| Name | Dialogue |
| | 拓かれし道 |
| ルドガー | あなた達も来ていたのか |
| ルドガー | ヴィクトル、エル |
| ヴィクトル | さっきぶりだね |
| エル | … |
| エル | 二人も、メルディ達と一緒に来ちゃったの? |
| ヴィクトル | 違うよ、エル。私達は自分でここに来たんだ |
| ルドガー | 自分で…?どういう事だ? |
| ヴィクトル | …当事者である君達は知っておくべきか |
| ヴィクトル | 君達を分史から転移させここに集めたのは私だ |
| エル | パパ達が…!? |
| ルドガー | 一体、どういう事だ…?この時空の裂け目と関係あるのか? |
| ヴィクトル | ああ。さっきも言ったが、それは「世界の楔」に通じる道だ |
| ヴィクトル | 私の計画は全てこの瞬間のためにあった… |
| ルドガー | 計画だって…? |
| ヴィクトル | 私が分史でどれだけ足掻こうとも正史にある「世界の楔」へは至れない |
| ヴィクトル | だから正史のルドガー──君に「世界の楔」への道を開かせたのだ |
| ヴィクトル | 道標を負の因子に変え、順番に回収出来るよう各分史にばら撒いてね |
| アッシュ | …貴様が諸悪の根源か |
| ルドガー | どうして世界の楔へ…? |
| ヴィクトル | 質問に答えてやりたいが…今は一刻も早く為さねばならない事がある |
| ヴィクトル | 対話の時間はその後だ。失礼する |
| ルドガー | なっ…! |
| エル | …じゃあね |
| | シュンッ |
| ルドガー | 待ってくれ…! |
| エル | 行っちゃった… |
| リタ | あいつ、何だったの?意味わかんないんだけど |
| キール | 随分と急いでいたな… |
| ユリウス | ヴィクトル…世界の楔で一体何をするつもりなんだ? |
| ルドガー | わからない。でも、嫌な予感がする…俺達も行こう! |
| | |
| ルドガー | …!中は広いな…ヴィクトル達の姿はもう見えない… |
| ルドガー | これが…世界の楔への道か… |
| エル | なんか…怖い。でも、パパはこの先にいるんだよね… |
| ミクリオ | …不思議な空間だ。こんな遺構は見た事も聞いた事もない |
| ユリウス | そうだろうな。おそらくこの地に到達した人類は我々が始めてだ |
| ユリウス | 何が起こるかわからない。なるべく固まってはぐれないように… |
| ユリウス | ちょっと待て。キールとリタはどうした? |
| メルディ | そういえばいないな?迷子か? |
| ルドガー | 入って来た時空の裂け目はすぐそこだ。はぐれるような距離じゃないはず… |
| アッシュ | 入った際、別の場所に飛ばされたという可能性は? |
| ミクリオ | どうだろう…でも、他のみんなは一緒にいるからその可能性は低いと思うな |
| ミクリオ | 単純にここに入れていないのかも知れない。一度戻って確認しよう |
| | |
| | グガアアァッ! |
| | |
| エル | わわっ!? |
| ルドガー | 危ない! |
| | ザシュッ |
| | グルルウゥ… |
| | バシュウゥゥ──… |
| メルディ | バイバ!消えちゃったな!…幻だったか? |
| ルドガー | いや、確かに手応えはあった。それと、今の魔物… |
| ユリウス | 見慣れない魔物だったな。何か気になるのか? |
| ルドガー | 世界が晶化した時、ラザリスの宮殿にいた魔物なんだ。もういなくなったはずなのに… |
| ユリウス | …やはりここでは何が起こるかわからない。一度外に出て状況を整理しよう |
| ルドガー | そうだな。一旦ここから出よう |
| | それぞれの使命 |
| リタ | 駄目ね、入ろうとしても弾かれる。何かしらの特殊な力が働いてるみたいね… |
| キール | ルドガー達は入れて僕達は入れない…。何故だ…? |
| | シュンッ |
| ルドガー | …よし、みんな無事に出られたな |
| リタ | うわっ!急に出てこないでよ。びっくりするじゃない! |
| キール | ルドガー!よかった、無事だったか |
| キール | 僕達は入れなくて、どうしようかと思っていたんだ |
| ユリウス | 入れない…か |
| ユリウス | これは推測だが、入るのには資格がいるのかもしれないな |
| リタ | 資格? |
| ユリウス | 先に入った二人とルドガー、エル、俺の三人はクルスニクの一族だ |
| ユリウス | そして分史の三人は道標…つまり入れた者は、オリジンの審判に関わりのある者なんだ |
| リタ | 部外者立ち入り禁止って事ね。どうにか出来ないの? |
| ルドガー | …何か方法があればいいけど… |
| キール | まだ情報が足りないな…。中の様子を教えてくれないか |
| ルドガー | ああ、中は── |
| リタ | 晶化現象の時に現れた魔物…ね |
| エル | ラザリスって人がフッカツしたのかな? |
| ルドガー | いや…おそらく違うと思う。それなら魔物だけじゃなく世界ごと晶化するはずだ |
| ユリウス | だとすると…命を失った魔物達の魂だったのかもしれないな |
| リタ | 魂?…まさか、幽霊だなんて言うつもりじゃないでしょうね |
| ユリウス | 実体はあったから幽霊というわけではないだろう |
| ユリウス | 伝承の中で、世界の楔は全ての世界のマナと魂を循環させる場所だと語られている |
| ユリウス | 命を失った者達の魂は世界の楔に集まる。人も、魔物もな |
| キール | その魂が何らかの理由で実体化していた…という事か? |
| ユリウス | ああ。あくまで伝承を元にした憶測でしかないがな |
| ルドガー | ヴィクトル達なら何か知っているだろうか… |
| ユリウス | 我々よりは詳しいだろうが…話を聞くためには追いつかなくてはな |
| ルドガー | すぐに追いかけよう |
| ルドガー | …何が起こるかわからない場所だ。エルは危険だから── |
| エル | 留守番しろ、なんて言わないよね。エルはルドガーのアイボーだし |
| ルドガー | …本当に危険なんだ。俺がエルを守り切れないかもしれない |
| エル | その時は、エルがルドガーを守る!それがアイボーでしょ! |
| エル | それに、中にはパパがいる…。エル、パパが何をしようとしてるのかちゃんと聞きたい! |
| エル | もしルドガーに置いて行かれてもエル、一人でパパを捜しに行くよ!それでもいいの!? |
| ルドガー | それは… |
| リタ | ルドガー、これはあんたの負けよ。置いてったらこの子本気で一人で行っちゃうわよ |
| キール | もしそうなったら、僕達は追いかけようにも世界の楔には入れないぞ |
| ルドガー | …そうだな。それに、エルの意志の強さもよくわかった |
| ルドガー | すまなかった、エル。アイボーとして、一緒に来てくれるか? |
| エル | もちろん! |
| ミクリオ | 話はまとまったようだね |
| メルディ | メルディ達はルドガーと行くよ!キール達、どうするか? |
| キール | ぼく達は、今ある情報を元にどうにか中に入れないか方法を探ってみる |
| リタ | 一度研究施設に戻った方がいいわね。何らかの方法で資格ってやつがあると認識させられれば── |
| | |
| 研究員 | はぁ、はぁっ!キールさん、リタさぁん! |
| キール | ?何だ? |
| リタ | あんた確か、研究施設にいた…。慌てて、どうしたの? |
| 研究員 | …き、緊急事態です!この観測結果、見てください! |
| | ペラッ |
| | |
| キール | これは…! |
| リタ | 嘘でしょ…!この数字、見覚えあるわ。確か前に時空の亀裂が出来た時の… |
| 研究員 | その通りです!実際に、東の山の方で時空の亀裂が観測されています! |
| ルドガー | クロノスが暴走していた時のような現象が起きてるのか!?大勢の人が亀裂に飲み込まれるぞ |
| リタ | どうすればいいのよ。亀裂への対応にも骸殻の力が必要なんでしょ!? |
| ユリウス | …手分けすればいい。新しく発生した亀裂には俺が向かおう |
| ルドガー | 兄さん…? |
| ユリウス | ヴィクトル達を追うのはルドガーが適任だろうからな |
| ルドガー | …兄さん、ありがとう。こっちの事は任せるよ |
| ユリウス | 気を付けてな |
| ルドガー | ああ。兄さんも |
| リタ | あたし達は研究施設に戻って、亀裂が出来た原因を探るわ。あと、世界の楔への入り方もね |
| キール | 忙しくなりそうだな |
| メルディ | キールなら出来るよ!頑張ってな! |
| キール | ああ。ありがとう |
| ルドガー | よし…それじゃ改めて向かおう。世界の楔の、その奥に |
| エル | おー! |
| scene1 | 最奥を目指して |
| ミクリオ | 世界の楔…前人未到の地か。改めて見てもやっぱり独特な景色だね |
| メルディ | また突然、魔物が出るかも。気を付けるよぅ |
| アッシュ | どんな景色だろうと、何が起ころうと道が続いているのなら進むのみだ。…急ぐぞ |
| エル | うん。パパ達に追いついて、何をしようとしてるかちゃんと聞かないとだもんね! |
| ルドガー | ああ。行こう! |
| scene2 | 最奥を目指して |
| アッシュ | 穿衝破! |
| ミクリオ | 六行六連! |
| | グギャア! |
| | |
| | バシュウゥゥ──… |
| | |
| アッシュ | 流れるような六連撃…見事だ |
| ミクリオ | 君が隙を作ってくれたお蔭だよ。それに、剣士と一緒に戦うのは経験があるからね |
| アッシュ | だとしても初対面で俺の動きに合わせられる奴はそう多くない |
| ルドガー | この辺りの魔物はあらかた片付いたみたいだ。戦い続きだし、少し息を整えよう |
| ミクリオ | それじゃ君も小さい頃から弟と剣の練習をしていたんだね |
| アッシュ | ああ。あいつも負けず嫌いで、ほぼ毎日手合わせしていたからな。練習相手には事欠かなかった |
| ミクリオ | そうか。僕も君もそんな繋がりがある人に負の因子が憑りついたんだね |
| アッシュ | ヴィクトルの計画か… |
| ミクリオ | ああ。彼は仮面の男…ヴィクトルにこう吹き込まれていたらしいんだ |
| ミクリオ | 平和のためには犠牲が必要だ、と… |
| ルドガー | 今にして思えばその情報は負の因子の影響を強めるためのエサだったのかもしれないな |
| メルディ | はいな。メルディが世界では、キールに分史が知識教えてた |
| メルディ | あの時がキールにとって悪い心、揺さぶられた気がするよ |
| アッシュ | …。俺の世界では、ルークに負の因子は道標、という言葉を残した |
| ルドガー | 負の因子を破壊した者は世界の楔へと続く道標になる… |
| アッシュ | ルドガーに回収させる事まで含めて全部、奴の計画の内だったという事だ |
| ミクリオ | みんな、彼の掌の上で踊らされていたのか… |
| メルディ | そこまでして、何したいか見つけ出して、聞かなきゃな! |
| メルディ | キールが事、利用したのは、許せないけど… |
| メルディ | 互いの考え知るため話し合うの、とっても大事 |
| メルディ | そうしないと悪い考えばっかり大きくなる。気持ち、すれ違っちゃうよ |
| エル | うん。パパと、ちゃんと話ししたい |
| エル | …エル、パパは悪い事したいわけじゃないって信じてるから |
| ルドガー | そうだな…。ヴィクトルのやり方は確かに正しくなかったけど… |
| ルドガー | そんな事をしたのには何か事情があるはずだ。その話はしっかり聞きたいと思う |
| アッシュ | 対話の必要性か…全く、耳の痛い話だ |
| メルディ | 対話の仕方も大事な。メルディとおカーサン、女王と王女として話すとダメだった |
| メルディ | でも親子として話したらすぐわかり合えたよ |
| アッシュ | … |
| ミクリオ | … |
| メルディ | ?どうかしたか? |
| ミクリオ | 君は、一国の王女なのかい? |
| メルディ | はいな。言ってなかったか? |
| アッシュ | そうだったのか。王族には珍しい純朴な人間だな |
| メルディ | それ、褒めてるか? |
| アッシュ | 勿論だ。王宮という魔窟では人を信じる気持ちを忘れがちだ |
| アッシュ | 俺も見習う必要があるかもしれないな… |
| ルドガー | そうか、そういえばお互いの自己紹介もまだだったもんな。そんな暇が今はないんだけど… |
| ミクリオ | 僕達の間にも対話は必要かもしれないね |
| ミクリオ | 例えば、ルドガー…君に確認しておきたいんだが |
| ミクリオ | ヴィクトルと対話した結果、もし受け入れられないような話だった場合… |
| ミクリオ | 君達は、ヴィクトルと戦うのか? |
| ルドガー | …出来る限りそれは避けたい。戦うって事は、彼の事情を鑑みず力尽くでこちらの正義を通すって事だ |
| ルドガー | もし戦うとしたら、話し合うために。話し合って折り合いがつかない時はお互いが納得出来るまで話すよ |
| ルドガー | 別の世界の存在とはいえ彼と俺は同じ…どこかで折り合いをつけられるはずだ |
| ミクリオ | それを聞いて安心したよ。僕もそうするべきだと思う |
| ミクリオ | 一方にとって邪魔だからもう片方を排除する…そんな戦いは、もう見たくないからね |
| アッシュ | 同感だ。主張が全く相反する者同士でも共存の道は必ずある |
| メルディ | ワイール!みんな仲よく話し合うが一番! |
| ルドガー | みんな…ありがとう。少し不安だったけど、お蔭で勇気が湧いて来たよ |
| | |
| ??? | こんなところで談笑とは随分余裕だな |
| ルドガー | …!誰だ…!? |
| | 時空を超える力 |
| ルドガー | あなたは…!? |
| ダオス | 仮面の男は…まだ先か |
| ルドガー | ダオス!何故ここに…!? |
| ダオス | …それはこちらの台詞だ。休んでいる暇などお前達にはないはず |
| ミクリオ | ダオス…?まさか、伝説の魔王…実在しているとは驚いた |
| ダオス | … |
| メルディ | ルドガー、知り合いか? |
| ルドガー | ああ。彼は、正史のマナが減っている理由を調べていたんだ |
| ルドガー | そうだ、ダオス。マナが減っていた原因はもう解決したんだ |
| ルドガー | ヴィクトルという男が分史にマナを移動させてたけど、それはもう止める事が出来た |
| ダオス | …そのヴィクトルというのが仮面の男だろう |
| ダオス | 今まだ野放しの状況で何故、解決したと言える |
| ダオス | お前は奴がここで何をしようとしているか、真意を知っているのか? |
| ルドガー | それは… |
| ダオス | …どうやらお前達と話していても時間の無駄のようだ |
| エル | パパを追いかけてどうするの…? |
| ダオス | … |
| エル | 行っちゃった…なんか感じ悪いし! |
| ルドガー | …追いかけよう |
| メルディ | ダオスをか?それともヴィクトル達か? |
| ルドガー | まずヴィクトルだ |
| ルドガー | ダオスもヴィクトルを捜していた。ヴィクトルを追っていればどこかで会うだろう |
| エル | うん!あの人より先にパパを見つけよう! |
| | |
| リタ | うーん…無理か。資格がないと入れない特殊な力…っていう線での検証はこれが限界ね |
| キール | 行き詰っているみたいだな |
| リタ | まぁね。情報が足りなさすぎるのよ。そっちで調べてる亀裂の方は何か進展はあった? |
| キール | いや、大きな動きはない。計測器の数値は異常な数値を指したままだ |
| リタ | 依然として安心は出来ないわけね… |
| ??? | あの、ごめん。ちょっといいかな |
| リタ | ん…? |
| ロンドリーネ | 忙しそうなところ申し訳ないんだけど… |
| リタ | あんたはこの前の…!どうしたのよ? |
| ロンドリーネ | 実はダオスがあの世界の楔ってとこに入って行っちゃったのよ… |
| キール | 何だって…!? |
| リタ | ちょ、ちょっと!その話詳しく聞かせなさい! |
| ロンドリーネ | わ、わかった。順を追って説明するね |
| ロンドリーネ | えっと、あの時空の裂け目の前から誰もいなくなるまで、私達は離れて待ってたんだけど… |
| | |
| ロンドリーネ | みんないなくなったね… |
| ダオス | … |
| ロンドリーネ | ねえ、どうするつもり?もしかして中に入るの? |
| ダオス | …時空の壁か。ならば… |
| ダオス | … |
| ロンドリーネ | えっ?入って行っちゃった…! |
| ロンドリーネ | 私も、入れるのかな…?えーい、ものは試し! |
| | |
| | シュン |
| ロンドリーネ | 入れた…!でも、どうして… |
| ダオス | …デリス・エリュシオンか |
| ロンドリーネ | え?あ、本当だ。デリス・エリュシオンが光ってる… |
| ダオス | だが、すぐにマナは尽きる |
| ロンドリーネ | え、それって、どういう── |
| | ヴォン |
| ロンドリーネ | えっ、何!?吸い込まれ── |
| | |
| | ヴォン |
| ロンドリーネ | きゃはぁっ!! |
| | ドサッ |
| ロンドリーネ | いてて…ここは…弾き出されちゃった?…って、私だけ? |
| ロンドリーネ | も、もう一回…! |
| ロンドリーネ | うーん…駄目ね、今度は全然入れない…さっきのキールやリタと一緒だ |
| ロンドリーネ | ダオス、何をするつもりなんだろ…。世界の終わりを止めるって言ってたけど… |
| ロンドリーネ | 何だか嫌な予感がする。どうにかして追いかけないと… |
| ロンドリーネ | キールやリタならもしかしたら…ここで考えてても仕方ない、研究施設に行ってみるか |
| | |
| ロンドリーネ | …というわけで、二人に相談しにきたの |
| リタ | 二人共、世界の楔に入れたって事?だけどあんたはすぐに弾き出されてダオスは戻ってこなかった… |
| キール | 今の話だと、デリス・エリュシオンという物のマナが尽きて弾き出されたみたいだな |
| キール | デリス・エリュシオンとは何だ? |
| ロンドリーネ | この指輪だよ。昔、ダオスにもらったの |
| キール | …見たところ、何の変哲もないただの指輪のようだが…特別な力があるのか? |
| ロンドリーネ | うん。溜めたマナを使って時空を超えて移動が出来るんだ |
| キール | 時空移動…!?とんでもない力だな |
| キール | しかし時空を超えるという点では骸殻能力に通じる部分がある… |
| キール | …時空を超える力があれば世界の楔に入る資格があると誤認させる事が出来るのか…? |
| ロンドリーネ | ダオスが中に入れたのは、デリス・エリュシオンなしで時空を超える術が使えるから…? |
| リタ | ちょっと、その指輪調べてもいい? |
| ロンドリーネ | …わかった |
| リタ | …全く未知の構造だわ。マナは自然と溜まるようになっていて膨大な量を蓄えられるみたい |
| キール | 時空を超えるには相応のマナが必要という事か。今はどのぐらいのマナが入ってるんだ? |
| リタ | すっからかんよ。自然に溜まるマナだけで満たすのは時間がかかりすぎるわね |
| キール | 世界の楔に入るために全てのマナを消費してしまったという事か |
| ロンドリーネ | ダオスの口ぶりからしてもきっとそうだと思う。何とかならないかな…? |
| リタ | …上手く行くかはわかんないけどここにある機材を使えば指輪にマナを充填出来ると思うわ |
| ロンドリーネ | ほんと!?私、どうしてもダオスを追いかけたいの!お願い出来ないかな…? |
| リタ | 任せなさい!…って言いたいところだけど、あんたも手伝ってくれる? |
| リタ | マナの大量急速充填には人手が必要なの |
| ロンドリーネ | 勿論!何をすればいいか教えて! |
| リタ | そうね…じゃあ、こっちに来て |
| キール | ふう。忙しくなってきたな。だが、これで── |
| | |
| キール | …… |
| | |
| キール | 何だ?妙な胸騒ぎがする |
| キール | (この感覚… メルディに危機が迫る悪夢を 見た時に似ている気がする…) |
| キール | (まさか、また何か──) |
| | |
| ??? | キール! |
| キール | うわぁ…っ! |
| | |
| メルディ | わっ!どうしたか!? |
| キール | …メルディか。驚かさないでくれ |
| メルディ | ごめんな |
| キール | いや…それで、どうかしたのか?今、大変な状況なんだ。急用でないなら後にしてほしい |
| メルディ | そうだった。お客さん連れてきたよぅ! |
| キール | …客だって? |
| メルディ | はいな!みんな変な夢見たり、胸騒ぎがして集まったって言ってるよ! |
| キール | 変な夢?胸騒ぎ?まさか── |
| scene1 | 仮面の裏側 |
| エル | あっ!いた! |
| ルドガー | 追いついたか…! |
| ヴィクトル | …… |
| エル | もう来たの!?魔物がたくさんいたはずでしょ |
| ルドガー | みんなの助けがあったからな |
| ルドガー | それより…ダオスはどうした? |
| ヴィクトル | 何の事だ。…もしや、かの魔王がここに来ているのか? |
| ミクリオ | 本当に知らないようだね。という事は、途中の分かれ道で別の方に行ったのかもしれない |
| ルドガー | そうだな… |
| ヴィクトル | …それより、何故エルを連れて来た。危険だろう |
| エル | ルドガーのアイボーだもん!それに、パパの事だって心配だし |
| エル | ねぇ、パパ。ここで何しようとしてるの?ちゃんと教えて |
| ヴィクトル | …エル。……わかった。全て教えよう |
| エル | ヴィクトル…!?でも… |
| ヴィクトル | 私がここで話をしていても何も問題はない |
| エル | …そういう事ね。わかった |
| ヴィクトル | …さて、私の目的だったか。そもそも君達はどうしてそこまで知りたがるんだ |
| ヴィクトル | もしかして私が世界征服でも企んでいると考えているのか? |
| ルドガー | そういうわけじゃないけど… |
| アッシュ | ご託はいい。さっさと話せ |
| ヴィクトル | 私の目的はごくありふれた事…娘と平穏に暮らしたい。ただそれだけだ |
| メルディ | そのため、道標が必要か?メルディ達が世界に負の因子、持ってくる必要あったか? |
| ヴィクトル | ああ、勿論だ。私は世界の楔に辿り着き…オリジンの審判を達成する必要がある |
| ルドガー | …やっぱりオリジンの審判が目的だったのか |
| ヴィクトル | そうだ |
| ヴィクトル | ルドガーは知っているだろうが、私の世界はマナが枯渇し滅亡の危機に瀕している |
| ヴィクトル | オリジンの審判を達成し願いを叶えれば、私の世界にマナを取り戻せる |
| ヴィクトル | ルドガー。君の言っていた、何も犠牲にしない方法というやつだよ |
| ミクリオ | …悪い話には聞こえないな |
| エル | うん。それだったら、エルも賛成 |
| ルドガー | …ああ。だけど…何かおかしい |
| ヴィクトル | …何か疑問があるのか? |
| ルドガー | 最初からそれが狙いだったら負の因子を使ってマナを集める必要はなかったはずだ |
| ルドガー | わざわざ負の因子を改造までして他の世界からマナを奪っていた…その意味は何だ? |
| ヴィクトル | マナを奪えば正史に異変が起こり、君は異変をたどって道標を集める。その誘導のためだ |
| ヴィクトル | 何せ正史の住人である君に道標を集めてもらわないと世界の楔へは至れないのだからね |
| ルドガー | …なるほど…筋は通る… |
| ヴィクトル | 納得したかい? |
| ルドガー | …もう一つ |
| ヴィクトル | …何だい? |
| ルドガー | エルが正史にいた事だ。エルと一緒に暮らす事が目的ならどうしてエルを迎えに来なかった? |
| ヴィクトル | …君も聞いた事があるだろう。正史世界では、同一の存在が共存する事は出来ないと |
| ルドガー | ああ。兄さんが言っていた… |
| ヴィクトル | 私はルドガーだ。正史世界に君がいる限り同一存在である私は正史に入れない |
| ルドガー | それなら、今ここにヴィクトルと大人のエルがいる事はおかしい… |
| ミクリオ | 僕達もだ。この世界にも僕はいるんだろう?なのにここにいられる… |
| ルドガー | もしかして、同一存在が共存出来ないという伝承は間違いなのか…? |
| ヴィクトル | …いや。伝承は間違っていない。そうでなければ私はエルと共に正史世界に住めばいいだけだからね |
| ヴィクトル | …それが出来ないのは、ルドガーと私という同一存在が正史世界に共存出来ないからだ |
| ルドガー | …だったら、何故、今── |
| | |
| ヴィクトル | …ここが正史世界ではなくなり始めているからだ |
| | |
| ルドガー | …!どういう事だ!? |
| ヴィクトル | 君が疑問に思った負の因子を使ってマナを奪っていた理由の一つだよ |
| ヴィクトル | この世界のマナを分史に移し替え、正史世界としての法則が機能しなくなるようにしていたのだ |
| ヴィクトル | 最初は、エルに持たせた懐中時計とルドガーの持つ時計がやっと共存出来る程度だった |
| ルドガー | …そうか、この時計…エルが持っているのはヴィクトルの…つまり俺の時計と同一存在なのか |
| ヴィクトル | ああ。それから徐々にマナを移し続け正史世界のマナの半分近くを私の世界に移し替えた |
| ヴィクトル | 今やこの世界は正史世界としての完全性を失い、同一存在が共存出来るまでになっている |
| ヴィクトル | あとは世界の楔だけだ。この世界の楔を正史から外し、私の分史に繋ぎかえれば── |
| ヴィクトル | 私の世界が正史となる |
| ルドガー | 何、だと…!? |
| ミクリオ | 君の世界の問題はマナの枯渇だったんだろう?なのに、正史にする意味は何だ |
| ヴィクトル | 何度も言っているだろう。娘と平穏に暮らし続けるためだ |
| ヴィクトル | マナの枯渇は、オリジンの審判を達成した時に願いを叶えれば解決するだろう |
| ヴィクトル | しかし…私の世界が分史である限り、突然世界が消える恐れが付きまとう |
| ルドガー | …!時歪の因子か! |
| ヴィクトル | そうだ。私の世界の時歪の因子が破壊されれば、全ては水の泡だ |
| ヴィクトル | だが、私の世界が正史となれば時歪の因子の破壊による世界破壊の心配がなくなる |
| メルディ | 時歪の因子の破壊…キールも同じ事心配してた |
| ヴィクトル | ああ。分史の人間にとっては、いつ自分の世界が消えるかも知れない |
| ヴィクトル | それを解決しない限り、平穏な生活は送れない |
| ルドガー | その時、正史…俺達の世界はどうなる? |
| ヴィクトル | 推測でしかないが… |
| ヴィクトル | 分史と同じ法則になるとすれば、世界の核となる時歪の因子がないため消滅してしまうだろう |
| ヴィクトル | ただ、分史とは根本的に世界の造りが異なる |
| ヴィクトル | 私の見立てだと…正史世界は、時間をかけてゆっくり溶けるように崩壊していく… |
| ヴィクトル | その間に、お前とエルの力を使えば仲間や家族──大切な人達を別の分史に避難させられるだろう |
| ルドガー | …だが、世界中全ての人を避難させる事は出来ない。違うか? |
| ヴィクトル | …その通りだ。しかし、その事がお前にどんな影響がある? |
| ヴィクトル | 身の回りの人間が全て今まで通り一緒にいるのなら元の世界と何が違うんだ? |
| ルドガー | 何が違うか、だって…!?大勢の人が犠牲になるんだぞ! |
| ヴィクトル | 元々、顔も名前も知らない者達だ。お前の人生と接点もない。心を痛める必要はないだろう |
| ルドガー | 本気で言ってるのか…?知らない誰かなら犠牲になっても平気だって… |
| エル | そんなのダメだよ、パパ! |
| ヴィクトル | …普段、私達が笑って過ごしている間にも、世界のどこかで人は死んでいる |
| ヴィクトル | 今こうしてる間にもだ。病で、事故で…だが、そんな事知る由もないだろう |
| ヴィクトル | 知らなければ平気だ。心が痛む事もない。…それと同じだ |
| ルドガー | 同じじゃない…!お前の都合で死を押し付ける事が問題なんだ! |
| ヴィクトル | …それを言うなら、ルドガー。お前もこれまでに分史世界を破壊した事があるだろう |
| ルドガー | …っ! |
| メルディ | …ルドガー…? |
| ルドガー | …ある。だけど好きでそうしたわけじゃない |
| ヴィクトル | つまり、自分や大切な者を守るため仕方がないから、時歪の因子を破壊し分史世界を消したという事だ |
| ヴィクトル | 私も同じだよ。大切なエルとの平穏な日常を守るために犠牲は厭わない |
| ルドガー | それをエルが望まなくてもか? |
| ヴィクトル | …っ! |
| エル | …ルドガーの言う通りだよ。エル、パパの言う事むずかしくてまだよくわかんないけど… |
| エル | 誰かをギセイにしたくない!その気持ちは、変わらないよ! |
| ヴィクトル | … |
| ヴィクトル | …今はわからなくても構わない。いずれ、理解してくれるさ |
| メルディ | それじゃダメな。エルの気持ち、無視するのよくない! |
| メルディ | きちんと話し合わないとお互いに後悔する! |
| ミクリオ | 犠牲の上に造られた世界で、何事もなかったかのように平穏に暮らす事は難しいよ |
| ミクリオ | 時間は痛みや罪の記憶を薄れさせてくれるけれど…消えるわけでは、決してない |
| ミクリオ | 幸せな日常を過ごせば過ごすほど彼女は犠牲になった人々を想い、罪の意識に苛まれるだろう |
| アッシュ | それに、他の分史を破壊した事を指摘してルドガーを黙らせたようだがそれとこれとは話が別だ |
| アッシュ | 過去にどんな罪を背負ってようと今、新たな犠牲を出さないように動いている事とは関係ない |
| アッシュ | ルドガーもだ。理屈ではなく、今自分が何を正しいと思うかを考えろ |
| ルドガー | …そうだな。みんな、ありがとう |
| ヴィクトル | …滅ぶのは正史だけだ。分史に生きる者達には無関係…何故、口を挟む? |
| ミクリオ | ルドガーは僕の大切な友人を救う手助けをしてくれた。その恩を返したいと思うのは当然だ |
| メルディ | メルディも助けてもらった、次は助けたい! |
| アッシュ | 俺は国と弟が世話になった。生きる世界が違う程度の事、黙っている理由にはならん |
| ルドガー | みんな… |
| ヴィクトル | ふふ…なるほど |
| ルドガー | 何がおかしい |
| ヴィクトル | 私が道標を集めた時は情など深める余裕はなかった。何しろ急いでいたのでね |
| ヴィクトル | 犠牲を出さないなどという甘い考えにもなるわけだ |
| ヴィクトル | 私達は同じ存在…話せば考えも通じると思ったがどうやら間違いだったようだ |
| ルドガー | …… |
| ヴィクトル | 世界が…環境が違えばここまで違うか |
| ヴィクトル | 結局、私達はどこまでも相容れないようだ。ここで消えてもらおう |
| ルドガー | 待ってくれ、ヴィクトル!今は相容れないかもしれないが、じっくり話し合えばきっと… |
| | |
| ヴィクトル | 話し合うよりもこの方が早い! |
| | |
| ミクリオ | 駄目だルドガー!向こうは何か使おうとしてる! |
| ルドガー | あれは…何かの、魔導器か!? |
| | ヴォン |
| メルディ | バイバ! |
| ミクリオ | これは、時空の──!? |
| アッシュ | くっ…吸い込まれるぞ…! |
| エル | きゃあぁぁっ! |
| | シュン |
| ルドガー | みんな!!!エルまで…! |
| ヴィクトル | 殺しはしない。別の場所へ飛ばしただけだ。このように… |
| | ヴォン |
| エル | きゃあっ! |
| ヴィクトル | おっと |
| | ガシッ |
| ヴィクトル | 怪我はないかい? |
| エル | パパ…!どうして、こんな事するの…? |
| ヴィクトル | そんなに悲しそうな顔をしないでくれ。全部、エルのためなんだよ |
| ヴィクトル | ここは危険だ。パパと一緒に行こう |
| エル | 行くってどこに!?ルドガーは!? |
| ヴィクトル | …残念だが、彼らはここまでだ |
| エル | それって… |
| ルドガー | …!? |
| | |
| | グゥルルル…!! |
| | |
| ルドガー | なっ…でかい!こんな魔物も呼び出せるのか!? |
| ヴィクトル | この空間を漂う魂に形を与えただけだ。創造の力を使ってね |
| ルドガー | 創造の力…そうか!ここまで襲ってきた魔物もお前の仕業だったのか! |
| エル | パパ、やめてよ!あんな大きいの、ルドガー死んじゃう! |
| ヴィクトル | 何、ルドガーなら大丈夫さ。一度は私に勝った実力者だからね |
| ヴィクトル | だが巻き込まれると危ない。エルはこっちに来るんだ |
| エル | パパ、放して…! |
| エル | ルドガー…! |
| ルドガー | エル…! |
| ルドガー | 待て、ヴィクトル!! |
| | ウガアァァッ!! |
| | ドゴォォォン! |
| ルドガー | くっ…!まずはこいつをどうにかしないと! |
| scene2 | 仮面の裏側 |
| | ズウゥゥン… |
| ルドガー | ふぅ…やっと倒れてくれたか |
| ルドガー | 今までの魔物のように消滅しない…。気絶しただけなのかもしれないな |
| ルドガー | …みんなは無事だろうか。他の場所に飛ばしただけって言っていたけど… |
| ルドガー | …居場所がわからない以上、合流するのは難しいな |
| ルドガー | ただ待つわけにもいかない。合流出来ないなら、奥を目指して進んでくれるはずだ |
| ルドガー | みんなを信じて…今はヴィクトルを追いかけよう |
| | |
| ミクリオ | ここは… |
| ミクリオ | みんなとは別の場所に飛ばされてしまったのか… |
| ミクリオ | 早く合流しなければ。だが、どっちに── |
| | ズズゥゥゥンッ!! |
| | グオオオォォォッ!! |
| ミクリオ | こいつは…! |
| ミクリオ | 本で見た事がある。魔界ニブルヘイムに棲むとされるギガントモンスター…! |
| ミクリオ | まさか実在したとは… |
| | グァアアッ! |
| ミクリオ | …どうやら、こいつを何とかしないと先に進めないようだな |
| | |
| メルディ | いたぁ…お尻打ったよー |
| メルディ | …バイバ!あれは… |
| | グァァァァッ!! |
| | グルルゥ… |
| メルディ | はぁ、はぁ…上手く隠れられたな。近くに四角いのあって助かったよぅ |
| | グルルルル… |
| メルディ | メルディが事、捜してる。ここなら見つからないけど… |
| メルディ | ……。道、塞がってる…。何とかしないと進めないな |
| メルディ | うーん…大きい魔物、怖いけど…。ルドガーが事、助けて力になるため進まないといけないな |
| メルディ | メルディはもう、じっと守られてるだけのお姫様違うから…! |
| メルディ | こっちだよ! |
| | ガルル!? |
| メルディ | 目を狙って──レイ! |
| | グギャアアアッ!!? |
| メルディ | グレイブ!ライトニング! |
| | グゥゥ…ギャオオオォン!!! |
| メルディ | そこどいてくれるまで、撃ち続けるよぅ! |
| | |
| アッシュ | この景色…外に出されたわけではなさそうだな。目的は分断か…? |
| アッシュ | …!あれは…! |
| | グオオォォッ! |
| アッシュ | ちっ、面倒そうな奴が出てきやがった |
| | ブオンッ! |
| アッシュ | ふん、大振りだな |
| アッシュ | 悪いが先を急ぐ。すぐに片付けさせてもらう! |
| | グオオォォォッ! |
| | 己が信念と共に |
| | ウガアアッ!!! |
| ルドガー | くっ、やっぱりまた動き出した…! |
| | ブンッ! |
| | ガキィッ! |
| ルドガー | くっ…重い…!受け止め…きれない…! |
| ルドガー | このままじゃ…! |
| | |
| ??? | あと3秒持ちこたえて! |
| ルドガー | …!この声は…! |
| ロンドリーネ | はあっ! |
| | ザシュザシュ、ジャキン! |
| | グルァアッ!! |
| | |
| ロンドリーネ | 思ったより硬いね~!けど、よろけさせたよ! |
| ルドガー | ありがとう、助かった!けど、どうしてここに… |
| ロンドリーネ | 話はあと!一気にやるよ! |
| ルドガー | ああ!! |
| ルドガー | 全力で行く! |
| ロンドリーネ | 逃がさない!貫け、槍よ!デモンズランスレイン!! |
| ルドガー | うぉぉぉっ!マター・デストラクト!! |
| | グ、グガアァァァ… |
| | ズズウゥゥゥン…!! |
| | バシュウゥゥ──… |
| ルドガー | ありがとう、助かったよ |
| ルドガー | もしかして、ダオスと一緒に来たのか?でも、どうやって… |
| ロンドリーネ | もう、ダオスと会ったんだね |
| ロンドリーネ | 私はダオスとは別で来たんだ。説明すると長くなるんだけど、このデリス・エリュシオンのお蔭なの |
| ロンドリーネ | ダオスも、デリス・エリュシオンも時空を超える力を持ってるから… |
| ルドガー | 時空を…そういう事だったのか |
| ロンドリーネ | でも、あまり時間はないんだ。マナはたくさん充填したけど、力をみんなと分け合ってるから… |
| ルドガー | みんな? |
| ロンドリーネ | うん。みんな呼ばれてる気がするって途中であちこちに分かれて行っちゃったけどね |
| ルドガー | あちこちに…それって、もしかして── |
| | |
| ミクリオ | ツインフロウ! |
| | バシュゥッ! |
| | グガァァッ! |
| ミクリオ | はぁ、はぁ…駄目だ…効いてはいるみたいだけど、この程度じゃ…! |
| | グオォッ! |
| ミクリオ | …っ!しまった、避けられな── |
| ??? | ルズローシヴ=レレイ! |
| スレイ・ミクリオ | 蒼の四連! |
| | バシュ! |
| | グアアッ!! |
| ミクリオ | …!スレイ…と、僕か!? |
| スレイ | 間に合ってよかった! |
| | グルルル… |
| スレイ | 行こう、ミクリオ! |
| ミクリオ | ああ…! |
| ミクリオ | 水神招来! |
| ミクリオ | 流れを見切る! |
| スレイ・ミクリオ | 蒼き渦に慙愧せよ! |
| ミクリオ | 手は抜かないぞ!そこだ! |
| スレイ・ミクリオ | アクアリムス! |
| ミクリオ | クリアレスト・ロッド! |
| | ズバァァァァッ!! |
| | ギャアアアアアッ!! |
| | ズズウゥゥゥン…!! |
| | バシュウゥゥ──… |
| スレイ | ふぅ… |
| ミクリオ | お見事。息ぴったりだったね |
| ミクリオ | まあね。何度合わせて来た動きかわからない |
| ミクリオ | 君達は──正史世界の僕とスレイ…だね |
| スレイ | ああ。会えて嬉しいよ |
| ミクリオ | 僕もだ。…増援が来た…という事はもしかして他にも誰か来てるのか? |
| ミクリオ | よくわかったね。僕達と一緒に入ったのは── |
| | |
| メルディ | 白き御手よ、清冽なる棺に── |
| | グアァァァッ!! |
| | ドゴォッ! |
| メルディ | あうっ!! |
| メルディ | うぅ…詠唱、間に合わないな…でもアイスニードルとかじゃ全然効かない… |
| ??? | フリーズランサー! |
| ??? | サンダーブレード! |
| | グギャアアァァッ!! |
| メルディ | え… |
| メルディ | 大丈夫か? |
| キール | 助けに来たぞ! |
| メルディ | キールに…メルディ!?バイバ!正史世界のメルディか!? |
| キール | 話は後だ!この隙に畳みかけるぞ! |
| メルディ | はいな! |
| メルディ・メルディ | 白き御手よ、清冽なる棺に封じよ |
| キール | 死の顎、全てを喰らいて闇へと帰さん |
| メルディ・メルディ | アブソリュート! |
| キール | ブラッディハウリング! |
| | グギャアアアアァァァッ!!! |
| | ズズウゥゥゥン…!! |
| | バシュウゥゥ──… |
| メルディ | ワイール!やったな! |
| メルディ | はいな!二人共、ありがとな! |
| キール | やはり胸騒ぎは気のせいじゃなかったな… |
| キール | 間に合ってよかった。ぼくの計算では、ここにいられる時間は殆ど残っていないはずだ |
| メルディ | 時間?すぐ帰っちゃうか? |
| キール | ああ。間もなく、ぼく達はここから弾き出されるだろう |
| メルディ | 手伝えなくてごめんな |
| メルディ | そうか…。残念だけど、仕方ないな。後はメルディ頑張るよ! |
| キール | …頼もしいな。任せたぞ |
| メルディ | はいな! |
| | |
| アッシュ | フンっ! |
| | ザシュッ! |
| | グルルルッ…! |
| アッシュ | チッ、硬い上に再生までしやがる。いくら斬っても終わらねぇ |
| ??? | だったら一撃で倒しゃ問題ねぇな! |
| アッシュ | …! |
| アッシュ | フッ、同時に行くぞ。ついて来れるか? |
| ルーク | それはこっちの台詞だぜ! |
| アッシュ&ルーク | 魔王絶炎煌! |
| | ドォォォォォン…! |
| | グギャアアアアァァァッ!!! |
| | ズズウゥゥゥン…!! |
| | バシュウゥゥ──… |
| アッシュ | フン、手こずらせやがって |
| アッシュ | また借りを作っちまったな、ルーク |
| ルーク | アッシュ。また会えるとは思わなかったぜ |
| アッシュ | …お前が来たという事は、キール達が何か方法を見つけたか |
| アッシュ | しかし、お前は何故ここに…?知らせを聞いてキムラスカから来たにしては、早すぎるだろう |
| ルーク | それが…何日か前から変な夢を見てよ。すげぇ呼ばれてるような気がしたんだ |
| ルーク | いてもたってもいられなくて呼ばれる方にたどって行ったらバロニアに着いたんだよ |
| ルーク | そしたら、スレイ達も同じような感じでバロニアに来たって言ってて… |
| ルーク | キールが言うには道標がどーたらで負の因子と絆が引き寄せ合って何とかだってよ |
| アッシュ | …何の説明にもなってないな。かろうじて言いたい事は推測出来るが |
| ルーク | そんで、ロディの持ってた時空を超える指輪ってやつでここに入って来た |
| ルーク | そしたら呼ばれる感じがもっと強くなって、それをたどったらここに着いたんだ |
| アッシュ | …時空を超える指輪。そんな物があるのか |
| ルーク | おう。で、その指輪でここに残れる時間が── |
| | ヴォン |
| ルーク | っと、悪い。ちょうどここまでみたいだ |
| アッシュ | 時間に制限があるのか |
| ルーク | そういう事だ |
| ルーク | 最後まで戦えねぇのは悔しいけどな。何が起きてんのかはわかんねぇけど、後の事は頼んだぜ! |
| | シュン |
| アッシュ | …フン。言われなくとも |
| | |
| ルドガー | ──そうか。みんな来てくれてるんだな |
| ロンドリーネ | うん。だけど、もう時間がない… |
| ロンドリーネ | デリス・エリュシオンのマナがまた空になっちゃった…。ダオスには追いつけなかったな |
| ルドガー | ダオス…。彼の目的が何か、ロディは知っているのか? |
| ロンドリーネ | …ううん |
| ロンドリーネ | ダオスは…あの人は何を考えてるか私にもわからない… |
| ロンドリーネ | いつだって、一人で抱え込んじゃうから… |
| ロンドリーネ | 侵略者や魔王なんて呼ばれて大戦争になった事もある |
| ロンドリーネ | 今も…あの時と同じ胸騒ぎがする… |
| ルドガー | …心配し過ぎだって言いたいけど… |
| ロンドリーネ | 本当は自分でダオスを追いたい。でも、出来ない…。だから… |
| ロンドリーネ | ルドガー、お願い。ダオスが何をしようとしているのか確かめて! |
| ロンドリーネ | もし危ない事をしてるようなら止めてほしい。そして、こう伝えて… |
| ロンドリーネ | 一人で抱え込まないでって。みんなでなら出来る事だって沢山あるはずだから… |
| ロンドリーネ | もしみんなが協力しなくても…私がいるからって |
| ルドガー | ロディ… |
| ロンドリーネ | それでも彼が…また魔王と呼ばれるような事をしてしまうのなら── |
| | ヴォン |
| ルドガー | …!時空の裂け目が…! |
| ロンドリーネ | お願い、ルドガー。彼を── |
| ロンドリーネ | 止めて── |
| | シュン |
| ルドガー | ロディ…! |
| ルドガー | …わかった、ロディ。ダオスが何を考えていようと魔王になんてさせない…! |
| ルドガー | …先を急がないと。ヴィクトルを追っていればダオスにも会えるはずだ |
| scene1 | 最強の骸殻能力者 |
| エル | パパ、放して!どうしてルドガーと話してくれないの! |
| エル | おとなのエルもパパを説得してよ!あの樹の後ろにいるんでしょ!? |
| ヴィクトル | 静かに。彼女は今、世界の楔を繋ぎ変えようと集中しているんだ |
| エル | …!それって、エル達の分史を正史にしようとしてるってこと!? |
| ヴィクトル | …よくわかったね。正解したご褒美に、この場所について教えてあげよう |
| エル | そんなのいい! |
| ヴィクトル | そう拗ねないでくれ。私から聞いた情報をルドガーに伝えれば助けになるかもしれないぞ |
| エル | …そんな大事な話なの? |
| ヴィクトル | ああ。きっとルドガーの助けになる |
| エル | …わかった。聞く |
| ヴィクトル | いい子だ |
| ヴィクトル | まず…ここは正史と分史、全ての世界のマナと魂の循環を管理する場所なんだ |
| ヴィクトル | 見てごらん。この満天の星々…美しいだろう? |
| ヴィクトル | あの輝き一つ一つが分史世界なんだ。私達の世界も、あの中にあるんだよ |
| エル | …どれがエル達の世界なの? |
| ヴィクトル | うーん、この中から探すのはさすがに骨が折れるね。何しろ数がとても多いんだ |
| ヴィクトル | いくつあるか、わかるかい? |
| エル | えっと…ひとつ、ふたつ──数えられないよ |
| ヴィクトル | そうだね。正確な数はわからないが…実は手がかりはあるんだ |
| ヴィクトル | ほら、あれを見てごらん。大きな樹に機械があって、そこに数字が刻まれてるだろう? |
| エル | うん…いち、じゅう、ひゃく、せん…すごい数だね |
| ヴィクトル | あれは今までに作られた分史世界の数を数えているんだ。破壊された世界も含めてね |
| エル | 数えて…どうするの? |
| ヴィクトル | …オリジンの審判は、分史世界が100万個作られると失敗になるとされている |
| ヴィクトル | そのためにあの機械で数えているんだ |
| ヴィクトル | あの数字が100万になる前に、精霊オリジンに審判の達成を認めさせる必要がある |
| エル | …もし、失敗したらどうなるの? |
| ヴィクトル | 伝承によると…全ての世界の人間が滅んでしまうんだ |
| エル | みんな死んじゃうの…? |
| ヴィクトル | ああ。だけど平気だよ。世界の繋ぎ変えが終わったらオリジンの審判はパパが達成する |
| ヴィクトル | そうすれば審判の失敗によって人間が滅ぼされるという事はなくなるからね |
| エル | じゃあ、早く達成しようよ |
| ヴィクトル | それは、もう少し後でだ |
| ヴィクトル | 先に審判を終わらせてしまうと世界の楔から追い出されるかも知れないからね |
| ??? | 安心したよ。オリジンの審判はまだ達成してないんだな |
| ヴィクトル | …来たか |
| エル | ルドガー! |
| ヴィクトル | …想定よりも速い到着だな。一体どんな手を使った? |
| ルドガー | 仲間が助けてくれたんだ。少しの時間だけここに入ってくる方法があったらしい |
| ヴィクトル | ほう…。だが今はその仲間もいない。一人でどうするつもりだ? |
| ルドガー | 一人じゃない。お前に飛ばされたみんながきっと来てくれる! |
| ヴィクトル | …つまりお前は、仲間達を助けに行く事もせず、自分が助けてもらう事だけを考えてここに来たんだな |
| ルドガー | 違う…!俺は、みんなを信じて… |
| ヴィクトル | 認めたくはないだろう。だが受け入れるがいい |
| ヴィクトル | 私はお前を責めたりはしない。私も同じ選択をしてきたのだ。目的のために、仲間を見捨てる選択を |
| ルドガー | 見捨てたんじゃない。みんななら、無事にここに来ると信じているだけだ |
| ヴィクトル | そうかも知れないな。だが、もし来なかったらどうする? |
| ヴィクトル | 目的のために犠牲を出すとはそういう事だ。私とて犠牲を出したいわけではない |
| ヴィクトル | だが物事には優先順位がある。お前が私を追う事を優先して仲間との合流を諦めたように… |
| ヴィクトル | 私は娘と生きる事を優先し、かつては仲間だった者達を殺した。今は正史世界を消そうとしている |
| ルドガー | …他の人の命は優先度が低いと言うのか |
| ヴィクトル | …娘の命よりはずっと低い |
| ルドガー | 同じように家族を大切にしている人も世界にはたくさんいるんだ。犠牲にして、心は痛まないのか |
| ヴィクトル | 何度もした問答だな。心は痛むが、それを受け入れてでも私は娘との平穏な日常を手に入れる |
| ヴィクトル | 自分勝手だと思うなら思うがいい。それでも私は止まらない |
| エル | パパのうそつき!ルドガーと約束してたでしょ!何も犠牲にしない方法を探すって! |
| ヴィクトル | … |
| ルドガー | ヴィクトル…頼む、もう一度考え直してくれ |
| ヴィクトル | …わかった |
| エル | パパ…! |
| ヴィクトル | では、今、ここで示してくれ。この世界も、他の世界も何も犠牲にせず世界を守る方法を |
| ルドガー | 今ここで…だって? |
| ヴィクトル | ああ。今、すぐにだ |
| ルドガー | なっ… |
| ヴィクトル | 私だって他の方法を探したいという気持ちはあるんだ。出来る限りの事はしたい |
| ヴィクトル | だが、時間切れだ。道標は揃い、世界の楔への道は拓かれた |
| ヴィクトル | 世界の楔を繋ぎ変え、オリジンの審判を達成する計画は今すぐ実行しなければならないのだ |
| ヴィクトル | 他の者にオリジンの審判の権利を奪われない内にな |
| ヴィクトル | 私はこの機会を逃すつもりはない。止めたいのなら、今すぐに他の方法とやらを示してくれ |
| ルドガー | くっ…! |
| エル | パパ、急すぎるよ… |
| ヴィクトル | ではいつまで待てばいい?考える考えると、そんな宣言だけで先延ばしに出来る問題ではないんだ |
| エル | そうかも…しれないけど… |
| ルドガー | …ヴィクトルの方法は間違ってる。どうしても止めなきゃいけないんだ。でも…だけど…代わりの方法は… |
| ヴィクトル | …出ないだろう。私も長い時間をかけて導き出せなかった答えだ |
| ヴィクトル | なんの答えも出せずにただ私の邪魔をするだけならここで退場してもらおう |
| | |
| | チャキ |
| | |
| ルドガー | 待ってくれ…!俺は話し合いたいんだ! |
| ヴィクトル | 話し合ったところで私の望む答えは出てこない時間は有限なんだ |
| ヴィクトル | 戦いを望まないのならば帰るといい。ここにいる限り、邪魔をする意図があるものと判断する |
| エル | パパ…!やめてよ!どうして… |
| ヴィクトル | 殺しはしないさ、エル |
| エル | パパ…!お願い…! |
| ヴィクトル | …危ないから下がっていなさい |
| エル | でも… |
| ルドガー | …エル、ありがとう。だけどヴィクトルの言う通りだ。危ないから、下がっていてくれ |
| | チャキ |
| エル | ルドガーまで…! |
| ルドガー | 話し合いが出来ないって言うならその気になるまで戦うさ |
| ルドガー | 確かに答えは出せていないけど、俺は最後まで諦めない。そう決めたからな |
| エル | ルドガー…わかった…けど、二人とも気を付けてね… |
| ヴィクトル | さあ…行くぞ |
| ルドガー | 来いっ! |
| scene2 | 最強の骸殻能力者 |
| ルドガー | そこだ! |
| ヴィクトル | はぁっ! |
| | キィン! |
| ルドガー | くっ…!以前よりも攻め込み辛い…! |
| ヴィクトル | 一度戦ったんだ。君の動きの癖は理解している |
| ルドガー | …それは俺だって同じだ。だからわかる…! |
| ルドガー | わざと攻撃の機会を逃しているな。守りに徹して、あなたらしくない── |
| エル | あっ…!そっか! |
| エル | ルドガー!パパは、時間稼ぎしてる!おとなのエルを捜して! |
| ルドガー | …!時間稼ぎだって…!? |
| ヴィクトル | …気付いたか。だが、もう遅い |
| ヴィクトル | 少し時間がかかっているようだが──既に世界の楔を正史世界から切り離す作業は進んでいる |
| ルドガー | …姿が見えないと思ったら大人のエルがそれを進めているのか |
| ヴィクトル | そうだ。そして私は相棒として、お前を彼女のところには行かせない |
| ヴィクトル | 私を倒せたとしても…その時には世界の繋ぎ変えは終わっているだろう |
| ルドガー | くっ…本当に手遅れなのか… |
| | |
| ??? | 貴様の覚悟はその程度か |
| ルドガー | …! |
| エル | ヴィクトル、よけて! |
| ヴィクトル | 何!? |
| | |
| | ズガアアァンッ! |
| エル | パパ!! |
| ルドガー | ダオス…! |
| | |
| エル | くぅっ…放してよ! |
| ヴィクトル | エル、繋ぎ変えは…!? |
| エル | …ごめんなさい。もう少しだったんだけど… |
| ダオス | 世界の楔を奪おうとするとはな。だが、その計画もここまでだ |
| | 選択の刻 |
| ルドガー | ダオス。その子を放してくれ。ここなら世界の繋ぎ変えは出来ないはずだ |
| ダオス | … |
| ルドガー | ダオスの目的を聞きたい。話して平和的に解決出来るならその方がいいだろ? |
| ダオス | …いいだろう |
| エル | …ありがとう、ルドガー |
| エル | 大丈夫…? |
| エル | うん、私は大丈夫。それより、ヴィクトルは…? |
| ヴィクトル | 心配いらない。声をかけてくれたお蔭で致命傷は避けられた |
| ルドガー | みんな無事でよかった |
| ルドガー | ダオス。改めて聞く。ここに来た目的は何だ? |
| ダオス | それを聞いてどうする |
| ルドガー | ロディに頼まれたんだ。何をしようとしてるか確かめてほしいって |
| ダオス | … |
| ダオス | 分史世界に奪われたマナを正史世界に取り戻す。それが私の目的だ |
| ルドガー | ヴィクトルが奪ったマナの事か…その事についてなんだが、協力を頼めないか |
| ルドガー | ヴィクトルの世界のマナ枯渇問題が解決しない事には返してもらう事も出来ないんだ… |
| ダオス | …そうではない |
| ダオス | ヴィクトルと言ったか。お前なら知っているだろう |
| ダオス | 分史世界が増える時…その世界に必要なマナは正史世界から奪われる |
| ダオス | …違うか? |
| ヴィクトル | …なるほど。その仮説は当たらずとも遠からずだ |
| ヴィクトル | マナの総量は決まっており全ての世界で共有している |
| ヴィクトル | 分史が増えれば、一つあたりの世界がもつマナの量は当然、減る |
| ヴィクトル | それを正史からマナを奪ったのだと表現する事も出来るだろう |
| エル | マナはみんなのもので、世界が増えたら、みんなで分けた時にもらえる量が減っちゃうって事? |
| ヴィクトル | そういう事だね |
| ダオス | 問題はそこだ |
| ダオス | 元より分史は存在せず、全てのマナは正史世界にあったはずだ |
| ダオス | だが、分史が増え、正史世界にあるべきだったマナは減っている |
| ルドガー | …それを取り戻すって言うのか?それはつまり… |
| | |
| ダオス | …そうだ |
| | |
| ダオス | 全ての分史世界を破壊し、散り散りになったマナを正史世界に再び集約させる |
| ルドガー | …! |
| ダオス | そのため私はオリジンの審判にて、全ての分史世界の破壊を望む |
| ヴィクトル | 不可能だな…オリジンの審判を達成出来るのはクルスニクの一族だけだ |
| ヴィクトル | これはクルスニク一族とオリジンとの間で交わされた契約…膨大な精霊術のようなものだ |
| ヴィクトル | お前が何者であろうと、オリジンの審判に挑む資格はない |
| ダオス | …問題はない。オリジンに願うのはお前達の誰かだ |
| ルドガー | な…!どういう── |
| ダオス | …従わなければその娘を殺す…と言ったらどうだ? |
| エル | えっ…エルの事!? |
| ヴィクトル | 貴様…! |
| | チャキ |
| ルドガー | ヴィクトル落ち着け!脅してるだけだ |
| エル | だといいけど…あの目、本気に見えるよ |
| ヴィクトル | ああ。それに…話し合いの余地はないと見える |
| ダオス | その通りだ。だが、お前は選ぶ事が出来る |
| ダオス | 全ての分史を破壊するか── |
| ダオス | その娘もろとも死ぬかだ |
| | |
| ヴィクトル | その前に── |
| | |
| ヴィクトル | 貴様を止める! |
| ダオス | …愚かな |
| ダオス | 力なき存在に第三の選択肢などない |
| ルドガー | やめてくれ、二人共!戦ったって、正史か分史のどちらかが犠牲になるだけだ! |
| ルドガー | それよりも、正史も分史も残せる道を探そう!力を合わせれば、必ず方法はある! |
| ダオス | …この期に及んで甘い事を |
| ダオス | お前がそうして対話を試みている間に正史世界は滅ぶところだったのだ |
| ダオス | そして何もかもが手遅れになる。何も救えない |
| ルドガー | …俺は、ただ… |
| ダオス | これ以上邪魔をするなら、お前から消えてもらおう |
| | シュウゥゥ… |
| エル | …!さっきと同じ技! |
| ヴィクトル | お前の相手は私だ! |
| | ドカッ! |
| ダオス | …その力は… |
| ヴィクトル | 私はルドガーのように甘くないぞ |
| ダオス | そうらしいな |
| ヴィクトル | ルドガー!ダオスと戦うつもりがないならせめてエルを守れ |
| ルドガー | 俺は… |
| ヴィクトル | …っ |
| エル | 私に任せて! |
| エル | 小さいエル、こっちだよ! |
| エル | う、うん… |
| ダオス | テトラスペル! |
| | ズドドドッ! |
| ヴィクトル | くらうかっ!舞斑雪!! |
| | ガキィンッ! |
| ヴィクトル | 魔力の壁…?こんなもの…! |
| | パリィィン! |
| ダオス | ほう…大した力だ。 |
| ダオス | 分史は正史のマナを奪う。その上、貴様のような者が現れれば正史を乗っ取ろうとする… |
| ダオス | やはり全て消し去る他はないな |
| ヴィクトル | 傲慢だな。分史にも生きている人間がいる。正史と何も変わらないんだ |
| ヴィクトル | いずれかの世界しか残れないのなら…私は、私と娘の暮す世界を生き延びさせる! |
| ダオス | 笑止!貴様はこの場所から生きて帰さん! |
| ダオス | エクスプロード! |
| ヴィクトル | 何人たりとも…私の願いの、邪魔はさせない!! |
| | ドドォォォォン…!! |
| ヴィクトル | はぁ、はぁっ… |
| ダオス | しぶとい奴だ… |
| ルドガー | …この戦い…どちらかが死ぬしか…解決出来ないのか…? |
| ルドガー | ダオスとヴィクトル…正史と分史…どうしてどっちかが滅びなくちゃいけないんだ |
| ルドガー | どっちも守りたい何かのために戦っているだけなんだ!それなのに…! |
| ルドガー | 二人共、やめてくれ!殺しあう以外にも方法があるはずだ! |
| ヴィクトル | くどい!先程も言ったはずだ。その方法を示せと! |
| ダオス | 必要ない。分史の存在は害悪…全て消し去る。それだけだ |
| ルドガー | それは極論だ!三人で話し合って、互いに譲歩すれば方法だって見つかるかもしれない! |
| ヴィクトル | この期に及んで「かもしれない」など… |
| ヴィクトル | 口ばかりで何も選べずにいる半端者が間に入るな! |
| | ドカッ!! |
| ルドガー | ぐわあぁっ!! |
| | ドサッ |
| エル | ルドガー!!大丈夫!? |
| ルドガー | くっ…ああ…平気だ… |
| エル | ……。一度はヴィクトルに勝ったルドガーとは思えないね |
| エル | どうしてちゃんと戦わないの?もしかして…どっちに味方しようか迷ってるとか? |
| ルドガー | …そうじゃない。俺はどっちのやり方も間違ってると思う…けど… |
| エル | 何それ。そんなどっちつかずの半端な気持ちであそこにいたの? |
| ルドガー | 俺は、半端…なのか? |
| ルドガー | (確かに俺は…あの二人のように 自分が正しいと思える答えを 出せてはいない…) |
| ルドガー | (何も犠牲にしたくない… あの二人を止めたい… その意志は確かなものだ) |
| ルドガー | (だが…それだけじゃ足りないのか。 俺は…) |
| エル | ルドガー… |
| エル | ヴィクトルが押されてる…。…ルドガーはここでこの子を守ってて |
| エル | ルドガーが戦わないなら、私がヴィクトルに加勢する! |
| ヴィクトル | …!よせ、来るなエル! |
| ヴィクトル | お前に何かあったら世界の繋ぎ変えが出来なくなる! |
| エル | でも…! |
| エル | じゃあ、せめてこれ! |
| エル | 受け取って! |
| ヴィクトル | これは…! |
| ダオス | 何を足搔こうと無駄だ。ここで朽ち果てるがいい!! |
| ダオス | テトラスペル! |
| | ズドドドッ! |
| ヴィクトル | くっ…!間に合え…! |
| | |
| ダオス | …… |
| ダオス | …術をかき消したのか何だ、それは |
| | |
| ??? | 準備運動にしては激しい術でしたね。いきなり呼び出してこれとは、主は精霊使いが荒い |
| ??? | 俺達を実体化したって事は、全力でやっちまっていいんだな? |
| ヴィクトル | ああ。力を抑えて勝てる相手じゃないからな |
| ルドガー | な、何だ…?急に何か出て来たけど… |
| エル | ヴィクトルが用意していた最終手段…人造精霊のオリジンとクロノスだよ |
| エル | ジンゾーセイレイ? |
| エル | 元はジュードが開発した精霊の力を核として動くマナを消費しない魔導器… |
| エル | その技術を応用して分史には存在しない精霊…クロノスとオリジンを作ったんだ |
| ルドガー | 原初の精霊を、人の手で作り出したっていうのか…! |
| エル | …未完成、だけどね |
| ダオス | 骸殻能力者に精霊か…相手にとって不足はない |
| 人造クロノス | 余裕ぶっこいていられるのも今の内だ!くらえ、テトラスペル! |
| ダオス | …!テトラスペル! |
| | バシュバシュバシュウ…! |
| 人造オリジン | へぇ、相殺とはやりますね |
| ヴィクトル | 今が好機…!そこだ! |
| ダオス | 甘い! |
| | ガキィン! |
| 人造オリジン | 動きが止まりましたね!これならどうです! |
| 人造オリジン | メテオスウォーム! |
| ダオス | …くっ |
| | ドゴォォォォンッ! |
| 人造オリジン | むぅ…あれを避けるとは… |
| ダオス | 確かに強力な精霊のようだな。だが戦闘経験が足りていない |
| 人造クロノス | 減らず口を! |
| ルドガー | …すごい力だ。あれで本当に未完成なのか? |
| エル | うん。本物のオリジンとクロノスの7割ぐらいの力しか出せないはずだよ |
| エル | クロノスはヴィクトル、オリジンは私の力にマナを注ぎ込んで増幅させた存在… |
| エル | けど原初の精霊の力を再現するには私達の世界にあるマナじゃ足りなかったんだ |
| ルドガー | それでもあの強さか…完成したらどれほど強くなるんだ… |
| エル | それだけじゃないよ。彼らは本物のクロノスやオリジンと同じように世界の楔の管理が出来る |
| エル | 世界の楔を繋ぎ変えた後、今度はここを奪われないように守ってもらうつもりだよ |
| ルドガー | …… |
| エル | どうかした? |
| ルドガー | ヴィクトルがいかに入念に準備してきたのか…その年月と苦労をひしひしと感じたんだ… |
| エル | …当然でしょ。世界を賭けた計画なんだから |
| ルドガー | ダオスだってそうだ。ずっと前から世界のマナの事を気にかけて、調べ続けていた |
| ルドガー | …なのに俺は、何の覚悟もせずその方法を否定していただけなのか… |
| エル | …ルドガー? |
| エル | …何が言いたいの? |
| ルドガー | 俺には知識も何もかもが足りない…。ここにいて口を出すべきじゃなかったんだ |
| エル | 何言ってるの!ルドガーが止めてくれなきゃ世界がどっちか滅ぶんだよ! |
| ルドガー | それは… |
| | |
| エル | …情けない |
| | |
| ルドガー | え…? |
| エル | そうやってただ悩んでるだけなのが一番情けないよ |
| エル | ヴィクトルは悩みながらも行動し続けた。だから人造精霊だって完成した |
| エル | あなたもヴィクトルの分史に来た時は、そうだったんじゃないの?なのに今更、足を止めるわけ? |
| ルドガー | …っ |
| エル | 別にヴィクトルの邪魔をしないなら私はそれでいいけど…さすがに見てらんないよ |
| ルドガー | …… |
| エル | ねぇ、ルドガー。ルドガーの考えは正しいんでしょ?パパは間違ってるんだよね |
| ルドガー | エル… |
| エル | ルドガー、自分を信じて。エルは、パパのやり方よりルドガーの考えの方が好きだよ |
| エル | ほら、ルドガー。小さい私にここまで言われてもまだ自分は半端で駄目だなんて思う? |
| ルドガー | いや…目が覚めたよ。ありがとう、二人共 |
| ルドガー | エルは…俺と同じ気持ちでいてくれるんだよな |
| エル | 当たり前でしょ!エルもギセイはない方がいいもん。別の世界とか関係ないし! |
| ルドガー | …そうか、そうだよな。わかったよ、エル。俺、大事な事を見逃してたみたいだ |
| エル | えっ、なに? |
| ルドガー | ロディが言ってたんだ。一人で抱え込まないようにって。みんなでなら出来る事もあるって |
| ルドガー | これはダオスに向けられた言葉だったけど… |
| ルドガー | 何もダオスだけの話じゃない…ヴィクトルだってエルがいるから世界の楔を繋ぎ変えられる |
| ルドガー | 俺には同じ気持ちで寄り添ってくれる相棒がいるから…挫けてしまっても、立ち上がれる! |
| エル | ルドガー…もしかして、パパと戦うの? |
| ルドガー | 違うよ。思いついたんだ。あの二人を納得させられる方法を |
| エル | 本当!? |
| エル | こんな土壇場で閃いた案なんて検証も出来ないでしょ |
| エル | 今すぐ確実な解決を求めるヴィクトルが受け入れるとは思えないけど |
| ルドガー | 思いつきじゃない。気付いたんだ |
| ルドガー | 俺達はもう、その答えを実践していた事に |
| エル | …どういうこと? |
| ルドガー | 俺達は分史世界でいろんな事件に出会ってきた… |
| ルドガー | ミクリオの分史世界ではスレイを救う方法が何百年も見つからずにいた… |
| ルドガー | メルディの分史世界では、長く続く外交摩擦から戦争が起ころうとしていた… |
| ルドガー | アッシュの分史世界では、何年もすれ違っていた兄弟がついに命の取り合いを始めていた… |
| ルドガー | だけどその事件は全部、別の世界から来た俺達── |
| ルドガー | ライフィセットや、リチャード、エル、ファラ、ルークやミュウが彼らと出会った事で状況が変わった |
| ルドガー | 本来接するはずのなかった人達が協力し合う事で、解決に導けたんだ |
| エル | 道標集めに時間かかってると思ったら負の因子を破壊するだけじゃなく周りの事まで解決してたんだ… |
| エル | 私達の時は急いでたからそんな余裕もなかった… |
| エル | 負の因子は見つけ次第破壊して、道標は全てヴィクトルが回収…すぐに帰る…の繰り返しだった |
| ルドガー | そうか…。だからヴィクトルは気付けなかったのかもしれないな |
| ルドガー | その世界だけでは解決できない問題も他の世界と手を取り合えば、道が拓けるという事に |
| エル | そっか。一人で出来ない事は、誰かにお願いすればいいんだ |
| ルドガー | そうだ。何かを犠牲にする必要なんてない。もし他の方法を思いつかなくても… |
| ルドガー | どこかの世界にはきっと、いい方法を知ってる人がいる |
| エル | でも、他の世界から知恵を借りても元の世界に戻るためには分史世界を破壊する必要があるでしょ |
| エル | やっぱり、たくさんの分史世界が犠牲になるよ |
| ルドガー | …それについては考えがある。オリジンの審判だ |
| エル | 審判…? |
| エル | …あ、そうか!オリジンが願いを叶えてくれれば…! |
| ルドガー | ああ!これが、俺の出した──何も犠牲にしない方法の答えだ |
| ルドガー | ヴィクトルとダオスに伝えたい!二人共、戦いを止めるのを手伝ってくれるか |
| エル | うん、わかった! |
| エル | 任せて! |
| | |
| | ガキィンッ! |
| ダオス | …こしゃくな |
| 人造クロノス | そっちこそ。あんた本当に人間か?俺達三人がかりでようやく対等だぜ… |
| 人造オリジン | 長期戦なら数の多いこちらが有利です |
| ヴィクトル | ああ、だが… |
| ダオス | …それが狙いか。ならば残念だったな |
| ダオス | これで終わりにしよう |
| | シュオオオ… |
| 人造オリジン | …!とてつもない量のマナが凝縮されていく…! |
| 人造クロノス | あんなの喰らったらひとたまりもないぞ |
| ヴィクトル | くっ…! |
| ルドガー | 待ってくれ!! |
| エル | 戦うの、やめて! |
| エル | ヴィクトルも、そこまで! |
| ヴィクトル | なっ…! |
| ダオス | …そこをどけ。死にたいか |
| ルドガー | 今撃てば、ここにいるクルスニク一族は全滅する。オリジンの審判が超えられないぞ! |
| ダオス | … |
| ヴィクトル | お前達、何のつもりだ! |
| エル | 正史も分史も、何も犠牲にしない答えを見つけたの! |
| エル | だからパパも、ダオスも、戦うのやめてー! |
| ダオス | …まだそんな戯言を言っているのか |
| ルドガー | ダオス、頼む。戦うのはこの話を聞いてからでも遅くはないはずだ |
| ルドガー | ダオスだって、多くの犠牲を望んでいるわけじゃないだろ!? |
| ダオス | … |
| エル | パパも、お願い…! |
| ヴィクトル | … |
| | |
| ヴィクトル | わかった。一時休戦だ、話を聞こう |
| ダオス | …言ってみろ。甘い主張を繰り返すなら滅ぼすのみだ |
| ルドガー | ありがとう、二人共 |
| ルドガー | 全てを解決する方法、俺の出した答えは… |
| ルドガー | 全ての分史と正史で力を合わせ、あらゆる問題を解決していく事 |
| ルドガー | そのためにオリジンに願って全ての世界を繋ぎ、自由に行き来できるようにするんだ |
| ヴィクトル | 何…!? |
| ダオス | それで何が変わるというのだ |
| ルドガー | 何もかも変わる。自分達以外にも文明を持った世界が沢山あるとみんなが知るんだ |
| ルドガー | 自分達の世界では手に余る問題も、他の知識や経験が解決してくれる。俺はそんな場面をいくつも見てきた |
| ルドガー | 例えばヴィクトルの分史世界はマナの消費を抑える技術に長けているだろう? |
| ヴィクトル | 当然だ、私の世界にとってマナの枯渇は存亡を賭けた重大な問題だったからな |
| ルドガー | その技術を他の世界に伝えれば全ての分史で共有しているマナを大きく節約出来るはずだ |
| ルドガー | …その代わり、マナが豊富な世界からマナを必要としている世界に少しずつわけてもらうんだ |
| ダオス | …全ての世界で消費するマナが減れば正史のマナが不足する事もなくなる…私の故郷を救う事にも繋がる…か |
| ヴィクトル | そのためにオリジンの審判の願いで骸殻能力の有無に関係なく世界を行き来できるようにするのか |
| ヴィクトル | そうなれば分史世界を破壊しなくても元の世界に帰る事も出来る…。確かに犠牲は出ないな |
| ルドガー | ああ。多くの世界に聞いてみればいいんだ。想像もつかない解決策が出るはずだ |
| ヴィクトル | …理想論だな。問題点も多い |
| ヴィクトル | だが…私とダオスの抱える問題は、同時に解決するか。確実とは言えないが… |
| 人造オリジン | …主。僭越ながら申し上げます。私達は世界の楔を管理する事を使命として創り出されました |
| 人造オリジン | 同じ管理するのであれば…彼の言う世界を管理したく存じます |
| 人造クロノス | 同じく。どうせ見守るなら、そっちの方が楽しそうだ |
| 人造クロノス | 人が行き来するとか、世界の管理は尋常じゃないほど大変になるだろうけどな |
| ヴィクトル | …私も同じ気持ちだ。だが、気持ちだけで決めていい問題ではない |
| ヴィクトル | ルドガー。現実的な問題として、歴史も立場も違う別世界の人々が手を取り合う事が出来ると思うか? |
| ルドガー | ああ、出来る |
| ダオス | 即答、か… |
| ルドガー | ミクリオ、メルディ、アッシュ…彼らは今、この世界のために力を貸してくれている |
| ルドガー | それに彼らの分史にあった問題も正史の知識や経験が解決への糸口になった |
| ヴィクトル | …確かに彼らは、その恩返しとして今度はお前を助けるのだと言っていたな |
| ダオス | …なるほど。手を取り合う事は出来るのだろう |
| ダオス | だが…それが永久に続く保証などどこにもない |
| ダオス | いずれ必ず争いは起こる。同じ平和を望む世界の中ですら意見がわかれるのだ |
| ルドガー | 確かにそうだ。お互い譲れないものがあって衝突する事はあるだろう |
| ルドガー | 今のダオスと、ヴィクトルのように… |
| ヴィクトル | … |
| ルドガー | でも、それは意見の衝突であって修復不可能な分断ではないはずだ |
| ルドガー | ミクリオの分史では天族と人間が争っていたけれど、今はお互いを受け入れて平和に暮らしている… |
| ルドガー | メルディの分史ではメルディと母親のシゼルは国を守る方法で衝突したけど憎み合ってはいなかった |
| ルドガー | アッシュの分史でも、敵対勢力の主張も一つの意見としてアレクセイを受け入れ、許した |
| ルドガー | …俺は知っている。人間は、話せばわかり合えるって事 |
| ダオス | …貴様の主張は理解した |
| ルドガー | よかった…!それじゃあ、これで解決だな! |
| ダオス | …… |
| scene1 | 絆を束ねて |
| ルドガー | みんなが賛成してくれてよかった。それじゃあ、早速── |
| | |
| ダオス | 賛成?私は理解したと言っただけだ |
| | |
| ダオス | 貴様の言う方法は有効だろう。だが…分史世界を全て破壊する方がより確実だ |
| ルドガー | なっ…! |
| ダオス | 人間は話し合える…確かにそういう者もいるだろう |
| ダオス | だが、全ての世界の全ての者が貴様達のように善意に満ちた人間だとでも? |
| ダオス | 人を痛めつける事に悦びを覚える者もいる |
| ダオス | 自らの危険すら省みず世界を滅ぼすほどの兵器で戦争を行う者もいる |
| ダオス | その仮面の男のように、自らの目的のためなら、他の世界を犠牲にする者も現れるだろう |
| ヴィクトル | …… |
| ダオス | 貴様の方法で起こる事はマナの譲り合いではない |
| ダオス | いずれマナの奪い合いが始まり──やがて戦争による世界の奪い合いへと発展するだろう |
| ルドガー | それは、可能性の話だ! |
| ダオス | 全ての分史を破壊すればその可能性の芽を摘める |
| ルドガー | それは、手を取り合ってよりよい世界になる可能性をも捨てるって事だぞ! |
| ダオス | 何の問題がある |
| ダオス | 私はデリス・カーラーンを救いたい。そのために正史にマナを取り戻す。それだけだ |
| | |
| ヴィクトル | …それだけが目的だと言うのなら口を挟まず見ているといい |
| ダオス | 何…? |
| | |
| ヴィクトル | 私達が全ての世界を繋ぎ、正史にも十分なマナが戻るよう取り計らおう |
| エル | エルも手伝う! |
| エル | 勿論、私も! |
| ヴィクトル | 今まで誰も辿り着けなかった世界の楔への道を拓いた四人だ。何だって成し遂げられる |
| ルドガー | …!それじゃあ… |
| ヴィクトル | ありがとう、ルドガー。私には考え付かない手法だ |
| ヴィクトル | 都合がいいように聞こえるだろうが、私にも手伝わせてほしい |
| ルドガー | ああ! |
| ダオス | ……。貴様もその夢物語を信じるというのか |
| ヴィクトル | 夢物語などではない。私達が現実にする |
| ダオス | …そうか |
| ダオス | …これ以上の対話は無意味だ。先も言った通り、私はより確実な方法を取る |
| ダオス | 貴様ら四人なら何でも出来ると言ったな。ではまず、私を倒してみせろ |
| ダオス | それが出来なければ、貴様らを屈服させ、分史世界の滅亡を願わせるのみ! |
| | |
| | シュウウゥゥ… |
| | |
| 人造オリジン | …!またです!とてつもないマナの量が…! |
| ダオス | 消し炭にならんよう身を守るのだな |
| ダオス | ダオスレーザー──!! |
| | バシュウウゥッ!!! |
| エル | えっ── |
| エル | まずいっ!避けられない…! |
| ルドガー | くっ…! |
| ヴィクトル | 離れてろ! |
| | ドカドカッ |
| エル | あうっ! |
| ルドガー | くっ…!ヴィクトル…!? |
| ヴィクトル | エル───!! |
| | |
| ヴィクトル | ぐっ…うおおぉぉぉぉっ…!! |
| エル | パパ──── |
| | ドォォォォォォン──! |
| ヴィクトル | ぐ、おおおぉぉっ!!! |
| | |
| ヴィクトル | …エル、怪我は…ないか… |
| エル | エルは大丈夫。でも、パパは… |
| ヴィクトル | よかっ── |
| ヴィクトル | ──た… |
| | ドサッ |
| エル | パパっ!! |
| エル | ヴィクトル!! |
| 人造オリジン | 主…!まずい── |
| 人造クロノス | 魔導器が、止ま── |
| | シュン |
| ルドガー | 人造精霊が消えた!?ヴィクトル!! |
| エル | 大丈夫、気絶してるだけ。でも…しばらく目を覚まさないかも… |
| エル | パパ… |
| ダオス | …これが現実だ。手を取り合うといっても、結局は対等ではない |
| ダオス | 助け合う事を理想としようとも、その能力には差がある |
| ダオス | 強者は足を引っ張られ血を流し、弱者はいつしか与えられる事に慣れ、傲慢になって行くものだ |
| ダオス | そして…見ろ。その男は戦えず、人造精霊とやらも消えてしまった |
| ダオス | 力を合わせるなどとぬかしたところで超えられぬ限界はある。貴様らが私に勝てぬようにな |
| ルドガー | …だったら乗り越えてやる。その限界を…! |
| ダオス | この期に及んでまだ現実が受け入れられぬと見える |
| ダオス | 貴様らだけで私に勝てると本気で思っているのか |
| ルドガー | くっ… |
| エル | 次にあの技がまた来たら、今度は防ぎきれない…。勝ち目ないかも… |
| エル | ルドガー…… |
| ルドガー | …何か打開策は… |
| ルドガー | …!あそこに見えるのは… |
| エル | ルドガー? |
| ルドガー | …大丈夫だ |
| ルドガー | 俺達にはまだ、仲間がいる |
| エル | えっ…? |
| ダオス | …そろそろ幕引きだ |
| | シュウウゥゥ… |
| エル | またあの技…! |
| ルドガー | くっ…! |
| | |
| ルドガー | 手を貸してくれ──みんな! |
| ダオス | …む |
| ??? | ──天光満つるところ、我は在り |
| エル | え、この声── |
| ??? | 黄泉の門、開くところに汝在り |
| ダオス | 何…!それは── |
| メルディ | 出でよ、神の雷! |
| メルディ | インディグネイション! |
| | |
| | ドゴォォォォンッ!! |
| ダオス | くっ…! |
| | |
| ミクリオ | ルドガー!無事か!? |
| アッシュ | どうやら間に合ったようだな |
| エル | みんな! |
| メルディ | 大丈夫か!? |
| アッシュ | ヴィクトルは…倒れてやがるのか |
| ミクリオ | そして、魔王ダオス…彼は敵だったんだな。一体、どういう状況なんだ |
| ルドガー | 話すと長くなるんだが…今は戦わないと収まらない状況だ |
| ルドガー | ダオスを止めないと全ての分史世界が破壊されてしまう! |
| アッシュ | なるほど。緊急事態だという事はよくわかった |
| ミクリオ | 僕達の世界はやっと平和になったんだ。消させるわけにはいかない! |
| メルディ | キールやおカーサン…他の世界がみんなも、メルディが守る! |
| | |
| ダオス | …何人増えようと同じだ。まとめてかかってくるがいい |
| ダオス | 理想だけでは覆せぬ絶望という名の現実を貴様達の魂に刻んでくれる! |
| ルドガー | …エル、二人でヴィクトルを連れて安全な場所へ |
| エル | うん! |
| エル | わかった…! |
| ルドガー | 来い、ダオス!お前の言う限界を、超えてみせる! |
| scene2 | 絆を束ねて |
| ルドガー | はぁっ! |
| | ガキィンッ! |
| ダオス | ここまでやるとはな… |
| ダオス | だが…私とて、諦めるわけにはいかんのだ! |
| | ドカッ! |
| ルドガー | くぅっ…! |
| アッシュ | ちっ…隙のない奴だ |
| ミクリオ | 四人で攻めても全く引かないとはね |
| メルディ | 強い術、たくさん使ってるのに威力ずっと下がらない…!どれだけ魔力あるか! |
| ダオス | …そろそろ終わりにしよう。ブラックホ── |
| | |
| 人造クロノス | タイムストップ! |
| ダオス | 何っ──! |
| ルドガー | 人造クロノス!? |
| | |
| エル | ルドガー!今だよ! |
| エル | いつの間に…!? |
| ルドガー | エル…!わかった!みんな、行こう! |
| ダオス | ──! |
| ミクリオ | ヴァイオレットハイ!! |
| アッシュ | 閃光墜刃牙!! |
| メルディ | インディグネイション!! |
| エル | 逃れられぬ運命に、抗う術なく果てろ!ブラッドカスケードッ!! |
| ルドガー | うぉぉぉっ!マター・デストラクト!! |
| 人造クロノス | ──時間だ |
| | |
| ダオス | ぐあああぁぁぁぁっ!!! |
| | |
| ダオス | くっ…私が、このような子どもに後れを取るとは… |
| ルドガー | これが力を合わせるって事だ。一人一人では小さい力でも重なりあえば大きな力になる |
| ルドガー | お前はエルの事を弱者だと言った。でも俺達は、エルの力があったから今のこの結果を生み出したんだ |
| ダオス | ふっ…偶然上手く行ったからと大きく出たものだ |
| ルドガー | 偶然じゃない。エルはいつだって俺に力をくれる存在だ |
| ルドガー | それが手を取り合う仲間──相棒だからな |
| エル | えっへん! |
| エル | ふふ、いい事言うね、ルドガー |
| ルドガー | ダオス。認めてくれないか。確かに争う事もあるかもしれないけどそれ以上に助け合う事は強い力になる |
| ルドガー | それから、ロディからの言伝もあるんだ。一人で背負い込まないでって |
| ダオス | … |
| ダオス | …好きにしろ |
| ルドガー | わかった。なら── |
| ダオス | …何だ、この手は |
| ルドガー | 俺達と一緒にこれからの世界の事を考えてほしいんだ |
| ルドガー | ダオスが懸念してた事ももっともだと思うし…その対策を考えたい |
| ダオス | …何を言うかと思えば。どこまでも甘いな |
| アッシュ | ふっ、敵を受け入れる覚悟が甘いだけの男に出来るはずがない。ルドガーを見くびるなよ |
| メルディ | それ、ルドガーがいいところな! |
| ミクリオ | 世界の平和を望む者同士、方法論は違ってもいがみ合う必要はないからね |
| ダオス | …ふん。その甘い考えで他の世界と渡り合えるとでも── |
| | |
| | グラッ |
| エル | ん?なんか、揺れてる!? |
| | |
| | グラグラッズゴゴゴゴ… |
| エル | わわっ!? |
| ヴィクトル | うぅ…これは… |
| エル | ヴィクトル!気が付いたの!? |
| ヴィクトル | あぁ…寝ている場合ではない…どうやら…まずい事になったようだ |
| scene1 | 明日へ |
| | ゴゴゴゴゴゴ── |
| ルドガー | 一体何が起ころうとしているんだ!? |
| ??? | 世界の楔が崩壊を始めたのだ |
| クロノス | そして全ての世界が滅ぶ |
| ルドガー | クロノス!? |
| 人造クロノス | 本物…か。今頃出て来たのかよ |
| クロノス | 我は初めからここにいた。審判を見届けるのも我の使命だ |
| クロノス | だが、それどころではなくなった |
| アッシュ | 世界が滅ぶと言ったな。どういう意味だ? |
| クロノス | 言葉の通りだ |
| クロノス | そこにいるクルスニクの鍵が世界の楔を正史から別の分史へと繋ぎ変えようとしていただろう |
| エル | え、うん…。ダオスの横やりが入ったから、中断されちゃったけど… |
| クロノス | 世界の楔は今、どの世界とも繋がりを持たぬ不安定な状態にある |
| クロノス | そこにお前達の戦いだ。この空間を保つ力は乱れ、形を保てなくなっているのだ |
| クロノス | このまま世界の楔が崩壊すればマナと魂の循環が行われなくなり全ての世界は滅びに向かう |
| メルディ | バイバ!一大事だよぅ! |
| ミクリオ | あなたの力でどうにか出来ないのか? |
| クロノス | 本来ならば我とオリジンの力で世界の楔を再生出来る |
| クロノス | だが…今、我々は世界の楔に干渉出来ないようにされている |
| 人造精霊クロノス | 俺達が権限を奪ったんだ。途中であんたらに干渉されたら世界の繋ぎ変えなんて出来ねえからな |
| ヴィクトル | それが裏目に出たか… |
| エル | 私がもう一度、世界を戻す!ヴィクトル、小さいエル、魔導器を貸して! |
| ヴィクトル | エル、頼む…! |
| エル | わ、わかった!はい…! |
| エル | オリジン! |
| 人造オリジン | …状況は、聞いていました。クロノス、世界の楔の修復作業を行いましょう |
| 人造クロノス | ああ。時間がねぇ。大樹のところまで急ぐぜ |
| ルドガー | 俺達も行こう。何か出来る事があるかもしれない |
| ミクリオ | ああ。任せきりというわけにいかないからね |
| アッシュ | 何か手伝える事もあるだろう |
| メルディ | みんなで力合わせればきっと大丈夫な! |
| エル | パパとダオスも行こう! |
| ヴィクトル | 私は勿論行くが… |
| ダオス | …ここで待っていても無意味だ。行くぞ |
| エル | …… |
| 人造クロノス | …… |
| 人造オリジン | …… |
| メルディ | 上手く行きそうか? |
| エル | …… |
| ヴィクトル | 今は見守る他ない… |
| エル | 集中、してるんだよね… |
| ヴィクトル | ああ。私達に出来る事は何も── |
| | ゴゴゴゴゴ…!! |
| | ガサッ── |
| ミクリオ | …!まずい、大樹の枝が落ち──! |
| ヴィクトル・ルドガー | はぁっ! |
| | ザシュッ |
| エル | すご…息ぴったり。コッパミジン! |
| ヴィクトル | …今出来る事は、こうして集中出来るように身を守ってやる事ぐらいだ |
| クロノス | …その程度では無意味だ |
| ルドガー | クロノス…!どういう事だ? |
| クロノス | この地の中心であり最も堅牢な大樹が崩壊を始めた… |
| クロノス | このままでは間に合わぬ。だが… |
| クロノス | 間に合わせる方法はある。…そこの精霊達にもわかっているはずだ |
| 人造オリジン | …ええ。私達が調整すれば今の三倍は速く進められます |
| 人造クロノス | …十倍だ |
| 人造オリジン | クロノス… |
| 人造クロノス | ここで嘘を言っても仕方ねぇだろ。間に合わせるのに必要な速度は十倍だ |
| アッシュ | だったら、何故そうしない |
| 人造クロノス | …それは… |
| クロノス | この期に及んで決断出来んか。所詮は人に作られた存在…劣化複製よ |
| ミクリオ | …何か出来ない理由があるのか |
| 人造オリジン | …… |
| | |
| クロノス | 我が答えてやろう。速度を速めればクルスニクの鍵に負荷がかかる |
| | |
| クロノス | 人の身で耐えられる負荷ではない。そいつは間違いなく死ぬだろう |
| エル | そんな…! |
| ルドガー | 他に方法はないのか!?せっかく…誰も犠牲にしない世界が実現しそうなのに… |
| ダオス | …結局、そのような世界はなかったという事だ |
| ダオス | その娘を犠牲にするか、その娘を生かすために全世界を犠牲にするか… |
| ダオス | もっとも…世界を犠牲にすれば我々やその娘も共に滅びる事になる。迷う余地はない |
| ヴィクトル | …… |
| | |
| エル | …いいよ |
| ヴィクトル | エル…!しかし… |
| | |
| エル | ヴィクトルらしくないなぁ。小さい私との平穏な暮らしのためにどんな犠牲でも受け入れて来たでしょ |
| ヴィクトル | そう…だが… |
| エル | ねぇ、ヴィクトル。私、ヴィクトルがいなかったら自分の世界でとっくに死んでたんだよ |
| エル | だけどヴィクトルに助けられて…一緒に旅をしたり、たくさん友達が出来たりした… |
| エル | これって、すっごく贅沢な事だよね |
| ヴィクトル | 何言ってるんだ。まだ、これからだって… |
| エル | ううん。ヴィクトル…もう、十分だよ |
| エル | とっくに失っていたはずの命…この命でヴィクトルと小さい私が幸せに暮らせるなら、すごく嬉しい |
| エル | ねぇ、小さい私。私がパパと出来なかった事…たくさんしてもらうんだよ |
| エル | エル…おとなのエルも一緒じゃないと、やだよ! |
| エル | ……ありがと |
| エル | 私の分も、あなたが幸せになって。そして…私よりも長生きして…綺麗なお姉さんになるんだよ |
| エル | そんな… |
| エル | …ヴィクトル |
| エル | 私をアイボーにしてくれて、ありがとう |
| ヴィクトル | エル…!! |
| エル | オリジン、クロノス。お願い |
| 人造オリジン | …その覚悟、見届けました |
| 人造クロノス | 行くぞ…! |
| エル | うあっ…ああああぁぁぁっ…! |
| 人造クロノス | よし…これならいける! |
| 人造オリジン | 必ずやりとげましょう。彼女の犠牲を無駄にしないために |
| エル | うぅぅっ…ぐぅ…っ!あああっ…!! |
| ルドガー | …くっ、見てられない |
| メルディ | すごく苦しそうな… |
| エル | …… |
| | ダッ |
| ルドガー | エル!?何を… |
| | |
| エル | エルも、一緒にやる!エルも、クルスニクの鍵だもん!手伝えるよ! |
| エル | おとなのエルの苦しいの、エルと半分こすれば助かるかもでしょ!? |
| エル | ぐぅぅぅっ…!無茶だよ、小さい、私…っ!下手したら、あなたまで…! |
| エル | いいから…! |
| エル | ううぅっ…! |
| ヴィクトル | …ルドガー。私達も力を貸すぞ |
| ルドガー | ヴィクトル…? |
| ヴィクトル | 私達はそれぞれの相棒のエルを介して時計と契約し、クルスニクの鍵の力と繋がっている |
| ヴィクトル | ならば逆に、私達の力をクルスニクの鍵へと貸す事も出来るはずだ! |
| ルドガー | そうか…!よし! |
| ミクリオ | …僕達も何か出来ないか? |
| 人造オリジン | …可能なら、僕達にマナを分けてください! |
| 人造クロノス | 四人に負担を分散するには俺達に力が必要なんだ! |
| ミクリオ | わかった!任せてくれ! |
| アッシュ | その程度なら俺にも出来る |
| メルディ | メルディがマナ、全部使っていいよぅ! |
| | ゴゴゴゴゴ……!!! |
| エル | ううぅぅぅっ…! |
| ヴィクトル | ここまでしてまだダメなのか…! |
| 人造オリジン | 僕達に出せる速度はこれが限界… |
| 人造クロノス | 悪い、俺が手間取ってる。時空が乱れて安定しねぇ |
| ルドガー | 諦めるな!最後まで希望を捨てるな!! |
| ダオス | …ふん。希望とやらで解決すれば苦労はすまい |
| ルドガー | ダオス…! |
| ダオス | …… |
| 人造クロノス | …!新たなマナが流れ込んでくる… |
| ヴィクトル | 手伝ってくれるのか |
| ダオス | …デリス・カーラーンの存在する正史が崩壊するのは私にとっても不都合だ |
| エル | これなら、間に合いそう…! |
| エル | はぁ、はぁ… |
| ルドガー | エル、大丈夫か!? |
| エル | うん…!もうちょっとだもん。頑張る…! |
| 人造クロノス | 仕上げに入るぞ! |
| 人造オリジン | 堪えどころです。どうか、無事でいてください…! |
| エル | うぐっ、うううっ…!あああああっ…! |
| | |
| エル | うああああぁぁぁぁぁっ…!!! |
| | |
| ルドガー | はぁ、はぁ……どうなったんだ…? |
| ヴィクトル | 揺れが止まった。という事は… |
| クロノス | …確認した。世界の楔は正史に繋がっている |
| | |
| クロノス | 世界の崩壊は免れた |
| ルドガー | そうか…! |
| エル | よかったぁ…! |
| ヴィクトル | 上手く行ったか。やったな、エル── |
| ヴィクトル | …エル? |
| エル | …… |
| エル | …おとなのエル…?どうしちゃったの? |
| エル | ねぇ、目を開けて?起きてよ! |
| ヴィクトル | エル…! |
| ルドガー | まさか…! |
| ダオス | 人造精霊の姿がない…使用者が力尽きたか |
| メルディ | そんな… |
| アッシュ | 負荷は分散されていたはずだ。それでもまだ耐えられなかったのか… |
| ミクリオ | 分散したといっても主体となって力を使う彼女にやはり負荷が集中したのかも知れない |
| ヴィクトル | エル…!目を覚ましてくれ…! |
| ヴィクトル | 頼む… |
| エル | …… |
| エル | …うぅ… |
| エル | あっ…! |
| エル | …ヴィクトル…?何、泣きそうな声出してんの… |
| エル | …あはは…おかしい… |
| ヴィクトル | エル…! |
| ルドガー | よかった…! |
| エル | みんなのお蔭で、何とかね… |
| エル | ありがとう、みんな |
| メルディ | ワイール!よかったな! |
| アッシュ | 上手くいったか… |
| ミクリオ | 無事で何よりだ。気休め程度だけど、僕が治癒術で体力を戻そう |
| ダオス | …… |
| ダオス | 我が故郷を守るためとはいえ私は貴様らに力を貸し、結果として難局を乗り越えた… |
| ダオス | 立場も目的も違う者同士が争い合ったとしても、最後には力を合わせる… |
| ダオス | 貴様の提唱するその甘言を私自らが体現したという事か |
| ルドガー | …ああ。手を貸してくれてありがとう |
| ダオス | …… |
| ダオス | …貴様のやり方で正史世界にマナが戻るのならば異存はない。後は好きにするがいい |
| ダオス | だが、無理だと判断した時は私はまた貴様の前に現れる。胆に銘じておく事だ… |
| ルドガー | …… |
| エル | あれ?ダオス、帰っちゃったの? |
| ルドガー | ああ。…彼の期待を裏切らないようにしないとな |
| ヴィクトル | さて、改めてこれからの事だが…提唱者であり正史の存在であるルドガーに進めてもらいたい |
| エル | まずは、オリジンの審判だね |
| クロノス | …審判はとっくに達成されている。願いを叶える者が決まったのならオリジンにそれを伝えよ |
| ルドガー | オリジン…?どこにいるんだ? |
| エル | あの大きな樹の中だよ!ね、パパ! |
| ヴィクトル | ああ。伝承ではそう言われている |
| クロノス | オリジンはあの中で魂の浄化と循環を行っている |
| クロノス | 姿を見せる事は出来ないが声は聞こえているはずだ |
| ルドガー | わかった |
| ルドガー | 俺の願いは…全ての世界を正史に繋げ、自由に移動出来るようにしてほしい! |
| オリジンの声 | …ルドガーと言ったかな |
| ルドガー | …! |
| エル | 樹の中から声がする! |
| オリジンの声 | 今の願い…そのままでは叶えられない |
| ルドガー | なっ…どうして…!?願いに条件があるのか!? |
| オリジンの声 | 条件はない。どんな願いでも叶えるよ |
| オリジンの声 | ただ…願いは一つだけだ |
| ミクリオ | …なるほど。世界を繋げる事と、行き来を自由にするのは、別の願いという事か |
| メルディ | どっちか片方しか出来ないか? |
| エル | でも、片方だけだったら意味ないよね…どうしよう |
| ヴィクトル | …迷う必要はない。ルドガー、こう願え |
| ヴィクトル | 全ての世界を維持したまま時歪の因子を消してくれ…と |
| ルドガー | 時歪の因子を…? |
| ヴィクトル | 時歪の因子がなくなれば分史世界は破壊される心配がなくなる |
| ヴィクトル | その上で、世界と世界が時空の歪みによって繋がっている形は変わらない |
| ヴィクトル | それならば人造精霊クロノスの力を用いれば、自由な行き来が可能になるだろう |
| ヴィクトル | 人造クロノスの力なら、意図的に時空の裂け目を作り出す事も可能なはずだ |
| エル | それなら骸殻能力者は自由に移動出来るね! |
| エル | それに人造オリジンなら、クルスニクの鍵の力を再現して他の人や物を移動させる事も出来るよ |
| ミクリオ | 限定的ではあるけど、ルドガーのやりたかった事は始められそうだね |
| アッシュ | 誰が人造精霊を呼びだすのかは慎重に検討する必要がありそうだな。課題は山積みだ |
| メルディ | メルディが世界のキール、骸殻に代わって世界を移動する方法研究しはじめてるよぅ |
| メルディ | それ完成したらもっと自由になるな! |
| ルドガー | そうか…。みんなで力を合わせればこの事も何とかなりそうだな |
| ルドガー | そしてそのためには、まず全ての世界を対等にしないと始まらない |
| ルドガー | よし、決めた── |
| ルドガー | オリジン。俺の願いは、「全ての世界を維持したまま、 時歪の因子を消滅させる」だ! |
| オリジンの声 | その願いなら問題ないね |
| クロノス | …待て。確かに願いは問題ない。しかし… |
| クロノス | 人間の都合による分史世界間の自由移動は認められない |
| ヴィクトル | 何だと…! |
| クロノス | 分史世界間の移動は我の管轄だ。貴様らクルスニクの一族は特別に認めていただけにすぎない |
| クロノス | 我の領域に人間風情が勝手をするなど… |
| オリジンの声 | それは残念だな… |
| オリジンの声 | オリジンの審判が終了すれば骸殻能力から因子化という制約は消え分史は今後、増えなくなる… |
| オリジンの声 | だけどルドガーの願いを叶えると分史が減る事もなくなるよね |
| オリジンの声 | 世界中で生じる負の感情やそこから発生する瘴気はこれまで通り…ずっと減りはしない |
| オリジンの声 | でもルドガー達なら…他の世界の負の感情や瘴気を徐々に減らしてくれるかもしれない |
| オリジンの声 | そして瘴気の量がこの大樹で浄化出来る範囲に収まれば… |
| クロノス | …回りくどい言い方をするな |
| クロノス | 要は、この者達の考え通りになるよう時空の移動を黙認しろと言いたいのだろう |
| オリジンの声 | そうは言ってないよ。時空に関してはクロノスの管轄だ。君に任せるよ |
| クロノス | …まったく。仕方あるまい |
| ルドガー | …!それじゃあ…! |
| クロノス | …我は時空間の移動を監視している。何か不用意な行動を起こした人間は世界ごと消す事も辞さぬ |
| クロノス | その事をゆめゆめ忘れぬようにな |
| ルドガー | 勿論だ! |
| ルドガー | そんな事にならないように、考えていくよ。世界中のみんなで |
| オリジンの声 | …話はまとまったね。それでは── |
| オリジンの声 | 君の願い、聞き届けよう |
| | |
| ルドガー | …これは… |
| エル | 星が見えなくなっちゃった… |
| ヴィクトル | あの星は一つ一つが分史世界だったはずだ。…一体、どうなったんだ…? |
| オリジンの声 | 安心して。消えたわけじゃない。一つになったんだ |
| オリジンの声 | この正史世界と… |
| ヴィクトル | そうか…元より、空を見上げても自分達の住む星は見えない |
| ヴィクトル | もはや全ての世界は手の届かぬ空の星ではなく地続きの身近なものになったのか |
| エル | あれだけの星が一つに…改めて考えると滅茶苦茶な事してるよね |
| ルドガー | でも、誰も犠牲になっていない丸く収まって大団円…これ以上はないだろ? |
| ヴィクトル | 終わりじゃない、始まりだこれからが大変だぞ |
| ルドガー | ああ。まずは俺達の力でいろいろな世界と協力関係を結んでいかないとな |
| メルディ | 戻ったら、キールにもここであった事、伝えるよぅ! |
| ミクリオ | まずは自分達の世界への説明と説得だね。そこから輪を広げていこう |
| アッシュ | ああ。反発もあるだろうが、話し合えばわかりあえる…。親善大使の腕の見せどころだ |
| ルドガー | それじゃあ、一度解散だな。それぞれの世界の様子も気になるだろう |
| ヴィクトル | エルは…ルドガーと一緒に行くんだろう? |
| エル | …うん。ルドガー、これから大変だと思うしエルはアイボーだから |
| エル | それに…世界が繋がったんだから、パパにはいつでも会えるもん!…だよね? |
| ヴィクトル | ああ、そうだな…冒険を頑張れ、応援してるよ |
| エル | また寂しそうな顔して。ヴィクトルには相棒の私がいるでしょ |
| エル | 私だってこれからも、相棒と一緒にどこまでも行くよ |
| ヴィクトル | そうか…ありがとう、エル。これからもよろしくな |
| ルドガー | …それじゃ、まずはみんなを分史世界に帰さなくちゃいけないな |
| メルディ | そういえばどうやって帰るか? |
| ヴィクトル | 私が送り届けよう。正史に集めた時と同じく、人造精霊の力を使えば出来るはずだ |
| ミクリオ | あの現象も人造精霊の力だったのか。…あとでその原理について是非聞かせてくれないか |
| アッシュ | 俺も聞きたい。マナを消費しない魔導器の技術はきっと欲しがる世界が多いだろう |
| ヴィクトル | 勿論だ。私の世界に戻ったら、資料をまとめて必要とする世界に渡せるようにしよう |
| ルドガー | …こうして、全部の世界がよくなっていくのか。ワクワクするな |
| エル | うん!これから、頑張ろうね! |
| クロノス | 手を取り合う、か…。いつまで持つか見物だな |
| オリジンの声 | 相変わらずだね、クロノスは |
| クロノス | 人間がどれだけ愚かな生き物か、一番よく知っているのはお前だろう |
| クロノス | 奴らの負の感情がどれだけお前を苦しめていると思うんだ |
| オリジンの声 | …わかってる。でも、人間は時に僕達の予想を超えた奇跡を起こす事もある |
| オリジンの声 | 彼らの絆を信じる気持ちが僕の審判をも乗り越えたんだ |
| オリジンの声 | 僕はその力を信じてみたいと思うよ |
| クロノス | …… |
| クロノス | 奇跡か。人間に期待はしていないが…お前がそこまで言うんだ |
| クロノス | 我も見届けてやるとしよう… |
| scene2 | 明日へ |
| | トンテンカンテン… |
| エル | ここがミクリオの世界なんだ。あちこちからトントン聞こえて音楽みたいだね |
| ルドガー | みんなが復興を頑張ってる音だ。心なしか希望に満ちているように聞こえるな |
| ライフィセット | 僕達が飛ばされた世界に、まさかまた来る事が出来るなんて… |
| ルドガー | みんなが分史に帰る時に約束したんだ。きっとまた会いに行くって |
| ルドガー | 世界が一つになった事を四大国に説明したりで忙しくて随分と時間が空いてしまったけど… |
| ライフィセット | 僕も初めて聞いた時は驚いたよ。でも意外と世間は落ち着いて受け入れてたね |
| ルドガー | ああ。これまでにも天啓や晶化現象、アヴァロン島といろんな事件があったからな |
| ルドガー | 不思議な現象もすぐ受け入れてくれたんだと思う |
| ルドガー | 四大国の重鎮達も、平和のために必要な事として前向きに捉えてくれたよ |
| ??? | 来てくれたんだね |
| エル | あっ! |
| ミクリオ | やあ、久しぶり |
| スレイ | 会えて嬉しいよ!改めてお礼をしたいと思ってたんだ |
| ライフィセット | そんな…あれは負の因子が憑りついたせいだし気にしないでよ |
| エル | …あれ?ミクリオ、あそこにあるのってもしかして魔導器…? |
| ミクリオ | ああ。マティス式魔導器だよ |
| エル | パパが使ってたやつ…!でも、どうしてここに? |
| ミクリオ | ヴィクトルからもらった資料で作り出したんだ |
| ミクリオ | 資材の加工に使ったり、医療や生活にも大いに役立っている |
| ミクリオ | マナを消費しないから天族からも評判がいいんだ |
| エル | エルの世界のギジュツが…なんか、嬉しい! |
| ライフィセット | ルドガーの言ってた全ての世界で手を取り合うって話、早速成果が出てるね! |
| ルドガー | ああ。これで復興が効率的に進めば成功例として他の世界にも説明しやすくなる |
| スレイ | 復興は勿論だけど、この魔導器を使えばこれからの生活が一変しそうだ |
| ミクリオ | まるで歴史書で見る、文明の転換期のようだね |
| ルドガー | …これから、いろんな世界でそういう転換期を迎える事になるんだ |
| ルドガー | 上手く行く事ばかりではないと思う。そういう時は歴史に詳しいミクリオ達の知恵を借りに来るよ |
| ミクリオ | ああ。いつでも来てくれ |
| ライフィセット | 僕も来ていいかな?天族と人間の付き合い方を学んで他の世界に伝えたりしたいんだ |
| ミクリオ | 勿論。ライフィセットも、いつでも歓迎するよ |
| スレイ | これからは他の世界の人達や天族とも交流していきたいと思ってるんだ |
| スレイ | いつか正史にも行くから、その時は案内をお願いしてもいいかな |
| ライフィセット | うん、わかった。こっちも、いつでも歓迎するよ |
| | |
| ファラ | わぁ…綺麗! |
| リチャード | 本当に綺麗だね。…しかし、この花畑は魔導器の実験で枯れ果てたと言っていなかったかい? |
| ??? | それはな。メルディお願いして、キールに戻してもらったんだよぅ! |
| エル | あっ、メルディ!久しぶりー! |
| メルディ | みんな!元気してたか? |
| ファラ | うん!メルディも元気そうでよかった |
| キール | …やあ |
| ルドガー | キール。すごいな。確か何年も命の芽生えない土地になったって聞いてたのに… |
| キール | ああ。それが新発見でね。別の世界の同じ場所の土を混ぜると生命力が戻る事がわかったんだ |
| キール | ヴィクトルが別の世界で見つけた方法だと言って教えてくれたよ |
| ルドガー | ヴィクトルはこの世界の事も手伝ってるのか |
| エル | パパがみんなと仲良くしてくれて嬉しい! |
| ルドガー | 同じ場所の土を使う…その方法ってもしかして同一存在同士で影響し合っているって事か? |
| ルドガー | 負の因子が正史の同一存在に影響を与えていたように… |
| キール | まだ詳しい原理は不明だが、関連性はあると睨んでる |
| キール | …他の世界でも魔導器の濫用で土地が枯れたり疫病が流行るような被害が出ているかもしれない |
| キール | ヴィクトルがマティス式魔導器を広めれば今後はなくなるだろうけど、これまでに出た被害はそのままだ |
| キール | その被害を少しでも元に戻せるよう今後も研究を続けて行こうと思うよ |
| ルドガー | それが出来ればすごいよ |
| キール | 罪滅ぼしにもならないけどな…それにメルディの方がすごい事をしてる |
| ファラ | メルディが?何をしたの? |
| キール | 四大国協定を成立させたんだ。今、この世界には大きな争いもない。これは偉業だと思う |
| メルディ | んー?大した事してないな。最初にみんな仲よくしようってメルディが言っただけ! |
| リチャード | それで実際に世界を動かしたんだ。本当にすごいよ |
| ファラ | うんうん、メルディはすごい!とっても立派だよ! |
| メルディ | 何だか照れくさいよぅ… |
| メルディ | けど、これはルドガーがお蔭。反対されても話し合えばわかるって信じたからだよ |
| ルドガー | 俺はメルディに教えてもらった事だ。だから、お互い様だな |
| メルディ | それから、リチャードやアッシュと手紙やり取りしてて国同士の話し方、教えてもらったな |
| リチャード | 僕も大した事はしていないよ。だけど役に立てたのならよかった |
| キール | 僕もメルディも、他の分史世界には随分助けてもらっているし、早く恩返しをしたいと思ってる |
| キール | 完成まではまだかかるけど、多くの人や物資を乗せて分史間を移動する船を開発中だ |
| ファラ | 船?海に出るの? |
| キール | 本当の船じゃない。時空間を航行する乗り物を便宜上そう呼んでいるんだ |
| メルディ | キール、今度はみんなが喜ぶもの、作れるな! |
| キール | ま、まあな… |
| メルディ | 船出来たら、他の世界と貿易できる!リチャード、その時はアッシュと貿易協定が話するよ! |
| リチャード | わかった。その日が来る事を心待ちにしているよ |
| | |
| ルーク | …ったく。何でこんな森の中で密会しなきゃなんねぇんだよ |
| ルドガー | …はは、仕方ないさ。俺達、この世界では逃亡した犯罪者なんだから |
| ミュウ | ミュウはこの森、好きですの。故郷の森に似ていて何だか落ち着くですの |
| ??? | この森にはチーグル族が住んでいるから、それでだろうな |
| エル | あっ!アッシュ来た!ルークも! |
| アッシュ | 待たせたな |
| ルーク | 仕方ないとはいえ、もてなせなくて悪いな |
| ルーク | いや、まあいいけどよ…元気でやってんのか? |
| ルーク | そうだな、お蔭様で…キムラスカの王位継承者として対外的に認められたよ |
| ルーク | おー、やるじゃねえか!さすがこの世界の俺! |
| ルーク | あと、今は親善大使としてチーグル族との共存関係を築こうとしているんだ |
| エル | チーグル族って、ミュウの仲間の事だよね? |
| ミュウ | はいですの! |
| ルドガー | それでこの森を待ち合わせ場所にしたのか? |
| アッシュ | ああ。ミュウと接しているところを見せ警戒心を解く狙いもある |
| アッシュ | ルークが考えたんだ。こいつにしては珍しく交渉事の要領を掴んでやがる |
| ルーク | 俺だって成長してんだ。ぼやぼやしてっと追い抜くからな |
| アッシュ | ふん。外交も剣も、まだまだお前に後れは取らねぇ |
| ルーク | あんな事言われてんぞ。絶対見返してやれよ |
| ルーク | 当然だ。剣だって、今度の── |
| ルーク | ああ、そうだ!今度「全世界闘技会」を開くんだ。お前達も参加してみないか? |
| ルドガー | 全世界…という事はもしかして他の分史や正史から… |
| ルーク | そうだ。交流を持てた各世界にはすでに案内を送っている |
| ルーク | そこでなら例の件の犯人ではなく別世界の俺として堂々と迎え入れられるはずだ |
| ルーク | なるほど、悪くねぇな。他に誰が参加するんだ? |
| アッシュ | まだ募集を始めたばかりだが…既にいくつかの世界から参加表明があった |
| アッシュ | ガイアスというア・ジュールの王とアーストという名の剣士── |
| ルドガー | その二人って…! |
| アッシュ | 知っている名か? |
| ルドガー | ああ、まぁ… |
| ルドガー | (違う世界の同一人物だよな…。 偶然の一致かも知れないけど…) |
| ルドガー | 俺の知ってるその人は、とても強い剣士だ。きっと強敵だぞ |
| アッシュ | そうか。面白い大会になりそうで何よりだ |
| ルーク | よーし、俺は参加するぜ!全世界の中で最強は誰か教えてやる! |
| ルドガー | 俺は遠慮しておくよ。その代わり、試合は必ず応援しに行く |
| エル | エルも試合見に行く! |
| ルーク | わかった。大規模な大会だから試合は数日に渡って行う予定だ |
| ルーク | 試合日程はまた連絡する。よかったら俺達の試合の時も応援しに来てくれ |
| ルドガー | 勿論だ |
| ルーク | おーし、そうと決まれば試合の日まで特訓だ!ミュウ、お前も手伝えよ! |
| ミュウ | はいですの! |
| ルドガー | …闘技大会という形の交流か…。やっぱり世界が違うといろんな可能性を見られていいな |
| | |
| エル | ついたー!パパ、ただいまー! |
| 人造オリジン | おかえりなさい |
| エル | …家間違えた!? |
| 人造クロノス | 間違ってないが。というかこの辺り他に家はねえぞ |
| ユリウス | これが話に聞いた人造精霊か… |
| 人造オリジン | ルドガーさんのお兄さんですね。はじめまして、オリジンと申します |
| ユリウス | あ…これはご丁寧に。ユリウス・ウィル・クルスニクです |
| ルドガー | 兄さんが畏まってる… |
| ユリウス | …人造とはいえオリジン相手…なのに腰の低い話し方をするから距離感を掴み損ねた |
| エル | あ、もう来ちゃったの?ごめん、お出迎え出来なくて |
| エル | おとなのエルだ!向こうからいい匂いするし、ご飯作ってたの? |
| エル | そうだよ。ヴィクトルと一緒に腕によりをかけて作ってるとこ |
| エル | やったー!パパのご飯だ! |
| エル | ちょっと!私とクロノスも手伝ってるんだからね |
| ユリウス | まさか…クロノスが料理を…? |
| エル | そう。調理時間を正確に測ってくれる優秀な料理人なんだよ |
| エル | みんな手伝ってるの!?エルも手伝うー! |
| ルドガー | 俺も手伝うよ。ヴィクトルの技術を盗ませてもらいたいからな |
| 人造オリジン | お待ちください。あなたは調理場に入れないように言われています |
| 人造オリジン | 10年かけて、この味に辿り着け…との事です |
| ルドガー | 手厳しいな… |
| ユリウス | こう言われてしまったら修行あるのみだな、ルドガー |
| ルドガー | 兄さんは俺に料理させたいだけだろう?別に構わないけど… |
| 人造オリジン | そういうわけですから、お二人は席におかけになってお待ちください |
| ルドガー | わかった |
| エル | いっただきまーす! |
| ヴィクトル | 熱いから気を付けて |
| エル | うん!ふー、ふーっ! |
| ルドガー | …これは美味いな |
| ヴィクトル | 今日は君達が来るからいつもより気合いが入ってしまってね |
| 人造クロノス | 煮込み時間も完璧なはずだ |
| エル | それに、この世界にマナが戻ってきたお蔭かトマトがすごく新鮮なの |
| ユリウス | …そうか。マナは回復しつつあるんだな |
| ヴィクトル | ああ。魔導器の技術提供の代わりに多くの世界からマナを少しずつ分けてもらったんだ |
| ヴィクトル | 負の因子を使って無理やりマナを奪った世界にも借りた分を返し終わったよ |
| ヴィクトル | 勿論、正史世界にもね |
| ルドガー | これで全部元通り…いや、この世界にとっては環境がよくなったと思っていいのかな |
| ヴィクトル | ああ。未完成だった人造精霊もこれだけマナがあればいずれ完成させられるだろう |
| 人造クロノス | とはいえ、本来の使命である世界の楔の管理は必要なくなってしまったがな |
| ルドガー | そうか。世界の楔の繋ぎ変えは結局してないもんな |
| 人造オリジン | 今の私達の使命は世界間をつなぐ流通手段の研究開発をしているんです |
| 人造クロノス | ああ。人や物を任意の世界に安全に転移させるんだ |
| エル | メルディの世界でもそんな研究してるって言ってたよね |
| 人造オリジン | ええ。その世界のキールとは意見を交換しながら研究を進めているんです |
| エル | じゃあ、パパも研究してるの? |
| ヴィクトル | いや。研究は人造精霊に任せている。私はいろんな世界を巡る旅をしているんだ |
| ヴィクトル | そしてその世界に問題があれば解決する。ルドガーのようにね |
| エル | 前はそんな余裕なかったけど今回はちゃんとその世界の人達と向き合いながら旅してるんだよ |
| ユリウス | …いい心がけじゃないか。ルドガーらしいよ |
| ヴィクトル | 別世界とはいえ兄さんにそう言われると照れるな… |
| ヴィクトル | …私にとっては贖罪の旅も兼ねているんだ |
| ヴィクトル | 世界の状況が落ち着いてエルが私の元に帰ってくるまではこの旅を続けようと思っている |
| エル | いいなー…エルもショクザイの旅したい!美味しい食べ物探すの! |
| ルドガー | ショクザイ違いだぞ、それは… |
| エル | あながち間違いでもないかも。いろんな世界のご飯を食べてヴィクトルは料理の腕を上げてるし |
| エル | へー、そうなんだ!いろんな世界のごはん食べてみたいな! |
| エル | …あっ、そうだ!友達をよんでパーティーする約束!パパ、覚えてる? |
| ヴィクトル | 勿論だよ。…今なら他の世界の友達もみんな呼べるな |
| エル | うん!たくさんお友達呼んでパーティーしよ! |
| ヴィクトル | …わかった。今度集まる時は盛大にやろう |
| エル | やったー!みんなに招待状書かなくちゃ! |
| ユリウス | エルの交友範囲は正史世界だけでもかなり広いだろう。これは大人数になりそうだな |
| ルドガー | いいのか、そんなに安請け合いして |
| ヴィクトル | 安請け合いなんかじゃないさ。エルが世話になっている友達だ。最高のおもてなしをさせてもらうよ |
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| キール | ん?分史巡りから帰ってきたのか? |
| リタ | 久々じゃない。さっきまでロディも来てたのよ。あんた達にお礼を言いたがってたわ |
| ルドガー | ロディか…お礼が言いたいのはこっちだ。世界の楔で助けてもらって以来だしな |
| リタ | また来ると思うわよ。この研究施設の設備を使ってマナを異星に送りたいって言ってたし |
| ルドガー | 異星…ダオスの故郷だな。正史にマナが戻った今ならそれも可能なのか? |
| リタ | 理論上はね。マナを送り込むための装置の開発にはしばらくかかりそうだわ |
| ルドガー | そうか。それでも解決に向かってるようでよかったよ |
| エル | キールとリタは、ここでその装置を作ってるの? |
| リタ | あたしはそうよ。キールは別の研究をしてるみたいだけど |
| キール | …本当はぼくも別の世界を旅してみたいんだが、研究員達からどうしても必要だと言われてね |
| キール | だけどお蔭で、ヴィクトルから聞いた別世界を座標として捉える仕組みがようやく形になりそうだよ |
| エル | 別世界を…ザヒョー…?それって何? |
| リタ | 簡単に言うと、全部の世界に行ける地図が作れるようになるの |
| リタ | ここにメルディの世界があってその近くにアッシュの世界が…とかね |
| エル | へー、すごい! |
| キール | メルディの世界のぼくが開発している、時空を移動する船の航路を決めるのにも使えるはずだ |
| ルドガー | 本当に、力を合わせる事で問題がどんどん解決していくな |
| キール | ああ。何かに行き詰っても他の世界ではとっくに解決済の問題だったりする… |
| キール | 研究の進展の速さはこれまでの比じゃない |
| ルドガー | そうか…。これからもっと世界を旅して交流の輪を広げていくよ |
| ルドガー | さぁ、エル。今度はどこの世界に行こうか |
| エル | どこでもついて行くよ!だってアイボーだもん! |
| エル | だけど…ちょっとだけ心配 |
| ルドガー | うん?何だ? |
| エル | ルドガーにもそろそろ落ち着いてもらわないとこの世界のエルが生まれないよね |
| ルドガー | えっ…!そ、それは…! |
| ルドガー | …善処するよ |
| エル | うん。そしたら今度はエルが、おとなのエルとしていろいろ教えてあげるんだ! |
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| エル | 楽しみだなー |
| エル | その時、世界はどんな風になってるのかなー |
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