NameDialogue
拓かれし道
ルドガーあなた達も来ていたのか
ルドガーヴィクトル、エル
ヴィクトルさっきぶりだね
エル
エル二人も、メルディ達と一緒に来ちゃったの?
ヴィクトル違うよ、エル。私達は自分でここに来たんだ
ルドガー自分で…?どういう事だ?
ヴィクトル…当事者である君達は知っておくべきか
ヴィクトル君達を分史から転移させここに集めたのは私だ
エルパパ達が…!?
ルドガー一体、どういう事だ…?この時空の裂け目と関係あるのか?
ヴィクトルああ。さっきも言ったが、それは「世界の楔」に通じる道だ
ヴィクトル私の計画は全てこの瞬間のためにあった…
ルドガー計画だって…?
ヴィクトル私が分史でどれだけ足掻こうとも正史にある「世界の楔」へは至れない
ヴィクトルだから正史のルドガー──君に「世界の楔」への道を開かせたのだ
ヴィクトル道標を負の因子に変え、順番に回収出来るよう各分史にばら撒いてね
アッシュ…貴様が諸悪の根源か
ルドガーどうして世界の楔へ…?
ヴィクトル質問に答えてやりたいが…今は一刻も早く為さねばならない事がある
ヴィクトル対話の時間はその後だ。失礼する
ルドガーなっ…!
エル…じゃあね
シュンッ
ルドガー待ってくれ…!
エル行っちゃった…
リタあいつ、何だったの?意味わかんないんだけど
キール随分と急いでいたな…
ユリウスヴィクトル…世界の楔で一体何をするつもりなんだ?
ルドガーわからない。でも、嫌な予感がする…俺達も行こう!
ルドガー…!中は広いな…ヴィクトル達の姿はもう見えない…
ルドガーこれが…世界の楔への道か…
エルなんか…怖い。でも、パパはこの先にいるんだよね…
ミクリオ…不思議な空間だ。こんな遺構は見た事も聞いた事もない
ユリウスそうだろうな。おそらくこの地に到達した人類は我々が始めてだ
ユリウス何が起こるかわからない。なるべく固まってはぐれないように…
ユリウスちょっと待て。キールとリタはどうした?
メルディそういえばいないな?迷子か?
ルドガー入って来た時空の裂け目はすぐそこだ。はぐれるような距離じゃないはず…
アッシュ入った際、別の場所に飛ばされたという可能性は?
ミクリオどうだろう…でも、他のみんなは一緒にいるからその可能性は低いと思うな
ミクリオ単純にここに入れていないのかも知れない。一度戻って確認しよう
グガアアァッ!
エルわわっ!?
ルドガー危ない!
ザシュッ
グルルウゥ…
バシュウゥゥ──…
メルディバイバ!消えちゃったな!…幻だったか?
ルドガーいや、確かに手応えはあった。それと、今の魔物…
ユリウス見慣れない魔物だったな。何か気になるのか?
ルドガー世界が晶化した時、ラザリスの宮殿にいた魔物なんだ。もういなくなったはずなのに…
ユリウス…やはりここでは何が起こるかわからない。一度外に出て状況を整理しよう
ルドガーそうだな。一旦ここから出よう
それぞれの使命
リタ駄目ね、入ろうとしても弾かれる。何かしらの特殊な力が働いてるみたいね…
キールルドガー達は入れて僕達は入れない…。何故だ…?
シュンッ
ルドガー…よし、みんな無事に出られたな
リタうわっ!急に出てこないでよ。びっくりするじゃない!
キールルドガー!よかった、無事だったか
キール僕達は入れなくて、どうしようかと思っていたんだ
ユリウス入れない…か
ユリウスこれは推測だが、入るのには資格がいるのかもしれないな
リタ資格?
ユリウス先に入った二人とルドガー、エル、俺の三人はクルスニクの一族だ
ユリウスそして分史の三人は道標…つまり入れた者は、オリジンの審判に関わりのある者なんだ
リタ部外者立ち入り禁止って事ね。どうにか出来ないの?
ルドガー…何か方法があればいいけど…
キールまだ情報が足りないな…。中の様子を教えてくれないか
ルドガーああ、中は──
リタ晶化現象の時に現れた魔物…ね
エルラザリスって人がフッカツしたのかな?
ルドガーいや…おそらく違うと思う。それなら魔物だけじゃなく世界ごと晶化するはずだ
ユリウスだとすると…命を失った魔物達の魂だったのかもしれないな
リタ魂?…まさか、幽霊だなんて言うつもりじゃないでしょうね
ユリウス実体はあったから幽霊というわけではないだろう
ユリウス伝承の中で、世界の楔は全ての世界のマナと魂を循環させる場所だと語られている
ユリウス命を失った者達の魂は世界の楔に集まる。人も、魔物もな
キールその魂が何らかの理由で実体化していた…という事か?
ユリウスああ。あくまで伝承を元にした憶測でしかないがな
ルドガーヴィクトル達なら何か知っているだろうか…
ユリウス我々よりは詳しいだろうが…話を聞くためには追いつかなくてはな
ルドガーすぐに追いかけよう
ルドガー…何が起こるかわからない場所だ。エルは危険だから──
エル留守番しろ、なんて言わないよね。エルはルドガーのアイボーだし
ルドガー…本当に危険なんだ。俺がエルを守り切れないかもしれない
エルその時は、エルがルドガーを守る!それがアイボーでしょ!
エルそれに、中にはパパがいる…。エル、パパが何をしようとしてるのかちゃんと聞きたい!
エルもしルドガーに置いて行かれてもエル、一人でパパを捜しに行くよ!それでもいいの!?
ルドガーそれは…
リタルドガー、これはあんたの負けよ。置いてったらこの子本気で一人で行っちゃうわよ
キールもしそうなったら、僕達は追いかけようにも世界の楔には入れないぞ
ルドガー…そうだな。それに、エルの意志の強さもよくわかった
ルドガーすまなかった、エル。アイボーとして、一緒に来てくれるか?
エルもちろん!
ミクリオ話はまとまったようだね
メルディメルディ達はルドガーと行くよ!キール達、どうするか?
キールぼく達は、今ある情報を元にどうにか中に入れないか方法を探ってみる
リタ一度研究施設に戻った方がいいわね。何らかの方法で資格ってやつがあると認識させられれば──
研究員はぁ、はぁっ!キールさん、リタさぁん!
キール?何だ?
リタあんた確か、研究施設にいた…。慌てて、どうしたの?
研究員…き、緊急事態です!この観測結果、見てください!
ペラッ
キールこれは…!
リタ嘘でしょ…!この数字、見覚えあるわ。確か前に時空の亀裂が出来た時の…
研究員その通りです!実際に、東の山の方で時空の亀裂が観測されています!
ルドガークロノスが暴走していた時のような現象が起きてるのか!?大勢の人が亀裂に飲み込まれるぞ
リタどうすればいいのよ。亀裂への対応にも骸殻の力が必要なんでしょ!?
ユリウス…手分けすればいい。新しく発生した亀裂には俺が向かおう
ルドガー兄さん…?
ユリウスヴィクトル達を追うのはルドガーが適任だろうからな
ルドガー…兄さん、ありがとう。こっちの事は任せるよ
ユリウス気を付けてな
ルドガーああ。兄さんも
リタあたし達は研究施設に戻って、亀裂が出来た原因を探るわ。あと、世界の楔への入り方もね
キール忙しくなりそうだな
メルディキールなら出来るよ!頑張ってな!
キールああ。ありがとう
ルドガーよし…それじゃ改めて向かおう。世界の楔の、その奥に
エルおー!
scene1最奥を目指して
ミクリオ世界の楔…前人未到の地か。改めて見てもやっぱり独特な景色だね
メルディまた突然、魔物が出るかも。気を付けるよぅ
アッシュどんな景色だろうと、何が起ころうと道が続いているのなら進むのみだ。…急ぐぞ
エルうん。パパ達に追いついて、何をしようとしてるかちゃんと聞かないとだもんね!
ルドガーああ。行こう!
scene2最奥を目指して
アッシュ穿衝破!
ミクリオ六行六連!
グギャア!
バシュウゥゥ──…
アッシュ流れるような六連撃…見事だ
ミクリオ君が隙を作ってくれたお蔭だよ。それに、剣士と一緒に戦うのは経験があるからね
アッシュだとしても初対面で俺の動きに合わせられる奴はそう多くない
ルドガーこの辺りの魔物はあらかた片付いたみたいだ。戦い続きだし、少し息を整えよう
ミクリオそれじゃ君も小さい頃から弟と剣の練習をしていたんだね
アッシュああ。あいつも負けず嫌いで、ほぼ毎日手合わせしていたからな。練習相手には事欠かなかった
ミクリオそうか。僕も君もそんな繋がりがある人に負の因子が憑りついたんだね
アッシュヴィクトルの計画か…
ミクリオああ。彼は仮面の男…ヴィクトルにこう吹き込まれていたらしいんだ
ミクリオ平和のためには犠牲が必要だ、と…
ルドガー今にして思えばその情報は負の因子の影響を強めるためのエサだったのかもしれないな
メルディはいな。メルディが世界では、キールに分史が知識教えてた
メルディあの時がキールにとって悪い心、揺さぶられた気がするよ
アッシュ…。俺の世界では、ルークに負の因子は道標、という言葉を残した
ルドガー負の因子を破壊した者は世界の楔へと続く道標になる…
アッシュルドガーに回収させる事まで含めて全部、奴の計画の内だったという事だ
ミクリオみんな、彼の掌の上で踊らされていたのか…
メルディそこまでして、何したいか見つけ出して、聞かなきゃな!
メルディキールが事、利用したのは、許せないけど…
メルディ互いの考え知るため話し合うの、とっても大事
メルディそうしないと悪い考えばっかり大きくなる。気持ち、すれ違っちゃうよ
エルうん。パパと、ちゃんと話ししたい
エル…エル、パパは悪い事したいわけじゃないって信じてるから
ルドガーそうだな…。ヴィクトルのやり方は確かに正しくなかったけど…
ルドガーそんな事をしたのには何か事情があるはずだ。その話はしっかり聞きたいと思う
アッシュ対話の必要性か…全く、耳の痛い話だ
メルディ対話の仕方も大事な。メルディとおカーサン、女王と王女として話すとダメだった
メルディでも親子として話したらすぐわかり合えたよ
アッシュ
ミクリオ
メルディ?どうかしたか?
ミクリオ君は、一国の王女なのかい?
メルディはいな。言ってなかったか?
アッシュそうだったのか。王族には珍しい純朴な人間だな
メルディそれ、褒めてるか?
アッシュ勿論だ。王宮という魔窟では人を信じる気持ちを忘れがちだ
アッシュ俺も見習う必要があるかもしれないな…
ルドガーそうか、そういえばお互いの自己紹介もまだだったもんな。そんな暇が今はないんだけど…
ミクリオ僕達の間にも対話は必要かもしれないね
ミクリオ例えば、ルドガー…君に確認しておきたいんだが
ミクリオヴィクトルと対話した結果、もし受け入れられないような話だった場合…
ミクリオ君達は、ヴィクトルと戦うのか?
ルドガー…出来る限りそれは避けたい。戦うって事は、彼の事情を鑑みず力尽くでこちらの正義を通すって事だ
ルドガーもし戦うとしたら、話し合うために。話し合って折り合いがつかない時はお互いが納得出来るまで話すよ
ルドガー別の世界の存在とはいえ彼と俺は同じ…どこかで折り合いをつけられるはずだ
ミクリオそれを聞いて安心したよ。僕もそうするべきだと思う
ミクリオ一方にとって邪魔だからもう片方を排除する…そんな戦いは、もう見たくないからね
アッシュ同感だ。主張が全く相反する者同士でも共存の道は必ずある
メルディワイール!みんな仲よく話し合うが一番!
ルドガーみんな…ありがとう。少し不安だったけど、お蔭で勇気が湧いて来たよ
???こんなところで談笑とは随分余裕だな
ルドガー…!誰だ…!?
時空を超える力
ルドガーあなたは…!?
ダオス仮面の男は…まだ先か
ルドガーダオス!何故ここに…!?
ダオス…それはこちらの台詞だ。休んでいる暇などお前達にはないはず
ミクリオダオス…?まさか、伝説の魔王…実在しているとは驚いた
ダオス
メルディルドガー、知り合いか?
ルドガーああ。彼は、正史のマナが減っている理由を調べていたんだ
ルドガーそうだ、ダオス。マナが減っていた原因はもう解決したんだ
ルドガーヴィクトルという男が分史にマナを移動させてたけど、それはもう止める事が出来た
ダオス…そのヴィクトルというのが仮面の男だろう
ダオス今まだ野放しの状況で何故、解決したと言える
ダオスお前は奴がここで何をしようとしているか、真意を知っているのか?
ルドガーそれは…
ダオス…どうやらお前達と話していても時間の無駄のようだ
エルパパを追いかけてどうするの…?
ダオス
エル行っちゃった…なんか感じ悪いし!
ルドガー…追いかけよう
メルディダオスをか?それともヴィクトル達か?
ルドガーまずヴィクトルだ
ルドガーダオスもヴィクトルを捜していた。ヴィクトルを追っていればどこかで会うだろう
エルうん!あの人より先にパパを見つけよう!
リタうーん…無理か。資格がないと入れない特殊な力…っていう線での検証はこれが限界ね
キール行き詰っているみたいだな
リタまぁね。情報が足りなさすぎるのよ。そっちで調べてる亀裂の方は何か進展はあった?
キールいや、大きな動きはない。計測器の数値は異常な数値を指したままだ
リタ依然として安心は出来ないわけね…
???あの、ごめん。ちょっといいかな
リタん…?
ロンドリーネ忙しそうなところ申し訳ないんだけど…
リタあんたはこの前の…!どうしたのよ?
ロンドリーネ実はダオスがあの世界の楔ってとこに入って行っちゃったのよ…
キール何だって…!?
リタちょ、ちょっと!その話詳しく聞かせなさい!
ロンドリーネわ、わかった。順を追って説明するね
ロンドリーネえっと、あの時空の裂け目の前から誰もいなくなるまで、私達は離れて待ってたんだけど…
ロンドリーネみんないなくなったね…
ダオス
ロンドリーネねえ、どうするつもり?もしかして中に入るの?
ダオス…時空の壁か。ならば…
ダオス
ロンドリーネえっ?入って行っちゃった…!
ロンドリーネ私も、入れるのかな…?えーい、ものは試し!
シュン
ロンドリーネ入れた…!でも、どうして…
ダオス…デリス・エリュシオンか
ロンドリーネえ?あ、本当だ。デリス・エリュシオンが光ってる…
ダオスだが、すぐにマナは尽きる
ロンドリーネえ、それって、どういう──
ヴォン
ロンドリーネえっ、何!?吸い込まれ──
ヴォン
ロンドリーネきゃはぁっ!!
ドサッ
ロンドリーネいてて…ここは…弾き出されちゃった?…って、私だけ?
ロンドリーネも、もう一回…!
ロンドリーネうーん…駄目ね、今度は全然入れない…さっきのキールやリタと一緒だ
ロンドリーネダオス、何をするつもりなんだろ…。世界の終わりを止めるって言ってたけど…
ロンドリーネ何だか嫌な予感がする。どうにかして追いかけないと…
ロンドリーネキールやリタならもしかしたら…ここで考えてても仕方ない、研究施設に行ってみるか
ロンドリーネ…というわけで、二人に相談しにきたの
リタ二人共、世界の楔に入れたって事?だけどあんたはすぐに弾き出されてダオスは戻ってこなかった…
キール今の話だと、デリス・エリュシオンという物のマナが尽きて弾き出されたみたいだな
キールデリス・エリュシオンとは何だ?
ロンドリーネこの指輪だよ。昔、ダオスにもらったの
キール…見たところ、何の変哲もないただの指輪のようだが…特別な力があるのか?
ロンドリーネうん。溜めたマナを使って時空を超えて移動が出来るんだ
キール時空移動…!?とんでもない力だな
キールしかし時空を超えるという点では骸殻能力に通じる部分がある…
キール…時空を超える力があれば世界の楔に入る資格があると誤認させる事が出来るのか…?
ロンドリーネダオスが中に入れたのは、デリス・エリュシオンなしで時空を超える術が使えるから…?
リタちょっと、その指輪調べてもいい?
ロンドリーネ…わかった
リタ…全く未知の構造だわ。マナは自然と溜まるようになっていて膨大な量を蓄えられるみたい
キール時空を超えるには相応のマナが必要という事か。今はどのぐらいのマナが入ってるんだ?
リタすっからかんよ。自然に溜まるマナだけで満たすのは時間がかかりすぎるわね
キール世界の楔に入るために全てのマナを消費してしまったという事か
ロンドリーネダオスの口ぶりからしてもきっとそうだと思う。何とかならないかな…?
リタ…上手く行くかはわかんないけどここにある機材を使えば指輪にマナを充填出来ると思うわ
ロンドリーネほんと!?私、どうしてもダオスを追いかけたいの!お願い出来ないかな…?
リタ任せなさい!…って言いたいところだけど、あんたも手伝ってくれる?
リタマナの大量急速充填には人手が必要なの
ロンドリーネ勿論!何をすればいいか教えて!
リタそうね…じゃあ、こっちに来て
キールふう。忙しくなってきたな。だが、これで──
キール……
キール何だ?妙な胸騒ぎがする
キール(この感覚… メルディに危機が迫る悪夢を 見た時に似ている気がする…)
キール(まさか、また何か──)
???キール!
キールうわぁ…っ!
メルディわっ!どうしたか!?
キール…メルディか。驚かさないでくれ
メルディごめんな
キールいや…それで、どうかしたのか?今、大変な状況なんだ。急用でないなら後にしてほしい
メルディそうだった。お客さん連れてきたよぅ!
キール…客だって?
メルディはいな!みんな変な夢見たり、胸騒ぎがして集まったって言ってるよ!
キール変な夢?胸騒ぎ?まさか──
scene1仮面の裏側
エルあっ!いた!
ルドガー追いついたか…!
ヴィクトル……
エルもう来たの!?魔物がたくさんいたはずでしょ
ルドガーみんなの助けがあったからな
ルドガーそれより…ダオスはどうした?
ヴィクトル何の事だ。…もしや、かの魔王がここに来ているのか?
ミクリオ本当に知らないようだね。という事は、途中の分かれ道で別の方に行ったのかもしれない
ルドガーそうだな…
ヴィクトル…それより、何故エルを連れて来た。危険だろう
エルルドガーのアイボーだもん!それに、パパの事だって心配だし
エルねぇ、パパ。ここで何しようとしてるの?ちゃんと教えて
ヴィクトル…エル。……わかった。全て教えよう
エルヴィクトル…!?でも…
ヴィクトル私がここで話をしていても何も問題はない
エル…そういう事ね。わかった
ヴィクトル…さて、私の目的だったか。そもそも君達はどうしてそこまで知りたがるんだ
ヴィクトルもしかして私が世界征服でも企んでいると考えているのか?
ルドガーそういうわけじゃないけど…
アッシュご託はいい。さっさと話せ
ヴィクトル私の目的はごくありふれた事…娘と平穏に暮らしたい。ただそれだけだ
メルディそのため、道標が必要か?メルディ達が世界に負の因子、持ってくる必要あったか?
ヴィクトルああ、勿論だ。私は世界の楔に辿り着き…オリジンの審判を達成する必要がある
ルドガー…やっぱりオリジンの審判が目的だったのか
ヴィクトルそうだ
ヴィクトルルドガーは知っているだろうが、私の世界はマナが枯渇し滅亡の危機に瀕している
ヴィクトルオリジンの審判を達成し願いを叶えれば、私の世界にマナを取り戻せる
ヴィクトルルドガー。君の言っていた、何も犠牲にしない方法というやつだよ
ミクリオ…悪い話には聞こえないな
エルうん。それだったら、エルも賛成
ルドガー…ああ。だけど…何かおかしい
ヴィクトル…何か疑問があるのか?
ルドガー最初からそれが狙いだったら負の因子を使ってマナを集める必要はなかったはずだ
ルドガーわざわざ負の因子を改造までして他の世界からマナを奪っていた…その意味は何だ?
ヴィクトルマナを奪えば正史に異変が起こり、君は異変をたどって道標を集める。その誘導のためだ
ヴィクトル何せ正史の住人である君に道標を集めてもらわないと世界の楔へは至れないのだからね
ルドガー…なるほど…筋は通る…
ヴィクトル納得したかい?
ルドガー…もう一つ
ヴィクトル…何だい?
ルドガーエルが正史にいた事だ。エルと一緒に暮らす事が目的ならどうしてエルを迎えに来なかった?
ヴィクトル…君も聞いた事があるだろう。正史世界では、同一の存在が共存する事は出来ないと
ルドガーああ。兄さんが言っていた…
ヴィクトル私はルドガーだ。正史世界に君がいる限り同一存在である私は正史に入れない
ルドガーそれなら、今ここにヴィクトルと大人のエルがいる事はおかしい…
ミクリオ僕達もだ。この世界にも僕はいるんだろう?なのにここにいられる…
ルドガーもしかして、同一存在が共存出来ないという伝承は間違いなのか…?
ヴィクトル…いや。伝承は間違っていない。そうでなければ私はエルと共に正史世界に住めばいいだけだからね
ヴィクトル…それが出来ないのは、ルドガーと私という同一存在が正史世界に共存出来ないからだ
ルドガー…だったら、何故、今──
ヴィクトル…ここが正史世界ではなくなり始めているからだ
ルドガー…!どういう事だ!?
ヴィクトル君が疑問に思った負の因子を使ってマナを奪っていた理由の一つだよ
ヴィクトルこの世界のマナを分史に移し替え、正史世界としての法則が機能しなくなるようにしていたのだ
ヴィクトル最初は、エルに持たせた懐中時計とルドガーの持つ時計がやっと共存出来る程度だった
ルドガー…そうか、この時計…エルが持っているのはヴィクトルの…つまり俺の時計と同一存在なのか
ヴィクトルああ。それから徐々にマナを移し続け正史世界のマナの半分近くを私の世界に移し替えた
ヴィクトル今やこの世界は正史世界としての完全性を失い、同一存在が共存出来るまでになっている
ヴィクトルあとは世界の楔だけだ。この世界の楔を正史から外し、私の分史に繋ぎかえれば──
ヴィクトル私の世界が正史となる
ルドガー何、だと…!?
ミクリオ君の世界の問題はマナの枯渇だったんだろう?なのに、正史にする意味は何だ
ヴィクトル何度も言っているだろう。娘と平穏に暮らし続けるためだ
ヴィクトルマナの枯渇は、オリジンの審判を達成した時に願いを叶えれば解決するだろう
ヴィクトルしかし…私の世界が分史である限り、突然世界が消える恐れが付きまとう
ルドガー…!時歪の因子か!
ヴィクトルそうだ。私の世界の時歪の因子が破壊されれば、全ては水の泡だ
ヴィクトルだが、私の世界が正史となれば時歪の因子の破壊による世界破壊の心配がなくなる
メルディ時歪の因子の破壊…キールも同じ事心配してた
ヴィクトルああ。分史の人間にとっては、いつ自分の世界が消えるかも知れない
ヴィクトルそれを解決しない限り、平穏な生活は送れない
ルドガーその時、正史…俺達の世界はどうなる?
ヴィクトル推測でしかないが…
ヴィクトル分史と同じ法則になるとすれば、世界の核となる時歪の因子がないため消滅してしまうだろう
ヴィクトルただ、分史とは根本的に世界の造りが異なる
ヴィクトル私の見立てだと…正史世界は、時間をかけてゆっくり溶けるように崩壊していく…
ヴィクトルその間に、お前とエルの力を使えば仲間や家族──大切な人達を別の分史に避難させられるだろう
ルドガー…だが、世界中全ての人を避難させる事は出来ない。違うか?
ヴィクトル…その通りだ。しかし、その事がお前にどんな影響がある?
ヴィクトル身の回りの人間が全て今まで通り一緒にいるのなら元の世界と何が違うんだ?
ルドガー何が違うか、だって…!?大勢の人が犠牲になるんだぞ!
ヴィクトル元々、顔も名前も知らない者達だ。お前の人生と接点もない。心を痛める必要はないだろう
ルドガー本気で言ってるのか…?知らない誰かなら犠牲になっても平気だって…
エルそんなのダメだよ、パパ!
ヴィクトル…普段、私達が笑って過ごしている間にも、世界のどこかで人は死んでいる
ヴィクトル今こうしてる間にもだ。病で、事故で…だが、そんな事知る由もないだろう
ヴィクトル知らなければ平気だ。心が痛む事もない。…それと同じだ
ルドガー同じじゃない…!お前の都合で死を押し付ける事が問題なんだ!
ヴィクトル…それを言うなら、ルドガー。お前もこれまでに分史世界を破壊した事があるだろう
ルドガー…っ!
メルディ…ルドガー…?
ルドガー…ある。だけど好きでそうしたわけじゃない
ヴィクトルつまり、自分や大切な者を守るため仕方がないから、時歪の因子を破壊し分史世界を消したという事だ
ヴィクトル私も同じだよ。大切なエルとの平穏な日常を守るために犠牲は厭わない
ルドガーそれをエルが望まなくてもか?
ヴィクトル…っ!
エル…ルドガーの言う通りだよ。エル、パパの言う事むずかしくてまだよくわかんないけど…
エル誰かをギセイにしたくない!その気持ちは、変わらないよ!
ヴィクトル
ヴィクトル…今はわからなくても構わない。いずれ、理解してくれるさ
メルディそれじゃダメな。エルの気持ち、無視するのよくない!
メルディきちんと話し合わないとお互いに後悔する!
ミクリオ犠牲の上に造られた世界で、何事もなかったかのように平穏に暮らす事は難しいよ
ミクリオ時間は痛みや罪の記憶を薄れさせてくれるけれど…消えるわけでは、決してない
ミクリオ幸せな日常を過ごせば過ごすほど彼女は犠牲になった人々を想い、罪の意識に苛まれるだろう
アッシュそれに、他の分史を破壊した事を指摘してルドガーを黙らせたようだがそれとこれとは話が別だ
アッシュ過去にどんな罪を背負ってようと今、新たな犠牲を出さないように動いている事とは関係ない
アッシュルドガーもだ。理屈ではなく、今自分が何を正しいと思うかを考えろ
ルドガー…そうだな。みんな、ありがとう
ヴィクトル…滅ぶのは正史だけだ。分史に生きる者達には無関係…何故、口を挟む?
ミクリオルドガーは僕の大切な友人を救う手助けをしてくれた。その恩を返したいと思うのは当然だ
メルディメルディも助けてもらった、次は助けたい!
アッシュ俺は国と弟が世話になった。生きる世界が違う程度の事、黙っている理由にはならん
ルドガーみんな…
ヴィクトルふふ…なるほど
ルドガー何がおかしい
ヴィクトル私が道標を集めた時は情など深める余裕はなかった。何しろ急いでいたのでね
ヴィクトル犠牲を出さないなどという甘い考えにもなるわけだ
ヴィクトル私達は同じ存在…話せば考えも通じると思ったがどうやら間違いだったようだ
ルドガー……
ヴィクトル世界が…環境が違えばここまで違うか
ヴィクトル結局、私達はどこまでも相容れないようだ。ここで消えてもらおう
ルドガー待ってくれ、ヴィクトル!今は相容れないかもしれないが、じっくり話し合えばきっと…
ヴィクトル話し合うよりもこの方が早い!
ミクリオ駄目だルドガー!向こうは何か使おうとしてる!
ルドガーあれは…何かの、魔導器か!?
ヴォン
メルディバイバ!
ミクリオこれは、時空の──!?
アッシュくっ…吸い込まれるぞ…!
エルきゃあぁぁっ!
シュン
ルドガーみんな!!!エルまで…!
ヴィクトル殺しはしない。別の場所へ飛ばしただけだ。このように…
ヴォン
エルきゃあっ!
ヴィクトルおっと
ガシッ
ヴィクトル怪我はないかい?
エルパパ…!どうして、こんな事するの…?
ヴィクトルそんなに悲しそうな顔をしないでくれ。全部、エルのためなんだよ
ヴィクトルここは危険だ。パパと一緒に行こう
エル行くってどこに!?ルドガーは!?
ヴィクトル…残念だが、彼らはここまでだ
エルそれって…
ルドガー…!?
グゥルルル…!!
ルドガーなっ…でかい!こんな魔物も呼び出せるのか!?
ヴィクトルこの空間を漂う魂に形を与えただけだ。創造の力を使ってね
ルドガー創造の力…そうか!ここまで襲ってきた魔物もお前の仕業だったのか!
エルパパ、やめてよ!あんな大きいの、ルドガー死んじゃう!
ヴィクトル何、ルドガーなら大丈夫さ。一度は私に勝った実力者だからね
ヴィクトルだが巻き込まれると危ない。エルはこっちに来るんだ
エルパパ、放して…!
エルルドガー…!
ルドガーエル…!
ルドガー待て、ヴィクトル!!
ウガアァァッ!!
ドゴォォォン!
ルドガーくっ…!まずはこいつをどうにかしないと!
scene2仮面の裏側
ズウゥゥン…
ルドガーふぅ…やっと倒れてくれたか
ルドガー今までの魔物のように消滅しない…。気絶しただけなのかもしれないな
ルドガー…みんなは無事だろうか。他の場所に飛ばしただけって言っていたけど…
ルドガー…居場所がわからない以上、合流するのは難しいな
ルドガーただ待つわけにもいかない。合流出来ないなら、奥を目指して進んでくれるはずだ
ルドガーみんなを信じて…今はヴィクトルを追いかけよう
ミクリオここは…
ミクリオみんなとは別の場所に飛ばされてしまったのか…
ミクリオ早く合流しなければ。だが、どっちに──
ズズゥゥゥンッ!!
グオオオォォォッ!!
ミクリオこいつは…!
ミクリオ本で見た事がある。魔界ニブルヘイムに棲むとされるギガントモンスター…!
ミクリオまさか実在したとは…
グァアアッ!
ミクリオ…どうやら、こいつを何とかしないと先に進めないようだな
メルディいたぁ…お尻打ったよー
メルディ…バイバ!あれは…
グァァァァッ!!
グルルゥ…
メルディはぁ、はぁ…上手く隠れられたな。近くに四角いのあって助かったよぅ
グルルルル…
メルディメルディが事、捜してる。ここなら見つからないけど…
メルディ……。道、塞がってる…。何とかしないと進めないな
メルディうーん…大きい魔物、怖いけど…。ルドガーが事、助けて力になるため進まないといけないな
メルディメルディはもう、じっと守られてるだけのお姫様違うから…!
メルディこっちだよ!
ガルル!?
メルディ目を狙って──レイ!
グギャアアアッ!!?
メルディグレイブ!ライトニング!
グゥゥ…ギャオオオォン!!!
メルディそこどいてくれるまで、撃ち続けるよぅ!
アッシュこの景色…外に出されたわけではなさそうだな。目的は分断か…?
アッシュ…!あれは…!
グオオォォッ!
アッシュちっ、面倒そうな奴が出てきやがった
ブオンッ!
アッシュふん、大振りだな
アッシュ悪いが先を急ぐ。すぐに片付けさせてもらう!
グオオォォォッ!
己が信念と共に
ウガアアッ!!!
ルドガーくっ、やっぱりまた動き出した…!
ブンッ!
ガキィッ!
ルドガーくっ…重い…!受け止め…きれない…!
ルドガーこのままじゃ…!
???あと3秒持ちこたえて!
ルドガー…!この声は…!
ロンドリーネはあっ!
ザシュザシュ、ジャキン!
グルァアッ!!
ロンドリーネ思ったより硬いね~!けど、よろけさせたよ!
ルドガーありがとう、助かった!けど、どうしてここに…
ロンドリーネ話はあと!一気にやるよ!
ルドガーああ!!
ルドガー全力で行く!
ロンドリーネ逃がさない!貫け、槍よ!デモンズランスレイン!!
ルドガーうぉぉぉっ!マター・デストラクト!!
グ、グガアァァァ…
ズズウゥゥゥン…!!
バシュウゥゥ──…
ルドガーありがとう、助かったよ
ルドガーもしかして、ダオスと一緒に来たのか?でも、どうやって…
ロンドリーネもう、ダオスと会ったんだね
ロンドリーネ私はダオスとは別で来たんだ。説明すると長くなるんだけど、このデリス・エリュシオンのお蔭なの
ロンドリーネダオスも、デリス・エリュシオンも時空を超える力を持ってるから…
ルドガー時空を…そういう事だったのか
ロンドリーネでも、あまり時間はないんだ。マナはたくさん充填したけど、力をみんなと分け合ってるから…
ルドガーみんな?
ロンドリーネうん。みんな呼ばれてる気がするって途中であちこちに分かれて行っちゃったけどね
ルドガーあちこちに…それって、もしかして──
ミクリオツインフロウ!
バシュゥッ!
グガァァッ!
ミクリオはぁ、はぁ…駄目だ…効いてはいるみたいだけど、この程度じゃ…!
グオォッ!
ミクリオ…っ!しまった、避けられな──
???ルズローシヴ=レレイ!
スレイ・ミクリオ蒼の四連!
バシュ!
グアアッ!!
ミクリオ…!スレイ…と、僕か!?
スレイ間に合ってよかった!
グルルル…
スレイ行こう、ミクリオ!
ミクリオああ…!
ミクリオ水神招来!
ミクリオ流れを見切る!
スレイ・ミクリオ蒼き渦に慙愧せよ!
ミクリオ手は抜かないぞ!そこだ!
スレイ・ミクリオアクアリムス!
ミクリオクリアレスト・ロッド!
ズバァァァァッ!!
ギャアアアアアッ!!
ズズウゥゥゥン…!!
バシュウゥゥ──…
スレイふぅ…
ミクリオお見事。息ぴったりだったね
ミクリオまあね。何度合わせて来た動きかわからない
ミクリオ君達は──正史世界の僕とスレイ…だね
スレイああ。会えて嬉しいよ
ミクリオ僕もだ。…増援が来た…という事はもしかして他にも誰か来てるのか?
ミクリオよくわかったね。僕達と一緒に入ったのは──
メルディ白き御手よ、清冽なる棺に──
グアァァァッ!!
ドゴォッ!
メルディあうっ!!
メルディうぅ…詠唱、間に合わないな…でもアイスニードルとかじゃ全然効かない…
???フリーズランサー!
???サンダーブレード!
グギャアアァァッ!!
メルディえ…
メルディ大丈夫か?
キール助けに来たぞ!
メルディキールに…メルディ!?バイバ!正史世界のメルディか!?
キール話は後だ!この隙に畳みかけるぞ!
メルディはいな!
メルディ・メルディ白き御手よ、清冽なる棺に封じよ
キール死の顎、全てを喰らいて闇へと帰さん
メルディ・メルディアブソリュート!
キールブラッディハウリング!
グギャアアアアァァァッ!!!
ズズウゥゥゥン…!!
バシュウゥゥ──…
メルディワイール!やったな!
メルディはいな!二人共、ありがとな!
キールやはり胸騒ぎは気のせいじゃなかったな…
キール間に合ってよかった。ぼくの計算では、ここにいられる時間は殆ど残っていないはずだ
メルディ時間?すぐ帰っちゃうか?
キールああ。間もなく、ぼく達はここから弾き出されるだろう
メルディ手伝えなくてごめんな
メルディそうか…。残念だけど、仕方ないな。後はメルディ頑張るよ!
キール…頼もしいな。任せたぞ
メルディはいな!
アッシュフンっ!
ザシュッ!
グルルルッ…!
アッシュチッ、硬い上に再生までしやがる。いくら斬っても終わらねぇ
???だったら一撃で倒しゃ問題ねぇな!
アッシュ…!
アッシュフッ、同時に行くぞ。ついて来れるか?
ルークそれはこっちの台詞だぜ!
アッシュ&ルーク魔王絶炎煌!
ドォォォォォン…!
グギャアアアアァァァッ!!!
ズズウゥゥゥン…!!
バシュウゥゥ──…
アッシュフン、手こずらせやがって
アッシュまた借りを作っちまったな、ルーク
ルークアッシュ。また会えるとは思わなかったぜ
アッシュ…お前が来たという事は、キール達が何か方法を見つけたか
アッシュしかし、お前は何故ここに…?知らせを聞いてキムラスカから来たにしては、早すぎるだろう
ルークそれが…何日か前から変な夢を見てよ。すげぇ呼ばれてるような気がしたんだ
ルークいてもたってもいられなくて呼ばれる方にたどって行ったらバロニアに着いたんだよ
ルークそしたら、スレイ達も同じような感じでバロニアに来たって言ってて…
ルークキールが言うには道標がどーたらで負の因子と絆が引き寄せ合って何とかだってよ
アッシュ…何の説明にもなってないな。かろうじて言いたい事は推測出来るが
ルークそんで、ロディの持ってた時空を超える指輪ってやつでここに入って来た
ルークそしたら呼ばれる感じがもっと強くなって、それをたどったらここに着いたんだ
アッシュ…時空を超える指輪。そんな物があるのか
ルークおう。で、その指輪でここに残れる時間が──
ヴォン
ルークっと、悪い。ちょうどここまでみたいだ
アッシュ時間に制限があるのか
ルークそういう事だ
ルーク最後まで戦えねぇのは悔しいけどな。何が起きてんのかはわかんねぇけど、後の事は頼んだぜ!
シュン
アッシュ…フン。言われなくとも
ルドガー──そうか。みんな来てくれてるんだな
ロンドリーネうん。だけど、もう時間がない…
ロンドリーネデリス・エリュシオンのマナがまた空になっちゃった…。ダオスには追いつけなかったな
ルドガーダオス…。彼の目的が何か、ロディは知っているのか?
ロンドリーネ…ううん
ロンドリーネダオスは…あの人は何を考えてるか私にもわからない…
ロンドリーネいつだって、一人で抱え込んじゃうから…
ロンドリーネ侵略者や魔王なんて呼ばれて大戦争になった事もある
ロンドリーネ今も…あの時と同じ胸騒ぎがする…
ルドガー…心配し過ぎだって言いたいけど…
ロンドリーネ本当は自分でダオスを追いたい。でも、出来ない…。だから…
ロンドリーネルドガー、お願い。ダオスが何をしようとしているのか確かめて!
ロンドリーネもし危ない事をしてるようなら止めてほしい。そして、こう伝えて…
ロンドリーネ一人で抱え込まないでって。みんなでなら出来る事だって沢山あるはずだから…
ロンドリーネもしみんなが協力しなくても…私がいるからって
ルドガーロディ…
ロンドリーネそれでも彼が…また魔王と呼ばれるような事をしてしまうのなら──
ヴォン
ルドガー…!時空の裂け目が…!
ロンドリーネお願い、ルドガー。彼を──
ロンドリーネ止めて──
シュン
ルドガーロディ…!
ルドガー…わかった、ロディ。ダオスが何を考えていようと魔王になんてさせない…!
ルドガー…先を急がないと。ヴィクトルを追っていればダオスにも会えるはずだ
scene1最強の骸殻能力者
エルパパ、放して!どうしてルドガーと話してくれないの!
エルおとなのエルもパパを説得してよ!あの樹の後ろにいるんでしょ!?
ヴィクトル静かに。彼女は今、世界の楔を繋ぎ変えようと集中しているんだ
エル…!それって、エル達の分史を正史にしようとしてるってこと!?
ヴィクトル…よくわかったね。正解したご褒美に、この場所について教えてあげよう
エルそんなのいい!
ヴィクトルそう拗ねないでくれ。私から聞いた情報をルドガーに伝えれば助けになるかもしれないぞ
エル…そんな大事な話なの?
ヴィクトルああ。きっとルドガーの助けになる
エル…わかった。聞く
ヴィクトルいい子だ
ヴィクトルまず…ここは正史と分史、全ての世界のマナと魂の循環を管理する場所なんだ
ヴィクトル見てごらん。この満天の星々…美しいだろう?
ヴィクトルあの輝き一つ一つが分史世界なんだ。私達の世界も、あの中にあるんだよ
エル…どれがエル達の世界なの?
ヴィクトルうーん、この中から探すのはさすがに骨が折れるね。何しろ数がとても多いんだ
ヴィクトルいくつあるか、わかるかい?
エルえっと…ひとつ、ふたつ──数えられないよ
ヴィクトルそうだね。正確な数はわからないが…実は手がかりはあるんだ
ヴィクトルほら、あれを見てごらん。大きな樹に機械があって、そこに数字が刻まれてるだろう?
エルうん…いち、じゅう、ひゃく、せん…すごい数だね
ヴィクトルあれは今までに作られた分史世界の数を数えているんだ。破壊された世界も含めてね
エル数えて…どうするの?
ヴィクトル…オリジンの審判は、分史世界が100万個作られると失敗になるとされている
ヴィクトルそのためにあの機械で数えているんだ
ヴィクトルあの数字が100万になる前に、精霊オリジンに審判の達成を認めさせる必要がある
エル…もし、失敗したらどうなるの?
ヴィクトル伝承によると…全ての世界の人間が滅んでしまうんだ
エルみんな死んじゃうの…?
ヴィクトルああ。だけど平気だよ。世界の繋ぎ変えが終わったらオリジンの審判はパパが達成する
ヴィクトルそうすれば審判の失敗によって人間が滅ぼされるという事はなくなるからね
エルじゃあ、早く達成しようよ
ヴィクトルそれは、もう少し後でだ
ヴィクトル先に審判を終わらせてしまうと世界の楔から追い出されるかも知れないからね
???安心したよ。オリジンの審判はまだ達成してないんだな
ヴィクトル…来たか
エルルドガー!
ヴィクトル…想定よりも速い到着だな。一体どんな手を使った?
ルドガー仲間が助けてくれたんだ。少しの時間だけここに入ってくる方法があったらしい
ヴィクトルほう…。だが今はその仲間もいない。一人でどうするつもりだ?
ルドガー一人じゃない。お前に飛ばされたみんながきっと来てくれる!
ヴィクトル…つまりお前は、仲間達を助けに行く事もせず、自分が助けてもらう事だけを考えてここに来たんだな
ルドガー違う…!俺は、みんなを信じて…
ヴィクトル認めたくはないだろう。だが受け入れるがいい
ヴィクトル私はお前を責めたりはしない。私も同じ選択をしてきたのだ。目的のために、仲間を見捨てる選択を
ルドガー見捨てたんじゃない。みんななら、無事にここに来ると信じているだけだ
ヴィクトルそうかも知れないな。だが、もし来なかったらどうする?
ヴィクトル目的のために犠牲を出すとはそういう事だ。私とて犠牲を出したいわけではない
ヴィクトルだが物事には優先順位がある。お前が私を追う事を優先して仲間との合流を諦めたように…
ヴィクトル私は娘と生きる事を優先し、かつては仲間だった者達を殺した。今は正史世界を消そうとしている
ルドガー…他の人の命は優先度が低いと言うのか
ヴィクトル…娘の命よりはずっと低い
ルドガー同じように家族を大切にしている人も世界にはたくさんいるんだ。犠牲にして、心は痛まないのか
ヴィクトル何度もした問答だな。心は痛むが、それを受け入れてでも私は娘との平穏な日常を手に入れる
ヴィクトル自分勝手だと思うなら思うがいい。それでも私は止まらない
エルパパのうそつき!ルドガーと約束してたでしょ!何も犠牲にしない方法を探すって!
ヴィクトル
ルドガーヴィクトル…頼む、もう一度考え直してくれ
ヴィクトル…わかった
エルパパ…!
ヴィクトルでは、今、ここで示してくれ。この世界も、他の世界も何も犠牲にせず世界を守る方法を
ルドガー今ここで…だって?
ヴィクトルああ。今、すぐにだ
ルドガーなっ…
ヴィクトル私だって他の方法を探したいという気持ちはあるんだ。出来る限りの事はしたい
ヴィクトルだが、時間切れだ。道標は揃い、世界の楔への道は拓かれた
ヴィクトル世界の楔を繋ぎ変え、オリジンの審判を達成する計画は今すぐ実行しなければならないのだ
ヴィクトル他の者にオリジンの審判の権利を奪われない内にな
ヴィクトル私はこの機会を逃すつもりはない。止めたいのなら、今すぐに他の方法とやらを示してくれ
ルドガーくっ…!
エルパパ、急すぎるよ…
ヴィクトルではいつまで待てばいい?考える考えると、そんな宣言だけで先延ばしに出来る問題ではないんだ
エルそうかも…しれないけど…
ルドガー…ヴィクトルの方法は間違ってる。どうしても止めなきゃいけないんだ。でも…だけど…代わりの方法は…
ヴィクトル…出ないだろう。私も長い時間をかけて導き出せなかった答えだ
ヴィクトルなんの答えも出せずにただ私の邪魔をするだけならここで退場してもらおう
チャキ
ルドガー待ってくれ…!俺は話し合いたいんだ!
ヴィクトル話し合ったところで私の望む答えは出てこない時間は有限なんだ
ヴィクトル戦いを望まないのならば帰るといい。ここにいる限り、邪魔をする意図があるものと判断する
エルパパ…!やめてよ!どうして…
ヴィクトル殺しはしないさ、エル
エルパパ…!お願い…!
ヴィクトル…危ないから下がっていなさい
エルでも…
ルドガー…エル、ありがとう。だけどヴィクトルの言う通りだ。危ないから、下がっていてくれ
チャキ
エルルドガーまで…!
ルドガー話し合いが出来ないって言うならその気になるまで戦うさ
ルドガー確かに答えは出せていないけど、俺は最後まで諦めない。そう決めたからな
エルルドガー…わかった…けど、二人とも気を付けてね…
ヴィクトルさあ…行くぞ
ルドガー来いっ!
scene2最強の骸殻能力者
ルドガーそこだ!
ヴィクトルはぁっ!
キィン!
ルドガーくっ…!以前よりも攻め込み辛い…!
ヴィクトル一度戦ったんだ。君の動きの癖は理解している
ルドガー…それは俺だって同じだ。だからわかる…!
ルドガーわざと攻撃の機会を逃しているな。守りに徹して、あなたらしくない──
エルあっ…!そっか!
エルルドガー!パパは、時間稼ぎしてる!おとなのエルを捜して!
ルドガー…!時間稼ぎだって…!?
ヴィクトル…気付いたか。だが、もう遅い
ヴィクトル少し時間がかかっているようだが──既に世界の楔を正史世界から切り離す作業は進んでいる
ルドガー…姿が見えないと思ったら大人のエルがそれを進めているのか
ヴィクトルそうだ。そして私は相棒として、お前を彼女のところには行かせない
ヴィクトル私を倒せたとしても…その時には世界の繋ぎ変えは終わっているだろう
ルドガーくっ…本当に手遅れなのか…
???貴様の覚悟はその程度か
ルドガー…!
エルヴィクトル、よけて!
ヴィクトル何!?
ズガアアァンッ!
エルパパ!!
ルドガーダオス…!
エルくぅっ…放してよ!
ヴィクトルエル、繋ぎ変えは…!?
エル…ごめんなさい。もう少しだったんだけど…
ダオス世界の楔を奪おうとするとはな。だが、その計画もここまでだ
選択の刻
ルドガーダオス。その子を放してくれ。ここなら世界の繋ぎ変えは出来ないはずだ
ダオス
ルドガーダオスの目的を聞きたい。話して平和的に解決出来るならその方がいいだろ?
ダオス…いいだろう
エル…ありがとう、ルドガー
エル大丈夫…?
エルうん、私は大丈夫。それより、ヴィクトルは…?
ヴィクトル心配いらない。声をかけてくれたお蔭で致命傷は避けられた
ルドガーみんな無事でよかった
ルドガーダオス。改めて聞く。ここに来た目的は何だ?
ダオスそれを聞いてどうする
ルドガーロディに頼まれたんだ。何をしようとしてるか確かめてほしいって
ダオス
ダオス分史世界に奪われたマナを正史世界に取り戻す。それが私の目的だ
ルドガーヴィクトルが奪ったマナの事か…その事についてなんだが、協力を頼めないか
ルドガーヴィクトルの世界のマナ枯渇問題が解決しない事には返してもらう事も出来ないんだ…
ダオス…そうではない
ダオスヴィクトルと言ったか。お前なら知っているだろう
ダオス分史世界が増える時…その世界に必要なマナは正史世界から奪われる
ダオス…違うか?
ヴィクトル…なるほど。その仮説は当たらずとも遠からずだ
ヴィクトルマナの総量は決まっており全ての世界で共有している
ヴィクトル分史が増えれば、一つあたりの世界がもつマナの量は当然、減る
ヴィクトルそれを正史からマナを奪ったのだと表現する事も出来るだろう
エルマナはみんなのもので、世界が増えたら、みんなで分けた時にもらえる量が減っちゃうって事?
ヴィクトルそういう事だね
ダオス問題はそこだ
ダオス元より分史は存在せず、全てのマナは正史世界にあったはずだ
ダオスだが、分史が増え、正史世界にあるべきだったマナは減っている
ルドガー…それを取り戻すって言うのか?それはつまり…
ダオス…そうだ
ダオス全ての分史世界を破壊し、散り散りになったマナを正史世界に再び集約させる
ルドガー…!
ダオスそのため私はオリジンの審判にて、全ての分史世界の破壊を望む
ヴィクトル不可能だな…オリジンの審判を達成出来るのはクルスニクの一族だけだ
ヴィクトルこれはクルスニク一族とオリジンとの間で交わされた契約…膨大な精霊術のようなものだ
ヴィクトルお前が何者であろうと、オリジンの審判に挑む資格はない
ダオス…問題はない。オリジンに願うのはお前達の誰かだ
ルドガーな…!どういう──
ダオス…従わなければその娘を殺す…と言ったらどうだ?
エルえっ…エルの事!?
ヴィクトル貴様…!
チャキ
ルドガーヴィクトル落ち着け!脅してるだけだ
エルだといいけど…あの目、本気に見えるよ
ヴィクトルああ。それに…話し合いの余地はないと見える
ダオスその通りだ。だが、お前は選ぶ事が出来る
ダオス全ての分史を破壊するか──
ダオスその娘もろとも死ぬかだ
ヴィクトルその前に──
ヴィクトル貴様を止める!
ダオス…愚かな
ダオス力なき存在に第三の選択肢などない
ルドガーやめてくれ、二人共!戦ったって、正史か分史のどちらかが犠牲になるだけだ!
ルドガーそれよりも、正史も分史も残せる道を探そう!力を合わせれば、必ず方法はある!
ダオス…この期に及んで甘い事を
ダオスお前がそうして対話を試みている間に正史世界は滅ぶところだったのだ
ダオスそして何もかもが手遅れになる。何も救えない
ルドガー…俺は、ただ…
ダオスこれ以上邪魔をするなら、お前から消えてもらおう
シュウゥゥ…
エル…!さっきと同じ技!
ヴィクトルお前の相手は私だ!
ドカッ!
ダオス…その力は…
ヴィクトル私はルドガーのように甘くないぞ
ダオスそうらしいな
ヴィクトルルドガー!ダオスと戦うつもりがないならせめてエルを守れ
ルドガー俺は…
ヴィクトル…っ
エル私に任せて!
エル小さいエル、こっちだよ!
エルう、うん…
ダオステトラスペル!
ズドドドッ!
ヴィクトルくらうかっ!舞斑雪!!
ガキィンッ!
ヴィクトル魔力の壁…?こんなもの…!
パリィィン!
ダオスほう…大した力だ。
ダオス分史は正史のマナを奪う。その上、貴様のような者が現れれば正史を乗っ取ろうとする…
ダオスやはり全て消し去る他はないな
ヴィクトル傲慢だな。分史にも生きている人間がいる。正史と何も変わらないんだ
ヴィクトルいずれかの世界しか残れないのなら…私は、私と娘の暮す世界を生き延びさせる!
ダオス笑止!貴様はこの場所から生きて帰さん!
ダオスエクスプロード!
ヴィクトル何人たりとも…私の願いの、邪魔はさせない!!
ドドォォォォン…!!
ヴィクトルはぁ、はぁっ…
ダオスしぶとい奴だ…
ルドガー…この戦い…どちらかが死ぬしか…解決出来ないのか…?
ルドガーダオスとヴィクトル…正史と分史…どうしてどっちかが滅びなくちゃいけないんだ
ルドガーどっちも守りたい何かのために戦っているだけなんだ!それなのに…!
ルドガー二人共、やめてくれ!殺しあう以外にも方法があるはずだ!
ヴィクトルくどい!先程も言ったはずだ。その方法を示せと!
ダオス必要ない。分史の存在は害悪…全て消し去る。それだけだ
ルドガーそれは極論だ!三人で話し合って、互いに譲歩すれば方法だって見つかるかもしれない!
ヴィクトルこの期に及んで「かもしれない」など…
ヴィクトル口ばかりで何も選べずにいる半端者が間に入るな!
ドカッ!!
ルドガーぐわあぁっ!!
ドサッ
エルルドガー!!大丈夫!?
ルドガーくっ…ああ…平気だ…
エル……。一度はヴィクトルに勝ったルドガーとは思えないね
エルどうしてちゃんと戦わないの?もしかして…どっちに味方しようか迷ってるとか?
ルドガー…そうじゃない。俺はどっちのやり方も間違ってると思う…けど…
エル何それ。そんなどっちつかずの半端な気持ちであそこにいたの?
ルドガー俺は、半端…なのか?
ルドガー(確かに俺は…あの二人のように 自分が正しいと思える答えを 出せてはいない…)
ルドガー(何も犠牲にしたくない… あの二人を止めたい… その意志は確かなものだ)
ルドガー(だが…それだけじゃ足りないのか。 俺は…)
エルルドガー…
エルヴィクトルが押されてる…。…ルドガーはここでこの子を守ってて
エルルドガーが戦わないなら、私がヴィクトルに加勢する!
ヴィクトル…!よせ、来るなエル!
ヴィクトルお前に何かあったら世界の繋ぎ変えが出来なくなる!
エルでも…!
エルじゃあ、せめてこれ!
エル受け取って!
ヴィクトルこれは…!
ダオス何を足搔こうと無駄だ。ここで朽ち果てるがいい!!
ダオステトラスペル!
ズドドドッ!
ヴィクトルくっ…!間に合え…!
ダオス……
ダオス…術をかき消したのか何だ、それは
???準備運動にしては激しい術でしたね。いきなり呼び出してこれとは、主は精霊使いが荒い
???俺達を実体化したって事は、全力でやっちまっていいんだな?
ヴィクトルああ。力を抑えて勝てる相手じゃないからな
ルドガーな、何だ…?急に何か出て来たけど…
エルヴィクトルが用意していた最終手段…人造精霊のオリジンとクロノスだよ
エルジンゾーセイレイ?
エル元はジュードが開発した精霊の力を核として動くマナを消費しない魔導器…
エルその技術を応用して分史には存在しない精霊…クロノスとオリジンを作ったんだ
ルドガー原初の精霊を、人の手で作り出したっていうのか…!
エル…未完成、だけどね
ダオス骸殻能力者に精霊か…相手にとって不足はない
人造クロノス余裕ぶっこいていられるのも今の内だ!くらえ、テトラスペル!
ダオス…!テトラスペル!
バシュバシュバシュウ…!
人造オリジンへぇ、相殺とはやりますね
ヴィクトル今が好機…!そこだ!
ダオス甘い!
ガキィン!
人造オリジン動きが止まりましたね!これならどうです!
人造オリジンメテオスウォーム!
ダオス…くっ
ドゴォォォォンッ!
人造オリジンむぅ…あれを避けるとは…
ダオス確かに強力な精霊のようだな。だが戦闘経験が足りていない
人造クロノス減らず口を!
ルドガー…すごい力だ。あれで本当に未完成なのか?
エルうん。本物のオリジンとクロノスの7割ぐらいの力しか出せないはずだよ
エルクロノスはヴィクトル、オリジンは私の力にマナを注ぎ込んで増幅させた存在…
エルけど原初の精霊の力を再現するには私達の世界にあるマナじゃ足りなかったんだ
ルドガーそれでもあの強さか…完成したらどれほど強くなるんだ…
エルそれだけじゃないよ。彼らは本物のクロノスやオリジンと同じように世界の楔の管理が出来る
エル世界の楔を繋ぎ変えた後、今度はここを奪われないように守ってもらうつもりだよ
ルドガー……
エルどうかした?
ルドガーヴィクトルがいかに入念に準備してきたのか…その年月と苦労をひしひしと感じたんだ…
エル…当然でしょ。世界を賭けた計画なんだから
ルドガーダオスだってそうだ。ずっと前から世界のマナの事を気にかけて、調べ続けていた
ルドガー…なのに俺は、何の覚悟もせずその方法を否定していただけなのか…
エル…ルドガー?
エル…何が言いたいの?
ルドガー俺には知識も何もかもが足りない…。ここにいて口を出すべきじゃなかったんだ
エル何言ってるの!ルドガーが止めてくれなきゃ世界がどっちか滅ぶんだよ!
ルドガーそれは…
エル…情けない
ルドガーえ…?
エルそうやってただ悩んでるだけなのが一番情けないよ
エルヴィクトルは悩みながらも行動し続けた。だから人造精霊だって完成した
エルあなたもヴィクトルの分史に来た時は、そうだったんじゃないの?なのに今更、足を止めるわけ?
ルドガー…っ
エル別にヴィクトルの邪魔をしないなら私はそれでいいけど…さすがに見てらんないよ
ルドガー……
エルねぇ、ルドガー。ルドガーの考えは正しいんでしょ?パパは間違ってるんだよね
ルドガーエル…
エルルドガー、自分を信じて。エルは、パパのやり方よりルドガーの考えの方が好きだよ
エルほら、ルドガー。小さい私にここまで言われてもまだ自分は半端で駄目だなんて思う?
ルドガーいや…目が覚めたよ。ありがとう、二人共
ルドガーエルは…俺と同じ気持ちでいてくれるんだよな
エル当たり前でしょ!エルもギセイはない方がいいもん。別の世界とか関係ないし!
ルドガー…そうか、そうだよな。わかったよ、エル。俺、大事な事を見逃してたみたいだ
エルえっ、なに?
ルドガーロディが言ってたんだ。一人で抱え込まないようにって。みんなでなら出来る事もあるって
ルドガーこれはダオスに向けられた言葉だったけど…
ルドガー何もダオスだけの話じゃない…ヴィクトルだってエルがいるから世界の楔を繋ぎ変えられる
ルドガー俺には同じ気持ちで寄り添ってくれる相棒がいるから…挫けてしまっても、立ち上がれる!
エルルドガー…もしかして、パパと戦うの?
ルドガー違うよ。思いついたんだ。あの二人を納得させられる方法を
エル本当!?
エルこんな土壇場で閃いた案なんて検証も出来ないでしょ
エル今すぐ確実な解決を求めるヴィクトルが受け入れるとは思えないけど
ルドガー思いつきじゃない。気付いたんだ
ルドガー俺達はもう、その答えを実践していた事に
エル…どういうこと?
ルドガー俺達は分史世界でいろんな事件に出会ってきた…
ルドガーミクリオの分史世界ではスレイを救う方法が何百年も見つからずにいた…
ルドガーメルディの分史世界では、長く続く外交摩擦から戦争が起ころうとしていた…
ルドガーアッシュの分史世界では、何年もすれ違っていた兄弟がついに命の取り合いを始めていた…
ルドガーだけどその事件は全部、別の世界から来た俺達──
ルドガーライフィセットや、リチャード、エル、ファラ、ルークやミュウが彼らと出会った事で状況が変わった
ルドガー本来接するはずのなかった人達が協力し合う事で、解決に導けたんだ
エル道標集めに時間かかってると思ったら負の因子を破壊するだけじゃなく周りの事まで解決してたんだ…
エル私達の時は急いでたからそんな余裕もなかった…
エル負の因子は見つけ次第破壊して、道標は全てヴィクトルが回収…すぐに帰る…の繰り返しだった
ルドガーそうか…。だからヴィクトルは気付けなかったのかもしれないな
ルドガーその世界だけでは解決できない問題も他の世界と手を取り合えば、道が拓けるという事に
エルそっか。一人で出来ない事は、誰かにお願いすればいいんだ
ルドガーそうだ。何かを犠牲にする必要なんてない。もし他の方法を思いつかなくても…
ルドガーどこかの世界にはきっと、いい方法を知ってる人がいる
エルでも、他の世界から知恵を借りても元の世界に戻るためには分史世界を破壊する必要があるでしょ
エルやっぱり、たくさんの分史世界が犠牲になるよ
ルドガー…それについては考えがある。オリジンの審判だ
エル審判…?
エル…あ、そうか!オリジンが願いを叶えてくれれば…!
ルドガーああ!これが、俺の出した──何も犠牲にしない方法の答えだ
ルドガーヴィクトルとダオスに伝えたい!二人共、戦いを止めるのを手伝ってくれるか
エルうん、わかった!
エル任せて!
ガキィンッ!
ダオス…こしゃくな
人造クロノスそっちこそ。あんた本当に人間か?俺達三人がかりでようやく対等だぜ…
人造オリジン長期戦なら数の多いこちらが有利です
ヴィクトルああ、だが…
ダオス…それが狙いか。ならば残念だったな
ダオスこれで終わりにしよう
シュオオオ…
人造オリジン…!とてつもない量のマナが凝縮されていく…!
人造クロノスあんなの喰らったらひとたまりもないぞ
ヴィクトルくっ…!
ルドガー待ってくれ!!
エル戦うの、やめて!
エルヴィクトルも、そこまで!
ヴィクトルなっ…!
ダオス…そこをどけ。死にたいか
ルドガー今撃てば、ここにいるクルスニク一族は全滅する。オリジンの審判が超えられないぞ!
ダオス
ヴィクトルお前達、何のつもりだ!
エル正史も分史も、何も犠牲にしない答えを見つけたの!
エルだからパパも、ダオスも、戦うのやめてー!
ダオス…まだそんな戯言を言っているのか
ルドガーダオス、頼む。戦うのはこの話を聞いてからでも遅くはないはずだ
ルドガーダオスだって、多くの犠牲を望んでいるわけじゃないだろ!?
ダオス
エルパパも、お願い…!
ヴィクトル
ヴィクトルわかった。一時休戦だ、話を聞こう
ダオス…言ってみろ。甘い主張を繰り返すなら滅ぼすのみだ
ルドガーありがとう、二人共
ルドガー全てを解決する方法、俺の出した答えは…
ルドガー全ての分史と正史で力を合わせ、あらゆる問題を解決していく事
ルドガーそのためにオリジンに願って全ての世界を繋ぎ、自由に行き来できるようにするんだ
ヴィクトル何…!?
ダオスそれで何が変わるというのだ
ルドガー何もかも変わる。自分達以外にも文明を持った世界が沢山あるとみんなが知るんだ
ルドガー自分達の世界では手に余る問題も、他の知識や経験が解決してくれる。俺はそんな場面をいくつも見てきた
ルドガー例えばヴィクトルの分史世界はマナの消費を抑える技術に長けているだろう?
ヴィクトル当然だ、私の世界にとってマナの枯渇は存亡を賭けた重大な問題だったからな
ルドガーその技術を他の世界に伝えれば全ての分史で共有しているマナを大きく節約出来るはずだ
ルドガー…その代わり、マナが豊富な世界からマナを必要としている世界に少しずつわけてもらうんだ
ダオス…全ての世界で消費するマナが減れば正史のマナが不足する事もなくなる…私の故郷を救う事にも繋がる…か
ヴィクトルそのためにオリジンの審判の願いで骸殻能力の有無に関係なく世界を行き来できるようにするのか
ヴィクトルそうなれば分史世界を破壊しなくても元の世界に帰る事も出来る…。確かに犠牲は出ないな
ルドガーああ。多くの世界に聞いてみればいいんだ。想像もつかない解決策が出るはずだ
ヴィクトル…理想論だな。問題点も多い
ヴィクトルだが…私とダオスの抱える問題は、同時に解決するか。確実とは言えないが…
人造オリジン…主。僭越ながら申し上げます。私達は世界の楔を管理する事を使命として創り出されました
人造オリジン同じ管理するのであれば…彼の言う世界を管理したく存じます
人造クロノス同じく。どうせ見守るなら、そっちの方が楽しそうだ
人造クロノス人が行き来するとか、世界の管理は尋常じゃないほど大変になるだろうけどな
ヴィクトル…私も同じ気持ちだ。だが、気持ちだけで決めていい問題ではない
ヴィクトルルドガー。現実的な問題として、歴史も立場も違う別世界の人々が手を取り合う事が出来ると思うか?
ルドガーああ、出来る
ダオス即答、か…
ルドガーミクリオ、メルディ、アッシュ…彼らは今、この世界のために力を貸してくれている
ルドガーそれに彼らの分史にあった問題も正史の知識や経験が解決への糸口になった
ヴィクトル…確かに彼らは、その恩返しとして今度はお前を助けるのだと言っていたな
ダオス…なるほど。手を取り合う事は出来るのだろう
ダオスだが…それが永久に続く保証などどこにもない
ダオスいずれ必ず争いは起こる。同じ平和を望む世界の中ですら意見がわかれるのだ
ルドガー確かにそうだ。お互い譲れないものがあって衝突する事はあるだろう
ルドガー今のダオスと、ヴィクトルのように…
ヴィクトル
ルドガーでも、それは意見の衝突であって修復不可能な分断ではないはずだ
ルドガーミクリオの分史では天族と人間が争っていたけれど、今はお互いを受け入れて平和に暮らしている…
ルドガーメルディの分史ではメルディと母親のシゼルは国を守る方法で衝突したけど憎み合ってはいなかった
ルドガーアッシュの分史でも、敵対勢力の主張も一つの意見としてアレクセイを受け入れ、許した
ルドガー…俺は知っている。人間は、話せばわかり合えるって事
ダオス…貴様の主張は理解した
ルドガーよかった…!それじゃあ、これで解決だな!
ダオス……
scene1絆を束ねて
ルドガーみんなが賛成してくれてよかった。それじゃあ、早速──
ダオス賛成?私は理解したと言っただけだ
ダオス貴様の言う方法は有効だろう。だが…分史世界を全て破壊する方がより確実だ
ルドガーなっ…!
ダオス人間は話し合える…確かにそういう者もいるだろう
ダオスだが、全ての世界の全ての者が貴様達のように善意に満ちた人間だとでも?
ダオス人を痛めつける事に悦びを覚える者もいる
ダオス自らの危険すら省みず世界を滅ぼすほどの兵器で戦争を行う者もいる
ダオスその仮面の男のように、自らの目的のためなら、他の世界を犠牲にする者も現れるだろう
ヴィクトル……
ダオス貴様の方法で起こる事はマナの譲り合いではない
ダオスいずれマナの奪い合いが始まり──やがて戦争による世界の奪い合いへと発展するだろう
ルドガーそれは、可能性の話だ!
ダオス全ての分史を破壊すればその可能性の芽を摘める
ルドガーそれは、手を取り合ってよりよい世界になる可能性をも捨てるって事だぞ!
ダオス何の問題がある
ダオス私はデリス・カーラーンを救いたい。そのために正史にマナを取り戻す。それだけだ
ヴィクトル…それだけが目的だと言うのなら口を挟まず見ているといい
ダオス何…?
ヴィクトル私達が全ての世界を繋ぎ、正史にも十分なマナが戻るよう取り計らおう
エルエルも手伝う!
エル勿論、私も!
ヴィクトル今まで誰も辿り着けなかった世界の楔への道を拓いた四人だ。何だって成し遂げられる
ルドガー…!それじゃあ…
ヴィクトルありがとう、ルドガー。私には考え付かない手法だ
ヴィクトル都合がいいように聞こえるだろうが、私にも手伝わせてほしい
ルドガーああ!
ダオス……。貴様もその夢物語を信じるというのか
ヴィクトル夢物語などではない。私達が現実にする
ダオス…そうか
ダオス…これ以上の対話は無意味だ。先も言った通り、私はより確実な方法を取る
ダオス貴様ら四人なら何でも出来ると言ったな。ではまず、私を倒してみせろ
ダオスそれが出来なければ、貴様らを屈服させ、分史世界の滅亡を願わせるのみ!
シュウウゥゥ…
人造オリジン…!またです!とてつもないマナの量が…!
ダオス消し炭にならんよう身を守るのだな
ダオスダオスレーザー──!!
バシュウウゥッ!!!
エルえっ──
エルまずいっ!避けられない…!
ルドガーくっ…!
ヴィクトル離れてろ!
ドカドカッ
エルあうっ!
ルドガーくっ…!ヴィクトル…!?
ヴィクトルエル───!!
ヴィクトルぐっ…うおおぉぉぉぉっ…!!
エルパパ────
ドォォォォォォン──!
ヴィクトルぐ、おおおぉぉっ!!!
ヴィクトル…エル、怪我は…ないか…
エルエルは大丈夫。でも、パパは…
ヴィクトルよかっ──
ヴィクトル──た…
ドサッ
エルパパっ!!
エルヴィクトル!!
人造オリジン主…!まずい──
人造クロノス魔導器が、止ま──
シュン
ルドガー人造精霊が消えた!?ヴィクトル!!
エル大丈夫、気絶してるだけ。でも…しばらく目を覚まさないかも…
エルパパ…
ダオス…これが現実だ。手を取り合うといっても、結局は対等ではない
ダオス助け合う事を理想としようとも、その能力には差がある
ダオス強者は足を引っ張られ血を流し、弱者はいつしか与えられる事に慣れ、傲慢になって行くものだ
ダオスそして…見ろ。その男は戦えず、人造精霊とやらも消えてしまった
ダオス力を合わせるなどとぬかしたところで超えられぬ限界はある。貴様らが私に勝てぬようにな
ルドガー…だったら乗り越えてやる。その限界を…!
ダオスこの期に及んでまだ現実が受け入れられぬと見える
ダオス貴様らだけで私に勝てると本気で思っているのか
ルドガーくっ…
エル次にあの技がまた来たら、今度は防ぎきれない…。勝ち目ないかも…
エルルドガー……
ルドガー…何か打開策は…
ルドガー…!あそこに見えるのは…
エルルドガー?
ルドガー…大丈夫だ
ルドガー俺達にはまだ、仲間がいる
エルえっ…?
ダオス…そろそろ幕引きだ
シュウウゥゥ…
エルまたあの技…!
ルドガーくっ…!
ルドガー手を貸してくれ──みんな!
ダオス…む
???──天光満つるところ、我は在り
エルえ、この声──
???黄泉の門、開くところに汝在り
ダオス何…!それは──
メルディ出でよ、神の雷!
メルディインディグネイション!
ドゴォォォォンッ!!
ダオスくっ…!
ミクリオルドガー!無事か!?
アッシュどうやら間に合ったようだな
エルみんな!
メルディ大丈夫か!?
アッシュヴィクトルは…倒れてやがるのか
ミクリオそして、魔王ダオス…彼は敵だったんだな。一体、どういう状況なんだ
ルドガー話すと長くなるんだが…今は戦わないと収まらない状況だ
ルドガーダオスを止めないと全ての分史世界が破壊されてしまう!
アッシュなるほど。緊急事態だという事はよくわかった
ミクリオ僕達の世界はやっと平和になったんだ。消させるわけにはいかない!
メルディキールやおカーサン…他の世界がみんなも、メルディが守る!
ダオス…何人増えようと同じだ。まとめてかかってくるがいい
ダオス理想だけでは覆せぬ絶望という名の現実を貴様達の魂に刻んでくれる!
ルドガー…エル、二人でヴィクトルを連れて安全な場所へ
エルうん!
エルわかった…!
ルドガー来い、ダオス!お前の言う限界を、超えてみせる!
scene2絆を束ねて
ルドガーはぁっ!
ガキィンッ!
ダオスここまでやるとはな…
ダオスだが…私とて、諦めるわけにはいかんのだ!
ドカッ!
ルドガーくぅっ…!
アッシュちっ…隙のない奴だ
ミクリオ四人で攻めても全く引かないとはね
メルディ強い術、たくさん使ってるのに威力ずっと下がらない…!どれだけ魔力あるか!
ダオス…そろそろ終わりにしよう。ブラックホ──
人造クロノスタイムストップ!
ダオス何っ──!
ルドガー人造クロノス!?
エルルドガー!今だよ!
エルいつの間に…!?
ルドガーエル…!わかった!みんな、行こう!
ダオス──!
ミクリオヴァイオレットハイ!!
アッシュ閃光墜刃牙!!
メルディインディグネイション!!
エル逃れられぬ運命に、抗う術なく果てろ!ブラッドカスケードッ!!
ルドガーうぉぉぉっ!マター・デストラクト!!
人造クロノス──時間だ
ダオスぐあああぁぁぁぁっ!!!
ダオスくっ…私が、このような子どもに後れを取るとは…
ルドガーこれが力を合わせるって事だ。一人一人では小さい力でも重なりあえば大きな力になる
ルドガーお前はエルの事を弱者だと言った。でも俺達は、エルの力があったから今のこの結果を生み出したんだ
ダオスふっ…偶然上手く行ったからと大きく出たものだ
ルドガー偶然じゃない。エルはいつだって俺に力をくれる存在だ
ルドガーそれが手を取り合う仲間──相棒だからな
エルえっへん!
エルふふ、いい事言うね、ルドガー
ルドガーダオス。認めてくれないか。確かに争う事もあるかもしれないけどそれ以上に助け合う事は強い力になる
ルドガーそれから、ロディからの言伝もあるんだ。一人で背負い込まないでって
ダオス
ダオス…好きにしろ
ルドガーわかった。なら──
ダオス…何だ、この手は
ルドガー俺達と一緒にこれからの世界の事を考えてほしいんだ
ルドガーダオスが懸念してた事ももっともだと思うし…その対策を考えたい
ダオス…何を言うかと思えば。どこまでも甘いな
アッシュふっ、敵を受け入れる覚悟が甘いだけの男に出来るはずがない。ルドガーを見くびるなよ
メルディそれ、ルドガーがいいところな!
ミクリオ世界の平和を望む者同士、方法論は違ってもいがみ合う必要はないからね
ダオス…ふん。その甘い考えで他の世界と渡り合えるとでも──
グラッ
エルん?なんか、揺れてる!?
グラグラッズゴゴゴゴ…
エルわわっ!?
ヴィクトルうぅ…これは…
エルヴィクトル!気が付いたの!?
ヴィクトルあぁ…寝ている場合ではない…どうやら…まずい事になったようだ
scene1明日へ
ゴゴゴゴゴゴ──
ルドガー一体何が起ころうとしているんだ!?
???世界の楔が崩壊を始めたのだ
クロノスそして全ての世界が滅ぶ
ルドガークロノス!?
人造クロノス本物…か。今頃出て来たのかよ
クロノス我は初めからここにいた。審判を見届けるのも我の使命だ
クロノスだが、それどころではなくなった
アッシュ世界が滅ぶと言ったな。どういう意味だ?
クロノス言葉の通りだ
クロノスそこにいるクルスニクの鍵が世界の楔を正史から別の分史へと繋ぎ変えようとしていただろう
エルえ、うん…。ダオスの横やりが入ったから、中断されちゃったけど…
クロノス世界の楔は今、どの世界とも繋がりを持たぬ不安定な状態にある
クロノスそこにお前達の戦いだ。この空間を保つ力は乱れ、形を保てなくなっているのだ
クロノスこのまま世界の楔が崩壊すればマナと魂の循環が行われなくなり全ての世界は滅びに向かう
メルディバイバ!一大事だよぅ!
ミクリオあなたの力でどうにか出来ないのか?
クロノス本来ならば我とオリジンの力で世界の楔を再生出来る
クロノスだが…今、我々は世界の楔に干渉出来ないようにされている
人造精霊クロノス俺達が権限を奪ったんだ。途中であんたらに干渉されたら世界の繋ぎ変えなんて出来ねえからな
ヴィクトルそれが裏目に出たか…
エル私がもう一度、世界を戻す!ヴィクトル、小さいエル、魔導器を貸して!
ヴィクトルエル、頼む…!
エルわ、わかった!はい…!
エルオリジン!
人造オリジン…状況は、聞いていました。クロノス、世界の楔の修復作業を行いましょう
人造クロノスああ。時間がねぇ。大樹のところまで急ぐぜ
ルドガー俺達も行こう。何か出来る事があるかもしれない
ミクリオああ。任せきりというわけにいかないからね
アッシュ何か手伝える事もあるだろう
メルディみんなで力合わせればきっと大丈夫な!
エルパパとダオスも行こう!
ヴィクトル私は勿論行くが…
ダオス…ここで待っていても無意味だ。行くぞ
エル……
人造クロノス……
人造オリジン……
メルディ上手く行きそうか?
エル……
ヴィクトル今は見守る他ない…
エル集中、してるんだよね…
ヴィクトルああ。私達に出来る事は何も──
ゴゴゴゴゴ…!!
ガサッ──
ミクリオ…!まずい、大樹の枝が落ち──!
ヴィクトル・ルドガーはぁっ!
ザシュッ
エルすご…息ぴったり。コッパミジン!
ヴィクトル…今出来る事は、こうして集中出来るように身を守ってやる事ぐらいだ
クロノス…その程度では無意味だ
ルドガークロノス…!どういう事だ?
クロノスこの地の中心であり最も堅牢な大樹が崩壊を始めた…
クロノスこのままでは間に合わぬ。だが…
クロノス間に合わせる方法はある。…そこの精霊達にもわかっているはずだ
人造オリジン…ええ。私達が調整すれば今の三倍は速く進められます
人造クロノス…十倍だ
人造オリジンクロノス…
人造クロノスここで嘘を言っても仕方ねぇだろ。間に合わせるのに必要な速度は十倍だ
アッシュだったら、何故そうしない
人造クロノス…それは…
クロノスこの期に及んで決断出来んか。所詮は人に作られた存在…劣化複製よ
ミクリオ…何か出来ない理由があるのか
人造オリジン……
クロノス我が答えてやろう。速度を速めればクルスニクの鍵に負荷がかかる
クロノス人の身で耐えられる負荷ではない。そいつは間違いなく死ぬだろう
エルそんな…!
ルドガー他に方法はないのか!?せっかく…誰も犠牲にしない世界が実現しそうなのに…
ダオス…結局、そのような世界はなかったという事だ
ダオスその娘を犠牲にするか、その娘を生かすために全世界を犠牲にするか…
ダオスもっとも…世界を犠牲にすれば我々やその娘も共に滅びる事になる。迷う余地はない
ヴィクトル……
エル…いいよ
ヴィクトルエル…!しかし…
エルヴィクトルらしくないなぁ。小さい私との平穏な暮らしのためにどんな犠牲でも受け入れて来たでしょ
ヴィクトルそう…だが…
エルねぇ、ヴィクトル。私、ヴィクトルがいなかったら自分の世界でとっくに死んでたんだよ
エルだけどヴィクトルに助けられて…一緒に旅をしたり、たくさん友達が出来たりした…
エルこれって、すっごく贅沢な事だよね
ヴィクトル何言ってるんだ。まだ、これからだって…
エルううん。ヴィクトル…もう、十分だよ
エルとっくに失っていたはずの命…この命でヴィクトルと小さい私が幸せに暮らせるなら、すごく嬉しい
エルねぇ、小さい私。私がパパと出来なかった事…たくさんしてもらうんだよ
エルエル…おとなのエルも一緒じゃないと、やだよ!
エル……ありがと
エル私の分も、あなたが幸せになって。そして…私よりも長生きして…綺麗なお姉さんになるんだよ
エルそんな…
エル…ヴィクトル
エル私をアイボーにしてくれて、ありがとう
ヴィクトルエル…!!
エルオリジン、クロノス。お願い
人造オリジン…その覚悟、見届けました
人造クロノス行くぞ…!
エルうあっ…ああああぁぁぁっ…!
人造クロノスよし…これならいける!
人造オリジン必ずやりとげましょう。彼女の犠牲を無駄にしないために
エルうぅぅっ…ぐぅ…っ!あああっ…!!
ルドガー…くっ、見てられない
メルディすごく苦しそうな…
エル……
ダッ
ルドガーエル!?何を…
エルエルも、一緒にやる!エルも、クルスニクの鍵だもん!手伝えるよ!
エルおとなのエルの苦しいの、エルと半分こすれば助かるかもでしょ!?
エルぐぅぅぅっ…!無茶だよ、小さい、私…っ!下手したら、あなたまで…!
エルいいから…!
エルううぅっ…!
ヴィクトル…ルドガー。私達も力を貸すぞ
ルドガーヴィクトル…?
ヴィクトル私達はそれぞれの相棒のエルを介して時計と契約し、クルスニクの鍵の力と繋がっている
ヴィクトルならば逆に、私達の力をクルスニクの鍵へと貸す事も出来るはずだ!
ルドガーそうか…!よし!
ミクリオ…僕達も何か出来ないか?
人造オリジン…可能なら、僕達にマナを分けてください!
人造クロノス四人に負担を分散するには俺達に力が必要なんだ!
ミクリオわかった!任せてくれ!
アッシュその程度なら俺にも出来る
メルディメルディがマナ、全部使っていいよぅ!
ゴゴゴゴゴ……!!!
エルううぅぅぅっ…!
ヴィクトルここまでしてまだダメなのか…!
人造オリジン僕達に出せる速度はこれが限界…
人造クロノス悪い、俺が手間取ってる。時空が乱れて安定しねぇ
ルドガー諦めるな!最後まで希望を捨てるな!!
ダオス…ふん。希望とやらで解決すれば苦労はすまい
ルドガーダオス…!
ダオス……
人造クロノス…!新たなマナが流れ込んでくる…
ヴィクトル手伝ってくれるのか
ダオス…デリス・カーラーンの存在する正史が崩壊するのは私にとっても不都合だ
エルこれなら、間に合いそう…!
エルはぁ、はぁ…
ルドガーエル、大丈夫か!?
エルうん…!もうちょっとだもん。頑張る…!
人造クロノス仕上げに入るぞ!
人造オリジン堪えどころです。どうか、無事でいてください…!
エルうぐっ、うううっ…!あああああっ…!
エルうああああぁぁぁぁぁっ…!!!
ルドガーはぁ、はぁ……どうなったんだ…?
ヴィクトル揺れが止まった。という事は…
クロノス…確認した。世界の楔は正史に繋がっている
クロノス世界の崩壊は免れた
ルドガーそうか…!
エルよかったぁ…!
ヴィクトル上手く行ったか。やったな、エル──
ヴィクトル…エル?
エル……
エル…おとなのエル…?どうしちゃったの?
エルねぇ、目を開けて?起きてよ!
ヴィクトルエル…!
ルドガーまさか…!
ダオス人造精霊の姿がない…使用者が力尽きたか
メルディそんな…
アッシュ負荷は分散されていたはずだ。それでもまだ耐えられなかったのか…
ミクリオ分散したといっても主体となって力を使う彼女にやはり負荷が集中したのかも知れない
ヴィクトルエル…!目を覚ましてくれ…!
ヴィクトル頼む…
エル……
エル…うぅ…
エルあっ…!
エル…ヴィクトル…?何、泣きそうな声出してんの…
エル…あはは…おかしい…
ヴィクトルエル…!
ルドガーよかった…!
エルみんなのお蔭で、何とかね…
エルありがとう、みんな
メルディワイール!よかったな!
アッシュ上手くいったか…
ミクリオ無事で何よりだ。気休め程度だけど、僕が治癒術で体力を戻そう
ダオス……
ダオス我が故郷を守るためとはいえ私は貴様らに力を貸し、結果として難局を乗り越えた…
ダオス立場も目的も違う者同士が争い合ったとしても、最後には力を合わせる…
ダオス貴様の提唱するその甘言を私自らが体現したという事か
ルドガー…ああ。手を貸してくれてありがとう
ダオス……
ダオス…貴様のやり方で正史世界にマナが戻るのならば異存はない。後は好きにするがいい
ダオスだが、無理だと判断した時は私はまた貴様の前に現れる。胆に銘じておく事だ…
ルドガー……
エルあれ?ダオス、帰っちゃったの?
ルドガーああ。…彼の期待を裏切らないようにしないとな
ヴィクトルさて、改めてこれからの事だが…提唱者であり正史の存在であるルドガーに進めてもらいたい
エルまずは、オリジンの審判だね
クロノス…審判はとっくに達成されている。願いを叶える者が決まったのならオリジンにそれを伝えよ
ルドガーオリジン…?どこにいるんだ?
エルあの大きな樹の中だよ!ね、パパ!
ヴィクトルああ。伝承ではそう言われている
クロノスオリジンはあの中で魂の浄化と循環を行っている
クロノス姿を見せる事は出来ないが声は聞こえているはずだ
ルドガーわかった
ルドガー俺の願いは…全ての世界を正史に繋げ、自由に移動出来るようにしてほしい!
オリジンの声…ルドガーと言ったかな
ルドガー…!
エル樹の中から声がする!
オリジンの声今の願い…そのままでは叶えられない
ルドガーなっ…どうして…!?願いに条件があるのか!?
オリジンの声条件はない。どんな願いでも叶えるよ
オリジンの声ただ…願いは一つだけだ
ミクリオ…なるほど。世界を繋げる事と、行き来を自由にするのは、別の願いという事か
メルディどっちか片方しか出来ないか?
エルでも、片方だけだったら意味ないよね…どうしよう
ヴィクトル…迷う必要はない。ルドガー、こう願え
ヴィクトル全ての世界を維持したまま時歪の因子を消してくれ…と
ルドガー時歪の因子を…?
ヴィクトル時歪の因子がなくなれば分史世界は破壊される心配がなくなる
ヴィクトルその上で、世界と世界が時空の歪みによって繋がっている形は変わらない
ヴィクトルそれならば人造精霊クロノスの力を用いれば、自由な行き来が可能になるだろう
ヴィクトル人造クロノスの力なら、意図的に時空の裂け目を作り出す事も可能なはずだ
エルそれなら骸殻能力者は自由に移動出来るね!
エルそれに人造オリジンなら、クルスニクの鍵の力を再現して他の人や物を移動させる事も出来るよ
ミクリオ限定的ではあるけど、ルドガーのやりたかった事は始められそうだね
アッシュ誰が人造精霊を呼びだすのかは慎重に検討する必要がありそうだな。課題は山積みだ
メルディメルディが世界のキール、骸殻に代わって世界を移動する方法研究しはじめてるよぅ
メルディそれ完成したらもっと自由になるな!
ルドガーそうか…。みんなで力を合わせればこの事も何とかなりそうだな
ルドガーそしてそのためには、まず全ての世界を対等にしないと始まらない
ルドガーよし、決めた──
ルドガーオリジン。俺の願いは、「全ての世界を維持したまま、 時歪の因子を消滅させる」だ!
オリジンの声その願いなら問題ないね
クロノス…待て。確かに願いは問題ない。しかし…
クロノス人間の都合による分史世界間の自由移動は認められない
ヴィクトル何だと…!
クロノス分史世界間の移動は我の管轄だ。貴様らクルスニクの一族は特別に認めていただけにすぎない
クロノス我の領域に人間風情が勝手をするなど…
オリジンの声それは残念だな…
オリジンの声オリジンの審判が終了すれば骸殻能力から因子化という制約は消え分史は今後、増えなくなる…
オリジンの声だけどルドガーの願いを叶えると分史が減る事もなくなるよね
オリジンの声世界中で生じる負の感情やそこから発生する瘴気はこれまで通り…ずっと減りはしない
オリジンの声でもルドガー達なら…他の世界の負の感情や瘴気を徐々に減らしてくれるかもしれない
オリジンの声そして瘴気の量がこの大樹で浄化出来る範囲に収まれば…
クロノス…回りくどい言い方をするな
クロノス要は、この者達の考え通りになるよう時空の移動を黙認しろと言いたいのだろう
オリジンの声そうは言ってないよ。時空に関してはクロノスの管轄だ。君に任せるよ
クロノス…まったく。仕方あるまい
ルドガー…!それじゃあ…!
クロノス…我は時空間の移動を監視している。何か不用意な行動を起こした人間は世界ごと消す事も辞さぬ
クロノスその事をゆめゆめ忘れぬようにな
ルドガー勿論だ!
ルドガーそんな事にならないように、考えていくよ。世界中のみんなで
オリジンの声…話はまとまったね。それでは──
オリジンの声君の願い、聞き届けよう
ルドガー…これは…
エル星が見えなくなっちゃった…
ヴィクトルあの星は一つ一つが分史世界だったはずだ。…一体、どうなったんだ…?
オリジンの声安心して。消えたわけじゃない。一つになったんだ
オリジンの声この正史世界と…
ヴィクトルそうか…元より、空を見上げても自分達の住む星は見えない
ヴィクトルもはや全ての世界は手の届かぬ空の星ではなく地続きの身近なものになったのか
エルあれだけの星が一つに…改めて考えると滅茶苦茶な事してるよね
ルドガーでも、誰も犠牲になっていない丸く収まって大団円…これ以上はないだろ?
ヴィクトル終わりじゃない、始まりだこれからが大変だぞ
ルドガーああ。まずは俺達の力でいろいろな世界と協力関係を結んでいかないとな
メルディ戻ったら、キールにもここであった事、伝えるよぅ!
ミクリオまずは自分達の世界への説明と説得だね。そこから輪を広げていこう
アッシュああ。反発もあるだろうが、話し合えばわかりあえる…。親善大使の腕の見せどころだ
ルドガーそれじゃあ、一度解散だな。それぞれの世界の様子も気になるだろう
ヴィクトルエルは…ルドガーと一緒に行くんだろう?
エル…うん。ルドガー、これから大変だと思うしエルはアイボーだから
エルそれに…世界が繋がったんだから、パパにはいつでも会えるもん!…だよね?
ヴィクトルああ、そうだな…冒険を頑張れ、応援してるよ
エルまた寂しそうな顔して。ヴィクトルには相棒の私がいるでしょ
エル私だってこれからも、相棒と一緒にどこまでも行くよ
ヴィクトルそうか…ありがとう、エル。これからもよろしくな
ルドガー…それじゃ、まずはみんなを分史世界に帰さなくちゃいけないな
メルディそういえばどうやって帰るか?
ヴィクトル私が送り届けよう。正史に集めた時と同じく、人造精霊の力を使えば出来るはずだ
ミクリオあの現象も人造精霊の力だったのか。…あとでその原理について是非聞かせてくれないか
アッシュ俺も聞きたい。マナを消費しない魔導器の技術はきっと欲しがる世界が多いだろう
ヴィクトル勿論だ。私の世界に戻ったら、資料をまとめて必要とする世界に渡せるようにしよう
ルドガー…こうして、全部の世界がよくなっていくのか。ワクワクするな
エルうん!これから、頑張ろうね!
クロノス手を取り合う、か…。いつまで持つか見物だな
オリジンの声相変わらずだね、クロノスは
クロノス人間がどれだけ愚かな生き物か、一番よく知っているのはお前だろう
クロノス奴らの負の感情がどれだけお前を苦しめていると思うんだ
オリジンの声…わかってる。でも、人間は時に僕達の予想を超えた奇跡を起こす事もある
オリジンの声彼らの絆を信じる気持ちが僕の審判をも乗り越えたんだ
オリジンの声僕はその力を信じてみたいと思うよ
クロノス……
クロノス奇跡か。人間に期待はしていないが…お前がそこまで言うんだ
クロノス我も見届けてやるとしよう…
scene2明日へ
トンテンカンテン…
エルここがミクリオの世界なんだ。あちこちからトントン聞こえて音楽みたいだね
ルドガーみんなが復興を頑張ってる音だ。心なしか希望に満ちているように聞こえるな
ライフィセット僕達が飛ばされた世界に、まさかまた来る事が出来るなんて…
ルドガーみんなが分史に帰る時に約束したんだ。きっとまた会いに行くって
ルドガー世界が一つになった事を四大国に説明したりで忙しくて随分と時間が空いてしまったけど…
ライフィセット僕も初めて聞いた時は驚いたよ。でも意外と世間は落ち着いて受け入れてたね
ルドガーああ。これまでにも天啓や晶化現象、アヴァロン島といろんな事件があったからな
ルドガー不思議な現象もすぐ受け入れてくれたんだと思う
ルドガー四大国の重鎮達も、平和のために必要な事として前向きに捉えてくれたよ
???来てくれたんだね
エルあっ!
ミクリオやあ、久しぶり
スレイ会えて嬉しいよ!改めてお礼をしたいと思ってたんだ
ライフィセットそんな…あれは負の因子が憑りついたせいだし気にしないでよ
エル…あれ?ミクリオ、あそこにあるのってもしかして魔導器…?
ミクリオああ。マティス式魔導器だよ
エルパパが使ってたやつ…!でも、どうしてここに?
ミクリオヴィクトルからもらった資料で作り出したんだ
ミクリオ資材の加工に使ったり、医療や生活にも大いに役立っている
ミクリオマナを消費しないから天族からも評判がいいんだ
エルエルの世界のギジュツが…なんか、嬉しい!
ライフィセットルドガーの言ってた全ての世界で手を取り合うって話、早速成果が出てるね!
ルドガーああ。これで復興が効率的に進めば成功例として他の世界にも説明しやすくなる
スレイ復興は勿論だけど、この魔導器を使えばこれからの生活が一変しそうだ
ミクリオまるで歴史書で見る、文明の転換期のようだね
ルドガー…これから、いろんな世界でそういう転換期を迎える事になるんだ
ルドガー上手く行く事ばかりではないと思う。そういう時は歴史に詳しいミクリオ達の知恵を借りに来るよ
ミクリオああ。いつでも来てくれ
ライフィセット僕も来ていいかな?天族と人間の付き合い方を学んで他の世界に伝えたりしたいんだ
ミクリオ勿論。ライフィセットも、いつでも歓迎するよ
スレイこれからは他の世界の人達や天族とも交流していきたいと思ってるんだ
スレイいつか正史にも行くから、その時は案内をお願いしてもいいかな
ライフィセットうん、わかった。こっちも、いつでも歓迎するよ
ファラわぁ…綺麗!
リチャード本当に綺麗だね。…しかし、この花畑は魔導器の実験で枯れ果てたと言っていなかったかい?
???それはな。メルディお願いして、キールに戻してもらったんだよぅ!
エルあっ、メルディ!久しぶりー!
メルディみんな!元気してたか?
ファラうん!メルディも元気そうでよかった
キール…やあ
ルドガーキール。すごいな。確か何年も命の芽生えない土地になったって聞いてたのに…
キールああ。それが新発見でね。別の世界の同じ場所の土を混ぜると生命力が戻る事がわかったんだ
キールヴィクトルが別の世界で見つけた方法だと言って教えてくれたよ
ルドガーヴィクトルはこの世界の事も手伝ってるのか
エルパパがみんなと仲良くしてくれて嬉しい!
ルドガー同じ場所の土を使う…その方法ってもしかして同一存在同士で影響し合っているって事か?
ルドガー負の因子が正史の同一存在に影響を与えていたように…
キールまだ詳しい原理は不明だが、関連性はあると睨んでる
キール…他の世界でも魔導器の濫用で土地が枯れたり疫病が流行るような被害が出ているかもしれない
キールヴィクトルがマティス式魔導器を広めれば今後はなくなるだろうけど、これまでに出た被害はそのままだ
キールその被害を少しでも元に戻せるよう今後も研究を続けて行こうと思うよ
ルドガーそれが出来ればすごいよ
キール罪滅ぼしにもならないけどな…それにメルディの方がすごい事をしてる
ファラメルディが?何をしたの?
キール四大国協定を成立させたんだ。今、この世界には大きな争いもない。これは偉業だと思う
メルディんー?大した事してないな。最初にみんな仲よくしようってメルディが言っただけ!
リチャードそれで実際に世界を動かしたんだ。本当にすごいよ
ファラうんうん、メルディはすごい!とっても立派だよ!
メルディ何だか照れくさいよぅ…
メルディけど、これはルドガーがお蔭。反対されても話し合えばわかるって信じたからだよ
ルドガー俺はメルディに教えてもらった事だ。だから、お互い様だな
メルディそれから、リチャードやアッシュと手紙やり取りしてて国同士の話し方、教えてもらったな
リチャード僕も大した事はしていないよ。だけど役に立てたのならよかった
キール僕もメルディも、他の分史世界には随分助けてもらっているし、早く恩返しをしたいと思ってる
キール完成まではまだかかるけど、多くの人や物資を乗せて分史間を移動する船を開発中だ
ファラ船?海に出るの?
キール本当の船じゃない。時空間を航行する乗り物を便宜上そう呼んでいるんだ
メルディキール、今度はみんなが喜ぶもの、作れるな!
キールま、まあな…
メルディ船出来たら、他の世界と貿易できる!リチャード、その時はアッシュと貿易協定が話するよ!
リチャードわかった。その日が来る事を心待ちにしているよ
ルーク…ったく。何でこんな森の中で密会しなきゃなんねぇんだよ
ルドガー…はは、仕方ないさ。俺達、この世界では逃亡した犯罪者なんだから
ミュウミュウはこの森、好きですの。故郷の森に似ていて何だか落ち着くですの
???この森にはチーグル族が住んでいるから、それでだろうな
エルあっ!アッシュ来た!ルークも!
アッシュ待たせたな
ルーク仕方ないとはいえ、もてなせなくて悪いな
ルークいや、まあいいけどよ…元気でやってんのか?
ルークそうだな、お蔭様で…キムラスカの王位継承者として対外的に認められたよ
ルークおー、やるじゃねえか!さすがこの世界の俺!
ルークあと、今は親善大使としてチーグル族との共存関係を築こうとしているんだ
エルチーグル族って、ミュウの仲間の事だよね?
ミュウはいですの!
ルドガーそれでこの森を待ち合わせ場所にしたのか?
アッシュああ。ミュウと接しているところを見せ警戒心を解く狙いもある
アッシュルークが考えたんだ。こいつにしては珍しく交渉事の要領を掴んでやがる
ルーク俺だって成長してんだ。ぼやぼやしてっと追い抜くからな
アッシュふん。外交も剣も、まだまだお前に後れは取らねぇ
ルークあんな事言われてんぞ。絶対見返してやれよ
ルーク当然だ。剣だって、今度の──
ルークああ、そうだ!今度「全世界闘技会」を開くんだ。お前達も参加してみないか?
ルドガー全世界…という事はもしかして他の分史や正史から…
ルークそうだ。交流を持てた各世界にはすでに案内を送っている
ルークそこでなら例の件の犯人ではなく別世界の俺として堂々と迎え入れられるはずだ
ルークなるほど、悪くねぇな。他に誰が参加するんだ?
アッシュまだ募集を始めたばかりだが…既にいくつかの世界から参加表明があった
アッシュガイアスというア・ジュールの王とアーストという名の剣士──
ルドガーその二人って…!
アッシュ知っている名か?
ルドガーああ、まぁ…
ルドガー(違う世界の同一人物だよな…。 偶然の一致かも知れないけど…)
ルドガー俺の知ってるその人は、とても強い剣士だ。きっと強敵だぞ
アッシュそうか。面白い大会になりそうで何よりだ
ルークよーし、俺は参加するぜ!全世界の中で最強は誰か教えてやる!
ルドガー俺は遠慮しておくよ。その代わり、試合は必ず応援しに行く
エルエルも試合見に行く!
ルークわかった。大規模な大会だから試合は数日に渡って行う予定だ
ルーク試合日程はまた連絡する。よかったら俺達の試合の時も応援しに来てくれ
ルドガー勿論だ
ルークおーし、そうと決まれば試合の日まで特訓だ!ミュウ、お前も手伝えよ!
ミュウはいですの!
ルドガー…闘技大会という形の交流か…。やっぱり世界が違うといろんな可能性を見られていいな
エルついたー!パパ、ただいまー!
人造オリジンおかえりなさい
エル…家間違えた!?
人造クロノス間違ってないが。というかこの辺り他に家はねえぞ
ユリウスこれが話に聞いた人造精霊か…
人造オリジンルドガーさんのお兄さんですね。はじめまして、オリジンと申します
ユリウスあ…これはご丁寧に。ユリウス・ウィル・クルスニクです
ルドガー兄さんが畏まってる…
ユリウス…人造とはいえオリジン相手…なのに腰の低い話し方をするから距離感を掴み損ねた
エルあ、もう来ちゃったの?ごめん、お出迎え出来なくて
エルおとなのエルだ!向こうからいい匂いするし、ご飯作ってたの?
エルそうだよ。ヴィクトルと一緒に腕によりをかけて作ってるとこ
エルやったー!パパのご飯だ!
エルちょっと!私とクロノスも手伝ってるんだからね
ユリウスまさか…クロノスが料理を…?
エルそう。調理時間を正確に測ってくれる優秀な料理人なんだよ
エルみんな手伝ってるの!?エルも手伝うー!
ルドガー俺も手伝うよ。ヴィクトルの技術を盗ませてもらいたいからな
人造オリジンお待ちください。あなたは調理場に入れないように言われています
人造オリジン10年かけて、この味に辿り着け…との事です
ルドガー手厳しいな…
ユリウスこう言われてしまったら修行あるのみだな、ルドガー
ルドガー兄さんは俺に料理させたいだけだろう?別に構わないけど…
人造オリジンそういうわけですから、お二人は席におかけになってお待ちください
ルドガーわかった
エルいっただきまーす!
ヴィクトル熱いから気を付けて
エルうん!ふー、ふーっ!
ルドガー…これは美味いな
ヴィクトル今日は君達が来るからいつもより気合いが入ってしまってね
人造クロノス煮込み時間も完璧なはずだ
エルそれに、この世界にマナが戻ってきたお蔭かトマトがすごく新鮮なの
ユリウス…そうか。マナは回復しつつあるんだな
ヴィクトルああ。魔導器の技術提供の代わりに多くの世界からマナを少しずつ分けてもらったんだ
ヴィクトル負の因子を使って無理やりマナを奪った世界にも借りた分を返し終わったよ
ヴィクトル勿論、正史世界にもね
ルドガーこれで全部元通り…いや、この世界にとっては環境がよくなったと思っていいのかな
ヴィクトルああ。未完成だった人造精霊もこれだけマナがあればいずれ完成させられるだろう
人造クロノスとはいえ、本来の使命である世界の楔の管理は必要なくなってしまったがな
ルドガーそうか。世界の楔の繋ぎ変えは結局してないもんな
人造オリジン今の私達の使命は世界間をつなぐ流通手段の研究開発をしているんです
人造クロノスああ。人や物を任意の世界に安全に転移させるんだ
エルメルディの世界でもそんな研究してるって言ってたよね
人造オリジンええ。その世界のキールとは意見を交換しながら研究を進めているんです
エルじゃあ、パパも研究してるの?
ヴィクトルいや。研究は人造精霊に任せている。私はいろんな世界を巡る旅をしているんだ
ヴィクトルそしてその世界に問題があれば解決する。ルドガーのようにね
エル前はそんな余裕なかったけど今回はちゃんとその世界の人達と向き合いながら旅してるんだよ
ユリウス…いい心がけじゃないか。ルドガーらしいよ
ヴィクトル別世界とはいえ兄さんにそう言われると照れるな…
ヴィクトル…私にとっては贖罪の旅も兼ねているんだ
ヴィクトル世界の状況が落ち着いてエルが私の元に帰ってくるまではこの旅を続けようと思っている
エルいいなー…エルもショクザイの旅したい!美味しい食べ物探すの!
ルドガーショクザイ違いだぞ、それは…
エルあながち間違いでもないかも。いろんな世界のご飯を食べてヴィクトルは料理の腕を上げてるし
エルへー、そうなんだ!いろんな世界のごはん食べてみたいな!
エル…あっ、そうだ!友達をよんでパーティーする約束!パパ、覚えてる?
ヴィクトル勿論だよ。…今なら他の世界の友達もみんな呼べるな
エルうん!たくさんお友達呼んでパーティーしよ!
ヴィクトル…わかった。今度集まる時は盛大にやろう
エルやったー!みんなに招待状書かなくちゃ!
ユリウスエルの交友範囲は正史世界だけでもかなり広いだろう。これは大人数になりそうだな
ルドガーいいのか、そんなに安請け合いして
ヴィクトル安請け合いなんかじゃないさ。エルが世話になっている友達だ。最高のおもてなしをさせてもらうよ
キールん?分史巡りから帰ってきたのか?
リタ久々じゃない。さっきまでロディも来てたのよ。あんた達にお礼を言いたがってたわ
ルドガーロディか…お礼が言いたいのはこっちだ。世界の楔で助けてもらって以来だしな
リタまた来ると思うわよ。この研究施設の設備を使ってマナを異星に送りたいって言ってたし
ルドガー異星…ダオスの故郷だな。正史にマナが戻った今ならそれも可能なのか?
リタ理論上はね。マナを送り込むための装置の開発にはしばらくかかりそうだわ
ルドガーそうか。それでも解決に向かってるようでよかったよ
エルキールとリタは、ここでその装置を作ってるの?
リタあたしはそうよ。キールは別の研究をしてるみたいだけど
キール…本当はぼくも別の世界を旅してみたいんだが、研究員達からどうしても必要だと言われてね
キールだけどお蔭で、ヴィクトルから聞いた別世界を座標として捉える仕組みがようやく形になりそうだよ
エル別世界を…ザヒョー…?それって何?
リタ簡単に言うと、全部の世界に行ける地図が作れるようになるの
リタここにメルディの世界があってその近くにアッシュの世界が…とかね
エルへー、すごい!
キールメルディの世界のぼくが開発している、時空を移動する船の航路を決めるのにも使えるはずだ
ルドガー本当に、力を合わせる事で問題がどんどん解決していくな
キールああ。何かに行き詰っても他の世界ではとっくに解決済の問題だったりする…
キール研究の進展の速さはこれまでの比じゃない
ルドガーそうか…。これからもっと世界を旅して交流の輪を広げていくよ
ルドガーさぁ、エル。今度はどこの世界に行こうか
エルどこでもついて行くよ!だってアイボーだもん!
エルだけど…ちょっとだけ心配
ルドガーうん?何だ?
エルルドガーにもそろそろ落ち着いてもらわないとこの世界のエルが生まれないよね
ルドガーえっ…!そ、それは…!
ルドガー…善処するよ
エルうん。そしたら今度はエルが、おとなのエルとしていろいろ教えてあげるんだ!
エル楽しみだなー
エルその時、世界はどんな風になってるのかなー