| Name | Dialogue |
| | マナと異変 |
| エル | ルドガー!バロニアについたよ! |
| エル | キールにみてもらって、メガネのおじさんのこと、思い出せるといいね |
| ルドガー | メガネの──? |
| エル | また忘れちゃったんだ…ルドガーのお兄さんだよ |
| ルドガー | 忘れるって、何の…ああ、いや、そうか… |
| ルドガー | 俺は誰かを忘れてるんだったな…。異変でルークを認識出来なくなった時みたいだ |
| ルドガー | 俺にも異変が起きてると考えて、キールに会いに来たって事はわかってるんだが… |
| ルドガー | 何を認識出来なくなっているのか、エルに指摘されても次の瞬間には頭から消えているんだ |
| エル | 前はエルが言ったら少しは思い出してたのに… |
| ルドガー | 不安にさせて、ごめん。きっと何とかして解決するから |
| エル | 大丈夫!それまで、エルがルドガーの代わりにちゃんと覚えててあげる! |
| ルドガー | ありがとう。エルがいてくれて本当に助かるよ |
| エル | えへへ、頼りになるアイボーでしょ! |
| エル | でも、ほんとにルドガーは負の因子の影響でそうなってるのかな? |
| ルドガー | エルは違うと思うのか? |
| エル | だって、スレイやキールみたいな黒いモヤ、ルドガーには出てないよ? |
| ルドガー | …確かに。それも、キールに調べてもらえばはっきりするはずだ。行こう |
| エル | うん…なにかわかりますように…! |
| | |
| エル | すごー!ケンキューシセツってこんなに立派なんだ! |
| ルドガー | 四大国の有識者が集まってどんどん大規模になって行ったと聞いていたけど、ここまでとは… |
| エル | これなら、きっとすぐにルドガーも治してもらえちゃうね! |
| ルドガー | はは、そうだといいな── |
| | |
| ??? | いい加減にして!! |
| ルドガー | な、何だ?聞いた事ある声だった気がするけど… |
| エル | あっちだよ!行ってみよう! |
| | |
| リタ | 魔導器に罪はないわよ! |
| ダオス | 危険な物に違いあるまい。愚かな目的で使われる科学など存在する必要はない |
| ロンドリーネ | まぁまぁ、二人共。話が逸れてるから… |
| ルドガー | 言い争ってるのは、リタとダオス!?それにロディ!? |
| エル | ケンカしてる!ルドガー、とめよう |
| ルドガー | ああ。ロディも困ってるみたいだしな |
| ルドガー | ロディ! |
| ロンドリーネ | ルドガー!いいところに、二人を止めるの手伝って |
| ルドガー | ああ。何があったんだ? |
| ロンドリーネ | えーっと、どこから説明すればいいかな… |
| リタ | 説明も何もないわよ!この二人、いきなり来て魔導器を愚かだって言うのよ |
| ルドガー | 魔導器…確かに俺もあまりいい思い出はないけどどうしてまた? |
| ダオス | 私はくだらぬ言い争いをしに来たわけではない |
| リタ | くだらないとは何よ!そっちが言い出したんでしょ! |
| エル | ケンカはやめて!エルとルドガーが話聞くから |
| リタ | 別に、これ以上話す事なんてないわ |
| ダオス | ならば仕方あるまい。この研究施設ごと── |
| ロンドリーネ | 待って、ダオス!ちゃんと話し合おう |
| ダオス | …… |
| ロンドリーネ | えっと…、説明するね。私達は、今世界中で起きてるマナの減少について調べてるの |
| ルドガー | マナの減少?そんな事が起きてるのか? |
| ロンドリーネ | うん。前に会った時もそうだったけど私達はダオスの故郷を救うためにマナについて調べてたの |
| ロンドリーネ | あちこち旅しながら調べたんだけどダオスの故郷を救うにはこの世界のマナだけじゃ足りないらしいんだ |
| ダオス | …かつてデリス・カーラーンからこの星を調べた時と比べ、明らかにマナが減っている |
| ダオス | その原因の一つは、魔導兵器──特にかつての戦争で使われた魔導器だ |
| ダオス | ディセンダーによる世界の再生とマナの晶化現象の解決で少しは元に戻ったようだが… |
| ダオス | また急激にマナが減少し始めている |
| ロンドリーネ | しかも同時期に、魔導器を兵器として使ったウィンドルに大きな研究施設が出来た |
| ルドガー | それで、また魔導器が兵器として使われてるんじゃないかと調べに来たって事か |
| リタ | 何よ。要はマナの減少の原因を知りたいの?だったら最初からそう言いなさいよ |
| リタ | 来るなり魔導器を諸悪の根源だ、愚かだとか言うからケンカ売りに来たのかと思ったわ |
| ロンドリーネ | ごめん。ダオス、ちょっと言い方キツくてさ… |
| ダオス | マナの減少について何か知っているようだな? |
| リタ | ええ。マナの減少については、あたし達も最近気付いて調べてたのよ |
| リタ | 調査報告書を見せるわ |
| ダオス | …こちらで調べたものと一致する |
| リタ | このマナの減り方が魔導器の影響に近い事は認めるわ。大精霊が暴走した時とも一部一致する |
| ルドガー | そんなに!? |
| エル | 大精霊のボーソーって、イニル街も凍っちゃって大変だった時だよね? |
| リタ | そうよ。でも、大規模な魔導器が使われたなら特有のマナの揺らぎも観測されるはず |
| リタ | あたし達の調査では、それは一切観測されなかった。だから原因は魔導器じゃないわ |
| ダオス | …そのようだな |
| ロンドリーネ | 魔導器のせいだって決めつけちゃってごめんね |
| リタ | わかってくれれば、それでいいわ |
| ルドガー | しかしマナの大量減少か…。そんな事まで起こってたなんて… |
| リタ | 実際、その影響で世界各地で地震や集中豪雨が起こってる…憂慮すべき事態だわ |
| ルドガー | えっ、あの異変は、負の因子の影響じゃないのか?俺はてっきり… |
| リタ | 問題はそこよ |
| リタ | 確かに負の因子の影響が観測された場所に天変地異が集中している |
| リタ | ここから導き出される仮説… |
| ルドガー | …!まさか、負の因子がマナの減少にも関係している!? |
| リタ | そういう事。まだ原理まではわかってないけど調査結果は明確な関連性を示してるわ |
| ロンドリーネ | ごめん、ちょっと話について行けてないんだけど負の因子って何? |
| リタ | それはルドガーから話してくれた方が早いわね。あたしは話に聞いただけだし |
| ルドガー | ああ。わかった |
| ロンドリーネ | そんな事が起こってたんだ… |
| ダオス | マナの減少、負の因子、分史世界… |
| ダオス | …… |
| ダオス | …収穫はあった |
| ロンドリーネ | えっ?ダオス、どこ行くの? |
| ダオス | 確かめたい事がある |
| ロンドリーネ | ちょ、ちょっと待って!じゃあみんな、またね! |
| エル | 行っちゃった… |
| リタ | 一人で納得してたけど、何だったのかしら… |
| ルドガー | ロディも大変だな… |
| リタ | さて、問題がひとつ解決したところで次はルドガーの番ね |
| リタ | 兄のユリウスの事が思い出せないんだったわよね |
| ルドガー | ああ。そうらしいんだ |
| リタ | らしいって事は、もう兄がいた記憶すら残ってないようね |
| リタ | キールのところに行きましょう。こっちよ |
| | |
| キール | よく来たな。手紙をもらった時は驚いたが… |
| キール | …こうして見る限り、いつもと変わらないように見えるな |
| キール | ぼくの時は立っていられなくなったが体調に問題はないか? |
| ルドガー | ああ…。今はただ、何かを忘れてるという感覚があるだけだ… |
| エル | 前はエルが言ったら思い出してたんだよ。でも最近はぜんぜんダメ… |
| キール | 進行しているという事か… |
| リタ | 負の因子の影響を受けているならマナの流れに特徴が出るはずよね。あたしが見てみるわ |
| キール | 助かる |
| エル | 負の因子のエイキョウを受けてる人がわかるようになったの? |
| キール | ああ。ぼくやスレイ、ルークを調べたところ僅かだがマナの流れに不自然な揺らぎがあった |
| キール | ルドガーに負の因子が今まさに憑りついているなら、それが顕著に出るはずなんだ |
| リタ | …で、そのマナの流れだけど… |
| ルドガー | …どうだった? |
| リタ | これまでの調査結果と一致する、負の因子の影響だと思われる反応を示してるけど… |
| リタ | こんな反応見た事ないわ。未知の現象よ |
| キール | 普通の負の因子とは違うという事か? |
| リタ | もう少し調べてみるから、ちょっと待って |
| リタ | この反応…マナの流れ…ルドガーの傍にあるマナから減少してる…? |
| キール | 何だって…!これは…負の因子がマナを吸収しているのか…!? |
| リタ | 詳しく調べてみないと何とも言えないわね… |
| ルドガー | よくわからないけど、負の因子なんだよな? |
| リタ | ええ。それは間違いないわ |
| ルドガー | …… |
| ルドガー | エル、時計を触らせてくれないか |
| エル | うん |
| ルドガー | みんな、念のため近くのものに掴まっていてくれ |
| キール | ルドガー?まさか… |
| ルドガー | …… |
| ルドガー | …何も起きないな。時空の裂け目が開く条件は揃ってるのに |
| ルドガー | これまでも、エルの時計に触れる機会はあったんだ。だけど何も起こらなかった |
| キール | つまり、負の因子とは似て非なるもの…という事か? |
| リタ | …いいえ。確かに負の因子の影響よ。ただ、その働きが大きく抑制されているみたい |
| リタ | 魔導器の術式でね |
| キール | 何かわかったのか? |
| リタ | ええ。マナの流れをずっとたどってみたら、見た事もない術式が仕込まれていたわ |
| リタ | おそらくこれは魔導器の術式。でも見た事もない、新しい型よ。つまり… |
| キール | 分史世界の魔導器か! |
| エル | ねぇ、エルわかんない。どういうこと? |
| キール | 分史世界には、負の因子の影響を制御出来る高度な魔導器があるという事だ |
| キール | その力で影響が抑制されているからルドガーの異変は、他の人と比べて進行が緩やかなんだろう |
| リタ | この術式を応用すれば異変を少しは抑えられるかも。とんだ拾いものだわ── |
| | |
| リタ | ──って、えっ、ちょっと待って!何これ!? |
| ルドガー | どうした!? |
| | |
| リタ | 術式が解かれていくわ! |
| キール | 一体、何が起こっているんだ! |
| リタ | ルドガー、時計を放して!負の因子の影響が、一気に── |
| | ヒュンッ |
| ルドガー | 時空の裂け目が…! |
| エル | あっ…わあぁっ!! |
| ルドガー | しまった…!エル!! |
| リタ | これが時空の裂け目…!あたし達も追うわよ! |
| ルドガー | ああ! |
| キール | 待ってくれ!ぼくとリタは、ここに残ろう |
| リタ | どうしてよ!早くしないとエルが危ないじゃない! |
| キール | ルドガーに任せるんだ。ぼく達には…特にリタにはこの世界でやるべき事がある |
| ルドガー | …そうだな。さっきの術式ってやつで異変が抑えられるかもしれないんだろ? |
| ルドガー | リタとキールはその研究を進めてこの世界を守ってくれ。エルは、俺が助ける! |
| リタ | …わかったわ。絶対エルと一緒に無事で戻ってきなさい! |
| ルドガー | ああ!必ず二人で戻るよ |
| | |
| | シュンッ |
| | |
| リタ | …閉じたわね |
| キール | ああ。心配ない、ルドガーならきっと大丈夫だ |
| リタ | 別に心配してないわ。そんな暇なんてないもの |
| リタ | さぁ、忙しくなるわよ。まずはさっき見た術式を書き出して解析と計算から始めないと |
| キール | ぼくは研究者みんなに伝えて意見を聞いて来る。この研究、必ず成功させないとな |
| | 双つの世界 |
| ルドガー | ここは…バロニアか? |
| ルドガー | そうだ、まずはエルを捜さないと…! |
| ルドガー | おーい!エル!聞こえたら返事をしてくれ! |
| | |
| エル | あっ、ルドガー! |
| ルドガー | エル!近くにいてよかった…! |
| エル | エル、待ってたんだよ! |
| ルドガー | 無事でよかった。怪我してないか? |
| エル | うん、平気!ここ、別の世界なんだよね? |
| ルドガー | ああ、そうだ。負の因子を持つ俺がいる分史世界…兄さんの事を思い出すためにも── |
| エル | あっ!ルドガー、メガネのおじさんのこと、ちゃんと覚えてる! |
| ルドガー | うん?そういえば… |
| ルドガー | ルークも分史に移動してから認識出来なくなる事はなかったし、分史では異変が収まるのか…? |
| エル | とにかくよかったね! |
| ルドガー | ああ。…思い出せるようになると不思議だな |
| ルドガー | 兄さんの事を完全に忘れてしまうなんて想像も出来ない… |
| エル | だよね。だからエル、びっくりしたし |
| ルドガー | …とはいってもまだ解決したわけじゃないか |
| ルドガー | この世界の俺を捜し出さないとな。手始めにこの辺りを調べたいところだけど… |
| ルドガー | この世界のバロニアは知っているようで知らない街だ。俺達の世界とは街並みが違う |
| エル | そう?エルは見覚えあるけど |
| ルドガー | 一見同じように見えても分史世界によって微妙に違うってエルも知ってるだろ? |
| ルドガー | 例えばあそこの喫茶店は、同じ建物だけど正史ではパン屋だった |
| エル | でもパン屋さんになる前は喫茶店だった?エル、喫茶店のこと、覚えてるし |
| ルドガー | いや…あのパン屋は28代続くワンダーパン職人の店でかなりの老舗だったはずだ |
| エル | でもエル、あの喫茶店見たことあるよ! |
| ルドガー | 別の店と間違えてないか?例えば、そこの角を曲がった先にも喫茶店があるから… |
| エル | …雑貨店 |
| ルドガー | えっ? |
| エル | この先を曲がったら雑貨店がある…と思う。正史世界では、喫茶店のところ |
| ルドガー | …確かめてみようか |
| エル | うん |
| | |
| エル | ほら、雑貨店! |
| ルドガー | …!本当だ… |
| ルドガー | どうしてエルは初めて来た分史世界の街並みを知っているんだ…? |
| エル | わかんないけど…ここのお店にはねよくパパと一緒に買い物に来たんだ |
| エル | おもちゃを買ってもらったりしたからよく覚えてるよ! |
| ルドガー | 俺が道を間違えてるのか…?でも似たような場所は他にないはずだし… |
| エル | パパはここで食器とか買ってたの!エルのお気に入りのお皿もあるよ。こっちに── |
| | ドンッ |
| エル | あっ! |
| ??? | おっと、すまない |
| エル | ううん、だいじょう── |
| | |
| エル | ……えっ? |
| ルドガー | エル?どうした? |
| エル | パ…パ…? |
| ルドガー | …パパ…? |
| | |
| ??? | エル…!エルじゃないか |
| エル | パパ!パパだ!! |
| ??? | エル…どうしてここへ…!? |
| エル | パパこそ、どこ行ってたの!?エル、ずっと待ってたんだよ! |
| ルドガー | エル。ちょっと待ってくれ。この人は、分史の人だ。だから── |
| ??? | 失礼だが、あなたは…? |
| ルドガー | あ、えっと、ルドガーと言います。どう説明すればいいのか… |
| エル | ルドガーは、エルのアイボーだよ! |
| エル | ルドガー、こっちはエルのパパ! |
| ルドガー | あ、ああ… |
| ??? | ルドガー君と言ったか…娘が世話になったようだね |
| ルドガー | いえ… |
| ルドガー | (この人がエルの父親… あの仮面は…素性を隠す必要が あるという事か…?) |
| ??? | エルも、寂しい思いをさせて悪かった |
| ??? | でも大丈夫、パパはちゃんとここにいるよ |
| エル | パパ… |
| ??? | エル、今までよく頑張ったな |
| エル | パパぁ…!ぐすっ、うわ…うわあぁんっ!! |
| エル | パパぁ、パパぁっ…!!うわああぁぁんっ!! |
| ルドガー | (…分史の別人にしては 話が嚙み合っている。 ただの偶然か…?) |
| ルドガー | (それに、エルはこの街の景色を 覚えていた…。 もしかして、エルは…) |
| ルドガー | (…もう少し話を聞いてみた方が よさそうだな) |
| ??? | …事情を聞きたいという顔だね |
| ルドガー | はい。少し、話してもいいですか? |
| ??? | 君から見れば私は娘を長期間放っておいた父親…聞きたい事があるのは当然だ |
| ??? | 私も、これまでの事を聞きたい。すぐそこに喫茶店があるんだ。そこで話そうか |
| ルドガー | はい |
| | |
| 店員 | いらっしゃいませ。メニューをどうぞ |
| ルドガー | ありがとう。エル、先に── |
| エル | エルはミラクルイチゴチョコパフェ! |
| エルの父 | エルはいつもそれだな。私はコーヒーを。ルドガー君は決まったかい? |
| ルドガー | あっ、同じもので… |
| 店員 | かしこまりました |
| ルドガー | (メニューも見ずに注文するなんて この店に来た事がなきゃ 出来ないな…) |
| ルドガー | (エルは本当にこの世界の…) |
| エルの父 | ルドガー君には、本当に世話になったようだね |
| エルの父 | 世話になった恩人に、仮面の無礼を許してほしい |
| エルの父 | ある戦いで、顔に傷を負ってしまってね |
| ルドガー | そんな、気にしないでください |
| エルの父 | エルは、迷惑をかけたりはしていなかっただろうか? |
| ルドガー | エルはとてもいい子でしたよ。いつも前向きで頑張り屋で助けられた事も多いです |
| エル | そうだよ!エルはルドガーのアイボーなんだから! |
| エルの父 | エルは、誰とでもすぐ仲よくなれるね。ママに似たんだな |
| エル | うん!もちろん、パパにも似てるよ!しっかり者なところとか |
| エルの父 | はは、そうだと嬉しいな |
| ルドガー | …こうしてると、二人が親子なんだなってよくわかります |
| エル | だって親子だもん!こんなところでグーゼン会えるぐらい強いキズナで結ばれてるんだよ! |
| エルの父 | 絆か…そうかも知れないね |
| エルの父 | やっと帰宅の目処がたったからエルを迎えに行く前に買い出しに来ていたんだ |
| ルドガー | そうだったんですね。そこにちょうど俺達が来たのか…すごい偶然だ |
| エルの父 | …ところで、今日帰るとは伝えていなかったのにどうしてここに来たんだい? |
| エル | あ、そうだった。エル達、ルドガーに起こった異変を解決しに来たんだよね! |
| ルドガー | …… |
| エル | ルドガー?どうしたの? |
| ルドガー | エル、ちょっと考えたんだけど、せっかくお父さんと出会えたんだ。二人でゆっくり過ごしたらどうだ? |
| エル | えっ?それはもちろんそうしたいけど…いいの? |
| エルの父 | 私としてはありがたい申し出だが…君はその間、どうするんだい? |
| ルドガー | 俺は少し調べたい事があって…街の外にも出るかもしれません |
| エルの父 | なるほど。街の外は危険も多いからね |
| エル | そのぐらい、エル平気だよ。それにルドガー、一人で寂しくない? |
| ルドガー | 大丈夫だよ。せっかくの親子水入らずなんだ、遠慮せずお父さんと仲よくな |
| エル | うん、わかった!ありがとう、ルドガー! |
| エル | パパ!お家に帰ったら、たくさんお話しよっ! |
| エルの父 | ああ |
| エル | そうだ、パパ、荷物いっぱいでしょ!エルも持ってあげるね! |
| エルの父 | 本当かい?助かるよ |
| エル | それとね、それとね!えっとー… |
| ルドガー | いつもよりはしゃいでるな…パパに会えなくても平気だと時々強がっていたけど |
| ルドガー | やっぱり寂しかったんだな。…会えて、よかったな |
| ルドガー | (さて、俺は俺の出来る事をしよう) |
| ルドガー | (負の因子に取り憑かれた 分史世界の俺…… 一体どこにいる?) |
| ルドガー | (…ひとまずは、 イニル街の俺の家に行ってみるか) |
| ルドガー | (この分史世界で同じ場所に 住んでいるかはわからないが… 他に手がかりもないしな) |
| | 兄からの手紙 |
| ルドガー | あった…俺の家…ところどころ街並みは違ったがこの辺りは同じで助かった |
| ルドガー | まぁ、正史と同じように俺が住んでいるとは限らないけど… |
| | コン、コンッ |
| ルドガー | すみません。誰かいらっしゃいませんか? |
| ルドガー | … |
| ルドガー | 反応はない…人がいる気配もないな、留守か? |
| | ガチャ、キイィ… |
| ルドガー | 鍵が開いている…? |
| | |
| ルドガー | これは…ゴホッ、ゴホッ! |
| ルドガー | 内装は正史の家と同じだけど…埃まみれだ… |
| ルドガー | 床にも…ん?これは? |
| ルドガー | 足跡…ここ最近、誰かが出入りしたようだな… |
| ルドガー | 足跡をたどってみるか。何か痕跡があるかもしれない |
| ルドガー | 食卓の前で折り返している… |
| ルドガー | …ん?テーブルクロスの下に何か… |
| ルドガー | これは、手紙? |
| | |
| | ペラッ |
| | |
| ルドガー | 「この手紙が 弟に届く事を望む」 |
| ルドガー | !!この字は…兄さんの字だ! |
| ルドガー | 「事情があって 姿を隠さざるを得ない状況に 陥ってしまった」 |
| ルドガー | 「助けが必要だ。 今は街外れの廃墟に 身を潜めている」 |
| ルドガー | これだけか…よっぽど慌てて書いたんだな |
| ルドガー | 街外れの廃墟、か…行ってみよう |
| | |
| ルドガー | 確か、この坂を下って… |
| ルドガー | 違うな…記憶と街並みが一致しない |
| ルドガー | さっきから同じ場所をグルグル回っているような… |
| ??? | あのー、もしかして困ってる? |
| ルドガー | あ、はい。実は道に迷ってしまって… |
| ルドガー | あっ…! |
| ??? | ん?どうかした? |
| ルドガー | い、いや… |
| ルドガー | (エルに似ている…? いやけど、そんな…まさかな) |
| ??? | …?私の顔に何かついてる? |
| ルドガー | ごめん。前に会った事あるような気がして |
| ??? | え…もしかして口説かれてる? |
| ルドガー | い、いや!そういうわけじゃ… |
| ??? | あはは、冗談だよ!声かけたのは私の方だもん |
| ??? | 道に迷ってるって言ったよね。どこに行きたいの? |
| ルドガー | 街外れに廃墟があるはずなんだけど…知ってるかな? |
| ??? | うん、わかるよ。でも何の用?あの辺りは何もなかったはずだけど… |
| ルドガー | 待ち合わせというか人捜しというか… |
| ??? | あんなとこで…?ふ~ん、変わってるね |
| ??? | まぁいいや。案内してあげる |
| ルドガー | ありがとう。助かるよ |
| ??? | どういたしまして。そうだ、名前聞いてもいい? |
| ルドガー | ルドガーだ。よろしく |
| ??? | よろしくね。私は、エルだよ |
| ルドガー | えっ…!? |
| エル | ん…? |
| ルドガー | い、いや、知り合いに同じ名前の子がいて |
| ルドガー | (やっぱり、 雰囲気も似てるな…。 だから会った事ある気がしたのか) |
| エル | …やっぱりそれ口説き文句じゃない?運命の出会いを演出、的な? |
| ルドガー | いや、本当なんだ。俺の知り合いは、エル・メル・マータって言うんだけど… |
| エル | あれっ!?何で私のフルネームを知ってるの? |
| ルドガー | …どういう事だ?君はまさかこの世界の…いや、でもそれだと… |
| エル | この世界? |
| ルドガー | あ、いや、なんでも── |
| エル | あっ、わかった!もしかしてルドガーも別の世界から来たんでしょ! |
| ルドガー | 俺『も』? |
| エル | もう10年くらい前かな?私、こことは別の世界からやって来たみたいなんだよね |
| ルドガー | …その話、詳しく聞かせてくれないか? |
| | |
| エル | こっちに来たばっかりの時はまだ子どもだったから、細かい事はよく覚えてないんだけど… |
| エル | イニル街に来てから家が壊れて大変だったのはよく覚えてるよ |
| ルドガー | それが10年前の出来事なのか… |
| ルドガー | (家が壊れたのはたしか 大精霊が暴走した頃… ここは正史世界より未来なのか?) |
| エル | …あ、そうだ。最近、この近くに美味しいアイスの店が出来たんだよ |
| エル | ルドガーの世界にもある? |
| ルドガー | …いや、ないな |
| エル | だったら是非食べてよ!廃墟まではまだ距離があるし腹ごしらえしない? |
| ルドガー | そうだな。案内してもらってるお礼にご馳走するよ |
| エル | ほんと!?やったー! |
| | |
| エル | おじさん、フルーツ焼きそばアイス!二つちょうだい! |
| ルドガー | フルーツ焼きそばアイス!? |
| 店主 | はいよ、フルーツ焼きそばアイス!ソース多めにかけといたよ! |
| エル | ありがとう!はい、こっちはルドガーの! |
| エル | この味が一番なんだから!ささ、食べてみて! |
| ルドガー | … |
| エル | どう? 美味しいでしょ! |
| ルドガー | 何というか…個性的な味だな…。でも、癖になるかも |
| エル | でしょ!?ルドガー、わかってるね! |
| ??? | … |
| ルドガー | ん? |
| エル | どうかした? |
| ルドガー | いや、今ちょっと視線を感じたような… |
| エル | ふふん、それはきっと私が注目を集めてるんだよ |
| エル | 溢れ出る美貌…美しいのは罪よね。…ぷっ、なんちゃって! |
| ルドガー | はは、そうだな。本当に、大人っぽくて美人だよ |
| エル | え…あ……ありがと |
| ルドガー | (あの小さなエルと比べたら 本当に大人っぽく見えるよな…) |
| エル | そ、そろそろ休憩は終わり!廃墟に行こう! |
| scene1 | 強襲 |
| エル | ついたよ。ルドガーの言ってた廃墟はたぶんここだと思うけど… |
| ルドガー | ここが…。案内ありがとう、エル |
| エル | どういたしまして。捜してる人、ここにいるといいね |
| ルドガー | ああ。中に入って、様子を見てくるよ |
| エル | いってらっしゃい |
| | |
| ルドガー | 兄さん、いるか?俺だ、手紙を読んだよ |
| ??? | その声… |
| ユリウス | ルドガー、来てくれたか…! |
| ルドガー | 兄さん…!よかった、無事で… |
| ユリウス | 何とかな…。…お前は正史世界のルドガーか? |
| ルドガー | ああ。兄さんも…だよな。事情があってこの分史世界に来たんだ |
| ルドガー | そこにまさか兄さんがいるなんて驚いたよ |
| ユリウス | 俺も驚いた。僅かな可能性に賭けて手紙を残したが本当に見つけてくれるとはな |
| エル | ルドガー。捜してる人はいたの? |
| ユリウス | …!お前は…! |
| ルドガー | そうだ、紹介するよ、兄さん。俺をこの廃墟まで案内してくれた、エル── |
| | |
| ユリウス | ルドガー、離れろ! |
| ルドガー | えっ…?どうしたんだ、兄さん?急に大きな声を出して… |
| ユリウス | 俺がここに隠れていた理由──それはこの世界で、ある二人組に襲われたからだ |
| ユリウス | そいつは俺を襲った二人組の内の一人だ! |
| ルドガー | そんな…何かの間違いじゃ…だって彼女は…エル、お前からも── |
| エル | … |
| ルドガー | エル? |
| エル | みんな、今だよ!二人を囲んで! |
| | |
| 傭兵1 | おう! |
| 傭兵2 | やっと出番か!いただいた料金分は働かせてもらうぜ |
| ルドガー | これは一体… |
| エル | …私が雇った傭兵だよ |
| ルドガー | それじゃあ、本当に… |
| エル | …自分から人のいない廃墟に向かってくれるなんて、好都合だったよ |
| エル | ユリウスまで出てきたのは想定外だけど…捜す手間が省けてよかった |
| ユリウス | …!今回はルドガーが狙いか! |
| 傭兵3 | 悪いな。あんたらに恨みはねぇが、こっちも商売なんだ |
| ルドガー | まさか、道中で感じていたあの視線…こいつらのものだったのか…! |
| ルドガー | 何故なんだ、エル!?どうしてこんな事… |
| エル | そんな事、聞いてる余裕あるの? |
| ルドガー | くっ… |
| ユリウス | ルドガー、落ち着け!今はこの場を乗り切る、詳しい事はその後だ! |
| ルドガー | ああ…! |
| scene2 | 強襲 |
| | ガキィン! |
| ルドガー | くっ…! |
| 傭兵1 | これを受け取めるとは、中々やるな。だが… |
| 傭兵2 | 隙あり! |
| ユリウス | ルドガー!危ない! |
| | キィン! |
| 傭兵2 | ちっ、防がれた! |
| 傭兵3 | こっちだ! |
| | ガキン! |
| ユリウス | くぅっ…! |
| ルドガー | はぁ、はぁっ…多勢に無勢か…。逃げる隙も作れない |
| ユリウス | ああ。だが…妙だな。殺意は感じられない…。むしろ手加減されているような… |
| ユリウス | …そうか、もし「殺さない事」が任務の内だったら… |
| ユリウス | ルドガー。合図をしたら出口にまっすぐ走れ |
| ルドガー | えっ? |
| ユリウス | 殺す気がないなら強行突破は容易だ。俺が隙を作るから包囲を破って脱出するんだ |
| ルドガー | でも、兄さんが危険じゃ… |
| ユリウス | 大丈夫だ。それに、どう反応するかで彼女──エルの真意もわかるかもしれない |
| ユリウス | 俺を信じろ |
| ルドガー | …わかった |
| ユリウス | よし…行くぞ! |
| ユリウス | 一迅! |
| | バシュッ! |
| 傭兵1 | ぐわあッ! |
| 傭兵2 | こいつ、まだこんな技を! |
| ユリウス | 今だ!行け、ルドガー! |
| ルドガー | ああ! |
| エル | なっ…!逃がさないよ! |
| ルドガー | エル、そこをどいてくれ…! |
| エル | …みんな!ユリウスを捕まえて!そしたらルドガーは逃げられない! |
| 傭兵3 | 了解! |
| ユリウス | ルドガー!俺に構わず走れ! |
| ルドガー | いいや!二人で逃げるんだ、兄さん! |
| ルドガー | 舞斑雪! |
| | ズバッ、ズバッ! |
| 傭兵2 | ぬおっ!? |
| 傭兵3 | 何っ…! |
| ルドガー | 兄さん、今だ! |
| ユリウス | 助かった! |
| エル | みんな、追いかけて! |
| 傭兵1 | ああ!仕事は必ずやり遂げる!行くぞ! |
| 傭兵2 | おう! |
| エル | …はぁ。やっぱり、強いなぁ… |
| | |
| ルドガー | …ここまでくれば大丈夫か? |
| ユリウス | 少なくとも今は追手はなさそうだ。ここまでくれば通行人も増える奴等もそう手出しは出来ないはず… |
| ユリウス | ルドガー。さっきどうして俺を助けに戻った?一人なら簡単に逃げられたはずだ |
| ルドガー | 兄さんらしくない質問だな。あの状況なら助けるに決まってるだろ |
| ルドガー | 自分が助かるために兄さんを見捨てたりするもんか |
| ユリウス | …そうだな。危ないだろうと言おうと思ったが、結果的に無事、二人共逃げられた |
| ユリウス | 強くなったな、ルドガー |
| ルドガー | 兄さんからそんな風に言われるとちょっと照れくさいな…。でも、ありがとう |
| ルドガー | それにしても…エルは、どうして俺達を…。兄さんは何か知ってる? |
| ユリウス | わからない。…もう少し離れた方がいいだろうから歩きながら状況を整理しよう |
| | |
| ユリウス | なるほどな。俺が正史世界を離れている間にそんな事になっていたのか |
| ユリウス | そちらの事情はわかった。次は俺の知っている事を話そう |
| ユリウス | 俺を襲ったのは先ほどの──10年後のエルと、ヴィクトルいう仮面を着けた男だった |
| ルドガー | ヴィクトル…知らない名前だな |
| ルドガー | (仮面を着けた男… エルの父親も仮面だったけど、 まさかな…) |
| ユリウス | ああ。俺も初めて聞く名だ |
| ルドガー | 襲われた理由もわからないのか? |
| ユリウス | ああ。この世界に来て、異常なマナの流れについて調べ始めた矢先だったんだ |
| ユリウス | 突然現れた二人に襲撃されて、逃げるので精一杯だった。事情など聞く暇もなかったよ |
| ユリウス | しかも、その時に時計を奪われてしまってな…。今は骸殻能力も使えない |
| ルドガー | まさか、兄さんがそんなに圧倒されるだなんて… |
| ユリウス | …さっきは見ていただけだったがあのエルも腕が立つぞ |
| ユリウス | それに、ヴィクトルという男は…かなりの手練れだ。骸殻化しても倒せるかどうか… |
| ユリウス | 時計を奪われ、骸殻化出来ない今、また襲撃されたら勝ち目はない。それで廃墟に隠れていたんだ |
| ユリウス | あの手紙に一縷の望みを託してな |
| ルドガー | …一体、何が起こってるんだ…。エルと、ヴィクトルという男は一体何の目的で… |
| ユリウス | 今の俺達にその事情を知る術はない… |
| ユリウス | 今は出来る事を考えよう。この世界のルドガーを捜すんだったな |
| ルドガー | ああ。兄さんは、この世界の俺について何か知ってるのか? |
| ユリウス | …いいや。残念ながら、な |
| ルドガー | 今のところ何の情報もない…全部が靄の中って感じだ。何から調べればいいんだ… |
| ユリウス | …こうして情報を共有していて少し思い出した事がある |
| ユリウス | もう一度俺達の家へと戻ろう。もしかしたらそこに手がかりがあるかもしれない |
| ルドガー | エルの雇った傭兵達が見張っているんじゃないか? |
| ユリウス | いや、人数が多いとそれだけ目立つ。腕のいい傭兵を雇っているようだし、少数精鋭だろう |
| ユリウス | その人数なら街から逃がさないよう俺達を捜しまわるだけで手一杯だろう |
| ユリウス | 見張りに割く人員もいない可能性は高い |
| ユリウス | そこを突いて、調べに行くんだ。この世界の俺達がたどった過去の軌跡をな |
| | オリジンの審判 |
| ユリウス | 無事、たどり着けたな |
| ルドガー | この世界の俺達はここに住んでいるのか? |
| ルドガー | 埃の積もり方からするに何年も足を踏み入れていないように思うんだけど… |
| ユリウス | ああ、お前の言うとおりだろう。おそらく長い間、この家には帰っていないと思われる |
| ユリウス | だが、家具は俺達が使っている物と全く同じだ。俺達の家だと考えていいだろう |
| ルドガー | そう言えば、そうか |
| ユリウス | そして、家具が同じという事は、ここの引き出し…実は二重底になっていてな |
| | ゴソッ |
| ルドガー | 底が外れて、中に本が…!知らなかった、こんな仕掛けがあったなんて |
| ユリウス | はは、それは知らないさ。俺の日記の隠し場所だからな |
| ユリウス | 正史世界でもここに隠しているからもしかしてと思ったんだ |
| ユリウス | …帰ったら隠し場所を変えておかないとな |
| ルドガー | 盗み読みなんかしないよちょっと気になるけど… |
| ユリウス | はは、冗談だよ。それよりほら、日記を確認するぞ |
| ユリウス | 俺はこの日記に調査した事なんかを記録しているんだ |
| ユリウス | この世界の俺も同じだったら何か情報が書かれているかもしれない |
| ユリウス | ルドガーに負の因子が憑りついたなら俺は調査するに決まっているからな |
| ルドガー | なるほど。それで日記を読みにここに戻って来たのか |
| ユリウス | さて、読むぞ… |
| | ペラッ |
| ユリウス | ふむ…最初の方は正史世界で俺が書いている内容とほとんど同じだな |
| | ペラッペラペラッ… |
| ユリウス | …む。これは…! |
| ルドガー | 何か見つけたのか? |
| ユリウス | ああ。どうやら、これが…正史とこの世界の分岐点だ |
| ルドガー | 世界の分岐点…?そこから歴史が大きく変わってるって事か? |
| ユリウス | そうだ。魔導器を使った大きな戦争、マナの急激な減少と、大精霊の暴走… |
| ルドガー | 正史世界でも起こった事件だな。時空の裂け目が出来て、人々が時空の歪みに巻き込まれた… |
| ユリウス | ああ。正史では、俺達が骸殻能力でみんなを助け出したんだ |
| ルドガー | という事は、この世界では違うのか |
| ユリウス | ああ。どこにも時空の歪みに関する事件が書かれていない |
| ルドガー | それが、世界の分岐点…? |
| ユリウス | いや、重要なのはこの後だ |
| ユリウス | 正史世界ではカノンノがディセンダーとして世界再生を行って解決したんだったな? |
| ルドガー | ああ。後でアスベル達から聞いた話だけど… |
| ユリウス | だがこの世界では、どうもその世界の再生に失敗したようだ |
| ルドガー | え…!? |
| ユリウス | 事件の元凶を倒し、ディセンダーの力でマナの消耗が穏やかになったのは確かだ… |
| ユリウス | しかし既に失われたマナは戻らず世界はゆっくりと死に近付いている… |
| ユリウス | この世界の俺達は、仲間達と共に死にゆく世界を救うため、動いていたらしい |
| ルドガー | それで、救えたのか? |
| ユリウス | …いや、おそらくこの方法では… |
| | ペラッ… |
| ユリウス | …やはり、上手く行かなかったようだ |
| ルドガー | そんな… |
| ルドガー | やはりって言ったけど、そんなに難しい方法だったのか? |
| ユリウス | ああ。難しいさ。それに、分史世界の人達には…絶対に成し得ない方法だ |
| ルドガー | それって、一体… |
| | |
| ユリウス | …彼らは挑んだんだ。クルスニク一族に伝わる伝承── |
| | |
| ユリウス | オリジンの審判にな |
| ルドガー | オリジンの審判…? |
| ルドガー | オリジンって、カノンノに力を貸してくれたっていうあの大精霊オリジンの事か? |
| ユリウス | …いや。そのオリジンはおそらく根源を司る大精霊だろう。能力は物質の再生だったはずだ |
| ユリウス | 一方オリジンの審判を行っているのは無を司る大精霊…世界を創造したとされる存在だ |
| ルドガー | つまり…オリジンは二人いるのか? |
| ユリウス | ああ。その理解で合っている |
| ユリウス | 大昔の人々は、物質再生の能力が世界を創造した能力と似たものに見えた… |
| ユリウス | 結果、混同した人々はふたりの精霊を同じ名で呼んだ…というのが定説だな |
| ルドガー | …その無を司るオリジンは世界を救う力を持っているんだな。でもこの世界を救ってくれなかった… |
| ユリウス | …正確には、この世界の俺達はオリジンに会う事すら出来ていないはずだ |
| ユリウス | 分史世界には存在しないからな… |
| ルドガー | …待ってくれ。知らない事が多すぎる |
| ルドガー | 兄さんはオリジンの審判をクルスニク一族に伝わる伝承だって言ったよな |
| ルドガー | だけど俺は、そんな話を聞いた事がない。まずはそこから教えてほしい |
| ユリウス | …そうだな。すまない |
| ユリウス | この話を今まで教えなかったのは、危険な事に巻き込む可能性があったからだ |
| ユリウス | 様々な戦いを乗り越えて来たお前には話してもいい頃合いだろう |
| ユリウス | だが、オリジンの審判を巡って、クルスニク一族がどれだけの犠牲を払って来たかわからない |
| ユリウス | その事をよく覚えておいてくれ |
| ルドガー | …わかった |
| ユリウス | …事の始まりは、およそ2000年前と言われている |
| ユリウス | 世界を作ったとされる精霊は三人いて原初の三精霊と呼ばれている。オリジンもその一人だ |
| ユリウス | 残りの二人は元素を司るマクスウェル、そして時を司るクロノス… |
| ルドガー | クロノス…!大精霊が暴走した時に会った…! |
| ユリウス | ああ、ルークが戦って鎮め、カノンノに力を貸してくれたあのクロノスだ |
| ユリウス | 彼はオリジンと違い、原初の三精霊本人だった |
| ルドガー | …知らない間に俺は一族の伝承に伝わる存在に会ってたんだな… |
| ユリウス | その原初の三精霊がまだ人と交流していた遥か昔、人々は魔導器を使い始めた |
| ユリウス | 当時の魔導器はマナを大量に消費し、世界を蝕むものだった |
| ユリウス | 放っておけばマナが枯渇し、精霊の生きられない世界となるだろう |
| ユリウス | オリジンは悩んだ。魔導器というすぎた道具を使う人間を滅ぼすべきか… |
| ユリウス | それとも警句を与え、自らの過ちに気付かせる事で救いの道を示すか… |
| ユリウス | そうして人類を見定めるべく人間の賢者へと審判の始まりを告げた |
| ユリウス | この人間の賢者というのが俺達の先祖、初代クルスニクだ |
| ルドガー | 初代、クルスニク… |
| ユリウス | オリジンは言った。「人類よ、世界の楔へたどり着け」 |
| ユリウス | 「さすれば人類は存続し、 最初にたどり着いた者の願いが かなえられる」と… |
| ユリウス | そして世界の楔へたどり着けるようクルスニク一族に骸殻の力を与えてくれた |
| ユリウス | しかし、同時にこの力は審判の終わりを告げるタイムリミットでもあった |
| ルドガー | タイムリミット…? |
| ユリウス | 骸殻の力は使いすぎれば自分自身が時歪の因子になる。それはルドガーも知っているな |
| ルドガー | ああ。だから細心の注意を払って使ってきた |
| ユリウス | だが、この話にはお前には伝えていない続きがあるんだ |
| ユリウス | 時歪の因子となった者は新しく分史世界を作る |
| ユリウス | 分史世界の数が百万に達した時オリジンは審判が失敗したと判断し、人類を滅ぼす |
| ルドガー | そ、それじゃあ、骸殻能力は、自分の命だけじゃなく人類の存亡にも関わってるのか!? |
| ユリウス | そういう事だ。だが審判を成功させるには骸殻能力を使わざるを得ない |
| ユリウス | 世界の楔にたどり着く条件…それは世界に散らばる四つの「道標」を集める事だからな |
| ルドガー | 「道標」… |
| ユリウス | 元々は全て正史世界にあったらしいが分史が増え、審判に挑む者が増える中で、散らばっていったそうだ |
| ルドガー | それじゃあ、数ある分史の中から四つの「道標」を探し出さないといけないのか… |
| ルドガー | 途方もない話だな… |
| ユリウス | 俺もそう思っていた。だがこの分史世界の俺達は、重要な手がかりを掴んでいたようだ |
| ユリウス | 「道標」は負の因子を破壊する事で手に入る…そう、日記に書いてある |
| ルドガー | 負の因子…!ここでその名が出てくるのか…! |
| | |
| ユリウス | …伝承の内容は以上だ |
| | |
| ルドガー | この世界の俺達は、この伝承を頼りにオリジンに願いをかなえてもらって世界を救おうとしたのか… |
| ルドガー | だけど失敗した…。「道標」が集まらなかったという事か |
| ユリウス | いや…。この日記には、苦難の末に、「道標」を集める事に成功したとある |
| ルドガー | それじゃあ、どうして失敗したんだ? |
| ユリウス | …さっきも言ったが、分史世界の人間にオリジンの審判を達成する事は出来ないんだ |
| ユリウス | 原初の三精霊のうち、オリジンとクロノスは…正史世界にしか存在しない |
| ユリウス | 分史世界で「道標」を集めても何も起こらないんだ… |
| ルドガー | そんな…そんな事って… |
| ユリウス | 「道標」を集めても世界の楔への道は開かれない…。そこで彼らは気付かざるを得なかった |
| ユリウス | この世界にはオリジン達がおらず、世界の楔へ繋がっていない…つまり分史世界なのだとな |
| ルドガー | ……。辛かっただろうな |
| ユリウス | …ああ。だが、この世界の俺達はそれだけでは諦めなかったようだ |
| ユリウス | ルドガーが「道標」を集めている間、ジュードを中心に別の方策を練っていたらしい |
| ユリウス | その方法は上手くいったとしてもとても時間のかかるものだったが着実に進んでいた |
| ユリウス | 世界が滅ぶのが先か、その方法が成就するのが先か…それだけが問題だったようだ |
| ルドガー | 地道に確実に…か。ジュードらしいな |
| ユリウス | ルドガーも、オリジンの審判が失敗した後も、決して希望は失わず、ジュードを手伝っていたようだ |
| ユリウス | 世界を再生しようと努力するその姿を根源を司るオリジンも近くで見届けていたらしい |
| ルドガー | 俺達の世界でも、カノンノの世界再生を見届けると言って力を貸してくれたらしいからな… |
| ルドガー | この世界では世界再生に失敗した後もずっと傍にいて見守っていてくれたのか… |
| ルドガー | …待てよ。という事は… |
| ルドガー | オリジンなら、この世界の俺が今、どこにいるのか知ってるんじゃないか? |
| ユリウス | なるほど、その可能性はあるな。だがオリジンの居場所はわかるか? |
| ルドガー | オリジンが住処にしていた遺跡ならアスベルから場所を聞いてる。この世界でも同じかわからないけど… |
| ユリウス | 他にあてもないんだ。そこに行ってみよう |
| ルドガー | ああ。確か、バロニア北部…森の中の遺跡にいたらしい。行こう…! |
| | これまでの事、これからの事 |
| ルドガー | … |
| ユリウス | どうした?急に立ち止まって |
| ルドガー | ああ、ごめん。エルが今どうしてるかなってちょっと気になっただけなんだ |
| ユリウス | そうか…俺達がよく知ってるエルもこの分史世界へ来ているんだったな |
| ルドガー | お父さんと楽しく過ごせているといいな… |
| | |
| エル | たっだいま~! |
| エル | ほら、パパも! |
| エルの父 | …ああ、ただいま |
| エルの父 | 久しぶりだな、この挨拶を口にするのは… |
| エル | お買い物の片づけ、手伝うね! |
| エルの父 | ありがとう。少し見ない間にエルは随分成長したみたいだな |
| エル | えへへ…パパと離れ離れの間に、エルもいろいろあったんだよ! |
| エル | イニル街でへんなビョーキが流行ってユーリやミラと一緒にカイケツしたんだ! |
| エルの父 | エルも頑張ってくれていたんだな |
| エル | でしょ? |
| エル | でも、ビョーキが治ったらと思ったら今度はジシンでエルのおうちが壊れちゃったの! |
| エル | だからね、今はルドガーのとこでイソーローしてるの |
| エルの父 | そうだったのか。彼には改めてお礼をしないといけないな |
| エルの父 | その後は、どんな事をしていたんだい? |
| エル | えっとね、世界中がショーカ現象でパキーンってなっちゃった! |
| エルの父 | ショーカ現象?何だいそれは? |
| エル | えっと…人とか植物とか、ぜんぶ氷みたいに固まっちゃっうんだよ |
| エルの父 | そんな事が…ショーカ現象…晶化現象か?大丈夫だったかい? |
| エル | イニル街も固まっちゃたけど、すぐに大丈夫になったよ! |
| エルの父 | それはよかった。他にはどんな事があったんだい? |
| エル | えっと、急に島が見つかってルドガーがお仕事でお出かけしちゃったり! |
| エルの父 | ふむ… |
| エル | あとあと、最近だとルドガーと別の世界へ行って、お姫様を助けたりしたんだよ! |
| エル | エルは捕まっちゃって、ちょっと怖かったけど… |
| エルの父 | それは、怖かったな。エルが無事でよかったよ |
| エル | でもね、エルは信じてたよ!ルドガーと友達のみんながエルを助けてくれるって! |
| エルの父 | 友達、か… |
| エル | うん、お姫様のメルディでしょ!ファラにクィッキーに…みんな友達! |
| エル | みんなすごく優しいし、一緒にいると楽しいんだよ! |
| エルの父 | …そうか、いい友達が出来たんだな。パパも嬉しいよ |
| エルの父 | さて、そろそろご飯にしようか。エルは何を食べたい? |
| エル | えー、どうしよっかな… |
| エルの父 | 買い出しに行ってきたばかりだから何でも作れるよ |
| エル | パパのごはん何でも美味しいから迷っちゃうなー |
| エル | うーん… |
| エル | そうだ!やっぱりアレがいいな!スープ! |
| エルの父 | ははは…アレか。エルのお気に入りだもんな |
| エルの父 | そう言うと思って、エルと会った後、ちゃんと材料は買っておいたんだ |
| エル | えー!じゃあ聞かなくてよかったじゃん! |
| エルの父 | ごめんごめん。本人の口からちゃんと聞きたかったんだよ |
| エルの父 | それじゃあ久しぶりに腕を振るうとしようか |
| エル | ん~!やっぱりパパのスープが一番! |
| エルの父 | 喜んでくれて何よりだ。作った甲斐があるよ |
| エル | そうだ!パパの料理、みんなにも食べてもらおうよ! |
| エルの父 | …みんなに、かい? |
| エル | ルドガーでしょ?メガネのおじさんでしょ?ルルに、ミラに、ユーリに… |
| エル | みんなを家に呼んで、パーティーをするの! |
| エルの父 | ああ…それは、楽しそうだ |
| エル | えへへ、名案でしょー?よーしけってーい!パパ、約束だからね? |
| エルの父 | ああ |
| エル | それじゃ指切り! |
| エルの父 | …ああ、いいよ。ほら、小指を出して |
| | ギュッ… |
| エル | 指切りげんまん!指切った! |
| エル | これで約束── |
| | |
| エルの父 | うっ…!ぐ、うっ!! |
| | |
| エル | パパ!?大丈夫!? |
| エルの父 | はぁ、は、はぁっ…ゴホ、ゴホッ! |
| エルの父 | 大丈夫、ちょっとむせただけだよ |
| エル | ほんと…? |
| エルの父 | 本当だよ…ほら、もうこんなに元気だ |
| エルの父 | それより、エル。スープを飲み切ってるじゃないか。おかわりするかい? |
| エル | う、うん… |
| エルの父 | すぐに入れてくるよ。待っていてくれ |
| エル | パパ… |
| scene1 | 失われた時 |
| | ああ、これは…またあの時の夢だ── |
| | |
| エル | 負の因子、この世界にはなかったね |
| ルドガー | そうだな。次こそは必ず── |
| エル | うん!次こそ! |
| ルドガー | ああ。俺達の世界を救うために… |
| ルドガー | …こんな調子で本当に負の因子は見つかるんだろうか |
| エル | 焦ったらダメだよ、気長にがんばろ! |
| エル | 大丈夫、ルドガーには頼りになるアイボーがついてるでしょ! |
| ルドガー | …ああ、そうだった。長い冒険になるけど、ついてきてくれるか、エル |
| エル | もちろん! |
| | |
| ルドガー | うおおおぉっ!! |
| | キィン! |
| ヴィクトル | そこをどけ。これが世界を守る、たった一つのやり方なんだ |
| ルドガー | こんな… |
| ルドガー | こんなやり方が許されていいはずがない! |
| ルドガー | お前は、お前はそれでもエルの…! |
| エル | やだ…!パパもルドガーもやめて! |
| ルドガー | 俺だって、こんな戦いしたくない!だけど… |
| ルドガー | 引き下がるわけには行かないんだ!大事な相棒のために! |
| エル | ルドガー…! |
| ヴィクトル | 私とて…!だが…これで世界を救えるなら…! |
| ルドガー | 世界が何だ!俺は、世界を敵に回してでも守るべきものを守る! |
| ルドガー | うおおおぉっ!! |
| ヴィクトル | 来い! |
| | |
| | バシュッ── |
| | |
| | ──ドサッ |
| | |
| エル | あ…あっ… |
| エル | パパぁーっ!! |
| ヴィクトル | くっ…あ、ぁ…エ…ル… |
| ヴィクトル | すま…ない… |
| | |
| エル | パパ、パパぁーっ!!! |
| エル | パパ、起きてよっ!目を開けてよぉ…! |
| ルドガー | エル… |
| エル | う、うぅ…うぅぅ… |
| ルドガー | わかってくれとは言わない… |
| エル | ぐすっ、うぅっ… |
| エル | わかってる…ルドガーはエルを助けてくれたって… |
| ルドガー | … |
| エル | エル…カクゴを決めようって思ってた…世界の、みんなの、ためなら… |
| エル | でも… |
| エル | ほんとは、怖くて…生きてて、エル…ひっく! |
| ルドガー | エル…それでいい生きている事が間違いだなんて思わないでくれ |
| ルドガー | エルを犠牲にして世界を生かすなんて…そんなの、間違ってる |
| ルドガー | 俺はエルを死なせない…絶対に死なせないから… |
| | |
| エル | ──っ! |
| エル | はぁ、はぁっ… |
| エル | 久しぶりに見たな…あの頃の夢… |
| エル | …はぁ。駄目だよ、エル |
| エル | あの頃の私は何も出来なかった…。でも、もう私は子どもじゃない… |
| エル | 今度は私が、相棒を守るんだから |
| | |
| ユリウス | この森のどこかに大精霊オリジンのいる遺跡があるんだな |
| ルドガー | ああ、この辺りだと思うんだけど…なかなか見つからないな |
| ユリウス | 元々は文献でも所在が掴めなかった遺跡、だったか…探すのは大変そうだ |
| ユリウス | ちょうどあそこに小屋がある。夜を越す準備もしておこう |
| ユリウス | まだ僅かに日はあるが森の夜は早いからな |
| ルドガー | ああ。そうしよう |
| | |
| | パチパチパチ… |
| ユリウス | 今日は歩き詰めで疲れただろう。俺が見張っておくからルドガーは休むといい |
| ルドガー | ありがとう兄さん。俺はまだ平気だから先に休んでいいよ |
| ルドガー | 廃墟に隠れていたんじゃろくに眠れてなかっただろ? |
| ユリウス | そうか?じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうとするか |
| ユリウス | しかし見つからないものだな…小さな遺跡というわけでもないんだろう? |
| ルドガー | うん。見落として通りすぎるような大きさじゃないはずなんだ |
| ルドガー | ただ…どうにも聞いていたのとは森の景色が違うみたいで… |
| ユリウス | …そうか。正史世界とこの分史世界では辺りの風景が違うのかもしれん |
| ユリウス | この世界の俺の日記によるとあの天変地異からおよそ十年が経過し世界再生もかなっていない… |
| ルドガー | …確かにそうだ。地震があれば地形は変わるし、樹の位置も変わる |
| ルドガー | 景色が違って当然だったんだ。聞いた通りの道をたどったつもりでも全然違う方向に進んでいたのかも |
| ルドガー | 明日は今日と違う方角を探してみよう |
| ユリウス | そうだな。明日はきっと遺跡が見つかるさ |
| scene2 | 失われた時 |
| ルドガー | 遺跡だ!やっと見つけた!随分、遠回りしたけど… |
| ユリウス | 見つかったのならそれでいいさ。早速、中に── |
| ユリウス | …! |
| | |
| ユリウス | ルドガー! |
| ルドガー | えっ!? |
| エル | はあっ! |
| | キィン! |
| | |
| ルドガー | エル…! |
| ユリウス | 待ち伏せしていたな?どうしてここがわかった |
| エル | あなた達がこの森へ行くのを見たって情報があって… |
| エル | だったら目的地はここしかないと思った。オリジンに会いに行くんだろうって |
| ルドガー | どうして俺達を狙うんだ!理由を聞かせてくれ! |
| エル | 理由?そんなの簡単! |
| エル | あなたがルドガーだからだよ! |
| エル | はぁっ! |
| | カキィン! |
| ルドガー | 俺がルドガーだから…?どういう意味だ…? |
| エル | 悪いけど、話してる余裕はないの! |
| ユリウス | 隙ありだ! |
| エル | …っ! |
| | キンッ |
| エル | うっ… |
| ユリウス | 今日は一人か。それで俺達に勝てるとでも? |
| エル | …さぁ。やってみないと、わからないでしょ! |
| | キィンッ |
| ユリウス | くっ…! |
| ルドガー | やめろエル!俺はお前と戦いたくない! |
| エル | だったら黙ってやられてよ! |
| エル | はぁっ! |
| | ガキンッ! |
| ルドガー | エル…!どうしても、やるしかないのか!? |
| ユリウス | ルドガー、これ以上は無駄だ。彼女は、お前の知っているエルとは違う |
| ユリウス | 割り切れなければ、やられるのはお前だぞ! |
| ルドガー | くそっ、腹を括るしかないのか… |
| エル | 覚悟は出来た?今度は、逃がさない! |
| scene3 | 失われた時 |
| エル | はぁ、はぁっ… |
| ルドガー | エル、もう諦めてくれ…! |
| エル | 諦める?私の目的はあなたに勝つ事じゃない。必要な物は、もうもらった |
| ルドガー | エル!! |
| | |
| ユリウス | やけにあっさり退いたな… |
| ルドガー | エルも俺達と戦いたくなかった…なんて理由だったらいいんだけど |
| ユリウス | …。それより気になる事を言っていたな |
| ユリウス | 「必要な物はもらった」…一体、何を… |
| ユリウス | …はっ!ルドガー、時計は!? |
| ルドガー | 時計…!しまった、俺の時計がない! |
| ユリウス | これが目的か…やられたな |
| ユリウス | これで俺達は二人共、骸殻能力を封じられた。戦力を削ぐのが目的だったのか |
| ルドガー | という事は、また改めて襲撃してくるつもりなんだろうか… |
| ユリウス | ルドガー、腹を括っておくんだ。そうしないと、いざという時に剣が鈍るぞ |
| ルドガー | わかってる… |
| ルドガー | …今は前に進むしかないか。エルとはまた会う事になるだろうし |
| ユリウス | ああ。今はここ…遺跡に集中しよう |
| ユリウス | エルが言っていた。オリジンに会いにここに来たのだろうと |
| ルドガー | つまり…俺達の考え通り、オリジンはここにいる…! |
| ルドガー | この世界の顛末がついにわかるかもしれないんだ…! |
| scene1 | 死にゆく世界 |
| ユリウス | 随分と広い遺跡だ…。昔は立派な神殿だったのかも知れないな |
| ルドガー | ここまで来たんだ。オリジンに会えるといいけど |
| ユリウス | ああ、そうだな… |
| ユリウス | (ジュードの確立した方法で 世界は救われるはずだった… それなのに、なぜ──) |
| ユリウス | (…それ以前にあの日記… もしかして、途中で俺は…) |
| ルドガー | …兄さん?何か気になる事でも? |
| ユリウス | いや、何でもない。それより、先を急ごう |
| scene2 | 死にゆく世界 |
| ルドガー | 祭壇のようになっている特別な部屋…カノンノ達から聞いていたオリジンの居場所だ |
| ユリウス | ここが… |
| ??? | 来たか |
| ルドガー | あなたがオリジン…! |
| オリジン | まさかまた、その顔を見る事になるとはな。ルドガー・ウィル・クルスニク |
| ルドガー | 俺の事を知っているんですか!? |
| オリジン | 無論。そちらは、ユリウス・ウィル・クルスニク… |
| オリジン | どちらも別の世界から来たのだろう |
| ユリウス | …俺達の事などお見通し、というわけですか |
| オリジン | 単純な話だ。この遺跡内での会話は全て私に聞こえている |
| オリジン | それに…この世界のユリウスがここに来るなどあり得ない事だからな |
| ユリウス | …それは、どういう意味でしょうか |
| オリジン | …説明してもよいが、まずはお前達の目的の詳細を聞かせてもらおうか |
| ルドガー | わかりました。実は… |
| オリジン | …なるほど。この世界のルドガーが原因で正史のお前に異変が… |
| オリジン | 負の因子にそんな側面があったとはな |
| オリジン | この世界でかつて道標を集めた時はそのような様子はなかった |
| ルドガー | そうなんですか?では、どうやって道標にたどり着いたんです? |
| オリジン | 分史の位置を座標で表し負の因子が存在する方角を示す装置、それを用いてだ |
| オリジン | それで候補となる世界を数百まで絞り込んでしらみ潰しにしていったのだ |
| ルドガー | 数百…そんなに世界を巡ったのか… |
| ユリウス | 分史世界は今や何十万もあると言われている…数百に絞れたなら大したものだ |
| ルドガー | それでも、大変だったはずだ。なのに、道標を揃えても上手くいかなかったなんて… |
| オリジン | 確かにあの時のルドガー達は絶望していた |
| オリジン | だが…まだ希望は残されていた |
| オリジン | 道標を集める事とは別に、世界を救うための計画が進められていたのだ |
| ユリウス | …日記にもそうあった。しかし、その計画がどうなったのか肝心なところは書かれていなかった… |
| オリジン | 当然だ。その計画が結末を迎える前に… |
| | |
| オリジン | この世界のユリウスは、弟の手にかかって死んだのだからな |
| | |
| ユリウス | なっ…! |
| ルドガー | 俺が、兄さんを…!? |
| オリジン | ユリウスだけではない |
| オリジン | 計画の中心人物であったジュード・マティスとリタ・モルディオ |
| オリジン | 元ディセンダーのカノンノ・イアハートやアスベル・ラント |
| ルドガー | ま、待ってくれ!頼む…少し、待ってくれ… |
| オリジン | …… |
| ユリウス | 本当に全員、ルドガーが殺したと? |
| オリジン | そうだ。他にも大勢が死んだ。もっとも、私も全ての者の名を覚えているわけではないがな |
| ルドガー | そんな…一体、どうして… |
| ユリウス | …その計画の途中で何があったのか…経緯をお教え願いたい |
| オリジン | いいだろう。では、話を道標を探す旅を終えた直後に戻そう |
| オリジン | ルドガーが分史世界を旅している間この世界に残った者達は、新たな魔導器の開発に取り組んでいた |
| ルドガー | 魔導器…それでリタの名前があったのか |
| オリジン | そうだ。だが計画自体は、ミラ=マクスウェルの助言を受けたジュード・マティスによるものだ |
| オリジン | 使用する際にマナを必要としない新型の魔導器…。彼らはそれをマティス式魔導器と呼んでいた |
| ルドガー | マナを必要としない…!そんな事が可能なんですか |
| オリジン | 理論上は可能だ。だが実現するには時間が必要だった |
| オリジン | 私も契約の元、力を貸したが…完成する頃にはマナの枯渇は止められぬところまで来ていた |
| オリジン | 魔導器を用いたところで世界の死を少し遅らせる事しか出来なかった |
| オリジン | そんな折、新たに世界を救う方法が見つかった |
| オリジン | その発見は一見希望に見えたが…絶望的な結末をもたらした |
| オリジン | ルドガーが拒絶し強行しようとする者とその仲間を全員殺したのだ |
| ルドガー | …それでみんなを…。どうしてこの世界の俺はその方法に反対したんですか? |
| オリジン | 人の情、というものだろう |
| オリジン | その方法とは、ある一人の人間を犠牲にする事でこの世界を救うというものだった |
| オリジン | だが、それはルドガーにとって、かけがえのない存在だった |
| ルドガー | 俺にとって、かけがえのない存在… |
| オリジン | その方法を知った者の一部が、ルドガーからその人間を奪い強行しようとしたのだ |
| オリジン | ルドガーは守るために戦った。だがその人間を守り切るには、事情を知る者全てを殺す必要があった |
| オリジン | 一人でも生かせば、また同じ事を企む人間が現れると考えての事だろう |
| ユリウス | …… |
| オリジン | お前と一部の仲間は戦いを止めようとして殺された |
| オリジン | 私はその光景に失望した。世界再生を見届けるという契約はカノンノの死とともに消えた |
| オリジン | 世界再生を果たすどころか殺し合いを始めた人間に世界を救えるはずもあるまい |
| オリジン | 私は人間を見限り、再びこの遺跡に戻ってきたのだ |
| オリジン | 来るべき世界最後の日を人間に関わらず、穏やかに迎えるために |
| ユリウス | …話していただき、感謝します |
| ルドガー | …… |
| オリジン | ルドガー。一つ聞こう |
| オリジン | お前はまだ、そのかけがえのない存在と出会っていないのだろう |
| オリジン | 今のお前なら、どう考える |
| オリジン | 大切な者一人か、他の全ての者と世界。どちらの犠牲を選ぶ? |
| ルドガー | 大切な者一人と、他の全ての者…それに世界… |
| ユリウス | …… |
| ルドガー | 俺…俺は… |
| ルドガー | わかりません…。どっちも犠牲にしちゃいけない…そう思います |
| オリジン | だが、どちらかを選ばねばならない時が来る。その時はどうする? |
| ルドガー | それは… |
| ルドガー | …… |
| ルドガー | 俺は…どっちも犠牲にしません |
| オリジン | …話にならん |
| ルドガー | そうかも知れません。でも、俺は誰かを犠牲にする話なんてしたくない |
| ルドガー | 俺は今まで、いろいろな分史に行って来ました |
| ルドガー | そこでは、何かを犠牲にして世界や大切な人、自分の居場所を守ろうとしている人達と出会いました |
| ルドガー | だけど、最後まで諦めずにいれば…少し見方を変えれば… |
| ルドガー | 犠牲が必要だなんて、ただの思い込みだったと気付く事も少なくなかったんです |
| ルドガー | だから俺は、何かを犠牲にする選択をするぐらいなら… |
| ルドガー | 最後の最後、人類が滅ぶその瞬間までどちらも犠牲にしない方法を考え続ける! |
| オリジン | お前が決断を鈍らせる事で世界が滅び、大勢が死ぬとしてもか |
| ルドガー | …世界や、大勢の命を救うべきなのは確かです |
| ルドガー | だけど大切な人だって、世界に生きる大勢の一人なんです |
| ルドガー | その一人を犠牲にしてしまったら世界を救ったなんて言えません |
| オリジン | …理想論だな |
| オリジン | だが…お前の進む先、その結末を見届けよう |
| オリジン | お前の行くべき先を示す。そこに行けば、お前は全てを知り、改めて決断に迫られるだろう |
| ルドガー | …今、教えてくれた話で全てじゃないんですか? |
| オリジン | 私が語れるのは、私が人間の元を去った時まで。8年近く前の話だ |
| オリジン | お前達の話を聞く限り、あれからまた何かが起こっているようだ |
| オリジン | …いざとなった時、お前が今と同じ決断が出来るのか…見させてもらおう |
| ルドガー | …わかりました |
| ユリウス | 大丈夫か、ルドガー |
| ルドガー | …別の世界とはいえ、俺が大勢の仲間を手にかけるなんて……正直、戸惑ってる |
| ルドガー | けど、立ち止まっていられない。俺は、今の俺に出来る事…為すべき事をやらないと |
| ユリウス | …そうだな |
| オリジン | …覚悟は決まったか |
| ルドガー | はい、お願いします |
| オリジン | …では、向かうべき場所について教えるとしよう |
| scene1 | 守る者、守られる者 |
| ルドガー | 北東の湖か…そこに一体、何があるんだろう |
| ユリウス | …不安か? |
| ルドガー | …ああ。大切な人を守るために他の人を殺すなんて |
| ルドガー | 俺にとっては、兄さんや他のみんなも大切な人なのに… |
| ユリウス | …俺は、少し理解出来る |
| ユリウス | 例えば俺にとってお前は大事な弟で、守るべき存在だ |
| ユリウス | もし誰かを傷つけないとお前を守れないのだとしたら…俺は迷わず、お前を守る選択をする |
| ルドガー | …兄さんだけど殺すというのは… |
| ユリウス | …そうだな。しかし、負の因子が憑りついていたらどうだ? |
| ルドガー | …そうか。この世界の俺には負の因子が憑りついているはずなんだ |
| ルドガー | 兄さんの言うような、誰かを守りたい気持ちが極端な形で表れても不思議じゃない |
| ルドガー | だからといって…決して許されはしないけど |
| ユリウス | ああ。だがお前が気にしすぎる必要はない |
| ユリウス | 同じルドガーとはいえ、お前とは別の存在だ。しかも負の因子の影響を受けている |
| ユリウス | お前は、自分がいつか同じように仲間を手にかけるんじゃないかと不安なんだろうが…そうはならない |
| ルドガー | 兄さん…。うん、ありがとう |
| ユリウス | …わかっているだろうが、この先、どこかで分史のルドガーと対峙しなければならないんだ |
| ユリウス | どういう出方をしてくるかわからない相手だ。…心の準備が必要だぞ |
| ルドガー | …うん |
| ユリウス | …もし辛いなら俺が一人で分史のルドガーを捜してもいい |
| ルドガー | いや…本人に直接聞いてみたいんだ。一体何を見て、何を感じたのか… |
| ルドガー | どんな事を悩んで、どうしてその選択をしたのかを |
| ユリウス | そうか…。不要な心配だったな |
| ユリウス | 行こう。この先の森を抜ければ湖が見えて来るはずだ |
| ルドガー | ああ |
| scene2 | 守る者、守られる者 |
| ルドガー | 湖が見えて来た。そろそろか… |
| | |
| ??? | 待ちなさい! |
| ユリウス | この声は…!そう簡単にはたどりつけなそうだな |
| | |
| エル | これ以上、先には行かせない! |
| | チャキ |
| ルドガー | エル…! |
| | ヒュンッ |
| ルドガー | くっ…! |
| ルドガー | どうしてだ?この先に何があるって言うんだ! |
| エル | 知らずに向かおうとしてるの? |
| エル | …やっぱり、繰り返すの?あの戦いを… |
| ユリウス | ここで会えたのはちょうどいい。時計を返してもらうぞ |
| ユリウス | はぁっ! |
| エル | っ…! |
| エル | そんなに必死に時計を取り戻そうとするなんて… |
| エル | やっぱり、ヴィクトルと戦う気なんでしょ!? |
| ユリウス | ヴィクトルだと? |
| ルドガー | ヴィクトル…彼女と一緒に兄さんを襲ったっていう…。この先にいるのか? |
| エル | …! |
| エル | (知らなかったっていうの? 嘘…それじゃ、今の私の言葉こそ 歴史を繰り返させる…) |
| ユリウス | 奴がいるなら、彼女の言う通り時計が必要だ。ルドガー、彼女を捕まえるぞ |
| エル | させない…!それに、私を捕まえても無駄だよ。ちゃんと隠してあるんだから! |
| ユリウス | なら隠し場所を吐かせるまでだ |
| エル | 死んでも言わないよ!あなた達に骸殻能力は使わせない! |
| エル | それに!捕まる前に私があなた達を倒す! |
| ルドガー | …本気なのか?エル、俺はお前を傷つけたくない |
| エル | だったら大人しくやられて! |
| | ヒュッ、ヒュッ── |
| ルドガー | ぐっ…!? |
| ユリウス | ルドガー! |
| ユリウス | ルドガー、誰も傷つかずにこの場を収める事は不可能だ |
| ユリウス | 彼女の戦いに向ける覚悟は本気だ。時計を奪いに来ただけの前回と同じだと思わない方がいい |
| ルドガー | だけど… |
| ユリウス | さっきも言った通り、俺はお前を守るためなら手段を選ばない |
| ユリウス | 彼女を傷つけたくないならお前も戦って、無事に取り押さえるんだ |
| ルドガー | …!ああ! |
| エル | お喋りなんて、余裕だね。それとも観念した? |
| エル | これでトドメ! |
| | ヒュヒュヒュンッ──! |
| ルドガー | はぁっ! |
| | キンキンキン! |
| エル | やっぱり戦うんじゃない。私の事、傷つけたくないなんて、嘘なんでしょ? |
| ルドガー | ああ。傷つけたくない。だからって何もしなければ解決するわけじゃないんだ |
| ルドガー | 誰も傷つけないために俺は戦う! |
| エル | 綺麗事を…。出来るわけないでしょ!! |
| scene3 | 守る者、守られる者 |
| エル | うぅっ…!はぁ、はぁ…… |
| エル | まだ…まだっ…! |
| ルドガー | エル…一体何がお前をそこまで… |
| エル | あんな歴史…はぁ、はぁっ…繰り返させないっ! |
| | ガキィッ! |
| ユリウス | まだ動くか…たいした信念だ |
| エル | うぅぅ…!私じゃ、無理なの…? |
| エル | でも、それでも私は…! |
| ルドガー | なあ、エル。教えてくれないか?エルがそこまで頑張る意味… |
| ルドガー | 何か事情があるんだろ?話してくれ。協力出来るかもしれないじゃないか |
| エル | … |
| エル | 私は… |
| エル | ヴィクトルを守りたいだけだよ |
| エル | あなたはヴィクトルを殺してしまうかも知れないから… |
| ルドガー | 俺が…ヴィクトルを?どうして、そんな風に思うんだ? |
| エル | 私のアイボーのルドガー…この世界のルドガーは、殺したから |
| | |
| エル | 私のパパを… |
| | |
| ルドガー | エルのパパ…?まさか、エルの父親がヴィクトルなのか? |
| エル | …そう。あなたはバロニアで会ったよね |
| ルドガー | ああ… |
| エル | あなたが会ったのは、この世界のエルのパパ。私のパパは、別の世界にいたの |
| エル | 子どもの頃、私は知らない内にこの世界にやって来て…イニル街に住んでた |
| エル | 地震で家が壊れてルドガーの家に居候してたの |
| ルドガー | 俺達の世界と同じだ… |
| エル | それからはルドガーのアイボーとして一緒にいろんな冒険をしたの。道標を求めて他の分史にも行った |
| エル | その旅の途中で、私が生まれた世界にも行った |
| エル | そこでルドガーは私のパパに会ったの |
| ルドガー | つまり、こことは別の世界のヴィクトルか… |
| エル | そう。そこでルドガーはパパと対立して…最後には殺した |
| ルドガー | … |
| エル | 今、同じ状況がこの世界で起ころうとしてる |
| エル | あの時と同じ年齢のエルを連れて、ルドガーがこの世界にやってきて、そしてヴィクトルと会った |
| エル | きっとこの後、ルドガーとヴィクトルは戦う…そしたらヴィクトルは…! |
| | |
| ??? | エル、どうかしたかい? |
| エル | …! |
| ルドガー | あなたは…! |
| | クルスニクの鍵 |
| ヴィクトル | 私の話をしていたようだが… |
| エル | ヴィクトル…!! |
| ユリウス | 貴様…! |
| ヴィクトル | …ユリウス |
| ヴィクトル | そう怖い顔をしないでくれ。今日は戦うつもりはないんだ |
| ユリウス | 何を勝手な事を |
| ルドガー | 待ってくれ、兄さん。この人はエルの父親でもあるんだ |
| ルドガー | 戦わずに済むなら、その方がいい。まずは…話を聞きたい |
| ユリウス | …そうだな、すまない |
| ヴィクトル | 助かるよ。ここでこれ以上騒ぐ事は避けたい |
| ヴィクトル | エルがさっき眠ったばかりでね |
| ルドガー | エルも近くにいるのか |
| ヴィクトル | ああ。この先にある私の家にいるよ |
| エル | ヴィクトル…。ごめんなさい、私… |
| ヴィクトル | …?何か謝るような事をしていたのか? |
| エル | そう…じゃないけど…ヴィクトルに内緒でルドガー達と戦ってたから… |
| ヴィクトル | …確かに、無茶をした事は褒められた事じゃない。でも、何か理由があったんだろう? |
| エル | 私はただ…ヴィクトルを守りたかったんだ |
| エル | いつも守られてばかりだけど私だって、ヴィクトルのために戦えるんだから…! |
| エル | だから… |
| ヴィクトル | ありがとう。その気持ちは嬉しいよ |
| ヴィクトル | でも、危険な事はやめてくれないか |
| エル | うん… |
| ルドガー | 一つ、聞いていいか? |
| ヴィクトル | 何かな? |
| ルドガー | 今の話だと、彼女が俺達を襲った事をあなたは知らなかったようだ |
| ヴィクトル | そうだね |
| ルドガー | なら、あなたがエルと一緒に兄さんを襲ったのは何故だ? |
| ヴィクトル | なるほど、もっともな疑問だ |
| ヴィクトル | …エルがどうして一人で君達と戦おうとしたのか私にはわからないが… |
| ヴィクトル | 君達はどちらも、この世界にとって脅威だからだよ |
| ヴィクトル | 何故なら、別の世界から来た骸殻能力者は、時歪の因子を破壊して分史世界を壊すだろう? |
| ユリウス | …詳しいな。お前は、何者だ |
| ヴィクトル | そう驚く事でもない。私もこの世界を再生するために力を尽くした者の一人だ |
| ヴィクトル | この世界が分史世界だと発覚した瞬間から世界の破壊には警戒していたんだよ |
| ルドガー | そういう事だったのか…。でも、世界の破壊の事なら安心してほしい |
| ルドガー | 俺達の今の目的は、時歪の因子じゃなくて、負の因子なんだ |
| ヴィクトル | …負の因子か |
| ヴィクトル | …なるほどな。それなら私達が戦う理由はなくなるというわけだ |
| ユリウス | 理解が早くて助かるが…本当に今の説明だけで納得出来るのか? |
| ヴィクトル | ああ。エルから、過去にルドガー君と道標を集めた時の話を聞いているからね |
| ヴィクトル | 負の因子を破壊し、道標を手にすれば時空の歪みを通って元の世界に戻れる事は承知している |
| ヴィクトル | もっとも、この世界に負の因子があり君達がそれを集めているという事は初めて知ったがね |
| エル | …… |
| ルドガー | エルも納得してくれたなら時計を返してもらいたいんだが… |
| エル | …私は… |
| ヴィクトル | エル、私からも頼む。彼らにとって時計は大切な物だと知っているだろう? |
| エル | …わかった |
| エル | 隠し場所まで案内するよ。二人共ついてきて |
| ユリウス | ああ |
| ルドガー | …… |
| ルドガー | すまない。時計の事は兄さんに任せてもいいかな |
| ルドガー | 俺は彼に聞きたい事があるんだ |
| ユリウス | …?それなら二人で… |
| ルドガー | 兄さん、頼む |
| ユリウス | …わかった |
| エル | そんなの、ダメ! |
| ヴィクトル | 私は構わないよ |
| エル | ヴィクトル!だって、この状況って… |
| ヴィクトル | エル。わかってるよ |
| ヴィクトル | 大丈夫だ。私は、あのヴィクトルとは違う…それは君がよく知っているだろう? |
| エル | …… |
| エル | …わかった。でも、気を付けてね |
| ヴィクトル | ああ。ありがとう |
| ヴィクトル | さて…立ち話もなんだ。大したもてなしは出来ないが、私の家で話さないか |
| ルドガー | …ああ |
| | 父と相棒 |
| ルドガー | ここが… |
| ヴィクトル | 長閑でいいところだろう?街から離れているのは少し不便だけどね |
| ヴィクトル | さあ、入ってくれ。お茶でも淹れよう── |
| | |
| ヴィクトル | さて、何から話そうか… |
| ルドガー | 単刀直入に聞かせてほしい。ヴィクトル…あなたは分史世界の俺なのか? |
| ヴィクトル | …そうだ |
| ルドガー | …!随分あっさり認めるんだな |
| ヴィクトル | 隠していたつもりはないよ。気付かれるまで名乗るつもりもなかったがね |
| ルドガー | つまり…あなたがこの世界の兄さんや、仲間達を… |
| ヴィクトル | そこまで知っているのか |
| ルドガー | オリジンが教えてくれたんだ。大切な人を守るためにみんなと戦ったって |
| ルドガー | …その大切な人って、もしかして… |
| ヴィクトル | ご察しの通り、私の娘──君と一緒に来たエルの事だよ |
| ルドガー | …エル… |
| ヴィクトル | …君は理解し難い事だろう。だが、これが何度も悩んで出した私の答えなんだ |
| ヴィクトル | 私はエルの父親が娘に下した選択がどうしても理解出来なくてね |
| ルドガー | … |
| ヴィクトル | 彼は…世界を救うために娘を犠牲にする選択をして |
| ヴィクトル | 私はエルを守るために…彼の命を奪った |
| ルドガー | エルもそう言っていた…。彼女を犠牲にするっていうのはどういう事なんだ? |
| ヴィクトル | エルは、クルスニクの鍵だ |
| ルドガー | クルスニクの鍵…? |
| ヴィクトル | クルスニクの鍵は時空を超越する力を持っている |
| ヴィクトル | その力を持つエルを…時空の歪みに閉じ込めれば、全世界のマナの循環に干渉出来る |
| ヴィクトル | つまり他の分史や正史から、対象の世界にマナを送り込む事が出来るんだ |
| ルドガー | それでマナの枯渇は解決するとしてもエルは… |
| ヴィクトル | …人間の肉体には寿命がある。だがマナは永久に送り続けなければならない |
| ヴィクトル | …学者の研究によれば、エルの魂を取り出し、魔導器に閉じ込めれば可能だそうだ |
| ルドガー | そんな… |
| ヴィクトル | 私も今の君と同じ気持ちだった。だから戦い、エルを守った |
| ヴィクトル | その後も私は悩んだ。自分の娘を犠牲にしようとするのはどういう気持ちなのかと… |
| ヴィクトル | 娘のエルが生まれてからもその事について考え続けた |
| ヴィクトル | だが、結局あの世界のルドガーが娘を犠牲にしようとした気持ちは理解出来ない |
| ヴィクトル | いくら考えても、私がエルを犠牲にする選択肢を選ぶ可能性はない |
| ルドガー | だから…エルを犠牲にしようとした人を殺したのか |
| ヴィクトル | 先に強硬手段に出たのは向こうだ |
| ルドガー | それを止めようとした仲間達まで…話し合う事は出来なかったのか? |
| ヴィクトル | 話し合わなかったと思うか?私だってこんな結末は望まなかった |
| ヴィクトル | 元より話し合いも上手くはいってなかったんだ |
| ヴィクトル | 「子どもはまた産めばいい」とまで言われたのだぞ! |
| ヴィクトル | 妻は、もう子を産める身体ではなかったのに…! |
| ルドガー | それは… |
| ヴィクトル | あがきにあがいた末の、これが私の最善だったんだ |
| ルドガー | 最善?兄さんを…仲間を傷つけ、殺して、それが最善だったって言うのか! |
| ヴィクトル | 私にとっては、娘が平穏に暮らせる事が何より重要だ |
| ルドガー | そんな事…!エルが── |
| | |
| エル | むにゃ…ルドガー…? |
| ルドガー | …! |
| ヴィクトル | エル…起きてしまったのかい |
| | |
| エル | うん。話し声が聞こえたから |
| エル | パパとルドガーって声がそっくりだね。一人でおしゃべりしてるのかと思った |
| ルドガー | エル…それは… |
| エル | ルドガー、迎えに来てくれたの?って事は、分史のルドガー見つかったんだ? |
| ルドガー | いや…どう説明すればいいか… |
| ヴィクトル | …私から説明しよう。エルにもいずれ話さなければならない事だからね |
| エル | …?何のこと? |
| エル | パパが、ルドガーだったの!? |
| ヴィクトル | ああ |
| ルドガー | エルは、パパの名前を知らなかったんだな |
| エル | だって、パパはパパだもん。他の人は、ヴィクトルさんって呼ぶし… |
| エル | エルの名前も、エル・メル・マータだし…ルドガーは、クルスニクでしょ? |
| ヴィクトル | エルの名前はママのものなんだ。クルスニク一族だと知られないようにしたかったからね |
| エル | そうだったんだ… |
| ルドガー | エル、平気か…?分史の俺の事もだけど、その…世界を救うために… |
| エル | エルが利用されるかもでしょ?でも、悪い人はパパがやっつけて守ってくれたんだよね! |
| ヴィクトル | …そうだ |
| ルドガー | (悪い人をやっつけた…か…) |
| ルドガー | (ヴィクトルの話し方が上手いのか エルは人が死んだとまでは 思っていないみたいだな) |
| ルドガー | (そしてヴィクトルが ジュードやリタと戦ったとも 思っていない…) |
| ルドガー | (だが、エルにとっても酷な事実を 敢えて伝える必要もないか…) |
| ルドガー | …事情はわかった。でも…今もこの世界はマナ減少が続いてるんだよな |
| ヴィクトル | ああ、その通りだ |
| ルドガー | あなたはこの先、どうするつもりなんだ? |
| ヴィクトル | …エルを犠牲にしなくても世界はまだ救えるかもしれない。その方法を私は見つけたんだ |
| ルドガー | 何だって…?オリジンは、そんな事一言も… |
| ヴィクトル | これはオリジンが人間を見限って遺跡に帰った後に発見した新しい方法だからね |
| ルドガー | それは一体… |
| | |
| ヴィクトル | 君もよく知っている…負の因子を使う方法だ |
| | |
| ルドガー | なっ…!? |
| エル | それって、分史のルドガーが持ってるんだよね?つまり…パパ? |
| ヴィクトル | そう。今まさに実践しているところだよ |
| ルドガー | …キールが言っていた。負の因子がマナを吸収してるって… |
| ルドガー | まさか、それが…! |
| ヴィクトル | さすがキール…負の因子を憑りつかせた甲斐もあった |
| エル | とりつかせたって…パパが? |
| ヴィクトル | …そうだよ |
| ヴィクトル | かつて負の因子を探す旅をした際、負の因子がマナの流れに影響を与える事を知った |
| ヴィクトル | オリジンの審判に失敗した後も、負の因子の解析は続けられ、魔導器の研究に活かされたんだ |
| ヴィクトル | そして最新のマティス式魔導器では負の因子の力の一部を操れるまでになった |
| ヴィクトル | そこで私は、かつてと同じように負の因子を集めた。ただし破壊せず、そのまま持ち帰った |
| ルドガー | そんな事が可能なのか? |
| ヴィクトル | クルスニクの鍵の力を応用すればな。そのために、かつて相棒として共に旅したエルに手伝ってもらった |
| エル | もう一人のエル…パパのアイボー… |
| ルドガー | あのエルも、クルスニクの鍵なのか…! |
| ヴィクトル | そうだ。そうして集めた負の因子を改造した |
| ヴィクトル | 憑りついた者の世界のマナを、この世界へと送るようにね |
| ルドガー | それじゃあ、スレイも、キールも、ルークもみんな…おかしくなったのはあなたの仕業か! |
| ヴィクトル | そうだ。負の因子が強く影響を出せるよう彼らに助言もした |
| ルドガー | そんな事まで…! |
| エル | パパ…そんな… |
| ルドガー | …一つ、わからない事がある。負の因子がこの世界にマナを送るためのものだとすれば… |
| ルドガー | この世界の俺…つまりあなたに負の因子がついているのは、何故だ |
| ヴィクトル | 私は受信機だ。各世界から送り出されたマナを私の負の因子が受け取っている |
| ルドガー | それじゃあ、そのためにわざと自分に負の因子を…!? |
| ヴィクトル | さっきも言った通り、負の因子は魔導器で制御出来る。大した問題ではない |
| ヴィクトル | 私のこの仮面には負の因子の影響を抑える術式が組み込まれているんだ |
| ルドガー | 負の因子の影響を抑える…そうか、リタが言っていた未知の術式… |
| ヴィクトル | 君の世界では、未知の技術だろう |
| ヴィクトル | もっとも、この世界でもまだ完璧とは言えない |
| ヴィクトル | この術式を発動させ続けるには身体への負担が大きくてね |
| エル | あ…。だからあのとき、急に苦しそうだったの? |
| ヴィクトル | ああ。心配かけたね。でも、まだ大丈夫… |
| ヴィクトル | 私がこうして生きている間は、世界と、大切なエルを守る事が出来る |
| エル | でも…でも…!パパが苦しいんでしょ!? |
| ヴィクトル | それでもいいんだ…エル、お前を犠牲にするより…ずっと |
| ルドガー | っ…! |
| ヴィクトル | 今、私が負の因子を使ってやっている事はクルスニクの鍵の代用品に他ならない |
| ヴィクトル | 他の世界を犠牲にし、私自身の命を削り、それでもマナの供給効率は悪い… |
| ヴィクトル | だが…エルを守れるのなら、そんな事、取るに足らない問題だ |
| エル | パパ… |
| ヴィクトル | 私の命で代用している間に世界を復活しきるか、それとも別の画期的な策が見つかるか… |
| ヴィクトル | どちらにせよ、エルも世界も犠牲にならない方法は、これしかないんだ… |
| ルドガー | それでも…間違ってる |
| ルドガー | 確かにあなたにとってエルは何ものにも代えがたい大事な存在だろう |
| ルドガー | でも!スレイを案じるミクリオの友情や! |
| ルドガー | メルディのために全てを賭けたキールの想い! |
| ルドガー | お互いを信じ切磋琢磨し続けたルークとアッシュの絆! |
| ルドガー | そのどれ一つとして犠牲にしていいはずがないんだ! |
| エル | …それに、エルパパが苦しむのも嫌だよ |
| ルドガー | ヴィクトル…他の方法を探そう。俺や…正史のみんなにも頼んで協力する |
| ヴィクトル | 他の方法などない! |
| ヴィクトル | 私だって他の方法があると信じていた! |
| ヴィクトル | だから私は、探し回ったんだ!あらゆる世界を旅して、様々な可能性を検討した |
| ヴィクトル | 誰も傷つけない…誰も不幸にならない…そんな方法を求め続けていた |
| ヴィクトル | だが、答えは見つからなかった…。どこにも…どんな世界にもなかった! |
| ヴィクトル | そうしている間にも理想を追い求める時間は減り、刻一刻と世界の終わりが近付く |
| ヴィクトル | だったら犠牲にするのは無関係の世界と自分自身だけでいい!これが精一杯だったんだ!! |
| ルドガー | そんなの… |
| エル | ダメだよ! |
| ヴィクトル | エル…? |
| エル | パパいつもエルに言ってるでしょ。人からされていやなことは、人にしちゃダメだって |
| エル | パパもみんなも苦しいの、エルは嬉しくない! |
| エル | こんなこと、やめてよ、パパ! |
| ヴィクトル | エル… |
| ヴィクトル | お前も私を認めてくれないのか…?いつも何でもパパの言う事を聞いてくれた、エルが… |
| エル | エル、パパの言うこと聞くよ |
| エル | でもこれは、ルドガーの方が正しいって思う |
| ヴィクトル | 私より…ルドガーを信じるというのか… |
| エル | …パパ? |
| ルドガー | そういう話じゃない。エルは自分で考えて意見を言ってるだけだ |
| エル | …そうだよ。パパ、何か、ヘン |
| ヴィクトル | 私よりルドガーの方が…エルの事を…わかっていると… |
| | |
| ヴィクトル | そうだ…あの時も、エルは…父親を殺した私を受け入れた |
| ヴィクトル | 一緒に冒険を重ねると…父親よりも相棒を取るのか、エル… |
| | |
| エル | 黒いモヤ…! |
| ルドガー | 負の因子…!自身を制御出来なくなっているのか |
| エル | そんな…!パパ…! |
| ルドガー | エル、危ない!安全なところに隠れるんだ |
| エル | 安全なところって…ルドガー、どうするの!? |
| ルドガー | 冷静になってもらうだけだ!エル、俺に任せてくれ |
| エル | う、うん!わかった! |
| ヴィクトル | エル…!エルが、離れて行く…! |
| ヴィクトル | どうして俺よりそいつを選ぶんだ…! |
| ルドガー | 制御が出来ていない…?今まで抑えつけていた反動か…!? |
| ヴィクトル | エルを…エルを返せッ!!! |
| scene1 | 決戦!骸殻VS骸殻 |
| ヴィクトル | エルを返せ、ルドガー! |
| | ドカッ |
| ルドガー | くっ…! |
| | ドカアアァァン!!! |
| | |
| | パラパラパラ… |
| ルドガー | ぐうっ…なんて力だ…壁を突き破るなんて…! |
| エル | ルドガー!! |
| ルドガー | 来ちゃダメだ、エル! |
| エル | で、でも…!! |
| ヴィクトル | うおおぉぉぉっ!! |
| | ガキィン! |
| ルドガー | ぐっ…!兄さんの言った通り、とんでもない強さだ…! |
| ヴィクトル | どうした!そんなものか! |
| ヴィクトル | エルを守るのは、この私だっ! |
| | ギィンッ! |
| ルドガー | くっ…!落ち着けヴィクトル!目を覚ませ!! |
| ルドガー | 衝動に吞まれるな!それこそエルを危険に晒すぞ! |
| ヴィクトル | 黙れ!! |
| ルドガー | …!?その姿は…! |
| ヴィクトル | その程度で、エルを守れるかぁぁぁっ!! |
| | ドゴォッ! |
| ルドガー | ぐっ…! |
| ヴィクトル | お前は弱い!力も!意思も! |
| | ドカッ! |
| ルドガー | うぐっ…! |
| ヴィクトル | 理想だけでエルを!世界を守れるなら! |
| ヴィクトル | 今ここでやって見せろ! |
| | ガンッ! |
| ルドガー | ぐぁぁっ…! |
| ヴィクトル | それが出来ないなら!ここで死ね! |
| エル | ダメえええぇぇぇっ!! |
| ルドガー | うおおおおおっ!! |
| | ガギギィィンッ…!! |
| ルドガー | はぁ、はぁ…この力は…! |
| ルドガー | なんで、時計がないのに… |
| ヴィクトル | お前のそれはエルの力だ!そんな道理もわからずに! |
| | ドガッ! |
| ルドガー | ぐぅっ…! |
| ヴィクトル | 別の道があるだと!?みんな助かる方法を探せだと!! |
| ヴィクトル | それは!選択する事を諦めただけだ! |
| ヴィクトル | 何も選ばず、何かを守れると思うな! |
| ルドガー | 違う!俺は、選ばないんじゃない! |
| ルドガー | 何一つ、諦めたくないんだ! |
| | ブンッ! |
| ヴィクトル | …! |
| ルドガー | 避けられた…!? |
| ヴィクトル | 所詮、その程度だ! |
| ヴィクトル | 邪魔をするな! |
| | ガギィッ! |
| ヴィクトル | 何っ…! |
| ユリウス | 弟が世話になったな |
| ルドガー | 兄さん…! |
| ユリウス | 全く、話し合いをするんじゃなかったのか…? |
| ルドガー | そのつもりだったんだけど… |
| ユリウス | 何故その姿になれているのかわからないが…お前の時計も返してもらったぞ |
| ルドガー | ああ |
| エル | …やっぱり、戦う事になったんだ。このままじゃ、ヴィクトルは… |
| ルドガー | エル…。ヴィクトルを守るためにまた俺達と戦うのか…? |
| エル | …ううん。前に私と戦った時、あなた達は言ったよね |
| エル | 傷つけないために戦うって |
| ルドガー | ああ |
| エル | 私もそうする。ヴィクトルをあのままにしておけない |
| エル | それに、二人が全力で戦ったらあの歴史を繰り返して…ヴィクトルを殺すかもしれない |
| エル | だったら…私が、ヴィクトルを死なせないように押さえつける! |
| ルドガー | …わかった。確かに加減して戦える相手じゃない…エルの言う通りだ |
| ヴィクトル | エル…お前まで、俺を裏切るのか… |
| エル | 違う!ヴィクトル…私はあなたを絶対に裏切らない! |
| エル | アイボーだから!あなたを守りたいし、間違ってたら止めるの! |
| ヴィクトル | 私が間違っている…? |
| エル | そうだよ!今、怒りのままにルドガーを殺したら、全部無駄になる! |
| ルドガー | …? |
| エル | だから、落ち着いてヴィクトル…!そのまま暴走を続ければヴィクトルの命が危ないんだよ! |
| エル | またあの時と同じ事を繰り返すのは嫌だよ…! |
| ヴィクトル | あの時…あの、時…?う、うぅっ…!! |
| エル | パパ…!何だか苦しそう…!パパに何言ったの!? |
| エル | 信じて!今はヴィクトルの理性に賭けるしかないの |
| エル | パパ…! |
| エル | とにかくここは危険だから、あなたは安全な場所に避難して! |
| エル | あなたが傷ついたらヴィクトルが悲しむから |
| エル | っ…わかった |
| ヴィクトル | お前は…私から何もかもを奪うのか、ルドガー! |
| ユリウス | …理性が負けたようだな |
| エル | まだ!ヴィクトルはこんな衝動に負ける人じゃない! |
| エル | ヴィクトルは間違えない!いつでも正しい選択をするの!だから… |
| エル | 負の因子の衝動なんかに負けるはずない!そうでしょ、ヴィクトル! |
| ヴィクトル | うぅっ…ぐぐぐっ…エル…私は… |
| ユリウス | 動きが鈍った! |
| エル | その調子だよ、ヴィクトル。あとは私に任せて |
| エル | あなたは私が絶対に守る!だって私はヴィクトルのアイボーだから! |
| エル | ルドガー、手伝って! |
| ルドガー | ああ! |
| ヴィクトル | 返せ…!私の全てを返せ、ルドガー!! |
| scene2 | 決戦!骸殻VS骸殻 |
| ヴィクトル | ぐっ… |
| エル | はぁ、はぁ…ヴィクトル、落ち着いた? |
| ヴィクトル | この程度で、私は…!私はぁぁぁぁっ! |
| ユリウス | もうやめろ!その状態で戦い続ければお前の命も危ないだろう! |
| ヴィクトル | なら、これで決着をつけるまでだ! |
| ルドガー | くっ…!わかった、受けてやる! |
| エル | …!待って、やめて…! |
| ヴィクトル | ルドガアアァァッ!! |
| ルドガー | うおおおおぉぉッ!!! |
| | |
| エル・エル | やめてぇぇぇぇぇっ!! |
| | |
| ヴィクトル | なっ…! |
| ルドガー | 危ない…! |
| | ドカッ── |
| | |
| ルドガー | エル! |
| | |
| エル | くっ…痛ったたた…間一髪だったね… |
| エル | うぅ…怖かった… |
| ルドガー | 二人共!怪我はないか? |
| エル | 私は問題ないよ。それより… |
| エル | パパ…!大丈夫!? |
| ヴィクトル | あ、ああ…心配は、いらないよ… |
| ルドガー | 力を使い果たしたのか… |
| ヴィクトル | 二人共…危ないじゃ、ないか… |
| エル | だって…!パパもルドガーも、何だか本気だったし |
| エル | そうだよ。ルドガーにもヴィクトルにも…どっちにも死んでほしくないよ |
| ヴィクトル | 私を見限って、ルドガーに…ついたのでは… |
| エル | そんな…そんなわけ、ないよ…! |
| ヴィクトル | だが…お前は、俺の事を…間違ってると… |
| エル | 間違ってる…でも…パパ、だもん |
| エル | エルの、とっても大事な…大好きなパパ…! |
| ヴィクトル | …!エル…膝を擦りむいてるじゃないか! |
| エル | あっ、ほんとだ…。でもこのぐらい、平気だよ!パパが無事だった方が大切! |
| ヴィクトル | …エルを守るつもりで…エルに怪我を… |
| ヴィクトル | 私は…! |
| ルドガー | …!また負の因子が…! |
| ユリウス | いや、待て…!よく見ろ!! |
| ヴィクトル | エル…二度と、傷つけない… |
| ヴィクトル | 絶対に…守る…! |
| ルドガー | 負の因子を…制御している…!? |
| | 巣立ちの時 |
| ヴィクトル | くっ…はぁ…はぁ… |
| ルドガー | 驚いたな。仮面の助けがあるとはいえ、衝動に打ち克つ事が出来るなんて… |
| ヴィクトル | とはいえ…長く保っていられはしない… |
| ヴィクトル | 私が抑えている間に…負の因子を… |
| ルドガー | …ああ、わかった |
| エル | … |
| | チャキッ |
| エル | ルドガー、違うよ! |
| ルドガー | エル…? |
| エル | 二人共、手、出して! |
| エル | こうして、こうして…はい、握手! |
| | ぎゅっ |
| | |
| ヴィクトル | …! |
| ルドガー | これは…! |
| | |
| ヴィクトル | 負の因子が…道標へと変異し、お前に宿ったんだ |
| ルドガー | 道標が…俺にも… |
| | ヒュンッ |
| ルドガー | …!時空の裂け目…! |
| ユリウス | 確か時空の裂け目は道標を宿した者がルドガーに触れると現れると言っていたな |
| ユリウス | 今、ルドガー自身が道標を宿した…。だから同時に裂け目が開いたのか |
| ルドガー | そういう事か…。言われてみれば当然だけど、いきなりだと驚くな |
| エル | 時空の裂け目か…何だか懐かしいね。昔、一緒に冒険した事を思い出すよ |
| ヴィクトル | ああ…そうだな。しかし、私もかつて道標を集めたがあんな方法は初めてだ |
| ヴィクトル | エル、どうして知っていたんだい? |
| エル | 他の世界で見たんだよ。叩いたりしなくても、仲良くギュッてすればいいの! |
| ルドガー | キールとメルディがそうだったな。なるほど、握手でもいいのか… |
| ヴィクトル | …負の因子を破壊する方法は、力を消耗させ、狂気の元となる感情を崩した瞬間に力を加える… |
| ヴィクトル | 今回は私の骸殻で力の消耗が激しかった上、術式で負の因子を抑えていた事も効いたのだろうが… |
| ヴィクトル | こんな方法で破壊出来るとは思わなかった… |
| ルドガー | …ヴィクトル。俺もあなたも、知らない事がきっとたくさんあるんだ |
| ルドガー | こうして人を傷つけずに負の因子を破壊する方法があったように… |
| ルドガー | 何も犠牲にせずこの世界を救う方法がきっとどこかにある |
| ヴィクトル | … |
| エル | 言われちゃったね、ヴィクトル |
| ヴィクトル | …そうだな。数多の世界を調べて回っても見つからなかったが… |
| ヴィクトル | 次の世界では見つかるかもしれない。そういう気持ちを忘れていたように思うよ |
| エル | これで…もうヴィクトルとルドガーは戦わなくていいんだよね? |
| ヴィクトル | ああ… |
| エル | よかった…ヴィクトルがちゃんと生きてる!本当に無事でよかった |
| エル | …そういえば、この人誰?あなたもエルって呼ばれてる気がするんだけど… |
| エル | …えへへ。私はエルだよ |
| エル | えっ、同じ名前!? |
| エル | そうじゃなくて…何て言えばいいのかな… |
| ヴィクトル | 彼女は、私がかつて一緒に冒険した相棒のエルだ。ルドガーにとってのエルと同じさ |
| エル | んんん…?えっと、パパのアイボーで…ルドガーのアイボーはエルで… |
| ルドガー | 簡単に言うと、10年後の未来のエルだ。別の世界の、だけどね |
| エル | そうなの!?すごー! |
| エル | よろしくね、10年前の私。あなたは幸せになるんだよ |
| エル | うん!おとなのエル、すごく美人だね!エルもそういう風になれる? |
| エル | なれるけど、簡単じゃないよ。美容にも結構気を使ってるんだから |
| エル | わかった!エル、ビヨーに気を使う! |
| ルドガー | こうして見ていると姉妹みたいだな |
| ヴィクトル | ああ… |
| ルドガー | …あの二人が生きるこの世界を俺も守りたい… |
| ルドガー | 俺達の世界に戻ったら、この世界を救う方法はないか、みんなと相談してみるよ |
| ヴィクトル | …ありがとう。私ももう一度、方法を探してみるとしよう |
| ルドガー | ああ |
| | |
| ルドガー | …それじゃあ、帰ろうか。兄さん |
| ユリウス | いいのか?エルは… |
| ルドガー | エルにとっては、ここが自分の世界だ。だから… |
| ユリウス | …別れの挨拶はしないのか? |
| ルドガー | 挨拶すると、辛くなる。それに、エルならきっと── |
| | |
| エル | ついて行く! |
| ルドガー | …!エル、聞いていたのか |
| | |
| エル | ルドガーひどい!アイボーを置いて行こうとするなんて! |
| ルドガー | そう言うと思ったから黙って行こうとしたんだ… |
| ルドガー | せっかくパパに会えたのに、また離れ離れになるんだぞ? |
| エル | それは… |
| エル | … |
| エル | パパ… |
| エル | エル、パパと一緒にいたい。けど… |
| エル | ルドガーの手助けもしたい。ルドガーは、アイボーだから |
| ヴィクトル | エル… |
| ルドガー | エル、無理しなくても… |
| エル | 無理なんかしてない!けど…確かにパパの事も…うーん… |
| エル | エル、難しく考えなくていいよ。エルはどう思う? |
| エル | …エルは… |
| エル | パパ… |
| ヴィクトル | …… |
| エル | エルね、ルドガーと一緒に最後まで冒険したい! |
| ヴィクトル | エル…そうか… |
| エル | でも!エル、どこにいてもパパが、一番、大好きだよ! |
| ヴィクトル | …エル…私は… |
| ユリウス | …… |
| ユリウス | 離れるのは辛いし心配だろう。だが、旅をする事でしか、得られない経験もある |
| ユリウス | 信じて送り出してやるのも、家族の務めだ |
| ヴィクトル | …ああ、そうだな |
| ヴィクトル | エル、パパもエルの事が大好きだ。どんなに離れていたって、いつもエルの事を想ってる |
| ヴィクトル | だから、安心して行ってきなさい |
| エル | …うん!行ってきます! |
| ヴィクトル | ルドガー。娘を、よろしく頼むよ |
| ルドガー | …!はい! |
| | 世界の楔 |
| | ヒュンッ |
| リタ | わっ!? |
| キール | 時空の裂け目!?もしかして… |
| エル | とうちゃーく! |
| ルドガー | 無事に戻って来られたな |
| キール | エル!ルドガー!それに… |
| ユリウス | ここは…正史世界か?見覚えのない場所だが… |
| リタ | もしかして…あんたがユリウス?えっ、何で!? |
| ルドガー | 何があったか、説明するよ |
| リタ | そう…あの時の世界再生が上手く行かなかった世界だったのね |
| リタ | 分史世界にはクロノスがいない分、力が足りなかったのかしら |
| ユリウス | なるほど…あり得る話だな |
| キール | それにしても、エルの出自に、マティス式魔導器に負の因子の真実… |
| キール | 新しい情報が多過ぎだ。そこから導き出される事もかなり多い… |
| キール | あらゆる研究が進展するぞ…どこから手を付ければいいのかわからないぐらいだ! |
| リタ | 嬉しい悲鳴って感じね |
| キール | …とりわけ大きな情報は、マナの減少の原因がはっきりわかった事だな |
| キール | 負の因子を改造し、新型の魔導器で操っていたなんて…ぼく達には解析出来ないわけだ |
| ルドガー | …それから、二人に相談したい事があるんだ |
| ルドガー | 実は俺達の行った世界は、滅びようとしてて── |
| | |
| | ビー、ビー、ビー |
| | |
| エル | わっ、何!? |
| キール | 異変を観測する装置だ!この近くで何か起こる予兆── |
| | ゴゴゴゴゴ!!!! |
| ルドガー | …地震! |
| エル | わわわっ! |
| リタ | これが異変!?でも、こんな規模って… |
| ユリウス | みんな、しゃがむんだ!頭を守れ!! |
| | |
| ミクリオ | スレイ、どうだった? |
| スレイ | 問題ないよ。ライラが紹介してくれた天族がこの村に加護を与えてくれるってさ |
| スレイ | 後は村の人達が建物を元に戻すだけだ。オレも手伝いたいけど… |
| ミクリオ | 気持ちはわかるが、今は先を急がないとね |
| ミクリオ | 何せ世界中の土地を回って、天族の加護を取り戻さないといけないんだから |
| スレイ | けど、オレのせいで壊れた建物なんだ。ちょっとぐらい役に立ちたいよ |
| スレイ | ミクリオ、ごめん。やっぱり、ちょっとだけ手伝ってくる |
| ミクリオ | あっ、スレイ…! |
| ミクリオ | 全く…仕方ないな。僕も手伝うか。その方が早く── |
| | |
| | ゴゴゴゴゴ!!!! |
| | |
| スレイ | …!地震!? |
| スレイ | そんな…だってここに加護を与えてくれてるのは地の天族… |
| ミクリオ | スレイ!これはただの地震じゃない!異常なマナの乱れを感じる! |
| スレイ | マナ…?まさか… |
| ミクリオ | 何だ、これは…! |
| スレイ | ミクリオ!? |
| ミクリオ | スレイ…!! |
| スレイ | ミクリオ!! |
| | |
| | ビー、ビー、ビー |
| キール | この反応は…! |
| メルディ | バイバ!キール、これ何の音か!? |
| キール | 時空間に大きな乱れが発生しているんだ! |
| メルディ | 何か起こるか? |
| キール | 詳しい事はわからないが…メルディ!近くの物に掴まれ! |
| メルディ | えっ…? |
| | |
| | ゴゴゴゴゴゴゴ… |
| メルディ | バイバ!? |
| キール | これは地震じゃない…時空に生じた異常で、空間そのものが揺れているんだ! |
| | |
| キール | その異常の中心は、メルディ、おまえだ…! |
| メルディ | …!メルディ、どうなるか? |
| キール | 別の時空へ飛ばされるかもしれない!この世界の物に掴まっていても無駄だ… |
| キール | メルディ!ぼくの手を握れ! |
| メルディ | はいな! |
| | ガシッ |
| キール | これなら…例え別の世界に行くとしてもぼく達は一緒だ! |
| メルディ | キール…!でも、キールも危ない… |
| キール | 構うもんか!いいか、この手は絶対に放さないからな! |
| メルディ | …!うん… |
| メルディ | バイバ…! |
| キール | 何っ…!まさか、これは… |
| キール | しまった!時空の変化はメルディの内側から…! |
| メルディ | キールっ!!! |
| キール | メルディ…!待て! |
| キール | メルディーーーっ!! |
| | |
| ルーク | 次は…ア・ジュールの大使館か。親善大使って忙しいんだな |
| アッシュ | 当たり前だ。手分けすれば仕事は半分になるぞ |
| ルーク | そうは言ってもな…。俺一人で行ったら嫌な顔する大使や大臣もいるからさ |
| アッシュ | フンッ、甘い考えだな。国を代表する親善大使を名乗るなら成果を挙げて一人前だと認めさせろ |
| ルーク | わかったよ。…とか言いつつ、しっかりついて来てくれるんだよな |
| アッシュ | …お前の言う通りだ。確かに俺も甘かったな。ここで帰らせてもらう |
| ルーク | 待った待った!本気にすんなって!せっかくなんだ、一緒に行こうぜ |
| アッシュ | 全く── |
| | |
| | ゴゴゴゴゴゴゴ!! |
| | |
| ルーク | うおっ!?じ、地震か!? |
| アッシュ | …大きいな。それに、妙な感じが… |
| アッシュ | …!これは… |
| ルーク | アッシュ!? |
| アッシュ | …… |
| アッシュ | ルーク。やはりこの先は一人で行ってもらう事になりそうだ |
| ルーク | 一人でって…アッシュ、お前は… |
| アッシュ | 俺の事は心配するな。それよりも親善大使の役目を果たす事だけを考えろ |
| アッシュ | ……。お前なら、一人でも── |
| ルーク | アッシュ…! |
| ルーク | き、消えちまった…何だよ、いきなり! |
| ルーク | 意味わかんねぇっつーの! |
| ルーク | けど…俺一人で、親善大使の役目、立派に果たせばいいんだろ…! |
| ルーク | こっちは心配すんなよ、アッシュ! |
| | |
| ルドガー | …止まったのか? |
| キール | そのようだが…観測装置は反応し続けている。まだ何か… |
| | |
| エル | わっ、まぶしい! |
| リタ | 何よ、この光…! |
| ??? | 何が起こっているんだ!?スレイは… |
| ??? | バイバ!キール… |
| ??? | … |
| ルドガー | …! |
| | |
| ミクリオ | 光が収まった… |
| メルディ | ここは… |
| アッシュ | …見慣れない場所だな |
| ルドガー | ミクリオ!メルディ!アッシュ! |
| ミクリオ | ルドガー!? |
| アッシュ | …?どうなっている? |
| キール | メルディ!?何でここに!? |
| メルディ | キール!よかった、一緒に来られたか!? |
| キール | な、何の話だ!?それに、その服装は一体… |
| メルディ | …?キール、メルディが知ってるキール違う |
| エル | もしかして…お姫様のメルディ!? |
| メルディ | あっ、エル!元気してたか!? |
| ルドガー | やっぱり…分史のみんな、だよな…? |
| ミクリオ | ここは…ルドガー達の世界なのか? |
| ルドガー | さっきの異変でみんなここに来たのか…一体どういう事なんだ…? |
| ユリウス | わからない… |
| ユリウス | そもそも骸殻能力を持つ者がいなければ世界を超える事自体、出来ないはず… |
| ルドガー | あの時…クロノスが暴走した時も、時空の裂け目が開いてみんなが世界を移動したけど… |
| ユリウス | クロノス… |
| ユリウス | …!そうか!オリジンの審判だ! |
| ユリウス | これで四つの道標が正史世界に揃った事になる! |
| ルドガー | そうか…!という事は… |
| | |
| | ビー、ビー、ビー |
| エル | わっ、また!? |
| キール | さっきとは別の反応だ!だけど、とても大きい… |
| リタ | また地震でも起きるの!? |
| | |
| キール | わからないが…影響範囲は…世界中!? |
| ルドガー | 世界規模の異変だって…!? |
| キール | 発生の中心点は、バロニア郊外…すぐ近くだ! |
| ユリウス | ここに道標が揃った事と何か関係があるかも知れないな… |
| ルドガー | 見に行こう。悪いけど、三人もついて来てくれ |
| アッシュ | …仕方ない。だが、説明はしてもらうぞ |
| ミクリオ | 全てが突然すぎて理解が追いつかないからね |
| メルディ | メルディも混乱してるよぅ |
| ルドガー | わかった。行きながら事情を話すよ |
| ルドガー | みんなに宿った道標の事…それに負の因子をみんなの世界に持ち込んだ、もう一人の俺の事も |
| | |
| キール | 観測装置の示す座標はこの辺りだが… |
| ルドガー | …!見てくれ、あそこ…! |
| | |
| | |
| | ヒュン |
| | |
| エル | 時空の裂け目! |
| ルドガー | いや、何だか様子が違う…あれは… |
| ??? | 「世界の楔」に通じる道だよ |
| ルドガー | …!あなたは…! |
| | |
| ロンドリーネ | あれが、ダオスが言ってた世界の楔への道…? |
| ダオス | やつらにたどり着かせるわけにはいかぬ… |
| ロンドリーネ | …どうするつもりなの? |
| ダオス | 止めるのだ。世界の終わりを |