NameDialogue
異変の兆候
店主どうです、お味は?
ルーク美味い!「ルークまんじゅう」って言うからには味もよくないとな!
ミュウご主人様のお顔のまんじゅう、とっても美味しそうですの~!
店主お墨付きをいただけて光栄です。試作を繰り返した甲斐があります…!
ルークこれなら、ガイアスまんじゅうやリチャードまんじゅうより人気出ちまうかもな!
ルーク…ところで、どうして俺なんだ?他の国では王のまんじゅうを作ってるだろ?
店主ルーク様は我が国の親善大使ですからこれから各国でもっとお顔を知られ有名になられる事でしょう
店主あなた様の上昇傾向にある人気にあやかりたいのです
ルークへへ、なるほどな。いいぜ!それじゃあ正式に「ルークまんじゅう」を認めてやるよ
店主ありがとうございます!量産体制を整えたら、すぐにでも大々的に売り出します!
ルークああ。応援してるぜ!それじゃあな!
ミュウ応援してますですのー!
店主どうぞ、今後ともご贔屓にー!
店主ふう。緊張した。しかしこれで俺の商売も上手く──
店主…ん?何だこのまんじゅう…
店主誰の顔だ?入れ物にはルークまんじゅうって書いてあるけど…
店主ルーク…?聞いた事のない名前だな…
ルークいやー、まんじゅうまで作られるなんて俺も人気者になったもんだな!
ミュウ……
ルークん?どうした、黙っちまって
ミュウ……
ルークおい、ブタザル。…おい
ミュウ……
ルーク聞こえてねぇのか!?ブタザル!
ミュウみゅ…?もしかしてボクに言ってるんですの?
ルーク当たり前だろ!他に誰がいんだよ!?
ミュウ違うですの。ボクはブタザルじゃなくてミュウって言うですの
ルークな、なんだよ、急に。今更、気に食わねぇってか?ずっとこう呼んできたじゃねぇかよ
ミュウずっと…?…そういえばボクの事をそう呼ぶ人がいた気がするですの…
ミュウ……みゅ?ご主人様ですの!
ルークはあ?何言ってんだよ
ミュウごめんなさいですの。ボク、どうしてかご主人様が誰かわからなかったですの…
ルーク何だそれ。まぁいいけどよ…おまえだけじゃなく、最近こういう事がたまにあるんだよな
ルーク声かけてんのにボーッとして聞いてなかったり俺に気付かなかったり…
ミュウみゅうぅ…。ボクはもうしないですの。約束ですの
ミュウもしみんながご主人様に気付かなくてもボクだけは、お返事しますの
ルーク大げさなんだよ。みんなが気付かないなんて事あるわけねぇだろ
ミュウみゅうぅぅ…
???あら…?
ティアミュウ!ここにいたの
ミュウあっ、ティアさんですの!
ルークよう、ティア。おまえも散歩か?
ティア…?ミュウ、こちらの方は…?
ルークは?おい、何言ってんだ。俺だよ、俺!
ミュウご主人様ですの!
ティアご主人様…?
ルークおまえ、まさかさっきの俺達の話を聞いててわざとやってるんじゃないだろうな?
ティア…さっきの話?何の事かわからないけれどふざけているつもりはないわ
ティア私はルークを捜していたら遠くから見えたから、それで…
ティアえ、あ…ルーク!そう、あなたルークよね…!
ルークだから俺だっつってんだろ
ティアごめんなさい。どうしてかしら…私、あなたの事がわからなくて…
ミュウティアさんもですの?ボクもさっき、同じような事があったですの
ルークおまえらちょっと変だぜ。医者に診てもらった方がいいんじゃねぇか
ティア…そうね。疲れてるだけならいいのだけど…
ルークで、捜してたって言ってたけど何か用か?
ティアそうだったわ。ルーク、国王陛下がお呼びよ。何か大事な用件だと仰っていたわ
ルーク伯父上が?一体何だろう…親善大使としての仕事か何かか?
ティアそうかもしれないわ。今は異変の対策で各国と協力体制を取ろうとしている時だから…
ルークあー。昨日、ルドガーが城に来てたやつか。異変の兆候があるから調査したいって
ティアええ。その時、ウィンドルでまとめられた異変の調査書を持ってきてくれたの
ルーク国を跨いで情報交換か。そりゃ確かに、親善大使の出番かもしんねぇな
ルークしかしルドガーも大変だよな。異変の調査をしながら、国同士の橋渡しもしてんだもんな
ティアええ、とても忙しそうだったわね。昨日もあまり話せなかった──
ティア…あっ!
ルーク何だ?急に大きな声出して
ティアねぇ、ルーク。昨日ルドガーと会った時に、話した事を覚えてる?
ルークあー…異変は自然災害だけでなく人にも起こるとか何とか…分史世界の影響だっけか?
ティアそうよ。分史世界にある負の因子というものの影響で、正史世界の人に異変が起こる
ティアだから、おかしな現象に心当たりがあったら教えてほしいって言われたわよね
ルーク…つまり何が言いてぇんだ?
ティアさっき、あなたの事を忘れてしまっていた事がその異変なんじゃないかしら
ティアだって、疲れて頭が回らないのとは全然違う感じだったもの。もっと超常的な何かに思えたわ
ルーク…考えすぎだろ?
ティアそうかも知れない…。でも何だかすごく嫌な予感がするから念のためルドガーに話してみるわ
ルークわかったよ。たしか街の宿屋に滞在してるんだよな。俺とミュウも一緒に行くぜ
ティア待って。ルークは陛下のところに行くのが先よ
ルークっと、そうだった。んじゃ、ルドガーのとこにはティアとミュウで行ってくれ
ルークミュウも俺の事忘れてたんだ。異変が起こってるとしたら二人共だろ
ミュウみゅう…怖いですの
ティア…大丈夫よ。ルドガーに相談してみましょう
ルークそれじゃあ俺は伯父上の用が済んだら合流するから、ルドガーと一緒に宿で待っててくれ
ティアわかったわ。それじゃあ、また後でね
ルーク伯父上。お話と言うのは?
インゴベルト六世うむ。突然呼び出してすまなかったな
インゴベルト六世…この話は、もしかするとおまえを困らせてしまうだけやも知れん…
インゴベルト六世だが、いずれ伝えねばならん事だ。最近のおまえは成長著しい…そろそろ話してもよいだろう
ルーク成長…ですか
インゴベルト六世うむ。おまえは親善大使として各国首脳陣との関係作りに貢献した
インゴベルト六世またアヴァロン島でも成果を上げ、今やキムラスカの顔としての地位を確立しつつある
インゴベルト六世最初、勝手に親善大使を名乗って国を出たり、シルヴァラントの神子を誘拐するという大罪を犯したが…
インゴベルト六世それを払拭して余りある活躍をしていると認めてよいだろう
インゴベルト六世ヴァンという大罪人を輩出した我が国が、今でも四大国たりえるのもおまえの活躍あってのものだ
インゴベルト六世おまえは様々な経験を通して人としての器を大きく成長させた。今のおまえになら真実を話せる
ルーク真実…?何か隠してたって言うんですか?
インゴベルト六世ああ。だが仕方なかったのだ。これは王位にも関わる事…おいそれと外に漏らす事は出来ぬでな
ルーク王位に関わる隠し事…まさか、伯父上…どこかお身体が…
インゴベルト六世早まるな。わしはまだ死なん
インゴベルト六世これからする話は王位継承権に深く関わりのある事…おまえの出生についてだ
ルーク俺の、出生…?
インゴベルト六世うむ。ここからが本題だ。心して聞くがよい
インゴベルト六世ルークよ、実はおまえには──
ルーク俺には…?
インゴベルト六世……
ルーク……
ルーク伯父上、あの…?
インゴベルト六世…誰…だ?今…わしは、おまえと話しておったのか…?
ルークどうしたんですか、急に。しっかりしてください
ルーク王位継承権にも関わる大事な話だって伯父上が言ったんですよ
インゴベルト六世王位継承…?そのような話を、見知らぬ者にするはずがないだろう
ルーク見知らぬって…
ルーク俺の事がわからないんですか?甥のルークです!
インゴベルト六世そうか、その顔に髪形…我が甥に似せたつもりか!だが甥はルークなどという名ではない
ルークえっ…?それって、どういう…
インゴベルト六世衛兵!誰かおらぬか!侵入者だ!
ルーク伯父上…!
バタンッ!
衛兵1陛下!ご無事ですか!
衛兵2おのれ侵入者!覚悟しろ!
ルークおまえらまで…!みんな俺の事がわかんねぇのかよ!
ルーク…まさかミュウやティアと同じ事が城のみんなに起こってんのか…!?
インゴベルト六世よいか!生きたまま捕え、目的を吐かせよ!仲間がおるやもしれんからな!
衛兵1はっ!
ルーク捕まってたまるかよ!
衛兵2くっ、逃がすか!待て!
タッタッタッタッ…
衛兵1くそっ、見失ったか!
衛兵2城の構造に精通しているようだった。綿密な計画があったに違いない
衛兵1兵を集め、人海戦術で街を捜索する。おまえは目撃者を捜してくれ
衛兵2了解!
タッタッタッタッ…
ルーク…行ったか。でも、このままじゃその内捕まっちまうな
ルークこのままティアと合流するか。これが分史世界の影響だって言うならルドガーに話すしかねぇだろうし…
???…こんなところで何してるんだ?
ルークガイじゃねぇか!よかった、困ってたんだ!
ガイん?おまえ、どうして俺の名前を知ってるんだ?
ルークなっ…おまえもかよ!おまえは、俺の教育係だろ!?
ガイ俺がおまえの教育係…?誰かと勘違いしてるんじゃないのか?
ガイそれよりおまえ…おまえ、今、兵士に追われてたよな
ルークああ。けど誤解なんだ!何もしてないのに、城への侵入者だとか言われちまって
ガイ城に入るには許可がいる。知らなかったのか?
ルーク今更許可なんて必要ないだろ!昔から自由に出入りしてたんだから
ガイ昔から…?
ルークそうだよ!ガイ、おまえ本当に俺の事がわかんねぇのか!?
ルーク俺だ、ルークだよ!思い出してくれよ…!
ガイ…ルーク…?
ルークああ!
ガイ悪い、聞き覚えのない名前だ。どこかで会った事があるか…?
ルーク……っ!
ルークもういい!どけっ!
ドンッ
ガイなっ…!おい、待て!
ガイ行っちまった…。変な奴。ま、後は兵士達が何とかするか
ルークくそっ…!もしかして誰も俺の事わかんねぇのか…!?
ルークあっ…!おい、おまえ!
店主ん?いらっしゃいませ
ルークあんたなら、俺の事わかるだろ!?ルークまんじゅうを作ってたんだ、忘れるわけねぇよな!?
店主はぁ?お客さん、何言ってんです?
ルーク忘れたなら、おまえが作ってるまんじゅうを見てみろよ!俺の顔のまんじゅうがあるだろ!?
店主お客さんの顔のまんじゅう…?そりゃ、注文されたら作りますが…
店主…そういや、お客さん、さっき大量に処分したまんじゅうに顔が似てるな…
ルーク処分しただぁ!?
店主ええ。いつの間にか、人の顔みたいなまんじゅうを作っちまってたんですがね
店主誰の顔かもわかんなくて不気味だったんで全部捨てちまったんです
ルーク…そうかよ。わかった。邪魔したな…
ルーク(って事は…みんな俺がルークだって わからなくなっちまった わけじゃねぇ…)
ルーク(俺が…ルークっていう人間が 存在した事自体を 忘れちまってるんだ…!)
ルークルドガーのところに急がねぇと…!
目に見えぬもの
ルドガーさて、調査に備えて食料も買ったし一度、宿に戻ろうか
エルうん。これからしばらく街の外で調査するんだよね
ルドガーああ。キールからの連絡によると異変の原因になりそうなマナの変動が王都近郊の広い範囲で起こってるんだ
ルドガー昨日、街を見て回った時は何もなかったから、今度は外を調べてみよう
エルせめて、どんな異変が起こるかわかればいいのに
ルドガー…そうだな。でも、何もわかってなかった頃から考えると、これでもすごい進歩だ
ルドガーキールの調査は着実に進んでるんだな
エルそのキールは今もウィンドルにいるんだよね?
ルドガー忙しいみたいだからな。リチャードが世界中に調査結果を公表してから、引っ張りだこらしい
ルドガーだから、キールがすぐには動けない分俺達が先に調べておかないとな
エル世話が焼けるなぁ
ルドガー頼りにしてくれてるんだ。期待に応えられるよう頑張ろう
エルうん
ルドガー(危険かもしれないから 本当はエルはウィンドルに 残っていてほしかったけど…)
ルドガー(キールの研究結果が正しいとすれば 分史世界への鍵は エルかもしれないんだ…)
ルドガー(また何が起こるかわからないから 一緒にいる方が安全だよな…)
エル…あれ?今、宿から出て来た人…
ルドガーあれは…!
ティアあっ…!ルドガー!
ミュウ会えてよかったですの!
ルドガーティア、ミュウ?
ティア宿にいなかったから捜しに行こうとしていたの。ちょっと聞きたい事があって…
ルドガー俺に聞きたい事?…もしかして、異変絡みか?
ティアええ、おそらく…。その…人の事を忘れてしまう異変ってあるのかしら?
ミュウすごく大切な人を忘れちゃうですの…
エル……!
ルドガー人の事を忘れる異変…?今まで聞いた事はないけど…
エルエル、知ってる!ルドガーも時々そうなってる!
ルドガー俺が…?そんな事あったか?
ティア自覚がないだけかもしれないわ
ティア私も、その人を忘れてしまっている事に違和感すらなかったもの。目の前に本人がいても、ね…
ミュウみゅぅぅ…ボクもですの
ルドガーなるほど…。初めて聞く現象ではあるけど異変という可能性はあるな
ルドガーだけど、これまでは負の因子の影響を受けた一人だけに異変が起こっていた
ルドガーティアとミュウ…それに俺にも同じ現象が起こってるなんて、一体…
エルティアとミュウは、誰の事忘れちゃったの?
ティアそれが、その…おかしいわ…
ティア忘れる…って、何の事だったかしら…
ミュウみゅうぅ…ボクも何だか変ですの。ボクの中に大きな穴が空いたみたいですの…
ルドガー…まさか、今またその現象が起こってるのか…?
ティアええ、おそらく…。だけど、さっきと違って、何かを忘れているという事はわかるわ
ルドガー記憶が消えているというよりはその人の存在だけが抜け落ちてる…って事か?
ティア…ええ。何かわかりそうかしら?
ルドガー…これは推測なんだけど、もしティアとミュウが同じ人の事を言ってるのだとしたら…
ルドガー異変が起こっているのは、その人なんじゃないか?
ルドガー誰かを忘れるという異変じゃなく、みんなから忘れられるという異変がその人の身に起こってると思うんだ
ミュウみゅうぅぅ…。その人を助けてあげてほしいですの!
ミュウ誰だか思い出せないけど…その人が悲しいとボクも悲しいですの…
ルドガーああ。だけど、それにはまず、その人に会わないといけない
ルドガーでも、それが誰かもわからないんじゃ──
ルーク…いた!おーい!
ミュウみゅ…?
ルドガーどうしたんだ、ミュウ?
ミュウ…今、ボク達を呼ぶ声が聞こえた気がしたんですの
ルドガー…誰もいないぞ?気のせいじゃないか?
ルーク何言ってんだ!俺がいるだろ!もしかして姿まで見えねぇのか!?
ルークおい、ティア、ブタザル!おまえらはさっき思い出してただろ!
ティア…!ルドガー、私も今、誰かに呼ばれた気がしたわ
エルえっ!? 本当に誰かいるの?…なんかこわっ!
ルドガー…もし二人の言う人がそこにいて、なのに俺達が気付けていないんだとしたら…
ルドガー単にその人を忘れてるだけじゃない。存在そのものが消えかかってる可能性がある!
ルークっ…!俺が、消えかかってるだって…!?
ルーク冗談じゃねぇ!おい、頼む!誰か気付いてくれよ!
ルークティア!
ティア……
ルークブタザル!
ミュウ……
ルーク他の誰が気付かなくてもおまえだけは返事してくれるんじゃなかったのかよ!
ルーク何とか言えよ、ミュウ!
ミュウ…みゅ?
ミュウこの声…
ミュウ──ご主人様ですの!
ルークミュウ!
ミュウご主人様!
ルーク俺の声が聞こえるのか!?
ミュウ聞こえますの!
ルーク姿が見えるのか!?
ミュウはいですの!
ティアミュウ…?
エル一人で話してる…?
ミュウ皆さん、思い出してほしいですの!ボクのご主人様…ルーク…フォン・ファブレ…ですの!
ティア、ルドガー、エル…!
ティアそうだわ…そうよ、ルーク!思い出したわ!
ルドガーああ、俺も今、ミュウのお蔭で思い出せたよ
エル…って、わぁ!ルーク、いつからいたの!?
ルークおまえらも俺の事がわかるのか?見えてるんだな?
ティアええ、わかるわ。よかった、本当に…
ルーク思い出してくれてひと安心だぜ。ずっとここにいたのに、誰も気付かねぇからよ
ルドガールーク。安心するのは早い
ルドガーもし分史世界の影響でルークに異変が起こっているならまた同じ事が起こるかもしれない
ルドガーいや、それどころか次はもっと悪化する事もあり得る
ルドガー今でも、ルークに意識を集中してないと、すぐに分からなくなりそうなんだ
ルーク…やっぱり異変が起きてるのはみんなじゃなくて俺なんだな
ティアルーク、気付いていたのね
ルークああ。城でもいろいろあったしな
ルークでも分史絡みならルドガーが解決策を知ってるんだろ?どうすりゃいいんだ?
ルドガー今までと同じなら分史世界にいるルークが負の因子に憑りつかれてるはずなんだ
ルドガー分史世界に行ってその負の因子を破壊すればこの正史世界での異変も止まるはず
ルーク分史世界の俺?前に分史世界に行った時は、ルークなんていないって感じだったぞ
ルドガーあの時とは別の分史世界だよ。分史世界は無数にあるんだ
ルークなるほどな。とにかく、そこにいる俺を捜しに行かなきゃならねぇんだな
ルークで、どうやったらその負の因子に憑りつかれた俺がいる分史世界に行けるんだ?
ルドガーキールの仮説が正しいなら…
ルドガーエル、時計を出してくれるか
エルわかった
ルドガールーク。この時計に触れてみてくれ
ルーク…こうか?
ルーク何だ!?光が…!
ヒュンッ
ルドガーよし、思った通りだ
ルークこの穴の向こうが分史世界って事か…?
エルルドガー、行っちゃうの?
ルドガーああ。前のように危険な目に遭うかもしれない。エルは宿で待っていてくれるか?
エルうん…
ティアルーク、私も──
ルーク待てって。おまえまで来たら誰がミュウとエルを見てるんだよ
ティアでも…
ティア…いえ、そうね。わかったわ。私はこっちで待ってる
ティアだから必ず、無事に帰って来て
ルーク当たり前だろ
ルークじゃあな。おまえも大人しくしてろよ
ミュウご主人様…ボクは…ボクは…
ルークそんな顔すんなって。すぐ帰ってくるからよ
ルークほら、ルドガー。早く行こうぜ
ルドガーああ。それじゃあ、ティア。エルをよろしく頼む
ティアわかったわ
エルルドガー、気を付けてね
ルドガーありがとう。…それじゃあ、ルーク。その穴に飛び込んでくれ
ルークよーし、行くぜ
ミュウ…ボクも行くですの!
ルークあっ…バカ!戻れ!くっつくな──…
ミュウ嫌ですの!ボクはどこまでもご主人様と一緒ですのー!
シュンッ
ティアミュウ!
エル行っちゃった…!
ティア大丈夫かしら…
エル平気だよ!ルドガーが一緒だし!
エルそれに、ルドガーが言ってたけどルークもすごく強いんでしょ?
ティア…そうね
ティア(…もしもの事があれば 私はルークを忘れて しまうのかしら…)
ティア(…ううん。 そんな事… ないわよね…)
scene1キムラスカの親善大使
ヒュンッ
ルドガー…よし、分史世界に着いたようだな
ミュウみゅっ…!
ドンッ
ルドガーミュウ!大丈夫か?
ミュウだ、大丈夫ですの。木にぶつかっただけですの…
シュン…
ミュウみゅ?穴が閉じたですの…
ルドガーああ。これまでも分史世界に移動したらすぐに穴が閉じたんだ
ミュウ…ご主人様はどこですの?
ルドガー…!ルーク…まさか時空の裂け目に入りそびれたのか!?
ミュウそんなことないですの!ボク、ご主人様にくっついて一緒に穴に入りましたの!
ミュウそうしたら、来るなって突き飛ばされたですの…
ルドガーそうか…なら、その勢いではぐれた可能性が高いな
ミュウルドガーさん!ご主人様はどこですの!?
ルドガー一緒に時空の裂け目に入ったなら、この世界には来ているはずだ
ルドガーこの世界の別の場所に飛ばされたのかもしれない
ミュウ大変ですの!早く捜しに行くですの!
ルドガー落ち着くんだ、ミュウ。状況がわからない中、闇雲に動くのは危険だ
ルドガーこういう時こそ冷静にならないと…まずは、ここがどこなのかを調べよう
ミュウみゅううぅぅ…。でも心配ですの…
ルドガー気持ちはわかるけど…
ミュウもしかしたら近くにいるかもですの。ボク、ちょっとだけ捜してきますの
ルドガー待ってくれ、ミュウ…!
ミュウすぐに戻るですのー!
ルドガー…ミュウ。よほどルークの事が心配なんだな
ルドガー(…俺もミュウも ルークの事をしっかり覚えてる。 存在が消えたわけではなさそうだ)
ルドガー(ルーク… どこにいるんだ…)
ガイはぁ、はぁ…くそ、まだ追って来るのか
アッシュ奴ら、一体何者なんだ。シルヴァラントの兵士に見えるが
ガイさあな。出会ってすぐ問答無用で追いかけられたんじゃ検討もつかないな
ガイ止まって話を聞いてみるか?
アッシュ…いや。この森を利用して追手を撒く
ガイ了解!
ザッザッザッザッ…
兵士1ちっ、見失ったか!
兵士2引き返しますか?
兵士1そうはいくか!シルヴァラントの威信に賭けて奴を必ず捕らえるぞ!
兵士1このまま王都に帰らせてはならん!各員、散開して捜索せよ!
兵士2はっ!
ザッザッザッザッ…
ガイ…ふう。行ったみたいだな
アッシュ王都に帰らせない…か。やはり俺が誰か理解した上で追って来てるようだな
アッシュだが、何故だ。俺は親善大使として赴いただけで、捕らえられるような事をした覚えは…
???説明してやろうか?
アッシュ…ちっ、見つかったか!
ゼロス落ち着けよ。俺だ、アッシュ
アッシュ…ゼロスか
ガイ騎士のおまえまで動いてるって事は国をあげて俺達を追って来てるみたいだな
ゼロスそりゃ、あわや王が殺されるなんて事件があれば、騎士団も動くぜ
アッシュ王が…!?どういう事だ
ゼロスその反応…やっぱりあれはおまえじゃないんだな
ゼロスアッシュが王の命を狙うわけねぇとは思ってたんだ
アッシュ一体、何を…
ゼロス事情を説明する前に、ここを離れようぜ。騎士団の連中が近づいて来てるからな
アッシュ…わかった
scene2キムラスカの親善大使
ゼロスこんぐらい離れれば大丈夫だろ
ガイゼロス、早速で悪いが何があったのか教えてくれないか
ゼロスああ。と言っても俺も伝令で聞いただけだから細かい事までは知らねぇんだが…
ゼロス一言で言うと、キムラスカの親善大使を名乗る男が王に斬りかかったんだ
アッシュ何っ…!
ゼロス幸い、陛下は無事だったが陛下を守った兵士が一人、負傷しちまってな
ガイその兵士は、大丈夫なのか?
ゼロスああ、命に別状はないらしい。ただ…もしあいつが守らなかったら王の命は危なかっただろうって話だ
ゼロス親善大使はそのまま逃走。兵士達はそれを追って来たってわけだ
アッシュ…親善大使は俺だが、まだ王には会えていない
ゼロスああ。要はアッシュの名を騙った偽者って事だ
ゼロス俺がその場にいればそう言ってやれたんだけどな…
ゼロス交流剣技大会で何度も辛酸を舐めさせられた相手を見間違えるわけがねぇ
ガイまた随分前の話を持ち出すな…。それにその大会には他の兵士だって参加してただろう
ゼロスああ。でもあいつらは、俺さまみたいに毎回アッシュと優勝争いしてたわけじゃねぇからな
ゼロスつまり、その偽者ってのは一度や二度会ったぐらいじゃ見抜けないぐらい似てるって事だ
アッシュ…俺とそっくり…
ゼロスというわけで、今おまえはシルヴァラントで大々的に指名手配されてるときた
ガイ…だから兵士達はアッシュを見るなり追いかけて来たんだな
ゼロス偽者が逃げた方角からおまえらが来たってのもあるな。わざとだとしたら──
ガイ俺達の移動ルートを知った上での罠か…!
アッシュ……
アッシュその偽者は、他に何か言っていなかったか?
ゼロス…これも伝令で聞いただけなんだが…
ゼロス「キムラスカはシルヴァラントとの 和平を望まず、 服従のみを受け入れる──」
ゼロスそんな感じの事を言ってから剣を抜いたらしいぜ
ガイそれじゃまるで、宣戦布告じゃないか
アッシュちっ…何て事をしやがる。キムラスカとシルヴァラントの親交を深める予定が台無しだ
ガイそれで…ゼロスはどうするんだ。俺達を捕まえるのか?
ゼロスまさか。そんな事したら真犯人の思うつぼじゃねーか
ゼロス俺は、おまえの無実を確認しに来ただけだ。偽者だとはっきりして、ほっとしたぜ
ガイそれを聞いてひと安心だ。おまえが相手となればお互い無事にはすまないからな
アッシュ…その偽者を捕らえるぞ。放っておけば、また何をしでかすかわからない
ゼロスそれはそうだが、何もおまえ達が無理する事もねぇだろ
ゼロスひとまず、真犯人捜索は俺達に任せて二人は一旦国に帰った方がいいんじゃねぇか?
ゼロス今おまえ達が捕まったらいくら俺さまでも、助けられるだけの証拠がねぇ
アッシュ…いや。要は、真犯人を突き出せばいいんだろう?
ゼロス…心当たりでもあんのか?
アッシュ……
ガイおい、アッシュ。まさか、ルークを疑ってるんじゃないだろうな?
ゼロスルークって、双子の弟だったよな?
ゼロスいくら真犯人の顔がおまえにそっくりだからって、弟を疑うのは感心しねぇな
アッシュそれだけじゃない。俺が親善大使に任命された時…少し気がかりな事があった
インゴベルト六世アッシュよ。各国を回る親善大使には、そちを任命する
アッシュ俺…一人ですか?
インゴベルト六世勿論、付き人はつける。誰でも指名するがいい
アッシュはい。では──
インゴベルト六世ただし、ルーク以外でな
アッシュ…何故です
インゴベルト六世ルークは最近、たるんでおる。剣の稽古には熱心なようだが国政の事にはまるで無関心だ
インゴベルト六世先日は国賓の集まる社交の場にも顔を見せなかった。…今のあやつを外に出すのは不安だ
アッシュ……
インゴベルト六世あやつには王位継承権を持つ者としての自覚が足らぬ
インゴベルト六世その事を自戒させるため敢えて今回は親善大使から外した。付き人として同行する事も禁じる
インゴベルト六世わかってくれるな
アッシュはっ…
コンコン
アッシュルーク、入るぞ
ガチャ
アッシュ…おまえ、その髪。切ったのか?
ルーク親善大使様がわざわざ髪型の話をしに来たわけじゃねぇだろ。…落ちこぼれに何の用だ?
アッシュ親善大使…か。随分と耳が早いな
アッシュなら、おまえが任命されなかった理由も聞いているな?
ルークああ、知ってるよ。全部、先生が教えてくれたからな
アッシュ先生…騎士団長か
ルーク…もういいだろ。先生が待ってるんだ。行かねぇと
アッシュおい、待て。おまえのそういう態度が──
ルーク…うるせぇな。話は終わりだ
アッシュ一つだけ聞かせろ
アッシュその髪…何か心変わりがあったんじゃないのか
ルーク……
バタン
アッシュ…ちっ。何を考えてやがる
アッシュ…俺にはあいつが何を考えてるのかわからなかった
アッシュだが、まさかこんな大それた事を計画していたとは…
ゼロス待てって。決めつけるにはまだ早いんじゃねーか?
アッシュ状況証拠が揃っている
ゼロスまだ、状況証拠だけだろ?僅かでも可能性があるなら最後まで信じてやれよ
ゼロスそれが、兄貴ってもんだろ
アッシュ妙にルークに肩入れするな
ゼロスそういうわけじゃねぇよ。ただ…俺と同じ間違いをしてほしくないんだよ
アッシュ間違い…?
ゼロス…ああ。この事は、他人にはあんまり話した事ねぇんだけど…
ゼロス俺には一人、妹がいるんだ。そいつの事で、昔ちょっとあってな…
ガイああ、剣技大会に応援に来てるのを見た事あるな。確か、セレス…だったか?
ゼロスそうそう!今でこそ仲良くしてるし、あいつも俺を慕ってくれてるけどな…
ゼロス昔は俺…あいつが苦手だったんだよ
ゼロス小さい頃から病弱でな。ちょっと何かあると親はあいつにつきっきりの看病だ
ゼロスまだ子どもだった俺は親の愛情を独り占めするセレスをよく思ってなかった…
ゼロスそれにあいつ、俺と二人の時は弱ってる素振りなんて全く見せなかったしな
ゼロスだから…いつしか、あいつは親の気を引くために病弱なフリをしてるんだって…
ゼロスそう思い込むようになっちまってた
ゼロス…ある日、家に俺しかいねぇ時に、あいつが急に苦しみだしたんだ
ゼロスなのに、馬鹿な俺は騙されてたまるかって、ずっと無視してたんだ
ゼロスさすがに様子がおかしいと気付いて医者を呼んだ時にはかなり酷い状態になってた
ゼロス何とか大事に至らなかったが…俺は自分の馬鹿さ加減を呪ったぜ
ゼロス後からわかったんだが、あいつは俺に心配かけまいと二人の時は元気なフリをしてたんだ
ゼロスなのに俺は、大事な妹を勝手に悪者だと決めつけて…嘘だと思いこんじまってさ
ゼロスそれから俺は、信じるべき相手の事は最後まで信じるって心に誓ったんだ
アッシュ…それはおまえが勝手に誓った事だ
ゼロスああ、確かにそうだ。でも、おまえにも関係のある話だぜ
ゼロス俺さまが、おまえが犯人じゃないって信じた理由だからな
アッシュどうして俺に繋がる?
ゼロス言ったろ?信じるべき相手を最後まで信じるってな
ゼロスその上で、兄として、妹や弟ってのは信じてやるべき相手に入るだろって言いてぇんだ
アッシュ……
ガイなぁ、アッシュ。俺はおまえら兄弟の問題には口を出さないようにしてたけど…
ガイゼロスの言う事、少し考えた方がいいぞ
アッシュ…今回の件は、二つの国を巻き込んだ大きな話だ。俺が信じるかどうかは関係ない
アッシュ弟だろうが可能性があれば疑う。…だが…
アッシュおまえの話は教訓として肝に銘じておく
ゼロスああ。それで充分だと思うぜ
ゼロス…ルークが犯人じゃなかったらいいな
アッシュ…そうだな
ガイさて、それじゃあこれからどうする?
アッシュ本来なら、さっきゼロスが言った通り急ぎ国に戻って伯父上に報告するべきだろう
アッシュそして王の名でシルヴァラントに対し事情を説明して、犯人は両国で協力して捜すのが筋だ
ガイ…けど、おまえは違う方法を取ろうとしてる。だろ?
アッシュああ。今の段階で報告すると、おそらく最初に疑われるのはルークだ
アッシュだが、もし犯人がルークでない場合それこそが犯人の狙いという可能性もある
ガイうちも一枚岩じゃないからな。アッシュを陥れようとする奴もいればルークを狙いそうな連中もいるか…
アッシュいずれにせよ、国内の派閥同士が疑心暗鬼になれば、政治機能が一時的に低下するだろう
アッシュそれを防ぐためには、報告と共に犯人を突き出し、断罪する事が理想だ
ガイ俺達で犯人を捕まえるって事か…
ゼロス今ならまだ、そう遠くまで逃げちゃいねーと思うぜ。捕まえるなら急いだ方がいい
アッシュわかった。…犯人は俺達が来た方角に逃げたと言っていたな
アッシュなら、この近く…身を隠すのなら森の中にいる可能性が高いだろう
ガイ森か…この森、かなり広いよな
アッシュああ。だからといって、諦めるわけにはいかない
ガイそうだな。大変そうだが、おまえと一緒なら、出来ない事なんてないよな
アッシュふっ、当たり前だ。やる事は決まったな
兵士の声ここもいないか。次はあっちを捜すぞ!
ゼロスおっと、そろそろここもやばそうだな
ゼロスここは俺さまが誤魔化しといてやる。おまえらは犯人を捜しに行け
アッシュ…恩に着る。
ゼロスいいって事よ。剣技大会の好敵手がいなくなるのは寂しいからな
ゼロス俺は俺の方で王都に戻って何とか誤解が解けないか試してみる
ゼロスあんまり期待は出来ねぇだろうがちょっとでも根回ししておきゃ犯人を捕まえた後、話が早いだろ
アッシュ世話になる。ガイ、行くぞ
ガイああ
scene1邂逅と誤解
ルーク…ったく。どこなんだよ、この森
ルークここは分史世界…でいいんだよな。でもルドガーもミュウもいねぇし、どうなってんだ?
ルーク…ん?何か声が聞こえるような…
兵士1まだ見つからんのか!
兵士2騎士殿が仰るには確かにこちらの方向だと…
兵士1他に手がかりもない。この辺りを徹底的に調べるぞ!
兵士達はっ!
ルーク…あの格好、兵士か。誰か捜してるみてぇだな
ルークちょうどいいや。ルドガー達を見てないか、聞いてみるか
ルークおーい、そこの人!
兵士1むっ、誰だ…!
ルーク忙しそうなところ悪いんだけどさ。仲間とはぐれちまって困ってんだ。もし見かけてたら──
兵士1おまえは…!服を変えたようだが、俺の目はごまかせんぞ!
ルークな、何だよ急に…
兵士2そっちから出てきてくれるとはな!絶対に逃がさんぞ!
ルークはぁ?待てよ、俺、何か悪い事したか?
兵士3とぼけるな!国王に刃を向けた罪、忘れたとは言わせんぞ!
兵士2我らシルヴァラントの威信に賭けて貴様を捕らえる!
ルークシルヴァラントの国王に刃を向けた!?んな事、するわけねぇだろ!
ルークだいたい、俺はついさっきこっちの世界に来たばっかなんだ!人違いもいいとこだぜ!
兵士1問答無用!総員、掛かれ!
兵士達はっ!
ルークだーっ!何だってんだよ!俺は戦う気なんてねぇっての!
兵士2逃がすか!
ヒュンッ!
ルークやめろって!
ガキィン…!
兵士2くっ、剣を弾かれた…!
ルーク今だ!
兵士3逃げるのか!待てー!
兵士1待て、闇雲に追うのは危険だ!先程の戦いぶり…噂以上の手練れだ。他の兵と合流し、数で追い詰めるぞ!
兵士3はっ!
ルークはぁ、はぁ…追ってこねぇのか…?
ルークよくわかんねぇけど、なるべく離れた方がよさそうだよな…
ガサガサ…
ルーク…さっきの奴らか!?
魔物グルルルル…
ルーク今度は魔物かよ!?こんな時に、邪魔すんじゃねぇ!
scene2邂逅と誤解
バシュッ
魔物ギャウゥ…
ルーク…ふぅ。今ので最後か
ルーク兵士も追ってこねぇようだしとりあえずミュウとルドガーを捜しに行くか
アッシュ…ガイ、見たか。今、魔物と戦っていた奴…
ガイああ。あれは、ルーク…だよな?
アッシュいや、確かに似てるが…
アッシュ俺が国を旅立つ直前、あいつは髪を切っていた
アッシュそれを知らない奴がルークに成りすましているんだろう
ガイアッシュに成りすませるならルークにも成りすませる、か…
アッシュあそこまで似ているとなれば、事件に無関係とは言い難い。…追うぞ
ガイああ
ルークおーい、ルドガー!ミュウー!いねぇのかー?
???おい、そこのおまえ
ルーク…!
アッシュ動くな
チャキ…
ルークなっ…!アッシュにガイ!?
ガイ…本当にそっくりだな。アッシュ、こいつ本当にルークじゃないのか?
アッシュああ。さっき言ったとおりだ
ルークいや…俺はルークだぞ…?
ルーク何を誤解してんのか知らねぇけどおまえらと戦う気はねぇんだ。剣を下ろしてくれよ
アッシュ黙れ。おまえは、俺の質問にだけ答えろ
ルークすげぇ剣幕だな…。わかったよ。そうすりゃ解放してくれんのか?
アッシュ事と次第によっては…な
アッシュシルヴァラントでキムラスカの親善大使を勝手に名乗ったのは、おまえか?
ルークは?何だよ、そんな昔の事…
アッシュおまえなんだな?
チャキ
ルークああ、そうだよ。俺だよ!でもあれは、星のカケラの件を解決した事で不問になっただろ!
ルークそりゃ、後で伯父上やティアからこってり絞られたけどよ。今更、剣を向けられる事なのか!?
アッシュ星のカケラ…?ティア…?何の話をしている
ルークガイはその事もよく知ってんだろ!?
アッシュ…そうなのか、ガイ?
ガイいや、何の事を言ってるのかさっぱりだな
ルーク(…そうか。ここは分史世界だから 星のカケラの事もティアの事も こいつらは知らねぇのか…)
ルーク(…ん? って事は、何かおかしいぞ…)
ルークなぁ。おまえらはどうして俺が親善大使として各国を回った事を知ってんだ!?
ルークあれは星のカケラを巡る戦争を避けるためにやったんだぞ!?
ガイおい、アッシュ。こいつ何か様子がおかしくないか?
アッシュ……次の質問だ。シルヴァラント王に剣を向けた目的は何だ?
ルークさっきの兵士もそんな事言ってたな。俺はそんな事してねぇ!
アッシュなら誰がやった。親善大使アッシュの名を騙ったのはおまえじゃないのか?
ルークアッシュはおまえだろ?つーか、この世界じゃ、おまえが親善大使なのか?
アッシュこの世界…?
ガイ…なぁ、アッシュ。少しこいつの話を聞いてみないか?
ガイ抵抗したり逃げたりする素振りもないし…
ガイもしかしたら、俺達の知らない何かがあるんじゃないか?
アッシュ…誤魔化しているという感じでもなさそうだな
ルーク話聞いてくれるんなら、とりあえずその剣をしまってくれ。物騒で仕方ねぇよ
アッシュ……
…カチャ
アッシュ妙な動きをしたら怪我じゃすまないぞ
ルークわかってる、何もしねぇよ
アッシュまず、おまえが何者でどうしてルークの格好をしているのか説明してもらおう
ルーク何者も何も…さっきも言ったけど…俺はルーク。ルーク・フォン・ファブレだ
アッシュ嘘を言うな
アッシュ確かに似てはいるが、俺の弟のルークは髪を短く切ったばかりだ
ルーク弟?この前会った時は、俺の事なんて見た事ねぇって感じじゃなかったか?
アッシュこの前…?
ルークあー、いや…。ここはあの時とは違う分史世界ってルドガーが言ってたっけ…
ルーク…じゃあ、この二人は俺と初対面の分史世界のアッシュとガイって事か?ややこしいな…
アッシュ何をブツブツ言っている。俺達にもわかるように話せ
ルークあーっと、だからな?俺はおまえ達に会った事があるけど、それは別の分史世界のおまえ達で…
ルークだからおまえ達が俺を知らないのは無理もないってか…当然か…
アッシュ…要領を得ないな。さっきも別の世界と言っていたがそれは何の事だ?
ルークだからえっと…世界には正史世界ってのと、分史世界ってのがあって…
ルーク俺は正史世界から来たから、この世界のルークじゃなくて正史世界のルークなんだ
アッシュ……ガイ、わかったか?
ガイうーん…おそらくだが、こことは別に同じような世界があってそこにもルークやアッシュや俺がいる
ガイこいつはその別の世界のルークで、俺達の知るルークとは別の存在…って事か?
ルークそう!そういう事だ!さすがガイだぜ!
ガイ別の世界に行ける機械の研究ってのを聞いた事があったから、何となく…な
アッシュその研究とやらは信用出来るのか?
ガイ正直、眉唾だと思うが…
アッシュだとするなら、そんな突拍子もない話、にわかには信じられんな
ルークじゃあ信じなくてもいいよ。とにかく俺は、どっかの王様相手に剣を向けたりしてねぇ!
アッシュその言葉を信じる証拠はあるか?
ルーク証拠って言ってもな…
ルークそうだ。おまえら、要するに俺にそっくりの顔した悪い奴を捜してるんだろ?
ルーク俺がおまえらと一緒にそいつを捜す。それでどうだ?真犯人が見つかりゃ文句はないだろ
アッシュ…いいだろう。だが、もし他に犯人が見つからなければ、次はないぞ
ルークわかったよ。俺もそんな悪い奴は許せねぇ。絶対とっ捕まえてやるぜ!
ガイいいのか、アッシュ?
アッシュああ。こいつの言う事が本当ならば犯人は別にいるはずだ。そいつが見つかるなら文句はない
アッシュそしてこいつが犯人だった場合…自分が生き残るために、共犯者を真犯人として突き出す事だろう
アッシュそれなら捕らえた真犯人を問い詰めて全てを明るみに出す
アッシュいずれにしても俺達は真実に近づく事が出来る
ガイなるほどな。嘘でも本当でも問題ないって事か
アッシュああ…だが警戒は解くなよ。隙を見て逃げる可能性もあるからな
ルークおい、さっきから何二人だけでこそこそ話してんだよ
ザッザッザッザッ…
兵士の声こっちにいたぞ!皆、陣形を崩すな!
ルークげっ、あいつら…!俺を追って来たのか!
ガイシルヴァラントの兵士か!随分と数が多いな
アッシュ…ああ。まるでこっちに俺達がいるのを知っていたかのようだ
チャキ…
ルークなっ…!おまえ、なんで俺に剣を向けんだよ!
アッシュ嵌めやがったな。俺を足止めしておいて、自分ごと兵士に捕らえさせる算段だったんだろ
アッシュアッシュが二人いるのは不自然だ。だからルークに変装してたってわけか?
ルークなっ…違う!誤解だって!自分まで捕まるなんておかしいだろ!
ガイ…犯人は国の根幹を揺るがす大事件を起こすような奴だ。そのぐらいの犠牲は覚悟の上かもな
ルークガイまで…!おまえら、本気で言ってんのか!?
アッシュもはや問答している時間はない
アッシュここでおまえを捕らえ、シルヴァラントの兵士に引き渡す
ルーク冗談じゃねえ…!俺だって捕まるわけにはいかねえんだ
アッシュ拘束するぞ!ガイ!
ガイああ!観念しろ!
ルークだーっ!こうなりゃ逃げるしかねぇ!
ガイさせるか!
ルークすまねぇ、ガイ!
ドンッ
ガイくっ…!
アッシュ待ちやがれ!
ガサササ…
アッシュ茂みに入ったのか。どっちに逃げやがった
アッシュ……
アッシュ…ちっ、見失った。ガイ、大丈夫か?
ガイ悪い。転んだだけだ
アッシュあいつ…ガイの動きの癖を知り尽くしているような動きだった…
ガイ逃げられちまったな
アッシュ兵士がもうそこまで来ている。俺達もここを離れるぞ
ガイああ
繋がる点と点
ガイふう…何とか見つからずに済んだな。あの偽ルークの事も完全に見失っちまったが
アッシュ……
ガイ何か気になる事でもあるのか?
アッシュ些細な事だが…一つ引っかかる点がある
アッシュあいつの身のこなし…幼い頃、ルークと剣を交えた時の事を思い出すものがあった…
アッシュもっとも、太刀筋や間合いの取り方は似ても似つかなかったが…
ガイって言っても、魔物と戦ってるのを少し見ただけだろ?気のせいって事もあるんじゃないか
アッシュだが…おまえの動きを読んだあの動きも偶然か?
ガイ…まさか、別世界のルークだっていう話を信じるのか?
アッシュ…信じられんが、筋は通る。今はあらゆる可能性を検討すべきだ
ガイなるほどな。ゼロスに言われた事を肝に銘じてるってわけか
ガイ注意深く真実に辿り着きさえすればルークが真犯人なわけがないって信じてるんだな
アッシュ…違う。雑な調査をしたくないだけだ
ガイそれでもいいさ。俺は少しほっとしたぜ
ガイおまえもやっぱりルークの事を気にかけてたんだってわかったからな
アッシュ何を勘違いしているかは知らんが…俺には弟を守ろうなどという気はないぞ
アッシュ例え、ルークが無実の罪を着せられてもその疑いを晴らすのはあいつ自身だ
アッシュただ俺は、この事件の解決のため真犯人を慎重に捜しているにすぎない
ガイ…もし、ルークが犯人でも捕らえてシルヴァラントに引き渡すって事か?
アッシュ当然だ。これは責任の問題だ
ガイ…だよな。変な事聞いて悪かったよ
ルドガーなかなか戻って来ないな…ミュウどこまで行ったんだ?
ルドガーまさか、道に迷ったんじゃ…
ガサガサ…
ルドガーん?ミュウか?
ガサッ
ルークおわっ!?
ルドガー…っ!?ルーク!
ルークルドガーか!会えてよかったぜ
ルドガーあれ…?ミュウは一緒じゃないのか?
ルークミュウ?会ってねぇけど…ここにいないのか?
ルドガー分史世界についてすぐ、ルークを捜しに行ったんだ
ルドガーすぐに戻るって言ってたんだけど…会えてないって事は道に迷ったのかもしれないな…
ルークったく、あいつは…
ルークまあ…心配ねえよああ見えてしぶとい奴だ。その内ひょっこり姿を見せるだろ
ルークそれより、さっきの奴らの事を何とかしねぇと…
ルドガーさっきの奴ら?誰かと会ったのか?
ルークああ。アッシュとガイなんだけどよ。俺を何かの犯人だと思ってるみてぇなんだ
ルドガー犯人…?何か事件が起こってるのか?
ルークああ…それも、ちょっと厄介な事になってるらしくてな
ルドガー何があったのか詳しく聞かせてくれ
ルークわかった。俺もよくわかんねぇから、あいつらの言葉をそのまま言うぜ
ルーク…で、何でか俺が真犯人だろって急に言われ出して、逃げるしかなかったんだ
ルドガーなるほど…
ルークな?わけわかんねぇだろ?
ルドガー…少し整理させてくれ。この世界で起こった事を順に並べて行こう
ルドガー話を総合すると、アッシュがキムラスカの親善大使で、ガイと共にシルヴァラントに向かった
ルドガーだけどシルヴァラントでは親善大使を名乗る何者かが王に斬りかかる事件が起こって
ルドガーその犯人は、ルークに似た顔をしている。…ここまでは合ってるか?
ルークたぶんな
ルドガー複雑なのはここからだ。その犯人は逃げて、シルヴァラントの兵士が追っている
ルドガーそこで俺達が正史世界からやってきてルークはその兵士達に見つかってしまった
ルドガー兵士達から逃げたと思ったら、今度はアッシュ達にも捕まりそうになった
ルークああ。その通りだ
ルドガーこれは推測だけど、アッシュ達も、その兵士達から逃げてる最中だったんじゃないかな
ルーク何でだよ。兵士達が追ってるのは俺だぞ?
ルドガー自分では気付きにくいと思うけど…ルークとアッシュはよく似た顔をしてる
ルドガー前に…クロノスと戦った後倒れた君をアッシュが宿まで運んでくれた事があっただろう
ルドガーあの時も、二人の顔が並んでいるとまるで兄弟のように似てるってみんな言ってたぐらいだ
ルドガーそれに、この世界では実際に二人は兄弟だと言ってたんだろ?
ルドガーそっくりだったとしても不思議はないと思わないか?
ルークうーん…そういや、前にアッシュと会った時、ミュウが変な事言ってたな
ルーク俺とアッシュの雰囲気が似てるとか何とか…あん時は、ふざけんなって怒ったけど
ルドガーそれに、その真犯人が似せるならルークじゃなくアッシュに似せるはずなんだ
ルドガーだってこの世界ではアッシュが親善大使なんだから
ルークそれもそうか…
ルドガーだから兵士達が本来追ってるのはアッシュ達なんだと思う
ルドガーその最中にアッシュと似ているルークを見かけたものだから犯人だと誤解したんじゃないか?
ルドガーそれにアッシュからすれば、自分にそっくりの知らない人がいたら犯人だと思い込むのも当然だろう
ルークえっと、真犯人がアッシュに似てて俺がアッシュに似てるから俺が真犯人に間違われて…
ルークだーっ!わけわかんねぇつーの!
ルドガーいや…この話、もう少し単純かもしれないぞ
ルーク…?どういう事だよ
ルドガーこの世界のルークがアッシュを装って事件を起こした…そういう可能性もあるんじゃないかな
ルドガーもしそうだとしたら、兵士がルークやアッシュを追う理由もアッシュがルークを疑う理由もわかる
ルークいくら世界が違うからって、俺がいきなり国王に斬りかかったりすると思うか!?
ルドガーしない…と言いたいけど世界が違えば、性格も違う事がある。負の因子に憑りつかれれば、尚更だ
ルドガー前に行った分史世界では、あのスレイが人類を滅ぼそうとしてた事もあったぐらいだ
ルークスレイが!?そんなに変わる事もあんのかよ!
ルーク…じゃあ、本当に…この世界の俺が…
ルドガーあくまで推測の域は出ないが…
ルドガールークに異変が起こったのは、この分史世界のルークが負の因子に憑りつかれたからのはずだ
ルドガーこの世界のルークが関わっている可能性は高いと思う
ルークなるほどな…。んじゃ、俺の事もアッシュの事もこの世界の俺を見つければ解決か
ルドガーそういう事になるな
ルーク…ん?そういや、こっちに来てから俺、異変っての起こってねぇな
ルーク認識されねぇどころか見つかって追い回されたりしてたぐらいだ
ルドガー確かに、俺もルークの事を忘れたりしてない。分史世界では異変が止まるのか…?
ルークじゃあ、慌てなくてよさそうだな
ルドガーそうだといいけど…早く行動するに越した事はないと思う
ルドガー…なあ、ルーク。アッシュと協力する事は出来ないか?
ルークアッシュと?無理じゃねえかな…俺を斬ろうとした奴だぜ?
ルドガーでも、この世界のルークが犯人の可能性がある以上、利害は一致するだろう
ルドガールークの話の通りなら話せば聞いてくれる人みたいだし丁寧に説明すればわかってくれるかも
ルークそれはそうかもしれねえけどよ…
ルドガーこのままアッシュや兵士達に追われていたら俺達はろくに動けない
ルドガーアッシュを説得出来れば、だいぶ状況がよくなると思わないか?
ルークまあ、確かに、そうかもな…。わかった。もう一度話してみるか
ルドガーああ。ミュウが戻ってきたらすぐに──
ルーク…いや、行くなら今すぐだ。アッシュも兵士達に追われてるからこの森を離れちまうかもしれねぇ
ルークミュウの事なら心配ねぇよ。言ったろ?あいつはあれで、結構しぶといって
ルドガー…ルークがそう言うなら、俺もミュウを信じるよ
ルークそうと決まりゃ、アッシュを捜そうぜ
ルドガーああ。まずはルークが来た方向に行ってみよう
scene1偽の親善大使
ガイさて、これからの動きだが──
アッシュさっきの奴を捜す。今のところ他に手がかりはないからな
ガイそうだな。でも、どうやって捜す?もう森を出てるかもしれないぞ
アッシュいや。よく思い出してみろ。あいつは誰かの名前を呼びながら歩いていた
ガイ最初に声をかけた時か…確か、ルドガーとかミュウとか言ってたな
アッシュこの森の中で仲間と合流出来ずにいるんだ。まだ近くにいる可能性は高い
アッシュそれに俺達は、ルークに似た奴本人でなくその仲間の方を見つけてもいいんだ
アッシュたった一人を捜すよりも幾分かマシだろう
ガイわかった。このまま森の中を捜してみよう
アッシュ…もし、日没までに奴らを見つけられなければ…
アッシュ一度国に戻り、全て報告して、ルークの所在を調べる
ガイルークの所在を…。それはつまり、さっきの奴の話を信じるって事か?
アッシュ全ての可能性を考えているだけだ
アッシュ先入観で決めつけたり、感情に流されたりしないようにな
ガイ感情、か。やっぱりおまえ、ルークの事…
アッシュふん。あんな奴でも弟だ。
ガイアッシュ!危ない!
ドンッ
アッシュなっ…!?
ザシュ…!
ガイぐっ!
ドサッ
アッシュガイ!
???ちっ。邪魔しやがって…
アッシュおまえ…まさか、ルーク…なのか?
ルークふん。信じられねぇって顔だな。俺に斬りかかられるのがそんなに意外か?
アッシュ何の真似だ!
ルーク…次は仕留める!
ギィンッ!
アッシュくっ…!
ルークこれを受け止めるとはさすがだな。だが…!
キンッ!
アッシュぐっ…!弾かれただと!?
ルーク俺も強くなったんだよ!
キンッ!キン、キン!
アッシュこの太刀筋…!間違いない…!ルーク!
ルーク相変わらず強いな、アッシュ
ルークでも、これなら…ついに、俺が、おまえに勝つんだ!
アッシュ…!
ガギィン!
ルーク避けずに受け止めるとはな。その従者がそこまで大切か?
アッシュ手負いの人間を狙うとは…落ちるとこまで落ちたな、ルーク!
ルークはっ。おまえに勝つためなら何だって利用する
アッシュ…おまえがそこまでの屑だとはな
ルークああ。俺は屑だ。でも、おまえは違うんだろ?
ルーク優等生のおまえなら怪我人を見捨てたりは出来ねぇよな!
アッシュ…ふん。卑怯な真似をしないと戦えないような奴に遅れは取らねぇ
ルークこれは殺し合いだ。どんな手を使っても、命を取れば勝ちだ!
アッシュやれるもんならやってみやがれ!
ガンッ!
ルークくっ…!
アッシュおまえの望みどおり、殺し合いをしてやる。だが一つだけ答えろ
アッシュ親善大使である俺の名を騙ってシルヴァラント王に会い、剣を向けたのは…おまえか?
ルーク……ああ
ルークおまえに成り代わってシルヴァラントに宣戦布告をしたのはこの俺だ
アッシュっ…!
ルークおまえは他国でも顔が通ってるんだな
ルーク念のためにと思って用意した偽の親書も使う事なく、この顔だけで王に会う事が出来たぜ
アッシュ何が目的だ。俺を消して、王にでもなりたいのか
ルーク…わかってんじゃねぇか
ルークおまえはシルヴァラントから追われる身。逃亡中に殺されても不思議はない
ルークもし無事に国まで逃げ帰れたとしても大罪人として処分される
ルークそうしないと、シルヴァラントとの戦争は避けられねぇもんな
アッシュ…浅いな。おまえの計略はそれだけか
アッシュ今の話をバチカルに持ち帰り伯父上に報告する。それでおまえは終わりだ
ルーク…へっ、それは無理な話だぜ
アッシュどういう意味だ
ルーク俺の仲間がナタリアを監禁してる
アッシュ何っ!
ルークもし俺に何かあって王位を継げないような事態になったら…ナタリアはこの世から消える
ルーク俺達はナタリアと結婚する事ではじめて王位を継げるんだ。そのナタリアがいなくなれば…
アッシュ…そこまでするのか
ルークさっきも言っただろ。どんな手でも使うってな
ルーク諦めろ、アッシュ。おまえはもう終わりだ。どうあがいても王にはなれない
ルーク最後に選べよ。おまえ一人が犠牲になるか、俺を殺してナタリアも失うか
アッシュ期待に沿えなくて悪いが俺はどっちも選ばねぇ
アッシュ目的がおまえの王位継承ならおまえが生きている限りナタリアに下手な事は出来ないはずだ
アッシュなら俺は、おまえを生け捕りにしてナタリアも救う
チャキッ
アッシュ大罪人、ルーク・フォン・ファブレ。この俺が直々に裁いてやる!
ルークやってみろ、アッシュ!俺は遠慮なく剣を振り抜く──!
scene2偽の親善大使
ザシュ!
ルークぐぅっ…!…さすがに無傷とはいかないか。やるな
アッシュ…ふん。おまえこそ腕を上げたな。
アッシュだがその怪我なら、動きは鈍る。降参した方が身のためだぞ
ルークこの程度の傷…!
アッシュ(ちっ…踏み込みが甘かったか? 本気で俺を殺すつもりの奴を 生け捕りにするのは厳しいか)
ルーク…おまえは昔からそうだったな。いつも冷静なくせに、ナタリアの事になると頭に血が上る
アッシュ…何?
ルーク大事な従者を忘れてたろ?ここからなら…
アッシュてめぇ!ガイには手を出すな!
ルークアッシュ。ガイとナタリアを助けたけりゃ自害するんだな
アッシュ……
ガイ…くっ…アッシュ…だめだ…
ルーク何だ。目を覚ましてたのか
ガイ俺に構うな…。おまえなら、わかるはずだ…どうするべきか…
ガイ国に必要なのは…おまえと…ナタリア…!
ルーク…そうか。国に必要とされなかった者同士…せめて楽に殺してやるよ
チャキッ
アッシュガイ!
ルークじゃあな
???やめろーーーっ!!
ギィン!
ルークくっ、誰だ…!?
アッシュ…おまえは!
ルークあいつは俺が引き付ける!おまえは今のうちにガイを!
アッシュああ…!
アッシュ掴まれ、ガイ!
ガイ…悪い、足引っ張っちまって…
アッシュおまえが無事ならそれでいい
ルドガーこっちだ!
アッシュおまえは…?
ルドガー詳しい事は後で。今は逃げる事を優先するんだ。援護は任せてくれ
アッシュ…わかった、頼む
ルドガー行くぞ、ルーク!
ルークはあ!?何言って──
ルークおう!
ルーク…その姿、その声…同じ名前…?何なんだ、おまえ…
ルークその質問には答えらんねーな!へっ、隙だらけだぜ!
ギィン!
ルークしまっ…!
ドサッ
ルークぐあっ…!
ルークじゃあな!
ルーク待ちやがれ…!
ルークぐぅっ…!…傷が…
ルークくそっ、アッシュ…!絶対に許さねぇ…
ルーク次は必ず…この手で…!
共同作戦
ルークこの辺りまで来ればいいだろ。あいつも、すぐには追ってこれねぇみたいだったしな
アッシュ見通しが利く奇襲されにくい場所…湖のお蔭で警戒する方角も限られている…か
アッシュ腰を落ち着けるには適しているな
ルークお、おう。まぁな
ルーク(そこまで考えてなかったけど…)
ルークところで、ガイ。怪我はどうだ?
ガイああ…大丈夫だ。もう自分で歩けるし、傷もそんなに深くない
アッシュ…浅くもないだろう。見せてみろ
ガイ意外と心配性だよな、お前。いててて…
アッシュ俺を助けた怪我が原因で倒れられても面倒だからな。…礼は言っておく
ガイはは。従者が主を守るのは当然だろ?それより、礼を言うべきなのはあっちの二人にだ
ガイ誰だかは知らないがお蔭で命拾いしたぜ。ありがとな
アッシュ礼を言う。世話になった
ルーク気にすんなって。…しかし、ガイがよそよそしいと何か調子狂うんだよな
ルドガー仕方ないさ。彼は俺達の知ってるガイとは別人なんだから
アッシュ…別のガイ、か。こことは別の世界のガイがいる…という事か?
ルドガーああ
ガイ嘘をついているようには見えないし別の世界から来たって話を信じるしかないみたいだな
アッシュ…そのようだな。改めて聞く。おまえ達は何者で、何を目的にしている
ルドガーじゃあ、まず名前から。俺は、ルドガー・ウィル・クルスニクこっちは──
ルークさっきも言ったけど、一応な。ルーク・フォン・ファブレだ
アッシュルドガーに…ルーク…か。…俺達の事はわかっているようだが礼儀としてこちらも名乗っておく
アッシュ俺の名はアッシュ・フォン・ファブレだ
ガイ俺はガイ・セシル
ルドガー俺達の目的については…どう説明していいのか難しいんだけど…
ルドガー一言で言うと、この世界のルークに会いに来たんだ
アッシュ……。あいつに何かあるんだな?
ルドガーああ。事の起こりは、俺達の世界でルークが──
アッシュ…正史と分史…。そして負の因子…か
ガイ驚くような話ばかりだな…こっちの世界の影響でそっちのルークが忘れられるだなんて
アッシュ…負の因子の目印になる黒いもやというやつには心当たりがある
アッシュさっきルークと戦っている最中にそれらしいものを見た
ルドガーやはりそうか…早く取り除かないとどんな事が起こるかわからない
ガイ今回の大事件も負の因子の影響によるものって事なんだよな?
ルドガー可能性は…ある。抱えていた強い感情の一部が膨らんで凶行に及ばすのを見てきた
アッシュ…凶行、か。まさしく、そのものだな
ルドガーこれまでの経験だと負の因子を破壊すれば、本来の自分を取り戻せると思う
ガイ本当か!光明が見えたな、アッシュ
アッシュ……
ルークそういや、負の因子を破壊ってどうすりゃいいんだ?
ルドガーおそらく…戦う必要がある。今までも説得してみたけど行動を止める事は出来なかったんだ
ルドガー仮説だけど、戦って消耗させる事が条件になっているんじゃないかな
ガイ…それじゃあ、ルークと戦う事は避けられないのか…
アッシュ負の因子とやらを破壊するのに戦う事が必要であればやるしかないだろう
ガイそりゃそうだが…俺はお前とルークの確執が深まらないかが心配なんだよ
アッシュ…くだらない心配をするな
ルーク二人の確執ってなんだ?ここじゃ、兄弟なんだろ?
アッシュ取るに足らん些細な事だ
ルドガーこの世界のルーク…。負の因子の持ち主の事は知っておきたい。もし何かあるなら教えてほしい
アッシュ…くだらん昔話にすぎんぞ
ルドガーああ、頼むよ
アッシュ…俺とルークは、ファブレ公爵家に生まれた双子の兄弟だ
アッシュ俺達は国王の甥にあたり、どちらかが王位を継承すると生まれた時から決められている
アッシュだから俺達は幼い頃から王位を継ぐに相応しい人間になるべく教育を受けて来た
ルークどっちが王位継承者になるか、揉めそうな話だな…
ガイそうならないようにって国王陛下もいろいろ考えてたんだけどな
ガイ俺は子どもの頃から二人とずっと一緒だったから細かく様子を聞かれたりしてたんだ
ガイ二人も、争うより協力しようって話していたしそのために切磋琢磨していた
ガイ…はずなのに、いつの間にか王位を巡って二人は争っている状態になっちまった
アッシュくだらん。俺は争っているつもりはない。あいつが勝手に暴走してやがるんだ
ルーク…でも、それは負の因子の影響があるからだろ?
アッシュどうだかな。今になって考えれば、ずっと昔から計画してたようにも思える
ルドガーそうなのか?
アッシュあいつは数年前から俺を避けていやがった
アッシュ話す機会もなくなったし何を考えてるのか、わからん
ガイだからって、アッシュを殺す計画を練っていたとは思えないぞ
アッシュだが実際、ルークは俺を殺しに来た。あいつの抱えていた感情がはっきりしたというわけだ
ルークそれは、負の因子が影響してるせいかもしれないだろ!?
アッシュ…どうだかな
ガイ結局、負の因子ってのを破壊してから本人に直接聞くしかない
ルドガー負の因子を破壊したいのは俺達も一緒だ
ルドガー利害は一致してるし、力を合わせないか?
アッシュ…そうだな。ルークを捕えるためにも人手がある方がいい
アッシュそれにナタリアの事もある。俺とガイだけでは手に余る事態だ
ガイ俺も賛成だ。よろしく頼むな
ルークあ~、よかった!これで、おまえらからは逃げなくてすむな
アッシュ元より、追う理由はなくなった。ルークが罪を白状した事でおまえの疑いも晴れたからな
ルークそういやそっか
ルークところで、そのルークって呼び方何とかならねぇかな。一瞬、俺の事かと思っちまうんだよ
ルドガー…確かに、これから一緒にルークを追うなら呼び分けた方がいいかもな
ガイ…とは言ってもどっちも全く同じ名前なんだよな。どうする?
アッシュ無理に呼び方を変えても混乱の元だ。どちらの事を言ってるかぐらい話の流れで理解しろ
ルークいや理解は出来るけど一瞬びっくりするんだって
アッシュ慣れろ
ルークはぁ…仕方ねぇか
ルークよし!負の因子を破壊して、二人が仲直り出来るように頑張ろうぜ!
アッシュ…待て。何を勘違いしている?
ルークん…?何がだ?
アッシュ俺の目的はルークを捕え、その罪を裁く事だ
アッシュ今更、良好な関係を築くつもりなどない
ルーク何でだよ。罪を裁くにしたって仲直りしてもいいだろ?
アッシュ…必要ない
アッシュ私情は邪魔になる。相手は国を揺るがす大罪人…厳格な処罰が必要だ
ルーク厳格な…って、まさか…
アッシュ極刑も、十分あり得るという事だ
ルークな、何とかならねえのか?実の弟なんだろ!?おまえだって嫌なはずだ!
アッシュ今言った通りだ
アッシュ弟の罪は、俺が責任を持って裁く。それが兄として出来る唯一の事だ
ルークぐっ…!ガイはどうなんだよ。止めなくていいのか?
ガイ…俺はアッシュの意志を尊重する
ルークガイもか…。ああもう…この世界の俺、何て事しでかしてんだよ…
アッシュ…これ以上、ごちゃごちゃ抜かすなら協力の話はなしだ
アッシュいざという時に邪魔されるかも知れないからな
ルークそんなつもりはねぇけどよ…
ルドガーアッシュ、君達の事情はわかった。君の覚悟についても
ルドガー俺達は、負の因子を破壊して、アッシュ達は、ルークを捕まえる。その目的さえ変わらないなら問題ない
ルドガーそれぞれの目的のために力を合わせよう
アッシュ…いいだろう。行くぞ
ルドガー行くって…ルークの居場所に目星がついてるのか?
アッシュああ。首謀者が俺の考える人物なら拠点は大体絞れる
ルドガー首謀者…!?
ルークそんな奴がいるのかよ!
アッシュおそらく…ルークが妄信する剣術の師…
アッシュキムラスカの騎士団長アレクセイ・ディノイアだ
帳の裏側
ルークはぁ…はぁ…ちっ、完全に見失った…
ルークぐっ…!くそっ…アッシュにやられたとこが…
ガサガサ…
ルーク…!誰だ!
ミュウご主人様!やっと見つけたですの!
ルークな、何だ、おまえは!魔物…チーグル族か!?何でしゃべれるんだ!?
ミュウ…あれ?髪が短い…服も違うですの…
ミュウあの、ご主人様…ですの?
ルーク気味悪ぃな、あっち行け!ご主人様なんて知らねぇ──
ルーク──っ!ぐっ…
ミュウどうしたんですの!?
ミュウあ!大変ですの!怪我してるですの!
ルーク寄るんじゃねえ!
バシッ!
ミュウみゅぅぅ!
ルークふんっ…
ミュウみゅうぅ…やっぱり…ご主人様じゃないですの…
ルークちっ…。一度先生のところに戻った方がよさそうだな…
ミュウあっ、待ってくださいですの!無理に動いたら傷が開きますの!
ルークうるせぇ。大声出すんじゃねぇよ。兵士達に見つかるだろうが
ミュウみゅ…追われてるですの?…何か悪い事したですの?
ルーク余計なお世話なんだよ。これ以上ごちゃごちゃ言うなら斬るぞ
チャキ
ミュウみゅうぅっ!ごめんなさいですのー!
ルーク…行ったか
ズリ…ズリ…
ルークはぁ…はぁ…
ルーク(くそっ…あいつの言う通り 動くと傷が…)
ルーク(何だこのぐらい…)
ルークぐぅっ…!駄目だ…痛ぇ…
ミュウあ、いたですの!
ルークおまえ…何で戻ってきやがった…
ミュウ薬草を採ってきたんですの!これ、傷口に貼ってくださいですの!
ルーク…おまえ…これを渡すために…?
ミュウあ、あの、これをお渡ししたらボクはすぐ行きますの。だから斬らないでほしいですの
ルークああ、そうしろ──
ルーク…ん?おまえ、よく見たら泥だらけの傷だらけじゃねえか
ミュウこれは、ちょっと転んだだけですの
ルーク…薬草を採ろうとして無理したんじゃねぇのかよ
ミュウみゅうぅ…
ミュウで、でも、これぐらい平気ですの!ボクの心配をしている場合じゃないですの!
ルーク……
ルーク…はぁ、わかった。貸せよ
ミュウはいですの!
ムギュッ
ミュウみゅ?
ルークそのままじっとしてろよ
ミュウあの…ボクの怪我に使うんじゃないですの
ルーク…いいんだよ。もらった薬草をどう使おうが、俺の勝手だろ
ルークこんだけありゃ、俺の分も十分足りる。おまえは大人しくしてろ
ミュウ…ありがとうですの
ルーク…これで少しすりゃ傷も治るか
ミュウあの…その傷、何があったんですの?
ルーク…見りゃわかんだろ。斬られたんだよ…兄貴にな
ルークだが、次こそは必ず俺があいつを殺してやる
ミュウこ、殺す…ですの!?そんなの、駄目ですの!
ルーク何も知らねぇくせに説教でもする気か?
ミュウみゅうう…ごめんなさいですの
ミュウでも、ボクを助けてくれた優しい人がお兄さんと殺し合いなんて…きっと辛いですの
ルーク…優しい人、か。嬉しくねぇ言葉だな
ルーク俺は情を捨てたんだ…。あいつと殺し合うと決めた時に
ミュウみゅう…仲直りは出来ないんですの?
ルーク命の取り合いはとっくに始まってる
ルーク…先生があいつの謀略を教えてくれなかったら俺は知らない内に殺されてた
ルークどっちかが消えるしかねぇんだよ
ミュウそんな…
ルーク…ったく、何を焦ってやがんだろうな
ルーク俺は出来が悪いんだから、放っておいても王位はあいつのもんだったのによ
ミュウ…本当はお兄さんと殺し合いなんてしたくないんですの…そういうお顔ですの…
ルーク…違う!俺は…!
???この声…ルーク、そこにいるのか?
ルークっ!この声は…先生!
ミュウルーク…?
ルークおまえなんかと一緒にいるところを見られたくねぇ。そこの茂みに隠れてろ!
ミュウえ…?
ルーク早く!絶対に出てくるなよ!
ミュウは、はいですの!
ガサガサ
アレクセイ…ここにいたのか、ルーク
ルーク先生…!
ミュウ(ルーク…って、やっぱりあの人、 この世界のご主人様ですの!)
ミュウ(…それに先生って… ヴァンさんとは違う人ですの…)
アレクセイ話し声が聞こえた気がしたが……一人か?
ルークはい
アレクセイ任せていた件はどうなった
ルークそれが…その…
アレクセイその怪我…返り討ちに遭ったか
ルークすみません…。せっかく、先生が期待して任せてくれたのに…
アレクセイ気に病む事はない。まだ機会はある
アレクセイおまえはまだ生きている。まだ剣を握り、アッシュに立ち向かえるだろう
アレクセイ諦めず何度でも戦うのだ
アレクセイそれとも…やはり兄に剣を向ける事は出来ないか?
ルークいえ…。今度こそ、必ず仕留めます
アレクセイ剣を交えてわかっただろう。アッシュはおまえを本気で殺すつもりだ
アレクセイあいつは欲に溺れている。自らの王位継承権を盤石にするためどんな手段でも使ってくるだろう
アレクセイもしかすると最初はおまえを殺す気などないような素振りを見せたのではないか?
ルークそういえば…確かに
アレクセイ奴の狡猾な手段だ。結果を見ろ。おまえは奴に斬られた
アレクセイ迷いがあってはアッシュに勝てない。おまえも非情になれ
アレクセイ……。おまえが斬れぬなら私がやろう
ルーク…いえ。今度こそ…必ず…アッシュを…この手で殺します!
ルーク俺を殺そうとした事、必ず後悔させてやる…!
アレクセイいいだろう。おまえ自身の手で決着を付け、国を背負う者としての覚悟を見せよ
ルークはい…!
ミュウ(だ、駄目ですの!)
アレクセイ拠点まで戻るぞ
ルークはい、先生
ミュウ(行っちゃうですの! 止めなきゃ…ですの!)
軋轢の始まり
ガイアレクセイ騎士団長…って、アッシュ、本気で言ってるのか?
ガイあの人が裏で糸を引いてるとなると一大事だぞ
ガイルークの不祥事どころじゃない。最悪、国を真っ二つに分けた抗争になりかねない
アッシュ…既に始まってる。アレクセイは戦争による国力増強を主張していただろう
アッシュ今回、ルーク達の行動によってシルヴァラントとの和平を望む俺達の親善活動が妨害された
アッシュそして親善大使となった俺を殺害しアレクセイを妄信するルークを王にしようとしている…
ガイ…確かに、全て騎士団長にとって優位に働く事ばかりだ…
ガイでも、仮にも騎士団長としてこんな行動に出るとは思えない
アッシュ俺もそう思っていたが…ルークを巻き込んでこんな事が出来る人物も、他にいないだろう
アッシュ…あいつは数年に渡って人との接触を自ら断っていた。剣の師であるアレクセイ以外とはな
ルーク剣の師…か
ルーク自分の師匠を信頼する気持ちはよくわかるんだけどよ…
ルークいくらなんでも実の兄を殺そうなんて思うか?
ルーク兄弟の絆ってのがどんなもんか俺にはわかんねぇけど、師弟の妄信を超えてるだろ
ルドガールーク…そうか、ヴァンの事…
ルークああ…。俺は師匠を信じて人さらいもやった
ルークでもそれは、騙されてたとはいえいい事だと思ったからやったんだ
ルークもし誰かを殺せって言われても絶対にやらないし、師匠が間違ってるなら剣も交えた
ルークだからこそ信じらんねぇんだ。師匠に言われただけで家族を殺そうとするなんてな
アッシュ何が言いたい。ルークが俺を殺しに来たのは事実だ
ルークそうだけどよ…!それは負の因子の影響ってやつだと思うんだ
ルークだから負の因子さえ破壊すりゃそのアレクセイって奴のいいようにはされねぇんじゃねぇかって
アッシュ…それはあくまでおまえの話だろう
ガイまぁ…ルークは騎士団長に依存している部分があるよな
アッシュアレクセイは人心掌握に長けた男だ
アッシュ負の因子の影響がなくてもルークを思い通りに動かす事は出来るだろう。妙な期待はするな
ルドガー…そうか。負の因子を壊しても、ルークが変わらない事を心配してるんだな…
アッシュアレクセイの言葉だけであいつが豹変したのなら、負の因子を破壊しても何も変わらん
ルークなぁ、そもそも、こっちの俺はどうしてそこまでアレクセイだけを妄信してんだ?
ルークアッシュだってずっと一緒にいたんだろ?何も言わなかったのかよ
アッシュ……
ガイさっきも言ったが、ルークは騎士団長以外とはまともに口を利かなかったんだ
ガイ俺やアッシュも含めてな…
ルドガー何か事情があったのか?
ガイきっかけはたぶん…あの時の事だ。アッシュ、話していいか?
アッシュ勝手にしろ
ガイわかった
ガイ…アッシュとルークは幼い頃から将来王位を継げるようにって、厳しく育てられてきたんだ
ガイ二人は、どちらが王になっても協力して国を背負っていくんだって誓いあったりしてな
アッシュ……
ガイ二人は何をやらせても優秀だったが剣術に関しては、ルークはアッシュになかなか勝てずにいた
ガイその様子を見てた騎士団長が、ルークが勝てないのは優しすぎるせいだと指摘したんだ
ガイ相手に強力な一撃を入れる事を迷ってほんの僅かに踏み込みが甘くなるんだと
ガイルークは騎士団長に頼み込んで猛特訓してもらってな。ついにアッシュに勝つ事が出来た
ガイそれがきっかけで、ルークは騎士団長を信頼し始めたんだ
ガイ何か困った事があるとアッシュや俺よりもまず騎士団長に相談したりしてな
ガイそれから少しずつ話す機会が減っていったんだ
ルーク待てよ。さっき、どっちが王になってもいいようにって言ってたよな
ルークなのにどうして、アッシュを殺して王位を奪おうなんて話になってんだよ
ガイ俺もそこが腑に落ちないんだ
ガイルークはアッシュに勝った時も、アッシュと肩を並べて国を守れるなんて喜んでたのに…
アッシュ…肩を並べて、か…
ガイだから、アッシュ。ルークの行動には負の因子の影響があると思うんだが…どうだ?
アッシュ……。確かにその可能性が高いと考えた方が全てに説明がつくな
アッシュあいつに負の因子が憑りついた事で変化が起きたなら、それを見逃すアレクセイじゃない
アッシュ上手く便乗して今回の計画を立てたんだろう
ルークつまり…負の因子の影響とアレクセイの計画、両方合わさって今の状況って事か
ガイそういう事になるな。少し複雑だが…
ルーク複雑でも関係ねぇ。原因が二つあるなら二つとも取り除けばいいんだ
ルーク負の因子もぶっ壊してアレクセイって奴もぶっ飛ばしてあいつの目を覚まさせてやる!
アッシュ闘志を燃やすのは勝手だが人質を取られていると動きづらい。まずナタリアの救出が先だ
アッシュアレクセイが首謀者だという裏付けも取る必要がある。まずは調査からだ
ルークお、おう。それで、調査ってのはどうやるんだ?
アッシュさっきも言ったが、奴らの居場所に心当たりがある
アッシュシルヴァラントとキムラスカの国境近くにある建物──かつて騎士団の駐屯施設だった場所だ
ガイそうか…!確か騎士団長が中心となっている強硬派の連中が密かに使ってた場所だ
アッシュああ。強硬派の動きを探った時に騎士団を使って武器や資材を運び込んでいる事が判明した
アッシュあの時は怪しい物も見つからず急を要する状況ではないと判断したが…
アッシュこの時のための拠点だった可能性がある
ガイこの森からそう遠くないし、行ってみる価値はありそうだ
アッシュああ。まずはそこを偵察するぞ
ルドガーわかった
ルーク待ってくれ、アッシュ。その建物ってこの森の外にあるのか?
アッシュああ。街道を挟んで内海側の別の森の中だ
ルークもう一人…いや一匹か。仲間がこの森ではぐれてんだけど見かけてねぇか?
ルークしゃべるチーグル族なんだけどよ
アッシュ…いや、見てないな。ガイはどうだ?
ガイ俺も見てない。捜しに行くか?
アッシュ捜すなら一旦別行動だ。人質を取られている以上、あまり時間をかけていられないからな
ルドガーミュウの事は心配だけど…どうする、ルーク?
ルーク……
ルークあいつなら…心配ないよな。悪い、大丈夫だ
ガイいいのか?
ルークああ。全部終わってから捜しに戻ってくりゃいいだろ
ガイわかった。その時は、俺達も捜すのを手伝うよ
ルークありがとな
アッシュ行くぞ
scene1罪と覚悟
アッシュあの建物だ
ルーク結構、でけぇな
アッシュ以前調査した時よりも見張りが多く厳重だ。何かあるのは間違いない
ルドガー正面突破は無理だな。どうする?
アッシュ誰かが敵の注意を引き付けて他の者で調査する
ガイ…あいつらの注意を引けるといえば…
アッシュ奴らの標的である俺か…ルーク、おまえだろうな
ルーク仕方ねーな。俺が行ってやるよ
ルーク敵の本命であるアッシュが行ったんじゃ囮の意味ねぇからな
アッシュわかった
ルークじゃあ、決まりだな。早速──
アッシュ…!待て、声を抑えろ
ルークえっ…?
ガサガサ
アッシュそこの茂みに誰かいるな。出てこい
ガサッ
ルークあ、おまえ…!
ミュウみゅうぅ…
ルドガーミュウ!?
ミュウあっ…!ルドガーさん!それに…
ルークブタザル!こんなとこまで来てたのかよ!
ミュウご主人様!会いたかったですのー!
ルークおわっ!くっつくなって!
ガイしゃべるチーグル…そいつがさっき言ってた仲間か?
ルークああ。ミュウって言うんだ
ミュウはじめまして…って、あれ?ガイさんと、アッシュさんですの
ルドガーこの世界のガイとアッシュだ。ミュウとは初対面だよ
ミュウそうでしたの。ミュウですの。よろしくお願いしますですの
アッシュ…ああ
ガイよろしくな。…ん?もしかしてそのリング…
ミュウはい、ソーサラーリングですの。これのお蔭でボクみなさんとおしゃべり出来るですの
ルークしゃべれるだけじゃねぇんだぜ。こいつ炎が吐けるんだけどリングの力ですげぇ火力を出せるんだ
ガイそりゃすげぇ
ガイ…ん?待てよ、炎か…
アッシュおい、そのぐらいにしろ。作戦通り、あそこに乗り込むぞ
ミュウみゅっ…!?みなさん、あそこに行くんですの?
ルークああ。何かあるのか?
ミュウボクは…あそこに入って行ったこの世界のルークさんを追って来たんですの
ルークなっ…!
アッシュおまえ、ルークに会ったのか
ミュウはいですの。でもあの建物に入って行って…ボク、怖くて近づけなかったんですの
ルドガーそれでこの辺りから遠巻きに様子を見てたのか
ミュウそうですの。…あっ、そういえば…
ミュウルークさん、先生っていう人とアッシュさんの事を話してたんですの
ミュウその…こ、殺す…って…
アッシュ…気を遣う必要はない。それはもうルークから直接言われている
アッシュそれにしても…先生…やはりアレクセイか
ガイミュウ。どんな話をしてたのか詳しく教えてくれるか?
ミュウはいですの
アッシュここで長話をするわけにもいかない。一度離れるぞ
scene2罪と覚悟
ミュウ…と、いうわけですの
ガイ何か、アレクセイの言い方だとまるでアッシュが先にルークを殺そうとしたみたいだな
アッシュおそらくルークはそう思い込まされているんだろう。アレクセイならそのぐらい造作もない
アッシュだが、そんな嘘に乗せられて大罪を犯すほど愚かだったとはな
ルークそんな言い方する事ねぇだろ。誤解があるってわかったんだ、ちゃんと説明すりゃいいじゃねぇか
アッシュ説明してどうなる。誤解がとけたところであいつの罪が消えるわけじゃない
ミュウでも…ルークさん、辛そうでしたのお話してあげたら、きっと喜ぶと思うですの
アッシュくどいぞ。この話は終わりだ
ルークいや、終わらせんじゃねぇ。ちゃんと向き合えよ
アッシュだから。今更あいつと向き合ったところでもう遅いと言ってるんだ
ルークなあ、おまえ何から逃げようとしてんだよ
アッシュ逃げる…だと?
ルークルークと本音で向き合うのが怖いのか?
アッシュ馬鹿を言うな。俺は何も恐れてなどいない!
ルーク俺の目を見て言えよ!
アッシュ……っ
ルークおまえは本当に…後悔しねぇのか?
アッシュ…うるせぇ。俺が後悔したら何だってんだ
アッシュこれは俺だけの問題じゃねぇ。あいつの気持ちはどうなる?
アッシュ誤解がとけるという事は信頼しているアレクセイと袂を分かつという事だ
アッシュそしてその後、和解した俺から断罪されるんだぞ
アッシュ…あいつは何回絶望すればいい?
ルーク…!おまえ…
アッシュそれだったら…アレクセイを信じ、俺を恨んだまま断罪される方がずっといいだろう
ガイアッシュ…そんな事を考えてたのか…
ルドガー…君の気持ちはわかった。でも、だからこそ俺はルークと話をしてほしいと思う
アッシュ…何故そこまで対話にこだわる。これは俺とルークの問題であって、おまえ達には関係のない話だろ
ルドガー…俺にも兄さんがいるんだ。だから…俺がルークの立場だったらって想像したんだよ
ルドガーすれ違ったまま…兄さんが俺をどう思って断罪するのかわからないなんて辛い
ルドガーアッシュからの言葉で今のルークの絶望を少しでも和らげられると思うんだ
アッシュ…………
アッシュ…ちっ。俺も腹を括るか
アッシュあいつには…言いたい事が山程ある
アッシュこれまで何も言ってこなかったのは俺が手を差し伸べる必要はないと思ってたからだ
アッシュだが、その結果…あいつはアレクセイから差し伸べられた手を取った…
ルークだったら、今からでもいい。ちゃんと話し合おうぜ
ルーク上手くいけば、殺し合いまではしなくて済むかも知れねぇだろ
アッシュ…そう上手く行くかはわからんが…
アッシュいいだろう。ルークに会ったら、全て話そう
ルークよし来た!じゃあ、二人が話せるように作戦を考えねぇとな!
アッシュいや…これは俺の個人的な問題だ。おまえ達が危険を冒してまで付き合う必要はない
ルークおいおい。今更、水臭い事言うなって!
ルドガーああ。乗りかかった舟だ。それにルークを説得するとなると負の因子の事も考えなきゃならない
ルドガー俺達にとっても重要な事なんだ
ガイ俺も、二人の幼馴染として最後まで見届けたいしな
アッシュわかった。…頼む
ガイ任せてくれ。で、その作戦だが…
ルーク俺が囮になるって話だったよな。一人で飛び出して行って見張りの気を引けばいいのか?
ガイそれなんだが、もしかすると誰も囮にならなくてもいいかもしれない
アッシュ何か考えがあるんだな
ガイああ。ちょっと試したい作戦がある。ミュウ、手伝ってくれるか?
ミュウみゅ…?
scene1強襲の騎士団長
アッシュ──では、今話した作戦で潜入する。成功するかどうかは、おまえ達の陽動にかかっている
ルークおう。任せとけって!
ルーク万が一、ガイとミュウの作戦に支障があったら、元の作戦通り、俺が囮になるぜ
アッシュわかった
アッシュ互いに隙を見つけて潜入した後、合流はせず、二手に分かれて拠点を調べるぞ
ガイ確か、中はかなり広いよな。入ってからの作戦は?
アッシュ第一の目的は人質の確保。ナタリアの安全を確保出来れば、格段に動きやすくなる
ルドガーナタリアはここにいる可能性が高いんだよな?
アッシュああ。奴らの拠点の数と位置を考えるとここが一番適している
アッシュそれにあの警備の数…ナタリアがここにいる前提で行動した方がいいだろう
アッシュ…他に確認しておく事はないな?敵拠点に近づいたら速やかに作戦を開始する
ルドガーああ、もう大丈夫だ
アッシュ行くぞ
scene2強襲の騎士団長
警備兵1…はぁ、暇だな。こんな場所、誰も来ねぇだろうに警備なんて必要か?
警備兵2おい、口を慎めよ。騎士団長に聞こえるぞ
警備兵1聞こえてもどうって事ねぇさ。俺はただの傭兵で、奴に忠誠を誓ってるわけじゃねぇからな
警備兵2だったら、どうしてここにいるんだ
警備兵1この計画が成功して戦争が始まりゃいい金になるからな
警備兵2それなら尚更、口に気を付けた方がいいぞ。あの方の逆鱗に触れでもしたら──
ガサガサ…
警備兵2む、何だ…!?
警備兵1…見ろ!あそこの茂み、動いてないか!?こっちに来るぞ!
警備兵2動く茂みなんてあるか!魔物じゃないのか?
魔物?がおおおおおっ!…ですの
警備兵2やはり魔物か!
ルークうまく騙されてるみてぇだな。ミュウにそこらの枝をかぶせて大きくしただけなのによ
ガイ問題なさそうだな。よし、次の段階に行こう
ルークわかった。ミュウに合図を送るぜ
ミュウ(…ご主人様が手を上げたですの。 合図ですの!)
ミュウがおお、がおおおおっ!…ですの
ボボボボォォォッ!
警備兵1うわっ、あちっ!こいつ、火を噴くのか!?
ボボォ!ボボボォ!
警備兵2こいつ、手当たり次第に…!
タッタッタッタッ…
警備兵3何の騒ぎ──なっ…!?何だこの巨大な魔物は…!
警備兵4しかも火を噴いてる!?燃え移ったら一大事だ!
警備兵2はい!すぐ騎士団長に報告を…
警備兵4そんな暇はない!すぐに討伐するぞ!
ルーク入口の方にいた警備兵もこっちに来たぞ!
ガイアッシュ達が入って行くのが見えた。作戦成功だな
ルークよし、仕上げだ、ミュウ
ミュウ(…ご主人様から合図ですの。 作戦成功ですの。 あとは…)
ミュウがおおおおおおっ!…ですの
ガサガサガサ…
警備兵3逃げるぞ!
警備兵4森が燃やされては困る!追いかけて仕留めるぞ!
警備兵2はい!
警備兵1行くぜ!
ルークあいつやるなぁ
ガイ手筈通り、警備兵を誘導して戻って来られたらいいけど…
ミュウはぁ、はぁ…お待たせしましたですの!
ルークお。上手く逃げて来たみたいだな
ミュウはいですの。ガイさんが用意した枝の魔物相手に戦いを挑もうとしていたですの
ガイひとまず警備兵は引き離せたな。とはいえ、はりぼての魔物だから、気付かれるのも時間の問題だろう
ルークだな。今の内に移動しちまおうぜ
ガイああ。そこの裏口から中に入ろう
ガイ…さて、入ったはいいが思ってたより広いな。どこから探すべきか…
ミュウナタリアさん、どこにいるんですの…?
コッコッコッ…
ルークしっ…足音だ。誰か来るぞ
ガイ…!そこの資材の影に身を隠すんだ
警備兵5……
ルークあいつ、食事を運んでるみてぇだな
ガイ食堂があるにも関わらず、わざわざ食事を運び出してるのか…?
ルーク誰かのために運んでる…って事は、ナタリア用か?
ガイ…その可能性は高いな。後をつけてみよう
警備兵5姫様の食事を持って来たぞ
警備兵6わかった。今開ける
ルーク(姫様…って事は…)
ガチャ
警備兵5姫、お食事です
???…必要ないですわ
ルーク今の声…ナタリアだ
ガイああ、間違いない。行こう
警備兵5召し上がってください、姫。もし体調を崩されては困りますから…
ナタリア私の体調を気にするなら、早く縄を解いて、帰しなさい
警備兵6それは──
???ああ、すぐに帰してやるぜ
警備兵6…!誰だ!
ドゴッ
警備兵6うっ…
バタン
警備兵5し、侵入者──!?
ガイはぁっ!
バキッ
ナタリアルーク!ガイ!
ガイ無事か?
ナタリアええ、大丈夫ですわ
ルーク…よかった。待ってろ、今縄を切るからな
ブチブチ…
ルークこれでよし
ナタリアふう…助かりましたわ
ナタリア…ルーク、嬉しいですわ。最近こもりがちだったあなたがこうして助けに来てくれるなんて…
ルークあー…俺はおまえの知ってるルークじゃねぇんだ
ガイ…信じられないだろうけど、こいつは、別の世界のルーク・フォン・ファブレなんだよ
ナタリア別の世界…?
ガイ説明は後だ。とにかくここを離れよう
ナタリアわかりましたわ
ナタリア…では、こちらのルークは別の世界にいるルークなのですね
ガイ理解が早くて助かるぜ
ガイなあ、ナタリア。最後にルークと会ったのっていつだ?
ナタリア…かなり前ですわ。少なくともアッシュが親善大使として国を発つよりは前でしたもの
ナタリアどうして今そんな事を聞くんですの?まさか、ルークに何か…?
ガイ何かあった…というか…実はナタリアの誘拐にあいつも関与しているんだ
ナタリアそんな…!どうして…!?
ガイアッシュの読みでは首謀者はアレクセイ騎士団長だ。だからルークも言いなりに…
ナタリアアレクセイが?本当ですの?
???勝手に出歩かれては困ります。ナタリア姫
ナタリア…!
ルーク誰だ!
ミュウあっ、この人…
ガイアレクセイ…騎士団長!
アレクセイ外で妙な魔物が出たと報告を受けて念のために見に来たが…嫌な予感ほどよく当たる
ルークおまえが全ての元凶か!よくも、のこのこ出てきやがったな!
アレクセイ…おまえがもう一人のルークか。ルークから話は聞いている
アレクセイまさに瓜二つだな。利用価値がありそうだ
ルーク何…!?
ナタリアその言い方…罪を認めるのですね
アレクセイこの期に及んで弁解など意味を持ちますまい
アレクセイ全てを知られてしまった以上、始末するほか道はありません
ナタリア何ですって…?
ガイ一国の王女に手をかけるっていうのか…!
アレクセイ騎士団が守るべきは国。我が国をより豊かにするためなら王女とて斬るのみ
アレクセイそれに…表向き、犯人はおまえ達という事になる
アレクセイ我々騎士団による救出作戦も空しく王女はおまえ達の凶刃に倒れてしまわれたという筋書きだ
ルーク好き勝手言いやがって…
ナタリアあなたの好きにはさせませんわ!
ガイああ。いくら騎士団長と言えど三対一ではどうにもならないだろ
ルークおまえの事は許せねぇと思ってたんだ…
ルークあいつはおまえを信じてるんだ、そんな奴の気持ちを弄びやがって…俺が代わりにぶっ飛ばしてやる!
アレクセイ威勢のいい連中だ。口だけでないといいがな
ルーク…ミュウ。先に行って、ナタリアを助けた事アッシュ達に伝えてくれ
ミュウは、はいですの!
アレクセイ行かせると思うか?
チャキ
ルークおらぁっ!
ガキィン!
アレクセイ…中々やるようだな
ルーク今だ、行け!ミュウ!
ミュウはいですのー!
アレクセイ一匹逃がしたか。…まあいい
ガンッ
ルークくっ…!
ガイルーク!
アレクセイ覚悟は出来ているのだろうな。我が力…その身をもって思い知るがいい
scene3強襲の騎士団長
ガキィン──!
ガイくっ…!
ナタリアさすがは騎士団長…強いですわね
ルークやっぱ一筋縄ではいかねぇな
アレクセイふっ…思いの他やるようだな
ルーク(…こいつの戦い方、 何か違和感がある…)
ルーク(手加減されてるような… まさか…時間を稼いでる? でも、何のために…)
ルーク…!そうか!
ルークガイ、ナタリア!聞いてくれ!
ガイ何だ、こんな時に…!
アレクセイふ、構わん。作戦会議が必要ならするがいい。戦局は何も変わらんがな
ルーク(やっぱりだ…。 あいつは時間を稼ぎたがってる)
ルーク…いいか。よく聞いてくれ──
scene1果たせない誓い
アッシュ…首尾よく潜入出来たな
ルドガー広いとは聞いていたが、想像以上だな。…調べるのは骨が折れそうだ
アッシュ手分けするぞ。おまえは向こう端から頼む
ルドガーわかった。何かあれば合図を出すよ
ルドガー…アッシュ、一つだけ確認しておきたいんだ
アッシュ何だ
ルドガー人質救出より先にルークに会ったらどうする?
アッシュ状況による。話せる機会があれば様子を確認する
アッシュ負の因子とやらの影響がどの程度か見極めねぇと話が通じるかどうか判断出来ん
アッシュ話し合いが無理だと少しでも感じたら実力行使だ。長々と説得する余裕はないからな
ルドガーそうか…わかった。…ルークと話せるといいな
アッシュ…ああ。行くぞ
ルドガー(…この部屋にも何もない…か。 資材や武器を置いている部屋が 多いな…)
ルドガー(次は…)
ルドガー(人の気配が…)
ルドガー(…! あれは…!)
アッシュ…ルークはこの中か
ルドガーああ。見た限りでは、一人のようだ
アッシュ話をするにはおあつらえ向きか…
アッシュ…俺が入って話す。外で何か問題があれば、知らせてくれ
ルドガーわかった。…上手く行くよう祈ってる
アッシュ…ああ
ガチャ
アッシュ…ルーク
ルークアッシュ!どうしてここに…?
アッシュケリを付けに来た。…おまえが俺に聞きたいのはそんな事なのか?
ルーク……
ルーク…どうして裏切ったんだ。二人で国を背負おうってこの剣に誓ったのに…
アッシュ誤解だ。俺は裏切ってなど──
ルーク嘘をつくな!
ルーク隠したって無駄だぜ。おまえ、俺を消すためにいろいろ根回ししてたんだろ
ルーク全部、先生から聞いてるよ
アッシュ俺の言葉には聞く耳も持たねぇ癖にアレクセイの言葉は信じるのか
ルークうるせぇ!
ルークおまえは、俺が邪魔なんだろ。わかるんだ
ルーク俺も、おまえが憎くて憎くて邪魔で仕方ねぇ。絶対に許せねぇんだ
ルークこそこそと人を消して王になろうとする、おまえみたいな屑に国は任せらんねぇ!
ルークおまえを殺して、俺が王になる。これが俺の選んだ道だ!
アッシュ…ルーク。それは本当に、国のためなのか。ただの俺への憎しみじゃないのか
ルークおまえを憎む事が!おまえを王にさせない事が!国のためになるんだ!
アッシュ…話にならんな。これも、負の因子の影響ってやつか
ルーク剣を抜けよ、アッシュ
チャキ
ルーク今ここで、息の根を止めてやる!
ヒュンッ
ガキィィン!
アッシュちっ…!目を覚ましやがれ!
ドカッ
バゴォンッ!
アッシュくっ…!
ルドガーアッシュ…!大丈夫か!?
ルーク仲間もいたのか
警備兵の声何の騒ぎだ!?
アッシュちっ、邪魔な奴らが集まって来そうだな
ルドガーどうする。一度態勢を立て直すか?
アッシュいや…ここで退くわけにはいかねぇ
ルドガーわかった。警備兵は俺が相手する
アッシュ任せた
ルーク…今度は逃げねぇんだな
アッシュおまえと向き合うと決めたからな
scene2果たせない誓い
ルドガーはぁっ!
ドカッ
警備兵7ぐっ…
ドサッ
警備兵8おのれ!大人しくしろ!
ルドガーくっ…次から次へと…!
アッシュはっ!
キィン!
アッシュ…今のも弾くか。腕を上げたな
ルーク当たり前だ。おまえに勝ったあの日から二度と負けねぇように鍛えて来たんだ
ルークなのに…何だ、その戦い方は!おまえはそんなもんじゃねぇはずだろ!
キィン!
アッシュ…ふん。俺の心配をする余裕まであるとはな
ミュウ見つけたですの!ルドガーさん!アッシュさん!
ルドガーミュウ!
ルークあいつ…あの時の…
ミュウナタリアさんを見つけて救出しましたの!
ルークちっ…警備の奴らは何してやがんだ
アッシュそうか…。
チャキ
アッシュもう手加減はしねぇ
ルーク本気で来い、アッシュ!それでも俺の方が強いって事を見せてやる!
scene3果たせない誓い
ルークぐぅっ…!さすがだな…!
ルークだが、まだ…!
アッシュおまえは強くなった。…だからこそ残念だ
ドカッ
ルークぐあぁぁっ!
ガタガタガタ
ルーク残念…だって…?それは…こっちの台詞だぜ…
アッシュ…何?
ルークおまえに俺を殺す事は出来ねぇ。偽親善大使の犯人として、差し出す必要があるもんな?
アッシュ……
ルークその顔、図星ってわけだ。この状況でまだ俺を捕らえられるって?
ルーク笑わせんな!
ルーク相手を殺す覚悟のねぇ奴に俺は負けたりしねぇ!!
ガキィン!
アッシュくっ…おまえ…まだこんな力が…
ルーク俺は!自分だけの居場所を手に入れるんだ!!
ルークそのためには、おまえが邪魔だ!
アッシュこの…
???ふざけるな!
ガイおまえの居場所はアッシュの隣じゃなかったのかよ!
ルークなっ…!
アッシュはあっ!
ガキィンッ
ルークしまっ…
ナタリアアッシュ!無事ですの!?
アッシュああ、問題ない
ルドガー二人共、無事でよかった。…ルークは一緒じゃないのか?
ガイ…アレクセイと戦ってたんだが警備兵に囲まれそうだからって俺達だけ先に逃がしてくれたんだ
ナタリア私やガイが捕まって人質になったらアッシュが戦いにくいからと…
ミュウご主人様…ボクにもアッシュさんのために先に行けって…心配ですの
アッシュふん…ルークの奴…余計な気を回しやがって
ルークルーク、ルークって…
ルーク俺の事は消そうとしたくせにあいつとは手を取り合って仲良しごっこか?
ナタリアルーク…
ルーク…なあ、ナタリア。どうして大人しくしててくれないんだ
ルーク先生から言われてるんだ。逃がすぐらいなら…口を封じなくちゃいけないって
ナタリア本気ですの…?
ルーク俺はやらなきゃならねぇんだ!
ルーク邪魔をする奴は誰だろうと斬る!相手が誰であろうと関係ねぇ!
???いい心掛けだ、ルーク
アッシュ…!おまえは…
アレクセイ私も加勢しよう
scene1交わる剣
ルーク先生!
ガイ騎士団長がここにいるって事は…ルークは…!?
アレクセイ今頃、私の部下が捕えているだろうな
ミュウそんな…!ご主人様を助けるですの!
ルドガーミュウ!アッシュ、俺もルークのところへ行く。ここは任せていいか
アッシュああ、こっちは気にするな
ルドガーすまない!
ナタリアもう一人のルークを捕らえて手駒としての利用を企むなど、どこまでも下劣ですわね
アレクセイキムラスカの発展のためになるならどのような汚名も我が誉れです
アッシュキムラスカの発展だと?笑わせるな
アッシュシルヴァラントとの親交を妨げ、王家を転覆させようとする者が国の未来を語るんじゃねぇ!
アレクセイ解釈の相違だな。王家など、ただの象徴にすぎん。国民が納得さえすればルークで十分だ
アレクセイシルヴァラントとの親交も国の発展を想えば必要のない事
アレクセイ対等な和睦を結ぶより実力で支配してしまった方が富国強兵に繋がる事は明白だ
アッシュだが多くの血が流れる事になる
アレクセイそう。おまえや王は手を汚す事を嫌って親睦策を進めて来た
アレクセイだが私は、国のために手を汚す事を厭わない。大義のためなら罪を背負おう
ガイこんな事に大義なんてあるかよ!
アレクセイ綺麗事の中にしか大義を見出せぬ者にはわからんだろうな
ナタリア詭弁ですわ。そんな事に民がついて来ると思っていますの?
アレクセイ私について来る必要はない。私が豊かにした国を治めるのはここにいるルークだ
ルーク…わかっただろ、アッシュ。先生は俺を王として認めてくれてるんだ
ルーク俺は先生や民の期待に応えられる立派な王になってやる。おまえなんていなくてもな!
アッシュ何でわからねぇんだ、ルーク
アッシュおまえを必要としてるのはアレクセイだけじゃない
アッシュ俺が王になった時、おまえが一緒に国を背負ってくれるんじゃなかったのか
ルーク今さら何言ってんだ。親善大使として供にガイを連れて出たのだって、俺は不要だと知らしめるためだろ
アッシュ…そう吹き込まれていたのか
ガイ誤解だ、ルーク!あの時、アッシュはおまえを連れて出ようとしてたんだぞ
ルーク嘘をつくな!
ナタリアその話は私も聞いています。本当ですわよ!
アレクセイ…ルーク。私か奴ら、どちらの言葉を信じるかはおまえの自由だ
アレクセイだが、何が真実であれ今、この状況でやるべき事は変わらないのではないか?
ルーク…そうだ。もう、過去の約束なんて関係ねぇ
ルーク話は終わりだ!全員まとめて殺してやる!
チャキ
アッシュちっ…結局こうなるのか…!
ルークはぁ…はぁ…あいつの部下は何人いやがんだ。いくらぶっ飛ばしても減らねぇ
ルークいい加減、そこを通しやがれ!
警備兵9アレクセイ様の命だ!行かせるわけにはいかん!
警備兵10この数に囲まれてるんだ、おまえこそ観念しろ!
ルーク何人に囲まれようと、全員ぶっ飛ばしてやるだけだ!
警備兵11奴は疲れてきてる。仕上げだ、全員一斉に──
ドカッ
警備兵11ぐあっ…
ドサッ
警備兵10何だ、おまえは!
ルドガールーク、無事か!
ミュウご主人様!助けに来たですの!
ルークおまえら!へっ、俺は一人でも平気だったのによ
ルーク…って言いたいとこだけど、正直、助かったぜ。ありがとな
警備兵9報告にあった侵入者か!
警備兵12一人増えたところで同じだ!全員捕えるぞ!
ルーク一人と一匹だ!それに同じなんてとんでもねぇ
ルークこれで百人力だぜ!
ルドガーここを切り抜けてみんなのところに戻ろう!
ルークああ!
アッシュはぁっ!
ガキィン!
ルークぐっ!
ナタリア今ですわ…!はっ!
ヒュンヒュン
キン、キン
ナタリアそんな…二本とも…!
ガイこれならどうだ!秋沙雨!
アレクセイ遅い
キンキキキキキキン…!
ガイ全部受け止めるって…化け物かよ
ルーク隙だらけだな!空破絶風撃!
バシュッ
ガイくっ、かすった…!
ナタリアやはり、手ごわいですわね
ガイああ。息が合ってる。師弟だけあってお互いの戦い方を熟知してるな
アッシュそれだけじゃない。ルークは大胆な攻撃をするようになった
アッシュアレクセイに背中を預けられるという信頼があってこそだ…
ルークしゃべってる暇があんのか。俺と先生の連携に、おまえらが勝てるはずねぇんだよ!
ガキン!
アッシュ…ちっ、てめぇ──
???連携が何だってんだ!だりゃぁっ!
ルークなっ…!
ガキィン!
ルークおまえは…!
ルドガーみんな、大丈夫か!?
ガイルーク、ルドガー!ミュウも!無事だったんだな!
ミュウはいですの!
アレクセイ…使えん部下共だ。足止めすら出来ないとは
ルーク何人増えようと同じだ、邪魔する奴は斬る!
ルーク同じ顔はいらねぇ…俺は、俺だけで十分だ!
アレクセイそうだ。もう一人のルークには利用価値があるが、元より計画にはいない存在…
アレクセイ殺したところでどうにでもなる
ルーク好き勝手言いやがって。こっちだって、おまえらまとめてぶっ飛ばさねぇと気が済まねぇんだ!
アッシュここで方を付けるぞ!
アレクセイ来るがいい。この戦いが、私の理想の礎となるのだ!
scene2交わる剣
ルークぐっ…俺は…まだ…
アッシュもういいだろう、ルーク。いい加減、俺と…そして自分自身と向き合う覚悟を決めろ
ルーク俺は…何も間違ってねぇ…!苦しくて辛くて…足掻いて…やっと見つけた道なんだ!
ルーク間違ってたって言うんなら…
ルークじゃあ俺はどうすればよかったんだ!教えてくれよ!!
アッシュ情けねぇ。持ち主が腑抜けじゃ、誓いの剣が泣いてるな
ルーク剣が…誓いが何だってんだ!こんなもの…!
アッシュこの剣に恥じるような事してんじゃねぇ…この屑が!!
バキィッ
ルークうぅっ…!
ルークなぁ、アッシュ…王様になれなかった方は大人になったらどうなるんだろうな?
アッシュわかんねぇが、好きなもんになりゃいいだろ
ルークだったら俺は…王様を支える騎士になりてぇな。アッシュは?
アッシュ…俺も似たようなもんだ
アッシュなぁ、どっちが王になっても、俺達は二人で国を背負おう
ルーク一緒に王様をやるって事か?
アッシュ王は一人だ。だが、王の誇りは二人で持てる
アッシュ二人、肩を並べて対等の関係で国のために生きるんだ
ルークへへ、いいな!じゃあ、この剣に誓おうぜ!せっかくお揃いなんだし
アッシュ伯父上からいただいた双子の剣か。ああ、ちょうどいい
ルーク決まりだな。じゃあ、剣先を合わせて…
アッシュ…こうか
チャキン
ルーク俺は誓う。いかなる時も王者の誇りを持ち力を合わせて国を背負う
アッシュ俺も誓おう。どれだけ時が経とうと、俺達は肩を並べ、国を守る
ルーク…ごめん…アッシュ…
ドサッ
アッシュ…!
アッシュ…何だ、今のは…
ルドガー負の因子が壊れたんだ…!
ルークじゃ、これで元に戻るのか!?
ルドガーそのはずだけど、あとは目が覚めるのを待つしかない
アッシュなら、他の事を片付けるぞ
ガイそうだな。他の奴らが起きる前に縛っておかないと
ナタリアそれなら地下室の縄を使うといいですわ
ルドガーそれじゃあ、手分けして拘束していこう
兄として
ルーク…う…ここは…?
ルークん…?
ギシッ
ルーク俺、縛られて…
ルーク…ああ、そうか俺…何て事を…
アッシュ…気分はどうだ、ルーク
ルークアッシュ…。何だか長い事、悪い夢を見てたみたいだ
ルーク…俺、またおまえに負けたんだな
アッシュ…ああ
ルーク話したい事がたくさんあるんだ…でも…何を話せばいいのか…わからない
ルークただ…謝っても済まない事をたくさんしちまったのはわかってる
アッシュ……
アッシュ…何から話すべきだろうな
アッシュ我ながら情けない事だ。おまえと向き合うと決めておきながらいざとなると言葉が出ない
ルーク…俺は…こんな言葉で済むとは思ってねぇけど…
ルーク悪かった、アッシュ。全部…俺が弱かったせいだ
ルーク少し考えれば、先生の言ってた事がおかしいって…わかったはずなんだ
アッシュ…気付いていたのか
ルーク…ああ。でも、何も考えられなかった。おまえへの憎しみで頭がいっぱいで…
アッシュ…………
アッシュ…わかっているようだが
アッシュ俺は、おまえを殺そうなんてしていない。不要だと思った事もない
アッシュおまえと二人、肩を並べて国を支えていくと誓ったあの日から俺の気持ちは変わっちゃいない
ルークそんなの、俺だって…!なのに、どうしてこんな事になっちまったんだろうな…
アッシュ…その憎しみの原因は、負の因子ってやつらしい
ルーク負の因子…?
アッシュああ。俺も詳しくは知らないが性格が変わっちまうものらしい
アッシュそいつを壊したから今こうして話が出来ているんだろう
ルーク──『負の因子は道標』
アッシュ…何だ、それは
ルークずっと前に、変な男と会ってそう言われたんだ
ルーク意味わかんなかったけど、何でか忘れられなくて
アッシュ…ルドガーなら何か知っているかもしれないな
ルーク…でも、関係ねぇんだ。負の因子ってやつのせいで憎しみが芽生えたんだとしても…
ルークその憎しみで行動に移しちまったのは、俺だ
ルーク…アッシュ。俺の首をシルヴァラントに差し出してくれ
アッシュ……
ルークおまえは親善大使としてシルヴァラントとの親交を取り戻す必要がある
ルークおまえのために出来る事はもうこれしか残ってない
アッシュ…それでいいのか
ルークああ
アッシュ……
アッシュ…わかった
アッシュルーク、ひとつ言っておく
アッシュおまえは大罪人だ。国葬もされないだろう
アッシュ国民から、世界中から、罵倒されるかも知れん
アッシュだが…俺にとっては…
アッシュ…自慢の弟だ
ルーク…ありがとう、アッシュ。それが聞けただけで、満足だ
ガチャ
ガイ話は終わったのか?
アッシュ…ああ
ナタリアルークの事…これからどうするんですの?
アッシュ…まず国に連れて帰り、伯父上に全てを報告する
アッシュおそらく、シルヴァラントに引き渡すという事になるだろう。本人もそれを希望している
ナタリアそんな…
ガイやっぱり…そうなるよな…
アッシュああ…
ルークなぁそれって、シルヴァラントの王に斬りかかった犯人が裁きを受ければいいって事だろ?
アッシュその通りだが…何がいいたい?
ルーク名案を思いついたんだよ。シルヴァラントも納得出来てこっちの俺も助かる方法だ
アッシュ…何?
ガイそんな方法があるのか…!?
ルークああ!超名案、聞いて驚くなよ!それは…
ルーク俺が犯人になる事だ!
紡ぐ未来
インゴベルト六世…そのような事件が起こっておったとはな
アッシュ俺も想定外でした
インゴベルト六世うむ…。しかし、偽者のルークとは敵も考えたものよ
アッシュ偽の親善大使として俺を失脚させ同時にルークをも陥れる…実に巧妙な計画でした
インゴベルト六世しかしルークはそれを暴き、おまえと共に犯人を捕らえた
インゴベルト六世このところのあやつには目に余る物があったが…見直さねばならんようだな
アッシュはい。それについては本人も反省しこれからを見ていてほしいと申しております
インゴベルト六世わかった。期待しておると伝えよ
アッシュはい
ガイさすがアッシュ。王様相手に嘘ついて汗一つかいてないとはな
ナタリアまあ、ガイ。それではまるでアッシュが大嘘つきみたいですわ
アッシュ…大嘘つきには違いない
ルークでも…本当にこれでよかったのか…?あいつらは牢に入れられたんだろ?
アッシュ問題ないだろう。本人がいいと言ったんだからな
ルーク超名案、聞いて驚くなよ!それは…
ルーク俺が犯人になる事だ!
ガイおまえが犯人に…?身代わりにでもなるってのか?
ルークまぁ、そんなとこだな
アッシュわかって言ってるのか?処刑される事になるんだぞ
ルーク俺は殺されねぇよ。ただ、この世界から消えてなくなるだけだ
アッシュこの世界から…消える?
アッシュ…そうか。別の世界から来たおまえ達なら元の世界に戻れば済むという事か
ルークそういう事。これにはルドガーの力が必要なんだけどな
ルドガーなるほどな
ガイそんな簡単に戻れるものなのか?
ルドガー元の世界に戻る時空の裂け目は俺とアッシュが接触すれば出現するはずなんだ
アッシュ俺が?
ルドガーああ。ルークの負の因子が壊れた時、アッシュに何か宿らなかったか?
アッシュ…そういえば、あったな。あれは何だ?
ルドガーごめん…詳しくはわかってないんだ。ただ…ある人は、あれの事を道標と呼んでいた
ルドガーそしてこれまでは、あれが宿った人と俺が触れる事で元の世界に戻れていたんだ
アッシュ…つまり、俺とおまえが揃えばこの世界から離脱出来るんだな
ルドガーああ
アッシュ…ルドガーの言う通り、あいつに触れたら、時空の裂け目とやらが出現した
アッシュ裂け目を観測して出現の法則性もわかったしな
アッシュ後はその時空の裂け目を使ってあいつらを上手く逃がしてやれば今回の件は終わりだ
ルーク…いいのかな。先生は牢に入ってるのに俺だけ無罪放免なんて…
ガイ騎士団長──じゃなかった。元騎士団長は、さすがに野放しには出来ないからな
アッシュだが、偽ルークに騙されていた事になっている。本来の罪よりも、よほど軽い
アッシュもしおまえが気が咎めるからと真実を話せば、二人共、処刑という事もあり得る
ルークそれはそうだけど…アッシュらしくないな
アッシュ「自分と向き合え」…そう言われたからな
アッシュそれに、親善大使としても、この嘘は悪くないと思っている
アッシュシルヴァラントや諸外国から見たキムラスカの印象が変わってくるからな
ナタリア確かに…騎士団長と王位継承候補者が結託したとなると、国の威信に関わりますわ
ナタリア国内に不穏分子を抱えているとなればまた何か事件を起こす可能性を孕んでいるように感じますし…
ナタリアその点、偽ルークという一人の悪党が騎士団長を騙して起こした事件なら犯人さえ捕まれば解決ですわね
アッシュそういう事だ。この方が各国と良好な関係を築きやすい
ガイ問題は、現実は不穏分子を抱えたままだって事だけどな。強硬派はまだいるだろ?
アッシュその事については考えがある。ついて来てくれ
ガイどこへ行くんだ?
アッシュ地下牢だ
アッシュ…気分はどうだ、アレクセイ
アレクセイ……。このようなところにお揃いで…王女殿下までお越しとは光栄ですな
ナタリア皮肉を言う元気がおありのようで安心しましたわ
ガイまぁ落ち込んでるとも思ってなかったけどな
ルーク先生…俺…
アレクセイ私はもう先生ではない。ただの罪人だ
ルーク…………
アレクセイ…それで、何をしに来た。事実を随分と捻じ曲げているようだが
アッシュああ。察しのいいおまえの事だ、どういう話になっているかはわかっているだろう
アレクセイ全ての罪をあのもう一人のルークに背負わせるのだろう
アレクセイ私がおまえにやろうとしていた計画と同じだ
アッシュ口裏を合わせろ。そうすればおまえは、ただの騙されていた被害者だ
アッシュ情状酌量の余地ありとなれば、騎士団長の肩書きを失うだけで済む
アレクセイ…甘いな。おまえも
アッシュ……
アレクセイ二人共、非情となれ。これは強硬派、穏健派などという話ではない
アレクセイ真に国を思うなら、情に流されず大局的に物事を判断するべきなのだ
アッシュアレクセイ。おまえが国を想う気持ちは本物のようだな
アレクセイ当然だ。大義もなくあのような事はしない
アッシュわかった。その大義を信じよう。アレクセイ、おまえの力を借りたい
アレクセイ何…?
アッシュ強硬派をただ排除するのではなく意見の一つとして耳を傾けるべきだと俺達は思っている
アッシュだが、なかなか意見が通らないからと今回のような事件を繰り返されても困る
ルーク先生が連れて来た傭兵の中には戦争さえ出来ればいいって奴もいました
ルークもしそんな奴らが強硬派の実権を握ればこの国は大変な事になりかねない…
ルークだから先生はここから釈放されたら強硬派をまとめあげて暴走しないようにしてほしいんです
アレクセイ…なるほど。今度は強硬派で獅子身中の虫になれと言うわけか
アッシュ裏切れと言っているわけではない。それに断っても構わん。これは命令ではなく依頼だ
アレクセイ…いいだろう
アレクセイアッシュ、ルーク。おまえ達が作り上げていく国、しかとこの目で見させてもらうぞ
ガイ…なるほど。まさか不穏分子を不穏でなくならせるとはな
ナタリア一筋縄ではいかないでしょうけどアッシュとルークならいい国にしてくれそうですわね
アッシュ他人事だな。その国の王妃になるのはおまえなんだぞ
ナタリアわかっています。私、今日ほどその事を誇らしく思った事はありませんもの
アッシュ…そうか
ガイあとは、ルーク達を元の世界に帰せば、万事解決だな
アッシュその件も、もう動いている。ゼロスが協力してくれるそうだ
ルーク今日で何日目だ?いつまでここに閉じ込めとくつもりなんだよ
ルドガーいろいろと根回しも必要だろうから時間がかかるんだろうな
ミュウボク達、このまま処刑されたりはしないですの…?
ルーク縁起でもねぇ事言うんじゃねぇ。さすがにその心配はねぇよ
コツコツコツ…
ミュウ誰か来ましたの…
看守迎えが来た。出ろ
ルーク迎え…?
ゼロスよう。おまえが、もう一人のルークか
ルドガーなっ…!
ルークゼロス!?
ゼロス俺さまの事、知ってんのか?いや、アッシュの話からすると別世界の俺さまと知り合い…か
ルーク別世界…って、俺達の事、聞いてるのか?
ゼロスああ。全部聞いてるぜ。まぁ、ここだと他の兵士もいるからあんまり話してらんねぇけど
ルドガーさっき迎えが来たって言われたけどどういう事なんだ?
ゼロス話は簡単だ。おまえらは親善大使を騙ってシルヴァラントに来た犯人だよな?
ルークあ、ああ…
ゼロスシルヴァラントでは、王に斬りかかった大罪人だ
ゼロスだから、おまえらの身柄はシルヴァラントで預かる事になった
ミュウみゅ…!それじゃ、ボク達は…
ゼロスこれからシルヴァラントに護送する。その間、絶対に逃げないよう俺さまとアッシュ、ルークで見張る
ゼロス絶対に逃げんなよ!絶対だぞ!
ミュウボク達、もう助からないですの…?シルヴァラントで処刑ですの!?
ルーク何言ってんだ、ミュウ。今、誰が護送するって言ったか聞いてなかったのか?
ミュウみゅ…?
ルドガー…これって…そういう事か
ルークああ。待ちわびたぜ、まったくよ
キムラスカ騎士1あの、アッシュ様。どうしてこのような山を通るのですか?
シルヴァラント兵1メルトキオに向かうなら街道を通った方が安全で早いですよ
アッシュ出発の直前に情報が入った
アッシュこの罪人共を逃がそうとする勢力が街道で待ち伏せているとな
ゼロスで、俺とアッシュで話し合って急遽この山を通る事にしたってわけだ
ルークまぁ、街道を通っていてもこのキムラスカとシルヴァラントの連合部隊なら、負けないだろうけどな
キムラスカ騎士1なるほど、そうでしたか。得心いたしました
ゼロス逃げられなくて残念だったな。大人しくシルヴァラントで刑を受けてもらうぜ
ルークちくしょう。全部バレてやがったのかー
アッシュ…………
ルドガーこうなったら、一か八かだ。ミュウ!
ミュウはいですの!
ボォォォッ!
シルヴァラント兵2こいつ、炎を!
キムラスカ騎士2まずい、縄が焼き切られたぞ!
ルークあちち…!
ルドガー行くぞ!
ルークおう!
ルーク待て!
アッシュ奴らは俺達で追う!ゼロス、包囲網を張る指揮を頼む!
ゼロスわかった!
ゼロスおまえらは無暗に追うな!奴らの退路を塞ぎながら徐々に追い詰めるぞ!
シルヴァラント兵1はっ!
キムラスカ騎士1承知しました
ルークはぁ、はぁ…この辺でいいか?
ルドガーああ。ちょうどよさそうだ
アッシュルドガー、手を
ルドガーああ
ヒュンッ
アッシュ練習通り、崖の下に開いたな
ルーク後は、兵士達が見てる前で俺達が崖から飛び降りればいいんだな
ルークちゃんと裂け目に入ってくれよ。もし失敗したら…
ルーク怖ぇ事言うなよ…
ミュウ大丈夫ですの。もし少しずれても、ボクが飛んで、ちゃんと裂け目に入るようにしますの
アッシュ…ルーク、ルドガー、ミュウ。おまえ達には世話になった
ルーク俺も助けてくれて…何て感謝すればいいんだろうな…
ルークへへっ、別にいいって
ルドガーああ。二人でいい国を作って行ってくれ
アッシュ勿論だ
キムラスカ騎士の声いたぞ!
ルーク…来たみたいだな
ルドガーよし、行こう
ルークああ
シルヴァラント兵1もう逃げ場はないぞ!
キムラスカ騎士1これだけの包囲網に後ろは崖…観念するんだな
ルーク捕まるぐらいなら、死んだ方がマシだ!
ルークとりゃあっ!
キムラスカ騎士2なっ…!
ルドガーはっ!
ミュウさよならですの!
ヒュンッ
シルヴァラント兵2あいつら、飛び降りやがった…!
アッシュ……行っちまったな
ルークああ
ゼロスふぅ、やっと追いついたぜ
ゼロスん?どうなったんだ?
シルヴァラント兵1それが…奴ら、崖から飛び降りて…
ゼロスなるほど。ここから飛び降りたらまぁ助からねぇわな
ゼロス奴ら、途中で引っ掛かったり飛んで逃げたりしてねぇよな?
アッシュああ。落ちて行って、そのままだ。もう姿も見えない
ゼロスなるほど。じゃあ、この件は被疑者死亡って事で報告しておくぜ
アッシュああ。すまないな、引き渡せなくて
ゼロスこっちの兵士もいたんだ。問題にはならねぇよ
アッシュルーク、このままシルヴァラントに謝罪と説明に向かうぞ
アッシュキムラスカの親善大使としてついて来るだろう?
ルーク…ああ!
予言と予感
ルークやっと帰って来たぜー!
ミュウただいまですのー
ルドガーふう。今回もどうにかなったな
ルドガー…ん?
エルルドガー!もう戻ってきたの!?
ルドガーエル…!…という事は、こっちではそんなに時間が経ってないのか?
エルうん。これからどうしようってティアと話してたところだよ
ティアええ、5分も経ってないわ。まさか…もう解決してきたの?
ルドガーああ。分史世界と正史世界では時間の流れが違うから…、向こうでは何日も経っていたんだよ
ルークなぁ、ティア。俺の事、わかるか?
ティアええ、大丈夫。ちゃんとルークの事がわかるわ
ルークよかった!異変もばっちり解決したんだな!苦労した甲斐があったぜ
ティア随分と大冒険だったようね
ルークああ。聞いてくれよ。あっちの世界ではキムラスカの王位継承者が二人いて──
ルーク──って、そうだ。伯父上の方はどうなってんだ?
ルーク話してる途中で俺の事が認識出来なくなっちまって俺、逃げるように出て来たんだけど…
ティアわからないわ。すぐに行った方がいいわね
ルークああ、行ってくる!
エルルドガー、これからどうする?異変の調査は、終わったんでしょ?
ルドガーああ。宿に戻って、今回の事を整理してから王様に報告しに行こう
ルドガー少し気になる事もあるしな
エル何かあったの?
ルドガー後で話すよ
エルうん
ルドガー(…『負の因子は道標』… 分史のルークが謎の男から 言われた言葉らしいが…)
ルドガー(分史のキールが言ってた男と 同一人物か…? それに、道標って…一体…)
インゴベルト六世ルーク、どこへ行っておったのだ?
ルークすみません、ちょっと野暮用で…それで、お話とは?
インゴベルト六世うむ…ずっと隠しておったのだが、昨今の成長したおまえを見ているとそろそろ話してもよいと思ってな
インゴベルト六世実は…お主には、双子の兄がいる
ルークなっ…!
インゴベルト六世名をアッシュと言ってな…
ルーク(アッシュ…!? って事は、こっちの世界でも 俺とアッシュは兄弟…!)
インゴベルト六世事情があって身分を隠し養子に出しておったのだ
ルーク事情?何です、それは?
インゴベルト六世…天啓の儀式があるだろう。シルヴァラントの神子が歴史の記された石碑を読み解く儀式だ
ルークはい。世界が結晶に包まれた時に問題になったやつですね
インゴベルト六世うむ…かつて天啓の儀式で予言された歴史によると、双子の王位継承者は国を破滅に導くとされていた…
インゴベルト六世その予言を避けるために…な
インゴベルト六世しかし最近、どういう経緯か、自らの出自を知り、ナタリアとも知り合っているようだ
インゴベルト六世ナタリアから、バチカルに呼び戻せないかと相談を受けてな…
インゴベルト六世おまえにも関わる話ゆえ、伝える事にしたのだ
ルークなるほど…。お話はわかりました
ルーク伯父上は、アッシュを俺の兄として呼び戻すおつもりなんですか?
インゴベルト六世うむ。前向きに検討するつもりだが…何じゃ、思ったより驚いておらんな
ルーク兄貴がいるってのも悪くねぇかもって思う事があったんです
ルーク大丈夫、破滅なんてしません
ルークむしろ二人で力を合わせて国を発展させてやりますよ!
インゴベルト六世そうか。それを聞いて安心した
インゴベルト六世…大人になったのう
ルークへへっ、俺だって成長しますって
ルーク(分史での事がなけりゃ 取り乱してたかも しんねぇけどな…)
ルドガー…よし。書き終わった
エルキールへの手紙?
ルドガーああ。今回の顛末を報告するんだ
ルドガー分史世界の情報は少しでも多い方がいいってキールも言ってたしな
エルそっかー。それじゃあ、メガネのおじさんの話も聞けたらよかったのにね
ルドガー…?誰の事を言ってるんだ?
エルルドガー、また忘れちゃったの!?ルドガーのお兄さんだよ!
ルドガー…誰の事かわからない。けど…この感じ、覚えがある…
ルドガールークの事を認識出来なくなった時と似てる…気がする…
エルじゃあ、メガネのおじさんに異変が起きてて…ルドガー、忘れちゃってるって事?
ルドガー…そうかも知れない
ルドガー(けど…その人の事を エルは認識出来ているみたいだ。 なら、ルークの時とは違う)
ルドガー(まさか… 異変が起きているのは──)
???…正史世界に戻って行ったな
???これで三度目…道標は集まりつつある
???我々の悲願を達成するまであと少しだな、相棒…