| Name | Dialogue |
| | 異変の兆候 |
| 店主 | どうです、お味は? |
| ルーク | 美味い!「ルークまんじゅう」って言うからには味もよくないとな! |
| ミュウ | ご主人様のお顔のまんじゅう、とっても美味しそうですの~! |
| 店主 | お墨付きをいただけて光栄です。試作を繰り返した甲斐があります…! |
| ルーク | これなら、ガイアスまんじゅうやリチャードまんじゅうより人気出ちまうかもな! |
| ルーク | …ところで、どうして俺なんだ?他の国では王のまんじゅうを作ってるだろ? |
| 店主 | ルーク様は我が国の親善大使ですからこれから各国でもっとお顔を知られ有名になられる事でしょう |
| 店主 | あなた様の上昇傾向にある人気にあやかりたいのです |
| ルーク | へへ、なるほどな。いいぜ!それじゃあ正式に「ルークまんじゅう」を認めてやるよ |
| 店主 | ありがとうございます!量産体制を整えたら、すぐにでも大々的に売り出します! |
| ルーク | ああ。応援してるぜ!それじゃあな! |
| ミュウ | 応援してますですのー! |
| 店主 | どうぞ、今後ともご贔屓にー! |
| 店主 | ふう。緊張した。しかしこれで俺の商売も上手く── |
| | |
| 店主 | …ん?何だこのまんじゅう… |
| | |
| 店主 | 誰の顔だ?入れ物にはルークまんじゅうって書いてあるけど… |
| 店主 | ルーク…?聞いた事のない名前だな… |
| | |
| ルーク | いやー、まんじゅうまで作られるなんて俺も人気者になったもんだな! |
| ミュウ | …… |
| ルーク | ん?どうした、黙っちまって |
| ミュウ | …… |
| ルーク | おい、ブタザル。…おい |
| ミュウ | …… |
| ルーク | 聞こえてねぇのか!?ブタザル! |
| ミュウ | みゅ…?もしかしてボクに言ってるんですの? |
| ルーク | 当たり前だろ!他に誰がいんだよ!? |
| ミュウ | 違うですの。ボクはブタザルじゃなくてミュウって言うですの |
| ルーク | な、なんだよ、急に。今更、気に食わねぇってか?ずっとこう呼んできたじゃねぇかよ |
| ミュウ | ずっと…?…そういえばボクの事をそう呼ぶ人がいた気がするですの… |
| ミュウ | ……みゅ?ご主人様ですの! |
| ルーク | はあ?何言ってんだよ |
| ミュウ | ごめんなさいですの。ボク、どうしてかご主人様が誰かわからなかったですの… |
| ルーク | 何だそれ。まぁいいけどよ…おまえだけじゃなく、最近こういう事がたまにあるんだよな |
| ルーク | 声かけてんのにボーッとして聞いてなかったり俺に気付かなかったり… |
| ミュウ | みゅうぅ…。ボクはもうしないですの。約束ですの |
| ミュウ | もしみんながご主人様に気付かなくてもボクだけは、お返事しますの |
| ルーク | 大げさなんだよ。みんなが気付かないなんて事あるわけねぇだろ |
| ミュウ | みゅうぅぅ… |
| ??? | あら…? |
| ティア | ミュウ!ここにいたの |
| ミュウ | あっ、ティアさんですの! |
| ルーク | よう、ティア。おまえも散歩か? |
| ティア | …?ミュウ、こちらの方は…? |
| ルーク | は?おい、何言ってんだ。俺だよ、俺! |
| ミュウ | ご主人様ですの! |
| ティア | ご主人様…? |
| ルーク | おまえ、まさかさっきの俺達の話を聞いててわざとやってるんじゃないだろうな? |
| ティア | …さっきの話?何の事かわからないけれどふざけているつもりはないわ |
| ティア | 私はルークを捜していたら遠くから見えたから、それで… |
| ティア | え、あ…ルーク!そう、あなたルークよね…! |
| ルーク | だから俺だっつってんだろ |
| ティア | ごめんなさい。どうしてかしら…私、あなたの事がわからなくて… |
| ミュウ | ティアさんもですの?ボクもさっき、同じような事があったですの |
| ルーク | おまえらちょっと変だぜ。医者に診てもらった方がいいんじゃねぇか |
| ティア | …そうね。疲れてるだけならいいのだけど… |
| ルーク | で、捜してたって言ってたけど何か用か? |
| ティア | そうだったわ。ルーク、国王陛下がお呼びよ。何か大事な用件だと仰っていたわ |
| ルーク | 伯父上が?一体何だろう…親善大使としての仕事か何かか? |
| ティア | そうかもしれないわ。今は異変の対策で各国と協力体制を取ろうとしている時だから… |
| ルーク | あー。昨日、ルドガーが城に来てたやつか。異変の兆候があるから調査したいって |
| ティア | ええ。その時、ウィンドルでまとめられた異変の調査書を持ってきてくれたの |
| ルーク | 国を跨いで情報交換か。そりゃ確かに、親善大使の出番かもしんねぇな |
| ルーク | しかしルドガーも大変だよな。異変の調査をしながら、国同士の橋渡しもしてんだもんな |
| ティア | ええ、とても忙しそうだったわね。昨日もあまり話せなかった── |
| ティア | …あっ! |
| ルーク | 何だ?急に大きな声出して |
| ティア | ねぇ、ルーク。昨日ルドガーと会った時に、話した事を覚えてる? |
| ルーク | あー…異変は自然災害だけでなく人にも起こるとか何とか…分史世界の影響だっけか? |
| ティア | そうよ。分史世界にある負の因子というものの影響で、正史世界の人に異変が起こる |
| ティア | だから、おかしな現象に心当たりがあったら教えてほしいって言われたわよね |
| ルーク | …つまり何が言いてぇんだ? |
| ティア | さっき、あなたの事を忘れてしまっていた事がその異変なんじゃないかしら |
| ティア | だって、疲れて頭が回らないのとは全然違う感じだったもの。もっと超常的な何かに思えたわ |
| ルーク | …考えすぎだろ? |
| ティア | そうかも知れない…。でも何だかすごく嫌な予感がするから念のためルドガーに話してみるわ |
| ルーク | わかったよ。たしか街の宿屋に滞在してるんだよな。俺とミュウも一緒に行くぜ |
| ティア | 待って。ルークは陛下のところに行くのが先よ |
| ルーク | っと、そうだった。んじゃ、ルドガーのとこにはティアとミュウで行ってくれ |
| ルーク | ミュウも俺の事忘れてたんだ。異変が起こってるとしたら二人共だろ |
| ミュウ | みゅう…怖いですの |
| ティア | …大丈夫よ。ルドガーに相談してみましょう |
| ルーク | それじゃあ俺は伯父上の用が済んだら合流するから、ルドガーと一緒に宿で待っててくれ |
| ティア | わかったわ。それじゃあ、また後でね |
| | |
| ルーク | 伯父上。お話と言うのは? |
| インゴベルト六世 | うむ。突然呼び出してすまなかったな |
| インゴベルト六世 | …この話は、もしかするとおまえを困らせてしまうだけやも知れん… |
| インゴベルト六世 | だが、いずれ伝えねばならん事だ。最近のおまえは成長著しい…そろそろ話してもよいだろう |
| ルーク | 成長…ですか |
| インゴベルト六世 | うむ。おまえは親善大使として各国首脳陣との関係作りに貢献した |
| インゴベルト六世 | またアヴァロン島でも成果を上げ、今やキムラスカの顔としての地位を確立しつつある |
| インゴベルト六世 | 最初、勝手に親善大使を名乗って国を出たり、シルヴァラントの神子を誘拐するという大罪を犯したが… |
| インゴベルト六世 | それを払拭して余りある活躍をしていると認めてよいだろう |
| インゴベルト六世 | ヴァンという大罪人を輩出した我が国が、今でも四大国たりえるのもおまえの活躍あってのものだ |
| インゴベルト六世 | おまえは様々な経験を通して人としての器を大きく成長させた。今のおまえになら真実を話せる |
| ルーク | 真実…?何か隠してたって言うんですか? |
| インゴベルト六世 | ああ。だが仕方なかったのだ。これは王位にも関わる事…おいそれと外に漏らす事は出来ぬでな |
| ルーク | 王位に関わる隠し事…まさか、伯父上…どこかお身体が… |
| インゴベルト六世 | 早まるな。わしはまだ死なん |
| インゴベルト六世 | これからする話は王位継承権に深く関わりのある事…おまえの出生についてだ |
| ルーク | 俺の、出生…? |
| インゴベルト六世 | うむ。ここからが本題だ。心して聞くがよい |
| | |
| インゴベルト六世 | ルークよ、実はおまえには── |
| ルーク | 俺には…? |
| インゴベルト六世 | …… |
| ルーク | …… |
| ルーク | 伯父上、あの…? |
| | |
| インゴベルト六世 | …誰…だ?今…わしは、おまえと話しておったのか…? |
| ルーク | どうしたんですか、急に。しっかりしてください |
| ルーク | 王位継承権にも関わる大事な話だって伯父上が言ったんですよ |
| インゴベルト六世 | 王位継承…?そのような話を、見知らぬ者にするはずがないだろう |
| ルーク | 見知らぬって… |
| ルーク | 俺の事がわからないんですか?甥のルークです! |
| インゴベルト六世 | そうか、その顔に髪形…我が甥に似せたつもりか!だが甥はルークなどという名ではない |
| ルーク | えっ…?それって、どういう… |
| インゴベルト六世 | 衛兵!誰かおらぬか!侵入者だ! |
| ルーク | 伯父上…! |
| | バタンッ! |
| 衛兵1 | 陛下!ご無事ですか! |
| 衛兵2 | おのれ侵入者!覚悟しろ! |
| ルーク | おまえらまで…!みんな俺の事がわかんねぇのかよ! |
| ルーク | …まさかミュウやティアと同じ事が城のみんなに起こってんのか…!? |
| インゴベルト六世 | よいか!生きたまま捕え、目的を吐かせよ!仲間がおるやもしれんからな! |
| 衛兵1 | はっ! |
| ルーク | 捕まってたまるかよ! |
| 衛兵2 | くっ、逃がすか!待て! |
| | |
| | タッタッタッタッ… |
| 衛兵1 | くそっ、見失ったか! |
| 衛兵2 | 城の構造に精通しているようだった。綿密な計画があったに違いない |
| 衛兵1 | 兵を集め、人海戦術で街を捜索する。おまえは目撃者を捜してくれ |
| 衛兵2 | 了解! |
| | タッタッタッタッ… |
| ルーク | …行ったか。でも、このままじゃその内捕まっちまうな |
| ルーク | このままティアと合流するか。これが分史世界の影響だって言うならルドガーに話すしかねぇだろうし… |
| ??? | …こんなところで何してるんだ? |
| ルーク | ガイじゃねぇか!よかった、困ってたんだ! |
| ガイ | ん?おまえ、どうして俺の名前を知ってるんだ? |
| ルーク | なっ…おまえもかよ!おまえは、俺の教育係だろ!? |
| ガイ | 俺がおまえの教育係…?誰かと勘違いしてるんじゃないのか? |
| ガイ | それよりおまえ…おまえ、今、兵士に追われてたよな |
| ルーク | ああ。けど誤解なんだ!何もしてないのに、城への侵入者だとか言われちまって |
| ガイ | 城に入るには許可がいる。知らなかったのか? |
| ルーク | 今更許可なんて必要ないだろ!昔から自由に出入りしてたんだから |
| ガイ | 昔から…? |
| ルーク | そうだよ!ガイ、おまえ本当に俺の事がわかんねぇのか!? |
| ルーク | 俺だ、ルークだよ!思い出してくれよ…! |
| ガイ | …ルーク…? |
| ルーク | ああ! |
| ガイ | 悪い、聞き覚えのない名前だ。どこかで会った事があるか…? |
| ルーク | ……っ! |
| ルーク | もういい!どけっ! |
| | ドンッ |
| ガイ | なっ…!おい、待て! |
| ガイ | 行っちまった…。変な奴。ま、後は兵士達が何とかするか |
| ルーク | くそっ…!もしかして誰も俺の事わかんねぇのか…!? |
| ルーク | あっ…!おい、おまえ! |
| 店主 | ん?いらっしゃいませ |
| ルーク | あんたなら、俺の事わかるだろ!?ルークまんじゅうを作ってたんだ、忘れるわけねぇよな!? |
| 店主 | はぁ?お客さん、何言ってんです? |
| ルーク | 忘れたなら、おまえが作ってるまんじゅうを見てみろよ!俺の顔のまんじゅうがあるだろ!? |
| 店主 | お客さんの顔のまんじゅう…?そりゃ、注文されたら作りますが… |
| 店主 | …そういや、お客さん、さっき大量に処分したまんじゅうに顔が似てるな… |
| ルーク | 処分しただぁ!? |
| 店主 | ええ。いつの間にか、人の顔みたいなまんじゅうを作っちまってたんですがね |
| 店主 | 誰の顔かもわかんなくて不気味だったんで全部捨てちまったんです |
| ルーク | …そうかよ。わかった。邪魔したな… |
| ルーク | (って事は…みんな俺がルークだって わからなくなっちまった わけじゃねぇ…) |
| ルーク | (俺が…ルークっていう人間が 存在した事自体を 忘れちまってるんだ…!) |
| ルーク | ルドガーのところに急がねぇと…! |
| | 目に見えぬもの |
| ルドガー | さて、調査に備えて食料も買ったし一度、宿に戻ろうか |
| エル | うん。これからしばらく街の外で調査するんだよね |
| ルドガー | ああ。キールからの連絡によると異変の原因になりそうなマナの変動が王都近郊の広い範囲で起こってるんだ |
| ルドガー | 昨日、街を見て回った時は何もなかったから、今度は外を調べてみよう |
| エル | せめて、どんな異変が起こるかわかればいいのに |
| ルドガー | …そうだな。でも、何もわかってなかった頃から考えると、これでもすごい進歩だ |
| ルドガー | キールの調査は着実に進んでるんだな |
| エル | そのキールは今もウィンドルにいるんだよね? |
| ルドガー | 忙しいみたいだからな。リチャードが世界中に調査結果を公表してから、引っ張りだこらしい |
| ルドガー | だから、キールがすぐには動けない分俺達が先に調べておかないとな |
| エル | 世話が焼けるなぁ |
| ルドガー | 頼りにしてくれてるんだ。期待に応えられるよう頑張ろう |
| エル | うん |
| ルドガー | (危険かもしれないから 本当はエルはウィンドルに 残っていてほしかったけど…) |
| ルドガー | (キールの研究結果が正しいとすれば 分史世界への鍵は エルかもしれないんだ…) |
| ルドガー | (また何が起こるかわからないから 一緒にいる方が安全だよな…) |
| | |
| エル | …あれ?今、宿から出て来た人… |
| ルドガー | あれは…! |
| ティア | あっ…!ルドガー! |
| ミュウ | 会えてよかったですの! |
| ルドガー | ティア、ミュウ? |
| ティア | 宿にいなかったから捜しに行こうとしていたの。ちょっと聞きたい事があって… |
| ルドガー | 俺に聞きたい事?…もしかして、異変絡みか? |
| ティア | ええ、おそらく…。その…人の事を忘れてしまう異変ってあるのかしら? |
| ミュウ | すごく大切な人を忘れちゃうですの… |
| エル | ……! |
| ルドガー | 人の事を忘れる異変…?今まで聞いた事はないけど… |
| エル | エル、知ってる!ルドガーも時々そうなってる! |
| ルドガー | 俺が…?そんな事あったか? |
| ティア | 自覚がないだけかもしれないわ |
| ティア | 私も、その人を忘れてしまっている事に違和感すらなかったもの。目の前に本人がいても、ね… |
| ミュウ | みゅぅぅ…ボクもですの |
| ルドガー | なるほど…。初めて聞く現象ではあるけど異変という可能性はあるな |
| ルドガー | だけど、これまでは負の因子の影響を受けた一人だけに異変が起こっていた |
| ルドガー | ティアとミュウ…それに俺にも同じ現象が起こってるなんて、一体… |
| エル | ティアとミュウは、誰の事忘れちゃったの? |
| | |
| ティア | それが、その…おかしいわ… |
| | |
| ティア | 忘れる…って、何の事だったかしら… |
| ミュウ | みゅうぅ…ボクも何だか変ですの。ボクの中に大きな穴が空いたみたいですの… |
| ルドガー | …まさか、今またその現象が起こってるのか…? |
| ティア | ええ、おそらく…。だけど、さっきと違って、何かを忘れているという事はわかるわ |
| ルドガー | 記憶が消えているというよりはその人の存在だけが抜け落ちてる…って事か? |
| ティア | …ええ。何かわかりそうかしら? |
| ルドガー | …これは推測なんだけど、もしティアとミュウが同じ人の事を言ってるのだとしたら… |
| ルドガー | 異変が起こっているのは、その人なんじゃないか? |
| ルドガー | 誰かを忘れるという異変じゃなく、みんなから忘れられるという異変がその人の身に起こってると思うんだ |
| ミュウ | みゅうぅぅ…。その人を助けてあげてほしいですの! |
| ミュウ | 誰だか思い出せないけど…その人が悲しいとボクも悲しいですの… |
| ルドガー | ああ。だけど、それにはまず、その人に会わないといけない |
| ルドガー | でも、それが誰かもわからないんじゃ── |
| ルーク | …いた!おーい! |
| ミュウ | みゅ…? |
| ルドガー | どうしたんだ、ミュウ? |
| ミュウ | …今、ボク達を呼ぶ声が聞こえた気がしたんですの |
| ルドガー | …誰もいないぞ?気のせいじゃないか? |
| ルーク | 何言ってんだ!俺がいるだろ!もしかして姿まで見えねぇのか!? |
| ルーク | おい、ティア、ブタザル!おまえらはさっき思い出してただろ! |
| ティア | …!ルドガー、私も今、誰かに呼ばれた気がしたわ |
| エル | えっ!? 本当に誰かいるの?…なんかこわっ! |
| ルドガー | …もし二人の言う人がそこにいて、なのに俺達が気付けていないんだとしたら… |
| ルドガー | 単にその人を忘れてるだけじゃない。存在そのものが消えかかってる可能性がある! |
| ルーク | っ…!俺が、消えかかってるだって…!? |
| ルーク | 冗談じゃねぇ!おい、頼む!誰か気付いてくれよ! |
| ルーク | ティア! |
| ティア | …… |
| ルーク | ブタザル! |
| ミュウ | …… |
| ルーク | 他の誰が気付かなくてもおまえだけは返事してくれるんじゃなかったのかよ! |
| ルーク | 何とか言えよ、ミュウ! |
| | |
| ミュウ | …みゅ? |
| ミュウ | この声… |
| | |
| ミュウ | ──ご主人様ですの! |
| ルーク | ミュウ! |
| ミュウ | ご主人様! |
| ルーク | 俺の声が聞こえるのか!? |
| ミュウ | 聞こえますの! |
| ルーク | 姿が見えるのか!? |
| ミュウ | はいですの! |
| ティア | ミュウ…? |
| エル | 一人で話してる…? |
| ミュウ | 皆さん、思い出してほしいですの!ボクのご主人様…ルーク…フォン・ファブレ…ですの! |
| ティア、ルドガー、エル | …! |
| ティア | そうだわ…そうよ、ルーク!思い出したわ! |
| ルドガー | ああ、俺も今、ミュウのお蔭で思い出せたよ |
| エル | …って、わぁ!ルーク、いつからいたの!? |
| ルーク | おまえらも俺の事がわかるのか?見えてるんだな? |
| ティア | ええ、わかるわ。よかった、本当に… |
| ルーク | 思い出してくれてひと安心だぜ。ずっとここにいたのに、誰も気付かねぇからよ |
| | |
| ルドガー | ルーク。安心するのは早い |
| ルドガー | もし分史世界の影響でルークに異変が起こっているならまた同じ事が起こるかもしれない |
| ルドガー | いや、それどころか次はもっと悪化する事もあり得る |
| ルドガー | 今でも、ルークに意識を集中してないと、すぐに分からなくなりそうなんだ |
| ルーク | …やっぱり異変が起きてるのはみんなじゃなくて俺なんだな |
| ティア | ルーク、気付いていたのね |
| ルーク | ああ。城でもいろいろあったしな |
| ルーク | でも分史絡みならルドガーが解決策を知ってるんだろ?どうすりゃいいんだ? |
| ルドガー | 今までと同じなら分史世界にいるルークが負の因子に憑りつかれてるはずなんだ |
| ルドガー | 分史世界に行ってその負の因子を破壊すればこの正史世界での異変も止まるはず |
| ルーク | 分史世界の俺?前に分史世界に行った時は、ルークなんていないって感じだったぞ |
| ルドガー | あの時とは別の分史世界だよ。分史世界は無数にあるんだ |
| ルーク | なるほどな。とにかく、そこにいる俺を捜しに行かなきゃならねぇんだな |
| ルーク | で、どうやったらその負の因子に憑りつかれた俺がいる分史世界に行けるんだ? |
| ルドガー | キールの仮説が正しいなら… |
| ルドガー | エル、時計を出してくれるか |
| エル | わかった |
| ルドガー | ルーク。この時計に触れてみてくれ |
| ルーク | …こうか? |
| ルーク | 何だ!?光が…! |
| | ヒュンッ |
| ルドガー | よし、思った通りだ |
| ルーク | この穴の向こうが分史世界って事か…? |
| エル | ルドガー、行っちゃうの? |
| ルドガー | ああ。前のように危険な目に遭うかもしれない。エルは宿で待っていてくれるか? |
| エル | うん… |
| ティア | ルーク、私も── |
| ルーク | 待てって。おまえまで来たら誰がミュウとエルを見てるんだよ |
| ティア | でも… |
| ティア | …いえ、そうね。わかったわ。私はこっちで待ってる |
| ティア | だから必ず、無事に帰って来て |
| ルーク | 当たり前だろ |
| ルーク | じゃあな。おまえも大人しくしてろよ |
| ミュウ | ご主人様…ボクは…ボクは… |
| ルーク | そんな顔すんなって。すぐ帰ってくるからよ |
| ルーク | ほら、ルドガー。早く行こうぜ |
| ルドガー | ああ。それじゃあ、ティア。エルをよろしく頼む |
| ティア | わかったわ |
| エル | ルドガー、気を付けてね |
| ルドガー | ありがとう。…それじゃあ、ルーク。その穴に飛び込んでくれ |
| ルーク | よーし、行くぜ |
| ミュウ | …ボクも行くですの! |
| ルーク | あっ…バカ!戻れ!くっつくな──… |
| ミュウ | 嫌ですの!ボクはどこまでもご主人様と一緒ですのー! |
| | シュンッ |
| ティア | ミュウ! |
| エル | 行っちゃった…! |
| ティア | 大丈夫かしら… |
| エル | 平気だよ!ルドガーが一緒だし! |
| エル | それに、ルドガーが言ってたけどルークもすごく強いんでしょ? |
| ティア | …そうね |
| ティア | (…もしもの事があれば 私はルークを忘れて しまうのかしら…) |
| ティア | (…ううん。 そんな事… ないわよね…) |
| scene1 | キムラスカの親善大使 |
| | ヒュンッ |
| ルドガー | …よし、分史世界に着いたようだな |
| ミュウ | みゅっ…! |
| | ドンッ |
| ルドガー | ミュウ!大丈夫か? |
| ミュウ | だ、大丈夫ですの。木にぶつかっただけですの… |
| | シュン… |
| ミュウ | みゅ?穴が閉じたですの… |
| ルドガー | ああ。これまでも分史世界に移動したらすぐに穴が閉じたんだ |
| ミュウ | …ご主人様はどこですの? |
| ルドガー | …!ルーク…まさか時空の裂け目に入りそびれたのか!? |
| ミュウ | そんなことないですの!ボク、ご主人様にくっついて一緒に穴に入りましたの! |
| ミュウ | そうしたら、来るなって突き飛ばされたですの… |
| ルドガー | そうか…なら、その勢いではぐれた可能性が高いな |
| ミュウ | ルドガーさん!ご主人様はどこですの!? |
| ルドガー | 一緒に時空の裂け目に入ったなら、この世界には来ているはずだ |
| ルドガー | この世界の別の場所に飛ばされたのかもしれない |
| ミュウ | 大変ですの!早く捜しに行くですの! |
| ルドガー | 落ち着くんだ、ミュウ。状況がわからない中、闇雲に動くのは危険だ |
| ルドガー | こういう時こそ冷静にならないと…まずは、ここがどこなのかを調べよう |
| ミュウ | みゅううぅぅ…。でも心配ですの… |
| ルドガー | 気持ちはわかるけど… |
| ミュウ | もしかしたら近くにいるかもですの。ボク、ちょっとだけ捜してきますの |
| ルドガー | 待ってくれ、ミュウ…! |
| ミュウ | すぐに戻るですのー! |
| ルドガー | …ミュウ。よほどルークの事が心配なんだな |
| ルドガー | (…俺もミュウも ルークの事をしっかり覚えてる。 存在が消えたわけではなさそうだ) |
| ルドガー | (ルーク… どこにいるんだ…) |
| | |
| ガイ | はぁ、はぁ…くそ、まだ追って来るのか |
| アッシュ | 奴ら、一体何者なんだ。シルヴァラントの兵士に見えるが |
| ガイ | さあな。出会ってすぐ問答無用で追いかけられたんじゃ検討もつかないな |
| ガイ | 止まって話を聞いてみるか? |
| アッシュ | …いや。この森を利用して追手を撒く |
| ガイ | 了解! |
| | ザッザッザッザッ… |
| 兵士1 | ちっ、見失ったか! |
| 兵士2 | 引き返しますか? |
| 兵士1 | そうはいくか!シルヴァラントの威信に賭けて奴を必ず捕らえるぞ! |
| 兵士1 | このまま王都に帰らせてはならん!各員、散開して捜索せよ! |
| 兵士2 | はっ! |
| | ザッザッザッザッ… |
| | |
| ガイ | …ふう。行ったみたいだな |
| アッシュ | 王都に帰らせない…か。やはり俺が誰か理解した上で追って来てるようだな |
| アッシュ | だが、何故だ。俺は親善大使として赴いただけで、捕らえられるような事をした覚えは… |
| ??? | 説明してやろうか? |
| アッシュ | …ちっ、見つかったか! |
| ゼロス | 落ち着けよ。俺だ、アッシュ |
| アッシュ | …ゼロスか |
| ガイ | 騎士のおまえまで動いてるって事は国をあげて俺達を追って来てるみたいだな |
| ゼロス | そりゃ、あわや王が殺されるなんて事件があれば、騎士団も動くぜ |
| アッシュ | 王が…!?どういう事だ |
| ゼロス | その反応…やっぱりあれはおまえじゃないんだな |
| ゼロス | アッシュが王の命を狙うわけねぇとは思ってたんだ |
| アッシュ | 一体、何を… |
| ゼロス | 事情を説明する前に、ここを離れようぜ。騎士団の連中が近づいて来てるからな |
| アッシュ | …わかった |
| scene2 | キムラスカの親善大使 |
| ゼロス | こんぐらい離れれば大丈夫だろ |
| ガイ | ゼロス、早速で悪いが何があったのか教えてくれないか |
| ゼロス | ああ。と言っても俺も伝令で聞いただけだから細かい事までは知らねぇんだが… |
| ゼロス | 一言で言うと、キムラスカの親善大使を名乗る男が王に斬りかかったんだ |
| アッシュ | 何っ…! |
| ゼロス | 幸い、陛下は無事だったが陛下を守った兵士が一人、負傷しちまってな |
| ガイ | その兵士は、大丈夫なのか? |
| ゼロス | ああ、命に別状はないらしい。ただ…もしあいつが守らなかったら王の命は危なかっただろうって話だ |
| ゼロス | 親善大使はそのまま逃走。兵士達はそれを追って来たってわけだ |
| アッシュ | …親善大使は俺だが、まだ王には会えていない |
| ゼロス | ああ。要はアッシュの名を騙った偽者って事だ |
| ゼロス | 俺がその場にいればそう言ってやれたんだけどな… |
| ゼロス | 交流剣技大会で何度も辛酸を舐めさせられた相手を見間違えるわけがねぇ |
| ガイ | また随分前の話を持ち出すな…。それにその大会には他の兵士だって参加してただろう |
| ゼロス | ああ。でもあいつらは、俺さまみたいに毎回アッシュと優勝争いしてたわけじゃねぇからな |
| ゼロス | つまり、その偽者ってのは一度や二度会ったぐらいじゃ見抜けないぐらい似てるって事だ |
| アッシュ | …俺とそっくり… |
| ゼロス | というわけで、今おまえはシルヴァラントで大々的に指名手配されてるときた |
| ガイ | …だから兵士達はアッシュを見るなり追いかけて来たんだな |
| ゼロス | 偽者が逃げた方角からおまえらが来たってのもあるな。わざとだとしたら── |
| ガイ | 俺達の移動ルートを知った上での罠か…! |
| アッシュ | …… |
| アッシュ | その偽者は、他に何か言っていなかったか? |
| ゼロス | …これも伝令で聞いただけなんだが… |
| ゼロス | 「キムラスカはシルヴァラントとの 和平を望まず、 服従のみを受け入れる──」 |
| ゼロス | そんな感じの事を言ってから剣を抜いたらしいぜ |
| ガイ | それじゃまるで、宣戦布告じゃないか |
| アッシュ | ちっ…何て事をしやがる。キムラスカとシルヴァラントの親交を深める予定が台無しだ |
| ガイ | それで…ゼロスはどうするんだ。俺達を捕まえるのか? |
| ゼロス | まさか。そんな事したら真犯人の思うつぼじゃねーか |
| ゼロス | 俺は、おまえの無実を確認しに来ただけだ。偽者だとはっきりして、ほっとしたぜ |
| ガイ | それを聞いてひと安心だ。おまえが相手となればお互い無事にはすまないからな |
| アッシュ | …その偽者を捕らえるぞ。放っておけば、また何をしでかすかわからない |
| ゼロス | それはそうだが、何もおまえ達が無理する事もねぇだろ |
| ゼロス | ひとまず、真犯人捜索は俺達に任せて二人は一旦国に帰った方がいいんじゃねぇか? |
| ゼロス | 今おまえ達が捕まったらいくら俺さまでも、助けられるだけの証拠がねぇ |
| アッシュ | …いや。要は、真犯人を突き出せばいいんだろう? |
| ゼロス | …心当たりでもあんのか? |
| アッシュ | …… |
| ガイ | おい、アッシュ。まさか、ルークを疑ってるんじゃないだろうな? |
| ゼロス | ルークって、双子の弟だったよな? |
| ゼロス | いくら真犯人の顔がおまえにそっくりだからって、弟を疑うのは感心しねぇな |
| アッシュ | それだけじゃない。俺が親善大使に任命された時…少し気がかりな事があった |
| | |
| インゴベルト六世 | アッシュよ。各国を回る親善大使には、そちを任命する |
| アッシュ | 俺…一人ですか? |
| インゴベルト六世 | 勿論、付き人はつける。誰でも指名するがいい |
| アッシュ | はい。では── |
| インゴベルト六世 | ただし、ルーク以外でな |
| アッシュ | …何故です |
| インゴベルト六世 | ルークは最近、たるんでおる。剣の稽古には熱心なようだが国政の事にはまるで無関心だ |
| インゴベルト六世 | 先日は国賓の集まる社交の場にも顔を見せなかった。…今のあやつを外に出すのは不安だ |
| アッシュ | …… |
| インゴベルト六世 | あやつには王位継承権を持つ者としての自覚が足らぬ |
| インゴベルト六世 | その事を自戒させるため敢えて今回は親善大使から外した。付き人として同行する事も禁じる |
| インゴベルト六世 | わかってくれるな |
| アッシュ | はっ… |
| | |
| | コンコン |
| アッシュ | ルーク、入るぞ |
| | ガチャ |
| アッシュ | …おまえ、その髪。切ったのか? |
| ルーク | 親善大使様がわざわざ髪型の話をしに来たわけじゃねぇだろ。…落ちこぼれに何の用だ? |
| アッシュ | 親善大使…か。随分と耳が早いな |
| アッシュ | なら、おまえが任命されなかった理由も聞いているな? |
| ルーク | ああ、知ってるよ。全部、先生が教えてくれたからな |
| アッシュ | 先生…騎士団長か |
| ルーク | …もういいだろ。先生が待ってるんだ。行かねぇと |
| アッシュ | おい、待て。おまえのそういう態度が── |
| ルーク | …うるせぇな。話は終わりだ |
| アッシュ | 一つだけ聞かせろ |
| アッシュ | その髪…何か心変わりがあったんじゃないのか |
| ルーク | …… |
| | バタン |
| アッシュ | …ちっ。何を考えてやがる |
| | |
| アッシュ | …俺にはあいつが何を考えてるのかわからなかった |
| アッシュ | だが、まさかこんな大それた事を計画していたとは… |
| ゼロス | 待てって。決めつけるにはまだ早いんじゃねーか? |
| アッシュ | 状況証拠が揃っている |
| ゼロス | まだ、状況証拠だけだろ?僅かでも可能性があるなら最後まで信じてやれよ |
| ゼロス | それが、兄貴ってもんだろ |
| アッシュ | 妙にルークに肩入れするな |
| ゼロス | そういうわけじゃねぇよ。ただ…俺と同じ間違いをしてほしくないんだよ |
| アッシュ | 間違い…? |
| | |
| ゼロス | …ああ。この事は、他人にはあんまり話した事ねぇんだけど… |
| | |
| ゼロス | 俺には一人、妹がいるんだ。そいつの事で、昔ちょっとあってな… |
| ガイ | ああ、剣技大会に応援に来てるのを見た事あるな。確か、セレス…だったか? |
| ゼロス | そうそう!今でこそ仲良くしてるし、あいつも俺を慕ってくれてるけどな… |
| ゼロス | 昔は俺…あいつが苦手だったんだよ |
| ゼロス | 小さい頃から病弱でな。ちょっと何かあると親はあいつにつきっきりの看病だ |
| ゼロス | まだ子どもだった俺は親の愛情を独り占めするセレスをよく思ってなかった… |
| ゼロス | それにあいつ、俺と二人の時は弱ってる素振りなんて全く見せなかったしな |
| ゼロス | だから…いつしか、あいつは親の気を引くために病弱なフリをしてるんだって… |
| ゼロス | そう思い込むようになっちまってた |
| ゼロス | …ある日、家に俺しかいねぇ時に、あいつが急に苦しみだしたんだ |
| ゼロス | なのに、馬鹿な俺は騙されてたまるかって、ずっと無視してたんだ |
| ゼロス | さすがに様子がおかしいと気付いて医者を呼んだ時にはかなり酷い状態になってた |
| ゼロス | 何とか大事に至らなかったが…俺は自分の馬鹿さ加減を呪ったぜ |
| ゼロス | 後からわかったんだが、あいつは俺に心配かけまいと二人の時は元気なフリをしてたんだ |
| ゼロス | なのに俺は、大事な妹を勝手に悪者だと決めつけて…嘘だと思いこんじまってさ |
| ゼロス | それから俺は、信じるべき相手の事は最後まで信じるって心に誓ったんだ |
| アッシュ | …それはおまえが勝手に誓った事だ |
| ゼロス | ああ、確かにそうだ。でも、おまえにも関係のある話だぜ |
| ゼロス | 俺さまが、おまえが犯人じゃないって信じた理由だからな |
| アッシュ | どうして俺に繋がる? |
| ゼロス | 言ったろ?信じるべき相手を最後まで信じるってな |
| ゼロス | その上で、兄として、妹や弟ってのは信じてやるべき相手に入るだろって言いてぇんだ |
| アッシュ | …… |
| ガイ | なぁ、アッシュ。俺はおまえら兄弟の問題には口を出さないようにしてたけど… |
| ガイ | ゼロスの言う事、少し考えた方がいいぞ |
| アッシュ | …今回の件は、二つの国を巻き込んだ大きな話だ。俺が信じるかどうかは関係ない |
| アッシュ | 弟だろうが可能性があれば疑う。…だが… |
| アッシュ | おまえの話は教訓として肝に銘じておく |
| ゼロス | ああ。それで充分だと思うぜ |
| ゼロス | …ルークが犯人じゃなかったらいいな |
| アッシュ | …そうだな |
| | |
| ガイ | さて、それじゃあこれからどうする? |
| | |
| アッシュ | 本来なら、さっきゼロスが言った通り急ぎ国に戻って伯父上に報告するべきだろう |
| アッシュ | そして王の名でシルヴァラントに対し事情を説明して、犯人は両国で協力して捜すのが筋だ |
| ガイ | …けど、おまえは違う方法を取ろうとしてる。だろ? |
| アッシュ | ああ。今の段階で報告すると、おそらく最初に疑われるのはルークだ |
| アッシュ | だが、もし犯人がルークでない場合それこそが犯人の狙いという可能性もある |
| ガイ | うちも一枚岩じゃないからな。アッシュを陥れようとする奴もいればルークを狙いそうな連中もいるか… |
| アッシュ | いずれにせよ、国内の派閥同士が疑心暗鬼になれば、政治機能が一時的に低下するだろう |
| アッシュ | それを防ぐためには、報告と共に犯人を突き出し、断罪する事が理想だ |
| ガイ | 俺達で犯人を捕まえるって事か… |
| ゼロス | 今ならまだ、そう遠くまで逃げちゃいねーと思うぜ。捕まえるなら急いだ方がいい |
| アッシュ | わかった。…犯人は俺達が来た方角に逃げたと言っていたな |
| アッシュ | なら、この近く…身を隠すのなら森の中にいる可能性が高いだろう |
| ガイ | 森か…この森、かなり広いよな |
| アッシュ | ああ。だからといって、諦めるわけにはいかない |
| ガイ | そうだな。大変そうだが、おまえと一緒なら、出来ない事なんてないよな |
| アッシュ | ふっ、当たり前だ。やる事は決まったな |
| 兵士の声 | ここもいないか。次はあっちを捜すぞ! |
| ゼロス | おっと、そろそろここもやばそうだな |
| ゼロス | ここは俺さまが誤魔化しといてやる。おまえらは犯人を捜しに行け |
| アッシュ | …恩に着る。 |
| ゼロス | いいって事よ。剣技大会の好敵手がいなくなるのは寂しいからな |
| ゼロス | 俺は俺の方で王都に戻って何とか誤解が解けないか試してみる |
| ゼロス | あんまり期待は出来ねぇだろうがちょっとでも根回ししておきゃ犯人を捕まえた後、話が早いだろ |
| アッシュ | 世話になる。ガイ、行くぞ |
| ガイ | ああ |
| scene1 | 邂逅と誤解 |
| ルーク | …ったく。どこなんだよ、この森 |
| ルーク | ここは分史世界…でいいんだよな。でもルドガーもミュウもいねぇし、どうなってんだ? |
| ルーク | …ん?何か声が聞こえるような… |
| 兵士1 | まだ見つからんのか! |
| 兵士2 | 騎士殿が仰るには確かにこちらの方向だと… |
| 兵士1 | 他に手がかりもない。この辺りを徹底的に調べるぞ! |
| 兵士達 | はっ! |
| ルーク | …あの格好、兵士か。誰か捜してるみてぇだな |
| ルーク | ちょうどいいや。ルドガー達を見てないか、聞いてみるか |
| ルーク | おーい、そこの人! |
| 兵士1 | むっ、誰だ…! |
| ルーク | 忙しそうなところ悪いんだけどさ。仲間とはぐれちまって困ってんだ。もし見かけてたら── |
| | |
| 兵士1 | おまえは…!服を変えたようだが、俺の目はごまかせんぞ! |
| | |
| ルーク | な、何だよ急に… |
| 兵士2 | そっちから出てきてくれるとはな!絶対に逃がさんぞ! |
| ルーク | はぁ?待てよ、俺、何か悪い事したか? |
| 兵士3 | とぼけるな!国王に刃を向けた罪、忘れたとは言わせんぞ! |
| 兵士2 | 我らシルヴァラントの威信に賭けて貴様を捕らえる! |
| ルーク | シルヴァラントの国王に刃を向けた!?んな事、するわけねぇだろ! |
| ルーク | だいたい、俺はついさっきこっちの世界に来たばっかなんだ!人違いもいいとこだぜ! |
| 兵士1 | 問答無用!総員、掛かれ! |
| 兵士達 | はっ! |
| ルーク | だーっ!何だってんだよ!俺は戦う気なんてねぇっての! |
| 兵士2 | 逃がすか! |
| | ヒュンッ! |
| ルーク | やめろって! |
| | ガキィン…! |
| 兵士2 | くっ、剣を弾かれた…! |
| ルーク | 今だ! |
| 兵士3 | 逃げるのか!待てー! |
| 兵士1 | 待て、闇雲に追うのは危険だ!先程の戦いぶり…噂以上の手練れだ。他の兵と合流し、数で追い詰めるぞ! |
| 兵士3 | はっ! |
| ルーク | はぁ、はぁ…追ってこねぇのか…? |
| ルーク | よくわかんねぇけど、なるべく離れた方がよさそうだよな… |
| | ガサガサ… |
| ルーク | …さっきの奴らか!? |
| 魔物 | グルルルル… |
| ルーク | 今度は魔物かよ!?こんな時に、邪魔すんじゃねぇ! |
| scene2 | 邂逅と誤解 |
| | バシュッ |
| 魔物 | ギャウゥ… |
| ルーク | …ふぅ。今ので最後か |
| ルーク | 兵士も追ってこねぇようだしとりあえずミュウとルドガーを捜しに行くか |
| アッシュ | …ガイ、見たか。今、魔物と戦っていた奴… |
| ガイ | ああ。あれは、ルーク…だよな? |
| アッシュ | いや、確かに似てるが… |
| アッシュ | 俺が国を旅立つ直前、あいつは髪を切っていた |
| アッシュ | それを知らない奴がルークに成りすましているんだろう |
| ガイ | アッシュに成りすませるならルークにも成りすませる、か… |
| アッシュ | あそこまで似ているとなれば、事件に無関係とは言い難い。…追うぞ |
| ガイ | ああ |
| ルーク | おーい、ルドガー!ミュウー!いねぇのかー? |
| ??? | おい、そこのおまえ |
| ルーク | …! |
| アッシュ | 動くな |
| | チャキ… |
| ルーク | なっ…!アッシュにガイ!? |
| ガイ | …本当にそっくりだな。アッシュ、こいつ本当にルークじゃないのか? |
| アッシュ | ああ。さっき言ったとおりだ |
| ルーク | いや…俺はルークだぞ…? |
| ルーク | 何を誤解してんのか知らねぇけどおまえらと戦う気はねぇんだ。剣を下ろしてくれよ |
| アッシュ | 黙れ。おまえは、俺の質問にだけ答えろ |
| ルーク | すげぇ剣幕だな…。わかったよ。そうすりゃ解放してくれんのか? |
| アッシュ | 事と次第によっては…な |
| アッシュ | シルヴァラントでキムラスカの親善大使を勝手に名乗ったのは、おまえか? |
| ルーク | は?何だよ、そんな昔の事… |
| アッシュ | おまえなんだな? |
| | チャキ |
| ルーク | ああ、そうだよ。俺だよ!でもあれは、星のカケラの件を解決した事で不問になっただろ! |
| ルーク | そりゃ、後で伯父上やティアからこってり絞られたけどよ。今更、剣を向けられる事なのか!? |
| アッシュ | 星のカケラ…?ティア…?何の話をしている |
| ルーク | ガイはその事もよく知ってんだろ!? |
| アッシュ | …そうなのか、ガイ? |
| ガイ | いや、何の事を言ってるのかさっぱりだな |
| ルーク | (…そうか。ここは分史世界だから 星のカケラの事もティアの事も こいつらは知らねぇのか…) |
| ルーク | (…ん? って事は、何かおかしいぞ…) |
| ルーク | なぁ。おまえらはどうして俺が親善大使として各国を回った事を知ってんだ!? |
| ルーク | あれは星のカケラを巡る戦争を避けるためにやったんだぞ!? |
| ガイ | おい、アッシュ。こいつ何か様子がおかしくないか? |
| アッシュ | ……次の質問だ。シルヴァラント王に剣を向けた目的は何だ? |
| ルーク | さっきの兵士もそんな事言ってたな。俺はそんな事してねぇ! |
| アッシュ | なら誰がやった。親善大使アッシュの名を騙ったのはおまえじゃないのか? |
| ルーク | アッシュはおまえだろ?つーか、この世界じゃ、おまえが親善大使なのか? |
| アッシュ | この世界…? |
| ガイ | …なぁ、アッシュ。少しこいつの話を聞いてみないか? |
| ガイ | 抵抗したり逃げたりする素振りもないし… |
| ガイ | もしかしたら、俺達の知らない何かがあるんじゃないか? |
| アッシュ | …誤魔化しているという感じでもなさそうだな |
| ルーク | 話聞いてくれるんなら、とりあえずその剣をしまってくれ。物騒で仕方ねぇよ |
| アッシュ | …… |
| | …カチャ |
| アッシュ | 妙な動きをしたら怪我じゃすまないぞ |
| ルーク | わかってる、何もしねぇよ |
| アッシュ | まず、おまえが何者でどうしてルークの格好をしているのか説明してもらおう |
| ルーク | 何者も何も…さっきも言ったけど…俺はルーク。ルーク・フォン・ファブレだ |
| アッシュ | 嘘を言うな |
| アッシュ | 確かに似てはいるが、俺の弟のルークは髪を短く切ったばかりだ |
| ルーク | 弟?この前会った時は、俺の事なんて見た事ねぇって感じじゃなかったか? |
| アッシュ | この前…? |
| ルーク | あー、いや…。ここはあの時とは違う分史世界ってルドガーが言ってたっけ… |
| ルーク | …じゃあ、この二人は俺と初対面の分史世界のアッシュとガイって事か?ややこしいな… |
| アッシュ | 何をブツブツ言っている。俺達にもわかるように話せ |
| ルーク | あーっと、だからな?俺はおまえ達に会った事があるけど、それは別の分史世界のおまえ達で… |
| ルーク | だからおまえ達が俺を知らないのは無理もないってか…当然か… |
| アッシュ | …要領を得ないな。さっきも別の世界と言っていたがそれは何の事だ? |
| ルーク | だからえっと…世界には正史世界ってのと、分史世界ってのがあって… |
| ルーク | 俺は正史世界から来たから、この世界のルークじゃなくて正史世界のルークなんだ |
| アッシュ | ……ガイ、わかったか? |
| ガイ | うーん…おそらくだが、こことは別に同じような世界があってそこにもルークやアッシュや俺がいる |
| ガイ | こいつはその別の世界のルークで、俺達の知るルークとは別の存在…って事か? |
| ルーク | そう!そういう事だ!さすがガイだぜ! |
| ガイ | 別の世界に行ける機械の研究ってのを聞いた事があったから、何となく…な |
| アッシュ | その研究とやらは信用出来るのか? |
| ガイ | 正直、眉唾だと思うが… |
| アッシュ | だとするなら、そんな突拍子もない話、にわかには信じられんな |
| ルーク | じゃあ信じなくてもいいよ。とにかく俺は、どっかの王様相手に剣を向けたりしてねぇ! |
| アッシュ | その言葉を信じる証拠はあるか? |
| ルーク | 証拠って言ってもな… |
| ルーク | そうだ。おまえら、要するに俺にそっくりの顔した悪い奴を捜してるんだろ? |
| ルーク | 俺がおまえらと一緒にそいつを捜す。それでどうだ?真犯人が見つかりゃ文句はないだろ |
| アッシュ | …いいだろう。だが、もし他に犯人が見つからなければ、次はないぞ |
| ルーク | わかったよ。俺もそんな悪い奴は許せねぇ。絶対とっ捕まえてやるぜ! |
| ガイ | いいのか、アッシュ? |
| アッシュ | ああ。こいつの言う事が本当ならば犯人は別にいるはずだ。そいつが見つかるなら文句はない |
| アッシュ | そしてこいつが犯人だった場合…自分が生き残るために、共犯者を真犯人として突き出す事だろう |
| アッシュ | それなら捕らえた真犯人を問い詰めて全てを明るみに出す |
| アッシュ | いずれにしても俺達は真実に近づく事が出来る |
| ガイ | なるほどな。嘘でも本当でも問題ないって事か |
| アッシュ | ああ…だが警戒は解くなよ。隙を見て逃げる可能性もあるからな |
| ルーク | おい、さっきから何二人だけでこそこそ話してんだよ |
| | |
| | ザッザッザッザッ… |
| 兵士の声 | こっちにいたぞ!皆、陣形を崩すな! |
| | |
| ルーク | げっ、あいつら…!俺を追って来たのか! |
| ガイ | シルヴァラントの兵士か!随分と数が多いな |
| アッシュ | …ああ。まるでこっちに俺達がいるのを知っていたかのようだ |
| | チャキ… |
| ルーク | なっ…!おまえ、なんで俺に剣を向けんだよ! |
| アッシュ | 嵌めやがったな。俺を足止めしておいて、自分ごと兵士に捕らえさせる算段だったんだろ |
| アッシュ | アッシュが二人いるのは不自然だ。だからルークに変装してたってわけか? |
| ルーク | なっ…違う!誤解だって!自分まで捕まるなんておかしいだろ! |
| ガイ | …犯人は国の根幹を揺るがす大事件を起こすような奴だ。そのぐらいの犠牲は覚悟の上かもな |
| ルーク | ガイまで…!おまえら、本気で言ってんのか!? |
| アッシュ | もはや問答している時間はない |
| アッシュ | ここでおまえを捕らえ、シルヴァラントの兵士に引き渡す |
| ルーク | 冗談じゃねえ…!俺だって捕まるわけにはいかねえんだ |
| アッシュ | 拘束するぞ!ガイ! |
| ガイ | ああ!観念しろ! |
| ルーク | だーっ!こうなりゃ逃げるしかねぇ! |
| ガイ | させるか! |
| ルーク | すまねぇ、ガイ! |
| | ドンッ |
| ガイ | くっ…! |
| アッシュ | 待ちやがれ! |
| | ガサササ… |
| アッシュ | 茂みに入ったのか。どっちに逃げやがった |
| アッシュ | …… |
| アッシュ | …ちっ、見失った。ガイ、大丈夫か? |
| ガイ | 悪い。転んだだけだ |
| アッシュ | あいつ…ガイの動きの癖を知り尽くしているような動きだった… |
| ガイ | 逃げられちまったな |
| アッシュ | 兵士がもうそこまで来ている。俺達もここを離れるぞ |
| ガイ | ああ |
| | 繋がる点と点 |
| ガイ | ふう…何とか見つからずに済んだな。あの偽ルークの事も完全に見失っちまったが |
| アッシュ | …… |
| ガイ | 何か気になる事でもあるのか? |
| アッシュ | 些細な事だが…一つ引っかかる点がある |
| アッシュ | あいつの身のこなし…幼い頃、ルークと剣を交えた時の事を思い出すものがあった… |
| アッシュ | もっとも、太刀筋や間合いの取り方は似ても似つかなかったが… |
| ガイ | って言っても、魔物と戦ってるのを少し見ただけだろ?気のせいって事もあるんじゃないか |
| アッシュ | だが…おまえの動きを読んだあの動きも偶然か? |
| ガイ | …まさか、別世界のルークだっていう話を信じるのか? |
| アッシュ | …信じられんが、筋は通る。今はあらゆる可能性を検討すべきだ |
| ガイ | なるほどな。ゼロスに言われた事を肝に銘じてるってわけか |
| ガイ | 注意深く真実に辿り着きさえすればルークが真犯人なわけがないって信じてるんだな |
| アッシュ | …違う。雑な調査をしたくないだけだ |
| ガイ | それでもいいさ。俺は少しほっとしたぜ |
| ガイ | おまえもやっぱりルークの事を気にかけてたんだってわかったからな |
| アッシュ | 何を勘違いしているかは知らんが…俺には弟を守ろうなどという気はないぞ |
| アッシュ | 例え、ルークが無実の罪を着せられてもその疑いを晴らすのはあいつ自身だ |
| アッシュ | ただ俺は、この事件の解決のため真犯人を慎重に捜しているにすぎない |
| ガイ | …もし、ルークが犯人でも捕らえてシルヴァラントに引き渡すって事か? |
| アッシュ | 当然だ。これは責任の問題だ |
| ガイ | …だよな。変な事聞いて悪かったよ |
| | |
| ルドガー | なかなか戻って来ないな…ミュウどこまで行ったんだ? |
| ルドガー | まさか、道に迷ったんじゃ… |
| | |
| | ガサガサ… |
| ルドガー | ん?ミュウか? |
| | ガサッ |
| ルーク | おわっ!? |
| ルドガー | …っ!?ルーク! |
| | |
| ルーク | ルドガーか!会えてよかったぜ |
| ルドガー | あれ…?ミュウは一緒じゃないのか? |
| ルーク | ミュウ?会ってねぇけど…ここにいないのか? |
| ルドガー | 分史世界についてすぐ、ルークを捜しに行ったんだ |
| ルドガー | すぐに戻るって言ってたんだけど…会えてないって事は道に迷ったのかもしれないな… |
| ルーク | ったく、あいつは… |
| ルーク | まあ…心配ねえよああ見えてしぶとい奴だ。その内ひょっこり姿を見せるだろ |
| ルーク | それより、さっきの奴らの事を何とかしねぇと… |
| ルドガー | さっきの奴ら?誰かと会ったのか? |
| ルーク | ああ。アッシュとガイなんだけどよ。俺を何かの犯人だと思ってるみてぇなんだ |
| ルドガー | 犯人…?何か事件が起こってるのか? |
| ルーク | ああ…それも、ちょっと厄介な事になってるらしくてな |
| ルドガー | 何があったのか詳しく聞かせてくれ |
| ルーク | わかった。俺もよくわかんねぇから、あいつらの言葉をそのまま言うぜ |
| ルーク | …で、何でか俺が真犯人だろって急に言われ出して、逃げるしかなかったんだ |
| ルドガー | なるほど… |
| ルーク | な?わけわかんねぇだろ? |
| ルドガー | …少し整理させてくれ。この世界で起こった事を順に並べて行こう |
| ルドガー | 話を総合すると、アッシュがキムラスカの親善大使で、ガイと共にシルヴァラントに向かった |
| ルドガー | だけどシルヴァラントでは親善大使を名乗る何者かが王に斬りかかる事件が起こって |
| ルドガー | その犯人は、ルークに似た顔をしている。…ここまでは合ってるか? |
| ルーク | たぶんな |
| ルドガー | 複雑なのはここからだ。その犯人は逃げて、シルヴァラントの兵士が追っている |
| ルドガー | そこで俺達が正史世界からやってきてルークはその兵士達に見つかってしまった |
| ルドガー | 兵士達から逃げたと思ったら、今度はアッシュ達にも捕まりそうになった |
| ルーク | ああ。その通りだ |
| ルドガー | これは推測だけど、アッシュ達も、その兵士達から逃げてる最中だったんじゃないかな |
| ルーク | 何でだよ。兵士達が追ってるのは俺だぞ? |
| ルドガー | 自分では気付きにくいと思うけど…ルークとアッシュはよく似た顔をしてる |
| ルドガー | 前に…クロノスと戦った後倒れた君をアッシュが宿まで運んでくれた事があっただろう |
| ルドガー | あの時も、二人の顔が並んでいるとまるで兄弟のように似てるってみんな言ってたぐらいだ |
| ルドガー | それに、この世界では実際に二人は兄弟だと言ってたんだろ? |
| ルドガー | そっくりだったとしても不思議はないと思わないか? |
| ルーク | うーん…そういや、前にアッシュと会った時、ミュウが変な事言ってたな |
| ルーク | 俺とアッシュの雰囲気が似てるとか何とか…あん時は、ふざけんなって怒ったけど |
| ルドガー | それに、その真犯人が似せるならルークじゃなくアッシュに似せるはずなんだ |
| ルドガー | だってこの世界ではアッシュが親善大使なんだから |
| ルーク | それもそうか… |
| ルドガー | だから兵士達が本来追ってるのはアッシュ達なんだと思う |
| ルドガー | その最中にアッシュと似ているルークを見かけたものだから犯人だと誤解したんじゃないか? |
| ルドガー | それにアッシュからすれば、自分にそっくりの知らない人がいたら犯人だと思い込むのも当然だろう |
| ルーク | えっと、真犯人がアッシュに似てて俺がアッシュに似てるから俺が真犯人に間違われて… |
| ルーク | だーっ!わけわかんねぇつーの! |
| ルドガー | いや…この話、もう少し単純かもしれないぞ |
| ルーク | …?どういう事だよ |
| ルドガー | この世界のルークがアッシュを装って事件を起こした…そういう可能性もあるんじゃないかな |
| ルドガー | もしそうだとしたら、兵士がルークやアッシュを追う理由もアッシュがルークを疑う理由もわかる |
| ルーク | いくら世界が違うからって、俺がいきなり国王に斬りかかったりすると思うか!? |
| ルドガー | しない…と言いたいけど世界が違えば、性格も違う事がある。負の因子に憑りつかれれば、尚更だ |
| ルドガー | 前に行った分史世界では、あのスレイが人類を滅ぼそうとしてた事もあったぐらいだ |
| ルーク | スレイが!?そんなに変わる事もあんのかよ! |
| ルーク | …じゃあ、本当に…この世界の俺が… |
| ルドガー | あくまで推測の域は出ないが… |
| ルドガー | ルークに異変が起こったのは、この分史世界のルークが負の因子に憑りつかれたからのはずだ |
| ルドガー | この世界のルークが関わっている可能性は高いと思う |
| ルーク | なるほどな…。んじゃ、俺の事もアッシュの事もこの世界の俺を見つければ解決か |
| ルドガー | そういう事になるな |
| ルーク | …ん?そういや、こっちに来てから俺、異変っての起こってねぇな |
| ルーク | 認識されねぇどころか見つかって追い回されたりしてたぐらいだ |
| ルドガー | 確かに、俺もルークの事を忘れたりしてない。分史世界では異変が止まるのか…? |
| ルーク | じゃあ、慌てなくてよさそうだな |
| ルドガー | そうだといいけど…早く行動するに越した事はないと思う |
| ルドガー | …なあ、ルーク。アッシュと協力する事は出来ないか? |
| ルーク | アッシュと?無理じゃねえかな…俺を斬ろうとした奴だぜ? |
| ルドガー | でも、この世界のルークが犯人の可能性がある以上、利害は一致するだろう |
| ルドガー | ルークの話の通りなら話せば聞いてくれる人みたいだし丁寧に説明すればわかってくれるかも |
| ルーク | それはそうかもしれねえけどよ… |
| ルドガー | このままアッシュや兵士達に追われていたら俺達はろくに動けない |
| ルドガー | アッシュを説得出来れば、だいぶ状況がよくなると思わないか? |
| ルーク | まあ、確かに、そうかもな…。わかった。もう一度話してみるか |
| ルドガー | ああ。ミュウが戻ってきたらすぐに── |
| ルーク | …いや、行くなら今すぐだ。アッシュも兵士達に追われてるからこの森を離れちまうかもしれねぇ |
| ルーク | ミュウの事なら心配ねぇよ。言ったろ?あいつはあれで、結構しぶといって |
| ルドガー | …ルークがそう言うなら、俺もミュウを信じるよ |
| ルーク | そうと決まりゃ、アッシュを捜そうぜ |
| ルドガー | ああ。まずはルークが来た方向に行ってみよう |
| scene1 | 偽の親善大使 |
| ガイ | さて、これからの動きだが── |
| アッシュ | さっきの奴を捜す。今のところ他に手がかりはないからな |
| ガイ | そうだな。でも、どうやって捜す?もう森を出てるかもしれないぞ |
| アッシュ | いや。よく思い出してみろ。あいつは誰かの名前を呼びながら歩いていた |
| ガイ | 最初に声をかけた時か…確か、ルドガーとかミュウとか言ってたな |
| アッシュ | この森の中で仲間と合流出来ずにいるんだ。まだ近くにいる可能性は高い |
| アッシュ | それに俺達は、ルークに似た奴本人でなくその仲間の方を見つけてもいいんだ |
| アッシュ | たった一人を捜すよりも幾分かマシだろう |
| ガイ | わかった。このまま森の中を捜してみよう |
| アッシュ | …もし、日没までに奴らを見つけられなければ… |
| アッシュ | 一度国に戻り、全て報告して、ルークの所在を調べる |
| ガイ | ルークの所在を…。それはつまり、さっきの奴の話を信じるって事か? |
| アッシュ | 全ての可能性を考えているだけだ |
| アッシュ | 先入観で決めつけたり、感情に流されたりしないようにな |
| ガイ | 感情、か。やっぱりおまえ、ルークの事… |
| アッシュ | ふん。あんな奴でも弟だ。 |
| | |
| ガイ | アッシュ!危ない! |
| | ドンッ |
| | |
| アッシュ | なっ…!? |
| | ザシュ…! |
| ガイ | ぐっ! |
| | |
| | ドサッ |
| | |
| アッシュ | ガイ! |
| ??? | ちっ。邪魔しやがって… |
| アッシュ | おまえ…まさか、ルーク…なのか? |
| ルーク | ふん。信じられねぇって顔だな。俺に斬りかかられるのがそんなに意外か? |
| アッシュ | 何の真似だ! |
| ルーク | …次は仕留める! |
| | |
| | ギィンッ! |
| アッシュ | くっ…! |
| ルーク | これを受け止めるとはさすがだな。だが…! |
| | キンッ! |
| アッシュ | ぐっ…!弾かれただと!? |
| ルーク | 俺も強くなったんだよ! |
| | キンッ!キン、キン! |
| アッシュ | この太刀筋…!間違いない…!ルーク! |
| ルーク | 相変わらず強いな、アッシュ |
| ルーク | でも、これなら…ついに、俺が、おまえに勝つんだ! |
| アッシュ | …! |
| | ガギィン! |
| ルーク | 避けずに受け止めるとはな。その従者がそこまで大切か? |
| アッシュ | 手負いの人間を狙うとは…落ちるとこまで落ちたな、ルーク! |
| ルーク | はっ。おまえに勝つためなら何だって利用する |
| アッシュ | …おまえがそこまでの屑だとはな |
| ルーク | ああ。俺は屑だ。でも、おまえは違うんだろ? |
| ルーク | 優等生のおまえなら怪我人を見捨てたりは出来ねぇよな! |
| アッシュ | …ふん。卑怯な真似をしないと戦えないような奴に遅れは取らねぇ |
| ルーク | これは殺し合いだ。どんな手を使っても、命を取れば勝ちだ! |
| アッシュ | やれるもんならやってみやがれ! |
| | ガンッ! |
| ルーク | くっ…! |
| アッシュ | おまえの望みどおり、殺し合いをしてやる。だが一つだけ答えろ |
| アッシュ | 親善大使である俺の名を騙ってシルヴァラント王に会い、剣を向けたのは…おまえか? |
| ルーク | ……ああ |
| ルーク | おまえに成り代わってシルヴァラントに宣戦布告をしたのはこの俺だ |
| アッシュ | っ…! |
| ルーク | おまえは他国でも顔が通ってるんだな |
| ルーク | 念のためにと思って用意した偽の親書も使う事なく、この顔だけで王に会う事が出来たぜ |
| アッシュ | 何が目的だ。俺を消して、王にでもなりたいのか |
| ルーク | …わかってんじゃねぇか |
| ルーク | おまえはシルヴァラントから追われる身。逃亡中に殺されても不思議はない |
| ルーク | もし無事に国まで逃げ帰れたとしても大罪人として処分される |
| ルーク | そうしないと、シルヴァラントとの戦争は避けられねぇもんな |
| アッシュ | …浅いな。おまえの計略はそれだけか |
| アッシュ | 今の話をバチカルに持ち帰り伯父上に報告する。それでおまえは終わりだ |
| ルーク | …へっ、それは無理な話だぜ |
| アッシュ | どういう意味だ |
| ルーク | 俺の仲間がナタリアを監禁してる |
| アッシュ | 何っ! |
| ルーク | もし俺に何かあって王位を継げないような事態になったら…ナタリアはこの世から消える |
| ルーク | 俺達はナタリアと結婚する事ではじめて王位を継げるんだ。そのナタリアがいなくなれば… |
| アッシュ | …そこまでするのか |
| ルーク | さっきも言っただろ。どんな手でも使うってな |
| ルーク | 諦めろ、アッシュ。おまえはもう終わりだ。どうあがいても王にはなれない |
| ルーク | 最後に選べよ。おまえ一人が犠牲になるか、俺を殺してナタリアも失うか |
| アッシュ | 期待に沿えなくて悪いが俺はどっちも選ばねぇ |
| アッシュ | 目的がおまえの王位継承ならおまえが生きている限りナタリアに下手な事は出来ないはずだ |
| アッシュ | なら俺は、おまえを生け捕りにしてナタリアも救う |
| | チャキッ |
| アッシュ | 大罪人、ルーク・フォン・ファブレ。この俺が直々に裁いてやる! |
| ルーク | やってみろ、アッシュ!俺は遠慮なく剣を振り抜く──! |
| scene2 | 偽の親善大使 |
| | ザシュ! |
| ルーク | ぐぅっ…!…さすがに無傷とはいかないか。やるな |
| アッシュ | …ふん。おまえこそ腕を上げたな。 |
| アッシュ | だがその怪我なら、動きは鈍る。降参した方が身のためだぞ |
| ルーク | この程度の傷…! |
| アッシュ | (ちっ…踏み込みが甘かったか? 本気で俺を殺すつもりの奴を 生け捕りにするのは厳しいか) |
| ルーク | …おまえは昔からそうだったな。いつも冷静なくせに、ナタリアの事になると頭に血が上る |
| アッシュ | …何? |
| ルーク | 大事な従者を忘れてたろ?ここからなら… |
| アッシュ | てめぇ!ガイには手を出すな! |
| ルーク | アッシュ。ガイとナタリアを助けたけりゃ自害するんだな |
| アッシュ | …… |
| ガイ | …くっ…アッシュ…だめだ… |
| ルーク | 何だ。目を覚ましてたのか |
| ガイ | 俺に構うな…。おまえなら、わかるはずだ…どうするべきか… |
| ガイ | 国に必要なのは…おまえと…ナタリア…! |
| ルーク | …そうか。国に必要とされなかった者同士…せめて楽に殺してやるよ |
| | チャキッ |
| アッシュ | ガイ! |
| ルーク | じゃあな |
| | |
| ??? | やめろーーーっ!! |
| | ギィン! |
| ルーク | くっ、誰だ…!? |
| アッシュ | …おまえは! |
| | |
| ルーク | あいつは俺が引き付ける!おまえは今のうちにガイを! |
| アッシュ | ああ…! |
| アッシュ | 掴まれ、ガイ! |
| ガイ | …悪い、足引っ張っちまって… |
| アッシュ | おまえが無事ならそれでいい |
| ルドガー | こっちだ! |
| アッシュ | おまえは…? |
| ルドガー | 詳しい事は後で。今は逃げる事を優先するんだ。援護は任せてくれ |
| アッシュ | …わかった、頼む |
| ルドガー | 行くぞ、ルーク! |
| ルーク | はあ!?何言って── |
| ルーク | おう! |
| ルーク | …その姿、その声…同じ名前…?何なんだ、おまえ… |
| ルーク | その質問には答えらんねーな!へっ、隙だらけだぜ! |
| | ギィン! |
| ルーク | しまっ…! |
| | ドサッ |
| ルーク | ぐあっ…! |
| ルーク | じゃあな! |
| ルーク | 待ちやがれ…! |
| ルーク | ぐぅっ…!…傷が… |
| ルーク | くそっ、アッシュ…!絶対に許さねぇ… |
| ルーク | 次は必ず…この手で…! |
| | 共同作戦 |
| ルーク | この辺りまで来ればいいだろ。あいつも、すぐには追ってこれねぇみたいだったしな |
| アッシュ | 見通しが利く奇襲されにくい場所…湖のお蔭で警戒する方角も限られている…か |
| アッシュ | 腰を落ち着けるには適しているな |
| ルーク | お、おう。まぁな |
| ルーク | (そこまで考えてなかったけど…) |
| ルーク | ところで、ガイ。怪我はどうだ? |
| ガイ | ああ…大丈夫だ。もう自分で歩けるし、傷もそんなに深くない |
| アッシュ | …浅くもないだろう。見せてみろ |
| ガイ | 意外と心配性だよな、お前。いててて… |
| アッシュ | 俺を助けた怪我が原因で倒れられても面倒だからな。…礼は言っておく |
| ガイ | はは。従者が主を守るのは当然だろ?それより、礼を言うべきなのはあっちの二人にだ |
| ガイ | 誰だかは知らないがお蔭で命拾いしたぜ。ありがとな |
| アッシュ | 礼を言う。世話になった |
| ルーク | 気にすんなって。…しかし、ガイがよそよそしいと何か調子狂うんだよな |
| ルドガー | 仕方ないさ。彼は俺達の知ってるガイとは別人なんだから |
| アッシュ | …別のガイ、か。こことは別の世界のガイがいる…という事か? |
| ルドガー | ああ |
| ガイ | 嘘をついているようには見えないし別の世界から来たって話を信じるしかないみたいだな |
| アッシュ | …そのようだな。改めて聞く。おまえ達は何者で、何を目的にしている |
| ルドガー | じゃあ、まず名前から。俺は、ルドガー・ウィル・クルスニクこっちは── |
| ルーク | さっきも言ったけど、一応な。ルーク・フォン・ファブレだ |
| アッシュ | ルドガーに…ルーク…か。…俺達の事はわかっているようだが礼儀としてこちらも名乗っておく |
| アッシュ | 俺の名はアッシュ・フォン・ファブレだ |
| ガイ | 俺はガイ・セシル |
| ルドガー | 俺達の目的については…どう説明していいのか難しいんだけど… |
| ルドガー | 一言で言うと、この世界のルークに会いに来たんだ |
| アッシュ | ……。あいつに何かあるんだな? |
| ルドガー | ああ。事の起こりは、俺達の世界でルークが── |
| アッシュ | …正史と分史…。そして負の因子…か |
| ガイ | 驚くような話ばかりだな…こっちの世界の影響でそっちのルークが忘れられるだなんて |
| アッシュ | …負の因子の目印になる黒いもやというやつには心当たりがある |
| アッシュ | さっきルークと戦っている最中にそれらしいものを見た |
| ルドガー | やはりそうか…早く取り除かないとどんな事が起こるかわからない |
| ガイ | 今回の大事件も負の因子の影響によるものって事なんだよな? |
| ルドガー | 可能性は…ある。抱えていた強い感情の一部が膨らんで凶行に及ばすのを見てきた |
| アッシュ | …凶行、か。まさしく、そのものだな |
| ルドガー | これまでの経験だと負の因子を破壊すれば、本来の自分を取り戻せると思う |
| ガイ | 本当か!光明が見えたな、アッシュ |
| アッシュ | …… |
| ルーク | そういや、負の因子を破壊ってどうすりゃいいんだ? |
| ルドガー | おそらく…戦う必要がある。今までも説得してみたけど行動を止める事は出来なかったんだ |
| ルドガー | 仮説だけど、戦って消耗させる事が条件になっているんじゃないかな |
| ガイ | …それじゃあ、ルークと戦う事は避けられないのか… |
| アッシュ | 負の因子とやらを破壊するのに戦う事が必要であればやるしかないだろう |
| ガイ | そりゃそうだが…俺はお前とルークの確執が深まらないかが心配なんだよ |
| アッシュ | …くだらない心配をするな |
| ルーク | 二人の確執ってなんだ?ここじゃ、兄弟なんだろ? |
| アッシュ | 取るに足らん些細な事だ |
| ルドガー | この世界のルーク…。負の因子の持ち主の事は知っておきたい。もし何かあるなら教えてほしい |
| アッシュ | …くだらん昔話にすぎんぞ |
| ルドガー | ああ、頼むよ |
| アッシュ | …俺とルークは、ファブレ公爵家に生まれた双子の兄弟だ |
| アッシュ | 俺達は国王の甥にあたり、どちらかが王位を継承すると生まれた時から決められている |
| アッシュ | だから俺達は幼い頃から王位を継ぐに相応しい人間になるべく教育を受けて来た |
| ルーク | どっちが王位継承者になるか、揉めそうな話だな… |
| ガイ | そうならないようにって国王陛下もいろいろ考えてたんだけどな |
| ガイ | 俺は子どもの頃から二人とずっと一緒だったから細かく様子を聞かれたりしてたんだ |
| ガイ | 二人も、争うより協力しようって話していたしそのために切磋琢磨していた |
| ガイ | …はずなのに、いつの間にか王位を巡って二人は争っている状態になっちまった |
| アッシュ | くだらん。俺は争っているつもりはない。あいつが勝手に暴走してやがるんだ |
| ルーク | …でも、それは負の因子の影響があるからだろ? |
| アッシュ | どうだかな。今になって考えれば、ずっと昔から計画してたようにも思える |
| ルドガー | そうなのか? |
| アッシュ | あいつは数年前から俺を避けていやがった |
| アッシュ | 話す機会もなくなったし何を考えてるのか、わからん |
| ガイ | だからって、アッシュを殺す計画を練っていたとは思えないぞ |
| アッシュ | だが実際、ルークは俺を殺しに来た。あいつの抱えていた感情がはっきりしたというわけだ |
| ルーク | それは、負の因子が影響してるせいかもしれないだろ!? |
| アッシュ | …どうだかな |
| ガイ | 結局、負の因子ってのを破壊してから本人に直接聞くしかない |
| ルドガー | 負の因子を破壊したいのは俺達も一緒だ |
| ルドガー | 利害は一致してるし、力を合わせないか? |
| アッシュ | …そうだな。ルークを捕えるためにも人手がある方がいい |
| アッシュ | それにナタリアの事もある。俺とガイだけでは手に余る事態だ |
| ガイ | 俺も賛成だ。よろしく頼むな |
| ルーク | あ~、よかった!これで、おまえらからは逃げなくてすむな |
| アッシュ | 元より、追う理由はなくなった。ルークが罪を白状した事でおまえの疑いも晴れたからな |
| ルーク | そういやそっか |
| ルーク | ところで、そのルークって呼び方何とかならねぇかな。一瞬、俺の事かと思っちまうんだよ |
| ルドガー | …確かに、これから一緒にルークを追うなら呼び分けた方がいいかもな |
| ガイ | …とは言ってもどっちも全く同じ名前なんだよな。どうする? |
| アッシュ | 無理に呼び方を変えても混乱の元だ。どちらの事を言ってるかぐらい話の流れで理解しろ |
| ルーク | いや理解は出来るけど一瞬びっくりするんだって |
| アッシュ | 慣れろ |
| ルーク | はぁ…仕方ねぇか |
| ルーク | よし!負の因子を破壊して、二人が仲直り出来るように頑張ろうぜ! |
| アッシュ | …待て。何を勘違いしている? |
| ルーク | ん…?何がだ? |
| アッシュ | 俺の目的はルークを捕え、その罪を裁く事だ |
| アッシュ | 今更、良好な関係を築くつもりなどない |
| ルーク | 何でだよ。罪を裁くにしたって仲直りしてもいいだろ? |
| アッシュ | …必要ない |
| アッシュ | 私情は邪魔になる。相手は国を揺るがす大罪人…厳格な処罰が必要だ |
| ルーク | 厳格な…って、まさか… |
| | |
| アッシュ | 極刑も、十分あり得るという事だ |
| | |
| ルーク | な、何とかならねえのか?実の弟なんだろ!?おまえだって嫌なはずだ! |
| アッシュ | 今言った通りだ |
| アッシュ | 弟の罪は、俺が責任を持って裁く。それが兄として出来る唯一の事だ |
| ルーク | ぐっ…!ガイはどうなんだよ。止めなくていいのか? |
| ガイ | …俺はアッシュの意志を尊重する |
| ルーク | ガイもか…。ああもう…この世界の俺、何て事しでかしてんだよ… |
| アッシュ | …これ以上、ごちゃごちゃ抜かすなら協力の話はなしだ |
| アッシュ | いざという時に邪魔されるかも知れないからな |
| ルーク | そんなつもりはねぇけどよ… |
| ルドガー | アッシュ、君達の事情はわかった。君の覚悟についても |
| ルドガー | 俺達は、負の因子を破壊して、アッシュ達は、ルークを捕まえる。その目的さえ変わらないなら問題ない |
| ルドガー | それぞれの目的のために力を合わせよう |
| アッシュ | …いいだろう。行くぞ |
| | |
| ルドガー | 行くって…ルークの居場所に目星がついてるのか? |
| アッシュ | ああ。首謀者が俺の考える人物なら拠点は大体絞れる |
| ルドガー | 首謀者…!? |
| ルーク | そんな奴がいるのかよ! |
| アッシュ | おそらく…ルークが妄信する剣術の師… |
| アッシュ | キムラスカの騎士団長アレクセイ・ディノイアだ |
| | 帳の裏側 |
| ルーク | はぁ…はぁ…ちっ、完全に見失った… |
| ルーク | ぐっ…!くそっ…アッシュにやられたとこが… |
| | ガサガサ… |
| ルーク | …!誰だ! |
| ミュウ | ご主人様!やっと見つけたですの! |
| ルーク | な、何だ、おまえは!魔物…チーグル族か!?何でしゃべれるんだ!? |
| ミュウ | …あれ?髪が短い…服も違うですの… |
| ミュウ | あの、ご主人様…ですの? |
| ルーク | 気味悪ぃな、あっち行け!ご主人様なんて知らねぇ── |
| ルーク | ──っ!ぐっ… |
| ミュウ | どうしたんですの!? |
| ミュウ | あ!大変ですの!怪我してるですの! |
| ルーク | 寄るんじゃねえ! |
| | バシッ! |
| ミュウ | みゅぅぅ! |
| ルーク | ふんっ… |
| ミュウ | みゅうぅ…やっぱり…ご主人様じゃないですの… |
| ルーク | ちっ…。一度先生のところに戻った方がよさそうだな… |
| ミュウ | あっ、待ってくださいですの!無理に動いたら傷が開きますの! |
| ルーク | うるせぇ。大声出すんじゃねぇよ。兵士達に見つかるだろうが |
| ミュウ | みゅ…追われてるですの?…何か悪い事したですの? |
| ルーク | 余計なお世話なんだよ。これ以上ごちゃごちゃ言うなら斬るぞ |
| | チャキ |
| ミュウ | みゅうぅっ!ごめんなさいですのー! |
| ルーク | …行ったか |
| | ズリ…ズリ… |
| ルーク | はぁ…はぁ… |
| ルーク | (くそっ…あいつの言う通り 動くと傷が…) |
| ルーク | (何だこのぐらい…) |
| ルーク | ぐぅっ…!駄目だ…痛ぇ… |
| ミュウ | あ、いたですの! |
| ルーク | おまえ…何で戻ってきやがった… |
| ミュウ | 薬草を採ってきたんですの!これ、傷口に貼ってくださいですの! |
| ルーク | …おまえ…これを渡すために…? |
| ミュウ | あ、あの、これをお渡ししたらボクはすぐ行きますの。だから斬らないでほしいですの |
| ルーク | ああ、そうしろ── |
| ルーク | …ん?おまえ、よく見たら泥だらけの傷だらけじゃねえか |
| ミュウ | これは、ちょっと転んだだけですの |
| ルーク | …薬草を採ろうとして無理したんじゃねぇのかよ |
| ミュウ | みゅうぅ… |
| ミュウ | で、でも、これぐらい平気ですの!ボクの心配をしている場合じゃないですの! |
| ルーク | …… |
| ルーク | …はぁ、わかった。貸せよ |
| ミュウ | はいですの! |
| | ムギュッ |
| ミュウ | みゅ? |
| ルーク | そのままじっとしてろよ |
| ミュウ | あの…ボクの怪我に使うんじゃないですの |
| ルーク | …いいんだよ。もらった薬草をどう使おうが、俺の勝手だろ |
| ルーク | こんだけありゃ、俺の分も十分足りる。おまえは大人しくしてろ |
| ミュウ | …ありがとうですの |
| ルーク | …これで少しすりゃ傷も治るか |
| ミュウ | あの…その傷、何があったんですの? |
| ルーク | …見りゃわかんだろ。斬られたんだよ…兄貴にな |
| | |
| ルーク | だが、次こそは必ず俺があいつを殺してやる |
| | |
| ミュウ | こ、殺す…ですの!?そんなの、駄目ですの! |
| ルーク | 何も知らねぇくせに説教でもする気か? |
| ミュウ | みゅうう…ごめんなさいですの |
| ミュウ | でも、ボクを助けてくれた優しい人がお兄さんと殺し合いなんて…きっと辛いですの |
| ルーク | …優しい人、か。嬉しくねぇ言葉だな |
| ルーク | 俺は情を捨てたんだ…。あいつと殺し合うと決めた時に |
| ミュウ | みゅう…仲直りは出来ないんですの? |
| ルーク | 命の取り合いはとっくに始まってる |
| ルーク | …先生があいつの謀略を教えてくれなかったら俺は知らない内に殺されてた |
| ルーク | どっちかが消えるしかねぇんだよ |
| ミュウ | そんな… |
| ルーク | …ったく、何を焦ってやがんだろうな |
| ルーク | 俺は出来が悪いんだから、放っておいても王位はあいつのもんだったのによ |
| ミュウ | …本当はお兄さんと殺し合いなんてしたくないんですの…そういうお顔ですの… |
| ルーク | …違う!俺は…! |
| | |
| ??? | この声…ルーク、そこにいるのか? |
| | |
| ルーク | っ!この声は…先生! |
| ミュウ | ルーク…? |
| ルーク | おまえなんかと一緒にいるところを見られたくねぇ。そこの茂みに隠れてろ! |
| ミュウ | え…? |
| ルーク | 早く!絶対に出てくるなよ! |
| ミュウ | は、はいですの! |
| | ガサガサ |
| アレクセイ | …ここにいたのか、ルーク |
| ルーク | 先生…! |
| ミュウ | (ルーク…って、やっぱりあの人、 この世界のご主人様ですの!) |
| ミュウ | (…それに先生って… ヴァンさんとは違う人ですの…) |
| アレクセイ | 話し声が聞こえた気がしたが……一人か? |
| ルーク | はい |
| アレクセイ | 任せていた件はどうなった |
| ルーク | それが…その… |
| アレクセイ | その怪我…返り討ちに遭ったか |
| ルーク | すみません…。せっかく、先生が期待して任せてくれたのに… |
| アレクセイ | 気に病む事はない。まだ機会はある |
| アレクセイ | おまえはまだ生きている。まだ剣を握り、アッシュに立ち向かえるだろう |
| アレクセイ | 諦めず何度でも戦うのだ |
| アレクセイ | それとも…やはり兄に剣を向ける事は出来ないか? |
| ルーク | いえ…。今度こそ、必ず仕留めます |
| アレクセイ | 剣を交えてわかっただろう。アッシュはおまえを本気で殺すつもりだ |
| アレクセイ | あいつは欲に溺れている。自らの王位継承権を盤石にするためどんな手段でも使ってくるだろう |
| アレクセイ | もしかすると最初はおまえを殺す気などないような素振りを見せたのではないか? |
| ルーク | そういえば…確かに |
| アレクセイ | 奴の狡猾な手段だ。結果を見ろ。おまえは奴に斬られた |
| アレクセイ | 迷いがあってはアッシュに勝てない。おまえも非情になれ |
| アレクセイ | ……。おまえが斬れぬなら私がやろう |
| ルーク | …いえ。今度こそ…必ず…アッシュを…この手で殺します! |
| ルーク | 俺を殺そうとした事、必ず後悔させてやる…! |
| アレクセイ | いいだろう。おまえ自身の手で決着を付け、国を背負う者としての覚悟を見せよ |
| ルーク | はい…! |
| ミュウ | (だ、駄目ですの!) |
| アレクセイ | 拠点まで戻るぞ |
| ルーク | はい、先生 |
| ミュウ | (行っちゃうですの! 止めなきゃ…ですの!) |
| | 軋轢の始まり |
| ガイ | アレクセイ騎士団長…って、アッシュ、本気で言ってるのか? |
| ガイ | あの人が裏で糸を引いてるとなると一大事だぞ |
| ガイ | ルークの不祥事どころじゃない。最悪、国を真っ二つに分けた抗争になりかねない |
| アッシュ | …既に始まってる。アレクセイは戦争による国力増強を主張していただろう |
| アッシュ | 今回、ルーク達の行動によってシルヴァラントとの和平を望む俺達の親善活動が妨害された |
| アッシュ | そして親善大使となった俺を殺害しアレクセイを妄信するルークを王にしようとしている… |
| ガイ | …確かに、全て騎士団長にとって優位に働く事ばかりだ… |
| ガイ | でも、仮にも騎士団長としてこんな行動に出るとは思えない |
| アッシュ | 俺もそう思っていたが…ルークを巻き込んでこんな事が出来る人物も、他にいないだろう |
| アッシュ | …あいつは数年に渡って人との接触を自ら断っていた。剣の師であるアレクセイ以外とはな |
| ルーク | 剣の師…か |
| ルーク | 自分の師匠を信頼する気持ちはよくわかるんだけどよ… |
| ルーク | いくらなんでも実の兄を殺そうなんて思うか? |
| ルーク | 兄弟の絆ってのがどんなもんか俺にはわかんねぇけど、師弟の妄信を超えてるだろ |
| ルドガー | ルーク…そうか、ヴァンの事… |
| ルーク | ああ…。俺は師匠を信じて人さらいもやった |
| ルーク | でもそれは、騙されてたとはいえいい事だと思ったからやったんだ |
| ルーク | もし誰かを殺せって言われても絶対にやらないし、師匠が間違ってるなら剣も交えた |
| ルーク | だからこそ信じらんねぇんだ。師匠に言われただけで家族を殺そうとするなんてな |
| アッシュ | 何が言いたい。ルークが俺を殺しに来たのは事実だ |
| ルーク | そうだけどよ…!それは負の因子の影響ってやつだと思うんだ |
| ルーク | だから負の因子さえ破壊すりゃそのアレクセイって奴のいいようにはされねぇんじゃねぇかって |
| アッシュ | …それはあくまでおまえの話だろう |
| ガイ | まぁ…ルークは騎士団長に依存している部分があるよな |
| アッシュ | アレクセイは人心掌握に長けた男だ |
| アッシュ | 負の因子の影響がなくてもルークを思い通りに動かす事は出来るだろう。妙な期待はするな |
| ルドガー | …そうか。負の因子を壊しても、ルークが変わらない事を心配してるんだな… |
| アッシュ | アレクセイの言葉だけであいつが豹変したのなら、負の因子を破壊しても何も変わらん |
| ルーク | なぁ、そもそも、こっちの俺はどうしてそこまでアレクセイだけを妄信してんだ? |
| ルーク | アッシュだってずっと一緒にいたんだろ?何も言わなかったのかよ |
| アッシュ | …… |
| ガイ | さっきも言ったが、ルークは騎士団長以外とはまともに口を利かなかったんだ |
| ガイ | 俺やアッシュも含めてな… |
| ルドガー | 何か事情があったのか? |
| ガイ | きっかけはたぶん…あの時の事だ。アッシュ、話していいか? |
| アッシュ | 勝手にしろ |
| ガイ | わかった |
| | |
| ガイ | …アッシュとルークは幼い頃から将来王位を継げるようにって、厳しく育てられてきたんだ |
| ガイ | 二人は、どちらが王になっても協力して国を背負っていくんだって誓いあったりしてな |
| アッシュ | …… |
| ガイ | 二人は何をやらせても優秀だったが剣術に関しては、ルークはアッシュになかなか勝てずにいた |
| ガイ | その様子を見てた騎士団長が、ルークが勝てないのは優しすぎるせいだと指摘したんだ |
| ガイ | 相手に強力な一撃を入れる事を迷ってほんの僅かに踏み込みが甘くなるんだと |
| ガイ | ルークは騎士団長に頼み込んで猛特訓してもらってな。ついにアッシュに勝つ事が出来た |
| ガイ | それがきっかけで、ルークは騎士団長を信頼し始めたんだ |
| ガイ | 何か困った事があるとアッシュや俺よりもまず騎士団長に相談したりしてな |
| ガイ | それから少しずつ話す機会が減っていったんだ |
| ルーク | 待てよ。さっき、どっちが王になってもいいようにって言ってたよな |
| ルーク | なのにどうして、アッシュを殺して王位を奪おうなんて話になってんだよ |
| ガイ | 俺もそこが腑に落ちないんだ |
| ガイ | ルークはアッシュに勝った時も、アッシュと肩を並べて国を守れるなんて喜んでたのに… |
| アッシュ | …肩を並べて、か… |
| ガイ | だから、アッシュ。ルークの行動には負の因子の影響があると思うんだが…どうだ? |
| アッシュ | ……。確かにその可能性が高いと考えた方が全てに説明がつくな |
| アッシュ | あいつに負の因子が憑りついた事で変化が起きたなら、それを見逃すアレクセイじゃない |
| アッシュ | 上手く便乗して今回の計画を立てたんだろう |
| ルーク | つまり…負の因子の影響とアレクセイの計画、両方合わさって今の状況って事か |
| | |
| ガイ | そういう事になるな。少し複雑だが… |
| | |
| ルーク | 複雑でも関係ねぇ。原因が二つあるなら二つとも取り除けばいいんだ |
| ルーク | 負の因子もぶっ壊してアレクセイって奴もぶっ飛ばしてあいつの目を覚まさせてやる! |
| アッシュ | 闘志を燃やすのは勝手だが人質を取られていると動きづらい。まずナタリアの救出が先だ |
| アッシュ | アレクセイが首謀者だという裏付けも取る必要がある。まずは調査からだ |
| ルーク | お、おう。それで、調査ってのはどうやるんだ? |
| アッシュ | さっきも言ったが、奴らの居場所に心当たりがある |
| アッシュ | シルヴァラントとキムラスカの国境近くにある建物──かつて騎士団の駐屯施設だった場所だ |
| ガイ | そうか…!確か騎士団長が中心となっている強硬派の連中が密かに使ってた場所だ |
| アッシュ | ああ。強硬派の動きを探った時に騎士団を使って武器や資材を運び込んでいる事が判明した |
| アッシュ | あの時は怪しい物も見つからず急を要する状況ではないと判断したが… |
| アッシュ | この時のための拠点だった可能性がある |
| ガイ | この森からそう遠くないし、行ってみる価値はありそうだ |
| アッシュ | ああ。まずはそこを偵察するぞ |
| ルドガー | わかった |
| ルーク | 待ってくれ、アッシュ。その建物ってこの森の外にあるのか? |
| アッシュ | ああ。街道を挟んで内海側の別の森の中だ |
| ルーク | もう一人…いや一匹か。仲間がこの森ではぐれてんだけど見かけてねぇか? |
| ルーク | しゃべるチーグル族なんだけどよ |
| アッシュ | …いや、見てないな。ガイはどうだ? |
| ガイ | 俺も見てない。捜しに行くか? |
| アッシュ | 捜すなら一旦別行動だ。人質を取られている以上、あまり時間をかけていられないからな |
| ルドガー | ミュウの事は心配だけど…どうする、ルーク? |
| ルーク | …… |
| ルーク | あいつなら…心配ないよな。悪い、大丈夫だ |
| ガイ | いいのか? |
| ルーク | ああ。全部終わってから捜しに戻ってくりゃいいだろ |
| ガイ | わかった。その時は、俺達も捜すのを手伝うよ |
| ルーク | ありがとな |
| アッシュ | 行くぞ |
| scene1 | 罪と覚悟 |
| アッシュ | あの建物だ |
| ルーク | 結構、でけぇな |
| アッシュ | 以前調査した時よりも見張りが多く厳重だ。何かあるのは間違いない |
| ルドガー | 正面突破は無理だな。どうする? |
| アッシュ | 誰かが敵の注意を引き付けて他の者で調査する |
| ガイ | …あいつらの注意を引けるといえば… |
| アッシュ | 奴らの標的である俺か…ルーク、おまえだろうな |
| ルーク | 仕方ねーな。俺が行ってやるよ |
| ルーク | 敵の本命であるアッシュが行ったんじゃ囮の意味ねぇからな |
| アッシュ | わかった |
| ルーク | じゃあ、決まりだな。早速── |
| アッシュ | …!待て、声を抑えろ |
| ルーク | えっ…? |
| | |
| | ガサガサ |
| アッシュ | そこの茂みに誰かいるな。出てこい |
| | ガサッ |
| ルーク | あ、おまえ…! |
| ミュウ | みゅうぅ… |
| ルドガー | ミュウ!? |
| ミュウ | あっ…!ルドガーさん!それに… |
| ルーク | ブタザル!こんなとこまで来てたのかよ! |
| ミュウ | ご主人様!会いたかったですのー! |
| ルーク | おわっ!くっつくなって! |
| ガイ | しゃべるチーグル…そいつがさっき言ってた仲間か? |
| ルーク | ああ。ミュウって言うんだ |
| ミュウ | はじめまして…って、あれ?ガイさんと、アッシュさんですの |
| ルドガー | この世界のガイとアッシュだ。ミュウとは初対面だよ |
| ミュウ | そうでしたの。ミュウですの。よろしくお願いしますですの |
| アッシュ | …ああ |
| ガイ | よろしくな。…ん?もしかしてそのリング… |
| ミュウ | はい、ソーサラーリングですの。これのお蔭でボクみなさんとおしゃべり出来るですの |
| ルーク | しゃべれるだけじゃねぇんだぜ。こいつ炎が吐けるんだけどリングの力ですげぇ火力を出せるんだ |
| ガイ | そりゃすげぇ |
| ガイ | …ん?待てよ、炎か… |
| アッシュ | おい、そのぐらいにしろ。作戦通り、あそこに乗り込むぞ |
| ミュウ | みゅっ…!?みなさん、あそこに行くんですの? |
| ルーク | ああ。何かあるのか? |
| ミュウ | ボクは…あそこに入って行ったこの世界のルークさんを追って来たんですの |
| ルーク | なっ…! |
| アッシュ | おまえ、ルークに会ったのか |
| ミュウ | はいですの。でもあの建物に入って行って…ボク、怖くて近づけなかったんですの |
| ルドガー | それでこの辺りから遠巻きに様子を見てたのか |
| ミュウ | そうですの。…あっ、そういえば… |
| ミュウ | ルークさん、先生っていう人とアッシュさんの事を話してたんですの |
| ミュウ | その…こ、殺す…って… |
| アッシュ | …気を遣う必要はない。それはもうルークから直接言われている |
| アッシュ | それにしても…先生…やはりアレクセイか |
| ガイ | ミュウ。どんな話をしてたのか詳しく教えてくれるか? |
| ミュウ | はいですの |
| アッシュ | ここで長話をするわけにもいかない。一度離れるぞ |
| scene2 | 罪と覚悟 |
| ミュウ | …と、いうわけですの |
| ガイ | 何か、アレクセイの言い方だとまるでアッシュが先にルークを殺そうとしたみたいだな |
| アッシュ | おそらくルークはそう思い込まされているんだろう。アレクセイならそのぐらい造作もない |
| アッシュ | だが、そんな嘘に乗せられて大罪を犯すほど愚かだったとはな |
| ルーク | そんな言い方する事ねぇだろ。誤解があるってわかったんだ、ちゃんと説明すりゃいいじゃねぇか |
| アッシュ | 説明してどうなる。誤解がとけたところであいつの罪が消えるわけじゃない |
| ミュウ | でも…ルークさん、辛そうでしたのお話してあげたら、きっと喜ぶと思うですの |
| アッシュ | くどいぞ。この話は終わりだ |
| | |
| ルーク | いや、終わらせんじゃねぇ。ちゃんと向き合えよ |
| アッシュ | だから。今更あいつと向き合ったところでもう遅いと言ってるんだ |
| ルーク | なあ、おまえ何から逃げようとしてんだよ |
| アッシュ | 逃げる…だと? |
| ルーク | ルークと本音で向き合うのが怖いのか? |
| アッシュ | 馬鹿を言うな。俺は何も恐れてなどいない! |
| ルーク | 俺の目を見て言えよ! |
| アッシュ | ……っ |
| ルーク | おまえは本当に…後悔しねぇのか? |
| アッシュ | …うるせぇ。俺が後悔したら何だってんだ |
| アッシュ | これは俺だけの問題じゃねぇ。あいつの気持ちはどうなる? |
| アッシュ | 誤解がとけるという事は信頼しているアレクセイと袂を分かつという事だ |
| アッシュ | そしてその後、和解した俺から断罪されるんだぞ |
| アッシュ | …あいつは何回絶望すればいい? |
| ルーク | …!おまえ… |
| アッシュ | それだったら…アレクセイを信じ、俺を恨んだまま断罪される方がずっといいだろう |
| ガイ | アッシュ…そんな事を考えてたのか… |
| ルドガー | …君の気持ちはわかった。でも、だからこそ俺はルークと話をしてほしいと思う |
| アッシュ | …何故そこまで対話にこだわる。これは俺とルークの問題であって、おまえ達には関係のない話だろ |
| ルドガー | …俺にも兄さんがいるんだ。だから…俺がルークの立場だったらって想像したんだよ |
| ルドガー | すれ違ったまま…兄さんが俺をどう思って断罪するのかわからないなんて辛い |
| ルドガー | アッシュからの言葉で今のルークの絶望を少しでも和らげられると思うんだ |
| アッシュ | ………… |
| | |
| アッシュ | …ちっ。俺も腹を括るか |
| | |
| アッシュ | あいつには…言いたい事が山程ある |
| アッシュ | これまで何も言ってこなかったのは俺が手を差し伸べる必要はないと思ってたからだ |
| アッシュ | だが、その結果…あいつはアレクセイから差し伸べられた手を取った… |
| ルーク | だったら、今からでもいい。ちゃんと話し合おうぜ |
| ルーク | 上手くいけば、殺し合いまではしなくて済むかも知れねぇだろ |
| アッシュ | …そう上手く行くかはわからんが… |
| アッシュ | いいだろう。ルークに会ったら、全て話そう |
| ルーク | よし来た!じゃあ、二人が話せるように作戦を考えねぇとな! |
| アッシュ | いや…これは俺の個人的な問題だ。おまえ達が危険を冒してまで付き合う必要はない |
| ルーク | おいおい。今更、水臭い事言うなって! |
| ルドガー | ああ。乗りかかった舟だ。それにルークを説得するとなると負の因子の事も考えなきゃならない |
| ルドガー | 俺達にとっても重要な事なんだ |
| ガイ | 俺も、二人の幼馴染として最後まで見届けたいしな |
| アッシュ | わかった。…頼む |
| ガイ | 任せてくれ。で、その作戦だが… |
| ルーク | 俺が囮になるって話だったよな。一人で飛び出して行って見張りの気を引けばいいのか? |
| ガイ | それなんだが、もしかすると誰も囮にならなくてもいいかもしれない |
| アッシュ | 何か考えがあるんだな |
| ガイ | ああ。ちょっと試したい作戦がある。ミュウ、手伝ってくれるか? |
| ミュウ | みゅ…? |
| scene1 | 強襲の騎士団長 |
| アッシュ | ──では、今話した作戦で潜入する。成功するかどうかは、おまえ達の陽動にかかっている |
| ルーク | おう。任せとけって! |
| ルーク | 万が一、ガイとミュウの作戦に支障があったら、元の作戦通り、俺が囮になるぜ |
| アッシュ | わかった |
| アッシュ | 互いに隙を見つけて潜入した後、合流はせず、二手に分かれて拠点を調べるぞ |
| ガイ | 確か、中はかなり広いよな。入ってからの作戦は? |
| アッシュ | 第一の目的は人質の確保。ナタリアの安全を確保出来れば、格段に動きやすくなる |
| ルドガー | ナタリアはここにいる可能性が高いんだよな? |
| アッシュ | ああ。奴らの拠点の数と位置を考えるとここが一番適している |
| アッシュ | それにあの警備の数…ナタリアがここにいる前提で行動した方がいいだろう |
| アッシュ | …他に確認しておく事はないな?敵拠点に近づいたら速やかに作戦を開始する |
| ルドガー | ああ、もう大丈夫だ |
| アッシュ | 行くぞ |
| scene2 | 強襲の騎士団長 |
| 警備兵1 | …はぁ、暇だな。こんな場所、誰も来ねぇだろうに警備なんて必要か? |
| 警備兵2 | おい、口を慎めよ。騎士団長に聞こえるぞ |
| 警備兵1 | 聞こえてもどうって事ねぇさ。俺はただの傭兵で、奴に忠誠を誓ってるわけじゃねぇからな |
| 警備兵2 | だったら、どうしてここにいるんだ |
| 警備兵1 | この計画が成功して戦争が始まりゃいい金になるからな |
| 警備兵2 | それなら尚更、口に気を付けた方がいいぞ。あの方の逆鱗に触れでもしたら── |
| | |
| | ガサガサ… |
| 警備兵2 | む、何だ…!? |
| 警備兵1 | …見ろ!あそこの茂み、動いてないか!?こっちに来るぞ! |
| | |
| 警備兵2 | 動く茂みなんてあるか!魔物じゃないのか? |
| 魔物? | がおおおおおっ!…ですの |
| 警備兵2 | やはり魔物か! |
| ルーク | うまく騙されてるみてぇだな。ミュウにそこらの枝をかぶせて大きくしただけなのによ |
| ガイ | 問題なさそうだな。よし、次の段階に行こう |
| ルーク | わかった。ミュウに合図を送るぜ |
| ミュウ | (…ご主人様が手を上げたですの。 合図ですの!) |
| ミュウ | がおお、がおおおおっ!…ですの |
| | ボボボボォォォッ! |
| 警備兵1 | うわっ、あちっ!こいつ、火を噴くのか!? |
| | ボボォ!ボボボォ! |
| 警備兵2 | こいつ、手当たり次第に…! |
| | タッタッタッタッ… |
| 警備兵3 | 何の騒ぎ──なっ…!?何だこの巨大な魔物は…! |
| 警備兵4 | しかも火を噴いてる!?燃え移ったら一大事だ! |
| 警備兵2 | はい!すぐ騎士団長に報告を… |
| 警備兵4 | そんな暇はない!すぐに討伐するぞ! |
| ルーク | 入口の方にいた警備兵もこっちに来たぞ! |
| ガイ | アッシュ達が入って行くのが見えた。作戦成功だな |
| ルーク | よし、仕上げだ、ミュウ |
| ミュウ | (…ご主人様から合図ですの。 作戦成功ですの。 あとは…) |
| ミュウ | がおおおおおおっ!…ですの |
| | ガサガサガサ… |
| 警備兵3 | 逃げるぞ! |
| 警備兵4 | 森が燃やされては困る!追いかけて仕留めるぞ! |
| 警備兵2 | はい! |
| 警備兵1 | 行くぜ! |
| | |
| ルーク | あいつやるなぁ |
| ガイ | 手筈通り、警備兵を誘導して戻って来られたらいいけど… |
| ミュウ | はぁ、はぁ…お待たせしましたですの! |
| ルーク | お。上手く逃げて来たみたいだな |
| ミュウ | はいですの。ガイさんが用意した枝の魔物相手に戦いを挑もうとしていたですの |
| ガイ | ひとまず警備兵は引き離せたな。とはいえ、はりぼての魔物だから、気付かれるのも時間の問題だろう |
| ルーク | だな。今の内に移動しちまおうぜ |
| ガイ | ああ。そこの裏口から中に入ろう |
| | |
| ガイ | …さて、入ったはいいが思ってたより広いな。どこから探すべきか… |
| ミュウ | ナタリアさん、どこにいるんですの…? |
| | コッコッコッ… |
| ルーク | しっ…足音だ。誰か来るぞ |
| ガイ | …!そこの資材の影に身を隠すんだ |
| 警備兵5 | …… |
| ルーク | あいつ、食事を運んでるみてぇだな |
| ガイ | 食堂があるにも関わらず、わざわざ食事を運び出してるのか…? |
| ルーク | 誰かのために運んでる…って事は、ナタリア用か? |
| ガイ | …その可能性は高いな。後をつけてみよう |
| | |
| 警備兵5 | 姫様の食事を持って来たぞ |
| 警備兵6 | わかった。今開ける |
| ルーク | (姫様…って事は…) |
| | ガチャ |
| 警備兵5 | 姫、お食事です |
| ??? | …必要ないですわ |
| ルーク | 今の声…ナタリアだ |
| ガイ | ああ、間違いない。行こう |
| | |
| 警備兵5 | 召し上がってください、姫。もし体調を崩されては困りますから… |
| ナタリア | 私の体調を気にするなら、早く縄を解いて、帰しなさい |
| 警備兵6 | それは── |
| | |
| ??? | ああ、すぐに帰してやるぜ |
| 警備兵6 | …!誰だ! |
| | ドゴッ |
| 警備兵6 | うっ… |
| | |
| | バタン |
| 警備兵5 | し、侵入者──!? |
| ガイ | はぁっ! |
| | バキッ |
| ナタリア | ルーク!ガイ! |
| | |
| ガイ | 無事か? |
| ナタリア | ええ、大丈夫ですわ |
| ルーク | …よかった。待ってろ、今縄を切るからな |
| | ブチブチ… |
| ルーク | これでよし |
| ナタリア | ふう…助かりましたわ |
| ナタリア | …ルーク、嬉しいですわ。最近こもりがちだったあなたがこうして助けに来てくれるなんて… |
| ルーク | あー…俺はおまえの知ってるルークじゃねぇんだ |
| ガイ | …信じられないだろうけど、こいつは、別の世界のルーク・フォン・ファブレなんだよ |
| ナタリア | 別の世界…? |
| ガイ | 説明は後だ。とにかくここを離れよう |
| ナタリア | わかりましたわ |
| | |
| ナタリア | …では、こちらのルークは別の世界にいるルークなのですね |
| ガイ | 理解が早くて助かるぜ |
| ガイ | なあ、ナタリア。最後にルークと会ったのっていつだ? |
| ナタリア | …かなり前ですわ。少なくともアッシュが親善大使として国を発つよりは前でしたもの |
| ナタリア | どうして今そんな事を聞くんですの?まさか、ルークに何か…? |
| ガイ | 何かあった…というか…実はナタリアの誘拐にあいつも関与しているんだ |
| ナタリア | そんな…!どうして…!? |
| ガイ | アッシュの読みでは首謀者はアレクセイ騎士団長だ。だからルークも言いなりに… |
| ナタリア | アレクセイが?本当ですの? |
| | |
| ??? | 勝手に出歩かれては困ります。ナタリア姫 |
| ナタリア | …! |
| ルーク | 誰だ! |
| ミュウ | あっ、この人… |
| ガイ | アレクセイ…騎士団長! |
| | |
| アレクセイ | 外で妙な魔物が出たと報告を受けて念のために見に来たが…嫌な予感ほどよく当たる |
| ルーク | おまえが全ての元凶か!よくも、のこのこ出てきやがったな! |
| アレクセイ | …おまえがもう一人のルークか。ルークから話は聞いている |
| アレクセイ | まさに瓜二つだな。利用価値がありそうだ |
| ルーク | 何…!? |
| ナタリア | その言い方…罪を認めるのですね |
| アレクセイ | この期に及んで弁解など意味を持ちますまい |
| アレクセイ | 全てを知られてしまった以上、始末するほか道はありません |
| ナタリア | 何ですって…? |
| ガイ | 一国の王女に手をかけるっていうのか…! |
| アレクセイ | 騎士団が守るべきは国。我が国をより豊かにするためなら王女とて斬るのみ |
| アレクセイ | それに…表向き、犯人はおまえ達という事になる |
| アレクセイ | 我々騎士団による救出作戦も空しく王女はおまえ達の凶刃に倒れてしまわれたという筋書きだ |
| ルーク | 好き勝手言いやがって… |
| ナタリア | あなたの好きにはさせませんわ! |
| ガイ | ああ。いくら騎士団長と言えど三対一ではどうにもならないだろ |
| ルーク | おまえの事は許せねぇと思ってたんだ… |
| ルーク | あいつはおまえを信じてるんだ、そんな奴の気持ちを弄びやがって…俺が代わりにぶっ飛ばしてやる! |
| アレクセイ | 威勢のいい連中だ。口だけでないといいがな |
| ルーク | …ミュウ。先に行って、ナタリアを助けた事アッシュ達に伝えてくれ |
| ミュウ | は、はいですの! |
| アレクセイ | 行かせると思うか? |
| | チャキ |
| ルーク | おらぁっ! |
| | ガキィン! |
| アレクセイ | …中々やるようだな |
| ルーク | 今だ、行け!ミュウ! |
| ミュウ | はいですのー! |
| アレクセイ | 一匹逃がしたか。…まあいい |
| | ガンッ |
| ルーク | くっ…! |
| ガイ | ルーク! |
| アレクセイ | 覚悟は出来ているのだろうな。我が力…その身をもって思い知るがいい |
| scene3 | 強襲の騎士団長 |
| | ガキィン──! |
| ガイ | くっ…! |
| ナタリア | さすがは騎士団長…強いですわね |
| ルーク | やっぱ一筋縄ではいかねぇな |
| アレクセイ | ふっ…思いの他やるようだな |
| ルーク | (…こいつの戦い方、 何か違和感がある…) |
| ルーク | (手加減されてるような… まさか…時間を稼いでる? でも、何のために…) |
| ルーク | …!そうか! |
| ルーク | ガイ、ナタリア!聞いてくれ! |
| ガイ | 何だ、こんな時に…! |
| アレクセイ | ふ、構わん。作戦会議が必要ならするがいい。戦局は何も変わらんがな |
| ルーク | (やっぱりだ…。 あいつは時間を稼ぎたがってる) |
| ルーク | …いいか。よく聞いてくれ── |
| scene1 | 果たせない誓い |
| アッシュ | …首尾よく潜入出来たな |
| ルドガー | 広いとは聞いていたが、想像以上だな。…調べるのは骨が折れそうだ |
| アッシュ | 手分けするぞ。おまえは向こう端から頼む |
| ルドガー | わかった。何かあれば合図を出すよ |
| ルドガー | …アッシュ、一つだけ確認しておきたいんだ |
| アッシュ | 何だ |
| ルドガー | 人質救出より先にルークに会ったらどうする? |
| アッシュ | 状況による。話せる機会があれば様子を確認する |
| アッシュ | 負の因子とやらの影響がどの程度か見極めねぇと話が通じるかどうか判断出来ん |
| アッシュ | 話し合いが無理だと少しでも感じたら実力行使だ。長々と説得する余裕はないからな |
| ルドガー | そうか…わかった。…ルークと話せるといいな |
| アッシュ | …ああ。行くぞ |
| ルドガー | (…この部屋にも何もない…か。 資材や武器を置いている部屋が 多いな…) |
| ルドガー | (次は…) |
| ルドガー | (人の気配が…) |
| ルドガー | (…! あれは…!) |
| アッシュ | …ルークはこの中か |
| ルドガー | ああ。見た限りでは、一人のようだ |
| アッシュ | 話をするにはおあつらえ向きか… |
| アッシュ | …俺が入って話す。外で何か問題があれば、知らせてくれ |
| ルドガー | わかった。…上手く行くよう祈ってる |
| アッシュ | …ああ |
| | |
| | ガチャ |
| アッシュ | …ルーク |
| ルーク | アッシュ!どうしてここに…? |
| アッシュ | ケリを付けに来た。…おまえが俺に聞きたいのはそんな事なのか? |
| ルーク | …… |
| ルーク | …どうして裏切ったんだ。二人で国を背負おうってこの剣に誓ったのに… |
| アッシュ | 誤解だ。俺は裏切ってなど── |
| ルーク | 嘘をつくな! |
| ルーク | 隠したって無駄だぜ。おまえ、俺を消すためにいろいろ根回ししてたんだろ |
| ルーク | 全部、先生から聞いてるよ |
| アッシュ | 俺の言葉には聞く耳も持たねぇ癖にアレクセイの言葉は信じるのか |
| ルーク | うるせぇ! |
| ルーク | おまえは、俺が邪魔なんだろ。わかるんだ |
| ルーク | 俺も、おまえが憎くて憎くて邪魔で仕方ねぇ。絶対に許せねぇんだ |
| ルーク | こそこそと人を消して王になろうとする、おまえみたいな屑に国は任せらんねぇ! |
| ルーク | おまえを殺して、俺が王になる。これが俺の選んだ道だ! |
| アッシュ | …ルーク。それは本当に、国のためなのか。ただの俺への憎しみじゃないのか |
| ルーク | おまえを憎む事が!おまえを王にさせない事が!国のためになるんだ! |
| アッシュ | …話にならんな。これも、負の因子の影響ってやつか |
| | |
| ルーク | 剣を抜けよ、アッシュ |
| | チャキ |
| | |
| ルーク | 今ここで、息の根を止めてやる! |
| | ヒュンッ |
| | ガキィィン! |
| アッシュ | ちっ…!目を覚ましやがれ! |
| | ドカッ |
| | |
| | バゴォンッ! |
| アッシュ | くっ…! |
| ルドガー | アッシュ…!大丈夫か!? |
| ルーク | 仲間もいたのか |
| 警備兵の声 | 何の騒ぎだ!? |
| アッシュ | ちっ、邪魔な奴らが集まって来そうだな |
| ルドガー | どうする。一度態勢を立て直すか? |
| アッシュ | いや…ここで退くわけにはいかねぇ |
| ルドガー | わかった。警備兵は俺が相手する |
| アッシュ | 任せた |
| ルーク | …今度は逃げねぇんだな |
| アッシュ | おまえと向き合うと決めたからな |
| scene2 | 果たせない誓い |
| ルドガー | はぁっ! |
| | ドカッ |
| 警備兵7 | ぐっ… |
| | ドサッ |
| 警備兵8 | おのれ!大人しくしろ! |
| ルドガー | くっ…次から次へと…! |
| アッシュ | はっ! |
| | キィン! |
| アッシュ | …今のも弾くか。腕を上げたな |
| ルーク | 当たり前だ。おまえに勝ったあの日から二度と負けねぇように鍛えて来たんだ |
| ルーク | なのに…何だ、その戦い方は!おまえはそんなもんじゃねぇはずだろ! |
| | キィン! |
| アッシュ | …ふん。俺の心配をする余裕まであるとはな |
| ミュウ | 見つけたですの!ルドガーさん!アッシュさん! |
| ルドガー | ミュウ! |
| ルーク | あいつ…あの時の… |
| ミュウ | ナタリアさんを見つけて救出しましたの! |
| ルーク | ちっ…警備の奴らは何してやがんだ |
| アッシュ | そうか…。 |
| | チャキ |
| アッシュ | もう手加減はしねぇ |
| ルーク | 本気で来い、アッシュ!それでも俺の方が強いって事を見せてやる! |
| scene3 | 果たせない誓い |
| ルーク | ぐぅっ…!さすがだな…! |
| ルーク | だが、まだ…! |
| アッシュ | おまえは強くなった。…だからこそ残念だ |
| | ドカッ |
| ルーク | ぐあぁぁっ! |
| | ガタガタガタ |
| ルーク | 残念…だって…?それは…こっちの台詞だぜ… |
| アッシュ | …何? |
| ルーク | おまえに俺を殺す事は出来ねぇ。偽親善大使の犯人として、差し出す必要があるもんな? |
| アッシュ | …… |
| ルーク | その顔、図星ってわけだ。この状況でまだ俺を捕らえられるって? |
| ルーク | 笑わせんな! |
| ルーク | 相手を殺す覚悟のねぇ奴に俺は負けたりしねぇ!! |
| | ガキィン! |
| アッシュ | くっ…おまえ…まだこんな力が… |
| ルーク | 俺は!自分だけの居場所を手に入れるんだ!! |
| ルーク | そのためには、おまえが邪魔だ! |
| アッシュ | この… |
| | |
| ??? | ふざけるな! |
| | |
| ガイ | おまえの居場所はアッシュの隣じゃなかったのかよ! |
| ルーク | なっ…! |
| アッシュ | はあっ! |
| | ガキィンッ |
| ルーク | しまっ… |
| ナタリア | アッシュ!無事ですの!? |
| アッシュ | ああ、問題ない |
| ルドガー | 二人共、無事でよかった。…ルークは一緒じゃないのか? |
| ガイ | …アレクセイと戦ってたんだが警備兵に囲まれそうだからって俺達だけ先に逃がしてくれたんだ |
| ナタリア | 私やガイが捕まって人質になったらアッシュが戦いにくいからと… |
| ミュウ | ご主人様…ボクにもアッシュさんのために先に行けって…心配ですの |
| アッシュ | ふん…ルークの奴…余計な気を回しやがって |
| ルーク | ルーク、ルークって… |
| ルーク | 俺の事は消そうとしたくせにあいつとは手を取り合って仲良しごっこか? |
| ナタリア | ルーク… |
| ルーク | …なあ、ナタリア。どうして大人しくしててくれないんだ |
| ルーク | 先生から言われてるんだ。逃がすぐらいなら…口を封じなくちゃいけないって |
| ナタリア | 本気ですの…? |
| ルーク | 俺はやらなきゃならねぇんだ! |
| ルーク | 邪魔をする奴は誰だろうと斬る!相手が誰であろうと関係ねぇ! |
| | |
| ??? | いい心掛けだ、ルーク |
| アッシュ | …!おまえは… |
| | |
| アレクセイ | 私も加勢しよう |
| scene1 | 交わる剣 |
| ルーク | 先生! |
| ガイ | 騎士団長がここにいるって事は…ルークは…!? |
| アレクセイ | 今頃、私の部下が捕えているだろうな |
| ミュウ | そんな…!ご主人様を助けるですの! |
| ルドガー | ミュウ!アッシュ、俺もルークのところへ行く。ここは任せていいか |
| アッシュ | ああ、こっちは気にするな |
| ルドガー | すまない! |
| ナタリア | もう一人のルークを捕らえて手駒としての利用を企むなど、どこまでも下劣ですわね |
| アレクセイ | キムラスカの発展のためになるならどのような汚名も我が誉れです |
| アッシュ | キムラスカの発展だと?笑わせるな |
| アッシュ | シルヴァラントとの親交を妨げ、王家を転覆させようとする者が国の未来を語るんじゃねぇ! |
| アレクセイ | 解釈の相違だな。王家など、ただの象徴にすぎん。国民が納得さえすればルークで十分だ |
| アレクセイ | シルヴァラントとの親交も国の発展を想えば必要のない事 |
| アレクセイ | 対等な和睦を結ぶより実力で支配してしまった方が富国強兵に繋がる事は明白だ |
| アッシュ | だが多くの血が流れる事になる |
| アレクセイ | そう。おまえや王は手を汚す事を嫌って親睦策を進めて来た |
| アレクセイ | だが私は、国のために手を汚す事を厭わない。大義のためなら罪を背負おう |
| ガイ | こんな事に大義なんてあるかよ! |
| アレクセイ | 綺麗事の中にしか大義を見出せぬ者にはわからんだろうな |
| ナタリア | 詭弁ですわ。そんな事に民がついて来ると思っていますの? |
| アレクセイ | 私について来る必要はない。私が豊かにした国を治めるのはここにいるルークだ |
| ルーク | …わかっただろ、アッシュ。先生は俺を王として認めてくれてるんだ |
| ルーク | 俺は先生や民の期待に応えられる立派な王になってやる。おまえなんていなくてもな! |
| アッシュ | 何でわからねぇんだ、ルーク |
| アッシュ | おまえを必要としてるのはアレクセイだけじゃない |
| アッシュ | 俺が王になった時、おまえが一緒に国を背負ってくれるんじゃなかったのか |
| ルーク | 今さら何言ってんだ。親善大使として供にガイを連れて出たのだって、俺は不要だと知らしめるためだろ |
| アッシュ | …そう吹き込まれていたのか |
| ガイ | 誤解だ、ルーク!あの時、アッシュはおまえを連れて出ようとしてたんだぞ |
| ルーク | 嘘をつくな! |
| ナタリア | その話は私も聞いています。本当ですわよ! |
| アレクセイ | …ルーク。私か奴ら、どちらの言葉を信じるかはおまえの自由だ |
| アレクセイ | だが、何が真実であれ今、この状況でやるべき事は変わらないのではないか? |
| ルーク | …そうだ。もう、過去の約束なんて関係ねぇ |
| | |
| ルーク | 話は終わりだ!全員まとめて殺してやる! |
| | |
| | チャキ |
| アッシュ | ちっ…結局こうなるのか…! |
| | |
| ルーク | はぁ…はぁ…あいつの部下は何人いやがんだ。いくらぶっ飛ばしても減らねぇ |
| ルーク | いい加減、そこを通しやがれ! |
| 警備兵9 | アレクセイ様の命だ!行かせるわけにはいかん! |
| 警備兵10 | この数に囲まれてるんだ、おまえこそ観念しろ! |
| ルーク | 何人に囲まれようと、全員ぶっ飛ばしてやるだけだ! |
| 警備兵11 | 奴は疲れてきてる。仕上げだ、全員一斉に── |
| | |
| | ドカッ |
| 警備兵11 | ぐあっ… |
| | |
| | ドサッ |
| 警備兵10 | 何だ、おまえは! |
| | |
| ルドガー | ルーク、無事か! |
| ミュウ | ご主人様!助けに来たですの! |
| ルーク | おまえら!へっ、俺は一人でも平気だったのによ |
| ルーク | …って言いたいとこだけど、正直、助かったぜ。ありがとな |
| 警備兵9 | 報告にあった侵入者か! |
| 警備兵12 | 一人増えたところで同じだ!全員捕えるぞ! |
| ルーク | 一人と一匹だ!それに同じなんてとんでもねぇ |
| ルーク | これで百人力だぜ! |
| ルドガー | ここを切り抜けてみんなのところに戻ろう! |
| ルーク | ああ! |
| | |
| アッシュ | はぁっ! |
| | ガキィン! |
| ルーク | ぐっ! |
| ナタリア | 今ですわ…!はっ! |
| | ヒュンヒュン |
| | キン、キン |
| ナタリア | そんな…二本とも…! |
| ガイ | これならどうだ!秋沙雨! |
| アレクセイ | 遅い |
| | キンキキキキキキン…! |
| ガイ | 全部受け止めるって…化け物かよ |
| ルーク | 隙だらけだな!空破絶風撃! |
| | バシュッ |
| ガイ | くっ、かすった…! |
| ナタリア | やはり、手ごわいですわね |
| ガイ | ああ。息が合ってる。師弟だけあってお互いの戦い方を熟知してるな |
| アッシュ | それだけじゃない。ルークは大胆な攻撃をするようになった |
| アッシュ | アレクセイに背中を預けられるという信頼があってこそだ… |
| ルーク | しゃべってる暇があんのか。俺と先生の連携に、おまえらが勝てるはずねぇんだよ! |
| | ガキン! |
| アッシュ | …ちっ、てめぇ── |
| | |
| ??? | 連携が何だってんだ!だりゃぁっ! |
| ルーク | なっ…! |
| | |
| | ガキィン! |
| ルーク | おまえは…! |
| | |
| ルドガー | みんな、大丈夫か!? |
| ガイ | ルーク、ルドガー!ミュウも!無事だったんだな! |
| ミュウ | はいですの! |
| アレクセイ | …使えん部下共だ。足止めすら出来ないとは |
| ルーク | 何人増えようと同じだ、邪魔する奴は斬る! |
| ルーク | 同じ顔はいらねぇ…俺は、俺だけで十分だ! |
| アレクセイ | そうだ。もう一人のルークには利用価値があるが、元より計画にはいない存在… |
| アレクセイ | 殺したところでどうにでもなる |
| ルーク | 好き勝手言いやがって。こっちだって、おまえらまとめてぶっ飛ばさねぇと気が済まねぇんだ! |
| アッシュ | ここで方を付けるぞ! |
| アレクセイ | 来るがいい。この戦いが、私の理想の礎となるのだ! |
| scene2 | 交わる剣 |
| ルーク | ぐっ…俺は…まだ… |
| | |
| アッシュ | もういいだろう、ルーク。いい加減、俺と…そして自分自身と向き合う覚悟を決めろ |
| ルーク | 俺は…何も間違ってねぇ…!苦しくて辛くて…足掻いて…やっと見つけた道なんだ! |
| ルーク | 間違ってたって言うんなら… |
| ルーク | じゃあ俺はどうすればよかったんだ!教えてくれよ!! |
| アッシュ | 情けねぇ。持ち主が腑抜けじゃ、誓いの剣が泣いてるな |
| ルーク | 剣が…誓いが何だってんだ!こんなもの…! |
| アッシュ | この剣に恥じるような事してんじゃねぇ…この屑が!! |
| | バキィッ |
| ルーク | うぅっ…! |
| | |
| ルーク | なぁ、アッシュ…王様になれなかった方は大人になったらどうなるんだろうな? |
| アッシュ | わかんねぇが、好きなもんになりゃいいだろ |
| ルーク | だったら俺は…王様を支える騎士になりてぇな。アッシュは? |
| アッシュ | …俺も似たようなもんだ |
| アッシュ | なぁ、どっちが王になっても、俺達は二人で国を背負おう |
| ルーク | 一緒に王様をやるって事か? |
| アッシュ | 王は一人だ。だが、王の誇りは二人で持てる |
| アッシュ | 二人、肩を並べて対等の関係で国のために生きるんだ |
| ルーク | へへ、いいな!じゃあ、この剣に誓おうぜ!せっかくお揃いなんだし |
| アッシュ | 伯父上からいただいた双子の剣か。ああ、ちょうどいい |
| ルーク | 決まりだな。じゃあ、剣先を合わせて… |
| アッシュ | …こうか |
| | チャキン |
| ルーク | 俺は誓う。いかなる時も王者の誇りを持ち力を合わせて国を背負う |
| アッシュ | 俺も誓おう。どれだけ時が経とうと、俺達は肩を並べ、国を守る |
| | |
| ルーク | …ごめん…アッシュ… |
| | |
| | ドサッ |
| アッシュ | …! |
| | |
| アッシュ | …何だ、今のは… |
| ルドガー | 負の因子が壊れたんだ…! |
| ルーク | じゃ、これで元に戻るのか!? |
| ルドガー | そのはずだけど、あとは目が覚めるのを待つしかない |
| アッシュ | なら、他の事を片付けるぞ |
| ガイ | そうだな。他の奴らが起きる前に縛っておかないと |
| ナタリア | それなら地下室の縄を使うといいですわ |
| ルドガー | それじゃあ、手分けして拘束していこう |
| | 兄として |
| ルーク | …う…ここは…? |
| ルーク | ん…? |
| | ギシッ |
| ルーク | 俺、縛られて… |
| ルーク | …ああ、そうか俺…何て事を… |
| アッシュ | …気分はどうだ、ルーク |
| ルーク | アッシュ…。何だか長い事、悪い夢を見てたみたいだ |
| ルーク | …俺、またおまえに負けたんだな |
| アッシュ | …ああ |
| ルーク | 話したい事がたくさんあるんだ…でも…何を話せばいいのか…わからない |
| ルーク | ただ…謝っても済まない事をたくさんしちまったのはわかってる |
| アッシュ | …… |
| アッシュ | …何から話すべきだろうな |
| アッシュ | 我ながら情けない事だ。おまえと向き合うと決めておきながらいざとなると言葉が出ない |
| | |
| ルーク | …俺は…こんな言葉で済むとは思ってねぇけど… |
| | |
| ルーク | 悪かった、アッシュ。全部…俺が弱かったせいだ |
| ルーク | 少し考えれば、先生の言ってた事がおかしいって…わかったはずなんだ |
| アッシュ | …気付いていたのか |
| ルーク | …ああ。でも、何も考えられなかった。おまえへの憎しみで頭がいっぱいで… |
| アッシュ | ………… |
| アッシュ | …わかっているようだが |
| アッシュ | 俺は、おまえを殺そうなんてしていない。不要だと思った事もない |
| アッシュ | おまえと二人、肩を並べて国を支えていくと誓ったあの日から俺の気持ちは変わっちゃいない |
| ルーク | そんなの、俺だって…!なのに、どうしてこんな事になっちまったんだろうな… |
| アッシュ | …その憎しみの原因は、負の因子ってやつらしい |
| ルーク | 負の因子…? |
| アッシュ | ああ。俺も詳しくは知らないが性格が変わっちまうものらしい |
| アッシュ | そいつを壊したから今こうして話が出来ているんだろう |
| ルーク | ──『負の因子は道標』 |
| アッシュ | …何だ、それは |
| ルーク | ずっと前に、変な男と会ってそう言われたんだ |
| ルーク | 意味わかんなかったけど、何でか忘れられなくて |
| アッシュ | …ルドガーなら何か知っているかもしれないな |
| ルーク | …でも、関係ねぇんだ。負の因子ってやつのせいで憎しみが芽生えたんだとしても… |
| ルーク | その憎しみで行動に移しちまったのは、俺だ |
| ルーク | …アッシュ。俺の首をシルヴァラントに差し出してくれ |
| アッシュ | …… |
| ルーク | おまえは親善大使としてシルヴァラントとの親交を取り戻す必要がある |
| ルーク | おまえのために出来る事はもうこれしか残ってない |
| アッシュ | …それでいいのか |
| ルーク | ああ |
| アッシュ | …… |
| アッシュ | …わかった |
| アッシュ | ルーク、ひとつ言っておく |
| アッシュ | おまえは大罪人だ。国葬もされないだろう |
| アッシュ | 国民から、世界中から、罵倒されるかも知れん |
| アッシュ | だが…俺にとっては… |
| アッシュ | …自慢の弟だ |
| ルーク | …ありがとう、アッシュ。それが聞けただけで、満足だ |
| | |
| | ガチャ |
| | |
| ガイ | 話は終わったのか? |
| アッシュ | …ああ |
| ナタリア | ルークの事…これからどうするんですの? |
| アッシュ | …まず国に連れて帰り、伯父上に全てを報告する |
| アッシュ | おそらく、シルヴァラントに引き渡すという事になるだろう。本人もそれを希望している |
| ナタリア | そんな… |
| ガイ | やっぱり…そうなるよな… |
| アッシュ | ああ… |
| ルーク | なぁそれって、シルヴァラントの王に斬りかかった犯人が裁きを受ければいいって事だろ? |
| アッシュ | その通りだが…何がいいたい? |
| ルーク | 名案を思いついたんだよ。シルヴァラントも納得出来てこっちの俺も助かる方法だ |
| アッシュ | …何? |
| ガイ | そんな方法があるのか…!? |
| ルーク | ああ!超名案、聞いて驚くなよ!それは… |
| ルーク | 俺が犯人になる事だ! |
| | 紡ぐ未来 |
| インゴベルト六世 | …そのような事件が起こっておったとはな |
| アッシュ | 俺も想定外でした |
| インゴベルト六世 | うむ…。しかし、偽者のルークとは敵も考えたものよ |
| アッシュ | 偽の親善大使として俺を失脚させ同時にルークをも陥れる…実に巧妙な計画でした |
| インゴベルト六世 | しかしルークはそれを暴き、おまえと共に犯人を捕らえた |
| インゴベルト六世 | このところのあやつには目に余る物があったが…見直さねばならんようだな |
| アッシュ | はい。それについては本人も反省しこれからを見ていてほしいと申しております |
| インゴベルト六世 | わかった。期待しておると伝えよ |
| アッシュ | はい |
| | |
| ガイ | さすがアッシュ。王様相手に嘘ついて汗一つかいてないとはな |
| ナタリア | まあ、ガイ。それではまるでアッシュが大嘘つきみたいですわ |
| アッシュ | …大嘘つきには違いない |
| ルーク | でも…本当にこれでよかったのか…?あいつらは牢に入れられたんだろ? |
| アッシュ | 問題ないだろう。本人がいいと言ったんだからな |
| | |
| ルーク | 超名案、聞いて驚くなよ!それは… |
| ルーク | 俺が犯人になる事だ! |
| ガイ | おまえが犯人に…?身代わりにでもなるってのか? |
| ルーク | まぁ、そんなとこだな |
| アッシュ | わかって言ってるのか?処刑される事になるんだぞ |
| ルーク | 俺は殺されねぇよ。ただ、この世界から消えてなくなるだけだ |
| アッシュ | この世界から…消える? |
| アッシュ | …そうか。別の世界から来たおまえ達なら元の世界に戻れば済むという事か |
| ルーク | そういう事。これにはルドガーの力が必要なんだけどな |
| ルドガー | なるほどな |
| ガイ | そんな簡単に戻れるものなのか? |
| ルドガー | 元の世界に戻る時空の裂け目は俺とアッシュが接触すれば出現するはずなんだ |
| アッシュ | 俺が? |
| ルドガー | ああ。ルークの負の因子が壊れた時、アッシュに何か宿らなかったか? |
| アッシュ | …そういえば、あったな。あれは何だ? |
| ルドガー | ごめん…詳しくはわかってないんだ。ただ…ある人は、あれの事を道標と呼んでいた |
| ルドガー | そしてこれまでは、あれが宿った人と俺が触れる事で元の世界に戻れていたんだ |
| アッシュ | …つまり、俺とおまえが揃えばこの世界から離脱出来るんだな |
| ルドガー | ああ |
| | |
| アッシュ | …ルドガーの言う通り、あいつに触れたら、時空の裂け目とやらが出現した |
| アッシュ | 裂け目を観測して出現の法則性もわかったしな |
| アッシュ | 後はその時空の裂け目を使ってあいつらを上手く逃がしてやれば今回の件は終わりだ |
| ルーク | …いいのかな。先生は牢に入ってるのに俺だけ無罪放免なんて… |
| ガイ | 騎士団長──じゃなかった。元騎士団長は、さすがに野放しには出来ないからな |
| アッシュ | だが、偽ルークに騙されていた事になっている。本来の罪よりも、よほど軽い |
| アッシュ | もしおまえが気が咎めるからと真実を話せば、二人共、処刑という事もあり得る |
| ルーク | それはそうだけど…アッシュらしくないな |
| アッシュ | 「自分と向き合え」…そう言われたからな |
| アッシュ | それに、親善大使としても、この嘘は悪くないと思っている |
| アッシュ | シルヴァラントや諸外国から見たキムラスカの印象が変わってくるからな |
| ナタリア | 確かに…騎士団長と王位継承候補者が結託したとなると、国の威信に関わりますわ |
| ナタリア | 国内に不穏分子を抱えているとなればまた何か事件を起こす可能性を孕んでいるように感じますし… |
| ナタリア | その点、偽ルークという一人の悪党が騎士団長を騙して起こした事件なら犯人さえ捕まれば解決ですわね |
| アッシュ | そういう事だ。この方が各国と良好な関係を築きやすい |
| ガイ | 問題は、現実は不穏分子を抱えたままだって事だけどな。強硬派はまだいるだろ? |
| アッシュ | その事については考えがある。ついて来てくれ |
| ガイ | どこへ行くんだ? |
| アッシュ | 地下牢だ |
| | |
| アッシュ | …気分はどうだ、アレクセイ |
| アレクセイ | ……。このようなところにお揃いで…王女殿下までお越しとは光栄ですな |
| ナタリア | 皮肉を言う元気がおありのようで安心しましたわ |
| ガイ | まぁ落ち込んでるとも思ってなかったけどな |
| ルーク | 先生…俺… |
| アレクセイ | 私はもう先生ではない。ただの罪人だ |
| ルーク | ………… |
| アレクセイ | …それで、何をしに来た。事実を随分と捻じ曲げているようだが |
| アッシュ | ああ。察しのいいおまえの事だ、どういう話になっているかはわかっているだろう |
| アレクセイ | 全ての罪をあのもう一人のルークに背負わせるのだろう |
| アレクセイ | 私がおまえにやろうとしていた計画と同じだ |
| アッシュ | 口裏を合わせろ。そうすればおまえは、ただの騙されていた被害者だ |
| アッシュ | 情状酌量の余地ありとなれば、騎士団長の肩書きを失うだけで済む |
| アレクセイ | …甘いな。おまえも |
| アッシュ | …… |
| アレクセイ | 二人共、非情となれ。これは強硬派、穏健派などという話ではない |
| アレクセイ | 真に国を思うなら、情に流されず大局的に物事を判断するべきなのだ |
| アッシュ | アレクセイ。おまえが国を想う気持ちは本物のようだな |
| アレクセイ | 当然だ。大義もなくあのような事はしない |
| アッシュ | わかった。その大義を信じよう。アレクセイ、おまえの力を借りたい |
| アレクセイ | 何…? |
| アッシュ | 強硬派をただ排除するのではなく意見の一つとして耳を傾けるべきだと俺達は思っている |
| アッシュ | だが、なかなか意見が通らないからと今回のような事件を繰り返されても困る |
| ルーク | 先生が連れて来た傭兵の中には戦争さえ出来ればいいって奴もいました |
| ルーク | もしそんな奴らが強硬派の実権を握ればこの国は大変な事になりかねない… |
| ルーク | だから先生はここから釈放されたら強硬派をまとめあげて暴走しないようにしてほしいんです |
| アレクセイ | …なるほど。今度は強硬派で獅子身中の虫になれと言うわけか |
| アッシュ | 裏切れと言っているわけではない。それに断っても構わん。これは命令ではなく依頼だ |
| アレクセイ | …いいだろう |
| アレクセイ | アッシュ、ルーク。おまえ達が作り上げていく国、しかとこの目で見させてもらうぞ |
| ガイ | …なるほど。まさか不穏分子を不穏でなくならせるとはな |
| ナタリア | 一筋縄ではいかないでしょうけどアッシュとルークならいい国にしてくれそうですわね |
| アッシュ | 他人事だな。その国の王妃になるのはおまえなんだぞ |
| ナタリア | わかっています。私、今日ほどその事を誇らしく思った事はありませんもの |
| アッシュ | …そうか |
| ガイ | あとは、ルーク達を元の世界に帰せば、万事解決だな |
| アッシュ | その件も、もう動いている。ゼロスが協力してくれるそうだ |
| | |
| ルーク | 今日で何日目だ?いつまでここに閉じ込めとくつもりなんだよ |
| ルドガー | いろいろと根回しも必要だろうから時間がかかるんだろうな |
| ミュウ | ボク達、このまま処刑されたりはしないですの…? |
| ルーク | 縁起でもねぇ事言うんじゃねぇ。さすがにその心配はねぇよ |
| | コツコツコツ… |
| ミュウ | 誰か来ましたの… |
| 看守 | 迎えが来た。出ろ |
| ルーク | 迎え…? |
| | |
| ゼロス | よう。おまえが、もう一人のルークか |
| ルドガー | なっ…! |
| ルーク | ゼロス!? |
| ゼロス | 俺さまの事、知ってんのか?いや、アッシュの話からすると別世界の俺さまと知り合い…か |
| ルーク | 別世界…って、俺達の事、聞いてるのか? |
| ゼロス | ああ。全部聞いてるぜ。まぁ、ここだと他の兵士もいるからあんまり話してらんねぇけど |
| ルドガー | さっき迎えが来たって言われたけどどういう事なんだ? |
| ゼロス | 話は簡単だ。おまえらは親善大使を騙ってシルヴァラントに来た犯人だよな? |
| ルーク | あ、ああ… |
| ゼロス | シルヴァラントでは、王に斬りかかった大罪人だ |
| ゼロス | だから、おまえらの身柄はシルヴァラントで預かる事になった |
| ミュウ | みゅ…!それじゃ、ボク達は… |
| ゼロス | これからシルヴァラントに護送する。その間、絶対に逃げないよう俺さまとアッシュ、ルークで見張る |
| ゼロス | 絶対に逃げんなよ!絶対だぞ! |
| ミュウ | ボク達、もう助からないですの…?シルヴァラントで処刑ですの!? |
| ルーク | 何言ってんだ、ミュウ。今、誰が護送するって言ったか聞いてなかったのか? |
| ミュウ | みゅ…? |
| ルドガー | …これって…そういう事か |
| ルーク | ああ。待ちわびたぜ、まったくよ |
| | |
| キムラスカ騎士1 | あの、アッシュ様。どうしてこのような山を通るのですか? |
| シルヴァラント兵1 | メルトキオに向かうなら街道を通った方が安全で早いですよ |
| アッシュ | 出発の直前に情報が入った |
| アッシュ | この罪人共を逃がそうとする勢力が街道で待ち伏せているとな |
| ゼロス | で、俺とアッシュで話し合って急遽この山を通る事にしたってわけだ |
| ルーク | まぁ、街道を通っていてもこのキムラスカとシルヴァラントの連合部隊なら、負けないだろうけどな |
| キムラスカ騎士1 | なるほど、そうでしたか。得心いたしました |
| ゼロス | 逃げられなくて残念だったな。大人しくシルヴァラントで刑を受けてもらうぜ |
| ルーク | ちくしょう。全部バレてやがったのかー |
| アッシュ | ………… |
| | |
| ルドガー | こうなったら、一か八かだ。ミュウ! |
| ミュウ | はいですの! |
| | ボォォォッ! |
| | |
| シルヴァラント兵2 | こいつ、炎を! |
| キムラスカ騎士2 | まずい、縄が焼き切られたぞ! |
| ルーク | あちち…! |
| ルドガー | 行くぞ! |
| ルーク | おう! |
| ルーク | 待て! |
| アッシュ | 奴らは俺達で追う!ゼロス、包囲網を張る指揮を頼む! |
| ゼロス | わかった! |
| ゼロス | おまえらは無暗に追うな!奴らの退路を塞ぎながら徐々に追い詰めるぞ! |
| シルヴァラント兵1 | はっ! |
| キムラスカ騎士1 | 承知しました |
| | |
| ルーク | はぁ、はぁ…この辺でいいか? |
| ルドガー | ああ。ちょうどよさそうだ |
| アッシュ | ルドガー、手を |
| ルドガー | ああ |
| | |
| | ヒュンッ |
| | |
| アッシュ | 練習通り、崖の下に開いたな |
| ルーク | 後は、兵士達が見てる前で俺達が崖から飛び降りればいいんだな |
| ルーク | ちゃんと裂け目に入ってくれよ。もし失敗したら… |
| ルーク | 怖ぇ事言うなよ… |
| ミュウ | 大丈夫ですの。もし少しずれても、ボクが飛んで、ちゃんと裂け目に入るようにしますの |
| アッシュ | …ルーク、ルドガー、ミュウ。おまえ達には世話になった |
| ルーク | 俺も助けてくれて…何て感謝すればいいんだろうな… |
| ルーク | へへっ、別にいいって |
| ルドガー | ああ。二人でいい国を作って行ってくれ |
| アッシュ | 勿論だ |
| キムラスカ騎士の声 | いたぞ! |
| ルーク | …来たみたいだな |
| ルドガー | よし、行こう |
| ルーク | ああ |
| シルヴァラント兵1 | もう逃げ場はないぞ! |
| キムラスカ騎士1 | これだけの包囲網に後ろは崖…観念するんだな |
| ルーク | 捕まるぐらいなら、死んだ方がマシだ! |
| ルーク | とりゃあっ! |
| キムラスカ騎士2 | なっ…! |
| ルドガー | はっ! |
| ミュウ | さよならですの! |
| | |
| | ヒュンッ |
| | |
| シルヴァラント兵2 | あいつら、飛び降りやがった…! |
| アッシュ | ……行っちまったな |
| ルーク | ああ |
| ゼロス | ふぅ、やっと追いついたぜ |
| ゼロス | ん?どうなったんだ? |
| シルヴァラント兵1 | それが…奴ら、崖から飛び降りて… |
| ゼロス | なるほど。ここから飛び降りたらまぁ助からねぇわな |
| ゼロス | 奴ら、途中で引っ掛かったり飛んで逃げたりしてねぇよな? |
| アッシュ | ああ。落ちて行って、そのままだ。もう姿も見えない |
| ゼロス | なるほど。じゃあ、この件は被疑者死亡って事で報告しておくぜ |
| アッシュ | ああ。すまないな、引き渡せなくて |
| ゼロス | こっちの兵士もいたんだ。問題にはならねぇよ |
| アッシュ | ルーク、このままシルヴァラントに謝罪と説明に向かうぞ |
| アッシュ | キムラスカの親善大使としてついて来るだろう? |
| ルーク | …ああ! |
| | 予言と予感 |
| ルーク | やっと帰って来たぜー! |
| ミュウ | ただいまですのー |
| ルドガー | ふう。今回もどうにかなったな |
| ルドガー | …ん? |
| エル | ルドガー!もう戻ってきたの!? |
| ルドガー | エル…!…という事は、こっちではそんなに時間が経ってないのか? |
| エル | うん。これからどうしようってティアと話してたところだよ |
| ティア | ええ、5分も経ってないわ。まさか…もう解決してきたの? |
| ルドガー | ああ。分史世界と正史世界では時間の流れが違うから…、向こうでは何日も経っていたんだよ |
| ルーク | なぁ、ティア。俺の事、わかるか? |
| ティア | ええ、大丈夫。ちゃんとルークの事がわかるわ |
| ルーク | よかった!異変もばっちり解決したんだな!苦労した甲斐があったぜ |
| ティア | 随分と大冒険だったようね |
| ルーク | ああ。聞いてくれよ。あっちの世界ではキムラスカの王位継承者が二人いて── |
| ルーク | ──って、そうだ。伯父上の方はどうなってんだ? |
| ルーク | 話してる途中で俺の事が認識出来なくなっちまって俺、逃げるように出て来たんだけど… |
| ティア | わからないわ。すぐに行った方がいいわね |
| ルーク | ああ、行ってくる! |
| エル | ルドガー、これからどうする?異変の調査は、終わったんでしょ? |
| ルドガー | ああ。宿に戻って、今回の事を整理してから王様に報告しに行こう |
| ルドガー | 少し気になる事もあるしな |
| エル | 何かあったの? |
| ルドガー | 後で話すよ |
| エル | うん |
| ルドガー | (…『負の因子は道標』… 分史のルークが謎の男から 言われた言葉らしいが…) |
| ルドガー | (分史のキールが言ってた男と 同一人物か…? それに、道標って…一体…) |
| | |
| インゴベルト六世 | ルーク、どこへ行っておったのだ? |
| ルーク | すみません、ちょっと野暮用で…それで、お話とは? |
| インゴベルト六世 | うむ…ずっと隠しておったのだが、昨今の成長したおまえを見ているとそろそろ話してもよいと思ってな |
| インゴベルト六世 | 実は…お主には、双子の兄がいる |
| ルーク | なっ…! |
| インゴベルト六世 | 名をアッシュと言ってな… |
| ルーク | (アッシュ…!? って事は、こっちの世界でも 俺とアッシュは兄弟…!) |
| インゴベルト六世 | 事情があって身分を隠し養子に出しておったのだ |
| ルーク | 事情?何です、それは? |
| インゴベルト六世 | …天啓の儀式があるだろう。シルヴァラントの神子が歴史の記された石碑を読み解く儀式だ |
| ルーク | はい。世界が結晶に包まれた時に問題になったやつですね |
| インゴベルト六世 | うむ…かつて天啓の儀式で予言された歴史によると、双子の王位継承者は国を破滅に導くとされていた… |
| インゴベルト六世 | その予言を避けるために…な |
| インゴベルト六世 | しかし最近、どういう経緯か、自らの出自を知り、ナタリアとも知り合っているようだ |
| インゴベルト六世 | ナタリアから、バチカルに呼び戻せないかと相談を受けてな… |
| インゴベルト六世 | おまえにも関わる話ゆえ、伝える事にしたのだ |
| ルーク | なるほど…。お話はわかりました |
| ルーク | 伯父上は、アッシュを俺の兄として呼び戻すおつもりなんですか? |
| インゴベルト六世 | うむ。前向きに検討するつもりだが…何じゃ、思ったより驚いておらんな |
| ルーク | 兄貴がいるってのも悪くねぇかもって思う事があったんです |
| ルーク | 大丈夫、破滅なんてしません |
| ルーク | むしろ二人で力を合わせて国を発展させてやりますよ! |
| インゴベルト六世 | そうか。それを聞いて安心した |
| インゴベルト六世 | …大人になったのう |
| ルーク | へへっ、俺だって成長しますって |
| ルーク | (分史での事がなけりゃ 取り乱してたかも しんねぇけどな…) |
| | |
| ルドガー | …よし。書き終わった |
| エル | キールへの手紙? |
| ルドガー | ああ。今回の顛末を報告するんだ |
| ルドガー | 分史世界の情報は少しでも多い方がいいってキールも言ってたしな |
| エル | そっかー。それじゃあ、メガネのおじさんの話も聞けたらよかったのにね |
| ルドガー | …?誰の事を言ってるんだ? |
| エル | ルドガー、また忘れちゃったの!?ルドガーのお兄さんだよ! |
| ルドガー | …誰の事かわからない。けど…この感じ、覚えがある… |
| ルドガー | ルークの事を認識出来なくなった時と似てる…気がする… |
| エル | じゃあ、メガネのおじさんに異変が起きてて…ルドガー、忘れちゃってるって事? |
| ルドガー | …そうかも知れない |
| | |
| ルドガー | (けど…その人の事を エルは認識出来ているみたいだ。 なら、ルークの時とは違う) |
| ルドガー | (まさか… 異変が起きているのは──) |
| | |
| ??? | …正史世界に戻って行ったな |
| ??? | これで三度目…道標は集まりつつある |
| ??? | 我々の悲願を達成するまであと少しだな、相棒… |