NameDialogue
scene1秘境の石盤
ミクリオガイ、クレス。ここから先は何があるかわからない。気を付けて進んでくれ
クレスうん。忠告ありがとう、ミクリオ。今のところは魔物の気配もないし、大丈夫だよ
ガイしかし、ずいぶんと登ったなぁ。その秘境とやらはまだ先なのか?
ミクリオああ、もう少しかかる。疲れたなら、一度休憩を…
ガイいや、俺は平気だ。ただ、お前が早く着きたいって顔してるもんだからさ
クレスあはは。確かに、街にいる時より生き生きしているみたいだね
ミクリオ…この辺りは、僕が知る限り、まだ本格的な調査がされていないんだ
ミクリオ未知の何かがあるかもしれないと思うと、つい気が急いて…ね
ガイやれやれ。ミクリオは本当にその未知ってヤツにご執心だな
ミクリオ…ん?ガイ、止まってくれ。君の足元の花を少し調べたい
ガイ何だ、お前が花を気にするなんて珍しいな
クレス僕にはただの花しか見えないけど…。これがどうかしたのかい?
ミクリオ
ミクリオこの花、図鑑で見た事がない種だ
ミクリオシロツメヤグルマソウの亜種か?いや、それにしては花弁の形が違う。という事は、やはりこれは…
ガイその花、そんなに珍しいものなのか?
ミクリオああ。これはおそらく新種だ
ミクリオこの植物を詳しく調べる事で、植物学だけではなく、薬学の進歩も望めるかもしれない
ミクリオこの発見は、ラザリス様の望む平和な世界にとって大きな意味を持つ可能性だってある
ガイなるほど…そいつはすごいな。うっかり踏み潰さなくてよかったよ
クレス本来の目的とは違うけど、ミクリオの調査が実を結びそうで僕も嬉しいよ
ミクリオ…それだけか?いつもはここでもっと、議論や推論を重ねて──
ガイいつも?俺達、議論なんてした事あったか?
ミクリオ…!
ミクリオあ…いや、何でもない……忘れてくれ
ミクリオ
ミクリオ…いつも付き合わせてしまってすまないな
クレスそんな水臭い事を言わないでくれよ。僕達は友達じゃないか
ガイクレスの言う通りだ。今さら、遠慮する必要なんてないさ
ミクリオ二人共…
ミクリオよし、もう少し先まで進んでみよう。さっきみたいな発見がまだあるかもしれない
クレスああ、行こう!
scene2秘境の石盤
クレスだいぶ奥まで進んで来たね
ガイそうだな…周囲の空気もどことなく重くなってきた気がする
ガイなあミクリオ、今回はそろそろ切り上げた方がいいんじゃないか?
ミクリオいや、もう少しだけ探させてくれ
クレス何か気になる事でもあるのかい?
ミクリオ…確証があるわけではないんだ。ただ、土が…
ガイ土?
ミクリオああ。この一帯の土は本来の山のものとは違うようなんだ
ミクリオ普通なら、局地的に地質が変わるなんて事は、まずありえない
ミクリオだが、自然物ではない何かの影響を受けたせいだという仮説を立てると、説明がつけられるようになるんだ
クレスなるほど。ミクリオは、その先を調べたいんだね
ガイ俺にはどこも同じに見えるが…
ガイま、ミクリオがまだ調べたいって言うなら、最後までとことん付き合うさ
クレスそうだね。土の調査に、つちあうよ!
クレス──なんてね
ミクリオ……
ガイえーと…じゃあ、とりあえずこの辺をもう一周してみるか
ミクリオあ、ああ…そうだな…
ミクリオとはいえ、闇雲に見て回るのは──
ミクリオ…!
ガイん?どうしたんだ?
ミクリオこれは…
ガイ泥だらけだが…石盤のように見えるな
ミクリオああ!これは間違いなく人工的に造られた物だ…!
クレスそうなのかい?僕にはただの平らな石に見えるけど…
ミクリオほら、表面にこびりついた泥を払うと…
クレスあ!何か紋様のようなものが…!
ミクリオやっぱり…。これは「人工遺物」だ
ガイ「人工遺物」…人が立ち入らないはずの秘境で、何故か見つかる謎の人工物、か
ミクリオああ。本に載っていなければ、説明出来る学者もいない
ミクリオけれどこの世界には、確実に複数の「人工遺物」が存在している
ミクリオこれもその一つだとしたら、間違いなく今日一番の大発見だ
ガイ…なあ、ミクリオ。その石盤と同じような物、この前の調査で見つけなかったか?
クレスああ、以前ミクリオが「螺旋模様の石盤」って名付けた遺物の事だね
ミクリオ…!そう言われれば、確かに似ているな…
ミクリオ見つかった場所が遠すぎるし、偶然だとは思うが…確証もなしに否定は出来ないな
ミクリオもし二つの石盤に関連性が見つかれば…人工遺物の研究が大きく進む事になるかもしれない
ミクリオ何にせよ、一度持ち帰って詳しく調べてみた方がよさそうだ
ガイまあ、何はともあれ、いいお土産が出来たな
クレスそれじゃあ、今日の調査はこの辺で終わりにしようか。遅くなると危険だしね
ミクリオああ、そうだな。そろそろ戻ろう
クレス今日はいい発見があってよかったね、ミクリオ!
ミクリオああ、二人共付き合ってくれてありがとう
ガイ…なあ、ミクリオ
ミクリオ何だい?
ガイ俺やクレスは、ただの一般市民だ
ガイレイザベールの貴族の常識とか、しきたりについてはよくわからない
ガイだから偉そうな事を言う資格なんかないってわかっちゃいるんだが…
ミクリオ…こんな風に好き勝手に遊んでいて大丈夫なのか、だろう?
ガイ…あー、まあ、そんなところだな
クレス実際どうなんだい?いろいろと話を聞いていたから、僕も気になっていたんだ
ミクリオその辺はローエンが上手くやってくれている。心配はいらない
ミクリオそもそも僕がやっている事は、決して遊びなんかじゃない
クレスうん。ミクリオが真剣に取り組んでる事はよく知っているよ
ミクリオ「人工遺物」の調査や研究は、いずれこの世界の発展に必要なものになる…
ミクリオ今はまだ成果は出ていないけれど、長い目で見れば、きっとラザリス様のお役に立つと思う
ガイそうか…。ま、問題ないならそれでいいんだ
ガイミクリオがそこまで考えて判断してるなら、大丈夫だろ
クレスそうだね。僕達はミクリオを応援するよ
ミクリオああ。これからもよろしく頼む
ガサッ
ガイおっと、話はここまでだな。そこの草むらに何かいるぞ!
ガルルルル!
ミクリオ魔物だ!行くぞ、二人共!
scene1優雅な?お茶会
ガイ思ったよりも早く、レイザベールに戻って来られたな
クレスそうだね。日が落ちるまでは、まだ時間がありそうだ
ミクリオそれにしても、外から帰ってくるといつも思うがこの街は本当に人が多いな…
ガイレイザベールは帝都に次ぐ大都市だからな
ガイ貴族も一般市民も大勢いるとなれば、にぎやかなのも無理はないさ
ミクリオん…?
貴族の男くそ!また入隊試験に落ちた!何故だ!俺の何が白き獅子に相応しくないって言うんだ~!
ガイ…ああいう輩まで「にぎやか」で済ますのは、ちょいとばかり難しいけどな
クレス荒れる気持ちもわかるけど、あまり感心は出来ないね
ガイあの家の当主は、今ごろ頭を抱えてるんだろうな
ミクリオ…貴族の間では、白き獅子の一員になる事を尊ぶ風潮があるからね
クレス白き獅子の騎士となり、ラザリス様にお仕えする事が、何より大事…だったっけ
ガイ実際その思想通り、白き獅子にはレイザベール出身の騎士がたくさんいるって話だからすごいよな
ミクリオああ。そうあるべきと努力して結果を残している点は僕も素直に尊敬する
ミクリオただ、武力ばかりを重視して、他を軽視しているところはあまり共感出来ないけど…
ガイおいおい。そんな事言ったらまずいんじゃないか?
ミクリオそうだな、気を付けるよ
ミクリオさてと。僕はこれから博物館に顔を出しに行くけど、君達はどうする?
ガイ一緒に行きたいところだけど、この後少し用事があってな
クレス僕も剣の稽古が…
ミクリオわかった。それじゃあ、今日はこれで
ガイああ、じゃあな
クレスまた何かあったら、声をかけてね
ミクリオ…さて、戻るとするか
ローエンお帰りなさいませ、ミクリオ様
ミクリオただいま、ローエン
ローエンそろそろお戻りになられる頃だと思っておりました。今日の首尾はいかがでしたか?
ミクリオ大収穫だった。新種の植物と、新しい人工遺物の回収に成功した
ローエンそれはそれは…よかったですね
ミクリオ博物館の方はどう…って、聞くまでもないか
ローエンええ。これまでにミクリオ様が収集された人工遺物の管理は、いつも通り万全です
ローエン展示物の入れ替えも、随時行っておりますよ
ローエンどれも倉庫の奥にしまい込んでおくには忍びない物ばかりですから
ミクリオ…そうやって展示物を入れ替えたところで、客が来るとは思えないけれど
ローエンいえいえ。こうして博物館を続ける事に、意義があるのですよ
ローエンミクリオ様の収集した品々は、市民の役に立っていると世間に周知する事が大事なのです
ミクリオああ、わかっている。だけど人が来ないんじゃ…
ローエンこれからでございますよ
ローエンいずれミクリオ様の調査と研究が実を結べば、この博物館にも大勢のお客様がいらっしゃいます
ローエンその日が来るまで、このローエン、老骨に鞭を打ち、ミクリオ様を支える所存にございます
ミクリオ…まあ、ここの運営については引き続きローエンに任せるよ
ローエンかしこまりました。この後はどうなさいますか?
ミクリオそうだな…まだ日も高いし、せっかくだから今日見つけた石盤の調査を…
アニスきゃわーん♪ミクリオ様、みーつけたー☆
ミクリオ…アニス
ローエンごきげんよう、アニスさん。ミクリオ様にどのようなご用でしょうか?
アニス今日は、約束をかなえてもらいに来ましたぁ
ミクリオ約束?
アニスえ~、忘れちゃったんですかぁ?アニスちゃんをお茶会に招待してくれる約束ですよ
ミクリオそんな約束をした覚えはないんだが…
アニスしましたよ!生誕祭の時に、しっかりと!
ローエン勿論、覚えておりますよ
ローエンしかし、日取りは特に決めてはいなかったかと存じますが…
アニスそうですけどぉ、いつまでも招待してくれないから直接来ちゃいました♪
アニス今日はご都合悪いですか?
ミクリオいや、特段用事はないが…。わかったよ、約束は約束だ。屋敷でお茶にしようか
アニスきゃわーん!ありがとうございますぅ
アニスそれじゃ、早速ミクリオ様のお屋敷に向かいましょう!
ミクリオ…すまないローエン。お茶会の支度を頼む
ローエンかしこまりました
scene2優雅な?お茶会
アニスはぁ…いつ見ても素敵なお庭ですねぇ
ミクリオローエンが丹精込めて整えているからな
アニスローエンさんの淹れてくれたお茶も美味しいですし、最高の気分です
ローエンほっほっほっ。お褒めに預かり、光栄です
アニスミクリオ様のお嫁さんになる人は、毎日このお庭を眺めて、美味しいお茶を飲めるんですねぇ
ミクリオそんなに庭園に興味があるなら、アニスも自宅の庭に作ったらいいんじゃないか?
アニス…もー!ミクリオ様のいじわるぅ!一般人には、こんな広い庭を持つ事すら難しいですよう!
ローエンおやおや、ミクリオ様にかかればアニスさんも形なし、ですかな?
アニス貴族ってみんなこんな感じなの?むむ、思った以上に手強い…
ミクリオ今何か言ったかい?
アニスいいえ、なーんにも!
アニスそれよりミクリオ様、知ってます?白き獅子の入隊試験に貴族がことごとく落ちてるって話
ミクリオああ、さっき街中で一人見かけたな。他にもそんなにいるのか
アニス生誕祭でのラザリス様襲撃の一件がきっかけで、白き獅子への入隊を志願する人が増えてるそうですよ
アニスで、一般市民の増員に対抗して、貴族もどんどん試験を受けようって動きになってるみたいです
ローエンとはいえ、白き獅子といえば、精鋭中の精鋭です。なかなかに狭き門と言えるでしょう
ミクリオ白き獅子は実力重視だからね。家柄だけではどうにもならないって事なんだろうな
アニス何だか他人事ですねぇ。ミクリオ様は志願しないんですか?
アニス貴族の方はみんな、白き獅子を目指すものだって聞きましたけど
アニスアニスちゃん、ミクリオ様が白き獅子の隊服を着ているところ、見てみたいです!
アニスきっとすごくお似合いでしょうねぇ。想像しただけで…うっとり♡
ミクリオ確かに、白き獅子としてラザリス様にお仕えするのも一つの道だと思う
ミクリオけれど僕は、別の方法でもラザリス様に…この世界に貢献出来ると考えている
アニスそれが、人工遺物の調査と研究、ですか?
ミクリオああ。人工遺物の謎の解明は、きっとこの世界の未来で役に立つ
ミクリオ僕は、ラザリス様の世界をよりよいものにしたいんだ
アニスむぅ…ローエンさんはそれでいいんですか?
ローエンええ、勿論。ミクリオ様のお志は尊いものですよ
ローエンミクリオ様のお考えが素晴らしいと感じたからこそ、私も全力でお仕えしているのです
ミクリオローエンには博物館や人工遺物の管理を一手に引き受けてもらって、いつも助かっている
ローエンいえいえ、これくらいミクリオ様の執事として当然の事です
アニスあ、博物館なら、アニスちゃんもよく行ってますよー
ミクリオ本当か…!?
アニスはい!いいですよね、博物館!
ミクリオそうか…!まさかアニスが人工遺物に興味があるなんて思わなかったよ
ローエンそうですねぇ。お蔭でミクリオ様とのお話も弾む事間違いありませんね
アニスふっふっふ、アニスちゃん結構勉強家なんですよ。可愛くて頭もいい!超お得物件です!
ミクリオアニス、よかったら君の感想を聞かせてくれないか?どの展示物に興味を引かれた?
アニスええと…全部、かな?どれも珍しくて、不思議だなーって
ミクリオ…じゃあ、他に何か気付いた事は?
アニスう、うーん…特には?その、掃除も行き届いていますしぃ、ごちゃごちゃしてなくて見やすいです
ミクリオ…そうか
アニスあれ?どうかしましたか?
ミクリオいや…何でもない
ミクリオ…ローエン、アニス。二人に聞きたい事がある
アニス何ですかぁ?このアニスちゃんに、何でも聞いちゃってください!
ミクリオ街の人々が、博物館や、陳列されている人工遺物をどう思っているか、教えてくれないか
アニスええと…それは…
ローエンそうですね…陳列されている人工遺物は、大半が日常的に目にするものが多いですから
ローエンただ並べているだけでは、ここでしか見られない、という特別感が少々足りないようです
ミクリオ初めて目にするような物もあるはずなんだが…
ローエンおそらく、何のために作られたかわからないため、価値が伝わりにくいのでしょう
アニスむぅ、確かに…。研究成果の資料も文字ばっかで取っ付きにくいですもんねぇ
ミクリオそうだったのか…。わかりやすくまとめたつもりだったんだが…
アニスはぅあ!あ、あれ、ミクリオ様が作ってたんですかぁ!?
ローエンおいたわしや、ミクリオ様…。夜なべして作られたというのに…
アニスえ、ええと…い、いっそ、ミクリオ様ご自身にまつわる物とかを展示したらどうでしょう!
アニスきっと、女の子のお客さんが山のようにやって来ますよ!
ミクリオ僕の事を知ってもらっても何の意味もないだろう
ミクリオ…はぁ。難しいものだな
ミクリオ人工遺物から得られた知識は、きっと世の中を発展させ、よりよい世界を作り上げるだろう
ミクリオそうする事が、ラザリス様の望む「永遠に続く平和と幸福の世界」へ繋がるはずだ
ミクリオそのためには、人工遺物の知識がもっと世の中に浸透しなければならない
ミクリオなのに、どうして誰も知ろうとしないんだ。僕だったら、毎日通い詰めてでも勉強するのに…
ローエン…それは、ミクリオ様が興味を持つ事と、他の方が興味を持つ事が異なるからですよ
ローエン大事な物や根幹にある価値観は、人によって大きく違うものです
ローエンその違いを踏まえた上で、どう工夫したらいいかを考えるのが、大切なのかもしれませんね
ミクリオそうだな…それは今後の課題にしよう
ローエンええ。ミクリオ様なら、きっと出来ますよ
アニス頑張ってくださいね!アニスちゃんも応援してますから!
ミクリオああ。ありがとう、二人共。期待に応えられるよう努力する
ローエンアニスさんはお帰りになりましたか
ミクリオああ。門のところまで送って来た
ローエン素晴らしい。女性の扱い方も板についてきましたね
ミクリオからかわないでくれ。僕はただ礼を尽くしただけだよ
ローエンほっほっ、その一見簡単な事が、とても大切なのですよ
ローエンああ、そういえば、ミクリオ様にお手紙が届いておりましたよ
ミクリオ誰からだ?
ローエンそれが、差出人の名前が書かれておらず…。申し訳ありませんが、先に内容を確認させていただきました
ローエンそれで、その内容ですが…どうも人工遺物の事について書いてあるようです
ミクリオ何だって…?
ローエン私には詳しい事はわかりませんでしたが、ミクリオ様ならあるいは…
ミクリオそうか。わかった、早速読ませてもらおう
ミクリオ……
ミクリオこれは…!
ミクリオすまないローエン、今すぐ部屋に戻らせてもらう
ローエンミクリオ様…?
scene3優雅な?お茶会
ミクリオローエンの言う通り、この手紙は人工遺物について書かれている。…それも、僕の知らない事ばかり
ミクリオ気になる事は多いが…何はともあれ、検証が必要だな
ミクリオ…まずはこの人工遺物。僕では用途がわからなかったが…
ミクリオふむ…古に作られた仕掛け箱で、特定の手順で開く事が出来る、か…
ミクリオここを、こうして…最後は…
ガチャ!
ミクリオ…!本当に開いた…!
ミクリオすごい…。手紙の主は、どうやってこんな事を…
ミクリオこうしてはいられない、他の人工遺物も検証をしなければ…!
ミクリオ…何という事だ。どの人工遺物についても、新事実ばかり…
ミクリオ手紙の主は、一体何者なんだ…
ローエン失礼いたします、ミクリオ様
ミクリオローエン?何かあったのか?
ローエン熱中出来る事があるのはよい事ですが、少しは休憩を挟まなければお身体に障りますよ
ローエンお茶をお持ちいたしましたので、一息つかれてはいかがですか?
ミクリオ…そんなに時間が経っていたのか。ありがたくいただくよ
ローエン…ずいぶんと夢中になられていたようですが、手紙の内容と何か関係が?
ミクリオああ、この手紙に書かれていた事は全て正しかった
ミクリオしかもどれも、少し見ただけでわかるようなものじゃない
ミクリオそれこそ制作に携わった者か、実際に触れて調べた者じゃないとわからない情報だ…
ミクリオ送り主の知識には本当に驚かされる
ローエンそれはそれは…
ミクリオ持ち主の僕ですら気付かなかったのに手紙の主は一体どうやってここまで詳しく知る事が出来たんだ?
ローエンさて…私には皆目見当もつきませんが…
ローエンそういえば、二枚目には壁画について書かれていたはずですが…。そちらも正しい情報だったのですか?
ミクリオ二枚目?ああ、そういえばそっちはまだ読んでいなかったな
ミクリオこれは…これから調べようと思っていた螺旋模様の石盤について書かれてある
ミクリオ……
ミクリオ…!まさか、この壁画の一部だというのか…?
ローエンほう…壁画、ですか
ミクリオ見てくれ、全体像が描かれている。手描きにしては、よく特徴を捉えているよ
ローエン特徴という事は…つまり、ミクリオ様はこの壁画に心当たりがおありと?
ミクリオああ、以前調査で訪れた秘境でその壁画と思しき物を見た事がある。その時の資料が──…あった、これだ
ローエンふむ、確かによく似ていますね
ミクリオ見た瞬間何故か強く心惹かれたから、よく覚えているよ
ミクリオ「英雄の壁画」…僕はその壁画を、そう名付けたけど
ミクリオ螺旋模様の石盤は、本当に英雄の壁画の一部なのか…?
ローエンその手紙を信じるのならば、そういう事になるのでは?
ミクリオ確かに、その通りなんだが…
ミクリオ螺旋模様の石盤を見つけたのは、英雄の壁画があるところとはかけ離れた場所だったんだ
ローエンまあ確かに、たまたま模様が壁画と似ていただけという可能性も、十分考えられるでしょう
ミクリオ模様…そうだ、紋様だ!
ミクリオこれを見てくれ、ローエン
ミクリオ今日見つけた新しい石盤と、螺旋模様の石盤は、紋様が酷似していたんだ
ローエンふむ…こうして見比べてみると、確かに似ていますね
ミクリオ…この二つの石盤を、詳しく調べてみよう
ミクリオもしも、全く別の場所で見つけた二つの石盤が、同じ様式だったと証明されたら…
ミクリオ英雄の壁画と石盤が同一の可能性も、あり得るかもしれない…
ミクリオ
ローエンいかがですか?
ミクリオ…信じられない…こんな事が、本当にあるなんて…
ミクリオ材質、加工方法、付着物の年代…描かれている紋様の形まで、どれも完全に一致している
ミクリオ元々一つの物だったとしても、おかしくない…
ローエンほう、それはそれは…
ミクリオこれは…早急に現物を確認する必要があるな
ローエン英雄の壁画を見に行かれるのですか?
ミクリオああ。情報の真偽の確認のために、実際に石盤と壁画を比較したいんだ
ミクリオそういうわけだから、明日は朝早く出発するよ
ローエン水を差すようで申し訳ありませんが、明日はレイザベール貴族連合主催の剣技会が開催される予定ですよ
ミクリオそんなもの棄権すればいい。僕にとっては、壁画と石盤の調査の方がずっと大事だからね
ローエンそれでは、連合のみなさんにはミクリオ様は参加を辞退するとお伝えしておきます
ミクリオああ、頼んだ
scene1心惹かれるもの
ガイしかし、まさかこんな短期間でもう一度お声がかかるとは思わなかったな
ミクリオ急な話ですまないな
クレス気にしないでくれ。昨日も言っただろう?何かあったら声をかけてくれって
ガイそうそう。こうしてお前達と遠出するのは楽しいしな
クレス気の置けない友達と話しながら、鍛錬も出来て、夢の手伝いも出来る。一粒で三度美味しいってところだね
クレスそう、三度美味しいサンドイッチ!なーんてね!
ガイ・ミクリオ
クレスあ、あれ、わかりにくかったかな?三度とサンドイッチをかけて…
ガイあー、うん。わかったわかった。クレスは本当にダジャレが好きだなぁ
ガイそれにしてもミクリオ、そんな差出人不明の手紙の内容を、あっさり信じて大丈夫か?
ガイ貴族のお前を狙った誘拐や物取りが目的の悪党かもしれないぜ?
ミクリオ勿論、その可能性も考えたさ
ミクリオだが、僕をおびき出したいなら、匿名で手紙など出さず、知人の名前を騙れば済む話だろう
ガイ…まあ確かに、あからさまに怪しまれるような事をする利点はないか
ミクリオああ、人工遺物についてあれだけの情報を揃える必要もないだろうしね
ミクリオそれに…手紙に書かれている事を、ただ闇雲に信じているわけでもない
ミクリオ僕なりにきちんと検証した上で、信憑性が高いと判断したからこそこうして足を運んでいるんだ
クレスミクリオがそう言うなら安心だね
クレスええと…この後はどっちだったかな…
ミクリオ確か向こうだったはずだ
クレスさすがだね。僕一人なら危うく迷子になるところだったよ
ミクリオここに生えている木に見覚えがあったんだ
ミクリオ前にこの辺りを調査した時、この木の下で休憩しただろう
ガイああ、ローエンの持たせてくれたお茶とお菓子を食べたっけ。どっちも美味しかったよなぁ
ミクリオそれなら、今日も持ってきている。後でみんなで食べよう
クレスそれは楽しみだね
ガイそれじゃ、このまま一気に、目的地まで行っちまおう
ガイそんで到着したところで、優雅にティータイム。で、どうだ?
ミクリオ異議なし
クレス僕も大賛成。それじゃあ、張り切って行こう
scene2心惹かれるもの
ミクリオ──さて、と。ティータイムはそろそろお開きにしようか
クレスうん。お茶もお菓子もとても美味しかったよ。ローエンさんにもお礼を言わなくちゃ
ミクリオああ、きっとローエンも喜ぶ
ガイしっかし…相変わらず寂しいところだな。まともに残ってるのは例の壁画くらいか
クレス確かこの壁画だったよね。ミクリオが「英雄の壁画」って名付けたのは
ミクリオああ…
ミクリオガイとクレスは、この壁画を見てどう思う?
ガイ改めて見ても、やっぱりデカいよな。あとは立派そう、ってとこか?
クレスうん。傷んでしまっているのが、もったいないかな
ミクリオ…ああ。それは僕も残念に思う
ガイミクリオはどうなんだ?
ミクリオそうだね…不思議と、惹きつけられるものを感じるかな
クレスへぇ…それも人工遺物に詳しいかどうかの違いなのかな
ミクリオいや、そうではないと思う。僕だって何もかもを熟知しているわけじゃない
ミクリオでも、そういう知識だの理屈だのを抜きにしても、この壁画には強い関心を掻きたてられるんだ
ミクリオ他にも壁画はあるのに…どうしてこの英雄の壁画だけが、こんなにも気になるんだろうか…
クレスもしかしたら、何か運命的なものを感じているのかもしれないな
ミクリオふっ。そうだったら面白いな
ミクリオさてと…
ミクリオ早速、壁画と石盤が同じ物かどうか調べよう
ミクリオ断面や模様が繋がれば、手っ取り早く証明出来るんだが…
ガイそれなら俺に任せてくれ。細かい作業は嫌いじゃないしな
ミクリオわかった。頼む、ガイ
ガイ…よし、これでどうだ?
ミクリオ…!
クレス二枚共、ぴったりはまったね
ガイ模様もちゃんと繋がったな
ミクリオ螺旋模様の石盤も、新しい石盤も、本当に英雄の壁画の一部だったのか…
ミクリオすごい…あの手紙に書かれていた事がついに証明された…
ミクリオ僕は今、歴史的な瞬間の目撃者になったのかもしれない…!
ガイおいおい、大げさだな
ガイ壁画はそれほど珍しくないし、これで完成したわけでもないだろ
クレスまだ欠けている部分もあるしね
ミクリオいや、重要なのは壁画じゃない
ミクリオ螺旋模様の石盤と新しい石盤…
ミクリオ全く別の場所で見つかったこの二つが同じ壁画の一部であるという事が、何より大事なんだ
クレス誰かが運んだんじゃないのかい?
ミクリオ確かに。それが一番あり得る可能性だな…
ミクリオもし意図的に動かされたのなら、石盤を集めて壁画を完成させる事に重大な意味があるはずだが…
クレス欠けている部分を全て埋めたら、どこかの入り口が開く…なんて事はないかな?
ガイその中にお宝どっさり…ってな。それだったら、誰かがわざと石盤を散らした理由もつくが
ミクリオそれは僕も考えたけど…残念ながら、周囲にそれらしい仕掛けは見当たらなさそうだ
ミクリオ今のところは、人為的な移動の説は難しそうだな
ミクリオだが大規模な自然現象だとしても、どのような現象が起これば、こんな事が起こるのか…
ミクリオどうすればこの謎を解明出来るんだろう。せめて何か手がかりでもあれば…
ガイ…すっかり夢中だな
クレスあはは、そうだね。ミクリオは本当にこういうのが好きなんだなぁ
ミクリオ…駄目だ。現段階ではどうしても、これ以上の事はわからない
ミクリオ仕方がない。ひとまず資料だけまとめて、後日改めて調査する事にしよう
クレスそれがいいかもしれないね
ガイそういう事なら…クレス、今の内に俺達で石盤を回収しておこう
ガイミクリオはその間に、資料を仕上げてくれ
ミクリオいや、石盤の回収は不要だ。ここに置いていく
クレスいいのかい?あんなに喜んで持ち帰っていたのに…
ミクリオ僕の目的は「骨董品集め」じゃないからね
ミクリオ石盤の調査は一通り済んでいるし、本来あるべき場所は見つかったんだ。ここに返しておくのが道理だと思う
ガイなるほど、確かにな。…石盤が移動した理由、解明出来るといいな
クレス例の手紙の主なら、何か知ってるかもしれないけど…
クレスどこの誰かもわからないんじゃ、聞く事も出来ないしね
ミクリオここまでの情報は得られたんだ、あとは自力で解明してみせるさ。そのためにも、資料をまとめないと
ガイああ、そうだな。じゃ、ミクリオがまとめ終えたら帰るとするか
クレスそうだね
scene1ミクリオの夢
ミクリオ…というわけで、手紙に書いてあった壁画の件は本当だったようだ
ローエン左様でございましたか。どうりで先ほどから、ミクリオ様が嬉しそうだと思いました
ミクリオまあね。人工遺物の研究が大きく進みそうなんだ、嬉しくもなるさ
ローエンほっほっ、ミクリオ様の夢の実現に向かって大前進、といったところですかな
ミクリオああ、これからはより一層研究に力を入れて行こうと思う
ローエン連日で遠出をされてお疲れでしょう。すぐに用意をいたしますので、今日は早めにお休みになられては?
ミクリオそうだな。そうさせてもらおう
???待ってください
ミクリオ…!君は…
???お疲れのところ申し訳ありませんが、休むのはもう少し後にしていただけませんか
ミクリオエレノア…
???ミクリオ殿、ローエン。主共々、急な訪問、失礼する
ローエンおやおや、クラトスさんもご一緒とは
ミクリオどうしたんだ?何の連絡もなしに突然来るなんて
エレノア…ミクリオ。どうして今日の剣技会に出場しなかったのですか
エレノアレイザベールで暮らす私達貴族にとって、剣技会がどれほど大切か…
エレノアそれがわからないあなたではないでしょう
ミクリオ
エレノア白き獅子や神兵には、剣技会で優秀な成績を収めた人が多く在籍しています
エレノアその誇りを守り続けるために、昨今は剣技会の重要性がますます高まっているというのに──
エレノア顔も出さず棄権だなんて、先人達への冒涜です!
ミクリオけれど、あの剣技会はあくまでも自由参加だったはずだ
エレノア競技に参加しないのは自由ですが、貴族の位を持つ者の責任として、顔くらい出すのが普通でしょう
エレノア他の貴族達と定期的に顔を合わせ、親睦を深めるのも、私達の大切な仕事の内です
ミクリオそういうのは得意じゃないんだ
ローエン本日の剣技会は、そもそも参加者が少なかったために中止になったと聞いておりますが
エレノアその中止になった理由こそが、問題なんです
エレノア帝都で咎人の逃走事件が起こったのはあなたもご存知でしょう。参加者が少なかったのはそのせいです
エレノア白き獅子や神兵として勤める腕自慢が事件解決に向けて任務に忙殺されていますから…
エレノアそれに、帝都の情勢が不穏な中、剣技会を開催するのは不謹慎だという意見も多く…
ミクリオまあ、妥当な意見だな
エレノア何を他人事のように…あなたにも関係がある話なのですよ
ミクリオ僕に?
エレノア任務に追われるか、世情を慮って出席を見合わせるかという人がほとんどだった中──
エレノア己の趣味を優先して、大会への参加を拒否した者が、たった一人だけいたのです
ミクリオ…なるほど、そこで僕の名前が出てくるわけだ
エレノアええ。そしてその事について、あなた以外の貴族達の間で議論が交わされました
エレノア協議の結果、レイザベール貴族の総意として、あなたに勧告を出す事になったんです
エレノア勿論、ミクリオの趣味に理解を示す者も少なからずいましたが大多数の意見としては…
ミクリオ次の剣技会には、必ず参加しろって?
エレノア剣技会だけではありません。白き獅子に志願し、ラザリス様に貢献すべし、と
ミクリオ僕の意志はお構いなしか…
ミクリオそれで、幼馴染である君が、僕の首に鈴をつける役目を押し付けられた、と?
エレノア…っ!いえ、私は自分の意志であなたに進言をしに来ました
エレノア他の貴族の方々よりも、私の言葉の方があなたにちゃんと届くと思いましたので
ミクリオ…そうか。君は相変わらず真面目だね
エレノアミクリオのやっている事に全く意味がないとは、私も思ってはいません
エレノア集めた人工遺物を博物館に収蔵し、一般に公開する事に、学術的意義があるのも確かでしょう
エレノアあなたなりに、街の人々やラザリス様の役に立とうとしている事も知っています
ミクリオ
エレノアですが、物事には優先順位というものがあるのではないでしょうか
エレノア今回、こうして貴族間の総意がまとまったのを機に、あなたには考えを改めてほしいんです
エレノアラザリス様の事を本当に大切に思うなら、道楽はやめ、白き獅子に志願するべきです
エレノアそれが貴族の…力ある者としての正しい世界への尽くし方というものではないでしょうか
ミクリオエレノア。君の言う事は理解出来るけど、僕は道楽でやってるわけじゃない
ミクリオ未知の事を調べて行く事が、世界をよりよくするためには必要だと思っている
エレノアですが、そのようないつ実るかもわからない事に時間を費やすのは…
ミクリオ…どうやら、話は平行線のようだね
ミクリオすまないが、今日はもう帰ってくれ。このところ連日遠出しているせいで、僕も疲れているんだ
エレノア…わかりました。明日、もう一度伺います
エレノアクラトス、帰りましょう
クラトス…ああ、わかった
エレノアそれでは、失礼します
ミクリオ…まさか、僕の活動がこんなに大きく問題視されるなんてね
ローエン少々厄介な事になりましたね…。どうなさいますか、ミクリオ様
ミクリオどうもこうも、僕のやる事は何も変わらない
ミクリオたとえ誰に何を言われようと、僕は、僕が正しいと思う道を進むだけだ
ミクリオこれもラザリス様のお力になる事だと信じているからね
ローエンほっほっほ。さすがミクリオ様。どうやら余計な心配だったようですね
ミクリオそうだ、ローエンに頼みがある
ミクリオ例の手紙の差出人を、捜し出してもらえないか
ミクリオ人工遺物の使用法を熟知し、石盤と壁画の関連性を言い当ててみせた…
ミクリオあれだけの知識を持っている人に、ぜひ会ってみたい。いくつか聞きたい事もあるしね
ローエンかしこまりました。世界の果てまででも捜しに行って必ず見つけてご覧に見せましょう
ミクリオはは、屋敷にはいてもらわないとそれはそれで困るけどね
ミクリオそれじゃあ、少し早いけど僕はもう休む事にする
ローエン承知いたしました。ごゆっくりお休みくださいませ、ミクリオ様
scene2ミクリオの夢
ローエン昨夜はよくお眠りになられたようですね
ミクリオああ、気付いたら朝だった。自分で思っていた以上に疲れていたみたいだ
ローエン何かと立て込んでおりましたからね。いかがでしょう、本日はこのままお屋敷でゆっくり過ごされては?
ミクリオああ、そうしよう
ローエンところでミクリオ様、例の手紙の差出人の件ですが
ミクリオもう見つかったのか?
ローエンいえ、申し訳ございませんが、少々お時間をいただく事になるかもしれません
ローエン手紙の内容から、博物館を訪れたものだろうと考え、街中を捜索したのですが…
ミクリオレイザベール中を捜しても見つからなかった、と?
ローエンはい。意図して身を隠しているか、それとも既に街を去った後なのか…
ローエン世界中をくまなく捜すわけには参りませんが、もう少し範囲を広げてみてもいいかもしれません
ミクリオ任せるよ。こういうのは、ローエンの方が得意だからね
ミクリオ僕もそこまで焦っているわけじゃないし、じっくり腰を据えて進めてほしい
ローエンかしこまりました
リンリン
ローエンおや、お客様のようですね。少々お待ちください
エレノア失礼します
ミクリオエレノア。また来たのかい
エレノア明日もう一度伺うと、昨日お伝えしたはずです
ミクリオ昨日も言ったけれど、僕は恥じるような事はしていないよ
ミクリオだから、貴族の協議で決まった事でも従うつもりはない
エレノアそうはいきません!ミクリオには絶対に白き獅子に志願してもらいます!
ミクリオ…それが貴族の常識だから、かい?
エレノアええ、その通りです。あなたの行動は、貴族として相応しいとは、とても思えません
エレノアそれに、中にはあなたの事をひ弱な臆病者だと馬鹿にしている人もいます
エレノアこのような事を言われてミクリオは悔しくないのですか!?
ミクリオ君達の言い分には納得は出来ない。だけど、そう言われたところで悔しいとも思わない
ミクリオ戦う事だけがラザリス様への貢献手段じゃない、僕はそう考えているから
エレノアどうしてあなたは、そう…!
エレノア…わかりました。でしたら、今から私と手合わせしてください
ミクリオ何だって?
クラトス…本気か、エレノア
エレノアええ、勿論。ミクリオの実力を、ここで見極めさせてもらいます
エレノアもしあなたに実力があるのなら、白き獅子に志願する事を、拒むはずがありません
ミクリオそれはまた、ずいぶんと極端な考え方じゃないか?
エレノアいいえ、事実です
エレノア白き獅子の一員となる事は、誰もが望み憧れる事で、我々貴族の誇りと義務そのもの…
エレノアそれを望まないなど、怖気づいている以外にどんな理由がありますか!
エレノア今のあなたは趣味を言い訳に鍛練を怠り、成すべき事から目を逸らして逃げているだけです
エレノアそうでないと言うのなら、今ここでその事を私に証明してください!
ミクリオ…君は本当に変わらないな
ミクリオ君を納得させるには、態度で示すしかなさそうだ
エレノアでは、手合わせをしていただけるのですね
ミクリオあまり気は進まないけれど、仕方がない
ミクリオ君の事だ。今ここで断ったら、僕がうんと言うまで毎日押しかけるつもりだろう
ローエンミクリオ様、お待ちください。お言葉ですがこのような戦いは──
ミクリオわかっている。それでも、ここでやらないわけにはいかない
クラトスエレノアは白き獅子に志願すべく、日々鍛錬を重ねている。半端な実力では決して勝てないぞ
ミクリオ僕が半端かそうでないかは、その目で確かめればいい
エレノアでは、参ります!
scene3ミクリオの夢
エレノアくっ…!そんな…
エレノアあなたにこれほどの実力があったなんて…
クラトス…なかなかやるようだな
ローエンエレノア様、この辺りで武器をお納めください。ご覧の通り、ミクリオ様は鍛錬を怠っておりません
ミクリオローエンの言う通りだ。君の知りたい事は十分伝わっただろう
ミクリオこれ以上やりあえば、どちらかが怪我をしかねない
エレノアいいえ、まだです!
エレノアこのまま負けて終わるわけにはいきません…!
ミクリオ手合わせの目的が変わってるじゃないか
ミクリオもういいだろう。僕はこれで…
エレノア──隙あり!
ミクリオツインフロウ!
バシュッ!
エレノアきゃあああっ!?
クラトス…勝負あったな
ローエンエレノア様!大丈夫ですか?
エレノアくっ…
ミクリオもういいだろう、これで決着だ
エレノアあなた、私を誘い出すために、わざと隙を…
エレノアですが、今のは反則ではありませんか?術の使用なんて…!
ミクリオ剣技会じゃあるまいし。手合せの場で術が反則になるなんて聞いた事もない
ミクリオそれとも君は、実戦の場でも剣技会のルールに従って戦っているとでも言うのか?
エレノアそれは…!
エレノア…わかりました。あなたがそう主張をするなら、私だって──
クラトスよせ、エレノア。そこまでだ
エレノアクラトス!?何故止めるのですか!
クラトス剣技会のルールに囚われていたお前の負けだ
エレノアですが…!
クラトスエレノア、お前も気付いているはずだ
クラトスミクリオ殿は術を使った際、お前が怪我をしないように配慮していた事を
エレノア…それは…
クラトス彼の実力は十分にわかったはずだ。負けを認めろ、エレノア
クラトスこれ以上は、私もローエンも見過ごせん
エレノア…わかりました
エレノアすみません、ミクリオ。私は少し冷静さを欠いていたようです
エレノアミクリオに実力がある事は、はっきりわかりました
ミクリオそれはよかった
エレノアですが…そこまでの力があるというのに、何故ミクリオは人工遺物にこだわるのですか
ミクリオ──それが、僕の夢だからだ
エレノア夢、ですか?
ミクリオエレノア。君は白き獅子のような「騎士」でないとラザリス様に貢献出来ないと思うか?
エレノアそんな事はありません!ラザリス様を想う心があれば誰でも…
ミクリオだが、君や貴族達の主張が正しいとするなら、力ある者しか貢献出来ないという事になるだろう
エレノア…!
ミクリオだから僕は、違う方法…力ではなく、ラザリス様の世界の発展と言う形であの方のお役に立ちたい
ミクリオ人工遺物研究の道が認められれば、格差も減って、より多くの人がラザリス様のお力になれる…
ミクリオ世界はきっと、さらに素晴らしいものになるはずだ
エレノア…世界をよりよくする。それがあなたの夢という事ですか
エレノアミクリオの考えは理解出来ました。ラザリス様への想いも…
エレノアですが…全ての人間が白き獅子になれないのであれば…
エレノア出来る者がやらないのは、逃げにはならないでしょうか
エレノア白き獅子になり、民の命を守る。それが力を持つ者の務めであると、私は思います
ミクリオ…やっぱり平行線か
ローエンエレノア様のおっしゃる事もよくわかります
ローエンですが、人にはそれぞれ価値観というものがあります
ローエンその価値観が、人によって異なるのは当然。時にはぶつかる事もあるでしょう
ローエンそういう時は一歩引いた視点で、全体を見渡してはいかがかと存じます
エレノア一歩…引いて…
ローエンミクリオ様もエレノア様も、ラザリス様に忠誠を誓い、貢献したいと考えていらっしゃいます
ローエンお二人のお話を伺っていると、その点においては間違いありません
ローエン目指すところが同じであるのなら、お二人がわかり合う事は決して不可能ではないと思います
ミクリオ…つまり、この辺りで和解してはどうか、という事か
ローエンええ、いかがでしょう。ここはお二人で手を取り合われては?
ミクリオそうだな、僕も互いに理解し合えればいいと思っている。エレノア、君はどうだい?
エレノア…私も、あなたと手を取り合いたいと思ってはいます
エレノアですが、今の私は、ミクリオの言う事の全てに納得が出来たわけではないのです
ミクリオエレノア…
エレノア…ただ、ミクリオが己の信念に基づき、行動している事は理解しました
エレノアそうしたあなたの考えは、きちんと尊重されるべきだと思います
エレノアですから、もう一度…もう一度だけ、他の貴族の方々とも話をしてみます
エレノアあなたの行動が、特例として他の方々に認めていただけるように
ミクリオエレノア…
ミクリオああ、頼む。…ありがとう
ローエンこれにて一件落着ですな。ではお二人共、せっかくですので和解のしるしに握手でも──
クラトスエレノア。この後は確か知己の貴族と晩餐会があるのではなかったか?
クラトスこれ以上遅くなると、相手を待たせてしまう事になるぞ
エレノアええっ!?もうそんな時間ですか!?
クラトス騒がせて申し訳なかった。私達はこれで失礼する
エレノアちょっ、クラトス、待ってください!あ、えっと、ミクリオ、ローエン、お邪魔しました!ごきげんよう!
ローエン…話の途中でしたのに、行ってしまわれましたね
ミクリオああ、やけに慌ただしかったね
ミクリオまあ、それはそれとして…今さらだけど、ローエンは僕の夢…正しいと思うかい?
ローエンええ。ミクリオ様がご自分でしっかりと考えてお決めになられたものですから
ローエンしかし、急にそのような事をおっしゃられるとは…何かお悩みでも?
ミクリオ…自分がやっている事が、間違っているとは思わないけれど…
ミクリオエレノアの言い分にも一理あるというのは、理解出来るんだ
ミクリオ率直なところ、ローエンはどう思う?君の意見を聞きたい
ローエンそうですな…白き獅子を務める事と、人工遺物を研究する事──
ローエンどちらも重要な事だと思いますが、私はミクリオ様の夢を応援したいと思っております
ローエンそのために私に出来る事があれば、全力でお手伝いさせていただきましょう
ミクリオローエン…
ミクリオ…ああ。よろしく頼む
エレノア…クラトス。何故止めたのですか
クラトス手合わせの事か。それとも和解の握手の事か
エレノア両方です
クラトス理由はどちらも同じだ
クラトスお前自身と、ヒューム家の両方に傷がつかぬよう動いた。それだけだ
エレノア私はそのような事を頼んだ覚えはありません
クラトスああ、あれはあくまでも私が勝手にやった事だ
クラトスだが、今回の件は、他の貴族達から正式な依頼を受けてやった事ではないだろう
クラトスミクリオ殿の事をかけ合うと言っていたが、わざわざこちらの説得失敗を報告するようなものだ
クラトスろくな事にはならない。やめておいた方がいい
エレノアそうはいきません。例え正式な依頼でなかろうと、引き受けたからには報告はします
クラトスそもそも彼と他の貴族達の仲を取り持つ必要もないはずだろう
エレノアつまりあなたは、ミクリオの件を話すのは気が乗らないと?
クラトス…ああ。この件はお前とヒューム家の立場を損なうだけだ
エレノアそのような心配はいりませんよ、クラトス
エレノアミクリオの評判が芳しくないのは、彼がただ遊んでいるだけだと思われているせいです
エレノア私も、ミクリオの夢を聞くまではそうだと思っていました
エレノアでもそうではなかった。彼は彼なりに、考えを持ってラザリス様に貢献しようとしています
エレノアその事を他の方々にもきちんと説明すれば、全て解決するはずですよ
クラトス…私は所詮ヒューム家に仕える従者にすぎない。差し出がましい事を言う気はないが…
クラトス他の貴族達が全員、お前と同じように実直だとは思わない方がいい
クラトスそれでも報告をすると言うのなら、今後、手段を選べなくなるかもしれないぞ
エレノアヒューム家を想っての忠告、感謝します
エレノアでも大丈夫です。私は間違った事はしていませんから
エレノアきっとみんなにも、わかってもらえると思います
クラトス…そうだといいがな
scene1湖畔の待ち人
ミクリオローエン、念のために確認しておくけど、今日の予定は──
ローエンほっほっ、ご安心ください。来客も公務のご予定も、本日は何もございませんよ
ミクリオそうか、よかった。…よし、忘れ物もなし、とこれで支度は完璧だ
ローエン声が弾んでおりますね、ミクリオ様
ミクリオこれが喜ばずにいられると思うかい?あの手紙の主に、ようやく会えるんだ
ミクリオこっちが散々手を尽くして捜しても、全く手がかりが掴めなかったのに
ローエンまさかこのタイミングで、向こうから会おうと申し出てくるとは思いませんでした
ローエンしかし何故、わざわざ待ち合わせに湖畔を指定してきたのでしょうね?
ミクリオあの湖畔周辺では、これまでにも多くの人工遺物が見つかっている
ミクリオもしかしたら、そこで何か新しい発見があったのかもしれない
ミクリオ実は、手紙の主に会えたら博物館を見てもらいたいと思っているんだ
ミクリオローエン、すまないが掃除がてらお茶の支度を整えておいてくれないか
ローエンかしこまりました。ご挨拶出来る事を楽しみにお待ちしておりますね
ミクリオああ。それじゃあ、行ってくる
ミクリオ──湖が見えて来たな。ここが待ち合わせ場所か…
ミクリオ…あの手紙を書いていたのは、一体、どんな人物なんだろう
ミクリオあそこまで人工遺物に精通していたんだ。只者とは思えないが…
ミクリオ…!向こうに人影が…!
ミクリオあなたは…
クラトス来たか…
ミクリオクラトス…どうしてここに?
クラトス私が貴公を呼び出したのだ。偽の手紙を使ってな
ミクリオ…!
ミクリオ僕を誘いだしたところであなたに利益があるとは思えない。…何が目的だ
クラトスエレノアでは、貴公を説得する事は出来ない。だから私が直接話をしにきた
クラトス主人を補うのも、従者の役目と言う事だ
ミクリオそれにしては、やり方が無粋じゃないか
クラトス少々強引な手段を取った事については謝罪しよう
クラトスだが、これでようやく貴公と二人になれた
クラトスここなら一対一の対等な人間同士、互いの立場や身分を気にする事なく話が出来る
ミクリオ身分や立場、か…。僕は気にしないけれど、まあいいさ
ミクリオそれよりも…主人を補う、と言ったね。という事は──
クラトスああ。貴公には人工遺物の研究から身を引き、白き獅子への入隊を志してもらいたい
ミクリオやはりか…。その話は終わったはずだが
クラトス世界全体をよくする…その考えは理解した
クラトスだが、貴公ほどの実力があるならば話は別ではないか
ミクリオ…どういう事だ
クラトス貴公の話は、あくまでも「夢」にすぎない。成果に結びつくかも定かではない
クラトスだが、白き獅子になれば、確実にラザリス様のお役に立てるだけの力を貴公は持っている
クラトス確実に成果を得られる道を捨て、夢という自らの欲のままに不確かで不合理な道を選ぶ…
クラトスそれが本当に正しい事なのか?
ミクリオ…!
クラトス人工遺物の研究は、他の誰かに任せればいい
クラトスラザリス様への貢献が最大の目的だと言うのなら、今一度、よく考えるべきだ
ミクリオ
クラトス無論、すぐに答えを出せとは言わん
クラトスゆっくり考えればいい。…時間はたっぷりある
ローエン──さてと、掃除も完了しましたし、いつでもすぐお茶の支度が出来るよう準備も整えました
ローエン後はミクリオ様が、手紙の主を伴って、お帰りになるのを待つばかり…
???ローエン。お仕事中にお邪魔いたします
ローエンおやおや、エレノア様。今日はまた、ずいぶんと大勢の方を連れていらっしゃいますね
ローエンはて、見たところ、みなさんヒューム家の使用人ではないようですが…?
エレノアミクリオはどこに?今すぐ呼んでいただだきたいのですが
ローエンあいにくミクリオ様は、ただいま外出中でして…
エレノア外出中…どこへ?
ローエン人と会うために、街を出られております。お待ちいただくなら、お部屋をご用意いたしますが…
エレノアそうですか。出来る事なら、もう一度直接話がしたかったですが…
エレノア仕方がありません。このまま始めましょう
ローエン始めるとは、一体何を…
エレノア
エレノア…ごめんなさい、ローエン。これはレイザベールの貴族の総意として決まった事なんです
エレノア決まってしまった以上、私にはこうするしか…
エレノア…さあ、あなた達。仕事を開始してください!
ローエン…!?
ローエンお待ちください!一体何を──
scene2湖畔の待ち人
ミクリオ
クラトス心は決まったか
ミクリオ…確かに、あなたの考えは間違ってはいないんだろう
ミクリオ白き獅子に志願する事…
ミクリオそれが今の僕にとってもっとも合理的で、確かな方法だという事は理解出来る
クラトスでは…
ミクリオ…けれど、同時にこうも思うんだ
ミクリオ人の夢というものは、合理的かどうかだけでは量れないんじゃないかって
ミクリオ人工遺物の研究は、僕にとっての「夢」だ
ミクリオそしてその夢は、ラザリス様の世界をよりよくするためのもの…
ミクリオだからこそ、僕はここで引くわけにはいかない
ミクリオ僕の身近にいる人も、その夢を応援してくれている事だしね
クラトスそのために、ラザリス様にとって不合理となる選択をするというのか?
ミクリオ合理的でなくても、自分のやり方でラザリス様に貢献したい…それがそんなにおかしい事だろうか
クラトス私には賛同出来かねる
クラトス力がある者は、その力に相応しい務めを果たすべきだ
ミクリオ…あなたも、エレノアと同じ事を言うんだな
ミクリオ…僕の気持ちはさっき言った通り。これ以上誰に何を言われようと考えは変わらない
ミクリオ聡明なあなたの事だ。こうなる事くらい想定出来ていただろうに、どうしてそこまで──
ミクリオ…!
ミクリオ…クラトス、本当の狙いは何だ?
クラトス
ミクリオあなたはこんな風に闇雲に議論を引き延ばしたり、精神論を振りかざすような人じゃない
ミクリオつまり…こうして僕を引き止める事であなたに何か利益がある、という事だろう?
クラトス…まあいい。十分に時間は稼げた。もう話してもいいだろう
クラトス今頃、エレノアが動き出しているはずだ
ミクリオエレノア…?一体どういう…
エレノア……
骨董商博物館の中にある人工遺物は全部運び出してしまっていいんですね?
エレノア…!あ…はい、よろしくお願いします
ローエンどうかおやめください、エレノア様。展示物や倉庫の物を、持ち主に無断で勝手に持ち出されるなど…
エレノアこれはレイザベールの貴族達の総意です。取りやめる事は出来ません
エレノア…ですが、安心してください。彼らは、いずれも骨董品の扱いに長けた者ばかり
エレノア人工遺物も、誰よりも丁寧に取り扱ってくれるはずです
ローエンそういう問題ではございません。何故いきなり、このような無体をなさるのです
ローエンエレノア様は、ミクリオ様のご意志を理解してくださったのではないのですか
エレノア
ローエン…エレノア様は、ミクリオ様の古くからのご友人。その信頼を、このような形で──
エレノア…私だって、好きでこのような事をしているわけでは…!
ローエン…一体何があったのか、お話ししていただけますかな?
エレノア…先日、ミクリオを説得しようとした一件について、他の方々にも説明したところ、彼らはこう考えたのです
エレノア私をも打ち負かす高い実力を持ったミクリオが白き獅子に入隊しないのは社会的損失だと…
エレノアそして彼らは、ラザリス様のためにミクリオの目を覚まさせようと…
エレノア──ミクリオがうつつを抜かす収集品を、没収する事にしたのです
ローエン…そしてその実行者にエレノア様が選ばれたのですね
エレノア…はい
ローエンそんな…あまりにも一方的です。エレノア様は、こんな行為が正しいと思っておいでなのですか?
エレノア…いいえ。本音を言えば、私も、今回のような強引なやり方には納得していません
エレノアですが、もう既に決まってしまった事ですし…貴族達の考えには、私も賛同していますから
ローエンそんな、何故…
エレノア…私は、先日の一件で、ミクリオのような考え方もあるのだと一応は理解したつもりです
エレノアですが…やはり彼ほどの実力者には、白き獅子を目指してほしいという気持ちも、変わらずあるのです
エレノアもし今日、ミクリオがこの場にいたら、もう一度説得を試みるつもりでしたが…
ローエンならばせめて、ミクリオ様がお戻りになられるまでお待ちいただく事は…
エレノア…ごめんなさい。それは出来ません
エレノア酷な事をしている自覚はあります。後にミクリオに責められても仕方がないと覚悟もしています
エレノアそれでも…こうする事で、もし本当に、白き獅子を目指すようになってくれたなら…
エレノアその時は、私は全力で彼を補佐し、正しい道へ導く事を誓いましょう。それが私の責任で、使命だと思います
ローエンエレノア様…
scene3湖畔の待ち人
ローエン
エレノア
骨董商うわっ!?だ、誰だあんたら!
???この博物館の関係者だ!
ローエンガイさん…それに、クレスさんまで…!
エレノアあなた達は…確か、ミクリオと親しくしていた…
ガイ何か博物館が騒がしいと思って来てみれば、こいつは一体何の騒ぎだ?
クレス引っ越しや改装…ってわけではなさそうだね
ローエン…ええ、実は──
ガイミクリオがいない間に、今まで集めた人工遺物を全部没収するだって?
クレスそんな事をしたら、ミクリオがどれほどショックを受けるか…
エレノア
クレス今すぐやめさせないと!あの、すみませ…
ローエンお待ちください、クレスさん
ガイどうして止めるんだ?あんただって納得してないんだろ?
ローエン今回の事は、エレノア様の独断ではありません。レイザベール貴族の総意です
ローエンお二人がここで抗議すれば、貴族に反抗したと取られる可能性があります
ローエンそんな事になってしまったら、お二人の立場が悪くなってしまいます
ローエンそのような事は、ミクリオ様もお望みにはならないはずです
ガイかと言って、このまま手をこまねいていたら、あっという間に回収が終わっちまうぞ
ガイそうなったら、取り返すのは難しいだろ
クレスせめてミクリオが帰って来てくれれば…
骨董商エレノア様、もうすぐ全ての人工遺物の運び出しが完了します
エレノア…わかりました。そのまま続けてください
ガイあれじゃあ、ミクリオが戻るまで、物が残ってるかどうか…
ローエン…もしミクリオ様のお帰りが間に合わない場合は、私が直接話を付けます
クレスローエンさんが?
ガイおいおい、自分がさっき言った事を忘れてないよな
ガイいくらミクリオに仕えてるって言っても、あんたは貴族じゃない。俺達と立場は一緒だろ
ガイ下手な真似をすれば、それこそ…
ローエン勿論、存じております
ローエン一介の執事風情が、貴族の決定に逆らえばどうなるか、わからない私ではございません
ローエン相応の覚悟は、出来ております
クレスローエンさん…
ガイくそっ。肝心のミクリオは一体どこに行ってるんだ
ローエン実は、人工遺物に関する手紙を送ってくださった方から、会いたいと呼び出されており──
???あの、その話、詳しく聞かせてくれませんか!?
ローエンあなたは…
ミクリオ──博物館に収蔵している人工遺物を全て没収するだって!?
クラトスああ、そうだ
ミクリオ…そんな事をして、僕の心が折れるとでも?
クラトス結果はどうあれ、エレノアが今回の任務を遂行するにあたって──
クラトス貴公を近くに置いておく事は避けるべきだと判断した
ミクリオそれで僕を、こんなところにまでおびき出したのか…!
ミクリオだが、意味がないと思っているなら、どうしてそんな事を…
クラトス…先日の話し合いの後、エレノアは貴公の意向を特例として認めてくれと報告に行った
クラトスだが、それは貴族達の意見に反するものだ
クラトス結果的にエレノアは、貴公の肩を持っていると見なされてしまった
ミクリオ…!そんな…
クラトス本人はそこまで深刻には考えていないようだが…これはヒューム家の存亡に関わる一大事だ
クラトスだからこそ、今回エレノアに命じられた人工遺物没収の任務は、何としても完遂させなければならない
ミクリオ…なるほど。名誉挽回のために、是が非でも成功させたいわけか
クラトスああ。だが、貴公を博物館から引き離したのは私の独断だ
クラトスエレノアと同様、私もミクリオ殿の行動そのものを否定するつもりはないが…
クラトス長年に渡り仕えてきたヒューム家の大事を看過する事も出来ん
ミクリオけれど、僕を引き離したところで、エレノアの任務がすんなり遂行出来るとは思えないな…
ミクリオローエンの事を、忘れてはいないか?
ミクリオエレノアにはあなたがいるように、僕にも信頼のおいている彼がいる
クラトス勿論、ローエンは止めようとするだろうが…彼も私と同じ、貴族に仕えるただの従者だ
クラトス分をわきまえぬ行動をすればどうなるかはわかりきっている
ミクリオ…今のあなたの行動も、十分従者の域を超えてると思うが?
クラトスああ。だが、私の目的はあくまでヒューム家を守る事。敵が貴公一人と貴族全体では話が違う
ミクリオ
クラトス…今ここで、貴族連中の取り決めに従うと、約束してもらえないか
クラトスそうすればローエンも無事で済むし、ただの収集品として持つだけなら、人工遺物の返還も可能だろう
クラトスこれ以上事態が悪化する前に、決断してもらいたい
ミクリオ
scene1不壊の約束
ミクリオ
クラトス
ミクリオあなたは…
ミクリオローエンやエレノアを守るために僕に白き獅子を目指せと…
ミクリオ夢を諦めろと…そう、言うのか?
クラトスああ。それが貴公に出来る、最善の選択だ
ミクリオだが…
クラトス人工遺物の事も、先ほどの通りだ
クラトス貴公が然るべき決断をすれば、手元に置いておく事くらい許されるはずだ
クラトス逆に今のままでは、何一つとして、望んだ結果にはなるまい
ミクリオ
ミクリオ夢を諦める事以外に、解決策はないのか…?
ミクリオだが、僕は…
クラトス…どうした
ミクリオ…駄目だ。どうしても言えない
ミクリオ貴族達の決めた方針に従うという事は自ら掲げた夢を諦める事…。そう考えると……
クラトスミクリオ殿の気持ちもわかる。だが、もう一度よく考えてみろ
クラトスその夢とやらは、ローエンやエレノアを犠牲にしてまで守るほどの価値がある物なのか?
ミクリオ
クラトス考えた上で貴公が我が道を進むと言うのなら、これ以上は何も言うまい
ミクリオローエン…エレノア……くっ…
ミクリオ
ミクリオ…いいだろう。クラトス、ここはあなたに従う
ミクリオ僕は…白き獅子になる
ミクリオその選択をする事で、ローエン達を守る事が出来るなら…
ミクリオ僕は…自分の夢を諦め──
???待ってくれ!ミクリオ!
???はあ…はあ…今、何て言おうとしてた?夢を諦めるつもりじゃないよな?
ミクリオ君は…?いや、それよりも何故僕の名前を…
???お前は…手堅いくせに意地っ張りだ
ミクリオなっ…!
???そんな奴が、簡単に自分の決めた事を諦めるなんてらしくない
???どこまでも、意志を貫く。…それがミクリオだろ?
???それに、お前の夢はオレの夢でもあるんだ。だから、諦めるなんて言うな!
ミクリオ君は…一体…
ミクリオいや、待て…この声、どこかで…?
???「よかった! 無事だったんだな」
???「誰って…ミクリオ、 オレの事、忘れちゃったのか?」
???「……冗談に決まってる。 だって、オレ達──」
ミクリオまさか君は、繰り返し夢の中に出てきていた…?
ミクリオ…いや、待て。ここに来たと言う事は…まさか、君があの手紙の主なのか?
スレイああ、手紙を出したのはオレだよ。オレはスレイって言うんだ
ミクリオやはりそうか…君が…
スレイ突然割って入って、ごめん。ローエンさんから話を聞いて居ても立ってもいられなくなって…
スレイミクリオ、あの博物館は、お前にとって大切なものなんだろ?
スレイずっと頑張って作り上げたものを諦めなくていい。それを言いに来たんだ
ミクリオ確かに僕だって、ここまで人生を賭けてやって来た事を諦めるなんて、本意じゃない
ミクリオ本当はこんな事はしたくないさ
スレイだったら!
ミクリオけれど、今回は問題が多すぎるんだ。事態は既に、僕一人ではどうにも出来ないところまできている
ミクリオ夢のために僕を支えてくれていた人達を見捨てるなんて、僕には…
スレイミクリオは本当にそれでいいのか?
ミクリオさっきも言っただろう!夢と仲間、どちらかを選ばなければいけないんだ!
スレイ…わかった。本当にそれで後悔しないって言うなら、そうすればいい
スレイオレが、先に夢を叶えるだけだ
ミクリオ…!
スレイオレに先を越されても平気なら、好きにすればいいさ
ミクリオ…誰が諦めると言った
スレイ自分でそう言ったじゃないか
ミクリオまだ言ってないだろ!君が僕の発言を邪魔したんだから
スレイあそこまで口にしたら、もう言ったようなものだろ
ミクリオ違う!僕は──
クラトス──そこまでだ
クラトス思わぬ邪魔が入ったが…そろそろ貴公の答えを聞かせてもらおう
ミクリオ…ああ、わかっている
ミクリオクラトス…あなたの言っている事は正しいのだと僕も思う
ミクリオそれでも…僕はやっぱり、自分の夢を、諦められない
スレイミクリオ…!
ミクリオスレイに言われたからじゃない。これは僕の意志で決めた事だ
ミクリオ巻き込む形になってしまって、あなた達には申し訳ないと思っている
ミクリオけれどやっぱり僕は、自分の信念を曲げてまで諦める事は出来ない
ミクリオ…クラトスの言う通り、僕のやろうとしている事はただの「夢」みたいなものだ
ミクリオ不確かで不合理な選択をしている、あなたはそう言うだろう
ミクリオそれでも僕は、誰かがこんな風に何かを諦めなきゃいけない世界を、ラザリス様の理想の世界にしたくない
クラトス…!だが──
ミクリオローエンの事を言うのなら、もう無駄だよ。僕はもう諦めない
ミクリオ大事な人も、夢も──僕が全て守る
クラトス…わかった。それが答えだと言うなら、これ以上何も言うまい
クラトス全てを失った後に、その決断を悔いる事にならないよう祈ろう
スレイあ、ちょっと待…
ミクリオいい、放っておけ
スレイでも…あの人、このままだとローエンさんのところへ…
ミクリオそんな事はわかっているよ。誰も追いかけないとは言っていないだろ
ミクリオこの辺は何度も調査をしたから、地理は熟知しているさ
ミクリオクラトスの進んだ道を行くより林の中を突っ切った方が早い
スレイそうか。だったら…
ミクリオただし。その分魔物と遭遇する確率も高く…
ガサガサッ
グルルゥッ!
ミクリオなっ…
スレイはあっ!
ズバッ!
スレイ…はは、大丈夫!オレとミクリオがいれば、魔物くらいどうって事ないよ!
ミクリオ…君は楽天的すぎないか。まあ、剣の腕は確かなようだけど
スレイよし!じゃあ急いで出発しよう!
scene2不壊の約束
スレイはあ…はあ…
ミクリオようやく林を抜けたな
スレイミクリオの言った通り、本当に魔物が多かったな…
スレイ戦いつつ一気に駆け抜けなきゃいけなかったから、何度か足がもつれそうになったよ…
ミクリオ…スレイ、ここで少し休んで行こう
スレイえ?でも、急がないとローエンさん達が…
ミクリオ藪を通り抜けたり、魔物との戦闘を繰り返したせいで、お互い傷だらけだろう
ミクリオ僕も君もだいぶ息が上がっているし、疲れた状態で無理に急ぐよりも、体力を回復させた方がずっと効率的だ
ミクリオ幸い、林を突っ切ったお蔭で、時間はだいぶ短縮出来ているしね
スレイ…確かにミクリオの言う通りだな。わかった、少し休憩しよう
パアア…
スレイふう…楽になった。ありがとう
ミクリオ…ここまで魔物と立て続けに戦ってきたけれど、君とは何故か連携が取りやすかったよ
ミクリオ僕の立ち回りを自然と察して動いてくれていたからかもしれないね
スレイ…そうだな。オレもミクリオと一緒だと、すごく戦いやすいよ
ミクリオ…その事で少し聞きたいんだが
ミクリオスレイは僕の事をよく知っているようだけれど、どうしてなんだ?
スレイ…やっぱり、覚えてないよな
ミクリオ…?
スレイあのさミクリオ、実はオレ達──
スレイ
ミクリオスレイ?僕達が何なんだ?
スレイいや、その…実はさ。オレ達は昔、一緒にいた事があるんだ
ミクリオ昔?
スレイうん。よく遺跡探索したりしてさ。うっかり日が暮れるまで遊んで、ジイジに怒られたり…
ミクリオジイジ?君の祖父か何かか?
スレイ…まあ、そんなとこかな
ミクリオ確かに遺跡探索なら、幼い頃よくガイ達と一緒に行っていたな…。まあ、今も大して変わらないけれど
ミクリオああ、もしかして、その時にスレイとも一緒に遊んだ事があったのか?
スレイ…あ、うん…。きっと、そんな感じだと、思う…
ミクリオそうだったのか…。はっきりと覚えてなくてすまない
スレイ…いや、いいんだ。これは仕方ない事だから
ミクリオでも、一つ気付いた事があるんだ。僕は不思議な夢を繰り返し見ているんだが──
ミクリオその夢に出てくる青年、あれは君なのかもしれない
スレイえ?オレが夢に…?
ミクリオ少し不思議な話だけどね
ミクリオでも、君と出会い今の話を聞いて…やっぱりあれは君だったんだと確信したよ
スレイミクリオ…
ミクリオ手紙の主だったり、夢に出て来たり…君は僕にとって縁の深い存在なのかもしれないね
スレイ……うん、そうだな。きっとオレ達は繋がってる
スレイ…ありがとう、ミクリオ
ミクリオ…?感謝されるような事は何も言ってないと思うけど
スレイいいんだ、オレが言いたかっただけだから
スレイ──あ、そうだ
スレイ今のミクリオは、覚えていないと思うけど…
スレイオレ達は昔、世界中の遺跡を一緒に回ろうって話してたんだ
スレイそれが、オレ達の夢
ミクリオ僕達の…
ミクリオ…スレイ、もしかして君がさっきあれだけ必死になって夢を諦めるなと言ったのは…
スレイえーっと…、うん。オレ達二人の夢を諦めてほしくなくて思わず…
ミクリオそうだったのか…
ミクリオ世界中の遺跡を回る、か。素晴らしい夢だ
スレイだろ?ミクリオなら、きっとそう言ってくれると思ったよ
スレイ…さてと。傷も癒えたし、レイザベールへ急ごうか!
ミクリオそうだね。のんびりしすぎて、追い抜かされたりしたらたまらない
ミクリオ──行こう!
scene1辿りついた選択肢
エレノア──作業の進み具合はどうですか
骨董商人工遺物の回収はほぼ終わりました
エレノア…そう、ですか
エレノアみなさん、お疲れ様でした。後の事は私に任せてください
クレスそんな…博物館が、すっかり空っぽに…
ガイくそ、ミクリオは間に合わなかったか…
ローエン
ローエンエレノア様
エレノアローエン…
ローエンお願いいたします。どうか商人達に、運び出した収蔵品を戻すよう命じてください
ローエンあなたもこのような結末は、決して望んでいないはずでしょう
ローエン今、あの商人達を止められるのは、あなたしかいないのです
エレノア…残念ですが、それは出来ません
エレノアやはりミクリオは白き獅子に志願すべきです。彼はそれだけの才を持っています
エレノアラザリス様をお守りする事は、この上ない貢献となるでしょう。…それは、彼のためにもなるはずです
エレノア人工遺物の研究から手を引かせる事でミクリオが正しい道を歩める可能性が少しでもあるのなら…
エレノア例え恨まれる事になろうとも、私は任務を遂行します
ローエンエレノア様…
ローエンお気持ちはよく理解しました。あなたもミクリオ様をお思いなのですね
ローエン…ですが、もう一度だけ言います
ローエン今すぐに作業を中止させなさい
エレノア…!
ローエンこのような強引な手段を用いたところで、ミクリオ様が夢を諦めるはずがない
ローエンそんな事は、あなたもおわかりのはずです
エレノア
クレスローエンさん!?
ガイおいおい、貴族のエレノア相手にそんな事言ったら…!
エレノア…そのような厳しい表情のあなたを見るのは初めてですね
エレノアですが…私にも立場があります。いくらあなたでも、庇う事は…
ローエンええ、覚悟の上でございます
クレス待ってくれ!ローエンさんに何かあったらミクリオは、より悲しむ事に…
ローエン私も本意ではございません。ですが、こうする事であの方の夢をお守り出来るのならば…
ローエンこのローエン、全てを投げ打ってでもエレノア様をお止めいたしましょう
ローエン老い先短い私の覚悟、聞き入れてはもらえませんかな?
エレノアローエン…あなたは…
???──その必要はない!
ミクリオ待たせたね、ローエン。今帰った
ローエンミクリオ様…
エレノアミクリオ…!
クレスよかった、ギリギリ間に合った!
ガイったく、待ちわびたぜ!
スレイふぅ…。間一髪だったみたいだな…
ローエン…どうやら、無事に手紙の主様と会えたようですね。ご無事で何よりです、ミクリオ様
ミクリオああ、遅くなってすまなかった
ミクリオ…どうやら、人工遺物の回収は順調に進んでいるようだね、エレノア
エレノア…!知っていたんですか…
ミクリオああ、全て聞いたよ。クラトスから…ね
エレノアクラトス…?どういう事ですか。彼は今日、休暇を取っているはず…
スレイ実は…クラトスさんはミクリオをこっそり呼び出して、説得しようとしてたんです
スレイオレが、新しい手紙をミクリオに出したかのように装って…
エレノアクラトスが、私に黙ってミクリオを…?
エレノアそんな…何故彼はそのような勝手な真似を
ミクリオ彼なりに、君と君の家の事を真剣に考えた結果だろう
ミクリオとはいえ、結局僕は、クラトスの説得に応じなかったんだけれど…
ミクリオ彼はあくまでも、貴族達の指示を遂行しようと考えているようだから、じきにここへ来るだろう
ミクリオそれより、ローエン
ミクリオ僕のために、君が犠牲になる必要なんてない
ローエンミクリオ様…
ローエンですが、このままではミクリオ様が今まで集めた人工遺物は全て没収されて…
ミクリオいいんだ。持って行かれても構わない。彼らの好きなようにさせればいいさ
ミクリオ…僕にとってローエンは人工遺物よりも守るに値する人だ
ローエンミクリオ様…
ローエンいけませんミクリオ様!そのような事をしたら、絶対に後悔いたします!
ローエン私はミクリオ様の夢を全力で応援すると申し上げたはずです!
ローエンそのためならば、この老体の未来などいくらでも──
ミクリオ心配ないよ、ローエン
ミクリオ僕は、夢を諦めるつもりなんてこれっぽっちもない
ミクリオ確かに、貴族達の勝手な都合で集めた人工遺物を没収されるのは許しがたい事だ
ミクリオだが、例え全てなくなったとしてもまた一から集め直せばいい
ミクリオ世界にはまだまだ数えきれないほどの人工遺物が眠っているんだ。何度だって探しにいける…
ミクリオそう思わないかい、ローエン?
ローエンミクリオ様…
エレノアミクリオ…あなたは…
スレイだな。ミクリオが、こんな事くらいで諦めるはずがない
スレイミクリオの意志の強さは筋金入りだ。オレが保証するよ。昔っからそうだったし
エレノア昔から…?お話を聞く限り、ミクリオに手紙を出していた方のようですが…
エレノアあなたは、ミクリオとは古くから交友があるのですか?
スレイああ、えーっと…そうだな。言うなれば…
スレイ見えない絆で繋がった親友!…かな
ミクリオ親友、か…。僕の方は君を忘れてしまってるけどね
スレイ今はそうかもしれないけど、いつか必ず思い出してくれる日が来るよ
スレイ…それに、何も覚えてなくたって、ミクリオはミクリオだった。それがわかれば大丈夫
ミクリオ…?
ローエンおやおや、お二人は昔からのご友人だったのですか
ローエンほっほっ、何はともあれ、ミクリオ様が素晴らしいご友人と再会出来て、何よりです
ミクリオ何を…って、それはいいんだ。とにかくそういう事だから、人工遺物は持って行って構わない
エレノアそんな…ミクリオが、何の抵抗もなく、あっさりと自分から人工遺物を手放すなんて…
ミクリオエレノア。君はこのまま、役目を完遂すればいい
ミクリオそれでも僕は、自分の夢を絶対に諦めない
ミクリオ僕の夢は、多くの人の…ひいてはラザリス様の望む世界の幸福へと繋がっているはずだ
ミクリオ途中で投げ出したらきっと後悔する。だから、どんなに辛くても大変でも、最後まで歩き通してみせるよ
ミクリオこの意志が挫ける事は決してない。この事は、他の貴族達にも改めて伝えておいてほしい
エレノア…怒らないんですか?私は、あなたの大切なものを奪っていこうとしているんですよ?
ミクリオ君にも事情や立場がある。やりたくてやったわけじゃない事は理解しているからね
エレノア
ミクリオ言われた通りに人工遺物を没収して、改めてミクリオも説得しようとした。でも、彼は言う事を聞かなかった
ミクリオ他の貴族達には、そう伝えればいい
???…まさかそう来るとはな
クラトス
ミクリオクラトス…
scene2辿りついた選択肢
クラトス…まさか自分の意志で人工遺物を差し出し、ローエンや私達だけでなく己の夢まで守ってみせるとはな
エレノア…クラトス。ミクリオから、あなたが私に黙って何をしていたのか聞きました
エレノアミクリオを呼び出したというのは本当なのですか
クラトスああ、その通りだ
クラトス幼馴染のミクリオ殿さえいなければ、お前は躊躇する事なく任務を遂行出来るだろうと思ったのでな
エレノア…そのような行動に出たのは、やっぱり…
クラトス…ああ。ヒューム家を守るためには、手段を選んではいられなかった
エレノアクラトス…。どうしてあなたはそこまでして、私の家を守ろうと…
ローエン…エレノア様。クラトスさんは、あなたのお父上の親友だったのですよ
クラトス待てローエン。その話は…
ローエンせっかくの機会です。知っておいた方がよろしいでしょう
ローエンエレノア様のお父上は、死の間際、友であるクラトスさんにヒューム家を頼むと言い残しました
ローエンだからクラトスさんは、ヒューム家とあなたを、何に変えても守ろうと必死に動いておられたのです
クラトス
エレノアクラトス…
エレノア…ミクリオ。あなたが人工遺物を持って行って構わないと言ったのは、私達のためだったのですね
エレノアクラトスの覚悟を尊重し、私やクラトスの立場が悪くならないように、と…
エレノア…ミクリオ、あなたは大切にしていた人工遺物や己の立場を犠牲にしてまで私達を守ろうとしてくれました
エレノア規律や取り決めに縛られず、ぶれる事なく夢を貫き通す強い覚悟と意志を見せた…
エレノア…それに比べて私は、よくない事だと思いながらも、仕方ない事なのだと自分に言い聞かせてばかりで…
エレノア正しいかどうかなんて考えもせず、周りに言われるがままに従うだけでした…
エレノア…私は、何と無知だったのでしょう
ミクリオ
エレノア私は白き獅子を目指す事こそが、ラザリス様への一番の貢献だと、信じて疑わずにここまできましたが…
エレノアこの思想には、ミクリオほどの強い意志はなかったのかもしれません
エレノア今なら素直に認められます。あなたの夢は、信念のこもったとても素晴らしいものだと
エレノア私の過ちに気付かせていただき、ありがとうございます。──そして、申し訳ありませんでした
ミクリオエレノア…
エレノアローエンも、すみませんでした。あなたのミクリオへの想いを、私はよく知っていたのに…
ローエン…お気になさらないでください。エレノア様は従わざるを得なかっただけなのですから…
エレノア本当に、あなた方には頭が上がりません。私は何という事をしてしまったのか…
エレノア何度お詫びをしてもし足りないくらいです
クラトス…私からも謝罪させてくれ。すまなかった
ミクリオ二人共、頭をあげてくれ。僕は謝罪なんか望んでいない
ガイそうそう。あんまりかしこまられても、ミクリオ達だって困っちまうだろ
クレス二人に悪意があってやったわけじゃない事は、みんなわかっているんだし…
エレノアはい…。…その、今さらかもしれませんが…
エレノア今後は私もミクリオのように、自分の意志で正しいと信じられる道を見極めたいと思います
エレノアそのためにも…ミクリオの夢の実現に、協力させていただけませんか
ミクリオ協力?
エレノア──そこのあなた!
骨董商は、はい!
エレノア申し訳ありませんが、回収した人工遺物を元に戻してもらえますか。手数料はお支払いいたしますので
スレイ人工遺物を返してくれるんですか?
ガイこれで博物館も元通りになるんだな!
ミクリオ…いいのか、エレノア?こんな事をしたら、君の立場は…
エレノア心配無用です。貴族の方々も説得してみせましょう
エレノアこれは私が、もう一度きちんと向き合わなければならない問題ですから
ミクリオエレノア…ありがとう
エレノアいえ、お礼を言うのは私の方です。…それと…
ミクリオこの手は…?
エレノア先日出来なかった、和解の握手です。…お願い出来ますか?
ミクリオああ、勿論さ
ローエンほっほっ、和解出来てよかったですね。ミクリオ様、エレノア様
クラトス…ミクリオ殿。偽りの手紙で貴公を誘い出した事、この場で詫びさせてくれ
ミクリオクラトス…
クラトス…だが、独断での行動に関しては、釈明するつもりはない。咎めはいくらでも受けよう
ミクリオ…クラトス。僕はあなたを咎めるつもりはない
クラトス…そうか。貴公も大概甘いな
スレイ何はともあれ、人工遺物の没収がなくなってよかったな、ミクリオ!
ローエンええ、これで少しだけ肩の荷が下りました
ガイ博物館が空になった時は、どうなる事かと冷や冷やしたぜ
クレス本当に。何とかなりそうでよかったよ
ミクリオみんなも、いろいろと手を貸してくれて、感謝している
ミクリオ特にスレイ…あの時君は、夢を諦めるなと声をかけてくれただろう
ミクリオあの一言があったから、僕は折れる事なく立ち向かう事が出来たんだと思う
ミクリオ本当に助かったよ。ありがとう、スレイ
スレイ…どういたしまして!
scene1追憶への行路
ガイ…ふぅ。これで、大体は元通りになったかな
クレスそうだね。見慣れた元の博物館の姿とほとんど変わらないと思うよ
ガイ一時はどうなるかと思ったが、何とかなってよかったな
ミクリオ心配をかけてすまなかった。ありがとう、クレス、ガイ
ガイ気にするなって、友達だろ。それじゃ、俺達はそろそろおいとまするとしようか
クレスミクリオ、また何かあったら、遠慮なく僕達を頼ってくれ
エレノアミクリオ、私達もそろそろ失礼しますね
ミクリオ結局二人にまで手伝わせてしまったな
エレノア私が原因を作ったのですから、これくらいは当然です
ミクリオ他の貴族達に話をすると言ってたけれど…くれぐれも無茶はしないでくれ
エレノアはい、でも大丈夫です。私には頼りになる従者がついていますから
エレノア…これからは、何があろうと私達はあなたの味方です。どうかそれだけは忘れないでください
ミクリオああ、覚えておくよ
エレノアそれでは、失礼します
クラトス邪魔をしたな
スレイ…さっきまで、あんなにたくさん人がいたのに、静かになる時はあっという間だな
ミクリオああ、そうだな
ローエン…ミクリオ様、先ほどの決断、実にお見事でした
ローエン友を助け、自らの夢も守る…。並大抵の覚悟で出来る事ではございません
ローエン本当にご立派になられました。あなたの従者として、誇りに思います
ミクリオよしてくれ。そこまで言われるとさすがに僕もくすぐったい
ローエンしかし、ついこの間まであんなに小さかったミクリオ様が…。時の流れは早いものですね
ミクリオ一体いつの話をしているんだ…
スレイはは、二人は仲がいいんだな
ローエンええ、長くお仕えさせていただいておりますから。…そうです、スレイさん
ローエン今回の事…本当にありがとうございました
スレイオレですか?そんな、オレは何も──
ローエン…あなたには、我が主の夢を守っていただきました
ローエンミクリオ様が夢にかける情熱は、ずっとお側で見てきた私も存じております
ローエンそして、そこに至るまでの、苦悩や喜びも…。だからこそ、私も深く感謝せずにはいれないのです
スレイ何か変な感じだな…。ミクリオの事で、オレが感謝されるのって
ミクリオ…スレイ、何でそんなに嬉しそうなんだ
ローエン…不思議ですね
ローエンスレイさんとミクリオ様が並んでいらっしゃる姿を見ると、何故かとても安心するのです
ローエンまるでずっと昔から、それが当たり前だったかのように…
スレイ
ローエンスレイさん。ミクリオ様と、これからも仲良くして差し上げてくださいね
スレイはい、勿論です!
ミクリオローエン…僕を子ども扱いするのはやめてくれ
ローエンほっほっほ。さて、お二人には積もる話もおありでしょう
ローエンせっかく人工遺物を語れる者同士が出会えたのですから、存分に語り合うとよろしいかと
ローエン私は仕事に戻りますので、何かあったらお呼びください
ミクリオああ。ありがとう、ローエン
スレイ…ここがミクリオの部屋かあ。今のミクリオは、こんなところに住んでるんだな
ミクリオ今の…?僕は昔から、ずっとこの部屋だけど
スレイあ…そうだよな。ごめんごめん。変な言い方しちゃったな
ミクリオ…?
スレイええっと…それにしても、人工遺物の件、何とか一件落着してよかったな!
ミクリオああ、これで思う存分研究に力を注げそうだ
スレイ…ミクリオは、本当に人工遺物が好きなんだな
ミクリオ昔から妙に心惹かれるんだ
ミクリオ別にきっかけと言えるような印象深い出来事があったわけじゃない
ミクリオただ、気付けばそれが当たり前かのように夢中になっていた
ミクリオ…不思議なものだね。これが好きという事なんだろうけど自分でも首をひねるくらいだよ
ミクリオ…けれど、落ち着くんだ
ミクリオこうしている事が僕が僕であるという証明のような…そんな気がして
スレイ
ミクリオ…こんな事、ローエンくらいにしかしゃべった事がないんだけどね。不思議と君には口が軽くなるみたいだ
スレイ…あのさ、ミクリオ
ミクリオ何だい?
スレイこんな事、オレがいきなり話し出したら、きっと驚くと思うけど…
スレイオレ…実は、別の世界で生きてたんだ
ミクリオ…どういう事だ?
スレイオレだけじゃない。ミクリオも一緒だった。オレ達、幼馴染だったんだ
ミクリオちょっと待ってくれ。わけがわからない…
ミクリオスレイも僕も別の世界の人間で…幼馴染、だって?
ミクリオ本気で言っているのか…?
スレイこんな冗談言わないよ
スレイ…昔オレ達が一緒にいた事があるって話したの、覚えてる?
スレイ小さい頃の話かって言われて咄嗟に頷いちゃったんだけど、…あれ、本当は別の世界の話なんだ
スレイオレ達は、小さい頃からずっと一緒に育って…それから、世界を救うための旅に出たんだよ
ミクリオ君は何を言って…
スレイ…ごめん。いきなりこんな事を話しても、やっぱり信じられないよな
ミクリオ…ああ、僕にそんな記憶はない
ミクリオそもそも僕は、君の事だって全く覚えていないんだ…
スレイだけど、嘘じゃないんだ。ミクリオが覚えていないのは、天帝が全てを変えてしまったからで…
ミクリオ天帝…?つまり君は、ラザリス様が僕の記憶を消したと…そう言いたいのか?
スレイうん。でも、ミクリオだけじゃない。天帝は、多分世界自体を書き換えてる
ミクリオそんな突拍子のない事、一体何を根拠に──
スレイ…「人工遺物」
スレイあれは、天帝が創り変えてしまう前の世界の物なんだ。だから、詳しく説明する事が出来た
ミクリオ人工遺物が?そんな、ありえない…
スレイじゃあ、ミクリオは、オレがどうやって人工遺物の知識を手に入れたと考えてるんだ?
ミクリオそれは…
スレイそれにミクリオはオレの事、知ってただろ
ミクリオいや、あれはあくまでも夢の話で…
スレイ…やっぱり、人工遺物の使い方だけじゃ記憶は戻らないか
スレイ本当は、ミクリオがちゃんと記憶を取り戻すまでは会わないつもりだったんだけど──
スレイミクリオが大変だって聞いて、思わず飛び出しちゃって…これじゃ、作戦も台無しだよな
ミクリオ作戦だって?
スレイ本当は、ミクリオを見つけた時、すぐにでも声をかけたかったんだけど…
スレイ…この世界を見て回る内にそれじゃ駄目なんだってわかったんだ
スレイみんな、ミクリオと同じように元の記憶を失ってて…誰もオレの話を信じてくれなかった
ミクリオ…それはそうだろう。自分にない記憶を思い出せ、なんて言われても、戸惑うだけだ
スレイだから、直接会いにいくのは避けて手紙を送ったんだ
スレイ人工遺物の事をきっかけにミクリオの記憶を取り戻せたらって…
スレイ…と言っても、これはオレが思い付いた作戦じゃないんだけどね
ミクリオ…!仲間がいるのか?
スレイ運よく記憶を取り戻してた仲間と合流出来たんだ。今はわけがあって、別行動中だけど…
ミクリオ
ミクリオ…人工遺物は別世界の物と考えれば、様々な事に説明が付く。理解出来る点があるのも確かだ
スレイミクリオ…
ミクリオでも…信じられない。いや、信じてはいけないんだ
ミクリオラザリス様が、僕達の記憶を書き換えているだなんて…
ミクリオそう…そんな事を言う君は、まるで──
スレイ……咎人みたいだ、って?
ミクリオ…!
ミクリオ…ああ、そうだ。人を惑わす言葉…そう思われても仕方ない事を言ってるんだぞ、君は…
スレイはは、そう…だな。でも、これは全部事実なんだ
ミクリオ…君の目的は何なんだ。どうして、僕にそこまで…
スレイ…多分、今のミクリオにはわからないと思う…
スレイすぐには無理かもしれない。でも、少しでもオレの言葉が届くなら…
スレイミクリオ。オレと一緒に、来てくれないか
スレイ一緒に旅をすれば、オレの言った事が嘘じゃないって証明出来るはずだ
スレイきっとお前の記憶だって取り戻せる。そして、今度こそみんなと世界を──
ミクリオ…少し、考えさせてくれないか
ミクリオいきなり多くの情報が入ってきたから混乱しているんだ。整理するのに時間がほしい
スレイ…そうだよな。わかった、ゆっくり考えてきてくれ
ミクリオ
scene2追憶への行路
ミクリオ──こことは違う別の世界、人工遺物の真実、失われた記憶…
ミクリオ…あんな話、簡単に信じられるわけがない
ミクリオそう…咎人の可能性がある者は、迷わず白き獅子に突き出すべきだ
ミクリオそれなのに、どうして僕は……
スレイミクリオ。オレと一緒に、来てくれないか
ミクリオ…僕は一体、どうすれば…
ローエンおや、ミクリオ様。もうお話を終えられたのですか?
ミクリオローエン…
ローエンてっきり、スレイさんと人工遺物の話に花を咲かせているものと思っておりましたが
ミクリオ
ローエン…表情が冴えませんね。どうかなさいましたか
ミクリオ…すまない。少し、相談に乗ってくれないか
ミクリオ実は、スレイからとんでもない話を聞かされてね…
ローエン──スレイさんは別の世界の住人で、人工遺物はその世界の物だった…ですか
ローエン…それはまた、何とも突拍子もないお話ですな
ミクリオスレイの言う事に不思議な説得力や検証の余地があるのは事実なんだが、あまりに現実離れしていて…
ローエン素直に信じていいものなのか判断しかねている、と。…なるほど、難しい話です
ミクリオスレイの言う話は本当なのだろうか、それとも、彼は……
ミクリオ…ローエン、君はどう思う?
ミクリオ僕の考えは無視していい。この話を聞いてどう感じるのか、客観的な意見がほしい
ローエンそうですねぇ…
ローエン確かに、にわかには信じがたい話だと思います。別の世界というのも聞いた事もありませんし…
ミクリオそうか…
ローエン…ですが、きっと真実なのでしょうね
ミクリオ…!
ローエンそもそも、人工遺物自体が正体不明の不思議な物なのですから、何があってもおかしくありませんし
ローエン何より、スレイさんはミクリオ様をとても大事に思っていらっしゃいます
ローエンそんな彼が、あなたを騙すような事を言うはずがない…そう感じます
ミクリオ…そうか
ローエン先ほど、スレイさんに旅に誘われたとおっしゃっていましたね
ミクリオああ。それがどうかしたか?
ローエンせっかくのお誘いなのです、博物館や貴族達の事は私に任せて、旅に出てみてはいかがです?
ミクリオ…!
ローエン彼と世界各地を回り、人工遺物と世界の謎を調べる事に魅力を感じておいでなのでしょう?
ミクリオそれは、確かにそうだが…スレイの話の事もあるし、僕が長期間屋敷を空けるわけには…
ローエンこちらの心配はいりませんよ。エレノア様やクラトスさんの助けも得られるでしょう
ローエンそれに、人工遺物に詳しいスレイさんと行動を共にすれば、研究もきっと捗ります
ローエンミクリオ様は、思う存分、ご自身の夢を追ってきてください
ミクリオ…僕は…
ローエンミクリオ様。今一度、ご自分の気持ちと素直に向き合ってみてくださいませ
ローエンそうすれば、誰を信じたいのか、そして、何がしたいのか…おのずとおわかりになるはずです
ローエンそれがどのようなものであろうと、このローエン、最後までお力になると誓いましょう
ミクリオ……そうだな。もう少し、考えてみる事にする
ローエンええ。どうか後悔だけはされませんよう、よくお考えください
scene3追憶への行路
スレイ
ミクリオ…待たせたね
スレイミクリオ…!
ミクリオ…単刀直入に言うよ。僕は君の事を咎人だと思っている
スレイそう…だよな
スレイ…ミクリオがオレを警戒するのもわかる。けど、オレは──…!
ミクリオ…でも、僕は、君の話が虚言だと断定する事も出来ないでいるんだ
ミクリオこうして迷っている事自体、咎人である君に惑わされているんじゃないか、と思うほどに…
スレイ…もしかして、オレを白き獅子に突き出そうとしてるのか…?
ミクリオ本来ならそうすべきだろうね…。けど僕は、真実を突き止めるため君に同行する事に決めた
スレイ…!本当か!?
ミクリオああ。旅をしながら、人工遺物や、君の言う別の世界について調べる事にする
ミクリオその中で確証が持てたら君を信じる。だが、もし全てが君の妄言だとわかったら…
ミクリオその時は即座に然るべき処置を取り、咎人として、君を白き獅子に突き出す
スレイ…!
ミクリオ僕はラザリス様に対して、忠誠を誓っている
ミクリオ今回のエレノアの一件を経て、ますますその思いは強くなったと言ってもいい
ミクリオだから、そのラザリス様に仇を為すかもしれない君を、放っておく事は出来ない
ミクリオ僕が同行するのはあくまでも、人工遺物の研究、及び、咎人かもしれない君の監視が目的だ
スレイ監視…
ミクリオ場合によっては、僕と君は敵対する可能性だってあるだろう
スレイそれでもいいよ。ありがとう、ミクリオ
スレイ…そっか…ミクリオと、また旅が出来るんだな…
スレイはは、思い切って話してよかった!記憶をなくしてるのは寂しいけど、やっぱりすごく嬉しいよ
ミクリオ…喜ぶところか?僕は君を警戒しているとはっきり告げたんだぞ?
スレイあはは、そういえばそうだな。でも、オレにとっては、一緒に旅が出来る事の方が大事なんだ
ミクリオ……。君の考えている事は時々よくわからないな
スレイさてと。まずはどこへ向かおうかなー
ミクリオそれなら、市都ファルカームに行ってみないか?
スレイ別にいいけど、何かあるのか?
ミクリオ最近、ラザリス様がその街を視察に訪れたそうだ
スレイそういえば、天帝はすごく視察に熱心なんだっけ
ミクリオああ。だけど、よく考えたら、視察の目的や理由も僕達は何一つとして知らないんだ
ミクリオだからまずは、ラザリス様のお考えを知る事が、スレイの話を見極める鍵になるんじゃないかと思ってね
ミクリオそのためには、実際に視察した街へ行ってみるのが一番だろう
スレイ…天帝について調べる事が、みんなの記憶や世界を取り戻すヒントにもなるかもしれないし…
スレイよし、決まりだ。ファルカームへ向かおう!
スレイ…あ、でも、その前にローエンさんや友達のみんなに挨拶してきた方がいいんじゃないか?
ミクリオいや、その必要はない。既にローエンには話してある
ミクリオそれに、少し街を離れるだけだ。二度と会えなくなるわけでもないし別れの挨拶なんて大げさだよ
ミクリオ…事情を話せば、かえって余計な心配をかける事になるかもしれないしね
スレイ…そっか、そうだよな
ミクリオわかったなら急ごう。あまり時間が経つと、正確な証言が得られなくなってしまうからね
スレイあ、うん…そうだな。それじゃ、出発しよう!
スレイミクリオ…必ず、お前の記憶を取り戻させる
スレイそして今度こそ、みんなで一緒に世界を取り戻すんだ!