| Name | Dialogue |
| scene1 | 運命の交差 |
| カイル | おーい!みんなー!いたら返事してくれー! |
| カイル | ……駄目か。転移してきた森まで戻ってきたはいいけど、やっぱり誰もいないな… |
| カイル | みんな…どこにいるんだろう。無事だといいけど… |
| カイル | それに… |
| | |
| ジューダス | カイル…!後は任せたぞ |
| カイル | ジューダス! |
| | |
| カイル | ジューダス…!世界の結晶化に巻き込まれるなんて… |
| カイル | オレ、目の前にいたのに、ジューダスを助けられなかった…! |
| カイル | 結晶化の原因はきっと、この過去にあるはずなんだ! |
| カイル | 待っててくれ、ジューダス!オレが必ず助けてみせるから! |
| カイル | ……とはいったもののここ本当にオレ達の世界の過去なのかな…? |
| カイル | 「永遠に続く平和と幸福」か…前に来た時にはそんな話、全然聞かなかったのに |
| カイル | それに…祈りを捧げるみんなの姿、何かこう…変な感じだったし… |
| カイル | もしかして、オレだけ転移する場所がズレちゃったとか…? |
| カイル | だったら早くみんなと合流しないと!場所は違っても、きっとこの時代に来てるはずだ! |
| カイル | オレが転移したのは、この先だな。何か手掛かりがあるかもしれないし、よく探してみないと |
| カイル | あの時は変な人達に追いかけられたし、慎重に… |
| カイル | …あれ?何だろう、この看板 |
| カイル | えっと、何なに「この先の立ち入りを禁ずる」…? |
| カイル | こんな森の奥なのに、立ち入り禁止なんて… |
| カイル | うーん、困ったな…。この先を調べたいのに… |
| ??? | そこで何してるんだ?その先は入っちゃ駄目だぞ |
| カイル | あ、すみませ── |
| | |
| カイル | …ああっ!父さ──あ、っと |
| スタン | …父さん? |
| カイル | …あ、い、いえ!驚いてちょっと間違えたっていうか… |
| スタン | 間違い…それって、俺が君くらいの子どもがいる年齢に見えたって事か? |
| カイル | い、いや、そうじゃなくて── |
| スタン | つまり、貫禄があるって事だよな!何だか照れるけど、ありがとう! |
| カイル | …わあ |
| カイル | この感じ、やっぱり父さんだな… |
| スタン | あ、そうそう。そこの看板に書いてある通り、この先は「立入禁止区域」なんだ |
| スタン | 「白き獅子」が管理する特別な場所だからな。無断で入ると捕まっちゃうぞ |
| カイル | 「白き獅子」… |
| スタン | …って、余計なお世話か。誰でも知ってる事だもんな |
| | |
| スタン | 俺はスタン。君は? |
| カイル | えっ… |
| カイル | な…何言ってるんですか!オレですよ、オレ!忘れちゃったんですか!? |
| スタン | …どこかで会った事あったっけ?んー… |
| スタン | もしかして…実は俺の知らない、生き別れの弟だったりするのか? |
| カイル | お、弟!? |
| スタン | はは、冗談だよ。でも何だか、他人とは思えないって感じがしたんだよな |
| カイル | あー、えっと…それは… |
| | |
| ??? | う、うわぁぁ! |
| | ギャオオオッ! |
| | |
| カイル | これは…魔物の声! |
| スタン | それに、人の叫び声も…! |
| スタン・カイル | 助けないと! |
| スタン | お、気が合うな! |
| カイル | そうですね! |
| カイル | って、笑ってる場合じゃないですよ! |
| スタン | そうだった!よし、行こう! |
| scene2 | 運命の交差 |
| カイル | よかった。どこにも怪我はないみたいだね |
| 行商人 | あ、ああ…。君達のお蔭で助かったよ… |
| スタン | 気にしなくていいって。それより街まで送っていくよ |
| 行商人 | いや、それには及ばないよ。ホーリィボトルを持ってるからね |
| 行商人 | 売り物だからってケチらないで、使っていく事にするよ |
| 行商人 | 魔物に襲われるのは、もうこりごりだからね…。それじゃあ、助けてくれてありがとう |
| カイル | あ、うん!気をつけてね! |
| スタン | 無事に助けられてよかったな!それにしても… |
| スタン | 君、すごいな!かなりの剣の腕前じゃないか! |
| スタン | それに、魔物を恐れずに人助けなんて勇気がなくちゃ出来ない事だよ |
| カイル | 当然!オレは、英雄になる男だから |
| スタン | 英雄かぁ!大きな目標だけど、なれる気がする。君なら… |
| スタン | …あれ?そういえばまだ名前、聞いてなかったよな |
| カイル | あ…ええと |
| カイル | やっぱりオレの事、覚えてない…?でも、ここまで綺麗に忘れられる事なんてあるのかな…? |
| スタン | ん?どうかしたか? |
| カイル | あ、いえ!何でもないです |
| カイル | …その…オレ、カイルっていいます |
| スタン | カイル…うん、いい名前だな! |
| スタン | それでカイルはこんなところで何をしてたんだ?うっかりして、って言ってたけど |
| カイル | えっと…人捜しです。実はオレ、離れ離れになった仲間を捜して旅をしてて… |
| スタン | そうなのか…それは大変だな… |
| スタン | …ん?仲間と離れ離れに?そういえば、俺の地元の街にも同じ事を言ってる人がいたなぁ |
| カイル | …え?そ、それ、どんな人ですか!? |
| スタン | 最近やってきた女の人なんだけど、ピンクのぼさぼさした髪で… |
| スタン | あ、そうそう!何かいつも変なもの作ってるんだ |
| カイル | それって…!スタンさん、その人、多分オレの仲間です! |
| スタン | 本当か?よし、それならその人のところまで案内するよ |
| スタン | 市都アルメリアまではちょっと遠いし一人じゃ退屈だったんだ。カイルと一緒なら楽しそうだな! |
| カイル | は、はい!オレも…スタンさんと一緒なら楽しいと思います…! |
| スタン | ははっ、俺達気が合いそうだもんな。じゃあ、早速向かおうか |
| カイル | はい!あっ… |
| カイル | 立入禁止区域…結局、この先には何があるんだろ |
| スタン | カイル?あんまりのんびりしてると日が暮れちゃうぞ? |
| カイル | あ、はい!それじゃあ、行きましょう── |
| カイル | い、っつ…! |
| スタン | カイル!大丈夫か!? |
| スタン | お前…足を怪我してるじゃないか!もしかしてさっきの戦いで…? |
| カイル | へ、平気です!これくらい、何ともないんで! |
| スタン | 平気なわけないだろ!この傷じゃあ、歩くだけでも大変だろうし… |
| スタン | …よし!街までは、俺が背負っていくよ! |
| カイル | えっ… |
| スタン | こうやって、俺もしゃがめば…どうだ?これで乗りやすいか? |
| カイル | …父さんが…俺をおんぶ… |
| スタン | …カイル?どうかしたか? |
| カイル | あ、いえ!だ、大丈夫です!オレ、ちゃんと歩けますから! |
| スタン | アルメリアは結構遠いんだけどな…。本当に大丈夫か? |
| カイル | はい!このぐらい、何ともありません! |
| スタン | …わかった。でも、途中でひどくなったら遠慮せず言ってくれよ |
| カイル | わかりました!オレ、最後まで歩き切りますから! |
| スタン | 無理はしなくていいんだけどなぁ… |
| scene1 | 超絶天才居候様 |
| スタン | ほら、着いたぞ。ここが市都アルメリアだ |
| カイル | うぅ…結局、背負われてしまった… |
| スタン | だから、距離があるって言ったろ?その怪我でここまで歩くのは無茶だったって |
| カイル | でも迷惑かけっぱなしっていうか…オレ、重かったですよね? |
| スタン | いやぁ、軽かったぞ?カイルもう一人分は背負えそうだな |
| カイル | ええっ!?お、オレ、そんなに軽いですか!?結構鍛えてるつもりなのに… |
| スタン | ははっ、ごめんごめん。要するに、気にするなって事だよ |
| スタン | さてと、例の仲間かもって女の人は── |
| カイル | ま、待ってください!街中でまでこの状態ですか!?恥ずかしいから降ろしてください! |
| スタン | 遠慮する必要はないって。恥ずかしさよりも、カイルの足の方が大事だろ? |
| カイル | ま、街の中を歩くくらいなら、大丈夫ですから! |
| スタン | そんなに恥ずかしがる事ないのに…わかった、降ろすよ |
| スタン | でも辛そうだったら無理やりにでも背負うからな? |
| カイル | だ、大丈夫ですって見ててください… |
| カイル | ほら、この通り!ちゃんと歩けますから! |
| スタン | はは、心配しすぎだったみたいだな。それじゃあ、ゆっくり目的地に向かうか! |
| | |
| カイル | ここって宿…ですか? |
| スタン | ああ。俺の友達がやってるんだ |
| スタン | おーい、アスベルー! |
| アスベル | はい、今行きます! |
| アスベル | …って、スタンか。どうしたんだ、急に来て |
| アスベル | …ん?そっちの彼は? |
| スタン | カイルっていうんだ。こっちに戻ってくる時に知り合ったんだけど… |
| スタン | カイルはすごいんだよ!魔物にも恐れず向かって行くし、剣の腕もかなりのものなんだ |
| アスベル | へぇ、知り合ったばかりなのにずいぶん気に入ったみたいだな |
| アスベル | けどわかる気がするよ。二人、何か似てるもんな。兄弟みたいっていうか── |
| カイル | そ、それは…その… |
| アスベル | よろしく、カイル。俺はアスベル。スタンの友人だ |
| カイル | は、はい!よろしくお願いします! |
| アスベル | それで、スタン。俺のところに来たのは、カイルを紹介してくれるためか? |
| スタン | いや、カイルははぐれた仲間を捜して旅してるらしいんだ |
| スタン | それでアスベルのところにいる、あの… |
| アスベル | …ああ、なるほど。彼女が仲間かもしれないってわけか。わかった、呼んでこよう |
| スタン | あ、それと、カイルが足首を怪我してるんだ。出来れば治療も頼む |
| アスベル | それなら彼女に頼むのがいいだろ。回復術が使えるはずだから |
| アスベル | おーい、ちょっと来てくれ! |
| ??? | 何よ~…せっかく実験がいいところだったのに… |
| ??? | …って、カイルじゃない! |
| カイル | やっぱり、ハロルドだったんだな! |
| カイル | よかった…やっと一人仲間を見つけられた… |
| カイル | ねえハロルド、他のみんなは── |
| ハロルド | や~、無事だったのね~!安心したわ~! |
| カイル | う、うん!ハロルドも無事でよかったよ!いろいろ相談したい事があって… |
| ハロルド | うんうん、そうよね。でも、そんなに急ぐ事ないわよ。とりあえず、私の部屋で… |
| カイル | いや、早くみんなを見つけないと!だって、ここって── |
| ハロルド | は~い、そこまで~!ちょっとこっちにいらっしゃい |
| カイル | も、もが!?な、何するんだよ! |
| ハロルド | あっ、アスベル。ちょっとこの子、借りるわよ~ |
| アスベル | あ、ああ。それはいいんだが、カイルは足を怪我して── |
| ハロルド | それなら大丈夫、ちゃ~んと治療しておくから。それじゃ~ね~ |
| スタン | …本当に大丈夫かなぁ… |
| アスベル | さあ…? |
| scene2 | 超絶天才居候様 |
| ハロルド | さ、ここが私の借りてる部屋よ。入って入って |
| カイル | お邪魔しま── |
| カイル | って、何だこの部屋!本当に借りてる部屋なの!? |
| カイル | 変な機械ばかりで、未来のハロルドの部屋、そのまんまじゃんか! |
| ハロルド | そのまんまなわけないでしょ?数も性能も、ちーっとも大した事ないんだから |
| ハロルド | ま、アスベル達に便利グッズを売りつけた程度のお金にしては、上等なものを揃えられたけどね♪ |
| カイル | う、売りつけるって… |
| ハロルド | 宿の売り上げには貢献してるから、オッケーオッケー。次の商品にも期待されてるしね |
| カイル | そ、そっか…。さすがはハロルド… |
| | |
| カイル | …それで、この機械って何なの? |
| ハロルド | 「解析君仮設3号」よ。マナの生成量と異空間における歪みの発生、時間軸の連動計測を── |
| カイル | え、えっと…ごめん。つまりはどういう事? |
| ハロルド | 要するに、多方面から計測してこの世界の変化を調べてるってわけ |
| ハロルド | まぁ、結果も今から説明するけど、その前に… |
| ハロルド | カイル。あんたの目的って、何? |
| カイル | え…それは勿論、あの「結晶化」の原因を調べて、ジューダスを助ける事だよ |
| カイル | だけどまずは、リアラとソフィと合流しないと。二人共、無事だといいけど… |
| ハロルド | ふむふむ…。記憶の改変は受けてないみたいね |
| カイル | えっと…記憶の改変って? |
| ハロルド | …やっぱりわかってなかったか。まあ、それも含めて治療しながら説明するわ |
| カイル | う、うん。お願い |
| | |
| ハロルド | まずは…そうね。簡単なところから一言で言っちゃうと… |
| | |
| ハロルド | 私達の世界は、なくなっちゃったのよ |
| カイル | 世界が…なくなった…!? |
| scene3 | 超絶天才居候様 |
| カイル | ハロルド、どういう事なの?オレ達の世界がなくなったって… |
| ハロルド | 私達が行くはずだった、過去の世界は消滅しているって事 |
| ハロルド | で、その時間軸の延長線上である私達の世界も、消えている可能性が高いのよね |
| カイル | 消滅…!? |
| ハロルド | 正確に言うと、今いるこの世界が元の世界を基礎にして創った新世界、という感じかしら |
| ハロルド | 消滅した、というより、創り変えられた、と言った方がいいかもね |
| カイル | 創り変えられたって…それ、本当なの…? |
| ハロルド | 私の計測を疑ってんの?いくら仲間捜しの片手間とはいえ、こんな事で間違えるわけないでしょ |
| カイル | …っ!?ハロルド、リアラ達の事も探していてくれたの!? |
| ハロルド | 当然でしょ。私を誰だと思ってるのよ |
| カイル | あはは…ごめんごめん |
| ハロルド | 全く…とにかく、今は情報もないし、リアラ達の事は置いておいて話を続けるわよ |
| ハロルド | 私達の住んでいた未来に現れたあの「結晶」とこの新世界に何か関わりがあるのは確かみたいね |
| カイル | あの「結晶」が…!? |
| ハロルド | ま、今の段階じゃまだ憶測の域を出ないけど私の見立てじゃほぼ間違いないわ |
| ハロルド | それと、もう一つ起こっている重大な変化が…人々の記憶の改変よ |
| カイル | …それ、さっきも言ってたよね。記憶の改変って、どういう事なの? |
| ハロルド | この世界の人々は、元の世界の出来事を覚えてないのよ |
| ハロルド | 自分達は、最初からこの新世界で生まれて、育ってきたと思ってる…。まるっと記憶を改変されているの |
| ハロルド | だから世界が創り変えられた事にも気付かないし疑問にも思わないの |
| カイル | …!そういえばオレ、違和感あったんだ |
| カイル | 前にもこの時代に来た事はあったけどその時は「天帝」なんていなかった |
| カイル | なのに、みんな今では当たり前のように受け入れてるから… |
| ハロルド | それが記憶改変よ。今の世界にとって「天帝」がいるのは当たり前になってるって事 |
| カイル | じゃあ…やっぱり、スタンさんも? |
| カイル | オレ、前の世界でさっきのスタンさんに会った事があるんだ |
| カイル | それなのに、オレの事、全然覚えてないみたいだったから… |
| ハロルド | 当然改変されているわね |
| ハロルド | それで?憧れの父親と再会出来た感想は? |
| カイル | それは勿論すごく嬉しかっ…って、ハロルド知ってたの!? |
| ハロルド | あら、やっぱりそうなの。あの青年の名前を聞いた時からそうだろうとは思ってたのよ |
| カイル | ハロルド… |
| ハロルド | シルヴァラントに名を残すほどの英雄もここでは単なる一般市民ってわけね |
| ハロルド | 未来では、行方不明になった後でさえ絶大な人気を誇っていたのに |
| カイル | …うん。俺も、過去に戻って父さんにまた会えて嬉しかったんだけど… |
| カイル | …ねえ、ハロルド!どうにかして父さんの記憶を取り戻す事は出来ないの? |
| ハロルド | 記憶を取り戻す人はいるみたいよ。でも方法はわからないし何よりも危険よ |
| カイル | 危険?どうして? |
| ハロルド | …あんた、この世界に来てから「咎人」って言葉に聞き覚えない? |
| カイル | 咎人…?あっ、そういえば生誕祭で捕まった人の事をそんなふうに言ってたような…? |
| ハロルド | なら話は早いわね。その咎人こそが、元の世界の記憶を取り戻した人よ |
| カイル | …!それ、本当なの!? |
| ハロルド | 本当よ。何ならこの結論に達した理由をいちから説明してあげてもいいけど…聞きたい? |
| カイル | む、難しい話はちょっと… |
| ハロルド | じゃ、重要な事だけ。どうやら天帝は、片っ端から咎人を捕らえているらしいわ |
| カイル | なっ…! |
| ハロルド | 記憶を取り戻しても、咎人だとばれて捕まったりしたら…何されるかわかったもんじゃない |
| ハロルド | だからカイル。悪いけれど、スタンの記憶は、一旦諦めなさい |
| カイル | そんな事言われたって…放っておけるわけないよ! |
| カイル | オレだったら、リアラや、みんなとの思い出を変えられて生きていくのなんて嫌だ |
| カイル | だから…父さんもアスベルさんも記憶を取り戻してあげたいんだ! |
| ハロルド | スタンはともかくアスベルも?あんた、アスベルとも知り合いなの? |
| カイル | うん、アスベルさんはリチャードさんの親友だよ |
| カイル | オレも何度かウィンドルの王宮で会った事があるし |
| ハロルド | あんた、いつの間に王宮なんか出入りするようになったわけ? |
| カイル | 前にリチャードさんが星のカケラの邪念にとりつかれた事があっただろ |
| カイル | それを救って以来、時々王宮に招いてもらってたから |
| ハロルド | なーるほど、ソフィのオマケってわけね。あの子、リチャード王と仲良かったし |
| カイル | オマケって!オレだってリチャードさんと友達だし! |
| ハロルド | はいはい。どっちにしろ、記憶を取り戻すなんて駄目よ |
| ハロルド | 今、下手に動いて天帝に捕まったりしたら本末転倒でしょ。リアラ達を捜す事も出来なくなるわよ |
| カイル | リアラ… |
| カイル | …わかったよ。今はリアラ達を見つける事に専念する |
| ハロルド | よろしい。それじゃ、しばらくはここを拠点にして情報を集めましょ |
| scene1 | 仮初の縁 |
| ハロルド | お待たせ~。ばっちり治療が終わったわよ~ |
| スタン | お、ようやく戻ってきたか!カイル、もう大丈夫なのか? |
| カイル | はい、すっかり治りました! |
| アスベル | 結局、ハロルドはカイルの仲間だったって事でいいんだな? |
| カイル | はい、そうです!それで、アスベルさんにも聞いておきたいんですが… |
| カイル | オレ達の仲間について、何か心当たりとか── |
| ハロルド | ちょい待ち!カイル!こっちに来なさい! |
| カイル | な、何だよ。どうかした? |
| ハロルド | 正直、私もまだこの世界に来てからそれほど時間が経ってないから、掴めていない情報も多いの |
| ハロルド | だから…考えなしに質問ばかりするのはやめておいた方がいいわよ |
| カイル | えっと…どういう事? |
| ハロルド | つまりね…何が原因で咎人だと思われるのか、わからないって事よ |
| ハロルド | ただの質問が、この世界の禁忌に触れてしまって、それが原因で咎人と思われる可能性だってある |
| ハロルド | 今は必要だから仕方ないけど、本来なら私達が仲間を捜してる事すら隠しておくべきなんだから |
| カイル | いやいや…ただ仲間の居所を聞いただけで、咎人扱いされるなんて… |
| ハロルド | ないって、絶対に言える?私達はこの世界について、まだほとんど何も知らないのよ? |
| カイル | うっ…確かにそうだけど… |
| ハロルド | リアラ達の事は私の方でも情報を集めておくからそれまでは大人しくしてなさい |
| カイル | うぅ…。でも、こんな時にオレだけじっとなんかしてられないよ |
| カイル | オレも街で情報を集める!ハロルドには迷惑かけないって約束するから…! |
| ハロルド | あのね…私の話聞いてた? |
| カイル | うん。だからこそ、こんな危険な世界にリアラやソフィを放っておけないよ |
| カイル | それに…ジューダスの事だってある。オレは少しでも早くジューダスを助けだしたいんだ |
| ハロルド | はあ…。わかったわ。言われて諦めるあんたでもないし、街で情報を集めるのは許してあげる |
| ハロルド | ただし、細心の注意を払う事。いいわね? |
| カイル | うん!ありがとう、ハロルド |
| ハロルド | あ、話を中断してごめんねー。さ、どんどん続けてよ |
| アスベル | あ、ああ…えーと、仲間の心当たりの話だったよな |
| アスベル | 残念だけど、ハロルド以外でそれらしい人物はわからないな |
| カイル | そうですか… |
| スタン | そう落ち込むなって!仲間捜しなら、俺も協力するから |
| カイル | 本当ですか!? |
| スタン | ああ!友達が困ってるっていうのに放ってなんておけないからな |
| ハロルド | …ふーん、やっぱり似てるわ |
| スタン | ん?何だって? |
| ハロルド | 何でもないわ。続けてどうぞ? |
| スタン | ん、ああ。それでカイル。仲間はまずどこで捜すつもりなんだ? |
| カイル | えっと…最初はこの街で捜すのがいいかなって思うんですけど… |
| スタン | この街からか。だったらこの街にいる間は、俺の家に寝泊まりすればいいよ |
| カイル | え、いいんですか!? |
| ハロルド | ちょ、ちょっとカイル──…! |
| スタン | 勿論だよ!困った時はお互い様だろ? |
| カイル | やった!スタンさんと一緒に過ごせるなんて夢みたいだ…! |
| カイル | スタンさん、よろしくお願いします! |
| ハロルド | あー…やっぱり、こうなるわよね… |
| | |
| | ガチャ… |
| ??? | ただいま。アスベル、今帰ったよ |
| カイル | …え?あなたは…! |
| scene2 | 仮初の縁 |
| ??? | 賑やかだな。お客さん…ではないみたいだけど |
| アスベル | おかえり、リチャード! |
| スタン | 帝都まで商品の買い付けに行ってたんだってな!お疲れ様! |
| カイル | やっぱり…リチャード、さん…! |
| ハロルド | …わかってるわよね? |
| カイル | も、勿論。リチャードさんとは初対面、でしょ? |
| アスベル | カイル、彼はリチャード。俺と一緒にこの店を経営しているんだ |
| カイル | は、はじめまして、リチャードさん。カイルです |
| リチャード | はじめまして、カイル。よろしく頼むよ |
| アスベル | カイルはスタンが連れてきたんだが、どうやらハロルドが捜していた仲間の一人らしい |
| スタン | アスベルとリチャードはすごく仲がいいんだ!昔からずっと一緒にいるしな |
| リチャード | まあ、僕はアスベルには助けられてばかりだけどね |
| リチャード | 今だって、親の商売を引き継いだ僕を助けてくれているし |
| リチャード | 正直、僕一人ではきっと店を維持するのも難しかったと思うよ |
| リチャード | いつもありがとう、アスベル。感謝しているよ |
| アスベル | 何をいってるんだよ。俺達は家族みたいなもんだろ。気にしないでくれ |
| リチャード | 家族か…。ああ、そうだな |
| カイル | こんなリチャードさん見た事ないや…やっぱり、未来とは少し雰囲気が違うな… |
| アスベル | カイル、どうしたんだ? |
| カイル | い、いや、何だか二人を見てると仲間の事を思い出しちゃって… |
| スタン | へぇ、って事はカイルの仲間達もすごく仲がいいんだな! |
| カイル | はい、それは勿論! |
| リチャード | …仲間か。そういえば、まだ全員は見つかっていないんだな |
| リチャード | 仲間の事は僕も気にかけておこう。何かあればすぐに知らせる |
| カイル | はい、ありがとうございます! |
| アスベル | 結構、話し込んでしまったな。そろそろ仕事に戻らないと |
| リチャード | そうだな。買い付けた商品の確認もある。アスベルはそちらを頼む |
| アスベル | ああ、わかったよ |
| リチャード | 僕達は仕事に戻るが何か協力出来そうな事があれば言ってくれ |
| スタン | さて、それじゃあ俺達も帰るか! |
| カイル | はい! |
| ハロルド | あっ、ちょっと、カイル。待ちなさい |
| カイル | わ、っとと。ど、どうかした? |
| | |
| ハロルド | もう一度忠告しておくけどこっちの世界の人々と不要な縁を結ぶのはやめておきなさい |
| カイル | 不要って…どうしてさ |
| ハロルド | 私達は元の世界を取り戻すために動く事になる |
| ハロルド | でもそれは、今ここにいる記憶を改変された人達を消滅させるという事なのよ |
| カイル | そ、それは…! |
| ハロルド | 私達は、いつか彼らと別れなければいけない |
| ハロルド | 仲良くなればなるほどその時がつらくなるわよ |
| カイル | …… |
| ハロルド | そうならないためにもカイル、特にスタンとは距離を置きなさい |
| カイル | う、うん。わかった… |
| カイル | オレだって、父さんとは敵対したくないから |
| ハロルド | そう… |
| スタン | おーい、カイル!まだかー? |
| カイル | あ、今、行きます! |
| カイル | それじゃあね、ハロルド! |
| ハロルド | …本当に大丈夫なのかしら? |
| scene1 | 黄昏に陰る心 |
| カイル | ふぁ、あ…おはよーございます… |
| スタン | おっ、起きたな!朝ごはん、出来てるぞ |
| カイル | う、ん…朝ごはん… |
| カイル | ──朝ごはん!? |
| カイル | す、すみません!オレ、居候なのに全然手伝わなくて! |
| スタン | いいっていいって。それにしても、カイルも朝が弱いんだな |
| カイル | うぅ…。そうなんです… |
| スタン | 実は俺もなんだ…。朝起きられなくて、本当に困っちゃうんだよなぁ |
| スタン | どうにかしなくちゃとは思うんだけどさ… |
| カイル | 父さんも…。そっか…オレの寝起きの悪さって本当に父さん似なんだ… |
| スタン | …まあ、悩んでても仕方ないし、飯にするか! |
| カイル | はい、いただきます! |
| スタン | とは言っても、俺も起きたばかりだから大したものは作ってないんだけどな |
| カイル | そんな事…!すごく嬉しい、です… |
| スタン | はは、そうか?それじゃ、遠慮なく食べてくれ |
| | |
| スタン | それで、カイルはこれからどうするんだ? |
| カイル | 仲間の情報はハロルドが集めてくれるって言ってるんですけど… |
| カイル | でも、じっとしていられませんし、オレも街で聞き込みをしようと思ってます |
| スタン | そっか…。そうだよな。俺も友達とはぐれちゃったら居ても立ってもいられないと思う |
| スタン | よし!そういう事なら俺も一緒に行くよ!協力するって言ったしな! |
| カイル | えっ!?でも、そんなの悪いですよ! |
| カイル | 家に置いてもらってるだけでありがたいのに… |
| スタン | そうは言うけど俺もカイルの事が心配なんだよ |
| カイル | …オレ、そんなに頼りないですか? |
| スタン | いや、そういうわけじゃないんだ。だけど、最近、咎人の話をよく聞くからな |
| スタン | 生誕祭で騒ぎを起こした咎人は脱走したらしいし、カルミナ街でも咎人が出たらしいんだ |
| カイル | 咎人…ですか |
| スタン | ああ。そんな状態だから、用心するに越した事はないだろ?咎人は、人を惑わすと言うし |
| | |
| スタン | 早く咎人が捕まってくれれば安心出来るんだけど |
| | |
| カイル | …… |
| カイル | …オレ、やっぱり、一人で行きます! |
| スタン | えっ?でも、街には入り組んだ通りもあって慣れてないと迷いやすいし… |
| カイル | と、とにかくオレ一人で大丈夫ですから!ごちそうさま! |
| スタン | …カイル、急にどうしたんだ…? |
| | |
| カイル | …急に飛び出したりして父さん心配してるかな…? |
| カイル | ここは一回戻って、謝った方が… |
| カイル | いや、駄目だ!深く関わるなってハロルドも言ってたじゃないか! |
| カイル | それに… |
| | |
| スタン | 早く咎人が捕まってくれれば安心出来るんだけど |
| | |
| カイル | 記憶を書き換えられている今の父さんにとって、咎人は悪でしかないんだ… |
| カイル | 少し距離を置かないと… |
| カイル | …オレの今やるべき事は、リアラ達を捜す事。…とにかく聞き込みだ! |
| scene2 | 黄昏に陰る心 |
| カイル | …迷った |
| カイル | オレ、どっちから来たっけ?全然、覚えてない… |
| カイル | はぁ…オレ、何やってんだろ。結局リアラ達の情報も、何一つ見つけられなかったし… |
| カイル | ジューダスの事だって早く助け出さなくちゃいけないのに… |
| 男の子 | パパ、早く早く! |
| 男の子の父親 | こらこら!あんまり急ぐと転ぶぞ! |
| 男の子 | だったらパパが手、繋いでて!いいでしょ? |
| カイル | …親子、か |
| カイル | オレだって、今は父さんと一緒だけど… |
| カイル | でも、今の父さんは本当の父さんじゃないんだよな… |
| カイル | 今の父さんにかけられた言葉も…背中の温もりも… |
| カイル | 父さんとの生活も…本当じゃないんだ |
| カイル | …オレが、帰る場所なんて… |
| カイル | やっぱり、このまま一人でも街を出てリアラ達を捜した方が── |
| ??? | カイル、ここにいたんだな |
| カイル | …!スタンさん… |
| | |
| スタン | なかなか戻ってこないから捜してたんだ |
| カイル | オ、オレをですか…? |
| スタン | 勿論。心配したんだぞ?さあ、家に帰って一緒に温かい飯でも食べよう! |
| カイル | …それは…でも… |
| スタン | …… |
| スタン | …なあ、カイル。ちょっといいか? |
| カイル | えっ? |
| スタン | カイルが仲間を心配する気持ちはわかる |
| スタン | でも、同じように俺もカイルの事が心配なんだ |
| カイル | オレの事が… |
| スタン | 何があったかは、今は聞かない。でもな、あんまり一人で抱え込みすぎるなよ |
| スタン | 俺もハロルドも、アスベル達もいる。辛い時は、頼ってくれていいんだ |
| スタン | カイルは、一人じゃないんだからさ |
| カイル | …!一人じゃ、ない… |
| | |
| カイル | …はい。スタンさん、ありがとうございます! |
| スタン | いいって。それじゃ、帰ろう!晩飯は気合入れるぞ |
| スタン | あ、そうそう、明日は何を言われようと、カイルについていくからな |
| カイル | 父さんは…記憶がなくたってやっぱり父さんなんだ… |
| カイル | 偽物なんかじゃない…。むしろ、本当の事を言えてないのはオレの方だ… |
| カイル | 仕方がない事だってのはわかるけど…でも…! |
| カイル | 本当に…それでいいのかな…? |
| scene1 | 信じる強さ |
| スタン | よし、それじゃ、早速聞き込みをはじめるとしようか |
| カイル | はい、そうですね… |
| スタン | まあ、今のところ何の情報もないから地道にやるしかないな |
| スタン | 絶対に、カイルの仲間の情報を見つけような! |
| カイル | …… |
| スタン | うーん…やっぱり簡単には見つからないな… |
| スタン | 少し休憩にするか。ご飯も買ってきた事だし |
| カイル | はい… |
| スタン | ほら、カイル。近くの屋台で買ってきたんだけど美味いんだ、これ! |
| カイル | あ、はい…。ありがとうございます… |
| スタン | …なあ、カイル。どうしたんだ?どうも今日は、元気がないというか… |
| スタン | もしかして、お腹でも痛いのか? |
| カイル | ち、ちがうんです!えっと、その…仲間達の事が心配で…! |
| スタン | …そうだよな |
| スタン | なあ、カイルの仲間ってどんな人達か、聞いてもいいか? |
| カイル | …あ、はい、勿論… |
| カイル | 一緒に旅をしていたのは、ハロルド以外だとリアラとソフィっていう女の子で… |
| カイル | みんな…オレの大事な仲間なんです |
| カイル | ソフィは、身体は細いけど、すっごく強いんですよ |
| カイル | 自分よりずっと大きな魔物もどかんと殴り飛ばしちゃうし、頼りになる子なんです |
| スタン | へぇ…すごいんだな!もう一人の仲間…リアラだっけ?そっちはどんな人なんだ? |
| カイル | リアラは…オレにとって一番特別な子です |
| カイル | とにかくすっごく可愛いんだ!オレの夢も応援してくれるし… |
| カイル | リアラと出会えたから、今のオレはここにいるんです…だから…! |
| カイル | 何があっても絶対にオレはリアラを守るって決めたんです! |
| スタン | …そっか。とても大事な人なんだな |
| カイル | はい! |
| スタン | やっぱりカイルはすごいな… |
| カイル | …え? |
| スタン | その歳で、守りたい人がいて…守るっていう覚悟もある。それってすごい事だと思うぞ? |
| スタン | なかなか出来る事じゃないよ。もしかして、その歳で旅をしてるのもリアラって子のためなのか? |
| カイル | …いえ。オレには、オレのための旅をする理由があるんです |
| カイル | オレ…父さんに憧れてて… |
| カイル | オレの父さんはすごいんです。英雄として、みんなに尊敬されてて… |
| カイル | それに…実際に会ってみると、強くて優しくて温かくて… |
| カイル | オレ、そんな父さんと同じように旅をして… |
| カイル | 父さんのような、英雄になりたいんです |
| スタン | …そうか。息子からそんな風に尊敬してもらえるなんて父親は嬉しいだろうな |
| カイル | そう…なのかな? |
| スタン | そりゃそうさ |
| スタン | 少なくとも、俺にそんな息子がいたらすごく嬉しいと思う |
| カイル | …ありがとうございます。すごく…すごく嬉しいです。でも… |
| カイル | …… |
| スタン | …。カイル、このあとちょっと俺に付き合ってくれないか? |
| カイル | へっ?は、はい…それはいいですけど…? |
| スタン | よかった!実は街はずれに俺のお気に入りの場所があるんだ |
| スタン | きっといい気晴らしにもなると思うから。さぁ、行こう |
| scene2 | 信じる強さ |
| スタン | ほら、カイル。着いたぞ |
| カイル | ここが…スタンさんのお気に入りの場所… |
| スタン | いいところだろ?何だかここだけ、時がゆっくり流れているような感じがして… |
| カイル | はい。わかる気がします… |
| | |
| スタン | …なあ、カイル。もし、悩み事があるなら俺に相談してくれよ |
| スタン | 俺を父親だと思ってさ。男同士、腹割って話そう! |
| カイル | スタンさん… |
| カイル | …実はオレ、大切な人にずっと隠し続けてる事があるんです |
| カイル | その人は、オレにとってかけがえのない人で…オレにすごくよくしてくれるんです |
| カイル | でも、だからこそ、秘密を隠し続けている事が辛くて… |
| スタン | …それでも隠してるって事はそうしなきゃならない事情があるって事か? |
| カイル | …はい |
| カイル | 秘密を話したら、きっと今のままの関係じゃいられないから…それが、すごく怖くて… |
| カイル | それに、その秘密を話してしまうと捜している仲間達にも迷惑がかかってしまうかもしれなくて |
| カイル | でも、秘密を隠したまま付き合うだなんて本当に正しい事なのかな…? |
| | |
| スタン | …… |
| カイル | って、こんな事言われてもスタンさん、困っちゃいますよね… |
| スタン | そんな事ない。俺、難しい事はあんまりわからないけど… |
| スタン | 大事なのは、「正しい」と信じる心の強さじゃないかな |
| カイル | 信じる心…? |
| スタン | カイルは誰かを傷つけるために隠し事をしてるんじゃないんだろ |
| スタン | そんなカイルの信じる相手ならその気持ちをわかってくれるはずだ |
| スタン | 少なくとも俺なら、絶対に嫌いになったりしない! |
| カイル | スタンさん… |
| スタン | だから、その相手を信じて──相手を信じた自分を信じるんだ |
| スタン | そうすれば、自分にとって本当に「正しい」と信じられる事がわかると思う |
| カイル | 相手を信じたオレを信じる… |
| カイル | …… |
| カイル | ──わかりました。オレ、もっと考えてみます! |
| スタン | ああ。でも考えて考えて、わからない事があったら… |
| スタン | 俺でもハロルドでも、誰でもいい。ちゃんと頼ってくれよな |
| スタン | 最後はきっと上手くいくからさ! |
| カイル | …はいっ!ありがとうございます |
| ハロルド | あ、いたいた!もう、大人しくしてなさいって言ったでしょ! |
| カイル | ハロルド!?そんなに慌ててどうしたの? |
| ハロルド | はぐれた仲間の情報が手に入ったの! |
| カイル | ほんとに!?詳しく教えてよ! |
| スタン | よかったな、カイル! |
| カイル | はい! |
| ハロルド | …と、その前に急いだから喉が渇いたわね… |
| ハロルド | スタン、飲み物を用意してきてくれないかしら |
| スタン | お、おお!わかったよ |
| ハロルド | さてと、今の内に話したい事があるの |
| | |
| ハロルド | 旧市街に黒髪で細身の少年がいるらしいの。二本の剣を使うって話よ |
| カイル | 黒髪…二本の剣…それってもしかしてジューダス!? |
| カイル | あ、いや…でも、それだけでジューダスだって判断するのは… |
| ハロルド | それから目つきが悪くって、ずっと不機嫌そうな顔をしてて、話しかけるとさらに不機嫌になるとか |
| カイル | ジューダスだ、間違いない! |
| カイル | あれ…?でも、ジューダスは未来の世界で結晶に包まれたはずだよね… |
| カイル | って事は別の人なんじゃ…? |
| ハロルド | それがそうとも限らないのよ。言ったでしょ、この新世界は元世界を土台に創られてるって |
| カイル | う、うん…えっと…マナ計測だかをして、確かめた…んだっけ? |
| ハロルド | そ。ただ土台にすると言っても何らかの方法で元世界の情報を取得しなきゃいけないはずなのよね |
| ハロルド | そんで、世界を創り変えるなんてとんでも現象を起こすんだから、それ相応の前触れがあったはず |
| ハロルド | 結果には必ず原因が付随するわ。私達が今まで知り得た情報の中で原因に足り得るものと言ったら… |
| カイル | ちょ、ちょっと待って!難しくてよくわからないよ! |
| ハロルド | もう、しょうがないわね。つまり、あの結晶がこの世界を創りあげた犯人で… |
| ハロルド | そんでジューダスも、結晶に覆われた事で、こっちの世界に来ている可能性があるって事よ |
| カイル | なるほど!つまり、旧市街に行けばジューダスに会えるって事だよね! |
| ハロルド | ま、あくまでも可能性だけどね。会いに行ってみる価値ぐらいはあるんじゃないかしら |
| カイル | それなら迷う必要なんてない。…行ってみるよ、旧市街へ! |
| scene1 | 解き放たれる想い |
| スタン | 着いたぞ、カイル。ここが旧市街だ |
| カイル | ここに、ジューダスが…? |
| カイル | …何か思ってた以上に寂しそうなところですね |
| スタン | 今は誰も住んでいないからな。俺も、旧市街に来るのは初めてだし… |
| スタン | …でも、何でだろう…この街並み、何か懐かしい感じがするんだよなぁ |
| カイル | 確かに…言われてみればオレも見覚えがあるような… |
| スタン | …まあ、いいや。今はそんな事よりカイルの仲間を捜さないとな! |
| カイル | は、はい!ありがとうございます! |
| スタン | 人影一つないし、誰かいればすぐわかると思うんだけど──…ん?あそこに誰か… |
| カイル | ジューダス…!?おーい、待ってくれよ! |
| スタン | あっ、おいカイル!一人で行くなって── |
| ??? | …… |
| カイル | ジューダス! |
| カイル | …って…あれ…?ジューダスじゃ、ない…? |
| ??? | …うるさい奴だな。向こうへ行け。人違いだ |
| カイル | た、確かに仮面もしてないし、雰囲気も何か違う気がするけど…でも… |
| カイル | ねぇ、本当にジューダスじゃないの?もしかして、記憶改変の影響で何か… |
| ??? | 記憶だと…?お前、まさか… |
| | |
| スタン | やっと追いついた。カイル、この人がお前の捜していた「ジューダス」なのか? |
| ??? | …! |
| スタン | …な、何か睨まれてるぞ、俺。えっと…ジューダス? |
| ??? | …二人そろって何だ。そんな名前など聞いた事がない |
| リオン | 僕の名前は…リオンだ |
| スタン | そうか、人違いだったのか。残念だったな、カイル……カイル、どうしたんだ? |
| カイル | リオン…って。もしかして、あのリオン・マグナス…? |
| リオン | …何? |
| スタン | ん?ジューダスではないけど、カイルの知り合いなのか? |
| カイル | あ、いやその…父さんの親友に、同じ名前の人がいて… |
| リオン | …お前は… |
| スタン | へー、あのすごい親父さんの。って事は、リオンもすごい人なのか |
| | |
| リオン | …何だ、その手は |
| スタン | 何って、握手だよ。俺はスタン、よろしくな! |
| リオン | …ふん。相変わらず能天気な奴だ |
| スタン | 相変わらず…?俺、お前とは初めて会ったと思うんだけど… |
| スタン | …でも、何でだ…?何だか、前にも会った事があったような気が… |
| リオン | …… |
| リオン | …話にならんな。これ以上、お前達の相手をするつもりはない |
| スタン | お、おい!ちょっと待てよ!もう少し話ぐらい── |
| リオン | そんな暇、僕にはない |
| スタン | あ、おい!待ってくれって! |
| リオン | …!いい加減にしろ、いつだってお前はそうだ! |
| スタン | いつだって…? |
| スタン | …リオン、何言ってるんだ?俺達、初対面だろ…? |
| | |
| リオン | …… |
| リオン | ──いや、違う。僕はお前を知っている |
| リオン | こうしてお前を前にしたら嫌でも思い出す…その、能天気で図々しい性格を |
| スタン | …?さっきから何を言ってるんだ…? |
| カイル | まさか…リオンさん、あなたは… |
| | |
| リオン | ああ、そうだ。僕は咎人だ。だからどうした? |
| スタン | 咎人…!なら放っておく事は出来ない。ここで捕まえる! |
| リオン | そうか。だが、お前に付き合う義理はない |
| スタン | 待て、リオン!このまま逃がすわけには── |
| リオン | 近寄るな。これ以上、僕に近寄るようなら… |
| | シャキン… |
| カイル | え…!?リオンさん!?どうして剣を抜く必要が…! |
| スタン | ……。出来れば手荒な真似はしたくなかったけど… |
| | チャキ… |
| カイル | ス、スタンさんまで…! |
| リオン | …くだらん。さっさと片づけてやる |
| スタン | そう簡単には行くものか! |
| カイル | このままじゃ…このままじゃ二人が戦う事に…!本当は親友同士なのに! |
| カイル | オレは…オレはどうしたらいいんだ…? |
| カイル | あの二人が戦うなんて、絶対に正しくないのに…! |
| | |
| スタン | そうすれば、自分にとって本当に「正しい」と信じられる事がわかると思う |
| | |
| カイル | 自分が「正しい」って信じられる事… |
| カイル | …… |
| カイル | そんなの、もう決まってる…! |
| カイル | 二人共…待って! |
| scene2 | 解き放たれる想い |
| カイル | 待って、リオンさん!剣を収めてください! |
| スタン | 何をしているんだ、カイル!リオンは咎人だ、それ以上近付くな! |
| カイル | …!スタンさん…違うんです、これは── |
| リオン | …… |
| リオン | …何故、スタンに味方する?お前も咎人だろう? |
| | |
| スタン | え…? |
| カイル | …… |
| | |
| スタン | 嘘だろ…いや、嘘だ!それこそ、咎人の妄言に決まってる…! |
| カイル | …ううん、リオンさんの言う通りなんです。オレは…咎人です |
| スタン | なっ…!そんな…どうして… |
| スタン | …どうしてだ?どうして嘘をついてたんだ…? |
| スタン | 短い間だったけど俺はカイルの事を本当の家族みたいに思ってたんだ! |
| スタン | それなのに…何で…! |
| カイル | …スタンさん。今まで黙ってて、ごめんなさい |
| カイル | オレもスタンさんと同じ気持ちです。スタンさんの事、本当の家族だって思ってた… |
| カイル | ずっと、このままスタンさんと一緒にいられたらなって |
| カイル | …だから、本当の事が言えなかった。オレが咎人って事を話したら、この関係は壊れちゃうから… |
| スタン | ………… |
| カイル | でも、「自分と相手を信じろ」って言ってくれたスタンさんの言葉… |
| カイル | あの言葉があったから、オレは決意出来たんです |
| スタン | 俺の言葉が…? |
| カイル | はい。咎人だって事が知られたらもう今のままじゃいられなくなるってわかってました |
| カイル | だけど…だから黙ってるっていうのはやっぱり違うって思って |
| カイル | もしこれで咎人として追われる事になっても…オレは後悔なんてしません |
| カイル | オレは…オレが信じた「正しい」と思う事をして仲間達を助けます |
| カイル | それがきっと…英雄なんだ! |
| スタン | カイル… |
| リオン | …… |
| | |
| | ギャオオオッ! |
| カイル | な、何?魔物!?どうしてこんなところに…!? |
| リオン | …人のいなくなった街は、格好の住処だったというわけか |
| リオン | まずは先にこいつらを片付ける必要がありそうだ |
| カイル | くっ…!こんな時に! |
| scene3 | 解き放たれる想い |
| カイル | はあっ! |
| | ザシュ! |
| リオン | ふっ…! |
| | ザシュ!ザシュ! |
| リオン | …面倒だな。数ばかり多くてきりがない |
| カイル | くそ、このままじゃ…! |
| スタン | くっ… |
| カイル | …… |
| カイル | スタンさん…!スタンさんはあの時、オレを信じるって言ってくれました |
| カイル | だから、今度はオレがスタンさんを信じます! |
| スタン | カイル…一体何を… |
| カイル | こっちはオレ一人で食い止めます!その隙に、二人は魔物の手薄なところを切り開いてください |
| スタン | なっ…!カ、カイル! |
| スタン | まさか、あの数の魔物を一人で相手する気なのか!?そんなの無茶だ…!! |
| スタン | …けど…カイルは…咎人、で… |
| リオン | …… |
| リオン | カイル…と言ったか。あいつ、少しも後ろを警戒していないな |
| リオン | お前に後ろから斬られるとは微塵も考えていないんだろう。全くおめでたい頭だ… |
| スタン | カイル…。お前は、俺を信じて… |
| スタン | …! |
| スタン | うっ…何だ…?一体何が──… |
| | |
| スタン | …ゼロス、お前しかいないんだ |
| スタン | お前なら絶対に開けられるって、俺は信じてる。だから、…ここは頼む! |
| スタン | みんな、行こう!急がないと…! |
| | |
| スタン | …今のは…?何なんだ…ゼロスって誰だ… |
| スタン | ぐっ…頭が…! |
| | |
| カイル | …っ、スタンさん!?どうしたんで──っ、しまった…! |
| | ザシュ! |
| リオン | 戦闘中に余所見をするな |
| カイル | リオンさん…!ありがとうございます! |
| | |
| スタン | カイル…リオン…ぐうっ!ま、また…! |
| | |
| スタン | 大丈夫か、スレイ! |
| スレイ | ああ、助かったよ。ありがとう、スタン |
| スタン | 気にするな。互いに助け合わないと |
| | |
| スタン | く、ぅ…! |
| スタン | またさっきと同じ…!これは、いつの話だ…?俺は…俺はこんなの知らない…! |
| | |
| カイル | リ、リオンさん!スタンさんの様子が…! |
| リオン | まさか、記憶を取り戻しかけているのか…!? |
| カイル | 記憶を…!? |
| | |
| スタン | はぁ…はぁ…俺、どうしちゃったんだよ… |
| スタン | 頭の中に、知らない人達が…知らない、俺自身の言葉が、どんどん浮かんでくる… |
| スタン | 俺は…俺って、いったい…! |
| カイル | ──スタンさんっ、オレ、信じてますから! |
| スタン | …!カイル…? |
| カイル | オレは何があってもスタンさんを信じ続けます…! |
| カイル | 記憶があってもなくても…スタンさんの心は変わらない事、オレは知ってますから! |
| カイル | だから…絶対に、大丈夫です! |
| スタン | 俺を、信じて──……うっ! |
| | |
| スタン | 心配いらないさ。ゼロスなら、必ずやってくれる |
| スタン | ああ見えてやる時はやるし、頼りになる奴だって事、俺は知ってる |
| スタン | 俺はゼロスを信じてる…!だから、絶対大丈夫だ! |
| | |
| スタン | そうだ…俺は… |
| | |
| カイル | このぉぉぉ! |
| リオン | はぁぁっ! |
| カイル | …はぁはぁ、ちょっと数が多すぎるな。このままじゃ、不味いかも… |
| カイル | …くっしまっ── |
| | |
| スタン | させるかああっ! |
| | ズバッ!! |
| | |
| スタン | 悪い、遅くなった! |
| カイル | スタンさん…! |
| スタン | 最後はきっと上手くいく…。ははっ、俺が言った言葉だったな。けど本当にその通りになったみたいだ |
| スタン | ありがとう、カイル。お蔭で全部思い出せた! |
| カイル | 記憶を…!よかった…本当に…! |
| スタン | リオン、協力してくれ!三人で追い払おう! |
| リオン | 全く…手のかかる奴だ |
| スタン | ははっ、迷惑かけたな。でもいつもの事だろ? |
| リオン | …ふん。そうだな、お前はそういう奴だ。ならいつも通り、さっさと片づけるぞ |
| スタン | ああ!カイルもいけそうか? |
| カイル | は、はい!大丈夫です! |
| スタン | それじゃ、一気に倒すぞ! |
| scene1 | 取り戻したもの |
| リオン | …ふん。数は多かったが、大した事はなかったな |
| スタン | リオンがいてくれたお蔭だよ。それと… |
| スタン | カイル、ありがとう |
| スタン | あの時のカイルの言葉がなかったら俺は今でもカイルの事もリオンの事も全部…忘れたままだったと思う |
| スタン | 俺を信じてくれて本当にありがとうな |
| カイル | スタンさん…よかった…!オレ…! |
| スタン | カイル…泣きそうじゃないか |
| カイル | し、仕方ないじゃないですか。スタンさんが思い出してくれた事が嬉しかったんですから…! |
| スタン | はは…心配かけたな |
| スタン | でも…どうして急に記憶が戻ったんだろうな? |
| リオン | おそらくだが…何らかのきっかけで元世界の記憶が刺激されたんだろう |
| スタン | …なるほどな。そう言われてみると、わかるような気がするよ |
| スタン | 俺も、カイルの行動を見て、仲間達と一緒に天帝の御座に乗り込んだ時の事が蘇ってきたんだ |
| スタン | きっと、それがきっかけだったんだと思う |
| カイル | お、オレの行動がですか? |
| リオン | あの向こう見ずな行動がきっかけになるとは、わからないものだな |
| スタン | 向こう見ずだなんて言ってやるなよ。あの時のカイル、かっこよかったじゃないか |
| カイル | か、かっこいい… |
| スタン | だいたい、そういうリオンは記憶を取り戻したきっかけって何だったんだ? |
| リオン | ……話す気はない |
| スタン | 何だよ、別に隠す事じゃないだろ? |
| リオン | …何故、僕がそこまで話さないとならない。お前には関係な── |
| | |
| | ギャオオオッ! |
| | |
| カイル | 魔物…!?まだいたのか! |
| スタン | 仕方がない。この話は後回しだな! |
| リオン | …くどい!話すつもりはないと言ってるだろう! |
| リオン | …全く、話すわけないだろう |
| リオン | 図々しくて能天気な奴に助けられたあの出来事が、僕の記憶を取り戻すきっかけになったなんて… |
| scene2 | 取り戻したもの |
| スタン | よし、魔物は退治出来たし…これから、どうする? |
| カイル | えっと…ハロルドへ報告したいんで一度アルメリアに戻りませんか? |
| スタン | そうか。そういえば、ハロルドも記憶があるのか? |
| カイル | あ、はい!それどころかこの世界の調査をやってくれてるみたいで… |
| スタン | だったら、ちゃんと報告しとかないとな!アルメリアに戻ろう! |
| リオン | …そうか。では僕は別行動だ |
| スタン | 何だよ、リオン。せっかく合流出来たんだから一緒に来ればいいだろ? |
| カイル | スタンさんの言う通りですよ!オレ達と一緒に行きましょう! |
| リオン | 僕にだってその前にやるべき事がある。協力は、その後だ |
| カイル | やるべき事、ですか? |
| リオン | 「立入禁止区域」の調査だ。元々、旧市街まで来たのもそのためだからな |
| カイル | えっ、立入禁止区域ってこの近くにもあるんですか? |
| リオン | ああ、街の外れで見た。白き獅子が警備していて近付けなかったがな |
| リオン | …それよりカイル。「この近くにも」というからには、他の立入禁止区域を知っているのか? |
| カイル | あ、はい。実は、ここに来る前に森の中で立入禁止区域を見たんです |
| カイル | ここからだと、ちょっと遠いけど… |
| スタン | ああ、トイマイの森か。そういえば、そこでカイルと会ったんだったな |
| リオン | なるほど…。それならば、そっちも調べてみよう |
| カイル | でも、立入禁止区域ってそもそも何があるんだろう?リオンさんは何か知ってるんですか? |
| リオン | それがわからないから調査をするんだ。少しは自分の頭で考えろ |
| カイル | うぐ…その言い方、やっぱりジューダスに似てる… |
| リオン | 何をわけのわからない事を…そもそも、僕達はまだこの世界がどうなっているかも知らないだろう |
| スタン | 確かになぁ…天帝が関わっているんだろうな、っていうのは、わかるんだけど… |
| リオン | 天帝が…?根拠はあるのか |
| スタン | ああ、実は… |
| カイル | 天帝の目覚めを防ぐために戦った…そんな事が… |
| リオン | だとすると…この世界が生まれた事自体、天帝の仕業という可能性もあるか… |
| カイル | …そういえば、ハロルドもこの世界は創り変えられた世界だって言ってました |
| リオン | 創り変えられただと…?…やはり不明点が多すぎる |
| リオン | その謎を少しでも解くためにも、僕は立入禁止区域を調べてくる |
| リオン | 天帝が見張りまで立てて人を近寄らせまいとしている場所だ |
| リオン | この世界について何かしらの鍵になる事は間違いないだろう |
| スタン | 鍵ねぇ…だったら、みんなで調査すればいいんじゃないか? |
| リオン | あまり目立ちたくないからな。一人の方が都合がいい |
| リオン | それに、スタン、お前が何か失敗した時にも、別動隊がいた方が支援に入りやすい |
| スタン | 何だよ、俺が絶対に失敗する、みたいに言うなって |
| リオン | 別に何も間違ってないだろう。大体お前はいつも── |
| カイル | ストーップ!ケンカはやめてください! |
| リオン | む… |
| スタン | け、ケンカはしてないぞ?リオンとは、いつもこんな感じだし |
| カイル | ええ?そんなものなんですか?もっと親友って感じかと… |
| スタン | まぁ、じゃあとりあえず…リオンが立入禁止区域を調べるなら俺達は別方面を当たってみるよ |
| リオン | …ほう。何か手掛かりがあるのか |
| スタン | 手掛かりっていうわけじゃないけど…まずは、スレイ達の行方を捜したいと思ってる |
| カイル | スレイさん…スタンさんと一緒に天帝達と戦った仲間ですね! |
| スタン | うん。みんなと合流出来ればきっと打開策だって見つけられると思うんだ |
| リオン | …わかった |
| リオン | 調査が終われば僕も合流するつもりだ。それまでせいぜい、上手くやるんだな |
| スタン | わかってるよ。心配してくれるなら、そう言えばいいのに… |
| スタン | 全く…リオンは本当に素直じゃないなぁ… |
| リオン | うるさい!僕はもう行くぞ |
| カイル | あ、はい!リオンさんも気を付けて!協力してくれて、ありがとうございます! |
| スタン | …さあ、俺達は一旦戻るか |
| カイル | はい! |
| scene1 | 小さな英雄 |
| カイル | ただいま、ハロルド! |
| ハロルド | 遅い!私をこんなに待たせるなんて覚悟は出来てるんでしょうね~? |
| カイル | ご、ごめん…!えっと、その…いろいろあって… |
| ハロルド | ふーん…ま、いいわ。とりあえず、報告を聞きましょうか |
| カイル | あ、うん。ジューダスについてだけど…噂の人は、ジューダスじゃなかったよ |
| カイル | リオンっていう、スタンさんの知り合いだった |
| ハロルド | そう…でも、だったら噂の段階でスタンにも見当がついてたんじゃない? |
| スタン | いや、知り合いだったのは元の世界での話だ。この新世界では、初対面だったよ |
| ハロルド | なっ…!スタン、あなた記憶が戻ったの? |
| スタン | ああ、カイルのお蔭でな! |
| ハロルド | カイルのお蔭…?あんた一体、何をしたのよ? |
| カイル | いや、それは…何というか… |
| スタン | カイルが俺を信じてくれたんだ! |
| ハロルド | ちょっと意味がわからないわ。詳しく説明して |
| カイル | う、うん… |
| ハロルド | はあー。じゃあ結局、私が言った事は全然守れなかったって事ね |
| カイル | うっ…ごめん… |
| ハロルド | ま、別にいいわ。私もカイルが我慢し続けられるなんて思ってなかったし |
| ハロルド | カイルっぽくていいんじゃない? |
| カイル | え?どういう意味さ |
| ハロルド | あんたがアホって事。悪い意味じゃなくてね |
| カイル | な、何だよ!悪い意味じゃないアホって! |
| ハロルド | でも…記憶への刺激がきっかけになるのなら、他の人間にも何か出来る事があるかも… |
| カイル | 何かいい方法が思い付いたの!? |
| ハロルド | まだ、わからないけどね。でも、調べてみる価値はありそう |
| ハロルド | それにしても、まさか元世界の過去の時代で、そんな事があったなんてね… |
| スタン | 俺も驚いたよ。まさかカイル達が未来の人間だったなんて… |
| スタン | あ。もしかして、未来の俺にも会った事あるのか? |
| カイル | え!?えっと、それは… |
| ハロルド | はいはい、脱線しないの。「晶化現象」に「立入禁止区域」と話す事は山積みなんだから |
| ハロルド | 私達のいたところで起こった現象も「晶化現象」だったんでしょうしね |
| カイル | 結晶に包まれても生きてるんだよね!それならジューダスも無事って事だよね? |
| スタン | ああ。きっと大丈夫なはずだ |
| カイル | よかった… |
| ハロルド | 解決はしてないけど、とりあえず命に別条はないって事ね |
| ハロルド | 「立入禁止区域」については、ちょっと気になるし、私の方でも調べてみるわね |
| カイル | うん。リオンさんも、そこに何かしらの鍵があるんじゃないかって言ってた |
| ハロルド | 鍵ねぇ…確かに、隠しておきたい「何か」があるのは疑いようがないわね |
| ハロルド | 記憶の戻し方に、立ち入り禁止区域…グフフ、忙しくなるわ~ |
| カイル | 調査はハロルドに任せるとして…それじゃあオレ達は── |
| スタン | 天帝に反撃、だな |
| カイル | 天帝…この新世界は、天帝と、ヴァンって奴が創ったものなんですよね? |
| スタン | ああ、俺達は奴らを止める事が出来なかった… |
| スタン | けど、もう奴らの好きにはさせない! |
| ハロルド | ふむふむ。それじゃあ天帝に反撃するためにも、スタンの目標は仲間捜しってところかしら |
| スタン | ああ。スレイ達と合流して打開策を考える |
| スタン | スレイ達は一緒に戦った仲間…みんなだって俺と同じように思うはずだ |
| スタン | なのに、記憶を改変されてその想いすら忘れているとしたら…早く記憶を取り戻させてやらないと |
| カイル | 仲間捜し… |
| カイル | …ねえ、ハロルド。咎人だってバレる危険とか、いろいろあるのはわかってきたけど… |
| ハロルド | いいんじゃない?スタンと一緒に、行ってきなさいよ |
| ハロルド | 私はここで研究を続けるから、リアラ達の事はよろしく頼むわ |
| カイル | …え? |
| ハロルド | あれはやるな、これはやるなってうるさく言ってきたけど…もういいわ。あんたに任せる |
| カイル | …!い、いいの? |
| ハロルド | スタンもいるしね。まぁ、危なっかしいのは変わらないけど… |
| スタン | えー。そうかぁ? |
| ハロルド | ま、何とかするのがあんた達でしょ。アスベルとリチャードの記憶も気がかりでしょうけど… |
| ハロルド | その辺りは全部私に任せて、あんた達は仲間を捜しにいってらっしゃいな |
| カイル | う、うん、わかったよ!リアラ達の事は俺に任せて! |
| スタン | …けど、本当にいいのか?いろんな事をハロルド一人に任せちゃう事になるけど… |
| ハロルド | 何言ってんの。あんた達に、足を使わせずに頭を使わせてどうするのよ |
| ハロルド | 自分に出来る事をやるのが一番。特にカイル。ぼさっとしてる暇はないわよ? |
| カイル | え、どういう意味? |
| ハロルド | 咎人の少女が目撃されたのよ。場所はナムザ街、スタンは知ってるでしょ? |
| スタン | 知ってるけど…その咎人の少女って、もしかして… |
| カイル | リアラだ! |
| ハロルド | そうとは限らないけど、他に手掛かりがないのなら行ってみて損はないと思うわ |
| カイル | うん!そうするよ! |
| スタン | じゃあ、まずはナムザ街に向かうとするか |
| スタン | 他の仲間の情報を集めるためにも、いろいろな街へ行ってみるのはいい手だと思うし… |
| スタン | 何より、カイルの仲間の事は気がかりだからな |
| ハロルド | 頼んだわね。それじゃあ私は、研究に戻るとするわ |
| カイル | え?見送りもナシ? |
| ハロルド | そんな暇がどこにあるのよ。仲間の記憶を取り戻して、立入禁止区域を調べて… |
| ハロルド | おまけに、世界を元に戻すっていう仕事まであるんだからね |
| カイル | 世界を、元に…!?ハロルド、そんな事出来るの!? |
| ハロルド | まあね。スタンの話を聞いて確信を持てたわ |
| ハロルド | 言ったでしょ?この世界は、元の世界を土台にしてるって |
| ハロルド | スタンがその証拠。別人になったわけじゃないから、こうして記憶も戻った… |
| ハロルド | それって、全世界を元に戻す事も出来ると思わない? |
| カイル | 言われてみれば、そんな気が…。すごいや、ハロルド! |
| ハロルド | 褒めるのはまだ早いわよ。もっと研究を進めて、確実な方法を導き出してやるんだから |
| ハロルド | 見てなさい。この天才に不可能はないって事、天帝とやらに見せつけてやるわ! |
| スタン | はは。これは本当に、反撃の方法が見つかるかもしれないな |
| カイル | はい!それじゃあ、そっちは任せるね!ハロルド! |
| scene2 | 小さな英雄 |
| カイル | それじゃあ…ナムザ街に向かいましょう! |
| スタン | ああ!っとその前に…リチャードとアスベルにも挨拶しないとな |
| カイル | あ…そうですよね。でも、店にはいないようでしたし、少し街を捜して── |
| リチャード | スタン、カイル!こんなところでどうしたんだ? |
| カイル | あっ!リチャードさん、アスベルさん!ちょうどいいところに! |
| アスベル | どこかに出かけるのか? |
| カイル | はい、仲間の手掛かりが見つかったんです。だから、捜しにいこうと思って… |
| カイル | 二人にはお世話になりました!ありがとうございます! |
| リチャード | いや、むしろ何も出来なくてすまない… |
| カイル | そんな事ないですよ!それに、ハロルドも引き続き居候させてもらうし… |
| リチャード | なるほど、手分けするわけか… |
| リチャード | 店の事なら気にしなくていいさ。むしろ、仲間を見つけたら是非連れてきてくれ |
| リチャード | カイルの仲間には僕も会ってみたい |
| カイル | リチャードさん…ありがとうございます! |
| アスベル | スタンも一緒に行くのか? |
| スタン | …ああ。カイルの手助けをしたくてさ |
| アスベル | そうか…。二人がいなくなると寂しくなるな |
| リチャード | そうだな…。だが、カイルの仲間を捜すためだ。応援しているよ |
| アスベル | 目的を果たしたらいつでも戻って来いよ |
| カイル | はい、ありがとうございます! |
| スタン | それじゃあ、行ってくる! |
| カイル | …あの二人も、元の世界での記憶は持ってないんですよね… |
| カイル | 元の世界と同じで、仲がいいままなのはよかったですけど… |
| スタン | そうだな… |
| スタン | なあカイル。二人のためにも、絶対に元の世界を取り戻そうな! |
| カイル | はい!そのためにもナムザ街に急がなきゃ! |
| スタン | あ、カイル!足元をよく見── |
| カイル | うわぁぁ! |
| カイル | いたた… |
| スタン | だ、大丈夫か?ほら、俺の手に掴まって── |
| カイル | …いえ |
| カイル | 大丈夫です。オレ、一人で立てますから |
| スタン | …そうか。うん、余計な心配だったな |
| スタン | それじゃあ、改めてナムザ街を目指そう! |
| カイル | はい! |