NameDialogue
scene1不屈の心
ベルベット……
ティア…!あなた、もう起き上がって平気なの?
ベルベットもう?遅いぐらいだわ。シャングレイス脱出から、何日経っていると思ってるの
ティアまだ数日よ、ベルベット。一人では動けないぐらい重傷だったんだから、無茶しないで
ベルベット…これだけ動ければ十分よ
ティアでも…
ベルベットここまで世話してくれた事には礼を言うわ
ベルベット崖から落ちた時もあんたの譜歌とやらがなければ危なかったのも事実…
ベルベット──だけど、あんたに従うつもりはない
ティア……
ベルベットそれに、あんただって人の世話を焼いている場合じゃないはずよ
ティア…そうね
ティア…兄さんに剣を向けられたあの時、すべてを思い出したわ…
ティア私は…何があっても兄を止めなくちゃいけない
ベルベット…兄を止める…
ティア元の世界で起きた晶化も兄とラザリスによるものだった
ティアこの世界を新たに創り上げたのも、兄さん達の仕業と考えて間違いないはずよ
ベルベットそこまでわかっているなら、なおの事大人しくなんてしていられないでしょ
ベルベットラザリスを討つためにも、今は情報を集めないと…
ティア…本気で行くつもりなのね
ベルベット身体さえ動くなら、足を止める理由はないわ
ティア…白き獅子が、まだあなたを捜しているとしても?
ティアあなたが寝ている間にも彼らは捜索を続けていたわ
ベルベット…それでも。これ以上、時間を無駄にするわけにはいかない
ベルベット元の世界に帰ってあいつを殺す…。…あたしには、立ち止まってる暇なんてないのよ
ティアあいつ…。それって、ラザリスではない別の誰かの事を言っているのよね?
ティアあなた、前に言っていたわ。元世界で「やるべき事」があるのだと
ベルベット
ティアベルベット…あなたはその人を討つために、一刻も早く元の世界に戻ろうと──
ベルベット…あんたには関係ないでしょ
ベルベットあたしは行く。あんたもせいぜい、捕まらない事ね
ティアあ、ちょっと…!
ティア…討つべき人物……
ティア…ベルベット、待って!
scene2不屈の心
ベルベットはぁ…はぁ…どうしてついて来るのよ
ベルベット…うぐっ…!
ティア…!あなた、傷が開いて…
ティアベルベット、そのままじっとしていて
パアアア…
ティア完治とまではいかないけど、これで動くのは大分楽になったはずよ
ベルベット…あんた前に、自分の術じゃ応急処置ぐらいしか出来ないって言ってなかった?
ティア…あの時は、ああ言うしかなかった
ティア怪我を完治させてしまったら…あなたはきっと、今のように無茶をすると思ったから
ベルベット…それがわかってるなら、どうして今度は治療する気になったの?
ティア…ベルベット。私も一緒について行く事に決めたわ
ベルベット…本気?
ティア…自分の身を顧みず戦うあなたの姿、見ていられないわ。それに──
ティア…あなたと私、少しだけ似ている気がしたの
ティアだから、あなたの事を放っておけないのかもしれない
ベルベット…ただそれだけの事で、何で…
ティアそれだけじゃない。この世界を元の姿に戻したい気持ちは私も一緒だもの
ティア目的は一緒なんだから、協力しあえるはずよ
ティア戦力は少しでも多い方がいい…違うかしら?
ベルベット…好きにすればいいわ。あたしの邪魔をしないならそれで構わない
ティア……
ティア本当は、他のみんなとの合流を急ぐべきなのかもしれないけど…
ベルベットついて来るつもりなら早くしなさい。今日中に街に入りたいわ
ティア…!ええ、今行くわ
ティアそろそろ街道に出るころかしら
ベルベット油断しない事ね。あんたの言葉が確かなら、白き獅子がまだ近くに──
ガサガサ…
ベルベット…!!
チャキ!
???うわっ、剣!?…っ、あなたは…!
???ジュード!?何なんだ、君達は…
ティアジュード、ルドガー!?
ジュードティア…!
ルドガー…ジュード、知り合いなのか!?
ジュードあ…えっと…ティアはそうなんだけど…──ってそれどころじゃない!
ガサガサ…
ジュード僕ら、魔物から逃げてるところだったんだ!
グルルルル…!
ティアなんて数…!
ベルベット…白き獅子じゃないだけ幸いだけど…さっさと片付けるわよ…!
scene3不屈の心
ベルベットはああっ!
バシュッ
ギャオオオッ!
ベルベットはぁ…はぁ…片付いたわね。それで…
ベルベット…あんたの知り合い、って事でいいのよね?
ティアええ。…改めて、二人共久しぶりね。無事でよかったわ
ジュードお互いにね。…と、その前にティア、ルドガーの事なんだけど……
ルドガー…俺と君は、初対面だよな?俺の事、知っている口ぶりだけど…
ティア…!ひょっとして、ルドガーはまだ…
ジュードうん…。記憶を取り戻していないんだ
ルドガー記憶…?って事は、もしかして…
ジュードああ、えーっと。ティアはその…僕達の仲間だよ。君は覚えてないと思うけど
ルドガー……
ティアルドガー、そんな顔しないで。警戒するなと言ったところで今は難しいのかもしれないけれど…
ジュードところでティアその人は…もしかして帝都で…
ティア…彼女はベルベット。わけあって、行動を共にしているの
ジュード…そう、なんだ
ジュード…よろしく、ベルベット。僕はジュードで、こっちが…
ルドガー…ルドガーだ。よろしく
ベルベット
ジュード…えっと。よ、よろしくね
ティアそれより二人共、どうしてこんなところに?
ジュードあ、うん。実は僕達、レイザベールに向かってて──
ルドガー──ジュード。この人達は…咎人、なんだろう?簡単に目的地を話しては…
ジュード…ルドガーが不審に思うのも警戒するのもわかる
ジュードけど大丈夫だよ、僕が保証する。だからもう少し…せめてエルに会うまでは、僕を信じてほしい
ルドガージュード…
ルドガー…わかった、今はジュードを信じるよ
ティアエルって確か、ルドガーの…?
ジュードうん、レイザベールにいるんだ。彼女と会えば、ルドガーの記憶も取り戻せるんじゃないかと思ってね
ティア
ティア…ねえ、ベルベット。私達もジュード達に同行してはどうかしら?
ベルベット…何のために?そんな事に時間を割いている余裕はないはずよ
ベルベットついて行きたいなら、あんた一人で勝手に行けばいいわ
ティア二人は以前、元世界の晶化を止めようと一緒に戦った仲間なの
ベルベット
ティアルドガーの記憶が戻れば、ラザリスと戦う時にきっと力になってくれるわ
ティアあなただって、今のままじゃ戦力不足だってわかっているでしょう?
ベルベット…わかったわ
ベルベットレイザベールまでは同行してあげる。でも、その男の記憶が戻らなかったらそれまでよ
ティアそれで構わないわ
ジュード…話はまとまった、かな?
ティアええ、ごめんなさい、ジュード。待たせてしまって
ティア聞いての通り、私と彼女もレイザベールまで同行しようと思うのだけど…
ジュード勿論だよ。心強い仲間が増えるという意味では大歓迎だけど…
ジュードルドガーもそれで構わないかな?
ルドガー…ああ、構わない
ティア…そう言ってもらえてよかったわ
ジュードそれじゃあ、レイザベールに向かおうか
ティアええ、行きましょう
scene1いつかの団欒
ヴァン…そうか、わかった。もう下がっていい
神兵はっ!
ヴァン……
ラザリス…何の報告?
ヴァン珍しいな。お前が私の動きに興味を持つとは
ラザリスまた囮にでも使われちゃたまらないからね
ヴァン…なるほど。では、また咎人を逃がされてはたまらないので、答えるとしよう
ラザリス……
ヴァン新たな咎人が出たようだ
ラザリス…何だ、またその話?いい加減飽き飽きしたよ
ヴァンそれがお前の目覚めを邪魔した相手だとしても、か?
ラザリス…へぇ、あの時の
ラザリス…けど、どうだっていい
ラザリスどうせ咎人達は全て消えるんだ。それまで無様に足掻けばいい
ヴァン……
ラザリス本当に、ヒトって愚かな生き物だね
ヴァン…果たして、本当に愚かなのは誰なのか…
ヴァンこちらはこちらで、策を考えておいた方がよさそうだ
ジュードふぅ、着いたね。ここがレイザベールか
ジュードさて、どこから捜そうか──
ティアところでジュード。エルの方は記憶を取り戻しているの?
ジュードいや…多分あの様子だと、まだ…
ティア…そう。ルドガーと会う事で互いに記憶を取り戻せたらいいけど…
ジュード…うん、そうだね。あんなに互いを大切に想い合ってた二人だし…僕もそう願うよ
ベルベット
ベルベットそれで、そのエルっていう子はどこにいるのよ
ジュードえ、えーっと…それはまだこれから…
ジュード──って、ああっ!?
ルドガー…!?ど、どうしたんだ、ジュード
???エルさん、よーく聞いてくださいね。一人で街の外に出ちゃ、絶対に駄目です!
エルわかってるよ!チェルシーはちょっとカホゴすぎ!
チェルシー何が過保護なものですか!街の外には魔物がたくさんいて、危険なんです!
チェルシー覚悟もなく飛び出してはいけません!これは遠慮近憂ですよ!
エルもー。チェルシーの言う事、時々よくわかんないよー
ジュードおーい、エル!
エルあれ、ジュード!?
チェルシー…?エルさんのお知り合いですか?
エルうん。カルミナ街で会ったんだ。ジュードだよ!
チェルシーそうだったんですか。はじめまして、ジュードさん。チェルシーと申します
ジュードはじめまして、よろしくね
エルどうしてジュードがレイザベールに?もしかして、ルドガーの事連れてきてくれたとか!?
ルドガージュード、その子が…
エルあなたがルドガー!?カルミナ街の食堂の!
ルドガーあ、ああ。君がエル、だな。わざわざ俺に会いに来てくれたとか
エルうん!エル、ルドガーの料理、すっごく食べてみたかったんだ!
エル今日はエルのために来てくれたって事だよね?エル、ちょうどお腹空いてるよ!
ルドガーあ、いや、まだ作るとは──
エルほらほら早く!エルのお家はこっちだよ!
ルドガーわ、わかった。だから、そんなに引っ張らないでくれ
チェルシーもーっ、初対面の人を無理やり連れて行っちゃ駄目ですってば~!
ティア…元気な子ね
ジュードあはは…本当にそうだね
ティアだけど…エルを見てもルドガーの様子に変化はなかったわ
ティア…記憶、戻るといいのだけれど…
ジュードきっと大丈夫だよ
ジュードルドガーにとって、エルが大切な子だっていうのは間違いないと思うんだ
ジュード記憶が改変されていたとしても、自分の中に残っているものは確かに存在しているから…
ジュードルドガーの中にも、誰かに料理をふるまう約束だけはずっと残ってた
ジュードだから僕は、ルドガーとエルの絆を信じるよ
ティア…そうね
ティア弱気な事を言ってごめんなさい。私達もルドガー達を追いましょう
ジュードうん、行こう
ベルベット……
ベルベット誰かのために料理をする、か…
scene2いつかの団欒
エルむぐ、むぐ、あむ…
チェルシーエルさん!淑女として、もっと落ち着いてマナーをしっかりと…
エルえ~?チェルシーは細かすぎ!美味しく食べるのがイチバンだよ
エルルドガー!この料理、どれもすっごく美味しいよ!
ルドガーそれはよかった
ティア…本当に美味しいわね
ジュードまさか僕達の分まで作ってくれるなんて…
ルドガーせっかくだったし、みんなで食べた方が美味しいかと思ってね
ベルベット…みんなで食事、ね…。そんなの、いつ以来かしら…
ルドガー…?ベルベット、どうかしたのか?
ベルベット別に。何でもないわ
ジュードところで、ルドガー。その…何か思い出したりは…?
ルドガー…いや。特には何も…
ジュード駄目かぁ…
ルドガー……
エルんぐっ……ぷはー!何これ、すごく美味しい!
エルこんな美味しいスープ、エル、初めて飲んだかも!
エルそれに…初めてなのに何だか懐かしいかんじ
エルルドガー!今日は来てくれてありがとう!
ルドガー…っ!?
エルエル、ルドガーのスープが一番好き!
ルドガー…今のは一体…?
ルドガー俺は、前にもエルにスープを…?いや、そんな覚えは…
ルドガーまさか…
ベルベット…どうやら駄目だったみたいね
ジュードうん…。でも、諦めるつもりはないよ
ジュード他にも何か記憶を刺激する事があるかもしれないし…いろいろ試してみるつもり
ベルベットそう…好きにすればいいわ
エルはむ、むしゃ…んぐ。ふぅ、ごちそうさま!お腹いっぱい~
ルドガー…ああ、お粗末様。口にあったなら幸いだ
ベルベット…ちょっと待ちなさい、エル
エルうん?
ベルベットトマト、残してるわよ
エルうぐっ…!
ルドガーあ、本当だ。綺麗に残ってる…
ベルベット好き嫌いせず、全部食べなさい
エル…エルのは好き嫌いじゃなくてシュチョーのケンリだもん
ベルベット大きくなれないわよ?
エルむー…わかった
ジュード……
ベルベット…何?言いたい事があるなら言ったら?
ジュードあ、いや…。ベルベットって、子どもの扱い上手だなって思って
ベルベット…。別に、ただの慣れよ
ジュードへぇ…もしかして、弟とか妹とかがいるのかな?
ベルベット……
ジュードベルベット?
ベルベットあたしの事は今は関係ないでしょ。それより、ルドガーの記憶を戻す事を考えなさいよ
ベルベットあたしは、悠長に記憶が戻るのを待つつもりはないから
ベルベット情報収集が終わり次第、明日には街を発つわ
ティア
ジュードとりあえず他にも試してみよう。ルドガー、もう少しだけ付き合ってくれないかな?
ルドガー…あ、ああ、わかった。俺としてもこのままで終わりってのはすっきりしない
ベルベット…勝手にしなさい。あたしは、先に宿を探してるわ
scene3いつかの団欒
ジュードおはよう、ルドガー。よく眠れた?
ルドガーおはよう。ああ、よく眠れたよ
ジュード…昨日あの後も、エルと一緒に遊んでたんだよね?やっぱり何も思い出さない?
ルドガー…ああ
ジュードそっか…。なかなか難しいね
ルドガー
ティアおはよう、二人共。…その様子だと、いい結果は得られなかったみたいね
ジュードうん、まあ…
ジュードそっちはどう?昨日、街で聞き込みしたらしいけど…
ベルベットラザリスが視察の終了を宣言したそうよ
ジュードえ、どうしてまた…
ベルベットさあ。理由なんてどうでもいいわ
ベルベットルドガーの記憶が戻る気配もないし、あたしはこのまま帝都へ向かう
ジュードちょ、ちょっと待って──
???み、みなさんっ!
チェルシーはぁ、はぁ…!
ジュードえっ?チェルシー?どうしたの?
チェルシーあ、あの!エルさんを見ませんでしたか!?
ルドガーエル?いや、見てないけど…
チェルシーそう、ですか…。実は今朝から姿が見えなくて…
ルドガー何だって…?心当たりはないのか?
チェルシーわかりません…。けど、今日は二人でカルミナ街へ買い出しに行く約束をしてたんです
チェルシー子どもじゃないから一人で行けると自信満々だったからもしかしたら一人で街の外に…
ティア…!もしそうだとしたらエルが危ないわ
ジュード…万が一があったらいけないし、手分けして捜した方がいいと思う
ルドガー万が一…
ルドガー…急いで捜そう!チェルシーはもう一度街の中を頼む!
ルドガー俺達は街の外へ──
ベルベット…あたしには関係ない事ね
ティアベルベット…!
ジュード…わかった。じゃあ、ティアとルドガーと僕で、街の外を捜そう
ティア…わかったわ、急ぎましょう
ルドガー無事でいてくれよ…エル!
チェルシーみなさん…よろしくお願いします!
ベルベット……
scene1覚悟を纏いて
ルドガーエル…どこにいったんだ?
ティアこの辺りにはいないわね。遠くまで行ってないといいんだけど…
ジュードカルミナ街の方へ行ってみよう。もし向かっているなら、途中で追いつけるかもしれない
ティアそうね、急ぎましょう
ルドガー
ルドガーあの時浮かんだエルの言葉…もしかしたら、俺は本当に──いや、けどジュード達は咎人だし…
ルドガー…それより今は、エルを捜さないと
ルドガーはぁ…。こっちにも、いない…
ジュード…エル!いたら返事をしてくれ!
ティア…ねえ、みんな。一度レイザベールへ戻ってみてはどうかしら
ティアこれだけ捜しても見つからないのよ。もしかしたら、彼女は街から出ていなかったのかもしれない…
ジュード…そうだね。エルの足で、これ以上遠くまで行っているとも思えないし…
ジュードルドガーもそれでいいかな?
ルドガー…ああ、そうだな。一度街に戻って…
???キャー!
ルドガー…!
ルドガー…今のは、エルの声だ…!
ジュードあっちからだ…行こう!
エルこ、来ないで…
グルルル
エルあっち行ってよ!
ガアアアアッ!
エルいやーーっ!!
バシュッ
エルえっ…?
ルドガーよし、当たった!エルー!大丈夫かー!?
エルあれって…ルドガー!?た、助けてーっ!!
ティア早く助けないと、囲まれているわ!
ルドガー待ってろ!すぐにそっちに行くから!
ジュードくっ…!魔物の数が多すぎるよ…!
ルドガーそこを、どけ──!
scene2覚悟を纏いて
ルドガーエル!よかった、無事だな
エルル、ルドガー…
グルルル
エルやっ…!まだ魔物が…!
ルドガーエル、俺から離れるな
エルう、うん…
ジュード何とかルドガーはエルのところまで辿りつけたみたいだけど…
ジュードくっ…魔物の数がさらに増えてる…!
ティアこれじゃ、彼らのところへ行けないわ
ルドガージュード達も手一杯だ…。俺だけで何とか…!
エル
ルドガー…大丈夫、俺に任せて
ルドガー必ず一緒に帰ろう。そしたら今度は、昨日のスープの特別バージョンを作ってやる
エルルドガー…
エル…うん。約束だからね?
ルドガーああ、約束──…
ルドガー……!
ルドガー──俺が帰って来たら、エルの大好きなスープをたっぷり作ってやる
エルホント!?
ルドガーああ、腕によりをかけた大好きなスープの特別バージョン、作るって約束するよ
エル…うん。約束だからね?
ルドガーああ、約束だ
ルドガーま、また、俺の知らない記憶…?…ぐっ!
エルルドガー!?頭、痛いの!?
ルドガーだ、大丈夫だ…。これくらい、何て事──
ルドガーうっ…!また…
エル気をつけて行って来てね、ルドガー
エルメガネのおじさんとルルの事も、エルがちゃんと守るから
ルドガーエル…それに、兄さん…?そうだ、あの時俺は二人に見送られて……
ルドガーくっ…
ルドガーエル!兄さん!ここにいるのか!?いるなら返事をしてくれ!
ルドガー俺は……二人を守る事が…
エルルドガー…!
グルルル…
エルっ!こ、このー!あっちいけー!
ルドガーえ、エル…?
エルルドガー!街の外では、カクゴが必要なんだよ!
エルルドガーは今、苦しそうだから!エルがカクゴして、ルドガーを守るから!
ルドガー覚悟……!
ユリウス『その覚悟…身をもって示せ』
ルドガーそうだ…俺は…
エルきゃああ!
ジュード…!ルドガー!危ない、魔物が…!
ティアエル──!
ズバッ!!
エル……
ルドガーエル、怪我はないか!?
エルうん、大丈夫──
エル…!ルドガー、そのカッコウ…
ルドガーさっきは守ってくれてありがとう。でも、もう大丈夫…お蔭で「覚悟」を思い出したよ
ルドガーエル…今度こそお前を守る、絶対に
ルドガーはあああああああっ!
ザシュッ、ザシュッ
エルル、ドガー?
エル…!
ティアルドガー、もしかして──
ジュードどうやら思い出したみたいだね。ティア、こっちも負けてられないよ、一気に片を付けよう!
ティアええ、そうね
scene3覚悟を纏いて
ジュードはぁ、はぁ…何とか、倒せたみたいだね
ティアええ…
ルドガーエル、どこも怪我はないか?
エル…う、うん
ルドガーそっか…、よかった
エル
エルあのね、ルドガー…エルさっき──
グ、グルルル
ジュード待って!その魔物、まだ息が──
ガアアアアッ!
エルきゃっ…
ルドガーくっ…!エル!俺の後ろに──
ザシュッ
ルドガー…?
ベルベット
ルドガー…ベルベット!?どうして…
ベルベット…さっさと、その子を連れて、街に戻るわよ
ルドガー…あ、ああ
ティア…ベルベット
ルドガーベルベット、さっきはありがとう
ベルベット…別に。あたしは、あたしの目的のために動いただけよ
ベルベットそれに…
エル……
ルドガーベルベット?
ベルベット…何でもないわ。もうこの話はいいでしょ
ティア…。もしかして、彼女なりにエルを心配していたのかしら…
ルドガーああ…そうかもしれない
ベルベット…何か言ったかしら?
ティア…いえ、何も
エル…ねえ、ルドガー
ルドガーん?
エルあのね、さっきのルドガーの黒いカッコウどこかで見た時ある…
エルそれにルドガーを見てると、胸がもやもやする…何でかな?
ルドガー…!もしかして記憶が…
ルドガー……
ルドガー…エル、怖い思いをして疲れただろ?そんな事、気にしなくていいんだ
エルルドガー…
ルドガーほら、チェルシーに顔を見せて安心させてやろう
エル…うん
ジュード…いいの?確かに、記憶を取り戻さない方が安全ではあるけど…
ルドガー…もうエルを恐ろしい目にはあわせたくないんだ
ティアルドガー…
ドンッ
ジュード!?す、すみません、ぶつかってしまって…
???いえ…こちらこそ前方不注意でした
???…!あなたは…
ベルベット…何?
???…いえ、失礼いたしました。私の思い違いのようです
???噂の人物は単独犯という話ですし、軽率に騒ぐべきではありませんね…
ジュード何だったんだろう…?
ルドガーよくはわからないが…どことなく、街の様子がおかしいような…?
ルドガー何だか、さっきから視線を感じるような気がして…
ジュード僕もだよ。…気のせいかとも思ったんだけど
ティア…嫌な予感がするわね…
チェルシーエルさーん!
エルチェルシー!
チェルシーエルさん、よかったぁ。心配してたんですよ
エル…ごめんなさい
チェルシーとりあえず、家に帰りましょう。みなさんも、その…早くこの街を出た方がいいかもしれません
ジュード…?それってどういう…
チェルシー…実は、街で噂になってるんです。ベルベットさんが、例の脱獄した咎人なんじゃないかって…
チェルシー私、誤解を解こうとしたんですけど誰も信じてくれなくて…
ベルベット
エル…ベルベット
ベルベット…時間が惜しいわ。帝都シャングレイスへ向かうわよ
ジュード僕達も行こう。エル、チェルシー短い期間だったけど、楽しかったよ
ティア…さようなら
エルえっ!?みんな、行っちゃうの…?
ルドガーエル、俺は…
エルルドガー、行っちゃやだ!
ルドガーごめん、エル
ルドガー俺には、どうしてもやらなきゃいけない事があるんだ
エルやだ!せっかく仲良くなれたのに…
チェルシー…エルさん、わがままを言ってはいけませんよ
エル…でも
ルドガーエル、必ずまた会えるよ
エル…うん、わかったその代わり、指切り!
ルドガー指切り…ああ
ルドガー次こそ絶対…エルのために特製スープを作るって約束するから
エル…絶対?
ルドガーああ。絶対に、だ
ティアルドガー…
ベルベット
ルドガー──さて、それじゃ行こうか。天帝の元に
ジュード…うん、そうだね
ジュード早くこの世界を何とかしないと…。エルのためにも…
scene1犬も歩けば…
レイヴン…もう行ったみたいね。出てきても大丈夫よ、ヴェイグ
ヴェイグああ。…わかっていたとはいえ、やはり厄介だな
レイヴン白き獅子達もしつこいね~。この街に戻ってきてから数日たってもまだ警戒が緩まないなんて
ヴェイグ…それも、お前の作戦の内だろう?
レイヴンま、そうなんだけどねぇ
レイヴンこれだけ白き獅子がいれば、ベルベットちゃんの情報も得られるだろうし、それに──
ヴェイグ咎人の噂があるこの街にいれば、噂を聞きつけた仲間がやってくるかもしれない…
ヴェイグお前のその意見に納得したから、オレもエリーゼも行動を共にしているんだ
レイヴンうんうん。若者は物わかりがよくて助かるねぇ
レイヴンで、どうよ。何かいい情報は手に入った?
ヴェイグ…いや。少女の咎人…エリーゼの噂が前よりも広まっているのを確認しただけだった
レイヴン帝都から逃げてきた、奇妙な人形を持った咎人の女の子ってヤツ?
ヴェイグそうだ。お前も聞いていたか…。他はどうだった?
レイヴン残念ながらおっさんも収穫なし。今のところ、広がってるのはエリーゼちゃんの噂だけみたいね
レイヴンま、そのお蔭で俺達二人はこうして情報収集出来てるんだけど
ヴェイグ…だが、今日も大した情報は得られなかった
レイヴン仲間がこの街にいるとしても、俺達みたいに隠れてるだろうからね。焦らず情報収集といきましょ
レイヴンそれよりほら、また巡回が来る前にさっさと隠れ家に戻りますよーっと
ヴェイグ…そうだな。急ごう、エリーゼが待っている
レイヴンはいよ
エリーゼはあ…ヴェイグもレイヴンも、まだ帰って来ないんでしょうか…
ティポ待ってるだけなんて退屈だよねー
エリーゼ…でも、仕方ありません。咎人であるわたしの噂は、街いっぱいに広まっちゃってますし…
エリーゼわたしが見つかるわけにはいかないですから
ティポエリー…
ギィィ…
ティポ今の何の音ー?
エリーゼ…!窓のところに何かいます!
ティポエリー!あれってもしかして…
???……
エリーゼこ…来ないでください…!
ティポち、近付くなー!
ヴェイグそれにしても、いつの間にあんな隠れ家を用意していたんだ?
レイヴンおっさん、裏で世界を飛び回るようなお仕事をしてたからね。隠れ家は多いのよ
レイヴンあそこもその中の一つってだけ
レイヴン記憶が戻る前とはいえ、徹底的に身分を隠して手配したから、突き止められる事はまずないわ
レイヴンそれこそ、ラザリスをはじめ、ヴァンや白き獅子にだってバレる事はないわよ
ヴェイグそうか…それなら安全だな
レイヴンさ、もうすぐ隠れ家に到着──……あら?窓が開いてる?
ヴェイグ確か出る時は締まっていたな。エリーゼが開けたのか
レイヴン…危ないから絶対に外に出るな、人がいる事も気取られるなって何度も言ったのに…?
ヴェイグ…!まさか…エリーゼ!
レイヴンあ、ちょっと青年!一人で行っちゃ危ないっての!
ヴェイグエリーゼ!無事か!
エリーゼヴェ、ヴェイグ…!
ティポわーん!ヴェイグくーん!こわかったよー!
ヴェイグよかった、無事だったんだな…。怪我はないか?
エリーゼは、はい。わたしもティポも無傷です…
レイヴン何があったのか、説明出来る?
エリーゼそれが…
???ワフッ!
レイヴンへっ!?犬の声…!?
レイヴン捕獲しなきゃ!…って、ん?この手触りは…
???ワウン!
レイヴンんんん?この鳴き声ともふもふ感、もしかして…?
レイヴン…おたく、ラピードよね?
ラピードワフン!
レイヴンはー…まさかワンコにこんな形で再会するとはねぇ
エリーゼあの…レイヴン。知っている犬なんですか?
レイヴン知ってるも何も、このワンコは…
ヴェイグユーリの相棒だ
レイヴンありゃ、ご存知だったようで
ヴェイグユーリとラピードには随分と世話になった
ティポペットじゃなくて相棒なんだねー
レイヴンペットとか言うと噛まれるかもよ?このワンコ、おたくらが思ってるよりずっと賢いんだから
レイヴンたまーにこっちの言う事全部理解してるんじゃないかって思うくらいにはね
エリーゼでも、大丈夫なんでしょうか…。ラピードは、その…
レイヴン記憶の事?問題ないでしょ。思い出してなきゃ、わざわざ会いに来たりしないって
ラピードワン!
ヴェイグ無事で何よりだ
レイヴンま、相手が人間じゃないんじゃ、あちらさんも咎人かどうかなんてわかるわけないわな
ラピードワウン!ワウン、ワウン、ワウン!!
レイヴンへっ?急にどうしたのよ?
ラピードワンワン!
エリーゼ…何だか、ついてこいって言ってるみたいですよ?
レイヴン…そうなの?
ラピードワウン!
レイヴン…ちょっとおっさん行ってくるわ。二人はここで留守番しててちょうだい
エリーゼえっ、レイヴン一人で行くんですか?
レイヴン街をうろつくのよ?何があるかわからないでしょ
ヴェイグ…注意を怠るなよ
レイヴンわーかってるって。じゃ、案内よろしくね、ワンコ
ラピードワォン!
scene2犬も歩けば…
レイヴンちょっとワンコ、あんまり強く押されたらおっさんこけちゃ…
騎士団員1ん?その犬…またお前か…
レイヴン…!
ラピードワンワン!ワォン!
騎士団員1…そいつはあんたの犬なのか?
レイヴンいや、まあ、知り合いというか、何というか…
騎士団員1飼い主ならちゃんと躾けといてくれ。数日前から、ずっとついてきては吠えられて、困ってるんだ
レイヴンあー、それはそれは、どうもすみません…
レイヴン…ちょっとワンコ、おたくが連れて来たかったのって本当にここなの?
ラピードワフン
騎士団員1ったく、この犬のせいで子どもまで後をついてきて巡回が変な行列になっちまうし
騎士団員1そのせいで「ワンコ隊長」なんて変なあだ名つけられたりして…はあ
レイヴンそ、それは…迷惑かけちゃったみたいで…
騎士団員1仮にもクロー隊長の精鋭部隊の一員である俺が、ワンコ隊長って…
レイヴン…!な、なるほど…ワンコはユーリの匂いを知らせようとしてたってわけ…
レイヴンただ…非常にまずい展開じゃね?コレクローには顔が割れてるし、もし鉢合わせなんて事になったら…
レイヴンえーっと、ワンコにはしっかり言い聞かせておきますんで!それじゃあ、おっさん達はこれで…
騎士団員2──おい、伝令だ!クロー隊長から、新しい咎人の情報の伝達だ!
レイヴンげっ!
騎士団員2少女の咎人と行動を共にしている、ぼさぼさ頭の、うさんくさい中年男らしい
騎士団員1ぼさぼさ頭の、うさんくさい、中年男…
レイヴン…そんじゃ、さいならーっと…
騎士団員1おい、待てそこの男!伝令の特徴と一致しているようだが、事情聴取の協力をお願いしたい
レイヴンや、やだなー!確かにおっさんはぼさぼさ頭の中年だけども…
レイヴン咎人がこんな風に、堂々と街中を歩いてるわけないじゃなーい!
騎士団員1ふむ…確かにそうなんだが…人相書きとも実によく似ている。偶然の一致にしては出来過ぎている
騎士団員1咎人が増えているこのご時世、不安の芽は摘まねばならぬのだ。御同行願おう
レイヴンい、いやいや!真面目なのは結構だけど、時間の無駄だと思うわよ?
レイヴンほら、犬を連れ歩くとか悪目立ちするような事をするほど、咎人も馬鹿じゃないでしょ?
騎士団員2心苦しいのだが、これも決まりでな。クロ―隊長にちょっと顔を見せてくれるだけでいいんだが…
レイヴンだけ、って…それが一番困るのよ…
騎士団員2すまないな。それでは、駐屯所へ──
???──待ってください!
スタンこの人は俺の知り合いだ!と、咎人なんかじゃない!
カイルそうです!この人は、えーと…す、すごくいい人です!
レイヴンスタン!?それに…あー、君は…
カイルあっ、えっとオレはカイルです!
カイルレイヴンさんの事は、父さ…スタンさんから聞いてて…
レイヴンあー、そうだった、カイル君だったねぇ!おっさんど忘れしちゃってたわ!
騎士団員1…いきなり何だ、お前達は
スタンこの人の知り合いで、仲間です!
スタン何度も言うけど、この人はその、咎人なんかじゃないです!だから連れて行かないでくれ!
レイヴンスタン…
騎士団員2だがなあ…咎人の人相書きともここまで一致している男を、放っておくわけには…
カイルち、違うんです!この人は、その…本当は見た目よりも真面目な人なんです!
レイヴンんん!?ちょ、少年!?
スタンそ、そうなんだ!こう、今までの自分を変えたくなって無理をしちゃったというか…!
カイル髪型も普段はちゃんとしてるし、すっごく誠実な…中年男なんです!
レイヴン…そ、そーなのよ!たまには雰囲気変えようかなーなんて思っちゃったりして?
騎士団員1…何だか三文芝居みたいだが、お前達の言ってる事は本当なのか?
騎士団員2まさかお前達も、咎人の仲間じゃ…
レイヴンあー…いやいや、よく考えてみてよ
レイヴン言ってる事はボロクソだけど、必死におっさんを助けようとしてる善人の鑑みたいな青年と少年よ?
レイヴンこんないい子達が、人心を惑わす咎人なんかだと思う?
騎士団員1…それは…
レイヴンそれにほら、さっきの報告で、女の子の咎人と一緒だって言ってたじゃない
レイヴンその女の子は、一体どこにいるのよ
騎士団員2まあ、確かに…。ここにいるのは、犬と男だけだな
レイヴンね?全然違うでしょ?だからさっきも言ったように、人違いだって
騎士団員1…そうか。そう、だな。外見が一致しているだけで疑ってすまなかった
騎士団員2まあ、うさんくさい中年男なんて、捜せばいくらでもいるだろうしな…
レイヴンわかってくれて何より!それじゃあおっさん達は、これでおいとまさせてもらうわね!
レイヴン青年と少年、それからワンコ!お仕事の邪魔しちゃ悪いから、さっさと帰りましょ!
スタンあ、う、うん!
カイルす、すみませんでした!
ラピードワウン!
レイヴンそれじゃ、失礼しました~
レイヴンいやー、ありがとね、お二人さん。演技はダイコンだったけど、助かったよ
スタンア、アハハ…
レイヴン…で、念のため確認なんだけど、おたくらは二人共、記憶が戻ってるって認識でいいのね?
スタンああ!やっぱりレイヴンも思い出してたんだな!
カイルオレはちょっと違うんですけど…元の世界を知ってるっていう意味なら合ってます!
レイヴンそう、そりゃよかった。情報交換もしたいし、まずはおっさん達の隠れ家に行こうか
レイヴン待ってる子達もいる事だし、ね
scene3犬も歩けば…
レイヴンただいま~
エリーゼレイヴン、ラピード、おかえりなさ──……!
スタンエリーゼ!それにヴェイグも!二人もここにいたんだな!
エリーゼスタン…!どうしてここに…?
ヴェイグ無事だったのか…!
ティポスタン君、久しぶりー!
スタンはは、ティポも元気そうでよかった!
カイルこの人達が、スタンさんと一緒に世界を救うために戦った仲間…
エリーゼ…あの、えっと…
カイルあ、ごめん。挨拶もしないで…!オレ、カイルです!よろしく!
ティポカイル君ねー。よろしくー
レイヴンんじゃ、挨拶も済んだ事だし、話の続きと行きましょっか。おたくら咎人を捜してるんだっけ?
カイルあ、はい──
カイル…というわけで、オレ達はリアラとソフィを捜すために「咎人の少女」の噂を追って来たんだ
カイル…けどまさか、咎人の少女がエリーゼの事だったなんて…
レイヴン落ち込まなくてもいーんじゃない?情報がないって事は、まだ捕まってないからかもしれないしねぇ
スタンそうだよ!それにほら、こうして新しい仲間とも会えたじゃないか!
カイル…そうですね。オレも、もっと前向きに考えなきゃ
カイル二人はきっと無事だ。仲間も増えて来てるし、すぐに二人とも再会出来るって…
スタンうんうん、その調子だ!この街に二人がいないってわかっただけでも大収穫だよ
スタンレイヴンさん達が先に調べておいてくれたお蔭だな
レイヴンそんなに褒めても、これ以上は何も出ないわよ~
エリーゼレイヴンの作戦通りですね!ここで待っていたら、本当に仲間と会えました!
ティポこの調子なら、どんどん仲間が増えていくかもしれないねー!
カイルえっ、でも、これ以上この街にいるのは危険なんじゃ…
レイヴンそうなのよね~。多分おっさん、白き獅子に目をつけられちゃったし
エリーゼえ!?
ヴェイグどういう事だ?
カイルレイヴンさんの捕縛命令も白き獅子に広まってるみたいなんだ
ヴェイグなるほど…。確かに、これ以上は危険だな
レイヴンそうね~。出来れば、夜の間にカルミナ街まで移動しちゃいたいところだけど
ヴェイグこれ以上粘る必要もないだろう。二人でも仲間が増えただけ、幸運だ
レイヴン着いて早々で悪いんだけど、二人もそれでいい?
スタンああ、俺は大丈夫!体力なら有り余ってるからさ
カイルオレも平気です!みんなの安全の方が大事ですから
レイヴン話が早くて助かるわ~。…ワンコも一緒に来る?
ラピードワゥン!
レイヴンうーん…さっぱりわかんないけど、まあ了承してるって事でいいのよね
レイヴンそれじゃあ今夜、闇に紛れて街を出るって事で!
カイルはい!わかりました!
scene1囚われた少女達
カイルふわぁ…
スタン大丈夫か、カイル。徹夜で移動じゃ、さすがに眠いよな…早く宿をとって仮眠を──
ヴェイグ──待て
カイルえっ?
レイヴンあちゃー…まさかこっちに来てるとはねぇ
クロー例の咎人連中はどこだ?
騎士団員1はい、現在連行しています。すぐこちらにお連れ出来ると思いますが…
クローああ、頼む
カイル白き獅子…!まさか、待ち伏せ!?
レイヴン…いや、どうやらそんな雰囲気じゃなさそうね
エリーゼ誰か、捕まっちゃったんでしょうか…
ラピードクゥン…
クローしかし、どこもかしこも咎人だな
騎士団員1最近、咎人が増えているようです。このままでは人々の不安も…
クローま、心配ねぇよ。その心配も近い内になくなる
騎士団員1…?隊長、それは一体どういう…
クロー近々帝都で行うラザリス様の演説…詳しい事はそこでわかるさ
レイヴン帝都で演説…
ヴェイグ…生誕祭以外にラザリスが演説をするなんて異例中の異例だ
レイヴンああ。なーんか、こいつは匂うねぇ
騎士団員2隊長!捕縛した咎人を連行しました!
クローっと、ようやくか
カイルえっ…!?あれって…
???
???
カイルリアラ!ソフィ!
スタンあっ!おい、カイル!
scene2囚われた少女達
カイルリアラ…!やっと見つけたよ!
リアラ…!
カイルソフィも見つかってよかった!二人共、オレと一緒に──
騎士団員2おい、何だお前は!
カイル…あ、オレは、その…
リアラ
リアラあなた、誰?
カイル…えっ?
リアラあなたなんか知らない
カイル…リアラ…?
ソフィ…わたしも、あなたの事は知らない
カイルソフィまで…!?一体、どうして──
クロー知り合いかどうかは知らないが…見ての通り、今咎人のそいつらを移送してるところだ
クロー咎人と話すのはご法度。そんな事も知らないってわけはねえよな?
クロー帝都まで行かなきゃならないんだ。こんなところで面倒事はごめんだぜ
カイルそんな事させない…!どうしても二人を連れて行くって言うなら──
スタンわーっ!ま、待ってください!
スタンこいつ、誰かと間違えてつい飛び出しちゃったみたいで…
カイルえっ?スタンさん、オレは…もがっ!
スタンお邪魔してすみませんでした!
クロー
騎士団員1隊長、いかがされますか?
クロー知り合いだって言ってんのはあいつだけだし、勘違いなんだろ。それより、咎人の移送を再開しろ
騎士団員2はっ!
クロー…にしても、結局見つからず、とはな
クローてっきりあいつを捕まえたと思ってたのによ
クローレイヴン…あいつだけはオレが…!
カイル…レイヴン…?
scene3囚われた少女達
スタンふー、危なかったな
カイルくっ…早くあいつらを追わないと!
スタンあっ、ちょっと待てって、カイル!
カイルどうして!?早く、リアラ達を助けに…
レイヴン行ってどうするのよ
カイルどうって…
スタンカイル、少し落ち着け。二人が庇ってくれたのを無駄にするなよ
カイルえっ…?
スタンあの子達が、返事をしていたら、カイルも咎人だと疑われたかもしれないだろ?
スタンあの子達は、その事に気付いてお前を庇ってくれたんだよ
カイルそんな…でも、だったらなおさら早く助けなきゃ──
レイヴンまあまあ、そう焦りなさんなって、少年
レイヴン連れて行かれたって言っても、すぐにどうこうされるわけじゃない
カイル…!レイヴンさん、何か知ってるの!?
カイル──天帝が、咎人を晶化させる…?
カイルだとしたら、なおさら早く助けなきゃ──
レイヴンだから、落ち着きなって
レイヴン事を急いで、大切なものを失ってしまったら元も子もないわよ
カイルレイヴンさん…?
レイヴン安心しなよ、少年。すぐにどうこうされるわけじゃないって、さっきも言ったでしょ?
レイヴン救済の儀式が行われるまでには、何日間かの猶予があるはずよ。それを有効に使わないと
レイヴン帝都に行くにしても、策ぐらいは練っていかないとね
エリーゼでも、どうすれば…
レイヴン何言ってんの~?絶好の機会が、目の前に転がってるじゃない
スタン絶好の機会?
ヴェイグ…!ラザリスの演説か
レイヴンそういう事~
カイルえっ?どういう事?
ヴェイグラザリスが表に出てくるなら、そちらに警備を割かざるを得ない。その時ならば…
カイル他のところは手薄になる…!
エリーゼで、でも、ラザリスが演説なんて、今までなかった事ですよね?
ティポ何だかアヤシー
ヴェイグ嫌な予感がする…。簡単に、行くと決めていいものか?
スタンうーん、確かに…
ラピードワフン…
レイヴン…ま、得体が知れないのは確かね
レイヴンけど、虎穴に入らずんば虎子を得ずとも言う事ですし
レイヴン仲間を救うためには、思い切って飛び込んでみるしかないんじゃない?
スタンそれもそうですね。それに、何かあっても俺達には仲間がいる!
エリーゼ…はい!絶対、負けません!
ヴェイグ…ああ、そうだな
カイル待ってて、リアラ、ソフィ!必ず、助け出すから…!
レイヴンそうそう、その意気よ
レイヴン…それに、ラザリスが出てくるなら、ベルベットちゃんもきっと帝都に──
カイル…そういえば、レイヴンさんって、クローとはどういう関係なんですか?
レイヴンへっ?
カイル聞いちゃったんです。クローがレイヴンさんの名前を口に出していたのを…
カイル何だか、すごい悔しそうな顔で…オレ、目に焼き付いちゃって…
レイヴンあー…まぁ、いろいろとね
レイヴンでもま、気にしなくていいわよ。おっさんの事よりカイルの仲間の方の心配をしなさいな
カイルレイヴンさんだって、オレにとっては大事な仲間ですよ!
レイヴンカイル…
カイル勿論、リアラ達の事は心配ですけど…
カイルでも、レイヴンさんやスタンさん…エリーゼやヴェイグさんの事だって、オレは仲間だと思っています
カイルだから、何かあったら言ってください。力になりたいんです!
レイヴン…ははっ、そいつは頼もしいわね
レイヴンじゃあ、何かあったら遠慮なく頼む事にしようかしらね~
カイルはい!
エリーゼ仲間…そうですね…!カイルも、リアラもソフィも、みんな仲間です…!
ヴェイグああ。必ずリアラ達を助けよう
ラピードワフッ!
カイルみんな…
スタンよし!それじゃあ、この先の行動は決まったな
カイルはい!──リアラ達を助けに行きます!
エリーゼまずは、帝都に移動ですね!
カイル行こう、帝都へ!
レイヴンラザリスが演説、ねぇ…。果たして鬼が出るか、蛇が出るか…
レイヴン
エリーゼレイヴン、置いて行っちゃいますよ!
レイヴンあぁ、ごめんごめん。すぐ行くからね~
scene1尋ね人と世界の囁き
ラザリス……
ラザリスやっぱりね…「世界の意志」が逃げ出してる
ラザリスくっ…あの忌々しい存在…!どこまでも、僕の邪魔をして──…
???ラザリス、ここにいたか
ラザリス
ヴァン…こんなところで何をしている?
ラザリス取るに足らない存在を、どう料理するか考えているだけさ
ヴァン…ほう。ならば、いい策がある
ヴァン「世界の意志」も咎人も、一気に片付けるいい手段がな…
ラザリス……。なら、君に預けようか
ラザリス君の実力を知るいい機会だしね
ヴァンこれも天の采配か…
ヴァンこの状況、利用しない手はないな
コレット…はぁ…はぁ…ここまで来れば、もう大丈夫かな?
ゼロスああ…誰かに追われてる感じもないし…大丈夫そうじゃん?
ゼロス俺達が逃げ出した事、まだ気付かれてないみたいだな
コレット…うん…
ゼロスちょっとちょっと。暗い顔すんなって、コレットちゃん!
コレットあ…えっと…いろいろあったから、まだ混乱してて…
コレットどうしてラザリスは、人を晶化させたりなんか…
ゼロス……。ラザリスの考える事なんて知ったこっちゃねぇけどな
ゼロスこれだけは言えるぜ。今のこの世界を創ってるのは、ヴァンとあいつだ
コレット…うん。元の世界で自分が晶化された時の事、ちょっとだけ覚えてるよ
コレットでも、そこからこの世界が創られただなんて…
ゼロス俺はわりと早くから記憶を取り戻す事が出来てさ
ゼロス同じく記憶を取り戻してたスレイと再会して手分けして仲間を捜す事にしたんだ
ゼロスだけど、俺は白き獅子に捕まっちまって…
ゼロスあとは、コレットちゃんも知っての通りラザリスに晶化されたってわけだな
コレットそうだったんだ…
コレットほんとのラザリスは、みんなが讃えるようないい人じゃないんだね…
ゼロスコレットちゃん…
ゼロスまっ、ラザリスなんかの事でコレットちゃんが胸を痛める必要なんてないんだしさ
ゼロスとりあえずマール村へ行って、これからの事を考えようぜ
コレットマール村?
ゼロスああ、白き獅子に捕まる前、俺が拠点にしてたとこでさ
ゼロスそこなら借りてた家もまだ残っているはずだし、態勢を整えるにもいいと思ってさ
ゼロスどう?コレットちゃんが頷いてくれたら、俺さま張り切って案内しちゃうよ
コレット私はいいけど…でも、だいじょぶなの?
コレットマール村の人って、ゼロスが咎人って知ってるんじゃ…
ゼロスああ、へーきへーき!
ゼロス俺さまが捕まったのは別の場所だし、マール村の人達は俺が咎人だって知らないと思うぜ
コレットそれなら安心だね
ゼロスんじゃ、決定!マール村にしゅっぱーつ!
scene2尋ね人と世界の囁き
ゼロスはぁーやっと着いたぁ…
ゼロスコレットちゃん、大丈夫?疲れたんじゃない?
コレットううん、私は平気だよ
ゼロスならよかった。コレットちゃんに何かあったら、俺さま、立ち直れないし~
ゼロス追っ手が来てる様子もねぇし、少しはゆっくり出来そうだな
コレット…でも、これからの事もちゃんと考えなきゃ…
コレットラザリス…天帝をどうにかすれば、この世界は元に戻るんだよね…?
ゼロス…ま、多分そういう事になるだろうな…
コレットゼロス…?
ゼロスあー、悪い。俺達が、天帝の御座で片を付けてりゃこんな事になってなかったと思ってさ
ゼロスだから、今度こそはきっちりヴァンを倒してラザリスを止めてみせるぜ
ゼロス…これ以上、世界をあいつらの好きにさせるつもりはないからな!
コレットそっか…ゼロスはもうちゃんと決めてるんだね
ゼロスま、当面の目標はその時の仲間を集める事だな
コレットうん…!
ゼロスまずは、スレイとミクリオ。ルドガー、スタン、ヴェイグティアちゃんにエリーゼちゃん…
ゼロス世界丸ごと変わってるって言うなら、ロイドだっているだろうな。あと…ルークとか
ゼロスこうして並べてみると結構な大所帯じゃないの?
コレットあはは、賑やかでいいんじゃないかな
ゼロスえ~?女の子達はともかく、野郎共がぞろぞろいてもなぁ
コレットでも心配なんだよね?
ゼロス…やだなぁ、コレットちゃん。俺さまが心配なのは、女の子達だけだって~
ゼロス野郎はあくまでそのおまけ
コレットじゃあ、まずはどうやって他のみんなと合流するかを考えないとだね
ゼロスそこはもうバッチリ。俺さまに死角なし、ってね~
ゼロス俺さまが白き獅子に捕まっちまう前、まだスレイと行動を共にしてた時…
ゼロスマール村を拠点にしてるってスレイに話したんだよな
コレット…それじゃあ!
ゼロスああ、もしかしたら、スレイがここに来たかもしれない
ゼロススレイはミクリオを捜しに行くって言ってたし、他の仲間の事も知ってるかも?
コレットじゃあスレイが来たかどうかマール村の人達に聞いてみればいいんだね!
ゼロスおっ、さすがコレットちゃん。話が早い~!とりあえず、村で聞き込みだな!
ゼロスはぁ~駄目だ、誰も知りやしねぇ…!
コレットスレイを知ってる人どころか、見たって人もいないね…
ゼロスこれで村の中は一通り回ったし…スレイのヤツ、この村には来てないのかもなぁ
ゼロス…まさか、スレイまで捕まったなんて事…
コレットそんな…諦めずに聞き込み続けようよ
ゼロス…いや、どっちにしろ、今日はここまでにしとこうぜ
コレットえ、でも…
ゼロスそろそろ日も暮れそうだしな。ここまでずっと逃げっぱなしだし、続きは明日にしようぜ
ゼロス最近はただでさえいろんな事が立て続けに起きてるし、俺さま、もうクタクタよ
ゼロスコレットちゃんも、疲れてんだろ?休める時には休んでおかねえと
コレットん…そだね。じゃあ、ゼロスの家に戻ろっか
ゼロスそうこなくっちゃ!
scene3尋ね人と世界の囁き
コレット…すっかり暗くなったね
ゼロスったく…一体、スレイはどこにいるんだか…
コレット…。あのね、ゼロス
ゼロスうん?何なに、コレットちゃん
コレットえっと、その…ロイドやみんなは、大丈夫かな…?
ゼロス……
コレット今になって急に不安になっちゃって…みんな、どうなってるんだろ…ロイドは…無事、なのかな?
ゼロス…。だーいじょうぶだって~。コレットちゃんは心配しすぎ
ゼロス他の奴ならともかくあのロイドくんよ?
ゼロス案外けろっと記憶を取り戻しててもおかしくないでしょ
コレットそう…だよね…
コレット──うん、ロイドだもん。きっと、だいじょぶだよね!
ゼロスそれに、もし仲間の誰かが晶化されちゃってたとしても、こっちにはコレットちゃんがいるだろ
ゼロス俺さまを助けてくれたあの力があれば、何にも怖い事なんてないって!
コレットでも、私…この力の事、まだ何も知らなくて…どうやって使えばいいかも、まだ…
ゼロスコレットちゃん…
コレットあっ…ご、ごめんね、変な事言っちゃった
ゼロス…いや、急にそんな力を手に入れて、戸惑わない方がどうかしてるよな
ゼロスけど、ラザリスに対抗出来るすげえ力である事も間違いないんだし悪いもんではないと思うぜ
ゼロスそれに、この俺さまがついてるんだぜ?
ゼロスなぁんも心配する事はねえって
コレットゼロス…うん…ありがと…!
コレット……!
ゼロス…?コレットちゃーん?どうした?
コレットえ、と…私にも、よくわからなくて…
コレットけど、どこからか、呼ばれたような気がするの…
ゼロスどこか…?
コレットうん…。村の近くに、何か──?
scene1望郷の景色
ミクリオ…ファルカームへ行くより、帝都に向かった方がいいかもしれないな…
スレイえっ!?突然、どうしたんだ…?
ミクリオ先ほど行商人から聞いてきたんだが…帝都で演説を行う事が決まっているらしい
スレイ演説って事はラザリスと直接会える──
ミクリオああ。…しかし、最後の視察地であるファルカームも見ておく価値はあると思っている
ミクリオこれまで頻繁に行っていた視察を急に取り止めると宣言された背景も気がかりではあるからね
ミクリオスレイはどう思う?
スレイ……
ミクリオ…スレイ?ちゃんと話を聞いているのか?
スレイ…ミクリオ、地面に何かある
ミクリオ何だって?君は人の話を何だと思って…
スレイ小言はあと!とにかく、ミクリオも調べてみてくれ
ミクリオ全く──…
ミクリオ…!
ミクリオこれは…まさか遺跡か?こんなところにあるなんて…
スレイ完全に埋まっちゃってるみたいだ。詳しく調べられないかな…
ミクリオどこかに入口があるのかもしれない。だが、これだけじゃ──
ピシッ…
スレイん?
ピシピシッ…!
ミクリオなっ、まさか地面が──
ズザザザッ!
スレイミクリオ!
スレイふぅー、間一髪
ミクリオ頼むよ、早く上げてくれ──
ゴゴゴ…
スレイうわあああっ!
ミクリオうわあああっ!
ミクリオくっ…!双流放て!
ミクリオツインフロウ!
スレイいって…
スレイ…ってあれ?確か、前にもこんな事…
ミクリオ咄嗟の判断だったけど、上手くいったろう?これで貸し借りなしだ
スレイ…ふ、やっぱりミクリオはミクリオだな
ミクリオ…?
スレイそれにしても、ここは…
ミクリオ…どうやら、遺跡の中みたいだね
スレイすごいな…!中は思ったより綺麗なままだ!
スレイ天井の脆さから見ても、かなり古い遺跡なのかな…?それに、この構造は…
ミクリオ待て、スレイ。これが古い遺跡だと決めるのは、早計じゃないか?
ミクリオおそらく、天井の上に土が重なり、人の行き来があった事で、そこだけ脆くなってしまったんだろう
スレイでも、土に埋もれるって事は、それだけこの遺跡が建ってから時間が経ったって事だろ?
ミクリオ…本当にそうなのか?もしかしたら、最初から地下に建造した可能性も…
???おっ…!もしかして、スレイとミクリオか!?
???おーい、二人共、無事かー!!
スレイ…あれ?今の声って…
ミクリオスレイ、地上だ!誰か降りてくる
ゼロスよっ…と
スレイやっぱり!ゼロス、久しぶり!
ゼロスおう!いや~まさかこんなとこでお前らと再会する事になるとはな
ゼロスっと、それより…
ゼロスコレットちゃーん!下りられそうかい~?
コレットう、うん…だいじょぶ、だよ…っと!
スレイコレットまで!
コレットスレイ、久しぶり!
ゼロスそれで…コレットちゃん。どう?間違いなさそう?
コレットうん…この中からだと思う…上で探してた時より近くなってるよ
ゼロスじゃあ、やっぱりこの遺跡に…
スレイゼロス、ここについて何か知ってるの?
ゼロスいんや。俺さま達も、それを調査しに来たんだよ
ゼロススレイ、お前もよかったな。ちゃーんとミクリオと会えたみたいで
ゼロスおいおいミクリオ~、聞いたぜぇ?お前ってばこっちの世界じゃ「貴族のお坊ちゃん」やってたとか
ゼロスでひゃひゃ!柄じゃねぇっての。本当の名家のお坊ちゃんと言えば、気品溢れる俺さまのような──
ミクリオ…誰なんだ、君達は
コレットえっ…?
スレイあー…いや、話すと長くなるんだけど…
ミクリオ
ゼロス…記憶、まだ戻ってなかったんだな…
スレイうん、まあ…
スレイだけど、大丈夫だよ。記憶が戻ってなくても、ミクリオはミクリオだ
ミクリオ…君達は、みんな咎人なのか?
コレットあっ…えと、私達は…
ミクリオスレイ。まさかこいつらと共謀して、僕をここに連れてきたんじゃ…
スレイ違う!オレはそんな…!
ゼロスおいおい、俺さま達はそんな事してねぇって
ミクリオ咎人の言う事なんて──
スレイ…待ってくれ!
ミクリオスレイ…
スレイゼロス達と会ったのは偶然だよ。そうじゃなくても、オレ達はミクリオを騙そうなんて思ってない
ミクリオ…だったら証明してくれ
スレイえっ…
ミクリオ君達が…スレイが僕を騙していないと証明してほしい
コレットミクリオ…
スレイ…ごめん。オレにはまだ、その手段がない
ミクリオ…それなら僕は、君を疑い続けなければならない
ゼロス…けっ、酷ぇ言い草だな。よりによってスレイがお前の事、騙したりするわけ──
スレイいいんだ、ゼロス。今は、それでもいい
ミクリオ…あっさりしているな
スレイそうかな?それは…きっとオレがミクリオの事を信じているからだと思う
ミクリオ君が、僕を…
スレイ行こう、ミクリオ。ここで言い合うよりも、出口を探した方がいいと思う
ゼロス…だな。俺達の事を信じられなくて白き獅子に突き出すにしろ、まずは外に出なくちゃいけないだろ
ミクリオ…わかった
ミクリオだが、ここから地上まで上がるのはさすがに難しそうだ
ミクリオ全く…。もし共謀していたわけじゃないなら何故二人共下りてきてしまったんだ
ミクリオ地上に人がいてくれれば、脱出も楽だっただろうに
コレットそれは…
ゼロスしょうがねぇだろ。俺達は探し物があるんだよ
スレイそういえば、さっきも地上よりも近いとか調査とか言ってたよね
ゼロスああ。俺さま達はマール村に滞在してたんだよ
ゼロスその時に、コレットちゃんが村の外から何かを感じるって言ってよ
ミクリオ…随分と曖昧だね
コレットえと…ごめんなさい。自分でも上手く説明出来なくて…
ゼロスこっちにも、ただの気のせいじゃ済ませられない事情があんだよ
スレイじゃあ、ゼロス達はその「何か」を探してこの遺跡に?
ゼロスそっ。コレットちゃんがここだって言うし、間違いないっしょ
スレイ遺跡に隠された「何か」かぁ…!
ミクリオ…スレイ、今の状況を忘れてないだろうな
スレイでも、ミクリオも気になるだろ?地下に埋まってる遺跡から感じる「何か」だなんてさ
スレイこの遺跡の年代を特定出来ればゼロス達が探してるものについてもわかるかもしれない!
ミクリオ…そういう事なら、僕は壁に施されているレリーフが気になるね
スレイ確かに…!天井だけだとわかりにくかったから…
ゼロスやれやれ、リフィルさまとは違うタイプの遺跡馬鹿だな、こりゃ
scene2望郷の景色
ミクリオ結構、歩いてきたと思うが…出口は見つからないな…
ゼロスコレットちゃん、「何か」の方はどーよ?
コレット…ううん。まだ駄目みたいすごく近くまではきてると思うんだけど…
コレット…あっちの方とか、どかな?
スレイよし、行ってみよう
ミクリオこれは…出口、だったものだな
スレイうん。結晶が出口を塞いでしまってるんだ…
ゼロスこりゃ、別の出口を見つけるしかなさそうだな。コレットちゃんも、行こうぜ
ゼロス…コレットちゃん?
コレットゼロス、あれ…!
ゼロスちょっと、コレットちゃん!?どこに行くんだ…!
ゼロスうわっ…!
スレイすごい…光の玉だ!
ミクリオ…何だ、こんなもの…見た事がないぞ!
コレット私が感じていた「何か」は、この光の玉だったのかも…
コレットこれが…私を呼んで…
コレットきゃっ…光が…強く…!
ゼロスおいおい、大丈夫なのか?光の玉が、どんどん大きくなるぞ!
コレット光の中に…何か見えて…
スレイ…!すごい…景色が映し出されてる。それに、これって──
スレイイズチだ!イズチだよ、ミクリオ!うわぁ、懐かしいな…!
ミクリオ…いや。僕は、こんな場所は知らない
スレイあー…そっか。ごめん、つい
ミクリオ
ミクリオスレイ、ここは…どんな場所なんだ?スレイと…それから、僕にとって
スレイミクリオ…
スレイ──イズチは、オレとミクリオが育った場所なんだ
スレイオレが導師になった旅に出るまで、オレ達、ずっとここでジイジに育てられたんだよ
スレイ懐かしいなジイジ…よく手を焼かせちゃってた気がする
スレイミクリオの真名を知った時もそうだ。羨ましがるオレをジイジが宥めてくれて──
ミクリオ僕の、真名…?
ミクリオ…っ!
ゼロス…!光の玉が小さくなっちまった…!
コレット景色も…見えなくなったね
ミクリオ真名…聞いた事ない言葉、見た事もない場所のはずなのに…
ミクリオそれに、今の衝撃は一体……
スレイミクリオ…?もしかして、何か思い出したのか?
ミクリオわからない…けど、僕は──…
ゼロス…混乱中ってか。この様子だと、どうやら何かがミクリオの記憶を刺激したのかもな
ゼロス俺さまが記憶を取り戻した時も確かこんな感じだったし
コレットえっと、とにかくどこか休める場所を──
???貴様ら、そこで何をしている!
スレイ…!あれは…もしかして──
scene3望郷の景色
スレイ白き獅子…!?何で…
騎士団員抵抗はやめてもらおう。大人しく我々に従うんだ!
スレイくっ…!突然何だって言うんだ…!
???待て、あまり脅かすんじゃない
ミクリオあの格好…白き獅子の騎士団の幹部…!?
ファングお前ら、ここは立入禁止区域だぞ。一体どうやって入ってきたんだ?
スレイ立入禁止区域だって…!?
ゼロス光の玉がある遺跡が、何だって立入禁止区域なんかに…!
ファング光の玉?何の話だ?
ファングとにかく、ここに一般人が立ち入る事は許可されて──
ファングん…?
コレットえ…
ファングお前は、確かあの時の子じゃないか。その服…神子になれたんだな!
ファングでも、だったらなおさら何でこんなところに…
コレットあなた…
ファングえーっと、確か…名前は…コレット──
コレットあなた…ロイド、ロイドだよね…!?
ゼロスなっ…!?
ファング…お前…
ファングどうしてその名前を知ってるんだ…?
scene1大切な人、大切な名前
ゼロスコレットちゃん…今、何て…
スレイロイドだって…!?
コレットねえ、ロイド…ロイドなんだよね…?
コレット顔が見えなくてもわかるよ…その声、その仕草…ロイドだよ…!
ファング…確かに、俺の本当の名はロイドだ。けど、その事を知ってるのは、限られた一部の人達だけ…
ファングどうしてお前が知ってるんだ…?
コレット…お願い、ロイド!私の…私達の事、思い出して!
コレットジーニアスやリフィル先生の事とか…昔から、ずっと仲良しだったよね?
コレットそれに、リタとか、ルークとか…一緒に戦った、みんなの名前だよ?思い出せない?
ファング
コレットお願い、ロイド…思い出して…
コレットあなたは、私達にとって…私にとって大切な人なの…。だから…
ファングさっきから、一体何の話を──…!
ファング…そうか
コレットロイド…!
ファングもしかして、お前…咎人に…
コレット…!そんな…
ファングだったら…大人しく投降してくれ。そうしたら俺達だって手荒な真似はしない
コレットロイド…
スレイオレ達も戦う気はないよ。ただここから出られたら、それで…
ファングそれは出来ない。咎人を見逃すわけにはいかないからな
スレイ…くっ…!
ファング…投降する気はないみたいだな
ファングなら、仕方ない…。──その咎人を捕らえろ
騎士団員はっ!
コレットそんな…ロイド!
scene2大切な人、大切な名前
スレイ頼む…どいてくれ!
キンッ!
ミクリオおい、スレイ…!騎士団に刃向かうなんて、正気か!?
スレイオレ達だって戦いたくない!けど…
ゼロスここで大人しく捕まるわけにはいかねーんだよ。何とか逃げる隙を作らねーと…
コレット……
騎士団員くっ!この咎人達、強い…!
ファング…俺がやる
騎士団員隊長!
ファングコレット…ラザリス様にお仕えする神子になれたっていうのに…まさか、咎人になるなんて…
コレット待って…私はロイドと、戦いたくなんて──
ファングそうはいかない。大人しく拘束させてくれ
ゼロス待てよ、ロイド
ゼロスいくら記憶がないって言ってもそれはあんまりなんじゃねぇか?
コレットゼロス…
ゼロスその子はな…お前が世界で一番剣を向けちゃいけねぇ相手なんだよ!
ゼロス行くぜ、ハニー!その目、覚まさせてやる…!
ファング来い…!どの道、咎人は全員捕まえなきゃならないんだ!
ゼロスおおぉっ!
ファングはぁっ!
ゼロスさすが、やるじゃねえか!
コレットロイド…ゼロス…こんなの、悲しすぎるよ…
スレイコレット、下がって!
コレットスレイ…でも…
スレイ今はこの場を乗り切るしかない。何とかして、ここから脱出しよう!
コレット…うん、わかった
スレイゼロス!オレが突破口を開いてみる!それまで何とか、ロイドの方を!
ゼロスああ、頼んだぜ!
騎士団員抵抗はやめろと言っている!
スレイごめんなさい、大人しく捕まるわけにはいかないんだ!
騎士団員くそっ…咎人め…!
ミクリオ咎人…
ミクリオそうだ、僕は白き獅子に協力して咎人を捕まえなければならない…。それこそが、ラザリス様のため…
ミクリオなのに…
ファングはああっ!
ゼロスどわぁっ!
ファング…!ちっ、こっちにも!
ミクリオいや、僕は…
ファング何?…そういえば、お前はさっきから抵抗しないな。咎人じゃないのか?
ゼロスくっ、ミクリオ!お前は下がってろ!
ミクリオ…確かに咎人になったつもりはないが…
ファングそれなら、何で咎人達と一緒に?騙されていた…とかか?
ミクリオなっ…!
ミクリオ違う、別に騙されていたわけじゃ…
ファング咎人に惑わされるんじゃない!
ファングそいつらを信じたところで咎人は、いずれラザリス様が全て、粛正する
ファング近々シャングレイスで行う演説でも…ラザリス様は、それを証明してくださるだろう
ミクリオラザリス様の、演説…?
ファング…さあ、今ならまだ間に合う。咎人の言葉に耳を貸すな!
ゼロスおいおい、ハニー。お前の相手はそっちじゃねぇ、この俺さま、だろ
ゼロスほら、来いよ
ファング…なら、遠慮なく行くぜ
ファングうおおおおっ!
ミクリオくっ、違う…咎人に惑わされてなんて…
騎士団員この咎人め…!力づくでも捕縛するぞ!
ガキィン!
スレイくっ…!
ゼロスっと。…ようスレイ、奇遇じゃねえの
コレットゼロス、スレイ、だいじょぶ!?
ゼロスへーきへーき…って言いたいとこだけど、俺さま達、結構ピンチじゃね…?
ゼロス全員ぶっ倒していいなら、どうにでもなるんだけどさ
スレイけど、この白き獅子の人達もただ記憶を改変されているだけだと思うと…
スレイ出来るだけ人を傷付けずに、何とかこの場を切り抜ける方法を考えないと…!
ファング総員、奴らを包囲しろ!
騎士団員はっ!
スレイ囲まれた…!?
ファングもう逃げ場はない。…これが最後の通告だ、大人しく投降してくれ
コレットロイド…
ミクリオ
ゼロスはは…随分と手際がいいじゃねーか。お前、本当にロイドか?
ファングどこでその名を聞いたか知らないが…今、お前達の目の前にいるのはロイドじゃない
ファング白き獅子のファングだ。ラザリス様を──そして、この世界を守る騎士だ!
コレット守る…。この世界を…
スレイ…それは、オレだって同じだよ
スレイオレ達の世界は、天帝によって闇に包まれてしまった
ファングラザリス様によって、だって…?
ファング…さすが咎人だな。そんな話、信じられるわけないだろ
ゼロスま、そうだよな…。今は話すだけ無駄ってか
スレイだとしても、オレ達の意思は変わらない
スレイ…必ず元の世界に光を取り戻してみせる…!
スレイ決めたんだ。オレは世界を導く光になるんだって
スレイ…だから従えない。ロイドとは戦いたくないけど、でも、捕まるわけにもいかないんだ
スレイ──オレは絶対に諦めない!
ミクリオ…!
スレイあの壁画では、導師が聖なる剣を掲げ闇を切り裂き…そこからまぶしい光が差し込んでた
スレイもしオレが導師になって、あの壁画と同じ事が出来るなら…この世界の導きの光になれるなら──
スレイ…オレは導師になる。どんな試練だって、乗り越えてみせる!
ミクリオ今のは…スレイ……君、なのか…?
ミクリオ導きの光…導師……くっ、僕は──…
ミクリオ…うっ!
ミクリオ──晶化現象が何だ。そんなもの、僕が何とかしてやるさ
ミクリオへっぽこ導師の、君の力なんて借りなくてもな!
ミクリオけど…スレイ。もし君も、世界を守りたいと…本気で思っているのなら
ミクリオ特別に、僕を手伝う事を許してやる
スレイ
スレイ…ぷっははは…!
ミクリオ笑うな。僕は真剣に言ってるんだぞ
スレイごめん…でもおかしくて
スレイそうか…そうだったんだな
スレイこの世界を、守りたい──…。これは、オレ一人の夢じゃない
スレイこれは、オレ達の…
ミクリオ───夢…
ミクリオ
スレイミクリオ…?うわっ…!
ザシュ!
ファングお前達の相手はこの俺だ!よそ見してる場合じゃないぞ
コレットロイド…!
ゼロスちっ…!
ファングこれで終わりだ…!
スレイくっ…!もうやるしかないのか…!
scene3大切な人、大切な名前
ファングくっ!
ファングなかなかやるな。──だが!
スレイうぐっ!
ファング何のつもりか知らないが、お前、本気で戦ってないだろ
ファングそれじゃあ俺は止められないぞ!戦意がないなら、大人しく──
ミクリオ…スレイ!
スレイミクリオ…?
ファング…!何のつもりだ!?お前は咎人じゃないはず──
ミクリオスレイ、僕の真名を!
スレイえっ?そ、それってまさか──
ミクリオどうした?まさか、忘れたわけじゃないだろうな
スレイ…!
スレイははっ、忘れるわけないだろ──
スレイいくぞ、ミクリオ!
ミクリオああ!
コレットゼロス、見て…!
ゼロス神依…!?って事は…ミクリオのヤツ、記憶を…
ゼロスへっ、あいつら…やりやがったな
ファングくっ…!こんな力を隠し持っていたなんて…
ファングだけど、俺も引くわけにはいかない!はあっ!
スレイ
ファング…どうした?何で反撃してこないんだ…?
スレイ君はオレ達の敵じゃない
スレイ行くよ、ミクリオ!
ミクリオああ!…出口をふさぐあの結晶だって、僕達の力なら──
スレイ・ミクリオはああぁーっ!
パリィイイーーン…!
ファングな……!?まさかラザリス様の結晶を砕ける奴がいるなんて…!
スレイ今だ、ゼロス、コレット!
ゼロスおっ、スレイやるぅ!
コレットでも、ロイドが…
ゼロスコレットちゃん、早く!外に逃げるなら今しかないぜ!
コレット…う、うん。わかった!
スレイよし、行こう!
ファング
騎士団員ファング様追わなくてよろしいのでしょうか?
ファングああ、見逃してやれ
ファング宰相が言ってたのは奴らだ。焦らなくてもどの道、シャングレイスで片が付く
スレイはぁ、はぁ…ここまで来たら、大丈夫かな
ミクリオ……
スレイん?どうかしたのか、ミクリオ
スレイ…って、そういえば記憶、本当に戻ったんだな!
ミクリオああ、君のお蔭でね
ミクリオ…いろいろとすまなかった。本当にありがとう、スレイ
スレイミクリオ…お礼なら、オレも言わないと
スレイオレを信じてくれてありがとう。それと、…おかえり!
ミクリオスレイ…ああ、ただいま
コレットロイド…
ゼロスコレットちゃん…
ゼロスしっかし、驚いたよな~。あのファングがロイドくんだったなんて
コレットうん…。そだね、驚いちゃった
コレット……
ゼロスそんな顔しなくても大丈夫だって。ミクリオだって記憶を取り戻したんだ
ゼロスロイドくんの記憶も、きっと…いや、絶対に取り戻せる。そうだろ?
コレットゼロス…うん、そだね
コレットミクリオ、記憶が戻ってよかったね
ミクリオああ。いろいろと心配をかけたね
ゼロス…これでミクリオの記憶も戻ったか
ゼロス…ロイド、あんまりコレットちゃんに心配かけんじゃねぇぞ
ゼロス…それにしても、何で白き獅子の奴らは俺達を追いかけて来なかったんだ?
スレイ確かに…あっさり引いてたよな
ミクリオその事なんだが、一つ気になる事がある
スレイミクリオ、何か気付いたのか?
ミクリオファングが言っていたんだ。ラザリスは近々、咎人を全て粛正するつもりで──
ミクリオシャングレイスで行う演説にて、それが証明されるらしい
コレットシャングレイスで演説…
ゼロスそこで咎人相手に何かしようってのか?
コレット大変!もしかしたら記憶を取り戻した仲間が他にもいるかもしれないのに…!
スレイうん、何をするつもりかはわからないけど放ってはおけない!
ミクリオ…決まりだね
ミクリオ僕達の次の目的地は、シャングレイスだ
scene1動乱の帝都
ジュードさすがに、すごい人だかりだねまだ演説会場の広場まで距離があるのに…
ティア…改めて、この世界におけるラザリスの影響力の強さがわかるわね
ベルベット
ジュード急ごう。この人混みでは、演説が始まるまでに広場にたどり着けないかもしれない
ルドガーふぅ…何とか間に合ったな
ジュード…始まるみたい。──あれは!
ヴァン
ティア…兄さん
街の男おぉ…ヴァン様だ!
街の女ヴァン様ー!
ヴァンエンテレスティアの民よ、静粛に
ヴァンまずは天帝ラザリス様のために集まってくれた事に感謝を
ヴァン…さて、集まってくれたみなに、言っておきたい事がある
ヴァン咎人の事だ
ヴァン先の生誕祭に現れた咎人を始め、最近咎人が数を増やしつつある。嘆かわしい事だ…!
ヴァンしかし、エンテレスティアの民よどうか安心してほしい!
ヴァン世界は今、ラザリス様の手により、完全なものへと近付いている
ヴァン世界が完全なものになれば、もう、これ以上、咎人が増える事もなくなるのだ
ヴァンその時こそ、真の平和な世が実現するだろう!
ヴァン故に!我々はみなに、咎人の根絶を約束しよう!
街の女ああ!ラザリス様のお力で、咎人はもう完全に居なくなるのね!
街の男ラザリス様ー!ヴァン様ー!咎人共を根絶して完全な世界をー!
ティア
ジュード咎人を根絶…か。僕達は元の世界の事を思い出しただけなのに…
ルドガーああ…。だけど、これがこの世界での普通なんだよな…
ティアええ…実際に記憶を取り戻すまでは、私もこの街の人達と同じように考えていたわ
ティア咎人は、虚言で人を惑わせる…と
ティア一方的に嘘だと決めつけて…、それを理由に消えてほしいだなんて…それこそ恐ろしい考え方なのに
ベルベット…どうでもいい事よ。自分のやるべき事が決まっていれば、他人の意見なんて関係ない
ジュード…強いね、ベルベットは
ジュードけど、世界が完全になればこれ以上咎人が増えなくなるって言ってたよね
ルドガーそうだな…。完全な世界ってどういう事だ…?
ベルベット…さあ。それよりも、ラザリスはどうしたの?全然出てこないじゃない
???お前達!そこを動くな!
ジュードえっ…!?
ベルベット…!
scene2動乱の帝都
レイヴン不届き者はお前さん達ですかい?
ベルベット…!あんた…!
レイヴンやぁベルベットちゃん、元気そうで何より。おっさん心配してたのよ?
カイルレイヴンさん!?何やってるの…!?
スタン先にどんどん行っちゃうから、びっくりしたよ
エリーゼジュード!
ティポジュード君だー!
ジュードえ…?エリーゼ!ティポ!
ジュード僕の事がわかるって事はもしかして…
エリーゼはい…、元の記憶は取り戻しました。ジュード、また会えてよかった!
ティポうわー!ジュード君!よかったよー!
ティアスタン、ヴェイグ…みんな無事でよかったわ
スタンティアこそ!
ヴェイグ全員、記憶は取り戻しているようだな
ラピードワオーン!
ルドガーはは、勿論ラピードもな
レイヴンいや~感動の再会だねぇ。おっさんもベルベットちゃんと会えてよかったよかった
ベルベット…あんたには用はないわ。用があるのはラザリスだけよ
スタンそういえば、今日の演説ってラザリスが出るって話だったよな?
カイルはい、ラザリスが演説をしている間にリアラ達を助け出さないと…!
レイヴン勿論潜入するなら、ラザリスの顔を拝んでからよ
レイヴンと言っても…案の定、出てきてないみたいだけど
ベルベット…案の定?一体どういう意味?
レイヴン元々、ラザリスが表に出てくるのは生誕祭か視察の時ぐらいだったのよ
ヴェイグ…つまり、今回は初めから出てくるつもりがなかった、と?
レイヴンそういう事。しかも、白き獅子の姿もないし、これはひょっとすると──
ベルベットどうでもいいわ。ラザリスが出てないなら、こっちから乗り込んで…
ヴァン──これより、咎人の一掃を行う!
ヴァン帝都を封鎖し、白き獅子総出で街中に検問をかける
ヴァン市民のみなには突然の取り決めで迷惑を掛けるが理解いただきたい
ヴァンこの機に、帝都に忍び込んでいる咎人共を一掃しようではないか!
ルドガーなっ…!まさか、これって──
カイルこの演説自体がオレ達を誘き寄せる罠だったって事…!?
ヴァンさあ、ラザリス様!いまこそ咎人に裁きを与える号令を!
ラザリス
ラザリス…エンテレスティアのみんな、どうか協力してほしい
ラザリス今日、ここで!咎人共を一掃する!白き獅子達よ!咎人に裁きを!
騎士団員1咎人に裁きを!
騎士団員2世界に平和を!
スタン白き獅子…!?広場を囲まれてる!
カイルこの時のために隠れてたんだ!
ベルベット──ラザリス!
ジュードえっ…!?ベルベット、どこへ…!?
ベルベットラザリスをここで殺す!
スタンなっ!?そんな無茶な事…!
レイヴンおっさんも、ここは逃げる事をオススメするけど
ベルベットあたしに構うな!ラザリスさえ殺せればそれで…!
カイル駄目だ!こんなに白き獅子もいて、ラザリスまで辿り着けないよ!
カイル事を急ぐと、大切なものを失う可能性だってあるんだから…!
スタンカイル…
ベルベット…くっ…!目の前に、あいつがいるのに…!
ヴェイグとにかく、見つかる前にこの広場を離れるべきだ
ヴェイグこっちだ…!急いで…──なっ!
エリーゼそんな!広場の門が閉じられて…!
ルドガー後ろ、もう追っ手が来てる!このままじゃ逃げ場が…!
ラピードグルルル…!
ティア言っている傍から…追いつかれたみたいね
ロアー観念しろ、咎人共。逃げ場はないぞ
ベルベット…!あんたはあの時の…
ベルベットそこを退きなさい!あんたに用はないの
ベルベット退かないって言うのなら──力づくでも通してもらうわ!
scene3動乱の帝都
ベルベット…はぁっ!
ロアー…お前、前よりも剣筋が冴えているな
ベルベット無駄口を叩く余裕はないはずよ。はあああっ!
バサッ
ロアーくっ…!
ティアロアーのフードが…!
ジュード…!あれって、まさか…
エリーゼそんな…!ミラ…嘘です…!
ベルベットこれで終わりよっ!
ロアーしまっ──!
エリーゼミラ…っ!駄目!
ジュードエリーゼ…!ミラ…!
ガキィィィン!
ベルベットなっ!?
ジュード待って、ベルベット…!
ロアー!?何故私を…
ベルベット白き獅子を庇うつもり…!?
ジュードそうだけど…でも、この人は…ミラは…
ティポいくらベルベット君でもダメなものはダメなんだよー!
ベルベット邪魔するなら容赦しないわ!あんた達もろとも、叩き切って──
ガキィィン!
ベルベット…っ!?
スレイふぅ…間に合った…のかな?
ジュードスレイ…!?
スレイ状況は上手く掴めないけど、今は味方同士で戦っている場合じゃない
ベルベット…ふん…!
ルドガーおい!門が開いていくぞ!
ヴェイグどういう事だ…!?
コレットみんな!
ミクリオ全員無事みたいだね
ティアミクリオ、それにコレットも…!?
コレット今、ゼロスが門を開けてくれてるの!
コレットみんなが脱出したあと、すぐにまた閉めるから…!みんな、急いで街の外に!
ロアーそうはさせん!
ミクリオ白き水よ、崩落せよ…スプラッシュ!
ロアー…なっ!
ミクリオさあ、急いで!じきに門が閉まるよ
エリーゼまって、ください…!あの…話を…
ラピードワン!ワンワン!
ジュード…くっ、エリーゼ!今は、一旦外に出よう!
エリーゼ
レイヴンベルベットちゃんも。今は一刻も早く脱出すべきだと思うけど?
ベルベット…くっ!
カイルリアラ…ソフィ…!
スタンカイル、二人の事は…
カイル…大丈夫です。必ず、また迎えに来ますから!行きましょう、スタンさん!
スタン…ああ!
ロアーくっ…、逃げられたか…!
ロアー
ロアーだが…。あの時、彼らは何故私の事を──…