| Name | Dialogue |
| scene1 | エルとの約束 |
| ルドガー | それじゃ兄さん、行ってくるよ |
| ユリウス | ああ。エルとルルの事は任せておいてくれ |
| ルドガー | ロイヤル猫缶ばかりねだって、兄さんを困らせるなよ、ルル |
| ルル | ナァ~ |
| エル | … |
| ユリウス | エル、いつまでもそんなところでむくれていないで、ルドガーを見送ってやってくれないか |
| エル | … |
| ユリウス | やれやれ。ずっとあの調子だ |
| ルドガー | 俺が話すよ、兄さん |
| ルドガー | エル、昨日ちゃんと話しただろう?納得していないのか? |
| エル | … |
| エル | どうしてダメなの? |
| エル | エルはアイボーじゃなかったの? なのにどうして、一緒にバロニアに行ったらダメなの? |
| ルドガー | エル…何度も言ってるだろう。晶化現象の事は何もわかっていない |
| ルドガー | 必要以上に外出は避けてほしいんだ。ましてや、バロニアまでなんて連れて行けないよ |
| エル | …連れてけなくない |
| ルドガー | それに、バロニアに着いたらお城の知り合いに会うつもりなんだ |
| ルドガー | お城にはいろんな偉い人もいるんだ。子どもと一緒には── |
| エル | エル、コドモじゃないもん |
| ルドガー | お城の人はそう思ってくれないよ。だからといって、街中でエル一人待たせるわけにもいかないだろう? |
| エル | だって…エルも、ルドガーと一緒にショーカのこと調べたい… |
| ルドガー | エルには、俺のいない間兄さんと、街のみんなの事を守って欲しいんだ |
| エル | おじさん、すぐトマト食べさせようとするからイヤ |
| ユリウス | トマトは栄養満点で、身体にすごくいいんだぞ |
| エル | エルはトマト食べなくても、これからちゃんと成長するからいいんですー |
| ユリウス | ルドガーがいない間に、エルのトマト嫌いを克服させようと思ったが…この分だと難しそうだ |
| ルドガー | はは、トマト嫌いは筋金入りだからな |
| ルドガー | じゃあエル。俺が帰って来たら、エルの大好きなスープをたっぷり作ってやる |
| エル | ホント!? |
| ルドガー | ああ、腕によりをかけた大好きなスープの特別バージョン、作るって約束するよ |
| エル | …うん。約束だからね? |
| ルドガー | ああ、約束だ。それじゃ、出発するよ |
| エル | エル、街の外までルドガーをお見送りする! |
| ユリウス | 俺も行こう |
| ルル | ナァン |
| ルドガー | エル、兄さん、それにルルまで。みんな、ありがとう |
| scene2 | エルとの約束 |
| ユリウス | ──ところでルドガー、晶化現象についてだが、何から調べるつもりだ? |
| ルドガー | 知りたい事は山ほどあるけど…特に気がかりなのは晶化した生物の生死、だ |
| ルドガー | 街の人が見せてくれた晶化した蝶を見て、ぞっとしたよ |
| ユリウス | 植物だけじゃなく、昆虫すらも…。晶化現象は、確実に進行していっているからな… |
| ユリウス | リチャード国王の例もある。今後は動物や人間にも広まっていくのかもしれない |
| ルドガー | もし仮にそうなってしまった時、晶化した生物は生きているのか、救い出す方法があるのか… |
| ルドガー | …結晶の性質を知るためにもまずはそれを調べてみようと思う |
| ユリウス | なるほど |
| ユリウス | 確かに、そういった性質を知る事は対策方法は勿論、晶化の実態を知る大きなきっかけとなるかもしれないな |
| ユリウス | …そういえば、バロニアにはアテがあるような事を言っていなかったか? |
| ルドガー | ああ。あそこの騎士団にアスベル達がいる。彼らなら、何か知っていると思うんだ |
| ルドガー | アスベルはリチャード国王とも親しいようだったしね |
| ユリウス | 国王に近い場所から情報を、か…。有力な情報が得られそうではあるな |
| ユリウス | 俺は俺で、調べてみよう。そっちは頼んだぞ |
| ユリウス | …それにしても、晶化現象とは一体何なのだろうな |
| ルドガー | 今は何とも── |
| エル | もー!ルドガーとおじさん、二人でお話してばっかり! |
| ルル | ナァー! |
| ユリウス | はは、ごめんごめん。…エル、まだ少し機嫌が悪いな |
| ルドガー | みたいだな… |
| | |
| ルドガー | 二人共、見送りはこの辺りまででいいよ |
| エル | …うん、わかった |
| ルル | ナァー… |
| ユリウス | 一人忘れてる、って言ってるぞ? |
| ルドガー | はは、ルルも忘れてないって |
| ルドガー | あ、エル…。この前拾った四つ葉のクローバーだけど… |
| エル | あれなら、ちゃんとフーインしたよ! |
| ルドガー | 封印…? |
| エル | ショーカゲンショーは、キケンかもしれないからガラスの入れ物に入れたよ |
| ルドガー | そうだったのか… |
| エル | ねえ、ルドガー |
| エル | ルルも、あんまり外に一人で出しちゃダメだよね |
| ルドガー | ルルか…。そうだな… |
| ユリウス | ルルを閉じ込めておくのは、難しそうだがな |
| ルル | ナァ? |
| ルドガー | エル、俺がいない間ルルの事、出来るだけ目を離さないでいてくれるか? |
| エル | うん、任せて!ルドガーも… |
| エル | ショーカゲンショーの事で何かわかったら、エルにすぐ教えてくれる? |
| ルドガー | ああ、勿論だ。エルは俺の相棒だからな |
| エル | うん! |
| ルドガー | それじゃあ、兄さん、後の事は頼むよ |
| ユリウス | ああ、わかった。気をつけてな |
| エル | 気をつけて行って来てね、ルドガー |
| エル | メガネのおじさんとルルの事も、エルがちゃんと守るから |
| ユリウス | ん?何かおかしいな |
| ルドガー | はは、兄さんと守ってくれって言ったつもりだったんだけどな… |
| エル | 行ってらっしゃーい |
| | |
| ルドガー | さて…と。バロニアへの道はこっちだな |
| ルドガー | …エルも、晶化を心配していろいろ考えていたんだな… |
| ルドガー | エルのためにも、晶化現象の事をちゃんと調べないとな |
| | ガサッ! |
| ルドガー | …!?何だ今の音は… |
| | |
| | ガルルルル! |
| ルドガー | くっ、魔物か…! |
| scene1 | 三人の旅人 |
| ルドガー | 相変わらず大きな街だな |
| ルドガー | 何もなければ、珍しい食材とか見て行きたいけど…寄り道は今度だな。まずは、王宮へ向かわないと |
| ルドガー | とはいえ、国王が晶化した一件で、王宮も警備が強化されていそうだ… |
| ルドガー | 騎士団も忙しいかもしれない。取り次いでもらえるだろうか…。…うん? |
| 街の男1 | セルディク大公以外、誰がいるって言うんだ! |
| ルドガー | …! |
| 街の男2 | 今のウィンドルには、新たな王が必要だ!大公殿下に立っていただくしかない! |
| 街の女1 | 何言ってるんだい。ウィンドルの国王陛下は、リチャード様しかいないよ! |
| 街の女2 | リチャード様が亡くなられたと決まったわけでもないのに、次の王様の話なんて許さないわ! |
| ルドガー | 大公殿下…セルディク大公の事か |
| ルドガー | 国王が晶化した状態じゃ、国民も不安だし、代わりの王の話が出ても不思議じゃないか… |
| ルドガー | 晶化現象で、みんな不安がっている。それはイニル街だけじゃない… |
| ルドガー | 何か俺に出来る事はないだろうか… |
| | ニャー |
| ルドガー | お?こんなところに猫が… |
| ルドガー | どうした?こんな人通りの多いところに、出てくると危ないぞ |
| ルドガー | 首輪があるから飼い猫みたいだが…。食べ物が欲しいのか? |
| ??? | ああっ、見つけたっ! |
| ルドガー | えっ! |
| | ギニャーー! |
| ルドガー | あ、逃げた…! |
| | |
| ??? | どいたどいたどいたーーっ! |
| ルドガー | おっと |
| ??? | そこの猫、待てーーっ! |
| ルドガー | 何だ、今の。猫を追いかけてるのか? |
| ??? | はあ…はあ…こっちの方に来たはずなんだけど |
| ??? | うーん、いないみたいだね。あ、ちょっと、そこの人! |
| ルドガー | 俺、かな? |
| ??? | うん、君だよ。今、やたら元気のいい男の子が走って行かなかった? |
| ??? | えーと、あ、その子、この子と双子で、顔が似ているんだ |
| ルドガー | 双子…か。ああ、ついさっき見かけたよ。猫を追いかけていた男の子だろう? |
| ??? | あ、きっとそうです! |
| ??? | どっちに行ったかな? |
| ルドガー | この通りをまっすぐ進んで、向こうの路地に入って行くのが見えたけど |
| ??? | 向こう…どこの路地ですか?あの、お花屋さんの角ですか? |
| ルドガー | いや、そこじゃなくて、ここからだと四つ目の…。いや、その次か? |
| ??? | あー、もう、わかんないから、お兄さん、ホント悪いんだけど案内してくれない? |
| ??? | その男の子…ディオって言うんだけど、バロニアには不慣れなんだ |
| ??? | このまま放っておいたら、確実に迷子になると思います… |
| ルドガー | それは大変だな。わかった、案内しよう |
| ??? | ありがと! |
| メル | あ、ご挨拶遅れてすみません。わたしはメルといいます。こちらはロディさん |
| ロンドリーネ | 本名はロンドリーネね。ロディは愛称。よろしく! |
| ルドガー | 俺はルドガー。よろしく、二人共 |
| scene2 | 三人の旅人 |
| ルドガー | あそこだ!あの子が捜してたディオじゃないか? |
| ディオ | はあ… |
| ロンドリーネ | そうそう、あの子!ディオくん発見! |
| メル | ディオ! |
| ディオ | あ、メルにロディ。駄目だったよ |
| メル | 駄目だったよ、じゃないでしょ!何も言わずに飛び出して行ったら、心配するじゃない |
| ロンドリーネ | 結局、猫は捕まえられなかったの? |
| ディオ | 捕まえたは捕まえたよ。オレじゃなくて別の人が、だけど |
| ディオ | その捕まえた人は飼い主とも知り合いだからって、連れて行っちゃった |
| ロンドリーネ | ま、それなら結果オーライだね。よかったよかった |
| メル | わたし達、さっき街の広場で迷い猫の張り紙を見つけたんです。で、ちょうどその時猫が前を通って… |
| ロンドリーネ | 可愛そうな迷い猫を捕まえようとディオくんが張り切って一人で飛び出して行ったってわけ |
| ルドガー | あの猫、やっぱり飼い猫だったのか。無事飼い主の元に帰れそうでよかったよ |
| ディオ | それが、よかったけどよくなかったんだよ |
| メル | …?どうしてディオはそんなにがっかりした様子なの? |
| ディオ | 謝礼をもらい損ねたからさ。オレがあの猫を捕まえていれば、今頃は… |
| メル | …呆れた。お礼が欲しくて、あんなに張り切ってたわけ? |
| ディオ | そりゃそうさ。だってオレ達、お金がなくて朝から何も食べてないんだぞ |
| ルドガー | お金がなくて…?昼も過ぎてる時間だし、食べてないなら空腹も限界じゃ… |
| ロンドリーネ | うう、思い出させないでよ。路銀も尽きてきたから、なるべく節約してるんだ |
| メル | この先、旅も続けられなくなっちゃいますね…。どうしよう… |
| ルドガー | 君達、旅をしているのか。子どもと女性だけで? |
| ディオ | 子ども…ってバカにするなよ!立派に旅してるっての! |
| メル | ロディさんも、戦うととっても強いんですよ。頼りになるんです |
| ロンドリーネ | 双子ちゃん達だって、すごい力持ってるんだから。そこらの魔物なんかイチコロだよ |
| ルドガー | へえ…。そのすごい力を持ってるけど、資金の底が尽きた、と |
| ルドガー | 食事が出来ないくらいの金欠って…結構一大事じゃないか? |
| ロンドリーネ | うう、そうなんだよねぇ…。お金がない、となると稼ぐしかない |
| メル | それはそうですけれど、私達、まだ子どもだし、どうやって…? |
| ロンドリーネ | 君、この街の人…だよね?ホント何から何まで悪いけど、私に何か仕事紹介してくれない? |
| ルドガー | 俺もここの街の人間じゃないんだ。いきなり訪れた街でお金を稼ぐとしたら…大道芸とか? |
| ロンドリーネ | 大道芸…か。うん、いいかも!ここは人通りが多いから、歌とか踊りとかいいかもね |
| ディオ | 歌とか踊りっていきなり言われても、オレ達にそんな事… |
| ロンドリーネ | 出来るって。双子ちゃんの得意な事は、なーんだ? |
| メル | あ、なるほど。服を着替えればいいんですね! |
| ロンドリーネ | ご名答! |
| ルドガー | 服を着替える…?着替えると、どうなるんだ? |
| メル | わたし達、いろいろな職業の服を着て、その職業になりきる事が出来るんです |
| ロンドリーネ | なかなかのものだよ。見たら君も、驚くと思う |
| ロンドリーネ | 善は急げ、だね。ルドガー、人手が欲しいから手伝ってくれない? |
| ルドガー | えぇ!?いや、俺これから行くところが…… |
| ディオ | どうせやるなら、街で一番人が多い広場でやろうぜ! |
| ロンドリーネ | いい考え!さあ、みんな、こっちこっち! |
| ルドガー | お、おい、ロディ──…はぁ…仕方がないか |
| | |
| ロンドリーネ | さあさあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! |
| ロンドリーネ | 双子の旅芸人、メルディオ一座がバロニアにやって来ましたよ! |
| ルドガー | 上手いもんだな。みんなこっちを向いたぞ |
| ロンドリーネ | 関心さえ引きつければ、後はこっちのもの。頼むよ、双子ちゃん! |
| メル | ららら~~~♪ |
| 街の男 | おお、なんて可愛らしい。しかも、なんて上手なんだ!まるで天使の歌声のようだ |
| メル | るるる~~~♪ |
| 街の女 | 小さい吟遊詩人さんだこと!いい声だねえ |
| ロンドリーネ | バードの服を着れば、メルはたちまち、一流の吟遊詩人に早変わりってわけ |
| ルドガー | 本当に熟練の歌い手みたいだ。メルの歌でみんな足を止めてる |
| ロンドリーネ | でしょ?でも、これだけじゃないんだな!まあ、見てて |
| ロンドリーネ | 美少女吟遊詩人に続きましては、少年剣豪の登場!技の冴えをご覧あれ! |
| ディオ | はああっ! |
| ディオ | えいっ!やあっ!たああっ! |
| ルドガー | すごい…!あんな大きな剣をいとも容易く操ってる |
| ロンドリーネ | 今のディオは、剣豪だからね |
| ロンドリーネ | …いかがです、お客さん?メルディオ一座の公演、たーっぷりとお楽しみ下さい! |
| メル | ららら~~~♪ |
| ディオ | はっ!やあっ!とうっ! |
| 街の男 | いいぞ、二人共! |
| 街の女 | 晶化現象が起きて以来、久しぶりにこんなに笑った気がするよ。これは、おひねりを奮発しないとね |
| ルドガー | 街のみんなも楽しそうだなこれが二人のすごい力、か… |
| ルドガー | あ、投げ銭はこちらにお願いします!投げ銭はこちらへ! |
| | |
| ディオ | すげえ!あっという間に、お金がこんなにたまったぞ! |
| ロンドリーネ | 作戦は成功だね!二人の頑張りの成果だよ |
| メル | わたし達だけじゃありません。お二人がいてくれたお蔭で思い切ってやれました |
| ロンドリーネ | ルドガー、ありがとう。これ、おひねりのおすそ分けね |
| ルドガー | いや、お金はいいよ。俺は大した事はしていない。三人の力だ |
| ルドガー | 俺もすごく楽しませてもらったし、街の人達の笑顔が見られてよかった |
| ロンドリーネ | ルドガー…。そっか、じゃあ今回は遠慮なくいただくね。本当に助かったよ |
| ディオ | これでまた、旅を続けられるな |
| ルドガー | …君達は何で旅をしているんだ?今は晶化現象で、外は危険かもしれないのに |
| ロンドリーネ | 私、人を捜してるんだ。どうしても会いたい人がいてさ |
| ロンドリーネ | 双子ちゃん達は、それを手伝ってくれてるんだ |
| ルドガー | 会いたい人、か… |
| ロンドリーネ | それじゃ、懐も暖まったし、そろそろ行こうか、双子ちゃん |
| ディオ | おう!まずはメシ食いに行こうぜ! |
| メル | ルドガーさん、本当にありがとうございました |
| ルドガー | いや、こちらこそ楽しかったよ。道中、気をつけてな。危険そうなところには近付くなよ |
| メル | はい、そうします。ご忠告、ありがとうございます |
| ディオ | じゃあ、行こうぜ!ルドガー、今日はありがとな |
| メル | ディオ!ルドガーさんは年上なんだから、ちゃんと敬語で話しなさいよ |
| ロンドリーネ | それじゃ、私達は行くとするよ。またどこかで会えるといいな |
| ルドガー | ああ、そうだな。君達が、捜している人に会える事を祈ってるよ |
| ロンドリーネ | …うん、ありがとう! |
| scene1 | 同志との出会い |
| ルドガー | ロディにディオにメルか…おもしろい三人組だったな |
| ルドガー | …さて、俺もそろそろ本来の目的に戻るとするか |
| ルドガー | 王宮はあっちだな。この道を行けば──…ん? |
| 青果商 | ちょっと、そこのお兄さん。新鮮なトマトはどうだい?甘くて美味しいよ! |
| ルドガー | へえ、こんなに熟したトマトならデザートにアレンジ出来そうだし、エルもきっと食べられるだろうな… |
| ルドガー | いや、俺はこれから用があるんだから、買い物は… |
| | |
| ??? | おー、このトマトおいしそう!おじさん、ちょうだい! |
| 青果商 | お姉ちゃん、見る目あるね。いくつ欲しい? |
| ??? | パスカル、勝手に買おうとしないでくれ。まだ何を作るか決めてないだろ |
| パスカル | ん~?トマトはそのまま食べられるけど? |
| ??? | そういう問題じゃない。必要のない材料をわざわざ── |
| パスカル | それじゃ…焼く?焼きトマト! |
| ??? | 調理法の話でもない… |
| パスカル | え~、違うの?トマトは柔らかくて栄養もあるし、病み上がりのスレイにもいいと思うけどな |
| ??? | 栄養があるのはその通りだけど、物事には順序というものがあるだろ |
| ルドガー | …あのー、話しかけても? |
| パスカル | ん?なあに? |
| ルドガー | 俺、よく料理をするんだけど、リゾットがいいんじゃないか? |
| ルドガー | トマトでも、お米と一緒に煮込めば病み上がりでも食べやすいと思う |
| パスカル | へえ、いいねぇ、それ。食べたい!ミクリオ作って! |
| ミクリオ | やれやれ…。了解した、君達の提案に乗ろう。あとで作り方を調べておく |
| パスカル | 宿の人に聞けばいいんじゃない?お兄さん、いい事教えてくれてありがと! |
| ルドガー | どういたしまして。その人も早くよくなるといいな |
| ミクリオ | …… |
| ミクリオ | …心遣い、感謝する |
| パスカル | 病気っていうか、ただ寝込んでるだけっていうか…。大した事はないんだ |
| パスカル | とにかく、早く戻ろっか。ご飯食べてスレイが元気になったら晶化現象の調査も再開だね! |
| ルドガー | …君達も、晶化現象の事を調べているのか? |
| パスカル | 君達もって、お兄さんも? |
| ルドガー | ああ。とは言っても、情報を求めてバロニアに来たばかりで何も知らないんだ |
| ルドガー | よかったら、何か知っている事があれば教えてくれないだろうか? |
| 青果商 | ちょっと!あんた達!立ち話ならよそでやってくれないかい? |
| ルドガー | すみません、今移動します。あ、その前にトマト買うんだったな |
| パスカル | おじさん!トマト5個ちょーだい!いや、やっぱり6個かなあ… |
| ルドガー | その前に、何人分作るんだ?それによると思うんだが… |
| ミクリオ | …… |
| ミクリオ | 晶化を調べている、か… |
| | |
| パスカル | お待たせ!えっと、お兄さんのお名前は? |
| ルドガー | ああ、自己紹介が遅れてすまない。俺はルドガー・ウィル・クルスニク。イニル街から来たんだ |
| パスカル | あたしはパスカル。で、こっちはミクリオ。よろしく、ルドガー |
| ミクリオ | …よろしく |
| ルドガー | 晶化現象の事なんだけど… |
| ミクリオ | その前に、一つ聞かせてほしい。バロニアに来たばかりという事だけど具体的には、いつこの街に? |
| ルドガー | …? |
| ミクリオ | 先日の大公による演説と赤の騎士団…街の住人達にも混乱は生じているし、正直、僕も敏感になっている |
| パスカル | ん~、悪い人には見えないけどなぁ~ |
| ミクリオ | パスカルの印象や勘を理解出来ないわけじゃない。それでも、今は時期が時期だ |
| ミクリオ | ルドガー、無礼な事を聞いている自覚はある。だが、答えてもらえないだろうか |
| ルドガー | 俺がこの街へ来たのは少し前の事だ |
| ルドガー | …それより、赤の、騎士団…だっけ?その騎士団の名前は初めて聞いたな。アスベル達がいる騎士団とは違うのか |
| パスカル | あれ?ルドガーってアスベルの事、知ってるの? |
| ルドガー | ああ、アスベルとは前に行動を共にした事がある |
| パスカル | おお~!それなら大丈夫!ミクリオ、ルドガーならきっと力になってくれるよ! |
| ミクリオ | また「知り合いの知り合い」か…旅に出てからはずっとこうだな。出来すぎた偶然が次々重なってくる… |
| ミクリオ | …ルドガー、大変失礼をした |
| ミクリオ | 改めて名乗るけど、僕はミクリオ。先ほどの発言、許してほしい |
| ルドガー | いや、いいんだ。街の様子を見ると無理もないよ |
| パスカル | それじゃ、まとまったところで!立ち話もなんだし、宿に行かない? |
| ミクリオ | …この機会だし、全員で顔合わせしておくのも悪くないか。ルドガーの都合はどうだい? |
| パスカル | みんなで話した方が何かと話が早いでしょ?ね、いいかな? |
| ルドガー | …じゃあ、そうさせてもらおう。荷物持つのを手伝うよ |
| パスカル | ありがと~!じゃあ、半分お願い。宿はこっちだよ! |
| scene2 | 同志との出会い |
| スレイ | へえ…。これが導師の衣装…オレに似合ってるかな、ライラ? |
| ライラ | とてもよくお似合いです。スレイさんのお身体に採寸も合っているみたいですね |
| スレイ | うん、ぴったりだ。結構動きやすいよ! |
| スレイ | …なぁ、ライラ |
| スレイ | オレ、導師になったんだよな |
| スレイ | あの後倒れて、ずっと寝込んでたからさ |
| スレイ | 今でも、あれは夢だったんじゃないかって… |
| ライラ | 夢ではありませんわ。スレイさんは聖剣を引き抜き、見事、試練を乗り越えられました |
| ライラ | 遠からず、自分が導師であると強く実感する時が訪れるでしょう。私も持てる限りの力をお貸しします |
| スレイ | そっか…。ありがとう、ライラ |
| | |
| パスカル | ただいま~。おっ、スレイ、起きたんだ!ライラの言う通りだったね |
| ミクリオ | 気分はどうだい?ふらつきとかはないか? |
| スレイ | よく寝たー!って感じで何ともない。ピンピンしてるよ |
| ミクリオ | ならいい…。それで?その格好は何なんだい? |
| スレイ | ライラがくれたんだ。カッコいいだろ? |
| ライラ | かつての導師の衣装を元にご用意いたしました |
| パスカル | へ~、そうなんだ。何か、長いマントが導師様ーって感じがするよ! |
| ミクリオ | 馬子にも衣装だね |
| スレイ | ちぇー…。…あれ、そっちの人は? |
| パスカル | この人はルドガー。買い物で悩んでた時に会ったんだ。ルドガーも事情があるらしくてさ |
| ルドガー | 初めまして、君がスレイ?俺はルドガー。よろしく |
| | |
| スレイ | ルドガーさん…はい、よろしくお願いします |
| ライラ | 私はライラと申します。パスカルさん?その事情と言うのはどういった? |
| ミクリオ | 彼は僕達と同じく、晶化現象について調べているんだ |
| ルドガー | 調べに来た、というのが正しいかな。バロニアに来たばかりで、まだ何も掴んではいないんだ |
| ライラ | お一人で来られたようですが、ルドガーさんの街で晶化現象は… |
| ルドガー | ああ。俺の住むイニル街でも街中で植物の晶化が進んでいる |
| ルドガー | 最近は昆虫も晶化するようになった。このままだと動物や人間にも晶化が起こり始めるかもしれない |
| パスカル | 原因や実態もわからないから、ね。いつどうなってもおかしくはないし… |
| ルドガー | 対策や解決方法があるのか…、少しでも早く情報を掴んで、みんなを安心させたいんだ |
| スレイ | ルドガーさんの気持ち、オレもわかります |
| ミクリオ | 僕達も住んでいた村の側で、晶化した鳥を見つけた事がある |
| ルドガー | そうか…。やっぱり、地域によっては動物の晶化も起きているんだな… |
| ルドガー | 晶化した動物がどうなるか、情報は?もう助からないのか? |
| スレイ | 鳥を覆った結晶を割ろうと思って結構強く叩いたんですけど、ヒビ一つ入らなくて… |
| ミクリオ | 今の僕達では手の施しようがないだろうね |
| ルドガー | そんな… |
| パスカル | でも、諦めるわけにはいかないよ。中の生物は生きてるんだし |
| ルドガー | …!中の生物が生きてるって…それは本当か!? |
| パスカル | うん、間違いないよ。だからこそ、晶化現象のメカニズムを解明して、中の生物を助け出したいんだよね |
| ミクリオ | 彼女は、ああ見えて科学者らしい |
| ライラ | 私も変わった発明品を見せていただきましたわ |
| ルドガー | そうなのか…人は見かけによらないな。でも、それを聞いて少し希望が持てたよ |
| パスカル | でも、わかってるのはそれだけなんだ |
| パスカル | 熱を加えても、衝撃を加えても少しも欠けないし。それ以上の事は… |
| ルドガー | 晶化現象が発生し始めた時期や原因などもわからないのか? |
| パスカル | 時期も各地域で異なるだろうし…この国の情報だけで判断は難しいかも |
| スレイ | じゃあ、やっぱり過去の記録とか? |
| ライラ | どうでしょうか。今のような状況は私ですら見た事も聞いた事もありませんし… |
| ルドガー | …?あなたですら、というのは…? |
| ライラ | あら、ふふ、何でもありません。こちらの話ですわ |
| ミクリオ | 過去という観点で言えば、以前の天変地異がまず思い出される |
| ミクリオ | ある時から突如発生し、世界全土に急激に拡大したところにも共通性があるしね |
| スレイ | 確かに、原因不明ってところも一緒だよな |
| パスカル | ふむふむ…言われてみればそんな気もするね |
| ルドガー | 前にあった天変地異との関連性か…。俺もその可能性は考えた |
| ルドガー | この晶化現象は大精霊に関わりがあるかもしれないって… |
| スレイ | 大精霊?あれ、どこかで聞いたような… |
| ルドガー | 本当か?大精霊を知っているのは一部の人だけだと思っていたんだが… |
| ルドガー | あの異変は、彼らが暴走状態になってしまったため、起きてしまったんだ |
| スレイ | …あ、思い出した!確かミラさんと会った時だ。みんな大精霊がどうのって話してて… |
| ルドガー | ミラと知り合いなのか? |
| スレイ | だいぶ前だけど、シルヴァラントの遺跡探検中に会った事があって… |
| ミクリオ | またここでも知り合い同士か…。僕達の世界は、実は意外なほど狭くて小さいのかもしれない… |
| ルドガー | ああ。すごい偶然だな… |
| ミクリオ | それで、その大精霊とは? |
| ライラ | 世界を形成する上で欠かせないさまざまな自然を司る存在の事ですわね |
| ライラ | 自然を司るという点では、私やミクリオさんが使う天響術とも関わりがあると言えます |
| スレイ | そんな存在がいるんだ…。知らなかった |
| ライラ | 自然を司り、世界の均衡を保つのに欠かせない大精霊が暴走したとなれば先の天変地異も頷けますね |
| パスカル | ん~…じゃあ、大精霊について調べた方がいいのかなぁ? |
| ルドガー | いや、可能性はなくはないが、晶化現象はどの自然現象とも結びつかない |
| ルドガー | 大精霊に絞って動くのは賢明ではないと思う |
| パスカル | うーん…そうかあ…。なかなか手がかりが見つからないね |
| スレイ | だけど、人数が増えた分だけ情報は確実に増えたよ。この調子で── |
| | ぐー |
| ライラ | ふふ。みなさん、つい話し込んでしまいましたが、少し休憩にしませんか? |
| ミクリオ | すまない、スレイ…。君がこの三日間、飲まず食わずなのを失念していた……くく…… |
| スレイ | 笑うなよ、ミクリオ! |
| パスカル | じゃあ、ご飯にしよ!考えるのはその後!お腹が空いちゃうと、何にも出来ないもんね! |
| ミクリオ | 僕が準備してくる。メニューはトマトリゾットだと決まっていてね |
| スレイ | 何かおいしそう!楽しみにしてるからな、ミクリオ! |
| ルドガー | せっかくだから、俺も手伝うよ。いろいろ話も聞かせてもらったし、作り方はまだ聞いてないだろ? |
| パスカル | 頼りになるねぇ、ルドガー!よく料理するんだっけ? |
| ルドガー | ああ、レシピを変えて作ったりしてる。トマト料理が好きな兄がいるんだ |
| ミクリオ | お願いしよう。厨房はこっちだ |
| スレイ | はぁ~!美味しかったぁー! |
| ルドガー | 作りすぎたかと思ったけど残さず食べたな。よっぽど空腹だったんだな… |
| ミクリオ | それにしても、あの手際のよさ…掛け値なしに素晴らしい腕だった。参考にさせてもらうよ、ルドガー |
| スレイ | 食べた事ないものばかりで、本当にどれも美味しかった!ごちそうさま! |
| パスカル | あたしも食べ過ぎちゃったよ~。食べたら眠くなっちゃった…。ふあ… |
| ルドガー | はは…。喜んでくれてうれしいよ |
| | わあああーーっ!パチパチパチ… |
| ミクリオ | …何だ?これは住民の喚声?拍手も聞こえるが… |
| | よう、待ってました! |
| | こっちを見たわ! |
| ライラ | 誰か来たみたいですわね |
| ルドガー | ちょっと様子を見てくるよ。何があったのか…少し気になる |
| スレイ | オレも行きます!ミクリオはどうする? |
| ミクリオ | 当然、僕も行く。急ごう、スレイ、ルドガー |
| パスカル | わああ、みんな待って~! |
| scene1 | 不穏な予感 |
| ライラ | すごい人だかりですね |
| パスカル | 有名人でもいるのかなぁ~? |
| ルドガー | ひょっとして、またロディ達が大道芸を…? |
| ミクリオ | スレイ、あそこだ |
| スレイ | …誰か来る。あれは! |
| | ザッザッザッ… |
| カーツ | … |
| 街の女1 | カーツ様、万歳! |
| 街の女2 | カーツ隊長、頑張ってください! |
| | ザッザッザッ… |
| ルドガー | 何だ、これは…? |
| | ざわざわ… |
| 街の男 | また戦争になるんじゃないのか…? |
| ライラ | 歓声は大きいですが、不安そうな顔つきの方も多いですね… |
| ルドガー | 今のはウィンドル騎士団か?知っている顔は見なかったが… |
| ミクリオ | あれが先日結成された赤の騎士団だ。正規のウィンドル騎士団とは別の指揮系統で動いているらしい |
| ルドガー | 騎士団を結成…?リチャード国王は晶化していると聞いたが… |
| パスカル | セルディク大公が勝手に作ったんだよ |
| ルドガー | セルディク大公が? |
| スレイ | 街の外へ行くみたいだ。どこへ向かってるんだろう? |
| ライラ | 少数精鋭といった印象を受けました。重要な任務、なのかもしれません |
| ルドガー | … |
| パスカル | ルドガーは、セルディク大公の事は詳しい? |
| ルドガー | 国王に代わる指導者として、国民の支持を集め出しているとは聞いたが… |
| ルドガー | どんな人物かまでは知らない。君達は何か知っているか? |
| ミクリオ | 僕やスレイは、この前行われた大公の演説を直接聞いたくらいだね |
| ミクリオ | 正直に言って特段弁の立つ人物でもない、という印象だった |
| パスカル | それでね、反国王派でお城の中での評判はよくないんだって |
| パスカル | なのに民衆の前で、リチャードは死んだ!なんて勝手な事言って… |
| パスカル | 自分こそみんなを引っ張る指導者なんだって言い回ってるみたい |
| ルドガー | そんな事が… |
| スレイ | 赤の騎士団…。あのセルディク大公の命令で動いてる部隊、か… |
| ライラ | ただ事ではなさそうですわね… |
| ルドガー | 俺の街では、セルディク大公は国を憂いて動いている人物だと伝わっていたが… |
| パスカル | とにかく、アスベルとフレンに会いに行こうよ。二人なら何か知ってるだろうし |
| ミクリオ | パスカル、僕達は元々晶化現象について相談していたんだ。それを忘れないでくれ |
| パスカル | 勿論覚えてるよ~!騎士団には晶化の情報も入ってるかもしれないし、聞いてみよう! |
| ライラ | …どうされますか? |
| ルドガー | 勿論だ、俺はそのためにバロニアに来たんだから |
| スレイ | なら早速、アスベルさんとフレンさんに会いに行ってみよう! |
| scene2 | 不穏な予感 |
| ウィンドル兵 | お前達を、城内に入れるわけにはいかん!立ち去れ! |
| パスカル | ええ~。どうして?そこを何とか。お願い! |
| ウィンドル兵 | あまりしつこいようだと、不穏分子で身柄を拘束するぞ |
| ルドガー | そんな… |
| ??? | ルドガー…。ルドガーですよね? |
| ルドガー | エステル!? |
| エステル | 窓から姿が見えたのでもしかしてと思って…。どうしたんです? |
| ルドガー | アスベルに聞きたい事があって来たんだが、中に入れてもらえないんだ |
| エステル | アスベルなら今、ちょうど会議中のはずですけど…急を要する話ですか? |
| ルドガー | 今出て行った赤の騎士団についてなんだが…エステルは何か知ってるか? |
| エステル | …! |
| エステル | …わたしも詳しく知っているわけではありませんが、わかる範囲でならお話は出来ます |
| エステル | 少し待っててください。門番の方に、みなさんをお城に入れてもらえるよう、話してきますから |
| スレイ | …ルドガーさん、あの人と知り合いなんですか? |
| ルドガー | ああ、前に会った事がある。彼女はエステル、この国の姫殿下だ |
| ライラ | 王族の方ともお知り合い… |
| エステル | すみません、今、警備がとても厳しくなっていて、建物への立ち入りは禁止されているそうなんです |
| エステル | 代わりに外出の許可を得てきました。少し、場所を移しませんか? |
| ルドガー | 構わないよ。ありがとう |
| ミクリオ | …大丈夫なのか?王族間のいざこざに巻き込まれる可能性は── |
| ルドガー | ミクリオの心配はわかるよ。そういう可能性も、あるかもしれない |
| ルドガー | ただ、エステルは自分の危険を顧みず国民を救おうとする優しい人だ |
| ルドガー | ここで彼女の話を聞いておくのはこの先、大きな意味を持つと思う |
| スレイ | …あの、エステリーゼ様、オレ達まで一緒に行っちゃって本当に大丈夫ですか? |
| エステル | あ、はい、大丈夫です。それと、私の事はエステルって呼んでください |
| エステル | 親しい人達はみんなそう呼んでくれますから |
| エステル | それではみなさん、こちらへ |
| ルドガー | ああ、行こう |
| scene1 | 心強い協力者 |
| エステル | ──みなさんは晶化現象を調べているんですね |
| スレイ | まだ動き始めたばかりだけど、それがきっかけでルドガーさんとも知り合ったんです |
| ルドガー | それで、アスベル達に晶化現象の事と赤の騎士団の動向を聞こうと思って来たんだけど… |
| エステル | そうだったんですね。…実は、アスベルとフレンは今、セルディク大公に謁見中なんです |
| ミクリオ | 赤の騎士団の事で、だろうか |
| エステル | はい…。この派兵を止めるよう、訴えるためでした。それなのに… |
| パスカル | 派兵って…何だか物騒じゃない? |
| ルドガー | さっき街中でどこかへ出向いて行く赤の騎士団を見かけた |
| ルドガー | 周りの声援とは裏腹に、騎士団の面々はまるで戦いにでも向かうような顔つきだった |
| エステル | …赤の騎士団の行先はおそらくシルヴァラントだと思います |
| エステル | 大公殿下が「新たなる天啓が出現した」という報告を受けた直後の事ですから |
| ライラ | 新たなる天啓…? |
| ルドガー | それは…ついこの前、メルトキオで公開された天啓とは別の新しい天啓って事…か? |
| エステル | はい。そう聞いています |
| ミクリオ | 確かなのか?この前現れた天啓は百年ぶりだと聞いていたけど… |
| ライラ | 私も、これほど短い期間に天啓の出現が続くというのは記憶にありません |
| パスカル | セルディク大公はどこでその情報を手に入れたんだろ? |
| エステル | 赤の騎士団の長を務めるカーツという人が持ち帰ったそうです |
| ミクリオ | …あの男か。どんな人物なんだ? |
| エステル | すみません。わたしもよく知らないんです |
| エステル | ウィンドルへ来たのは最近の事だと聞きますし… |
| スレイ | 他から移って来たばかりの人がいきなり騎士団の団長になるって… |
| エステル | はい。普通は騎士団に長く勤めて功あった者から選ばれるのですが… |
| エステル | 今回は、赤の騎士団を含め、大公殿下がお一人でお決めになったようなんです |
| パスカル | うーん…。ますます怪しい… |
| ルドガー | それで、天啓が現れたというのは本当なのか? |
| エステル | それは…わたしにもわかりません |
| エステル | 石碑の存在そのものが多くの謎に包まれていますし、どんな事が起こり得るのかまでは… |
| ミクリオ | 気になるな。セルディクに情報をもたらしたカーツ自身は、そもそもどうやってその情報を得たのか… |
| パスカル | 石碑が出現した事は確か神子だけが感じ取れるって話だったっけ |
| スレイ | 普通に考えたら、神子本人か、その周りの人達から話を聞いたって事になるけど… |
| エステル | 情報の出所はわかりません…。ですが、大公殿下が天啓に関心を持っている事は間違いありません |
| エステル | おそらくカーツ団長は、石碑出現の真偽を確かめるために神子に会いに行ったのでしょう |
| エステル | 石碑の捜索にも、天啓の読み解きにも、神子の存在は欠かせないそうですから… |
| ルドガー | でも、どうしてそこまでして天啓を手に入れようとするんだ? |
| エステル | 大公殿下によれば、天啓には未来の事が記されているそうです。だから次の天啓もきっとそうだ、と… |
| エステル | 予め未来を知る事が出来れば、他国に対して優位に立てる、そう考えているんだと思います |
| スレイ | そんな理由で、本当に騎士団を…? |
| ライラ | 未来を知る…… |
| ルドガー | 天啓の内容やその真偽はひとまず置いておこう。それより、正式な騎士団ではないとはいえ── |
| ルドガー | ウィンドルの騎士団がシルヴァラントに向かったという事が大きな問題だ |
| エステル | はい…。この事をシルヴァラント側がどう受け止めるか、とても心配です |
| ミクリオ | 他国まで出向いて行くんだ。赤の騎士団が何もせず、大人しくしているとは考えにくい |
| パスカル | 大公の考える事だもん。何が何でも手に入れようとしそうだね |
| ルドガー | 二国の争いの火種になり兼ねない |
| エステル | わたしもそれを懸念しています |
| エステル | …ただでさえ今は、晶化現象やリチャード陛下の事でみんな、不安に思っているんです |
| エステル | それなのに、こんな事をして何事もなく済むとは思えません。そう思って訴えたのですが… |
| ライラ | …相手は、聞く耳を持ってはくれなかったのですね |
| エステル | はい。それでフレン達がもう一度、大公殿下に直接訴えに行ったんです |
| スレイ | そうだったのか… |
| ルドガー | そうだ、エステル。リチャード陛下の具合はどうなんだ? |
| エステル | それは…何とも言えません。未だに結晶を取り除くための方法も掴めていないようですし… |
| パスカル | …そうなんだ…。やっぱり、何もわかっていないの? |
| エステル | はい…。それに、事が事だからか研究も制限されているみたいで… |
| ミクリオ | 下手な情報を外に漏らされてはいらぬ不安を抱かせてしまうかもしれないからね。理解は出来る判断だよ |
| ルドガー | …王宮なら、何か晶化について情報があると思っていたんだが、エステルも知らないとなると… |
| パスカル | うーん、何をどうすればいいんだろ… |
| エステル | … |
| ミクリオ | 新たな天啓…か |
| ミクリオ | 晶化と天啓…あながち無関係じゃないかもしれない |
| パスカル | どういう事? |
| ミクリオ | …最近になって晶化現象が発生した事、立て続けに石碑が現れている事── |
| ミクリオ | そして、天啓に記されていたと思われる出来事が、現実に起こってしまっている事… |
| ライラ | それらがどこかで関連しているかもしれない、そうお考えなのですね? |
| ミクリオ | ただの勘だけどね |
| ルドガー | …よし。俺が赤の騎士団を追おう |
| ルドガー | アスベル達には会えなかったけど、エステルからいろいろ聞けたし |
| ルドガー | 何より今は赤の騎士団が気になる。動向を探って、場合によっては彼らを止めないと |
| スレイ | ルドガーさん、オレ達も一緒に行きます |
| ルドガー | スレイ、どうして君が? |
| ミクリオ | 以前、スレイはシルヴァラントの神子と偶然行きあったらしい |
| スレイ | 今起きてる事、早く教えてあげたいんです。コレットが危ないかもしれない |
| ミクリオ | そうだね…。それに、赤の騎士団が動いている事がシルヴァラントで知れ渡ったら… |
| スレイ | 一気に大きな騒ぎや、混乱になる事だってあるかもしれない。それだけでも心配だよ |
| ミクリオ | おそらく、あのロイドが護衛役だ。戦いの心得はあるようだったけど、騎士団相手なら多勢に無勢だね… |
| ルドガー | そうか、一緒に来てくれると心強いよ |
| ルドガー | よし、行くと決まったら急ごう。赤の騎士団に追いつけなくなる |
| エステル | 赤の騎士団を追う…。あの、でしたらわたしも一緒に行っては駄目でしょうか? |
| エステル | わたしがカーツ団長に会って直接話をしてみます! |
| ルドガー | エステル。赤の騎士団は俺達に任せて、君はここにいてくれないか? |
| ルドガー | ここに残って大公の監視と説得を続けてほしいんだ |
| エステル | でも…ルドガー、みなさん…。本当に大丈夫ですか? |
| ルドガー | ああ。その代わり、ここで大公達の事を頼むよ |
| エステル | …そう、ですね…。わかりました。赤の騎士団の事はみなさんにお任せします |
| エステル | あ、そういえば、ルドガーはユーリの事もご存知です? |
| ルドガー | 軽く面識がある程度だけど… |
| エステル | 実は、赤の騎士団の件はユーリにも相談しているんです |
| エステル | ユーリの事ですから、もしかしたらもう赤の騎士団の後を追って出かけたかもしれません |
| エステル | もし会う事が出来れば、きっと力になってくれると思います |
| ルドガー | そうか。ユーリに会えたら、エステルの事伝えてみるよ |
| スレイ | ユーリ…。どんな人なんですか? |
| エステル | そうですね、少し口が悪くて、素直じゃないところもありますけど…でも、とても頼りになる人ですよ |
| エステル | きっと、みなさん方とも仲良しになれると思います |
| ライラ | エステルさんがそこまで仰る方なら、きっと素敵な方なのでしょうね。お会い出来るのが楽しみですわ |
| ルドガー | よし、じゃあそろそろ俺達も行こうか |
| スレイ | はい! |
| scene2 | 心強い協力者 |
| ルドガー | ──エステル、見送りは大丈夫だ。君は王宮に戻った方がいい |
| エステル | わかりました。みなさん…ありがとうございます。何とお礼を言ったらいいか… |
| エステル | ユーリに会ったらよろしくと伝えてください |
| スレイ | はい。必ず |
| エステル | 本当にお願いするばかりで何も出来なくて…すみません |
| ライラ | お気持ちはお察しします…。ですが、エステルさんだからこそ出来る事が、きっとあると思いますわ |
| ルドガー | エステルは引続き、セルディク大公と国民の事を頼むよ |
| エステル | …はい。大公殿下にはなかなかお会いしていただけないのですが…何とか頑張って説得してみます |
| エステル | このままではリチャード陛下にも顔向け出来ませんから |
| エステル | みなさんもどうか気をつけて。旅の無事をお祈りしています |
| スレイ | ありがとう、エステルさん |
| | |
| スレイ | さてと、まずは宿に戻って出発の準備をしないと── |
| ミクリオ | スレイ、一つだけ言っておく。君はまだ体調が万全じゃない…。止めはしない、だから無理もするな |
| スレイ | サンキューな、ミクリオ。でも大丈夫!よく寝て、よく食べたし、バッチリだよ! |
| ルドガー | ……! |
| ??? | … |
| ルドガー | あの男… |
| ルドガー | 待っ── |
| ??? | … |
| ルドガー | …消えた? |
| ライラ | ルドガーさん…どうされました? |
| ルドガー | ああ、視線を感じて振り返ったら、一瞬だけど黒ずくめの男が見えた… |
| ルドガー | 俺達の話を聞かれていたのかもしれない |
| ミクリオ | …ずっと見張られていたのか? |
| スレイ | オレ達の事をどこかの密偵だって思った、とか? |
| ルドガー | エステルも王族の一人だからな…。セルディク大公も警戒しているのかもしれない |
| | ガサッ |
| パスカル | …!何の音!?例の覗き見さん…!? |
| | |
| | ガルルルル! |
| ライラ | 魔物ですわ! |
| scene1 | 黒い翼 |
| ミクリオ | 魔物がこんなところまで…。晶化の影響か? |
| ルドガー | 騎士団の警備も行き届いてなさそうだな |
| ライラ | 私達を監視していた者の事は少々気がかりですが、早く街を発った方がよさそうですね |
| スレイ | うん、早くコレットに知らせないと… |
| ルドガー | シルヴァラントの神子…。確か、護衛が付いているって言ってたよな? |
| ミクリオ | 正確には、昔からの友人、幼馴染という感じだったけどね。闘いの術は身につけていると思う |
| ルドガー | それでも、危険な事には変わりないだろうな |
| ミクリオ | 神子に接触を図るとすれば、赤の騎士団の行先はメルトキオで間違いないだろう |
| スレイ | だな! |
| パスカル | …ねえ、ごめん、みんな!あたし、エステルを追いかけていいかな? |
| スレイ | どうしたんだ、急に…? |
| パスカル | ここに残って、晶化現象の事、もっと調べたいんだ |
| パスカル | エステルに頼み込めば、リチャードの近くに行って研究出来るかもしれない… |
| パスカル | アスベル達とも約束したし、早くリチャードの事も何とかしてあげたいって思うから |
| スレイ | パスカルがそうしてくれるなら、オレ達としても心強いよ |
| パスカル | ありがとう、スレイ!絶対何か掴んでみせるよ! |
| ルドガー | 別れるのは残念だけどエステルやアスベル達の力になってやってくれ |
| パスカル | 任せて!何かわかったらすぐに知らせるよ。…って事で、これ、渡しとくね |
| ライラ | これは、何かの機械…でしょうか? |
| パスカル | うん、通信機だよ!これを使えば離れた場所にいても話が出来るんだ |
| スレイ | 解析機とか、通信機とか…パスカルは何でも作れるんだな |
| パスカル | まあね~♪てなわけで、はい。スレイに渡しとくね |
| ミクリオ | その道具の使い方は? |
| パスカル | んとね、このボタンを押すと話せてこっちのボタンをね、ピコピコポンだよ! |
| スレイ | ぴ、ピコピコポン? |
| ミクリオ | …すまない、もう少し詳しく説明してくれないか |
| パスカル | えー。十分詳しいんだけどなぁ。えーっとね、ボタンを押している時に話が出来るのね、それから… |
| スレイ | ふむふむ… |
| ミクリオ | 操作そのものは単純なんだな |
| パスカル | というわけで、よろしく!エステルに追いつかないと~ |
| ライラ | パスカルさん、どうかお気をつけて |
| パスカル | みんなも!またね~! |
| ミクリオ | 嵐のように去って行ったな |
| スレイ | ちょっとさみしいんじゃないか、ミクリオ? |
| ミクリオ | そんなんじゃない。静かになったなと思っただけだよ |
| ライラ | ふふ、賑やかな方でしたからね |
| ルドガー | さあ、俺達もそろそろ行こう。赤の騎士団に追いつかないと |
| ルドガー | …! |
| ルドガー | あれは、さっきの…! |
| ルドガー | みんな、すまない…!少しここで待っててくれ! |
| スレイ | ル、ルドガーさん!? |
| scene2 | 黒い翼 |
| ルドガー | はあ、はあ… |
| ルドガー | 間違いない、絶対にあの男だ… |
| ルドガー | 何か理由があって俺達の話を聞いていたのか…?一体、何のために…? |
| ルドガー | 確か、こっちの方へ来たはず──… |
| ルドガー | …いた! |
| ルドガー | 待て! |
| ??? | … |
| ルドガー | お前は一体何者だ…? |
| ルドガー | 俺達が話をしていた最中、誰かの視線を感じた。あれは、お前じゃないのか? |
| ルドガー | 何が目的で俺達の話を聞いていたんだ? |
| ??? | … |
| ルドガー | 答えるつもりはない、という事か…? |
| ルドガー | 質問を変える。どうして今度は姿を消さず、俺の前に姿を見せたんだ? |
| ??? | …敢えて言うなら、お前達相手に姿を隠す必要はない、という事がわかったからだ |
| ルドガー | …どういう事だ? |
| ??? | それ以上の答えなどない |
| ルドガー | じゃあ、何故俺達の話を…?何か知りたい情報があったからじゃないのか? |
| ??? | 答える義理はない |
| ルドガー | 待て! |
| ルドガー | …!また消えた… |
| ルドガー | あの機敏な身のこなし…何者なんだ? |
| ルドガー | 姿を隠す必要はない…敵ではない、という事か…? |
| ルドガー | … |
| scene3 | 黒い翼 |
| ライラ | ──あ、スレイさん!ルドガーさんがいらっしゃいました |
| ルドガー | みんな…突然すまなかった |
| スレイ | ルドガーさん、やっぱり… |
| ルドガー | ああ、例の黒ずくめの男がいたんだ。気配を感じて咄嗟に追いかけたんだが… |
| ルドガー | 結局詳しい事は何も聞き出せなかった |
| スレイ | 立ち聞きされてたのは間違いないんですよね? |
| ルドガー | ああ、おそらく |
| ミクリオ | 正体は何だ?状況を考えれば、エステルを監視していた大公の密偵の線だけど… |
| ルドガー | その可能性もなくもないが…「俺達に姿を隠す必要はなくなった」と言っていた |
| ミクリオ | それは僕達の話を聞いて、敵ではないと判断した、という事か |
| ルドガー | 断言は出来ない…。ただ、敵意は感じなかった |
| ライラ | となると、全く別の勢力が遣わした者、という事になるのでしょうか… |
| ルドガー | どうだろう…。とはいえ、正体がわからない以上警戒するに越した事はない |
| ミクリオ | ああ。スレイ、念のためだ。さっきの通信機でパスカルにも知らせておこう |
| スレイ | りょーかい。早速これが役に立つな |
| ルドガー | 気を取り直して、俺達も出発しよう |
| スレイ | はい! |