| Name | Dialogue |
| scene1 | 旅立ち |
| スレイ | この辺りに来ると帰って来たって感じがするよなぁー! |
| ミクリオ | 遺跡が地下にあって空気がかなりよどんでいたからね。無理もない |
| ミクリオ | さっき話していたけど、イズチには戻らずに行くんだろう? |
| スレイ | ジイジに探検の許可はもらってるし遺跡探検の場所を一個増やしても問題ないって! |
| ミクリオ | 全く…。それで?ここから次に行く遺跡の場所、ちゃんと地図で調べたのか? |
| スレイ | 勿論。これから行くレユ遺跡はシルヴァラントの方だったよな? |
| ミクリオ | ああ。この前行ったサザ遺跡から比較的近い場所にあるはずだ |
| スレイ | サザ遺跡か。確か、あそこは内部にも晶化現象が発生し始めていたな… |
| ミクリオ | … |
| ミクリオ | 晶化現象、か… |
| スレイ | イズチで暮らしているだけなら一見何にも変わらないように思えるけどさ |
| スレイ | 旅をしていると、晶化現象が徐々に広がっている噂ばかり耳にしないか? |
| ミクリオ | …確かにそうかもしれない |
| ミクリオ | 大地や草花にしか影響しなかったものが、昆虫や動物にも生じ始めているという話も聞く |
| ミクリオ | 僕もずっと気にかかってはいるけど── |
| | ザザザ…ドサッ! |
| スレイ | …! |
| スレイ | 何か木から落ちて来たみたいだ。何だろう? |
| ミクリオ | …スレイ、あそこだ |
| | |
| スレイ | これは… |
| スレイ | 鳥だ…!鳥が凍って──…いや待てよ、これってまさか… |
| ミクリオ | ああ、晶化だ…!間違いない |
| スレイ | そんな…!助けてやらないと…! |
| | カッ!カッ! |
| ミクリオ | 傷付けないように気をつけろ |
| スレイ | わかってるって! |
| | カッ!カッ! |
| スレイ | …駄目だ、いくら叩いてもヒビすら入らない… |
| ミクリオ | … |
| ミクリオ | 動物が晶化したのを実際に見るのはこれが初めてだ |
| ミクリオ | ウィンドルの国王が晶化したと聞いた時は、にわかに信じがたかったけど |
| ミクリオ | こうして鳥が晶化しているのを見ると、現実味を帯びてきたな |
| スレイ | … |
| | |
| スレイ | …ミクリオ。オレ、決めたよ |
| スレイ | 晶化現象について、もっと知りたい。そのための旅に出る |
| ミクリオ | 近くの遺跡を探索するのとはわけが違う。自分が言ってる事の意味、わかってるのか? |
| スレイ | …いろいろ危険はあると思う。でも、自分で確かめないといけない |
| スレイ | 世界に今、何が起きてるのか… |
| ミクリオ | 各国の学者、研究者達が未だに何も解明出来てないという話だ |
| ミクリオ | 学者や研究者でもない君が見ても何かが変わるわけじゃ… |
| スレイ | それもわかってる |
| スレイ | けど、旅をすれば、世界各地の情報を集める事だって、広める事だって知識のないオレにも出来るし… |
| スレイ | それに、こんな風に動物達が晶化していくのを見ているだけなんて、オレは嫌だ |
| ミクリオ | スレイ… |
| ミクリオ | わかった。じゃあ、僕も一緒に行く |
| スレイ | ミクリオ…いいのか? |
| ミクリオ | スレイを、一人で行かせるのは心配だからな |
| ミクリオ | それに、原因不明の晶化現象に不安を抱いているのは僕達だけじゃない |
| ミクリオ | イズチのみんなもだ。みんなのためにも僕達に出来る限りの事をしよう |
| スレイ | ありがとう。ミクリオが来てくれるなら、心強いよ |
| ミクリオ | ただし、ジイジを説得出来たらの話だ |
| ミクリオ | 今回は、いつもの遺跡探索とはわけが違う |
| スレイ | う…問題はそれだ |
| ミクリオ | だけど、ジイジの説得すら出来ないようじゃ、晶化現象の情報を集める事なんて到底出来ない |
| ミクリオ | そこは、スレイのお手並み拝見といったところかな |
| スレイ | ど、努力はする… |
| ミクリオ | とりあえず、一度イズチに帰ろう。ジイジに旅の許可をもらいに! |
| スレイ | ああ |
| スレイ | …っと、その前にミクリオ、待ってくれ |
| ミクリオ | 何だ? |
| スレイ | この鳥を、村に持って帰って安全な場所に移そう |
| スレイ | 晶化を解く方法が見つかったらまた飛べるかもしれないし |
| ミクリオ | スレイ… |
| scene2 | 旅立ち |
| ジイジ | このバッカもーーん! |
| スレイ | うっ… |
| ミクリオ | … |
| ジイジ | 何が晶化現象の事をもっと知りたい、じゃ! |
| スレイ | やっぱり…こうなるよなぁ… |
| ジイジ | お前の事じゃ、詳しく知れば、次は何とかしたいと言い出すに決まっとる! |
| スレイ | そ、それは知ってみないとわかんないけど… |
| ジイジ | 原因不明の現象に立ち向かう事が危険な旅になるかもしれん事くらいわかっておらんわけではなかろう? |
| ミクリオ | スレイなりに考えてはいるみたいですが… |
| ジイジ | … |
| ジイジ | …許そう |
| ミクリオ | え? |
| スレイ | 本当!?ジイジ |
| ジイジ | …スレイ、お前は幼い頃から、人間には見えぬこの特殊な杜でワシらと共に暮らしてきた |
| ジイジ | それが故に、世の中の事はどこか遠くに捉えていただろうと思う |
| ジイジ | しかし、お前は人間だ。それに、人間と天族もお互いが無関係というわけでもない |
| ジイジ | お前が、やるべき事を見つけて広い世界に出るというなら止める理由などない |
| スレイ | …ジイジ… |
| ジイジ | 晶化現象の事は、杜の者達もみな気にしておる。人間が晶化したという話も聞こえて来とるしな |
| ジイジ | 今のところイズチの者は無事じゃが…お前達の言う通り、ワシら天族なら同じ目に遭わんとは言い切れまい |
| ジイジ | 自分のため、みなのため…各地で知り得た情報や経験はきっと何らかの役に立つはずだ |
| ジイジ | 行くからには、覚悟を持って気をつけて行ってこい。何かあれば、力にもなろう |
| スレイ | ジイジ…ありがとう!オレ、頑張るよ。晶化現象をもっと知って── |
| スレイ | …って、あれ?でも…最初から許すつもりだったなら、オレ達、怒鳴られ損じゃ… |
| ジイジ | それはそれ、これはこれじゃ |
| スレイ | 何か釈然としない…けどまあ、いいか |
| スレイ | 善は急げだ。すぐ旅の支度を整えるよ! |
| ジイジ | やれやれ…あわただしい奴じゃのぅ |
| ミクリオ | ええ、全く。…でもジイジ、許してくれてありがとうございます |
| ジイジ | なに、いずれ来たであろう時が来ただけの事じゃ |
| ジイジ | …ミクリオよ、スレイの気持ちはまっすぐで正しい。じゃが、それ故の困難も多かろう |
| ミクリオ | …はい |
| ジイジ | いかなる時も二人で力を合わせ、無事、帰ってこい。…よいな? |
| ミクリオ | ジイジ…。当然、そのつもりです |
| ジイジ | …うむ。では、旅に出るにあたって、いくつか助言をしておこう。まずは── |
| | |
| スレイ | 来た来た。遅いぞ、ミクリオ |
| ミクリオ | ジイジにいろいろ心構えを聞かされていたんだ |
| スレイ | みんなに挨拶も済ませたし、出発しよう。まずはどこへ向かおうか? |
| ミクリオ | その事なんだけど、ジイジからいい話を聞いたよ |
| ミクリオ | メルトキオに「図書館」という、歴史的資料や文献が多く集められた施設があるらしい |
| スレイ | へえ、面白そうだな!そんなところがあるなんて、さすが大都会だな |
| ミクリオ | まずはその図書館に行って、晶化現象の情報を探すのがいいと思う |
| スレイ | だな。じゃあ、メルトキオに向けて出発!と、行きたいところだったけど… |
| | ガサッ |
| ミクリオ | …はあ。やれやれ、水を差してくれるね |
| | |
| | ガルルル! |
| スレイ | 行くぞ、ミクリオ! |
| ミクリオ | ああ! |
| scene1 | 不思議な少女 |
| スレイ | それにしても、本当にいい天気だな |
| ミクリオ | ああ、そうだね |
| スレイ | こうして見ていると、のどかで平和な、いつもの光景なんだけど… |
| スレイ | その一方で、晶化現象は徐々に広がってて…。何だか信じられないよな |
| ミクリオ | だが、それがまごう事なき現実だ。僕らも目の当たりにしただろう?晶化現象が発生した鳥を… |
| スレイ | うん…さっきの鳥… |
| スレイ | 結晶の中で、まるで時間が止まったみたいに固まってたけど、生きてるよな…? |
| ミクリオ | 見ただけでは何とも言えないね |
| ミクリオ | 結晶が解ければ、すぐにでも飛び立ちそうに見えたけど… |
| スレイ | 生きてるといいよな。あの鳥も、ウィンドルの国王も… |
| ミクリオ | … |
| ミクリオ | …そのウィンドルの王様なんだけど、例の天啓、覚えてるかい? |
| スレイ | 『命源は燦爛たる結晶となり、 猛き君主を醒めぬ夢へ攫った』 |
| ミクリオ | 『零れ落ちた星の雫は、 波紋の如く世界に拡がる』 |
| ミクリオ | この天啓について、ウィンドル国王の晶化を予言したものじゃないかって噂が流れているらしい |
| スレイ | 予言?そんな話になってるのか…。ミクリオはどう思う? |
| ミクリオ | 猛き君主…確かに、ウィンドルの国王は年若いにも関わらず、立派な人物らしい |
| ミクリオ | 燦爛たる結晶という言葉も、晶化現象を暗示していると読めなくはない |
| ミクリオ | あれを未来予知だと捉える者が出てくる事自体は、理解出来なくはないね |
| スレイ | そっか… |
| ミクリオ | ただ、「天啓は未来予知だ」と人間が本気で考えるようになったら、少し厄介な事になると思う |
| スレイ | 厄介? |
| ミクリオ | それがいい事ならまだしも、今回の王の晶化みたいに実は不吉な内容だった場合さ |
| ミクリオ | 晶化の件があって、世間には微かだけど不安が広まってる |
| ミクリオ | その不安が一気に高まるような事態も… |
| スレイ | そんな事起きるのか?あくまで噂なんだし… |
| ミクリオ | いや、むしろ当然だよ。晶化現象が人、動物、植物、何にでも起こり得るという事は── |
| ミクリオ | 晶化したそれ自体の命が失われるかもという心配以前に、まずは食糧の問題が出てくる |
| スレイ | それはわかるよ。晶化がどんどん拡大していったら、漁も狩りも収穫も全部出来なくなるもんな |
| ミクリオ | そう。晶化してしまったものは、どう考えても食べられそうにない |
| ミクリオ | 僕達天族と違って、人間が生きていくには一定量の食糧が絶対に必要だろ? |
| スレイ | 晶化のせいで、世界中で飢餓が起きるかもしれない、か… |
| スレイ | … |
| scene2 | 不思議な少女 |
| ミクリオ | やっとメルトキオだね |
| スレイ | 久しぶりだけど、相変わらず賑やかな街だな |
| スレイ | まずは…ジイジから聞いた「図書館」ってところだな。どこにあるんだろう |
| ミクリオ | 誰かに聞いてみたらどうだい? |
| スレイ | うん、それもそうだな。あの、すみませ── |
| 街の男1 | やっぱりこの間の天啓は、これから起こる事を暗示した未来予知なんだって |
| 街の男2 | 未来予知といや、他国の連中の中には我が国が未来予知を独占してるって非難してる奴もいるらしい |
| スレイ | 未来予知を独占?そんな話も出てきているのか… |
| ミクリオ | 天啓はこの前広場で公開していたはず。何だってそんな話に── |
| | ドンッ! |
| ??? | きゃっ!? |
| スレイ | うわっ!? |
| ミクリオ | スレイ!? |
| スレイ | いてて… |
| ??? | ご、ごめんなさい…!急につまずいちゃって…怪我してませんか? |
| スレイ | オレは全然…!こちらこそ、すみません! |
| スレイ | 君の方こそ、派手に転んだみたいだけど大丈夫、かな? |
| ??? | 私はだいじょぶです。こういうの慣れてるから… |
| スレイ | 慣れてる? |
| ??? | えへへ…私、ドジだからうっかり転んだりする事が多くて。今だって── |
| ??? | ……? |
| スレイ | …どうかした? |
| ??? | あれ?えっと… |
| ??? | 何だろう…不思議な感じがする。あなたのすぐ傍、まるで誰かがいるみたい… |
| ミクリオ | …!ひょっとして、この女の子僕の気配を感じ取っているのか? |
| スレイ | まさかそんな──…あの…もしかしてわかるんですか? |
| ??? | …?うん、えと… |
| ??? | おーい、コレット!どこだー? |
| コレット | あ、ロイドー!こっちこっちー |
| ミクリオ | …はっきり見えるわけではないみたいだ |
| スレイ | 以前もこんな事あったな |
| ミクリオ | ああ、異常な天変地異が続いていた頃だね。遺跡探索中に壁が崩れて生き埋めになりかけた時だ |
| ミクリオ | あの時もこんな風に僕の存在に気付いた人がいたね。ミラ、という女性だったか |
| ロイド | 一人で急に行くなって!慌てて転んだらどうするんだ |
| コレット | もう転んじゃった。えへへ |
| ロイド | おいおい…大丈夫か? |
| ロイド | コレットがすみません…って、お前は…! |
| スレイ | あなたは確かミラさんと一緒にいた… |
| ロイド | やっぱり!何か見た顔だと思ったんだよな |
| ロイド | 俺はロイド。ロイド・アーヴィングだ!えっと、確か名前は… |
| スレイ | スレイって言います。覚えていてくれたんだ |
| ミクリオ | 噂をしていたら、あの時の人に会うなんてすごい偶然だ |
| コレット | ロイド、この人と知り合い? |
| ロイド | 大精霊の事を調べていた時にな。ミラが感じ取った妙な気配を追ってたら──… |
| スレイ | あ、あの時は危なかったんですよね!遺跡の壁が崩れてきて、逃げ出したところにちょうど… |
| ロイド | そうそう!驚いたぜ!遺跡の中から音がしたと思ったら急に人が飛び出してくるんだもんな |
| ロイド | …で、コレットは何でスレイと一緒にいるんだ? |
| コレット | 私がつまづいてぶつかっちゃったんだよ。本当にごめんなさい |
| ロイド | そうだったのか…。スレイ、コレットが迷惑かけてごめんな。怪我はしてないか? |
| スレイ | オレは本当に大丈夫。ロイドさん、心配してくれてありがとう |
| コレット | 迷惑かけちゃったお詫びに何か私に出来る事…ありませんか?街の案内とか… |
| ミクリオ | スレイ。この人達に、図書館の事を聞いてみてはどうだろう |
| スレイ | …だな。ロイドさん、コレットさん、ちょっと聞きたいんですが── |
| ロイド | ロイドでいいよ。見たところ、歳も変わらないし |
| コレット | そだね!私もコレットって呼んでくれてだいじょぶだよ! |
| スレイ | ロイドとコレット、だね。改めてよろしく |
| スレイ | この街に大きな図書館があるって聞いたんだけど、どこかな? |
| ロイド | 図書館に用があるのか?いいぜ、案内してやるよ! |
| スレイ | え、いいのか?二人でどこかに行くところだったんじゃ… |
| コレット | だいじょぶだよ。私達もちょうどそっちの方に用があったから。ね、ロイド! |
| ロイド | ああ! |
| ミクリオ | …いいのか、案内までさせて。場所を聞くだけでも十分だと思うけど |
| スレイ | 図書館まで案内してもらうだけだし、それくらいなら問題ないって |
| ロイド | …?どうしたんだ、スレイ独り言か? |
| スレイ | な、何でもないさ。二人共、ありがとう。図書館までの道案内、お願いするよ |
| コレット | うん!任せて! |
| ロイド | それにしても、図書館に用なんて…。遺跡探検といい、スレイは勉強が好きなんだな |
| スレイ | …そうかな?単に遺跡や歴史に興味があるってだけだよ |
| コレット | ふふ、ロイドは図書館が苦手なんだよね? |
| スレイ | 苦手?図書館には本があるって聞いたけど… |
| ロイド | 本しかないからなぁ…。頭が痛くなっちまうんだ |
| コレット | ロイドもたまにはリフィル先生と一緒に──… |
| 街の女 | 神子様!聞きたい事があってずっと捜しておりました…! |
| コレット | えと、それは… |
| 街の女 | 先の天啓が、未来予知だと他国で噂されているようです。それは本当でしょうか? |
| ロイド | 悪い、そういう話は、神殿のフィリア司祭に聞いてくれ。コレットは何も知らないんだ |
| 街の女 | はあ… |
| ロイド | やれやれ。最近、ああいう連中が増えたな |
| コレット | うん…。でもみんな、それだけ心配してるって事だと思うよ |
| ミクリオ | 神子って事はこの子が例の天啓を読み解いた… |
| スレイ | …みたい、だな |
| ロイド | まあいいや、気を取り直して行くとしようぜ |
| スレイ | あ、ああ |
| scene1 | お騒がせな科学者 |
| ミクリオ | ここがメルトキオ図書館…。ここまで案内してくれたあの二人に感謝しないとな |
| スレイ | うん、親切な人達だった。それにしても、コレットっていう子不思議な雰囲気があったな |
| ミクリオ | たまに僕の方を見ていたからやっぱり何か感じていたんだろうな。さすがは神子なだけあるね |
| スレイ | 神子って、近寄りがたい感じの人なのかと思ってたけど、随分穏やかで親しみやすかったな |
| ミクリオ | 一緒にいたロイドの影響が大きいのかもしれないね。すごく仲がよさそうだった |
| スレイ | それにしても… |
| スレイ | すっげー…山のように本がある! |
| ミクリオ | まさに知の殿堂と呼ぶにふさわしい施設と言えるね |
| スレイ | これだけ多くの本があると、きっと遺跡に関する文献もたくさんあるんだろうなあ…! |
| ミクリオ | …さて、そろそろ目的の文献を探そう。スレイ、君はこの棚を… |
| スレイ | あ…ミクリオ、この本… |
| ミクリオ | …!もう見つけたのか?どれどれ… |
| ミクリオ | ってこれ、遺跡の本じゃないか!スレイ、僕達がここへ来た理由は── |
| ??? | …コホン! |
| スレイ・ミクリオ | …? |
| ??? | あなた達、ここは公共の場所よ。大声で話すのは感心しないわね |
| ??? | …って、あら?あなた一人…?誰かと話しているような気がしたのだけれど |
| スレイ | …あ、えっと…すみません、今のはオレの独り言で… |
| ??? | 随分大きな独り言ね。…ともかく図書館では静かになさい。基本的なマナーは守らないと |
| スレイ | ごめんなさい、今後は気をつけます |
| ??? | 素直でよろしい。あら、その本…あなたも遺跡に興味があるの? |
| スレイ | え、ええ。遺跡をよく探検したりします |
| ??? | 素晴らしい!若いのにいい趣味をしているわね |
| ??? | その本、スヴェン卿の代表作、「夢とロマンを追い求めて」ね。私も何度も読んだわ |
| ??? | その本が気に入ったなら、師匠のザマランの著書もお勧めよ |
| ??? | 各国を旅をして得た知識を元に考察された物語仕立ての本は一読の価値があるわ |
| スレイ | へえ、面白そうですね…!今度必ず読んでみます |
| スレイ | その、あなたも…遺跡がお好きなんですね |
| ??? | 好き?…ふっ |
| ??? | 好きとか嫌いとか、そんな単純な捉え方で言い表せるものではないわ |
| ??? | そもそも私にとって、遺跡とは──… |
| 子ども | リフィル先生~ |
| リフィル | いけない。つい熱くなるところだったわね。生徒達を引率しているのに |
| リフィル | あなたとは、またゆっくり話をしてみたいわ。私はリフィル・セイジ。あなたは? |
| スレイ | オレは、スレイって言います |
| リフィル | ふふふ。ではまたね、スレイ |
| ミクリオ | …あの人も、僕達に負けず劣らず騒がしかったと思うけど |
| スレイ | あはは。でもいい人だったね。時間がある時に、遺跡の話をしてみたいな |
| スレイ | …よし、じゃあそろそろ本格的に晶化現象の事を調べようか |
| ミクリオ | そうだな。スレイ、君はそっちの棚を頼む。僕は奥を見てくる |
| スレイ | りょーかい! |
| スレイ | …うーん、手がかりになるような本は見つからないな…。ミクリオは? |
| ミクリオ | こっちもだ。歴史書を中心に見ているけど…。晶化…生物学の方がいいだろうか |
| スレイ | これだけの数だもんな、そう簡単に見つかるはず── |
| ??? | ぎゃーーー! |
| | ドサドサドサ! |
| スレイ | な、何だ!?今の悲鳴は… |
| ミクリオ | 向こうの方から聞こえてきたぞ。スレイ、行こう! |
| スレイ | ああ! |
| scene2 | お騒がせな科学者 |
| ミクリオ | スレイ、見ろ! |
| スレイ | あんなところに、人が…!? |
| パスカル | た~す~け~て~!お~ち~る~! |
| ミクリオ | 脚立が傾いてる…!あんな高いところにある本を取ろうと…? |
| | グラッ… |
| スレイ | あっ…!危ない!倒れる! |
| パスカル | ひいい~もうダメ~! |
| ミクリオ | くっ…!間に合うか…! |
| | |
| パスカル | ぐえっ、いった~… |
| パスカル | …くない。あれ? |
| スレイ | 二人共大丈夫か!? |
| | |
| ミクリオ | くっ…… |
| パスカル | 大丈夫…だけど…何で!?あたし今落っこちて…なのに、痛くないし… |
| パスカル | んん?何というか、誰かに抱えられたような…!?超常現象、はあり得ないとして… |
| パスカル | だとすると…君…?じゃないよね。離れてるし |
| スレイ | あ、はい… |
| パスカル | じゃあ、誰だろ?他には誰も見当たらないのに |
| ミクリオ | …やれやれ… |
| スレイ | えぇ~っと… |
| パスカル | ん…そういえば君、さっき「二人共大丈夫」って言ったよね? |
| パスカル | それって、あたし以外にもう一人いるって事だよね? |
| ミクリオ | 何なんだ、この人間…。随分食いついてくるな |
| パスカル | つまり、あたしには見えないもう一人が、君には見えてる?その人が助けてくれたって事? |
| パスカル | それって誰なの?透明人間?まさか幽霊!?ねえねえ! |
| スレイ | ええと…それはつまり… |
| ミクリオ | …スレイ |
| スレイ | ごめん…。何かこの人、すごく言い逃れしにくいっていうか… |
| スレイ | ええっと…信じてもらえないかもしれないけど、確かに、ここにはもう一人います |
| スレイ | 天族っていう特殊な種族で、普通の人間の目には見えないんだ |
| パスカル | 天族…!?初めて聞く…!でも、どうして君はその「天族」が見えるの? |
| スレイ | それはオレが天族のみんなと一緒に育ったから…かな? |
| パスカル | うーんと、天族って、おばけや精霊とは違うんだよね。見える人もいるし、触れるし… |
| パスカル | ふむふむ…。ねぇ、今はどこにいるの~? |
| ミクリオ | 全く……。旅に出てまだ間もないのに、ハプニング続きにもほどがある… |
| パスカル | あ、そうだ!自己紹介が遅れてごめんね。あたしパスカル。 |
| スレイ | あ、オレは…スレイです。天族の友達は、ミクリオ |
| パスカル | スレイにミクリオだね。よろしく~ |
| パスカル | それよりミクリオ、助けてくれてありがとう! |
| ミクリオ | …妙な人間だな。僕の事が見えていないのに、この押しの強さは何なんだ? |
| スレイ | あ~、えっと、ミクリオが、「どういたしまして」って |
| パスカル | そっかそっか!で、二人は図書館で何してたの? |
| スレイ | オレ達は、晶化現象について調べるためにここに来たんです |
| パスカル | お~、奇遇だね!実はあたしもなんだよ |
| パスカル | 謎に包まれた晶化現象…そのメカニズムを解明したいと思ってね |
| パスカル | ヒントを探しに来てみたんだけど、気付いたら空中にいてさ~あはは! |
| パスカル | そうだ!見えないけど、天族は存在してる…って事はあれが使えるんじゃないかな? |
| スレイ | あれって? |
| パスカル | えーっとね、ちょっと待ってね。今出すから… |
| | ごそごそ… |
| スレイ | …? |
| ミクリオ | 鞄にいろんなものが入っているな…。どうにも嫌な予感がするけど… |
| パスカル | じゃーん!取り出しましたるこの解析機1号! |
| スレイ | 解析機? |
| パスカル | 晶化物の解析のために作ってみたんだけど、結局未知の物質としかわからなくってさ |
| パスカル | 役には立たなかったんだけど不可視物質を可視化するものだからもしかして天族にも作用するかも! |
| ミクリオ | まさか…そんな事あるはずないだろう |
| スレイ | …本当に、ミクリオが…? |
| パスカル | 理論上はいけるはずだし、構造にも間違いないはずなんだ |
| パスカル | まあ、天族に試した事は勿論ないけど、光を当てるだけ。害もないよ |
| スレイ | …だってさ、ミクリオ。どうする? |
| ミクリオ | 断わるに決まってるだろ。怪しすぎる |
| スレイ | パスカルさん、ミクリオはやっぱり不安だって |
| パスカル | 大丈夫大丈夫!自分にも試したけど何ともなかったから。ほら、自分にやってみるよ? |
| パスカル | ここのボタンを、チャカチャカポン…っと! |
| | ピピピピ…パチン! |
| スレイ | あ!そっちは…! |
| ミクリオ | う…眩しい…! |
| スレイ | ミクリオ…! |
| パスカル | わお!そんなとこにいたんだ!やったね、大成功ー!トロピカルヤッホ~ゥイ!! |
| ミクリオ | 何?僕は今、君に見えているのか…!? |
| スレイ | オレの目には何も変わってないんだけど… |
| パスカル | スレイには元々見えてたんでしょ?そりゃ変わらないよ |
| パスカル | へえ、君がミクリオなんだ。はじめましてー! |
| ミクリオ | 本当に僕が見えているのか…?…念のため聞かせてくれ、僕は、何本指を立てている? |
| パスカル | 2本! |
| ミクリオ | 正解だ…。本当に僕が見えているのか。あんな…胡散臭いもので…? |
| スレイ | あれ?姿だけじゃなくて声も聞こえてるんじゃないか?普通に会話してるみたいだけど… |
| パスカル | あれ、そういえば…!これは思わぬ効果だね、大発見! |
| スレイ | …もう何が何だか。ミクリオ、身体に異変はないか? |
| ミクリオ | …特に異常は感じない。今のところ、だけど |
| パスカル | ごめんごめん!何ともなかったから結果オーライって事で! |
| ミクリオ | 元には戻せるのか? |
| パスカル | 出来ると思うよ。元に戻りたい? |
| ミクリオ | …いや、今はいい。せっかくだし、聞きたい事がある |
| ミクリオ | …パスカル、君は科学者のようだけど世界中で広がる晶化現象についてどこまで知ってるんだ? |
| ミクリオ | 晶化したウィンドルの国王や動物達は生きているのか、死んでいるのか… |
| スレイ | 晶化について、もし知ってたらオレ達に教えてほしいんです |
| パスカル | ああ、それならちゃんと生きてるよ。晶化した動物を調べたら、生命反応があったから |
| スレイ | よかった…やっぱり生きてるんだな |
| パスカル | でも、長期間観察したわけじゃないから、この状況が続いたらどうなるかはわからないけど… |
| パスカル | 今生きてるからこそ、何としてもこのメカニズムを解明して晶化を解く方法を見つけたいんだ |
| ミクリオ | …全くの未知の現象に対応策が見つかるというのは、確かに大きな意味があるけど… |
| パスカル | ねえ!だったら、協力しようよ!目的だって同じなわけだし |
| スレイ | 協力…ですか。オレ達でよかったら── |
| ミクリオ | …もう一つ聞きたい。どうしてそこまで簡単に、僕達を信用出来る? |
| スレイ | ミクリオ… |
| ミクリオ | 目には見えない天族という種族。君にとっては魔物にも等しいはずだ。なのに何故? |
| パスカル | だって助けてくれたし、二人共いい人なのは間違いないでしょ? |
| パスカル | それにミクリオって、何だか弟君に雰囲気似てるんだよねぇ |
| パスカル | 目つきとか後ろのヒラヒラとか、色とか!! |
| ミクリオ | 色!?そもそも、弟君って誰の事だ…?彼女には姉弟がいるのか? |
| スレイ | …正直オレもよくわかんないけど、すごく気に入られたんじゃないか、ミクリオ… |
| パスカル | ささ、話もまとまった事だし、さっそく調べものしていい? |
| パスカル | あ、そうだ!その前に、崩れてきた本片付けないとだよね?二人も手伝ってよー! |
| ミクリオ | やれやれ… |
| scene1 | 記された伝説 |
| パスカル | ──そっか。スレイとミクリオは遺跡が好きなんだね~ |
| パスカル | あたしも、遺跡は研究の一環でいくつか行った事あるよ |
| スレイ | へえ…!じゃあ、シルヴァラントにあるサザ遺跡は行った事はある? |
| パスカル | あー、行った事あるかも。…確か、大きな壁画がある遺跡じゃなかった? |
| スレイ | そうそう。変わった表現技法の壁画がある遺跡だったんだ |
| ミクリオ | サザ遺跡、か… |
| パスカル | 何なに?その遺跡が、どうかしたの? |
| ミクリオ | 最近そこに足を運んだんだけど、遺跡内部の草木にまで晶化現象が発生していてね… |
| パスカル | そっか…遺跡の中にまで影響が出てきてるんだね… |
| ミクリオ | … |
| スレイ | ん?どうしたんだ、ミクリオ |
| ミクリオ | いや…想像していた以上に、図書館には数多くの書物が集められているんだと思ってね |
| パスカル | メルトキオの図書館は、他の国の図書館と比べても特に充実してるんだよ |
| スレイ | へぇ…!確かに、すごい量だもんな… |
| パスカル | だからこそ、期待してたんだけど…肝心の晶化現象の資料はなかなか見つからないんだよね~ |
| パスカル | 晶化現象に注目が集まったのもここ最近だから、研究資料は図書館に集まってないのかも |
| ミクリオ | リチャード国王の件からか…。何にせよ、せっかく来たんだ、もう少し手分けして調べよう |
| ミクリオ | 僅かな情報も、今の僕達には次の手がかりになるかもしれない。やるべき事はやっておかないとね |
| | |
| スレイ | うーん… |
| パスカル | これにも、ないな~ |
| ミクリオ | これも違うな… |
| スレイ | へえ…。すごい、こんなものが… |
| ミクリオ | 何か見つかったのか、スレイ? |
| スレイ | あ、いや。晶化現象とは関係ないんだけど、面白そうな記述を見つけてさ |
| スレイ | ほら、この本なんだけど、面白い話が書かれてる |
| パスカル | どんな話? |
| スレイ | 「湖の乙女の護りし祭壇の聖剣を 抜きし者、求めし答えを 必ずや得るであろう」だって |
| パスカル | どの地域の言い伝えかなぁ…。こんなの初めて聞いたよ? |
| スレイ | 求めし答え…。これが何を示しているのか、何だか気になってさ |
| ミクリオ | 史実が元になっているかはわからないけど、おそらく英雄譚の一種だろうね |
| パスカル | 聖剣を抜いた人が知りたい事わかっちゃうって事でしょ? |
| スレイ | …って事は、オレ達が抜けば晶化現象について何かわかるのかな? |
| ミクリオ | あくまで伝説だ。そんな都合のいい話はさすがにないだろう |
| パスカル | それに、その一文だけだと聖剣の場所もわからないしね~ |
| ミクリオ | …スレイ、今は晶化現象を調べる事が先決だ |
| スレイ | そうだよな。…何か、気になっちゃって。オレ、あっち見てくるよ |
| ミクリオ | スレイ…? |
| scene2 | 記された伝説 |
| パスカル | うーん…かなりの量の文献を調べたけど… |
| スレイ | 結局肝心の晶化現象に関しては、何にもわからなかったな |
| 街の女性 | …きゃっ |
| ミクリオ | 失敬、すまなかった |
| 街の女性 | こちらこそ、ごめんなさいね? |
| ミクリオ | … |
| パスカル | ミクリオ?そんなとこで固まっちゃって、どうかした? |
| ミクリオ | いや、やっぱりパスカル以外にも、全ての人間に見えているんだなと思ってね |
| ミクリオ | スレイ以外の人間と普通に対話出来るというのは意外と新鮮味がある |
| パスカル | あ、そっか。今までは、ミクリオが話してても相手には聞こえないはずだもんね |
| ミクリオ | 当然だけど、すれ違う通行人の視線も感じる。不快ではないけど、今までにはなかった感覚だ |
| スレイ | …ミクリオ、もしかして街を歩くのが嫌なのか? |
| ミクリオ | そんなわけない。たった今、不快ではないって言ったじゃないか |
| スレイ | ああ。…でも、何かあったらオレ達に遠慮しないでくれよ? |
| ミクリオ | スレイ…さすがにそれは気にしすぎだよ。気持ちはありがたいけど… |
| パスカル | ふふ、それじゃあこれからどうしよっかね~? |
| スレイ | オレ達も図書館以外は…。結局、振り出しに戻っちゃったな |
| パスカル | うーん、情報集めに関してはここが最有力候補だったし…街の人に聞いてみるとか── |
| 街の男1 | 聞いたか?ウィンドルの話。辺り一面に結晶が、ゴロゴロあるって話だ |
| 街の男2 | ああ、怖い話だな。各地で見られるようになったとはいえ何でまた、特定の地域がそんな… |
| 全員 | …! |
| ミクリオ | スレイ…! |
| スレイ | ああ… |
| スレイ | すみません、今の話詳しく教えてくれませんか |
| 街の男1 | 何だ、ウィンドルの晶化現象の話か?実は、噂なんだが── |
| パスカル | 晶化現象が特に進行した地域かぁ…。一体、何があったんだろ? |
| ミクリオ | 晶化に結びつく何かがあった…と考える事も出来るけど… |
| ミクリオ | さすがに、ウィンドルのどこかまでは彼らも知らなかったようだ。確かめるのは難しいかもしれないね |
| パスカル | どうするの、二人共? |
| スレイ | …ウィンドルへ行こう |
| ミクリオ | まあ当然だね。ウィンドルに入れば、どこの地域かわかるかもしれないし |
| パスカル | うんうん、あたしも賛成~!三人で頑張ろ~! |
| ミクリオ | 三人、って…パスカル、まだ一緒に来る気なのか? |
| パスカル | 何で~?駄目かなぁ?二人といると、楽しそうだし! |
| パスカル | 得意不得意の分野はあるけどいろいろ役には立てると思うよ? |
| スレイ | さっきの機械のお蔭でミクリオが見えるようになったんだし頼りになるのは確かだけど… |
| パスカル | じゃあ、決まり!先を急ぎたいけど、今日はもう遅いし… |
| | きゃあああっ! |
| | |
| ミクリオ | 今の悲鳴は…!? |
| パスカル | スレイ、ミクリオ!あれ見て、魔物が街の中に…! |
| スレイ | こんな街中に…!行こう! |
| scene1 | 強者の博物学者 |
| スレイ | ここはもうウィンドルなんだよな? |
| パスカル | うん、そうだよ |
| ミクリオ | ここまでは何事もなく来れたけど、異常に晶化が進んだ場所の情報も手に入らずじまいか… |
| パスカル | バロニアへ行けば、誰かしらは何か知ってるんじゃない? |
| ミクリオ | バロニア…、ウィンドルの王都か… |
| パスカル | あそこにはあたしの知り合いもいるし… |
| | ザザッ…! |
| スレイ | …!こっちに何か向かって…!? |
| ??? | 危ない、よけろ! |
| パスカル | ふぇ? |
| | グオオオッ! |
| スレイ | うわっ! |
| ??? | 逃がすか! |
| | ガッ!ズカッ! |
| | ギャウウー! |
| スレイ | 強い…! |
| ??? | 驚かせてすまん。怪我はなかったか? |
| スレイ | あ、いえ!大丈夫です。あなたこそ… |
| ??? | オレは見ての通り無傷だ。君達は旅人のようだがどこから来た? |
| スレイ | イズ…いえ、シルヴァラントからです |
| スレイ | オレ、スレイって言います。こっちはミクリオにパスカル |
| ウィル | ほう、礼儀正しい若者だな。オレはウィル・レイナードだ |
| ウィル | この辺りは魔物が多い。十分気をつけて旅を続けてくれ |
| ウィル | 最近は魔物だけでなく、他にも不穏な現象が起きているしな |
| ミクリオ | 不穏な現象… |
| パスカル | それってもしかして、晶化現象の事だったり? |
| ウィル | ああ。近頃は植物だけじゃなく動物や魔物にまで晶化が見られるようになった |
| ウィル | とはいえ、この辺りの晶化具合はこの間訪れた遺跡の周りと比べれば軽微なものだがな |
| パスカル | 晶化が進行した場所にあるウィンドルの遺跡…。ひょっとして、これってビンゴ!? |
| ウィル | …何だ? |
| ミクリオ | その遺跡は、ウィンドル国内に? |
| ウィル | ん、そうだが…君達、遺跡に興味があるのか? |
| スレイ | ウィルさん、その遺跡の場所を教えてもらえませんか? |
| ウィル | あんな場所に一体何の用だ?物見遊山で訪れるような場所ではないぞ |
| スレイ | オレ達、晶化現象の事を調べているんです |
| ミクリオ | 危険かもしれない、というのは十分承知しているつもりだ |
| ミクリオ | だが、その晶化が進んだ遺跡にあの現象と結びつく手がかりがあるかもしれない |
| スレイ | オレ達の住んでいた場所でも晶化があちこちで起きてて… |
| スレイ | だから、知りたいんです。晶化って何なのか…、世界に何が起きてるのか… |
| ウィル | …なるほど。理由はわかった |
| パスカル | でも、そんな危険な場所に何しに行ってたの? |
| ウィル | こう見えてオレの本職は博物学者だからな。その遺跡へは珍しい化石を求めて辿りついたんだ |
| パスカル | おお、なるほど~。まだ見ぬものへの探究心だね!それで、場所はどこ~? |
| ウィル | 遺跡の名は、ピュール遺跡。バロニア北部の湖近くにある遺跡だ |
| ウィル | あの辺りは辺鄙な場所で、魔物もここ以上に多い。行くならくれぐれも注意した方がいい |
| ミクリオ | 情報の提供、感謝する。スレイ、パスカル、教えてもらった遺跡に行ってみよう |
| スレイ | うん!ウィルさんも気をつけて |
| ウィル | ありがとう |
| ウィル | ああ、スレイ。もし行くのなら遺跡内の最深部に行ってみるといい。面白いものがそこにある |
| スレイ | 面白いもの…? |
| ウィル | 最深部には祭壇があるんだ。その中央の台座に剣が刺さっている |
| ウィル | オレも抜いてみようと剣を握ったがびくともしなかった…。力には自信はあるつもりなんだがな |
| ウィル | もしかしたら、何かの儀式のために作られたのかもしれないが、正体はわからずじまいだ |
| パスカル | 祭壇に剣…?あれ?どっかで聞いたような… |
| スレイ | …! |
| スレイ | 図書館で読んだ、伝説の一節…! |
| ミクリオ | … |
| パスカル | だとしたら、その遺跡に伝説の湖の乙女がいたりして! |
| ミクリオ | …偶然にしては出来すぎているような気がするけど… |
| スレイ | ミクリオはあの伝説の事、気にならないか? |
| ミクリオ | …勿論、気にはなる。ただ……いや、ここで話していても仕方ない。まずは目的地を目指そう |
| パスカル | いやぁ、思わぬ新展開!あたし達ツイてるかも~ |
| スレイ | ウィルさん、貴重な話、ありがとうございました! |
| ウィル | 役に立ったのなら、何よりだ |
| ウィル | それにしても、君は礼儀正しいな。セネルに君の爪の垢を煎じて、飲ませてやりたいものだ |
| ミクリオ | …? |
| ウィル | いや、こっちの話だ。では、オレもそろそろ行く。くれぐれも気をつけてくれ |
| スレイ | はい! |
| パスカル | よーし!ピュール遺跡を目指して、しゅっぱーつ! |
| scene2 | 強者の博物学者 |
| スレイ | ──あれは… |
| パスカル | ん?スレイ、どうかしたの? |
| スレイ | あそこに見える大きな街…あれがバロニア? |
| パスカル | そうそう。あ、せっかくだしちょっと寄ってく?新しい情報の収集も兼ねて |
| ミクリオ | さっきのウィルという男も遺跡周辺は魔物が多いと言っていた。準備は万全に整えたい |
| パスカル | それもそうだね。んじゃあ、行こうか~ |
| | |
| スレイ | ここも王都なだけあって、すっごい都会なんだなぁ。メルトキオと同じくらい? |
| ミクリオ | いや、それ以上かもしれない。建造物もかなり違う |
| ミクリオ | メルトキオは宗教に縁のある建物が多かったけど、それに比べて… |
| 街の女 | ねえ、広場で大公殿下が演説をするんだってさ |
| 街の男 | 何の話をするんだろうな。聞きに行ってみるか |
| スレイ | ミクリオ、セルディク大公って確か… |
| ミクリオ | リチャード国王が晶化した事を、公言した人物だ。どんな演説を行うのか… |
| パスカル | ねぇ、二人共聞きに行ってみない?何か新しい情報があるかも |
| ミクリオ | 確かに…。国王の晶化状態について何か発表があるかもしれない |
| パスカル | よし、広場に行こっか。こっちだよー |
| scene1 | 二つの騎士団 |
| スレイ | すごい人だかりだ… |
| ミクリオ | それだけ国民が、自国の動向を気にしているって事だろう |
| パスカル | 二人共、こっちこっち!ここからなら見えやすいよ! |
| | |
| スレイ | …へぇ~、ここなら演説する場所も見えるね |
| パスカル | あ、セルディク大公が出てきたみたい |
| | |
| セルディク | 親愛なるウィンドル王国の民よ! |
| ミクリオ | 始まったか… |
| スレイ | あれがセルディク大公… |
| セルディク | 私は今、深い悲しみと、強い憤りに包まれている! |
| セルディク | 悲しみの理由は他でもない。諸君が敬愛する国王陛下が痛ましいお姿になられたが故だ |
| | |
| セルディク | 知れ渡っている通り…リチャード国王陛下は、晶化現象に倒れてしまわれた! |
| セルディク | 晶化現象の解決法がない今、亡くなった、と認識せざるを得ない状況である… |
| | |
| | ざわ…ざわざわ… |
| 街の男 | リチャード陛下…おいたわしい… |
| 街の女 | どうしてこんな事に… |
| セルディク | そして憤りの理由は…この重大な事実が、民に対して伏せられていたためだ! |
| セルディク | 私が真実を明らかにしたからこそア・ジュールのガイアス王も動き、ようやく事実が明るみになった |
| セルディク | この事を忘れてはならない。私があの時動かなければ、真実は今も尚伏せられたままだっただろう |
| セルディク | すなわち、諸君はいつ我が身に降りかかるかわからない晶化現象を警戒する事すら出来ずにいたのだ |
| セルディク | 本来ならば、即刻真実を公表し、諸君らへ用心を促すべきだったはず。にも関わらず、今のこの国は── |
| セルディク | 民の身を案ずるどころか、他国との情勢が不利になる事を恐れ事実を隠蔽した… |
| セルディク | これは許すまじき行為だ。陛下…いや、我が甥リチャードも決してこんな事態は望まないはず |
| セルディク | 今も尚、陛下の周囲にいる臣下の者達は、自らの保身を優先し続けている |
| セルディク | そんな我が国の今の体制を信用する事が出来るのだろうか?忠誠を尽くす事が出来るだろうか? |
| セルディク | 今改めて、諸君らに問い掛けたい |
| | ざわ…ざわざわ… |
| 街の男 | 何という事だ…。国民の安全を最優先にしないとは… |
| 街の女 | リチャード国王がいれば…これからどうしたらいいの? |
| セルディク | 諸君らは舵取りの利かぬ船に乗っているも同然…ではこの状況を打開するにはどうするべきか? |
| セルディク | その答えは諸君の目の前にある。そう、私だ! |
| セルディク | 私なら亡き陛下に代わって、ウィンドルを束ね、この腐りきった国の体制を変える事が出来る! |
| セルディク | 旧弊にとらわれる事のない、全く新しい王国を作る事が出来る!私はただ、諸君を守りたいのだ! |
| 街の男 | そうだ、こんな状況では大公殿下が王になった方が… |
| 街の女 | 私達をお導き下さい、セルディク大公殿下! |
| | |
| ミクリオ | …妙だな |
| スレイ | どうしたんだ?ミクリオ |
| ミクリオ | かく言うセルディク大公だって重役である一人だ。陛下の叔父でもある |
| ミクリオ | 十分に発言権がある立場のはずだ。こんなあからさまな体制批判を、国民に向ける必要はないと思うけど… |
| スレイ | 言われてみれば… |
| 街の男 | でも、陛下はまだ生きているんじゃ… |
| 街の女 | いいえ!今のウィンドルにはセルディク大公殿下しかいないわ! |
| ミクリオ | そもそもこれは、本当に国民の声…なのか? |
| ミクリオ | 同意の声がすぐ上がる事にも妙な違和感を覚える…。聴衆の中に彼の仲間が紛れているんじゃないのか |
| パスカル | 確かに変だね?噂だけど、そんなに評判いい人じゃなかった気がするなぁ… |
| 街の男 | 大公殿下万歳! |
| 街の女 | ウィンドルには、新しい王が必要だ! |
| セルディク | 諸君の熱い声、私の耳にしかと届いている。今こそ──… |
| ??? | お待ち下さい! |
| セルディク | む? |
| パスカル | ん?あれって…アスベルじゃん! |
| ミクリオ | パスカルの知り合いか? |
| パスカル | うん |
| セルディク | お前達、知っているぞ。騎士団のアスベル・ラントにフレン・シーフォだな |
| セルディク | たかが一介の騎士が大公たる私の演説を妨げるか |
| アスベル | 不敬に対するお咎めは、後でいくらでも受けます |
| アスベル | しかし、事実と異なる事が本当のように喧伝されるのを、看過するわけにはいきません! |
| フレン | アスベルの言う通りです。リチャード陛下は生きておられます |
| フレン | それに、事実の公表が遅れたのは、民を不安に陥れたくないという配慮からだと伺っております |
| アスベル | 決して民を蔑ろにしたわけではありません。デール公もそう仰られていました |
| セルディク | ふん…デールの言う事など、あてになるか。所詮あやつは、陛下の腰巾着にすぎぬ |
| セルディク | 民を不安に陥れたくない?笑わせるな |
| セルディク | そうやって手をこまねいている間に我が国の民が危機に見舞われたら、どう責任を取るつもりだったのだ |
| フレン | …っ!ですが、我々も手をこまねいていたわけでは… |
| セルディク | 諸君、今のやり取りを聞いたな?これではっきりわかっただろう! |
| セルディク | 今のウィンドル騎士団は、国と民を守るという本分を忘れた、国王の私兵に過ぎぬという事が! |
| アスベル | なっ、そんな事── |
| セルディク | ふん、ちょうどいい機会だ。ここでお披露目といこう。私が組織した、「赤の騎士団」を! |
| スレイ | 赤の騎士団…? |
| | ザッ、ザッ… |
| セルディク | 諸君、これが赤の騎士団。王国に真の忠誠を尽くす、勇敢、清廉なる騎士の集まりだ |
| セルディク | 騎士団を率いる団長には、信頼のおける人物を任命した |
| セルディク | 紹介してやろう。来い、カーツ・ベッセル! |
| カーツ | … |
| アスベル | セルディク大公! |
| アスベル | 国王陛下のお許しも得ず、新たな騎士団を組織するなど、越権行為ではありませんか! |
| フレン | そうです。私兵というなら、これこそ私兵ではありませんか。陛下がお認めになるわけが── |
| セルディク | 黙れ!一介の騎士に過ぎない貴様達に指図されるいわれはない! |
| セルディク | 大公セルディクの名において命じる。今すぐこの場から去れ! |
| 街の男1 | そうだ、出て行け! |
| 街の女1 | 赤の騎士団、万歳! |
| アスベル | そんな…! |
| 街の男2 | いいや、そんな事はない!アスベル様、フレン様の言っている事は間違ってない! |
| 街の女2 | そうよ!ウィンドル騎士団はいつでも私達を助けて下さった、私はフレン様達を信じるわ! |
| 街の男1 | 甘い!これを機に、騎士団の構成は一新すべきだ! |
| 街の女1 | ウィンドル騎士団は必要ない!これからは赤の騎士団がいるもの! |
| フレン | くっ…何て事だ… |
| パスカル | アスベル… |
| フレン | …アスベル、行こう |
| アスベル | フレン!しかし… |
| フレン | 大公の言う通り、我々は一介の騎士に過ぎない。この場を覆すのは難しい |
| フレン | これ以上騒ぎが大きくなっても不利になるばかりだ。ここは一旦引いた方がいい |
| アスベル | … |
| アスベル | わかった… |
| | |
| カーツ | … |
| セルディク | 諸君、すまなかった。とんだ邪魔が入ってしまったな。さあ、話を続けよう |
| 街の男 | 大公殿下、万歳! |
| 街の女 | ばんざーい! |
| ミクリオ | …晶化の情報を期待していたけど、まさかここまではっきりと、この国の現状を理解出来るとはね… |
| ミクリオ | 今後、ウィンドルのような国が他にも出てくる可能性は十分にある… |
| スレイ | …よくない雰囲気だと思うけど、オレ達には何も出来ないんだよな… |
| パスカル | …スレイ、ミクリオ、行こ! |
| スレイ | え?行くってどこに? |
| パスカル | アスベルのとこ。このまま放ってはおけないよ |
| ミクリオ | さっきの騎士のところ?行って何を── |
| パスカル | いいから、早く早く! |
| スレイ | ちょ…パスカル!?そんなに引っ張ったらミクリオの腕が!! |
| scene2 | 二つの騎士団 |
| フレン | ──まさかこんな事になるとはね。「赤の騎士団」か… |
| アスベル | 騎士団まで用意していたなんて…この機会を狙ったとしか考えられない |
| アスベル | セルディク大公は、以前から陛下を目の敵にしているところがあったからな |
| フレン | だからといって、陛下の不在で国民の不安を煽るとはあんまりなやり方だ…! |
| アスベル | 彼は有能な王になれるかもしれない。だが、大公の野心を考えたら、他国との摩擦は避けられない… |
| パスカル | アスベル! |
| アスベル | …!パスカルじゃないか |
| パスカル | 広場での騒ぎ、見てたから追って来たんだ。大変だったね? |
| アスベル | まあな… |
| フレン | アスベル、知り合いなのか? |
| アスベル | ああ、こっちはパスカルで、この二人は… |
| パスカル | 二人共あたしの友達だよ。メルトキオで知り合ったんだ! |
| | |
| スレイ | えーっと…はじめまして、オレ、スレイって言います |
| ミクリオ | ミクリオだ。よろしく |
| アスベル | 俺はアスベル・ラント。そして、こっちはフレン |
| フレン | フレン・シーフォだ。よろしく |
| スレイ | 二人共騎士団の人、でしたね?よろしくおねがいします |
| | |
| パスカル | それにしても、大丈夫?国の体制とかアスベル達の事とか、すごい言われようだったけど… |
| アスベル | 大丈夫…ではないかな |
| ミクリオ | 質問してもいいだろうか。国王の件を、敢えて伏せていたというのは── |
| アスベル | 国民や他国との混乱を避けるため、公にしなかったのは事実だ |
| アスベル | だからといって、危険を野放しにしようとしていたわけじゃない |
| フレン | うん、それより問題はセルディク大公だ |
| フレン | さっきの演説では、陛下の事を心配しているような口ぶりだったが、実際は反国王派と言ってもいい |
| アスベル | その陛下がいない今を狙ってセルディク大公が狼煙をあげた、という事だ |
| ミクリオ | なるほど… |
| フレン | 大公が陛下の一件について国が方針を慎重に検討していたのを知らなかったはずがない |
| フレン | おそらく、それを意図的に捻じ曲げて人々の前で発表したんだ。この国の実権を握るためにね |
| ミクリオ | ならつまり、あの会場に集まった人間の中には… |
| フレン | …大公の手の者が紛れ込んで周囲の人々を煽っていた可能性は否定出来ない。証拠は何もないけどね |
| アスベル | 国王の不在をいい事に、不安を抱える国民の支持を掴む手段に出るなんて…これから何をするつもりなんだ… |
| パスカル | アスベル… |
| スレイ | 問題ばかり、なんだな… |
| アスベル | リチャードは必死に国を立て直してきた。それを壊すような事は絶対にさせない…! |
| スレイ | … |
| アスベル | リチャードは生きてる…。必ず生きてるって、俺は信じてる |
| フレン | …本当なら、今すぐにでも陛下を救い出す方法を探しに行きたいところなんだ |
| フレン | だけど、この状況で僕達がここを離れるわけにはいかない |
| アスベル | 「赤の騎士団」…。セルディク大公が、まさか騎士団まで作られるとはな |
| フレン | また争いの種とならなければいいが… |
| スレイ | あの──…アスベルさん、フレンさん…! |
| フレン | 何だい? |
| スレイ | オレ達、今、晶化現象について調べてるんです |
| ミクリオ | どういう現象なのかがわかれば、リチャード国王を救う方法も見つかるかもしれない… |
| ミクリオ | まだ何もわかってない。だから、助けられないと決まったわけでもない |
| スレイ | 何かわかったら、すぐにお二人に知らせに来ます! |
| スレイ | だから、お二人は安心してウィンドルと、街のみんなを守ってあげてください |
| パスカル | そうそう!調査の事はこっちに任せて! |
| アスベル | スレイ、ミクリオ…パスカルも。ありがとう、そう言ってくれると助かるよ |
| フレン | うん、僕からもお礼を言わせてもらうよ。ありがとう |
| フレン | …。スレイ、君は何だか不思議な人だな |
| フレン | 君の言葉はまっすぐで…どんな事でも何とかなりそうな…そんな気分にさせられる |
| スレイ | えっ… |
| アスベル | 俺もやる気をわけてもらった気がする。ありがとう、スレイ |
| スレイ | そうですか? |
| パスカル | んじゃ、名残惜しいけど先を急ぐ事にしますか! |
| パスカル | 助かる命は、ちゃーんと助けたいしね |
| フレン | 助かる命? |
| パスカル | そうそう。生命反応はあるけど、それがいつまで持続するかは── |
| アスベル | ちょっと待ってくれ、パスカル。生命反応があったって……今の話は本当なのか? |
| パスカル | うん、それは間違いないよ。晶化した生物数体のサンプルを使って確認したから |
| アスベル | って事は…リチャードは本当にちゃんと生きてるって事だよな…? |
| アスベル | よかった、本当に…! |
| フレン | ああ…! |
| スレイ | … |
| パスカル | ごめんごめん、早くそれを教えてあげればよかったね |
| パスカル | …あ、そうだ! |
| パスカル | ねえねえ、アスベル。バロニアの北にあるっていうピュール遺跡を知らない? |
| アスベル | ピュール遺跡…?いや、聞いた事もないな。フレンは知ってるか? |
| フレン | いや、僕も聞いた事はない。バロニアの北…本当なのかい? |
| パスカル | え~おっかしいなあ…。確か湖のほとりにあるって話だったんだけど… |
| フレン | 湖…?確かに湖ならバロニアの北の森を北東に抜けた先にあるにはあるが… |
| フレン | バロニアの北には他に湖はないし、そこの事だろうか…? |
| アスベル | あそこは国内でも晶化が特に進行していると聞く。そんなところに行って大丈夫か? |
| パスカル | だからこそ、何かあるんじゃないかって睨んでるんだ。とにかく行ってみるよ、ありがと! |
| ミクリオ | いろいろと話が聞けてよかった。感謝する |
| アスベル | こちらこそ。道中はくれぐれも気をつけてくれ |
| フレン | 何かあればいつでもまたバロニアへ立ち寄ってくれ。協力は惜しまない |
| スレイ | ありがとう、アスベルさん、フレンさん |
| ミクリオ | 彼らはリチャード国王を随分慕っていたみたいだね |
| ミクリオ | 楽観は出来ないけど、彼らのような騎士がいるなら、ウィンドルはきっと大丈夫だろう |
| パスカル | アスベル達のためにも、ますます頑張っちゃわないと! |
| | |
| 街の女 | きゃああっ! |
| スレイ | …!?あの悲鳴は? |
| パスカル | あ、あっち!女の人が魔物に襲われかけて… |
| | ガルルルル! |
| スレイ | まずい!ミクリオ! |
| ミクリオ | ああ! |
| scene1 | 燦然たる湖 |
| パスカル | やーっと、たどり着いた!ここが例の湖だね |
| スレイ | 大きな湖だなー! |
| スレイ | …!ミクリオ、パスカル、あれ…! |
| ミクリオ | 晶化現象か |
| パスカル | あちこち晶化しちゃってる…。今まで見てきたところより晶化が進んでいるのは間違いなさそう |
| スレイ | よし、とりあえずは湖の周辺を見て回ってみよう |
| ミクリオ | この辺りで見られるのは植物の晶化ばかりだ |
| スレイ | その点はイズチと変わらないな |
| ミクリオ | ここまで酷くなかったけどね… |
| ミクリオ | 進行が進んでいると聞いていたから人間にも影響が出ているかもと思ったけど… |
| スレイ | この近くに街や村はなさそうだし少し安心だな… |
| スレイ | そういえば、ウィルさんが教えてくれたピュール遺跡はどこにあるんだろう |
| ミクリオ | 確かに見かけないな。湖のほとりって話だったけど |
| パスカル | …あ!ねえ、あれがそうじゃないかな? |
| パスカル | ちょっと奥まった地形の…ほら、あそこ。端っこがのぞいてる |
| スレイ | …本当だ。あれがピュール遺跡…? |
| ミクリオ | 外観からすると、神殿か何かか?それも、かなり古い様式のようだけど |
| スレイ | 今まで見て来た遺跡とは何か雰囲気が違うな… |
| ミクリオ | ああ、周囲の自然の美しさも相俟ってどこか神聖な雰囲気があるね… |
| パスカル | ねえねえ!この辺りに新しい発見はないしあの中に入ってみようよ! |
| パスカル | 岸沿いに岩場を伝っていけば近くまでいけそうだよ |
| ミクリオ | あんな足場が悪そうなところを?本当に大丈夫なのか? |
| パスカル | 気をつけて行けば大丈夫だって!あたしの後について来てね~ |
| スレイ | 危ないからゆっくり進も──って、パスカル!早いな… |
| ミクリオ | 全く…岩場から滑り落ちても知らないぞ |
| scene2 | 燦然たる湖 |
| ミクリオ | 遺跡の中はこんな風になっていたのか |
| スレイ | 外はだいぶ風化が進んでたけど、中はこんなに綺麗なんだな |
| スレイ | 何となくだけど、空気まで澄んでるように感じる… |
| ミクリオ | かなり辺鄙な場所だ。人間が立ち入る事はほとんどなかったんだろうね |
| スレイ | …うーん、本当にそれだけかな? |
| パスカル | うん?どういう事? |
| スレイ | …よくわからないけどまるで誰かがここを守っているような── |
| | ウオオーー…… |
| スレイ | …!今のは…魔物の遠吠えか? |
| ミクリオ | 僕達が立ち入った事に気がついたのかもしれない。…ここから先は気をつけて進もう |
| スレイ | そうだな… |
| | |
| | ウオオオオオーーー…! |
| ミクリオ | 魔物の声が近付いてきたな |
| パスカル | しかも、一匹じゃなくて何匹かいるっぽい? |
| スレイ | あ! |
| パスカル | え?何なに?言ったそばから魔物が出てきちゃった!? |
| スレイ | あ…驚かせてごめん。魔物じゃなくってほら、これ── |
| | |
| ミクリオ | 壁画か… |
| パスカル | 随分大きいね~!何か雰囲気あるかも? |
| ミクリオ | 描かれているのは、剣を掲げる英雄の図、といったところか |
| パスカル | ひょっとして、この英雄の持ってる剣が例の聖剣なんじゃない? |
| ミクリオ | 可能性はあるかもしれない。この遺跡にあるという剣が、本当に伝説の聖剣であればの話だけど |
| スレイ | … |
| スレイ | …何だろう、この感覚… |
| スレイ | 絵に込められた強い想いが伝わってくるような── |
| | グオオオオオッ! |
| | |
| パスカル | また魔物の声…!この先から聞こえるよ…! |
| | ザシュッ!ズバッ! |
| ミクリオ | 待つんだ!この音…誰か戦っている… |
| スレイ | …!あれは… |
| ??? | …! |
| | ガウウッ! |
| スレイ | ミクリオ!あの女の人! |
| ミクリオ | どうしてこんなところに…!急いで助けよう! |
| パスカル | え!?女の人って何の事!?あたしには魔物しか見えな──… |
| パスカル | ちょ、ちょっとスレイ!ミクリオ!置いてかないでぇ~!! |
| scene1 | 紅蓮の試練 |
| スレイ | …ふう、何とか片付いたな |
| ??? | … |
| ミクリオ | 君も…天族なんだな |
| ライラ | はい。ライラと申します |
| スレイ | 君、大丈夫?怪我はない? |
| ライラ | …はい。助けていただいて、ありがとうございます |
| ライラ | あなたは…天族でなく人間の方ですね |
| ライラ | 私達の姿が見えて、声も聞こえてらっしゃるようですが… |
| スレイ | オレ、小さな頃からずっと天族に囲まれて育ったんだ。そのお蔭かな?天族が見えるんだ |
| ライラ | そうなのですか… |
| ミクリオ | … |
| スレイ | それにしても…こんなところで天族に会うとは思わなかったな |
| ライラ | ふふふ、ちょっと事情がありまして… |
| スレイ | オレはスレイ。こっちはミクリオで、この人はパスカル |
| パスカル | はいはーい、パスカルで~す!自己紹介も大事だけど… |
| パスカル | あたしも話に混ぜてよ~!スレイ達だけで盛り上がってずるい~! |
| スレイ | そっか、ごめんごめん。実は── |
| パスカル | 天族がいるんだよね?さっきから魔物しか見えなかったし。それで、どこにいるの~? |
| ミクリオ | パスカルの目の前だ |
| パスカル | まさかの目の前!ここに新しい天族の人が…! |
| パスカル | ねえねえ!解析機を使ってミクリオと同じように、あたしにも見えるようにしていい? |
| スレイ | ライラ、パスカルが持っているあの道具を使うと、普通の人にも天族の姿が見えるようになるんだ |
| スレイ | 君に使ってもいいかな? |
| ライラ | まあ、そんな事が…?…何か問題はないのでしょうか? |
| ミクリオ | 僕もあれを使用されたけど、特に異常はなかった。心配はないと思う |
| ライラ | …そうなのですね。それでしたら、お願いいたします。パスカルさん |
| ミクリオ | 構わないそうだ |
| パスカル | やった!えっと、正面の方向ね?ではでは、ここを…ポチっとな! |
| ライラ | きゃっ! |
| パスカル | ゴメン、驚かせちゃったね。出てきた!またまた大成功~!初めまして、ライラ! |
| パスカル | やっぱり女性の天族だったんだぁ。スレイがさっき女の人って言ってたしそうかな~って思ってたんだよね |
| パスカル | しかも、すっごい美人! |
| ライラ | まあ、美人だなんて… |
| パスカル | その美人さんに、お願い! |
| パスカル | ぎゅーってしてもいい?天族の触り心地を知りたいなぁって |
| ミクリオ | 触り心地って… |
| パスカル | ミクリオのが成功した後、すごく疑問に思ってたんだよねぇ。…駄目? |
| ライラ | えぇ~と、少しだけでしたら… |
| パスカル | ありがとー! |
| パスカル | ぎゅーっ! |
| パスカル | なるほどなるほど…。なーんだ、普通の女の人と変わらないねー |
| ミクリオ | …僕に来なくて助かった |
| パスカル | ん~?何なに?ミクリオも触っていいの? |
| ミクリオ | 丁重にお断わりするよ |
| ライラ | ふふっ。パスカルさん、とても明るい方ですのね |
| ミクリオ | …… |
| ミクリオ | ところでライラ、君はどうしてこんなところに? |
| ライラ | ミクリオさんは同じ天族ですからおわかり頂けると思いますが、私は元々ここで暮らしていたのです |
| ライラ | ただ最近になって、晶化現象が急激に広がってしまって… |
| スレイ | オレ達はまさにその晶化現象を調べるためにここに来たんだ |
| パスカル | 晶化現象が進行してるこの地域へ来れば、何か問題解決のヒントを得られるんじゃないかなぁ、ってね? |
| ライラ | つまり、晶化現象の原因を解明しようとしていらっしゃると… |
| ミクリオ | 始めは植物にしか発生しなかった晶化現象が、近頃は動物にまで起きるようになってる |
| スレイ | このまま晶化現象が進行し続けたらその内、人や天族にも影響が出るかもしれない |
| ミクリオ | 現に、道中で立ち寄ったウィンドルでは国王が晶化してしまい混乱状況に陥っていた |
| ライラ | …想像していた以上に、大変な状況になっているのですね… |
| スレイ | ちょっとした事でいいんだ。この辺りで、晶化現象と関係してそうな事に心当たりってない? |
| スレイ | オレ達にどこまで出来るか、まだわからないけど… |
| スレイ | どんなに小さい事だっていい。何か手がかりを見つけたいんだ! |
| スレイ | 人も天族も、動物もみんな、安心して暮らせるように… |
| ライラ | …… |
| ライラ | スレイさん、助けて頂き何とかお役に立ちたいのですが… |
| ライラ | 晶化現象に関しては私も、何も知らないのです |
| スレイ | そっか… |
| ライラ | 申し訳ありません… |
| スレイ | ううん!そんな事ないよ!オレの方こそゴメン。自分の事ばっかりだった |
| ミクリオ | …僕も一つ聞いていいかい?この遺跡に暮らしていた君ならもしかしたら知っているかもしれない |
| ライラ | はい、何でしょうか? |
| パスカル | はいはーい!この遺跡の中に、剣が刺さった祭壇ってないかなぁ?伝説に出てくるようなすっごいの! |
| ミクリオ | …… |
| ライラ | 祭壇に刺さった剣…。みなさんは聖剣もお探しだったのですか? |
| スレイ | 聖剣!?ライラ、ここには本当に聖剣があるのか!? |
| ライラ | まだご存じの方がいらっしゃったんですね。もう随分と昔の事ですのに… |
| スレイ | 図書館にあった本で読んだんだ、聖剣の伝説について |
| ライラ | はい、それは事実ですわ。この遺跡の奥には、確かに聖剣の祭壇が存在します |
| ミクリオ | 本に記載されていた伝説、ウィルから得た情報、全て重なっていたわけか |
| パスカル | おお~!じゃあもしその聖剣を抜く事が出来たらいろいろわかるかも…! |
| ライラ | 聖剣は、晶化現象とは直接関わりのないものですわ |
| ライラ | それでも尚、聖剣の元へ行きたいと思われますか? |
| スレイ | …伝説には「求めし答えを得られる」って書いてあったんだ |
| スレイ | だから、その聖剣が手に入ったら今のこの状況を何とか出来るんじゃないかって思って… |
| ライラ | …わかりました。それでは、聖剣の祭壇までみなさんをご案内します |
| スレイ | いいの!? |
| ライラ | はい、スレイさんが望まれるなら |
| スレイ | ミクリオ、パスカル!早く行こう! |
| ミクリオ | …本物の聖剣か。ウィルは抜く事が出来なかったと言っていたけど… |
| パスカル | まあま、とりあえず見せてもらおうよ! |
| scene2 | 紅蓮の試練 |
| ライラ | あれが聖剣です |
| スレイ | ……! |
| パスカル | 本当に剣が突き立ってる!どうやって刺したんだろ? |
| ミクリオ | もっと近寄って見てみても? |
| ライラ | 勿論です。さあ、前へどうぞ |
| スレイ | … |
| スレイ | まさか、本当にあったなんて… |
| パスカル | この剣、綺麗だね。全然傷んでない。随分古い伝説の剣、だよね? |
| スレイ | 文献には、この聖剣を抜くと、求めし答えを得る事が出来るって書いてあったけど |
| パスカル | 剣に向かって、言えばいいのかな?晶化現象の原因を教えてーって |
| ミクリオ | …さすがに会話形式で聖剣が答えを返してくれるわけではないだろう… |
| パスカル | スレイ、剣抜けるか、やってみなよ |
| スレイ | オレが?…いいのかな? |
| ライラ | … |
| ライラ | スレイさん… |
| スレイ | 何?やっぱり触っちゃまずかったかな? |
| ライラ | この聖剣は、かつて世界を救った救世主である「導師」が携えていたものなのです |
| ライラ | この剣を抜くという事は、導師になるための試練に挑むという事を意味します |
| スレイ | 試練…? |
| ライラ | …スレイさん。私達を視認出来るあなたには、導師となる素養がおありだと思います |
| ライラ | だから私は、あなた方をここへお連れしたのです |
| ミクリオ | …… |
| パスカル | あ!もしかして…伝説の一節に書いてあった、聖剣を護る湖の乙女っていうのは… |
| パスカル | ひょっとして、ライラの事? |
| ライラ | はい。その呼ばれ方は、少し恥ずかしいのですけど… |
| ミクリオ | その聖剣が全く抜けなかったという話も聞いた。それはつまり… |
| ライラ | お察しの通り、この聖剣が試練を課す剣だからですわ。素養のない方に抜く事は出来ません |
| スレイ | …ライラ、教えて欲しい。その「導師」って何なんだ? |
| ライラ | 導師とは、天族と一体化する事の出来る特別な人間の事です |
| スレイ | 天族と一体化…? |
| ライラ | 天族の力を身に纏う「神依」を行う事で、天族特有の力を我が物として扱う事が出来る人間… |
| ライラ | それが導師です |
| ライラ | 神依とは、その導師と天族、双方の力を飛躍的に高める秘術の名ですわ |
| ミクリオ | 神依… |
| ライラ | これまでの長い歴史の中で、導師は存在していました |
| ライラ | …ですが、素養を持つ者の少なさ故にここ久しくは出現が途絶え── |
| ライラ | 遂には、人々や天族の記憶から忘れ去られていったのです |
| ミクリオ | だからイズチでも導師の事は伝わっていなかった… |
| ライラ | 私はこの地で、長きに渡りこの聖剣を護ってきました |
| ミクリオ | … |
| ライラ | 何の道具も必要とせず、天族を視認出来る天性の素質… |
| ライラ | そして、人と天族、それに動物…全てをわけ隔てなく救いたいと願う純真でまっすぐな想い── |
| ライラ | 導師となるには、いずれも欠けていてはいけない要素なのです |
| ライラ | スレイさんは、私が拝見した限り、その必要な要素の全てを、兼ね備えている方だと思います |
| ライラ | 私の役目は、そういった素養のある人間を見出し、導師となる道を指し示す事… |
| スレイ | オレが… |
| ライラ | スレイさん、剣を抜いたその瞬間、…導師となるための試練が始まります |
| ライラ | ですが、その試練は望まぬ内に巻き込まれて、乗り越えられるものではありません |
| ライラ | 導師になりたいという意思がないのでしたら、剣に触れないようにしてください |
| スレイ | …… |
| スレイ | ライラ、さっき導師は神依が使える人間だって言ってたよな?…本当に、それだけなのか? |
| ライラ | …さすがですわ。仰る通り、「神依の使い手」が導師の本質ではありません |
| ライラ | かつて、この世界は大きな混乱に見舞われました。もうずっと昔の事ですが… |
| ライラ | その時、世界を救ったのが、先代の導師です |
| ライラ | 導師とは、その闇に呑まれた世界の運命を覆す事が出来るまさに「導きの光」… |
| スレイ | 導きの光… |
| ライラ | 今、世界に暗い影が忍び寄っている事は、私も知っています |
| ライラ | このような時に、スレイさんがこの地を訪れた事は、ただの偶然ではないのかもしれません |
| ライラ | みなさんが調べている晶化現象。それが、いずれ世界中を巻き込む巨大な災厄となり得るのだとしたら… |
| ライラ | …確かな事は私にもわかりません。だから、スレイさんご自身で決めて頂きたいのです |
| スレイ | …… |
| パスカル | いいんじゃない?せっかく導師になれるって言ってるんだし、なっちゃえば |
| パスカル | 要は、スレイがどーんとパワーアップするって事だよね?晶化現象もぱぱっと解決するかも? |
| ミクリオ | 待ってくれ。簡単に決めていい話じゃない… |
| ミクリオ | 確かに僕らは晶化現象を追っている。でも、その事が導師になる事と繋がっている確証はない… |
| スレイ | …ライラ、さっき言ったよな。剣を抜くという事は、導師になるための試練に挑む事だって |
| ライラ | はい。導師となるためには、厳しい試練を乗り越えていただく必要があります |
| ライラ | 素養さえあれば、必ず導師になれるわけではありません。強い意志と力を示さなくては… |
| ライラ | そして、その試練を乗り越え導師になれたとしても、その先の道のりはとても険しい… |
| ライラ | 導師は、世界を導く光となる存在。世界の運命を背負うその使命はとても重いのです |
| ミクリオ | それは、苦渋の決断を迫られる事もあるかもしれないとそういう意味なのか? |
| ライラ | …それだけではありません。人に疎まれ、心を打ちのめされる事も… |
| パスカル | うぅ~、聞けば聞くほど、導師になるってすごいオオゴトっぽいね… |
| ライラ | …スレイさん。私からお話したい事はこれで全てですわ |
| ライラ | 聞かせてください。…スレイさんは、導師となる事を望まれますか? |
| スレイ | … |
| スレイ | オレは── |
| ミクリオ | …スレイ、剣を抜くのは待ってくれ。僕からも確認したい。本当にいいのか? |
| スレイ | …さっきさ、ライラが言ってただろ?このタイミングでオレがここに来た事は、偶然とは思えないって |
| スレイ | オレもそう感じてたんだ。この遺跡に入った時から何か不思議な感じがして… |
| スレイ | それに、ここに来るまでにパスカルやアスベルさん達と出会った事も偶然じゃなかったんじゃないかって… |
| スレイ | オレ達、ここに来るまでの旅で今の世界がどうなっているか、少しだけど見てきただろ? |
| ミクリオ | …晶化現象は各地で進んでいる。そしてそれを端緒として、人々の心に不安が募っている… |
| スレイ | 晶化しちゃったあの鳥も、リチャード国王も、一刻も早くオレは助けたい |
| スレイ | この気持ちは、間違いなくオレの本心だよ |
| ミクリオ | 全く…君はどこまでも… |
| スレイ | そうだライラ、途中にあった壁画だけど、あれって導師を描いているのかな |
| ライラ | あ、はい。それが何か…? |
| スレイ | …やっぱり |
| | |
| スレイ | あの壁画では、導師が聖なる剣を掲げ闇を切り裂き…そこからまぶしい光が差し込んでた |
| スレイ | もしオレが導師になって、あの壁画と同じ事が出来るなら…この世界の導きの光になれるなら── |
| | |
| スレイ | …オレは導師になる。どんな試練だって、乗り越えてみせる! |
| | ギュッ |
| | |
| | スラッ… |
| パスカル | 聖剣が… |
| ミクリオ | 抜けた… |
| ライラ | スレイさん…やはりあなたは… |
| | |
| | ゴオオッ! |
| ミクリオ | 何だ、この炎は!? |
| スレイ | くっ…! |
| パスカル | 見て、炎が何かの形に! |
| | グルル…! |
| スレイ | こいつは!? |
| ライラ | 炎の化身たる鳳凰…これが試練ですわ |
| スレイ | つまり、こいつと戦えばいいって事か |
| ライラ | その通りです…! |
| ミクリオ | スレイ、僕は君につき合うと言った。それはいつでも、どんな事が起きようと変わらない |
| スレイ | …ミクリオ…! |
| パスカル | あたしも手伝うよ!いっちょやりますか! |
| スレイ | うん!ありがとう、みんな |
| | グオオオオオッ! |
| スレイ | 来るぞ! |
| scene3 | 紅蓮の試練 |
| スレイ | はあ…はあ… |
| スレイ | これで…どうだ! |
| | ズバーーッ! |
| | グオオオオーーーッ! |
| ミクリオ | やったか… |
| スレイ | ああ!鳳凰が消えてく… |
| | |
| パスカル | 強かったぁ。さすが試練だね…。何とか勝ててよかったよ~ |
| ライラ | お見事ですわ、スレイさん。無事、試練を乗り越えられました。一安心ですわね |
| スレイ | ああ、ありがとうライラ。これでオレは───……うっ! |
| ミクリオ | …!どうしたんだ、スレイ! |
| パスカル | ちょ…何これ…!?何かスレイに光が集まり始めて… |
| スレイ | う…あ…熱い…身体が… |
| ミクリオ | スレイ!?大丈夫か、スレイ!? |
| スレイ | やば…も、もう駄目…… |
| | ドサッ |
| ミクリオ | スレイ、大丈夫か。しっかりしろ、スレイ! |
| スレイ | … |
| パスカル | …大丈夫。意識を失ってるだけ、みたい |
| ミクリオ | ライラ、これはどういう事だ!?僕達はちゃんと鳳凰を倒した、なのにこれは── |
| ライラ | …大丈夫ですわ、ミクリオさん。命に別状はないはずです。おそらく、しばらく寝込む事にはなりますが… |
| ミクリオ | しばらく寝込む…?どういう事なんだ? |
| ライラ | スレイさんは無事試練を乗り越えられました |
| ライラ | 導師になるという事は、すなわち天族と一体化するための「器」となるという事です |
| ライラ | そのための身体作り、と言ったところでしょうか |
| ミクリオ | 人が天族の力を受けるための「器」になる。そのための変化で、スレイは… |
| ライラ | はい。人が持ち得ない力を、突然身体に収める事になるのですから… |
| パスカル | とにかく、スレイを休める場所に連れてってあげなきゃ |
| ライラ | それがよろしいかと。数日は高熱にうなされてしまうかもしれません… |
| ライラ | 私も同行させていただきますわ |
| ミクリオ | それなら、まずバロニアへ戻ろう。ここからだと、あの街が一番近いと思う |
| パスカル | うん、そうだね |
| ミクリオ | 二人にはすまないけど、なるべく急ぎたい。スレイは僕が担ぐ。パスカル、君は荷物を頼めるか? |
| パスカル | はいよ~ |
| | |
| スレイ | … |
| ミクリオ | …スレイ、辛いだろうが少し耐えてくれ |
| | |
| ライラ | …スレイさん、本当にお疲れさまでした |
| ライラ | …先ほども申し上げた通り、今日お会いしたのはきっと偶然ではありません |
| ライラ | これから大変になりますが…どうか今は、ゆっくり休んでくださいね |