| Name | Dialogue |
| scene1 | 昼下がりの買い物 |
| ジェイド | ──それにしてもセルディク大公の動きには驚かされますね |
| ガイアス | … |
| ジェイド | 新たなる天啓の出現… |
| ジェイド | その内容も定かでない内に、奪取のために他国に兵を派遣するとは正気の沙汰とは思えません |
| ジェイド | あるいは、知られていない何らかの情報を掴んでいる可能性もありますが… |
| ガイアス | … |
| ジェイド | シルヴァラントより公表された前回の天啓── |
| ジェイド | その内容は、リチャード陛下の晶化を予知したものだという噂がまことしやかに囁かれています |
| ジェイド | 察するに、今回の天啓もそうした未来を予知したものだと大公は考えたのかもしれません |
| ガイアス | …そのようだな |
| ジェイド | 陛下、一つお伺いしてもよろしいですか? |
| ガイアス | …何だ |
| ジェイド | 天啓が未来予知であるとの説、陛下はどうお考えですか? |
| ジェイド | もし本当に天啓が未来を告げるようになったのだとしたら── |
| ガイアス | 馬鹿げた事を言うな |
| ガイアス | … |
| ジェイド | 失礼しました。愚問でしたね |
| ガイアス | いずれにせよ、天啓をあのような男に渡すわけにはいかない |
| ガイアス | …ジェイド、例の準備は進めているか |
| ジェイド | ええ、勿論抜かりはありません |
| ジェイド | 必要な面々も戻って来た事ですし、ご心配には及びませんよ |
| ガイアス | ふむ… |
| ジェイド | では、私はこれで失礼いたします |
| | |
| ガイアス | … |
| ガイアス | …断じて、セルディク大公の好きにはさせん |
| | |
| ??? | ヴェイグ、待って。歩くのが早いわ |
| ヴェイグ | すまない、クレア。つい、いつもの癖で |
| クレア | ふふ、そうね。ヴェイグは昔から、歩くのが早かったものね |
| ヴェイグ | … |
| クレア | メルトキオまで買い出しする事になるなんてね。ヴェイグがついて来てくれて助かるわ |
| ヴェイグ | クレアを一人で行かせるわけにはいかないからな |
| ヴェイグ | …? |
| クレア | ヴェイグ、どうかした? |
| ヴェイグ | … |
| クレア | あんなところにも、晶化現象が… |
| クレア | …村の人に聞いたわ。ウィンドルの国王陛下にも晶化現象が起きてしまったって |
| クレア | まさか人間にも発生するものだなんて思わなかったわ…。これから人にも広まってしまうのかしら |
| ヴェイグ | ウィンドルの国王の件以来、その話は聞いていない。心配しすぎだ |
| クレア | そう…よね。何事もなければいいのだけれど… |
| | |
| クレア | あ、街が見えてきたわ |
| ヴェイグ | ピーチパイの材料はあるだろうか… |
| クレア | ふふ、ヴェイグったら。大丈夫よ、今までメルトキオで、欲しいものが手に入らなかった事なんてないもの |
| ヴェイグ | あそこは市場も盛んだからな。早いところ買い物を済ませよう |
| クレア | ええ |
| scene2 | 昼下がりの買い物 |
| クレア | そんなにするんですか?どうしようかしら… |
| ヴェイグ | どうした? |
| | |
| クレア | ピーチパイに使う白桃のシロップ漬けを買おうと思ったんだけど… |
| クレア | 1500ガルドだと聞いて… |
| ヴェイグ | 随分高いな |
| クレア | でしょう?普段の倍もするから驚いて… |
| 商人 | 言っておくが、別にぼったくってるわけじゃねぇ |
| 商人 | 例の晶化現象って知ってるだろ?あれにうちが取り引きしてる農園がやられちまったんだよ |
| クレア | まあ…。晶化現象が農園に…? |
| 商人 | 知り合いに頼んで、何とかモノだけは調達しているが、値段ばかりはどうしようもねえ |
| 商人 | これでも良心的なんだぜ。信じてくれ |
| クレア | そんな事が起こっていたんですね… |
| クレア | じゃあ…いいわ。白桃のシロップ漬けを一瓶ください |
| 商人 | 一瓶でいいのか?今後はもっと手に入りにくくなるかもしれねえよ |
| クレア | ええ。買いだめしておきたかったのだけど、今日はこれだけにしておくわ |
| クレア | もっと買いにくくなるかもしれないけど…だからこそ、買い占めるわけにはいかないわ |
| クレア | だから、ごめんなさいヴェイグ。今回作れるピーチパイは、少し量が減ってしまうかもしれないけど… |
| ヴェイグ | 今は事情が事情だ。オレは構わない |
| 商人 | すまないね |
| | |
| ヴェイグ | …これで買い出しは終わりか? |
| クレア | ええ、そうね。一通りは揃ったかしら |
| クレア | …それにしても、食糧が手に入りにくくなってしまうなんて… |
| クレア | でも、植物が晶化するって事は、穀物や作物も当然そうなるって事よね |
| クレア | 私、晶化現象の事を甘く考えていたのかもしれないわ |
| ヴェイグ | クレア… |
| ヴェイグ | とにかく、一度村へ帰ろう。今ここでオレ達が話したところですぐに解決出来る問題じゃない |
| クレア | …それもそうね。わかったわ |
| ヴェイグ | … |
| scene1 | シルヴァラントの神子 |
| クレア | あ…! |
| ヴェイグ | どうかしたのか? |
| クレア | ごめんなさい、ヴェイグ。お隣のおばさんに届け物を頼まれていた事をすっかり忘れていたわ |
| クレア | 村へ帰る前に、寄り道してもいいかしら |
| ヴェイグ | よし、行こう |
| | |
| クレア | 確か、この辺りにある家だったはず…。ええと、地図は… |
| ヴェイグ | 表通りと違って静かだな。王宮のすぐ裏手だからか人の通りも少ない |
| クレア | 住宅街みたいね。広場辺りとは違って閑静だわ |
| ヴェイグ | …!? |
| ヴェイグ | 何だ?向こうから誰か来る |
| | |
| シルヴァラント兵 | 神子様、お急ぎくださいませ |
| ??? | でも… |
| シルヴァラント兵 | 陛下直々のご命令です。どうか… |
| ??? | ロイド…本当にいいのかな?私達だけで行っちゃって…ゼロスの事も── |
| ロイド | あいつなら心配ないって。今頃一人でどこか安全な場所に身を潜めてるはずだ |
| ロイド | 簡単に捕まるようなヘマはしないだろ。ゼロスの事を信じようぜ、コレット |
| コレット | …うん |
| シルヴァラント兵 | 神子様、急いでください。いつ追手が来るかわかりません |
| シルヴァラント兵 | あなたの身に何かあっては国の一大事です |
| ロイド | 本当かわからない情報でこの人数の護衛がつくのは少し大げさすぎる気もするけどな… |
| ロイド | …ん?誰かいるぞ… |
| ヴェイグ | …! |
| シルヴァラント兵 | む?お前は何者だ?そこで一体何をしている |
| ヴェイグ | ただの通りがかりだ。この近くに用があって── |
| シルヴァラント兵 | 今の話を聞いていたのか?赤の騎士団ではなさそうだが… |
| シルヴァラント兵 | 市民を装った刺客かもしれん。何かあってからではまずい… |
| | |
| シルヴァラント兵 | 捕えろ! |
| ヴェイグ | 何だって? |
| クレア | 待ってください!私達は本当にただの民間人です。刺客だなんて、そんな… |
| シルヴァラント兵 | 女もいたのか…だが仕方がない。念のためだ、まとめて捕まえろ! |
| ヴェイグ | やめろ!クレアに触るな! |
| | |
| ロイド | ちょっと待ってくれ! |
| ヴェイグ | …!お前は… |
| | |
| ロイド | …やっぱり!ヴェイグじゃないか! |
| クレア | ヴェイグ…あなた、この人と知り合いなの? |
| ヴェイグ | ああ、確か… |
| ロイド | この人は、俺の知り合いだ。刺客なんかじゃない。大丈夫だ |
| シルヴァラント兵 | …そうでしたか。失礼しました |
| | |
| ロイド | 驚かせてごめんな、ヴェイグ。この人達もいろいろと事情があってさ… |
| ヴェイグ | あ、ああ…すまない、お前は… |
| ロイド | 俺はロイド。お前、覚えてるかなぁ…ヴィズリー遺跡の仕掛けの事で話を聞かせてもらった… |
| ヴェイグ | 幼なじみを助けると言っていたな |
| ロイド | そう、それ!あの時はありがとな!前に話してた幼なじみだけど、隣にいるコレットがそうなんだ |
| コレット | えっと…こ、こんにちは |
| クレア | こんにちは。私はクレア・ベネット。よろしく |
| ヴェイグ | …そうか、無事だったのなら何よりだ |
| | |
| ロイド | 久しぶりに会えたし、いろいろと話したかったけど…急いで街を出ないといけないんだ |
| クレア | 何かあったんですか? |
| ロイド | …ヴェイグ達なら話しても大丈夫かな |
| ロイド | ウィンドルの「赤の騎士団」が神子を狙っているという情報が入ってきたんだ |
| ヴェイグ | 赤の騎士団…?さっきも聞いた名だが |
| ロイド | ウィンドルのセルディク大公が作った新しい騎士団らしい |
| クレア | 神子を狙うとはどういう事なんでしょう |
| コレット | 天啓の石碑が新たに出現したんです |
| クレア | 天啓?この前現れたのとは違うもの、という事ですか |
| コレット | 赤の騎士団はそれを手に入れるため神子に必ず接触してくるって王様が… |
| ヴェイグ | そうか、天啓の石碑を見つけるにも読むにも、神子が必要だからな… |
| シルヴァラント兵 | 神子様、ロイド様。知人とはいえそれ以上は…。それにゆっくりしている暇はありません |
| コレット | わかっています…。でもやっぱり、ゼロスが… |
| ロイド | コレット、心配なのは俺も同じだ。だから、ゼロスの事は俺に任せてくれ落ち着いたら、俺が捜しに行く |
| コレット | うん…ありがとう、ロイド |
| ロイド | いろいろ騒がせてごめんな。先を急ぐから、俺達は行くよ |
| ヴェイグ | …ああ |
| コレット | またどこかで会えたらいいですね?さようなら、二人共 |
| クレア | 気をつけて |
| ヴェイグ | 行ったようだな |
| クレア | コレットさん、大丈夫かしら…。神子だからって危険な目に遭うなんてかわいそうだわ |
| ヴェイグ | ああ… |
| クレア | それに、新しい天啓の石碑が現れたって…本当かしら。つい最近前回の儀式があったばかりよね |
| ヴェイグ | あの時は百年ぶりという事もあって街ではかなり盛り上がっていたと聞いたが… |
| クレア | 神子が言うのだから事実なんでしょうけど… |
| ヴェイグ | クレア、オレ達も用を済ませて帰ろう。探していた家はどっちだ? |
| クレア | 地図によると、こっちのようね |
| ヴェイグ | よし、なら急ごう |
| scene2 | シルヴァラントの神子 |
| クレア | お届け物も無事届けた事だし、村に帰ったらピーチパイ作りに取りかかるわね |
| ヴェイグ | そうだな。オレも何か手伝おう──… |
| ヴェイグ | …? |
| クレア | どうしたの、ヴェイグ |
| ヴェイグ | …何だ、あれは…。こっちに向かってくる |
| ??? | … |
| ヴェイグ | あれは騎士か…? |
| 街の男 | 見ろよ、あれ…。兵士を引き連れて…一体何事だ? |
| 街の女 | あの国旗…ウィンドルの騎士団じゃないのかい? |
| ヴェイグ | ウィンドル…? |
| | |
| | ザッ、ザッ… |
| ??? | 私はセルディク大公の命を受け、ウィンドル王国の公用としてこのメルトキオを訪れた騎士団の者だ |
| ??? | 騎士団は見世物ではない。見物をしている者は早々に立ち去れ |
| ヴェイグ | セルディク大公…という事は、彼らがロイド達の話していた赤の騎士団…? |
| クレア | そうみたいね。でも…何かしら、怖いわ |
| | |
| | きゃあああ! |
| ヴェイグ | …!何だ、今の声は…! |
| クレア | ヴェイグ、あれを見て!魔物が…! |
| | グオオオオッ! |
| クレア | こっちに向かって来るわ…! |
| ヴェイグ | 何故こんなところに…! |
| 街の男 | うわあああっ! |
| 街の女 | 助けてええっ! |
| ヴェイグ | まずいな。みんなパニックを起こしている |
| ヴェイグ | クレアは避難しろ。オレが魔物を… |
| クレア | …! |
| クレア | ヴェイグ!子どもが魔物に狙われて… |
| 男の子 | た、助けてー! |
| | グオオオ! |
| ヴェイグ | くっ…!させるか! |
| クレア | あ、ヴェイグ…! |
| ??? | … |
| scene3 | シルヴァラントの神子 |
| ヴェイグ | …何とか間に合ったか。大丈夫か? |
| 男の子 | う、うん…ありがとう、お兄ちゃん |
| クレア | ヴェイグ!よかった、二人共無事で… |
| ヴェイグ | クレア…!避難しろと言っただろう |
| クレア | 魔物はあなたが倒してくれたしもう大丈夫… |
| クレア | …あら? |
| 男の子 | うう、ひっく… |
| クレア | 少し膝を擦りむいたみたいね。念のため、消毒しておかないと── |
| ??? | …そこを退け |
| クレア | え…? |
| | |
| ??? | 大怪我でないなら、他で手当てをしろ。道の中央に居られたら邪魔だ |
| ヴェイグ | なっ… |
| ??? | 二度は言わない |
| クレア | ごめんなさい、今避けますから… |
| ??? | … |
| ヴェイグ | … |
| 街の男1 | …聞いたか?今ここで何が起きたのかは、あいつらも見ていたはずなのに… |
| 街の男2 | ああ、あの三人は何も悪くない。人の国へ押し入って来たよそ者風情が、何を偉そうに…! |
| 街の女 | 公用だか何だか知らないけど、あの傲慢な態度は気に入らないね |
| ヴェイグ | …クレア、移動しよう。その子はオレが抱える |
| クレア | ありがとう、ヴェイグ |
| シルヴァラント兵 | 何の騒ぎだ?……! |
| シルヴァラント兵 | …失礼ながらお尋ねする。貴殿らは何者か。何用で我が王国に来たのだ? |
| カーツ | 我々はウィンドル王国に所属する赤の騎士団。私は団長を務めるカーツ・ベッセルだ |
| カーツ | 神子との謁見の場を設けていただきたい |
| ヴェイグ | 神子… |
| シルヴァラント兵 | 突然何を…。神子様と貴殿らを会わせる事は出来ない |
| カーツ | 私はウィンドルの代表として、正式に要求をしている |
| カーツ | 貴公に、それを拒む権限があるのか? |
| シルヴァラント兵 | 何を… |
| カーツ | …悪いが、貴公では話にならない。国王陛下と直接話をさせてもらおうか |
| ヴェイグ | 兵士でもこの騒ぎを鎮める事は出来ないのか… |
| クレア | ヴェイグ… |
| ??? | まあ…一体何事ですか? |
| シルヴァラント兵 | あ、あなたは! |
| | |
| カーツ | 貴女は… |
| フィリア | 初めてお目にかかります。神殿の司祭を務める、フィリア・フィリスと申します |
| カーツ | その名前は、聞き覚えがある。天啓の儀式も執り行っていた方のようだが… |
| カーツ | 我々が謁見を求めているのは司祭ではなく、神子だ |
| フィリア | そうおっしゃらず |
| フィリア | これでも微力ながら、国王陛下のご公務のお手伝いなどもさせていただいている身です |
| カーツ | 国王陛下の手伝いを、か…。儀式だけを行うただの司祭ではないようだな |
| フィリア | 司祭には違いありませんが…。まずは私がお話をお伺いいたしますわ |
| scene1 | 対峙 |
| クレア | ヴェイグ…さっきの子どもは? |
| ヴェイグ | 大した怪我でなかったようだ。元気そうだったから、家に帰るように言っておいた |
| ヴェイグ | あれがフィリア司祭…。確か、国王が病床に伏していた時に政務を代行していた人だ |
| クレア | まあ、名前は知っていたけど、あんなに若い女性だったの…? |
| | |
| カーツ | ほう…それではまず、貴女にお話させていただこう |
| カーツ | 私はカーツ・ベッセル。ウィンドル王国赤の騎士団の団長を務めている |
| フィリア | ウィンドルからの使者の方ですね。本日はどういったご用件でしょうか |
| カーツ | 新たな天啓が出現したとの情報を得た |
| カーツ | 事の真偽と、天啓の内容の開示のため大公に代わり神子との謁見を要求する |
| フィリア | 貴国がどのようにして、その情報を手に入れたかはわかりませんが── |
| フィリア | 新たな天啓の石碑が出現した事は紛れもない事実ですわ |
| カーツ | そうか…。ならば、その内容を知りたい |
| フィリア | それは出来ませんわ |
| カーツ | 何故だ?天啓は世界全体にまつわる星の記憶であり、シルヴァラント一国に属するものではない |
| カーツ | 全ての国が、等しくその内容を知る権利があるはずだ |
| フィリア | 天啓の石碑は、出現した事がわかっただけでまだ発見には至っておりません |
| フィリア | 従って、天啓の読み解きに関してもこれから、という事になります |
| カーツ | … |
| フィリア | カーツ様の仰るように、天啓は誰もが知る権利を持つものです |
| フィリア | 石碑を見つけ、儀式にて内容を読み解いた暁には、その全てを開示するとお約束しますわ |
| カーツ | 儀式まで神子や石碑の所在を明かさないのは、独占しているのと変わりがないのではないか? |
| フィリア | 私達は、天啓の石碑の出現を神のご意志と捉えております |
| フィリア | そして、長きにわたりその伝統と儀式を守って参りました |
| フィリア | そのため、天啓の読み解きや保管などは、これまでと変わらず我が国が主管出来ればと |
| カーツ | …神子に会わせる気もなければ、今後も独占をしていく、というわけか |
| フィリア | 独占をするために主管しているわけでも神子に会わせないわけでもありません |
| フィリア | 当代の神子は、あくまで普通の方という事もありますし…ご理解いただけると幸いですわ |
| カーツ | … |
| ヴェイグ | ロイド達が話していた通りだな。赤の騎士団は何としてでも神子に会いたいらしい… |
| クレア | いくら何でも、いきなりやって来て会わせろ、なんて乱暴だわ… |
| カーツ | フィリア司祭…貴女は、この国にある疑念が向けられている事はご存知だろうか |
| カーツ | 我が国では、国王陛下晶化の一件を受け、天啓に関する一つの認識が覆りつつある |
| カーツ | 天啓は、過去の出来事を記したものではなく未来予知ではないのか、と… |
| フィリア | … |
| カーツ | …我々は、貴国に対しこう考えている |
| カーツ | これまでにも、貴国の都合によって隠された天啓があるのではないか? |
| カーツ | 過去に公表された天啓の内容も、実際に事が起きてから公表したのではないか? |
| カーツ | 貴国には、天啓が未来予知である事を知りながらその事実を伏せ、情報を改ざんしている疑いがある |
| カーツ | …故に、貴国の管理下において開示された天啓は信用出来ない、それが我が国の見解だ |
| フィリア | そんな…! |
| | |
| ヴェイグ | 天啓が改ざんされた情報だって…? |
| クレア | まさか、そんな事… |
| フィリア | 神に誓って、そのような不正はございませんわ |
| カーツ | 先の天啓の公表も、我が国の混乱を招く意図があっての事…そうも考えられる |
| フィリア | ……!いいえ、決してそのような事は… |
| カーツ | この目で見ない限りは信じるに値しない |
| カーツ | 国王が晶化したという実害がある我が国には天啓を開示要求する権利がある… |
| カーツ | それでも尚、我が国の要求を拒むようであればそれ相応の措置を取る事になる |
| | ざわざわ… |
| 街の男 | 天啓の儀式に不正だって?そんな、まさか… |
| ヴェイグ | 相応の措置って…武力を行使するって事か…? |
| クレア | ヴェイグ… |
| カーツ | …再度要求する。神子へ取り次ぎ願── |
| | |
| | ガツッ |
| カーツ | …! |
| クレア | 石…!?一体誰が… |
| 男の子 | 司祭様をいじめるな! |
| | ヒュッ |
| | |
| | ガツッ |
| クレア | ヴェイグ、あの子、さっきあなたが助けた子じゃない? |
| ヴェイグ | 帰るように言っておいたのに… |
| 男の子 | お前なんか、出て行け! |
| | ヒュッ |
| | ガツッ |
| カーツ | … |
| フィリア | いけません、そんな事をしては…! |
| 赤の騎士団員 | 無礼者!団長に何をするか! |
| クレア | やめてください! |
| ヴェイグ | クレア! |
| 赤の騎士団員 | 貴様は… |
| クレア | … |
| scene2 | 対峙 |
| ヴェイグ | クレア! |
| 赤の騎士団員 | 貴様は… |
| クレア | … |
| 赤の騎士団員 | 女、そこを退け! |
| クレア | 退きません…!この子に手荒な真似をするのはどうかやめてください |
| ヴェイグ | クレア…!オレの後ろに下がるんだ |
| クレア | …大丈夫よ、ヴェイグ |
| クレア | 確かにこの子は、人に石を投げるという、してはいけない事をしました |
| クレア | でも…だからといって、こんな小さな子どもに騎士が手を出していいはずがありません |
| 赤の騎士団員 | うるさい!黙っていればこの女…! |
| ヴェイグ | 待て! |
| ヴェイグ | クレアに手出しはさせない…! |
| ヴェイグ | お前達は都合が悪くなると、すぐに武力に頼るのか? |
| 赤の騎士団員 | なっ… |
| ヴェイグ | 神子の事にしたって同じだ。権利や便宜を主張し武力行使を仄めかしていたが── |
| ヴェイグ | 武力を振るう事に正当な理由などあるわけがない。…争いが起きて、苦しむのは民衆だ |
| | |
| カーツ | … |
| フィリア | … |
| クレア | みなさん、ご自分の周囲を…隣の人の表情を見てください |
| クレア | 原因不明の晶化現象に、新たに現れた天啓…。この世界は大きな問題に直面しています |
| クレア | そして今、みなさん不安と疑いの表情でここに立っています |
| クレア | …そんな時に、このような些細な事で争っていていいのでしょうか |
| クレア | 争いで相手を制すやり方は、決して本質的な解決にはなりません |
| クレア | こんな時だからこそ、国も、立場も越えて、お互いの手を取り合うべきではないでしょうか |
| フィリア | クレアさん、ですね。あなたのお考えに、私も賛同いたしますわ |
| カーツ | … |
| フィリア | カーツ様、先ほどの男の子の非礼については私からもお詫び申し上げます |
| フィリア | また、神子と話がしたいとの事ですが… |
| フィリア | 神子はこの街にはおりません。これは偽りなき事実ですわ |
| フィリア | 従って、ここで争う事は無意味です。恐縮ながら、お引取り願えませんか |
| カーツ | … |
| 赤の騎士団員1 | いかがいたしますか、団長。神子がこの街にいないなどとは思えませんが… |
| 赤の騎士団員2 | 私も同感です。あのような虚言に惑わされては…! |
| 街の男 | 司祭様が嘘をつくはずないだろ!馬鹿な事言ってねえで、とっとと出て行きやがれ! |
| 街の女 | そうよそうよ! |
| 民衆 | かーえーれ!かーえーれ! |
| カーツ | … |
| 赤の騎士団員1 | くっ…おのれ。こちらが大人しくしていれば… |
| 赤の騎士団員1 | お前達、いい加減にしろ。さもないと… |
| | スチャッ |
| ヴェイグ | 剣を抜く気か…!? |
| フィリア | いけません、それだけは! |
| カーツ | よせ、お前達── |
| ??? | ワウッ! |
| 赤の騎士団員1 | うわっ!? |
| ヴェイグ | 犬…!? |
| ??? | ナイスだ、ラピード |
| ??? | やれやれ、騎士ってのはいつから市民相手に剣を振り回すのが仕事になったんだ? |
| ヴェイグ | 誰だ…? |
| カーツ | お前は…ユーリ・ローウェルか |
| カーツ | 元ウィンドル騎士団員だったな。お前がここにいるという事は、……エステリーゼ殿下か |
| ユーリ | …訳知りってわけか。ま、なら話が早い |
| ユーリ | もう少しお前らの様子を見てるつもりだったんだが、生憎そうもいかなくなっちまった |
| ユーリ | これ以上、おいたするつもりならまずはオレの相手をしてもらうぜ |
| ラピード | ワンッ! |
| ユーリ | おっと、悪い悪い。ラピード、お前もだな |
| カーツ | … |
| 赤の騎士団員2 | 一民間人が我々に楯突くとは…!どけ!どかぬなら──! |
| カーツ | …待て |
| ユーリ | …! |
| カーツ | 神子がいないこの街にこれ以上留まる理由はない。撤退するぞ |
| 赤の騎士団員2 | しかし団長…!神子不在の情報も確かなものだとは… |
| カーツ | …あの情報は確かなものだ。司祭の目を見ればわかる |
| カーツ | …それに、一定の成果は得られた。これ以上の長居は無用だ |
| カーツ | 行くぞ |
| | ザッ、ザッ、ザッ |
| | |
| クレア | 行ったみたいね…よかった |
| ヴェイグ | ああ… |
| scene1 | クレアの想い |
| クレア | …ぼく、大丈夫だった? |
| 男の子 | うん… |
| クレア | 怪我がなくてよかったわ |
| クレア | でも、人に向かって石を投げるのはよくない事だわ。もうしないって約束出来る? |
| 男の子 | …わかった、約束する |
| クレア | ふふ、いい子ね |
| フィリア | ヴェイグさん、クレアさん、先ほどは本当にありがとうございました |
| クレア | いえ、私達はただ思った事を言っただけです。ね、ヴェイグ? |
| クレア | …あら? |
| | |
| ヴェイグ | …ユーリと言ったか |
| ユーリ | ん? |
| ヴェイグ | オレは、ヴェイグ・リュングベル。さっきは助かった、ありがとう |
| ユーリ | 別に何もしちゃいないさ。それより、さっきのお前らだ。見てたぜ、演説 |
| ユーリ | お前らの声がみんなを動かした。大したもんだ |
| ヴェイグ | いや、オレは何もしていない。あれはクレアのお蔭だ |
| ユーリ | 何にせよ、あんな連中相手に真向から一席ぶつなんざ、相当肝が据わってんな |
| ヴェイグ | ああ。だが、だからこそ放っておけないんだ |
| | |
| クレア | ヴェイグ!と、あなたは先ほどの… |
| ユーリ | お、噂をすれば… |
| クレア | さっきは助けてくださって、ありがとうございました |
| フィリア | ユーリさん、私からもお礼を。あなた方がいなければ、事態は悪化していた事でしょう |
| フィリア | 街の人達も、みなさんにお礼を言いたいと仰っています |
| ユーリ | 気にすんなよ。それにそもそもあいつら、オレの国のモンだ。威張れた話じゃないんでね |
| フィリア | まあ、そう仰らず。あちらで街の人達がお待ちしています |
| クレア | …こう言ってくださってるし、行きませんか? |
| ラピード | ワフッ! |
| ユーリ | …ったく、堅苦しいのは苦手なんだがな |
| フィリア | ふふ。では、こちらへ |
| ヴェイグ | …わかった |
| scene2 | クレアの想い |
| ヴェイグ | … |
| 街の男1 | あ、来たぞ! |
| 街の女1 | さっきはありがとうね。兵士がやって来て怖かったけどあんた達のお蔭で救われたよ |
| 街の女2 | あなた、こんなに華奢なのに騎士団に立ち向かうなんて勇気があるねえ。かっこよかったよ |
| クレア | みなさん…ありがとうございます |
| 街の男2 | あんた達の話を聞いて、俺達もいろいろ考えさせられたよ |
| 街の男1 | 今は、こんなちんけな事で争ってる場合じゃねえ、みんなで協力しなきゃってな |
| クレア | そうですね、みなさん、今は不安でいっぱいだと思います |
| クレア | 不安で、怖いからこそ、衝突してしまう事、混乱してしまう事もあると思いますが── |
| クレア | 一人でも多くの人が、わかり合おうとする気持ちを持てば、争わなくたって解決出来ると思うんです |
| フィリア | …そうですね。クレアさんの仰る通りだと思いますわ |
| ユーリ | あの赤の騎士団の連中にも少しは響いてるといいんだがな |
| ユーリ | ま、何はともあれ大事にならなくてよかったぜ |
| ヴェイグ | そうだな |
| 男の子 | ワンちゃん、お前も助けてくれてありがとな |
| ラピード | ワンッ! |
| ヴェイグ | …ん?ラピードは人の話がわかるのか? |
| ユーリ | どうだかな |
| 街の女3 | みなさん、本当にありがとうございます |
| フィリア | 私も国を代表してお礼申し上げますわ |
| ヴェイグ | 礼を言われるほどの事ではないが… |
| ユーリ | 素直に受け取っておけって |
| | |
| ??? | あーあ…せっかく面白いものが見れると思ったのにー…つまんないの |
| ??? | そう思わない、デクス? |
| デクス | そうだね、アリスちゃん。ったく、あいつは何だって… |
| デクス | …まあいい。安心してよ、オレなら大丈夫さ! |
| デクス | キミの王子様、デクスがその願いをかなえてあげるよ! |
| アリス | わかったから、近寄らないで!その香水、相変わらず臭いんだからにおいが移っちゃう |
| デクス | 臭い…… |
| デクス | って、アリスちゃん!?どこに行くんだ |
| アリス | …ふふ♪アリスちゃん、いい事思い付いちゃった |
| デクス | いい事…? |
| アリス | そう、い・い・事♪ |
| アリス | 元はと言えば、全部あの女…… |
| アリス | …アリスちゃん、ああいう、キレイ事ばっかりな女だーい嫌いなの |
| アリス | だからちょーっと、可愛がってあげようかなぁと思って。うふふ… |
| scene1 | 忍び寄る二つの影 |
| フィリア | ──それでは、みなさん。国王陛下への報告もありますので私はこれで… |
| ユーリ | 一人で大丈夫か? |
| ユーリ | 兵隊さんも赤の騎士団見張りに行っちまったし、なんなら送るぜ? |
| フィリア | まあ…、ありがとうございます。でも、一人で大丈夫ですわ |
| ヴェイグ | いや、あんな事があった後だ。用心した方がいいだろう |
| ヴェイグ | オレ達も同行しよう |
| フィリア | そうですね、では、お言葉に甘えさせていただきますわ |
| 女の子 | 司祭さまー |
| フィリア | あら、あなた達…どうしたんですか? |
| 女の子 | いつもみたいに、面白いお話聞かせてー |
| 男の子1 | ぼくも聞きたい! |
| 男の子2 | ぼくもぼくもー! |
| ヴェイグ | …大人気だな |
| クレア | 司祭様は、街の人にとても慕われているのね |
| フィリア | そうですね、お話したいのは山々なのですが… |
| ユーリ | お前ら、司祭様はこれから王様んとこに行くんだとよ。お話はまた今度にしてやってくれ |
| 男の子1 | ええー |
| 女の子 | でも、司祭様のお話聞きたいよ… |
| クレア | 無理を言って、困らせてはいけないわ |
| クレア | …そうだわ。代わりに、お姉ちゃんがみんなにお話をしてあげましょうか? |
| 男の子2 | 本当!? |
| ヴェイグ | クレア…いいのか? |
| クレア | 私達の用は済んでるし、あなたが司祭様をお見送りするまで時間があるわ |
| クレア | それに見て、この子達。こんなにも期待に目を輝かせているのよ? |
| 男の子1 | お姉ちゃん、こっちこっち。こっちでお話しして |
| クレア | …はいはい、すぐ行くわ。ちょっと待ってね |
| フィリア | すみません、クレアさん。お手数をおかけしてしまって |
| クレア | いいえ、いいんです。自分で言い出した事ですし |
| クレア | そういうわけだからヴェイグ、この辺りにいるからまた後で落ち合いましょう |
| ヴェイグ | わかった。すぐ戻る |
| フィリア | クレアさんは、本当にお優しい方ですね |
| ヴェイグ | …ああ |
| ユーリ | んじゃ、早いとこ王様のとこに行くとしようぜ。行くぞ、ラピード |
| ラピード | ワウッ! |
| フィリア | ありがとうございます。では、私達も参りましょうか |
| scene2 | 忍び寄る二つの影 |
| フィリア | ユーリさんはエステリーゼ殿下のご指示でメルトキオまで? |
| ユーリ | 指示っていうか相談されたんだよ。何かキナ臭い連中が動いてるんで気になるってな |
| ユーリ | で、そいつらがいきなり出かけるってんで、大慌てで後を追っかけて来たってとこだ |
| ヴェイグ | ユーリ、お前はウィンドルの人間、赤の騎士団側の人間だろう? |
| ヴェイグ | 彼らの邪魔するような事をして大丈夫だったのか? |
| ユーリ | おいおい、確かにオレはウィンドルの人間だが、あいつらの仲間呼ばわりはご勘弁願いたいね |
| フィリア | …ウィンドルの中でも、混乱があるようですね |
| ユーリ | オレも詳しくは知らないんだけどな。そういや、さっき神子は街を出たって言ってたが、ありゃ本当なのか? |
| フィリア | はい、セルディク大公が天啓に強い関心を示しているという情報が入ってすぐ── |
| フィリア | 国王陛下が神子の二人の身を案じて昨晩、避難を命じられました |
| フィリア | 恐れていた事態が、これほど早くに起こるとは、想定外でしたが… |
| ユーリ | 二人?神子ってのは二人もいんのか? |
| フィリア | ええ、天啓にまつわる特殊な力を持つ神子は二人います |
| ヴェイグ | そういえば、そんな事を言っていたな… |
| ヴェイグ | でも、一人は別行動を取っているようだが、そっちは大丈夫なのか |
| フィリア | …!ヴェイグさん、それは本当ですか? |
| ヴェイグ | あ、ああ。知らなかったのか?実は、少し前に── |
| フィリア | まさか、ヴェイグさんがコレットさんとお会いしていたなんて |
| ユーリ | オレとしちゃ、あのゼロスの奴がそんな特別な存在だったって事の方が衝撃だけどな |
| フィリア | 私はてっきり、ゼロスさんはコレットさん達と一緒に街を出たものだと… |
| ヴェイグ | ゼロスっていう奴にはロイドみたいな護衛や見張りはついていなかったのか? |
| フィリア | 神子の保護命令が出たのはつい昨晩の事ですから… |
| フィリア | 今日、街を出る手筈になっていましたので、夜明け前にお一人で出られたのかもしれません |
| ユーリ | おいおい、向こうにしてみりゃどっちか捕まえれば済むんだろ?何考えてんだ、ゼロスの奴 |
| ユーリ | あのカーツって奴の様子じゃ、セルディクは天啓の解読にだいぶご執心みたいだし |
| フィリア | ゼロスさんが心配です。すぐに国王陛下にお伝えしなくては |
| ユーリ | ま、そうは言ってもゼロスはあれで剣の腕も立つ。そう簡単に捕まらないとは思うぜ |
| ユーリ | もう一人の…コレットだったか?そっちもロイドがついてるんならとりあえず、大丈夫だろうが… |
| ユーリ | そのコレットの居場所が赤の騎士団には見つからない自信はあんのか? |
| フィリア | ええ、詳しくはお話し出来ませんがまず見つかる事はないかと |
| ヴェイグ | とはいえ、絶対に安全という事はない |
| ユーリ | だな。あの赤の騎士団どもが次に何をやらかすつもりか、目を離さない方がよさそうだ |
| ラピード | ワンッ |
| | |
| フィリア | ──それでは、私はここで。お見送りありがとうございました |
| フィリア | いろいろとお話も聞けてよかったですわ。早く国王陛下にお伝えしないと |
| フィリア | クレアさんにもよろしくお伝えください |
| ヴェイグ | わかった、伝えておこう |
| ユーリ | オレんとこのもんが迷惑かけて悪ぃが、またその内話を聞かせてもらえると助かる |
| フィリア | はい。私に出来る事でしたら、協力は惜しみませんわ |
| ヴェイグ | ユーリ、お前はこれからどうするんだ? |
| ユーリ | そうだな。何をするにしたって、もう少し情報が欲しいとこだが… |
| ユーリ | このまま赤の騎士団を追ってみるか、それとも一度バロニアに戻るか…ま、そんなとこだ |
| ヴェイグ | そうか… |
| ユーリ | にしても、新しい天啓とはな。こちとら晶化現象だけで満腹だってのに迷惑なこった |
| ヴェイグ | カーツという男が言っていたが、天啓が未来予知というのは本当なのだろうか |
| ユーリ | どうだろうな。前回の天啓とリチャード王の件を結び付けたがってる奴は多いみたいだが |
| ヴェイグ | だが、ウィンドルは…いや、セルディク大公はそう考えているから神子を探しているんだろう? |
| ユーリ | カーツって奴の言葉を信じるならそういう事になるんだろうな |
| ユーリ | ああいう手合いの事だ、大方予め未来を知る事が出来りゃ何かと好都合とか思ってんのかもな |
| ヴェイグ | そういう事か… |
| 男の子 | あ、いた!三つ編みのお兄ちゃん! |
| ヴェイグ | お前は…クレアと一緒にいた… |
| ユーリ | 血相を変えてどうした。何かあったのか |
| ラピード | グルル… |
| 男の子 | お姉ちゃんが…お姉ちゃんが… |
| ヴェイグ | …!?クレアがどうかしたのか |
| | |
| 男の子 | …さらわれちゃったんだ! |
| 男の子 | おかしな男の人と女の人が突然来て… |
| ヴェイグ | 何… |
| ヴェイグ | どういう事だ…誰にだ!?何故… |
| ユーリ | 落ち着け、ヴェイグ! |
| ユーリ | …おかしな男と女ってのは何もんだ?赤の騎士団とは違うのか? |
| ラピード | …! |
| ラピード | ガウッ! |
| ユーリ | どうした、ラピード? |
| | ガルルル! |
| ユーリ | くっ…!こんな時に魔物か! |
| scene1 | 追跡 |
| ヴェイグ | クレア!いたら返事をしてくれ! |
| ヴェイグ | 本当にクレアはこの森にいるのか…? |
| ユーリ | 気持ちはわかるが慌てんなって。どうだ、ラピード? |
| ラピード | クゥン… |
| ヴェイグ | …?ラピードが立ち止まって… |
| ユーリ | どっちに向かうか熟考中ってとこみたいだな |
| ユーリ | このハンカチの匂いをたどってここまで来たわけだが…犬の鼻でなくとも、ひでえ匂いだなこりゃ |
| ラピード | ウルルル… |
| ヴェイグ | かなり迷っているようだが大丈夫なのか…? |
| ユーリ | いい加減な判断でオレ達にハズレつかませたくないんだよ |
| ユーリ | だろ、ラピード |
| ラピード | ワウッ! |
| ヴェイグ | …ラピードが動き出した |
| ユーリ | そうこなくっちゃな。よし、オレ達も追おうぜ |
| | |
| ユーリ | あの子どもの話だと、おかしな男女の二人組が現れて、クレアをさらったって事だったが… |
| ユーリ | そいつらに心当たりは? |
| ヴェイグ | …いや、見当もつかない。さらわれる理由なんてあるはずもない |
| ユーリ | となると、手がかりはこの香水だか何だか知らないが、ひでえ匂いのハンカチだけか |
| ユーリ | いかにも見つけてくれって感じで落ちてたわけだが、だとすると連中の狙いは… |
| ヴェイグ | 誰であろうと許しはしない…!クレアは必ず救い出す |
| ヴェイグ | クレアは…オレにとって家族も同然なんだ |
| ヴェイグ | 子どもの頃に両親を亡くし、育ての親でもある祖父とも死別したオレは── |
| ヴェイグ | クレアの家に引き取られて、以来、実の子ども同様に育ててもらった |
| ヴェイグ | だから、失うわけにはいかないんだ。絶対に… |
| ユーリ | …なるほどな |
| ユーリ | …よし、ラピード。ペースを上げられるか? |
| ヴェイグ | …? |
| ユーリ | オレ達は勝手についてくから、お前は全力疾走で頼む |
| ラピード | ワウッ!! |
| ヴェイグ | …突然どうしたんだ |
| ユーリ | なに、お前の熱さにちっとばかしあてられた、ってとこだ |
| ユーリ | 急げる限り急ぐ。その代わり、遅れるんじゃねえぞ? |
| ヴェイグ | ユーリ… |
| ヴェイグ | …ああ、急ごう! |
| scene2 | 追跡 |
| アリス | 街の中と違って、草木がたくさんある森の中はだいぶ晶化現象が進んでるのね |
| アリス | キラキラしてとってもキ・レ・イ♪ |
| デクス | うんうん、宝石のようでキレイな…まるでオレのアリスちゃんみたいだ! |
| アリス | うるさい!バカデクス! |
| アリス | いくら宝石みたいにキレイでも、こんなのと一緒にされてアリスちゃんが嬉しいわけないでしょ |
| デクス | ご、ごめんよアリスちゃん! |
| アリス | そんな事より、ちゃんとクレアちゃんを見張ってなさいよ。大事な大事なエサなんだから |
| デクス | 大丈夫だよ、ちゃーんと手足を縛って動けなくしてあるからさ! |
| クレア | … |
| アリス | そ、ならいいけど。それよりクレアちゃんのお友達の方は大丈夫なの? |
| デクス | 心配無用だよ。とっておきの証拠を残してきたんだ |
| アリス | とっておき? |
| デクス | ああ!魅惑の香水「メロメロコウ」を染み込ませたハンカチさ |
| アリス | え~!?そんなので本当に上手くいくの? |
| デクス | 大丈夫!オレのかぐわしき香りにメロメロになったあいつらが、もうすぐここに── |
| | |
| ラピード | ガウッ! |
| アリス | あ…! |
| ヴェイグ | クレア! |
| クレア | ヴェイグ! |
| ユーリ | おかしな男女の2人組、ね。クレアをさらったのはこいつらか |
| アリス | あら?本当に来ちゃった♡ |
| デクス | はっはっはっ!な、アリスちゃん、言った通りになっただろ? |
| アリス | だから…デクスは臭いから近寄らないでって何回言ったらわかるのよ! |
| ユーリ | 何なんだ、こいつらは?赤の騎士団とも違うみたいだが |
| ヴェイグ | 覚えのない顏だ。それより──… |
| ヴェイグ | クレア! |
| アリス | ダ・メ! |
| アリス | ヴェイグちゃん、だっけ?勝手に動かないでね |
| アリス | アリスちゃん、こういう可愛い女の子の腕をへし折るの、だーい好きなの♪ |
| ヴェイグ | くっ…! |
| アリス | …それにしても、意外と来るのが早かったわね。アリスちゃんびっくりしちゃった |
| アリス | そんなにもクレアちゃんが大事?のこのこと、こんなところまで来るなんて、本当おバカさん♪ |
| ヴェイグ | クレアに手を出すな! |
| ユーリ | どこの誰だか知らねえが何が狙いだ?まさかオレらを誘き出すため、とか言わねえよな |
| アリス | ご名答♪ |
| ヴェイグ | …なら早く、その目的を言え |
| アリス | …ズバリ言うと、メルトキオ襲撃!ぐっちゃぐちゃにしてほしいの♪ |
| ユーリ | メルトキオを… |
| ヴェイグ | ぐちゃぐちゃに、だと…? |
| ラピード | クーン |
| アリス | クレアちゃんを返すか・わ・り♪あの子が無傷で助かるんだったら、ヴェイグちゃんも嬉しいでしょ? |
| ヴェイグ | …馬鹿な!そんな事出来るはずがない |
| デクス | アリスちゃんがやれって言ったらやるんだよ。この女がどうなってもいいのか! |
| ヴェイグ | くっ… |
| クレア | ヴェイグ、駄目!この人達の言う事を聞いちゃ… |
| デクス | おーっと!人質は口を挟まない方がいいぜ? |
| | ジャキ…! |
| クレア | …っ! |
| アリス | あんまりギャーギャーうるさいと…無傷でヴェイグちゃんのところに返してあげないわよ? |
| ヴェイグ | やめろ! |
| ラピード | グルルッ… |
| アリス | ほーら、どうするの?クレアちゃんの事返してほしい?それとも、このまま見捨てる? |
| アリス | …大人しく従うしかないと思うけど♪ |
| ヴェイグ | くっ…! |
| ユーリ | で?具体的に何をすりゃいいんだ? |
| ユーリ | 国王でも暗殺すりゃ満足か?それとも、ご希望でもあんのか? |
| クレア | …! |
| ヴェイグ | ユーリ…!お前正気か!? |
| ユーリ | しょうがねえだろ。やらなきゃ、クレアが無事に返ってこねえってんだから |
| ヴェイグ | クレアは勿論救いたい、だが、街を襲撃する事なんて── |
| ユーリ | …ま、取りあえず適当に合わせとけって |
| ヴェイグ | …? |
| アリス | ユーリくん、ね。案外話のわかる男じゃない。そういう人、アリス嫌いじゃないカモ |
| デクス | なっ…アリスちゃん!?ユーリ、てめぇ!アリスちゃんにはこのオレが…… |
| アリス | デクス、うざーい。ちょっと静かにしててくれるかな |
| デクス | ご、ごめんよ… |
| アリス | そうね~。今のユーリくんの案もすーっごくステキなんだけどー… |
| アリス | …とにかく、街も人もみーんなぐっちゃぐちゃにしてくれたらそれでいいかなぁ♪ |
| アリス | 憎しみの感情が生まれたら、後は勝手に争いを広げてくれる……人間ってそういうものだから♪ |
| ヴェイグ | 争いの拡大…それが本当の狙いか… |
| ユーリ | …なるほどな |
| アリス | ふふ、物分かりがいいのね?じゃあ、とっとと行きなさ── |
| デクス | …!アリスちゃん、危ない!! |
| アリス | …! |
| | バシッ! |
| ユーリ | ちっ… |
| アリス | ふう、あっぶな~い!ギリギリセーフ… |
| アリス | …アリスちゃんを騙したのね?そういう悪いコ達は許さないわよ。デクス!その子を── |
| ヴェイグ | させるか! |
| | ガキン! |
| デクス | くっ…! |
| クレア | ヴェイグ! |
| ヴェイグ | クレア、今行く! |
| デクス | 行かせねえぞ! |
| ラピード | ガウッ!! |
| デクス | うわっ…! |
| ヴェイグ | クレア…!今縄を切るからな…! |
| ヴェイグ | よし、立てるか!?行くぞ! |
| クレア | え、ええ…! |
| ユーリ | どうやら上手くいったみたいだな |
| ラピード | ワフッ |
| クレア | ラピードのお蔭よ。ありがとう |
| ユーリ | ヴェイグ、ナイスだったぜ |
| ヴェイグ | …いや、礼を言うのはこっちだ。奴らに隙が出来たのは、お前の策のお蔭だ |
| アリス | も~!デクスったら何やってるのよ、みすみす彼女を逃がすなんて…! |
| デクス | くっ、アリスちゃんの前でよくも…大恥かかせやがったな!絶対に、許さねえ! |
| ヴェイグ | それはこっちの台詞だ…!覚悟するんだな |
| | チャキ… |
| デクス | アリスちゃんは下がってて、ここはオレがやる |
| デクス | …お前ら、全員あの世行きだぁ! |
| ヴェイグ | …さっさと来い! |
| scene1 | 悲嘆の結晶 |
| デクス | はあ…はあ… |
| ヴェイグ | はあ…はあ… |
| アリス | あらあら、デクスと互角に渡り合うなんて… |
| デクス | ハッ、ただのでくの坊じゃなかったか |
| デクス | だが、まだまだだ!デクスさまの実力はこんなもんじゃ… |
| アリス | …そこまでよ |
| デクス | アリスちゃん!?何で…!? |
| アリス | もう十分楽しんだじゃない。ぐずぐずしてるとあの人に叱られちゃう |
| デクス | …アリスちゃんがそう言うならお前達、アリスちゃんに感謝しろよ! |
| ヴェイグ | 待て!逃げる気か? |
| アリス | …逃げる?バカ言わないで。ヴェイグちゃん達に、少しの猶予をあげるだけ♪ |
| ヴェイグ | … |
| アリス | あなた達とはまた会いそうな気がするわ |
| アリス | …その時は、今度こそこのアリスちゃんが天国に連れて行ってあ・げ・る♡ |
| アリス | さ、デクス。行くわよ |
| デクス | アリスちゃんとならどこへでも! |
| | |
| ユーリ | やれやれ、勝手に手を出してきて勝手に引き上げていきやがった。何だったんだ、あいつら |
| ヴェイグ | クレア、大丈夫か…? |
| クレア | ええ、平気よ。助けに来てくれてありがとう |
| クレア | ユーリさんに、ラピードまで…。巻きこんでしまってごめんなさい |
| ユーリ | 気にする事はねえさ。悪いのは全部あの馬鹿どもだ |
| クレア | そうだわ…私と一緒にいた子ども達、あの子達は無事なのかしら…? |
| ヴェイグ | ああ、心配ない。ついでに言うと、その子達がオレ達にクレアの事を知らせてくれたんだ |
| クレア | まあ、そうだったの…。無事で安心したわ |
| ユーリ | にしても、あいつら一体何者だ? |
| ユーリ | 無茶振りしてきた割にはヴェイグに敵わないとみるとあっさり身を引きやがった |
| ユーリ | それに、あの人がどうとかって誰か裏にいるような口ぶりだったが… |
| ヴェイグ | 自分達ではなくオレ達にメルトキオを襲撃させようとしたのも解せない |
| ヴェイグ | 争いの拡大とか言っていたが…どういう事だ |
| ユーリ | ただの人さらいとはちっとばかし違うみたいだし、しばらく用心した方がいいかもな |
| ヴェイグ | ああ |
| ユーリ | ま、何にせよだ。一旦メルトキオへ戻るとすっか |
| クレア | それがいいと思うわ。子ども達も早く安心させてあげたいし |
| ヴェイグ | …クレア、歩けるか |
| クレア | ええ、大丈夫よ |
| クレア | あ…! |
| クレア | ごめんなさい。少しだけ待っててもらえるかしら?髪飾りを落としたみたい |
| クレア | きっとそこの小屋の中だわ。最初あそこに連れて行かれたの。急いで取ってくるわね |
| ヴェイグ | … |
| ユーリ | 彼女、縛り上げられてた割には特に怪我もなかったみたいでよかったな |
| ヴェイグ | 街での騒動といい、助けられてばかりだな。お前達には本当に感謝している |
| ユーリ | よせよ、お互い様って奴だ。街ではオレも、助けてもらったようなもんだしな |
| ラピード | ウウウ…! |
| ヴェイグ | …ラピード、どうかしたのか? |
| | |
| ラピード | ウウウウウ…! |
| ユーリ | …気をつけろ。何か様子がおかしい |
| ヴェイグ | クレアは… |
| ユーリ | …そう言えば、ちっとばかし時間がかかりすぎだな |
| ヴェイグ | ちょっと様子を見て来る |
| | |
| ヴェイグ | …クレア、髪飾りは見つかったのか? |
| ヴェイグ | ……妙に静かだな |
| ヴェイグ | クレア、一体何をして── |
| ヴェイグ | …! |
| ヴェイグ | あ… |
| | |
| ヴェイグ | そんな……嘘だ… |
| ヴェイグ | クレ…クレ…ア…… |
| クレア | … |
| ヴェイグ | クレアーーーーーーーーーッ!! |
| scene2 | 悲嘆の結晶 |
| スレイ | ──街の人の話だと、多分こっちの方向で合ってると思うんだけど… |
| ミクリオ | やはり赤の騎士団は動いていたね |
| ミクリオ | 早々に街中で騒ぎを起こすなんて、一体何を考えているのか… |
| ライラ | はい。エステルさんが懸念していた通りになってしまっています |
| スレイ | 結局オレ達は入れ違いになっちゃったけど… |
| ルドガー | 話を聞く限りでは、大事に至る前に収束したみたいだ |
| ミクリオ | 事を鎮めたのは、男女二人組と後から加わった黒髪で長髪の男。それと犬一匹、か── |
| ルドガー | おそらく、聞いた外見からするとその黒髪の男というのがユーリの事だと思う |
| ミクリオ | 真っ向から騎士団と対峙するなんてその人間も随分命知らずみたいだね |
| ライラ | …そういえば、一番初めに騎士団を止めようと飛び出したのは一人の女性だったとか |
| ミクリオ | 怪我人が出てなくて本当によかったよ |
| ミクリオ | でも、その後に慌てて街を出て行ったっていうのは… |
| ルドガー | 何事もない事を祈るが… |
| ルドガー | とにかく、ユーリに追いつこう |
| ライラ | …? |
| ライラ | みなさん、待ってください。何か音が聞こえませんか? |
| ミクリオ | …本当だ。この鈍い音は一体… |
| ルドガー | あの小屋からか? |
| スレイ | 何かあったのかもしれない…行ってみよう! |
| ルドガー | ああ…! |
| scene1 | 決意の時 |
| ヴェイグ | クレアーーーーーーーーーッ!! |
| ユーリ | !?ヴェイグ!? |
| ラピード | ウウ…! |
| ユーリ | ちっ…! |
| | |
| ユーリ | ヴェイグ、どうした、一体何が──… |
| ユーリ | …!こ、これは… |
| ラピード | ウウウ… |
| | |
| クレア | … |
| ヴェイグ | … |
| ユーリ | マジかよ…。たったあれだけの間に晶化しちまったってのか…? |
| ヴェイグ | クレア… |
| ヴェイグ | …くっ! |
| ユーリ | 待てよ、ヴェイグ。何をする気だ! |
| ヴェイグ | 決まっている、クレアをここから出すんだ!今助けてやる…! |
| | ガツッ! |
| | ガツッ! |
| ユーリ | やめろ、ヴェイグ!中のクレアまで傷付くかもしれねえだろ! |
| ヴェイグ | だが…! |
| ヴェイグ | くっ…!欠ける事すらしない…! |
| ラピード | クーン… |
| ヴェイグ | …クレアがこうなってしまったのは、あいつらのせいか…? |
| ユーリ | アリスとデクスの事か?気持ちはわかるが、それはないと思うぜ |
| ユーリ | もし奴らに人間を晶化する力があるなら、オレ達も無事じゃ済まなかったはずだ |
| ヴェイグ | … |
| ラピード | …! |
| ラピード | グルル…! |
| ユーリ | ラピード… |
| ユーリ | …ん?誰か来る…!まさか奴らか…? |
| | |
| スレイ | 今、声が聞こえた |
| ミクリオ | 誰がいるかわからない。用心した方がいい |
| ルドガー | とにかく、中を調べてみよう── |
| | |
| ユーリ | …誰だ! |
| ヴェイグ | … |
| スレイ | あなたは… |
| ルドガー | ユーリ…!君だったのか |
| ユーリ | お前…ルドガー?どうしてこんなとこに |
| ルドガー | 君を捜してたんだ。事情はあらかた聞いている、会えてよかっ── |
| | |
| ライラ | …! |
| ライラ | み、みなさん…あれは… |
| スレイ | …!そんな… |
| | |
| クレア | … |
| ルドガー | 晶化、現象… |
| ヴェイグ | … |
| scene2 | 決意の時 |
| ユーリ | なるほどな。エステルから聞いてメルトキオに来たのか |
| ルドガー | ああ。結局、俺達が街に着いた頃には赤の騎士団が出て行った後だった |
| ルドガー | 街の人達に話を聞いたら、すぐに君達の事を教えてくれてその情報を元にこの森に来たんだが… |
| ルドガー | …まさか、こんな事になっていたとはな |
| ヴェイグ | … |
| ルドガー | …と、すまない、紹介が遅れた。スレイにミクリオ、それにライラだ |
| スレイ | よろしくお願いします |
| ライラ | よろしくお願いいたしますわ |
| ミクリオ | … |
| ラピード | ワウッ! |
| ミクリオ | …よ、よろしく |
| ヴェイグ | … |
| ライラ | 大変な事になりましたね…。コレットさん達は無事との事でそちらはよかったのですが… |
| スレイ | 人が晶化してしまうなんて… |
| ミクリオ | 以前見た、晶化した鳥と同じ…。まるでこの中だけ、時間の流れが止まっているみたいだ… |
| ヴェイグ | … |
| ルドガー | リチャード陛下が晶化したと聞いた時から、いつかこんな事になるのではないかと心配していた |
| ルドガー | シルヴァラントでも人の晶化…恐れていた事が遂に起きてしまった… |
| ヴェイグ | くっ…!この結晶さえ砕ければ…! |
| ルドガー | ヴェイグ…!やめるんだ! |
| ヴェイグ | 止めるな、クレアが…!クレアが…! |
| スレイ | …オレ達も、晶化した鳥を助け出そうとしたけど、無理でした。ヒビすら入らなくて… |
| ミクリオ | 叩いて破壊出来るなら、ウィンドルの国王だって、救い出されているはずだ |
| ヴェイグ | だが、早く救い出さなければ命が…! |
| ライラ | 結晶の中の生命は生きているそうです。晶化現象に見舞われたとしても |
| ミクリオ | 知り合いの言葉の受け売りだが、信憑性はあると思う |
| ヴェイグ | …クレアは大丈夫、という事か…? |
| ルドガー | ひとまずは…。しかし、このままこの状態が長く続けば安心は出来ない… |
| ヴェイグ | … |
| ユーリ | という事らしい。だから今は早まるな、ヴェイグ |
| ヴェイグ | そうか…それを聞けただけで少しは… |
| ユーリ | ちょっと外に出ないか?外の空気を吸って落ち着いた方がいい |
| ヴェイグ | … |
| | |
| スレイ | クレアさんを誘拐したっていう二人組はいったい…? |
| ユーリ | 正体はわからずじまいの無茶苦茶な連中だが、只者じゃなさそうだったな |
| ユーリ | おまけに、口振りから察するに誰かの指示で動いているようだった |
| ヴェイグ | … |
| ルドガー | 晶化現象に、赤の騎士団に、新しい天啓… |
| ルドガー | それに加え、何か企みのある二人組…また世界に何か…大きな事が起ころうとしているのか? |
| スレイ | 世界に起きようとする、大きな事… |
| ライラ | スレイさん… |
| ユーリ | やれやれ、次から次へと、どうなってんだろうな、この世界は |
| ラピード | ワンッ |
| ヴェイグ | 世界が大変なのはわかっている。だが…オレは、クレアを救いたい |
| ヴェイグ | そのためなら、何だってする |
| スレイ | … |
| ヴェイグ | 晶化を元に戻す方法を絶対に突き止めてみせると、クレアに誓う |
| スレイ | ヴェイグさん、よかったらオレ達と一緒に行きませんか? |
| スレイ | オレも、晶化した人達を助けたいんです |
| ミクリオ | 僕も同意見だ。何事も、仲間が多いに越した事はない |
| スレイ | ミクリオ… |
| ルドガー | 俺達は協力し合えるはずだヴェイグ、一緒に行こう |
| ヴェイグ | … |
| ヴェイグ | …わかった。そうさせてもらおう |
| ヴェイグ | クレアは必ず救い出す…何としてでも |