Name | Dialogue |
scene1 | 不運な幕開け |
ルカ | うう…。本当に大丈夫なのかなあ…僕達 |
ロイド | さっきから何ぶつぶつ言ってるんだ?ルカ |
ルカ | な、何でもないよ。この状況に慣れなくて、ちょっとね… |
ロイド | 確かに、変な森だもんなあ。木はいちいちでけーし、たまに変な鳴き声も聞こえてくるし |
ルカ | そうなんだよ…こういう経験って初めてで、どうしても、怖── |
ロイド | ああ、どうしてもこう…ワクワクしてくるよな!冒険の予感がするっていうかさ! |
ルカ | え?いや…。そういうわけじゃ、ないんだけど… |
ロイド | へ?違うのか? |
ルカ | …ううん。いいんだ…気にしないで |
ロイド | そうか…?あ、そういや、薪は集まったか? |
ルカ | あ…うん、どうにか。このくらいでいいかな…? |
ルカ | ロイドに言われた通り、なるべく乾いてるのだけ拾ってきたけど… |
ロイド | どれどれ…。おっ、いいやつ拾ってきたな!これならよく燃えるぜ! |
ロイド | 俺が拾った分も合わせれば、薪は切らさずに済みそうだ |
ルカ | 煙で誰かが気付いてくれればいいね |
ロイド | 駄目だったら野宿だな。さてと、この先は… |
| |
パスカル | ん~…これでも駄目か…。絶対まだ仕掛けがあるはずなんだけどな~ |
パスカル | …あ、お帰り~、二人共! |
ロイド | おう、ただいま。やっぱり、ここに戻って来れたな。って言うより… |
ルカ | 戻って来ちゃった、だね… |
ルカ | これで何度目だろう…。やっぱり、ここからは抜け出せないのかな… |
ロイド | 悪い方にばかり考えるなよ。こうして拠点だって出来たんだ、焦らず行こうぜ |
ルカ | そっか…それもそうだね。…何かわかった事はあった?パスカル |
パスカル | そりゃもう! |
ルカ | えっ!?そ、それって、森を抜ける方法とか!? |
パスカル | うん、ばっちり! |
パスカル | まだ何もわからないって事がわかったよ! |
ルカ | な、何さそれ~… |
ロイド | パスカルって変な奴だよなー。いろんな奴に会ってきたけど、その中でもとびきりだぜ |
パスカル | やだな~。そんな褒めても何も出ないよ? |
ルカ | 褒めてるのかな…? |
パスカル | まあ見ててよ、あたしがこの装置を解明したら、きっと上手くいくって! |
パスカル | いい?ここをガチャガチャポンってすると、…ほら、この通り! |
パスカル | …… |
ルカ | …何も起きないよ? |
パスカル | む~、こうじゃなかったか。やっぱり手強いなあ、こいつ |
ロイド | そういうの、よくわかんねえけどさ。うんともすんとも言わないんじゃ、ただのガラクタなんじゃないか? |
パスカル | いーや!絶対何かある! |
ルカ | どうしてそう思うの? |
パスカル | あたしの勘がそう告げているからね! |
パスカル | この森のビリビリってやつが、この装置にも関係してるはずだって |
ロイド | ビリビリ?何だよそれ |
ルカ | そう言えば森に入る時、そんな事言ってたよね。「ピリピリ、ビョエー!」みたいな |
パスカル | 全然ちっがーう!ビリビリ、ビャー!だよ |
パスカル | 塔の扉から森に続く何かとしか言えないんだけど…。そういうのを感じたんだよね |
ロイド | ふーん。詳しい事はともかく、何となく気持ちはわかるぜ |
ロイド | この森、いかにも不気味な感じで何かありそうだしな! |
ルカ | うん…。で、でもさ── |
パスカル | でしょでしょ!やっぱわかるよね!?面白そうだよねー! |
ルカ | あ、あの…うう… |
ロイド | 長居するわけにはいかないけど、それとは別に──っと、悪いルカ。何か言いかけなかったか? |
ルカ | い、いいんだ。何でもないから、気にしないで |
パスカル | そう言われると余計気になるよー。言ってみなって |
ルカ | その…。このまま森を抜けられなかったら、どうなっちゃうのかなって思ったんだ |
ルカ | ご、ごめん…変な事言って |
ロイド | 何で謝るんだ?言いたい事があるなら、言っちまえばいいんだよ |
ルカ | うん、わかってはいるんだけど…。余計な事言って、迷惑かけちゃいけないと思って… |
パスカル | 引っ込み思案ってやつ?駄目だよルカ!何事も楽しく!好きにやってみなきゃ! |
ロイド | そうそう!…って、お前はそれでルカを巻き込んだんだろ、パスカル |
パスカル | あはは、ごめーん |
ルカ | う、ううん。それはいいんだけど… |
ロイド | …まあ、ルカの心配ももっともだな。いつまでもこんなところにいるわけにはいかねえし |
ロイド | あっ、調査隊ってのがいるんだろ?いざとなれば、そいつらが助けに来てくれるって |
ルカ | 実は…それもそれでちょっと不安があって… |
ロイド | 調査隊が来るのがか?どうしてだよ? |
ルカ | うっ…。じ、実は僕、調査隊員なんだ… |
ロイド | ルカが!?へえー、それでそんな格好してんだな |
ルカ | うん…。…本当は、本部に寄って配属先とか教えてもらうはずだったんだけど… |
ロイド | その前に塔を見物してたら、パスカルに会ったわけか |
ルカ | 配属される前から森で遭難なんて前代未聞だよ… |
ルカ | 調査隊が助けに来てくれたとしても、きっと怒られる…。うう~… |
パスカル | しょげててもしょうがないって!大志を抱け、少年! |
ロイド | そうだぜ。こうなっちまったもんは仕方がないさ |
パスカル | うんうん!…ところでさ、調査隊って何?その辺よくわかってないんだけど |
ロイド | 知らないでこの島に来たのか?てっきり、パスカルも研究者か何かだと思ってたぜ |
ルカ | …僕も。ええっと、調査隊って言うのはね… |
ルカ | 四大国が合同で結成した組織だよ。いろんな専門家を国中から募って、この島を隅々まで調査するんだ |
ルカ | 結構、大々的に布告が出てたはずなんだけど…知らない? |
パスカル | ん~、港でそんな事聞いたような…聞いてなかったような? |
ロイド | みんなお祭り騒ぎだったぜ。とりあえずアヴァロン島へ!って奴が港にたくさんいたし |
ロイド | 塔の封印を解けば結構な報酬が出るらしいけど、あまり進展してないみたいだな |
パスカル | へえ…いーじゃんいーじゃん!研究しがいのあるものがまだたくさんあるって事でしょ!? |
ルカ | 二人も、サフィアを調べるために島に来たの? |
パスカル | あたしはそうだね。面白そうなものが見つかったって噂を聞いて来たんだよ |
ロイド | 俺は、幼なじみが式典に招待されたからな。護衛のために島に来たんだ |
ロイド | 土産話を持ってくつもりで塔を見に行ってたんだけど、まさかこうなるとはなあ |
ルカ | あ、えっと…。ごめんね、巻き込んじゃって… |
ロイド | ははは、気遣わなくていいって。別にルカのせいじゃないんだからよ |
パスカル | そうそう!気にしすぎると胃に穴開いちゃうよ! |
ロイド | お前はもうちょっと気にした方が…まあいいか |
ロイド | とにかく、俺達は三人仲よく遭難中ってわけだ |
ロイド | 改めて、よろしくな。一人じゃなかったのは運がよかった。力を合わせて森を抜けようぜ! |
パスカル | あいあいさー! |
ルカ | うん…よろしく! |
ルカ | …でも、野宿となると大変だよね。火も食べ物もあるけど… |
ルカ | お風呂とかも入れないだろうし。僕らはともかく、パスカルは… |
パスカル | ん?あたしがどうかした? |
ルカ | その…女性だからさ。お風呂とか入れないの、嫌じゃない? |
パスカル | いや?あたしは平気だけど。あんなの何日か入らなくったってへーきへーき |
ルカ | ええっ!? |
パスカル | 世の中は広いんだよ~。どんな人がいたって不思議じゃないっしょ! |
ロイド | へえ~。世の中いろんな奴がいるんだな |
パスカル | あははは!それよりさ、もう一回森の探索に行かない? |
パスカル | あたし、ずっと装置をいじってたから気分転換もしたいんだよね |
ロイド | …そうだな。まだ探してない場所もあるだろうし |
ロイド | 早いとこ、森を抜ける方法を見つけないとな!ルカもいいだろ? |
ルカ | う、うん!手がかり、見つかるといいけど… |
scene2 | 不運な幕開け |
ルカ | はあ、はあ…。二人共、待ってよ… |
ロイド | っと、悪い。でも、お前結構根性あるな |
ロイド | 泣き言言いながらも、何だかんだついて来れてるし。案外、こういう探検に慣れてるのか? |
ルカ | まさか!ただ、友達によく引っ張り出されるんだ |
ルカ | 「お勉強ばっかじゃ退屈だろ」って… |
ロイド | おっ、そいつは俺と気が合いそうだな! |
パスカル | ルカって、やっぱ断れないタイプだよね~ |
ルカ | うう… |
ロイド | だから、森に引っ張り込んだお前が言うなって… |
ルカ | ロイドは慣れてるんだよね?使える薪の見分け方とか、教えてくれたし |
ロイド | ま、故郷じゃ狩りもやってたからな!こうしてると思い出すぜ、あの巨大イボイノシシを…! |
ルカ | きょ、巨大イボイノシシ…!? |
ロイド | おう!そりゃあもうでけー奴でさ、日が暮れても決着がつかなかったぜ! |
ルカ | へえ…!何かすごいね。そんなの、想像出来ないや |
ロイド | ルカは狩りとかしなかったのか? |
ルカ | 僕の家は商家だったから…。そういう経験、ほとんどないんだ。…ちょっと羨ましいかも |
パスカル | で、どうなったの?その巨大イボイノシシ |
ロイド | ん?ああ、狩るのに二日かかったぜ。何しろ歩くだけで地響きが── |
| ズン…!ズン…! |
ロイド | これこれ!あいつときたら、まさにこんな感じの足音だったんだ!ズン、ズンって…! |
パスカル | ルカ、もしかして太った? |
ルカ | 太ってないよ!これ、本当に足音だよ…それも、相当大きな生き物の…! |
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| ブオオオオオ!! |
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ルカ | うわあっ!!出たあああ!! |
ロイド | うわ、でけー!あの時の奴と同じくらいあるぜ! |
パスカル | 食べても美味しくなさそ~ |
ルカ | そんな事言ってる場合じゃないよ! |
| ブオオオオオ!! |
ロイド | おっ、あいつやる気だぜ!よーし、俺達も負けてらんねえな! |
ルカ | の、乗り気だ…!こ、こうなったら、やるしかない…! |
scene3 | 不運な幕開け |
ルカ | はあっ…!はあっ…!な、何とか…倒せそうだね |
ロイド | ああ、動きが鈍ってきた!とどめは俺が行くぜ! |
パスカル | いっただき!ばっしゃ~ん!…って、あれ、ロイド!? |
ロイド | おりゃああ! |
ルカ | ま、待ってロイド!!パスカルの術が!巻き込まれちゃうよ! |
ロイド | へ? |
| バシュウッ! |
ロイド | うおおおっ!?何かかすった!! |
| |
| ブオオオオオッ!? |
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ロイド | あ、危ねー…。何とか避けられた… |
パスカル | ご、ごめんごめーん!ロイドの動き、ちゃんと見てなくって…! |
ロイド | いや、先走った俺も悪かったしな!次はお互い気を付けようぜ! |
パスカル | りょーかい!魔物はばっちり吹っ飛ばしたから! |
ルカ | ほんとだ。向こうでピクピクしてる… |
ロイド | よーし、そんじゃ今度こそ俺が… |
| ガサガサ… |
ルカ | あれ?魔物の後ろで何か… |
| ガサガサ… |
| …ドゴッ!! |
| …ブ、ブオオッ!? |
ルカ | ま、魔物が飛んで来た!?パスカル!危ない! |
パスカル | へ? |
| |
パスカル | …ぷぎゅ! |
ロイド | パ、パスカルー!! |
ルカ | 大変…!パスカルが魔物の下敷きにされちゃった…! |
ロイド | 今のは… |
??? | ああ、吹っ飛ばしたんだ |
ロイド | …!何だ、お前…!? |
アイゼン | ただの通りすがりだ |
ロイド | …今の、お前がやったのか? |
アイゼン | そう言ったつもりだが。でかい図体が邪魔だったんでな。少しどいてもらった |
アイゼン | …お前らもそこをどけ。うるさいのが来る前にな |
ロイド | うるさいの…? |
ルカ | ロ、ロイド!この魔物、一人じゃ持ち上げられないよ!手伝って──って、あれ? |
アイゼン | む…お前は |
ルカ | あ、あなたは確か、式典会場で会った… |
パスカル | ぷぎゅー!むぐー! |
??? | …いた!ようやく追いついたぞ! |
アイゼン | …ちっ |
アリーシャ | いい加減逃げるのはやめろ!大人しく話を聞かせてくれれば、こちらとしても…! |
ロイド | あ、あれ?アリーシャ?こんなところで何やってんだ? |
アリーシャ | ロイド?どうして、君がここに… |
ルカ | な、何か…どんどんややこしくなってきたような… |
パスカル | むぎゅーーーっ!! |
scene1 | 旅は道連れ |
ルカ | よい…しょっ!ぜえっ、ぜえっ…! |
パスカル | ぶはーっ!!危なかった!魔物の下敷きなんて、もう二度とごめんだよ! |
パスカル | ありがと、ルカ!──って、あら。何かややこしそうな空気だね? |
ルカ | う…うん。僕にも、何が何だか…? |
アイゼン | …お前らをどうこうしようって気はない。先に行かせてもらうぞ |
アリーシャ | いいや、待ってもらう。ロイド、すまないがその男を止めてくれ |
ロイド | そう言われてもな…。一体何したんだ、あんた |
アイゼン | 何も。その女が勝手に絡んでくるだけだ |
アリーシャ | 私は警備役としての役目を全うしているだけだ |
アリーシャ | この森は一般人の立ち入りを禁じられている。その警告を無視しただろう |
アイゼン | 悪いが、名も知らん奴の命令を受けるのは性に合わなくてな |
アリーシャ | …! |
ロイド | …お、おいおい待てって!そんなバチバチしなくても… |
アリーシャ | そうはいかない。この島の情報が公開されて以来、サフィアを狙う者は後を絶たないんだ |
アリーシャ | 近海で海賊の目撃情報もあった。この男の素性がはっきりしない限り、目を離す事は出来ない |
アリーシャ | 私はシルヴァラントの騎士、アリーシャ・ディフダ!島の警備を担当している! |
アリーシャ | …今度はそちらに答えてもらうぞ。お前は何者だ? |
アイゼン | 全く…。見えるってのも一長一短だな |
アイゼン | …まあ、いいだろう。アイフリード海賊団副長、アイゼン。それが俺の名だ |
ルカ | か…海賊!?初めて見た…! |
アリーシャ | …やはり海賊か。随分素直に答えるのだな |
アイゼン | 追いかけっこも飽きたんでな。第一、わかったところでどうしようもないだろう |
アイゼン | さっきも言った通り、お前らと事を構える気はない。だが、そっちがやる気なら… |
アリーシャ | …! |
ルカ | あわわわわ…!あの人達、早く止めないとまずいよ…! |
パスカル | そう?んじゃ、ルカが止めてきなよ!ほーら、行ってらっしゃーい! |
ルカ | え!?ちょ、押さないでよ、パスカ──うわっ…とっと…! |
アイゼン | …! |
アリーシャ | …君は? |
ルカ | へ!?あ…。ルカ・ミルダです…どうも |
ロイド | あー、ちょっとした成り行きでさ。俺達一緒に行動してんだ。そんで、あっちが… |
パスカル | パスカルだよ~。何かね、ルカが言いたい事あるんだってさ |
ルカ | も、もう…パスカルってば!!え、えっと… |
ルカ | 向こうで聞いてて、その…事情はわかったんですけど… |
ルカ | やっぱり、喧嘩はよくないと思うし…。もっと穏便に済ませた方が… |
アリーシャ | …私としても争いは本意ではないが、この男を放っておくわけにはいかない |
ルカ | で、でも…!今はもっと大きな問題だってあるし… |
アリーシャ | …大きな問題?一体、何の事だ? |
ルカ | その…。この森、出られないんです |
アイゼン | …何だと? |
ルカ | ひっ!う、嘘じゃありません! |
ロイド | 本当だぜ。どの道を行っても、同じ場所に戻って来ちまうんだ |
ロイド | 俺達もいろいろあってここに来たんだけど…。全然抜け出せる気がしねえんだ |
パスカル | そういうわけだからさ、喧嘩してる場合でもないんだよ |
アリーシャ | 迷いの森…という事か?そう言われてみると、確かに何度か違和感があった… |
アイゼン | …振り切れなかったのはそういうわけか。いや… |
アイゼン | …… |
アリーシャ | …… |
ルカ | 二人共、考えこんじゃってるけど… |
ロイド | …提案なんだけどさ、ここは休戦して一緒に森を抜けないか? |
アイゼン | …何? |
パスカル | おー、いいんじゃない?旅は道連れって言うしね! |
アリーシャ | いや、それは…! |
ルカ | ロ、ロイド…!この人、海賊だって…! |
ロイド | でも、人手は多い方がいいだろ?一人で動くのは危険だし、一緒に森を抜ける方法を探そうぜ |
アイゼン | …断る。つるむつもりはない |
ロイド | でもよ、さっきも言った通りこの森は── |
アイゼン | この森については自分の目で確かめる。…ああ、あとお前 |
アリーシャ | 何だ…! |
アイゼン | そういきり立つな。お互い、殺し合いが好きって柄でもなさそうだ |
アイゼン | どうせ振り切れないなら、監視でも何でも好きにしろ。…が、捕縛となれば話は別だ |
アイゼン | 俺は誰にも従うつもりはない。先に行かせてもらうが、ついてきたけりゃ勝手にするんだな |
アリーシャ | あっ、待て…くっ! |
ルカ | …行っちゃった。あの、追わなくていいんですか? |
アリーシャ | そうしたいところだが…。君達も、遭難してこの森に閉じ込められているのだろう? |
アリーシャ | 島の警備としても、騎士としても、君達の事を放ってはおけない |
ロイド | 心配しなくてもいいぜ。行って来いよ、アリーシャ |
アリーシャ | しかし… |
パスカル | どうせ同じところに戻って来るだろうしね~。あたし達はそこで待ってるよ |
アリーシャ | …わかった。では、気を付けてくれ。必ず戻る |
ルカ | あの二人、一緒にいて大丈夫なのかな…。結構、ピリピリしてたけど |
ロイド | 海賊って聞いたら、アリーシャも放ってはおけないだろ。それより戻ろうぜ、ルカ |
パスカル | 適当に走り回ってくれば、あたし達の言う事を信じるようになるって |
ルカ | う、うん…。海賊か…本当にいたんだ… |
| |
アイゼン | …なるほどな |
ルカ | あっ、アイゼンさん… |
アイゼン | …ふん。本当だったようだな |
ルカ | ど、どうも…。ロイド、パスカル!二人が来たよ! |
パスカル | おっ!お帰りなさーい! |
アリーシャ | はあっ…はあっ…。ほ、本当に戻って来ている…! |
ロイド | 俺達も何度か試したけど、結局ここに戻って来ちまうんだ |
アイゼン | 方向は確認しながら進んだはず…。…なるほどな、確かにお前らの言う通りだ |
アイゼン | どういうからくりか知らんが、厄介な森だな |
ロイド | だろー?あんた、海賊って言ってたけど… |
ロイド | 何か狙ってるにしても、まずはここから出ないとどうしようもないぜ? |
アリーシャ | …ロイド、本当に海賊と手を組むつもりか? |
ロイド | アリーシャだって一緒にいた方が都合がいいんだろ? |
アリーシャ | それは…そうだが |
ロイド | ならいいじゃないか。人は多い方が楽しいしな! |
アイゼン | 待て。まだ手を組むとは言ってない |
パスカル | あれ、結構頑固者だね。今ならあたしもついてくるよ?役に立つよ~? |
アイゼン | 俺には俺の目的がある。足を引っ張られるのはごめんだ。何より… |
ルカ | む、無視されちゃったけど… |
パスカル | うーん、見た目通り冗談通じない人なのかな? |
| |
| ブオオオオオ! |
| |
ルカ | な、何!? |
アイゼン | ちっ…やはり来たか |
アリーシャ | まさか、また魔物?森に入ってから、もう五回目…どうなってるんだ! |
アイゼン | …さあな。口より手を動かす事だ |
ルカ | 五回目って…う、うわあ!こっち来た! |
scene2 | 旅は道連れ |
ルカ | 魔神剣! |
| |
| ブオオオオオ… |
| |
ルカ | よ、よかった。やっと倒せた… |
ロイド | よーし、やったぜ!それにしても…アイゼンだっけ? |
ロイド | 強いな、あんた!海賊って言ってたけど、みんなそうなのか? |
アリーシャ | …確かに、拳一つで戦っているとは思えない強さだった |
アイゼン | 海賊と武器を持たない事は関係ない。お前らも…俺の足を引っ張る心配はなさそうだな |
アイゼン | …わかった。お前らの提案を飲もう |
ロイド | おっ、本当か!? |
アイゼン | だが、その前に一つ覚えておけ。俺は…死神の呪いにかかっている |
ルカ | シニガミ…死神!? |
アリーシャ | …どういう意味だ? |
アイゼン | 冗談の類じゃない。俺の周りには常に災いが渦巻いてる。誰に、どんな形で降りかかるか… |
アイゼン | それは俺にもわからん。…例えば、むやみに凶暴な魔物を引き寄せてしまう、とかな |
ルカ | じゃあ、さっきの魔物も…?その、死神の呪いのせいで… |
アイゼン | …おそらくな |
アイゼン | 控えめに言って危険そのもの。…それでもいいなら、協力しよう。お前らが決めろ |
ルカ | ぼ、僕達が…?…ええっと |
ルカ | …どうしよう…。危険なんだよね |
パスカル | ん~…よくわかんないけど、あたしは別に構わないよ。にぎやかな方が好きだし |
ロイド | 俺も言い出しっぺだしな、今更やめようなんて言わないって。ルカは嫌なのか? |
ルカ | そ、そう言うわけじゃないよ。みんながそう言うなら、僕も… |
アイゼン | そうか。…で、お前は? |
アリーシャ | …私の役目は民を守る事だ。お前から目を離す気はないし、彼らを放っておくのも本意ではない |
アリーシャ | 海賊と一緒に行動する事になるとは思っていなかったが…。ここは協力するのが最善のようだ |
ルカ | じゃあ、アリーシャさんも…! |
アリーシャ | 同行させてもらうよ。安心してくれ。騎士として、どんな危険からも守ってみせる |
アイゼン | 協力するのは、森を抜けるまでだ。…行くぞ |
ルカ | 行くって…どこに? |
アイゼン | まだ調べてない場所に、だ。同じところに戻って来るだけで、ある程度の探索は出来るんだろう? |
ロイド | おっしゃ、そんじゃ── |
| |
パスカル | あーーーーっ!! |
| |
ルカ | ひいっ!な、何なの、パスカル!? |
パスカル | 見てよこれ…。あたしの…あたしの装置が~…!! |
アリーシャ | その、手に持っているものか?…割れてしまったようだが |
ルカ | あ…ほんとだ。魔物の下敷きになった時、壊れちゃったのかな? |
パスカル | そ、そんな~!あと少しで完璧に解明して…む?むむむ…? |
ロイド | まあ…元気出せって!いくら見てたって、壊れたもんはしょうがねーだろ? |
パスカル | この断面…ふんふん、なるほどね~ |
ルカ | パスカル…?割れた装置をマジマジ見てどうしたの? |
パスカル | ほら、ここの断面を見て!割れたにしては、綺麗すぎるでしょ? |
アリーシャ | …確かに、傷一つないな。どちらかと言うと、これは… |
パスカル | うん、開いたんだ!装置が古すぎて、接合部分がくっついちゃってたんだよ |
パスカル | しかも、ここ見て!何かをはめるような窪みがあるよね?きっと、専用のパーツがあるんだよ! |
ルカ | じゃあ…この装置って元々開けて使うものだったの? |
パスカル | そういう事!どうりでいくらいじっても、何の反応もなかったわけだよ~ |
アイゼン | …おい、そいつはこの島で見つけたものか? |
パスカル | ん?そうだよ~。多分、古代アンマルチアの技術だね |
ロイド | 前も言ってたけど、何だよ、その古代アンマ何とかって |
パスカル | あたしのご先祖様にあたる超技術をもっていた一族だよ。大昔に栄えてたんだ |
アイゼン | 古代アンマルチア…。確かに、以前目にしたものとよく似ているな |
パスカル | あれ、こういう機械とか得意なの? |
アイゼン | 機械と言うより遺物にな。職業柄、知識は必要だ。…にしても |
アイゼン | そういうもんがあるなら早く言え。重要な手がかりになる。くれぐれも雑に扱うなよ |
パスカル | わーかってるって。それじゃ、装置のパーツも含めて…探索再開だね! |
アリーシャ | 妙な形になってしまったが…行くしかないか。よろしく頼むよ、みんな |
ルカ | はい。よ、よろしくお願いします…! |
scene1 | 古の記録 |
ルカ | ──ええっ!?じゃあ、アリーシャさんってお姫様なんですか!? |
ロイド | ああ、シルヴァラントじゃ有名だな |
ルカ | す、すみません!僕、そうとは知らず… |
アリーシャ | そうかしこまらないでくれ。王族と言っても末席も末席だ。私はただの騎士にすぎないよ |
アイゼン | わざわざ騎士にならなくとも、末席とは言え王族ならば不自由なく暮らせるだろう |
アリーシャ | …私は国のために働くべき立場だ。だが、政治の世界で私に出来る事は少ない |
アリーシャ | ならば騎士として、犯罪や災害から民を助ける。それが国への貢献にもなると考えた |
アイゼン | …酔狂な女だな |
パスカル | アリーシャが王族の人っていうのは納得だね。すごく高貴な感じがするし |
パスカル | あたしはどっちかって言うと、ルカの方が意外だったなー |
アリーシャ | どういう事だ? |
ロイド | ルカは調査隊員なんだってさ。今日、この島に来たばっからしいけど |
アリーシャ | …そうだったのか?私はてっきり── |
アリーシャ | あ、いや…何でもない |
ルカ | …いいですよ。とても調査隊員には見えない…ですよね? |
アリーシャ | 初めて君を見た時は、その…迷い込んだ要救助者かと。…失礼した |
ルカ | いいですよ…。ほとんど事実ですし…あはは… |
パスカル | う~ん、笑顔の中にも悲しさがにじんでるね~ |
アリーシャ | …おほん!だが、思い出したよ。ミルダという名前には聞き覚えがある |
アリーシャ | 本部で話題になっていた。最近、優秀な成績で調査隊入りした少年が島にやって来るとね |
ロイド | へえー!ルカ、お前頭いいんだな |
ルカ | そ、そうかな?そんな事ないと思うけど… |
アリーシャ | 筆記も実技も、他の実力者に引けを取らないと聞いたよ |
ロイド | ああ、確かに!そのでかい剣で魔物と渡り合ってたもんな!いっそ大剣二刀流とかどうだ、ルカ? |
ルカ | む、無理だよそんなの! |
パスカル | 魔物との接近戦は任せた!あたしはばっちり援護するから |
アイゼン | お前の武器は、銃なのか杖なのかよくわからんな |
ロイド | そういえば、アイゼンは武器を持ってないのか?素手で魔物をぶっ飛ばしてたよな |
アイゼン | いざという時に得物が壊れては話にならん。信用出来るのは、この拳だけだ |
ルカ | す、すごい…! |
アイゼン | …それより、目下の問題を考えろ。また同じ場所に戻って来たぞ |
パスカル | うーん…。太陽の位置を元に動いてみたけど、今度も駄目か~ |
ルカ | ど、どうすればいいんだろう |
アイゼン | …同じ道ばかり進んできた、というわけではないはずだ |
アリーシャ | 確かに、何度か見覚えのない場所も通ったな |
アイゼン | ある程度、森の探索は出来そうだ。まだ通っていない場所があるなら、そこに出口があるかもな |
ロイド | …ん?パスカル、まだその装置をいじってるのかよ |
パスカル | どうしても気になるんだよね~。…やっぱ、残りのパーツが必要みたいだけど |
アリーシャ | 装置に関しては、そのパーツを見つけてからだな。今はやれる事をやろう |
アリーシャ | ひとまず、今度通りすぎた木には目印を付けて行こう。一度通った場所かどうか判断できる |
パスカル | そだねー。他に出来そうな事は…ルカ、何かないかなー? |
ルカ | え?えーっと…。太陽を目印に…はもうやったし、いっそ逆走するとか… |
ルカ | …これも駄目そう。あんまりいい考えが浮かばないや。ロイドはどう? |
ロイド | そうだな…。こういうのはどうだ? |
パスカル | おっ!期待しちゃうよ~? |
ロイド | エルピスの塔に向かって、まっすぐ木を切り倒す!! |
ロイド | ……なーんてな!いくら何でも無理があるよな |
アイゼン | …… |
アイゼン | …よし。目印案で一つ一つ潰していくぞ。時間はかかるがしょうがない |
パスカル | そだね~。行こ、アリーシャ |
アリーシャ | ああ。ロイド…念のために言っておくが、あまり乱暴な手は感心しないぞ |
ロイド | お、おい!本気にすんなって!無視しなくてもいいじゃんか! |
ルカ | 行っちゃったね…。…ふふっ |
ロイド | 今笑ってどうすんだよ…。ちょっとした冗談だったんだぜ? |
ルカ | もう打つ手がなくなったら、最後の手段としては有りかも…? |
ロイド | 他の打つ手を探すか… |
ルカ | あはは、だね。…それにしても |
ルカ | …みんな、すごいね |
ロイド | …すごい?何がだよ |
ルカ | こんな状況なのに、みんな前向きって言うか…行動力があるって言うのかな |
ルカ | 僕一人だと、きっと何も出来ない…。物事を悪い方向にばかり、考えちゃうし |
ロイド | ああ、そういう事か…。なーに、ルカもその内変われるって! |
ルカ | だといいけど…。こういう先の見えない状況って、どうしても不安になっちゃうよ |
ロイド | そりゃそうだろ。俺だって、不安はあるぜ |
ロイド | でも、どんな事だって、成功するか失敗するかはやってみるまでわかんねーだろ? |
ロイド | だったら、とりあえずやってみる!やらずに後悔するより、やって後悔する方がいいじゃないか |
ルカ | …! |
ルカ | とりあえずやってみる…か。そっか、そうだね…! |
ロイド | んじゃ、みんなを追っかけようぜ。このままじゃ置いてかれちまう |
ルカ | うん、行こう! |
scene2 | 古の記録 |
ルカ | 目印、付け終わったよ。この辺りも調べ尽くしたかな…? |
パスカル | 森の出口も装置のパーツも見つかんないし、どうしたもんかな~… |
アリーシャ | おかしいな。これだけ歩き回っても、森を抜ける手がかりすら見つからないとは… |
| ガサガサ… |
アイゼン | …!おい、気を付けろ!そこの茂みに何かいるぞ! |
アリーシャ | くっ、また魔物か!? |
??? | あら…魔物呼ばわりなんて酷いわね |
アイゼン | …人か? |
??? | ええ。少なくとも、戦う気はないわ |
??? | …ひとまず、武器を下ろしてもらえるかしら? |
ルカ | あなたは、一体…? |
??? | あら、可愛らしい子ね |
ルカ | か、可愛い…!? |
パスカル | お、褒められたけど複雑そうな顔 |
ロイド | いや、わかるぜ。男が可愛いって言われんのもなあ… |
アリーシャ | 失礼。私は島の警備を担当している、アリーシャ・ディフダと言う者だ |
アリーシャ | 彼らと共に、この森の出口を探しているのだが… |
ジュディス | ご丁寧にどうも、私はジュディス |
ジュディス | …どうやら、お互いに事情がありそうね。少しお話でもいかが? |
ジュディス | なるほど…迷いの森ね |
アリーシャ | そちらの事情も聞かせてもらえるか? |
ジュディス | あら、ごめんなさい。簡単に言うと、あなた達と同じね。遭難中よ |
ジュディス | サフィアの情報が公開されたでしょ?島へは観光のつもりで来たの |
ジュディス | …もう一人、連れがいるんだけど今ははぐれちゃって |
ルカ | じゃあ、その人も森のどこかにいるかも…。どんな人ですか? |
ジュディス | 長い黒髪で…。人相はちょっと悪いかしら。全身真っ黒で、狼みたいな顔してるわ |
ロイド | 何だそりゃ?おっかない奴だなあ |
ロイド | …ん?待てよ…どっかで見たような…? |
ジュディス | よく騒ぎに巻き込まれる人だから、どこかで会ってるかもね |
ジュディス | もし彼を見かけたら私の事、伝えておいてちょうだい。それじゃね |
ルカ | ええっ!?あ、あの…一人で行っちゃうんですか? |
ジュディス | ええ。…もしかして、誘ってくれてるの? |
ロイド | 一人じゃ危ないだろ |
ジュディス | ふふ、優しいのね。でも大丈夫よ。一人が向いてるの、私 |
アリーシャ | すまないが、私も立場上、それは看過出来ない |
ジュディス | 固い事言いっこなしよ、騎士さん。でも、そうね…こうして会ったのも何かの縁かしら |
ジュディス | 見逃してくれる代わりに…ってわけじゃないけど、これをあげるわ |
アイゼン | …箱か?かなり小さいな…何だこれは? |
ジュディス | さあね。森の中で拾ったんだけど、調べても何の反応もないのよ。あなた達、何かわかるかしら? |
パスカル | あ…!ああああーっ!!! |
ルカ | うわあっ!もうパスカル!驚かさないでよ… |
パスカル | ビリビリってきた!!探してた装置のパーツって、きっとこれだよ!! |
ルカ | えっ…!? |
アリーシャ | …確かに、装置にはまりそうな形だ。試してみても構わないだろうか? |
ジュディス | ええ、勿論。お役に立ちそうかしら? |
| |
パスカル | よーし、やるよ!…バコッとな! |
| ポチッ…! |
| |
ロイド | お…?おおっ!?すげえ、本当に動き出したぜ! |
ルカ | 空中に、何か浮かんできた…!?人影が見える…子ども、かな? |
| |
子ども | これで映ってる…よね。えっと、ここが森のおへそで… |
子ども | ここからまず、この木を左に曲がるんだったよね |
アリーシャ | これは…!拠点にしていた場所じゃないか?見覚えがある |
ルカ | うん。あれだけ何度も戻された場所だし、間違いないと思う…! |
ロイド | こいつも迷ってんのかな…?おーい!聞こえるかー!?おーい! |
ロイド | …駄目だ。聞いてねーな、こりゃ |
パスカル | 通信機ってわけじゃないみたいだね。過去の出来事を記録して、再生してるのかも… |
パスカル | …って事はこれ、大昔の風景?さすがは古代アンマルチア…! |
アイゼン | 静かにしろ。どうやら、この子ども…何かを確認してるようだ |
アリーシャ | …言われてみれば、確かに。しきりに周囲を見回している |
パスカル | どこかに行こうとしてるみたい。多分…この装置を使って、道順を確かめてる |
ロイド | …!もしかして、森を抜ける道なのか? |
アイゼン | 可能性は高い。そうでなければ、わざわざ記録に残す必要もないからな |
ジュディス | …なるほどね。いいもの見せてもらったわ。…さて、と |
アイゼン | …… |
アリーシャ | …これは朗報だな。この道をたどれば、森を抜けられるかもしれない! |
ルカ | すごい…すごいよパスカル! |
パスカル | ふふーん、どうだい! |
子ども | 木の下をくぐって…最初の別れ道を右… |
子ども | 最後に、ここを通って…うん。これでよし、と──…… |
ロイド | …あれ、光が消えちまった。もう一回見れないのか、パスカル? |
パスカル | んーと…。うん、大丈夫。何度でも見れるみたいだよ |
アリーシャ | よし、では一旦森の拠点に戻ろう。光の通りに動けば、問題ないはずだ |
ルカ | ジュディスさんも…って、あれ?どこに… |
アイゼン | あの女ならさっき森の奥へ消えたぞ |
アリーシャ | なっ…どうしてすぐに教えなかった! |
アリーシャ | …いや、私が彼女をちゃんと止めていれば…! |
アイゼン | 一人でやりたいと言うなら、そうさせてやればいい |
アイゼン | 遭難した観光客だとか言ってたが、あの隙の無さはただ者ではない。関わりたくない理由があるんだろう |
ルカ | でも、一人で大丈夫なのかな… |
ロイド | 連れがいるって言ってたし大丈夫じゃないか?今から追うにしても、この森だし |
アリーシャ | …ああ、君の言う通りだ。今はとにかく、森を抜けよう |
| |
ロイド | ここを右、左ときて…おっ!みんな、見ろ!開けた場所に出たぜ! |
ルカ | はあっ…はあ…っ!よかった、やっと森を抜けられる… |
ルカ | …あれ?でも、随分寂しい場所だね…。こんなとこ、あったかな? |
アリーシャ | 塔周辺の地理は把握している。…ここはそのどれとも合致しない |
パスカル | あちゃー。ここまで来て空振りかぁ~… |
アイゼン | いや…どうやら収穫はあったようだ。先へ進むぞ |
| |
ロイド | …家だ!森の中に家があるぜ! |
ルカ | うん…しかも一つじゃない。ここは… |
ルカ | アヴァロン島に住んでた人の集落って事…!? |
scene1 | 夢の中の僕 |
ルカ | やっぱりだ…。かなり古いけど、家がいくつもある…! |
アイゼン | …あの子どもはこの集落の住人か。記録していたのは、迷わないための帰り道というわけだ |
パスカル | ねえねえ!これさ、もしかして大発見なんじゃない!? |
ロイド | ああ、森を出たわけじゃないが…。ここで何かが見つかるかもな! |
アリーシャ | よし、中を調べてみよう |
| |
ロイド | パスカルが拾った装置みたいなのが結構転がってるな。どれも壊れてそうだけど |
ルカ | 壊れてても関係ないみたいだよ。…ほら、あれ見て |
パスカル | はーっ!すっごい!どこもかしこも宝の山だよ~!!! |
アイゼン | おい待て!はしゃぐのはいいが、家を傷つけるなよ! |
パスカル | 大丈夫だって!ほら、この壺持ってて! |
アイゼン | 人の話を聞け── |
アイゼン | ──む、この壺…!悪くない拵えだ…! |
ロイド | アイゼンまで盛り上がってねーか?…ま、気持ちはわかるけどな |
ロイド | 迷いの森に隠された、謎の集落!冒険魂とか、いろいろくすぐられる感じがするぜ! |
ルカ | でも、家の見た目とかは僕達のものとあんまり変わらないみたいだよ? |
アリーシャ | …普通の食器や、家具もあるな。超技術の一族と聞いていたが、意外と普通の生活をしていたようだ |
パスカル | ここがアンマルチア族のいた集落かどうかはわかんないよ?技術だけ流出する事もあるし |
パスカル | もしくは、質素な人達だったのかも。どっちにしろ、面白いけどね~! |
ルカ | ここに住んでた人達が、エルピスの塔を建てたのかな? |
アイゼン | この規模じゃ、あんな塔を建てられるだけの人数は集まらん |
アイゼン | この島のほとんどはまだ手付かずだ。どこかにもっと規模のでかい…都市と言えるものがあるかもしれんな |
ルカ | なるほどなあ… |
ロイド | もっとここを調べてみようぜ!まだ何か見つけられそうだしな! |
| |
ルカ | …ん?何だろ、これ |
ロイド | おーい、みんな!いいもんがあったぜ! |
ロイド | …って、何だ、ルカも見つけてたか |
ルカ | うん。これ…ジュディスさんが持ってた── |
パスカル | あーっ、さっきの箱!二人共、もっとよく見せて! |
アリーシャ | こっちにもあった。それほど珍しいものではないのかもな |
パスカル | 多分、装置にはめればさっきみたいに昔の風景を見せてくれるよ! |
ロイド | よーし!そんじゃ、早速やってみようぜ! |
| |
ルカ | ──これが、最後の一個だよ |
パスカル | よーし、そーれっと…! |
| ポチッ…! |
| |
女の子 | あはははは、パパ、こっちこっち! |
父親 | こーら、もう帰る時間だぞ! |
女の子 | えー?もっと遊びたい!ママには、道に迷ったとか言い訳すればいいじゃない! |
父親 | まだカタグラフィで撮ってるのに、そんな事言っていいのかなー?母さんに聞かせたら… |
女の子 | やだもう、わかったってば!帰りましょ、パパー! |
父親 | ははは、いい子だ。そろそろご飯が出来てる頃だな──… |
| |
ロイド | …お、これで終わりか。何つーか、普通の家族の風景ばっかだったな |
アリーシャ | …ああ。私達と何も変わらない。当然と言えば、当然だが… |
アイゼン | …わかった事もある。この箱の名は「カタグラフィ」。やはり、記録用の装置のようだな |
ルカ | カタグラフィを入れ替える事で、それぞれ違った過去の記録が映し出される…って事だよね |
パスカル | みたいだねー。んで、唯一重要そうな情報を持ってたのは…これだったかな |
パスカル | えいっ! |
| ポチッ…! |
| |
見張りの男1 | …やれやれ。警備の日が来ると、気が滅入るよ |
見張りの男2 | そう言うな。万が一にも、あれをよそ者に渡すわけにはいかないからな |
見張りの男1 | しかしなあ。あの森があるだけでも普通の奴は近寄れないんだ。何も一日中立ってなくても── |
| |
アリーシャ | …短いが、確かに他のものとは違った感じだな。何かを守っているような口ぶりだ |
アイゼン | こいつらが立っている場所も、この集落には見当たらん。一瞬だったが、遺跡のように見えたな |
ルカ | この近くに、何かを守るための遺跡がある…って事ですか? |
アイゼン | …ああ。この忌々しい森の仕掛けも、その場所を隠すためだろうな |
パスカル | …ここまでして守るものって、一体何なんだろうねー? |
ロイド | 決まってるさ!きっと、すっげ―お宝だよ! |
ルカ | お、お宝…!?それって、サフィアみたいな…? |
アイゼン | …もしくは塔の封印に関わる何か、という可能性もある |
ロイド | どっちにしろすげーものって事だろ!遭難してたはずが、面白い事になってきたぜ! |
アリーシャ | ま、待ってくれ。島内の調査は、基本的に調査隊の管轄だ |
アリーシャ | …正規の命令も受けていない身で、そんな重要なものを扱ってもいいのだろうか…? |
ロイド | 考えすぎだって、アリーシャ!まずは見つけてから考えればいいさ! |
アリーシャ | …あ、ああ |
パスカル | とにかく、次の目標は決まったね~ |
ルカ | うん。森を抜けるための手がかりもあるかもしれないし…。その遺跡に行かないと、だね |
ルカ | あとは、どうやって遺跡の場所を探すかだけど… |
パスカル | それは何とかなると思う。いろんな記録があったから、背景見れば大体の位置関係はわかるよ |
アイゼン | …もう少し集落を探せば、地図ぐらいはあるかもしれんな |
アリーシャ | とにかく、続きは明日にしよう。みんな疲れているだろう |
ロイド | そうだな。さすがにいろいろありすぎて、疲れちまった |
アリーシャ | 幸い、寝泊まり出来そうな家には困らない。今日はもう休もう |
ルカ | …そうですね。じゃあ、僕らは向こうの家を借ります |
パスカル | はいよー。あたしはもうちょっとカタグラフィいじってるね |
アイゼン | 俺はもう少しここを探しておきたい。出発は明日の朝だ |
ルカ | うん。それじゃ…お休み、みんな |
scene2 | 夢の中の僕 |
ロイド | さて、と。布団はねーけど、適当に寝るとするか |
ルカ | いろいろありすぎて、もうクタクタだよ… |
ルカ | 暖かいベッドが恋しいけど…贅沢は言えないよね。屋根はあるし |
ロイド | そうそう、野宿よりはずっとマシだろ?んじゃ、お休み! |
ルカ | うん、お休み。…ふう |
| |
ルカ | (ほんと、いろんな事があったな…) |
ルカ | (父さんに逆らってこの島に来て… 調査隊に入るはずがこんな事に…) |
ルカ | (きっと怒ってるんだろうな、 父さん…) |
ルカ | …………すぅ |
ルカ | …… |
ルカ | (何だろう…この感覚。 …そうだ、夢だ。 いつも見る、あの夢だ…) |
| |
兵士 | ぐっ…!持った方だが、ここまでか…! |
| オオオオ!!! |
ルカ | 戦争の夢。敵に追いつめられたボロボロの兵士。でも、心配いらない |
兵士 | 殺すなら殺せ!だが、私がここで倒れても…我らには、彼がついている…! |
ルカ | そうだ、この人には… |
| |
??? | はああああ!! |
| ズバッ! |
| オオオオ…!! |
| |
ルカ | 僕が…アスラがついてる。夢の中の、雄々しい僕。夢の中の僕は、こんなにも強い…! |
兵士 | …おお!あれほどの巨体を両断するとは…!さすがはアスラ様! |
アスラ | 間に合ったようだな!怪我はないか! |
兵士 | は、はい!ありがとうございます…!私のような一兵卒に… |
アスラ | 言うな。私と共に戦う者全てが私の同胞。決して見捨てたりはしない! |
アスラ | さあ立て!共にこの戦を終わらせるのだ! |
兵士 | はっ!! |
ルカ | …かっこいいなあ。僕も、僕もこんな風に…! |
| |
ロイド | ぐごおおーっ! |
ルカ | わあっ!? |
ロイド | くーっ、くーっ… |
ルカ | 何だ、いびきか… |
ルカ | うわ、汗ぐっしょりだ。何だか体も熱いし…。よっぽど興奮してたんだな、僕 |
ルカ | アスラ…か。夢の中の僕は、あんなに格好いいのに… |
ルカ | …実際の僕は、いびきに驚いて寝汗をかいてる。何だかなあ… |
ルカ | あれ…まだ夜も明けてないんだ。変な時間に起きちゃったな |
ロイド | むにゃむにゃ…。これっと、まってろよぉ… |
ルカ | …。ちょっと外に出てくるね、ロイド |
scene1 | 仲間同士 |
ルカ | 思ったより外は明るいや…。月が出てるせいかな |
ルカ | これなら、あんまり怖くないかも… |
ロイド | ぐーーーっ!すーーーっ… |
ルカ | まだ聞こえてくる。はは、人のいびきで安心するのって初めてだ… |
ルカ | ちょっとくらいなら、散歩してみても大丈夫だよね |
| |
ルカ | 静かだな…。でも、やっぱり怖くない |
ルカ | これは何だろう?ポスト…いや、ランプかな。何だか不思議な感じ… |
ルカ | 文字とか細かいところは違うけど、普通の家並みだな |
ルカ | …昔は人が住んでたんだもんな。こんな風に探検するのも、本当はちょっと失礼だったり… |
ルカ | …そうだよ。もしかしたら、隠れてるだけでまだ人が住んでるかも── |
??? | …ん?そこに誰かいるのか? |
ルカ | わあああっ!!すいませんでしたーっ! |
アリーシャ | お、落ち着いてくれ!私だ!アリーシャだ! |
ルカ | あ、アリーシャさん…!?な、何だ…てっきり幽霊かと… |
アリーシャ | あはは、安心してくれ。正真正銘、私だよ。こんな時間に、どうかしたのか? |
ルカ | ちょっと、寝付けなくて。夜風に当たろうと思ったんです。…アリーシャさんは? |
アリーシャ | 念のため、アイゼンを見張っていた。逃げたらすぐに捕まえられるようにな |
ルカ | それは、その…お疲れ様です |
アリーシャ | 何、私の判断でやっている事だ。それに… |
アリーシャ | それだけが理由ではないと思う。多分、君と同じだ |
ルカ | 僕と同じって…? |
アリーシャ | 盗み聞きする気はなかったんだが、私も…人の影と言うか生活の跡が気になってしまうんだ |
アリーシャ | 今はもう朽ちているが…。ここには確かに人が息づいていた |
ルカ | はい…。大昔の事だってわかってても、何だか不思議な気分です |
アリーシャ | ああ。幸せそうだったあの家族…。彼らが暮らした家はここにあるのに、その彼らはもういない |
アリーシャ | …私が騎士になったのは、ああいう平和な生活を守るためだ |
アリーシャ | だから…ここにいると妙に寂しいんだ。感傷がすぎると笑うかもしれないが… |
ルカ | そんな事ないです!僕も…何て言うか…寂しいと、思います |
アリーシャ | …そうか。カタグラフィ、だったか。あの光景が鮮明すぎたからかな |
ルカ | すごい技術ですよね。でも、ますます不思議だな… |
アリーシャ | 何がだ? |
ルカ | だって、あれだけの技術を持ってた人達ですよ。どこに消えちゃったんだろう、って… |
??? | …それこそ、遺跡に行ってみないとわからんな |
ルカ | ひえええええっ!! |
| |
アイゼン | …いちいち騒ぐな。これ以上やかましいのが増えるのはごめんだ |
アリーシャ | アイゼン…!お前、寝ていたのではなかったのか? |
アイゼン | 自分の寝床の周りをぐるぐる回り続ける女がいてみろ。休むに休めんだろうが |
アリーシャ | …き、気付いていたのか |
アイゼン | 生真面目に警戒するのも結構だが…。次からは気配くらい消しとくんだな |
アイゼン | 心配しなくても、森を抜けるまでは逃げやしない。…それと、お前 |
ルカ | はいっ…!? |
アイゼン | …いつまで震えてるんだ |
ルカ | み、みんなして驚かすから、足の震えが止まらなくなっちゃって… |
アイゼン | …あのな。俺が騒いだんじゃない。お前らが俺のところで騒いでたんだ |
ルカ | は、はい…その通りです… |
アイゼン | まあいい、話を戻すぞ。この集落の事だが… |
アイゼン | 俺とパスカルとやらの見立てじゃ、相当古いものなのは間違いない |
アイゼン | だが、一つわかる事がある。これだけ古い集落にもかかわらず、まるで荒らされた様子がない |
アリーシャ | …確かに。朽ちてはいるが、何かを壊されたような痕はなかったな |
ルカ | そう言えば…。本も食器もぼろぼろだけど、荒らされた感じじゃなかった… |
アイゼン | そうだ。おそらくだが、ここの連中は外敵によって滅ぼされたんじゃなく… |
アイゼン | 自分達から、この集落を捨てた可能性が高い |
ルカ | 自分達で…捨てた? |
アイゼン | 理由まではわからんがな。…話は終わりだ、とっとと行け |
アリーシャ | わかった。…邪魔をしたな |
| |
アリーシャ | …全く、まるで隙のない男だ。海賊とはみんな、ああなのだろうか |
ルカ | 僕も会ったばかりだから、わからないけど…。本当に悪い人なのかな…? |
アリーシャ | 少なくとも、四大国の決まりに従う気がないのは確かだな。警戒は怠れないよ |
ルカ | でも、集落について教えてくれたし… |
ルカ | みんなで集落を探ってる時も、家具とか丁寧に扱ってて… |
ルカ | 何て言うか、僕の想像してた海賊とちょっと違うんです |
アリーシャ | …… |
ルカ | つ、都合のいい想像かもしれませんけど… |
アリーシャ | いや…君の言ってる事は事実だ |
アリーシャ | 今のところ協力関係も続いている。私としても、事を荒立てたくはない |
アリーシャ | このまま何事もなければいいと思っているよ。…ところで、ルカ |
ルカ | 何ですか? |
アリーシャ | 今更だが、私に敬語は必要ないよ。そう堅くては、君もやりにくいだろう? |
ルカ | そ、そうですか?でも、アリーシャさんは年上だし、立場もあるし… |
アリーシャ | 妙な経緯ではあるが、私達は仲間同士。立場は対等だ |
アリーシャ | 今後は呼び捨てで構わないよ |
ルカ | は…はい、わかりました、アリーシャさん!…あっ |
ルカ・アリーシャ | …… |
ルカ | 「わかったよ、アリーシャ」…で、いいんだった |
アリーシャ | ぷっ…あははは!少しずつ慣れていけばいいさ。それじゃ…お休み、ルカ |
ルカ | あはは…そうするよ。…お休み、アリーシャ |
scene2 | 仲間同士 |
ロイド | よーし。全員揃ってるよな? |
アリーシャ | ああ…と言うか、君達二人が最後だよ |
ルカ | ご、ごめん。何度声かけてもロイドが起きなくって… |
ロイド | 悪い悪い。でもその分、元気は有り余ってるぜ! |
アイゼン | とにかく、揃ったなら行くぞ。カタグラフィは持ったな? |
パスカル | もち!遺跡の方向は昨日の内に見当付けてあるから、すぐ見つかるよ! |
scene3 | 仲間同士 |
パスカル | ──見つかるはずだったんだけど…。うう~、遺跡のいの字も見当たんないよ~… |
パスカル | おっかしいな~。カタグラフィの背景からして、この辺のはずなんだけどな… |
アイゼン | 方向は合ってるはずだが、森の仕掛けでまた迷っているのかもな |
アイゼン | ぼろぼろだが、地図らしきものも見つけておいた。何とか照らし合わせるしかない |
パスカル | うーん、そうなるとここがさ~… |
ロイド | はあ、似たような風景ばっかでいい加減飽きてきたぜ…。ルカもそう思うだろ? |
ルカ | う、うん… |
ルカ | (何だろう、この辺。 今までの森と、少し違うような…? そうだ、あそこ…) |
ルカ | (あそこに見えてるの… ずれた地層だよね。 それも、かなり古い…?) |
ロイド | ルカ、何か考え込んでるのか? |
ルカ | い、いや、何でも… |
| ブツッ… |
ルカ | ロ、ロイド。今、何か聞こえなかった…? |
ロイド | いや?鳥か何かの鳴き声じゃないか? |
ルカ | なら、いいんだけど… |
ルカ | (昔、父さんの書斎で読んだ気が… 地盤が不安定な土地だと、確か…) |
| ブツッ…ブツッ… |
ルカ | (木の根が切れるような嫌な音がする …って。もしかして、ここも…?) |
アリーシャ | ──やはり方向を間違えてしまったんじゃないか? |
アイゼン | いや、それに関しては間違いない。何かを見落としてるんだ |
ロイド | もうちょっと進んでみればわかるんじゃねーの? |
ルカ | …あ、あの! |
パスカル | んー?どったのルカ? |
ルカ | あ、その… |
ルカ | (つ、つい口出しちゃったけど… この音、ロイドには 聞こえてなかったんだよね) |
ルカ | (もし、勘違いだったら 出しゃばりになっちゃうし…) |
ルカ | …ごめん、何でもないよ。気にしないで── |
| |
| ブツッ…ブヅッ!! |
アイゼン | …待て。この音…いかん! |
| ブツッ…ズ… |
ロイド | 急にどうしたんだよ、血相変えて? |
アイゼン | 下がれお前ら!この音…!地盤が崩落するぞ! |
ルカ | や…やっぱり…!! |
| |
| ゴゴゴ… |
アリーシャ | なっ…!?あ、足下が崩れて…!! |
ロイド | や、やべえ!ルカ、向こうの岩に飛び移れ! |
ルカ | う、うん! |
ロイド | パスカル、アリーシャ!俺達の手を取れ…うわっ!! |
アリーシャ | …駄目だ!届かな──ぐうっ! |
| |
| ズザザザッ! |
パスカル | お、お助け──うわああっ!?落ちる―!! |
アイゼン | …ちっ!遅かったか…! |
ロイド | くそ!二人共見えなくなっちまった!いきなり何だってんだ! |
アイゼン | 地盤が崩落したんだ。元々不安定なところに、俺達が踏み入ったせいだろうが… |
アイゼン | …ただの崩落じゃないな。地下深くまで穴が開いてる。…ぼやぼやするな、下りるぞ |
ロイド | ああ、急いで二人を助けないと…!行くぞルカ!…ルカ? |
ルカ | ぼ、僕のせいだ…!僕がもっと早く伝えてれば…! |
ロイド | しっかりしろ、ルカ!今は後悔より先に、やる事があるだろ! |
ルカ | …!う、うん! |
ルカ | ごめん…!無事でいて、二人共…!! |
scene1 | 崩れ落ちた先 |
ルカ | パスカルー!アリーシャー! |
ロイド | 二人共、返事しろー! |
ルカ | …かなり降りてきたのに、全然反応がない…! |
ロイド | 諦めんな、気を失ってるって事もある! |
アイゼン | 呼びかけを止めるな。生きているなら、そのうち反応がある |
ルカ | は、はい…。おーい!おーーーい…!! |
??? | ──い…!おーーい! |
ルカ | …今、何か聞こえた!パスカル!?パスカルなの!? |
ロイド | あの土の向こうだ!二人共、そこにいるのか!? |
アリーシャ | この声…ロイドか!?よかった、君達も無事だったか! |
パスカル | じゃあ、全員無事って事だね~ |
アイゼン | 運のいい奴らだ。…とにかく、この邪魔な土をどかすぞ |
ルカ | はい!待ってて、二人共! |
ロイド | よし…と。大きな怪我はないみたいだな |
パスカル | いや~、助かったよ。一時はどうなる事かと思っちゃった |
アリーシャ | ああ、さすがに焦ったよ |
アイゼン | あの崩落に巻き込まれて、よくこんな軽傷で済んだもんだ |
アリーシャ | 途中で崩落の勢いが弱まったんだ。一瞬だったが、その間に私の槍をあそこに刺せた |
パスカル | 崩落が止まるまでずっと掴まってたから、手が痺れちゃったよ~ |
アリーシャ | だが、上手くいってよかった。一つ間違えたら、二人共土の下だったからな |
ルカ | 土の、下… |
アイゼン | 勢いが弱まったというのが気になるな。…少し向こうの様子を見てくるか |
ロイド | あっ、おい…!…行っちまった。まあ、あいつなら心配ないか |
ロイド | とにかく二人が無事でよかったぜ。な、ルカ? |
| |
ルカ | …ご、ごめんなさい! |
| |
パスカル | ん~?どったの、ルカ。顔が真っ青だよ? |
ルカ | 実は僕…気付いてたんだ。あそこの地面は不安定で…すごく危険な場所なんじゃないかって |
ロイド | あっ…そう言えば、音がどうとか言ってたな |
ルカ | うん…。でも、自分の考えが正しいのか自信がなくて… |
パスカル | それで迷ってたら、本当に足場が崩れちゃった。…って事? |
ルカ | …う、うん。…僕が迷わずに言ってれば、二人は巻き込まれずに済んだんだ…! |
ルカ | だからその…本当に、ごめんなさい… |
アリーシャ・パスカル | …… |
アリーシャ | 顔を上げてくれ、ルカ。君が謝る事じゃない |
パスカル | いきなり謝るから、何の事かと思ったよ~ |
| |
ルカ | え?で、でも!僕のせいで、二人は大怪我するところで…! |
アリーシャ | 異変に気付けなかったのは私の未熟さ故だ。君が気に病む必要はないよ |
パスカル | そうそう。結局あたし達はピンピンしてるんだし |
ルカ | それはそうだけど… |
パスカル | む~、まだ言うか!そんな子にはこうだ!こちょこちょこちょ~! |
ルカ | あは、あはははは!ちょ、やめ…!何するんだよ、パスカルってば…! |
パスカル | しょぼくれてちゃ駄目だって!ほら、元気元気!それ~! |
ルカ | あ、あはははは!わかった、わかったよ!もう言わないから、止めてよ~! |
アリーシャ | …だ、そうだ。そろそろ止めてあげたらどうだ、パスカル |
パスカル | ラジャー!はい、止め! |
ルカ | ひー、ひー…!い、いいのかな、本当に? |
ロイド | 二人が気にしないって言ってんだし、それでいいじゃねーか |
ルカ | で、でも!いつもだったら、徹底的に怒られたあと、しばらくはいじられるよ? |
ルカ | 例えば、僕の友達なら── |
| |
イリア | はあ~~!?気付いてたあ~!? |
スパーダ | ル~カ~?何でそんな大事な事黙ってたんだおめェはよォ~? |
イリア | 仕返し?普段の仕返しなのね?いい度胸してんじゃな~い…。ねえ?ル・カ・ちゃ・ま? |
スパーダ | こりゃしばらくホットドッグ奢りの刑だな。一番でっけえやつ! |
イリア | そーね。そのくらいで勘弁してあげる。…あ、あたしドリンク付きね |
スパーダ | ヒャーハッハッハッハ! |
イリア | いーっひっひっひっひっひ! |
| |
ルカ | ──って感じで! |
ロイド | …友達なんだよな、そいつら? |
ルカ | う…ほ、本当は優しいんだよ…?ちょっと誤解されやすいって言うか… |
ルカ | ほ、ほら!ホットドッグ奢りの刑も結局三回で済んだし! |
アリーシャ | ふむ。親しさ故に遠慮のない関係…という事か? |
ルカ | そんな感じ…かな。多分…? |
アイゼン | …お前ら、いつまで話してる。来い。向こうに面白いものがあったぞ |
ロイド | アイゼン、何か見つけたのか? |
アイゼン | ああ。どうやら…ここはもう、遺跡の中のようだ |
ロイド | 遺跡の中!?どういう事だよ? |
アイゼン | 説明するより見た方が早い。とにかく、ついてこい |
| |
ルカ | …!これって! |
アリーシャ | 石壁だな…明らかに人間の手で加工されたものだ |
ルカ | じゃあ本当に…ここがカタグラフィで見た遺跡!? |
ロイド | どういう事だよ。遺跡は地下にあったって事か? |
アイゼン | そういう事だ。元から地下にあったのか、緩い地盤のせいで沈んだのか… |
アイゼン | いずれにせよ、入口が見つからなかったのはこれで説明がつく |
アリーシャ | では…崩落に飲み込まれた事で、偶然遺跡の中まで来てしまったというわけか |
パスカル | そっか。遺跡にせき止められたから、崩落もここで止まったんだね~ |
アイゼン | ここは遺跡の入口ってところか。あちこち崩れてはいるが、瓦礫をどかせば先へ進めそうだ |
ロイド | だったら、一番奥を目指そうぜ!何かあるとしたら、やっぱりそこだもんな! |
ロイド | もしかしたら、すげーお宝が眠ってるかも…! |
パスカル | うん!このまま全部丸裸にしちゃうぞ~! |
アリーシャ | 遺跡には森を抜ける手がかりがあるかもしれないと話していたんだが…すっかり忘れていそうだな… |
アイゼン | 行くぞ。いつまた崩れ出すかもわからん |
ロイド | おう!待ってろよ、お宝ー! |
ルカ | よーし…みんなのためにも、今度は役に立たないと…! |
scene2 | 崩れ落ちた先 |
ルカ | あれ…?この先の通路、随分明るいね |
アイゼン | 大昔の遺跡に、明かりか。…どうにも不自然な話だな |
パスカル | 確かに怪しいけど…薄暗いよりはいーんじゃない? |
ロイド | そういう事だな。とにかく、行ってみりゃわかるさ! |
| |
ロイド | …おお~、よく見えるぜ!この辺まで来ると土もないし、本当に遺跡の中って感じがするな |
パスカル | へえ~、まだ照明が生きてるんだ!…って事は、奥の方には供給元もあるよね? |
パスカル | ん~、どういう仕組みなんだろ?調べてみたいな~ |
アリーシャ | 魔物の気配はないな。ひとまずは安心だが…ん?あそこに何か落ちているな |
ルカ | これは…手帳みたいだね。今の文字じゃないみたいだけど…パスカル、これ読める? |
パスカル | ん~…さすがにこれだけだと文字の解読は無理かな~ |
パスカル | でも、ここ見て。図面みたいなのが描いてあるよ |
ロイド | 遺跡の地図って事か?…あー、でも途中までしか描いてねえみたいだな |
アリーシャ | こっちには武器も落ちている。錆が酷くて使い物にはならないが |
アイゼン | 島の人間か、外部の人間か…詳しい事はわからんが、大昔にも先客がいたようだな |
ロイド | こいつらも、遺跡を調べに来たのかな? |
アイゼン | 恐らくな。観光目的の物好き、って事もないだろう |
ロイド | へへっ、探りに来た奴がいたなら、やっぱり奥に何かあるのかもしれねーな! |
アイゼン | ふ…面白くなってきたな。おい、カタグラフィに反応はないか? |
パスカル | うーん、特に何もないね~。記録以外の機能はついてないのかも |
パスカル | でも、この奥に何かがあるってのはあたしも同意見! |
パスカル | 森に入った時から感じてたビリビリが強くなってきたからね。期待出来そうだよ~! |
ロイド | へへ、ますますやる気が出てきたぜ! |
ルカ | …あ、あのう、アイゼンさん。ちょっと気になったんですけど… |
アイゼン | 何だ? |
ルカ | この道具の持ち主って、結局どうなったんでしょう…? |
アイゼン | …こんな半端なところに道具が残っている事から見て、成果があったとは考えにくい |
アイゼン | 失敗して逃げ出したか…あるいはここで何かに捕まって、遺跡の奥に連れ去られたのかもな |
ルカ | ひいっ…! |
アイゼン | 何、気になるならその辺を探してみればいい |
アイゼン | 怨念だの亡霊だの、その手の話は遺跡につきものだ。本人から話を聞けるかも── |
ルカ | い、いいです!よくわかりました! |
アリーシャ | あまり脅かすな、アイゼン。道具があるだけだ、それ以上は何もわからないだろう |
アイゼン | 軽い冗談だ。先に行ってるぞ |
アリーシャ | …全く。安心してくれ、ルカ |
アリーシャ | この先どんな危険があっても、私が君を守ってみせる。騎士の名に懸けて |
ルカ | か、かっこいい…! |
アリーシャ | …そうだろうか?少し大げさだったかな |
ルカ | そんな事ないよ!僕も…僕もきっと、役に立ってみせるよ |
アリーシャ | ふふ、心強いな。では、先に進もうか |
| |
ルカ | ようやく広いところに出た…のはいいんだけど… |
| |
| グルルルル… |
ロイド | この部屋、丸ごと魔物の巣になってるぜ! |
アイゼン | 蹴散らすまでだ。とっとと終わらせるぞ! |
scene3 | 崩れ落ちた先 |
アリーシャ | はっ! |
| ギャウッ…! |
ルカ | すごい…あんなにいた魔物が、もうほとんど倒されちゃった! |
ルカ | よ、よーし…僕だって! |
| グルルルル… |
ロイド | …!ルカ!後ろだ!狙われてるぞ! |
ルカ | えっ… |
アリーシャ | させない!はあっ! |
| ギャウッ…! |
パスカル | アリーシャ、お見事~! |
アリーシャ | 怪我はないか、ルカ? |
ルカ | う、うん。ありがとう…! |
ロイド | よっしゃ、こそこそ隠れてた奴も倒したし、仕上げといこうぜ! |
ルカ | うん!はああっ! |
| |
アイゼン | 片付いたか。結構な数だったな |
ロイド | これくらいならどうって事ないぜ。お宝はいただきだ! |
パスカル | ふっふっふ~。油断するな、まだ小手調べと言ったところだ…! |
ルカ | な、何それ…? |
パスカル | アイゼンの真似~。どう?似てた? |
アイゼン | …下らん事してると置いていくぞ |
パスカル | 結構自信あったんだけどな~。あ、待ってよ~! |
アリーシャ | ふふ…やれやれだな。では、私達も行こうか |
ロイド | おう!さーて、次は何があるんだ |
ルカ | (うーん… みんなの役に立つって 意気込んだはいいけど…) |
ルカ | (逆に助けてもらっちゃった…。 なかなか上手くはいかないな…) |
アリーシャ | …ルカ?どうしたんだ、さっきから考え込んでいるようだが… |
ルカ | え!?な、何でもないよ! |
ルカ | 先に進まないとね…あはは! |
ルカ | …ふう。こんな調子で、本当に役に立てるのかな? |
scene1 | 己の流儀 |
ルカ | ふう…ようやく広いところに出たね |
ロイド | でもよ、ここ行き止まりみたいだぜ |
パスカル | そんな~!ここまで来て収穫なしは勘弁してよ~… |
アリーシャ | ここまでは一本道だったはず。どこかで道を見落としたのだろうか? |
アイゼン | 隠し通路があった可能性はあるが…。まずは、この部屋を調べてからだな |
アリーシャ | 砂地というのが気になる…。ここまでは全て石造りだった |
ルカ | (よーし… 今度こそ、役に立たないと…) |
ルカ | それじゃ、僕は床を調べてみるね!何か見つかるかもしれないし |
パスカル | 何だか張り切ってるね~。もうあんなとこまで行ってるし |
アリーシャ | ルカ、調べるのはいいが、何があるかわからない。十分に気を付けてくれ |
| ズ…!! |
ルカ | うん、わかって── |
ルカ | うわっ…!? |
| ドテッ |
パスカル | ありゃ、こけちゃった。もう、はしゃぎすぎだよ~、ルカ |
ルカ | あはは、ごめん。…って、あれ? |
ルカ | お、おかしいな。上手く立てないや…? |
ロイド | 何やってんだ、あいつ…?ほら、俺が手貸してやるから、そこでちょっと待ってろ |
アイゼン | …!いや、待て!うかつに踏み入るな! |
| |
| ズズズズズ…! |
| |
ルカ | 何、これ…!?部屋中の砂が…動いてる…! |
ルカ | この砂のせいで足が滑って…!早く逃げないと…うわあっ! |
パスカル | これって…ちょっとまずいんじゃない!?ルカがどんどん流されてくよ! |
アイゼン | 部屋の端まで離れろ!砂がすり鉢状に陥没していく…俺達の足元まで崩れ始めたぞ! |
ロイド | んな事言っても…ルカを放っておけるかよ! |
アイゼン | まずは自分の身を守れ!それに、砂の底を見ろ…何かいる! |
| キシャアアアアッ!! |
アリーシャ | 大型の魔物…アリジゴクのようなものか!ルカ、早くこっちに! |
ルカ | ご、ごめん…砂で滑るせいで、どうしても立てなくて…うわあっ! |
ロイド | やべえ…!あのまま流されたら、魔物にやられちまう! |
アリーシャ | パスカル、魔物を術で狙えないか!? |
パスカル | ここからだと、どうやってもルカを巻き込んじゃう!直接助けるしかないよ! |
ロイド | くっ…待ってろルカ!今、助けてやる! |
ルカ | …駄目だよ、ロイド!こっちに来たら、みんなも巻き込まれちゃう…! |
ロイド | そんな事言ったって、一人で抜け出せるわけないだろ!絶対助けるから、そこで── |
ロイド | …!まずい!魔物が狙ってるぞ! |
| キシャアアアアッ!! |
ルカ | …ううっ!駄目だ、この足場じゃ、とても受けきれない… |
| ドカッ! |
ルカ | うわああっ!! |
ルカ | ぐ…うう…意識…が… |
ルカ | …… |
ロイド | 大丈夫か!?おい、返事しろ!ルカっ!! |
アリーシャ | くっ…!一体、どうすれば…! |
アイゼン | …決まってるだろう。方法は一つだ |
アイゼン | お前らはそこを動くな。いいな! |
アリーシャ | なっ…!?お前、一体何を── |
| |
ルカ | う…。何も聞こえない…。砂が、こすれる音しか… |
ルカ | 確か、魔物に弾き飛ばされて…その後…どうなったんだっけ。思い出せないや |
ルカ | …… |
ルカ | 僕、死ぬのかな。こんな事なら…父さんの言う事聞いておけばよかった |
ルカ | こんな僕がみんなの役に立とうなんて…やっぱり間違ってたんだ |
ルカ | …でも |
ルカ | 何も出来ないままは…嫌だな |
???(アイゼン) | ──い! |
ルカ | …?誰だろう。誰かが、呼んでる…? |
ルカ | …そんなわけないか。また、アスラの夢でも見てるのかな |
ルカ | 夢、か…僕も、なりたかったな。かっこよくて、頼りがいがある…アスラみたいな人に… |
???(アイゼン) | ──い。早──きろ… |
ルカ | …!気のせいじゃ…ない?一体、誰が── |
| |
アイゼン | おい!起きろ! |
ルカ | ──!こ、ここは…! |
アイゼン | 意識が戻ったか。見かけより頑丈だ |
ルカ | ア、アイゼンさん!?どうして!…ごほっ、ごほっ…! |
アイゼン | いいからそのままじっとしていろ。あまり動くと、どんどん砂に流されて… |
| キシャアアアアッ!! |
アイゼン | 今度こそ致命傷になるぞ。おい、お前ら!! |
パスカル | なーに!?今引っ張り上げる物探してるから、待っててよ~! |
アイゼン | いや、このままでは間に合わん!脱出は俺の方で何とかする。その間あの魔物の動きを抑えろ! |
パスカル | わかった!任せといて! |
アイゼン | やるぞ!…大地よ! |
| |
| ゴゴゴゴゴゴゴ…! |
アリーシャ | これは…術か?土の足場が出来た! |
アイゼン | ちっ…流砂のせいか、安定しないな。長くは持たない。こいつを伝って這い上がるぞ!行け! |
ルカ | は、はい! |
| |
ロイド | へへっ…そういう事出来るんなら、突っ込む前に言えよな! |
ロイド | パスカル、魔物は頼んだぜ!俺とアリーシャで二人を引き上げる! |
パスカル | あいあいさ~!危ないから大きな術は使えないけど…脅かすくらいなら! |
| |
パスカル | ウィンドニードル! |
| ギ…ギギ…!? |
アリーシャ | 魔物がひるんだ!今のうちだ! |
| |
アイゼン | 一気に上まで行くぞ。もたもたしてると足場が崩れる! |
ルカ | はい…! |
| |
ロイド | よし…こっちだ、俺の手を掴め! |
ルカ | う…も、もう少し…! |
ロイド | そうだ、そのまま…!引っ張り上げるぞ、せーのっ! |
| |
ルカ | ごほっ、ごほっ!!助かった…の? |
パスカル | よ、よかった~!無事だよね、ルカ!? |
アイゼン | 衝撃で気絶していただけだ。見たところ大きな怪我はない。 |
アリーシャ | 無茶をする奴だ…。一歩間違えれば、お前も巻き込まれていたぞ |
アイゼン | 迷ってる暇はなかったからな |
アリーシャ | …そうだな。ルカが助かったのはお前のお蔭だ。ありがとう |
アイゼン | …礼はいらん。それより…問題はまだ残ってるぞ |
ロイド | ああ、魔物が来るぜ! |
| キシャアアアアッ!! |
アイゼン | 獲物を取られてご立腹か。来い。相手をしてやる |
ルカ | …待って。僕も…戦うよ |
アイゼン | …… |
アリーシャ | 無理はしなくていい。ここは私達に任せてくれ |
ルカ | …大丈夫。このくらいやらないと、みんなに申し訳ないから…! |
アイゼン | …好きにしろ。行くぞ! |
ルカ | はい! |
scene2 | 己の流儀 |
パスカル | ふい~。何とかなった~ |
ロイド | あの魔物、相当怒ってたなあ。好き放題暴れやがって… |
アリーシャ | けほっ…砂まみれになってしまったな |
ルカ | …ごめんね、みんな。僕のせいで、またみんなを危険な目に遭わせちゃった… |
ロイド | 気にすんなって。仲間なんだから、助け合って当然だろ! |
アリーシャ | その通りだ。それに…悪い事ばかりでもない。魔物のいた場所を見てくれ |
ルカ | 地下への扉がある…!…あの魔物は、あれを守ってたんだ |
アリーシャ | 結果的に、全員無事に道を切り開けたというわけだ。それだけで十分さ |
パスカル | そんじゃ、行こっか!ビリビリも強くなってきたし、そろそろお宝が待ってるかもよ! |
ロイド | おう! |
ルカ | あの、アイゼンさん… |
アイゼン | 何だ |
ルカ | アイゼンさんも…その、本当にすみませんでした |
ルカ | 僕が先走ったせいで、あんな危ない目に遭わせてしまって… |
アイゼン | …… |
ルカ | あの…? |
アイゼン | …謝罪はいらん。俺は俺のやりたいようにやっただけだ |
ルカ | …はい |
アイゼン | …納得出来ないって顔だな。なら、少し言い方を変えてやる |
アイゼン | 確かに…俺は危険を冒し、お前を助けた。だが、それがお前のためとは限らん |
ルカ | え…? |
アイゼン | この森を抜けるまでは協力する。俺はそう言ったはずだ |
アイゼン | あそこでお前を見捨てるのは、そう決めた俺自身への裏切りになる |
アイゼン | しいて言うなら、俺のため。俺が俺であるために助けたんだ |
ルカ | そのためなら…どんな危険も冒すって事ですか? |
アイゼン | そういう事になるな |
ルカ | …!怖くはないんですか? |
ルカ | 僕は…怖い。もし間違ってたら、死んじゃうかもしれないのに…! |
アイゼン | 自分の舵は自分の意志で取る。それが俺の流儀だ |
アイゼン | 少なくとも…自分で選んだやり方なら、どうなろうが後悔はしない |
ルカ | …! |
アイゼン | 先に行くぞ。そろそろ最下層のはずだ |
ルカ | 自分の… |
ルカ | 自分の舵は…自分の意志で取る、か… |
ロイド | おーい、どうしたルカー!?どっか痛むのかー? |
ルカ | …う、ううん!大丈夫!今行くよー! |
scene1 | ルカの作戦 |
アイゼン | また部屋に出たか。もっとも…今度は期待出来そうだがな |
ルカ | 何だか、今までと雰囲気が違うような…ここが最後の部屋なのかな? |
ロイド | かもな。その割には砂も敵も見当たんねーし、結構不用心だけど |
アリーシャ | …だが、目立つものもある。部屋全体に彫られているのは…壁画だろうか? |
ルカ | みたいだね。うーん…この感じじゃ、お宝とかそういうのはなさそう… |
ロイド | ま…まだわかんねーだろ?よく探せばきっと何かあるって! |
ロイド | な、パスカル!…あれ?どこ行ったんだ、あいつ |
アイゼン | あいつなら、部屋を見るなり壁の方まで飛んで行ったぞ |
ロイド | って事は…!おーい、パスカル!何か見つかったのか!?お宝か!? |
パスカル | ん~?お宝とはちょっと違うけど… |
パスカル | この壁画、面白そうなものが描いてあるよ!みんなもこっち来て見てみなよ! |
ロイド | 面白そうなもの?どれどれ… |
アイゼン | ほう…近くで見ると、なかなか見事な代物だな。 |
アリーシャ | 絵だけかと思ったが…文字のようなものも彫られているな |
パスカル | カタグラフィの中に見えた言語と似てるから、多分集落の人達が残したんだと思う |
ルカ | …文字は読めないけど、絵の方は何となくわかるかも。…これって、エルピスの塔じゃない? |
アリーシャ | ああ、そのようだ。頂上に輝いている星のようなものは、サフィアだろう |
アイゼン | 他にも小さな星があるな…。一、二…六つか。こんなものは塔周辺にはなかったが |
ルカ | 下の方にも何か描いてあるけど…これはよくわからないや。…動物、かな? |
ロイド | …まあ、確かにすげーけどさ。なあ、他に何か描いてないのか?ほら、お宝の隠し場所とか… |
パスカル | そういうのは見当たんないけど、まだ壁画はいっぱいあるよ~ |
パスカル | ほら、向こうにも続いてるし!あたし、あっちの方見てくるね~! |
ロイド | お、おいパスカル…!行っちまった… |
ロイド | はあ…あいつは楽しそうでいいよな |
ルカ | そう言うロイドは、あんまり元気ないね。一応、これも大発見なんじゃない? |
ロイド | まあ、そうなんだけどよ。何かもやもやするって言うか…期待と違ったって言うか… |
アイゼン | 全く…わかっていないな |
ロイド | アイゼン?何だよ、いきなり |
アイゼン | この壁画を見ろ。精緻、かつ大胆な彫刻。保存状態も悪くない…! |
アイゼン | 考古学的に見れば、この部屋全体がお宝と言っても過言ではないだろう… |
アイゼン | 少なくとも、落ち込むような代物ではない。海賊として保証してやる |
ロイド | な、何か今のお前、俺の知り合いが遺跡を見つけた時に似てるぜ |
アイゼン | ほう…どこにでもわかる奴はいるものだ |
ロイド | …その感じとか、特にな。とにかく、俺はもっと一目でわかるお宝を想像してたんだよ |
ロイド | 金銀財宝とか、未知の秘宝とか…!だから、その…結構地味っつーか、肩透かしっつーか… |
アイゼン | ふっ…それもまた冒険者の醍醐味だ。まあ、金銀財宝の方が心くすぐられるというのもわかるがな |
アイゼン | 俺も壁画を調べてくる。邪魔はするなよ |
アリーシャ | では、壁画はパスカル達に任せるか。私達は森を抜ける手がかりを探そう。ロイドも、それでいいか? |
ロイド | そうだな…がっかりはしたけど土産話としては悪くねぇし。さっさと帰らねえとな |
ルカ | そうだね。何か見落としてるかもしれないし、壁画以外のところも探してみよう |
ルカ | ──うーん…。やっぱり、壁画以外に目立ったものは見つからないなあ… |
パスカル | …ねえルカー!ちょっと手伝ってよー! |
ルカ | どうしたの、パスカル? |
パスカル | お~、来た来た!悪いんだけどさ、肩車してくれる?上の方の文字が見えないんだ |
ルカ | ま、また?あんまりいい思い出ないんだけど… |
パスカル | ん~、最初は、そこにいるアイゼンに頼んだんだけどね~ |
アイゼン | 俺も俺でこの部屋には興味がある。後にしろ |
パスカル | …だってさ。けちんぼめ~ |
ルカ | しょうがないなあ…。はい、これでいい? |
パスカル | うんしょ、っと…。ふーむ。やっぱり、まだ文字は読めないな~… |
ルカ | 「まだ」って…こんな古い文字、本当に読めるの? |
パスカル | 時間と資料があればね~。今も数字っぽいのは何とか読み取れるし |
パスカル | …ただ、あたしの知ってるアンマルチアの文字よりずっと古そうなんだよね~、これ |
ルカ | 大昔の島みたいだし…やっぱり、使ってた文字も違うんだね |
パスカル | ん~、単純に時代が古いだけかな…似てるようで別物っぽいと言うか…。うん、やっぱすぐには無理っぽいね~ |
ルカ | …そっか。でも、パスカルがいてよかったよ。僕達だけじゃお手上げだったし |
パスカル | アンマルチアの研究はあたしの本分だからね!それに… |
パスカル | この部屋にはまだ何かあるよ。今までで一番感じるんだよね、こう…ビリビリって!! |
ルカ | ちょっ、パスカル!急に動いたら危ないよ! |
パスカル | うわっ、とっと…!ルカ、壁!壁の方に寄って! |
ルカ | わかったから動かないで!上の方は見えないんだって…! |
パスカル | いよっと!ふう~、危なかった。壁に手をついたから何とか倒れずに… |
| |
| ガコッ…! |
| |
ルカ・パスカル | …ガコッ? |
| |
| ズゴゴゴゴゴ… |
ルカ | ちょ…!壁画が動き出したよ! |
ロイド | な、何だ!?一体何が起こってんだ? |
| |
| ゴゴゴゴゴ…ズン! |
| |
アリーシャ | 壁画が動いて、扉が現れた…!パスカル、君がやったのか? |
パスカル | う~ん、たまたまなんだけど手をついて押した所が何かのスイッチだったみたい |
アリーシャ | 隠し扉というわけか…。この先にもまだ何かありそうだな |
アイゼン | 厳重さから言って、この先が本命かもしれんな |
ロイド | 本当か!?へへっ、そうこなくっちゃな!行こうぜ、みんな! |
ルカ | う、うん! |
scene2 | ルカの作戦 |
ルカ | これって…!別の部屋…!?見た事もないものが浮いてる… |
アイゼン | それも気になるが…本命は部屋の中心だな。あれを見ろ |
パスカル | な…何あれ!?おっきな装置…! |
ロイド | 音もするし、光ってるし…!すげーな、今も動いてんじゃないか、あれ!? |
アイゼン | どういう技術か知らんが好都合だ。壊れてたら、調べようがないからな |
アイゼン | む…装置の隣にも何かあるな。台座のように見えるが… |
パスカル | どれどれ~。いじったら台座に反応があるかも…! |
アリーシャ | 待て、パスカル。まだ何なのかもわからないんだ。慎重に── |
| |
| ビーーーッ!ビーーーッ! |
| |
アイゼン | …!!これは…警報か!? |
ルカ | み、みんな!あれを見て! |
| オオオオオ!! |
ロイド | お、おい!こんな魔物、今までどこにもいなかったぞ! |
アリーシャ | 一体どういう事だ…!警戒はしていたのに、ここまで接近を許すとは…! |
アイゼン | 装置の番人といったところか。邪魔をするというなら…倒すのみだ |
| ゴッ…! |
アイゼン | …!!ほう…随分硬いな |
ルカ | アイゼンさんの攻撃を受け付けてない…!? |
ロイド | 他の魔物とはわけが違うって事か!どっち道、逃げる気はないけどなっ!行くぜ! |
アリーシャ | ああ!私も合わせる! |
| オオオオオ!! |
ロイド | へっ、魔物の奴、どこ狙ってんだ?何もないところで暴れてるぜ |
アリーシャ | …随分な大振りだな。避けるだけなら、難しくなさそうだ |
パスカル | 援護は任せて~!…って、あれ?装置が反応してる…? |
| ヴーーン…! |
ルカ | …!!二人共!後ろだよ! |
ロイド | なっ…!?何だあ!? |
| ドゴォ! |
アリーシャ | くっ…ロイド! |
ロイド | 心配すんなって、ちゃんと避けてるぜ!それより…! |
アリーシャ | ああ…いつの間にか背後を取られた!一体どういう事だ…? |
アイゼン | 距離を取って見ていた俺達には、はっきり見えた |
ルカ | あの魔物…瞬間移動したんだ!攻撃したと思ったら、あそこから消えてなくなって… |
パスカル | その瞬間、ロイドの後ろに転移したんだよ! |
ロイド | 何だよ、それ!?あの魔物の能力なのか? |
パスカル | 違うよ、多分この装置が魔物の動きを補助してるんだ!移動の直前に反応してたし! |
アリーシャ | 空間を操作しているというのか!? |
アリーシャ | …!待ってくれ、では、まさかあの森も…! |
アイゼン | 知らず知らずのうち、俺達もこいつに転移させられていた。それなら説明がつくな |
ロイド | …!考えてる場合じゃないぜ!魔物が消えた! |
アリーシャ | …ルカ!そっちだ! |
| オオオオオ!! |
| ドゴォ! |
パスカル | うひゃあっ!…あっぶないな、いきなり出てこないでよ~! |
ルカ | 動きが全然読めない…!これじゃ、戦いようがないよ! |
ロイド | くっそ…!こいつは何とか俺が抑える!その間に対策を考えてくれ! |
ルカ | 何とかって…!一人じゃ危ないよ! |
ロイド | 考えるより、こっちのが役に立つからな!さあ、来やがれ! |
| オオオオオ!! |
ルカ | …わかった!無茶しないでね、ロイド! |
アリーシャ | さて…魔物本体も頑丈だが、まずはこの転移を止めないとどうしようもないな |
アイゼン | …ちっ。ここまで来て惜しいが、あの装置を破壊するしかないか |
ルカ | えっ…? |
パスカル | 破壊って…!そんな殺生な~、まだ全然調べてないのに~! |
アリーシャ | 残念だが、私も破壊に賛成だ。貴重な島の遺物と言えど、このままでは危険すぎる |
アリーシャ | あの動きを止めてからでないと、かなり不利な戦いになるからな |
パスカル | …う。それはそうだけど… |
ルカ | パ、パスカル… |
ルカ | (パスカル…すごく残念そうだ。 そうだよね、転移装置なんて すごく貴重なものだし) |
アイゼン | どの道、あの装置を止めなければこの森からも出られない |
アイゼン | この状況では悠長に構えてる時間もないしな。破壊するしかないだろう |
パスカル | …うぐ。確かに…このままじゃ、みんな危ないもんね… |
パスカル | すっごくやりたくないけど…うう~… |
ルカ | (…何とか装置を壊さずに、 魔物を倒せないかな…) |
ルカ | (でも、あの魔物は正面から 戦うと攻撃を受け付けなかった… 不意をつかないと、それも…) |
ルカ | (不意…そうだ!! あの装置を使えば…!) |
ルカ | み、みんな、その… |
ルカ | (…でも、本当に僕なんかの 考えが上手くいくのかな…) |
ルカ | (いや、ここで言い出さないと… アリーシャやパスカルを 危ない目に遭わせた時と同じだ) |
ルカ | (それに…) |
| |
アイゼン | 自分の舵は自分の意志で取る。…それが俺の流儀だ |
アイゼン | 自分で選んだやり方なら、どうなろうが後悔はしない |
| |
ルカ | …… |
アリーシャ | では…いいんだな、パスカル |
パスカル | ~~~っ!わかった!あの装置、壊しちゃお── |
ルカ | ──待って! |
パスカル | …ルカ? |
ルカ | みんな…僕の…僕の話を聞いてほしい! |
ルカ | もしかしたら…全部上手くいくかもしれない! |
scene3 | ルカの作戦 |
ルカ | 僕の作戦、どうかな…? |
アリーシャ | …やはり駄目だ。危険すぎる。それでは、君の安全がまるで考えられていない! |
ルカ | 言い出したのは僕だから…一番危険な役目は、僕がやらなきゃ |
ルカ | 僕も…みんなの役に立ちたいんだよ |
アリーシャ | しかし…! |
ルカ | お願い、アリーシャ。…みんな! |
パスカル | ルカ…! |
アイゼン | …やるか |
アリーシャ | アイゼン! |
アイゼン | こいつは出来ると思ったから俺達に話したんだ |
アイゼン | なら、俺達が口を挟む余地はない。無茶が多い作戦だが…俺もあの装置は壊したくないからな |
ルカ | アイゼンさん…! |
アイゼン | …ただし、失敗しそうなら装置はすぐに破壊する。それでいいな |
ルカ | …はい。アリーシャも…お願い |
アリーシャ | そこまで言うなら…わかった。私も全力を尽くそう |
ルカ | …ありがとう!ロイド、もう大丈夫だよ! |
ロイド | …話はまとまったか!?それなら…虎牙破斬! |
| ズバッ! |
| オ…オオオオ!! |
アリーシャ | 魔物がよろめいた…!さすがだな、ロイド! |
ロイド | へへっ、完全には効かなくても、押し切るくらいなら出来るさ!今のうちだ、みんな! |
ルカ | うん!今行くよ!それじゃあまず… |
パスカル | あたしが装置を操作する、だよね!その間、魔物はお願い!アリーシャ!アイゼン! |
アリーシャ | わかった!ロイド、私達に任せて下がれ!ルカと一緒にパスカルを守ってくれ! |
ロイド | ああ!…って、その装置、ぶっ壊すとか言ってなかったか? |
ルカ | 壊さないように作戦を考えたんだ!だから、ロイドも協力して! |
ロイド | おう!よくわかんねえけど、パスカルを守ってたらいいんだな? |
ルカ | ロイド…うん。ありがとう…! |
パスカル | こういう機械は前に使った事あるし、しばらくいじれば操作法はわかるはず…! |
| ピッ…ピピ…! |
パスカル | 違う、こうじゃないか…!思ったより複雑だ~!…でも── |
ルカ | 装置を壊して止められたとしても…あの硬い魔物を倒すためには、もっと大きな力が必要だよ |
ルカ | だから…逆に装置を利用したいんだ。パスカルに、この装置を操作してもらう |
パスカル | 操作って…止めるんじゃなくて?一体どうするの? |
ルカ | うん…どうにかして、僕をあの魔物の上に転移させて。僕が上から飛び込んで攻撃する |
アリーシャ | 自分が落下する力を使って魔物に斬りかかるという事か… |
ルカ | そうすれば、正面から攻撃するよりも魔物の不意をつけると思うんだ |
アイゼン | 向こう見ずな策だな。装置を操作している間、時間稼ぎは俺達がやるとしても… |
アリーシャ | ああ。本当に装置を動かせるのか、その保証がない |
ルカ | …も、勿論、無理だと思ったらすぐ壊してもらっていいよ!きっとパスカルだって狙われるし…! |
ルカ | でも…パスカルなら、動かせると思うんだ |
パスカル | …! |
ルカ | 僕達の誰よりも機械に詳しいし…カタグラフィだって、パスカルがいなきゃ使えなかった |
ルカ | だから… |
パスカル | …へへ。まっかせて、ルカ!ちょちょいのちょいだよ! |
パスカル | ──あたしにかかれば、こんな装置くらい無理でも無茶でも何でもないって…! |
ロイド | アイゼン達が押され始めた!パスカル…そっちはどうだ!? |
パスカル | もう少し!操作法はわかってきたから、あとは転移システムを見つけるだけ! |
パスカル | 駄目だ…これも違う!いや、だったら、ここを一時的に解除して…! |
| ピッ…ピピ…! |
パスカル | …これだ!この部屋の転移システム! |
パスカル | …ルカ!準備出来たよ! |
| オオオオオ!! |
パスカル | って、うわあ!こっちに来る!? |
アイゼン | …お前の相手は俺達だ |
アリーシャ | 行かせるものか!はああっ! |
| ズバッ! |
| オッ…オオオ!? |
ロイド | ひるんだか!さすがだぜ、二人共! |
パスカル | た、助かった~…そんじゃ、ルカ!今度こそ行くよ! |
ルカ | うん、お願い! |
パスカル | …転移装置、作動! |
ルカ | …っ! |
| ヴーーン…! |
ルカ | …!!わ、わわ!本当に転移した! |
| オオオオオ!! |
ルカ | 魔物が真下に…!よし、この勢いなら…! |
ロイド | …そういう事か!いいぜ、やっちまえルカ! |
ルカ | …行くぞ!はあああああ! |
ルカ | 裂空斬!! |
| ズバッ! |
| オオオオオ!!?? |
アリーシャ | ルカの攻撃が効いた…!見事な一撃だ! |
アイゼン | このまま畳みかけるぞ! |
ルカ | はい! |
scene4 | ルカの作戦 |
ルカ | これで…最後だ!はああっ! |
| オ…オオオ…! |
| |
ルカ | …た、倒せた! |
ロイド | 装置も無事だ。ルカが考えた作戦だったんだよな?すげーな、ルカ! |
パスカル | これで思う存分調べられるよ~!ありがと、ルカ! |
ルカ | ぼ、僕は大した事やってないから… |
パスカル | またまた、すーぐ引っ込んじゃうんだから…ん?何だろ、これ |
アイゼン | どうした? |
パスカル | 何かね、装置にさっきまでなかった項目が追加されてて…えい! |
| ヴーーン…! |
アリーシャ | …何だ?確かに動いたようだが、装置には何も変化がないな… |
ロイド | いや…装置の方じゃない!その隣…台座の方から何か出てきたぜ! |
ルカ | ほんとだ…!ぼんやり青く光ってて…まるで星みたい |
ルカ | …でも、何だろう。この青い光、どこかで見たような…? |
アイゼン | ああ、この光には覚えがある。エルピスの塔の頂上にあった…サフィアの輝きによく似ている! |
パスカル | だよねだよね!?あたしもそう思ってたとこ!って事はさ…! |
ルカ | まさか…これって、サフィアなの!? |
scene1 | 憧れへの一歩 |
ロイド | そうだ…サフィアだ!この青い光、サフィアにそっくりだぜ! |
ルカ | じゃ、じゃあ、お宝ってサフィアの事だったの!?この…青い星が!? |
アイゼン | 落ち着け。確かにエルピスの塔から見えた光によく似ているが… |
アイゼン | 塔のものと比べるとかなり小さい。片手で持てる程度の大きさだ |
パスカル | 関係はありそうだけどね~。森も遺跡も、これを守ってたんだろうしさ |
アリーシャ | 驚いたな…。まさか、本当にこんなものが隠されていたとは… |
ロイド | …よし。お前が取れよ、ルカ |
ルカ | え…ええ!?どうして僕が…? |
ロイド | どうしても何も、魔物を倒して装置を止められたのは、お前のお蔭だろ? |
ルカ | 僕の…お蔭?でも…何度も足引っ張っちゃったし…! |
アイゼン | そうでもない。実際、装置を使った一撃がなければかなりてこずったはずだ |
アイゼン | お宝を一番に手にするくらいの働きはしている |
ロイド | そういう事だ!ほら、行ってこいって |
ルカ | う、うん…それじゃ |
| |
ルカ | …近付いて見ると、本当に眩しいなあ。触っても大丈夫…だよね |
ルカ | あ…普通に取れた。な、何だか実感わかないよ~…! |
パスカル | ル~カ~!早く見せてよ、あたしも触りたいんだから~!! |
ルカ | う、うん…! |
パスカル | ふむ?ふむふむふむ?見れば見るほど面白いな~、これ! |
パスカル | ここまで近いとはっきりわかるよ~。あたしが感じてたビリビリは、これが出してるみたい |
アイゼン | 俺達にはわからんが…何か底知れないものは感じるな。少し貸してみろ |
アイゼン | …… |
アイゼン | …特に仕掛けがあるわけではなさそうだ。薄く輝いているだけで反応もない |
アリーシャ | だが、とても美しい輝きだ。さっきも言っていたが、サフィアに関係するものかもしれない |
ロイド | ああ!何より…これぞお宝って感じだぜ! |
ロイド | こういうのを待ってたんだよ!いや~冒険の甲斐があったぜ! |
アリーシャ | …後は本部に帰ってからだな。パスカル、装置を完全に止める事は出来るか? |
パスカル | うん。もうちょっと時間をくれれば、完璧に操作法がわかると思うよ |
アリーシャ | では、それを待って調査隊本部へ戻ろう。装置が止まれば、森も抜けられる |
パスカル | まっかせて~! |
アイゼン | …本部か。…潮時だな |
scene2 | 憧れへの一歩 |
アリーシャ | さて、そろそろ出口のはずだが…みんな、いるな? |
ルカ | うん、大丈夫だよ。パスカル達はあっちで話し込んでるけど |
パスカル | いや~、最後の部屋は大漁だったね!あのあと、青いお宝の他にもいろいろ見つかったし! |
パスカル | カタグラフィに、機械の残骸…!帰って調べるのが楽しみだよ~! |
アイゼン | ほとんど破損しているが、収穫としては十分だ。それよりも── |
ロイド | あの二人、結構気が合うみてーだ。…にしても、元気だよな。俺はさすがに疲れたぜ |
アリーシャ | 脱出にもそれなりの時間がかかってしまったからな…。もう式典も終わった頃だろう |
ロイド | げっ…!そ、そんなに時間経ってたのか? |
ロイド | 後でコレットに謝らないとなあ…。って、そう言えば…! |
ロイド | 俺は護衛のためだけど…アリーシャも式典に出るはずだったんだよな? |
アリーシャ | 仕方がない、で済ませるわけにはいかないが…ただ、状況が状況だ |
アリーシャ | 各国の平和協調を示す場にいられなかったのは残念だが…事情については、私から上に話す |
ロイド | 俺達も説明するよ。お宝についても、話さなきゃならねーし |
ルカ | …お宝。お宝かあ… |
アリーシャ | ん…?ルカ、前をよく見ないと…! |
| ドテッ…! |
ルカ | あいたっ…!うう…つまづいちゃった… |
アリーシャ | …大丈夫か?崩落で足元が不安定になっている。気を付けて進んだ方がいい |
ロイド | おいおい…せっかくお宝を手に入れたんだぜ。シャキッとしろよ、ルカ |
ルカ | あはは…何だか信じられなくて。こんな発見するなんて、思ってもいなかったから |
ロイド | そうなのか?わざわざ調査隊に入ったのに? |
ルカ | 僕、将来の事で父さんと喧嘩してさ。当てつけって言うか…半分勢いで調査隊に入ったんだ |
ルカ | でも、はっきりした目的はなかった。いつもと違う環境なら、何かが変わるかもって思ったくらい |
ルカ | だから…やっぱり信じられないんだ |
ルカ | そんな僕が、遺跡の中を走り回ったり、戦ったりして、こんなお宝を持ってる事が… |
ロイド | ったく、しょーがねえな。何度も言うけど、もっと胸張ってりゃいいんだよ |
ロイド | 遭難してたはずが、遺跡に眠るお宝を大発見!誰が見たって、大手柄なんだぜ |
ルカ | そうなんだけど… |
アリーシャ | 嬉しいのはわかるが油断は禁物だぞ。…っと。光が差しているな。どうやら、出口のようだ |
ロイド | ふい~、ようやくか!さ、行こうぜ! |
ルカ | う、うん…! |
| |
アリーシャ | ふう、ようやく外に出られたか。もうすっかり朝になってしまったな |
パスカル | そんじゃ、ひとまず昨日泊まった集落まで戻ろうよ~! |
パスカル | あそこにも持ち帰りたいものがたくさんあるし! |
アイゼン | ああ。無論、そのサフィアによく似たお宝も調べる必要がある |
アイゼン | あれだけの技術を持った一族が隠していたものだ。小さいが、どんな力を秘めているか… |
パスカル | ちょっと!まずはあたしが調べるんだから、盗んだら駄目だよ~! |
アイゼン | 後でも先でも構わない。詳しい事がわかったら教えてもらう。…その内な |
パスカル | お?そういう事なら、全然オッケー! |
ロイド | …って言ってるけど、いいのか、あれで? |
アリーシャ | いいわけないだろう!これは本部に持ち帰って、しっかりと管理させてもらう! |
アリーシャ | その後、正式に本部の研究者の手に渡して… |
パスカル | え~!?そりゃないよ~!横暴だ!断固抗議する! |
アリーシャ | い、いや、しかし… |
ロイド | あーもー、みんなのもんって事でいいだろ!ここでもめるなって! |
ルカ | (みんなの…そうだ。 ロイドは僕のお手柄だって 言ってくれたけど…) |
ルカ | (僕があの作戦をたてられたのは、 みんなが僕を助けてくれたからだ) |
ルカ | (僕だけじゃ駄目だった。 僕だけじゃ、このお宝は 絶対手に入らなかった…!) |
ルカ | そうか…みんなとなら…! |
パスカル | なーにニヤニヤしてんの、ルカ? |
ルカ | えへへ…何でもないよ |
パスカル | ふーん…? |
ロイド | よーし、それじゃあさっさと森を抜けようぜ! |
ロイド | へへ…!お宝を持ち帰ったら、きっと大騒ぎになるだろうな |
ルカ | あはは…そうだね |
ルカ | (冒険はやっぱり怖かった。 僕一人じゃ、きっとまだ 出来る事は少ないと思う) |
ルカ | (アスラみたいにかっこよく、 とはいかないけど…) |
ルカ | (みんなと一緒なら、 僕も変わっていけるかも!) |
パスカル | ル~カ~?早く帰ろうよ~! |
ルカ | …うん、今行くよー! |
Name | Dialogue |
| 塔の封印 |
アリーシャ | 塔が見えてきたな。ここまで来たらもう安全だ |
ルカ | よ、よかった…。森を抜ける間も魔物は襲ってくるし生きた心地がしなかったよ |
ロイド | そうだな…早く本部に帰ろうぜ。さすがに疲れたしよ |
パスカル | ちょっと待った! |
アリーシャ | どうしたんだ、パスカル?疲れていると思うが、このまま進めば本部はすぐだ |
パスカル | 違うって。せっかく塔の近くまで来たんだしちょっと寄っていこうよ |
パスカル | それで、お宝がサフィアに関係あるか試しちゃおう! |
アリーシャ | いや、それは駄目だ。前にも言ったが、その宝は本部に預け研究者の手で詳しく調べないと |
パスカル | う~ん、どうしても駄目?ちょっとだけでいいから~ |
アリーシャ | そう言われてもな…。原則として、新しい発見があった時は本部にすぐ報告すべきなんだ |
アイゼン | だが、ここからなら塔の方が近い。どうせ本部とやらが調べるなら、俺達がやってもいいだろう |
パスカル | そうそう、ちょーっと先に調べるだけ!わかった事はちゃんと報告するからさ |
ルカ | すごい理屈だね… |
アイゼン | このお宝がどんな力を秘めているのかは未知数だ。情報があって困る事はないだろう |
ロイド | うーん、俺もこのお宝が何なのか知りたい気持ちはあるけどよ |
ロイド | いい加減帰らないと幼馴染を待たせてるしな… |
アリーシャ | 私も、式典を欠席した事を上に詫びなければならない |
アリーシャ | だから、寄り道せず本部に向かおう |
パスカル | う~ん、こうなったら── |
パスカル | ね!ね!ルカも気になるよね? |
ルカ | う、うん…まあ気にはなるよ。でも… |
パスカル | そうだよね!んじゃ行こう! |
ルカ | えっ!?何で手を掴んで…パスカル、放してよー! |
ロイド | あーあ、ルカの奴、またパスカルに振り回されてるぜ。ああなったらもう聞かねえか |
ロイド | おーい、俺も行くよ! |
アリーシャ | あ、おい!三人共! |
アイゼン | 反対派はお前だけだ。大人しくついていく方が早く本部に戻れるぞ |
アリーシャ | …全く、仕方がないな… |
| |
パスカル | よ~し、到着~!やっぱりあのお宝とサフィアの光はそっくりだね |
ルカ | もう、パスカル。着いたなら、手を放してよ… |
パスカル | ああ、ごめんね。はい |
ルカ | ふぅ…パスカルの強引さには大分慣れたけどね |
ロイド | しかし、すげー人だかりだな!二人を見失うところだったぜ |
ルカ | うん、みんなエルピスの塔を一目見たくて集まってるみたい── |
| ドンッ |
ルカ | うわっ…っと |
パスカル | あれ?今扉が…んん? |
ロイド | ルカ、大丈夫か? |
ルカ | う、うん…はは…もう少しで扉に顔から突っ込むところだったよ |
パスカル | ありゃ、気のせいだったのかな?う~ん |
アリーシャ | この人だかりだ。私達が扉の前で立ち止まっていては迷惑になる |
アリーシャ | 宝とサフィアとの関係を調べるのに時間がかかるようなら、本部に任せて── |
パスカル | ちょっと待って!試してみたい事があるんだ |
パスカル | ルカー!ちょっと扉の近くに来てよ |
ルカ | いいけど…もしかしてまた肩車? |
パスカル | 今回はちょっとした実験!ほら、早く早く! |
ルカ | わかったよ。…ん?今、何か… |
アイゼン | わずかに扉が反応したように見えたな |
パスカル | でも、この間来た時はルカに反応してなかったんだよ。って事は… |
アイゼン | 扉が、こいつではなくお宝に反応してるって事か |
パスカル | うん、絶対そうだよ!ルカ、お宝を扉に近付けてみて! |
ルカ | ええっ、僕が!? |
パスカル | あたしがしてもいいけど、今お宝を持ってるのはルカでしょ? |
ルカ | わかったよ、もう、強引なんだから… |
ルカ | な、何!?お宝が光り出した! |
パスカル | おおお、扉もピカッって光ってる!お宝が封印に反応してるんだよ! |
アリーシャ | もしかして、これが塔の鍵なのか!? |
アイゼン | そのようだな。…と言っても、封印が解けたわけではないようだ |
ルカ | 扉の一部が光っているだけ…? |
パスカル | う~ん、このお宝が鍵なのは間違いないけど多分、一部の封印しか解けないんだよ |
| |
パスカル | ほら、遺跡の壁画を思い出して。塔を囲むように星が並んでたでしょ? |
パスカル | あの星はこのお宝…つまり、塔の鍵を表してたんだよ |
| |
ルカ | あ…扉から離れたら光が消えちゃった |
アリーシャ | 鍵を集めないと封印は解けないのだろうか? |
パスカル | そうなんじゃないかな~ |
ロイド | 何だ、じゃあ今はまだ扉は開かないのか… |
アイゼン | おい、他の鍵の反応は感じないのか? |
パスカル | ん~、ちょっとしか感じないかな?だから、近くにはないと思う。辛うじて方向がわかるくらいだよ |
アイゼン | どの方向だ? |
パスカル | えっと…あっちの方から感じるよ |
アリーシャ | あの方向には湖があるが…調査はまだ進んでいない。鍵があってもおかしくないな |
アイゼン | …なるほどな |
アリーシャ | それも含めて本部に報告しなければ…では、一刻も早く宝を本部に持っていこう |
パスカル | そんな~。まだ調べてみたい事があるのに~! |
アリーシャ | いや、これ以上時間は取れない。こうして寄り道したのも本来なら許されないんだ |
アイゼン | …ふん、融通の利かない女だ |
アリーシャ | それが規則だ |
アリーシャ | …アイゼン、お前も海賊である以上一緒に本部に── |
| |
観光客1 | 扉が光っているのが見えたぞ!君達が封印を解いたのか!? |
| |
アリーシャ | …!?いつの間にこんなに人が… |
ロイド | やべーぞ、アリーシャ!さっきよりも人が増えてる。すげー騒ぎだ |
観光客2 | 君、一体何をしたんだ?もう一度やって見せてくれ! |
ルカ | えっ?それは、その… |
調査隊員1 | 四大国からの報酬はこいつらの物か…何でもいいってんだから、羨ましいな |
調査隊員2 | いや、まだ扉は開いてないぞ!俺達にもチャンスは残ってる── |
ルカ | ど、どうしよう…このままじゃ収拾がつかないよ |
アリーシャ | 私がどうにかしよう。混乱を収めるのは警備の役目だ |
アリーシャ | みんな、落ち着いてくれ! |
調査隊員2 | おい、封印の鍵は何だったんだ?扉を開くにはどうすればいい!? |
パスカル | うわっ!ちゃんと説明するから、押さないで~! |
ルカ | パ、パスカル!今助け…わあああ~!? |
ロイド | あんた、一旦落ち着けって!アリーシャの話を聞いて── |
アイゼン | …… |
アイゼン | この騒ぎ、姿を消すには都合がいいな |
アリーシャ | 他の警備の者も駆けつけてくれたが…騒ぎが収まらない…! |
??? | 塔の付近が騒がしいと連絡があったが…何が起こっている? |
アリーシャ | …!あなたは…クラトス殿!応援に来てくださったのですか? |
クラトス | アリーシャか。行方不明だと聞いたが、どうしてここにいる |
アリーシャ | その事については改めて報告させていただきます。今は… |
クラトス | ああ、騒ぎを収めるぞ |
アリーシャ | はい! |
| |
クラトス | 騒ぎは何とか収まったな。しかし…ロイド |
クラトス | 騒ぎの真ん中にお前がいるとは思わなかったぞ |
ロイド | いやー、助かったぜクラトス!こっちはパスカルとルカを助けるので、手一杯だったからさ |
アリーシャ | 本当にありがとうございました。お蔭でみんな怪我もなく… |
アリーシャ | あっ!? |
ロイド | うわっ!何だよ、アリーシャ。いきなり大きな声出して |
アリーシャ | ロイド、アイゼンはどこに行った!? |
ロイド | へっ?あいつなら一人でも大丈夫だと思ってたけど…そういえばいないな |
ルカ | 騒ぎのうちにはぐれたのかな |
アリーシャ | …いや、おそらく私が目を離した隙に逃げたのだろう |
ロイド | 逃げたって…あー、そういえばあいつ、森を抜ける間だけ協力するって言ってたな |
パスカル | 何だか馴染んでたから忘れてたよ。でも、挨拶もなしに消えるなんて水臭いな~ |
ルカ | …そっか。もっとアイゼンさんと冒険したかったんだけどな… |
クラトス | 話が見えんな。そのアイゼンと言うのは一体何者だ? |
アリーシャ | …私が追っていた海賊です。話せば長くなるのですが… |
アリーシャ | …というわけです |
クラトス | …なるほど。その海賊の事とお前達が行方不明だった理由は大体把握した |
クラトス | だが、まずはこの騒ぎの原因についてだ |
クラトス | 調査隊のシルヴァラント代表として、私は本部に報告する義務がある |
ルカ | えっ…調査隊の代表!? |
パスカル | クラトスって調査隊の中でもすごい人なの? |
アリーシャ | 簡単に言えばそうだ。四大国それぞれの代表が、協同で調査隊を指揮している |
ロイド | ん?ルカ、どうしたんだ?顔が真っ青だぞ |
ルカ | だって…クラトスさん、調査隊の偉い人なんだよね? |
ルカ | 僕が調査隊なのに迷ってたって事知られたら、叱られるんじゃ… |
ロイド | なーに言ってんだよ!怒られたりしないって言っただろ? |
ロイド | 何てったって俺達、塔の鍵を見つけたんだぜ! |
クラトス | …!!鍵…だと!? |
ルカ | ひっ…!ごめんなさい! |
クラトス | …?何を謝っている? |
ルカ | えっ…怒ってるんじゃ? |
クラトス | …何故そう思ったか知らないが鍵について詳しい話が聞きたいだけだ |
ロイド | ははっ、心配すんなルカ。クラトスは元からこんな顔なんだよ |
クラトス | …ここではまた騒ぎになるな。話は本部で聞こう。私について来い |
アリーシャ | はい。…行こう、みんな |
| 新たな役目 |
アリーシャ | ──報告は以上です |
クラトス | 鍵とカタグラフィ…か。それが事実なら、調査の方針を大きく変えねばならん |
本部の男 | 方針を変えるなら、それに合わせて調査隊も編成し直さなければならないぞ |
クラトス | ああ、これから本部で話し合いを始める。アリーシャ達は外で待機していてくれ |
| |
ルカ | はあ…怒られなくてよかったよ… |
ロイド | だから、大丈夫って言っただろ?むしろすげー褒められたじゃねえか |
アリーシャ | ルカは調査隊として正式な任務を与えられる前だったが、あれで成果を上げたのは確かだ |
ルカ | う、うん…ありがとう、二人共 |
アリーシャ | ただ、私は喜んでばかりはいられないが… |
ロイド | ん?どうしてだ? |
アリーシャ | 私は警備の持ち場を離れ、参加するはずだった式典も欠席してしまったからな |
アリーシャ | 鍵を見つけた成果によって上からのお咎めはなかったが…自戒は必要だ |
ルカ | そっか…アリーシャは責任感が強いんだね |
ロイド | ちょっと気にしすぎじゃねえか?…にしても、結構待たされるよなあ |
ロイド | こんなに時間がかかるなら、コレットに土産話でもしてくればよかったかもな |
ロイド | コレットは本部にいるってクラトスが言ってたし…ただ待ってるよりずっといいぜ |
パスカル | あたしも待ってる間に森で手に入れた物や再生装置をいじりたかったな~ |
パスカル | なのに、あれ全部没収なんて聞いてないよ~! |
ロイド | 没収じゃないだろ?本部の奴は預かるって言ってたぜ |
アリーシャ | それに調査隊の研究員が調べてくれるなら、何か新しい事もわかるだろう |
パスカル | だとしても、横暴だ~!だったらあたしも調査隊に入る! |
アリーシャ | そう言われてもな… |
ロイド | パスカル、落ち着けよ。預けたって事は、そのうち返してもらえるんだろ? |
パスカル | あたしが調べられないなら没収と同じだよ~! |
クラトス | 騒がしい声が聞こえたぞ |
アリーシャ | クラトス殿…!申し訳ありません。お見苦しいところを… |
パスカル | あっ、ちょうどよかった!クラトスに相談したい事があるんだ |
クラトス | …何だ |
パスカル | あたしも調査隊の研究員になるから、没収された物を一緒に調べさせて! |
アリーシャ | パスカル、気持ちはわかるが調査隊はすぐに入れるものじゃない |
アリーシャ | 試験などの手順を一つずつ踏んで初めて入る事が出来るんだ |
アリーシャ | ルカだって試験を受けて正式な調査隊員になったんだぞ |
クラトス | いや、いいだろう。調査隊に入れてやる |
全員 | …! |
パスカル | ほんと!?言ってみるもんだね! |
アリーシャ | クラトス殿、本当によろしいのですか? |
クラトス | ああ、これは本部の方針だ。もとより、優秀な冒険者は現地で採用する予定だったからな |
パスカル | ねえねえ、調査隊員になれば没収された物を返してもらえるよね? |
クラトス | いや、預かった物はすでに研究員が調査しているから無理だ |
パスカル | そんな~!うう、じゃあこれから見つけた物なら、あたしが調べてもいい? |
クラトス | 構わんだろう |
パスカル | おおっ、やった~!没収された物は残念だけどこれで島をぜーんぶ調べられるよ! |
ルカ | よかったね、パスカル! |
クラトス | パスカルだけではない。ロイド、お前も調査隊に加われ |
ロイド | えっ、俺もか!? |
クラトス | 鍵を見つけた功績はお前達全員のものだからな。優秀な人材は一人でも多い方がいい |
ロイド | うーん、調査隊か… |
パスカル | ん?どうしたの、ロイド?調査隊員になればもっといっぱい冒険できるんだよ! |
ロイド | うーん、ちょっとな |
パスカル | …ふーん? |
クラトス | …話を続けるぞ。これでルカ、アリーシャを含め、調査隊員は四人。そこで── |
クラトス | 即席ではあるが、この四人に小隊を組んでもらう |
クラトス | 調査区域の安全確保、遺物の探索が主な任務だ |
クラトス | そしてアリーシャには隊長として小隊を率いてもらいたい |
アリーシャ | 私が小隊の…隊長ですか!? |
ルカ | いきなり小隊って言われて驚いたけどアリーシャが隊長なら安心だね |
アリーシャ | そう…だろうか |
クラトス | 何か問題があるのか? |
アリーシャ | いえ、そういうわけでは… |
クラトス | 確かに急な任命だ。だが、お前ならこなせるはずだ |
アリーシャ | …はい。期待に応えられるよう、努めます |
クラトス | 他の者も何か気になる事があれば聞こう |
ロイド | あのさ、ちょっといいか |
クラトス | 何かあるのか、ロイド? |
ロイド | やっぱり俺、調査隊には入れねえよ |
ルカ | えっ、どうして!? |
パスカル | 本当だよ!冒険の続きが出来るぞー!やったぜ!くらい言いそうなのに |
ロイド | みんなにも言っただろ?俺は神子であるコレットの護衛で来たんだって |
ルカ | 神子って…シルヴァラントの!? |
ロイド | ああ。…何で驚いてるんだ? |
ルカ | 驚くよ!だって、幼馴染の護衛としか言ってなかったじゃないか |
ルカ | そんなすごい人の護衛だったんだ… |
アリーシャ | …だからこそ、そんなに重要な仕事を置いておけないと言うのだな |
ロイド | ああ、調査隊員になったらコレットの近くにいられないだろ? |
クラトス | では、こうすればいい。お前が調査隊にいる間、神子には他の護衛を付ける |
ロイド | クラトスの提案は嬉しいけどよ… |
クラトス | …勿論、無理にとは言わない。だがロイド、お前は本当のところはどう思っている? |
ロイド | …… |
ロイド | 俺が、どう思っているか… |
| |
ロイド | みんな悪いな。コレットに相談するまで隊の結成を待ってもらってさ |
アリーシャ | いや、それは構わないよ。一度、神子殿とお話ししてみたいと思っていたんだ |
パスカル | あたしはすぐにでも調査に行きたいところだけど |
パスカル | まっ、神子にも興味あったしね~。前から話には聞いてたけど会うのは初めてなんだ! |
ルカ | 神子の護衛、かあ… |
パスカル | な~にルカ?表情が暗いよ? |
ロイド | 緊張してんのか?安心しろよ。コレットはいい奴だぜ! |
ルカ | あっ…いや、そうじゃないんだ。情けないから、ちょっと言いにくいんだけど… |
ルカ | ロイドが神子の護衛を続けるなら、アイゼンさんだけじゃなくて、ロイドもいなくなっちゃうでしょ? |
ルカ | 急に二人もいなくなると思うと、寂しいって言うか、不安って言うか… |
ロイド | うーん…こればっかりは何ともな |
ルカ | そっか…そうだよね |
パスカル | 大丈夫だって!寂しくないようにその分あたしが盛り上げちゃうからさ~ |
パスカル | ほーら、背中を伸ばして!しょぼくれちゃ駄目だよ~!それと、笑顔、笑顔! |
ルカ | パスカル…。うん、ありがとう |
パスカル | どういたしまして! |
ロイド | ははっ、にぎやかでいいな。みんなと冒険を続けたら退屈しなさそうだ |
アリーシャ | ロイド、君は調査隊に入るつもりなのか? |
ロイド | 正直なところ、少し迷ってるんだ。コレットの護衛は大事だけど、みんなと冒険したい気持ちもある |
ロイド | …だから、まずコレットに全部話す!それから、改めて自分がどうするか決めるよ |
アリーシャ | そう…なのか?改めて決めるとは── |
パスカル | 二人共何やってんの~?早くコレットに会いに行こうよ~! |
ロイド | おっと、これ以上コレットを待たせられねえな。行こうぜ、アリーシャ |
アリーシャ | …… |
アリーシャ | …てっきり、ロイドは護衛の仕事を優先させたいのかと思っていたんだが…違うのか |
scene1 | 四大国連合調査隊 |
ロイド | コレット!ごめんな、長い間待たせちまって |
コレット | ううん、無事でよかったよ。お帰りなさい、ロイド |
ロイド | ああ、心配かけたよな。本当にごめん! |
コレット | もう謝らないで、ロイド。それよりお話、聞かせてほしいな。約束だったよね |
ロイド | ああ、そうだったな!土産話はたくさんあるんだ。まずは… |
ロイド | ──それでな、コレット。そのお宝が塔の鍵でさ。それが一番すげー発見だったぜ |
コレット | そっか、ふふっ |
ロイド | どうした、コレット? |
コレット | ううん、ロイドの話す姿を見てたらすごく楽しかったんだなって |
コレット | でも、まさかアリーシャさんもロイドと一緒だったなんてびっくりしちゃったよ |
コレット | 式典にいなかったから心配してたんだ |
アリーシャ | ご心配をおかけしました。平和の祭典にぜひとも参加したかったのですが… |
ロイド | あー…俺も式典に出れなくて悪かったな |
コレット | ううん、仕方ないよ。でも、式典すっごくよかったからロイド達にも見せたかったな |
アリーシャ | 神子殿、よかったというのは? |
コレット | えっとね…四大国の偉い人達が平和のために手を取り合おうって宣言してたんだ |
コレット | それでね、みんな笑顔で…そこにいるだけで温かい気持ちになっちゃった |
アリーシャ | そうですか、四大国が… |
アリーシャ | 騎士として、その場に居合わせる事が出来ず残念でなりません |
パスカル | まあまあ、アリーシャ。終わった事を気にしてても時間は戻らないよ |
パスカル | これからは調査隊員として頑張ればいいじゃん! |
アリーシャ | …ああ、そうだな |
コレット | あれ、アリーシャさん達はみんな調査隊員なの? |
パスカル | えへへ~、そうだよ!さっきクラトスから任命されたんだ |
ルカ | えっと…僕は元々調査隊員として島に来たんです |
コレット | へえ…みんな調査隊員なんてすごいんだね! |
ロイド | コレット、その事なんだけど…実は俺もクラトスから調査隊に入らないかって誘われてんだ |
コレット | えっ、そうなの?じゃあ、ロイドはこれからも冒険出来るんだね! |
ロイド | いや、俺はコレットの護衛だから調査隊の話は断ろうと思ってるんだ |
コレット | 断っちゃうの?ロイド、受けた方がいいよ |
ロイド | …いいのか?俺が調査隊に入っても |
コレット | うん。さっきロイドが楽しそうにお話ししてくれたの見て、応援したくなっちゃった |
コレット | 私は神子の仕事があるから、一緒には行けないけど…ロイドはもっと島を見てほしいなって |
ロイド | コレット… |
コレット | えへへ、次はどんなお話が聞けるかな。楽しみにしてるね |
ロイド | …ああ、任せてくれ!ありがとな、コレット! |
| |
パスカル | クラトスに報告すれば晴れてロイドも調査隊に加入、だね! |
ロイド | おう、みんな改めてよろしく頼むぜ! |
パスカル | こっちこそよろしく~!いや~、よかったよかった!どうせなら賑やかでないとね! |
ルカ | うん、ロイドが一緒なら安心だよ |
アリーシャ | …あっさり決めてしまったが、これでよかったのか、ロイド? |
ロイド | へっ?あっさりって事はねーだろ?返事を待ってもらったしな |
アリーシャ | そう、だな。確かにそうだが… |
アリーシャ | 君にとって神子殿の護衛は大事な仕事だったはずだろう? |
アリーシャ | だが、神子殿と話してすぐに調査隊に入ると決めている。それは何故だろうと… |
ロイド | …ああ、その事か。俺も最初は、コレットの護衛に戻るつもりでいたんだ |
ロイド | けど、クラトスに本当はどうしたいんだって聞かれて…それで、改めて考えたんだ |
ルカ | 確かにロイド、クラトスさんと別れてから考え込んでたもんね… |
ロイド | そしたら、お前らと冒険したいって気持ちが大きくなってさ |
ロイド | コレットはそれに気付いて、俺を後押ししてくれたんだと思う |
ロイド | だから俺は、応援してくれるコレットの気持ちに応えるためにも調査隊になるって決めたんだ |
アリーシャ | そうか…。ロイドはそう思ったんだな |
パスカル | あれ、もしかしてアリーシャはロイドが調査隊になるの、反対してる? |
アリーシャ | そんな事はないよ!ロイドが一緒なら心強い |
ロイド | そうか!じゃあ早くクラトスに報告に行こうぜ |
アリーシャ | …ああ |
scene2 | 四大国連合調査隊 |
アリーシャ | 本部の者によると、クラトス殿は先ほど出て行かれたようだ |
ルカ | やっぱり調査隊の偉い人だから忙しいのかな? |
アリーシャ | そうかもしれないな。だが、すぐに帰ってくるそうだ。しばらくここで待って── |
| |
??? | ──だーっ!わかったっての!じゃあな! |
| |
パスカル | ん?誰か本部から出てきたね |
ロイド | あれは…ルークだ!どうしたんだよ、こんなところで |
ルーク | ロイドか!?コレットがすげー心配してたぞ |
??? | おい、ルーク、勝手に一人で出て行くなっての |
ルカ | あれ、スパーダ…? |
スパーダ | あ?ルカじゃねーか!遭難しかけたって聞いたが、元気そうじゃねーの |
ルカ | やっぱり!何で本部にいるの?式典に出席するだけじゃ… |
スパーダ | オレもそう聞いてたんだけどよ。上の方でごたごたがあって、四大国連合調査隊ってのにされたんだ |
ルカ | 四大国連合調査隊?初耳なんだけど、それって一体… |
エレノア | 四大国の代表が調査隊に入り、小隊を組む事で各国の結束を示すんです |
アリーシャ | エレノア!では、君がシルヴァラントの代表に? |
エレノア | ええ、そうです。そしてスパーダがア・ジュール代表… |
アスベル | ルークがキムラスカ…俺がウィンドル代表として任命されたんだ |
パスカル | おお~、アスベルだ!なーるほど、確かに代表としてはうってつけだね |
アスベル | ははは…会えてよかった、パスカル。本部の人から話は聞いてるよ |
アリーシャ | お互い知り合いもいるようだが…まずは簡単に、自己紹介させてもらおうか── |
| |
アリーシャ | ──つまり、四大国連合調査隊は四大国の平和協調を宣伝する事が主な役目なんだな |
アスベル | ああ、と言っても君達とする事は一緒さ |
ルカ | へえ…そうだったんだ |
エレノア | あの、アリーシャ。せっかく会えたのですからもう少しお話しませんか? |
アリーシャ | エレノア…?私は構わないが… |
ロイド | いいんじゃねーか?俺達も知り合いと話したいしな |
エレノア | あの、ルーク達もいいでしょうか? |
ルーク | しゃーねぇな、すぐ済ませよ |
エレノア | ありがとうございます! |
アリーシャ | では、エレノア。向こうで少し話そう |
ルーク | あいつら結構仲良いんだな |
ロイド | 二人共シルヴァラントの騎士だしな |
パスカル | 騎士か~。そう言われればどっちも雰囲気が似てる感じがするかも |
ルーク | 確かに、お堅そうなところとか…って…そんな事より!俺はお前らに言いてえ事がある! |
ロイド | へっ?何だよ、ルーク |
ルーク | 俺達が一番に手柄を立ててやるつもりだったのによ。随分目立ったみてえじゃねえか? |
パスカル | ありゃ、もしかしてルークも一緒に鍵を見つけたかったの? |
ロイド | そうなのか?悪かったな。鍵はまだ全部集まってねえしこれから一緒に見つけようぜ |
ルーク | ちげーよ!それだと俺達が目立たねえじゃねえか |
アスベル | ルーク、調査隊は目立つためのものじゃない。俺達の活躍は平和への希望になるんだ |
ルーク | わかってるっつーの!だからこそ、俺達が誰よりも活躍して注目されてやろうって… |
ルーク | …何だよ、お前ら急ににやにやしやがって |
アスベル | ははっ…いや、俺達も負けないように頑張ろうな |
ロイド | へへっ、やっぱりルークはいい奴だな |
ルーク | な、何だよ。今回は先越されたけど、お前らだけにいいかっこはさせねえからな |
スパーダ | まさかルカが本当に鍵を見つけるとは思わなかったぜ |
ルカ | 今回はたまたまだったんだ。それに僕だけの力じゃ絶対手に入らなかったし |
スパーダ | 僕だけの力…ねえ |
ルカ | な、何? |
スパーダ | いや、今までのおめェなら「僕は何もしてない」…とか言ってたぜ、ぜってえ |
スパーダ | 今回はちゃーんと自分も協力したって自負があるわけだ |
ルカ | ええっ!そ、そんなつもりじゃ |
スパーダ | いやー言うようになったなあ。この調子なら本当にサフィアを手に入れちまうんじゃねえか? |
ルカ | そ、そんなの無理だよ…! |
スパーダ | そこは頑張るぐらい言えよ、調査隊としてやっていくんだからな。ヒャーハッハッハ! |
エレノア | アリーシャも警備から調査隊になったんですよね? |
アリーシャ | ああ、まだ実感はわかないけどね |
エレノア | アリーシャ、話と言うのは── |
調査隊員1 | おおっ!あんた、四大国連合調査隊のシルヴァラント代表じゃないか |
エレノア | あ、はい。そうですが… |
調査隊員2 | 式典であんたの凛々しい姿に感動してな。つい、声をかけちまったぜ |
調査隊員3 | みんな四大国連合調査隊には期待してるんだ!頑張ってくれ |
エレノア | 応援ありがとうございます!期待に応えられるよう努めます! |
アリーシャ | 驚いた、すごい人気だな… |
エレノア | ふふっ。私ではなく四大国連合調査隊の人気ですけどね |
エレノア | 式典が終わってから、こうして出自を問わず話しかけられる事も多いんです |
アリーシャ | なるほど…。それはいいな |
エレノア | …それで、話したかったのは調査隊の事なんです |
エレノア | アリーシャは隊長に任命された事をどう思ってますか? |
アリーシャ | …実を言うと私に務まるのか少し不安なんだ |
エレノア | 気持ちはわかります。私も四大国連合調査隊に任命されて最初は戸惑いました |
エレノア | 私にこの仕事が務まるのか…と、悩んだ事もあります |
アリーシャ | そう…なのか?だが、最初はという事は今は違うんだろう? |
エレノア | ええ、今では任命されてよかったと心から思ってます |
アリーシャ | 心から…か |
エレノア | だって、四大国が寄り集まって、こんな風に協調する事は初めてでしょう? |
アリーシャ | ああ、特にウィンドルとア・ジュールは長年争っていたしな |
エレノア | …おそらく人々の中には他国と協調する事に不安を抱えている人もいます |
エレノア | だからこそ、私が仲間と共に四大国連合調査隊として、成果を出せれば… |
エレノア | きっと人々も未来に希望を持てるはずなんです |
アリーシャ | …!そうか…目の前の人々を守る以外にも平和のためにやれる事があるのだな |
エレノア | ええ、手段は一つではありません |
エレノア | 大切なのは、平和のために力を尽くす事ではないでしょうか |
アリーシャ | …その通りだな。はは…随分頭が固くなっていたようだ |
アリーシャ | 私は、隊長として彼らを絶対に守ると誓うよ |
アリーシャ | だから、共に平和のために頑張ろう。エレノア |
エレノア | ええ、同志としても、友人としても…共に! |
アリーシャ | …君とこうして話せてよかった。ありがとう |
エレノア | いえ、私がアリーシャと話をしたかっただけですから。では、みんなと合流しましょうか |
アリーシャ | いや、私は少しここに残るよ。考えたい事があるんだ |
エレノア | …わかりました。先に戻ってますね |
| |
ルカ | あっ、アリーシャが戻ってきたよ |
アリーシャ | すまない、待たせてしまった。ルーク達はもう行ったのか? |
ロイド | ああ、エレノアが合流してすぐにな。あいつらこれから任務に行くってさ |
パスカル | いいなあ~。早くあたし達もクラトスのところに行こうよ |
パスカル | 本部の人に聞いたら、さっき戻って来たって |
アリーシャ | よし、クラトス殿を訪ねよう |
scene3 | 四大国連合調査隊 |
クラトス | 神子と話を終えてきたか。それでロイド、お前は… |
ロイド | おう、調査隊として頑張るつもりだ |
クラトス | そうか…では、お前達全員を正式に調査隊員に任命する |
クラトス | アリーシャ。不安は消えたか? |
アリーシャ | はい! |
アリーシャ | …では、隊長として君達を率いさせてもらう |
アリーシャ | みんな、改めてよろしく頼むよ |
ルカ | うん…こちらこそよろしく。頼りないと思うけど、足を引っ張らないようにするから |
ロイド | おいおい、また引っ込み思案か?まっ、これから一緒に冒険していけばルカも自信がつくかもな |
パスカル | そうだね~。みんなで島の謎を解き明かしちゃおう! |
クラトス | 挨拶は済んだようだな。では、任務を言い渡す前にこれを渡しておこう |
パスカル | やった~!おかえり!あたしのカタグラフィと再生装置! |
パスカル | 返してくれるって事は、本部ではもう調べ終わったんだよね? |
クラトス | ああ、貴重な遺物の提供に感謝する。それと…新たに判明した事がある |
パスカル | えっ、何なに? |
クラトス | 塔の封印に反応した鍵だが、「マナリス」という名前らしい |
アリーシャ | マナリス…何だか不思議な響きだ |
クラトス | お前達にはこれの探索もしてもらいたい |
パスカル | おお!それなら大歓迎だよ~ |
クラトス | パスカル、湖の方向からマナリスの気配を感じるそうだな |
パスカル | うん。でも、近くに行かないと本当にあるかはわからないけどね~ |
アリーシャ | それでも、むやみに探すよりは発見出来る可能性は高い…という事ですね |
クラトス | そうだ。明日より湖へ向かってもらう |
クラトス | 今日はもう休め。私はこれで失礼する |
パスカル | 湖か~。森の時みたいに遺跡があったら調べがいがあって最高なんだけどね |
ロイド | 確かに、見つけた遺跡を探るのはいかにも冒険って感じだよな |
ルカ | あれをもう一度かあ…出来れば、穏やかに終わってほしいけど… |
アリーシャ | 心配するな、ルカ |
アリーシャ | もし何かあったとしても私が隊長として君達を守る。だから、安心して任せてくれ |
ルカ | アリーシャ… |
ルカ | 任せろ…か。そう言えば、前に見た夢でアスラも… |
| |
兵士 | このままでは部隊は壊滅だ!どうすれば…どうすればいいんだ… |
| |
アスラ | 何を弱気になっている! |
兵士 | ア、アスラ様…! |
| |
アスラ | 大丈夫だ、俺がいる!俺がお前達を率いよう! |
兵士 | アスラ様!何と力強い言葉だ |
兵士 | 貴方についていけば、私達は負けない…! |
アスラ | ああ、そうだ。心配は無用!俺に任せろ! |
アスラ | その剣!その盾!その力と、命を!存分に目の前の敵に振るってやれ!守るべきもののために! |
| |
アリーシャ | ルカ?急に黙ってどうしたんだ? |
ルカ | いや、憧れの人にアリーシャが似ててかっこいいなと思ったんだ |
アリーシャ | そうなのか?私は隊長として当たり前の事を言ったつもりだが… |
ルカ | ううん、かっこいいよ |
ルカ | …僕も二人みたいになれたらいいんだけど…きっと無理だよね |
アリーシャ | 私はその人を知らないから無責任な事は言えないが… |
アリーシャ | 無理だと決めつけるべきではないよ。森の遺跡では、ルカのお蔭で魔物を倒せたんだから |
ルカ | そ、そっか…!僕でもアリーシャを助ける事が出来るかもしれない… |
アリーシャ | ああ、私も未熟者だ。だからこそ、頼られる隊長になれるよう精進する |
ルカ | そうなんだ…うん!ありがとう、アリーシャ |
アリーシャ | 何の礼かわからないが…君が安心したならよかった。では、今日は明日に備えて休もう |
scene1 | 二つの任務 |
アリーシャ | では、湖に出発しよう。みんな準備は済んだか |
クラトス | 待て、アリーシャ |
アリーシャ | クラトス殿…?何かあったのですか? |
クラトス | お前達が行こうとしている湖で問題が発生した |
パスカル | 問題?すっごく危ない魔物が現れたとか? |
クラトス | いや、海賊だ。先行した調査隊への妨害、攻撃…好き放題やっているようだ |
アリーシャ | 海賊…!?まさか…アイゼンでは… |
ロイド | そうかあ?無意味にそんな事する奴には見えなかったし、人違いじゃないか? |
パスカル | その悪い海賊は捕まってないの? |
クラトス | ああ。他の先行部隊にも情報を求めているところだ |
アリーシャ | つまり、湖に行けば海賊が襲ってくるかもしれない…という事ですね |
クラトス | そうだ。その時は撃退してもらう事になる |
クラトス | だが、湖の調査に集中してもらうため捕縛は他の者に行わせよう |
| |
本部の男1 | …ほう、アリーシャ殿下は海賊を逃がした責任も負わずに調査に向かうのですか |
アリーシャ | あなた方は… |
本部の男2 | ほう、末席ではあっても姫は姫。シルヴァラントの貴族はご存知のようだ |
アリーシャ | …勿論存じております。ですが、どうしてここに… |
本部の男1 | 私達も四大国調和のためにお手伝いをしたいと思いましてな。今は本部に所属しているんですよ |
アリーシャ | …そうでしたか |
本部の男2 | しかし、よい御身分ですな。さすがは大手柄を立てた殿下…我々とは肝の据わり方が違う |
本部の男2 | 普通、自分の逃がした海賊が暴れていると知ったら落ち着いていられませんがね |
ロイド | 何だよお前ら!いきなり出てきて、嫌味な言い方しやがって! |
パスカル | そうだよ!今回調査隊を襲ったのは違う海賊かもしんないでしょ! |
アリーシャ | みんな、止めてくれ |
ルカ | でも、このままだとアリーシャが悪いって事になるよ… |
アリーシャ | …いや、私の失態が不問になっていたのはおかしかった |
本部の男1 | 鍵の発見で自分の失態をもみ消しておきながら随分聞き分けがいいですな |
ロイド | アリーシャはそんな事してないぜ!鍵だってたまたま見つけたんだ! |
本部の男2 | どうでしょうな。警備のような小さな仕事より宝探しに目が眩んだのでは? |
本部の男1 | 式典を放り出してまで栄誉の為に宝探しですか。野心家な事だ |
アリーシャ | 理由があったとはいえ、式典を欠席したのは事実です。叱責は真摯に受け止めます |
本部の男1 | …ほう、ではアリーシャ殿下、この責任はどう取るおつもりか? |
アリーシャ | …… |
アリーシャ | 責任を取るためにも、湖の海賊は私が捕まえます。…今度こそ逃がしはしない |
本部の男1 | そうですか。それは殊勝な事ですな |
本部の男2 | では、マナリスの探索に加え海賊の捕縛も行ってもらいましょう。よい報告をお待ちしていますよ |
| |
ロイド | 何だ、あいつら。いちゃもんつけやがって…! |
パスカル | 何でもいいからアリーシャの事をけなしたいって感じだったね |
アリーシャ | …そういう面がないとは言えない |
アリーシャ | 姫であり、騎士でもある私は一部の貴族にとって邪魔な存在なんだ |
ルカ | じゃあ、やっぱりアリーシャが海賊を追う必要はないんじゃ… |
アリーシャ | いや、海賊を逃がしたのは私だ。私が責任を取る |
ルカ | アリーシャ…無理はしないでね |
アリーシャ | ありがとう、ルカ。みんなも巻き込んでしまってすまない |
ロイド | …俺は、やっぱりアイゼンがその海賊だとは思えねえけどな |
ロイド | まっ、湖の海賊を捕まえてアイゼンとは違うってわかればあいつらも文句言えねえって |
アリーシャ | …そうだな。やるべき事は増えたが、目的地は変わらない |
アリーシャ | それでは、出発するとしよう |
scene2 | 二つの任務 |
パスカル | ふんふふ~ん、ここをこうして~、後はガチャガチャっと |
ルカ | パスカル、歩きながら道具をいじるのは危ないよ |
パスカル | じゃあ、こけそうになったらルカが助けてよ~ |
ルカ | ええっ?いじるのは止めないって事…? |
ロイド | ってか、そもそもパスカルは何やってんだ |
パスカル | さっきクラトスからもらった通信機を改良中なんだ~ |
ロイド | そういえば何かもらってたな。本部との連絡用だっけか |
アリーシャ | いや、それはいじらないでくれ!もし壊れたら本部との連絡手段が… |
パスカル | 大丈夫だって。アリーシャだってあたしの実力はもう知っているでしょ? |
アリーシャ | それはそうだが… |
パスカル | それにこれ、感度がよくないもん。このままだと遠くに行くと繋がりにくくなると思う |
アリーシャ | 感度がよくない?パスカルはそんな事もわかるのか |
パスカル | これくらいならすぐにわかるよ。通信機は前に作った事もあるしね |
パスカル | あと、他にもマナリスを感知するレーダーも作成中だよ! |
ロイド | へえ、よくわかんねえけど便利そうだな! |
パスカル | でしょでしょ!マナリスが出してるビリビリをあたし以外は感じないみたいだし |
ルカ | ねえ、パスカルはずっとビリビリって言ってるけど…それって結局何なの? |
パスカル | うーん、マナリスから出てる電波…いや、波動かな…言葉じゃ難しいけどとにかくビリビリビャーって── |
パスカル | ああっ!! |
アリーシャ | なっ、何だパスカル、いきなり大声を出して |
パスカル | 湖に近付くとビリビリが強くなってきたんだよ。やっぱり湖にあるのは間違いないね! |
パスカル | よーし、湖に行ったらすぐに探そうよ! |
アリーシャ | いや、マナリス探索も大事だが湖には海賊がいる |
アリーシャ | このままだと被害が広がってしまうしまずは海賊を捕まえた方が… |
パスカル | え~、マナリスだって緊急だよ!早く見つけて、調べちゃいたいし |
アリーシャ | パスカルの気持ちもわかるが…海賊が暴れているのを見過ごすわけにはいかないだろう |
ルカ | えっと、二人共落ち着いて… |
パスカル | ルカからもアリーシャに言ってよ~。まずはマナリスを探そうって |
ルカ | ええっ!僕に言われても… |
ロイド | おいおい、別にここでどっちが優先か決めなくたっていいだろ?ルカだって困ってるじゃねえか |
ルカ | ロ、ロイド~…! |
ロイド | 海賊を捕まえるのも、マナリスを探すのもどっちも湖が目的地だぜ |
ロイド | だったら、どっちかじゃなくてどっちもすればいいじゃねえか。なあ、ルカ? |
ルカ | う…うん、そう!そう思うよ。話は湖に行ってからでいいじゃない |
アリーシャ | そう…だな。どちらもこなすべき任務であるのに優先順位をつけるのはよくない |
パスカル | ま、どっちもいっぺんに見つけちゃえば問題ないしね |
アリーシャ | ロイドの言う通りだった。ありがとう |
ロイド | 思った事を言ってるだけだって |
ロイド | アリーシャも隊長ってのにこだわらずもっと気楽にやったらいいと思うぜ |
アリーシャ | 気楽に…か |
ルカ | はあ…ロイドはすごいな…。僕はあたふたしてただけで何にも出来なかった… |
ルカ | アスラみたいになれなくても、出来るだけの事をしようと思ったのに…上手くいかないよ |
ロイド | アスラって誰の事だ? |
ルカ | わっ!ロ、ロイド…!聞いてたの? |
ロイド | 結構大きな声で言ってたからな。聞かれたくない事だったか? |
ルカ | そういうわけじゃないよ!…ロイドなら馬鹿にしないと思うし |
ロイド | そんな事するかって。面白そうだし、聞かせてくれよ |
ルカ | …昔から、何度も同じ夢を見るんだ。何て言うか、ここじゃないどこかの出来事を見ているみたいな |
ルカ | その夢だと、僕はいつもある英雄になって戦ってるんだけど…その英雄の名前が、アスラだよ |
ルカ | 人望も、実力もあって…いつも先頭に立ってみんなを引っ張っていくんだ! |
ロイド | へー…英雄になる夢をいつも見るなんて、不思議な事もあるもんだな |
ルカ | でも、「お前みたいな弱虫が夢じゃ英雄か」…って、よく馬鹿にされたんだ |
ルカ | だから、夢の事はあんまり人に言わないようにしてるんだけどね |
ロイド | そうか?結構面白そうだけどな。そのアスラって奴の事、もっと教えてくれよ |
ルカ | ロイド…うん!どこかの将軍みたいなんだけど…まず、絶対に負けないんだ |
ルカ | たくさんの人に慕われてて…見た目は違うけど、雰囲気はアイゼンさんにちょっと似てるかも |
ロイド | あいつに似てるのか!とにかくすげー奴なんだな |
ルカ | うん!アスラは僕の憧れなんだ!だから、僕もいつかアスラみたいに── |
アリーシャ | 二人共何を話し込んでいるんだ?湖はすぐそこだ、早く行こう |
ルカ | あっ…つい夢中になっちゃった。ごめんね、ロイド |
ロイド | 気にすんなって。アスラって奴の事また聞かせてくれよな |
ロイド | ほら、行こうぜルカ! |
ルカ | うん! |
scene1 | 湖に潜む影 |
ルカ | 湖に着いた…。まずはマナリスと海賊の手がかりを探さないとね |
アリーシャ | 油断はするな。いつ海賊が襲ってくるかわからない |
ロイド | おう、十分注意して進もうぜ |
アリーシャ | パスカル、マナリスは近いのか? |
パスカル | うーん、近くはないかな~。ビリビリはずっと感じるんだけどね |
ロイド | 湖って割にはかなり広いし、島まであるぜ。探すとなると結構大変だな、こりゃ |
パスカル | まず陸地にあったらいいけどね。森みたいに隠されてるなら湖の中ってのも有り得るよ~ |
ルカ | 湖の中って…どうやって行くのさ。もしかして泳いで探すの? |
アリーシャ | 泳ぐのは最終手段だな。まずは湖周辺を探してみよう |
パスカル | オッケー、って…んん?早速だけど誰かいない?あれは… |
??? | だーっ、もう!何で釣れねえんだよ! |
ロイド | ルーク達じゃねえか!?あいつらもここに来てたんだな |
ルカ | 向こうも、海賊を追ってきたのかな? |
アリーシャ | まさか、我々より先に…?いや、それにしては… |
アスベル | ルーク、あまり騒ぐと魚が驚く。もう少し待ってみよう |
ルーク | んな事言ったってよ…。あいつはあんなに釣れてるのにおかしいだろ!ほら! |
エレノア | ふふっ、また釣れました!これで十匹目ですね! |
スパーダ | おおっ、スゲーじゃねえか!釣りが得意だって言うだけあるぜ! |
エレノア | ええ、久しぶりですが、勘は忘れてないみたいです |
ルーク | …すぐ隣で釣ってんだぞ!?俺達はまだ一匹も釣れねえのに、何でエレノアだけ…!! |
アスベル | あっ、俺もかかった |
ルーク | ~~~っ!!あーもうやってらんねえ! |
スパーダ | 腐んなよ、こっちはお前が釣りしてえって言うから付き合ってやってるんだぜ |
ルーク | わかってるっつーの!…って、おっ?おお!?やっと引っかかったか! |
アリーシャ | …随分楽しそうだな |
ルカ | う、うん…でも、どうして釣りをしてるんだろ |
ロイド | 腹でも減ったんじゃねえか? |
アリーシャ | 全く、海賊がいるかもしれないのに何てのんきなんだ…。おい、君達!! |
アスベル | ん?ああ、アリーシャ達じゃないか。そちらもここに派遣されて── |
ルーク | ──くそっ、重てえな…ここまで来て往生際が悪いぜ、大人しく釣られちまえ…よっ! |
| |
| ザッバーーーーン!! |
ルーク | よっしゃあ!こいつは大物だ…ってうおおっ!? |
| |
| シャアアア! |
ロイド | おい!あれ、魚じゃなくて魔物じゃねえか!? |
| シャアアア! |
パスカル | …!あの魔物、ルカを狙ってるよ! |
ルカ | ちょっ…何で僕!? |
アリーシャ | 危ない!はあっ!! |
| ザッ! |
| キシャアアア…! |
ルカ | ありがとう、アリーシャ! |
アリーシャ | 怪我はないか?さあ、私が槍で抑えているうちに早く剣を構えるんだ! |
| シャアアア!! |
アリーシャ | 来るか!とにかく倒すぞ、みんな! |
scene2 | 湖に潜む影 |
スパーダ | ったく、まさか魔物を釣り上げるとはなァ… |
エレノア | 私達もとっさの出来事で反応が遅れてしまいました… |
ルーク | あーその…巻き込んじまって悪かったな、お前ら |
パスカル | でも、釣り上げた本人じゃなくてルカが狙われるなんてびっくりだね~ |
ルカ | ほんとだよ、どうして僕だけ… |
スパーダ | 大方、一番トロそうな奴に目ェ付けたんだろ。ヒャーッハッハッハ! |
ルカ | 最近みんな優しかったから、この感じもちょっと懐かしい…って思う自分がいるよ。うう… |
アリーシャ | …それにしても、君達はどうして釣りを? |
アスベル | う…元々は調査で湖に来たんだ。ただちょっとトラブルがあってね |
スパーダ | ここに来てから通信機が通じねェの。仕方ねえから本部に一度帰ろうとしてたんだけどよ |
ルーク | 何もせずに帰るなんてしゃくだろ。ぜってーあいつに嫌味言われるし、それなら楽しんだ方がマシだからな |
ルカ | あいつって…? |
アスベル | 調査隊にいる代表の一人だよ。とても優秀な人なんだが…何と言うか…曲者でね |
アリーシャ | ふむ、それで釣りをしてた…と。通信機が使えなかったという事は海賊についても知らないのか? |
エレノア | 海賊…ですか? |
ロイド | ああ、どうもこの湖で暴れ回ってるらしいぜ |
アリーシャ | 君達は、湖にいる間何か怪しい人物を見かけなかったか? |
ルーク | 怪しい人物?…そういえば、湖に来る途中に妙な男がいたな |
スパーダ | ああ、オレ達が声をかけたら、無視してどっか行った奴だろ |
アスベル | あの時は、調査隊の誰かかと思っていたが… |
ロイド | 確かに気になる奴ではあるな。なあ、その男の特徴を教えてくれよ |
ルーク | 確か…金髪で黒っぽい服を着てたな |
ルカ | き、金髪で黒っぽい服って…まさか!? |
パスカル | うーん、一応特徴はあってるね |
アリーシャ | …… |
エレノア | …?金髪の男について心当たりがあるんですか? |
アリーシャ | 一時的にだが…この間まで私達が行動を共にしていた海賊も金髪の男なんだ |
エレノア | それは…偶然にしては出来すぎてますね |
アリーシャ | …まだ決まったわけではないが、目撃情報は本部に伝えるべきだろう |
アリーシャ | パスカル、さっきいじっていた通信機はもう使えるのか? |
パスカル | うん、もう完成してるよ! |
アスベル | それって本部でもらった通信機だよな? |
アスベル | パスカルがいじってたって事は、君達のも壊れたのか? |
パスカル | 渡された通信機は感度が悪くてさ。距離が離れると通じなくなるってわかったから、いじっておいたわけ |
エレノア | そうなんですか?じゃあ、湖に来てから通じなくなったのは… |
パスカル | 本部から離れたからだね。でも、これならどんなに離れても通じるはずだよ |
アリーシャ | それは心強いな。使い方は同じなのか? |
パスカル | ちょっと変わったけど簡単だよ。ピコピコポンってすれば通じるから |
アリーシャ | ピコピコポン?…すまない、もう少し詳しく言ってくれないか |
パスカル | ありゃ、難しい?じゃあ、あたしがかけるの見ててね。ピコピコポンっと |
| ツー、ツー、ツー |
| ピッ |
本部の男1 | こちら本部。応答せよ |
パスカル | はい、アリーシャ。後はよろしく~ |
アリーシャ | ああ、ありがとう。次からは自分でやるよ |
アリーシャ | こちらアリーシャ・ディフダです。ご報告があり、連絡いたしました。実は── |
| |
本部の男2 | 湖で金髪の男が目撃された…と。…殿下が逃がしたという海賊も金髪でしたな? |
アリーシャ | …はい |
本部の男1 | では、やはり金髪の男は、湖を荒らし、調査隊を襲った海賊の一員だったという事ですな |
ロイド | おいおい、決めつけるなよ。アイゼンが湖を荒らした海賊とは決まってねえだろ |
本部の男1 | なら、金髪の男がやってないという証拠はあるのか? |
本部の男1 | 今も金髪の男が何をしているのかわからないのだろう |
ロイド | それはそうだけどよ… |
本部の男2 | ふん、まともな反論がしたいなら、金髪の男を捕まえてからにするんだな |
| ツー、ツー、ツー |
アリーシャ | …… |
ロイド | 何だよ、あれ。本部の奴ら、全くこっちの意見を聞かねえな |
ルカ | うん、アイゼンさんを悪い海賊だって決めつけてたね…。決定的な証拠はないのに |
アリーシャ | …ただ、こちらも否定出来るだけの証拠はないんだ |
アリーシャ | アイゼンが消え、湖で海賊が暴れた。そしてその場所にアイゼンらしき男の姿がある |
アリーシャ | 状況から見れば、彼らの言うようにアイゼンが疑われるのは仕方がない |
ルーク | よくわかんねえけどあの金髪の男が湖で暴れてる海賊なのか? |
アリーシャ | …ああ、本部はそう思っている。だから私は、あいつを捕まえなければならない |
ルカ | アリーシャ、だけど… |
アリーシャ | ルカ、理解してくれ |
ルカ | …うん |
ロイド | …… |
アリーシャ | 他の手がかりを探そう。みんなもそれで── |
ルーク | って、おい!ちょっと見ろよ!さっき倒した魔物、動いたぞ!? |
アリーシャ | 何!?また襲ってくる気か! |
ルカ | …でも、何か様子がおかしいよ |
ロイド | 起き上がってはこないみたいだ。…ん?あの魔物…何か吐き出してねえか |
パスカル | あれって、もしかして! |
| |
アリーシャ | カタグラフィか! |
ルーク | へえ。この小さい箱が、カタグラフィって奴なのか |
ロイド | ルーク達もカタグラフィを知ってるのか? |
エレノア | はい。本部から特徴を聞かされました。見つけたら、持ち帰るようにと… |
アスベル | 研究員が調べている最中だったから実物は見てなかったんだけど…こんな小さい物なんだね |
パスカル | 装置にはめて昔の風景を見たらもっとびっくりするよ |
アリーシャ | だが、これはちゃんと動くのか?魔物の口から出てきたんだぞ? |
パスカル | 大きな傷もないし動かすには問題はないと思うよ |
パスカル | ほら、バコッとな! |
| ポチッ…! |
スパーダ | おおっ、すげえな!本当に何か映ってやがる |
エレノア | この影は…湖で釣りをしているのでしょうか? |
釣りをする男1 | 大漁、大漁!ははっ、今日の夕食は豪華だぞ |
釣りをする男1 | ほら、ちゃんと俺の雄姿は撮ったんだろうな? |
釣りをする男2 | はいはい。…全く。侵略者の話題で持ちきりだってのに、釣りなんかしてていいのかねえ |
釣りをする男1 | ああ、この間来たって言うあれか?外の奴らがちょっと暴れただけだろ |
釣りをする男1 | 戦争になるだなんて、いちいち大げさなんだよ…おっ、またかかったぞ…! |
ロイド | 戦争だって!?この島でも戦争があったのか? |
アスベル | だが、アヴァロン島は平和で栄えた島だと聞いているぞ。映像の彼らにも緊張感がないし… |
ルカ | いつの時代かはわからないけど侵略者とか、戦争とか…そんな話をしてるのは初めて見たよ |
スパーダ | どこにでも戦争の影はあるってか。実際オレ達も、やっと平和のために動き出したわけだしな |
アリーシャ | 平和を保つのはそれだけ難しい。…だからこそ、守るために尽力しなければならないな |
エレノア | ええ、その通りです。…あれ、まだ映像は終わってないみたいですね |
| |
釣りをする男1 | ふう…釣った魚が重くて家に帰るのも一苦労だ |
釣りをする男2 | 一匹も釣れずに帰るよりずっといいだろ。家に着いたら、早速ごちそうにするか |
釣りをする男1 | おう、戦争だか何だか知らんが、今は飯だ。腹が減っては戦は出来ぬってな |
| |
ロイド | …っと、これで全部か?なあ、男達がいた村みたいな場所ってこの近くにあるんじゃねえか? |
ルカ | うん、湖に沿って行けば着けるみたいだね |
パスカル | やったー!また集落があるんだとしたら、マナリスの手がかりもあるかも! |
パスカル | それにカタグラフィとか他のお宝もたくさん残ってるはず!こうしちゃいられないよ~! |
アリーシャ | あっ、待てパスカル!海賊がどこにいるかわからない。集落には全員で警戒しながら── |
パスカル | みんな、早く~! |
ルカ | …パスカル、聞こえてないみたいだね |
アリーシャ | はあ、パスカルの好奇心は困ったものだな |
scene1 | 隊長として |
アリーシャ | 何だここは…家がボロボロじゃないか…! |
ルカ | 迷いの森にあった家とは全然違うね。どこもかしこも、割れたり、穴が開いてたり… |
パスカル | うわっ、家どころか道具も全部壊れてるよ~。せっかくのお宝が… |
エレノア | まさか、カタグラフィで言っていた戦争が起きたのでしょうか?あの後、戦火が広がったのでは… |
スパーダ | いーや、違うと思うぜ |
アスベル | ああ、家の傷跡はまだ真新しい。最近になって人の手で壊されているんだ |
アリーシャ | …海賊の仕業か |
ルーク | って事は金髪の野郎がやったのか!?くそっ!あの時海賊だって知ってたらぜってえ逃がさなかったのによ! |
ロイド | いや、この跡を見て確信したぜ。アイゼンは今回の海賊とは関係ねえよ |
ルーク | …?どうしてそんな事がわかるんだよ |
ルカ | …アイゼンさんは遺物をこんな風に扱いはしないんだ |
パスカル | むしろ壊すなって口うるさく言ってたしね |
パスカル | ほら、この壺とか。「ほう、悪くない…」とか言って絶対アイゼンは壊さないよ |
ロイド | あーあ、こりゃひでえ。あいつ、これ見たら怒るだろうな |
パスカル | 物の価値もわからん馬鹿共が… |
ルカ | もしかしてまたアイゼンさんの真似? |
パスカル | そうそう、ちょっと上達したでしょ? |
ルカ | うーん…そうかな? |
スパーダ | おうおう、そのアイゼンって奴に随分懐いてるじゃねえの、ルカ |
ルカ | そ、そういうわけじゃないよ |
ルカ | ただ、この荒れ果てた様子と僕の知っているアイゼンさんは結び付かないんだ |
ルーク | 何かよくわかんねえけど一緒に行動してたお前らが言うんだ。金髪の男は悪い奴じゃねえって事か? |
アリーシャ | いや、それでもアイゼンの目撃情報がある以上疑いは晴れないよ |
ルカ | えっ…でも、アリーシャもアイゼンさんが遺物を大切にしてたのは知ってるでしょ? |
アリーシャ | ああ…私も、アイゼンが悪人だとは思っていなかったからな |
ルカ | だったら… |
アリーシャ | だが、これはあくまで私情だ。私があいつを逃がしたのも、この私情による油断からだ |
アリーシャ | もう失敗は出来ない。…君達の隊長として、今度は判断を誤るわけにはいかないんだ |
ルカ | アリーシャ… |
エレノア | あの…アリーシャ。少し気負いすぎではないですか |
アリーシャ | …そうだろうか |
エレノア | ええ、アリーシャは真面目すぎるところがありますし私でよければ、相談に… |
アリーシャ | 心遣い感謝するよ、エレノア |
アリーシャ | でも、私は大丈夫だ。心配はいらない |
エレノア | …そう…ですか |
| |
アリーシャ | もうここに手がかりは残されていないようだ |
パスカル | う~…カタグラフィも壊れてる…。せめてもう少し形が残ってたら何とかなったのに! |
パスカル | もっと探せば無事な物があるかも…! |
アリーシャ | パスカル、残念なのはわかるが全員で隅々まで探したんだ。これ以上留まっても仕方ないだろう |
アスベル | それに、これだけボロボロの家に人がたくさんいるとちょっとの刺激でも壊れそうだしな |
エレノア | そうですね。外に出ましょうか |
| |
ロイド | …!待て、誰かそこにいるぞ |
| |
??? | ちっ、バレちまったか!やるぞ、野郎共! |
| ヒュッ! |
ルーク | うおっ、何だこいつら!いきなり襲い掛かってきやがって! |
??? | ここは俺らが先に見つけたんだ!テメエらはさっさと出て行け! |
| ヒュッ! |
アリーシャ | …先に見つけた?お前ら、ここを荒らした海賊か!? |
海賊1 | だったらどうした! |
| ヒュッ! |
スパーダ | いちいちナイフ振り回しやがって!危ねえだろーが! |
ロイド | こんなに家をボロボロにしやがって!絶対捕まえてやる! |
| ガキン! |
ロイド・スパーダ | うわっ!! |
ルカ | 二人共大丈夫!? |
スパーダ | …ああ!ダッセー事に、お互いの剣がぶつかっちまっただけだ |
ロイド | 悪い、スパーダ。こんな狭い中じゃ思ったように動けないな |
パスカル | これじゃ危なっかしくて、術も使えないよ~! |
アリーシャ | 向こうは小ぶりのナイフか…。地の利は向こうにあるな |
ルーク | はっ!こんな雑魚、武器がなくても十分だぜ! |
アスベル | 待ってくれ、ルーク。ここで暴れたら建物自体が崩れかねない |
エレノア | そうなったら大惨事です! |
ルーク | だったらどうするんだよ! |
アリーシャ | だったら…私が敵を食い止める。その間にみんなは外に出てくれ! |
アリーシャ | 外に出れば私達の方が断然有利だ。だから早く! |
アスベル | ──わかった! |
海賊1 | はっ!逃がさねえよ! |
ルカ | アリーシャ、危ない! |
| ブオン! |
海賊1 | ぐっ!?槍の長さで近付けねえ!? |
アリーシャ | 振るう事は出来なくとも…槍は長い分防御にも使える |
アリーシャ | そんな小さなナイフなら、近付くのも一苦労だろう |
アリーシャ | みんなが外に出るまで、守り抜くなんて造作もない |
アリーシャ | …さあ、私が抑えているうちに早く行くんだ! |
scene2 | 隊長として |
エレノア | アリーシャのお蔭で海賊も無事捕える事が出来ましたね |
パスカル | すごいよアリーシャ!槍の長さを使ってみんなを守るなんてね~ |
アリーシャ | いや、みんなが無事でよかったよ。私の槍はみんなを守るための物だからな |
ルカ | か、かっこいい… |
アリーシャ | そうだろうか?ルカはよくそう言ってくれるが… |
ロイド | それだけアリーシャがすげーって事だろ? |
アリーシャ | あ、あまり褒めないでくれ。照れくさいよ |
アリーシャ | それより…ルークとスパーダはどこに行ったんだ? |
アスベル | 向こうで海賊の残党を探してくれてるよ |
アリーシャ | そうか、確かにまだ隠れているかもしれない |
ロイド | こいつらが情報をくれたらいいんだけどな |
エレノア | でも、全員気絶しているようですよ。連行する時はこっちの方が楽ではありますが |
ロイド | いや…見ろよ。噂をしてたら一人起きて── |
海賊2 | ──くっそ…親分がいれば… |
全員 | …! |
アリーシャ | 親分…だと?お前らにはまだ仲間がいるのか |
海賊2 | …… |
ロイド | じゃあその親分はどこにいるんだ? |
海賊1 | …… |
パスカル | ありゃ、だんまりだ。もう答える気はないみたいだね |
アリーシャ | では、質問を変えよう。…お前達は金髪の男に覚えはないか |
海賊2 | …… |
アリーシャ | …あくまで沈黙を続けるつもりならこちらとしても考えがあるぞ |
海賊2 | ちっ…そんな奴知らねえよ |
ロイド | って事は、やっぱりこいつらはアイゼンとは無関係なんだな |
ルカ | よかった…これでアイゼンさんの疑いが晴れるね |
アリーシャ | そう…だな |
パスカル | おっ?アリーシャも安心した? |
アリーシャ | えっ?…あ、いや、そんな事はない。こいつらがしらを切っている可能性もある |
ルカ | アリーシャ…? |
アリーシャ | …少し気が緩んでいたようだ。海賊について本部に報告してくる |
アスベル | なら、俺も一緒に話すよ |
ルカ | …アリーシャも、心の中ではアイゼンさんを疑いたくないのかな |
ロイド | それは間違いないと思うぜ。アリーシャは否定するだろうけどよ |
パスカル | アイゼンを疑っていないならそう言えばいいのにね~ |
エレノア | …アリーシャは立場上そうせざるを得ないんだと思います |
ルカ | それは…アリーシャが隊長だからって事ですか? |
エレノア | はい。アリーシャには一度、海賊を逃がしたという自責の念があります |
エレノア | それにより、いつも以上に責任を抱え込みすぎているのかもしれません |
パスカル | うーん、責任感が強いのも大変だね~ |
ロイド | なら、一緒に行動してる俺らがアリーシャを助けてやらねえとな |
パスカル | そうだね。アリーシャがしょぼくれてたらあたし達だって嫌だもん |
ルカ | う、うん。僕は今のところアリーシャに助けてもらってばかりだけど |
ルカ | …それでも、僕はアリーシャを助けたい |
エレノア | …ふふっ。私が心配する必要はなかったかもしれませんね |
ロイド | ああ、アリーシャの事は任せてくれ!大切な仲間だからな |
ロイド | …っと。アスベル達とルーク達も戻ってきたな |
アリーシャ | つまり、この辺りに海賊の残党はもういないという事か |
スパーダ | ああ、他の奴らは遠くに散らばって宝を漁ってるんだろ |
ルーク | …で、捕まえたこいつらは俺らが連行するってか? |
アスベル | ああ、本部からそう指示された。残党はアリーシャ達が探す事になったよ |
アリーシャ | 了解した。後は任せてくれ |
ルーク | …やっぱり納得出来ねえーっ!海賊の残党の中には親玉がいるだろ |
ルーク | いくらお前らでもいきなり襲い掛かられたら危ねーんじゃねえか? |
ロイド | 大丈夫だって、ルーク!警戒すればやられたりしねえよ |
アリーシャ | それにいざとなったら、私が隊長としてみんなを守る。怪我などさせないさ |
ルーク | でもよ… |
アスベル | ルーク、俺達は自分の任務を全うしよう |
ルーク | …わかったよ。こいつらだけに任せるのがしゃくだっただけだ |
ルーク | まっ、仕方ねえ。今回はお前らに手柄を譲ってやるよ |
スパーダ | ったく、素直じゃねえ野郎だぜ。ま、心配なのはわかるけどよ |
ルカ | えっと…それって僕が頼りないからだよね |
スパーダ | 何だ、わかってんじゃねえか。釣り上げた魔物に一番に襲われて動けなかったルカちゃまよ~ |
スパーダ | あの時アリーシャが助けなかったら魔物に食われてたかもな! |
ルカ | わ、わかってるよ。助けてもらうだけじゃ駄目だ。僕もしっかりしないとって |
スパーダ | 頼りっぱなしで悔しいってか。本当にそう思ってるなら、行動で示してやれよな |
ルカ | …うん!スパーダも気を付けて |
| |
アリーシャ | おはよう。みんな揃っているな。悪天候だが、今日も引き続き湖の調査を進めよう |
ロイド | 全然日が差さねえと思ったら、霧が出てるのか |
ルカ | 昨日は晴れてたのにね。この霧だと、外を歩き回るのは危なそうだよ… |
アリーシャ | しかし、この集落は探し尽くした。人はいないし、手がかりになりそうな道具も見当たらなかったが… |
パスカル | あと調べてないのは、湖の中かな。やっぱり泳いで調査する感じ? |
ロイド | いや、来た時は泳ぎもありかと思ったけどよ |
ロイド | ルークが釣り上げたような魔物がまだ湖の中にいるかもしれないだろ? |
ルカ | さすがに難しいよね…。せめて、船があればいいんだけど |
パスカル | 船ならあるよ?さっき見かけたし…ほら、確かあの辺 |
ルカ | え…!?ほ、ほんとだ!湖の側に小船が止まってる! |
アリーシャ | 霧のせいで気付かなかった…。もしかして海賊がいるのか? |
ロイド | ここからじゃよく見えねえな。近くに行ってみよう |
アリーシャ | そうだな…。みんな、注意してくれ |
ルカ | あっ…!船から人が出てきたよ! |
ロイド | あれ、あいつは… |
scene1 | 小島を目指して |
ルカ | あっ…!船から人が出てきたよ! |
ロイド | あれ、あいつは… |
??? | 何者だ! |
ロイド | やっぱり、セネルだ! |
セネル | …!!お前達は、確か…ロイドだったな。それに、パスカルも |
アリーシャ | 君達の知り合いなのか? |
ロイド | ああ、シーブル村で前に会ってて…。パスカルも知り合いだったんだな |
パスカル | いや~世間って狭いんだね~ |
ロイド | なあ、セネルがここにいるって事はお前も調査隊なのか? |
セネル | ああ、そうだ。海上警備を任されてる |
パスカル | 海上警備って、ここは湖だよ。迷っちゃったとか? |
セネル | そんなわけあるか。海賊を追いかけて湖に来たんだ |
セネル | 湖に来た日も今日みたいな濃霧が出ててな…。海賊の船を見失ってしまったんだ |
セネル | それからずっと暴れ回っている海賊を見つけては捕縛しているんだが数が多くて手に負えない |
ルカ | 一人で海賊を相手にするなんて…。大変ですよ。他に調査隊員はいなかったんですか? |
セネル | ジェイという奴と一緒にいたんだが、湖に着いた時点で、本部へ報告に行ってもらう事にしたんだ |
ロイド | じゃあ、そいつのお蔭で本部まで海賊の情報が届いたんだな |
アリーシャ | セネル、私達も本部から海賊の捕縛を任されているんだ |
セネル | そうか…助かる |
アリーシャ | まずは海賊達の行方を探ろう。何か手がかりはあるだろうか |
セネル | あいつらは湖の小島に向かったらしい |
アリーシャ | セネル、その情報は誰から聞いたんだ? |
セネル | 海賊から直接だ。こことは別の集落で海賊が倒れていたのを見つけてな |
セネル | 何があったのかわからないが、全員傷ついて怯えていたから…仲間の行方を自分から話しだした |
アリーシャ | 怯えるほど酷い目に遭ったのか…。一体誰が海賊を? |
セネル | 詳しい事は分からない。確か、金髪の死神がどうとか言ってたけどな |
ルカ | それって…!もしかして、アイゼンさんなんじゃ… |
パスカル | かもね~。海賊が集落を荒らしてるところを見たら、許さん!って懲らしめに行きそうだし |
セネル | アイゼン?そいつは誰だ |
アリーシャ | 大柄な金髪の海賊だ。本部は、彼が湖を荒らした海賊だと思っている |
アリーシャ | 君はその海賊に見覚えがないか? |
セネル | いや、見てはいない |
アリーシャ | …そうか。では、小島まで船を出す事は出来ないだろうか? |
セネル | 悪いな…霧が濃すぎて今船を出すのは難しい。これだけ広い湖だと尚更だ |
ロイド | くそっ、早く追いかけてえのに… |
セネル | 海賊は相当な危険を承知で、小島へ向かったはずだ |
ルカ | どうしてそこまでして、そこへ行く必要があったんだろう… |
アリーシャ | …海賊はどの小島に宝があるか、知っていたのかもしれない |
アリーシャ | でなければ闇雲に動くはずはない。奴らも霧の怖さは知っているはずだ |
パスカル | そうだとしたら、大変だよ~!海賊にマナリスを奪われちゃう! |
ロイド | なあ、セネル。他に気になる事はなかったか?何でもいいんだ |
セネル | 気になる事…?そういえば、これを見つけた |
セネル | 湖の辺りで海賊を捜していた時に拾ったんだが…何かわかるか? |
ルカ | あっ!これ…カタグラフィだよ! |
パスカル | おおっ!まだ壊されていないカタグラフィがあったんだね! |
ロイド | この湖についての記録があるかもな!見てみようぜ |
パスカル | オッケー、バコッとな! |
| ポチッ…! |
| |
ルカ | あれ、映像がぼんやりしてるけど…壊れてるのかな? |
パスカル | おっかしいな~?再生装置はちゃんと動いてるのに… |
ロイド | いや、見えるぞ!人がいる。段々はっきり見えてきた… |
| |
見張りの男1 | …おっと、あったあった。おい、入口はこっちだぞ!見張りが迷ってちゃ世話ないな |
見張りの男2 | 仕方ないさ。この辺りは霧が濃い。多少の遅れには目をつぶろう |
見張りの男2 | それに…俺達がいなくても、この霧が出ている間は誰も神殿に立ち入れないさ |
見張りの男1 | ああ、守り神のお蔭だな。ここの守りは万全だ。見張りを立てる必要もなさそうだが… |
見張りの男2 | 念には念を、って事だろ |
| |
ルカ | 入口…って言ってたね。この湖のどこかに神殿があるのかな? |
パスカル | きっとそうだよ!森の遺跡の時みたいに、その神殿が今も遺跡として残ってるかも |
パスカル | それに、そこにも見張りがいたって事は… |
ロイド | ああ、マナリスがあるって事だな! |
ルカ | でも、守り神がいるって言ってたよ?近寄ったら、祟られるんじゃ… |
パスカル | 祟られてもこの際いいんじゃない?神様が守ってる物って事はマナリスに間違いないからね! |
ロイド | パスカル、どの小島にマナリスがあるかわからないか? |
パスカル | う~ん、どの小島にあるか、かぁ…。マナリスの位置がもう少し詳しくわかれば…あっ! |
パスカル | レーダーを作ってたんだった!これを使えば、マナリスがどの小島にあるか、わかると思う! |
ルカ | そういえば前に作ってるって言ってたね。でも、それって再生装置じゃない? |
パスカル | 実は再生装置をちょっと改造してレーダー機能を付けたんだ~ |
アリーシャ | 改造…?パスカル、君の技術力は認めるが、勝手に再生装置をいじるのは… |
パスカル | 大丈夫だって!今まで通り再生装置としても使えるし! |
アリーシャ | …わかった。君の言葉を信じよう |
ロイド | それ、どうやって使うんだ? |
パスカル | えっとね、カタグラフィと同じように映像が映し出されるんだよ |
| ポチッ…! |
ルカ | 映像は…真っ暗だよ?あ、真ん中に白い点がある |
パスカル | それがあたし達のいる場所ね!そんでもって、こうやってレーダーを持って歩くと…あった! |
ロイド | ん?今度は赤い印が出てきたぞ! |
パスカル | そう!これがマナリスだよ~!こうしてマナリスがある方向と距離がわかるって仕組み |
アリーシャ | すごいな。確かにこれなら、私達でもマナリス探索が出来るようになる |
パスカル | みんなが使えるようにしたくてさ。量産すれば、探索が捗るよ~ |
ルカ | …ふふ。パスカル、楽しそうだね |
パスカル | まあね! |
パスカル | えっと、赤い印はここだから…マナリスはあの小島にあるよ |
scene2 | 小島を目指して |
アリーシャ | マナリスを探すためには小島に向かわないといけないのか |
セネル | …改めて言うが、この霧の中、船を出すのは難しいぞ |
ルカ | そうだよね…。この霧があるから…あっ! |
ルカ | カタグラフィの中で、湖には守り神がいて、神殿を守ってるって言ってたよね |
ルカ | もしかして…この霧もその守り神が出してるんじゃないかな |
ロイド | …!じゃあ、この霧が発生したのは神殿の遺跡に近付いた奴がいるからか |
パスカル | 海賊が近付いたんだよ!このままじゃマナリスも海賊に奪われちゃう! |
パスカル | ねえ、セネル!どうしても船は出せない? |
セネル | …わかった。安全の保証は出来ないが、それでもいいなら船を出そう |
パスカル | やった~!ありがとう、セネル! |
アリーシャ | 待ってくれ。危険があるとわかっているのに、みんなを向かわせる事は出来ない |
アリーシャ | 私が先に行って安全を確認しよう |
ロイド | いや、アリーシャ一人にそんな危険を背負わせたりしねえよ |
ロイド | マナリスがあるのも、海賊がいるのも小島だってわかったんだ |
ロイド | 俺達の任務なんだから、みんなで行って、完了させようぜ |
パスカル | そうそう、マナリスを手に入れるためだしね~! |
ルカ | 僕は…ちょっと怖いけどみんなが一緒なら…大丈夫だと思う |
アリーシャ | …そうだな。これは私達全員が背負う任務だ。みんなを信じるよ |
アリーシャ | セネル、危険を承知で頼む。私達を小島に運んでほしい |
セネル | ああ、そういう事なら任せろ。みんな、船に乗ってくれ |
scene1 | 濃霧の正体 |
アリーシャ | 湖の上はさらに霧が濃いな…。前がほとんど見えない |
セネル | ああ、そのレーダーだけが頼りだ。パスカル、こっちであってるか? |
パスカル | うん!このまま、まっすぐ進んで~! |
ルカ | …あれ?あそこ、何かが動いて見えた…。小さい船が二つ…三つ…? |
| |
| ギャオオオ! |
| |
アリーシャ | 何だ、この声は!? |
ロイド | おい、見ろよ!船が魔物に襲われてるぞ! |
セネル | あの旗は…!海賊の船だ! |
アリーシャ | 海賊とはいえ放ってはおけない!あの魔物を倒さないと…! |
ロイド | セネル、もう少し魔物に近付いてくれ! |
セネル | ああ、わかった! |
海賊1 | 親分、このままじゃ船が沈んじまいますぜ! |
海賊の親分 | わかってる!くっそ、この化け物め! |
セネル | 近付くのはここが限界だ。これ以上は俺達が危ない |
パスカル | 大丈夫、ここまでくれば届くはず…! |
パスカル | スプレッド! |
| ギャオオオ! |
海賊の親分 | な、何だ!?魔物が倒れやがった… |
海賊1 | 親分!あそこに船が! |
アリーシャ | おい、お前達!船を捨ててこちらに来い!そうすれば悪いようには── |
海賊の親分 | あいつらが攻撃したのか!ははっ、俺達は運がいいぜ! |
海賊の親分 | 野郎共、魔物の注意があいつらに向いている間に逃げるぞ! |
ロイド | あいつら、俺達をおとりにして逃げ出しやがった! |
アリーシャ | くっ…卑劣な! |
セネル | 追いかけるぞ!お前ら、しっかり掴まって── |
| ギャオオオ! |
セネル | くっ…魔物が近い! |
アリーシャ | 戦うしかないか…! |
ルカ | うわっ、船が揺れる…!これじゃまともに戦えないよ! |
ロイド | 船の上からじゃ、剣が届かねえ! |
パスカル | それなら、また術で!スプレ── |
| ギャオオオ! |
パスカル | うわっ!?食べられるかと思った! |
ルカ | 詠唱を邪魔してきた…!あの魔物、パスカルの術が危険だってわかってるんだよ! |
| グルルル…! |
ロイド | また離れていったぞ…。今度は船首の方で様子見してる |
アリーシャ | (これ以上時間を掛ければ 海賊を逃がしてしまう…。 それに、みんなも危険だ) |
アリーシャ | (…船首からなら槍が届くはず!) |
アリーシャ | はあああ! |
ルカ | アリーシャ!そっちは危ないよ! |
ロイド | 魔物に近付きすぎると狙われるぞ! |
| ギャオオオ! |
| ドコンッ! |
アリーシャ | うわっ!?船に体当たりだと…! |
ルカ | このままだとアリーシャが湖に落ちちゃうよ! |
ロイド | セネル!船を動かして魔物と距離をとってくれ! |
セネル | 駄目だ!その衝撃でアリーシャが落ちる! |
ルカ | だったら僕が助けに行くよ! |
ルカ | アリーシャ!今そっちに行くから、耐えて── |
アリーシャ | こっちへ来るな、ルカ! |
ルカ | でも、このままじゃ…! |
| ギャオオオ! |
ルカ | 魔物が!アリーシャ、避けて! |
アリーシャ | くっ…! |
ロイド | 虎牙破斬! |
| ズバッ!ズバッ! |
| ギャオオオオン! |
アリーシャ | なっ、ロイド!? |
ロイド | ふう…間に合ったか |
パスカル | おおっ、魔物が怯んだよ~! |
ルカ | アリーシャ…。危なかった… |
ルカ | (…僕は助けられなかった。 ロイドはすごいな…) |
セネル | 今の内に船ごと島に乗り上げる!みんな、しっかり掴まってろ! |
パスカル | へ?ちょっと乱暴すぎっ!うわーー!! |
| |
| ドシャーーーン |
ルカ | ふ、振り落とされるかと思ったよ…。心の準備をさせてくれても… |
セネル | そんな暇があったと思うか? |
| ギャオオオオ! |
セネル | …陸に上がっても見逃してはくれないらしいな |
ロイド | けど、地面に足がついてる今ならこっちのもんだ! |
アリーシャ | そうだな。今度こそ、あの魔物を倒すぞ! |
scene2 | 濃霧の正体 |
ロイド | やっと魔物が帰っていった…。あいつ、全然倒れなかったな |
アリーシャ | ああ…。だが、諦めてはくれたようだ |
セネル | 全員無事のようだな |
パスカル | 船が陸地に突っ込んだ時はヒヤッとしたけどね~ |
セネル | ああしなければ、今頃は全員湖に沈んでいたぞ |
アリーシャ | そうだな。セネルの判断は正しかった |
ロイド | ふう…安心したらどっと疲れたぜ… |
ロイド | …っつ! |
アリーシャ | ロイド?それは…怪我をしているじゃないか! |
ロイド | ただのかすり傷だよ。俺も今気付いたくらいだ |
アリーシャ | 私を助けた時だな…。本当にすまない |
ロイド | 気にすんなって。手当てすればすぐ治るよ |
アリーシャ | …ありがとう、ロイド。みんなを助けるはずだったのに私が助けられてしまったな |
アリーシャ | みんなを守れなかったばかりか、君に怪我をさせてしまうなんて…私は隊長失格だ |
ロイド | 何でそうなるんだ?仲間が危ない目に遭ってたら助けに入るのは当たり前だろ? |
ロイド | 俺達全員で背負うってそう決めたじゃねえか |
アリーシャ | …そうだったな。変な事を言った。許してくれ |
ルカ | アリーシャが無事で本当によかったよ。ロイドのお蔭だね。うん… |
ルカ | (ロイドがあの時 助けに入ってくれなかったら、 アリーシャは危なかった…) |
ルカ | (僕が何も出来ないまま、 助けられずに終わってたら… すごく後悔したはずだ) |
ルカ | (そんな思いはしたくない…。 次があったら、絶対に助けるぞ) |
ロイド | それで、みんな無事なのはいいけど…ここは湖のどの辺りなんだ? |
セネル | すまないが、それはわからない。あの時は目の前にあった島に、乗り上げただけだったからな |
パスカル | あっ、ちょっと待って。レーダーが強く反応してる…! |
パスカル | この反応は…間違いない。この島にマナリスがあるよ! |
アリーシャ | という事は…海賊もこの島に来ているかもしれない |
ロイド | よし、じゃあカタグラフィで見た遺跡の入口を探そうぜ! |
セネル | 待ってくれ。俺はここに残る |
セネル | さっき無理に突っ込んだせいで船の底が少し壊れてしまったんだ |
ルカ | ええっ!じゃあ、もうこの船には乗れないんですか? |
セネル | これくらいなら直せるさ。ただ、少し時間が必要だが… |
アリーシャ | そうか…。では、修理を頼めるだろうか? |
セネル | ああ、任せてくれ。それに、もしここで海賊を見つけたら俺が足止めしておこう |
パスカル | それじゃ、あたし達はマナリスを探しに行こ~! |
ルカ | パスカル、一人で進んだら危ないよ! |
アリーシャ | 私達も行こう、ロイド。海賊と戦う事になるかもしれない。もし傷が痛んだら言ってくれ |
ロイド | 大丈夫だって言ったろ?心配してくれるのは嬉しいけどよ |
ロイド | アリーシャはもっと俺達を頼ってくれよ。仲間なんだしさ |
アリーシャ | ロイドの気持ちはありがたいが…海賊を捕まえるためにも私がしっかりしなければならない |
ロイド | アリーシャの責任感の強さはいいところだと思うぜ |
ロイド | でも、今は責任を果たそうと意地になってるように見えるぞ |
アリーシャ | …大丈夫だ。無理はしていない |
ロイド | じゃあ、アリーシャはアイゼンをどう思ってるんだ? |
アリーシャ | …アイゼンは湖を襲った海賊だと疑われている。だから、私が捕まえなければ… |
ロイド | それは、本部の奴らが考えてる事だよな |
ロイド | アイゼンを逃がした責任を感じて、自分の気持ちを隠してないか?それが心配だったんだ |
アリーシャ | それは… |
ロイド | 俺はアリーシャの本当の気持ちを知りたいんだよ |
アリーシャ | ……。私の…気持ちか… |
| |
ルカ | カタグラフィでは島全体が霧で覆われていたけど、今は晴れてるね |
パスカル | そうだね~。湖にあった霧もいつの間にか晴れてるし |
ルカ | あ…そういえば、守り神は遺跡を霧で守ってるんだったよね |
ルカ | まさか、霧が晴れたのって… |
パスカル | さっきの魔物が守り神だったのかもね~。だからあんなに強かったのかも |
ルカ | ど、どうしよう…!僕達大変な事をしちゃったよ!罰が当たるんじゃ… |
パスカル | 湖の中に帰ってもらっただけだって。それで霧が晴れたんだから、よかったって思っておこう |
ルカ | ええ、そんな~。軽く流して大丈夫なのかな… |
パスカル | 気にしてても仕方ないって。おおっ!マナリスにどんどん近付いてきてる |
ルカ | なら、もう遺跡は近いんだ。あれ、ロイド達は… |
パスカル | あ、置いて行っちゃってた。お~い、二人共! |
ロイド | ごめん!ちょっと話をしててさ |
アリーシャ | パスカル、遺跡を見つけたのか? |
パスカル | 多分もうすぐ着くよ~。あっ、あれが遺跡の入口じゃない? |
| |
ロイド | おおっ、水の中に階段か!カタグラフィじゃ霧でぼんやりしてたけど、すげーな |
アリーシャ | ああ、驚いたな。…ん? |
アリーシャ | あれは…海賊の船だ!やはり海賊もこの島に着いていたのか |
ルカ | ここに船があるって事は…海賊はもう遺跡の中にいるのかも |
パスカル | 急がなきゃ!マナリスは絶対渡さないぞ~! |
アリーシャ | いや、焦りは禁物だ。待ち伏せして私達を襲うつもりかもしれない |
アリーシャ | それに、遺跡自体に仕掛けがある可能性も高い。みんなで警戒して── |
パスカル | な~にやってんの!みんな、早く~ |
ロイド | アリーシャ、そういう助言はパスカルには聞こえないみたいだぞ |
アリーシャ | …はあ、そうだったな |
scene1 | 自分の意志 |
アリーシャ | ここは…湖の中なのか?魚が泳いでいるのが見える。不思議な光景だな… |
パスカル | すご~い!遺跡自体がバリアみたいなもので覆われてるよ! |
ロイド | …ん?でも、この通路の下を見ろよ。水が入ってきてるぞ? |
ルカ | へえ、そうなんだ。通路の下… |
| バシャン! |
ルカ | うわっ…! |
ルカ | 水の中に魔物がいるよ!それもいっぱい… |
ロイド | 大丈夫だよ。水位が低いから、ここまでは襲ってこれないみたいだ |
ロイド | 先に進もうぜ |
ルカ | …うん。あれ?通路の床に何か描かれてる。これって… |
アリーシャ | パスカル、マナリスはこの遺跡の奥にあるんだな? |
パスカル | うん、間違いないよ |
アリーシャ | そうか。では先を急ご── |
| |
| ゴゴゴゴゴゴ…! |
アリーシャ | 何だ、この音と揺れは!? |
ルカ | みんな、通路の下を見て!水位が上がってきてる! |
パスカル | もしかして、侵入者用の罠!? |
ロイド | このまま浸水したら溺れちまうぞ! |
アリーシャ | みんな、急いで入口まで戻るんだ! |
| |
アリーシャ | あれ、水の音が聞こえなくなった。だいぶ戻ってきてしまったが浸水はとまったのか? |
ルカ | うん…揺れも収まったし…。浸水は通路のすぐ下で止まったみたい |
パスカル | 天井部分のバリアにも変化はないね。う~ん、何だったんだろう? |
ロイド | はあ…ビビったぜ。とりあえず溺れなくて済みそうだな |
アリーシャ | …!待て、あれを見ろ! |
| シャアア! |
ルカ | うわっ!魔物がどんどん通路に上がってきてる!このままじゃ囲まれちゃうよ…! |
パスカル | おおっ、わかった~!さっきの浸水は、水中にいた魔物達を通路まで引き上げるためだったんだ |
パスカル | マナリスを守るために昔の人が作った仕掛けだね~。いや~、すごい技術だよ! |
| シャアア! |
ルカ | か、感心してる場合じゃないよ!水位を下げられないの? |
パスカル | う~ん、侵入者用の仕掛けなんだし、元に戻す方法はありそうだけど… |
ロイド | よし、魔物を倒しながら仕掛けの解除方法を探そうぜ! |
アリーシャ | …いや、待ってくれ。ここは役割分担をしよう |
アリーシャ | 私が魔物を食い止める。その間に、みんなは仕掛けの解除方法を探してくれ |
ロイド | 何言ってんだよ、アリーシャ!こんな数の魔物を一人で相手する気か? |
アリーシャ | ああ、そのつもりだ。また、いつ水位が上がってくるかわからない以上、それが得策だ |
ルカ | 駄目だよ、アリーシャ…!みんなで魔物と戦えば、もっと早く倒せるはず── |
アリーシャ | いや、全員で戦っていては、解除方法を探すのが遅れてしまう |
アリーシャ | みんなが助かるためには、この方法を取った方がいい。私を信じて、任せてくれないか |
ルカ | でも… |
アリーシャ | 大丈夫だよ、ルカ。必ずみんなを守ってみせる |
ロイド | あっ、一人で行くな!アリーシャ! |
ルカ | ……。今度こそ…! |
ルカ | 僕、アリーシャを助けに行くよ!二人は仕掛けの解除をお願い! |
ロイド | そうか!わかった、任せてくれ! |
パスカル | オッケー、ルカ!アリーシャをよろしくね! |
ルカ | うん! |
scene2 | 自分の意志 |
ロイド | 仕掛けを解除できそうなものなんてこの辺には見当たらないな |
パスカル | う~ん、そうだね。でも、通路を通っただけで作動するって事はないと思うんだよ |
パスカル | だって、ここを通るたびに仕掛けが作動してたら大変でしょ? |
ロイド | 海賊もここを通ったはずだよな。俺達が通った時だけ動き出したのは何でなんだ? |
パスカル | わかんないけど、あたし達が来た道を見てみれば何か見つかるかも! |
パスカル | あたし達が気付かないうちに何かしちゃったのかもしれないし |
ロイド | そうだな…ん? |
ロイド | おい、あそこ…床がへこんでねえか? |
パスカル | あれ、本当だ!へこんだ床に絵が描かれてる。これは… |
ロイド | さっき戦った魔物にそっくりだぜ |
ロイド | 遺跡の床に描かれてるって事は、やっぱり守り神だったんじゃないか? |
パスカル | 確かにそうかも。こんな絵まで残ってるなんて、昔の人に敬われて…あっ!! |
ロイド | どうした、パスカル。何かわかったのか? |
パスカル | うん。仕掛けのスイッチはこれだよ! |
パスカル | 昔の人が守り神を敬ってたなら、この床は絶対踏まないでしょ |
パスカル | あたし達はそれを知らずに床の真ん中にあるスイッチを踏んでいっちゃったんだ |
パスカル | でも、それならどうして海賊は仕掛けに気付いたんだろ? |
ロイド | …あー、あいつらなら、この絵を避けていくのもわかるぜ |
ロイド | あの魔物に襲われたのを思い出して、怖がって踏まなかった…とかな |
パスカル | なるほど…。あたし達、罰が当たったのかも。そんな事をルカが言ってたっけ |
ロイド | そうだな。守り神に謝って、この床を元に戻そうぜ |
scene3 | 自分の意志 |
アリーシャ | はあ、はあ…。いくら倒しても魔物の数が減らない |
アリーシャ | だが、みんなが解除方法を見つけるまでは…負けるわけにはいかない! |
| ゴゴゴゴ…! |
アリーシャ | …水位が下がっていく?仕掛けを解除出来たのか! |
アリーシャ | 危なかったが、これで一安心── |
| シャアアア!! |
アリーシャ | なっ、まだ魔物が!? |
| |
??? | 危ない、アリーシャ! |
| ザシュッ! |
| ギャアアア! |
| |
アリーシャ | ルカ!?どうしてここに? |
ルカ | その…アリーシャを追いながら一緒に戦ってたんだけど… |
アリーシャ | …一緒に?そういえば、目の前の敵に必死で後ろを気にしていなかった |
アリーシャ | あれだけの数だ。背後から回り込む魔物もいたはず… |
アリーシャ | ずっと一人で戦っていた気でいたが、ルカが私を守ってくれていたのか… |
ルカ | う、うん…。ほんの少しかもしれないけど…アリーシャを助けられてよかったよ |
アリーシャ | ありがとう、ルカ。礼を言った後にこんな事を言うのは何だが… |
アリーシャ | 私はルカの事を…守るべき存在だと認識していた |
アリーシャ | だから、少し意外だったんだ。こうして私を助けてくれたのが… |
ルカ | あはは…。それってやっぱり、僕が頼りないからだよね… |
アリーシャ | いや、そういうわけでは…! |
ルカ | ううん、いいんだ。僕がアリーシャにずっと守ってもらっていたのは本当だから |
| |
パスカル | アリーシャ、ルカ!二人共無事だったんだね~ |
ロイド | ルカ、アリーシャを助けたのか!よかったな! |
ルカ | うん!僕だって、助けられてばかりじゃ駄目だから… |
パスカル | でも、ルカが自分から走っていくとは思わなかったよ~ |
ルカ | …今までの僕ならきっと、恐くて動けなかったと思う。それでいつも後悔してた |
ルカ | でも、アイゼンさんに教えてもらった事を思い出したんだ |
ルカ | 自分の選んだ道なら後悔はしないはずだって… |
ルカ | だから、僕も後悔しないように目の前の事をやるって決めたんだ。ちょっと怖いけど… |
ロイド | その意気だぜ、ルカ。お蔭でアリーシャを助けられたしよ |
アリーシャ | …… |
アリーシャ | …みんな。私の話を聞いてくれないか |
パスカル | ん~?どうしたの、アリーシャ |
アリーシャ | 私は、今までみんなに自分の気持ちを伝えていなかった |
アリーシャ | アイゼンについてだが…今までは、任務のために捕縛しようとしていた |
アリーシャ | しかし…私自身、アイゼンがあの海賊達の仲間だとは思えない |
アリーシャ | 証拠や確証のないまま、彼を犯人扱いはしたくない…。私はそう思っている |
ロイド | …そうか。そうだったんだな |
アリーシャ | ああ…私にはアイゼンを逃がした責任がある |
アリーシャ | だから、正直に言えなかったんだ…。すまない |
ロイド | 何謝ってんだよ!アリーシャの気持ちをやっと聞けて嬉しいぜ |
ルカ | あのね、アリーシャがアイゼンさんを心から疑ってないのは何となくわかってたよ |
パスカル | そうだよ~。アリーシャも素直になればいいのにって思ってたんだよね~ |
ロイド | つまり俺達全員、アイゼンはあの海賊達と関係ないと思ってるわけだ |
ロイド | なら、やる事は一つだ。それを本部に証明するためにもこの先にいる海賊を捕まえようぜ! |
scene1 | 海賊の真実 |
アリーシャ | かなり奥まで進んできたと思うが… |
パスカル | レーダーの赤い印も近くなったよ!この先にマナリスが── |
| ガシャン |
ルカ | 今、音が聞こえなかった?何かが割れたみたいな… |
アリーシャ | 近いぞ、行ってみよう! |
| |
海賊の親分 | くっそ、ここまで来て何もないなんて、ふざけんなよ! |
ルカ | 酷い…。貴重な遺物が壊されてる… |
アリーシャ | 海賊、ようやく見つけたぞ!ここを荒らすのは止めるんだ! |
海賊1 | てめえらは…調査隊の奴ら! |
ロイド | よくも俺達をおとりにしてくれたな! |
海賊2 | ちっ…しぶとい奴らだぜ!どうしますか、親分 |
海賊の親分 | 放っておけ!とにかく金になる物を探すんだ。どこかに隠されてるに決まってる! |
| ガン! |
パスカル | ちょっと、柱に何してんの!この遺跡自体、貴重なものなのに! |
海賊の親分 | うるせえ!手ぶらじゃ帰れねえだろうが! |
アリーシャ | …やはり、こいつらはアイゼンとは違う |
ロイド | ああ、アイゼンがさっきのセリフを聞いたら激怒すると思うぜ |
パスカル | まさに「物の価値もわからん馬鹿共が…」って感じじゃない? |
ルカ | パスカル、アイゼンさんの真似をしてる場合じゃないよ…! |
| |
海賊1 | 何をごちゃごちゃと…邪魔するなら、容赦はしねえぞ! |
| |
ルカ | こっちに来た…! |
アリーシャ | 大人しく捕まる気がないなら…仕方ない。やるぞ、みんな! |
アリーシャ | 子分達は倒した。後はお前だけだ! |
海賊の親分 | くそ、捕まってたまるか。宝探しは終わってねえんだ! |
パスカル | 宝探しって、荒らしてるだけじゃ… |
パスカル | あああ!台座が壊されてるー!マナリスはどこ!? |
ルカ | も、もしかしてマナリスも壊されてるんじゃ… |
アリーシャ | 一見、宝石にも見えるマナリスを壊すとは思えないが… |
ロイド | 親分を倒して、探すしかないな! |
scene2 | 海賊の真実 |
アリーシャ | …よし、捕縛は済んだ。これで逃げられる事はないだろう |
ルカ | うん。パスカルはマナリスの台座を見に行ったよ |
海賊の親分 | 畜生!放しやがれ! |
ロイド | 放すわけないだろ、諦めが悪い奴だな |
海賊の親分 | 諦めてたまるか!金髪の男から逃げてやっとここまで来たのによ! |
アリーシャ | …金髪の男だと?その男について、詳しく話せ |
海賊の親分 | 詳しくなんて知らねえよ!湖畔でいきなり襲ってきやがったとんでもねえ奴だよ |
海賊の親分 | 船に乗って湖まで逃げてきたんだ。そしたら今度は湖の化け物だろ?ったく、災難続きだぜ |
ルカ | …海賊を倒していたのって、やっぱりアイゼンさんだったんだね |
ロイド | ああ。アイゼンは湖畔を荒らすこいつらを懲らしめようとしてたんじゃねーかな |
アリーシャ | そうか… |
ロイド | こいつらとアイゼンは仲間じゃないって事はわかった。安心したか、アリーシャ? |
アリーシャ | …ああ。確証のないまま、アイゼンを疑いかけた事を改めて反省している |
ルカ | でも、アイゼンさんは何で湖に来てたんだろう? |
アリーシャ | わからないが…湖は調査隊員以外は立入禁止だ。また規則を破って侵入したのは間違いない |
アリーシャ | やはり、アイゼンを放ってはおけないが…今はマナリスを見つけなければ |
海賊の親分 | くっそ、俺達はここで終わるわけにはいかねえんだ!! |
ロイド | ったく、暴れても疲れるだけだぞ。おーい、パスカル!マナリスの方はどうだ? |
パスカル | えっとね~、マナリスは台座の中にあるみたい。でも、ちょっと面倒な事になってて… |
パスカル | 何か仕掛けがあるはずなのに…台座の一部が壊されててどんなものかよくわからないんだ |
パスカル | それで、何かヒントがないかと思って辺りを探してみたんだけど…。みんな、この柱を見て! |
ルカ | 柱に星の絵が描かれてる…。森の遺跡にあった壁画と似てるね |
アリーシャ | 星の下に、台座のような絵がある。この星はマナリスを表すのだろうか |
パスカル | あたしもそう思ったんだ。これで仕掛けが何なのかわかればよかったんだけど… |
パスカル | 絵から読み取れる情報は他になさそうなんだよね… |
ルカ | この絵にヒント、かあ…。何か変わったところは… |
| |
| ガコン…! |
ルカ | ガコン…? |
パスカル | ちょっとルカ、柱に何したの!? |
ルカ | いや、僕は何も…!絵のマナリスに触ってみたら、押せちゃったというか… |
ロイド | おい、見ろよ!マナリスの台座が動いたぞ? |
| |
アリーシャ | あれは…!マナリスが出てきた! |
パスカル | え~、そんな簡単な仕掛け~!?逆に盲点だったかも。お手柄だよ~!ルカ! |
ルカ | う、うん。それって喜んでいいのかな… |
海賊の親分 | あれは…宝石か!?もう少しで…よし |
パスカル | はあ、マナリスが無事でよかった~!早く持って帰ろう── |
| |
海賊の親分 | そいつは俺のもんだ! |
| |
ロイド | あいつ!いつの間に縄を解いたんだ!? |
アリーシャ | 台座の方に向かって…!この期に及んで、まだマナリスを狙うのか!? |
海賊の親分 | この宝石で、一獲千金だぜ!誰にも渡さねえ! |
パスカル | ちょっと!マナリスを返してよ~! |
| ゴゴゴゴゴ…! |
| ザバーーー! |
海賊の親分 | な、何だあ!?…う、うおおっ!! |
| ガタガタガタ!ゴン! |
海賊の親分 | うっ…ぐう… |
ロイド | おっ…おい、お前!派手に落ちたけど、大丈夫か! |
アリーシャ | …どうやら、気絶したようだ。しかし、この揺れと水の音は一体…? |
ルカ | もしかして、まだ侵入者用の仕掛けがあったの? |
ロイド | それなら、マナリスを戻せば止められるんじゃねえか? |
| ゴゴゴゴゴ…! |
パスカル | 残念だけど、もう遅いかな…!遺跡のバリアが消え始めてる! |
| ザバーーー!! |
アリーシャ | 水が遺跡に流れ込んでくる…!みんな、出口まで急ぐんだ! |
scene1 | 想いのままに |
アリーシャ | うっ…すごい揺れだ!マナリスは無事か! |
パスカル | 大丈夫!親分から取り返したよ! |
ロイド | アリーシャ、この揺れで海賊達が起き出したぞ! |
アリーシャ | よし、彼らは一旦逃がそう! |
ルカ | えっ…いいの? |
アリーシャ | ああ、彼らを連行していたら私達も逃げ遅れてしまう |
ロイド | 確かにそうだな。まずは脱出しねえと… |
| ザバーーー! |
パスカル | うわっ、すごい水の音!みんな早く逃げようよ~! |
ルカ | 待って!親分がまだ気絶したままだよ! |
アリーシャ | 何!?彼を放っておくわけにはいかない |
アリーシャ | みんな、力を貸してくれないか?私の力だけでは足りないんだ |
ロイド | ああ、勿論だ! |
パスカル | ドーンと任せておいてよ~! |
ルカ | うん、みんなで脱出しよう! |
アリーシャ | みんな…ありがとう! |
| ゴゴゴゴゴ! |
アリーシャ | 時間がない!ロイドは私と共に親分を担いでくれ。ルカとパスカルはサポートを頼む! |
ルカ | 通路にどんどん水がきてる…!それだけじゃない!魔物もあふれてきてるよ…! |
アリーシャ | くっ…この先は浸水してるな。別の道を探そう |
パスカル | 大丈夫!あたしが先に進んで道を作るから、そのまま走って! |
パスカル | そりゃ、氷霧の白薙! |
| ピキピキピキ! |
| |
アリーシャ | 氷の橋を作ったのか!助かるよ、パスカル! |
| シャアアア! |
ロイド | でも、みんなで戦ってると逃げれねえぞ! |
ルカ | なら、僕がみんなを守る!はあああ! |
| ザシュッ! |
| ギャアアア! |
ルカ | 僕が先に行って魔物を倒すよ!二人は親分を運んで! |
ロイド | ルカ、助かったぜ!アリーシャ、一緒に親分を担ぐぞ |
アリーシャ | ああ!よし、出口が見えてきた── |
| バリンッ! |
アリーシャ | なっ…!足が!?氷が割れ始めているのか…! |
ロイド | 大丈夫か、アリーシャ!このままだと足場がなくなるぞ!急げ! |
アリーシャ | ああ!すまない、ロイド!氷に足を取られて動けないんだ!少しの間、親分を抱えていてくれ! |
ロイド | わかった!気を付けろよ! |
アリーシャ | ルカ!こっちに来てくれないか! |
ルカ | どうしたの、アリーシャ…?…その足は! |
アリーシャ | すまないが、手を貸してくれ! |
ルカ | わかった!引っ張るよ、アリーシャ! |
アリーシャ | ああ、思い切りやってくれ! |
ルカ | いくよ!せーのっ…! |
アリーシャ | くっ…もう、少し…!もう少しだ! |
| ピキ…ピキキッ…バキンッ…! |
アリーシャ | …!!よし、抜けた! |
ルカ | 氷の橋が崩れ始めてる!急いで渡ろう! |
| |
| ガラララ! |
アリーシャ | 間一髪だったな…。あと少し遅れていたら、氷の橋ごと落ちていた… |
アリーシャ | ありがとう、ルカ。本当に助かった |
ルカ | うん、アリーシャが無事でよかった! |
パスカル | ルカ~!こっちの魔物をどうにかして~! |
ルカ | パスカル!今行くよ! |
ロイド | アリーシャ、俺達も行こう! |
アリーシャ | ああ、待たせてすまない!一緒に親分を担いでいこう |
scene2 | 想いのままに |
アリーシャ | はあ…はあ…。何とか逃げ切れたようだ |
パスカル | 本当、ヒヤヒヤしたよ~!もう駄目かと思った… |
ルカ | う、うん…無事だったのが奇跡だよ |
ロイド | 親分も連れてこられたし…後は逃がした海賊達だな。まだこの辺にいるとは思うけど… |
アリーシャ | ああ、すぐに捕まえて…おや?あれは…セネル? |
セネル | みんな無事だったんだな! |
パスカル | どうしてセネルがここにいるの?船の修理は? |
セネル | とっくに終わったさ。だから、俺も海賊を追うために遺跡まで来たんだが… |
ルカ | へえ…って、セネルさんの後ろにいるのって…! |
セネル | 海賊の奴らだ。まとめて遺跡から飛び出してきた |
ルカ | セネルさんが一人で全員捕まえたんだ… |
セネル | ああ、海賊達も命からがら逃げてきた様子だったからあっという間に片付いた |
アリーシャ | ありがとう。セネルのお蔭で海賊を捕まえる事が出来た |
ロイド | じゃあ、海賊達が起きる前に、セネルの船に乗せちまおうぜ |
| |
ロイド | ふう…無事に戻ってこれたな |
ルカ | 帰り道は霧がなくてよかったね。ほら、パスカル。湖畔に着いたよ |
パスカル | ここをこうしたら…。おお~、やっぱり見れば見るほどマナリスは面白いな~ |
セネル | パスカルの奴、船に乗ってからずっとあの調子だな |
アリーシャ | ふふ…仕方ないよ。セネルはこれから本部に戻るのか? |
セネル | いや、俺はもうしばらく湖に残るよ。傷ついた調査隊員がまだいるかもしれないしな |
ロイド | そっか!ありがとな、セネル!また会おうぜ |
セネル | ああ、捕まえた海賊は頼んだぞ |
アリーシャ | さあ、私達は本部に戻ろう。…と、その前にパスカル、通信機を貸してくれないか |
パスカル | ん?いいよ~、はい |
ロイド | 本部に連絡するのか? |
アリーシャ | ああ。海賊を捕まえた事とマナリスを手に入れた事を報告する |
| |
本部の男1 | なるほど…海賊を捕まえたと。当然、殿下が逃がした金髪の男もその中に入っているんですよね? |
アリーシャ | いえ、金髪の男は捕えていません。海賊の証言では仲間ではないようです |
本部の男2 | おや、金髪の男がいなければ任務は完了したとは言えませんね |
アリーシャ | …何故でしょうか? |
本部の男1 | 金髪の男の容疑はまだ晴れていないじゃありませんか |
本部の男2 | 金髪の男が、海賊の仲間でないと本当に言えるのですか?海賊が嘘の証言をしているのでは? |
ルカ | そんな…理不尽すぎるよ… |
パスカル | アリーシャが何を言ってもケチを付けたいんだね~ |
ロイド | ったく、ムカつく奴らだぜ。アリーシャ、大丈夫か? |
アリーシャ | ああ、心配しないでくれ。私から本部にはっきり伝える |
アリーシャ | お言葉ですが──この状況からして、金髪の男は今回の海賊とは関係がないと思います |
本部の男1 | それは殿下の個人的な見解でしょう。一度行動を共にしたから、情がわいてしまっているのですよ |
本部の男2 | 何と…任務に私情を挟むとは、騎士としても隊長としても失格ではありませんか |
アリーシャ | いえ、確証がないまま犯人の一人であると決めつけてはいけないはずです |
アリーシャ | 継続して金髪の男を捜しはしますが、実際に会って判断するまで彼を犯人扱いはしません |
本部の男1 | 金髪の男を捕縛しろ、というのは調査隊本部の決定ですよ! |
本部の男2 | それに従わないというのは相応の覚悟があるんでしょうな! |
アリーシャ | はい。決めた事を変えるつもりはありません |
本部の男1 | 殿下がそう言い張るなら、こちらとしても考えが── |
クラトス | …いや、金髪の男についてはアリーシャの判断に任せる |
アリーシャ | クラトス殿…!本当によろしいのですか |
クラトス | ああ、実際に海賊と対峙したお前の判断ならば間違いないだろう |
本部の男2 | なっ…貴様!勝手に何を… |
クラトス | 勝手なのはそちらの方だ。以前から問題になっていたが、これ以上は看過出来ない |
クラトス | アリーシャ、本部のいさかいはこちらで処理する。後は任せたぞ |
アリーシャ | は、はい!ありがとうございます! |
| ツー、ツー、ツー |
ロイド | よかったな、アリーシャ!もう、本部の奴らの言う事なんて気にしなくていいんだろ? |
アリーシャ | ああ、そうみたいだ。正直、心が軽くなったよ |
パスカル | そうだよね~。言いたい事があるならバシッと言わないと! |
アリーシャ | …では、早速言わせてくれ。私は自分の意志で調査隊を続けたいと思っている |
アリーシャ | だから、これからもみんなと一緒に調査をしたい。そうさせてもらえるだろうか |
ロイド | 何言ってんだよ、そんなの当たり前だろ! |
パスカル | そうそう、あたし達で島をぜ~んぶ調べちゃおうよ! |
ルカ | うん!一緒に頑張ろう、アリーシャ |
アリーシャ | …ああ!ありがとう、みんな |
パスカル | じゃあ、早く本部に行こうよ~。マナリスもじっくり調べたいし、レーダーも量産しないとね~! |
ルカ | パスカル、元気だね…。僕は戻ったら、ちょっと休みたいかも |
ロイド | 休んだら、また調査に行こうぜ!この島にはまだ冒険出来るところがいっぱいあるみたいだし |
アリーシャ | 冒険か…。アイゼンは今、どこにいるんだろうな |
ロイド | あんなに目立つ奴だ。俺達が調査を続けてたらまた会えるって |
アリーシャ | 私もそう思う。よし、みんなで本部へ帰ろう! |
Name | Dialogue |
scene1 | アイゼンの行方 |
ルカ | …そこだ!やっ!はあっ! |
ロイド | おっと、危ね!へへ…やるじゃねえか、ルカ!今度は俺からいくぜ! |
ルカ | う、うん!いつでもいいよ!それじゃ、もう一回… |
アリーシャ | いや…二人共、そろそろ稽古は切り上げよう |
ロイド | 何でだよ、アリーシャ?あと一回くらい、いいだろ? |
アリーシャ | 私も邪魔はしたくなかったが、もう約束の時間だ。クラトス殿のところに行かなくては |
ルカ | あっ、本当だ。もうそんなに経ってたんだ…!夢中になって、気付かなかった |
ルカ | ロイド、稽古の相手してくれてありがとう。お蔭で、勉強になったよ |
ロイド | そりゃお互い様さ、稽古ならいつでも付き合うぜ!さて…そんじゃ、行くか! |
アリーシャ | ああ。途中でパスカルのところに寄ろう。約束を覚えていればいいのだが… |
| |
パスカル | いや~、すっかり忘れてた!マナリスの研究に夢中になっちゃってさ~! |
ルカ | あはは…アリーシャの心配した通りだったね。…研究は進んだの、パスカル? |
パスカル | ん~、まだまだかな。あたしの他にもいろんな人が調べてるんだけど進展なし! |
パスカル | エルピスの塔で反応したっきり、何の反応もないよ。新しい情報でもあればな~… |
アリーシャ | パスカルでも一筋縄ではいかないか。ルカ達はこの数日どうしていたんだ? |
ルカ | 僕とロイドは一緒に稽古したり、島を見て回ったりしてたよ。塔とか、港の近くとか… |
ロイド | 港は観光客でいっぱいだったぜ。次から次に船が到着してたぞ |
ルカ | アリーシャは?ここ最近、忙しそうだったよね |
アリーシャ | いや、何て事はない。調査隊の上層部への報告や、折衝をしていた |
アリーシャ | アイゼンについても各所で聞いて回ったが…新たな目撃情報はないようだ |
パスカル | アイゼンかあ。そう言えば、湖以来ちっとも話を聞かないね |
ルカ | …… |
アリーシャ | 他には…四大国連合調査隊も調査に向けて出発したそうだ |
ロイド | 本当か!?ルーク達に負けてられねえな!次の任務も頑張ろうぜ! |
ルカ | …うん、そうだね。あ、クラトスさんが来たみたい |
クラトス | …待たせた。全員揃っているな。早速だが、次の任務について説明する |
ロイド | おっ、次はどこに行けばいいんだ? |
クラトス | 順を追って話す。まず、お前達が最初にマナリスを見つけた森の事だ |
クラトス | つい先日、本格的な調査が終了し、一部が観光客にも開放されたのだが、同時に新たな発見があった |
クラトス | 森の奥に、山岳地帯へと続く道が複数あるらしい |
ルカ | 山岳地帯…初めて聞きました。という事は… |
クラトス | ああ。今回の任務も以前と同様だ。山岳地帯の安全確保と、遺物の探索を任せたい |
クラトス | 他の調査隊員を派遣する前にな |
パスカル | いえ~い!やった~!トロピカルヤッホー!待ってました~! |
ルカ | ふふ…嬉しそうだね、パスカル |
パスカル | そりゃそうだよ~!山岳地帯で新しい発見があれば、マナリスの研究も進むかも! |
ロイド | 湖に行った以来の冒険だな!楽しみだぜ! |
クラトス | 遊びに行くわけではない。山岳地帯に入るのはお前達が最初だ。気を引き締めろ |
ロイド | わかってるって! |
クラトス | …準備が出来次第出発しろ。健闘を祈る |
ルカ | 僕達が初めて、かあ… |
アリーシャ | 何があるかわからない。クラトス殿の言う通り、万全の準備を整えて行こう |
ルカ | …あのさ。これから行く山岳地帯って、調査隊しか入れないんだよね? |
アリーシャ | ああ。私達が出会った頃の森と同じく、未調査領域と呼ばれている |
ルカ | 未調査領域って事は、見張りも少ない場所って事でしょ? |
アリーシャ | そういう事になるが…何か気になるのか? |
ルカ | …アイゼンさんの事で、ちょっと。目撃情報はないってさっきアリーシャが言ってたよね |
ルカ | だったら、人目につかない場所…未調査領域にいるんじゃないかなって |
アリーシャ | そうか…可能性はある。少なくとも、アイゼンが人目を避けているのは間違いない |
ロイド | アイゼンか…。悪い奴じゃなさそうだったし、また会いたいよな |
ルカ | うん。僕も会って話がしたい。アイゼンさんが島に来た理由とか、何でいなくなっちゃったのかとか… |
ルカ | そして、またみんなで一緒に冒険したいな |
アリーシャ | 私も、アイゼンに会ってこの目で確かめたい。彼がどういう人物なのかを |
ロイド | …だよな!パスカルはどうだ? |
パスカル | ん~?そう言えば、アイゼンに「マナリスの事がわかったら教えろ」って言われてるんだよね~ |
パスカル | ほとんど何もわかってないけど、経過くらいは会ったら教えないと…かな? |
ロイド | へへ…つまり俺達全員、アイゼンに話したい事があるわけだ |
アリーシャ | 今は任務が最優先…だが、もしアイゼンに会う事があれば、まず話をしよう |
アリーシャ | …さあ、準備が終わったら出発だ。気を引き締めていこう、みんな! |
scene2 | アイゼンの行方 |
ルカ | 山岳地帯か…どういうところなんだろうね? |
アリーシャ | 人の通れる山道は複数あるが、ほとんどが落石で塞がれているらしい |
ロイド | 俺達がこれから使う道はちゃんと通れるんだろ? |
アリーシャ | ああ、安心してくれ。他の道も、後ほど隊員を派遣し、岩を砕いて整備すると言っていた |
パスカル | 道を塞ぐほどの岩か~。砕くには丈夫なハンマーが必要だね |
ルカ | うーん…山岳地帯は遠いしハンマーを運ぶのも、着いてから岩を砕くのも、大変そうだね |
??? | ちょっと、そこの |
ルカ | え?…僕? |
??? | そうよ。道を聞きたいんだけど |
ルカ | えっと、観光に来たの? |
??? | そんな事どうでもいいでしょ。私は道が聞きたいの |
??? | エルピスの塔へは、どう行けばいいのかしら |
ルカ | あ、うん。えっと… |
??? | ふーん…わかったわ |
ルカ | 行っちゃった… |
ルカ | 今の子…何だか独特な雰囲気の子だったね |
ルカ | 誰と来たんだろう。家族とか一緒じゃないみたいだし…迷子かな? |
ロイド | 迷子にしては、落ち着いてたけどな。誰かと待ち合わせでもしてんじゃないか? |
パスカル | やっぱりみんな、エルピスの塔が気になるんだね~ |
アリーシャ | 時間があれば、塔まで案内したいが…今は任務がある。先を急ごう |
ルカ | う、うん!今行くよ! |
scene1 | 小さな同行者 |
アイゼン | …ここまでは順調だな。随分遠くまで来たもんだ |
アイゼン | (アイフリードに会う前も、 こうして各地を探していたが…。 また探す事になるとはな) |
アイゼン | (もっとも、 サフィアに伝説通りの力が あるかどうかはわからないが…) |
アイゼン | さて…人の気配はないな。集めた情報に間違いはなかった |
アイゼン | これなら邪魔は入らない── |
| |
??? | わあああっ! |
アイゼン | …! |
| |
| グオオオ! |
??? | 全く、話が通じん相手なのじゃ |
??? | 魔物なんですから当たり前でしょう!に、逃げますよ!! |
アイゼン | こっちに来るか… |
| グオオオ! |
チャット | わあああっ!どっか行ってくださいー! |
パティ | チャット、時には諦めも肝心なのじゃ |
チャット | パティさんは落ち着きすぎで──って、人!? |
チャット | そこの人!助けてください! |
アイゼン | 騒がしいな、全く。万事上手くはいかないか |
| グオオオ! |
scene2 | 小さな同行者 |
| ギャアアアア! |
アイゼン | こんなものか |
チャット | はあはあ…。すみません、助かりました |
アイゼン | ただの成り行きだ。何故ここにいるのかは知らんが…俺には興味のない事だ。じゃあな |
パティ | まあ待て。こうして会ったのも何かの縁じゃ |
パティ | お前、調査隊員にしては目つきが悪いのう…。さては不法侵入者じゃな? |
チャット | パティさん、失礼ですよ!確かに、ちょっとガラが悪くて極悪人に見えなくもないですが |
パティ | でも、それならうちらにとっても都合がいいのじゃ |
チャット | ん?…なるほど、それもそうですね! |
アイゼン | おい… |
パティ | きっと、複雑な事情で小魚のように身を潜めているのじゃな |
チャット | わかりますよ、その気持ち |
アイゼン | おい。勝手に話を進めるな |
パティ | そう誤魔化さなくてもよいのじゃ |
アイゼン | …もういい。とにかく俺は行く。じゃあな |
アイゼン | …… |
パティ・チャット | …… |
アイゼン | …何故ついてくる。ここは危険だ |
チャット | 調査隊でもないのに、こんなところにいるのは明らかに変です。あなたは何か知っていると見ました! |
パティ | それに、さっき言ったぞ。こうして会ったのも、何かの縁じゃ |
アイゼン | あいにくだが、子守りはやってない。さっさと家に帰るんだな |
パティ | む。それは聞き捨てならん言葉じゃの |
パティ | 子どもではない。パティなのじゃ! |
チャット | そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね。ボクはチャットです! |
アイゼン | …… |
パティ | うちはお宝の話を聞きつけてはるばるこの島へとやって来たのじゃ |
パティ | なのに、どこへ行っても子どもの遊びだと思われてのう… |
チャット | 一般開放されたと言う森にすら入れてもらえなかったんですよ!?失礼な話です! |
アイゼン | …そうか。それは災難だったな、じゃあ── |
パティ | それでじゃ!あてもなくふらふらしていたら、港でチャットに出会ったのじゃ |
チャット | ええ。ボクも同じ状況だったのですぐに意気投合しました!そこで… |
パティ | うちらが先にお宝を見つけてしまえば調査隊も文句は言えんじゃろう、という事になったのじゃ! |
チャット | そういうわけで、ボク達は大人しく帰るわけにはいかないんです! |
パティ | まだ見ぬお宝が待っている以上、サメのように泳ぎ続ける他ないのじゃ! |
チャット | あなたが嫌だと言っても、ボク達はどこまでもついていきますよ! |
アイゼン | …わかった。よくわかった。聞いてもいない事情も、お前らの名前もな |
アイゼン | だが、俺にも俺の事情がある。人目につくのは避けたいんでな。お前らがいると迷惑だ |
アイゼン | それに…いや、いい。とにかく、お前らは山を下りろ |
チャット | そんな事言わないでください。道中魔物が襲ってきたら今度こそ、ボク達はおしまいです |
アイゼン | さっきは十分戦えているように見えたが |
パティ | 有能な助っ人がいてこそなのじゃ |
アイゼン | …どうしてもついてくる気か。やれやれ |
アイゼン | …いいか。ついてきたけりゃ勝手にすればいい。だが、騒ぐな |
パティ | おお。見た目よりは話がわかるのう |
チャット | 恩に着ます! |
アイゼン | これ以上話していても時間の無駄だ。一時的な同行、それでいいな |
チャット | ええ、十分です…ところで、あなたの名前は何と言うんですか? |
アイゼン | アイゼンだ |
パティ | うむ。よろしく頼むぞ、アイゼン! |
チャット | よろしくお願いします、アイゼンさん!! |
アイゼン | …だから、静かにしろ |
scene3 | 小さな同行者 |
アイゼン | …… |
チャット | ──そして、その時現れたウォントを一網打尽にし…ついにお宝を手に入れたのです! |
パティ | ほうほう。それは大層な冒険だったの |
チャット | 何、ボクにかかれば何て事はありませんでしたよ |
チャット | ま、まあ、さっきは不意打ちを受けてしまいましたが… |
パティ | 今こうして生きているなら、問題なしなのじゃ! |
パティ | ふふ…うちも似たような話がある。冒険の末、かのお宝を手にした時は身震いしたのじゃ |
パティ | 魔の海域を通り抜け、黄金に輝く秘宝を見つけた瞬間は、胸にこみ上げるものがあった! |
アイゼン | …お前達。ただの子どもじゃないな。何者だ? |
チャット | 何者…とは? |
アイゼン | お前達が口にした海域や気候は、実在する物ばかりだ。適当に語っているにしては詳しすぎる |
パティ | おお、ようやくわかったか。うちは冒険家じゃ! |
チャット | ボクは海を愛する海賊です! |
アイゼン | 冒険家に海賊、か。…なるほどな |
チャット | お宝のうわさを聞けば、海を渡ってどこまでも! |
パティ | 危険を顧みず突き進む!それが海に生きる者なのじゃ! |
アイゼン | …だが、今回のように子どもの遊び扱いされては「海に生きる者」も形無しだな |
チャット | 確かに大変ではありますが、冒険に障害はつきものです! |
パティ | その通りじゃの。そして、うちらは障害があればあるほど燃えるのじゃ! |
チャット | こればかりは、海に生きるボク達にしかわからないかもしれませんけどね! |
アイゼン | …… |
アイゼン | いや。確かに、一級品のお宝の前には難題が降りかかるものだ |
チャット | …その通りです!あなた、話がわかる人ですね |
パティ | うむ。お前からはお仲間の匂いを感じるのじゃ |
アイゼン | ああ。俺も海賊だからな。ある海賊団と共に、世界中を航海してきた |
チャット | おお、そうだったんですか!それならそうと、早く言ってくださいよ |
パティ | 類は友を呼ぶと言うわけじゃな。それで、アイゼンはその仲間と一緒にこの島に来たのかの? |
アイゼン | 今は別行動だ。あいつらは海にいる |
チャット | という事は、ここまでは一人だったんですね |
アイゼン | …そのはずだったがな |
チャット | …? |
パティ | まあ、今はうちらがいるから寂しくないのじゃ |
チャット | そうですね。海賊同士、助け合っていきましょう |
アイゼン | …全く。お前達といい、森で会ったあいつらといい…付きまとわれて困る |
アイゼン | (まあ… こういうのも新鮮ではあるか) |
パティ | それでは、お宝を求めていざ行かん、なのじゃ! |
チャット | 見つけたら山分けですよ!…では、アイゼンさん!先頭で警戒をお願いします! |
アイゼン | …目指すは山頂だ。それと…何度も言うが、もう少し声を落とせ |
scene1 | 新たな真実 |
チャット | ふう…。ようやく、開けたところに出ましたね |
パティ | さて、何があるかのう…。…ほう、これはこれは |
チャット | 古びた家がいくつも…。どうやら、集落があったみたいですね |
アイゼン | 住人はそれなりにいたようだな。…だが |
パティ | どの建物もボロボロじゃの。ガレキかと思ったぞ |
アイゼン | ここは滅んだ集落というわけか。災害か、戦禍か…何故滅んだかはわからんが |
アイゼン | (…確か森の集落では、マナリスは 人の手で守られていた) |
アイゼン | (それなら、この集落にも マナリスがあるかもしれん) |
チャット | アイゼンさん?どうかしましたか? |
アイゼン | …この辺りにお宝がありそうだ |
パティ | 何と!それは本当か!? |
アイゼン | 以前、似たような事があった。その時は集落で見つけたある物がお宝に繋がっていたんだ |
アイゼン | これから集落を調べてそれを探す。ついでだ、お前達も手伝え |
チャット | 勿論です!それでお宝が見つかるのなら! |
パティ | うむ!草の根かきわけてでも探し出して見せるのじゃ! |
パティ | それで、そのある物とは…? |
アイゼン | カタグラフィという紋様の入った四角い箱だ。大きさは…まあ、これくらいか |
チャット | 片手で持てる大きさですね…。カタグラフィ…わかりました! |
パティ | では早速、お宝探しといくかのう |
scene2 | 新たな真実 |
チャット | ──アイゼンさん!もしかして、これじゃないですか!?こっちにたくさんある、この箱! |
アイゼン | これは… |
パティ | …おー、確かに箱じゃの!アイゼンの言っていたカタグラフィとは、これの事か? |
アイゼン | ああ、間違いない。再生装置も向こうで見つけた |
アイゼン | 確か、ここを開くんだったな… |
チャット | …見た事のない代物ですが、何に使うんですか? |
アイゼン | こいつは過去の記録を映し出す装置。言わば、かつての超技術だ |
パティ | ほう、心躍る響きじゃの |
アイゼン | …よし、起動したか。口で説明するより、見た方が早い |
| ポチッ…! |
| |
兵士1 | うおおおおお!! |
兵士2 | 侵入を許すな!全員、ここを死守し──ぐはっ! |
兵士1 | 隊長!?くそっ…!! |
| |
パティ | これは…戦争の様子じゃな |
チャット | この集落での出来事のようですが…今ほど建物が壊れていませんね? |
アイゼン | ああ。もっとも、この戦いで壊れていくのかもしれんが…ん…まだ続きがあるな |
| |
兵士2 | うぐっ…ああ!痛い…痛い…! |
集落の女 | …こっちよ!急いで! |
??? | ああ!…もう大丈夫だよ。すぐに済む…! |
??? | …マナリスよ!彼の傷を癒してくれ! |
兵士2 | …っ、はあ…。か、身体が楽に…!助かったよ…さすがは、天族だな… |
天族の男 | ぐっ…はあっ…はあっ…!お、お礼ならいいさ。それで、次の負傷者はどこだい? |
ドワーフの男 | 傷の深かった者は、今ので最後だな。あとはみんな、軽い怪我だ |
天族の男 | いや…治せる人は…治しておこう。軽くても、怪我には変わりないからね |
集落の女 | 駄目よ!何回マナリスを使ったと思ってるの? |
集落の女 | いくら天族でも、あなたの身体が持たないわ!次に使う時は、私達が…! |
天族の男 | それこそ駄目だ!人間がマナリスを使うなんて、危険すぎる! |
天族の男 | 僕達天族が使えば…代償は最小限で済む。僕が使わない理由は…ないよ |
天族の男 | 他の集落に援軍を要請している。もう少し辛抱すれば…きっと助けが来るはずなんだ |
天族の男 | …さあ、怪我人のところへ案内してくれ |
| |
アイゼン | これは…! |
チャット | マナリス…!すごいお宝じゃないですか!一瞬で傷を治せるなんて… |
パティ | うむ、さすがのうちもちょっとびっくりしたのじゃ |
チャット | もう一度見てみましょうか。…ふむふむ。この集落には、様々な種族の方がいたようですが… |
チャット | マナリスを使っているのは、この方だけですね |
パティ | 人間やら、ドワーフやら…あの傷を治していた男は、天族とか呼ばれておったの |
チャット | 聞いた事はありませんが…この島特有の種族なんでしょうか? |
アイゼン | いや…違う。本来、天族は他種族から距離を置いて生活するものだ |
アイゼン | (この時代ではすでに天族の姿が 見えるようになっていた… やはり、この島には何かあるな) |
パティ | 何じゃ、アイゼンは知っておるのか?何やら、驚いているように見えるが… |
アイゼン | …何でもない。それよりも、マナリスの方が重要だ |
パティ | おお、そうじゃ!あれだけの傷を、ぱーっと一瞬で治す力! |
パティ | マナリスこそ、お宝に相応しい代物なのじゃ! |
チャット | ええ。でも、あの様子からすると何かリスクがあるようですね… |
チャット | よし!カタグラフィは他にもいっぱいありますし、全部再生してみましょう! |
パティ | うむ!何か手がかりがあるかもしれん! |
アイゼン | (…マナリスは、 単なる塔の鍵ではなかった。 まさしく破格の能力…) |
アイゼン | (ならば、サフィアの力はどうだ? マナリスを使ってまで、 厳重に封印されるほどの代物…) |
アイゼン | どんな願いも叶えられる伝説、か。あながち嘘ではないかもしれないな |
| |
パティ | ふむ…映像はこれで終わりじゃな。マナリス以外にめぼしい物はなかったの |
チャット | 十分ですよ!この集落でマナリスが使われていたのは確かです! |
アイゼン | これだけ広い集落だ。まだ探していない場所はあるはず…片っ端から── |
| |
| グオオオオ! |
| |
チャット | ひいっ!この声、また魔物ですか!? |
アイゼン | 表に集まってきている。どうやら、この集落は奴らの住処になっていたようだな |
アイゼン | まあいい…道を塞ぐのなら、蹴散らしていくまでだ |
scene3 | 新たな真実 |
| ウ…ウウ…ギャ…ウウウッ…! |
アイゼン | …妙に魔物の動きが鈍い。こいつら、手負いか? |
パティ | ふふん。どうやら楽勝のようじゃな! |
パティ | さ、こいつで最後じゃ── |
| ガキン! ボンッ! |
パティ | わっ!暴発じゃと!?まるで見当違いのところを撃ってしまったのじゃ…! |
| ゴ…ゴゴッ…! |
チャット | …!暴発した弾で、家が崩れてくる…!パティさん、危ない! |
アイゼン | ──ちっ!身を屈めてじっとしてろ!ガレキを吹っ飛ばす! |
| ガッ!ドガッ!! |
| |
アイゼン | …無事か? |
パティ | う、うむ。助かった。うちは大丈夫じゃ |
チャット | よかった!暴発騒ぎに驚いて、魔物も逃げていきましたよ! |
パティ | ふう…危うくやられるとこじゃった。それにしても… |
パティ | 何でいきなり暴発したのかの?この間手入れしたばかりなんじゃが… |
アイゼン | おそらく…今のはお前のせいじゃない |
チャット | お前のせいじゃない、って…?何でそんな事がわかるんですか? |
アイゼン | いろいろと事情があってな。…… |
アイゼン | …やはり、危険だな。俺は一人で行動する |
パティ | いきなり何言いだすんじゃ?急に怖い顔になったぞ |
チャット | そうですよ!これからお宝を見つけようって時に! |
??? | ──ロイド、みんなを呼んできて!今、こっちで音がしたよ! |
アイゼン | …!この声…あいつらもここに来ていたのか。ちょうどいい |
アイゼン | お前達。そこに並べ。…動くなよ |
パティ | む…?ここか? |
チャット | 次から次に、何なんです? |
| ゴゴゴッ! |
チャット | なっ、アイゼンさん!?この土の壁は一体!? |
パティ | と、閉じ込められたー!?さっきは守ってくれたのに、何でこんな真似するんじゃ! |
アイゼン | 悪く思うな。もう追ってくるなよ…じゃあな |
チャット | ちょ、本当に置いていくんですか!?アイゼンさーん! |
scene4 | 新たな真実 |
ルカ | 確かこの辺りから聞こえたと思ったけど… |
??? | だーれーかー!助けてほしいのじゃ! |
アリーシャ | …あそこだ!土の…壁? |
ロイド | この声…壁の中からだぜ!おーい、今助けるぞ! |
| |
チャット | いやー、ありがとうございます。助かりました |
アリーシャ | 無事で何よりだ。それより君達、一体何があった? |
パティ | 実は、もう一人連れがおったのじゃ。共にこの集落にやってきたのじゃが… |
チャット | 魔物を倒して一段落したと思ったら、急に土壁に閉じ込めてきたんです |
チャット | それまでは一緒に戦ってくれたのに、どうしてあんな事をしたのか…。全く、アイゼンさんは── |
ルカ | アイゼン…!?って、金髪で黒い服の? |
パティ | そうじゃ!…もしかして、お前らも知り合いか? |
ロイド | ああ。でも、何でお前らとアイゼンが一緒にいたんだ? |
パティ | 何でかと聞かれれば、偶然会っただけじゃがの。それ以上の関係は…秘密なのじゃ |
パスカル | ふーん…。アイゼンもマナリスを探しにきたのかな |
ルカ | かもしれないね。何の目的もなく、こんな山まで来ないだろうし |
アリーシャ | …アイゼンについてはひとまず置いておこう。それより… |
アリーシャ | 君達のような子どもが、どうしてここに?迷い込んでしまったのか? |
チャット | …!え、ええ…そんなところです |
アリーシャ | …そうか、ここは怖かっただろう。だが、もう大丈夫だ。私達調査隊が責任をもって保護しよう |
チャット | ちょ、調査隊!?みなさん、全員そうなんですか!? |
ロイド | ああ、ここには任務で来たんだ。まさか、子どもがいるとは思わなかったけどな |
パスカル | そうだ!アイゼンと一緒にいたなら、何か知らないかな?マナリスとか、カタグラフィとか! |
パティ | し、知らないのじゃ。もし知っていても、うちらの口は貝よりも固いのじゃ |
チャット | ボ、ボク達は大丈夫です!さっき、アイゼンさんに安全な道を教えてもらったところで… |
チャット | 何も知らないし、保護も必要ありませんから!それでは、失礼しますー! |
アリーシャ | ちょっ…待ってくれ!…駄目だ。もう見えなくなってしまった… |
ルカ | すっごい慌ててたね。怒られると思ったのかな? |
アリーシャ | 一応、人の通れそうな道は全て安全を確認してきたが… |
パスカル | ん~、元気そうだったし、大丈夫じゃない?心配なら帰る時に捜そうよ |
ロイド | …ん?あいつら、何かポロポロ落としていったぞ? |
パスカル | …!これ、カタグラフィと再生装置だ! |
ルカ | そっか…。アイゼンさんがマナリスの手がかりを探してたのかも? |
パスカル | なら、あたし達も見てみようよ~!バコッとな…! |
| |
ルカ | マナリスに、こんな力があったなんて… |
アリーシャ | 単なる塔の鍵ではなかったのか… |
パスカル | すごい!すごいよ、これ!傷も一瞬で治してるし…。しかも、それだけじゃないんだ! |
ロイド | ああ。こっちのカタグラフィを見ろよ |
アリーシャ | …!植物の苗が、瞬く間に育って…果実までつけている…! |
ロイド | マナリスってのは、想像以上にすごいお宝みたいだな |
パスカル | う~、今すぐ戻って、もう一度調べてみたい~! |
アリーシャ | 私はあのマナリスを使っていた男が天族と呼ばれていたのが気になるのだが… |
ルカ | そうだね。マナリスの事も気になるけど、天族っていうのは何だろう? |
ロイド | それなら聞いた事あるぜ。俺の知り合いでミクリオとライラって奴がそうだったな |
パスカル | ロイドも二人を知ってるの?私も一緒に旅した事があるよ |
アリーシャ | なっ…!二人とも、天族に知り合いがいるのか!? |
パスカル | 前にちょっとね~。天族って特殊な存在らしいよ |
アリーシャ | その姿は普通の人間には見えず、自然の力を操る事が出来るらしい |
ルカ | アリーシャも天族を知ってるの? |
アリーシャ | ああ、小さい頃に伝承を読んだんだ |
アリーシャ | …まさか、こんなところで天族の話を聞く事になるなんて思いもしなかった |
アリーシャ | しかも、二人が天族と会った事があるとは…。驚いたな |
ロイド | 特別変わった奴じゃなかったけどな。俺達と何も変わらないって言うかさ |
アリーシャ | そうなのか!出来れば私も会ってみたいが… |
アリーシャ | 今は任務中だ。詳しい話はまた後で聞かせてほしい |
アリーシャ | 今回のカタグラフィを見る限り、マナリスにはすさまじい力が秘められていると考えられる |
アリーシャ | 能力を調べるためにも、調査隊で早く確保しなくては。使い方や…代償と言うのも気になる |
ルカ | うん、僕もそう思う。天族の人は、いい事に使ってたけど… |
ロイド | この集落にマナリスがあったなら、今も近くにあるかもしれないぜ |
アリーシャ | ああ、私もそう思う。パスカル、レーダーを使ってマナリスの反応を見てくれないか? |
パスカル | 任せて!…って言うか、もうやってるよ~! |
パスカル | えっと…おっ!あっちの方に反応があるよ! |
ロイド | へへ、思った通りだ!行ってみようぜ! |
| |
チャット | …どうやら、行ったみたいですね |
パティ | まさか調査隊員と出くわすとはのう。とりあえず逃げ切れたが、これからどうするのじゃ、チャット? |
チャット | …決まってます!今のは戦略的撤退…!お宝をみすみす渡せませんよ! |
パティ | そうじゃな。アイゼンにも文句を言わねばならんし |
チャット | こっそり、後をつけましょう!マナリスは僕らの物です! |
scene1 | 死神の呪い |
ルカ | これまでは遺跡だったけど、今度は洞窟か… |
アリーシャ | 自然の地形を利用した祠のような物かもしれないな |
アリーシャ | パスカル、マナリスはこの洞窟にあるのか? |
パスカル | うん。レーダーにも反応があるし、間違いないよ |
ロイド | なら、急ごうぜ。…ん? |
ロイド | これ、誰かの足跡だ。俺達より先に入った奴がいるのか? |
ルカ | もしかして…アイゼンさん? |
アリーシャ | そうだとすれば、いい機会だ。アイゼンと直接話が出来る |
アリーシャ | 何故私達の前から消えたのか、何の目的でこの島に来たのか…。全てをはっきりさせよう |
ルカ | うん。行こう! |
scene2 | 死神の呪い |
アイゼン | …… |
パスカル | おっ!あそこに立ってるのは…おーい、アイゼン! |
アイゼン | …ようやくあの二人を引き離したのに、今度はお前達か |
ルカ | よかった…!アイゼンさん、この間は何も言わずにいなくなったから… |
ルカ | もう一度会いたいと思ってたんです |
アリーシャ | 調査隊員として、本来、立入禁止のこの場所にいるのは見過ごせないが… |
アリーシャ | それより先に、私達はお前と話がしたい |
アイゼン | …話だと? |
ルカ | 僕は…アイゼンさんと、また一緒に冒険出来ればいいって思ってます |
アイゼン | …! |
アイゼン | 本気か?普通、あんな別れ方をされて追う気にはならないだろう |
アリーシャ | 確かにお前は何も言わず消えた。だが、ただそれだけだ。マナリスを奪ったわけでもない |
アリーシャ | それに…アイゼン。以前、湖を荒らす海賊と戦っただろう |
アイゼン | …ああ。ついこの間な |
ロイド | やっぱりお前だったか |
ルカ | 森では僕を助けてくれたし…さっき会った子達も、一緒に戦ってくれたって言ってました |
ルカ | だから僕は…僕達は、アイゼンさんが悪い人だとは思えません |
アリーシャ | だが…お前が私達を避けているのも事実だ。どうしても、それが引っ掛かる |
ルカ | だから僕達は…アイゼンさんの口から、事情を聞きたかったんです! |
アイゼン | …… |
ルカ | アイゼンさんの事情がわかれば、協力して一緒に冒険する事だって… |
アイゼン | お前らと一緒に、か… |
| |
アイゼン | …駄目だな。その気はない |
| |
ルカ | …! |
アリーシャ | …理由を聞きたい |
アイゼン | 理由も何もない。俺は一人で動くと決めてるんだ |
ロイド | じゃあ、島に来た目的は何なんだ?海賊って言ってたけど…お宝探しに来たのか? |
ロイド | せっかく会えたんだし、少しくらいは教えてくれてもいいだろ |
アイゼン | …マナリスを探す限り、お前達とは今後とも何度か顔を合わせる事になるな… |
アイゼン | いいだろう。俺の事情と目的については、ここではっきりさせておこう |
アイゼン | まず…俺は人間じゃない。聖隷だ。…この島では、天族と呼ばれていたようだがな |
アリーシャ | なっ…!?アイゼンが、天族…!? |
ルカ | 天族…ってカタグラフィに映っていたあの… |
アイゼン | カタグラフィを見たのか。それなら話は早い |
アイゼン | 聖隷とは本来、人には見えず、世界のあちこちでひっそりと暮らしてきた種族だ |
アイゼン | 寿命はなく、生まれながらにして特殊な力が使える |
アイゼン | 他にも、周囲に影響する加護を持っている事もある。だが…俺の場合、それは呪いだった |
ルカ | …呪い? |
アイゼン | 言っただろう。俺は死神の呪いにかかっていると |
アリーシャ | 森で言っていた、あれか… |
アイゼン | 俺は呪いを解こうと世界中を旅していたんだ |
アイゼン | 方法は見つからなかったが…ある男の言葉によって呪いを受け入れる事が出来た |
アイゼン | そんな時だ。この島の…サフィアの伝説を耳にしたのは |
ロイド | 「どんな願いも叶えられる」…そうか、じゃあ…! |
アイゼン | ああ。俺は呪いを解くためにサフィアを狙っている |
パスカル | でもさ、サフィアの力で呪いが解けるとは限らないんじゃない? |
アイゼン | …その通り。眉唾にもほどがある伝説だ。完全には信じていなかったが… |
アイゼン | ここに来て、賭ける価値が出てきた。お前達も、あのカタグラフィを見たんだろう? |
アイゼン | ここでは多くの種族が集まり、共存、共栄していた。本来見えないはずの天族もだ |
アイゼン | つまり…かつてこの島には、天族に影響を及ぼすほどの技術が存在したという事だ |
パスカル | なるほどね~…だったら、サフィアの力だって、天族の呪いに効果があるかも…って事? |
アイゼン | ああ。多様な種族によって発展した島だ。それだけの期待は出来る |
ロイド | じゃあ…ここに来たのも、サフィアのためか? |
アイゼン | ああ。一個でもマナリスを手に入れれば、塔の扉を開ける時、調査隊との交渉材料になるからな |
ルカ | そんな…!一人で調査隊と敵対するような事、しなくたっていいのに… |
アリーシャ | そうだ。マナリスを使って交渉しようとすれば、調査隊全体がお前の敵になるかもしれないぞ |
アイゼン | 構わない。自分の舵は自分の意志で取る。調査隊の下につくのは性に合わん |
アイゼン | それに…一人で生きるのは慣れてるんでな |
ルカ | アイゼンさん… |
アイゼン | これで俺の話は終わりだ。俺は…お前達の仲間にはならない |
アイゼン | …呪いは俺一人で解く。もう協力者はいらないし、ほしいとも思わない |
ルカ | そんな… |
アイゼン | お前達にも任務があるんだろうが…マナリスを渡すわけにはいかないな |
アイゼン | もし俺の邪魔をするのなら、その時は相手になってやろう |
アイゼン | …この先のマナリスがほしければ、相応の覚悟をしてくるんだな |
ルカ | アイゼンさん… |
ロイド | …あいつ、本気みたいだな |
アリーシャ | …退くわけにはいかない。私達も調査隊としてマナリスを確保しなければ |
パスカル | う~ん、アイゼンには悪いけど、マナリスは渡せないね~ |
ロイド | ああ。アイゼンの事情はよくわかった |
ロイド | でも…黙って見てるなんて出来ないもんな |
ルカ | アイゼンさんと戦う…。そんな事、あるのかな… |
アリーシャ | 覚悟はしておくべきだろう。アイゼンの目に迷いはなかった |
アリーシャ | ただ、少し都合のいい解釈をすると… |
アリーシャ | 本当に私達が邪魔なら、今この場で戦いになっていたはずだ |
ルカ | …そうだね。ありがとう、アリーシャ |
アリーシャ | ああ、アイゼンを追い、私達でマナリスを確保しよう |
scene1 | 度重なる災難 |
パスカル | ぜえ…はあ…。つ、疲れた~!この洞窟、どうなってるんだろ? |
ルカ | 吊り橋の縄が切れたり、いきなり足元が崩れたり… |
アリーシャ | ああ。次から次へと危険な事ばかり起こるな |
ロイド | 遠回りばっかで全然前に進んでる気がしないぜ |
アリーシャ | 先を急ごう。この洞窟が異常なのは明らかだが…気をつけて進むしかない |
ルカ | そうだね。このままじゃ、アイゼンさんに追いつけなくなるかもしれないし… |
ルカ | …ん?あれって… |
アイゼン | …… |
パスカル | アイゼンだ!お~い、アイゼ── |
| |
| ピシッ…! |
| |
アリーシャ | …!パスカル、下がれ!天井が崩れる! |
パスカル | ──え?うわあっ! |
| ガラガラガラッ…! |
ロイド | パスカル! |
ロイド | 裂空斬! |
| |
| ドゴォッ!!ガラガラガラッ…! |
| |
ロイド | …思い切りやっちまったけど、大丈夫か、パスカル? |
パスカル | げほっ、げほっ…うん、助かったよ~。ありがと、ロイド |
アリーシャ | 崩れてきた岩を砕いたのか…あの短時間でよく反応出来たな |
ロイド | 一か八かだったけど上手くいったぜ |
ルカ | パスカルが無事でよかったけど、別の道を探すしかなさそうだね |
アリーシャ | ああ、来た道を戻ろう |
パスカル | そんな~、これで何度目なんだろ… |
scene2 | 度重なる災難 |
アリーシャ | …よし、この横穴から先に進めそうだ |
ルカ | もう何も起こらないといいけど…。さっきの崩落も、マナリスを守るための罠…なのかな |
ロイド | それにしちゃ、ちょっと変だよな。森や湖にも罠はあったけど、こんなに多くはなかっただろ? |
パスカル | ん~…多分、今回のは罠じゃないと思うんだよね |
パスカル | 気になって途中から調べてたけど、何かが仕掛けられた跡はなかったし |
パスカル | 全部罠じゃないとは言い切れないよ?でも…ほとんどは自然に起こった事じゃないかな |
アリーシャ | 偶然にしては出来過ぎているが…罠ではないとしたら、何か原因があるのだろうか |
ルカ | もしかして… |
ルカ | これって、アイゼンさんが言ってた死神の呪いに関係があるんじゃない? |
アリーシャ | 死神の呪い…。自分の周囲に災いが降りかかるとアイゼンは言っていた |
パスカル | 呪いか~。それなら、今までの事も説明がつくね |
ロイド | 俺達はアイゼンを追ってるから、危ない目に遭ってるって事か? |
ルカ | 確証はないけど…可能性はあると思う |
アリーシャ | そう言えば…森でアイゼンを追っている時も不自然な程、何度も魔物に遭遇したな |
ルカ | あの時、魔物を引き寄せたのは死神の呪いのせいだろう…ってアイゼンさんも考えてた |
ロイド | なるほどなあ…って、待てよ |
ロイド | だったら、アイゼンはいつもこんな目に遭ってるのか? |
ルカ | そうだと思う。生まれつき加護や呪いを持ってるって話をしてた |
ロイド | あいつは…生まれてからずっと呪いの影響に苦しんでたのか… |
パスカル | 天族って寿命がない種族なんでしょ?だったら、これからもずっと呪いと付き合い続けなきゃいけないんだ |
アリーシャ | そんな呪いを解く可能性があるのならサフィアを狙うのも当然だろう |
ロイド | けどよ、それなら何で俺達を遠ざけるんだ? |
ルカ | …多分、アイゼンさんは僕達を呪いの影響に巻き込みたくなかったのかな |
ルカ | 周りの人に迷惑をかけちゃうのって…辛いから |
アリーシャ | そうか…アイゼンがそんな想いでいるとしたら、集落であの子達を壁に閉じ込めたのも理解できる |
ロイド | ああ、あいつらか。しばらく一緒に行動してたって言ってたな |
アリーシャ | 恐らく、私達と同じように道中で死神の呪いの影響を受けたのだろう |
アリーシャ | 一緒にいるのは危険だと考えてあの子達を遠ざけたのかもしれない |
パスカル | 遠ざける方法にしては、やりすぎな気もするけどね~ |
ロイド | この先、マナリスのところへ行けばアイゼンと会えるはずだ |
ロイド | アイゼンが俺達を遠ざけるのが呪いに巻き込みたくないからなのか、そこで本人に確かめようぜ |
ルカ | …うん。もう一度、話がしたい |
アリーシャ | マナリスの前でアイゼンと対峙する事になれば戦いが始まるかもしれない |
アリーシャ | …しかし、話し合いを諦めはしない |
アリーシャ | サフィアの使用について本部に掛け合う事が出来れば…私達が争う必要はなくなる |
アリーシャ | アイゼンに本部の人間を説得しようと持ちかけてみよう |
ロイド | おう!またアイゼンと一緒に冒険したいしな! |
パスカル | よ~し、そうと決まれば、早く行こ! |
ルカ | うん!アイゼンさんに追いつかないと! |
scene1 | 変わらぬ意志 |
アイゼン | ちっ…!魔物が次から次へと…はっ!! |
| ギャアアアア! |
アイゼン | あの集落にいた魔物と同じか。数が多くて厄介だ…! |
| グオオオオ! |
アイゼン | …後ろか!せいっ!! |
| …!グルル…! |
アイゼン | …くそ、仕留めそこねた。死角から逃げ場所まで、ここの地形を知り尽くしてやがる |
アリーシャ | ──みんな、こっちだ! |
アイゼン | …!この声、あいつらか |
ロイド | アイゼン…!やっと追いついた |
アリーシャ | 足止めされていたのは私達だけではなかったようだ |
アイゼン | …もう来たか。これだけ邪魔が入れば当然だな |
パスカル | うわ~、すっごい数の魔物だね。これも死神の呪いってやつ? |
アイゼン | いや、呪いの影響だとはいえない。こいつらとは集落でも戦った |
アイゼン | 元からこの一帯を縄張りにしているんだろう |
| グオオオオ! |
ルカ | 魔物がくる…!アイゼンさん、僕も戦います! |
パスカル | あたし達もこの先に進みたいしね! |
アイゼン | お前ら…邪魔はするなよ! |
scene2 | 変わらぬ意志 |
| ギャアアアア! |
| |
ロイド | よし、大体倒せたな。残りは逃げて行ったけど |
アイゼン | …… |
ルカ | アイゼンさん…!えっと、その… |
アイゼン | …じゃあな |
ルカ | …!待ってください、アイゼンさん! |
ルカ | もう一度だけ、僕達の話を聞いてくれませんか |
アイゼン | …一緒に冒険する話ならもう断ったぞ |
アイゼン | 邪魔をすれば容赦はしない、とも言ったはずだ |
ルカ | …僕は、アイゼンさんに大切な事を教えてもらいました |
ルカ | 自分の舵は自分の意志で取る…あの言葉が僕に勇気をくれたんです |
アイゼン | …… |
ルカ | 僕に必要だったのは、自信を持って自分の意志を伝える事だった |
ルカ | 今、こうして話せてるのもあの言葉があったからです |
ルカ | 身勝手かもしれない…。…でも僕は、もう一度アイゼンさんと一緒に冒険がしたい! |
アイゼン | …そうか。だが、俺の答えは変わらない |
アイゼン | …これは俺の問題だ。これ以上つきまとうつもりなら、戦ってでも振り切らせてもらう |
ルカ | …!! |
アリーシャ | アイゼン…私達は、お前を仲間だと思っている |
アイゼン | お前達が俺をどう思っていようが、この先どうなろうが…俺には関係のない事だ |
ロイド | …本当にそうなのか? |
アイゼン | どういう意味だ |
ロイド | 俺達を避けてるんじゃないか?ここに来る途中、みんなで話したんだ |
ロイド | お前が一人で行動しようとするのは、死神の呪いのせいなんだろ? |
アリーシャ | 誰かを巻き込まないようにしている…私達にはそう見えた |
アイゼン | …… |
ルカ | やっぱり、そうだったんだね |
アリーシャ | 死神の呪いを解くために…私達も協力したい。調査隊に入れば、利点もあるはずだ |
アリーシャ | もちろん不都合はあるだろうが…調査隊と敵対し、争いになるよりはずっといい |
アリーシャ | サフィアの力を使えるようになれば呪いを解くために使えないか、私から上に掛け合おう |
アリーシャ | だから、調査隊に入る事を考えてみてくれないか? |
ロイド | 一緒に行こうぜ、アイゼン!一人で悩むよりみんなで助け合った方がいいって |
アイゼン | …お前達の言う通り、俺が一人で行動するのはこの呪いのせいだ |
アイゼン | 呪いが周りに降りかかるのを、俺は望んでいない |
アイゼン | この呪いは強力だ。海賊団の連中を何度も巻き込んだ |
ルカ | だったら、尚更早く解かないと…! |
アイゼン | お前達はまだ、呪いの恐ろしさを理解していない |
アイゼン | 理解すれば、考えが変わるはずだ。それから後悔したのでは遅い |
パスカル | ここまで来る間にも、呪いの影響は結構あったよ |
ロイド | 危険な目に何度も遭った。だからこそ、そんな呪いを持ったアイゼンを放っておけないんだ |
アイゼン | たまたま生き延びただけだ。調子に乗るな |
ルカ | 確かに、僕らはアイゼンさんほど呪いの事をわかってないかもしれない |
ルカ | それでも、僕は…!アイゼンさんと冒険がしたい! |
ルカ | 死神の呪いがいくら危険だとしても…呪いごと受け止めるよ! |
アイゼン | …! |
ルカ | これが…僕の意志です |
アイゼン | お前… |
アイゼン | 「呪いごと受け止める」か。 どこかで聞いたような台詞だな |
パスカル | 前にも誰かに言われた? |
アイゼン | …… |
アリーシャ | アイゼン。私達と共に行かないか? |
アイゼン | …いや。その誘いは受けられない |
アイゼン | 俺は一人で行く。何を言われても、考えは変わらない |
ルカ | そんな… |
アイゼン | …だが、俺の事情を知り、その上で共に行きたいと言うとはな |
アイゼン | 気持ちだけはもらっておく。もう俺を誘うのは諦めろ。…それがお互いの為だ |
アイゼン | 俺は先に向かう |
パスカル | …行っちゃった。あれだけ言っても駄目かあ… |
ロイド | もしかしたらって…思ったんだけどな |
ルカ | アイゼンさん… |
アリーシャ | …説得は失敗か。アイゼンの決意は固いようだな |
アリーシャ | マナリスをみすみす渡すわけにはいかない。アイゼンを追おう |
パスカル | そうだね~。はいどうぞ、って譲ってあげるわけにはいかないし |
ロイド | それにやっぱり、ここまで来てアイゼンを諦めるわけにもいかないよな |
アリーシャ | ああ。私達の覚悟を見せてやろう |
ルカ | …行こう、みんな! |
scene1 | マナリスを手に |
パスカル | レーダーの反応が強くなった!マナリスはすぐ近くだよ! |
ロイド | あそこ、光が漏れてるぜ。何かありそうだ |
アリーシャ | 何が起こるかわからない。みんな、用心して進もう |
ルカ | うん! |
| |
アイゼン | …… |
パスカル | あっ、いた!アイゼン、マナリスは見つかった? |
アイゼン | …やはり来たか。マナリスは見つかったが、妙な先客がいる |
??? | ──ハスタキーック!! |
| グガッ…!?グウ…ウ… |
| |
??? | ふーむ。前菜にしては食べ応えがありましたな…星二つ! |
ロイド | 何だ、あいつ…?あんなでっかい魔物を一人で倒したのか? |
パスカル | あっ…!あいつが持ってるの…! |
ルカ | マナリスだ! |
??? | おやおや、騒がしくなってきたと思ったらお客さん。ご注文は何ですぴょん? |
ロイド | ち、注文…? |
アリーシャ | 私達は調査隊だ。ここは立入禁止のはずだが…一体、何者だ? |
??? | 何者…?ああ、名前?オレの名前ね? |
ハスタ | 窓辺のマーガレットでお馴染み、ハスタでございます |
パスカル | 窓辺の…えーっと。アリーシャ、知ってる? |
アリーシャ | …いや、聞いた事がない |
| |
ロイド | お前も調査隊の一員なのか? |
ハスタ | チョウサタイ?ああ、そんなご当地名産品があったような、なかったような… |
パスカル | …つまり、調査隊には全く関係ない人? |
ハスタ | 関係ないあるヨ! |
パスカル | どっち!? |
ハスタ | あるある、あるともさ~。この…これ、何だっけ…マナリ何とか? |
ハスタ | こいつを手に入れたら、キミ達に手渡すよう言われてたんだよ~ |
アリーシャ | …… |
ルカ | あ、そうなんですね…?僕達の他にも、任務で来た人がいたんだ |
ハスタ | そうなのさ。だからほら、こっちにおいで。おじさんがいいものをあげるから |
ルカ | あ、はい… |
アリーシャ | …待て、ルカ。その男から離れるんだ |
ルカ | え?でも… |
アリーシャ | クラトス殿は、山岳地帯に入るのは私達が初めてだと言っていた |
アリーシャ | 他の調査隊員が派遣されるなら私達に知らせてくれるはずだ |
アイゼン | ほう…つまり、あいつはお前らの仲間じゃないのか |
ハスタ | あれ、バレた?ぴんぽんぴんぽーん!調査隊?何それ知らね |
ハスタ | 惜しかったなあ…もうちょっとで綺麗な刺身にしてやったのに |
ルカ | 刺身って…ぼ、僕の事!? |
ロイド | こいつ…!俺達を騙すつもりだったのか! |
| |
ハスタ | うん。バレたら仕方ないね。奇襲が失敗したら、やる事は一つだよね… |
| |
ハスタ | さあ!こうなれば正々堂々、正面から暗殺しよう!行くぞ、みんな! |
ルカ | えっ!?もしかして仲間がいるの? |
アリーシャ | ただのハッタリだ!惑わされるな、ルカ |
アリーシャ | ふざけた男だが、敵意は本物だ。みんな、構えろ! |
アイゼン | マナリスは俺がいただく。…だが、まずはあいつを倒す方が先のようだな! |
scene2 | マナリスを手に |
ハスタ | 束でかかってくるなんて、まるで魔物みたいだー。お主が欲しいのはこの…何だっけ? |
アリーシャ | マナリスだ!それはこちらに渡してもらう! |
アイゼン | マナリスを渡せ! |
| ガキィン! |
アリーシャ | うっ!?アイゼン…!? |
アイゼン | くっ…!! |
ハスタ | …おやあ?ぶつかってしまうとはコンビネーションがイマイチですなあ |
パスカル | あたしに任せて、アリーシャ! |
アイゼン | ちっ…マナリスを寄こせ── |
パスカル | ねちねちバレット! |
ハスタ | おーっと、華麗に回避!成功!…お帰りはあちらですポン |
| ドドドドドッ!! |
アイゼン | ──!!ぐおっ…!? |
パスカル | アイゼン!?ごめん!狙ったわけじゃないんだけど…! |
ロイド | あのハスタって奴、俺達の攻撃を利用してアイゼンの動きを封じてやがる! |
ハスタ | あらあらお可哀そうに。演奏前のリハーサルはちゃんとしました? |
ハスタ | してない?それじゃあお客さんは満足しないぴょろよ |
ロイド | アイゼン!ここは一旦、手を組もうぜ!このままじゃ危険だ |
アイゼン | 危険だと思うなら下がってろ |
| グガアアア! |
ルカ | …魔物!?アイゼンさん、危ない…! |
アイゼン | …!くらえ! |
| ギャアアアア! |
アイゼン | さっき取り逃がした魔物だな。次から次へと邪魔が入る…! |
アイゼン | まずはこいつらを片付ける |
パスカル | うわっ!魔物がどんどん出てくるよ~! |
アリーシャ | アイゼンは魔物の方へ行ったか… |
アリーシャ | みんな、ここは二組に分かれて戦おう! |
アリーシャ | 私とルカは魔物を倒しに行く!その間、ロイドとパスカルはハスタを抑えていてくれ |
ハスタ | いい作戦だ。おいらも手を貸そうか?地獄行きのな! |
ルカ | …!魔物を倒したら、すぐに合流するよ! |
ロイド | ああ、任せろ!やるぜ、パスカル! |
パスカル | うん! |
scene3 | マナリスを手に |
アイゼン | まだこんなに魔物がいたのか…時間ばかりとられる |
ルカ | …アイゼンさん、僕達も戦います! |
アリーシャ | 手を組みたくないならそれでいい。勝手に協力させてもらう! |
アイゼン | …戦う相手は、お前達で決めろ。俺は俺でやるだけだ |
ルカ | は、はい!はああっ! |
| グギャアアアッ! |
ルカ | …よし!この調子なら何とか倒せそう |
| ピシ、ピシ、ピシッ…! |
アイゼン | …おい、上だ!岩が落ちてくるぞ! |
| ビシッ…!!ガラガラガラ…!! |
ルカ | 駄目だ、避けきれない…! |
| |
ルカ | うわああっ! |
| |
アリーシャ | ルカ!大丈夫か!?今、そちらに行く! |
ルカ | …ぐ、がはっ…! |
アイゼン | くそっ…!だからあれほど忠告したんだ…! |
ルカ | ア、アリー…シャ! |
アイゼン | …!! |
アリーシャ | ルカ!?ひどい怪我だ、起き上がってはいけない…! |
ルカ | 僕は、大丈夫…。それより、魔物を倒さないと… |
アイゼン | おい、下がってろ |
ルカ | …アイゼン、さん?ううっ!! |
アイゼン | 動くだけでも辛いだろう。そんな身体で、何故戦おうとする |
アイゼン | …今の落石は俺の呪いの影響だ。こんな事が続けば、命がいくつあっても足りないぞ |
ルカ | 怪我や呪いなんて…関係ない。呪いごと受け止めるって、言ったじゃないですか… |
アイゼン | …それは、俺がお前らの仲間になった場合の話だろう |
ルカ | アイゼンさんが仲間じゃなくてもその気持ちは…変わりません…! |
ルカ | 自分の意志で…決めた事だから |
アイゼン | …! |
ルカ | そこを退いてください…みんなを…助けなきゃ |
アイゼン | おい、お前…! |
ルカ | 魔物を、倒さないと… |
ルカ | …はああっ! |
アイゼン | …無茶な奴だ。こうなれば、魔物を倒す方が早いか…! |
scene4 | マナリスを手に |
ルカ | これで…最後!やあ…あああっ! |
| ギャンッ! |
| |
ルカ | はあっ…はあっ…。やっ…た… |
アリーシャ | ルカ、今治療する!身体を楽にして、怪我を見せてくれ…! |
アリーシャ | くっ…何て怪我だ。この身体で、どうしてあんな無茶を… |
ルカ | ごめん…少しでも早くロイド達に加勢したくて焦っちゃって… |
ルカ | それに、あのハスタって人にマナリスは渡せないよ… |
ルカ | アイゼンさんの、ために…も… |
アイゼン | …!! |
アリーシャ | ルカ…?返事をするんだ、ルカ! |
ルカ | …… |
アイゼン | 俺のためにも、だと?…お人好しにもほどがある |
アイゼン | そのくせ、自分の意志はしっかりある、か… |
アイゼン | …よくわかった。これがお前の覚悟だと言うんだな |
アリーシャ | …傷が深すぎる…駄目か!手持ちの治療道具では、応急処置くらいしか… |
アリーシャ | このままでは危険だ!一体、どうすれば…! |
アイゼン | …落ち着け。薬はないが、こいつの命を救うための手ならある |
アリーシャ | アイゼン、本当か? |
アイゼン | ああ、だが俺一人では手間がかかる。だから… |
アイゼン | 力を貸せ。アリーシャ |
scene1 | 唯一の方法 |
ロイド | ──ルカ!?おい、大丈夫かよあいつ…! |
ハスタ | よそ見しちゃダーメ |
ロイド | …ぐっ!! |
| ギィイン!! |
ハスタ | つれないぜ、レッドマン。息の根を止めるまでが殺し合いです、…って、学校で教わらなかった? |
ロイド | くっ…!こいつから目を離すと危ねえな! |
ハスタ | ん~?ああ、気になるわけだ?あそこで無様に倒れちゃった坊やの事! |
ハスタ | わかるなあ、その気持ち…オレも、何人もの仲間を失った。…あれ?自分でブチ殺したんだっけ? |
ハスタ | まあいいや。とにかくわかる!死にかけってのが一番辛いんだあ。痛くて痛くて、でも気持ちよくて… |
ハスタ | だからさあ、オレが止めを刺してやりましょう!ぼくちん出血大サービス! |
ロイド | こいつ…させるかっ!! |
| ギィイン!!ギィイン!! |
パスカル | ちょ、飛ばしすぎだって…!大丈夫、ロイド!? |
ハスタ | いいねいいねえ!麗しい友情!弱者を守るヒーロー、かっけー!そういうの、大嫌いだわ~ |
ロイド | 弱者だと…?取り消せ!ルカは弱くねえ! |
ハスタ | オレを殺す力もないくせに?甘い!甘すぎて虫歯がうずくなあ! |
ハスタ | お前みたいな奴を見ると…もう一人の俺がささやくんだよっ!コ・ロ・セ、ってな! |
ロイド | 好き放題言いやがって…! |
パスカル | 挑発に乗っちゃ駄目だよ、ロイド!しっかり抑えてないと、こいつ何するかわかんないんだから! |
ハスタ | 賢いお嬢ちゃん登場!楽しくなってきたところなのに邪魔するなら… |
ハスタ | 指先一つで先に眠っててもらいましょうかねえ! |
ロイド | そんな事させるかよ!パスカル、援護頼むぞ! |
パスカル | 了解! |
ロイド | おおおおおっ!! |
ハスタ | ひゃっほーう!! |
パスカル | …って、無理だよ~!あんなに混戦してたら巻き込んじゃうってば! |
アリーシャ | …では、当てなくていい。ロイドとハスタの間に術を撃て、パスカル! |
パスカル | わっ、アリーシャ!?う、うん。わかった! |
| バシュッ! |
ハスタ | あ~ん?どこ狙って…? |
アリーシャ | …そこだ!マナリスは返してもらう!はあっ!! |
ハスタ | おっと!ハスタエスケープ!…サクセス!! |
ハスタ | ハスタ選手、卑劣な不意打ちを華麗なステップで回避しました!観客席は拍手喝采でっす! |
パスカル | 惜しい!あと少しで、マナリスに手が届いたのに~! |
アリーシャ | …いや。どうやら成功だ |
| |
??? | …はあっ!! |
| バキッ!! |
ハスタ | …ぐっ!?何ですと…!? |
アイゼン | 予想外の攻撃だったか? |
ハスタ | やってくれるじゃないの…お礼はたっぷりさせてもらうぴょろよ |
アイゼン | …何、礼を言うのはこちらの方だ |
ハスタ | …!! |
ロイド | マナリス!?いつの間に…! |
アイゼン | …パスカル!投げるぞ、受け取れ! |
パスカル | えっ!?わっ、ちょっと待って…! |
パスカル | …よっと!! |
パスカル | ふー…危ない危ない。いいの、アイゼン? |
アイゼン | 構わん。それより、絶対に奪われるなよ |
ロイド | アイゼン…!協力してくれるのか! |
アイゼン | …ああ。すぐに終わらせるぞ |
ハスタ | …すぐに終わらせる?舐めてますねえ~…急に仲良しこよしってか!? |
ハスタ | 温厚で知られたぼくちんもさすがにさすがに大噴火!てめえら、生かしちゃ帰さねえ! |
ロイド | こいつ…!まだピンピンしてやがる! |
ハスタ | そう、諦めたら終わり!くらえ、ハスタキーッ── |
チャット | 今です、パティさん! |
パティ | 任せるのじゃ! |
| バキューン! |
ハスタ | ──危なっ!?どこのどなた様かな!?こそこそとオレ好みの攻撃をするのは |
アイゼン | あの声は、まさか… |
パティ | よくも置いて行ってくれたのう、アイゼン |
チャット | こっそり追いかけてきたら、何やら大変な状況になっていたので…お宝を守るため、加勢しますよ! |
アイゼン | まったく、どいつもこいつも |
ハスタ | 次から次へと…これは一体何だ!?神の与えたもうた試練なのかあ!? |
ハスタ | はあ~…ちょっとタイム。ポク、ポク、ポク… |
チャット | えっと…あれ、何してるんですか? |
アリーシャ | 反応してはいけない。調子に乗るだけだ |
ハスタ | チーン!ハスタ選手、ここは冷静に撤退を選ぶとの事です! |
アリーシャ | 待て、お前のような危険人物を野放しには出来ない |
ハスタ | おっとお~?怖い顔。でもお嬢さん、忘れちゃいけねえよ?そこで死にかかってる坊やの事 |
ルカ | …… |
ハスタ | おいらの邪魔するってんなら、どんな手使ってでも坊やの息の根止めちゃうぞ! |
ロイド | ふざけるな!指一本だって触れさせるもんか! |
ハスタ | ぶっぶ~、不正解!連帯責任で全員死刑な |
ハスタ | さあ、お刺身タイム! |
アリーシャ | マナリスはこちらにある。ルカに近づかせるな! |
ロイド | おう!行くぞ、みんな! |
scene2 | 唯一の方法 |
ハスタ | おー、いててて。もう勘弁。こんなに痛いのは初めてだよ |
ハスタ | なんちゃって!ただの筋肉痛でした!だけど痛いのは嫌だから帰ろっと!…とうっ!! |
パスカル | あ、あいつ!あそこの穴から逃げる気だ! |
ロイド | 待ちやがれ! |
ハスタ | 嫌だぴょん。また会おうぜ、覚えてたら殺してやるよ… |
ハスタ | アスタ・ラ・ビスタ・ベイベー |
| |
アリーシャ | ──逃がしたか。一体、何者だったのか… |
ロイド | むかつく奴だけど…今はルカの治療が先だ! |
チャット | 何て傷…!だ、大丈夫なんですか、この人!? |
パスカル | ルカ!ねえ、ルカってば!…早く、ちゃんと治療しないと! |
アリーシャ | 本部に運んでいる時間はない。応急処置はしてあるが…このままでは…! |
アイゼン | ああ。だからこそ、何としてもこいつを手に入れる必要があった |
パティ | マナリス…!おお、カタグラフィに映っていた形そのままじゃ! |
パスカル | …!アイゼン、まさか…! |
アイゼン | そうだ。マナリスを使う |
ロイド | そっか、傷を治すあの力なら…!マナリスを貸してくれ!俺がやる! |
アイゼン | それは駄目だ |
アイゼン | カタグラフィの中で、天族が言っていただろう。人間が使うには危険すぎる…と |
アイゼン | 俺がやる。元はといえば、俺の呪いが原因だからな |
アリーシャ | …すまない。そして…頼む!他にルカを助ける方法はない…! |
アイゼン | …ああ。お前達はここから離れておけ |
アイゼン | マナリスを使った時に死神の呪いの影響があるかもしれん |
アイゼン | …こいつは必ず助ける。俺に任せろ |
ロイド・パスカル・アリーシャ | …… |
アイゼン | おい、聞いてるのか? |
アリーシャ | …聞けない相談だな。それでは、アイゼンを守る者がいなくなる |
アイゼン | …! |
パスカル | さっきみたいに天井が崩れてきたら、危ないしね |
ロイド | ルカだけじゃねえ。アイゼンだって、俺達の仲間だろ。何があろうと守ってやるさ |
アイゼン | …どいつもこいつもお人好しか。呆れたな |
アイゼン | …… |
| |
アイゼン | それがお前らの意志なら止めはしない。始めるぞ! |
ロイド | おう!頼む! |
アイゼン | さあ、マナリスよ…! |
アイゼン | その力で、傷を癒せ! |
| |
パスカル | マナリスが反応してる…! |
アリーシャ | 今のところ、死神の呪いで何かが起こっている様子はない。後は、ルカの傷さえ治れば…! |
アイゼン | 心配するな…!どうやら… |
アイゼン | 効果はありそうだ…!…っ! |
パスカル | す、すごい!あれだけ深かった傷が、どんどん塞がっていく…! |
アリーシャ | 目は覚まさないが…顔色もよくなった。…成功だ、アイゼン! |
| |
アイゼン | ぐっ…!! |
ロイド | アイゼン!? |
アイゼン | 大丈夫だ…。急に倒れたりはしないから安心しろ |
アイゼン | マナリスを使った瞬間、力を吸われたような感覚があった。お蔭でどっと疲れたな… |
パスカル | 力を吸われる…?それって、カタグラフィにあったマナリスを使う代償ってやつ? |
アイゼン | さあな…。その話はまた今度だ |
ロイド | そうだな…急いで下山しよう。ルカの傷は塞がったけど油断は出来ない |
アリーシャ | 命に別条はないか本部の医者に診てもらおう |
ロイド | よし。アリーシャ、パスカル、あとお前らは── |
パティ | うちはパティ、こっちがチャットじゃ。うちらも手伝うか? |
ロイド | ああ。敵が来たら手を貸してくれ |
チャット | 任せてください。でも、調査隊の本部へ行くんですね… |
パティ | 何、その時になったらこっそり逃げ出せばいいのじゃ |
パスカル | ん?何か言った? |
パティ | 何でもないのじゃ~ |
パスカル | 早く本部に戻ろう!アイゼンはどうする? |
アイゼン | そうだな…俺も行こう |
scene1 | 受け入れる者 |
アスラ | …… |
兵士 | アスラ様。心中お察ししますが、今日はもう戻りましょう… |
アスラ | いや、悼むのならば、近くの方がいい |
兵士 | …はっ |
アスラ | 一人、また一人…。俺の力が足りないばかりに、多くの同志を亡くしてしまった |
アスラ | 許せ。大言を吐きながら、未だ事の解決には至らぬ |
兵士 | 何を仰います!アスラ様がいてくれた事で、我々が何度助けられたか…! |
アスラ | ふ…俺とした事が、感傷に浸りすぎたか |
アスラ | 立ち止まっている場合ではなかった。後は、行動で示すのみ |
アスラ | 選りすぐりの兵を集めろ!新たな作戦を伝える!! |
兵士 | はっ!!直ちに! |
アスラ | …見届けてくれ、同志達よ。奴を倒し、この戦は必ず終わらせる! |
| |
ルカ | …!また、いつもの夢か… |
ルカ | アスラでも落ち込む事があるんだ。同志を亡くしたって…イナンナ…じゃないよね |
ルカ | そう言えば、デュランダルも見当たらなかったな。いつも一緒にいるのに…ん? |
ルカ | …そうだ!!みんなは!? |
パスカル | 治療してくれた人もああ言ってたし、きっと大丈夫だって… |
ロイド | おっ!ルカ!!目が覚めたのか!? |
ルカ | ロイド、パスカル! |
パスカル | おっはよ~、ルカ!あんな大怪我だったのに、もう起きて平気なの? |
パスカル | やっぱりマナリスの力は…って言ってもわかんないか。魔物と戦った後の事、覚えてる? |
ルカ | えっと…魔物と戦ってる途中に岩が落ちてきて…魔物はやっつけたけど… |
ルカ | …そこまでしか覚えてないや。あの後、どうなったの?アイゼンさんは…マナリスは!? |
ロイド | 落ち着けって!アイゼンもマナリスも無事だ |
パスカル | アイゼンが協力してくれたんだよ~。一緒にマナリスを取り戻して、ルカの傷を治すのに使ったんだ! |
パスカル | マナリスの力、凄かったよ~!あっという間に傷が塞がったの |
ルカ | マナリスが…?そっか、だから傷がなくなってるんだ |
ロイド | その後は、山の集落で会った子どもと一緒にルカを運んで… |
ロイド | あ、でも…あいつらはいつの間にかいなくなっちまったけど。今度、礼を言っとかなきゃな |
ルカ | …って事は、アリーシャとアイゼンさんもここにいるんだよね? |
ロイド | おう、会議室にいる。アイゼンの今後について、上層部の人間と話し合ってんだよ |
ルカ | 上層部って…クラトスさん? |
パスカル | それが、どうも違う人みたい。ア・ジュールの代表って言ってたけどルカは知ってる? |
scene2 | 受け入れる者 |
アリーシャ | ──以上が、マナリスを確保した経緯です。ジェイド殿 |
ジェイド | …ふむ。予期せぬ敵を倒すため、海賊のアイゼンと協力したと |
アリーシャ | 彼の協力のお蔭で、ハスタという人物からマナリスを回収する事が出来ました |
アイゼン | …… |
アリーシャ | 加えて、彼は調査隊員であるルカ・ミルダの命も救いました |
アリーシャ | 彼の事情は先ほどお話しした通り。今後、アイゼンを調査隊員として認めていただけないでしょうか |
ジェイド | …なるほど。あなたの言い分もわかります |
アリーシャ | では…! |
ジェイド | ですが…彼を調査隊員として認めるのは難しいかもしれませんねえ |
ジェイド | 彼は数度にわたって立入禁止区域に侵入し、遺物を持ち去ろうともしました |
ジェイド | ここは四大国の平和協調の場です。不穏分子になり得る存在を見過ごすわけにはいきません |
アリーシャ | …彼の戦力や遺物への見識は、調査の助けになるはずです。どうか、お願いします…! |
ジェイド | 私としても、力にはなりたいんですがねえ…無視出来ない声もありまして |
アリーシャ | …貴族の方々ですか |
ジェイド | それは、ご想像にお任せします。現状、調査隊入りは厳しいかと |
アイゼン | …もういい。アリーシャ。俺が直接話す |
アイゼン | 俺の入隊が許可出来ないなら、何故はっきり「駄目だ」と言わない? |
ジェイド | …おや、言いませんでしたか? |
アイゼン | 「かも」だの「現状」だの…含みのある言い方だった |
アイゼン | つまりは交渉の余地がある。俺はそう受け取ったが、違うか? |
ジェイド | …… |
ジェイド | …ええ、その認識で構いません。私達に利益のある話であれば、あなたの入隊を認めてもいい |
アリーシャ | ジェイド殿、一体、何を言って…? |
ジェイド | あなたの仲間も、功績と引き換えに調査隊に入ったでしょう?それと同じ事ですよ |
ジェイド | とは言え、よほど魅力的なものが得られなければここからの会話は意味を持ちませんが |
アイゼン | …… |
アイゼン | 俺の調査隊入りを認めるなら、マナリスの研究に協力しよう |
ジェイド | …ほう? |
アイゼン | 人間がマナリスを使うのは危険だ。不用意に研究に用いればどんな被害が出るかわからない |
アイゼン | 俺はルカの治療にマナリスを使った。命の危険がない事は実証済みだ |
ジェイド | 悪くない提案です。マナリスについてはまだわからない事が多いですから |
アイゼン | その代わり、俺からも要求が二つある |
アイゼン | まずは、この島における行動の自由を保障する事。もう一つは… |
アイゼン | 俺にサフィアを使わせろ。叶える願いは「呪いの解除」だ |
ジェイド | 行動の自由を保障するのは問題ないでしょう |
ジェイド | 完全な自由とはいきませんが、制限があれば難しくはありません |
アイゼン | アリーシャを監視に付ければいい。要は、俺の行動が把握出来ればいいんだろう? |
ジェイド | ええ。ですが、問題は次です |
ジェイド | サフィアを使う権利…残念ですが、こちらは約束出来ません |
ジェイド | 今回の一件で、サフィアの伝説にもいくらかの真実味が出てきましたし… |
ジェイド | サフィアの扱い方は、四大国で慎重に議論を重ねる必要があります |
ジェイド | そんな中、一個人の目的のためにサフィアを使わせる事は出来ません |
アイゼン | 調査隊がマナリスの研究に行き詰っている事は知っている |
ジェイド | …… |
アイゼン | マナリスを使う存在はお前達にとっても必要だろう |
アイゼン | 俺もこれ以上退く気はない。俺の入隊を認めるかは、この条件で判断してくれ |
ジェイド | 確かに、これ以上話していても進展はなさそうですね |
アリーシャ | ジェイド殿、横から口を挟むようですが、マナリスの使用には危険が伴います! |
アリーシャ | 事実、ルカを治療した事で彼は急激に体力を消耗しました…!次に使用したら、どうなるか… |
ジェイド | ええ、それは心配ですねえ。心中お察しします |
ジェイド | …が、それはそれ、これはこれ。いや、お蔭で有意義な話が出来ました |
ジェイド | ここで即答は出来ませんが、各方面に話を通してみましょう |
ジェイド | 適当に時間を潰しておいてください。そろそろ、あなた方の仲間も目を覚ましているかもしれません |
ジェイド | その内、正式な通達が届くはずですから。では、私はこれで失礼しますよ |
アリーシャ | …は、はい!ありがとう、ございます… |
アリーシャ | ア・ジュールきっての曲者だと聞いていたが、確かに掴みどころのない方だった… |
アイゼン | 言うだけの事は言った。俺達も行くぞ |
アリーシャ | あっ…!待ってくれ、アイゼン。今後の事で…少し、確認したい事がある |
アイゼン | …?何だ |
アリーシャ | その…この落ち着いた機会に話しておくが… |
アリーシャ | 私は幼い頃から天族という存在に憧れていたんだ。聖隷とは、天族の別名なのだろう? |
アリーシャ | だから、その、何と言うか…こうして改めて話すとなると、どう接したものかと… |
アリーシャ | アイゼンが天族とは知らず、今まで不敬な態度をとってきた。…申し訳なかったと思っている |
アリーシャ | この機会に言葉遣いをきちんと正すべきだろうか? |
アリーシャ | …そうだ!「アイゼン様」と呼ばせてくれないか!?今からでは遅いかもしれないが…! |
アイゼン | …… |
アイゼン | …全く。やはり融通の利かない奴だったか |
アリーシャ | なっ…!? |
アイゼン | そんな気遣いは必要ない。今更態度を変えられても気味が悪いだけだ |
アイゼン | 天族だろうが、人間だろうが、俺は俺だ。…違うか? |
アリーシャ | それは、そうだが… |
アイゼン | まあ、お前がどうしても呼びたいと言うなら、「アイゼン様」でも構わないがな |
アリーシャ | …よくわかった。「アイゼン様」はなしだ。これまで通りにさせてもらう! |
アイゼン | ふっ…ああ、よろしく頼む。隊長殿 |
scene3 | 受け入れる者 |
アイゼン | …すっかり夜も更けたか。ようやく休める…ん? |
ルカ | あ、いた…!アイゼンさん! |
アイゼン | …目が覚めたのか。傷はどうだ? |
ルカ | 傷口も消えて、元通りです。あの…ロイド達から全部聞きました。僕を助けてくれたって…! |
ルカ | これで二回目です。助けてくれて、ありがとうございました! |
アイゼン | 俺はお前達の仲間になると決めた。いちいち礼はいらない |
ルカ | 仲間…!!じゃあ、一緒に冒険してくれるんですか!? |
アイゼン | ああ。あと…その言葉遣いもやめろ。堅苦しいのは好きじゃない |
ルカ | う…うん!でも…どうして仲間になってくれたの? |
アイゼン | どうして、か… |
アイゼン | 野暮な事は聞くな。俺がそう決めたんだ |
アイゼン | …随分、懐かしい言葉も聞けたしな |
ルカ | …? |
アイゼン | こっちの話だ。お前らこそ、死神を仲間にした事を後悔するなよ? |
ルカ | それなら、大丈夫。今回は大怪我しちゃったけど… |
ルカ | あれだって、自分の舵を自分の意志で取った結果だから |
アイゼン | …ほう?言うじゃないか、ルカ |
ルカ | あ、いや、その…!僕なんかまだまだかもしれないけど、ちょっとは成長出来たかな、って… |
アイゼン | それなら恥ずかしがるな。ふ…戦っている時は海でもやっていけそうな顔をしていたが |
ルカ | あはは…。ねえ、アイゼンがいる海賊団ってどんな事をしてるの? |
アイゼン | 興味があるのか? |
ルカ | か、海賊にはならないよ!でも、船で世界中を旅するのは、気持ちよさそうだなって… |
アイゼン | そうだな…まだ見ぬ場所への航海は確かに気分がいい |
アイゼン | 海賊団の連中も、バカだが、いい奴らだ。そうだな、こんな話がある── |
| |
アリーシャ | ──みんな、もう少し静かに。あまり騒がしいと、ジェイド殿から何を言われるか… |
ロイド | でも、アイゼンの事で話があるって言うんだろ?どんな話か気になっちまってさ |
パスカル | こっちは何日も待ったもんね~ |
アイゼン | 上層部の判断が必要とはいえそろそろ答えが出る頃だろう |
パスカル | そうだよね~。アイゼンが調査隊に入れるかどうか気になってるんでしょ、ルカ? |
ルカ | はい!…え!?何?何か言った、パスカル? |
アイゼン | …お前が緊張してどうする。む…来たようだぞ |
| |
ジェイド | お待たせしました、みなさん。早速ですが、決定をお伝えしましょう |
ルカ | …… |
| |
ジェイド | アイゼンの入隊が正式に認められました |
ルカ | …!よ、よかった~… |
アリーシャ | ありがとうございます、ジェイド殿! |
ジェイド | 条件は先日の通り。マナリス研究の際は全面協力、それ以外はアリーシャの監視付きです |
ジェイド | いやー、各所を説得するのは骨が折れましたよ |
アイゼン | 恩を着せるような物言いはやめろ。条件通りに協力はするが、それだけだ |
調査隊員 | …お話し中失礼します |
ジェイド | 構いません、今終わったところです。どうかしましたか? |
調査隊員 | はい。緊急の連絡があり、各国の代表に招集がかかっています |
アリーシャ | …? |
ジェイド | …ふむ。わかりました。では、私はこれで |
ルカ | …ほ、本当によかったあ~! |
パスカル | お、二回目~。アイゼンより喜んでない? |
ルカ | あはは…さっきから、それしか頭に浮かんでこなくて… |
アイゼン | ともあれ、用は済んだな。俺は部屋に戻る |
アリーシャ | …… |
ロイド | …どうしたんだ、アリーシャ?難しい顔して。アイゼンの事で、何か気になるのか? |
アリーシャ | いや、それは勿論喜んでいるよ。今考えていたのは…「緊急の連絡」と言っていた件だ |
アリーシャ | 四大国の代表が集まるような事とは、一体何なのかと… |
ロイド | そう言われると、確かに気になるな… |
ロイド | 何か、事件でも起きたのか…? |
Name | Dialogue |
scene1 | 途絶えた連絡 |
調査隊員1 | 急ぎ情報を伝達しろ!砂漠地帯の周辺にいる調査隊員には注意を促せ |
調査隊員2 | はい!今から本部にいる隊員で動ける者を捜します |
アイゼン | …やけに慌ただしいな |
パスカル | みんな忙しそうだね~。何かあったのかな? |
アリーシャ | …もしかしたら今、各国の代表が集まっている事と関係があるのかもしれない |
調査隊員3 | なあ、聞いたか?四大国連合調査隊が行方不明だってさ |
調査隊員4 | ああ…。調査から戻ってきたら、本部が騒がしくて驚いたよ |
ルカ | 四大国連合調査隊…スパーダ達が!? |
ロイド | その話、詳しく教えてくれ! |
調査隊員3 | な、何だ急に… |
調査隊員4 | 君達、知らないのか?…四大国連合調査隊からの連絡が途絶えたそうだ |
調査隊員4 | 本部で対策を練っているようだが…まだ何も発表はないな |
調査隊員3 | 突然の出来事で、本部も対応に追われてるって話だぜ |
ロイド | …そうか。ありがとな |
パスカル | んん~、アスベル達に連絡を取ってみたけど、繋がらないや |
パスカル | 改良した通信機なら、感度に問題はないだろうし…さっきの話は本当みたいだね |
ルカ | そんな…。みんな大丈夫かな…。危ない目に遭ってないといいけど… |
アリーシャ | 彼らほどの手練れなら、よほどの事がない限り無事でいると思うが… |
アリーシャ | …心配だな |
アイゼン | 俺達がここで話していても、事態は変わらない。…情報を集めるぞ |
ロイド | ああ、ジェイドなら何か知ってるはずだ。聞きに行こうぜ |
| |
ロイド | ジェイド…! |
ジェイド | おや、どうかしました?真剣な顔で |
ロイド | 四大国連合調査隊が行方不明になったって本当か? |
ジェイド | ご存知でしたか。状況を説明する手間が省けましたね |
アイゼン | 調査隊の中で噂になっていた。…事実のようだな |
ジェイド | ええ。四大国連合調査隊は砂漠地帯でマナリスの探索を行っていましたが… |
ジェイド | 任務から帰還する途中で、一切の連絡が取れなくなりました |
ルカ | そんな…! |
ジェイド | 最後の通信でマナリスを確保したと言っていたので、一刻も早く捜し出さなければならないのですが |
ジェイド | 何しろ本部も対応に追われている状態でして… |
アリーシャ | まだ捜索隊は選出されていないのですか? |
ジェイド | 先行して向かわせた者はいますが、捜索隊の編成はこれからです |
ジェイド | …どこかに手の空いている優秀な調査隊員はいませんかねえ |
ロイド | なら、俺達に任せてくれ!こんな状況でじっとしてられない |
ロイド | 困っているなら助けてやりたいんだよ!頼む、ジェイド! |
ルカ | 僕からもお願いします!スパーダ達がマナリスを持ってるならレーダーで追えるはずだから…! |
パスカル | うんうん。マナリスの動きをたどれば、見つけられると思うよ |
ジェイド | よろしいのですか?それは助かりますね |
ジェイド | 実績のあるあなた達なら捜索隊として適任でしょうし、お任せしますよ |
ロイド | 本当か、ジェイド! |
ジェイド | ええ、ちょうど人手不足だったもので。私としても、ありがたい提案です |
アイゼン | …元々、俺達に任せるつもりだったんじゃないのか? |
ジェイド | いえ、そんな事はありませんよ。そうそう、彼らが入手したマナリスも同時に回収してきてください |
アイゼン | …食えない奴だ |
しいな | おーい、戻ったよ。っと…話の途中だったかい? |
ロイド | …しいな!?お前もこの島に来てたのか! |
しいな | 久しぶりだねえ、ロイド。あんた達の活躍は聞いてるよ |
しいな | あんたとコレットのところには顔を出したかったんだけど、あたしも任務で忙しくてさ |
ジェイド | 彼女には先行して砂漠の調査を行ってもらいました。…状況はどうですか? |
しいな | 残念だけど、四大国連合調査隊は見つけられなかったよ |
しいな | ただ…砂漠地帯にこれが落ちてた |
ジェイド | これは…ルークの水筒ですね |
しいな | ああ、砂漠の手前で見つけたんだ |
しいな | …悪いね。出来る限り捜したんだけど、ろくな成果がなくて |
ジェイド | いえ、そんな事はありませんよ。水筒が見つかっただけでも、進展があったと言えるでしょう |
ジェイド | 本格的な捜索はロイド達に任せます |
しいな | …あんた達が捜索隊に選ばれたんだね |
ロイド | おう、これから向かうところなんだ |
しいな | なら、せめて次の任務に向かう前に砂漠まであんた達を案内させとくれ |
しいな | あたしもこのままじゃ、もやもやするからね |
パスカル | 一緒に来てくれたら助かるよ~! |
アリーシャ | 何があるかわからない場所だからな。道案内をしてもらえるのは有難い |
しいな | 任せな。ジェイド、任務はちゃんとこなすから構わないだろ? |
ジェイド | ええ。任務に支障が出ない範囲であれば |
ロイド | しいな、俺達は助かるけど任務続きみたいだし、疲れてるんじゃないのか? |
しいな | 相変わらずお人よしだね、あんたは。これはあたしのわがままだから気にする事ないよ |
しいな | それじゃみんな、準備が出来たら声かけとくれ |
scene2 | 途絶えた連絡 |
ロイド | よし、準備ばっちりだ。ルーク達を捜しに行こうぜ! |
ルカ | うん、早く砂漠に…ん?あれは… |
アイゼン | …見た顔だな。確か、森で会った女だ |
ジュディス | あら、お久しぶりね。元気そうでよかったわ |
ルカ | やっぱり、ジュディスさんだ!無事でよかったです…! |
アリーシャ | 何故、君がここに? |
ジュディス | ああ、それはね… |
ユーリ | ジュディ。報告、終わったぜ |
ラピード | ワン! |
ロイド | …ユーリに、ラピード!?久しぶりだな! |
ユーリ | ロイドじゃねえか。こんなところで会うとはな |
しいな | また知り合いかい?あんたも顔が広いね |
ロイド | 前にちょっとな。じゃあ、ジュディスが捜してたのは… |
ジュディス | ええ、彼の事よ。合流して、一緒に調査隊に入ったの |
ユーリ | ま、そういうこった。初めて会う顔ばっかだな。お前らも調査隊なんだろ? |
ユーリ | オレはユーリ・ローウェル。こっちは相棒のラピードだ |
ラピード | ワン! |
アリーシャ | アリーシャ・ディフダだ。彼らはルカとアイゼン。それに…… |
パスカル | あたしはパスカル!よろしくね |
ユーリ | 聞いた事ある名前だな。…お前、前にスレイと通信機で話してなかったか? |
パスカル | スレイと知り合いなんだ?確かにそんな事あったかも |
ロイド | でも、まさかユーリ達も調査隊に入ってたとは思わなかったぜ |
ジュディス | 森で遺物を発見した功績が認められて、勧誘されたのよ |
パスカル | あたし達と同じだ~。そう言えば、最初にカタグラフィ見つけたのってジュディスだもんね |
ジュディス | あのカタグラフィを渡した後、あなた達が森の仕掛けを解いてくれたんでしょう? |
ジュディス | お蔭で私も森から出て彼を見つける事が出来たわ。ありがとう |
ユーリ | オレからも礼を言うぜ |
ユーリ | …それで?お前ら、どっかに行くつもりだったんじゃねえのか? |
ロイド | いや、実は── |
ユーリ | なるほど。それで砂漠にねえ… |
ユーリ | そういう話ならオレ達もついていくぜ。いいだろ?お前ら |
ジュディス | ええ。お友達がいなくなったなんて、心配だもの |
ラピード | ワンッ! |
ルカ | 協力してくれるんですか? |
ユーリ | そんな話を聞かされたら放っておけねえしな |
ユーリ | オレの相棒は頼りになるぜ?水筒から持ち主の匂いを追うくらい、朝飯前だ |
ラピード | ワン! |
アリーシャ | 待ってくれ。気持ちはありがたいが、他に任務があるのでは? |
ユーリ | ああ、それなら今は待機中だ人捜しについていったって問題はないだろ |
ジュディス | 心配しなくても、あなた達に迷惑はかけないわ |
アイゼン | …人を捜すなら手段は多い方がいいだろう |
アリーシャ | …わかった。感謝するよ。助力を頼む |
ユーリ | ああ、よろしく頼むぜ |
ロイド | よし!そうと決まれば、砂漠へ急ごうぜ! |
| 不思議な噂 |
しいな | この林を抜ければ砂漠地帯が見えてくるよ |
ルカ | 砂漠かあ。本では見た事があるけど、どんな場所なんだろう…あれ? |
ルカ | あんなところに馬車が停まってる |
アリーシャ | 随分大きな荷物を運んでいるようだ |
アルヴィン | おっ、ロイドじゃねーか |
ロイド | アルヴィン!こんなところで何してるんだ? |
ユーリ | 見た感じ、キャラバンの護衛ってとこか |
アルヴィン | そういう事。調査隊がいるっつっても、危険な場所もあるからな |
アルヴィン | 貴重な物資を守るため、汗水流して働いてるわけよ |
アルヴィン | ま、今回の雇い主に護衛が必要かどうかは、正直疑問なんだが… |
ロゼ | 何言ってんの?依頼料の分は、ちゃーんと働いてもらうよ |
ロゼ | …それにしても、アルヴィンの知り合いがあんたと一緒にいるとはね |
ロゼ | 久しぶり、アリーシャ |
アリーシャ | ロゼ…!そうか、このキャラバンは君が率いているのか |
ロゼ | そうそう、今は調査隊と提携して調査に必要な物資を島中に運んでるの |
ロゼ | あたし達は荷物の運搬に慣れてるし適任でしょ? |
アリーシャ | そうだったのか。…ロゼは調査隊ともいい関係を築いているのだな |
パスカル | アリーシャ、知り合い? |
アリーシャ | ああ、彼女はシルヴァラント王室御用達の商人だ |
アリーシャ | 王宮に出入りしているから、私も何度か顔を合わせた事がある |
パスカル | へ~、なるほどね |
ロゼ | あたしもここでアリーシャと会うなんて思わなかったよ |
ロゼ | もっと話をしたいところだけど本部に荷物を届ける途中だしね。また今度 |
アイゼン | …待て。荷台に砂がついているようだが、お前達は砂漠を通って来たのか? |
ロゼ | いや、砂漠地帯へは行ってないよ。近くは通ってきたけどね |
ロイド | なあ、砂漠の近くに行ったなら四大国連合調査隊について何か知らないか? |
ロイド | 砂漠に行ったきり、行方がわからないんだ |
ロゼ | 四大国連合調査隊、ね…。名前は聞いた事があるけどそれ以外は何も知らないや |
ロイド | そうか… |
ロゼ | ごめんね、力になれなくて |
ロイド | いや、気にしないでくれもしかしたらって思っただけだから |
ロゼ | …そうだ!調査隊の行方はわからないけど、砂漠の変な噂なら知ってるよ |
ロゼ | 情報があるのとないのとじゃ、大違いでしょ?心構えくらいは出来ると思うけど |
ジュディス | あら、助かるわ。聞かせてくれないかしら |
アルヴィン | 俺が話してやるよ。何でも、砂漠じゃ… |
アルヴィン | 魔物や動物が急に姿を消したり、逆に何もない空から降ってきたりするそうだ |
ロイド | 消えたり、降ってきたり…?何だ、そりゃ? |
ユーリ | 暑さにやられて、幻覚でも見たんじゃねえか? |
ラピード | ワフン |
ロゼ | あたしも実際に見たわけじゃないけど目撃した人に話を聞いたんだ |
しいな | …あたしも心当たりがあるよ |
しいな | 先行して砂漠に行ってきた時、魔物が突然現れたんだ。頭の上にね |
しいな | 飛べるようには見えなかったから、あたしが動きを見落としたんだと思ったけど… |
アリーシャ | …奇妙な現象だが、この島ならあり得ない事もない |
パスカル | うん、森の遺跡に物質を転移させる装置があったしね。砂漠にも同じ物があるかもしれないよ |
アリーシャ | そうだな。ロゼ、アルヴィン情報の提供に感謝する |
ロゼ | 気にしなくていいって。今後何か困った事があれば、いつでもあたし達を頼ってよ! |
ロゼ | それじゃ、お互い急いでるみたいだしまたね! |
アルヴィン | 気をつけてな。無事に連れ帰ってこいよ |
ルカ | はい、ありがとうござい── |
| ガタッ…!! |
ルカ | ──うわっ! |
パスカル | どうしたの、ルカ~? |
ルカ | い、今、ロゼさん達の運んでた箱、動かなかった…? |
ロイド | 馬車の振動で動いたんじゃないか? |
ルカ | それにしては音が大きかった気がしたけど…多分…気のせい、かな |
scene1 | 匂いを辿って |
ロイド | 砂漠に着いたのはいいけど、やっぱあちーな |
しいな | あたしの案内はここまでだ。次の任務に行かなきゃいけないからね |
ロイド | そういう話だったもんな。しいな、案内ありがとう |
しいな | 礼なんてやめとくれよ。むしろ、一緒に行けなくて申し訳ないくらいさ |
しいな | そうそう、ユーリ。ルークの落とした水筒を渡しておくよ |
ユーリ | 確かに受け取ったぜ。ラピード、匂いをたどれるか? |
ラピード | ワン! |
しいな | 一緒に行けないのは残念だけどみんな、四大国連合調査隊を頼んだよ! |
ロイド | ああ、任せてくれ!絶対に見つけてやるからさ |
パスカル | さて!レーダーの反応はどうなってるかな~ |
アイゼン | 四大国連合調査隊がいる場所はわかりそうか? |
パスカル | ちょっと待って~。ん~、んん~? |
アリーシャ | どうした、パスカル |
パスカル | マナリスの反応がないんだよ。もしかしたら、四大国連合調査隊はもう砂漠にいないかもしれないね |
ルカ | いないって言われても…。じゃあ、一体どこにいるんだろ… |
ユーリ | まあ待てって。決めつけるのは早いんじゃねえのか? |
ユーリ | ラピード、ルークの足取りを追ってくれ |
ラピード | クン…クン… |
ロイド | いけそうか? |
ラピード | ワン、ワン! |
ユーリ | ついてこいってよ |
ロイド | さすがラピードだな!頼りになるぜ |
scene2 | 匂いを辿って |
パスカル | うう…暑いよお… |
アリーシャ | 元気を出せ、パスカル。ユーリの話だと、そう遠くはないようだ |
パスカル | 頑張る… |
ラピード | ワウン! |
ユーリ | 噂をすれば、ってやつだな。どうやら、あそこからルークの匂いがするみたいだ |
ルカ | あれって…オアシス? |
アリーシャ | 一見すると安全そうな場所だな。まだあの場所に留まっていればいいのだが… |
| |
パスカル | …ルーク~!出ておいで~!あたしがひからびちゃうよ~ |
ルカ | パスカル、そんな、ペットを捜すみたいに… |
ジュディス | ふふ、捜し方は人それぞれでいいんじゃないかしら |
ジュディス | ただこの辺りにそれらしい姿は見当たらないわね |
ルカ | 匂いは残ってるのに、スパーダ達がいないのはどうしてなんだろう… |
ラピード | グルルルル… |
ルカ | ごっ、ごめん。ラピードを疑ってるわけじゃないよ |
ユーリ | 確かに変だな。ラピード、まだ匂いを追えるか? |
ラピード | ウ~…ワン、ワン! |
ロイド | ん?何もないところに向かって吠えてるぞ |
ユーリ | ここでルークの匂いが途切れてるって事か? |
ラピード | ワン |
ロイド | …みたいだな。うーん、匂いが途切れてるってどういう事だ? |
ルカ | ここにいたのは間違いないんだよね?…さっき噂で言ってた通り、消えちゃったのかな… |
アイゼン | ふむ… |
パスカル | アイゼン?怖い顔してどしたの~? |
アイゼン | いいから、この小石を見ていろ |
| |
| ヒュッ |
| |
ルカ | ──あっ!アイゼンの投げた小石が、消えた…? |
アイゼン | やはりな。ここには何かがある |
パスカル | う~ん、どれどれ~? |
アイゼン | 待て。うかつに触るな!何があるか── |
パスカル | おおっ、なるほどね~ |
ロイド | どうなってんだ!?パスカルの手がなくなっちまった! |
アイゼン | …全く、人の話を聞かん奴だ |
ルカ | パスカル!大丈夫なの!? |
パスカル | うん、手はちゃんと繋がってるよ。感覚もあるしね |
パスカル | ここ、空間が歪んでるんだよ!ほら、見てみて~ |
アリーシャ | これは…確かに、よく見ると歪みのようなものがあるな |
ジュディス | 歪んだ空間に触れると、その部分だけ消えてしまうのね |
パスカル | ん~、消えたんじゃなくて、移動しただけだと思うよ |
ロイド | どういう事だ? |
アイゼン | おそらく…この歪みが境界になって、別の空間に繋がっているんだ |
アイゼン | パスカルの手や投げた小石は俺達のいる空間とは別の空間に行ったんだろう |
ユーリ | 別の空間ねえ…。そんなもん本当にあんのか? |
アイゼン | 目の前のものが全てだ。この島であった事を考えれば、有り得ない話じゃない |
アイゼン | キャラバンの奴が言っていた魔物や動物が突然消えた話はこの歪みによるものだろう |
ユーリ | …なら、あいつらの行方とも関係がありそうだな。匂いはここで途切れてるわけだし |
パスカル | 何かの拍子に入っちゃったのかもね~ |
ロイド | なら、俺達も思い切って入ってみようぜ |
ルカ | 待って!中がどうなってるのかわからないのに、簡単に決めない方がいいよ…! |
ロイド | でも、あいつらの手がかりはここしかないだろ? |
アリーシャ | すまないが、私もルカに賛成だ。まずは本部に連絡して、この歪みの正体を探るべきだろう |
ジュディス | そうね。私達まで行方不明になるわけにはいかないもの |
ロイド | う…それもそうか… |
ユーリ | なら、さっさと本部に連絡しようぜ。アリーシャ、任せていいか |
アリーシャ | ああ。通信機で連絡を── |
ラピード | グルルルル…!ワン!ワン! |
ユーリ | どうした、ラピード |
ユーリ | …!あれは… |
| |
| シャアアア! |
| |
ロイド | 魔物だ!こっちに向かってくるぞ |
アリーシャ | こんな時に…!一気に蹴散らそう! |
scene3 | 匂いを辿って |
アリーシャ | 魔物は全て倒したみたいだな。ルカ、大丈夫か? |
ルカ | う、うん…何とか。砂に足がとられて上手く動けなかったけど |
| ガルルル… |
ユーリ | ちっ、向こうから新手が来やがった。休む暇もねえな |
| ガルルル! |
アイゼン | …! |
アイゼン | ルカ、アリーシャ、魔物がそっちへ行ったぞ |
ルカ | は、早く逃げないと…うわっ! |
ルカ | いたたっ、足がもつれて… |
アリーシャ | ルカ!?手を貸すから、早くこっちに── |
| ガルルル!! |
ルカ | うわああ!! |
アリーシャ | くっ…! |
ロイド | ルカ!アリーシャ! |
パスカル | どうしよう~!二人共、歪みの中に入っちゃったよ! |
ジュディス | 困ったわね…。でも、まずは魔物の対処が先かしら |
ロイド | ああ、早くこいつをどうにかしねえと!よし、かかってこ── |
| ガルルル |
| |
ロイド | へっ…?おい、どこ行くんだよ!? |
| |
ジュディス | あら、無視されちゃったわね。…水場に向かって行くわ |
ユーリ | ルカ達が立ってた場所が悪かったって事だな。仕方ない、俺が本部へ連絡するか… |
パスカル | 二人共、中に入っちゃったし、どうしよう~! |
ロイド | よし、俺達も歪みの中に入ろう! |
アイゼン | 慎重な事を言ってた奴から歪みに飛び込むとはな… |
| |
scene1 | 亜空間 |
パスカル | 歪みの中ってこんな風になってたんだ~! |
ロイド | うわっ、変なとこだな!早く二人を捜さねえと… |
ユーリ | おい、あそこに誰か倒れてねぇか? |
ロイド | ルカ、アリーシャ!?おい、大丈夫か? |
ルカ | …いたた…うん、何とか。魔物に体当たりされて、派手に転んじゃったんだ… |
アリーシャ | 私も大丈夫だ。ここは…歪みの中なのか? |
アイゼン | ああ。俺達も後を追って飛び込んだが…やはり違う空間に繋がっていたな |
ユーリ | 何だ?あの空の色。…妙な場所だな |
ジュディス | 妙なのはそれだけじゃないわね。空中に島が浮いてるみたい |
パスカル | すごいよね~!これって亜空間ってやつだよね |
ルカ | 亜空間って…こんなところに来て、大丈夫なのかな…僕達 |
パスカル | 面白そうだしいいじゃん!どうにかして、あの島まで行ってみたいな~ |
アリーシャ | いや、ここからは早く出よう。無暗に歩き回るのは危険だ |
アリーシャ | ひとまず本部に連絡を… |
アリーシャ | …ん? |
ルカ | どうしたの、アリーシャ |
アリーシャ | …通信機が繋がらない。故障だろうか? |
パスカル | どれどれ~。ん~、通信機自体は壊れてないね |
パスカル | 今は亜空間にいるからここから外へ向けては通信が出来ないようになってるんだよ |
アリーシャ | では、この空間から出て本部に連絡しよう |
ユーリ | 本部へは連絡しといたぜ。ただ、オレ達が入ってすぐ歪みは消えちまったみたいだな |
アイゼン | 一方通行…。いや、時間の制限でもあるのか…? |
ルカ | ええっ!?出口がないって事は… |
パスカル | この亜空間を調査するしかないって事だね~! |
ジュディス | あら、閉じ込められたわりには楽しそうね |
パスカル | だって、この亜空間を見てよ!何から何まで、面白そうな場所でしょ? |
アリーシャ | パスカル、目的を忘れていないか? |
ロイド | ああ、この空間が気になるのはわかるけどよ。早く四大国連合調査隊を捜さないとな |
パスカル | あっ、その事なんだけど四人はここにいると思うよ |
ルカ | えっ!?どうしてわかるのさ? |
パスカル | ここに来たら、急にマナリスのビリビリを感じ始めたんだよね~ |
パスカル | 見て見て!レーダーも反応してるよ。ほら、赤い点が移動してるでしょ? |
ロイド | おっ、本当だ!赤い点が動いてるって事は…あいつら無事かもな! |
ルカ | じゃあ、四大国連合調査隊は亜空間にいたから連絡が出来なかったって事? |
アイゼン | 違う空間にいたせいで連絡が取れなかったとすれば… |
アイゼン | 同じ空間内なら通信機が機能するかもしれん |
アリーシャ | …ああ、試してみよう |
| プルルル… |
| ピッ |
ルカ | 繋がった! |
アリーシャ | こちらはアリーシャだ。…聞こえるだろうか? |
ルーク | …ん、通信機が…アリーシャか…!? |
アイゼン | やはり…あいつらはこの空間にいるようだな |
ロイド | ルーク、無事なんだな!他の奴らも怪我とかしてないか? |
ルーク | んだよ、大袈裟な奴だな。ちゃんと全員無事だって |
ルーク | ちょっと帰るのには手間取っちまってるけどよ。何つーか、妙な場所にいんだよな |
パスカル | ルーク、あたし達も同じとこにいるよ~!結構近いみたい! |
ルーク | 本当か!? |
ロイド | ああ。すぐそっちに向かうからさ、詳しい話は合流してからにしようぜ |
ルーク | わかった!なるべく早く来いよ! |
| ツー、ツー、ツー |
ジュディス | これで行先は決まったわね |
アリーシャ | ああ、彼らと合流しよう。パスカル、案内してくれ |
パスカル | 了解! |
scene2 | 亜空間 |
パスカル | レーダーの反応はこの辺りのはずなんだけど… |
ロイド | …姿は見えないな。あいつら、どこにいるんだ |
パスカル | う~ん、おっかしいな~。そうだ、もう一度通信機で── |
ラピード | ウ~…ワウワウッ! |
ジュディス | あら、ラピード。何か見つけたの? |
ユーリ | そうみたいだな…。お、ここにも歪みがあんのか |
ラピード | ワウッ! |
ユーリ | どうやら、ここであいつらの匂いが途切れているみたいだな |
ロイド | …って事は、この向こうに四大国連合調査隊がいるんだな! |
ロイド | これでやっと合流出来るぜ!行こう、みんな! |
| 落下地点 |
パスカル | わわわっ!ちょっと、何!? |
ルカ | すごい高さだよ!! |
ルカ | え? |
| |
ルカ | …ひいっ!! |
アイゼン | …なるほど。さっきの歪みは、空中に繋がっていたわけだ |
アリーシャ | 分析している場合か!?このままでは…! |
ロイド | 地面に落っこちる!みんな、受け身を取れ! |
| |
| ドサッ!ドサドサドサッ! |
ロイド | いってえ…!…みんな、大丈夫か? |
アリーシャ | 奇跡的に怪我はない…。だが、誰かが背中に乗っていて身動きが… |
パスカル | むぎゅ~!あたしの上にも誰かいる~! |
| |
ロイド | えっ?俺が二人の上に乗ってんのか!? |
ロイド | すぐ退くな…って、うわっ!足を踏まれてて抜け出せねえ |
ユーリ | オレも動けねえんだよ。いてて、これ誰の足だ |
ユーリ | ジュディ!無事に着地したのはお前だけなんだ。笑ってないで手を貸してくれ |
ジュディス | ふふ…ごめんなさいね、あまりにも面白い事になってるから |
ラピード | ギャウ!? |
ルカ | わっ、踏んじゃった!?ごめん、ラピード! |
ルカ | …あれ?僕の下にも、まだ誰か… |
ルーク | いつまで…乗っかって、やがるっ!テメーら全員、俺の上から…降りろってんだ!! |
ルーク | はあ…ったく!急に人の上に落ちてくるんじゃねえよ! |
ロイド | 悪かったって。でも、合流出来て本当よかったぜ |
アスベル | ああ、まさかこんなところで会うとは思わなかった。…みんなはどうしてここに? |
ロイド | どうしてって、お前らを追ってきたんだよ |
アリーシャ | 四大国連合調査隊が消息を絶った事で本部は大変な騒ぎになっている |
アリーシャ | 私達も君達が心配で捜索に来たんだ |
エレノア | そこまで大事になっていたとは…。みなさん、ご心配をおかけしました |
アスベル | すまない、早く戻ろうとはしていたんだが… |
スパーダ | しかし、今度はオレらが行方不明扱いになるとはな |
スパーダ | ルカが森で行方不明になった時はトロい奴だなと思ったけどよ、人の事言えねえぜ |
ルカ | そんな風に思ってたの!?僕はスパーダがいなくなってすごく心配してたのに…! |
スパーダ | そんな、怒んなって。心配かけて悪かったよ |
スパーダ | にしても、大袈裟すぎねェか?こんな大人数で来なくたってよ。まあ、美女が来てくれて嬉しいけど |
ジュディス | そう言えば、あなた達とは初対面ね |
ユーリ | オレは見知った顔もいるけどな。一応、挨拶しておくか |
ルーク | ──なるほどな。お前らの事は大体わかった |
ルーク | 湖で言ってた海賊まで仲間になってるとは思わなかったぜ。よくジェイドが許したよな |
アイゼン | 曲者ではあるが話のわかる奴だった。安心しろ、今は調査隊に手を貸すと決めている |
アスベル | これからは同じ調査隊員としてよろしくお願いします。アイゼンさん |
アイゼン | 妙に堅苦しいな。気にするな、普段通り話せ |
アスベル | じゃあ、改めてよろしく。アイゼン |
アスベル | それにしても、ユーリが調査隊に入ってるなんて思わなかったな |
ユーリ | まあ、成り行きでな。それより、お前らの話だ。一体、何があったんだよ? |
アイゼン | まずはマナリスだ。手に入れたと聞いたが、無事なんだろうな |
ルーク | んなの決まってるだろ!見てみろよ、傷一つねえし! |
アイゼン | ふむ、確かにな |
アリーシャ | それでマナリスを手に入れた後、どうしてここに? |
エレノア | 探索を終えた私達はオアシスを見つけて、水分補給と休息のために向かったのですが… |
エレノア | その途中でこの空間に迷い込んでしまって… |
スパーダ | んで、こっちに来てからはずっと、出る方法を探してさまよってたわけだ |
ルカ | 僕達、さっきここに来たばかりで何にも知らないんだ…。わかった事があれば教えてよ |
スパーダ | しょうがねェな…まあ、とにかくだだっ広い空間で、小島が浮いてんのは見ての通りだ |
スパーダ | ただ、あちこちに歪みがあんだよ。この空間に繋がってた歪みと違って一方通行じゃねえけどな |
アスベル | 一度入った歪みが消滅する事はないから、行き来は自由に出来るんだ |
アイゼン | 亜空間内は歪みを通路にして移動すればいいという事か |
エレノア | それと…出口を探している途中で何かを研究しているような施設を見つけました |
スパーダ | ちょっと入って見渡してみたが、かまどもあったぜ |
パスカル | 何なに、どんな研究をしてたの!? |
エレノア | すみません、時間がなくて研究内容までは… |
スパーダ | オレ達の通信機は一つだしな。手分けして探す事も出来ねえし、どこ探すにも時間がかかってよ |
アリーシャ | …状況はわかった。では、私達の通信機も使えば手分けして探せるな |
アスベル | ああ。人数も増えたし、早く出口を── |
ルーク | おい、待てよ!まだ話してねえ事があるだろ! |
ロイド | どうしたんだ?ルーク |
ルーク | へへっ、聞いて驚け。何とこの亜空間には── |
ルーク | すっげえお宝が眠ってんだよ! |
scene1 | 二刀流の剣士 |
ロイド | すっげえお宝…!?なあ、ルーク!それってどんな物なんだ!? |
ルーク | ちょっと待ってろ。説明するより見た方が早いしな…。っと、あったあった |
パスカル | おおっ、カタグラフィだ!それ、ここにあったの? |
ルーク | おう、脱出する方法を探してる途中で見つけたんだ |
ルーク | …よっと、これでいいんだっけか?んじゃ、再生するぞ |
| ポチッ…! |
| |
ドワーフ | これがダモクレスの剣の試作品だ。ほら、持ってみてくれ |
二刀流の剣士 | おお…!持った瞬間、剣が二本になったぞ! |
ドワーフ | ああ、使い手によって形状を変え、使い手の力を最大限まで引き出せるようにしているんだ |
ドワーフ | 島の脅威を払う剣だ、これくらい出来なくてはな |
二刀流の剣士 | 手によく馴染むな…。軽くて振りやすいし、いくらでも戦えそうだ |
二刀流の剣士 | さすが、島に住む全種族の叡智の結晶と言われるだけはある |
| グルルル…! |
ドワーフ | 魔物か!?まさか研究施設にまで入ってくるとは! |
二刀流の剣士 | お前は下がっていてくれ!ダモクレスの剣を試すいい機会だ… |
二刀流の剣士 | はあああ! |
| グギャアアアッ…! |
| |
ルーク | な?見たか、今の剣!すげぇお宝だろ! |
ルーク | カタグラフィはこの空間にあったヤツだし、きっとここにあの剣があるんだって! |
ロイド | ダモ…ダモクレス、だっけか。脅威を払う剣なんてかっけーよな!く~、ワクワクしてきたぜ |
ルーク | へへっ、だよな!?ロイドなら食いつくと思ったぜ!剣士だったら絶対ほしくなるよな |
ロイド | 試作品でも魔物をばったばった切り倒してたし、完成品はもっとすごいんだろうな |
アイゼン | 興味深い。完成品はさらに洗練されているだろう。間違いなく価値のある品物だ |
ロイド | おっ、アイゼンも気になるのか!それにあの二刀流の剣士もすごかったよな! |
スパーダ | ああ、まるで二つの剣を自分の手のように扱ってた。ありゃかなりの使い手だ |
ロイド | やっぱスパーダもそう思うか!同じ二刀流として憧れるよな |
ロイド | 俺もあの剣があればあいつみたいな剣さばきが出来るかな? |
ユーリ | 随分盛り上がってるみてえだが…あいつら、ここから出られないって事わかってんのかね |
ルカ | あはは…あれ?まだカタグラフィには続きがあるみたいだ |
| |
二刀流の剣士 | 研究施設に入った魔物は倒したが…試作品の剣が折れてしまった。すまない… |
ドワーフ | いや、欠点がわかってよかった。…もっと精度を上げなくてはな |
ドワーフ | しかし、研究施設にまで魔物が入ってくるとは…。それだけ魔物が活発になっているのか |
二刀流の剣士 | …亜空間に島を隔離してよかったな。あのままだったら島の外に被害が出ていた |
ドワーフ | ああ。…ただ私やお前も含めアヴァロン島の人間は日に日に衰弱してきている |
二刀流の剣士 | そうだな…。剣の完成を見届けるまで持てばいいんだが |
| |
アリーシャ | 亜空間に島を隔離した、か…。島の外に被害を出さないために亜空間が作られたという事だろうか |
パスカル | う~ん、今までにカタグラフィで見てきた事とちょっと違うよね |
パスカル | 湖で見たカタグラフィでは侵略者がアヴァロン島で暴れてるって言ってたし |
アリーシャ | ああ。だから、私達は島の外から来た侵略者と戦争になったと認識したんだ |
スパーダ | つってもよ、湖で見たカタグラフィに映ってた奴らは結構呑気だったよなあ |
スパーダ | 結局戦争にはならなかったんじゃねェか? |
ロイド | いや、戦争は起きてた。それは間違いないぜ |
アスベル | どうしてそう言い切れるんだ? |
アイゼン | …実際に俺達は目にしているからな。戦争で滅んだ山の集落を |
エレノア | …山の集落…ですか?初めて聞きましたが… |
アリーシャ | ああ、君達は調査に出ていたから知らないのか |
アリーシャ | 私達はここへ来る前、山岳地帯で荒れ果てた集落を発見したんだ |
ルカ | 山の集落で見つけたカタグラフィには戦って傷ついた兵士達が映ってた |
エレノア | …なるほど。ですが、侵略者との戦争が本当に起こったのなら… |
エレノア | パスカルの言う通り今回のカタグラフィにあった情報はおかしいですね |
ルーク | だーっ!わかんねえな!何がおかしいんだよ、俺にもわかるように言え! |
アイゼン | つまり、俺達はアヴァロン島の歴史に関する新たな情報を手に入れたが… |
アイゼン | 今まで見てきたカタグラフィとは情報が噛み合わないという事だ。別の時代のものかもしれん |
エレノア | 私達が何かを見落としている可能性もあります |
ルカ | 島を隔離したのは、侵略者の侵入を阻むためじゃなくて、何か別の目的があったのかな… |
アイゼン | …発見したカタグラフィだけでは、これ以上の事はわからん。他の情報も集めてみないとな |
アイゼン | …それこそ、こいつらの言う剣を探す事が新たな情報に繋がるかもしれん |
アリーシャ | …カタグラフィの情報は気になるが、剣を探すより今は出口を探す方が先決だ |
アリーシャ | 四大国連合調査隊はまだ行方不明のままになっている。一刻も早く連絡を入れるべきだろう |
エレノア | そうですね。早く本部にマナリスを持ち帰らなければ… |
エレノア | それに大昔の記録ですから、剣を探したところで今も残っているかはわかりませんし |
ルーク | ぐっ…!ないとは決まってねえだろ。貴重なお宝の情報を無視していいのかよ? |
ロイド | 調査隊なら、貴重なお宝は手に入れた方がいいって! |
アリーシャ | 君達の熱意はわかるがそうは言ってもな… |
アイゼン | 亜空間は不安定な場所だ。一度出たらここに戻れる確証はない。…この機会を逃すのは惜しい |
ロイド | だよな、アイゼン!今見つけないともう手に入らない気がするんだよ |
アリーシャ | そうか…。確かに…再び調査が出来る保証はない |
アリーシャ | …では、脱出と同時進行で剣も探すというのはどうだろうか |
アスベル | そうだな。みんなが来てくれて、人数も増えたし… |
スパーダ | ルークとロイドは引く気ねえしな。両方探した方が、手っ取り早そうだぜ |
scene2 | 二刀流の剣士 |
ユーリ | それで?脱出する方法とダモクレスの剣、どうやって探すんだ? |
ジュディス | 手分けして探すのがいいんじゃないかしら |
パスカル | 賛成~!アスベル達の持ってる通信機は一つだけだったよね? |
アスベル | ああ、そうだ |
ジュディス | なら、私達の分も合わせて、通信機は三つね。四人ずつ三組に分かれましょう |
アスベル | 後は組み分けだな |
ユーリ | んなの、目的が同じ奴同士で集まればいいだけだろ |
エレノア | そういう事でしたら私は脱出する方法を探します |
アリーシャ | では、私もエレノアと同じ組だな |
ルーク | 俺は勿論、剣を探しに行くぜ! |
ロイド | 俺も剣だな!よし、俺とルークで一緒に剣を… |
ルーク | いいや、そいつは断る! |
ロイド | 何でだよ!? |
ルーク | そんなの決まってるだろ!ダモクレスの剣がそう何本もあるとは思えねえ |
ルーク | 二人で見つけたら、結局取り合いになっちまうからな |
ロイド | …つまり、早い者勝ちって事か。へへっ、わかりやすいぜ |
ロイド | じゃあ、俺はルークとは別で剣を探すよ |
ユーリ | エレノアとアリーシャが脱出組で、ルーク、ロイドの二人が、別々に剣探しか… |
ユーリ | …よし。エレノア、アリーシャ。オレとラピードもそっちに入るわ |
ジュディス | あら。あなたは剣の調査に行くんだと思ってたわ。気にならないの? |
ユーリ | どんだけすげえ剣だろうと、ここから出られなきゃ、宝の持ち腐れだろ |
ラピード | ワウッ! |
ユーリ | ラピードもそうだってよ |
アリーシャ | ああ、協力して出口を探そう |
スパーダ | 後は剣探しか。よっしゃ、オレはロイドに付くぜ |
ルーク | 何だよ、それ!お前は俺と同じ四大国連合調査隊だろ |
スパーダ | そんなの今は関係ねえっての。同じ二刀使いとして、個人的な興味があるんだよ |
スパーダ | ロイド。ルークより先に手に入れてやろうぜ! |
ロイド | そういう事なら…よろしくな、スパーダ! |
ルーク | あいつら…いつの間に仲良くなったんだよ |
アスベル | 二人共、二刀流の剣士が気になってたみたいだからな |
ルーク | …まあ、別にいいけどよ。んで、アスベルはどうすんだ? |
アスベル | 俺はルークと一緒に行くよ |
パスカル | あたしはどうしよっかな~。ルカは?誰と一緒に行く? |
ルカ | 僕は…う~ん。ロイドとスパーダは二刀流同士で盛り上がってるし… |
ルカ | 僕は入っていけなさそうだからルーク達と一緒に行こうかな |
アイゼン | なら、俺もそちらに付こう |
ルカ | えっ、アイゼンも? |
アイゼン | ああ。どの組でも構わないと思っていたが…この間、海賊の話をしてやっただろう |
アイゼン | いい機会だ。話だけでなく、どうやって宝を探しているのか見せてやる |
ルーク | 一緒に来るのはいいけどよ、足引っ張んじゃねえぞ |
アイゼン | 威勢がいいな。まあ、お前みたいな奴が意外とあっさり宝を見つけるものだ |
パスカル | そんじゃあ、あたしとジュディスはロイド達と一緒だね! |
ジュディス | そうなるわね。でも、あなたは剣を探す組でいいの? |
パスカル | 別にいいよ~。調べたい事が見つかれば、勝手に調べるし! |
パスカル | 剣も、カタグラフィも、この亜空間もね! |
ジュディス | そう。私は特に執着はないけれど… |
ジュディス | せっかく探すなら、向こうより先に剣を手に入れたいものね |
アリーシャ | 組み分けは決まったな。後はどこを探索すべきか、だが… |
アイゼン | …剣は研究施設を調べれば手がかりがありそうだな |
アイゼン | カタグラフィの内容からすると、施設で研究していたのはダモクレスの剣だと見ていいだろう |
ロイド | うーん、他にも建物はありそうだし、俺達はルーク達と他の場所を探すよ |
エレノア | 研究施設はルーク達に任せて私達はこの辺りの歪みを調べてみましょう |
ユーリ | だな。ラピード、頼りにしてるぜ |
ラピード | ワウッ! |
パスカル | あっ、そうだ!通信機、ちゃんと組ごとに持ってる?これがないと連絡取れないよ |
ユーリ | じゃあ、オレが持ってるのはロイドに渡しとく |
ロイド | えっ、ジュディスじゃねえのか? |
ジュディス | 私はいいわ。あなたが持っていて |
ユーリ | ってわけだ。ほら、預けたぜ |
ロイド | ありがとな。よーし、これで剣を手に入れたってみんなに報告出来るな |
ルーク | 何、もう手に入れた気になってんだ?剣はこの俺が見つけて、俺の物にすんだっつーの! |
ユーリ | その理屈が通るなら… |
ユーリ | 出口探しの途中でオレが剣を見つけたら、もらっていいって事だよな? |
ルーク | なっ…!?何だよ、それ!ズルいじゃねえか |
ユーリ | そこは早い者勝ち、だろ? |
ルーク | そ、それは… |
ロイド | 誰が見つけても、文句は言いっこなしだ! |
ルーク | おうよ!ぜってえ負けねえからな! |
ジュディス | 仲がいいのね。けれど、出発しなくてもいいのかしら? |
ロイド | 悪い悪い。よーし、剣を探しに行くか! |
ロイド | みんな、また後でな! |
| 脱出への糸口 |
アリーシャ | この先は…行き止まりか。歪みを探すと言ったはいいが、なかなか見つからないな |
エレノア | こちらも駄目ですね。次はあの辺りを探してみましょう |
ラピード | ワン! |
ユーリ | おい、こっちだ。ラピードが新しい歪みを見つけたってよ |
アリーシャ | そうか…!今度こそ出口に繋がっていればいいが… |
ユーリ | とりあえず中を見てみねえとな。さて、と… |
エレノア | どうですか、ユーリ? |
ユーリ | 残念、はずれだな。出口じゃなさそうだ |
ユーリ | また空中に繋がってたぜ。下の方を見てみたが、何もねえ |
アリーシャ | そうか…。上手くはいかないな |
ユーリ | こいつは思ったよりも手間がかかりそうだ |
エレノア | しかし、出口を見つけなければ本部には帰れません。私達が頑張らなくては── |
| |
エレノア | ……! |
| |
アリーシャ | エレノア!大丈夫か!?…顔色が悪いじゃないか |
エレノア | 大丈夫です、めまいがして少しふらついただけで… |
アリーシャ | 無理をしない方がいい |
アリーシャ | 私達が来る前からずっと歩き続けていたのではないか?少し休んだほうがいい |
ユーリ | なら、オレがラピードと探してくる |
ユーリ | アリーシャはエレノアについていてくれ。魔物が出るかもしれないからな |
アリーシャ | いや、ここは私が行ってくるよ。守りながら戦うような事があったらユーリの方が適任だ |
ユーリ | そう言うなら構わねえが。あんたはどこを調べに行くんだ? |
アリーシャ | 先ほど通ってきた道を見直してくる。見逃していた歪みがあるかもしれない |
ユーリ | わかった。ラピード、アリーシャについて行ってくれないか? |
ラピード | ワン |
アリーシャ | ありがとう、ラピード。では、行ってくるよ |
ユーリ | 気を付けて行ってこいよ |
エレノア | みなさん、ありがとう。…少し休ませてもらいますね |
| |
ユーリ | お、戻ってきたな。どうだった? |
アリーシャ | 新たな歪みを見つけたが、それも出口ではなかった… |
アリーシャ | 次は探す範囲を広げてみよう。すまないが、引き続きラピードに協力してもらって── |
ユーリ | おい、待てって。いい加減あんたも休めよ |
エレノア | 座ってください、アリーシャ。次に探す時には私も行きますから |
アリーシャ | …わかった。では、少し休んだら出発しよう |
ユーリ | 決まりだな。二人共、任務だからってあんま無理すんなよ |
ユーリ | 焦って探したって見つかるもんも見つからねえ |
エレノア | …そうかもしれませんね |
アリーシャ | 確かに、任務を遂行しようと気が急いてしまっていたかもしれない |
アリーシャ | …だが、今の私を動かしているのは任務や使命だけではないんだ |
アリーシャ | みんなのために出来る事をしたい。みんなが剣を見つけた後、無事に帰れるように |
ラピード | ……!!…ワン!ワン! |
アリーシャ | …ラピード?ああ、新しい歪みを見つけてくれたのか! |
ユーリ | よくやった、ラピード |
アリーシャ | 先に様子を見てくる。二人は後からついてきてくれ! |
ユーリ | やれやれ。アリーシャの奴、大丈夫か?頼もしいんだか、危なっかしいんだか |
エレノア | ふふ、きっと大丈夫ですよ。島に来てから、アリーシャは少し変わりました |
エレノア | 以前の彼女であれば…さっきの言葉は聞けなかったと思います |
ユーリ | ふーん…。調査隊でロイド達といる間に、いろいろあったって事か… |
| プルルル… |
エレノア | 通信機が…!誰でしょうか? |
| ピッ |
ルーク | あー、お前ら!聞こえっか? |
エレノア | ルーク!どうしました? |
ルーク | そろそろ出口が見つかったかと思ってよ |
ユーリ | まだだ。歪みはいくつか見つかったが、どれも出口じゃなかった |
ルーク | 何やってんだよお前ら!別れてから結構経ってんだろーが! |
ユーリ | こっちも難航してんだよ。…で、そこまで言うならお前はもう剣を見つけたんだよな? |
ルーク | …いや、これからだけどよ |
ルーク | 剣を見つけたって、亜空間から出られなきゃ意味ねーんだ!頼むぜ |
ユーリ | へいへい。…まあ、心配すんなって。こっちには── |
アリーシャ | ずっと付き合ってもらっているが…ラピード、君は休まなくていいのか? |
ラピード | ワン |
アリーシャ | ふふ…ユーリのように意思疎通は出来ないが…今のは何となくわかる気がするよ |
アリーシャ | ありがとう、ラピード。よし、案内を頼む! |
ユーリ | ──心強い騎士様がいるからな。この分なら、すぐに見つかるさ。んじゃ、切るぜ |
ルーク | ああ?本当に大丈夫かよ…それじゃ、見つけたらすぐ言えよ! |
| ツー、ツー、ツー |
ユーリ | さて、と…それじゃ、置いてかれない内に行きますか |
エレノア | ええ!休んで、すっかり元気になりました |
エレノア | アリーシャ!私達も一緒に探します! |
| 剣の試練 |
ルーク | ユーリの奴、心配ないって言ってたけど、本当かよ |
ルカ | 沢山の歪みの中から出口を探すのって、大変そうだよね… |
ルーク | エレノア以外の奴らは、ここに来たばっかだしな… |
ルーク | 俺達が剣を見つけたら、あいつらを手伝ってやんねーと |
アスベル | ああ。急いで剣を見つけよう |
アイゼン | そのためにここへ来たんだからな。この研究施設のどこかに剣の手がかりがあるはずだ |
アイゼン | この部屋には剣らしき物は見当たらないが…机の上はどうだ、ルカ? |
ルカ | うーん…気になる物はないよ |
アイゼン | ここもはずれか。…よし、次の部屋に進むぞ |
ルーク | ああ。…って、仕切ってんじゃねーよ!俺が先に見つけるんだからな! |
ルカ | あっ…!待ってよ、二人共! |
| |
ルーク | 待てって!俺を無視すんじゃねーよ!聞いてんのか、アイゼ── |
ルーク | ぶっ!? |
アイゼン | …!これは… |
ルーク | 急に止まんな!ぶつかっちまっただろうが! |
ルーク | …ん?今、何か拾わなかったか? |
アイゼン | お前達、こいつを見ろ |
アスベル | これは…!剣の、柄じゃないか? |
ルカ | 本当だ。錆びてて、随分古そうだけど… |
ルカ | …よく見たら、この部屋のあちこちに落ちてるよ |
アスベル | けど、柄ばかりで剣身がないな。ひょっとしたら、ダモクレスの剣もここにあるかと思ったんだが… |
アイゼン | そう簡単にはいかんだろう。剣の柄が見つかっただけでも十分だ |
ルカ | この部屋で剣を作ってたのかな?あそこに装置みたいな物もあるし… |
アイゼン | だとすれば、ここにある柄は、試作品を作る過程で出来た物だろう |
ルーク | 何だよ、期待させといて…。これ、本物じゃねーのかよ |
ルーク | なら、こんなもんに用はねーな。よっ… |
アイゼン | …おい、投げるな!そっちには装置が…! |
ルーク | や、やべ…! |
| ヒューン…ガンッ! |
ルカ | ああ、装置に当たっちゃった…!大丈夫かな? |
アスベル | 見たところ、装置に傷はなさそうだ |
アスベル | ルーク、何も投げる事はないだろう |
ルーク | 手元が狂ったんだよ!別に狙ったわけじゃねーし… |
アイゼン | …荒っぽい奴だ。あの装置に重要な情報が入っていたらどうする? |
ルーク | な、何だよ…わざとじゃねーって言ってんだろ |
アイゼン | ダモクレスの剣がほしいなら、もっと考えて行動するんだな |
アイゼン | 少なくとも、物の価値がわからないような奴に貴重な剣は必要ないだろう |
ルーク | な…!黙って聞いてりゃ、好き勝手言いやがって…! |
ルカ | ま、待ってよ二人共!喧嘩してる場合じゃないってば |
ルーク | うっせえ!お前も文句あんのか!? |
ルカ | そ、それは、その…アイゼンの言う事も正しい、と思うけど… |
ルーク | ああ!? |
ルカ | ルークがわざとやったんじゃないって事はわかってるよ…! |
ルカ | と、とにかく喧嘩は駄目!…だと、思います |
ルーク・アイゼン | …… |
ルーク | …何か、アホらしくなってきたぜ。やめだ、やめ! |
アイゼン | 確かに、これ以上時間を無駄にする必要はないな |
アスベル | さあ、気を取り直して剣の探索を再開しよう |
ルーク | わかってるっつーの。…にしても、ルカ |
ルカ | な、何…? |
ルーク | なよなよした奴だと思ったけど…見かけよりは度胸あるじゃねーか |
アスベル | ああ。スパーダから聞いてた通りだな |
アスベル | ここに来るまで何度か魔物と戦ったが、剣の腕も確かだった |
ルカ | はは…ありがとう。ロイド達と冒険したお蔭かな… |
ルカ | でも、やっぱり僕はまだまだだよ。もっと強くならないと… |
ルーク | んん?何だ、まさかお前も剣を狙ってんのか!? |
ルカ | え?いや、違うよ!僕なんかに使いこなせる剣じゃないもの |
アイゼン | そう決めつける事はないだろう |
ルカ | でも、島の脅威を払うために作られた剣なんて、荷が重いよ |
ルカ | ダモクレスの剣は…ロイドみたいな人が使うべきだと思う |
ルーク | んだよ、俺じゃなくてロイドかよ |
ルーク | …ま、確かにあいつなら剣を使いこなしちまうだろうけど |
アイゼン | お前も、ロイドを認めているようだな |
ルーク | …へっ。それでも、剣は俺が手に入れるけどな! |
アスベル | そうだな。この部屋にはまだ手がかりがきっとあるはず── |
アスベル | …ん?あれは… |
ルカ | どうかした? |
アスベル | いや、あそこにある物が気になって…ちょっと待っていてくれ! |
アスベル | …ああ、やっぱりだ。みんな、カタグラフィがあったぞ! |
ルーク | 何!?よくやった、アスベル! |
アイゼン | 見たところ壊れてはいないようだな |
アイゼン | よし、再生するぞ |
| ポチッ…! |
| |
研究者 | ──これを見ているのが誰かはわからない |
研究者 | だが、遠い未来…この場所にたどり着く者がいると信じ映像を残そう |
研究者 | ダモクレスの剣を求める者達よ |
研究者 | あの剣は、人間やドワーフ…多くの種族が協力し、生涯を賭して作り上げた最高の武器だ |
研究者 | 使用者に合わせて形を変え、その力を限界以上に引き出す。だが、それ故に… |
研究者 | 未熟な者に渡す気はない。剣を手に入れるために…いくつかの試練を用意した |
研究者 | 剣を手に入れる事が出来るのは、試練を突破した者だけだ |
研究者 | あまりに危険な試練ゆえ、試練の館には鍵をかけてある |
研究者 | 試練に挑むつもりがあるのならば…この印を試練の館で示すがいい |
研究者 | これを見ているお前が、剣を使うのにふさわしい者である事を願っている── |
| |
アイゼン | これは…剣への道筋が見えてきたな |
ルカ | 試練の館って言うからには…どこかに専用の場所があるんだと思う |
ルーク | よし、そうと決まれば、その館とやらを探し出すぞ! |
| プルルル… |
アスベル | …ん?待ってくれ、通信だ |
| ピッ |
ロイド | あー、アスベルか?ちょっと聞きたい事があるんだ |
ルーク | おう、ロイド!何の用事か知らねえがあと少しで剣は俺達のもんだぜ! |
ロイド | 本当か!?ちぇっ…俺達だって、せっかく怪しい場所を見つけたのに |
アイゼン | …怪しい場所だと?詳しく聞かせろ |
ロイド | ん?ああ…探索してたら妙な建物を見つけたんだけど…扉が開かないんだよ |
ロイド | しかも、変な声が聞こえてくるんだ。「正しい印を示せ」とか何とか…お前ら、何か知らないかと思ってさ |
アスベル | 印って…まさか、その建物は… |
ルカ | ロイド達、試練の館の前にいるんじゃないかな |
ルーク | だぁっ!何でお前らがそこにいるんだよ! |
| |
ルカ | ──うん、そう。ロイド、印の形は今言葉で説明した通りだよ |
アイゼン | 今回はお前らの方に運があったな。…まあ、こういう事もある |
ルカ | その扉の先に剣があるはずだけど…研究者の口ぶりだとどんな試練が待ってるかわからないよ |
ロイド | ああ、気は抜かないさ。任せとけ!…ところで、ルークは? |
アスベル | さっきまでイラついてたが、ちょうど元気になったみたいだ |
ルーク | …よーし決めた!今から俺達もそっちに向かう!ちょっとそこで待って… |
ルーク | うおおっ!? |
ルカ | …いけない!!待って、今── |
| |
| ガシャン |
| |
ロイド | 今の…何の音だ、ルーク?おい、ルーク!?ルカ!アイゼン!アスベル!おい! |
ロイド | 何も聞こえなくなった…おい、何があったんだよ!? |
scene1 | 剣の管理者 |
ロイド | 結局切れちまった。あいつら、大丈夫かな… |
スパーダ | 何かあったのかもな。理由もなしにいきなり切ったりしねェだろ |
ジュディス | もう一度連絡してみたらどうかしら。案外、通信機を地面に落として通信が切れただけかもしれないし |
ロイド | よし、もう一回試してみよう。もし何かあったんなら、あいつらを助けに行かないと! |
スパーダ | そうなったら、試練や剣どころじゃねェしな |
スパーダ | …ん?パスカル、お前は何してんだ? |
パスカル | 砂場に印を描いてるんだよ~ |
パスカル | ルカの話だと、印を扉の前で示せば剣の試練が受けられるはずだからね |
スパーダ | ふ~ん、なるほどな。砂場が扉の鍵になってるってわけか。…んで、扉は開きそうなのか? |
パスカル | え~っと、待ってね。確か、こういう形で…そんで、こう! |
| |
| ズ…ズズズズズ…! |
| |
ジュディス | 扉が開いたわ。彼らの情報は正しかったわね |
パスカル | へえ~、試練の館って、中はこんな風になってるんだ!ちょっと見てくるね! |
スパーダ | おいおい、勝手に──…ったく、行っちまったぜ。自由な奴だな |
ジュディス | 通信機はどう?まだ反応はないの? |
ロイド | …ああ。何度かけても繋がらない。やっぱり何かあったんだ |
ロイド | パスカル、戻って来てくれ!ルーク達を助けに行こうぜ |
ジュディス | …聞こえてないみたいね。どんどん先に進んでいくもの。それにしても… |
| ズズズズ |
ジュディス | この音は何かしら? |
スパーダ | ……!おい、この扉…!だんだん閉じてねえか!? |
ロイド | くそっ、ルーク達も気になるけど、パスカルも放っておけないし…! |
スパーダ | ちっ…!こうなったらもう行くしかねえ! |
スパーダ | ルカ達なら、そう簡単にやられやしねェよ! |
ロイド | …そうだな。あいつらを信じて、俺達は中に入ろう! |
scene2 | 剣の管理者 |
スパーダ | よ、ようやく追いついたぜ…おいパスカル!一人で先に行くんじゃねえよ! |
パスカル | あはは~、ごめん。どうしても先が気になっちゃってさ。ほら、見てこの部屋! |
ロイド | こいつは…すげえ広いところに出たな |
パスカル | …!ね、あれ見て。部屋の奥に、また扉があるよ |
ジュディス | あら、本当。でも…それ以外は何にもないわね。試練というのに期待してたんだけれど |
スパーダ | いいんじゃねえか?何もせずに剣が手に入るなら、それが一番… |
??? | ──ようこそ。試練の館へ |
ロイド | …誰だ!?どこにいる!? |
ジュディス | 低い…男の声ね。気配は感じなかったはずだけれど何者かしら? |
??? | そう身構えなくていい。私はこの試練の館を司る者。ダモクレスの剣の…管理者だ |
剣の管理者 | 君達がこの部屋に来た事で、私は目覚めた。今は、館の最奥部にいる |
スパーダ | おーおー、勿体ぶってやがる。姿くらい見せるのが礼儀ってもんじゃねェの? |
剣の管理者 | 無礼は許してほしい。私にも事情があってね。今は、とある装置を使って話している |
ロイド | 事情?いや、それよりこの声、どっかで聞いたような… |
ジュディス | 少なくとも、これはカタグラフィの音声ではないわね。私達と会話出来ているもの |
パスカル | このおじさんが島の住民なら…それって大発見じゃない!?ね、聞きたい事がたくさんあるんだ! |
パスカル | 例えば、今こうしてしゃべってる仕組みとか!詳しく教えて~! |
剣の管理者 | かつてこの島には、数多くの種族が暮らし、手を取り合って生きていてね |
剣の管理者 | 互いの技術を共有し、磨き合い…島の文明を発展させたんだ。その内の一つだ、とだけ言っておく |
剣の管理者 | …さて、本題に入ろう。私は剣の管理者として、これからお前達に試練を課す |
スパーダ | って事はよォ、お前に認められたらダモクレスの剣が手に入るのか? |
剣の管理者 | そうだ。ダモクレスの剣を扱う資格があるか、私がこの目で確かめる |
ロイド | …… |
パスカル | どしたの、ロイド?せっかく剣が手に入りそうなのに |
ロイド | ん?ああ。そりゃ、勿論嬉しいけど… |
ロイド | やっぱりこの声、どっかで聞いた事あるような気がするんだよ |
剣の管理者 | …まずは、剣を扱うだけの力があるか、確かめさせてもらうよ |
| |
剣の管理者 | では、早速始めよう。現れろ、番人よ!! |
| |
| ゴゴゴゴゴ…!! |
ロイド | な、何だ!? |
ジュディス | …見て!部屋の中心に何かが召喚されたみたい。あれを倒せという事かしら |
剣の管理者 | 言っておくが、手強いぞ |
| ゴオオオオッ!! |
スパーダ | ハッ、試練って言うから何をするかと思ったけどよ、これならわかりやすくていいぜ! |
パスカル | こういう敵なら、今までも戦ってきたもんね!サクッと倒しちゃおう! |
ロイド | ああ、行くぜ、みんな! |
scene3 | 剣の管理者 |
パスカル | 思ったより頑丈だね~。まだ倒れないよ~! |
ジュディス | あら、動きは鈍ってきたようだけれど |
| ゴゴ… |
ジュディス | 今ならいけそうね…ふっ…! |
パスカル | わっ!ジュディスが飛んだ!? |
ロイド | す、すげえ!あんなに高く…! |
ジュディス | ここね…神月烈破! |
| ゴッ…!ゴオオオオッ!! |
ジュディス | あら…まだ動けるなんて、本当に頑丈ね。でも… |
| ゴッ…ゴゴ…!? |
ジュディス | 今のは効いたでしょう?しばらくはまともに動けないはず |
ロイド | よし、俺達も続くぞ!合わせてくれ、スパーダ! |
スパーダ | 誰に言ってんだよ。お前こそ、遅れんじゃねえぞ! |
ロイド・スパーダ | 虎牙連斬!! |
| |
| ゴッ…ゴ、ゴゴ…ゴ…… |
| |
ロイド | どうだ!これが二刀流の力だぜ! |
パスカル | あいつ、動かなくなった!これって、あたし達の勝ち? |
剣の管理者 | …ああ。十分な力を見せてもらった。第一の試練は合格だ |
スパーダ | あ?ンだよ、第一のって…! |
| ズ…ズズズズズ…! |
| |
ジュディス | 奥の扉が開いたわ。試練を突破すると次の部屋に進めるみたい |
剣の管理者 | ああ。そして、次の部屋で第二の試練を突破すれば、剣を手にする事が出来る |
パスカル | よ~し、どんどん行こう! |
ロイド | ああ!絶対剣を手に入れてやるぜ! |
剣の管理者 | 威勢がいいな。だが、次の試練に挑めるのは一人だけだ |
剣の管理者 | そうだな…お前がいい |
| |
| …ゴ |
| |
ジュディス | 番人が…!まだ動けたの!? |
スパーダ | ロイド!後ろだ! |
| ゴオオオオッ!! |
ロイド | なっ…しまった!!…うわああっ!? |
パスカル | ちょっ…まずいって!扉の中に吹っ飛ばされちゃったよ! |
スパーダ | 問答無用かよ!追うぞ! |
剣の管理者 | 試練に挑むのは一人だけ、と言ったはずだ |
| ズ…ズズズズズ…! |
| |
ジュディス | 扉が閉まった…。それに… |
| ゴオオオオッ!! |
スパーダ | 番人とやらも完全復活してやがる!どうしても行かせねェってか? |
剣の管理者 | ああ。第二の試練が終わるまで扉は開かないし、番人は何度でも復活する |
スパーダ | ロイド次第って事かよ。やってくれるぜ…! |
ロイド | …みんな、聞こえるか! |
パスカル | ロイド!待ってて、今行くよ! |
| ゴオオオオッ!! |
パスカル | うわあっ!? |
ジュディス | 気を付けて。今の動き…扉に近い人を狙って攻撃しているんだわ |
ロイド | みんな!くそっ…この扉、びくともしねえ! |
ロイド | こうなったら…少しでも早く試練を終わらせるしかないか…! |
ジュディス | …この状況じゃ、試練は彼に任せるしかないわね |
スパーダ | ちっ…まあ、一番剣をほしがってたのはロイドだしな |
パスカル | 一人だけって言うんなら、あたし達もロイドを選んでたもんね |
パスカル | そんじゃ、行ってきてロイド!あたし達は心配しないでいいよ! |
ロイド | ああ。待っててくれ!ダモクレスの剣は絶対手に入れる! |
ロイド | …それまで頼むぜ、みんな! |
scene1 | 託される想い |
ロイド | どけえ!はあっ! |
| グルル…! |
| |
ロイド | 今のが最後の一匹か?いきなり襲いかかってくるからびっくりしたぜ |
ロイド | これが試練…ってわけじゃないよな。番人みたいに強くはなかったし |
ロイド | ん…?この先、真っ暗だ… |
| |
ロイド | 何も見えないけど…どうなってんだ?第二の試練って、ここでやるのか…? |
ロイド | おい、さっきみたいに聞いてんだろ!試練ってのは、いつ始まるんだ? |
ロイド | …… |
ロイド | お、おい!早くしてくれよ!こうしてる間にも、パスカル達が戦ってんだ…! |
剣の管理者 | 慌てるな。試練なら…既に始まっている |
剣の管理者 | 周りをよく見てみろ |
ロイド | 周りって…この暗さじゃよく… |
| |
ロイド | うわっ!! |
| |
ロイド | 何だこれ…部屋中に、剣が突き刺さってる |
剣の管理者 | そう。これこそが第二の試練だ |
剣の管理者 | ただ強いだけでは駄目だ。常に正しいものを見極める目を持ってこそ、正しく剣を扱える |
剣の管理者 | この無数の剣の中から、一振りの正しい剣を手にすれば…お前の力は格段に上がるはず |
剣の管理者 | お前はそれを望んでいるか? |
ロイド | そりゃ…剣はほしいさ。そのためにここまで来たんだ |
ロイド | カタグラフィですげえ強そうな剣士も見たし… |
ロイド | ダモクレスの剣があれば、あれくらい強くなれるかもしれない |
剣の管理者 | …では、お前の思う、正しい一振りを選べ。お前がもっとも強くなれる剣を! |
ロイド | 待てよ。正しいって言うけど…この中の一本がダモクレスの剣って事か? |
剣の管理者 | …それは答えられない |
ロイド | 答えられないって、何だよそれ!…仕方ねえ。強そうな剣を探してみるか |
ロイド | この剣は…装飾が派手すぎる。使う時、邪魔になっちまう |
ロイド | こっちは…握りは悪くないし切れ味はよさそうだけど、こっちの剣も同じようなもんだし… |
ロイド | なあ、正しい剣、じゃわからねえよ。もっと細かい特徴とかないのか? |
剣の管理者 | …… |
ロイド | …答えてはくれないか。何本かに絞ったけど、本当にこれでいいのか…? |
ロイド | くそっ…駄目だ!やっぱり、どれが正しい剣かなんてわかんねえよ! |
ロイド | パスカル達も心配だし、早く決めなきゃならないのに…!…ん? |
| プルルル… |
| ピッ |
アリーシャ | こちらアリーシャ。聞こえているか? |
ロイド | …アリーシャ!?そうか、通信機の事、すっかり忘れてたぜ! |
アリーシャ | 朗報だ、ロイド!亜空間の出口を発見したぞ。だから、安心して探索を続けてくれ |
アリーシャ | そちらはどうだろう?剣は見つかっただろうか? |
ロイド | 出口が見つかったのはよかったけど…実は今、その剣の事で行き詰まっててさ |
ロイド | 正直、どうすればいいのかわかんねえんだ…。頼む、力を貸してくれ! |
アリーシャ | そうか、事情はわかった |
アリーシャ | 心苦しいが…その場にいない私達には適切な助言は出来ないな… |
ロイド | だよな… |
アリーシャ | だが、ロイド。君ならきっと…正しい選択が出来ると信じている |
アリーシャ | だからこそ、私達は君が剣を持って帰ってくるのを待つよ |
ロイド | 俺を信じて待つ、か…。へへ…ありがとう、アリーシャ!ガラにもなく弱気になっちまったぜ |
アリーシャ | 少しでもロイドの力になれたのならよかったよ |
アリーシャ | 今、ラピードが君の匂いを追ってくれている |
アリーシャ | みんなと合流して待っているから、頑張ってくれ |
| ツー、ツー、ツー |
ロイド | 信じてくれたみんなのためにも正しい剣を探し当てないとな… |
ロイド | …そう言えば、最初にルーク達が見せてくれたカタグラフィで… |
ロイド | 剣は使い手に合わせて形を変える、みたいな事を言ってたよな…。じゃあ、形が変わる剣があれば…! |
ロイド | …いや、違うか。全部手に取ったけど、形なんて変わらなかったもんな |
ロイド | それじゃあ、持った瞬間力がみなぎるとか、強くなった!ってわかるような剣… |
ロイド | これも違うよな。うーん… |
ロイド | 剣に、強さ、か…たった一本の剣で、俺がそこまで変わるのか…? |
| プルルル… |
ロイド | …っと、また通信か |
| ピッ |
ロイド | 誰だ? |
ルーク | おい!試練は終わったのかよ?剣はどうなった!? |
ロイド | うわっ、ルークか!脅かすなよ…! |
ロイド | まだ試練の途中だ。それより、さっきは何があったんだ?突然通信が切れたけど… |
ルーク | あ?あれか。話してる途中に、魔物に襲われたんだよ |
ロイド | 襲われたって…大丈夫だったのか? |
ルーク | 大丈夫に決まってんだろ。魔物なんざ返り討ちだ |
ルーク | 他の奴らも全員無事だし…あー、そうそう |
ルーク | 他の奴らと言えば…ルカだよ!あいつ、結構やるな |
ロイド | …ん?ルカがどうしたんだ? |
ルーク | 魔物に気付いて返り討ちにしたのはルカなんだよ…っと、おい!わーったって、お前が話せ! |
ルカ | …ロイド、大丈夫!?試練はどうなってるの? |
ロイド | ああ、俺は大丈夫だ。それより、ルカ。魔物を返り討ちにしたんだって? |
ロイド | すげえな!詳しく聞かせてくれよ! |
ルカ | あはは、えーと……ロイドのお蔭だよ |
ロイド | えっ?俺が何かしたか? |
ルカ | ロイドが僕達を助けてくれたのを今まで見てきたから…身体が勝手に動いたんだと思う |
ルカ | …僕、これからもみんなの役に立てるかな? |
ルカ | 急に強くはなれないけど、今、僕に出来る事から始めていけば…みんなみたいに強くなれそうなんだ |
ロイド | そうさ!少しずつでもそうやって… |
| |
ロイド | 待てよ…そういう事か! |
ルカ | …ロイド?どうしたの? |
ロイド | へへ…何でもねえよ!ありがとな、ルカ! |
ルカ | う、うん!よくわからないけど…?地図があったから、今から試練の館まで行くよ!頑張って! |
| ツー、ツー、ツー |
ロイド | …悩みすぎて、当然の事を忘れちまってたぜ |
ロイド | …おい、見てんだろ!試練は終わりだ! |
剣の管理者 | 答えは出たのか?どの剣がお前を強くする? |
ロイド | 答えは決まったぜ。…ここにあるどの剣を使っても、強さは得られない |
剣の管理者 | …本当に、その答えでいいのか? |
ロイド | 仲間が言ってたんだ。自分に出来る事からやっていけば少しずつ強くなれるって |
ロイド | 俺もそうだと思う。だから…正しい剣を手に入れれば強くなれる…なんて事はなかったんだ |
ロイド | だから、剣は選ばない。それが俺の答えだ |
剣の管理者 | そうか…。ならば、試練は終わりだ |
剣の管理者 | 今から新たな扉を開く。その先へと進むがいい |
scene2 | 託される想い |
ロイド | うおっ!?何だ、この部屋…? |
剣の管理者 | 驚くのも無理はない。中央にある装置がわかるか?…それが私だ |
ロイド | 私って…あれは機械だろ?どういう事だよ |
剣の管理者 | わかった、全てを見せよう… |
| |
ロイド | うわっ!何だ、映像…か? |
| |
研究者 | 最後の工程に入ったぞ。だが、本当にいいのか?精神の転送が成功するかどうかは… |
二刀流の剣士 | 覚悟なら出来ている。剣の行方は、私が見届けなくては…始めてくれ! |
| ポチッ… |
二刀流の剣士 | …ぐ、う…! |
| ヴーーーン…!! |
研究者 | どうなった!?おい! |
二刀流の剣士 | …… |
剣の管理者 | …成功だ。私の精神は、確かにこの装置へと転送されたようだ |
研究者 | そうか!君の精神はこれで救われたんだな…! |
剣の管理者 | …ありがとう。これで、私の身体はもう── |
| ドサッ |
ロイド | …何だよ、これ。あの倒れた男は…そうだ!カタグラフィで見た奴だ |
ロイド | 痩せてたけど、間違いない…あんた、二刀流の剣士だったのか! |
剣の管理者 | …過去の私を知っていたのか。妙な偶然もあるんだな |
剣の管理者 | かつて私は肉体を捨てたのだ。島の技術を使い、この装置に精神を移して |
剣の管理者 | 全ては、ダモクレスの剣を託せる相手を待つために… |
ロイド | 本当かよ…!俺、すげーと思ったんだぜ!あんたが戦ってる姿を見てさ! |
剣の管理者 | …そうか。だがお前は試練で剣を選ばなかっただろう。私からすれば、想定外の答えだ |
剣の管理者 | だからこそ、興味がわいた。その答えを導いたお前にな |
剣の管理者 | 何故剣を選ばなかったのだ?選ばなければ、ダモクレスの剣は手に入らないんだぞ |
ロイド | 構わねえよ。あんたが強かったのだって、強い剣があったからじゃないだろ? |
剣の管理者 | …… |
ロイド | 俺だって、武器に頼って戦ってきたわけじゃない。少しずつ、腕を磨いてきたんだ |
ロイド | 俺の仲間も、すごい武器なんかなくったって強くなれたしな |
剣の管理者 | なるほどな…。答えは変わらないか |
ロイド | ああ。だけど…ダモクレスの剣はほしい |
剣の管理者 | …何? |
ロイド | 俺が剣を持って帰るのを、みんなが待ってるからな |
剣の管理者 | …… |
ロイド | …あれ。ちょっと虫がよすぎたか? |
剣の管理者 | ふっ…わかった。ダモクレスの剣はお前に託そう |
ロイド | 本当か!? |
剣の管理者 | お前が…いや、お前達が、正しく力を使ってくれるよう、祈っているぞ |
剣の管理者 | 仲間のところまで転移させてやる。そこから動くなよ |
ロイド | えっ…転移って… |
ロイド | うわああ──!? |
| |
ロイド | ──ん?あれ、あいつは… |
アリーシャ | …!ロイド!?いつの間に現れたんだ…? |
ルカ | び、びっくりした…! |
ロイド | アリーシャに、ルカ?どうして一緒に…? |
アイゼン | お前と通信をした後、合流したんだ |
ユーリ | それで、ラピードにお前の匂いを追ってもらったんだよ |
ロイド | じゃあ、パスカル達は!?あいつら、ずっと戦ってて…! |
パスカル | こっちこっち!全員無事だよ~ |
ジュディス | 戦っていたら番人の動きが急に止まったの。外に出てみたら、あなたが現れて… |
スパーダ | 随分苦労したみてえだな。こっちもへとへとだぜ |
ロイド | はは…!悪い、時間かかっちまった |
ロイド | …ん?何だ?何か、硬い感触が… |
パスカル | さっきから踏んづけてる、それの事?もしかして、それがダモクレスの剣!? |
ロイド | うおっ!?いつの間にこんなのあったんだ? |
パスカル | 早く早く!上に乗ってないで早く剣を見せて~! |
ロイド | おっと、ごめん!これでようやくダモクレスの剣を…この目で…っと! |
ロイド | …あれ? |
| |
ルーク | なっ…!?何だよ、それ!? |
ユーリ | こりゃ、どっからどう見ても… |
アスベル | …ハリセンだな |
ルーク | 何だあ、これ!?ロイド、お前まさか試練の奴に騙されちまったんじゃ… |
エレノア | 何故ハリセンなのでしょう?興味はわきますが… |
ラピード | ワフ |
ロイド | ふーん…。これをあいつがくれたのか… |
アリーシャ | ロイド…大変だったと思うが、ハリセンで気を落とさないでくれ |
ロイド | いや?俺はこれ、悪くないと思うぜ? |
ロイド | …なるほどなあ。確かに、武器に頼らなくても強くなれそうだぜ…ははっ |
ロイド | さ、みんな帰ろうぜ! |
ルーク | どうしたんだよ、急に…?おいルカ、お前も納得出来ねえだろ!? |
ルカ | うーん…そうは言ってもハリセンに罪はないし… |
パスカル | ハリセンかあ。あれだけ大がかりな事してまで守ってたのにな~ |
パスカル | 本当に、あれがダモクレスの剣なのかな?…アイゼンはどう思う? |
アイゼン | 剣というには奇怪だな。貴重な遺物には違いないが |
ルカ | 二人共、どうしたの?みんな出口へ向かっていったよ |
パスカル | …ま、いっか。ごめん、今行くよ~ |
scene1 | 待つ人々の元へ |
ロイド | ふう…。やっと着いたな! |
ルカ | そんなに日は経ってないはずなのに、何だかすごく疲れたよ… |
アスベル | 本部に帰ってきたのは久しぶりな気がするな |
エレノア | まずは報告ですね。亜空間を出た時に、通信機で無事は伝えておきましたが… |
スパーダ | 早く休みてェところだが、顔出しに行くか |
ルーク | ジェイドのとこか。まあ、報告すんのはいいとして… |
ロイド | な、何だよ。怖い目で見るなよ、ルーク |
ルーク | 理由なんか一つしかねえっつーの!そのハリセンだよ!ハリセン! |
ルカ | うーん…。四大国連合調査隊は無事だったし、マナリスも手に入れたんだから… |
ルカ | 怒られる事はないんじゃないかな?お土産がハリセンだったとしても… |
ルーク | どうだかな。あいつの事だから、うるせー小言が飛んでくるかもしれねえぞ |
| |
ジェイド | ──ご苦労様です。ユーリ達と合流し砂漠地帯へ向かい、亜空間から帰還したという事ですか |
ジェイド | 四大国連合調査隊、そしてマナリスの無事も確認しました |
ジェイド | そして…これがダモクレスの剣ですか?いやあ、実に見事なハリセンですねえ |
ジェイド | これさえあれば、うるさいお偉方も黙らせる事が出来ます。物理的にね |
ジェイド | 本当に大発見です!あなた達が騒がせた本部の人員も、きっと喜ぶでしょう |
ルーク | …ほらな!お前ら、言った通りだろ!? |
エレノア | ま、待ってください。確かに見た目はふざけていますが、貴重な島の遺物です |
パスカル | そうだね~。試練を終えたロイドが持ち帰ってきたのは確かだし |
ジェイド | ふむ。島の脅威を払うという剣にはとても見えませんが… |
ジェイド | 遺物である事には変わりありませんし念のため調査しましょう |
ジェイド | 任務の詳しい報告は四大国連合調査隊と、アリーシャから聞かせてもらいましょう |
アリーシャ | はい。みんな、後は私に任せてくれ |
ユーリ | んじゃ、オレ達は戻って休んでていいか? |
ラピード | ワン! |
ジェイド | いえ、その前にマナリスとそのハリ…ダモクレスの剣を、本部の保管庫に持って行ってください |
パスカル | 了解~。保管庫なら場所もわかるし、あたし一人で行こうか? |
ジェイド | いえ、遺物は遺物ですからね。全員で安全に送り届けてください |
ジェイド | 話は通しておきますから、誰かが出迎えてくれるはずですよ |
ジェイド | その遺物を届ければ、あなた方の任務は完了です。では、どうぞ外へ |
ジェイド | …山岳地帯に現れたハスタと名乗る男の件もありますし、本部とは言え警戒はすべきでしょうね |
| |
ロイド | せっかく四大国連合調査隊が戻ったのに、ジェイドの奴結構あっさりしてたな |
ジュディス | 感情が顔に出る人には見えないしあれで案外ホッとしているんじゃないかしら |
ユーリ | どうだかね…ま、オレ達は言われた通り、任務を終わらせようぜ |
パスカル | うん、保管庫はこっちだよ~。遺物があるから、研究のためによく来てたんだ |
アイゼン | …… |
ルカ | アイゼン、どうかしたの? |
アイゼン | 何か、さっきから…嫌な予感がする |
パスカル | 嫌な予感って…死神の呪い? |
アイゼン | いや、違うな。この背を這うような感覚…視線、か? |
??? | その髪色に、背格好…!やはり間違いない!ようやく見つけたぞ!! |
ルカ | ひゃあっ!?だ、誰…!? |
リフィル | 私はリフィル・セイジ!縁あって今は調査隊で研究者をしている |
リフィル | このアヴァロン島の至宝とも言えるサフィア…そしてマナリスの謎を解き明かすために! |
ロイド | リフィル先生!先生もこの島に来てたのか? |
パスカル | あれ、ロイドってリフィルとも知り合いなんだね~ |
ロイド | ああ、先生は俺の… |
リフィル | ロイドか!いや、今はそんな事よりも! |
ロイド | そ、そんな事って…! |
リフィル | アイゼン!マナリスを使った天族とは、お前だな! |
アイゼン | ああ、そうだが…研究への協力なら、後にしてくれ |
リフィル | 今この場においてマナリス研究以上に重要な用事があると言うのか!?どれだけ待ったと思っている!? |
アイゼン | 確かに協力するとは言ったが、俺の用事を済ませてからだ |
リフィル | いや、もう待てない。今すぐ、全面的に協力してもらおう!さあ来い!早く来い! |
キール | あ!リフィル、こんなところに…!急に実験を放り出すなよ! |
パスカル | あ、キールだ。この間、一緒に実験した以来だね~ |
キール | パスカルもいたのか。お前と一緒にいるって事は… |
キール | お前達がマナリスを探し出した調査隊員か。知ってるやつもいるな |
キール | ぼくはキール・ツァイベル。研究者の一人だ |
ロイド | おう、久しぶりだな!なあ、キール、リフィル先生だけど… |
アイゼン | お前、こいつの同僚か?なら、もう少し落ち着くように言い聞かせろ。手に負えん |
リフィル | キール!この男がアイゼンだ! |
キール | アイゼンだって!?そうか、だからリフィルは興奮しているのか |
キール | リフィル!ぼくは他の研究者に知らせてくる。実験の準備をしないと… |
リフィル | さあ、来てもらうぞアイゼン! |
リフィル | マナリスの謎を解明するため、ひいては遺跡の謎を解明するために! |
アイゼン | …やれやれ。お前ら、先に行ってろ。どうやら長くなりそうだ |
ルカ | …すごい勢いで連れ去られちゃったね。アイゼンも諦めたみたいだったし |
ユーリ | そりゃ、あのぎらついた目を見ればな |
ジュディス | 魔物も逃げ出しそうなくらい迫力があったものね。さ、行きましょ |
パスカル | いいな~。任務が終わったら、あたしも見に行こうっと |
ロイド | あの状態の先生には逆らえないもんな。アイゼン…無事でいてくれよ |
| |
パスカル | ここが保管庫だよ~。島の遺物は大体ここに集められてるんだ |
ルカ | す、すみませーん!僕達、ジェイドさんに言われて遺物を持ってきたんですけど… |
スレイ | ああ、今行くよ!ごめん、あっちで作業してて… |
ミクリオ | 新たに見つかった遺物は二つだと聞いているが…ん? |
ユーリ | …!お前ら、確か…! |
ロイド | スレイ!ミクリオ! |
スレイ | ロイドに、ユーリ…それに、パスカルも!こんなところで会うなんて! |
ミクリオ | 驚いたな…。確かに君達ならば調査隊にいてもおかしくないか |
ユーリ | お前らこそ、どうしてここに? |
スレイ | この島の遺跡に興味があってさ。研究者として調査隊に志願したんだ |
ミクリオ | 君達が持っているのはマナリスと…何だ、それは…ハリセン? |
ジュディス | ダモクレスの剣、って代物らしいわ。島の脅威を払う強力な剣なんですって |
ラピード | ワン! |
スレイ | これが? |
ミクリオ | …使えば笑いは取れそうだけどね。でも、見かけで判断するのは早計じゃないか? |
スレイ | そうだな。みんな、遺物は確かに受け取ったよ。後はオレ達に任せて |
ミクリオ | 僕達、遺跡にもよく行くんだ。どこかで会ったら、よろしく頼むよ |
ルカ | うん、よろしく! |
ロイド | それじゃあ、またな! |
scene2 | 待つ人々の元へ |
ルカ | 一応、ジェイドさんのところに戻る?そろそろ報告も終わってるかもしれないし |
パスカル | だったら、アイゼンは行けないね~。リフィルもキールも放す気なさそうだもん |
ロイド | まあな…っと、見ろよ。本部から出てくるの、ルーク達だ |
ルーク | おう、お前ら。マナリスはしっかり届けたんだろうな? |
エレノア | 剣の事には触れないんですね… |
ジュディス | ええ、両方届けたわ。彼への報告は済んだの? |
スパーダ | ああ。ジェイドの奴、報告を聞いたらさっさと行っちまったよ。いつもの調子でな |
アリーシャ | ジェイド殿もお忙しいのだろう |
ルーク | あんの野郎、せっかく人がマナリスをどうやって手に入れたか一から説明しようとしたのに…! |
ルーク | …そう言えば、お前らにも話してなかったよな!?見せてやりたかったぜ、俺の… |
アルヴィン | よーうお前ら!どうやら元気みたいだな? |
ルーク | …だーっ!何だってんだ、どいつもこいつも俺の話の邪魔しやがって! |
ロゼ | あ、噂の四大国連合調査隊?あたしはロゼ。それで、こっちがアルヴィン |
ロゼ | 調査隊と提携してる商人なんだ。よろしくね |
アリーシャ | 二人共、その節はありがとう。教えてもらった情報のお蔭でルーク達を見つける事が出来た |
エレノア | キャラバンですか…長旅で切らした物もありますし、商品を見せてもらってもいいですか? |
ロゼ | 勿論!お安くしとくよ! |
アスベル | 完全に話の主導権を握られたな、ルーク |
ルーク | うっせえ |
アルヴィン | そう拗ねるなって。俺達は、お前らの上司に言われて顔出したんだぜ? |
アリーシャ | 上司…?ジェイド殿か? |
アルヴィン | ああ。長い間砂漠をさまよって疲れただろうから、積荷の一部を分けてやれってさ |
ロイド | うおっ!何かくれるって事か!?ちょうど腹減ってたんだよな! |
ルーク | 何だよジェイドの奴、たまには気が利くじゃねえか! |
ロゼ | 確か…この箱だったっけ。はい、どうぞ! |
| |
| ガタッ…ガタガタッ…! |
ルーク | うおっ、動いた!?何だよ、おい!? |
アルヴィン | …あん?待てよ、動く物なんて俺達は運んでね── |
| |
ミュウ | ご主人様ーー!! |
ルーク | なっ…てめ、ブタザル!?何でこんなところにいんだよ! |
アリーシャ | あれは一体…?随分可愛らしい生き物だな |
エレノア | ミュウです。私達が隊を結成した時、別の仕事で別れたはずですが… |
ロイド | ルークの仲間だよ。まあ、ユーリにとってのラピード…みたいなもんか? |
ラピード | ワフン |
ユーリ | …一緒にするな、ってよ |
ルーク | ブタザル、自分の仕事はどうした! |
ミュウ | ちゃ、ちゃんとやってきたですの!山の岩は全部砕き終わったんですの! |
ミュウ | でも…戻ってきたらご主人様が行方不明ですの!ミュウは、ミュウは… |
ミュウ | 心配で仕方なかったんですの!とにかく近くの馬車に乗り込んで…ようやく会えたですのー! |
ロゼ | …じゃあ、ずっとうちの荷物に潜り込んでたって事?気付かなかったー! |
ルーク | だーっ、うっせえぞブタザル!服が汚れるから引っ付くんじゃねー! |
ミュウ | みゅうぅぅ、ご主人様、離したらまたどこかに行っちゃうですの… |
コレット | あ、いた…!何だかにぎやかだね、ロイド |
ロイド | コレット!どうしてここに? |
コレット | ジェイドさんに、みんなが帰ってきたって聞いたから、捜しにきたんだ |
コレット | ルーク達も、みんな元気みたいだね。よかったあ…ほっとしたよ |
ロイド | 何だよ、大げさだな。俺達がいなくなるわけないだろ? |
コレット | そだね。でも、みんなの顔を見るまでちょっと不安だったんだ |
ロイド | コレット…そうだよな。心配かけて、ごめん |
コレット | あ…だいじょぶだよ!それでも、みんななら無事に戻ってくるって信じてたから! |
ロイド | へへ…ああ、ちゃんと帰ってきたぜ!そうだ、今回はいつもよりいろんな事があったんだ! |
コレット | そっか…。えへへ、またたくさんお話を聞かせてほしいな |
コレット | …お帰り、ロイド! |
ロイド | ああ!ただいま、コレット! |
Name | Dialogue |
| サフィアへの期待 |
パスカル | ただいま~!実験に使えそうな植物の苗、貰って来たよ! |
リフィル | ありがとう、パスカル。それじゃあ実験を始めましょうか |
キール | アイゼン、準備はいいか? |
アイゼン | ああ。マナリスを使って、この苗を成長させればいいんだな? |
キール | そうだ。カタグラフィの中で、かつてこの島にいた天族が植物の苗を急成長させていた |
キール | 同じ事が出来るのか確かめたい。…始めてくれ |
アイゼン | …… |
| メキ…メキメキ… |
パスカル | …!すご~い、あっという間に苗が育っていくよ! |
リフィル | 植物の相対成長速度が格段に早まっているようね |
パスカル | アイゼンも、マナリスを使って植物を成長させられるんだ~ |
パスカル | もしかして…あたしにも出来たりするのかな? |
リフィル | 可能性はあるけれど…検証する事は出来ないわ |
リフィル | 天族以外の種族がマナリスを使用する事は、調査隊内で禁じられているのよ |
パスカル | あ、そっか~…。人間が使うと危ないんだっけ |
キール | 使用時の代償が計り知れないからな。…アイゼン、マナリスを使用した時に疲労感はあったか? |
アイゼン | 力を吸われる感覚はあるが…ルカの傷を治療した時に比べれば、大した事はないな |
パスカル | ふむふむ、なるほどね…。かなえる願いの大きさによって疲労度が変化してるんじゃないかな |
パスカル | どう思う、リフィル? |
リフィル | その可能性は高いわね。もう一つ、実験をしてみましょう |
リフィル | アイゼン、ここにある複数の苗を一気に成長させる事は出来るかしら? |
アイゼン | ああ。…いくぞ |
| メキメキメキメキィ… |
リフィル | どんどん苗が育っていく…驚くべき光景ね |
キール | ああ…信じられないな。本当に、これだけの力を持った物が存在するなんて |
アイゼン | …っ |
パスカル | さっきより体力の消耗が大きいみたいだね。大丈夫? |
アイゼン | ああ…、問題ない少し休めば回復する |
キール | やはり、苗を一気に成長させると身体的な負担が増すようだな |
リフィル | これで、マナリス使用時の疲労度は願いの大きさに比例する事がわかったわね |
アイゼン | …もう一つ、試したい事がある |
キール | 何だ? |
アイゼン | マナリスに、「呪いの解除」を願う |
リフィル | …危険じゃないかしら?ルカの怪我を治療した時は、今より体力の消耗が激しかったのでしょう? |
リフィル | 呪いの解除にどれだけの力が必要かはわからないけれど…。苗を育てるよりは危険度が高いわ |
アイゼン | 覚悟の上だ。危険かどうかは、試してみないとわからん |
アイゼン | それに…俺が天族である以上、命を落とす事はないだろう |
パスカル | 呪いが解けたかどうかは、どうやって確認するの? |
パスカル | 研究室の外に落とし穴でも掘ってみる? |
アイゼン | 必要ない。…これを使う |
リフィル | それは…カーラーン金貨か!? |
アイゼン | ほう、よく知っているな。古代遺跡から発掘されたものだ |
リフィル | すばらしい!遺跡に関する文献で存在を知ってはいたが、実物を見るのは初めてだ! |
アイゼン | マナリスに呪いの解除を願った後、これを投げる |
リフィル | 投げるだと…!?正気か?その金貨にどれだけの価値があると思って… |
アイゼン | これは俺の物だ。どう使おうと、俺の勝手だろう |
リフィル | く…。そ、それはそうだが… |
アイゼン | 死神の呪いの影響で、コインを投げる時は必ず裏側が出る |
アイゼン | つまり、表が出れば呪いが解除されたという事だ |
キール | 死神の呪いは、コインの裏表にまで作用するのか。たまたま表が出る可能性は…? |
アイゼン | ないな。千回振っても裏しか出ない悪運だ。そう簡単には覆らないだろう |
リフィル | …いいわ。あなたがそうしたいなら、私達に止める権利はなくてよ |
リフィル | ただし、危険だと判断したら、すぐに中断してちょうだい |
アイゼン | …わかった。マナリスを使うぞ |
アイゼン | …… |
パスカル | …何か起こってる感じはしないね |
キール | ああ、視覚的な変化はないな。アイゼン、大丈夫なのか? |
アイゼン | …あぁ、何ともない。これは… |
アイゼン | …… |
| キンッ── |
| パシッ |
アイゼン | …やはりな |
キール | 裏が出た、という事は…。呪いは解かれていないようだな |
アイゼン | …マナリスを使った時、力を吸われる感覚が全くしなかった |
パスカル | かなえられない願いには、そもそもマナリスの力が作用しないって事だね |
リフィル | マナリスにも、かなえられない願いがある…。新しい発見だわ |
キール | 願いの大きさと代償の関係性を、再定義する必要がありそうだな |
パスカル | 天族と人間で、代償に差がある理由も解明しないといけないしね~! |
リフィル | その辺りの解明は、これからの研究次第かしら |
リフィル | 急ぎたい気持ちはあるけれど…今日の実験は、ここまでにしましょう |
アイゼン | 何故、辞める?俺は続けてもかまわんぞ |
キール | いや、リフィルの言う通りだ。連続的なマナリスの使用は避けるべきだろう |
キール | いくら天族が最低限の代償でマナリスを使えるとは言っても… |
キール | 疲労は確実に、アイゼンの身体に蓄積されているはずだからな |
パスカル | そうだね~。任務の時にアイゼンがヘロヘロだと困るし… |
アイゼン | …いいだろう。力を残しておくに越した事はないからな |
アイゼン | マナリスでは死神の呪いが解けないとわかった以上、サフィアを手にする事が先決だ |
パスカル | マナリスでかなわない願いでも、サフィアなら、かなえられるかもしれないもんね~ |
リフィル | 確かに、その可能性はあるわね。エルピスの塔に厳重保存されているくらいだから、貴重な物でしょうし… |
リフィル | マナリスよりも大きな力を宿していると考えてもいいと思うわ |
キール | どんな願いでもかなえられる…馬鹿げた伝説だが、マナリスがある以上は完全に否定も出来ない |
キール | 代償はあるものの、マナリスにも願いをかなえる力が宿っているからな |
パスカル | サフィアとマナリスは同じ輝きを発してるから、関連性がありそうだしね |
パスカル | サフィアでアイゼンの呪いが解けるといいな~。ルカ達もそれを望んでるだろうしさ! |
アイゼン | マナリスが集まらない限り、エルピスの塔の扉は開かん。次の招集を待つしかないだろう |
パスカル | そうだねえ…砂漠地帯から帰ってきて何日か経ったし、あたしもそろそろ次の任務に出たいな~ |
リフィル | あなた達以外の調査隊員が、調査領域の拡大にあたっているはずだけれど… |
リフィル | 私達の方には、詳しい話は下りてきていないわ |
キール | 気になるなら、本部にいる他の調査隊員に聞いてみる事だな |
キール | 今は、マナリス探索に多くの人員が割かれてる。新しい情報が入っているかもしれない |
パスカル | ん~、それなら…今から会議室に行ってみようかな~ |
パスカル | あそこなら、上層部の誰かがいるかもしれないし…運が良ければ教えてくれるかも! |
アイゼン | 会議室にいるのがあの曲者だった場合、厄介だが…背に腹は代えられんな |
アイゼン | 俺も行く。実験をしないなら、ここにいても仕方がない |
リフィル | 何かわかった事があったら、私達にも知らせてちょうだい |
キール | ぼく達はここで研究を続ける。いつでも訪ねて来てくれ |
アイゼン | ああ、わかった。行くぞ、パスカル |
パスカル | がってんだー!そんじゃ、会議室目指して、しゅっぱーつ! |
scene1 | 伝わらない想い |
パスカル | いい天気だね~。こんな日は一日中、発明に没頭して過ごしたいな~ |
アイゼン | お前はいつでもそうだろう |
アイゼン | …今日は風が穏やかだ。波も静かだろう。船を出せば、いい航海が出来る |
パスカル | アイゼンは本当に海が好きなんだね |
アイゼン | 海が、俺とあいつらの生きる場所だからな |
パスカル | え~、今は陸にいるけど生きてるじゃん! |
アイゼン | そういう事を言ってるんじゃない |
アリーシャ | パスカル!それにアイゼンも |
パスカル | アリーシャ!奇遇だね~ |
エレノア | こんにちは。この間は、砂漠地帯でお世話になりました |
アイゼン | 別に、大した事じゃない。気にするな |
パスカル | そうそう!困った時はお互い様だしね! |
エレノア | ありがとうございます |
エレノア | ところで…二人はどこかに行く途中だったのですか? |
パスカル | うん、会議室にね。マナリスの新しい情報が入ってないかな~と思って |
エレノア | なるほど。残念ですが…そう言った話は聞けないと思います |
アイゼン | 何故、そう言い切れる |
アリーシャ | 私とエレノアは、さっきまで本部の会議に出ていたんだ |
アリーシャ | 上層部から、調査領域の拡大と新しいマナリスの探索に難航していると報告を受けた |
エレノア | 調査隊員を増員して未調査領域の調査にあたっているようですが…目ぼしい収穫はないそうです |
パスカル | そうなんだ…。なら、任務はもう少しお預けかな~ |
アリーシャ | 焦っても仕方がない。任務が入るまで、私達も出来る事をしよう |
アイゼン | お前達はこれからどこに行くつもりだ |
エレノア | 警備の応援です。エルピスの塔周辺の人手が足りないようなので、そちらに |
パスカル | 二人共、仕事熱心だね~ |
アイゼン | …… |
アイゼン | …俺も、お前達と行こう |
アリーシャ | 島の警備を手伝うというのか…? |
アイゼン | ああ。研究ばかりだと身体が鈍る。島内を自由に動くには、お前の監視が必要だろう |
アイゼン | そういう約束だからな。俺は、それに従うだけだ |
アリーシャ | 私達は構わないが、マナリスの研究協力はいいのか? |
アイゼン | 問題ない。実験は中断する事になった |
パスカル | 連続的にマナリスを使用するのは控えようって話になったんだよ |
エレノア | そうだったんですね。それなら、アイゼンも一緒に行きましょう |
エレノア | 警備に協力する人手は、多い方がいいでしょうから |
アリーシャ | そうだな。アイゼン、よろしく頼む |
アイゼン | ああ。やるからには、とことんやる |
エレノア | 気が合いますね!私も、やるからには全力でやりぬく方です |
アリーシャ | パスカルはどうするんだ? |
パスカル | ん~、研究室に戻ろうかな |
パスカル | マナリスの情報が得られないなら、会議室に行っても仕方ないし… |
パスカル | 今出来る事をやろうかなって。時間がある時にレーダーを改良しようと思ってたんだよね! |
アリーシャ | 改良…?何か気になる事でもあるのか? |
パスカル | そうそう。ちょっと付け足したい機能があってさ |
パスカル | 完成したら見せるよ! |
エレノア | 通信機を改良した手腕といい、パスカルは技術的な知識が豊富なんですね… |
エレノア | 素晴らしい才能です |
アイゼン | ……確かに、発明品は役に立つ。だが、こいつと話していると才能がある事すら忘れるがな |
アリーシャ | そんなところも、パスカルの良さだと私は思うよ |
アリーシャ | では、行こう。パスカル、また任務の時に会おう |
パスカル | うん、またね~! |
パスカル | よ~し、研究室に戻って、改良作業に取り掛かりますか |
scene2 | 伝わらない想い |
パスカル | ──そう言えば…あの部品の予備、あったかな~ |
パスカル | 通信機を改造した時に全部使っちゃったんだっけ…?どうだっけ…? |
パスカル | あれがないと、改良作業が進まないけど… |
パスカル | ん~ま、いっか |
??? | よくないでしょう |
| |
パスカル | ん? |
ヒューバート | 全く、あなたという人は…足りない物があるなら、調査隊の街に行って── |
パスカル | 弟くん!?わ~、久しぶり~! |
ヒューバート | …相変わらず、人の話を聞かない人ですね |
ヒューバート | それから、ぼくは弟くんじゃなくてヒューバートです。いつになったら覚えるんですか? |
パスカル | え~、アスベルの弟だから、弟くんでしょ?呼びやすいし、いいじゃん! |
ヒューバート | …… |
パスカル | というか、弟くんも島に来てたんだね~!知らなかったよ |
ヒューバート | あなたと同じ調査隊の一員として、警備の任務についています |
ヒューバート | 前回の任務では、兄がご迷惑をお掛けしたようで |
ヒューバート | その他にも、パスカルさん達の噂は聞いていますよ。活躍されているようですね |
パスカル | ん~それほどでも…あるかな~。弟くんは本部に用事でもあったの? |
ヒューバート | いいえ。ちょうど今は休憩時間で… |
ヒューバート | パスカルさんが研究室にいると聞いたので、向かおうとしていたところです |
パスカル | あたしのとこに?何で何で? |
ヒューバート | 何でって…。それは、その…久しぶりですし、会いた── |
パスカル | あ~、なるほどね!挨拶しに来てくれたんだ!?律儀だね~ |
ヒューバート | …… |
ヒューバート | …もういいですよ、それで |
ヒューバート | それより、さっき独り言で言っていた部品の事ですが |
パスカル | 買ってきてくれるの!? |
ヒューバート | 何故そうなるんですか。そのくらい、自分で買いに行ってください |
パスカル | む~、けちんぼめ~ |
ヒューバート | …ぼくは今から、任務で調査隊の街に向かうところなんです |
ヒューバート | だから、その…一緒に付いてきても構いませんよ |
パスカル | …何で? |
ヒューバート | だから、改良に必要な部品を買うためですよ! |
パスカル | あ、そっか~!じゃあ、一緒に行こうかな |
パスカル | 部品を売ってるのって、どこのお店だっけ… |
ヒューバート | …はぁ。仕方ありませんね。任務まで少し時間があるので、付き合います |
ヒューバート | …あなた一人だと不安ですから |
パスカル | さっすが弟くん!頼りになる~ |
パスカル | そうと決まれば…張り切って行こう~! |
ヒューバート | ちょっ…いきなり走り出さないでください! |
scene1 | 強さの理由 |
ロイド | ん~、やっぱりここのマーボーカレーは最高だぜ! |
スパーダ | カレーひとつで大げさなヤツだな |
ルカ | ロイド、いつもそれ食べてるもんね |
ロイド | ああ!いくらでも食べられるんだよな |
スパーダ | ま、確かにここの料理は美味ぇけどよ |
ルーク | …この肉、ちょっと硬えな。もう少し焼いた方が柔らかくなんのに |
ルカ | え、大丈夫?お店の人に言って、もう一度火を通してもらう…? |
ミュウ | 待ってほしいですの。ボクがお役に立てるですの! |
ロイド | ミュウが…?どうするつもりなんだ? |
ミュウ | 火を吹くですの |
ルーク | おわっ!?熱っ!? |
ルーク | おい、ブタザル!俺ごと丸焼きにするつもりか!? |
ミュウ | みゅううぅぅぅ……。ごめんなさいですの~!わざとじゃないですの! |
ロイド | あはは、ルーク達がいると賑やかでいいな |
スパーダ | うるせェの間違いだろ |
ルカ | は、はは…。でも、こんな風にみんなでご飯を食べるの、初めてだよね |
スパーダ | まあな。今回はたまたま待機の時期が被っただけだしよ |
ロイド | 時間が合うときはまた一緒に食べに来ようぜ!な、ルーク! |
ルーク | ま、まあ…お前らがどうしてもって言うんなら、来てやらねえ事もないけど… |
ミュウ | みゅう~♪ |
ルカ | ミュウ、なんだか機嫌がいいみたいだね? |
ミュウ | はいですの!ご主人様が嬉しそうだと、ミュウも幸せですの! |
スパーダ | へえ?ルークはロイドの誘いが嬉しかったってわけか |
ルーク | な、ちが…! |
ロイド | おー、俺もルークが来てくれたら嬉しいぜ! |
ルーク | ぐ…! |
ルーク | こんのブタザル!お前、何勝手な事言ってんだよ! |
ミュウ | みゅぅ~~~!?ご主人様、何で怒ってるんですの? |
??? | あの、すみません。まだ席は空いてますか? |
店員 | ああ、相席でいいなら、そっちの席が空いてるよ |
ロイド | ん…?あれって…! |
ルーク | クレスじゃねーか! |
クレス | ルーク!?それに、ロイドも! |
ミュウ | ミュウもいるですの! |
クレス | ミュウも、久しぶりだね |
ミュウ | はいですの! |
ルカ | ロイド達の知り合い? |
ロイド | ああ。クレスとは、光の神殿で出会ったんだ |
ロイド | 一緒に困難を乗り越えた大切な仲間だぜ! |
ロイド | クレス、こいつらはルカとスパーダだ |
クレス | 僕はクレス・アルベイン。よろしく |
スパーダ | ああ、よろしくな |
ルカ | よろしく、クレスさん |
クレス | クレスでいいよ。…相席させてもらってもいいかな? |
ロイド | 当たり前だろ!一緒に飯食おうぜ! |
クレス | ありがとう |
ルーク | クレスは、いつこの島に来たんだ? |
クレス | 少し前からだよ |
クレス | アヴァロン島は四大国が協力して調査を進める場所だって聞いてね。興味を惹かれたんだ |
クレス | 今は街の建設活動を手伝ってて、作業がひと段落したから食事をとりに来たんだよ |
スパーダ | へえ、建設の手伝いねえ。お前、そういうのに慣れてんのか? |
クレス | そうだね。ずっとトーティス村の復興作業を手伝っていたから |
ロイド | そういえば、トーティス村はどうなったんだ? |
クレス | 復興が終わって、普通の生活が送れるようになったよ。今度、ぜひ遊びに来てほしいな |
ロイド | ああ!必ず行くぜ |
スパーダ | …なあ、さっきロイドはクレスと光の神殿で出会ったって言ってたよな? |
スパーダ | じゃあ、ミラとも知り合いなんじゃねーの? |
クレス | …!ミラの事を知っているんだね |
スパーダ | ああ。ミラが光の神殿に向かう直前まで、一緒にいたからよ |
ルカ | 光の神殿って… |
ルカ | 前にスパーダが話してくれた、「選ばれし者」だけが行けるっていう神殿だよね? |
ルカ | ロイドもそこへ行ったの…? |
ルーク | 俺も行ったぜ?後は…ユーリとか、ソフィもいたな |
クレス | そうだね。懐かしいな…みんな、元気にしているといいけど |
ロイド | ユーリなら、この島にいるぜ!その内、きっと会えるさ |
クレス | …!そうか、ユーリもここにいるんだね。早く会いたいよ |
ルーク | 光の神殿か…あん時は冷や冷やさせられたよな。変な仕掛けがいっぱいあってよ |
ロイド | ああ。最初はみんなと連携がとれなくて、危ない目にも遭ったしな |
クレス | そう言えば、あの時も── |
| |
ルカ | …… |
スパーダ | どうしたんだ、ルカ?さっきから固まってっけどよ |
ルカ | うん…僕はずっと、ロイドが特別に強い人だと思ってたけど… |
ルカ | 今の話を聞いて、ロイドの強さにも長い歴史があるんじゃないかって思ったんだ |
ルカ | いろんな戦いを経験して、今の強いロイドになったんじゃないかなって… |
スパーダ | はッ…そりゃそうさ。最初から強い人間なんていねぇよ |
スパーダ | あいつはあいつなりに、乗り越えてきたもんがあるんじゃねえの? |
ルカ | そうだね。ロイドがルークやユーリから信頼を寄せられてるのも… |
ルカ | ずっと一緒に戦って来たからなのかな? |
ルカ | …僕が、スパーダを信頼してるみたいにさ |
スパーダ | …さあな。そんなの、本人達に聞いてみなきゃわかんねーだろ |
ルカ | …うん。でも…もし、ロイド達が冒険を経て強くなる事が出来たんだとしたら… |
ルカ | 僕も…この島で変われるかな?ずっと憧れてたアスラみたいに…勇敢になりたいんだ |
スパーダ | …… |
スパーダ | そう思ったんなら、強くなれよ、ルカ。口だけで終わったら、格好悪ぃからな |
ルカ | うん! |
| |
ルカ | ねえ、ロイド!今の話、詳しく聞かせてよ |
ロイド | ああ、いいぜ! |
スパーダ | …おめェならなれるさ。元々、弱い人間なんかじゃねぇんだからよ |
クレス | ──ごちそうさま。美味しかったね |
ロイド | おう、やっぱりみんなで食べる飯は美味えよな! |
クレス | そうだね。…少し前までは、違う国の人同士で食事を共にする事はあまりなかった |
クレス | アヴァロン島で別の国に住む人達が協力して街を作る姿を見て、平和を実感したよ |
クレス | いつまでも、この平和が続いてくれるといいな |
ルーク | …まあ、確かにな |
スパーダ | 戦争で魔導兵器が使われンのも、そのせいで村や街に被害が出るのも、もう見たくねェしな |
ロイド | ああ。俺達も、クレスと同じ気持ちだ |
ルカ | みんなが望んでる事だと思うよ。島での出来事が、平和に繋がっていくといいね |
ルーク | そういう事なら俺とスパーダに任せとけって! |
ルーク | 四大国連合調査隊は、平和への希望だからな!ガンガン活躍して、目立ってやるよ! |
スパーダ | …ま、確かにいつまでもルカ達にいいとこ持ってかれたままでいるわけにもいかねえしな |
スパーダ | 手加減はしねえぜ。首洗って待っとけよ、ヒャーハッハッハ! |
ロイド | 望むところだ!俺達も負ける気はないよな、ルカ! |
ルカ | う、うん…!アイゼンの呪いを解くためにも、マナリス探しを頑張らなきゃ |
クレス | 頼もしいね。調査隊の…君達の活躍を期待してるよ |
ロイド | …そうだ!クレス、この後時間ないか? |
ロイド | せっかく会えたんだし、手合わせでもしようぜ! |
クレス | いいね。建設の再開まで、まだ時間もあるし |
ルーク | …!手合わせなら、俺も一緒に行くぜ! |
ミュウ | ミュウもお供するですの! |
ルカ | あ、あの…僕も一緒に行っていいかな? |
ルカ | クレスと戦ってみたいんだ…! |
クレス | 勿論いいよ。僕もルカ達と手合わせがしたいからね |
スパーダ | おもしれぇ事になってきたじゃねーか! |
スパーダ | そうと決まれば、さっさと行こうぜ! |
ルカ | うん…! |
scene2 | 強さの理由 |
パスカル | 買い物、終了~!付き合ってくれてありがとね、弟くん! |
ヒューバート | これくらい、構いませんよ。…ほしい物は全て揃いましたか? |
パスカル | うん、ばっちり!これでレーダーの改良が出来るよ~ |
ヒューバート | それならよかったです |
??? | ──パスカル? |
| |
パスカル | ソフィ!? |
ヒューバート | 兄さん…! |
アスベル | ヒューバートじゃないか!二人で何してるんだ? |
ヒューバート | ぼくはパスカルさんの買い物に付き合っていたんです。兄さんは… |
パスカル | ソフィも島に来てたんだね!再会の記念にぎゅーってしちゃう! |
| ひょいっ |
| びたーん! |
パスカル | うう…地面に顔ぶつけた…相変わらずガードが固いよ~ |
ソフィ | …さわるの、だめ |
パスカル | へいへーい |
ヒューバート | 何をやっているんですか…あなたは |
ソフィ | ヒューバート…? |
ヒューバート | …?あなたは…?どうしてぼくの名前を知って… |
ソフィ | …会った事があるから… |
ヒューバート | あなたとぼくは、初対面だと思いますが… |
アスベル | ヒューバート、驚かないで聞いてくれ。ソフィは、未来から来たんだ |
ヒューバート | 未来から…? |
パスカル | そうだよ~!だから、未来のアスベルや弟くんと会ってるんだよね? |
ソフィ | うん、パスカルもいるよ。みんな、わたしにとって大切な友達だから… |
ソフィ | この時代でも会えて、嬉しい |
ヒューバート | …にわかには信じ難い話ですが、冗談を言っているわけではなさそうですね |
ヒューバート | 兄さんはどうして彼女と一緒にいるんですか? |
アスベル | 港の警備中に会ったんだ。島に来たばかりだから、街を案内しようと思って連れてきた |
アスベル | ウィンドル港でアヴァロン島の噂を聞いて、観光しに来たんだよな? |
ソフィ | うん、そう。未来に帰る前に、島を見てみたくて |
パスカル | そういえば、ソフィはどうしてこの時代に来てたのー? |
ソフィ | 最初は、晶化現象を止めるためにリアラに転移させてもらったの |
ソフィ | 晶化現象はおさまったけど…戦争の種が残されてないか、確かめようって話になって… |
ソフィ | わたしが、この時代に留まる事にしたんだよ |
ヒューバート | リアラさん…という方が、あなたの仲間で、過去に転移させる力があるという事ですね? |
ソフィ | うん。…信じられないかな? |
ヒューバート | すぐに全てを飲み込むのは難しいですが… |
ヒューバート | 兄さんとパスカルさんが嘘をつく必要はありませんし…。…あなたの話を信じます |
ソフィ | ありがとう、ヒューバート |
パスカル | それで?アスベルとソフィはこれからどうするの? |
アスベル | ソフィは島に来たばかりだから、エルピスの塔に連れて行こうかと思っていたんだ |
ヒューバート | 確かに、島の観光をするなら、塔に行くのがいいでしょうね |
パスカル | はいはーい!あたしも一緒に行きたい! |
パスカル | ソフィに島を案内してあげる! |
ソフィ | うん、ありがとう、パスカル |
パスカル | その代わり…ぎゅーってしてもいい? |
ソフィ | …だめ |
| |
ヒューバート | ぼくはこれから警備の任務があるので、ここで失礼します |
パスカル | え~、弟くん、行っちゃうの? |
ヒューバート | 元々、休憩時間だけあなたの買い物に付き合う約束だったでしょう |
ソフィ | …お仕事、頑張ってね |
ヒューバート | …ありがとうございます。あなたも、島を楽しんでください |
アスベル | それじゃ、俺達は塔に向かって行くか |
パスカル | 了解~!弟くん、また会おうねー! |
ソフィ | …ヒューバート、また話せる? |
ヒューバート | ええ。あなたが島にいるなら、きっと会えますよ。…次は、未来の話を聞かせてください |
ソフィ | うん…!わかった。…行ってきます |
scene1 | 塔を見上げて |
アスベル | ──これが、エルピスの塔だ |
ソフィ | 大きい…。上で光ってる、あれは…? |
パスカル | サフィアだよ~。伝説によると、何でも願いがかなう宝物なんだって |
アスベル | 望むものが手に入るとも、必ず幸せをもたらすとも言われてる |
アスベル | サフィアはエルピスの塔に厳重保存されていて、まだ誰も触れた事がないんだ |
ソフィ | アスベルとパスカルは、塔の封印を解くために調査隊にいるの…? |
アスベル | それだけが目的じゃないんだが…塔の封印を解いて、サフィアへの道をひらくのも重要な任務の一つだ |
パスカル | マナリスっていう、塔の扉を開く鍵を最初に見つけたのはあたしのいる隊なんだよ~! |
パスカル | すごいでしょ!?ソフィ、褒めて褒めて~! |
ソフィ | …… |
| ひょいっ |
| びたーん! |
パスカル | うう…手厳しい… |
ソフィ | …さわるの、だめ |
パスカル | ほ~い… |
ソフィ | マナリスが鍵…。なら、マナリスを使えば、あの扉は開くの? |
アスベル | ああ。島にあるマナリスを全て集めると、封印は解かれる。遺跡の壁画にそう記されていたらしい |
パスカル | しかも、マナリス自体にも願いをかなえる力があるってわかったんだ~! |
パスカル | 怪我を一瞬で治したり、植物を急成長させたり…いろんな事が出来るんだよ~ |
アスベル | 俺も、その報告は受けてる。マナリスには、特殊な力が宿っているみたいだな |
ソフィ | …… |
アスベル | ソフィ…?どうかしたのか? |
ソフィ | …ううん、ただ…「星のカケラ」を思い出してたの |
ソフィ | あれも、願いをかなえる物だと思われてたから… |
アスベル | …不安なのか? |
パスカル | 不安…?何で? |
アスベル | 世界は、星のカケラほしさに、戦争を始めてしまった… |
アスベル | マナリスやサフィアにも願いをかなえる力があるなら、争いの種になる可能性がある |
ソフィ | うん…。あの時みたいに、世界が闇に包まれるのは嫌、だから… |
アスベル | …俺も、最近考えるんだ。サフィアが伝説通りの宝だった場合、ほしがる人は沢山いる |
アスベル | 島の調査は平和的な催しとして行われてはいるが… |
アスベル | 高度に発達した技術を悪用して、平和を脅かす存在が現われるかもしれない |
パスカル | なるほどね~。そんな風に考えた事なかったよ~! |
アスベル | …パスカルには、サフィアでかなえたい願いはないのか? |
パスカル | ん~、あたしの願いかぁ…。…思い浮かばないから、研究だけさせてほしいかな |
パスカル | 何でも知りたくなっちゃう性分だからさ~ |
アスベル | パスカルらしいな |
ソフィ | うん、そうだね |
パスカル | そう言うアスベルは?かなえたい願いでもあるの? |
アスベル | いや…俺は、願いは自分の力でかなえるものだと思ってる |
アスベル | 身に余る力を得る事は望んでいないよ。パスカルと同じだ |
パスカル | あたしはそんな難しい事、考えてなかったけどね~! |
アスベル | …幾多の戦乱を経て、四大国は平和協調の道を歩み出した |
アスベル | この平和は、リチャードは勿論、各国が長い間望んでいたものだ。だから…俺は、平和を守りたい |
アスベル | そのために出来る事があるなら、何でもするつもりだ |
ソフィ | アスベルなら、大丈夫。それに…わたしも、守るよ。アスベル達が大切にしてるもの |
パスカル | うんうん、あたしも!いつでも協力するからさ! |
アスベル | ありがとう、二人共。よろしく頼む |
アスベル | さて、塔は十分見たし、そろそろ別の場所に行こうか |
パスカル | そうだね!ソフィは他に行きたいところとか、観たい場所はある? |
ソフィ | ん~… |
| プルルル… |
アスベル | ん…?通信だ |
| ピッ |
アリーシャ | アスベル、私だ |
アスベル | アリーシャか。どうしたんだ? |
アリーシャ | 私の隊と、四大国連合調査隊に本部から招集がかかっている。新たな任務が入ったそうだ |
パスカル | いえ~い、待ってましたー! |
アリーシャ | …!パスカルも一緒にいるのか。ちょうどよかった |
アリーシャ | 私とアイゼン、エレノアは、今から本部へ戻るつもりだ。君達も向かってもらえるだろうか |
アスベル | ああ、わかった。俺達も今から向かう |
| ツー、ツー、ツー |
パスカル | やった~!新しい任務だ~! |
アスベル | ──ソフィ、すまない。調査隊の任務が入ったんだ |
アスベル | …一人で大丈夫か? |
ソフィ | うん、平気だよ。アスベルとパスカルは、任務に行って来て |
アスベル | …… |
パスカル | ソフィも一緒に来る?そしたら── |
| |
ロイド | ますます強くなったな、クレス! |
クレス | ありがとう。ロイドも、着実に腕を上げてるね |
パスカル | あれ、ロイド? |
ロイド | パスカル!アスベルも一緒だったのか。それに… |
クレス | ソフィ!久しぶりだね |
クレス | ちょうど会いたいって話をしていたところなんだ |
ソフィ | クレスも島に来てたんだね。会えてうれしい |
ルーク | なんだぁ?今日はよく知ってる奴に会うな |
ミュウ | 賑やかですの!楽しいですの! |
アスベル | ルーク、スパーダ。四大国連合調査隊に新しい任務が入ったんだ |
パスカル | あたし達にもだよ~!今から本部に戻ろうとしてたとこ |
ロイド | そうなのか?じゃあ、俺達も行かないとな! |
ルカ | クレス、ありがとう。手合わせ、すごく勉強になったよ |
クレス | こちらこそ。調査隊の任務、頑張って |
アスベル | ソフィはどうする?俺達と本部に向かうか? |
ソフィ | ううん、もう少し島を見て回ろうと思う |
クレス | じゃあ僕が案内するよ。ソフィ、一緒に行こう |
ソフィ | いいの?ありがとう |
アスベル | クレスが一緒なら、心配ないな。行こう、みんな |
scene2 | 塔を見上げて |
エドナ | …… |
ライラ | エドナさん、待ってください。あんまり先へ行かれると、はぐれてしまいますわ |
エドナ | 別に、付いて来てほしいなんて一言も言ってないけど?あなたが勝手に来ただけでしょ |
ライラ | スレイさんとミクリオさんは調査で忙しいようですし… |
ライラ | 一人で島の中を周るより、エドナさんと一緒にいた方が楽しいじゃありませんか |
エドナ | どうしてもって言うなら止めないけど、面倒事は起こさないでよね |
ライラ | はい。わかっていますわ |
エドナ | …… |
ライラ | エルピスの塔が、気になるんですか? |
エドナ | …あの塔の上にあるサフィアには、何でも願いをかなえる力があるって言われてるらしいけど… |
エドナ | …胡散臭いわね |
ライラ | ですが…エドナさん、島に来てから頻繁に塔へ通われていますよね |
ライラ | サフィアでかなえたい願いがあるのではないですか? |
エドナ | …さぁね |
エドナ | 行くわよ。無駄口叩いたら、今度こそ置いていくから |
ライラ | …!待ってください、エドナさぁん! |
| |
アイゼン | ──人が多いな |
エレノア | エルピスの塔は、今や観光地ですからね。この辺りは特に混むんです |
アリーシャ | それだけ、サフィアに対する関心が高いという事だ |
アリーシャ | 日に日に、島に来る観光客の数も増えているらしい |
アイゼン | こう人が多いと、動き辛いな──… |
??? | …さん、この先に…が、あるんです |
??? | 寄り道しないって…でしょう。いい加減に… |
アイゼン | …!? |
アイゼン | (今の声は…) |
アリーシャ | アイゼン…?どうかしたのか? |
アイゼン | …いや、何でもない。行くぞ |
アリーシャ | …?ああ… |
アイゼン | (まさか、な…) |
| |
パスカル | はー…ようやく人波から抜け出せたね~ |
アスベル | ああ。少し時間を取られたから、急がないとな |
ルカ | そうだね…。ん…?あの、前を歩いてる人達って、もしかして… |
パスカル | おーい、アイゼン~!アリーシャ~! |
アイゼン | …… |
アリーシャ | パスカル…!それにみんなも。近くにいたんだな |
パスカル | ありゃ…?アイゼン、聞こえなかったのかな? |
エレノア | ルークやスパーダも、アスベルと一緒だったんですね |
スパーダ | おう、途中で偶然会ってよ |
アリーシャ | 全員揃ったな。このまま本部へ向かおう |
パスカル | …… |
パスカル | アイゼン~お~い |
アイゼン | (この島にあいつが…エドナがいるはずがない。だが、あの声は──) |
パスカル | ねえ、あたしの声聞こえてる? |
アイゼン | …ああ、行くぞ |
ロイド | どうしたんだ…?アイゼンの奴、うわの空だったな |
ルカ | もしかして…マナリスの実験協力で疲れてるのかな…? |
パスカル | …考えたんだけどさ、ここが陸だからじゃないかな? |
パスカル | 海水かけてみる?水を得た魚みたいに元気になるかも! |
ルカ | え、何…?海水…? |
ロイド | …前から思ってたけど、パスカルの考えてる事って謎だよな~ |
パスカル | そんなに褒めても何も出ないよ~ |
アスベル | …褒めてはいないんじゃないか? |
scene1 | パスカルの目的 |
アリーシャ | ──失礼します。招集命令に応じて、参上いたしました |
エレノア | 四大国連合調査隊も、全隊員、到着しています |
ローエン | おや、みなさんお揃いで。そう畏まる事はないですよ、気楽に話しましょう |
ルーク | ローエン!そう言えば、お前がキムラスカの代表だったな |
ローエン | ご無沙汰しております、ルーク様。調査隊での活躍は聞き及んでいますよ、ご立派ですね |
ルーク | へ…へへ。まあ、それほどでもあるかな… |
スパーダ | 何照れてンだよ |
ルーク | う…うるせぇな! |
ローエン | ほっほっほ、お変わりがないようで、安心しました |
フレン | アスベル、しばらくだね |
アスベル | フレンもいたんだな |
フレン | ああ。島に来てから、あまり顔を合わせていなかったけど…元気そうでよかったよ |
フレン | …早速だけど、調査隊代表として君達に任務を頼みたいんだ |
パスカル | いえーい、待ってましたー!次は何の調査かな~? |
フレン | アリーシャ達には、湖の近くで新たに見つかった集落の探索を任せたい |
アリーシャ | 新たに、という事は…未調査領域の安全確保と、遺物の探索も含まれるでしょうか |
フレン | その通りだ。マナリスの探索を最優先に、調査を進めてほしい |
フレン | 任務地に向かってもらう前に、君達に紹介したい人がいる |
フレン | …ジェイ、入ってきてくれるかな |
ジェイ | ──呼びましたか? |
ロイド | お前は…?初めて見る顔だな! |
ジェイ | ぼくはジェイです。はじめまして |
ルカ | ジェイって…セネルと一緒にいたって言う、あの…? |
ジェイ | ええ。みなさんは彼とお知り合いでしたね |
フレン | 集落を見つけたのは、ジェイなんだ |
フレン | ジェイには、君達の案内役を務めてもらう。詳しい話は、彼から聞いてくれ |
アリーシャ | 了解しました。急ぎ出発した方がよいでしょうか? |
フレン | ジェイ、君はすぐに向かえるかい? |
ジェイ | ぼくはいつでも構いませんよ。ああ、ただ…そちらのみなさんは、念入りに準備しておいてください |
ジェイ | 任務に失敗した時の言い訳にされても困りますから |
アイゼン | …ふん、言ってくれるな |
ルカ | 準備が必要なくらい、危険な場所に行くって事なのかな…?ちょっと不安だね… |
パスカル | え?そう? |
ルーク | …で?俺達は何すんだよ |
ローエン | 四大国連合調査隊のみなさんには、砂漠地帯の調査領域拡大を手伝っていただきたいのです |
ルーク | だーっ、また砂漠かよ!? |
ミュウ | 次はミュウもいますの!安心してほしいですの! |
ルーク | 出来るわけねえだろ!ブタザルは黙ってろ! |
ミュウ | みゅうぅぅぅぅぅ… |
ローエン | ここのところ、砂漠地帯に多くの魔物が出現していましてね |
ローエン | 実力のあるみなさんに、調査をお願いしたいのです |
スパーダ | そういう事なら仕方ねえな。実際にあそこへ行ったオレ達の方が、他のヤツらより砂漠に詳しいしよ |
アスベル | ああ、それに…砂漠地帯は広い。調査するべき場所はまだ残っているはずだ |
ローエン | 行ってくださる、という事でよろしいですかな? |
エレノア | はい、異論はありません |
アスベル | ルークも、それでいいか? |
ルーク | …わかったよ。行けばいいんだろ?かったりーけど、仕方ねえな |
ミュウ | ご主人様、偉いですの!ミュウも頑張りますの! |
フレン | …実を言うと、調査隊は今、マナリスの回収と調査領域の拡大を急いでいるんだ |
ローエン | アイゼンさんの協力を得て行ったマナリスの実験結果を受けて、調査隊も本気を出したという事です |
ローエン | 万が一にでも調査隊以外の人間がマナリスを手にした場合、悪用される可能性もありますからね |
パスカル | …… |
ルカ | パスカル?どうかした? |
パスカル | …アスベルとソフィも、同じ事を言ってたんだよね~ |
パスカル | マナリスやサフィアを悪用する人がいるかもしれない、ってさ |
パスカル | みんな、そんな風に考えるんだな~って、思っただけ |
アリーシャ | マナリスの悪用、か。あれだけの力を持った物だ。調査隊が警戒するのもわかるな |
アスベル | 調査中にマナリスを発見したら、すぐに報告する |
フレン | ああ、頼んだよ。それから、くれぐれも気を付けて |
ローエン | 何か不測の事態があった場合は、本部に連絡してください |
エレノア | わかりました。アリーシャ達とは、ここから別行動になりますね |
スパーダ | 任務が終わったらまた会おうぜ!じゃあな! |
ロイド | おう、またな! |
scene2 | パスカルの目的 |
ジェイ | これから向かう集落は、断崖の縁に沿うように築かれています |
ジェイ | 湖の近くにある森を抜けるので、魔物に用心してください |
パスカル | 崖の近くの集落って、どんなところなのかな~?わくわくしちゃうね! |
ロイド | ああ!準備も出来たし早速、出発し── |
| |
ルカ | うわぁ!な、何…!? |
アリーシャ | あの光は…雷、か?さっきまであんなに晴れていたのに…雲行きも怪しくなってきたな |
| |
| ポツ… |
ロイド | 冷てっ。今の、雨か…? |
| ポツ…ポツ… |
| |
| ザー… |
パスカル | う、嘘… |
ルカ | 一瞬で大雨になったね… |
| ゴロゴロ… |
| ピシャーン |
パスカル | ひぃ~、木が真っ二つになっちゃったよ |
アリーシャ | 落雷か…!みんな、木から離れろ |
ルカ | ねえ、アイゼン。これって、もしかして… |
アイゼン | …ああ、死神の呪いだろうな |
ジェイ | 困りましたね…。これだと、出発出来ませんよ |
ロイド | え?何でだ? |
ジェイ | さっき言いましたよね?発見した集落に行くには、森を抜けないといけません |
ジェイ | この荒天の中、木が密集した場所を歩くのは危険です |
アリーシャ | ジェイの言う通りだ。落雷に巻き込まれないとも限らない |
アリーシャ | …出発は明日にしよう。隊長として、みんなを危険に晒すわけにはいかない |
パスカル | そ、そんなぁ~。やっと任務に出られるかと思ったのに… |
ルカ | 残念だけど、仕方ないよパスカル。宿舎に戻ろう? |
パスカル | …あ、そうだ!レーダーを改良しなきゃいけないんだった! |
アリーシャ | 切り替えが早いな… |
scene3 | パスカルの目的 |
パスカル | う~ん、こんなもんかなあ |
パスカル | おお、いい感じ~。よし、これなら── |
アイゼン | こんな時間に何をしているんだ、お前は |
パスカル | ありゃ?アイゼンこそ、遅くまで起きてるんだね~ |
アイゼン | 天族は眠る必要がないからな |
パスカル | そうなの?いいな~あたし、夜更かしした次の日はすっごく眠くなるんだよね |
パスカル | そんで…アイゼンは何でここに来たの?あたしを捜してたとか? |
アイゼン | 近くを歩いていたら、研究室から灯りが見えた。それで、立ち寄っただけだ |
アイゼン | 改良とやらは、終わったのか? |
パスカル | あともうちょっとかな~!マナリスの移動経路を記録出来るようにしたくてさ |
アイゼン | 過去にマナリスが存在していた場所がわかる、という事か |
パスカル | そうそう、亜空間の時みたいに、マナリスの信号が途切れる可能性があるでしょ? |
パスカル | だから、直前にあった場所が割り出せるようにしようかなあって |
パスカル | ハスタの事もあるし、マナリスが奪われた時の対策も考えとかないとね |
アイゼン | …… |
アイゼン | …お前は何故、マナリスを追い求める |
アイゼン | かなえたい願いでもあるのか?それとも、知的欲求を満たしたいだけなのか |
パスカル | ん~、単純にマナリスの事を知りたいって気持ちもあるよ |
パスカル | あとは…アンマルチア族のルーツを知りたいんだ |
アイゼン | ルーツ、だと? |
パスカル | うん。マナリスにはアンマルチア族の技術が使われてる可能性が高いからさ |
パスカル | サフィアやマナリスの研究を通して、アンマルチア族のルーツを解明出来るんじゃないかって思ってね |
アイゼン | …なるほどな。研究が、お前の目的であり願いというわけか |
パスカル | そうそう。だから、何でも研究したくなっちゃうんだ~ |
パスカル | そう言えば、アイゼンの呪いって発動する条件みたいなのはないの? |
アイゼン | そんなものがあるなら、俺が知りたいくらいだ |
パスカル | ん~、じゃあさ……死神の呪いが発動する条件を研究してみるのはどうかな? |
パスカル | 発動条件を解明して、呪いを抑えられる技術を発明出来たりしたら面白いよね~ |
アイゼン | 簡単に言ってくれるな。お前にそんな事が出来るのか? |
パスカル | やってみないとわかんないけどね~。ただ、天族に何かしら作用する技術は生み出せると思うよ |
アイゼン | 何…? |
パスカル | 前に、不可視物質を可視化する道具を発明したんだよね |
パスカル | 「解析機1号」っていう名前なんだけど…天族にも作用したんだよ |
アイゼン | …!その道具を使うと、天族の姿が見えるようになるのか |
パスカル | うん。あたしが思うに、アヴァロン島にも似たような技術があるんじゃないかな |
パスカル | だから、島に来た時にアイゼンの姿が見えるようになったんだよ |
アイゼン | …確かに、筋は通るな。カタグラフィの中でも、天族の姿は他の種族から見えていた |
パスカル | あたしの先祖が技術を提供して、天族が島で生きる手助けをしてたのかもしれないね |
パスカル | だから、あたしも…アイゼンが困ってるなら、死神の呪いを解くために協力するよ |
パスカル | どうせ発明するなら、誰かの役に立つ技術の方がいいもんね |
アイゼン | …… |
アイゼン | お前は、変わった奴だな |
パスカル | え~、ひどいな~。まあ、よく言われるんだけどね~ |
アイゼン | …… |
| |
アリーシャ | ──よし、全員揃ったな |
ジェイ | みなさん、覚悟と準備は出来てますね? |
ロイド | ああ、ばっちりだぜ! |
パスカル | 雨が上がって、落雷の心配もなくなったしね! |
アイゼン | 油断は出来ないがな。先は長い…さっさと出発するぞ |
ルカ | うん、行こう! |
scene1 | 悠久からの目覚め |
ジェイ | 着きました。ここが、断崖の集落です |
パスカル | やっとたどり着いた~!長い道のりだったね |
ロイド | すげぇー!崖から家が生えてるぜ! |
アイゼン | これまで見てきた集落とは、建物の構造がずいぶん違うな |
ルカ | うん。他の集落と同じで、寂れてはいるけど… |
ルカ | う…何、これ… |
ロイド | ルカ…?いきなりうずくまって、どうしたんだ? |
ルカ | (この、感覚は…) |
| |
兵士 | アスラ様…!敵軍が後退を始めたようです |
アスラ | 奇襲が功を奏したか。読み通り、切り立った壁が敵軍の行動を制限したようだな |
アスラ | だが…奴らとて、諦めたわけではなかろう |
アスラ | …兵をまとめよ!敵が態勢を立て直す前に、こちらから仕掛ける |
兵士 | はっ! |
アスラ | 戦続きだが、許せよ。俺達は止まれぬのだ… |
アスラ | この地で命を散らした同志達の想いに報いるために! |
| |
ルカ | 今の、は… |
アリーシャ | 大丈夫か、ルカ?気分が悪いなら、休憩しよう |
ルカ | …ううん、平気だよ。少しぼーっとしてたみたい |
アリーシャ | そうか…?身体に異変があれば、私に言ってくれ |
ルカ | うん、ありがとう… |
ルカ | (さっき、アスラがいた場所…建物は今よりきれいだったけど、この集落と景色が似てた) |
ルカ | (もしかして…アスラは、アヴァロン島にいたの…?それじゃあ、今まで見てた夢も…) |
ルカ | …… |
ジェイ | みなさん。ここから先は、ぼくも足を踏み入れていない場所です |
ジェイ | 何が起こるかわからないので、用心してください |
パスカル | 了解~!ルカ、行くよー? |
ルカ | …!う、うん…! |
ロイド | よし。それじゃあ、奥に進んでみようぜ |
| |
| ガサッ |
アイゼン | …水を差してくれるな |
| |
| ガルルル! |
アリーシャ | 魔物か…! |
ロイド | 先にあいつを倒さないとな。行くぜ、みんな! |
scene2 | 悠久からの目覚め |
アリーシャ | ──この辺りには、何もないようだ |
ルカ | カタグラフィも落ちてないね。今まで見てきた集落には、たくさん転がってたのに… |
ジェイ | これは…。建物の側面に、戦跡があります |
ジェイ | かつてこの集落で、大きな戦があったようですね |
ジェイ | いつの頃の物かわかりませんが…それらしき痕跡があちこちに残っています |
ルカ | …… |
ルカ | (アスラも、誰かと戦ってるみたいだった…。ここは、やっぱり…) |
アイゼン | 集落にあった大半の物が、戦で失われた可能性があるな |
パスカル | ねえねえ、それならどこかの家に入ってみようよ! |
パスカル | ここの周りは大体探し終えたし、屋内なら、戦の影響を受けずに残ってる物があるかもしれないよ? |
アリーシャ | そうだな。建物の風化が進んでいるから、まずは屋内の安全確認をして… |
パスカル | …あ!あっちの家とかよさそう!見て来るね! |
アリーシャ | 待て、パスカ──…聞いていないか |
ロイド | もうあんなところに…。おーい、待てってー! |
| |
ルカ | はあ…はあ…パスカル、足早いね |
パスカル | そうかな?それより…見てよ、この装置! |
アイゼン | これは…。森の遺跡の隠し部屋にあった装置と形状が似ているな |
ロイド | ほんとだ。剣の試練を受けた時も、似たようなやつがあったな。これ、全部壊れてるのか…? |
パスカル | うん、みたいだね。大掛かりな設備だし、もしかしたら… |
パスカル | ここで、何かの研究をしてたんじゃないかな~? |
ジェイ | 装置を起動して確かめるのは、難しそうですね |
アリーシャ | 部屋の中に、何か手がかりが残されているかもしれない。手分けして、探してみよう |
パスカル | ん~…、研究に関する資料はないか~ |
パスカル | どこか怪しい場所は… |
ルカ | …ねえ、パスカル!扉の横にあるこの装置、まだ動きそうじゃない? |
パスカル | どれどれ…?お、ほんとだ! |
アイゼン | 起動出来るのか? |
パスカル | うん、ちょっと待ってね。ふんふん…なるほど…ここをこうして… |
| ピ、ピピピー |
ロイド | 装置が、動き出したぞ! |
| |
| プシュー… |
アリーシャ | 扉が開いたな。中は…階段になっているようだ |
ジェイ | 地下に続いているようですね |
アイゼン | 行くぞ。下に、何かあるかもしれん |
| |
アリーシャ | ここは…地下室か |
パスカル | 上の施設と違って、ここの装置はまだ生きてるみたいだね |
ルカ | 中央にあるあの装置は、何に使う物なんだろう? |
ロイド | …!何だ…? |
アイゼン | 装置が反応したようだな |
| ヒューン──… |
ジェイ | …!装置の蓋が開きましたね |
ルカ | みんな、見て!装置の中に人がいるよ! |
パスカル | あの人…死んでるのかな? |
??? | …… |
??? | …… |
scene1 | 古を知る者 |
??? | …… |
パスカル | うわ、動いた!? |
アイゼン | どうやら生きているようだな |
??? | …あなた方は?どうしてこの場所に…? |
アリーシャ | 私の名はアリーシャ・ディフダ。調査隊の任務で、この集落一帯を調査している |
アリーシャ | 研究施設と思われる建物を調べていたところ、地下に続く階段を発見してここへ来た |
??? | 調査というと…島の住民に依頼されたのですか? |
アリーシャ | いや。島の調査は、調査隊が独自で行っている |
アリーシャ | それに、この島に住民がいたのは大昔の事だ |
??? | 大昔…?…少しお待ちください。装置で経過年数を確認します |
??? | ピピ…ピ… |
??? | …なるほど。どうやら私は、長い間眠りについていたようですね |
アイゼン | まさか、お前は…アヴァロン島の住民なのか? |
エメロード | はい。自己紹介が遅くなりましたね。私の名はエメロードと言います |
ルカ | エメロードさんは、どうしてこの地下室に…? |
エメロード | 集落から住民が避難した後、そこにある装置の中で眠りにつきました |
エメロード | 島の混乱が収まるまでと思っていたのですが…こんなに時が経っていたなんて |
ジェイ | …信じ難い話ですね。それだけの期間、あなたはその姿を維持していたと言うんですか? |
エメロード | いいえ。私は眠りにつく前に、自らの精神をヒューマノイドに転送しました |
エメロード | その時に、本来の身体を手放しています |
ルカ | ヒューマノイド…?それって、一体…? |
エメロード | 人の形をした人にあらざる者です |
エメロード | 人の形を取っているので、精神を移した後も違和感なく活動する事が出来ます |
ロイド | 精神の転送…。それって確か… |
ロイド | 剣の試練の時、二刀流の剣士が似たような事を話してたな |
ロイド | 島の技術を使って、精神を装置に転移したって… |
エメロード | その技術を発明したのは、島にいたアンマルチアです |
パスカル | アンマルチア族が、この島に住んでたの!? |
エメロード | はい。アンマルチアが訪れる前から、この島には様々な種族が暮らしていましたが… |
エメロード | 技術の提供によって、アンマルチアも島民として受け入れられたのです |
アイゼン | アンマルチア族とは、何者なんだ |
エメロード | アンマルチアは、技術者の集団です。私もかつてはその一員でした |
ルカ | え!?それって…パスカルとエメロードさんが遠い親戚かもしれないって事? |
エメロード | …?念のために説明しますが、技術者集団の一派がアンマルチアと呼ばれていただけです |
エメロード | アンマルチアに、血のつながりはありません |
パスカル | え~!みんな家族じゃないの!? |
エメロード | その通りです。…もしや、あなたはアンマルチアの? |
パスカル | うん、そうだよ |
エメロード | なるほど…。扉の装置を解除出来たのは、そのためですね |
アリーシャ | あなたが古代アンマルチアの一員ならサフィアやマナリスについても詳しいのだろうか? |
エメロード | …… |
エメロード | サフィアに、マナリス…。聞き覚えのある名称ですが… |
アイゼン | 覚えてないのか…? |
パスカル | あれー?マナリスにはアンマルチア族の技術が使われてると思ったんだけどな |
ルカ | えっと…それなら、島から住人が避難した理由は覚えてますか? |
エメロード | それは…戦争が…。いえ、それ以外にも原因があったように思います |
エメロード | …どうやら、長い眠りの影響で記憶回路に障害が起きているようですね |
エメロード | 少し時間をいただければ、徐々に回復するはずです |
アリーシャ | そうか。無理に思い出す必要はないが、記憶が戻った時は教えてほしい |
エメロード | はい、勿論です。では…上の研究施設へ向かいましょう |
エメロード | ここを出れば、何か思い出せる事があるかもしれません |
scene2 | 古を知る者 |
エメロード | …研究室の装置は、全て壊れているようですね |
アイゼン | 長い時間が経っているからな。昔のままとはいかないだろう |
ロイド | 何か思い出せそうか? |
エメロード | …ええ、ぼんやりとですが。私達はここで、人々の願いをかなえる技術を発明していた… |
エメロード | それが…サフィアにマナリス。先ほど、あなた方が話していた物です |
パスカル | やっぱり、サフィアとマナリスには古代アンマルチアの技術が使われてたんだね! |
パスカル | しかも、技術の流用じゃなくて、実際に島にいたアンマルチア族の手で作られた物だったんだ! |
パスカル | く~!ますます研究のし甲斐があるよ。いい事聞いちゃったな~! |
ルカ | あはは。嬉しそうだね、パスカル |
アイゼン | お前がサフィアを生み出した技術者集団の一員なら、聞きたい事がある |
アイゼン | マナリスの使用には代償を伴うが、サフィアも同じなのか? |
エメロード | 代償…。確かに、使用時に疲労感や脱力感を訴える者がいたように思います |
エメロード | 詳しい事は思い出せませんが、サフィアの使用にも何らかの代償があると考えていいでしょう |
エメロード | ただ…島に住む人々は、サフィアやマナリスの使用に対して肯定的でしたね |
アリーシャ | カタグラフィに映っていた天族は、人間がマナリスを使用するのは危険だと言っていたが… |
エメロード | 乱用しない限り、大きな問題はないはずです |
エメロード | 使用者が限度を理解しているのなら、危険性はありません |
ルカ | それなら…サフィアの使用も、使い方さえ間違わなければ危険じゃないって事になるのかな |
エメロード | ええ、勿論です。技術は使われるためにあるのですから |
パスカル | サフィアはエルピスの塔に封印されてるんだけど、どうしてか知ってる? |
エメロード | …いいえ。封印されたという記憶はありませんね |
エメロード | サフィアはマナリスよりも高い性能を持っていたので、何かの理由で封印が必要になったのかもしれません |
ロイド | 性能が高いって事は、かなえられる願いもマナリスより大きいのか? |
エメロード | はい。サフィアはマナリスよりも少ない代償で、より大きな願いをかなえる事が出来ます |
ルカ | それなら…サフィアを使って、アイゼンの呪いを解けるかもしれないね! |
エメロード | …ですが、サフィアやマナリスにもかなえられない願いがあります |
エメロード | 使用者によって効果が変わるので、一概には言えませんが |
アリーシャ | 彼は天族だ。大きな願いであっても、かなえられる可能性は高いのではないだろうか? |
エメロード | 天族…そうですか。それならば、代償は最小限に抑えられるでしょう |
エメロード | かつてのアヴァロン島でも、天族がサフィアを用いて島の繁栄に貢献していました |
アイゼン | …試してみない限りは、何とも言えないという事か… |
ルカ | そういえば、パスカル。ここに来てから、マナリスの波動は感じないの? |
パスカル | 全然だね~。さっきレーダーを確認してみたけど、特に反応はなかったよ |
アリーシャ | 今までは集落の傍にある遺跡や洞窟にマナリスが隠されていたが…ここには保管されていないのだろうか |
エメロード | …変ですね。この集落にも、かつてマナリスが存在していました |
エメロード | もしかしたら…崖の上にある基地に、保管されているかもしれません |
エメロード | 島に留まった者の多くは、基地内に避難していたはずです |
エメロード | マナリスは貴重な物なので、持ち出された可能性が高いかと |
パスカル | 崖の上か~。登っていくのは、難しそうだね |
ルカ | うん…すごく高い崖だったし… |
エメロード | 心配はいりません。移動する手段はあります |
エメロード | 移動のための装置が設置されている場所まで、ご案内しましょう |
エメロード | 基地内を案内するために、私もあなた方と一緒に行きます |
ロイド | ありがとな、助かるぜ! |
ジェイ | ぼくは一度、本部に戻ります。ここであった事を報告しないと |
アリーシャ | 了解した。私達はこのまま、マナリスの探索に向かう |
ジェイ | はい。何かあった時には、通信機で連絡を取ってください |
ルカ | ここまで連れてきてくれて、ありがとう |
ジェイ | 仕事なので、お礼はいりません。…それでは、また |
アリーシャ | 私達も出発しよう。案内を頼めるだろうか |
エメロード | はい。みなさん、私の後について来てください |
| |
エメロード | この装置を使って、崖の上に移動します |
パスカル | お~!転移装置だ!この集落にもあったんだね~ |
ルカ | 転移装置…?それって、森の遺跡にあった瞬間移動が出来る装置だよね? |
エメロード | この島には、これと似た装置がいくつか設置されています。遺跡にあった物も、その一部でしょう |
エメロード | 少しお待ちください。装置を起動させます |
| ピコ…ピコピコ… |
ロイド | アンマルチア族って、すごいんだな。森の遺跡で装置を見た時も、驚いたけど… |
ロイド | この集落も、何でもかんでも発達してるって感じだしさ |
アイゼン | これだけの技術があれば、サフィアやマナリスを発明出来たというのも頷ける |
| カチッ |
| フイイーーン! |
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エメロード | …準備出来ました。みなさん、こちらへ |
パスカル | やった~!これで、五つ目のマナリスに近付いたね! |
エメロード | …すでに、四つのマナリスを回収しているのですね |
エメロード | マナリスは全部で六つあったと記憶しています |
アイゼン | あと二つで、塔の扉を開く鍵が全て集まるという事か |
ロイド | 意外と集まってたんだな!とっとと揃えちまおうぜ |
エメロード | それでは、崖の上に転送します |
scene1 | 迫りくる光 |
エメロード | ──到着しました |
ロイド | おおーすげぇ!ほんとに一瞬で、崖の上に着いたな! |
アリーシャ | 目の前に見えるあれが…アンマルチアの基地なのか? |
エメロード | はい。人目を避けるため、外観は遺跡のような作りになっていますが… |
エメロード | 内部には研究施設や格納庫、簡易的な居住空間も併設されています |
パスカル | あの中にマナリスがあるのかなー?崖の下にいた時と同じで、ビリビリは特に感じないけど… |
パスカル | …ん~、やっぱりレーダーにも反応がないや |
エメロード | そのレーダーは、マナリスが発している波動を探知する道具ですか? |
パスカル | うん、そうだよ。カタグラフィの再生装置を改造して、レーダー機能を付けたんだ~ |
エメロード | すばらしい技術ですね。さすがはアンマルチアの末裔です |
エメロード | しかし…残念ながら、この島にはマナリスの波動を遮断する装置が存在します |
エメロード | マナリスを安全に保管するためにアンマルチアが発明した物なので、当然基地の中にも装備されています |
アイゼン | なるほどな。レーダーの反応がなくとも、マナリスが保管されている可能性はあるという事か |
パスカル | あちゃ~。そっか…波動が遮断された場合の対処を考えとくべきだったね |
パスカル | 改良したレーダーの性能をみんなに見せたかったんだけど…。今回は役立ちそうにないな~… |
ロイド | 気にするなよ、パスカル!いつか必ず、役立つ時が来るって! |
アリーシャ | ああ、私達はいつも君の技術に助けられて来たからな |
パスカル | そう…?なら、いいんだけどさ! |
アイゼン | マナリスがあの中にあるかどうかは、実際に入って確かめればいい |
ルカ | そうだね。エメロードさん、案内してもらえますか…? |
エメロード | ええ、勿論です。…ここから先は、注意して進みましょう |
エメロード | 長い時間が経過しているので、内部の様子がどうなっているのか、私にもわかりません |
ルカ | うう…何事もないといいけど |
ロイド | 心配したって仕方ないさ!中に入ろうぜ! |
scene2 | 迫りくる光 |
アリーシャ | …基地の内部は、外観とはまるで雰囲気が違っているな |
パスカル | 至るところにアンマルチアの技術が使われてるね~ |
アイゼン | この廊下の先には、何がある? |
エメロード | 操作室です。まずはそこで、基地の情報を集めましょう |
エメロード | マナリスはおそらく…波動遮断装置があるシャトルの中に保管されているはずです |
ロイド | シャトルって何だ? |
エメロード | 推進力を利用して上昇する、有人の飛行体の事です |
アリーシャ | 飛行体か…。アンマルチア族は、そんな物まで作れてしまうのだな |
エメロード | ええ。シャトルは、基地の最下層部…格納庫の中にあります |
エメロード | 操作室に詳しい情報が残されているはずなので、確認してみましょう |
アリーシャ | ああ、りょうか── |
| |
| ビーーーッ!ビーーーッ! |
ルカ | な、何!? |
エメロード | …どうやら、基地の防衛システムが作動したようですね |
| プシュー… |
アリーシャ | くっ…出入り口が…! |
アイゼン | …退路を塞がれたな |
| キュイーン |
ロイド | おい、見ろ…!廊下の先に、何かいるぞ!? |
エメロード | あれは、防衛のために作り出された機械です。防衛システムによって動いています |
パスカル | あの機械…この先の扉を守ってるみたいだね |
エメロード | 扉の奥に操作室があります。先へ進むには、あの機械を倒すしかないようですね |
パスカル | よーし、それなら早速── |
アリーシャ | 待て、パスカル!何か様子がおかしい |
ロイド | 何か出てきたぞ…!? |
ルカ | 何だろう、あれ?光ってるみたいだけど… |
エメロード | 気を付けてください。あのレーザーに触れると、あらゆるものが切断されます |
ルカ | せ、切断!?ひぃ… |
アリーシャ | 前にも後ろにも、進めなくなってしまったな… |
ロイド | でも、レーザーがあるなら、あの機械も襲ってこれないだろ?策を練る時間はあるぜ! |
アイゼン | そう単純でもなさそうだがな |
| |
| ビーーーッ!ビーーーッ! |
| |
ルカ | レーザーが動き出した…!迫ってきてるよ! |
ロイド | 止まった…? |
エメロード | 段階的に接近する構造のようですね。一時的に停止していますが、またすぐに動き出すと思います |
ルカ | そ、そんな… |
アリーシャ | 退路は断たれている。このままでは… |
ロイド | エメロード!何とかして、防衛システムってやつを止められないのか!? |
エメロード | …難しいですね。操作室に入らないと、防衛システムは解除出来ません |
エメロード | アンマルチア以外の者が基地に入った際に、システムが稼働するようになっていたのでしょう |
パスカル | それなら、どこかに侵入者を感知するセンサーが設置されてるはずだよ! |
エメロード | なるほど…。センサーを破壊すれば、レーザーを止められるかもしれません |
アイゼン | …… |
アイゼン | …!見ろ!機械の背後にある壁だ! |
ルカ | ほんとだ!何かの装置があるよ |
エメロード | あの形は…防衛用のセンサーで間違いありません |
アリーシャ | 狙えるか?パスカル |
パスカル | うん、任せて! |
アイゼン | レーザーが解除されると、機械が襲ってくるぞ |
アリーシャ | すぐに攻撃出来るように、私達も準備しておこう |
パスカル | そんじゃ、いくよ!──輝線! |
| |
| ヒューン── |
| |
パスカル | やった! |
| キュイーン |
ロイド | 来るぞ!みんな、構えろ! |
scene3 | 迫りくる光 |
ルカ | やった…!機械が動かなくなったよ |
パスカル | これで先へ進めるね~!…ん? |
| |
| ギィイイ… |
エメロード | 危ない…! |
| ドンッ! |
| |
| ドサッ |
パスカル | うっ… |
エメロード | く… |
アリーシャ | パスカル!エメロード! |
アイゼン | …!あの機械、まだ動けるとはな |
ルカ | ロイド、そっちへ向かったよ! |
ロイド | 任せろ!はあっ! |
| ギ…ギギギ… |
ロイド | アイゼン、後は頼むぜ! |
アイゼン | ああ!──破砕しろ! |
アイゼン | ストーンエッジ! |
| ズガッ!! |
| ガシャーン |
| |
アリーシャ | 何とか倒せたようだな… |
ロイド | パスカル、エメロード、大丈夫か…? |
パスカル | …いてて。あたしは何とか… |
エメロード | う… |
アリーシャ | 無理に立ち上がらない方がいい。…傷の具合はどうだ? |
エメロード | 少し手首を挫いた程度なので、問題はありません |
パスカル | …ごめん、エメロード。あたしを庇ったせいだよね |
エメロード | いいえ。あなたがセンサーを壊したお蔭で、ここにいる全員が助かったのです。謝る必要はありません |
エメロード | それに、逆の立場であれば、あなたも同じ事をしたのではないですか? |
パスカル | …!うん、ありがとね! |
アイゼン | 先を急ぐぞ。いつまた防衛システムが作動するか分からん |
ロイド | そうだな。行こうぜ、みんな! |
scene1 | 技術の在り方 |
アイゼン | ここが…操作室か |
アリーシャ | この装置は…? |
エメロード | 基地の制御装置です。これ一つで、基地内の全システムを管理する事が出来ます |
ルカ | じゃあ、これを使えば防衛システムが解除出来るんですね |
エメロード | ええ、その通りです |
エメロード | 装置の状態は…問題ないようですね。早速取り掛かりましょう |
パスカル | はいは~い!あたしにも手伝わせて~! |
パスカル | アンマルチアの里にも同じような装置があったから、役に立てると思うよ! |
エメロード | 助かります。では、制御装置のロックを外してもらえますか? |
パスカル | がってんだ~!えっと…確か、ここをこうして… |
| ピピ…ピ…ピピピ… |
パスカル | よし、完璧!これで、制御機能を自由に使えるはずだよ! |
エメロード | ありがとうございます。後は、防衛システムにアクセス出来れば… |
| ピピ…ピ…ピピピ… |
| ピー… |
エメロード | 解除出来ました。…どうやら、基地の防衛レベルが最大値に引き上げられていたようです |
エメロード | 常時は作動しない緊急時用の防衛システムが作動していました。先程のレーザーも、その一部です |
ルカ | それだけ、この基地に危険が迫ってたって事なのかな…? |
エメロード | はい…。私が眠りについた頃のアヴァロン島は戦争の真っ只中にありました |
エメロード | それ故に、侵入者を警戒して防衛レベルを引き上げたのでしょう |
アイゼン | 基地内を管理している装置なら、マナリスが保管されている場所を探る事も出来るのか? |
エメロード | はい。制御装置の中にある情報を抽出しましょう |
| ピピ…ピ… |
エメロード | これは…マナリスに関する情報が消えていますね |
エメロード | …過去の変更記録を確認しましたが、意図的に情報を削除した痕跡があります |
エメロード | アンマルチアがこの基地を出る際に、装置内の情報を消した可能性がありますね |
アイゼン | 侵入者にマナリスを奪われないよう、情報を消したという事か… |
エメロード | ええ。他にもサフィアに関する情報が残されていたはずですが…同様に削除されています |
ロイド | 装置に情報が残ってないなら、他に何かマナリスの手がかりを見つけないとな |
アリーシャ | ん…?あの、机の上にある物は… |
パスカル | カタグラフィだ~! |
ロイド | 本当だ!よく見ると、部屋の中にいくつか落ちてるな |
ロイド | 取ってくるから、少し待っててくれ |
エメロード | カタグラフィを見れば、私が眠りについた後の島の様子がわかるかもしれません |
エメロード | 再生をお願い出来ますか? |
パスカル | うん、勿論! |
ロイド | ほら、パスカル。カタグラフィ、取って来たぜ |
パスカル | ありがとう~!じゃあ、これから再生するね |
パスカル | バコッとな! |
| ポチッ…! |
| |
天族の男 | まさか…サフィアを使って、島に瘴気を蔓延させるなんて… |
ドワーフの男 | マナリスの力を利用して瘴気の影響を防いではいるが…ここも、そう長くは持たんだろう |
集落の女 | このままでは、島の外にある国々にも被害が及んでしまうわ。何とかしないと… |
??? | …別の次元に空間を作り、島を隔離する方法を探そう |
ドワーフの男 | 隔離…!?そんな…お前達の技術で、どうにか出来ないのか? |
アンマルチアの男 | …すまない。アンマルチアの技術をもってしても、瘴気の流出は止められないんだ |
アンマルチアの男 | 島外に瘴気を出さないためには、島ごと閉じ込めるしかない |
天族の男 | そうだね…。ここまで瘴気が広がってしまったら、マナリスを使っても完全に消し去る事は出来ない |
アンマルチアの男 | ああ。早急に、島を隔離する方法を見つけ出そう |
アンマルチアの男 | 私達が作り出したサフィアによって、悲劇がもたらされてしまった。…これは、私達の罪でもあるんだ |
| |
アイゼン | こいつらは…山の集落で見つけたカタグラフィに映っていた天族達だな |
ルカ | 本当だ…あの時と同じで、いろんな種族の人達が集まってるね。随分深刻そうだけど… |
エメロード | 瘴気…。…思い出しました |
エメロード | サフィアが悪用された結果、島中に瘴気が蔓延し、住民の大半が避難を余儀なくされたのです |
パスカル | 島の内部に亜空間が残されていたのは島に残った人達が瘴気から逃れるためだったんだね~ |
アリーシャ | 瘴気の被害を他国に及ぼさないために亜空間が作られたのだとしたら… |
アリーシャ | やはり、島を隔離したのは、島への侵入者を阻むためではなかったのか |
ロイド | サフィアを使って瘴気を蔓延させた奴は、誰なんだ…? |
エメロード | …そこまでは思い出せません。その人物が、どうなったのかも… |
アイゼン | サフィアが封印された理由は、瘴気の蔓延と関係がありそうだな |
パスカル | …… |
ルカ | どうかした?パスカル |
パスカル | カタグラフィの中で、アンマルチア族の男の人が言ってたでしょ? |
パスカル | 「これは私達の罪でもある」って…。そこが引っ掛かってるんだよね |
ロイド | そんなの、悪用した奴が悪いに決まってるさ。技術者のせいじゃないだろ? |
パスカル | うん…。でも、サフィアを作り出した技術者側にも、やっぱり責任があると思うんだ |
パスカル | …使い方次第で、技術が人を不幸にする事もあるんだね |
ルカ | パスカル… |
エメロード | …技術は、人に使われてこそ真価を発揮します |
エメロード | サフィアやマナリスは、島の繁栄に不可欠でした |
エメロード | すばらしい発明を、罪だと決めつけてしまうのは、早計だと思います |
アリーシャ | そうだな。とは言え…ハスタのような男がいる以上、マナリスを放置するわけにはいかない |
アリーシャ | 悲劇が繰り返されないように、早急に残りのマナリスを確保して厳重に管理しよう |
パスカル | うん。あたしも研究を進めて、サフィアとマナリスの有用性を確かめるよ |
パスカル | 安全に使える物だって証明出来れば、封印する必要もないしね!よーし、がんばるぞ~! |
ロイド | やる気だな、パスカル! |
パスカル | うん!アンマルチア族の発明品が悪用されて島が大変な事になっちゃったなら… |
パスカル | あたしは、二度とそれが繰り返されないようにしないと! |
パスカル | 技術は、よい事のために使われるべきだもん |
アリーシャ | …君の言う通りだ、パスカル。これ程すばらしい技術を、私利私欲のために使うべきじゃない |
アリーシャ | 技術者として人を幸せにしようとする君の考えは、すばらしいと思うよ |
パスカル | え~!照れるな~! |
エメロード | …… |
ルカ | ねえ、みんな。他のカタグラフィも、再生してみない? |
アイゼン | 賛成だ。アヴァロン島の歴史に関する新たな情報は手に入れたが… |
アイゼン | 肝心のマナリスの情報は、まだ得られてない |
ロイド | そうだな!パスカル、今度はこっちのカタグラフィを見てみようぜ! |
パスカル | オッケー、バコッとな! |
| ポチッ…! |
| |
アンマルチアの女 | 島は隔離されたわ。これで、瘴気が漏れ出す心配もないでしょう |
アンマルチアの男 | ああ。俺達も、早く島外へ避難しよう |
アンマルチアの男 | マナリスはどうする? |
アンマルチアの女 | …ここに置いていくわ。波動遮断装置に入れておくのが安全だろうから |
アンマルチアの女 | 基地の防衛システムがあるとは言え、万全を期す方がいいでしょう |
アンマルチアの男 | そうだな。後は…万が一に備えて、シャトルのメインシステムを書き換えよう |
アンマルチアの男 | 格納庫に配置されてる防衛用の機械とメインシステムを連動させれば、基地の防御システムから切り離せる |
アンマルチアの男 | あれだけの数の機械があるんだ。基地に侵入した奴がいても、簡単にはシャトルに近付けないさ |
| |
アイゼン | 防衛用の機械、か…。廊下にいた奴と似たような機械がいるなら厄介だな |
ロイド | ああ。でも、シャトルにマナリスがあるのは間違いなさそうだぜ! |
ルカ | 格納庫の機械は、シャトルのメインシステムと連動してるって言ってたね… |
ルカ | つまり、ここにある制御装置で防衛システムを弄っても、動きを止められないって事なのかな? |
エメロード | 念のために、調べてみましょう |
| ピピ…ピ…ピピピ… |
エメロード | …やはり、操作室からは操作出来ないように設定されていますね |
エメロード | シャトルのメインシステムは、私が眠りについた後に書き換えられています |
エメロード | 解除出来るかどうかは、実際にシャトルの装置を触ってみないとわかりません |
アリーシャ | カタグラフィの会話を聞く限り、格納庫には複数の機械が配置されているようだ |
エメロード | はい。真正面から戦っても、こちらが消耗するだけで突破は難しいでしょう |
ルカ | …… |
ルカ | ──僕達が、足止めしよう |
アリーシャ | 足止め…?どういう意味だ、ルカ? |
ルカ | シャトルのメインシステムを解除出来る可能性があるのは、パスカルとエメロードさんでしょ |
ルカ | 僕達がシャトルに向かうための道を作るよ |
ルカ | 防衛用の機械を全部倒すのは無理だけど…隙を作る事は出来ると思うんだ |
アイゼン | なるほどな。隙をついて、こいつらがシャトルのメインシステムを目指すわけか |
アイゼン | 危険な賭けにはなるが…ふっ、悪くない提案だ |
エメロード | ですが、システムが解除されない限りあなた方は無数の機械と戦い続ける事になるのですよ? |
ロイド | パスカル達がシステムを解除するまで時間を稼げばいいんだろ?任せとけって! |
アリーシャ | …… |
ルカ | アリーシャは、僕の作戦に反対かな…? |
アリーシャ | …いや、私も全力を尽くそう。危険だが、他にいい作戦があるとも思えない |
パスカル | アリーシャ…みんな…本当にいいの…? |
ルカ | うん!僕らは何度もパスカルに救われてきたから、信じられるよ |
ルカ | いつも頼ってばかりで、無責任かもしれないけど… |
ルカ | 僕は僕が出来る事を、やり遂げるから…! |
ロイド | よく言ったな、ルカ! |
アイゼン | 失敗したら、海でサメの餌にするからな |
パスカル | 心配いらないって!絶対、システムを解除してみせるからさ |
アイゼン | ふっ…いい度胸だ |
ルカ | エメロードさんも…この作戦に、賛同してくれますか? |
エメロード | あなた方にその覚悟があるなら、止める事は出来ませんね。…協力させていただきます |
ロイド | そうと決まれば…格納庫に向かおうぜ! |
アリーシャ | ああ、行こう! |
scene1 | 背中を預けて |
エメロード | ──あそこに見えるのが、シャトルです |
ルカ | すごいや…基地の中に、あんな物があるなんて… |
ロイド | 俺達はここからシャトルの前に走って行けばいいんだよな? |
エメロード | はい。一定の距離まで近付くと、反応を感知した機械の集団が防衛のために動き出します |
エメロード | 一度シャトルに近付くと、メインシステムを停止しない限り機械に襲われ続けると考えてください |
アイゼン | 覚悟の上だ。──まずは、俺達が出る |
アイゼン | お前達は防衛機械の隙をついて、シャトルの中に飛び込め |
ルカ | 必ず、僕達が道を切り開いてみせるよ! |
パスカル | うん!メインシステムの方は、あたしとエメロードに任せて! |
ロイド | ああ、頼んだぜ! |
アリーシャ | では、作戦開始だ。行こう |
| |
| ビーーーッ!ビーーーッ! |
| |
ロイド | …!早速見つかったみてぇだな! |
アイゼン | 来るぞ、構えろ |
| キュイーンキュイーン |
ルカ | すごい数だね…! |
アリーシャ | あっという間に囲まれたか…!どうにかして、包囲網を突破しないと── |
| ギュィイイン |
アリーシャ | くっ…! |
アイゼン | アリーシャ、下がれ!──エアスラスト! |
| ギ…ギギギ… |
アリーシャ | すまない、助かった |
アイゼン | 気にするな。そんな事よりも… |
| キュイーンキュイーン |
ロイド | どんどん集まってくるぞ! |
アイゼン | ちっ、きりがないな |
アリーシャ | 個々の力も相当なものだ。これ以上集まると、隙を作るのが難しくなる |
ルカ | ──僕が行くよ!パスカルに、必ず道を作るって約束したから…! |
ルカ | はああっ! |
| ギ…ギギギ… |
アリーシャ | 今だ!押し込むぞ! |
ロイド | 任せろ! |
ロイド | ──くらえ!散沙雨!! |
| ガシャーン |
ルカ | 今だ!二人共、先に行って! |
パスカル | ありがとう、みんな!無茶しないでね! |
アイゼン | 俺達の事は心配するな。必ず、システムを止めてこい |
ロイド | 信じてるぜ、パスカル!エメロード! |
パスカル | うん…! |
| キュイーンキュイーン |
パスカル | うわあああ!出た! |
アリーシャ | ──させない!星天裂華! |
| ザシュッザシュッ! |
| ガシャーン |
パスカル | アリーシャ! |
アリーシャ | 大丈夫だ。私達が食い止める |
ルカ | うん!パスカルとエメロードさんを追わせたりしないよ! |
エメロード | 進みましょう! |
パスカル | …わかった!みんな、後でね! |
パスカル | すぐに終わらせてくるからさ! |
アイゼン | …行ったか |
| キュイーンキュイーン |
ロイド | こいつら、どっから湧いてくるんだ…!? |
アリーシャ | 先ほどよりも、遥かに数が多くなっているな |
アイゼン | シャトルへは行かせるな。ここを死守するぞ! |
ルカ | うん! |
scene2 | 背中を預けて |
パスカル | はあ…はあ…ここが…? |
エメロード | はい…。メインシステムのある、制御室です |
パスカル | あっ…!窓の手前にあるあれって…! |
エメロード | マナリスですね。周りを覆っている容器に、波動を遮断する技術が使われています |
| ピッ…ピピピ… |
パスカル | …なるほど、こうなってんのか。それなら… |
エメロード | …… |
エメロード | 何をしているのですか? |
パスカル | 何って…システムを停止させようとしてるんだよ |
エメロード | …目の前にマナリスがあるのに、回収しなくてよいのですか? |
パスカル | 仲間がピンチなんだもん!今はこっちの方が大切だよ |
パスカル | やっぱりこれじゃない、か…。いや、こっちを書き換えれば… |
エメロード | 仲間… |
エメロード | …そうでしたね。私も手伝いましょう |
| ピッ…ピピッ…! |
エメロード | メインシステムの中枢にアクセスしました |
エメロード | 少し複雑なシステムに書き換えられていますが…いけますか? |
パスカル | うん…!ありがとう。これなら、何とかなると思う! |
エメロード | では、取り掛かりましょう |
| ピッ…ピピッ…ピ… |
エメロード | …あの方々は、あなたの事を随分信頼しているようでしたね |
パスカル | そうなのかな~?だとしたら嬉しいけど、大変な仕事を任されちゃったよね |
パスカル | あたし達が失敗したら、みんなの命を危険に晒す事になっちゃうしさ |
エメロード | 重圧を感じているのですか? |
パスカル | 感じないって言ったら、嘘になるけど…あたしにしか、出来ない事だから |
パスカル | やらなきゃいけないって思うんだ。出来るのにやらないのは、出来ないのと一緒だから |
エメロード | …… |
エメロード | あなたは…仲間を置いて、マナリスを手に入れたいとは思わないのですか? |
エメロード | 手に届く場所に、マナリスがあると言うのに |
パスカル | マナリスより、みんなを助ける方がずっと大切だよ! |
パスカル | だって、マナリスの研究が進んでも、喜んでくれる仲間がいなきゃ、意味がないからね! |
エメロード | …なるほど。それが、あなたの考えなのですね |
パスカル | うん!だから、早くこのシステムを停止させないと…! |
パスカル | …これじゃない、か…。なら…この方法かな…? |
パスカル | 駄目だ、これだとシステムの中に入れない…! |
パスカル | (みんな、もう少しだけ持ちこたえて…!) |
| |
| ギュィイイン |
ルカ | くっ… |
アリーシャ | ルカ…!大丈夫か!? |
ルカ | うん!まだ、やれるよ…! |
ルカ | やあああっ! |
| ズバッ! |
| ギ…ギギギ… |
ルカ | ぜえ…はあ… |
ロイド | くそっ。わかってたけど、全然数が減らないな! |
アリーシャ | ああ、倒しても倒しても、次の機械が出てくる |
| ギュィイイン |
ロイド | ぐ…っ |
アリーシャ | うぅ… |
| |
アイゼン | はあああっ! |
| ドカッ |
| ガシャーン |
| |
アリーシャ | アイゼン…! |
アイゼン | 手間のかかる奴らだな。この程度で音を上げるのか? |
アリーシャ | …まさか!これくらいでへこたれはしないさ |
ロイド | ああ、パスカルが頑張ってるのに、俺達が諦めるわけにはいかねぇよ! |
ルカ | うん!限界まで戦うよ!今が逃げちゃいけない時なんだって、僕にもわかるから! |
アイゼン | ふっ… |
アイゼン | こちらから攻めるぞ!後れを取るなよ! |
scene3 | 背中を預けて |
エメロード | ──私の方は、準備出来ました |
パスカル | あたしも、もうちょっと…!あとは、ここをこうして… |
| ピッ…ピピッ…! |
パスカル | よし!出来たよ…! |
エメロード | では、システムを停止しましょう |
パスカル | うん!…みんな、お待たせ。これで最後っと! |
| ポチッ |
| ピ── |
| |
| ギ…ギギギ… |
ルカ | …!防衛機械が、止まった…? |
アイゼン | …らしいな。見ろ、他の奴らも停止していくぞ |
ロイド | ああ、これって…! |
アリーシャ | パスカルが、約束を守ってくれたようだな |
| |
パスカル | はあああ…何とか間に合った~!今回ばっかりは、焦ったよ~ |
エメロード | この短時間でシステムを停止させられるなんて… |
エメロード | さすがは、アンマルチアの末裔ですね |
パスカル | エメロードが隣にいてくれたから、心強かったよ。一人じゃないって思えたしさ |
エメロード | そうですか… |
エメロード | さて、システムの停止も済んだ事ですから…マナリスを取り出しましょうか |
| ピッ…ピピッ…! |
エメロード | …美しい輝きですね。ずっと見ていたくなります |
パスカル | そうかな?確かに綺麗だとは思うけど… |
パスカル | 見つめてるだけじゃ、物足りないよ~研究してる時の方が、わくわくするし! |
エメロード | ふふ…。技術者らしい意見ですね |
エメロード | さあ、マナリスを回収しましょう |
パスカル | 了解~! |
パスカル | これで、任務完了だね! |
エメロード | そろそろ、シャトルを出ましょうか。みなさんが待っているはずです |
パスカル | ああ~!そうだった!いけないいけない |
パスカル | そんじゃ、行こっか! |
| |
パスカル | みんな、無事~? |
アリーシャ | 私達は大丈夫だ。そちらも怪我はないか? |
エメロード | ええ、問題ありません |
ルカ | メインシステムの停止、上手くいったんだね…! |
パスカル | ルカ達があの機械を足止めしてくれてたからだよ~!…遅くなってごめんね |
ロイド | 全然不安じゃなかったぜ!パスカル達を信じてたからな |
パスカル | …へへ |
アイゼン | それで、マナリスは無事に確保出来たのか? |
パスカル | 勿論!ほら! |
ロイド | これで、五つのマナリスが揃ったんだな…!残すは、あと一つか… |
アリーシャ | そうだな。マナリスが手に入った事だし、一度本部へ戻ろう |
アリーシャ | エメロードも、私達と一緒に来てもらえるだろうか?かつての島の話を聞かせてほしいんだ |
エメロード | はい。ぜひ、同行させてください |
エメロード | 私の持つ知識や技術が役立つようであれば、協力は惜しみません |
アリーシャ | ありがとう、助かるよ |
パスカル | よし、それじゃみんなで本部に帰ろう~! |
scene1 | 小さな諍い |
パスカル | ふ~、やっと街の近くまで来たね! |
ロイド | ああ。ここまで来ると、帰って来たって感じがするよな! |
ルカ | 集落の中は閑散としてたけど、この辺りは人が多いし賑やかだもんね |
エメロード | これほどの活気があるとは…かつてのアヴァロン島を見ているようです |
アイゼン | この島に住民がいた頃は、今と同じくらい賑わっていたのか |
エメロード | ええ。様々な種族が共に暮らし、サフィアやマナリスの力を使って繁栄の道を歩んでいました |
アリーシャ | そうだったんだな…。今のアヴァロン島に人が訪れるようになったのは、最近の事だ |
アリーシャ | 突然現れた伝説の島を見ようと、各国から多くの観光客が集まっている |
ロイド | 街にはいろんな物があるんだぜ!島でしか売ってない土産とか…あと、飯も美味いんだ! |
パスカル | あたし達が街を案内するよ~!この前、発明に使えそうな道具がたくさん並んでる店を見つけたんだ~ |
エメロード | それは、興味深いですね。ぜひお願いしたいです |
アイゼン | 調査隊の本部は、街と逆方向だ。観光がしたいなら、本部にマナリスを届けてからにしろ |
パスカル | わかってるって~!楽しみにしててね、エメロード! |
エメロード | はい、ありがとうございます |
| プルルル… |
アリーシャ | ん…?通信機が… |
| ピッ |
ローエン | …聞こえていますかな?みなさん、任務ご苦労様です |
アリーシャ | ローエン殿!どうされたのですか? |
ローエン | みなさんにお願いしたい事がありましてね |
ロイド | 俺達に…? |
ローエン | ええ。実は…調査隊の街で、民衆が小競り合いを起こしているようでして |
ローエン | 街の中が混乱状態にあると聞いているため、警備の人数を増やし事態の収拾を図りたいと思っています |
ローエン | 任務続きでお疲れとは思いますが、行っていただけますか? |
アリーシャ | わかりました。すぐに向かいます |
ローエン | お願いします。くれぐれも、お気をつけて |
| ツー、ツー、ツー |
パスカル | ローエンが、調査隊の街に行けってさ~! |
アイゼン | …遊びで行くわけじゃないだろう。勝手に消えて、観光するなよ |
パスカル | 流石のあたしでも、それはしないってー!…多分 |
アイゼン | おい |
パスカル | 冗談だって~ |
アリーシャ | 小競り合いか…。記念式典の前にも、もめ事を起こしている者がいたが… |
ロイド | そう言えば、島でアリーシャに会った時に、喧嘩の仲裁をしてたよな |
アリーシャ | ああ。あの時はロイドに助けられたよ |
アリーシャ | 最近は警備が行き届いていて、もめ事の類は起こっていなかったんだが… |
ルカ | 街が混乱状態になるくらいだから、ただの喧嘩じゃなさそうだね |
ロイド | とりあえず行ってみようぜ!実際に見てみなきゃ、わかんないだろ |
アリーシャ | そうだな。エメロード、悪いが付き合ってもらえるだろうか |
エメロード | ええ、構いません |
アイゼン | 行くぞ。喧嘩の仲裁なら、殴って黙らせるのが一番だ |
パスカル | うひょ~、過激~! |
scene2 | 小さな諍い |
街の男1 | てめえ!絶対に許さねえ |
街の男2 | お前が先に突っかかって来たんだろうがよ! |
アリーシャ | これは… |
商人 | この野郎!盗んだ店頭の商品を返せってんだ! |
観光客 | しつこいんだよ!盗んでねえって言ってんだろ! |
ルカ | 思ったより、荒れてるね…。喧嘩をしてる人も、一人や二人じゃないみたい |
ロイド | 一体、何が起こってんだ…? |
??? | ロイド…? |
ロイド | ん?お前は…エミルか!? |
エミル | やっぱり、ロイドだったんだ…!元気そうでよかった |
アリーシャ | ロイドの知り合いなのか? |
ロイド | ああ。というか、何でエミルが調査隊の街にいるんだ…? |
エミル | 調査隊の一員として、警備の任務についてるんだよ |
エミル | ロイド達は、どうしてここに…? |
ロイド | 俺は、調査隊の本部から連絡を受けてここに来たんだ |
ロイド | 街で小競り合いが起こってるから、警備に協力してほしいって |
エミル | …!ロイドも調査隊に入ってたんだね |
アリーシャ | ローエン殿から事情は聞いている。私達に出来る事があれば、言ってくれ |
エミル | ローエンさんが…。人手が足りていなかったから、助かります |
エミル | 今、街の各所で暴動が起こっていて…警備の人間だけじゃ、手が回らないんです |
ロイド | 俺達も手伝うぜ!そのために、ここに来たんだからな |
エミル | ありがとう…!僕はこれから、街の東側に向かうんだ |
エミル | ロイド達は、西側の様子を見てきてくれないかな? |
アリーシャ | 了解した。早速、向かおう |
ロイド | ああ。また後でな、エミル! |
エミル | うん!任せたよ、ロイド |
scene3 | 小さな諍い |
街の男3 | ああ…イライラすんなお前の顔見てると、反吐が出る! |
街の男4 | それはこっちの台詞だ。さっきから難癖つけやがって! |
街の男3 | ああ?やるか?かかってこいよ! |
ルカ | ど、どうしよう…!今にも殴り合いが始まりそうだよ…! |
パスカル | あの人達、手に瓶を持ってる!危ないよ~! |
エメロード | あの二人には、周りの様子が見えていないようですね |
アイゼン | さっさと止めるぞ。他人の喧嘩に付き合ってる暇はないからな |
アリーシャ | アイゼン!いきなり殴りかかったりはしないだろうな!? |
アイゼン | …相手の出方による |
ロイド | まずは話し合いで解決しようぜ。──ん?おい、みんな!あれ… |
??? | 喧嘩は駄目だよ! |
街の男3 | 何だ?お前 |
街の男4 | ガキはすっこんでろよ! |
??? | こんな街中で暴れたりしたら、危ないよ。誰かが怪我をするかもしれない |
街の男3 | お前には関係ねえだろ! |
アイゼン | あいつは…! |
アリーシャ | いけない…!このままでは、あの子が危険だ |
ロイド | 行くぞ! |
| |
街の男4 | こっちは苛ついてんだ。さっさと行けよ |
??? | 落ち着いて。街の人達が、怖がってる |
街の男3 | うるせえな!早く失せろって言ってんだよ!一発殴らなきゃわからねえか!? |
| ヒュッ── |
??? | …! |
ルカ | あの人、瓶で殴る気だよ…! |
アリーシャ | くっ、間に合わな── |
| |
| ドカッ |
| ドサッ |
街の男3 | ぐ…… |
| |
ベルベット | まったく、急にいなくなったと思ったら…こんなとこで何してるの?フィー |
??? | ベルベット!ありがとう、助かったよ |
ロイド | あれは…!ベルベット…!? |
Name | Dialogue |
| 二人の来訪者 |
ロイド | あれは…ベルベット…!? |
アイゼン | …… |
ベルベット | 勝手に一人で行動しちゃ駄目でしょ。…怪我はない? |
ライフィセット | うん、平気だよ |
ベルベット | そう…。無事ならいいわ |
ベルベット | ──それで?何なの?こいつら |
街の男3 | う…う…あの女、殴りやがった… |
街の男4 | い、いきなり入ってきてお前こそ、何だよ…!やるつもりなら、容赦しねえぞ! |
ベルベット | …… |
ライフィセット | この人達、ここで喧嘩してたんだ。だから、止めようと思って… |
ベルベット | …全く。そんなの放っておけばいいのよ |
ライフィセット | でも…街の人達が怖がってたし、見ないふりはしたくなかったんだ |
街の男4 | この…!無視して話進めてんじゃねえ! |
ベルベット | うるさいわね |
| ドカッ |
| ドサッ |
街の男4 | うぅ…… |
ベルベット | …フィー。あたしは、あんたがやりたい事をやればいいと思ってる |
ベルベット | けど、危ない事だけはしないって約束して。いい? |
ライフィセット | うん、わかった… |
ロイド | おーい、ベルベット! |
ベルベット | あんたは… |
ライフィセット | …?ベルベットの知り合い? |
ベルベット | まあね |
ロイド | 俺はロイド。ロイド・アーヴィングだ!お前は…? |
ライフィセット | ライフィセットだよ。よろしくね |
ロイド | ああ、よろしくな! |
ロイド | それにしても…アヴァロン島でベルベットに会うなんてな!観光しに来たのか? |
ベルベット | …人を捜しに来ただけよ。あんたこそ、ここで何してるの |
ロイド | 俺は街を警備してる調査隊を手伝いに来たんだ |
ライフィセット | 調査隊って…? |
ロイド | 四大国が合同で結成した組織で島の調査や警備を任されてるんだ。俺もその一員なんだぜ! |
ライフィセット | へぇ、ロイドも調査隊なんだ…!島を調べるのって、面白そうだね |
アリーシャ | …ロイド。彼女達は君の知り合いなのか…? |
パスカル | あたし達にも紹介してよ~! |
ロイド | あ、悪い悪い!こいつは── |
ベルベット | …!あんたは…! |
ライフィセット | アイゼン…!? |
アイゼン | …久しぶりだな。ベルベット、ライフィセット |
ライフィセット | アイゼンも、この島に来てたんだね! |
アイゼン | ああ |
ルカ | え…!?アイゼン、二人と知り合いなの? |
アイゼン | まあな。前に、アイフリード海賊団の船にこいつらを乗せた事がある |
ロイド | そうなのか!?世界って思ったよりも狭いんだなぁ… |
ロイド | とりあえず…知らない奴もいるから、始めに自己紹介しようぜ! |
アリーシャ | そうだな。話をするのは、それからにしよう |
ライフィセット | へぇ…ここにいるみんな、調査隊に入ってるんだね! |
ベルベット | つまり…アイゼン、あんたも調査隊って事なの? |
アイゼン | ああ、そうだ |
ベルベット | ふぅん、あんたが海賊団以外の人間と行動するなんてね |
アイゼン | 成り行きでこうなっただけだ。深い意味はない |
ライフィセット | アイゼンがここにいるなら…海賊団のみんなも、この島に来てるの? |
アイゼン | いや、俺だけだ。今は海賊団の奴らと離れて、単独で行動している |
ベルベット | そこまでして、ここに来なきゃいけない理由でもあったわけ? |
アイゼン | …死神の呪いが解けるかどうか、確かめに来たんだ |
ライフィセット | 呪いを…!?一体、どうやって… |
アリーシャ | もしや君達は、サフィアの伝説を知らずに島へ来たのか? |
ベルベット | サフィア…? |
アリーシャ | この島にある宝の名称だ。サフィアを使えば、どんな願いもかなえられると言われている |
ベルベット | どんな願いも…。胡散臭い話ね |
エメロード | 実際にはかなえられない願いも存在しますが…貴重な宝である事に変わりはありません |
パスカル | 古代のアヴァロン島に住んでた人達はサフィアの力を使って島を繁栄させてたんだって~ |
ライフィセット | そうなんだ!…つまり、アイゼンはサフィアの話を聞いて島に来たんだね? |
アイゼン | ああ。とある港に停泊していた時に、サフィアの噂を耳にしてな。特に興味はなかったが… |
アイゼン | ある男に「死神の呪いが解ける可能性があるなら試してみるべきだ」と言われて、ここまで来たんだ |
ベルベット | まぁ、確かに…やれる事はやっておかないと、後悔するかもね |
ライフィセット | それで…もし呪いが解けたら、アイゼンはどうするつもりなの? |
アイゼン | 詳しくは考えていないが…海賊として、冒険は続ける |
アイゼン | だが…その前にまずはエドナに顔を見せに行くつもりだ |
ルカ | エドナって…? |
ライフィセット | アイゼンの妹だよ |
パスカル | ええ!?アイゼンって、妹がいるの!?聞いてないよ~! |
アイゼン | …聞かれなかったからな。あいつは、たった一人の家族だ。今は離れて暮らしている |
アリーシャ | それは…死神の呪いが原因なのか? |
アイゼン | …ああ。俺と一緒にいると、あいつは不幸な目に遭うからな |
アイゼン | あいつに死神の呪いが降りかからないように離れて暮らすと決めてから、一度も会っていない |
アリーシャ | …すまない。辛い事を聞いてしまったな |
アイゼン | 気にするな。昔は違ったが…今の俺はたとえ呪いが解けたとしてもあいつと一緒に暮らそうとは思わない |
アイゼン | 俺の居場所は、あの船だけだからな。エドナも、それは理解している |
アイゼン | それに…あいつとは手紙のやり取りがある。…それだけで十分だ |
アリーシャ | そうか…。それを聞いて、安心したよ |
ロイド | アイゼンの妹か…。機会があったら、一度会ってみてぇな! |
アイゼン | …一つだけ言っておく。妹に手を出したら殺すからな |
ロイド | …は? |
ベルベット | また言ってる…。ほんと、バカ兄ね |
アイゼン | 前にも言っただろう。兄バカと言え |
ルカ | それはいいんだ… |
パスカル | …… |
アイゼン | …何だ |
パスカル | う~。あたし、アイゼンの呪いが解けるように、全力で頑張るよ! |
アイゼン | 急に何を言い出すかと思えば…今更だな |
パスカル | だって、もしお姉ちゃんがあたしと会ってくれなくなったら悲しいもん |
パスカル | だから…妹に会う事を諦めないでほしいんだよね |
アイゼン | …そうだな。俺も、出来ればあいつに会いに行ってやりたい |
アリーシャ | そのためにはマナリスを全て集めて、サフィアへの道を切りひらかなくてはな |
??? | おーい!ロイド、みんな! |
ロイド | エミル!東側の暴動は収まったのか? |
エミル | うん。応援のお蔭で警備の人員を確保出来たから、想定よりも早く事態を収められたよ |
エミル | こっちの暴動も、収まったみたいだね。ありがとう、協力してくれて |
ロイド | あー…実は、俺達は何もしてなくてさ |
ロイド | ここにいるベルベットとライフィセットが、喧嘩してた奴らを止めてくれたんだ |
エミル | そうなの…? |
ベルベット | …別に。あたしは何もしてない。絡んで来た奴を殴っただけ |
ベルベット | 喧嘩を止めようとしたのは、フィーよ |
エミル | 君が…。ありがとう |
ライフィセット | う、ううん…!僕は、何も… |
アリーシャ | 謙遜する事はない。瓶を振り回している相手に向かって行ったんだ |
アリーシャ | 君がした事は、勇気ある行動だったと私は思うよ |
ライフィセット | そうかな… |
ベルベット | …… |
アイゼン | …暴動が収まったなら、そろそろ本部に戻るとしよう |
アリーシャ | そうだな。エミル、後の事は任せてもいいだろうか |
エミル | はい、僕の方で対処します。ご協力ありがとうございました |
パスカル | そんじゃ、本部にマナリスを届けに行きますか~ |
ロイド | ベルベットとライフィセットは、ここに残るのか? |
ベルベット | 街の外に出て、島を見て回るわ。…ここには、あいつがいないみたいだし |
ロイド | 人を捜してるなら、エルピスの塔の近くに行ってみるといいぜ!あそこが一番人の集まる場所だからな |
ベルベット | そう、わかった |
ライフィセット | アイゼン、みんな、またね! |
アイゼン | ああ、またな |
scene1 | 成長と信頼 |
アリーシャ | ──失礼します。アリーシャ隊、帰還いたしました |
ローエン | ご苦労様です。そろそろ戻られる頃だと思っていましたよ |
ローエン | 調査隊の街で起こっていた暴動は、無事鎮静化されたと聞いています |
ローエン | ご尽力いただき、ありがとうございました |
ルカ | い、いえ…!少しでも役に立てたならよかったです |
ロイド | 俺達に出来る事があったら、いつでも言ってくれよ! |
ローエン | ほっほっほ、頼もしいですね。心強い限りです |
ローエン | さて…早速で申し訳ありませんが、今回の任務について報告をお願い出来ますか? |
アリーシャ | はい。集落での事は、ジェイからお聞きでしょうか? |
ローエン | ええ、そちらにいらっしゃるエメロードさんの事も伺っていますよ |
アリーシャ | では、ジェイと別れた後に行った調査の内容について、私の方からご報告いたします |
アリーシャ | ──このようにして、マナリスの確保に至りました。報告は以上になります |
ローエン | …なるほど。今回の任務は、想像以上に危険を伴うものだったようですね |
ルカ | エメロードさんがいてくれたから、危ない状況を切り抜けられたと思います |
パスカル | そうだね~。私一人じゃ、基地の防衛を突破出来なかっただろうし… |
ローエン | それはそれは…。エメロードさん、調査隊へのご協力感謝します |
エメロード | …お役に立てたのであれば幸いです |
ローエン | 勿論です。エメロードさんの助力がなければ、マナリスの確保は困難だったでしょう |
ローエン | 引き続きあなたのお力をお借りしたいのですが…よろしいですかな? |
エメロード | はい。私の知識が役立つようであれば、協力は惜しみません |
ローエン | ありがとうございます。何分、私達も島について知らない事が多いので助かります |
ローエン | お疲れでなければ、もう少しこちらに留まって、お話を聞かせていただきたいのですが… |
エメロード | ええ、構いません |
パスカル | それなら、あたし達もここに残った方がいい? |
ローエン | いえ。任務の報告は受けましたので、マナリスを保管庫に届けて頂ければ宿舎で休んでいただいて大丈夫ですよ |
ローエン | ただ…その前に一つだけ、アイゼンさんにお話があります |
アイゼン | 俺に?…何だ |
ローエン | あなたの献身的な協力によって、マナリスの研究が飛躍的に発展したと聞いております |
ローエン | ですので…上層部は、一般公開されている場所に限り |
ローエン | アイゼンさんの単独行動を許可するとの事です |
アイゼン | …! |
アリーシャ | では…!アイゼンの監視を解いてもよいという事ですね? |
ローエン | はい、その通りです |
ルカ | よかったね、アイゼン |
アイゼン | …ああ。礼を言う |
ローエン | いえいえ。──私からは以上です |
ローエン | みなさん、任務続きでお疲れでしょう。数日間はゆっくりと身体を休めてください |
アリーシャ | 心遣い感謝いたします、ローエン殿 |
パスカル | そんじゃ、保管庫にマナリスを届けて宿舎に戻ろっか~! |
パスカル | エメロードは、また後でね! |
エメロード | はい |
アリーシャ | それでは、私達はこれで失礼します |
ロイド | ──ローエン! |
ローエン | おや、どうかなさいましたか? |
ロイド | ちょっと聞きたい事があってさ。…コレットに会いたいんだけど、どこにいるか知ってるか? |
ローエン | コレットさんなら、貴賓室にいらっしゃると思いますよ |
ローエン | 外交会議が開かれるまでの間、そちらで待機されると聞いておりますので |
ロイド | わかった。マナリスを届け終わったら行ってみるよ!教えてくれて、ありがとな |
ローエン | いえいえ、どういたしまして |
ローエン | さて…話を始める前に、お茶でも入れましょうか |
ローエン | エメロードさんもお疲れでしょう。温かい物を飲みながら話す方が、気持ちが落ち着きますからね |
エメロード | …ありがとうございます |
本部の男1 | ──ローエン、ここにいたのか。マナリスの使用について話がある |
ローエン | おや…今は、大切なお客様がいらっしゃるのですが…。急ぎの御用ですか? |
本部の男2 | 客人だと?…誰だ、その女は |
エメロード | …… |
ローエン | この島に関する重要な情報を提供してくださっている方です |
ローエン | こちらからお願いして、調査隊にご協力いただいているんですよ |
ローエン | それで…マナリスの使用について、でしたかな。それは前回もお断りしたはずですが |
ローエン | 天族以外の種族がマナリスを使用すると、どのような影響が出るかわかりません |
ローエン | だからこそ、調査隊内ではマナリスの使用を禁じているのです |
本部の男1 | …怪しいものだな。そう言って、裏では他国の奴らが使用してるんじゃないのか? |
本部の男2 | シルヴァラントを差し置いて、キムラスカに使用を許しているんじゃないだろうな! |
ローエン | …ご心配なく。マナリスの保管には細心の注意を払っています |
ローエン | 研究目的以外で持ち出される事は、あり得ません |
本部の男1 | ふん…どうだかな |
本部の男2 | 次の会議でマナリスの使用について抗議してやる!…行くぞ |
本部の男1 | ああ |
ローエン | …お騒がせしてすみませんでした |
エメロード | いいえ…。あの方達は? |
ローエン | 本部の人間です。数日前からマナリスを使用したいと話していましてね |
ローエン | 他国の者にマナリスを使われる事を恐れての行動でしょう |
ローエン | 島の調査は四大国が協力して行う平和的な催しですが──綻びはあるものです |
エメロード | そうですか… |
エメロード | …… |
| |
パスカル | ──よし!マナリスは保管庫に届けたし、任務完了だね~ |
ルカ | はぁ…。何だか力が抜けちゃったよ |
アイゼン | 任務続きで、気が張っていたんだろうな |
アリーシャ | ああ。みんな、宿舎に戻ろう。ローエン殿が言っていたように、しっかりと休息を取るべきだ |
ロイド | あ、俺…その前に、貴賓室に寄ってくよ! |
ルカ | 貴賓室…?何か用があるの? |
ロイド | コレットがそこにいるってローエンに聞いたんだ。会いに行こうと思ってさ |
ロイド | 最近、任務が続いててあんまり話せてなかったからな |
ルカ | わかった。そういう事なら、僕達は先に宿舎に戻ってるね |
パスカル | コレットによろしく伝えて~ |
ロイド | ああ!みんな、また後でな! |
scene2 | 成長と信頼 |
ロイド | ──コレット! |
コレット | ロイド…!? |
コレット | 戻って来てたんだね。お帰りなさい |
ロイド | ただいま。さっき任務から戻って来たんだ |
ロイド | ルークもここにいたんだな!会議に出席するのか? |
ルーク | まあな。面倒だけど、国の仕事だから断るわけにもいかねぇし… |
コレット | ルークもさっき調査から戻って来たばかりなのに…会議に出るなんて、偉いよねぇ |
ロイド | そりゃすげーな。…疲れてないか? |
ルーク | べ、別に…こんなの大した事じゃねぇよ |
ロイド | そっか…それならいいんだ!でもま、無理はするなよ! |
ロイド | それで…四大国連合調査隊は、砂漠地帯の調査に行ってたんだよな? |
ルーク | ああ。レーダーに弱い反応があったけど、マナリスがある場所は特定出来なかった |
ルーク | 他の隊と入れ替わりで、俺達は一旦本部に戻って来たんだよ |
コレット | どうして反応が弱かったのかな…。何かに遮られてるとか…? |
ルーク | 何でかはまだわからねぇけど…今は他の隊が調べてるぜ |
コレット | 気になるね |
コレット | ロイドの任務はどうだった? |
ロイド | ん~…いろいろ話したい事があるんだけど… |
ロイド | とりあえず、マナリスは確保出来たぜ! |
ルーク | まじかよ!?…またお前らにおいしいとこ持ってかれたな |
ロイド | たまたまだって!ルーク達だって、前の任務でマナリスを回収してただろ? |
コレット | そだね。ロイドもルークもすごいよ |
ルーク | …… |
ロイド | そういえば…マナリスがあった場所にでっかい乗り物があったんだ! |
ロイド | シャトルって言って、空を飛べるらしいぜ! |
コレット | 本当に…?私も見たかったな |
ルーク | 俺達なんて、砂漠で山みたいにでかい魔物と戦ったんだぜ! |
ロイド | え!?そんなに大きい魔物を四人で倒したのか…? |
ルーク | ああ。ちょっと手間取ったけどな |
コレット | すご~い!強いんだね、ルーク |
ルーク | へ…へへ。ま、まあな |
スパーダ | …えらく盛り上がってンな |
ロイド | スパーダ!お前も会議に参加するのか? |
スパーダ | いや…今終わって、戻ってきたところだ |
スパーダ | ああ、そうだ…コレット、ルーク。本部の奴らが呼んでたぜ |
ルーク | げ…もうそんな時間か… |
コレット | …ロイド、ごめんね。まだまだ話し足りないんだけど…会議の時間みたい |
ロイド | 気にしないで行って来いよ!ここで待ってるからさ |
コレット | 本当?やったー!戻ってきたら、お話の続き、聞かせてね |
コレット | それから…出来れば、みんなでご飯が食べたいな |
ロイド | いいな、それ! |
スパーダ | じゃあ、俺もここで待ってるぜ |
コレット | うん、わかった |
ルーク | また後でな |
ロイド | それにしても…スパーダもルークも大変だよな |
ロイド | 任務から帰って来てすぐに会議なんてさ |
スパーダ | 別に大した事じゃねェぜ。基本的にはお偉いさんの話を聞いてるだけだしな |
ロイド | へー、そんなもんか? |
スパーダ | ああ。そう言や、お前らマナリスを確保したらしいじゃねぇか |
ロイド | ああ!そうなんだ!…あれ、でも何で知ってるんだ? |
スパーダ | 本部の奴らが話してたぜ。お手柄じゃねぇか |
スパーダ | ルカの奴は、任務中にヘタれヌカしてなかったか? |
ロイド | 全然そんな事ないぜ!ルカが立てた作戦のお蔭で、マナリスが手に入ったんだ |
スパーダ | あいつが… |
ロイド | 出会ったばっかの頃のルカは、自分の気持ちを伝えるのが苦手だったみたいだけど… |
ロイド | 今は俺達に遠慮せず、意見を言ってくれるようになったしな! |
スパーダ | そうか。じゃあ、調査隊に応募してやったのは、正解だったみてぇだな |
ロイド | へ…?スパーダが応募したのか? |
スパーダ | ああ。あいつは、自分の事を弱い奴だと思ってる。でも、俺はそうは思わねぇ |
スパーダ | だから…ルカに内緒で調査隊に応募したんだ |
スパーダ | 調査隊に入れば、ルカも変われるんじゃねぇかと思ってよ |
ロイド | そうだったのか。ルカとは、出会ってからまだそんなに経ってないけど… |
ロイド | 弱い奴なんて思った事ないぜ。日に日に強くなってるし、何度も助けられたんだ |
ロイド | だから、ルカが信頼出来る奴だって自信を持って言えるぜ! |
スパーダ | 信頼、か。それならルカも、お前と同じ気持ちだと思うぜ |
スパーダ | 亜空間にいた時も、絶対にお前がダモクレスの剣を手に入れるって思ってたみてぇだしよ |
ロイド | そうなのか…?何か照れるな… |
ロイド | でも、ルカが信頼してくれてるなら、その気持ちに応えたいって思うよ |
ロイド | まだまだ足りないところもたくさんあるけどな |
スパーダ | へっ!言うじゃねェか。そういう前向きな考え方、嫌いじゃねェよ |
スパーダ | …ああ見えてルカは、熱くなると自分の身を顧みずに突っ走るところがあるんだ |
スパーダ | そういう時は、無茶する前に力を貸してやってくれ |
ロイド | ああ、わかった。任せとけ! |
スパーダ | ありがとな。ルカの事、頼んだぜ |
scene1 | 技術者の選択 |
パスカル | こっちに行って…ここを曲がって、保管庫に… |
パスカル | …よし。移動経路に問題はなし、と |
??? | ──あれ?パスカル? |
パスカル | やっほー!二人が一緒にいるの、珍しいね |
ルーク | 会議に出てたんだよ。お前は、ここで何してんだ? |
パスカル | 改良したレーダーが問題なく使えるか試してたんだよ |
ルーク | 改良って…レーダーの機能に不具合でもあったのか? |
パスカル | ううん。砂漠の時みたく、マナリスの信号が途中で途切れる事があるかもしれないじゃん? |
パスカル | そういう時に、直前にあった場所が割り出せるようにしたくてさ~ |
パスカル | じゃーん!レーダーを改良して、マナリスの移動経路を記録出来るようにしてみました! |
コレット | わぁ~!新しい機能をつけたんだね~! |
コレット | これって…本部にあるマナリスの移動経路も記録されてたりするの? |
パスカル | うん!この前あたし達が回収したマナリスの記録ならあるよ!見てみて! |
| ポチッ…! |
コレット | あ、映像が映った!赤い印と…点線があるね |
パスカル | その赤い印が、マナリスのある保管庫の場所だよ |
パスカル | そんで、赤い印に繋がってる点線が移動経路を表してるんだ~! |
コレット | すご~い!パスカルって、本当に何でも作れちゃうんだね! |
コレット | 前にね、ロイドが話してたの。パスカルの発明品には、いつも助けられてるって |
パスカル | そうなの?嬉しい事言ってくれるね~ |
パスカル | あ、そう言えば…コレット、ロイドには会えた? |
コレット | うん!さっきまで、一緒にお話ししてたよ |
コレット | 私とルークが会議に呼ばれたから、今は貴賓室でスパーダと一緒に待っててくれてるんだ |
パスカル | そっか!ちゃんと会えたならよかったよ |
コレット | これから二人と合流してご飯に行くんだけど…パスカルも一緒にどうかな? |
パスカル | ん~…。実は…さっきバナナ食べちゃったんだよね~ |
ルーク | バナナだけじゃ足りねぇだろ |
パスカル | バナナパイも食べたよ! |
コレット | あはは、パスカルってバナナが好きなんだね |
パスカル | うん!だからお腹いっぱいで…。せっかく誘ってくれたのに、ごめんね~ |
コレット | ううん、だいじょぶだよ。また今度、一緒に行こうね |
ルーク | じゃあ、俺達は貴賓室に戻るけど…お前はこの後どうすんだ? |
パスカル | ん~、レーダーのテストが終わった後の事は、特に考えてなかったな~ |
コレット | それなら、研究室に行ってみるといいよ! |
コレット | サフィアとマナリスに関する新しい情報が入ったんだって |
パスカル | え、ほんとに!? |
ルーク | あー…、そういや、会議中にそんな話してたな |
パスカル | わかった、これから行ってみるよ!教えてくれてありがと~ |
scene2 | 技術者の選択 |
スレイ | ──ミクリオ、早く!まずは森の遺跡で発見された壁画を調べに行こう |
ミクリオ | そんなに慌てなくてもいいだろう。心配しなくても、遺跡は逃げないよ |
パスカル | …ありゃ?二人共、どっかに出掛けるの? |
ミクリオ | ああ、今から森の遺跡に行くところだ |
パスカル | 遺跡に…?何か気になる事でもあった? |
ミクリオ | 僕らが解読を進めていた古代文字に言語の規則性を発見してね |
ミクリオ | 一部の文字が読めるようになったから遺跡にある壁画を再調査しに行くんだ |
パスカル | なるほどね~。壁画にはサフィアとマナリスの事が描かれてたし… |
パスカル | 何か重要な記述が残されてるかもしれないもんね |
スレイ | うん、オレ達もその可能性が高いと思って。とにかく、遺跡に行ってみるよ! |
ミクリオ | 慌ただしくてすまない。何か進展があれば、後で話すよ |
パスカル | うん!頑張ってね、二人共! |
スレイ | ありがとう。じゃあパスカル、また! |
パスカル | またね~ |
| |
パスカル | ただいま~! |
リフィル | お帰りなさい、パスカル。調査から戻って来てたのね |
パスカル | うん、ちょっと前にね!…それより、サフィアとマナリスに関する新しい情報が入ったんだって? |
キール | ああ。調査隊に情報を提供した人物がいたらしい |
リフィル | あなた達が調査した断崖の集落に資料が残っているそうよ。今、別の隊が回収に向かっているわ |
パスカル | (あれ…? あの時、調べられる物は全部 調べたはずだけど…) |
パスカル | (エメロードの記憶が戻って、 ローエンに伝えたって事かな) |
パスカル | それで…新しい情報って、何だったの? |
キール | ああ。それなんだが…マナリスは、サフィア由来の発明品らしい |
キール | 詳しい事は、研究資料を読んでみないとわからないが… |
キール | サフィアが破壊された場合、マナリスの力も無効化されるそうだ |
リフィル | 情報を元に推測すると…二つの発明品は、同じ構造をしていると考えられるわ |
パスカル | やっぱり…サフィアもマナリスと同じように、何らかを代償にして願いをかなえる物なのかな…? |
リフィル | そう考えるのが自然ね。かなえる願いや代償の大きさに差はあるかもしれないけれど… |
リフィル | サフィアもマナリスと同じように、扱いには細心の注意を払うべきだわ。ただ── |
キール | 何か心配な事でもあるのか? |
リフィル | …調査隊の上層部が、マナリスの利用価値や用途について連日話し合いを重ねているそうなの |
リフィル | 一部の人間は、今すぐにでもマナリスを使用したいと考えているみたいね… |
キール | バカな!使い方を間違えれば、使用者に危険が及ぶんだぞ |
パスカル | 安全に使える物だって証明出来るまでは、使用するべきじゃないのに… |
パスカル | …技術を使って、誰かが不幸になるのは見たくないよ |
キール | …そうだな。マナリスを悪用しようとする奴がいたら、ぼく達で何とか食い止める |
リフィル | ええ。あなたが任務に行ってる間は、私達が気を付けておくから…心配しないで、パスカル |
パスカル | …うん!二人共、ありがとう |
パスカル | ──よし!気を取り直して、あたしもマナリスの研究に参加しようかな! |
リフィル | ええ、歓迎するわ。早速、取りかかりましょう |
scene3 | 技術者の選択 |
パスカル | 研究に没頭してたら、すっかり暗くなっちゃったな~ |
パスカル | ──ん?あれって… |
フレン | 相変わらず、じっとしてるのは苦手みたいだな |
ユーリ | 人をガキみたいに言うな |
パスカル | ユーリと…フレン? |
フレン | …聞いてるよ。本部の指示に従わず、自由気ままに行動してるって |
ユーリ | …… |
フレン | 行方不明になった四大国連合調査隊の捜索にも、勝手に加わったそうだね |
ユーリ | アスベルやルークがいるんだ。放っておくわけにもいかねぇだろ |
フレン | だからと言って、身勝手な行動を取るべきじゃない |
フレン | 僕達は調査隊なんだ。調査隊員として規則を守るべきだろう |
ユーリ | 堅苦しいのは苦手なんだよ |
ユーリ | それに、目の前で困ってる連中をほっといてまでやらなきゃいけない事なんてねぇだろ |
フレン | ユーリ… |
フレン | 全く、君はいつまで経っても… |
ユーリ | ほっとけ |
ユーリ | そんな事より…マナリスの管理は万全なのか? |
ユーリ | 噂じゃ、上層部の奴らがマナリスの使用について揉めてるそうじゃねぇか |
フレン | …確かに最近の会議ではそういった話し合いも行われている |
ユーリ | 懲りない奴らだな。星のカケラをめぐって争いが起こったっていうのに… |
ユーリ | また、同じ事を繰り返すつもりなのかよ |
フレン | …君が言いたい事はわかる。出来る限り、上層部の動きには気を配っておくよ |
ユーリ | ああ、頼んだぜ |
調査隊員 | フレン様、こちらでしたか |
フレン | どうした? |
調査隊員 | 森林地帯で魔物が暴れているという報告を受けました |
調査隊員 | 討伐の指揮を執っていただきたいのですが |
フレン | わかった |
フレン | ユーリ、何度も言うようだけど… |
ユーリ | 調査隊として規律と秩序を守れ、だろ? |
ユーリ | わかったわかった |
フレン | …… |
ユーリ | ありゃ、疑ってる顔だな…。…ん? |
| |
パスカル | ユーリ!元気だった~? |
ユーリ | ああ、変わりないぜ。お前、ここで何してんだ? |
パスカル | 宿舎に戻ろうとしてたんだけど、二人が話してるのが見えたから、会話に混じろうと思ってさ~ |
ユーリ | フレンは、調査隊の奴に呼ばれて森の方に向かったぜ |
パスカル | うん、見えてたよ。ユーリは、フレンと知り合いだったんだね! |
ユーリ | まあ、腐れ縁ってやつだな |
パスカル | へぇ~!二人でどんな話してたの? |
ユーリ | 別に、大した事は話してないぜ。調査隊の規律を守れって出会い頭に小言を言われただけだ |
パスカル | 何なに?フレンを怒らせるような事しちゃった? |
ユーリ | 勝手に四大国連合調査隊の捜索に加わったり…まぁ、いろいろだな |
ユーリ | 調査依頼があるまで待ってるのは性に合わないんだよ |
パスカル | わかるな~。あたしも、お姉ちゃんによく注意されるんだけど… |
パスカル | じっとしていられなくて、他の人を巻き込んじゃう事があるんだ |
パスカル | マナリスの波動を追って、勝手に森の中に入った時もルカとロイドを巻き込んじゃったし |
ユーリ | 仲間が理解してくれてんなら、いいんじゃねぇの |
ユーリ | 自分が選んだ道は、胸張って進むべきだと俺は思うぜ |
パスカル | …うん、そうだね!ルカ達とも上手くやっていけてるし、いいかな~ |
パスカル | そう言えば…近くに来た時にちょっと聞こえちゃったんだけど…マナリスについてフレンと話してたよね? |
ユーリ | ああ、それがどうかしたか? |
パスカル | あたしも、ユーリと同じ事が気になってるんだ |
パスカル | …昔、サフィアを悪用してこの島に瘴気を蔓延させた人がいたみたいなんだよね |
ユーリ | その話…どこで知ったんだ? |
パスカル | カタグラフィで島の住人達が話してるのを見たんだよ |
パスカル | 同じような悲劇が起こらないように、マナリスを悪用しようとする人がいたら、止めなきゃいけない |
ユーリ | …そうだな。上の奴らは、信用出来ないが…今のところは様子を見るとするか |
ユーリ | 上層部の事はフレンに任せて、オレ達はオレ達が出来る事をしようぜ |
パスカル | ユーリはフレンを信頼してるんだね~ |
ユーリ | 他に選択肢がないだけだ。あいつが一番、上層部に近いところにいるし… |
ユーリ | フレンの他にお偉いさんで親しい奴なんていないしな。ま、比較の問題ってやつだ |
パスカル | いいね~!男同士の熱い友情!憧れちゃうな~ |
ユーリ | …聞いてねぇな |
scene1 | 金髪の少女 |
アイゼン | …… |
アイゼン | (エルピスの塔の近くで聞いた、 あの声…) |
| |
??? | 寄り道しないって…でしょう。いい加減に… |
| |
アイゼン | (やはり、似ていた) |
アイゼン | (この島に、 エドナがいる…のか?) |
アイゼン | (…人の出入りが多い港は、 情報を集めやすい) |
アイゼン | ──ここなら、何か掴めるかもしれんな… |
アイゼン | (次の任務が与えられるまでに、 あいつがここにいるのかどうか 確かめる必要がある) |
アイゼン | 手当たり次第に聞いてみるしかなさそうだな… |
調査隊員 | ──いえ、そういった人は見かけていませんね |
アイゼン | …そうか。手を止めて悪かった |
調査隊員 | とんでもない。お力になれず、すみません |
アイゼン | (何人かに尋ねてみたが…島で エドナを見た奴はいなかった) |
アイゼン | (この島では、人間にも あいつの姿が見えるはずだが…) |
アイゼン | …もう少しだけ探ってみるか |
アイゼン | ──おい。聞きたい事がある |
観光客 | ん…?何だい? |
アイゼン | 人を捜してる。金髪の小柄な奴で、身長は多分…このくらいだ |
アイゼン | どこかで見かけていないか? |
観光客 | 金髪の子なら…ついさっき、あの辺りですれ違ったよ |
アイゼン | 本当か…!? |
観光客 | ああ。すぐそこだから、案内するよ |
観光客 | ──この小屋の近くだ |
アイゼン | 手間をかけたな |
観光客 | どうって事はないさ。それじゃ、私はこれで失礼するよ |
アイゼン | …… |
| ガヤガヤ… |
アイゼン | (人が多すぎるな…。 この中にエドナがいるのか?) |
アイゼン | …!あれは… |
??? | …… |
アイゼン | おい、待て…! |
| ガシッ── |
エミル | え…!? |
アイゼン | お前は… |
エミル | あの…。僕に何か…? |
アイゼン | いや…人違いだった。…悪かったな |
エミル | い、いえ…。あなたは確か、ロイドと一緒にいた… |
アイゼン | アイゼンだ |
エミル | アイゼンさんは…誰かを捜しているんですか? |
アイゼン | …ああ |
エミル | 僕でよければ手伝いますよ。港には、警備の仕事でよく来るので何か力になれるかもしれません |
アイゼン | そうか…。なら聞くが、どこかで金髪で小柄な女を見ていないか? |
エミル | 金髪…。…だから、さっき僕の肩を掴んだんですか? |
アイゼン | ああ…。港で金髪の小柄な人間を見たと聞いたもんでな |
エミル | なるほど、そうだったんですね…。…アイゼンさんが捜している人かどうかはわかりませんが… |
エミル | ここに来る前に船着き場で金髪の女の子を見かけましたよ |
アイゼン | …!どれくらい前の話だ? |
エミル | ついさっきです。僕も今ここに来たばかりなので…まだあそこにいるかもしれません |
エミル | 船着き場は、階段の先にあります。よかったら、行ってみてください |
アイゼン | そうか。礼を言う |
エミル | いえ、お役に立てたならよかったです。それに…お礼なら、僕の方こそ |
アイゼン | …?何の事だ |
エミル | 調査隊の街で暴動が起こった時…警備の応援に駆け付けてくれましたよね? |
エミル | あの時はありがとうございました。…捜している人が見つかるといいですね |
アイゼン | …ああ |
scene2 | 金髪の少女 |
アイゼン | ここが船着き場か… |
??? | 悪いけど、湖の遺跡の事はよく知らない |
アイゼン | …ん?あれは… |
| |
パティ | うちらはそんな言葉で誤魔化されたりしないのじゃ |
チャット | あなたが湖に向かったという話は、調査隊の人から聞いています |
パティ | …というより、調査隊の話を盗み聞きしたのじゃが |
チャット | パティさん、しー!それは言っちゃいけないやつです! |
セネル | …?何か言ったか? |
パティ | 何でもないのじゃ! |
アイゼン | 誰かと思えば…お前達か |
アイゼン | (確かに、金髪で小柄な女では あるが…) |
チャット | アイゼンさんじゃないですか!また会いましたね |
パティ | もしや…アイゼンも、お宝の話を聞きに来たのか? |
アイゼン | 宝…? |
チャット | 湖の遺跡で回収されたマナリスの話ですよ!今、この人に聞いていたところです |
セネル | だから…俺は知らないって言ってるだろ |
セネル | 確かに、遺跡の傍まで船を出したが…中には入ってないんだ。マナリスの話も詳しくは聞いてない |
パティ | なんじゃと!? |
セネル | 俺の任務は、アヴァロン島に侵入した海賊を捕縛する事だったからな |
チャット | 海賊を… |
パティ | 捕縛… |
セネル | あの二人、急に離れてどうしたんだ…? |
アイゼン | あいつらの事は気にするな |
チャット | これ以上、あの人に話を聞くのは危険ですね… |
パティ | そうじゃな。うちらが海賊だという事がバレたら捕まってしまうのじゃ |
チャット | はい…。それにしても、また無駄足でしたね。今回の情報は信憑性が高いと思っていたんですが… |
パティ | 落ち込んでいる暇があったら、次の作戦を考えるのじゃ! |
チャット | …!そうですね、パティさん。アイゼンさんに調査隊が掴んでいる情報がないか聞いてみますか? |
パティ | それなら…もっといい考えがあるのじゃ! |
アイゼン | …… |
パティ | アイゼン、話があるのじゃ |
アイゼン | …俺にはない。お前達の話に興味もない。じゃあな |
| グイッ── |
パティ | 待つのじゃ! |
アイゼン | …離せ |
パティ | 洞窟での事、忘れたとは言わせないのじゃ! |
| グイッ── |
チャット | ボク達が加勢しなかったら…危ない状況でしたよね? |
アイゼン | …あの時は助かった。礼を言う。これでいいか? |
アイゼン | 満足したなら、腕を離せ |
パティ | 礼はいらないのじゃ!その代わり…うちらのマナリス探しに協力してもらおうと思っての |
アイゼン | 断る。俺にはやる事があるからな |
チャット | やる事…?それは、ボク達を助けるよりも大切な用事なんですか? |
パティ | 恩を仇で返すとは獲物を狙うサメのように、血も涙もない男なのじゃ! |
アイゼン | お前達が勝手に恩を売りつけているだけだろう |
パティ | 酷いのじゃ! |
チャット | もしかして…一人でお宝を探しに行くつもりじゃないでしょうね? |
アイゼン | 違う。…妹を、捜しているだけだ |
セネル | 妹…? |
アイゼン | この島にいる確証はないが…。エルピスの塔の近くで、妹と似た声を聴いた |
チャット | へー、アイゼンさんって妹がいたんですね |
パティ | アイゼンの妹という事は…仏頂面で高圧的な雰囲気なのか? |
チャット | パティさん、失礼ですよ!確かに、アイゼンさんはちょっとだけ乱暴な人に見えますけど |
アイゼン | …妹は、優しくて思いやりのある子だ |
アイゼン | お前達の考えているような、心のない奴じゃない |
アイゼン | …あいつがここにいるなら呪いが降りかかる前に、島の外へ出す必要がある… |
パティ | ん…?何か言ったかの? |
アイゼン | いや、こっちの話だ |
セネル | …何か、事情があるようだな |
セネル | 俺はよく港に出入りしてるんだ。特徴を教えてくれれば、注意して見ておく |
セネル | それらしい人を見かけたら、お前に知らせよう |
アイゼン | …何故、俺に協力する? |
セネル | お前…島に侵入した海賊達を懲らしめた奴だろ? |
セネル | 金髪の死神、って海賊達は呼んでいたな |
セネル | 湖でロイド達に会った時、金髪の死神がアイゼンという名の海賊だと聞いたんだ |
パティ | む…?海賊だとわかっているのに、捕えようとしないのじゃな |
チャット | そうみたいですね… |
セネル | お前のお蔭で、被害が大きくなる前に海賊を捕える事が出来た |
セネル | 人捜しに協力するのは、あの時の礼だと思ってくれ |
セネル | それに…俺にも、妹がいるからな。心配する気持ちはわかるさ |
アイゼン | …そうか。助かる |
パティ | アイゼンにとって、妹はかけがえのない存在なのじゃな… |
アイゼン | …まあな |
チャット | そういう事なら…ボク達も、協力しますよ |
パティ | うむ、島で妹を見かけたら知らせてやるのじゃ! |
パティ | その代わり、本部にあるマナリスを使わせるのじゃ! |
アイゼン | おい |
パティ | じょ、冗談なのじゃ~ |
セネル | それで…妹の特徴は? |
アイゼン | 金髪の小柄な女で…名前はエドナだ |
セネル | エドナ…。わかった、捜してみよう |
チャット | 任せてください! |
アイゼン | …ああ、よろしく頼む |
パティ | アイゼンは、この後も妹を捜すのか? |
アイゼン | そのつもりだ。今から、エルピスの塔へ行く。港は大方捜し終わったからな |
パティ | ふむ…仕方ない、今日のところは引き留めないでおくのじゃ! |
チャット | 次に会った時は、ボク達のお宝探しを手伝ってくださいね |
アイゼン | …… |
セネル | また港に寄る事があったら、声をかけてくれ |
アイゼン | …ああ。じゃあな |
| |
エドナ | ──お待たせ |
ライラ | どうでしたか…?エドナさん |
エドナ | 海賊船は停泊していなかったわ。まあ、当たり前よね |
ライラ | そうですか… |
ライラ | 島に海賊が出たと聞いて、港に参りましたのに…残念でしたね |
エドナ | そう?期待してなかったから、それほどでもないけど |
エドナ | 港に堂々と海賊船が停まってたら、大騒ぎになるだろうし |
ライラ | ですが…エドナさんも、少しは期待したのではないですか? |
ライラ | アイゼンさんが、この島にいるかもしれない…と |
エドナ | …用は済んだわ。もう、帰るわよ |
ライラ | 待ってください。一応、港にいる方に話を聞いてみませんか? |
ライラ | せっかく、ここまで足を運んだのですから |
エドナ | …好きにすれば? |
ライラ | はい…! |
ライラ | あの…すみません |
ライラ | 少しお話を聞いてもよろしいですか? |
調査隊員 | ああ、いいよ |
ライラ | 少し前の話ですが…島に海賊が現われたそうですね? |
調査隊員 | 湖で暴れていた海賊の事かい? |
エドナ | …ほんとに、島に海賊がいたのね |
調査隊員 | ああ。だけど、安心してくれ。海賊なら全員捕縛されたよ |
エドナ | 捕縛…。…そう、わかったわ |
ライラ | エドナさん…!? |
エドナ | …… |
ライラ | エドナさん!待ってください |
ライラ | 詳しい話を聞かなくてよかったのですか? |
エドナ | 必要ないわ。あの人間、海賊は捕縛されたって言ってたでしょ |
エドナ | お兄ちゃんなら、そんなヘマをするはずがないもの |
ライラ | …なるほど。そうだったのですね |
エドナ | さぁ、戻るわよ。もうここに用はないし |
ライラ | …せっかく来たのですから、もう少し港を見ていきませんか? |
エドナ | 興味なし。行きたいなら、一人でどうぞ |
ライラ | そんな…!エドナさぁん! |
scene1 | 双つの槍 |
アリーシャ | ──君、少しいいか? |
調査隊員 | はっ。何でしょうか、アリーシャ様 |
アリーシャ | そう畏まらないでくれ。同じ調査隊員なのだから、気楽に話してくれていい |
調査隊員 | は、はい… |
アリーシャ | 街の様子はどうだ?変わったところはないだろうか |
調査隊員 | 特に大きな問題は起こっていません。時折、喧嘩まがいの言い合いをする輩がいますが… |
調査隊員 | 先日のような、大規模な暴動に発展する事はないでしょう |
アリーシャ | そうか…。それを聞いて、安心した |
アリーシャ | 呼び止めてすまない。教えてくれてありがとう |
アリーシャ | …彼が言った通り、どこにも異常はないようだな |
アリーシャ | (街の中は、平和そのものだ) |
アリーシャ | (警備の手薄な場所があれば 手伝おうと思っていたが… この様子なら、必要はないだろう) |
??? | ──お前も見回りか? |
アリーシャ | …? |
アリーシャ | クラトス殿!街にいらしていたのですね |
クラトス | ああ。警備の見直しのために、街の中を視察していた |
アリーシャ | 見直しというのは…もしかして、先日の暴動が原因ですか? |
クラトス | また同じような事が起こらないとも限らないからな |
クラトス | 街の警備を増員する事になった。備えは、多いに越した事はないだろう |
アリーシャ | そうですね。…私に出来る事があれば、お手伝いさせてください |
アリーシャ | 人手の足りない場所があれば、これから応援に向かいます |
クラトス | …… |
クラトス | お前達はよくやっている。たまには身体を休めろ |
クラトス | 任務の時に、全力を出せない方が問題だからな |
アリーシャ | …確かに、その通りですね |
クラトス | 私は本部に戻る。…根を詰めすぎるなよ |
アリーシャ | はい…。お心遣い、感謝いたします |
アリーシャ | …休息、か |
| |
アリーシャ | (いざ休もうと思うと、 何をすればいいか わからなくなるものだな……) |
アリーシャ | とりあえず、宿舎に戻って考えよう… |
| ドサッ! |
アリーシャ | …!何だ…? |
粗暴な男1 | ぐう… |
ジュディス | あら、ごめんなさい。勢いよく飛ばしすぎたかしら? |
粗暴な男2 | な、なんて強さだ…!くそ、一先ず逃げるぞ! |
粗暴な男1 | あ、ああ…! |
| タッタッタ── |
ジュディス | …意気地がないのね |
| タッタッ── |
| シュタッ |
ジュディス | どこへ行くつもり?まだ勝負はついてないわよ |
粗暴な男2 | ひ…!いつの間に… |
ジュディス | あなた達から誘って来たのだから途中で逃げるなんて事、しないわよね? |
粗暴な男1 | や、やめろ…!俺達が悪かった…!だから…許してくれ |
アリーシャ | ──待て! |
ジュディス | あら?あなたは… |
アリーシャ | これは…一体何事なんだ?…とにかく、槍をしまってくれないか |
ジュディス | …街を歩いていたら、彼らが絡んできたのよ |
アリーシャ | 何…? |
ジュディス | 戦いを挑まれたら…応戦するのは、当然よね? |
アリーシャ | と、彼女は言っているが──まずは話を聞かせてもらえるだろうか |
粗暴な男1 | くっ…冗談じゃねえ!この…! |
アリーシャ | ──はっ! |
粗暴な男1 | ぐうう… |
アリーシャ | 悪い事は言わない。大人しくしてくれ |
粗暴な男2 | くそ!やりやがったな! |
ジュディス | あなたのお相手は、私よ |
ジュディス | 少し痛むかもしれないけど、我慢してね? |
ジュディス | ──ふっ! |
アリーシャ | (速い…!) |
粗暴な男2 | ううう… |
ジュディス | …さて、この人達どうしようかしら? |
アリーシャ | 街にいる調査隊員に預けよう。然るべき処置をしてくれるはずだ |
アリーシャ | ──彼らの事を頼む |
調査隊員 | はい。本部に連れ帰り、事情を聴いてみます |
ジュディス | これで一件落着かしら |
アリーシャ | 先ほどは誤解をしてすまなかった。怪我はないだろうか |
ジュディス | 彼ら相手に、そんなヘマはしないわ |
ジュディス | それにしても…あの人達、少し様子がおかしかったわね |
アリーシャ | 何か気になる事でも? |
ジュディス | ええ。彼ら…私に声をかけた後に、いきなり襲いかかってきたの |
ジュディス | 突然、感情の制御が出来なくなったみたいだったわ |
アリーシャ | そうか…。実は、先日もこの街で大規模な暴動が起こったんだ |
アリーシャ | 何か怒りの感情を助長する要因があるのだろうか… |
ジュディス | 暴動、ね… |
ジュディス | …… |
アリーシャ | 一先ず、原因の究明は街の警備に任せよう |
アリーシャ | ところで…ジュディス。君に頼みたい事があるんだが |
ジュディス | あら、何かしら? |
アリーシャ | 私と…手合わせをしてくれないだろうか |
ジュディス | 急にどうしたの? |
アリーシャ | いきなりこんな事を頼んですまない。先ほどの戦いで君が見せた動き…素晴らしかった |
アリーシャ | 同じ槍使いとして、手を合わせてみたいと思ったんだ |
ジュディス | ふふ…面白そうね。わかったわ、力試しといきましょう? |
アリーシャ | 本当か…!感謝する |
アリーシャ | (この手合わせは調査隊の任務とは 関係のないものだし… 休息という事でいいだろう) |
アリーシャ | 街の外に移動しよう |
ジュディス | ええ、そうね |
scene2 | 双つの槍 |
ジュディス | ここなら、誰にも邪魔されないわね。…準備はいい? |
アリーシャ | ああ、いつでも大丈夫だ |
ジュディス | それじゃあ…行くわよ! |
| |
| キンッ!キンッ! |
アリーシャ | く…… |
アリーシャ | (なんて重い一撃なんだ…!) |
ジュディス | まさか、このくらいでヘコたれたりしないわよね? |
アリーシャ | …まさか!はっ! |
| キンッ! |
ジュディス | …! |
アリーシャ | そう簡単に倒せると思ってもらっては困る! |
ジュディス | なかなかやるわね…。…この勝負、楽しくなりそう |
アリーシャ | ああ…。私も、そう思っていたところだ! |
scene3 | 双つの槍 |
| キンッ!ガキイィン! |
アリーシャ | はあ…はあ… |
ジュディス | …いい腕ね。あなたに敬意を表して、ここからは本気でいかせてもらうわ! |
| キン!ガキィン! |
アリーシャ | …くっ!ううっ! |
ジュディス | どうしたの?もう終わり…? |
アリーシャ | いや…まだだ!まだ、私は戦える…! |
ジュディス | …… |
| ガキイィン! |
アリーシャ | つっ──…! |
ジュディス | …… |
ジュディス | …少し熱くなりすぎたわね。今日はこのくらいにしましょう |
アリーシャ | ああ…。やはり、君は強いな |
アリーシャ | 槍使いとして、君と戦えた事を嬉しく思うよ |
ジュディス | ふふ…ありがとう。私も、楽しかったわ |
ジュディス | 強い人と戦うのは、嫌いじゃないの |
アリーシャ | あの…もしよかったらまたいつか、手合わせをしてもらえるだろうか? |
ジュディス | ええ、望むところよ |
scene1 | 翼を広げて |
ルカ | ふぅ…結構歩いたな。そろそろ足が疲れてきたかも… |
ルカ | (島の中を歩き回ったけど、 断崖の集落で見たような光景は 浮かばなかった) |
ルカ | (どうしてあの時… アヴァロン島にいるアスラの姿が 見えたんだろう) |
ルカ | とにかく…塔の前までは行ってみよう |
| |
ルカ | …… |
ルカ | (ここでも 何も起こらない、か…) |
ルカ | …ん?あそこにいる人って… |
エメロード | …… |
ルカ | エメロードさん…? |
エメロード | …? |
エメロード | …あなたでしたか。数日ぶりにお会いしますね |
エメロード | 調査の一環で、ここにいらしているのですか? |
ルカ | あ、いえ…!何となく、塔が見たくなって… |
ルカ | エメロードさんは、どうしてここに…? |
エメロード | 調査協力の合間を縫って、島の中を見て回っているんです |
エメロード | 昔のアヴァロン島とはずいぶん様子が違っていますが…何がきっかけで記憶が戻るかわかりませんので |
ルカ | そうなんですね。…あれから、何か思い出せましたか? |
エメロード | ええ。少しずつではありますが、記憶は戻ってきています |
ルカ | そうですか…!…よかった |
ルカ | (そう言えば…アスラがいたのも、 アヴァロン島かも しれないんだよね…) |
ルカ | (それが本当だとしたら… エメロードさんが、何か知ってる かもしれない!) |
ルカ | あの…!エメロードさんに、聞きたい事があるんです |
エメロード | 何ですか? |
ルカ | アスラっていう名前に、聞き覚えはありませんか…? |
エメロード | どうして、その名を… |
ルカ | え…? |
エメロード | いえ…。何でもありません |
エメロード | アスラ…。詳しくは思い出せませんが、その名は聞いた事があります |
ルカ | 本当ですか!? |
エメロード | ええ。確か…島を救った英雄の名前だったはずです |
ルカ | …!アスラが…島の英雄… |
ルカ | (僕の勘違いじゃなかった…。 本当に、アスラは この島にいたんだ!) |
ルカ | 何か他にアスラについて覚えてる事はありますか? |
エメロード | …いえ、名前以外に思い出せる事は特にありません |
エメロード | …聞きたい事は、それだけですか? |
ルカ | は、はい…! |
エメロード | それなら、私はそろそろ別の場所に向かいたいと思います。森や湖の集落も、見て回りたいので |
エメロード | あなたはここに残られますか? |
ルカ | (アスラの事…一度、スパーダに 相談した方がいいかな…) |
ルカ | 僕は…本部に戻ります。アスラの事を教えてくれて、ありがとうございました |
エメロード | …いえ。それでは |
| |
ルカ | …… |
ルカ | (アスラが島にいた事は わかったけど…) |
ルカ | どうしてイナンナやデュランダルの姿は見えなかったんだろう… |
ルカ | うう…頭が混乱してきた。…本部に戻ってから、考えよう |
| |
| バサバサ… |
ルカ | ん…?何の音だろう… |
ルカ | …!あれって… |
| |
| グオオオッ! |
ルカ | 魔物!? |
ルカ | (魔物の足元に、何かいる…。 あれは…鳥?) |
| シャアアア! |
ルカ | うわ、こっちに来た! |
scene2 | 翼を広げて |
ルカ | はあ…はあ…。何とか倒せたかな… |
| バサ…バサ… |
ルカ | (あの鳥…動きが変だ。 もしかして…) |
ルカ | やっぱり…怪我してる |
| バサバサ…!バサ… |
ルカ | 暴れないで…!傷口が広がっちゃうよ |
| バサ…… |
ルカ | そう…いい子だね。大人しくしてて |
ルカ | (骨が折れてるみたい…。 とにかく、何かで固定しないと) |
ルカ | (どこかに使える物は…。 …あった! この枝なら…) |
ルカ | …少しじっとしててね |
ルカ | ──よし。とりあえず、これでいいかな… |
ルカ | (小枝を添え木に使って、 包帯を巻いただけの応急処置 だけど…) |
ルカ | (僕には、これ以上の事は 出来ないし…) |
ルカ | 本部にいる誰かに、専門的な治療を頼まないと… |
| |
| ガサガサ… |
ルカ | え… |
| |
| シャアアア! |
ルカ | また魔物が…!? |
ルカ | (いつもはこの辺りに、 魔物なんて出ないはずなのに…!) |
ルカ | ──はああっ! |
| グウウゥ… |
ルカ | (この子を抱えたままで 戦うのは不利だ…。 隙をついて、逃げないと…) |
| シャアアア! |
ルカ | くっ… |
??? | ──月黄泉! |
| ギャアアアア! |
ルカ | …!君は… |
ライフィセット | 大丈夫? |
ルカ | うん…!助けてくれてありがとう |
ライフィセット | 気にしないで!それに…魔物は、まだ残ってるよ |
| ガサガサ… |
| シャアアア! |
ライフィセット | …囲まれたみたいだね |
ルカ | そんな… |
| シャアアア! |
ライフィセット | …! |
ルカ | 危ない…! |
ベルベット | はああっ! |
| ギャアアアア! |
ライフィセット | ベルベット…!…ありがとう |
ベルベット | …話は後よ、油断しないで。まだ、何体か茂みの中にいる |
ベルベット | まずは、こいつらを蹴散らす! |
scene3 | 翼を広げて |
ベルベット | ふう… |
ライフィセット | 何とか、倒せたね |
ベルベット | フィー、言ったでしょ。大人しく待ってなさいって |
ライフィセット | 子ども扱いしないでよ…。魔物に襲われてる人を、放っておけないでしょ? |
ベルベット | …… |
ルカ | あ、あの…!危ないところを助けてくれてありがとうございました |
ベルベット | …別に、あんたを助けたわけじゃないわ |
ルカ | そ、そうですよね… |
| バサ…バサ… |
ルカ | あ…!動いちゃ駄目だって… |
ライフィセット | ねえ、その鳥…怪我してるの? |
ルカ | うん…。魔物に襲われたみたいで… |
ライフィセット | それなら、僕に任せて! |
| パアア… |
ルカ | すごい…傷がどんどん塞がっていく |
ライフィセット | ──よし、これで大丈夫。少ししたら、飛べるようになるよ |
ライフィセット | 応急処置が的確だったから、酷くならずに済んだみたい |
ルカ | よかった… |
ベルベット | …随分、手馴れているのね。 |
ルカ | …実は僕、医者になりたいと思ってて…医学の勉強をしていたんです |
ルカ | だけど、出来る事が限られてたから、鳥を助けてあげられなくて…。ライフィセットがいてくれてよかった |
ルカ | やっぱり、僕じゃ医者になれないのかな… |
ライフィセット | そんな事ないよ!ルカは、危険を冒してでも鳥を助けようとしたんでしょ? |
ライフィセット | それって、誰にでも出来る事じゃないと思うんだ。きっとルカはいいお医者さんになるよ! |
ルカ | そうかな… |
| バサ…バサ…! |
ライフィセット | あ、待って…!まだ動いちゃ駄目だよ! |
ルカ | ふふ…あの様子だと、今にも飛び立ちそう。元気になったみたいでよかった |
ルカ | …医者、か。本当に、なれるのかな… |
| |
ベルベット | …… |
| |
ベルベット | …鳥はなぜ空を飛ぶと思う? |
ルカ | え…? |
ベルベット | …答えて |
ルカ | えっと…昔読んだ動物行動学の本に書いてあった内容だと… |
ルカ | 鳥類の翼の揚力発生は、円弧翼に曲げられた空気の流れの反作用で── |
ベルベット | …… |
ルカ | …そういう事じゃ、ないですよね… |
ルカ | (ベルベットさんが求めてるのは… 本に書かれているような 知識じゃないんだ) |
| |
ルカ | 鳥が空を飛ぶのは… |
| |
ルカ | 飛ばないと見られない景色があるから…かな |
ルカ | (僕も…この島に来なかったら、 見えなかったものがたくさんある) |
ルカ | だから…鳥は、新しい景色を見るために空を飛ぶんじゃないでしょうか |
ベルベット | ……そう |
| バサバサ…! |
| |
ライフィセット | あ…… |
ルカ | …!飛んだ… |
| バサッバサッ |
ルカ | よかった…。あの様子なら、どこまでも飛んでいけそうだな… |
ベルベット | …そうね |
ルカ | (あの鳥はきっと… 新しい景色を見に行くんだ) |
ルカ | (僕も早く次の冒険に出たいな。 …この島で、新しい自分に 出会うために) |
Name | Dialogue |
| 六つ目の手がかり |
ルカ | こうやってみんなで集まるのは、久しぶりだね |
アイゼン | ああ。ここ数日は任務がなかったからな |
パスカル | やっと招集がかかって嬉しいよ~。そろそろ次の調査に出たいと思ってたんだよね~! |
ロイド | 俺も!休んでばっかいられないしな |
アリーシャ | ──変だな… |
ルカ | アリーシャ?どうしたの? |
アリーシャ | クラトス殿が会議室にいらっしゃらないんだ |
アイゼン | あいつが俺達を呼び出したんじゃないのか? |
アリーシャ | そのはずだが…。…もしかしたら、何か問題が起こったのかもしれない |
アリーシャ | 私はクラトス殿を捜してくる。みんなは中で待っていてくれ |
ロイド | 俺も一緒に行こうか? |
アリーシャ | いや、一人で平気だよ |
ロイド | わかった。気を付けてな |
アリーシャ | ありがとう、ロイド。では、行ってくる |
| |
パスカル | アリーシャ、なかなか戻って来ないね~ |
ルカ | うん…。やっぱり、上層部の方で何かあったのかな? |
ロイド | そんなに心配しなくても大丈夫だと思うぜ。クラトスはいつも忙しそうだからさ |
ルカ | 確かに、調査隊を指揮する代表者だから、僕達以外にも沢山指示しなきゃいけない人がいるもんね |
アイゼン | …噂をすれば、戻って来たようだな |
ロイド | おかえり、アリーシャ。クラトスには会えたか? |
アリーシャ | いや…。クラトス殿は今、緊急の報告を受けているそうだ |
ロイド | そっか、それじゃあ来られなくてもしょうがねーな。ここで待ってようぜ! |
パスカル | 早く終わらないかな~。新しい任務の内容が気になって落ち着かないよ~! |
アリーシャ | 焦っても仕方ない。少しの間、ここで待機していよう |
ルカ | それにしても…緊急の報告って何だろう。悪い話じゃないといいけど… |
アリーシャ | 最近は島の各所で魔物が頻繁に出現しているからな…。その対応に追われているのかもしれない |
ルカ | そう言えば…僕もこの前、エルピスの塔の近くで魔物に遭遇したよ |
パスカル | 森や山だけじゃなくて、人の多い場所にも出没してるんだね~ |
アイゼン | 調査隊の街に魔物が出た場合、厄介な事になるぞ |
アリーシャ | そうだな…。先日の暴動を受けて、街の警備を増員したと聞いているが… |
アリーシャ | その分、他の警備が手薄になっている可能性がある |
アイゼン | どこも人手不足という事か。島の調査に専念するというわけにもいかなそうだな |
ルカ | マナリスの回収も大切だけど、島に来てる人達が被害にあったら大変だもんね |
ロイド | あ、そういえば俺…パスカルに聞きたい事があったんだ! |
パスカル | ん?何なに? |
ロイド | コレットがマナリスの新しい情報がどうとかって話してたんだけどさ…研究室で何か聞いてるか? |
パスカル | うん!それなら知ってるよ。みんなにはまだ話してなかったね |
パスカル | 断崖の集落に研究資料が残ってて、マナリスがサフィア由来の発明品だって事がわかったんだ~ |
パスカル | 研究資料には、マナリスがサフィアから力の供給を受けてるって書かれてたんだけど… |
パスカル | サフィアが壊れちゃうと力の供給が受けられないから、マナリスも使えなくなるみたいだね |
ルカ | じゃあ、エメロードさんが言ってたように、サフィアの使用にも代償が伴うのかな |
パスカル | 詳しい事は研究を進めてみないとわかんないけど…あたしとリフィル達はそう考えてるよ |
アイゼン | …何にせよ、サフィアを使うためにももう少し情報を集める必要があるな |
クラトス | ──遅くなった。揃っているようだな |
アイゼン | 緊急の報告とやらの対応は終わったのか? |
クラトス | ああ。報告の内容は、お前達の任務にも関係がある |
ロイド | 俺達の…?どんな報告だったんだ? |
クラトス | それも含めて、今から任務の内容を説明しよう |
パスカル | 待ってました~!次はどこに行けばいいの? |
クラトス | その件だが…今回は隊を二つに分け、それぞれ別の調査地へ派遣する事になった |
ルカ | みんなで一緒に行動するわけじゃないんですね… |
クラトス | 急ぎの任務が重なっていてな。隊の編成は、お前達に任せよう |
アリーシャ | 了解しました。それぞれの任務内容について、詳しくお聞かせいただけますか? |
クラトス | ああ。まず、隊の半分は森の最奥部にあるという記録館へ向かってもらう |
パスカル | 記録館…?そんなのあったっけ? |
クラトス | 先ほど、森の遺跡を再調査していたスレイとミクリオから通信があり、壁画の文字を解読したと報告を受けた |
クラトス | 壁画には、島に隠された記録館の位置が記されていたそうだ |
パスカル | そっか~、あの二人、壁画の解読を進めたんだ! |
ロイド | 緊急の報告って、記録館の事だったんだな |
クラトス | ああ。本部は出来るだけ早く記録館の調査を行いたいと考えている |
パスカル | 記録館でスレイとミクリオに合流して、調査すればいいの? |
クラトス | いや、あの二人は引き続きこれまでに発見された遺跡の再調査を行っている |
クラトス | 後ほど記録館にも向かう予定だが、まずはお前達に調査を頼みたい |
クラトス | 記録館にはサフィアやマナリスに関する情報が眠っている可能性が高いからな |
アイゼン | …あの壁画にはエルピスの塔の扉を開く鍵がマナリスであると記されていた |
アイゼン | 確かに、記録館へ行けば壁画に描かれていた以上の情報が得られそうだな… |
ロイド | それで、もう一つの任務は何をするんだ? |
クラトス | マナリスの回収を任せたい |
クラトス | 砂漠地帯にある山脈でマナリスの微弱な反応をレーダーが探知したと報告を受けた |
ロイド | それって…ルークが言ってたやつかな。砂漠地帯で、レーダーに弱い反応があったとかって… |
クラトス | おそらく同じものだろう。未だ正確な位置は割り出せていないが、山脈付近での反応が強いとの事だ |
クラトス | 砂漠地帯にはすでに四大国連合調査隊を派遣している |
ルカ | スパーダ達を? |
クラトス | 四大国連合調査隊は砂漠地帯を越えた辺りにある平野地帯の魔物討伐を請け負っていたが… |
クラトス | 砂漠地帯にある山脈からマナリスの波動が出ているという報告を受け、現場に急行させた |
アリーシャ | では、何故私達が…? |
クラトス | 砂漠地帯には他の場所よりも大量の魔物が出現している |
クラトス | 島の警備をしている調査隊員達も現地に派遣されているが、手が足りない |
クラトス | 確実にマナリスを回収するために、お前達にも向かってもらいたい |
ロイド | あいつらなら大丈夫だと思うけど…万が一って事もあるもんな |
クラトス | ああ。砂漠にあるマナリスは、塔の扉を開くために必要な最後の鍵だ |
クラトス | 調査隊の力を結集して回収に努めてほしい |
アリーシャ | 事情はわかりました。後は、私達の中の誰がどこに向かうか決めればよろしいのですね? |
クラトス | その通りだ。お前達の意見を聞こう |
パスカル | はいはーい!あたしは記録館に行きたいな |
パスカル | サフィアやマナリスの情報があるなら、出来るだけ早く知りたいしね! |
アイゼン | 俺も、こいつと一緒に記録館へ行く |
アリーシャ | そうか。では…私とルカ、ロイドが砂漠地帯へ向かおう |
アリーシャ | 二人も、それで問題ないだろうか? |
ルカ | うん、僕は大丈夫。スパーダ達の事も気になるし…アリーシャと一緒に行くよ |
ロイド | 俺も、それでいいぜ! |
クラトス | ──決まったようだな |
アリーシャ | はい。私とルカ、ロイドは四大国連合調査隊の協力とマナリスの確保へ… |
アリーシャ | アイゼン、パスカルは記録館の調査へそれぞれ向かいます |
クラトス | 頼んだぞ |
パスカル | あ、そうだ…!分かれて行動するなら、あたし達にも通信機を貸してくれない? |
クラトス | ここに用意してある。記録館の場所を記した地図と共に持っていくといい |
アイゼン | 助かる |
クラトス | 島に出現している魔物は日に日に数を増している。…気を抜くなよ |
ロイド | わかってるって!それじゃ、行ってくるな |
| |
アリーシャ | ここで別れよう |
アイゼン | マナリスの回収は頼んだぞ |
ルカ | うん!僕達はパスカルみたいにマナリスの波動を感じ取れないから、レーダーは借りていくね |
パスカル | あ、そうだ。波動と言えば…クラトスが話してた山脈のレーダー反応の事なんだけど |
パスカル | もしかしたら…反応が弱いのは、山の中にマナリスが隠されてるからじゃないかな |
ロイド | 何でそう思うんだ? |
パスカル | アヴァロン島には、アンマルチアの基地にあったようなマナリスの波動を完全に遮断する装置があるけど… |
パスカル | 砂漠地帯で微弱でも波動が感知されたんだとしたら、装置に入れられてるわけじゃなさそうだし |
パスカル | 山でマナリスの波動が遮られてるんじゃないかって思ってさ~! |
アリーシャ | なるほど…。確かに、その可能性はあるな |
アリーシャ | ありがとう、パスカル。君の意見を参考に調査を進めてみるよ |
パスカル | どういたしまして~! |
ルカ | それじゃあ、二人共…気を付けてね |
アイゼン | お前達もな |
scene1 | 深森の記憶 |
アイゼン | この先に、記録館があるのか? |
パスカル | うん。本部でもらった地図によると…この道で間違いないみたいだよ |
アイゼン | そうか。一見、何の変哲もない森に見えるが…情報を信じて進むしかないようだな |
パスカル | あ、そう言えば…さっきから聞こうと思ってたんだけどさ、アイゼンは砂漠地帯に行かなくてよかったの? |
アイゼン | ああ、構わない。…何故、そんな事を聞く |
パスカル | アイゼンならマナリスの回収に行くと思ってたのに、こっちに来たから気になってたんだよね~ |
アイゼン | 超常の力であるサフィアを使うためには、知識が必要だ |
アイゼン | 力に振り回されていては、自ら舵を取る事も出来んからな |
アイゼン | それに…マナリスの回収は、あいつらに任せておけばいいだろう |
パスカル | なるほどね~! |
パスカル | そんじゃ、ルカ達のためにも役立つ情報を持ち帰れるようにますます頑張っちゃわないと! |
アイゼン | ふっ…そうだな |
アイゼン | いつまでもここで話しているわけにはいかない。先へ進むぞ |
パスカル | 了解~! |
| |
| ガッ── |
パスカル | うわっ!とっとっと… |
パスカル | 太い根っこだな~!足引っ掛けて転ぶところだったよ~ |
アイゼン | 気を付けろ。視界がきかない上に、樹木の根や草で道が荒れていて足場も悪い |
アイゼン | …油断していると、足を取られるぞ |
パスカル | へいへーい。今度はちゃんと前を見て歩── |
パスカル | …ありゃ?アイゼン、あそこに何かあるよ! |
アイゼン | あれは…橋か?どこかに繋がっているようだが… |
| |
| ザザッ…! |
パスカル | ん…?何か今…音がしたような… |
| |
アイゼン | 茂みの中に何かいるぞ! |
| グオオオッ! |
パスカル | わあ、魔物!? |
アイゼン | ──はっ! |
| ガッ! |
| ギャァアア |
アイゼン | 構えろ、パスカル! |
パスカル | うん! |
scene2 | 深森の記憶 |
アイゼン | どうやら、ここが記録館のようだな。橋の先に何かあると踏んだが…当たりだったか |
パスカル | すごい…木が丸ごと建物になってる。森の奥にこんな場所があるなんて想像してなかったよ |
パスカル | 壁画の情報がなかったら、たどり着けなかっただろうな~ |
アイゼン | …!これは… |
パスカル | アイゼン、どうかした? |
アイゼン | …見ろ。扉の前に、錠前が落ちている |
パスカル | あれ?ほんとだ…。この錠前、かなり錆びついてるみたいだね~ |
アイゼン | 長い時を経て老朽化が進んだ影響で、損壊したのかもしれんな |
パスカル | 鍵を開ける手間が省けてよかったじゃん! |
アイゼン | ああ、そうだな。…中へ入るぞ |
| |
パスカル | へ~、記録館の中はこんな風になってるんだね~ |
アイゼン | 図書館のような作りだが…。棚の本は、かなり傷んでいるようだな |
アイゼン | とにかく、ここにある物を片っ端から調べるぞ |
パスカル | おっけー! |
| ペラ… |
アイゼン | …やはり、ここの本はほとんど読める状態じゃないな。そっちはどうだ? |
パスカル | うーん、辛うじて文字が残ってる部分もあるけど…古代文字で書かれてるから解読出来ないや |
パスカル | この辺にある書物を調べるのは難しそうだね~ |
アイゼン | ああ。あそこに装置があるようだが、動かせるか? |
パスカル | お、どれどれ~ |
パスカル | 植物に埋もれてるけど…壊れてはないみたい。これなら… |
| ピピ…ピ…ピピピ… |
パスカル | …うん、まだ動くよ!しかもこの装置、カタグラフィが再生出来るようになってるね |
アイゼン | カタグラフィなら、棚にいくつか並べられていたな。壊れている物が多いようだったが… |
パスカル | 一つくらい、再生出来るのがあるかもしれないよ! |
アイゼン | …探してみるか |
アイゼン | ──これはどうだ? |
パスカル | …うん、状態も綺麗だし、問題ないと思う! |
アイゼン | 他のカタグラフィは保存状態が悪い。破損していないのはそれくらいだ |
パスカル | 扉の鍵と同じで、時間と共に老朽化が進んじゃったんだろうね~ |
パスカル | 一つだけでも綺麗な状態で残っててよかったよ |
アイゼン | そうだな。…再生出来るか? |
パスカル | うん、任せて! |
| ピピ…ピ… |
| |
兵士1 | 報告いたします!敵軍が完全に撤退しました! |
アスラ | …そうか |
兵士1 | はっ。アスラ様のお力添えなしには、成し遂げられませんでした |
兵士2 | 島の外から来られた貴方が我々をここまで導いてくださった… |
兵士2 | どれだけ感謝の言葉を並べても、足りません。アスラ様こそ、島の英雄と呼ぶに相応しいお方です |
アスラ | ふ…この程度の勝利でいちいち喜んではいられぬぞ |
アスラ | ヘルダルフを倒さぬ限り、この戦いは終わらん。島を覆う瘴気も増すばかりだ |
兵士1 | 心得ております。…アスラ様、ご指示を |
アスラ | 軍議をひらく!各隊の隊長を呼べ |
アスラ | 長きに渡って続いたこの戦いに終止符を打つために…明日、少数精鋭を率いてあやつを討つ! |
兵士たち | オーーーッ! |
| |
アイゼン | ヘルダルフ…。どうやらそいつが、サフィアを使って島に瘴気を蔓延させた張本人のようだな |
パスカル | うん。ヘルダルフを倒すためにここに映ってるアスラが、島の兵を率いてたみたいだね |
パスカル | アスラは島の外から来たって言ってるけど…。どうして戦いに手を貸したのかな? |
アイゼン | さあな。今ある情報だけでは、何とも言えん |
パスカル | う~ん、他に何か残ってるものは、っと… |
| ピピ…ピ… |
パスカル | ん?何だろう、これ… |
アイゼン | 何か見つけたのか? |
パスカル | 島民が書いた報告書みたいだね。何なに… |
パスカル | ヘルダルフは後にアスラによって討伐された、だって |
アイゼン | …ならば何故、別の次元に島を隔離する必要があったんだ |
パスカル | 報告書によると…瘴気が完全に消えるには、長い年月が必要だったみたいだよ |
アイゼン | なるほどな。島に残った瘴気が流出しないように、隔離したという事か… |
パスカル | 今までの情報と繋がったね。サフィアが封印された理由は二度と悪用されないため、なのかな… |
アイゼン | そうかもしれんな。…他に、何か残っているものはあるか? |
パスカル | ちょっと待ってね… |
| ピピ…ピ… |
パスカル | あれ…?情報の一部が見られないようになってる |
アイゼン | 何…? |
| ピピ…ピ… |
パスカル | 駄目だ~!暗号か何かでロックされてて開けないようになってるよ |
アイゼン | ここは島の住民が利用していた場所だ。あの女ならば、何か知っているんじゃないのか? |
パスカル | そっか!本部に戻ったら、エメロードに聞いてみよう |
アイゼン | その前に、他に情報が残されていないか探るぞ |
アイゼン | この島には多種民族が集まっていた。俺達が読める書物もあるかもしれない |
パスカル | がってんだ~! |
scene1 | 砂漠の刺客 |
アリーシャ | 砂漠地帯に入ったな |
ロイド | 早くルーク達と合流しようぜ!山脈はどっちにあるんだ? |
アリーシャ | ああ、それなら── |
| シャアアア──…… |
ルカ | …!今のは…魔物の声? |
アリーシャ | 近いな…。一体どこから── |
| |
| ズ…! |
ロイド | ──下だ! |
| |
| キシャアアアッ!! |
ルカ | う、うわっ! |
アリーシャ | 砂の中を移動して来たのか…! |
ロイド | この魔物…森の遺跡で見た奴と似てるぞ! |
| ズズズ…! |
| キシャアアアアッ!! |
アリーシャ | く…何体いるんだ |
| シャアアア! |
ルカ | 囲まれてるみたいだよ! |
ロイド | とにかく、手前の奴から倒して── |
| |
??? | はあっ! |
| バシイッ! |
| ギ…ギギ…!? |
ロイド | お前は…! |
| |
ルドガー | 久しぶりだな、ロイド |
ロイド | ルドガー! |
エミル | みんな!大丈夫だった? |
リッド | ったく、倒しても倒しても出てきやがるな |
ロイド | エミルに…リッドまで! |
アリーシャ | 君達は、何故ここに… |
ルドガー | 説明は後だ。まずはあの魔物を倒そう |
アリーシャ | …ああ、そうだな! |
scene2 | 砂漠の刺客 |
エミル | ふう…何とか倒せたみたいだね |
ロイド | 助けてくれてありがとな! |
ルドガー | みんなが無事でよかったよ |
アリーシャ | 改めて聞くが…君達は何故ここにいるんだ? |
エミル | 本部からみなさんを援護するように言われて捜していたんです |
エミル | ロイド達が四大国連合調査隊の協力とマナリスの捜索のために、砂漠地帯へ向かっていると報告を受けました |
ロイド | そっか、クラトスが話してた砂漠地帯に派遣された調査隊員って、エミル達の事だったんだな! |
エミル | うん、そうだよ |
リッド | この辺りは魔物ばっかで、おまえらに合流するのに時間がかかっちまったけどな… |
ルカ | あの…リッドさんって前にア・ジュールで会った事がありますよね? |
リッド | ん…?ああ、おまえ…スパーダと一緒にいた奴だよな? |
リッド | 確か…ルカって言ったっけ |
ルカ | はい。その節は、スパーダがお世話になりました |
ロイド | ルカもリッドと知り合いなのか |
アリーシャ | 知り合い同士が多いようだが…簡単に挨拶を済ませておこう |
アリーシャ | 私はアリーシャ・ディフダ。君達の名前も、聞かせてもらえるだろうか |
ルドガー | あ、自己紹介が遅れてすまない。俺はルドガー・ウィル・クルスニク |
リッド | リッド・ハーシェルだ |
アリーシャ | よろしく、二人共。エミルと共に行動しているという事は君達も警備の人間なのか? |
ルドガー | ああ。本部から砂漠地帯の魔物討伐を任されてるんだ |
ロイド | ルドガーとリッドが調査隊に入ってるなんて、知らなかったぜ |
リッド | まあ、成り行きでな |
エミル | 警備の人手が足りなくて困ってたから僕がリッドさんに協力を頼んだんだ |
ルカ | リッドさんは、どうして島に来たんですか? |
リッド | 研究室にキールって奴がいるだろ?あいつの付き添いで来たんだよ。…ファラがどうしてもって言うからさ |
リッド | あいつ、子どもの頃から運動音痴で体力がないから…放っておくとその辺で倒れてそうだし |
ロイド | そうだったのか。ルドガーは何で調査隊に? |
ルドガー | 割のいい仕事を探してた時に、島の警備の求人を見つけて応募したんだ |
ルドガー | 目標額まで貯めていつも世話になってる兄さんにプレゼントをあげたいと思って |
ロイド | へ~、兄貴想いなんだな! |
リッド | さてと、自己紹介も終わった事だし…そろそろ移動しようぜ |
アリーシャ | そうだな。このまま山脈の方へ向かおう |
ルドガー | いつ魔物が出現するかわからないから用心して進まないとな |
ルカ | スパーダ達も、魔物に襲われたりしてないといいけど… |
ロイド | とにかく、急いで行こうぜ! |
| |
アリーシャ | ここが山脈だな |
| キンッ── |
リッド | 何の音だ? |
エミル | みんな、あれ…! |
| |
ルーク | 何だよお前ら!いきなり襲ってきやがって |
謎の男1 | …… |
スパーダ | だんまりかよ。話す気はないみてェだな |
謎の男2 | はああ! |
| ガキィィンッ! |
アスベル | くっ! |
| ガンッ、キィンッ! |
謎の男2 | ぐ… |
エレノア | アスベル…!大丈夫ですか? |
アスベル | ああ、問題ないよ |
ルーク | こいつら…最初から俺達を狙ってたのか? |
エレノア | そのようですね。何故このような事を… |
謎の男3 | お前達の掲げる平和など…綺麗事にすぎない |
スパーダ | ああ? |
謎の男1 | 偽りの安寧など無意味!今ここで…果てるがいい |
ロイド | 危ない! |
| ギィィン! |
ロイド | くっ…! |
ルーク | ロイド!? |
アリーシャ | ロイド、下がれ! |
アリーシャ | ──葬炎雅! |
謎の男1 | く…何者だ!? |
アスベル | アリーシャ…!それにみんなも…どうしてここに? |
アリーシャ | 任務を受けて、君達の協力に来たんだ |
エミル | 僕達はこの辺り一帯の魔物討伐を任されています |
エレノア | そうですか…。助かります |
スパーダ | 懐かしい顔がいるが…今は挨拶してる暇はなさそうだな |
アスベル | ああ。今は目の前の敵を倒す方が先決だ |
エレノア | 行きましょう! |
scene3 | 砂漠の刺客 |
謎の男2 | うぐっ…くそ… |
スパーダ | さてと。てめェらの目的を洗いざらい吐いてもらうぜ |
謎の男1 | …… |
エレノア | この期に及んでまだ話さないつもりですか |
ルーク | なら力ずくでも…… |
| |
| ズズズズ…! |
ルカ | …!この揺れは… |
ルドガー | みんな、気を付けろ!──魔物だ! |
| |
| キシャアアアッ!! |
ロイド | またこいつかよ! |
謎の男1 | おい…!今の内だ!行くぞ! |
謎の男3 | ああ! |
アリーシャ | 逃がしはしない! |
アリーシャ | ──飛燕月華! |
謎の男2 | ぐうう… |
| ドサッ |
謎の男1 | くそ!どうする…!? |
謎の男3 | 放っておけ!行くぞ! |
| ダッダッダ── |
アスベル | 待て…! |
| キシャアアアッ!! |
ルーク | だーっ、邪魔だっつーの!何だよ次から次へと… |
スパーダ | ルカ、魔物がそっちへ行ったぜ! |
ルカ | うん! |
ルカ | ──はああっ! |
| ギ…ギギ…!? |
ルカ | スパーダ、今だよ! |
スパーダ | ああ! |
スパーダ | 行くぜ!はああっ! |
| ザシュッ!! |
| ギャウウッ! |
| |
ルカ | な、何とか倒せた… |
スパーダ | やるじゃねえか、ルカ |
エレノア | ありがとうございます、みなさん。助かりました |
アリーシャ | 礼には及ばない。それにしても…彼らは一体何者なんだ? |
ルーク | 俺達にもわかんねえ。いきなり襲いかかってきやがったんだ |
アスベル | 初めから俺達を襲う気でいたんだと思う。山脈で待ち伏せしていたようだから |
ロイド | 何でアスベル達を… |
エミル | とにかく…あそこで倒れている人に事情を聞いてみる必要がありそうだね |
謎の男2 | …… |
アスベル | ああ…そうだな |
| |
調査隊員1 | 誰か!誰かいないか!? |
調査隊員2 | 何の騒ぎだ? |
調査隊員1 | 調査隊の街に魔物が侵入したんだ! |
調査隊員2 | 何…!? |
エメロード | …… |
調査隊員2 | くそ…まさか、街に魔物が出るなんて… |
調査隊員2 | 至急、街へ向かう!手の空いている者は私に続け! |
調査隊員3 | はっ! |
エメロード | …もう、猶予は残されていないようですね |
エメロード | ならば… |
scene1 | 光を示して |
謎の男2 | う…ぐ… |
スパーダ | ──お目覚めのようだぜ |
謎の男2 | お前達は…。くっ…縄を解け! |
スパーダ | 解くわけねェだろ。…お前ら、何でオレ達を襲ったんだ? |
スパーダ | 仲間の一人が、平和がどうとかって言ってたけどよ。…おい、聞いてンのか? |
謎の男2 | …… |
アリーシャ | やはり何も話さない、か… |
エレノア | このままここで尋問を続けていてもただ時間がすぎていくだけです |
エレノア | 一旦、彼の身柄を本部に引き渡しましょう |
アスベル | そうだな。本部には一報を入れておいたが、俺達が襲われた時の状況も詳しく報告しないといけないし… |
ルーク | マナリスの回収はどうすんだよ? |
アスベル | …隊を二つに分けて、別々に行動しよう。本部には、俺が行くよ |
エレノア | 私も同行します。マナリスの回収は、二人に任せても大丈夫ですか? |
ルーク | おう、そういう事なら任せとけって! |
スパーダ | オレも、構わねぇぜ。ルカ達もいるし、問題ないだろ |
アスベル | アリーシャ、この場を頼んでもいいか? |
アリーシャ | ああ、勿論。そのために来たのだからな |
アスベル | ありがとう。よろしく頼む |
エミル | 僕達は、逃げた男達を追います。他の隊に危害を加える可能性もあるので |
エレノア | そうですか。くれぐれも、お気をつけて |
リッド | おまえらもな |
アスベル | それじゃあ、行ってくる |
エミル | 僕達も行きましょう |
ルドガー | そうだな |
ロイド | お互いに頑張ろうぜ! |
リッド | ああ。魔物には気を付けろよ |
ルーク | んじゃ、俺達はマナリスを探そうぜ |
ロイド | そうだな。確か…クラトスは山脈から波動が出てるって言ってたっけ? |
スパーダ | ああ。この辺りに来ると、レーダーの反応が強くなんだよ |
スパーダ | 洞窟や遺跡の入り口は…なさそうだけどな |
アリーシャ | 岩肌を探ってみよう。パスカルが言うには、山の中にマナリスが隠されてる可能性が高いらしい |
ルーク | 山の中?何でだ? |
ルカ | レーダーの反応が弱いのは、山で遮られているからじゃないかって言ってたよ |
スパーダ | なるほどな… |
ロイド | もうちょっと岩山に近付いて、調べてみようぜ! |
scene2 | 光を示して |
ルーク | うーん…特に変わった場所はねぇな。そっちはどうだ? |
ルカ | こっちも特には… |
| |
ロイド | …ん? |
スパーダ | どうした? |
ロイド | あの岩壁に彫られてる印…どっかで見た事ないか? |
スパーダ | あれは…!試練の館に入る時に、扉の前で描いた印じゃねぇか |
ルカ | 本当だ!亜空間にいた時に、カタグラフィの映像で見た印と同じ形だね |
ルーク | あー、確かに…こんな形してたな |
アリーシャ | この印は、何かを示しているのだろうか…? |
ロイド | …とりあえず、岩壁を押してみるか? |
ルーク | やってみようぜ! |
| グググ… |
ルーク | だーっ、びくともしねぇじゃねぇか! |
ロイド | 駄目か~。これが入り口かと思ったんだけどな |
スパーダ | 何か仕掛けがあるんじゃねえの?他に怪しい場所もなかったしな |
ルカ | う~ん…。近くにカタグラフィでも落ちてたらよかったんだけど… |
ロイド | 他の場所をもう一回探してみるか? |
| プルルル… |
アリーシャ | ん…?通信だ |
| ピッ |
パスカル | やっほー!聞こえてる~? |
アリーシャ | パスカル!記録館には到着したのか? |
パスカル | うん、今そこにいるよ!そっちの調子はどう~? |
アリーシャ | 砂漠地帯の山脈で、山の中に入る手立てを探しているところだ |
パスカル | お!ちょうどいいタイミングだったみたいだね! |
パスカル | 実はさ、記録館で気になる情報が見つかったんだよ~ |
ルカ | どんな情報なの? |
パスカル | それがね~、砂漠地帯には、山の中に通じる秘密の入り口があるんだって…! |
アリーシャ | …!それは本当か? |
パスカル | うん。入り口は、光に反応して現れるみたいだよ |
ルカ | 光… |
アイゼン | 他にもわかった事がある |
アイゼン | サフィアを使ってアヴァロン島に瘴気を蔓延させた奴は…ヘルダルフと言うらしい |
パスカル | 記録館に残された報告書によると、アスラって人がヘルダルフを打ち破ったみたいだね |
ルカ・スパーダ | …! |
ロイド | アスラ、って… |
パスカル | この情報、役に立ったかな~? |
アリーシャ | ああ、とても。助かったよ |
パスカル | それならよかった! |
パスカル | そんじゃ、記録館の調査は終わったから…あたしとアイゼンは本部に戻ってるね! |
アリーシャ | ああ、了解した。また後で会おう |
| ツー、ツー、ツー |
ルーク | 入り口は光に反応して現れるか…。あの印と何か関係あんのか? |
アリーシャ | 調べてみよう |
ルカ | …… |
ロイド | なあ、ルカ。アスラって…おまえが言ってた夢の中の英雄と同じ名前だよな? |
ルカ | うん…。実は…アスラが、この島にいたみたいなんだ |
ロイド | えっ!?それって…アスラが実在してたって事か? |
ルカ | 多分…。エメロードさんに聞いたら、アスラの事を知ってたんだ。島の英雄の名前だって言ってた |
スパーダ | その話…ほんとかよ?アスラがこの島にいた、って… |
ルカ | …うん |
ロイド | スパーダも、アスラって奴の事を知ってるんだな |
スパーダ | …オレも、ルカと同じような夢を見てんだよ |
ロイド | スパーダも…? |
スパーダ | ああ。ただの夢じゃねぇとは思ってたけど…。まさか、この島にアスラがいたなんてな |
ルカ | この前の任務中、夢の中のアスラが戦ってた場所がアヴァロン島に似てる事に気付いたんだ |
ルカ | 島に来てから頻繁に夢を見るようになったし、スパーダに相談しようと思ってたんだけど… |
スパーダ | 最近会えてなかったもんな |
ルカ | うん…。スパーダも島に来てから夢を見てた? |
スパーダ | いや、俺は見てないぜ |
ロイド | ん~…夢に出てくるって事は、アスラとルカは何か関係があるのか? |
ルカ | どうだろう…。僕らも、どうして夢を見るのかわからないんだ |
ルカ | ただ…アスラの夢がこの島の歴史に深く関わるなら、アリーシャ達にも話した方がいいかなって思ってるよ |
スパーダ | そうだな。ま、ルカの夢が重要な情報かどうか、今の時点で判断出来ねえし… |
スパーダ | もう少し様子を見てみようぜ |
ルカ | うん |
ルーク | おーい、おまえら!ちょっとこっち来いよ! |
ロイド | お、ルークが何か見つけたみたいだな!行こうぜ |
スパーダ | 入り口が見つかったのか? |
ルーク | いや、まだだ。けど…上手くいけば、中に入れるかもしれねえぜ! |
ルカ | え…!?どういう事? |
アリーシャ | 岩壁を探っていて気が付いたんだが…印のある場所がちょうど影になっているんだ |
ルカ | ほんとだ…!この場所だと、日光が届かないんだね |
ルーク | さっき、パスカルが通信で光に反応して現れる入り口があるって言ってただろ! |
ルーク | つまり、あの印に光を当てれば入り口が出てくるんじゃねぇか!? |
ロイド | おおーすげぇ!よくそんな事思いついたな!? |
ルーク | へへ、まあな |
スパーダ | って言っても…どうやって印に光を当てるんだ? |
ルカ | …剣の表面に太陽の光を当てて、岩壁の印に反射させるのはどうかな? |
スパーダ | 剣か…。やってみる価値はありそうだな |
スパーダ | ただ…この角度だと、何度か光を屈折させる必要がありそうだな |
ルカ | うん。僕とルークの剣なら、剣身の幅が広いから光を反射させやすいと思う |
アリーシャ | やってみよう。ルカはあそこの岩場で光を反射させてくれ |
ルカ | わかった、移動するね |
| |
スパーダ | ルークは…この辺りだな |
ルーク | お、おう… |
アリーシャ | ルカ、準備はいいか? |
ルカ | うん、位置についたよ! |
アリーシャ | ルカの剣に反射させた光を、ルークの剣で受けてくれ |
ルカ | わかった。いくよ、ルーク |
ルーク | ああ、いつでもいいぜ |
| カチャ…カチャ… |
スパーダ | ルーク、剣に反射した光を岩壁の印に当てられるか? |
ルーク | やってみる |
| カチャ…カチャ… |
| ズ…ズズズズズ…! |
| |
ルカ | …!岩壁が動いたよ |
スパーダ | ああ。どうやら…あの入り口から山の中に入れるみてえだな |
ルーク | あの中にマナリスがあるって事だよな!? |
アリーシャ | …間違いない。レーダーを確認したがマナリスの反応はこの奥から出ている |
ロイド | パスカル達に感謝しないとな |
スパーダ | よし。それじゃあ、先に進むか |
ルカ | うん、行こう! |
scene1 | 最後のマナリス |
ロイド | ここは…坑道みたいだな |
ルカ | うん。そこら中に鉱山の作業道具が転がってるね |
スパーダ | 元々は坑内採掘のために使われてた作業場か何かだろうな |
アリーシャ | ああ。全体的に朽ちてはいるが…これまでに見つけた集落よりは、綺麗な状態のようだ |
ロイド | あの、青く光ってるのは…鉱石か?光る石なんて、珍しいな |
ルカ | ほんとだ…!あの石が、光源になってるんだね |
ルーク | それで…肝心のマナリスはどこにあるんだよ? |
アリーシャ | レーダーの反応は…坑道の奥を指しているな |
ルーク | それなら、適当にその辺の穴に入って奥へ進もうぜ! |
スパーダ | おいおい、待てよ。全部の穴が、マナリスのある場所に繋がってるとは限らねえだろ |
ルーク | そりゃそうだけど、じゃあどうすんだよ。じっとしててもしょうがねぇだろ? |
アリーシャ | まずは坑道内の様子を探ろう。マナリス探索の手がかりになる物が残されているかもしれない |
スパーダ | ああ、そうだな。手分けして探してみようぜ |
ルカ | カタグラフィも地図も…手がかりになりそうな物は、何一つ落ちてないね… |
スパーダ | つまり、しらみつぶしに穴の中を調べるしかねぇって事か… |
ロイド | どんだけ長い穴なのかわからねぇし、歩きだと時間がかかりそうだな |
スパーダ | …ってわけだけど、どうだ?アリーシャ。トロッコは動きそうか? |
ルーク | トロッコがあるのか…!?なら、それに乗って移動しようぜ! |
アリーシャ | いや…このトロッコは、損傷している箇所が多い。使えるかどうか怪しいところだ |
アリーシャ | 乗っている途中で壊れでもしたら、怪我をする可能性がある。使うのは避けた方がいいだろう |
ルーク | ちぇ。そいつに乗れば、楽して移動出来ると思ったのによ。期待して損したぜ |
スパーダ | 使えねぇもんは仕方ねぇだろ。地道に足使って調べようぜ |
ロイド | よし。それじゃあ俺は、奥の穴を見て来るよ。ルカも付いて来てくれるか? |
ルカ | うん、勿論! |
スパーダ | んじゃ、俺達はこの穴を調べてみるか。ルーク、お前も来いよな |
ルーク | …わかったよ。しゃーねえな |
| |
ロイド | 暗いな… |
ルカ | うん…。穴の中には光源がないんだね |
ルカ | 先へ進む道は…こっちでいいのかな── |
| |
| ドンッ |
ルカ | 痛っ |
ロイド | 大丈夫か?ルカ |
ルカ | う、うん…この先は、行き止まりになってるみたい。気付かずにぶつかっちゃったよ |
ロイド | このまま歩き続けてたら、迷子になりそうだな。一度さっきの場所に戻ろうぜ |
ルカ | うん、そうだね |
| |
ルカ | ふぅ…。何とか無事に戻って来れたね |
ロイド | ああ。とりあえず、灯りになる物を探さねぇとな |
ルカ | あ、それなら…あそこにある岩を削って、光る石を持っていこうよ |
ルカ | 硬そうな岩だけど…周りに落ちてる道具を使えば、何とか削れると思うんだ |
ロイド | よし、早速やってみようぜ! |
| ガンッ!ガンッ! |
ルカ | 削れたよ!これくらいあれば、足りるかな? |
ロイド | そうだな。後は、ルーク達の分も──… |
| ゴゴゴゴ… |
ロイド | 何だ…!? |
ルカ | …!ロイド、こっち! |
| ガッシャーン! |
ロイド | うわ!あぶね!間一髪だったな… |
ルカ | 岩を削った振動で、積み重なってた作業道具が崩れてきたみたいだね… |
ロイド | 助かったぜ、ルカ!ありがとな |
ルカ | ううん、ロイドが無事でよかった |
アリーシャ | 二人共、大丈夫か…!?すごい音がしたが… |
ルカ | うん、何とか… |
スパーダ | ったく、何やってンだよ |
| |
| ダッダッダ── |
ルーク | ん…?何か聞こえねえか? |
アリーシャ | ああ、確かに…。足音のようなものが… |
ルカ | 何か来るよ! |
| |
| グオオオオッ! |
スパーダ | 魔物!? |
ロイド | すごい数だ…。こいつら、一体どこから… |
アリーシャ | く…どうやら、坑道の中に潜んでいた魔物達が先ほどの音に反応して出てきたようだな |
ルーク | それってつまり、おまえ達のせいじゃねえか! |
ルカ | ひい!ごめんなさい! |
| グオオオオッ! |
アリーシャ | はあっ! |
| グルルル… |
スパーダ | 言い争ってる暇はねェぜ!隙を見て、突破するぞ! |
| グオオオオッ! |
scene2 | 最後のマナリス |
ロイド | ──虎牙破斬! |
| ズバッ!ズバッ! |
| オ…オオオ… |
ロイド | やったか!? |
| グオオオオッ! |
スパーダ | 駄目だ、数が多すぎる! |
アリーシャ | く、こうなったら…。みんな!トロッコに乗り込め! |
ルカ | え…!?どうするつもりなの、アリーシャ!? |
アリーシャ | トロッコを使って、この場から逃げるんだ! |
アリーシャ | 私達の足で逃げても、じきに追いつかれる |
ルーク | だけどよ、どの穴がどこに繋がってるかわかんねぇんだろ!大丈夫なのかよ!? |
アリーシャ | 一か八か…やってみるしかない。今は逃げきる事が先決だ! |
| グオオオオッ! |
スパーダ | くそっ、急げ!乗り込むぞ! |
ロイド | みんな、乗ったか!? |
ルーク | ああ! |
ルカ | アリーシャ!魔物が迫ってくるよ! |
アリーシャ | …行くぞ、みんな!掴まれ! |
| ガシャンッ |
| ガタ…ガタガタ… |
ロイド | 動き出したぞ! |
ルーク | こんなおんぼろで本当に大丈夫なのかよ!? |
| ガタガタガタガタ…… |
スパーダ | 舌噛みたくなかったら、黙っとけ! |
アリーシャ | …!傾斜を下るぞ |
ルカ | う、うわ~! |
scene3 | 最後のマナリス |
ルーク | し、死ぬかと思ったぜ… |
ロイド | 魔物からは、何とか逃げきれたみたいだな! |
アリーシャ | ああ。トロッコが動いてよかったよ |
ルーク | 元はと言えば、おまえとルカのせいだろうが! |
ロイド | わ、悪かったって。謝るから、な? |
ルーク | …しゃーねぇな |
スパーダ | ん?あれは… |
ルカ | スパーダ?どうかしたの? |
スパーダ | これが落ちてたぜ |
アリーシャ | …!カタグラフィか |
ロイド | 見てみようぜ!何か、マナリスの事がわかるかもしれないしさ |
アリーシャ | そうだな。再生してみよう |
| ポチッ…! |
| |
坑道のドワーフ1 | くそ…!こんなところまで魔物が侵入してくるなんて… |
坑道のドワーフ2 | 瘴気の影響だろう。どうする?ここも、長くはもたないぞ |
坑道のドワーフ3 | 仕方ない…。坑道を捨てて逃げよう |
坑道のドワーフ1 | そんな… |
坑道のドワーフ3 | 命の方が大事だ。隠し通路を使って、外へ脱出するぞ |
坑道のドワーフ1 | …わかった。お前に従うよ |
| |
アリーシャ | どうやら…魔物から逃れるために、坑道からの脱出を余儀なくされたようだ |
スパーダ | ああ。隠し通路ってやつを使えば、外に出られるみてぇだな |
ルカ | 僕達も魔物が来る前に、マナリスを回収して外に出た方がよさそうだね… |
ロイド | アリーシャ、マナリスの反応はどこから出てるんだ? |
アリーシャ | …この奥のようだな |
ルーク | この奥って…壁しかねえぞ? |
スパーダ | いや…よく見ろ。壁に何か彫られてる |
ルカ | これ、入り口にあった印と同じ形だよ! |
アリーシャ | それなら、光を当てれば何かが起こるかもしれないな |
ロイド | 光、って言っても…。ここは薄暗いからな… |
ルーク | 何か印を照らせるようなもんはねえのかよ? |
ルカ | あ…!これはどうかな? |
ルカ | 作業場で、岩を削って光る石を回収してたんだ |
アリーシャ | 使えそうではあるが…光が弱い事が気になるな |
| ──オオオ… |
アリーシャ | この声は… |
ロイド | さっきの魔物か?俺達を追いかけて来てるみたいだ |
スパーダ | 悩んでる時間はなさそうだな。あいつらがここに来る前に、先へ進まねぇと |
ルーク | …なぁ、この石柱、何か変じゃねぇか? |
ロイド | ん?どこがだ? |
ルーク | 側面に鏡みたいなのがついてるんだよ |
アリーシャ | 本当だ…。そっちの石柱には、窪みがあるな |
ルカ | …… |
ルカ | もしかしたら… |
スパーダ | どうしたんだ?ルカ |
ルカ | みんな、石柱の外側に移動してもらえる? |
アリーシャ | ああ…。これでいいのか? |
ルカ | うん、ありがとう!後は、この光る石を石柱の窪みにはめれば… |
| カチ── |
スパーダ | …!石の光が、一点に集まっていくぜ |
ルーク | あれを見ろ!石柱の鏡に光が反射してくぞ! |
| ズ…ズズズズズ…! |
| |
ルーク | 壁が…動いた! |
アリーシャ | なるほど…。石柱の鏡で光を反射させる事で、光量を増幅する仕組みになっていたのか |
スパーダ | 石柱にあった窪みは、元々光る石をはめ込むために作られた物だったんだな |
ロイド | よく気付いたな、ルカ! |
ルカ | たまたまだよ。光る石が役に立ったね |
アリーシャ | まさか、壁の裏に祭壇が隠されているなんて… |
ロイド | ん…?祭壇の中央にある石盤にはまってるあれって… |
スパーダ | マナリスだな |
アリーシャ | いつ魔物が来るかわからない…。早く回収して外に出よう |
ロイド | そうだな。でも…隠し通路はどこにあるんだ? |
ルカ | あれの事かな…?石盤の裏に、道があるみたいだよ |
ルーク | 確かに…他に道はねぇし、隠し通路で間違いなさそうだな |
| グオオオオッ! |
アリーシャ | …!急ごう、みんな! |
スパーダ | ああ、行こうぜ |
scene4 | 最後のマナリス |
ルーク | ん…?あれは…光だ! |
スパーダ | あそこから外に出られそうだな |
アリーシャ | 魔物も追って来ていないようだし…逃げきれてよかったよ |
ルカ | うん…一安心だね |
スパーダ | マナリスは全部で六つ…。って事は、これで全部揃ったんだよな |
アリーシャ | ああ。つまり…エルピスの塔の扉を開く鍵が全て集まったという事だ |
ロイド | やったな!早く本部に戻ってパスカル達に教えてやりたいぜ |
アリーシャ | よし、ここから出てすぐに本部へ向かおう |
ルカ | うん、そうだね! |
| 崩れ去る日々 |
アスベル | やっと、ここまで来たな |
エレノア | はい、本部までもう一息ですね |
謎の男2 | くそ…離せよ! |
エレノア | 大人しくしてください。どれだけ騒いでも、絶対に逃がしませんよ |
アスベル | 本部についたら、どうして俺達を襲ったのか話してもらうぞ |
謎の男2 | …… |
アスベル | 話す気はない、って言いたいみたいだな… |
| |
| タッタッタッ… |
エレノア | アスベル、誰か来ます |
アスベル | …… |
| ガサガサッ |
アスベル | …!あれは…? |
| |
エメロード | はあ…はあ… |
エレノア | あの女性は確か、調査隊の協力者だったはずです |
エレノア | なぜ、一人でこんな場所に… |
アスベル | …様子が変だな。行こう、エレノア |
| |
エメロード | …… |
| ガサガサッ |
| ガシッ |
エメロード | …!何をするのですか。離してください |
謎の男1 | 追いかけっこは終わりだ。大人しくしろ |
謎の男1 | 黙って言う事を聞いていれば、悪いようにはしねぇよ |
アスベル | ──はっ! |
謎の男1 | くっ!? |
| キィィンッ! |
アスベル | 大丈夫ですか?後ろに下がっていてください |
エメロード | はい… |
謎の男1 | お前達は…四大国連合調査隊か。つくづく邪魔な奴らだな |
エレノア | 邪魔…?それは、どういう意味ですか |
謎の男1 | 言葉通りの意味だ。…かかれ! |
| ガサガサッ |
謎の男3 | はあああ! |
| キンッ |
アスベル | く…!伏兵がいたのか |
エレノア | アスベル…! |
謎の男4 | おっと、動くなよ! |
| チャキッ── |
謎の男4 | この女が傷付く事になるぜ |
エメロード | …! |
エレノア | いつの間に…! |
エメロード | 嫌…!離してください! |
謎の男4 | うるせえな!黙ってろ! |
| ガンッ! |
エメロード | う… |
アスベル | …!やめろ、手荒な事はするな! |
謎の男4 | だったら…どうすればいいか、わかるよな? |
アスベル | …わかった。エレノア、武器を置くんだ |
エレノア | …わかりました |
| カラン── |
謎の男3 | ああ、そうそう…。調査隊に支給されてる通信機も出せよ |
アスベル | …これだ |
| バキィ |
謎の男3 | よし、これで…調査隊本部と連絡は取れないな |
謎の男2 | おい…!そんな事してないで、早く俺の縄を解いてくれ! |
エレノア | まさか…。あなた達は全員、この男の仲間なのですか |
謎の男1 | 今更気付いたのか?…おい、こっちへ来い |
| シュル── |
謎の男2 | 助かったぜ |
アスベル | …お前達の目的は何だ。どうしてこんな事をしている |
謎の男3 | 答える義理はねえな! |
| ドカッ |
| ドサッ |
アスベル | う… |
エレノア | アスベル! |
謎の男4 | おっと、動くなよ。この女がどうなってもいいのか? |
| チャキッ── |
エメロード | …… |
エレノア | …!く…卑怯な真似を |
謎の男1 | 何とでも言え |
謎の男4 | さて、と──。さっさとこの女を運ばねえとな |
謎の男3 | こいつら二人はどうする?一旦連れて行って── |
アスベル | エレノア… |
エレノア | アスベル…!大丈夫ですか? |
アスベル | ああ。…一つ、頼みを聞いてくれないか |
エレノア | 頼み…?何ですか…? |
アスベル | 俺が隙を作るから、その間に…本部へ走って助けを呼んできてほしい |
エレノア | そんな…!アスベルと彼女を置いて一人で行けと言うんですか!? |
エレノア | そんな事、出来ません! |
アスベル | 意識を失った人間を運んで逃げるのは無謀だ。俺はここで時間を稼ぐ |
エレノア | しかし…! |
アスベル | このままじゃ共倒れになる。…頼む、エレノア |
エレノア | …… |
エレノア | …わかりました |
謎の男1 | お前ら、何をコソコソと話して── |
アスベル | …はああ! |
| ガキンッ! |
謎の男1 | ぐ…!? |
アスベル | 今だ、エレノア! |
エレノア | はい…! |
謎の男3 | くそ…!あの女を追え! |
アスベル | させるか! |
| キンッ! |
謎の男3 | 何…!? |
アスベル | ここから先へは…絶対に進ませない! |
エレノア | はぁ…はぁ… |
エレノア | アスベル…。どうか、無事でいてください |
エレノア | …… |
| タッタッタ── |
アスベル | うぐっ…! |
| カラン── |
謎の男3 | こいつ…手間取らせやがって! |
アスベル | はぁ…はぁ… |
| ザッザッザ |
謎の男2 | …やるか? |
謎の男1 | いや、まだだ。こいつには利用価値があるからな |
アスベル | …? |
謎の男1 | 偽りの平和は崩れ去る。お前にも、協力してもらうぜ |
アスベル | 何を言って── |
| ガッ! |
アスベル | く… |
謎の男1 | …人は強欲で、傲慢だ。平和だ共存だと言ってる裏で、他人を見下してる |
謎の男1 | 群れを作る奴らは結局のところ、弱いだけなんだ。お前もそう思うだろ? |
アスベル | ちが…う。大切な人が…守りたいものがあるから、人は…俺は、強くなれるんだ |
謎の男1 | ちっ。綺麗事なんてうんざりなんだよ! |
| |
| ガツン! |
| ドサッ! |
謎の男1 | ──楽しみだぜ。お前がその手で、守りたいものってやつを壊す瞬間がよ |
| |
調査隊員 | 現在の街の状況ですが…魔物を全て討伐したため、平穏を取り戻しています |
調査隊員 | しかし…依然、街の周辺には魔物が出現しているとの報告を受けています |
ヒューバート | もう一度、街に魔物が攻めてくる可能性は十分にあるというわけですか |
調査隊員 | はい。街の周辺に警備を展開させ監視を強化していますが…油断ならない状況です |
ヒューバート | わかりました。僕も後で向かいます |
調査隊員 | はい、お願いします |
ヒューバート | …ふぅ、今のままだと警備の人数が足りないか… |
ヒューバート | 本部に行って人員の確保を申し出ないと── |
ヒューバート | …ん? |
ヒューバート | (保管庫に警備がいない…。 巡回に出たのか…?) |
ヒューバート | (それにしても… 誰もいないのは不自然だな…) |
ヒューバート | …… |
| |
保管庫の警備1 | ぐ… |
保管庫の警備2 | うう… |
ヒューバート | …!どうしたんですか!? |
保管庫の警備1 | いきなり襲われて… |
ヒューバート | 襲われた…?一体、誰に… |
保管庫の警備2 | あそこ…に… |
ヒューバート | …! |
??? | …… |
ヒューバート | …そこで、何をしているんですか |
| |
アスベル | …… |
ヒューバート | そんな、まさか…。兄さん…!? |
Name | Dialogue |
| 向けられた刃 |
ヒューバート | どうして兄さんが… |
アスベル | …… |
ヒューバート | 入り口の警備を襲ったというのは、本当なんですか? |
アスベル | …… |
ヒューバート | 黙っていないで、何か言ってください! |
| チャキッ |
ヒューバート | …! |
アスベル | そこをどいてくれ、ヒューバート。今はお前と話してる時間がないんだ |
ヒューバート | 何を馬鹿な事を…!今すぐ剣を下ろしてください |
ヒューバート | 自分が何をしているのか、わかっているんですか!? |
アスベル | ああ。俺にはどうしてもやらなければいけない事があるんだ |
アスベル | 邪魔をするつもりならたとえお前でも容赦はしない |
ヒューバート | 兄さん… |
保管庫の警備1 | 行か…せるな…!そいつは、マナリスを持ち去るつもりだ…! |
ヒューバート | な… |
ヒューバート | 本当に、兄さんがマナリスを…? |
アスベル | だとしたら、どうするんだ? |
ヒューバート | …マナリスは返してもらいます。このまま兄さんを行かせるわけにはいきません |
アスベル | そうか。──なら、仕方ないな |
アスベル | はあっ! |
| キィィンッ! |
ヒューバート | くっ…! |
| カシーン! |
ヒューバート | やめてください、兄さん!この保管庫にある物は全て、四大国が協同で管理しています |
ヒューバート | 保管庫からマナリスを奪取すれば、兄さんは犯罪者として世界中から追われる事になるんですよ!? |
アスベル | ああ、わかってるさ。覚悟は出来てる |
ヒューバート | 兄さん…! |
アスベル | 話は終わりだ、ヒューバート。そこを通してもらうぞ! |
| ヒュッ…キィンッ! |
ヒューバート | っ…ぐっ… |
| キィインッ!ガキィンッ! |
アスベル | 剣に迷いがあるな |
ヒューバート | …っ! |
アスベル | 心を乱したその一瞬が、命取りになるぞ |
| ガキィィィン… |
ヒューバート | くうっ! |
アスベル | 勝負は見えたな。さあ道を開けてくれ |
ヒューバート | はぁ…はぁ…それは出来ないと先ほども言ったはずです |
アスベル | …そうか。悪いが、俺も引くわけにはいかない |
| チャキッ |
ヒューバート | 本気、なんですね… |
ヒューバート | 弟として、兄さんがしようとしている愚行を見逃すわけにはいきません |
| チャキンッ! |
ヒューバート | ここであなたを止める。それが、ぼくの役目です |
アスベル | 心に迷いがある内は、俺には勝てない |
アスベル | これで終わりだ!はああぁぁ!! |
| |
ヒューバート | つっ──…! |
| |
アイゼン | ようやくここまで戻って来たな |
パスカル | すっかり暗くなっちゃったね~!ひとまず、早く本部に戻って── |
| ザッザッザ── |
アイゼン | あれは…調査隊か?随分物々しいな |
パスカル | …ん?先頭を歩いてる人って、もしかして… |
エレノア | …… |
パスカル | エレノアだ!ここで何してるんだろ…? |
パスカル | 行ってみよう、アイゼン! |
アイゼン | おい、待──…聞いてないな |
アイゼン | …… |
パスカル | お─い、エレノア─! |
エレノア | あなた達は…!調査から戻って来たんですか? |
パスカル | うん!今から本部に向かうところだよ! |
アイゼン | お前は何故ここにいるんだ。砂漠地帯でマナリスの探索を進めていたんじゃなかったのか? |
エレノア | それは… |
ジェイ | 詳しい事情は、ぼくからお話ししますよ |
パスカル | ジェイ! |
ジェイ | どうも |
ジェイ | エレノアさんは先に行ってください。今はゆっくり話してる場合じゃないでしょう |
エレノア | …そうですね |
エレノア | アイゼン、パスカル。すみませんが、私は先を急ぎます |
エレノア | 話はジェイに聞いてください。──それでは |
アイゼン | …何があった? |
ジェイ | 実は── |
アイゼン | 砂漠地帯での襲撃に、森での戦闘か… |
ジェイ | ええ。襲撃犯は調査隊に対して何らかの悪意を抱いているようです |
ジェイ | エレノアさんの話では、四大国連合調査隊の掲げる平和が綺麗事だと言っていたそうですから |
アイゼン | …… |
パスカル | あたし達が知らないところで、大変な事が起こってたんだね |
アイゼン | ──ひとつ、気になる事がある |
アイゼン | 四大国連合調査隊を襲った奴らとエメロードを追いかけていた男達は仲間だと言ったな? |
ジェイ | ええ、そう聞いています |
アイゼン | そうなると、敵はエメロードに何らかの利用価値を見出していた事になる |
ジェイ | そうでしょうね。彼女は古代アヴァロン島の住人で知識も豊富ですから |
ジェイ | 敵の目的が何であれ彼女から得られるものは多いでしょう |
アイゼン | だが、エメロードがアヴァロン島の住人だという情報は、調査隊でも一部の人間しか知らないはずだ |
ジェイ | …おそらく、どこからか情報が漏れているんでしょう |
ジェイ | 男達は、調査隊に支給されている通信機の事も知っていたようですから |
パスカル | 調査隊に内通者がいるって事…?そうなると、こっちも慎重に動かないといけないね |
ジェイ | 本部は救援に向かう隊員を編成しエレノアさんに指揮を任せました |
ジェイ | ぼくもこれから、捜索に加わる事になっています |
パスカル | そっか。引き留めてごめんね |
パスカル | あたし達も、本部への報告が済んだら許可をとってすぐに追いかけるよ! |
アイゼン | そうだな。敵の数が把握出来ていない以上こちらも数を揃えた方がいい |
ジェイ | わかりました。どこに敵の仲間が潜んでいるかもわからないのでくれぐれも気を付けてください |
パスカル | ジェイもね! |
ジェイ | ぼくは心配いりませんよ。気を抜いたりしませんから |
ジェイ | それでは、また |
アイゼン | 本部へ急ぐぞ。事態は一刻を争う |
パスカル | うん、行こう! |
scene1 | 平和への亀裂 |
パスカル | ──それにしても四大国連合調査隊を襲った人達の目的って何だったんだろう? |
アイゼン | わからん。だが、平和を願う人間がいる一方で戦いを望む人間がいる事も確かだ |
アイゼン | 平和は綺麗事にすぎない。その言葉から察するに… |
アイゼン | 襲って来た奴らは、四大国が歩もうとしている平和協調の道を疎ましく思っているんだろうな |
パスカル | なるほどね。だから、各国の結束を示す四大国連合調査隊を狙って… |
| ガタッ── |
パスカル | …ん? |
パスカル | 今、何か音がしなかった? |
アイゼン | ああ。保管庫の方からだ |
アイゼン | …嫌な予感がする。中に入るぞ |
パスカル | うん |
| |
パスカル | …!この人達って… |
保管庫の警備達 | …… |
アイゼン | 保管庫の警備だな。…気絶しているようだ |
アイゼン | もう一人、そこに誰かいるぞ |
ヒューバート | う… |
パスカル | 弟くん…!? |
ヒューバート | パスカル…さん…? |
パスカル | うん、そうだよ |
ヒューバート | …くっ |
パスカル | …!無理に立とうとしちゃ駄目だよ…! |
パスカル | ほら、掴まって? |
ヒューバート | ありがとうございます… |
パスカル | 弟くん、怪我してるね…。大丈夫? |
ヒューバート | 心配はいりません。こんな傷、大した事ありませんよ |
パスカル | そっか…なら、よかった!一体何があったの? |
ヒューバート | それは… |
アイゼン | ──保管されていたマナリスが全部なくなってやがる |
パスカル | えっ!? |
ヒューバート | …… |
アイゼン | ここで何があったかは、大体想像がつく |
アイゼン | 誰が、マナリスを持ち去ったんだ |
ヒューバート | …兄さんです |
パスカル | アスベルが…? |
ヒューバート | はい。保管庫の外に出ようとした兄さんを制止したら、剣を向けてきて |
パスカル | でも、アスベルは襲われたエメロードを守るために森に残ったはずじゃ… |
ヒューバート | …?何の話ですか |
アイゼン | ここに来る前に、エレノアに会った。あいつから事情をきいたジェイの話によれば── |
| |
ヒューバート | 兄さん達が襲撃に…。そんな事があったんですね |
パスカル | アスベルはエメロードが人質に取られて、仕方なくマナリスを持ち去ったんじゃない? |
ヒューバート | いえ…兄さんに脅されているような様子はありませんでした |
ヒューバート | 兄さん以外に怪しい人物もいませんでしたし |
パスカル | そんな…。アスベルが自分の意志で弟くんを傷付けるなんて、信じられないよ |
アイゼン | 他に何か気付いた事はないか?些細な事でも構わん |
ヒューバート | そうですね…。兄さんは見た事のない黒い服を着ていました |
ヒューバート | それから… |
ヒューバート | …!そう言えば、去り際に妙な事を言っていました |
パスカル | 妙な事…? |
ヒューバート | はい。何か思い詰めたような顔で… |
| |
アスベル | お前の負けだ、ヒューバート。もう諦めろ |
ヒューバート | 兄さん…!待って…ください… |
ヒューバート | どうして…。──どうして、こんな事を…! |
アスベル | …四大国が手を取り合うなんて、無理だったんだ |
| |
パスカル | それって… |
アイゼン | 四大国連合調査隊を襲った男達と、同じ思想だな |
ヒューバート | あんな事を口にするなんて…。兄さんの顔をしていましたが、別人のようでした |
ヒューバート | 四大国が平和協調の道を歩むと決めた時、兄さんは本当に喜んでいましたから |
パスカル | …… |
アイゼン | どちらにせよマナリスを奪われた以上、お前の兄を野放しにはしておけない |
ヒューバート | …わかっています。調査隊の上層部に、マナリスが奪取されたと伝えましょう |
パスカル | …! |
パスカル | それって、アスベルが追われる立場になるって事だよね…? |
ヒューバート | 兄さんが何のためにマナリスを持ち去ったのか、知る必要があります |
ヒューバート | 今は手段を選んでいる場合じゃない。詳しい話は、兄さんの口から話してもらいましょう |
パスカル | …それもそうだね。あたし達も一緒に行くよ! |
ヒューバート | わかりました。では、ここを出ましょう |
アイゼン | そうだな |
scene2 | 平和への亀裂 |
ヒューバート | 一先ず会議室の方へ向かいます。あそこなら、上層部の人間がいるはず── |
??? | あれ…? |
ルカ | パスカル!アイゼン! |
パスカル | ルカ!それに、みんなも…! |
アイゼン | 調査から戻って来ていたのか |
アリーシャ | ああ、先ほど着いたばかりだ。パスカル、君の隣にいる彼は…? |
パスカル | 弟くんだよ! |
ヒューバート | …だから、前も言ったでしょう。ぼくは弟くんじゃなくてヒューバートです |
ロイド | ヒューバートは誰かの兄弟なのか? |
パスカル | うん、アスベルの弟だよ。だから弟くんなんだ~ |
スパーダ | そういえば、アスベルが弟も調査隊にいるって言ってたな |
アリーシャ | それにしても…随分急いでいる様子だったが、何かあったのか? |
アイゼン | …保管庫にあったマナリスが全て奪われた |
ルーク | はあ!?どういう事だよ |
ヒューバート | …兄さんが、警備を襲ってマナリスを奪取しました |
ロイド | アスベルが!? |
アリーシャ | そんな…。何かの間違いじゃないのか |
ヒューバート | …残念ながら、事実です。ぼく自身が、保管庫を襲った兄さんと剣を交えましたから |
スパーダ | けどよ、アスベルはエレノアと俺達を襲った賊の一人を連れて本部に向かったはずだぜ |
ルーク | そうだ!なのに、何で一人で行動してるんだよ!? |
アイゼン | その話だが── |
アリーシャ | エレノア達は本部に向かう途中で襲われたのか… |
ルカ | エメロードさん、大丈夫かな… |
スパーダ | とにかく、アスベルを捜して話を聞こうぜ |
スパーダ | あいつが何の事情もなくマナリスを持ち去るとは思えねえからな |
ロイド | ああ、そうだな!今から手分けして── |
本部の男1 | ──今の話は本当ですか? |
本部の男1 | アスベル・ラントがマナリスを持ち去ったというのは |
アリーシャ | …!あなた方は── |
| |
ヒューバート | 彼らは確か…本部に所属しているシルヴァラントの貴族ですね |
パスカル | うん、アリーシャの知り合いなんだって |
本部の男2 | ウィンドルの騎士が私利私欲のために調査隊の所有物に手を出した…これは、由々しき事態ですな |
アリーシャ | 待ってください…!アスベル本人に事情を聞くまでそうと決めつけるのは早計で── |
本部の男1 | 殿下が仲間を庇いたい気持ちはわかりますが、アスベル・ラントがマナリスを奪った事実は変わりません |
アリーシャ | …… |
本部の男2 | 大方、あの騎士は我々の味方を装って裏では調査隊を裏切る行動を取っていたのでしょう |
本部の男2 | マナリスを奪取するために、周到な計画を立てていたに違いない |
スパーダ | 待てよ。俺達が砂漠地帯で賊に襲われた時、アスベルも一緒にいたぜ |
スパーダ | たまたま賊の一人を捕えたから、アスベルとエレノアが本部に戻る事になったんだ |
スパーダ | アスベルが本部に戻ったのは、計画的な行動じゃなかった。そうだよな?ルーク |
ルーク | ああ!賊に襲われなかったら、アスベルは俺達と調査を続けてたはずだ! |
本部の男1 | それこそが、彼の計画だったのでは? |
スパーダ | ああ? |
本部の男1 | 今、調査隊は魔物の討伐に人員を割かれていて本部の警備が手薄になっているんですよ |
本部の男2 | 好機を得た彼は、裏で賊を操ってあなた方を襲わせ、あえて捕えた。…本部に戻る理由を得るために |
ルカ | そんな…! |
アリーシャ | 本部に戻ったのはアスベルだけではありません。エレノアも同行しています! |
本部の男1 | ふむ…だからこそ、彼女を引きはがすために再び賊を動かしたのでは? |
本部の男1 | 一人で保管庫に向かい、マナリスを奪うために |
ロイド | そんなの、ただの推測だろ!アスベルにはきっと何か事情があったはずだ! |
本部の男2 | 事情、ですか…。あなたの話も憶測にすぎないのでは? |
ロイド | …… |
パスカル | …あの人達、何が何でもアスベルを悪者にしたいみたいだね |
アイゼン | そのようだな |
本部の男1 | どちらにせよ、この話は我々だけの問題ではありません |
本部の男1 | 至急会議室へ出向き各国の代表に意見を仰がなければ |
アリーシャ | …わかりました。このまま会議室へ向かいましょう |
アリーシャ | ヒューバート。君も一緒に来てもらえるだろうか |
アリーシャ | 保管庫で起こった事を詳しく話してほしい |
ヒューバート | 勿論です。ぼくも今から、そこへ向かおうと思っていましたから |
スパーダ | 俺達も行くぜ。アスベルは、四大国連合調査隊の一員だからな |
アリーシャ | ああ、そうだな |
パスカル | それじゃ、あたし達も… |
アリーシャ | …パスカル達は、宿舎で待っていてくれないか |
ロイド | 何でだよ!?俺達も一緒に… |
アリーシャ | この先は国同士の話し合いになる。私達全員が会議に参加する事は認められないだろう |
アリーシャ | 一旦、私に任せてくれないか。会議の内容は、必ず後で話す |
ロイド | …わかった。頼んだぜ、アリーシャ |
アリーシャ | ああ |
本部の男1 | 話は纏まりましたか?では、アスベル・ラントの犯行を報告しに行きましょう |
本部の男2 | あなた方がどれだけ庇っても彼の罪は軽くならないでしょうがね |
アリーシャ | …… |
scene1 | 軌跡を辿って |
ローエン | ──アスベルさんは単独で保管庫に侵入し、マナリスを奪取した |
ローエン | これが、昨夜保管庫で起こった事件の概要です |
エレノア | そんな…にわかには信じられません |
ジェイド | 残念ながら、今の話は事実です。保管庫で襲われた警備達から証言を得ていますので |
ジェイド | まさか、こうも容易くマナリスを奪われるとは…警備の見直しが必要ですねぇ |
エレノア | …… |
ローエン | エレノアさんは先ほど招集命令を受けて本部に戻られたばかりです。驚かれるのも無理はありません |
ローエン | お気持ちはお察ししますが、今は事態を打開するためにあなたの力を貸していただきたい |
エレノア | …わかりました。私に出来る事があるなら、全力を尽くします |
ローエン | ありがとうございます。では、会議を続けましょうか |
クラトス | アスベルの捜索はどうなっている |
フレン | 捜索隊が追跡を試みていますが、依然として居場所は掴めていません |
ローエン | 目撃情報さえ得られないとなると、あらかじめ逃走経路を確保していた可能性が高いですね |
スパーダ | レーダーでマナリスの反応を追えないのか? |
ジェイド | それが出来れば苦労はしていませんよ |
クラトス | 捜索隊から、マナリスの波動がレーダーで探知出来ないと聞いている |
ルーク | それなら、波動が遮られそうな場所を捜せばいいんじゃねーか?俺達が行った山の中みたいにさ |
ジェイド | 既に指示は出していますが、今のところよい報告はありませんね |
アリーシャ | …… |
本部の男1 | これではっきりしたな。奴は周到な計画を立てた上でマナリスを強奪した |
本部の男1 | エレノアを逃がしたのも、本部の目を欺くための策だったに違いない |
エレノア | まさか…!そんなはずはありません! |
スパーダ | 否定しても無駄だぜ。あいつらの中じゃ、そういう筋書きになってるみてェだからよ |
スパーダ | 砂漠地帯で俺達を襲った奴らもアスベルが差し向けたって言い張ってるくらいだ |
エレノア | どうして…そんな… |
アリーシャ | 私達も否定はしているが…アスベル本人に真意を確かめない限り話し合いは平行線のままだろう |
エレノア | …すみません。私が森に留まっていれば、こんな事には… |
ルーク | 何でエレノアが謝るんだよ。おまえは悪くねぇだろ |
エレノア | ルーク… |
本部の男1 | ルーク様の仰る通りです。諸悪の根源はウィンドルのアスベル・ラントだ |
ルーク | な…!誰もそんな事言ってねえだろーがっ! |
ルーク | あいつは…アスベルは何か事情があってマナリスを持ち出したんだ! |
本部の男1 | 全く…アリーシャ殿下といいルーク様といい、個人的な見解を述べられては困ります |
本部の男2 | どんな理由があろうとも保管庫を襲撃し、マナリスを強奪した彼の行いは重罪だ |
本部の男2 | ウィンドルの騎士が、四大国の所有物に手を出した…これは、国際的な問題ですよ |
フレン | …… |
クラトス | 今は、アスベルの罪状を議論している場合ではない |
ジェイド | そうですね。何よりもまず優先するべきなのはマナリスの回収ではありませんか? |
本部の男1 | …であれば、調査隊の総力を挙げてアスベル・ラントを捕縛し、マナリスを奪還すればいい |
本部の男2 | すぐに他の隊を出動させろ。マナリスさえ無事ならば、どんな攻撃も許可する |
本部の男2 | 手加減は無用だ。徹底的に追い詰めろ! |
エレノア | な…。マナリスを回収出来れば、アスベルはどうなってもいいと言うのですか!? |
本部の男1 | 何か問題があるのか?あの男は調査隊の反逆者だろう |
ヒューバート | …… |
クラトス | 調査隊の指揮は、四大国の代表者に一任されている |
クラトス | 隊員に指示を出すのは我々の役目だ。勝手に行動されては困るな |
本部の男1 | そ、それは… |
クラトス | これ以上は会議の妨げになる。退室願おうか |
本部の男2 | なっ…!貴様、何の権限を持って… |
ジェイド | おや、おかしいですね。会議における決定権は、我々に委ねられているはずですが |
本部の男2 | く… |
クラトス | 私が彼らを連れて出る。後の事は頼めるか |
フレン | はい、わかりました |
ローエン | …これで、落ち着いて話が出来そうですね |
ジェイド | かなり強引な方法でしたが…まあ、クラトスなら上手くやってくれるでしょう |
ルーク | けっ、清々するぜ。あいつら、アスベルの事を悪く言いやがって |
ローエン | ──さて、今一度みなさんにお聞きしたい事があります |
ローエン | アスベルさんは何か事情があってマナリスを持ち去ったと思いますか? |
スパーダ | ああ。あいつは、理由もなく平和を壊すような真似はしないと思うぜ |
アリーシャ | …私も同意見です。現段階でアスベルを反逆者と決めつけるのは、早計かと |
ローエン | ふむ…であれば、真相がわかるまで事を大きくするのは避けた方がよさそうですね |
ジェイド | 同感です。マナリス強奪の件は、一旦伏せておく事にしましょう |
ジェイド | 真相はどうであれ、今、この件を広めても余計な混乱を招くだけです |
ローエン | では次に…フレンさん。あなたの意見を伺ってもよろしいですか? |
フレン | …私は、アスベルが国やリチャード陛下を裏切って私利私欲に走る人間ではないと思っています |
フレン | しかし、どんな理由があったとしても彼が起こした事は許されるものではない |
フレン | このままでは、四大国の関係に亀裂が生じてしまう… |
フレン | 今は一刻も早く事態の解決に動かなければいけません |
ジェイド | そうですね。捜索の指揮は私が取りましょう |
ジェイド | アリーシャ隊と四大国連合調査隊にも捜索に加わっていただきますよ |
アリーシャ | …!我々でよろしいのですか? |
ジェイド | 今は、猫の手も借りたい状況ですから |
アリーシャ | わかりました。必ず、任務を遂行します |
ヒューバート | …ぼくも、兄の捜索に同行させてください |
フレン | それは構わないが…。場合によってはアスベルと戦う事も覚悟しなければいけないんだぞ |
ヒューバート | 承知の上です。もしまた戦う事になっても次は負けません |
フレン | …わかった。同行を認めよう |
ヒューバート | ありがとうございます |
ジェイド | 話は纏まったようですね。それでは準備が出来次第、出発してください |
アリーシャ | 承知致しました |
フレン | みんな…アスベルの事を頼んだよ |
スパーダ | ああ、任せとけって |
| |
ロイド | ──そっか。つまり、俺達でアスベルを見つけて、マナリスを取り戻せばいいって事だよな? |
アリーシャ | ああ。捜索には四大国連合調査隊とヒューバートも同行する |
パスカル | 弟くんも一緒に行くんだね。やっぱお兄ちゃんの事心配? |
ヒューバート | …兄さんにもしもの事があったら、悲しむ人がいますから |
パスカル | 弟くんは、ホントお兄ちゃんっ子だよね |
ヒューバート | 子ども扱いしないでください |
パスカル | はいは~い。そんじゃ、早速アスベルを捜さないとね! |
パスカル | マナリスの反応を追えばアスベルにたどり着けるかな? |
アリーシャ | その件だが…クラトス殿の話ではマナリスの波動が探知出来ないそうだ |
ルカ | そっか…。そうなると、捜索が難しくなるね |
パスカル | 大丈夫!こんな事もあろうかと… |
パスカル | じゃじゃーん!レーダーを改良しておいたんだよね! |
ルーク | あー…、そういや前に移動経路が記録出来るようにしたとか言ってたな |
パスカル | そうそう!新しい機能を使えばマナリスの波動が途切れた場所が割り出せるんだよ! |
スパーダ | そりゃ、すげェな。早速使ってみようぜ |
パスカル | おっけー! |
| ポチッ…! |
パスカル | ここが、最後にマナリスの反応が探知された場所だよ! |
アイゼン | ──森の遺跡の近くか |
ロイド | これでアスベルを捜せるな! |
ヒューバート | 時間が経てば経つほど追うのが難しくなります。急ぎましょう |
ルカ | うん、そうだね |
scene2 | 軌跡を辿って |
エドナ | …… |
謎の男1 | おい、止まれ |
エドナ | …… |
| ガサガサッ |
謎の男2 | …本当にこいつで間違いないのか? |
謎の男1 | ああ、装置が反応してる |
エドナ | そこ、どいてくれない?邪魔なんだけど |
謎の男2 | まあ、そう言うなよ。お前に話がある |
エドナ | ワタシにはないわ。女の子一人に寄ってたかってどういうつもり? |
謎の男1 | 天族であるお前の力を借りたい |
エドナ | …! |
エドナ | どうしてそれを… |
謎の男2 | おっと、抵抗はするなよ。怪我したくなかったらな! |
エドナ | はぁ…面倒ね |
エドナ | ──エアプレッシャー! |
謎の男たち | ぐ…っ!? |
謎の男3 | 気を付けろ!こいつ、ただのガキじゃねぇ! |
エドナ | 人を見た目で判断すると痛い目見るわよ |
エドナ | 何が目的か知らないしわかりたくもないけど |
| ブンッ! |
エドナ | これ以上やるつもりなら手加減しないわ |
謎の男4 | くそっ!あれを使え! |
謎の男1 | ああ…! |
謎の男1 | ──はああ! |
エドナ | うっ──…! |
| ドサッ── |
謎の男1 | やっと倒れたか… |
謎の男2 | 手間取らせやがって…。さっさとこいつを運んで── |
謎の男1 | くっ!!何の光だ…!? |
謎の男3 | 傘についてるマスコットが光ってるぞ…! |
??? | 盟約の──そして、制裁の時は来たれり! |
謎の男2 | 何だこいつは…!? |
フェニックス | ふっ…冥土の土産に覚えておくがいい。我が名は── |
謎の男1 | かかれ! |
フェニックス | 何…!?名乗り終わる前に攻撃を仕掛けてくるなど、鬼畜の所業! |
フェニックス | ──ふんっ! |
謎の男2 | ぐああ!? |
謎の男3 | な、何て力だ… |
フェニックス | ふ…汝等ごときに引けを取る我ではないわ! |
謎の男4 | この…! |
| ピョーン |
フェニックス | はあっ! |
謎の男4 | ぐふっ! |
フェニックス | ふん、脆弱な奴らめ |
謎の男1 | 調子にのるなよ…! |
フェニックス | な…!うご…けぬ… |
謎の男1 | そこでじっとしてろ |
フェニックス | 卑怯な…! |
| ザッ…ザッ… |
フェニックス | やめろ!その娘に…エドナに触れるな! |
謎の男3 | 諦めろよ、マスコット。装置がある限り、お前は動く事すら出来ねぇんだからな |
フェニックス | く…! |
謎の男2 | さぁ、一緒に来てもらうぜ天族サンよ |
エドナ | … |
scene1 | 蝕む黒夢 |
アスベル | …… |
| |
アスベル | ──双衝ッ!! |
ア・ジュール兵 | ぐぁっ…! |
アスベル | はあ…はあ…何とか退けたか |
アスベル | (今は持ちこたえているが、 ここも長くは持たないだろう) |
部隊長 | アスベル!ア・ジュールの後続軍が国境線を越えウィンドル領地へ侵攻中だ |
部隊長 | 今の戦力では迎え撃てない。一度砦まで退いて体勢を立て直すぞ! |
アスベル | はっ。俺が隊のしんがりを務めます |
部隊長 | わかった。──全軍撤退!みな、私に続け! |
アスベル | (砦を落とされたら、本陣が 危ない…。何としても 防衛線を死守しないと) |
| ガキィイン── |
アスベル | …!あれは… |
ウィンドル兵 | く、来るな…! |
ア・ジュール兵 | … |
ウィンドル兵 | 誰か…誰か、たす… |
アスベル | やめ…! |
| ドシュッ! |
ウィンドル兵 | ぐああああ…! |
アスベル | やめろおおおお! |
ア・ジュール兵 | うぐ…!? |
| ドサッ… |
アスベル | おい、しっかりしろ。おい! |
ウィンドル兵 | …… |
アスベル | (間に合わなかった…) |
アスベル | くそ…!どうしてこんな…! |
??? | …けて…。助…けて… |
アスベル | …!どこだ…!? |
アスベル | (あそこに誰か倒れてる…? 助けないと…!) |
アスベル | 今行く!待っててくれ! |
パスカル | 痛い…よ…。助けて… |
アスベル | パスカル…!?何でこんなところに…!? |
パスカル | アス、ベル… |
パスカル | うう… |
アスベル | …!しっかりしろ、パスカル…! |
アスベル | (酷い傷だ…。 このままだと命が危ない…!) |
パスカル | 痛い…痛いよ… |
アスベル | くそ…!どうしたら… |
パスカル | アスベル、これを… |
アスベル | これは…マナリスか |
パスカル | お願い、アスベル…。助けて… |
アスベル | …安心しろ、パスカル |
アスベル | すぐに助けてやるからな! |
パスカル | …… |
アスベル | (傷口が塞がっていく…!) |
パスカル | ありがとう、アスベル。楽になったよ |
アスベル | そうか、よかった… |
アスベル | …っ! |
アスベル | (力が抜ける…。 これが、マナリスを 使用した代償なのか) |
パスカル | アスベル? |
アスベル | …何でもない。傷はもう痛まないか? |
パスカル | うん、平気 |
アスベル | なら、俺と一緒に来てくれ。砦まで行けば── |
??? | 誰か…助けてくれ… |
アスベル | …!まさか、この声は… |
リチャード | 誰、か… |
アスベル | リチャード!? |
アスベル | (なぜ、リチャードが戦場に…!) |
パスカル | 大変!怪我してるみたい |
パスカル | あたしがマナリスでリチャードの傷を癒してくるよ! |
アスベル | それは駄目だ…! |
パスカル | え…? |
アスベル | (マナリスの代償を パスカルに背負わせるわけには いかない…!) |
アスベル | リチャードの事は俺に任せて、パスカルは先に砦へ向かってくれ |
パスカル | でも… |
アスベル | 大丈夫だ。リチャードは必ず俺が助けるから |
パスカル | …わかった。頼んだよ、アスベル |
アスベル | ああ! |
アスベル | リチャード…!しっかりするんだ! |
リチャード | アスベル…?僕を助けに来てくれたんだね… |
リチャード | うぐっ… |
アスベル | 苦しいのか?大丈夫か、リチャード! |
リチャード | 思ったより…傷が深いみたいだ。僕は、もう… |
アスベル | 心配するな。何があっても、俺がお前を助ける |
アスベル | 死なせたりしない。絶対に…! |
リチャード | この、光は… |
アスベル | どうだ?痛みは消えたか…? |
リチャード | ああ、何ともないよ |
アスベル | よかった… |
アスベル | ぐっ…!! |
リチャード | アスベル!? |
アスベル | 大丈夫、だ… |
リチャード | アスベル…。君が来てくれなかったら僕は本当に死んでいたと思うよ |
リチャード | 助けてくれてありがとう |
アスベル | ああ…リチャード。お前が無事で本当によかった |
アスベル | っ…! |
| |
アスベル | …… |
謎の男1 | アスベル様。ご報告が |
アスベル | 何だ? |
謎の男1 | マナリスを使用するための器が見つかりました |
謎の男1 | 作戦は順調です。この後はどう動きましょうか? |
アスベル | いずれ調査隊がマナリスの反応を追ってくるはずだ |
アスベル | 俺達は出来るだけ長くここで足止めをする。準備を怠るな |
謎の男1 | はっ |
謎の男1 | それにしても…今頃、調査隊の奴らは仲間が裏切ったと思って動揺しているでしょうね |
アスベル | ああ、事は順調に進んでいる… |
アスベル | この男"を選んで正解だった" |
| ザッザッザ… |
謎の男1 | この足音は… |
アスベル | …来たようだな |
scene2 | 蝕む黒夢 |
パスカル | ──この辺りだね |
ロイド | ここでレーダーの反応が途切れてるのか? |
パスカル | うん、そうだよ |
ルカ | 近くにマナリスの波動が遮られそうな場所はないみたいだけど… |
ヒューバート | …!これを見てください。足跡が残っています |
エレノア | …この数から見て、一人や二人ではないようですね |
アリーシャ | ここで誰かと落ち合ったのか…?一体誰と… |
ルーク | そんな事より、この後はどうすんだよ!? |
ルーク | マナリスの反応がなけりゃアスベルを捜せないだろ |
ヒューバート | それなら、この足跡を追って── |
| |
アイゼン | その必要はなさそうだ |
アイゼン | …そこにいる事はわかっている。出てこい |
| ガサ… |
| |
アスベル | …… |
ヒューバート | 兄さん…! |
謎の男1 | おっと、動くなよ |
| ガサガサ… |
ルカ | …!いつの間に… |
ロイド | くそ!囲まれたか… |
謎の男2 | 全く、しつこい連中だ。ここまで追い掛けて来るとはな |
謎の男3 | 今度こそ…お前達にはここで死んでもらうぜ |
エレノア | あなた達は…! |
パスカル | 知ってる人? |
ルーク | 砂漠地帯で俺達を襲った奴らだ…! |
ルーク | 何でおまえらが、アスベルと一緒にいるんだよ! |
謎の男3 | アスベル様、ご指示を |
エレノア&ルーク | …! |
スパーダ | おいおい、何の冗談だ? |
スパーダ | そいつらが…おまえの仲間って事かよ、アスベル |
アスベル | ああ |
アイゼン | …シルヴァラントの貴族達が言っていた通りだったというわけか |
ルカ | そんな…!アスベルが四大国連合調査隊を襲わせたの? |
アスベル | …… |
アイゼン | 否定はしないようだな |
ヒューバート | くっ…!何故あなたはこんな事をしているのですか、兄さん! |
アスベル | …星のカケラの事を覚えているか?四大国の均衡は、きっかけさえあれば簡単に揺らぐ |
アスベル | マナリスの使用を巡って国同士の争いが起こるのは、時間の問題だ |
パスカル | それは… |
アスベル | 再び戦争を起こすわけにはいかない。だからこそ俺は、行動を起こした |
アリーシャ | …確かに、マナリスを巡って争いが起こる可能性は否定出来ない |
アリーシャ | だが、君がしている事もまた、争いの種をまく行為だ! |
エレノア | アリーシャの言う通りです。アスベルがマナリスを持ち去った事で四大国の均衡が崩れようとしています |
エレノア | 平和を願うならばこんな事をするべきではありません!マナリスを渡してください |
アスベル | 俺はもう他国の人間を信じる事が出来ない |
アスベル | ウィンドルを守るためにマナリスを渡すわけにはいかないんだ |
ヒューバート | 馬鹿な事を…!あなたが取った選択肢は国の平和を壊す行為だ |
ヒューバート | ウィンドルがマナリスを保有していると疑われて、総攻撃を受ける事だってあり得ます! |
アスベル | …どうしようもない状況になった時は国のみんなを守るために、俺がマナリスに平和を願う |
パスカル | え… |
ロイド | 何言ってんだよ!人間がマナリスを使うのは、危険だって知ってるだろ!? |
アスベル | それくらいの覚悟がないと、何も成し遂げられない |
アイゼン | …何を言っても無駄のようだな |
ルーク | 待てよ!アスベルと戦うつもりなのか!? |
アイゼン | このまま押し問答を続けていても事態は解決しない |
スパーダ | アスベル。おまえは考えを変えるつもりはねえんだな? |
アスベル | ああ。俺は…ウィンドルを守るためなら、何だってする |
エレノア | アスベル… |
| チャキッ |
パスカル | 弟くん…!? |
ヒューバート | 兄さんが間違った道を進むと言うならば、それを正すのがぼくの役目です |
ヒューバート | …今度こそ負けません。勝って、あなたを止める! |
アスベル | お前がその気なら、受けて立つ |
アスベル | ただし、俺の元にたどり着ければ…な |
アスベル | ──俺は先へ行く。彼らの相手は任せるぞ |
謎の男1 | はい、アスベル様 |
エレノア | 待ってください、アスベル…! |
謎の男2 | おっと、この先には進ませないぜ |
エレノア | く…。邪魔をするなら、容赦しません! |
スパーダ | 仕方ねェな。さっさとこいつらを倒してアスベルを追うぞ! |
ルカ | うん! |
scene3 | 蝕む黒夢 |
ロイド | ──はああ! |
謎の男1 | ぐ…! |
| ドサッ |
スパーダ | これで全員だな |
ルーク | こんな奴らに構ってられねえ。早くアスベルを追おうぜ |
アリーシャ | 待ってくれ。全員気絶してるとはいえこのままにしておくのは危険だ |
アリーシャ | 縄で拘束してから行こう。手分けすればすぐに終わる |
エレノア | そうですね。取りかかりましょう |
パスカル | …よし!これで大丈夫だね |
ヒューバート | 先を急ぎましょう。森の奥に、兄さんがいるはずです |
アイゼン | …その前に、あいつについて聞きたい事がある |
ヒューバート | 何ですか? |
アイゼン | あいつが今回の行動を起こしたきっかけに心当たりはあるか |
ヒューバート | …いえ。正直今でも、何故兄さんがこんな事をしているのかわからないんです |
ヒューバート | 兄さんはやると言ったら反対しても聞かない人ですが… |
ヒューバート | 国やリチャード陛下を裏切る事は絶対にしません。そういう人なんです |
アイゼン | …義理堅い人間のようだな |
ロイド | ああ。それにアスベルは、仲間想いなんだ |
ルーク | …そうだな。あいつはどんな時でも仲間を見捨てたりしない |
パスカル | アスベルは、何があっても仲間を信じる人だと思うよ |
アイゼン | …… |
アイゼン | お前達の言葉を聞いていると、今のあいつは別人のように思える |
アリーシャ | ああ…。私も、彼が平和のために調査隊を裏切る人間だとは思えないよ |
アリーシャ | それに、調査隊の上層部がマナリスの使用について揉めていた事は事実だが… |
アリーシャ | アスベルが起こした行動の方が、四大国の均衡を崩しかねない |
パスカル | …アスベルがエレノアと別れて、保管庫で弟くんと会うまでの間に何かがあったんじゃないかな? |
ルカ | どうしてそう思うの? |
パスカル | さっき、アスベルが国を守るためにマナリスを使うって言ってたでしょ? |
パスカル | 前にエルピスの塔の前で話した時、願いは自分でかなえるものだって言ってたんだよね |
パスカル | どっちかと言うと、アスベルはマナリスを使う事に対して否定的だったよ |
エレノア | なるほど…。短期間で考え方が変わるのはおかしいですね |
アイゼン | …何かカラクリがあるかもしれんな |
スパーダ | とにかく、先へ進もうぜ。ここで話してても解決しねえだろ |
ルーク | そうだな。あいつに直接確かめてやる! |
ロイド | よし。行こうぜ、アスベルのところへ! |
scene1 | 守る強さ |
アスベル | …来たか |
ヒューバート | 兄さん… |
アスベル | 彼らにお前達の足止めを頼むのは荷が重かったみたいだな |
ルカ | ……。何か、変じゃない? |
スパーダ | 気になる事でもあんのか、ルカ? |
ルカ | うん…。…ねぇ、アスベル。どうしてここで僕達を待ってたの? |
ルカ | 僕らが戦っていた間に、いくらでも逃げられたはずだよね |
アスベル | …… |
アイゼン | …ちっ、そういう事か。まんまと嵌められたな |
エレノア | 嵌められた…?どういう意味ですか? |
アイゼン | マナリスはここにはない |
エレノア | …! |
アイゼン | おそらく、俺達が森に着いた頃には別の場所に運ばれていたんだろう |
アリーシャ | 何故そう思うんだ? |
アイゼン | あいつがマナリスを持っているなら、ここで俺達を待ち構えている必要がないからな |
ルカ | そっか…アスベル達は、僕らの目をマナリスから逸らすためにわざと森に残ったんだ |
パスカル | …!だから、レーダーの反応が途切れた場所で待ち伏せしてたんだね |
アリーシャ | あえて兵力を分断したのも時間を稼ぐため、という事か… |
ルカ | 僕達がマナリスを追ってくると予測して、裏をかいた。──そうだよね? |
アスベル | …確かに、マナリスはここにはない。安全な場所へ運ぶように俺が指示を出した |
スパーダ | その場所を教えろって言っても、話す気はねえんだろ? |
アスベル | ああ |
ロイド | アスベル…。本当に、後悔しないのか? |
ロイド | 調査隊の反逆者として俺達と戦う事になってもいいのか? |
アスベル | 構わない。マナリスさえあれば俺の願いはかなえられる |
ヒューバート | …… |
パスカル | アスベルの言う通り、マナリスを使えば世界を平和にする事が出来るかもしれないけど… |
パスカル | マナリスの使用には代償が伴うから、アスベルが無事じゃ済まなくなるよ |
アスベル | 平和を守るためなら、この身がどうなっても構わない |
アスベル | 俺には、それだけの覚悟がある |
ルーク | …だったら、俺達も引くわけにはいかねえ |
ルーク | これ以上、おまえに馬鹿な真似はさせられねぇからな! |
アスベル | そうか。ならここで、決着をつけよう |
| チャキッ |
エレノア | …!本気で、私達と戦うつもりなのですね… |
アイゼン | 諦めろ。今のあいつは、仲間想いの義理堅い男ではないようだ |
ヒューバート | …… |
ヒューバート | …最後にひとつだけ、答えてください |
ヒューバート | 兄さんは、平和を守るために仲間を傷付ける事になってもいいんですか? |
ヒューバート | あなたを信じて、ここまで追いかけて来てくれた人達ですよ |
アスベル | 何かを得るためには何かを失う必要がある |
アスベル | 戦争を繰り返させないために多少の犠牲は必要なんだ |
ヒューバート | やはり…あなたは、兄さんじゃない |
アスベル | 何を、馬鹿な事を… |
ヒューバート | 兄さんは、目的のために自分の大切なものを犠牲にしたりしません |
ヒューバート | むしろ、仲間を守るために自分を差し出すような人です |
エレノア | …そうですね。アスベルはどんな時でも、仲間を守る選択をしてきました |
ルーク | ああ。俺達の知ってるアスベルは他の目的のために仲間を諦めたりしない! |
ルカ | それじゃあ…あそこにいるアスベルは偽物って事? |
アイゼン | …あるいは、記憶を改ざんされたか違う思考を植え付けられたかだろうな |
アイゼン | 誰かがあいつの思考を捻じ曲げたなら考え方が違っていても納得がいく |
アスベル | その推測は的外れだ。俺は、俺の意志で行動している |
スパーダ | だったら、その意志ってやつを俺達が納得出来るように話せよ |
スパーダ | 調査隊の仲間同士で戦っても意味ねえだろ |
アスベル | お前達がマナリスを取り戻そうとする限り、戦いは避けられない |
アスベル | 来ないなら、こちらから行くぞ! |
アリーシャ | …!早い…! |
ロイド | パスカル、避けろ! |
パスカル | わわっ。何であたし狙い!? |
アスベル | 終わりだ! |
ヒューバート | そうはさせません! |
| ガキ─ンッ! |
ヒューバート | つっ──…! |
パスカル | 弟くん…! |
パスカル | …?あれは…! |
| カシーン! |
アスベル | 邪魔をするな、ヒューバート |
ヒューバート | そうはいきません。あなたが誰でも、パスカルさんに剣を向けるのは許せない |
パスカル | 弟くん…! |
ヒューバート | …!パスカルさん、危ないから後ろに下がって── |
パスカル | もしかしたら、アスベルを助けられるかもしれないよ…! |
ヒューバート | …! |
パスカル | だから…少しでも長く時間を稼げるかな? |
ヒューバート | …わかりました。手加減出来る相手ではないのでそう長くは持ちませんよ |
パスカル | うん、わかってる |
アスベル | 何をコソコソと話しているんだ? |
ヒューバート | あなたには関係のない事です |
| チャキ── |
ヒューバート | ここからは、本気でいかせてもらいます |
ルーク | 待てよ、俺達も…! |
ヒューバート | いえ…。ここは、ぼくに任せてくれませんか |
ヒューバート | あの人と、一対一で決着を付けたいんです |
スパーダ | 一人で大丈夫なのか? |
ヒューバート | はい。兄さんの名を騙る者に二度も負けるわけにはいきません |
アスベル | 自分の力を過信しているようだな、ヒューバート |
アスベル | 何度やっても結果は同じだ。お前は、俺に勝てない |
ヒューバート | 侮ってもらっては困ります!──はああ! |
エレノア | 彼一人に戦わせてよいのですか!?私達も、加勢に… |
パスカル | 待って…!みんなに聞いてほしい事があるんだ |
ルカ | どうしたの?パスカル |
パスカル | さっきアスベルが近くに来た時に見えたんだけど… |
パスカル | アスベルがつけてる首飾り、何かの装置みたいなんだよ |
パスカル | もしかしたら、あの首飾りがアスベルの記憶や思考に何らかの作用を及ぼしてるのかもしれない! |
アリーシャ | アイゼンが話していたように、アスベルは思考を捻じ曲げられているというわけか… |
アイゼン | 確かにそれなら、あいつが真っ先にお前を狙ったのも頷ける |
ロイド | 俺達の中で技術的な知識があるのは、パスカルだけだもんな |
ルーク | それじゃあ、あいつの首飾りを壊せば…! |
エレノア | アスベルの正気を、取り戻せるかもしれませんね |
スパーダ | 簡単には壊させてくれなさそうだが…やるしかねぇな |
アリーシャ | よし、それなら全員でアスベルを抑え込もう |
| キィイン!ガキイィン! |
ヒューバート | はぁ…はぁ… |
アスベル | まだ立ち上がるのか。いい加減、諦めたらどうだ? |
アスベル | 何度やってもお前は俺に勝てない |
ヒューバート | …確かに、ぼく一人ではあなたを倒せないかもしれない |
ヒューバート | ですが… |
| |
ルカ | はあっ! |
| カキ─ンッ! |
アスベル | く…!? |
ヒューバート | ぼくは今のあなたと違って一人ではありません |
パスカル | 弟くん、大丈夫? |
ヒューバート | ええ、問題ありません。打開策は見つかりましたか? |
パスカル | うん、ばっちり! |
アリーシャ | パスカルがアスベルに近付けるように私達で隙を作る |
アリーシャ | ヒューバート、君も力を貸してくれ |
ヒューバート | わかりました。パスカルさん、兄さんを頼みますよ |
パスカル | うん…!任せて |
アスベル | 何をしようとしているのか知らないが…お前達に、マナリスは渡さない! |
アスベル | ──来い! |
scene2 | 守る強さ |
アスベル | リチャード、動けそうか? |
リチャード | ああ、大丈夫だ |
アスベル | よし、それなら砦へ向かって── |
アスベル | …っ! |
リチャード | アスベル? |
アスベル | …何でもない。さあ、早く行こう |
リチャード | 待ってくれ、アスベル。あそこに誰かいるようだ |
アスベル | …!あれ、は… |
シェリア | …… |
アスベル | …!シェリア…! |
リチャード | 大変だ、早く助けに行こう |
アスベル | シェリア!おい、しっかりしろ…! |
シェリア | ん…アス…ベル…? |
シェリア | ごほっ…げほっ…う…はあ…はあ… |
アスベル | シェリア!? |
リチャード | 酷い怪我だ…。このままだと… |
アスベル | くそっ!誰が…誰がこんな事を…! |
シェリア | ごほっ…痛い…苦し… |
シェリア | 助けて…アスベル… |
アスベル | 大丈夫だ、シェリア…! |
アスベル | 今、俺が助けてやる! |
リチャード | すごい…。傷が塞がっていく… |
アスベル | ぐっ… |
リチャード | アスベル…! |
アスベル | 大丈夫、だ…。シェリアは… |
リチャード | …心配ないよ。出血もないようだ |
アスベル | …… |
シェリア | アスベル、聞いて… |
アスベル | どうした?シェリア |
シェリア | あっちにヒューバートが倒れてるの… |
アスベル | ヒューバートが…!? |
リチャード | アスベル、あそこだ…! |
ヒューバート | う…… |
アスベル | …! |
シェリア | 酷い怪我なの…。助けてあげて…お願い… |
リチャード | …アスベル、僕にマナリスを渡してくれ |
リチャード | 君の代わりに僕が彼を助けるよ |
アスベル | 駄目だ、リチャード。それだけは…絶対に駄目だ! |
リチャード | しかし、このままでは彼が…!アスベルの身体だって… |
アスベル | …リチャード、頼みがある。肩を貸してくれないか? |
アスベル | ヒューバートを助けるために、俺をあそこまで連れて行ってほしい。…頼むよ |
リチャード | アスベル… |
ヒューバート | う…ぐ… |
アスベル | ヒューバート… |
ヒューバート | にい、さん…? |
リチャード | これでいいのかい?アスベル |
アスベル | ああ。支えてくれてありがとう、リチャード |
リチャード | 礼はいらない。君の力になれて嬉しかったよ |
アスベル | (あと一度なら…使えるはずだ) |
アスベル | …ヒューバート。今、助けてやるからな |
アスベル | ぐっ…はあっ… |
| ドサッ |
ヒューバート | 兄さん…! |
アスベル | はあっ…はあっ… |
ヒューバート | 大丈夫ですか! |
アスベル | ああ…。お前は…大丈夫…か? |
ヒューバート | ええ…。身体が楽になりました |
ヒューバート | ありがとうございます |
アスベル | そうか… |
リチャード | 君はよくやったよ、アスベル。僕達を助けてくれて、本当にありがとう |
アスベル | …ああ |
アスベル | (よかった…。 これで、みんな助かったんだな) |
アスベル | (守れて、よかった…) |
ヒューバート | 疲れたでしょう、兄さん。もう眠ってください |
アスベル | (…? 何だ、この違和感は…) |
ヒューバート | 自分を犠牲にしてまでぼく達を助けてくれて本当にありがとうございます |
アスベル | (…違う。 こんな時、ヒューバートは…) |
| |
ヒューバート | 兄さん…! |
アスベル | ヒューバート…? |
アスベル | どうしたんだ?そんなに慌てて |
ヒューバート | …兄さんが怪我をしたと聞いたので |
アスベル | ああ…そこまで酷い傷じゃないよ。大げさだな |
ヒューバート | 戦地で負傷した仲間を助けるために無茶をしたそうですね |
ヒューバート | 救援部隊が到着するまで怪我人を庇いながら一人で敵兵と戦っていたとか… |
アスベル | …… |
ヒューバート | そうやってすぐに一人で背負おうとするのは兄さんの悪い癖です |
ヒューバート | 無茶をすればいいというものではありませんよ。ぼくの気苦労も考えてください |
アスベル | 心配かけてすまない、ヒューバート |
ヒューバート | …別に、ぼくは心配なんてしていません |
ヒューバート | 兄さんにもしもの事があったら、シェリアやリチャードが悲しむでしょう |
ヒューバート | それにぼくも── |
| |
アスベル | …… |
ヒューバート | 兄さん…? |
アスベル | 違う…。お前は、ヒューバートじゃない |
ヒューバート | 何を言ってるんですか…? |
アスベル | 俺がマナリスを使って命を助けても…みんなは、礼を言ったりしない |
アスベル | 無茶をするなって、怒るはずだ |
ヒューバート | …… |
アスベル | それに…マナリスを使って願いをかなえる事は間違ってる |
アスベル | 運命は、自分の手で掴み取るものだ…! |
| |
アスベル | …… |
ヒューバート | (…! 兄さんの動きが止まった…?) |
ヒューバート | パスカルさん!今です! |
パスカル | 任せて! |
パスカル | アスベル、今…助けるからね! |
| パキッ… |
| 夢からの解放 |
パスカル | アスベル、今…助けるからね! |
| パキッ… |
アスベル | …つっ…! |
| カシャンッ──… |
| |
アスベル | (ここは…?) |
| ザバーン… |
アスベル | (波の音がする…。 船の上にいるのか…?) |
アスベル | (…あれは──) |
| |
アスベル | う… |
ヒューバート | 兄さん! |
パスカル | アスベル! |
アスベル | ん…ヒューバート…?それに、みんなも… |
ロイド | 意識が戻ったんだな…!大丈夫か、アスベル? |
アスベル | ああ…。…ここは? |
スパーダ | 迷いの森にある遺跡の傍だ |
アスベル | 迷いの森…?どうして俺は、この場所に… |
アイゼン | 何も覚えていないのか? |
アスベル | ああ…。エレノアと別れた後、男達と戦って…気を失ったところまでは覚えてるけど、それからは… |
エレノア | …アスベル、身体はどうですか?具合が悪かったり、どこか痛いと感じるところは…? |
アスベル | 平気だ。エレノアは本部に戻ってみんなと合流出来たんだな |
アスベル | …無事でよかった |
エレノア | っ… |
ルーク | 馬鹿野郎!今は自分の心配しろよ!俺達がどれだけ… |
スパーダ | まあまあ、落ち着けよ。アスベルは何も覚えてねえみたいだし責めても仕方ねーだろ? |
ロイド | 真っ先に仲間の事を考えるのはアスベルらしいしな! |
パスカル | うんうん、それでこそアスベルって感じだよね~ |
アスベル | …? |
ルカ | はは…。ちゃんと説明しないと、ますますアスベルが混乱しちゃうよ |
アリーシャ | そうだな。まずは、状況を整理しよう |
ヒューバート | 兄さんの様子を見るに、ぼく達と対峙していた時の事は記憶にないようですね |
アイゼン | ああ。パスカルの予想通り首飾りが思考や記憶に作用を及ぼしていたのだろう |
アスベル | 俺は、何か忘れているのか…? |
エレノア | それは… |
ヒューバート | …兄さんは先ほど、気を失った後の事は何も覚えていないと言っていましたね |
アスベル | ああ…。ここで目が覚めるまではずっと…夢を見ていたんだ |
アスベル | 夢だと気付けないくらい鮮明で…現実味のあるものだった |
ロイド | どんな内容だったんだ? |
アスベル | 戦場で倒れている仲間を助けるために、マナリスを使い続ける夢だ |
アスベル | マナリスの使用には代償があるとわかっていても、使わずにはいられなかった |
アスベル | みんな、酷く傷付いていて…早く治療しないと命が危ない状態だったから |
エレノア | アスベル… |
アスベル | だけど途中で違和感を覚えて、夢の内容を否定したんだ。その後に、目が覚めた |
ヒューバート | なるほど… |
ヒューバート | 首飾りを破壊する前に兄さんの動きが止まったのは、夢の中で抵抗した事と関係があるかもしれませんね |
アスベル | さっきも気になったんだが、首飾りって何の話だ…? |
パスカル | アスベルの首に取り付けられていた装置の事だよ |
アイゼン | おそらく、お前が気を失った後に付けられたんだろう |
アスベル | …その装置が、夢と関係してるのか? |
パスカル | これは推測だけど…首飾りを付けられると、催眠状態に引き入れられるんじゃないかな |
パスカル | アスベルの意識を夢の中に閉じ込めて意のままに操るためにね |
パスカル | たぶん、夢を否定した事でアスベルの意識が一瞬戻って動きが止まったんだと思う |
スパーダ | つまり、首飾りを付けられてる間はアスベルの意志とは関係なく敵の都合のいいように動かされてたって事か |
アスベル | そう言えば…森で戦った男達が、俺にはまだ利用価値があると話してた |
アスベル | ──教えてくれ。俺が夢を見ている間に何があったんだ? |
エレノア | …… |
アリーシャ | …それは、私が話そう |
アスベル | 本部の保管庫を襲って、マナリスを強奪した…? |
アリーシャ | ああ。私達は最後にマナリスの反応が探知された場所を追って来たんだ |
ルーク | 結局、マナリスは別の場所に運ばれた後だったけどな |
アスベル | …俺は、この手でヒューバート達を傷付けたんだな |
アスベル | その上、助けに来てくれたみんなにも剣を向けたのか──… |
ヒューバート | 兄さん… |
スパーダ | お前は何も悪くねえだろ。操られてただけなんだからよ |
アスベル | …それでも、俺が意識を奪われたせいでマナリスが敵の手に渡ったんだ |
アスベル | 今回の件で四大国の均衡が崩れるような事があれば── |
アスベル | リチャード達が必死に守ろうとしている平和を壊す事になる… |
アイゼン | 今は思い悩むより、マナリスを取り戻す事を考えるべきだろう |
アイゼン | お前を操っていた奴がどんな目的でマナリスを使うかわからんからな |
アスベル | …そうだな。悪用されれば、大変な事になる |
アスベル | まずはマナリスを奪還しよう。それに、攫われた女性も助けないと |
アスベル | 意識を奪われていた間に犯した罪はその後で償うよ |
エレノア | アスベル…今回の件は、私にも責任があります。一人で背負わないでください |
アスベル | …ありがとう、エレノア |
パスカル | そうと決まれば、持ち去られたマナリスを探さないとね! |
ルカ | うん。エメロードさんもきっと、敵がいる場所に囚われてるはずだよ |
ルーク | そうは言ってもよ、レーダーでマナリスを追えないんじゃ探しようがないだろ |
ルカ | アスベルと一緒にいた人達なら何か知ってるんじゃないかな? |
スパーダ | あいつらが簡単に口を割るとは思えねェけどな |
ヒューバート | しかし、彼らが所持している物が何かの手がかりになるかもしれません |
アイゼン | 調べるだけの価値はありそうだ |
ロイド | それじゃ、さっきの場所に戻ろうぜ! |
| |
謎の男達 | …… |
ルカ | まだ、目が覚めてないみたいだね |
エレノア | 今の内に、所持品を調べましょう |
アリーシャ | そうだな。手分けして取りかかろう |
パスカル | 了解~! |
ロイド | ん…?何だ、これ |
ルーク | どうかしたのか? |
ロイド | こいつの服のポケットに紙が入ってたんだ |
ルーク | …何かの書類みてえだな。開いてみようぜ |
| ガサガサッ |
アスベル | これは…!通行許可書だ |
ヒューバート | 調査隊員が島の各所に立ち入る事を許可する書状──… |
ヒューバート | 本部の上層部しか発行出来ない通行許可書を、何故彼らが… |
パスカル | ジェイが言ってた通り、調査隊の内部に内通者がいるんだろうね |
アスベル | 書状の署名欄を確認しよう。彼らと繋がってる人物がわかるはずだ |
エレノア | …!まさか── |
ロイド | どうしたんだ? |
エレノア | この署名は、シルヴァラントの貴族のものです |
ルーク | つまり…アスベルを追う時にいちゃもんつけて来た奴がマナリスの強奪に関わってたって事かよ!? |
エレノア | …その可能性が高いと思います |
アリーシャ | 彼らが襲撃犯と組んで悪事に手を染めていたというのか…? |
アリーシャ | 何故、そんな… |
スパーダ | だからあいつら、アスベルに全ての罪を着せようとしてたのかもな |
ルーク | それが本当なら、一発殴らねえと気がすまねえぜ |
アリーシャ | …… |
謎の男2 | う… |
アイゼン | …目が覚めたようだな |
謎の男3 | く…動けねえ |
アリーシャ | 手荒にしてすまないが、縄で縛らせてもらった。君達を逃がすわけにはいかないからな |
謎の男2 | くそ…!計画は完璧だったはずなのに… |
アスベル | …… |
謎の男1 | お前は… |
謎の男1 | ──首の装置を壊したのか。よくカラクリに気付いたな |
謎の男1 | …それで?守りたいものを自分の手で壊した感想を聞かせてくれよ |
アスベル | っ… |
エレノア | 何て卑劣な…! |
ルーク | こいつ…!絶対に許さねえ! |
ヒューバート | 気持ちはわかりますが、今は感情を抑えるべきです |
ヒューバート | 怒りで思考を曇らせると彼の思う壺です |
謎の男1 | ち…。邪魔しやがって |
ルカ | …あなた達に聞きたい事があります。マナリスをどこへ運んだんですか? |
謎の男2 | 俺達が話すと思うか? |
スパーダ | 力ずくで吐かせてもいいんだぜ? |
アイゼン | 何度か殴られればそんな軽口も言えなくなるだろう |
謎の男3 | ひ…っ |
ルカ | ふ、二人共、落ち着いて… |
アスベル | …もう一度聞く。お前達はマナリスがどこへ運ばれたか知っているのか? |
謎の男2 | さあな |
スパーダ | …やっぱ、一発殴っとくか |
アイゼン | 手伝おう |
謎の男2 | ま、待てよ…!俺達もどこに運んだのかまでは知らされてねえんだ! |
謎の男1 | 馬鹿、余計な事をしゃべるな! |
謎の男2 | …!わ、悪い… |
ルカ | 今の話が本当だとすると…マナリスの捜索は振り出しに戻ったみたいだね… |
パスカル | ん~、困ったね。通行許可書だけじゃ、マナリスを探す手がかりにはならないし… |
アスベル | …… |
アスベル | そう言えば、意識が戻る前に一瞬だけ何か、夢とは別のものが見えたんだ |
ヒューバート | 首の装置を破壊した直後ですか? |
アスベル | ああ。船の上にいるみたいだった |
アスベル | 通行許可書を持っていれば港から船に乗る事も出来るから、ふと思い出して… |
パスカル | …それって、もしかしたらアスベルを操ってた人が見てたものなんじゃないかな |
エレノア | どうしてそう思うんですか? |
パスカル | 一方的に支配されてた意識が、首飾りを破壊した時に同期して… |
パスカル | アスベル側に、操ってた人の意識が流れ込んで来たんじゃないかと思ってさ |
パスカル | あの装置は、意識や記憶を共有出来る物だと思うんだよね |
パスカル | 操られていた間も、アスベルはあたし達や弟くんの事を認識してたし |
アスベル | ──そう言えば、夢の中にリチャードやシェリアも出てきた |
アスベル | 俺の記憶を探って親しい人間が苦しむ姿を見せていたのか… |
ロイド | だったら、港に行ってみようぜ! |
ロイド | 船に乗った奴がマナリスを持ってるかもしれないしさ |
アリーシャ | そうだな。操られていた時、アスベルはここにいる男達に指示を出していた |
アリーシャ | おそらく、意識を乗っ取っていた人物が首謀者だろう。マナリスを持っている可能性は高い |
アイゼン | 船の上にいたと言っていたが…何か他に見えたものはあるか? |
アスベル | ──確か…岩山の向こうにエルピスの塔が見えたんだ |
ルカ | 大体の場所がわかれば、僕達も船に乗って追いかけられそうだね |
ヒューバート | …ぼくは一度、本部に戻ります。ここにいる男達を引き渡さなくてはいけませんからね |
スパーダ | それなら、オレ達も一緒に行くぜ。本部に内通者がいるなら一人で行動するのは危険だしな |
ルーク | ああ。ジェイド達に話して、裏切った奴らを徹底的に追い詰めてやろうぜ |
エレノア | …アリーシャ。私も本部に戻って、シルヴァラントの貴族を調べます |
アリーシャ | ああ、頼む…。マナリスの奪還は私達に任せてくれ |
アスベル | …俺はアリーシャ達と港に向かうよ。意識が戻る前に見た場所を探す必要があるし… |
アスベル | 俺のせいでマナリスが奪われたなら、取り返す責任があるからな |
ヒューバート | 兄さん… |
アスベル | …ヒューバート。上層部に伝言を頼めるか? |
アスベル | マナリスを取り戻した後で、必ず本部に戻ると |
ヒューバート | …ええ。本部の対応はぼくに任せて兄さんは行ってください |
ヒューバート | くれぐれも、無茶はしないようにしてくださいね |
アスベル | …ありがとう、ヒューバート |
アスベル | 今も、夢の中でも、お前には助けられてばかりだな |
ヒューバート | …何の事かはわかりませんが、気持ちだけは受け取っておきます |
パスカル | いいねぇ、兄弟愛 |
ヒューバート | からかわないでください! |
パスカル | へいへーい。そんじゃ、あたし達はそろそろ出発しよっか |
エレノア | みなさん、気を付けてくださいね |
アスベル | ああ。必ずマナリスを取り戻して、本部に戻るよ |
scene1 | 不死鳥の漢 |
アリーシャ | ようやく、ここまで来たな。港まであと少しだ |
ロイド | 急ごうぜ。早くしないと逃げられちまう |
アスベル | ああ。港に到着したら、すぐに出航できる船を探そう |
| トタトタトタッ…── |
パスカル | …ん?何だろう、あれ |
ルカ | どうしたの、パスカル? |
パスカル | 道の先に、何かいるような…。ほら、あそこ! |
ロイド | ほんとだ。小さいから気付かなかったぜ |
アイゼン | …!あいつは… |
フェニックス | …… |
ルカ | あれ…?あの形、見覚えがあるような… |
アイゼン | (あいつが島にいるという事は、 やはり──) |
アイゼン | ──確かめたい事がある。先に行くぞ |
パスカル | え、ちょっと!アイゼン、待── |
ルカ | …行っちゃったね |
ロイド | アイゼンの奴…どうしたんだ、急に |
アスベル | 焦っていたようだし、何か事情がありそうだな |
アリーシャ | ああ…。私達も後を追いかけよう |
アイゼン | ──おい、止まれ! |
フェニックス | …!汝は…! |
フェニックス | 海賊が出たという噂を聞いていたが…やはりこの島に来ていたのか、友よ |
アイゼン | ああ。まさかここで、お前と再会するとはな |
ロイド | おーい、アイゼン!待てって! |
パスカル | はあ…はあ…。いきなり走り出さないでよ~! |
ルカ | はは…。パスカルが言うとあんまり説得力ないね… |
フェニックス | …友よ、この者達は汝の同志か?見たところ、ただの人間のようだが |
アイゼン | 調査隊の仲間だ。この島では行動を共にしている |
フェニックス | …!そうか… |
フェニックス | まさか、汝が調査隊に入っていたとはな |
ロイド | なあ、アイゼン。こいつ、普通に話してるけど…何者なんだ? |
アイゼン | ノルミン天族のフェニックスだ |
アリーシャ | 天族…。この方が… |
アスベル | それで…アイゼンはフェニックスに確かめたい事があるのか? |
アイゼン | ああ。…フェニックス、お前がいるという事は、この島に来ているんだろう |
アイゼン | …エドナが |
フェニックス | …… |
ロイド | エドナって…前に話してた、アイゼンの妹だよな |
パスカル | フェニックスはエドナと一緒に行動してるの? |
アイゼン | ああ。俺が傍にいられない代わりに妹を守ってくれている |
アイゼン | こいつの力は不死鳥。俺の死神の呪いとは真逆の性質を持つ加護の力だからな |
ルカ | そうだったんだ。でも…今は一人みたいだね |
アイゼン | あいつは、どうした? |
フェニックス | …許せ、友よ |
フェニックス | エドナは攫われた。我が、敵に不覚を取ったばかりに |
| |
アイゼン | …!攫われただと? |
アイゼン | 誰が、あいつに手を出しやがった |
フェニックス | 見知らぬ男達だったが…一人の少女を複数人で取り囲む、極重悪人共である事は確かだ |
フェニックス | エドナが天族だと知り、襲って来た |
フェニックス | 話しぶりから察するに天族であれば誰でもよかったのだろう |
アスベル | それは…何かの事件に巻き込まれた可能性があるな |
ルカ | うん…。どうしてその男達は天族を狙ってたんだろう? |
フェニックス | 敵は、天族であるエドナの力を借りたいと話していた |
ロイド | そいつらはどうやってエドナが天族だって調べたんだ?見た目だけじゃわからないよな |
フェニックス | 天族に反応する装置を使ったようだ。おそらく、島の中に天族を捕える網を張っていたのだろう |
フェニックス | あのような者達にエドナを奪われるとは、何たる不覚…! |
アイゼン | くそっ。どうしてこうなる |
アイゼン | 同じ島の中にいたあいつに呪いの影響が出たのか… |
ルカ | アイゼン… |
パスカル | うーん、もしかして… |
パスカル | その男達って、今あたし達が追ってる襲撃犯と関係があるんじゃないかな? |
アイゼン | 何…!? |
アスベル | どうしてそう思うんだ? |
パスカル | マナリスを強奪しても、代償を支払わないと願いはかなえられないでしょ |
パスカル | でも天族なら最小限の代償でマナリスを使える。だから、狙われたんじゃないかな? |
アスベル | なるほど…。確かにそれなら、マナリスを持っている人間の傍に連れていかれたと考えるのが自然だ |
フェニックス | エドナの居場所が、わかるのか…!? |
アイゼン | 確証があるわけじゃないが、今俺達が追っている敵に囚われているかもしれん |
ルカ | 敵は船で逃走してる可能性が高いんだ |
ルカ | 僕達は今から港に行ってその船を追うつもりだよ |
フェニックス | ならば、我も共に行くぞ!あの悪人共に報復を与えてやらねばな |
フェニックス | そして次こそは…!友よ、汝と交わした約束通り、あの子を守ってみせる! |
アイゼン | ああ…必ず、あいつを取り返すぞ |
パスカル | そんじゃ、そろそろ出発しよっか |
フェニックス | 待て。港に行く前に、汝らに一つ忠告がある |
ロイド | 何だ? |
フェニックス | 敵が持っている装置に注意しろ。一瞬でエドナを昏倒させ、我の動きを封じた代物だ |
パスカル | 装置の特徴は? |
フェニックス | 箱形の装置で、使用時に強い光を放っていた |
アスベル | 一瞬で動きを奪う装置か…厄介だな |
ルカ | 装置を使われる前に対処するしかなさそうだね |
アリーシャ | ああ。十分注意して、先へ進もう |
scene2 | 不死鳥の漢 |
パスカル | ──人が多いね。久しぶりに港に来たけど、前より活気がある気がするよ |
アリーシャ | 島に訪れる観光客は日に日に増加しているからな |
アイゼン | とりあえず、使えそうな船を探すぞ。出来れば速度の速いものを── |
セネル | ──お前達、ここで何してるんだ? |
ロイド | お前は…セネル! |
セネル | 久しぶりだな。今日はどうしたんだ?何か急いでるみたいだったが… |
アリーシャ | 実は、船を探しているんだ。よければ力を貸してもらえないだろうか |
セネル | …何かわけがありそうだな。話を聞かせてくれ |
セネル | ──そんな事があったのか |
セネル | …実は、少し前に金髪の少女が港を歩いていたんだ |
アイゼン | 何…!それは本当か |
セネル | ああ。お前の妹と特徴が似ていたから「アイゼンを知っているか」と尋ねたんだが… |
セネル | 何も答えないまま行ってしまった。だから、妹じゃないと判断したんだ |
ルカ | もしそれがエドナなら、どうして答えなかったんだろう? |
アスベル | 敵に脅されていたか…あるいは、何か言えない事情があったんじゃないか? |
アイゼン | …… |
ロイド | セネルは、その子がどこへ向かったかわかるか? |
セネル | いや…。ただ、シルヴァラントの大型船に乗り込むところまでは見たな |
ルカ | …! |
パスカル | シルヴァラントの船って事は…セネルが見た女の子は、やっぱりエドナだったんじゃないかな |
セネル | どういう事だ? |
アリーシャ | …敵は、シルヴァラントの貴族が署名した通行許可書を持っていたんだ |
アリーシャ | シルヴァラントが保有している船に乗っている可能性が高い。おそらく、アイゼンの妹も… |
セネル | なるほどな…。そういう事なら、俺が船を出そう |
ルカ | …!いいの? |
セネル | ああ。同じ兄として、妹を心配する気持ちはわかる |
セネル | それに、いつまでもマナリスを敵の手に渡しておくわけにはいかないだろ? |
アイゼン | …そうだな。力を借りるぞ |
セネル | 任せてくれ |
ルカ | それで…シルヴァラントの船はどの方角に向かったの? |
セネル | 港から北上した。そのまま進めば途中で岩山が見えてくる |
ロイド | …!アスベルが見た場所と一致してるな |
アスベル | 今から船を出して、シルヴァラントの船に追いつく事は出来るか? |
セネル | ああ。俺の船なら、大型船より速度が出る。すぐに追いつけるだろう |
フェニックス | これで、エドナを追うための道が拓けたな |
アイゼン | ああ。…頼めるか、セネル |
セネル | 勿論だ。船に乗ってくれ、すぐに出航する |
scene1 | 同じ願い |
| ザバーン |
パスカル | うわっ!とっとっと…── |
| ガシッ |
ロイド | 危ないだろ、パスカル。ちゃんと、どこかに掴まっとけって |
パスカル | ありがと~、ロイド。もう少しですっ転ぶところだったよ |
アイゼン | やけに揺れるな。この海域は、波が荒いのか? |
セネル | いや、ここ数日で海の様子が変わったんだ。魔物の数も増えてる |
アリーシャ | 海もなのか…。島でも、同様の現象が起きているんだ |
セネル | らしいな。本部から島内の様子は聞いてる |
セネル | 島全体が、何かの影響を受けているようだが…今のところ、原因はわからない |
ルカ | 海にいる魔物が増えたら、大陸から島に行き来するのが難しくなりそうだけど…大丈夫かな |
セネル | 今はまだ大きな問題になっていないが…油断は出来ないだろうな |
セネル | …!──見えてきたぞ |
セネル | あれが、港で話した岩山だ |
ロイド | どうだ、アスベル? |
アスベル | …間違いない。目が覚める前に見えた景色と同じだ |
パスカル | って事は、やっぱり…港から出たシルヴァラントの船に敵が乗ってるんだね |
アリーシャ | ああ。という事は…船に乗り込んだ少女もエドナ様で間違いないだろう |
ルカ | でもどうして、島に沿って船を進めてるのかな? |
ルカ | 島から離れた方が追跡され難いと思うんだけど… |
パスカル | うーん、たぶん…船の事がバレるはずないって思ってるんじゃないかな? |
ロイド | 確かに、アスベルがこの景色を見てなかったら、あいつらが船に乗ってるなんて考えもしなかったよな |
アリーシャ | ああ…。島の周辺に留まっているという事は、まだ何か狙いがあるのだろうか… |
セネル | …… |
セネル | これは推測だが、奴らは川を下って、エルピスの塔に向かうつもりなんじゃないか? |
アイゼン | 何故そう思う? |
セネル | 逃げる目的で船を出したならとっくに島から離れているはずだ |
セネル | この航路を行けば、川を下ってエルピスの塔に近付く事が出来る |
セネル | 俺が、海賊達を追って湖に出た進路と同じだ |
アリーシャ | つまり敵の最終目的は…サフィアか |
セネル | ああ、おそらくな。シルヴァラントの船には小舟が積まれていたはずだ |
セネル | 大型船では無理だが、小舟なら川を下れる |
アスベル | だが、砂漠地帯で回収されたマナリスがなければ塔の扉は開かないはずだ |
パスカル | それは… |
パスカル | 本部にいるシルヴァラントの貴族が最後のマナリスを持ち出す算段だったのかも |
アリーシャ | あり得ない話ではないな。今は、セネルの推測に賭けてみるしかないだろう |
アイゼン | ああ。お前の言っている河口はどこにある |
セネル | この先だ。このまま船を進めよう |
アイゼン | 頼んだ |
アイゼン | …… |
ルカ | アイゼン…エドナの事、心配、だよね… |
アイゼン | …たった一人の、家族だからな |
パスカル | それにしても、まさか島にアイゼンの妹が来てたなんてね |
アリーシャ | そう言えば…セネルはアイゼンの妹を知っていたようだが、二人には面識があったのか? |
セネル | 前に、妹を捜して港に来ていたアイゼンと話をした |
セネル | エルピスの塔の近くで妹と似た声を聴いたから島にいないか捜してたんだよな? |
アイゼン | ああ |
ロイド | そうなのか!?言ってくれれば俺達も捜したのに |
アイゼン | 確証がなかったからな。まさか、本当に島に来ているとは思っていなかった |
アイゼン | …フェニックス。あいつは何故、この島に来ていたんだ |
フェニックス | 少し前…エドナが住んでいた山に導師が現われた |
フェニックス | あの子は導師から、アヴァロン島に願いをかなえる輝石があると聞いて旅に同行したのだ |
アリーシャ | …! |
パスカル | 導師って…スレイの事? |
フェニックス | …!汝はスレイを知っているのか |
パスカル | うん、一緒に旅をした事があるんだ。島でも何回か会ったよ |
ロイド | 俺も、島で会う前からスレイの事は知ってるぜ! |
フェニックス | そうか。導師の仲間が我が友と共にいたとは…数奇な運命だ |
アイゼン | それで…どうしてエドナは、サフィアに興味を持ったんだ? |
アイゼン | 人間嫌いのあいつが山を下りるくらい、かなえたい願いがあったのか? |
フェニックス | 直接口に出す事はなかったが…おそらく、汝の呪いを解きたいと考えていたのだろう |
アイゼン | …そうか |
ロイド | エドナも、アイゼンに会いたかったんだな |
アイゼン | …あいつは今まで何度も呪いの影響を受けて傷付いてきた |
アイゼン | もう二度とあいつを傷付けないために離れたが…また、巻き込んじまったな |
ルカ | アイゼン… |
セネル | …心配するな。必ず、シルヴァラントの船に追いついてみせる |
セネル | そしたら、みんなで妹を助け出せばいい |
アリーシャ | セネルの言う通りだ。必ずエドナ様を救い出そう…私達の、力で |
アイゼン | お前ら… |
ロイド | そうと決まれば、早く船を見つけねえとな! |
アスベル | ああ。甲板に散って、周囲を確認しよう |
フェニックス | 友よ、どうやら…この島で、よい仲間を得たようだな |
アイゼン | …ああ、そうだな |
ルカ | こっちに船はいないみたい…。パスカル、そっちはどう? |
パスカル | 同じく、何も見えないよ~ |
| …オオ…オ… |
ロイド | ん…?今、何か聞こえなかったか? |
| |
| ガタンッ── |
アリーシャ | くっ…何だ?この揺れは…! |
アイゼン | 暗礁にでも乗り上げたのか? |
セネル | いや、違う。この辺りの海は深い |
セネル | 岩やサンゴ礁が船底に当たる事はないはずだ。これは… |
ルカ | …!あれって… |
ルカ | みんな!海の中に、何かの影が見えるよ |
| ギャオオオ! |
アスベル | 魔物だ…!それも、すごい数の! |
セネル | 島周辺の海域でこれだけの魔物が出たのは初めてだ…! |
| ザッバーン |
| ギャオオオ! |
パスカル | うわあああ!海から飛び出してきた! |
アスベル | 下がれ、パスカル! |
アスベル | ──裂空刃! |
| ギャオオオン…! |
| バシャン! |
ルカ | やった…! |
| ドコンッ! |
セネル | くっ…!魔物の数が多すぎる |
セネル | このままじゃ船体が持たない。速度を上げて魔物を振り切るぞ! |
アイゼン | わかった。お前は舵に集中しろ |
アイゼン | 海から飛び出してくる奴らは、俺達で片付ける |
セネル | ああ、頼んだ |
| ザッバーン |
ロイド | また来たぞ…! |
アリーシャ | 任せろ!──裂駆槍! |
| ギャオオオン…! |
パスカル | まだまだ下にいるよ!みんな、気を付けて! |
フェニックス | ふっ…。この程度の魔物に遅れを取る我ではないわ! |
scene2 | 同じ願い |
セネル | ──追って来ないな。どうやら魔物達は諦めたようだ |
パスカル | はー、よかった。船が沈んじゃうんじゃないかってヒヤヒヤしたよ |
アリーシャ | ああ…。あのまま攻撃を受け続けていたら危なかった |
アイゼン | …いつの間にか、かなり進んで来たな。ここはどの辺りだ? |
セネル | 進路に問題はない。もうそろそろ、河口が見えてくる頃だ |
アスベル | …!みんな、あれを見てくれ |
アリーシャ | あの旗は…!間違いない、シルヴァラントの船だ |
セネル | あそこで停泊しているようだな。無事に追いついてよかった |
ロイド | セネル、あの船に出来るだけ近付いてくれ! |
セネル | ああ、わかった |
ルカ | 近くで見ると、すごく大きいね… |
パスカル | ん…?あれ… |
ロイド | どうかしたのか、パスカル? |
パスカル | 甲板のところに、誰か立ってるみたいだよ |
フェニックス | …!まさか、あれは── |
| |
エドナ | …… |
| |
アイゼン | エドナ…! |
フェニックス | 何故、我らに反応しない…? |
フェニックス | 何か様子がおかしい。攫われた時と、服装も変わっている |
パスカル | もしかしたら、アスベルと同じ首飾りを付けられてるかもしれないね |
アスベル | だから、港でセネルの問いかけに答えなかったのか |
アイゼン | ──許さねえ。あいつに手を出した奴には落とし前をつけさせる |
アイゼン | セネル、船を横につけられるか。このままシルヴァラントの船に乗り込む |
セネル | ああ、任せろ! |
scene1 | 兄として |
セネル | 近付くのは、ここまでが限界だ。後は乗り込むしかない |
セネル | 船に積んである梯子を使ってくれ。舷側にかければあっちの甲板に登れる |
アイゼン | 助かった。礼を言う |
パスカル | 何かあった時のために、誰か一人は船にいた方がいいよね? |
セネル | ここには俺が残ろう。船はいつでも動かせるようにしておく |
ロイド | ああ、わかった!それじゃ、早速梯子をかけて登ろうぜ |
| |
アリーシャ | …!待て、ロイド。向こうの甲板に人の動きがある |
アスベル | こっちの動きに気付かれたみたいだな… |
ルカ | 甲板から縄を落としてるよ!この船に乗り込むつもりなんだ…! |
アスベル | 迎え撃とう。ここで引き返すわけにはいかない! |
パスカル | うん!縄の数からして、降りてくるのは一人や二人じゃなさそうだね |
フェニックス | ふん、何人来ようとも返り討ちにしてくれる! |
| シュルシュルシュル── |
| ドタドタドタッ |
船の男1 | まさか、この船を追ってくる奴がいるとはな… |
船の男1 | 悪いが、お前達には海の藻屑となってもらう |
アイゼン | 黙れ。海に沈むのはてめえらの方だ |
アイゼン | 妹に手を出した事、後悔させてやる |
船の男1 | …ちっ、かかれ!一人残らず排除しろ! |
船の男2 | うおおおおお! |
アイゼン | ──おらっ! |
| ドガッ! |
船の男2 | ぐふっ…!? |
パスカル | うわ…、痛そ~ |
ロイド | アイゼンの奴、かなり怒ってるみたいだな。いつもより容赦ないぜ… |
フェニックス | 戦場で問答は無用。我らも後に続くぞ! |
ルカ | うん! |
scene2 | 兄として |
| バキィッ |
船の男3 | ぐ…う… |
アイゼン | ちっ、キリがねえな |
アリーシャ | ああ…。一向に数が減らない |
アリーシャ | おそらく敵は、ここで私達の体力を消耗させるつもりだろう |
フェニックス | おのれ、どこまでも姑息な真似を…! |
セネル | …ここは、俺に任せろ |
パスカル | セネル? |
セネル | ──魔神拳・双牙! |
船の男達 | ぐうう…!? |
アスベル | …!敵の連携が崩れた…! |
セネル | 今だ!敵が怯んでいる間に、お前達は船に乗り込め! |
セネル | 甲板に降りてくる敵は俺が引き付ける |
ルカ | でも、それじゃセネルが…! |
ロイド | お前を残して行けるわけないだろ! |
セネル | 甲板に上がって縄を切れば敵は降りて来られない |
セネル | お前達が甲板に着くまでの時間稼ぎだ |
アリーシャ | しかし… |
船の男1 | くそ、いつまで倒れているつもりだ!早くあいつらを始末しろ! |
アイゼン | …悩んでいる暇は、なさそうだな |
セネル | 行け!俺の事は気にするな |
セネル | 必ず、マナリスを奪還しろ |
ロイド | …わかった。任せろ! |
アスベル | 梯子をかけよう。ルカ、手伝ってくれ! |
ルカ | うん! |
アスベル | …よし、これで登れるな。俺が先陣を切る |
ロイド | ああ、俺達も後に続くぜ! |
アイゼン | …上に着いたら縄を切る。それまで、持ち堪えろ |
セネル | ああ、わかった |
セネル | アイゼン。必ず、妹を助けてこの船に戻って来い |
セネル | 妹が困っていれば、何があろうと、どこにいようと即座に駆け付ける。それが兄というものだからな |
アイゼン | …ああ、そうだな |
セネル | …さてと後はあいつらを信じてここを守り切るだけだな |
船の男1 | 何をしてる…!あの梯子を落とせ…! |
セネル | ここから先は…誰一人通す気はない |
セネル | …さあ、来い!俺が相手だ! |
scene1 | 黒幕 |
| シュタッ── |
船の男1 | な…!こいつ、いつの間に── |
アスベル | はあっ! |
| ドサッ… |
船の男2 | っ…敵襲だ!船内にいる奴らを集めろ! |
ロイド | くそっ、やっぱりここも敵だらけだな |
アリーシャ | ああ…。この先も、慎重に行こう |
| シュタッ── |
アイゼン | これで全員だ!縄を切れ! |
ルカ | うん、任せて!──やあっ! |
| ザシュッ! |
船の男3 | うあああああ! |
| ドボン! |
ロイド | よし…!これで、あいつらは船に乗り込めなくなったな |
アイゼン | ああ。下はセネルに任せて、俺達は先へ進むぞ! |
船の男2 | くそ、縄をやられた…!こうなったら… |
フェニックス | …!あれは── |
フェニックス | あの男が持っている箱が例の装置だ…! |
パスカル | 装置を使って何かするつもりだよ! |
アリーシャ | させるか!──やあっ! |
| バキッ! |
船の男2 | な…!? |
フェニックス | 装置の起動を槍による攻撃で防いだのか…見事な動きだ! |
| バキ…バキバキ… |
パスカル | 見て!今の一撃で、装置が崩れてくよ |
| パリィィン |
船の男2 | こ、これは… |
ルカ | 箱の中から、マナリスが…!? |
船の男2 | どういう事だ…!?何で、これが箱の中に!? |
船の男4 | くそ…!俺達は、あいつに騙されてたんだ! |
船の男5 | 知らず知らずの内に代償を払わされてたって事か…!? |
アイゼン | …連中も、動揺しているようだな |
アスベル | ああ。箱の中身がマナリスだと知らなかったみたいだ |
船の男2 | ちっ、一先ずこいつらを倒すぞ! |
船の男2 | あいつを問い詰めるのは、その後だ! |
フェニックス | 構えろ!来るぞ! |
アイゼン | 覚悟はいいか?死神の力、見せてやる…! |
scene2 | 黒幕 |
ルカ | ふう…何とか全員倒したみたいだね。みんな、大丈夫? |
アリーシャ | 問題ないよ。敵が持っていたマナリスも、無事に回収出来た |
パスカル | よーし!この調子で、残りのマナリスも取り戻さないとね! |
アスベル | 問題は、この船のどこにマナリスが隠されているかだな |
アイゼン | まずは、奥にある階段を上って船橋を目指すぞ |
ルカ | エドナを助けるんだね? |
アイゼン | ああ。それに…船橋にある舵を奪えば船の動きを封じられる |
アイゼン | その後で、船内を探ってマナリスを見つけ出せばいい |
パスカル | お~!すごく、海賊っぽいね |
アイゼン | 海賊だからな |
ロイド | そんじゃ、船橋に向かおうぜ! |
アリーシャ | ああ。どこに敵が潜んでいるかもわからない。警戒して進もう |
| |
ルカ | …!みんな、見て。舵の傍に、誰か立ってるよ |
エドナ | …… |
アイゼン | エドナ! |
| コツコツコツ… |
ロイド | ん…?柱の陰から、エドナの方に誰か歩いて来るぞ! |
アリーシャ | …!あなたは…! |
| |
エメロード | ──驚きました。まさか、あなた方がここまで来るなんて |
ルカ | エメロードさん…!よかった、無事で── |
アスベル | 待て。何か…様子が変だ |
ロイド | エメロードが手に持ってるのって、マナリス…だよな? |
パスカル | どうしてエメロードがマナリスを…? |
エメロード | 私がマナリスを奪うように指示したからです |
パスカル | っ…!そんな… |
アリーシャ | あなたが…黒幕だったのか |
エメロード | ふふ… |
scene1 | 夢見る傀儡 |
アリーシャ | あなたが…黒幕だったのか |
エメロード | ふふ… |
ロイド | 黒幕って…ちょっと待てよ。どういう事だ? |
ロイド | エメロードは俺達が森で戦った奴らに追われてたんじゃなかったのか? |
アスベル | ああ…。俺とエレノアは彼女が男達に囲まれているのを見て助けようとしたんだ |
エメロード | あの時は、あなた方の動きを鈍らせるためにわざと人質に取られたのです |
アイゼン | …アスベルとエレノアを追い詰めるために打った芝居だった、というわけか |
エメロード | その通りです。砂漠地帯の失態を繰り返すわけにはいきませんでしたから |
エメロード | 確実に装置を取り付けるために最善の策を講じました |
アリーシャ | 初めから、狙いは四大国連合調査隊だったのか… |
パスカル | アスベルの首についてた装置はエメロードが作ったの? |
エメロード | はい。私が持ち得る技術の全てを投じて完成させた装置です |
アイゼン | エドナの首に付いてる装置も同じ物だな |
エメロード | ──気が付いていましたか。彼女は今、自らの意志で行動する事は出来ません |
エメロード | 私が装置を使って彼女の身体を支配していますから |
エドナ | …… |
エメロード | 対象の意識を乗っ取り、意のままに操る事が出来る…素晴らしい発明だと思いませんか? |
フェニックス | 貴様…! |
パスカル | …… |
ルカ | じゃあ、もしかして首飾りを使ってアスベルを操っていたのも── |
エメロード | ええ、私です |
アスベル | …! |
エメロード | 装置で記憶を読み取り言動を真似る事で、彼が調査隊を裏切ったように見せかけました |
アスベル | 何故そんな事を…! |
エメロード | 勿論、あなたを囮として利用するためです |
エメロード | 私達がエルピスの塔へ向かう間、調査隊の注意を逸らしておく必要がありましたから |
アリーシャ | そんな事のために、手の込んだ芝居まで打ってアスベル達を陥れたのか!? |
エメロード | ふふ…お蔭で、調査隊の目を欺く事が出来ました |
アイゼン | …ルカ達が砂漠で回収したマナリスは調査隊の中に紛れ込んだ内通者が持ち出す算段だったのか? |
エメロード | ええ、その通りです。外部に気を取られている時は、内部に注意がいかないものですから |
エメロード | 私の計画通りに進んでいれば今頃、調査隊に気付かれる事なくサフィアを手にしていたでしょう |
エメロード | ──それがまさか、こうも容易く追いつかれてしまうとは… |
エメロード | あなた方は、どうやってこの船を探し出したのですか? |
パスカル | 首飾りを破壊した時にアスベルとエメロードの意識が同期したんだよ |
エメロード | …なるほど。その時に、私の居場所がわかる何かが見えたというわけですね |
エメロード | 捨て駒として利用するつもりが、こちらの手を読まれる事になるとは…予想外でした |
ロイド | 捨て駒って…。お前、本気で言ってるのか!? |
エメロード | はい。彼には全ての罪を背負って死んでもらうつもりでした。──哀れな道化として |
アスベル | …… |
エメロード | しかし、あなた方が予想していたよりも早く首の装置に気付いてしまった |
エメロード | あの短時間で装置のカラクリに気が付いたその洞察力には驚かされます |
パスカル | …エメロードはマナリスを強奪するために、アンマルチアの技術を使ってたんだね |
パスカル | 天族に反応する装置に…マナリスが入った箱形の装置もエメロードが発明したものでしょ? |
パスカル | それに…マナリスを運ぶために、波動を遮断する装置を使ったんじゃない? |
エメロード | その通りです。マナリスを運んだ経路を調査隊に知られるわけにはいきませんから |
アリーシャ | だから、レーダーでマナリスの反応を探知する事が出来なかったのか… |
アイゼン | 断崖の集落で目覚めた後、俺達に協力したのは情報を得るためか? |
アイゼン | 過去の記憶を失っていると言ったのも、虚言だろう |
エメロード | ええ、私がサフィアを手に入れるまであなた方に余計な情報を与えたくありませんでしたから |
エメロード | 記憶がないと偽ったまま、仲間としてふるまっていた方が何かと都合がよかったのです |
ルカ | そんな… |
ロイド | お前、怪我してまでパスカルの事を助けてただろ?あれも演技だったって言うのか? |
エメロード | はい。あなた方の信頼を得るためにあえて傷を負ったのです |
パスカル | エメロード… |
フェニックス | 信頼を寄せる仲間を裏切り、あまつさえ利用するとは…汝には人の心がないのか! |
エメロード | 目的を達成するために犠牲を払うのは当然の事でしょう |
ロイド | こいつ…! |
エメロード | ふふ…サフィアを手にするのは他の誰でもない、この私です |
アリーシャ | あなたにサフィアは渡さない!奪ったマナリスを返して、大人しく投降するんだ |
アリーシャ | 今頃、本部にいるシルヴァラントの貴族達も拘束されているはずだ |
エメロード | それがどうしたのですか?利用価値のない駒は切り捨てるまでです |
エメロード | 多少計画は狂いましたが…マナリスとこの天族の娘を使えばどうとでもなるでしょう |
エドナ | …… |
アイゼン | てめぇ…! |
ロイド | マナリスを取り戻す前に、エドナの首飾りを破壊するぞ! |
ルカ | うん…! |
エメロード | そう簡単にいくと思っているのですか? |
エメロード | ──彼らを始末しなさい |
| ザザザッ |
アリーシャ | …!伏兵か…! |
船の男6 | 囲め!一人残らず片付けるぞ! |
船の男7 | ああ! |
アスベル | 俺達が話している間に、船の中から出てきたみたいだな… |
フェニックス | く…!船内にまだこれだけ人が残っていたのか |
エメロード | 真相を知られた以上、皆さんを生かしておく事は出来ません |
エメロード | あなた方には、ここで死んでいただきます |
船の男6 | かかれ! |
| ダッダッダ── |
ルカ | みんな、気を付けて!来るよ…! |
アイゼン | ちっ!上等だ! |
scene2 | 夢見る傀儡 |
船の男7 | うぐ…! |
| ドサッ |
フェニックス | ふん、脆弱な奴らだ |
エメロード | …やはりその者達では力不足でしたか |
エドナ | …… |
アイゼン | …! |
エメロード | 彼女が、あなた方の相手です。存分に戦ってください |
エドナ | ──エアプレッシャー |
アイゼン | っつ…! |
ルカ | アイゼン…! |
エドナ | ──インブレイスエンド |
アイゼン | ちっ! |
エメロード | 逃げるだけですか?…やはり妹には手が出せないようですね |
アリーシャ | 兄妹だと知っていて、わざとアイゼンに攻撃をしかけたのか…! |
パスカル | 装置を使ってエドナの記憶を読んでるから、厄介だね |
フェニックス | く…!どこまで悪逆非道な行いを重ねるつもりだ! |
エドナ | ──ロックランス |
アリーシャ | くっ…! |
アイゼン | やめろ、エドナ…! |
エメロード | 話しかけても、無駄です。彼女は夢の中に囚われている |
エメロード | あなた方の声が届く事はありません |
エドナ | …… |
scene3 | 夢見る傀儡 |
エドナ | …ここでいいわ。向こうでお兄ちゃんが待ってるから |
スレイ | そっか。じゃあ、ここでお別れだね |
スレイ | 今までありがとう、エドナ。…短い間だったけど、一緒に旅が出来て楽しかったよ |
エドナ | スレイ… |
ライラ | サフィアの力でアイゼンさんの呪いが消えたので、もう何も心配する事はありませんね |
ライラ | エドナさんの願いがかなって本当によかったです |
ライラ | アイゼンさんとお二人で幸せに暮らしてください… |
エドナ | 大げさね。前の生活に戻るだけよ |
エドナ | …ただ、それだけ |
ミクリオ | こんな時くらい、素直に喜べばいいだろう。誰もからかったりしない |
エドナ | 生意気ね、ミボのくせに |
エドナ | あなたこそ、素直に言っていいのよ?ワタシと離れるのが寂しい、って |
ミクリオ | …別に、思ってない |
スレイ | ミクリオも素直じゃないな |
ライラ | お二人のやり取りを見られなくなると思うととても寂しいですわ |
ミクリオ | ──スレイ。そろそろ行かないと、日が暮れる |
スレイ | そうだな。エドナ、オレ達はもう行くよ |
エドナ | そう。…あまり無茶しないようにね、スレイ |
スレイ | うん!じゃあ、また! |
スレイ | 近くを通る事があったら会いに来るから!アイゼンによろしく! |
エドナ | …… |
エドナ | …ありがとう。あなた達との旅も、悪くなかったわ |
アイゼン | 別れは済んだのか? |
エドナ | ええ。もう行ったわ |
アイゼン | そうか |
エドナ | ──お兄ちゃんは、これからずっとここにいてくれるのよね? |
アイゼン | ああ。お前の傍にいる |
アイゼン | もう俺の呪いが原因でお前を傷付ける心配もないからな |
エドナ | …そう |
エドナ | なら、時間は沢山あるわね。とりあえず… |
エドナ | 久しぶりに、お兄ちゃんの作ったパルミエが食べたいわ。作ってくれる? |
アイゼン | ああ、わかった |
| |
エドナ | …… |
エメロード | 今、彼女は幸福な夢の中にいます。そこから抜け出そうとは思わないでしょう |
アリーシャ | そんなものは偽りにすぎない! |
エメロード | だからと言って、手放せると思いますか? |
エメロード | ずっと願い続けてきた世界にいられる幸せを |
フェニックス | まさか…エドナは、兄と共に歩む未来を夢に見ているのか |
アイゼン | …… |
エドナ | ──跪きなさい |
アスベル | …!来るぞ! |
アイゼン | くっ…! |
| ガシッ |
エドナ | …! |
アイゼン | ──目を覚ませ、エドナ! |
エドナ | お兄ちゃん…? |
アイゼン | …! |
パスカル | アイゼン、危ない…! |
エドナ | …さようなら、お兄ちゃん |
アイゼン | ぐっ…!? |
scene1 | 兄妹の流儀 |
アイゼン | ぐっ…!? |
ロイド | アイゼン!大丈夫か!? |
アイゼン | ああ…。大した傷じゃない |
エドナ | …とっさに身体を逸らして直撃を避けたのね |
エドナ | さすが、お兄ちゃん。簡単には倒れてくれなさそうね |
アイゼン | てめぇ!いつまでそのくだらねえ茶番を続けるつもりだ! |
エメロード | ふふ…気に入りませんでしたか? |
パスカル | やっぱり…エメロードがアイゼンを油断させるためにエドナの振りをしたんだね |
ルカ | 酷い…!どうしてそんな事が出来るんだ! |
エメロード | 首に装置を付けられた者は私の思うがままに動く人形…言わば、傀儡です |
エメロード | 手先を使って隙をつく事に、何か問題がありますか? |
フェニックス | 貴様…!妹を想う兄の心まで利用すると言うのか! |
エメロード | ええ。使える物は全て利用します |
アスベル | …人は物じゃない。他人の思考を奪って身体を乗っ取るあなたのやり方は、非道だ |
エメロード | あなた達には私の崇高な考えが理解出来ないでしょう |
エメロード | これ以上の会話は無意味です。この少女を傷付けたくないのなら大人しく死を受け入れなさい |
アリーシャ | …!仕掛けて来るぞ! |
エドナ | ──エアプレッシャー! |
ルカ | …! |
フェニックス | くっ…! |
| ドンッ! |
| ドサッ |
ルカ | うっ… |
フェニックス | 間一髪だったな… |
パスカル | 二人共、大丈夫!? |
ルカ | う、うん…。何とか… |
ルカ | ありがとう、フェニックス。助かったよ |
フェニックス | 礼には及ばぬ。それよりも、今は一刻も早く首飾りを破壊しなければ |
アリーシャ | エドナ様の術が厄介ですね…。今のままではろくに近付く事も出来ない |
アイゼン | 俺とパスカルの術であいつの動きをかく乱する。お前達はその隙に接近しろ |
ロイド | ああ、わかった! |
パスカル | そんじゃ、行くよ!──ウィンドニードル! |
エドナ | 無駄よ |
アイゼン | これならどうだ?──フリジットフォトン! |
エドナ | くっ…! |
アリーシャ | 体勢が崩れた!今の内だ! |
ロイド | 両側から挟み撃ちにするぞ、アスベル! |
アスベル | ああ! |
アスベル | ──はああ! |
| ガキーンッ! |
エドナ | つっ…! |
ロイド | 今だ、首飾りを…! |
アリーシャ | 任せろ…! |
エドナ | ──甘く見ないで |
| カシーン! |
エドナ | …… |
ルカ | あれは…!マナリス…!? |
エドナ | ──インブレイスエンド! |
ロイド&アスベル | ぐああっ! |
アリーシャ | ロイド!アスベル! |
エメロード | ふふふ……あははは!素晴らしい… |
エメロード | 予想以上の力ですね |
パスカル | マナリスを使って術の威力を増幅させたの…!? |
エメロード | その通りです |
アイゼン | てめぇ!エドナにマナリスを使わせやがったのか! |
エメロード | 心配しなくても天族であるこの娘なら、マナリスの代償を最小限に抑えられます |
ロイド | それでも、全く負担がないわけじゃないだろ! |
エメロード | それが何だと言うのですか?これだけの力を発揮出来るなら、安い対価でしょう |
パスカル | そんな…技術を使って誰かが不幸になるなんておかしいよ…! |
パスカル | 人を傷付けるエメロードのやり方は絶対に間違ってる! |
エメロード | …あなたも、かつてこの島にいたアンマルチア族の者達と同じような事を言うのですね |
エメロード | 私には理解出来ません |
エメロード | 高度な技術を使って他の種族を意のままに操る事が出来るのに何故、実行しないのか… |
アリーシャ | 身に余る力は、人を不幸にする。アンマルチア族の技術者達は、それをわかっていたんじゃないのか |
エメロード | 代償を恐れ使われない技術など存在していないのと同じです |
エメロード | 技術は使われてこそ真価を発揮するもの──何故それがわからないのですか? |
ロイド | 何言ってんだ! |
ロイド | 自分の手を汚さないで他人に代償を支払わせるお前に共感する奴なんていない! |
エメロード | …そうですか。ならば、マナリスの力を見せてあげましょう |
エメロード | あなた方は強大な力の前に成す術もなくひれ伏すのです! |
エメロード | その時初めて…私達が発明した技術の偉大さを知る事になるでしょう! |
エドナ | …… |
アリーシャ | いけない…! |
アリーシャ | ──逆雲雀! |
エドナ | く…! |
アスベル | 彼女にマナリスを使う隙を与えないようにするぞ! |
ルカ | うん!──裂空斬! |
| ガキーンッ! |
エドナ | 面倒ね… |
アイゼン | 俺達も行くぞ。隙をみてあいつの首飾りを破壊する |
ロイド | ああ、わかった! |
フェニックス | …我が友よ、早々に決着をつけるぞ |
フェニックス | これ以上、エドナに苦しい想いはさせたくない |
アイゼン | 心配するな、フェニックス。必ず、あいつを取り戻してみせる |
scene2 | 兄妹の流儀 |
アイゼン | エドナ、パルミエが焼けたぞ |
エドナ | 美味しそうね。それに、いい香り… |
アイゼン | 自家製のバターを生地に練り込んだ自信作だ |
エドナ | 素材から拘るところは相変わらずね。焼き加減も完璧だし… |
アイゼン | お前が食べたい時はいつでも作ってやる |
エドナ | …ありがとう |
エドナ | それよりも、お兄ちゃん。ワタシとずっと一緒にいてくれるって言ったけど… |
エドナ | 本当は、海で冒険を続けたいんじゃないの? |
アイゼン | いや、それはない。お前一人をここに残して、海賊を続けるつもりもないからな |
エドナ | …前はワタシを置いて、しょっちゅう旅に出てたわよね |
エドナ | いつも勝手に飛び出して行ったくせに…どうして今は一緒にいてくれるの? |
アイゼン | 俺にとって、お前以上に大切なものはないと気付いたからだ |
アイゼン | 安心しろ。これからは何よりもお前を優先する |
エドナ | …じゃあ、ワタシがここでずっと一緒に過ごしたい…って言ったらどうする? |
アイゼン | それがお前の願いなら、俺はここを動かない |
エドナ | ──それがお兄ちゃんの流儀に反する事でも? |
アイゼン | ああ |
| |
エドナ | やっぱり…偽物なのね |
エドナ | お兄ちゃんは、そんな事言ったりしないもの |
アイゼン | エドナ…?何を言って── |
| |
| ブンッ |
エドナ | 近付かないで。…本当は、ずっとおかしいと思ってたの |
エドナ | お兄ちゃんは例え呪いが消えても海賊をやめたりしないわ |
エドナ | 自分がこうだと決めたら、迷わずワタシとの別れを選ぶ。…それが、お兄ちゃんだから |
アイゼン | …… |
エドナ | 頭ではわかってるのに、お兄ちゃんってだけで…見ない振りをしてたけど |
エドナ | でもやっぱり…偽物は、偽物ね。全然違うもの |
アイゼン | ここから抜け出すつもりか?現実に戻れば、俺と離れる事になるんだぞ |
エドナ | 結構よ。あなたは、ワタシの知ってるアイゼンじゃない |
エドナ | いつも勝手にいなくなって何でも勝手に決めて…どうしようもない家族だけど |
エドナ | ワタシがずっと会いたかったのはそんなお兄ちゃんだから |
アイゼン | …… |
エドナ | どんなに辛い事があっても現実から逃げたりしない |
エドナ | ワタシはアイゼンの妹よ。自分の舵は、自分で取るわ |
| |
エドナ | …… |
パスカル | …!エドナの動きが止まったよ |
ルカ | アスベルの時と同じだ…! |
ロイド | アイゼン!今の内に、早く! |
アイゼン | ああ! |
エドナ | おにい…ちゃ…ん |
アイゼン | …! |
アイゼン | 今、お前の舵を戻してやる |
アイゼン | ──俺の妹を返してもらうぞ! |
| パキッ… |
エドナ | つっ…! |
| 願いの代償 |
アイゼン | ──俺の妹を返してもらうぞ! |
| パキッ… |
エドナ | つっ…! |
| カシャンッ──… |
フェニックス | …!後の事は頼む! |
ロイド | フェニックス…!? |
フェニックス | 我はまだ、エドナに正体を明かすわけにはいかぬのだ! |
アスベル | な、何だ…? |
ルカ | フェニックスが、マスコットに…!? |
| |
エドナ | …うっ… |
アイゼン | エドナ…! |
エドナ | …お兄、ちゃん…? |
エドナ | …… |
アイゼン | おい…!しっかりしろ、エドナ! |
アリーシャ | …心配ない。眠っているだけのようだ |
パスカル | マナリスの力を使いすぎて気を失ったんだろうね |
パスカル | 呼吸も安定してるし、しばらくしたら目を覚ますと思うよ |
アイゼン | …そうか |
エメロード | ──まさか、装置を取り付けた者が、次々に精神から私を追い出そうとするとは… |
エメロード | どうやらこの装置は失敗作だったようですね |
アイゼン | …… |
アイゼン | ──パスカル。エドナを頼む |
パスカル | …うん、任せて |
エメロード | それにしても…天族を失うとは、惜しい事をしました |
エメロード | 妹を人質に取って、あなたが私の命令に従うように策を練る方がよかったかもしれませんね |
| |
アイゼン | 黙れ! |
| |
アイゼン | てめぇだけは、絶対に許さねぇっ!! |
エメロード | ふふっ |
| バシュウッ |
アイゼン | くっ…!? |
ルカ | はじき返された…!? |
パスカル | 気を付けて、みんな…! |
パスカル | エドナの時みたいに、マナリスを使って術の力を増幅するかもしれないよ! |
ロイド | その前に倒すぞ! |
アスベル | ああ!加勢する! |
ロイド | ──魔神連牙斬! |
アスベル | ──葬刃! |
エメロード | 無駄です |
ロイド&アスベル | ぐっ…!? |
ルカ | ロイド!アスベル! |
エメロード | ──逃しませんよ。死になさい! |
アリーシャ | ──させない! |
エメロード | …防がれましたか |
ロイド | ありがとう、アリーシャ。助かったよ |
アリーシャ | 間に合ってよかった。…しかし、気は抜けない |
アリーシャ | マナリスを使われたら、次は防ぎきれるかどうか… |
| |
エメロード | ──これを、警戒しているのですか? |
ルカ | …! |
エメロード | …… |
| |
アスベル | …?どうしてマナリスを使おうとしないんだ? |
パスカル | もしかして…使わないんじゃなくて、使えないんじゃないかな? |
ルカ | どうしてそう思うの? |
パスカル | マナリスの使用には、代償が伴うでしょ? |
パスカル | エメロードは天族じゃないし、危険を冒してまでマナリスを使う気がないのかも |
エメロード | 当たらずといえども遠からずといったところですね |
エメロード | 確かに、私はマナリスを使えません |
エメロード | しかしそれは、代償を恐れているからではなく…支払う代償を持ち得ていないからです |
エメロード | サフィアやマナリスは、寿命を代償に力を発揮する物ですから |
ルカ | …!寿命を…? |
アイゼン | …だから、寿命を持たない天族は最小限の代償でマナリスを使えるというわけか |
エメロード | その通りです |
エメロード | ヒューマノイドはそもそも寿命という概念から外れているのでマナリスを扱えません |
アリーシャ | …箱形の装置にマナリスを入れて男達の目を欺いていたのは、あなたの代わりに使用させるためか |
エメロード | はい。マナリスの使用に危険が伴う事は、調査隊が周知していますから |
エメロード | ああでもしないと、彼らはマナリスを使わないでしょう |
ロイド | 自分が代償を払えないからって仲間を騙してマナリスを使わせてたのかよ!? |
エメロード | 仲間…?何度も言わせないでください |
エメロード | 彼らはただの手駒にすぎない。生かすも殺すも私の自由なのです |
アスベル | だが…夢の中でマナリスを使った時には、疲労感があった |
アスベル | マナリスを使い続けていれば、男達も違和感を覚えるはずだ |
エメロード | あれは、あなたを夢に留めるためにわざと痛みを感じさせただけです |
エメロード | 代償が寿命だと知らないあなたはマナリスの使用に苦痛が伴うと考えていた |
エメロード | だから、痛みを与えたのです。夢の内容に違和感を覚えられると困りますから |
パスカル | じゃあ、寿命が減ってもマナリスを使ってる人達は何も気付かないの? |
エメロード | はい。通常はマナリスの使用時に疲労感や倦怠感を感じる事はありません |
エメロード | 例外として、寿命のない天族のみ身体に負担がかかります |
パスカル | …エメロードは、技術で人を傷つける事に何も感じないの? |
エメロード | ええ、全く。技術は使われてこそ真価を発揮するのですから |
アリーシャ | 他者の命を犠牲にしてもサフィアを使い続けるつもりなのか!? |
エメロード | そうです。より精巧な装置を作り、サフィアを使うための駒を増やせば… |
エメロード | あらゆるものを意のままに操る事が出来る! |
エメロード | 私はサフィアを使い、全ての種族を統べる神になるのです |
ロイド | そんなの、認められるかよ! |
アスベル | ああ。技術を悪用して他者を貶めるなんて、間違ってる |
エメロード | 間違い…?ふふふ……あははは! |
エメロード | あなた方は知らないだけです。サフィアによって、争いが繰り返されていた事を |
エメロード | 誰もがあなた方の言う『間違い』を犯してきたのです |
ルカ | どういう事…? |
エメロード | 遥か昔、古代のアヴァロン島でサフィアを巡って島民同士が争いを起こしました |
エメロード | サフィアは全種族の叡智の結晶…手に入れたいと願う者は後を絶たなかった |
パスカル | そんな… |
エメロード | 島内の争いをなくすためにサフィアをエルピスの塔に封印し、一時は平穏を取り戻しましたが… |
エメロード | 技術の恩恵にあやかろうと人々はサフィアよりも力の弱いマナリスを生み出しました |
アリーシャ | …その後で、私達がカタグラフィで見た他国との戦争が起こったのか… |
エメロード | そうです。サフィアやマナリスの噂を聞きつけた外部の人間が島に侵入してきました |
エメロード | サフィアを巡って再びアヴァロン島は戦禍に巻き込まれる事になったのです |
エメロード | そして最後には…ヘルダルフがサフィアを使って島に瘴気を蔓延させました |
アイゼン | 記録館で得た情報と一致しているな |
パスカル | うん… |
エメロード | 私以外にも、サフィアを欲する人間は大勢います |
エメロード | これまでも、サフィアを巡って戦争が繰り返されてきました |
ルカ | だからって、エメロードさんが他人を傷つけていい理由にはならないよ! |
エメロード | 何故ですか? |
エメロード | サフィアを発明したアンマルチア族にこそ、その力を使う権利がある |
アイゼン | …てめぇはさっき装置を改良してサフィアを使うための駒を増やすと言っていたな |
アイゼン | 何故、回りくどい真似をする?サフィアに願えばいくらでも手駒を増やせるだろう |
エメロード | いいえ。サフィアであっても、全ての願いをかなえられるわけではありません |
エメロード | サフィアを使う本人が成しえる可能性がある事しか願いを実現出来ないのです |
エメロード | アンマルチアの技術を持たない者達は、他者を操る術を持ちません |
エメロード | だからこそ、私自身が装置を使って手駒を増やす必要があるのです |
パスカル | それって…寿命を先払いして願いをかなえる時間を短縮してるって事? |
エメロード | ええ。大金持ちになりたいと願えば、支払った寿命で本人が稼げる範囲の金額が手に入ります |
ロイド | それじゃ、アイゼンの呪いは… |
エメロード | 原理がわからない事を解消する手立てはありません |
エメロード | サフィアを使っても呪いが消える事はないでしょう |
ルカ | そんな… |
アイゼン | …… |
scene1 | 奪還 |
エメロード | いくら叡智の結晶と言えども…かなう可能性のない願いを実現出来る力はありません |
エメロード | しかし、夢の中でなら…天族の娘は、幸福な時をすごす事が出来たのです |
エメロード | なのに、残酷な現実に自ら手を伸ばすとは…愚かですね |
| |
アイゼン | ふざけるな!あいつの覚悟を、てめぇに笑わせたりしねぇ |
ルカ | アイゼン… |
エメロード | ふふ…悲観しないのですね?自らの願いがかなわないと知ったのに |
エメロード | 慈悲を乞うなら、私があなた方に優しい夢を見せてあげます |
アリーシャ | そんなものは必要ない! |
エメロード | 何故、否定するのですか?大人しく私の手駒になれば望む世界の中で生きられますよ? |
ロイド | 馬鹿にするな!お前の身勝手な計画はここで潰してやる! |
エメロード | …マナリスを使えないからと言って私があなた方に劣るとでも? |
エメロード | この身体は人間であった時よりも全ての機能が向上している… |
エメロード | そう易々と倒せるなどと思われては困ります |
アスベル | 確かに、さっき剣を交えた時のあなたの動きは只者じゃなかった。それでも… |
| チャキッ… |
アスベル | 俺達は、自分勝手な願いのために四大国の平和を崩そうとしたあなたを倒す! |
エメロード | …あくまでも、神に逆らうというのですね |
アイゼン | 神だろうが、何だろうが絶対に許さん |
アイゼン | エドナを巻き込んだ落とし前はつけさせてもらう! |
パスカル | あたしも、同じアンマルチア族として、エメロードを止めるよ! |
エメロード | いいでしょう。口で言っても理解出来ないというなら… |
エメロード | 力の差を思い知りなさい! |
scene2 | 奪還 |
エメロード | 馬鹿な…。こんなはずでは… |
ルカ | エメロードさん… |
エメロード | サフィアさえ…マナリスさえ、使えれば…! |
パスカル | もう止めようよ、エメロード |
パスカル | エメロードの知識と技術があれば、人を幸せにする事も出来たはずなのに… |
エメロード | そんな事をして私に何の利があるというのですか? |
エメロード | 力は行使してこそ、意味がある──。強い人間はその権利を持つのです |
アスベル | それは違う。本当に強いのは、自分の力を誰かのために使える人だ |
エメロード | 他者のために力を尽くす?…くだらない |
アリーシャ | 何故そう言い切れる。人が人を想う気持ちがあるから、今の平和が成り立っているんだ |
アリーシャ | みんなが必死に紡いだ未来をあなたが摘み取る事は許されない! |
エメロード | ふふふ…あはははは! |
アイゼン | 何が可笑しい |
エメロード | 平和など、まやかしにすぎないのです |
エメロード | あなた達が知っている歴史は…その事実を語っていないのでしょうが |
アリーシャ | …話は本部に戻ってから聞こう。あなたの持っているマナリスを渡してもらおうか |
エメロード | …… |
エメロード | …いいでしょう、あなた方にこれを返します。どの道、私には使えない物ですから |
パスカル | エメロード…。本部に戻ったら、あたしも一緒に謝るから…だから… |
エメロード | …つくづく、甘いですね |
| |
エメロード | ──どきなさい! |
| |
パスカル | うわっ!? |
| タタッ…── |
ロイド | あいつ…!海の方へ向かって…!? |
アリーシャ | 待て、そっちは…! |
| |
| バシャン! |
| |
ルカ | エメロードさん…! |
アイゼン | …まさか、自分から海に飛び込むとはな |
ロイド | 浮いてこないのか!? |
アリーシャ | …ああ。どこにも姿が見えない |
アイゼン | 追い詰められて、自ら死を選んだのか |
パスカル | そんな…! |
アスベル | …… |
| |
ロイド | 落ち着いたか?パスカル |
パスカル | うん、大丈夫 |
ルカ | これからどうしようか…?船にいた人達は、とりあえず捕縛したけど… |
アリーシャ | 一先ず、本部へ戻ろう。回収したマナリスを渡して事情を説明しなければ |
アスベル | ああ。サフィアやマナリスの代償が寿命だという件も、早く伝えた方がいい |
ロイド | そうだな。とりあえず、下にいるセネルを呼んで来ようぜ! |
セネル | カタはついたようだな |
アリーシャ | ああ。本部に戻って、この件を報告しようと思う |
セネル | わかった。俺がこの船を動かして、港までお前達を連れていく |
ルカ | セネルの船はどうするの? |
セネル | 船同士を縄で固定すれば牽引出来るから、心配ない |
セネル | それで…アイゼンの妹は無事なのか? |
アイゼン | ああ。気を失ってはいるが、命に別条はない |
アイゼン | 少し休めば、回復するだろう |
セネル | そうか…。よかったな、無事に妹を取り戻せて |
アイゼン | お前のお蔭だ。…礼を言う |
セネル | 大した事じゃない |
セネル | 前にも言っただろ?島に侵入した海賊達を懲らしめてくれた礼だ |
アイゼン | ふ…そうだったな |
セネル | ──船を出すぞ。港に着くまで、お前達は休んでてくれ |
ロイド | ああ、わかった |
パスカル | …エドナ、よく眠ってるね |
アイゼン | ああ。この様子だと、目覚めるまでまだ時間がかかりそうだな |
ロイド | 目を覚ましたら、エドナと何を話すんだ? |
ロイド | 会うの、久しぶりなんだろ? |
アイゼン | …エドナは、俺がこの島にいる事を知らないままだ |
アイゼン | それなら、会わなかった事にした方がいい |
ルカ | え…!?どうして? |
アイゼン | 死神の呪いがある限りこいつと一緒にいる事は出来ない |
アイゼン | 会わずに別れた方が互いのためだ |
ルカ | …… |
ロイド | それじゃ、フェニックスとも会えなくなるな |
パスカル | この…傘についてるマスコットがフェニックスなんだよね? |
パスカル | 姿が変わる前に正体を明かすわけにはいかないって言ってたけど… |
アイゼン | ああ。普段はマスコットの振りをしてエドナを見守っているらしい |
ルカ | よく、バレないね… |
ロイド | それで、本部に戻ったらエドナはどうするんだ? |
アイゼン | フェニックスが言っていた導師にエドナをこの島から連れ出すよう頼むつもりだ |
パスカル | それなら、研究室に寄るといいよ。スレイはよくあそこにいるから |
アイゼン | そうか、わかった |
ロイド | 本部に着いたら、俺達はまずアスベルの疑いを晴らさないとな! |
アスベル | …… |
ルカ | マナリスも取り戻したし…大丈夫、だよね…? |
アリーシャ | …アスベルの処遇については、上の判断を仰ぐしかない |
ロイド | そんな… |
アリーシャ | それに、シルヴァラントの貴族達がマナリスの強奪に関わっていた事で、四大国の均衡が崩れる可能性もある |
アイゼン | 全てが元通りというわけにはいかないようだな |
アリーシャ | ああ… |
ロイド | ──アスベル、心配するなよ!俺達が、クラトスに事情を説明するからさ! |
パスカル | うんうん!ルーク達や弟くんだってアスベルの助けになってくれるよ |
アスベル | …ありがとう、みんな |
Name | Dialogue |
| 変えられない生き方 |
ルカ | ふぅ…。無事に帰って来れたね |
アリーシャ | ああ。まずは報告のためにクラトス殿を捜さなければ… |
パスカル | そんじゃ、近くにいる調査隊員にクラトスがどこにいるか聞いてみようよ! |
??? | ──おーい、おまえら! |
ロイド | ルーク!それに、エレノアとスパーダも! |
ロイド | もしかして、ここで待っててくれたのか? |
スパーダ | まあな。本部の奴らにおまえらが戻って来るって聞いてよ。マナリスは無事取り返せたみてえだな |
エレノア | 海上で激しい交戦があったと聞いていますが…。怪我はありませんか? |
アスベル | ああ。俺もみんなも大丈夫だ |
エレノア | よかった、安心しました |
エレノア | それで…あの…アイゼンが抱えているその女の子は? |
アイゼン | ──俺の妹だ |
ルーク&エレノア | 妹!? |
スパーダ | おまえに妹なんていたのかよ |
ルーク | まあ、確かに…言われてみれば、髪の色が似てるな |
エレノア | 気を失っているようですが、何があったんですか? |
ルカ | アスベルと同じように装置で操られてたんだ |
アイゼン | マナリスを使った代償で、今は気を失っている |
エレノア | マナリスを…。事件の首謀者はわかりましたか? |
アリーシャ | ああ…。エメロードが、裏で糸を引いていたんだ |
エレノア | …!彼女が…!? |
アスベル | 俺達を追い詰めるためにわざと人質に取られたと言っていた |
ルーク | 何だよ、それ!汚ねぇ奴だな |
スパーダ | …んで、そのエメロードはどうしたんだよ? |
スパーダ | 捕まえたのか? |
パスカル | ううん…。自分から海に飛び込んで、そのまま… |
エレノア | …そう、ですか… |
スパーダ | 後味のいい終わり方じゃねえが、とりあえず事件は解決したって事だな |
ロイド | ああ。後は、アスベルの事をクラトス達に伝えるだけだ |
ルーク | それなら、俺達がちゃんと説明しといたぜ |
エレノア | アスベルが操られていた事も、上層部に報告しました |
エレノア | ヒューバートが私達と一緒に詳しい経緯を説明してくれたんです |
エレノア | なので、アスベルが裏切ったという誤解はすでに解けています |
アスベル | ヒューバートが… |
パスカル | 弟くんはここにいないみたいだけどまた任務? |
スパーダ | ああ。少し前までオレ達と一緒にいたけど、調査隊員に呼ばれて行ったぜ |
アイゼン | お前達は任務に駆り出されなかったんだな |
ルーク | 俺達はアスベルが戻って来るまで待機するように言われてたんだよ |
アスベル | そうか。待たせてすまない |
スパーダ | 大した事じゃねえよ |
アリーシャ | ──エレノア。シルヴァラントの貴族達は、拘束されたのか? |
エレノア | はい。本部に戻った後、彼らの悪事を暴きました |
エレノア | 今は上層部から事情聴取を受けている頃だと思います |
アリーシャ | そうか… |
スパーダ | そういや、四大国の代表達が会議室に来てくれって言ってたぜ |
スパーダ | アリーシャとアスベルから詳しい話を聞きたいってよ |
アスベル | わかった |
ルカ | 僕達も一緒に行かなくて大丈夫? |
アリーシャ | 二人で十分だ。みんなは少し休んでくれ |
アリーシャ | 任務続きだったからな…疲れているだろう |
ルカ | わかった。アリーシャも、戻ってきたらちゃんと休んでね |
アリーシャ | ああ、ありがとう |
エレノア | 私達はすでに報告を終えているので、宿舎でアスベルを待っています |
アスベル | わかった。後で合流する |
ルーク | 責任取らされそうになったら俺達に言えよ |
スパーダ | おまえが処罰を受けるっていうなら、オレ達も一緒に背負うぜ |
ロイド | そんな事になったら、俺達が会議室に乗り込んでクラトス達に文句言ってやるからな! |
パスカル | うんうん。アスベルは何も心配しなくていいよ! |
アスベル | …… |
アスベル | ありがとう、みんな |
アリーシャ | それじゃ、行ってくる |
ルカ | いってらっしゃい。また後でね |
ロイド | よし。それじゃあ俺達は宿舎に向かうか |
アイゼン | その前に、導師を捜す。エドナを預ける必要があるからな |
ルーク | 導師って、スレイの事だよな…? |
ルーク | あいつなら、さっきミクリオと一緒に研究室に入ってくのを見たぜ |
パスカル | なら、あたし達は研究室に寄ってから宿舎に戻るよ |
エレノア | わかりました。それでは、また |
アイゼン | ああ、またな |
| |
スレイ | 本部の周辺を捜してみたけど、エドナはどこにもいなかったな… |
ミクリオ | また一人でエルピスの塔を見に行ってるんじゃないのか? |
ライラ | そうであれば、よいのですが… |
パスカル | お、いたいた! |
パスカル | スレイとミクリオ発見! |
スレイ | パスカル…?それに、ロイド達まで |
アイゼン | …こいつが、例の導師か |
ミクリオ | …!スレイ、彼が腕に抱きかかえているのって、まさか… |
スレイ | エドナ…!?一体何が…! |
アイゼン | 落ち着け。エドナは無事だ |
ライラ | あなたは…? |
アイゼン | …こいつの兄だ |
スレイ&ミクリオ | …! |
スレイ | エドナのお兄さんって事は、あなたがアイゼンさん…なんですね |
アイゼン | アイゼンでいい。俺も、お前達と同じ調査隊員だからな |
ミクリオ | …まさか、彼も同じように調査隊に所属していたなんてね |
スレイ | うん。近くにいたはずなのに全然知らなかったな |
スレイ | アイゼン、改めてよろしく |
スレイ | それで…どうしてエドナがみんなと一緒にいるんだ? |
アイゼン | …先に、エドナを休ませてやりたい。少し長い話になるからな |
ライラ | でしたら、私がエドナさんを寝かせられる場所に連れて行きますわ |
ライラ | スレイさんとミクリオさんは、そのままお話を続けてください |
スレイ | うん、わかった。ありがとう、ライラ |
スレイ | …詳しい話を聞かせてもらっていいかな? |
アイゼン | ああ、俺から説明する |
ミクリオ | 意識を乗っ取る装置…。そんな物が… |
スレイ | 昨日の夜、エドナが戻って来なかったってライラに聞いて、オレ達も捜してたんだけど── |
スレイ | まさかそんな事になってたなんて…。…みんな、エドナを守ってくれてありがとう |
ロイド | お礼なんていいよ。困ってる奴を助けるのは当たり前だろ |
ルカ | 僕らもアイゼンの妹を助けたいと思ってたしね |
スレイ | そっか |
ミクリオ | それで、君達は僕らを捜していたみたいだけど…エドナの事を知らせに来てくれたのか? |
アイゼン | それもあるが、お前達に頼みたい事があってな |
スレイ | 頼みって? |
アイゼン | 死神の呪いの影響が出る前に、エドナを連れてこの島を出てくれ |
ミクリオ | 死神の呪い…? |
アイゼン | 自他に際限なく不幸をもたらす俺のひねくれた加護の力…それが、死神の呪いだ |
アイゼン | このままエドナが島に留まれば、呪いの影響が出るだろう |
ミクリオ | 不幸を…。そんな加護が存在するのか… |
スレイ | 事情はわかったけど…せめて、エドナが目を覚ますまでここにいてくれないかな? |
スレイ | エドナはずっと、アイゼンに会いたがってたんだ |
アイゼン | 断る。…俺がこの島にいた事は、あいつには伝えるな |
スレイ | …!どうして… |
アイゼン | 呪いがある限り、すぐに離れる事になるんだ。それなら、会わない方がいい |
ミクリオ | けど、エドナは君に会いたいと思うかもしれないだろう |
アイゼン | …そうかもな。だが、自分で自分の舵を取る…それが俺の流儀だ |
アイゼン | そのせいで妹に寂しい想いをさせている事も、それが身勝手な流儀だという事もわかっている |
アイゼン | それでも俺はこういう生き方しか出来ない。エドナもそれをわかっているはずだ |
ロイド | 何でそう思うんだ? |
アイゼン | …昔、エドナから届いた手紙に『危険でも構わない、一緒にいたい』と書いてあった |
アイゼン | だが、俺は例え呪いが解けたとしてもあいつの元へは戻らないと返事を返した |
アイゼン | 海賊達と共に生きる事を選んだからだ |
パスカル | 成程ね。エドナも、アイゼンが帰ってこない事はわかってるんだ |
アイゼン | ああ。サフィアで呪いが解ければ顔を見せに行こうと考えていたが… |
アイゼン | サフィアでは呪いが解けないとわかった今、あいつの傍にいる事は出来ない |
アイゼン | 俺が島を出る事も考えたが、無理を言って調査隊に入った手前、中途半端なところでは辞められない |
アイゼン | 勝手な事を言っているのはわかっている。だが、出来るなら聞き入れてほしい |
スレイ | …わかった |
ミクリオ | いいのか、スレイ? |
スレイ | うん。エドナの願いをかなえたい気持ちはあるけど…アイゼンの事情もわかるからさ |
スレイ | エドナを説得して、島を出るよ |
アイゼン | そうか、助かる |
アイゼン | …これからもあいつには寂しい想いをさせる事になる |
アイゼン | だから、お前達はあいつの傍にいてやってくれないか |
スレイ | うん、勿論!エドナが、オレ達と一緒にいたいと思ってくれるなら |
アイゼン | …頼んだぞ |
パスカル | そんじゃ、あたし達は宿舎に戻ろっか |
ロイド | ああ。スレイ、ミクリオ、またな! |
スレイ | うん、また! |
スレイ | …行っちゃったな |
ミクリオ | ああ。…こんなに近くにいるのに会えないなんて、悲しいね |
スレイ | …うん。死神の呪いがなかったら、少しくらい二人が話せたかもしれないのに |
ミクリオ | そうだな… |
scene1 | 歩む道 |
アリーシャ | ──と、いう経緯で私達はシルヴァラントの船に乗り込み敵と交戦しました |
アリーシャ | 奪われたマナリスは全てここに揃っています |
クラトス | 確かに受け取った。よくやったな |
ローエン | 本当にお疲れ様でした。まさか、攫われたと思っていたエメロードさんが黒幕だったとは |
ジェイド | 彼女は調査隊に協力するふりをしながら、虎視眈々とマナリスを奪う機会をうかがっていたようですね |
ジェイド | シルヴァラントの貴族達は彼女から手を組もうと持ちかけて来たと証言しています |
ジェイド | …まあそれは、貴族達が罪を逃れるために言い訳をしているだけかもしれませんが |
アリーシャ | …… |
フレン | ──アスベル。ヒューバートから意識を乗っ取る装置の事は報告を受けている |
フレン | 特に身体を害するものではないと聞いているけど、体調に問題はないかい? |
アスベル | ああ、平気だ |
アスベル | 俺の失態で、みんなに迷惑をかけた…本当にすまない |
フレン | アスベル… |
ジェイド | …敵の狙いは、四大国連合調査隊の誰かを使ってマナリスを強奪し本部をかく乱する事だったのでしょう |
ジェイド | 平和の象徴であるあなた方が裏切ったとなれば、大きな問題に発展しますからね |
アスベル | …… |
ローエン | 敵の思惑に気付かずこの事態を招いてしまった我々にも、責任はあります |
ローエン | アスベルさん一人に責任を負わせるような事はありませんから、ご安心を |
アリーシャ | …!それでは… |
ジェイド | アスベルには今まで通り調査隊の任務を続けていただきますよ |
ジェイド | マナリスの奪取は、彼の意志とは関係なく行われた事ですから、罪には問いません |
クラトス | それに、アスベルの協力がなければシルヴァラントの船を発見する事は出来なかった |
クラトス | 調査隊はお前の働きに感謝している |
アスベル | 俺は… |
フレン | ──アスベル。君が負い目を感じる事はないよ |
フレン | これからも四大国連合調査隊として平和のために力を尽くしてくれ |
アスベル | …ああ |
ローエン | フレンさんの言う通りです。裁きを受けるべき人間は、他にいます |
ローエン | エメロードさんに加担した貴族達はシルヴァラントに護送される事になりました |
アリーシャ | …!シルヴァラントの法のもと、裁きを受けるのですね |
ローエン | ええ、その通りです |
アリーシャ | …彼らが本国に護送される前に一度話をしたいのですが、宜しいでしょうか |
ローエン | 構いませんよ。話は通しておきましょう |
アリーシャ | ありがとうございます |
ジェイド | では、この話はここまでにして…事前に通信機で報告していただいた件について、聞かせてください |
ジェイド | サフィアとマナリスの代償が寿命というのは、間違いないのですね? |
アリーシャ | はい。エメロードは自分ではマナリスが使えないため天族を利用したと言っていました |
アリーシャ | ヒューマノイドには寿命という概念がないので、使用出来なかったようです |
フレン | 寿命を対価に願いをかなえる技術…我々の手に負えるものではありません |
クラトス | そうだな。万が一の事があってからでは遅い |
ジェイド | 民衆の混乱を招く恐れがあるので、サフィアとマナリスの代償が寿命だと公表するのは避けた方がよいでしょう |
クラトス | ああ。マナリスの実験は即座に打ち切り、警備を強化した保管庫で厳重に保管する |
ジェイド | 問題はサフィアですね。封印したまま手を出さない方がよさそうですが… |
ジェイド | すでに全てのマナリスが揃った事は民衆に周知されています |
ジェイド | エルピスの塔の扉を開かない場合はそれなりの理由を用意しないと納得しないでしょう |
ローエン | なるほど、困りましたね… |
クラトス | ──今は、サフィアの回収を急ぐべきだろう |
フレン | そうですね…。回収したサフィアは、マナリスと同じように厳重に保管しましょう |
ローエン | そうと決まれば、早急に扉を開く準備を進めなくてはいけませんね |
クラトス | アスベル、アリーシャ。塔の封印を解く権利は、お前達の隊に与える |
アリーシャ&アスベル | …! |
アリーシャ | 私達で宜しいのですか? |
ローエン | これまでの功績を鑑みてもあなた方が適任でしょう |
アスベル | …… |
クラトス | 話は以上だ。アリーシャは宿舎に戻って身体を休めろ |
アリーシャ | はい。ありがとうございます |
ローエン | アスベルさんはもう少しここに残っていただけますか?詳しい話を聞いておきたいので |
アスベル | わかりました |
ローエン | アリーシャさん。じきに護送用の船が港に到着する予定です |
ローエン | 貴族の方々は貴賓室にいらっしゃるので、早めに会われた方がよろしいかと |
アリーシャ | はい。…それでは、失礼します |
| |
本部の男1 | ん…?誰かと思えば…アリーシャ殿下ではありませんか |
本部の男2 | 無様に拘束された私達を笑いにでも来たのですかな |
アリーシャ | …… |
アリーシャ | ──護送船に移動する前に、あなた達に聞きたい事がある |
アリーシャ | 何故、エメロードに加担したんだ |
本部の男1 | 簡単な話ですよ。四大国の調和に亀裂を生じさせるためです |
アリーシャ | な…!そんな事をして、何になると言うんだ! |
本部の男2 | どうせ明るみに出る事ですから、言いますが…我々は武器の製造権を所有しています |
本部の男2 | 武器を売るためにはどうすればいいか、わかりますか? |
アリーシャ | まさか…利益を得るために他国との戦争を起こそうと考えていたのか |
本部の男1 | その通りです。そもそも、四大国の同盟など仮初のものにすぎない |
本部の男1 | マナリスの使用を巡って争いが起こるのは時間の問題だった |
本部の男1 | 我々はその時期を少し早めようとしただけです |
アリーシャ | お前達は…!私利私欲の為にシルヴァラントの民を戦争に巻き込むつもりなのか! |
本部の男2 | それが何だと言うんだ? |
本部の男2 | 末席の身で我らに意見するなど…立場をわきまえろ! |
アリーシャ | っ…… |
調査隊員1 | 失礼します。護送船が到着しました |
調査隊員2 | 立て。本国に送還する |
本部の男1 | …アリーシャ殿下。私達が動かずともいずれ戦争は起こりますよ |
本部の男1 | あなたは何も出来ない自分を呪いながら、我々が利益を手にする姿を見る事になる |
アリーシャ | …そんな事は、させない。私が必ず阻止してみせる |
本部の男2 | 殊勝な事ですな。あなたがどこまでやれるのか、楽しみにしていますよ |
アリーシャ | …… |
| |
アリーシャ | ただいま |
パスカル | おかえり~! |
ロイド | アリーシャ、アスベルはどうなった? |
アリーシャ | 問題ない。彼は無罪放免だ |
ルカ | よかった…。これで、一安心だね |
アリーシャ | ああ。それから、近い内にエルピスの塔の扉を開く事になった |
パスカル | サフィアを回収するの? |
アリーシャ | そうだ。混乱を防ぐために、サフィアの代償が寿命だという事実は伏せられる事になった |
アリーシャ | だが、民衆はマナリスが全て集まった事をすでに知っている |
アリーシャ | 疑問を持たれないようにするためにも予定通りサフィアを回収して保管する方が安全という上層部の判断だ |
アリーシャ | 扉の封印を解く役目は、四大国連合調査隊と、私達の隊に与えられた |
パスカル | おお~!遂に、あのでっかい扉が開くところを見られるんだね! |
ロイド | サフィアは使えないってわかったけど、扉が開くと思うと何かちょっとわくわくするな |
アリーシャ | ああ… |
アイゼン | …何かあったのか。いつもの覇気がないようだが |
アリーシャ | え… |
パスカル | そうなの?アリーシャ、元気出して~! |
ルカ | 人に話した方が、楽になるんじゃないかな。僕でよければ話を聞くよ? |
アリーシャ | …実は、ここに戻る前に、貴賓室でシルヴァラントの貴族達と話をして来たんだ |
ロイド | …!あいつら、何か言ってたか? |
アリーシャ | エメロードに加担したのは、戦争を起こすためだった、と |
アイゼン | 何…? |
アリーシャ | 彼らは武器の製造権を持っていた。…利益を得るために四大国を衝突させようと考えていたようだ |
ルカ | そんな… |
アリーシャ | 私は…いがみ合っていても、彼らが国を想う気持ちは同じだと信じていた |
アリーシャ | 国をよくするためには意見の違いで衝突する事もあるだろうと… |
アリーシャ | だが、彼らは利益のために国を焼く事も厭わないような人間だった |
パスカル | アリーシャ… |
アリーシャ | こうも容易く、信じていた者に裏切られるなんて… |
アリーシャ | 自分の歩んできた道が正しかったのか、わからなくなったんだ |
ロイド | …アリーシャは、自分の信じる道を行けばいいさ |
ロイド | あいつらが間違った事をしたのはアリーシャのせいじゃないだろ |
アリーシャ | ロイド… |
アイゼン | ──あいつらが裏切ったからと言って、それが何だ? |
アイゼン | 道がわからなくなったのは、お前の覚悟が足りないからだ |
ルカ | ちょっと、アイゼン…! |
アイゼン | 俺は、自分の舵は自分の意志で取る。だが、それには、どんな結果も受け入れる覚悟が要る |
アイゼン | お前はどうなんだ |
アリーシャ | …アイゼンの言う通りだ。私には、覚悟が足りなかった |
アリーシャ | こんな事で揺らいでいるようでは国も、民も…何も守れはしないな |
アリーシャ | …私は、私が正しいと思う道を歩き続けよう |
アイゼン | そうか |
パスカル | はいは~い!アリーシャが辛い時はあたし達が支えるよ! |
ルカ | うん。今の話も、打ち明けてくれて嬉しかった |
ロイド | 悩んでる事があったら、一人で抱えずにいつでも相談してくれよな! |
アリーシャ | …ああ!ありがとう、みんな |
アリーシャ | 私はもう、揺らがない。みんなと一緒に決意の道を歩むよ |
scene2 | 歩む道 |
エドナ | …ん… |
スレイ | エドナ…! |
エドナ | スレイ…?…ここは… |
ライラ | 本部の研究室ですわ |
ライラ | 目が覚めてよかった…。本当に、心配したんですよ |
スレイ | エドナ。何があったか、思い出せる? |
エドナ | …湖の近くで襲われた後の事は、記憶が曖昧ね |
ミクリオ | 意識を乗っ取る装置をつけられていたそうだから、思い出せなくても仕方ないだろう |
スレイ | 調査隊の人が、エドナを助けて本部に連れて来てくれたんだ |
エドナ | …そう |
ライラ | マナリスを使った代償で気を失っていたと聞きました |
ライラ | だから、無理に動いたりしてはいけませんよ |
エドナ | 大げさね。もう大丈夫よ |
スレイ | …起きたばかりで悪いんだけど、エドナに話したい事があるんだ |
エドナ | 何? |
スレイ | サフィアとマナリスの代償が寿命だって事がわかってさ |
スレイ | 人の手に負えない危険なものだから、研究が打ち切られる事になったんだ |
スレイ | それで…遺跡の調査も終わったし、オレ達は本土に戻ろうと思ってる |
スレイ | 出来ればエドナにもついて来てほしいんだけど…どうかな? |
エドナ | …… |
エドナ | (見間違うはずがない。 あれは…) |
| |
アイゼン | エドナ…! |
| |
エドナ | (…きっと、ワタシを 島から出すように、スレイに 頼んだのね…) |
エドナ | …わかった。そこまで言うなら、一緒に付いて行ってあげるわ |
ミクリオ | 決まりだな。スレイ、島を出る許可をもらいに行こう |
スレイ | ああ、そうだな。ライラはエドナと一緒に、ここで待っててくれるかな? |
ライラ | はい、わかりました。エドナさんの事は任せてください |
スレイ | ありがとう。それじゃ、行ってくるよ |
ライラ | そう言えば…エドナさんは意識を奪われている間、夢を見ていたそうですよ |
ライラ | どんな内容だったか、覚えていますか? |
エドナ | …忘れたわ。そんなに大した内容じゃなかったんじゃない? |
ライラ | そうですか。体力が回復したら、島を出る準備をしましょう |
エドナ | …そうね |
| |
ミクリオ | 島を離れるとなると、船を探さないとな |
スレイ | うん。後で港に行ってみよう! |
??? | 止まれ、導師よ! |
スレイ | え…? |
フェニックス | 我が願いを聞き入れてはくれぬか! |
ミクリオ | ノルミン天族…!?何でこんなところに… |
スレイ | あれ、あの色と柄って…。もしかして、エドナの傘についてるマスコット!? |
フェニックス | マスコットに非ず! |
フェニックス | 我が名はフェニックス!ノルミン天族最強の漢なり |
スレイ | …つまり、フェニックスはマスコットのふりをしてたって事、だよな…? |
フェニックス | ふっ、そうだ。我はマスコットに身をやつし密かにエドナを見守ってきた |
フェニックス | しかし!今は汝らにどうしても伝えなければならない事がある |
フェニックス | だからこそ、エドナの目を盗んで研究室から汝らを追いかけて来たのだ |
ミクリオ | なるほどね。それで、何を伝えにきたんだ? |
フェニックス | マナリスを使わせてほしい。そのために、力を貸してくれぬか |
スレイ | マナリスを…? |
フェニックス | 我の加護──不死鳥の加護は、アイゼンと真逆の力を持つ |
フェニックス | マナリスで加護の力を増幅させれば、死神の呪いを一時的に抑え込む事が出来るやもしれぬ |
スレイ | つまり、エドナがアイゼンに会えるって事…? |
フェニックス | ああ。勝手な願いだとわかっているが…力を貸してほしい |
フェニックス | あの兄妹を、ひと時でも再会させてやりたいのだ…! |
スレイ | …わかった |
ミクリオ | スレイ…!そう簡単に、マナリスを借りられると思うのか? |
スレイ | 駄目な時は…事情を説明して、許可が出るまでお願いする! |
スレイ | フェニックスは天族だし、ちゃんと理由を話せば、許可してくれるかもしれないだろ? |
ミクリオ | それは、そうだけど…。いいのか、安請け合いして |
スレイ | いいんだ。オレも、エドナがアイゼンに会えればいいなって思ってたから |
スレイ | …フェニックス。ぜひ、オレ達に協力させてくれ |
フェニックス | …!誠か! |
ミクリオ | はあ…仕方ないな。スレイは一度言い出したら、聞かないんだ |
ミクリオ | 僕も、出来る事があるなら手伝おう |
フェニックス | 助かる。この礼は、必ず…! |
スレイ | はは、お礼なんていいよ。とりあえず、会議室に向かおう! |
スレイ | まずは上層部にマナリスの使用許可をもらわなきゃいけないしな |
ミクリオ | ああ、わかった |
フェニックス | …待っていろ、エドナ |
フェニックス | 必ず、汝と兄の再会を実現させてみせる…!! |
| 扉が開く時 |
観光客1 | いよいよ塔の封印が解かれるのか…!待ちきれないな |
観光客2 | ああ!中はどんな風になってるんだろう… |
観光客3 | 扉の前に立ってるのが、マナリスっていう宝を集めた調査隊員達か |
観光客4 | あの中の誰かが、サフィアへの道をひらくのかな…? |
ルカ | うう…。何だか視線を感じる… |
スパーダ | しゃきっとしろよ、ルカ。調査隊員がそんなへっぴり腰じゃ格好つかねえだろ |
ルカ | それは、そうだけど…。これだけの人に見られてると流石に緊張するよ |
パスカル | 確かに、すごい人数だよね~!みんなどこから来たんだろう? |
エレノア | 封印が解かれる瞬間を一目見ようと、大勢の人達が島中から集まったようですね |
ルーク | 島中か…。へへ、これだけ注目されれば十分だな |
アイゼン | お前は、目立ちたくて調査隊に入ったのか? |
ルーク | ちげーよ!勘違いすんな! |
ロイド | そう言えばルーク、前に言ってたよな |
ロイド | 四大国連合調査隊が、平和への希望になるために誰よりも注目されなきゃいけないって |
ルーク | ああ。活躍すれば、島の奴らに俺達の事、知ってもらえるだろ? |
アイゼン | ほう…ただの考えなしというわけでもないわけか |
ルーク | 誰が考えなしだ! |
アスベル | 平和への希望、か… |
エレノア | アスベル…?どうかしましたか? |
アスベル | …いや。何でもないよ |
エレノア | …… |
アリーシャ | みんな、静かに。──始まるようだ |
クラトス | これよりエルピスの塔の扉を開く。調査隊員は、前へ |
パスカル | うわ~!ドキドキしてきた! |
ロイド | いろいろあったけど、俺達この扉を開くために調査を始めたんだもんな |
ルカ | うん。やっと、目標が達成出来るね |
クラトス | ──集めたマナリスを扉の前に近付けろ |
アリーシャ&エレノア | はい |
| |
スパーダ | …!マナリスが光り出したぜ |
| |
アイゼン | 扉の方も、反応しているようだな |
| ガ…ガガガ… |
| |
(全員) | …! |
| |
観光客1 | 見ろ、扉が開いてる!封印が解けたぞ! |
| ワアアア…! |
エレノア | すごい歓声ですね |
アリーシャ | ああ。みんなが喜んでくれているようだ |
ルーク | 中は…駄目だ。薄暗くて、よく見えねーや |
ロイド | そうだな。早く塔の中を調査したいぜ |
クラトス | ──ここに集まった者達に、調査隊から発表がある |
観光客2 | 発表…?何だろう… |
クラトス | 我々は明日、万全の準備を整えた上で塔の中の調査を行う |
クラトス | 調査に当たるのは今日、扉を開いたこの者達だ |
クラトス | そしてサフィアへの道をひらいた調査隊員には、約束通り希望する報酬を与える |
| ワアアア…! |
スパーダ | ますます、盛り上がってきたな |
ルカ | うん…。みんなの期待を裏切らないように、サフィアを回収しないといけないね |
スパーダ | …へえ? |
ルカ | どうかした? |
スパーダ | 島に来る前のルカなら、無理だ何だ言って弱腰になってただろうと思ってよ |
スパーダ | 少しは調査隊が板に付いてきたじゃねえか。ヒャーハッハッハ! |
ルカ | そ、そうかな…?だといいんだけど… |
クラトス | 任務はこれで終了だ。明日の朝まで自由に行動していい |
クラトス | それから、今日の夜は調査隊の街で祭りが開かれるそうだ |
ロイド | 祭りかー!美味いもん、たくさん食べられるな |
パスカル | うんうん!バナナパイも売ってるといいな~ |
クラトス | ──はしゃぎすぎるなよ |
| |
客の男 | なあなあ、サフィアへの道をひらいた奴はどんな報酬を願うんだろうな! |
屋台の店主 | 噂じゃ、金も地位も名誉も、望むものは何でも与えられるって話だぜ |
客の男 | くー!羨ましいねえ |
客の女 | 私だったら、何をお願いするかな─… |
ルカ | みんな、僕達が何を願うのか気になるみたいだね |
ロイド | 報酬、かあ…。冒険するのに夢中で、他の事は何も考えてなかったな! |
アリーシャ | はは。ロイドらしい |
パスカル | でも、何でもくれるって言うなら何かほしいもの考えとくべきだよね~ |
アイゼン | そういうお前は、何か望むものでもあるのか |
パスカル | ん~…調査隊の任務が終わっても調査を続ける権利とか? |
パスカル | 島に残って、古代の技術を研究したいんだよね! |
ルカ | それは相談さえすれば、普通に許可してもらえると思うな |
ルカ | ロイドは、何かほしい物ある? |
ロイド | そうだな… |
ロイド | マーボーカレーを一年分食べられる権利とかどうだ?最高だろ? |
ルカ | え!?う、うん… |
アイゼン | どいつもこいつも、欲のない奴ばかりだな |
アリーシャ | そう言えば…アイゼンは島に残るのか? |
アリーシャ | サフィアでは呪いが解けないとわかった今、島に留まる理由はないはずだが… |
パスカル | え~!アイゼン、どっか行っちゃうの!? |
アイゼン | …いや。乗りかかった舟だ |
アイゼン | 塔の調査が終わるまでは、お前達に付き合ってやる |
ロイド | アイゼンがいてくれたら、俺達も心強いぜ! |
ルカ | 任務が終わるまでみんなで頑張ろうね |
パスカル | よ~し!そうと決まれば、今日はじゃんじゃん食べてじゃんじゃん飲むぞー! |
アリーシャ | ふふ、そうだな。明日の任務に支障が出ない程度に、この夜を楽しもう |
| |
パスカル | うぷ…。さすがに食べすぎたかな |
ルカ | はは…。パスカル、大丈夫? |
ロイド | 明日はいよいよ、エルピスの塔に入るんだな |
アリーシャ | ああ。頂上にあるサフィアを回収すれば、私達の任務は終わる |
アイゼン | 調査隊の連中はサフィアを厳重に保管すると言っていたが…どう思う |
パスカル | う~ん、サフィアもマナリスも寿命を代償に願いをかなえる危険なものだし… |
パスカル | 正直、人の手には余ると思うけどな~ |
ルカ | うん…。エメロードさんが言ってたサフィアを巡って争いが起こった歴史も気になるしね |
ロイド | クラトス達に頼んで、しっかり管理してもらわないとな |
アリーシャ | ああ。もう二度とサフィアやマナリスのせいで争いが起きないようにしないと |
パスカル | よーし、そんじゃ、明日の任務に備えてそろそろ宿舎に戻りますか! |
アイゼン | 賢明な判断だな |
アリーシャ | みんなは、先に戻っていてくれ。私は街の警備に会ってくるよ |
アリーシャ | 海で起こっていた異変と街で起きている異変に共通点がないか聞いて来る |
ルカ | アリーシャはいつでも仕事熱心だね |
ロイド | それじゃあ、俺達は先に戻るけど…あんまり無理するなよ? |
アリーシャ | ああ、わかっているよ |
| |
アスベル | …… |
エレノア | アスベル、ここにいたんですね |
アスベル | エレノア…。みんなも |
アスベル | どうしてここに? |
ルーク | それは俺達の台詞だっつーの。何でこんなところに突っ立ってんだよ |
スパーダ | これから街に行こうってルーク達と話してたんだ。お前も一緒に行くだろ? |
アスベル | …俺は… |
エレノア | アスベル、どうかしましたか? |
エレノア | 塔の扉を開いた時も、今も…何か悩んでいるように見えます |
アスベル | …俺は、四大国連合調査隊に居続けてもいいんだろうか |
ルーク | はあ?今更何言って… |
エレノア | ルーク。まずはアスベルの話を聞きましょう |
ルーク | …わかったよ |
スパーダ | …んで、お前は何に悩んでんだよ、アスベル? |
アスベル | …エメロードに操られていたとはいえ俺のした事は四大国の築き上げてきた平和を壊しかねない行為だ |
アスベル | それなのに、四大国連合調査隊として平和を体現し続けるのは違うんじゃないかと思ってさ |
エレノア | そんな事はありません…! |
アスベル | …! |
エレノア | アスベルは四大国連合調査隊として常に正しい事を行おうと任務に励んでいたじゃないですか |
エレノア | 同じ隊の仲間として、いつも…誇らしく思っていました |
エレノア | それに、マナリス強奪の件は私の責任でもあります |
エレノア | だから、一人で背負い込まないでください。一緒に、悩ませてください |
アスベル | エレノア… |
ルーク | 難しい事はわかんねえけど、おまえが欠けたらそれってもう…四大国連合調査隊じゃねえよ |
スパーダ | そうだな。平和への希望とか正直よくわからねえけどよ |
スパーダ | 大事なのはお前がどうしたいかだろ |
アスベル | …ああ |
アスベル | 俺は、ここにいるみんなで最後まで任務をこなしたい |
アスベル | 俺達の活躍が、誰かの希望になるなら諦めるわけにはいかないよな |
エレノア | はい。誰一人欠ける事なく最後まで、力を尽くしましょう |
ルーク | よーし、問題は解決したな!早く祭りに行こうぜ! |
スパーダ | 明日の任務までに力を蓄えねぇとな |
アスベル | そうだな。…みんな、ありがとう |
| 星空の下で |
アリーシャ | …… |
アリーシャ | (──街の周辺でも海と同様に、 以前より多くの魔物が 目撃されているようだ) |
アリーシャ | (やはり、セネルが言っていたように 島全体が何かの影響を 受けているのだろうか…) |
スレイ | あの…!ちょっと、いいかな? |
アリーシャ | …? |
スレイ | この辺に、アイゼンが使ってる宿舎があるって聞いて、探しに来たんだけど…場所がわからなくて |
スレイ | どこにあるか知ってたら、教えてほしいんだ |
アリーシャ | ああ、それなら…この道を少し進んだところにある |
アリーシャ | 彼に伝える事があれば、言付けを預かろうか?私も今から宿舎に戻るところだから |
スレイ | ありがとう。でも…大切な手紙だから、アイゼンに直接渡したいんだ |
アリーシャ | そうか。では、私が彼の元に案内しよう |
スレイ | ありがとう、助かるよ! |
アリーシャ | 自己紹介がまだだったな。私の名はアリーシャ・ディフダだ |
スレイ | オレはスレイ。よろしく、アリーシャ |
アリーシャ | スレイ…?──まさか君が、ロイド達の言っていた導師なのか…? |
スレイ | …!ロイドを知ってるの? |
アリーシャ | ああ。私は、ロイドやアイゼンと同じ隊に所属しているからな |
スレイ | そうなんだ。同じ調査隊なのに、今まで会う機会がなかったから知らなかったな |
アリーシャ | 会議でロイド達と別行動を取る事も多いから、すれ違いになっていたのかもしれない |
アリーシャ | それにしても…まさかこの島で、伝承にある導師に会えるとは思っていなかったよ |
スレイ | アリーシャは導師の伝承を知ってるんだね |
アリーシャ | ああ…幼い頃から、繰り返し本で読んでいた。導師はずっと、私にとって憧れの存在だったんだ |
アリーシャ | だから…君に会えてとても光栄だよ、スレイ |
スレイ | そんな風に言ってもらえるのは嬉しいけど…少し照れるな |
アリーシャ | スレイ。もしよければ…宿舎へ向かう間、君の話を聞かせてもらえないだろうか |
アリーシャ | これまでどんな経験を積んできたのか知りたいんだ |
スレイ | いいよ。オレの話でよければ、いくらでも |
アリーシャ | ありがとう |
アリーシャ | ──祭壇に刺さった剣か…。そう言えば、聖剣の伝説を本で読んだ事がある |
アリーシャ | スレイはその剣を祭壇から抜いて、導師になったんだな |
スレイ | うん。あの時は確か…試練が終わった後に寝込んでみんなに心配かけちゃったんだ |
アリーシャ | …導師になるというのは、大変な事なのだな |
スレイ | うーん…確かに、楽な事ばかりじゃないとは思うよ |
スレイ | だけど、導師の試練を受ける時に誓ったんだ |
スレイ | ──この世界の、導きの光になれるように…どんな事でも乗り越えるって |
アリーシャ | …スレイ。私が思い描いていた導師は、まさに君のような人だ |
アリーシャ | 私も君に負けないように頑張るよ。よい国をつくり、民を守るために |
スレイ | それが、アリーシャの夢なんだな。オレにはこれしか言えないけど…夢がかなうのを応援してるよ |
アリーシャ | ありがとう。君の折れない心を見習って私も歩み続けよう |
アリーシャ | …スレイと話していたら、あっという間だったな。あそこが、アイゼンの宿舎だよ |
スレイ | ん…?誰か出て来たみたいだね |
アイゼン | …アリーシャ?帰って来たのか |
アリーシャ | アイゼン…!丁度いいところに |
アリーシャ | 彼が、渡したいものがあるそうだ |
アイゼン | お前は… |
スレイ | こんばんは。アイゼン宛ての手紙を預かったから渡しに来たんだ |
アイゼン | 手紙…?俺に? |
スレイ | うん。はい、これ |
アイゼン | …… |
| ガサガサ |
アイゼン | …!これは── |
| |
アイゼン | ──この辺りか… |
アイゼン | (全くあいつは…手紙に 好き勝手な事を 書いてくれたものだな) |
| |
フェニックス | 「我はマナリスを使い、 不死鳥の力を増幅させた」 |
フェニックス | 「一晩ならば、 汝の死神の呪いも打ち消せる。 その間に、エドナと会うがよい」 |
フェニックス | 「よもや、再会を拒むなどとは 考えていないだろうな、我が友よ」 |
フェニックス | 「兄のために霊峰を飛び出し ここまでやって来た妹に 汝は話の一つもしてやらぬのか」 |
| |
アイゼン | (まさか、フェニックスが マナリスを使って加護の力を 増幅させるとはな…) |
アイゼン | (手紙には、あいつが ここへ来ると 書かれていたが──…) |
エドナ | …お兄ちゃん! |
アイゼン | …エドナ |
エドナ | 本当に来ると思ってなかったわ。どうして会う気になったの? |
アイゼン | …今のお前は、マナリスの力で一時的に死神の呪いの影響を受けない状態になっているらしい |
エドナ | ──成程ね。誰かさんがスレイ達とこそこそ何かやってるみたいだとは思ってたけど… |
エドナ | …まあ、いいわ。呪いの影響が出ない状態なら、少しくらい一緒に話せるわよね |
アイゼン | ああ。だが、この夜が過ぎれば俺達はまた別れる事になる。──それでもいいんだな? |
エドナ | ええ、わかってるわ。明日になったら、スレイ達と島を出るって約束する |
エドナ | だけど今は…お兄ちゃんと一緒にいるこの時間を、大切にしたいの。たくさん、話したい事があるから |
エドナ | 手紙で全部伝えるのは大変だし…助けてくれたお礼も言ってなかったでしょ |
アイゼン | …そうか。俺も、一晩じゃ足りないくらいお前に話したい事がある |
エドナ | 時間が許す限り、全部聞かせて。海の冒険の話も…この島での事も |
アイゼン | …ああ、わかった |
| |
エドナ | …すっかり明るくなったわね |
アイゼン | もうそんな時間か。あっという間だったな |
アイゼン | 俺はそろそろ宿舎に戻る。お前も、仲間達の元へ戻った方がいいだろう |
エドナ | …そうね |
エドナ | ありがとう、お兄ちゃん。いろいろと話せて嬉しかった |
アイゼン | ああ。島を出たら、山に戻るのか? |
エドナ | …ううん。もう少し、スレイ達と一緒に旅を続けてみるわ |
エドナ | あの子達だけじゃこの先の旅が不安だもの |
アイゼン | そうか。──お前にも、やりたい事が見つかったようだな |
エドナ | …そうかもね。それじゃ、もう行くわ |
エドナ | またお兄ちゃんに話したい事が出来たら、手紙を送るから |
アイゼン | ああ。俺も、そうしよう |
アイゼン | …元気でな、エドナ |
| |
ルカ | 気持ちのいい天気だね |
パスカル | うん!絶好の冒険日和だよ~ |
アリーシャ | みんな、昨日はゆっくり休めたか? |
ロイド | ばっちりだぜ!アイゼンは朝まで宿舎に戻って来なかったけど、大丈夫か? |
アイゼン | ああ、問題ない |
ロイド | そっか。それじゃ、早く出発しようぜ! |
クラトス | ──準備は整ったようだな |
アリーシャ | はい。これからエルピスの塔へ向かいます |
フレン | そうか。アスベル達は先に出発したから、塔の前で合流してくれ |
ジェイド | くれぐれもサフィアの扱いは丁重にお願いしますよ |
パスカル | わかってるって~! |
ローエン | それでは、皆さんお気をつけて。ここでお帰りをお待ちしておりますよ |
| |
アイゼン | …改めて見ると、巨大な塔だな |
ルカ | うん…!塔の中はどうなってるんだろうね |
パスカル | マナリスと同じように、簡単にはサフィアにたどり着けない構造になってるんじゃないかな~ |
アリーシャ | ああ。どんな危険が待ち受けているかわからない── |
| |
ルカ | な、何…!? |
ロイド | 見ろ…!エルピスの塔が…! |
| |
??? | …… |
??? | 時は満ちた、か── |
| |
| |
アリーシャ | あれは…! |
アイゼン | カタグラフィで見た瘴気と同じもの、なのか… |
男1 | 何だ、この霧…!何が起こってるんだ…!? |
男2 | 早く逃げるぞ!くそ…どけよ!邪魔だ! |
| ドンッ── |
女1 | うっ… |
ロイド | …!大丈夫か!? |
女1 | ええ… |
パスカル | みんな、混乱してるみたいだね。このままじゃ怪我人が出ちゃうよ |
アリーシャ | ああ…。報告や状況確認を含め一旦本部へ戻ろう |
アイゼン | そうだな |
| 真の姿へ |
調査隊員1 | 街の様子はどうなっている |
調査隊員2 | 突如発生した霧の影響で、民衆が騒乱状態に陥っています! |
調査隊員2 | 霧は徐々に広がっており、島の各所で混乱が起きていると、報告が… |
調査隊員1 | 被害を受けていないのはここだけか… |
調査隊員1 | ──急ぎ動ける隊員を集めろ!民衆の避難を最優先に動く |
調査隊員2 | はっ! |
アイゼン | …どうやら、エルピスの塔以外でも混乱が生じているようだな |
ルカ | うん。でも…本部だけは瘴気の影響を受けてないみたいだね。なんでだろう… |
パスカル | う~ん、何か理由がありそうだけど… |
アリーシャ | まずは、情報を集めよう。何が起こっているのか見極める必要がある |
ロイド | そうだな。それじゃ、クラトス達を捜して─… |
リフィル | ロイド! |
ロイド | リフィル先生…?それに、キールも! |
リフィル | みんな、無事でよかったわ |
キール | 丁度いい。これからぼく達と一緒に保管庫へ向かってくれないか? |
パスカル | 保管庫に…?何かあったの? |
キール | ああ。ダモクレスの剣に変化があったそうだ |
アリーシャ | …!わかった、同行しよう |
| |
ロイド | これが… |
ロイド | あの、ハリセンなのか…!? |
ルカ | 立派な剣になってるね。しかも、二本ある… |
アイゼン | 試練を越えた者を主として認め、ロイドに合わせて二対の剣になったんだろう |
アイゼン | ダモクレスの剣は使い手によって形状を変えると、カタグラフィの中で研究者が語っていたからな |
キール | しかし何故、今になって剣に変化したんだ…? |
パスカル | …もしかしたら、瘴気と関係があるんじゃないかな? |
リフィル | 瘴気…今、島を覆っているあの霧の事ね?どうしてそう思うの? |
パスカル | 本部だけが瘴気の影響を受けてないのは、変だと思ってたんだよね |
パスカル | この剣、刀身が輝石で出来てるみたいだし、何かを斬るための物じゃないと思うんだ |
パスカル | たぶん…ダモクレスの剣が瘴気から本部を守ったんじゃないかな |
アリーシャ | そう言えば、剣は島の脅威を払うために作られたと、映像の中でドワーフが話していたな… |
ルカ | 島の脅威が瘴気の事なら、話の辻褄が合うね |
キール | 瘴気を払うために変化が促されたというわけか…。あり得ない話ではないな |
リフィル | …一先ず、クラトス達に剣の事を知らせましょう |
ロイド | ああ。このままみんなで会議室に向かおうぜ! |
| |
アリーシャ | ──失礼します |
ジュディス | あら、奇遇ね |
アリーシャ | ジュディス…? |
ユーリ | よっ。お前らも、本部に戻ってたんだな |
ロイド | ユーリ!ラピードも、元気そうだな |
クラトス | …お前達か |
アリーシャ | お話し中に申し訳ありません。どうしてもクラトス殿に報告したい事がありまして |
クラトス | その様子だと、急ぎの用があるようだな。何があった? |
リフィル | ダモクレスの剣が形を変えたのよ。ハリセンは仮の形状だったようね |
リフィル | パスカルの予想では、島を覆っている瘴気に反応して変化したんじゃないかって |
ユーリ | へえ、あのハリセン、ちゃんとした剣になったんだな |
パスカル | うん。本部が瘴気の影響を受けてないのは、剣と関係があると思うんだよね |
ジュディス | その瘴気の事で私達からも報告があるのだけど |
ジュディス | 山岳地帯の洞窟でこのカタグラフィを見つけたわ |
ジュディス | …説明するより見てもらった方が早いわね。再生してもらえるかしら |
ルカ | わかった。再生するね |
| ポチッ…! |
| |
島民1 | アスラ様…!よくぞご無事で |
島民1 | みな、討伐隊の帰還を心から喜んでおります |
アスラ | この勝利は、戦いに挑んだみなで掴んだものだ。俺より帰還した兵士達を労ってほしい |
島民1 | はい。負傷している兵士には早急に手当を施します |
アスラ | ああ、頼む。…塔の中では、多くの者が命を落とした |
アスラ | 帰還出来なかった者達が勇敢に戦った事を家族や友人に伝えてくれ |
島民1 | …はい。しかしこれで、島に平和が訪れたのですよね…? |
アスラ | いや…蔓延してしまった瘴気が完全に消えるまでには長い時が必要になるだろう |
島民2 | そんな…!では、我々は── |
アスラ | 家族や仲間を連れて、島外に逃げろ |
アスラ | 瘴気に侵された人間や魔物は、理性が麻痺し、狂暴化する |
アスラ | 心の弱い人間ほど短時間で影響を受けやすい。戦いで摩耗したお前達も例外ではない |
島民1 | …わかりました。我々も、島を出る時が来たようですね |
島民2 | アスラ様…。封印されたヘルダルフは、いつか復活するのでしょうか? |
アスラ | …ああ。いずれ、奴が目覚める時が来るだろう |
アスラ | だが、案ずる必要はない。希望はある |
アスラ | 必ずや未来に…俺達が託した希望が目覚めるだろう |
| |
アリーシャ | これは… |
アイゼン | ヘルダルフは討伐されたわけではなく塔に封印されていただけだった、という事か |
ユーリ | みたいだな |
ジュディス | 街で暴動が起きたと聞いた時から違和感があったの |
ジュディス | あなたも言っていたでしょう?何か怒りの感情を助長する要因でもあるのかって |
アリーシャ | …!あの時から、独自調査を…? |
ジュディス | ええ。彼らと一緒に島中を回って、ようやくこのカタグラフィを見つけたのよ |
ユーリ | 少しばかり、遅かったみたいだけどな |
パスカル | …エメロードが言ってたまやかしって、この事だったんだ |
アイゼン | 記録館で見たヘルダルフの討伐記録は偽の情報というわけか |
ジュディス | 街の暴動や魔物の増加は漏れ出した瘴気の影響でしょうね |
ルカ | じゃあ、今になって急に瘴気が噴き出したのは… |
アリーシャ | ヘルダルフが、復活したという事か… |
クラトス | ──至急対策を練る必要があるな。各所で指揮を取っている代表達を呼び戻して、会議を行う |
クラトス | 決定には少し時間がかかるだろう。お前達は、宿舎に戻るといい |
パスカル | それなら、あたしはもう一度記録館に行ってもいいかな? |
パスカル | エメロードが記録館の情報を書き換えてた可能性が高いから、調べ直したいんだ |
キール | ぼくも一緒に行かせてほしい。手は多いに越した事はないだろう |
クラトス | わかった。お前達には護衛をつけよう |
クラトス | 瘴気の影響で、狂暴化した魔物達が襲いかかって来る可能性があるからな |
キール | 確かに、島がこんな状態じゃ何が起こるかわからない…。護衛は必要だな |
クラトス | ──おい |
調査隊員 | はっ、ご用でしょうか |
クラトス | 本部にいる隊員を数名、護衛として連れてきてくれ |
調査隊員 | 承知致しました |
リフィル | パスカル達が記録館を調べている間私は本部に残ってダモクレスの剣を詳しく調べてみるわ |
ロイド | それなら、俺達は避難誘導を手伝うよ |
ロイド | こんな時に本部でじっとしてられないだろ |
クラトス | いいだろう。混乱の大きい街の方を頼む |
クラトス | 出来るだけ速やかに、島民を避難させるんだ |
アリーシャ | わかりました |
| |
リッド | ──おっ、出て来たな |
キール | リッド…? |
キール | もしかして…おまえが護衛なのか? |
リッド | ああ、そうだぜ。ルドガーとエミルも一緒にな |
ルドガー | 本部の要請を受けて、パスカルとキールに同行する事になったんだ |
ロイド | ルドガー達が一緒なら、心配ないな!二人の事、頼んだぜ! |
エミル | うん。二人に危険が及ばないように、護衛の役目を果たすよ |
キール | …ふん。リッドが護衛なんて心許ないが…まあいいさ。いないよりはマシだ |
リッド | …おまえ、大丈夫か? |
キール | 何がだよ |
リッド | 記録館に行くまでの道のり、結構険しいらしいぜ |
リッド | おまえの体力じゃ、つらいんじゃねぇのか? |
キール | そのくらい、どうって事ない。無駄口を叩いていないでさっさと出発するぞ |
パスカル | お~、キールやる気だね! |
リッド | あの勢いが続けばいいけどな |
ルドガー | それじゃ、俺達も行こうか |
アイゼン | …以前記録館に行った時も、森の中で魔物に遭遇した。気を抜くなよ |
エミル | はい。みなさんも、気を付けて |
パスカル | また後でね~! |
scene1 | 瘴気満ちる街 |
アリーシャ | ──この辺りは瘴気が濃い。やはり、被害を免れているのは本部だけのようだ |
ロイド | ダモクレスの剣が瘴気を払ってたっていうのは間違いなさそうだな |
アイゼン | ああ。剣の効果が及ぶ限られた範囲のみ瘴気の影響を受けないようだ |
ルカ | 剣から離れれば離れるほど、瘴気が濃くなっていくんだね |
ルカ | そう言えば…カタグラフィの中でアスラが心の弱い人間ほど瘴気の影響を受けやすいって言ってたけど… |
ルカ | 人によってどれくらいの差が出るものなんだろう? |
アイゼン | さあな。どの道、瘴気を消さない限り時間と共に事態は悪化していくだろう |
アリーシャ | ああ…。これ以上、混乱が広がる前に島にいる人達を安全な場所に避難させなくては |
ロイド | そうだな。急いで街に向かおうぜ! |
| |
| ガサッ…ガサガサッ |
アイゼン | …そう簡単には事が運ばないようだな |
| ガルルル! |
| |
ロイド | 魔物の群れか…! |
アリーシャ | かなり興奮しているな。瘴気の影響で、狂暴化しているのかもしれない |
アイゼン | 何にせよ、ここでもたついている暇はない。行くぞ! |
ルカ | うん! |
scene2 | 瘴気満ちる街 |
ルカ | はあっ! |
| ズバッ |
| ギャウウー! |
アイゼン | この辺りは片付いたか… |
| ガサガサッ |
| ガルルル! |
アリーシャ | く…!まだ茂みの中に潜んでいたのか…! |
ロイド | 一体、何匹いるんだ…? |
女性 | きゃあああ |
アイゼン | …!あれは… |
ルカ | あの人、魔物に襲われてる…!助けないと…! |
| ガルルル! |
アリーシャ | っ…!これでは前に進めない…! |
女性 | 嫌…!誰か…! |
ロイド | くそっ!このままじゃ間に合わな── |
??? | ──裂空斬! |
| ギャウウー! |
アリーシャ | …! |
??? | 大丈夫ですか? |
女性 | は、はい…!助けていただいてありがとうございます! |
ルカ | …よかった、何ともないみたいだね |
ロイド | ああ!無事でよかったぜ |
| ガルルル! |
ロイド | …まずは、目の前のこいつらを何とかしないとな! |
ルカ | うん! |
??? | あんた達、調査隊の奴らだよな?魔物を倒すなら、オレも手伝うぜ! |
アリーシャ | ああ、頼む! |
scene3 | 瘴気満ちる街 |
??? | ふう…。何とか全部追い払えたみたいだな |
アリーシャ | 助太刀、感謝する。君は── |
カイウス | オレはカイウス。島を観光してる時に突然この霧が出てきて避難するように言われたんだけど… |
カイウス | さっきみたいに逃げ遅れた人とか魔物に襲われてる人達がいたから助けてたんだ |
アリーシャ | そうだったのか。先程は助かったよ、ありがとう |
カイウス | 大した事ない。あんた達の名前は? |
ロイド | 俺はロイド。隣にいるのはルカ、アリーシャ、アイゼンだ |
ルカ | よろしく、カイウス |
カイウス | よろしくな!…あんた達は、これから街に向かうのか? |
アリーシャ | ああ。街の避難誘導を手伝うつもりだ |
カイウス | それなら、オレも一緒に行ってもいいか? |
カイウス | 街の中はここよりもっと人が多いだろ?協力するよ |
アリーシャ | …わかった。君ほどの実力があるなら、問題はないだろう |
アリーシャ | 手を貸してもらえると助かる |
カイウス | 任せろ! |
| |
観光客1 | どけよ!トロトロ歩いてんじゃねえ! |
観光客2 | 押さないでよ…!小さい子どもがいるのよ…!? |
観光客1 | うるさい!さっさと道を開けろ! |
クレス | 落ち着いてください! |
ロゼ | 今、街の外に出ても魔物に襲われるだけだよ |
観光客1 | ああ?何だ、お前ら |
観光客1 | 文句があるなら、今ここで── |
アルヴィン | ハイハイ。そこまでにしとけって |
ソフィ | 喧嘩は駄目。小さい子が怖がってる |
観光客1 | …ちっ。わかったよ、待てばいいんだろ |
観光客1 | その代わり、さっさと魔物でも何でも倒して俺達を避難させろよ! |
ロゼ | …あのオジサン、何であんなに偉そうなんだろ |
アリーシャ | ロゼ…! |
ロゼ | アリーシャ? |
ロイド | クレス達も!ここにいたんだな |
クレス | ああ。調査隊の人達と協力して避難を手伝っているんだけど… |
アルヴィン | どうも、この霧が出始めてから街にいる連中の様子がおかしくてな |
アルヴィン | 急に喧嘩を始めたり、文句を言ってきたり…まあ、なかなか避難が進まないんだ |
ルカ | 一部の人達に、瘴気の影響が出始めてるんだね… |
ソフィ | 瘴気…? |
アリーシャ | 島全体を覆っている、この霧の事だ |
ロゼ | …何か大変な事が起こってるみたいだね。詳しく聞かせて、アリーシャ |
アリーシャ | ああ、勿論だ |
クレス | 成程…。瘴気の影響で人や魔物の理性が麻痺しているのか |
アリーシャ | 街の外にいる魔物達も、かなり興奮してる様子だった |
ロゼ | 事態は一刻を争うって事だね |
ロゼ | なら、出来るだけ早くここにいる人達を瘴気の届かない場所まで誘導しないと |
アルヴィン | んじゃ、港に向かおうぜ。海辺の方まではまだ瘴気が届いてないはずだ |
アルヴィン | 船が出れば、島の外へ逃げる事も出来るしな |
露天商 | くそ…!いつまでこんな場所に待機させるつもりだ…! |
ロゼ | あー、もう!次から次へと… |
アイゼン | …お前達は、島中に必要な物資を運んでいると言っていたな |
アルヴィン | ああ、そうだぜ? |
アイゼン | なら、安全な経路を選んでここにいる奴らを港へ誘導しろ |
アイゼン | 手に負えない奴らは、俺達で抑える |
ロゼ | わかった。出来るだけ安全な道を選ぶけど、途中で魔物に遭遇する可能性もあるよ |
ロゼ | 誘導する人数が多いから、護衛も兼ねて手を貸してもらっていい? |
クレス | ああ、勿論だ。僕とソフィで援護するよ |
カイウス | オレも手伝うぜ! |
クレス | 君も…? |
ロイド | カイウスは、街の外で魔物に襲われてた人を助けてたんだ |
ロイド | 避難する人達を助けたいって街まで付いて来てくれたんだぜ |
クレス | そうだったのか。心強いよ、ありがとう |
ロゼ | それじゃ、あたしとアルヴィンは先頭で街の人達を誘導する |
ルカ | 僕達は向こうで暴れてる人を止めに行くよ |
ソフィ | わかった。魔物はわたし達に任せて |
アルヴィン | そんじゃ、早速港に向けて出発しますかね |
scene1 | 隠された真実 |
ルドガー | ──随分と奥まできたな。記録館はこの先にあるのか? |
パスカル | うん。ここから先は足場が悪い道が続くから、気を付けた方がいいよ~ |
キール | …… |
リッド | …キール、おまえ、疲れたんじゃねぇのか? |
エミル | ここまで休まずに歩いて来たし…そろそろこの辺りで休憩する? |
キール | いや、問題ない。僕なら大丈夫だ |
リッド | そう言っておまえ、子どもの時も途中で疲れて歩けないって言い出しただろ |
キール | いつの話をしているんだ。今のぼくは、昔のぼくとは違う! |
リッド | はいはい、わかった、わかった |
パスカル | 二人は幼なじみなんだね。仲良しでいいな~! |
キール | 今のやり取りを見て、どうしてそう思えるんだ… |
キール | …そんな事より、パスカルに聞きたかった事があるんだが |
パスカル | 何なに? |
キール | これから記録館に行って新しい情報を得られる当てはあるのか? |
キール | 記録館の中は調査隊が調べ尽くしたと聞いているが… |
パスカル | 確証があるわけじゃないんだけど… |
エミル | 何か、気になってる事があるの? |
パスカル | うん。前に記録館の装置を調べた時に、見られない情報があったんだよね |
パスカル | 暗号か何かでロックされてて、あの時は諦めたんだけど… |
キール | なるほど。どうにかして装置の暗号を解けば、何か新しい情報が得られるかもしれないな… |
| |
| ザザッ…! |
エミル | …!今の音は… |
ルドガー | 茂みの中に、何かいるみたいだ! |
ルドガー | みんな、構えろ! |
| |
| グオオオッ! |
リッド | 魔物か…!油断するなよ、キール! |
キール | おまえに言われなくても、わかってるさ…! |
scene2 | 隠された真実 |
エミル | ふう…。何とか無事に、ここまでたどり着けたね |
パスカル | アイゼンと記録館に来た時も魔物に襲われたけど… |
パスカル | さっきの魔物は、すごく殺気立ってたな~ |
ルドガー | 瘴気の影響を受けて狂暴化してるのかもしれない |
キール | 早いとこ、記録館の中に入ろう。外にいれば、いつまた襲われるかわからない |
リッド | 樹の幹に埋まってるあれが、記録館の扉だよな? |
パスカル | うん。…そう言えば、初めてここに来た時、扉の前に錠前が落ちてたんだ |
パスカル | あの時は老朽化が進んで壊れたんじゃないかって思ってたんだけど… |
パスカル | エメロードが記録館の中に入るために錠前を壊してたのかもね |
キール | そして、自分に都合のいいように記録を改ざんしたというわけだな |
キール | ──とにかく、中に入って装置を調べてみよう |
| |
| ピピ…ピ…ピピピ… |
パスカル | …やっぱり。装置内の記録が書き換えられた痕跡があるよ |
キール | エメロードが記録を改ざんした時の履歴を調べれば、暗号を割り出せるかもしれないな |
キール | 出来るか?パスカル |
パスカル | 任せて!すぐに調べるね |
| ピピ…ピ… |
パスカル | …あった!これが暗号だよ |
リッド | って事は、装置のロックを解除出来るんだな |
パスカル | うん!ここに暗号を入力して、っと… |
| ピピ…ピピピ… |
| カチッ |
パスカル | ロックを解除したから、情報が見られるようになったよ! |
パスカル | 何かの映像記録みたいだから、再生するね |
| ピピ…ピ… |
| |
集落の男 | 聞いたか?ヘルダルフの話… |
集落の女 | ええ…。長の怒りに触れて、罰を受けたそうね |
集落の男 | ああ…。山の集落の長はサフィアを使ってあいつに永遠の孤独の呪いってやつをかけたらしい |
集落の女 | どんな呪いなの? |
集落の男 | 何でも、その呪いにかかると瘴気を発生させる不老不死の身体になっちまうそうだ |
集落の男 | もう誰も、あいつには近付かないだろうさ |
| |
エミル | この映像を見る限り…ヘルダルフは島の住民だったみたいだね |
パスカル | うん。呪いで不老不死になったから、島中の人達が束になっても簡単には倒せなかったんだ |
エミル | だけど、どうして島の住人だったヘルダルフが、瘴気を蔓延させるような事をしたのかな… |
ルドガー | 確かに…。余程の理由がないと自分が暮らしていた場所を瘴気で覆うような事はしないはずだ |
リッド | そればっかりは本人に聞いてみるしかないんじゃねぇか? |
エミル | そうだね…。…あ、ここに、別の映像が入ってるみたいだよ |
パスカル | ほんとだ!再生するね |
| ピピ…ピ… |
| |
ドワーフ | 遂に完成したぞ…!この剣があれば、ヘルダルフが放つ瘴気に対抗出来る |
二刀流の剣士 | ダモクレスの剣は、サフィア由来の力を吸収するんだな? |
ドワーフ | ああ。サフィアから力を供給しているマナリスの力も吸収出来るように作った |
二刀流の剣士 | そうか…。後は、未来にこの剣を託せる者が現われる事を願うばかりだ |
| |
ルドガー | ダモクレスの剣は、サフィア、マナリス由来の力を吸収する事が出来るみたいだな |
キール | …だから、調査隊の本部だけは瘴気の影響を受けなかったのか |
キール | 剣が瘴気を打ち消していたわけじゃなく、瘴気を吸収していたんだ |
パスカル | …!それなら、剣でヘルダルフの呪いを吸収出来るんじゃないかな? |
キール | ああ。呪いが消えればヘルダルフも不老不死ではなくなるだろう |
キール | 瘴気を発生させる事も出来なくなるはずだ |
リッド | なるほど、ダモクレスの剣がこの状況を打開する鍵って事か |
キール | ああ。情報を得るために、記録館まで足を運んだ甲斐があったな |
パスカル | ──あれ…?まだ他にも、映像が残ってる |
エミル | 再生出来そう? |
パスカル | うん!今から流すよ |
| |
女の子 | ねぇ、パパ!どうしていつもカタグラフィでみんなの事、撮ってるの? |
父親 | お父さんは、記録係だからだよ |
父親 | 島の人達がどんな風に生活しているのかを記録するのがお父さんの仕事なんだ |
女の子 | 変なの~。そんな記録、何の役に立つの? |
父親 | お父さん達が豊かな生活を送れているのは、マナリスのお蔭なんだよ |
父親 | だけど、マナリスやサフィアは使い方を間違えると恐ろしい事になってしまうんだ |
父親 | 未来の人達に、その事を伝えるために記録を残すんだよ |
| |
キール | …カタグラフィは、サフィアやマナリスの事を後世に伝えるために発明された物だったのか |
リッド | この映像に映ってた男みたいに島の記録を撮り続けてた奴がいたんだな |
エミル | だから、島の至るところに記録が残されていたんだね |
パスカル | 島を救う方法が見つかったのはその人達のお蔭だね! |
ルドガー | ああ。昔の人達が残した情報が無駄にならないように、俺達が瘴気から世界を守らないとな |
キール | …こうしてはいられない。すぐに、本部へ戻ろう |
キール | 一刻も早く、ここにあった情報を持ち帰るべきだ |
パスカル | うん!そんじゃ、今すぐ出発しよう! |
| 憧れの先へ |
クラトス | ──揃ったようだな |
エレノア | はい |
アリーシャ | こちらも全員揃いました |
ローエン | では、まず街の様子について、聞かせていただけますかな? |
アリーシャ | はい。街は瘴気の影響で混乱していますが、ロゼ達が先導して民衆を港へ避難させています |
ロイド | クレス達も魔物の討伐を手伝ってくれてるから、今のところ怪我人は出てないぜ |
ローエン | それは頼もしい。何とか、被害は最小限に留まっているようですね |
ローエン | アスベルさん達の方はどうですか? |
アスベル | 街から少し離れた森で魔物の討伐に当たっていましたが、どこも混乱している様子は変わりません |
スパーダ | 瘴気の影響なのか、今まで以上に色んな場所で魔物が暴れ回ってるみてえだしな |
フレン | そうか…。他の調査隊員からの報告によると、港にはまだ瘴気の影響が出ていないらしい |
フレン | ただ…海に大量の魔物が出た事で船が出せない状態になっているそうだ |
ルカ | もしかして、僕達が船に乗っている時に遭遇したあの魔物の群れが… |
ジェイド | おそらく、同じ群れでしょう |
ジェイド | 船が出航出来る状態になるまで、避難者は港に足止めされる事になります |
ルーク | そんな事してる間に、瘴気が港に届いたらどうすんだよ!? |
クラトス | 無理に船を出せば民衆を危険に晒す事になる |
クラトス | それに、瘴気を消さない限りいずれ海の向こうの大陸にも被害が出るだろう |
アイゼン | ──大元を断たない限り、事態は改善しないという事だな |
ローエン | ええ、その通りです |
ローエン | しかし幸運にも、パスカルさん達が記録館からこの状況を打破するための重要な情報を持ち帰ってくれました |
ローエン | パスカルさん、ご説明をお願い出来ますか |
パスカル | うん。記録館に残ってた情報によると、この瘴気はヘルダルフが発生させてるみたいだよ |
アイゼン | …! |
パスカル | やっぱり、ヘルダルフの封印が解けた事と、瘴気の流出は関係があったんだね |
アリーシャ | つまり…ヘルダルフを倒さない限り瘴気を止める事は出来ないのか |
パスカル | うん。ヘルダルフは昔、山の集落の長の怒りを買って、呪いをかけられたんだって |
パスカル | 呪いを受けたヘルダルフは瘴気を発生させる不老不死の身体になったみたいだよ |
アイゼン | …不老不死か。随分厄介な呪いだな |
パスカル | たぶんヘルダルフは、サフィアを使って呪いの力を増幅させてるんじゃないかな |
パスカル | 瘴気が噴出した時に、サフィアの輝きが増したように見えたから |
エレノア | どうしてそんな事を… |
ジェイド | 理由が何であれ、放っておく事は出来ません |
アリーシャ | ですが…不老不死の人間を討伐する事など出来るのでしょうか? |
パスカル | それなら、心配いらないよ!記録館にダモクレスの剣の情報が残されてたんだけど… |
パスカル | 剣には、サフィア由来の力を吸収する力があるんだって |
スパーダ | なるほどな。ダモクレスの剣を使えば、不老不死にも対抗出来るって事か |
ローエン | そのダモクレスの剣に関してですが… |
ローエン | リフィルさんが詳しく調べた結果、剣に殺傷力がない事が判明しました |
ローエン | 刀身が輝石で出来ているため、斬る事が出来ないそうです |
ジェイド | つまり、瘴気や呪いを吸収するためだけに作られた剣…という事でしょう |
フレン | 一刻も早くヘルダルフを止めなければアヴァロン島だけではなく大陸全土に被害が広がる事になる |
フレン | ダモクレスの剣を使ってヘルダルフを討伐する以外に島を救う方法はないようだね |
パスカル | ヘルダルフを封印したアスラは未来にダモクレスの剣を扱える人が現われるって信じてたのかな |
パスカル | ジュディス達が持って来たカタグラフィの映像の中で希望はある、って言ってたから |
ルカ | …… |
アリーシャ | どうかしたのか、ルカ? |
ルカ | えっと…ここで話すような内容じゃないかもしれないんだけど… |
ローエン | 何か話したい事があれば、遠慮なく発言していただいて構いませんよ |
ルカ | …ありがとうございます |
ルカ | 実は僕…みんなには言ってなかったけど、島にいる間にアスラの夢を見る事があったんだ |
スパーダ | …!ルカ… |
パスカル | それって、島に来てから見るようになったの? |
ルカ | ううん。島に来る前も、何度かアスラの夢を見ていたんだけど |
ルカ | アヴァロン島に来てからは頻繁に見るようになって… |
スパーダ | ルカがこの島に来る前からアスラの夢を見てた事は、オレも知ってるぜ |
エレノア | …不思議ですね。大昔に存在した者の夢を見るなんて |
ルカ | うん…。僕はずっと、夢の中のアスラに憧れを抱いていたんだ |
ルカ | だから、もしアスラがヘルダルフを討てずに封印っていう手段を取ったんだとしたら… |
ルカ | 僕は、アスラがなし遂げられなかった事を、代わりになし遂げたいんだ |
アイゼン | …アスラに代わってヘルダルフを討つ。そういう事だな? |
ルカ | うん |
ロイド | それなら、俺達も一緒に行くぜ! |
パスカル | うんうん。あたし達は同じ隊の仲間だからね! |
スパーダ | オレ達の事も、忘れてもらっちゃ困るぜ |
ルーク | ああ!おまえらだけに、いい格好はさせられねえからな! |
アリーシャ | …クラトス殿。我々にヘルダルフの討伐を任せていただけませんか |
クラトス | ──いいだろう |
クラトス | どの道、ロイド以外の者がダモクレスの剣を持とうとすれば力を発揮しない可能性があるからな |
ロイド | あ…そうか。そうだったよな |
ローエン | 私達は初めからあなた方に討伐を頼むつもりだったのですよ |
ローエン | 自ら志願していただいて、心強いばかりです |
クラトス | 瘴気を吸収出来るものはダモクレスの剣しかない |
クラトス | ダモクレスの剣で吸収出来る瘴気の範囲は限られている |
クラトス | 行動範囲を狭めるためにも、討伐には少数精鋭で挑む方がいいだろう |
フレン | では、私達は避難者の誘導や瘴気の影響を受けて狂暴化した人々の鎮圧に向かいます |
フレン | ダモクレスの剣を持ち出した場合、本部にも影響が出ると考えられるので、その対処も含めて |
ジェイド | 避難経路を塞ぐ魔物の討伐もしなくてはいけません。問題は山積みですね |
クラトス | ヘルダルフの事は、お前達に一任する |
ロイド | ああ!俺達に任しとけ! |
クラトス | 頼んだぞ |
ジェイド | ああ、それから塔の頂上に保管されているサフィアに関してですが… |
ジェイド | あなた達が危険な物と判断した場合は、その場で破壊して構いません |
アリーシャ | …!宜しいのですか? |
ジェイド | ええ。最大の目的は瘴気の流出を止める事にあります |
ジェイド | サフィアの扱いについてはあなた方の意志に任せると決定しました |
アリーシャ | わかりました |
フレン | エルピスの塔の内部は私達にとっても未知の領域だ |
フレン | くれぐれも気を付けて。必ず君達がヘルダルフを倒すと信じている |
アスベル | ああ。任せてくれ |
ルーク | 決まったなら、さっさと行こうぜ! |
ルカ | うん! |
ローエン | 頼みましたよ、皆さん |
| |
アリーシャ | みんな、準備は出来ているか? |
スパーダ | いつでもいいぜ |
コレット | ──みんな、待って! |
ロイド | コレット…? |
ミュウ | ご主人様~! |
ルーク | うぶっ |
ミュウ | ミュウを置いて行っちゃ嫌ですの~! |
ルーク | この…ブタザル!離れろ…! |
ミュウ | 離れませんの!ご主人様と一緒に行くですの! |
コレット | …ごめんね、ロイド。みんながエルピスの塔に行くって調査隊の人達から聞いて… |
ロイド | 心配して、来てくれたんだな |
コレット | …うん |
パスカル | 心配いらないよ!ロイドにはあたし達が付いてるしね |
ルーク | ブタザル。おまえもここに残れ |
ミュウ | でもミュウは… |
ルーク | …おまえの役目は、こいつを守る事だ |
コレット | え…? |
ミュウ | みゅ? |
ルーク | ロイドも俺も、今からあの塔に行かなきゃいけねえ |
ルーク | だから、おまえは傍でコレットを守れ |
ミュウ | …わかりましたですの!ミュウが、お守りするですの! |
コレット | ふふ。よろしくね、ミュウ |
ロイド | コレット。必ず、みんなで帰って来るから…待っててくれよ |
コレット | …うん、わかってる。気を付けてね、ロイド |
ロイド | ああ! |
ロイド | コレットを頼むな、ミュウ |
ミュウ | はいですの!絶対にお守りしますの! |
アイゼン | …話は済んだようだな |
エレノア | それじゃあ、そろそろ出発しましょうか |
コレット | みんな、無事に戻って来てね |
ロイド | ああ。行ってくるな! |
Name | Dialogue |
scene1 | エルピスの塔へ |
ロイド | この辺りまで来ると瘴気が濃いな |
ルカ | うん…。塔に近付けば近づくほど、視界がきかなくなってくるね |
パスカル | ダモクレスの剣があるから、あたし達に影響はないと思うけど… |
パスカル | このままじゃ、あっという間に瘴気が島全体を覆っちゃいそうだよ |
アイゼン | それだけじゃない。時間が経てば島の外にある国々にも被害が広がるだろう |
アスベル | …そうなる前に、ヘルダルフを倒さないといけないな |
エレノア | そうですね。とにかく先を急ぎましょう |
エレノア | サフィアを使って呪いの力を増幅させているなら、ヘルダルフは塔の頂上にいるはずです |
アリーシャ | ああ。このまま最短距離で塔の入り口を目指して── |
| |
| グルルル… |
ルーク | この声…魔物か!近付いて来てるぜ |
スパーダ | …わかってはいたが、そう簡単には塔までたどり着けねえみてえだな |
| |
| ウウウウウッ…! |
アスベル | みんな、構えろ!来るぞ! |
アイゼン | 一気に叩く。生憎、魔物の相手をしている時間はないんでな…! |
scene2 | エルピスの塔へ |
アイゼン | ちっ…!しつこいな |
| バコッ! |
| ギャウゥ…! |
ルーク | やった…! |
アリーシャ | いや…まだだ! |
| ウウウウウッ…! |
| ガキンッ! |
アリーシャ | く…っ! |
ルカ | まだ襲ってくるなんて…! |
パスカル | 瘴気の影響で、狂暴になってるのかも! |
パスカル | ロイド。ダモクレスの剣で攻撃してみて |
ロイド | いいけど…、この剣じゃ魔物を倒す事は出来ないんだよな? |
パスカル | うん。でも、もしかしたら…魔物に影響を与えてる瘴気を吸い取る事は出来るかもしれないよ! |
ロイド | そっか。なら、やってみるぜ! |
ロイド | ──はあああ! |
| ザシュッ! |
| グウウゥ…ッ! |
| |
スパーダ | …!魔物が逃げてくぜ |
ロイド | パスカルの予想通りだったな! |
アリーシャ | ダモクレスの剣は周囲の瘴気を自動的に吸収するが── |
アリーシャ | 瘴気に侵された魔物を元に戻す場合は、剣で攻撃を与える必要があるのか… |
エレノア | そうなると、剣を使えば理性を失った人を元に戻す事も出来るかもしれませんね |
アイゼン | ああ。とはいえ、狂暴化した魔物や理性を失った人間を全員斬って回るわけにはいかない |
ルカ | そうだね…。この先は狂暴化した魔物に囲まれないように、注意しなきゃ |
アスベル | ああ…出来るだけ魔物との戦いは避けつつ、塔の頂上に向かう事を最優先に考えよう |
ロイド | それじゃ、エルピスの塔へ急ごうぜ! |
ルーク | そうだな |
| |
ルカ | …何とかたどり着けたね |
アスベル | この辺りに魔物はいないようだな |
パスカル | 扉を開いた時は人がたくさんいて賑わってたのに、今は静かだね… |
スパーダ | 塔の近くにいた奴らはとっくに避難してるだろうしな |
エレノア | ええ。ですが…ここから避難した人達も港で足止めされているはずです |
エレノア | 早く瘴気を止めなければ、被害が広がってしまう |
アイゼン | ヘルダルフを倒さない限り何も解決しないという事だ。…塔の中に入って頂上を目指すぞ |
アリーシャ | ああ、そうだな。中はどうなっているかわからない。用心して進もう |
ロイド | わかった。俺が先に入るから、みんなは後から付いて来てくれ! |
ルーク | おいっ、勝手に決めんなっつーの!俺も一緒に入るからな! |
スパーダ | …ルカ、何してんだよ。入らねえのか? |
ルカ | 入るよ。ただ… |
スパーダ | …どうした? |
ルカ | …アスラの代わりにヘルダルフを倒すなんて、本当に出来るのかな |
スパーダ | ヘルダルフの元に向かうって決めたのは、ルカじゃねえか |
スパーダ | それがおまえの選んだ道なら、後は進むだけだろ |
スパーダ | それとも、ビビッて帰るつもりなのか? |
ルカ | …ううん。不安はあるけど、前に進まなきゃいけない時だってわかってるつもりだよ |
ルカ | それに、一人じゃ無理でもみんなと一緒なら強くなれる気がするんだ |
ルカ | だから…僕はここで、アスラが果たせなかった事を成し遂げるよ! |
スパーダ | ほんと、言うようになったな。島に来た時はビビりまくってたのに、今は── |
ルカ | 今は? |
スパーダ | その服が似合う男になったぜ! |
| バシッ! |
ルカ | いた…っ!や、やめてよスパーダ |
スパーダ | 背中叩いたくらいで痛がってたら、この先苦労するぜ |
ルカ | …わかってるよ。どんなに大変でも、必ず頂上まで上ってみせるから |
スパーダ | 覚悟は決まったみてえだな |
ルカ | うん。行こう、スパーダ! |
スパーダ | ああ! |
scene1 | 拓く槍 |
アリーシャ | くっ…やはり、塔の中も魔物だらけだな |
ルーク | この…! |
| ザシュッ! |
| グルルルル… |
ロイド | …!あいつら、斬られたのに倒れもしないぞ |
パスカル | たぶん、さっきの魔物と同じで瘴気の影響を受けてるんだよ |
アリーシャ | みんな、あそこを見てくれ…! |
アリーシャ | 魔物が倒れている。もしかしたら…仲間同士で争ったのかもしれない |
アイゼン | 敵味方の区別も付かないほど、狂暴化しているというわけか |
| グルルルル…! |
スパーダ | …!気を付けろ、こっちに向かって来るぜ |
エレノア | く…!戦うしかないようですね! |
scene2 | 拓く槍 |
ルカ | ──真空破斬! |
| ギャゥウ!? |
ルカ | はあ…はあ…。この数の魔物を相手にしてたら、いつまで経っても先には進めないよ |
アスベル | ああ…。どうにかして、魔物の包囲網を突破するしかない |
アスベル | 奥に見える階段にたどり着ければ、先へは進めるだろうが… |
スパーダ | 問題はどうやって魔物達から逃げ切るか、だな |
アイゼン | 階段まで行けば、後方に土の壁を作って魔物の行く手を阻む事が出来る |
ルカ | それなら、魔物達は追って来れなくなるね…!あとは階段まで行けさえすれば… |
アリーシャ | 魔物が一斉に襲いかかってくれば混戦状態になる。包囲網の一点を衝いて突破口を開こう |
エレノア | わかりました。私とアリーシャが先陣を切って道を拓きましょう |
エレノア | 別方向から襲いかかって来る魔物を、後方から術で牽制してもらえますか |
パスカル | 任せて!あたしとアイゼンで援護するよ |
アイゼン | 魔物達は長く抑えていられない。機会は一度きりだ、必ず決めろ |
アリーシャ | ああ、わかってる。行こう、エレノア! |
エレノア | はい! |
| ギャゥウウウウウ! |
パスカル | ──ブラドフランム! |
| グルルルル… |
スパーダ | まだだ!立ち上がって来るぞ! |
アイゼン | 畳みかける! |
アイゼン | ──ビジュゲイト! |
| ギャウゥ…!? |
エレノア | 今です、アリーシャ! |
アリーシャ | ああ、行こう!エレノア |
アリーシャ&エレノア | ──はあああ! |
| ズバッ! |
| ギャゥウウウウ… |
ルカ | 今なら包囲網を突破出来るよ!みんな、階段に走って! |
| |
ルーク | はあ、はあ…。何とか階段までたどり着けたな |
ロイド | アイゼン、頼むぜ! |
アイゼン | ああ。どいていろ |
| |
| ゴ…ゴゴゴ… |
スパーダ | …!一瞬で、壁が出来たな |
ルーク | すげぇ…。これなら、あいつらも追って来れねえな! |
アイゼン | ああ。だがそれはつまり俺達の退路も断たれたという事だ |
アスベル | 確かに、この壁がある限り塔の外へ引き返す事は出来ないな |
アリーシャ | …今は、前に進む事だけを考えよう |
アリーシャ | 迷う時がくれば、みんなで考えればいいよ |
ルカ | そうだね |
ルーク | つーか、塔に入った時から引き返す事なんて考えてねーよ |
ルーク | 絶対に頂上まで行って、ヘルダルフを倒してやる |
ロイド | ああ、そうだな!いつまでもこんなところで立ち止まってられないぜ! |
パスカル | そんじゃ、早いとこ次の階に向かわないとね~! |
アスベル | この先も魔物がいるかもしれない。気を抜かずに行こう |
エレノア | ──前に進む事だけを考える…隊長らしい言葉ですね |
アリーシャ | …エレノアにそう言われると少し恥ずかしいな |
エレノア | ふふっ。アリーシャが隊長に任命された時は、戸惑っているように見えましたが… |
エレノア | 今は隊長として立派に隊を率いているようですね |
アリーシャ | …そうだろうか。どちらかと言えば、私の方が彼らに助けられる事が多いんだ |
エレノア | そうなのですか? |
アリーシャ | ああ。…シルヴァラントの貴族達が悪事に手を染めていると知った時── |
アリーシャ | 私は、足下が崩れていくような不安を感じた |
アリーシャ | 信じていた者に裏切られて、どうすればいいかわからなくなったんだ |
エレノア | アリーシャ… |
アリーシャ | だけど、彼らは私に諦めない強さを教えてくれた |
アリーシャ | だから私は、これからも自分の信じる道を歩む事が出来る |
アリーシャ | …エレノアは、四大国連合調査隊に任命されてよかったと言っていたな |
エレノア | ええ。今でもそう思っています |
アリーシャ | 私も、彼らと共に調査隊として活動出来る事を誇りに思うよ |
エレノア | そうですか |
アリーシャ | 私がするべき事は、隊長としてみんなを守り、島に平和を取り戻す事だ |
アリーシャ | この先どんな危険が待ち受けていようとも…必ず、決意を貫いてみせる |
エレノア | 私もアリーシャの同志として、友として、共に戦います |
エレノア | だから、一人で抱えずに頼ってくださいね |
アリーシャ | ああ、ありがとうエレノア |
ロイド | ──おーい!アリーシャ、エレノア! |
ロイド | こっちにカタグラフィが落ちてるみたいなんだ!来てくれ! |
アリーシャ | …!行こう、エレノア |
エレノア | はい! |
スパーダ | …少し錆びついてるみてえだけど、見られそうか? |
パスカル | うん、これくらいの劣化なら映像に問題はないと思うよ!再生するね |
| ポチッ…! |
| |
兵士1 | ──報告します!大国の部隊が港付近の拠点を突破し、こちらへ侵攻しています |
ヘルダルフ | …兵をまとめろ。敵がエルピスの塔へ至る前に討つ |
兵士1 | はっ! |
兵士2 | …もう港の拠点を突破されたのか |
兵士3 | 敵は大国だけじゃなく、大陸連合軍だからな。この先の戦いは苦しいものになるだろうよ |
兵士3 | だが、ヘルダルフ様なら…あの方ならきっと、我々を導いて島に勝利をもたらしてくださる |
兵士2 | …そうだな。俺達はあの方についていくだけだ |
ヘルダルフ | ──同志達よ。武器を取り、ワシに続け |
ヘルダルフ | 大国が攻め込もうと、いずれ連合軍を率いようと関係ない。我らを敵に回すとは、愚の骨頂よ |
| チャキッ… |
ヘルダルフ | これ以上、一歩たりとも敵を島内部に侵攻させてはならん! |
ヘルダルフ | 我らの力を持って、敵兵に死の絶望を与えてやるのだ! |
兵士達 | オーーーッ! |
| |
ルーク | どういう事だ…?ヘルダルフは島を守るために戦ってたのか? |
アイゼン | この映像を見る限り、そのようだな |
エレノア | 戦争中に、彼が呪いをかけられるような過ちを犯したという事でしょうか… |
ロイド | 確か、ヘルダルフは山の集落の長の怒りに触れて呪いをかけられたんだよな? |
パスカル | うん。詳しい理由までは記録館に残ってなかったけどね |
アスベル | ん…?このカタグラフィ、まだ続きがあるみたいだ |
パスカル | ほんとだ!見てみよう! |
| ポチッ…! |
| |
兵士1 | ぐう…! |
敵兵 | はあ、はあ…。手こずらせやがって |
敵兵 | お前はもう終わりだ。大人しく死── |
| ザシュッ |
敵兵 | ぐ…あ…!? |
| バタンッ |
ヘルダルフ | …立てるか |
兵士1 | は、はい…! |
ヘルダルフ | ならばワシに続け。この戦、勝たねばならん |
ヘルダルフ | ここで助かった命、無駄に散らせるでないぞ |
兵士1 | …はっ! |
| |
スパーダ | 部下の命を助けてるって事は…血も涙もない悪党ってわけじゃなさそうだな |
ロイド | ああ。それなのに、何でサフィアを使って島に瘴気を蔓延させたりしたんだ? |
アイゼン | さあな。俺達がここで考えていても答えは出ない |
ルカ | そうだね…。とにかく、先へ進もう |
ルーク | なあ、あそこ見ろよ!この階段を進んだ先に、扉があるぜ |
アリーシャ | 次の部屋に出られそうだ。行こう! |
scene1 | 絡みつく糸 |
ロイド | この部屋…気味が悪いな |
ルーク | ああ…そこら中蜘蛛の巣だらけだぜ。気持ちわりぃ… |
エレノア | 長い間、誰も足を踏み入れていない場所ですから…巣が張っていても仕方ありませんね |
アリーシャ | それにしても、静かだな…。マナリスがあった遺跡のように罠が仕掛けられている様子はないが… |
アイゼン | 止まっている時間が惜しい。先へ進むぞ |
ルーク | おう。…って、何でおまえが仕切ってんだよ! |
ルカ | あの二人、また喧嘩しないといいけど… |
アスベル | 亜空間にあった研究所で和解したようだし、大丈夫だろう |
スパーダ | オレ達も後に続こうぜ。ここで止まってても仕方ねえだろ |
ルカ | うん、そうだね |
| |
| ガサ…ガサ… |
アイゼン | …! |
ルーク | っ、おい!急に止まんなよ。ぶつかっちま── |
アイゼン | 静かにしろ |
| ガサ…ガサガサ… |
アイゼン | この音は……上だ! |
ルーク | うおっ!? |
| |
| シャァアアアア! |
スパーダ | な…上から!? |
パスカル | ──うわああっ!? |
ロイド | ぐ…ううっ…!み、みんな…!大丈夫か…? |
ルカ | う、うん…何とか。でも、巣に引っかかって動けないよ |
エレノア | くっ…!動けば動くほど、糸が絡みついて… |
ルーク | いってえ…何すんだ、アイゼン!いきなり引っ張りやがって… |
アイゼン | …あいつらの様子を見てみろ |
ルーク | え… |
ルーク | …!大丈夫か、おまえら! |
アリーシャ | すまない、油断した。巣に絡まって身動きが取れない |
パスカル | この糸、ベタベタしてて全然剥がれないよ~! |
ルーク | 待ってろ、今── |
| ガシッ |
アイゼン | 不用意に動くな |
ルーク | 何で止めるんだよ!?魔物一匹くらい、倒せるって! |
ルーク | あいつらの事、早く助けねえと…! |
| ドスンッ! |
| シャァアアアア! |
ルーク | な…っ!もう一匹いたのか…!? |
アイゼン | 下がれ! |
| ザシュッ! |
アイゼン | ぐう…っ! |
ルーク | アイゼン! |
ルーク | 何で、おまえ… |
アイゼン | 呆けている場合か!次の攻撃に備えろ |
ルーク | あ、ああ… |
| シャァアアアア… |
アイゼン | 図体のでかい奴が二匹もいて厄介だが…ルカ達は動けない、俺達で何とかするぞ |
ルーク | わかった。…怪我は、大丈夫なのかよ? |
アイゼン | ああ、大した傷じゃない |
ルーク | …悪かったな |
アイゼン | 気にするな。とにかく、この場を切り抜けるぞ! |
ルーク | …ああ!待ってろよ、みんな!こいつらを倒して、助けるからな |
scene2 | 絡みつく糸 |
ルーク | くっ…こいつら、強い…! |
| シャァアアアア! |
アイゼン | ──おらっ! |
| ギャァアア…! |
アイゼン | …キリがないな。手負いの状態でも、立ち上がって攻撃を仕掛けてきやがる |
ルーク | こいつらも、瘴気の影響を受けてるって事か… |
アイゼン | ──ルーク。俺が魔物を引き受けてる間に、ルカ達の元へ走れ |
ルーク | おまえ一人であいつらと戦うつもりなのか!? |
アイゼン | 魔物の標的がルカ達に移ったら、反撃する間もなくやられる |
アイゼン | それに、魔物が瘴気の影響を受けている以上、倒すにはダモクレスの剣が必要だ |
アイゼン | お前があいつらを解放するまで、俺が魔物を引き付けておく |
ルーク | …わかった。絶対に、やられるなよ! |
アイゼン | ふん、誰に言っている。行くぞ! |
アイゼン | ──ストーンエッジ! |
| ギャゥウ…!? |
アイゼン | 走れ! |
ルーク | ああ! |
ルーク | みんな、大丈夫か!? |
ロイド | ルーク! |
ルーク | 待ってろ!今、糸を斬る! |
| ジャキッジャキンッ |
ルーク | く…粘々してて上手く斬れねえ!このままじゃ… |
| シャァアアアア! |
アイゼン | ぐ…っ! |
ルーク | …!くそっ…! |
ルーク | あいつより先に諦めてたまるかよ…! |
ルーク | ──うぉおおおお! |
| ジャキッジャキンッ |
ルカ | …!糸が…! |
パスカル | ありがとう、ルーク~!これで自由に動けるよ |
ルーク | 急ぐぞ!早くアイゼンに加勢しねえと…! |
スパーダ | ああ、そうだな。行こうぜ! |
scene3 | 絡みつく糸 |
アイゼン | ──はああっ! |
| ギャウウッ…! |
アイゼン | …何とか倒せたな |
アリーシャ | ああ。まさか、天井に巨大な蜘蛛が潜んでいたなんて… |
アリーシャ | あのまま巣に囚われていたら無防備な状態で攻撃を受けていたかもしれない…助かったよ |
アイゼン | 俺じゃない。お前達を助けたのは、あいつだ |
ルーク | …あーもー!剣がベトベトになっちまった… |
ルーク | まじでうぜぇな、この糸… |
エレノア | 大丈夫ですか、ルーク? |
スパーダ | 気持ちわりぃって言ってたのに、糸にまみれながらオレ達を助けようとしてくれたんだな? |
ルーク | …あの時はそんな事、言ってられなかっただろ |
アスベル | ありがとう、ルーク |
ルーク | べ、別に…。仲間なんだから…当たり前だろ! |
スパーダ | ははっ。何、照れてんだよ? |
ルーク | 照れてねー!さっさと行くぞ! |
アイゼン | 無事だったか |
ルーク | まあな。…なあ、よかったのかよ俺にルカ達の救出を任せたりして |
ルーク | 失敗したら、あいつらもおまえも危なかったかもしれないのに… |
アイゼン | お前らしくないな。手柄は俺に寄こせと言いそうな奴だっただろう |
ルーク | な…!そんな事、言う訳ねえだろ! |
アイゼン | ──理由は簡単だ。お前なら出来ると思ったから任せた。それだけだ |
ルーク | …そっか。へへっ、任せてくれてありがとな |
アイゼン | …… |
スパーダ | おーい、おまえらいつまで話してんだ?そろそろ次の階に行こうぜ |
ルーク | あ、ああ…!今行く! |
パスカル | あっちに扉があるみたいだよ! |
アリーシャ | 行ってみよう |
ロイド | ん…?あれは── |
エレノア | どうかしましたか? |
ロイド | 扉の前を見てみろよ。魔物が倒れてるぜ |
ルーク | さっき戦った魔物より、一回りくらい小せぇな…子蜘蛛か? |
アイゼン | …死んでいるようだな。槍のようなもので突かれた傷がある |
ルカ | 本当だ… |
アリーシャ | どうやら私達よりも先に塔の中へ入った者がいるようだ |
アスベル | 用心するに越した事はないな |
スパーダ | ああ。気を付けて進もうぜ |
| |
ロイド | 俺達より先にここへ来た奴は、サフィアを狙ってるのかな |
アリーシャ | そう考えるのが自然だな。瘴気に侵された魔物を倒せるくらいの実力があるようだが… |
パスカル | そう言えば、一階に倒れてた魔物がいたよね |
パスカル | 理性をなくした魔物同士が争ったのかと思ったけど…塔に入った人に倒されたのかも |
アスベル | ダモクレスの剣がない状態で瘴気が蔓延する塔の中を上っているんだとしたら… |
アスベル | 瘴気の影響を受けないくらい、心の強い人間という事になるな |
ルカ | 理性を失わないだけの強さがある人…。一体誰なんだろう… |
スパーダ | …ん?なあ、そこに何か落ちてるみたいだぜ |
エレノア | カタグラフィですね。二つあるようですが… |
ルーク | 再生してみようぜ |
| ポチッ…! |
| |
兵士1 | ヘルダルフ様…! |
ヘルダルフ | 何事だ? |
兵士1 | 敵の襲撃です!砦で足止めをしていますが、兵の消耗が激しく…突破されるのは時間の問題かと |
ヘルダルフ | …ままならぬものよ |
ヘルダルフ | 仕方がない。砦にいる兵を撤退させよ |
兵士2 | 反撃しないのですか? |
ヘルダルフ | 今の戦力では、到底敵軍に太刀打ち出来まい |
ヘルダルフ | …山の集落にサフィアが隠されているという情報を流す。斥候に伝えよ |
兵士2 | …!山の集落を囮にするつもりなのですか…!? |
ヘルダルフ | …いかなる犠牲をおいても平和を実現する。それがワシらの役目よ |
ヘルダルフ | 敵の戦力が集落に集中している間に、本陣を討つ。よいな |
兵士2 | は、はい…! |
| |
アイゼン | 戦に勝つために、山の集落を囮に使ったのか… |
ルカ | 山の集落の長がヘルダルフに呪いをかけたのは、集落を見捨てた事が原因なのかな… |
アスベル | もう一つのカタグラフィも再生してみよう。何か他の事がわかるかもしれない |
ロイド | ああ、そうだな! |
| ポチッ…! |
| |
集落の男 | 誰か!生きている者がいたら、返事をしろ…! |
集落の長 | 何故だ…。どうして、こんな事に… |
集落の子供 | た…す…けて… |
集落の長 | …!大丈夫か!? |
集落の長 | 無理に話そうとしなくていい。今、傷を治して── |
集落の子供 | ぐす…。たすけ…て…痛い… |
集落の子供 | 痛い…痛いよ… |
集落の子供 | …… |
集落の長 | っ…おい!しっかりしろ |
集落の子供 | …… |
集落の長 | …何故…だ… |
集落の長 | 何故、見捨てた…!ヘルダルフよ…! |
| |
ルカ | 酷い… |
スパーダ | 囮になった集落は焼き討ちに遭ったのか…。悲惨な状況だったな |
ロイド | く…誰かの命を犠牲にして得られる平和なんて、間違ってる…! |
アスベル | ああ、その通りだ |
アリーシャ | 勝利への渇望が、ヘルダルフの判断を鈍らせたのかもしれないな |
アイゼン | …危険を冒してまで勝利を掴もうとした奴の焦りが、悲劇を生んだんだろう |
ルーク | って事は、ヘルダルフは集落の長に逆恨みして、瘴気を蔓延させたのか…? |
ルーク | どう見たって、集落を見捨てたあいつが悪いのによ |
エレノア | 呪いという代償が、ヘルダルフの心を蝕んだとも考えられますが… |
アリーシャ | どんな理由があったとしても、私達は悲劇を繰り返させないために、ヘルダルフを討たなければならない |
スパーダ | ああ…先を急ごうぜ。こうしてる間にも、瘴気は広がってるんだからよ |
ロイド | そうだな |
| |
パスカル | あれ…? |
ルカ | どうしたの、パスカル? |
パスカル | 次の部屋に続く扉…少しずつ閉まってない!? |
アリーシャ | …!間違いない、徐々に通り抜けられる隙間が狭くなっている |
ルーク | さっきは時間制限なんてなかっただろ!? |
アイゼン | 文句を言っている場合か。走るぞ! |
アスベル | ああ、急ごう! |
scene1 | 機械仕掛けの番人 |
エレノア | 扉が…! |
アリーシャ | 閉まり切る前に駆け込むんだ! |
| |
| ゴゴゴ…ガシャンッ! |
ルーク | はあ、はあ…。何とか間に合ったな |
ルカ | 間一髪だったね… |
パスカル | この扉…一定の時間が経つと閉まるようになってるみたい |
アイゼン | 塔の中に侵入した者を足止めしておくための仕掛けだろう |
アイゼン | そう易々と、サフィアのある頂上へたどり着けるようにはなっていないはずだ |
アスベル | そうなると、この先も侵入者を撃退するための罠に警戒する必要があるな |
スパーダ | この部屋にも、何か仕掛けられてる可能性があるって事だろ? |
エレノア | 今までとは、かなり雰囲気が違う場所ですが…。次の階に続く道が見当たりませんね |
ロイド | …!なあ、あそこ── |
ロイド | 上の方に、扉みたいなのが見えないか? |
ルカ | ほんとだ!でも…上に行くための階段やはしごはないみたいだね… |
ルーク | なら、どうやってあそこに行けばいいんだよ? |
パスカル | たぶん、向こうにある転送装置を使えば、扉の前に移動出来るはずだよ |
エレノア | 転送装置…?部屋の中央にある、大きな装置の事ですか? |
パスカル | うん、森の遺跡にもあったんだ。瞬間移動が出来る装置なんだよ |
スパーダ | へえ、そんな便利な物が島の中にあったのか |
アスベル | パスカルはあの装置を動かす事が出来るんだな? |
パスカル | うん。ただ…森の遺跡で装置をいじろうとしたら番人が出て来たんだよね |
パスカル | たぶん、あの装置にも侵入者を撃退するためのシステムが組み込まれてるはずだよ |
アリーシャ | 番人は装置の補助を受けて転移していた。あの時はルカが機転を利かせて魔物を倒したが… |
アリーシャ | 転移する魔物は動きが想定し辛い分、手強いんだ |
アイゼン | パスカルが装置を操作する間、俺達で時間稼ぎをする必要がある |
アスベル | 無防備な状態のパスカルを守りながら、転移する敵を倒せばいいんだな |
ルカ | うん。出来るだけみんなで固まって、不意の攻撃に対応出来るようにしよう |
スパーダ | よし、わかった。んじゃ、やってみようぜ |
ロイド | もし番人が出てきたら、俺達が引き受けるからパスカルは装置の方を頼んだぞ! |
パスカル | 任せて! |
| |
| ビ───ッ!ビ───ッ! |
ルカ | …!!警報だ! |
| |
| キュイーンキュイーン |
アリーシャ | やはり、装置に近付くと番人が現れるように設定されていたようだな…! |
ルカ | それに、数が多いよ…!森の遺跡の番人は一体だけだったのに… |
ロイド | しかもあれって、アンマルチアの基地で見た機械だよな? |
アイゼン | ああ。あいつらは壊れるまで襲ってくる…厄介だが、仕方がない |
アイゼン | こいつらは俺達で相手をする。パスカル、お前は俺達が時間を稼いでる間に装置で敵の転移を止めろ |
パスカル | 了解! |
scene2 | 機械仕掛けの番人 |
スパーダ | こいつら、やけに硬いな…! |
| キュイーン |
ルーク | このっ…! |
| ヴーーン…! |
ルーク | な…!?どこに行きやがった!? |
エレノア | …!パスカル、危ない! |
| キュイーン |
パスカル | うわあっ!? |
エレノア | ──散牙蛇垂! |
| ギ…ギギギ… |
パスカル | あ、危な…!ありがとう、エレノア |
エレノア | ここは私達に任せてください!パスカルは装置を…! |
パスカル | うん!すぐに終わらせるからね! |
パスカル | えっと、システムを管理してるのは── |
| ピッ…ピピ…! |
パスカル | あった!ここから確か… |
| ヴーーン…! |
| ギュイイイイン |
パスカル | …!!転移した…!?何でこっちに来るの~! |
アスベル | くっ…! |
| ガキンッ! |
パスカル | アスベル! |
アスベル | 大丈夫だ…!絶対に、攻撃は通させない! |
アスベル | だから、装置の操作を続けてくれ…! |
パスカル | …わかった!背中は預けたよ、アスベル! |
アスベル | ああ。守り抜いてみせる! |
| ピッ…ピピ…! |
パスカル | あった、管理システム…!ここをピコってやって…ポン! |
| ピッ…ピピ…! |
パスカル | …開いた!後は機械の転移設定をはずして… |
パスカル | …みんな!敵が瞬間移動出来ないようにシステムを書き換えたよ! |
ロイド | よし、これで動きが読めるようになったな! |
アイゼン | このまま畳みかけるぞ! |
アリーシャ | ああ! |
scene3 | 機械仕掛けの番人 |
アスベル | ──これで終わりだ!はあああっ! |
| ガシャーン! |
スパーダ | …何とか、全部倒せたみてえだな |
パスカル | ありがとう、みんな!敵を引き付けておいてくれたお蔭でシステムを書き換えられたよ |
アイゼン | それで、転移装置を使って扉の前に移動する事は出来そうなのか? |
パスカル | うん!転移対象をあたし達に変更して── |
| ピッ…ピピ…! |
パスカル | これで、準備完了!移動するよ! |
ロイド | いつでもいいぜ! |
パスカル | そんじゃ…転送装置、作動! |
| ヴーーン…! |
ルーク | …!!本当に移動した… |
エレノア | これで、次の階に進む事が出来ますね |
ルカ | うん。行こう、みんな! |
パスカル | アスベル! |
アスベル | …?どうしたんだ、パスカル? |
パスカル | お礼を言ってなかったから!さっきは背中を守ってくれて、助かったよ~ |
パスカル | あたしの事、信じて戦ってくれてありがとね |
アスベル | …パスカルも、俺の事を信じてくれただろ |
パスカル | え…? |
アスベル | 俺が操られてマナリスを奪った時…みんなは俺を助けようとしてくれた |
アスベル | パスカルは俺が自分の意志でマナリスを奪うわけがないって、信じてくれたんだろ? |
パスカル | そんなの、当然だよ~。アスベルがみんなを裏切るわけないからね |
アスベル | …ありがとう。俺も、必ずパスカルがやり遂げるって信じてたよ |
パスカル | …へへ、そっか |
アスベル | さあ、俺達も行こう。みんなの後を追わないとな! |
パスカル | うん、そうだね! |
| |
ルカ | ──みんな!ここにも、カタグラフィが落ちてたよ |
ルーク | 何で階段にだけ置いてあるんだ?さっきの部屋にはなかったよな |
アイゼン | …階段には罠の類が仕掛けられていないからかもしれん |
アイゼン | 魔物や機械が暴れ回らない場所ならカタグラフィが壊れる可能性は低くなるからな |
パスカル | って事は、誰かが意図的にカタグラフィを塔の中に置いていった事になるね |
アイゼン | ああ。記録館にはヘルダルフに関する情報が殆ど残っていなかった |
アイゼン | ここにカタグラフィを置いていった奴は、ヘルダルフの記録を残したかったのかもしれんな |
スパーダ | 記録にどんな意味があるかわからねえが、見ておいた方がよさそうだな |
アリーシャ | ああ、再生してみよう |
| |
兵士1 | ──まさか、またここに戻って来られるなんて… |
兵士2 | …ヘルダルフ様の策がなければ討ち負けていただろうな |
兵士2 | 奇襲を受けて大将を失った敵軍が陣形を崩したお蔭で、何とか攻め落とす事が出来た |
兵士1 | ああ。敵は撤退を始めてる。俺達は、勝ったんだ…! |
ヘルダルフ | …何を騒いでいる |
兵士達 | ヘルダルフ様…! |
ヘルダルフ | 勝利に酔いしれている場合か?ワシらにはまだやらねばならん事があろう |
ヘルダルフ | 先に傷付いた兵を休ませる。マナリスを使える天族を呼び、治癒を… |
集落の男 | ヘルダルフ…!?貴様、何をしに戻って来た! |
兵士2 | な…!口を慎め! |
兵士2 | ヘルダルフ様は、この島を救った英雄だぞ! |
集落の男 | 英雄だって!?お前らが見捨てたせいで、山の集落の住民は殆ど死んだ! |
ヘルダルフ | …! |
兵士2 | ば、馬鹿な…!ヘルダルフ様は山の集落に避難を促す伝令を送ったはずだ! |
集落の住民 | 嘘をつくな!そいつを擁護するなら、お前も同罪だ! |
集落の住民 | 大人も、子どもも…多くの者が炎に焼かれて死んだ! |
集落の住民 | ここから出ていけ!二度と顔を見せるな、この…悪魔共め! |
ヘルダルフ | 馬鹿な… |
| |
ロイド | …戦争には勝ったけど、ヘルダルフ達は帰る場所を失ったんだな |
ルカ | 島を守るために戦ってたはずなのに恨まれる事になるなんて…悲しいね |
アリーシャ | 人の行いの善悪に応じて、その報いも善悪にわかれるものだ |
アイゼン | ああ。山の集落を見捨てた時点で報いを受ける覚悟を決めておくべきだったな |
エレノア | 危険を知らせる伝令を送ったと言っていましたが…嘘をついているのでしょうか |
スパーダ | 伝令が届いてたら、集落の住民が死ぬ事はなかったはずだろ |
ルーク | 焦って、その場しのぎの嘘ついただけなんじゃねーの |
アイゼン | どちらにせよ、ヘルダルフ達は戦の傷を癒す事も許されずに島を追い出される事になった |
エレノア | 島の人々に見限られた事を恨んで瘴気を蔓延させたのでしょうか… |
アイゼン | さあな。今ある情報だけでは何とも言えん |
パスカル | 誰かがヘルダルフの記録を残すためにカタグラフィを置いていったんだとしたら… |
パスカル | 他の場所にもまだカタグラフィがあるかもしれないよ! |
アスベル | 進みながら探してみよう。真実がわかるかもしれない |
ロイド | ああ、そうだな! |
scene1 | 神と生贄 |
ルーク | 何だ、ここ…。瓦礫だらけじゃねえか |
エレノア | 石像が破壊されている…?これは一体── |
| コツコツコツ… |
| |
エメロード | 追いつかれてしまいましたか。どうやら、仕掛けの破壊に時間をかけすぎたようですね |
パスカル | エメロード…!? |
アイゼン | …てめえ、生きてやがったのか |
エメロード | ふふ…。あの程度で私が死ぬと思っていたのですか…? |
エメロード | ──その油断が命取りになるのです |
??? | ヒーハー! |
アリーシャ | なっ…上から!? |
| ガキーンッ! |
ロイド | く…っ!この…! |
| カシーン! |
ハスタ | 緊迫した雰囲気など全く気にせず登場するこのオレ様! |
ルーク | おまえは…ハスタ!? |
ルカ | ルークも、ハスタの事を知ってるの…? |
ルーク | ああ…。リンネル村を襲ってた奴が、何でこんな場所にいるんだよ! |
ハスタ | ん~?初対面の人におまえなんて言っちゃ駄目、…って学校で教わらなかった? |
ルーク | 初対面じゃねえって言ってんだろ!おまえが俺に斬りかかって来た時の事忘れたのか!? |
ハスタ | …そうだっけ?それって何時何分何秒?オレが何回寝て起きた時の話? |
ルーク | そんなの知るわけねーだろ! |
アスベル | ルーク、あの人の言葉に乗せられるな |
ハスタ | あっれぇー?誰かと思ったらアスベル先生ェ! |
アスベル | ハスタ…。あなたはまた、悪事に手を染めているんですか |
ハスタ | は~、アスベル君、もうぼくちんの事隊長って呼んでくれないんだね。わかってる、それが巣立ちってやつサ |
スパーダ | 何だあいつ…?ふざけた野郎だな… |
アスベル | 元はウィンドル軍の騎士だったんだ。けど、今は戦争中に略奪を行った罪で指名手配されている |
アスベル | …まさか、あなたもサフィアを狙っているんですか |
ハスタ | そうとも言えないあるヨ! |
パスカル | え、どっち!? |
アイゼン | いちいち相手にするな、パスカル。…お前らが手を組むとはどういう風の吹き回しだ? |
エメロード | 私はヘルダルフを倒すための戦力が、彼は塔の仕掛けを解くための知識が必要だった… |
エメロード | 利害が一致したから手を組んだまでです |
アリーシャ | …狙いは、塔の頂上にあるサフィアだな |
エメロード | ええ、勿論。あなた方より先に頂上へたどり着くはずだったのですが… |
エメロード | 追いつかれてしまったのなら、仕方ありませんね。皆さんには今度こそここで死んでいただきます |
ハスタ | 待ってましたァ!歯ごたえのない石ころ相手に飽き飽きしてたところだポン |
| |
ハスタ | ──そこのレッドマン!殺し合いの続きと行きましょうや! |
| ガキイイイイイン! |
ロイド | く…っ!今度こそ、絶対に逃がさねえ! |
パスカル | …!始まっちゃったよ…! |
アリーシャ | 二手に分かれよう。私とルカがロイドの援護に向かう!アイゼンとパスカルはエメロードを! |
アイゼン | ああ、わかった |
スパーダ | オレとルークもハスタの方に行く。…アスベル、エレノア、そっちは頼んだぜ |
エレノア | ええ、任せてください! |
scene2 | 神と生贄 |
ロイド | 虎牙連斬! |
ハスタ | 甘い甘い!そんな攻撃では、オイラに傷一つ付けられないぴょろよ |
アリーシャ | ──はああっ! |
| ヒュンッ! |
ハスタ | おっと!オレ様、華麗にエスケープ!そして成功! |
ハスタ | おんやぁ~、ひぃふぅみぃよぉ…。僕のためにいつの間にか狩る首を増やしてくれたんだね |
アリーシャ | 狩られるつもりはない!…今だ、ルカ! |
ルカ | うん! |
ルカ | ──鳳凰天駆! |
| ザシュッ! |
ハスタ | ぐっ…!後ろからだと…!? |
ハスタ | 連携技とは…なかなか噛み応えが出てきましたね |
ルーク | あいつ、攻撃を受けたのに全然動じてねえ…! |
ロイド | ハスタ!お前は何のためにサフィアを狙ってるんだ! |
ハスタ | 何でだっけな~。しいて言うなら、暇つぶし? |
ハスタ | オレ様にマナ…何とかの回収を依頼してたどっかの貴族が捕まって、まさかのタダ働き! |
ハスタ | 途方に暮れてたオレ様の前にあの女が現われて、面白そうだからついて来たってワケ |
アリーシャ | 貴族…。まさか、お前を雇っていたのはシルヴァラントの── |
ハスタ | あー、それそれ。戦争したいって言うから、手を貸してやったんデスよ |
ハスタ | オレ様の時代アゲイン!って思ってたのにな~。無様に捕まりやがって… |
ハスタ | 仕方ないから、サフィ何とかで全人類を滅ぼす事にしますぴょん |
ルーク | な…!? |
ハスタ | 死にゆく人々の甘美な悲鳴を聞きながら踊り明かすのも一興 |
ハスタ | あれ?全人類が滅びれば、残るはオレ一人…そうすりゃ、オレ様が神じゃねえ? |
スパーダ | 胸糞悪ぃ奴だな |
ルカ | うん… |
スパーダ | でも…何だろうな…。あのハスタって奴、初めて会った気がしねぇんだよな… |
ルカ | スパーダ?どうかしたの? |
スパーダ | いや…何でもねぇよ |
ハスタ | さ~て、何の脈略もないけれどそろそろ本気で殺しにいかせてもらうぜ |
ロイド | 言ってろ!お前は…俺達が倒す。必ず! |
ハスタ | いいねえ、そうこなくっちゃ!やられなくてもやり返す…皆殺しだッ! |
エメロード | ──あなた方も凝りませんね |
アイゼン | それはこちらの台詞だ |
パスカル | エメロード…まだ、サフィアを諦めてないの? |
エメロード | …おかしな質問をしますね |
エメロード | 何度も言っているでしょう。サフィアを手にするのは、この私です |
エメロード | 私だけが、あの技術を使って崇高な目的を達する事が出来る… |
エメロード | 他の誰も成し得ない偉業をサフィアによって成し遂げるのです |
アイゼン | 御託はいい。お前がエドナにした事を忘れたとは言わせねえ |
アイゼン | 落とし前はつけさせてもらうぞ! |
エメロード | やってみなさい |
アイゼン | ──はああっ! |
| ドガッ |
エメロード | う…っ! |
エレノア | 攻撃が届いた…! |
アスベル | いや、あれは── |
エメロード | ふふ… |
アイゼン | な… |
パスカル | エメロードの傷が、塞がっていく…! |
エメロード | あなた方には言っていませんでしたが…私の身体には自己修復機能が搭載されています |
アスベル | だから、海に落ちても平気だったのか… |
パスカル | それじゃあ、あたしを助けるために怪我した時も…? |
エメロード | すぐに修正機能が働いて回復していましたよ |
エメロード | あなた方の信頼を得るため負傷したように見せかけただけです |
パスカル | そんな… |
エレノア | あなたという人は…!どれだけ人の心を傷付ければ済むのですか…! |
エメロード | 何故、温情をかける必要が…?他者の気持ちなどどうでもいい事です |
アイゼン | 話すだけ無駄のようだな |
アスベル | …俺達は、あなたを止める。あなたに、サフィアを使わせるわけにはいかない! |
エメロード | ふふ、いいでしょう…。今度こそ、神に逆らう恐ろしさを思い知りなさい! |
scene3 | 神と生贄 |
ロイド | ──はあああっ! |
| ガキーン! |
ハスタ | 危なっ!?意外とやりますねぇ… |
アリーシャ | まだだ!──旋光連舞! |
アリーシャ | ザシュッ!ザシュッ! |
ハスタ | ぎゃふん! |
ハスタ | クソ…前は仲間同士で足を引っ張り合ってたくせに…。話が違うじゃねえか… |
アスベル | ──終わりだ! |
| ザシュッ! |
エメロード | くう…っ!? |
エメロード | 自己修復が間に合わない…。こんな、事が… |
ハスタ | ちょっとちょっと~、エメロード先生ェ。やばいんじゃねえの? |
ハスタ | この状況を打開する超必殺技出すなら、い・ま・だ・ぜ! |
エメロード | あなたこそ何をしているのですか!私を守るのが、あなたの役割だったはず…! |
ハスタ | 人は死ぬまで一人で歩いていくもんだ。おわかり? |
アイゼン | 仲間割れか?どうやら後がないようだな |
アリーシャ | 観念するんだ、二人共 |
エメロード | おのれ…神に逆らう不届き者共が! |
| バシュウッ |
| |
ルカ | うわ…っ!? |
エメロード | そこをどきなさい…! |
ハスタ | いい事、思いつきました!思いついちゃいました! |
スパーダ | …!ルカ…! |
| ドンッ! |
ルカ | え…… |
ハスタ | ──神様を満足させるためには生贄が必要だポン |
ハスタ | ハスタ様が神になるから、おまえらが生贄な! |
| |
| ザシュッ! |
| |
エメロード | な…!? |
スパーダ | ぐ……っ! |
ルカ | そんな…っ! |
ルカ | スパーダァア!! |
scene1 | 強さの証明 |
スパーダ | く…っ |
ルーク | っおい、大丈夫なのか!?腹から血が…! |
ロイド | あいつ…!何て事を…! |
アスベル | しっかりするんだ、スパーダ! |
ルカ | 僕が…僕のせいで…スパーダが… |
スパーダ | …何て顔してんだよ、ルカ |
ルカ | …! |
エレノア | スパーダ!大丈夫なのですか!? |
スパーダ | ああ。こんな傷、大した事ねぇよ |
ルーク | な、何だよ!心配させやがって… |
ハスタ | …あれ~?確かに手ごたえを感じたと思ったのになァ… |
ハスタ | 女越しにやったから、深く刺さらなかったようデスね。失敗失敗! |
エメロード | な、ぜ… |
ハスタ | …何だ、まだ生きてたの?とっくに死んだと思ってたぜ |
ハスタ | 神様の役に立ったと思えば本望だろ、兄妹? |
ハスタ | 地獄の入り口はこちらです。お忘れ物がないようにご注意くださ~い |
| ザシュッ! |
エメロード | ぐう…っ!? |
パスカル | エメロード! |
エメロード | こんな…はずでは… |
| ドサッ |
パスカル | しっかりして、エメロード! |
アイゼン | 傷が塞がらないな。自己修復機能とやらが働いていないのか? |
パスカル | …たぶん、修復が出来ないくらい傷が深いんだよ |
アリーシャ | つまり、エメロードはもう── |
ハスタ | 弱い奴が死ぬのは、世の道理。安らかにお眠りください、なむなむ… |
ロイド | お前…!どれだけ人を馬鹿にすれば気が済むんだ! |
ハスタ | 何で怒ってるんデスか?ぼくちんは当たり前の事を言っただけだポン |
ロイド | この…! |
ハスタ | いやん! |
ロイド | くそっ! |
ハスタ | 焦らない焦らない。お肉は両面に焦げ目がつくまでじっくり焼いた方が美味しいんだぜ |
ハスタ | ──そう言えばそこの坊や…よかったね、死ななくて |
ハスタ | お友達が身を挺して守ってくれたから、無傷でいられたのかなー? |
ルカ | …! |
アイゼン | あいつの言葉を聞くな、ルカ! |
ハスタ | は~やだやだ。弱い奴は誰かに守ってもらわないと生きていけないんデスね~ |
スパーダ | …ルカは、弱い奴なんかじゃねえ |
ルカ | スパーダ… |
ハスタ | ふ~ん…。仲良しごっこですか? |
ハスタ | 全く、弱い奴ほどよく群れるぜ |
ルカ | …… |
ハスタ | ん~?何か目つきが変わりました? |
ルカ | …僕を馬鹿にする事は許せても、僕の友達を笑うのは許せない |
ルカ | 僕は確かに、不安や弱さを持ってるよ |
ルカ | だからこそ、仲間に支えられてる事がよくわかるし…信頼出来る人がいるだけで、自分も強くなれる |
ロイド | ああ、そうだな。一人で戦ってるお前なんかに俺達は負けない! |
ハスタ | ロイド先生、かっけーッ!!こ~んな、かっけー男、初めて見ました!見ちゃいました! |
ルカ | 仲間を信頼する事は強さだ!おまえに勝って、僕がそれを証明してみせる! |
ハスタ | ああ、証明してやるとも。力の差を、たっぷりとな!そ~ら、行くんだぷー |
scene2 | 強さの証明 |
ルカ&ロイド | ──はああああっ! |
| ザシュッ!ザシュッ! |
ハスタ | グフゥォァッ!? |
ハスタ | うわ!待った待った!このまま一歩でも後ろに下がったら、あたいは塔の下に真っ逆さまよ!? |
ロイド | 観念しろ!お前の負けだ! |
ハスタ | おぅのぅれぇ、ここまでくわぁぁぁぁ!!あぁぁな、口惜しやぁぁぁ |
ハスタ | な~んてね!はい、お時間終了です |
ハスタ | 次回のご予約は受け付けておりません! |
ルーク | あいつ…!逃げるつもりだ…! |
アリーシャ | く…!そうはさせな── |
エメロード | この、裏切り者が…! |
| ドンッ |
| |
ハスタ | …!ブルータス、お前もか |
ハスタ | あぁぁぁぁああああれぇえええぇえええ! |
| |
ルカ | あ…! |
ロイド | 落ちたのか…!?あいつらは… |
ルカ | …見当たらないね。この高さから落ちて、無事では済まないと思うけど… |
ロイド | そうだな… |
スパーダ | い…っ |
ルカ | 大丈夫、スパーダ!? |
スパーダ | ああ。立ち上がる時に少し痛みが走っただけだ |
ルカ | …ごめん、僕を庇ったせいで… |
スパーダ | 見た目より酷くねえよ。心配すんな |
スパーダ | それより、さっきの戦い、すごかったな |
スパーダ | おまえとロイドならハスタの野郎を倒すって信じてたぜ |
ルカ | …うん!ありがとう、スパーダ |
エレノア | スパーダの傷が心配ですが…いつまでもここにいるわけにはいきませんね |
アリーシャ | ああ。幸いにもこの部屋の仕掛けはすべて壊されている |
アスベル | このまま奥にある階段を使って上に行けそうだな |
アイゼン | 先は長い。次の階へ進むぞ |
ルカ | うん! |
スパーダ | …… |
ルーク | おまえ…やっぱり痛むんじゃねえのか |
スパーダ | …ルカ達には言うな |
ルーク | けどよ… |
スパーダ | ──頼む、ルーク |
ルーク | …わかったよ |
scene3 | 強さの証明 |
エレノア | 長いらせん階段ですね… |
ロイド | ああ。どこまで続いてるんだろうな |
ロイド | って、うわっ!? |
| ガラ…ガラガラ… |
ルカ | 大丈夫、ロイド? |
ロイド | ああ。急に、足元が崩れて… |
アイゼン | 気を付けろ。今まで上って来た階段とくらべてかなり痛みが激しいようだ |
| ギシ…ギシギシ… |
アスベル | この強度だと、いつ崩れてもおかしくはないな… |
アスベル | みんな、ここは早く上り切った方がよさそうだ |
スパーダ | そんじゃ、さくっと上っていこうぜ |
ルーク | …… |
エレノア | ──見えました!あそこに扉が… |
| ビシッ!バキバキバキッ! |
ルーク | …!何の音だ…!? |
ルカ | 階段のヒビが広がってる…! |
アリーシャ | 上の方も崩れてきているようだ! |
アイゼン | 急げ…! |
| バキバキバキ… |
| |
| ガシャ──ンッ! |
スパーダ | …! |
ルーク | スパーダ! |
| |
ルカ | スパーダ!ルーク! |
ロイド | 待ってろ!今、助けに── |
アリーシャ | 待つんだ、ロイド! |
ロイド | 何で止めるんだよ、アリーシャ!? |
アリーシャ | 足下を見るんだ |
| ビシッビシビシ… |
ロイド | …!ヒビが… |
アスベル | 下手に動くと、階段が崩れて二人共、下に落ちる可能性がある |
エレノア | そんな…。どうすれば── |
パスカル | …!みんな! |
アイゼン | どうかしたのか |
パスカル | 扉が…!閉まり始めてる! |
ルカ | …! |
ルーク | く…っ! |
スパーダ | ルーク、手を放せ! |
ルーク | はあ…!? |
スパーダ | オレの事はいいから、おまえだけでも…っう… |
| ポタ…ポタポタ… |
ルーク | …!おまえ、その血… |
スパーダ | …大丈夫だ。いいから、手を── |
ルーク | 置いて行けるわけねぇだろ! |
ルーク | 絶対に、離さねえ…! |
スパーダ | 馬鹿、おまえまで落ちる気かよ! |
スパーダ | 先に進めなくなるぜ。絶対に頂上まで行くって言ってただろ!? |
スパーダ | ここから落ちても大した怪我にはならねえから、さっさと行け! |
ルーク | うるせー!もう二度と、目の前で仲間が落ちていくのは見たくねえんだ! |
スパーダ | ルーク… |
ルーク | ──みんな!スパーダは俺に任せて、先へ行け! |
エレノア | …!しかし…! |
ルーク | 扉が閉まり切っちまったら、元も子もねえだろうが! |
| |
アイゼン | …あいつの言う通りだ。俺達は、先へ進むぞ |
ルカ | そんな…!でも… |
アスベル | …今はルークを信じよう。俺達がヘルダルフを止めないと、世界中が大変な事になる |
ロイド | くそ…。ルーク、スパーダ!ヘルダルフを倒したら、必ず助けに戻って来る! |
ロイド | それまで、無事でいてくれ…! |
ルーク | ああ! |
| ガガガ…ガガ… |
アリーシャ | いけない、扉が…!走るぞ、みんな! |
ルカ | …… |
ルカ | ごめん…っ |
| |
ルーク | こ…の…! |
スパーダ | …! |
| |
ルーク | ドサッ! |
ルーク | ぜえ…ぜえ…。今度は落とさなかったぜ… |
スパーダ | …扉、閉まっちまったな |
スパーダ | よかったのかよ?先に進まなくて |
ルーク | …ああ。あいつらなら、必ずやり遂げるって信じてるからな |
スパーダ | …そうだな。仲間を信頼する事が強さだって、あいつらが証明してくれるはずだ |
スパーダ | ──ありがとな、ルーク |
ルーク | な、何だよいきなり… |
スパーダ | 傷の事、ルカ達に黙っといてくれただろ? |
ルーク | …傷は、深いのか? |
スパーダ | まあまあ、な |
スパーダ | この傷じゃ、ルカ達と一緒に先へ進んでも、足手まといになってたと思うぜ |
| ガラ…ガラガラ… |
スパーダ | …階段がどんどん崩れてるな |
ルーク | ああ。とりあえず、安全な場所に移動しようぜ! |
ルーク | 今は、おまえの傷を癒す事を考えねえと… |
スパーダ | …頼りにしてるぜ、ルーク |
ルーク | …! |
ルーク | へへっ、任せろ! |
scene1 | 託された想い |
パスカル | はぁ…はぁ…。何とか次の階にたどり着けたね… |
アスベル | ああ… |
エレノア | ルークとスパーダは大丈夫でしょうか… |
ルカ | 僕の…僕のせいだ… |
ルカ | あの時、僕がハスタの攻撃を避けられていたらスパーダが怪我をする事もなかった |
ルカ | 傷がなければ、スパーダは階段を越えられたかもしれないのに… |
アリーシャ | ルカ… |
アイゼン | 起こった事を悔やんでも過去は変わらん。後悔なら後でいくらでも出来る |
ルカ | …心配なんだ。ダモクレスの剣から離れた二人が、瘴気の影響を受けるんじゃないかって… |
ロイド | 大丈夫だって!スパーダにはルークが付いてるだろ |
ロイド | あいつらは簡単に瘴気に負けるような奴らじゃないさ。今は二人を信じて、前に進もうぜ |
ルカ | …うん、そうだね |
| |
アスベル | ──この部屋は、一つ下の階とはまた雰囲気が違うようだな |
エレノア | ええ。今度は砂だらけの部屋、ですね… |
アリーシャ | 森の遺跡にも似たような場所があった。あの時は砂の中に潜んでいた魔物に手こずらされたが… |
アイゼン | ただ木の通路があるだけの部屋という事はないだろう |
アイゼン | 森の遺跡と同じように、魔物が潜んでいる可能性もある。油断せずに行くぞ |
アスベル | ああ。俺が先導するから、みんなは左右と後ろの警戒を頼む |
パスカル | 了解!任せといて |
ルカ | …スパーダ、ルーク。必ず、戻ってくるからそれまで──… |
ルカ | う…これ、は… |
| |
兵士2 | もう、駄目だ…。俺達はここで殺される…! |
兵士2 | 苦しんで死ぬくらいなら、いっそ…! |
| チャキッ… |
アスラ | …!何をしている…! |
兵士1 | 落ち着け!お前は瘴気の影響で混乱してるんだ…! |
兵士2 | 煩い!煩い、煩い…! |
兵士2 | …どうせ俺達は全員、ヘルダルフに殺されるんだ。だったら今ここで、全部終わらせてやる! |
兵士2 | お前達も、道連れだ! |
| ドシュッ! |
兵士1 | ぐああああ…! |
アスラ | く…っ!この…! |
| ザシュッ |
兵士2 | ぐ…!? |
| ドサッ |
アスラ | …許せ。おまえに、仲間を殺させるわけにはいかない |
兵士1 | う… |
アスラ | 痛むのか?傷が深いようなら、ここで休んでいろ |
兵士1 | いえ…この程度の傷、大した事はありません |
兵士1 | …上に近付くにつれ、兵士の中にも瘴気の影響を受ける者が出てきましたね |
アスラ | ああ…。また一人、同胞を失う事になった |
兵士1 | アスラ様のせいではありません。それに、我々は命をかけて戦う覚悟を決めています |
兵士1 | この命が尽きたとしても、ヘルダルフを止められるのであれば本望です…! |
アスラ | 確かに、何かを成し遂げるためには、何かを犠牲にしなければならない時もある。だが… |
アスラ | ヘルダルフを討つための戦いで失った同胞の数はあまりにも多い。…大きすぎる犠牲だ |
アスラ | サフィアを巡る戦争で、ヘルダルフも多くの部下を失ったと聞く |
アスラ | …あの男も、今の俺と同じような喪失感を抱えていたのだろう |
兵士1 | ヘルダルフが…? |
アスラ | ああ。戦争の終結を急ぐあまり判断力に欠いた策を講じた事が悲劇に繋がったのかもしれんな |
| |
ルカ | 今のは…アスラの、記憶… |
ロイド | おーい、ルカ!早く来いよ! |
ルカ | う、うん…! |
ルカ | (…やっぱり、どんな人でも 瘴気の影響を受ける可能性は あるんだ…) |
ルカ | (急がないと、 スパーダとルークが 危険な目に遭うかもしれない) |
ルカ | (早く…早く、 ヘルダルフを倒して 瘴気を消さないと…!) |
パスカル | 通路が入り組んでて、どっちに進めばいいか悩むね |
アスベル | ああ。選ぶ道を間違えたら、かなり時間を取られそうだ |
エレノア | 今のところ、順調に進めていますが…この静けさが不気味ですね |
アリーシャ | ああ。この先も慎重に── |
| |
| ゴゴゴゴゴゴ… |
ロイド | 何だ!? |
ルカ | …!みんな、あそこ! |
| |
| ズズズズ…! |
アイゼン | 壁の窪みから、魔物が…!擬態していたのか |
エレノア | こちらに向かってきます! |
アリーシャ | ここで引き返すわけにはいかない!迎え撃とう! |
scene2 | 託された想い |
ルカ | ──はあああああ! |
| グゴォオ…! |
アスベル | …!魔物に近付きすぎだ…! |
パスカル | 下がって、ルカ!それ以上前に出たら、反撃された時に避けられないよ! |
| ゴォオオオ! |
ルカ | …! |
ロイド | 危ないっ! |
ロイド | く…! |
| ガキィィイイン |
ルカ | ロイド…! |
アイゼン | 一発入れる!二人共、離れていろ! |
アイゼン | ──グランドクェイク! |
| グゴゴォオオ… |
| |
アスベル | みんな、大丈夫か? |
ロイド | ああ、何とかな。助かったぜアイゼン |
アリーシャ | ルカも、怪我はないか? |
ルカ | うん、何ともないよ |
アリーシャ | そうか…先ほどは肝が冷えたよ。あまり、一人で無茶をしないでくれ |
ロイド | そうだぜ、ルカ。ああいう時は一人で突っ込むんじゃなくて仲間を頼ってくれよな! |
ルカ | ごめん…。次からは気を付けるね |
アイゼン | …… |
エレノア | また魔物が出てくるかもしれません。急いで先へ進みましょう |
アスベル | ああ、そうだな |
| |
パスカル | 見て!あそこに扉があるよ |
ロイド | けど、通路が途中で途切れてるみたいだぜ |
アイゼン | ないものは作ればいい。どいていろ |
| ゴ…ゴゴゴ… |
アリーシャ | なるほど…土で橋を作るつもりなのか |
| |
| ゴゴゴゴゴゴ… |
エレノア | また…! |
ルカ | 天上から岩が落ちてくるよ!みんな、避けて! |
| |
| ドゴォン! |
ロイド | いてて…。みんな、無事か? |
アスベル | ああ。今の揺れ…偶然とは思えないな |
アイゼン | おそらく、術を妨害するために岩が落ちて来たんだろう |
アイゼン | 橋を作ろうとすればまた天上から岩が落ちてくる可能性が高いな |
アリーシャ | …これでは先に進めない。どうしたら… |
エレノア | …待ってください。何か、変です |
パスカル | どうしたの?エレノア |
エレノア | あそこ…落ちて来た岩の破片が宙に浮いているように見えませんか? |
ルカ | 本当だ…! |
パスカル | …!これって、もしかしたら… |
パスカル | ──スプレッド! |
| プシャァア! |
| |
パスカル | やっぱり!考えた通りだったね |
ロイド | すげー!通路が出てきたぞ…!? |
アイゼン | 成程な。目には見えない透明な通路が存在していたのか |
エレノア | パスカルの術で水を表面に付着させて、通路を可視化させたんですね |
アスベル | 人が渡るには問題ないみたいだが…。天上から岩が降って来たらひとたまりもないな |
パスカル | それは大丈夫じゃないかな。正しい手順を踏めば、先に進める仕掛けになってると思うよ |
パスカル | 転移装置があった部屋でも、転移した後に魔物が襲ってくるような事はなかったからね! |
アリーシャ | そうだな。…渡ってみよう |
ロイド | よし、みんな渡りきれたな! |
エレノア | パスカルの言った通り透明な通路を通れば、岩が落ちてくる事はありませんでしたね |
アスベル | ああ。このまま、扉の先へ進もう |
アイゼン | 待て、ルカ |
ルカ | どうしたの?早く頂上に行かないと… |
アイゼン | 一人で魔物に突っ込んでいくのはお前らしくない。…何を焦っている |
ルカ | …っ |
ルカ | …どんなに心が強い人でも瘴気の影響を受けないとは言い切れない… |
ルカ | スパーダ達が傷付いた後でヘルダルフを倒しても、意味がないんだ…! |
アイゼン | …… |
ルカ | 目的を成し遂げるために、仲間を犠牲にするなんて、そんなの── |
ルカ | 平和を実現するために集落を捨てたヘルダルフと同じじゃないか |
ルカ | だから、少しでも早く頂上に行って、瘴気を消さないと… |
アイゼン | あいつらは犠牲になったわけじゃない |
ルカ | え… |
アイゼン | お前に思いを託して、背中を押したんじゃないのか |
アイゼン | 仲間を信頼する事が強さだと言ったのは、お前自身だろう |
ルカ | …! |
ルカ | …そう、だね。わかってたはずなのに…焦りすぎてたのかな |
アイゼン | 焦りは視界を曇らせる。一人で抱え込もうとするな |
ルカ | うん。ありがとう、アイゼン |
| |
アリーシャ | みんな、これを見てくれ。カタグラフィが落ちていた |
パスカル | やっぱり誰かが意図的にカタグラフィを置いていってたみたいだね |
アスベル | ああ。ヘルダルフに関する新しい情報が得られるかもしれない。再生しよう |
| |
集落の男1 | なあ、聞いたか?あの噂… |
集落の男2 | ああ…ヘルダルフが率いてた隊にいた奴らの事だろ? |
集落の男2 | 次々に死んでるって話じゃねえか |
集落の男1 | そうなんだよ。頭がイカれて病に伏せたり、魔物に襲われて死んじまったり… |
集落の男1 | あいつの周りにいた奴らはみんな、悲惨な末路をたどってるんだよ |
集落の男1 | みんな、噂してるぜ。きっと、ヘルダルフに見捨てられた集落の奴らが祟ってるんだ、ってよ |
集落の男2 | おー、怖い。あいつにはもう関わりたくないぜ |
集落の男2 | …そう言えば最近ヘルダルフの姿を見なくなったな |
集落の男1 | あいつの家族や、友人にも祟りの影響が出たらしくてよ |
集落の男1 | それからは、人里離れた場所で一人暮らしてるって話だぜ |
集落の男2 | ありがてえ。このままずっと姿を現さずにいてくれる事を願うぜ… |
| |
アリーシャ | どうやら、ヘルダルフの周りにいた人々が次々に不幸に見舞われたようだな… |
パスカル | たぶん、この映像が撮られたのはヘルダルフに呪いがかけられた後なんじゃないかな |
ルカ | 呪いの影響で、家族や友達にも不幸が降りかかったって事…? |
アイゼン | 関わった人間に被害が及ぶ事を恐れて人里離れた場所で一人隠居したんだろう |
エレノア | 人との関わりを絶たなければ不幸を招く、永遠の孤独の呪い…恐ろしいものですね |
ルカ | 誰にも必要とされずに永遠に生きるなんて…寂しい、よね… |
ロイド | …… |
アスベル | …だからといって、世界を壊していい理由にはならない |
アリーシャ | ああ、彼を止めなくては。今は塔を上る事を最優先に考えよう |
ロイド | そうだな。それに他のカタグラフィを見つければ、もっと…あいつの事がわかるかもしれない |
ルカ | そうだね。次の部屋に行こう |
scene1 | 襲い来る水魔 |
ロイド | でっかい穴だな~ |
パスカル | これも何かの仕掛けだろうね。この穴以外、他に変わったものもないし |
アイゼン | …見ろ、上の方に扉がある |
ルカ | 本当だ…。転移装置があった部屋と同じで、階段やはしごはないみたいだね |
エレノア | ざっと見渡しても、この部屋には転移装置が見当たりませんね |
アリーシャ | ああ。何か他に、上へ登るための方法を探すしかないようだな |
アスベル | …みんな、見てくれ。この穴、下の方に水が溜まっているみたいだ |
ロイド | 水か… |
ロイド | …!パスカル、これ! |
パスカル | どうしたの?ロイド |
ロイド | ここの床に描かれてる絵、見た事ないか? |
パスカル | …!湖の遺跡にあったのと同じ絵だね |
アリーシャ | なるほど、この仕掛けがあれば…。よく気付いたな、ロイド |
ロイド | たまたまだけどな |
エレノア | 床の絵が、何かの目印なんですか? |
パスカル | 湖の遺跡に、水位を上昇させる仕掛けがあったんだ |
パスカル | この絵が描かれている床が仕掛けを起動させるスイッチになってたんだよ |
エレノア | なるほど…。穴の下から扉がある場所まで水位を上昇させるんですね |
アスベル | 水の浮力を使って扉がある場所まで移動するのか |
パスカル | そういう事!このスイッチを押せば穴の中に水が放たれて水位が上昇するはずだよ! |
アイゼン | …… |
ルカ | …アイゼン?どうかしたの? |
アイゼン | いや、大した事じゃない |
ルカ | そう…? |
アリーシャ | ──本当にスイッチを押せば水位が上がるのか、試してみよう |
パスカル | 了解!ポチっとな! |
| カチッ! |
| ドドドドドドド…! |
ルカ | やった…!水が出てるよ |
アイゼン | どんどん水位が上がって来るな |
パスカル | よーし!このまま一気に扉の前まで上っちゃおう! |
| |
| ドド…ド… |
アリーシャ | 放水が止まったようだ |
パスカル | あれ?おかしいな…扉がある場所まで浮いていくには、まだ水位が足りないんだけど… |
ロイド | もう一度スイッチを押してみようぜ。水が出るかもしれないし |
アイゼン | 待て!あれを見ろ…! |
| |
| シャアア! |
エレノア | 水の中に、魔物が…! |
| バシャァァアアン! |
ルカ | 飛び出してきた…!みんな、構えて! |
アスベル | 他にも水の中に何匹かいるようだ。油断するな! |
scene2 | 襲い来る水魔 |
パスカル | ──スプレッド! |
| シャアア! |
| バシャンッ! |
アイゼン | ちっ!水に潜ったか |
ロイド | どこに行ったんだ!? |
| バシャァァアアン! |
アリーシャ | くっ……!いつの間に… |
| ガキィィン! |
アリーシャ | この…!──はああああ! |
| バシャァァアアン! |
アスベル | また、水の中に…! |
アイゼン | 地の利は向こうにある。このままだと、消耗戦になるぞ |
ルカ | …… |
ルカ | 水の中にいる魔物を、一度に倒す方法…。そうだ、これなら… |
ルカ | みんな!力を貸して…! |
アリーシャ | 何か策があるのか? |
ルカ | うん。水の中に電撃を放てば、魔物を感電させる事が出来るはずだよ |
エレノア | なるほど…!いい作戦ですね |
アイゼン | 一度に魔物を仕留めるには床に上がって来た奴を水の中に戻す必要があるな |
| バシャァァアアン! |
ロイド | とにかく、こいつらを水の中に落とせばいいんだな! |
ルカ | うん!手分けして、魔物達を退けよう! |
scene3 | 襲い来る水魔 |
ルカ | ──弧月双閃! |
| ギャオオオ! |
| バシャァァアアン! |
ルカ | 今だよ、みんな! |
ロイド | 雷破斬! |
アリーシャ | 逆雲雀! |
アスベル | 雷斬衝! |
エレノア | 雷牙轟閃! |
| バチバチバチバチィ |
| ギャオオオオオ… |
パスカル | やった…! |
アスベル | 倒せたようだな。ルカの作戦のお蔭だ、ありがとう |
ルカ | ううん。みんなが協力してくれたから、倒せたんだよ |
アリーシャ | 後は水位を上げるだけだが… |
パスカル | もう一度、スイッチを押してみるよ |
| カチッ! |
| ドドドドドドド…! |
ロイド | よし!水が出て来たぜ |
パスカル | 水位が二段階で上昇するように設定されてたみたいだね |
ルカ | 魔物を倒してもう一度スイッチを押すのが正しい手順だったって事かな |
エレノア | 後は水の浮力を使って上に行くだけですね |
| |
アイゼン | …… |
アリーシャ | …どうかしたのか?アイゼン |
アイゼン | …… |
ルカ | もしかして…泳げない、とか… |
アイゼン | …地の天族は水に浮かない。生まれ持った性質だ |
ルカ | ええっ。本当に泳げないの!? |
ロイド | アイゼン、海賊だろ?海に出るのは危なくないのか? |
アイゼン | 俺は水に…属性という宿命などに負けたくはない |
エレノア | でも、泳げないんですよね? |
アイゼン | …いずれ、水を克服する |
アリーシャ | そんな悠長な事は言っていられないだろう…! |
ルカ | そうだよ、アイゼン!今、何とかしないと溺れちゃうんだよ…! |
パスカル | そういう事なら、あたしの出番だね! |
パスカル | えっと、確かここに… |
| ごそごそ… |
アイゼン | …? |
パスカル | じゃーん!取り出しましたるこの自動膨張救命機! |
エレノア | 自動膨張救命機…? |
パスカル | 見てて。これを水の中に投げ込むと… |
| バシュンッ! |
ロイド | うわっ!?一瞬で膨らんだ!? |
パスカル | 装置が水に触れるとセンサーが着水を感知して、即座に膨張する仕組みなんだ~! |
パスカル | 船から落ちた人を助ける時なんかに使えると思って発明したんだよね |
アスベル | つまり浮き輪だな |
パスカル | これがあれば、アイゼンも浮けるでしょ? |
アイゼン | …この形はどうにかならなかったのか |
パスカル | え?何で? |
パスカル | バナナ型、気に入らない? |
アイゼン | …… |
パスカル | 問題なさそうだね! |
アイゼン | …… |
ロイド | よし、このまま扉の前に行こう! |
| |
ルカ | ついた…! |
アリーシャ | ふぅ…。何とか無事にここまで来られたな |
パスカル | アイゼン、どうだった?自動膨張救命機、役に立ったでしょ? |
ロイド | バナナに乗ってるアイゼン、なかなか様になってたぜ! |
アイゼン | …先へ進むぞ |
パスカル | あ、待って!今後の研究の参考に乗り心地を教えてよ~! |
| |
ルカ | …かなり上って来たね |
アリーシャ | ああ。あと少しで頂上だ |
アリーシャ | 一刻も早くヘルダルフを倒して瘴気を消し去らなくては |
ロイド | みんな、こっちに来てくれ!カタグラフィが落ちてたんだ |
エレノア | やはり、ここにも残されていたんですね |
アイゼン | 再生するぞ |
| |
集落の長 | …ここに、いたのか |
兵士1 | 長がヘルダルフ様を捜しておられたので、お連れしました |
ヘルダルフ | …そうか |
ヘルダルフ | …すまなかった。ワシの判断でお前の集落を… |
集落の長 | 謝罪の言葉はいらぬ。ほしいのは、償いだ |
| チャキッ… |
兵士1 | …!お待ちくださ…! |
| グサッ |
ヘルダルフ | う…ぐ…!? |
兵士1 | ヘルダルフ様!! |
ヘルダルフ | 何故…。何故、死なぬ… |
集落の長 | はは…はははは!…お前が何度死のうと、お前の罪は洗い流せん |
集落の長 | 私はお前に、永遠の孤独の呪いをかけた |
集落の長 | 呪いはお前に永遠の命を与え、お前に関わる全ての者を不幸にするだろう |
集落の長 | 愛する者を失って絶望しても、自ら命を絶つ事すら出来ぬ |
ヘルダルフ | 馬鹿な… |
集落の長 | 地獄のような苦しみの中で、見捨てていった集落の者達に懺悔せよ |
ヘルダルフ | …… |
集落の長 | …ああ、伝えるのを忘れていたな。その呪いは、お前の心身をも蝕む |
集落の長 | じきに敵味方の区別なくすべてを壊そうとする理性なき獣になるだろう |
ヘルダルフ | …! |
集落の長 | 島の英雄は島の敵となり、住民達に討伐される事になる |
集落の長 | 憎しみの刃に貫かれながら、絶望に溺れるがいい!集落で死んでいった者達と同じように |
ヘルダルフ | この…! |
| ザシュッ! |
集落の長 | ぐ、うぅ… |
| ドサッ |
兵士1 | お止めください!ヘルダルフ様! |
ヘルダルフ | ──煩い。去ね |
| ザシュッ! |
兵士1 | ヘルダルフ…さ… |
| ドサッ |
ヘルダルフ | …… |
| ザシュッ!ザシュッザシュッ…… |
ヘルダルフ | …? |
ヘルダルフ | …!ワシは、何を…。この姿は… |
集落の長 | …… |
兵士1 | …… |
ヘルダルフ | ワシが、殺したのか… |
ヘルダルフ | …ふっ、ははは…。はははははははは |
| |
アスベル | …永遠の孤独の呪いは、ヘルダルフの理性も奪っていったんだな |
アリーシャ | ああ… |
アイゼン | 仲間に手をかけた事で、心身ともに変容したんだろう |
パスカル | …何だか、悲しいね。ヘルダルフも、集落の長も、みんな… |
ルカ&ロイド | …… |
エレノア | ヘルダルフを討伐する事は、彼自身を救う事になるかもしれませんね |
エレノア | 彼も…理性なき獣のまま生きたいとは思っていないはずです |
アリーシャ | そうだな。呪いの連鎖を断ち切らなければ… |
| |
| ゴゴゴゴゴゴ…! |
ロイド | 何だ…!? |
アスベル | 何かが落ちて来るぞ! |
アリーシャ | あれは…岩の塊だ! |
アイゼン | 引き返すぞ!この狭さでは術で岩を砕く事もままならん |
エレノア | わかりました! |
| ガラ、ガラガラ… |
ルカ | 階段が…!崩れ始めてるよ |
パスカル | 老朽化した階段じゃ、岩の重みに耐えられなかったんだよ |
アリーシャ | 一度外へ出よう!通路を渡って西側の塔に移動すれば、頂上に続く階段があるはずだ |
アスベル | ああ、わかった! |
scene1 | 天空の覇者 |
アスベル | 空が…。禍々しい色だな |
エレノア | ええ。この辺りは特に、瘴気が濃いようですね |
アイゼン | 俺達の真上にサフィアがあるからだろうな |
ロイド | つまり…ヘルダルフがすぐそこにいるって事か |
アリーシャ | ああ、おそらくそうだろう。ここを渡り切って、西塔の階段を使えば、頂上にたどり着けるはずだ |
| バサッバサッ |
パスカル | 何の音だろ? |
| ギャァアアアア! |
ロイド | ──上だ! |
ルカ | あれは…竜!? |
| |
| バサッバサッ…ドシン! |
アリーシャ | 何て威圧感だ… |
エレノア | 私達の行く手を阻むためにここへ降り立ったようですね |
アイゼン | この場所を守る番人のようなものか…! |
| ギャァアアアア! |
アスベル | …!来るぞ…! |
ロイド | ようやくここまで来たんだ。絶対に負けるかよ…! |
scene2 | 天空の覇者 |
アリーシャ | ──斬鋼炎旋舞! |
| ガァアア…! |
アイゼン | 怯んだ…!畳みかけるぞ! |
ルカ | うん! |
アイゼン&ルカ | ──はぁあああああ! |
| ギャァアアアア… |
| ドサッ |
| |
アリーシャ | はあ、はあ…。倒せた、のか…? |
パスカル | やったー!これで先に進めるね! |
ロイド | ああ、行こうぜ! |
| |
アイゼン | …!待て、様子がおかしい |
| |
| ギャァアアアア! |
パスカル | そんな…! |
ルカ | 危ない、パスカル! |
| ガァアアアッ! |
ルカ | …ぐっ! |
パスカル | うう…! |
ロイド | ルカ!パスカル! |
ロイド | ──はああっ! |
| ズバッ!ズバッ! |
| ギァアアア… |
アイゼン | …ちっ。あの竜、即座に傷を治す能力があるようだな |
アリーシャ | そんな…!これではいつまで経っても先へ進めない…! |
アスベル | …… |
アスベル | …俺があの竜を引き付ける。隙をみて、みんなは頂上へ向かってくれ |
エレノア | アスベル…!? |
ロイド | 馬鹿言うな!おまえをここに置いて行けるわけないだろ! |
アスベル | このままここであいつと戦っている時間はないはずだ! |
アスベル | ルークやスパーダの想いを無駄にしないためにも、行ってくれ |
パスカル | 駄目だよ、アスベル…!こんなに瘴気が濃い場所でダモクレスの剣から離れたら… |
アスベル | …瘴気に侵された人達は、島の中に沢山いる |
アスベル | その人達を救うためにも、一刻も早くヘルダルフを倒すべきだ! |
ルカ | アスベル…! |
アイゼン | …あいつの決意を無駄にするな。行くぞ! |
アリーシャ | しかし…! |
アイゼン | ここで俺達が倒れれば全てが無駄になる。それでもいいのか? |
アリーシャ | …くっ。わかった… |
エレノア | …待ってください |
アリーシャ | エレノア…? |
エレノア | アリーシャ、私は── |
| ギャァアアアア! |
アスベル | お前の相手は俺だ!──はぁあああああ! |
| ザシュッ! |
| ギャァアアアア! |
アスベル | く…っ! |
エレノア | させません!──ストラッシュ・ドライ! |
| ギャァアアアア… |
| |
アスベル | エレノア…!どうして… |
エレノア | 私も残ります |
アスベル | 駄目だ!お前は、みんなと一緒に… |
エレノア | 今度こそ…最後まで共に戦わせてください |
エレノア | もう二度と、仲間を置いていくような真似はしたくありません |
アスベル | …!エレノア… |
アスベル | ありがとう |
エレノア | …… |
アイゼン | あいつの注意が二人に向いている間に廊下を抜けるぞ! |
ロイド | ああ! |
アリーシャ | アスベル…エレノア…。必ず、ヘルダルフを倒して瘴気を消し去ってみせる |
アリーシャ | それまでどうか…持ち堪えてくれ…! |
| ガァアアアッ! |
| バサッバサッ |
エレノア | …!アリーシャ達に気が付いたようですね |
アスベル | 追わせるわけにはいかない!行くぞ、エレノア! |
エレノア | はい! |
アスベル | 決めてやる!──覇道滅封! |
エレノア | 参ります!──エリアルストラッシュ! |
| ギャァアアアア…!? |
アスベル | お前の相手は、俺達だ! |
エレノア | ここから先へは一歩も進ませません! |
| 語られなかった歴史 |
ルカ | この階段を上りきれば、いよいよ頂上だね… |
アリーシャ | ああ。…ヘルダルフも、そこにいるはずだ |
パスカル | あたし達が塔を上って来てる事には気付いてるのかな? |
アイゼン | おそらくな。これだけ派手に動いていれば、勘付かれるだろう |
ロイド | ん…?あれって… |
ロイド | …なあ、そこに落ちてるのカタグラフィじゃないか? |
パスカル | ほんとだ!頂上に近いこんな場所にまで落ちてるんだね |
ルカ | もしかしたら…これを置いていった人は、僕らにヘルダルフの事を知ってほしかったんじゃないかな |
アイゼン | 何故、そう思う? |
ルカ | 塔に置いてあったカタグラフィは全部、ヘルダルフに関係する記録を集めたものだったから… |
ルカ | 島のどこにも残されてなかったヘルダルフの情報を、意図的に残そうとしたんじゃないかな |
アリーシャ | 確かに…そうとも考えられるな。真意はまだわからないがこのカタグラフィも、再生してみよう |
| |
兵士3 | 危ない、避けろ…! |
| ガァアアアッ! |
兵士1 | うぐうう!? |
アスラ | ──はあああああ! |
| ザシュッ! |
| ギァアアア… |
アスラ | 大丈夫か? |
兵士1 | アスラ、様… |
アスラ | …傷が深い。あまり話すな |
兵士1 | 自分の事は、自分が一番よくわかっています…。私は、もう… |
アスラ | …… |
アスラ | 何か言い残す事はあるか |
兵士1 | ヘルダルフ、さまを…救ってください |
アスラ | 何…? |
兵士1 | 私は、かつて…この命を…ヘルダルフ様に…救われました… |
兵士1 | それからずっと傍であの方の戦いを見て来た… |
兵士1 | 集落を見捨てたヘルダルフ様の選択は…間違っていたと思い…ます… |
兵士1 | けれど、あの方は決して…冷酷で、無慈悲な人間ではなかった… |
アスラ | 戦に勝つために、集落の人間達を犠牲にしたにも関わらず、か…? |
兵士1 | あの方は伝令を送り…集落の人々を…避難させようとしていました |
アスラ | …! |
アスラ | 伝令を送ったという話は、偽りではなかったと言うのだな? |
兵士1 | はい。この島にはまだ…ヘルダルフ様を…救いたいと願う者が残っています… |
兵士1 | 必ず、彼らがあの方を救う方法を、探し出してくれる… |
アスラ | いいだろう。おまえの言葉の真偽を確かめると約束する |
アスラ | 命を落とす前の人間が嘘をつくとは思えないからな |
兵士1 | ありがとう、ございます |
兵士1 | うっ…げほっごほっ |
アスラ | しっかりしろ…! |
兵士1 | ああ…出来る事なら、呪いを解きあの方を…お救い、したかった… |
| ガクッ |
アスラ | …逝った、のか |
アスラ | おまえのような奴がいると知れば…あの男も、真に孤独ではないと気付けただろう |
アスラ | …安らかに眠れ。おまえの願い、確かに聞き届けた |
| |
ルカ | …呪いが掛けられた後もヘルダルフを慕っていた人がいたんだね |
ロイド | ああ。カタグラフィを置いていった奴は、俺達にこれを知らせたかったのか? |
ルカ | たぶん、これは…ヘルダルフを討伐するために塔を上る人達に向けた手紙みたいなものなんだと思う |
ルカ | ヘルダルフを救いたいと思う気持ちを映像に託して、未来に繋げようとしたんだよ |
パスカル | この映像を見てて気付いたんだけど、もしかしたら、ダモクレスの剣はヘルダルフを倒すためじゃなく── |
パスカル | ヘルダルフを助けるために、作られた剣なんじゃないかな |
パスカル | 映像の中で、ヘルダルフを救う方法を探してる人がいるって話してたしね |
アイゼン | ダモクレスの剣には殺傷力がない。その剣は、サフィア由来の力を吸収するために作られたものだ |
アイゼン | ヘルダルフの呪いを解くために作られた剣だとしたら、その性能も頷ける |
アリーシャ | 伝令を放ったという話は、本当なのだろうか… |
アイゼン | その話が真実ならば何らかの原因で伝令が届かなかった事になるな |
ルカ | もし伝令が届いてたら…ヘルダルフと集落の長が憎しみ合う事はなかったよね… |
ロイド | ああ。二人共、島の人達を守りたいって気持ちは同じだったはずだからな… |
ルカ | …僕、みんなに話してなかった事があるんだ |
パスカル | 何? |
ルカ | 砂の部屋にいた時、エルピスの塔を上ってた時の、アスラの記憶を見たんだ |
ルカ | ヘルダルフを討伐するために塔を上ってたアスラも、仲間を失う痛みを抱えてた… |
ルカ | アスラは、兵を率いる者として、ヘルダルフが感じていた苦悩を理解してるみたいだった |
ルカ | 仲間を救いたいと思うあまり、誤った選択をしたんじゃないかって… |
アリーシャ | 確かに…焦りは時に人の判断力を鈍らせる |
ロイド | …俺だって、目の前で仲間が死んでいくのなんて耐えられない |
ルカ | うん… |
ロイド | ──なあ、みんな。俺…出来る事なら、ヘルダルフを助けたい |
ロイド | ダモクレスの剣で呪いを解けば、あいつも…正気に戻るかもしれないんだろ? |
アリーシャ | ロイドの気持ちはわかる。だが…強敵を相手に、呪いを吸収する隙を作るのは至難の業だ |
アイゼン | そうだな。殺す気で立ち向かっても押し負けるような相手なら、逆に隙を衝かれてやられる事になる |
ロイド | それでも…!少しでも可能性があるなら、その可能性に賭けてみたいんだ |
ルカ | ロイド… |
パスカル | あたしも、サフィアが原因で不幸になった人がいるなら、別の技術で助けたいと思うよ |
パスカル | それが、ダモクレスの剣を作った研究者達の願いだと思うしね! |
ルカ | …そうだね。ヘルダルフが本当に伝令を出したのかは確かめる術がないけど── |
ルカ | 偉大な指揮官だった事は確かだと思うんだ |
アリーシャ | ああ…。死ぬ間際まで部下の兵士が彼を心配していた姿からも、それが伝わってくる |
ルカ | うん。だから…僕も、ロイド達と同じ気持ちだよ。助けられるなら、助けたい |
ルカ | アスラが本当に成し遂げたかった事はヘルダルフを倒す事じゃなくて… |
ルカ | 救う事だったんじゃないかって今は思うから |
アイゼン | …危険を承知で可能性に賭けるならまずは奴に正気を取り戻させるべきだろう |
アイゼン | 倒すかどうかは、その後の行動次第で決めればいい事だ |
アリーシャ | そうだな。まずはダモクレスの剣でヘルダルフの呪いを解こう |
アリーシャ | 難しい戦いになるだろうが私達ならきっと、出来るはずだ |
ロイド | ああ! |
アイゼン | 俺達の目的は、瘴気を止める事だ。最優先事項は変わらない |
ルカ | うん、わかってるよ。だけど…救える命があるなら、出来る限り救いたい |
パスカル | おー!何だか燃えてきたね! |
アリーシャ | ここまで来たら、悔いが残らないようにやり切るだけだ |
アリーシャ | そして必ず…生きて戻ろう。誰一人、欠ける事なく |
ルカ | …うん!行こう、みんな! |
scene1 | 決意を抱いて |
ルカ | ここが頂上… |
アリーシャ | 視界が悪いな…。他の場所より瘴気が濃いようだ |
パスカル | 奥にあるのがサフィアか~!近くで見ると大きいんだね |
アイゼン | そんな事より、奴はどこだ |
| コツ…コツ… |
アリーシャ | みんな、気を付けろ。…来るぞ |
| |
??? | …この瘴気の中、ここまで上って来るとはな |
??? | いつの時代にも邪魔者は存在するらしい |
ロイド | おまえが… |
ヘルダルフ | 我が名はヘルダルフ |
ヘルダルフ | 貴様らの狙いはサフィアか?何の目的もなく塔を上って来たわけではあるまい |
ルカ | 僕達は、あなたを止めるためにここへ来たんだ! |
ルカ | 世界が瘴気に覆われるのをただ見ているわけにはいかない! |
ヘルダルフ | ふ…ふふ… |
ヘルダルフ | 貴様らのような青二才が本気でワシを止められると?笑止な… |
ヘルダルフ | ワシは止まらぬ。この世界を瘴気で満たし混沌たる闇に堕とすまで |
アリーシャ | 何故そんな事をする…!目的は何だ? |
ヘルダルフ | …与えてやるのだ。全ての種族に、孤独の沼で絶望に浸る苦しみを! |
アイゼン | …わからんな。お前は、呪いによって生き方を曲げられた |
アイゼン | 呪いに自分の舵を奪われる…その苦しみを知りながら何故、他人に押し付けようとする |
ヘルダルフ | …人の業よ |
ヘルダルフ | 島の繁栄のために、サフィアが生み出された。それこそが、厄災の始まりなのだ |
パスカル | …… |
ロイド | 聞いてくれ、ヘルダルフ…!俺達はおまえを倒しに来たわけじゃない |
ロイド | おまえの呪いを解いて、孤独から解放するために来たんだ! |
ヘルダルフ | 何…? |
パスカル | アヴァロン島の人達が残したダモクレスの剣があれば、永遠の孤独の呪いは解けるはずだよ |
ロイド | この剣は、おまえを救うために作られた。だから── |
ヘルダルフ | …ふっふっふ |
ヘルダルフ | はぁーっはっはっは! |
アイゼン | 何が可笑しい |
ヘルダルフ | あまりに馬鹿げた事を話すのでな |
ヘルダルフ | 救いなど…誰が望むものか |
ルカ | …! |
ヘルダルフ | 誰もワシから絶望と孤独を奪う事など出来はせん |
ヘルダルフ | 瘴気を止めたいと願うならば、ワシを殺せ |
ヘルダルフ | …出来るものなら、な |
| |
アリーシャ | これは… |
ルカ | 瘴気が島の外にも広がっていく…! |
アイゼン | サフィアを使って、瘴気を拡散させたのか…。あまり猶予はなさそうだな |
パスカル | そんな…。このままじゃ、世界中の人が瘴気に呑まれちゃうよ |
ヘルダルフ | さぁ、どうする?痴れ者共よ |
ヘルダルフ | じきに世界は闇に転じる。貴様らも沈むか?孤独と絶望に |
アリーシャ | くっ…!早くダモクレスの剣を使って彼の呪いを解こう |
アリーシャ | そうすれば、瘴気を止める事が出来る |
ロイド | ああ、そうだな!みんな、いくぞ! |
ルカ | うん…! |
ヘルダルフ | ふ、抗うか… |
ヘルダルフ | 力の差もわからぬとは愚の骨頂よ |
scene2 | 決意を抱いて |
ルカ | 魔王炎撃破! |
ヘルダルフ | 同じ攻撃が何度も通じると思うのか! |
ロイド | だったらこれはどうだ! |
ロイド | ──烈風空牙衝! |
ヘルダルフ | 無駄だ! |
| バシュウウゥ |
ルカ&ロイド | うう…! |
アリーシャ | ルカ!ロイド!大丈夫か!? |
ルカ | う、うん…。何とか |
| ピキ…ッ! |
ロイド | …っ!ダモクレスの剣にひびが…! |
パスカル | 大量の瘴気を吸収して剣の耐久力に限界がきてるのかもしれないね |
アイゼン | その様子だとそう長くは持たんな。…次で決めるぞ |
アリーシャ | ああ。私とアイゼンで奴を引き付けよう |
ロイド | わかった。隙を狙って、俺が全力でダモクレスの剣を叩き込む! |
パスカル | あたしとルカはロイドを援護すればいいんだね |
アイゼン | 半端な攻撃は弾かれる。この一撃に賭けるぞ |
ルカ | …二人が道をひらいてくれるって信じてるよ |
アリーシャ | 任せてくれ。必ず、好機を作り出してみせる |
ヘルダルフ | 力の差を目の当たりにしてもなおまだ抗うか… |
ヘルダルフ | よほど、命が惜しくないと見える |
アイゼン | あいつはああ言っているが…。海賊と共に命を落とす事になっても悔やむなよ、アリーシャ |
アリーシャ | 友の横で倒れると思えば、それほど悪くないよ |
アイゼン | ふっ…そうだな |
アイゼン | 行くぞ! |
| ガキィインッ! |
ヘルダルフ | ふん、この程度で── |
アイゼン | 死神を舐めるなよ |
アリーシャ | 騎士は守るもののために強くあるものだ! |
| グググ…… |
ヘルダルフ | ぬ… |
ヘルダルフ | なるほど。これが貴様らの覚悟か… |
ヘルダルフ | ──だが、足りんな! |
| ザシュッ! |
アリーシャ | うっ… |
アイゼン | ぐ…! |
ヘルダルフ | もはや立てまい。終わりだな |
パスカル | まだだよ! |
| バシュウッ! |
ヘルダルフ | ぐ…!? |
ヘルダルフ | ち、小賢しい… |
パスカル | 今だよ、ルカ! |
ヘルダルフ | なっ…、後ろか…! |
ルカ | 僕がつないでみせる…みんなが切り開いてくれた道を! |
ルカ | はああっ! |
| ザシュッ! |
ロイド | ヘルダルフ…今、おまえを解放してやる! |
ロイド | ──でやあああっ! |
| |
ヘルダルフ | ぐああっ…! |
パスカル | やった…!ヘルダルフが纏ってた瘴気が、薄れていくよ! |
ヘルダルフ | …… |
ルカ | あの姿は…!呪いが、解けたんだ…! |
| ピキ…ピキピキ… |
ロイド | …!ダモクレスの剣が… |
| |
| パアア… |
ルカ | 光になって消えていく… |
| |
アリーシャ | う… |
アイゼン | 立てるか?肩に腕を回せ |
アリーシャ | ありがとう、アイゼン… |
アリーシャ | ロイド達は、やったのか? |
アイゼン | ああ。見ろ、瘴気が… |
| |
| |
パスカル | 視界が開けていくよ! |
ルカ | 眩しい…。こんなに空が近かったんだね |
ヘルダルフ | はあ…はあ…馬鹿な… |
ヘルダルフ | 何故…奪った… |
ロイド | ヘルダルフ…? |
| |
ヘルダルフ | 救いなど…助けなどいらぬ。こんな結末は認められるものか |
ヘルダルフ | ──ワシは止まらぬ!この世界を、闇に堕とすまで! |
ロイド | くっ…あいつ、サフィアに向かって行くぞ! |
パスカル | サフィアで世界を壊すつもりなの!?とにかく、止めないと…! |
ヘルダルフ | 邪魔をするな! |
| ザシュッ! |
ロイド | ぐぁっ…! |
パスカル | うわああっ! |
アリーシャ | いけない…! |
アリーシャ | くっ… |
アイゼン | 無理をするな。今の俺達では、あいつを止められない |
アリーシャ | しかし…! |
アイゼン | 大丈夫だ。…見ろ |
アリーシャ | …! |
アイゼン | あいつなら、止められる。必ずな |
ルカ | 止まれ…!ヘルダルフ! |
ヘルダルフ | 貴様は… |
ルカ | これ以上、先へは進ませない! |
ヘルダルフ | …貴様の仲間は誰一人立ち上がれる状態ではない。この状況でどうするというのだ? |
ルカ | …僕一人でも、あなたを止める |
ヘルダルフ | ふ…ふふふ… |
ヘルダルフ | ──愚かな。身の程をわきまえよ |
ヘルダルフ | 貴様如きに何が出来るというのだ |
ルカ | 僕は… |
ルカ | う… |
| |
アスラ | はああああ!! |
| ズバッ! |
ヘルダルフ | ぐあっ! |
ルカ | これは…もしかしてアスラの記憶…? |
ヘルダルフ | く…。ここは…ワシは、何を… |
アスラ | …おまえは自らの瘴気に呑まれ世界を壊そうとしていたのだ、ヘルダルフよ |
ヘルダルフ | ワシが… |
ヘルダルフ | …貴様、名は? |
アスラ | 我が名はアスラ。世界を覆わんとする瘴気を止めるためアヴァロン島へ来た |
ヘルダルフ | …そうか。ならば、ワシを殺せ |
ヘルダルフ | それで、全てが終わる。瘴気も消え去るだろう |
アスラ | …その前に、一つ聞こう |
アスラ | 山の集落に伝令を送り、危機を知らせようとしていたという話は本当か? |
ヘルダルフ | …まことの事よ。だが、伝令は集落にたどり着く前に敵兵に襲われ…死した |
アスラ | …!それが真相か |
ヘルダルフ | …我が軍はみな、自らの命を犠牲にしても島を守る覚悟があった |
ヘルダルフ | いかなる犠牲をおいても平和を実現するのがワシらの役目よ |
ヘルダルフ | それがまさか、集落の島民を犠牲に平和を得る事になるとはな… |
アスラ | …… |
| チャキッ… |
アスラ | ヘルダルフよ。部下に慕われるおまえは、真の将であった |
アスラ | 将とは時に孤独なものだ。だが、永遠ではない |
ヘルダルフ | ふ…同情はいらぬ |
ヘルダルフ | 殺せ、アスラよ。ワシはもう将ですらない |
アスラ | …今の俺にはおまえを救う術がない。それでも、希望は残されている |
ヘルダルフ | 何を…する気だ…? |
アスラ | この塔で眠れ、ヘルダルフよ |
アスラ | …必ず、未来におまえを救う者が現われる |
ヘルダルフ | やめろ…!命など、惜しくはない! |
ヘルダルフ | ワシを殺せ!それこそが慈悲よ |
アスラ | 許せ、ヘルダルフ。今はこれ以外、方法がない |
アスラ | …俺の言葉を信じろ。おまえは…孤独ではない |
| |
ルカ | (そうか…。アスラが本当に 成し遂げたかった事は…) |
| チャキッ… |
ヘルダルフ | …本当に、貴様一人でワシを止められると思っているのか |
| |
ルカ | 僕は…アスラが出来なかった事を成し遂げるためにここへ来た |
ルカ | だから…止めてみせる。あなたを、救うために! |
ヘルダルフ | アスラ…そうか、貴様は… |
ヘルダルフ | …どうしても止めると言うなら今ここでワシを殺せ |
ヘルダルフ | さもなくば、サフィアを使い貴様の仲間も、世界も…全て破壊する |
ルカ | …!そんな… |
ロイド | く…ルカ…! |
パスカル | うう… |
ルカ | (僕一人で、ヘルダルフを 止められなかったら…世界も、 仲間も救えないかもしれない…) |
ヘルダルフ | …やれ。その剣をワシに突き立てた時…世界は救われるのだ |
ルカ | 確かにあなたの言う通りかもしれない…。でも、僕はやっぱり… |
ルカ | 世界を救うために、誰かを犠牲にしたりしない! |
ルカ | あなたより力がなくても…限界を超えて戦うよ! |
ヘルダルフ | …では雌雄を決するとしよう |
ヘルダルフ | 貴様の愚かさが多くの犠牲を生むのだ! |
ヘルダルフ | ──獅子戦吼!! |
ルカ | ぐううっ! |
ロイド | ルカ、諦めるな! |
パスカル | 負けないで…! |
アリーシャ | 君なら、出来る…! |
アイゼン | お前の、意志を見せろ…! |
ルカ | はあ、はあ… |
ヘルダルフ | まさか… |
ヘルダルフ | 何故、立っていられるのだ…。どこにそんな力が… |
ルカ | あなたも、世界も、見捨てはしない!僕は、僕の意志を貫いてみせる! |
ルカ | はああああああっ! |
ルカ | ──天を統べる覇者の証!魔王灼滅刃! |
ヘルダルフ | …! |
scene1 | 自由な未来へ |
ヘルダルフ | ぐ…止めを…刺せ…! |
ヘルダルフ | この命を終わらせろと、そう言ったはずだ…! |
ルカ | それは出来ない…。僕の願いは、アスラの代わりにあなたを救う事だから |
ヘルダルフ | ──戯言よ。ワシは…救いなど求めてはおらぬ |
ルカ | …… |
アリーシャ | ルカ…! |
ルカ | アリーシャ!みんなも…ボロボロだね |
アイゼン | ふ…お前もな |
ロイド | まさか、一人でヘルダルフに立ち向かうなんてな!ルカはすごいよ |
ルカ | ううん…僕は、一人じゃなかったよ |
ルカ | ロイド達が僕を信じて必要としてくれたから、戦う勇気を持てたんだ |
ルカ | だから、ヘルダルフ…僕は、あなたに知ってほしい |
ルカ | あなたが、多くの人に必要とされていた事を |
ヘルダルフ | 今更、何を… |
パスカル | ルカが言ってる事が嘘じゃないってこれを見たらわかるよ |
ヘルダルフ | これは…カタグラフィか |
アイゼン | お前の部下が残した、最後の言葉だ。聞いてやれ |
ヘルダルフ | …… |
パスカル | じゃあ、再生するね |
ヘルダルフ | こんな…事が… |
ルカ | カタグラフィに映ってた人は、あなたを助けるために命がけで塔を上ったんだよ |
ルカ | この人以外にも、呪いを解くための方法を探していた人達がいるんだ |
パスカル | ダモクレスの剣が作られたのも、きっとその人達の働きかけがあったからじゃないかな? |
ヘルダルフ | まさか… |
アイゼン | おそらく、塔の中に残されていたカタグラフィも、お前を救いたいと願った誰かが置いていったんだろう |
アイゼン | 島の記録館にさえ、お前の情報は残されていなかったからな |
ヘルダルフ | …孤独だと思っていたのは、ワシだけだったという事か |
ヘルダルフ | 集落を囮にし、民を死なせ、絶望に呑まれた事で部下さえも死に追いやった… |
ヘルダルフ | ──許し難い、愚かさよ |
アリーシャ | …誰にでも間違いはある。民を守るために戦った事は、決して愚かじゃない |
ロイド | そうだよ。間違えたら、やり直せばいい |
ロイド | 塔に残ってたカタグラフィさえ壊せば、俺達以外誰もおまえの事を知らないわけだしさ |
ヘルダルフ | …今更、善人にはなれん。ワシは、許されない事をした |
ロイド | そうだとしても、生きる事から逃げていい理由にはならないだろ |
ロイド | 許されるかどうかが重要なんじゃない。償おうとする事が大事なんだと思う |
アイゼン | 山の集落の長は、お前が何度死のうとお前の罪は洗い流せないと言っていたな |
アイゼン | 死ぬ事で償えない罪なら、生きて償うしかないだろう |
ヘルダルフ | 生きて…償う… |
ルカ | アスラが言っていたように…希望は残されてると思うよ |
ルカ | 僕はこの島に来て、新しい世界を…たくさんの大切な事を知った |
ルカ | だからあなたに、今の世界を…新しい景色を見てほしい |
ルカ | そうすればきっと、償う方法も見つかると思うんだ |
ヘルダルフ | …… |
ヘルダルフ | ワシを許し、あまつさえ生かそうとするなど…馬鹿な奴らがいたものよ |
アイゼン | どこへ行く気だ |
ヘルダルフ | …今は、わからぬ |
ヘルダルフ | ただ流れて…死に勝る償いとやらを探すとしよう |
ルカ | …また、会えるかな? |
ヘルダルフ | さあな。未来は常に見えぬものよ |
ルカ | …ヘルダルフ。これだけは覚えておいてほしい。あなたは、孤独じゃないよ |
ヘルダルフ | ふ…またその言葉か。貴様は変わらんな… |
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パスカル | 行っちゃったね~ |
アリーシャ | ああ… |
アイゼン | よかったのか?あいつを行かせて |
アリーシャ | …構わないよ。誰にでも、やり直す機会は与えられるべきだ |
アイゼン | …お前も変わったな |
ルカ | 後は…サフィアをどうするかだね。判断は僕達に任せるって言われたけどパスカルの意見を聞かせて |
パスカル | う~ん…。残念だけど、サフィアは私達の手に負えないと思うな |
パスカル | 人の寿命を代償にする物はまずいよ。間違って使っちゃったらシャレにならないもん |
アイゼン | サフィアを壊す。それでいいんだな? |
パスカル | うん。厄災が降りかからない内にね |
アリーシャ | 私もパスカルに賛成だ。それが選ぶべき最善の道だろう |
ロイド | 決まったな |
パスカル | …この強度なら、みんなで一斉に力を加えれば壊れそうかな |
パスカル | ん…?何だろう、これ… |
ルカ | どうしたの?パスカル |
パスカル | 台座の部分に、何か書いてあるみたいなんだ |
ロイド | ほんとだ。「まだ見ぬ明日を生きる人々へ、この輝きを贈る」だってさ |
アリーシャ | サフィアを作った研究者達が残した言葉だろうか |
アイゼン | 欲深い人間達が望みをかなえるためにサフィアを巡って戦争を起こしたが… |
アイゼン | 始まりは研究者達の島を豊かにしたいという純粋な欲求だったのかもしれんな |
パスカル | …… |
ロイド | パスカル…本当に壊してもいいのか?これはアンマルチア族が作った物だろ |
パスカル | …うん、いいんだ。サフィアを作った研究者達も壊す事を望んでると思う |
パスカル | それに…今は無理でも、人の幸せに繋がる発明品を作って研究者達の想いを引き継いでみせるよ |
パスカル | サフィアみたいに、技術が人を不幸にする事もあるけど… |
パスカル | 人を幸福にするのも、技術だと思うからね! |
アリーシャ | そうだな…。パスカルの言う通りだ |
ロイド | ヘルダルフの呪いを解けたのも、ダモクレスの剣のお蔭だしな! |
パスカル | うん!だから…みんなで一気にやっちゃおう! |
パスカル | ルカが合図して! |
ルカ | ぼ、僕が…!? |
アリーシャ | ああ、君が適任だ |
ルカ | …わかった。じゃあ、いくよ! |
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ルカ | せーの! |
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| パリィィィン──ッ |
scene2 | 自由な未来へ |
パスカル | ──おーい! |
ルカ | パスカル…!それにアイゼンも。見送りに来てくれたの? |
アイゼン | まあな |
アリーシャ | ありがとう、二人共。姿が見られて嬉しいよ |
スパーダ | おまえらは島に残るのか? |
パスカル | うん。もう少しここで、研究を続けようかなって |
パスカル | 弟くんもまだ島にいるらしいし! |
アイゼン | 俺はすぐにでも島を出るつもりだ |
ルーク | なら、ここで一緒に船に乗ればいいだろ |
アイゼン | 海賊が白昼堂々港から出る船に乗ると思うか? |
ルーク | じゃあどうするんだよ |
アイゼン | 島に来た時に乗っていた小舟がある。適当な場所で海賊船と合流するつもりだ |
パスカル | え~、小舟で大丈夫?アイゼン泳げないよね? |
パスカル | あ、そうだ!自動膨張救命機、貸そうか? |
アイゼン | いらん |
エレノア | ふふっ、賑やかですね。…みなさんと離れると思うと少し寂しいです |
アスベル | 俺も同じ気持ちだ。でもきっと…またすぐに会えるさ |
ロイド | ああ!平和になった今ならどこの国だってすぐに行ける |
ロイド | いつだって道は開かれてるんだ…俺達の前に! |
アリーシャ | そうだな。気持ち一つで世界は繋がる |
アリーシャ | 離れていても、私達が友である事に変わりはない |
エレノア | ええ、その通りですね |
ルーク | よし。それじゃあ、そろそろ行こうぜ |
パスカル | またね、みんな!次に会う時までに解析機でアイゼンを可視化しとくから! |
アイゼン | 勝手に決めるな |
アイゼン | …風や天候で海は表情を変える。目的地に着くまで、気は抜くなよ |
エレノア | はい。…みなさんと島で過ごした日々は何があっても忘れません |
アリーシャ | ありがとう、みんな。君達と出会えた事を…誇りに思うよ |
ロイド | シルヴァラントに来る事があったら会いに来てくれよな! |
ロイド | コレットも、またみんなに会いたがってたしさ |
ルーク | キムラスカに来た時も、顔出してけよ! |
アスベル | ああ、勿論だ。みんな、元気でな |
アスベル | 次に会う時はこの島で過ごした日々の記憶を思い出話として語り合おう |
スパーダ | それもいいかもな。おまえ達とは気が合って楽しかったぜ |
ルカ | 僕、みんなに会いに行くよ。必ず! |
ルカ | それまで…バイバイ! |
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アイゼン | 思っていたより島を出るのが遅くなったな |
アイゼン | まあ…それも悪くはなかったが |
アイゼン | …? |
アイゼン | (誰もいない、か…) |
アイゼン | (誰かに呼ばれたような 気がしたが…) |
アイゼン | …気のせいか |
エドナ | …… |
エドナ | またね、お兄ちゃん |
エドナ | …いってらっしゃい |
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スパーダ | 見ろよ、ルカ。アヴァロン島がどんどん遠ざかっていくぜ |
ルカ | 本当だ…。あっという間にア・ジュールに着きそうだね |
ルカ | …ありがとう、スパーダ |
スパーダ | 急にどうしたんだよ? |
ルカ | スパーダが応募してくれなかったら僕は調査隊に入ってなかった |
ルカ | 最初はどうなるかと思ってたけど…。今なら言えるよ。僕は、島に来られてよかった |
スパーダ | 俺もそう思うぜ |
スパーダ | あのヘタレなルカが、ここまで変わっちまうなんてな |
スパーダ | イリアが驚くんじゃねーか? |
ルカ | そんなに変わったかな…?自分では、よくわからないけど |
ルカ | でも…この島に来たからこそ経験出来た事がたくさんあったと思うんだ |
ルカ | 家を出ていなかったら、僕は何も知らないままだった |
ルカ | 仲間と一緒に冒険する楽しさも、新しい景色を見た時のワクワクも |
ルカ | 新しい事を始めるのはいつだって少し不安だけど… |
ルカ | 一歩踏み出す勇気があれば僕らは何だって出来るんだ |
スパーダ | ああ、そうだな |
ルカ | (あの人は… 今頃何をしてるんだろう) |
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ヘルダルフ | …… |
露店の主人 | ん…?あんた、見ない顔だな |
露店の主人 | 観光かい? |
ヘルダルフ | …そのようなものだ |
| バサ… |
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ヘルダルフ | …… |
ヘルダルフ | (アスラ… お前の言う希望とは、 眩しいものよ) |
ヘルダルフ | (この眩しさに負けぬよう ワシは罪を償う旅に出よう) |
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ルカ | (ヘルダルフが新しい人生を 前向きに生きられるといいな…) |
ルカ | (アヴァロン島の人達が 必死に繋いだ未来だから) |
ルカ | スパーダ。僕ね、家に帰ったらもう一度ちゃんと父さんと話そうと思うんだ |
ルカ | 医者になる…それが、僕が進むと決めた道だから |
スパーダ | 言うじゃねえか。頑張れよ |
ルカ | うん! |
| バサッバサッ |
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ルカ | あ… |
スパーダ | 鳥か。気持ちよさそうに飛んでんな |
ルカ | どこに行くつもりなんだろう |
スパーダ | さあな。あいつが行きたいところに飛んでいくだろ |
ルカ | …そうだね |