NameDialogue
度重なる戦乱を経て、ウィンドル、ア・ジュール、キムラスカ、シルヴァラントの四国は
不戦と平和を実現するために互いに手を取り合う道を選んだ
アヴァロン島での共同調査が終わった後は、以前より国同士の対話や交流が盛んに行われるようになった
大きな困難を乗り越え、ようやく訪れた平穏な日々…
世界中の人々が心の底から願った。「この穏やかで優しい時間がいつまでも続くように」と──
時と共に戦禍の記憶は次第に薄れていき、平和な日常が当たり前になっていく
戦争によって人々が負った心の傷は氷が溶けるようにゆるやかに癒えていった
そして、俺もまた──何者にも脅かされない、平凡で穏やかな暮らしを送っていた
エルいい匂い!ルドガー、ゴハンまだ?
ルドガー後は付け合わせの野菜を炒めるだけだ
ルドガーすぐに出来るから、もう少しだけ待っててくれ
エルわかった。じゃあ、エル、ルルと遊んで待ってる…って、あれ?
ルル……
エルルル、寝てるの…?
ルドガーああ…ルルは先にご飯を食べたから、お腹いっぱいになって寝ちゃったのかもしれないな
ルドガー…それか、夕食がカリカリだった事に拗ねてるのかも…
ルル……
エルどうしてロイヤル猫缶あげないの?
ルドガー兄さんが甘やかすから、お腹が出てきて…。これ以上太ったら健康にも悪いだろ?
エルえー。このぷにぷに具合が可愛いのになぁー
エル…そーいえば、メガネのおじさん、今日も遅いね
ルドガー仕事が忙しいんだろうな。最近は夜遅くに帰って来てるみたいだし
エルおじさん、家族との食事は大切なものって言ってたのに…
ルドガーそうだな。本当は兄さんも早く帰って、俺達と一緒に夕食を食べたいと思ってるはずだよ
ルドガーまあ、それに…兄さんならトマト料理を作っておけばその内帰ってくるんじゃないかな
エル…!!ルドガー、エルのはトマト抜きでね!
ルドガーはいはい、わかってるよ
エルまったく、パパとか大人は、なんでトマト好きかなー?
ルドガーはは…
ルドガーよし、出来た。…はい、お待たせ
カタッ…カタッ…
エルおいしそー!いただきまーす!
パクッ
エルん~~~!
ルドガー…ゆっくり噛んで食べるんだぞ
エルうん!…やっぱりルドガーのゴハン、パパのと同じくらいおいしー!
ルドガーそう言えば、エルのパパは料理上手だって言ってたよな。機会があれば、食べてみたいよ
エルパパが帰ってきたら、エルがたのんであげる!ルドガーにゴハンめぐんであげてって
ルドガーそ、それは楽しみだな…
ルドガー今まであまり聞いた事なかったけど、エルのパパってどんな人なんだ?
エルんっとねぇ、強くて優しくて…何でもできちゃうんだよ!
エルエルのパパはサイキョーなんだから!
ルドガー…エルは、パパが大好きなんだな
エルそ、それほどでもないよ。パパはエルのこと、大好きっぽいけど──
ルドガーそうか。長い間、家を空けてるけど…どこにいるんだろうな
エルわかんない…。でも、エル、パパと約束したんだ
エルパパが帰ってくるまでいい子で待ってるって
ルドガーエルはちゃんと約束を守ってるんだな。偉いよ
エルまーね!エルはけっこういい子だから
エルそれに、パパとの約束を守ったらセーレーが『約束の帽子』にプレゼントを入れてくれるんだよ
エル今回はエルが一番ほしいもの、セーレーにお願いするヨテイなんだぁー
ルドガー約束の帽子って…今、エルが被ってるその帽子の事か?
エルうん、そーだよ
エルパパとの約束をちゃんと守ると、朝起きた時、帽子にごほうびが入ってるの
エルいい子には、セーレーがプレゼントをくれるんだって
ルドガーへえ…どんなご褒美が入ってるんだ?
エルもちろん、ぜんぶエルのほしいものだよ
エルイベント限定カラーの万華鏡とかキレイなセミノヌケガラとか
ルドガー用意するのが大変そうなプレゼントばかりだな…
ルドガーそれで、エルが一番ほしいものって、何なんだ?
エル…んー、ないしょ!
ルドガーええ?教えてくれないのか?
エル願いごとは人に言うとかなわないんだよ。ルドガー、知らないの?
エルでも、まあ…ルドガーはエルのアイボーだから、特別にパパが帰って来た後で教えてあげてもいーよ
ルドガーわかった。早く、エルのパパが帰って来るといいな
エル…うん。パパが戻って来た後も、ルドガー達に会いに来ていい?
ルドガーああ、勿論だ。エルのパパが帰って来ても、俺達が相棒な事には変わりないだろ?
ルドガーいつだって遊びに来ていいよ。俺も、兄さんも…それにルルもエルの事、家族みたいに思ってるから
エルうん!
あの頃は誰もがこの平和が長く続くものだと信じて疑わなかった
けれど、闇は静かに、確実に人々の傍へと忍び寄っていた。そして──…
後に起こる出来事が、あらゆる世界の運命を左右する事になる。俺達はまだ、それを知らなかった──
ガイさて、と。どうするアッシュ
ガイ親善大使として最初に向かう国は決まったか?
アッシュああ。まずは手近な場所からにしようと思う
ガイとなると、シルヴァラントだな
ガイ…急に大役を任される事になったけどナタリアには旅の事、ちゃんと話せたのか?
ガイ全世界を回る事になるから、当分はキムラスカに帰って来られないだろ
アッシュ昨晩、会いに行った。各国の土産を楽しみにしていると言っていたな
ガイはは、ナタリアらしいな
アッシュ…あいつは昔から四国間の関係が安定し、戦争のない世界が築かれる事を願っていた
アッシュこの旅で俺達が戦争の芽を摘んで帰って来ると信じているんだろう
アッシュこの国のためにも、与えられた使命は必ずやり遂げる。親善大使の名に恥じないようにな
ガイそうだな。俺も誠心誠意、お供させてもらうよ
ルーク……
???何を見てんのかと思ったら噂の親善大使様じゃねえか。お供と一緒にいるみてぇだな
ルーク…!
怪しげな男和平交渉の外交を全て任されるとは…次期国王様は相当優秀なようだ
ルークああ。あいつは、何でも出来る奴だから…
怪しげな男…あいつ一人動いたところで、世界が平和になるわけねえってのに。わらっちまうぜ
ルーク…っ、そんな事…!
怪しげな男何だよ?…あいつが王様になったらお前はどうなる?
怪しげな男誰にも必要とされず…忌み嫌われて、始末されんのがオチだぜ
ルーク…それ、は…
ガイの声そう言えば、出発する前にルークに会いに行かなくてよかったのか?
ルーク…!
アッシュ…昨晩あいつの部屋にも足を運んだが、いなかった
ガイ他の場所は捜さなかったのか?
アッシュ何故、俺が?
ガイ何故、って…。兄弟だろ、おまえ達
アッシュだからと言って、いちいちあいつの面倒を見ているわけにもいかないだろうが
アッシュったく、昼間は勉強も稽古もほっぽりだしてサボってやがるくせに
アッシュ夜中までどこをほっつき歩いてやがるんだ、ルークの野郎…
ガイ前は熱心に剣の稽古をしてるみたいだったが…
ガイ最近は勉強にも稽古にも熱が入らないようだな、ルークは
アッシュ…ちっ…
アッシュ俺達には、国の未来を切り開く義務がある。生半可な覚悟で成し遂げられる事じゃねぇ
アッシュあいつには国を背負う者としての自覚が足りねぇんだ。あんな野郎が、俺の弟だなんてな
アッシュ……
ガイまあまあ。とにかく俺達はシルヴァラントへ向かおう
ガイ旅から帰って来る頃にはルークも心を入れ替えてるかもしれないぜ?
アッシュふん…。だといいがな
ルークそんなの…わかってる
ルーク俺と、おまえは違うんだ。どんなに頑張ってもアッシュみたいにはなれねぇよ…!
怪しい男──気持ちは固まったか?なら、行くぞ
怪しい男あいつらが戻る前に準備を進めねぇとな…。忙しくなるぜ
ルークああ…
ルーク……
クィッキークキュウユ…
メルディだいじょうぶよー。ここまで来たら見つからない。たぶんきっと
ザッザッザッ…
メルディ&クィッキー…!
メルディ隠れなきゃ…!
ザッザッザッ…
メルディ…行ったか?
クィッキークィック、クィック!
メルディ危なかったよぅ。見つからなくてよかったな
街の女あら…?お姫様じゃないですか
メルディバイバ!
街の女そんな隅っこの方に隠れて…。どうかしたんですか?
メルディびっくりしたな。お城の人かと思ったよぅ
街の女あらまあ。まさか、またお城を抜け出して来たんですか?
メルディはいな!こっそり抜け出したの、みんなには内緒な
メルディメルディ、これから花畑行くよ
メルディキールがお出掛け、誘ってくれたからな!
街の女ふふ…。そうでしたか
街の女わかりました。メルディ様を見た事は黙っておきますね
メルディありがとな!
メルディそれじゃメルディ、行ってくるよ!
キール……
メルディキール!
キール……
メルディ…キール、本に夢中な。メルディに気付いてないよ
クィッキークィッキー、クキクキキ
メルディなあに? クィッキー
メルディあ、クィッキー!
クィッキークィッキー!
キールうわぁ!?
メルディびっくりしたか?
キールな、何だ、メルディか。驚かせるなよ
メルディちゃんと声、かけたよぅ。キール、本に夢中でメルディに気付かなかったな
キール…悪かった。集中してたんだ
メルディその本、今キールがしてる研究と関係あるか?
キールああ。教授から借りたんだ
メルディキール、いつも勉強しててリッパ、リッパ!
メルディ…だけど、最近ボーッとする事が増えたな。無理してないか?
キール心配はいらない。あと少しで論文が書き上がるんだ
キールぼくの論文が認められればマナの研究は飛躍的に発展する。そうすれば、研究費だって…
メルディキール、お金がほしいのか?
キール…あって困るものじゃないだろ
キール論文を発表して、ぼくの事を馬鹿にした奴らを見返してやるんだ。立場が違うなんて、言わせるもんか…
メルディ…キール?
クィッキークィック…
キール…何でもない
キール行くぞ。おまえに、見せたいものがある
メルディホントか?楽しみだよぅ
侍女姫様!
メルディ&キール…!
侍女こんなところにいらっしゃったんですね。捜しましたよ
メルディ…見つかっちゃったな
クィッキークィィ…
侍女…また、その方とご一緒だったのですね
侍女あなた、研究生でしょう?こんなところで遊んでいていいのかしら
メルディ…!
メルディキールは悪くない!勉強だって頑張ってるよ
侍女…姫様、お城に戻りましょう。午後のパーティーに遅れてはいけませんからね
メルディでも…
キール…今日は帰った方がいい
メルディ…キール、またお出掛け、誘ってくれるか?
メルディメルディ、キールが一緒がいいよ。キールともっと一緒にいたい
キール……
キール心配するな。すぐに逃げたり隠れたりしなくても会えるようになる
キール今に立派な学者になってやるから見てろよ
メルディキール…
侍女行きますよ、姫様
キール……
キール待ってろ。…ぼくが必ず、おまえのいる場所まで上っていくからな
ミクリオ…ここへ来るのは久しぶりだな
ミクリオなかなか会いに来れなくてすまない。…スレイ
スレイ……
ミクリオ…君を救う方法は、まだ見つかっていないんだ
ミクリオ必ず、探し出してみせるってそう約束したのに…
スレイっ…う…
ミクリオスレイ…!
スレイ…大丈夫。そんなに心配するなって
ミクリオ大丈夫って顔色じゃないだろう…!君はどうして、そうやって…
スレイははは。そんなに酷い顔、してる?
ミクリオスレイ!
スレイ…やっぱりミクリオに隠し事は出来ないな
スレイなあ、ミクリオ。頼みがあるんだ
ミクリオ…何だ?
スレイ…取り返しのつかない事になる前に、オレを封印してほしい
ミクリオ…!
スレイたぶんこのままだと、オレがオレじゃなくなる…そんな気がするんだ
ミクリオ……
ミクリオ…わかった。だけど、スレイが眠っている間に必ず…僕が原因を突き止める
ミクリオ君一人に全てを背負わせたりしない
スレイ…うん
スレイなあ、ミクリオ。もし…
スレイもし、封印が解けてオレが暴走するような事があったら、その時は…
ミクリオさせない!僕が…僕が必ず、探し出してみせる
ミクリオスレイを救う方法を。絶対に!
スレイ…そっか。ありがとな、ミクリオ!
ミクリオ…くっ。僕は、どうしたら…!
スレイっ…
ミクリオ!?スレイ!?
スレイぐ…う…!
ミクリオそんな、まさか…封印が…!
スレイ……
スレイここがイニル街か…
ミクリオ確か、ルドガーが住んでいる街だったね
スレイうん。バロニアに向かう前に家を訪ねて──…
スレイ…うっ!
ミクリオ…!どうしたんだ、スレイ!
スレイ…っ
ミクリオこれは…!?
ドサッ
ミクリオスレイ!?しっかりしろ、スレイ!
スレイ……

NameDialogue
眠れる導師
エルルドガー、はやくー!
ルドガーあんまり急ぐと危ないぞ、エル
エルだいじょうぶですー。ルドガーこそ、のんびりしすぎ!
エルメガネのおじさんに渡すプレゼント、買いに行こうって言ったのルドガーなのに
ルドガー確かにそうだけど…そんなに急がなくてもいいだろ?
エル甘いなー、ルドガーは。のんびりしてる間にいいもの全部取られちゃうかもしれないよ?
エル早くお店行って選ぼ。プレゼントするなら、おじさんが喜ぶものにしなきゃ!
ルドガーわかったよ。だけど、ちゃんと前を向いて歩くんだぞ
エル子ども扱い禁止!エルとルドガーは、対等のアイボーだし!
ルドガーそ、そうだな。ごめん…
エルわかればいいよ、わかれば
ルドガーはは…
エル…ねえ、ルドガー。メガネのおじさん、今日は一緒にご飯食べられるのかな?
エル昨日はおじさん、遅い時間になっても帰って来なかったんだよね…?
ルドガー仕事が忙しい時は、泊まり込みが続く事があるんだ
エルそっか…。お仕事なら、仕方ないね
ルドガー…でも、そういう時は着替えを取りに一旦帰って来るから、きっともうすぐ会えるよ
エルほんと?じゃあ、その時にプレゼント渡せるかな?
ルドガーああ。二人で兄さんを驚かせよう
エルうん!おじさんのびっくりした顔、見るの楽しみだなー
エルよーし。早く行こ、ルドガー!
ルドガーあ、こら!走ったら危ないって!
ルドガーうーん…
エルルドガー、まだなに買うか決まらないの?
ルドガーああ。兄さんに贈り物をするためにお金を貯めたところまではよかったんだけど…
ルドガー何を買うかまでは、決めてなかったんだ
エルそういうの、ケイカクセーが足りないって言うんだよ!
ルドガーはは…エルの言う通りだな
エル仕方ないなぁ─。ルドガーの代わりに、エルがプレゼント、選んであげる!
ルドガーありがとう。何か気になる物、あるか?
エルうーんとねえ…あ、これ!
ルドガー──カメラ?
エルうん!カメラで写真を撮れば、家族の思い出が残せるんだよ
エルパパともたくさん二人で写真を撮って、エルのお家に飾ったの
エルエル、それがすっごく嬉しかったから…おじさんにも写真、飾ってほしいなって
ルドガーそれなら、一緒に写真立ても買って帰ろう
ルドガー三人で写真を撮って、家の中に飾らないとな
エルルルも!
ルドガー勿論、ルルも一緒に。きっと兄さん、すごく喜ぶよ
エルえへへ、そーかな?
ルドガーああ。エルが選んでくれたプレゼントだからな
エルうん!
ライフィセットここがイニル街、か…。綺麗な街だなぁ
ライフィセットベルベットが戻って来るまで時間がかかるだろうし、いろいろ見て回ろうかな…
???──レイ!スレイ!
ライフィセット…ん?あれって…
スレイ……
ミクリオしっかりしろ、スレイ!スレイ…!
ライフィセットあの…大丈夫?
ミクリオ…!君は…天族だな
ライフィセットうん。歩いてたら、声が聞こえて来たから何かあったのかと思って…
ライフィセット…その人、どうしたの?気を失ってるみたいだけど…
ミクリオ…わからない。突然倒れたんだ
ライフィセットそれなら僕に任せて。──快癒瞬け!ファーストエイド!
パアア…
スレイ……
ミクリオこれは…!
ライフィセット駄目だ。モヤに阻まれて、術が届かない…!
ミクリオ…スレイが倒れる直前にも同じようにモヤが出ていた
ミクリオスレイの身に何かが起こっているのは確かだな…
ライフィセット力になれなくて、ごめん…
ミクリオいや、君が謝る事はない。ひと先ず、スレイを安全な場所に運んで──
ルドガー…あれ?ミクリオじゃないか
ミクリオルドガー!
ライフィセット…!
エルルドガーの知り合い?
ルドガーああ。前に一緒に旅をして…
ルドガー…!そこに倒れてるのは…スレイか…!?
ルドガー何があったんだ!?
ミクリオ原因はわからない。話している最中に、突然倒れたんだ
ルドガーそんな…
ルドガーエル、俺は医者を呼んで来るから、ミクリオ達を家まで案内してくれないか?
エルうん、わかった!
ミクリオ迷惑をかけてすまない、ルドガー
ルドガーいいんだ。医者を連れて行くまで、俺の家で休んでてくれ
ミクリオありがとう
ルドガーそれじゃ、後で。エル、二人をよろしくな
ライフィセット…びっくりした。アヴァロン島の中じゃないのに姿が見えるなんて
ミクリオああ。前に、不可視物質を可視化する装置の光を浴びて…
エル…誰と話してるの?
ミクリオあ、いや…。何でもない
エルルドガーの家はこっちだよ!早くその人を連れて行ってあげなきゃ
ミクリオ…そうだな。案内を頼むよ
医者…特に異常は見当たりませんね。ただ眠っているだけのようにも見える
ルドガーでも、目覚めないのはおかしいですよね?
医者ええ…。ですが、原因がわからない限り治療を施す事は出来ません
ルドガーそう、ですか…
ルドガーミクリオ。スレイはいきなり倒れたって言ってたよな?
ルドガー倒れる前に何か変わった事はなかったのか?
ミクリオスレイが倒れる直前に、身体から黒いモヤのようなものが溢れたんだ
ミクリオ彼が回復術を施そうとした時も同じようにモヤが出て…
ルドガー彼って…?
ミクリオああ、すまない。言ってなかったな
ミクリオここにもう一人、天族がいるんだ。君には見えないだろうけど…
ルドガーえ、そうなのか…?
スレイ……
ルル……
エルこの人、全然起きないね、ルル。大丈夫なのかな…
ルルナァ~…
エルあ、駄目だよルル…!ベッドの上にあがっちゃ…!
エルほら、ルル。降りよう?
エルえ…?
ヒュンッ
エルな、なにこれ…。足元になんか広がって…
ルドガー…!エル、危ない…!
ドンッ!
ミクリオっ…!二人共、早くこっちへ…!
ライフィセットわっ…!身体が吸い込まれる…!
ルドガーミクリオ、エルを頼む!
シュン…
ミクリオくっ…!ルドガーとライフィセットが穴の中に吸い込まれた…!
エルルドガー!ルドガー!
医者い、今のは一体…
エルどうしよう、ルドガーが!
ミクリオ落ち着くんだ。君は、何であの穴が現れたのか、わかるかい?
エルううん、わかんない…。時計が光ったと思ったら、いきなり…
ミクリオこの時計か?…今は光ってないみたいだな
エルこれは、パパがエルにくれた時計なんだ
エルパパはずっと帰って来てなくて…。だからエル、ルドガーのとこにイソーローしてるの
ミクリオそうか…。なら、時計の事はよく知らないんだな
エルうん…。パパがいたら、聞けたんだけど…
ミクリオ今は時計の謎よりも、二人を探す事を優先しよう
エルこれからどうするの?
ミクリオそうだな…。二人を追いかけたくても、穴は閉じてしまったし…
ミクリオ僕達だけで原因を解明するのは難しそうだ。誰かに助けを求めるべきだろう
エル…ルドガーなら、大丈夫だよね?
ミクリオああ、ルドガーは強いから大丈夫だ。僕は彼と一緒に戦った事があるからわかるよ
エル…うん
エルさっき、誰かに助けてもらおうって言ってたけど…ミクリオには他にも仲間がいるの?
ミクリオいつも一緒に旅をしている仲間とは今は別行動を取ってるんだ
ミクリオ里帰りをしているから当分戻って来ないだろうし…
エルそっか…。じゃあ、どうしよう…
ミクリオ──バロニアに行けば、何人か知り合いがいる
ミクリオでも、僕がここを離れるわけには…
医者彼の事は、私が看ておくから心配しなくてもいいよ。その子とバロニアに行ってくるといい
医者状況はよく分からないが…何かあてがあるんだろう?
ミクリオ…ありがとう、助かります
ミクリオエル、今からバロニアへ行こう。道案内を頼めるか?
エルうん!エルにお任せ!
医者…もし可能なら、バロニアからより専門的な治療が出来る人を連れてきてくれ
医者街医者の私では、今の診断が限界だからね
ミクリオああ、わかった。…スレイの事、よろしく頼む
エルすぐに戻って来るから!ルルも大人しく待っててね
ルルナァ~
scene1久年の邂逅
ヒュンッ
ライフィセットうわっ…!
ルドガーくっ…!
ドサッ!ドサッ!
シュン…
ライフィセットいたた…。ここは、一体…?
ルドガー遺跡…みたいだな。──あの裂け目から、別の場所に移動したのか…
ルドガー君も裂け目から出て来たみたいだけど怪我はないか?
ライフィセットうん、大丈夫。…って、あれ?
ライフィセットもしかして、僕の姿が見えてるの…!?
ルドガーえ…?ああ、見えてるけど…
ライフィセットどうしていきなり…。さっきまでは見えてなかったはずなのに…
ルドガー見えてなかったって…
ルドガー…!そうか、君がさっきミクリオの言っていた──
ガサガサ…
ルドガー…!誰だ…!?
???──まさか、こんなところに人間が紛れ込んでるとはな
ライフィセット…あの人達、天族だよ。やっぱりここでは天族の姿が見えるようになってるみたいだね
ライフィセットここがどこなのか聞いて、元の場所に戻らないと…
ルドガーああ…。だけど、何か様子が変だ
天族の男2どうする?
天族の男1決まってるだろう。人間は一人残らず始末する!
バシュッ!
ルドガーぐ…っ!?
ライフィセット…!いきなり、何を…!
天族の男2そいつを生かしたまま、ここから出すわけにはいかねえんだよ
天族の男2お前こそ、天族のくせにどうして人間と一緒にいるんだ
ライフィセットどうしてって…。人間と天族が一緒にいたらおかしいの?
天族の男2ああ、おかしいね
天族の男3…邪魔をするなら、お前もそいつと一緒に死ぬ事になるぞ
ライフィセットそんな…!
ルドガー話し合いで解決とはいかないみたいだな…
チャキッ
ルドガー今はとにかく、この場を切り抜ける事を考えよう
ライフィセット…うん、そうだね
scene2久年の邂逅
ルドガー──アサルトダンス!
天族の男2ぐ…!
天族の男3怯むな!数はこちらの方が優勢だ
天族の男1数人で囲んで、一気に畳みかけろ!
ライフィセットっ…この人数相手じゃ、僕達が不利だよ
ルドガーああ。どうにかして、包囲網を突破しないと…
天族の男2させるか…!
バシュッ!
ライフィセットううっ!
ルドガー…くそっ、このままじゃ…
???──フリーズランサー!
天族の男1ぐう…!?
???こっちだ!走れ!
ルドガー…!行こう!
ライフィセットうん!
ルドガーはあ…はあ…。さっきの攻撃は一体…
ライフィセット…!あそこに、誰かいるよ
コツコツ…
ミクリオ…危ないところだったね
ライフィセット君は…
ルドガーもしかして…ミクリオ、なのか…?
ミクリオ…君が知っているミクリオと僕は別人だ
ミクリオ僕が知っているルドガーが君と違う人物であるように
ルドガーそれは、どういう…
ミクリオ詳しい事は彼らを倒してから、場所を変えて話そう
タッタッタッ
天族の男2見つけたぞ…!
ルドガー…!もう追いついて来たのか…!
天族の男1さっきの攻撃はお前だな。何故、人間の味方をする
ミクリオ僕は誰の味方でもない。ただ、人間という理由だけで人を襲う君達とは相容れないだけだ
天族の男2裏切者め…!
天族の男1…構うな。天族だろうと関係ない、こいつらにはここで死んでもらう!
ミクリオ──来るぞ、構えるんだ!
ルドガーあ、ああ!
scene3久年の邂逅
ミクリオこっちだ。彼らの仲間が追ってくる前に遺跡を出よう
ライフィセット…遺跡の内部に詳しいんだね
ミクリオああ…。昔はよく、遺跡の中を探索していたから
ルドガー…君は、俺達が知ってるミクリオじゃないって言ったよな?
ミクリオそうだ。それに…僕が知ってるルドガーは、ずっと前に亡くなっているからね
ルドガー…!つまりここは…分史世界、なのか?
ミクリオそうだよ
ライフィセット分史世界って…?
ルドガー信じてもらえないかもしれないけど…俺達のいた世界から分岐した、別の可能性の世界が存在するんだ
ルドガーそれが、分史世界だよ
ライフィセットえっと…つまり、僕らが元々いた世界とは別の世界が存在してて…
ライフィセットいきなり現れた穴に落ちたら、別の世界に飛ばされちゃった…って事なの?
ルドガーああ、おそらく。普通なら骸殻の力を持った者しか入れないはずなんだけど…
ミクリオ君達はどうやってこの世界に?
ライフィセットルドガーの家にいた時に、突然足元に穴が開いて…落ちたと思ったら、ここにいたんだ
ルドガー普段は特定の場所からしか入れない分史世界へ繋がる入り口が開いたって事は…
ルドガースレイに起こった異変と分史世界に何か関係があるのかもしれないな…
ミクリオ…!そっちの世界のスレイに、何かあったのか?
ルドガーああ…。突然倒れて、未だに目が覚めないままなんだ
ミクリオ……
ルドガーミクリオは俺の事を知ってるみたいだけど…一応、自己紹介をしておくべきかな
ルドガー君の名前も、知らないままだし…
ライフィセットあ…、まだ名乗ってなかったね。僕はライフィセット
ルドガールドガー・ウィル・クルスニクだ。よろしく
ミクリオミクリオだ。よろしく頼むよ
ミクリオ人と天族が共にいるところを見るのは随分久しぶりだな…
ミクリオ君達は、正史世界から来たんだろう?
ルドガー…!ミクリオは、正史世界の事も知ってるんだな
ミクリオああ。長い間、生きているからね
ミクリオ古い文献を読む内に、正史世界の存在を知ったんだ
ミクリオ僕達が住んでいる世界が正史世界でない事は、薄々気付いていた
ルドガー…そうなのか
ミクリオルドガーとライフィセットが共に行動してるって事は…
ミクリオそっちの世界では人間と天族の戦いは起こっていないんだな
ライフィセットこの世界では、人間と天族が争ってるの…?
ミクリオああ、随分前からね
ルドガーミクリオ。この世界について詳しく教えてくれ
ルドガー君は、俺達が知っているミクリオよりもかなり成長しているようだし
ミクリオ…おそらく、僕達の世界はルドガー達がいる正史世界よりも長い時間が経過しているんだろう
ミクリオこの世界では、ある日突然天族の姿が見えるようになった
ミクリオその後世界が厄災に見舞われて…人間達は、厄災の原因が天族にあると考えたんだ
ライフィセットそんな…
ミクリオ僕は…人間と天族の争いを止めるために、スレイと奔走した
ミクリオ…だけど、戦いは激しさを増す一方でどんどん仲間達が傷付いていったんだ
ミクリオその頃から、スレイの様子が少しずつおかしくなっていった
ルドガー…何が、あったんだ?
ミクリオたまに、人が変わったような態度を取るようになったんだ。攻撃的になるって感じかな
ミクリオ…多分、あのモヤのせいで
ライフィセットモヤ?
ミクリオああ。ある時期から時々黒いモヤがスレイの身体から溢れ出すようになったんだ
ミクリオあのモヤが出始めた頃から…スレイは、自分が自分じゃなくなる感覚に苛まれると言っていた
ルドガー…確か、正史世界のミクリオも黒いモヤの話をしてたな…
ライフィセットうん。スレイが倒れる前に身体からモヤが溢れたって…
ライフィセット僕が回復しようとしたんだけど、モヤに阻まれてきかなかったんだ
ルドガーもしかしたら…
ルドガー…ミクリオ。モヤが出た後、この世界のスレイはどうなったんだ?
ミクリオスレイは自我が残っている内に自分を封印する道を選んだ
ミクリオそれから長い年月、異変の原因を探し求めて来たけど…解決の糸口は見つからなかった
ライフィセットスレイが封印されてから、どのくらい探したの?
ミクリオ…数百年、かな
ルドガーそんなに…!?
ミクリオああ。スレイを救う方法を探すために世界中を歩いて回ったよ
ミクリオそれなのに…手がかり一つ見つからなかった
ミクリオ封印で抑え込んでいた力は日に日に増大していって…遂には抑えきれなくなった
ミクリオ──そして少し前に、封印が破れてスレイが目覚めたんだ
ルドガー…その後、スレイはどうなったんだ?
ミクリオ人間と天族の争いに加担するようになった。以前のスレイとはまるで別人だ
ルドガー…ミクリオ。今、スレイがどこにいるかわかるか?
ミクリオ…どうしてそれを聞くんだい?
ルドガーこの世界のスレイに会わせてほしい
ルドガー正史世界のスレイに起こった異変の原因を、突き止めるためにも
ミクリオ…今のスレイは、仲間の話に耳を傾けていた頃の彼とは違う
ミクリオスレイが目覚めてから、何度も話をしようとしたけど僕の言葉に耳を貸す事はなかった
ライフィセット……
ルドガーそれでも、確かめなくちゃいけない事があるんだ。…正史世界のスレイを助けるために
ミクリオ……
ミクリオ…わかった。スレイがいる場所は、把握してる
ミクリオ案内するよ。…ついて来てくれ
イズチへ
ミクリオ…日が落ちたな。ここで少し休息を取ろう
ミクリオ夜が更けてから移動した方が動きを悟られにくいだろうし
ルドガーそうだな
ルドガー…スレイは、近くにいるのか?
ミクリオああ。ここから少し歩いたところに、イズチがある
ライフィセットどうして、スレイがそこにいるってわかったの?
ミクリオ数日前、スレイがイズチに天族を集めているという話を聞いたんだ
ルドガー…だから、さっきの遺跡にも天族が大勢いたんだな。皆、イズチを目指していたのか
ライフィセットスレイは天族を集めて何をする気なんだろう…
ミクリオ詳しい事はわからない。ただ…集められた天族達は酷く人間を恨んでいる連中だ
ミクリオさっきの様子を見る限り、人間に復讐しようとしているのは確かだろう
ライフィセット…あの天族達は、人間と、戦うつもりなんだね
ライフィセット傷付けられたから傷付けて、傷付けたから傷付けられて…それで何か、変わるのかな
ミクリオ……
ミクリオ…ルドガー。君は、スレイの異変の原因を確かめると言ったね
ミクリオ見ただけで原因がわかるものなのか?
ルドガー…見てみない事にはわからない。けど、俺は今までいくつかの分史世界を見て来たから…
ルドガー俺の予測通りだったとしたら、異変の原因になっているものを突き止められるかもしれない
ミクリオ…そうか。随分前から、スレイの異変の原因を探る事は諦めてたんだ
ミクリオ君がこの世界に来た事で何かが変わってくれたら…そう思わずにはいられない
ミクリオだけど、ルドガー。もし君にも異変の原因がわからなかった場合は──
ミクリオ僕は、スレイを殺してでも争いを止めさせるつもりだ
ルドガー…!
ミクリオ僕がイズチの近くに来ていた理由は初めからその目的のためだったからね
ライフィセット殺す、って…スレイはミクリオの友達なんじゃないの?
ミクリオ…スレイを助けるためにあらゆる手を尽くしてきた。君達以外に、もう希望は残っていない
ミクリオスレイが望まない罪を犯させるわけにはいかないんだ。僕は、彼の尊厳を守りたいから
ミクリオだから…
ライフィセット諦めちゃ駄目だよ…!
ライフィセット原因を突き止められなかったとしても希望を捨てるべきじゃない
ミクリオ…僕も、昔はそう思っていたさ
ミクリオだけど、スレイを封印してから何百年もの間…僕は、彼を救う方法を探してきたんだ
ミクリオそれなのに、彼を助ける術も戦争を止める手段も何も…何も見つける事が出来なかった…っ!
ルドガーミクリオ…
ミクリオ──これ以上、彼に罪を重ねさせるわけにはいかない
ライフィセットだから、殺すって言うの…?そんなの駄目だよ!
ライフィセット絶対に何か、まだ方法があるはずだ
ミクリオ…君にも、いずれわかる。何も出来ない自分を持て余したままただ年月を重ねていくだけの空しさが
ミクリオ人間の寿命は僕達よりもはるかに短い…
ミクリオ今回の事がなくても、いずれ別れが来る事は決まっていたんだ…
ライフィセットミクリオの言う通りだとしても、僕は──!
ルドガー静かに…!何か聞こえないか?
ミクリオ…!
ザッザッザッ
ライフィセット足音だ…。大勢で移動してるみたいだね
ルドガー…急に、森の中が騒がしくなってきたな
ミクリオ天族達が、イズチの方へ移動しているみたいだ
ミクリオ何か動きがあったのかもしれない。僕達も、移動しよう
ミクリオ…彼らが向かう先に、スレイもいる
ルドガーああ、わかった
ライフィセット……
scene1かつて見た夢
ミクリオここから先がイズチだ
ライフィセット…ここに、スレイがいるんだね
ミクリオああ…
ピッピピッ
ライフィセットわ…
ミクリオどうやら、君が好きみたいだな。鳥達が集まって来た
ライフィセットかわいい鳥だね。ひばりかな?
ミクリオイズチひばりだよ。僕とスレイが幼かった頃もこの森でよく見かけた
ライフィセット…ここはミクリオとスレイが生まれ育った場所なの?
ミクリオ…ああ。二人一緒に、育てられたんだ
ルドガーここにいた頃はどんな風に暮らしてたんだ?
ミクリオあの頃はよく二人でイズチの長老だったジイジに怒られてたな
ミクリオ勝手にイズチの外に出て遺跡探索をした事がバレた時は、肝が冷えたよ
ルドガー俺達の世界にいるスレイとミクリオもよく二人で遺跡を探索してたよ
ミクリオ僕達は互いに、天遺見聞録という本に夢中になった。そっちの世界の二人もきっと同じだろう
ライフィセットその本には、どんな事が書かれているの?
ミクリオ人と天族の歴史が残された古代遺跡を巡って、その謎に迫った人物の旅の記録が記してある
ミクリオ──いつか世界中の遺跡を回りたい
ミクリオスレイはよく、そう言ってたよ。すっかりあの本に影響されたんだろうね
ルドガー二人は兄弟みたいに育ったんだな…
ミクリオああ。天遺見聞録には導師の伝説が書かれているんだ
ミクリオだから、スレイが導師になった時は嬉しかったし…誇らしかった
ミクリオだけど、導師になった後のスレイはいつも無茶ばかりしていて…
ミクリオ人と天族の関係が悪化してからは更に無理を重ねるようになったんだ
ライフィセットその後、スレイに異変が起こったんだね…
ミクリオ──同じものを見聞き出来ねば共に生きる仲間とは言えん…か
ルドガーそれは…?
ミクリオ昔、ジイジに言われたんだ。今の僕は、スレイと同じ方向を向いていない
ミクリオいつの間にか、気持ちが遠く離れてしまったものだと思ってね
ルドガーミクリオ…
ルドガー(…ミクリオは俺達が ここに来るまでに、どれくらい 苦しんで来たんだろう…)
ルドガー(スレイを殺す事でしか 終止符を打てないと考えるまでに、 どれだけ…)
ルドガー(もし兄さんを殺せって言われたら… 俺は、そう簡単には決断出来ない)
ルドガー──ミクリオ。俺が言っていた、スレイの異変の原因についてなんだけど…
ガサッガサッ
ライフィセット…!誰か来るよ…!
天族の男1お前達は…
ミクリオ遺跡にいた天族達か…
天族の男2ここで再会するとはな。お前達、やはり何か嗅ぎまわってるのか…?
ミクリオ君達に危害を加えるつもりはない。ただ、イズチの遺跡にいるスレイに用があるだけだ
天族の男1…それは容認出来ないな。俺達はこの辺りの警備を任されてる
天族の男1不穏分子はすべて排除しなければ
ライフィセットミクリオはスレイの友達なんだ…!不穏分子なんかじゃ…
ミクリオ言っても無駄だ。話の通じる相手じゃない
天族の男2そっちの人間を置いていくなら、お前達だけ助けてやってもいいぜ?
ルドガー……
ミクリオ君達に温情をかけてもらうほど僕らは弱くないよ
ライフィセット僕は、仲間を見捨てて逃げたりしない…!
ルドガー二人共…
天族の男1馬鹿な奴らだ。なら、その人間と共にここで朽ち果てるがいい
天族の男1かかれ!
ミクリオ…長引くと面倒だ。早々に決着をつけよう
ルドガーああ!
scene2かつて見た夢
天族の男1ぐ…う…
ドサッ
ライフィセットこれで全員、倒せたね
ミクリオああ。だけど、油断は出来ない
ミクリオこの先も天族達が待ち構えているだろうから慎重に進もう
ミクリオ…そう言えば、ルドガー。天族達が襲って来る前に何か話そうとしてたんじゃないか?
ルドガーあ、ああ…
ルドガー…いや、何でもない。気にしないでくれ
ミクリオそうか
ミクリオ…この先に、遺跡がある。スレイはそこにいるはずだ
ライフィセット…スレイを助ける方法が見つかるといいね
ミクリオ……
ルドガー──行こう。俺達が行く事で何かが変わると信じて
scene1友との決別
スレイ……
コツコツコツ…
ミクリオ…スレイ。やっぱり、ここにいたんだな
スレイ久しぶりだな、ミクリオ
天族の男3貴様ら、どこから入った…!警備の者は何をしてるんだ!
ライフィセット…囲まれちゃったね
ルドガーああ…。流石にここまで来ると警備も手厚いな
天族の男4スレイ様、ご安心を。今すぐこの者達を排除して…
スレイいいんだ。ミクリオは、オレの友達だから
天族の男3しかし…!
スレイ何か話したい事があるみたいだからさ。下がってていいよ
天族の男3…わかりました
スレイ…外が騒がしいと思ってたけどここに乗り込んでくるなんて、無茶をするようになったな
ミクリオ僕が君に、無茶だと言われる日が来るとはね
ルドガーミクリオ。スレイの、あの服は…
ミクリオ…封印から目覚めた後、彼は導師の服を脱ぎ捨てたんだ
スレイそうそう。もう、オレは導師じゃないからさ
ミクリオ……
スレイ…それにしても、おかしいな。何でここにルドガーがいるんだ?
スレイずっと前に亡くなったはずだろ?
ミクリオ彼は、この世界の人間じゃない
スレイ別の世界からやってきたルドガーって事か?
スレイ…信じられないような話だけどミクリオが言うなら、本当の話なんだろうな
スレイ別の人間だってわかってても…君を見てると、少し懐かしい気持ちになるよ
ルドガー…スレイはどうして遺跡に天族を集めてるんだ?
スレイ彼らに無念を晴らす機会を与えるため…かな
ミクリオ人間と天族を戦わせるつもりなのか。これ以上争いを広げてどうするんだ!
ミクリオ君が望んでいた世界は、こんな…
スレイ──人も天族も、存在する限り争い続ける
スレイ負の連鎖を断ち切るにはすべて無かった事にした方がいいんだ
スレイだからオレは、災禍の顕主になる道を選んだ
ミクリオ…やはり君には僕の声が届かないようだな
ミクリオなら、どんな手段を使っても…僕は君を止めないといけない
ライフィセットミクリオ、待って…!
スレイ…オレは、ミクリオ達とここで戦うつもりはないよ
スレイ何もしないで、このまま帰るんだ。そうすれば、君達に手を出させないって約束する
ミクリオそんな要求が飲めると思ってるのか?
スレイこれは要求じゃない、警告だ。ミクリオ達と傷付け合うのはオレの望みじゃないしな
スレイただし、これ以上オレの邪魔をするようなら…
チャキッ
スレイミクリオでも、容赦はしない
ライフィセット…!あのモヤは…
ルドガー(あれは…)
ルドガーミクリオ、ライフィセット。ここは俺に任せてくれないか?
ミクリオルドガー…?
ルドガー確かめたい事があるんだ。頼むよ
ミクリオ…わかった。この場は、君に託そう
ルドガーああ、任せてくれ
ルドガーはっ!
ライフィセット…!ルドガー、その姿は…
ルドガー骸殻の力を使うと、この姿になるんだ
スレイ──骸殻の力、か。それを使って、何をするつもりなんだ?
ルドガー異変の正体を確かめさせてもらう!行くぞ、スレイ!
ガキンッ!
スレイどんな力を使おうと、オレは止められないよ
ルドガー(やはり、時歪の因子なのか…? だけど、何か──)
ドオオオンッ
ライフィセット何…!?
ミクリオあれは…
シュヴァルツ……
人間の男1いたぞ!シュヴァルツ様が仰った事は本当だったんだ…!
人間の男2天族め…!結託して俺達を襲うつもりだったのか!
ドタドタドタッ
天族の男4侵入者はこっちだ…!集え!
天族の男3人間共が何故、ここに…!嗅ぎつけられたのか!
天族の男4ここは我々で抑えます!スレイ様はお逃げください…!
スレイ…邪魔が入ったみたいだな
ルドガー待つんだ、スレイ!戦いはまだ…
シュヴァルツわきまえよ、人の子よ
ルドガー…!いつの間に…
シュヴァルツ滅びの時は近付いている。抵抗など無意味
ルドガーこの…!
ガキン…!
ルドガーっ…!?弾かれた!?
シュヴァルツ死に急ぐ子よ。ならば、虚無の彼方へと還るがよい
シュヴァルツ我が永遠の闇の眠りへと、子をいざなおうぞ
ライフィセットさせない…!
バシュッ
シュヴァルツ……
ライフィセット…!
ルドガーどうして、何ともないんだ?
シュヴァルツ器の違いを知れ
ミクリオ危ない…!
ライフィセットわ…!
ミクリオぐ…っ
ライフィセットミクリオ…!
ミクリオ──大丈夫だ。油断するな、すごい力だ
シュヴァルツあくまで、あがくというのか。…愚かな
ルドガー二人共、気を付けろ!来るぞ!
scene2友との決別
ルドガー&ミクリオぐうう…っ
ライフィセットルドガー!ミクリオ!
ルドガー何て力だ…
ミクリオ実力が違いすぎると言うのか…。このままじゃ…
天族の男4あれだけの攻撃を受けて無傷とは…本当に人間なのか
天族の男3人間相手に怯むな!スレイ様の退路をお守りするんだ…!
天族の男4ああ!──はあああああ!
バシュッバシュッ
シュヴァルツ……
天族の男4畳みかけろ!
シュヴァルツ…死を選ぶ子よ。ならば、その道を歩むがいい
人間の男1シュヴァルツ様に続け!天族共を一掃するぞ!
人間達おお!
ミクリオ…今の内に、遺跡を抜けよう
ライフィセットミクリオ…!?
ミクリオ今の僕らじゃ、彼女の力には太刀打ち出来ない
ミクリオ混戦状態が続いている今の内に、早く…!
ルドガー…わかった、出よう!
敵対する種族
ライフィセットはぁ…はぁ…。…誰も追って来てないみたいだね
ルドガーああ…。無事に遺跡から脱出できたな
ルドガーミクリオ。遺跡に侵入した人間達を率いていた女性は何者なんだ?
ミクリオ…彼女はシュヴァルツ。スレイと共に世界を滅ぼそうとしている存在だ
ライフィセットスレイの仲間って事…!?
ライフィセットでも、あの人はスレイが遺跡に集めた天族達と戦うよう人間に指示してたよ
ミクリオそれが狙いなんだ。シュヴァルツはスレイと結託して、大規模な戦争を起こそうとしている
ミクリオ人間をそそのかすシュヴァルツと、天族を率いるスレイが裏で繋がる事で厄災をもたらそうとしているんだ
ルドガーそんな…。人間や天族達は、二人の思惑に気付いてないのか?
ミクリオ彼らには見るべきものが見えていない。互いへの憎悪で頭が一杯になっているからね
ライフィセットスレイは負の連鎖を断ち切るために全てをなかった事にするって言ってたけど…
ライフィセットシュヴァルツの目的は何なの…?
ミクリオ僕にも、彼女の狙いはわからない。どうやら、人間や天族の負の感情を地上に蔓延させようとしているようだ
ルドガー負の感情…。怒りや悲しみの感情を増幅させたいのか?
ミクリオああ。負の感情が、シュヴァルツ自身の力と深く関係しているみたいだな
ミクリオ何にせよ、いい目的でない事は確かだ
ルドガーそんな得体のしれない人物と手を組むなんて…スレイは何を考えてるんだ?
ミクリオ…今の僕に、彼の考えはわからない
ミクリオ同じものを見聞き出来ていた、あの頃とは違ってね
ライフィセット…ミクリオは、導師だったスレイが天族と人間の争いを止めるために奔走してたって言ってたよね?
ライフィセット戦いが激しさを増す一方で、どんどん仲間達が傷付いていったって…
ミクリオああ、そうだ
ライフィセットスレイの負の感情が膨れ上がる前に何があったのか…聞いてもいいかな?
ミクリオ…人間と天族の争いは、スレイから大切なものを奪っていった
ミクリオジイジやイズチの仲間達…それに、エドナも
ライフィセットそんな…!
ライフィセットこの世界のアイゼンはどうしてたの!?
ライフィセットアイゼンなら、エドナを助けようとするはずでしょ?
ミクリオアイゼンは海賊の仲間を助けるために戦い、人間に捕らえられた
ミクリオ…彼も、もうこの世にはいない
ルドガー……
ミクリオ仲間を失う度に、スレイ自身の心も削られていった
ミクリオ彼の心が弱った隙をついて何かが憑りついたようだ
ライフィセット…その「何か」が黒いモヤと関係してるって事だね
ミクリオおそらく、そうだろう
ルドガー…ミクリオ。「時歪の因子」という名称を聞いた事はあるか?
ミクリオいいや。初めて聞く言葉だ
ルドガー時歪の因子は分史世界を形成する要で正史世界との違いが大きいものに憑依する性質がある
ルドガーこの世界のスレイは、俺達の世界にいた彼と大きく違っていると思うんだ
ミクリオ…!つまり、スレイに憑りついたものがその時歪の因子だと?
ルドガー黒いモヤの話を聞いた時、その可能性を考えたんだ
ルドガー時歪の因子に憑依されたものは黒いモヤに身体が覆われるから
ライフィセットスレイとの戦いで言ってた確かめたい事って、時歪の因子の事だったんだね
ルドガーああ。近くでスレイと対峙すればモヤの正体を掴めるかもしれないと思ったんだ
ミクリオそれで…あのモヤは君の言う時歪の因子だったのか?
ルドガー…わからない。ただモヤを見た時、違和感を感じたんだ
ルドガー時歪の因子かどうか見極めようとしたけど、シュヴァルツが介入してきて確かめられなかった
ライフィセットスレイが時歪の因子に憑依されてたとして…助ける方法はあるの?
ルドガー…さっきも話した通り、時歪の因子は分史世界を形成する要なんだ
ルドガー破壊すれば、憑依された者だけじゃなく…その分史世界ごと、消滅する事になる
ライフィセット…!
ルドガー俺や兄さん…クルスニクの一族は、骸殻の力を使って時歪の因子を破壊する事が出来る
ルドガー正史世界に悪影響を及ぼす分史世界は兄さんと手分けして破壊してきたんだ
ミクリオ…もし、スレイが時歪の因子だったとしたら、君はこの世界ごと破壊するつもりなのか?
ルドガー俺は…この世界を壊さずにスレイを助ける道を探したい
ルドガー今まで破壊してきた分史世界とはいろいろと状況が違ってるんだ
ルドガーモヤの影響が正史世界のスレイにあらわれた事も気になる
ライフィセット…それなら、もう一度スレイに会って、憑りついたものの正体を見極めるべきだね
ルドガーああ。正体がわかれば、スレイを助ける方法が見つかるかもしれない
ミクリオ…わかった。人の集まる場所に行って、情報を集めよう
ミクリオスレイをどうするのかは彼に憑依したものの正体を確かめてから考えるよ
ライフィセット……
ルドガーそれじゃあ、ここから一番近い街かどこかに…
グオオオオッ!
ミクリオ…!魔物の声だ
???……
ライフィセットあそこ…!魔物の傍に、誰か倒れてるみたいだよ…!
ルドガーこのままじゃ危ない!助けよう
森での出会い
ルドガーはああっ!
ズバッ!
ギャウウッ!
ライフィセットふう、何とか間に合ったみたいだね
ミクリオああ。倒れている女性も無事だ
ミクリオ見たところ、怪我はないみたいだな。魔物が現れた事に驚いて気を失ったのか…
ルドガーあの、起きてください…!大丈夫ですか?
???ん…?
???あら、おはよう
ルドガーお、おはようございます…
???ここは…どこだったかしら?
ライフィセット森の中だよ。大丈夫?どこか痛いところはない?
???大丈夫よぉ。どうしてそんなに心配そうな顔をしてるのかしら?
ミクリオ君は、魔物に襲われそうになっていたんだ。覚えてないのか?
???あら、そうなの。あなた達が助けてくれたのね、ありがとう
ライフィセットどうしてこんなところで倒れてたの?
???…思い出したわ。森の中を歩いている時に眠くなって…
ルドガーもしかして…寝ていたんですか?
???うららかな陽気に誘われて、つい…
ミクリオこの森にはよく魔物が出る。あまり気を抜かない方がいい
???知らなかったわぁ。次は魔物ちゃんの邪魔にならない場所を探すわね
ミクリオ…僕は、昼寝をしない方がいいと言ったつもりなんだが
???些細な事は、気にしないでおきましょう?だって、些細な事ですもの
ミクリオ……
???ところで、あなた達はだあれ?
ルドガー俺はルドガー・ウィル・クルスニク。こっちはライフィセットとミクリオです
グリューネわたくしはグリューネ。よろしくね
ライフィセットグリューネは、どこかに向かう途中だったの?
グリューネそうねぇ。確か、人を捜していて…
グリューネこの辺りで気配を感じたんだけど…お昼寝している間に、消えちゃったみたいね
ミクリオ本当に捜す気があるのか…?
ルドガーは、はは…
グリューネみんな、黒い仮面をつけた女性を見なかったかしら?
ミクリオ黒い仮面…もしかして、シュヴァルツの事か?
グリューネ…だったと思うけれど。違うかしら?
ミクリオ僕に聞かれても困る…
ライフィセットどうしてシュヴァルツを捜してるの?
グリューネ…理由はわからないけれど、シュヴァルツちゃんを止めなければいけない気がするの
グリューネそれに、何故かシュヴァルツちゃんの居場所がわかるのよねぇ
ルドガー実は俺達も、捜している人がいるんです
ルドガーもしかしたら、シュヴァルツは俺達が捜している人の傍に現れるかもしれない
グリューネそうなの?
ミクリオ僕達が捜しているスレイとシュヴァルツは人間と天族を戦わせるために裏で結託している
ミクリオどちらかを追えば、必ずもう片方が現れるはずだ
ライフィセット僕達はこれから人の集まる場所に行って情報を集めるつもりなんだ
ライフィセットグリューネも一緒に行かない?この森を一人で抜けるのは危険だと思うし
グリューネ誘ってもらえて嬉しいわぁ。ピクニックは大勢の方が、楽しいものねぇ
ルドガーピクニック…じゃないけど、まあ、いいのかな
ライフィセット些細な事は気にしないって言ってたもんね
ミクリオ連れて行く事に不安がないわけじゃないが…
ミクリオシュヴァルツの気配が読めるなら彼女が傍にいた方が心強い
グリューネみんなでピクニックね。楽しみだわぁ
グリューネ改めてよろしくね
ライフィセットよろしく、グリューネ
ミクリオ不安だな…
ルドガー……
エルやっと着いた~!
ミクリオバロニアは、いつ来ても人で賑わってるな
ミクリオここまで結構距離があったけど、歩き疲れてないか?
エル全然よゆー!エル、前に一人でバロニアまで来た事あるし
ミクリオそれは頼もしいな
エルこれからどうしよう?エル達を助けてくれる人、見つけなきゃだよね
ミクリオ…まずはウィンドル城の近くに行ってみよう
ミクリオあそこに行けば、騎士団の誰かに会えるかもしれない
エルわかった!
エルエルが一人でバロニアに来た時は、ユーリが助けてくれたんだけど今は騎士じゃないんだって
ミクリオ…!エルはユーリの知り合いなんだな
エルうん。ミクリオもユーリ、知ってるの?
ミクリオああ。他にも何人か騎士団の中に知り合いがいるんだ
エルじゃあ、早くお城に向かおう!ルドガー達を助けてもらわないと
ミクリオそうだな
アスベル──被害の規模は?
騎士山道は封鎖されているが、幸い土砂崩れによる怪我人は出ていないそうだ
アスベルそうか。それなら、増援は必要ないな
騎士ああ。状況が変化した場合は、報告する
アスベルわかった
ミクリオアスベル!
アスベル…!ミクリオじゃないか
アスベルウィンドルに来ていたんだな
ミクリオああ。城の騎士達が慌ただしくしていたが、何か問題があったのか?
アスベル山岳地帯で土砂災害が起こったんだ。道が塞がれるくらいの小規模な被害で済んだそうだから、心配はない
ミクリオそうか
アスベル久しぶりに会えて嬉しいよ。一緒にいるその子は…?
エルエルはエル。エル・メル・マータ
ミクリオ彼女は、訳あってルドガーの家で暮らしているんだ
アスベルそう言えば、ルドガーが一緒に住んでいる女の子がいるって話していたな
アスベル俺は、アスベル・ラント。ルドガーとは友達なんだ
エルそうなの?じゃ、エルもアスベルと友達になる!
アスベルああ、よろしく、エル
アスベルそれで…二人はどうしてここに?
ミクリオ実は──
アスベルそんな事があったのか…。ルドガーとライフィセットの行方は掴めていないんだな?
ミクリオああ…。スレイも目を覚まさないままだ
アスベルわかった。国王陛下に話して手を貸してくれる人を捜そう
アスベル心配だから、俺もイニル街に向かうよ
エルアスベル、王様と話せるの?すごー
エル王様は忙しいって、前にユーリが言ってたのに
アスベル…!エルはユーリとも知り合いなんだな
アスベル大丈夫だ。リチャード陛下なら、ちゃんと話を聞いてくれる
エルよかった!
アスベル陛下に状況を報告したら、バロニアで治療が出来る人を何人かあたってみよう
アスベル一人では無理でも、数人ならスレイを治療出来るかもしれない
ミクリオ助かるよ
アスベル今から陛下と騎士団に話を通してくる。二人はここで待っていてくれ
エルうん、わかった!いってらっしゃい
scene1襲いくる魔の手
グリューネ──あっちからシュヴァルツちゃんの気配を感じるわ
ミクリオ…!確かなのか?
グリューネそうねぇ…何となくわかるの
ミクリオ…なら、向こうの方角へ向かおう。丁度あの先にメルトキオがある
ミクリオあそこにはいろいろな情報が集まっているはずだ
ルドガーそうだな。メルトキオなら、たくさん人がいるだろうし
ライフィセットねぇ、どうしてグリューネはシュヴァルツの気配が読めるのかな?
グリューネええと、どうしてかしら?
ミクリオさっきから話を聞いているとまるで自分の事がわかっていないみたいだ
ルドガーもしかして、記憶を失ってるんじゃ…
グリューネあら、記憶はちゃんとあるわよ。お昼寝から起きたら、みんながいたわ
ライフィセットそれって、ついさっきの事だよね…
ミクリオ彼女から詳しい情報を聞き出すのは難しそうだな
ルドガーああ…。シュヴァルツを捜してるって事は何か関わりがあるんだろうけど…
ザッザッザ
グリューネ…あら?何か聞こえるわね
ライフィセット向こうから、誰か歩いて来るよ。…大勢いるみたい
ミクリオあれは…シルヴァラントの兵士だ
ルドガーやけに急いでるみたいだ
ルドガー何かあったのかもしれない。話を聞いてみよう
ライフィセットうん!
ルドガーあの…!
兵隊長ん?まだこんなところに人が残っていたのか
兵隊長避難指示を出しているはずだが、行き届いていないようだな
ミクリオ何かあったのか?
兵士1王都メルトキオに魔物の大群が押し寄せたらしい
ライフィセット…!魔物が!?
ライフィセットメルトキオの人達は、無事なの?
兵隊長街の中で大規模な戦いが起こっている。人的な被害も相当出ているだろう
ライフィセットそんな…
兵隊長この辺りも安全とは言えない。君達も早く避難しなさい
ザッザッザ
ルドガー今の話…何か、スレイ達と関係があるんじゃないか?
ミクリオああ…。いきなり魔物が大群で襲って来るなんて、通常じゃ考えられない
ミクリオそれに、メルトキオの方角はグリューネが気配を感じた方向と一致してる
ミクリオおそらく、シュヴァルツが関わっているんだろう
ライフィセットメルトキオに行けば戦いに巻き込まれる事になるけど…グリューネは平気?
グリューネ勿論よぉ。わたくしも、みんなと一緒に戦うわよ
ミクリオ…戦えるのか?
グリューネきっと何とかなるわよぉ
ルドガー……
グリューネ早く行きましょう?街で美味しいものを食べたいわぁ
ライフィセット本当に、ピクニック気分なんだね…
scene2襲いくる魔の手
兵士2早く港へ!停泊している船に乗って、安全な場所に避難するんだ!
女性まだ家に夫が残っているの…!メルトキオに行かせて
兵士2駄目だ!街中はすでに魔物だらけで戻れるような状況じゃない!
女性そんな…
兵士3…すまない。我々も、対応が追い付いていない状況なんだ
兵士3どうして急に、あれだけの魔物が襲ってきたのか…
女性天族達よ。…彼らが、魔物をけしかけたんだわ!
ルドガーあれは…メルトキオから出て来た人達か?
ミクリオそうみたいだな。港に向かっているんだろう
ライフィセットそれだけ、街の被害が大きいんだろうね…
ミクリオメルトキオの人間達は天族が魔物を誘導したと考えているみたいだが…
ミクリオ──グリューネ。シュヴァルツの気配を追えるか?
グリューネそうねぇ…。あっちの方にいる気がするわ
ミクリオ…やはり、メルトキオにシュヴァルツがいるようだな
ライフィセット魔物を動かしてるのはシュヴァルツって事…?
ミクリオまだわからないが、彼女が騒動に関与している事は間違いなさそうだ
ルドガーメルトキオへ急ごう。被害が大きくなる前にシュヴァルツを捜さないと
ミクリオああ、そうだな
scene1人間と天族
ルドガー人が多くて進み辛いな…
ミクリオメルトキオに近付くにつれて、避難者が増えてるんだ。この辺りは特に混乱してるみたいだね
ライフィセットうん…。ここに来るまでに何度か避難する人達に会ったけど…
ライフィセットみんな、メルトキオの街が悲惨な状況になってるって言ってたよね…
きゃあああっ!
グリューネあら、賑やかねぇ
グルルルルル…
女の子こ、来ないで…!
ライフィセットあそこを見て!女の子が魔物に襲われてるよ!
ルドガーこのままじゃ危ない!助けないと!
ミクリオああ、行こう
scene2人間と天族
ライフィセット──ジルクラッカー!
ギャゥウウウ
女の子あ、あれ…?
ルドガー間一髪だったな。間に合ってよかった
ライフィセット君、大丈夫…?
女の子う、うん!助けてくれてありがとう
女の子お兄ちゃん達、強いんだね
グリューネ一人じゃ危ないわよぉ。お母さんとお父さんは?
女の子あ、二人ならあそこに…
女の子お父さん!お母さん!
母親ああ…!無事だったのね…よかった
女の子うん!お兄ちゃん達が助けてくれたんだよ
父親ありがとうございます。何とお礼を言っていいか…
ライフィセットお礼なんて…僕達は、当たり前の事をしただけだから
母親優しいのね。あなた達も避難を?
ミクリオいいや。僕達はメルトキオに向かってる
父親メルトキオに…!?やめておいた方がいい、あそこはもう…
ピーピー
父親…ん?装置が反応している…!?
女の子どうしたの、お父さん?
父親この装置は、天族に反応するんだ。君達は…天族なんだな
ミクリオ……
ライフィセットそう、だけど…
父親離れなさい!彼らは私達の敵だ
女の子え、でも…お兄ちゃん達は、私を助けてくれたよ…?
母親信じちゃ駄目よ!街に魔物を呼び込んだのも天族なのよ…!
母親誰か!ここに天族がいるわ…!
ライフィセットっ…
タッタッタ…
兵士4こんなところに天族が紛れ込んでいたのか!
兵士4やはり、魔物をけしかけたのは貴様達だな!?
ルドガーそんな…!ミクリオ達は何も──
兵士5早くこの家族を港へ!天族から民衆を守るんだ!
女の子お、お兄ちゃん…
ミクリオ──行くんだ。僕達は、大丈夫だから
女の子…わかった
兵士4お前達の目的は何だ
グリューネどうしてそんなに怒ってるの?わたくし達は街に行きたいだけよぉ
兵士5メルトキオの街に魔物を誘導するためか!?
ルドガーそうじゃないって言ってるだろう!俺達は、ただ…
ミクリオ…仕方ないな
チャキッ…
ライフィセットミクリオ…!?
ミクリオ人間にとって僕と君は天族という敵でしかない
ミクリオいつまでもここで足止めされているわけにはいかないんだ
ライフィセットでも…!
ルドガー…戦おう、ライフィセット。俺達は、先に進まないといけない
ルドガースレイ達を止めない限り、この戦いに終わりは来ないんだ
ライフィセットっ…わかった
scene3人間と天族
ミクリオ増援は到着していない。今の内に、メルトキオへ──
ガルルルル!
兵士6く、来るな…!うあああああ!
ザシュッ!
兵士6ぐああああ…!
ライフィセット人が襲われてる…!行かないと!
グリューネあら、走って行っちゃったわね
ルドガーまずい!ライフィセットを追おう!
ミクリオああ
ライフィセットはっ!
ギャゥウウウ
兵士6う…ぐっ
ライフィセット大丈夫!?待ってて、今、僕が…!
ライフィセット──快癒瞬け!ファーストエイド!
パアア…
ルドガーライフィセット!その人の様子は?
兵士6ぐう…
ライフィセット傷が深い…!このままじゃ…
グリューネ…苦しそうねぇ
ミクリオ──やめるんだ、ライフィセット。彼はもう…
ライフィセットまだわからないよ…!もしかしたら、助かるかも…
兵士6はぁ…はぁ…
ミクリオ…ルドガー、剣を貸してくれ
ルドガーああ…でも何に使うんだ?
ミクリオ…こうするんだ
チャキッ
ライフィセット…!ミクリオ、待っ──
グサッ
ルドガー…!
ライフィセットどうして…!何で、こんな…!
ミクリオいつまでも、苦しみを与え続けるべきじゃない
ライフィセットっ…だから、殺すって言うの!?スレイの事も!?
ミクリオ……
ミクリオ…殺す事が救いになると、ある男に教わった
ミクリオ殺す事でしかスレイを守れないなら僕は…親友をこの手で殺める覚悟がある
ミクリオたとえ刺し違えたとしても…スレイが望まない罪を犯させるわけにはいかない
ルドガーミクリオ…
ライフィセット…たとえその人が変わってしまっても僕は…大切な人に生きていてほしいと思うよ
ライフィセットミクリオは、スレイと一緒に生きたいと思わないの…!?
ミクリオ……
グリューネまあ。ミクリオちゃんとライフィセットちゃんはと~っても優しいのねぇ
ミクリオ…唐突だな
グリューネだって二人共、お互いを心配して言葉をかけてるんでしょう?
グリューネそれって、相手を思い遣ってるのは、同じって事よねぇ
ライフィセット…!
ミクリオ…悪かった。僕が感情的になったようだ
ライフィセット…ううん、僕も…ごめんなさい
ルドガーまだ、スレイを救う方法がないと決まったわけじゃない
ルドガー今、俺達に出来る事を探そう
ライフィセットうん、そうだね
グリューネみんなの気持ちを合わせれば、きっとうまくいくわ
scene1虚ろなる導き手
ライフィセットここがメルトキオ…
ミクリオああ。だけど…いつもとはまるで雰囲気が違う
グルルル…
ルドガー人影は見えないけど…そこら中に魔物がいるな。空気が張り詰めてる感じがする
ミクリオ普段はもっと活気に溢れて穏やかな街だ。今は…見る影もない状態だけど
ミクリオ兵士達以外は街の外に避難したんだろう。建物の損壊も激しい
グリューネ…シュヴァルツちゃんの気配が強くなったわ。近くにいるみたいねぇ
ライフィセットどっちの方向にいるかわかる?
グリューネそうねぇ…。多分…あっちの方、かしら
ミクリオ酷く曖昧だが…君の言葉を信じるしかないな
グリューネ大丈夫よ。この気配だけは、読み違えた事がないもの
グルルルルル…!
ルドガー…!魔物達に気付かれたみたいだな
ミクリオああ。先へ進むには魔物を倒すしかなさそうだ
ミクリオ少し数が多いが…こんなところで立ち止まっているわけにはいかない。行こう
scene2虚ろなる導き手
ルドガー…ふう、この辺りの魔物は大体倒せたな
ミクリオああ。だけど、油断は禁物だ
ミクリオ街の中にはまだかなりの数の魔物が残っているだろうから
グリューネ…!
グリューネ来るわ…
ライフィセットえ…?
シュヴァルツ久しいな、グリューネ
ミクリオ…!いつの間に背後に…!
グリューネあなたは…わたくしの、お知り合いの方かしら?
シュヴァルツよもや記憶すら戻っておらぬとは
シュヴァルツグリューネが我を知るのと同様に、我はグリューネを知る存在
グリューネわたくしも、あなたを知ってるのね?
グリューネだから、あなたの気配が追えるのかしら…
シュヴァルツ我を感じるまでには、力を取り戻しているわけか
シュヴァルツ記憶がなければそれでよい。すべての力を取り戻す前に…滅びの道を歩め
バシュッ
グリューネうう…っ
ライフィセットグリューネ!
ルドガーいきなり何をするんだ!
シュヴァルツ邪魔立てするな、人の子よ
ミクリオ…シュヴァルツ、答えろ。スレイと結託して、何をするつもりなんだ
ミクリオ負の感情を蔓延させる事に、何の意味がある
シュヴァルツ愚問だな。我は破壊神としてこの世界ごと無に帰すのみ
ライフィセット…!どうしてそんな事を…!
シュヴァルツこの世界に、如何ほどの価値があると言える?
シュヴァルツ醜態を晒すなら、潔く虚無の彼方へと還る方がよい
ルドガースレイと手を組んだのは…その計画を進めるためなのか
シュヴァルツあの者の心に憑りついた闇は我に大きな力を与える
シュヴァルツ時が来るまで、利用しているだけだ。所詮はあの者も人の子よ
ミクリオ…!
ミクリオスレイを利用して…世界を壊すつもりなのか!
ミクリオ彼の怒りや悲しみは君に利用されるために生まれたものじゃない!
シュヴァルツ人の子よ。わきまえよと教えた
シュヴァルツこのまま無に還るがよい
ライフィセットさせない…!
バシュッ!
シュヴァルツ…哀れな。その程度の力で我を止めようとは
グリューネどうして優しい子達を苦しめるの?
シュヴァルツグリューネよ、何故わからぬ。我に過ちはない
シュヴァルツ過ちを犯すは人の子の業。幾度の過ちは人の子の罪
シュヴァルツこれがこの星の実態だ。守る価値など到底ありはしない
グリューネ…あなたが奪おうと言うのなら、わたくしは立ちはだかるわ
シュヴァルツ何故、脆弱な人の子を守ろうとする?記憶すら失ったその身で
シュヴァルツ争いに疲れた人の子の願いを、我がかなえようというのだ
シュヴァルツ全てが無ければ、痛みも苦しみもない
シュヴァルツすべてが虚無へと還ればよい
グリューネあなたはわかっていないのね
グリューネこの世界には命を懸けるに値するくらい素晴らしいものがたくさんあるのよ
シュヴァルツ…グリューネよ。もう我の邪魔をするな
バシュッバシュッ
ルドガー&ミクリオくっ…!?
グリューネやめなさい
シュヴァルツ……
グリューネわたくしは、あなたと、戦わなければならない
グリューネ不思議と…その事だけは思い出せたわ
シュヴァルツそのような半端な覚醒で、我の前に立ちはだかった事、後悔するぞ
グリューネ後悔なんてしないわよぉ。わたくしが正しいと思う道ですもの
グリューネわたくしが守りたいと思うみんなをあなたに壊させたりしないわ
シュヴァルツあわれな存在だな、グリューネよ。記憶がなくとも道を変えられぬとは
グリューネそれはあなたも同じなのでしょう?
シュヴァルツ…言葉は無意味だ。始めようか
グリューネ来るわよ。みんな、大丈夫?
ライフィセットうん。何があってもあの人を止めなくちゃ
ミクリオ…僕は、彼女を許さない
ミクリオシュヴァルツがスレイを利用しようとするなら僕が止めて見せる
ルドガーそうだな。俺達で、人と天族の争いを終わらせよう
シュヴァルツ人の子よ、我が腕に抱かれ、安らかなる眠りに落ちよ
シュヴァルツ我が力をもって、無に還るがよい!
scene3虚ろなる導き手
シュヴァルツこれが…人の子の力だと言うのか…
グリューネわたくしの力が完全ではないようにあなたの力も完全ではなかったようね
シュヴァルツおのれ…。我の糧となる人の業がこの地を満たしていれば…
シュヴァルツ何故抗う。いずれこの世界は負の感情で満たされると言うのに
ライフィセットそんな未来にはさせない!
ライフィセット諦めなければきっと、人間と天族は手を取り合う事が出来るはずだから
ミクリオ…!
シュヴァルツ戯言を。人は迷い、苦しみ、悲しむ事から逃れられはしない
ルドガーそんなの、やってみないとわからないだろう
グリューネみんなの言う通りよ。未来なんて、誰にもわからないわ
シュヴァルツ愚かな…
ミクリオ彼女をこのままにしておくと危険だ。何か策を考えないと…
グリューネわたくしが封印するわ。シュヴァルツちゃんの力が弱まっている、今の内にね
ミクリオそんな事が出来るのか?
グリューネ出来るわよぉ。何となく、やり方がわかるの
グリューネずっと前にも同じ事をしたような気がするわぁ
グリューネそれじゃあ、始めるわね
???そうはさせない
???──はああっ!
グリューネっ…!?
ミクリオスレイ…!何を…
スレイありがとう、ミクリオ。シュヴァルツを弱らせてくれて
スレイオレは…この時を待ってたんだ
パアア…
ルドガーあれは…!
グリューネシュヴァルツちゃんの力を自分の中に取り込んだのね
ライフィセットそんな…!
スレイこれで…オレの願いがかなえられるよ
ミクリオっ…スレイ…
scene1スレイの目的
グリューネ…あなたは、その力を取り込んで何をするつもりなのかしら?
スレイそれは──
ガサッ
スレイ…邪魔が入ったみたいだな
ガルルルル!
ルドガーくっ…まだ魔物が残ってたのか!
スレイここは、ミクリオ達に任せるよ
ミクリオ待て、スレイ…!逃げるつもりか!
スレイオレは、逃げも隠れもしない。その魔物を倒して追って来られたら話をしよう
スレイいつまでも、ミクリオ達にオレの目的を邪魔されるわけにもいかないしね
ミクリオスレイ…
ガルルルル…
グリューネあら、何だか気が立ってるみたいねぇ
ライフィセット魔物を操ってたシュヴァルツが消えたから、制御が解けて混乱してるのかな
ザザッ…!
ルドガー…!こっちに向かってくる!
ライフィセットグリューネ、危ない!
グリューネあらあら
ミクリオはああっ!
バシュッ!
ギャゥウウウウ…
ミクリオ怪我はないか?
グリューネ大丈夫よぉ。強いわねぇ、ミクリオちゃん
ミクリオ…君はもう少し周りを警戒した方がいい
ミクリオスレイを追おう。今の彼を野放しにしておくわけにはいかない
ルドガーああ…
scene2スレイの目的
ルドガー──この辺りも、かなり荒らされてるな
ミクリオそれだけ魔物達が暴れまわったという事だろう
ライフィセット…!みんな、あそこ…!
スレイ…やっぱり、追いついて来たな
スレイあの程度の魔物じゃ足止めくらいにしかならないと思ってたよ
ミクリオスレイ!君は…シュヴァルツの力が弱まる時を待っていたと言ったな
ミクリオ初めから、彼女の力を取り込むつもりだったのか
スレイそうだよ。オレの願いをかなえるためには、彼女の力が必要だった
スレイ封印から目覚めたシュヴァルツがある程度力を取り戻してから取り込むつもりだったんだ
グリューネわたくし達がシュヴァルツちゃんを倒さなくても、あなた自身の手で力を奪うつもりだったのね
スレイああ。人間と天族の負の感情を取り込んで彼女はかなり力を取り戻してたからね
ライフィセットシュヴァルツがスレイを利用してたんじゃなくて…
ライフィセットスレイが、シュヴァルツを利用してたって事?
スレイどっちだって同じさ。最終的に残った方が、力を得られるってだけで
スレイ結果的に、オレがシュヴァルツを取り込む事になったけどね
ルドガー…!あのモヤは…
ルドガーはっ!
ミクリオ…!モヤの正体を確かめるのか?
ルドガーああ。今度こそ、見極めてみせる!
ルドガー──はああっ!
ガキンッ!
スレイその力…前に会った時も使ってたな
スレイ力が強化されるみたいだけど、今のオレには通用しないよ
scene3スレイの目的
ルドガーくっ…!?
ライフィセットルドガー!大丈夫!?
ルドガーああ…。それにしても、何て力だ…
ルドガー前に遺跡で戦った時と、全然違う…
グリューネシュヴァルツちゃんを取り込んでより強い力を手に入れたのねぇ
ミクリオルドガー。スレイに憑りついたものの正体はわかったのか?
ルドガーああ。近くで見て確信したよ
ルドガーあれは、時歪の因子じゃない。あのモヤは一体、何なんだ…
ミクリオ…!
ミクリオ…そうか。やはり、モヤの正体は掴めないんだな…
ライフィセットミクリオ…
ルドガースレイ。君は、シュヴァルツのように世界を無に帰すつもりなのか?
スレイ…そんな事はしないよ
スレイオレの目的は、全ての人間を滅ぼす事だから
ミクリオ…!
グリューネ何故、人間を…?
スレイ人がいなくなれば天族を傷付ける存在はいなくなる
スレイもう二度と…エドナ達のように、仲間を失う事もなくなるだろ?
ミクリオっ…だから、消し去ると言うのか!君と同じ人間を、この世界から!
スレイああ。それで、争いが終わるなら
スレイオレは一人残らず人間を滅ぼしてみせる
ミクリオ…君に、そんな事をさせるわけにはいかない!
ライフィセットミクリオ、待って…!
スレイ本当は、ミクリオとは戦いたくないんだけど
スレイこのまま何もせず立ち去ってはくれないみたいだな
ミクリオ…君はもう、同じ夢をみた友じゃない
ミクリオ僕は君を…止めてみせる!この戦いで、君の命を奪う事になったとしても…!
scene1ミクリオの選択
ミクリオ──はああっ!
キィィンッ!
スレイミクリオは、本気でオレを殺すつもりなのか?
ミクリオああ…。僕は、そのために今、ここにいる!
ミクリオ君を救えないとわかった時から今日まで生き長らえて来たのは君にこれ以上、罪を犯させないためだ
スレイ…わかった。ミクリオにその覚悟があるなら──
スレイオレも、もう戦いを避けるのはやめにする
カシーン!
ミクリオくっ…!?
スレイ──地竜連牙斬!
ミクリオぐう…っ
ルドガーミクリオ…!
ライフィセットやめてよ、二人共…!どうして友達同士で戦わなくちゃいけないの!?
ミクリオっ…邪魔をしないでくれ!これは、僕とスレイの問題なんだ
ミクリオそれに、ここにいるスレイを倒せば君達の世界のスレイが救われるかもしれない
ライフィセットそんな事、誰も望んでないよ…!
ミクリオ望む望まないに関わらず生きていれば選択を迫られる時が必ず来る
ミクリオ僕は、スレイを苦しみから解放したい。だから…彼と戦う道を選ぶ
ミクリオスレイの尊厳を守るためにはもう、この方法しかないんだ…!
ルドガーミクリオ…
スレイ──悲しいな。イズチにいた時も、導師になって旅をしていた時もいつも一緒にいたのに
スレイ今は、こんな風に剣を交えるようになるなんて…あの頃は、考えもしなかった
ミクリオ……
ミクリオスレイ、君は…人と天族を繋ぐ架け橋になりたいと言っていただろう
ミクリオその時の気持ちを失ってしまったのか…?あの頃の夢を、思い出せないのか?
スレイあんな風に仲間を殺されたのにミクリオは人間を恨んだりしないんだな
スレイオレは、もう決めたんだ。人間を滅ぼして、天族達が平和に暮らせる世界を作るって
ミクリオっ…
ミクリオ…覚えているか、スレイ。僕は君に…何もかも一人で背負わせたりしないと、そう言った
ミクリオだからこそ、僕の手で…君を止めてみせる。他の誰にも、この役目は譲らない
ミクリオ…終わりにしよう、スレイ。ここで、何もかも!
グリューネ…ミクリオちゃん、すごく悲しそうだわ
ライフィセット二人を止めなきゃ…!あんな風に友達同士で傷付け合うのは間違ってるよ…!
ルドガー待つんだ!下手に飛び込んだら、ライフィセットも無事じゃすまない
ライフィセットでも…!
天族の男1──いたぞ!スレイ様を狙う人間と天族だ!
ルドガー…!スレイが率いている天族達か…!
グリューネと~っても気が立ってるみたいねぇ。何か嫌な事があったのかしら
ライフィセットそんな事言ってる場合じゃないよ!あの人達を倒して、早くミクリオとスレイを止めないと!
グリューネみんな、戦いが好きなのねぇ。メルトキオのご飯を食べられるのはもう少し先になるかしら…
scene2ミクリオの選択
ミクリオ──ヴァイオレットハイ!
バシュッ
スレイ…強くなったな、ミクリオ
ミクリオ僕の術を余裕で躱しておいて、よく言うよ
スレイミクリオの戦い方はよく知ってる
スレイ隣でずっと見てたから、手に取るようにわかるんだ
ミクリオ…あれから数百年経った。何もかも同じだと思っていたら痛い目を見るよ
スレイ忠告どうも。でも…
タタッ
ミクリオ(早い…!?)
スレイオレも、あの頃とは違うんだよ、ミクリオ
ミクリオくっ…!
パアアア…
スレイ……
シェリアモヤのせいで術が届かない…。厄介ね
エステルはい…。ですが、少しずつモヤが薄まっている気がします
シェリアそうですね。少しきついけど…このまま二人で治癒を続けましょう
エステルはい、任せてください!
アスベルシェリア。少し休んだ方がいいんじゃないか?
アスベルエステリーゼ様も…
エステル私は大丈夫ですよ、アスベル。このまま続けさせてください
シェリアここでやめたら、振り出しに戻っちゃうかもしれないしね
アスベル…わかった。くれぐれも、無理はしないでくれ
シェリアうん、わかってる。心配しないで
エル…なんか、すごー。ルドガーの家にお姫様がいるよ、ルル
ルルナァ~
エル王様とも話せるし、もしかしてアスベルってタダモノじゃない…?
アスベルい、いや…そうじゃないんだ
アスベルリチャード陛下にスレイの事を報告していた時に、たまたまエステリーゼ様がいらっしゃって
アスベルスレイを助けるために同行したいと申し出てくださったんだ
エルへ~。シェリアは、アスベルの幼馴染なんだよね?
アスベルああ。スレイの治療は、シェリアとエステリーゼ様に任せよう
アスベル俺達は、スレイに起こった異変の原因を調べないといけないな
ミクリオ…おそらく、ルドガー達が落ちた穴とスレイの異変には何か関係性があるはずだ
ミクリオエル。もう一度、その時計を見せてもらえるかな?
エルうん、いいよ
アスベル穴が現れる前に、この時計が光ったんだよな…?
ミクリオああ。今は特に変化がないようだけど何かの要因で時計が反応したんだと思う
アスベルエル。穴が現れる前に、変わった事はなかったか?
エルうーん…。確か、ルルがスレイのベッドに登っちゃって…
スレイう…
シェリア&エステル…!
シェリアみんな、来て!スレイの様子が…
エステル意識が戻りそうです!
エルスレイ、苦しそうだよ…?大丈夫かな…
スレイうぅ…
ミクリオっ…しっかりするんだ、スレイ!
ミクリオスレイ!!
scene1呼応する世界
スレイっ…
カラン…
ミクリオ…!
スレイこんな事しちゃ駄目だ…。でも、天族のみんなを守らないと…
ミクリオスレイ…?
人間の男く、来るな…!
スレイ&ミクリオ…!
ミクリオどうしてあんなところに人間が!?全員避難したわけじゃなかったのか…!
人間の男頼む、見逃してくれ…!
天族の男2──今更手遅れだ。逃げ遅れた自分を呪うんだな
人間の男うう…どうか…命だけは…
天族の男2はっ、命乞いか? 俺達の仲間が泣き叫んで助けを乞うてもお前達は剣を振り下ろしただろう!
天族の男2お前にも同じ苦痛を与えてやるよ。死んで罪を償え!
天族の男2はあああああっ!
スレイやめろ!
カシーン!
天族の男2な…!
ミクリオ…!
ミクリオスレイが、人間を助けた…?
天族の男2何故止めるのですか、スレイ様!
スレイ駄目だ、こんな事…オレ、は…
スレイう…
ミクリオ…!スレイ!
スレイ逃げ、ろ…ミクリオ。オレが、まだ…抑えられている間に…!
ミクリオ…!スレイ、まさか君は…
スレイオレ、は…人間を…
スレイ人間を、滅ぼさないと…。違う、オレは…
ミクリオしっかりするんだ、スレイ…!
天族の男3──スレイ様から離れろ!
ミクリオ…!
ルドガーミクリオ、危ない!
ガキーンッ
ルドガーくっ…!
ミクリオルドガー!
天族の男4スレイ様、今の内です!こちらへ!
スレイ…ああ…
ミクリオ待て…!スレイをどこへ連れて行く気だ!
天族の男5邪魔をするな!
ザシュッ
ミクリオぐう…っ!?
天族の男5あの方は我々を導く光。決してお前達に討ち取らせるわけにはいかない
ミクリオ今のスレイが、光だって…?笑わせないでくれ
ミクリオ君達の相手をしている暇はない。どいてくれ!
ミクリオあの頃のスレイがまだ失われていないなら、僕は…彼を諦めるわけにはいかないんだ!
天族の男5人間に下った天族が…!軽々しくスレイ様の名を呼ぶな!
ライフィセットミクリオ、下がって!──虹香澄!
バシュウウッ
天族の男5ぐう…!?
ライフィセットみんな、構えて!天族達がこっちに迫って来てるよ
ルドガーミクリオ、怪我は大丈夫なのか?
ミクリオこの程度の傷なら、問題ないよ
グリューネスレイちゃんを追いかけるためにまずはあの人達をどうにかしないといけないわねぇ
ミクリオ…ああ。早々に、片を付ける!
scene2呼応する世界
グリューネ静かになったわねぇ
ルドガーああ。街に攻めて来た天族達は全員倒せたみたいだな
パアア…
ライフィセットよし。これで治療は済んだよ
人間の男…君は天族なのに、私の事を助けてくれるんだな
ライフィセットうん。傷付いてる人を助けるのに人間も天族も関係ないよ
人間の男そうか…。君の言う通りだ
人間の男助けてくれてありがとう。心から感謝しているよ
ライフィセットどういたしまして
ミクリオ……
グリューネミクリオちゃん、どうかしたの?辛そうな顔をしてるわ
ミクリオ…ライフィセットを見ていると、時々ひどく眩しく感じるんだ
ミクリオ全ての人間が天族を恨んでるわけじゃない…
ミクリオそんな当たり前の事を、ずっと忘れていた
ルドガー…スレイと何かあったのか?
ミクリオ…戦っている最中に、スレイの身体から溢れていたモヤが一瞬消えたんだ
ミクリオその後、スレイは天族に襲われそうになっていた人間を助けた
ミクリオあの時のスレイは…昔の彼に戻っていたと思う
ルドガ…!
ルドガー何かの要因で、スレイに憑りついたものの力が弱まったのか…
グリューネそれなら、スレイちゃんを助けられる方法があるかもしれないわねぇ
グリューネ一度、元の自分自身を取り戻せたんだもの。可能性はあるはずだわ
ミクリオ…スレイを追いかけよう
ミクリオ人間を助けた時のスレイは、かなり精神が混乱しているみたいだった
ミクリオあんな状態で人間や天族と戦ったりしたら、危険だ
ルドガーああ、そうだな
ミクリオグリューネ。スレイの中にいるシュヴァルツの気配をたどる事は出来るか?
グリューネ出来るわよぉ。あっちの方から、シュヴァルツちゃんの気配を感じるわ
ミクリオ──案内してくれ。僕はもう一度…スレイと話さなくちゃいけないんだ
scene1夢の続きを
グリューネスレイちゃん達は、あっちの方に向かったみたいねぇ
ライフィセット見て、あそこに村があるよ
ミクリオトーティス村だ。何か情報を得られるかもしれない、寄ってみよう
ルドガーああ
グルルルル…
グリューネあら、こんなところに魔物ちゃんが…
ライフィセットグリューネ、危ないよ!手を伸ばさないで!
グリューネどうして?仲良くなれるかもしれないわよぉ
ギャァアアア!
ルドガーますます怒らせたみたいだな…
ミクリオメルトキオを襲った魔物がここまで逃げて来たんだろう
ミクリオこのまま放置しておけば怪我人が出る。僕達で倒してから進もう
ルドガーああ、わかった!
scene2夢の続きを
ルドガー──これは…
兵士1うう…
兵士2兵隊長!魔物との戦いで、半数の兵が動けない状態です
兵隊長怪我人は奥の小屋に運べ!動ける者は私と村の警護に当たる
兵隊長いつ魔物がこの村にも押し寄せてくるかわからん!早急に兵を配備するぞ
兵士2はっ!
ミクリオメルトキオの周辺で魔物と戦っていたシルヴァラントの兵士達だね
ライフィセットひどい…。みんな、傷だらけだ
グリューネシュヴァルツちゃんの気配はここで一旦途切れているわ
グリューネスレイちゃんが力を使えばまた追えると思うのだけれど
ミクリオ…おそらく、戦いはこれだけじゃ終わらない。彼らが動く前に居場所を突き止めないと
ミクリオスレイ達を見かけた人間がいないか捜してみよう
ルドガーそうだな。もしかしたら、スレイ達が向かった場所がわかるかもしれないし…
兵士1ぐっ…!
兵士2くそっ、血が止まらない…!
ライフィセット…!
ガシッ
ミクリオ待つんだ、ライフィセット。どこへ行くつもりなんだ
ライフィセットあの人を助けないと…!
ミクリオ君の気持ちはわかる。だけど、天族を恨んでいる人間もいるんだ!
ミクリオむやみやたらに人間と関わって、もし君が傷付くような事があったら…!
ライフィセット危険な事はわかってるよ。でも…僕は、人間を信じたい
ライフィセットそれに、もし恨まれたとしても自分の意思を貫いた事を後悔したりはしないよ!
ミクリオ…!
ライフィセットあの…!
ピーピー
兵士2…!装置が反応してる!?
チャキッ
兵士2お、お前…天族だな!
ミクリオくっ…!
グリューネ待って、ミクリオちゃん
ミクリオどうして止めるんだ!?
グリューネ少し、様子を見守りましょう。ライフィセットちゃんならきっと、大丈夫よぉ
ミクリオ……
ライフィセット──確かに、僕は天族だけど…ここにいる人達を傷付けたりしないよ
ライフィセットその人を助けたいんだ。だから、僕に治療させてほしい
兵士2…!
兵士1うう…っ
兵士2…わかった。頼めるか?
ライフィセットうん!
パアア…
兵士2傷が…塞がっていく…
ライフィセットとりあえずはこれで、大丈夫だと思う
兵士2そうか…。…ありがとう
ライフィセットううん。役に立てたなら、よかった
兵士2…まだ、奥の小屋に大勢怪我人がいるんだ
兵士2もしよかったら、手を貸してくれないか
兵士2自分でも、都合のいい事を言っている自覚はある…。さっきの態度は詫びるよ
ライフィセット…ちょっとだけ、待ってて
ライフィセットミクリオ、僕…
ミクリオ──行くといい。スレイ達の事は、僕達の方で探っておくから
ライフィセット…!うん!
ライフィセットじゃあ、僕はあっちの方にいるから、何かあったら声をかけてね!
ミクリオ…彼は、どんな人間にも天族にも分け隔てなく接するんだな
グリューネそれがライフィセットちゃんの優しいところよねぇ。お姉さん、感動しちゃうわ
ミクリオ……
ルドガーミクリオ?どうかしたのか?
ミクリオ本当の事を打ち明けると…僕は人を救おうとするライフィセットを見るたびに、苦しかった
ミクリオ過去の自分と重なるようで、心が痛むんだ
グリューネミクリオちゃん
ギュッ…
ミクリオグ、グリューネ…何を…
グリューネお疲れさま。よく頑張ったわね
グリューネきっとミクリオちゃんは…ずーっと一人で悩んで来たのよねぇ
グリューネ本当は…ミクリオちゃんだって人間と仲良くしたいんでしょう?
ミクリオと、とにかく…離れてくれないか
ミクリオ──君の言う通りだ。僕も昔は…人間と天族の争いを止めようと必死になっていた
ミクリオだけど、長い時が過ぎて…いつまでも終わらない戦いに疲れてしまったんだ
ミクリオ…ライフィセットと違って僕は、全てを諦めようとしていた
ルドガーそれでも、ミクリオはスレイから逃げなかったじゃないか
ルドガー大切な人を倒してでも救いたい…その決断を下したミクリオはすごいと思うよ
ルドガーミクリオがどれだけスレイの事を大事だと思っているのか伝わってくるんだ
ミクリオ……
ミクリオ…聞いてくれ、ルドガー
ミクリオ僕はスレイが人間を助ける姿を見て、確信したんだ
ミクリオ彼の中にはまだ、人間を助けたいと願う気持ちが残っている
ミクリオ僕は…スレイを取り戻したい。スレイが諦めていないのに、僕が諦めるわけにはいかないからね
ルドガーああ、そうだな
ルドガーミクリオなら絶対にスレイを助ける方法を見つけ出せるよ
ミクリオありがとう、ルドガー。僕はもう、どんな事があっても立ち止まったりしない
ミクリオスレイを取り戻して…もう一度、途切れた夢の続きを二人で見たいんだ
グリューネ素敵ねぇ。きっと、ミクリオちゃんならなし遂げられると思うわぁ
ルドガーそのためにはまず、人間と天族の戦いを止めないとな
ミクリオああ。──諦めなければきっと、人間と天族は手を取り合う事が出来る…
ミクリオライフィセットが言っていた言葉を僕も信じようと思う
ミクリオだから今は…僕に出来る精一杯の事をするだけだ
ミクリオ僕はもう一度スレイを封印する
ルドガー…!
ミクリオそのためには…グリューネ、君の力が必要だ。手伝ってくれないか
グリューネミクリオちゃんは、それでいいのね?
ミクリオああ。僕は必ず世界を変えてみせる
ミクリオ何百年…何千年かかっても人間と天族が平和に暮らせる世界を作るよ
ミクリオスレイが次に目を覚ました時に…苦しむ事がないように
ルドガーミクリオ…
ミクリオ君達に出会ってから、少しずつ状況が変わって来た
ミクリオこの数百年で知り得なかった事が少しずつ解き明かされていってる
ミクリオスレイに人を救いたいと願う心が残っている限り、希望はあるはずだ
ミクリオだから…僕はもう二度と、スレイを救う事を諦めないよ
ルドガーああ。俺達も、手を貸すよ
ミクリオありがとう
グリューネ…それなら、早くスレイちゃん達を捜さないといけないわねぇ
ルドガーひとまず、村の人達に話を聞いてみよう
ルドガー怪我をした人が多いみたいだから、薬を運ぶ手伝いをしながら一人一人に聞いて回った方がいいな
グリューネそうねぇ。私達もライフィセットちゃんを見習って、お手伝いしましょうか
ミクリオああ、そうだね
scene1暗躍する影
ライフィセットグリューネ。シュヴァルツの気配は感じる?
グリューネそうねぇ…今はまだ何も感じないわぁ
ルドガートーティス村にいた人達の話だと、スレイ達はこっちの方角に向かったみたいだけど…
ミクリオこの先にあるのは、ウィンドルの王都、バロニアだ
ミクリオスレイの目的が人間を滅ぼす事なら人の集まる場所が標的になるだろう
ライフィセットだったら、急いでバロニアに行かないと!
ルドガーああ。スレイ達が動けばメルトキオの時のように怪我人が大勢出る事になる…
ミクリオ…ああ
ライフィセット大丈夫だよ、ミクリオ!僕達ならきっと、スレイを止められる
ライフィセットミクリオがスレイを助けたいって話してくれた時…僕、本当に嬉しかったんだ
ライフィセット二人が戦う姿を見るのは、すごく…辛かったから
ミクリオライフィセット…
グリューネミクリオちゃんを変えたのは、ライフィセットちゃんよねぇ
ライフィセットえ、僕が…?
ルドガーああ。ミクリオはライフィセットが人を助ける姿を見て、昔の気持ちを思い出したんだ
ミクリオ君には感謝してる。ありがとう…僕に、あの頃の気持ちを取り戻させてくれて
ライフィセットそ、そんな風に言われるとなんだか照れるね…
ライフィセットでも、ミクリオはきっと一人でも同じ答えを出していたと思うよ
ライフィセットミクリオはずっとスレイを助けようと頑張って来たんだから
ミクリオ…どうだろうね。君達がいなければ、僕は絶望したままだった
ミクリオ君達がこの世界に来た事で風向きが変わったのは確かだよ
グリューネあら?ルドガーちゃん達はどこか遠いところから来たの?
ルドガーあ…そう言えば、グリューネにはちゃんと説明してなかったな
ルドガー俺達は、この世界とは別の世界から来たんだ
グリューネ世界って、そんなにたくさんあるものなのねぇ
グリューネわたくし、ルドガーちゃんとライフィセットちゃんに会えてとーっても嬉しいわぁ
ライフィセット僕も。こんな風に別の世界で仲間が出来るなんて思ってなかった
ライフィセットここに来た時は戸惑ったけど…今は来てよかったって思ってるよ
ミクリオ…この世界のスレイを封印した後で君達が元の世界に戻るための方法を探そう
ミクリオ正史世界にいるスレイが目を覚ましているのかも気になる
ルドガーああ。次こそ必ずスレイとの戦いに決着をつけよう
グリューネ悔いが残らないようにルドガーちゃん達との時間を過ごしたいわねぇ
グリューネバロニアに着いたら、何か美味しいものを食べましょう
ライフィセットあはは。グリューネはどんな時でも変わらないね
ミクリオ…君のそういうところに、僕達も救われているのかもしれないな
グリューネみんながにこにこしてるのを見るとわたくし、と~っても気持ちがいいわぁ
ルドガー街はまだ、無事みたいだな
ライフィセットうん。でも…やけに静かだね
ミクリオああ…人の気配がしない。まるで、街の中が空になったみたいだ
グリューネ…シュヴァルツちゃんの気配がするわ
グリューネ街の中で力を使ったみたい
ミクリオ…一歩遅かったようだね。この辺りにいた人間達は街の外へ避難したんだろう
ミクリオ急ごう。早くしないと、メルトキオの街のようにバロニアがめちゃくちゃになる
ライフィセットうん…!
ザッザッザ…
天族の男1──そんなに簡単にこの先へ進ませると思うか?
ルドガーお前達は…
天族の男1必ずまた邪魔をしに来ると踏んでいたが…こんなに早く、ここを嗅ぎ付けるとは
天族の男1厄介な連中だな、お前達は。そこまでして人間を守りたいのか
ミクリオ人間も天族も関係ない。僕達は、この無意味な戦いを止めたいだけだ
天族の男2俺達は人間と相容れない。あいつらが生きている限り殺し合う運命なんだ
ライフィセットそんな事ない…!僕らは人間と一緒に生きていける
ミクリオああ。互いに理解しようと努力すれば必ず、わかり合えるはずだ
天族の男1戯言を!
天族の男1お前達にはここで死んでもらう。スレイ様の邪魔はさせない
グリューネ…シュヴァルツちゃんの力が強くなっているわ。あまり時間はなさそうねぇ
ミクリオ彼らを倒して前に進もう。スレイが人間達を攻撃する前に止めないといけない
ルドガーああ、そうだな
scene2暗躍する影
スレイこれでやっと、終わる…。人間と、天族の戦いが…
コツコツコツ…
???──順調に事が進んでいるようだな
スレイ…そうでもないよ。ミクリオがオレを止めようとしてくるから
スレイそれに、別の世界から来たルドガーと、ライフィセットもね
???だが、お前は全てをやり遂げるつもりだろう
スレイ…ああ。どうやったって人と天族の争いは止まらない
スレイあなたが言ったように…平和な世界を作るためにはそれ相応の犠牲が必要なんだ
???……
スレイオレはもう行くよ。ミクリオ達が来てるみたいだから
???…やはり、この世界にたどり着いたか
???お前は、どう選択する?ルドガー
scene1友の救済
ミクリオ…スレイ
スレイまた、追いかけて来たんだな
ミクリオああ。君に人間を滅ぼさせるわけにはいかないからね
スレイ何時からミクリオは人間の肩を持つようになったんだ?
ミクリオ僕は、天族の味方でも人間の味方でもないよ
ミクリオただ君と見た夢を…平和な世界の実現を、望んでいるだけだ
スレイ人と天族が平和に暮らせる世界を作る…今更そんな事が出来るはずがないだろ
スレイどちらか一方が滅びない限り…この争いは、終わらない
ミクリオ…君は、またその感情に飲まれてしまったんだな
ルドガースレイに憑りついたものの力は一時的に弱まっただけだったのか…
グリューネそうねぇ。モヤがスレイちゃんの心の闇を増幅させているみたいだわ
ライフィセット…ミクリオ、大丈夫?
ミクリオああ。もう諦めないと、自分で決めたからね
ミクリオスレイ。僕は…必ず君を助けてみせる
スレイ…何だか顔つきが変わったな、ミクリオ
スレイ迷いがなくなったみたいに見えるよ
ミクリオルドガー達のお蔭だ。僕は、僕の夢を取り戻した
ミクリオだからスレイ。君が昔の君に戻るまで…一人でも足掻いてみるつもりだ
スレイ何をする気か知らないけど、オレはそう簡単に止められないよ
スレイ…この前の続きをしようか。今でもミクリオと戦いたいとは思ってないけど
スレイオレ達はどっちも諦めが悪いみたいだからさ
ルドガーく…すごい気迫だな
グリューネスレイちゃんの中からシュヴァルツちゃんの力を感じるわぁ
ライフィセット僕達がスレイを止めないとバロニアが大変な事になるよ
ミクリオああ。ここで負ける事は許されない
ミクリオスレイ…君を救ってみせる。すべての、苦しみから
スレイ無理だよ、ミクリオ。オレが救われるのは…人間を滅ぼした後だけだ
スレイだから…オレの目的のためにみんなにはここで消えてもらう!
scene2友の救済
ミクリオ──はああ!
ガキィィン
スレイっ…この…!
グリューネスレイちゃんの体勢が崩れたわ
ライフィセット僕に任せて!──カレイドイグニス!
バシュッ
スレイくっ…!?
ライフィセット今だよ、ルドガー!
ルドガーああ!
ルドガーはああああっ
スレイぐうううう…
ルドガー…!?これは…
ライフィセットモヤの形が変わった…!?
グリューネ強い力を感じるわぁ。スレイちゃんの身体から溢れていたモヤをぎゅっと濃縮させたみたいな…
ルドガー…!
ルドガーミクリオ、あれを壊すんだ!おそらくあれが…スレイに憑りついたものの正体だ!
ミクリオ…!ああ、わかった!
ミクリオ双流放て!──ツインフロウ!
バシュッ
スレイぐうっ…
ミクリオ…!
スレイ…うっ…
ミクリオスレイ…!
スレイ…ミク、リオ…
ミクリオ大丈夫か!?痛むところは…
スレイ…大丈夫。相変わらず心配性だな、ミクリオは
ミクリオスレイ…戻ったんだな。よかった…
グリューネモヤの影響が消えたみたいねぇ
ライフィセットうん。さっきミクリオが壊したもの…あれが、異変の原因だったんだね
ルドガーっ…この光は…!?
シュヴァルツ……
ライフィセットあれ…!スレイの傍にシュヴァルツが倒れてるよ!
グリューネスレイちゃんが元に戻ったからシュヴァルツちゃんも出てこられたのね
グリューネシュヴァルツちゃんが目覚める前に、封印しましょう
グリューネスレイちゃんは…もう大丈夫よね?
ミクリオ…ああ
グリューネそれじゃあ、シュヴァルツちゃん。おやすみなさい
グリューネ──次に会う時は楽しくお話出来たらいいわねぇ
パアア…
ルドガー…!
ライフィセットシュヴァルツは、眠りについたの?
グリューネええ、そうよぉ。わたくしの役目は終わったわ
グリューネみんなが手伝ってくれたから上手く出来たわねぇ
ルドガーあの…グリューネ、君は今、ライフィセットと話してるのか?
グリューネそうよぉ。どうしたの、ルドガーちゃん
ルドガー見えないんだ…ライフィセットも、ミクリオも
ミクリオ…!
スレイもしかしたら…シュヴァルツが封印されたから、人間の目に天族の姿が見えなくなったのかもしれない
ライフィセット天族を可視化してたのは、シュヴァルツの力だったの…?
スレイシュヴァルツは負の感情を地上に蔓延させるために、人間と天族を戦わせようとしてた
スレイ天族の姿が見えるようになった後、世界が厄災に見舞われたのは…
スレイシュヴァルツが裏で暗躍してたからだと思うんだ
ミクリオなるほど。争いを起こさせるために天族が厄災の原因を生み出したように見せかけたんだな
ミクリオだけど、困ったな。僕達の姿が見えなくなると、ルドガーに不便をかけるだろうし…
グリューネそれなら心配いらないわぁ
グリューネミクリオちゃん、ライフィセットちゃん、ここに並んでくれるかしら
ライフィセット何をするの…?
グリューネこうするのよぉ。えいっ
ギュッ
ミクリオな、突然何を…!
ルドガー…!見えるようになった…!?
ライフィセットええ…!?
グリューネシュヴァルツちゃんもしてたから、わたくしにも出来る気がしたのよねぇ
グリューネ二人の姿が人間に見えるようにしておいたわぁ
ミクリオ君は…本当に何でもありだな
スレイいきなり天族の姿が見えなくなったら…世界中の人が混乱するだろうな
ミクリオああ…。…スレイ、君は今までの記憶があるのかい?
スレイ全部覚えてる。ずっと自分を止めようともがいてたけどどうする事も出来なかった…
スレイミクリオが苦しんでるってわかってたのに…ごめん
ミクリオいいんだ、スレイ。君が戻ってきてくれただけで…それだけで、十分だ
ルドガー…スレイ。君があのモヤに憑りつかれてる間、どんな状態だったか教えてくれないか?
スレイ…モヤに覆われていた間は、戦争を止めるために、とにかく人間を滅ぼさなきゃいけないと思ってた
スレイ自分の中の怒りとか…悲しいって感情が、どんどん膨れ上がっていったんだ
スレイ…エドナやアイゼン、ジイジが亡くなった後、人間と天族の争いは一層激しさを増した
スレイこのままじゃ、ミクリオ達まで失うかもしれないって…あの頃はそんな事ばっかり考えてたな
ミクリオスレイ…
スレイでも今は、不思議と心が軽いんだ。あのモヤが消えたからかな
ルドガースレイはすっかり元通りになったみたいだな
ライフィセットうん。やっぱりあのモヤが全ての元凶だったのかな?
グリューネそうねぇ。心の闇を増幅させる因子のようなものかしら
ミクリオ憑りついた者の闇を深める…負の因子、といったところだね
ルドガー負の因子、か…。正史世界のスレイとは、症状が違うのが気になるな…
ライフィセットそう言えば、あれを破壊した後にミクリオの身体に何かが移ったように見えたけど…大丈夫?
ミクリオああ。特に変化はないよ
ルドガースレイは、大丈夫か?どこかおかしいところは?
スレイもう大丈夫。気持ちも落ち着いてるし
スレイ…ありがとう、二人共。別の世界の人なのに、オレの事を助けようとしてくれて
ルドガーどの世界のスレイでも、俺にとっては仲間だよ
ライフィセット僕も同じ気持ち。だから…スレイを助けられて本当に嬉しいんだ
スレイ…うん。オレも、二人に会えて嬉しいよ
スレイオレはこれから、平和な世界を作るために、一からやり直すよ
スレイそれが、オレが犯した罪を償う事にも繋がるから…
ミクリオ…君はそうやって何でも一人で解決しようとする
ミクリオ僕も一緒に背負うさ。二人でやり直していこう
スレイうん、ありがとう。…これからもよろしくな、ミクリオ
ミクリオああ
ライフィセット二人はもう、大丈夫そうだね
ルドガーああ。この世界を壊さずに済んでよかった…
ルドガー後は、正史世界に戻る方法を考えないとな
ミクリオ僕達も一緒に、帰る手段を探そう
ルドガーいいのか?やらなきゃいけない事が、たくさんあるんだろ?
スレイでも、ルドガー達にはたくさん助けてもらったから
ミクリオああ。いくらでも頼ってくれて構わない。君達の事は…大切な仲間だと思っているから
ライフィセットミクリオ…
グリューネ素敵ねぇ。お姉さん、感動しちゃったわ
グリューネこういう時は確か…友情の証に、握手するのよねぇ
ミクリオいや、そんな決まりは…
グリューネあら、やり方を知らないの?ミクリオちゃんが、ルドガーちゃんの手を握って…ぎゅってするのよぉ
ギュッ
ルドガー…!これは…
ヒュンッ
ライフィセット僕達が分史世界に来る時に通った穴だ…!
ミクリオどうして、今…
ルドガー負の因子を破壊した事で、正史世界に戻る道が現れたのか…?
ライフィセットだったら、正史世界のスレイにも何か変化が起こってるかもしれないね
ルドガーああ。──ミクリオ、俺達は元の世界に戻るよ
ミクリオ…そうか。どうやら、お別れのようだね
グリューネ寂しくなるわねぇ。また、遊びに来てね
グリューネみんなで一緒にピクニックしましょう
ライフィセットあはは…。そんなに簡単に世界って行き来出来るのかな…
スレイ…ルドガー、ライフィセット。本当にありがとう
スレイこれからは、人と天族が幸せに暮らせる世界をミクリオと一緒に作っていくよ
グリューネわたくしも、ミクリオちゃん達のお手伝いをするわねぇ
ミクリオ──二人のお蔭で、僕は大切なものを取り戻せた。君達には、心から感謝してる
ミクリオこれからは、この世界をよい方向へ導いていけるように力を尽くすつもりだ
ルドガーああ。ミクリオ達なら、きっと出来るよ
ライフィセットみんな、またね!
シュン…
スレイ行っちゃったな
ミクリオああ。これから僕達も忙しくなるよ
スレイそうだな。まずはライラに会いに行こう
ミクリオライラなら、争いを望まない天族達と一緒に姿を隠しているはずだ
グリューネたくさんする事がありそうねぇ。でも、その前に…
グリューネみんなで一緒に、美味しいものを食べましょう。その後で頑張ればいいわ
ミクリオ…全く、君はどんな時でも変わらないな
ヒュンッ
ライフィセットあれ…?ここ…元の場所じゃないよ
ルドガーここは、時空の歪みだな…
ライフィセット時空の歪み?
ルドガーああ。正史世界と分史世界を繋ぐ場所だ
ライフィセットそんな…僕達、元の世界に戻れるの?
ルドガー安心してくれ。骸殻の力があれば時空の歪みから正史世界に移動出来る
ライフィセットそっか…よかった
ルドガーここに移動してもライフィセットの姿が消えないって事は…
ルドガー正史世界に戻っても姿が見えなくなる事はなさそうだな
ライフィセットそっか、これからはアヴァロン島にいた時みたいに、普通に人と話せるようになるんだね
ライフィセット姿が見えた方がルドガー達と話しやすいから嬉しいよ
ルドガーああ、俺もだ
ルドガーさぁ、そろそろ元の世界に戻ろう。エル達が心配してるだろうから
ライフィセットうん、そうだね!
異変の始まり
ミクリオスレイ、本当に大丈夫なのか…?
スレイ心配しすぎだって、ミクリオ。別に何ともないよ
シェリア不思議ね。突然目が覚めるなんて…
アスベルああ。後は、ルドガー達の行方がわかれば…
エステル…!これは…?
ミクリオ部屋の中が、光り出した…?
エルううっ…!まぶし──
ライフィセットっ…ここは…
ミクリオライフィセット!
ライフィセットミクリオ!
ルドガー…どうやら、ちゃんと戻って来られたみたいだな
エルルドガー!どこに行ってたの…!?
ルドガーただいま、エル。心配かけてごめんな
エルべ、別に…心配なんかしてないし
エルエル、ルドガーなら大丈夫だってわかってたもん
ルドガーそうか
スレイルドガー!無事だったんだな、よかった
ルドガー…!目が覚めてたのか、スレイ
スレイうん。知らない内に、迷惑かけちゃったみたいでごめん
スレイ目が覚めたら、みんながベッドの周りにいて…すごく驚いたよ
スレイオレ、何が起こってたのかよくわかってないんだけど…みんなに心配かけたみたいで
ルドガーアスベル達も、スレイを助けるために来てくれたのか?
アスベルああ。バロニアでミクリオとエルに会って何が起こったのか聞いたんだ
ミクリオ事情を知ったシェリアとエステルがイニル街まで来てくれたんだよ
ルドガーそうなのか。スレイから溢れていた負の因子は…もう出ていないみたいだな
エステルはい…少し前に、突然モヤが消えたんです。あれは、負の因子と言うのですね
シェリア私達が術をかけている間はモヤの力を弱められても、消す事は出来なかったのに…
シェリア何の前触れもなくモヤが消えてスレイが目を覚ましたから驚いたわ
エステルええ。術の効果でスレイの意識が戻ったのも、一瞬だけでしたし
ライフィセットそれって…あの時、分史世界のスレイが一瞬動きを止めたのと何か関係があるのかな?
ルドガー…わからない。だけど、スレイに起こった異変の原因が分史世界にあった事は確かだと思う
ルドガー俺達が負の因子を破壊した頃にスレイが目を覚ましていたみたいだしな
エル…ルドガー、その子誰?ルドガーの知り合い?
ルドガーああ、そうか…エルは初めて会うんだよな。彼はライフィセットだ
ミクリオ…!エルやルドガーにも姿が見えるようになったのか
エステルそう言えば、天族は人には見えない種族でしたよね
ミクリオああ。僕は前に、可視化装置の光を浴びたから、人に姿が見えるようになったんだ
シェリア前にパスカルが言っていた装置ね…。ライフィセットも、その光を浴びたの?
ライフィセットううん。別の方法で、姿が見えるようにしてもらったんだよ
エル何か不思議…
アスベルルドガー、ここに戻って来るまでに何があったのか詳しく聞かせてくれないか?
アスベルもしかしたら、今後スレイと同じような異変が起こる人が出てくるかもしれない
ルドガーああ、わかった
アスベル分史世界、か…。前にも一度、ルーク達が地割れから移動していたよな
ルドガーああ。だけど、あの時とは少し状況が違ってるみたいだ
ミクリオ分史世界のスレイに憑りついていた負の因子が気になるね
ミクリオ話を聞いていると、正史世界と分史世界、双方のスレイに影響を及ぼしていたみたいだし
スレイ数百年後のミクリオって想像出来ないよなぁ…
スレイちょっと見てみたいよ
ミクリオスレイ、今はそんな事を話している場合じゃないだろう
ミクリオ全く、君は…緊張感がないというか、何というか
ライフィセット……
ルドガーライフィセット、何で笑ってるんだ?
ライフィセット分史世界のミクリオとスレイはずっと戦ってたから…
ライフィセット二人がこんな風に当たり前に一緒にいられるのが嬉しいなって思って
ルドガー…そうだな
アスベル話してくれてありがとう、ルドガー。今聞いた事は陛下にも伝えておくよ
ルドガーああ、頼む
シェリアそれじゃあ、私達はそろそろバロニアに戻りましょうか
アスベルそうだな。いつまでもエステリーゼ様を連れ出しているわけにはいかないし
スレイ助けてくれてありがとう、シェリア、エステル
エステルいいえ。力になれたならとても嬉しいです
ルドガーミクリオ達はこれからどうするんだ?
ミクリオ僕達も旅を続ける事にするよ。いつまでも、ここで世話になっているわけにはいかないしね
スレイ旅の途中で何か負の因子に関する事がわかったら、ルドガーにも知らせるよ
ルドガーああ、ありがとう
ライフィセット僕は、港の方に行くね。…いきなりいなくなって、ベルベットが心配してると思うから
エルえっと…ルドガーと一緒に戦ってくれてありがとう
エル今度、ベルベットって人とルドガーのご飯、食べに来てね
ライフィセットうん!ベルベットに話してみる
ライフィセットそれじゃあ…ルドガー、エル、またね
ルドガーああ、また。みんなも気を付けて
エルルドガー!今日のご飯、何にするの?
ルドガーそうだな…。確か、冷蔵庫の中に野菜がいくつか残ってたはずだから…
ルドガーん…?
エルどうかしたの?
ルドガー机の上に置いてあるこれ…誰からもらったんだ?
ルドガー包装されてるし、プレゼントみたいだけど
エルえ…
エルルドガー、二人で一緒に買いに行ったのに忘れちゃったの?
エルメガネのおじさんにあげるプレゼントだよ!
ルドガーメガネのおじさんて…?
エルルドガーのお兄ちゃんでしょ…
ルドガー何言ってるんだよ、エル。俺に兄さんなんていないだろ?
エル…ルドガー?
ルドガーん…?
エル冗談、だよね…?どうしてメガネのおじさんの事、そんな風に言うの…?
ルドガー兄さんがどうしたんだ?
エルえ…っ。ルドガーが今、おじさんの事知らないみたいに言うから…
ルドガーそんなわけないだろ?
ルドガー二人で兄さんにプレゼントを渡そうって話してたじゃないか
エルう、うん…
ルドガーさて、と…。何を作ろうかな…
エルねぇ、ルル…
ルルナァ~?
エルルドガーがね、「俺には兄さんなんていない」って言ったんだよ
エル…もしかして、メガネのおじさんがぜんぜん帰って来ないから、怒ってるのかな…?
エル仕事ばっかりでエル達と一緒にご飯食べてくれないから、拗ねてるんだよね?
ルルナァ~…
門番1む…?何だ、貴様
キール…そこを通してくれ
門番2お前は確か、研究施設の学生だろう
門番2一介の研究者が城の中に立ち入る事は許されない。即刻、立ち去れ
キール無礼な奴らだな
門番1何だと…!?
キール──これを見ろ
門番2こ、これは…!宮廷学者の認定証明書…
キール通してもらえるよな?
門番1し、失礼致しました…!どうぞお通りください
キール……
コツコツコツ…
キールやっとここまで来た…
キールもうすぐ、おまえと同じ場所に立てるな…メルディ

NameDialogue
scene1夢に見た君
ファラリンネル村まであと少しだね。メルディ、驚くかなあ?
リッドそりゃ、驚くだろ。何の連絡もせずに来たからな。会うのはいつぶりだっけ?
ファラいつだったかな。キール、覚えてる?
キール……
リッドおい、キール。さっきから全然喋んねぇけどどうしたんだよ
ファラ結構歩いてきたし、疲れちゃった?
キールいや…。少し考え事をしてただけだ
ファラもしかして、コルテア街を出る時に気にしてた夢の事?
ファラ確か…リンネル村が炎に包まれてメルディが危険な目に遭ってる夢を見たんだよね?
キール…ああ
リッドおまえがいきなりデカい荷物背負って「リンネル村に行く」って言い出した時は驚いたぜ
リッドその時も言ったけど夢に見ただけでここまでするって珍しいよな
キールぼくだって非合理的なのはわかってるさ
キールただ、胸騒ぎがして仕方がないんだ。手紙を書く事も考えたが、実際に訪ねていく方が早いだろう
ファラキールはメルディが心配なんだよ。いいじゃない、わたし達も久しぶりに友達に会えるんだから
キールそれに、今回の旅はア・ジュールの調査も兼ねている。無駄足にはならないさ
リッド調査って言ってもなぁ…
リッドシルヴァラントみたいに地震が起こってる様子はなさそうだぜ?
キールそう結論付けるのは早計だ。ぼく達はア・ジュールに到着したばかりだからな
キールそれに異変は地震だけとは限らない。シルヴァラントでも突然の豪雨という現象が確認されているだろう
ファラ「一見無関係の自然現象に見えるが 同時期に群発するのには 共通の因果がある」…だっけ
ファラ道中、何度も聞かされたから覚えちゃった
キールああ。もっとも、あくまで推測の段階だ。だから裏付け調査が必要なんだ
キールそれに…この災害の先に何が起ころうとしているのかも確かめなければならない
リッド災害の先に…って、もっと大きな何かが起こる前触れって事か?
キール…断言は出来ない。ただ、大精霊の影響で起きていた以前の異変と類似している点が多い
キール災害の原因が大精霊に関係している可能性もあるとぼくは考えている
リッド──って事は、まさか、また魔導器が!?
キールだから結論を急ぐな。可能性は否定しないが、ぼくの意見としては違うと思う
リッドだったら何が原因なんだよ
キールそれがわからないから調査をするんだって、今説明したばかりだろう
リッドつまり何もわかってないんだな
キールわかっていたら調査の必要はないだろう…
ファラまあまあ。キールが調査を急ぎたい理由はよくわかったよ
ファラ前みたいに火山が噴火したり湖が凍ったりしたら大変な事になっちゃうもんね
キールそうなる前に、異変についてもっと詳しく調べる必要がある
リッドそんじゃ、リンネル村でメルディに会ったら変わった事がなかったか聞いてみるか
キールああ、それがいいだろう
リッドん…?雨が近いな
キールわかるのか?
リッドこれでも猟師だからな。森の天候の変化には敏感なんだ
ファラ雪じゃなくて雨?降るの?
リッド雨だけど、風向きからいってこのあたりは大丈夫だと思うぜ
リッドほら、あっちの方に黒い雲が見えるだろ?
ファラほんとだー
キールあの方角は…
ファラわっ、光った!
リッド雷か?
キール……
ドドーン!
キール…!二人とも、急ぐぞ!
リッド何だ、雷が怖いのか?
キール違う。12秒だったんだ
ファラ12秒…?
キール光ってから音が聞こえるまでだ。あの方角に、音速で12秒の距離…
キール雷が落ちた場所は、リンネル村のあたりだ!
リッドまじかよ…
ファラ大変!
キール急ごう!
scene2夢に見た君
キール村が燃えてる…!まさか、夢の通りに…
ファラ大変!早く火を消さなきゃ!
リッド二人とも落ち着けって。こういう時に焦ると危険だ
ファラでも、急がないと…!
リッドああ。でもオレ達はどこで水を汲めばいいかもわかんねぇだろ?
ファラそ、そうだね。じゃあ村の人に声をかけて消火を手伝おう!
キール…あそこにいるの、レイアじゃないか?
ファラ本当だ!おーい!
レイアリッド、ファラ、キール!村に来てたんだね、怪我はない?
リッドああ。大丈夫だ。雷が落ちたように見えたんだがこの火事はそれが原因なのか?
レイアそうなの。近くの森に雷が落ちて、燃え広がってきちゃって…
ファラ早く消し止めなきゃ!消火、手伝うよ!
レイアありがとう!
キールメルディはどこに…?
レイアそれが、火事になってから見かけてなくて…逃げ遅れてないといいけど
キール…!メルディ!
リッド待てよ!どこ行くつもりだ?
キール離してくれ!メルディを捜さないと…!
リッドメルディが心配な気持ちはわかるけど少し落ち着け。とっくに避難してるかもしれないだろ
キール夢で見た光景に似てるんだ。このままじゃ、本当に…
クィッキークィッキー!
キール…!クィッキー!
クィッキークィッキー!クィック、クィック!クィッキー!
リッドクィッキー!メルディと一緒じゃないのか!?
クィッキークィッキー!
ファラついて来いって言ってるみたい
レイア行こう!メルディがいるのかも!
メルディ──スプレッド!
ザバァーン!
メルディこれで火はこっち来ないよ。怪我、大丈夫か?
村の男ああ。ちょっと足を捻っただけだ。この程度で動けねぇとは、情けねぇ…
メルディごめんな。メルディ、運んでいけない
メルディクィッキーが助け呼んでくれてるからもう少し辛抱よ
レイアメルディー!こっちにいるのー?
メルディこの声、レイアか?こっちだよぅ!
メルディバイバ!キール、リッド、ファラ!どうしているか!?
キール話は後だ。怪我はないか?
メルディメルディは大丈夫だよー
村の男すまねぇ。俺が動けなくなっちまったんでメルディが守ってくれてたんだ
メルディメルディ一人では運べないからクィッキーに人呼んでもらってたよ
レイアそういう事だったんだね
リッドオレの肩につかまれ。安全なとこまで行こう
村の男ああ。助かるよ。ありがとう
レイアわたし達は消火しながら他に怪我人がいないか確認してまわろう!
ファラうん!
メルディメルディ、水が術で消火するよ!
キールぼくも手伝おう!
リッドふー。何とか、火は消えたみてぇだな
レイアリッド達が手伝ってくれたお蔭で助かったよ。ありがとう
リッド別に、大した事してねぇって。消火も村の人達をちょっと手伝っただけだし
キールああ。とても効率的な消火活動だった。村の人達は訓練でもしているのか?
レイアうん。前にも村が燃えた事があったからいろいろ備えてたんだ
レイア怪我人もいるけどみんな軽傷で済んだみたい
メルディよかったよぅ
ファラうん。よかったぁ…
メルディファラ!?
リッドどうした?大丈夫か
ファラうん、平気。安心したら、力が抜けちゃって…
レイア…そっか、村に着くなりこの騒動だったもんね。巻き込んじゃってごめんね
レイア村の事はもう大丈夫だから、ゆっくり休んでてよ
メルディそれならメルディが家来るよ。火もつかなかったから無事!ゆっくり休めるよぅ
キールそうさせてもらおう。ぼくもヘトヘトだし、落ち着いた場所で話もしたい
リッド決まりだな。ファラ、メルディの家まで歩けるか?
ファラうん、もう平気!
レイアわたしは村の片付けを手伝うから、また後で。ゆっくり休んでね
キール──やっと落ち着いて話せるな。メルディ、元気だったか?
メルディはいな!げんきだったよ!メルディ、またキール達に会えてとてもうれしー!
メルディみんな、どーしてリンネル村に来たか?
ファラキールがね、メルディが困ってる夢を見たんだって
ファラだから心配で、みんなでメルディに会いに来たんだよ
メルディバイバ!キールもメルディが夢、見たか?
メルディメルディも、キールが会いに来てくれる夢、見たよ!
リッドメルディも?
ファラへえ…お互いに夢を見てたなんて不思議だね
メルディキール、ありがとな!メルディが事、心配してくれて
キール…感謝の言葉は「ありがとう」!「な」は余計って言ってるだろう
リッドまったく、素直じゃねぇなぁ
ファラところで、メルディ。森に雷が落ちたって言ってたけど…それって、よくある事なの?
メルディううん。こんな事初めて。突然空が真っ暗になって、強い雨が降り始めたな
メルディそしたら空が光って、ドカーン!メルディ、びっくりしたよー
クィッキークィイ…
メルディ慌てて外に出たら空はもう晴れてたよぅ
キールそういえば、ぼく達が村についた時は黒い雲は消えていたな。リッド、森ではよくある事なのか?
リッド急に天気が変わる事はあるけどさすがに極端過ぎるだろ。そんなのオレも聞いた事ねぇぜ
キール…もしかしたら、その雷もシルヴァラントで起こっているような異変と同種のものかもしれないな
メルディキール達が街も、雷落ちたか?
リッド雷は落ちてねぇけど、雨が大量に降ったり地震が起きたりしてるんだよ
ファラキールは、自然災害の原因が大精霊にあるんじゃないかって考えてるんだって
メルディ…!
メルディまた、あの時みたいに大地震が起きるのか…?
キール…ぼくの考えはあくまで推測にすぎない。そう不安がる事はないさ
メルディはいな!キールがそう言うなら、心配ないな
メルディみんな、これからメルディが家でゆっくりしていくといいよ!
キールいや…こんな状況で、村に居座ると迷惑が掛かるだろう
キールぼく達はこれからア・ジュールを回って他に異変が起きていないか調べるつもりだ
キール当初の予定にはなかったが…ウィンドルやキムラスカの様子も見に行くべきかもしれないな
メルディそれなら、メルディも一緒に行くよ!
メルディ異変の調査、手伝わせてほしいな!
キール一緒に?…いや、でも村の事もあるだろ?
リッドいいんじゃねぇか?メルディなら、オレ達よりア・ジュールに詳しいだろ
ファラメルディは調査に一緒に行くってレイアに伝えておかないとね
キールおい、勝手に…
メルディメルディ、キール達と一緒にまた旅がしたいよ。…だめか?
キール…わかったよ
メルディワイール!キール、ありがとな!
キールわ、わ、くっつくな!
メルディあ!待ってよぅ、キール!
クィッキークィッキー!
ファラあはは!賑やかな旅になりそうだね
リッドまったくだ
天災の因果
騎士お待ちしておりました。陛下は来客中のため待合室までご運内いたします
ルドガーよろしくお願いします
エルうわー、お城広ーい!きれーい!!
エル──わっ、声がすごいひびいてる。うるさかったかな…
ルドガーまぁ、もう少し静かな方がいいな。エルはお城初めてなんだっけ?
エルうん。入るのは初めて!この前、ミクリオと一緒に来た時は中に入らなかったし
エルショーカの時はルドガーひとりでお城に行っちゃったし!
ルドガーショーカ…ああ、晶化現象の時か。そういえばあの時も一緒に行きたいって言ってたな
エルエルは子どもだからってお留守番になっちゃったけど今回はエルも王様に呼ばれたもんね!
ルドガーエルにとっては念願の城内か。でも、少し気をつけてくれよ
エルもう、大丈夫!エル、場はワキマエてるもん
騎士もしよければ陛下とのお話が終わった後、城内を見て回られますか?
エルえっ、いいの!?
騎士ええ。陛下からお二人をおもてなしするよう仰せつかってますから
エルやったーっ!
エルあっ!
エル…大声出ちゃった
ルドガーはは…
騎士こちらの部屋でお待ちください
ルドガーわかりました
エル中にいっぱい人がいる。もしかしてみんな、王様に会いに来たの?
騎士ええ。特に最近は異変に関する報告や相談で謁見を希望される方が多いのです
エルエルたちは呼ばれたんだからすぐなんだよね?
騎士お嬢様のおっしゃる通りです。それでは陛下の手が空くまで今しばらくお待ちください
ルドガーありがとうございます
エルえへへ、エルがオジョーサマだって
ルドガーよかったな
???あ、ルドガー!…と、もしかしてエル?
ルドガーえっ…?
リッドほんとだ。奇遇だな、ルドガー
ルドガーみんな…!久しぶりだな。リッドとキールはアヴァロン島以来か
ルドガーファラとメルディはもっと久しぶりだな。元気だったか?
メルディはいな。元気だよー!
エルルドガー。この人たちは?
ルドガーああ、エルは初めて会うんだったな。リッドにファラ、キール、メルディだ
エルメルディは聞いた事ある。レイアの友達だよね!
メルディバイバ!レイア知ってるか!
クィッキークィッキー!
エルわ!かわいい!
メルディクィッキーだよぅ。メルディが大切なともだち
リッドきっとレイアの名前に反応したんだな
エルあなたもレイアと友達なの?じゃあ、エルとも友達だね!
クィッキークィッキー♪
ルドガー他のみんなの事も前に話したよな。ほら、ファラはエルへのお土産を一緒に選んでくれた人だ
エルネコの人形!
ファラあなたがエルだったんだね。お土産は気に入ってくれた?
エルうん、ずっと大事にしてるよ!
ルドガーリッドとキールの話も前に聞かせただろう?
エルそういえば、聞いた事あるかも
リッドオレがリッドで、こっちがキールだ。よろしくな
キールよろしく
エルうん。エルはエルだよ!よろしくね!
リッドここに来たって事はルドガー達も陛下に用事があるのか?
ルドガーああ。実は陛下から呼ばれて来たんだ。異変についての話だと思うんだけど…
キール…という事は、異変について何か知っているのか?
ルドガー確証はないんだけど関係はあると思う
リッド実はオレ達も異変について調べてんだ。陛下と会うのもその関係でさ
メルディずっと待ってるよぅ、でも、次ぐらいメルディ達が順番!
ルドガーそうだったのか
キールよかったら知っている事を教えてくれないか?
ルドガーああ。俺もいろいろと気になってるからみんなが調べた事も教えてほしい
キールわかった。情報交換と行こう
キールなるほど、分史世界か…。異変との関係性は不明だが無関係とも思えないな
ルドガーキールもそう思うか。この話を陛下にして、異変の原因究明が進めばいいんだけど
キール検証するべき事がいくつかあるが、可能性は高いだろう
騎士ご歓談のところ失礼します。ルドガー様、謁見の準備が整いましたので、ご案内いたします
メルディルドガー達が先みたいな
ファラ王様から呼ばれたって言ってたもんね
キールルドガー。異変の話をするのならぼく達も一緒に話した方が早いんじゃないか?
ルドガー確かにそうだな
ルドガーすみません。彼らも一緒に謁見して構いませんか?
騎士わかりました。そちらの方々の順番はルドガー様の次でしたので問題ないでしょう
騎士ご案内いたします。みなさまご一緒にお越しください
ルドガーありがとうございます
エルやった!みんなで王様のところに行こー!
リチャードなるほど…。分史世界でそんな事があったんだね
リチャードそれに負の因子…。それは一体、何なんだい?
ルドガー詳しい事はわかりません。ただ、スレイに異変をもたらしていた原因なのは確かです
ルドガーそれに、キール達の話を聞く限り世界で異変が起こり始めた時期とも一致しています
ルドガー勿論、偶然かも知れませんが…
リチャード僕もルドガーと同意見だよ。リッド達は、世界の異変について調べてると言ったね?
リッドオレ達…と言ってもほとんどキールが調べてるようなもんですけど
リチャードキール。君の見解を教えてくれないか
キールはい。まず前提として、これは可能性であり結論ではありません
リチャードああ、それでかまわないよ
キールでは…ルドガーの言う「負の因子」は異変と密接な関係があると思います
リチャードなるほど。何か繋がりが見えたんだね
キールはい。まず、異変についてですが、地震や豪雨など現象は様々でも共通する因果があると考えています
キールぼくはシルヴァラントとア・ジュールで実際に異変を体験してその事に確信を抱き始めていました
リチャードその共通の因果というのが負の因子だというのかい?
キールいえ…ぼくの考えでは、共通の因果というのは世界のマナである可能性が高い
キールかつて大精霊が暴走した時と同様に…
キールそしてスレイに回復術が効かなかったという話から、おそらく負の因子もマナの異常を伴った現象です
キールそれが異変の原因なのか、あるいは異変の結果の一つなのか、そこまではわかりません
リチャードなるほど…
リチャードシルヴァラントやア・ジュール…そしてキムラスカでも災害が続いている事は聞いている
リチャードこちらに入ってくる情報は確かに大精霊が暴走した時と似たようなものばかりだった
リッドじゃあ、やっぱり大精霊が原因なんですか?それとも魔導器がまた…
リチャード大精霊はともかく、魔導器の心配はないよ
リチャード僕も気になって調べさせたがかつてのように魔導器が使われた形跡はなかった
ファラもし負の因子が関係してるならスレイに何か影響が残ったりしてないでしょうか…?
リチャードアスベルとエステリーゼから事情を聞いて、すぐにスレイの身体も診てもらったよ
リチャード医師も魔術師も、特におかしなところはないと言っていた
リチャード一緒に来たミクリオからも話は聞いたが、特に変わった事はないそうだ
エルスレイ、ちゃんと元気なんだ。よかったね、ルドガー
ルドガーああ
キールスレイが倒れたのはウィンドルでの事だったんだな?
ルドガーえっ、ああ。そうだけど…
キール陛下。ぼくはウィンドル国内をもう少し調査してみたいと思います
キールもしかするとどこかにマナの乱れた痕跡があるかもしれません
リチャードわかった。調査しやすいように便宜を図ろう。何でも言ってくれ
キールありがとうございます
メルディワイール!キールすごいな。王様公認で調査出来るか
エルすごーい。えらい学者さんみたい
キール学者だよ。偉くはないけどね
リチャードなら、ウィンドルに来ないかい?地位を用意して歓迎するよ
キールいえ、ご厚意には感謝しますが、ぼくは高い地位よりも自由に研究出来る事が大事なので
リチャードそうか。残念だけど、そんな君だからこそ調べられる事もあるのだろうね
キールはい。高い地位でないと調べられない事は陛下にお願いします
リチャードはは、確かにそれは僕の務めだね
リチャードこちらでも引き続き調査を続ける。君達も何かわかったら、どんな些細な事でも報告して欲しい
キールはい
ルドガーわかりました。俺も負の因子の事、もう少し調べてみます
エルエルも手伝うよ
リチャードああ、そうだ。エルさん、ルドガーの話に出た時計は今持ってるかい?
エルうん。いつでも持ってるよ!
リチャードよかったら少し見せてもらえるかな?
エルいいけど…パパのだから大切にしてね
リチャードああ、勿論さ
エルはい、これだよ
リチャードありがとう。…見たところ、普通の時計だな
キール反応する条件があるのかもしれません。次、ぼくにも見せてください
メルディメルディも見たい!
エルうん。順番だよ
リチャード反応する条件…か。エルさん、前に反応した時の事を詳しく教えてくれるかい?
エルえっと…ルルがスレイの寝てるベッドの上に乗っちゃったから、下ろそうと思って──
ゴゴゴゴゴ…
リッドな、なんだ!?地震か!?
エルうわわぁっ!!
キール…!危ない!
メルディバイバ!
ルドガーメルディ!掴まれ!
エルえっ、また時計が…!
リチャード反応した…!
ルドガーまずい!エル…!
ヒュンッ
メルディバイバ!
キール何だ、これは…!
エル吸い込まれる…!ルドガー!
ルドガーエルーっ!
リチャードエルさん!
リチャードくっ、ダメだ、落ち──
ルドガーエル!陛下!
キールくっ、ダメだ…!
メルディ吸い込まれるよぅ…!
リッドキール、掴まれ!
キールああ!
ファラメルディ、危ない!
メルディっ!
ファラ受け取って!リッド!
ファラきゃあっ!
メルディバイバ!
キール自分が落ちてどうするんだ!
リッドファラ!!
シュン…
メルディおさまったか…?
キールそう…みたいだな。
メルディうん。でも、みんなが…
リッドキール。さっきのって分史世界への入口だよな…?
キールああ、おそらく
リッドファラ…またかよ!
キールファラだけじゃない…。ルドガーにエル…それに陛下まで飲み込まれてしまった
リッドまあ、ルドガーが一緒ならその内、戻ってくんだろ
キールそういう問題じゃない。王が消えたんだぞ。国の一大事だ
メルディとても大変!どうする、キール
キールどうするったって…
???今の騒ぎは…!?陛下、何事ですか!?
リッド誰か来たぞ!
メルディキールぅ…どうするか?
キール落ち着け。信じてもらえるかわからないがぼくが説明する
???陛下?入りますよ
キィィィ…
リッド…!おまえは…
フレン──つまり、突然現れた分史世界に繋がる穴に陛下やみんなが吸い込まれた、と
キールああ
リッド来たのがフレンで助かったぜ
フレンただ…僕が信じても他の人は信じないだろうね
フレン君達に疑いをかけられたら一介の騎士にはどうする事も出来ない
メルディメルディ達、どうなるか?
フレン悪いようにはしないよ
フレンとはいえ、陛下が消えたとなると混乱が起こるのは避けられない。みだりに公にしない方がいいな…
リッドけど、バレないか?謁見予定すげぇ入ってんだろ?
フレン確かにそうだね。まず、エステリーゼ様に相談してくるよ
フレンこの状況を信じてくれて陛下の代わりを務めていただけるのはエステリーゼ様だけだ
フレンだから、それまではこの事が他に知られないよう内密にお願いしたい
キールわかった。ぼく達はここに残るから急いでもらえると助かる
リッドどうして一緒に行かねぇんだよ
キールぞろぞろ動いても怪しまれるだけだ。それにぼくは、もう一度分史世界への入口を開けられないか確かめたい
フレンわかった。これからこの部屋は封鎖する
フレン封鎖は信頼出来る者に任せるから何かあれば扉の外にいる騎士に声をかけてくれ
キールああ。助かる。これで余計な邪魔はされずに調べられるな
フレンそれじゃあ、また後で
リッドさて、と。とりあえず、いきなり逆賊扱いで牢屋入りって事はなくなったな
リッドこれからどうする?
メルディメルディ、ファラ達助けたい!
クィッキークィッキー!
キールそうは言っても、現状は分史世界に行く手段がないからな。出来る事からやっていくしかない
キールまずは分史世界への入口が開いたあたりを調べてみよう
冷たき牢獄
ヒュンッ
ファラわわっ!
リチャードく…!
ドサッ!ドサドサッ!
シュン…
エルつ、冷た…!これ…雪?
ルドガー大丈夫か、エル?ほら、手に掴まって
エルうん。ありがと、ルドガー
ファラ王様、大丈夫ですか?
リチャードああ。雪がクッションになってくれたよ
リチャードここは…カン・バルクの近くか
ファラカン・バルク…ってア・ジュールの首都ですよね。こんな遠いところに、どうして…
ルドガーあの時計の反応に、突然開いた穴…前の時と同じだった…。きっとここは、分史世界だ
ファラ分史世界…
リチャードなるほど、ここが…
リチャード…こちらに移動してきたのは僕達四人だけかな?
ファラはい。リッドとキールとメルディは穴から逃れてました
エルルドガー、エルたちちゃんと元の世界に戻れるの?
ルドガーああ、心配ないよ。まずはこの世界について調べてから──
ア・ジュール兵1全員、動くな!
チャキンッ
ルドガーっ…!
ファラあ、あの…!わたし達、怪しい者じゃ…
ア・ジュール兵2お前達が空中からいきなり現れたと通報があったぞ。今まで何処に隠れていた?
ア・ジュール兵1逆徒の一派だろう。連行する!
ファラま、待って!この人がわからない?捕まえたら大問題だと思うよ!
リチャード……
ア・ジュール兵1…誰だ?身なりはいいようだが…
ア・ジュール兵2貴族だか商人だか知らんがこっちも見逃せない状況だ。大人しくついて来い
ファラえぇっ!?リチャード陛下がわからないの!?どうして…
ルドガー…ここは分史世界だ。時代や歴史が違えば、こういう事もあり得る
リチャード事情がわからない以上、今は大人しく従った方がよさそうだね
ア・ジュール兵2何をしている。早く来るんだ
ファラまさか、こんな事になるなんて…
リチャード兵の話を聞く限り、僕達が城に攻め込んできたと思ったようだね
リチャード逆徒と言われたね。もしかすると内乱でも起きているのかもしれない
ルドガーそうだとしたら話をしたところで信じてもらうのは難しいか…
ファラそれにしても、王様をこんなところに閉じ込めるなんて…
リチャードこういう経験も悪くないよ
エル王様ってマエムキだね
リチャード残念がっていても仕方ないからね
リチャードところで、ここでは僕の事をリチャードと呼んでくれないかい?
エルどうして?王様は王様でしょ?
リチャードここでは違うようだからね。権力者に見られて危険な事になるのを避けたいんだ
リチャードここでは僕も対等な仲間として扱ってほしい。勿論、敬語もなしでお願いするよ
エルそうなんだ。じゃあ、リチャードって呼ぶね!
リチャードありがとう。みんな、かまわないかな?
ファラわかりま──よろしくね、リチャード!
エルそれじゃあ、リチャードもエルと友達だね!
ルドガー改めてよろしく、リチャード
リチャードああ、よろしく頼むよ。ふふ、まさかこんな形でみんなと距離を縮められるとはね
リチャード後は無事に元の世界に戻れたら言う事はないんだが…
ファラそうだね…。ルドガー、わたし達が元の世界に戻るにはどうしたらいいのかな?
ルドガー…この前と同じなら、負の因子を壊せば帰れるようになるかもしれない
リチャードさっき話してくれた、スレイに憑りついていたというものだね?
ルドガーああ。あの時のように、分史世界に異変をもたらしているかも知れない
ルドガーまずはこの世界に起こっている異変を調べてみよう
エルでも、どうやって調べるの?エルたち、ここから出られないんだよ
リチャードまずは僕達の置かれた状況について情報が欲しいところだ
ファラそうだね。何が何だかわからないまま捕まっちゃったし…
???ここか?
ルドガーん?誰か来たのか
ファラ今の声って…
キール──こいつらか?何の前触れもなく突然現れたというのは
看守1はっ。そのように聞いております
ファラキール!?
キールなぜ、ぼくの名を知っている?怪しいな…敵国の密偵…?いや…だとすると不自然か…
ファラな、何言ってるの?わたしだよ、幼馴染のファラ!
キール知らないな
ファラえ…っ
キール…まさか、こいつら──
キール──まぁいい。確かめてみれば、わかる事だな
リチャードあれは…?
ルドガー何かの装置…みたいだな。小さくてよく見えないけど…
ビービー!
キール…!やはりそうか…
キール反応が強いのは…
ビービービービー!
エルなっ、何…?
キール看守。あの子どもを出せ
看守1はっ!
ガチャッ
エル…!ルドガー!
ルドガーエルに近づくな!
看守1邪魔だ!
看守2取り押さえろ!
ドカッ
ルドガーくっ、この…!
エルルドガー!
看守1お前はこっちに来るんだ
エルやだ!はなして、痛いよ!
ファラ何するの!
リチャードファラさん、待つんだ。ここで暴れたら僕達の立場はもっと悪くなる
ファラでも、エルが…!
リチャードキールさん、と言ったかな。理由を教えてくれないか
キール…あんたには関係ない事だ
リチャード…取り付く島もなしか
ルドガー待て!エルに怪我でもさせたら容赦しないぞ!
キール怪我をさせたくないなら大人しくしていろ
キール…つれて行くぞ
看守1はっ
エルルドガー!助けて…っ!
ルドガーくっ、エルー!
看守2動くな!
ドスッ
ルドガーぐっ…エ…ル…
ドサッ
ファラルドガー…!もう我慢出来ない!
リチャード駄目だ、ファラさん!ここは…堪えてくれ…!
ファラでも、わたし…!
看守2な、何だその反抗的な目は!歯向かうならお前も容赦せんぞ!
リチャードよした方がいい。さすがに僕も黙っていられなくなる
看守2何…!に、逃げられると思ってるのか。外には兵がいくらでも…
リチャードそうだね。君がここまでにしてくれるなら僕達も大人しく従おう
看守2ふ…ふん。わかればいいんだ
リチャードそれと、もう暴れないと約束するから君が怪我をさせた友人を手当てしてやってくれないか
看守2ちっ、仕方ないな。少し待ってろ。逃げようとするんじゃないぞ
ガチャン
ファラ鍵閉められちゃった…。リチャード…わたし…ついカッとなっちゃって…
リチャード気にしなくていいよ。ファラさんの気持ちは痛いほどわかるからね
リチャードだが、怒りに任せて動いても事態は好転しない
リチャード気絶したルドガーを置いていけないし看守が言ったように、ここを出てもすぐに囲まれてしまうだろう
リチャードそれに…キールさんは怪我をさせたくなければ大人しくしていろと言っていた
リチャードあの言葉を聞く限り、何もしなければ彼女に危害を加えるつもりはないのだろう
ファラ…確かに、わたしの知ってるキールは、そんな事する人じゃないけど…
ファラでも…
リチャード…不安なんだね。すまないが今はその不安を解消してあげる事が出来ない
リチャード今は目の前の問題から片付けよう。まずはルドガーの手当てをする事が先決だ
ファラそうだね…
ルドガー……
ファラ…大丈夫?まだどこか痛む?
ルドガーああ、もう平気だ。大した事ない
ルドガーただ…エルの事が心配だ。どうしてキールはエルだけを連れて行ったんだろう
リチャード何か理由がありそうだね。彼が使った小型の装置が気になる
リチャードあの装置は、エルさんに強く反応していたようだが一体…
ルドガーいつまでもここにいるわけにはいかない。エルを助けにいかないと…!
ファラうん。ただ…わたし達が下手な事を考えないようにって看守の目が厳しくなったみたいなの
リチャードエルさんの居場所もわからない以上今行動を起こすのは得策とは言えないだろうね
ルドガー…そう、だよな。でも、どうしたら…
看守1なあ、聞いたか?ウィンドルの話
看守2ああ。セルディク王の事だろう
看守1我らが姫様に婚約を迫っているとか。政略結婚が行われない場合、戦争に発展する可能性もあるんだとさ
看守2戦争か…嫌だなぁ。姫様には悪いけど円満に事が進めばと思うよ
ルドガー…!今の話…
リチャードなるほど…。この世界のウィンドルを統治しているのはセルディク公のようだ
リチャードだから僕が何者なのか、門番達は知らなかったんだね
ファラ政略結婚を迫られるお姫様か…。何だか、可哀想だね…
看守1…!どうして、あなた様がこのような場所に!
リチャードん…?急に騒がしくなったみたいだ
ファラ誰かがこっちに来るよ
看守2姫様、お待ちを…!
コツコツコツ…
メルディ……
ファラえっ。め、メルディ…!?
雪の国の王女
メルディ今すぐこの人達を解放するよ
看守1しかし、姫様…!
メルディ罪を犯してない人を牢に入れる必要、あるか?
看守2…わかりました
ガチャッ
看守2外に出ろ
メルディ大丈夫か?手荒な真似してごめんな…
クィッキークィック!クィック!
ファラ…あなたが、この城のお姫様なの?
メルディはいな!メルディがおカーサン、この国の偉い人!
ファラそうなんだ。ねぇ、わたしの事、わかる?
メルディんー…?どこかで会ったか?ごめん、覚えてないよぅ
ファラ…ううん、いいの。よく考えたら他人の空似だったよ。あはは…
メルディ…?
リチャードお互いに面識はないという事か…ならば、なぜ見ず知らずの僕達を助けてくれたんだい?
メルディそれは…ここじゃゆっくり話せない。みんな、メルディに付いてくるよ!
ルドガー処刑…!?
メルディはいな。牢に入れられた人、みんな処刑されちゃうよ…
リチャード事情も聴かずにか…
メルディおカーサン、公務で今いないけど出かける時にそう命令して行ったよ
メルディ厳しい思ったけど、ここに捕まる人は滅多にいないからホントに処刑はない思ってた
メルディそんな時に誰か捕まったって聞いて様子を見に来たよ
ファラメルディ──王女様のお蔭で助かったよ。ありがとう!
メルディお礼はいらない!ただ…堅苦しいのは嫌だからメルディって呼んでほしいよ
ファラうん、勿論!私はファラだよ
ルドガー俺はルドガーだ
リチャード僕はリチャード。よろしく
メルディよろしくな!それと、こっちは友達のクィッキーだよぅ
クィッキークィッ、クィッキー!
ファラクィッキーもよろしく
クィッキークィッキー!
リチャードところでさっきの話だけど僕達を助けてくれたという事はメルディは処刑に反対なのかい?
メルディはいな。法律とか難しい事はメルディよくわからないけど…
メルディ罪もない人、処刑したら絶対ダメだよぅ
ルドガー俺達が怪しい者じゃないって信じてくれるんだな
メルディはいな。クィッキー懐いてるからみんないい人!
メルディただ、ひとつだけ教えてほしいな。みんなは、どうして城の前に落ちて来たのか?
ルドガー説明が難しいんだけど…たまたま落ちた場所が城の前だった、というか…
ルドガー兎に角、用事があって来たってわけじゃないんだ
ルドガーこの国にも来たばかりで何が起こってるのかわかってなくて…勿論、逆徒なんかじゃないよ
メルディそうなのか…。運、悪かったな
メルディ最近、おカーサンと敵対する人多くて、城が中、ピリピリしてるよ
リチャードなるほど。警戒を強めていたところに僕達が怪しい登場をしたわけか…
メルディでも安心するよ。メルディ、お城の外まで連れてく!
ルドガーありがとう。けど、少し待ってくれないか。ここを出る前にエルを連れ戻さないと
メルディエル…?
ルドガーああ。俺達と一緒にもう一人女の子がいたんだ。キールがどこかに連れて行って…
メルディキールが…?どうして…
ルドガー彼がいる場所を教えてくれないか?
メルディ……
メルディみんなが事、おカーサンに知られたら牢に戻されるかもしれない。早くお城から出た方がいいよ
メルディだから、その子が事、メルディに任せてくれるか?
ルドガー何か考えがあるのか?
メルディキールに言って、何とかするよ!メルディ、キールとは仲よしだからな
メルディ街で待っててくれたら必ずその子を連れて行くよ!だからみんなは先にここを出るよ!
ルドガー…………
リチャード…ひとつ聞いてもいいかな?キールさんは何か目的があってエルさんを連れて行ったようなんだ
リチャード何をするつもりなのか知っているかい?
メルディ…メルディ、キールが何してるか知らない。でも、これだけは言えるよぅ
メルディメルディは、キールに人を傷つけさせたくないよぅ!
ファラメルディ…
ファラルドガー、大丈夫だよ。このメルディはわたし達の知ってるメルディと同じ優しい子だから
ルドガー…そうみたいだな。メルディ、エルの事よろしく頼む
メルディまかせるよ!
クィッキークィッキー!
キールやはり…。別の世界からここへ飛ばされて来たんだな
キールおまえ達、クルスニクの一族が持つ力の謎に迫れば、きっと…
エル…ルドガーのところに帰して
キールそれは聞けない相談だな。おまえが持ってるその時計を渡してもらえれば考えてもいいが
エルこれはパパの大切な時計だから、ダメ!触らないで!
バシッ
キール…ふん、意地を張りたいならそうしているといいさ。おまえがいつまでも帰れないだけだ
ガチャ
メルディキール!
キール…メルディか。どうしたんだ、ノックもせず
キール…怒っているのか?
メルディ外まで声聞こえてた。その子、嫌がってる!乱暴な事よくない!
キール…はあ。仕方ない、自分から渡す気になるまで待つとするか
エル……
メルディキール。牢に入ってた人達、何も悪い事してないって言ってたよ
メルディその子も…何も悪い事してないな
キール…!おまえ、あいつらに会ったのか!?
メルディその子をルドガー達がところに帰してあげないと
エルルドガーの事、知ってるの!?
メルディはいな。エルの事、連れ戻す約束したよ
キール…駄目だ。時計と、こいつの力を調べるまで、外には出さない
メルディキール!
キールこの研究が進めば、ぼくは更に認められる…
キール誰にも見下されない偉大な研究者になるんだ
メルディキール…
クィッキークィイ…
キールそんな顔をするな。用が済めば、こいつは帰してやる。いつになるかはわからないけどな
メルディキール、約束してほしいよ。絶対、酷い事しないって
キール…善処はする。人の事より、メルディ。おまえは何か身体に変化はないか?
キール最近、政務続きで疲れていただろう
メルディ何ともないよ。いつも通り!
キール…そうか
キールだったら話はここまでだ。ぼくは研究で忙しい。おまえも、早く部屋に戻れ
メルディキール…
メルディ行っちゃったな…
エル…あの人、性格悪い!
メルディ……
メルディキール、昔は…すごく優しかったよ
メルディ最近は少し、おかしいけどメルディが事…いつも心配してくれる
メルディメルディを姫じゃなくてメルディとして見てくれるよ
エル…メルディはこのお城のお姫様なの?
メルディはいな!
エルあの人と、仲がよかったんだね
エル…お姫様の友達を悪く言ってごめんなさい…
メルディ謝らずでいいよ。エルは優しい子だな!
ガッガガガ…
エル…!何の音?
メルディあそこにある機械、見えるか?あれが動く音だよ
エルあの機械…すごく、いやな感じがする
メルディいやな感じ?
エルうん…。イニル街にあった魔導器に似てるから…
メルディあれは、人を殺すものだから…メルディも嫌い
メルディ…エル。必ずここから出すよ。もう少し待てるか?
エル…わかった。メルディの事、待ってる
メルディ約束な!ルドガー達にエルが事伝えておくよ!
キール何をコソコソ話してたんだ?
エル教えない!
エルルドガーたちがギャクトじゃないってお姫様が言ってたのに、どうしてカイホーしてくれないの
キールおまえ達が逆徒だろうがそうでなかろうが、ぼくには関係ない
キール自由に動き回られると困るってだけだ
兵士──キール様!
キール何だ。騒々しいな
兵士牢に入れていた逆徒達が城の外に出たとの報告がありました
キール何…!?
兵士看守の話だと、メルディ様が逆徒を逃がしたとかで…。いかがいたしましょう
キールくそっ。すでに逃がしていたのか…
キールあいつらを追え。絶対に捕らえろ
兵士し、しかし…メルディ様の命に逆らうわけには…
キールメルディの命令が正しいと思うならどうしてぼくに伺いを立てにきた?追うべきだとわかっているのだろう?
キールメルディの命に反した責任ならぼくが取ってやる。あいつらをすぐ牢に連れ戻せ
キール抵抗するなら生死は問わない
兵士はっ!
エルっ…!行っちゃダメ!
ガシッ
兵士な、なんだ…!?
キールおい、勝手な事をするな!
エルいーかーせーなーいー!
兵士この!離れろ!
キール大人しくしていろ!
エルはなしてー!
キール今だ、早く行け!
兵士はっ!失礼します!
エルうぅ…。…ルドガーにひどい事したら、許さないから!
キールふん
scene1為政者の悩み
ファラ誰も追って来てないみたいだね
リチャードああ。この国の姫君が直々に送り出してくれたんだ。脱走とはわけが違うだろう
ルドガーけど、キールや女王に知られたらどうなるかわからない
ルドガーそれまでにエルと合流出来るといいんだけど…
ファラメルディがきっと上手くやってくれるよ
リチャードそうだね。その間、僕達は少しでもこの世界の事を調べておこう
ルドガーここまで歩いてきた感じだとカン・バルクの街並みは正史世界とあまり変わらないみたいだな
リチャードああ、しかし国の体制は大きく違う。ガイアス王でなくメルディの母上がア・ジュールを統治しているようだ
ファラまさか、メルディがお姫様になってるなんて…わたし、びっくりしちゃった
ルドガーああ、俺も驚いたよ。政略結婚を迫られているのはメルディだったんだな
リチャードどうやらウィンドルの事情も僕達の世界とは異なるようだな
リチャード道中で街の人達の話を聞いた感じだとこの世界のウィンドルは大国として大きな武力を有しているようだ
ルドガーこの国の女王は秘密裡に兵器の開発も進めているという噂もあったな
リチャード政略結婚による同盟か、戦争の始まりか…
リチャード国中が緊張しながら成り行きを見守っているようだ
ファラア・ジュールとウィンドルが戦争するの…?
リチャード僕達の世界でも、四大国は長く良好な関係が築けず歴史の中で何度も戦って来た…
リチャード分史世界でも、同じような事が繰り返されようとしているのだろうか…
ファラ何とかして止められないのかな…
リチャード誰しも戦争なんてしたくない。それでも…武器を取らなければ民を守れない事があるのも事実なんだ
ファラそんなの…悲しすぎるよ。何か他の、平和的な方法がきっとあるはずだよ
ファラメルディが結婚させられる以外の方法が、きっと…
リチャード…平和的な方法を考えて考えて…けれど答えが出ないまま戦いが始まってしまう事もある
リチャード…ア・ジュールの女王も僕と同じ苦悩の中でもがいているのかもしれないね
ルドガーリチャード…
ファラ…王様やお姫様がこんなに大変だなんて知らなかったな
ファラ小さな頃は煌びやかなお城暮らしに憧れて、お姫様ごっこなんてしてたけど…
ファラ何もわかってなかったな…。何だか恥ずかしいよ
リチャードすまない。不安にさせてしまったね
リチャード勿論、戦争を止められるならそれに越したことはない。やれるだけの事は──
ザッザッザッザ
兵士1おい、いたぞ!あそこだ!
ファラ…!
リチャードやはり、そう簡単にはいかないみたいだね
兵士2もう逃げられないぞ!
ルドガーくっ、囲まれた…!どうすれば…
リチャード不本意だが戦うしかないだろうね。突破口を切り拓こう!
ルドガーわかった!
scene2為政者の悩み
兵士1くっ、こいつら、やるぞ…!
ファラ道が開いたよ!あそこから抜け出そう!
ルドガーああ!
兵士2待て!
兵士3くそ、応援を呼ぶんだ!逃げられないよう城門を閉めろ!
リチャード何とか撒いたが、追いつかれるのも時間の問題だな
ファラすぐ隠れないとまた囲まれちゃうよ…!
ルドガー街の外にも逃げられそうにない…!どうすれば…!
メルディみんな!こっちだよぅ!
ルドガーメルディ…!
メルディあの建物、隠れられる!
ルドガーわかった!みんな、あそこに急ごう!
ファラ…外ではまだわたし達の事捜してるみたいだね
メルディこの宿、メルディが知り合い。みんなが事、匿ってくれるな
ルドガー助かったよ
ファラねぇ、メルディ。その服って…
メルディこれか?こっそり街に出る時、いつも着てるよ
メルディ…何か変か?
ファラううん。すっごく似合ってる
メルディありがとな!
ルドガー…ところで、メルディ。エルの姿が見えないようだけど…
メルディ…ごめんな。連れてくる事、出来なかったよ。キール、すぐには帰してくれないな
ルドガーそうか…。怪我とかはしてなかったか?
メルディはいな!
ルドガーよかった…。今はそれだけで十分だ
リチャード…メルディさん。追手が来たのは女王様の指示かい?
メルディううん、キールが命令って兵士達言ってたよぅ
リチャードそうか…
リチャードしかし、君は王女だ。君の意志を無視して僕達に追手を差し向けるなんて…
リチャードキールさんは一体、何者だい?
メルディ…キールは、王室専属が研究員
リチャード研究員…?一介の研究員が、王女を超える実権を握っているのかい?
メルディキールが研究、おカーサン進めてる兵器開発に貢献してるよ
メルディだから軍はメルディよりキールが言う事聞くな。メルディも少しは権限あるけど…
リチャードそういう事か…。王女とはいえ、君も苦しい立場なんだね
ルドガーなのにエルを取り戻せるよう掛け合ってくれたのか…ありがとう、メルディ
メルディでもメルディ、連れてこられなかったよぅ…
メルディおカーサン帰ってきたらエルが事お願いしてみるな。けど…たぶん…
ルドガー聞き入れてもらえないか…
メルディでも、考えあるよ!みんな、リンネル村知ってるか?
ファラ勿論!この世界にもリンネル村はあるんだね
メルディ…?この世界?
ファラあ、ううん。こっちの話!それで、リンネル村に何かあるの?
メルディ力を貸してくれそうな人いるよ。先王が息子、話聞いてくれるよ
リチャード先王の息子が王位を継承せず首都から離れて暮らしている…何か事情がありそうだね
ルドガーわかった、リンネル村に行ってみよう
ファラでも、街の外には出られないんだよね。城門を閉められてたし…
メルディメルディ、何とかするよ。そのぐらいは出来ると思う
メルディ地図を描くからその通りに行くよ!誰にも見つからないで街を出られるな
ファラありがとう。だけど、いいの?メルディの立場が悪くならない?
メルディ平気だよ。それにメルディ、ルドガー達捕まる方がやだよ
ファラ…だからって、会ったばかりのわたし達のためにそんなに無理して──
ファラ…あっ
メルディ…?どうかしたか?
ファラううん、何でもない
ファラ(これって、わたしが リッドにいつも言われてる事だ…)
リチャードありがとう、メルディさん。みんな、疲れていると思うが早速出発してもいいかな?
ルドガーああ。エルのためにも、少しでも急ぎたい
ファラうん。それに、いつまでもここにいると、宿にも迷惑かかっちゃうもんね
メルディわかったよぅ。すぐに城門を開けるよう手配するな
メルディリンネル村についたらブウサギがいっぱいいる家を探すといい!
ルドガーわかった。その人の名前は?
メルディピオニー!
scene1雪国の実力者
ファラあっ、あれ!リンネル村が見えてきたよ。このまま行けばあと少しで──
ルドガー…ん?ちょっと待ってくれ
リチャードどうかしたのかい?
ルドガーあの木の陰になっているところ…
怪しい男……
ファラ誰かいる!あんな場所で何してるんだろう?
ルドガー村の人…と言うには動きが少し怪しい気がするんだ
リチャード…確かに。姿を隠しながら、何かを見張っているのか?
リチャードあれは…
ルドガー何か気になる事でも…?
リチャード彼が腰に下げている剣に見覚えがあるんだ
リチャードア・ジュールの兵士達が使っていた剣と同じように見える。軍服を着ていないが、彼も兵士だろう
ファラもしかして、わたし達を捜しに来たのかな?
リチャードいや…僕達を捕まえるつもりなら一人という事はないだろう。もっと多くの兵士を派遣するはずだよ
ルドガー確かに…。他に兵士はいないようだし、俺達を待ち伏せしてるわけじゃないのか…
ファラそれなら、旅人のふりをして前を通り過ぎちゃおうよ!
ルドガーさすがに堂々としすぎじゃないか?
ファライケる、イケる!何とかなるって!コソコソしてる方が怪しいよ!
リチャード時には大胆さも必要かもしれないね。行こう、リンネル村はすぐそこだ
ルドガーふぅ…。何事もなく村の中に入れたな
ファラうん!でも、どうして兵士があんなところに立ってたんだろ?
リチャード真意はわからないけど…村の中で目立つような行動は控えた方がよさそうだね
ルドガーそうだな。とりあえず早くピオニーさんを捜さないと
ファラえっと、確か…村に着いたらブウサギがたくさんいる家を探せってメルディが言ってたっけ
リチャードブウサギか…。あ、あそこに何匹かいるようだよ
ブウサギぶー、ぶー
ファラあんなにいっぱい…!放し飼いにされてるみたいだね
ルドガー近くピオニーさんがいるかもしれない。行ってみよう!
ブウサギぶひ、ぶひっ
ファラわっ、近付いてきた…!人に慣れてるみたい
リチャードこうやって見ると、愛らしいものだね
???おっ。何だおまえら、俺のブウサギを見に来たのか?可愛いぞ!
ルドガー俺の、って事は…もしかして貴方がピオニーさんですか?
ピオニーああ、そうだ。おまえ達は?
ファラメルディ…王女様からこの場所を聞いて、訪ねて来たんです
ファラあなたなら、わたし達を助けてくれるかもしれないってこれを…
ピオニー確かにメルディからの手紙か…今は少しばかり都合が悪いんだが何か事情がありそうだな
ピオニー王女の頼みを、無下には出来ないしな。中で話を聞こう
ピオニー大した持て成しは出来ないが、楽にしてくれ
リチャードありがとうございます
ブウサギぶひー、ぶひー
ルドガー家の中にもブウサギがいるんですね…
ピオニー可愛いだろ?他の奴らも寝る時はちゃんと自分から家の中に戻って来るんだぜ
ピオニーさて、話が途中だったな。ここに来るまでに何があったかざっと説明してくれ
ピオニー──成程な。おまえ達はそのエルって子を城から連れ戻したいわけだ
ルドガーはい。ただ、出来るだけ目立たずに穏便に済ませたいんです
ルドガー俺達が下手に動いてメルディに迷惑をかけるのは避けたいので
ファラメルディもいろいろ大変そうだったもんね。それなのに協力してくれて…
リチャード難しいかもしれませんが、メルディ王女のためにも力を貸していただけないでしょうか
ピオニーそうか。そういう事なら協力しよう。その代わり…条件がある
ルドガー条件、ですか…?
ピオニーああ。実はブウサギが一匹逃げ出したんだ
ピオニー多分リンネル村の近くにいるはずだから探してくれないか
ファラえっ、ブウサギ探しですか…?
ピオニー一刻も早く城へ向かいたいというおまえ達の気持ちはわかっているつもりだ
ピオニーだが、俺の可愛いジェイドが丸焼きにされたらと思うと、心配で村を出られない
リチャード…ジェイド?
ピオニー逃げ出したブウサギの名前だ
ファラジェイド、って…ア・ジュールにいる軍人さんと同じ名前だね
ルドガーああ。たまたまにしても奇妙な感じだな…
ピオニー何をコソコソ話してるんだ?俺の頼みは聞いてくれるのか?
ルドガー…ブウサギ探しを手伝えば、俺達に協力してもらえるんですよね?
ピオニーああ、約束する
ピオニーおまえ達がジェイドを探してくれている間に、俺は村を出る準備をしておこう
ルドガーわかりました
ルドガー今から探しに行くので、特徴を教えてもらえますか?
ピオニーいいぞ。俺の可愛いジェイドはな芸の覚えは悪いが毛並みだけはぴかぴかで…
ファラ…何だか名前に違和感があるなぁ
リチャード慣れるしかなさそうだね…
ルドガー…ここにもいないみたいだな。どこへ逃げたんだろう?
ファラん~、人に育てられたブウサギだからそう遠くには行っていないと思うんだよね
リチャード手当たり次第に探すよりもここの近くで姿を現すのを待っていた方がいいという事かな?
リチャードでも、僕達の姿を見たら驚いて逃げてしまうかもしれないね…
ファラ…!それなら、わたしにいい考えがあるよ!
ファラ…よし。この辺りに隠れていれば大丈夫かな
ルドガーへぇ、ここから仕掛けた罠を見張るのか
ファラうん。餌につられたブウサギが罠にかかったところを捕まえようと思って
リチャードあの短時間で捕獲用の罠を仕掛けるなんて、ファラさんは器用なんだね
ファラリッドがやってるのを見てたから作れたんだ!罠で怪我したりしないように、工夫もしたし…
ファラ後はブウサギが来るまでじっと待つだけだよ!
リチャードここまでずっと慌ただしかったし、少しのんびり待つとしようか
ルドガー…のんびりしていていいんだろうか
ルドガーこうしている間にもエルは辛い思いをしているかもしれないのに…
ファラ心配なんだね…。でも…きっと、大丈夫だよ
ファラあの時はちょっと変な感じだったけどキールが小さい子に酷い事するわけないもん
ルドガー俺もそう信じたいけど…ここは分史世界だからな…
ファラそう言われるとわたしも自信なくなっちゃうけど…
ルドガー…ごめん。酷い人だと思ってるわけじゃない。ただ、どうしても不安で…
ファラうん…わたしも不安だもん…メルディの事も…
リチャード…厳しい事を言うようだけど不安な事ばかりを考えると気持ちの焦りに繋がってしまう
リチャードここでブウサギが罠にかかるのを待っているのも、二人を助ける事に繋がるはずだよ
リチャード目の前の問題から着実に片付けていこう
ルドガー…そうだな。ありがとう、リチャード
ファラさすが王様だね。いつも冷静で頼りになるなぁ
リチャードそんな事ないさ。僕だって心乱れる事はあるし…今だってとても不安だよ
リチャードだけど自分の気持ちは別として状況を俯瞰的に見るよう努めているんだ
リチャード僕はかつて黒い衝動に呑まれるまま国を動かしてしまっていた…。それを繰り返すわけにいかないからね
ファラでも、それじゃあリチャードは国のために自分の気持ちを閉じ込めてるの?
リチャードそんな事はないよ。ウィンドルに住むみんなの事を大切にしたいのは、僕の本心だからね
リチャードそれに、何も自分の気持ちを閉じ込めてしまうべきだと言ってるわけじゃないんだ
リチャード気持ちは気持ち、やるべき事はやるべき事と切り分けて考えているだけさ
ルドガーなるほど…。なかなか出来る事じゃないな
ルドガーリチャードは本当に尊敬出来る王様だと思うよ
リチャードありがとう、ルドガー
ガサ…ガサガサ…
ファラ…!あれは…
ブウサギ……
ルドガージェイド、なのか…?首輪をしてるみたいだから飼われてるブウサギだと思うけど
ファラ餌に興味を示してるみたい。罠にかかったら、捕まえよう…!
ガサガサ…
ルドガー…!今、あの辺りの茂みが動いたような
グルル…
ルドガー魔物…!?
リチャードあの魔物、ブウサギを狙っているのか!?
ファラまさか、食べる気なの!?止めないと!
ルドガーああ!俺達の方に魔物を引き付ける!
ルドガー──ゼロディバイド!
ギャウウ…ッ!?
ダッ──
ファラ魔物の注意がこっちに向いた!作戦成功だね!
リチャードよし、ここで迎え撃とう!
scene2雪国の実力者
ファラよかった…。ブウサギに怪我はないみたいだね
ブウサギぶーぶー
リチャード大人しいね。魔物から守った僕達を信頼してくれているのかな
ルドガージェイドも無事に見つかった事だし、リンネル村に戻ろう
ルドガー早くピオニーさんの元に連れて帰らないと
ファラうん、そうだね!
ピオニーさて、準備は終わったな。あとはあいつら次第か…
ファラあっ、ピオニーさん!ジェイド、見つけて来ましたよ!
ブウサギぶひっ、ぶひっ
ピオニーおお!戻ったか、ジェイド!
ブウサギぶひー
ピオニー助かったぜ、おまえ達。ジェイドが戻ってきてくれて一安心だ
ルドガーこれで、エルを連れ戻すための手助けをしてくれるんですよね?
ピオニーああ、勿論だ。俺は、約束を守る男だからな
ピオニー準備は整ってる。今すぐカン・バルクへ向かうぞ!
ファラえっ、わたし達も一緒に…ですか?
ピオニーああ。何か問題でもあるのか?
ファラ一緒に行動しているところを見られたら、ピオニーさんまで捕まっちゃうかも…
ピオニー心配ない。俺に任せろ
母と娘
ファラ堂々とお城の前まで来ちゃった…
リチャード街にいた兵士達とのやり取りを見ていた感じだと、彼の一言にはかなりの影響力があるようだったね
ルドガーただ、お城に入るとなるとそう簡単にいくかどうか…
ピオニー大丈夫だ。俺に任せろって言っただろう?
ピオニーよう、調子はどうだ
兵士1ピオニー殿下!?何か御用でしょうか…!
ピオニーああ。こいつらと俺を城の中に通してほしい
兵士2なっ、お前達は…!どうして貴殿がそのような者達と共に!?
兵士1お下がりください、ピオニー殿下。そやつらは逆徒として投獄されていた罪人達です!
兵士2殿下から離れろ!脱獄犯共め!
チャキッ
ピオニーおいおい、おまえ達は何か勘違いをしているみたいだ。こいつらは罪人なんかじゃない
ピオニー身元は俺が保証する。城の中に用があるから、通してくれ
兵士1し、しかし殿下…!
ピオニーこいつらが城に忘れたものを取りに来ただけだ。用が済んだらすぐに出ていくさ
兵士1…わかりました。殿下をお通しするぞ
兵士2ああ…
ピオニー突然押しかけて悪いな。恩に着るぜ
シゼル…投獄していた逆徒を逃がしたそうだな、メルディ
メルディあのまま牢にいたらルドガー達、処刑されちゃう
メルディ罪のない人達、処刑されるの間違ってるよ!
シゼル罪がないとなぜ言い切れる?おまえはその者達の何を知っているのだ?
メルディそれは…でも、悪い人違うのわかるよ!
シゼル…おまえは何もわかっていない。世にどれほど善良な顔をした悪人が蔓延っているかという事を
シゼルよいか。世の中には自らの都合を正義と称する厚顔無恥な者もいるのだぞ
メルディルドガー達、そんな人違う!
シゼルおまえは王女だ。個人の感情だけでなく周囲の状況を冷静に考えよ
シゼルその上で信用に足ると判断する材料を提示すれば、私もその者達を認めてやろう
シゼルもっとも…今はそのような細事にかまけている暇はないがな
メルディ…おカーサン、ウィンドルとの交渉また上手くいかなかったか
シゼル…交渉は継続中だ
メルディこのまま折り合わなかったら…ウィンドルと戦争するのか?
シゼル…戦争は避けられぬであろうな。だが、兵器開発が間に合えば被害は最小限に抑えられる
シゼル先制攻撃であの兵器の威力を知ればウィンドルとて全面戦争を避けるだろう
メルディ最小限でも、戦争よくない。…おカーサン、メルディ、みんながためなら結婚出来るよ
シゼル愚かな事を。おまえを差し出すという事は事実上の降伏を意味するのだぞ
メルディ降伏でも戦争ない方がみんな平和。違うか?
シゼル違うな。結婚など建前にすぎん。実際は人質だ。我々は友好国という名の属国となる
シゼルそうなれば待ち受けるのは一方的に搾取され続ける未来だ。到底受け入れられるものではない
シゼルこちらとしても婚約交渉は建前だ。兵器が完成するまで時間を稼ぐ手段でしかない
メルディ…戦争は死ぬ人いるよ。最小限だとしても…メルディ、一人も死なせたくない
シゼル私とて死なせたいわけではない。だが先ほども伝えた通り、感情よりも状況を優先するべきなのだ
メルディ…本当に他の方法、ないか…?
シゼルそのようなものがあるのなら、教えてもらいたいものだな
シゼルさぁ、もうわかっただろう。この話は終わりだ
メルディ待って。最後に一つだけお願いあるよ
メルディキールが研究室にいるエル、ルドガー達のところに帰すよう言ってほしいな
シゼルその願いは聞けぬ。研究に必要と聞いている。おまえが口を出す事ではない
シゼル話はここまでだ。下がれ、メルディ
メルディ……わかった…よぅ…
シゼル…得心のいかぬ顔をしておったな。今は大事な時だ。面倒が起こる前に手を打つべきか
シゼル誰かいるか!
ファラ──本当にお城の中に入れちゃった…
タタタッ
兵士3お待ちください!
兵士1何事だ。殿下と客人の前で失礼だろう
兵士3そ、それが…
ファラ何かあったのかな?すごく慌ててるみたいだけど…
ルドガー…嫌な予感がするな
兵士1っ…それは本当か!?
兵士3ああ、女王陛下直々の命令だ
ピオニー何だ何だ、悪い知らせか?
兵士1…殿下。あなた方を研究室へお連れするわけにはいかなくなりました
兵士1取り押さえろ!
チャキッ!
ルドガー…!
ピオニーこれは何の冗談だ?
兵士3この者達を捕えよと女王陛下の命令です
ファラえぇっ…!
リチャードどうやら女王に目を付けられてしまったようだね
ピオニー彼らは俺の連れだ。女王と話をさせてくれ
兵士4それはかないません、殿下
ピオニーおまえは…リンネル村で何度か見た顔だな
ルドガーあの時の…!
リチャード僕達も見かけた村を見張っていた兵士だね
ピオニーなるほど。俺の周りをこそこそ嗅ぎまわってたってわけか
兵士4ご察しいただけたのなら話は早い。殿下、あなたには逆徒達に加担した謀反の疑いがかけられています
ファラピオニーさんが…逆徒…!?
ピオニー……
兵士1手荒な真似はしたくありません。…ご同行願います
ピオニーいやぁ、参った参った。まさか俺まで罪人扱いされるとは
ルドガー笑い事じゃありませんよ…!
ファラまた、牢の中に戻ってきちゃった…
ルドガー逆徒達に手を貸したって話、本当なんですか?
ピオニー大した事はしてないぞ。俺はただ金を──
看守1何だ貴様らは!?
バシュッバシュッ
看守2ぐう…!?
ドサッドサッ
ファラ何…!?
リチャード看守達が誰かに襲われたようだ!
逆徒の男カーティス司令官、こちらです!
ピオニー誰かと思ったらおまえか、ジェイド
ジェイドこんなところで何をしていらっしゃるのですか、殿下
ピオニー俺の可愛いジェイドを助けてくれた奴らに恩返ししようと思っただけだ
ジェイド…不気味なのでその言い方はやめてもらえませんか
ピオニー安心しろ。おまえは可愛くない方のジェイドだ
ジェイド私が言いたいのは、ブウサギに人の名前を付けるなという事で…
ジェイド…はぁ、今はそんな話をしている場合ではありませんでしたね。早くここから出なければ
ジェイドそちらの方々が一度城から逃げた事で兵士達が警戒を強めているようですから
ルドガーえっ…!俺達の事を知っているんですか?
ジェイドええ、勿論。殿下と共にリンネル村からカン・バルクに戻って来た事も知っています
ピオニーその様子だと、俺が牢に入れられる事を見越して城内に潜入していたみたいだな
ジェイド殿下に謀反の疑いがかけられていると情報が入りましてね。事前に手を打つ予定でしたが…
ジェイドあなたがリンネル村を出てカン・バルクに来たりするから手間が増えました
ピオニー危険を冒して俺を助けに来るとは、実に友達がいのある奴だ
ジェイド城の人間にあなたが持っている私達の情報を渡すわけにはいきませんからね
ジェイド…牢を開けてください
逆徒の男はっ
ガチャガチャ…
キー…
ピオニー思ったより早く出られたな
ファラはい。一時はどうなる事かと思いましたけど…
逆徒の男おい、止まれ。お前達まで牢の外へ出すとは言っていない
ファラえっ、そんな…!
ピオニーおいおい、それはないだろ?あいつらも出してやってくれ
ジェイドどうして得体の知れない者を助け出す必要があるんです?
ピオニー俺はメルディから、こいつらの事を頼まれたんだ。見捨てていくわけにはいかないだろうが
ピオニーそれに、こいつらはシゼル女王に対抗するための戦力になるぞ
ピオニー何たって俺の可愛いジェイドを魔物から救ってくれた奴らだからな。戦力は保証する
リチャード少なくとも僕達はあなた達に襲い掛かったりしません
ジェイド……
ジェイドいいでしょう。あなた方も付いて来てください
逆徒の男この辺りに兵士はいないようです。一気に逃走用の通路まで進みますか?
ジェイドいえ、油断は出来ません。廊下の先まで行って安全かどうか確かめてください
逆徒の男はっ
ファラ…ピオニーさんはあの人とどういう関係なんですか?
ピオニージェイドの事か?あいつとは長い付き合いでな
ピオニージェイドが率いている組織はシゼル女王の兵器開発を止めるために動いてるんだ
リチャードあなたも、その活動に協力を?
ピオニーまあ、そうだな。多少の資金援助をしたくらいだが
ルドガーピオニーさんは地位もあるし、女王陛下に直接進言する事も出来るんじゃないんですか?
ピオニーいいや、今の俺にそこまでの力はないぜ。ただ、俺にも国を憂う心はあるからな
ジェイド…殿下、話はここを出てからにしてください。いつ兵士に見つかるかわからないんですよ
ピオニーおまえの事だ。見つかってもいいように策くらいは立ててあるだろ?
ジェイド……
ジェイド我々がここで捕まるような事があれば誰が民の生活を守るのですか
ジェイド民を思う心があるなら慎重に行動してください
ピオニーはいはい、わかってるって
リチャード…彼は正史世界のジェイドさんと少し違うようだね
ファラ確かに…、前に会った時はもっと飄々としてて、何を考えてるかわかり辛い人だった気がするなぁ
ルドガー分史世界ではよくある事だよ。環境や立場が少し違うだけでも人の印象が違って見えるものなんだ
リチャードそうか…僕がこの世界では王として振舞わないように、同じ人でも行動が変わるんだね
ファラなるほど
逆徒の男司令官、安全の確認が取れました!
ジェイドわかりました。逃走用の経路まで一気に進んで──
ルドガー待ってください…!
ルドガー俺達は研究室にいるエルを助けに来たんです!
ジェイド残念ですが、それは聞けませんね
ジェイド兵器開発の要ともいえる研究室にそう易々と近づく事は出来ません
ルドガーそんな…
ファラそれじゃあ、わたし達だけでも研究室に向かいます!
ジェイド…本気ですか?
ファラ今またここを出たらもう戻ってくる方法はないし…エルを助けないと!
ルドガーああ、たとえ危険でもエルをこのままにしておけない
リチャード…待ってくれ、二人共
リチャードジェイドさん。再び城内に戻って来る事が出来ないなら、僕達は行きます
リチャードですが、この騒ぎの中、研究室まで辿り着ける可能性は確かに低い…
リチャードなので単刀直入に聞きますが、この先、ここに戻って来る機会はありませんか?
ジェイド……お答え出来ません。少なくとも、今、ここでは
リチャード…わかりました。ルドガー、ファラさん、今はここを出よう
ファラえっ、でも…
リチャード焦る気持ちはわかるが今は僕を信じてくれ
ルドガー……わかった
ファラうん
ダダダッ
兵士1いたぞ!!!
ファラ…!後ろから追手が来たよ!
リチャード僕達が牢から逃げ出した事に気付かれたみたいだね
ジェイドやれやれ。あなた方がのんびりしているからですよ
ジェイドこうなってはどの道研究室に向かうのは不可能でしょう
ジェイド脱出するのであれば、ついて来てください。いいですね
ルドガーはい!
scene1すれ違う想い
メルディおカーサンが事、説得出来なかったな…
クィッキークキュウ…
メルディ心配してくれるか?ありがとな、クィッキー
メルディいつまでも落ち込むいけないな!
クィッキークィッキー!
メルディ決めた!もう一度、キールのところ行くよ!
メルディキールに人殺しの兵器なんて作ってほしくないからな…
クィッキーククキュキュキ…
キール──駄目だ。話にならない
エル……
メルディどうして!その兵器、完成したらおカーサン使うよ!
メルディそしたら人がいっぱい死ぬ!キール、それが望みか!?
キール別に人が死ぬ事を望んでいるわけじゃない。だが、兵器の開発は止められない
メルディどうして…
キール…メルディ。おまえはぼくに、城から出て行けと言うつもりか?
メルディそんな事ない!どうしてそうなる!?
キールぼくは兵器開発のためにシゼル陛下から宮廷学者に取り立ててもらったんだ
キール兵器開発を中止にするという事はその立場を手放すという事だ。当然、城にぼくの居場所はなくなる
メルディそれは…
キール…兵器開発の責任者という立場をなくしたぼくを周りの研究者はどう見ると思う?
キールぼくの研究はただでさえ学会で認められていないんだ
キールこの世界が本当の世界ではない…分史の世界だなんて誰も信じてくれなかった
エル分史…!キールの研究って分史世界の事だったの!?
メルディエル…分史世界が事知ってるか?
エルう、うん…ちょっとだけ。ルドガーとメガネのおじさんは詳しいかもだけど…
メルディキール、もしかしてエル返してくれないの、このためか?
キール…他に何があるって言うんだ
メルディ研究がためにエルを無理やり連れてきたか。ちゃんとお願いすればよかったのに…
キールそれは出来ない。あの男もクルスニクの一族だ、警戒する必要がある
エルルドガー?どうして…
キール…おまえに説明するつもりはない。とにかくあの男がいると困るんだ
エル…ルドガー…
メルディキール…変だよぅ。研究がために兵器を作ったりエルを返してくれなかったり…
キール手段を選んでいる余裕はないんだ。時間がなさすぎる
キールせっかくここまで来て…女王直々に研究を認められて学会の連中を見返せたっていうのに…
メルディキール…キールはそんな事のために研究をしているのか?
キールそんな事とは何だ!誰にも認められずに馬鹿にされ夢を笑われたぼくがどれほどみじめか…
キールぼくはこの研究に全てを賭けている。それなのに、おまえは…
メルディ…?メルディ、関係あるか?
キール…いや、何でもない。とにかく、この研究の前には些細な事だ
メルディたくさんの人が死ぬ事、些細な事言うか!
キールぼくには関係ない事だ
メルディどうして…キール、そんな事言う人違う!
メルディキール、世界が未来よくするため研究する優しい人!
メルディその研究使った兵器でたくさん人死ぬなんて耐えられないはずよ!
キールうるさいっ!!
キール何も知らないくせに口を出すな!
メルディ…出すよ!メルディ知っている!キールとたくさんお話したよ。あの花畑で…
メルディそうだ、メルディと一緒にまた行こう!キールきっと疲れてるだけ
キール時間がないと言ったはずだ。ぼくは一刻も早くこの兵器を完成させなければならないんだ
メルディ休憩必要!前は…研究が事、世界が事話してくれたな
メルディまたお話してほしいよ…そしたらキールも、あの頃が気持ち思い出せる
キール気持ちだと?
キールそんなもの、思い出している暇はないっていうのがわからないのか
メルディでも…
キールぼくが研究を完成させればこの国は強くなる!
キールウィンドルに脅されて王女を差し出すような弱い国じゃなくなるんだぞ!
メルディ弱くたっていい!人を殺す兵器、作らないでほしいよ!
キール…話は平行線だな。これ以上は時間の無駄だ。出て行ってくれ
メルディどうしても…やめてくれないか
キールくどいぞ
メルディメルディ、ウィンドルに行ってもメルディごと撃つか?
キール…何?
メルディ……
メルディメルディ、決めたよ。ウィンドルが王様と結婚する!
キールな、何をバカな事を…
メルディ今のキールきらい!ウィンドルが王様は、結婚すれば戦争しないでくれる
メルディメルディ…戦争しない人が方、好きだよ!
キール国の存続の話だ好きか嫌いかの話じゃない!
キールそもそもこんな交渉を持ち出す王だ。おまえの思うような結末になると思っているのか!
メルディやってみないとわからない!メルディ、本気!おカーサンにそう言ってくる!
キール……
エル…追いかけなくていいの?
キール必要ない。シゼル陛下が止めるだろう
エル泣いちゃってるかもしれないよ
キール…。そんな暇はない。放っておけばいいさ
エル…メルディ本当に結婚しちゃったらどうするの?
キール…兵器の開発が間に合わなければ遅かれ早かれそうなるんだ
キールとやかく言うのなら、まずその時計を渡したらどうなんだ
エルこれだけはダメ!
キールふん…。どいつもこいつもぼくの邪魔ばかりする…
キール……
兵士5止まれー!
兵士6抵抗すると容赦せんぞ!
リチャード追手が増えてきたね
ジェイド出口までもう少しですが…妙ですね。兵士が後ろからしか来ないというのは…
ピオニーわざとこっちに追い込んでるって事か?
ジェイドええ。事前に把握していた警備の配置とも違うようです。これは罠の可能性が高いですね
ルドガーそれじゃあ、逃げる事も出来ないんですか?
ジェイドいえ、予備の逃走経路を使います。人目につく可能性はありますが追手を撒くには適した道です
リチャード流石ですね
ジェイド流石…とは、どういう事でしょう。普段の私の事をご存じかのような言い方ですが…
リチャードああ、いえ。ピオニーさんが一目置くだけあると思っただけです
ジェイド殿下は私を買い被っているだけですよ
ジェイドさぁ、こちらです。ついて来てください
scene2すれ違う想い
ジェイドここを抜ければ城の外です
ルドガー追手は撒けたようですね
ピオニーこの道は、なまじ人目があるから逃走に使われるとは思わなかったんだな
リチャード上手く盲点を突けたようですね
ファラ掃除してたお姉さんがびっくりして逃げて行ったのはちょっと申し訳なかったけど…
ジェイド彼女が通報したら終わりです。早くここを離れましょう
メルディ…はぁ。キール…どうして…
メルディここに連れて来てくれたキール…いろいろお話してくれたキール…優しくて、不器用だけど頑張ってて…
メルディ立派な人だと思ったよぅ。だからメルディ、おカーサンにキールが論文紹介したな
メルディなのに…
クィッキークィィ…
メルディクィッキー、心配してくれるか。ありがとな
メルディでもメルディ、今はちょと元気出ないよ。ごめんな…
ザッザッザッ…
メルディ…!誰か来た!
メルディキール、来てくれたか…?
ファラメルディ!?
メルディファラ!?みんなに…ピオニーもいるか!?
ピオニー奇遇だな、メルディ
メルディ無事会えたんだな。よかったよぅ。これから研究室に行くのか?
ルドガーいや…実は…
メルディバイバ!ピオニー、逆徒と繋がりがあったか!?それで捕まってたなんて…
ピオニーそういえば話した事はなかったな!
メルディピオニーの話なら、おカーサンも聞いてくれる思ったよ…ルドガー達、ごめんな…
ルドガーいや、知らなかったんだからメルディのせいじゃないよ
ピオニーまぁ、繋がりをもったのもつい最近の事だからな
ジェイド私達が活動を始めたのは王室での兵器開発が始まってから…
ジェイド具体的には、ウィンドルとの戦争を積極的に進める動きを感知してからでして
リチャードウィンドルと戦争を…
ルドガー可能性はあるって噂は聞いたけど積極的に進めていたなんて…
ファラという事は…メルディが結婚するっていう話はなくなったんですか?
ジェイドいえ。表向きは和平の条件が折り合わず結論は保留…という事になっています
ジェイドしかしそれは、戦争の準備が整うまでの時間稼ぎにすぎないでしょう
メルディおカーサンもそう言ってたな。メルディ、戦争やめるよう頼んだけど聞いてもらえなかったよ
ジェイドやはりそうですか
ファラどうしてだろう。戦争なんて誰もしたくないと思うんだけど…
ピオニーセルディクは野心家で知られている
ピオニーメルディと結婚したとしてもこの国を乗っ取るつもりだろう
ピオニー王位についた背景もいろいろな策謀があるって噂だからな
リチャード……
ピオニーア・ジュールの国を守るためにはセルディクを跳ね除ける力がいるとシゼル女王は考えたんだろう
メルディおカーサン、守るために兵器作ってるか…?
ピオニー…そうだろうな。ただ、力が拮抗してしまえば消耗戦になりどちらかが滅ぶまで戦う事になる
ピオニー国を第一に思うなら、それを避けるために早期決着を狙うはずだ
リチャード相手が戦う気を無くすほどの強力な兵器…という事ですね
メルディそれを…キールが作ってる…
ファラ大変…!どうにか止められないんですか?
ジェイドそれを止めるために策謀しているのが私達です。逆徒などと呼ばれていますがね
メルディそれじゃ、みんなで戦争止めてくれるか!?
ジェイドええ。ただ…この先の話を聞くといくら王女殿下とは言え城に帰すわけにいかなくなりますよ
ジェイド万が一にでも城の者に情報が伝わったら困りますからね
メルディ…わかった。メルディ、お城戻れなくてもいい
メルディ戦争を…兵器開発を止めてくれるならメルディ手伝うよ!
ファラメルディ…本当にいいの?
メルディはいな。メルディ、おカーサンやキールに戦争してもらいたくないよ
ジェイド…わかりました。では話しましょう
ジェイド私達は兵器の研究室に侵入して開発中の兵器を破壊し──
ジェイド開発責任者、キール・ツァイベルを暗殺します
ルドガーなっ…
ファラそんな…!
メルディキ…キールが事…こ、殺す…か?
ピオニーその計画は初耳だが…確かに兵器開発を止めるには一番確実な方法だな
リチャード女王に抜擢されるくらいだ。彼にしか出来ない開発なんだろう。確かに頓挫する可能性はある
リチャードしかし…
ジェイド抵抗があるという事でしたら協力していただく必要はありません
ジェイド事が終わるまで私達の拠点で大人しくしていてもらうだけです
ジェイドただ…暗殺のためには当然、研究室に入ります。となれば、同行したいのでは?
ルドガーエル…!
リチャード戦闘になる事を考えれば僕達も同行してエルさんを保護した方がいいね
ジェイド勿論、可能な限り保護はしますが保証は出来ませんからね
ジェイド例えばその方が人質に取られた時私達がどういう決断をするか…何しろこちらも命がけですから
ルドガーわかりました。俺達も行きます…!
リチャードああ…エルさんを助けよう
ファラ勿論、私も行くよ!でも…
メルディ…メルディも、行くよ!
ファラメルディ…!?
メルディメルディも戦争止めたい。だからキールがとこ一緒に行く!
メルディでも、殺しに行くと違う。メルディ、もう一度キールを説得する!
ファラメルディ…
ジェイド盛り上がっているところ申し訳ありませんが王女殿下の同行は許可出来ません
ジェイド私達は万が一の事があったらあなたの身を切り札として使わせていただくつもりです
ジェイドそのため、危険な場所に王女殿下を連れて行く事は出来ません
ファラそんな…!メルディを道具みたいに!
メルディ…それで戦争止まるならメルディ道具でも構わないよ
メルディだけどその前にキールが説得させてほしい
ジェイドですから、切り札であるあなたを危険な戦いに連れて行くわけにはいかないと言っているんですよ
ピオニーまあまあ、落ち着けよ。メルディの身に何かあったら困るっていうだけなんだろ?
ピオニーそれならルドガー達に守らせたらどうだ?
ピオニー俺達だって国民の一人を殺して平和を作りたいわけじゃないだろ。それは最終手段だ
ファラわたし…やる!メルディの事、守るよ!
ジェイド守りながら戦うというのは相当な能力が必要ですよ
リチャード僕も尽力させてもらうよ。要人の警護はいつも間近で見てきたから、多少心得があるしね
ルドガージェイドさん、メルディは俺達が必ず守ると約束します
ジェイド…みなさんの気持ちはわかりました。では、こうしましょう
チャキッ
ルドガー…!何を…
ジェイドここであなた方の実力を試させてもらいます
ジェイド王女殿下を守りながら私と戦ってみてください
ファラそんな、いきなり…
ジェイド敵はいきなり襲ってくるものです。それも複数で
ジェイド私一人からも守れないのなら王女殿下の同行は認められません
ピオニーよく言うぜ。そこらの雑兵が束になってもおまえほどじゃないだろ
ジェイドどうでしょうねぇ。私も、もう年ですから、そこまでの力はありませんよ
ジェイドさぁ、どうしますか?私はどちらでも構いませんよ
メルディみんな…力貸してくれるか?
ルドガー勿論だ
ルドガージェイドさん、その条件、受けて立ちます
ジェイド心は決まったようですね。それでは、お手並み拝見といきましょうか
scene3すれ違う想い
ジェイドふむ…思ったよりやりますね。王女殿下まで攻撃が届く気がしません
ジェイドこれなら合格と言ってもいいでしょう
ルドガーはぁ、はぁ…ありがとうございます
ファラふぅ、よかった…
リチャードそれにしても、三対一なのにここまで追いつめられるとはね…
ピオニーなっ、強いだろ?
ジェイド何故あなたが誇らしげなんですか…
ジェイド…さて、それでは正式にご協力いただけるという事ですし私達の拠点まで案内しましょう
ピオニーカン・バルクの街中にあるんだったな
ジェイドええ。街中に入ったら警戒を怠らないようにしてください。至るところに兵士がいるはずです
ルドガーわかりました
ルドガー(ごめん、エル。 もう少しだけ、待っててくれ)
迫る時限
キール…ここを…こうして…
カチャカチャ
キール……
メルディメルディ、ウィンドルに行ってもメルディごと撃つか?
キール…何?
メルディメルディ、決めたよ。ウィンドルが王様と結婚する!
キール…別にどうでもいいそんな事は些細な事だ
キールこの術式さえ完成すれば兵器の完成は目前だというのに…
キール長年の研究で培ってきた知識と技術がやっと活かされるんだ…これで…
メルディキール、世界が未来よくするため研究する優しい人!
メルディその研究使った兵器でたくさん人死ぬなんて耐えられないはずよ!
キール…ぼくの、何を知っているというんだ
キールぼくを認めない人達が死んだって…関係ない
キール……くそっ。少し休憩するか…
キールそういえばあの子どもさっきから静かだが…
エルすー…すー…
キール大人しいと思ったら眠っているのか
キール時計は握ったままか。…今なら、慎重にやれば…
コンコン
兵士キール様。よろしいでしょうか
キール…っ!だ、誰だ、こんな時に
ガチャ
シゼル誰だとは挨拶だな
キール陛下…!
シゼル首尾はどうだ?
キール順調です。完成は時間の問題でしょう
シゼルその時間がもうないのだ。ウィンドルに不穏な動きがあるという情報が入って来た
シゼルこうなっては、もはや一刻を争う。完成を急げ
キール…陛下。失礼を承知で申し上げます
キール開発が万が一遅れてメルディが…王女がウインドルに嫁いでこの国から出て行った場合
キールそれでも、兵器をウインドルへ使うのでしょうか
シゼル愚問だな。…メルディに何か言われたか
キール開発は勿論間に合わせますが少し、気になったまでです
シゼル遅れた結果メルディを差し出したとしても研究は続けていく
シゼル他にこの国を存続する手立てはない。私は守らなければならぬのだ。例え尊い犠牲を払おうとも
シゼル…これでよいか。私の決心は揺るがぬ
キール…はい
シゼル兼ねてより約束していたがこの開発が成功したらおまえの望むものをやろう
シゼル地位も、名誉も好きに与える。それこそ本来の研究に戻っても構わぬ
シゼル励めよ
キールはっ
キール…。そうだ。ぼくの望みはこれなんだ
ジェイド何とか、兵士に見つからず辿り着けましたね
ピオニーまさか、酒場の上とはな。昔、カン・バルクにいた頃はよくこの店で飲み明かしたよな
ジェイドあの頃の友人達も私達の仲間ですよ
ルドガーその仲間って何人ぐらいいるんですか?
ジェイド少なく見積もって二百人…ですが、全員が戦えるわけではありません
ファラにひゃ──そんなにたくさん!?
リチャード相当な数ではあるが…ア・ジュールの兵力を考えると足元にも及ばないだろうね
ジェイドええ。ですから正面突破ではなく暗殺という方法を取るわけです
ジェイドそのための計画をここで着々と進めてきました
メルディけどここ、普通の酒場よ。お城が兵士、店に来る事ないか?
ジェイド客には兵士に限らず一般人も来ますが店主が上手く仕切ってくれていますから、問題はありませんよ
ジェイドもっとも作戦の決行が近い今は臨時休業にしていただいてますが
ルドガー作戦の決行って、いつなんですか?
ジェイドピオニー殿下を救出次第でしたので…今から準備を整えて、出発は明朝ですね
ルドガーそんなに早く…!
リチャードしかし今日あんな事があった後では警戒されているのではないですか?
ジェイドはい。ですが、時間が経てば警戒が解けるというものでもありません
ジェイド何せ戦争の準備をしている国です。警戒はどんどん強まる事でしょう
リチャード確かに…。それなら急いだ方が虚を衝ける可能性があるか…
ファラそっか。さすがにすぐ戻ってくるとは思わないもんね
ジェイドええ。それに…もう時間がないかもしれないんです
ピオニーまさか、戦争が始まるのか?
ジェイド情報を集めてくれている仲間達からウィンドルに不穏な動きがあると連絡がありました
ジェイドおそらくその情報はシゼル女王の耳にも入っているでしょう
メルディどうしよう…。おカーサン、完成したらすぐ兵器使うかもしれない
メルディ先制攻撃で兵器の威力を知らせる言ってたよ…
ジェイド…まさに一刻を争う状況ですね
ジェイド準備があるため出発は早められませんが正直もどかしいですよ
メルディおカーサン…お願いな…早まらないでほしいよ…
ファラメルディ…。大丈夫だよ。きっとみんなで止められるから…
ジェイドさて、作戦を説明しようと思いますがその前にいくつか質問させてください
ルドガー何ですか?
ジェイド門番が話しているのを聞きました。あなた方は「何の前触れもなく突然空から現れた」と
ジェイドこの国の情勢についてもあまり詳しくないようですし…あなた方は一体何者なのですか?
ルドガーそれは…
リチャードルドガー。彼らには正直に話すべきじゃないかな
リチャードエルさんを助けた後に元の世界へ戻るためには協力者がいた方がいい
ピオニー元の世界って?
ルドガー実は…俺達は、この世界とは別の世界から来たんです
ジェイド…にわかには信じがたい話ですが冗談を言っているわけではなさそうですね
ジェイドそれに気になる事もあります…。もう少し詳しく、あなた方の事を聞かせてもらえますか?
ルドガーわかりました
ジェイド──成程。あなた方がこちらの世界に来た経緯はある程度理解しました
ジェイドこれで証明されましたね…キール・ツァイベルは優秀な学者なのだと
ファラ…?どういう事?
ピオニー女王がどういう兵器を作っているか調べるために、開発責任者の研究を調べたんだ
ピオニー専門はマナの革新的な技術応用。そこから発展して、今研究しているのは──
ピオニーこことは別の世界…分史世界の存在についてだ
ルドガー何だって…!
メルディメルディもよく話聞いてたから知ってるよ
メルディキール、世界が研究してたけど誰も信じてくれなかったな
ジェイド学者の中では嘲笑の的だったと聞いています
ジェイド私も論文を読みました。理屈は通っていますが、仮説も多く机上の空論だと思っていました
ジェイドしかし正しいのは彼の方だった…。つまり、彼の学者としての能力は世界中の学者を凌駕しているんです
ファラキールって、そんなにすごいんだ
リチャードしかしその頭脳が今、兵器開発に向けられている…
ジェイドええ。元々由々しき事態ではありましたが思っていた以上にマズい状況ですね
ジェイドそれほどの頭脳があれば我々の想像を超えた恐ろしい兵器の可能性があります
ジェイド──例えば、魔導器とか
ピオニー魔導器?まさか。あれは実現不可能な都市伝説だって話だろ?
メルディでもエル、兵器が事見て魔導器って言ってたよ
ジェイド…という事は、あなた方の世界では実在しているのですか?
ルドガーはい。俺達の世界では戦争で魔導器が使われていました
ルドガーエルはその時、実際に魔導器を見た事があって…
リチャードイニル街の魔導器か…
ジェイドでは、あなた方は魔導器の効果や対策についてもご存知ですか?
リチャード対策は、本体から魔核を取り出すなど直接の破壊が有効です
リチャード効果については、魔導器にもいろいろあるので断定は出来ません
ジェイド…それなら、こんな魔導器を聞いた事はありますか?
ジェイド周囲のマナを吸い尽くし、生命が存在出来ない土地にする兵器…
リチャード…あり得ると思います
リチャード魔導器の動力源はマナです。僕達の世界でも、命を吸い上げると言われた事がありました
ジェイドそうですか…。…出来れば、不可能であってほしかったのですが…
メルディ……
ジェイド我々が掴んだ情報では、そのような効力があるそうです。それも、街一つが一瞬で枯れると…
ジェイドその情報を聞いた時、さすがに偽の情報を掴まされたのだと思いましたよ
ジェイド理論上は可能ですが、実用化は不可能な技術で現実的ではありません
ジェイドしかし…彼がそれ相応の頭脳を持っていると知った今、考えは変わりました
ピオニー使い方を誤ると世界が滅ぶ危険性すらあるな。絶対に阻止しないと
メルディ…キール…どうしてそんな怖いもの作れるか…?
ジェイド…負の因子の影響、という事は考えられませんか?
ルドガー負の因子…!
ジェイドさっきあなた方の話を聞いてから気になっていたのです
ジェイドそれに憑りつかれた人は普段と様子が違ったのですよね?
ルドガーはい。必ずそうなるかどうかはわかりませんが…
ジェイドならば、シゼル女王か、キールに憑りついた可能性は十分ありますね
ルドガー確かに…!もしそうだったら負の因子を破壊すれば解決するかも知れません
ピオニー因子を破壊すれば元の人格に戻るか…
ピオニー憑りついてるのがセルディクだったら話が早かったかもなぁ
リチャードそうですね…でもセルディクは僕達の世界でも好戦的な性格の人物でした
リチャードもし王になっていたら、こういう状況になる可能性は十分あり得ます
ジェイド興味本位で聞きますがそちらの世界ではウィンドルの王はどんな方なのですか?
リチャード僭越ながら僕が務めています
ジェイドなるほど…道理で。品格のある方だとは思っていましたが国王陛下だったとは…
ピオニーリチャード…そういえば聞いた事あるな
ピオニー確かウィンドルの王子だったが幼い頃に病死したとか
ルドガー病死…。それでこっちの世界ではリチャードが王じゃないのか
ファラ誰も気付かなかったのは大人のリチャードを知ってる人がいなかったからなんだね
リチャード…なるほど、病死…か
ファラリチャード…大丈夫?
リチャードああ。少し驚いたけど、平気だよ
リチャード負の因子の話に戻ろう。僕達が元の世界に戻るために必要なものだ
ピオニーと言っても、誰についてるかわからないんだろ?
ルドガー確かに…手がかりは少ないですね
リチャードもし見つからなかった場合、他に元の世界に戻る方法はないのかい?
ルドガーいや、実は戻るだけなら他にも手はあるんだ
ルドガー異変の前までは元の世界に戻るために時歪の因子(タイムファクター)というものを壊していた
ファラあっ、前にわたしとルークが分史世界に迷い込んだ時に倒した黒いモヤの魔物…
ルドガーああ。あの時は魔物だったけど…人間に憑りついている事の方が多いかな
ルドガー時歪の因子は…その世界を作っている中核なんだ
ルドガー憑りつかれた者は俺達のような骸殻能力を持つ者が近づくと黒いモヤを出し始める
ルドガーそして骸殻の力を使って時歪の因子を破壊すると……その…元の世界に戻れるんだ
リチャードなるほど…。異変の原因と思われる負の因子を見つける方が理想的だがその方法も検討するべきだね
ファラ勿論、エルを助けてからね
ルドガーああ。とにかく今は、エルを助ける事とキールを止める事に専念しよう
ジェイドいやー、皆さんの方針が定まったようでよかったですね
ルドガーあ、すみません。俺達の話ばかりしてしまって…
ジェイドいえいえ。私としても、皆さんの行動目的を把握出来ましたので有意義でしたよ
ジェイドそれでは、改めて突入作戦の打ち合わせと行きましょう
ピオニーその後は、朝まで自由行動だ。寝床は用意させてるから今日の疲れをゆっくり癒してくれ
ルドガーありがとうございます
決意の夜
ピオニーここで呑むのは久しぶりだな。たまにこの店の味が恋しくなるんだ
リチャード今日は臨時休業と言っていましたがいいんですか?
ジェイドええ、作戦決行に備えて士気を上げるためにと、店主が厚意でやってくれているんです
ルドガーじゃあ、ここにいる人達はみんな仲間なんですね。俺達がいていいのかな…
ジェイドあなた方や王女殿下の事も協力者として説明してありますから気にする必要はありませんよ
ピオニーその王女はふらふらとどっか行っちまったけどな
リチャード作戦の説明を聞いて思い詰めていたようだね…
ルドガー無理もないな。キールを確実に殺すための計画を聞かされたら…
ジェイドだからといって作戦の説明を曖昧にする事は出来ません。あれでも表現には配慮したんですよ
ピオニーそれはメルディもわかっているさ
ピオニー今は考えを整理したいんだろう。ほんの数時間の間にいろいろありすぎたからな
リチャードそうですね。ファラさんがついてくれていますから彼女に任せましょう
ジェイド念のため我々の仲間にも護衛させてますから問題はないでしょう
ピオニーそれじゃ、男だけでむさくるしいがこっちはこっちで男同士楽しく食事でもするか!
ルドガー…いいんでしょうか。仲間が悩んでるのに楽しく食事なんて…
ピオニー気持ちはわかるが、ずっと張り詰めたままじゃ身が持たないぞ
リチャードそうだね。ルドガーはこの世界に来てからどこか気負っているように感じる
ルドガー…そうか?エルの事があるからかな…
リチャード僕も最初はそう思った。けど、それだけじゃないように感じてね
リチャード分史世界に詳しいから、僕達に対してまで責任を感じているんじゃないかい?
ルドガーそう…なのかな。確かに、みんなを元の世界に連れて帰らないとって思っていたけど
リチャード君の気持ちは嬉しいが、少し気を休めた方がいい
リチャード前に、感情に流されずやるべき事を見極めるという話をしただろう?
リチャード今は力を抜いて、明日に備える時だ。焦る気持ちを抑えてね
ルドガー…そうだな
ピオニーいいとこ取られたな、ジェイド
ルドガーえっ…?
リチャードふふ、実は、君の緊張に気付いて休ませた方がいいと教えてくれたのはジェイドさんなんだよ
ジェイド手合わせした時に、あなたの太刀筋から何となく感じただけですよ
ジェイド少し肩の力を抜けば、もっと強くなる…とね
ルドガーはは、あんなに強いジェイドさんにそう言ってもらえると嬉しいですね
ピオニーさぁ、もういいだろう。ここからは戦いの事を忘れてのんびり食事しようぜ
ルドガーはい!
店主お待たせしましたー!
ピオニー来たな。これがこの店の看板料理だ。ほら、食べてみろ
ルドガーそれじゃあ…
ルドガー…!
ピオニーどうだ?旨いだろ?
ルドガーはい。濃厚な魚介の旨味がぎゅっと詰まったスープですね。これ、どうやって作ってるんだろう
店主ははは、それは企業秘密です。しかし喜んでもらえてよかった
店主それと、ジェイドの旦那はいつもの入れておきましたぜ
ジェイドありがとうございます
ルドガー豆腐入りですか?確かに、このスープに合うかも
ジェイドおや、わかってくださいますか。店主、彼にも豆腐入りをお願いします
ルドガーえっ、いや、そんなつもりじゃ…
ジェイドまぁまぁ、遠慮なさらずに
ピオニールドガー、すっかり懐かれちまったな
ジェイド酷いですね。ペットのように言わないでください
逆徒の男お食事中失礼します。ジェイド様、例の件について報告書をまとめました
ジェイドありがとうございます。仕事が早いですね
逆徒の男いえ。セルディクに関しては前々から情報を集めていましたから
ジェイドなるほど。あなたも休んでください
逆徒の男はい。失礼します
リチャードもう調べていてくれたんですね
ジェイド…。あなたの推理は的中していたようです
リチャード…素直に喜んでいいのか、複雑な気持ちだな…
ピオニーいい知らせなのか?それとも悪い知らせなのか?
ジェイドそうですね。場合によっては、王女殿下よりもずっと強い切り札になる情報です
ピオニーもったいぶってないで内容を教えろよ
ジェイドそうしたいのは山々なんですが今は楽しい食事中ですので…
ピオニーそういう皮肉が出るあたり相当いい知らせなんだろ。いいから、さっさと言え
ジェイド承知いたしました。いい知らせ…といっても楽しい話ではないのでご承知ください
ジェイドこれは、とある高貴な方が、セルディクに殺された…という話です
ルドガーなっ…!
メルディ……
メルディキール…
ファラ…メルディ、大丈夫?
メルディファラ…!ついて来てたか?
ファラごめんね。何だか心配で…
メルディ…誰かついてきてる思ってたけどジェイドがつけた見張りと思ってたよ
ファラ見張りの人も後ろにいるみたい。夜は危ないから心強いけど…
メルディ無理ないな。メルディ、逃げ出したらみんな困るよぅ
メルディそれに、少しは思ったよ。先にキールがとこ行って話した方がキールは安全かもしれないって…
メルディでも、そうしたら…今度はピオニー達が危ないな
メルディみんな捕まったら今度こそ処刑されちゃう…
メルディメルディ、キールが事、大切。だけど、みんなが事も大切
メルディだから…明日、みんなと一緒にキールがとこ行って、説得するよ
ファラメルディ…。ありがとう。わたし達の事まで心配してくれてたんだね
メルディファラ達、友達。心配するが当たり前!だから決心、揺るがないよ
メルディただ…メルディ、明日キールに上手く話せるか…不安な
ファラそうだよね…わたしにも手伝える事があればいいんだけど…
メルディありがとな。でもキール、メルディが友達だからメルディお話頑張るよ
ファラ…実はね、わたし達の世界のキールとは幼なじみなんだ
メルディバイバ!ファラ達が世界にもキールいるか?
ファラうん。メルディもいるよ。わたし達、友達なんだ
ファラメルディは王女様じゃなくてわたし達と一緒に冒険したりしてたんだよ
メルディ冒険!みんな一緒にか?キールも、ファラも?
ファラうん。もう一人リッドっていう幼なじみも一緒に旅をしてたんだ
メルディファラの世界ではみんな…キールもメルディも仲良しなんだな
ファラうん…
ファラ…わたし達の世界のキールはメルディが嫌な目に遭う夢を見たっていうだけで大慌てだったんだ
メルディ夢だけでか?…おかしなキールだな
ファラ勉強ばかりのキールをわたし達が振り回してたくらいなのに
ファラメルディの事になるとわたし達の事を逆に振り回すくらいなんだよ
メルディ…ファラ、その話、もっと聞かせてほしいよ
ファラうん。ある日、キールが突然わたし達のところに来て──
ファラ…と、いうわけなの
メルディ違う世界のキールの話なのにメルディが大切にされたみたいで嬉しいな
ファラそう思えるって事はここのキールだって大切に思ってくれてた時があったんじゃない?
ファラ今はきっと、研究とか戦争とかメルディが結婚を迫られてるとかいろいろあって大変なだけだよ
メルディ…うん。メルディ、覚えてるよ。キールと過ごしてた時間
メルディキールが研究、最初は世界の未来がためって言ってた
メルディこの世界が人々、生き続けさせるため必要な研究って
メルディキールがそのため、すっごく頑張ってた事は知ってる
メルディそれに…キール、研究でとても忙しいはずなのにこの花畑に連れて来てくれたよ
ファラここに?…そっか、だからメルディ、ここで考え事してたんだね
メルディはいな。ここの花はマナが影響受けて色を変える…
メルディマナ、生き物にとってどれほど大事かわかる場所ってキール言ってたよ
メルディなのにキールが兵器、そのマナを吸い取って生き物殺すなんて…
ファラ明日、説得できたらキールと二人でまたここに来たらいいよ!
ファラそうすればきっとキールもあの時の気持ち、思い出すんじゃないかな
メルディそれは、多分…出来ないな
ファラどうして…?
メルディキールに研究止めてほしくて、メルディ、ウィンドル王に嫁ぐって言ったよ
メルディメルディが話、聞いてくれなくてキールにきらい、言っちゃったよ
ファラそっか…ケンカ、しちゃったんだね
メルディうん…それに、キールを説得出来ても戦争しないためメルディお嫁行く
メルディだから、もうきっとここにキールとは来れない
ファラそんな事…。また二人で来られるようにわたし達も協力するよ!
メルディありがとな。でも、メルディキールともうここに来れなくてもいい
メルディメルディ嫌われても、キール無事、みんなも無事。だったらメルディ、平気だよぅ
メルディメルディが大事な人誰も傷つかないのがメルディ、一番嬉しい
ファラ…。でも、それじゃメルディが…
メルディメルディ、夜にここに来たの初めてマナの光が空に昇ってお星さまに生まれ変わってるみたい…
メルディ…ファラ。この綺麗な星空。メルディが代わりにキールに教えてあげてほしいよ
ファラそんなの、駄目だよ…絶対、二人は大丈夫だから。そんな顔しないで、メルディ…
メルディありがとな。ファラ…
騎士王の間の封鎖は完了しました。これより先はフレン隊長の指示があるまで外で待機します
キールありがとうございます
キールさあ、陛下の行方を追う手段がないか改めて探るぞ
リッド探すったって…何の手掛かりも残ってないんだぜ
メルディルドガーもエルも消えちゃったしな…
キールだからと言って諦めるわけにはいかないだろう
キールいつまでもリチャード陛下の事を隠し通せるわけじゃない。早くしないと…
キールっ…
メルディキール?どうかしたか?
キール…少し眩暈がしただけだ。心配するな
リッド少し休んだ方がいいんじゃねえか?ここに来るまでずっと歩き通しだったし
メルディメルディ、リッドと一緒に部屋の中調べるよ!その間、キール休むといいな
キール…わかった
リッドよし。俺達はあっちの方を調べてるから、何かあったら呼べよ
キール…全く、ぼくは子どもじゃないんだぞ
キール……
scene1陽動作戦と包囲網
キィ──…バタン
キール…試験運転も上手くいった。これでようやく──
???戻ったか
キール…!何だ、おまえか
???研究は順調か?
キールああ。小型の試作機で実験をして来たが、上手く動作した。兵器の完成は目前だ
???…私が聞いているのはその研究の事ではない
キール……。分史の研究は保留中だ。兵器が完成次第、再開する
???そうか
キール…ところで、どうやってここに入り込んだ?
キールこの部屋の警備は厳重だ。国家機密を扱っている上、保護している研究対象もいるからな
キール…何かの術か?だとしたら対策を打っておかねば…
???心配するな。私以外が使える方法ではない
キールそういう問題じゃない。…答える気はなさそうだな
???…その研究対象の様子はどうだ。今は眠っているようだが
キールああ。静かにしているが…眠っていても時計だけは放そうとしない
キールこの子どもを傷つけるなと言われてさえいなければ楽だったんだが…
???…真の価値は時計ではなくその娘にある
キールわかっているさ。でも、いよいよとなれば多少の怪我は目を瞑ってもらうぞ
???…………
キールそれにしてもおまえは一体、何者なんだ?どうしてそんな事まで知っている
キールぼくに分史世界の知識を与えただけでなくクルスニク一族の力にも詳しいときた
キール正体を明かすつもりはないだろうが何が目的かぐらいは知っておきたい
???おまえは知る必要のない事だ。そんな事より今は時間がないのだろう?
キール…それはそうだが…
エルう…ん…
???…!
エルあれ…?寝ちゃってた…
キール何だ、起きたのか
エル今…誰かと話してた?
キール…いや
キール(もう姿を消したか… どういう事情か知らないが こいつに何かあるのは間違いない…)
キール(真の価値…か。 まだぼくの知らない何かが 隠されてるようだな…)
兵士1異常はないか?
兵士2はっ。問題ありません
兵士1警戒は怠るな。またいつ逆徒共が入り込むとも──
パンッパンパンッ
兵士1っ、何事だ!?
兵士2あれは…!街の方から煙が上がっています!
兵士3た、大変です!ウィンドルが攻めて来ました!
兵士1何!?くっ…こうしてはおれん!
兵士1私は女王陛下へ報告に行く!お前はすぐに動ける兵を集めて街へ向かえ!
兵士2はっ!
兵士1お前は待機中の兵を率いて街の外にある門を閉じよ!これ以上、敵の進軍を許すな!
兵士3承知いたしました!
タッタッタ…
ジェイド始まりましたね。兵も動き始めたようですから、隙を見て侵入を開始します
ピオニー街を巻き込んだ大規模な陽動作戦はやり直しがきかない。正真正銘、最後の決戦だな
ジェイドええ、もう後には引けません。私達はこの作戦の成否に全てを賭けています
ジェイド決行前に、作戦を再確認しておきましょう
ジェイドまず、さっきの音と煙に加え、街ではウィンドル軍が攻めてきたと仲間達が吹聴してまわっています
ジェイド城の兵士達はこれに対応するため大半が街に出払う。それが今の状況です
ジェイドこの隙に仲間達が城の正門を占拠します。これで出ていった兵士達は戻れません
ジェイドさらに、城内に残った兵力も正門の対応にまわるでしょう。その隙に我々が裏から侵入します
ジェイドそして素早く研究室に向かい、兵器を破壊して、キールに開発を止めさせれば作戦完了です
ルドガー正門の占拠もいつまでもつか、わからないしな…時間との勝負だ
ジェイドええ。…さて、そろそろ──
ドォン!
リチャード正門で戦闘が始まったようですね
ジェイド我々も侵入を始めましょう
ファラはいっ。行こう、メルディ
メルディ…はいな
クィッキークィィ…
scene2陽動作戦と包囲網
ピオニーここまでは問題なさそうだな。作戦通り、警備も手薄になっているようだ
ジェイド喜ぶのはまだ早いですよ。油断せず、このまま研究室に向かいましょう
ルドガー今行くからな、エル…
???止まれ
ピオニー…!まさか、あなたが直々にお出ましとは
メルディおカーサン!
シゼル…やはり騒ぎの元凶はおまえ達だったか
ザッザッザッ
ファラ囲まれた…!
リチャードまるで僕達がここに来るのがわかっていたみたいだ
ジェイド…陽動が見破られていたようですね。それなら我々の目的が城内にあると推測するのは容易でしょう
ジェイドしかし、侵入経路まで特定し女王陛下自らが兵を率いて待ち構えているとは、予想外でした
クィッキークィィ…
シゼルここから先へは進ませぬ。勿論、おまえもだメルディ
メルディおカーサン、聞いて!兵器使うの、絶対ダメ!
シゼル…逆徒共に何を吹き込まれたのかは知らぬが…
シゼルあの兵器は我々に必要な物だ。強い力がなければ我が国と民を守る事は出来ぬ
リチャードそれは違います。強い力は、さらに強い力を呼ぶ…その先に待っているのは破滅だけです
リチャードあなたは民を想える王妃だ
リチャード叶うのであれば戦争をせず解決する事をお望みではないのですか?
シゼル黙れ。戯言を。おまえ達の言葉に耳を貸すつもりはない
メルディおカーサン、お願いよ…メルディ達が話聞いてほしい!
シゼルくどい。──こやつらを拘束しろ
シゼルメルディもろともだ
兵士3はっ!
メルディ…っ
ジェイド…想定していた中で最悪から二番目の展開ですね
ピオニーおまえが想定してたならまだ大丈夫そうだな。ちなみに最悪ってどんな状況だ?
ジェイド戦う間もなく奇襲で全滅する事です
ピオニー抗えるだけマシって事か…それじゃ、ひとまず周りの奴らを大人しくさせないとな
ファラ…メルディ、大丈夫?
メルディ…はいな。メルディ、みんなと一緒に戦う
メルディおカーサンとキールが事、絶対止めてみせる!
scene1曇天穿つ
ルドガーはあっ!
ザシュッ
兵士くっ…申し訳…ございません…
ドサッ
シゼル…ほう。我が軍の精鋭達がこうも容易く倒されるとはな
シゼル……情けない事だ
ルドガー容易くだって?こっちもギリギリだったさ
ジェイドですが、形勢逆転です。あとはあなただけですよ、女王陛下
シゼルだから何だと言うのだ。私が生きている限り兵器開発は諦めぬぞ
メルディやめて!おカーサン、みんなで他の道、探すんだよ!
シゼルその議論は終わった。今はウィンドルを凌ぐ強い力こそが我が国に安寧をもたらすのだ
ジェイドそれはどうでしょう国内の反乱分子に刃を向けられている今の状況をどうお考えですか?
シゼル…私がここで果てようが武力を持って目的を成そうとしているのは今のおまえ達も同じ…
シゼルウィンドルからこの国を守るにはもはや力を得る以外方法がないのだ。おまえ達の言葉は偽善でしかない
ジェイド同じで結構です。しかしそれだと、矛盾していませんか
シゼル何だと…?
ジェイド我々を「同じ」と言うのであれば兵器でウィンドルを追い詰めてもあなたの要望は通らないのでは?
ピオニー追い詰められてもこっちの話を聞く気にまだならないみたいだしな
シゼルふ、そのような詭弁は私を追い詰めてから言うのだな!
ファラまだ戦うつもりなの…!
シゼル兵器の開発を止めたとてウィンドルはこの国を支配するだろう
シゼルそれは、メルディが嫁いでも同じ事
シゼルア・ジュールは戦い続けるあの男に、私の愛しいものを傷つけさせてなるものか
メルディメルディ、イヤだよ!キールが研究でたくさん人死ぬ…おカーサンの号令で人が死ぬ
メルディそんなのメルディは絶対にイヤ!
シゼル子どものわがままだな。私達は王族なのだ個人の感情は持ち出すなと言ったはず
メルディわがままなのはわかってる。メルディ一人で、解決できないのも…
メルディでも、ここには助けてくれる人がいる!
メルディメルディ、子どもで、わがままでお嫁に行くくらいしかア・ジュールの役に立てないけど…
メルディおカーサン、一人で悩まないで!みんな、ア・ジュールのため一緒に考えてくれるから
シゼル…メルディそこの者共に、唆されているのだな
シゼル愚かなる逆徒共よ我が娘を誑かした罪この私自らの手で罰を下してやろう
リチャード話し合う事は出来ないのか…
ジェイド今は何を言っても無駄でしょう。まずは頭を冷やしていただきます
メルディ…………
クィッキークィック…
ルドガーメルディ、無理はしなくていい。ここは俺達で…
メルディ…心配いらないメルディ、戦える!
メルディ決めてたよ。おカーサンやキールと戦う事なっても絶対に諦めないって
ファラメルディ…
シゼルその覚悟、口だけとは言わせんぞ。国を背負う者の責任の重さ、その身に刻み込んでくれよう!
メルディいくよ、おカーサン…!
scene2曇天穿つ
シゼルくっ!
ジェイドどうやらここまでのようですね。道を開けてもらいましょう
シゼルまだだ…!
シゼルこの身がどうなろうとおまえ達を通すわけにはいかぬ…!
ファラどうしてそこまで…
シゼルこの国を…あの暴君…セルディクごときに支配させてなるものか!
ジェイド…なるほど。では、支配されないのであれば問題ないですね?
シゼル世迷い言を…
ジェイド我々が手に入れた情報を使えばセルディクを黙らせる事が出来ますよ
シゼルセルディクを黙らせるだと…?そのようなもの…
ジェイド信じるかどうかは話を聞いてからご判断いただければいいでしょう
メルディおカーサン…ジェイドの話、聞いてほしいよ
シゼル…申してみよ
ジェイドセルディクには後ろ暗い過去があります。四大国の中で立場を失うほどの、ね
シゼルああ、それなら私も入念に調べた。だが黒い噂は絶えないものの決定的な証拠は何一つ見つからぬ
ジェイド我々も最初はそうでした。しかし、ここに…この世界では誰も知り得ない事を知る人物がいるのです
シゼルこの世界では…だと?
ジェイドでは、後の説明はお願いしますよ、リチャード「様」
リチャードはい
シゼルその者が、一体、何だと──
シゼル──いや、リチャード…確かウィンドルの病死した王子の名だったか
リチャードその通りです。僕はこことは違う世界でウィンドルを治めている者です
シゼルこことは違う世界…キールの提唱する分史世界から来たというのか…
リチャード結論から言いましょう。この世界のリチャードはセルディクに暗殺されています
リチャード病死というのは、セルディクが自分の悪事を隠すために流した嘘の情報…
リチャードしかし事実は、王である父と共に毒を盛られて死んでいたのです
リチャード僕達の世界のセルディクも同じ企てをしていました。幸いにも失敗に終わりましたが…
シゼル…この世界でもセルディクを疑う者はいたが、何の証拠も出てこなかったと記憶している
シゼルそちらの世界ではどのように発覚した?
リチャード以前、僕が動けなくなった時にセルディクが実権を握り、暴走した事があったんです
ルドガーああ…世界が晶化現象に包まれてリチャードが晶化してしまった時か
ルドガーセルディクが結成した「赤の騎士団」には、みんな酷い目にあわされた…
リチャード本当に迷惑をかけたね…
リチャード…全てが解決して「赤の騎士団」を解体した後、僕はセルディクが他に何か企んでいなかったか調べたんだ
リチャードその中で、わかった。彼にはかつて、僕を暗殺する計画があったという事がね
ジェイドもうおわかりですね。調査の結果、この世界でも同じ暗殺計画は進められていました
ジェイドそして…この世界ではセルディクの思い通りに事が進んでいたのです
シゼル…その話が本当だとして、証拠は掴めているのだろうな?
ジェイドいただいた情報のお蔭ですんなりと。あちらの世界と全く同じ計画だったのは幸いでした
ジェイド使われた毒、利用された者達、毒の入手経路や、根回しの手段など外堀を埋める情報は揃っています
ジェイドこれだけ揃っていれば言い逃れは出来ませんよ
ピオニーそれに俺なら、この報告書を使ってシルヴァラントとキムラスカを味方に付ける自信があるぜ
ピオニー隠居していようと思っていたがこの国の危機なんだ。協力させてくれ
シゼル……確かに。それらの国を敵に回して戦おうとは思わぬか…
メルディおカーサン!これなら戦争しなくても国を守れるな!
シゼルこの話が真実なら奴を失脚させるには十分であろう
メルディそれじゃ、おカーサン!
シゼル兵器を使って戦うよりも確実で犠牲も出さずに済むというなら…その策に乗る価値はあろう
シゼル……だが、これからも国を守るために兵器を持つ事に価値がないとはいえぬ
ルドガーっ!?
シゼル──が、兵器開発を中止しなければその男は私に情報はくれまい
ジェイド勿論です
シゼル……兵器開発は中止させよう
メルディおカーサン…ありがとう!
ピオニー話はついたな。ここで女王に会えたのは不幸中の幸いだったぜ
ジェイド私達の話を信じていただけなければ、終わりでしたから
ファラメルディの気持ちが伝わったんだよ信じてもらえてよかった!
ジェイド皆さんの頑張りで話を聞いていただける状態になりましたしね
メルディお蔭でみんな助かった!ありがとな!
シゼル喜ぶのはまだ早い。まずは急ぎこの内乱を止めなければ
シゼル私はウィンドルと戦争になる前に会談を申し込む。ピオニー他国への根回しは頼んだぞ
ピオニー任せてくれ
リチャード会談は可能でしたらウィンドルのデールを同席させてください
リチャード僕の世界のデールと同じなら、セルディクを上手く抑え込んでくれるかもしれません
シゼルわかった、要請してみよう
シゼルメルディ、私は急がねばならない。兵器開発の中止をおまえから伝えてくれるか
シゼル後で正式に命令書を届けさせるが急ぎ伝えた方がよいだろうからな
メルディはいな!キールに全部説明するよ
ルドガーこれで兵器開発は止まるとして…あとはエルだ
メルディきっと、だいじょぶ!兵器開発なくなったらエルが事も解放してくれる!
メルディみんなで一緒にキールがとこ行こ!
ジェイド私も同行しますよ。兵器開発の中止を見届けるまでが任務ですので
メルディはいな!ジェイド達納得してくれる事も大事だからな
ピオニーよし、こっちは作戦終了の伝達とこの国を守るための準備を進めてくるぜ
ピオニーキールにもしっかり伝えろよ。メルディ
メルディはいな!
ルドガーそれじゃあ研究室に行こう!エルも待ってるはずだ
因子のありか
カチャカチャ──
キールよし、完成だ
エル魔導器…ほんとに使うの?絶対、やめた方がいいよ!
キールおまえが自分の世界で見たという魔導器の話か?
エル…うん。街が病気になっちゃうんだよ。さっきも言ったでしょ
キールああ。別世界での実例だから無視出来ない話だったさ
キールだがその問題は既に解決したし、その過程で術式の効率化にも成功した
キール試験運転の結果も上々だったしな
エルシケンウンテン…?もしかして、本当に使っちゃったの!?
キールああ。今朝、街外れの花畑を利用した
キールマナに反応して色を変える花だ。もし失敗しても花の色からその原因を探れると思ったが──
キール試作機を起動したら花畑が一瞬で枯れ果てた。最小出力でもすさまじい効果だ
エルお花が…ひどい…
キール酷いものか。最高の結果だ!生命の根源であるマナを一瞬で奪い取ったんだぞ!
エルお花がかわいそう!何とも思わないの!?
キール別に。兵器開発のためなら花畑ぐらい──…
メルディワイール!お花きれい!
キール気に入ったか?研究の一環で見つけたんだ
キールこの花はマナに反応して色が変わるから、研究でよく使うんだ
メルディじゃあ、キールは研究がためここに来る事たくさんあるか?
キールああ…まぁ、それなりによく来るな
メルディわかった!メルディ、キールに会いたくなったらここで待ってるよ!
キール…毎日来るとは限らないぞ
メルディでもメルディずっと待ってたらいつかキールやってくる。それでいいよ
キールおまえだって、毎日ここに来る時間なんて取れないだろ…
キールぼくに用があるなら研究所に来た方が確実だぞ
メルディ研究所行ったら、メルディ、みんな、王女様扱いするからキールと自由に話せない
メルディここでなら王女なんて関係ない。キールとメルディ、遠慮なく話せるよ
キール…そうだな
キール…………
キール(…どうして今更、こんな事を 思い出すんだ…)
キール(…過去なんてどうだっていい。 大切なのは今だ)
キール(あの花畑は確かに示していた。 ぼくの兵器の性能は想定以上… 一瞬で死の大地を作り出せる)
キール(これでぼくは… 目的に一歩近づいた。 全ての邪魔者を…排除してやる!)
エル……
キールこんな事してる場合じゃない。女王陛下に完成を報告して…早速、ウィンドルに向けて発動を──
バタンッ
兵士失礼します!緊急事態です!
兵士先ほど、逆徒が城内に侵入しました
キール何っ…!兵達は何をしている?
兵士敵の陽動に騙されてしまい出払っており…
兵士女王陛下自らが、残った兵を率いて逆徒共を捕えようとされましたが、状況は劣勢…
兵士私は隊長の指示によりキール様に一刻も早くお伝えするべく戦闘を抜け出して参りました
キール陛下自らだと?…逆徒共の目的は何だ
兵士情報によると──兵器の破壊と、キール様の暗殺だとか
キール…ぼくの命を狙うか。ならば返り討ちにするまで!
キール報告ご苦労だった。おまえは戻って女王陛下の加勢に向かえ
兵士はっ!
バタン
エル…戦うの?
キールああ。おまえは安全なところで大人しくしていろ
キール大事な研究対象だ。もしもの事があったら──
コンコン
メルディキール、いるか?
キールメルディか。おまえもここに匿ってやる。入れ
ガチャ──
キール──なっ!
ジェイド失礼しますよ
エルルドガー!
ルドガーエル!無事だったか!?
キール待て!
エルうぅっ、ルドガー…!
ルドガーエル…!
メルディキール、何する!乱暴やめて!
キールうるさい!メルディ…おまえ…逆徒共と手を組んだのか
キールそいつらは、ぼくの事を殺そうとしてるんだぞ。わかっているのか?
メルディ違うよ!
キール何が違うんだ!そうか、メルディ…戦争を止めたいと言っていたな
キールぼくを殺すつもりだったのか…そのために逆徒共をここまで引き入れたのか!
メルディ違う!キール、話聞いて!誰もキールが事、殺さないよ!
キール…逆徒と組んでいる事は否定しないんだな
メルディそれは…
キールぼくの気持ちも知らないでおまえは…!ぼくはおまえのために…!
ファラえっ…!黒いモヤ!?ねぇ、あれって…
ルドガー負の因子だ…!キールに憑りついていたのか!
キールやはりこれが気になるか。だからぼくを殺そうというんだな!
メルディキール、違うよ!どう言えばわかってくれる?
ジェイド私が端的に説明しましょう。よろしいですか、王女殿下?
メルディうん…ごめんな
ジェイドルドガー。話の間、あの子に下手に動かないよう伝えてもらえますか
ルドガーああ。エル、聞こえたな。少し辛抱してくれ
エル…うん
ジェイドさて、本題に入りましょう
ジェイドあなたの言う通り、我々は逆徒と呼ばれる集団で、あなたを暗殺する事も考えていました
ジェイドしかしもう、その必要がありません。シゼル女王は兵器開発の中止を決定したからです
キール何…?
メルディメルディ達はその事、伝えに来ただけよ
キールそんな言葉を信じろと言うのか?
ジェイド事実でなければ女王陛下が私達をここまで通すとお思いですか?
キール……
ジェイドまぁ、そう簡単には納得出来ないでしょう。ですので、順を追って説明します
キール…なるほど。セルディクが失脚すれば戦争をする必要はなくなる…か
メルディおカーサンは今、その話をしに動き回ってるよ
メルディだから兵器はもういらない!戦う必要もない!エルも解放してほしいよ
キール…駄目だ
メルディキール…!
キールメルディ…。上手く言いくるめられたものだな
メルディ信じてくれないか?
キールセルディクの件は信じてもいい。兵器も、もういらないのかもしれない
キールだが、そいつらの事を信じるかどうかは別の話だ
キール妙だと思わなかったのか?どうして別の世界から来たやつらがそこまで力を貸すのか
メルディルドガー達が事か…?
ルドガーそんな…俺達はただ目の前で困ってる人を放っておけなかっただけだ
ファラそうだよ!それにメルディはわたし達を助けてくれたもん
リチャードそれに、別の世界とはいえウィンドルが関係している事を見過ごせなかったからね
ルドガーこの世界に来たのだって偶然なんだ。他意はないよ
キール…本当にそういう理由ならそれでいい
キールいい奴らなんだろう。メルディが信用するだけの事はある
キールだから、残念だ
キール…ルドガー!ぼくは、おまえを殺す!
ルドガー何だって…!?
メルディキール、どうして!?
ジェイド…もしや、これが負の因子というものの影響なのですか?
リチャード詳しくはわかりませんが…それだけではルドガーを名指しする理由がないと思います
キールとぼけても無駄だぞ。おまえ達、クルスニク一族が分史に来た目的はわかっているんだ
キール殺す…殺さなければ…ここで…絶対に…殺す…殺すんだ…殺してやる…!
メルディキール…
エルルドガー…
ルドガー…………
ルドガー事情はわからないが、キールは俺に用があるんだろ?ならエルは放してくれないか
キール残念だが、それは出来ない。こいつにはまだ用があるんだ
キールクルスニク一族の力を研究するために、こいつと時計を手放すわけにいかない
ルドガーどうしてエルなんだ。クルスニク一族を研究したいのなら俺を好きにすればいい
キール……必要なのはこいつであっておまえじゃない
ルドガーエルが必要…?どういう事だ…?
キール答える必要はない。こいつを傷つけたくなければ武器を捨てて、大人しく死んでくれ
チャキ
ファラナイフ…!?そんな、卑怯だよ!
キール手段なんて選んでいられないんだ!
メルディせっかく兵器使わなくてよくなった…人、殺さなくてもよくなったのにどうしてこんな事する!?
キール黙れ。おまえも妙な動きをしたら、こいつはただじゃ済まないぞ
メルディキール…
ジェイド…小型のナイフですが、精密作業にも使える非常に切れ味のいいものです
ジェイドもしもの場合、怪我では済みません。ここは従った方がいいでしょう
ルドガーくっ…
エルルドガー、ダメだよ。エルの事はいいから、戦って!
キールもう遅い!死ね!ブラッディハウリング!
ヴォンッ──
ルドガーしまっ──
メルディ…させない!
キール何っ…!
ドォン!
メルディきゃうっ…!
ドサッ
ルドガーメルディ!
キールくっ…何故だ、メルディ…!
ルドガー大丈夫か…!?すぐに手当てを…
キール…!やめろ、メルディに近づくな!
メルディうぅっ…
メルディルドガー…無事か…?
ルドガーなっ…今のは…!
リチャード黒いモヤ…?負の因子とも少し違うようだが…
ファラ…わたし、これと同じものを見た事があるよ。ルークと一緒に分史に行った時…
ルドガーああ。あの時の魔物と同じだ
ルドガーメルディ…君が時歪の因子だったのか…
メルディ時歪の…因子…?
キール……
キールくっ、うっ…
リッドキール!?どうした!
メルディバイバ!黒いモヤモヤ…ルドガー達言ってた、負の因子か!
キールこ、好都合だ…自分の身体の事なら…いろいろと…調べられる…
キールぐうぅっ…!
ドサッ
リッドキール!無理するな!
メルディ今、治療するよ!じっとしてて!
パアアア…
キールうぅ…
メルディうー、術が力、モヤのせいで散ってしまうよ!
キールメルディ、やめろ…。おまえまで、消耗するぞ…
メルディ嫌!メルディ、諦めない!
メルディモヤにも負けないぐらい、力、出し切る!
パアアア…
リッドエステルや、治療出来るやつに手伝ってもらえねぇか、フレンに頼んでくる!
キール二人共…すまない…
パアアア…
メルディはぁ、はぁ…まだよ…
クィッキークィィ…
キールメルディ…もう…いい。これ以上は、おまえが…
メルディううん。ちょっとずつ、よくなってる。もう少しで、きっと治る!
メルディあとちょっと…頑張る…!メルディ、キール助ける…だから──
フラッ…
クィッキークィィッ!
キールメルディ!危ない!
ガシッ
キール…!何だ、これは…
キール何か…見える…
メルディうぅ…よかったな、キール…メルディ生きてる…誰も殺さず、すんだ…な…
キールくっ…。どうしておまえがぼくの邪魔をするんだ!
キール…今の景色は、一体…。それに、ぼくだけでなくメルディにも黒いモヤが…
メルディキール…?もうだいじょぶだから、手、放していいよぅ
キールあっ…!
キールす、すまない
メルディワイール!キール、元気なったな!よかったよかった!
キールああ、メルディのお蔭だ。ありがとう
キール(しかし…さっき見えたのは 一体何だったんだ…)
scene1因子と骸殻能力者
ファラメルディ、大丈夫!?
メルディはいな…。メルディ死なないよ。キール、人殺しにはさせない…
キール無駄な事を…
キールおまえが時歪の因子だと知られた今、もはや生かしておくという選択肢はなくなったんだぞ
ルドガーキールは、メルディが時歪の因子だと知ってたのか?
キール当然だ。だから封印の術式で時歪の因子を抑えていた
キール骸殻能力者が近づいても気付かれないようにな
ルドガー…そんな事が出来るのか
キール……
パァァ…
メルディ…!
リチャード消えた…。これが封印の術式…
キールもっとも、おまえ達には意味がなかったようだ
キールおまえ達はメルディに時歪の因子が憑りついている事を知っていて近づいたんだろ
キール何せクルスニク一族は──時歪の因子を消すために分史に来ているのだからな
ルドガーなっ…!
リチャード……ルドガー、どういう事だい?
ルドガー…本来、分史世界を出るためには時歪の因子を破壊する必要がある。多分、その事を言っているんだ
ルドガー分史世界に入り込んだ骸殻能力者はまず時歪の因子を壊す事を目指すものだから…
ファラでも、わたし達はそんなつもり──
エルルドガー、危ない!
キールファイアーボール!
バシュッ
ルドガーくっ…!
ヒュン──
キール…避けられたか。おまえさえ余計な事を言わなければ!
エルうぅ…怖い…
メルディやめて、キール!これ以上は、メルディ…許さない!
キールうるさい!邪魔をするならおまえでも容赦しない
キール例えおまえを傷つける事になっても…そいつは必ず殺す!
メルディどうして!そんな事するキール、メルディ嫌いよ!
キール構うもんか。例え嫌われようと…おまえさえ生きていればそれでいい
メルディ……!
ジェイド本気のようですね。負の因子の影響…というのもあるでしょうが
ルドガー待ってくれ!俺達は戦うつもりはないんだ!話を聞いてくれ!
キール無駄だ!ぼくには、おまえを殺す以外の道はないんだ!
リチャードこのままでは危険だ。彼には悪いが、取り押さえる他ないだろうね
キールやってみろ。その前にそいつを殺してみせる!
エルルドガー…
ルドガー…キール。相手になるからエルは安全な場所に避難させてくれ。何かあったらキールも困るんだろう?
キール…いいだろう。後ろの机に行っていろ
キールあいつを殺すまで、そこを動くなよ。おまえも無事では済まなくなるぞ
エルルドガーは、負けないもん!ベーッだ!
ルドガーああ。メルディを悲しませないためにも誰も殺させない!
メルディメルディも、戦う!キールが目を覚まさせる!
クィッキークィッキー!
ジェイドやれやれ。手伝わないわけにはいかなさそうですね
キールぼくの目的はおまえただ一人だ!滅べ、クルスニク!
scene2因子と骸殻能力者
キールぐっ…手こずらせるな…だが…まだ…
メルディもうやめよ。これ以上は、キールが…
キール……メルディ。こっちに来い
メルディキール…?
キール早く来るんだ!
グイッ
メルディバイバ…!?
キールおまえもだ
エルえっ…?うわっ…
ルドガーエル…!メルディ!
ファラ何するの!?
キールこうするんだ!
ピピッ…
ジェイドまずいですね。魔導器が動き始めました
リチャード何だって…!
ファラそんな…!
メルディキール!やめて!
キールもう遅い。間もなくこの周辺は生物の生きられない環境になる
キール助かるのは専用の防御術に入ったぼく達だけだ
キィン…
ジェイドやられましたね。まだあんな高度な術を使う力を残していたとは
メルディキール、魔導器止めて!このままじゃ…みんな死んじゃう!
キール構わないさ。あいつらは勿論、城のみんなを犠牲にしたって構わない
キールおまえが生きていられるのならぼくは世界のすべてを焼き払ってやる!
メルディキール…!
ジェイドもう時間がありません!魔導器を壊せるだけの術を詠唱しますので、援護してください
ルドガーわかりました!
ジェイド天光満つる処我はあり、黄泉の門開く処に汝あり──
キールふん、無駄だ
ジェイド──…何て事です。術に必要なマナが…吸われて…
ファラわ、わたしも…何だか力が抜けていくみたい…
メルディみんな…!
ダッ──
キール待て、メルディ!防御術から出るんじゃない!こっちに戻れ!
メルディキール!殺すなら、メルディごと殺して!
キール何を言っているんだ!正気か!?
メルディ正気じゃないのはキールよ!こんな事、望む人じゃないってメルディ知ってる!
キール魔導器はもう動いている。ここのマナがなくなるまであと数秒だ
キールだから…
メルディ嫌だよ…!メルディ、キールが事、信じてる…最後まで、ずっと…
メルディだから、メルディ、動かない!キールは、きっと…止めてくれるよ!
キールメルディ…!くっ…!
ピピピッ…
シュウゥゥゥ…
リチャード魔導器が…止まった…!
メルディキール!ありがとな。やっぱりキールは、優しい──
キール…何故だ!メルディ…どうして、そうまで…ぼくの邪魔をする
キールぼくは、おまえを守ろうと…なのに…
メルディキール…
キールどうして、ぼくを…!どうして…
キールどうしてぼくに、おまえを傷つけるような事をさせるんだ!
メルディメルディ、キールが事、大好きだからだよ!
キール…!
ファラメルディ…
メルディメルディ、大好きなキールが怖い顔してるの、耐えられない!
メルディ優しいキールに戻ってくれるならメルディ、どうなったって平気!
キールな、何を言ってるんだ。それじゃあ、話があべこべじゃないか
キールぼくは、おまえを守るために全てを費やしたんだぞ!
キールおまえをクルスニク一族から守るため分史の研究に心血を注いできた!どんなに人から嘲笑されてもだ!
キールその上、こんな兵器まで作り上げた!大勢の人を犠牲にする覚悟もした!
キールそれを…全部否定するのか!
キールぼくがおまえを守ろうとするほどおまえが傷つくというのなら…
キールぼくは一体、どうすればいいんだ!
メルディキール…わからないか?
キール……何をするつもりだ
ギュウッ…
キール…!
メルディ一人で背負い込まないでほしいよ
メルディメルディ、キールが事、好き。キールも、メルディが事、大事に想ってくれてる…だな?
キール……ああ
メルディ相手がためにどっちか犠牲になったら二人共、悲しい事になる
メルディだから辛い事、一緒に乗り越える。メルディとキールならきっと上手く出来るよ
キール…感情論だ。合理的とは言えない
キール…どうしてだ…頭では間違っていると思っているのに…
メルディキール、素直になって。気持ちに嘘つかなくて、いいよ
ギュウゥ…
キール……!
メルディバイバ…!
ファラ何…?今、キールから何か…
ルドガースレイの時と同じだ…負の因子が壊れたんだ
ジェイドようやく一件落着ですね…少々青臭いですが
ファラふふ、それがいいんだよ。見てるこっちまで照れちゃうぐらい気持ちが伝わってくるもん
エルルドガー!
ルドガーエル…!怪我はないか?
エルうん!
キール…悪かった。話も聞かず殺そうとしたり…小さな子どもまで巻き込んでしまった
エル…!エル、そんなに小さくないですよーだ!
エルだから許してあげる。メルディのためにね
メルディエル…ありがとな
キールルドガーと言ったか。正直に話してほしい。時歪の因子の事…どうするつもりだ?
ルドガーどうもしないよ。元の世界に戻る方法が、きっと他にあるからな
キール本当か?
キール…ぼくの研究もまだまだだな。知らない事だらけのようだ
キールあの男、そんな事は言っていなかったな…
ルドガーあの男…?
キール分史世界について妙に詳しい男だ。ぼくの研究の礎となる知識を与えたのはそいつなんだ
キール詳しい事はぼくも知らないが、突然現れて、煙のように消えるんだ
ルドガー分史に詳しい男…。まさか、兄さんか…?いや、そんなはずは…
キールとにかく、メルディに手を出さないと約束してくれるのなら、ぼくとしては何も問題はない
ルドガーああ。それは約束する
ジェイド話はついたようですしこちらの用件も済ませていただけますか?
キール…魔導器の破壊だったな
キール…………
メルディキール…?
ジェイドまさか、今更嫌だと言わないでくださいね
キールいや、破壊するさ。こんな物があれば、また戦争の火種になりかねない
キールだが学者として…やっと完成した研究成果を破壊するのは気が引けただけだ
ジェイドそれなら私が破壊しましょうか?
キールいや…ぼくにやらせてほしい。他人に壊されるのは、もっと辛い
メルディキール…魔導器は壊れてしまってもまた作ればいいよ。今度は、みんなが喜ぶものを
キール…そうだな
キールメルディ。ぼくは、おまえと一緒にやり直すと決めた
キールこれは、そのケジメだ
キールホーリーランス!!
キール…魔核も壊れたな。これで再起不能だ
ジェイド確かに見届けました
ファラこれで全部解決だね!
ジェイド全部…ではないですね。まだまだ課題は山積みです
エル何かあるの?
ジェイドあなた方は元の世界に戻る必要があるでしょうし、私達も外交問題が残っています
リチャードそういえば、負の因子は壊れたけど元の世界に戻るためにはこの後どうすればいいんだい?
ルドガー前の時は、突然、時空の穴が開いたんだけど……何か他にも条件があるのかな
キール少し調べてみよう。幸い、ここには時空移動に関する文献や計器も揃っている
ルドガーありがとう。よろしく頼むよ
リチャードところで、さっき外交問題も残っていると言ってましたが…
ジェイドええ。あなたのお蔭でセルディクの失脚は確実と言えますが重要なのはその後です
ジェイド王の変わったウィンドルがどのような国に変わるかはまだ未知数ですからね
リチャード…なら、参考になるかわかりませんがぼく達の世界のウィンドルについて話をしましょうか
リチャードこの世界では全く同じとはいかないでしょうが何の情報もないよりはいいでしょう
ジェイドいいですね。では私はその話を元に、この世界でも使えそうな事を書き取ります
ジェイド王女殿下。私が書き取った内容をシゼル女王にお伝えいただけますか?
メルディはいな!おまかせー!
クィッキークィッキー!
キール…では、その間にぼくはルドガー達が元の世界に戻る方法を考えるとしよう
キールまずは、前例を詳しく聞かせてくれ
ルドガーわかった
キール……なるほど
ルドガーどうかな?かなり細かい事まで話したと思うけど…
キールそのグリューネという人物…底知れない力を持っているようだ。それに天族の力も興味深い…
キールしかし時計が反応していたという事はこの二人の力は関係ないだろう
キール残った要素は、道標…破壊された負の因子か
ファラそれって、さっきメルディにパーッて入っていったやつだよね。どうなってるの?
キールあれについては、ぼくも知らない。今のところ害はないようだが…後で詳しく調べてみるつもりだ
キール調査には時間がかかるだろう。だが、仮説を試すぐらいはすぐに出来る
ファラ仮説?
キールルドガーとミクリオという天族がやった事を再現するんだ
キールメルディ。こっちに来てくれるか
メルディはいな。どうした?
キールルドガーと握手してみてくれ
メルディ…?はいな
ギュッ
ルドガー…!これは、また…!
ヒュンッ
メルディバイバ!
ファラあっさり開いちゃったね
キール…推測通りとはいえ、さすがに驚いたな…。こんな簡単に時空の穴が開くとは…
エルよかった!これで帰れるんだね
ジェイドおや、お帰りですか?唐突ですね…
リチャード…後の事はジェイドさんにお任せします
ジェイド言ってくれますね
キール急いだ方がいい。未知の現象なんだ。穴が閉じてしまう可能性もある
ファラそれじゃ、メルディ…わたし達、もう行くね
メルディまだちゃんとお礼もしてないのに…
ファラそんなの、いいよ。それより、キールと仲良くね!
メルディはいな。ファラが世界のメルディとキールにもよろしく伝えてな
キール別世界のぼく…?…そうだ!
キールルドガー。これを、そっちの世界のぼくに渡してくれないか
ルドガーこれは…?
キール分史世界に関する研究資料だ。そっちの世界で起きている異変の調査に役立つだろう
ルドガーいいのか!?ありがとう
メルディみんな…元気でな
ルドガーああ。メルディも
エルみんな、ばいばーい!またねー!
ヒュンッ
キール…ルドガー達が入っていったら穴は閉じた…か
キールこうしちゃいられない。この空間に残ったマナの痕跡を解析しないと…!
ジェイド…ついて行く、という手もあったのではないですか?
キール…興味はあった。だけど、それは出来ないんだ
キールこの世界は分史世界。そしてルドガー達の世界はおそらく正史世界だ
キール正史世界に同一の存在がある場合外から入り込めても共存する事は出来ないらしい
ジェイドなるほど。あちらの世界にキールがいるとあなたは共存出来ないわけですね
キールああ。…それに…
キールメルディを残して別の世界に旅立つなんて、今は考えられないからな
メルディキール…
ジェイドやれやれ。年寄りには刺激が強すぎます
帰還、それから…
リッドおーい、大丈夫か?今、フレンが治療出来るやつを集めてくれてるからな
キールありがとう。だが…もう大丈夫だ。急に身体が軽くなった
メルディ黒いモヤも消えたみたいだな。よかったよぅ
クィッキークィック、クィッキー!
メルディクィッキーも嬉しいな
リッドならいいけど…。念のため治療を受けて休んだ方がいいんじゃねぇか?
キール…いや、分史世界への入口の調査が先決だ
キールぼくの体調の変化もおそらく分史世界が関係して──
リッド…!?何だ!?
エルただいまー!
リッドエル!?って事は…
リチャード無事に戻って来られたようだね
ルドガーこれで一安心だな
ファラリッド!キール!メルディ!みんな大丈夫だった?
リッド大丈夫って…それはこっちの台詞だ!
メルディファラ!みんな!心配したよ。何があったか?
ファラえっと…どこから説明したらいいのかな
リチャードあの穴に入った時の事から順を追って話そうか
キール…ぼくに負の因子が…。やはり、そうだったのか
ルドガーやはりって…わかってたのか?
キールああ。少し前、ぼくにも黒いモヤが出て危うく意識を失いかけた
ファラえっ!?体調は大丈夫なの?
キールああ。今はもう何ともない
リッドメルディが必死に治癒術をかけてくれたお蔭だな
メルディでもメルディも疲れちゃって今度はキールに助けられたな
リチャードお互いに助け合う絆…。分史と同じように、二人は支え合っているんだね
キール同じではありません…!ぼく達は、そういう、その…とにかく違います!
メルディ…?何慌ててる?おかしなキール!
キールこほん!とにかく──
キール黒いモヤが出た時、メルディに触れたら、頭の中に妙な景色が流れ込んできた
キール黒いモヤを出すメルディの姿が…
ルドガーそれって…まさか、分史世界が見えたっていうのか…!?
キール話を聞く限り、可能性はある
キール負の因子に憑りつかれると正史と分史の同一人物に影響が出た。つまり何かの形で繋がっているんだ
キール詳しく調査してみる必要があるな。もしマナが影響しているのだとすれば異変にも関係があるかもしれない
ファラキールならきっと解明出来るよ!あっちのキールに負けないぐらいすごいもん!
ルドガーそうだな。あ…そうだ、これを分史のキールから預かって来たんだ
キールこれは…研究論文か?確かにぼくの筆跡だな
キール表題は…「創世原理~分史とマナ~」だって…!?
リチャード分史世界の研究を熱心に続けてきた別世界の君が書いた論文だ
リチャード異変の調査にも有用じゃないかと言っていたよ。読み終えたら見解を教えてほしい
キールわかりました。少し時間をください
リチャードさて。何日も留守にしていたが城の方は大丈夫だっただろうか。みんなに迷惑をかけてしまったな…
リッド何日も…?みんなが穴に落ちてから、まだ半日ってとこですけど
リチャード何だって…?
ルドガー驚いたな…。確かに分史世界では時間の流れ方が違う事もあるけど…
リチャードそうか…少しほっとしたよ。もっとも、半日でも迷惑をかけた事は確かだ…みんなには謝らないとね
リッドそうだ!フレンにも知らせてやらないと!キールの事も伝えてくる
リチャードそれなら僕が行くよ。今の状況を聞きたいし、留守の対応について礼を言いたいしね
リッド陛下直々にか。フレンのやつ、驚くだろうなー
エル…ねぇ、ルドガー
ルドガーどうした?
エルエル、おなかすいたー
ルドガーはは、そうか
ルドガー…エルもお疲れ様だったな。いろいろあって辛かっただろう
エルエル、ルドガーの事、信じてたし!
エルそれより、早く何か食べよ。もうおなかペコペコ
ファラそういえば、わたしも…戻ってきて気が抜けたのかな
ルドガーはは。それじゃあ、みんなで何か食べに行こうか
エルやったー!
リチャードそれなら食事を用意させよう。大したもてなしは出来ないが、料理人の腕は保証するよ
エルほんと!?やったー、お城のごはんだー!
メルディワイール!きっとすごく美味しいな!
クィッキークィッキー!
ルドガーいいのか?
リチャードああ。実は僕も空腹なんだ。フレンと話して城の事が落ち着いたら後で合流するよ
ルドガーありがとう、リチャード
エルあー、美味しかった!おなかいっぱい!
ルドガーリチャードが言うだけあって料理人の腕を感じられる食事だったな
リッドその陛下は、食べ終わったらすぐに公務に戻っていったけどな
リッドもっと味わう時間があればいいのに、王様ってのは大変な仕事だよなー
ファラ…あの世界のメルディ達も同じように忙しくしてるのかな
ルドガーそうかもしれないな。でも、きっとピオニーさん達が支えてくれているよ
ファラうん。そうだね
メルディメルディ、王女様だった世界か…全然想像出来ないな。な、キール
キール……
メルディキール?
キール…ん?ああ、呼んだか…?
リッドその論文、よっぽど気になるみたいだな
ファラお腹もいっぱいになったし、キールも論文が気になるみたいだから宿に戻ろっか
キールそうだな
キール……
キール…ルドガー。ちょっといいか?
ルドガーうん?
キールこの論文…分史のぼくがメルディを守るための研究に力を注いでいた事がよくわかる
キールでも、だからといってメルディ以外の人間は死んでも構わないなんて異常だ…
ルドガーそれは、負の因子が憑りついていたから…
キールああ。その通りだ。でも全てが負の因子の影響だけではないように思うんだ
キール負の因子がなくても、分史のぼくには、兵器開発の他に選択肢がなかったんじゃないか?
ルドガー……
キール率直な意見を聞かせてほしい
キールぼくが同じ立場なら…やはり同じような行動を取ったと思うか?
ルドガーそれはわからない。分史世界のキールと今のキールは経験してきたものが違うんだから
ルドガーあっちのキールは、リッドやファラを知らないと言っていた
ルドガーもし同じ状況になっても、リッドやファラと共にいるキールは違う道を選べるんじゃないかな
キール…そうだな
ルドガー勿論、俺やリチャードもいる。困った時は力を貸すから遠慮しないで言ってほしい
キール…あっちの世界のぼくにもそうやって力を貸してくれたんだよな
キールぼくが言うのも変かもしれないが…感謝してるよ。ありがとう
ルドガーああ
リッドおーい、早くしないと置いていくぞー
ファラはぁー、やっと一息つけるー!
メルディふかふかベッドー!
クィッキークィッキー!
リッドおいおい、ベッドに飛び込むなって。じゃ、この部屋がファラとメルディでオレとキールは隣な
ルドガーエル、随分と眠そうだけど先に部屋に行ってるか?
エルうん。ちょっと休む…
ルドガーわかった。俺達の部屋は一番奥だからな
エルはぁーい…おやすみ…
キールさて、他のみんなも解散する前に明日からの事を話しておきたい
キールぼくは少しの間、ここで研究論文を熟読し、その上で調査を続けようと思う
キールそれには数日かかるだろうからみんなは一度、家に帰ってもらっても構わない
メルディメルディ、一緒にいる!キールが事、手伝うな
リッドオレも残るぜ。一度帰っちまったら、何かあった時にここまで駆けつけるのは大変だからな
ファラわたしも。キールが調べものに集中出来るように身の回りの事とか手伝うよ
キールわかった。ありがとう、助かるよ
キール…ルドガーの言う通りだな…
リッドん?何か言ったか?
キールいや、何でもない
キールルドガーはどうする?
ルドガーそうだな…。俺は一度、イニル街に戻ろうと思う
ルドガー今回の件と、世界の異変にどんな関係があるのか、俺の方でも調べてみるよ
キールわかった。ルドガーなら独自に調査も出来る…それなら別行動の方が効率的か
ルドガー調査のために動き回ってると連絡を取るのが難しくなるかもしれない
ルドガー何かわかったらリチャードに報告するって事でいいかな
キールわかった
リッドじゃ、明日からは別行動だな
ファラ寂しくなるね
メルディ全部終わったらまたみんなで食事しよな!
ルドガーああ。約束だ
エルただいまー!
ルドガーやっと帰ってきたな。お隣さんに預けてたルルも迎えに行かないと…
エルルル、きっと寂しがってるね
ルドガーそうかもな。…長い時間、留守にしてたから郵便物も溜まってるな…
エルじゃあ、メガネのおじさんは一度も帰ってきてないの?
エルこんなに長い間帰ってこないなんて何かあったのかな…
ルドガー…?誰の事を言ってるんだ?
エル誰って…メガネのおじさん!ずっと帰って来てないでしょ?
ルドガーメガネの…もしかしてジェイドさんの事か?
エルまたそんな事言って…ルドガー、何だかおかしいよ…?
ルドガーそんなつもりはないけど…エルの方こそ…
ルドガーこの家には、俺とエルと、ルルしか住んでないじゃないか
エル……!?
エル何で…?ルドガー、どうしてそんな事言うの…?
ルドガーどうしても何も……ん?
ルドガーこの郵便物の宛名…ユリウス…って
ルドガー全部、兄さん宛の物か
エル…!ほら、やっぱり、メガネのおじさんの事覚えてる!
ルドガー…?何言ってるんだ?おかしなエルだな
エルおかしいのはルドガーだって!じゃあ、これの事は覚えてる?
エルメガネのおじさんのために買ったプレゼント!
ルドガーああ。一緒に買いに行ったな
ルドガー…でも、何のために買ったんだっけ。誰かにプレゼントを贈る予定なんてあったかな…
エル…今言ったでしょ。メガネのおじさんの事って…
ルドガーメガネのおじさん…?ああ…えっと…そうだ、兄さんの事か
エルどうして…ルドガー…おかしいよ…
エル何だか怖いよ…パパ…
怪しい男1…いよいよ決行だな
怪しい男2手筈は整った。あとは、お前の腕の見せどころだな
ルーク……
怪しい男3おいおい。今更、怖気づいたのか?ちゃんと作戦通りやれんのかよ
ルーク……当たり前だっつーの
ルークここまで来たんだ。作戦通り完璧にやってやるよ
ルークもう決めたんだ。例え相手が実の兄だろうと、俺は──

NameDialogue
異変の兆候
店主どうです、お味は?
ルーク美味い!「ルークまんじゅう」って言うからには味もよくないとな!
ミュウご主人様のお顔のまんじゅう、とっても美味しそうですの~!
店主お墨付きをいただけて光栄です。試作を繰り返した甲斐があります…!
ルークこれなら、ガイアスまんじゅうやリチャードまんじゅうより人気出ちまうかもな!
ルーク…ところで、どうして俺なんだ?他の国では王のまんじゅうを作ってるだろ?
店主ルーク様は我が国の親善大使ですからこれから各国でもっとお顔を知られ有名になられる事でしょう
店主あなた様の上昇傾向にある人気にあやかりたいのです
ルークへへ、なるほどな。いいぜ!それじゃあ正式に「ルークまんじゅう」を認めてやるよ
店主ありがとうございます!量産体制を整えたら、すぐにでも大々的に売り出します!
ルークああ。応援してるぜ!それじゃあな!
ミュウ応援してますですのー!
店主どうぞ、今後ともご贔屓にー!
店主ふう。緊張した。しかしこれで俺の商売も上手く──
店主…ん?何だこのまんじゅう…
店主誰の顔だ?入れ物にはルークまんじゅうって書いてあるけど…
店主ルーク…?聞いた事のない名前だな…
ルークいやー、まんじゅうまで作られるなんて俺も人気者になったもんだな!
ミュウ……
ルークん?どうした、黙っちまって
ミュウ……
ルークおい、ブタザル。…おい
ミュウ……
ルーク聞こえてねぇのか!?ブタザル!
ミュウみゅ…?もしかしてボクに言ってるんですの?
ルーク当たり前だろ!他に誰がいんだよ!?
ミュウ違うですの。ボクはブタザルじゃなくてミュウって言うですの
ルークな、なんだよ、急に。今更、気に食わねぇってか?ずっとこう呼んできたじゃねぇかよ
ミュウずっと…?…そういえばボクの事をそう呼ぶ人がいた気がするですの…
ミュウ……みゅ?ご主人様ですの!
ルークはあ?何言ってんだよ
ミュウごめんなさいですの。ボク、どうしてかご主人様が誰かわからなかったですの…
ルーク何だそれ。まぁいいけどよ…おまえだけじゃなく、最近こういう事がたまにあるんだよな
ルーク声かけてんのにボーッとして聞いてなかったり俺に気付かなかったり…
ミュウみゅうぅ…。ボクはもうしないですの。約束ですの
ミュウもしみんながご主人様に気付かなくてもボクだけは、お返事しますの
ルーク大げさなんだよ。みんなが気付かないなんて事あるわけねぇだろ
ミュウみゅうぅぅ…
???あら…?
ティアミュウ!ここにいたの
ミュウあっ、ティアさんですの!
ルークよう、ティア。おまえも散歩か?
ティア…?ミュウ、こちらの方は…?
ルークは?おい、何言ってんだ。俺だよ、俺!
ミュウご主人様ですの!
ティアご主人様…?
ルークおまえ、まさかさっきの俺達の話を聞いててわざとやってるんじゃないだろうな?
ティア…さっきの話?何の事かわからないけれどふざけているつもりはないわ
ティア私はルークを捜していたら遠くから見えたから、それで…
ティアえ、あ…ルーク!そう、あなたルークよね…!
ルークだから俺だっつってんだろ
ティアごめんなさい。どうしてかしら…私、あなたの事がわからなくて…
ミュウティアさんもですの?ボクもさっき、同じような事があったですの
ルークおまえらちょっと変だぜ。医者に診てもらった方がいいんじゃねぇか
ティア…そうね。疲れてるだけならいいのだけど…
ルークで、捜してたって言ってたけど何か用か?
ティアそうだったわ。ルーク、国王陛下がお呼びよ。何か大事な用件だと仰っていたわ
ルーク伯父上が?一体何だろう…親善大使としての仕事か何かか?
ティアそうかもしれないわ。今は異変の対策で各国と協力体制を取ろうとしている時だから…
ルークあー。昨日、ルドガーが城に来てたやつか。異変の兆候があるから調査したいって
ティアええ。その時、ウィンドルでまとめられた異変の調査書を持ってきてくれたの
ルーク国を跨いで情報交換か。そりゃ確かに、親善大使の出番かもしんねぇな
ルークしかしルドガーも大変だよな。異変の調査をしながら、国同士の橋渡しもしてんだもんな
ティアええ、とても忙しそうだったわね。昨日もあまり話せなかった──
ティア…あっ!
ルーク何だ?急に大きな声出して
ティアねぇ、ルーク。昨日ルドガーと会った時に、話した事を覚えてる?
ルークあー…異変は自然災害だけでなく人にも起こるとか何とか…分史世界の影響だっけか?
ティアそうよ。分史世界にある負の因子というものの影響で、正史世界の人に異変が起こる
ティアだから、おかしな現象に心当たりがあったら教えてほしいって言われたわよね
ルーク…つまり何が言いてぇんだ?
ティアさっき、あなたの事を忘れてしまっていた事がその異変なんじゃないかしら
ティアだって、疲れて頭が回らないのとは全然違う感じだったもの。もっと超常的な何かに思えたわ
ルーク…考えすぎだろ?
ティアそうかも知れない…。でも何だかすごく嫌な予感がするから念のためルドガーに話してみるわ
ルークわかったよ。たしか街の宿屋に滞在してるんだよな。俺とミュウも一緒に行くぜ
ティア待って。ルークは陛下のところに行くのが先よ
ルークっと、そうだった。んじゃ、ルドガーのとこにはティアとミュウで行ってくれ
ルークミュウも俺の事忘れてたんだ。異変が起こってるとしたら二人共だろ
ミュウみゅう…怖いですの
ティア…大丈夫よ。ルドガーに相談してみましょう
ルークそれじゃあ俺は伯父上の用が済んだら合流するから、ルドガーと一緒に宿で待っててくれ
ティアわかったわ。それじゃあ、また後でね
ルーク伯父上。お話と言うのは?
インゴベルト六世うむ。突然呼び出してすまなかったな
インゴベルト六世…この話は、もしかするとおまえを困らせてしまうだけやも知れん…
インゴベルト六世だが、いずれ伝えねばならん事だ。最近のおまえは成長著しい…そろそろ話してもよいだろう
ルーク成長…ですか
インゴベルト六世うむ。おまえは親善大使として各国首脳陣との関係作りに貢献した
インゴベルト六世またアヴァロン島でも成果を上げ、今やキムラスカの顔としての地位を確立しつつある
インゴベルト六世最初、勝手に親善大使を名乗って国を出たり、シルヴァラントの神子を誘拐するという大罪を犯したが…
インゴベルト六世それを払拭して余りある活躍をしていると認めてよいだろう
インゴベルト六世ヴァンという大罪人を輩出した我が国が、今でも四大国たりえるのもおまえの活躍あってのものだ
インゴベルト六世おまえは様々な経験を通して人としての器を大きく成長させた。今のおまえになら真実を話せる
ルーク真実…?何か隠してたって言うんですか?
インゴベルト六世ああ。だが仕方なかったのだ。これは王位にも関わる事…おいそれと外に漏らす事は出来ぬでな
ルーク王位に関わる隠し事…まさか、伯父上…どこかお身体が…
インゴベルト六世早まるな。わしはまだ死なん
インゴベルト六世これからする話は王位継承権に深く関わりのある事…おまえの出生についてだ
ルーク俺の、出生…?
インゴベルト六世うむ。ここからが本題だ。心して聞くがよい
インゴベルト六世ルークよ、実はおまえには──
ルーク俺には…?
インゴベルト六世……
ルーク……
ルーク伯父上、あの…?
インゴベルト六世…誰…だ?今…わしは、おまえと話しておったのか…?
ルークどうしたんですか、急に。しっかりしてください
ルーク王位継承権にも関わる大事な話だって伯父上が言ったんですよ
インゴベルト六世王位継承…?そのような話を、見知らぬ者にするはずがないだろう
ルーク見知らぬって…
ルーク俺の事がわからないんですか?甥のルークです!
インゴベルト六世そうか、その顔に髪形…我が甥に似せたつもりか!だが甥はルークなどという名ではない
ルークえっ…?それって、どういう…
インゴベルト六世衛兵!誰かおらぬか!侵入者だ!
ルーク伯父上…!
バタンッ!
衛兵1陛下!ご無事ですか!
衛兵2おのれ侵入者!覚悟しろ!
ルークおまえらまで…!みんな俺の事がわかんねぇのかよ!
ルーク…まさかミュウやティアと同じ事が城のみんなに起こってんのか…!?
インゴベルト六世よいか!生きたまま捕え、目的を吐かせよ!仲間がおるやもしれんからな!
衛兵1はっ!
ルーク捕まってたまるかよ!
衛兵2くっ、逃がすか!待て!
タッタッタッタッ…
衛兵1くそっ、見失ったか!
衛兵2城の構造に精通しているようだった。綿密な計画があったに違いない
衛兵1兵を集め、人海戦術で街を捜索する。おまえは目撃者を捜してくれ
衛兵2了解!
タッタッタッタッ…
ルーク…行ったか。でも、このままじゃその内捕まっちまうな
ルークこのままティアと合流するか。これが分史世界の影響だって言うならルドガーに話すしかねぇだろうし…
???…こんなところで何してるんだ?
ルークガイじゃねぇか!よかった、困ってたんだ!
ガイん?おまえ、どうして俺の名前を知ってるんだ?
ルークなっ…おまえもかよ!おまえは、俺の教育係だろ!?
ガイ俺がおまえの教育係…?誰かと勘違いしてるんじゃないのか?
ガイそれよりおまえ…おまえ、今、兵士に追われてたよな
ルークああ。けど誤解なんだ!何もしてないのに、城への侵入者だとか言われちまって
ガイ城に入るには許可がいる。知らなかったのか?
ルーク今更許可なんて必要ないだろ!昔から自由に出入りしてたんだから
ガイ昔から…?
ルークそうだよ!ガイ、おまえ本当に俺の事がわかんねぇのか!?
ルーク俺だ、ルークだよ!思い出してくれよ…!
ガイ…ルーク…?
ルークああ!
ガイ悪い、聞き覚えのない名前だ。どこかで会った事があるか…?
ルーク……っ!
ルークもういい!どけっ!
ドンッ
ガイなっ…!おい、待て!
ガイ行っちまった…。変な奴。ま、後は兵士達が何とかするか
ルークくそっ…!もしかして誰も俺の事わかんねぇのか…!?
ルークあっ…!おい、おまえ!
店主ん?いらっしゃいませ
ルークあんたなら、俺の事わかるだろ!?ルークまんじゅうを作ってたんだ、忘れるわけねぇよな!?
店主はぁ?お客さん、何言ってんです?
ルーク忘れたなら、おまえが作ってるまんじゅうを見てみろよ!俺の顔のまんじゅうがあるだろ!?
店主お客さんの顔のまんじゅう…?そりゃ、注文されたら作りますが…
店主…そういや、お客さん、さっき大量に処分したまんじゅうに顔が似てるな…
ルーク処分しただぁ!?
店主ええ。いつの間にか、人の顔みたいなまんじゅうを作っちまってたんですがね
店主誰の顔かもわかんなくて不気味だったんで全部捨てちまったんです
ルーク…そうかよ。わかった。邪魔したな…
ルーク(って事は…みんな俺がルークだって わからなくなっちまった わけじゃねぇ…)
ルーク(俺が…ルークっていう人間が 存在した事自体を 忘れちまってるんだ…!)
ルークルドガーのところに急がねぇと…!
目に見えぬもの
ルドガーさて、調査に備えて食料も買ったし一度、宿に戻ろうか
エルうん。これからしばらく街の外で調査するんだよね
ルドガーああ。キールからの連絡によると異変の原因になりそうなマナの変動が王都近郊の広い範囲で起こってるんだ
ルドガー昨日、街を見て回った時は何もなかったから、今度は外を調べてみよう
エルせめて、どんな異変が起こるかわかればいいのに
ルドガー…そうだな。でも、何もわかってなかった頃から考えると、これでもすごい進歩だ
ルドガーキールの調査は着実に進んでるんだな
エルそのキールは今もウィンドルにいるんだよね?
ルドガー忙しいみたいだからな。リチャードが世界中に調査結果を公表してから、引っ張りだこらしい
ルドガーだから、キールがすぐには動けない分俺達が先に調べておかないとな
エル世話が焼けるなぁ
ルドガー頼りにしてくれてるんだ。期待に応えられるよう頑張ろう
エルうん
ルドガー(危険かもしれないから 本当はエルはウィンドルに 残っていてほしかったけど…)
ルドガー(キールの研究結果が正しいとすれば 分史世界への鍵は エルかもしれないんだ…)
ルドガー(また何が起こるかわからないから 一緒にいる方が安全だよな…)
エル…あれ?今、宿から出て来た人…
ルドガーあれは…!
ティアあっ…!ルドガー!
ミュウ会えてよかったですの!
ルドガーティア、ミュウ?
ティア宿にいなかったから捜しに行こうとしていたの。ちょっと聞きたい事があって…
ルドガー俺に聞きたい事?…もしかして、異変絡みか?
ティアええ、おそらく…。その…人の事を忘れてしまう異変ってあるのかしら?
ミュウすごく大切な人を忘れちゃうですの…
エル……!
ルドガー人の事を忘れる異変…?今まで聞いた事はないけど…
エルエル、知ってる!ルドガーも時々そうなってる!
ルドガー俺が…?そんな事あったか?
ティア自覚がないだけかもしれないわ
ティア私も、その人を忘れてしまっている事に違和感すらなかったもの。目の前に本人がいても、ね…
ミュウみゅぅぅ…ボクもですの
ルドガーなるほど…。初めて聞く現象ではあるけど異変という可能性はあるな
ルドガーだけど、これまでは負の因子の影響を受けた一人だけに異変が起こっていた
ルドガーティアとミュウ…それに俺にも同じ現象が起こってるなんて、一体…
エルティアとミュウは、誰の事忘れちゃったの?
ティアそれが、その…おかしいわ…
ティア忘れる…って、何の事だったかしら…
ミュウみゅうぅ…ボクも何だか変ですの。ボクの中に大きな穴が空いたみたいですの…
ルドガー…まさか、今またその現象が起こってるのか…?
ティアええ、おそらく…。だけど、さっきと違って、何かを忘れているという事はわかるわ
ルドガー記憶が消えているというよりはその人の存在だけが抜け落ちてる…って事か?
ティア…ええ。何かわかりそうかしら?
ルドガー…これは推測なんだけど、もしティアとミュウが同じ人の事を言ってるのだとしたら…
ルドガー異変が起こっているのは、その人なんじゃないか?
ルドガー誰かを忘れるという異変じゃなく、みんなから忘れられるという異変がその人の身に起こってると思うんだ
ミュウみゅうぅぅ…。その人を助けてあげてほしいですの!
ミュウ誰だか思い出せないけど…その人が悲しいとボクも悲しいですの…
ルドガーああ。だけど、それにはまず、その人に会わないといけない
ルドガーでも、それが誰かもわからないんじゃ──
ルーク…いた!おーい!
ミュウみゅ…?
ルドガーどうしたんだ、ミュウ?
ミュウ…今、ボク達を呼ぶ声が聞こえた気がしたんですの
ルドガー…誰もいないぞ?気のせいじゃないか?
ルーク何言ってんだ!俺がいるだろ!もしかして姿まで見えねぇのか!?
ルークおい、ティア、ブタザル!おまえらはさっき思い出してただろ!
ティア…!ルドガー、私も今、誰かに呼ばれた気がしたわ
エルえっ!? 本当に誰かいるの?…なんかこわっ!
ルドガー…もし二人の言う人がそこにいて、なのに俺達が気付けていないんだとしたら…
ルドガー単にその人を忘れてるだけじゃない。存在そのものが消えかかってる可能性がある!
ルークっ…!俺が、消えかかってるだって…!?
ルーク冗談じゃねぇ!おい、頼む!誰か気付いてくれよ!
ルークティア!
ティア……
ルークブタザル!
ミュウ……
ルーク他の誰が気付かなくてもおまえだけは返事してくれるんじゃなかったのかよ!
ルーク何とか言えよ、ミュウ!
ミュウ…みゅ?
ミュウこの声…
ミュウ──ご主人様ですの!
ルークミュウ!
ミュウご主人様!
ルーク俺の声が聞こえるのか!?
ミュウ聞こえますの!
ルーク姿が見えるのか!?
ミュウはいですの!
ティアミュウ…?
エル一人で話してる…?
ミュウ皆さん、思い出してほしいですの!ボクのご主人様…ルーク…フォン・ファブレ…ですの!
ティア、ルドガー、エル…!
ティアそうだわ…そうよ、ルーク!思い出したわ!
ルドガーああ、俺も今、ミュウのお蔭で思い出せたよ
エル…って、わぁ!ルーク、いつからいたの!?
ルークおまえらも俺の事がわかるのか?見えてるんだな?
ティアええ、わかるわ。よかった、本当に…
ルーク思い出してくれてひと安心だぜ。ずっとここにいたのに、誰も気付かねぇからよ
ルドガールーク。安心するのは早い
ルドガーもし分史世界の影響でルークに異変が起こっているならまた同じ事が起こるかもしれない
ルドガーいや、それどころか次はもっと悪化する事もあり得る
ルドガー今でも、ルークに意識を集中してないと、すぐに分からなくなりそうなんだ
ルーク…やっぱり異変が起きてるのはみんなじゃなくて俺なんだな
ティアルーク、気付いていたのね
ルークああ。城でもいろいろあったしな
ルークでも分史絡みならルドガーが解決策を知ってるんだろ?どうすりゃいいんだ?
ルドガー今までと同じなら分史世界にいるルークが負の因子に憑りつかれてるはずなんだ
ルドガー分史世界に行ってその負の因子を破壊すればこの正史世界での異変も止まるはず
ルーク分史世界の俺?前に分史世界に行った時は、ルークなんていないって感じだったぞ
ルドガーあの時とは別の分史世界だよ。分史世界は無数にあるんだ
ルークなるほどな。とにかく、そこにいる俺を捜しに行かなきゃならねぇんだな
ルークで、どうやったらその負の因子に憑りつかれた俺がいる分史世界に行けるんだ?
ルドガーキールの仮説が正しいなら…
ルドガーエル、時計を出してくれるか
エルわかった
ルドガールーク。この時計に触れてみてくれ
ルーク…こうか?
ルーク何だ!?光が…!
ヒュンッ
ルドガーよし、思った通りだ
ルークこの穴の向こうが分史世界って事か…?
エルルドガー、行っちゃうの?
ルドガーああ。前のように危険な目に遭うかもしれない。エルは宿で待っていてくれるか?
エルうん…
ティアルーク、私も──
ルーク待てって。おまえまで来たら誰がミュウとエルを見てるんだよ
ティアでも…
ティア…いえ、そうね。わかったわ。私はこっちで待ってる
ティアだから必ず、無事に帰って来て
ルーク当たり前だろ
ルークじゃあな。おまえも大人しくしてろよ
ミュウご主人様…ボクは…ボクは…
ルークそんな顔すんなって。すぐ帰ってくるからよ
ルークほら、ルドガー。早く行こうぜ
ルドガーああ。それじゃあ、ティア。エルをよろしく頼む
ティアわかったわ
エルルドガー、気を付けてね
ルドガーありがとう。…それじゃあ、ルーク。その穴に飛び込んでくれ
ルークよーし、行くぜ
ミュウ…ボクも行くですの!
ルークあっ…バカ!戻れ!くっつくな──…
ミュウ嫌ですの!ボクはどこまでもご主人様と一緒ですのー!
シュンッ
ティアミュウ!
エル行っちゃった…!
ティア大丈夫かしら…
エル平気だよ!ルドガーが一緒だし!
エルそれに、ルドガーが言ってたけどルークもすごく強いんでしょ?
ティア…そうね
ティア(…もしもの事があれば 私はルークを忘れて しまうのかしら…)
ティア(…ううん。 そんな事… ないわよね…)
scene1キムラスカの親善大使
ヒュンッ
ルドガー…よし、分史世界に着いたようだな
ミュウみゅっ…!
ドンッ
ルドガーミュウ!大丈夫か?
ミュウだ、大丈夫ですの。木にぶつかっただけですの…
シュン…
ミュウみゅ?穴が閉じたですの…
ルドガーああ。これまでも分史世界に移動したらすぐに穴が閉じたんだ
ミュウ…ご主人様はどこですの?
ルドガー…!ルーク…まさか時空の裂け目に入りそびれたのか!?
ミュウそんなことないですの!ボク、ご主人様にくっついて一緒に穴に入りましたの!
ミュウそうしたら、来るなって突き飛ばされたですの…
ルドガーそうか…なら、その勢いではぐれた可能性が高いな
ミュウルドガーさん!ご主人様はどこですの!?
ルドガー一緒に時空の裂け目に入ったなら、この世界には来ているはずだ
ルドガーこの世界の別の場所に飛ばされたのかもしれない
ミュウ大変ですの!早く捜しに行くですの!
ルドガー落ち着くんだ、ミュウ。状況がわからない中、闇雲に動くのは危険だ
ルドガーこういう時こそ冷静にならないと…まずは、ここがどこなのかを調べよう
ミュウみゅううぅぅ…。でも心配ですの…
ルドガー気持ちはわかるけど…
ミュウもしかしたら近くにいるかもですの。ボク、ちょっとだけ捜してきますの
ルドガー待ってくれ、ミュウ…!
ミュウすぐに戻るですのー!
ルドガー…ミュウ。よほどルークの事が心配なんだな
ルドガー(…俺もミュウも ルークの事をしっかり覚えてる。 存在が消えたわけではなさそうだ)
ルドガー(ルーク… どこにいるんだ…)
ガイはぁ、はぁ…くそ、まだ追って来るのか
アッシュ奴ら、一体何者なんだ。シルヴァラントの兵士に見えるが
ガイさあな。出会ってすぐ問答無用で追いかけられたんじゃ検討もつかないな
ガイ止まって話を聞いてみるか?
アッシュ…いや。この森を利用して追手を撒く
ガイ了解!
ザッザッザッザッ…
兵士1ちっ、見失ったか!
兵士2引き返しますか?
兵士1そうはいくか!シルヴァラントの威信に賭けて奴を必ず捕らえるぞ!
兵士1このまま王都に帰らせてはならん!各員、散開して捜索せよ!
兵士2はっ!
ザッザッザッザッ…
ガイ…ふう。行ったみたいだな
アッシュ王都に帰らせない…か。やはり俺が誰か理解した上で追って来てるようだな
アッシュだが、何故だ。俺は親善大使として赴いただけで、捕らえられるような事をした覚えは…
???説明してやろうか?
アッシュ…ちっ、見つかったか!
ゼロス落ち着けよ。俺だ、アッシュ
アッシュ…ゼロスか
ガイ騎士のおまえまで動いてるって事は国をあげて俺達を追って来てるみたいだな
ゼロスそりゃ、あわや王が殺されるなんて事件があれば、騎士団も動くぜ
アッシュ王が…!?どういう事だ
ゼロスその反応…やっぱりあれはおまえじゃないんだな
ゼロスアッシュが王の命を狙うわけねぇとは思ってたんだ
アッシュ一体、何を…
ゼロス事情を説明する前に、ここを離れようぜ。騎士団の連中が近づいて来てるからな
アッシュ…わかった
scene2キムラスカの親善大使
ゼロスこんぐらい離れれば大丈夫だろ
ガイゼロス、早速で悪いが何があったのか教えてくれないか
ゼロスああ。と言っても俺も伝令で聞いただけだから細かい事までは知らねぇんだが…
ゼロス一言で言うと、キムラスカの親善大使を名乗る男が王に斬りかかったんだ
アッシュ何っ…!
ゼロス幸い、陛下は無事だったが陛下を守った兵士が一人、負傷しちまってな
ガイその兵士は、大丈夫なのか?
ゼロスああ、命に別状はないらしい。ただ…もしあいつが守らなかったら王の命は危なかっただろうって話だ
ゼロス親善大使はそのまま逃走。兵士達はそれを追って来たってわけだ
アッシュ…親善大使は俺だが、まだ王には会えていない
ゼロスああ。要はアッシュの名を騙った偽者って事だ
ゼロス俺がその場にいればそう言ってやれたんだけどな…
ゼロス交流剣技大会で何度も辛酸を舐めさせられた相手を見間違えるわけがねぇ
ガイまた随分前の話を持ち出すな…。それにその大会には他の兵士だって参加してただろう
ゼロスああ。でもあいつらは、俺さまみたいに毎回アッシュと優勝争いしてたわけじゃねぇからな
ゼロスつまり、その偽者ってのは一度や二度会ったぐらいじゃ見抜けないぐらい似てるって事だ
アッシュ…俺とそっくり…
ゼロスというわけで、今おまえはシルヴァラントで大々的に指名手配されてるときた
ガイ…だから兵士達はアッシュを見るなり追いかけて来たんだな
ゼロス偽者が逃げた方角からおまえらが来たってのもあるな。わざとだとしたら──
ガイ俺達の移動ルートを知った上での罠か…!
アッシュ……
アッシュその偽者は、他に何か言っていなかったか?
ゼロス…これも伝令で聞いただけなんだが…
ゼロス「キムラスカはシルヴァラントとの 和平を望まず、 服従のみを受け入れる──」
ゼロスそんな感じの事を言ってから剣を抜いたらしいぜ
ガイそれじゃまるで、宣戦布告じゃないか
アッシュちっ…何て事をしやがる。キムラスカとシルヴァラントの親交を深める予定が台無しだ
ガイそれで…ゼロスはどうするんだ。俺達を捕まえるのか?
ゼロスまさか。そんな事したら真犯人の思うつぼじゃねーか
ゼロス俺は、おまえの無実を確認しに来ただけだ。偽者だとはっきりして、ほっとしたぜ
ガイそれを聞いてひと安心だ。おまえが相手となればお互い無事にはすまないからな
アッシュ…その偽者を捕らえるぞ。放っておけば、また何をしでかすかわからない
ゼロスそれはそうだが、何もおまえ達が無理する事もねぇだろ
ゼロスひとまず、真犯人捜索は俺達に任せて二人は一旦国に帰った方がいいんじゃねぇか?
ゼロス今おまえ達が捕まったらいくら俺さまでも、助けられるだけの証拠がねぇ
アッシュ…いや。要は、真犯人を突き出せばいいんだろう?
ゼロス…心当たりでもあんのか?
アッシュ……
ガイおい、アッシュ。まさか、ルークを疑ってるんじゃないだろうな?
ゼロスルークって、双子の弟だったよな?
ゼロスいくら真犯人の顔がおまえにそっくりだからって、弟を疑うのは感心しねぇな
アッシュそれだけじゃない。俺が親善大使に任命された時…少し気がかりな事があった
インゴベルト六世アッシュよ。各国を回る親善大使には、そちを任命する
アッシュ俺…一人ですか?
インゴベルト六世勿論、付き人はつける。誰でも指名するがいい
アッシュはい。では──
インゴベルト六世ただし、ルーク以外でな
アッシュ…何故です
インゴベルト六世ルークは最近、たるんでおる。剣の稽古には熱心なようだが国政の事にはまるで無関心だ
インゴベルト六世先日は国賓の集まる社交の場にも顔を見せなかった。…今のあやつを外に出すのは不安だ
アッシュ……
インゴベルト六世あやつには王位継承権を持つ者としての自覚が足らぬ
インゴベルト六世その事を自戒させるため敢えて今回は親善大使から外した。付き人として同行する事も禁じる
インゴベルト六世わかってくれるな
アッシュはっ…
コンコン
アッシュルーク、入るぞ
ガチャ
アッシュ…おまえ、その髪。切ったのか?
ルーク親善大使様がわざわざ髪型の話をしに来たわけじゃねぇだろ。…落ちこぼれに何の用だ?
アッシュ親善大使…か。随分と耳が早いな
アッシュなら、おまえが任命されなかった理由も聞いているな?
ルークああ、知ってるよ。全部、先生が教えてくれたからな
アッシュ先生…騎士団長か
ルーク…もういいだろ。先生が待ってるんだ。行かねぇと
アッシュおい、待て。おまえのそういう態度が──
ルーク…うるせぇな。話は終わりだ
アッシュ一つだけ聞かせろ
アッシュその髪…何か心変わりがあったんじゃないのか
ルーク……
バタン
アッシュ…ちっ。何を考えてやがる
アッシュ…俺にはあいつが何を考えてるのかわからなかった
アッシュだが、まさかこんな大それた事を計画していたとは…
ゼロス待てって。決めつけるにはまだ早いんじゃねーか?
アッシュ状況証拠が揃っている
ゼロスまだ、状況証拠だけだろ?僅かでも可能性があるなら最後まで信じてやれよ
ゼロスそれが、兄貴ってもんだろ
アッシュ妙にルークに肩入れするな
ゼロスそういうわけじゃねぇよ。ただ…俺と同じ間違いをしてほしくないんだよ
アッシュ間違い…?
ゼロス…ああ。この事は、他人にはあんまり話した事ねぇんだけど…
ゼロス俺には一人、妹がいるんだ。そいつの事で、昔ちょっとあってな…
ガイああ、剣技大会に応援に来てるのを見た事あるな。確か、セレス…だったか?
ゼロスそうそう!今でこそ仲良くしてるし、あいつも俺を慕ってくれてるけどな…
ゼロス昔は俺…あいつが苦手だったんだよ
ゼロス小さい頃から病弱でな。ちょっと何かあると親はあいつにつきっきりの看病だ
ゼロスまだ子どもだった俺は親の愛情を独り占めするセレスをよく思ってなかった…
ゼロスそれにあいつ、俺と二人の時は弱ってる素振りなんて全く見せなかったしな
ゼロスだから…いつしか、あいつは親の気を引くために病弱なフリをしてるんだって…
ゼロスそう思い込むようになっちまってた
ゼロス…ある日、家に俺しかいねぇ時に、あいつが急に苦しみだしたんだ
ゼロスなのに、馬鹿な俺は騙されてたまるかって、ずっと無視してたんだ
ゼロスさすがに様子がおかしいと気付いて医者を呼んだ時にはかなり酷い状態になってた
ゼロス何とか大事に至らなかったが…俺は自分の馬鹿さ加減を呪ったぜ
ゼロス後からわかったんだが、あいつは俺に心配かけまいと二人の時は元気なフリをしてたんだ
ゼロスなのに俺は、大事な妹を勝手に悪者だと決めつけて…嘘だと思いこんじまってさ
ゼロスそれから俺は、信じるべき相手の事は最後まで信じるって心に誓ったんだ
アッシュ…それはおまえが勝手に誓った事だ
ゼロスああ、確かにそうだ。でも、おまえにも関係のある話だぜ
ゼロス俺さまが、おまえが犯人じゃないって信じた理由だからな
アッシュどうして俺に繋がる?
ゼロス言ったろ?信じるべき相手を最後まで信じるってな
ゼロスその上で、兄として、妹や弟ってのは信じてやるべき相手に入るだろって言いてぇんだ
アッシュ……
ガイなぁ、アッシュ。俺はおまえら兄弟の問題には口を出さないようにしてたけど…
ガイゼロスの言う事、少し考えた方がいいぞ
アッシュ…今回の件は、二つの国を巻き込んだ大きな話だ。俺が信じるかどうかは関係ない
アッシュ弟だろうが可能性があれば疑う。…だが…
アッシュおまえの話は教訓として肝に銘じておく
ゼロスああ。それで充分だと思うぜ
ゼロス…ルークが犯人じゃなかったらいいな
アッシュ…そうだな
ガイさて、それじゃあこれからどうする?
アッシュ本来なら、さっきゼロスが言った通り急ぎ国に戻って伯父上に報告するべきだろう
アッシュそして王の名でシルヴァラントに対し事情を説明して、犯人は両国で協力して捜すのが筋だ
ガイ…けど、おまえは違う方法を取ろうとしてる。だろ?
アッシュああ。今の段階で報告すると、おそらく最初に疑われるのはルークだ
アッシュだが、もし犯人がルークでない場合それこそが犯人の狙いという可能性もある
ガイうちも一枚岩じゃないからな。アッシュを陥れようとする奴もいればルークを狙いそうな連中もいるか…
アッシュいずれにせよ、国内の派閥同士が疑心暗鬼になれば、政治機能が一時的に低下するだろう
アッシュそれを防ぐためには、報告と共に犯人を突き出し、断罪する事が理想だ
ガイ俺達で犯人を捕まえるって事か…
ゼロス今ならまだ、そう遠くまで逃げちゃいねーと思うぜ。捕まえるなら急いだ方がいい
アッシュわかった。…犯人は俺達が来た方角に逃げたと言っていたな
アッシュなら、この近く…身を隠すのなら森の中にいる可能性が高いだろう
ガイ森か…この森、かなり広いよな
アッシュああ。だからといって、諦めるわけにはいかない
ガイそうだな。大変そうだが、おまえと一緒なら、出来ない事なんてないよな
アッシュふっ、当たり前だ。やる事は決まったな
兵士の声ここもいないか。次はあっちを捜すぞ!
ゼロスおっと、そろそろここもやばそうだな
ゼロスここは俺さまが誤魔化しといてやる。おまえらは犯人を捜しに行け
アッシュ…恩に着る。
ゼロスいいって事よ。剣技大会の好敵手がいなくなるのは寂しいからな
ゼロス俺は俺の方で王都に戻って何とか誤解が解けないか試してみる
ゼロスあんまり期待は出来ねぇだろうがちょっとでも根回ししておきゃ犯人を捕まえた後、話が早いだろ
アッシュ世話になる。ガイ、行くぞ
ガイああ
scene1邂逅と誤解
ルーク…ったく。どこなんだよ、この森
ルークここは分史世界…でいいんだよな。でもルドガーもミュウもいねぇし、どうなってんだ?
ルーク…ん?何か声が聞こえるような…
兵士1まだ見つからんのか!
兵士2騎士殿が仰るには確かにこちらの方向だと…
兵士1他に手がかりもない。この辺りを徹底的に調べるぞ!
兵士達はっ!
ルーク…あの格好、兵士か。誰か捜してるみてぇだな
ルークちょうどいいや。ルドガー達を見てないか、聞いてみるか
ルークおーい、そこの人!
兵士1むっ、誰だ…!
ルーク忙しそうなところ悪いんだけどさ。仲間とはぐれちまって困ってんだ。もし見かけてたら──
兵士1おまえは…!服を変えたようだが、俺の目はごまかせんぞ!
ルークな、何だよ急に…
兵士2そっちから出てきてくれるとはな!絶対に逃がさんぞ!
ルークはぁ?待てよ、俺、何か悪い事したか?
兵士3とぼけるな!国王に刃を向けた罪、忘れたとは言わせんぞ!
兵士2我らシルヴァラントの威信に賭けて貴様を捕らえる!
ルークシルヴァラントの国王に刃を向けた!?んな事、するわけねぇだろ!
ルークだいたい、俺はついさっきこっちの世界に来たばっかなんだ!人違いもいいとこだぜ!
兵士1問答無用!総員、掛かれ!
兵士達はっ!
ルークだーっ!何だってんだよ!俺は戦う気なんてねぇっての!
兵士2逃がすか!
ヒュンッ!
ルークやめろって!
ガキィン…!
兵士2くっ、剣を弾かれた…!
ルーク今だ!
兵士3逃げるのか!待てー!
兵士1待て、闇雲に追うのは危険だ!先程の戦いぶり…噂以上の手練れだ。他の兵と合流し、数で追い詰めるぞ!
兵士3はっ!
ルークはぁ、はぁ…追ってこねぇのか…?
ルークよくわかんねぇけど、なるべく離れた方がよさそうだよな…
ガサガサ…
ルーク…さっきの奴らか!?
魔物グルルルル…
ルーク今度は魔物かよ!?こんな時に、邪魔すんじゃねぇ!
scene2邂逅と誤解
バシュッ
魔物ギャウゥ…
ルーク…ふぅ。今ので最後か
ルーク兵士も追ってこねぇようだしとりあえずミュウとルドガーを捜しに行くか
アッシュ…ガイ、見たか。今、魔物と戦っていた奴…
ガイああ。あれは、ルーク…だよな?
アッシュいや、確かに似てるが…
アッシュ俺が国を旅立つ直前、あいつは髪を切っていた
アッシュそれを知らない奴がルークに成りすましているんだろう
ガイアッシュに成りすませるならルークにも成りすませる、か…
アッシュあそこまで似ているとなれば、事件に無関係とは言い難い。…追うぞ
ガイああ
ルークおーい、ルドガー!ミュウー!いねぇのかー?
???おい、そこのおまえ
ルーク…!
アッシュ動くな
チャキ…
ルークなっ…!アッシュにガイ!?
ガイ…本当にそっくりだな。アッシュ、こいつ本当にルークじゃないのか?
アッシュああ。さっき言ったとおりだ
ルークいや…俺はルークだぞ…?
ルーク何を誤解してんのか知らねぇけどおまえらと戦う気はねぇんだ。剣を下ろしてくれよ
アッシュ黙れ。おまえは、俺の質問にだけ答えろ
ルークすげぇ剣幕だな…。わかったよ。そうすりゃ解放してくれんのか?
アッシュ事と次第によっては…な
アッシュシルヴァラントでキムラスカの親善大使を勝手に名乗ったのは、おまえか?
ルークは?何だよ、そんな昔の事…
アッシュおまえなんだな?
チャキ
ルークああ、そうだよ。俺だよ!でもあれは、星のカケラの件を解決した事で不問になっただろ!
ルークそりゃ、後で伯父上やティアからこってり絞られたけどよ。今更、剣を向けられる事なのか!?
アッシュ星のカケラ…?ティア…?何の話をしている
ルークガイはその事もよく知ってんだろ!?
アッシュ…そうなのか、ガイ?
ガイいや、何の事を言ってるのかさっぱりだな
ルーク(…そうか。ここは分史世界だから 星のカケラの事もティアの事も こいつらは知らねぇのか…)
ルーク(…ん? って事は、何かおかしいぞ…)
ルークなぁ。おまえらはどうして俺が親善大使として各国を回った事を知ってんだ!?
ルークあれは星のカケラを巡る戦争を避けるためにやったんだぞ!?
ガイおい、アッシュ。こいつ何か様子がおかしくないか?
アッシュ……次の質問だ。シルヴァラント王に剣を向けた目的は何だ?
ルークさっきの兵士もそんな事言ってたな。俺はそんな事してねぇ!
アッシュなら誰がやった。親善大使アッシュの名を騙ったのはおまえじゃないのか?
ルークアッシュはおまえだろ?つーか、この世界じゃ、おまえが親善大使なのか?
アッシュこの世界…?
ガイ…なぁ、アッシュ。少しこいつの話を聞いてみないか?
ガイ抵抗したり逃げたりする素振りもないし…
ガイもしかしたら、俺達の知らない何かがあるんじゃないか?
アッシュ…誤魔化しているという感じでもなさそうだな
ルーク話聞いてくれるんなら、とりあえずその剣をしまってくれ。物騒で仕方ねぇよ
アッシュ……
…カチャ
アッシュ妙な動きをしたら怪我じゃすまないぞ
ルークわかってる、何もしねぇよ
アッシュまず、おまえが何者でどうしてルークの格好をしているのか説明してもらおう
ルーク何者も何も…さっきも言ったけど…俺はルーク。ルーク・フォン・ファブレだ
アッシュ嘘を言うな
アッシュ確かに似てはいるが、俺の弟のルークは髪を短く切ったばかりだ
ルーク弟?この前会った時は、俺の事なんて見た事ねぇって感じじゃなかったか?
アッシュこの前…?
ルークあー、いや…。ここはあの時とは違う分史世界ってルドガーが言ってたっけ…
ルーク…じゃあ、この二人は俺と初対面の分史世界のアッシュとガイって事か?ややこしいな…
アッシュ何をブツブツ言っている。俺達にもわかるように話せ
ルークあーっと、だからな?俺はおまえ達に会った事があるけど、それは別の分史世界のおまえ達で…
ルークだからおまえ達が俺を知らないのは無理もないってか…当然か…
アッシュ…要領を得ないな。さっきも別の世界と言っていたがそれは何の事だ?
ルークだからえっと…世界には正史世界ってのと、分史世界ってのがあって…
ルーク俺は正史世界から来たから、この世界のルークじゃなくて正史世界のルークなんだ
アッシュ……ガイ、わかったか?
ガイうーん…おそらくだが、こことは別に同じような世界があってそこにもルークやアッシュや俺がいる
ガイこいつはその別の世界のルークで、俺達の知るルークとは別の存在…って事か?
ルークそう!そういう事だ!さすがガイだぜ!
ガイ別の世界に行ける機械の研究ってのを聞いた事があったから、何となく…な
アッシュその研究とやらは信用出来るのか?
ガイ正直、眉唾だと思うが…
アッシュだとするなら、そんな突拍子もない話、にわかには信じられんな
ルークじゃあ信じなくてもいいよ。とにかく俺は、どっかの王様相手に剣を向けたりしてねぇ!
アッシュその言葉を信じる証拠はあるか?
ルーク証拠って言ってもな…
ルークそうだ。おまえら、要するに俺にそっくりの顔した悪い奴を捜してるんだろ?
ルーク俺がおまえらと一緒にそいつを捜す。それでどうだ?真犯人が見つかりゃ文句はないだろ
アッシュ…いいだろう。だが、もし他に犯人が見つからなければ、次はないぞ
ルークわかったよ。俺もそんな悪い奴は許せねぇ。絶対とっ捕まえてやるぜ!
ガイいいのか、アッシュ?
アッシュああ。こいつの言う事が本当ならば犯人は別にいるはずだ。そいつが見つかるなら文句はない
アッシュそしてこいつが犯人だった場合…自分が生き残るために、共犯者を真犯人として突き出す事だろう
アッシュそれなら捕らえた真犯人を問い詰めて全てを明るみに出す
アッシュいずれにしても俺達は真実に近づく事が出来る
ガイなるほどな。嘘でも本当でも問題ないって事か
アッシュああ…だが警戒は解くなよ。隙を見て逃げる可能性もあるからな
ルークおい、さっきから何二人だけでこそこそ話してんだよ
ザッザッザッザッ…
兵士の声こっちにいたぞ!皆、陣形を崩すな!
ルークげっ、あいつら…!俺を追って来たのか!
ガイシルヴァラントの兵士か!随分と数が多いな
アッシュ…ああ。まるでこっちに俺達がいるのを知っていたかのようだ
チャキ…
ルークなっ…!おまえ、なんで俺に剣を向けんだよ!
アッシュ嵌めやがったな。俺を足止めしておいて、自分ごと兵士に捕らえさせる算段だったんだろ
アッシュアッシュが二人いるのは不自然だ。だからルークに変装してたってわけか?
ルークなっ…違う!誤解だって!自分まで捕まるなんておかしいだろ!
ガイ…犯人は国の根幹を揺るがす大事件を起こすような奴だ。そのぐらいの犠牲は覚悟の上かもな
ルークガイまで…!おまえら、本気で言ってんのか!?
アッシュもはや問答している時間はない
アッシュここでおまえを捕らえ、シルヴァラントの兵士に引き渡す
ルーク冗談じゃねえ…!俺だって捕まるわけにはいかねえんだ
アッシュ拘束するぞ!ガイ!
ガイああ!観念しろ!
ルークだーっ!こうなりゃ逃げるしかねぇ!
ガイさせるか!
ルークすまねぇ、ガイ!
ドンッ
ガイくっ…!
アッシュ待ちやがれ!
ガサササ…
アッシュ茂みに入ったのか。どっちに逃げやがった
アッシュ……
アッシュ…ちっ、見失った。ガイ、大丈夫か?
ガイ悪い。転んだだけだ
アッシュあいつ…ガイの動きの癖を知り尽くしているような動きだった…
ガイ逃げられちまったな
アッシュ兵士がもうそこまで来ている。俺達もここを離れるぞ
ガイああ
繋がる点と点
ガイふう…何とか見つからずに済んだな。あの偽ルークの事も完全に見失っちまったが
アッシュ……
ガイ何か気になる事でもあるのか?
アッシュ些細な事だが…一つ引っかかる点がある
アッシュあいつの身のこなし…幼い頃、ルークと剣を交えた時の事を思い出すものがあった…
アッシュもっとも、太刀筋や間合いの取り方は似ても似つかなかったが…
ガイって言っても、魔物と戦ってるのを少し見ただけだろ?気のせいって事もあるんじゃないか
アッシュだが…おまえの動きを読んだあの動きも偶然か?
ガイ…まさか、別世界のルークだっていう話を信じるのか?
アッシュ…信じられんが、筋は通る。今はあらゆる可能性を検討すべきだ
ガイなるほどな。ゼロスに言われた事を肝に銘じてるってわけか
ガイ注意深く真実に辿り着きさえすればルークが真犯人なわけがないって信じてるんだな
アッシュ…違う。雑な調査をしたくないだけだ
ガイそれでもいいさ。俺は少しほっとしたぜ
ガイおまえもやっぱりルークの事を気にかけてたんだってわかったからな
アッシュ何を勘違いしているかは知らんが…俺には弟を守ろうなどという気はないぞ
アッシュ例え、ルークが無実の罪を着せられてもその疑いを晴らすのはあいつ自身だ
アッシュただ俺は、この事件の解決のため真犯人を慎重に捜しているにすぎない
ガイ…もし、ルークが犯人でも捕らえてシルヴァラントに引き渡すって事か?
アッシュ当然だ。これは責任の問題だ
ガイ…だよな。変な事聞いて悪かったよ
ルドガーなかなか戻って来ないな…ミュウどこまで行ったんだ?
ルドガーまさか、道に迷ったんじゃ…
ガサガサ…
ルドガーん?ミュウか?
ガサッ
ルークおわっ!?
ルドガー…っ!?ルーク!
ルークルドガーか!会えてよかったぜ
ルドガーあれ…?ミュウは一緒じゃないのか?
ルークミュウ?会ってねぇけど…ここにいないのか?
ルドガー分史世界についてすぐ、ルークを捜しに行ったんだ
ルドガーすぐに戻るって言ってたんだけど…会えてないって事は道に迷ったのかもしれないな…
ルークったく、あいつは…
ルークまあ…心配ねえよああ見えてしぶとい奴だ。その内ひょっこり姿を見せるだろ
ルークそれより、さっきの奴らの事を何とかしねぇと…
ルドガーさっきの奴ら?誰かと会ったのか?
ルークああ。アッシュとガイなんだけどよ。俺を何かの犯人だと思ってるみてぇなんだ
ルドガー犯人…?何か事件が起こってるのか?
ルークああ…それも、ちょっと厄介な事になってるらしくてな
ルドガー何があったのか詳しく聞かせてくれ
ルークわかった。俺もよくわかんねぇから、あいつらの言葉をそのまま言うぜ
ルーク…で、何でか俺が真犯人だろって急に言われ出して、逃げるしかなかったんだ
ルドガーなるほど…
ルークな?わけわかんねぇだろ?
ルドガー…少し整理させてくれ。この世界で起こった事を順に並べて行こう
ルドガー話を総合すると、アッシュがキムラスカの親善大使で、ガイと共にシルヴァラントに向かった
ルドガーだけどシルヴァラントでは親善大使を名乗る何者かが王に斬りかかる事件が起こって
ルドガーその犯人は、ルークに似た顔をしている。…ここまでは合ってるか?
ルークたぶんな
ルドガー複雑なのはここからだ。その犯人は逃げて、シルヴァラントの兵士が追っている
ルドガーそこで俺達が正史世界からやってきてルークはその兵士達に見つかってしまった
ルドガー兵士達から逃げたと思ったら、今度はアッシュ達にも捕まりそうになった
ルークああ。その通りだ
ルドガーこれは推測だけど、アッシュ達も、その兵士達から逃げてる最中だったんじゃないかな
ルーク何でだよ。兵士達が追ってるのは俺だぞ?
ルドガー自分では気付きにくいと思うけど…ルークとアッシュはよく似た顔をしてる
ルドガー前に…クロノスと戦った後倒れた君をアッシュが宿まで運んでくれた事があっただろう
ルドガーあの時も、二人の顔が並んでいるとまるで兄弟のように似てるってみんな言ってたぐらいだ
ルドガーそれに、この世界では実際に二人は兄弟だと言ってたんだろ?
ルドガーそっくりだったとしても不思議はないと思わないか?
ルークうーん…そういや、前にアッシュと会った時、ミュウが変な事言ってたな
ルーク俺とアッシュの雰囲気が似てるとか何とか…あん時は、ふざけんなって怒ったけど
ルドガーそれに、その真犯人が似せるならルークじゃなくアッシュに似せるはずなんだ
ルドガーだってこの世界ではアッシュが親善大使なんだから
ルークそれもそうか…
ルドガーだから兵士達が本来追ってるのはアッシュ達なんだと思う
ルドガーその最中にアッシュと似ているルークを見かけたものだから犯人だと誤解したんじゃないか?
ルドガーそれにアッシュからすれば、自分にそっくりの知らない人がいたら犯人だと思い込むのも当然だろう
ルークえっと、真犯人がアッシュに似てて俺がアッシュに似てるから俺が真犯人に間違われて…
ルークだーっ!わけわかんねぇつーの!
ルドガーいや…この話、もう少し単純かもしれないぞ
ルーク…?どういう事だよ
ルドガーこの世界のルークがアッシュを装って事件を起こした…そういう可能性もあるんじゃないかな
ルドガーもしそうだとしたら、兵士がルークやアッシュを追う理由もアッシュがルークを疑う理由もわかる
ルークいくら世界が違うからって、俺がいきなり国王に斬りかかったりすると思うか!?
ルドガーしない…と言いたいけど世界が違えば、性格も違う事がある。負の因子に憑りつかれれば、尚更だ
ルドガー前に行った分史世界では、あのスレイが人類を滅ぼそうとしてた事もあったぐらいだ
ルークスレイが!?そんなに変わる事もあんのかよ!
ルーク…じゃあ、本当に…この世界の俺が…
ルドガーあくまで推測の域は出ないが…
ルドガールークに異変が起こったのは、この分史世界のルークが負の因子に憑りつかれたからのはずだ
ルドガーこの世界のルークが関わっている可能性は高いと思う
ルークなるほどな…。んじゃ、俺の事もアッシュの事もこの世界の俺を見つければ解決か
ルドガーそういう事になるな
ルーク…ん?そういや、こっちに来てから俺、異変っての起こってねぇな
ルーク認識されねぇどころか見つかって追い回されたりしてたぐらいだ
ルドガー確かに、俺もルークの事を忘れたりしてない。分史世界では異変が止まるのか…?
ルークじゃあ、慌てなくてよさそうだな
ルドガーそうだといいけど…早く行動するに越した事はないと思う
ルドガー…なあ、ルーク。アッシュと協力する事は出来ないか?
ルークアッシュと?無理じゃねえかな…俺を斬ろうとした奴だぜ?
ルドガーでも、この世界のルークが犯人の可能性がある以上、利害は一致するだろう
ルドガールークの話の通りなら話せば聞いてくれる人みたいだし丁寧に説明すればわかってくれるかも
ルークそれはそうかもしれねえけどよ…
ルドガーこのままアッシュや兵士達に追われていたら俺達はろくに動けない
ルドガーアッシュを説得出来れば、だいぶ状況がよくなると思わないか?
ルークまあ、確かに、そうかもな…。わかった。もう一度話してみるか
ルドガーああ。ミュウが戻ってきたらすぐに──
ルーク…いや、行くなら今すぐだ。アッシュも兵士達に追われてるからこの森を離れちまうかもしれねぇ
ルークミュウの事なら心配ねぇよ。言ったろ?あいつはあれで、結構しぶといって
ルドガー…ルークがそう言うなら、俺もミュウを信じるよ
ルークそうと決まりゃ、アッシュを捜そうぜ
ルドガーああ。まずはルークが来た方向に行ってみよう
scene1偽の親善大使
ガイさて、これからの動きだが──
アッシュさっきの奴を捜す。今のところ他に手がかりはないからな
ガイそうだな。でも、どうやって捜す?もう森を出てるかもしれないぞ
アッシュいや。よく思い出してみろ。あいつは誰かの名前を呼びながら歩いていた
ガイ最初に声をかけた時か…確か、ルドガーとかミュウとか言ってたな
アッシュこの森の中で仲間と合流出来ずにいるんだ。まだ近くにいる可能性は高い
アッシュそれに俺達は、ルークに似た奴本人でなくその仲間の方を見つけてもいいんだ
アッシュたった一人を捜すよりも幾分かマシだろう
ガイわかった。このまま森の中を捜してみよう
アッシュ…もし、日没までに奴らを見つけられなければ…
アッシュ一度国に戻り、全て報告して、ルークの所在を調べる
ガイルークの所在を…。それはつまり、さっきの奴の話を信じるって事か?
アッシュ全ての可能性を考えているだけだ
アッシュ先入観で決めつけたり、感情に流されたりしないようにな
ガイ感情、か。やっぱりおまえ、ルークの事…
アッシュふん。あんな奴でも弟だ。
ガイアッシュ!危ない!
ドンッ
アッシュなっ…!?
ザシュ…!
ガイぐっ!
ドサッ
アッシュガイ!
???ちっ。邪魔しやがって…
アッシュおまえ…まさか、ルーク…なのか?
ルークふん。信じられねぇって顔だな。俺に斬りかかられるのがそんなに意外か?
アッシュ何の真似だ!
ルーク…次は仕留める!
ギィンッ!
アッシュくっ…!
ルークこれを受け止めるとはさすがだな。だが…!
キンッ!
アッシュぐっ…!弾かれただと!?
ルーク俺も強くなったんだよ!
キンッ!キン、キン!
アッシュこの太刀筋…!間違いない…!ルーク!
ルーク相変わらず強いな、アッシュ
ルークでも、これなら…ついに、俺が、おまえに勝つんだ!
アッシュ…!
ガギィン!
ルーク避けずに受け止めるとはな。その従者がそこまで大切か?
アッシュ手負いの人間を狙うとは…落ちるとこまで落ちたな、ルーク!
ルークはっ。おまえに勝つためなら何だって利用する
アッシュ…おまえがそこまでの屑だとはな
ルークああ。俺は屑だ。でも、おまえは違うんだろ?
ルーク優等生のおまえなら怪我人を見捨てたりは出来ねぇよな!
アッシュ…ふん。卑怯な真似をしないと戦えないような奴に遅れは取らねぇ
ルークこれは殺し合いだ。どんな手を使っても、命を取れば勝ちだ!
アッシュやれるもんならやってみやがれ!
ガンッ!
ルークくっ…!
アッシュおまえの望みどおり、殺し合いをしてやる。だが一つだけ答えろ
アッシュ親善大使である俺の名を騙ってシルヴァラント王に会い、剣を向けたのは…おまえか?
ルーク……ああ
ルークおまえに成り代わってシルヴァラントに宣戦布告をしたのはこの俺だ
アッシュっ…!
ルークおまえは他国でも顔が通ってるんだな
ルーク念のためにと思って用意した偽の親書も使う事なく、この顔だけで王に会う事が出来たぜ
アッシュ何が目的だ。俺を消して、王にでもなりたいのか
ルーク…わかってんじゃねぇか
ルークおまえはシルヴァラントから追われる身。逃亡中に殺されても不思議はない
ルークもし無事に国まで逃げ帰れたとしても大罪人として処分される
ルークそうしないと、シルヴァラントとの戦争は避けられねぇもんな
アッシュ…浅いな。おまえの計略はそれだけか
アッシュ今の話をバチカルに持ち帰り伯父上に報告する。それでおまえは終わりだ
ルーク…へっ、それは無理な話だぜ
アッシュどういう意味だ
ルーク俺の仲間がナタリアを監禁してる
アッシュ何っ!
ルークもし俺に何かあって王位を継げないような事態になったら…ナタリアはこの世から消える
ルーク俺達はナタリアと結婚する事ではじめて王位を継げるんだ。そのナタリアがいなくなれば…
アッシュ…そこまでするのか
ルークさっきも言っただろ。どんな手でも使うってな
ルーク諦めろ、アッシュ。おまえはもう終わりだ。どうあがいても王にはなれない
ルーク最後に選べよ。おまえ一人が犠牲になるか、俺を殺してナタリアも失うか
アッシュ期待に沿えなくて悪いが俺はどっちも選ばねぇ
アッシュ目的がおまえの王位継承ならおまえが生きている限りナタリアに下手な事は出来ないはずだ
アッシュなら俺は、おまえを生け捕りにしてナタリアも救う
チャキッ
アッシュ大罪人、ルーク・フォン・ファブレ。この俺が直々に裁いてやる!
ルークやってみろ、アッシュ!俺は遠慮なく剣を振り抜く──!
scene2偽の親善大使
ザシュ!
ルークぐぅっ…!…さすがに無傷とはいかないか。やるな
アッシュ…ふん。おまえこそ腕を上げたな。
アッシュだがその怪我なら、動きは鈍る。降参した方が身のためだぞ
ルークこの程度の傷…!
アッシュ(ちっ…踏み込みが甘かったか? 本気で俺を殺すつもりの奴を 生け捕りにするのは厳しいか)
ルーク…おまえは昔からそうだったな。いつも冷静なくせに、ナタリアの事になると頭に血が上る
アッシュ…何?
ルーク大事な従者を忘れてたろ?ここからなら…
アッシュてめぇ!ガイには手を出すな!
ルークアッシュ。ガイとナタリアを助けたけりゃ自害するんだな
アッシュ……
ガイ…くっ…アッシュ…だめだ…
ルーク何だ。目を覚ましてたのか
ガイ俺に構うな…。おまえなら、わかるはずだ…どうするべきか…
ガイ国に必要なのは…おまえと…ナタリア…!
ルーク…そうか。国に必要とされなかった者同士…せめて楽に殺してやるよ
チャキッ
アッシュガイ!
ルークじゃあな
???やめろーーーっ!!
ギィン!
ルークくっ、誰だ…!?
アッシュ…おまえは!
ルークあいつは俺が引き付ける!おまえは今のうちにガイを!
アッシュああ…!
アッシュ掴まれ、ガイ!
ガイ…悪い、足引っ張っちまって…
アッシュおまえが無事ならそれでいい
ルドガーこっちだ!
アッシュおまえは…?
ルドガー詳しい事は後で。今は逃げる事を優先するんだ。援護は任せてくれ
アッシュ…わかった、頼む
ルドガー行くぞ、ルーク!
ルークはあ!?何言って──
ルークおう!
ルーク…その姿、その声…同じ名前…?何なんだ、おまえ…
ルークその質問には答えらんねーな!へっ、隙だらけだぜ!
ギィン!
ルークしまっ…!
ドサッ
ルークぐあっ…!
ルークじゃあな!
ルーク待ちやがれ…!
ルークぐぅっ…!…傷が…
ルークくそっ、アッシュ…!絶対に許さねぇ…
ルーク次は必ず…この手で…!
共同作戦
ルークこの辺りまで来ればいいだろ。あいつも、すぐには追ってこれねぇみたいだったしな
アッシュ見通しが利く奇襲されにくい場所…湖のお蔭で警戒する方角も限られている…か
アッシュ腰を落ち着けるには適しているな
ルークお、おう。まぁな
ルーク(そこまで考えてなかったけど…)
ルークところで、ガイ。怪我はどうだ?
ガイああ…大丈夫だ。もう自分で歩けるし、傷もそんなに深くない
アッシュ…浅くもないだろう。見せてみろ
ガイ意外と心配性だよな、お前。いててて…
アッシュ俺を助けた怪我が原因で倒れられても面倒だからな。…礼は言っておく
ガイはは。従者が主を守るのは当然だろ?それより、礼を言うべきなのはあっちの二人にだ
ガイ誰だかは知らないがお蔭で命拾いしたぜ。ありがとな
アッシュ礼を言う。世話になった
ルーク気にすんなって。…しかし、ガイがよそよそしいと何か調子狂うんだよな
ルドガー仕方ないさ。彼は俺達の知ってるガイとは別人なんだから
アッシュ…別のガイ、か。こことは別の世界のガイがいる…という事か?
ルドガーああ
ガイ嘘をついているようには見えないし別の世界から来たって話を信じるしかないみたいだな
アッシュ…そのようだな。改めて聞く。おまえ達は何者で、何を目的にしている
ルドガーじゃあ、まず名前から。俺は、ルドガー・ウィル・クルスニクこっちは──
ルークさっきも言ったけど、一応な。ルーク・フォン・ファブレだ
アッシュルドガーに…ルーク…か。…俺達の事はわかっているようだが礼儀としてこちらも名乗っておく
アッシュ俺の名はアッシュ・フォン・ファブレだ
ガイ俺はガイ・セシル
ルドガー俺達の目的については…どう説明していいのか難しいんだけど…
ルドガー一言で言うと、この世界のルークに会いに来たんだ
アッシュ……。あいつに何かあるんだな?
ルドガーああ。事の起こりは、俺達の世界でルークが──
アッシュ…正史と分史…。そして負の因子…か
ガイ驚くような話ばかりだな…こっちの世界の影響でそっちのルークが忘れられるだなんて
アッシュ…負の因子の目印になる黒いもやというやつには心当たりがある
アッシュさっきルークと戦っている最中にそれらしいものを見た
ルドガーやはりそうか…早く取り除かないとどんな事が起こるかわからない
ガイ今回の大事件も負の因子の影響によるものって事なんだよな?
ルドガー可能性は…ある。抱えていた強い感情の一部が膨らんで凶行に及ばすのを見てきた
アッシュ…凶行、か。まさしく、そのものだな
ルドガーこれまでの経験だと負の因子を破壊すれば、本来の自分を取り戻せると思う
ガイ本当か!光明が見えたな、アッシュ
アッシュ……
ルークそういや、負の因子を破壊ってどうすりゃいいんだ?
ルドガーおそらく…戦う必要がある。今までも説得してみたけど行動を止める事は出来なかったんだ
ルドガー仮説だけど、戦って消耗させる事が条件になっているんじゃないかな
ガイ…それじゃあ、ルークと戦う事は避けられないのか…
アッシュ負の因子とやらを破壊するのに戦う事が必要であればやるしかないだろう
ガイそりゃそうだが…俺はお前とルークの確執が深まらないかが心配なんだよ
アッシュ…くだらない心配をするな
ルーク二人の確執ってなんだ?ここじゃ、兄弟なんだろ?
アッシュ取るに足らん些細な事だ
ルドガーこの世界のルーク…。負の因子の持ち主の事は知っておきたい。もし何かあるなら教えてほしい
アッシュ…くだらん昔話にすぎんぞ
ルドガーああ、頼むよ
アッシュ…俺とルークは、ファブレ公爵家に生まれた双子の兄弟だ
アッシュ俺達は国王の甥にあたり、どちらかが王位を継承すると生まれた時から決められている
アッシュだから俺達は幼い頃から王位を継ぐに相応しい人間になるべく教育を受けて来た
ルークどっちが王位継承者になるか、揉めそうな話だな…
ガイそうならないようにって国王陛下もいろいろ考えてたんだけどな
ガイ俺は子どもの頃から二人とずっと一緒だったから細かく様子を聞かれたりしてたんだ
ガイ二人も、争うより協力しようって話していたしそのために切磋琢磨していた
ガイ…はずなのに、いつの間にか王位を巡って二人は争っている状態になっちまった
アッシュくだらん。俺は争っているつもりはない。あいつが勝手に暴走してやがるんだ
ルーク…でも、それは負の因子の影響があるからだろ?
アッシュどうだかな。今になって考えれば、ずっと昔から計画してたようにも思える
ルドガーそうなのか?
アッシュあいつは数年前から俺を避けていやがった
アッシュ話す機会もなくなったし何を考えてるのか、わからん
ガイだからって、アッシュを殺す計画を練っていたとは思えないぞ
アッシュだが実際、ルークは俺を殺しに来た。あいつの抱えていた感情がはっきりしたというわけだ
ルークそれは、負の因子が影響してるせいかもしれないだろ!?
アッシュ…どうだかな
ガイ結局、負の因子ってのを破壊してから本人に直接聞くしかない
ルドガー負の因子を破壊したいのは俺達も一緒だ
ルドガー利害は一致してるし、力を合わせないか?
アッシュ…そうだな。ルークを捕えるためにも人手がある方がいい
アッシュそれにナタリアの事もある。俺とガイだけでは手に余る事態だ
ガイ俺も賛成だ。よろしく頼むな
ルークあ~、よかった!これで、おまえらからは逃げなくてすむな
アッシュ元より、追う理由はなくなった。ルークが罪を白状した事でおまえの疑いも晴れたからな
ルークそういやそっか
ルークところで、そのルークって呼び方何とかならねぇかな。一瞬、俺の事かと思っちまうんだよ
ルドガー…確かに、これから一緒にルークを追うなら呼び分けた方がいいかもな
ガイ…とは言ってもどっちも全く同じ名前なんだよな。どうする?
アッシュ無理に呼び方を変えても混乱の元だ。どちらの事を言ってるかぐらい話の流れで理解しろ
ルークいや理解は出来るけど一瞬びっくりするんだって
アッシュ慣れろ
ルークはぁ…仕方ねぇか
ルークよし!負の因子を破壊して、二人が仲直り出来るように頑張ろうぜ!
アッシュ…待て。何を勘違いしている?
ルークん…?何がだ?
アッシュ俺の目的はルークを捕え、その罪を裁く事だ
アッシュ今更、良好な関係を築くつもりなどない
ルーク何でだよ。罪を裁くにしたって仲直りしてもいいだろ?
アッシュ…必要ない
アッシュ私情は邪魔になる。相手は国を揺るがす大罪人…厳格な処罰が必要だ
ルーク厳格な…って、まさか…
アッシュ極刑も、十分あり得るという事だ
ルークな、何とかならねえのか?実の弟なんだろ!?おまえだって嫌なはずだ!
アッシュ今言った通りだ
アッシュ弟の罪は、俺が責任を持って裁く。それが兄として出来る唯一の事だ
ルークぐっ…!ガイはどうなんだよ。止めなくていいのか?
ガイ…俺はアッシュの意志を尊重する
ルークガイもか…。ああもう…この世界の俺、何て事しでかしてんだよ…
アッシュ…これ以上、ごちゃごちゃ抜かすなら協力の話はなしだ
アッシュいざという時に邪魔されるかも知れないからな
ルークそんなつもりはねぇけどよ…
ルドガーアッシュ、君達の事情はわかった。君の覚悟についても
ルドガー俺達は、負の因子を破壊して、アッシュ達は、ルークを捕まえる。その目的さえ変わらないなら問題ない
ルドガーそれぞれの目的のために力を合わせよう
アッシュ…いいだろう。行くぞ
ルドガー行くって…ルークの居場所に目星がついてるのか?
アッシュああ。首謀者が俺の考える人物なら拠点は大体絞れる
ルドガー首謀者…!?
ルークそんな奴がいるのかよ!
アッシュおそらく…ルークが妄信する剣術の師…
アッシュキムラスカの騎士団長アレクセイ・ディノイアだ
帳の裏側
ルークはぁ…はぁ…ちっ、完全に見失った…
ルークぐっ…!くそっ…アッシュにやられたとこが…
ガサガサ…
ルーク…!誰だ!
ミュウご主人様!やっと見つけたですの!
ルークな、何だ、おまえは!魔物…チーグル族か!?何でしゃべれるんだ!?
ミュウ…あれ?髪が短い…服も違うですの…
ミュウあの、ご主人様…ですの?
ルーク気味悪ぃな、あっち行け!ご主人様なんて知らねぇ──
ルーク──っ!ぐっ…
ミュウどうしたんですの!?
ミュウあ!大変ですの!怪我してるですの!
ルーク寄るんじゃねえ!
バシッ!
ミュウみゅぅぅ!
ルークふんっ…
ミュウみゅうぅ…やっぱり…ご主人様じゃないですの…
ルークちっ…。一度先生のところに戻った方がよさそうだな…
ミュウあっ、待ってくださいですの!無理に動いたら傷が開きますの!
ルークうるせぇ。大声出すんじゃねぇよ。兵士達に見つかるだろうが
ミュウみゅ…追われてるですの?…何か悪い事したですの?
ルーク余計なお世話なんだよ。これ以上ごちゃごちゃ言うなら斬るぞ
チャキ
ミュウみゅうぅっ!ごめんなさいですのー!
ルーク…行ったか
ズリ…ズリ…
ルークはぁ…はぁ…
ルーク(くそっ…あいつの言う通り 動くと傷が…)
ルーク(何だこのぐらい…)
ルークぐぅっ…!駄目だ…痛ぇ…
ミュウあ、いたですの!
ルークおまえ…何で戻ってきやがった…
ミュウ薬草を採ってきたんですの!これ、傷口に貼ってくださいですの!
ルーク…おまえ…これを渡すために…?
ミュウあ、あの、これをお渡ししたらボクはすぐ行きますの。だから斬らないでほしいですの
ルークああ、そうしろ──
ルーク…ん?おまえ、よく見たら泥だらけの傷だらけじゃねえか
ミュウこれは、ちょっと転んだだけですの
ルーク…薬草を採ろうとして無理したんじゃねぇのかよ
ミュウみゅうぅ…
ミュウで、でも、これぐらい平気ですの!ボクの心配をしている場合じゃないですの!
ルーク……
ルーク…はぁ、わかった。貸せよ
ミュウはいですの!
ムギュッ
ミュウみゅ?
ルークそのままじっとしてろよ
ミュウあの…ボクの怪我に使うんじゃないですの
ルーク…いいんだよ。もらった薬草をどう使おうが、俺の勝手だろ
ルークこんだけありゃ、俺の分も十分足りる。おまえは大人しくしてろ
ミュウ…ありがとうですの
ルーク…これで少しすりゃ傷も治るか
ミュウあの…その傷、何があったんですの?
ルーク…見りゃわかんだろ。斬られたんだよ…兄貴にな
ルークだが、次こそは必ず俺があいつを殺してやる
ミュウこ、殺す…ですの!?そんなの、駄目ですの!
ルーク何も知らねぇくせに説教でもする気か?
ミュウみゅうう…ごめんなさいですの
ミュウでも、ボクを助けてくれた優しい人がお兄さんと殺し合いなんて…きっと辛いですの
ルーク…優しい人、か。嬉しくねぇ言葉だな
ルーク俺は情を捨てたんだ…。あいつと殺し合うと決めた時に
ミュウみゅう…仲直りは出来ないんですの?
ルーク命の取り合いはとっくに始まってる
ルーク…先生があいつの謀略を教えてくれなかったら俺は知らない内に殺されてた
ルークどっちかが消えるしかねぇんだよ
ミュウそんな…
ルーク…ったく、何を焦ってやがんだろうな
ルーク俺は出来が悪いんだから、放っておいても王位はあいつのもんだったのによ
ミュウ…本当はお兄さんと殺し合いなんてしたくないんですの…そういうお顔ですの…
ルーク…違う!俺は…!
???この声…ルーク、そこにいるのか?
ルークっ!この声は…先生!
ミュウルーク…?
ルークおまえなんかと一緒にいるところを見られたくねぇ。そこの茂みに隠れてろ!
ミュウえ…?
ルーク早く!絶対に出てくるなよ!
ミュウは、はいですの!
ガサガサ
アレクセイ…ここにいたのか、ルーク
ルーク先生…!
ミュウ(ルーク…って、やっぱりあの人、 この世界のご主人様ですの!)
ミュウ(…それに先生って… ヴァンさんとは違う人ですの…)
アレクセイ話し声が聞こえた気がしたが……一人か?
ルークはい
アレクセイ任せていた件はどうなった
ルークそれが…その…
アレクセイその怪我…返り討ちに遭ったか
ルークすみません…。せっかく、先生が期待して任せてくれたのに…
アレクセイ気に病む事はない。まだ機会はある
アレクセイおまえはまだ生きている。まだ剣を握り、アッシュに立ち向かえるだろう
アレクセイ諦めず何度でも戦うのだ
アレクセイそれとも…やはり兄に剣を向ける事は出来ないか?
ルークいえ…。今度こそ、必ず仕留めます
アレクセイ剣を交えてわかっただろう。アッシュはおまえを本気で殺すつもりだ
アレクセイあいつは欲に溺れている。自らの王位継承権を盤石にするためどんな手段でも使ってくるだろう
アレクセイもしかすると最初はおまえを殺す気などないような素振りを見せたのではないか?
ルークそういえば…確かに
アレクセイ奴の狡猾な手段だ。結果を見ろ。おまえは奴に斬られた
アレクセイ迷いがあってはアッシュに勝てない。おまえも非情になれ
アレクセイ……。おまえが斬れぬなら私がやろう
ルーク…いえ。今度こそ…必ず…アッシュを…この手で殺します!
ルーク俺を殺そうとした事、必ず後悔させてやる…!
アレクセイいいだろう。おまえ自身の手で決着を付け、国を背負う者としての覚悟を見せよ
ルークはい…!
ミュウ(だ、駄目ですの!)
アレクセイ拠点まで戻るぞ
ルークはい、先生
ミュウ(行っちゃうですの! 止めなきゃ…ですの!)
軋轢の始まり
ガイアレクセイ騎士団長…って、アッシュ、本気で言ってるのか?
ガイあの人が裏で糸を引いてるとなると一大事だぞ
ガイルークの不祥事どころじゃない。最悪、国を真っ二つに分けた抗争になりかねない
アッシュ…既に始まってる。アレクセイは戦争による国力増強を主張していただろう
アッシュ今回、ルーク達の行動によってシルヴァラントとの和平を望む俺達の親善活動が妨害された
アッシュそして親善大使となった俺を殺害しアレクセイを妄信するルークを王にしようとしている…
ガイ…確かに、全て騎士団長にとって優位に働く事ばかりだ…
ガイでも、仮にも騎士団長としてこんな行動に出るとは思えない
アッシュ俺もそう思っていたが…ルークを巻き込んでこんな事が出来る人物も、他にいないだろう
アッシュ…あいつは数年に渡って人との接触を自ら断っていた。剣の師であるアレクセイ以外とはな
ルーク剣の師…か
ルーク自分の師匠を信頼する気持ちはよくわかるんだけどよ…
ルークいくらなんでも実の兄を殺そうなんて思うか?
ルーク兄弟の絆ってのがどんなもんか俺にはわかんねぇけど、師弟の妄信を超えてるだろ
ルドガールーク…そうか、ヴァンの事…
ルークああ…。俺は師匠を信じて人さらいもやった
ルークでもそれは、騙されてたとはいえいい事だと思ったからやったんだ
ルークもし誰かを殺せって言われても絶対にやらないし、師匠が間違ってるなら剣も交えた
ルークだからこそ信じらんねぇんだ。師匠に言われただけで家族を殺そうとするなんてな
アッシュ何が言いたい。ルークが俺を殺しに来たのは事実だ
ルークそうだけどよ…!それは負の因子の影響ってやつだと思うんだ
ルークだから負の因子さえ破壊すりゃそのアレクセイって奴のいいようにはされねぇんじゃねぇかって
アッシュ…それはあくまでおまえの話だろう
ガイまぁ…ルークは騎士団長に依存している部分があるよな
アッシュアレクセイは人心掌握に長けた男だ
アッシュ負の因子の影響がなくてもルークを思い通りに動かす事は出来るだろう。妙な期待はするな
ルドガー…そうか。負の因子を壊しても、ルークが変わらない事を心配してるんだな…
アッシュアレクセイの言葉だけであいつが豹変したのなら、負の因子を破壊しても何も変わらん
ルークなぁ、そもそも、こっちの俺はどうしてそこまでアレクセイだけを妄信してんだ?
ルークアッシュだってずっと一緒にいたんだろ?何も言わなかったのかよ
アッシュ……
ガイさっきも言ったが、ルークは騎士団長以外とはまともに口を利かなかったんだ
ガイ俺やアッシュも含めてな…
ルドガー何か事情があったのか?
ガイきっかけはたぶん…あの時の事だ。アッシュ、話していいか?
アッシュ勝手にしろ
ガイわかった
ガイ…アッシュとルークは幼い頃から将来王位を継げるようにって、厳しく育てられてきたんだ
ガイ二人は、どちらが王になっても協力して国を背負っていくんだって誓いあったりしてな
アッシュ……
ガイ二人は何をやらせても優秀だったが剣術に関しては、ルークはアッシュになかなか勝てずにいた
ガイその様子を見てた騎士団長が、ルークが勝てないのは優しすぎるせいだと指摘したんだ
ガイ相手に強力な一撃を入れる事を迷ってほんの僅かに踏み込みが甘くなるんだと
ガイルークは騎士団長に頼み込んで猛特訓してもらってな。ついにアッシュに勝つ事が出来た
ガイそれがきっかけで、ルークは騎士団長を信頼し始めたんだ
ガイ何か困った事があるとアッシュや俺よりもまず騎士団長に相談したりしてな
ガイそれから少しずつ話す機会が減っていったんだ
ルーク待てよ。さっき、どっちが王になってもいいようにって言ってたよな
ルークなのにどうして、アッシュを殺して王位を奪おうなんて話になってんだよ
ガイ俺もそこが腑に落ちないんだ
ガイルークはアッシュに勝った時も、アッシュと肩を並べて国を守れるなんて喜んでたのに…
アッシュ…肩を並べて、か…
ガイだから、アッシュ。ルークの行動には負の因子の影響があると思うんだが…どうだ?
アッシュ……。確かにその可能性が高いと考えた方が全てに説明がつくな
アッシュあいつに負の因子が憑りついた事で変化が起きたなら、それを見逃すアレクセイじゃない
アッシュ上手く便乗して今回の計画を立てたんだろう
ルークつまり…負の因子の影響とアレクセイの計画、両方合わさって今の状況って事か
ガイそういう事になるな。少し複雑だが…
ルーク複雑でも関係ねぇ。原因が二つあるなら二つとも取り除けばいいんだ
ルーク負の因子もぶっ壊してアレクセイって奴もぶっ飛ばしてあいつの目を覚まさせてやる!
アッシュ闘志を燃やすのは勝手だが人質を取られていると動きづらい。まずナタリアの救出が先だ
アッシュアレクセイが首謀者だという裏付けも取る必要がある。まずは調査からだ
ルークお、おう。それで、調査ってのはどうやるんだ?
アッシュさっきも言ったが、奴らの居場所に心当たりがある
アッシュシルヴァラントとキムラスカの国境近くにある建物──かつて騎士団の駐屯施設だった場所だ
ガイそうか…!確か騎士団長が中心となっている強硬派の連中が密かに使ってた場所だ
アッシュああ。強硬派の動きを探った時に騎士団を使って武器や資材を運び込んでいる事が判明した
アッシュあの時は怪しい物も見つからず急を要する状況ではないと判断したが…
アッシュこの時のための拠点だった可能性がある
ガイこの森からそう遠くないし、行ってみる価値はありそうだ
アッシュああ。まずはそこを偵察するぞ
ルドガーわかった
ルーク待ってくれ、アッシュ。その建物ってこの森の外にあるのか?
アッシュああ。街道を挟んで内海側の別の森の中だ
ルークもう一人…いや一匹か。仲間がこの森ではぐれてんだけど見かけてねぇか?
ルークしゃべるチーグル族なんだけどよ
アッシュ…いや、見てないな。ガイはどうだ?
ガイ俺も見てない。捜しに行くか?
アッシュ捜すなら一旦別行動だ。人質を取られている以上、あまり時間をかけていられないからな
ルドガーミュウの事は心配だけど…どうする、ルーク?
ルーク……
ルークあいつなら…心配ないよな。悪い、大丈夫だ
ガイいいのか?
ルークああ。全部終わってから捜しに戻ってくりゃいいだろ
ガイわかった。その時は、俺達も捜すのを手伝うよ
ルークありがとな
アッシュ行くぞ
scene1罪と覚悟
アッシュあの建物だ
ルーク結構、でけぇな
アッシュ以前調査した時よりも見張りが多く厳重だ。何かあるのは間違いない
ルドガー正面突破は無理だな。どうする?
アッシュ誰かが敵の注意を引き付けて他の者で調査する
ガイ…あいつらの注意を引けるといえば…
アッシュ奴らの標的である俺か…ルーク、おまえだろうな
ルーク仕方ねーな。俺が行ってやるよ
ルーク敵の本命であるアッシュが行ったんじゃ囮の意味ねぇからな
アッシュわかった
ルークじゃあ、決まりだな。早速──
アッシュ…!待て、声を抑えろ
ルークえっ…?
ガサガサ
アッシュそこの茂みに誰かいるな。出てこい
ガサッ
ルークあ、おまえ…!
ミュウみゅうぅ…
ルドガーミュウ!?
ミュウあっ…!ルドガーさん!それに…
ルークブタザル!こんなとこまで来てたのかよ!
ミュウご主人様!会いたかったですのー!
ルークおわっ!くっつくなって!
ガイしゃべるチーグル…そいつがさっき言ってた仲間か?
ルークああ。ミュウって言うんだ
ミュウはじめまして…って、あれ?ガイさんと、アッシュさんですの
ルドガーこの世界のガイとアッシュだ。ミュウとは初対面だよ
ミュウそうでしたの。ミュウですの。よろしくお願いしますですの
アッシュ…ああ
ガイよろしくな。…ん?もしかしてそのリング…
ミュウはい、ソーサラーリングですの。これのお蔭でボクみなさんとおしゃべり出来るですの
ルークしゃべれるだけじゃねぇんだぜ。こいつ炎が吐けるんだけどリングの力ですげぇ火力を出せるんだ
ガイそりゃすげぇ
ガイ…ん?待てよ、炎か…
アッシュおい、そのぐらいにしろ。作戦通り、あそこに乗り込むぞ
ミュウみゅっ…!?みなさん、あそこに行くんですの?
ルークああ。何かあるのか?
ミュウボクは…あそこに入って行ったこの世界のルークさんを追って来たんですの
ルークなっ…!
アッシュおまえ、ルークに会ったのか
ミュウはいですの。でもあの建物に入って行って…ボク、怖くて近づけなかったんですの
ルドガーそれでこの辺りから遠巻きに様子を見てたのか
ミュウそうですの。…あっ、そういえば…
ミュウルークさん、先生っていう人とアッシュさんの事を話してたんですの
ミュウその…こ、殺す…って…
アッシュ…気を遣う必要はない。それはもうルークから直接言われている
アッシュそれにしても…先生…やはりアレクセイか
ガイミュウ。どんな話をしてたのか詳しく教えてくれるか?
ミュウはいですの
アッシュここで長話をするわけにもいかない。一度離れるぞ
scene2罪と覚悟
ミュウ…と、いうわけですの
ガイ何か、アレクセイの言い方だとまるでアッシュが先にルークを殺そうとしたみたいだな
アッシュおそらくルークはそう思い込まされているんだろう。アレクセイならそのぐらい造作もない
アッシュだが、そんな嘘に乗せられて大罪を犯すほど愚かだったとはな
ルークそんな言い方する事ねぇだろ。誤解があるってわかったんだ、ちゃんと説明すりゃいいじゃねぇか
アッシュ説明してどうなる。誤解がとけたところであいつの罪が消えるわけじゃない
ミュウでも…ルークさん、辛そうでしたのお話してあげたら、きっと喜ぶと思うですの
アッシュくどいぞ。この話は終わりだ
ルークいや、終わらせんじゃねぇ。ちゃんと向き合えよ
アッシュだから。今更あいつと向き合ったところでもう遅いと言ってるんだ
ルークなあ、おまえ何から逃げようとしてんだよ
アッシュ逃げる…だと?
ルークルークと本音で向き合うのが怖いのか?
アッシュ馬鹿を言うな。俺は何も恐れてなどいない!
ルーク俺の目を見て言えよ!
アッシュ……っ
ルークおまえは本当に…後悔しねぇのか?
アッシュ…うるせぇ。俺が後悔したら何だってんだ
アッシュこれは俺だけの問題じゃねぇ。あいつの気持ちはどうなる?
アッシュ誤解がとけるという事は信頼しているアレクセイと袂を分かつという事だ
アッシュそしてその後、和解した俺から断罪されるんだぞ
アッシュ…あいつは何回絶望すればいい?
ルーク…!おまえ…
アッシュそれだったら…アレクセイを信じ、俺を恨んだまま断罪される方がずっといいだろう
ガイアッシュ…そんな事を考えてたのか…
ルドガー…君の気持ちはわかった。でも、だからこそ俺はルークと話をしてほしいと思う
アッシュ…何故そこまで対話にこだわる。これは俺とルークの問題であって、おまえ達には関係のない話だろ
ルドガー…俺にも兄さんがいるんだ。だから…俺がルークの立場だったらって想像したんだよ
ルドガーすれ違ったまま…兄さんが俺をどう思って断罪するのかわからないなんて辛い
ルドガーアッシュからの言葉で今のルークの絶望を少しでも和らげられると思うんだ
アッシュ…………
アッシュ…ちっ。俺も腹を括るか
アッシュあいつには…言いたい事が山程ある
アッシュこれまで何も言ってこなかったのは俺が手を差し伸べる必要はないと思ってたからだ
アッシュだが、その結果…あいつはアレクセイから差し伸べられた手を取った…
ルークだったら、今からでもいい。ちゃんと話し合おうぜ
ルーク上手くいけば、殺し合いまではしなくて済むかも知れねぇだろ
アッシュ…そう上手く行くかはわからんが…
アッシュいいだろう。ルークに会ったら、全て話そう
ルークよし来た!じゃあ、二人が話せるように作戦を考えねぇとな!
アッシュいや…これは俺の個人的な問題だ。おまえ達が危険を冒してまで付き合う必要はない
ルークおいおい。今更、水臭い事言うなって!
ルドガーああ。乗りかかった舟だ。それにルークを説得するとなると負の因子の事も考えなきゃならない
ルドガー俺達にとっても重要な事なんだ
ガイ俺も、二人の幼馴染として最後まで見届けたいしな
アッシュわかった。…頼む
ガイ任せてくれ。で、その作戦だが…
ルーク俺が囮になるって話だったよな。一人で飛び出して行って見張りの気を引けばいいのか?
ガイそれなんだが、もしかすると誰も囮にならなくてもいいかもしれない
アッシュ何か考えがあるんだな
ガイああ。ちょっと試したい作戦がある。ミュウ、手伝ってくれるか?
ミュウみゅ…?
scene1強襲の騎士団長
アッシュ──では、今話した作戦で潜入する。成功するかどうかは、おまえ達の陽動にかかっている
ルークおう。任せとけって!
ルーク万が一、ガイとミュウの作戦に支障があったら、元の作戦通り、俺が囮になるぜ
アッシュわかった
アッシュ互いに隙を見つけて潜入した後、合流はせず、二手に分かれて拠点を調べるぞ
ガイ確か、中はかなり広いよな。入ってからの作戦は?
アッシュ第一の目的は人質の確保。ナタリアの安全を確保出来れば、格段に動きやすくなる
ルドガーナタリアはここにいる可能性が高いんだよな?
アッシュああ。奴らの拠点の数と位置を考えるとここが一番適している
アッシュそれにあの警備の数…ナタリアがここにいる前提で行動した方がいいだろう
アッシュ…他に確認しておく事はないな?敵拠点に近づいたら速やかに作戦を開始する
ルドガーああ、もう大丈夫だ
アッシュ行くぞ
scene2強襲の騎士団長
警備兵1…はぁ、暇だな。こんな場所、誰も来ねぇだろうに警備なんて必要か?
警備兵2おい、口を慎めよ。騎士団長に聞こえるぞ
警備兵1聞こえてもどうって事ねぇさ。俺はただの傭兵で、奴に忠誠を誓ってるわけじゃねぇからな
警備兵2だったら、どうしてここにいるんだ
警備兵1この計画が成功して戦争が始まりゃいい金になるからな
警備兵2それなら尚更、口に気を付けた方がいいぞ。あの方の逆鱗に触れでもしたら──
ガサガサ…
警備兵2む、何だ…!?
警備兵1…見ろ!あそこの茂み、動いてないか!?こっちに来るぞ!
警備兵2動く茂みなんてあるか!魔物じゃないのか?
魔物?がおおおおおっ!…ですの
警備兵2やはり魔物か!
ルークうまく騙されてるみてぇだな。ミュウにそこらの枝をかぶせて大きくしただけなのによ
ガイ問題なさそうだな。よし、次の段階に行こう
ルークわかった。ミュウに合図を送るぜ
ミュウ(…ご主人様が手を上げたですの。 合図ですの!)
ミュウがおお、がおおおおっ!…ですの
ボボボボォォォッ!
警備兵1うわっ、あちっ!こいつ、火を噴くのか!?
ボボォ!ボボボォ!
警備兵2こいつ、手当たり次第に…!
タッタッタッタッ…
警備兵3何の騒ぎ──なっ…!?何だこの巨大な魔物は…!
警備兵4しかも火を噴いてる!?燃え移ったら一大事だ!
警備兵2はい!すぐ騎士団長に報告を…
警備兵4そんな暇はない!すぐに討伐するぞ!
ルーク入口の方にいた警備兵もこっちに来たぞ!
ガイアッシュ達が入って行くのが見えた。作戦成功だな
ルークよし、仕上げだ、ミュウ
ミュウ(…ご主人様から合図ですの。 作戦成功ですの。 あとは…)
ミュウがおおおおおおっ!…ですの
ガサガサガサ…
警備兵3逃げるぞ!
警備兵4森が燃やされては困る!追いかけて仕留めるぞ!
警備兵2はい!
警備兵1行くぜ!
ルークあいつやるなぁ
ガイ手筈通り、警備兵を誘導して戻って来られたらいいけど…
ミュウはぁ、はぁ…お待たせしましたですの!
ルークお。上手く逃げて来たみたいだな
ミュウはいですの。ガイさんが用意した枝の魔物相手に戦いを挑もうとしていたですの
ガイひとまず警備兵は引き離せたな。とはいえ、はりぼての魔物だから、気付かれるのも時間の問題だろう
ルークだな。今の内に移動しちまおうぜ
ガイああ。そこの裏口から中に入ろう
ガイ…さて、入ったはいいが思ってたより広いな。どこから探すべきか…
ミュウナタリアさん、どこにいるんですの…?
コッコッコッ…
ルークしっ…足音だ。誰か来るぞ
ガイ…!そこの資材の影に身を隠すんだ
警備兵5……
ルークあいつ、食事を運んでるみてぇだな
ガイ食堂があるにも関わらず、わざわざ食事を運び出してるのか…?
ルーク誰かのために運んでる…って事は、ナタリア用か?
ガイ…その可能性は高いな。後をつけてみよう
警備兵5姫様の食事を持って来たぞ
警備兵6わかった。今開ける
ルーク(姫様…って事は…)
ガチャ
警備兵5姫、お食事です
???…必要ないですわ
ルーク今の声…ナタリアだ
ガイああ、間違いない。行こう
警備兵5召し上がってください、姫。もし体調を崩されては困りますから…
ナタリア私の体調を気にするなら、早く縄を解いて、帰しなさい
警備兵6それは──
???ああ、すぐに帰してやるぜ
警備兵6…!誰だ!
ドゴッ
警備兵6うっ…
バタン
警備兵5し、侵入者──!?
ガイはぁっ!
バキッ
ナタリアルーク!ガイ!
ガイ無事か?
ナタリアええ、大丈夫ですわ
ルーク…よかった。待ってろ、今縄を切るからな
ブチブチ…
ルークこれでよし
ナタリアふう…助かりましたわ
ナタリア…ルーク、嬉しいですわ。最近こもりがちだったあなたがこうして助けに来てくれるなんて…
ルークあー…俺はおまえの知ってるルークじゃねぇんだ
ガイ…信じられないだろうけど、こいつは、別の世界のルーク・フォン・ファブレなんだよ
ナタリア別の世界…?
ガイ説明は後だ。とにかくここを離れよう
ナタリアわかりましたわ
ナタリア…では、こちらのルークは別の世界にいるルークなのですね
ガイ理解が早くて助かるぜ
ガイなあ、ナタリア。最後にルークと会ったのっていつだ?
ナタリア…かなり前ですわ。少なくともアッシュが親善大使として国を発つよりは前でしたもの
ナタリアどうして今そんな事を聞くんですの?まさか、ルークに何か…?
ガイ何かあった…というか…実はナタリアの誘拐にあいつも関与しているんだ
ナタリアそんな…!どうして…!?
ガイアッシュの読みでは首謀者はアレクセイ騎士団長だ。だからルークも言いなりに…
ナタリアアレクセイが?本当ですの?
???勝手に出歩かれては困ります。ナタリア姫
ナタリア…!
ルーク誰だ!
ミュウあっ、この人…
ガイアレクセイ…騎士団長!
アレクセイ外で妙な魔物が出たと報告を受けて念のために見に来たが…嫌な予感ほどよく当たる
ルークおまえが全ての元凶か!よくも、のこのこ出てきやがったな!
アレクセイ…おまえがもう一人のルークか。ルークから話は聞いている
アレクセイまさに瓜二つだな。利用価値がありそうだ
ルーク何…!?
ナタリアその言い方…罪を認めるのですね
アレクセイこの期に及んで弁解など意味を持ちますまい
アレクセイ全てを知られてしまった以上、始末するほか道はありません
ナタリア何ですって…?
ガイ一国の王女に手をかけるっていうのか…!
アレクセイ騎士団が守るべきは国。我が国をより豊かにするためなら王女とて斬るのみ
アレクセイそれに…表向き、犯人はおまえ達という事になる
アレクセイ我々騎士団による救出作戦も空しく王女はおまえ達の凶刃に倒れてしまわれたという筋書きだ
ルーク好き勝手言いやがって…
ナタリアあなたの好きにはさせませんわ!
ガイああ。いくら騎士団長と言えど三対一ではどうにもならないだろ
ルークおまえの事は許せねぇと思ってたんだ…
ルークあいつはおまえを信じてるんだ、そんな奴の気持ちを弄びやがって…俺が代わりにぶっ飛ばしてやる!
アレクセイ威勢のいい連中だ。口だけでないといいがな
ルーク…ミュウ。先に行って、ナタリアを助けた事アッシュ達に伝えてくれ
ミュウは、はいですの!
アレクセイ行かせると思うか?
チャキ
ルークおらぁっ!
ガキィン!
アレクセイ…中々やるようだな
ルーク今だ、行け!ミュウ!
ミュウはいですのー!
アレクセイ一匹逃がしたか。…まあいい
ガンッ
ルークくっ…!
ガイルーク!
アレクセイ覚悟は出来ているのだろうな。我が力…その身をもって思い知るがいい
scene3強襲の騎士団長
ガキィン──!
ガイくっ…!
ナタリアさすがは騎士団長…強いですわね
ルークやっぱ一筋縄ではいかねぇな
アレクセイふっ…思いの他やるようだな
ルーク(…こいつの戦い方、 何か違和感がある…)
ルーク(手加減されてるような… まさか…時間を稼いでる? でも、何のために…)
ルーク…!そうか!
ルークガイ、ナタリア!聞いてくれ!
ガイ何だ、こんな時に…!
アレクセイふ、構わん。作戦会議が必要ならするがいい。戦局は何も変わらんがな
ルーク(やっぱりだ…。 あいつは時間を稼ぎたがってる)
ルーク…いいか。よく聞いてくれ──
scene1果たせない誓い
アッシュ…首尾よく潜入出来たな
ルドガー広いとは聞いていたが、想像以上だな。…調べるのは骨が折れそうだ
アッシュ手分けするぞ。おまえは向こう端から頼む
ルドガーわかった。何かあれば合図を出すよ
ルドガー…アッシュ、一つだけ確認しておきたいんだ
アッシュ何だ
ルドガー人質救出より先にルークに会ったらどうする?
アッシュ状況による。話せる機会があれば様子を確認する
アッシュ負の因子とやらの影響がどの程度か見極めねぇと話が通じるかどうか判断出来ん
アッシュ話し合いが無理だと少しでも感じたら実力行使だ。長々と説得する余裕はないからな
ルドガーそうか…わかった。…ルークと話せるといいな
アッシュ…ああ。行くぞ
ルドガー(…この部屋にも何もない…か。 資材や武器を置いている部屋が 多いな…)
ルドガー(次は…)
ルドガー(人の気配が…)
ルドガー(…! あれは…!)
アッシュ…ルークはこの中か
ルドガーああ。見た限りでは、一人のようだ
アッシュ話をするにはおあつらえ向きか…
アッシュ…俺が入って話す。外で何か問題があれば、知らせてくれ
ルドガーわかった。…上手く行くよう祈ってる
アッシュ…ああ
ガチャ
アッシュ…ルーク
ルークアッシュ!どうしてここに…?
アッシュケリを付けに来た。…おまえが俺に聞きたいのはそんな事なのか?
ルーク……
ルーク…どうして裏切ったんだ。二人で国を背負おうってこの剣に誓ったのに…
アッシュ誤解だ。俺は裏切ってなど──
ルーク嘘をつくな!
ルーク隠したって無駄だぜ。おまえ、俺を消すためにいろいろ根回ししてたんだろ
ルーク全部、先生から聞いてるよ
アッシュ俺の言葉には聞く耳も持たねぇ癖にアレクセイの言葉は信じるのか
ルークうるせぇ!
ルークおまえは、俺が邪魔なんだろ。わかるんだ
ルーク俺も、おまえが憎くて憎くて邪魔で仕方ねぇ。絶対に許せねぇんだ
ルークこそこそと人を消して王になろうとする、おまえみたいな屑に国は任せらんねぇ!
ルークおまえを殺して、俺が王になる。これが俺の選んだ道だ!
アッシュ…ルーク。それは本当に、国のためなのか。ただの俺への憎しみじゃないのか
ルークおまえを憎む事が!おまえを王にさせない事が!国のためになるんだ!
アッシュ…話にならんな。これも、負の因子の影響ってやつか
ルーク剣を抜けよ、アッシュ
チャキ
ルーク今ここで、息の根を止めてやる!
ヒュンッ
ガキィィン!
アッシュちっ…!目を覚ましやがれ!
ドカッ
バゴォンッ!
アッシュくっ…!
ルドガーアッシュ…!大丈夫か!?
ルーク仲間もいたのか
警備兵の声何の騒ぎだ!?
アッシュちっ、邪魔な奴らが集まって来そうだな
ルドガーどうする。一度態勢を立て直すか?
アッシュいや…ここで退くわけにはいかねぇ
ルドガーわかった。警備兵は俺が相手する
アッシュ任せた
ルーク…今度は逃げねぇんだな
アッシュおまえと向き合うと決めたからな
scene2果たせない誓い
ルドガーはぁっ!
ドカッ
警備兵7ぐっ…
ドサッ
警備兵8おのれ!大人しくしろ!
ルドガーくっ…次から次へと…!
アッシュはっ!
キィン!
アッシュ…今のも弾くか。腕を上げたな
ルーク当たり前だ。おまえに勝ったあの日から二度と負けねぇように鍛えて来たんだ
ルークなのに…何だ、その戦い方は!おまえはそんなもんじゃねぇはずだろ!
キィン!
アッシュ…ふん。俺の心配をする余裕まであるとはな
ミュウ見つけたですの!ルドガーさん!アッシュさん!
ルドガーミュウ!
ルークあいつ…あの時の…
ミュウナタリアさんを見つけて救出しましたの!
ルークちっ…警備の奴らは何してやがんだ
アッシュそうか…。
チャキ
アッシュもう手加減はしねぇ
ルーク本気で来い、アッシュ!それでも俺の方が強いって事を見せてやる!
scene3果たせない誓い
ルークぐぅっ…!さすがだな…!
ルークだが、まだ…!
アッシュおまえは強くなった。…だからこそ残念だ
ドカッ
ルークぐあぁぁっ!
ガタガタガタ
ルーク残念…だって…?それは…こっちの台詞だぜ…
アッシュ…何?
ルークおまえに俺を殺す事は出来ねぇ。偽親善大使の犯人として、差し出す必要があるもんな?
アッシュ……
ルークその顔、図星ってわけだ。この状況でまだ俺を捕らえられるって?
ルーク笑わせんな!
ルーク相手を殺す覚悟のねぇ奴に俺は負けたりしねぇ!!
ガキィン!
アッシュくっ…おまえ…まだこんな力が…
ルーク俺は!自分だけの居場所を手に入れるんだ!!
ルークそのためには、おまえが邪魔だ!
アッシュこの…
???ふざけるな!
ガイおまえの居場所はアッシュの隣じゃなかったのかよ!
ルークなっ…!
アッシュはあっ!
ガキィンッ
ルークしまっ…
ナタリアアッシュ!無事ですの!?
アッシュああ、問題ない
ルドガー二人共、無事でよかった。…ルークは一緒じゃないのか?
ガイ…アレクセイと戦ってたんだが警備兵に囲まれそうだからって俺達だけ先に逃がしてくれたんだ
ナタリア私やガイが捕まって人質になったらアッシュが戦いにくいからと…
ミュウご主人様…ボクにもアッシュさんのために先に行けって…心配ですの
アッシュふん…ルークの奴…余計な気を回しやがって
ルークルーク、ルークって…
ルーク俺の事は消そうとしたくせにあいつとは手を取り合って仲良しごっこか?
ナタリアルーク…
ルーク…なあ、ナタリア。どうして大人しくしててくれないんだ
ルーク先生から言われてるんだ。逃がすぐらいなら…口を封じなくちゃいけないって
ナタリア本気ですの…?
ルーク俺はやらなきゃならねぇんだ!
ルーク邪魔をする奴は誰だろうと斬る!相手が誰であろうと関係ねぇ!
???いい心掛けだ、ルーク
アッシュ…!おまえは…
アレクセイ私も加勢しよう
scene1交わる剣
ルーク先生!
ガイ騎士団長がここにいるって事は…ルークは…!?
アレクセイ今頃、私の部下が捕えているだろうな
ミュウそんな…!ご主人様を助けるですの!
ルドガーミュウ!アッシュ、俺もルークのところへ行く。ここは任せていいか
アッシュああ、こっちは気にするな
ルドガーすまない!
ナタリアもう一人のルークを捕らえて手駒としての利用を企むなど、どこまでも下劣ですわね
アレクセイキムラスカの発展のためになるならどのような汚名も我が誉れです
アッシュキムラスカの発展だと?笑わせるな
アッシュシルヴァラントとの親交を妨げ、王家を転覆させようとする者が国の未来を語るんじゃねぇ!
アレクセイ解釈の相違だな。王家など、ただの象徴にすぎん。国民が納得さえすればルークで十分だ
アレクセイシルヴァラントとの親交も国の発展を想えば必要のない事
アレクセイ対等な和睦を結ぶより実力で支配してしまった方が富国強兵に繋がる事は明白だ
アッシュだが多くの血が流れる事になる
アレクセイそう。おまえや王は手を汚す事を嫌って親睦策を進めて来た
アレクセイだが私は、国のために手を汚す事を厭わない。大義のためなら罪を背負おう
ガイこんな事に大義なんてあるかよ!
アレクセイ綺麗事の中にしか大義を見出せぬ者にはわからんだろうな
ナタリア詭弁ですわ。そんな事に民がついて来ると思っていますの?
アレクセイ私について来る必要はない。私が豊かにした国を治めるのはここにいるルークだ
ルーク…わかっただろ、アッシュ。先生は俺を王として認めてくれてるんだ
ルーク俺は先生や民の期待に応えられる立派な王になってやる。おまえなんていなくてもな!
アッシュ何でわからねぇんだ、ルーク
アッシュおまえを必要としてるのはアレクセイだけじゃない
アッシュ俺が王になった時、おまえが一緒に国を背負ってくれるんじゃなかったのか
ルーク今さら何言ってんだ。親善大使として供にガイを連れて出たのだって、俺は不要だと知らしめるためだろ
アッシュ…そう吹き込まれていたのか
ガイ誤解だ、ルーク!あの時、アッシュはおまえを連れて出ようとしてたんだぞ
ルーク嘘をつくな!
ナタリアその話は私も聞いています。本当ですわよ!
アレクセイ…ルーク。私か奴ら、どちらの言葉を信じるかはおまえの自由だ
アレクセイだが、何が真実であれ今、この状況でやるべき事は変わらないのではないか?
ルーク…そうだ。もう、過去の約束なんて関係ねぇ
ルーク話は終わりだ!全員まとめて殺してやる!
チャキ
アッシュちっ…結局こうなるのか…!
ルークはぁ…はぁ…あいつの部下は何人いやがんだ。いくらぶっ飛ばしても減らねぇ
ルークいい加減、そこを通しやがれ!
警備兵9アレクセイ様の命だ!行かせるわけにはいかん!
警備兵10この数に囲まれてるんだ、おまえこそ観念しろ!
ルーク何人に囲まれようと、全員ぶっ飛ばしてやるだけだ!
警備兵11奴は疲れてきてる。仕上げだ、全員一斉に──
ドカッ
警備兵11ぐあっ…
ドサッ
警備兵10何だ、おまえは!
ルドガールーク、無事か!
ミュウご主人様!助けに来たですの!
ルークおまえら!へっ、俺は一人でも平気だったのによ
ルーク…って言いたいとこだけど、正直、助かったぜ。ありがとな
警備兵9報告にあった侵入者か!
警備兵12一人増えたところで同じだ!全員捕えるぞ!
ルーク一人と一匹だ!それに同じなんてとんでもねぇ
ルークこれで百人力だぜ!
ルドガーここを切り抜けてみんなのところに戻ろう!
ルークああ!
アッシュはぁっ!
ガキィン!
ルークぐっ!
ナタリア今ですわ…!はっ!
ヒュンヒュン
キン、キン
ナタリアそんな…二本とも…!
ガイこれならどうだ!秋沙雨!
アレクセイ遅い
キンキキキキキキン…!
ガイ全部受け止めるって…化け物かよ
ルーク隙だらけだな!空破絶風撃!
バシュッ
ガイくっ、かすった…!
ナタリアやはり、手ごわいですわね
ガイああ。息が合ってる。師弟だけあってお互いの戦い方を熟知してるな
アッシュそれだけじゃない。ルークは大胆な攻撃をするようになった
アッシュアレクセイに背中を預けられるという信頼があってこそだ…
ルークしゃべってる暇があんのか。俺と先生の連携に、おまえらが勝てるはずねぇんだよ!
ガキン!
アッシュ…ちっ、てめぇ──
???連携が何だってんだ!だりゃぁっ!
ルークなっ…!
ガキィン!
ルークおまえは…!
ルドガーみんな、大丈夫か!?
ガイルーク、ルドガー!ミュウも!無事だったんだな!
ミュウはいですの!
アレクセイ…使えん部下共だ。足止めすら出来ないとは
ルーク何人増えようと同じだ、邪魔する奴は斬る!
ルーク同じ顔はいらねぇ…俺は、俺だけで十分だ!
アレクセイそうだ。もう一人のルークには利用価値があるが、元より計画にはいない存在…
アレクセイ殺したところでどうにでもなる
ルーク好き勝手言いやがって。こっちだって、おまえらまとめてぶっ飛ばさねぇと気が済まねぇんだ!
アッシュここで方を付けるぞ!
アレクセイ来るがいい。この戦いが、私の理想の礎となるのだ!
scene2交わる剣
ルークぐっ…俺は…まだ…
アッシュもういいだろう、ルーク。いい加減、俺と…そして自分自身と向き合う覚悟を決めろ
ルーク俺は…何も間違ってねぇ…!苦しくて辛くて…足掻いて…やっと見つけた道なんだ!
ルーク間違ってたって言うんなら…
ルークじゃあ俺はどうすればよかったんだ!教えてくれよ!!
アッシュ情けねぇ。持ち主が腑抜けじゃ、誓いの剣が泣いてるな
ルーク剣が…誓いが何だってんだ!こんなもの…!
アッシュこの剣に恥じるような事してんじゃねぇ…この屑が!!
バキィッ
ルークうぅっ…!
ルークなぁ、アッシュ…王様になれなかった方は大人になったらどうなるんだろうな?
アッシュわかんねぇが、好きなもんになりゃいいだろ
ルークだったら俺は…王様を支える騎士になりてぇな。アッシュは?
アッシュ…俺も似たようなもんだ
アッシュなぁ、どっちが王になっても、俺達は二人で国を背負おう
ルーク一緒に王様をやるって事か?
アッシュ王は一人だ。だが、王の誇りは二人で持てる
アッシュ二人、肩を並べて対等の関係で国のために生きるんだ
ルークへへ、いいな!じゃあ、この剣に誓おうぜ!せっかくお揃いなんだし
アッシュ伯父上からいただいた双子の剣か。ああ、ちょうどいい
ルーク決まりだな。じゃあ、剣先を合わせて…
アッシュ…こうか
チャキン
ルーク俺は誓う。いかなる時も王者の誇りを持ち力を合わせて国を背負う
アッシュ俺も誓おう。どれだけ時が経とうと、俺達は肩を並べ、国を守る
ルーク…ごめん…アッシュ…
ドサッ
アッシュ…!
アッシュ…何だ、今のは…
ルドガー負の因子が壊れたんだ…!
ルークじゃ、これで元に戻るのか!?
ルドガーそのはずだけど、あとは目が覚めるのを待つしかない
アッシュなら、他の事を片付けるぞ
ガイそうだな。他の奴らが起きる前に縛っておかないと
ナタリアそれなら地下室の縄を使うといいですわ
ルドガーそれじゃあ、手分けして拘束していこう
兄として
ルーク…う…ここは…?
ルークん…?
ギシッ
ルーク俺、縛られて…
ルーク…ああ、そうか俺…何て事を…
アッシュ…気分はどうだ、ルーク
ルークアッシュ…。何だか長い事、悪い夢を見てたみたいだ
ルーク…俺、またおまえに負けたんだな
アッシュ…ああ
ルーク話したい事がたくさんあるんだ…でも…何を話せばいいのか…わからない
ルークただ…謝っても済まない事をたくさんしちまったのはわかってる
アッシュ……
アッシュ…何から話すべきだろうな
アッシュ我ながら情けない事だ。おまえと向き合うと決めておきながらいざとなると言葉が出ない
ルーク…俺は…こんな言葉で済むとは思ってねぇけど…
ルーク悪かった、アッシュ。全部…俺が弱かったせいだ
ルーク少し考えれば、先生の言ってた事がおかしいって…わかったはずなんだ
アッシュ…気付いていたのか
ルーク…ああ。でも、何も考えられなかった。おまえへの憎しみで頭がいっぱいで…
アッシュ…………
アッシュ…わかっているようだが
アッシュ俺は、おまえを殺そうなんてしていない。不要だと思った事もない
アッシュおまえと二人、肩を並べて国を支えていくと誓ったあの日から俺の気持ちは変わっちゃいない
ルークそんなの、俺だって…!なのに、どうしてこんな事になっちまったんだろうな…
アッシュ…その憎しみの原因は、負の因子ってやつらしい
ルーク負の因子…?
アッシュああ。俺も詳しくは知らないが性格が変わっちまうものらしい
アッシュそいつを壊したから今こうして話が出来ているんだろう
ルーク──『負の因子は道標』
アッシュ…何だ、それは
ルークずっと前に、変な男と会ってそう言われたんだ
ルーク意味わかんなかったけど、何でか忘れられなくて
アッシュ…ルドガーなら何か知っているかもしれないな
ルーク…でも、関係ねぇんだ。負の因子ってやつのせいで憎しみが芽生えたんだとしても…
ルークその憎しみで行動に移しちまったのは、俺だ
ルーク…アッシュ。俺の首をシルヴァラントに差し出してくれ
アッシュ……
ルークおまえは親善大使としてシルヴァラントとの親交を取り戻す必要がある
ルークおまえのために出来る事はもうこれしか残ってない
アッシュ…それでいいのか
ルークああ
アッシュ……
アッシュ…わかった
アッシュルーク、ひとつ言っておく
アッシュおまえは大罪人だ。国葬もされないだろう
アッシュ国民から、世界中から、罵倒されるかも知れん
アッシュだが…俺にとっては…
アッシュ…自慢の弟だ
ルーク…ありがとう、アッシュ。それが聞けただけで、満足だ
ガチャ
ガイ話は終わったのか?
アッシュ…ああ
ナタリアルークの事…これからどうするんですの?
アッシュ…まず国に連れて帰り、伯父上に全てを報告する
アッシュおそらく、シルヴァラントに引き渡すという事になるだろう。本人もそれを希望している
ナタリアそんな…
ガイやっぱり…そうなるよな…
アッシュああ…
ルークなぁそれって、シルヴァラントの王に斬りかかった犯人が裁きを受ければいいって事だろ?
アッシュその通りだが…何がいいたい?
ルーク名案を思いついたんだよ。シルヴァラントも納得出来てこっちの俺も助かる方法だ
アッシュ…何?
ガイそんな方法があるのか…!?
ルークああ!超名案、聞いて驚くなよ!それは…
ルーク俺が犯人になる事だ!
紡ぐ未来
インゴベルト六世…そのような事件が起こっておったとはな
アッシュ俺も想定外でした
インゴベルト六世うむ…。しかし、偽者のルークとは敵も考えたものよ
アッシュ偽の親善大使として俺を失脚させ同時にルークをも陥れる…実に巧妙な計画でした
インゴベルト六世しかしルークはそれを暴き、おまえと共に犯人を捕らえた
インゴベルト六世このところのあやつには目に余る物があったが…見直さねばならんようだな
アッシュはい。それについては本人も反省しこれからを見ていてほしいと申しております
インゴベルト六世わかった。期待しておると伝えよ
アッシュはい
ガイさすがアッシュ。王様相手に嘘ついて汗一つかいてないとはな
ナタリアまあ、ガイ。それではまるでアッシュが大嘘つきみたいですわ
アッシュ…大嘘つきには違いない
ルークでも…本当にこれでよかったのか…?あいつらは牢に入れられたんだろ?
アッシュ問題ないだろう。本人がいいと言ったんだからな
ルーク超名案、聞いて驚くなよ!それは…
ルーク俺が犯人になる事だ!
ガイおまえが犯人に…?身代わりにでもなるってのか?
ルークまぁ、そんなとこだな
アッシュわかって言ってるのか?処刑される事になるんだぞ
ルーク俺は殺されねぇよ。ただ、この世界から消えてなくなるだけだ
アッシュこの世界から…消える?
アッシュ…そうか。別の世界から来たおまえ達なら元の世界に戻れば済むという事か
ルークそういう事。これにはルドガーの力が必要なんだけどな
ルドガーなるほどな
ガイそんな簡単に戻れるものなのか?
ルドガー元の世界に戻る時空の裂け目は俺とアッシュが接触すれば出現するはずなんだ
アッシュ俺が?
ルドガーああ。ルークの負の因子が壊れた時、アッシュに何か宿らなかったか?
アッシュ…そういえば、あったな。あれは何だ?
ルドガーごめん…詳しくはわかってないんだ。ただ…ある人は、あれの事を道標と呼んでいた
ルドガーそしてこれまでは、あれが宿った人と俺が触れる事で元の世界に戻れていたんだ
アッシュ…つまり、俺とおまえが揃えばこの世界から離脱出来るんだな
ルドガーああ
アッシュ…ルドガーの言う通り、あいつに触れたら、時空の裂け目とやらが出現した
アッシュ裂け目を観測して出現の法則性もわかったしな
アッシュ後はその時空の裂け目を使ってあいつらを上手く逃がしてやれば今回の件は終わりだ
ルーク…いいのかな。先生は牢に入ってるのに俺だけ無罪放免なんて…
ガイ騎士団長──じゃなかった。元騎士団長は、さすがに野放しには出来ないからな
アッシュだが、偽ルークに騙されていた事になっている。本来の罪よりも、よほど軽い
アッシュもしおまえが気が咎めるからと真実を話せば、二人共、処刑という事もあり得る
ルークそれはそうだけど…アッシュらしくないな
アッシュ「自分と向き合え」…そう言われたからな
アッシュそれに、親善大使としても、この嘘は悪くないと思っている
アッシュシルヴァラントや諸外国から見たキムラスカの印象が変わってくるからな
ナタリア確かに…騎士団長と王位継承候補者が結託したとなると、国の威信に関わりますわ
ナタリア国内に不穏分子を抱えているとなればまた何か事件を起こす可能性を孕んでいるように感じますし…
ナタリアその点、偽ルークという一人の悪党が騎士団長を騙して起こした事件なら犯人さえ捕まれば解決ですわね
アッシュそういう事だ。この方が各国と良好な関係を築きやすい
ガイ問題は、現実は不穏分子を抱えたままだって事だけどな。強硬派はまだいるだろ?
アッシュその事については考えがある。ついて来てくれ
ガイどこへ行くんだ?
アッシュ地下牢だ
アッシュ…気分はどうだ、アレクセイ
アレクセイ……。このようなところにお揃いで…王女殿下までお越しとは光栄ですな
ナタリア皮肉を言う元気がおありのようで安心しましたわ
ガイまぁ落ち込んでるとも思ってなかったけどな
ルーク先生…俺…
アレクセイ私はもう先生ではない。ただの罪人だ
ルーク…………
アレクセイ…それで、何をしに来た。事実を随分と捻じ曲げているようだが
アッシュああ。察しのいいおまえの事だ、どういう話になっているかはわかっているだろう
アレクセイ全ての罪をあのもう一人のルークに背負わせるのだろう
アレクセイ私がおまえにやろうとしていた計画と同じだ
アッシュ口裏を合わせろ。そうすればおまえは、ただの騙されていた被害者だ
アッシュ情状酌量の余地ありとなれば、騎士団長の肩書きを失うだけで済む
アレクセイ…甘いな。おまえも
アッシュ……
アレクセイ二人共、非情となれ。これは強硬派、穏健派などという話ではない
アレクセイ真に国を思うなら、情に流されず大局的に物事を判断するべきなのだ
アッシュアレクセイ。おまえが国を想う気持ちは本物のようだな
アレクセイ当然だ。大義もなくあのような事はしない
アッシュわかった。その大義を信じよう。アレクセイ、おまえの力を借りたい
アレクセイ何…?
アッシュ強硬派をただ排除するのではなく意見の一つとして耳を傾けるべきだと俺達は思っている
アッシュだが、なかなか意見が通らないからと今回のような事件を繰り返されても困る
ルーク先生が連れて来た傭兵の中には戦争さえ出来ればいいって奴もいました
ルークもしそんな奴らが強硬派の実権を握ればこの国は大変な事になりかねない…
ルークだから先生はここから釈放されたら強硬派をまとめあげて暴走しないようにしてほしいんです
アレクセイ…なるほど。今度は強硬派で獅子身中の虫になれと言うわけか
アッシュ裏切れと言っているわけではない。それに断っても構わん。これは命令ではなく依頼だ
アレクセイ…いいだろう
アレクセイアッシュ、ルーク。おまえ達が作り上げていく国、しかとこの目で見させてもらうぞ
ガイ…なるほど。まさか不穏分子を不穏でなくならせるとはな
ナタリア一筋縄ではいかないでしょうけどアッシュとルークならいい国にしてくれそうですわね
アッシュ他人事だな。その国の王妃になるのはおまえなんだぞ
ナタリアわかっています。私、今日ほどその事を誇らしく思った事はありませんもの
アッシュ…そうか
ガイあとは、ルーク達を元の世界に帰せば、万事解決だな
アッシュその件も、もう動いている。ゼロスが協力してくれるそうだ
ルーク今日で何日目だ?いつまでここに閉じ込めとくつもりなんだよ
ルドガーいろいろと根回しも必要だろうから時間がかかるんだろうな
ミュウボク達、このまま処刑されたりはしないですの…?
ルーク縁起でもねぇ事言うんじゃねぇ。さすがにその心配はねぇよ
コツコツコツ…
ミュウ誰か来ましたの…
看守迎えが来た。出ろ
ルーク迎え…?
ゼロスよう。おまえが、もう一人のルークか
ルドガーなっ…!
ルークゼロス!?
ゼロス俺さまの事、知ってんのか?いや、アッシュの話からすると別世界の俺さまと知り合い…か
ルーク別世界…って、俺達の事、聞いてるのか?
ゼロスああ。全部聞いてるぜ。まぁ、ここだと他の兵士もいるからあんまり話してらんねぇけど
ルドガーさっき迎えが来たって言われたけどどういう事なんだ?
ゼロス話は簡単だ。おまえらは親善大使を騙ってシルヴァラントに来た犯人だよな?
ルークあ、ああ…
ゼロスシルヴァラントでは、王に斬りかかった大罪人だ
ゼロスだから、おまえらの身柄はシルヴァラントで預かる事になった
ミュウみゅ…!それじゃ、ボク達は…
ゼロスこれからシルヴァラントに護送する。その間、絶対に逃げないよう俺さまとアッシュ、ルークで見張る
ゼロス絶対に逃げんなよ!絶対だぞ!
ミュウボク達、もう助からないですの…?シルヴァラントで処刑ですの!?
ルーク何言ってんだ、ミュウ。今、誰が護送するって言ったか聞いてなかったのか?
ミュウみゅ…?
ルドガー…これって…そういう事か
ルークああ。待ちわびたぜ、まったくよ
キムラスカ騎士1あの、アッシュ様。どうしてこのような山を通るのですか?
シルヴァラント兵1メルトキオに向かうなら街道を通った方が安全で早いですよ
アッシュ出発の直前に情報が入った
アッシュこの罪人共を逃がそうとする勢力が街道で待ち伏せているとな
ゼロスで、俺とアッシュで話し合って急遽この山を通る事にしたってわけだ
ルークまぁ、街道を通っていてもこのキムラスカとシルヴァラントの連合部隊なら、負けないだろうけどな
キムラスカ騎士1なるほど、そうでしたか。得心いたしました
ゼロス逃げられなくて残念だったな。大人しくシルヴァラントで刑を受けてもらうぜ
ルークちくしょう。全部バレてやがったのかー
アッシュ…………
ルドガーこうなったら、一か八かだ。ミュウ!
ミュウはいですの!
ボォォォッ!
シルヴァラント兵2こいつ、炎を!
キムラスカ騎士2まずい、縄が焼き切られたぞ!
ルークあちち…!
ルドガー行くぞ!
ルークおう!
ルーク待て!
アッシュ奴らは俺達で追う!ゼロス、包囲網を張る指揮を頼む!
ゼロスわかった!
ゼロスおまえらは無暗に追うな!奴らの退路を塞ぎながら徐々に追い詰めるぞ!
シルヴァラント兵1はっ!
キムラスカ騎士1承知しました
ルークはぁ、はぁ…この辺でいいか?
ルドガーああ。ちょうどよさそうだ
アッシュルドガー、手を
ルドガーああ
ヒュンッ
アッシュ練習通り、崖の下に開いたな
ルーク後は、兵士達が見てる前で俺達が崖から飛び降りればいいんだな
ルークちゃんと裂け目に入ってくれよ。もし失敗したら…
ルーク怖ぇ事言うなよ…
ミュウ大丈夫ですの。もし少しずれても、ボクが飛んで、ちゃんと裂け目に入るようにしますの
アッシュ…ルーク、ルドガー、ミュウ。おまえ達には世話になった
ルーク俺も助けてくれて…何て感謝すればいいんだろうな…
ルークへへっ、別にいいって
ルドガーああ。二人でいい国を作って行ってくれ
アッシュ勿論だ
キムラスカ騎士の声いたぞ!
ルーク…来たみたいだな
ルドガーよし、行こう
ルークああ
シルヴァラント兵1もう逃げ場はないぞ!
キムラスカ騎士1これだけの包囲網に後ろは崖…観念するんだな
ルーク捕まるぐらいなら、死んだ方がマシだ!
ルークとりゃあっ!
キムラスカ騎士2なっ…!
ルドガーはっ!
ミュウさよならですの!
ヒュンッ
シルヴァラント兵2あいつら、飛び降りやがった…!
アッシュ……行っちまったな
ルークああ
ゼロスふぅ、やっと追いついたぜ
ゼロスん?どうなったんだ?
シルヴァラント兵1それが…奴ら、崖から飛び降りて…
ゼロスなるほど。ここから飛び降りたらまぁ助からねぇわな
ゼロス奴ら、途中で引っ掛かったり飛んで逃げたりしてねぇよな?
アッシュああ。落ちて行って、そのままだ。もう姿も見えない
ゼロスなるほど。じゃあ、この件は被疑者死亡って事で報告しておくぜ
アッシュああ。すまないな、引き渡せなくて
ゼロスこっちの兵士もいたんだ。問題にはならねぇよ
アッシュルーク、このままシルヴァラントに謝罪と説明に向かうぞ
アッシュキムラスカの親善大使としてついて来るだろう?
ルーク…ああ!
予言と予感
ルークやっと帰って来たぜー!
ミュウただいまですのー
ルドガーふう。今回もどうにかなったな
ルドガー…ん?
エルルドガー!もう戻ってきたの!?
ルドガーエル…!…という事は、こっちではそんなに時間が経ってないのか?
エルうん。これからどうしようってティアと話してたところだよ
ティアええ、5分も経ってないわ。まさか…もう解決してきたの?
ルドガーああ。分史世界と正史世界では時間の流れが違うから…、向こうでは何日も経っていたんだよ
ルークなぁ、ティア。俺の事、わかるか?
ティアええ、大丈夫。ちゃんとルークの事がわかるわ
ルークよかった!異変もばっちり解決したんだな!苦労した甲斐があったぜ
ティア随分と大冒険だったようね
ルークああ。聞いてくれよ。あっちの世界ではキムラスカの王位継承者が二人いて──
ルーク──って、そうだ。伯父上の方はどうなってんだ?
ルーク話してる途中で俺の事が認識出来なくなっちまって俺、逃げるように出て来たんだけど…
ティアわからないわ。すぐに行った方がいいわね
ルークああ、行ってくる!
エルルドガー、これからどうする?異変の調査は、終わったんでしょ?
ルドガーああ。宿に戻って、今回の事を整理してから王様に報告しに行こう
ルドガー少し気になる事もあるしな
エル何かあったの?
ルドガー後で話すよ
エルうん
ルドガー(…『負の因子は道標』… 分史のルークが謎の男から 言われた言葉らしいが…)
ルドガー(分史のキールが言ってた男と 同一人物か…? それに、道標って…一体…)
インゴベルト六世ルーク、どこへ行っておったのだ?
ルークすみません、ちょっと野暮用で…それで、お話とは?
インゴベルト六世うむ…ずっと隠しておったのだが、昨今の成長したおまえを見ているとそろそろ話してもよいと思ってな
インゴベルト六世実は…お主には、双子の兄がいる
ルークなっ…!
インゴベルト六世名をアッシュと言ってな…
ルーク(アッシュ…!? って事は、こっちの世界でも 俺とアッシュは兄弟…!)
インゴベルト六世事情があって身分を隠し養子に出しておったのだ
ルーク事情?何です、それは?
インゴベルト六世…天啓の儀式があるだろう。シルヴァラントの神子が歴史の記された石碑を読み解く儀式だ
ルークはい。世界が結晶に包まれた時に問題になったやつですね
インゴベルト六世うむ…かつて天啓の儀式で予言された歴史によると、双子の王位継承者は国を破滅に導くとされていた…
インゴベルト六世その予言を避けるために…な
インゴベルト六世しかし最近、どういう経緯か、自らの出自を知り、ナタリアとも知り合っているようだ
インゴベルト六世ナタリアから、バチカルに呼び戻せないかと相談を受けてな…
インゴベルト六世おまえにも関わる話ゆえ、伝える事にしたのだ
ルークなるほど…。お話はわかりました
ルーク伯父上は、アッシュを俺の兄として呼び戻すおつもりなんですか?
インゴベルト六世うむ。前向きに検討するつもりだが…何じゃ、思ったより驚いておらんな
ルーク兄貴がいるってのも悪くねぇかもって思う事があったんです
ルーク大丈夫、破滅なんてしません
ルークむしろ二人で力を合わせて国を発展させてやりますよ!
インゴベルト六世そうか。それを聞いて安心した
インゴベルト六世…大人になったのう
ルークへへっ、俺だって成長しますって
ルーク(分史での事がなけりゃ 取り乱してたかも しんねぇけどな…)
ルドガー…よし。書き終わった
エルキールへの手紙?
ルドガーああ。今回の顛末を報告するんだ
ルドガー分史世界の情報は少しでも多い方がいいってキールも言ってたしな
エルそっかー。それじゃあ、メガネのおじさんの話も聞けたらよかったのにね
ルドガー…?誰の事を言ってるんだ?
エルルドガー、また忘れちゃったの!?ルドガーのお兄さんだよ!
ルドガー…誰の事かわからない。けど…この感じ、覚えがある…
ルドガールークの事を認識出来なくなった時と似てる…気がする…
エルじゃあ、メガネのおじさんに異変が起きてて…ルドガー、忘れちゃってるって事?
ルドガー…そうかも知れない
ルドガー(けど…その人の事を エルは認識出来ているみたいだ。 なら、ルークの時とは違う)
ルドガー(まさか… 異変が起きているのは──)
???…正史世界に戻って行ったな
???これで三度目…道標は集まりつつある
???我々の悲願を達成するまであと少しだな、相棒…

NameDialogue
マナと異変
エルルドガー!バロニアについたよ!
エルキールにみてもらって、メガネのおじさんのこと、思い出せるといいね
ルドガーメガネの──?
エルまた忘れちゃったんだ…ルドガーのお兄さんだよ
ルドガー忘れるって、何の…ああ、いや、そうか…
ルドガー俺は誰かを忘れてるんだったな…。異変でルークを認識出来なくなった時みたいだ
ルドガー俺にも異変が起きてると考えて、キールに会いに来たって事はわかってるんだが…
ルドガー何を認識出来なくなっているのか、エルに指摘されても次の瞬間には頭から消えているんだ
エル前はエルが言ったら少しは思い出してたのに…
ルドガー不安にさせて、ごめん。きっと何とかして解決するから
エル大丈夫!それまで、エルがルドガーの代わりにちゃんと覚えててあげる!
ルドガーありがとう。エルがいてくれて本当に助かるよ
エルえへへ、頼りになるアイボーでしょ!
エルでも、ほんとにルドガーは負の因子の影響でそうなってるのかな?
ルドガーエルは違うと思うのか?
エルだって、スレイやキールみたいな黒いモヤ、ルドガーには出てないよ?
ルドガー…確かに。それも、キールに調べてもらえばはっきりするはずだ。行こう
エルうん…なにかわかりますように…!
エルすごー!ケンキューシセツってこんなに立派なんだ!
ルドガー四大国の有識者が集まってどんどん大規模になって行ったと聞いていたけど、ここまでとは…
エルこれなら、きっとすぐにルドガーも治してもらえちゃうね!
ルドガーはは、そうだといいな──
???いい加減にして!!
ルドガーな、何だ?聞いた事ある声だった気がするけど…
エルあっちだよ!行ってみよう!
リタ魔導器に罪はないわよ!
ダオス危険な物に違いあるまい。愚かな目的で使われる科学など存在する必要はない
ロンドリーネまぁまぁ、二人共。話が逸れてるから…
ルドガー言い争ってるのは、リタとダオス!?それにロディ!?
エルケンカしてる!ルドガー、とめよう
ルドガーああ。ロディも困ってるみたいだしな
ルドガーロディ!
ロンドリーネルドガー!いいところに、二人を止めるの手伝って
ルドガーああ。何があったんだ?
ロンドリーネえーっと、どこから説明すればいいかな…
リタ説明も何もないわよ!この二人、いきなり来て魔導器を愚かだって言うのよ
ルドガー魔導器…確かに俺もあまりいい思い出はないけどどうしてまた?
ダオス私はくだらぬ言い争いをしに来たわけではない
リタくだらないとは何よ!そっちが言い出したんでしょ!
エルケンカはやめて!エルとルドガーが話聞くから
リタ別に、これ以上話す事なんてないわ
ダオスならば仕方あるまい。この研究施設ごと──
ロンドリーネ待って、ダオス!ちゃんと話し合おう
ダオス……
ロンドリーネえっと…、説明するね。私達は、今世界中で起きてるマナの減少について調べてるの
ルドガーマナの減少?そんな事が起きてるのか?
ロンドリーネうん。前に会った時もそうだったけど私達はダオスの故郷を救うためにマナについて調べてたの
ロンドリーネあちこち旅しながら調べたんだけどダオスの故郷を救うにはこの世界のマナだけじゃ足りないらしいんだ
ダオス…かつてデリス・カーラーンからこの星を調べた時と比べ、明らかにマナが減っている
ダオスその原因の一つは、魔導兵器──特にかつての戦争で使われた魔導器だ
ダオスディセンダーによる世界の再生とマナの晶化現象の解決で少しは元に戻ったようだが…
ダオスまた急激にマナが減少し始めている
ロンドリーネしかも同時期に、魔導器を兵器として使ったウィンドルに大きな研究施設が出来た
ルドガーそれで、また魔導器が兵器として使われてるんじゃないかと調べに来たって事か
リタ何よ。要はマナの減少の原因を知りたいの?だったら最初からそう言いなさいよ
リタ来るなり魔導器を諸悪の根源だ、愚かだとか言うからケンカ売りに来たのかと思ったわ
ロンドリーネごめん。ダオス、ちょっと言い方キツくてさ…
ダオスマナの減少について何か知っているようだな?
リタええ。マナの減少については、あたし達も最近気付いて調べてたのよ
リタ調査報告書を見せるわ
ダオス…こちらで調べたものと一致する
リタこのマナの減り方が魔導器の影響に近い事は認めるわ。大精霊が暴走した時とも一部一致する
ルドガーそんなに!?
エル大精霊のボーソーって、イニル街も凍っちゃって大変だった時だよね?
リタそうよ。でも、大規模な魔導器が使われたなら特有のマナの揺らぎも観測されるはず
リタあたし達の調査では、それは一切観測されなかった。だから原因は魔導器じゃないわ
ダオス…そのようだな
ロンドリーネ魔導器のせいだって決めつけちゃってごめんね
リタわかってくれれば、それでいいわ
ルドガーしかしマナの大量減少か…。そんな事まで起こってたなんて…
リタ実際、その影響で世界各地で地震や集中豪雨が起こってる…憂慮すべき事態だわ
ルドガーえっ、あの異変は、負の因子の影響じゃないのか?俺はてっきり…
リタ問題はそこよ
リタ確かに負の因子の影響が観測された場所に天変地異が集中している
リタここから導き出される仮説…
ルドガー…!まさか、負の因子がマナの減少にも関係している!?
リタそういう事。まだ原理まではわかってないけど調査結果は明確な関連性を示してるわ
ロンドリーネごめん、ちょっと話について行けてないんだけど負の因子って何?
リタそれはルドガーから話してくれた方が早いわね。あたしは話に聞いただけだし
ルドガーああ。わかった
ロンドリーネそんな事が起こってたんだ…
ダオスマナの減少、負の因子、分史世界…
ダオス……
ダオス…収穫はあった
ロンドリーネえっ?ダオス、どこ行くの?
ダオス確かめたい事がある
ロンドリーネちょ、ちょっと待って!じゃあみんな、またね!
エル行っちゃった…
リタ一人で納得してたけど、何だったのかしら…
ルドガーロディも大変だな…
リタさて、問題がひとつ解決したところで次はルドガーの番ね
リタ兄のユリウスの事が思い出せないんだったわよね
ルドガーああ。そうらしいんだ
リタらしいって事は、もう兄がいた記憶すら残ってないようね
リタキールのところに行きましょう。こっちよ
キールよく来たな。手紙をもらった時は驚いたが…
キール…こうして見る限り、いつもと変わらないように見えるな
キールぼくの時は立っていられなくなったが体調に問題はないか?
ルドガーああ…。今はただ、何かを忘れてるという感覚があるだけだ…
エル前はエルが言ったら思い出してたんだよ。でも最近はぜんぜんダメ…
キール進行しているという事か…
リタ負の因子の影響を受けているならマナの流れに特徴が出るはずよね。あたしが見てみるわ
キール助かる
エル負の因子のエイキョウを受けてる人がわかるようになったの?
キールああ。ぼくやスレイ、ルークを調べたところ僅かだがマナの流れに不自然な揺らぎがあった
キールルドガーに負の因子が今まさに憑りついているなら、それが顕著に出るはずなんだ
リタ…で、そのマナの流れだけど…
ルドガー…どうだった?
リタこれまでの調査結果と一致する、負の因子の影響だと思われる反応を示してるけど…
リタこんな反応見た事ないわ。未知の現象よ
キール普通の負の因子とは違うという事か?
リタもう少し調べてみるから、ちょっと待って
リタこの反応…マナの流れ…ルドガーの傍にあるマナから減少してる…?
キール何だって…!これは…負の因子がマナを吸収しているのか…!?
リタ詳しく調べてみないと何とも言えないわね…
ルドガーよくわからないけど、負の因子なんだよな?
リタええ。それは間違いないわ
ルドガー……
ルドガーエル、時計を触らせてくれないか
エルうん
ルドガーみんな、念のため近くのものに掴まっていてくれ
キールルドガー?まさか…
ルドガー……
ルドガー…何も起きないな。時空の裂け目が開く条件は揃ってるのに
ルドガーこれまでも、エルの時計に触れる機会はあったんだ。だけど何も起こらなかった
キールつまり、負の因子とは似て非なるもの…という事か?
リタ…いいえ。確かに負の因子の影響よ。ただ、その働きが大きく抑制されているみたい
リタ魔導器の術式でね
キール何かわかったのか?
リタええ。マナの流れをずっとたどってみたら、見た事もない術式が仕込まれていたわ
リタおそらくこれは魔導器の術式。でも見た事もない、新しい型よ。つまり…
キール分史世界の魔導器か!
エルねぇ、エルわかんない。どういうこと?
キール分史世界には、負の因子の影響を制御出来る高度な魔導器があるという事だ
キールその力で影響が抑制されているからルドガーの異変は、他の人と比べて進行が緩やかなんだろう
リタこの術式を応用すれば異変を少しは抑えられるかも。とんだ拾いものだわ──
リタ──って、えっ、ちょっと待って!何これ!?
ルドガーどうした!?
リタ術式が解かれていくわ!
キール一体、何が起こっているんだ!
リタルドガー、時計を放して!負の因子の影響が、一気に──
ヒュンッ
ルドガー時空の裂け目が…!
エルあっ…わあぁっ!!
ルドガーしまった…!エル!!
リタこれが時空の裂け目…!あたし達も追うわよ!
ルドガーああ!
キール待ってくれ!ぼくとリタは、ここに残ろう
リタどうしてよ!早くしないとエルが危ないじゃない!
キールルドガーに任せるんだ。ぼく達には…特にリタにはこの世界でやるべき事がある
ルドガー…そうだな。さっきの術式ってやつで異変が抑えられるかもしれないんだろ?
ルドガーリタとキールはその研究を進めてこの世界を守ってくれ。エルは、俺が助ける!
リタ…わかったわ。絶対エルと一緒に無事で戻ってきなさい!
ルドガーああ!必ず二人で戻るよ
シュンッ
リタ…閉じたわね
キールああ。心配ない、ルドガーならきっと大丈夫だ
リタ別に心配してないわ。そんな暇なんてないもの
リタさぁ、忙しくなるわよ。まずはさっき見た術式を書き出して解析と計算から始めないと
キールぼくは研究者みんなに伝えて意見を聞いて来る。この研究、必ず成功させないとな
双つの世界
ルドガーここは…バロニアか?
ルドガーそうだ、まずはエルを捜さないと…!
ルドガーおーい!エル!聞こえたら返事をしてくれ!
エルあっ、ルドガー!
ルドガーエル!近くにいてよかった…!
エルエル、待ってたんだよ!
ルドガー無事でよかった。怪我してないか?
エルうん、平気!ここ、別の世界なんだよね?
ルドガーああ、そうだ。負の因子を持つ俺がいる分史世界…兄さんの事を思い出すためにも──
エルあっ!ルドガー、メガネのおじさんのこと、ちゃんと覚えてる!
ルドガーうん?そういえば…
ルドガールークも分史に移動してから認識出来なくなる事はなかったし、分史では異変が収まるのか…?
エルとにかくよかったね!
ルドガーああ。…思い出せるようになると不思議だな
ルドガー兄さんの事を完全に忘れてしまうなんて想像も出来ない…
エルだよね。だからエル、びっくりしたし
ルドガー…とはいってもまだ解決したわけじゃないか
ルドガーこの世界の俺を捜し出さないとな。手始めにこの辺りを調べたいところだけど…
ルドガーこの世界のバロニアは知っているようで知らない街だ。俺達の世界とは街並みが違う
エルそう?エルは見覚えあるけど
ルドガー一見同じように見えても分史世界によって微妙に違うってエルも知ってるだろ?
ルドガー例えばあそこの喫茶店は、同じ建物だけど正史ではパン屋だった
エルでもパン屋さんになる前は喫茶店だった?エル、喫茶店のこと、覚えてるし
ルドガーいや…あのパン屋は28代続くワンダーパン職人の店でかなりの老舗だったはずだ
エルでもエル、あの喫茶店見たことあるよ!
ルドガー別の店と間違えてないか?例えば、そこの角を曲がった先にも喫茶店があるから…
エル…雑貨店
ルドガーえっ?
エルこの先を曲がったら雑貨店がある…と思う。正史世界では、喫茶店のところ
ルドガー…確かめてみようか
エルうん
エルほら、雑貨店!
ルドガー…!本当だ…
ルドガーどうしてエルは初めて来た分史世界の街並みを知っているんだ…?
エルわかんないけど…ここのお店にはねよくパパと一緒に買い物に来たんだ
エルおもちゃを買ってもらったりしたからよく覚えてるよ!
ルドガー俺が道を間違えてるのか…?でも似たような場所は他にないはずだし…
エルパパはここで食器とか買ってたの!エルのお気に入りのお皿もあるよ。こっちに──
ドンッ
エルあっ!
???おっと、すまない
エルううん、だいじょう──
エル……えっ?
ルドガーエル?どうした?
エルパ…パ…?
ルドガー…パパ…?
???エル…!エルじゃないか
エルパパ!パパだ!!
???エル…どうしてここへ…!?
エルパパこそ、どこ行ってたの!?エル、ずっと待ってたんだよ!
ルドガーエル。ちょっと待ってくれ。この人は、分史の人だ。だから──
???失礼だが、あなたは…?
ルドガーあ、えっと、ルドガーと言います。どう説明すればいいのか…
エルルドガーは、エルのアイボーだよ!
エルルドガー、こっちはエルのパパ!
ルドガーあ、ああ…
???ルドガー君と言ったか…娘が世話になったようだね
ルドガーいえ…
ルドガー(この人がエルの父親… あの仮面は…素性を隠す必要が あるという事か…?)
???エルも、寂しい思いをさせて悪かった
???でも大丈夫、パパはちゃんとここにいるよ
エルパパ…
???エル、今までよく頑張ったな
エルパパぁ…!ぐすっ、うわ…うわあぁんっ!!
エルパパぁ、パパぁっ…!!うわああぁぁんっ!!
ルドガー(…分史の別人にしては 話が嚙み合っている。 ただの偶然か…?)
ルドガー(それに、エルはこの街の景色を 覚えていた…。 もしかして、エルは…)
ルドガー(…もう少し話を聞いてみた方が よさそうだな)
???…事情を聞きたいという顔だね
ルドガーはい。少し、話してもいいですか?
???君から見れば私は娘を長期間放っておいた父親…聞きたい事があるのは当然だ
???私も、これまでの事を聞きたい。すぐそこに喫茶店があるんだ。そこで話そうか
ルドガーはい
店員いらっしゃいませ。メニューをどうぞ
ルドガーありがとう。エル、先に──
エルエルはミラクルイチゴチョコパフェ!
エルの父エルはいつもそれだな。私はコーヒーを。ルドガー君は決まったかい?
ルドガーあっ、同じもので…
店員かしこまりました
ルドガー(メニューも見ずに注文するなんて この店に来た事がなきゃ 出来ないな…)
ルドガー(エルは本当にこの世界の…)
エルの父ルドガー君には、本当に世話になったようだね
エルの父世話になった恩人に、仮面の無礼を許してほしい
エルの父ある戦いで、顔に傷を負ってしまってね
ルドガーそんな、気にしないでください
エルの父エルは、迷惑をかけたりはしていなかっただろうか?
ルドガーエルはとてもいい子でしたよ。いつも前向きで頑張り屋で助けられた事も多いです
エルそうだよ!エルはルドガーのアイボーなんだから!
エルの父エルは、誰とでもすぐ仲よくなれるね。ママに似たんだな
エルうん!もちろん、パパにも似てるよ!しっかり者なところとか
エルの父はは、そうだと嬉しいな
ルドガー…こうしてると、二人が親子なんだなってよくわかります
エルだって親子だもん!こんなところでグーゼン会えるぐらい強いキズナで結ばれてるんだよ!
エルの父絆か…そうかも知れないね
エルの父やっと帰宅の目処がたったからエルを迎えに行く前に買い出しに来ていたんだ
ルドガーそうだったんですね。そこにちょうど俺達が来たのか…すごい偶然だ
エルの父…ところで、今日帰るとは伝えていなかったのにどうしてここに来たんだい?
エルあ、そうだった。エル達、ルドガーに起こった異変を解決しに来たんだよね!
ルドガー……
エルルドガー?どうしたの?
ルドガーエル、ちょっと考えたんだけど、せっかくお父さんと出会えたんだ。二人でゆっくり過ごしたらどうだ?
エルえっ?それはもちろんそうしたいけど…いいの?
エルの父私としてはありがたい申し出だが…君はその間、どうするんだい?
ルドガー俺は少し調べたい事があって…街の外にも出るかもしれません
エルの父なるほど。街の外は危険も多いからね
エルそのぐらい、エル平気だよ。それにルドガー、一人で寂しくない?
ルドガー大丈夫だよ。せっかくの親子水入らずなんだ、遠慮せずお父さんと仲よくな
エルうん、わかった!ありがとう、ルドガー!
エルパパ!お家に帰ったら、たくさんお話しよっ!
エルの父ああ
エルそうだ、パパ、荷物いっぱいでしょ!エルも持ってあげるね!
エルの父本当かい?助かるよ
エルそれとね、それとね!えっとー…
ルドガーいつもよりはしゃいでるな…パパに会えなくても平気だと時々強がっていたけど
ルドガーやっぱり寂しかったんだな。…会えて、よかったな
ルドガー(さて、俺は俺の出来る事をしよう)
ルドガー(負の因子に取り憑かれた 分史世界の俺…… 一体どこにいる?)
ルドガー(…ひとまずは、 イニル街の俺の家に行ってみるか)
ルドガー(この分史世界で同じ場所に 住んでいるかはわからないが… 他に手がかりもないしな)
兄からの手紙
ルドガーあった…俺の家…ところどころ街並みは違ったがこの辺りは同じで助かった
ルドガーまぁ、正史と同じように俺が住んでいるとは限らないけど…
コン、コンッ
ルドガーすみません。誰かいらっしゃいませんか?
ルドガー
ルドガー反応はない…人がいる気配もないな、留守か?
ガチャ、キイィ…
ルドガー鍵が開いている…?
ルドガーこれは…ゴホッ、ゴホッ!
ルドガー内装は正史の家と同じだけど…埃まみれだ…
ルドガー床にも…ん?これは?
ルドガー足跡…ここ最近、誰かが出入りしたようだな…
ルドガー足跡をたどってみるか。何か痕跡があるかもしれない
ルドガー食卓の前で折り返している…
ルドガー…ん?テーブルクロスの下に何か…
ルドガーこれは、手紙?
ペラッ
ルドガー「この手紙が 弟に届く事を望む」
ルドガー!!この字は…兄さんの字だ!
ルドガー「事情があって 姿を隠さざるを得ない状況に 陥ってしまった」
ルドガー「助けが必要だ。 今は街外れの廃墟に 身を潜めている」
ルドガーこれだけか…よっぽど慌てて書いたんだな
ルドガー街外れの廃墟、か…行ってみよう
ルドガー確か、この坂を下って…
ルドガー違うな…記憶と街並みが一致しない
ルドガーさっきから同じ場所をグルグル回っているような…
???あのー、もしかして困ってる?
ルドガーあ、はい。実は道に迷ってしまって…
ルドガーあっ…!
???ん?どうかした?
ルドガーい、いや…
ルドガー(エルに似ている…? いやけど、そんな…まさかな)
???…?私の顔に何かついてる?
ルドガーごめん。前に会った事あるような気がして
???え…もしかして口説かれてる?
ルドガーい、いや!そういうわけじゃ…
???あはは、冗談だよ!声かけたのは私の方だもん
???道に迷ってるって言ったよね。どこに行きたいの?
ルドガー街外れに廃墟があるはずなんだけど…知ってるかな?
???うん、わかるよ。でも何の用?あの辺りは何もなかったはずだけど…
ルドガー待ち合わせというか人捜しというか…
???あんなとこで…?ふ~ん、変わってるね
???まぁいいや。案内してあげる
ルドガーありがとう。助かるよ
???どういたしまして。そうだ、名前聞いてもいい?
ルドガールドガーだ。よろしく
???よろしくね。私は、エルだよ
ルドガーえっ…!?
エルん…?
ルドガーい、いや、知り合いに同じ名前の子がいて
ルドガー(やっぱり、 雰囲気も似てるな…。 だから会った事ある気がしたのか)
エル…やっぱりそれ口説き文句じゃない?運命の出会いを演出、的な?
ルドガーいや、本当なんだ。俺の知り合いは、エル・メル・マータって言うんだけど…
エルあれっ!?何で私のフルネームを知ってるの?
ルドガー…どういう事だ?君はまさかこの世界の…いや、でもそれだと…
エルこの世界?
ルドガーあ、いや、なんでも──
エルあっ、わかった!もしかしてルドガーも別の世界から来たんでしょ!
ルドガー俺『も』?
エルもう10年くらい前かな?私、こことは別の世界からやって来たみたいなんだよね
ルドガー…その話、詳しく聞かせてくれないか?
エルこっちに来たばっかりの時はまだ子どもだったから、細かい事はよく覚えてないんだけど…
エルイニル街に来てから家が壊れて大変だったのはよく覚えてるよ
ルドガーそれが10年前の出来事なのか…
ルドガー(家が壊れたのはたしか 大精霊が暴走した頃… ここは正史世界より未来なのか?)
エル…あ、そうだ。最近、この近くに美味しいアイスの店が出来たんだよ
エルルドガーの世界にもある?
ルドガー…いや、ないな
エルだったら是非食べてよ!廃墟まではまだ距離があるし腹ごしらえしない?
ルドガーそうだな。案内してもらってるお礼にご馳走するよ
エルほんと!?やったー!
エルおじさん、フルーツ焼きそばアイス!二つちょうだい!
ルドガーフルーツ焼きそばアイス!?
店主はいよ、フルーツ焼きそばアイス!ソース多めにかけといたよ!
エルありがとう!はい、こっちはルドガーの!
エルこの味が一番なんだから!ささ、食べてみて!
ルドガー
エルどう? 美味しいでしょ!
ルドガー何というか…個性的な味だな…。でも、癖になるかも
エルでしょ!?ルドガー、わかってるね!
???
ルドガーん?
エルどうかした?
ルドガーいや、今ちょっと視線を感じたような…
エルふふん、それはきっと私が注目を集めてるんだよ
エル溢れ出る美貌…美しいのは罪よね。…ぷっ、なんちゃって!
ルドガーはは、そうだな。本当に、大人っぽくて美人だよ
エルえ…あ……ありがと
ルドガー(あの小さなエルと比べたら 本当に大人っぽく見えるよな…)
エルそ、そろそろ休憩は終わり!廃墟に行こう!
scene1強襲
エルついたよ。ルドガーの言ってた廃墟はたぶんここだと思うけど…
ルドガーここが…。案内ありがとう、エル
エルどういたしまして。捜してる人、ここにいるといいね
ルドガーああ。中に入って、様子を見てくるよ
エルいってらっしゃい
ルドガー兄さん、いるか?俺だ、手紙を読んだよ
???その声…
ユリウスルドガー、来てくれたか…!
ルドガー兄さん…!よかった、無事で…
ユリウス何とかな…。…お前は正史世界のルドガーか?
ルドガーああ。兄さんも…だよな。事情があってこの分史世界に来たんだ
ルドガーそこにまさか兄さんがいるなんて驚いたよ
ユリウス俺も驚いた。僅かな可能性に賭けて手紙を残したが本当に見つけてくれるとはな
エルルドガー。捜してる人はいたの?
ユリウス…!お前は…!
ルドガーそうだ、紹介するよ、兄さん。俺をこの廃墟まで案内してくれた、エル──
ユリウスルドガー、離れろ!
ルドガーえっ…?どうしたんだ、兄さん?急に大きな声を出して…
ユリウス俺がここに隠れていた理由──それはこの世界で、ある二人組に襲われたからだ
ユリウスそいつは俺を襲った二人組の内の一人だ!
ルドガーそんな…何かの間違いじゃ…だって彼女は…エル、お前からも──
エル
ルドガーエル?
エルみんな、今だよ!二人を囲んで!
傭兵1おう!
傭兵2やっと出番か!いただいた料金分は働かせてもらうぜ
ルドガーこれは一体…
エル…私が雇った傭兵だよ
ルドガーそれじゃあ、本当に…
エル…自分から人のいない廃墟に向かってくれるなんて、好都合だったよ
エルユリウスまで出てきたのは想定外だけど…捜す手間が省けてよかった
ユリウス…!今回はルドガーが狙いか!
傭兵3悪いな。あんたらに恨みはねぇが、こっちも商売なんだ
ルドガーまさか、道中で感じていたあの視線…こいつらのものだったのか…!
ルドガー何故なんだ、エル!?どうしてこんな事…
エルそんな事、聞いてる余裕あるの?
ルドガーくっ…
ユリウスルドガー、落ち着け!今はこの場を乗り切る、詳しい事はその後だ!
ルドガーああ…!
scene2強襲
ガキィン!
ルドガーくっ…!
傭兵1これを受け取めるとは、中々やるな。だが…
傭兵2隙あり!
ユリウスルドガー!危ない!
キィン!
傭兵2ちっ、防がれた!
傭兵3こっちだ!
ガキン!
ユリウスくぅっ…!
ルドガーはぁ、はぁっ…多勢に無勢か…。逃げる隙も作れない
ユリウスああ。だが…妙だな。殺意は感じられない…。むしろ手加減されているような…
ユリウス…そうか、もし「殺さない事」が任務の内だったら…
ユリウスルドガー。合図をしたら出口にまっすぐ走れ
ルドガーえっ?
ユリウス殺す気がないなら強行突破は容易だ。俺が隙を作るから包囲を破って脱出するんだ
ルドガーでも、兄さんが危険じゃ…
ユリウス大丈夫だ。それに、どう反応するかで彼女──エルの真意もわかるかもしれない
ユリウス俺を信じろ
ルドガー…わかった
ユリウスよし…行くぞ!
ユリウス一迅!
バシュッ!
傭兵1ぐわあッ!
傭兵2こいつ、まだこんな技を!
ユリウス今だ!行け、ルドガー!
ルドガーああ!
エルなっ…!逃がさないよ!
ルドガーエル、そこをどいてくれ…!
エル…みんな!ユリウスを捕まえて!そしたらルドガーは逃げられない!
傭兵3了解!
ユリウスルドガー!俺に構わず走れ!
ルドガーいいや!二人で逃げるんだ、兄さん!
ルドガー舞斑雪!
ズバッ、ズバッ!
傭兵2ぬおっ!?
傭兵3何っ…!
ルドガー兄さん、今だ!
ユリウス助かった!
エルみんな、追いかけて!
傭兵1ああ!仕事は必ずやり遂げる!行くぞ!
傭兵2おう!
エル…はぁ。やっぱり、強いなぁ…
ルドガー…ここまでくれば大丈夫か?
ユリウス少なくとも今は追手はなさそうだ。ここまでくれば通行人も増える奴等もそう手出しは出来ないはず…
ユリウスルドガー。さっきどうして俺を助けに戻った?一人なら簡単に逃げられたはずだ
ルドガー兄さんらしくない質問だな。あの状況なら助けるに決まってるだろ
ルドガー自分が助かるために兄さんを見捨てたりするもんか
ユリウス…そうだな。危ないだろうと言おうと思ったが、結果的に無事、二人共逃げられた
ユリウス強くなったな、ルドガー
ルドガー兄さんからそんな風に言われるとちょっと照れくさいな…。でも、ありがとう
ルドガーそれにしても…エルは、どうして俺達を…。兄さんは何か知ってる?
ユリウスわからない。…もう少し離れた方がいいだろうから歩きながら状況を整理しよう
ユリウスなるほどな。俺が正史世界を離れている間にそんな事になっていたのか
ユリウスそちらの事情はわかった。次は俺の知っている事を話そう
ユリウス俺を襲ったのは先ほどの──10年後のエルと、ヴィクトルいう仮面を着けた男だった
ルドガーヴィクトル…知らない名前だな
ルドガー(仮面を着けた男… エルの父親も仮面だったけど、 まさかな…)
ユリウスああ。俺も初めて聞く名だ
ルドガー襲われた理由もわからないのか?
ユリウスああ。この世界に来て、異常なマナの流れについて調べ始めた矢先だったんだ
ユリウス突然現れた二人に襲撃されて、逃げるので精一杯だった。事情など聞く暇もなかったよ
ユリウスしかも、その時に時計を奪われてしまってな…。今は骸殻能力も使えない
ルドガーまさか、兄さんがそんなに圧倒されるだなんて…
ユリウス…さっきは見ていただけだったがあのエルも腕が立つぞ
ユリウスそれに、ヴィクトルという男は…かなりの手練れだ。骸殻化しても倒せるかどうか…
ユリウス時計を奪われ、骸殻化出来ない今、また襲撃されたら勝ち目はない。それで廃墟に隠れていたんだ
ユリウスあの手紙に一縷の望みを託してな
ルドガー…一体、何が起こってるんだ…。エルと、ヴィクトルという男は一体何の目的で…
ユリウス今の俺達にその事情を知る術はない…
ユリウス今は出来る事を考えよう。この世界のルドガーを捜すんだったな
ルドガーああ。兄さんは、この世界の俺について何か知ってるのか?
ユリウス…いいや。残念ながら、な
ルドガー今のところ何の情報もない…全部が靄の中って感じだ。何から調べればいいんだ…
ユリウス…こうして情報を共有していて少し思い出した事がある
ユリウスもう一度俺達の家へと戻ろう。もしかしたらそこに手がかりがあるかもしれない
ルドガーエルの雇った傭兵達が見張っているんじゃないか?
ユリウスいや、人数が多いとそれだけ目立つ。腕のいい傭兵を雇っているようだし、少数精鋭だろう
ユリウスその人数なら街から逃がさないよう俺達を捜しまわるだけで手一杯だろう
ユリウス見張りに割く人員もいない可能性は高い
ユリウスそこを突いて、調べに行くんだ。この世界の俺達がたどった過去の軌跡をな
オリジンの審判
ユリウス無事、たどり着けたな
ルドガーこの世界の俺達はここに住んでいるのか?
ルドガー埃の積もり方からするに何年も足を踏み入れていないように思うんだけど…
ユリウスああ、お前の言うとおりだろう。おそらく長い間、この家には帰っていないと思われる
ユリウスだが、家具は俺達が使っている物と全く同じだ。俺達の家だと考えていいだろう
ルドガーそう言えば、そうか
ユリウスそして、家具が同じという事は、ここの引き出し…実は二重底になっていてな
ゴソッ
ルドガー底が外れて、中に本が…!知らなかった、こんな仕掛けがあったなんて
ユリウスはは、それは知らないさ。俺の日記の隠し場所だからな
ユリウス正史世界でもここに隠しているからもしかしてと思ったんだ
ユリウス…帰ったら隠し場所を変えておかないとな
ルドガー盗み読みなんかしないよちょっと気になるけど…
ユリウスはは、冗談だよ。それよりほら、日記を確認するぞ
ユリウス俺はこの日記に調査した事なんかを記録しているんだ
ユリウスこの世界の俺も同じだったら何か情報が書かれているかもしれない
ユリウスルドガーに負の因子が憑りついたなら俺は調査するに決まっているからな
ルドガーなるほど。それで日記を読みにここに戻って来たのか
ユリウスさて、読むぞ…
ペラッ
ユリウスふむ…最初の方は正史世界で俺が書いている内容とほとんど同じだな
ペラッペラペラッ…
ユリウス…む。これは…!
ルドガー何か見つけたのか?
ユリウスああ。どうやら、これが…正史とこの世界の分岐点だ
ルドガー世界の分岐点…?そこから歴史が大きく変わってるって事か?
ユリウスそうだ。魔導器を使った大きな戦争、マナの急激な減少と、大精霊の暴走…
ルドガー正史世界でも起こった事件だな。時空の裂け目が出来て、人々が時空の歪みに巻き込まれた…
ユリウスああ。正史では、俺達が骸殻能力でみんなを助け出したんだ
ルドガーという事は、この世界では違うのか
ユリウスああ。どこにも時空の歪みに関する事件が書かれていない
ルドガーそれが、世界の分岐点…?
ユリウスいや、重要なのはこの後だ
ユリウス正史世界ではカノンノがディセンダーとして世界再生を行って解決したんだったな?
ルドガーああ。後でアスベル達から聞いた話だけど…
ユリウスだがこの世界では、どうもその世界の再生に失敗したようだ
ルドガーえ…!?
ユリウス事件の元凶を倒し、ディセンダーの力でマナの消耗が穏やかになったのは確かだ…
ユリウスしかし既に失われたマナは戻らず世界はゆっくりと死に近付いている…
ユリウスこの世界の俺達は、仲間達と共に死にゆく世界を救うため、動いていたらしい
ルドガーそれで、救えたのか?
ユリウス…いや、おそらくこの方法では…
ペラッ…
ユリウス…やはり、上手く行かなかったようだ
ルドガーそんな…
ルドガーやはりって言ったけど、そんなに難しい方法だったのか?
ユリウスああ。難しいさ。それに、分史世界の人達には…絶対に成し得ない方法だ
ルドガーそれって、一体…
ユリウス…彼らは挑んだんだ。クルスニク一族に伝わる伝承──
ユリウスオリジンの審判にな
ルドガーオリジンの審判…?
ルドガーオリジンって、カノンノに力を貸してくれたっていうあの大精霊オリジンの事か?
ユリウス…いや。そのオリジンはおそらく根源を司る大精霊だろう。能力は物質の再生だったはずだ
ユリウス一方オリジンの審判を行っているのは無を司る大精霊…世界を創造したとされる存在だ
ルドガーつまり…オリジンは二人いるのか?
ユリウスああ。その理解で合っている
ユリウス大昔の人々は、物質再生の能力が世界を創造した能力と似たものに見えた…
ユリウス結果、混同した人々はふたりの精霊を同じ名で呼んだ…というのが定説だな
ルドガー…その無を司るオリジンは世界を救う力を持っているんだな。でもこの世界を救ってくれなかった…
ユリウス…正確には、この世界の俺達はオリジンに会う事すら出来ていないはずだ
ユリウス分史世界には存在しないからな…
ルドガー…待ってくれ。知らない事が多すぎる
ルドガー兄さんはオリジンの審判をクルスニク一族に伝わる伝承だって言ったよな
ルドガーだけど俺は、そんな話を聞いた事がない。まずはそこから教えてほしい
ユリウス…そうだな。すまない
ユリウスこの話を今まで教えなかったのは、危険な事に巻き込む可能性があったからだ
ユリウス様々な戦いを乗り越えて来たお前には話してもいい頃合いだろう
ユリウスだが、オリジンの審判を巡って、クルスニク一族がどれだけの犠牲を払って来たかわからない
ユリウスその事をよく覚えておいてくれ
ルドガー…わかった
ユリウス…事の始まりは、およそ2000年前と言われている
ユリウス世界を作ったとされる精霊は三人いて原初の三精霊と呼ばれている。オリジンもその一人だ
ユリウス残りの二人は元素を司るマクスウェル、そして時を司るクロノス…
ルドガークロノス…!大精霊が暴走した時に会った…!
ユリウスああ、ルークが戦って鎮め、カノンノに力を貸してくれたあのクロノスだ
ユリウス彼はオリジンと違い、原初の三精霊本人だった
ルドガー…知らない間に俺は一族の伝承に伝わる存在に会ってたんだな…
ユリウスその原初の三精霊がまだ人と交流していた遥か昔、人々は魔導器を使い始めた
ユリウス当時の魔導器はマナを大量に消費し、世界を蝕むものだった
ユリウス放っておけばマナが枯渇し、精霊の生きられない世界となるだろう
ユリウスオリジンは悩んだ。魔導器というすぎた道具を使う人間を滅ぼすべきか…
ユリウスそれとも警句を与え、自らの過ちに気付かせる事で救いの道を示すか…
ユリウスそうして人類を見定めるべく人間の賢者へと審判の始まりを告げた
ユリウスこの人間の賢者というのが俺達の先祖、初代クルスニクだ
ルドガー初代、クルスニク…
ユリウスオリジンは言った。「人類よ、世界の楔へたどり着け」
ユリウス「さすれば人類は存続し、 最初にたどり着いた者の願いが かなえられる」と…
ユリウスそして世界の楔へたどり着けるようクルスニク一族に骸殻の力を与えてくれた
ユリウスしかし、同時にこの力は審判の終わりを告げるタイムリミットでもあった
ルドガータイムリミット…?
ユリウス骸殻の力は使いすぎれば自分自身が時歪の因子になる。それはルドガーも知っているな
ルドガーああ。だから細心の注意を払って使ってきた
ユリウスだが、この話にはお前には伝えていない続きがあるんだ
ユリウス時歪の因子となった者は新しく分史世界を作る
ユリウス分史世界の数が百万に達した時オリジンは審判が失敗したと判断し、人類を滅ぼす
ルドガーそ、それじゃあ、骸殻能力は、自分の命だけじゃなく人類の存亡にも関わってるのか!?
ユリウスそういう事だ。だが審判を成功させるには骸殻能力を使わざるを得ない
ユリウス世界の楔にたどり着く条件…それは世界に散らばる四つの「道標」を集める事だからな
ルドガー「道標」…
ユリウス元々は全て正史世界にあったらしいが分史が増え、審判に挑む者が増える中で、散らばっていったそうだ
ルドガーそれじゃあ、数ある分史の中から四つの「道標」を探し出さないといけないのか…
ルドガー途方もない話だな…
ユリウス俺もそう思っていた。だがこの分史世界の俺達は、重要な手がかりを掴んでいたようだ
ユリウス「道標」は負の因子を破壊する事で手に入る…そう、日記に書いてある
ルドガー負の因子…!ここでその名が出てくるのか…!
ユリウス…伝承の内容は以上だ
ルドガーこの世界の俺達は、この伝承を頼りにオリジンに願いをかなえてもらって世界を救おうとしたのか…
ルドガーだけど失敗した…。「道標」が集まらなかったという事か
ユリウスいや…。この日記には、苦難の末に、「道標」を集める事に成功したとある
ルドガーそれじゃあ、どうして失敗したんだ?
ユリウス…さっきも言ったが、分史世界の人間にオリジンの審判を達成する事は出来ないんだ
ユリウス原初の三精霊のうち、オリジンとクロノスは…正史世界にしか存在しない
ユリウス分史世界で「道標」を集めても何も起こらないんだ…
ルドガーそんな…そんな事って…
ユリウス「道標」を集めても世界の楔への道は開かれない…。そこで彼らは気付かざるを得なかった
ユリウスこの世界にはオリジン達がおらず、世界の楔へ繋がっていない…つまり分史世界なのだとな
ルドガー……。辛かっただろうな
ユリウス…ああ。だが、この世界の俺達はそれだけでは諦めなかったようだ
ユリウスルドガーが「道標」を集めている間、ジュードを中心に別の方策を練っていたらしい
ユリウスその方法は上手くいったとしてもとても時間のかかるものだったが着実に進んでいた
ユリウス世界が滅ぶのが先か、その方法が成就するのが先か…それだけが問題だったようだ
ルドガー地道に確実に…か。ジュードらしいな
ユリウスルドガーも、オリジンの審判が失敗した後も、決して希望は失わず、ジュードを手伝っていたようだ
ユリウス世界を再生しようと努力するその姿を根源を司るオリジンも近くで見届けていたらしい
ルドガー俺達の世界でも、カノンノの世界再生を見届けると言って力を貸してくれたらしいからな…
ルドガーこの世界では世界再生に失敗した後もずっと傍にいて見守っていてくれたのか…
ルドガー…待てよ。という事は…
ルドガーオリジンなら、この世界の俺が今、どこにいるのか知ってるんじゃないか?
ユリウスなるほど、その可能性はあるな。だがオリジンの居場所はわかるか?
ルドガーオリジンが住処にしていた遺跡ならアスベルから場所を聞いてる。この世界でも同じかわからないけど…
ユリウス他にあてもないんだ。そこに行ってみよう
ルドガーああ。確か、バロニア北部…森の中の遺跡にいたらしい。行こう…!
これまでの事、これからの事
ルドガー
ユリウスどうした?急に立ち止まって
ルドガーああ、ごめん。エルが今どうしてるかなってちょっと気になっただけなんだ
ユリウスそうか…俺達がよく知ってるエルもこの分史世界へ来ているんだったな
ルドガーお父さんと楽しく過ごせているといいな…
エルたっだいま~!
エルほら、パパも!
エルの父…ああ、ただいま
エルの父久しぶりだな、この挨拶を口にするのは…
エルお買い物の片づけ、手伝うね!
エルの父ありがとう。少し見ない間にエルは随分成長したみたいだな
エルえへへ…パパと離れ離れの間に、エルもいろいろあったんだよ!
エルイニル街でへんなビョーキが流行ってユーリやミラと一緒にカイケツしたんだ!
エルの父エルも頑張ってくれていたんだな
エルでしょ?
エルでも、ビョーキが治ったらと思ったら今度はジシンでエルのおうちが壊れちゃったの!
エルだからね、今はルドガーのとこでイソーローしてるの
エルの父そうだったのか。彼には改めてお礼をしないといけないな
エルの父その後は、どんな事をしていたんだい?
エルえっとね、世界中がショーカ現象でパキーンってなっちゃった!
エルの父ショーカ現象?何だいそれは?
エルえっと…人とか植物とか、ぜんぶ氷みたいに固まっちゃっうんだよ
エルの父そんな事が…ショーカ現象…晶化現象か?大丈夫だったかい?
エルイニル街も固まっちゃたけど、すぐに大丈夫になったよ!
エルの父それはよかった。他にはどんな事があったんだい?
エルえっと、急に島が見つかってルドガーがお仕事でお出かけしちゃったり!
エルの父ふむ…
エルあとあと、最近だとルドガーと別の世界へ行って、お姫様を助けたりしたんだよ!
エルエルは捕まっちゃって、ちょっと怖かったけど…
エルの父それは、怖かったな。エルが無事でよかったよ
エルでもね、エルは信じてたよ!ルドガーと友達のみんながエルを助けてくれるって!
エルの父友達、か…
エルうん、お姫様のメルディでしょ!ファラにクィッキーに…みんな友達!
エルみんなすごく優しいし、一緒にいると楽しいんだよ!
エルの父…そうか、いい友達が出来たんだな。パパも嬉しいよ
エルの父さて、そろそろご飯にしようか。エルは何を食べたい?
エルえー、どうしよっかな…
エルの父買い出しに行ってきたばかりだから何でも作れるよ
エルパパのごはん何でも美味しいから迷っちゃうなー
エルうーん…
エルそうだ!やっぱりアレがいいな!スープ!
エルの父ははは…アレか。エルのお気に入りだもんな
エルの父そう言うと思って、エルと会った後、ちゃんと材料は買っておいたんだ
エルえー!じゃあ聞かなくてよかったじゃん!
エルの父ごめんごめん。本人の口からちゃんと聞きたかったんだよ
エルの父それじゃあ久しぶりに腕を振るうとしようか
エルん~!やっぱりパパのスープが一番!
エルの父喜んでくれて何よりだ。作った甲斐があるよ
エルそうだ!パパの料理、みんなにも食べてもらおうよ!
エルの父…みんなに、かい?
エルルドガーでしょ?メガネのおじさんでしょ?ルルに、ミラに、ユーリに…
エルみんなを家に呼んで、パーティーをするの!
エルの父ああ…それは、楽しそうだ
エルえへへ、名案でしょー?よーしけってーい!パパ、約束だからね?
エルの父ああ
エルそれじゃ指切り!
エルの父…ああ、いいよ。ほら、小指を出して
ギュッ…
エル指切りげんまん!指切った!
エルこれで約束──
エルの父うっ…!ぐ、うっ!!
エルパパ!?大丈夫!?
エルの父はぁ、は、はぁっ…ゴホ、ゴホッ!
エルの父大丈夫、ちょっとむせただけだよ
エルほんと…?
エルの父本当だよ…ほら、もうこんなに元気だ
エルの父それより、エル。スープを飲み切ってるじゃないか。おかわりするかい?
エルう、うん…
エルの父すぐに入れてくるよ。待っていてくれ
エルパパ…
scene1失われた時
ああ、これは…またあの時の夢だ──
エル負の因子、この世界にはなかったね
ルドガーそうだな。次こそは必ず──
エルうん!次こそ!
ルドガーああ。俺達の世界を救うために…
ルドガー…こんな調子で本当に負の因子は見つかるんだろうか
エル焦ったらダメだよ、気長にがんばろ!
エル大丈夫、ルドガーには頼りになるアイボーがついてるでしょ!
ルドガー…ああ、そうだった。長い冒険になるけど、ついてきてくれるか、エル
エルもちろん!
ルドガーうおおおぉっ!!
キィン!
ヴィクトルそこをどけ。これが世界を守る、たった一つのやり方なんだ
ルドガーこんな…
ルドガーこんなやり方が許されていいはずがない!
ルドガーお前は、お前はそれでもエルの…!
エルやだ…!パパもルドガーもやめて!
ルドガー俺だって、こんな戦いしたくない!だけど…
ルドガー引き下がるわけには行かないんだ!大事な相棒のために!
エルルドガー…!
ヴィクトル私とて…!だが…これで世界を救えるなら…!
ルドガー世界が何だ!俺は、世界を敵に回してでも守るべきものを守る!
ルドガーうおおおぉっ!!
ヴィクトル来い!
バシュッ──
──ドサッ
エルあ…あっ…
エルパパぁーっ!!
ヴィクトルくっ…あ、ぁ…エ…ル…
ヴィクトルすま…ない…
エルパパ、パパぁーっ!!!
エルパパ、起きてよっ!目を開けてよぉ…!
ルドガーエル…
エルう、うぅ…うぅぅ…
ルドガーわかってくれとは言わない…
エルぐすっ、うぅっ…
エルわかってる…ルドガーはエルを助けてくれたって…
ルドガー
エルエル…カクゴを決めようって思ってた…世界の、みんなの、ためなら…
エルでも…
エルほんとは、怖くて…生きてて、エル…ひっく!
ルドガーエル…それでいい生きている事が間違いだなんて思わないでくれ
ルドガーエルを犠牲にして世界を生かすなんて…そんなの、間違ってる
ルドガー俺はエルを死なせない…絶対に死なせないから…
エル──っ!
エルはぁ、はぁっ…
エル久しぶりに見たな…あの頃の夢…
エル…はぁ。駄目だよ、エル
エルあの頃の私は何も出来なかった…。でも、もう私は子どもじゃない…
エル今度は私が、相棒を守るんだから
ユリウスこの森のどこかに大精霊オリジンのいる遺跡があるんだな
ルドガーああ、この辺りだと思うんだけど…なかなか見つからないな
ユリウス元々は文献でも所在が掴めなかった遺跡、だったか…探すのは大変そうだ
ユリウスちょうどあそこに小屋がある。夜を越す準備もしておこう
ユリウスまだ僅かに日はあるが森の夜は早いからな
ルドガーああ。そうしよう
パチパチパチ…
ユリウス今日は歩き詰めで疲れただろう。俺が見張っておくからルドガーは休むといい
ルドガーありがとう兄さん。俺はまだ平気だから先に休んでいいよ
ルドガー廃墟に隠れていたんじゃろくに眠れてなかっただろ?
ユリウスそうか?じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうとするか
ユリウスしかし見つからないものだな…小さな遺跡というわけでもないんだろう?
ルドガーうん。見落として通りすぎるような大きさじゃないはずなんだ
ルドガーただ…どうにも聞いていたのとは森の景色が違うみたいで…
ユリウス…そうか。正史世界とこの分史世界では辺りの風景が違うのかもしれん
ユリウスこの世界の俺の日記によるとあの天変地異からおよそ十年が経過し世界再生もかなっていない…
ルドガー…確かにそうだ。地震があれば地形は変わるし、樹の位置も変わる
ルドガー景色が違って当然だったんだ。聞いた通りの道をたどったつもりでも全然違う方向に進んでいたのかも
ルドガー明日は今日と違う方角を探してみよう
ユリウスそうだな。明日はきっと遺跡が見つかるさ
scene2失われた時
ルドガー遺跡だ!やっと見つけた!随分、遠回りしたけど…
ユリウス見つかったのならそれでいいさ。早速、中に──
ユリウス…!
ユリウスルドガー!
ルドガーえっ!?
エルはあっ!
キィン!
ルドガーエル…!
ユリウス待ち伏せしていたな?どうしてここがわかった
エルあなた達がこの森へ行くのを見たって情報があって…
エルだったら目的地はここしかないと思った。オリジンに会いに行くんだろうって
ルドガーどうして俺達を狙うんだ!理由を聞かせてくれ!
エル理由?そんなの簡単!
エルあなたがルドガーだからだよ!
エルはぁっ!
カキィン!
ルドガー俺がルドガーだから…?どういう意味だ…?
エル悪いけど、話してる余裕はないの!
ユリウス隙ありだ!
エル…っ!
キンッ
エルうっ…
ユリウス今日は一人か。それで俺達に勝てるとでも?
エル…さぁ。やってみないと、わからないでしょ!
キィンッ
ユリウスくっ…!
ルドガーやめろエル!俺はお前と戦いたくない!
エルだったら黙ってやられてよ!
エルはぁっ!
ガキンッ!
ルドガーエル…!どうしても、やるしかないのか!?
ユリウスルドガー、これ以上は無駄だ。彼女は、お前の知っているエルとは違う
ユリウス割り切れなければ、やられるのはお前だぞ!
ルドガーくそっ、腹を括るしかないのか…
エル覚悟は出来た?今度は、逃がさない!
scene3失われた時
エルはぁ、はぁっ…
ルドガーエル、もう諦めてくれ…!
エル諦める?私の目的はあなたに勝つ事じゃない。必要な物は、もうもらった
ルドガーエル!!
ユリウスやけにあっさり退いたな…
ルドガーエルも俺達と戦いたくなかった…なんて理由だったらいいんだけど
ユリウス…。それより気になる事を言っていたな
ユリウス「必要な物はもらった」…一体、何を…
ユリウス…はっ!ルドガー、時計は!?
ルドガー時計…!しまった、俺の時計がない!
ユリウスこれが目的か…やられたな
ユリウスこれで俺達は二人共、骸殻能力を封じられた。戦力を削ぐのが目的だったのか
ルドガーという事は、また改めて襲撃してくるつもりなんだろうか…
ユリウスルドガー、腹を括っておくんだ。そうしないと、いざという時に剣が鈍るぞ
ルドガーわかってる…
ルドガー…今は前に進むしかないか。エルとはまた会う事になるだろうし
ユリウスああ。今はここ…遺跡に集中しよう
ユリウスエルが言っていた。オリジンに会いにここに来たのだろうと
ルドガーつまり…俺達の考え通り、オリジンはここにいる…!
ルドガーこの世界の顛末がついにわかるかもしれないんだ…!
scene1死にゆく世界
ユリウス随分と広い遺跡だ…。昔は立派な神殿だったのかも知れないな
ルドガーここまで来たんだ。オリジンに会えるといいけど
ユリウスああ、そうだな…
ユリウス(ジュードの確立した方法で 世界は救われるはずだった… それなのに、なぜ──)
ユリウス(…それ以前にあの日記… もしかして、途中で俺は…)
ルドガー…兄さん?何か気になる事でも?
ユリウスいや、何でもない。それより、先を急ごう
scene2死にゆく世界
ルドガー祭壇のようになっている特別な部屋…カノンノ達から聞いていたオリジンの居場所だ
ユリウスここが…
???来たか
ルドガーあなたがオリジン…!
オリジンまさかまた、その顔を見る事になるとはな。ルドガー・ウィル・クルスニク
ルドガー俺の事を知っているんですか!?
オリジン無論。そちらは、ユリウス・ウィル・クルスニク…
オリジンどちらも別の世界から来たのだろう
ユリウス…俺達の事などお見通し、というわけですか
オリジン単純な話だ。この遺跡内での会話は全て私に聞こえている
オリジンそれに…この世界のユリウスがここに来るなどあり得ない事だからな
ユリウス…それは、どういう意味でしょうか
オリジン…説明してもよいが、まずはお前達の目的の詳細を聞かせてもらおうか
ルドガーわかりました。実は…
オリジン…なるほど。この世界のルドガーが原因で正史のお前に異変が…
オリジン負の因子にそんな側面があったとはな
オリジンこの世界でかつて道標を集めた時はそのような様子はなかった
ルドガーそうなんですか?では、どうやって道標にたどり着いたんです?
オリジン分史の位置を座標で表し負の因子が存在する方角を示す装置、それを用いてだ
オリジンそれで候補となる世界を数百まで絞り込んでしらみ潰しにしていったのだ
ルドガー数百…そんなに世界を巡ったのか…
ユリウス分史世界は今や何十万もあると言われている…数百に絞れたなら大したものだ
ルドガーそれでも、大変だったはずだ。なのに、道標を揃えても上手くいかなかったなんて…
オリジン確かにあの時のルドガー達は絶望していた
オリジンだが…まだ希望は残されていた
オリジン道標を集める事とは別に、世界を救うための計画が進められていたのだ
ユリウス…日記にもそうあった。しかし、その計画がどうなったのか肝心なところは書かれていなかった…
オリジン当然だ。その計画が結末を迎える前に…
オリジンこの世界のユリウスは、弟の手にかかって死んだのだからな
ユリウスなっ…!
ルドガー俺が、兄さんを…!?
オリジンユリウスだけではない
オリジン計画の中心人物であったジュード・マティスとリタ・モルディオ
オリジン元ディセンダーのカノンノ・イアハートやアスベル・ラント
ルドガーま、待ってくれ!頼む…少し、待ってくれ…
オリジン……
ユリウス本当に全員、ルドガーが殺したと?
オリジンそうだ。他にも大勢が死んだ。もっとも、私も全ての者の名を覚えているわけではないがな
ルドガーそんな…一体、どうして…
ユリウス…その計画の途中で何があったのか…経緯をお教え願いたい
オリジンいいだろう。では、話を道標を探す旅を終えた直後に戻そう
オリジンルドガーが分史世界を旅している間この世界に残った者達は、新たな魔導器の開発に取り組んでいた
ルドガー魔導器…それでリタの名前があったのか
オリジンそうだ。だが計画自体は、ミラ=マクスウェルの助言を受けたジュード・マティスによるものだ
オリジン使用する際にマナを必要としない新型の魔導器…。彼らはそれをマティス式魔導器と呼んでいた
ルドガーマナを必要としない…!そんな事が可能なんですか
オリジン理論上は可能だ。だが実現するには時間が必要だった
オリジン私も契約の元、力を貸したが…完成する頃にはマナの枯渇は止められぬところまで来ていた
オリジン魔導器を用いたところで世界の死を少し遅らせる事しか出来なかった
オリジンそんな折、新たに世界を救う方法が見つかった
オリジンその発見は一見希望に見えたが…絶望的な結末をもたらした
オリジンルドガーが拒絶し強行しようとする者とその仲間を全員殺したのだ
ルドガー…それでみんなを…。どうしてこの世界の俺はその方法に反対したんですか?
オリジン人の情、というものだろう
オリジンその方法とは、ある一人の人間を犠牲にする事でこの世界を救うというものだった
オリジンだが、それはルドガーにとって、かけがえのない存在だった
ルドガー俺にとって、かけがえのない存在…
オリジンその方法を知った者の一部が、ルドガーからその人間を奪い強行しようとしたのだ
オリジンルドガーは守るために戦った。だがその人間を守り切るには、事情を知る者全てを殺す必要があった
オリジン一人でも生かせば、また同じ事を企む人間が現れると考えての事だろう
ユリウス……
オリジンお前と一部の仲間は戦いを止めようとして殺された
オリジン私はその光景に失望した。世界再生を見届けるという契約はカノンノの死とともに消えた
オリジン世界再生を果たすどころか殺し合いを始めた人間に世界を救えるはずもあるまい
オリジン私は人間を見限り、再びこの遺跡に戻ってきたのだ
オリジン来るべき世界最後の日を人間に関わらず、穏やかに迎えるために
ユリウス…話していただき、感謝します
ルドガー……
オリジンルドガー。一つ聞こう
オリジンお前はまだ、そのかけがえのない存在と出会っていないのだろう
オリジン今のお前なら、どう考える
オリジン大切な者一人か、他の全ての者と世界。どちらの犠牲を選ぶ?
ルドガー大切な者一人と、他の全ての者…それに世界…
ユリウス……
ルドガー俺…俺は…
ルドガーわかりません…。どっちも犠牲にしちゃいけない…そう思います
オリジンだが、どちらかを選ばねばならない時が来る。その時はどうする?
ルドガーそれは…
ルドガー……
ルドガー俺は…どっちも犠牲にしません
オリジン…話にならん
ルドガーそうかも知れません。でも、俺は誰かを犠牲にする話なんてしたくない
ルドガー俺は今まで、いろいろな分史に行って来ました
ルドガーそこでは、何かを犠牲にして世界や大切な人、自分の居場所を守ろうとしている人達と出会いました
ルドガーだけど、最後まで諦めずにいれば…少し見方を変えれば…
ルドガー犠牲が必要だなんて、ただの思い込みだったと気付く事も少なくなかったんです
ルドガーだから俺は、何かを犠牲にする選択をするぐらいなら…
ルドガー最後の最後、人類が滅ぶその瞬間までどちらも犠牲にしない方法を考え続ける!
オリジンお前が決断を鈍らせる事で世界が滅び、大勢が死ぬとしてもか
ルドガー…世界や、大勢の命を救うべきなのは確かです
ルドガーだけど大切な人だって、世界に生きる大勢の一人なんです
ルドガーその一人を犠牲にしてしまったら世界を救ったなんて言えません
オリジン…理想論だな
オリジンだが…お前の進む先、その結末を見届けよう
オリジンお前の行くべき先を示す。そこに行けば、お前は全てを知り、改めて決断に迫られるだろう
ルドガー…今、教えてくれた話で全てじゃないんですか?
オリジン私が語れるのは、私が人間の元を去った時まで。8年近く前の話だ
オリジンお前達の話を聞く限り、あれからまた何かが起こっているようだ
オリジン…いざとなった時、お前が今と同じ決断が出来るのか…見させてもらおう
ルドガー…わかりました
ユリウス大丈夫か、ルドガー
ルドガー…別の世界とはいえ、俺が大勢の仲間を手にかけるなんて……正直、戸惑ってる
ルドガーけど、立ち止まっていられない。俺は、今の俺に出来る事…為すべき事をやらないと
ユリウス…そうだな
オリジン…覚悟は決まったか
ルドガーはい、お願いします
オリジン…では、向かうべき場所について教えるとしよう
scene1守る者、守られる者
ルドガー北東の湖か…そこに一体、何があるんだろう
ユリウス…不安か?
ルドガー…ああ。大切な人を守るために他の人を殺すなんて
ルドガー俺にとっては、兄さんや他のみんなも大切な人なのに…
ユリウス…俺は、少し理解出来る
ユリウス例えば俺にとってお前は大事な弟で、守るべき存在だ
ユリウスもし誰かを傷つけないとお前を守れないのだとしたら…俺は迷わず、お前を守る選択をする
ルドガー…兄さんだけど殺すというのは…
ユリウス…そうだな。しかし、負の因子が憑りついていたらどうだ?
ルドガー…そうか。この世界の俺には負の因子が憑りついているはずなんだ
ルドガー兄さんの言うような、誰かを守りたい気持ちが極端な形で表れても不思議じゃない
ルドガーだからといって…決して許されはしないけど
ユリウスああ。だがお前が気にしすぎる必要はない
ユリウス同じルドガーとはいえ、お前とは別の存在だ。しかも負の因子の影響を受けている
ユリウスお前は、自分がいつか同じように仲間を手にかけるんじゃないかと不安なんだろうが…そうはならない
ルドガー兄さん…。うん、ありがとう
ユリウス…わかっているだろうが、この先、どこかで分史のルドガーと対峙しなければならないんだ
ユリウスどういう出方をしてくるかわからない相手だ。…心の準備が必要だぞ
ルドガー…うん
ユリウス…もし辛いなら俺が一人で分史のルドガーを捜してもいい
ルドガーいや…本人に直接聞いてみたいんだ。一体何を見て、何を感じたのか…
ルドガーどんな事を悩んで、どうしてその選択をしたのかを
ユリウスそうか…。不要な心配だったな
ユリウス行こう。この先の森を抜ければ湖が見えて来るはずだ
ルドガーああ
scene2守る者、守られる者
ルドガー湖が見えて来た。そろそろか…
???待ちなさい!
ユリウスこの声は…!そう簡単にはたどりつけなそうだな
エルこれ以上、先には行かせない!
チャキ
ルドガーエル…!
ヒュンッ
ルドガーくっ…!
ルドガーどうしてだ?この先に何があるって言うんだ!
エル知らずに向かおうとしてるの?
エル…やっぱり、繰り返すの?あの戦いを…
ユリウスここで会えたのはちょうどいい。時計を返してもらうぞ
ユリウスはぁっ!
エルっ…!
エルそんなに必死に時計を取り戻そうとするなんて…
エルやっぱり、ヴィクトルと戦う気なんでしょ!?
ユリウスヴィクトルだと?
ルドガーヴィクトル…彼女と一緒に兄さんを襲ったっていう…。この先にいるのか?
エル…!
エル(知らなかったっていうの? 嘘…それじゃ、今の私の言葉こそ 歴史を繰り返させる…)
ユリウス奴がいるなら、彼女の言う通り時計が必要だ。ルドガー、彼女を捕まえるぞ
エルさせない…!それに、私を捕まえても無駄だよ。ちゃんと隠してあるんだから!
ユリウスなら隠し場所を吐かせるまでだ
エル死んでも言わないよ!あなた達に骸殻能力は使わせない!
エルそれに!捕まる前に私があなた達を倒す!
ルドガー…本気なのか?エル、俺はお前を傷つけたくない
エルだったら大人しくやられて!
ヒュッ、ヒュッ──
ルドガーぐっ…!?
ユリウスルドガー!
ユリウスルドガー、誰も傷つかずにこの場を収める事は不可能だ
ユリウス彼女の戦いに向ける覚悟は本気だ。時計を奪いに来ただけの前回と同じだと思わない方がいい
ルドガーだけど…
ユリウスさっきも言った通り、俺はお前を守るためなら手段を選ばない
ユリウス彼女を傷つけたくないならお前も戦って、無事に取り押さえるんだ
ルドガー…!ああ!
エルお喋りなんて、余裕だね。それとも観念した?
エルこれでトドメ!
ヒュヒュヒュンッ──!
ルドガーはぁっ!
キンキンキン!
エルやっぱり戦うんじゃない。私の事、傷つけたくないなんて、嘘なんでしょ?
ルドガーああ。傷つけたくない。だからって何もしなければ解決するわけじゃないんだ
ルドガー誰も傷つけないために俺は戦う!
エル綺麗事を…。出来るわけないでしょ!!
scene3守る者、守られる者
エルうぅっ…!はぁ、はぁ……
エルまだ…まだっ…!
ルドガーエル…一体何がお前をそこまで…
エルあんな歴史…はぁ、はぁっ…繰り返させないっ!
ガキィッ!
ユリウスまだ動くか…たいした信念だ
エルうぅぅ…!私じゃ、無理なの…?
エルでも、それでも私は…!
ルドガーなあ、エル。教えてくれないか?エルがそこまで頑張る意味…
ルドガー何か事情があるんだろ?話してくれ。協力出来るかもしれないじゃないか
エル
エル私は…
エルヴィクトルを守りたいだけだよ
エルあなたはヴィクトルを殺してしまうかも知れないから…
ルドガー俺が…ヴィクトルを?どうして、そんな風に思うんだ?
エル私のアイボーのルドガー…この世界のルドガーは、殺したから
エル私のパパを…
ルドガーエルのパパ…?まさか、エルの父親がヴィクトルなのか?
エル…そう。あなたはバロニアで会ったよね
ルドガーああ…
エルあなたが会ったのは、この世界のエルのパパ。私のパパは、別の世界にいたの
エル子どもの頃、私は知らない内にこの世界にやって来て…イニル街に住んでた
エル地震で家が壊れてルドガーの家に居候してたの
ルドガー俺達の世界と同じだ…
エルそれからはルドガーのアイボーとして一緒にいろんな冒険をしたの。道標を求めて他の分史にも行った
エルその旅の途中で、私が生まれた世界にも行った
エルそこでルドガーは私のパパに会ったの
ルドガーつまり、こことは別の世界のヴィクトルか…
エルそう。そこでルドガーはパパと対立して…最後には殺した
ルドガー
エル今、同じ状況がこの世界で起ころうとしてる
エルあの時と同じ年齢のエルを連れて、ルドガーがこの世界にやってきて、そしてヴィクトルと会った
エルきっとこの後、ルドガーとヴィクトルは戦う…そしたらヴィクトルは…!
???エル、どうかしたかい?
エル…!
ルドガーあなたは…!
クルスニクの鍵
ヴィクトル私の話をしていたようだが…
エルヴィクトル…!!
ユリウス貴様…!
ヴィクトル…ユリウス
ヴィクトルそう怖い顔をしないでくれ。今日は戦うつもりはないんだ
ユリウス何を勝手な事を
ルドガー待ってくれ、兄さん。この人はエルの父親でもあるんだ
ルドガー戦わずに済むなら、その方がいい。まずは…話を聞きたい
ユリウス…そうだな、すまない
ヴィクトル助かるよ。ここでこれ以上騒ぐ事は避けたい
ヴィクトルエルがさっき眠ったばかりでね
ルドガーエルも近くにいるのか
ヴィクトルああ。この先にある私の家にいるよ
エルヴィクトル…。ごめんなさい、私…
ヴィクトル…?何か謝るような事をしていたのか?
エルそう…じゃないけど…ヴィクトルに内緒でルドガー達と戦ってたから…
ヴィクトル…確かに、無茶をした事は褒められた事じゃない。でも、何か理由があったんだろう?
エル私はただ…ヴィクトルを守りたかったんだ
エルいつも守られてばかりだけど私だって、ヴィクトルのために戦えるんだから…!
エルだから…
ヴィクトルありがとう。その気持ちは嬉しいよ
ヴィクトルでも、危険な事はやめてくれないか
エルうん…
ルドガー一つ、聞いていいか?
ヴィクトル何かな?
ルドガー今の話だと、彼女が俺達を襲った事をあなたは知らなかったようだ
ヴィクトルそうだね
ルドガーなら、あなたがエルと一緒に兄さんを襲ったのは何故だ?
ヴィクトルなるほど、もっともな疑問だ
ヴィクトル…エルがどうして一人で君達と戦おうとしたのか私にはわからないが…
ヴィクトル君達はどちらも、この世界にとって脅威だからだよ
ヴィクトル何故なら、別の世界から来た骸殻能力者は、時歪の因子を破壊して分史世界を壊すだろう?
ユリウス…詳しいな。お前は、何者だ
ヴィクトルそう驚く事でもない。私もこの世界を再生するために力を尽くした者の一人だ
ヴィクトルこの世界が分史世界だと発覚した瞬間から世界の破壊には警戒していたんだよ
ルドガーそういう事だったのか…。でも、世界の破壊の事なら安心してほしい
ルドガー俺達の今の目的は、時歪の因子じゃなくて、負の因子なんだ
ヴィクトル…負の因子か
ヴィクトル…なるほどな。それなら私達が戦う理由はなくなるというわけだ
ユリウス理解が早くて助かるが…本当に今の説明だけで納得出来るのか?
ヴィクトルああ。エルから、過去にルドガー君と道標を集めた時の話を聞いているからね
ヴィクトル負の因子を破壊し、道標を手にすれば時空の歪みを通って元の世界に戻れる事は承知している
ヴィクトルもっとも、この世界に負の因子があり君達がそれを集めているという事は初めて知ったがね
エル……
ルドガーエルも納得してくれたなら時計を返してもらいたいんだが…
エル…私は…
ヴィクトルエル、私からも頼む。彼らにとって時計は大切な物だと知っているだろう?
エル…わかった
エル隠し場所まで案内するよ。二人共ついてきて
ユリウスああ
ルドガー……
ルドガーすまない。時計の事は兄さんに任せてもいいかな
ルドガー俺は彼に聞きたい事があるんだ
ユリウス…?それなら二人で…
ルドガー兄さん、頼む
ユリウス…わかった
エルそんなの、ダメ!
ヴィクトル私は構わないよ
エルヴィクトル!だって、この状況って…
ヴィクトルエル。わかってるよ
ヴィクトル大丈夫だ。私は、あのヴィクトルとは違う…それは君がよく知っているだろう?
エル……
エル…わかった。でも、気を付けてね
ヴィクトルああ。ありがとう
ヴィクトルさて…立ち話もなんだ。大したもてなしは出来ないが、私の家で話さないか
ルドガー…ああ
父と相棒
ルドガーここが…
ヴィクトル長閑でいいところだろう?街から離れているのは少し不便だけどね
ヴィクトルさあ、入ってくれ。お茶でも淹れよう──
ヴィクトルさて、何から話そうか…
ルドガー単刀直入に聞かせてほしい。ヴィクトル…あなたは分史世界の俺なのか?
ヴィクトル…そうだ
ルドガー…!随分あっさり認めるんだな
ヴィクトル隠していたつもりはないよ。気付かれるまで名乗るつもりもなかったがね
ルドガーつまり…あなたがこの世界の兄さんや、仲間達を…
ヴィクトルそこまで知っているのか
ルドガーオリジンが教えてくれたんだ。大切な人を守るためにみんなと戦ったって
ルドガー…その大切な人って、もしかして…
ヴィクトルご察しの通り、私の娘──君と一緒に来たエルの事だよ
ルドガー…エル…
ヴィクトル…君は理解し難い事だろう。だが、これが何度も悩んで出した私の答えなんだ
ヴィクトル私はエルの父親が娘に下した選択がどうしても理解出来なくてね
ルドガー
ヴィクトル彼は…世界を救うために娘を犠牲にする選択をして
ヴィクトル私はエルを守るために…彼の命を奪った
ルドガーエルもそう言っていた…。彼女を犠牲にするっていうのはどういう事なんだ?
ヴィクトルエルは、クルスニクの鍵だ
ルドガークルスニクの鍵…?
ヴィクトルクルスニクの鍵は時空を超越する力を持っている
ヴィクトルその力を持つエルを…時空の歪みに閉じ込めれば、全世界のマナの循環に干渉出来る
ヴィクトルつまり他の分史や正史から、対象の世界にマナを送り込む事が出来るんだ
ルドガーそれでマナの枯渇は解決するとしてもエルは…
ヴィクトル…人間の肉体には寿命がある。だがマナは永久に送り続けなければならない
ヴィクトル…学者の研究によれば、エルの魂を取り出し、魔導器に閉じ込めれば可能だそうだ
ルドガーそんな…
ヴィクトル私も今の君と同じ気持ちだった。だから戦い、エルを守った
ヴィクトルその後も私は悩んだ。自分の娘を犠牲にしようとするのはどういう気持ちなのかと…
ヴィクトル娘のエルが生まれてからもその事について考え続けた
ヴィクトルだが、結局あの世界のルドガーが娘を犠牲にしようとした気持ちは理解出来ない
ヴィクトルいくら考えても、私がエルを犠牲にする選択肢を選ぶ可能性はない
ルドガーだから…エルを犠牲にしようとした人を殺したのか
ヴィクトル先に強硬手段に出たのは向こうだ
ルドガーそれを止めようとした仲間達まで…話し合う事は出来なかったのか?
ヴィクトル話し合わなかったと思うか?私だってこんな結末は望まなかった
ヴィクトル元より話し合いも上手くはいってなかったんだ
ヴィクトル「子どもはまた産めばいい」とまで言われたのだぞ!
ヴィクトル妻は、もう子を産める身体ではなかったのに…!
ルドガーそれは…
ヴィクトルあがきにあがいた末の、これが私の最善だったんだ
ルドガー最善?兄さんを…仲間を傷つけ、殺して、それが最善だったって言うのか!
ヴィクトル私にとっては、娘が平穏に暮らせる事が何より重要だ
ルドガーそんな事…!エルが──
エルむにゃ…ルドガー…?
ルドガー…!
ヴィクトルエル…起きてしまったのかい
エルうん。話し声が聞こえたから
エルパパとルドガーって声がそっくりだね。一人でおしゃべりしてるのかと思った
ルドガーエル…それは…
エルルドガー、迎えに来てくれたの?って事は、分史のルドガー見つかったんだ?
ルドガーいや…どう説明すればいいか…
ヴィクトル…私から説明しよう。エルにもいずれ話さなければならない事だからね
エル…?何のこと?
エルパパが、ルドガーだったの!?
ヴィクトルああ
ルドガーエルは、パパの名前を知らなかったんだな
エルだって、パパはパパだもん。他の人は、ヴィクトルさんって呼ぶし…
エルエルの名前も、エル・メル・マータだし…ルドガーは、クルスニクでしょ?
ヴィクトルエルの名前はママのものなんだ。クルスニク一族だと知られないようにしたかったからね
エルそうだったんだ…
ルドガーエル、平気か…?分史の俺の事もだけど、その…世界を救うために…
エルエルが利用されるかもでしょ?でも、悪い人はパパがやっつけて守ってくれたんだよね!
ヴィクトル…そうだ
ルドガー(悪い人をやっつけた…か…)
ルドガー(ヴィクトルの話し方が上手いのか エルは人が死んだとまでは 思っていないみたいだな)
ルドガー(そしてヴィクトルが ジュードやリタと戦ったとも 思っていない…)
ルドガー(だが、エルにとっても酷な事実を 敢えて伝える必要もないか…)
ルドガー…事情はわかった。でも…今もこの世界はマナ減少が続いてるんだよな
ヴィクトルああ、その通りだ
ルドガーあなたはこの先、どうするつもりなんだ?
ヴィクトル…エルを犠牲にしなくても世界はまだ救えるかもしれない。その方法を私は見つけたんだ
ルドガー何だって…?オリジンは、そんな事一言も…
ヴィクトルこれはオリジンが人間を見限って遺跡に帰った後に発見した新しい方法だからね
ルドガーそれは一体…
ヴィクトル君もよく知っている…負の因子を使う方法だ
ルドガーなっ…!?
エルそれって、分史のルドガーが持ってるんだよね?つまり…パパ?
ヴィクトルそう。今まさに実践しているところだよ
ルドガー…キールが言っていた。負の因子がマナを吸収してるって…
ルドガーまさか、それが…!
ヴィクトルさすがキール…負の因子を憑りつかせた甲斐もあった
エルとりつかせたって…パパが?
ヴィクトル…そうだよ
ヴィクトルかつて負の因子を探す旅をした際、負の因子がマナの流れに影響を与える事を知った
ヴィクトルオリジンの審判に失敗した後も、負の因子の解析は続けられ、魔導器の研究に活かされたんだ
ヴィクトルそして最新のマティス式魔導器では負の因子の力の一部を操れるまでになった
ヴィクトルそこで私は、かつてと同じように負の因子を集めた。ただし破壊せず、そのまま持ち帰った
ルドガーそんな事が可能なのか?
ヴィクトルクルスニクの鍵の力を応用すればな。そのために、かつて相棒として共に旅したエルに手伝ってもらった
エルもう一人のエル…パパのアイボー…
ルドガーあのエルも、クルスニクの鍵なのか…!
ヴィクトルそうだ。そうして集めた負の因子を改造した
ヴィクトル憑りついた者の世界のマナを、この世界へと送るようにね
ルドガーそれじゃあ、スレイも、キールも、ルークもみんな…おかしくなったのはあなたの仕業か!
ヴィクトルそうだ。負の因子が強く影響を出せるよう彼らに助言もした
ルドガーそんな事まで…!
エルパパ…そんな…
ルドガー…一つ、わからない事がある。負の因子がこの世界にマナを送るためのものだとすれば…
ルドガーこの世界の俺…つまりあなたに負の因子がついているのは、何故だ
ヴィクトル私は受信機だ。各世界から送り出されたマナを私の負の因子が受け取っている
ルドガーそれじゃあ、そのためにわざと自分に負の因子を…!?
ヴィクトルさっきも言った通り、負の因子は魔導器で制御出来る。大した問題ではない
ヴィクトル私のこの仮面には負の因子の影響を抑える術式が組み込まれているんだ
ルドガー負の因子の影響を抑える…そうか、リタが言っていた未知の術式…
ヴィクトル君の世界では、未知の技術だろう
ヴィクトルもっとも、この世界でもまだ完璧とは言えない
ヴィクトルこの術式を発動させ続けるには身体への負担が大きくてね
エルあ…。だからあのとき、急に苦しそうだったの?
ヴィクトルああ。心配かけたね。でも、まだ大丈夫…
ヴィクトル私がこうして生きている間は、世界と、大切なエルを守る事が出来る
エルでも…でも…!パパが苦しいんでしょ!?
ヴィクトルそれでもいいんだ…エル、お前を犠牲にするより…ずっと
ルドガーっ…!
ヴィクトル今、私が負の因子を使ってやっている事はクルスニクの鍵の代用品に他ならない
ヴィクトル他の世界を犠牲にし、私自身の命を削り、それでもマナの供給効率は悪い…
ヴィクトルだが…エルを守れるのなら、そんな事、取るに足らない問題だ
エルパパ…
ヴィクトル私の命で代用している間に世界を復活しきるか、それとも別の画期的な策が見つかるか…
ヴィクトルどちらにせよ、エルも世界も犠牲にならない方法は、これしかないんだ…
ルドガーそれでも…間違ってる
ルドガー確かにあなたにとってエルは何ものにも代えがたい大事な存在だろう
ルドガーでも!スレイを案じるミクリオの友情や!
ルドガーメルディのために全てを賭けたキールの想い!
ルドガーお互いを信じ切磋琢磨し続けたルークとアッシュの絆!
ルドガーそのどれ一つとして犠牲にしていいはずがないんだ!
エル…それに、エルパパが苦しむのも嫌だよ
ルドガーヴィクトル…他の方法を探そう。俺や…正史のみんなにも頼んで協力する
ヴィクトル他の方法などない!
ヴィクトル私だって他の方法があると信じていた!
ヴィクトルだから私は、探し回ったんだ!あらゆる世界を旅して、様々な可能性を検討した
ヴィクトル誰も傷つけない…誰も不幸にならない…そんな方法を求め続けていた
ヴィクトルだが、答えは見つからなかった…。どこにも…どんな世界にもなかった!
ヴィクトルそうしている間にも理想を追い求める時間は減り、刻一刻と世界の終わりが近付く
ヴィクトルだったら犠牲にするのは無関係の世界と自分自身だけでいい!これが精一杯だったんだ!!
ルドガーそんなの…
エルダメだよ!
ヴィクトルエル…?
エルパパいつもエルに言ってるでしょ。人からされていやなことは、人にしちゃダメだって
エルパパもみんなも苦しいの、エルは嬉しくない!
エルこんなこと、やめてよ、パパ!
ヴィクトルエル…
ヴィクトルお前も私を認めてくれないのか…?いつも何でもパパの言う事を聞いてくれた、エルが…
エルエル、パパの言うこと聞くよ
エルでもこれは、ルドガーの方が正しいって思う
ヴィクトル私より…ルドガーを信じるというのか…
エル…パパ?
ルドガーそういう話じゃない。エルは自分で考えて意見を言ってるだけだ
エル…そうだよ。パパ、何か、ヘン
ヴィクトル私よりルドガーの方が…エルの事を…わかっていると…
ヴィクトルそうだ…あの時も、エルは…父親を殺した私を受け入れた
ヴィクトル一緒に冒険を重ねると…父親よりも相棒を取るのか、エル…
エル黒いモヤ…!
ルドガー負の因子…!自身を制御出来なくなっているのか
エルそんな…!パパ…!
ルドガーエル、危ない!安全なところに隠れるんだ
エル安全なところって…ルドガー、どうするの!?
ルドガー冷静になってもらうだけだ!エル、俺に任せてくれ
エルう、うん!わかった!
ヴィクトルエル…!エルが、離れて行く…!
ヴィクトルどうして俺よりそいつを選ぶんだ…!
ルドガー制御が出来ていない…?今まで抑えつけていた反動か…!?
ヴィクトルエルを…エルを返せッ!!!
scene1決戦!骸殻VS骸殻
ヴィクトルエルを返せ、ルドガー!
ドカッ
ルドガーくっ…!
ドカアアァァン!!!
パラパラパラ…
ルドガーぐうっ…なんて力だ…壁を突き破るなんて…!
エルルドガー!!
ルドガー来ちゃダメだ、エル!
エルで、でも…!!
ヴィクトルうおおぉぉぉっ!!
ガキィン!
ルドガーぐっ…!兄さんの言った通り、とんでもない強さだ…!
ヴィクトルどうした!そんなものか!
ヴィクトルエルを守るのは、この私だっ!
ギィンッ!
ルドガーくっ…!落ち着けヴィクトル!目を覚ませ!!
ルドガー衝動に吞まれるな!それこそエルを危険に晒すぞ!
ヴィクトル黙れ!!
ルドガー…!?その姿は…!
ヴィクトルその程度で、エルを守れるかぁぁぁっ!!
ドゴォッ!
ルドガーぐっ…!
ヴィクトルお前は弱い!力も!意思も!
ドカッ!
ルドガーうぐっ…!
ヴィクトル理想だけでエルを!世界を守れるなら!
ヴィクトル今ここでやって見せろ!
ガンッ!
ルドガーぐぁぁっ…!
ヴィクトルそれが出来ないなら!ここで死ね!
エルダメえええぇぇぇっ!!
ルドガーうおおおおおっ!!
ガギギィィンッ…!!
ルドガーはぁ、はぁ…この力は…!
ルドガーなんで、時計がないのに…
ヴィクトルお前のそれはエルの力だ!そんな道理もわからずに!
ドガッ!
ルドガーぐぅっ…!
ヴィクトル別の道があるだと!?みんな助かる方法を探せだと!!
ヴィクトルそれは!選択する事を諦めただけだ!
ヴィクトル何も選ばず、何かを守れると思うな!
ルドガー違う!俺は、選ばないんじゃない!
ルドガー何一つ、諦めたくないんだ!
ブンッ!
ヴィクトル…!
ルドガー避けられた…!?
ヴィクトル所詮、その程度だ!
ヴィクトル邪魔をするな!
ガギィッ!
ヴィクトル何っ…!
ユリウス弟が世話になったな
ルドガー兄さん…!
ユリウス全く、話し合いをするんじゃなかったのか…?
ルドガーそのつもりだったんだけど…
ユリウス何故その姿になれているのかわからないが…お前の時計も返してもらったぞ
ルドガーああ
エル…やっぱり、戦う事になったんだ。このままじゃ、ヴィクトルは…
ルドガーエル…。ヴィクトルを守るためにまた俺達と戦うのか…?
エル…ううん。前に私と戦った時、あなた達は言ったよね
エル傷つけないために戦うって
ルドガーああ
エル私もそうする。ヴィクトルをあのままにしておけない
エルそれに、二人が全力で戦ったらあの歴史を繰り返して…ヴィクトルを殺すかもしれない
エルだったら…私が、ヴィクトルを死なせないように押さえつける!
ルドガー…わかった。確かに加減して戦える相手じゃない…エルの言う通りだ
ヴィクトルエル…お前まで、俺を裏切るのか…
エル違う!ヴィクトル…私はあなたを絶対に裏切らない!
エルアイボーだから!あなたを守りたいし、間違ってたら止めるの!
ヴィクトル私が間違っている…?
エルそうだよ!今、怒りのままにルドガーを殺したら、全部無駄になる!
ルドガー…?
エルだから、落ち着いてヴィクトル…!そのまま暴走を続ければヴィクトルの命が危ないんだよ!
エルまたあの時と同じ事を繰り返すのは嫌だよ…!
ヴィクトルあの時…あの、時…?う、うぅっ…!!
エルパパ…!何だか苦しそう…!パパに何言ったの!?
エル信じて!今はヴィクトルの理性に賭けるしかないの
エルパパ…!
エルとにかくここは危険だから、あなたは安全な場所に避難して!
エルあなたが傷ついたらヴィクトルが悲しむから
エルっ…わかった
ヴィクトルお前は…私から何もかもを奪うのか、ルドガー!
ユリウス…理性が負けたようだな
エルまだ!ヴィクトルはこんな衝動に負ける人じゃない!
エルヴィクトルは間違えない!いつでも正しい選択をするの!だから…
エル負の因子の衝動なんかに負けるはずない!そうでしょ、ヴィクトル!
ヴィクトルうぅっ…ぐぐぐっ…エル…私は…
ユリウス動きが鈍った!
エルその調子だよ、ヴィクトル。あとは私に任せて
エルあなたは私が絶対に守る!だって私はヴィクトルのアイボーだから!
エルルドガー、手伝って!
ルドガーああ!
ヴィクトル返せ…!私の全てを返せ、ルドガー!!
scene2決戦!骸殻VS骸殻
ヴィクトルぐっ…
エルはぁ、はぁ…ヴィクトル、落ち着いた?
ヴィクトルこの程度で、私は…!私はぁぁぁぁっ!
ユリウスもうやめろ!その状態で戦い続ければお前の命も危ないだろう!
ヴィクトルなら、これで決着をつけるまでだ!
ルドガーくっ…!わかった、受けてやる!
エル…!待って、やめて…!
ヴィクトルルドガアアァァッ!!
ルドガーうおおおおぉぉッ!!!
エル・エルやめてぇぇぇぇぇっ!!
ヴィクトルなっ…!
ルドガー危ない…!
ドカッ──
ルドガーエル!
エルくっ…痛ったたた…間一髪だったね…
エルうぅ…怖かった…
ルドガー二人共!怪我はないか?
エル私は問題ないよ。それより…
エルパパ…!大丈夫!?
ヴィクトルあ、ああ…心配は、いらないよ…
ルドガー力を使い果たしたのか…
ヴィクトル二人共…危ないじゃ、ないか…
エルだって…!パパもルドガーも、何だか本気だったし
エルそうだよ。ルドガーにもヴィクトルにも…どっちにも死んでほしくないよ
ヴィクトル私を見限って、ルドガーに…ついたのでは…
エルそんな…そんなわけ、ないよ…!
ヴィクトルだが…お前は、俺の事を…間違ってると…
エル間違ってる…でも…パパ、だもん
エルエルの、とっても大事な…大好きなパパ…!
ヴィクトル…!エル…膝を擦りむいてるじゃないか!
エルあっ、ほんとだ…。でもこのぐらい、平気だよ!パパが無事だった方が大切!
ヴィクトル…エルを守るつもりで…エルに怪我を…
ヴィクトル私は…!
ルドガー…!また負の因子が…!
ユリウスいや、待て…!よく見ろ!!
ヴィクトルエル…二度と、傷つけない…
ヴィクトル絶対に…守る…!
ルドガー負の因子を…制御している…!?
巣立ちの時
ヴィクトルくっ…はぁ…はぁ…
ルドガー驚いたな。仮面の助けがあるとはいえ、衝動に打ち克つ事が出来るなんて…
ヴィクトルとはいえ…長く保っていられはしない…
ヴィクトル私が抑えている間に…負の因子を…
ルドガー…ああ、わかった
エル
チャキッ
エルルドガー、違うよ!
ルドガーエル…?
エル二人共、手、出して!
エルこうして、こうして…はい、握手!
ぎゅっ
ヴィクトル…!
ルドガーこれは…!
ヴィクトル負の因子が…道標へと変異し、お前に宿ったんだ
ルドガー道標が…俺にも…
ヒュンッ
ルドガー…!時空の裂け目…!
ユリウス確か時空の裂け目は道標を宿した者がルドガーに触れると現れると言っていたな
ユリウス今、ルドガー自身が道標を宿した…。だから同時に裂け目が開いたのか
ルドガーそういう事か…。言われてみれば当然だけど、いきなりだと驚くな
エル時空の裂け目か…何だか懐かしいね。昔、一緒に冒険した事を思い出すよ
ヴィクトルああ…そうだな。しかし、私もかつて道標を集めたがあんな方法は初めてだ
ヴィクトルエル、どうして知っていたんだい?
エル他の世界で見たんだよ。叩いたりしなくても、仲良くギュッてすればいいの!
ルドガーキールとメルディがそうだったな。なるほど、握手でもいいのか…
ヴィクトル…負の因子を破壊する方法は、力を消耗させ、狂気の元となる感情を崩した瞬間に力を加える…
ヴィクトル今回は私の骸殻で力の消耗が激しかった上、術式で負の因子を抑えていた事も効いたのだろうが…
ヴィクトルこんな方法で破壊出来るとは思わなかった…
ルドガー…ヴィクトル。俺もあなたも、知らない事がきっとたくさんあるんだ
ルドガーこうして人を傷つけずに負の因子を破壊する方法があったように…
ルドガー何も犠牲にせずこの世界を救う方法がきっとどこかにある
ヴィクトル
エル言われちゃったね、ヴィクトル
ヴィクトル…そうだな。数多の世界を調べて回っても見つからなかったが…
ヴィクトル次の世界では見つかるかもしれない。そういう気持ちを忘れていたように思うよ
エルこれで…もうヴィクトルとルドガーは戦わなくていいんだよね?
ヴィクトルああ…
エルよかった…ヴィクトルがちゃんと生きてる!本当に無事でよかった
エル…そういえば、この人誰?あなたもエルって呼ばれてる気がするんだけど…
エル…えへへ。私はエルだよ
エルえっ、同じ名前!?
エルそうじゃなくて…何て言えばいいのかな…
ヴィクトル彼女は、私がかつて一緒に冒険した相棒のエルだ。ルドガーにとってのエルと同じさ
エルんんん…?えっと、パパのアイボーで…ルドガーのアイボーはエルで…
ルドガー簡単に言うと、10年後の未来のエルだ。別の世界の、だけどね
エルそうなの!?すごー!
エルよろしくね、10年前の私。あなたは幸せになるんだよ
エルうん!おとなのエル、すごく美人だね!エルもそういう風になれる?
エルなれるけど、簡単じゃないよ。美容にも結構気を使ってるんだから
エルわかった!エル、ビヨーに気を使う!
ルドガーこうして見ていると姉妹みたいだな
ヴィクトルああ…
ルドガー…あの二人が生きるこの世界を俺も守りたい…
ルドガー俺達の世界に戻ったら、この世界を救う方法はないか、みんなと相談してみるよ
ヴィクトル…ありがとう。私ももう一度、方法を探してみるとしよう
ルドガーああ
ルドガー…それじゃあ、帰ろうか。兄さん
ユリウスいいのか?エルは…
ルドガーエルにとっては、ここが自分の世界だ。だから…
ユリウス…別れの挨拶はしないのか?
ルドガー挨拶すると、辛くなる。それに、エルならきっと──
エルついて行く!
ルドガー…!エル、聞いていたのか
エルルドガーひどい!アイボーを置いて行こうとするなんて!
ルドガーそう言うと思ったから黙って行こうとしたんだ…
ルドガーせっかくパパに会えたのに、また離れ離れになるんだぞ?
エルそれは…
エル
エルパパ…
エルエル、パパと一緒にいたい。けど…
エルルドガーの手助けもしたい。ルドガーは、アイボーだから
ヴィクトルエル…
ルドガーエル、無理しなくても…
エル無理なんかしてない!けど…確かにパパの事も…うーん…
エルエル、難しく考えなくていいよ。エルはどう思う?
エル…エルは…
エルパパ…
ヴィクトル……
エルエルね、ルドガーと一緒に最後まで冒険したい!
ヴィクトルエル…そうか…
エルでも!エル、どこにいてもパパが、一番、大好きだよ!
ヴィクトル…エル…私は…
ユリウス……
ユリウス離れるのは辛いし心配だろう。だが、旅をする事でしか、得られない経験もある
ユリウス信じて送り出してやるのも、家族の務めだ
ヴィクトル…ああ、そうだな
ヴィクトルエル、パパもエルの事が大好きだ。どんなに離れていたって、いつもエルの事を想ってる
ヴィクトルだから、安心して行ってきなさい
エル…うん!行ってきます!
ヴィクトルルドガー。娘を、よろしく頼むよ
ルドガー…!はい!
世界の楔
ヒュンッ
リタわっ!?
キール時空の裂け目!?もしかして…
エルとうちゃーく!
ルドガー無事に戻って来られたな
キールエル!ルドガー!それに…
ユリウスここは…正史世界か?見覚えのない場所だが…
リタもしかして…あんたがユリウス?えっ、何で!?
ルドガー何があったか、説明するよ
リタそう…あの時の世界再生が上手く行かなかった世界だったのね
リタ分史世界にはクロノスがいない分、力が足りなかったのかしら
ユリウスなるほど…あり得る話だな
キールそれにしても、エルの出自に、マティス式魔導器に負の因子の真実…
キール新しい情報が多過ぎだ。そこから導き出される事もかなり多い…
キールあらゆる研究が進展するぞ…どこから手を付ければいいのかわからないぐらいだ!
リタ嬉しい悲鳴って感じね
キール…とりわけ大きな情報は、マナの減少の原因がはっきりわかった事だな
キール負の因子を改造し、新型の魔導器で操っていたなんて…ぼく達には解析出来ないわけだ
ルドガー…それから、二人に相談したい事があるんだ
ルドガー実は俺達の行った世界は、滅びようとしてて──
ビー、ビー、ビー
エルわっ、何!?
キール異変を観測する装置だ!この近くで何か起こる予兆──
ゴゴゴゴゴ!!!!
ルドガー…地震!
エルわわわっ!
リタこれが異変!?でも、こんな規模って…
ユリウスみんな、しゃがむんだ!頭を守れ!!
ミクリオスレイ、どうだった?
スレイ問題ないよ。ライラが紹介してくれた天族がこの村に加護を与えてくれるってさ
スレイ後は村の人達が建物を元に戻すだけだ。オレも手伝いたいけど…
ミクリオ気持ちはわかるが、今は先を急がないとね
ミクリオ何せ世界中の土地を回って、天族の加護を取り戻さないといけないんだから
スレイけど、オレのせいで壊れた建物なんだ。ちょっとぐらい役に立ちたいよ
スレイミクリオ、ごめん。やっぱり、ちょっとだけ手伝ってくる
ミクリオあっ、スレイ…!
ミクリオ全く…仕方ないな。僕も手伝うか。その方が早く──
ゴゴゴゴゴ!!!!
スレイ…!地震!?
スレイそんな…だってここに加護を与えてくれてるのは地の天族…
ミクリオスレイ!これはただの地震じゃない!異常なマナの乱れを感じる!
スレイマナ…?まさか…
ミクリオ何だ、これは…!
スレイミクリオ!?
ミクリオスレイ…!!
スレイミクリオ!!
ビー、ビー、ビー
キールこの反応は…!
メルディバイバ!キール、これ何の音か!?
キール時空間に大きな乱れが発生しているんだ!
メルディ何か起こるか?
キール詳しい事はわからないが…メルディ!近くの物に掴まれ!
メルディえっ…?
ゴゴゴゴゴゴゴ…
メルディバイバ!?
キールこれは地震じゃない…時空に生じた異常で、空間そのものが揺れているんだ!
キールその異常の中心は、メルディ、おまえだ…!
メルディ…!メルディ、どうなるか?
キール別の時空へ飛ばされるかもしれない!この世界の物に掴まっていても無駄だ…
キールメルディ!ぼくの手を握れ!
メルディはいな!
ガシッ
キールこれなら…例え別の世界に行くとしてもぼく達は一緒だ!
メルディキール…!でも、キールも危ない…
キール構うもんか!いいか、この手は絶対に放さないからな!
メルディ…!うん…
メルディバイバ…!
キール何っ…!まさか、これは…
キールしまった!時空の変化はメルディの内側から…!
メルディキールっ!!!
キールメルディ…!待て!
キールメルディーーーっ!!
ルーク次は…ア・ジュールの大使館か。親善大使って忙しいんだな
アッシュ当たり前だ。手分けすれば仕事は半分になるぞ
ルークそうは言ってもな…。俺一人で行ったら嫌な顔する大使や大臣もいるからさ
アッシュフンッ、甘い考えだな。国を代表する親善大使を名乗るなら成果を挙げて一人前だと認めさせろ
ルークわかったよ。…とか言いつつ、しっかりついて来てくれるんだよな
アッシュ…お前の言う通りだ。確かに俺も甘かったな。ここで帰らせてもらう
ルーク待った待った!本気にすんなって!せっかくなんだ、一緒に行こうぜ
アッシュ全く──
ゴゴゴゴゴゴゴ!!
ルークうおっ!?じ、地震か!?
アッシュ…大きいな。それに、妙な感じが…
アッシュ…!これは…
ルークアッシュ!?
アッシュ……
アッシュルーク。やはりこの先は一人で行ってもらう事になりそうだ
ルーク一人でって…アッシュ、お前は…
アッシュ俺の事は心配するな。それよりも親善大使の役目を果たす事だけを考えろ
アッシュ……。お前なら、一人でも──
ルークアッシュ…!
ルークき、消えちまった…何だよ、いきなり!
ルーク意味わかんねぇっつーの!
ルークけど…俺一人で、親善大使の役目、立派に果たせばいいんだろ…!
ルークこっちは心配すんなよ、アッシュ!
ルドガー…止まったのか?
キールそのようだが…観測装置は反応し続けている。まだ何か…
エルわっ、まぶしい!
リタ何よ、この光…!
???何が起こっているんだ!?スレイは…
???バイバ!キール…
???
ルドガー…!
ミクリオ光が収まった…
メルディここは…
アッシュ…見慣れない場所だな
ルドガーミクリオ!メルディ!アッシュ!
ミクリオルドガー!?
アッシュ…?どうなっている?
キールメルディ!?何でここに!?
メルディキール!よかった、一緒に来られたか!?
キールな、何の話だ!?それに、その服装は一体…
メルディ…?キール、メルディが知ってるキール違う
エルもしかして…お姫様のメルディ!?
メルディあっ、エル!元気してたか!?
ルドガーやっぱり…分史のみんな、だよな…?
ミクリオここは…ルドガー達の世界なのか?
ルドガーさっきの異変でみんなここに来たのか…一体どういう事なんだ…?
ユリウスわからない…
ユリウスそもそも骸殻能力を持つ者がいなければ世界を超える事自体、出来ないはず…
ルドガーあの時…クロノスが暴走した時も、時空の裂け目が開いてみんなが世界を移動したけど…
ユリウスクロノス…
ユリウス…!そうか!オリジンの審判だ!
ユリウスこれで四つの道標が正史世界に揃った事になる!
ルドガーそうか…!という事は…
ビー、ビー、ビー
エルわっ、また!?
キールさっきとは別の反応だ!だけど、とても大きい…
リタまた地震でも起きるの!?
キールわからないが…影響範囲は…世界中!?
ルドガー世界規模の異変だって…!?
キール発生の中心点は、バロニア郊外…すぐ近くだ!
ユリウスここに道標が揃った事と何か関係があるかも知れないな…
ルドガー見に行こう。悪いけど、三人もついて来てくれ
アッシュ…仕方ない。だが、説明はしてもらうぞ
ミクリオ全てが突然すぎて理解が追いつかないからね
メルディメルディも混乱してるよぅ
ルドガーわかった。行きながら事情を話すよ
ルドガーみんなに宿った道標の事…それに負の因子をみんなの世界に持ち込んだ、もう一人の俺の事も
キール観測装置の示す座標はこの辺りだが…
ルドガー…!見てくれ、あそこ…!
ヒュン
エル時空の裂け目!
ルドガーいや、何だか様子が違う…あれは…
???「世界の楔」に通じる道だよ
ルドガー…!あなたは…!
ロンドリーネあれが、ダオスが言ってた世界の楔への道…?
ダオスやつらにたどり着かせるわけにはいかぬ…
ロンドリーネ…どうするつもりなの?
ダオス止めるのだ。世界の終わりを

NameDialogue
拓かれし道
ルドガーあなた達も来ていたのか
ルドガーヴィクトル、エル
ヴィクトルさっきぶりだね
エル
エル二人も、メルディ達と一緒に来ちゃったの?
ヴィクトル違うよ、エル。私達は自分でここに来たんだ
ルドガー自分で…?どういう事だ?
ヴィクトル…当事者である君達は知っておくべきか
ヴィクトル君達を分史から転移させここに集めたのは私だ
エルパパ達が…!?
ルドガー一体、どういう事だ…?この時空の裂け目と関係あるのか?
ヴィクトルああ。さっきも言ったが、それは「世界の楔」に通じる道だ
ヴィクトル私の計画は全てこの瞬間のためにあった…
ルドガー計画だって…?
ヴィクトル私が分史でどれだけ足掻こうとも正史にある「世界の楔」へは至れない
ヴィクトルだから正史のルドガー──君に「世界の楔」への道を開かせたのだ
ヴィクトル道標を負の因子に変え、順番に回収出来るよう各分史にばら撒いてね
アッシュ…貴様が諸悪の根源か
ルドガーどうして世界の楔へ…?
ヴィクトル質問に答えてやりたいが…今は一刻も早く為さねばならない事がある
ヴィクトル対話の時間はその後だ。失礼する
ルドガーなっ…!
エル…じゃあね
シュンッ
ルドガー待ってくれ…!
エル行っちゃった…
リタあいつ、何だったの?意味わかんないんだけど
キール随分と急いでいたな…
ユリウスヴィクトル…世界の楔で一体何をするつもりなんだ?
ルドガーわからない。でも、嫌な予感がする…俺達も行こう!
ルドガー…!中は広いな…ヴィクトル達の姿はもう見えない…
ルドガーこれが…世界の楔への道か…
エルなんか…怖い。でも、パパはこの先にいるんだよね…
ミクリオ…不思議な空間だ。こんな遺構は見た事も聞いた事もない
ユリウスそうだろうな。おそらくこの地に到達した人類は我々が始めてだ
ユリウス何が起こるかわからない。なるべく固まってはぐれないように…
ユリウスちょっと待て。キールとリタはどうした?
メルディそういえばいないな?迷子か?
ルドガー入って来た時空の裂け目はすぐそこだ。はぐれるような距離じゃないはず…
アッシュ入った際、別の場所に飛ばされたという可能性は?
ミクリオどうだろう…でも、他のみんなは一緒にいるからその可能性は低いと思うな
ミクリオ単純にここに入れていないのかも知れない。一度戻って確認しよう
グガアアァッ!
エルわわっ!?
ルドガー危ない!
ザシュッ
グルルウゥ…
バシュウゥゥ──…
メルディバイバ!消えちゃったな!…幻だったか?
ルドガーいや、確かに手応えはあった。それと、今の魔物…
ユリウス見慣れない魔物だったな。何か気になるのか?
ルドガー世界が晶化した時、ラザリスの宮殿にいた魔物なんだ。もういなくなったはずなのに…
ユリウス…やはりここでは何が起こるかわからない。一度外に出て状況を整理しよう
ルドガーそうだな。一旦ここから出よう
それぞれの使命
リタ駄目ね、入ろうとしても弾かれる。何かしらの特殊な力が働いてるみたいね…
キールルドガー達は入れて僕達は入れない…。何故だ…?
シュンッ
ルドガー…よし、みんな無事に出られたな
リタうわっ!急に出てこないでよ。びっくりするじゃない!
キールルドガー!よかった、無事だったか
キール僕達は入れなくて、どうしようかと思っていたんだ
ユリウス入れない…か
ユリウスこれは推測だが、入るのには資格がいるのかもしれないな
リタ資格?
ユリウス先に入った二人とルドガー、エル、俺の三人はクルスニクの一族だ
ユリウスそして分史の三人は道標…つまり入れた者は、オリジンの審判に関わりのある者なんだ
リタ部外者立ち入り禁止って事ね。どうにか出来ないの?
ルドガー…何か方法があればいいけど…
キールまだ情報が足りないな…。中の様子を教えてくれないか
ルドガーああ、中は──
リタ晶化現象の時に現れた魔物…ね
エルラザリスって人がフッカツしたのかな?
ルドガーいや…おそらく違うと思う。それなら魔物だけじゃなく世界ごと晶化するはずだ
ユリウスだとすると…命を失った魔物達の魂だったのかもしれないな
リタ魂?…まさか、幽霊だなんて言うつもりじゃないでしょうね
ユリウス実体はあったから幽霊というわけではないだろう
ユリウス伝承の中で、世界の楔は全ての世界のマナと魂を循環させる場所だと語られている
ユリウス命を失った者達の魂は世界の楔に集まる。人も、魔物もな
キールその魂が何らかの理由で実体化していた…という事か?
ユリウスああ。あくまで伝承を元にした憶測でしかないがな
ルドガーヴィクトル達なら何か知っているだろうか…
ユリウス我々よりは詳しいだろうが…話を聞くためには追いつかなくてはな
ルドガーすぐに追いかけよう
ルドガー…何が起こるかわからない場所だ。エルは危険だから──
エル留守番しろ、なんて言わないよね。エルはルドガーのアイボーだし
ルドガー…本当に危険なんだ。俺がエルを守り切れないかもしれない
エルその時は、エルがルドガーを守る!それがアイボーでしょ!
エルそれに、中にはパパがいる…。エル、パパが何をしようとしてるのかちゃんと聞きたい!
エルもしルドガーに置いて行かれてもエル、一人でパパを捜しに行くよ!それでもいいの!?
ルドガーそれは…
リタルドガー、これはあんたの負けよ。置いてったらこの子本気で一人で行っちゃうわよ
キールもしそうなったら、僕達は追いかけようにも世界の楔には入れないぞ
ルドガー…そうだな。それに、エルの意志の強さもよくわかった
ルドガーすまなかった、エル。アイボーとして、一緒に来てくれるか?
エルもちろん!
ミクリオ話はまとまったようだね
メルディメルディ達はルドガーと行くよ!キール達、どうするか?
キールぼく達は、今ある情報を元にどうにか中に入れないか方法を探ってみる
リタ一度研究施設に戻った方がいいわね。何らかの方法で資格ってやつがあると認識させられれば──
研究員はぁ、はぁっ!キールさん、リタさぁん!
キール?何だ?
リタあんた確か、研究施設にいた…。慌てて、どうしたの?
研究員…き、緊急事態です!この観測結果、見てください!
ペラッ
キールこれは…!
リタ嘘でしょ…!この数字、見覚えあるわ。確か前に時空の亀裂が出来た時の…
研究員その通りです!実際に、東の山の方で時空の亀裂が観測されています!
ルドガークロノスが暴走していた時のような現象が起きてるのか!?大勢の人が亀裂に飲み込まれるぞ
リタどうすればいいのよ。亀裂への対応にも骸殻の力が必要なんでしょ!?
ユリウス…手分けすればいい。新しく発生した亀裂には俺が向かおう
ルドガー兄さん…?
ユリウスヴィクトル達を追うのはルドガーが適任だろうからな
ルドガー…兄さん、ありがとう。こっちの事は任せるよ
ユリウス気を付けてな
ルドガーああ。兄さんも
リタあたし達は研究施設に戻って、亀裂が出来た原因を探るわ。あと、世界の楔への入り方もね
キール忙しくなりそうだな
メルディキールなら出来るよ!頑張ってな!
キールああ。ありがとう
ルドガーよし…それじゃ改めて向かおう。世界の楔の、その奥に
エルおー!
scene1最奥を目指して
ミクリオ世界の楔…前人未到の地か。改めて見てもやっぱり独特な景色だね
メルディまた突然、魔物が出るかも。気を付けるよぅ
アッシュどんな景色だろうと、何が起ころうと道が続いているのなら進むのみだ。…急ぐぞ
エルうん。パパ達に追いついて、何をしようとしてるかちゃんと聞かないとだもんね!
ルドガーああ。行こう!
scene2最奥を目指して
アッシュ穿衝破!
ミクリオ六行六連!
グギャア!
バシュウゥゥ──…
アッシュ流れるような六連撃…見事だ
ミクリオ君が隙を作ってくれたお蔭だよ。それに、剣士と一緒に戦うのは経験があるからね
アッシュだとしても初対面で俺の動きに合わせられる奴はそう多くない
ルドガーこの辺りの魔物はあらかた片付いたみたいだ。戦い続きだし、少し息を整えよう
ミクリオそれじゃ君も小さい頃から弟と剣の練習をしていたんだね
アッシュああ。あいつも負けず嫌いで、ほぼ毎日手合わせしていたからな。練習相手には事欠かなかった
ミクリオそうか。僕も君もそんな繋がりがある人に負の因子が憑りついたんだね
アッシュヴィクトルの計画か…
ミクリオああ。彼は仮面の男…ヴィクトルにこう吹き込まれていたらしいんだ
ミクリオ平和のためには犠牲が必要だ、と…
ルドガー今にして思えばその情報は負の因子の影響を強めるためのエサだったのかもしれないな
メルディはいな。メルディが世界では、キールに分史が知識教えてた
メルディあの時がキールにとって悪い心、揺さぶられた気がするよ
アッシュ…。俺の世界では、ルークに負の因子は道標、という言葉を残した
ルドガー負の因子を破壊した者は世界の楔へと続く道標になる…
アッシュルドガーに回収させる事まで含めて全部、奴の計画の内だったという事だ
ミクリオみんな、彼の掌の上で踊らされていたのか…
メルディそこまでして、何したいか見つけ出して、聞かなきゃな!
メルディキールが事、利用したのは、許せないけど…
メルディ互いの考え知るため話し合うの、とっても大事
メルディそうしないと悪い考えばっかり大きくなる。気持ち、すれ違っちゃうよ
エルうん。パパと、ちゃんと話ししたい
エル…エル、パパは悪い事したいわけじゃないって信じてるから
ルドガーそうだな…。ヴィクトルのやり方は確かに正しくなかったけど…
ルドガーそんな事をしたのには何か事情があるはずだ。その話はしっかり聞きたいと思う
アッシュ対話の必要性か…全く、耳の痛い話だ
メルディ対話の仕方も大事な。メルディとおカーサン、女王と王女として話すとダメだった
メルディでも親子として話したらすぐわかり合えたよ
アッシュ
ミクリオ
メルディ?どうかしたか?
ミクリオ君は、一国の王女なのかい?
メルディはいな。言ってなかったか?
アッシュそうだったのか。王族には珍しい純朴な人間だな
メルディそれ、褒めてるか?
アッシュ勿論だ。王宮という魔窟では人を信じる気持ちを忘れがちだ
アッシュ俺も見習う必要があるかもしれないな…
ルドガーそうか、そういえばお互いの自己紹介もまだだったもんな。そんな暇が今はないんだけど…
ミクリオ僕達の間にも対話は必要かもしれないね
ミクリオ例えば、ルドガー…君に確認しておきたいんだが
ミクリオヴィクトルと対話した結果、もし受け入れられないような話だった場合…
ミクリオ君達は、ヴィクトルと戦うのか?
ルドガー…出来る限りそれは避けたい。戦うって事は、彼の事情を鑑みず力尽くでこちらの正義を通すって事だ
ルドガーもし戦うとしたら、話し合うために。話し合って折り合いがつかない時はお互いが納得出来るまで話すよ
ルドガー別の世界の存在とはいえ彼と俺は同じ…どこかで折り合いをつけられるはずだ
ミクリオそれを聞いて安心したよ。僕もそうするべきだと思う
ミクリオ一方にとって邪魔だからもう片方を排除する…そんな戦いは、もう見たくないからね
アッシュ同感だ。主張が全く相反する者同士でも共存の道は必ずある
メルディワイール!みんな仲よく話し合うが一番!
ルドガーみんな…ありがとう。少し不安だったけど、お蔭で勇気が湧いて来たよ
???こんなところで談笑とは随分余裕だな
ルドガー…!誰だ…!?
時空を超える力
ルドガーあなたは…!?
ダオス仮面の男は…まだ先か
ルドガーダオス!何故ここに…!?
ダオス…それはこちらの台詞だ。休んでいる暇などお前達にはないはず
ミクリオダオス…?まさか、伝説の魔王…実在しているとは驚いた
ダオス
メルディルドガー、知り合いか?
ルドガーああ。彼は、正史のマナが減っている理由を調べていたんだ
ルドガーそうだ、ダオス。マナが減っていた原因はもう解決したんだ
ルドガーヴィクトルという男が分史にマナを移動させてたけど、それはもう止める事が出来た
ダオス…そのヴィクトルというのが仮面の男だろう
ダオス今まだ野放しの状況で何故、解決したと言える
ダオスお前は奴がここで何をしようとしているか、真意を知っているのか?
ルドガーそれは…
ダオス…どうやらお前達と話していても時間の無駄のようだ
エルパパを追いかけてどうするの…?
ダオス
エル行っちゃった…なんか感じ悪いし!
ルドガー…追いかけよう
メルディダオスをか?それともヴィクトル達か?
ルドガーまずヴィクトルだ
ルドガーダオスもヴィクトルを捜していた。ヴィクトルを追っていればどこかで会うだろう
エルうん!あの人より先にパパを見つけよう!
リタうーん…無理か。資格がないと入れない特殊な力…っていう線での検証はこれが限界ね
キール行き詰っているみたいだな
リタまぁね。情報が足りなさすぎるのよ。そっちで調べてる亀裂の方は何か進展はあった?
キールいや、大きな動きはない。計測器の数値は異常な数値を指したままだ
リタ依然として安心は出来ないわけね…
???あの、ごめん。ちょっといいかな
リタん…?
ロンドリーネ忙しそうなところ申し訳ないんだけど…
リタあんたはこの前の…!どうしたのよ?
ロンドリーネ実はダオスがあの世界の楔ってとこに入って行っちゃったのよ…
キール何だって…!?
リタちょ、ちょっと!その話詳しく聞かせなさい!
ロンドリーネわ、わかった。順を追って説明するね
ロンドリーネえっと、あの時空の裂け目の前から誰もいなくなるまで、私達は離れて待ってたんだけど…
ロンドリーネみんないなくなったね…
ダオス
ロンドリーネねえ、どうするつもり?もしかして中に入るの?
ダオス…時空の壁か。ならば…
ダオス
ロンドリーネえっ?入って行っちゃった…!
ロンドリーネ私も、入れるのかな…?えーい、ものは試し!
シュン
ロンドリーネ入れた…!でも、どうして…
ダオス…デリス・エリュシオンか
ロンドリーネえ?あ、本当だ。デリス・エリュシオンが光ってる…
ダオスだが、すぐにマナは尽きる
ロンドリーネえ、それって、どういう──
ヴォン
ロンドリーネえっ、何!?吸い込まれ──
ヴォン
ロンドリーネきゃはぁっ!!
ドサッ
ロンドリーネいてて…ここは…弾き出されちゃった?…って、私だけ?
ロンドリーネも、もう一回…!
ロンドリーネうーん…駄目ね、今度は全然入れない…さっきのキールやリタと一緒だ
ロンドリーネダオス、何をするつもりなんだろ…。世界の終わりを止めるって言ってたけど…
ロンドリーネ何だか嫌な予感がする。どうにかして追いかけないと…
ロンドリーネキールやリタならもしかしたら…ここで考えてても仕方ない、研究施設に行ってみるか
ロンドリーネ…というわけで、二人に相談しにきたの
リタ二人共、世界の楔に入れたって事?だけどあんたはすぐに弾き出されてダオスは戻ってこなかった…
キール今の話だと、デリス・エリュシオンという物のマナが尽きて弾き出されたみたいだな
キールデリス・エリュシオンとは何だ?
ロンドリーネこの指輪だよ。昔、ダオスにもらったの
キール…見たところ、何の変哲もないただの指輪のようだが…特別な力があるのか?
ロンドリーネうん。溜めたマナを使って時空を超えて移動が出来るんだ
キール時空移動…!?とんでもない力だな
キールしかし時空を超えるという点では骸殻能力に通じる部分がある…
キール…時空を超える力があれば世界の楔に入る資格があると誤認させる事が出来るのか…?
ロンドリーネダオスが中に入れたのは、デリス・エリュシオンなしで時空を超える術が使えるから…?
リタちょっと、その指輪調べてもいい?
ロンドリーネ…わかった
リタ…全く未知の構造だわ。マナは自然と溜まるようになっていて膨大な量を蓄えられるみたい
キール時空を超えるには相応のマナが必要という事か。今はどのぐらいのマナが入ってるんだ?
リタすっからかんよ。自然に溜まるマナだけで満たすのは時間がかかりすぎるわね
キール世界の楔に入るために全てのマナを消費してしまったという事か
ロンドリーネダオスの口ぶりからしてもきっとそうだと思う。何とかならないかな…?
リタ…上手く行くかはわかんないけどここにある機材を使えば指輪にマナを充填出来ると思うわ
ロンドリーネほんと!?私、どうしてもダオスを追いかけたいの!お願い出来ないかな…?
リタ任せなさい!…って言いたいところだけど、あんたも手伝ってくれる?
リタマナの大量急速充填には人手が必要なの
ロンドリーネ勿論!何をすればいいか教えて!
リタそうね…じゃあ、こっちに来て
キールふう。忙しくなってきたな。だが、これで──
キール……
キール何だ?妙な胸騒ぎがする
キール(この感覚… メルディに危機が迫る悪夢を 見た時に似ている気がする…)
キール(まさか、また何か──)
???キール!
キールうわぁ…っ!
メルディわっ!どうしたか!?
キール…メルディか。驚かさないでくれ
メルディごめんな
キールいや…それで、どうかしたのか?今、大変な状況なんだ。急用でないなら後にしてほしい
メルディそうだった。お客さん連れてきたよぅ!
キール…客だって?
メルディはいな!みんな変な夢見たり、胸騒ぎがして集まったって言ってるよ!
キール変な夢?胸騒ぎ?まさか──
scene1仮面の裏側
エルあっ!いた!
ルドガー追いついたか…!
ヴィクトル……
エルもう来たの!?魔物がたくさんいたはずでしょ
ルドガーみんなの助けがあったからな
ルドガーそれより…ダオスはどうした?
ヴィクトル何の事だ。…もしや、かの魔王がここに来ているのか?
ミクリオ本当に知らないようだね。という事は、途中の分かれ道で別の方に行ったのかもしれない
ルドガーそうだな…
ヴィクトル…それより、何故エルを連れて来た。危険だろう
エルルドガーのアイボーだもん!それに、パパの事だって心配だし
エルねぇ、パパ。ここで何しようとしてるの?ちゃんと教えて
ヴィクトル…エル。……わかった。全て教えよう
エルヴィクトル…!?でも…
ヴィクトル私がここで話をしていても何も問題はない
エル…そういう事ね。わかった
ヴィクトル…さて、私の目的だったか。そもそも君達はどうしてそこまで知りたがるんだ
ヴィクトルもしかして私が世界征服でも企んでいると考えているのか?
ルドガーそういうわけじゃないけど…
アッシュご託はいい。さっさと話せ
ヴィクトル私の目的はごくありふれた事…娘と平穏に暮らしたい。ただそれだけだ
メルディそのため、道標が必要か?メルディ達が世界に負の因子、持ってくる必要あったか?
ヴィクトルああ、勿論だ。私は世界の楔に辿り着き…オリジンの審判を達成する必要がある
ルドガー…やっぱりオリジンの審判が目的だったのか
ヴィクトルそうだ
ヴィクトルルドガーは知っているだろうが、私の世界はマナが枯渇し滅亡の危機に瀕している
ヴィクトルオリジンの審判を達成し願いを叶えれば、私の世界にマナを取り戻せる
ヴィクトルルドガー。君の言っていた、何も犠牲にしない方法というやつだよ
ミクリオ…悪い話には聞こえないな
エルうん。それだったら、エルも賛成
ルドガー…ああ。だけど…何かおかしい
ヴィクトル…何か疑問があるのか?
ルドガー最初からそれが狙いだったら負の因子を使ってマナを集める必要はなかったはずだ
ルドガーわざわざ負の因子を改造までして他の世界からマナを奪っていた…その意味は何だ?
ヴィクトルマナを奪えば正史に異変が起こり、君は異変をたどって道標を集める。その誘導のためだ
ヴィクトル何せ正史の住人である君に道標を集めてもらわないと世界の楔へは至れないのだからね
ルドガー…なるほど…筋は通る…
ヴィクトル納得したかい?
ルドガー…もう一つ
ヴィクトル…何だい?
ルドガーエルが正史にいた事だ。エルと一緒に暮らす事が目的ならどうしてエルを迎えに来なかった?
ヴィクトル…君も聞いた事があるだろう。正史世界では、同一の存在が共存する事は出来ないと
ルドガーああ。兄さんが言っていた…
ヴィクトル私はルドガーだ。正史世界に君がいる限り同一存在である私は正史に入れない
ルドガーそれなら、今ここにヴィクトルと大人のエルがいる事はおかしい…
ミクリオ僕達もだ。この世界にも僕はいるんだろう?なのにここにいられる…
ルドガーもしかして、同一存在が共存出来ないという伝承は間違いなのか…?
ヴィクトル…いや。伝承は間違っていない。そうでなければ私はエルと共に正史世界に住めばいいだけだからね
ヴィクトル…それが出来ないのは、ルドガーと私という同一存在が正史世界に共存出来ないからだ
ルドガー…だったら、何故、今──
ヴィクトル…ここが正史世界ではなくなり始めているからだ
ルドガー…!どういう事だ!?
ヴィクトル君が疑問に思った負の因子を使ってマナを奪っていた理由の一つだよ
ヴィクトルこの世界のマナを分史に移し替え、正史世界としての法則が機能しなくなるようにしていたのだ
ヴィクトル最初は、エルに持たせた懐中時計とルドガーの持つ時計がやっと共存出来る程度だった
ルドガー…そうか、この時計…エルが持っているのはヴィクトルの…つまり俺の時計と同一存在なのか
ヴィクトルああ。それから徐々にマナを移し続け正史世界のマナの半分近くを私の世界に移し替えた
ヴィクトル今やこの世界は正史世界としての完全性を失い、同一存在が共存出来るまでになっている
ヴィクトルあとは世界の楔だけだ。この世界の楔を正史から外し、私の分史に繋ぎかえれば──
ヴィクトル私の世界が正史となる
ルドガー何、だと…!?
ミクリオ君の世界の問題はマナの枯渇だったんだろう?なのに、正史にする意味は何だ
ヴィクトル何度も言っているだろう。娘と平穏に暮らし続けるためだ
ヴィクトルマナの枯渇は、オリジンの審判を達成した時に願いを叶えれば解決するだろう
ヴィクトルしかし…私の世界が分史である限り、突然世界が消える恐れが付きまとう
ルドガー…!時歪の因子か!
ヴィクトルそうだ。私の世界の時歪の因子が破壊されれば、全ては水の泡だ
ヴィクトルだが、私の世界が正史となれば時歪の因子の破壊による世界破壊の心配がなくなる
メルディ時歪の因子の破壊…キールも同じ事心配してた
ヴィクトルああ。分史の人間にとっては、いつ自分の世界が消えるかも知れない
ヴィクトルそれを解決しない限り、平穏な生活は送れない
ルドガーその時、正史…俺達の世界はどうなる?
ヴィクトル推測でしかないが…
ヴィクトル分史と同じ法則になるとすれば、世界の核となる時歪の因子がないため消滅してしまうだろう
ヴィクトルただ、分史とは根本的に世界の造りが異なる
ヴィクトル私の見立てだと…正史世界は、時間をかけてゆっくり溶けるように崩壊していく…
ヴィクトルその間に、お前とエルの力を使えば仲間や家族──大切な人達を別の分史に避難させられるだろう
ルドガー…だが、世界中全ての人を避難させる事は出来ない。違うか?
ヴィクトル…その通りだ。しかし、その事がお前にどんな影響がある?
ヴィクトル身の回りの人間が全て今まで通り一緒にいるのなら元の世界と何が違うんだ?
ルドガー何が違うか、だって…!?大勢の人が犠牲になるんだぞ!
ヴィクトル元々、顔も名前も知らない者達だ。お前の人生と接点もない。心を痛める必要はないだろう
ルドガー本気で言ってるのか…?知らない誰かなら犠牲になっても平気だって…
エルそんなのダメだよ、パパ!
ヴィクトル…普段、私達が笑って過ごしている間にも、世界のどこかで人は死んでいる
ヴィクトル今こうしてる間にもだ。病で、事故で…だが、そんな事知る由もないだろう
ヴィクトル知らなければ平気だ。心が痛む事もない。…それと同じだ
ルドガー同じじゃない…!お前の都合で死を押し付ける事が問題なんだ!
ヴィクトル…それを言うなら、ルドガー。お前もこれまでに分史世界を破壊した事があるだろう
ルドガー…っ!
メルディ…ルドガー…?
ルドガー…ある。だけど好きでそうしたわけじゃない
ヴィクトルつまり、自分や大切な者を守るため仕方がないから、時歪の因子を破壊し分史世界を消したという事だ
ヴィクトル私も同じだよ。大切なエルとの平穏な日常を守るために犠牲は厭わない
ルドガーそれをエルが望まなくてもか?
ヴィクトル…っ!
エル…ルドガーの言う通りだよ。エル、パパの言う事むずかしくてまだよくわかんないけど…
エル誰かをギセイにしたくない!その気持ちは、変わらないよ!
ヴィクトル
ヴィクトル…今はわからなくても構わない。いずれ、理解してくれるさ
メルディそれじゃダメな。エルの気持ち、無視するのよくない!
メルディきちんと話し合わないとお互いに後悔する!
ミクリオ犠牲の上に造られた世界で、何事もなかったかのように平穏に暮らす事は難しいよ
ミクリオ時間は痛みや罪の記憶を薄れさせてくれるけれど…消えるわけでは、決してない
ミクリオ幸せな日常を過ごせば過ごすほど彼女は犠牲になった人々を想い、罪の意識に苛まれるだろう
アッシュそれに、他の分史を破壊した事を指摘してルドガーを黙らせたようだがそれとこれとは話が別だ
アッシュ過去にどんな罪を背負ってようと今、新たな犠牲を出さないように動いている事とは関係ない
アッシュルドガーもだ。理屈ではなく、今自分が何を正しいと思うかを考えろ
ルドガー…そうだな。みんな、ありがとう
ヴィクトル…滅ぶのは正史だけだ。分史に生きる者達には無関係…何故、口を挟む?
ミクリオルドガーは僕の大切な友人を救う手助けをしてくれた。その恩を返したいと思うのは当然だ
メルディメルディも助けてもらった、次は助けたい!
アッシュ俺は国と弟が世話になった。生きる世界が違う程度の事、黙っている理由にはならん
ルドガーみんな…
ヴィクトルふふ…なるほど
ルドガー何がおかしい
ヴィクトル私が道標を集めた時は情など深める余裕はなかった。何しろ急いでいたのでね
ヴィクトル犠牲を出さないなどという甘い考えにもなるわけだ
ヴィクトル私達は同じ存在…話せば考えも通じると思ったがどうやら間違いだったようだ
ルドガー……
ヴィクトル世界が…環境が違えばここまで違うか
ヴィクトル結局、私達はどこまでも相容れないようだ。ここで消えてもらおう
ルドガー待ってくれ、ヴィクトル!今は相容れないかもしれないが、じっくり話し合えばきっと…
ヴィクトル話し合うよりもこの方が早い!
ミクリオ駄目だルドガー!向こうは何か使おうとしてる!
ルドガーあれは…何かの、魔導器か!?
ヴォン
メルディバイバ!
ミクリオこれは、時空の──!?
アッシュくっ…吸い込まれるぞ…!
エルきゃあぁぁっ!
シュン
ルドガーみんな!!!エルまで…!
ヴィクトル殺しはしない。別の場所へ飛ばしただけだ。このように…
ヴォン
エルきゃあっ!
ヴィクトルおっと
ガシッ
ヴィクトル怪我はないかい?
エルパパ…!どうして、こんな事するの…?
ヴィクトルそんなに悲しそうな顔をしないでくれ。全部、エルのためなんだよ
ヴィクトルここは危険だ。パパと一緒に行こう
エル行くってどこに!?ルドガーは!?
ヴィクトル…残念だが、彼らはここまでだ
エルそれって…
ルドガー…!?
グゥルルル…!!
ルドガーなっ…でかい!こんな魔物も呼び出せるのか!?
ヴィクトルこの空間を漂う魂に形を与えただけだ。創造の力を使ってね
ルドガー創造の力…そうか!ここまで襲ってきた魔物もお前の仕業だったのか!
エルパパ、やめてよ!あんな大きいの、ルドガー死んじゃう!
ヴィクトル何、ルドガーなら大丈夫さ。一度は私に勝った実力者だからね
ヴィクトルだが巻き込まれると危ない。エルはこっちに来るんだ
エルパパ、放して…!
エルルドガー…!
ルドガーエル…!
ルドガー待て、ヴィクトル!!
ウガアァァッ!!
ドゴォォォン!
ルドガーくっ…!まずはこいつをどうにかしないと!
scene2仮面の裏側
ズウゥゥン…
ルドガーふぅ…やっと倒れてくれたか
ルドガー今までの魔物のように消滅しない…。気絶しただけなのかもしれないな
ルドガー…みんなは無事だろうか。他の場所に飛ばしただけって言っていたけど…
ルドガー…居場所がわからない以上、合流するのは難しいな
ルドガーただ待つわけにもいかない。合流出来ないなら、奥を目指して進んでくれるはずだ
ルドガーみんなを信じて…今はヴィクトルを追いかけよう
ミクリオここは…
ミクリオみんなとは別の場所に飛ばされてしまったのか…
ミクリオ早く合流しなければ。だが、どっちに──
ズズゥゥゥンッ!!
グオオオォォォッ!!
ミクリオこいつは…!
ミクリオ本で見た事がある。魔界ニブルヘイムに棲むとされるギガントモンスター…!
ミクリオまさか実在したとは…
グァアアッ!
ミクリオ…どうやら、こいつを何とかしないと先に進めないようだな
メルディいたぁ…お尻打ったよー
メルディ…バイバ!あれは…
グァァァァッ!!
グルルゥ…
メルディはぁ、はぁ…上手く隠れられたな。近くに四角いのあって助かったよぅ
グルルルル…
メルディメルディが事、捜してる。ここなら見つからないけど…
メルディ……。道、塞がってる…。何とかしないと進めないな
メルディうーん…大きい魔物、怖いけど…。ルドガーが事、助けて力になるため進まないといけないな
メルディメルディはもう、じっと守られてるだけのお姫様違うから…!
メルディこっちだよ!
ガルル!?
メルディ目を狙って──レイ!
グギャアアアッ!!?
メルディグレイブ!ライトニング!
グゥゥ…ギャオオオォン!!!
メルディそこどいてくれるまで、撃ち続けるよぅ!
アッシュこの景色…外に出されたわけではなさそうだな。目的は分断か…?
アッシュ…!あれは…!
グオオォォッ!
アッシュちっ、面倒そうな奴が出てきやがった
ブオンッ!
アッシュふん、大振りだな
アッシュ悪いが先を急ぐ。すぐに片付けさせてもらう!
グオオォォォッ!
己が信念と共に
ウガアアッ!!!
ルドガーくっ、やっぱりまた動き出した…!
ブンッ!
ガキィッ!
ルドガーくっ…重い…!受け止め…きれない…!
ルドガーこのままじゃ…!
???あと3秒持ちこたえて!
ルドガー…!この声は…!
ロンドリーネはあっ!
ザシュザシュ、ジャキン!
グルァアッ!!
ロンドリーネ思ったより硬いね~!けど、よろけさせたよ!
ルドガーありがとう、助かった!けど、どうしてここに…
ロンドリーネ話はあと!一気にやるよ!
ルドガーああ!!
ルドガー全力で行く!
ロンドリーネ逃がさない!貫け、槍よ!デモンズランスレイン!!
ルドガーうぉぉぉっ!マター・デストラクト!!
グ、グガアァァァ…
ズズウゥゥゥン…!!
バシュウゥゥ──…
ルドガーありがとう、助かったよ
ルドガーもしかして、ダオスと一緒に来たのか?でも、どうやって…
ロンドリーネもう、ダオスと会ったんだね
ロンドリーネ私はダオスとは別で来たんだ。説明すると長くなるんだけど、このデリス・エリュシオンのお蔭なの
ロンドリーネダオスも、デリス・エリュシオンも時空を超える力を持ってるから…
ルドガー時空を…そういう事だったのか
ロンドリーネでも、あまり時間はないんだ。マナはたくさん充填したけど、力をみんなと分け合ってるから…
ルドガーみんな?
ロンドリーネうん。みんな呼ばれてる気がするって途中であちこちに分かれて行っちゃったけどね
ルドガーあちこちに…それって、もしかして──
ミクリオツインフロウ!
バシュゥッ!
グガァァッ!
ミクリオはぁ、はぁ…駄目だ…効いてはいるみたいだけど、この程度じゃ…!
グオォッ!
ミクリオ…っ!しまった、避けられな──
???ルズローシヴ=レレイ!
スレイ・ミクリオ蒼の四連!
バシュ!
グアアッ!!
ミクリオ…!スレイ…と、僕か!?
スレイ間に合ってよかった!
グルルル…
スレイ行こう、ミクリオ!
ミクリオああ…!
ミクリオ水神招来!
ミクリオ流れを見切る!
スレイ・ミクリオ蒼き渦に慙愧せよ!
ミクリオ手は抜かないぞ!そこだ!
スレイ・ミクリオアクアリムス!
ミクリオクリアレスト・ロッド!
ズバァァァァッ!!
ギャアアアアアッ!!
ズズウゥゥゥン…!!
バシュウゥゥ──…
スレイふぅ…
ミクリオお見事。息ぴったりだったね
ミクリオまあね。何度合わせて来た動きかわからない
ミクリオ君達は──正史世界の僕とスレイ…だね
スレイああ。会えて嬉しいよ
ミクリオ僕もだ。…増援が来た…という事はもしかして他にも誰か来てるのか?
ミクリオよくわかったね。僕達と一緒に入ったのは──
メルディ白き御手よ、清冽なる棺に──
グアァァァッ!!
ドゴォッ!
メルディあうっ!!
メルディうぅ…詠唱、間に合わないな…でもアイスニードルとかじゃ全然効かない…
???フリーズランサー!
???サンダーブレード!
グギャアアァァッ!!
メルディえ…
メルディ大丈夫か?
キール助けに来たぞ!
メルディキールに…メルディ!?バイバ!正史世界のメルディか!?
キール話は後だ!この隙に畳みかけるぞ!
メルディはいな!
メルディ・メルディ白き御手よ、清冽なる棺に封じよ
キール死の顎、全てを喰らいて闇へと帰さん
メルディ・メルディアブソリュート!
キールブラッディハウリング!
グギャアアアアァァァッ!!!
ズズウゥゥゥン…!!
バシュウゥゥ──…
メルディワイール!やったな!
メルディはいな!二人共、ありがとな!
キールやはり胸騒ぎは気のせいじゃなかったな…
キール間に合ってよかった。ぼくの計算では、ここにいられる時間は殆ど残っていないはずだ
メルディ時間?すぐ帰っちゃうか?
キールああ。間もなく、ぼく達はここから弾き出されるだろう
メルディ手伝えなくてごめんな
メルディそうか…。残念だけど、仕方ないな。後はメルディ頑張るよ!
キール…頼もしいな。任せたぞ
メルディはいな!
アッシュフンっ!
ザシュッ!
グルルルッ…!
アッシュチッ、硬い上に再生までしやがる。いくら斬っても終わらねぇ
???だったら一撃で倒しゃ問題ねぇな!
アッシュ…!
アッシュフッ、同時に行くぞ。ついて来れるか?
ルークそれはこっちの台詞だぜ!
アッシュ&ルーク魔王絶炎煌!
ドォォォォォン…!
グギャアアアアァァァッ!!!
ズズウゥゥゥン…!!
バシュウゥゥ──…
アッシュフン、手こずらせやがって
アッシュまた借りを作っちまったな、ルーク
ルークアッシュ。また会えるとは思わなかったぜ
アッシュ…お前が来たという事は、キール達が何か方法を見つけたか
アッシュしかし、お前は何故ここに…?知らせを聞いてキムラスカから来たにしては、早すぎるだろう
ルークそれが…何日か前から変な夢を見てよ。すげぇ呼ばれてるような気がしたんだ
ルークいてもたってもいられなくて呼ばれる方にたどって行ったらバロニアに着いたんだよ
ルークそしたら、スレイ達も同じような感じでバロニアに来たって言ってて…
ルークキールが言うには道標がどーたらで負の因子と絆が引き寄せ合って何とかだってよ
アッシュ…何の説明にもなってないな。かろうじて言いたい事は推測出来るが
ルークそんで、ロディの持ってた時空を超える指輪ってやつでここに入って来た
ルークそしたら呼ばれる感じがもっと強くなって、それをたどったらここに着いたんだ
アッシュ…時空を超える指輪。そんな物があるのか
ルークおう。で、その指輪でここに残れる時間が──
ヴォン
ルークっと、悪い。ちょうどここまでみたいだ
アッシュ時間に制限があるのか
ルークそういう事だ
ルーク最後まで戦えねぇのは悔しいけどな。何が起きてんのかはわかんねぇけど、後の事は頼んだぜ!
シュン
アッシュ…フン。言われなくとも
ルドガー──そうか。みんな来てくれてるんだな
ロンドリーネうん。だけど、もう時間がない…
ロンドリーネデリス・エリュシオンのマナがまた空になっちゃった…。ダオスには追いつけなかったな
ルドガーダオス…。彼の目的が何か、ロディは知っているのか?
ロンドリーネ…ううん
ロンドリーネダオスは…あの人は何を考えてるか私にもわからない…
ロンドリーネいつだって、一人で抱え込んじゃうから…
ロンドリーネ侵略者や魔王なんて呼ばれて大戦争になった事もある
ロンドリーネ今も…あの時と同じ胸騒ぎがする…
ルドガー…心配し過ぎだって言いたいけど…
ロンドリーネ本当は自分でダオスを追いたい。でも、出来ない…。だから…
ロンドリーネルドガー、お願い。ダオスが何をしようとしているのか確かめて!
ロンドリーネもし危ない事をしてるようなら止めてほしい。そして、こう伝えて…
ロンドリーネ一人で抱え込まないでって。みんなでなら出来る事だって沢山あるはずだから…
ロンドリーネもしみんなが協力しなくても…私がいるからって
ルドガーロディ…
ロンドリーネそれでも彼が…また魔王と呼ばれるような事をしてしまうのなら──
ヴォン
ルドガー…!時空の裂け目が…!
ロンドリーネお願い、ルドガー。彼を──
ロンドリーネ止めて──
シュン
ルドガーロディ…!
ルドガー…わかった、ロディ。ダオスが何を考えていようと魔王になんてさせない…!
ルドガー…先を急がないと。ヴィクトルを追っていればダオスにも会えるはずだ
scene1最強の骸殻能力者
エルパパ、放して!どうしてルドガーと話してくれないの!
エルおとなのエルもパパを説得してよ!あの樹の後ろにいるんでしょ!?
ヴィクトル静かに。彼女は今、世界の楔を繋ぎ変えようと集中しているんだ
エル…!それって、エル達の分史を正史にしようとしてるってこと!?
ヴィクトル…よくわかったね。正解したご褒美に、この場所について教えてあげよう
エルそんなのいい!
ヴィクトルそう拗ねないでくれ。私から聞いた情報をルドガーに伝えれば助けになるかもしれないぞ
エル…そんな大事な話なの?
ヴィクトルああ。きっとルドガーの助けになる
エル…わかった。聞く
ヴィクトルいい子だ
ヴィクトルまず…ここは正史と分史、全ての世界のマナと魂の循環を管理する場所なんだ
ヴィクトル見てごらん。この満天の星々…美しいだろう?
ヴィクトルあの輝き一つ一つが分史世界なんだ。私達の世界も、あの中にあるんだよ
エル…どれがエル達の世界なの?
ヴィクトルうーん、この中から探すのはさすがに骨が折れるね。何しろ数がとても多いんだ
ヴィクトルいくつあるか、わかるかい?
エルえっと…ひとつ、ふたつ──数えられないよ
ヴィクトルそうだね。正確な数はわからないが…実は手がかりはあるんだ
ヴィクトルほら、あれを見てごらん。大きな樹に機械があって、そこに数字が刻まれてるだろう?
エルうん…いち、じゅう、ひゃく、せん…すごい数だね
ヴィクトルあれは今までに作られた分史世界の数を数えているんだ。破壊された世界も含めてね
エル数えて…どうするの?
ヴィクトル…オリジンの審判は、分史世界が100万個作られると失敗になるとされている
ヴィクトルそのためにあの機械で数えているんだ
ヴィクトルあの数字が100万になる前に、精霊オリジンに審判の達成を認めさせる必要がある
エル…もし、失敗したらどうなるの?
ヴィクトル伝承によると…全ての世界の人間が滅んでしまうんだ
エルみんな死んじゃうの…?
ヴィクトルああ。だけど平気だよ。世界の繋ぎ変えが終わったらオリジンの審判はパパが達成する
ヴィクトルそうすれば審判の失敗によって人間が滅ぼされるという事はなくなるからね
エルじゃあ、早く達成しようよ
ヴィクトルそれは、もう少し後でだ
ヴィクトル先に審判を終わらせてしまうと世界の楔から追い出されるかも知れないからね
???安心したよ。オリジンの審判はまだ達成してないんだな
ヴィクトル…来たか
エルルドガー!
ヴィクトル…想定よりも速い到着だな。一体どんな手を使った?
ルドガー仲間が助けてくれたんだ。少しの時間だけここに入ってくる方法があったらしい
ヴィクトルほう…。だが今はその仲間もいない。一人でどうするつもりだ?
ルドガー一人じゃない。お前に飛ばされたみんながきっと来てくれる!
ヴィクトル…つまりお前は、仲間達を助けに行く事もせず、自分が助けてもらう事だけを考えてここに来たんだな
ルドガー違う…!俺は、みんなを信じて…
ヴィクトル認めたくはないだろう。だが受け入れるがいい
ヴィクトル私はお前を責めたりはしない。私も同じ選択をしてきたのだ。目的のために、仲間を見捨てる選択を
ルドガー見捨てたんじゃない。みんななら、無事にここに来ると信じているだけだ
ヴィクトルそうかも知れないな。だが、もし来なかったらどうする?
ヴィクトル目的のために犠牲を出すとはそういう事だ。私とて犠牲を出したいわけではない
ヴィクトルだが物事には優先順位がある。お前が私を追う事を優先して仲間との合流を諦めたように…
ヴィクトル私は娘と生きる事を優先し、かつては仲間だった者達を殺した。今は正史世界を消そうとしている
ルドガー…他の人の命は優先度が低いと言うのか
ヴィクトル…娘の命よりはずっと低い
ルドガー同じように家族を大切にしている人も世界にはたくさんいるんだ。犠牲にして、心は痛まないのか
ヴィクトル何度もした問答だな。心は痛むが、それを受け入れてでも私は娘との平穏な日常を手に入れる
ヴィクトル自分勝手だと思うなら思うがいい。それでも私は止まらない
エルパパのうそつき!ルドガーと約束してたでしょ!何も犠牲にしない方法を探すって!
ヴィクトル
ルドガーヴィクトル…頼む、もう一度考え直してくれ
ヴィクトル…わかった
エルパパ…!
ヴィクトルでは、今、ここで示してくれ。この世界も、他の世界も何も犠牲にせず世界を守る方法を
ルドガー今ここで…だって?
ヴィクトルああ。今、すぐにだ
ルドガーなっ…
ヴィクトル私だって他の方法を探したいという気持ちはあるんだ。出来る限りの事はしたい
ヴィクトルだが、時間切れだ。道標は揃い、世界の楔への道は拓かれた
ヴィクトル世界の楔を繋ぎ変え、オリジンの審判を達成する計画は今すぐ実行しなければならないのだ
ヴィクトル他の者にオリジンの審判の権利を奪われない内にな
ヴィクトル私はこの機会を逃すつもりはない。止めたいのなら、今すぐに他の方法とやらを示してくれ
ルドガーくっ…!
エルパパ、急すぎるよ…
ヴィクトルではいつまで待てばいい?考える考えると、そんな宣言だけで先延ばしに出来る問題ではないんだ
エルそうかも…しれないけど…
ルドガー…ヴィクトルの方法は間違ってる。どうしても止めなきゃいけないんだ。でも…だけど…代わりの方法は…
ヴィクトル…出ないだろう。私も長い時間をかけて導き出せなかった答えだ
ヴィクトルなんの答えも出せずにただ私の邪魔をするだけならここで退場してもらおう
チャキ
ルドガー待ってくれ…!俺は話し合いたいんだ!
ヴィクトル話し合ったところで私の望む答えは出てこない時間は有限なんだ
ヴィクトル戦いを望まないのならば帰るといい。ここにいる限り、邪魔をする意図があるものと判断する
エルパパ…!やめてよ!どうして…
ヴィクトル殺しはしないさ、エル
エルパパ…!お願い…!
ヴィクトル…危ないから下がっていなさい
エルでも…
ルドガー…エル、ありがとう。だけどヴィクトルの言う通りだ。危ないから、下がっていてくれ
チャキ
エルルドガーまで…!
ルドガー話し合いが出来ないって言うならその気になるまで戦うさ
ルドガー確かに答えは出せていないけど、俺は最後まで諦めない。そう決めたからな
エルルドガー…わかった…けど、二人とも気を付けてね…
ヴィクトルさあ…行くぞ
ルドガー来いっ!
scene2最強の骸殻能力者
ルドガーそこだ!
ヴィクトルはぁっ!
キィン!
ルドガーくっ…!以前よりも攻め込み辛い…!
ヴィクトル一度戦ったんだ。君の動きの癖は理解している
ルドガー…それは俺だって同じだ。だからわかる…!
ルドガーわざと攻撃の機会を逃しているな。守りに徹して、あなたらしくない──
エルあっ…!そっか!
エルルドガー!パパは、時間稼ぎしてる!おとなのエルを捜して!
ルドガー…!時間稼ぎだって…!?
ヴィクトル…気付いたか。だが、もう遅い
ヴィクトル少し時間がかかっているようだが──既に世界の楔を正史世界から切り離す作業は進んでいる
ルドガー…姿が見えないと思ったら大人のエルがそれを進めているのか
ヴィクトルそうだ。そして私は相棒として、お前を彼女のところには行かせない
ヴィクトル私を倒せたとしても…その時には世界の繋ぎ変えは終わっているだろう
ルドガーくっ…本当に手遅れなのか…
???貴様の覚悟はその程度か
ルドガー…!
エルヴィクトル、よけて!
ヴィクトル何!?
ズガアアァンッ!
エルパパ!!
ルドガーダオス…!
エルくぅっ…放してよ!
ヴィクトルエル、繋ぎ変えは…!?
エル…ごめんなさい。もう少しだったんだけど…
ダオス世界の楔を奪おうとするとはな。だが、その計画もここまでだ
選択の刻
ルドガーダオス。その子を放してくれ。ここなら世界の繋ぎ変えは出来ないはずだ
ダオス
ルドガーダオスの目的を聞きたい。話して平和的に解決出来るならその方がいいだろ?
ダオス…いいだろう
エル…ありがとう、ルドガー
エル大丈夫…?
エルうん、私は大丈夫。それより、ヴィクトルは…?
ヴィクトル心配いらない。声をかけてくれたお蔭で致命傷は避けられた
ルドガーみんな無事でよかった
ルドガーダオス。改めて聞く。ここに来た目的は何だ?
ダオスそれを聞いてどうする
ルドガーロディに頼まれたんだ。何をしようとしてるか確かめてほしいって
ダオス
ダオス分史世界に奪われたマナを正史世界に取り戻す。それが私の目的だ
ルドガーヴィクトルが奪ったマナの事か…その事についてなんだが、協力を頼めないか
ルドガーヴィクトルの世界のマナ枯渇問題が解決しない事には返してもらう事も出来ないんだ…
ダオス…そうではない
ダオスヴィクトルと言ったか。お前なら知っているだろう
ダオス分史世界が増える時…その世界に必要なマナは正史世界から奪われる
ダオス…違うか?
ヴィクトル…なるほど。その仮説は当たらずとも遠からずだ
ヴィクトルマナの総量は決まっており全ての世界で共有している
ヴィクトル分史が増えれば、一つあたりの世界がもつマナの量は当然、減る
ヴィクトルそれを正史からマナを奪ったのだと表現する事も出来るだろう
エルマナはみんなのもので、世界が増えたら、みんなで分けた時にもらえる量が減っちゃうって事?
ヴィクトルそういう事だね
ダオス問題はそこだ
ダオス元より分史は存在せず、全てのマナは正史世界にあったはずだ
ダオスだが、分史が増え、正史世界にあるべきだったマナは減っている
ルドガー…それを取り戻すって言うのか?それはつまり…
ダオス…そうだ
ダオス全ての分史世界を破壊し、散り散りになったマナを正史世界に再び集約させる
ルドガー…!
ダオスそのため私はオリジンの審判にて、全ての分史世界の破壊を望む
ヴィクトル不可能だな…オリジンの審判を達成出来るのはクルスニクの一族だけだ
ヴィクトルこれはクルスニク一族とオリジンとの間で交わされた契約…膨大な精霊術のようなものだ
ヴィクトルお前が何者であろうと、オリジンの審判に挑む資格はない
ダオス…問題はない。オリジンに願うのはお前達の誰かだ
ルドガーな…!どういう──
ダオス…従わなければその娘を殺す…と言ったらどうだ?
エルえっ…エルの事!?
ヴィクトル貴様…!
チャキ
ルドガーヴィクトル落ち着け!脅してるだけだ
エルだといいけど…あの目、本気に見えるよ
ヴィクトルああ。それに…話し合いの余地はないと見える
ダオスその通りだ。だが、お前は選ぶ事が出来る
ダオス全ての分史を破壊するか──
ダオスその娘もろとも死ぬかだ
ヴィクトルその前に──
ヴィクトル貴様を止める!
ダオス…愚かな
ダオス力なき存在に第三の選択肢などない
ルドガーやめてくれ、二人共!戦ったって、正史か分史のどちらかが犠牲になるだけだ!
ルドガーそれよりも、正史も分史も残せる道を探そう!力を合わせれば、必ず方法はある!
ダオス…この期に及んで甘い事を
ダオスお前がそうして対話を試みている間に正史世界は滅ぶところだったのだ
ダオスそして何もかもが手遅れになる。何も救えない
ルドガー…俺は、ただ…
ダオスこれ以上邪魔をするなら、お前から消えてもらおう
シュウゥゥ…
エル…!さっきと同じ技!
ヴィクトルお前の相手は私だ!
ドカッ!
ダオス…その力は…
ヴィクトル私はルドガーのように甘くないぞ
ダオスそうらしいな
ヴィクトルルドガー!ダオスと戦うつもりがないならせめてエルを守れ
ルドガー俺は…
ヴィクトル…っ
エル私に任せて!
エル小さいエル、こっちだよ!
エルう、うん…
ダオステトラスペル!
ズドドドッ!
ヴィクトルくらうかっ!舞斑雪!!
ガキィンッ!
ヴィクトル魔力の壁…?こんなもの…!
パリィィン!
ダオスほう…大した力だ。
ダオス分史は正史のマナを奪う。その上、貴様のような者が現れれば正史を乗っ取ろうとする…
ダオスやはり全て消し去る他はないな
ヴィクトル傲慢だな。分史にも生きている人間がいる。正史と何も変わらないんだ
ヴィクトルいずれかの世界しか残れないのなら…私は、私と娘の暮す世界を生き延びさせる!
ダオス笑止!貴様はこの場所から生きて帰さん!
ダオスエクスプロード!
ヴィクトル何人たりとも…私の願いの、邪魔はさせない!!
ドドォォォォン…!!
ヴィクトルはぁ、はぁっ…
ダオスしぶとい奴だ…
ルドガー…この戦い…どちらかが死ぬしか…解決出来ないのか…?
ルドガーダオスとヴィクトル…正史と分史…どうしてどっちかが滅びなくちゃいけないんだ
ルドガーどっちも守りたい何かのために戦っているだけなんだ!それなのに…!
ルドガー二人共、やめてくれ!殺しあう以外にも方法があるはずだ!
ヴィクトルくどい!先程も言ったはずだ。その方法を示せと!
ダオス必要ない。分史の存在は害悪…全て消し去る。それだけだ
ルドガーそれは極論だ!三人で話し合って、互いに譲歩すれば方法だって見つかるかもしれない!
ヴィクトルこの期に及んで「かもしれない」など…
ヴィクトル口ばかりで何も選べずにいる半端者が間に入るな!
ドカッ!!
ルドガーぐわあぁっ!!
ドサッ
エルルドガー!!大丈夫!?
ルドガーくっ…ああ…平気だ…
エル……。一度はヴィクトルに勝ったルドガーとは思えないね
エルどうしてちゃんと戦わないの?もしかして…どっちに味方しようか迷ってるとか?
ルドガー…そうじゃない。俺はどっちのやり方も間違ってると思う…けど…
エル何それ。そんなどっちつかずの半端な気持ちであそこにいたの?
ルドガー俺は、半端…なのか?
ルドガー(確かに俺は…あの二人のように 自分が正しいと思える答えを 出せてはいない…)
ルドガー(何も犠牲にしたくない… あの二人を止めたい… その意志は確かなものだ)
ルドガー(だが…それだけじゃ足りないのか。 俺は…)
エルルドガー…
エルヴィクトルが押されてる…。…ルドガーはここでこの子を守ってて
エルルドガーが戦わないなら、私がヴィクトルに加勢する!
ヴィクトル…!よせ、来るなエル!
ヴィクトルお前に何かあったら世界の繋ぎ変えが出来なくなる!
エルでも…!
エルじゃあ、せめてこれ!
エル受け取って!
ヴィクトルこれは…!
ダオス何を足搔こうと無駄だ。ここで朽ち果てるがいい!!
ダオステトラスペル!
ズドドドッ!
ヴィクトルくっ…!間に合え…!
ダオス……
ダオス…術をかき消したのか何だ、それは
???準備運動にしては激しい術でしたね。いきなり呼び出してこれとは、主は精霊使いが荒い
???俺達を実体化したって事は、全力でやっちまっていいんだな?
ヴィクトルああ。力を抑えて勝てる相手じゃないからな
ルドガーな、何だ…?急に何か出て来たけど…
エルヴィクトルが用意していた最終手段…人造精霊のオリジンとクロノスだよ
エルジンゾーセイレイ?
エル元はジュードが開発した精霊の力を核として動くマナを消費しない魔導器…
エルその技術を応用して分史には存在しない精霊…クロノスとオリジンを作ったんだ
ルドガー原初の精霊を、人の手で作り出したっていうのか…!
エル…未完成、だけどね
ダオス骸殻能力者に精霊か…相手にとって不足はない
人造クロノス余裕ぶっこいていられるのも今の内だ!くらえ、テトラスペル!
ダオス…!テトラスペル!
バシュバシュバシュウ…!
人造オリジンへぇ、相殺とはやりますね
ヴィクトル今が好機…!そこだ!
ダオス甘い!
ガキィン!
人造オリジン動きが止まりましたね!これならどうです!
人造オリジンメテオスウォーム!
ダオス…くっ
ドゴォォォォンッ!
人造オリジンむぅ…あれを避けるとは…
ダオス確かに強力な精霊のようだな。だが戦闘経験が足りていない
人造クロノス減らず口を!
ルドガー…すごい力だ。あれで本当に未完成なのか?
エルうん。本物のオリジンとクロノスの7割ぐらいの力しか出せないはずだよ
エルクロノスはヴィクトル、オリジンは私の力にマナを注ぎ込んで増幅させた存在…
エルけど原初の精霊の力を再現するには私達の世界にあるマナじゃ足りなかったんだ
ルドガーそれでもあの強さか…完成したらどれほど強くなるんだ…
エルそれだけじゃないよ。彼らは本物のクロノスやオリジンと同じように世界の楔の管理が出来る
エル世界の楔を繋ぎ変えた後、今度はここを奪われないように守ってもらうつもりだよ
ルドガー……
エルどうかした?
ルドガーヴィクトルがいかに入念に準備してきたのか…その年月と苦労をひしひしと感じたんだ…
エル…当然でしょ。世界を賭けた計画なんだから
ルドガーダオスだってそうだ。ずっと前から世界のマナの事を気にかけて、調べ続けていた
ルドガー…なのに俺は、何の覚悟もせずその方法を否定していただけなのか…
エル…ルドガー?
エル…何が言いたいの?
ルドガー俺には知識も何もかもが足りない…。ここにいて口を出すべきじゃなかったんだ
エル何言ってるの!ルドガーが止めてくれなきゃ世界がどっちか滅ぶんだよ!
ルドガーそれは…
エル…情けない
ルドガーえ…?
エルそうやってただ悩んでるだけなのが一番情けないよ
エルヴィクトルは悩みながらも行動し続けた。だから人造精霊だって完成した
エルあなたもヴィクトルの分史に来た時は、そうだったんじゃないの?なのに今更、足を止めるわけ?
ルドガー…っ
エル別にヴィクトルの邪魔をしないなら私はそれでいいけど…さすがに見てらんないよ
ルドガー……
エルねぇ、ルドガー。ルドガーの考えは正しいんでしょ?パパは間違ってるんだよね
ルドガーエル…
エルルドガー、自分を信じて。エルは、パパのやり方よりルドガーの考えの方が好きだよ
エルほら、ルドガー。小さい私にここまで言われてもまだ自分は半端で駄目だなんて思う?
ルドガーいや…目が覚めたよ。ありがとう、二人共
ルドガーエルは…俺と同じ気持ちでいてくれるんだよな
エル当たり前でしょ!エルもギセイはない方がいいもん。別の世界とか関係ないし!
ルドガー…そうか、そうだよな。わかったよ、エル。俺、大事な事を見逃してたみたいだ
エルえっ、なに?
ルドガーロディが言ってたんだ。一人で抱え込まないようにって。みんなでなら出来る事もあるって
ルドガーこれはダオスに向けられた言葉だったけど…
ルドガー何もダオスだけの話じゃない…ヴィクトルだってエルがいるから世界の楔を繋ぎ変えられる
ルドガー俺には同じ気持ちで寄り添ってくれる相棒がいるから…挫けてしまっても、立ち上がれる!
エルルドガー…もしかして、パパと戦うの?
ルドガー違うよ。思いついたんだ。あの二人を納得させられる方法を
エル本当!?
エルこんな土壇場で閃いた案なんて検証も出来ないでしょ
エル今すぐ確実な解決を求めるヴィクトルが受け入れるとは思えないけど
ルドガー思いつきじゃない。気付いたんだ
ルドガー俺達はもう、その答えを実践していた事に
エル…どういうこと?
ルドガー俺達は分史世界でいろんな事件に出会ってきた…
ルドガーミクリオの分史世界ではスレイを救う方法が何百年も見つからずにいた…
ルドガーメルディの分史世界では、長く続く外交摩擦から戦争が起ころうとしていた…
ルドガーアッシュの分史世界では、何年もすれ違っていた兄弟がついに命の取り合いを始めていた…
ルドガーだけどその事件は全部、別の世界から来た俺達──
ルドガーライフィセットや、リチャード、エル、ファラ、ルークやミュウが彼らと出会った事で状況が変わった
ルドガー本来接するはずのなかった人達が協力し合う事で、解決に導けたんだ
エル道標集めに時間かかってると思ったら負の因子を破壊するだけじゃなく周りの事まで解決してたんだ…
エル私達の時は急いでたからそんな余裕もなかった…
エル負の因子は見つけ次第破壊して、道標は全てヴィクトルが回収…すぐに帰る…の繰り返しだった
ルドガーそうか…。だからヴィクトルは気付けなかったのかもしれないな
ルドガーその世界だけでは解決できない問題も他の世界と手を取り合えば、道が拓けるという事に
エルそっか。一人で出来ない事は、誰かにお願いすればいいんだ
ルドガーそうだ。何かを犠牲にする必要なんてない。もし他の方法を思いつかなくても…
ルドガーどこかの世界にはきっと、いい方法を知ってる人がいる
エルでも、他の世界から知恵を借りても元の世界に戻るためには分史世界を破壊する必要があるでしょ
エルやっぱり、たくさんの分史世界が犠牲になるよ
ルドガー…それについては考えがある。オリジンの審判だ
エル審判…?
エル…あ、そうか!オリジンが願いを叶えてくれれば…!
ルドガーああ!これが、俺の出した──何も犠牲にしない方法の答えだ
ルドガーヴィクトルとダオスに伝えたい!二人共、戦いを止めるのを手伝ってくれるか
エルうん、わかった!
エル任せて!
ガキィンッ!
ダオス…こしゃくな
人造クロノスそっちこそ。あんた本当に人間か?俺達三人がかりでようやく対等だぜ…
人造オリジン長期戦なら数の多いこちらが有利です
ヴィクトルああ、だが…
ダオス…それが狙いか。ならば残念だったな
ダオスこれで終わりにしよう
シュオオオ…
人造オリジン…!とてつもない量のマナが凝縮されていく…!
人造クロノスあんなの喰らったらひとたまりもないぞ
ヴィクトルくっ…!
ルドガー待ってくれ!!
エル戦うの、やめて!
エルヴィクトルも、そこまで!
ヴィクトルなっ…!
ダオス…そこをどけ。死にたいか
ルドガー今撃てば、ここにいるクルスニク一族は全滅する。オリジンの審判が超えられないぞ!
ダオス
ヴィクトルお前達、何のつもりだ!
エル正史も分史も、何も犠牲にしない答えを見つけたの!
エルだからパパも、ダオスも、戦うのやめてー!
ダオス…まだそんな戯言を言っているのか
ルドガーダオス、頼む。戦うのはこの話を聞いてからでも遅くはないはずだ
ルドガーダオスだって、多くの犠牲を望んでいるわけじゃないだろ!?
ダオス
エルパパも、お願い…!
ヴィクトル
ヴィクトルわかった。一時休戦だ、話を聞こう
ダオス…言ってみろ。甘い主張を繰り返すなら滅ぼすのみだ
ルドガーありがとう、二人共
ルドガー全てを解決する方法、俺の出した答えは…
ルドガー全ての分史と正史で力を合わせ、あらゆる問題を解決していく事
ルドガーそのためにオリジンに願って全ての世界を繋ぎ、自由に行き来できるようにするんだ
ヴィクトル何…!?
ダオスそれで何が変わるというのだ
ルドガー何もかも変わる。自分達以外にも文明を持った世界が沢山あるとみんなが知るんだ
ルドガー自分達の世界では手に余る問題も、他の知識や経験が解決してくれる。俺はそんな場面をいくつも見てきた
ルドガー例えばヴィクトルの分史世界はマナの消費を抑える技術に長けているだろう?
ヴィクトル当然だ、私の世界にとってマナの枯渇は存亡を賭けた重大な問題だったからな
ルドガーその技術を他の世界に伝えれば全ての分史で共有しているマナを大きく節約出来るはずだ
ルドガー…その代わり、マナが豊富な世界からマナを必要としている世界に少しずつわけてもらうんだ
ダオス…全ての世界で消費するマナが減れば正史のマナが不足する事もなくなる…私の故郷を救う事にも繋がる…か
ヴィクトルそのためにオリジンの審判の願いで骸殻能力の有無に関係なく世界を行き来できるようにするのか
ヴィクトルそうなれば分史世界を破壊しなくても元の世界に帰る事も出来る…。確かに犠牲は出ないな
ルドガーああ。多くの世界に聞いてみればいいんだ。想像もつかない解決策が出るはずだ
ヴィクトル…理想論だな。問題点も多い
ヴィクトルだが…私とダオスの抱える問題は、同時に解決するか。確実とは言えないが…
人造オリジン…主。僭越ながら申し上げます。私達は世界の楔を管理する事を使命として創り出されました
人造オリジン同じ管理するのであれば…彼の言う世界を管理したく存じます
人造クロノス同じく。どうせ見守るなら、そっちの方が楽しそうだ
人造クロノス人が行き来するとか、世界の管理は尋常じゃないほど大変になるだろうけどな
ヴィクトル…私も同じ気持ちだ。だが、気持ちだけで決めていい問題ではない
ヴィクトルルドガー。現実的な問題として、歴史も立場も違う別世界の人々が手を取り合う事が出来ると思うか?
ルドガーああ、出来る
ダオス即答、か…
ルドガーミクリオ、メルディ、アッシュ…彼らは今、この世界のために力を貸してくれている
ルドガーそれに彼らの分史にあった問題も正史の知識や経験が解決への糸口になった
ヴィクトル…確かに彼らは、その恩返しとして今度はお前を助けるのだと言っていたな
ダオス…なるほど。手を取り合う事は出来るのだろう
ダオスだが…それが永久に続く保証などどこにもない
ダオスいずれ必ず争いは起こる。同じ平和を望む世界の中ですら意見がわかれるのだ
ルドガー確かにそうだ。お互い譲れないものがあって衝突する事はあるだろう
ルドガー今のダオスと、ヴィクトルのように…
ヴィクトル
ルドガーでも、それは意見の衝突であって修復不可能な分断ではないはずだ
ルドガーミクリオの分史では天族と人間が争っていたけれど、今はお互いを受け入れて平和に暮らしている…
ルドガーメルディの分史ではメルディと母親のシゼルは国を守る方法で衝突したけど憎み合ってはいなかった
ルドガーアッシュの分史でも、敵対勢力の主張も一つの意見としてアレクセイを受け入れ、許した
ルドガー…俺は知っている。人間は、話せばわかり合えるって事
ダオス…貴様の主張は理解した
ルドガーよかった…!それじゃあ、これで解決だな!
ダオス……
scene1絆を束ねて
ルドガーみんなが賛成してくれてよかった。それじゃあ、早速──
ダオス賛成?私は理解したと言っただけだ
ダオス貴様の言う方法は有効だろう。だが…分史世界を全て破壊する方がより確実だ
ルドガーなっ…!
ダオス人間は話し合える…確かにそういう者もいるだろう
ダオスだが、全ての世界の全ての者が貴様達のように善意に満ちた人間だとでも?
ダオス人を痛めつける事に悦びを覚える者もいる
ダオス自らの危険すら省みず世界を滅ぼすほどの兵器で戦争を行う者もいる
ダオスその仮面の男のように、自らの目的のためなら、他の世界を犠牲にする者も現れるだろう
ヴィクトル……
ダオス貴様の方法で起こる事はマナの譲り合いではない
ダオスいずれマナの奪い合いが始まり──やがて戦争による世界の奪い合いへと発展するだろう
ルドガーそれは、可能性の話だ!
ダオス全ての分史を破壊すればその可能性の芽を摘める
ルドガーそれは、手を取り合ってよりよい世界になる可能性をも捨てるって事だぞ!
ダオス何の問題がある
ダオス私はデリス・カーラーンを救いたい。そのために正史にマナを取り戻す。それだけだ
ヴィクトル…それだけが目的だと言うのなら口を挟まず見ているといい
ダオス何…?
ヴィクトル私達が全ての世界を繋ぎ、正史にも十分なマナが戻るよう取り計らおう
エルエルも手伝う!
エル勿論、私も!
ヴィクトル今まで誰も辿り着けなかった世界の楔への道を拓いた四人だ。何だって成し遂げられる
ルドガー…!それじゃあ…
ヴィクトルありがとう、ルドガー。私には考え付かない手法だ
ヴィクトル都合がいいように聞こえるだろうが、私にも手伝わせてほしい
ルドガーああ!
ダオス……。貴様もその夢物語を信じるというのか
ヴィクトル夢物語などではない。私達が現実にする
ダオス…そうか
ダオス…これ以上の対話は無意味だ。先も言った通り、私はより確実な方法を取る
ダオス貴様ら四人なら何でも出来ると言ったな。ではまず、私を倒してみせろ
ダオスそれが出来なければ、貴様らを屈服させ、分史世界の滅亡を願わせるのみ!
シュウウゥゥ…
人造オリジン…!またです!とてつもないマナの量が…!
ダオス消し炭にならんよう身を守るのだな
ダオスダオスレーザー──!!
バシュウウゥッ!!!
エルえっ──
エルまずいっ!避けられない…!
ルドガーくっ…!
ヴィクトル離れてろ!
ドカドカッ
エルあうっ!
ルドガーくっ…!ヴィクトル…!?
ヴィクトルエル───!!
ヴィクトルぐっ…うおおぉぉぉぉっ…!!
エルパパ────
ドォォォォォォン──!
ヴィクトルぐ、おおおぉぉっ!!!
ヴィクトル…エル、怪我は…ないか…
エルエルは大丈夫。でも、パパは…
ヴィクトルよかっ──
ヴィクトル──た…
ドサッ
エルパパっ!!
エルヴィクトル!!
人造オリジン主…!まずい──
人造クロノス魔導器が、止ま──
シュン
ルドガー人造精霊が消えた!?ヴィクトル!!
エル大丈夫、気絶してるだけ。でも…しばらく目を覚まさないかも…
エルパパ…
ダオス…これが現実だ。手を取り合うといっても、結局は対等ではない
ダオス助け合う事を理想としようとも、その能力には差がある
ダオス強者は足を引っ張られ血を流し、弱者はいつしか与えられる事に慣れ、傲慢になって行くものだ
ダオスそして…見ろ。その男は戦えず、人造精霊とやらも消えてしまった
ダオス力を合わせるなどとぬかしたところで超えられぬ限界はある。貴様らが私に勝てぬようにな
ルドガー…だったら乗り越えてやる。その限界を…!
ダオスこの期に及んでまだ現実が受け入れられぬと見える
ダオス貴様らだけで私に勝てると本気で思っているのか
ルドガーくっ…
エル次にあの技がまた来たら、今度は防ぎきれない…。勝ち目ないかも…
エルルドガー……
ルドガー…何か打開策は…
ルドガー…!あそこに見えるのは…
エルルドガー?
ルドガー…大丈夫だ
ルドガー俺達にはまだ、仲間がいる
エルえっ…?
ダオス…そろそろ幕引きだ
シュウウゥゥ…
エルまたあの技…!
ルドガーくっ…!
ルドガー手を貸してくれ──みんな!
ダオス…む
???──天光満つるところ、我は在り
エルえ、この声──
???黄泉の門、開くところに汝在り
ダオス何…!それは──
メルディ出でよ、神の雷!
メルディインディグネイション!
ドゴォォォォンッ!!
ダオスくっ…!
ミクリオルドガー!無事か!?
アッシュどうやら間に合ったようだな
エルみんな!
メルディ大丈夫か!?
アッシュヴィクトルは…倒れてやがるのか
ミクリオそして、魔王ダオス…彼は敵だったんだな。一体、どういう状況なんだ
ルドガー話すと長くなるんだが…今は戦わないと収まらない状況だ
ルドガーダオスを止めないと全ての分史世界が破壊されてしまう!
アッシュなるほど。緊急事態だという事はよくわかった
ミクリオ僕達の世界はやっと平和になったんだ。消させるわけにはいかない!
メルディキールやおカーサン…他の世界がみんなも、メルディが守る!
ダオス…何人増えようと同じだ。まとめてかかってくるがいい
ダオス理想だけでは覆せぬ絶望という名の現実を貴様達の魂に刻んでくれる!
ルドガー…エル、二人でヴィクトルを連れて安全な場所へ
エルうん!
エルわかった…!
ルドガー来い、ダオス!お前の言う限界を、超えてみせる!
scene2絆を束ねて
ルドガーはぁっ!
ガキィンッ!
ダオスここまでやるとはな…
ダオスだが…私とて、諦めるわけにはいかんのだ!
ドカッ!
ルドガーくぅっ…!
アッシュちっ…隙のない奴だ
ミクリオ四人で攻めても全く引かないとはね
メルディ強い術、たくさん使ってるのに威力ずっと下がらない…!どれだけ魔力あるか!
ダオス…そろそろ終わりにしよう。ブラックホ──
人造クロノスタイムストップ!
ダオス何っ──!
ルドガー人造クロノス!?
エルルドガー!今だよ!
エルいつの間に…!?
ルドガーエル…!わかった!みんな、行こう!
ダオス──!
ミクリオヴァイオレットハイ!!
アッシュ閃光墜刃牙!!
メルディインディグネイション!!
エル逃れられぬ運命に、抗う術なく果てろ!ブラッドカスケードッ!!
ルドガーうぉぉぉっ!マター・デストラクト!!
人造クロノス──時間だ
ダオスぐあああぁぁぁぁっ!!!
ダオスくっ…私が、このような子どもに後れを取るとは…
ルドガーこれが力を合わせるって事だ。一人一人では小さい力でも重なりあえば大きな力になる
ルドガーお前はエルの事を弱者だと言った。でも俺達は、エルの力があったから今のこの結果を生み出したんだ
ダオスふっ…偶然上手く行ったからと大きく出たものだ
ルドガー偶然じゃない。エルはいつだって俺に力をくれる存在だ
ルドガーそれが手を取り合う仲間──相棒だからな
エルえっへん!
エルふふ、いい事言うね、ルドガー
ルドガーダオス。認めてくれないか。確かに争う事もあるかもしれないけどそれ以上に助け合う事は強い力になる
ルドガーそれから、ロディからの言伝もあるんだ。一人で背負い込まないでって
ダオス
ダオス…好きにしろ
ルドガーわかった。なら──
ダオス…何だ、この手は
ルドガー俺達と一緒にこれからの世界の事を考えてほしいんだ
ルドガーダオスが懸念してた事ももっともだと思うし…その対策を考えたい
ダオス…何を言うかと思えば。どこまでも甘いな
アッシュふっ、敵を受け入れる覚悟が甘いだけの男に出来るはずがない。ルドガーを見くびるなよ
メルディそれ、ルドガーがいいところな!
ミクリオ世界の平和を望む者同士、方法論は違ってもいがみ合う必要はないからね
ダオス…ふん。その甘い考えで他の世界と渡り合えるとでも──
グラッ
エルん?なんか、揺れてる!?
グラグラッズゴゴゴゴ…
エルわわっ!?
ヴィクトルうぅ…これは…
エルヴィクトル!気が付いたの!?
ヴィクトルあぁ…寝ている場合ではない…どうやら…まずい事になったようだ
scene1明日へ
ゴゴゴゴゴゴ──
ルドガー一体何が起ころうとしているんだ!?
???世界の楔が崩壊を始めたのだ
クロノスそして全ての世界が滅ぶ
ルドガークロノス!?
人造クロノス本物…か。今頃出て来たのかよ
クロノス我は初めからここにいた。審判を見届けるのも我の使命だ
クロノスだが、それどころではなくなった
アッシュ世界が滅ぶと言ったな。どういう意味だ?
クロノス言葉の通りだ
クロノスそこにいるクルスニクの鍵が世界の楔を正史から別の分史へと繋ぎ変えようとしていただろう
エルえ、うん…。ダオスの横やりが入ったから、中断されちゃったけど…
クロノス世界の楔は今、どの世界とも繋がりを持たぬ不安定な状態にある
クロノスそこにお前達の戦いだ。この空間を保つ力は乱れ、形を保てなくなっているのだ
クロノスこのまま世界の楔が崩壊すればマナと魂の循環が行われなくなり全ての世界は滅びに向かう
メルディバイバ!一大事だよぅ!
ミクリオあなたの力でどうにか出来ないのか?
クロノス本来ならば我とオリジンの力で世界の楔を再生出来る
クロノスだが…今、我々は世界の楔に干渉出来ないようにされている
人造精霊クロノス俺達が権限を奪ったんだ。途中であんたらに干渉されたら世界の繋ぎ変えなんて出来ねえからな
ヴィクトルそれが裏目に出たか…
エル私がもう一度、世界を戻す!ヴィクトル、小さいエル、魔導器を貸して!
ヴィクトルエル、頼む…!
エルわ、わかった!はい…!
エルオリジン!
人造オリジン…状況は、聞いていました。クロノス、世界の楔の修復作業を行いましょう
人造クロノスああ。時間がねぇ。大樹のところまで急ぐぜ
ルドガー俺達も行こう。何か出来る事があるかもしれない
ミクリオああ。任せきりというわけにいかないからね
アッシュ何か手伝える事もあるだろう
メルディみんなで力合わせればきっと大丈夫な!
エルパパとダオスも行こう!
ヴィクトル私は勿論行くが…
ダオス…ここで待っていても無意味だ。行くぞ
エル……
人造クロノス……
人造オリジン……
メルディ上手く行きそうか?
エル……
ヴィクトル今は見守る他ない…
エル集中、してるんだよね…
ヴィクトルああ。私達に出来る事は何も──
ゴゴゴゴゴ…!!
ガサッ──
ミクリオ…!まずい、大樹の枝が落ち──!
ヴィクトル・ルドガーはぁっ!
ザシュッ
エルすご…息ぴったり。コッパミジン!
ヴィクトル…今出来る事は、こうして集中出来るように身を守ってやる事ぐらいだ
クロノス…その程度では無意味だ
ルドガークロノス…!どういう事だ?
クロノスこの地の中心であり最も堅牢な大樹が崩壊を始めた…
クロノスこのままでは間に合わぬ。だが…
クロノス間に合わせる方法はある。…そこの精霊達にもわかっているはずだ
人造オリジン…ええ。私達が調整すれば今の三倍は速く進められます
人造クロノス…十倍だ
人造オリジンクロノス…
人造クロノスここで嘘を言っても仕方ねぇだろ。間に合わせるのに必要な速度は十倍だ
アッシュだったら、何故そうしない
人造クロノス…それは…
クロノスこの期に及んで決断出来んか。所詮は人に作られた存在…劣化複製よ
ミクリオ…何か出来ない理由があるのか
人造オリジン……
クロノス我が答えてやろう。速度を速めればクルスニクの鍵に負荷がかかる
クロノス人の身で耐えられる負荷ではない。そいつは間違いなく死ぬだろう
エルそんな…!
ルドガー他に方法はないのか!?せっかく…誰も犠牲にしない世界が実現しそうなのに…
ダオス…結局、そのような世界はなかったという事だ
ダオスその娘を犠牲にするか、その娘を生かすために全世界を犠牲にするか…
ダオスもっとも…世界を犠牲にすれば我々やその娘も共に滅びる事になる。迷う余地はない
ヴィクトル……
エル…いいよ
ヴィクトルエル…!しかし…
エルヴィクトルらしくないなぁ。小さい私との平穏な暮らしのためにどんな犠牲でも受け入れて来たでしょ
ヴィクトルそう…だが…
エルねぇ、ヴィクトル。私、ヴィクトルがいなかったら自分の世界でとっくに死んでたんだよ
エルだけどヴィクトルに助けられて…一緒に旅をしたり、たくさん友達が出来たりした…
エルこれって、すっごく贅沢な事だよね
ヴィクトル何言ってるんだ。まだ、これからだって…
エルううん。ヴィクトル…もう、十分だよ
エルとっくに失っていたはずの命…この命でヴィクトルと小さい私が幸せに暮らせるなら、すごく嬉しい
エルねぇ、小さい私。私がパパと出来なかった事…たくさんしてもらうんだよ
エルエル…おとなのエルも一緒じゃないと、やだよ!
エル……ありがと
エル私の分も、あなたが幸せになって。そして…私よりも長生きして…綺麗なお姉さんになるんだよ
エルそんな…
エル…ヴィクトル
エル私をアイボーにしてくれて、ありがとう
ヴィクトルエル…!!
エルオリジン、クロノス。お願い
人造オリジン…その覚悟、見届けました
人造クロノス行くぞ…!
エルうあっ…ああああぁぁぁっ…!
人造クロノスよし…これならいける!
人造オリジン必ずやりとげましょう。彼女の犠牲を無駄にしないために
エルうぅぅっ…ぐぅ…っ!あああっ…!!
ルドガー…くっ、見てられない
メルディすごく苦しそうな…
エル……
ダッ
ルドガーエル!?何を…
エルエルも、一緒にやる!エルも、クルスニクの鍵だもん!手伝えるよ!
エルおとなのエルの苦しいの、エルと半分こすれば助かるかもでしょ!?
エルぐぅぅぅっ…!無茶だよ、小さい、私…っ!下手したら、あなたまで…!
エルいいから…!
エルううぅっ…!
ヴィクトル…ルドガー。私達も力を貸すぞ
ルドガーヴィクトル…?
ヴィクトル私達はそれぞれの相棒のエルを介して時計と契約し、クルスニクの鍵の力と繋がっている
ヴィクトルならば逆に、私達の力をクルスニクの鍵へと貸す事も出来るはずだ!
ルドガーそうか…!よし!
ミクリオ…僕達も何か出来ないか?
人造オリジン…可能なら、僕達にマナを分けてください!
人造クロノス四人に負担を分散するには俺達に力が必要なんだ!
ミクリオわかった!任せてくれ!
アッシュその程度なら俺にも出来る
メルディメルディがマナ、全部使っていいよぅ!
ゴゴゴゴゴ……!!!
エルううぅぅぅっ…!
ヴィクトルここまでしてまだダメなのか…!
人造オリジン僕達に出せる速度はこれが限界…
人造クロノス悪い、俺が手間取ってる。時空が乱れて安定しねぇ
ルドガー諦めるな!最後まで希望を捨てるな!!
ダオス…ふん。希望とやらで解決すれば苦労はすまい
ルドガーダオス…!
ダオス……
人造クロノス…!新たなマナが流れ込んでくる…
ヴィクトル手伝ってくれるのか
ダオス…デリス・カーラーンの存在する正史が崩壊するのは私にとっても不都合だ
エルこれなら、間に合いそう…!
エルはぁ、はぁ…
ルドガーエル、大丈夫か!?
エルうん…!もうちょっとだもん。頑張る…!
人造クロノス仕上げに入るぞ!
人造オリジン堪えどころです。どうか、無事でいてください…!
エルうぐっ、うううっ…!あああああっ…!
エルうああああぁぁぁぁぁっ…!!!
ルドガーはぁ、はぁ……どうなったんだ…?
ヴィクトル揺れが止まった。という事は…
クロノス…確認した。世界の楔は正史に繋がっている
クロノス世界の崩壊は免れた
ルドガーそうか…!
エルよかったぁ…!
ヴィクトル上手く行ったか。やったな、エル──
ヴィクトル…エル?
エル……
エル…おとなのエル…?どうしちゃったの?
エルねぇ、目を開けて?起きてよ!
ヴィクトルエル…!
ルドガーまさか…!
ダオス人造精霊の姿がない…使用者が力尽きたか
メルディそんな…
アッシュ負荷は分散されていたはずだ。それでもまだ耐えられなかったのか…
ミクリオ分散したといっても主体となって力を使う彼女にやはり負荷が集中したのかも知れない
ヴィクトルエル…!目を覚ましてくれ…!
ヴィクトル頼む…
エル……
エル…うぅ…
エルあっ…!
エル…ヴィクトル…?何、泣きそうな声出してんの…
エル…あはは…おかしい…
ヴィクトルエル…!
ルドガーよかった…!
エルみんなのお蔭で、何とかね…
エルありがとう、みんな
メルディワイール!よかったな!
アッシュ上手くいったか…
ミクリオ無事で何よりだ。気休め程度だけど、僕が治癒術で体力を戻そう
ダオス……
ダオス我が故郷を守るためとはいえ私は貴様らに力を貸し、結果として難局を乗り越えた…
ダオス立場も目的も違う者同士が争い合ったとしても、最後には力を合わせる…
ダオス貴様の提唱するその甘言を私自らが体現したという事か
ルドガー…ああ。手を貸してくれてありがとう
ダオス……
ダオス…貴様のやり方で正史世界にマナが戻るのならば異存はない。後は好きにするがいい
ダオスだが、無理だと判断した時は私はまた貴様の前に現れる。胆に銘じておく事だ…
ルドガー……
エルあれ?ダオス、帰っちゃったの?
ルドガーああ。…彼の期待を裏切らないようにしないとな
ヴィクトルさて、改めてこれからの事だが…提唱者であり正史の存在であるルドガーに進めてもらいたい
エルまずは、オリジンの審判だね
クロノス…審判はとっくに達成されている。願いを叶える者が決まったのならオリジンにそれを伝えよ
ルドガーオリジン…?どこにいるんだ?
エルあの大きな樹の中だよ!ね、パパ!
ヴィクトルああ。伝承ではそう言われている
クロノスオリジンはあの中で魂の浄化と循環を行っている
クロノス姿を見せる事は出来ないが声は聞こえているはずだ
ルドガーわかった
ルドガー俺の願いは…全ての世界を正史に繋げ、自由に移動出来るようにしてほしい!
オリジンの声…ルドガーと言ったかな
ルドガー…!
エル樹の中から声がする!
オリジンの声今の願い…そのままでは叶えられない
ルドガーなっ…どうして…!?願いに条件があるのか!?
オリジンの声条件はない。どんな願いでも叶えるよ
オリジンの声ただ…願いは一つだけだ
ミクリオ…なるほど。世界を繋げる事と、行き来を自由にするのは、別の願いという事か
メルディどっちか片方しか出来ないか?
エルでも、片方だけだったら意味ないよね…どうしよう
ヴィクトル…迷う必要はない。ルドガー、こう願え
ヴィクトル全ての世界を維持したまま時歪の因子を消してくれ…と
ルドガー時歪の因子を…?
ヴィクトル時歪の因子がなくなれば分史世界は破壊される心配がなくなる
ヴィクトルその上で、世界と世界が時空の歪みによって繋がっている形は変わらない
ヴィクトルそれならば人造精霊クロノスの力を用いれば、自由な行き来が可能になるだろう
ヴィクトル人造クロノスの力なら、意図的に時空の裂け目を作り出す事も可能なはずだ
エルそれなら骸殻能力者は自由に移動出来るね!
エルそれに人造オリジンなら、クルスニクの鍵の力を再現して他の人や物を移動させる事も出来るよ
ミクリオ限定的ではあるけど、ルドガーのやりたかった事は始められそうだね
アッシュ誰が人造精霊を呼びだすのかは慎重に検討する必要がありそうだな。課題は山積みだ
メルディメルディが世界のキール、骸殻に代わって世界を移動する方法研究しはじめてるよぅ
メルディそれ完成したらもっと自由になるな!
ルドガーそうか…。みんなで力を合わせればこの事も何とかなりそうだな
ルドガーそしてそのためには、まず全ての世界を対等にしないと始まらない
ルドガーよし、決めた──
ルドガーオリジン。俺の願いは、「全ての世界を維持したまま、 時歪の因子を消滅させる」だ!
オリジンの声その願いなら問題ないね
クロノス…待て。確かに願いは問題ない。しかし…
クロノス人間の都合による分史世界間の自由移動は認められない
ヴィクトル何だと…!
クロノス分史世界間の移動は我の管轄だ。貴様らクルスニクの一族は特別に認めていただけにすぎない
クロノス我の領域に人間風情が勝手をするなど…
オリジンの声それは残念だな…
オリジンの声オリジンの審判が終了すれば骸殻能力から因子化という制約は消え分史は今後、増えなくなる…
オリジンの声だけどルドガーの願いを叶えると分史が減る事もなくなるよね
オリジンの声世界中で生じる負の感情やそこから発生する瘴気はこれまで通り…ずっと減りはしない
オリジンの声でもルドガー達なら…他の世界の負の感情や瘴気を徐々に減らしてくれるかもしれない
オリジンの声そして瘴気の量がこの大樹で浄化出来る範囲に収まれば…
クロノス…回りくどい言い方をするな
クロノス要は、この者達の考え通りになるよう時空の移動を黙認しろと言いたいのだろう
オリジンの声そうは言ってないよ。時空に関してはクロノスの管轄だ。君に任せるよ
クロノス…まったく。仕方あるまい
ルドガー…!それじゃあ…!
クロノス…我は時空間の移動を監視している。何か不用意な行動を起こした人間は世界ごと消す事も辞さぬ
クロノスその事をゆめゆめ忘れぬようにな
ルドガー勿論だ!
ルドガーそんな事にならないように、考えていくよ。世界中のみんなで
オリジンの声…話はまとまったね。それでは──
オリジンの声君の願い、聞き届けよう
ルドガー…これは…
エル星が見えなくなっちゃった…
ヴィクトルあの星は一つ一つが分史世界だったはずだ。…一体、どうなったんだ…?
オリジンの声安心して。消えたわけじゃない。一つになったんだ
オリジンの声この正史世界と…
ヴィクトルそうか…元より、空を見上げても自分達の住む星は見えない
ヴィクトルもはや全ての世界は手の届かぬ空の星ではなく地続きの身近なものになったのか
エルあれだけの星が一つに…改めて考えると滅茶苦茶な事してるよね
ルドガーでも、誰も犠牲になっていない丸く収まって大団円…これ以上はないだろ?
ヴィクトル終わりじゃない、始まりだこれからが大変だぞ
ルドガーああ。まずは俺達の力でいろいろな世界と協力関係を結んでいかないとな
メルディ戻ったら、キールにもここであった事、伝えるよぅ!
ミクリオまずは自分達の世界への説明と説得だね。そこから輪を広げていこう
アッシュああ。反発もあるだろうが、話し合えばわかりあえる…。親善大使の腕の見せどころだ
ルドガーそれじゃあ、一度解散だな。それぞれの世界の様子も気になるだろう
ヴィクトルエルは…ルドガーと一緒に行くんだろう?
エル…うん。ルドガー、これから大変だと思うしエルはアイボーだから
エルそれに…世界が繋がったんだから、パパにはいつでも会えるもん!…だよね?
ヴィクトルああ、そうだな…冒険を頑張れ、応援してるよ
エルまた寂しそうな顔して。ヴィクトルには相棒の私がいるでしょ
エル私だってこれからも、相棒と一緒にどこまでも行くよ
ヴィクトルそうか…ありがとう、エル。これからもよろしくな
ルドガー…それじゃ、まずはみんなを分史世界に帰さなくちゃいけないな
メルディそういえばどうやって帰るか?
ヴィクトル私が送り届けよう。正史に集めた時と同じく、人造精霊の力を使えば出来るはずだ
ミクリオあの現象も人造精霊の力だったのか。…あとでその原理について是非聞かせてくれないか
アッシュ俺も聞きたい。マナを消費しない魔導器の技術はきっと欲しがる世界が多いだろう
ヴィクトル勿論だ。私の世界に戻ったら、資料をまとめて必要とする世界に渡せるようにしよう
ルドガー…こうして、全部の世界がよくなっていくのか。ワクワクするな
エルうん!これから、頑張ろうね!
クロノス手を取り合う、か…。いつまで持つか見物だな
オリジンの声相変わらずだね、クロノスは
クロノス人間がどれだけ愚かな生き物か、一番よく知っているのはお前だろう
クロノス奴らの負の感情がどれだけお前を苦しめていると思うんだ
オリジンの声…わかってる。でも、人間は時に僕達の予想を超えた奇跡を起こす事もある
オリジンの声彼らの絆を信じる気持ちが僕の審判をも乗り越えたんだ
オリジンの声僕はその力を信じてみたいと思うよ
クロノス……
クロノス奇跡か。人間に期待はしていないが…お前がそこまで言うんだ
クロノス我も見届けてやるとしよう…
scene2明日へ
トンテンカンテン…
エルここがミクリオの世界なんだ。あちこちからトントン聞こえて音楽みたいだね
ルドガーみんなが復興を頑張ってる音だ。心なしか希望に満ちているように聞こえるな
ライフィセット僕達が飛ばされた世界に、まさかまた来る事が出来るなんて…
ルドガーみんなが分史に帰る時に約束したんだ。きっとまた会いに行くって
ルドガー世界が一つになった事を四大国に説明したりで忙しくて随分と時間が空いてしまったけど…
ライフィセット僕も初めて聞いた時は驚いたよ。でも意外と世間は落ち着いて受け入れてたね
ルドガーああ。これまでにも天啓や晶化現象、アヴァロン島といろんな事件があったからな
ルドガー不思議な現象もすぐ受け入れてくれたんだと思う
ルドガー四大国の重鎮達も、平和のために必要な事として前向きに捉えてくれたよ
???来てくれたんだね
エルあっ!
ミクリオやあ、久しぶり
スレイ会えて嬉しいよ!改めてお礼をしたいと思ってたんだ
ライフィセットそんな…あれは負の因子が憑りついたせいだし気にしないでよ
エル…あれ?ミクリオ、あそこにあるのってもしかして魔導器…?
ミクリオああ。マティス式魔導器だよ
エルパパが使ってたやつ…!でも、どうしてここに?
ミクリオヴィクトルからもらった資料で作り出したんだ
ミクリオ資材の加工に使ったり、医療や生活にも大いに役立っている
ミクリオマナを消費しないから天族からも評判がいいんだ
エルエルの世界のギジュツが…なんか、嬉しい!
ライフィセットルドガーの言ってた全ての世界で手を取り合うって話、早速成果が出てるね!
ルドガーああ。これで復興が効率的に進めば成功例として他の世界にも説明しやすくなる
スレイ復興は勿論だけど、この魔導器を使えばこれからの生活が一変しそうだ
ミクリオまるで歴史書で見る、文明の転換期のようだね
ルドガー…これから、いろんな世界でそういう転換期を迎える事になるんだ
ルドガー上手く行く事ばかりではないと思う。そういう時は歴史に詳しいミクリオ達の知恵を借りに来るよ
ミクリオああ。いつでも来てくれ
ライフィセット僕も来ていいかな?天族と人間の付き合い方を学んで他の世界に伝えたりしたいんだ
ミクリオ勿論。ライフィセットも、いつでも歓迎するよ
スレイこれからは他の世界の人達や天族とも交流していきたいと思ってるんだ
スレイいつか正史にも行くから、その時は案内をお願いしてもいいかな
ライフィセットうん、わかった。こっちも、いつでも歓迎するよ
ファラわぁ…綺麗!
リチャード本当に綺麗だね。…しかし、この花畑は魔導器の実験で枯れ果てたと言っていなかったかい?
???それはな。メルディお願いして、キールに戻してもらったんだよぅ!
エルあっ、メルディ!久しぶりー!
メルディみんな!元気してたか?
ファラうん!メルディも元気そうでよかった
キール…やあ
ルドガーキール。すごいな。確か何年も命の芽生えない土地になったって聞いてたのに…
キールああ。それが新発見でね。別の世界の同じ場所の土を混ぜると生命力が戻る事がわかったんだ
キールヴィクトルが別の世界で見つけた方法だと言って教えてくれたよ
ルドガーヴィクトルはこの世界の事も手伝ってるのか
エルパパがみんなと仲良くしてくれて嬉しい!
ルドガー同じ場所の土を使う…その方法ってもしかして同一存在同士で影響し合っているって事か?
ルドガー負の因子が正史の同一存在に影響を与えていたように…
キールまだ詳しい原理は不明だが、関連性はあると睨んでる
キール…他の世界でも魔導器の濫用で土地が枯れたり疫病が流行るような被害が出ているかもしれない
キールヴィクトルがマティス式魔導器を広めれば今後はなくなるだろうけど、これまでに出た被害はそのままだ
キールその被害を少しでも元に戻せるよう今後も研究を続けて行こうと思うよ
ルドガーそれが出来ればすごいよ
キール罪滅ぼしにもならないけどな…それにメルディの方がすごい事をしてる
ファラメルディが?何をしたの?
キール四大国協定を成立させたんだ。今、この世界には大きな争いもない。これは偉業だと思う
メルディんー?大した事してないな。最初にみんな仲よくしようってメルディが言っただけ!
リチャードそれで実際に世界を動かしたんだ。本当にすごいよ
ファラうんうん、メルディはすごい!とっても立派だよ!
メルディ何だか照れくさいよぅ…
メルディけど、これはルドガーがお蔭。反対されても話し合えばわかるって信じたからだよ
ルドガー俺はメルディに教えてもらった事だ。だから、お互い様だな
メルディそれから、リチャードやアッシュと手紙やり取りしてて国同士の話し方、教えてもらったな
リチャード僕も大した事はしていないよ。だけど役に立てたのならよかった
キール僕もメルディも、他の分史世界には随分助けてもらっているし、早く恩返しをしたいと思ってる
キール完成まではまだかかるけど、多くの人や物資を乗せて分史間を移動する船を開発中だ
ファラ船?海に出るの?
キール本当の船じゃない。時空間を航行する乗り物を便宜上そう呼んでいるんだ
メルディキール、今度はみんなが喜ぶもの、作れるな!
キールま、まあな…
メルディ船出来たら、他の世界と貿易できる!リチャード、その時はアッシュと貿易協定が話するよ!
リチャードわかった。その日が来る事を心待ちにしているよ
ルーク…ったく。何でこんな森の中で密会しなきゃなんねぇんだよ
ルドガー…はは、仕方ないさ。俺達、この世界では逃亡した犯罪者なんだから
ミュウミュウはこの森、好きですの。故郷の森に似ていて何だか落ち着くですの
???この森にはチーグル族が住んでいるから、それでだろうな
エルあっ!アッシュ来た!ルークも!
アッシュ待たせたな
ルーク仕方ないとはいえ、もてなせなくて悪いな
ルークいや、まあいいけどよ…元気でやってんのか?
ルークそうだな、お蔭様で…キムラスカの王位継承者として対外的に認められたよ
ルークおー、やるじゃねえか!さすがこの世界の俺!
ルークあと、今は親善大使としてチーグル族との共存関係を築こうとしているんだ
エルチーグル族って、ミュウの仲間の事だよね?
ミュウはいですの!
ルドガーそれでこの森を待ち合わせ場所にしたのか?
アッシュああ。ミュウと接しているところを見せ警戒心を解く狙いもある
アッシュルークが考えたんだ。こいつにしては珍しく交渉事の要領を掴んでやがる
ルーク俺だって成長してんだ。ぼやぼやしてっと追い抜くからな
アッシュふん。外交も剣も、まだまだお前に後れは取らねぇ
ルークあんな事言われてんぞ。絶対見返してやれよ
ルーク当然だ。剣だって、今度の──
ルークああ、そうだ!今度「全世界闘技会」を開くんだ。お前達も参加してみないか?
ルドガー全世界…という事はもしかして他の分史や正史から…
ルークそうだ。交流を持てた各世界にはすでに案内を送っている
ルークそこでなら例の件の犯人ではなく別世界の俺として堂々と迎え入れられるはずだ
ルークなるほど、悪くねぇな。他に誰が参加するんだ?
アッシュまだ募集を始めたばかりだが…既にいくつかの世界から参加表明があった
アッシュガイアスというア・ジュールの王とアーストという名の剣士──
ルドガーその二人って…!
アッシュ知っている名か?
ルドガーああ、まぁ…
ルドガー(違う世界の同一人物だよな…。 偶然の一致かも知れないけど…)
ルドガー俺の知ってるその人は、とても強い剣士だ。きっと強敵だぞ
アッシュそうか。面白い大会になりそうで何よりだ
ルークよーし、俺は参加するぜ!全世界の中で最強は誰か教えてやる!
ルドガー俺は遠慮しておくよ。その代わり、試合は必ず応援しに行く
エルエルも試合見に行く!
ルークわかった。大規模な大会だから試合は数日に渡って行う予定だ
ルーク試合日程はまた連絡する。よかったら俺達の試合の時も応援しに来てくれ
ルドガー勿論だ
ルークおーし、そうと決まれば試合の日まで特訓だ!ミュウ、お前も手伝えよ!
ミュウはいですの!
ルドガー…闘技大会という形の交流か…。やっぱり世界が違うといろんな可能性を見られていいな
エルついたー!パパ、ただいまー!
人造オリジンおかえりなさい
エル…家間違えた!?
人造クロノス間違ってないが。というかこの辺り他に家はねえぞ
ユリウスこれが話に聞いた人造精霊か…
人造オリジンルドガーさんのお兄さんですね。はじめまして、オリジンと申します
ユリウスあ…これはご丁寧に。ユリウス・ウィル・クルスニクです
ルドガー兄さんが畏まってる…
ユリウス…人造とはいえオリジン相手…なのに腰の低い話し方をするから距離感を掴み損ねた
エルあ、もう来ちゃったの?ごめん、お出迎え出来なくて
エルおとなのエルだ!向こうからいい匂いするし、ご飯作ってたの?
エルそうだよ。ヴィクトルと一緒に腕によりをかけて作ってるとこ
エルやったー!パパのご飯だ!
エルちょっと!私とクロノスも手伝ってるんだからね
ユリウスまさか…クロノスが料理を…?
エルそう。調理時間を正確に測ってくれる優秀な料理人なんだよ
エルみんな手伝ってるの!?エルも手伝うー!
ルドガー俺も手伝うよ。ヴィクトルの技術を盗ませてもらいたいからな
人造オリジンお待ちください。あなたは調理場に入れないように言われています
人造オリジン10年かけて、この味に辿り着け…との事です
ルドガー手厳しいな…
ユリウスこう言われてしまったら修行あるのみだな、ルドガー
ルドガー兄さんは俺に料理させたいだけだろう?別に構わないけど…
人造オリジンそういうわけですから、お二人は席におかけになってお待ちください
ルドガーわかった
エルいっただきまーす!
ヴィクトル熱いから気を付けて
エルうん!ふー、ふーっ!
ルドガー…これは美味いな
ヴィクトル今日は君達が来るからいつもより気合いが入ってしまってね
人造クロノス煮込み時間も完璧なはずだ
エルそれに、この世界にマナが戻ってきたお蔭かトマトがすごく新鮮なの
ユリウス…そうか。マナは回復しつつあるんだな
ヴィクトルああ。魔導器の技術提供の代わりに多くの世界からマナを少しずつ分けてもらったんだ
ヴィクトル負の因子を使って無理やりマナを奪った世界にも借りた分を返し終わったよ
ヴィクトル勿論、正史世界にもね
ルドガーこれで全部元通り…いや、この世界にとっては環境がよくなったと思っていいのかな
ヴィクトルああ。未完成だった人造精霊もこれだけマナがあればいずれ完成させられるだろう
人造クロノスとはいえ、本来の使命である世界の楔の管理は必要なくなってしまったがな
ルドガーそうか。世界の楔の繋ぎ変えは結局してないもんな
人造オリジン今の私達の使命は世界間をつなぐ流通手段の研究開発をしているんです
人造クロノスああ。人や物を任意の世界に安全に転移させるんだ
エルメルディの世界でもそんな研究してるって言ってたよね
人造オリジンええ。その世界のキールとは意見を交換しながら研究を進めているんです
エルじゃあ、パパも研究してるの?
ヴィクトルいや。研究は人造精霊に任せている。私はいろんな世界を巡る旅をしているんだ
ヴィクトルそしてその世界に問題があれば解決する。ルドガーのようにね
エル前はそんな余裕なかったけど今回はちゃんとその世界の人達と向き合いながら旅してるんだよ
ユリウス…いい心がけじゃないか。ルドガーらしいよ
ヴィクトル別世界とはいえ兄さんにそう言われると照れるな…
ヴィクトル…私にとっては贖罪の旅も兼ねているんだ
ヴィクトル世界の状況が落ち着いてエルが私の元に帰ってくるまではこの旅を続けようと思っている
エルいいなー…エルもショクザイの旅したい!美味しい食べ物探すの!
ルドガーショクザイ違いだぞ、それは…
エルあながち間違いでもないかも。いろんな世界のご飯を食べてヴィクトルは料理の腕を上げてるし
エルへー、そうなんだ!いろんな世界のごはん食べてみたいな!
エル…あっ、そうだ!友達をよんでパーティーする約束!パパ、覚えてる?
ヴィクトル勿論だよ。…今なら他の世界の友達もみんな呼べるな
エルうん!たくさんお友達呼んでパーティーしよ!
ヴィクトル…わかった。今度集まる時は盛大にやろう
エルやったー!みんなに招待状書かなくちゃ!
ユリウスエルの交友範囲は正史世界だけでもかなり広いだろう。これは大人数になりそうだな
ルドガーいいのか、そんなに安請け合いして
ヴィクトル安請け合いなんかじゃないさ。エルが世話になっている友達だ。最高のおもてなしをさせてもらうよ
キールん?分史巡りから帰ってきたのか?
リタ久々じゃない。さっきまでロディも来てたのよ。あんた達にお礼を言いたがってたわ
ルドガーロディか…お礼が言いたいのはこっちだ。世界の楔で助けてもらって以来だしな
リタまた来ると思うわよ。この研究施設の設備を使ってマナを異星に送りたいって言ってたし
ルドガー異星…ダオスの故郷だな。正史にマナが戻った今ならそれも可能なのか?
リタ理論上はね。マナを送り込むための装置の開発にはしばらくかかりそうだわ
ルドガーそうか。それでも解決に向かってるようでよかったよ
エルキールとリタは、ここでその装置を作ってるの?
リタあたしはそうよ。キールは別の研究をしてるみたいだけど
キール…本当はぼくも別の世界を旅してみたいんだが、研究員達からどうしても必要だと言われてね
キールだけどお蔭で、ヴィクトルから聞いた別世界を座標として捉える仕組みがようやく形になりそうだよ
エル別世界を…ザヒョー…?それって何?
リタ簡単に言うと、全部の世界に行ける地図が作れるようになるの
リタここにメルディの世界があってその近くにアッシュの世界が…とかね
エルへー、すごい!
キールメルディの世界のぼくが開発している、時空を移動する船の航路を決めるのにも使えるはずだ
ルドガー本当に、力を合わせる事で問題がどんどん解決していくな
キールああ。何かに行き詰っても他の世界ではとっくに解決済の問題だったりする…
キール研究の進展の速さはこれまでの比じゃない
ルドガーそうか…。これからもっと世界を旅して交流の輪を広げていくよ
ルドガーさぁ、エル。今度はどこの世界に行こうか
エルどこでもついて行くよ!だってアイボーだもん!
エルだけど…ちょっとだけ心配
ルドガーうん?何だ?
エルルドガーにもそろそろ落ち着いてもらわないとこの世界のエルが生まれないよね
ルドガーえっ…!そ、それは…!
ルドガー…善処するよ
エルうん。そしたら今度はエルが、おとなのエルとしていろいろ教えてあげるんだ!
エル楽しみだなー
エルその時、世界はどんな風になってるのかなー