NameDialogue
「追憶の楽園」編
スレイ
スレイん…?ここは…
スレイどうしてオレはここに…?
スレイ
スレイ…そうだ!みんなは…
スレイみんなは…どうなったんだ…?
ルドガー……
ティア……
スタン……
スレイ…!ルドガー…、ティア…、スタン…!
スレイうっ…!?
スレイ……何だこれ…!?
スレイみんな 、どこに…見失ったか…
スレイ…!
ゼロス……
ヴェイグ……
エリーゼ……
スレイゼロス!ヴェイグ!エリーゼ!
エリーゼ
スレイよかった、みんな…
エリーゼわたし…行かないと…
スレイえっ…
スレイエリーゼ…!どこに…
スレイまた…!
スレイはぁ、はぁ…そうだ、ミクリオは…
スレイここは…どこなんだ!何が…
ミクリオ……
スレイ…ミクリオ…!ミクリオ!
スレイよかった!無事だったんだな
ミクリオ無事…?何を言っているんだ?
スレイミクリオ…?
ミクリオ君は誰だい?僕を知っているようだけど
スレイ誰って…ミクリオ、オレの事、忘れちゃったのか?
ミクリオ…忘れたも何も、初めて会う
スレイ…冗談だよな?
スレイ……冗談に決まってる。だって、オレ達──
ミクリオ…すまない、本当にわからないんだ
スレイそんな…、何で…!
ミクリオ悪いが、僕はこれで失礼するよ
スレイ…!待ってくれ、ミクリオ!
ミクリオ
スレイ
ミクリオ…!!
ミクリオ…夢…か
コンコン
ミクリオ…どうぞ
ローエンおはようございます、ミクリオ様
ミクリオおはよう、ローエン
ローエン…どうされましたか?お顔の色が…
ミクリオああ、いや…少し不思議な夢を見たんだ
ローエン不思議な夢…?
ミクリオ初めて会う青年…。なのに、向こうは僕の事をよく知っているみたいだった
ローエンほう…確かに、珍しい夢ですな
ミクリオ
ローエン見た夢は、すぐに人に話すかメモしておくと忘れないと申します
ミクリオなら、もう心配はないな。…とにかく早く支度をしないと。それを言いに来たんだろう?
ローエンほっほっほ、そうでした。今日はエンテレスティアの生誕祭です
ローエン天帝のお言葉を我々が直接聞ける貴重な機会です
ミクリオ天帝…ラザリス様だね
ミクリオこんな風に公式の場に招待されるのは初めての事だ
ミクリオローエンが付いてくれるのは心強いよ
ローエン私も従者として臨席を許され、大変光栄です
ミクリオでも、心を落ち着ける時間が欲しい。お茶をお願い出来るかい
ミクリオローエンの入れてくれたお茶がないと一日が始まらないからね
ローエン身に余るお言葉ですな。では、ただ今
ミクリオ……
カイルはあ…はあ…
カイル……
カイルふぅ…、何とか撒けたかな?
カイル一体どうなってるんだ?何でオレ、追いかけられてんだよ
カイルえーっと、確か…未来から飛んできて、それで森の中を歩いてたら突然あいつらに…
カイルうーん、オレ…何か悪い事でもしたっけ…?
カイル…やっぱわけわかんねぇ!景色も様子も何か変だし…何がどうなってんだよぉー!
???こっちこっち!
カイル…!やばい、誰か来た…!とにかく隠れなきゃ
シェリア待って!コレット。焦る気持ちはわかるけど走っちゃ駄目よ!
コレットごめんね、シェリア…。でも、生誕祭始まっちゃうかもって思ったら…
シェリアすごく楽しみにしているのはわかるけど、こんな森の中で闇雲に進むのは危ないわ
コレットうん…。まずは森を出なきゃ、だね
シェリアシャングレイスはすごく大きいの。だから、見通しのいい場所に出られれば見えると思うんだけど…
コレット見通しのいいところ…。…じゃあ、あっちかな?明るいし
カイル…生誕祭?お祭りでもあるのかな?
カイルん?まずい、こっちに…!
ずってーん!
コレットいったたたた…
シェリアコレット!コレット!大丈夫!?
カイルぎゅむむむ…女の子が…降って来た…
コレットあれ、誰かいる…?ご、ごめんなさい…!
カイルうわわ!そうだ!あんなところから落ちて…君、怪我してない!?
コレットえ!?えと…
カイルやっぱり、手、怪我してる!どーしよ…あ、そうだ!森を抜けて街道まで出れば手当が…
カイルえぇっと……よし、行こう!多分こっちだと思う!
シェリアあ、あの…ちょっと…!
カイルお友達もついて来て!
シェリア治癒術なら私が…って、聞いてない…
カイルすみません!そこの人!この辺りにお医者さんは…
ジュードお医者さん?どうしたんですか?
カイルこの子に怪我させちゃって…
ジュードこの辺りだと、帝都シャングレイスに行けば見つかると思うよ
カイル帝都…シャングレイス?さっきも聞いたな
ジュード君、怪我したの?ちょっと見せて
ジュードああ、これくらいなら…
カイル治ってく…!すげー!
ジュードはい。こんなものかな
コレットわぁ…ありがとうございます!
シェリアコレットー!あら…?
コレットシェリア!怪我、治してもらったよ~
シェリアよかった…!
シェリア…じゃなくて!もう!あなたコレットを勝手に連れて行かないで!
カイルご、ごめん…!慌てちゃって…
コレットシェリア、私は何ともなかったんだし怒らないであげて?
コレット元はと言えば、私が転んじゃって怪我しちゃったんだし…
シェリア…もう、わかったわ。あなたは何ともなかったの?コレットの下敷きになっていたけど…
カイルオレ?オレは何ともないよ。ありがとう!
シェリアそう?ならよかった。じゃあ、行きましょ、コレット。早くしないと本当に始まっちゃう
ジュード始まる…って、君達もエンテレスティアの生誕祭に?
シェリアええ。道に迷って予定より遅くなっちゃったけど…
ジュード僕はジュード・マティス。シャングレイスに行くところなんだ
ジュードよかったら一緒に行かない?案内出来るよ
コレットわあ、いいんですか?ありがとうございます
シェリア助かるわ。そうだ、自己紹介しなきゃ
シェリア私はシェリア、この子はコレット。さっきは怪我の治療ありがとう
ジュードどういたしまして。シェリアにコレットだね、よろしく。…君は?
カイルえ!?えっと…オレはカイル
ジュードよろしく、カイル。カイルも生誕祭に行くところなら一緒に行こう
カイル…う、うん。そうする。お祭りって楽しそうだよな!
ジュードじゃあ、こっちだよ
カイルエンテレスティアに、帝都シャングレイス…?
カイルそんなの、この時代にあったかなぁ…
カイル…とにかく、そこに行けば何かわかるかもしれないし、ついて行ってみよう
コレットわあ…!あれがシャングレイスだよね?
シェリアすごく綺麗ね!あの中心にあるのがお城かしら。ラザリス様に相応しいお城だわ
ジュードたくさんの人が集まってきてるみたいだね
カイル……すごい
カイル何なんだ、あれ。あんなでっかいのが街、なのか…?
レイヴンおや、そこの少年。もしやシャングレイスは初めて?
カイルあ、うん…。初めて、だね。こんなの、見た事ないや
レイヴンて事は、やっぱり生誕祭を見に来たクチ?
カイルいや、そういうわけじゃないよ。さっき聞いたばっかりだし
コレットカイルー!はぐれちゃうよー!
カイルあ、待って!じゃあね、おじさん!
レイヴン可愛い子と一緒にお祭り見物なんて青春だねぇ
レイヴンさっき聞いたばかり、ね…
ジュードさあ、着いたよ。この先が天帝ラザリス様がお見えになる広場なんだけど…
コレットうわぁ…人がたくさん!
シェリアこれ以上は近づけないわね…。ラザリス様のお姿、見えるかしら…
???あっ!ミクリオ様、みーっけ♡
カイルえっ?
アニスはわーん!ミクリオ様ー!
ミクリオぐっ!…君は…アニス!?
アニスきゃわーん♡覚えててくれたんですねー?
ミクリオは、離れてくれ!僕は急いで──…
ローエンほっほっほ。相変わらずモテモテですな
ミクリオローエン、笑ってないで何とかしてくれ
ローエンそれもそうですな
ローエンアニスさん、お静かに。あまり騒がれますとミクリオ様が他の方の注目を集めてしまいます
アニスはっ!そうですよねぇ、ごめんなさい…
ミクリオふぅ…
ローエンそれにしても、よくミクリオ様を見つけられましたね
アニス当然です!ミクリオ様とアニスちゃんは運命の糸で結ばれてますから!
シェリア…ねぇ、コレット。あの人、ミクリオ様じゃないかしら
コレットミクリオ様って…あ、前にシェリアが言ってた…
ローエンむ、まずいですな…。勘付かれたようです
ローエンアニスさん。ここで女性にミクリオ様が囲まれては我々は動けなくなります
ローエン彼女達を引き止めていただけませんか?
アニス私が、ですか?
ローエンええ、このような事を頼めますのはミクリオ様の事を誰よりも想ってくださるアニスさんだけです
ローエンねぇ、ミクリオ様
ミクリオあ、ああ。アニス、ここは頼んでいいかい
アニスきゅーん…!ミクリオ様のためなら、アニスちゃん例え火の中水の中、ですぅ!
アニスその代わり、ローエンさんのお茶会に今度私も招待してくださいね♡
ローエンその時は、アニスさんの好きなお菓子を用意しておきましょう
ローエンさぁ、ミクリオ様、こちらへ
アニスこらこらこらぁ!何見てるの!
コレットえ、えと…
ジュード見ちゃ駄目だったの…?
アニスミクリオ様は忙しいんだから、お声はかけちゃ駄目ですよ!
カイルねぇ、あの人は誰?有名人?
アニスええ!?あなた、ミクリオ様を知らないの!?
アニスお金持ちで身分もあって、賢くてその上容姿端麗!
アニスこの辺りでミクリオ様を知らない人はいませんよ?
シェリア私も間近でお見かけするのは初めてだけど、女の子の間ではとっても人気なのよね
ジュード確か、学問も優秀なんだよね
アニスとにかく!ミクリオ様に一般人をお相手してる暇はないんです!
カイル君は一般人じゃないの?
アニス私?私も一般人といえば一般人ですけどぉ…
アニスそんなのは愛があれば乗り越えられます!
ジュードあ、うん…そうだね。愛があればね…
民衆おおおお~!!
コレットわ…!生誕祭、始まったのかな!?
ジュードこれは、紙ふぶき…?
マギルゥ──斯様に泣く子も笑うマギルゥ奇術団!
マギルゥシャングレイスのみなさまにご挨拶の一席でございました~!
民衆いいぞーー!!
シェリア奇術団…すごい、初めて見たかも…
カイルあ~。でも、ちょうど終わっちゃったみたいだ
コレット最初から見たかったね…
???そうじゃろ、そうじゃろ♪
ジュード…え?
マギルゥせっかくの儂のスペシャルなあれやこれやを見逃すとは…死んでも死に切れんのー
アニスなっ…さっきまであそこにいたよね?一体いつの間に…!
マギルゥそんな細かい事はど~でもいいわい!それよりそこの娘、我が奇術団に入団せんかえ?
コレットわ、私ですか?
マギルゥそうじゃ、お主以外に誰がおる。儂の五感が叫んでおるのじゃよ~、お主には特別な力がある、との
コレット特別な力…
シェリア駄目よ、コレット。何だか怪しいわ、この人…
シェリア私達、時間がないの。さ、行きましょ。コレット
ジュードすみません、生誕祭をいい場所で見たいので僕達はこれで…
マギルゥこらこら、色男!場所取りくらい、お主一人で十分じゃろ
ジュードい、色男…?
マギルゥ両手に見事な二つの大輪!お主を色男と呼ばずして何と呼ぶ!
アニス二つ?私は数に入ってない…!?
カイル一応、オレもいるんだけど…
マギルゥ……可愛い顔して、なかなか隅に置けん奴じゃの♪
ジュードちっ、違います!そんなんじゃ…とにかく行こう、みんな
コレットえと…奇術師さん、ごめんなさい!じゃあ、また!
マギルゥあ、こら!待て~~いっ!ちと、からかいすぎたかのー
レイヴン奇術団、ねぇ。お祭りに乗じていろんな人間が入ってきてるね~
レイヴン今回の生誕祭はいつにも増して華やかだけど…
レイヴン何か大きな発表でもあんのかしらねぇ
ローエンミクリオ様、時間がありません。急ぎましょう
ミクリオああ、わかっ──
ドンッ
???…きゃっ!
ミクリオ…っと、すまない。大丈夫か?
ローエン大丈夫ですか、ミクリオ様。それに、お嬢さんもお怪我は…
ローエンおや、ぬいぐるみを落とされましたよ
エリーゼあ…ありがとうございます
エリーゼ
ローエンお嬢さん、やはりどこかを打ったのでは?
エリーゼあの…えと……
エリーゼ何でもないです、ごめんなさい…!
ミクリオあ、ちょっと…!
ミクリオ様子が変だったね?何かに怯えているようだったけど…
ローエン……
ベルベット……
街の男ラザリス様だ!
街の女ラザリス様ー!
街の老人ありがたやありがたや…
祭司エンテレスティアの民よ、静まれ
祭司これより、我がエンテレスティアの生誕祭を執り行う
祭司まずは、天帝ラザリス様の御言葉を賜る
ラザリス──エンテレスティアのみんな…僕は、君達を誇りに思うよ
ラザリス僕の…このエンテレスティアは長きに渡り争いのない平和を保ち、またこうして今日を迎える事が出来た
ラザリスこれも全てここにいる君達…エンテレスティアの民達が平和を祈り、愛してくれたから
ラザリス次も、この次も…ここでまた、こうやって君達と共に過ごせるように
ラザリス永遠に続く平和と幸福を祈ろう。僕と一緒に
祭司ラザリス様の祈りのままに!
民衆ラザリス様の祈りのままに!
コレットラザリス様の祈りのままに…
ジュード…優しい祈りだね。僕らが日々穏やかに過ごせてるのはラザリス様のお蔭だ
コレットそだね。ラザリス様の祈る平和と幸福、私達一人一人が大事にしないと
シェリアええ。ラザリス様は私達の全てだから
レイヴン盛り上がってるねぇ…ん?
ベルベット
レイヴン…!超ド級のすんごいクールビューティー…
レイヴンちょ…抜群のスタイルに、あの格好…あれは罪でしょ…!
レイヴンいいねぇ、たまんないわ~
レイヴン…って、あら?
ミクリオ
ローエン…素晴らしい御言葉でしたな、ミクリオ様
ミクリオああ。今改めてこの場で誓いを立てるよ、ラザリス様の祈る平和を守ると
ローエンここにいる誰しもが、同じ気持ちでいる事でしょう
ローエンラザリス様は、エンテレスティア全ての民の希望──…む?
ミクリオどうかしたのか、ローエン
ローエンいえ、何か観衆の様子が…
ミクリオ…?
街の女きゃあ!何!?
ベルベットどいて
街の男おい!何だ何だ!?
ベルベット
神兵神聖なこの場を汚す不届き者よ
神兵下がれ!ラザリス様の御前だぞ
ベルベット
神兵下がらぬか…捕えよ!
ベルベットどけ。邪魔をするなら…
神兵させるか!
ベルベット容赦しない!
神兵うわぁああ!
ベルベット
ラザリス…君は?
ベルベット名乗る必要はないわ。あんたはここで死ぬんだから
ベルベット…顔を見せなさい!
ラザリス
ベルベット…!
ベルベットふん…。みんなが崇める天帝様がこんな子どもだったなんてね
ラザリス生誕祭が滅茶苦茶だね
ベルベット滅茶苦茶なのはあんたよ
ベルベットこんな世界…願い下げだわ
ベルベットあんたを葬って、あたしはあたしの世界を取り戻す
ラザリスこんなに…美しいのに…
ラザリス君にはそうじゃないみたいだ。残念だよ
ベルベットこれで…終わりだ!ラザリス!
ラザリス
ベルベット何…!?
ラザリス…少しの間、おやすみ
ミクリオあれは…緊縛の術…!?あんなの、初めて見る…
ローエンラザリス様のお力でしょうか。それとも…
ベルベットこんな…
ベルベットラザ…リス…
ラザリス連れて行ってくれるかい?
神兵はっ!
コレットびっくりした…
シェリアラザリス様に刃を向けるなんて…処刑、されてしまうのかしら…
ジュードラザリス様の事だ。そんな事しないよ
ザワザワ…
ラザリス
ヴァン危ないところだったな
ラザリス…知ってたんだろう?あの「咎人」の存在を
ラザリスご丁寧に警備まで手薄にしてさ
ラザリス僕を囮にするなんて…君って本当に食えない奴だね
ヴァンふっ…
ベルベット…んここは…
衛兵起きたか
ベルベットここはどこ?
衛兵見てわからんのか
衛兵あのような無礼を働いて生きていられるのだ。ラザリス様の慈悲に心から感謝する事だな
ベルベット慈悲…?そんなもの、まやかしよ
ベルベット見てなさい…今に…
ベルベット明るく、光に満ちた世界──…平和な笑い声──…
ベルベットそんなものは、全部嘘
ベルベットあいつを殺してすべて暴いて見せる。この偽りで出来た世界を───!

NameDialogue
scene1脱獄
ベルベット
ベルベット…こんな世界、絶対に認めない
ベルベットラザリス…あんたと、この世界を覆う化けの皮はあたしが剥ぎ取ってやるわ
ベルベットそして今度こそ必ず、この手で「あいつ」を……
ベルベット……
ベルベットそのためにもまずはここを脱出しないと──…
コツ…
ベルベット…!
コツ…コツ…コツ…
レイヴンさーて、例のお嬢さんはどこにいるかなっと…
レイヴンおっ、早速はっけ~ん!宮殿の地下牢に、こんな素敵な美女がいるとはねぇ
ベルベット
レイヴンしっかし、これまたクールビューティな…
カシャンッ
レイヴンん?
ベルベット用件があるならさっさと言いなさい
ベルベットそれとも何、あたしを処刑しにでも来たの?
レイヴンまぁまぁ、落ち着いて。若い子は急ぎ癖があるからよくないわね
レイヴン初対面同士、こういうのはまず挨拶からって相場は決まってるもんでしょ
ベルベットあいにく、処刑人と話してるほど暇じゃないの
レイヴン処刑人?…ああ、お嬢さん何か勘違いしてるみたいだから言っとくけど…
レイヴンおっさん、処刑人でもなければ警備兵でもないし、安心して──
ベルベット…なら、何者なのよ
ベルベットここはラザリスの宮殿よ。それなりに警備だっているはず
ベルベット…関係者じゃないなら、どうやってここまで来たわけ?
レイヴンおよ?安心させるつもりが逆に警戒させちゃった感じかしら
ベルベット…つべこべ言わずに目的を言いなさい
レイヴンまあまあ、そんな怖い顔しなさんなって。せっかくの可愛い顔が台無しよ
レイヴン…それよりお嬢さん、こんな暗い牢獄、とっととおさらばしたいーとか、思わない?
ベルベット…!
レイヴン名前、教えてくれたらこの扉開けてあげてもいいけど~
ベルベット名前…?
レイヴンそそ。名前がわからなけりゃ口説けもしないってね
レイヴンほら、これが条件。どうする?
ベルベット…ベルベットよ
レイヴンベルベットちゃん、ね。へぇ、可愛い名前じゃないの
レイヴン俺はレイヴン、よろしくね。んじゃ、約束通り…
カチャ…カチャカチャ…
ガチャン!
キイイ…
レイヴンはい、この通り。牢の扉が開きましたよっと
ベルベット…本当に助けるのね
レイヴンまぁねぇ。牢に入る前のベルベットちゃんの持ち物もほら、この通り揃えておいたわよ
ベルベットあたしの武器まで…一体どうやって…
レイヴンおっさん、準備いいでしょ
ベルベット
レイヴン手厳しいなぁ。一言くらいくれても罰は当たらないと思うけど
ベルベット
レイヴン無視、ね。はぁ、おっさん悲しい──
レイヴン…っと、ベルベットちゃん。そんなに慌ててどこに行こうっての?
レイヴンラザリス様なら今この宮殿にはいないけど?
ベルベット…!
レイヴンまあ、宮殿って言うか、シャングレイスにはいないって言った方が正しいかも──
ベルベット何であんたがその事を…?
レイヴンなぁに、風の噂でね
ベルベットラザリスはどこなの?知ってるなら言いなさい
ベルベットもったいぶらずに吐いた方が身のためよ
チャキッ
レイヴンうわっと…!剣なんか突き付けて…物騒なお嬢さんだ事
レイヴン…けど、脅したところで無駄よ。だって、おっさんこれ以上の事なーんも知らないし
ベルベット…本当に?
レイヴン本当、本当!信じてって!
ベルベット……
レイヴンほっ…助かった
ベルベットラザリスがどこへ行ったのか…宮殿内の人間から情報を聞き出して居場所を突き止めるしかないわね
レイヴンえ?助けてあげたのに、置き去り?
レイヴンちょ、ベルベットちゃん!待ってってば──
衛兵お前達、そこで何をしている!
ベルベット…!
レイヴンあら、ばれちゃった?もう少しくらい余裕はあると思ってたんだけど
ベルベットちっ…
レイヴンうおっと、待って待って!おっさんを置いてかないでってば!
衛兵脱獄だ!あいつらを捕まえろ!
scene2脱獄
レイヴン──その先を右
ベルベット
レイヴン次は左。そしたら階段があるから、そこを…
衛兵いたぞ、あっちだ!
衛兵逃がすな!
ベルベット…関係者じゃないって割にやけに詳しいのね
レイヴンまぁね
ベルベット…にしても、衛兵の数が多いわ
レイヴンそりゃあね。重罪人を収監してるわけだから、警備も厳しくなるのも当然でしょ
ベルベット重罪人?
レイヴン誰それ、って顔しないの。ベルベットちゃんの事でしょ
ベルベット
レイヴンあのラザリス様を、衆人環視の中襲うなんて前代未聞だわ
レイヴンいやあ、驚いたの何のって。まさかラザリス様に不満を抱く人がいるとはねぇ
レイヴン何が気に入らなかったんだか
ベルベット不満なんかじゃない。そのラザリスが奪ったのよ、あたしの世界を
ベルベットあたしはただそれを取り戻したいだけ
ベルベット…成すべき事のために
レイヴン成すべき事…?
ベルベット
ベルベットこれ以上話す義理はないわ
レイヴンやっぱりつれないねぇ。こうして一緒に、苦難を乗り越えようとしてるのに
レイヴンこうやってるとだんだん俺様に、仲間意識を感じてきたりしない?
ベルベットあんたが何者かもわからないのに、そんなもの芽生えるわけないでしょ
レイヴンあっ…はい、そうですか
ベルベットそれより、出口はまだなの?
レイヴンそれならもうすぐ近くよ。向こうの角を曲がった先
ベルベットそれを早く言いなさいよ
レイヴンいや、でもねえ…
衛兵見つけたぞ!
衛兵ここは通さん!おとなしくしろ!
ベルベット
レイヴンま、当然こうなるわよね。思ったよりも、衛兵の数が多いかも
ベルベット何人いようと関係ないわ。あいつらがあたしの邪魔をするなら、全員倒すだけよ
レイヴンおーおー、勇ましい事で
ベルベット巻き込まれたくなかったら、あんたはどこかへ行けば?
レイヴン今更遅いでしょ。やります、やりますよ
ベルベットそう。だったら行くわよ!
scene1天帝の行方
レイヴンはー…ようやく地下牢から抜け出せたわね
レイヴン道中の衛兵は一人残らず倒したけど、気休めね。脱獄の情報も少しすれば宮殿内に知れ渡るだろうし
レイヴン騒ぎが大きくなる前に、ベルベットちゃんの気になる情報を調べるとしますかね
ベルベット…何であんたがやる気なの。これはあたしの問題よ、ついてこないで
ベルベットラザリスの居場所くらい、あたし自身の手で見つけられるわ。あんたの手を借りなくてもね
レイヴンそうは言われてもこっちにも事情ってのがあんのよ
レイヴンベルベットちゃんが嫌でもおっさんは勝手に手を貸すからね
ベルベットどういう事?あんた、一体何が目的なわけ
レイヴンまあまあ…それより、ほら。こんな話してる暇ないんじゃない?
レイヴン衛兵に気付かれたら応援も来ちゃうし、早く行動しないとね
ベルベット
ベルベットあんたが何をしようと勝手だけどあたしの邪魔はしないで
レイヴンそれは勿論。んじゃ、行きますかね
ベルベットここが大広間かしら…
ベルベット…!
衛兵1そっちはどうだ?
衛兵2特に異常はない。引き続き警備にあたる…
ベルベット…行った…わね
レイヴンここも衛兵だらけね。はぁ、先に進むのも一苦労だわこりゃ
ベルベットでも、あの様子…。あたしが脱獄した事はまだ知れ渡ってなさそう
レイヴンま、けどそれも時間の問題だわね
ベルベット…!
レイヴンまたぞろぞろと…
衛兵3今日も異常なし、っと。ほんと、平和だよなー
衛兵4ラザリス様のお蔭さ。視察であちこち行ってらして大変だろうに
衛兵3民思いの素晴らしいお方だよっと、そうだ。次の見張り番に見回りの報告をしないと
衛兵3その後ヴァン様へのご報告か…緊張するな…
衛兵4粗相のないように気を付けろよ
衛兵3ああ、勿論だ
ベルベットヴァン…確か、ラザリスの側近の──
レイヴン…なるほど。確かに宰相様ならラザリス様の行先を知ってるかもしれないわね
ベルベットなら…
レイヴンベルベットちゃん、宰相様のところに行くつもり?
ベルベットええ
レイヴン宰相様の周りを探るってわけね。随分と大胆な事で
ベルベット今はそれしか方法がなさそうだわ
レイヴンなるほど。それで?
ベルベットあの衛兵の後を追えば確実にヴァンにたどり着ける。でも…
レイヴンだいぶ時間がかかるわね。先に次の見張り番に報告に行くって言ってたから
ベルベットそれだけこっちが見つかる危険も増す…
レイヴンおっさん、お偉いさんの居そうな場所はいくつか見当つくんだけどなぁ…
ベルベット例えば?
レイヴン宮殿の中でも重要な役どころの人は個室を与えられていてねぇ
レイヴン宮殿の上層部にその個室が並ぶ階があるらしいわ
ベルベットなら、そこにヴァンの部屋があってもおかしくないわね
ベルベット時間を無駄に出来ない。そこに向かうわよ
レイヴンはいよ
scene2天帝の行方
ティア
ティア兄さん、部屋に飾る花は、私が選んでみたのだけれど…
ティアその…どうかしら?
ヴァンああ、綺麗だ。それに香りもいい
ティアふふっ、気に入ってくれてよかった
ティア中庭に咲いている花の中から選ぶしかないから、どうしても種類に限りはあるけれど…
ティア
ヴァン…外の世界が気になるか、ティア
ティア…べ、別に、そんな事は……
ティアただ…外にはどんな花が咲いているのか…
ティアひょっとしたら、そこには見た事のない花があるかもしれない…
ティア…そんな風に思っただけよ
ヴァンフッ…お前は正直だな
ヴァンその様子だと、生誕祭に出られなかった事も、まだ気にしているようだが
ティアそれは──…
ティア
ヴァン確かにお前の言う通り、宮殿の外には、ここでは見られぬ多くの花が存在する
ヴァンしかし、その花も踏まれれば終い…。…こことは違い、外の世界はそれだけ危険も多いという事だ
ティア……
ヴァン…わかってくれるな、ティア。私はお前を危険に晒したくないのだ
ティア兄さん…
ティア私の事を心配してくれてありがとう。でも、兄さんが考えているような事にはならないわ
ティア私はそんな兄さんを裏切るような事、したくはないから
ヴァン…そうか。私の杞憂だったようだ
ベルベット今までの階と様子が違うわね。おそらく、ここが…
レイヴン警備が厳重な事で。いかにもお偉いさんがいそうな気配だわ
ベルベット…進みながら、ヴァンの部屋を探すわよ
レイヴンついでに部屋に宰相様が居てくれると、ベルベットちゃんとしては助かるわね
ベルベット居なければ待ち伏せる、それだけの事だわ
scene1深窓の姫君
レイヴンちょっ、ベルベットちゃん、ガンガン行きすぎだって!
レイヴン急ぐ気持ちはわかるけど、もう少し慎重に動かないと…
ベルベット言われなくてもわかってるわ
コツ…コツ…
ベルベット…!
レイヴンん?
ベルベット誰か来るわ。隠れて
ティア兄さんが元気そうで安心したわ。最近忙しそうにしてたから
衛兵1ヴァン様も妹君のティア様にお会い出来て、嬉しそうでしたね
ティアそうかしら…
ティアところで、ラザリス様はいつ頃戻られるのかしら
衛兵1申し訳ありません、自分は存じ上げておらず…
ティアそう…いつも遠方に出向かれて大変ね
レイヴン兄さんって…。あの娘、宰相様の妹?
ベルベットだとしたら…
ベルベット
ベルベット娘の後を追うわよ
レイヴンありゃま。宰相様の部屋探しからいきなり方針変更?
ベルベットあの口ぶり…ラザリスの行方を知っている可能性は高いわ
ベルベットここからヴァンの部屋を探し出すより、あの娘から話を聞き出した方が手っ取り早そう
レイヴンなるほどねぇ。ま、大事になる前に、彼女が話してくれる事を祈るわ
レイヴンさてと、んじゃおっさんはここらでお暇するわね
ベルベット…随分勝手な話ね
ベルベット頼んでもないのについてきたと思ったら、今度は急に去るなんて
レイヴンある程度情報のあてはついたし、おっさんはもう用済みでしょ?
レイヴン可愛いベルベットちゃんのお役に立てて、おっさん大満足~みたいな
ベルベット
ベルベット…止めはしないわ
レイヴンう…最後の最後まで本当クールなんだから…。ま、けど…
レイヴンだいぶ話も出来たし、また今度があればその時はよろしくね
ベルベット今度なんてあるわけ…
レイヴン先はわからないもんだよ?んじゃ、またね。ベルベットちゃん
ベルベット…結局あいつは何だったの…
ベルベット…ま、いいわ。あの娘を追わないと
scene2深窓の姫君
カチャ…
ファラあっ!お帰りなさいませ、ティア様!
ティアただいま、ファラ
ファラヴァン様のところに行ってらしたんですか?
ティアもう、ファラったら、またそんな固い口調で
ティア今は他に誰もいないわ。普通にしてくれていいのよ
ファラそう?じゃあ、そうするね!
ティアええ、その方が私も気が楽だわ。あら…私の部屋を掃除してくれたのね
ティアファラ、いつもありがとう。本当に助かっているわ
ファラお礼なんていいよ。ティアのお世話をするのがわたしの仕事なんだから
ファラほら、見てティア!窓だってピッカピカに磨いておいたんだから
ティアどうりで日の光がいつもより明るく差し込んでいると思ったわ
ファラ本当は窓を開けて、ぱーっと思い切り風を通せるといいんだけど
ティアそれは難しいわね。窓には格子が嵌まっているから…
ファラティア…
ティアそういえば、この間聞かせてもらったお店の話、また聞きたいわ
ファラあっ、ドーナツ屋さんの話ね!実はあそこのお店、昨日から新しい種類のドーナツが売られててね
ファラすっごく美味しいんだ~!今度買ってきてティアにもわけてあげる!
ティアありがとう。その日が楽しみね
ファラうん!楽しみにしてて!
ファラそれじゃ、私そろそろ行くね。何かあったらいつでも声かけてね!
ティアわかったわ。またね、ファラ
カチャ…
バタン
ティア
ティアふう…
カタン…
ティア…!
ティア誰!?
チャキッ
ベルベット動かないで
ベルベットそれ以上動くと、この剣の切っ先が、あんたの喉に突き刺さるわよ
ベルベット大人しくこちらの質問に答えれば、危害は加えない。わかった?
ティア
ベルベット…ラザリスは今どこにいるの?あんたの知ってる事を、洗いざらい話しなさい
ティア
ベルベットさあ、早く──
ティアはあっ!
カシーン!
ベルベットな…!
ベルベットこの状態から、剣を払うなんて…大した身のこなしね
ベルベットどうやら誤解していたみたい。あんた、ただの大人しいお姫様じゃなさそうね
ティアあなたは何者なの…!?どうしてこんな事──
ベルベットもう一度聞くわ。ラザリスは今、どこにいるの
ティア
ベルベット…答えないなら仕方ないわね
チャキ…
ティア…!
scene1欠けた心
ベルベットはああっ!
ティアはっ!
キィィンッ!
ベルベット
ティアはあ…はあ…
ベルベット…まさか宮殿の衛兵よりも強いだなんてね
ベルベット──あんたは何者?
ティア今まで戦った事もないのに、身体が勝手に…
ティア私…どうしてこんな…
ベルベットあたしに聞かれたって知らないわよ。それより…
ティア近寄らないで!
ベルベット
ティア…侵入者ね。あなたこそ、一体何者なの?
ベルベットさぁね。少なくとも味方じゃない事はわかってもらえたかしら
ティア…目的は何?宮殿に侵入した上、こんな事するなんて──
ベルベット言ったはずよ。あたしが知りたいのはラザリスの居場所だと
ベルベット欲しい情報はどんな手段を使ってでも手に入れてみせるわ
ベルベット…そのためなら、何だってする
ティア……
ティアあなた、名前は?
ベルベットベルベットよ。ベルベット・クラウ
ティアベルベット…
ティア…ラザリス様なら、市都ファルカームへ視察に行かれているわ
ベルベットファルカーム…
ティア…ベルベット、一つ聞かせて
ベルベット
ティアあなたがそうまでしてラザリス様を捜す理由は何?
ティアただ行方を知るためだけに、こんな事までするなんて…
ベルベット決まってるじゃない。あいつを殺すためよ
ティアなっ…!
ティアラザリス様を殺すなんて何て事を…っ
ティア私達がこうして平和に暮らせるのもラザリス様のお蔭…なのに──…どうしてそんな…
ベルベット平和ねえ…
ティアそうよ。ラザリス様は常に万物を愛し、私達を幸せへと導いて下さるわ
ベルベットあんたの中のラザリス様はそうなんでしょうね。でもね、それが全部嘘だとしたら?
ティア嘘?
ベルベットどうしてかは知らない。でも、あたしは確信してる
ベルベットこのエンテレスティアは嘘で塗り固められた偽りの世界…
ベルベット見るものの全て、あたしの知っている世界と違う
ベルベット歴史も、平和も、幸せも……そんなもの、全て創られた偽物よ
ベルベットこんな世界、あたしは絶対に認めないわ
ティア偽りの世界…?偽物なんて…そんな…
ティアそんな事あり得ないわ!
ティアエンテレスティアは、ずっとラザリス様の庇護の下、発展してきた
ティア人々はラザリス様が見守る中、互いに認め合い、助け合い、争う事もなく過ごしてきた…
ティアそのエンテレスティアの繁栄の象徴が、今私達のいる帝都シャングレイスなのよ
ティアそれが紛れもない真実、私が実際に生きてきた歴史。決して嘘や偽りのはずがない!
ベルベットあたしは信じろなんて言ってない
ベルベットあんた達みたいなのが何の疑問も持たずラザリスを受け入れ妄信している…
ベルベットこの現実が嫌いなだけ
ベルベット…ま、その信じる感情もこの世界と同じで捏造されたものなのかもしれないけど
ティアそんな…
ベルベットこの世界はおかしい。その原因はラザリスにある
ベルベットだからあたしはラザリスに会って、全てを暴いて見せる
ベルベットあたしの「世界」を取り戻すために
ティアあなたは…
scene2欠けた心
ティア──わからないわ…
ベルベットわからない?
ティアラザリス様を殺そうだなんて…
ティアどうしてあなたは、そんな事を思うの?
ティアあなたをそこまで駆り立てるものは何?
ベルベット聞くまでもないわ。許せないから、あいつを殺す。それだけよ
ティア許せない…
ベルベットあたしには、やるべき事があった。なのに、あいつがそれを邪魔したの
ベルベットそんな事をされたら怒るのは当然でしょ
ベルベットだからあいつを殺して、あたしの世界を取り戻す
ティア…何故許せないの?私には、あなたのその憤りが理解出来ないわ
ベルベットもし、あんたがわけもなく誰かに傷つけられたらどう感じるの?
ベルベットそんな状況でもまだ、相手を憎む感情や怒りがわからないとでも言うつもり?
ティア憎む…?それはどういう感情なの?
ベルベット…本気?
ティア私なら、相手は何故そんな事をしたのだろうと真っ先に考えるわ
ティアそうやって他人を傷付けたのには、きっと何かやむを得ない事情があると思うから
ティア私はその理由を知りたいと思う。ただそれだけ。怒りはおろか、やっぱり仕返しをしようなんて──
ベルベット傷付けるだけの事情があれば殺されたって仕方がない、…そう言いたいわけ?
ティアそれは極論だけれど…でも…
ベルベット…あんたに何がわかるのよ…
ティアベルベット…?
ベルベットそんなもの、あるわけがない。…いや、あったとしてもあたしは認めない…絶対に!
ティア…!?っ…
ベルベットラザリスの居場所を教えてくれた事、感謝するわ
ベルベット後は衛兵に告げるなり、助けを呼ぶなり、好きにすればいい
ベルベットじゃあね
ティアベルベット、まっ…
ティア…!
ティア…今のは…何…
ティアあの人の言葉を聞いた瞬間、何か鼓動が──…
ティアベルベットのような強い意志…私、前にもどこかで…
ティアいえ、そんなはずは…でも…
ティア
scene1逃亡
衛兵1宮殿内に異常はありませんでした。定期報告は以上となります
ヴァンご苦労、下がっていいぞ
衛兵1はっ…それでは──…
バンッ
衛兵2失礼致します!火急のご報告のため無礼を承知で、ただ今申し上げます!
ヴァン何事だ、騒々しい
衛兵2地下牢に捕らえておりました例の咎人が、脱獄した模様です…!
ヴァン何だと…
衛兵2咎人は警備にあたっていた衛兵全てを昏倒させておりました。依然、逃走中です
ヴァン速やかに兵を展開し、行方を突き止めよ
ヴァン既に宮殿を出ているやもしれぬ。全兵士に伝令を…
衛兵3申し上げます!
ヴァン今度は何だ
衛兵3ティア様が行方不明に!ティア様の部屋を警備している者は何者かの襲撃を受け意識がありません
ヴァン…!
衛兵2何と…!同時に…咎人の仕業でしょうか?
ヴァンそう考えるのが妥当であろう
ヴァン…咎人の生死は問わんが、ティアには決して傷をつけるな
衛兵1はっ!
ヴァン私も出るとしよう
衛兵達かしこまりました
タッタッタッ…
ヴァンティア…
ベルベット…こっちも衛兵が押さえてる
ベルベット仕方ないわね。他の出口を…
ティアどこへ行っても無駄よ
ベルベットあんた…
ティア宮殿の外へ通じる全ての出入口は、封鎖されてる。通常の方法で出るのは無理よ
ティアこれだけ緊張感のある宮殿の空気は初めて…
ティアこの警備の状況…侵入者である、あなたの存在に気付いたという事かしら
ベルベットあんたには関係ないでしょ。それとも何?
ベルベットそんな事を言うためにわざわざ追いかけてきたわけ?ご苦労な事ね
ティア…これだけの数の衛兵を真正面からかいくぐるなんて無茶よ
ベルベット無茶でもやるしかないわ
ベルベットそろそろ情報が回った頃だろうと思ってはいたけど
ベルベットまさかたった一匹のねずみ取りにここまで躍起になるなんてね
ティア…ねぇ、聞いてベルベット
ベルベット何?
ティア…この宮殿には秘密の地下通路があるの。それを使えば外に出られるわ
ベルベット
ティアあそこは宮殿の人間でも知っている人はほとんどいないから、衛兵もいないはず…
ティア私ならその通路を案内出来る。昔、一度だけ入った事があるから
ベルベットそうやってあたしを誘い出せば楽に捕まえられるわね
ティア違うわ!そうじゃなくて、私はただ──
ティア…!隠れて…
衛兵1そっちはどうだ?
衛兵2いない。奥を捜そう
タッタッタッ…
ティアこのままだとただ囲まれて捕まるだけよ
ティアどうせなら、逃げられる可能性のある方にかけてみたらどうかしら
ベルベット…不本意だけど、あんたの案に乗るしかないみたいね
ベルベットで、どうすればいいの?
ティア地下通路への入口はこっちよ
ベルベットここが地下通路…
ティア外へ通じる出口はこっちよ
ベルベットねえ。どうしてあんたが、あたしを助けるような真似をするの?
ティア…信じてくれるかどうか、わからないけれど
ティアさっき、あなたの言葉を聞いた時、何か大切な事を思い出したような…そんな不思議な感覚に襲われたの
ベルベット思い出した?
ティアええ…。自分でも上手く説明が出来ないのだけれど
ティアこのままじゃいけない、あなたともっと話をしなくちゃと思って、それで…
ベルベットあんたも酔狂ね。そんな好奇心のために、あたしを追いかけて来るなんて
ベルベット言ったでしょ?あたしの目的。ラザリスを殺すって
ティアそれは…っ!…それは絶対に駄目よ
ベルベットでも、逃がすのね。あたしの事
ティア……。わからない…の…まるで自分が二人いるみたい
ティア本当ならこんな事、許されるはずがないけど…
ベルベットそのお蔭で逃げられそうだし、あたしは助かるけどね
ティア
ベルベット地下通路はまだ続くのかしら
ティア…もう少しで宮殿の外よ。急ぎましょう
scene2逃亡
ベルベット…ここに出るのね
ティアこれが…宮殿の外の景色…
ティアまさか、こんな形で見る事になるなんて…
ベルベット外に出た事がない癖に、よく抜け道なんて知ってたわね
ティア偶然見つけたの。ずっと外を見てみたかったから兄さんにも黙っていたけれど…
ティア…この一歩を越えてしまったら兄さんを裏切ってしまう…そう思ったら、出られなかった
ティアまさかこういう形で役に立つなんて、その時は夢にも思っていなかったわ
ベルベットま、宮殿の外に出たってだけじゃ、安心出来ないわ。急いで帝都を抜けないと…
ベルベット確か…あの辺りだったわね…
ベルベット
ティア
ベルベットちょっと、あんた。どこまでついて来るつもり?
ティアあんたじゃない、ティアよ。ティア・グランツ
ティア私の知りたい事をあなたが知っている気がするわ。だから、私もついていく
ティアそれが何なのか、わかるまで…
ベルベット邪魔なだけよ。来ないで
ティアそれは聞けないわ
ベルベット自分勝手ね…あんた。戦い振りといい、見た目とは大違い
ティア何とでも言って。ラザリス様に会った時、私はあなたを止めなければならないから
ベルベット邪魔するならもってのほかよ。ほら、お姫様は早くおうちに帰って──
ヴァン…やはりここにいたか
ティア兄さん!?
ベルベット…!
ヴァンもしや地下通路を使ったかと思ったが、案の定だったな
ヴァン大方ティアを脅しつけ、無理に案内させたのだろう
ティア違うわ、兄さん!これは…
ベルベットあたしが何を言ったところで、そう思うでしょうね
ベルベットで、どうするの?またあたしをあそこに連れ戻すつもり?
ヴァンいや、そのような煩わしい事はせん
ヴァン…まさかあの時の「傷」がこのような不穏分子を生み出す事になるとはな
ヴァンだが、それも過ぎた事…
ティア「傷」…?兄…さん…?
ヴァンベルベット、お前の持つ意志…それは争いの根源となり得る危険なものだ
ヴァンみすみす見逃すつもりはない
チャキッ…
ティア…!
ティアう…っ、また……
ヴァンこの場で貴様を処刑するとしよう。私はラザリス様のように甘くはない…
ヴァン貴様のような存在、エンテレスティアには不要だ
ベルベット悪いけど、あんたの思惑通りにはならない
ベルベットあたしはラザリスのところへ行く。誰にも邪魔はさせない…!
ヴァンならばその思いも一太刀に薙ぎ払ってくれよう
ヴァンはああああっ!
ガキィィンッ!!
ティアそんな…っ!兄さん、やめて!!
ベルベットはあああああっっ!!
scene1揺り動かすもの
ヴァン
ベルベットくっ…う…
ヴァンあのような大胆な振る舞いに及ぶだけの事はある。それなりには使えるようだ
ヴァンだが…私には、及ばぬ
ヴァンはあああっ!
ズバーーーッ!
ベルベットうぐっ…!
ヴァンとどめだ
ティア待って、兄さん!
ヴァンそこを退くのだ、ティア。私はこの女を処刑せねばならん
ティアいいえ…
ヴァンそこを退け、ティア!
ティアいいえ!
ヴァンティア…私に逆らうのか。あれほど従順だったお前が
ティア逆らうつもりなんてないわ。でも、殺すだなんて…
ティアこの人が、どんな罪を犯したと言うの?
ヴァンそうか、お前は知らなかったな。その者の罪を…
ヴァンその者は先の聖誕祭で、畏れ多くもラザリス様の命を狙った咎人だ
ティア咎人…!?ただの侵入者じゃなかったの…?
ヴァンそればかりか、地下牢を脱獄し、お前を人質に取り逃亡を謀った。断じて許されぬ
ティアそれは…
ヴァン私はラザリス様の側近として、このエンテレスティアを守る義務がある
ヴァン世界の秩序を乱す咎人は始末しなければならないのだ
ティア兄さん…あのね…いえ、何て言えば。違うの…違うのよ…!
ヴァンティア?
ティアまず、私は人質じゃない。自らの意志で、この人に協力したの
ヴァン…!
ティアそれに、罪を犯したとは言え何の話も聞かずにこの場で処刑なんて許されるはずがないわ
ティアそのような事はラザリス様も、決して望んでいない…
ヴァン…ティア、お前は何故こやつの逃亡に手を貸したのだ。何故…!
ティア…ごめんなさい、兄さん。私…どうしてもベルベットに聞きたい事があるの…
ヴァン…!
ティア上手く言えないのだけど、何か心の中で引っ掛かっていてそれがもう少しでわかりそうで…
ティアだから兄さん、お願い。処刑じゃなくて、別の方法を──…
ヴァン
ヴァンティア…
ヴァンそう、か…お前は──…
ティア…?
ヴァン…ふっ、なるほど
ヴァン全ては私の幻想に過ぎなかった。お前だけは、と思ったが──…
ヴァンどうやらそれすらも、私の甘えが見せた夢でしかなかったようだ
ティア…?兄さん、それはどういう──
チャキ…
ティア兄さん!?
ベルベット……妹にまで剣を向ける気?
ヴァン私は理想を実現するためなら、どのような犠牲もいとわぬ
ヴァンそうとも…初めからこうするべきだったのだ
ティアそんな──…
ティア…!
ベルベットティア?
ティアうっ…
ティアあ…ああ…っ
ティア……
ティア兄さん……あなたは…また…
ヴァン
ベルベットヴァン、あんたを見てると、「あいつ」を思い出す…
ベルベット自分の理想とやらのために、平気で誰かを犠牲にする身勝手さ、残酷さ…
ベルベット…本当、そっくり
ヴァン何とでも言うがいい。お前達が束になったところで、私を倒す事は出来ぬ
ティアさせない…わ…絶対に、あの時そう…私は思って…
ティアいえ、そんな事…っなら兄さんとの時間は…?…どれが正しいものなの
ベルベットティア…?
ティアうっ…く…でも、覚えてる。あの時の悲しみも…みんなの思いも…っ
ヴァン…早くにこうしておくべきだったのだ…
ヴァン全ての憂いを、今ここで──…
???待て、ヴァン!
ヴァンお前は…!
scene2揺り動かすもの
???
ティア…「白き獅子」
???ヴァン、この者をお前の一存で処断する事は認められない
???違うか?
ヴァンここにいるのは咎人だぞ
???例えそうであってもだ
???今我々が天帝から受けている命はこの者を地下牢に繋ぐ事
???我らが天帝の意志を曲げる事は許されない
ヴァン
???…剣を引け、ヴァン。引かぬのであれば、私達が相手になる
???ロアーの言う通りだ。例え相手があんただろうが関係ねぇ
???筋は通させてもらうぜ。それがオレ達の流儀だ
???ああ
ベルベット…逃げるわよ!
ティアえっ!?
ベルベットいいから来なさい!
ティアわ、わかったわ!
ヴァン…!
ロアー待て、ヴァン。ここから先には行かせない
ヴァンふっ…お前達の仕事が咎人を私から逃がす事だったとはな
ヴァンとんだ騎士が居るものだ
ロアーいや、逃がしはしない。我々の包囲を持ってすれば追いつく事など容易い
ロアークロー、ファング、咎人は私が追おう
クローりょーかい、任せとけ。んじゃ、後で合流な
ファング宰相、今のあなたに二人を追わせるわけにはいかないんだ
クロー天帝様の意志とは関係なく、その手を汚しちまうだろうからな
ヴァン…失敗は許されんぞ。必ず二人を連れ戻せ
クローああ。オレ達「白き獅子」の名に懸けて
ヴァン
ヴァンティア…
scene1白き獅子
ベルベットはあ…はあ…
ティアはあ…はあ…
ティアうっ…!
ベルベットどうしたの?足でも痛めたわけ
ティアいいえ…そんな事はないわ。大丈夫よ
ベルベットう…
ティアあなたの方こそ、私よりよほど傷ついているわ
ティア無理もないわね…あれほど兄さんの攻撃を受けたのだから
ベルベットこのくらい平気よ
ティア少しだけ、その岩陰で休憩しましょう
ベルベット
パアア…
ベルベット傷が治っていく…あんた、こんな事も出来たのね
ティアええ、まあ
ティア
ベルベットこの辺りは宮殿からも見えない場所なんじゃない?
ティアそうね。今まで見た事のある景色とは全然違う…
ティア…本当なら、今頃この初めて見る景色に感動を覚えていたのかもしれない
ティアけれど、もうそんな気分にはなれなさそうだわ
ティア…兄さん…
ベルベット…ちょっとあんたに聞きたいんだけど
ティア何かしら
ベルベットあの「白き獅子」とかいう連中は何者なの?
ティア正式名称は「帝都騎士団」ラザリス様直属の精鋭騎士団よ
ティアあの白い隊服と気高き振る舞い、獅子の如く勇猛な戦いぶりから白き獅子と呼ばれているわ
ティアさっきの三人は騎士団を取りまとめる幹部…
ティア彼らの顔は、常に隠されていてあの下の本当の姿を見た者はいない…
ベルベットへぇ…
ティア今までも宮殿内で何度か、すれ違った事があるわ…
ベルベットようするにラザリスの、忠実な犬って事ね
ティア
ティア…私も聞いていいかしら
ベルベット何?
ティアどうして一人で逃げなかったの?
ベルベット……
ベルベット…ただの気まぐれよ。理由なんてないわ
ティアそう…
ベルベットさて。傷も治ったし、そろそろ出発するわよ
騎士団員1何をして…ああ、痕跡がある。行くぞ…
ティア待って!兵士の声が聞こえる…
ベルベット身をかがめて。様子を伺うわよ
騎士団員2咎人が逃げたのは、こっちの方だ!
騎士団員1手当たり次第捜せー!!
ガサ…ガサガサッ…
ティア…まずいわね。あの隊服…白き獅子だわ
ベルベット奴らに気付かれる前に移動するわよ
ティアええ…
騎士団員1
騎士団員2そこに誰かいるぞ!
ティア見つかった!?
ベルベットちっ…!走るわよ!
scene2白き獅子
ティア追っ手は撒けたかしら?
ベルベットさあ、どうかしらね
騎士団員1こっちだ!
ベルベットまだ駄目みたい。しつこい連中ね
ティア山の頂上に向かっているけれど、逃げ切れるあてはあるの?
ベルベットそんなの、あるわけないでしょ。あたしもこの辺りは初めて…
ベルベットこれは…!
ティア崖に行き止まり…ね。これ以上は進めないわ
ベルベット飛び降りるのは、さすがに厳しいかしらね
ティアこれだけの高さよ。私達が無事な保証なんて…
ロアーそこまでだ、お前達
ティアあなたは…!
ベルベットふうん。あんたも追っ手に加わってたの
ティアさっきは助けてくれたのに…
ロアー助けただと?助けたつもりなどないぞ
ロアー私達の役目は、あくまで民を守る事
ロアーそこには民が不当に虐げられぬよう目を光らせる事と共に、罪人を捕らえる事も含まれている
ロアー先ほどはヴァンの行き過ぎた行動を止めるため、あのような手段を取ったが…
ロアー咎人であるお前を捕らえ、再び牢に繋ぐのも、同じく私達の責務だ
ベルベット責務ね…嫌だと言ったら?
ロアー少々手荒な手段を取らざるを得ない
ロアー世界にとって害をなす者…咎人はその存在自体が罪だ
ロアーあまつさえ天帝の命を狙い、収監されていた地下牢を脱獄し、さらには人質を取って逃走する…
ロアーお前の重ねた罪は重い。しかるべき裁きを受けねばならん
ロアーお前の行く手は、断崖に遮られている。もはやどこにも逃げられんぞ
ベルベット…誰もあたしを裁く事は出来ないわ。断じてね
ロアーあくまで逆らうか。ならば…
ロアーお前達、下がっていろ
騎士団員1はっ!
ロアー咎人、ベルベット・クラウはこの私…ロアーが騎士の名の元に捕えよう
ティアベルベット!
ベルベットあんたは下がってなさい。こいつのご指名は私よ!
scene3白き獅子
ロアーほう、やるな。だが…!
ガキィィンッ!!
ベルベットぐっ…!
ガンッ、キィンッ!
ロアーそろそろ諦めたらどうだ?
ベルベット…っ、そっちこそね
ロアーふっ!笑わせてくれる…
ロアーはあああああっっ!!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ベルベットぐあっ!
ティアベルベット!?
ベルベット地面から…急に…っ…妙な技を使ってくれるじゃない…
ロアー認めよう、お前は強い。だからこそ少し本気を出させてもらった
ベルベットちっ…
クローよっと、ここにいたか
ファングやっと追いついたな
ロアー来たか、二人共
ベルベットまだ仲間が…
ティア…っ!
ロアー既にお前の体力は限界に達していよう。私達三人を相手にするのは無理だ
ファング無駄な抵抗はよした方がいいぜ
ベルベットあいにく、あたしは往生際が悪いのよ
ロアーあくまで抵抗をやめないか。ならば…
ティア…!今までと構えが違う…
ロアー殺しはしない。私はヴァンとは違うからな
ロアーだが、無傷では済まぬ。覚悟してもらおう
ロアーはああああっ!
ベルベットっ!?
ティア危ない!
ドゴオオオンッ!!
ズ…ズズズズ…ッ
ファングおい、地面が!
ビシッ!
ガラガラガラ…ッ!
クロー崩れるぞ!
ティア!?
ベルベット…ぐっ…
ティア…!
ティアベルベット…っ!
ベルベットあたしは、まだ戦え──…
ベルベット…!くっ…!
ガラガラガラガラ…
ティアベルベット──!!きゃ…っ!
ズザザザザザザッ…ドシャアッ…
ティア…う…っ、くぅ…お願い、間に合って…!
ティア──…
ロアー…まさかあそこまで喰らいついてくるとはな
ファングロアーにここまでの力を使わせるなんて、…咎人ながらすごいヤツだ
クローま、何にせよこの高さから落ちたんじゃ無傷じゃ済まねぇ──
パアアアーーー……ッ!
クロー…!何だ、あの光は…
ファングくっ、眩しい…!
ロアーこれは…!一体崖下で何が起きて…

NameDialogue
scene1カルミナ街の食料泥棒
ジュードやあ、ジーニアス。はい、牛乳だよ
ジーニアスありがとう、ジュード。毎日精が出るね
ジュードうん、仕事だからね
ジーニアスそれでもすごいよ。重たい牛乳を持って、街中を配達して回ってるなんて
ジーニアスシャングレイスほどじゃないにしてもこのカルミナ街だって結構広いし…
ジュード確かに広いけど、最短ルートで回れば大した事ないよ。重さだってそれほどじゃないしね
ジーニアス前から思ってたけど、ジュードって見かけのわりに体力あるよね。もしかして武術か何かやってたの?
ジュードううん、何もしてないよ。慣れただけ、かな?
ジーニアスすごいなぁ。本格的に武術を学んでいたら、達人になれてたかもしれないね!
ジーニアスところで、話は変わるけどさ。この前の生誕祭で見たラザリス様のお力、すごかったよね!
ジュードはは、ジーニアスは生誕祭が本当に楽しかったんだね。もう毎日、あの日の話してない?
ジーニアス楽しかった以上に、感動したんだよ!ラザリス様がお力を使う姿を目撃出来たんだから!
ジュードあの謎の女性の事件か…。あの時は驚いたなぁ。一時はどうなる事かと思ったよ
ジーニアスでも、冷静な判断で対処してその人を簡単に捕えたラザリス様。さすがだよね…
ジーニアス年齢はボクと変わらなそうなのに、きっと精神力が強いんだね
ジュードそれにしてもあの女性は一体何者だったんだろう…。あんな恐ろしい事をするなんて…
ジーニアスまあ、いいじゃない。ラザリス様も無事だったんだし、今日もこうしていつも通り平和──
ジーニアス…じゃないんだった
ジュード何かあったの?
ジーニアス実は最近、この辺りで不思議な事が起きてるんだ
ジュード不思議な事って…?
ジーニアス何でも、机に置いてあった食べ物がいつの間にか消えたりするとか…
ジュードそれって、食べてしまったけど忘れちゃってるだけじゃ…。それか家族の誰かが食べちゃったとか
ジーニアスうん。そう思うよね。けどそんな事が、あちこちで起きてるらしくてさ…
ジュード一件じゃないのか…確かに勘違いにしては不自然だね
ジーニアスそれで一応、食料泥棒の可能性があるから戸締りに気を付けようって連絡が回ってきたんだよ
ジュード戸締りは大事だよね。僕も気を付けるようにするよ
ジュードまた何か情報があったら教えてよ。僕にも何か出来るかもしれないから
ジーニアスうん。調べておくよ
ジュードふぅ、今日の配達終わり…っと
ジュード…ん?
???
ジュードあの人、何をコソコソと…食堂から何か持って…あれって…お肉…?
ジュード…!ひょっとして…ジーニアスが言ってた食料泥棒…!?
ジュード…よし、後をつけてみよう…
scene2カルミナ街の食料泥棒
???
ジュードこんな街外れに…?
ジュードひょっとして、街の住人じゃないんじゃ──
???おーい、食べ物持ってきたぞー
ジュード…!仲間がいるのか…?
???…あれ、おかしいな。いつもならすぐ出て来るのに…
ジュード…?
ミャー
???お、来た来た。よしよし、お腹が空いただろう。今餌をやるからな
ジュード…猫…の親子…?
ミャアッ…!
???ん?どうして隠れる?何を怖がってるんだ?
???…!誰かそこにいるのか!?
ジュード見つかっちゃったか…
???君は…?俺に何か用があるのか?
ジュード…単刀直入に聞きます。あなた、食料泥棒じゃないですか?
???なっ…、食料泥棒だって!?
ジュード僕、見てたんです。あなたが食堂からそのお肉を持ってコソコソと出てくるのを…
???誤解だよ。だいいち、俺はコソコソなんか──……!
???ああ、そういう事か…
ジュード…?
???猫達が食べてるこの肉…。これ、食堂の残り物なんだ
???持ち出している事が店主にばれたら大目玉を食らうからこっそり出てきたんだけど…
???その様子を見れば、誤解されるのも当然かもしれないな
ジュードあ、という事は、食堂の人…?
???ああ、コックとして雇われている
ジュードもしかして、あなたの名前はルドガーさん…?
ルドガーそうだけど…どこかで会った事あったか?
ジュードいえ、初めてです。あの食堂のルドガーさんと言えば街で評判だから
ジュード若いコックだって聞いてたし、もしかしたら…と思ったんです
ジュード知らなかったとはいえ…疑ったりして、ごめんなさい
ルドガーいや、気にしないでくれ。驚いたけど、誤解が解けてよかったよ
ジュード知り合えて光栄です。僕はジュード、よろしくお願いします、ルドガーさん
ルドガーそんなにかしこまらなくても、ルドガーでいいよ。名探偵さん
ジュードははは…。「迷」探偵の間違いでしょ。ありがとう、ルドガー
ルドガーしかし、何だか…照れるな。そんな噂になってるとは…
ジュード僕も恥ずかしいよ…そんな人を食料泥棒と勘違いするなんて
ルドガーところで、その食料泥棒の話だけど…犯人は人間なのか?
ジュードえっ…どういう事?
ルドガー…正体がわかってないなら、おそらく犯人はこいつらだ…
ルドガーたまに、人の食べ物を取って来てここで食べてる事があるから…
ジュード何だ、猫の仕業だったのか…
ルドガー餌を持って来てやればそんな事もしなくなるかと思ってたんだけどな…
ジュードでもよかったよ、正体がわかって。猫なら仕方ないけど、泥棒するような悪い人間がいたら、少し怖いもんね
…ミャー
ルドガーお、出てきたな。ジュードをいい人だと認めてくれたみたいだぞ
ジュードはは、ありがとう。それにしても、野良猫の親子なんて、珍しいね
ルドガー子猫も小さいからちゃんと保護してやりたいんだけど、俺も食堂に住み込みの身だからな…
ルドガー店主にも打診してみたが動物は連れ込むなときっぱり言われてしまった
ジュード食堂じゃ仕方ないよ。僕も猫は嫌いじゃないんだけど──
ナーオ
ルドガー何だ、急にジュードにすり寄って…えらく懐かれたな
ジュードあ、僕、牛乳配達してたからその匂いがしてるのかも…
ジュード…──っくしゅん!
ルドガージュード?
ジュードごめん、大丈夫。それより、これからは僕も、時々食べ物を持ってくるよ
ジュード食堂の残り物だって、いつも出るわけじゃないでしょ?
ルドガーああ、ありがたいよ。毎日持ち出してると、いつばれるかひやひやものなんだ
ジュードそれから、この猫を飼ってくれる人がいないかどうか、配達のついでに聞いてみる
ルドガー俺も食堂のお客さんの中にいい人がいないか、捜してみよう
ニャー
ジュードよろしく…って言ってるのかな?
ルドガーははは、そうかもな
scene1猫を助ける方法
ジュードおはよう、ジーニアス。はい、朝の牛乳だよ
ジーニアスジュード、おはよう。どう、猫達の飼い手は見つかった?
ジュードうーん、毎日あちこちで聞いてみてはいるんだけど、なかなか見つからなくて…
ジーニアス猫が犯人だったって聞いた時はほっとしたけど、こう何日も飼い手が見つからないのも心配だね
ジュードうん…。今でもたまに、食料をどこかの家から持ってきてるみたいだし…
ジーニアス実は昨日、うちに来たよ
ジュード何か取られたの?
ジーニアスジュードから受け取った牛乳を狙ってたんだよ。ビンを眺めながらニャアニャア鳴くから、可愛くて…
ジュードはは、なるほど。いつも牛乳配達の後に会いに行くから匂いで覚えてくれたのかな?
ジーニアスボクから牛乳を取ろうなんて酷い食料泥棒だよね、全く
ジュードジーニアスも牛乳好きだもんね
ジュード…やっぱり、早く飼ってくれる人を見つけないと…猫達のためにもこのままじゃよくないよね…
ジーニアスうーん…ボクの家も、猫はちょっと歓迎してもらえないみたいだし…
ジュードルドガーもいろいろ当たってくれてるんだけど…一匹ならともかく親子で二匹ってなると難しいのかな…
ジーニアス…そうだ!生誕祭に行った時、シャングレイスですっごくたくさんの猫を飼ってる人を見たんだ
ジーニアス確か…ココネ・ネココさんって言ったかな。その人に相談してみたらどうだろう?
ジュードそれいいかも!ルドガーに会ったら相談してみるよ。情報ありがとう!
ジュードよし、配達も終わったし…猫の事、ルドガーに相談しに行かないと…
???ねぇ!あなた今、ルドガーって言った!?
ジュードえっ?
???もしかして、あなたがルドガー?
ジュード違うよ。僕はジュード。ルドガーとは知り合いなんだ
???じゃあ、ルドガーどこにいるか知らない?どうして今、食堂にいないの?
ジュードえっ、食堂にいないんだ?僕もルドガーに会いに来たんだけど…えっと…君は?
エルエルはエル!ルドガーっていう人の料理を食べに市都レイザベールから来たんだよ!
ジュードそんな遠い街から…。まさか君一人じゃないよね?
エル大人のドウハンシャもいるし。遠かったけど、ずっとずっと歩いてやっと食べれるって思ったのに…
ジュードそっか…でも食堂は営業してるよね。他の人の料理もきっと美味しいよ
エルそれじゃ意味ないの!みんな言ってたもん。ルドガーの料理がシコウだって!
ジュード…!レイザベールみたいな遠くの街でも評判なんだね
エルエルずっと待ってたのにルドガーって人、戻ってこないし。もう時間ないのに…
ジュードわかった、ルドガーを捜してすぐに戻るよう伝えるよ。ここでもう少し待っててよ
エルもう待てない…。早く戻らないと置いてかれちゃうし
ジュードそっか…ごめんね。じゃあ、また来てあげてよ
エル…うん、わかった。お願いしてみる
エルじゃあエル、行くね。ありがとう、ジュード
ジュードごめんねー!ルドガーに会ったら伝えておくからー!
ジュードルドガー、食堂にはいないのか…
ジュードとりあえず猫のところに行こう。あそこで待っていれば、その内、ルドガーも来るよね
scene2猫を助ける方法
ルドガー
ミャア…?
ジュードルドガー…!何だ、先に来てたんだね
ルドガージュード…猫を飼ってくれるって人が見つかったぞ…
ジュードえっ、本当に!?でもそれにしては、浮かない顔をしているようだけど…
ルドガー子猫と親猫を、別々の人が引き取ると言うんだ。親子が引き離される形になる
ルドガーこのまま野良猫にしておくわけにはいかない…それはわかっているが…家族がバラバラになるのは辛い
ルドガーどうすればいいのか…こいつらの顔を見ながらずっと考えていたんだ…
ジュードそれで食堂にいなかったんだね。あの子、ついてないな…
ルドガーあの子…?
ジュードさっき、ルドガーの料理を食べに来たっていう小さな女の子と食堂の前で出会ったんだ
ジュードレイザベールから来たみたいだけどタイミングが合わなかったって残念がってたよ
ルドガーそれは悪い事をしたな。まだ食堂にいるかな?
ジュードもう帰るって言ってたよ。ギリギリまで待ってたみたいだけど時間がないって…
ルドガーそっか…。その小さい子、きっと家族と一緒だったんだよな
ジュード大人と一緒に来たとは言ってたけど…でも、それがどうかしたの?
ルドガーいや、ただ家族との食事ってものは大切なものだから…悪い事したと思ってさ
ナーオ…
ルドガーごめんごめん、今はお前の家族の問題だったな。さて、どうするか…
ジュードあのさ、それなんだけど…ひょっとしたら何とかなるかもしれない
ルドガー…どういう事だ?
ジュードシャングレイスに、猫をたくさん飼ってる人がいるんだって。頼んでみる価値はあるんじゃないかな
ルドガーなるほど、確かにいいかもしれないな
ルドガーシャングレイスなら例えその人が無理でもたくさん人がいるし
ジュードうん。いい飼い主を見つけられるといいよね
ルドガー別々に引き取ると言ってくれた人達には、少し待ってもらうように頼んでおくよ
ルドガーお前達も、それでいいか?
ニャー
ルドガー異論はないそうだ。よし、早速、明日にでも行ってみよう
ジュードうん!
scene1森と柵と侵入者
ルドガーもうすぐシャングレイスが見えてくる頃だな…
ジュード猫達、大人しいね
ルドガー…俺の腕の中で寝てるよ。呑気なもんだ
…ニャッ!
ルドガーん、起きたのか…
ニャニャニャ!
ルドガーこら、親子そろって暴れるなって。どうしたんだ突然…
ニャー!
ルドガーあ、おい…!お前達、どこへ行くんだ!
ジュード森に入って行った…急いで捕まえよう!
ジュードあれは…
ルドガー猫…あんなにたくさん…そうか、あいつら、仲間を見つけて走り出したのか…
ジュード子猫もたくさんいて、みんなくつろいでる…。ここに住み着いてるのかな
ルドガー多分そういう事だろうな
ジュード…ねぇ、ルドガー。下手に飼い主を捜すより、これでよかったんじゃないかな
ジュードここに住み着いてるって事はきっと食べ物も自分達で採って生活してるんだと思う
ジュードだとしたら…人に飼われるよりも、ここで仲間達と自由に居られる方が幸せなんじゃないかな
ジュードあの猫の親子にとって…
ルドガー…確かに、そうかもしれないな
ルドガーあいつらもあんなに生き生きと楽しそうに走り回ってるし
ジュード何だか、あっという間に馴染んじゃったね
ルドガー…よし、なら決まりだな。飼うと言ってくれた人達には俺から説明しておくよ
ジュードうん、ありがとう。時々一緒に様子を見にこようね
ルドガーああ、勿論──……ん?
ジュードどうかしたの?
ルドガージュード、見ろ。あの柵は…
ジュードあれは…!もしかして、この森って…
ルドガー白き獅子が管理している「立入禁止区域」のようだな
ルドガーこんなに近づいてしまってたとは…猫に夢中で気が付かなかったな
ジュードけど、柵の中に入らなければ大丈夫だよ
ルドガー規則の上ではそうだろうが、そもそも立入禁止区域というものには近づかない方がいい
ルドガー白き獅子としても、ここまで近づいている人間を放っておくわけにはいかないだろう?
ジュードそれは…そうか…うん、見張りに見つかる前に離れた方がいいね
ジュードそれじゃあ、来た道をたどって…
ルドガー…待て、ジュード。何か聞こえないか…?
ジュードえ?
騎士団員1侵入者を見つけたぞ!
騎士団員2急げ、逃がすな!
ルドガーあれは…見張りの騎士か!?
ジュード侵入者って言ってたけど、もしかして、僕達の事!?
ルドガー早速勘違いされたらしいな…これでますます見つかるわけにはいかなくなった
ジュード…!こっちに来るみたいだ。逃げよう…!
scene2森と柵と侵入者
騎士団員1侵入者はまだ見つからないのか!白き獅子の名に懸けて捜し出せ!
騎士団員2お前達はあっちだ!俺は向こうを捜す!
ジュード…行ったみたいだね。それにしても、こんなに警戒が厳しいなんて…
ルドガーこの様子じゃ、下手に動けないな
ジュード…ねぇ、ルドガー。僕達、悪い事はしてないんだから堂々と名乗り出てもいいんじゃない?
ルドガー侵入者だと思われてるんだ…そう簡単に信じてはくれないだろう
???そうそう。頭の固い連中じゃからのー
ジュード・ルドガーうわぁっ!?
???こりゃ、静かにせんか!せっかくほとぼりが冷めるまで、ここに身を潜めていようと思ったのに
???そんな大声を出されたら、白き獅子の連中にあっさり見つかってしまうじゃろ?
ルドガーだ、誰だ?
???よう聞いた。自分で言うのも嬉しいが儂こそは八紘四界を股にかける大魔法使いにして大奇術師!
???マジギギカ・ミルディン・ド・ディン・ノルルン・ドゥ!略して──
ジュードマギルゥ、でしょ…
ルドガー知り合いなのか?
ジュード知り合いって言うか…前に一度、生誕祭で会って──
マギルゥおお!誰かと思えばあの時の…!
マギルゥいや~、ここで会ったが百年目!誰だか忘れたが奇遇じゃの!
ジュード…ジュード、だよ。コレット達と一緒にいた…と言えば思いだせるかな?
マギルゥおお、あの両手に花の色男か!覚えておるとも。片時も忘れた事はないぞ
ルドガー何だかいい加減な事ばかり言ってるみたいだが…
ルドガー騎士団員ではないみたいだけど、一体、何者なんだ?
マギルゥ何じゃ、また聞きたいのかえ?お主も好きじゃの~。ならば仕方あるまい、もう一度…
マギルゥ儂こそは八紘四界を股にかけ──
ルドガーわかったわかった!マギルゥだったな。魔法使いと言ってたか…
マギルゥチッチッチッ…「大」魔法使いじゃ
ルドガーその大魔法使いが、こんなところで何をしてるんだ?
マギルゥそれは…乙女のひ・み・つ…じゃ
ジュード言えないような事をしてたって事だよね?もしかして…
マギルゥそういうお主らこそ侵入者ではないのかや?
ジュードち、違うよ。僕達は偶然、近くに来ただけで…
マギルゥ儂もじゃよー。お互い侵入者騒動に巻き込まれていやはや、迷惑な話じゃのー
ルドガー…しっ!また見張りが戻って来た…!息を潜めるんだ
騎士団員1くそ、見失ったか…
騎士団員2いや、あんな派手で奇抜な格好の女、見つけるのは難しくないはずだ
騎士団員1ああ。あの尖った帽子は遠くからでも一目でわかる。よし、もう一度捜そう。あっちだ!
ジュード派手で奇抜な格好…
ルドガー尖った帽子の女…
マギルゥほう~。偶然の一致とはまさにこの事じゃな!
ジュードとぼけたって駄目だよ、侵入者はマギルゥなんでしょ!
ルドガーつまり、白き獅子が捜していたのは俺達じゃなかったって事か
マギルゥまぁまぁ。物は相談なんじゃが…ここは一つ、互いに協力せんかの?
マギルゥお互いすねに傷を持つ者同士。悪い話ではなかろ?
ジュードすねに傷って…僕達、何も悪い事はしてないよ!
ルドガーああ。むしろマギルゥを突き出して正直に話した方がいいんじゃないか
マギルゥそれを連中に言ったところで、すんなり信じてもらえるかの?
ジュードそれは…きちんと話して調べてもらえばきっと大丈夫だよ
マギルゥどうかの?ちなみに儂は、お主らをかけがえのない仲間じゃと証言するぞ
ジュードちょ、そんな嘘…
マギルゥそれに…無実を証明出来たとしてもそれまでにながーい取り調べがあるじゃろうな
マギルゥ何日か…いや、何年かもしれん……
マギルゥ取り調べを終えた頃には職はおろか居場所も何もかも失って一生路頭に迷う事になるじゃろ…
ジュードそんな…
ルドガー…はあ、仕方ない
ルドガージュード、不本意だけどここは協力しよう
ジュードルドガー、本気!?まさか、マギルゥの話に…
ルドガーいや、そうじゃない
ルドガーけど、俺達が怪しい事に変わりないし彼女の言うように無実を訴えてもすんなり信じてもらえるとは思えない
ルドガー…今はこの場を離れよう。マギルゥを突き出すとしても、ここを出てからでも遅くない
マギルゥよくも悪くも大人の意見じゃの。そういう考え方、嫌いじゃないぞえ
ジュードわかったよ…。それで、協力するって、何か策があるの?
マギルゥそ・れ・は・の──…
マギルゥない!
ジュードえぇ…
マギルゥしかーし、三人にして迷う事なしと言うじゃろう!力を合わせれば妙案も浮かぶというものじゃ!
ジュードそういうものなのかな…
マギルゥさぁ、キリキリと考えよ。儂を無事に逃がすのじゃ!
ジュードそれって結局、自分は何もしないって事じゃ…
マギルゥ言われた事はしてやるぞ。さぁ、願いを言うがよいー!
ルドガーふざけてる場合じゃないぞ。こんな茂みに隠れていても捕まるのは時間の問題だ
ルドガー見つからない内に、隙を突いて一気に走り抜けよう
ジュード…それは無理だよ
ルドガー何故だ…?
ジュードずっと観察してたけど、見張りは適当に動いてるように見えて完璧に統率が取れた動きをしてる
ジュード一瞬、隙が出来たように見える場所も、その先で必ず塞がれている
ジュード少ない人数で広い範囲を封鎖する、緻密に計算された布陣になってるよ。白き獅子…さすがだよね
ルドガーそうなのか…?
マギルゥふむ。それは困ったの!まさに魔女が通る隙もないとはー!
ジュード…いや、まだ活路はあるよ
ジュード完璧に計算されてるだけに、崩すと脆い部分もはっきり見える…
ジュード例えば、あの見張りの人。あの人さえいなければ少しの間だけど、隙が出来るはずだ
ルドガー一人だけか…何とかなるか、マギルゥ?
マギルゥそこで儂に振るかー!?
ルドガー願いをかなえてくれるんだろう?奇術師と言っていたが、今何か仕込んでたりしないか?
マギルゥそれならあるぞ。種も仕掛けも盛りだくさんじゃ
ジュードそれなら、他の人に気付かれずにあの人の注意だけ引くなんて事、出来るかな?
マギルゥそれは、ちょいと難しいのー。ド派手が売りの奇術師には荷の重い話じゃが──…
マギルゥ大魔法使いなら造作もない!見ておれー…
ガサガサ…
騎士団員3…ん?
騎士団員3な、何だ…?何か近づいて…
騎士団員3紙?いや、顔があるぞ…?一体、何なんだ…
騎士団員3ひぃっ!増えた!?く、来るなぁっ…!
マギルゥほれ、今の内に行くぞよ
ジュードい、今のは…何…?
マギルゥなぁに、種も仕掛けもないただの式神という紙じゃよ。不気味で不思議で面白かろ?
ジュードうん…あれは誰でも逃げるよ
ルドガーこの際、何でもいい。今の内に急ごう
ルドガー追手は来てないようだな。上手く撒けたか…
マギルゥジュードの言うた通りじゃったの。使える男は儂、好きじゃぞ
ジュード僕は観察してただけだよ。上手くいったのはマギルゥのお蔭だって
マギルゥほう、謙遜するとは…よほど自信があるのかあるいはないのか…
ルドガー二人共、森の出口が見えて来たぞ。もう少しだ…
ジュード──!危ない!
ルドガー!?
シュトッ!
マギルゥおろ?今帽子にサクッと何かが…
ルドガー手裏剣…!?一体どこから…
???まさか避けられるとは…やはりただ者ではないようですね
ジュードそこに誰か隠れてる!
???…ここは通しません
ルドガーくっ、白き獅子か…?
???すず、危ないじゃないですか
???いきなり手裏剣なんて投げつけて、あの人達に当たりでもしたら怪我させてしまいます
マギルゥいや、当たっとるぞ!儂の脳天を直撃しとるぞー!
???大変です!大丈夫ですか、すぐに手当てを!
すずエステルさん騙されてはいけません。帽子に刺さっただけです
エステル…本当です?
マギルゥちっ、無防備に近づいたところを捕まえて人質にしようかと思うたのにのぉ?
すず…!やはり凶悪な犯罪者のようです
エステルでも、いきなり乱暴はよくないです。もし無関係の人だったらどうするんです?
エステルみなさん、申し遅れました。わたし達はロランドファミリー。近くの村の自警団です
エステル白き獅子から侵入者の連絡を受けこの辺りの警備をお手伝いしてました
マギルゥほう…ただの民間組織か。ならば、従わなくともラザリス様への反逆にはならんの?
すず聞きましたか。話をしても無駄なようです
ジュード待ってよ。僕達は何も言ってないし、彼らに追われてるのも誤解なんだ。全部マギルゥが…
マギルゥおおーっと、ジュードぉ?儂ら千辛万苦を共にした仲間であろう?
ルドガーどうあっても巻き込むつもりか…
マギルゥ仲間は多い方が楽しかろ?
マギルゥそれに、見よ。奴らの後ろ…
マギルゥ魔物じゃー!
すずなっ…!
エステル魔物です!?
マギルゥそれ、今の内に逃げるぞ!
ジュードえっ、ちょっ…
ルドガーやむを得ないな…躊躇している暇はない、行こう
すず足元にご注意を
ジュードわあ!?何これ…!?
すずまきびしを撒いておきました。あんな手にはひっかかりません
ルドガーくっ、迂闊に動けない…!
マギルゥこりゃあ、危ないではないか!大人しく逃がさんかー!
すずエステルさん。もう甘い事は言いっこなしです。このまま逃がす事は出来ませんから
エステルでも、手荒な事は…
マギルゥやれやれ、火に油を注いでしまったようじゃのー
ジュード待ってよ…!逃げようとしたのは悪かったけど僕達、戦うつもりは…
すず問答無用です。あなた達は油断も隙もありません
すずはっ!
ジュードおっと…!
すずあれを避けるとは、やはりただ者ではありませんね…
ジュードちょっ…待ってって…!
すず行きます!
scene3森と柵と侵入者
すずくっ…
エステルすず、やめてください
すずいえ、それは出来ません。任務ですから
ジュードお願い、もうやめてよ!僕達だって、君を傷つけたくない
ルドガー俺達は本当に何もしてないんだ。話を聞いてくれ!
マギルゥ無益な戦いは犬も食わんぞ?
すずそんな甘言には…
すず乗りません!
ヒュッ!
ジュードわっとっと…!ほら、足元がふらついてる。無茶はやめなって…
すず敵からの情けなど無用です。これは…任務ですから…!
ルドガーその任務がどんなものかは知らないが立入禁止区域に侵入したのは俺達じゃない
マギルゥそう、儂らではない。三人共、潔白じゃ!
ジュードマギルゥ…
すず問答無用と言ったはずです!
エステル待ってください、すず。ちゃんとお話を伺いましょう
すずそんな事をしている間にまた逃げようとするかもしれません。それに話も信じられるかどうか…
ジュードそんな…もう逃げないし、ちゃんと全部話すから、せめて聞いてから判断してよ…!
エステルうーん…わかりました。それでは、こうしましょう
エステルみなさん、わたし達ロランドファミリーの拠点までご同行いただけませんか?
エステルそこでわたし達のリーダーと会って、事情をお話してほしいんです
エステルそれならすずも問題ないですよね?
すず…まぁ…それだったら…
エステルその判断が出るまで白き獅子への報告は一旦、保留にします
すずただし、もし途中で逃げようとしたらエステルさんが何と言おうと今度こそ容赦しません
ジュード…どうしよう?
ルドガー大人しく従おう。こうなった以上、荒事を避けるにはそれが一番の選択だろう
マギルゥうむ。連中に引き渡されるよりはずっとマシかもしれんの
エステル決まりですね
すずそれではエステルさん、先導してください。私は逃げないよう後ろから見張ります
ルドガーあの子には完全に疑われてるな…リーダーが話のわかる相手である事を祈ろう…
ジュードうん…
scene1ロランドファミリー
ロアーでは先の件、よろしく頼む。時間を取らせて済まなかったな
レイアい、いえ、そんな事…!むしろ、こんなところまでわざわざ足を運んでいただいて、恐縮です
ロアーそうかしこまらなくてもいい。それに、卑下する事もない
ロアーリッカ村と言ったか。いい村じゃないか
ロアー君達、地元の自警団を中心に皆が助け合って生活している
ロアーまさに天帝の祈りのまま、平和を体現したようではないか
レイアはい。みなさんに迷惑をかけないよう自分達で出来る事は自分達でするって村のみんなで決めましたから
ロアー別に頼ってくれて構わない…と言いたいところだが助かっているのは事実だ
ロアーそれに最近はこの村とは関係ない場所でさえ我々を手伝ってくれていると聞く
ロアーそして今回の依頼もだ。本来、我々で処理すべき事案なのにすまないが…事は急を要するのでな
レイアいいえ、力になれて光栄です!みんな、喜んで協力しますよ!
ロアーそうか。そう言ってもらえると助かる。では、邪魔したな
レイアいえいえー。お気をつけてー!
レイアふう…緊張したー!
エステル──着きました。ここがリッカ村です
ジュードへぇ…自然に囲まれた村だけど、何だかカルミナ街より活気があるね
すず…褒めたからって酌量はしませんよ
ルドガーはは、別にお世辞じゃないよ
エステルではみなさん、拠点へ案内します。こちらに──
エステル…!あちらから来る方…まさか…
ロアー
ジュードあ…
ロアー
ジュード…今のって…
マギルゥ顔の見えん不審者じゃったのー。捕まえんでよいのか?
すず不審者なんてとんでもありません。あの白き隊服…誰かなんてすぐわかります
ルドガー白き獅子の幹部…その頂点とも言われているロアーか。こんなところでお目にかかれるとはな
ジュードうん…話には聞いた事があったけど…神秘的な人だったね…
すず…もう姿が見えなくなりましたよ。エステルさん、そろそろ拠点へ
エステルあ…すみません、つい見惚れてしまって……改めてみなさん、こちらです
エステルただ今戻りました
レイアあ、エステル、すず、お帰り。そちらは…お客さん?
すず立入禁止区域に侵入した可能性のある容疑者です
ジュードいや、だから…
レイア容疑者…?って事は、犯人かどうかはまだはっきりしないって事?
エステルはい。事情をお聞きするためにここまでご同行いただいたんです
レイアなるほどね。他に変わった事はなかった?
エステルありました!さっき、そこで誰に会ったと思います?
レイアふふふ…知ってるよ。その人、誰に用事があってこの村にいたと思う?
エステルまさか…!すごいです、レイア!そんな身分の高い方とお知り合いだったんですか?
レイアロアー様と会うのは初めてだよ。仕事を手伝って欲しいって、直々に依頼しに来てくれたんだ
マギルゥそれは恐悦至極という奴じゃのう。他の幹部と会う事もあるのかえ?
レイアそれはまだだけど、この調子ならいつかはって思ってるよ
エステル世界中が憧れる存在ですよね。小さな子どもが、将来の夢は白き獅子とまで言うそうです
レイアそんな人達に頼られるなんて何かこう、燃えてくるものがあるよね!
レイアわたし達ロランドファミリーの活動が白き獅子に認められたんだ!
エステルはい。みなさんのお役に立てている証拠だと思います
マギルゥよかったよかった、めでたしめでたしじゃ。それでは儂らはこれにて…
すず逃がしません…!
ジュードマギルゥ…そういう事するとまた疑いが深くなるよ…?
ルドガー俺達は逃げない。ちゃんと話して誤解を解くためにここまで来たんじゃないか
レイアよし…!じゃあ、そっちの話を聞こうか
レイア…なるほど、事情はわかった。全部、猫を助けようとしてやった事だったんだね
すず…カルミナ街の食料泥棒の情報は私も聞いた事があります。犯人が猫だったとは…
エステルでは、すずもこの方達の無実を信じるという事でいいです?
すずいえ…猫の話が事実だとしても、立入禁止区域に入らなかった証拠にはなりません
レイアんー、それもそうか…ジュード、その辺りはどうなの?
ジュード近くまで行った事は認めるけど、柵の中には決して入らなかったよ。入る理由もないしね
すずお二人はそうかもしれませんが、マギルゥさんは?さっきから話に出てきませんが
マギルゥぎく!
ルドガーマギルゥとは、警備の人達が騒ぎ出してから出会ったんだ
ジュードうん。だから僕達もマギルゥが何をしていたのかはよく知らないんだよ
レイアなら事情は飛ばして、ズバリ聞くよ。マギルゥ、柵は越えたの、越えてないの?
マギルゥ迷っておったからのー。柵は越えたかもしれんし、越えてないかもしれんし…
マギルゥそういう事、誰にでもあるじゃろ?
エステル侵入者は昨日も現れたと聞いています。だからわたし達が呼ばれたわけですし…
ルドガー二日連続…どっちもマギルゥが?
マギルゥおお、そうじゃった!二日間ぐらい彷徨い続けておったのじゃ!
ジュードそれにしては体調がよさそうだけど…疲弊した感じもないし、顔色も──
マギルゥえーい、黙れ黙れ!証拠はあるのか、証拠はー!
レイア確かに証拠はないね。ふむぅ…
レイアうん…なるほど。そっちの事情はわかったよ
レイアジュードとルドガーについては、説明も筋が通ってるし、問題ないんじゃないかな
レイアというわけで、二人は釈放!疑ってごめんね。何かお詫びしないと
エステルよかったですね、二人共
すずレイアさんがそう判断するなら私も信じます
ルドガーいや、わかってもらえたならそれでいいよ。そっちの事情もわかるし
マギルゥよかったよかった。それでは今度こそ帰るとしようかのう
レイア待って!今のは、ジュードとルドガーの話!
レイアマギルゥは…まだ怪しいよね。筋は通ってるようで通ってないし…
レイア…と言っても、ロアー様が捜してるっていう咎人とは違うみたいだけど…
すず…!今、何と…!
エステル咎人が出たんです…?
レイアそう。ロアー様からの依頼。女性の咎人が一人、こっち方面に逃げたから情報集めてって言われてて
ジュード待ってよ。咎人って確か、人を惑わすような事を言う人の事だよね?
レイアうん。ありもしない事を本当にあったかのように話して、世間を混乱させるとか…
ジュード確かにマギルゥは怪しいところもたくさんあるけど、さすがに咎人ではないと思うよ
ジュード筋は通ってないかもだけど、意味不明な事は…たまに言うけど…
ジュードそれで人を惑わす事も…言うね……あれ…?
マギルゥええい、「まさか!」みたいな顔をするでないわ!
ルドガーマギルゥは確かに人を惑わせるしお騒がせなところもあるけど、人を煙に巻いてるだけだ
ルドガー話に聞く咎人のイメージとはちょっと違うような気がするけど…
レイアごめんごめん、わたしもマギルゥは咎人ではなさそうって言いたかったの
すず…よかったです。もしマギルゥさんが咎人だったら、わたしはラザリス様に背いた事になりますから
エステル咎人を見つけたら、その言葉に耳を傾けてはならず、誰にも接触しないよう閉じ込める…
ルドガー咎人が現れた時の緊急対応法か。ラザリス様直々のお言葉だったな
エステルはい。でも、よく考えると難しい事かもしれませんね。話も聞かずに判断というのは…
レイア咎人の言葉は人を惑わせるって言うからね
ルドガーラザリス様が仰るぐらいだ。マギルゥのように人を煙に巻くのとはまた違った意味じゃないかな
マギルゥ何にしても儂は咎人ではないのじゃ。もうよかろう?
レイアダ~メ。侵入の事に関しては、結局、何も説明してくれてないよね。そこはっきりするまでは帰せないかな
マギルゥ何も説明する事はないんじゃがのー
レイアでも、それじゃ疑いも晴れないし、その間はここにいてもらうしかなくなっちゃうよ?
マギルゥ三食昼寝付きならいくらでもいてやるぞー
レイア食事は出すけど…仕方ないね。じゃあどこか部屋を…鍵を掛けられるのは地下倉庫かな?
マギルゥ倉庫じゃとー!?こんなか弱い乙女をそんなところに閉じ込めるというのかー!
レイアすず。案内してあげて
すず了解しました。こっちです
マギルゥは~な~せ~!魔女さらい~!
ジュードいいのかな…悪い人ではないと思うんだけど
ルドガー気の毒ではあるが、疑いがある以上、仕方ないだろう。善人と言い切れないのも事実だしな
レイア悪いようにはしないよ。事情があるなら、それもきちんと聞いた上で考えるから
レイアそれはそうと、二人共、もう日も暮れるし、今日はこの村に泊まって行くんでしょ?
レイアよかったら、ここの客室を貸すけどどうかな?ベッドもふかふかだよ
ルドガーいや、そこまでの気遣いは…
レイアまぁまぁ、遠慮しないでよ。それで、出来たらなんだけど…
レイアルドガー、ご飯作るの手伝ってくれない?
ルドガーあぁ、それは構わないけど…
エステルレイア、ルドガーの料理食べてみたいってずっと言ってましたもんね
ルドガーずっと…?
レイアあはは。実は噂はかねがね…カルミナ街のルドガーって言えばこの村でも有名だよ
ルドガーちょっと照れくさいな…わかった、今夜はお言葉に甘えるよ。食事の用意も手伝おう
レイアやった!じゃあ早速、厨房に案内するね
ジュードあ、僕も手伝うよ
エステル今夜は、いつもより一層、賑やかになりそうですね
エステルわたしも手伝います!
ジュードふぁ…よく寝た
ルドガーおはよう、ジュード。朝食の用意出来てるぞ
ジュードありがとう。朝食もルドガーが作ってくれたんだ
ルドガーああ。朝から出かけるからってレイアに弁当をねだられてね。そのついでだよ
ジュード人気のコックも大変だね。昨日の夕食も、結局ほとんどルドガーが作ってたし…
ルドガーいや、喜んでもらえるならどうって事ないよ
ルドガーそれに…俺は、ああしてわいわいと大勢で食卓を囲む姿を見るのが好きなんだ
ルドガーまるで家族のように仲のいい彼女達が俺の料理を美味しい美味しいと喜んで食べてくれているのを見ると…
ルドガー心に空いた穴が埋まっていくような不思議な気持ちになる…
ジュード心に空いた穴…?
ルドガー上手く言えないんだけど…これは義務感に近いかもしれないな
ルドガー使命感と言い換えてもいい。誰かに料理をふるまう事を約束したような気がして落ち着かないんだ
ルドガーそんな約束をした記憶もないし、誰に何を食べさせたいのかもわからないんだけどな
ジュード使命感か…変な話だけど、ちょっとうらやましいかも
ジュード僕には、そういうどうしてもやらなきゃって思う事、特にないから…
ルドガー
ジュードそういえば、マギルゥはどうなったのかな?
ルドガーレイアが言うには、事情を話すどころか寝床を整えたりしているそうだ
ジュード住みつく気なのかな…何がしたいんだろう?
ジュード昨日も何だか変なはぐらかし方をしてわざと捕まってるようにも思えたし…
ルドガーさぁ…。彼女に関しては言動が全く読めないから、何とも…
ドォォォォォンッ!
ジュードな、何…!?
ルドガー外が騒がしい。何かあったのか…
ジュード窓の外見て、ルドガー!村の中に魔物の群れが…
ルドガーそれだけじゃない!あそこで煙が上がってる…火事じゃないか!?
エステルた、大変です!魔物の群れが…
ジュードうん、わかってる。ねぇエステル、遠くだけど火も上がってるし、マギルゥも…
エステル…!このままじゃ危ないですね…!わたし、お迎えにいきます!
ルドガー何があるかわからない。俺達も行こう、ジュード!
scene2ロランドファミリー
ルドガー…!魔物がこんなに…!
マギルゥおーおー、圧巻じゃのー
ジュード村のみんなは大丈夫!?
エステルわたし、様子を見てきます。みなさんは安全なところへ避難してください
ジュードいや、手伝うよ。僕、治癒術も使えるからきっと役に立てると思うし
エステルですが…
ジュードこんな状況なのに、自分達だけ安全なところに避難するなんて出来ないよ
ルドガー俺もだ。それにレイアが出かけている今、人手が必要だろう
マギルゥ仕方ないのう、儂も手伝うわい。ただし…この恩義、忘れるでないぞー
エステルありがとうございます。とても頼もしいです
エステル既に、すずが村の人達の避難誘導に動いてくれています
エステルわたし達は手分けして逃げ遅れた人や怪我人がいないか見て回りましょう
ジュードうん、わかった。急ごう
ジュードたあっ!
バシィッ!
ギャウッ!
ジュードふぅ、何匹か倒したけど、まだまだいるな…
ジュードでも村人達の避難はほとんど終えてるみたいだ…人っ子一人いない。さすが、すずだね
すずロランドファミリーは自警団。その一員として当然の仕事です
ジュードすず…!
すず逃げ遅れた人かと思ったらあなたでしたか…お怪我もないようで、何よりです
ジュードそっちは大丈夫?怪我があるなら、すぐ治療を…
すずいえ、平気です。魔物も数は多いですが、私も手数の多さには自信があります
すず魔物は私に任せて、ジュードさんは消火活動を。村の食料庫が燃えているらしいので
ジュードうん、わかった
ジュードここが食料庫…!酷い燃え方だ、早く消さないと…
マギルゥおお、ジュードではないか!よいところに来た!
ジュードマギルゥ!
マギルゥ急げ!消火じゃ、消火!ここが燃えたら居候の儂らは飯にありつけんようになるやもしれん
マギルゥほれ、水をじゃんじゃん持って来い!ザバザバぶっかけよ!
ジュードう、うん…!
ジュードふぅ…何とか火は消し止めたかな…
マギルゥな、中は…?儂らの食料…
ジュード駄目だよ、マギルゥ!食料庫に入っちゃ!崩れ落ちるかもしれないよ!?
マギルゥかっはぁ…!黒焦げじゃあぁぁ…!
ジュードまぁ…自分が無事だっただけよしとしようよ…村の火事も収まったみたいだし
マギルゥいや、諦めるのはまだ早いぞ。無事な食べ物を探し出しておけば自警団の連中も儂を見直すじゃろ
マギルゥ儂は食料庫を調べておるから、村の事、後は任せたぞ!
ジュードマギルゥがあんなに必死に…
ルドガージュード!そっちはどうだ、無事か?
ジュードうん。火も消し止まったとこ。ルドガーは?
ルドガー俺は大丈夫だけど、逃げ遅れた怪我人を見つけたんだ。動かせないほど酷いんだ、治療を頼む
ジュード…!わかった、すぐ行くよ!
scene3ロランドファミリー
ルドガーこっちだ
ジュード大丈夫ですか!?
村の男あ、あんた…!治療出来るって人だろ?頼む、この子を助けてくれ…!
ジュード大変だ、すぐ治療します。あなたは大丈夫ですか?その顔の傷は…
村の男こいつぁ元々ある古傷だ。今更治療なんていらねぇよ。それよりこの子…意識がねぇんだよ
男の子ぅ…うぅぅ…
ジュード…傷が深い。脈は……まずいな…
ジュード時間がかかるかもしれません。その間、声をかけ続けてください
ルドガージュード、手慣れてるな。医学の心得が?
ジュードえ…いや、見よう見まねだよ。だから大した事は出来ないけど、命だけは助けるから…
ルドガー酷いのか…?
ジュード大丈夫…絶対治してみせるから…
すずやあっ!
グギャァアッ!
すず…ふぅ。魔物はだいたい片付きましたね
エステルすず、怪我はないです?
すずエステルさん、ご心配には及びません。あの数だったので疲れはしましたが…
エステル無理は禁物です。少し休んでください
すずいえ、そうはいきません。一匹、取り逃がした魔物がいます。まだ村の中にいるかもしれないので
エステル…確かにそれは心配ですね。わかりました、わたしも行きます
ジュードはぁ…はぁ…ここが正念場だ…あと少し…
ルドガージュード、顔色悪いけど大丈夫か…?少し休んだ方が…
ジュード今、手を放すわけにいかないんだ。この子の意識が戻るまでは集中し続けないと…
ジュード僕が休んだら、ここまでの治療が無駄になるかもしれない…!
ルドガー…わかった。ならここは任せた。俺はエステル達の様子を見に行くよ
ジュードうん、お願いするよ。この子は僕が絶対に助けるから…!
ルドガー…ジュード…優しい奴だな。弱音も吐かず、あんなに献身的に頑張って…
ガサガサ…
ルドガー…!何だ…?あの辺りの茂みが動いたような…
グルル…
ルドガー魔物…!?まだ残ってたのか…
エステルルドガー!無事です?
ルドガーエステル、すず…!
すず最後の一匹、ここにいましたか…!
ガウウ…
ダッ──
エステル逃げました!
ルドガーまずい!あっちにはジュードと怪我人が…
すず…!行きましょう!
ジュードはぁ…はぁ…くぅ…集中力が…でも、まだ…手を放すわけには…!
ガルルルル!
ジュードえっ…?
ルドガージュード、魔物だ!避けろっ…!
ジュードなっ…!うわあぁっ!?
グオオッ!
ジュード──っ!
ザシュッ!
村の男ぐああっ!?
ジュードおじさん!?そんな、僕を庇って…!
ルドガーはああっ!
ズバッ!
ギャウウッ!
すず魔物は仕留めましたか…
エステルですが…
ジュードおじさんが…!顔から血が出て…
村の男くっ…お、俺は大丈夫…ちょいと古傷が開いただけだ…それより…せがれを頼む…!
エステルその子意識がないんです?ジュード、わたしも手伝います!
ジュードもう少しだ…
男の子うぅ…ん…
ジュード意識が戻った…!
エステルああ…!よかったです…!
男の子あれ…お父ちゃんは…?
ジュード大丈夫。お父さんの怪我もすぐに治すからね
村の男…!?うぅ…
ジュード…おじさん…?
村の男
村の男…これは…どうした事だ、俺は…
ジュードどうしたの、おじさん?じっとしてて。早く治療を…
村の男それどころじゃない。それより…どうして今まで…!
村の男俺はいつここへ…そうだ、戦争はどうなったんだ?
ルドガー…戦争?
エステル何の事を仰ってるのでしょうか…
村の男何って、戦争だよ!あんな大きな戦争を知らないのか?ほら、この顔の傷だってその戦争で…
男の子お父…ちゃん…?どうしたの…?
すず
村の男それにこの辺りは…あの結晶がない…ここはまだ安全な場所…なのか…?
エステルあの、お気を確かに。落ち着いてください
村の男…!あ、あなたは…!エステリーゼ様…!?
エステルはい…?
ジュード…エステリーゼ、様…?
村の男どうしてこんなところに──
すず…!
ガシッ
村の男──うぐっ!?な、何をする…!
エステルすず!?何を…!
すずみなさん落ち着いて聞いてください。この人は…咎人です
ジュードまさか…!?
すずエステルさん、この方の言葉、理解出来ましたか?
エステルいえ…何の事か、わたしには…
すず咎人の言葉は人を惑わせる…今、エステルさんを惑わせた言葉こそまさしく咎人の証…!
すずラザリス様のお言葉通り、誰にも接触しないよう閉じ込めねばなりません
村の男おい、やめろ、違う!意味がわからないのはお前らだ。どうしてこんな事になってるんだ!
すずお静かに。咎人の言葉は聞いてはいけない…これ以上の発言は慎んでください
村の男なっ…
エステルすず…!咎人とはいえ、あまり手荒な事は…
すず取り押さえているだけです。静かにしていてくれれば、これ以上の事はしません
ジュード…ねぇ、すず。その人だけどさ…本当に捕まえちゃうのかな…
ルドガージュード…よせ…
ジュードだって、僕の事を助けてくれた人なのに!息子想いの、優しい人なのに!
エステルジュード…お気持ちはお察しします。けど…咎人は咎人ですから…
ジュードそんな…
ルドガージュード、諦めた方がいい。ラザリス様の言葉に逆らってくれと頼んでいるようなものだから
ルドガーそれに…君よりずっと辛い想いをしてる人がいる事も忘れちゃいけない
ジュードあ…
男の子…お父ちゃん…
男の子ぐすっ…ぅ…ラザリス様のため…お父ちゃん…うぅ…
ジュード
村の男くっ…血も涙もねぇのかよ
すず黙ってください。決まりですから
村の男くっ…!
すずこの人はロランドファミリーで預かります。地下倉庫に閉じ込め、白き獅子を呼びましょう
エステルそうですね…マギルゥはどうしますか?
すず…客室で見張りましょう。そもそもマギルゥさんが逃げず、大人しく戻ってくれれば、ですが
ジュード
ジュード…鍵がかかってる。ここだね…
ジュードおじさん…聞こえる?
村の男…!その声は、あの時の…助けに来てくれたのか?
ジュードいや…あの…あの時のお礼をちゃんと言いたくて…
村の男そんな事はもうどうでもいい。なぁ、あの子…俺の息子はどうなった?
ジュードあの子ならもう大丈夫です。すっかり元気になりました
村の男そうか…ありがとうよ…
村の男なあ、あんたも俺が人を惑わす悪い人間だと思うか?
ジュードいえ、そんな事は…
村の男だろ?お願いだ、ここから出してくれ
村の男このままだと俺は、シャングレイスまで連行される。あの子に会えなくなっちまうんだ…
ジュード出来る事ならそうしてあげたいけど…でも、あなたは咎人で──
村の男咎人なんか知ったもんか!大体、咎人って何なんだ!?
村の男この国は何か変だ…!そもそもエンテレスティアなんて国…一体いつから…
村の男人を惑わせるだって…?戸惑ってるのはこっちだ…
ジュードおじさん…僕は…
ジュード……ごめん
村の男ま、待ってくれ!行かないでくれよ!おい…!
ルドガー…ジュード。やっぱりここにいたのか
ジュードルドガー!?あの、これは…
ルドガー地下倉庫の鍵を持ち出しただろう?
ジュードばれてたんだ…
ジュードルドガー…僕は…どうすればいいんだろう…
ジュードラザリス様は信じてる…けど…あの人は命の恩人なんだ
ルドガー咎人を相手に取るべき対応…そんな事は、言うまでもなくジュードだってわかっているだろう?
ルドガーそれでも悩むのは、君の気持ちがあの人が咎人になったっていう結果を受け止めきれていないから…違うか?
ジュード
ルドガー…ジュード。君は優しいし、あの人に同情する気持ちもわかる…
ルドガーけど、その考えは現実から目を背けているだけだ
ジュード僕は…
ジュードおじさんを見捨てたくはない…けど、ラザリス様を裏切る事なんてしたくない
ルドガージュード…
ジュード頭ではわかってるんだ。おじさんは咎人になってしまった…。白き獅子に引き渡すべきなんだって
ジュードけど同時に、そうしなくて済むのならどんなにいいだろうって考えてしまう…
ジュードルドガー、僕は…自分がどうすればいいのかわからないんだ…!
ルドガー…ジュード。その答えは俺には出せないよ
ルドガーやるべき事はわかってるのに悩むっていうのは、君の気持ちの問題なんだと思う
ルドガー気持ちの問題に答えを出せるのは、君自身だけ…どうするべきかは自分で決めるんだ
ルドガー仮に俺が答えを言ったところで、君の気持ちが納得出来なければ結局、後悔が残るだけだからね
ルドガー辛い選択だとは思うが…現実と、何より自分の気持ちと、きちんと向き合うんだ
ジュード
ジュード僕は…僕の、選択は…
ジュード…ルドガー…これ…
チャリ…
ルドガージュード?この鍵は…どういう…
ジュードルドガーを信じる事が僕の選択…ていうのは、駄目かな…
ルドガーそれは選択じゃない。流されているだけだ
ジュード…ごめん
ルドガージュード…
ルドガー
scene1やるべき事、やりたい事
ジュードはぁ…昨日はあんまり眠れなかったな。疲れてるはずなのに…
マギルゥどうしたどうした。冴えない面して、色男が台なしじゃぞ
ジュードその色男って言うの、そろそろやめてくれないかな…全然そんなのじゃないし
マギルゥ話は聞いたぞ。この村で咎人が出たらしいのー。それもお主の命の恩人じゃとか
ジュード…その話はしたくない
マギルゥレイアも大変だったようじゃぞ。昨晩、疲れて帰ってきてみれば村はボロボロじゃし、咎人はおるし
マギルゥまさに目の回る忙しさ!ルドガーの夜食を食べる暇もなかったと聞くぞ
マギルゥそのルドガーも、村の連中にせがまれて、料理をふるまいにあちこち奔走しとるのじゃとか…
ジュード…何が言いたいの?
マギルゥ思い悩む暇があるのは幸せ、という事じゃよ
ジュードマギルゥは、人の痛みとか苦しみって考えた事ないの?
マギルゥさぁのー。儂にとってはどーでもいい事じゃ
ジュードそんな言い方…まるで人の気持ちになんて関心ないみたいだよ…
マギルゥ魔女じゃからのー
マギルゥそれに言っておくが、これは別に悪い事ではないのじゃぞ
マギルゥどーでもよいと思える方が、くだらん事で悩むより、ずっと人生を楽しめるものじゃ
ジュード僕にはそんな風に思えないよ。どうでもいい事なんてないからこうして悩んでるんじゃないか
マギルゥ人は気付かぬ内に、どーでもよい事に捉われる生き物なんじゃて…
マギルゥそうじゃ、どーでもいい事がどーでもよくなるまじないの呪文を教えてやろうかの?
ジュードいいよ、そんなの…
マギルゥまぁまぁ、物は試しじゃ。よいか?こうして足を曲げて、マギン──…
ジュードもう、いいって…僕、部屋に帰るから
マギルゥおー、思春期という奴かの。難しい年頃じゃな
マギルゥ…とにかく、こうなってしまえばレイアからの初任務は失敗じゃの
マギルゥはぁ、せっかくロランドファミリーに加入したというのに、先が思いやられるわい…
ジュードはぁ…どうでもいい、か…。そうだよね、普通は咎人の事なんて心配する方がおかしいんだし…
コンコン
???ジュード、あの…
???少し、よろしいでしょうか?
ジュードその声は、エステルとすず?どうぞ、入って
エステルお邪魔します
ジュードあれ…何か甘い匂いが…
すず実はエステルさんと二人でお菓子を作りました。よかったら食べてください
ジュードそうなんだ。ありがとう…クッキーか。いただくよ
エステルお口に合うといいのですが…
ジュード…ん、美味しい。サクサクした歯ごたえにバターのいい香りがする
エステルわあ、よかったです!
すず元気、出ましたか?
ジュード…え?
ジュードそっか…元気づけようとしてくれたんだ…
ジュードマギルゥにも言われたしそんなに落ち込んで見えてたんだね
すず元気出してください。あんな事があれば悩むのもわかりますが…
エステルわたし達に出来る事があれば言ってください
ジュードありがとう、二人共。その気持ちだけで十分だよ
エステルよかった…レイアも心配してたんですよ。こんな任務を発令するぐらい
すずエステルさん…!任務の事は…
ジュード任務…?
ジュードレイア、どういう事?僕を元気づける任務なんて…
レイアごめん、どうしても気になってさ。気に障ったなら謝るよ。ほんと、ごめん!
ジュードそうじゃなくて…ロランドファミリーがそんな事に人員を割いてていいの?
ジュード村の復興とか、もっと優先してやる事がいろいろあるでしょ?
レイア…何言ってるの?
ジュード何って…だから焼けた食料庫を立て直したり…
レイア心の修復は、食料庫の修復なんかよりよっぽど優先すべきだと思いますけど?
ジュードでも、僕一人のための事より村のみんなのために動くべきで…
レイアむむむ…あのね、ジュード。「村のみんな」なんて人はいないんだよ
レイアわたし達は、村の一人一人のために出来る事なら何でもやるの。そこにはジュードも入ってる
ジュードレイア…
ジュード…そっか、すごいな…レイア達はやるべき事を考えて、きちんと選んで動いてる…
ジュード僕も、そんな風になれたら…
ジュード
ジュードねぇ、レイア。お願いがあるんだけど…
レイアん?
レイア…というわけで、ジュードのロランドファミリー加入を認めたいと思うんだけど、どうかな?
エステル賛成です。ジュードは昨日も、消火活動の手伝いに魔物退治、負傷者の治療と大活躍でしたから
すず私も異存はありません。マギルゥさんの方はまだ賛成ではありませんが…
マギルゥ何とでも言うがよいわ。入ったもん勝ちじゃ。入れた方が悪いのじゃ
ジュードそんな事言われたら僕も入り辛くなるんだけど…
ジュードというか、マギルゥはいつの間にロランドファミリーに加入していたの?
マギルゥ昨晩、レイアに頼み込んだのじゃ。儂もリッカ村の力になりたいと思ってのー
レイア消火を手伝ってくれた上に、村のために燃え跡から使える食料を探し出してくれたって聞いてね
レイアお蔭で十分な食料も確保出来たし、悪い人じゃないってわかったならそれでいいと思って
マギルゥジュードこそ、急にファミリーに入れてくれとは…ははーん…わかったぞ…
マギルゥ思春期の男が持つ熱き魂が女だらけの禁断の花園に導かれたというわけじゃな~?
ジュードそ、そんなんじゃないから…!
レイア別に禁断でもないからね。たまたま女の子ばかりなだけで、男の子も大歓迎だから!
ジュード僕はただ…レイア達みたいに、自分のやる事をちゃんと決めたいって思ったんだ
ジュード昨晩の事も、結局、僕自身の意志では何も…
レイアん、昨晩何かあったの?
ジュードあ、いや、今のは独り言。忘れて
マギルゥ
ジュードとにかく僕は、みんなみたいにやるべき事を自分で決めたいって思ったんだ
ジュードその初めの一歩として、ファミリーに入る事を自分で決めたんだけど…
マギルゥ自分探し、という奴じゃな。若いのー、青いのー
ジュード駄目かな…?こんな動機じゃ…
レイアううん、駄目なんて事ないよ。別に面接してるってわけじゃないんだしね
エステルはい。歓迎します。ね、すず
すずはい
レイアというわけで、改めてよろしくね、ジュード
ジュードうん、こちらこそ
レイア男手があると便利な時も多いしね。いろいろあてにすると思うけど、いいかな?
ジュードうん。何でも言って
レイアじゃあ早速。これから村の人の依頼で、買い物に行くんだ
レイア量が多いから、わたし一人じゃ大変で。付き合ってもらえるかな?
ジュードわかった
レイアよおし、じゃあ初仕事、張り切って行きましょう!
エステルいってらっしゃい
すずお気をつけて
scene2やるべき事、やりたい事
ジュードそれにしても、買い物の手伝いまで任務だなんて…
レイア言ったでしょ。村の一人一人のために出来る事なら何でもやるって
レイア依頼主は足の悪いおばあちゃんでね。たまにまとめて買い出しをしてあげてるんだ
ジュード出来る事なら何でも…か…
レイアジュード、暗い顔は禁止!
ジュードえっ…?
レイアみんなの笑顔を守るのがわたし達の仕事なのに、わたし達が笑ってないでどうするの
ジュード…そっか。そうだね
レイアそうそう。いい顔してないといい買い物は出来ないんだからね
ジュードうん…そう…だね…?え、顔と買い物、関係ある?
レイアおじさーん!このリンゴ、たくさん買うからちょっとまけてくださーい!
店主お、レイアちゃんか。今日も元気いいねぇ。よし、目いっぱい安くしちゃおう!
レイア…ほらね?
ジュードあはは、さすが
店主おっ、そっちの兄ちゃんも確か昨日、何かと頑張ってくれたって人だよな?
ジュードえ、僕?
店主みんな感謝してるよ。こいつもおまけだ、持っていきな
ジュードいや、そんな、大した事してませんから…
店主まぁまぁ、遠慮しなさんな。これは俺の気持ちなんだ。迷惑でなきゃ受け取ってくれよ
ジュードでも…
レイアおじさん、ありがとう!よかったじゃない、ジュード。もっと喜びなよ
ジュードそうだね。ありがとうございます
店主いいって事よ。しばらくこの村にいるのかい?
レイアふふふ、実はね。何を隠そう、ジュードは今日からロランドファミリーの一員なんだよ!
店主へぇ、そいつぁいいや!村のみんなもきっと喜ぶぜ!よろしくな、兄ちゃん!
ジュードうん…よろしくお願いします
ジュードいいのかな…
レイア何が?
ジュードあんなに感謝されるほど、僕は立派な事はしてないよ。僕は僕に出来る事をやっただけで…
レイアうーん、それでいいんじゃないかな
レイア出来る事をやっただけ…ジュードは謙遜して言ってるけどそれが一番大事だと思うよ?
レイア出来る事なら何でもやるって言ったのは、別に、もっとやれるって意味じゃなくて…
レイア一生懸命にやってれば何とかなるから元気出して頑張ろう!
レイア…って、それだけの事なんだよ。特別な事なんてわたし達も何もやってないから
レイアだからジュードは、それでいいと思うよ、わたしは。褒められたんだから、胸を張りなって
ジュードわかった。褒められた事は素直に受け止めるよ。けど、胸を張る事は、出来ないかな…
レイア…何かあったの?
ジュードうん…実は…
レイアそっか、ジュードにとっては命の恩人が捕まってる状況なんだね…
ジュード怒られるかもしれないけど…昨晩、僕、地下倉庫の鍵を持っておじさんのところに行ったんだ…
ジュードけど、結局、開けられなかった…出来る事を僕はやらなかったんだ…
レイアジュード…
ジュード…ねぇ。レイアはあの、咎人になった人の事、どう思ってる?
レイアんー…わたしの立場でこんな事言うと、おかしいんだけど…
レイア命の恩人の事が気がかりだっていうジュードの気持ちも理解は出来るよ
レイアけど、咎人となると、やっぱり別かな…どんないい人でも、咎人は、その…
ジュード…いいよ、レイア。わかってる。だから悩んでるんだ…
ジュード咎人は放っておいちゃいけない…閉じ込めて、ちゃんと白き獅子に通報する…
ジュードけど…僕にはおじさんのために出来る事は何もないのかなって…
レイア…ジュード。ちょっと寄り道してもいいかな
ジュードえ…?うん…
レイア着いた。あそこに見える家、わかる?
ジュードあ…あそこにいる男の子、昨日の…じゃあ、もしかして…
レイアそう。咎人になったおじさんの家
ジュード…あの子…やっぱり、元気ないね…
レイアうん。元気出してもらいたくて、わたし、声かけてみたんだけどね…
レイアあの子が落ち込んでる原因を取り除いてあげる事は出来ないから…
レイアどーしようもない事、なんだけどさ。だからって諦めたくないじゃない
レイアでも、すごく悔しいけど…やっぱり難しいね
レイア何かを大事にすると、他の何かがやり辛くなったりしてさ…
ジュード…どっちも大事にしたい時はどうすればいいんだろう…?
レイアんー、わかんないけど、とにかく、くよくよしてるのはよくないよね
レイア悩んで落ち込んでるだけじゃ本当に大事にしたい事までどーにもならなくなっちゃうよ
レイアだからわたしは、せめて出来る事だけは悔いのないよう全力投球するってわけ
レイアロランドファミリーを作ったのもそのためなんだよ。仲間がいた方が出来る事はもっと多くなるから
ジュード…すごいね、レイアは。どんな事があっても、前向きに考えて進んでるんだ…
レイアまぁ、わたし、じっと考えるよりとにかく動きたい方だからね
レイア悩むにしても、動きながら悩むようにしようって、自分に言い聞かせてるんだ
ジュード答えを出さないまま動くなんて…失敗が怖くはないの?
レイアうーん、そうだなぁ…勿論、失敗もするし、こうしておけばよかったって思う事もあるよ
レイアでも、反省はしても、後悔はしないようにって思ってる。それは自分で決めた事の結果だから
レイアって言ってても、後悔する事もしょっちゅうだけどね。昨日、村にいなかった事とか、あと…
ジュード…レイアは大人なんだね
レイアえっ、そ…そんな事ないよ。そんな風に言われると、ちょっと照れるな…
ジュード出来ない事も糧にして、ちゃんと前に進んでる…
ジュード僕なんて…自分の進むべき方向すら見えてないのに…
レイアジュードは…難しく考えすぎなんじゃないかな
レイアだからいろんな事に縛られて本当にやりたい事がわからなくなってるんじゃない?
レイア本気でやりたいって思ったら考える前に身体が動いてるもんだよ
ジュードそっか…。そういうものかもね…
ガサッ!
ジュード…!何の音!?
ガルルル!
レイア魔物…!?まさか、また…?
ジュード大丈夫、他にはいないみたいだ。…僕に任せて!
scene3やるべき事、やりたい事
ジュードふう…レイア、大丈夫!?
レイアう、うん…いきなりでびっくりしたけど
レイアジュード、すごいね。一人であっと言う間に倒しちゃって。わたしも手伝えたのに…
ジュード…さっき、レイアが言ってた通りだよ
ジュードレイアを守らなきゃって思ったら身体が自然と動いたんだ
レイアわたしを…守りたい…?それって…
レイア…っ!うっ…
ジュードレイア!どうしたの!?どこか怪我でもした!?
レイアだ、大丈夫。ごめん、ただの立ちくらみだと思う。平気だから…
ジュードならいいけど…。怪我じゃなくても疲れてるなら無理しない方がいいよ
レイアもう、大丈夫だってば。ジュードは心配性すぎるよ
ジュードそうかなぁ?
レイアそうだよ。ジュードは昔から──
レイア…!
レイア…昔から…ジュードは…いつだって…
レイア…!ジュード、後ろ!
ガアアッ!
ジュードなっ…!さっきの魔物…!?
レイアはああっ!
ドゴォッ!
ギャウウ…ッ!
ジュードあ、ありがとう
レイア…わたしも、身体が自然に動いた
レイアジュードの事、守りたかったから…
ジュード僕ら、いいコンビかもね
レイアそうかも。でも何か、ちょっとくすぐったいね。あははは…
レイアに、任務の続き…買い物、行こっか。依頼主のおばあちゃんも待ってるし
ジュードあ、そうだったね。急ごう
レイアおばあちゃん、頼まれてたもの買ってきたよ!
村の老婦ありがとう。そこに置いといておくれ
レイアジュード、そこだって
ジュードよい…しょっ…!
村の老婦ふふふ…二人でそうしてると買い物帰りの夫婦みたいねぇ
レイアお、おばあちゃんったら、もう、やめてよ
レイアわたし達はそんなんじゃなくて、ただの幼なじみ──
ジュードえ?
レイア…あ…れ?
レイア…っ!
ジュードレイア?
レイア…そう、わたし達は、ただの幼なじみなんだから。買い物くらい…普通に行くよ…
ジュードえ?
村の老婦おや、そうだったのかい。レイアと幼なじみって事は、兄さんもこの村の出身かい?
ジュードいえ…違いますけど…
レイアえっ…
レイア…うっ!
レイアわたし…ジュードと…ううん、最近会ったばかり…あれ…?
ジュードレイア、大丈夫?
レイアわたし…
レイア…わたしは…
レイアジュード…と…
レイア…あっ…
レイアそっか、そうなんだ…わたし…
ジュードレイア、どうしたの?やっぱりさっきの戦いでどこか怪我を…
レイア…あ、ううん。違う違う、何でもないの
レイアあはは…わたし、ちょっと疲れてるみたい
ジュードちょっと休みなよ。おばあちゃんの手伝いは僕がやっておくからさ
レイアうん…ごめんね。そうさせてもらうよ。少し休んだら、落ち着くと思うから…
村の老婦…ちょっと様子が変だったねぇ。何かあったのかい?
ジュードさあ…僕にもよくわからないです…
ジュードレイア…どうしたんだろう…
scene1それぞれの迷い
レイアはあ…どうしてこんな事になっちゃったんだろ
レイアここはどこなのかな…エンテレスティアなんて前は聞いた事もなかったのに…
レイアリンネル村は…ア・ジュールはどっちだろ。それにメルディの事も…
レイアどうして今まで忘れてたんだろ…ジュードの事まで…そのジュードも今は何も覚えてないみたいだし…
レイアああー!頭がごちゃごちゃして、考えがまとまらないよ!
レイアそもそも晶化現象はどうなってるの?わたし、晶化したミラの事見てるってエリーゼ達と約束したのに…
レイアはぁ…咎人になるって、こういう事だったんだ…
レイア
レイア記憶を…失ってたって事になるのかなぁ…
レイアでもじゃあ、どうして記憶が急に戻ったんだろ…
レイア…あれ、そういえば…
レイア記憶を取り戻すだけなら、咎人なんて言って、悪い事のように言う必要あるのかな…?
レイア別にこんなの、誰に危害を加えるわけでもないよね
レイアむしろ、他の人もわたしと同じように記憶を失ってるんだとしたら、早く取り戻した方がいいに決まってる──
レイア──まさか、それが罪って事?
レイア記憶を取り戻す事がいけない事で、他の人の記憶を取り戻させないために誰とも接触しないように…?
レイア
コンコン
レイアひゃいっ!?
???レイア…大丈夫?入るよ…?
レイアあ、う、うん。どうぞ
ジュード調子はどう?食べる物持ってきたんだけど食欲はあるかな…?
レイアあ、そういえばお腹空いたかも。ありがとう…って、この匂いはもしかして?
ジュードうん、これ
レイアフルーツ焼きそば!わたしの大好物!
ジュード変わった料理だと思ったけど…レイアは好きなんだ?
レイア好きなんだって…ジュードが思い出してくれたわけじゃないの…?
ジュード思い出す…?えっと、前に聞いた事あったっけ。ごめん、忘れてたかも
ジュードエステルがルドガーに頼んでくれたんだ。僕は持ってきただけ
レイアそうなんだ…エステルが…
レイアって、あぁっ…!エステルって、エステリーゼ様…!
ジュードエステリーゼ様…?それって…
レイアあ、あの…何でもないの、今のは忘れて!
レイアそれより、フルーツ焼きそば!冷めない内に食べないと…いただきます!
レイア…はむ…ちゅるる…
レイアうーん、美味しい!
ジュード…ねぇ、何があったの?部屋にこもるなんて珍しいって、みんなも心配してたよ
レイアそうなんだ、迷惑かけちゃったね。ごめん!でも、もう大丈夫だから!
ジュード迷惑なんて思ってないよ。ただ、心配なだけ。どこか悪いんじゃないかって
レイア…ジュードは相変わらず、人の心配ばっかりだよね。そういうところは変わらないんだ…
ジュードえ、それってどういう…
レイア優しいよねって事。エステルや、すずや、マギルゥにルドガーも、みんな優しいけど…
レイアジュードは昔から、こっちが心配になっちゃうぐらい、人の心配ばっかりしてたなぁって
ジュード昔から…?一体、何の事…?
レイアね、ジュード。わたし達が幼なじみだって話、本当に何も思い出せない?
ジュードさっきもそんな事言ってたけど…何の事だか僕にはわからないよ…
レイア…そっか…上手くいかないな…
ジュード
ジュードレイア…聞いてもいいかな
レイアん、何?
ジュード僕の間違いだったら、本当に悪いんだけど…
ジュードレイア、もしかして…咎人になったんじゃ?
レイア
ジュード明らかに、いつものレイアと様子が違うよね
ジュードさっきから変な事ばかり言うし…違うなら、それでいいんだけど
レイアあはは、そっか、ごめん。変な事にしか聞こえないよね
レイア
レイアねぇ、ジュード。変な事ばかり言うけど、ちょっとだけ聞いてくれる?
ジュード…レイア?
レイアア・ジュールっていう国、知ってるかな?ガイアスっていう王様がいてね
ジュード国…?王様…?
レイアガイアスまんじゅうなんて売り出しちゃう、面白い国でさ。ジュードも一緒に食べたよね
レイアメルディが慌てて食べちゃって喉に詰まらせたところを、ジュードが助けてくれたんだよね
ジュード待ってよ、レイア…何の話を…
レイアそうそう、ジュードは医学の道を志して勉強してたんだよ。だからメルディへの処置も的確で…
ジュードレイア、待ってってば…
レイアそれから、小さい頃からよく遊んでてその頃にお母さんから──
ジュード待ってよ…!
レイアジュード…
ジュードどうして…レイア…本当に咎人に…
ジュード僕はただ…一言、違うよ誤解だよって言ってほしかっただけなのに…
レイア…最後に一つだけ
レイアミラの事も…覚えてない?
ジュードミ…ラ…?
レイア……
ジュード…ごめん、何の事だか僕にはわからないよ…
レイア…駄目、か。言葉だけじゃ無理なのかな…
レイアそれとも、これでいいのかな…記憶を取り戻すって事は、エンテレスティアでは罪なんだし…
ジュードねぇ、レイア…もうやめてよ…君まで咎人になってしまったら僕はどうしたらいいんだ…
ジュード君をあのおじさんのように閉じ込めて白き獅子に通報するなんて…僕には耐えられないよ…
ジュード咎人になったからって…君を守りたいっていう気持ちが変わるわけじゃないのに…
レイアジュード…すっごく嬉しい言葉…
レイアだけど…ジュードが一緒にいるべきなのはわたしじゃない…
ジュードレイア…?
レイアあっ、ううん、何でもない。ごめん、少し一人にしてくれる?
ジュード…わかったよ。僕も…少し頭を冷やしたいから…
ジュードあとでまた来るよ…
バタン
レイア…見てられないな。ミラの事まで完全に忘れちゃってるんだもんね…
レイア…言葉だけじゃジュードの記憶は戻りそうになかった…
レイア何とかしてあげたいけど、一体どうすれば…
レイア……
レイアそうだ…咎人だ…咎人を危険だって言ってるのは天帝だし、何か知ってるかも
レイアはぁ、わたしもジュードに負けないぐらいお人好しなのかも
レイアでも、ま、ジュードがあれじゃ仕方ない…わたしがひと肌、脱ぎますか!
scene2それぞれの迷い
ジュード…はぁ。どうしてこんな事ばかり…
ジュード僕は…どうすればいいんだろう…
ジュードおじさんを助ける事もレイアを通報する事も僕はしてないし、出来てない…
ジュードレイアは、くよくよせず出来る事を全力でやるんだって言ってたけど…
ジュード今の僕に…出来る事なんて何があるんだろう…
ルドガージュード、ここにいたのか
ジュードあ…ルドガー…さっきはありがとう。レイア、喜んでたよ
ルドガーそれはよかった。しかし、それにしては浮かない顔をしているな?
ルドガー…何かあったのか?
ジュードうん…まあ…
ルドガー俺でよかったら話を聞くけど…昨日の咎人の事か?
ジュード…咎人の事っていうのは、確かなんだけど…
ジュード…ねぇ、ルドガーは…前に僕が鍵を持って咎人のところへ行った時も黙っててくれたよね…
ジュード何で黙っててくれたの…?咎人を逃がしていたかもしれないのに
ルドガー何で…か…そうだなぁ…
ルドガー結局、ジュードは逃がしてない。だったら、誰かに言う必要なんてないと思うんだ
ルドガー悩む事は誰にでもあるし、ああいう場合なら、尚更だと思う。でも、悩む事は悪じゃない
ジュードじゃあ、僕が咎人を逃がしていたらやっぱり僕の事を捕まえて通報してた…?
ルドガー…ああ。けど俺も、その結論を出すまでに悩みはしていただろうけどね
ジュードルドガー…
ジュード…ルドガーになら、いいよね…実は──
ルドガーレイアが咎人…!確かなのか?
ジュードはっきりそうだと言ったわけじゃないけど、おそらく…
ルドガーそれで…ジュードは今回、どうするつもりなんだ?
ジュード咎人が現れた時の緊急対応法…
ジュード咎人を見つけたら、誰とも接触しないように捕えて、騎士団…白き獅子に引き渡す…
ジュードそんなの当たり前の事だ…今更言われなくてもわかってるよ…
ジュードけど…僕は…
ルドガー
ルドガー当たり前なら、いいじゃないか。君の言ってる事は間違ってない。すぐにレイアの事を通報しよう
ジュードルドガー!?で、でも、そんないきなり…
ルドガー躊躇する必要はないだろ?ジュードの言う通り、咎人はすぐに捕まえるべきなんだ
ルドガー世のため人のため、何よりラザリス様のためにもそうするのが一番じゃないのか?
ジュードそれは…そうだけど…
ジュードでもレイアは、すごくいい子なんだ
ジュード優しくて明るくて、この村には欠かせない人なんだ
ジュードなのに、こんな形で…黙って通報してさよならなんて出来ないし、したくない…!
ジュードちゃんと、レイアと話さないと…
ルドガー…ジュード、君自身の気持ちはもう見えてるんじゃないのか?
ジュード僕自身の…気持ち…?
ルドガー自分で言ったじゃないか。こんな形でさよならはしたくないって
ルドガー俺はレイアの事を通報するべきだと答えを言ったのに、君は反論して、自分の気持ちをはっきり言っている
ルドガーラザリス様を裏切るような気持ちを認めたくないんだろうけど…
ルドガーラザリス様を言い訳にして辛い現実から目をそらすのはちょっといただけないな
ジュード僕…僕は…
ルドガー前にも言ったけど、気持ちの問題には自分で答えを出さないときっと後悔する事になる
ルドガーその答えを出せるのは、俺でもラザリス様でもない、君自身だけだ
ルドガージュード。レイアの通報は少し待つ。だから後悔しないように自分の気持ちとちゃんと向き合うんだ
ルドガー何もせず成り行きに任せるなら、それもまた一つの選択だと思う。俺はこれ以上、何も言わないよ
ルドガー後悔さえしなければいい…。どうしようもない事なのは確かだからね…
ジュードどうしようもない事…そうかもしれない…
ジュードでも、それを悩んで落ち込んでいたら本当に大事にしたい事までどうにもならなくなる…
ジュード僕は、レイアを…
ジュードありがとう、ルドガー。僕、レイアと話してくる
ルドガー
マギルゥ何やら面白い事になってきたようじゃのー?
ルドガーなっ、マギルゥ…!?いつからそこに…まさか立ち聞きしてたのか?
マギルゥ何の事やら、さぱらんのう。儂はたった今やって来た通りすがりの大魔法使いじゃー
ルドガー…マギルゥ。通報するのは待ってやってくれないか?
マギルゥほほう、お主には儂がそんな真面目な魔女に見えるかや?あの出会いを忘れたわけではあるまい
マギルゥ安心せい。邪魔も協力もする気はないわい。儂にも事情があるでの
マギルゥ儂はただの見物客じゃ。咎人に情を感じる若人!純粋さ故の過ち、その悲劇の物語!
ルドガー
マギルゥ何じゃその目は…言っておくが本当じゃぞ。儂は成り行きを見守りたいだけじゃ
ルドガーそうか…俺も同じだよ。これはあの二人の問題だから
マギルゥほう?それにしては妙にはっぱをかけておったようじゃが?
マギルゥ咎人を守るという事は、ラザリス様に逆らうという事…下手をすれば大罪人じゃぞ?
ルドガー俺はジュードを煽ったわけじゃない。気持ちに整理をつけさせないときっと後で後悔すると思ったんだ
ルドガー自分の心に従えば、後悔をなくす事は出来なくとも、後悔を減らしていく事は出来る
マギルゥ熱いのう。熱すぎて、水をかけたくなるわい
マギルゥ酸いも甘いも受け入れてどーでもよくなれば楽じゃのに
ルドガー…それが出来れば、誰も悩んだりしないよ
scene3それぞれの迷い
コンコン
ジュードレイア、ちょっといいかな
ジュード
ジュード…レイア?入るよ…?
カチャ…
ジュードあれ…いない…どこか出かけちゃったのかな…
ジュードん…?何か置いてある…手紙…?
ジュード……
ジュードこれって…!大変だ、みんな…っ!
ルドガー置き手紙?
マギルゥほほう、そう来おったか…
エステル何と書いてあるんです?
すず見せてください
すず「突然、いなくなってごめんなさい。 みんなと話すと決心が揺らぐから 黙って出る事にしました」
すず「後の事はエステルに任せます」
エステル…っ!
すず「エステル。いきなり押し付ける形に なっちゃって本当にごめんなさい」
すず「けどわたしの知る本当のあなたなら わたしよりずっと上手に みんなを導いてくれるはずだから」
エステルレイア…
すず「みんな、今まで本当にありがとう。 ロランドファミリーとしての活動は すっごく楽しかったです」
すず「みんなの事はずっと忘れません。 さようなら」
ジュード
すず…手紙は以上です。出ていく理由が明記されてませんね。…レイアさん、一体…
エステル何か事情があるのでしょうけど…。こんな手紙、少しレイアらしくないです…
すずすぐに捜しに出ましょう。さっきまで居たのですから、まだそう遠くには行ってないはずです
エステルええ。どんな事情があるにせよこんな形でのお別れなんてわたし、絶対嫌です!
ジュード手分けして捜そう!すずとエステルは村の中でレイアが行きそうなところを
ジュード僕とルドガーは村の外を見て回るよ
ジュードマギルゥはどうせ動きたがらないだろうからレイアが帰ってこないか留守番してて
マギルゥ儂の事、ようわかっとるのう
エステルわかりました、そうしましょう
すずはい
ルドガーよし行こう!
レイア
レイアみんな…もう手紙を見つけた頃かな…
レイア…駄目駄目。未練がましく後ろを振り返ったりしちゃ
レイアこうするのが一番…咎人がファミリーにいるなんてみんなにも迷惑かかっちゃうし…
レイアそれにジュードの記憶を取り戻させる方法を探すんだったら、一人の方が動きやすい…
レイア…まずは、情報を集めよう。とりあえず天帝のいるシャングレイスに行って…
騎士団員1おい、そこの娘
レイア…!白き獅子…!
騎士団員1こんな時間に何をしている。夜道の一人歩きは危ないぞ。ここらは魔物もよく出るからな
レイアあ、す、すみません。大丈夫ですから、お気遣いなく…
騎士団員2…ん?君、ロランドファミリーのレイアじゃないか?
レイアあ、ど、どうも…
騎士団員2丁度いいところで会った。君達から通報のあった咎人を引き取りに来たんだ
騎士団員2咎人のところへ案内してくれないか?
レイアそれは…
レイアしまった…あのおじさん、釈放してから出てくるんだった
騎士団員1どうした?何をぶつぶつ言っている?
レイア…案内の必要はありません
レイア咎人は…わたしです。わたしをシャングレイスまで連行してください
騎士団員2君が?そんな馬鹿な。それじゃあ何か。自分の組織に通報されたというのか?
レイア身内でも関係ありません。咎人を捕えるのは天帝のためですから
騎士団員2それはそうだが…
レイア疑うなら証拠を見せましょうか?
レイアわたしは元々、ア・ジュールにあるリンネル村で暮らしていて、ア・ジュールはウィンドルと戦争を…
騎士団員1リンネル…村…?どこの村だ、それは。それに、ア、ア・ジュール…?
騎士団員2やめろ、耳を貸すな!
レイアわたし達の国はガイアス王が治めていて…天帝なんて崇拝どころか知りもしなかった…
騎士団員1き、貴様、ラザリス様を侮辱しているのか…!?
騎士団員2落ち着け、惑わされるな!お前も、口を閉じろ。これ以上、勝手にしゃべるな!
レイア
騎士団員2ロランドファミリーのリーダーが咎人になるとは、皮肉なものだな…。咎人確保だ。これより護送を開始する
レイアこれならおじさんも大丈夫だよね。後戻りは出来なくなっちゃったけど…
レイアううん、元より戻る必要なんてない。シャングレイスに行けば、咎人の事も何かわかるかも知れないし
レイア待っててね、ジュード…。わたしが絶対に記憶を取り戻させてあげるんだから…!
scene1譲れない決意
ジュードはあ…はあ…
ルドガーかなり走ったが…ジュード、本当にレイアはこっちにいるのか?
ジュード多分ね…今回の一件がレイアが咎人になった事と関係あるなら、村にはいないと思う
ジュード手紙では咎人になった事を伏せてた。それを隠しておきたいのなら、きっと村からは離れようとするはず…
ルドガーそれでエステルとすずには村の中を捜させたのか…レイアの気持ちを尊重して…
ジュードそれもあるけど、もし僕の考え違いで村の中にいるならあの二人の方が土地勘もあるしね
ルドガー…ジュード。見つけたら、どうするつもりだ…?
ジュードどうするって…レイアと話をするよ
ルドガーその後だ。彼女は咎人で、しかも一度逃げ出した…
ジュード…まだわからない。けど、今は…
ルドガー…!ジュード、見ろ!
ジュードあれは…!
レイア
ジュードレイアだ!よかった、追いついた!
ルドガー待て、ジュード。横にいる二人…白き獅子じゃないか?
ジュードそんな…!それじゃあ、咎人だって事がばれちゃったって事!?
マギルゥおやおや。すんでのところで間に合わなんだかー
ジュード…マギルゥ!どうしてここに…留守番は!?
マギルゥいや、マギルゥ占いでレイアはこっちじゃと出てのー
マギルゥ感動のクライマックスを見逃すわけにいかんと思うたが…どうやらもう幕引きのようじゃな
ジュードまだ諦めるのは早いよ。マギルゥ、お願い!あの時みたいに、紙を飛ばして白き獅子を散らしてよ!
ジュードその隙にレイアを話が出来る場所まで連れていくからさ!
マギルゥ無茶を言うでない!あれは姿の見えぬ森の中じゃから効果があったのじゃ
ルドガージュード、落ち着け。相手は白き獅子だぞ
ジュードでも…こんな別れ方なんて…
ルドガー残念だが、こうなってしまっては、もうどうにもならないだろう
マギルゥうむ、白き獅子ならば、咎人をぬかりなく連行するじゃろうな
マギルゥもはや民間人の口出し出来る状況ではない。このまま任せておくしかないのう
ジュードそれって…酷い事はされないのかな…
ルドガー大丈夫。咎人とはいえ相手は白き獅子だからね
ルドガーそれに咎人は、ラザリス様が適切に処置してくださるはずだ。何も心配する必要はないだろう
ジュードそうだけど…でも…だったら…
ルドガー「でも」「だったら」…か
ルドガー…ジュード
ルドガー言ったはずだ。どうしようもない事は確かだけど後悔だけはしないようにって
ジュード…!そうだ…ここで悩んでいてもレイアが遠くに行ってしまうだけ…
ジュード咎人でも何でも…僕はレイアが一人で抱え込んだまま黙って行ってしまうのは嫌なんだ!
ジュードちゃんとレイアと話がしたい…
ジュードそれが僕の譲れない気持ちなんだ。このままだと絶対に後悔する…!
マギルゥほほう…
ジュード二人は…巻き込んだら悪いからリッカ村に戻ってて!
ジュードレイア…!
マギルゥさて、どうなる事やら…果報は寝て待つとするかの。青臭いのは趣味でないのでな
ルドガー俺達はジュードを信じて村に戻ろうか。あの二人にも報告してやらないと…
マギルゥしっかし、お主もやりおるの。あの優柔不断なジュードにあれほどの決心をさせるとは…
ルドガーさて、どうかな。決心は俺がさせたんじゃない
ルドガージュードは元々、芯のある奴なんだ。カルミナ街で猫の世話をした時からそれは感じていた…
ルドガーただあいつの芯は、他人のためのものばかりで、自分の事は二の次だった…優しすぎるんだよ
マギルゥそれよりも、よいのか?白き獅子相手に何をするかわからんぞ
ルドガー心配しなくても、ジュードだってわきまえてるさ。だからこそ悩んでたんだ
ルドガー今はただ、レイアの事が突然すぎて、気持ちの整理がつかないだけだと思う
ルドガー別れの挨拶でもすれば、落ち着いて戻って来るはずだ
ルドガー咎人に話しかけるんだから、白き獅子から説教ぐらいはされるかもしれないけどな
マギルゥそれだけかのう。儂はもう少し面白い方向に転がりそうな気がするがのー
scene2譲れない決意
レイアあの、騎士さん。ここは…?シャングレイスへ向かうんじゃ…?
騎士団員1今日は遅い。ここで夜営をする。君には悪いが、そこの小屋に入っててもらうぞ
レイアはい…
騎士団員2…従順なものだな。咎人とはもっと反抗的なものだと思っていたが
騎士団員1全くだ。閉じ込めなければならないのも心が痛むぐらいだよ
レイア…咎人の言葉は…人を惑わせますから
騎士団員1物わかりがよくて助かるよ。明日、日が昇り次第、出発だ。それまで大人しくしていてくれよ
レイアはい…
ジュードレイアー!
レイアジュード…!?どうして…
ジュードやっと追いついたよ!
レイアまさか…わたしを追いかけて…?
ジュード当然じゃないか。あんな手紙を見て黙っていられるロランドファミリーじゃないでしょ
レイアそっか…確かにそうかも
騎士団員1おい、何だお前は!そいつは咎人だぞ!
ジュード少しでいい、話をさせてください。レイアをこのまま黙って行かせたくないんです!
騎士団員2ならん!ラザリス様のお言葉を知らないわけではないだろう?
ジュードほんの少しでいいんです!お願いします、レイアと話を…!
レイアジュード…
騎士団員2ラザリス様のお言葉に背くのか!話をするだけとはいえ、それは重罪になるんだぞ!
レイアジュード!村に帰ってよ!わたしの事なんて放っといて!
レイアでないと、ジュードまで捕まっちゃうよ!
ジュードそれでもいい。ラザリス様に背いた罰なら後でちゃんと受ける…!
ジュードでも今は…レイアをこのまま行かせてしまったら絶対に後悔すると思うんだ
ジュードだから…!
レイアジュード…どうしてそこまで…
騎士団員1ええい、聞き入れないか!仕方ない、取り押さえるぞ!
レイア待ってください!ジュードは話がしたいって言ってるだけじゃないですか!
騎士団員1口を閉じろ。ここまで多少大目に見ていたが、こうなっては咎人の発言は許容出来ん
レイア天帝の命令だからって、おかしいよ!乱暴にしなくても少し話をさせてくれればいいだけでしょ!
騎士団員1黙れと言ってるのがわからんか!
騎士団員2その女の口を封じろ!手荒な事はしたくなかったが、こうなっては止むを得ん!
ジュード…!レイアを放せ!
ドゴッ
騎士団員2──ぐっ…何を…!?
ドサッ
レイアジュード!?
騎士団員1おのれ、逆らうか!
ジュードレイアに手荒な真似はさせない…!
ドカッ
騎士団員1うぐっ…くそ…
ドサッ
レイアジュード…!?なんて事を…
ジュード急所は外してる。少しの間、眠ってもらっただけだよ
ジュード僕のした事は許される事じゃない…。でも…
ジュードレイアやルドガーが教えてくれたんだ。それでも後悔だけはするなって
レイアジュード…ねぇ、そうまでしてわたしとしたい話って…何…?
ジュード…僕は、レイアの望みをかなえたい。あんな別れ方、レイアだって本当は嫌なはずだと思うから
ジュードだからレイアの望みを聞きたいんだ。こうして出て行く事が本当にレイアの意志だって言うなら尊重する…
ジュードけど、そうじゃないなら僕は…
レイア…はぁ
レイアジュードは優しいね…。誰にでも優しすぎる。ほんと、昔から変わらないなぁ
レイアけど、それじゃ駄目なんだよ。ジュードは自分が本当にやりたい事を忘れちゃってる…
ジュード本当にやりたい事…?
レイアわたしはジュードにそれを思い出してほしくて…そのために村を出て来たの
ジュードレイア、じゃあ君は…
レイア…戻るつもりはないよ。手紙にもそう書いてあったでしょ
レイアだから、こんな事されると困っちゃうんだ。気持ちは、嬉しかったけどね
ジュード…レイア。本気なの…?
ジュードレイアがそれでいいって言うなら僕にはもう何も出来ない…でも僕は…
ジュードねぇ、本心を聞かせてよ。レイアが本当に望んでる事を知りたいんだ…
レイアわたしの望みは今言った通りだよ
ジュードううん。レイアは、戻るつもりはないって言った…。けど、戻りたくないとは言ってない
レイア…!
レイア…だったら、どうするの?わたしを連れて逃げたりしたら天帝に逆らう事になっちゃうでしょ?
ジュードそれは…
レイアこんな話をして悩ませるつもりはなかった…だから一人で出て来たのにどうしてわかってくれないの…
レイアもう帰って。それがわたしの本当の望み
レイア何も思い出せないなら、何もわかってくれないなら、わたしの事は放っといてよ…!
ジュードレイア、待って…!
レイアついて来ないでって言ってるの!
ジュード待ってよ。そんなの本気じゃないよね。レイアだって本当は…
レイア
レイアわかってくれないみたいだね…
レイア言葉で言っても信じられないって言うなら…
レイアその身体にわからせてあげる!ぶん殴ってでも帰ってもらうから!
ジュードレ、レイア…!?どうしてそうなるの…!?
レイアわたしは、帰りたいなんて絶対に望まない。それだけの覚悟をしてきた
レイアやらなきゃいけない事があるの…お願いだから邪魔しないでよ!
ジュードレ、レイア…!?待ってよ、こんなのおかしいって
レイア問答無用!はぁぁっ!
ジュードうわっと…!
レイアこれ以上、何か話したいなら決着を付けてからにして!
ジュードくっ…レイアの、強情っぱり!
scene1彼の日の想いを胸に
レイアはぁ、はぁ…結構やるね…
レイア記憶はなくても、身体は覚えてるんだ…
ジュードレイア…もうこれくらいで…
レイア隙あり!
ドッ──…!
ジュードぐぅぅっ…!
レイアあれで終わりだと思うなんて…覚えてるのは身体の動かし方だけみたいだね
レイア忘れてるんだろうけど…お母さんのしごきはもっと厳しかったんだからね!
ジュードお母さんのしごき…
レイア何だか懐かしいな。昔も、こうして…
レイアはあっ!
ドッ、ドッ!
ジュードぐっ、重い…!
レイア昔、よく組手したよね。ジュードの動き、あの頃から変わってない…
レイアこの後、隙が出来る事もね…!たあっ!
ヒュッ…!
ジュードうわっ…!
レイア避けた…!?
ジュード何だろう…どうしてか今、レイアがどう動くかわかった…
ジュードまるで見た事があるような…頭の中に…違う、これは…
ジュード小さい頃の…レイア…?今と同じ動きを…
ジュードうっ…!?
レイアジュード、もしかして記憶が…?…だったらこの攻撃も…!
バコッ…!
ジュードぐあっ…!
レイア避けない…昔、ジュードに完全に見切られてたはずの技なのに…やっぱりさっきのは偶然…?
ジュード…僕は前にも、あの技を受けた事が…?
ジュードうぅ…っ!
レイア…そうだよね。そう上手い話はないよね…
レイア忘れたままなら…わたしに殴られて、村に帰りなさい!やぁっ!
ヒュッ…バシッ!
レイア止められた…!?くっ、まだまだ!はああぁっ!
ヒュッヒュッ…バシバシッ!
レイアまた…!この連携を受け止めるなんて…
ジュード…どうして…僕は…
ジュード初めて見る攻撃なのに…身体が勝手に…
レイアジュード…!なら、これは!?
ヒュッヒュヒュッ…バシバシバシッ!
ジュード僕…知ってる…このレイアの攻撃…どうしてだろう…
ジュードうっ…レイアの動きが…脳裏に焼き付いてる…!右、左…いや、右…!
レイアやっぱり…型が読まれてる…!完全に見切られた…わたしのクセを知り尽くしてる動き…
ジュードそう…ずっと前から…何度も受け止めてきた…
ジュードわかるんだ、次の動き…僕は知ってる…覚えてる…
ジュードあの時は…掃除をしていて…ほうきで、レイアはこの技を出してきて…
レイアジュード!?そう、そうだよ!ほうきで遊んで、叱られたよね!
ジュード遊びだしたのはレイアだから…レイアがいつも叱られて…でも僕は、一緒に遊んだからって…
レイアうん。いつも庇ってくれた…。ジュード、本当に、記憶が…
ジュードそれでも懲りずに…罰の掃除もサボッて…組手…上手く避けるまで…
ジュードうぅっ…!何だ、この感じ…!
ジュードっ…何度も…そう、組手…小さな…レイア…師匠…
ジュードうあああぁぁぁ…っ!
レイア…ジュード?
ジュードそうだ…そうだよ…
ジュードどうして僕は、今まで…
レイアジュード、まさか…
ジュードねぇ、レイア。僕は…
レイア隙ありっ!
ジュードおっと!
レイアやっぱり避けた…!ジュード…もしかして…
ジュードレイア、ごめん。思い出したよ。僕がこんなにも戦える理由…
ジュード見てて…はっ!
バシッ──ガシッ──!
レイアこれはお母さんに習った型…じゃあ、完全に…
ジュード小さい頃…レイアとはご近所さんで…レイアのお母さんに武術の手ほどきを受けてた…
ジュードこうやって、何度も何度も…毎日毎日、何百回も何千回も…僕らは手合わせをしてきた
レイアジュード、ならこれも受けられるよね!
レイアせいっ!
バシバシッ──ガガッ──!
ジュード懐かしいな、この技…。厳しい修行だったよね…
レイア…そうそう、二人して毎日お母さんにしごかれたよね。身体中、傷だらけになってさ
ジュードでも、それで僕達は強くなった…!
レイアジュードはいつも、わたしに負けてたけどね
ジュード今はそうはいかないよ!
レイア…言っとくけど、記憶が戻ったからってわたしの決心は変わらないよ
レイア世界に今、何が起こってるのかよくわからないけど…ここでは咎人は他人に迷惑をかけるだけ…
レイアリッカ村に戻る事は出来ない…!
ジュード決心が変わらないのは僕も同じだよ。レイアに少しでも迷いがあるのなら…僕は絶対に負けたりしない
バシッ──ガッガッ──!
レイア全部受け止められるなんて…ジュードの言う通り、迷いがあるのかもね
レイアでも…だったら尚の事…ジュードを倒して迷いを断ち切る!
ジュード…!その構えは…!
レイアお母さん直伝!活伸棍・神楽!
ドゴォッ──!
ジュードうっ…ぐっ…!重い…!けど、今は…今だけは…!
ジュード倒れるわけに…いかないんだ…!
レイアうそ…昔のジュードなら…
ジュードはあああっ!
レイア…!
ドッ──!
ジュード…ごめん、レイア。君相手だと、手加減する余裕なかった
レイアよかった、ジュード…思い出してくれて…
ドサッ…
ジュードちゃんと連れて帰るから、そのまま休んでて…
騎士団員1うっ…ま、待て…咎人を連れて帰るなど…我々が…ぐっ、身体が、動けば…
ジュードもう気が付いたんだ…。けど、もう少し安静にしておいた方がいいよ
騎士団員2…に、逃げ切れると思うなよ。お前達は指名手配になる…白き獅子は二人を絶対に逃さん…
ジュード
ジュードそうか、それは困ったね。まんまとレイアに騙されたよ
騎士団員2何…?
ジュードまさか自分が咎人のふりをしてまで咎人である僕をおびき出すとはね…
ジュード咎人の仲間だと思ったのに白き獅子に指名手配させるため自分を餌にして僕を釣ったんだ
ジュード力尽くでは捕まえられないからってこんな作戦を思いつくとはね!
騎士団員2そういう事か‥何か不自然だと思ってたが…
騎士団員2全てロランドファミリーの作戦だったというわけか…
ジュードそうそう。けど、その作戦も失敗だよね。僕は今から逃げるんだから
ジュードレイアは人質にもらっていくよ。後で仕返ししなくちゃね
騎士団員1やめろ…!例え咎人相手でも、酷い行いは…いや、咎人ではなかったのか…
騎士団員2善良な協力者だったんだ…ならば、なおさら助けねば…!くそっ…身体さえ動けば…!
ジュードそうなる前に僕は逃げるよ
騎士団員2待てぇっ…!
scene2彼の日の想いを胸に
レイア
ジュード…えっと…そういうわけなんだけど…
レイア…それでわたしが納得すると思う?
ジュード納得はしなくていいよ。レイアの決断に反する事をしたのもわかってる…
ジュードけどこれが、僕の意志なんだ。あのままレイアを行かせるのだけは絶対に嫌だったから
ルドガーだとしても…指名手配になって来る事はないだろ…
マギルゥくっくっくっ…もう駄目じゃ、笑いが止まらんわい。だから言ったじゃろうに
レイア笑い事じゃないよ。ジュード、これからどうするつもりなの?
ジュードうん。明日の朝ぐらいには手配書も配られるだろうからそれまでには出ていくよ
ジュードみんなを捜してみようと思ってるんだ
ジュードミラやエリーゼ達…スレイやスタンや、他のみんなも僕達のように困ってるかもしれない
ジュード記憶をなくしてたらどうするかは、わからないけど…様子を見て考えないとね
レイア平和に暮らしてるならそっとしておいた方が幸せかもしれないもんね…
ジュードうん…少なくとも今は何がどうなってるのかわからないから下手な事は出来ないよ
ジュードともあれ、まずは、レイザベールに向かおうと思ってるんだ
ジュード確かミクリオがあの街の良家の出身って事になってるだろ?それにローエンも一緒だった
ジュード記憶がないのか、記憶はあるけどここでの立場を演じ続けてるのか…まずはそれを確認しようと思う
レイアそう言えば…変な感じだよね。ミクリオが貴族やってるし、エステルはわたしの部下だし…
ジュードほんとだね。でも、今ここではみんながその立場を受け入れてる…
レイアいきなりエステルをお姫様だって言っても誰も信じないだろうね…わたし達には確かな記憶なのに
ジュードうん。黙っておいた方がいいよ。記憶は取り戻してほしいけど下手な事をするのはかえって危険かも
ルドガー…その記憶の話だが、つまりはジュード…君も咎人になったって事だよな?
ルドガー咎人のはずのレイアを連れて帰ってきたからどういう事情かと思っていたが…
ルドガー咎人が咎人を逃がしてきた。…そういう事なら、俺達は黙って見過ごすわけにいかない…
ジュード待ってよ、ルドガー!咎人って言っても、記憶を取り戻しただけなんだよ!?
ルドガー…悪いがジュード。記憶の事が真実かどうかなんて俺達には確認のしようがないんだ
ルドガーそれにさっきから二人の話を聞いていても、俺には理解出来ない突拍子もない話ばかりに感じる…
ルドガーレイアもジュードもいい奴だから信じてやりたい気持ちはあるけど…
ルドガーラザリス様と、咎人の言葉、どちらを選ぶかとなると悪いけど答えは決まってる…
ジュード…ルドガー。記憶の事、真実かどうか確認してもらえると思う
ルドガーえ…?
ジュード僕は記憶を失う前のルドガーを知ってるんだ。信じられないかもしれないけど…
ジュードカルミナ街で、ルドガーの料理を食べに来てたエルって女の子の事、話したの覚えてる?
ルドガーああ、覚えてるけど…
ジュード前はルドガー、その子と一緒に暮らしてたんだ
ジュードあとユリウスっていうお兄さんと、ルルっていう猫も一緒にね。思い出せないかな?
ルドガーエル…ユリウス…ルル…
ルドガー
ルドガーいや、やっぱり何も思い出せない…
ルドガージュード、お前は俺を惑わせようとしているのか?
ジュードそんな…違うよ!
レイアジュードの時もそうだったけどやっぱり言葉だけじゃ記憶は戻らないのかな?
ジュードわからないけど…言葉だけじゃ駄目でも、僕みたいに何かの行動と記憶が結びつけば…
ジュード
ジュード…そうだ、ルドガーは誰かに料理をふるまう約束をした気がするって言ってたよね?
ルドガーああ。…まさか、その相手が…?
ジュードうん。きっとエルとの約束だと思う
ジュードエルももしかすると、何か感じるところがあって訪ねて来たのかもしれないし
ルドガー
ジュードそれに、家族の姿を見ると不思議な気持ちになるとも言ってたでしょ?
ジュードそれってきっと、エルやユリウスさんとの記憶が心のどこかに響いてるんだと思うんだ
ルドガーしかし…
ジュードルドガー、少しの間でいいんだ…!僕を信じてよ
ジュードこれから向かうレイザベールにはエルもいるはずなんだ
ジュード僕と一緒に来て、確かめてみてよ。僕を突き出すなら、それからでも遅くないでしょ?
ジュードその時は、逃げも隠れもしないから…!
ルドガー
ルドガー咎人は白き獅子に引き渡す…俺はそれが正しいと思っている。だが──
ルドガーもしジュードの言う事が本当だとしたら、それを知った時俺はきっと後悔するだろう
ジュード…!それじゃあ…
ルドガー…ああ、俺も同行しよう
ルドガーただし、完全に信じたわけじゃない。そのエルと会ってみても、真実かどうか確かめられなかったら…
ルドガー悪いが、君達の事は全て白き獅子に話す。それでいいな?
ジュード…うん、わかったよ。ありがとう、ルドガー
ルドガーマギルゥ、聞いた通りだ。君もジュード達を通報したいだろうがしばらくは黙っていてくれないか?
マギルゥ…ま、ええじゃろう
マギルゥ場合によっては、ジュードの言う事の真偽が確認出来そうじゃしのー
レイアあら、すんなり…。マギルゥももしかして何か心当たりがあるの?
マギルゥ実を言うと儂は、ちと咎人について調べておってのう
マギルゥ咎人の話す内容には、何ぞ秘密があると考えておったのじゃ。民間人には知らされておらん秘密がの
マギルゥじゃから、立入禁止区域に行けば何か掴めると踏んだんじゃが…
レイアそれで侵入を!?じゃあやっぱり、あの時の侵入者っていうのは…
マギルゥ咎人に何を言われてものー?
レイアうっ…痛いとこ突くじゃない
マギルゥいや、しかし困ったわい…我らがロランドファミリーのリーダーが咎人になってしまうとは…
マギルゥロアーに一目置かれるほどの組織ならその内、立入禁止区域や咎人の情報も得られるかと思うて加入したが…
マギルゥリーダーが咎人とあっては地位も大暴落の大撃沈。せっかくの努力が水の泡じゃー!
マギルゥ…じゃが、ジュードの機転のお蔭で今のところレイアが咎人な事はバレとらんのじゃろう?
ジュードうん。演技だった事にしてきたからね
マギルゥならば儂は、利用価値がある限りレイアを庇ってやってもよいぐらいじゃぞ?
マギルゥジュードと一緒で、通報する事はいつでも出来そうじゃしのー
マギルゥその代わり、儂の咎人研究にいろいろと協力してもらうがの
レイアうん。それは構わないよ
ルドガー咎人研究…レイアとジュードをずっと見ていたのも、そういう理由か…
ルドガーしかし、どうして咎人の事を調べたりしているんだ?
マギルゥいや何、そこは単純な理由じゃよ
マギルゥラザリス様も疎む存在、咎人。彼らはどこからやって来るのか、何故現れるのか…
マギルゥそれを解明して予防策を考えればラザリス様も嬉しかろ?褒美もたんまり出そうなものじゃ
ルドガーそのために、立入禁止区域に入ってラザリス様の意に背いていたら意味がないだろう
マギルゥ大義を取り小義を捨てただけじゃ。手段を選んでおってはこの偉業は成せんわい
ジュードマギルゥがそこまでするなんて…何か事情が…?
マギルゥ実は…奇術団の興行が大失敗してのー
マギルゥ正攻法ではとても返せん額の借金が、この身にズシーンとのしかかっておるのじゃよー
ジュード借金…そのために褒美をもらおうと…
ルドガー借金なんて大変だな…
マギルゥま、そんなわけじゃ。咎人の味方をするわけではないが、観察対象の保護ぐらいはするぞい
ジュードうん、それでもいいよ。レイアがこのファミリーに戻るには、マギルゥの協力も必要だしね
レイア
レイアね、ねぇ、ジュード。それなんだけど、わたしもジュードと一緒に──
バタンッ!
エステルレイアが戻ったって本当です!?
すずレイアさん…!
レイアエステル…すず…!
すずジュードさん、どうしてすぐに知らせてくれなかったんですか!
ジュードご、ごめん…
マギルゥそれはの。今までこやつら二人には聞かせられん内緒の話を…
ジュードマギルゥ、言っちゃ駄目だよ
エステル何か事情があったんだと思います。内緒だと言うのなら無理に聞き出したりはしません
エステルけど、レイア。黙って出ていくなんて事は二度としないでください!
レイアご、ごめんね。二人共。でもわたしやっぱり、ジュードと一緒に…
ジュードレイア。ごめん、君は連れて行けないよ
レイアえっ、ど、どうして!?
ジュード僕は、あの手紙を読んだ時に二人がどんな顔してたか知ってるからね
ジュードレイアはロランドファミリーに、そしてリッカ村に、欠かせない人なんだよ
エステルその通りです。もし重荷になっていたのならわたし、もっともっと手伝います
エステルけどやっぱり、リーダーとしてレイアが必要です
すず私も同意見です
レイア二人共…そこまでわたしを…?
エステル・すず当然です!
レイア……
レイアそっか…うん、わかった。わたしはここに残るよ
レイアもう何も言わずに出て行ったりしないから、安心して
エステルはい…!そうしてください、是非…!
すず…待ってください。今「わたしは」と言いましたか。という事は…
レイアあ、うん。ジュードはちょっと事情があってね。ルドガーと旅に出る事になったんだ
レイアねぇ、ジュード。わたしは旅にはついていけないけどメルディやみんなの事──
ジュードうん、わかってる。何かあればすぐに知らせるよ
レイアありがとう。わたしも全力で援護するから
すずでしたら、シルフモドキを一羽、お貸ししましょう
ジュードシルフモドキ…?鳥…?
すず手紙を配達してくれる鳥です。遠方からの急ぎの連絡に便利ですよ
ルドガー急ぎの連絡…そうだ、食堂にしばらく休むって連絡しないと…
ジュード僕もついでに連絡を頼めるかな?牛乳配達はしばらく休みますって…
すずでは早速、使ってみましょう。手紙を用意してください
バサバサバサ…
すず飛んでいきました。明朝にはカルミナ街に着くでしょう
ルドガー外は暗いのに、鳥を飛ばして大丈夫なのか?
すず訓練してありますから大丈夫です
ジュード連絡手段も整ったし、そろそろ出発しようか
ルドガーそうだな
エステルそんなに急ぐ旅です?
ジュードうん、そうなんだ。…あ、そうだ、レイア。あの咎人のおじさんの事だけど…
レイア大丈夫。ちゃんと話しとくし、あの子のところに戻れるようにしておくから
すず…何の話ですか?
ジュードあ、いや、何でもない。それじゃレイア、後は任せたよ
ルドガー行こう、ジュード
ジュードうん。いざ、レイザベールへ

NameDialogue
scene1虚空の夢
『名もなき男』──今日、この日より我が剣の全てを王と民のため捧げる事を誓います
王と思わしき男よかろう。そなたを我が騎士、玉座の守人と認めよう
『名もなき男』はっ…!
『名もなき男』はあ…はあ…
『名もなき男』くそっ…何でこんな事になるんだ…
『名もなき男』やっとお前と同じ場所に立てた…。これからだって時に!
『名もなき男』何も、何も終わってないんだぞ…!
敵兵生き残りがいたぞ!四方から包囲して討ち取れ!
『名もなき男』…だったら、俺が終わりにする。このくだらない争いも…全部…
『名もなき男』──この命と引き替えにして、よ
シャキン…
『名もなき男』…少しだけ待っててくれ。すぐに俺も、そっちにいく
『名もなき男』うおおおおおおっ!
レイヴン今のは…
???何だよ、どうかしたか?
???相変わらず、冴えない顔してんな。レイヴン
レイヴンお前は……
レイヴン…はっ!
レイヴン……夢、か…
レイヴンまた、妙な夢を見ちゃったわね…。ここんところ、ずっと同じ夢の繰り返し…
レイヴンあの玉座の人物…ラザリス様でないって事は確かだけど…一体誰なんだ
レイヴンそれに、あの戦争も。あんなの一度も起きた事ないけど、妙にリアルな感じがしたって言うか…
レイヴン特に、最後に聞こえてきたあの声…どこかで…
レイヴンずっと昔…いや、つい最近…?
レイヴン
レイヴンあー、疲れてんのかね…
ザー…
レイヴン…おっと。いつの間にか、雨になってたか
レイヴン例の件で出かけないといけないってのに
レイヴンうーん、風邪をひいたら嫌だし?今日はやっぱりお仕事やーめた!
レイヴン…とか出来ればいいんだけど。あいにくこればっかりは…ね
コンコン
レイヴンおろ、お客さん?いらっしゃい、開いてるよ
???邪魔するぜ。って、えらく暇そうな店だな…
レイヴン失礼ね、って…何だ、おたくか
クロー──ああ、久しぶりだな。レイヴン
scene2虚空の夢
レイヴン珍しいねえ、クローがここにやってくるなんて
クローま、ちょっとわけありでな
レイヴン…なるほど、ね
クローそれにしても…
クロー相変わらず、冴えない顔してんな。レイヴン
レイヴン…!それって…
クローん…?どうかしたのか?
レイヴンあ、いやいや…
レイヴン久しぶりのお客さんかと思ったのに、青年だったんで落ち込んでんのよ
クローご挨拶だな。「仕事仲間」じゃねえか
レイヴン何の事やら…。おっさんはしがないただの何でも屋よ?
クロー表向きは、だろ
レイヴン…それで、今日はどういった用向きなわけ?
レイヴンま、天下の白き獅子様がここに来る用なんて、大体想像がつくけど
クローああ、他でもない。例の脱走者についてだ
クロー警備の話だと、脱走者に仲間がいたって話だったろ
クローその脱走を手引きした奴について何かわかった事はねえか?
レイヴン脱走者…生誕祭でラザリス様に手を出そうとした、あのクールビューティーちゃんね
クロー…何がクールビューティーだ。相手は咎人だってのに…全く…
レイヴンまあまあ~。でも、何で手引きした奴について聞くのよ?
レイヴン確か、おたくら白き獅子は脱走者を追ってるって話じゃなかったっけ?
クローああ、だが状況は芳しくねぇ
クローガハラム山での崖の崩落で奴を取り逃がして以来、足取りがまるで掴めなくてな
クローあの高さから落ちたんじゃタダじゃすまねえし、オレ達としてもすぐに捕えられると踏んでたんだが…
レイヴン駄目だった、と?
クローああ。いざ、崖下まで行ってみりゃ人影すら見当たらなかった。…多分、逃げたんだろう
クロー…ったく、一筋縄じゃいかなさそうだぜ
レイヴンなるほどねぇ…
レイヴンそれで、何か別の手がかりを…って脱走に協力した奴の情報を求めてるって事、か
クローま、そう言うこった
レイヴンけど、残念だねぇ。あいにく、その件に関してはこっちもお手上げ
レイヴンおっさんも八方手を尽くして、調べてはいるんだけどねえ
クローそうか…あんただったら何か掴んでるかと思ったんだが
クロー…やれやれ、やっぱりそう上手くはいかねぇか
レイヴンおよ、珍しく疲れてる様子じゃないの
クローそりゃ疲れもするさ
クロー脱走者が出たってだけでも大事だってのに、宰相の妹まで連れ去られちまったからな
レイヴンほお…
クローしかもそれだけじゃねえ。昨日、この街で新たな咎人が現れたらしくてな
クローそっちの捜索も、並行してやらねえといけねえのさ
レイヴンそりゃまた大変だ。頑張れよ、青年
レイヴン若い内の苦労は買ってでも…ってね!
クローおいおい…えらく他人事だな
レイヴン実際、管轄違いでしょ。咎人の捕縛は白き獅子のお勤めよ
クローったく…まあ、いいさ
クローそんなわけで、ちょいとばかし余裕がなくてな
クロー何かわかったら知らせてくれ。今は少しでも手がかりが欲しい
レイヴンへいへい、わかりましたよっと
レイヴン脱走者の一件については、こっちにも責任の一端はあるしねえ
クロー助かるぜ。いい情報があれば、礼をすっからよ
レイヴンふーん、お礼ね。白き獅子からの感謝状…とかならいらないわよー
クローわかってるっての。いつもの店のサバみそ定食、勿論オレの奢りで、な
レイヴンさっすが青年、わかってるじゃないの~
クローじゃあ、そろそろ行くわ。例の件くれぐれもよろしく頼んだぜ
レイヴンはいよ~
レイヴン白き獅子も大変そうだねえ
レイヴンほんとなら手助けしてあげたいけどこっちはこっちでそれどころじゃなくってね…
レイヴン悪いな、クロー
レイヴンさて、と…
ガチャ
ザーッ…!
レイヴン雨宿り、といきたいところだけどそう呑気な事も言ってられないわね
レイヴン…白き獅子の動きに煽りを受けて「こっちの標的」が隠れちゃう前に、何としても見つけ出さないと
レイヴンさぁて…少し急ぎますか
scene1雨降る街の怯えた少女
ザー…
???はぁ…はぁ…
???エリー…このままじゃ風邪ひいちゃうよ…?
???
街の女ちょっとあんた、何やってるんだい!?
???…!
街の女びしょ濡れじゃないか。こんな雨の中を、傘もささずうろついてたのかい?
???ええと…その…
街の女とにかく、あたしん家においで。このすぐ近くだから
???で、でも…
街の女でもじゃないよ。ほら、早く
???
騎士団員そこのお前達、どうかしたのか?
???あれは…
???白き獅子だよ…!…エリー、逃げなきゃ!
街の女どうしたんだい?何ぶつぶつ言って…
???あの…ごめん、なさい…!
街の女ちょ、ちょっとあんた!
レイヴン──路地裏に佇む少女?
情報屋の男ああ。この雨だってのに傘もささずにうろついてるらしい
情報屋の男近隣の住民も保護してやろうと声をかけたらしいが、怯えて逃げちまうとか
レイヴン怯えて、ね…なるほど
レイヴン…情報助かったわ。これはお礼、とっといて
情報屋の男毎度
レイヴン…ふぅ、あちこち聞いて回ったけど有力なのは今のとここの情報だけ、と
レイヴン
レイヴンはあ、それにしても…ベルベットちゃんってば、まさかあの宰相の妹を連れ去っちゃうとはね
レイヴン大胆にもほどがあるって言うか……ラザリス様もほんと何を考えてるのやら…
レイヴンま、おっさんとしては従うだけだから別に何でもいいんだけど…
レイヴン…さて、と。油売ってる暇はないわね。えーっと、確か路地裏だっけか
レイヴン他に目ぼしい情報もないし、はずれて元々ちょっくら行ってみますかね
レイヴンここが例の路地裏ね
レイヴンちらほらと白き獅子の姿もあるけど、例の咎人捜索中ってわけ──…
レイヴン…ん?
???…!
レイヴン雨に打たれて佇む少女…。って事は、あの子が情報屋の言ってた…
???ううっ…
scene2雨降る街の怯えた少女
???
レイヴンあの、そこのお嬢ちゃん?ちょーっとお話聞かせてもらえないかなーなんて
???っ…!
???こ、来ないでください…!
レイヴンそんな怯えなくても…。大丈夫、これでもおっさん、案外紳士で──
???エ、エリーに触るなー!
レイヴン…!ちょっと、何よこれ。ぬいぐるみ…がしゃべってる!?
レイヴン…って、別におっさんはこの子をどうこうするつもりはなくてね?
レイヴンちょっと、聞きたい事があっただけなんだけど…
???来ないでー!
レイヴンそう言われてもねえ…
レイヴン変なお供までいるし…どうしたものやら
???はぁ…はぁ…
レイヴンって、お嬢ちゃん大丈夫…?すっごくふらついてるみたいだけど…
???だいじょうぶ…です。わたし、は…
バタッ!
レイヴンちょっと、お嬢ちゃん!?
???…けて…
レイヴンん?
???たす…けて…
レイヴン
レイヴン…やれやれ。仕方ないわね
レイヴンま、ここで死なれちゃっても、困るし…
レイヴンよいしょっと…
???
レイヴンあらら…お供もぐったりしちゃったか
???う…
レイヴン何かしら事情があるのは間違いなさそうだけど…
レイヴン全く…厄介な事になったもんだ…
scene1二人の何でも屋
レイヴン
???すう…すう…
レイヴン全く起きる気配がない…
レイヴン特に怪我とかはないみたいだし、疲労困憊って事かしらねえ…
レイヴンあの様子を見れば、さもありなんだけど…。さて、どうしたもんか
???うっ……
レイヴン…ん?えらくうなされてるな
???ラザ、リス…様…!どうして…
???わたしは…見てません…何も…
レイヴン…!
レイヴン今の寝言って、まさか……
???天誅ーーーっ!
レイヴンのわーーっ!?
???レヴっち!見損なったわよ!
レイヴンいたた…いきなり何なのよ、ノーマちゃん。おっさんが何をしたって言うの
ノーマ何をしたのじゃなーい!いたいけな少女を連れ込んで、そっちこそ何してたのさ!
レイヴンえ?ちょ…いや、誤解だって!これは人助けで──
ノーマ情けないよあたしは。情けない。ああ情けない情けない。情けないったら情けない!
レイヴンだから、誤解だって言ってるのに…。って言うか、おっさんの話聞いてる?
ノーマたとえ仕事の依頼がほとんどなくても、髪がボサボサでも!
ノーマ思わせぶりな事ばかり言って何考えてるかわからなくても、髪がボサボサでも!
ノーマもう!とにかく!髪がボサボサでも!
レイヴンそんなにおっさんの髪型が気になってたのね…
ノーマとにかく、レヴっちは人の道を踏み外す真似だけはしないって信じてたのに!
レイヴンだから。本当に違うんだって
ノーマみんな初めはそう言うの!潔白だって言うなら、きっちり説明しなさいってば!
レイヴンするする、するったら…!というか説明させてくれないんだもん
レイヴンえーとね。この子は路地裏で見つけたの
レイヴン行き場を失ってたみたいでね。雨に打たれて、そりゃ本当にかわいそうだったのよ
レイヴンで、たまたまその場に居合わせた紳士なおっさんが、保護したってわけ
ノーマえ~?ほんとにー?
レイヴン本当だって。ノーマちゃんに、嘘ついた事なんかないでしょ
ノーマそれがもう嘘じゃん!
ノーマ口では何とでも言えるしなー。レヴっち、適当だし
レイヴンおっさん、いつも正直だってば。失礼しちゃう
???むにゃむにゃ…おはよー…
ノーマうわっ!何このぬいぐるみ!何でしゃべってんの!?
レイヴンそこはおっさんも、気になってたんだけどね
レイヴンもっと大きな問題があるから、後回しにしてたって言うか…
???
ノーマあ、あの子も起きてる
レイヴンえ?
???…!
scene2二人の何でも屋
???
レイヴン気がついたのはいいけど、だんまりだねぇ…
ノーマレヴっちは黙ってて。こういう時はあたしの出番!
ノーマこんにちは!あたし、ノーマ・ビアッティ
ノーマこっちの髪の毛ボサボサのおっさんはレイヴンっていうの
ノーマそんで、ここは何でも屋、ビアッティ&ビアッティの事務所だよ
レイヴン何、その名前。いつの間にそうなったの
レイヴン大体、ビアッティ&ビアッティって。それじゃ両方ノーマちゃんになっちゃうじゃ──
ノーマで、何があったの?よかったらあたしに話してみない?
レイヴン無視ってひどくなーい!?
???ええと…その…
???わ、わたし…街の学校に通ってたんです。けど…
レイヴン
???そこで怖い事に巻き込まれて……逃げてきたんです
レイヴン怖い事…?
レイヴンそう言えば…お嬢ちゃん、さっき寝てる時、随分とうなされてたわよ
レイヴン…確か、ラザリス様がどうのって。うわ言だけど、随分怯えた様子で…
???…!それは…その…
ノーマちょっと、レヴっち…!言いにくい事もあるんだって
レイヴン…へいへい、黙ってますってば
ノーマそれで、どうしたの?
???あの…それで…寮に帰るわけにもいかなくて…ずっと街を…最後は気が遠くなって…
???…ごめんなさい。その後どうなったのか、よく覚えてないんです…
ノーマそっか…
レイヴンお嬢ちゃん、おっさんの目の前で、気を失って倒れちゃったのよ
???そ、そうだったんですか…
レイヴンね?これでおっさんの話が正しいって、わかったでしょ、ノーマちゃん
ノーマうん、まあ…とりあえずこの子が、嘘をついてるって事はないかなー
ノーマそう言えば、あなた、名前は?
エリーゼあ、わたしは…エリーゼ・ルタスです。こっちはお友達のティポ…
ノーマん、おけ。エーちゃんにティッポンね
エリーゼエーちゃん…?
ティポティッポン…?
レイヴンあー、気にしないで。ノーマちゃん、いつもこうだから
レイヴン会う人みんなに、独自のあだ名をつけないと気が済まない子なのよ
ノーマそういうわけでよろしくね、エーちゃん!ティッポン!
エリーゼは、はい…
レイヴンそれで、エリーゼちゃん、これからどうするの?
ノーマ待った!その前に、やる事があるでしょ
ノーマ女の子をこんな濡れたままにしておくなんて、レヴっち、何考えてんのさ!
レイヴンいやいや、さすがに服脱がすわけにもいかないでしょ
ノーマそんな事は当たり前!はあ…何ですぐにあたしを呼ばないかなあ
ノーマとにかく!まずは服を乾かす!話はそれから!
ノーマエーちゃん、すぐ用意するからね!
ノーマほら!レヴっちは部屋から出る!
ノーマあ、そうだ!レヴっち、ついでにご飯買ってきて!
レイヴンえ、おっさんが?何でよ面倒くさい
ノーマエーちゃんがお腹すかせてるからに決まってるでしょ~が!あと、あたしも!
レイヴンえー?それ絶対ノーマちゃんが食べたいだけじゃない
ノーマおらー!もたもたすんなー!
レイヴンとほほ…わかりましたよ
ティポ何だか二人共、悪い人じゃなさそーだね
エリーゼそう…ですね…
エリーゼあ、ありがとうございます…。お蔭で助かりました
ノーマ服はバッチリ乾いたけど、身体の具合は大丈夫?
エリーゼあ、はい…だいぶよくなりました
エリーゼすみません、食事までいただいてしまって…
ノーマいいっていいって~!困った時はお互いさまじゃん!
レイヴンご飯買ってきたのはおっさんなんだけど…
ノーマそれより、これからどうするかあてはあるの?
エリーゼえと、その…この街を出て、故郷へ帰ろうと思ってます…
レイヴン故郷ってどこ?
エリーゼ市都アルメリア、です…
レイヴンあら、結構遠いねえ
レイヴン最近は街道にも魔物がたくさん出るって言うし、一人じゃ危ないっしょ
ティポぼくもいるぞー!
レイヴンティポがいても二人でしょ?おっさん、おすすめ出来ないなぁー
エリーゼそれでも、わたしはここには…もう…
レイヴン
レイヴン護衛がいれば別だけど。ね、ノーマちゃん
ノーマお~!
ノーマたまにはいい事言うじゃん!見直したよ、レヴっち!
ノーマうんうん!こんな時こそ、何でも屋の出番だもんね!
エリーゼ護衛、ですか?どういう事でしょう…?
ノーマこのビアッティ&ビアッティのあたしらが、エーちゃんを送り届けてあげるって事!
エリーゼえ、でも…
ノーマこのまま放り出してはいさようなら~なんて、出来るわけないしね
エリーゼお、お気持ちはありがたいですけど…わたし、お金なんて…
ノーマ気にしなくていいって。エーちゃんから取ろうなんて言わないから
エリーゼえ…
ノーマ市都アルメリアについてから、お家の人に請求するだけの話!
レイヴンタダでいいとは言わないのね
ノーマまあそこはそれでしょ。そんじゃ早速、市都アルメリアへゴー!
ティポ何か強引に、話をまとめられたー!
ノーマ──っと、勿論エーちゃんがすぐに動けそうなら、だけどね!
エリーゼはい、わたしは大丈夫です。その…出来るだけ急ぎたい…ので
レイヴンそんじゃあ、決まりだね
ノーマお~し!んじゃあ改めてしゅっぱ~つ!!
エリーゼよ、よろしくお願いします…
レイヴン
レイヴン…ま、少し様子を見てみますか
scene1仄かな揺らぎ
ザー…
ノーマ市都アルメリアを目指して、街を出たはいいものの…
レイヴン街道沿いとはいえ、こう雨が続くと厄介だねえ
ノーマだーもー!雨降りすぎ!全然やむ気配ないじゃん!
レイヴン仕方ないか。もう少しここで雨宿りして、様子を見ましょ
エリーゼ
エリーゼあ、あの…
ノーマん?何なに?
エリーゼレイヴンとノーマは、何でも屋さん…だって言ってましたよね
ノーマそ。探偵から引っ越しの手伝いまで、依頼があれば何でもやるよ!
エリーゼ何でも…ですか?
ティポ何かカッコイイー!
ノーマあー…そう思うよね、やっぱ。多彩な能力を駆使して次々に難題を解決…!みたいな
エリーゼは、はい…
レイヴンだけども、現実はそうじゃない…ってね
ティポそうなの?
ノーマまーね
ノーマ実際のところ依頼のほとんどは近所の家の掃除とか、犬の散歩とか…
ティポ夢がないー!
ノーマそうなのよ。夢がないの。現実は厳しいって事
ノーマ侘しいよね。侘しすぎるよね。世知辛すぎ。切なすぎ!
ノーマま、それで食べてるんだから文句は言えないけどさ~
ノーマもっとこうドカーン!とでっかい事件とかバーン!と解決させろー!
レイヴンバーンって…どんな感じなのよ…
レイヴンそれだけシャングレイスが平和だって事でしょ
ノーマそ!ラザリス様のお蔭だね~
レイヴンラザリス様のお蔭か…。…と言っても、エリーゼちゃんみたいな子もいるんだし
レイヴン…ラザリス様も全知全能ってわけじゃないわね
ノーマちょっと!いくらレヴっちでも言っていい事と悪い事が──
エリーゼラザリス様…ですか…
ノーマん?ラザリス様がどうかしたの?
エリーゼい、いえ…
レイヴン
ノーマそう言えばエーちゃんさ、さっき、学校に通ってるって話してたよね
エリーゼは、はい…
ノーマそこを卒業したら、どうするの?
エリーゼまだだいぶ先の話ですし…考えた事がありません…
ノーマよかったらうちに来ない?ビアッティ&ビアッティの新メンバーとして
レイヴンおよ、エリーゼちゃんをウチに誘うの?
ノーマ人手は多い方がいいっしょ?そしたら依頼だって今よりいっぱい受けられるし
レイヴン今のとこ、おっさんとノーマちゃんだけで、十分回ってると思うけどねぇ
ノーマだーかーらー、メンバーが増えれば、営業にも力を入れられるって話よ
ノーマエーちゃんかわいいし、きっとお客さんも増えると思うんだけどなー
レイヴンまあ、かわいいのは確かだけどね
エリーゼそっ、そんな事ないです…
ノーマだからさ、うちにおいでよ!一緒に何でも屋をやろう!
ティポぼく達にも出来るかなー?
ノーマ厄介な依頼は全部レヴっちがやるから大丈夫!あたしらは別件を担当するって事で!
レイヴン勝手に決めてる!?
エリーゼか、考えておきます…
ノーマよろしくねーいやー楽しみだー!
エリーゼあ、あの…
エリーゼノーマとレイヴンは、どうして何でも屋さんを始めたんですか…?
ノーマんー…何でだっけ?
レイヴン何でだったかね?
ティポ覚えてないのー?
レイヴン何かいつの間にかこうなってたのよね…。まあ、成り行きって奴?
エリーゼ二人は…仲がいいんですね
ノーマ腐れ縁みたいなもんだけどね
レイヴン人と人の縁なんて、大概そんなものよ
ノーマそそ。エーちゃんと友達になれたのも言ってみれば成り行きなわけだし
エリーゼお友達…わたしが、ですか…?
ノーマ当ったり前じゃん!ね、レヴっち?
レイヴンへ?あぁ…まあそうなる…のかね
ティポぼくは仲間はずれなのー?
ノーマ勿論、ティッポンも友達!決まってんじゃん!
ティポわーい!
エリーゼ友達…
レイヴン…ところでさ、エリーゼちゃん
エリーゼあ…はい、何でしょうか
レイヴン
レイヴン…いや、やっぱ何でもないわ。またの機会にしようかね
エリーゼ…?
レイヴンそれにしても、雨、やみそうにないわね
レイヴンこういう雨の日って、普段は出くわさないモノと、ばったり出くわす事もあるけど…
ティポ普段は出くわさないモノって?
ノーマあー、魔物の事?まーねー、出てもおかしくなさそうだよね
ティポ魔物は嫌ー
ノーマ大丈夫。出ても何とかするから!
ノーマ…レヴっちが!
レイヴンおっさんだけ?
ノーマ気が向いたら手伝うって。だからよろしく!
レイヴンとほほ。人使いが荒いんだから。全く…
レイヴンんっ…?
ガサッ…
エリーゼレイヴン…!今、そこで音がしました…!だ、誰かいるんじゃ…
ティポもう怖いのはヤダよー!
ノーマ人ならいいけど、ひょっとして本当に魔物が出ちゃったとか…じゃない…よね?
レイヴンちょっと見て来るか……
エリーゼレイヴン…
ガサガサ…
レイヴンうーん、何もいないな。動物か何かだったのかもね
レイヴンま、何もないなら、先を急ぎましょ
ノーマおー!
エリーゼふぅ…
レイヴン…動物、だといいんだけどね
レイヴンやっぱり一筋縄じゃいかなさそうか…
???
???……今はまだ早い…か
scene2仄かな揺らぎ
レイヴン──うんうん。雨の方は、ようやく落ち着いたっぽいね
ノーマこのまま晴れるかな?
レイヴンだといいけど。まだ雲は出てるみたいだし、月も星も見えないからねえ
ノーマそっかー
エリーゼすう…すう…
レイヴンあららー、エリーゼちゃんってばすっかり熟睡してるわね
ノーマうん。夕食を食べたら、バターンだったよ
ノーマでもエーちゃん、一体何があったんだろうね
ノーマ人見知りなのもあるんだろうけど…。街を出てからもずっと何かに怯えてるみたいだし…
レイヴン
ノーマ出会った時なんか震えっぱなしでさ。雨の冷たさだけのものじゃないよ、あれ…
ノーマそう…例えば誰かに追われて逃げてきた……みたいな?
レイヴン…例えば白き獅子、とか?ちょうど今街中で咎人捜ししてるみたいだったし
ノーマちょっと、レヴっち!エーちゃんが咎人だって言うの!?
レイヴンま、ないとは思うけどね。話に聞いてるような咎人とは違って普通の女の子って感じだし
ノーマうーん…でも、何かあった事は確かだよね…
ノーマあたしらにはまだ話したくないみたいだけど
レイヴン…他人に言えない事くらい、誰でも持ってるもんでしょ
エリーゼすう…すう…
レイヴン…さて、と
ノーマあれ。レヴっち、どっか行くの?
レイヴン薪を拾ってくんのよ。今ある分だけだと、朝までもたないだろうしね
ノーマあ、そうだね。じゃあよろしくー
レイヴンはいはい
レイヴンはあ…ただ一言、真相を問いただすだけだってのに
レイヴンなのに…何だっての、このモヤモヤは…
レイヴン…ったく、らしくないねぇ。俺が考える必要はないんだっての
レイヴン
クロー雨はやんだか…
クローそれに比べてこっちの状況は、相変わらずの雨模様だけどな
騎士団員クロー隊長!
クローどうした?
騎士団員例の咎人に関する目撃情報が得られました
クローようやく尻尾を掴めたか…。で、そいつはどこにいる?
騎士団員それが…
クロー
scene1エリーゼの告白
ノーマよしよし。この分なら今日も、雨に降られないで済みそうだね
エリーゼそう…ですね…
ノーマどうかこのまま目的地まで、お天気がもちますよ~に!
ティポもちますようにー
レイヴン何に祈ってるのやら…
ノーマ何でもいいんだって。こういうのは、気持ちの問題なんだから
ノーマほらほら、レヴっちとエーちゃんも一緒に祈って!
レイヴンおっさんは遠慮しとくわ。こんなおっさんに拝まれたって神様もきっと嬉しくないし
ノーマ駄目だよ、レヴっち!そんな事言って、どうせ面倒くさいだけ──
ノーマ…って、何か聞こえない?
エリーゼ聞こえます…太鼓の音…でしょうか
ティポ向こうから聞こえてくるよー
レイヴンあっちの方は確か、ナムザ街のある辺りだねえ
レイヴン市都アルメリアまでに一度街で補給しておきたいし…
レイヴン行って確かめてみますかね
ノーマ賛成~!
エリーゼあ…
ティポお祭りだー!
ノーマなるほど~。あたしらが聞いたのは、お祭りで使われてる楽器の音だったんだ
ノーマねえねえ、エーちゃん。せっかくだしちょっと見てまわらない?
エリーゼでも…のんびりしてるわけには…
レイヴンうーん、でもあいにく食料もそろそろ尽きちゃいそうね
レイヴンお祭りはともかくとして、補給って意味でも今日はこの街に留まる方がいいかも…
エリーゼそう…ですか…
レイヴン
レイヴンまあまあ、エリーゼちゃん。そう焦んなくても明日には出発だから、ね?
レイヴン家族にだってもうすぐ会えるし、そんな顔しないで今日はおっさん達とパーッと遊ぼうじゃないの
レイヴンね、ノーマちゃん
ノーマそうそう!レヴっちの言う通りだよ
ノーマお祭りを楽しんでる内に今日なんてあっという間に終わっちゃうよ
ノーマだからほら、行こ?
エリーゼレイヴン…、ノーマ…
エリーゼ…わかりました。それじゃあ、少しだけ…
レイヴンそうそう、その調子。エリーゼちゃんは笑顔が一番なんだから
ティポよーし、それじゃお祭りにレッツゴー!
ドン、ドン、ドン!
タタタ!!
ノーマあ、そーれ!
ノーマよよいのよい!
ティポノーマ君、踊りが上手だねー
村の男いいぞー!姉ちゃん!
村の女もっとやんなー!
レイヴン元気だねぇ。若さがまぶしいわー
ノーマほらほら、もっと盛り上げてくよ~!
ノーマあたしは~、すご腕~…
ティポノーマ君、踊りながらどっか行っちゃったー
レイヴン街の人達ともすっかり打ち解けちゃったみたいね
エリーゼ……
レイヴン…やっぱり、お祭りを楽しむような気分じゃなかった?
エリーゼえっ…
エリーゼい、いえ…お祭りは楽しいです…
エリーゼみんな明るくて、笑顔がいっぱいで…
エリーゼ…少し、なつかしい感じがします
レイヴン
エリーゼ…こんな光景、少し前までは当たり前だったんです。けど、今は……
エリーゼレイヴン…
エリーゼ故郷に帰って、わたしはまたこんな風に友達と笑顔で過ごせるんでしょうか…
レイヴンエリーゼちゃん…
レイヴン…きっと大丈夫よ
レイヴンみんな満面の笑顔でエリーゼちゃんを出迎えてくれるって
エリーゼそう…でしょうか…
エリーゼ…でも、わたし……。もう故郷にも…居場所はないかもしれなくて…
レイヴン居場所…ねぇ
レイヴン
ノーマイエイ!
レイヴンどわっ!ノーマちゃん!?
エリーゼびっくりしました…
ノーマん~…悩み多き年頃なんだね、エーちゃんは
ノーマあたしも若い頃は、そんなだったっけな~
エリーゼき、聞いてたんですか…?
ノーマんー、最後のとこだけね!
レイヴンって言うかノーマちゃんは、今でも若いじゃないの
ノーマそうなんだけど、それはそれでしょ!水を差さない!
ノーマこれだからおっさんは…
ノーマエーちゃん、あたし達でよければいつでも相談に乗るからね!ね、レヴっち!
レイヴン勿論、エリーゼちゃんならいつでも大歓迎よ
エリーゼでも…
ノーマ遠慮なんかしなくていいんだよー!
ノーマ人はみんな、いろいろあるよ。あるけどさ。でもさ
ノーマレヴっちみたいなおっさんだって、こうやってしぶとく生きてるんだし、何とかなるよ、うん
レイヴン変なとこで引き合いに出すのね。まあ、そうなんだけど
レイヴンノーマちゃんの言う通り、大抵の事は何とかなるかもね
レイヴンそれに、居場所がないって言うならお嬢ちゃん一人の居場所くらいおっさんが作ってあげるわよ
レイヴン伊達に歳は食ってないってね
ノーマそうだよ!だからさ、もしもの時もそうじゃない時でもあたしらのとこ来なって
ノーマ一緒に何でも屋やろうよ!大歓迎するから!
エリーゼレイヴン、ノーマ…本当にありがとうございます
エリーゼ二人には励ましてもらってばかりですね
レイヴン気にしない気にしない。これもほら、何かの縁ってもんよ
レイヴンさて、んじゃそろそろ気を取り直してお祭り騒ぎ再開といきますか
エリーゼはい…!
ノーマでは改めて、いきま~す!
ノーマ今度はみ~んな一緒に~!!はい!
ノーマよよいのよい!
レイヴンほほいのほい!
ノーマほら、エーちゃんも!
エリーゼこ…こんな感じ…ですか?
レイヴンそうそう。上手いわよエリーゼちゃん
エリーゼが、頑張ります…
ティポあ、そーれ!
ノーマエーちゃん、やっと笑顔になったね
ノーマレヴっちも、楽しそうだし~
レイヴンおっさんが?
ノーマうん。レヴっちって、いっつも何しててもどっか他人事みたいだけどさ
ノーマエーちゃんに対しては、ちゃんと親身になってるみたいだね
レイヴンそんなもんかね?
ノーマそんなもんだって。自分じゃ気付いてないかもだけど
ティポノーマ君、レイヴン君、何休んでるんだよ-!ぼく達ばっかり踊らせてー
ノーマあーっと、ごめんごめん!
レイヴン
レイヴン俺が楽しそう、ね…
ガサッ…
レイヴン…!また、妙な気配が…
レイヴンって…逃げられたか。勘のいい奴…
レイヴンつけられているのは確か…手を出して来ないのが気になるけど…
レイヴン
scene2エリーゼの告白
レイヴンふぅ、小さい祭りだったけどなかなか楽しめたじゃないの
エリーゼはい、レイヴンとノーマのお蔭です
エリーゼ…でも、また少し雲が出てきましたね…
レイヴンこの分だと、明日はまた雨かしら。ノーマちゃんのお祈りは、通じなかったみたいね
ティポあれれーノーマ君はー?
レイヴン騒ぐだけ騒いだ挙げ句、先に休むって宿に引っ込んだわよ
レイヴンほんと自由なんだから、あの子ったら
エリーゼお祭りが終わって、村も静かになりましたね
エリーゼ何だか…寂しいです…ね
レイヴン仕方ないわよね。どんなに楽しい時も、いつか必ず終わるもんだし
エリーゼ
レイヴンどしたのエリーゼちゃん。まーた暗い顔になっちゃってる
エリーゼい、いえ…
エリーゼえと、その…聞いてもいいですか?
レイヴンん?まあ、おっさんにわかる事なら
エリーゼ初めて会った日…レイヴンはどうしてわたしの事を、助けてくれたんですか…?
レイヴン雨の中、困ってる美少女がいたら助けるのが男の務めってもんでしょ?
レイヴンこう見えてもおっさん、紳士だからね
エリーゼそう…ですか…
レイヴンあらら……。ノーマちゃんみたいなツッコミがないのもやりにくいわね
レイヴン…エリーゼちゃん
レイヴン悩んでるなら話してみたら?
レイヴンおっさんでも、聞くくらいは出来るかもよ
ティポエリー、話してみようよー
エリーゼ…そう、ですね
エリーゼわ、わたし…実は…その…
エリーゼ今まで怖くて…レイヴンやノーマには、言えなかったんですけど…
エリーゼ咎人の疑いをかけられて…白き獅子に追われてるんです…
レイヴン咎人…
レイヴンクローが言ってたのはまさか本当にエリーゼちゃんの事──
エリーゼえ?
レイヴン…何でもないわ。こっちの話よ
レイヴンそれにしても、咎人とは穏やかじゃないわね
エリーゼ違うんです…!わたしは咎人なんかじゃ…!
レイヴン落ち着きなって。俺もノーマちゃんもエリーゼちゃんが咎人だとは思ってないから
レイヴンそれよりも、どうして白き獅子に追われる事になったのよ?
エリーゼそれは…
エリーゼ
エリーゼ……知ってはいけない事を知ってしまったからです…
レイヴン……
エリーゼ…生誕祭の日に、宮殿に迷い込んでしまって…
エリーゼ勿論、すぐ外に出ようとしたんです…
エリーゼでも、見つかったら怒られると思って、人目を避けている内に迷ってしまって…
エリーゼ気が付いたら薄暗い地下にいました。そこで…ラザリス様と…
レイヴン…お会いしたってわけ?
エリーゼ会ったというか…その…姿をお見かけしました
エリーゼわたし、嬉しくて思わずラザリス様のいる方へ歩いて行ったんです
エリーゼそしたら突然…悲鳴と、妙な音が聞こえてきて…
レイヴン妙な音…?
ティポビキビキビキ!って音ー
レイヴン…それで?
エリーゼ……悲鳴の後、ラザリス様の声が聞こえました
エリーゼ「愚かな咎人達…でも、大丈夫。 僕が救ってあげる」って…
エリーゼその後は、悲鳴も聞こえなくなって…恐ろしいほど静かに…
レイヴン……
エリーゼラザリス様は咎人を救うと言っていました…。…でも、本当は──…
エリーゼ……本当は、何か…よくない事をしているんじゃないでしょうか…
レイヴン
エリーゼ…ラザリス様を疑うなんて自分でも信じたくないんですけど…でも、わたし…怖くて……
レイヴン
レイヴン…けど、それがどうして咎人疑惑に?
エリーゼ…それは、その後の事です。宮殿から逃げ出したんですけど…そこで見た事が頭から離れなくて…
エリーゼ……怖かったんです。こんな事、誰にも言えないし…どうしたらいいかもわからなくて…
エリーゼそしたら、咎人の疑いがあると通報されてしまいました…。友達だと思っていたみんなや先生に…
エリーゼ故郷に帰ろうと思ったのはそのせいなんです…
レイヴン…まさか、そんな事だったとはね
エリーゼ…ラザリス様も友達もわたし…本当は全部信じたいんです…
エリーゼけど…もう、誰を…何を信じたらいいかわからなくて……
レイヴンエリーゼちゃん…
エリーゼレイヴン、教えてください…
エリーゼラザリス様のやっている事は、本当に「正しい」のでしょうか…
レイヴン……!
エリーゼおかしいですよね…わたし。ラザリス様を疑うなんて……
レイヴン…おかしいかどうか、か
レイヴン正しい答えはおっさんにはわからないけど
レイヴンでも少しだけ…共感はしてあげられるかも、ね
エリーゼレイヴン…
エリーゼ…本当にありがとうございます。わたしを助けてくれて…
エリーゼレイヴン達がいなかったらきっとここまで来られなかったし…
エリーゼそれに、何よりその…嬉しかったんです。友達だと言ってもらえて…
レイヴンエリーゼちゃん…
エリーゼだから…レイヴンとノーマさえよければ、これからも…わたしと一緒に──
レイヴン──っと、ストップ。今日はそろそろお開きって事で
エリーゼ…え?
レイヴン話は尽きないけど、そろそろエリーゼちゃんも宿に戻って休みなさいな
エリーゼ…レイヴン?突然どうしたんですか…?
レイヴンここから先は、大人の時間。ほらほら、先に宿へ戻んなさい
レイヴンたくさん眠らないとおっさん好みのお姉さんにはなれないぞ?
エリーゼな…ならなくていい、です…!
エリーゼじゃあ…おやすみなさい…
ティポエリー、待ってー
レイヴン
レイヴンったく、そんなガラでもないってのに…
レイヴン……
レイヴンラザリス様のあの力を知っちまった、か…
scene1差し伸べられた手
ノーマさーて!お祭りに参加して、気分もリフレッシュ出来たし!
ノーマエーちゃんの故郷市都アルメリアを目指して、張り切って出発しますか~!
ノーマ…って、言いたいとこだったけど…
ザー…
エリーゼまた雨…ですね
ノーマそうなんだよね…
ティポレイヴン君の言った通りになっちゃったねー
ノーマだーもー!何でまた降り出すのよ!
ノーマせっかく昨日、天気がもつように祈ったのに、全然効きゃしない。うがー!
ノーマこれも全部、レヴっちのせいね。一緒に祈れって言ったのに、やらないから
ティポ言いがかりだー!
ノーマそうよ。言いがかりよ。でもそれくらいしたくなるでしょ。こんな雨じゃ!
エリーゼノーマ達さえよければわたしは…雨がやむのを待っても…
エリーゼ二人にはずっと迷惑をお掛けしてますし…
ノーマあー、違う違う。エーちゃんは全然悪くないから。そんな風に気に病む必要ないって
ノーマ悪いのは全部レヴっち!あの髪がボッサボサのおっさん!
ティポところで、そのレイヴン君は?
レイヴン……
ノーマ何でか今朝からず~っと黙ってるんだよね
ノーマおーい!おっさーん!!
レイヴンどわっ!急に耳元で叫ばないでってば
ノーマ何、ぼぉ~っとしてんの。もうすぐ出発だよ?
レイヴンあー…大丈夫大丈夫
レイヴン……で、何の話だっけ?
ノーマちょっと、マジでどうしたのさ?しっかりしてよ~
ノーマはぁ…。エーちゃん何か知らない?レヴっちが腑抜けてる理由
エリーゼいえ…
エリーゼあ…でも、昨日の夜もレイヴンの様子が何だか──
男の声うわあああっ!?
ノーマ何の悲鳴!?
女の声魔物よー!魔物が街の中に-!
レイヴンあらら…これから出発しようって時に
ノーマ放ってはおけないでしょ。行くわよ、レヴっち!
レイヴンあいさー
レイヴン…あ、エリーゼちゃん達はここにいて
エリーゼえ…でも…
レイヴンいいから。魔物退治は、おっさん達に任せておいてちょうだい
エリーゼあ…
scene2差し伸べられた手
ティポねーねーエリー、外が静かになったよ
エリーゼ終わったんでしょうか…
ティポたぶんねー。レイヴン君とノーマ君、怪我してないかなー?
エリーゼそうですね…
エリーゼ心配ですし、様子を…見に行ってみましょうか
エリーゼ治療なら役に立てるはずです
ティポうん!
エリーゼレイヴン達いませんね…
ティポどこまで行っちゃったのかなー
ガルルル!
エリーゼ──!
ティポま、まままま…!魔物がまだー!
グオオッ!
エリーゼいや…!
???…はああぁ!!
ズバッ!
ギャウウッ!
エリーゼあれ、何ともない…
ティポエリー!
???…怪我は、ないか
エリーゼは、はい。わたしは大丈夫、です…
ティポありがとー!おにーさん!
???
エリーゼそれで…その、あなたは…?
???やはり…お前も記憶を…
エリーゼえ…?
???
???…いくつか聞きたい事がある
???お前は…ティアやスレイ、という名前に聞き覚えはないか?
エリーゼティア…スレイ…?よく、わかりませんが…知らない気がします
???では…結晶に覆われた世界、そんな風景が記憶にないだろうか
エリーゼ結晶…?それってどういう──
ノーマいっちょ~上がりっと!…って、あれ?エーちゃん?
レイヴン部屋にいてって言ったのに、駄目じゃないの
エリーゼわっ…!二人共…。ご、ごめんなさい…
ティポエリーは、レイヴン君とノーマ君の事がシンパイだったんだよねー?
???お前は…
レイヴン…?この美青年は一体どなた?
エリーゼ…さっき、魔物に襲われたところを助けてもらったんです
ノーマええ~~っ!魔物に!?どっか怪我とかしてない?大丈夫!?
エリーゼはい、すぐに助けてもらったので怪我はありません
ノーマも~よかったよ~!
ノーマありがとね!ええと……
ヴェイグ…ヴェイグ・リュングベルだ。たまたま、通りかかってよかった
レイヴンへぇ…たまたま?そんなタイミングよく、ねえ…
ヴェイグ…仲間達が来たなら、もう大丈夫だな
エリーゼま、待って…ください…!
エリーゼさっきの…ティアにスレイ…という人…
エリーゼお捜しの人がいるなら力になれるかもしれません
エリーゼ結晶に覆われた風景…というのはわたしにはわかりませんが…
レイヴン結晶に覆われた…?
ヴェイグいや…いいんだ、忘れてくれ
エリーゼでも…きっと大事な事なんですよね…
エリーゼレイヴンやノーマにも聞けばもしかしたら…
ヴェイグ…本当に大丈夫だ。ただ、気遣いには感謝する
ヴェイグありがとう、エリーゼ
レイヴン
レイヴン…まあまあ、少しくらい話してくれてもいいじゃない
レイヴンおっさんもちょっと気になるねえ。特に結晶に覆われた風景…ってとこ
ヴェイグ…特に意味はない
レイヴンほーん…。じゃあ、おたくさ
レイヴン──どうして、エリーゼちゃんの名前知ってるのよ?
エリーゼえ…?
ヴェイグ……
レイヴンノーマちゃんは「エーちゃん」って呼んでたし、ティポは「エリー」だったっけ?
レイヴン何にせよ「エリーゼ」とは誰も言ってないと思うけど?
ヴェイグ
ノーマ…え?ちょ、ちょっとどういう事?
ヴェイグこれ以上の話は無意味だ。オレは先を──
ヒュッ!
ヴェイグくっ…!
レイヴン外したか…
ノーマ弓…!?ちょっとレヴっちってば急に何してんの!
レイヴン離れな、エリーゼちゃん。そいつは「咎人」だ
エリーゼ咎…人…?
レイヴンああ…虚言で人を惑わせる…。結晶がどうとか言う荒唐無稽な話…咎人でもないとしないでしょ
レイヴン誰も教えてもないはずのエリーゼちゃんの名前を知ってたのも不思議だし…それに──
レイヴン…どうやら、道中で俺達をずっとつけてた人物でもあるみたいだしね
ノーマあたし達をつけてた!?何でまた…
エリーゼもしかして、街道での物音はこの人だったって事でしょうか…
エリーゼでも、何故そんな事を…
レイヴン目的はおそらくエリーゼちゃん…よね?
ノーマ咎人がエーちゃんに一体何の用だって言うの!?
レイヴンさぁね。どんな用だとしても関係ないわ
レイヴン『咎人を見つけたら 誰とも接触させてはいけない』…ラザリス様の命を遂行するだけよ
ヴェイグやはり、こうなってしまうか…
ヴェイグエリーゼ…!本当に覚えていないのか…?
エリーゼ…どうして…わたしは何も…
レイヴン安心しな。お嬢ちゃんの事はおっさんがちゃーんと守ってやっから
レイヴン…ったく、大人しくしててくれりゃ見逃してやらなくもないのにねえ
ノーマ見逃すって…レヴっち、それは駄目でしょ。閉じ込めるかちゃんと白き獅子に通報しないと…
ノーマそれはともかくとして…エーちゃんには指一本触れさせないから!
ヴェイグくっ…!
scene3差し伸べられた手
レイヴンはあ…はあ…
ノーマぜはー…ぜはー…
ヴェイグ
ノーマつ、強い…
レイヴンそうね…この実力、つくづく惜しいわ
レイヴン咎人じゃなかったら、いい仕事の口を紹介してあげられるんだけど…
ヴェイグ…エリーゼ!
エリーゼ…!
ヴェイグオレがわからないか…?本当に何も思い出せないのか?
エリーゼ思い出すって…何を…
ヴェイグエリーゼ…オレは…!
エリーゼわ、わかりません…!
エリーゼわたし…あなたの事なんか、知らないです…
ヴェイグエリーゼ…!
ノーマそうだよエーちゃん、咎人の話なんて聞いちゃ駄目!
レイヴンおたくも諦めなよ、知らない事を思い出せるわけないでしょ
レイヴンって、咎人に何を言っても無駄か…
ヴェイグ
ヴェイグならば──
…キン
エリーゼ剣を…
ティポ収めた?
レイヴン諦めた…って事かしら
ヴェイグそうではない…
ヴェイグオレはお前の記憶を取り戻したい…それだけだ
エリーゼわたしの…記憶…?
ヴェイグ怖がらせて悪かった…エリーゼ
ヴェイグだが、オレは誰も傷つけるつもりはない
ヴェイグ誰かを騙すつもりもない…
ヴェイグ本当は、頃合いを見て落ち着いて話をしたかったのだが…
エリーゼ
ノーマ全然諦めてない…!エーちゃん、話を聞いちゃ駄目だよ!
ヴェイグエリーゼ…今のお前が、オレを忘れている事はわかっている
ヴェイグだが、オレは…お前の事をはっきり覚えている。決して忘れたりなどしない
ヴェイグお前の強さもそうだ…。人のために恐怖に立ち向かえる勇気をお前は持っているはずだ
ヴェイグエリーゼ…オレの事は無理でもあの夜の誓いを、思い出せないか?
エリーゼ誓い…?
ヴェイグ『お前は一人ではない』
ヴェイグ『同じ晶化に立ち向かう者として… オレがお前と共に歩もう』
エリーゼそ、その言葉…
エリーゼ…!
ヴェイグ『忘れるな。 ミラを大切に想うお前がいるように お前を想う者が必ずいる』…
ノーマまたわけのわからない事を…!
レイヴンだからいい加減にしなさいって。しつこい男は本当に…
エリーゼミラ…あ…れ…?
ティポエリー?
レイヴンどしたの、エリーゼちゃん?
ヴェイグ…!
エリーゼこれ…何なんですか…
エリーゼわたしの頭の中に…知らない光景がいっぱい…
レイヴン…エリーゼちゃん…?一体何が──
エリーゼうっ…
エリーゼそんな……どうして──…
ヴェイグエリーゼ…!
ヴェイグ恐れなくていい…。それはお前の中に眠る本当の記憶だ…!
エリーゼああっ…!
エリーゼ…そうです。ミラは…目の前で…晶化して……
ヴェイグそうだ…大切な者を救うため、お前は旅に出た
ヴェイグそしてみんなと出会った…その中にオレもいる
ノーマエーちゃん、駄目…!咎人の話に耳を傾けちゃ──
エリーゼ『…わたし、決めました。 もう、恐れません』…
エリーゼ『ヴェイグ達と前に進みま──
レイヴンエリーゼちゃん…
ヴェイグエリーゼ…思い出したんだな──
エリーゼ来ないで…ください!
ヴェイグ…!
レイヴンエリーゼちゃん…?
エリーゼあなたの言葉は…確かに…どこかで聞いた事がある気がします
エリーゼミラ…っていう人がわたしの大切な人だっていう事も…
エリーゼでも……
エリーゼわたし、わからないんです…!知ってるけど、知らなくて……
エリーゼ何が本当なのか…わたしは誰なのか…!
エリーゼこのままじゃ、わたし…自分がなくなってしまいそうです…
ヴェイグ…心配ない、お前はお前で──
エリーゼお願いです…!もう放っておいてください…!
エリーゼわたしは…咎人なんかじゃありません
ヴェイグ…エリーゼ
ヴェイグ戸惑うのもわかる、オレの言葉がお前を苦しめるのも…
ヴェイグだが…お前には助けたい仲間がいる
ヴェイグ本当のお前なら、今のこの状態を望まないはずだ
エリーゼ…!
ノーマちょっと!
ティポこれ以上、エリーを虐めるなー!
ヴェイグオレは…お前と共に歩むと誓った
ヴェイグ例えお前が忘れようと、お前との約束を破るわけにはいかない…
ヴェイグオレは…大切な仲間であるお前を、放っておく事は出来ない…!
エリーゼこの手は…
ヴェイグ『一人で抱え込むな』
エリーゼ…!
ヴェイグ『恐れで動けないというのであれば、 この手を取れ、エリーゼ』
エリーゼ一人…で…
エリーゼ──…うっ!
ノーマエーちゃん!?
エリーゼ……
エリーゼそう…あの時も…
エリーゼミラがいなくなった…あの時…
エリーゼミラは…わたしの事を、妹だと言ってくれて…でも晶化してしまって…
レイヴン晶化…?おい、エリーゼちゃん…一体何を言って…
エリーゼそれで…わたしは…
エリーゼわたしは…!
エリーゼ…誓ったんです!ミラを…みんなを取り戻すって!
ノーマえ…エーちゃん…?
ヴェイグエリーゼ…!
エリーゼヴェイグ…!わたし思い出しました…!
エリーゼわたしは誰なのか…そして…何をすべきなのかも
ティポぼくもー!
レイヴン
ノーマどど…どう言う事?
ノーマねえレヴっち!何がどうなってんの!
レイヴン…まずいわね
レイヴンエリーゼちゃん…
scene1本当の自分
レイヴンエリーゼちゃん…
ノーマエーちゃん…どうしたの。何だか今までと…雰囲気が…
レイヴンどうやらエリーゼちゃんは、咎人になった…って事みたいね
ノーマ咎人…?そんな…、冗談でも笑えないってば
ノーマ冗談…だよね
ヴェイグエリーゼは本来の記憶を取り戻しただけだ…
ヴェイグそれがお前達の言う咎人の定義なら、確かにその通りだが…これは決して咎などではない
ノーマ嘘…
ノーマ嘘でしょエーちゃん。…本来の記憶って何?嘘だよね?嘘だとか嘘だとか言ってよ!
エリーゼごめんなさい、ノーマ…。でも、嘘じゃないんです…
エリーゼこれが本当の、わたしなんです
レイヴン本当の自分ね…
ノーマ何それ…レヴっちも何とか言ってよ!
ノーマエーちゃんが咎人になっちゃったんだよ!
レイヴンまぁまぁ。落ち着いて、ノーマちゃん
レイヴンまずはエリーゼちゃんの話を…
ノーマ聞きたいよ…!何でなのか、あたしに出来る事はないか、他にもたくさん…
ノーマでも聞けるわけないじゃん、咎人の言葉は全部妄言で……耳を貸しちゃいけないんだって…
エリーゼノーマ…
ノーマレヴっちは何で落ち着いてられるのよ
ノーマあたし達三人、ここまで一緒に旅してきた仲間だよね?違う?
レイヴン
ノーマそれがどーして…!何でこんな事になっちゃうのさ!
ノーマあたし…もう、わけわかんないよ!
エリーゼノーマ…!待ってください…!
レイヴン放っておきなってば、誰も咎人の話なんか聞かないんだから
ヴェイグなら、お前は何故ここに残った?
レイヴン…ちと、わけありでね
エリーゼ…?
レイヴンしかし、エリーゼちゃんが咎人になっちゃうとはね
レイヴン…お蔭で迷いがなくなったよ
???レイヴン!
ヴェイグお前達は…
???…エリーゼ・ルタスだな
???お前には咎人の疑いが掛かっている。オレ達と来てもらおうか
エリーゼ白き獅子…!?
レイヴンクロー…!どうしてここに?
レイヴンタイミング的に、ノーマちゃんが連れて来たってわけでもなさそうだけど
クローレイヴン、あんたを追ってきたんだよ
クロー例の咎人を連れて街を出たって、報告を受けてな
レイヴンなるほど…ね
クローしっかし、さすがはレイヴンだな。情報収集どころか、咎人の監視までやってくれるとは
クローこいつは約束してた礼じゃ足りなさそうだ
ヴェイグ監視…だと?
エリーゼ今のどういう事ですか?どうしてレイヴンが白き獅子と…
レイヴンはぁ…。バレちゃったら仕方ないわね
レイヴン言ってなかったけど、実はおっさん「特務補佐官」って言ってさ
レイヴン白き獅子のお仲間みたいなもんなのよ
エリーゼ白き獅子の…?何でも屋って言うのは嘘だったんですか?
レイヴンいんや?あれはホントよ。特務補佐官ってのは何ていうかーおっさんの裏の顔、みたいな?
レイヴン実際、この事はノーマちゃんだって知らないしね
エリーゼ…じゃあ、今まで一緒にいてくれたのは、わたしを監視するためだったんですか…?
レイヴン…まあ、そういう事になるわね
エリーゼ嘘です…そんな…
クローどうやら上手く取り込んでたみたいだな
クロー何にせよ、よくやってくれたぜ。んじゃ、こっから先はオレ達の管轄だ
クローこの咎人の身柄はオレ達が──
レイヴンおっと…それなんだけど。いくらクローのお願いでも、出来ない相談なんだよね
クロー…どういう事だ?まさか、咎人に情が移ったとでも言うんじゃねぇだろうな
エリーゼレイヴン…!
レイヴンそれが…実はこのお嬢ちゃん、こっちの獲物でね
エリーゼえ…?
ヴェイグどういう事だ…
レイヴンラザリス様による「咎人の救済」を見守る事──
レイヴン…それが特務補佐官の務めであり、おっさんの裏の顔ってわけ
エリーゼ咎人の…救済……
レイヴン宮殿の地下で行われる救済の儀式はとても神聖なものでね、宮殿内でも限られた者しかその全貌を知らないの
レイヴンおっさんを除いたら、当事者であるラザリス様と……あとは宰相様くらいじゃないかしら
レイヴンそんなすっごく内々の儀式で、少し困った事が起きちゃってねー。確か、生誕祭の日だったかしら
レイヴンどうもその救済の儀式の場にうっかり足を踏み入れてしまった「侵入者」がいたみたいなのよ
ヴェイグ侵入者だと…?
レイヴンそ。おっさんは特務補佐官として、その人物を捜してた…
クローじゃあ、お前の獲物ってのは…
レイヴン…ここまで言えばわかるよね。エリーゼちゃん
エリーゼ…そんな……
レイヴンいやー上手く取り入ったお蔭で、本人がぜーんぶしゃべってくれたのよ
レイヴンまさかクローの捜してる新たな咎人でもあったとは、思ってもみなかったけどね
クローお前の管轄内でそんな非常事態が起きてたってのも、初耳だけどな
レイヴンお互い担ってる仕事が違うんだから言えない事くらいあるじゃない?
クロー…まあな。何にせよ、そういう事なら仕方ねえ。この咎人の捕縛はお前に任せるさ
クローどっちが捕まえようと地下牢送りってのは変わらねぇしな
エリーゼ…そんな、信じられません。今までずっとわたしを騙してたなんて…
レイヴン
エリーゼレイヴン…お願いです!嘘と言ってください…
エリーゼこんなのは全部嘘で…これからもずっとわたしと一緒に来てくれると──
レイヴン──ストップ。二度も遮っちゃって悪いけど、結論出ちゃってるからさ
エリーゼ…レイヴン…
レイヴンエリーゼちゃんとここまで一緒に来たのはただのお仕事
レイヴン…けどそれも、これで終わり
レイヴン大人しく捕まってちょうだいな
レイヴンさもないと…
チャキ…
ヴェイグエリーゼ、オレの後ろへ…!奴は本気だ
ティポどうしてぼく達に弓を向けるのー?友達でしょー?
レイヴンごめんね、今までのぜーんぶ「嘘」だったのよ
ヴェイグお前は…!
エリーゼレイヴン…!
scene2本当の自分
エリーゼレイヴン…
レイヴン
ヴェイグエリーゼ、ここは一旦引くぞ
エリーゼ…嫌です
ヴェイグエリーゼ…?
エリーゼこのままなんて駄目です…。わたしは…行きません…!
エリーゼレイヴンにもわたし達と同じように本当の記憶があるはずです
エリーゼヴェイグがしてくれたように、本当の記憶を取り戻させてあげないと…!
ヴェイグ…エリーゼ。気持ちはわかるが…今のあいつはお前の敵──
エリーゼ…いえ、友達です
エリーゼ……レイヴンがこんな事するのはきっと、全部天帝のせいなんです…!
エリーゼ…本当のレイヴンならこんな事、絶対にしません…
エリーゼわたしは…そう信じてますから
レイヴンちょっとちょっと。信じるって今更、何言ってんのさ
レイヴンラザリス様とかよくわかんないけど、事実として、エリーゼちゃんはおっさんに騙されてたのよ?
レイヴン友達とか、そんな話だって全部嘘で──
エリーゼ…嘘なんかじゃありません
エリーゼレイヴンはたまに何を考えているのかさっぱりですけど…
エリーゼノーマとレイヴンに助けられて一緒にお祭りに行って…
エリーゼ根っこの部分は優しい人なんだって…この人は信じられるって思ったんです
エリーゼその気持ちは、記憶を取り戻した今も変わっていません
エリーゼ…だって、全てを忘れてしまっていても、レイヴンはレイヴンです…
エリーゼ天帝だって、心までは変えられないと思うんです
レイヴン
エリーゼだから、レイヴンを置いては行けません…!記憶を取り戻してあげないと…
レイヴン置いてはいけないって、おっさん、別に…
クローやれやれ…咎人ってのもここまで来ると哀れだな
クローおい、レイヴン。咎人お得意の妄言だ、耳を貸す必要なんざねぇ
エリーゼ…聞いてください、レイヴン
エリーゼわたし、全てを忘れてしまう前の本当のレイヴンを知ってるんです…
エリーゼエステルやアーチェ…それに、リタ…。お名前に聞き覚えはないですか?
レイヴンエステル…アーチェ…リタ…?
エリーゼはい…。大精霊の暴走で世界が危機に陥った時の事です
エリーゼ世界中で起きていた異変の原因を探るために、あなたはリタ達と旅をしていました…
エリーゼわたしがレイヴンと初めて会ったのもちょうどその頃です…
レイヴン…うーん、悪いけどおっさんには何の事かさっぱり…
エリーゼ思い出してください、レイヴン!リタ達はあなたの仲間で、大切な友達です…!
エリーゼヴェイグと同じように、今頃リタ達もあなたを心配して捜してるかもしれません…
レイヴン…だから、何度も言わせないで。リタっち達の事なんて、全く──
レイヴン…え?リタっち、って──…
レイヴン…!
ティポレイヴン君!?
ヴェイグ…まさか記憶を取り戻したのか?
エリーゼレイヴン!リタ達の事、思い出して──…
レイヴン…今のは、一体…?
エリーゼレイヴン、お願いです…!あと少し…もう少しなんです。真実を思い出してください
エリーゼあなたがリタ達を忘れてるのも、世界を晶化で奪った天帝に従う事になっているのも全部…
エリーゼ…これは全部、作られた偽物なんです!
レイヴン偽物…
レイヴン──っ!!
リタ『うっさい、おっさん!』
アーチェ『あたしの実力は、 もうわかったでしょ? バンバン力になっちゃうから!』
レイヴン今のは……?
クロー…ちっ
クローレイヴン!おい、レイヴン!
レイヴン…!その…声は…
???『どうした。 浮かない顔だな、レイヴン』
レイヴンあれ…?これって、あの夢で聞いた……
クローくっ!
クローおい!しっかりしやがれ、レイヴン!
クロー咎人の言葉なんかに、惑わされてんじゃねえ!奴らの常套手段だろうが!
レイヴンクロー…
クローオレ達は天帝の命に従って、「正しい事」をやってんだ。ぶれるんじゃねえ!
レイヴン正しい…事…
レイヴンくっ…この感覚、さっきと──…
『名もなき男』
国の重鎮…これは「正しい事」である
国の重鎮要人誘拐と言えば聞こえは悪いが、国の安寧を保つために、どうしても必要なのだ
『名もなき男』はっ…心得ております
国の重鎮では、やるべき事はわかっているな?狙うはウィンドル王国の姫殿下だ
『名もなき男』…仰せのままに
『名もなき男』……
レイヴンな…何なんだ、これ…
レイヴンぐっ…また…
???くそっ、何でだ!何でお前がそんな事をする必要があんだよ!
『名もなき男』俺はただ、命令に従って「正しい事」をしてるってだけ
『名もなき男』これでも一応騎士って身分だからね。祖国の命は絶対なのよ
『名もなき男』それに…これは、俺に残された最後の──
クロー──ヴン、おい!レイヴン!どうしちまったんだよ!
レイヴンうっ…ク、クロー…
レイヴンそうだ、俺は…正しい事をしている…だけ…
レイヴン俺は……
レイヴンうっ…、頭が…
クローレイヴン!
エリーゼレイヴン、逃げないでください!本当の自分を取り戻す事から…本当の自分に向かい合う事から…!
エリーゼそこに真実があります…!
クローちっ、咎人風情が好き勝手言いやがって…
レイヴンう…あ…
レイヴンこれは…
レイヴン俺が…今の俺になる前の──…
レイヴン──…!
クローレイヴン!
エリーゼレイヴン!
ヴェイグ
ティポレイヴン君ー!
レイヴン
レイヴンは、はは…思い出しちまった…
クローレイヴン…
レイヴン今はクロー…だっけか。「また」お前さんの言葉に助けられるとは…つくづく因果だねぇ
レイヴン…けど次は、おっさんの番って事になりそうね
クローおいおい…、またとか次とか、一体何の話──…
クロー…って、まさかお前…
エリーゼ記憶を…取り戻したんですね!レイヴン!
レイヴン…ん。忘れたかった事も含めてぜーんぶね
レイヴン…にしても何がどうなってんのかね。記憶操作だなんて
エリーゼはい…。けど、天帝とヴァン…二人が関わっている事は確かです
ヴェイグ…詳しい話は後だ。まずはここを離れるぞ
ヴェイグレイヴン、お前も一緒に来い
レイヴンへいへい、勿論ですよっと。…あいつを助けようにも機をうかがった方がよさそうだしね
レイヴンはあ…まさかこんな形で追う立場から追われる身になっちゃうなんてね
クロー…おいおい、ここから逃げ出せるとでも思ってんのか?
レイヴンクロー…。ま、そうなるわなぁ
騎士団員隊長、ここは我々が!
レイヴンおっと!そうはさせないわよ!
ヒュンッ!
騎士団員くっ…!弓矢が…!
クローレイヴン!お前…
レイヴン
クローやれやれ…まさか本当に咎人になっちまうとはな
レイヴンま、そこんとこはおっさんも正直まだよくわかってないけど、捕まるわけにはいかないんだわ
レイヴン目の前にいる、お前さんを助けるためにも、ね
レイヴンそれよりどうよ、互いに武器を収めてここは一つ話し合いで、さ
クローわかってるはずだぜ?そうなっちまったお前と話す事は何一つねえってな
クロー──総員、戦闘態勢に入れ。目の前にいる咎人三人を捕縛する
騎士団員はっ…!!
エリーゼ…!
ティポどど、どうしよう!?
ヴェイグ…エリーゼはオレが守る
クロー…レイヴン、最初で最後の警告だ
クロー大人しくお縄頂戴されんなら今しかねえぜ?
レイヴンお気遣いどーも。…けど、聞くだけ無駄よ
レイヴン言ったでしょ、今捕まるわけにはいかないって
クロー…なら、斬られても文句なしってわけだな
クローそれじゃ…遠慮なく行くぜ!
レイヴンそうじゃない──ってもわかっちゃくれないか…
レイヴンったく、やりたかないんだけどねえ
scene3本当の自分
レイヴンおっとっと…!やっぱ、やるわね
クローお前もな。だが…
クローこいつはどうだっ!
ビュンッ!
レイヴンあぶっ!
ズルッ!
レイヴンうおっ!?ぬかるみで足が!
エリーゼレイヴン!
クロー…そこだっ!
ヴェイグそうはさせん…!
ガキン──ッ!
クローちっ…邪魔が入ったか
レイヴンふう…ありがとね。おっさんが、女だったら惚れてるわ
ヴェイグ…早く立て。すぐに次が来る
レイヴンへいへい。全く…若い子は余裕がなくていけないねえ
クロー……
レイヴン「正しい事」をやってる…か。お前さんがあんな風な事を言うとは…本当なら想像もつかないねえ
レイヴンま…そのお蔭で思い出せたんだけど、…これじゃどうにも目覚めが悪いわな
レイヴンそっちもさっさと思い出したらどーよ
レイヴンおっさんがさ、お前の正体教えてあげるから──
クロー黙りやがれっ!
ビシュッ!
レイヴンうおっと!
クロー咎人の言葉に耳を傾ける気はねえよ
騎士団員クロー隊長!
ヴェイグ…増援か。まずいな
ティポこのままじゃ、囲まれちゃうよー!
エリーゼどうしたら…
???みんな、逃げて!
???グランドダッシャー!どっせ───い!
ズドドドドッ!
騎士団員うわぁっ!?
レイヴンお?この術は…
ヴェイグ…今だ!逃げるぞ、エリーゼ
エリーゼあ…
ティポ待ってー!
エリーゼレイヴンも早く!
レイヴン
クローレイヴン!待て!
レイヴン…借りは必ず返すぜ。だから──
レイヴンまた会おうぜ、青年!
scene1いつか晴れる空
エリーゼはあ…はあ…
ティポもうヘトヘトー
ヴェイグ…大丈夫か、エリーゼ
エリーゼは、はい…
レイヴン白き獅子達は、追って来てないわね
レイヴンはぁ~助かったぁ~
ヴェイグ術の援護がなければ危なかったな…
ヴェイグしかし、一体誰が…
エリーゼレイヴン…さっきわたし達を助けてくれた人、あの声って…
レイヴンああ。助けに来てくれたみたいね
レイヴン…ま、とにかくこれで、結果オーライって事よ
レイヴン勿論まだ、安心は出来ないけどさ
エリーゼです、ね…
エリーゼそうだ…改めて。お久しぶりです、レイヴン
レイヴンそうね…前に会ってから、どれくらい経ったのかしら
レイヴン一方で、ここまでエリーゼちゃんと旅してきた記憶もそのままだから、頭がどうにも混乱してるんだけど
エリーゼそれは…わたしもです
エリーゼでも、レイヴンの記憶が戻って本当によかったです
レイヴンエリーゼちゃん…
レイヴンいや~ホント助かった!エリーゼちゃんはまさに救いの天使って感じだねえ!
エリーゼ天使…ですか?ちょっと、よくわかりません…
レイヴンま、ありがとねって事よ
ティポ素直じゃないなー
レイヴンそれはそうと、このわけのわからん状況はどういう事なのよ?
レイヴン天帝とヴァンが関わってるとか何とか言ってたけど
ヴェイグやはり天帝の御座でヴァンが話していた事が実現したと言う事か…
レイヴン天帝の御座?何それ?
エリーゼ…実は──
レイヴン──なるほどね
レイヴンつまり晶化現象を止めるためにその天帝の御座ってとこでヴァン達と戦ったと…
レイヴンしっかし、あの晶化現象ってのがまさかラザリスの力だったとはねえ…
ヴェイグああ。そしてヴァンはそこで全てを一からやり直せる世界を作ると言った
エリーゼそして、今のこの世界は見た事のない街や風景ばかりです…
ヴェイグそう…おそらくだが、この世界こそがヴァンが目指し、天帝が実現したものなのだろう
レイヴンおっそろしい事するもんだねえ…。そんな奴に仕えてたと思うとぞっとするわ
エリーゼレイヴン…わたしとヴェイグはこの後、世界を巡って仲間達を捜そうと思っています
エリーゼ何故記憶操作が行われているのかはまだわかりませんが…
エリーゼヴェイグやわたし以外のみんなもきっとどこかにいるはずです
エリーゼ仲間を見つけ出して…そして、今度こそヴァンを止めて、世界を取り戻します
ヴェイグ…ああ
エリーゼそれで…レイヴンさえよければこの後も一緒に行きませんか…?
レイヴンそうね…
レイヴン…勿論よ。さっき言ったでしょ──
ノーマちょっと待って!
ヴェイグお前は…
エリーゼノーマ…
レイヴンさっきはありがとね、ノーマちゃん
レイヴン術で援護してくれたお蔭で、無事に逃げ出せたわ
レイヴンやっぱり持つべきものは、頼れる相棒だねえ
ノーマそんなのいいからさ、早く帰ろう、レヴっち
エリーゼノーマ…あの、わたし──
ノーマごめんね、エーちゃん…咎人とは話せないよ…
ティポノーマ君…
ノーマ…レヴっち、さっきはごめん。びっくりしてつい飛び出しちゃった
ノーマけど、やっぱり放っておけないから戻ってきたんだ。…ほら、相棒じゃない?あたしら
ノーマそしたら白き獅子とやり合ってるし…ホント、何やってんのさ…!
ノーマ…話は後で聞くからとにかく、あたしと一緒に帰ろ?
レイヴンノーマちゃん…
レイヴン…おっさんとしても、出来ればそうしたかったけどね。でも無理だわ
レイヴンもう決めちゃったから。…エリーゼちゃん達と行くって
ノーマ…え?
レイヴン……
scene2いつか晴れる空
ノーマ…な、何言ってんの、レヴっち!このヴェイグって人も、エーちゃんも咎人なんでしょ?
ヴェイグ
ノーマそりゃエーちゃんが咎人になったなんてあたしも信じたくないよ!
ノーマホントはエーちゃんと一緒に何でも屋やりたかったし、もっと話したかった!
ノーマ…信じたくない気持ちは痛いくらいわかる
ノーマでも…咎人になったって言ったのはレヴっち自身じゃんか…!
ノーマそれが事実なら、咎人と一緒に旅なんて…許される事じゃない!
ノーマ…ラザリス様に背く事になるんだよ?やるべき事を見失わないで
レイヴン
エリーゼノーマ…。レイヴンは…
ヴェイグ待て、エリーゼ…
エリーゼでも…!
ヴェイグ…今はあの男に任せよう
レイヴン…ノーマちゃんの言う通りだ
ノーマ…!
レイヴン早く帰ろう、おっさんが間違ってたよ
ノーマレヴっち!わかってくれたんだ──
レイヴンああ、勿論…
レイヴン…ごめんね、ノーマちゃん
ノーマえ…?
トスッ!
ノーマ──っ!
バタッ!
ティポノーマ君!?
エリーゼノーマ!
レイヴン大丈夫、気を失っただけだから
エリーゼレイヴン…
ヴェイグ…これでよかったのか?お前を信頼していたからこそさっきも助けに来たのだろう
レイヴン…出来ればこんな事はしたくなかったけどね。でも今は、こうするしかないでしょ
レイヴン白き獅子から逃げ切る事がまず目先の優先事項
エリーゼでも…
レイヴン大丈夫。俺達を追ってきたクローがしっかりノーマちゃんを保護してくれるはずよ
エリーゼ
レイヴン今のノーマちゃんを巻き込むわけにはいかないし、まずは記憶を取り戻してあげないと、でしょ?
レイヴンそのためにも、今ここでおっさん達がとっ捕まるわけにはいかないのよ
エリーゼそうですね…
レイヴンま、記憶を取り戻す方法を見つけるのが先だけど
エリーゼレイヴンの時と同じようにノーマに語りかければ…
レイヴンどうだろうねえ。話すら聞いてくれない人もいるだろうし
レイヴンおっさんやエリーゼちゃんは、運よく話している内に記憶が戻ったけど…
レイヴン誰でもそうなのかは、まだ何とも言えないねえ。他の理由があるかもしんない
ヴェイグ確かにな…
レイヴン今の世界がどうなってるかもよくわからないしね…
エリーゼはい…
ティポノーマ君…
レイヴン…でも、おっさんでも記憶を取り戻せたし、ノーマちゃんだってきっと記憶を取り戻せるはずよ
ヴェイグそうだな…。オレもレイヴンと同じ意見だ
ヴェイグところで、これからの動きについてだが…
ヴェイグまずは近隣の村でスレイ達の情報を探るのはどうだろう
ヴェイグもし、オレ達と同じように記憶を取り戻している者がいれば騒ぎになっているかもしれない
エリーゼ…そうですね。ただ、みんなを捜すのもそうですが…
エリーゼわたしはみんなの記憶を取り戻す、はっきりした方法も調べたいです
エリーゼノーマや…記憶を失っているかもしれないみんなのために…
レイヴンそれと…この世界の仕組みがどうなってるのかも、突き止めたいわね
レイヴンそうなると…ベルベットちゃんにもう一度接触するのがいいかも
ヴェイグベルベット…?それは誰だ?
レイヴン生誕祭で、天帝に襲いかかった娘、覚えてない?
レイヴンその後、地下牢に捕まっててさ。実は、その天帝直々の指示でわざと逃がしたのよ
ティポわざと…?
エリーゼ何故ですか…?
レイヴンさあね。おっさんはただ命令に従っただけだから
レイヴン何か目的はあったんだろうけど、今となっては、それはわかんないわね
レイヴン…けど、咎人だし、何より天帝に敵意むき出しって感じだったし、協力は出来ると思うわ
エリーゼでは、スレイ達も捜しつつ、そのベルベットという人も捜してみましょうか
ヴェイグオレも異存はない、味方は一人でも多く欲しい
ヴェイグ天帝を討とうとした者だ、仲間になってくれれば心強い
レイヴンよーし、そうと決まれば、もたもたしてらんないね
レイヴン今度はこっちが助けるってあいつに大口叩いちゃったし…
エリーゼあいつ…?
レイヴン…ああ、何でもない。こっちの話
ヴェイグ何はともあれ…方針は決まったな
エリーゼあ…空、見てください…!
レイヴンおっ…。雨が上がったねえ
エリーゼ空には晴れ間も覗いていますよ。ほら
レイヴンあら、本当~
ティポ何だか久しぶりな感じー
エリーゼ…レイヴンはあの時言いましたよね
エリーゼどんなに楽しい時も、いつか必ず終わる、って
レイヴンああ、お祭りの後の話?
エリーゼでも、それって逆も言えますよね。ずっと降り続く雨なんか、ないんです
エリーゼ必ず晴れる時は来ます。あの空みたいに
エリーゼ希望だって、持ってていいんです。そう、思いませんか?
レイヴン随分詩的な言い方じゃない、エリーゼちゃん。美少女が言うと様になるわねぇ
レイヴンでも…そうだな…
エリーゼどうしたんですか?
レイヴン…何でもないさ。それじゃ、行きましょ
ヴェイグ…ああ
エリーゼはい

NameDialogue
scene1ブランの花
コレットふんふふふ~ん
コレット今日は天気がいいからお花にしっかりお水をあげないとね
コレット綺麗な花壇になるといいなぁ
コレットふんふふ~ん♪
シェリアあ、いたいた。コレット、ここだったのね
コレットシェリア!見て見て。お花、もうすぐ咲きそうだよ
シェリア本当!綺麗な花壇になりそうね。ところでこれって、何ていう花?
コレットえっと…何だったかな…
シェリアコレット…せっかくなんだから、花の名前と花言葉ぐらい覚えておいた方がいいわよ?
シェリアそうすれば、花を育てるのがもっと楽しくなるから
コレットうん。今度調べておくね
コレットそれはそうと、私に何か用?捜してたみたいだったけど…
シェリアあ、そうだった!ねぇ、コレット。一緒に市都ファルカームに行かない?
コレットいいよ。ファルカームまで行くなんて、買い出しかな?
シェリアふふ…実は今、ラザリス様がファルカームに来ていらっしゃるんですって
コレットラザリス様が?わあ、すごいね!
シェリア視察で訪れているそうよ。という事はもしかすると、生誕祭の時よりも…
コレット近くでお目にかかれるかも!
シェリアそうね。目が合っちゃったりして
コレットまたお話を聞けるかな?
シェリアふふ、それはどうかしら。けど、お姿を見られるだけでも十分幸せな事だと思うわ
シェリアどうする?ファルカームへ行ってみる?
コレットうん、行きたい!
シェリアコレットったら、あの生誕祭以来、ますますラザリス様への憧れが強くなってるものね
コレットうん!シェリアもだよね?
シェリアええ、勿論よ
シェリアそれじゃ、早速準備をして出発しましょうか
コレット楽しみだね
scene2ブランの花
シェリアいいお天気。絶好のお出かけ日和ね
コレットうん。日差しも穏やかで、気持ちいいね
コレット…!シェリア、向こうを見て
シェリアあれは…
コレットわあ、綺麗。お花がこんなにいっぱい…!
シェリアこれはブランの花かしら。一面、白いじゅうたんみたいで絶景ね…
コレットブランの花っていうんだ。可愛い名前
コレットそだ、シェリア。お花の名前と花言葉を知るといいって言ってたよね?
コレットブランの花言葉は何かな?
シェリア確か…「大切なあなたを守る」よ
コレットわぁ、素敵だね
シェリアええ。だからこの花は、恋人に気持ちを伝えるために使われる事も多いの
シェリアそういうのって憧れるわよね。私もいつか好きな人が出来たら、ブランの花を贈ってもらいたいわ
コレット好きな人、かぁ…いつか素敵な人に出会えるといいね
シェリアふふ、そうね
コレットねぇ、シェリア。花を贈るのって、恋人じゃないといけないの?
シェリアそんな事ないわ。大切にしたいって想う相手なら誰に贈ってもいいのよ
コレットそっか
シェリアどう?花言葉を知れば、そのお花をもっと好きになるでしょ?
コレットうん。「大切なあなたを守る」…そんな気持ちが込められたお花だって思うと、もっと綺麗に見えてきたよ
コレットそだ!このお花をラザリス様に贈るのって、どうかな?
シェリアブランの花を…?
コレットラザリス様に私達の気持ちが伝わるんじゃないかな
コレットラザリス様は私達みんなのために平和を祈ってくださってるけど、私達も大切なラザリス様を守りたい…
コレット…そういう気持ちって、言葉では言い尽くせないけど、お花に込めれば伝えられるかも
シェリアそうね、いい考えだわ
シェリアお渡しする機会さえあれば、きっと喜んでいただけるんじゃないかしら
コレットだよね!それじゃ、たくさん摘んでいこ!
シェリアええ。二人で最高の花束を作りましょう
コレットたくさん摘めたね
シェリア綺麗な花束になったわ。ラザリス様への気持ちがこもった素敵な贈り物よ
コレットラザリス様、喜んでくれるといいなぁ
シェリアそうね。それじゃあ、そろそろファルカームへ向かいましょう
コレットあっ、待って、シェリア
シェリアコレット?どうかしたの?
コレットシェリアにもこれ…はい
シェリアブランの花輪…?これを私に?
コレットうん。シェリアのために作ったの。親友の証!
コレットラザリス様は勿論だけど、シェリアも、私にとって大切な人だから
シェリアありがとう、コレット。あなたの気持ち、すごく嬉しいわ
コレットえへへ…
シェリア私もお返しをしなくちゃね。親友の証だもの、同じ花輪がいいかしら…
ガサッ…
コレット…あれ?
シェリア何の音?
ガルルルル!
コレット大変、魔物が!
シェリア…追い払いましょう。この綺麗な花畑を荒らさせはしないわ…!
scene1天帝を訪ねて
コレット無事に着いたね。市都ファルカーム!
シェリアオルシャ村に比べて大きな街なのは確かなんだけど…
シェリアそれにしたって、こんなに人が多かったかしら?
ザワ…ザワ…
コレットほんとだね。たまにお買い物に来るけど、こんなの初めて見たよ
シェリアそっか…これみんな、ラザリス様の事を聞きつけて来たんだわ
コレット私達と同じだね。それで、ラザリス様は街のどこにいるのかな…?
シェリアええと…
街の女1ちょっと聞いた?ラザリス様、今日はすぐそこの広場にいらっしゃってるそうよ
街の女2本当かい?いつも通りかかる広場にラザリス様がいらっしゃるなんて、ありがたいったらないねぇ
シェリア…聞くまでもなかったわね
コレットラザリス様は広場だね。早く行こ!
シェリア広場ってまだ先よね…。既にこんなに混んでるなんて
ザワ…ザワ…
コレットすごい人だかり…。通れるかな…
ドンッ
コレットわぁっ!?
シェリアコレット!?
街の男おっと、ごめんよ。怪我はないか、お嬢ちゃん
コレットだいじょぶです。こっちこそごめんなさい
街の男いや、無事なら何より。何せこの人だかりだからな…
街の男お嬢ちゃん達、危ないから気を付けなよ
コレットはい。ありがとうございます
シェリア確かに、この先に進むにはそれなりの覚悟がいりそうね…
シェリアでも、ここまで来て諦められないわ。行きましょう、コレット。お花、潰されないように気を付けてね
コレットうん。…あれ?
シェリアどうかしたの?
コレットな、ない…。お花がないよ。どこかで落としちゃったのかな…
シェリアえぇっ!?大変じゃない!
シェリア仕方ないわね…来た道を戻ってみましょう
シェリアお花、お花…見つからないわね…
コレットひょっとして、さっきの人とぶつかった時に落としちゃったのかなぁ…
シェリアえぇ…けど、あの辺りだとしたらとても探せる状況じゃ…
コレットどしよ…
???あ、あの…ちょっといいかな
コレットはい。…あっ!
シェリアその手に持っているのって…
???ごめん、いきなり話しかけたりして
???この花束なんだけど、君達の落とし物、だよね?
コレットあっ、それ、探してたの。拾ってくれたんだね、ありがとう!
???渡せてよかった。すぐに声をかけようと思ったんだけど、人がすごくて…
シェリアありがとう。本当に助かったわ
???どういたしまして
コレットよかった。これでラザリス様にちゃんと渡せるね
シェリアその前に、無事に広場までたどり着ければ…だけどね
???あの…二人共、広場に行きたいの?
???それだったら、いい裏道があるよ。よかったら案内しようか?
コレットそんな道があるんだ
???うん。街の人でもあまり知らないとっておきの抜け道なんだ
???そこを通れば、人だかりを避けてすぐ広場に行けると思う
シェリアえっと…気持ちはとても嬉しいけど、どうして私達にそこまで?
???ラザリス様にお花を贈りたいんだよね。それを手伝いたいと思って
コレットえへへ、ありがとう!
シェリアそういう事なら…お言葉に甘えてもいいかしら?
???勿論だよ
ルカあ、まだ自己紹介してなかったね。僕はルカ・ミルダ
コレットルカさんだね。よろしく。私はコレット・ブルーネルです
ルカさん、なんてつけなくていいよ。ルカって呼んで
シェリア私はシェリア・バーンズ。私達も、さんづけじゃなくていいからね
ルカわかった。コレットにシェリアだね。よろしく
ルカそれじゃ、早速行こう。こっちだよ、ついて来て
コレットうん
scene2天帝を訪ねて
ルカ──なるほど。コレットとシェリアは、オルシャ村から来たんだね
コレットうん。ラザリス様が、ファルカームにいらっしゃるって聞いて
シェリア生誕祭にも行ったんだけど、あの時は遠くからしか見られなかったから
ルカ気持ちはわかるよ。ラザリス様に間近でお会い出来る機会なんて、滅多にないしね
ルカ僕もこの街にラザリス様がいらっしゃったって聞いた時は、夢かと思ったよ
コレットいいなぁ。いつかオルシャ村にも来てくださるかな?
シェリアどうかしら。ファルカームと違って、小さな街だから…
ルカきっとオルシャ村にも来てくれるよ
ルカラザリス様はお忙しい中、時間を作っては、こうやって各地を回ってるらしいし
ルカ民を想ってそこまでしてくださる素晴らしいお方なんだ。街の大きさなんて関係ないと思うよ
シェリアそっか…そうかもしれないわね
ザワ…ザワザワ…
コレットあ…また大勢の人の話し声が
ルカこの先が広場だからね。もう少しだよ
シェリアいよいよね…
コレットドキドキしてきた…
ルカここを曲がれば広場だよ
コレットこの先に、ラザリス様が…!
シェリアコレット、そんなに急いだら転ぶわよ。気を付けて
シェリア全く…
ルカよっぽど楽しみだったんだね。気持ちはわかるよ。僕達も行こう
scene1静かなる慟哭
ラザリス
民衆ラザリス様!ラザリス様!
ラザリス
ラザリス今回も成果はなし。一体どこに…
警備兵ラザリス様。そろそろシャングレイスへお戻りになられますか?
ラザリスそうしようか。今頃は逃げた鼠を追いかけるのに大わらわだろうけどね
警備兵逃げた鼠…?
ラザリス
ラザリス…ん?
コレットわわわわ…!
ずってーーん!
ラザリス…?
警備兵何者だ!?
コレットいたた…
ラザリス…誰?
コレットえっ…あっ…
コレットわあっ!ラ、ラザリス様…!
警備兵ラザリス様、お下がりください。この前の生誕祭の件もあります
シェリアコレット!大丈夫!?
ルカごめんなさい!僕達、怪しい者じゃありません
ルカ裏道を通ってきたら、たまたまここに出てしまって…。本当にすみません!
警備兵三人共、動くな。妙な動きをしたら、容赦出来んぞ
シェリアそんな!私達、本当に怪しい者じゃ…
ルカシェリア。ここは大人しく従った方が──
ラザリス
コレットあ…ラ、ラザリス様…
警備兵ラザリス様、危険です。近づかれては…
ラザリス花…
コレットえ…?
ラザリス落とし物だよ
コレットあ!ありがとうございま──
コレット…!何…これ…
ラザリス…?
コレットこの感じ…
コレット…これってもしかして、ラザリス様の…「感情」──…?
ラザリス……
ラザリス…君、名前は…?
コレットえ?あ…えと…その、私…コレットです!コレット・ブルーネルって言います!
ラザリス…コレット
ラザリス面白いね、君。…近い内にまた会える事を祈ってるよ
コレット…え?
ラザリスさ、帰るよ
警備兵ラ、ラザリス様!お待ちください!
ルカみんな、行っちゃったみたい
シェリア私達、見逃してもらえたのかしら
ルカ多分ね…
コレット
シェリアコレット、大丈夫?怪我はない?
コレットあ、うん。大丈夫…
シェリアよかったわ
シェリアそれにしても、すごいじゃない!ラザリス様にお声をかけていただけるなんて
ルカ一時はどうなる事かと思ったよ。けど、ラザリス様とお話出来たのは嬉しい誤算だったね
ルカねぇ、コレット。ラザリス様とどんなお話したの?僕、よく聞こえなかったんだ
シェリアいいなぁ。私もお話したかったわ。コレット、感想を教えてよ
コレット…あ、うん
ルカあれ?コレット、その花束ラザリス様に渡せなかったんだ
シェリアきっと緊張でそれどころじゃなかったのよ。でしょ?
コレット
シェリア…?コレット、聞いてる?
コレット…!あ、えと…ごめんシェリア。何…?
シェリア…コレット…?
scene2静かなる慟哭
ルカ──じゃあこの部屋を使ってね
シェリア本当に泊めてもらってもいいの?
ルカうん。もう遅いから。夜道を歩いて帰るのは、危ないしね
ルカ僕は自分の部屋にいるから、何か必要な物とかあれば、いつでも気軽に声をかけてね
シェリアありがとう。助かるわ
ルカそれじゃ、おやすみなさい。ゆっくり休んで
バタン
シェリア大きなお屋敷ね…。部屋もベッドも余ってるなんて…
シェリアお蔭で助かったわ。昼間の事といい、ルカにはお世話になりっぱなしね
シェリア何かお礼しなくちゃ。ねぇ、コレット?
コレット…あ、うん。そだね
シェリアコレット…?
コレット
シェリアどうしたの?心ここにあらずって感じだけど…
コレットえ…?そ、そかな?
シェリアええ。じっと花束を見つめたまま、ずっと考え込んでたわよ
コレットあ…
シェリアラザリス様とお話してからずっとその調子じゃない
シェリアもしかして花束を渡せなかった事が、心残りなの?
シェリア今日は駄目だったけど、いつかまた、お渡し出来る機会が来るわよ
シェリアだから…
コレットえと…そうじゃないの
コレット私がずっと考えてたのは、花束を渡せなかった事じゃなくて…その…
シェリア何か心配事でもあるの?よかったら話してみて
コレットえとね…ラザリス様から花束を受け取った時…
コレット突然、不思議な感じがして…
シェリア不思議な…?
コレット上手く言えないんだけど…ラザリス様の感情が私の心に入って来るみたいな…
コレット不安で…悔しくて悲しくて…寂しくて…
コレット冷たくて苦しい…けど焦がれるように熱い…
コレット心が辛くなるような気持ちが全部、渦になって混ざってる…そんな感情だったの…
シェリアそんな…ラザリス様が…?
コレットあのラザリス様が、あんな苦しくて辛い想いを抱えてる…
コレットそう思ったら、私…
シェリアコレット…
コレットねぇ、シェリア。もしかしたら、ラザリス様、何かお困りなのかな…?
コレット私達に見せないような悩みがあるのかもしれないって私、不安で…
コレットもしラザリス様に、誰も相談する相手がいないんだったら…
コレット私が助けになれればいいのに、とか…そんな風にも思ったりして
シェリアなるほどね…
コレットもし私の思い過ごしだったら、それでいいの
コレットけど、そうじゃないなら…
コレット…ラザリス様のために私に出来る事って何かあるかな…?
シェリアうーん…難しいわね…。ただの一般人でしかない私達に出来る事なんて…
シェリア…そうだわ。宮廷神子になるのはどうかしら
コレット宮廷…神子?
シェリアラザリス様のお側にお仕えして、身の回りのお世話をするお役目よ
シェリア時にはラザリス様の名代として街を巡回し、お言葉を伝えたりもするらしいわ
シェリアラザリス様とお近づきにもなれるはず
コレットその宮廷神子って、私もなれるの?
シェリア試験に合格すれば、ね
シェリア聞く話によると、宮廷神子になるための試験というものがあるらしいわ
シェリアそれを受けるためにシャングレイスには毎日のように志願者が訪れてるとか…
シェリアただ、公に募集しているわけじゃないみたいだから、突然行って受けられるかはわからないけど…
コレット宮廷神子の試験…
コレット…ありがとう、シェリア。私、シャングレイスに行ってみるよ
コレット宮廷神子になって…ラザリス様の支えになりたい
シェリア…そう。なら決まりね。私も一緒に行くわ、同じ志願者として
コレットシェリアも?
シェリアいけない?ラザリス様を支えたい気持ちは、私だって同じよ
シェリアもし一緒に試験を受ける事になったら、私達、ライバルになるわね
コレットシェリアがライバルじゃ、勝てる気がしないよ…
シェリアふふ…ようやく表情も晴れたわね
シェリアじゃあ、早速だけど明日このままシャングレイスに向かいましょうか。善は急げって言うしね
コレットうん!
コレットラザリス様をお支えする宮廷神子か…なれるといいなぁ
シェリアさ、明日に備えて今日は寝ましょう。おやすみなさい
コレットおやすみ、シェリア
scene1白き獅子の牙
コレット無事、シャングレイスに着いたね
シェリア相変わらず大きな街ね。あのファルカームが小さく思えるぐらい…
コレットでも、ファルカームもいい街だったよね。ルカともお友達になれたし
シェリア彼には本当にお世話になったわね。宮廷神子の事も応援してるって言ってくれたし
コレットルカにいい報告が出来るように、頑張らないとね
コレット…でも、どこに行けばいいのかな?
シェリアうーん、ひとまず宮殿に行けば詳しい事がわかるんじゃないかしら
コレットそれもそだね。それじゃ、宮殿に行ってみよっか
コレットこうして歩いてると、何だか生誕祭の事を思い出すね
コレットまた奇術団とか来てないかな?
シェリアわからないけど、ああいうのはお祭りの時だけじゃないかしら
コレットジュードやカイルも元気にしてるといいなぁ
シェリアそんなに昔の事でもないのに、何だか懐かしいわ。忘れられない思い出になったわね
シェリアそういえば…ファルカームで誰かが噂してるのを聞いたんだけど…
シェリア生誕祭でラザリス様を襲った女の人が脱獄したそうよ。今、白き獅子が捜してるんだって
コレットそなんだ。それでかな?何だか街が落ち着かない空気だなって思ってたんだけど…
シェリア確かにそうね…。けど脱獄って何日も前の事らしいし、街の外に逃げたって聞いたけど…
街の男1おい、聞いたか。新しい咎人が出現したって話
街の男2ああ。例の脱獄した女もまだ捕まらないんだろ?白き獅子は大忙しだとよ
コレット新しい咎人…
シェリアなるほど…街が落ち着かない空気なのはそういう理由だったのね
シェリアあの女の人の脱獄に、新しい咎人…帝都では事件が続いてるんだわ…
コレット何だか怖いね…
シェリア白き獅子が動いてるならすぐに解決するとは思うけど…用心するに越した事はないわね
シェリアコレット、いい?知らない人に声かけられても、絶対について行っちゃ駄目よ
コレットうん。だいじょぶだよ
シェリア早く宮殿に行きましょう
scene2白き獅子の牙
シェリア宮殿の前まで来てみたけど…どこに行けばいいのかしら?
シェリアあ。あそこにいるの宮殿の衛兵よね。ここで待ってて。私、ちょっと聞いて来るから
コレットうん。わかった
コレットシェリアは頼りになるなぁ。私も、宮廷神子を目指すならしっかりしなくちゃ…
???ん?あれ、お前…
コレットえ、私ですか?
シェリアただいま…って、あら?コレット?
コレットシェリアー!こっちこっちー!
シェリアあっ…!コレット…!
コレットシェリア!宮廷神子の試験の場所、教えてもらったよ
シェリアコレット。知らない人について行っちゃ駄目って言ったばかりじゃない
コレットだいじょぶだよ、よく知ってる人だから
ファング用心深いのはいいけどいきなり怪しい人みたいに言わないでくれよな
シェリアわっ…!も、もしかして、あなたは…ファング様!?
シェリア知ってる人って……嘘、まさか…
シェリア申し遅れました!私、シェリア・バーンズって言います
シェリアまさかこんな形でファング様とお話出来るなんて…夢みたいです
ファングそんな風に言ってもらえて俺も嬉しいよ
シェリア親友のコレットがいつもお世話になっているようでありがとうございます
コレット…?
シェリア本当ならすぐにでも挨拶すべきところだったのに、この子ったら何も言ってくれなくて…
シェリアでも、コレットがファング様のような方とお知り合いだったなんて、親友としてもすごく鼻が高いです…!
コレットあれ…?何か…
シェリアファング様、これからもコレットの事末永くよろしくお願い──
コレットシェリア…あの…何か誤解してる、かも…?
シェリア…?誤解って…
コレットえと、その…ファング様は「知ってる人」だけど「知り合い」とはちょっと違って…
シェリアへ…?
シェリア──まさか「ファング様と知り合い」なんじゃなくて「コレットが一方的に知ってる」だけだったなんて…
コレットえへへ…ごめんね。でも私、ファング様の事は結構いろいろ知ってるんだよ
コレット白き獅子の幹部をしてるすごい人って事とか…他にも、剣を二本使って戦う事とか!
ファングおお、よく知ってるな!
シェリアそ、そんなのエンテレスティア中の人が知ってるわよ!
シェリアはあ…私の早とちりだったわけ…?恥ずかしい…
シェリアファング様。重ね重ね、失礼いたしました
ファングまぁ気にするなって。そんな事もあるある
ファングところで、シェリアも宮廷神子の志願者なのか?
ファング実は、コレットが宮廷神子になるって言ってたのが聞こえてさ
ファングそれだったら大聖堂で聞けばいいって教えてたところなんだ
シェリアそうだったんですか。ありがとうございます
ファングおーい、そこの衛兵!悪いけど、この二人を、大聖堂へ案内してやってくれないか?
衛兵はっ。かしこまりました
コレットそんな、みなさんお仕事中なのに…
ファング心配するなって。みんなの助けになるってのも、俺達の大事な役目だからさ
ファング大聖堂に神官がいるから、そこで詳しい話を聞くといいよ
コレットはい。ありがとうございます!
ファングこれくらいお安い御用だ。本当は俺が案内してやりたいんだけどこれから出なくちゃならなくてさ
シェリアあ、もしかして噂の咎人を捜しに…
ファング悪い、詳しい事は内緒なんだ
ファングそれよりさ、もし二人が宮廷神子になれたらラザリス様に仕えるんだよな
ファングだったら、またどっかで会えるかもな
コレットは、はい。そうですね
ファングそうなるように祈ってるぜ。宮廷神子の試験頑張れよ、コレット、シェリア
コレットはい!
シェリアありがとうございます!
シェリア白き獅子の幹部って、もっと厳しい人かと思ってたけど、案外気さくな人だったわね
コレットうん。いい人だったね
衛兵それでは大聖堂までご案内します
コレットよろしくお願いします
scene3白き獅子の牙
コレットここが大聖堂…
シェリアわざわざ連れて来ていただいて、ありがとうございました
衛兵では、私はこれで
コレットあの…ファング様にも、よろしくお伝えください
衛兵わかりました
シェリアさて…ファング様は神官がいるって言ってたけど…
コレットあそこに誰かいるよ!行ってみよ!
コレットあの、すみません
???はい…?
???
???
コレットあ…えと…
シェリア何だか睨まれてるわね…?
???まあ、またお客様ですか
???ひょっとして、あなた方も宮廷神子に志願されるのですか?
コレットはい、そうです
???また増えた…
???しかも今度は二人まとめてだなんて…
ライラ私は当大聖堂の神官を務める、ライラと申します
ライラちょうど今から、こちらにいるマルタさんとアリエッタさんに試験の説明をするところでした
コレット今からでも参加出来ますか?
ライラええ、大歓迎ですわ
マルタそんなぁ、ライバルが二人も増えちゃうなんて…
アリエッタ…何人増えても、同じ
ライラまぁまぁ、そう構えずに…。何はともあれ、みなさん自己紹介をしませんか?
コレットあ、私、コレット・ブルーネルと言います。よろしくお願いします
シェリアシェリア・バーンズです。よろしくお願いします
マルタ…マルタ・ルアルディよ
アリエッタ…アリエッタ…です
コレットマルタとアリエッタだね。一緒に頑張ろうね
マルタライバルだっていうのに呑気ね。私、負けないから
ライラさて…自己紹介も済んだようですし早速ですが、試験の説明をしますわね
ライラここシャングレイスの北西、湖のほとりにある洞窟…その奥に、小さな祠があります
ライラみなさんにはその祠に祀られているクリスタルを持ち帰っていただきたいのです
マルタそれだけですか?
ライラはい
コレット思ったより簡単…かな?
シェリアどうかしら…
アリエッタ
ライラ…ただし。クリスタルは、一つしかありません
コレットえ…
マルタじゃあ、合格出来るのは一人だけって事ですか?
ライラはい。合格させてあげられるのは、お一人だけになります
コレット私達の中から、一人だけ…
ライラこの試験では、特別な能力は必要ありません
ライラ必要なのは、ラザリス様を想う強い気持ちだけですわ
ライラとは言え…洞窟の中は危険もあります
ライラ元は天然の洞窟なので魔物もいますし、多くの難関が待ち受けている事でしょう
ライラ下手をすれば大怪我をしたり、最悪、命の危険に陥る可能性もないとは言えません
コレット…!
ライラ宮廷神子に志願するくらいですから、みなさん、ラザリス様を強くお慕いしているのでしょう
ライラですが、今一度よく考えてください。命を懸けてまで試練に臨まれる覚悟はおありでしょうか?
ライラそれをご自分に問いかけた上で、試験を受けるかどうかを決めていただきたいのです
コレット
ライラマルタさん、アリエッタさん、コレットさん、シェリアさん
ライラ宮廷神子になるための試験を、受けられますか?
マルタ…私は受けるわ!
マルタラザリス様を想う気持ちは、誰にも負けないんだから…!
アリエッタアリエッタも…参加します
アリエッタあの子を見返すには、宮廷神子になるのが一番って言われたから…
アリエッタだから…アリエッタ、宮廷神子になる
シェリア私も受けます
シェリア覚悟…って言われると、不安も勿論ありますけど…
シェリアでもラザリス様にお仕え出来るって考えたら、そんな不安も吹き飛んでしまうから
シェリアこの気持ち、貫いて見せます!
ライラコレットさんはいかがでしょう?
コレットえと…
コレット私、ラザリス様とお会いした時、…思ったんです
コレットこの人の力になりたい、支えになりたいって…
マルタ……
コレットだから…試験は勿論受けます。私、宮廷神子になりたいです
ライラわかりました。では全員参加、ですね
ライラみなさん、事情は違えど、強い意気込みをお持ちですのね。健闘をお祈りいたしますわ
ライラそれでは、試験開始です。お気を付けて行ってらっしゃいませ
マルタじゃあ、行ってきます
アリエッタアリエッタが一番!…です!
シェリアさ、私達も急ぎましょう
コレットあ、待って…
コレットあの、ライラ様。この花束を、預かってもらっていいでしょうか?
ライラまあ、綺麗ですね
コレットラザリス様にお渡ししたくて。だから試験が終わるまでここに置かせてください
ライラ勿論です。責任を持ってお預かりいたしますわ
コレットよろしくお願いします
マルタ…来たわね
コレットあ、待っててくれたんだ
マルタ待ってたんじゃなくて、確認したい事があったの。あなた、ラザリス様にお会いしたの?
コレットあ、はい。ファルカームで
マルタ何だ、同じじゃない。私もファルカームでラザリス様にお会いしたのよ
マルタしかも、目が合ったんだから!
マルタあの瞬間、わかったの。私は、ラザリス様のためにお仕えする運命にあるんだって…
シェリアあら。コレットはラザリス様と直接お話もしたのよ
マルタ何ですって!?本当なの!?
コレットう、うん…
マルタま、まぁ、いいわ。私、アリエッタと組む事にしたから
アリエッタ組むなんて言ってない…。力を貸すって言うから、一緒にいるだけ…
マルタそれが組むって事なの
マルタアリエッタは、ヴァン宰相と知り合いらしいのよ
マルタラザリス様と会った私と合わせればあなた達なんか目じゃないわ
シェリアそれを言ったら、私だってラザリス様にお会いしてるわよ?
マルタえっ!?
マルタうぅ…これで勝ったと思わないでよ。試験では負けないんだからね!
マルタ行くわよ、アリエッタ!
アリエッタう、うん…
コレットマルタ、気合十分だったね。私達も頑張ろうね、シェリア
シェリア……はあ
scene1クリスタルを求めて
コレットここが試験の洞窟?入口には何もないけど…
シェリアそうね。試験っていうからには、もっととんでもない洞窟を想像してたわ
マルタ楽そうでいいじゃない。それじゃ、お先に
コレットあ、待って。せっかくだから、みんなで一緒に行かない?
コレットその方が、何かあった時も心強いよ
マルタ何言ってるの。クリスタルは一つしかないんだから、早い者勝ちよ!
シェリア…まあ、それもそうよね
マルタじゃあ行くわよ、アリエッタ!
アリエッタ…早い者勝ちの競争なのにどうしてアリエッタだけ一緒に行くの?
マルタだから言ったでしょ、二人で組むって
マルタコレットとシェリアは組んでるのよ。こっちも協力しないと不利になっちゃうじゃない
アリエッタ協力とかいらないもん。クリスタルはアリエッタが見つける
マルタあっ、ま、待ちなさいよぉー!
シェリア私達も急いでクリスタルを探しましょう
コレットそだね。この辺りにはなさそうだし、とにかく奥に進もう
カチッ
コレット…あ
シェリア何、今のカチッて音
ズドドドドッ!
コレットわっ、何、何…!?
シェリアコレット、危ない!足下が──
コレットわぁっ…!
どしーーん!
シェリアコレット!?
マルタ今の音、何!?
アリエッタこれは…落とし穴…?結構、深い…です
コレットいたたた…
シェリアコレット、大丈夫!?
コレットあ、うん。ちょっと尻餅をついただけ
マルタ落とし穴か…。私達も気を付けないと
マルタそれじゃあ、悪いけどお先にー!アリエッタも早く!
シェリアもう。手伝ってくれたっていいのに
シェリアコレット、私の手、掴める?引き上げてあげるわ
コレットあ、うん、ありがと…!よいしょ…
シェリアん…っと
シェリアふう…何とか上がって来られたわね。怪我はない?
コレットうん、だいじょぶ。ごめんね、シェリア。迷惑かけちゃって
シェリアコレットが無事ならいいわ。それじゃ、私達も行きましょ
コレットいきなり出遅れちゃったね…
シェリア別に大した事ないわよ。きっとすぐ追いつくわ
シェリア慌てる事なく、私達は私達のペースでやりましょう
コレットうん
scene2クリスタルを求めて
シェリアこの洞窟、随分と広いのね
コレット…なのに、クリスタルは一つしかないんだよね。見つけられるかなあ…
シェリア祠に祀られてるって話だから見ればすぐにわかるわよ
コレットそだね。じゃあいろんな場所を探してみよ
マルタあっ…
コレット…あ
コレットマルタ、アリエッタ。そっちの方は、何もなかった?
アリエッタなかった…です
マルタもう、アリエッタ!ライバルに情報を漏らしちゃ駄目じゃない
シェリア別にいいじゃない。情報交換ぐらい
コレット向こうも何もなかったよ
アリエッタじゃあ、次はあっち…
マルタあっ、アリエッタ!私より先に行かな──
カチッ
マルタカチッ?
コレット
ズドドドドッ!
マルタきゃあああっ!?
どしーーん!
コレットマルタ!平気!?
マルタいたた…また落とし穴があるなんて…
マルタアリエッタ、お願い。引き上げて──…
シェリアアリエッタならもう行っちゃったわよ
マルタまさか気付かなかったの!?嘘でしょ、戻って来てよー!
コレットマルタ、すぐに引き上げるね
マルタえっ、どうして…!?
コレットどうしてって…だって、出られないと困るでしょ?
コレットだから、はい。手、伸ばして
マルタ…コレット。でも…
シェリアほら、マルタ。意地張ってないで、早く掴まって
マルタううう…
コレットよいしょ…
シェリアん、しょ…
マルタ…ありがと
マルタけど、借りがあっても試験は別なんだからね
マルタ私を助けた事、後悔しても知らないから
コレット後悔なんてしないよ。むしろ助けなかったら、その方が後悔しちゃうと思うな
マルタ
シェリアそれにしても、こんな仕掛けがいくつもあるのね。試験のために作られた物かしら…
コレットだったら、この先も気を付けないと──
???きゃあっ!?
シェリア今の声…
マルタアリエッタよ!
コレット行こう!
アリエッタ来ないで…
グオオオオッ!
アリエッタどうして…このコ達、言葉、通じない…
マルタアリエッタ!大丈夫!?
アリエッタ駄目…このコ達、普通の魔物じゃない…
マルタどういう事…?確かに変わった魔物だけど…
シェリアこれもひょっとして、試験用の魔物かしら…
コレットアリエッタ、今助けるからね!
scene3クリスタルを求めて
コレットふう…何とか倒せたね
シェリアええ…
マルタアリエッタ、大丈夫!?
アリエッタうん…
コレットあ、アリエッタ!膝、怪我してるよ
アリエッタこのぐらい平気…
シェリア駄目よ。すぐ治療するから、じっとしてて
パアア…
シェリアはい、これでいいわ
アリエッタ痛くない…
シェリアよかった。治ったみたいね
マルタ
コレットマルタ、どうしたの?
マルタその…コレット、シェリア…二人共、今までごめんなさい
マルタ二人は私やアリエッタを心配して手を貸してくれるのに、私は突っかかってばかりで…
マルタ私、自分が宮廷神子になるんだって、その事ばっかり考えてた…
マルタけど二人を見てたら、急にそれが恥ずかしくなって…。本当にごめんなさい…
アリエッタそれ、アリエッタも…同じかも…
コレットマルタ、アリエッタ…
コレット…いいんだよ。だって、それって二人が本気で宮廷神子になりたいから、だよね?
コレットその気持ちは私も同じだし、謝るような事じゃないと思うの
コレットだから気にしてないよ
マルタコレット…ありがとう…
アリエッタ…コレット、優しい
マルタ私…あなた達が困った時、今度はちゃんと助けるわ
コレットありがと。じゃあその時はよろしくね
シェリアま、そんな事にならないのが一番いいんだけど…
シェリア一筋縄では行かなさそうよね。他にも仕掛けがあるかもしれないし、見慣れない魔物もいたし…
マルタそうだ、アリエッタ。さっき言ってた、魔物が普通じゃないってどういう事?
アリエッタ…アリエッタ、魔物とお話が出来るの
アリエッタだけど…あのコ達とは話せなかった…
マルタ魔物と仲良くなれるって事?すごいわね…
コレットでも、どうしてここの魔物にはお話通じなかったのかな?
アリエッタわからない…こんな事、初めて
マルタあの仕掛けといい、変な魔物といい…さすがは宮廷神子の試験ね。何が起こるかわからないわ
コレットそだね。でも、みんなで協力して進めばだいじょぶだよ
アリエッタ異議なし…です
マルタわかったわ
マルタでも、あくまで試験は試験。悪いけどそこは遠慮しないからね
コレットうん、わかってるよ。試験に合格するため、みんなで頑張ろ
マルタ本当にわかってるのかしら…?
シェリアふふ…それじゃ、行きましょう
scene1最後の審判
コレット──そっか。アリエッタはヴァン宰相から宮廷神子になる事を勧められたんだ
アリエッタうん…いつもアリエッタの事を馬鹿にするあの子を見返したくて…
シェリアそういえば大聖堂でもそんな事、言ってたわね
アリエッタラザリス様にお仕えしたら、あの子ももう根暗ッタなんて言えなくなるはず…
アリエッタそのためにアリエッタ、絶対に宮廷神子になりたい…
コレットそっか、じゃあ頑張らないとね
マルタちょっと…呑気に応援してる場合じゃないでしょ
マルタ試験に合格出来るのは一人だけ。アリエッタが宮廷神子になるって事はコレットはなれないって事なのよ?
コレットそれはそだけど…でもアリエッタを応援したい気持ちはほんとだよ
コレット勿論、マルタやシェリアも同じように応援してる
コレットみんながそれぞれ精一杯力を出せたら、誰が選ばれても私は嬉しいよ
コレットあっ、私も一生懸命頑張るからね
マルタコレット…
コレットみんな一緒に宮廷神子になれたら…ほんとはそれが一番いいのにねぇ
シェリアそれが出来ないから試験をしてるんじゃない…ほんと昔から前向きというか、純粋というか…
アリエッタ…コレットはいい人
マルタ…私だって、他の誰が宮廷神子になっても、それはそれで嬉しいと思うわよ
マルタけど宮廷神子になるのは私だから、そんな事はないってだけ
マルタ私、ラザリス様と目が合った時に感じた運命を信じてるから…!
シェリアはあ…マルタも、コレットとは違う意味ですごく前向きで純粋ね…
アリエッタあ…
コレットアリエッタ、何か見つけたの?
アリエッタ…向こうに何かある
コレットきらきら光ってるね
マルタあれって、まさか…!
シェリア行ってみましょう
シェリアあれは…祠かしら?中で輝いてるのは…
アリエッタ…クリスタル?
シェリアそうだわ、きっと!
コレットあれがクリスタル…
マルタここからは、正々堂々と勝負よ!
シェリアマルタ!
アリエッタ勝つのはアリエッタ…!
コレット待って…!
コレットわっとと…!
シェリアコレット!?足場が悪いから、気を付けて
マルタやった!一番乗り…!
マルタクリスタルを手に入れたわ!
コレットという事は…
コレット試験はマルタが合格?
アリエッタ…これで終わり?
シェリア取られちゃったわね…
マルタ何だか悪いわね。でも、これも試験だから──
ヴオン!
マルタ…な、何?
コレットクリスタルが光ってる…?
マルタよく見たらこのクリスタル、何か刻まれてるわ…
マルタこれは…魔法陣?
ズシン…!
マルタわっ、今度は何よ!?
コレットこれは…何かの足音!?
アリエッタマルタ、何したの…!?
マルタ私は何もしてないわよ!
ズシン…ズシン…!
シェリアまた…!これも試験の仕掛けなのかしら
アリエッタここから出た方がいい。この揺れ、洞窟崩れるかも…です
コレットそだね。行こ、マルタ
マルタええ。せっかくクリスタルを手に入れたんだもの。絶対、無事に帰って──
マルタ…な、あ、あれ…!
コレット…?どうしたの、マルタ?
マルタな、何なのあいつ…!
コレットえ…?
グオオオオオッ!
マルタま、魔物!?
コレットすっごい大きい…!
グアアアアッ!
マルタきゃああっ!?
コレット壁が崩れるよ!
シェリアみんな、大丈夫!?
マルタな、何とか…
グアアアアッ!
コレットわっ、また…!
シェリアとにかく逃げましょ!
コレットね、ねぇ。こっちに来るよ!
マルタそうだ、アリエッタ!あなた魔物と話せるんでしょ!?仲良くしてって頼んでよ!
アリエッタ…無理みたい。さっきの変な魔物と一緒。言葉が通じない…
マルタそんな…
スゥ──…
コレット…?何か吸い込んでる?
マルタ違う、あれは──
ゴオオッ!
シェリアブレスよ!みんな、避けて!
ピキーーン!
ピキピキピキ!!
シェリア嘘…吐いたブレスが結晶に…!
マルタ道が…!これじゃ通れないじゃない!
スゥ──…
コレットまたブレスが…!
シェリアそこの岩陰よ!隠れて!
ゴオオッ!
コレットはあ…はあ…何とか助かったけど…
マルタ何なのよ、もう…!
アリエッタ…こっち来た
グルル…
マルタ私達を捜してるみたい…
コレットどうしよう…?
シェリア来た道は結晶で通れなくなっちゃったから他の道を探すしかないんだけど…
マルタあんなのがウロウロしてたらそれどころじゃないわよ
アリエッタ…倒す?
マルタ無理言わないでよ。一撃で岩の壁を壊すような奴よ?それに見たでしょ、あのブレス!
コレットでも、ずっと隠れてるわけにもいかないよね
シェリアええ。この岩が砕かれたら、隠れるところさえなくなってしまうわ
コレットうーん、どうしよ…
マルタはぁ…せっかくクリスタルを取ったっていうのに、こんなの無理じゃない…
コレットクリスタル…!そっか、クリスタルだよ!
マルタえ、何…?
コレットあの魔物、マルタがクリスタルを取ったら現れたよね
マルタそういう仕掛けなんでしょ。宮廷神子になるための最後の試練って事じゃないの?
コレットじゃあクリスタルを元に戻せば、魔物も消えたりしないかな?
シェリア確かに、賭けてみる価値はありそうね
マルタでも…祠へ戻るには、あいつをすり抜けていかないといけないわ
マルタそんなの、現実的じゃない。命がいくつあっても足りないわよ…!
コレット
コレット…危険だけど…これしかないよね…
コレット…ねぇ、マルタ、そのクリスタル、ちょっと貸してもらっていい?私に考えがあるの
マルタえ…?で、でもこのクリスタルは合格の条件──
マルタ…ううん、今はそんな事言ってる場合じゃないわね。はい、これ
コレットありがと
マルタでも、どうするつもり?
コレット私が戻して来るよ
マルタえっ…
コレットみんなはその間に、上手く脱出してね
シェリアだ、駄目よ!危険すぎるわ!
アリエッタ…あのブレスから身を守るのは、絶対無理…と思う
コレットそだね。ちょっと怖いけど…
コレット私、みんなを守りたいんだ。そう考えたら、不思議なんだけどすごく勇気が湧いてきて…
コレットみんなのためなら、何でも出来るって気がするの。だから、だいじょぶだよ
コレットみんなの事は、必ず私が守るから
シェリアコレット!
シェリアあの子…私達のために…
マルタ…あれ?あの子、何か落として行ったわ
マルタ何これ…?花輪…?
シェリア…!これ…あの時の…
シェリア
コレットシェリアのために作ったの。親友の証!
コレットシェリアも、私にとって大切な人だから
シェリアコレット…
シェリア…よし!
シェリアコレットだけを危険な目に遭わせるわけにいかないわ。私も行く!
マルタシェリア!
アリエッタどうしよう…
マルタ…アリエッタはここに隠れてて
マルタ魔物がコレットを追っていったのは多分、クリスタルを持ってるから。そういう試験だから…
マルタだったら、私だけ逃げるわけにいかない!今度は私が助ける番!
アリエッタア…アリエッタも行く。あの時の恩返し、します!
scene2最後の審判
コレットはあ…はあ…
コレット何だろう…さっきからずっと身体の内側が熱いような──…
グオオッ!
コレットもう近くまで来てる…!
コレットでも、あそこの岩陰までたどり着けたら、あと少し…!
スゥ──…
コレットあっ…間に合わ──
シェリア危ない!伏せて!
ゴオオオオオオッ!
ピキン…ピシピシ…!
シェリアうぅっ…!
コレットシェリア!?私を庇って…!
シェリアコレット、大丈夫?
コレットうん。シェリアこそ…
シェリア私も平気。それより早く、祠へ──
スゥ──…
シェリアまた来る…!
コレットシェリア、こっち!
ゴオオオオオオッ!
ピシッ…!ピシピシピシッ…!
コレットはぁ、危なかった…
シェリア助かったわ。ありがとう、コレット
コレット私こそシェリアのお蔭で助かったよ。けど、どうして…
シェリア親友だもの。約束したでしょ。「大切なあなたを守る」って
コレットシェリア…。ありがと
シェリア…さて、問題はクリスタルね。祠まであと少しなのに、今出たらあのブレスに巻き込まれるわ
コレットシェリア。私、思うんだけど、あの魔物はクリスタルを持ってる人を追いかけてるんじゃないかな
コレットだから、今度は──
???こらー!そこの大きいの!こっちを見なさい!
コレット…!あの声は…
マルタほらほらどうしたの!?かかってきなさいよ!
アリエッタコレット達に酷い事したら許さない!
グオオッ!
マルタき、来た…!でもこの隙があればコレットは…
スゥ──…
マルタいきなりブレス!?まずい、隠れる場所が…!
マルタアリエッタ!私の後ろに隠れて!
アリエッタえ、でも…!
マルタ早く!
コレット駄目ぇーーーっ!
グオ…
コレットマルタ!アリエッタ!
マルタあ、ちょっと!どうして大声出すのよ!せっかく…
ガアアアッ!
コレットわっ…!
マルタほら見つかった!おとりの意味、ないじゃない!
コレットおとり!?そんなの危ないよ!
マルタ言ったでしょ。借りは返すって
マルタあなただけにいい格好なんてさせてあげないんだから!
コレットマルタ…
ガアアアッ!
コレットわっ、来た!
マルタコレット、逃げて!多分だけどそいつ、クリスタルを持ってる人を──
コレットうん!わかってる!
コレット魔物さん!クリスタルを持ってる私はこっちだよー
ガアアッ!
コレットよし、十分離れたかな…
コレットシェリア、今だよ!
マルタシェリア…?そういえば、どこに…
アリエッタあっ…!岩陰から…
シェリアはぁ、はぁ…祠まであと少し…
シェリアコレットったら、また無茶して…止める暇もなくクリスタルを置いて飛び出すんだから
シェリアけどお蔭で隙が出来た。一気に走り抜けるわよ…!
グルルル…
コレット…!魔物の動きが止まった。もしかして…
ガアアッ!
コレットシェリアの方を見てる!私がクリスタルを持ってないってバレたの…!?
スゥ──…
コレットやめてぇーーっ!
マルタさせない!
ザシュッ!
グオオオッ!
コレットマルタ!
マルタ…コレット。あなたが飛び出して行って、私、わかったの
マルタあなたがみんなで一緒にって言うのはただのお気楽でも、打算でもない…
マルタ人が傷つくのを見るのが嫌なのよね?例えライバルでも、いざとなれば守りたいとか考えてるんでしょ
マルタそれも生半可な優しさとか人のよさだけじゃない…命を懸けるほどの覚悟がある
マルタすごいと思うわ。でも、それに黙って甘えていられる私じゃないの!
マルタコレットが犠牲になるなんて私は絶対に嫌だからね!
マルタあいつを食い止めるわよ…!クリスタルを祠に返すまで、シェリアには近づけさせないわ!
コレットマルタ…
アリエッタアリエッタも…借りは返すんだから!
コレットアリエッタ…
コレットうん、そだね。一緒にシェリアを守ろう
コレット力を合わせて、四人で一緒にここを出ようね…!
マルタ勿論よ!
scene3最後の審判
グルル…
コレットはあ…はあ…
マルタシェリアは、まだなの…!?
アリエッタアリエッタ…負けないもん。シェリアのために持ち堪えるんだからぁ…!
スゥ──…
マルタまたブレス…!?も、もう避けられ…
コレットわっ、何…!?
マルタ眩し…!目、開けてられない…!
マルタう…光、消えた…?何だったの…?
コレットあれ?魔物が消えてる…
マルタた、助かった…の?
シェリアふぅ。間に合ってよかったわ…
コレットシェリア!じゃあ、魔物が消えたのって…
シェリアええ。魔物を足止めしてくれていたお蔭で、何とか祠までたどり着けたわ
シェリアみんな、無事?
マルタ戦ってた相手を考えれば、無傷と言ってもいいぐらいの軽傷よ
アリエッタアリエッタも。全員無事って、すごい…
コレット私も平気。大事なくてほっとしたよ
マルタやっぱりクリスタルと魔物は関係してたのね
シェリアそうね。賭けだったけど、何とか成功してよかったわ…
マルタでも、これじゃクリスタルを持ち帰るなんて絶対に無理じゃない
シェリア今在職中の宮廷神子の人達も、みんなこの試験を乗り越えたのかしら
シェリアちょっと信じられないわね…
アリエッタ現役の宮廷神子は…みんな、ムキムキなの
コレットそなんだ…!
マルタ絶対、違うと思う…
シェリアさて…これ以上ここに留まっていても仕方ないわね
コレットそだね。クリスタルはもう触らない方がいいと思うし…
マルタ大聖堂に戻りましょうか…
ライラ──ふう…試験は無事に終わったようですね
ライラあの方は…きっと素晴らしい宮廷神子になるでしょう
ラザリス
ライラまあ…!ラザリス様…!
ライラお越しになられていたとは露知らず、失礼いたしました
ライラ視察からお戻りになられていたのですね
ラザリスまあね
ライラこちらにいらっしゃるなんて珍しいですわね。何か御用でしょうか?
ラザリス少し、気になる事があってね。宮廷神子の試験を行ってるんだって?
ライラはい。ちょうど今、試験が終わったところですわ
ライラ新たな宮廷神子を一名、迎える事になりそうです
ラザリスへえ、どんな子?
ライララザリス様の事を心から大切に想っている、素敵な方ですわ
ライラご覧ください、この花束。その子がラザリス様を想って用意したものですのよ
ラザリス…その花束…
ラザリス…ふふ、そうか。どうりで見つからなかったわけだよ
ラザリス僕の探し物、あの子が持っていたとはね
ライララザリス様…?
ラザリス
scene1宮廷神子
コレットただ今戻りました
ライラみなさん、おかえりなさい
ライラ試験、お疲れ様でした。無事に終えられたようで、何よりですわ
シェリア無事に…とは、言えないかもしれません…
マルタ魔物がいるとは聞いてましたけど、あれは反則だと思います
ライラクリスタルを持ち帰れなかったのですね?
アリエッタあんなの無理に決まってる、です
ライラ一度は手に取ったのに惜しかったですね
コレットあれ?今、どうして、手に取ったってわかったんですか?
ライラふふ…実はですね…
ライラみなさんの様子は、こちらでずっと見ておりました
シェリアそんな事が出来るんですか!?
ライラはい。ここにある大きな結晶には洞窟内の様子が映し出されるんです
ライラその事とも関係あるのですが…実はみなさんにお知らせしておきたい事があります
ライラ実は、クリスタルを持ち帰っても試験は合格になりません
シェリアえっ…!?
ライラというよりも、クリスタルを持ち帰るかどうかは、実は合否とは関係ありません
マルタそ、それって…あの時の試験の説明は嘘だったって事ですか!?
ライラいいえ。私、嘘は申し上げませんわ
ライラ私は、一つしかないクリスタルを持ち帰っていただきたいとお願いいたしましたが…
ライラ持ち帰れば合格だとも、持ち帰らなければ失格だとも、告げてはいないでしょう?
シェリアそういえば…そうだったような…
コレットそれじゃあ、本当の試験って何だったんですか?
ライラはい。では改めて試験の本質についてご説明いたしましょう
ライラクリスタルを目指す道中、困難に直面したみなさんがどう振る舞うのか…
ライラそれを観察する事がこの試験の狙いだったのですわ
ライラ私、大変心を打たれました。みなさんはこの短時間で、素晴らしい友情を育まれたのですね
ライラ四人がお互いを想い、力を合わせて困難に立ち向かう姿はとても素晴らしかったです
ライラさすがラザリス様にお仕えしたいと、望まれるだけの事はありますね
コレットじゃ、もしかして、みんな合格とか…?
ライラいえ…みなさん全員を宮廷神子としてお迎えしたい気持ちは山々なのですが…
ライラ初めに申し上げた通り、残念ながら、合格させられるのはお一人のみなのです
ライラさて、今回の合格者ですが──
マルタま、待ってください!
マルタ誰が合格か言う前に…その人を選んだ理由を教えてください
マルタ私は宮廷神子になりたい…。けど他のみんなも、同じぐらい真剣に宮廷神子を目指して頑張ったんです
マルタもしいい加減な理由だったら、私が選ばれても嬉しくない…
マルタだから先に、それを確認させてください
ライラなるほど…承知しました
ライラマルタさん。試験が始まった時のあなたなら、そんな事、気にしなかったでしょう
ライラマルタさんだけではありません。他の方も、この試験を通じて自分を省みる部分があったはずです
ライラその結果、みなさんは一回り成長された事と思います
ライラでは、みなさんの心に影響を与え突き動かすきっかけとなったのはどなたの言動だったでしょう?
マルタ
マルタそういう事ね
シェリアなるほど…
アリエッタ納得
コレットえっ、何?みんな、誰の事かわかったの!?
ライラみなさんにご納得いただけたところで…
ライラコレットさん
コレットはい…
ライラおめでとうございます!宮廷神子の試験、合格です!
コレットえ…私…?本当に、私が…宮廷神子…ですか?
コレットやった…!合格したんだ、私!宮廷神子になれたんだ!
シェリアよかったわね、コレット。おめでとう!
コレットあ、でも…という事は、みんなは…
シェリアコレット、そんな顔しないで。みんな、あなたが選ばれた事に納得してるんだから
マルタ…私も、あなたなら認めるわ
アリエッタアリエッタも、コレットならいいと思う
シェリアコレットならいい宮廷神子になると思うわ。おめでとう
コレットみんな…。ありがとう、私、頑張るよ…!
ライラでは早速ですが…コレットさん、こちらにお着替えください
コレットこれは…?
ライラ宮廷神子の装束ですわ
シェリア素敵…!早く着替えて見せて
コレットうん!
シェリアわあ…
コレットど、どうかな…?
シェリアすっごくよく似合ってる。素敵よ、コレット
アリエッタコレット…ううん、コレット様…かも
マルタそうね。上手く言えないけど、まさに宮廷神子って感じ。コレット様、いいなぁ…
シェリアあ、私も。宮廷神子コレット様!…なんてね
コレットや、やめてよみんな。普通でいいよ
ライラふふ。微笑ましいですわね
ライラコレットさん、この装束に身を包んだ今この瞬間からあなたは宮廷神子になったのです
ライラ気を引き締めてラザリス様にお仕えしてくださいね
コレットは、はい…!ご期待に沿えるよう、精一杯務めさせていただきます
ライラはい。では、自覚も芽生えたところでコレットさんには早速、宮廷神子としての仕事をお願いします
コレットな、何でしょうか
ライラ実は先ほどまで、こちらにラザリス様がいらっしゃったんです
シェリアラザリス様が?
ライララザリス様はコレットさんの宮廷神子就任を祝し、お言葉をくださるそうですよ
ライラなので、ラザリス様のいらっしゃる宮殿まで行っていただけますか
シェリアそれって…ラザリス様がコレットをお待ちになってるって事!?
マルタ羨ましすぎる!
アリエッタコレット、すごい…
コレットじゃあ私、行ってきます
コレットあ、そだ…!すみません、ライラ様。先ほど預かっていただいたお花は…
ライラはい。こちらですね
コレットありがとうございました。それじゃ、私は宮殿に行きます
シェリア宮殿の前までは私達も行くわ。みんなでコレットの門出を見送ってあげる
コレットありがとう、シェリア
scene2宮廷神子
シェリアさ、宮殿前に着いたわ。私達がついて行けるのは、ここまでね
コレット宮殿…
コレットどうしてかな…何度も見た事あるはずなのに、何だか新鮮に見える…
シェリアそれはそうよ。あなたはもう、ここから眺めるだけの立場ではないんだもの
コレットそっか…私、これからあの宮殿に入って行くんだね…
マルタ頑張ってね、コレット。落ち着いた頃に様子を見に来るわ
マルタその時、ラザリス様にご迷惑かけてるようだったら、承知しないから
コレットうん。マルタの分まで、しっかり頑張るね
アリエッタアリエッタも応援します
コレットありがと
マルタさて…それじゃ私は、このまま家に帰るわ
マルタそれじゃ、コレット。元気でねー
アリエッタあっ、アリエッタもそっち
コレット二人共、気を付けてねー
シェリアさて…。私もオルシャ村に帰るわ。コレットの事、みんなに報告したいし
コレットシェリアも帰っちゃうんだ。寂しくなっちゃうね…
シェリア寂しいのは私も一緒だけど…それ以上に私、嬉しいのよ
シェリアドジで、放っておけない子だったあのコレットが、これから宮廷神子として頑張ろうとしてる…
シェリアそう思えば、寂しさなんて吹き飛んで、誇らしい気持ちでいっぱいになるわ
シェリアだからコレットも、寂しいなんて言ってないで頑張ってね
コレットシェリア…
シェリアもう、コレットったら。まだそんな顔してるの?
コレット…だって、オルシャ村を出てここまでずっと一緒だったんだよ
コレットそれだけじゃない。小さい頃から、私の隣にはいつもシェリアがいてくれて──…
コレット楽しい事も辛い事も全部二人でわけ合ってきた…。なのに…
シェリアコレット…。大丈夫よ
シェリアこれまでみたいには会えなくなるかもしれないけどそんな事、関係ないわ
シェリア私はずっとコレットの事を想ってる。離れていても、想い合っていれば、何も変わらないわよ
シェリアそれにあなたは、これからラザリス様にお仕えするのよ
シェリア悲しい顔してちゃ駄目よ。ちゃんと笑ってないと
コレットうん…
コレットこう、かな?
シェリアそうそう。やっぱりコレットはこうでなくちゃ
シェリアその笑顔で、しっかりとラザリス様をお支えするのよ
シェリアそれじゃ、私もそろそろ行くわ。またね、コレット…。近い内に必ず、また会いに来るから
コレットうん。シェリア、元気でね
コレット
コレットあ、いけない。笑顔、笑顔
コレットラザリス様が待ってる…宮殿に行かなくちゃ
scene1届いた願い、届かぬ想い
コレットこれが宮殿の中…。思ってた通り、すっごく綺麗…
衛兵む?君は…
コレットあ、すみません。私…
衛兵その格好…宮廷神子か
コレットはい。今日から宮廷神子になったコレット・ブルーネルと言います
コレットえと…ラザリス様がお呼びと伺ってここに来たんですけど、宮殿の中に入るのは初めてで…
衛兵なるほど、そういう事か。なら私が案内──
???その必要はないよ
ラザリスその子は僕が案内する
コレットラザリス様…!
衛兵ラ、ラザリス様が直々にお出迎えなさるとは…
ラザリス君を迎えに来たんだ
コレット私を…?
ラザリスこっちだよ。ついておいで
コレットは、はい…!
scene2届いた願い、届かぬ想い
コツ…コツ…
ラザリス
コレット…ここは、地下通路…?
コレットすごく広いし一人だと迷っちゃいそう──…
コレットあ、ラザリス様がもうあんなところに…急がないと…!
ラザリス
コレットあ、あの…ラザリス様
ラザリス…何?
コレット覚えておいででしょうか。私、ファルカームでラザリス様と…
ラザリスコレット・ブルーネルでしょ?
コレットあ…
コレットはい…!覚えてくださってたんですね!
コレットまたこうしてラザリス様にお会い出来て、本当に嬉しいです
コレット近い内に会える事を祈ってるって言ってくださった事…本当になりましたね
ラザリス…そうなる運命だったからね
コレット…!光栄です!すっごく嬉しいです!
コレットあっ、そだ!これ…ラザリス様に
コレットほんとはファルカームでお渡ししたかったんですけど、うっかりしちゃってて…
コレットブランの花って言うんです。「大切なあなたを守る」っていう花言葉があるんです
コレットその花言葉のように私もラザリス様をお守りしたいと思って…
ラザリス守る?僕を、君が?
コレット私、ラザリス様をお助けしたいと思ってるんです
コレットだから、もしお辛い事や、お困りの事があるなら、私に何でも言ってほしいんです
ラザリス…何の事?
コレットあ、えと…実は…ファルカームでラザリス様にお花を拾っていただいた時…
コレット不思議なんですけど、ラザリス様の感情が私の中に流れ込んできたんです
コレット何だか暗くて…寂しくて、苦しいような…
コレットもしラザリス様がそんなお気持ちでいらっしゃるなら、私、支えになりたくて…
ラザリス
コレットえっと…。す、すみません。突然不躾な事を…
ラザリス君は…そんな花よりももっと大事な物を持ってきてくれた
ラザリスそれだけで十分、力になってくれているよ
コレットあ、ありがとうございます…!
コレットラザリス様…!では、ブランの花、受け取っていただけますか?
ラザリスああ…君が預かっておいてよ。花を飾るのも宮廷神子の仕事だろう?
コレットはい…!では後で、お部屋に飾っておきますね
ラザリス…さて。着いたよ
ラザリスここだ
コレット大きな扉…ここは…?
ラザリス「救済の儀式」…確かそんな言い方をしていたかな。それを行う場所だよ
コレットあ…もしかして宮廷神子はその儀式のお手伝いをするのでしょうか
ラザリス…どんな事をすると思う?
コレットそれは、えっと…お祈りするとか…
ラザリスそうだね。祈る者もいる…
コレットあの、ごめんなさい。私その儀式の事、初めて聞いて…
ラザリス心配はいらない。あっと言う間に終わるよ
ラザリスさあ、中に入ろう
コレットは、はい…
scene3届いた願い、届かぬ想い
ギイイ──…
コレットわっ…中は暗いんですね
ラザリス…すぐに目が慣れるよ
コレットあ、少しずつ見えてきました。何だろ…何か大きな物が、たくさん並んで…
コレット…!これは…
コレット部屋の中に結晶が…これって、試験の時の…
コレットあれ?結晶の中に…何か──…
コレット…!
コレットこ、これ…人ですか!?
コレット人間が、結晶の中に…
コレットこれだけじゃない…こっちも…あっちも…!
コレットよ、よく見たら、この結晶の塊…ぜ、全部…中に人が…
コレットこの人達…生きてるんですか…?
ラザリス死んではいないよ。どう、気に入った?
コレットどうして…?どうしてこんな事に──
コレットう…!
コレットこんな事…前…にも‥?
ラザリス
コレットラザリス様…あの…この人達は、一体…
ラザリスここにいるのは全て咎人だよ。僕の世界を汚す有害なヒト…
ラザリスけど、何よりも…誰よりも邪魔なのは「君」だ
ラザリスずっと探してたのに…全然見つからないと思ったら、まさかそんなところに隠れてたとはね
コレットラザリス様…?
ラザリスかくれんぼはお終いだ。…出ておいで、「世界の意志」
コレット世界の…意志…?
コレットううっ…
コレット何…今の…
ラザリス上手く隠れたものだね。ファルカームで会った時も、君の存在までは気が付かなかったよ
ラザリス…だけど、残念だったね。君の選んだ器は、誰よりも強く純粋な意志を持っていた
ラザリスおそらく君の器であるコレットは、宮廷神子の試験でその強い意志を見せたのだろう
ラザリス…そして、その意志は衰弱しきっていた君に力を与えた。僕に検知されてしまうほどに
ラザリスけど…ディセンダーを生み出した時ほどの力はまだ取り戻していないようだね
コレットラザリス様…?えと、何の事だか、私には…君って…誰ですか?
ラザリス君には眠ってもらうよ。器の少女ごと…永遠にね
コレットラザリス様…?な、何をするんですか?まさか…
ラザリス
コレットわ、私、咎人じゃありません!ラザリス様!私はラザリス様の支えになりたくて…
コレットだからお花も…なのに…どうして──
ラザリス
ピキ…ピキピキ…
コレット…!ラ、ザリス様…どうして…
コレット…私はただ…あなたを──
ラザリス動けもしないのに、僕の心配かい?
コレット動け…ない…?
コレット…!この結晶……私、前にもこんな事…
コレット──ううぅっ…!
ラザリス
コレット……そんな…どうして私…今まで……
コレット駄目…助けて…ロイド──…
ピシ…ピシピシピシ!
ラザリス
ラザリス──さよなら
ラザリス…ん?
ラザリスブランの花、だっけ…
ラザリス
ラザリス「苦しい」「寂しい」だって?この僕が…
ラザリス
ラザリスふ…ははっ…
──グシャッ!
ラザリス…ふざけるなっ!!
ラザリスお前に何が…何一つ知らないくせに…
ラザリス……
scene1目覚めし意志
???──…ット
???コレット
ロイドおい、コレット
ゼロスコレットちゃん?どうしたんだよ、ぼーっとして
コレットあれ…ロイド?それに、ゼロス
コレットここは…?晶化した人達は?
ロイド何言ってるんだよ、コレット。それより、早く行くぞ
コレット待って、ロイド!行くって、どこへ?
ゼロスコレットちゃん、大丈夫か?ぼーっとしてると危ないぜ?
コレットゼロス、待ってよ…。置いて行かないで──…
コレット…!あ、足が動かない…何で…
ピシ…ピシピシピシ!
コレットあっ…ああっ、やだ…待って、ロイド…!助けて、ゼロス…!
ラザリス行かせないよ。君は…永遠に眠るんだ
コレットいやああぁぁぁっ──…!
コレット──はっ!
コレットあ、あれ…私…
コレット…動ける…
コレットロイドー!ゼロスー!
コレット…夢…だったのかな…
コレット…この場所は…
コレットそうだ…私…ラザリス様とここに来て…
コレット…ラザリス様は…?
コレット…いない。どこに行ったんだろう…
コレット
コレットラザリス様…どして私を…
コレットそれに「世界の意志」って一体…
コレットそれに他のみんなは晶化したままなのに、何で私だけ助かったのかな…
コレット…うぅ…わかんないよ。何も…
コレット…!私、前にもこんな事…
コレットあちこちで起きてた晶化現象がメルトキオでも起きて、それで……
コレット何で…どしてこんな大事な事…今まで忘れちゃってたのかな…
コレットもしかして…あの晶化現象もラザリス様が──…
コレット…ううん、そんなはずない。ラザリス様があんな事…
コレットでも…ここの人達や私を晶化させたのは…
コレット
コレットうぅ…どうなってるのかわかんないよ…!
コレットこれから…どうすればいいんだろう
コレットこの晶化した人達も何とか助けてあげたいけど…どうしたら…
コレット…!?
コレット…そ、そんな…まさか…!あの結晶の中にいるのって…!
scene2目覚めし意志
コレットそんな…やっぱり…この晶化してる人は──…
ゼロス
コレットゼロス…!
コレットそんな…ゼロスまで…
コレット何でこんな事…だって、ゼロスはスレイ達と旅してて…
コレットじゃあスレイは…?他の人達は…?どうなっちゃったの!?
コレットロイド…ロイドは!?
コレット嫌だよ…。ロイド、ゼロス…私…!
コレットごめんなさい…!みんなの事、忘れてて…私、何も知らなくて、出来なくて…!
コレットゼロス…!ごめんなさい、私…
コレット何が出来たかわからないけど…
コレットこんな事になる前に…助けてあげたかった──…
コレットごめんなさい、何もしてあげられなくて…
コレットでも私…必ずゼロスを助けるから。絶対、結晶から出してあげるから…!
コレット私、みんなとまた会いたい
コレットゼロスや、ロイドや…みんなに会って、それで今度は、こんな事にならないように…
コレット大切なみんなを守りたい…!
コレットうっ…今の光は一体──…
ゼロスうぅ…
コレット…!ゼ…ゼロス!
ゼロスん…?ここは…?
ゼロスコレットちゃん…?
コレット何で…?結晶はどこに…
ゼロス結晶…?ああ、そうか。俺、咎人として捕まって、天帝に──
ゼロス…って、コレットちゃん!?もしかして記憶あるのか!?
コレットうん。多分…。さっきまで、いろいろ忘れちゃっててちょっと混乱してるけど…
ゼロスそうか、それはよかった!
ゼロスでも、ここにいるって事は、コレットちゃんも咎人として捕まったのか?
コレット違う…と思うんだけど…私にもよくわからなくって…
ゼロス…とにかく落ち着いて何があったのか、順に話してくれ
コレットうん…。実は──
ゼロスなるほどな…その服装は宮廷神子の制服ってわけか
ゼロスんで、どうしてなのかわからねーけどコレットちゃんは晶化を解く力を持ってる…と
コレットうん…ゼロスを助けたいって強く願ったら、急に身体の内側が熱くなって…
コレットシルヴァラントにいた頃はこんな事、出来なかったのに…
ゼロス俺も記憶を取り戻してからあちこち調べ回ってたけど、そんな力は聞いた事がねぇな…
ゼロス情報が足りなくて推測しか出来ねぇけど…
ゼロス天帝が言ってたっていう「世界の意志」ってのが関係してそうだな
ゼロスそいつが原因だと考えれば、いろいろと辻褄が合いそうだ
コレットそう…なのかな…
ゼロスだとすれば、急いでここを出た方がいいな
ゼロス天帝は「世界の意志」って奴が晶化を解くなんて力を持ってるとは気付いてなかったと見える
ゼロス俺もコレットちゃんも、想定外の復活ってわけだ。この状況を最大限に利用しねぇと
ゼロスコレットちゃん。あいつに見つかる前にここから抜け出すぞ!
コレットうん。けど…ここにいる他の人達は?私、もしかしたら助けられるかも…
ゼロス助けたいのは俺も一緒だけど、今はちょっとまずいな
コレットどうして?
ゼロスここにいる連中は、咎人って奴だ。奴ら、救済だとか言って、咎人をここで晶化してやがる
ゼロスそれでも十分酷い事だけど、どういうわけか命は取られてねぇ。みんな俺と同じように生きてんだ
ゼロスけど、もし、晶化した連中が逃げ出したなんて事になったら…
コレットラザリス様が…そんな酷い事するのかな…
コレット…ねぇ、ゼロス。世界を晶化させたのって、本当にラザリス様なの…?
ゼロス…ああ、そいつは間違いねぇ
コレットそんな…
ゼロス…コレットちゃん。戸惑うのはわかるけど、今は俺さまを信じてくれねぇか?
コレット
コレット…うん、わかった。でも後で絶対、この人達の事、助けに来ようね
ゼロスああ、当たり前だ。これ以上あいつらの好きにさせてたまるかってな
ゼロスそのためにも、まずはここを抜けださねぇとな。…作戦の立て直しはそっからだ
コレットうん…!

NameDialogue
scene1運命の交差
カイルおーい!みんなー!いたら返事してくれー!
カイル……駄目か。転移してきた森まで戻ってきたはいいけど、やっぱり誰もいないな…
カイルみんな…どこにいるんだろう。無事だといいけど…
カイルそれに…
ジューダスカイル…!後は任せたぞ
カイルジューダス!
カイルジューダス…!世界の結晶化に巻き込まれるなんて…
カイルオレ、目の前にいたのに、ジューダスを助けられなかった…!
カイル結晶化の原因はきっと、この過去にあるはずなんだ!
カイル待っててくれ、ジューダス!オレが必ず助けてみせるから!
カイル……とはいったもののここ本当にオレ達の世界の過去なのかな…?
カイル「永遠に続く平和と幸福」か…前に来た時にはそんな話、全然聞かなかったのに
カイルそれに…祈りを捧げるみんなの姿、何かこう…変な感じだったし…
カイルもしかして、オレだけ転移する場所がズレちゃったとか…?
カイルだったら早くみんなと合流しないと!場所は違っても、きっとこの時代に来てるはずだ!
カイルオレが転移したのは、この先だな。何か手掛かりがあるかもしれないし、よく探してみないと
カイルあの時は変な人達に追いかけられたし、慎重に…
カイル…あれ?何だろう、この看板
カイルえっと、何なに「この先の立ち入りを禁ずる」…?
カイルこんな森の奥なのに、立ち入り禁止なんて…
カイルうーん、困ったな…。この先を調べたいのに…
???そこで何してるんだ?その先は入っちゃ駄目だぞ
カイルあ、すみませ──
カイル…ああっ!父さ──あ、っと
スタン…父さん?
カイル…あ、い、いえ!驚いてちょっと間違えたっていうか…
スタン間違い…それって、俺が君くらいの子どもがいる年齢に見えたって事か?
カイルい、いや、そうじゃなくて──
スタンつまり、貫禄があるって事だよな!何だか照れるけど、ありがとう!
カイル…わあ
カイルこの感じ、やっぱり父さんだな…
スタンあ、そうそう。そこの看板に書いてある通り、この先は「立入禁止区域」なんだ
スタン「白き獅子」が管理する特別な場所だからな。無断で入ると捕まっちゃうぞ
カイル「白き獅子」…
スタン…って、余計なお世話か。誰でも知ってる事だもんな
スタン俺はスタン。君は?
カイルえっ…
カイルな…何言ってるんですか!オレですよ、オレ!忘れちゃったんですか!?
スタン…どこかで会った事あったっけ?んー…
スタンもしかして…実は俺の知らない、生き別れの弟だったりするのか?
カイルお、弟!?
スタンはは、冗談だよ。でも何だか、他人とは思えないって感じがしたんだよな
カイルあー、えっと…それは…
???う、うわぁぁ!
ギャオオオッ!
カイルこれは…魔物の声!
スタンそれに、人の叫び声も…!
スタン・カイル助けないと!
スタンお、気が合うな!
カイルそうですね!
カイルって、笑ってる場合じゃないですよ!
スタンそうだった!よし、行こう!
scene2運命の交差
カイルよかった。どこにも怪我はないみたいだね
行商人あ、ああ…。君達のお蔭で助かったよ…
スタン気にしなくていいって。それより街まで送っていくよ
行商人いや、それには及ばないよ。ホーリィボトルを持ってるからね
行商人売り物だからってケチらないで、使っていく事にするよ
行商人魔物に襲われるのは、もうこりごりだからね…。それじゃあ、助けてくれてありがとう
カイルあ、うん!気をつけてね!
スタン無事に助けられてよかったな!それにしても…
スタン君、すごいな!かなりの剣の腕前じゃないか!
スタンそれに、魔物を恐れずに人助けなんて勇気がなくちゃ出来ない事だよ
カイル当然!オレは、英雄になる男だから
スタン英雄かぁ!大きな目標だけど、なれる気がする。君なら…
スタン…あれ?そういえばまだ名前、聞いてなかったよな
カイルあ…ええと
カイルやっぱりオレの事、覚えてない…?でも、ここまで綺麗に忘れられる事なんてあるのかな…?
スタンん?どうかしたか?
カイルあ、いえ!何でもないです
カイル…その…オレ、カイルっていいます
スタンカイル…うん、いい名前だな!
スタンそれでカイルはこんなところで何をしてたんだ?うっかりして、って言ってたけど
カイルえっと…人捜しです。実はオレ、離れ離れになった仲間を捜して旅をしてて…
スタンそうなのか…それは大変だな…
スタン…ん?仲間と離れ離れに?そういえば、俺の地元の街にも同じ事を言ってる人がいたなぁ
カイル…え?そ、それ、どんな人ですか!?
スタン最近やってきた女の人なんだけど、ピンクのぼさぼさした髪で…
スタンあ、そうそう!何かいつも変なもの作ってるんだ
カイルそれって…!スタンさん、その人、多分オレの仲間です!
スタン本当か?よし、それならその人のところまで案内するよ
スタン市都アルメリアまではちょっと遠いし一人じゃ退屈だったんだ。カイルと一緒なら楽しそうだな!
カイルは、はい!オレも…スタンさんと一緒なら楽しいと思います…!
スタンははっ、俺達気が合いそうだもんな。じゃあ、早速向かおうか
カイルはい!あっ…
カイル立入禁止区域…結局、この先には何があるんだろ
スタンカイル?あんまりのんびりしてると日が暮れちゃうぞ?
カイルあ、はい!それじゃあ、行きましょう──
カイルい、っつ…!
スタンカイル!大丈夫か!?
スタンお前…足を怪我してるじゃないか!もしかしてさっきの戦いで…?
カイルへ、平気です!これくらい、何ともないんで!
スタン平気なわけないだろ!この傷じゃあ、歩くだけでも大変だろうし…
スタン…よし!街までは、俺が背負っていくよ!
カイルえっ…
スタンこうやって、俺もしゃがめば…どうだ?これで乗りやすいか?
カイル…父さんが…俺をおんぶ…
スタン…カイル?どうかしたか?
カイルあ、いえ!だ、大丈夫です!オレ、ちゃんと歩けますから!
スタンアルメリアは結構遠いんだけどな…。本当に大丈夫か?
カイルはい!このぐらい、何ともありません!
スタン…わかった。でも、途中でひどくなったら遠慮せず言ってくれよ
カイルわかりました!オレ、最後まで歩き切りますから!
スタン無理はしなくていいんだけどなぁ…
scene1超絶天才居候様
スタンほら、着いたぞ。ここが市都アルメリアだ
カイルうぅ…結局、背負われてしまった…
スタンだから、距離があるって言ったろ?その怪我でここまで歩くのは無茶だったって
カイルでも迷惑かけっぱなしっていうか…オレ、重かったですよね?
スタンいやぁ、軽かったぞ?カイルもう一人分は背負えそうだな
カイルええっ!?お、オレ、そんなに軽いですか!?結構鍛えてるつもりなのに…
スタンははっ、ごめんごめん。要するに、気にするなって事だよ
スタンさてと、例の仲間かもって女の人は──
カイルま、待ってください!街中でまでこの状態ですか!?恥ずかしいから降ろしてください!
スタン遠慮する必要はないって。恥ずかしさよりも、カイルの足の方が大事だろ?
カイルま、街の中を歩くくらいなら、大丈夫ですから!
スタンそんなに恥ずかしがる事ないのに…わかった、降ろすよ
スタンでも辛そうだったら無理やりにでも背負うからな?
カイルだ、大丈夫ですって見ててください…
カイルほら、この通り!ちゃんと歩けますから!
スタンはは、心配しすぎだったみたいだな。それじゃあ、ゆっくり目的地に向かうか!
カイルここって宿…ですか?
スタンああ。俺の友達がやってるんだ
スタンおーい、アスベルー!
アスベルはい、今行きます!
アスベル…って、スタンか。どうしたんだ、急に来て
アスベル…ん?そっちの彼は?
スタンカイルっていうんだ。こっちに戻ってくる時に知り合ったんだけど…
スタンカイルはすごいんだよ!魔物にも恐れず向かって行くし、剣の腕もかなりのものなんだ
アスベルへぇ、知り合ったばかりなのにずいぶん気に入ったみたいだな
アスベルけどわかる気がするよ。二人、何か似てるもんな。兄弟みたいっていうか──
カイルそ、それは…その…
アスベルよろしく、カイル。俺はアスベル。スタンの友人だ
カイルは、はい!よろしくお願いします!
アスベルそれで、スタン。俺のところに来たのは、カイルを紹介してくれるためか?
スタンいや、カイルははぐれた仲間を捜して旅してるらしいんだ
スタンそれでアスベルのところにいる、あの…
アスベル…ああ、なるほど。彼女が仲間かもしれないってわけか。わかった、呼んでこよう
スタンあ、それと、カイルが足首を怪我してるんだ。出来れば治療も頼む
アスベルそれなら彼女に頼むのがいいだろ。回復術が使えるはずだから
アスベルおーい、ちょっと来てくれ!
???何よ~…せっかく実験がいいところだったのに…
???…って、カイルじゃない!
カイルやっぱり、ハロルドだったんだな!
カイルよかった…やっと一人仲間を見つけられた…
カイルねえハロルド、他のみんなは──
ハロルドや~、無事だったのね~!安心したわ~!
カイルう、うん!ハロルドも無事でよかったよ!いろいろ相談したい事があって…
ハロルドうんうん、そうよね。でも、そんなに急ぐ事ないわよ。とりあえず、私の部屋で…
カイルいや、早くみんなを見つけないと!だって、ここって──
ハロルドは~い、そこまで~!ちょっとこっちにいらっしゃい
カイルも、もが!?な、何するんだよ!
ハロルドあっ、アスベル。ちょっとこの子、借りるわよ~
アスベルあ、ああ。それはいいんだが、カイルは足を怪我して──
ハロルドそれなら大丈夫、ちゃ~んと治療しておくから。それじゃ~ね~
スタン…本当に大丈夫かなぁ…
アスベルさあ…?
scene2超絶天才居候様
ハロルドさ、ここが私の借りてる部屋よ。入って入って
カイルお邪魔しま──
カイルって、何だこの部屋!本当に借りてる部屋なの!?
カイル変な機械ばかりで、未来のハロルドの部屋、そのまんまじゃんか!
ハロルドそのまんまなわけないでしょ?数も性能も、ちーっとも大した事ないんだから
ハロルドま、アスベル達に便利グッズを売りつけた程度のお金にしては、上等なものを揃えられたけどね♪
カイルう、売りつけるって…
ハロルド宿の売り上げには貢献してるから、オッケーオッケー。次の商品にも期待されてるしね
カイルそ、そっか…。さすがはハロルド…
カイル…それで、この機械って何なの?
ハロルド「解析君仮設3号」よ。マナの生成量と異空間における歪みの発生、時間軸の連動計測を──
カイルえ、えっと…ごめん。つまりはどういう事?
ハロルド要するに、多方面から計測してこの世界の変化を調べてるってわけ
ハロルドまぁ、結果も今から説明するけど、その前に…
ハロルドカイル。あんたの目的って、何?
カイルえ…それは勿論、あの「結晶化」の原因を調べて、ジューダスを助ける事だよ
カイルだけどまずは、リアラとソフィと合流しないと。二人共、無事だといいけど…
ハロルドふむふむ…。記憶の改変は受けてないみたいね
カイルえっと…記憶の改変って?
ハロルド…やっぱりわかってなかったか。まあ、それも含めて治療しながら説明するわ
カイルう、うん。お願い
ハロルドまずは…そうね。簡単なところから一言で言っちゃうと…
ハロルド私達の世界は、なくなっちゃったのよ
カイル世界が…なくなった…!?
scene3超絶天才居候様
カイルハロルド、どういう事なの?オレ達の世界がなくなったって…
ハロルド私達が行くはずだった、過去の世界は消滅しているって事
ハロルドで、その時間軸の延長線上である私達の世界も、消えている可能性が高いのよね
カイル消滅…!?
ハロルド正確に言うと、今いるこの世界が元の世界を基礎にして創った新世界、という感じかしら
ハロルド消滅した、というより、創り変えられた、と言った方がいいかもね
カイル創り変えられたって…それ、本当なの…?
ハロルド私の計測を疑ってんの?いくら仲間捜しの片手間とはいえ、こんな事で間違えるわけないでしょ
カイル…っ!?ハロルド、リアラ達の事も探していてくれたの!?
ハロルド当然でしょ。私を誰だと思ってるのよ
カイルあはは…ごめんごめん
ハロルド全く…とにかく、今は情報もないし、リアラ達の事は置いておいて話を続けるわよ
ハロルド私達の住んでいた未来に現れたあの「結晶」とこの新世界に何か関わりがあるのは確かみたいね
カイルあの「結晶」が…!?
ハロルドま、今の段階じゃまだ憶測の域を出ないけど私の見立てじゃほぼ間違いないわ
ハロルドそれと、もう一つ起こっている重大な変化が…人々の記憶の改変よ
カイル…それ、さっきも言ってたよね。記憶の改変って、どういう事なの?
ハロルドこの世界の人々は、元の世界の出来事を覚えてないのよ
ハロルド自分達は、最初からこの新世界で生まれて、育ってきたと思ってる…。まるっと記憶を改変されているの
ハロルドだから世界が創り変えられた事にも気付かないし疑問にも思わないの
カイル…!そういえばオレ、違和感あったんだ
カイル前にもこの時代に来た事はあったけどその時は「天帝」なんていなかった
カイルなのに、みんな今では当たり前のように受け入れてるから…
ハロルドそれが記憶改変よ。今の世界にとって「天帝」がいるのは当たり前になってるって事
カイルじゃあ…やっぱり、スタンさんも?
カイルオレ、前の世界でさっきのスタンさんに会った事があるんだ
カイルそれなのに、オレの事、全然覚えてないみたいだったから…
ハロルド当然改変されているわね
ハロルドそれで?憧れの父親と再会出来た感想は?
カイルそれは勿論すごく嬉しかっ…って、ハロルド知ってたの!?
ハロルドあら、やっぱりそうなの。あの青年の名前を聞いた時からそうだろうとは思ってたのよ
カイルハロルド…
ハロルドシルヴァラントに名を残すほどの英雄もここでは単なる一般市民ってわけね
ハロルド未来では、行方不明になった後でさえ絶大な人気を誇っていたのに
カイル…うん。俺も、過去に戻って父さんにまた会えて嬉しかったんだけど…
カイル…ねえ、ハロルド!どうにかして父さんの記憶を取り戻す事は出来ないの?
ハロルド記憶を取り戻す人はいるみたいよ。でも方法はわからないし何よりも危険よ
カイル危険?どうして?
ハロルド…あんた、この世界に来てから「咎人」って言葉に聞き覚えない?
カイル咎人…?あっ、そういえば生誕祭で捕まった人の事をそんなふうに言ってたような…?
ハロルドなら話は早いわね。その咎人こそが、元の世界の記憶を取り戻した人よ
カイル…!それ、本当なの!?
ハロルド本当よ。何ならこの結論に達した理由をいちから説明してあげてもいいけど…聞きたい?
カイルむ、難しい話はちょっと…
ハロルドじゃ、重要な事だけ。どうやら天帝は、片っ端から咎人を捕らえているらしいわ
カイルなっ…!
ハロルド記憶を取り戻しても、咎人だとばれて捕まったりしたら…何されるかわかったもんじゃない
ハロルドだからカイル。悪いけれど、スタンの記憶は、一旦諦めなさい
カイルそんな事言われたって…放っておけるわけないよ!
カイルオレだったら、リアラや、みんなとの思い出を変えられて生きていくのなんて嫌だ
カイルだから…父さんもアスベルさんも記憶を取り戻してあげたいんだ!
ハロルドスタンはともかくアスベルも?あんた、アスベルとも知り合いなの?
カイルうん、アスベルさんはリチャードさんの親友だよ
カイルオレも何度かウィンドルの王宮で会った事があるし
ハロルドあんた、いつの間に王宮なんか出入りするようになったわけ?
カイル前にリチャードさんが星のカケラの邪念にとりつかれた事があっただろ
カイルそれを救って以来、時々王宮に招いてもらってたから
ハロルドなーるほど、ソフィのオマケってわけね。あの子、リチャード王と仲良かったし
カイルオマケって!オレだってリチャードさんと友達だし!
ハロルドはいはい。どっちにしろ、記憶を取り戻すなんて駄目よ
ハロルド今、下手に動いて天帝に捕まったりしたら本末転倒でしょ。リアラ達を捜す事も出来なくなるわよ
カイルリアラ…
カイル…わかったよ。今はリアラ達を見つける事に専念する
ハロルドよろしい。それじゃ、しばらくはここを拠点にして情報を集めましょ
scene1仮初の縁
ハロルドお待たせ~。ばっちり治療が終わったわよ~
スタンお、ようやく戻ってきたか!カイル、もう大丈夫なのか?
カイルはい、すっかり治りました!
アスベル結局、ハロルドはカイルの仲間だったって事でいいんだな?
カイルはい、そうです!それで、アスベルさんにも聞いておきたいんですが…
カイルオレ達の仲間について、何か心当たりとか──
ハロルドちょい待ち!カイル!こっちに来なさい!
カイルな、何だよ。どうかした?
ハロルド正直、私もまだこの世界に来てからそれほど時間が経ってないから、掴めていない情報も多いの
ハロルドだから…考えなしに質問ばかりするのはやめておいた方がいいわよ
カイルえっと…どういう事?
ハロルドつまりね…何が原因で咎人だと思われるのか、わからないって事よ
ハロルドただの質問が、この世界の禁忌に触れてしまって、それが原因で咎人と思われる可能性だってある
ハロルド今は必要だから仕方ないけど、本来なら私達が仲間を捜してる事すら隠しておくべきなんだから
カイルいやいや…ただ仲間の居所を聞いただけで、咎人扱いされるなんて…
ハロルドないって、絶対に言える?私達はこの世界について、まだほとんど何も知らないのよ?
カイルうっ…確かにそうだけど…
ハロルドリアラ達の事は私の方でも情報を集めておくからそれまでは大人しくしてなさい
カイルうぅ…。でも、こんな時にオレだけじっとなんかしてられないよ
カイルオレも街で情報を集める!ハロルドには迷惑かけないって約束するから…!
ハロルドあのね…私の話聞いてた?
カイルうん。だからこそ、こんな危険な世界にリアラやソフィを放っておけないよ
カイルそれに…ジューダスの事だってある。オレは少しでも早くジューダスを助けだしたいんだ
ハロルドはあ…。わかったわ。言われて諦めるあんたでもないし、街で情報を集めるのは許してあげる
ハロルドただし、細心の注意を払う事。いいわね?
カイルうん!ありがとう、ハロルド
ハロルドあ、話を中断してごめんねー。さ、どんどん続けてよ
アスベルあ、ああ…えーと、仲間の心当たりの話だったよな
アスベル残念だけど、ハロルド以外でそれらしい人物はわからないな
カイルそうですか…
スタンそう落ち込むなって!仲間捜しなら、俺も協力するから
カイル本当ですか!?
スタンああ!友達が困ってるっていうのに放ってなんておけないからな
ハロルド…ふーん、やっぱり似てるわ
スタンん?何だって?
ハロルド何でもないわ。続けてどうぞ?
スタンん、ああ。それでカイル。仲間はまずどこで捜すつもりなんだ?
カイルえっと…最初はこの街で捜すのがいいかなって思うんですけど…
スタンこの街からか。だったらこの街にいる間は、俺の家に寝泊まりすればいいよ
カイルえ、いいんですか!?
ハロルドちょ、ちょっとカイル──…!
スタン勿論だよ!困った時はお互い様だろ?
カイルやった!スタンさんと一緒に過ごせるなんて夢みたいだ…!
カイルスタンさん、よろしくお願いします!
ハロルドあー…やっぱり、こうなるわよね…
ガチャ…
???ただいま。アスベル、今帰ったよ
カイル…え?あなたは…!
scene2仮初の縁
???賑やかだな。お客さん…ではないみたいだけど
アスベルおかえり、リチャード!
スタン帝都まで商品の買い付けに行ってたんだってな!お疲れ様!
カイルやっぱり…リチャード、さん…!
ハロルド…わかってるわよね?
カイルも、勿論。リチャードさんとは初対面、でしょ?
アスベルカイル、彼はリチャード。俺と一緒にこの店を経営しているんだ
カイルは、はじめまして、リチャードさん。カイルです
リチャードはじめまして、カイル。よろしく頼むよ
アスベルカイルはスタンが連れてきたんだが、どうやらハロルドが捜していた仲間の一人らしい
スタンアスベルとリチャードはすごく仲がいいんだ!昔からずっと一緒にいるしな
リチャードまあ、僕はアスベルには助けられてばかりだけどね
リチャード今だって、親の商売を引き継いだ僕を助けてくれているし
リチャード正直、僕一人ではきっと店を維持するのも難しかったと思うよ
リチャードいつもありがとう、アスベル。感謝しているよ
アスベル何をいってるんだよ。俺達は家族みたいなもんだろ。気にしないでくれ
リチャード家族か…。ああ、そうだな
カイルこんなリチャードさん見た事ないや…やっぱり、未来とは少し雰囲気が違うな…
アスベルカイル、どうしたんだ?
カイルい、いや、何だか二人を見てると仲間の事を思い出しちゃって…
スタンへぇ、って事はカイルの仲間達もすごく仲がいいんだな!
カイルはい、それは勿論!
リチャード…仲間か。そういえば、まだ全員は見つかっていないんだな
リチャード仲間の事は僕も気にかけておこう。何かあればすぐに知らせる
カイルはい、ありがとうございます!
アスベル結構、話し込んでしまったな。そろそろ仕事に戻らないと
リチャードそうだな。買い付けた商品の確認もある。アスベルはそちらを頼む
アスベルああ、わかったよ
リチャード僕達は仕事に戻るが何か協力出来そうな事があれば言ってくれ
スタンさて、それじゃあ俺達も帰るか!
カイルはい!
ハロルドあっ、ちょっと、カイル。待ちなさい
カイルわ、っとと。ど、どうかした?
ハロルドもう一度忠告しておくけどこっちの世界の人々と不要な縁を結ぶのはやめておきなさい
カイル不要って…どうしてさ
ハロルド私達は元の世界を取り戻すために動く事になる
ハロルドでもそれは、今ここにいる記憶を改変された人達を消滅させるという事なのよ
カイルそ、それは…!
ハロルド私達は、いつか彼らと別れなければいけない
ハロルド仲良くなればなるほどその時がつらくなるわよ
カイル……
ハロルドそうならないためにもカイル、特にスタンとは距離を置きなさい
カイルう、うん。わかった…
カイルオレだって、父さんとは敵対したくないから
ハロルドそう…
スタンおーい、カイル!まだかー?
カイルあ、今、行きます!
カイルそれじゃあね、ハロルド!
ハロルド…本当に大丈夫なのかしら?
scene1黄昏に陰る心
カイルふぁ、あ…おはよーございます…
スタンおっ、起きたな!朝ごはん、出来てるぞ
カイルう、ん…朝ごはん…
カイル──朝ごはん!?
カイルす、すみません!オレ、居候なのに全然手伝わなくて!
スタンいいっていいって。それにしても、カイルも朝が弱いんだな
カイルうぅ…。そうなんです…
スタン実は俺もなんだ…。朝起きられなくて、本当に困っちゃうんだよなぁ
スタンどうにかしなくちゃとは思うんだけどさ…
カイル父さんも…。そっか…オレの寝起きの悪さって本当に父さん似なんだ…
スタン…まあ、悩んでても仕方ないし、飯にするか!
カイルはい、いただきます!
スタンとは言っても、俺も起きたばかりだから大したものは作ってないんだけどな
カイルそんな事…!すごく嬉しい、です…
スタンはは、そうか?それじゃ、遠慮なく食べてくれ
スタンそれで、カイルはこれからどうするんだ?
カイル仲間の情報はハロルドが集めてくれるって言ってるんですけど…
カイルでも、じっとしていられませんし、オレも街で聞き込みをしようと思ってます
スタンそっか…。そうだよな。俺も友達とはぐれちゃったら居ても立ってもいられないと思う
スタンよし!そういう事なら俺も一緒に行くよ!協力するって言ったしな!
カイルえっ!?でも、そんなの悪いですよ!
カイル家に置いてもらってるだけでありがたいのに…
スタンそうは言うけど俺もカイルの事が心配なんだよ
カイル…オレ、そんなに頼りないですか?
スタンいや、そういうわけじゃないんだ。だけど、最近、咎人の話をよく聞くからな
スタン生誕祭で騒ぎを起こした咎人は脱走したらしいし、カルミナ街でも咎人が出たらしいんだ
カイル咎人…ですか
スタンああ。そんな状態だから、用心するに越した事はないだろ?咎人は、人を惑わすと言うし
スタン早く咎人が捕まってくれれば安心出来るんだけど
カイル……
カイル…オレ、やっぱり、一人で行きます!
スタンえっ?でも、街には入り組んだ通りもあって慣れてないと迷いやすいし…
カイルと、とにかくオレ一人で大丈夫ですから!ごちそうさま!
スタン…カイル、急にどうしたんだ…?
カイル…急に飛び出したりして父さん心配してるかな…?
カイルここは一回戻って、謝った方が…
カイルいや、駄目だ!深く関わるなってハロルドも言ってたじゃないか!
カイルそれに…
スタン早く咎人が捕まってくれれば安心出来るんだけど
カイル記憶を書き換えられている今の父さんにとって、咎人は悪でしかないんだ…
カイル少し距離を置かないと…
カイル…オレの今やるべき事は、リアラ達を捜す事。…とにかく聞き込みだ!
scene2黄昏に陰る心
カイル…迷った
カイルオレ、どっちから来たっけ?全然、覚えてない…
カイルはぁ…オレ、何やってんだろ。結局リアラ達の情報も、何一つ見つけられなかったし…
カイルジューダスの事だって早く助け出さなくちゃいけないのに…
男の子パパ、早く早く!
男の子の父親こらこら!あんまり急ぐと転ぶぞ!
男の子だったらパパが手、繋いでて!いいでしょ?
カイル…親子、か
カイルオレだって、今は父さんと一緒だけど…
カイルでも、今の父さんは本当の父さんじゃないんだよな…
カイル今の父さんにかけられた言葉も…背中の温もりも…
カイル父さんとの生活も…本当じゃないんだ
カイル…オレが、帰る場所なんて…
カイルやっぱり、このまま一人でも街を出てリアラ達を捜した方が──
???カイル、ここにいたんだな
カイル…!スタンさん…
スタンなかなか戻ってこないから捜してたんだ
カイルオ、オレをですか…?
スタン勿論。心配したんだぞ?さあ、家に帰って一緒に温かい飯でも食べよう!
カイル…それは…でも…
スタン……
スタン…なあ、カイル。ちょっといいか?
カイルえっ?
スタンカイルが仲間を心配する気持ちはわかる
スタンでも、同じように俺もカイルの事が心配なんだ
カイルオレの事が…
スタン何があったかは、今は聞かない。でもな、あんまり一人で抱え込みすぎるなよ
スタン俺もハロルドも、アスベル達もいる。辛い時は、頼ってくれていいんだ
スタンカイルは、一人じゃないんだからさ
カイル…!一人じゃ、ない…
カイル…はい。スタンさん、ありがとうございます!
スタンいいって。それじゃ、帰ろう!晩飯は気合入れるぞ
スタンあ、そうそう、明日は何を言われようと、カイルについていくからな
カイル父さんは…記憶がなくたってやっぱり父さんなんだ…
カイル偽物なんかじゃない…。むしろ、本当の事を言えてないのはオレの方だ…
カイル仕方がない事だってのはわかるけど…でも…!
カイル本当に…それでいいのかな…?
scene1信じる強さ
スタンよし、それじゃ、早速聞き込みをはじめるとしようか
カイルはい、そうですね…
スタンまあ、今のところ何の情報もないから地道にやるしかないな
スタン絶対に、カイルの仲間の情報を見つけような!
カイル……
スタンうーん…やっぱり簡単には見つからないな…
スタン少し休憩にするか。ご飯も買ってきた事だし
カイルはい…
スタンほら、カイル。近くの屋台で買ってきたんだけど美味いんだ、これ!
カイルあ、はい…。ありがとうございます…
スタン…なあ、カイル。どうしたんだ?どうも今日は、元気がないというか…
スタンもしかして、お腹でも痛いのか?
カイルち、ちがうんです!えっと、その…仲間達の事が心配で…!
スタン…そうだよな
スタンなあ、カイルの仲間ってどんな人達か、聞いてもいいか?
カイル…あ、はい、勿論…
カイル一緒に旅をしていたのは、ハロルド以外だとリアラとソフィっていう女の子で…
カイルみんな…オレの大事な仲間なんです
カイルソフィは、身体は細いけど、すっごく強いんですよ
カイル自分よりずっと大きな魔物もどかんと殴り飛ばしちゃうし、頼りになる子なんです
スタンへぇ…すごいんだな!もう一人の仲間…リアラだっけ?そっちはどんな人なんだ?
カイルリアラは…オレにとって一番特別な子です
カイルとにかくすっごく可愛いんだ!オレの夢も応援してくれるし…
カイルリアラと出会えたから、今のオレはここにいるんです…だから…!
カイル何があっても絶対にオレはリアラを守るって決めたんです!
スタン…そっか。とても大事な人なんだな
カイルはい!
スタンやっぱりカイルはすごいな…
カイル…え?
スタンその歳で、守りたい人がいて…守るっていう覚悟もある。それってすごい事だと思うぞ?
スタンなかなか出来る事じゃないよ。もしかして、その歳で旅をしてるのもリアラって子のためなのか?
カイル…いえ。オレには、オレのための旅をする理由があるんです
カイルオレ…父さんに憧れてて…
カイルオレの父さんはすごいんです。英雄として、みんなに尊敬されてて…
カイルそれに…実際に会ってみると、強くて優しくて温かくて…
カイルオレ、そんな父さんと同じように旅をして…
カイル父さんのような、英雄になりたいんです
スタン…そうか。息子からそんな風に尊敬してもらえるなんて父親は嬉しいだろうな
カイルそう…なのかな?
スタンそりゃそうさ
スタン少なくとも、俺にそんな息子がいたらすごく嬉しいと思う
カイル…ありがとうございます。すごく…すごく嬉しいです。でも…
カイル……
スタン…。カイル、このあとちょっと俺に付き合ってくれないか?
カイルへっ?は、はい…それはいいですけど…?
スタンよかった!実は街はずれに俺のお気に入りの場所があるんだ
スタンきっといい気晴らしにもなると思うから。さぁ、行こう
scene2信じる強さ
スタンほら、カイル。着いたぞ
カイルここが…スタンさんのお気に入りの場所…
スタンいいところだろ?何だかここだけ、時がゆっくり流れているような感じがして…
カイルはい。わかる気がします…
スタン…なあ、カイル。もし、悩み事があるなら俺に相談してくれよ
スタン俺を父親だと思ってさ。男同士、腹割って話そう!
カイルスタンさん…
カイル…実はオレ、大切な人にずっと隠し続けてる事があるんです
カイルその人は、オレにとってかけがえのない人で…オレにすごくよくしてくれるんです
カイルでも、だからこそ、秘密を隠し続けている事が辛くて…
スタン…それでも隠してるって事はそうしなきゃならない事情があるって事か?
カイル…はい
カイル秘密を話したら、きっと今のままの関係じゃいられないから…それが、すごく怖くて…
カイルそれに、その秘密を話してしまうと捜している仲間達にも迷惑がかかってしまうかもしれなくて
カイルでも、秘密を隠したまま付き合うだなんて本当に正しい事なのかな…?
スタン……
カイルって、こんな事言われてもスタンさん、困っちゃいますよね…
スタンそんな事ない。俺、難しい事はあんまりわからないけど…
スタン大事なのは、「正しい」と信じる心の強さじゃないかな
カイル信じる心…?
スタンカイルは誰かを傷つけるために隠し事をしてるんじゃないんだろ
スタンそんなカイルの信じる相手ならその気持ちをわかってくれるはずだ
スタン少なくとも俺なら、絶対に嫌いになったりしない!
カイルスタンさん…
スタンだから、その相手を信じて──相手を信じた自分を信じるんだ
スタンそうすれば、自分にとって本当に「正しい」と信じられる事がわかると思う
カイル相手を信じたオレを信じる…
カイル……
カイル──わかりました。オレ、もっと考えてみます!
スタンああ。でも考えて考えて、わからない事があったら…
スタン俺でもハロルドでも、誰でもいい。ちゃんと頼ってくれよな
スタン最後はきっと上手くいくからさ!
カイル…はいっ!ありがとうございます
ハロルドあ、いたいた!もう、大人しくしてなさいって言ったでしょ!
カイルハロルド!?そんなに慌ててどうしたの?
ハロルドはぐれた仲間の情報が手に入ったの!
カイルほんとに!?詳しく教えてよ!
スタンよかったな、カイル!
カイルはい!
ハロルド…と、その前に急いだから喉が渇いたわね…
ハロルドスタン、飲み物を用意してきてくれないかしら
スタンお、おお!わかったよ
ハロルドさてと、今の内に話したい事があるの
ハロルド旧市街に黒髪で細身の少年がいるらしいの。二本の剣を使うって話よ
カイル黒髪…二本の剣…それってもしかしてジューダス!?
カイルあ、いや…でも、それだけでジューダスだって判断するのは…
ハロルドそれから目つきが悪くって、ずっと不機嫌そうな顔をしてて、話しかけるとさらに不機嫌になるとか
カイルジューダスだ、間違いない!
カイルあれ…?でも、ジューダスは未来の世界で結晶に包まれたはずだよね…
カイルって事は別の人なんじゃ…?
ハロルドそれがそうとも限らないのよ。言ったでしょ、この新世界は元世界を土台に創られてるって
カイルう、うん…えっと…マナ計測だかをして、確かめた…んだっけ?
ハロルドそ。ただ土台にすると言っても何らかの方法で元世界の情報を取得しなきゃいけないはずなのよね
ハロルドそんで、世界を創り変えるなんてとんでも現象を起こすんだから、それ相応の前触れがあったはず
ハロルド結果には必ず原因が付随するわ。私達が今まで知り得た情報の中で原因に足り得るものと言ったら…
カイルちょ、ちょっと待って!難しくてよくわからないよ!
ハロルドもう、しょうがないわね。つまり、あの結晶がこの世界を創りあげた犯人で…
ハロルドそんでジューダスも、結晶に覆われた事で、こっちの世界に来ている可能性があるって事よ
カイルなるほど!つまり、旧市街に行けばジューダスに会えるって事だよね!
ハロルドま、あくまでも可能性だけどね。会いに行ってみる価値ぐらいはあるんじゃないかしら
カイルそれなら迷う必要なんてない。…行ってみるよ、旧市街へ!
scene1解き放たれる想い
スタン着いたぞ、カイル。ここが旧市街だ
カイルここに、ジューダスが…?
カイル…何か思ってた以上に寂しそうなところですね
スタン今は誰も住んでいないからな。俺も、旧市街に来るのは初めてだし…
スタン…でも、何でだろう…この街並み、何か懐かしい感じがするんだよなぁ
カイル確かに…言われてみればオレも見覚えがあるような…
スタン…まあ、いいや。今はそんな事よりカイルの仲間を捜さないとな!
カイルは、はい!ありがとうございます!
スタン人影一つないし、誰かいればすぐわかると思うんだけど──…ん?あそこに誰か…
カイルジューダス…!?おーい、待ってくれよ!
スタンあっ、おいカイル!一人で行くなって──
???……
カイルジューダス!
カイル…って…あれ…?ジューダスじゃ、ない…?
???…うるさい奴だな。向こうへ行け。人違いだ
カイルた、確かに仮面もしてないし、雰囲気も何か違う気がするけど…でも…
カイルねぇ、本当にジューダスじゃないの?もしかして、記憶改変の影響で何か…
???記憶だと…?お前、まさか…
スタンやっと追いついた。カイル、この人がお前の捜していた「ジューダス」なのか?
???…!
スタン…な、何か睨まれてるぞ、俺。えっと…ジューダス?
???…二人そろって何だ。そんな名前など聞いた事がない
リオン僕の名前は…リオンだ
スタンそうか、人違いだったのか。残念だったな、カイル……カイル、どうしたんだ?
カイルリオン…って。もしかして、あのリオン・マグナス…?
リオン…何?
スタンん?ジューダスではないけど、カイルの知り合いなのか?
カイルあ、いやその…父さんの親友に、同じ名前の人がいて…
リオン…お前は…
スタンへー、あのすごい親父さんの。って事は、リオンもすごい人なのか
リオン…何だ、その手は
スタン何って、握手だよ。俺はスタン、よろしくな!
リオン…ふん。相変わらず能天気な奴だ
スタン相変わらず…?俺、お前とは初めて会ったと思うんだけど…
スタン…でも、何でだ…?何だか、前にも会った事があったような気が…
リオン……
リオン…話にならんな。これ以上、お前達の相手をするつもりはない
スタンお、おい!ちょっと待てよ!もう少し話ぐらい──
リオンそんな暇、僕にはない
スタンあ、おい!待ってくれって!
リオン…!いい加減にしろ、いつだってお前はそうだ!
スタンいつだって…?
スタン…リオン、何言ってるんだ?俺達、初対面だろ…?
リオン……
リオン──いや、違う。僕はお前を知っている
リオンこうしてお前を前にしたら嫌でも思い出す…その、能天気で図々しい性格を
スタン…?さっきから何を言ってるんだ…?
カイルまさか…リオンさん、あなたは…
リオンああ、そうだ。僕は咎人だ。だからどうした?
スタン咎人…!なら放っておく事は出来ない。ここで捕まえる!
リオンそうか。だが、お前に付き合う義理はない
スタン待て、リオン!このまま逃がすわけには──
リオン近寄るな。これ以上、僕に近寄るようなら…
シャキン…
カイルえ…!?リオンさん!?どうして剣を抜く必要が…!
スタン……。出来れば手荒な真似はしたくなかったけど…
チャキ…
カイルス、スタンさんまで…!
リオン…くだらん。さっさと片づけてやる
スタンそう簡単には行くものか!
カイルこのままじゃ…このままじゃ二人が戦う事に…!本当は親友同士なのに!
カイルオレは…オレはどうしたらいいんだ…?
カイルあの二人が戦うなんて、絶対に正しくないのに…!
スタンそうすれば、自分にとって本当に「正しい」と信じられる事がわかると思う
カイル自分が「正しい」って信じられる事…
カイル……
カイルそんなの、もう決まってる…!
カイル二人共…待って!
scene2解き放たれる想い
カイル待って、リオンさん!剣を収めてください!
スタン何をしているんだ、カイル!リオンは咎人だ、それ以上近付くな!
カイル…!スタンさん…違うんです、これは──
リオン……
リオン…何故、スタンに味方する?お前も咎人だろう?
スタンえ…?
カイル……
スタン嘘だろ…いや、嘘だ!それこそ、咎人の妄言に決まってる…!
カイル…ううん、リオンさんの言う通りなんです。オレは…咎人です
スタンなっ…!そんな…どうして…
スタン…どうしてだ?どうして嘘をついてたんだ…?
スタン短い間だったけど俺はカイルの事を本当の家族みたいに思ってたんだ!
スタンそれなのに…何で…!
カイル…スタンさん。今まで黙ってて、ごめんなさい
カイルオレもスタンさんと同じ気持ちです。スタンさんの事、本当の家族だって思ってた…
カイルずっと、このままスタンさんと一緒にいられたらなって
カイル…だから、本当の事が言えなかった。オレが咎人って事を話したら、この関係は壊れちゃうから…
スタン…………
カイルでも、「自分と相手を信じろ」って言ってくれたスタンさんの言葉…
カイルあの言葉があったから、オレは決意出来たんです
スタン俺の言葉が…?
カイルはい。咎人だって事が知られたらもう今のままじゃいられなくなるってわかってました
カイルだけど…だから黙ってるっていうのはやっぱり違うって思って
カイルもしこれで咎人として追われる事になっても…オレは後悔なんてしません
カイルオレは…オレが信じた「正しい」と思う事をして仲間達を助けます
カイルそれがきっと…英雄なんだ!
スタンカイル…
リオン……
ギャオオオッ!
カイルな、何?魔物!?どうしてこんなところに…!?
リオン…人のいなくなった街は、格好の住処だったというわけか
リオンまずは先にこいつらを片付ける必要がありそうだ
カイルくっ…!こんな時に!
scene3解き放たれる想い
カイルはあっ!
ザシュ!
リオンふっ…!
ザシュ!ザシュ!
リオン…面倒だな。数ばかり多くてきりがない
カイルくそ、このままじゃ…!
スタンくっ…
カイル……
カイルスタンさん…!スタンさんはあの時、オレを信じるって言ってくれました
カイルだから、今度はオレがスタンさんを信じます!
スタンカイル…一体何を…
カイルこっちはオレ一人で食い止めます!その隙に、二人は魔物の手薄なところを切り開いてください
スタンなっ…!カ、カイル!
スタンまさか、あの数の魔物を一人で相手する気なのか!?そんなの無茶だ…!!
スタン…けど…カイルは…咎人、で…
リオン……
リオンカイル…と言ったか。あいつ、少しも後ろを警戒していないな
リオンお前に後ろから斬られるとは微塵も考えていないんだろう。全くおめでたい頭だ…
スタンカイル…。お前は、俺を信じて…
スタン…!
スタンうっ…何だ…?一体何が──…
スタン…ゼロス、お前しかいないんだ
スタンお前なら絶対に開けられるって、俺は信じてる。だから、…ここは頼む!
スタンみんな、行こう!急がないと…!
スタン…今のは…?何なんだ…ゼロスって誰だ…
スタンぐっ…頭が…!
カイル…っ、スタンさん!?どうしたんで──っ、しまった…!
ザシュ!
リオン戦闘中に余所見をするな
カイルリオンさん…!ありがとうございます!
スタンカイル…リオン…ぐうっ!ま、また…!
スタン大丈夫か、スレイ!
スレイああ、助かったよ。ありがとう、スタン
スタン気にするな。互いに助け合わないと
スタンく、ぅ…!
スタンまたさっきと同じ…!これは、いつの話だ…?俺は…俺はこんなの知らない…!
カイルリ、リオンさん!スタンさんの様子が…!
リオンまさか、記憶を取り戻しかけているのか…!?
カイル記憶を…!?
スタンはぁ…はぁ…俺、どうしちゃったんだよ…
スタン頭の中に、知らない人達が…知らない、俺自身の言葉が、どんどん浮かんでくる…
スタン俺は…俺って、いったい…!
カイル──スタンさんっ、オレ、信じてますから!
スタン…!カイル…?
カイルオレは何があってもスタンさんを信じ続けます…!
カイル記憶があってもなくても…スタンさんの心は変わらない事、オレは知ってますから!
カイルだから…絶対に、大丈夫です!
スタン俺を、信じて──……うっ!
スタン心配いらないさ。ゼロスなら、必ずやってくれる
スタンああ見えてやる時はやるし、頼りになる奴だって事、俺は知ってる
スタン俺はゼロスを信じてる…!だから、絶対大丈夫だ!
スタンそうだ…俺は…
カイルこのぉぉぉ!
リオンはぁぁっ!
カイル…はぁはぁ、ちょっと数が多すぎるな。このままじゃ、不味いかも…
カイル…くっしまっ──
スタンさせるかああっ!
ズバッ!!
スタン悪い、遅くなった!
カイルスタンさん…!
スタン最後はきっと上手くいく…。ははっ、俺が言った言葉だったな。けど本当にその通りになったみたいだ
スタンありがとう、カイル。お蔭で全部思い出せた!
カイル記憶を…!よかった…本当に…!
スタンリオン、協力してくれ!三人で追い払おう!
リオン全く…手のかかる奴だ
スタンははっ、迷惑かけたな。でもいつもの事だろ?
リオン…ふん。そうだな、お前はそういう奴だ。ならいつも通り、さっさと片づけるぞ
スタンああ!カイルもいけそうか?
カイルは、はい!大丈夫です!
スタンそれじゃ、一気に倒すぞ!
scene1取り戻したもの
リオン…ふん。数は多かったが、大した事はなかったな
スタンリオンがいてくれたお蔭だよ。それと…
スタンカイル、ありがとう
スタンあの時のカイルの言葉がなかったら俺は今でもカイルの事もリオンの事も全部…忘れたままだったと思う
スタン俺を信じてくれて本当にありがとうな
カイルスタンさん…よかった…!オレ…!
スタンカイル…泣きそうじゃないか
カイルし、仕方ないじゃないですか。スタンさんが思い出してくれた事が嬉しかったんですから…!
スタンはは…心配かけたな
スタンでも…どうして急に記憶が戻ったんだろうな?
リオンおそらくだが…何らかのきっかけで元世界の記憶が刺激されたんだろう
スタン…なるほどな。そう言われてみると、わかるような気がするよ
スタン俺も、カイルの行動を見て、仲間達と一緒に天帝の御座に乗り込んだ時の事が蘇ってきたんだ
スタンきっと、それがきっかけだったんだと思う
カイルお、オレの行動がですか?
リオンあの向こう見ずな行動がきっかけになるとは、わからないものだな
スタン向こう見ずだなんて言ってやるなよ。あの時のカイル、かっこよかったじゃないか
カイルか、かっこいい…
スタンだいたい、そういうリオンは記憶を取り戻したきっかけって何だったんだ?
リオン……話す気はない
スタン何だよ、別に隠す事じゃないだろ?
リオン…何故、僕がそこまで話さないとならない。お前には関係な──
ギャオオオッ!
カイル魔物…!?まだいたのか!
スタン仕方がない。この話は後回しだな!
リオン…くどい!話すつもりはないと言ってるだろう!
リオン…全く、話すわけないだろう
リオン図々しくて能天気な奴に助けられたあの出来事が、僕の記憶を取り戻すきっかけになったなんて…
scene2取り戻したもの
スタンよし、魔物は退治出来たし…これから、どうする?
カイルえっと…ハロルドへ報告したいんで一度アルメリアに戻りませんか?
スタンそうか。そういえば、ハロルドも記憶があるのか?
カイルあ、はい!それどころかこの世界の調査をやってくれてるみたいで…
スタンだったら、ちゃんと報告しとかないとな!アルメリアに戻ろう!
リオン…そうか。では僕は別行動だ
スタン何だよ、リオン。せっかく合流出来たんだから一緒に来ればいいだろ?
カイルスタンさんの言う通りですよ!オレ達と一緒に行きましょう!
リオン僕にだってその前にやるべき事がある。協力は、その後だ
カイルやるべき事、ですか?
リオン「立入禁止区域」の調査だ。元々、旧市街まで来たのもそのためだからな
カイルえっ、立入禁止区域ってこの近くにもあるんですか?
リオンああ、街の外れで見た。白き獅子が警備していて近付けなかったがな
リオン…それよりカイル。「この近くにも」というからには、他の立入禁止区域を知っているのか?
カイルあ、はい。実は、ここに来る前に森の中で立入禁止区域を見たんです
カイルここからだと、ちょっと遠いけど…
スタンああ、トイマイの森か。そういえば、そこでカイルと会ったんだったな
リオンなるほど…。それならば、そっちも調べてみよう
カイルでも、立入禁止区域ってそもそも何があるんだろう?リオンさんは何か知ってるんですか?
リオンそれがわからないから調査をするんだ。少しは自分の頭で考えろ
カイルうぐ…その言い方、やっぱりジューダスに似てる…
リオン何をわけのわからない事を…そもそも、僕達はまだこの世界がどうなっているかも知らないだろう
スタン確かになぁ…天帝が関わっているんだろうな、っていうのは、わかるんだけど…
リオン天帝が…?根拠はあるのか
スタンああ、実は…
カイル天帝の目覚めを防ぐために戦った…そんな事が…
リオンだとすると…この世界が生まれた事自体、天帝の仕業という可能性もあるか…
カイル…そういえば、ハロルドもこの世界は創り変えられた世界だって言ってました
リオン創り変えられただと…?…やはり不明点が多すぎる
リオンその謎を少しでも解くためにも、僕は立入禁止区域を調べてくる
リオン天帝が見張りまで立てて人を近寄らせまいとしている場所だ
リオンこの世界について何かしらの鍵になる事は間違いないだろう
スタン鍵ねぇ…だったら、みんなで調査すればいいんじゃないか?
リオンあまり目立ちたくないからな。一人の方が都合がいい
リオンそれに、スタン、お前が何か失敗した時にも、別動隊がいた方が支援に入りやすい
スタン何だよ、俺が絶対に失敗する、みたいに言うなって
リオン別に何も間違ってないだろう。大体お前はいつも──
カイルストーップ!ケンカはやめてください!
リオンむ…
スタンけ、ケンカはしてないぞ?リオンとは、いつもこんな感じだし
カイルええ?そんなものなんですか?もっと親友って感じかと…
スタンまぁ、じゃあとりあえず…リオンが立入禁止区域を調べるなら俺達は別方面を当たってみるよ
リオン…ほう。何か手掛かりがあるのか
スタン手掛かりっていうわけじゃないけど…まずは、スレイ達の行方を捜したいと思ってる
カイルスレイさん…スタンさんと一緒に天帝達と戦った仲間ですね!
スタンうん。みんなと合流出来ればきっと打開策だって見つけられると思うんだ
リオン…わかった
リオン調査が終われば僕も合流するつもりだ。それまでせいぜい、上手くやるんだな
スタンわかってるよ。心配してくれるなら、そう言えばいいのに…
スタン全く…リオンは本当に素直じゃないなぁ…
リオンうるさい!僕はもう行くぞ
カイルあ、はい!リオンさんも気を付けて!協力してくれて、ありがとうございます!
スタン…さあ、俺達は一旦戻るか
カイルはい!
scene1小さな英雄
カイルただいま、ハロルド!
ハロルド遅い!私をこんなに待たせるなんて覚悟は出来てるんでしょうね~?
カイルご、ごめん…!えっと、その…いろいろあって…
ハロルドふーん…ま、いいわ。とりあえず、報告を聞きましょうか
カイルあ、うん。ジューダスについてだけど…噂の人は、ジューダスじゃなかったよ
カイルリオンっていう、スタンさんの知り合いだった
ハロルドそう…でも、だったら噂の段階でスタンにも見当がついてたんじゃない?
スタンいや、知り合いだったのは元の世界での話だ。この新世界では、初対面だったよ
ハロルドなっ…!スタン、あなた記憶が戻ったの?
スタンああ、カイルのお蔭でな!
ハロルドカイルのお蔭…?あんた一体、何をしたのよ?
カイルいや、それは…何というか…
スタンカイルが俺を信じてくれたんだ!
ハロルドちょっと意味がわからないわ。詳しく説明して
カイルう、うん…
ハロルドはあー。じゃあ結局、私が言った事は全然守れなかったって事ね
カイルうっ…ごめん…
ハロルドま、別にいいわ。私もカイルが我慢し続けられるなんて思ってなかったし
ハロルドカイルっぽくていいんじゃない?
カイルえ?どういう意味さ
ハロルドあんたがアホって事。悪い意味じゃなくてね
カイルな、何だよ!悪い意味じゃないアホって!
ハロルドでも…記憶への刺激がきっかけになるのなら、他の人間にも何か出来る事があるかも…
カイル何かいい方法が思い付いたの!?
ハロルドまだ、わからないけどね。でも、調べてみる価値はありそう
ハロルドそれにしても、まさか元世界の過去の時代で、そんな事があったなんてね…
スタン俺も驚いたよ。まさかカイル達が未来の人間だったなんて…
スタンあ。もしかして、未来の俺にも会った事あるのか?
カイルえ!?えっと、それは…
ハロルドはいはい、脱線しないの。「晶化現象」に「立入禁止区域」と話す事は山積みなんだから
ハロルド私達のいたところで起こった現象も「晶化現象」だったんでしょうしね
カイル結晶に包まれても生きてるんだよね!それならジューダスも無事って事だよね?
スタンああ。きっと大丈夫なはずだ
カイルよかった…
ハロルド解決はしてないけど、とりあえず命に別条はないって事ね
ハロルド「立入禁止区域」については、ちょっと気になるし、私の方でも調べてみるわね
カイルうん。リオンさんも、そこに何かしらの鍵があるんじゃないかって言ってた
ハロルド鍵ねぇ…確かに、隠しておきたい「何か」があるのは疑いようがないわね
ハロルド記憶の戻し方に、立ち入り禁止区域…グフフ、忙しくなるわ~
カイル調査はハロルドに任せるとして…それじゃあオレ達は──
スタン天帝に反撃、だな
カイル天帝…この新世界は、天帝と、ヴァンって奴が創ったものなんですよね?
スタンああ、俺達は奴らを止める事が出来なかった…
スタンけど、もう奴らの好きにはさせない!
ハロルドふむふむ。それじゃあ天帝に反撃するためにも、スタンの目標は仲間捜しってところかしら
スタンああ。スレイ達と合流して打開策を考える
スタンスレイ達は一緒に戦った仲間…みんなだって俺と同じように思うはずだ
スタンなのに、記憶を改変されてその想いすら忘れているとしたら…早く記憶を取り戻させてやらないと
カイル仲間捜し…
カイル…ねえ、ハロルド。咎人だってバレる危険とか、いろいろあるのはわかってきたけど…
ハロルドいいんじゃない?スタンと一緒に、行ってきなさいよ
ハロルド私はここで研究を続けるから、リアラ達の事はよろしく頼むわ
カイル…え?
ハロルドあれはやるな、これはやるなってうるさく言ってきたけど…もういいわ。あんたに任せる
カイル…!い、いいの?
ハロルドスタンもいるしね。まぁ、危なっかしいのは変わらないけど…
スタンえー。そうかぁ?
ハロルドま、何とかするのがあんた達でしょ。アスベルとリチャードの記憶も気がかりでしょうけど…
ハロルドその辺りは全部私に任せて、あんた達は仲間を捜しにいってらっしゃいな
カイルう、うん、わかったよ!リアラ達の事は俺に任せて!
スタン…けど、本当にいいのか?いろんな事をハロルド一人に任せちゃう事になるけど…
ハロルド何言ってんの。あんた達に、足を使わせずに頭を使わせてどうするのよ
ハロルド自分に出来る事をやるのが一番。特にカイル。ぼさっとしてる暇はないわよ?
カイルえ、どういう意味?
ハロルド咎人の少女が目撃されたのよ。場所はナムザ街、スタンは知ってるでしょ?
スタン知ってるけど…その咎人の少女って、もしかして…
カイルリアラだ!
ハロルドそうとは限らないけど、他に手掛かりがないのなら行ってみて損はないと思うわ
カイルうん!そうするよ!
スタンじゃあ、まずはナムザ街に向かうとするか
スタン他の仲間の情報を集めるためにも、いろいろな街へ行ってみるのはいい手だと思うし…
スタン何より、カイルの仲間の事は気がかりだからな
ハロルド頼んだわね。それじゃあ私は、研究に戻るとするわ
カイルえ?見送りもナシ?
ハロルドそんな暇がどこにあるのよ。仲間の記憶を取り戻して、立入禁止区域を調べて…
ハロルドおまけに、世界を元に戻すっていう仕事まであるんだからね
カイル世界を、元に…!?ハロルド、そんな事出来るの!?
ハロルドまあね。スタンの話を聞いて確信を持てたわ
ハロルド言ったでしょ?この世界は、元の世界を土台にしてるって
ハロルドスタンがその証拠。別人になったわけじゃないから、こうして記憶も戻った…
ハロルドそれって、全世界を元に戻す事も出来ると思わない?
カイル言われてみれば、そんな気が…。すごいや、ハロルド!
ハロルド褒めるのはまだ早いわよ。もっと研究を進めて、確実な方法を導き出してやるんだから
ハロルド見てなさい。この天才に不可能はないって事、天帝とやらに見せつけてやるわ!
スタンはは。これは本当に、反撃の方法が見つかるかもしれないな
カイルはい!それじゃあ、そっちは任せるね!ハロルド!
scene2小さな英雄
カイルそれじゃあ…ナムザ街に向かいましょう!
スタンああ!っとその前に…リチャードとアスベルにも挨拶しないとな
カイルあ…そうですよね。でも、店にはいないようでしたし、少し街を捜して──
リチャードスタン、カイル!こんなところでどうしたんだ?
カイルあっ!リチャードさん、アスベルさん!ちょうどいいところに!
アスベルどこかに出かけるのか?
カイルはい、仲間の手掛かりが見つかったんです。だから、捜しにいこうと思って…
カイル二人にはお世話になりました!ありがとうございます!
リチャードいや、むしろ何も出来なくてすまない…
カイルそんな事ないですよ!それに、ハロルドも引き続き居候させてもらうし…
リチャードなるほど、手分けするわけか…
リチャード店の事なら気にしなくていいさ。むしろ、仲間を見つけたら是非連れてきてくれ
リチャードカイルの仲間には僕も会ってみたい
カイルリチャードさん…ありがとうございます!
アスベルスタンも一緒に行くのか?
スタン…ああ。カイルの手助けをしたくてさ
アスベルそうか…。二人がいなくなると寂しくなるな
リチャードそうだな…。だが、カイルの仲間を捜すためだ。応援しているよ
アスベル目的を果たしたらいつでも戻って来いよ
カイルはい、ありがとうございます!
スタンそれじゃあ、行ってくる!
カイル…あの二人も、元の世界での記憶は持ってないんですよね…
カイル元の世界と同じで、仲がいいままなのはよかったですけど…
スタンそうだな…
スタンなあカイル。二人のためにも、絶対に元の世界を取り戻そうな!
カイルはい!そのためにもナムザ街に急がなきゃ!
スタンあ、カイル!足元をよく見──
カイルうわぁぁ!
カイルいたた…
スタンだ、大丈夫か?ほら、俺の手に掴まって──
カイル…いえ
カイル大丈夫です。オレ、一人で立てますから
スタン…そうか。うん、余計な心配だったな
スタンそれじゃあ、改めてナムザ街を目指そう!
カイルはい!

NameDialogue
scene1秘境の石盤
ミクリオガイ、クレス。ここから先は何があるかわからない。気を付けて進んでくれ
クレスうん。忠告ありがとう、ミクリオ。今のところは魔物の気配もないし、大丈夫だよ
ガイしかし、ずいぶんと登ったなぁ。その秘境とやらはまだ先なのか?
ミクリオああ、もう少しかかる。疲れたなら、一度休憩を…
ガイいや、俺は平気だ。ただ、お前が早く着きたいって顔してるもんだからさ
クレスあはは。確かに、街にいる時より生き生きしているみたいだね
ミクリオ…この辺りは、僕が知る限り、まだ本格的な調査がされていないんだ
ミクリオ未知の何かがあるかもしれないと思うと、つい気が急いて…ね
ガイやれやれ。ミクリオは本当にその未知ってヤツにご執心だな
ミクリオ…ん?ガイ、止まってくれ。君の足元の花を少し調べたい
ガイ何だ、お前が花を気にするなんて珍しいな
クレス僕にはただの花しか見えないけど…。これがどうかしたのかい?
ミクリオ
ミクリオこの花、図鑑で見た事がない種だ
ミクリオシロツメヤグルマソウの亜種か?いや、それにしては花弁の形が違う。という事は、やはりこれは…
ガイその花、そんなに珍しいものなのか?
ミクリオああ。これはおそらく新種だ
ミクリオこの植物を詳しく調べる事で、植物学だけではなく、薬学の進歩も望めるかもしれない
ミクリオこの発見は、ラザリス様の望む平和な世界にとって大きな意味を持つ可能性だってある
ガイなるほど…そいつはすごいな。うっかり踏み潰さなくてよかったよ
クレス本来の目的とは違うけど、ミクリオの調査が実を結びそうで僕も嬉しいよ
ミクリオ…それだけか?いつもはここでもっと、議論や推論を重ねて──
ガイいつも?俺達、議論なんてした事あったか?
ミクリオ…!
ミクリオあ…いや、何でもない……忘れてくれ
ミクリオ
ミクリオ…いつも付き合わせてしまってすまないな
クレスそんな水臭い事を言わないでくれよ。僕達は友達じゃないか
ガイクレスの言う通りだ。今さら、遠慮する必要なんてないさ
ミクリオ二人共…
ミクリオよし、もう少し先まで進んでみよう。さっきみたいな発見がまだあるかもしれない
クレスああ、行こう!
scene2秘境の石盤
クレスだいぶ奥まで進んで来たね
ガイそうだな…周囲の空気もどことなく重くなってきた気がする
ガイなあミクリオ、今回はそろそろ切り上げた方がいいんじゃないか?
ミクリオいや、もう少しだけ探させてくれ
クレス何か気になる事でもあるのかい?
ミクリオ…確証があるわけではないんだ。ただ、土が…
ガイ土?
ミクリオああ。この一帯の土は本来の山のものとは違うようなんだ
ミクリオ普通なら、局地的に地質が変わるなんて事は、まずありえない
ミクリオだが、自然物ではない何かの影響を受けたせいだという仮説を立てると、説明がつけられるようになるんだ
クレスなるほど。ミクリオは、その先を調べたいんだね
ガイ俺にはどこも同じに見えるが…
ガイま、ミクリオがまだ調べたいって言うなら、最後までとことん付き合うさ
クレスそうだね。土の調査に、つちあうよ!
クレス──なんてね
ミクリオ……
ガイえーと…じゃあ、とりあえずこの辺をもう一周してみるか
ミクリオあ、ああ…そうだな…
ミクリオとはいえ、闇雲に見て回るのは──
ミクリオ…!
ガイん?どうしたんだ?
ミクリオこれは…
ガイ泥だらけだが…石盤のように見えるな
ミクリオああ!これは間違いなく人工的に造られた物だ…!
クレスそうなのかい?僕にはただの平らな石に見えるけど…
ミクリオほら、表面にこびりついた泥を払うと…
クレスあ!何か紋様のようなものが…!
ミクリオやっぱり…。これは「人工遺物」だ
ガイ「人工遺物」…人が立ち入らないはずの秘境で、何故か見つかる謎の人工物、か
ミクリオああ。本に載っていなければ、説明出来る学者もいない
ミクリオけれどこの世界には、確実に複数の「人工遺物」が存在している
ミクリオこれもその一つだとしたら、間違いなく今日一番の大発見だ
ガイ…なあ、ミクリオ。その石盤と同じような物、この前の調査で見つけなかったか?
クレスああ、以前ミクリオが「螺旋模様の石盤」って名付けた遺物の事だね
ミクリオ…!そう言われれば、確かに似ているな…
ミクリオ見つかった場所が遠すぎるし、偶然だとは思うが…確証もなしに否定は出来ないな
ミクリオもし二つの石盤に関連性が見つかれば…人工遺物の研究が大きく進む事になるかもしれない
ミクリオ何にせよ、一度持ち帰って詳しく調べてみた方がよさそうだ
ガイまあ、何はともあれ、いいお土産が出来たな
クレスそれじゃあ、今日の調査はこの辺で終わりにしようか。遅くなると危険だしね
ミクリオああ、そうだな。そろそろ戻ろう
クレス今日はいい発見があってよかったね、ミクリオ!
ミクリオああ、二人共付き合ってくれてありがとう
ガイ…なあ、ミクリオ
ミクリオ何だい?
ガイ俺やクレスは、ただの一般市民だ
ガイレイザベールの貴族の常識とか、しきたりについてはよくわからない
ガイだから偉そうな事を言う資格なんかないってわかっちゃいるんだが…
ミクリオ…こんな風に好き勝手に遊んでいて大丈夫なのか、だろう?
ガイ…あー、まあ、そんなところだな
クレス実際どうなんだい?いろいろと話を聞いていたから、僕も気になっていたんだ
ミクリオその辺はローエンが上手くやってくれている。心配はいらない
ミクリオそもそも僕がやっている事は、決して遊びなんかじゃない
クレスうん。ミクリオが真剣に取り組んでる事はよく知っているよ
ミクリオ「人工遺物」の調査や研究は、いずれこの世界の発展に必要なものになる…
ミクリオ今はまだ成果は出ていないけれど、長い目で見れば、きっとラザリス様のお役に立つと思う
ガイそうか…。ま、問題ないならそれでいいんだ
ガイミクリオがそこまで考えて判断してるなら、大丈夫だろ
クレスそうだね。僕達はミクリオを応援するよ
ミクリオああ。これからもよろしく頼む
ガサッ
ガイおっと、話はここまでだな。そこの草むらに何かいるぞ!
ガルルルル!
ミクリオ魔物だ!行くぞ、二人共!
scene1優雅な?お茶会
ガイ思ったよりも早く、レイザベールに戻って来られたな
クレスそうだね。日が落ちるまでは、まだ時間がありそうだ
ミクリオそれにしても、外から帰ってくるといつも思うがこの街は本当に人が多いな…
ガイレイザベールは帝都に次ぐ大都市だからな
ガイ貴族も一般市民も大勢いるとなれば、にぎやかなのも無理はないさ
ミクリオん…?
貴族の男くそ!また入隊試験に落ちた!何故だ!俺の何が白き獅子に相応しくないって言うんだ~!
ガイ…ああいう輩まで「にぎやか」で済ますのは、ちょいとばかり難しいけどな
クレス荒れる気持ちもわかるけど、あまり感心は出来ないね
ガイあの家の当主は、今ごろ頭を抱えてるんだろうな
ミクリオ…貴族の間では、白き獅子の一員になる事を尊ぶ風潮があるからね
クレス白き獅子の騎士となり、ラザリス様にお仕えする事が、何より大事…だったっけ
ガイ実際その思想通り、白き獅子にはレイザベール出身の騎士がたくさんいるって話だからすごいよな
ミクリオああ。そうあるべきと努力して結果を残している点は僕も素直に尊敬する
ミクリオただ、武力ばかりを重視して、他を軽視しているところはあまり共感出来ないけど…
ガイおいおい。そんな事言ったらまずいんじゃないか?
ミクリオそうだな、気を付けるよ
ミクリオさてと。僕はこれから博物館に顔を出しに行くけど、君達はどうする?
ガイ一緒に行きたいところだけど、この後少し用事があってな
クレス僕も剣の稽古が…
ミクリオわかった。それじゃあ、今日はこれで
ガイああ、じゃあな
クレスまた何かあったら、声をかけてね
ミクリオ…さて、戻るとするか
ローエンお帰りなさいませ、ミクリオ様
ミクリオただいま、ローエン
ローエンそろそろお戻りになられる頃だと思っておりました。今日の首尾はいかがでしたか?
ミクリオ大収穫だった。新種の植物と、新しい人工遺物の回収に成功した
ローエンそれはそれは…よかったですね
ミクリオ博物館の方はどう…って、聞くまでもないか
ローエンええ。これまでにミクリオ様が収集された人工遺物の管理は、いつも通り万全です
ローエン展示物の入れ替えも、随時行っておりますよ
ローエンどれも倉庫の奥にしまい込んでおくには忍びない物ばかりですから
ミクリオ…そうやって展示物を入れ替えたところで、客が来るとは思えないけれど
ローエンいえいえ。こうして博物館を続ける事に、意義があるのですよ
ローエンミクリオ様の収集した品々は、市民の役に立っていると世間に周知する事が大事なのです
ミクリオああ、わかっている。だけど人が来ないんじゃ…
ローエンこれからでございますよ
ローエンいずれミクリオ様の調査と研究が実を結べば、この博物館にも大勢のお客様がいらっしゃいます
ローエンその日が来るまで、このローエン、老骨に鞭を打ち、ミクリオ様を支える所存にございます
ミクリオ…まあ、ここの運営については引き続きローエンに任せるよ
ローエンかしこまりました。この後はどうなさいますか?
ミクリオそうだな…まだ日も高いし、せっかくだから今日見つけた石盤の調査を…
アニスきゃわーん♪ミクリオ様、みーつけたー☆
ミクリオ…アニス
ローエンごきげんよう、アニスさん。ミクリオ様にどのようなご用でしょうか?
アニス今日は、約束をかなえてもらいに来ましたぁ
ミクリオ約束?
アニスえ~、忘れちゃったんですかぁ?アニスちゃんをお茶会に招待してくれる約束ですよ
ミクリオそんな約束をした覚えはないんだが…
アニスしましたよ!生誕祭の時に、しっかりと!
ローエン勿論、覚えておりますよ
ローエンしかし、日取りは特に決めてはいなかったかと存じますが…
アニスそうですけどぉ、いつまでも招待してくれないから直接来ちゃいました♪
アニス今日はご都合悪いですか?
ミクリオいや、特段用事はないが…。わかったよ、約束は約束だ。屋敷でお茶にしようか
アニスきゃわーん!ありがとうございますぅ
アニスそれじゃ、早速ミクリオ様のお屋敷に向かいましょう!
ミクリオ…すまないローエン。お茶会の支度を頼む
ローエンかしこまりました
scene2優雅な?お茶会
アニスはぁ…いつ見ても素敵なお庭ですねぇ
ミクリオローエンが丹精込めて整えているからな
アニスローエンさんの淹れてくれたお茶も美味しいですし、最高の気分です
ローエンほっほっほっ。お褒めに預かり、光栄です
アニスミクリオ様のお嫁さんになる人は、毎日このお庭を眺めて、美味しいお茶を飲めるんですねぇ
ミクリオそんなに庭園に興味があるなら、アニスも自宅の庭に作ったらいいんじゃないか?
アニス…もー!ミクリオ様のいじわるぅ!一般人には、こんな広い庭を持つ事すら難しいですよう!
ローエンおやおや、ミクリオ様にかかればアニスさんも形なし、ですかな?
アニス貴族ってみんなこんな感じなの?むむ、思った以上に手強い…
ミクリオ今何か言ったかい?
アニスいいえ、なーんにも!
アニスそれよりミクリオ様、知ってます?白き獅子の入隊試験に貴族がことごとく落ちてるって話
ミクリオああ、さっき街中で一人見かけたな。他にもそんなにいるのか
アニス生誕祭でのラザリス様襲撃の一件がきっかけで、白き獅子への入隊を志願する人が増えてるそうですよ
アニスで、一般市民の増員に対抗して、貴族もどんどん試験を受けようって動きになってるみたいです
ローエンとはいえ、白き獅子といえば、精鋭中の精鋭です。なかなかに狭き門と言えるでしょう
ミクリオ白き獅子は実力重視だからね。家柄だけではどうにもならないって事なんだろうな
アニス何だか他人事ですねぇ。ミクリオ様は志願しないんですか?
アニス貴族の方はみんな、白き獅子を目指すものだって聞きましたけど
アニスアニスちゃん、ミクリオ様が白き獅子の隊服を着ているところ、見てみたいです!
アニスきっとすごくお似合いでしょうねぇ。想像しただけで…うっとり♡
ミクリオ確かに、白き獅子としてラザリス様にお仕えするのも一つの道だと思う
ミクリオけれど僕は、別の方法でもラザリス様に…この世界に貢献出来ると考えている
アニスそれが、人工遺物の調査と研究、ですか?
ミクリオああ。人工遺物の謎の解明は、きっとこの世界の未来で役に立つ
ミクリオ僕は、ラザリス様の世界をよりよいものにしたいんだ
アニスむぅ…ローエンさんはそれでいいんですか?
ローエンええ、勿論。ミクリオ様のお志は尊いものですよ
ローエンミクリオ様のお考えが素晴らしいと感じたからこそ、私も全力でお仕えしているのです
ミクリオローエンには博物館や人工遺物の管理を一手に引き受けてもらって、いつも助かっている
ローエンいえいえ、これくらいミクリオ様の執事として当然の事です
アニスあ、博物館なら、アニスちゃんもよく行ってますよー
ミクリオ本当か…!?
アニスはい!いいですよね、博物館!
ミクリオそうか…!まさかアニスが人工遺物に興味があるなんて思わなかったよ
ローエンそうですねぇ。お蔭でミクリオ様とのお話も弾む事間違いありませんね
アニスふっふっふ、アニスちゃん結構勉強家なんですよ。可愛くて頭もいい!超お得物件です!
ミクリオアニス、よかったら君の感想を聞かせてくれないか?どの展示物に興味を引かれた?
アニスええと…全部、かな?どれも珍しくて、不思議だなーって
ミクリオ…じゃあ、他に何か気付いた事は?
アニスう、うーん…特には?その、掃除も行き届いていますしぃ、ごちゃごちゃしてなくて見やすいです
ミクリオ…そうか
アニスあれ?どうかしましたか?
ミクリオいや…何でもない
ミクリオ…ローエン、アニス。二人に聞きたい事がある
アニス何ですかぁ?このアニスちゃんに、何でも聞いちゃってください!
ミクリオ街の人々が、博物館や、陳列されている人工遺物をどう思っているか、教えてくれないか
アニスええと…それは…
ローエンそうですね…陳列されている人工遺物は、大半が日常的に目にするものが多いですから
ローエンただ並べているだけでは、ここでしか見られない、という特別感が少々足りないようです
ミクリオ初めて目にするような物もあるはずなんだが…
ローエンおそらく、何のために作られたかわからないため、価値が伝わりにくいのでしょう
アニスむぅ、確かに…。研究成果の資料も文字ばっかで取っ付きにくいですもんねぇ
ミクリオそうだったのか…。わかりやすくまとめたつもりだったんだが…
アニスはぅあ!あ、あれ、ミクリオ様が作ってたんですかぁ!?
ローエンおいたわしや、ミクリオ様…。夜なべして作られたというのに…
アニスえ、ええと…い、いっそ、ミクリオ様ご自身にまつわる物とかを展示したらどうでしょう!
アニスきっと、女の子のお客さんが山のようにやって来ますよ!
ミクリオ僕の事を知ってもらっても何の意味もないだろう
ミクリオ…はぁ。難しいものだな
ミクリオ人工遺物から得られた知識は、きっと世の中を発展させ、よりよい世界を作り上げるだろう
ミクリオそうする事が、ラザリス様の望む「永遠に続く平和と幸福の世界」へ繋がるはずだ
ミクリオそのためには、人工遺物の知識がもっと世の中に浸透しなければならない
ミクリオなのに、どうして誰も知ろうとしないんだ。僕だったら、毎日通い詰めてでも勉強するのに…
ローエン…それは、ミクリオ様が興味を持つ事と、他の方が興味を持つ事が異なるからですよ
ローエン大事な物や根幹にある価値観は、人によって大きく違うものです
ローエンその違いを踏まえた上で、どう工夫したらいいかを考えるのが、大切なのかもしれませんね
ミクリオそうだな…それは今後の課題にしよう
ローエンええ。ミクリオ様なら、きっと出来ますよ
アニス頑張ってくださいね!アニスちゃんも応援してますから!
ミクリオああ。ありがとう、二人共。期待に応えられるよう努力する
ローエンアニスさんはお帰りになりましたか
ミクリオああ。門のところまで送って来た
ローエン素晴らしい。女性の扱い方も板についてきましたね
ミクリオからかわないでくれ。僕はただ礼を尽くしただけだよ
ローエンほっほっ、その一見簡単な事が、とても大切なのですよ
ローエンああ、そういえば、ミクリオ様にお手紙が届いておりましたよ
ミクリオ誰からだ?
ローエンそれが、差出人の名前が書かれておらず…。申し訳ありませんが、先に内容を確認させていただきました
ローエンそれで、その内容ですが…どうも人工遺物の事について書いてあるようです
ミクリオ何だって…?
ローエン私には詳しい事はわかりませんでしたが、ミクリオ様ならあるいは…
ミクリオそうか。わかった、早速読ませてもらおう
ミクリオ……
ミクリオこれは…!
ミクリオすまないローエン、今すぐ部屋に戻らせてもらう
ローエンミクリオ様…?
scene3優雅な?お茶会
ミクリオローエンの言う通り、この手紙は人工遺物について書かれている。…それも、僕の知らない事ばかり
ミクリオ気になる事は多いが…何はともあれ、検証が必要だな
ミクリオ…まずはこの人工遺物。僕では用途がわからなかったが…
ミクリオふむ…古に作られた仕掛け箱で、特定の手順で開く事が出来る、か…
ミクリオここを、こうして…最後は…
ガチャ!
ミクリオ…!本当に開いた…!
ミクリオすごい…。手紙の主は、どうやってこんな事を…
ミクリオこうしてはいられない、他の人工遺物も検証をしなければ…!
ミクリオ…何という事だ。どの人工遺物についても、新事実ばかり…
ミクリオ手紙の主は、一体何者なんだ…
ローエン失礼いたします、ミクリオ様
ミクリオローエン?何かあったのか?
ローエン熱中出来る事があるのはよい事ですが、少しは休憩を挟まなければお身体に障りますよ
ローエンお茶をお持ちいたしましたので、一息つかれてはいかがですか?
ミクリオ…そんなに時間が経っていたのか。ありがたくいただくよ
ローエン…ずいぶんと夢中になられていたようですが、手紙の内容と何か関係が?
ミクリオああ、この手紙に書かれていた事は全て正しかった
ミクリオしかもどれも、少し見ただけでわかるようなものじゃない
ミクリオそれこそ制作に携わった者か、実際に触れて調べた者じゃないとわからない情報だ…
ミクリオ送り主の知識には本当に驚かされる
ローエンそれはそれは…
ミクリオ持ち主の僕ですら気付かなかったのに手紙の主は一体どうやってここまで詳しく知る事が出来たんだ?
ローエンさて…私には皆目見当もつきませんが…
ローエンそういえば、二枚目には壁画について書かれていたはずですが…。そちらも正しい情報だったのですか?
ミクリオ二枚目?ああ、そういえばそっちはまだ読んでいなかったな
ミクリオこれは…これから調べようと思っていた螺旋模様の石盤について書かれてある
ミクリオ……
ミクリオ…!まさか、この壁画の一部だというのか…?
ローエンほう…壁画、ですか
ミクリオ見てくれ、全体像が描かれている。手描きにしては、よく特徴を捉えているよ
ローエン特徴という事は…つまり、ミクリオ様はこの壁画に心当たりがおありと?
ミクリオああ、以前調査で訪れた秘境でその壁画と思しき物を見た事がある。その時の資料が──…あった、これだ
ローエンふむ、確かによく似ていますね
ミクリオ見た瞬間何故か強く心惹かれたから、よく覚えているよ
ミクリオ「英雄の壁画」…僕はその壁画を、そう名付けたけど
ミクリオ螺旋模様の石盤は、本当に英雄の壁画の一部なのか…?
ローエンその手紙を信じるのならば、そういう事になるのでは?
ミクリオ確かに、その通りなんだが…
ミクリオ螺旋模様の石盤を見つけたのは、英雄の壁画があるところとはかけ離れた場所だったんだ
ローエンまあ確かに、たまたま模様が壁画と似ていただけという可能性も、十分考えられるでしょう
ミクリオ模様…そうだ、紋様だ!
ミクリオこれを見てくれ、ローエン
ミクリオ今日見つけた新しい石盤と、螺旋模様の石盤は、紋様が酷似していたんだ
ローエンふむ…こうして見比べてみると、確かに似ていますね
ミクリオ…この二つの石盤を、詳しく調べてみよう
ミクリオもしも、全く別の場所で見つけた二つの石盤が、同じ様式だったと証明されたら…
ミクリオ英雄の壁画と石盤が同一の可能性も、あり得るかもしれない…
ミクリオ
ローエンいかがですか?
ミクリオ…信じられない…こんな事が、本当にあるなんて…
ミクリオ材質、加工方法、付着物の年代…描かれている紋様の形まで、どれも完全に一致している
ミクリオ元々一つの物だったとしても、おかしくない…
ローエンほう、それはそれは…
ミクリオこれは…早急に現物を確認する必要があるな
ローエン英雄の壁画を見に行かれるのですか?
ミクリオああ。情報の真偽の確認のために、実際に石盤と壁画を比較したいんだ
ミクリオそういうわけだから、明日は朝早く出発するよ
ローエン水を差すようで申し訳ありませんが、明日はレイザベール貴族連合主催の剣技会が開催される予定ですよ
ミクリオそんなもの棄権すればいい。僕にとっては、壁画と石盤の調査の方がずっと大事だからね
ローエンそれでは、連合のみなさんにはミクリオ様は参加を辞退するとお伝えしておきます
ミクリオああ、頼んだ
scene1心惹かれるもの
ガイしかし、まさかこんな短期間でもう一度お声がかかるとは思わなかったな
ミクリオ急な話ですまないな
クレス気にしないでくれ。昨日も言っただろう?何かあったら声をかけてくれって
ガイそうそう。こうしてお前達と遠出するのは楽しいしな
クレス気の置けない友達と話しながら、鍛錬も出来て、夢の手伝いも出来る。一粒で三度美味しいってところだね
クレスそう、三度美味しいサンドイッチ!なーんてね!
ガイ・ミクリオ
クレスあ、あれ、わかりにくかったかな?三度とサンドイッチをかけて…
ガイあー、うん。わかったわかった。クレスは本当にダジャレが好きだなぁ
ガイそれにしてもミクリオ、そんな差出人不明の手紙の内容を、あっさり信じて大丈夫か?
ガイ貴族のお前を狙った誘拐や物取りが目的の悪党かもしれないぜ?
ミクリオ勿論、その可能性も考えたさ
ミクリオだが、僕をおびき出したいなら、匿名で手紙など出さず、知人の名前を騙れば済む話だろう
ガイ…まあ確かに、あからさまに怪しまれるような事をする利点はないか
ミクリオああ、人工遺物についてあれだけの情報を揃える必要もないだろうしね
ミクリオそれに…手紙に書かれている事を、ただ闇雲に信じているわけでもない
ミクリオ僕なりにきちんと検証した上で、信憑性が高いと判断したからこそこうして足を運んでいるんだ
クレスミクリオがそう言うなら安心だね
クレスええと…この後はどっちだったかな…
ミクリオ確か向こうだったはずだ
クレスさすがだね。僕一人なら危うく迷子になるところだったよ
ミクリオここに生えている木に見覚えがあったんだ
ミクリオ前にこの辺りを調査した時、この木の下で休憩しただろう
ガイああ、ローエンの持たせてくれたお茶とお菓子を食べたっけ。どっちも美味しかったよなぁ
ミクリオそれなら、今日も持ってきている。後でみんなで食べよう
クレスそれは楽しみだね
ガイそれじゃ、このまま一気に、目的地まで行っちまおう
ガイそんで到着したところで、優雅にティータイム。で、どうだ?
ミクリオ異議なし
クレス僕も大賛成。それじゃあ、張り切って行こう
scene2心惹かれるもの
ミクリオ──さて、と。ティータイムはそろそろお開きにしようか
クレスうん。お茶もお菓子もとても美味しかったよ。ローエンさんにもお礼を言わなくちゃ
ミクリオああ、きっとローエンも喜ぶ
ガイしっかし…相変わらず寂しいところだな。まともに残ってるのは例の壁画くらいか
クレス確かこの壁画だったよね。ミクリオが「英雄の壁画」って名付けたのは
ミクリオああ…
ミクリオガイとクレスは、この壁画を見てどう思う?
ガイ改めて見ても、やっぱりデカいよな。あとは立派そう、ってとこか?
クレスうん。傷んでしまっているのが、もったいないかな
ミクリオ…ああ。それは僕も残念に思う
ガイミクリオはどうなんだ?
ミクリオそうだね…不思議と、惹きつけられるものを感じるかな
クレスへぇ…それも人工遺物に詳しいかどうかの違いなのかな
ミクリオいや、そうではないと思う。僕だって何もかもを熟知しているわけじゃない
ミクリオでも、そういう知識だの理屈だのを抜きにしても、この壁画には強い関心を掻きたてられるんだ
ミクリオ他にも壁画はあるのに…どうしてこの英雄の壁画だけが、こんなにも気になるんだろうか…
クレスもしかしたら、何か運命的なものを感じているのかもしれないな
ミクリオふっ。そうだったら面白いな
ミクリオさてと…
ミクリオ早速、壁画と石盤が同じ物かどうか調べよう
ミクリオ断面や模様が繋がれば、手っ取り早く証明出来るんだが…
ガイそれなら俺に任せてくれ。細かい作業は嫌いじゃないしな
ミクリオわかった。頼む、ガイ
ガイ…よし、これでどうだ?
ミクリオ…!
クレス二枚共、ぴったりはまったね
ガイ模様もちゃんと繋がったな
ミクリオ螺旋模様の石盤も、新しい石盤も、本当に英雄の壁画の一部だったのか…
ミクリオすごい…あの手紙に書かれていた事がついに証明された…
ミクリオ僕は今、歴史的な瞬間の目撃者になったのかもしれない…!
ガイおいおい、大げさだな
ガイ壁画はそれほど珍しくないし、これで完成したわけでもないだろ
クレスまだ欠けている部分もあるしね
ミクリオいや、重要なのは壁画じゃない
ミクリオ螺旋模様の石盤と新しい石盤…
ミクリオ全く別の場所で見つかったこの二つが同じ壁画の一部であるという事が、何より大事なんだ
クレス誰かが運んだんじゃないのかい?
ミクリオ確かに。それが一番あり得る可能性だな…
ミクリオもし意図的に動かされたのなら、石盤を集めて壁画を完成させる事に重大な意味があるはずだが…
クレス欠けている部分を全て埋めたら、どこかの入り口が開く…なんて事はないかな?
ガイその中にお宝どっさり…ってな。それだったら、誰かがわざと石盤を散らした理由もつくが
ミクリオそれは僕も考えたけど…残念ながら、周囲にそれらしい仕掛けは見当たらなさそうだ
ミクリオ今のところは、人為的な移動の説は難しそうだな
ミクリオだが大規模な自然現象だとしても、どのような現象が起これば、こんな事が起こるのか…
ミクリオどうすればこの謎を解明出来るんだろう。せめて何か手がかりでもあれば…
ガイ…すっかり夢中だな
クレスあはは、そうだね。ミクリオは本当にこういうのが好きなんだなぁ
ミクリオ…駄目だ。現段階ではどうしても、これ以上の事はわからない
ミクリオ仕方がない。ひとまず資料だけまとめて、後日改めて調査する事にしよう
クレスそれがいいかもしれないね
ガイそういう事なら…クレス、今の内に俺達で石盤を回収しておこう
ガイミクリオはその間に、資料を仕上げてくれ
ミクリオいや、石盤の回収は不要だ。ここに置いていく
クレスいいのかい?あんなに喜んで持ち帰っていたのに…
ミクリオ僕の目的は「骨董品集め」じゃないからね
ミクリオ石盤の調査は一通り済んでいるし、本来あるべき場所は見つかったんだ。ここに返しておくのが道理だと思う
ガイなるほど、確かにな。…石盤が移動した理由、解明出来るといいな
クレス例の手紙の主なら、何か知ってるかもしれないけど…
クレスどこの誰かもわからないんじゃ、聞く事も出来ないしね
ミクリオここまでの情報は得られたんだ、あとは自力で解明してみせるさ。そのためにも、資料をまとめないと
ガイああ、そうだな。じゃ、ミクリオがまとめ終えたら帰るとするか
クレスそうだね
scene1ミクリオの夢
ミクリオ…というわけで、手紙に書いてあった壁画の件は本当だったようだ
ローエン左様でございましたか。どうりで先ほどから、ミクリオ様が嬉しそうだと思いました
ミクリオまあね。人工遺物の研究が大きく進みそうなんだ、嬉しくもなるさ
ローエンほっほっ、ミクリオ様の夢の実現に向かって大前進、といったところですかな
ミクリオああ、これからはより一層研究に力を入れて行こうと思う
ローエン連日で遠出をされてお疲れでしょう。すぐに用意をいたしますので、今日は早めにお休みになられては?
ミクリオそうだな。そうさせてもらおう
???待ってください
ミクリオ…!君は…
???お疲れのところ申し訳ありませんが、休むのはもう少し後にしていただけませんか
ミクリオエレノア…
???ミクリオ殿、ローエン。主共々、急な訪問、失礼する
ローエンおやおや、クラトスさんもご一緒とは
ミクリオどうしたんだ?何の連絡もなしに突然来るなんて
エレノア…ミクリオ。どうして今日の剣技会に出場しなかったのですか
エレノアレイザベールで暮らす私達貴族にとって、剣技会がどれほど大切か…
エレノアそれがわからないあなたではないでしょう
ミクリオ
エレノア白き獅子や神兵には、剣技会で優秀な成績を収めた人が多く在籍しています
エレノアその誇りを守り続けるために、昨今は剣技会の重要性がますます高まっているというのに──
エレノア顔も出さず棄権だなんて、先人達への冒涜です!
ミクリオけれど、あの剣技会はあくまでも自由参加だったはずだ
エレノア競技に参加しないのは自由ですが、貴族の位を持つ者の責任として、顔くらい出すのが普通でしょう
エレノア他の貴族達と定期的に顔を合わせ、親睦を深めるのも、私達の大切な仕事の内です
ミクリオそういうのは得意じゃないんだ
ローエン本日の剣技会は、そもそも参加者が少なかったために中止になったと聞いておりますが
エレノアその中止になった理由こそが、問題なんです
エレノア帝都で咎人の逃走事件が起こったのはあなたもご存知でしょう。参加者が少なかったのはそのせいです
エレノア白き獅子や神兵として勤める腕自慢が事件解決に向けて任務に忙殺されていますから…
エレノアそれに、帝都の情勢が不穏な中、剣技会を開催するのは不謹慎だという意見も多く…
ミクリオまあ、妥当な意見だな
エレノア何を他人事のように…あなたにも関係がある話なのですよ
ミクリオ僕に?
エレノア任務に追われるか、世情を慮って出席を見合わせるかという人がほとんどだった中──
エレノア己の趣味を優先して、大会への参加を拒否した者が、たった一人だけいたのです
ミクリオ…なるほど、そこで僕の名前が出てくるわけだ
エレノアええ。そしてその事について、あなた以外の貴族達の間で議論が交わされました
エレノア協議の結果、レイザベール貴族の総意として、あなたに勧告を出す事になったんです
エレノア勿論、ミクリオの趣味に理解を示す者も少なからずいましたが大多数の意見としては…
ミクリオ次の剣技会には、必ず参加しろって?
エレノア剣技会だけではありません。白き獅子に志願し、ラザリス様に貢献すべし、と
ミクリオ僕の意志はお構いなしか…
ミクリオそれで、幼馴染である君が、僕の首に鈴をつける役目を押し付けられた、と?
エレノア…っ!いえ、私は自分の意志であなたに進言をしに来ました
エレノア他の貴族の方々よりも、私の言葉の方があなたにちゃんと届くと思いましたので
ミクリオ…そうか。君は相変わらず真面目だね
エレノアミクリオのやっている事に全く意味がないとは、私も思ってはいません
エレノア集めた人工遺物を博物館に収蔵し、一般に公開する事に、学術的意義があるのも確かでしょう
エレノアあなたなりに、街の人々やラザリス様の役に立とうとしている事も知っています
ミクリオ
エレノアですが、物事には優先順位というものがあるのではないでしょうか
エレノア今回、こうして貴族間の総意がまとまったのを機に、あなたには考えを改めてほしいんです
エレノアラザリス様の事を本当に大切に思うなら、道楽はやめ、白き獅子に志願するべきです
エレノアそれが貴族の…力ある者としての正しい世界への尽くし方というものではないでしょうか
ミクリオエレノア。君の言う事は理解出来るけど、僕は道楽でやってるわけじゃない
ミクリオ未知の事を調べて行く事が、世界をよりよくするためには必要だと思っている
エレノアですが、そのようないつ実るかもわからない事に時間を費やすのは…
ミクリオ…どうやら、話は平行線のようだね
ミクリオすまないが、今日はもう帰ってくれ。このところ連日遠出しているせいで、僕も疲れているんだ
エレノア…わかりました。明日、もう一度伺います
エレノアクラトス、帰りましょう
クラトス…ああ、わかった
エレノアそれでは、失礼します
ミクリオ…まさか、僕の活動がこんなに大きく問題視されるなんてね
ローエン少々厄介な事になりましたね…。どうなさいますか、ミクリオ様
ミクリオどうもこうも、僕のやる事は何も変わらない
ミクリオたとえ誰に何を言われようと、僕は、僕が正しいと思う道を進むだけだ
ミクリオこれもラザリス様のお力になる事だと信じているからね
ローエンほっほっほ。さすがミクリオ様。どうやら余計な心配だったようですね
ミクリオそうだ、ローエンに頼みがある
ミクリオ例の手紙の差出人を、捜し出してもらえないか
ミクリオ人工遺物の使用法を熟知し、石盤と壁画の関連性を言い当ててみせた…
ミクリオあれだけの知識を持っている人に、ぜひ会ってみたい。いくつか聞きたい事もあるしね
ローエンかしこまりました。世界の果てまででも捜しに行って必ず見つけてご覧に見せましょう
ミクリオはは、屋敷にはいてもらわないとそれはそれで困るけどね
ミクリオそれじゃあ、少し早いけど僕はもう休む事にする
ローエン承知いたしました。ごゆっくりお休みくださいませ、ミクリオ様
scene2ミクリオの夢
ローエン昨夜はよくお眠りになられたようですね
ミクリオああ、気付いたら朝だった。自分で思っていた以上に疲れていたみたいだ
ローエン何かと立て込んでおりましたからね。いかがでしょう、本日はこのままお屋敷でゆっくり過ごされては?
ミクリオああ、そうしよう
ローエンところでミクリオ様、例の手紙の差出人の件ですが
ミクリオもう見つかったのか?
ローエンいえ、申し訳ございませんが、少々お時間をいただく事になるかもしれません
ローエン手紙の内容から、博物館を訪れたものだろうと考え、街中を捜索したのですが…
ミクリオレイザベール中を捜しても見つからなかった、と?
ローエンはい。意図して身を隠しているか、それとも既に街を去った後なのか…
ローエン世界中をくまなく捜すわけには参りませんが、もう少し範囲を広げてみてもいいかもしれません
ミクリオ任せるよ。こういうのは、ローエンの方が得意だからね
ミクリオ僕もそこまで焦っているわけじゃないし、じっくり腰を据えて進めてほしい
ローエンかしこまりました
リンリン
ローエンおや、お客様のようですね。少々お待ちください
エレノア失礼します
ミクリオエレノア。また来たのかい
エレノア明日もう一度伺うと、昨日お伝えしたはずです
ミクリオ昨日も言ったけれど、僕は恥じるような事はしていないよ
ミクリオだから、貴族の協議で決まった事でも従うつもりはない
エレノアそうはいきません!ミクリオには絶対に白き獅子に志願してもらいます!
ミクリオ…それが貴族の常識だから、かい?
エレノアええ、その通りです。あなたの行動は、貴族として相応しいとは、とても思えません
エレノアそれに、中にはあなたの事をひ弱な臆病者だと馬鹿にしている人もいます
エレノアこのような事を言われてミクリオは悔しくないのですか!?
ミクリオ君達の言い分には納得は出来ない。だけど、そう言われたところで悔しいとも思わない
ミクリオ戦う事だけがラザリス様への貢献手段じゃない、僕はそう考えているから
エレノアどうしてあなたは、そう…!
エレノア…わかりました。でしたら、今から私と手合わせしてください
ミクリオ何だって?
クラトス…本気か、エレノア
エレノアええ、勿論。ミクリオの実力を、ここで見極めさせてもらいます
エレノアもしあなたに実力があるのなら、白き獅子に志願する事を、拒むはずがありません
ミクリオそれはまた、ずいぶんと極端な考え方じゃないか?
エレノアいいえ、事実です
エレノア白き獅子の一員となる事は、誰もが望み憧れる事で、我々貴族の誇りと義務そのもの…
エレノアそれを望まないなど、怖気づいている以外にどんな理由がありますか!
エレノア今のあなたは趣味を言い訳に鍛練を怠り、成すべき事から目を逸らして逃げているだけです
エレノアそうでないと言うのなら、今ここでその事を私に証明してください!
ミクリオ…君は本当に変わらないな
ミクリオ君を納得させるには、態度で示すしかなさそうだ
エレノアでは、手合わせをしていただけるのですね
ミクリオあまり気は進まないけれど、仕方がない
ミクリオ君の事だ。今ここで断ったら、僕がうんと言うまで毎日押しかけるつもりだろう
ローエンミクリオ様、お待ちください。お言葉ですがこのような戦いは──
ミクリオわかっている。それでも、ここでやらないわけにはいかない
クラトスエレノアは白き獅子に志願すべく、日々鍛錬を重ねている。半端な実力では決して勝てないぞ
ミクリオ僕が半端かそうでないかは、その目で確かめればいい
エレノアでは、参ります!
scene3ミクリオの夢
エレノアくっ…!そんな…
エレノアあなたにこれほどの実力があったなんて…
クラトス…なかなかやるようだな
ローエンエレノア様、この辺りで武器をお納めください。ご覧の通り、ミクリオ様は鍛錬を怠っておりません
ミクリオローエンの言う通りだ。君の知りたい事は十分伝わっただろう
ミクリオこれ以上やりあえば、どちらかが怪我をしかねない
エレノアいいえ、まだです!
エレノアこのまま負けて終わるわけにはいきません…!
ミクリオ手合わせの目的が変わってるじゃないか
ミクリオもういいだろう。僕はこれで…
エレノア──隙あり!
ミクリオツインフロウ!
バシュッ!
エレノアきゃあああっ!?
クラトス…勝負あったな
ローエンエレノア様!大丈夫ですか?
エレノアくっ…
ミクリオもういいだろう、これで決着だ
エレノアあなた、私を誘い出すために、わざと隙を…
エレノアですが、今のは反則ではありませんか?術の使用なんて…!
ミクリオ剣技会じゃあるまいし。手合せの場で術が反則になるなんて聞いた事もない
ミクリオそれとも君は、実戦の場でも剣技会のルールに従って戦っているとでも言うのか?
エレノアそれは…!
エレノア…わかりました。あなたがそう主張をするなら、私だって──
クラトスよせ、エレノア。そこまでだ
エレノアクラトス!?何故止めるのですか!
クラトス剣技会のルールに囚われていたお前の負けだ
エレノアですが…!
クラトスエレノア、お前も気付いているはずだ
クラトスミクリオ殿は術を使った際、お前が怪我をしないように配慮していた事を
エレノア…それは…
クラトス彼の実力は十分にわかったはずだ。負けを認めろ、エレノア
クラトスこれ以上は、私もローエンも見過ごせん
エレノア…わかりました
エレノアすみません、ミクリオ。私は少し冷静さを欠いていたようです
エレノアミクリオに実力がある事は、はっきりわかりました
ミクリオそれはよかった
エレノアですが…そこまでの力があるというのに、何故ミクリオは人工遺物にこだわるのですか
ミクリオ──それが、僕の夢だからだ
エレノア夢、ですか?
ミクリオエレノア。君は白き獅子のような「騎士」でないとラザリス様に貢献出来ないと思うか?
エレノアそんな事はありません!ラザリス様を想う心があれば誰でも…
ミクリオだが、君や貴族達の主張が正しいとするなら、力ある者しか貢献出来ないという事になるだろう
エレノア…!
ミクリオだから僕は、違う方法…力ではなく、ラザリス様の世界の発展と言う形であの方のお役に立ちたい
ミクリオ人工遺物研究の道が認められれば、格差も減って、より多くの人がラザリス様のお力になれる…
ミクリオ世界はきっと、さらに素晴らしいものになるはずだ
エレノア…世界をよりよくする。それがあなたの夢という事ですか
エレノアミクリオの考えは理解出来ました。ラザリス様への想いも…
エレノアですが…全ての人間が白き獅子になれないのであれば…
エレノア出来る者がやらないのは、逃げにはならないでしょうか
エレノア白き獅子になり、民の命を守る。それが力を持つ者の務めであると、私は思います
ミクリオ…やっぱり平行線か
ローエンエレノア様のおっしゃる事もよくわかります
ローエンですが、人にはそれぞれ価値観というものがあります
ローエンその価値観が、人によって異なるのは当然。時にはぶつかる事もあるでしょう
ローエンそういう時は一歩引いた視点で、全体を見渡してはいかがかと存じます
エレノア一歩…引いて…
ローエンミクリオ様もエレノア様も、ラザリス様に忠誠を誓い、貢献したいと考えていらっしゃいます
ローエンお二人のお話を伺っていると、その点においては間違いありません
ローエン目指すところが同じであるのなら、お二人がわかり合う事は決して不可能ではないと思います
ミクリオ…つまり、この辺りで和解してはどうか、という事か
ローエンええ、いかがでしょう。ここはお二人で手を取り合われては?
ミクリオそうだな、僕も互いに理解し合えればいいと思っている。エレノア、君はどうだい?
エレノア…私も、あなたと手を取り合いたいと思ってはいます
エレノアですが、今の私は、ミクリオの言う事の全てに納得が出来たわけではないのです
ミクリオエレノア…
エレノア…ただ、ミクリオが己の信念に基づき、行動している事は理解しました
エレノアそうしたあなたの考えは、きちんと尊重されるべきだと思います
エレノアですから、もう一度…もう一度だけ、他の貴族の方々とも話をしてみます
エレノアあなたの行動が、特例として他の方々に認めていただけるように
ミクリオエレノア…
ミクリオああ、頼む。…ありがとう
ローエンこれにて一件落着ですな。ではお二人共、せっかくですので和解のしるしに握手でも──
クラトスエレノア。この後は確か知己の貴族と晩餐会があるのではなかったか?
クラトスこれ以上遅くなると、相手を待たせてしまう事になるぞ
エレノアええっ!?もうそんな時間ですか!?
クラトス騒がせて申し訳なかった。私達はこれで失礼する
エレノアちょっ、クラトス、待ってください!あ、えっと、ミクリオ、ローエン、お邪魔しました!ごきげんよう!
ローエン…話の途中でしたのに、行ってしまわれましたね
ミクリオああ、やけに慌ただしかったね
ミクリオまあ、それはそれとして…今さらだけど、ローエンは僕の夢…正しいと思うかい?
ローエンええ。ミクリオ様がご自分でしっかりと考えてお決めになられたものですから
ローエンしかし、急にそのような事をおっしゃられるとは…何かお悩みでも?
ミクリオ…自分がやっている事が、間違っているとは思わないけれど…
ミクリオエレノアの言い分にも一理あるというのは、理解出来るんだ
ミクリオ率直なところ、ローエンはどう思う?君の意見を聞きたい
ローエンそうですな…白き獅子を務める事と、人工遺物を研究する事──
ローエンどちらも重要な事だと思いますが、私はミクリオ様の夢を応援したいと思っております
ローエンそのために私に出来る事があれば、全力でお手伝いさせていただきましょう
ミクリオローエン…
ミクリオ…ああ。よろしく頼む
エレノア…クラトス。何故止めたのですか
クラトス手合わせの事か。それとも和解の握手の事か
エレノア両方です
クラトス理由はどちらも同じだ
クラトスお前自身と、ヒューム家の両方に傷がつかぬよう動いた。それだけだ
エレノア私はそのような事を頼んだ覚えはありません
クラトスああ、あれはあくまでも私が勝手にやった事だ
クラトスだが、今回の件は、他の貴族達から正式な依頼を受けてやった事ではないだろう
クラトスミクリオ殿の事をかけ合うと言っていたが、わざわざこちらの説得失敗を報告するようなものだ
クラトスろくな事にはならない。やめておいた方がいい
エレノアそうはいきません。例え正式な依頼でなかろうと、引き受けたからには報告はします
クラトスそもそも彼と他の貴族達の仲を取り持つ必要もないはずだろう
エレノアつまりあなたは、ミクリオの件を話すのは気が乗らないと?
クラトス…ああ。この件はお前とヒューム家の立場を損なうだけだ
エレノアそのような心配はいりませんよ、クラトス
エレノアミクリオの評判が芳しくないのは、彼がただ遊んでいるだけだと思われているせいです
エレノア私も、ミクリオの夢を聞くまではそうだと思っていました
エレノアでもそうではなかった。彼は彼なりに、考えを持ってラザリス様に貢献しようとしています
エレノアその事を他の方々にもきちんと説明すれば、全て解決するはずですよ
クラトス…私は所詮ヒューム家に仕える従者にすぎない。差し出がましい事を言う気はないが…
クラトス他の貴族達が全員、お前と同じように実直だとは思わない方がいい
クラトスそれでも報告をすると言うのなら、今後、手段を選べなくなるかもしれないぞ
エレノアヒューム家を想っての忠告、感謝します
エレノアでも大丈夫です。私は間違った事はしていませんから
エレノアきっとみんなにも、わかってもらえると思います
クラトス…そうだといいがな
scene1湖畔の待ち人
ミクリオローエン、念のために確認しておくけど、今日の予定は──
ローエンほっほっ、ご安心ください。来客も公務のご予定も、本日は何もございませんよ
ミクリオそうか、よかった。…よし、忘れ物もなし、とこれで支度は完璧だ
ローエン声が弾んでおりますね、ミクリオ様
ミクリオこれが喜ばずにいられると思うかい?あの手紙の主に、ようやく会えるんだ
ミクリオこっちが散々手を尽くして捜しても、全く手がかりが掴めなかったのに
ローエンまさかこのタイミングで、向こうから会おうと申し出てくるとは思いませんでした
ローエンしかし何故、わざわざ待ち合わせに湖畔を指定してきたのでしょうね?
ミクリオあの湖畔周辺では、これまでにも多くの人工遺物が見つかっている
ミクリオもしかしたら、そこで何か新しい発見があったのかもしれない
ミクリオ実は、手紙の主に会えたら博物館を見てもらいたいと思っているんだ
ミクリオローエン、すまないが掃除がてらお茶の支度を整えておいてくれないか
ローエンかしこまりました。ご挨拶出来る事を楽しみにお待ちしておりますね
ミクリオああ。それじゃあ、行ってくる
ミクリオ──湖が見えて来たな。ここが待ち合わせ場所か…
ミクリオ…あの手紙を書いていたのは、一体、どんな人物なんだろう
ミクリオあそこまで人工遺物に精通していたんだ。只者とは思えないが…
ミクリオ…!向こうに人影が…!
ミクリオあなたは…
クラトス来たか…
ミクリオクラトス…どうしてここに?
クラトス私が貴公を呼び出したのだ。偽の手紙を使ってな
ミクリオ…!
ミクリオ僕を誘いだしたところであなたに利益があるとは思えない。…何が目的だ
クラトスエレノアでは、貴公を説得する事は出来ない。だから私が直接話をしにきた
クラトス主人を補うのも、従者の役目と言う事だ
ミクリオそれにしては、やり方が無粋じゃないか
クラトス少々強引な手段を取った事については謝罪しよう
クラトスだが、これでようやく貴公と二人になれた
クラトスここなら一対一の対等な人間同士、互いの立場や身分を気にする事なく話が出来る
ミクリオ身分や立場、か…。僕は気にしないけれど、まあいいさ
ミクリオそれよりも…主人を補う、と言ったね。という事は──
クラトスああ。貴公には人工遺物の研究から身を引き、白き獅子への入隊を志してもらいたい
ミクリオやはりか…。その話は終わったはずだが
クラトス世界全体をよくする…その考えは理解した
クラトスだが、貴公ほどの実力があるならば話は別ではないか
ミクリオ…どういう事だ
クラトス貴公の話は、あくまでも「夢」にすぎない。成果に結びつくかも定かではない
クラトスだが、白き獅子になれば、確実にラザリス様のお役に立てるだけの力を貴公は持っている
クラトス確実に成果を得られる道を捨て、夢という自らの欲のままに不確かで不合理な道を選ぶ…
クラトスそれが本当に正しい事なのか?
ミクリオ…!
クラトス人工遺物の研究は、他の誰かに任せればいい
クラトスラザリス様への貢献が最大の目的だと言うのなら、今一度、よく考えるべきだ
ミクリオ
クラトス無論、すぐに答えを出せとは言わん
クラトスゆっくり考えればいい。…時間はたっぷりある
ローエン──さてと、掃除も完了しましたし、いつでもすぐお茶の支度が出来るよう準備も整えました
ローエン後はミクリオ様が、手紙の主を伴って、お帰りになるのを待つばかり…
???ローエン。お仕事中にお邪魔いたします
ローエンおやおや、エレノア様。今日はまた、ずいぶんと大勢の方を連れていらっしゃいますね
ローエンはて、見たところ、みなさんヒューム家の使用人ではないようですが…?
エレノアミクリオはどこに?今すぐ呼んでいただだきたいのですが
ローエンあいにくミクリオ様は、ただいま外出中でして…
エレノア外出中…どこへ?
ローエン人と会うために、街を出られております。お待ちいただくなら、お部屋をご用意いたしますが…
エレノアそうですか。出来る事なら、もう一度直接話がしたかったですが…
エレノア仕方がありません。このまま始めましょう
ローエン始めるとは、一体何を…
エレノア
エレノア…ごめんなさい、ローエン。これはレイザベールの貴族の総意として決まった事なんです
エレノア決まってしまった以上、私にはこうするしか…
エレノア…さあ、あなた達。仕事を開始してください!
ローエン…!?
ローエンお待ちください!一体何を──
scene2湖畔の待ち人
ミクリオ
クラトス心は決まったか
ミクリオ…確かに、あなたの考えは間違ってはいないんだろう
ミクリオ白き獅子に志願する事…
ミクリオそれが今の僕にとってもっとも合理的で、確かな方法だという事は理解出来る
クラトスでは…
ミクリオ…けれど、同時にこうも思うんだ
ミクリオ人の夢というものは、合理的かどうかだけでは量れないんじゃないかって
ミクリオ人工遺物の研究は、僕にとっての「夢」だ
ミクリオそしてその夢は、ラザリス様の世界をよりよくするためのもの…
ミクリオだからこそ、僕はここで引くわけにはいかない
ミクリオ僕の身近にいる人も、その夢を応援してくれている事だしね
クラトスそのために、ラザリス様にとって不合理となる選択をするというのか?
ミクリオ合理的でなくても、自分のやり方でラザリス様に貢献したい…それがそんなにおかしい事だろうか
クラトス私には賛同出来かねる
クラトス力がある者は、その力に相応しい務めを果たすべきだ
ミクリオ…あなたも、エレノアと同じ事を言うんだな
ミクリオ…僕の気持ちはさっき言った通り。これ以上誰に何を言われようと考えは変わらない
ミクリオ聡明なあなたの事だ。こうなる事くらい想定出来ていただろうに、どうしてそこまで──
ミクリオ…!
ミクリオ…クラトス、本当の狙いは何だ?
クラトス
ミクリオあなたはこんな風に闇雲に議論を引き延ばしたり、精神論を振りかざすような人じゃない
ミクリオつまり…こうして僕を引き止める事であなたに何か利益がある、という事だろう?
クラトス…まあいい。十分に時間は稼げた。もう話してもいいだろう
クラトス今頃、エレノアが動き出しているはずだ
ミクリオエレノア…?一体どういう…
エレノア……
骨董商博物館の中にある人工遺物は全部運び出してしまっていいんですね?
エレノア…!あ…はい、よろしくお願いします
ローエンどうかおやめください、エレノア様。展示物や倉庫の物を、持ち主に無断で勝手に持ち出されるなど…
エレノアこれはレイザベールの貴族達の総意です。取りやめる事は出来ません
エレノア…ですが、安心してください。彼らは、いずれも骨董品の扱いに長けた者ばかり
エレノア人工遺物も、誰よりも丁寧に取り扱ってくれるはずです
ローエンそういう問題ではございません。何故いきなり、このような無体をなさるのです
ローエンエレノア様は、ミクリオ様のご意志を理解してくださったのではないのですか
エレノア
ローエン…エレノア様は、ミクリオ様の古くからのご友人。その信頼を、このような形で──
エレノア…私だって、好きでこのような事をしているわけでは…!
ローエン…一体何があったのか、お話ししていただけますかな?
エレノア…先日、ミクリオを説得しようとした一件について、他の方々にも説明したところ、彼らはこう考えたのです
エレノア私をも打ち負かす高い実力を持ったミクリオが白き獅子に入隊しないのは社会的損失だと…
エレノアそして彼らは、ラザリス様のためにミクリオの目を覚まさせようと…
エレノア──ミクリオがうつつを抜かす収集品を、没収する事にしたのです
ローエン…そしてその実行者にエレノア様が選ばれたのですね
エレノア…はい
ローエンそんな…あまりにも一方的です。エレノア様は、こんな行為が正しいと思っておいでなのですか?
エレノア…いいえ。本音を言えば、私も、今回のような強引なやり方には納得していません
エレノアですが、もう既に決まってしまった事ですし…貴族達の考えには、私も賛同していますから
ローエンそんな、何故…
エレノア…私は、先日の一件で、ミクリオのような考え方もあるのだと一応は理解したつもりです
エレノアですが…やはり彼ほどの実力者には、白き獅子を目指してほしいという気持ちも、変わらずあるのです
エレノアもし今日、ミクリオがこの場にいたら、もう一度説得を試みるつもりでしたが…
ローエンならばせめて、ミクリオ様がお戻りになられるまでお待ちいただく事は…
エレノア…ごめんなさい。それは出来ません
エレノア酷な事をしている自覚はあります。後にミクリオに責められても仕方がないと覚悟もしています
エレノアそれでも…こうする事で、もし本当に、白き獅子を目指すようになってくれたなら…
エレノアその時は、私は全力で彼を補佐し、正しい道へ導く事を誓いましょう。それが私の責任で、使命だと思います
ローエンエレノア様…
scene3湖畔の待ち人
ローエン
エレノア
骨董商うわっ!?だ、誰だあんたら!
???この博物館の関係者だ!
ローエンガイさん…それに、クレスさんまで…!
エレノアあなた達は…確か、ミクリオと親しくしていた…
ガイ何か博物館が騒がしいと思って来てみれば、こいつは一体何の騒ぎだ?
クレス引っ越しや改装…ってわけではなさそうだね
ローエン…ええ、実は──
ガイミクリオがいない間に、今まで集めた人工遺物を全部没収するだって?
クレスそんな事をしたら、ミクリオがどれほどショックを受けるか…
エレノア
クレス今すぐやめさせないと!あの、すみませ…
ローエンお待ちください、クレスさん
ガイどうして止めるんだ?あんただって納得してないんだろ?
ローエン今回の事は、エレノア様の独断ではありません。レイザベール貴族の総意です
ローエンお二人がここで抗議すれば、貴族に反抗したと取られる可能性があります
ローエンそんな事になってしまったら、お二人の立場が悪くなってしまいます
ローエンそのような事は、ミクリオ様もお望みにはならないはずです
ガイかと言って、このまま手をこまねいていたら、あっという間に回収が終わっちまうぞ
ガイそうなったら、取り返すのは難しいだろ
クレスせめてミクリオが帰って来てくれれば…
骨董商エレノア様、もうすぐ全ての人工遺物の運び出しが完了します
エレノア…わかりました。そのまま続けてください
ガイあれじゃあ、ミクリオが戻るまで、物が残ってるかどうか…
ローエン…もしミクリオ様のお帰りが間に合わない場合は、私が直接話を付けます
クレスローエンさんが?
ガイおいおい、自分がさっき言った事を忘れてないよな
ガイいくらミクリオに仕えてるって言っても、あんたは貴族じゃない。俺達と立場は一緒だろ
ガイ下手な真似をすれば、それこそ…
ローエン勿論、存じております
ローエン一介の執事風情が、貴族の決定に逆らえばどうなるか、わからない私ではございません
ローエン相応の覚悟は、出来ております
クレスローエンさん…
ガイくそっ。肝心のミクリオは一体どこに行ってるんだ
ローエン実は、人工遺物に関する手紙を送ってくださった方から、会いたいと呼び出されており──
???あの、その話、詳しく聞かせてくれませんか!?
ローエンあなたは…
ミクリオ──博物館に収蔵している人工遺物を全て没収するだって!?
クラトスああ、そうだ
ミクリオ…そんな事をして、僕の心が折れるとでも?
クラトス結果はどうあれ、エレノアが今回の任務を遂行するにあたって──
クラトス貴公を近くに置いておく事は避けるべきだと判断した
ミクリオそれで僕を、こんなところにまでおびき出したのか…!
ミクリオだが、意味がないと思っているなら、どうしてそんな事を…
クラトス…先日の話し合いの後、エレノアは貴公の意向を特例として認めてくれと報告に行った
クラトスだが、それは貴族達の意見に反するものだ
クラトス結果的にエレノアは、貴公の肩を持っていると見なされてしまった
ミクリオ…!そんな…
クラトス本人はそこまで深刻には考えていないようだが…これはヒューム家の存亡に関わる一大事だ
クラトスだからこそ、今回エレノアに命じられた人工遺物没収の任務は、何としても完遂させなければならない
ミクリオ…なるほど。名誉挽回のために、是が非でも成功させたいわけか
クラトスああ。だが、貴公を博物館から引き離したのは私の独断だ
クラトスエレノアと同様、私もミクリオ殿の行動そのものを否定するつもりはないが…
クラトス長年に渡り仕えてきたヒューム家の大事を看過する事も出来ん
ミクリオけれど、僕を引き離したところで、エレノアの任務がすんなり遂行出来るとは思えないな…
ミクリオローエンの事を、忘れてはいないか?
ミクリオエレノアにはあなたがいるように、僕にも信頼のおいている彼がいる
クラトス勿論、ローエンは止めようとするだろうが…彼も私と同じ、貴族に仕えるただの従者だ
クラトス分をわきまえぬ行動をすればどうなるかはわかりきっている
ミクリオ…今のあなたの行動も、十分従者の域を超えてると思うが?
クラトスああ。だが、私の目的はあくまでヒューム家を守る事。敵が貴公一人と貴族全体では話が違う
ミクリオ
クラトス…今ここで、貴族連中の取り決めに従うと、約束してもらえないか
クラトスそうすればローエンも無事で済むし、ただの収集品として持つだけなら、人工遺物の返還も可能だろう
クラトスこれ以上事態が悪化する前に、決断してもらいたい
ミクリオ
scene1不壊の約束
ミクリオ
クラトス
ミクリオあなたは…
ミクリオローエンやエレノアを守るために僕に白き獅子を目指せと…
ミクリオ夢を諦めろと…そう、言うのか?
クラトスああ。それが貴公に出来る、最善の選択だ
ミクリオだが…
クラトス人工遺物の事も、先ほどの通りだ
クラトス貴公が然るべき決断をすれば、手元に置いておく事くらい許されるはずだ
クラトス逆に今のままでは、何一つとして、望んだ結果にはなるまい
ミクリオ
ミクリオ夢を諦める事以外に、解決策はないのか…?
ミクリオだが、僕は…
クラトス…どうした
ミクリオ…駄目だ。どうしても言えない
ミクリオ貴族達の決めた方針に従うという事は自ら掲げた夢を諦める事…。そう考えると……
クラトスミクリオ殿の気持ちもわかる。だが、もう一度よく考えてみろ
クラトスその夢とやらは、ローエンやエレノアを犠牲にしてまで守るほどの価値がある物なのか?
ミクリオ
クラトス考えた上で貴公が我が道を進むと言うのなら、これ以上は何も言うまい
ミクリオローエン…エレノア……くっ…
ミクリオ
ミクリオ…いいだろう。クラトス、ここはあなたに従う
ミクリオ僕は…白き獅子になる
ミクリオその選択をする事で、ローエン達を守る事が出来るなら…
ミクリオ僕は…自分の夢を諦め──
???待ってくれ!ミクリオ!
???はあ…はあ…今、何て言おうとしてた?夢を諦めるつもりじゃないよな?
ミクリオ君は…?いや、それよりも何故僕の名前を…
???お前は…手堅いくせに意地っ張りだ
ミクリオなっ…!
???そんな奴が、簡単に自分の決めた事を諦めるなんてらしくない
???どこまでも、意志を貫く。…それがミクリオだろ?
???それに、お前の夢はオレの夢でもあるんだ。だから、諦めるなんて言うな!
ミクリオ君は…一体…
ミクリオいや、待て…この声、どこかで…?
???「よかった! 無事だったんだな」
???「誰って…ミクリオ、 オレの事、忘れちゃったのか?」
???「……冗談に決まってる。 だって、オレ達──」
ミクリオまさか君は、繰り返し夢の中に出てきていた…?
ミクリオ…いや、待て。ここに来たと言う事は…まさか、君があの手紙の主なのか?
スレイああ、手紙を出したのはオレだよ。オレはスレイって言うんだ
ミクリオやはりそうか…君が…
スレイ突然割って入って、ごめん。ローエンさんから話を聞いて居ても立ってもいられなくなって…
スレイミクリオ、あの博物館は、お前にとって大切なものなんだろ?
スレイずっと頑張って作り上げたものを諦めなくていい。それを言いに来たんだ
ミクリオ確かに僕だって、ここまで人生を賭けてやって来た事を諦めるなんて、本意じゃない
ミクリオ本当はこんな事はしたくないさ
スレイだったら!
ミクリオけれど、今回は問題が多すぎるんだ。事態は既に、僕一人ではどうにも出来ないところまできている
ミクリオ夢のために僕を支えてくれていた人達を見捨てるなんて、僕には…
スレイミクリオは本当にそれでいいのか?
ミクリオさっきも言っただろう!夢と仲間、どちらかを選ばなければいけないんだ!
スレイ…わかった。本当にそれで後悔しないって言うなら、そうすればいい
スレイオレが、先に夢を叶えるだけだ
ミクリオ…!
スレイオレに先を越されても平気なら、好きにすればいいさ
ミクリオ…誰が諦めると言った
スレイ自分でそう言ったじゃないか
ミクリオまだ言ってないだろ!君が僕の発言を邪魔したんだから
スレイあそこまで口にしたら、もう言ったようなものだろ
ミクリオ違う!僕は──
クラトス──そこまでだ
クラトス思わぬ邪魔が入ったが…そろそろ貴公の答えを聞かせてもらおう
ミクリオ…ああ、わかっている
ミクリオクラトス…あなたの言っている事は正しいのだと僕も思う
ミクリオそれでも…僕はやっぱり、自分の夢を、諦められない
スレイミクリオ…!
ミクリオスレイに言われたからじゃない。これは僕の意志で決めた事だ
ミクリオ巻き込む形になってしまって、あなた達には申し訳ないと思っている
ミクリオけれどやっぱり僕は、自分の信念を曲げてまで諦める事は出来ない
ミクリオ…クラトスの言う通り、僕のやろうとしている事はただの「夢」みたいなものだ
ミクリオ不確かで不合理な選択をしている、あなたはそう言うだろう
ミクリオそれでも僕は、誰かがこんな風に何かを諦めなきゃいけない世界を、ラザリス様の理想の世界にしたくない
クラトス…!だが──
ミクリオローエンの事を言うのなら、もう無駄だよ。僕はもう諦めない
ミクリオ大事な人も、夢も──僕が全て守る
クラトス…わかった。それが答えだと言うなら、これ以上何も言うまい
クラトス全てを失った後に、その決断を悔いる事にならないよう祈ろう
スレイあ、ちょっと待…
ミクリオいい、放っておけ
スレイでも…あの人、このままだとローエンさんのところへ…
ミクリオそんな事はわかっているよ。誰も追いかけないとは言っていないだろ
ミクリオこの辺は何度も調査をしたから、地理は熟知しているさ
ミクリオクラトスの進んだ道を行くより林の中を突っ切った方が早い
スレイそうか。だったら…
ミクリオただし。その分魔物と遭遇する確率も高く…
ガサガサッ
グルルゥッ!
ミクリオなっ…
スレイはあっ!
ズバッ!
スレイ…はは、大丈夫!オレとミクリオがいれば、魔物くらいどうって事ないよ!
ミクリオ…君は楽天的すぎないか。まあ、剣の腕は確かなようだけど
スレイよし!じゃあ急いで出発しよう!
scene2不壊の約束
スレイはあ…はあ…
ミクリオようやく林を抜けたな
スレイミクリオの言った通り、本当に魔物が多かったな…
スレイ戦いつつ一気に駆け抜けなきゃいけなかったから、何度か足がもつれそうになったよ…
ミクリオ…スレイ、ここで少し休んで行こう
スレイえ?でも、急がないとローエンさん達が…
ミクリオ藪を通り抜けたり、魔物との戦闘を繰り返したせいで、お互い傷だらけだろう
ミクリオ僕も君もだいぶ息が上がっているし、疲れた状態で無理に急ぐよりも、体力を回復させた方がずっと効率的だ
ミクリオ幸い、林を突っ切ったお蔭で、時間はだいぶ短縮出来ているしね
スレイ…確かにミクリオの言う通りだな。わかった、少し休憩しよう
パアア…
スレイふう…楽になった。ありがとう
ミクリオ…ここまで魔物と立て続けに戦ってきたけれど、君とは何故か連携が取りやすかったよ
ミクリオ僕の立ち回りを自然と察して動いてくれていたからかもしれないね
スレイ…そうだな。オレもミクリオと一緒だと、すごく戦いやすいよ
ミクリオ…その事で少し聞きたいんだが
ミクリオスレイは僕の事をよく知っているようだけれど、どうしてなんだ?
スレイ…やっぱり、覚えてないよな
ミクリオ…?
スレイあのさミクリオ、実はオレ達──
スレイ
ミクリオスレイ?僕達が何なんだ?
スレイいや、その…実はさ。オレ達は昔、一緒にいた事があるんだ
ミクリオ昔?
スレイうん。よく遺跡探索したりしてさ。うっかり日が暮れるまで遊んで、ジイジに怒られたり…
ミクリオジイジ?君の祖父か何かか?
スレイ…まあ、そんなとこかな
ミクリオ確かに遺跡探索なら、幼い頃よくガイ達と一緒に行っていたな…。まあ、今も大して変わらないけれど
ミクリオああ、もしかして、その時にスレイとも一緒に遊んだ事があったのか?
スレイ…あ、うん…。きっと、そんな感じだと、思う…
ミクリオそうだったのか…。はっきりと覚えてなくてすまない
スレイ…いや、いいんだ。これは仕方ない事だから
ミクリオでも、一つ気付いた事があるんだ。僕は不思議な夢を繰り返し見ているんだが──
ミクリオその夢に出てくる青年、あれは君なのかもしれない
スレイえ?オレが夢に…?
ミクリオ少し不思議な話だけどね
ミクリオでも、君と出会い今の話を聞いて…やっぱりあれは君だったんだと確信したよ
スレイミクリオ…
ミクリオ手紙の主だったり、夢に出て来たり…君は僕にとって縁の深い存在なのかもしれないね
スレイ……うん、そうだな。きっとオレ達は繋がってる
スレイ…ありがとう、ミクリオ
ミクリオ…?感謝されるような事は何も言ってないと思うけど
スレイいいんだ、オレが言いたかっただけだから
スレイ──あ、そうだ
スレイ今のミクリオは、覚えていないと思うけど…
スレイオレ達は昔、世界中の遺跡を一緒に回ろうって話してたんだ
スレイそれが、オレ達の夢
ミクリオ僕達の…
ミクリオ…スレイ、もしかして君がさっきあれだけ必死になって夢を諦めるなと言ったのは…
スレイえーっと…、うん。オレ達二人の夢を諦めてほしくなくて思わず…
ミクリオそうだったのか…
ミクリオ世界中の遺跡を回る、か。素晴らしい夢だ
スレイだろ?ミクリオなら、きっとそう言ってくれると思ったよ
スレイ…さてと。傷も癒えたし、レイザベールへ急ごうか!
ミクリオそうだね。のんびりしすぎて、追い抜かされたりしたらたまらない
ミクリオ──行こう!
scene1辿りついた選択肢
エレノア──作業の進み具合はどうですか
骨董商人工遺物の回収はほぼ終わりました
エレノア…そう、ですか
エレノアみなさん、お疲れ様でした。後の事は私に任せてください
クレスそんな…博物館が、すっかり空っぽに…
ガイくそ、ミクリオは間に合わなかったか…
ローエン
ローエンエレノア様
エレノアローエン…
ローエンお願いいたします。どうか商人達に、運び出した収蔵品を戻すよう命じてください
ローエンあなたもこのような結末は、決して望んでいないはずでしょう
ローエン今、あの商人達を止められるのは、あなたしかいないのです
エレノア…残念ですが、それは出来ません
エレノアやはりミクリオは白き獅子に志願すべきです。彼はそれだけの才を持っています
エレノアラザリス様をお守りする事は、この上ない貢献となるでしょう。…それは、彼のためにもなるはずです
エレノア人工遺物の研究から手を引かせる事でミクリオが正しい道を歩める可能性が少しでもあるのなら…
エレノア例え恨まれる事になろうとも、私は任務を遂行します
ローエンエレノア様…
ローエンお気持ちはよく理解しました。あなたもミクリオ様をお思いなのですね
ローエン…ですが、もう一度だけ言います
ローエン今すぐに作業を中止させなさい
エレノア…!
ローエンこのような強引な手段を用いたところで、ミクリオ様が夢を諦めるはずがない
ローエンそんな事は、あなたもおわかりのはずです
エレノア
クレスローエンさん!?
ガイおいおい、貴族のエレノア相手にそんな事言ったら…!
エレノア…そのような厳しい表情のあなたを見るのは初めてですね
エレノアですが…私にも立場があります。いくらあなたでも、庇う事は…
ローエンええ、覚悟の上でございます
クレス待ってくれ!ローエンさんに何かあったらミクリオは、より悲しむ事に…
ローエン私も本意ではございません。ですが、こうする事であの方の夢をお守り出来るのならば…
ローエンこのローエン、全てを投げ打ってでもエレノア様をお止めいたしましょう
ローエン老い先短い私の覚悟、聞き入れてはもらえませんかな?
エレノアローエン…あなたは…
???──その必要はない!
ミクリオ待たせたね、ローエン。今帰った
ローエンミクリオ様…
エレノアミクリオ…!
クレスよかった、ギリギリ間に合った!
ガイったく、待ちわびたぜ!
スレイふぅ…。間一髪だったみたいだな…
ローエン…どうやら、無事に手紙の主様と会えたようですね。ご無事で何よりです、ミクリオ様
ミクリオああ、遅くなってすまなかった
ミクリオ…どうやら、人工遺物の回収は順調に進んでいるようだね、エレノア
エレノア…!知っていたんですか…
ミクリオああ、全て聞いたよ。クラトスから…ね
エレノアクラトス…?どういう事ですか。彼は今日、休暇を取っているはず…
スレイ実は…クラトスさんはミクリオをこっそり呼び出して、説得しようとしてたんです
スレイオレが、新しい手紙をミクリオに出したかのように装って…
エレノアクラトスが、私に黙ってミクリオを…?
エレノアそんな…何故彼はそのような勝手な真似を
ミクリオ彼なりに、君と君の家の事を真剣に考えた結果だろう
ミクリオとはいえ、結局僕は、クラトスの説得に応じなかったんだけれど…
ミクリオ彼はあくまでも、貴族達の指示を遂行しようと考えているようだから、じきにここへ来るだろう
ミクリオそれより、ローエン
ミクリオ僕のために、君が犠牲になる必要なんてない
ローエンミクリオ様…
ローエンですが、このままではミクリオ様が今まで集めた人工遺物は全て没収されて…
ミクリオいいんだ。持って行かれても構わない。彼らの好きなようにさせればいいさ
ミクリオ…僕にとってローエンは人工遺物よりも守るに値する人だ
ローエンミクリオ様…
ローエンいけませんミクリオ様!そのような事をしたら、絶対に後悔いたします!
ローエン私はミクリオ様の夢を全力で応援すると申し上げたはずです!
ローエンそのためならば、この老体の未来などいくらでも──
ミクリオ心配ないよ、ローエン
ミクリオ僕は、夢を諦めるつもりなんてこれっぽっちもない
ミクリオ確かに、貴族達の勝手な都合で集めた人工遺物を没収されるのは許しがたい事だ
ミクリオだが、例え全てなくなったとしてもまた一から集め直せばいい
ミクリオ世界にはまだまだ数えきれないほどの人工遺物が眠っているんだ。何度だって探しにいける…
ミクリオそう思わないかい、ローエン?
ローエンミクリオ様…
エレノアミクリオ…あなたは…
スレイだな。ミクリオが、こんな事くらいで諦めるはずがない
スレイミクリオの意志の強さは筋金入りだ。オレが保証するよ。昔っからそうだったし
エレノア昔から…?お話を聞く限り、ミクリオに手紙を出していた方のようですが…
エレノアあなたは、ミクリオとは古くから交友があるのですか?
スレイああ、えーっと…そうだな。言うなれば…
スレイ見えない絆で繋がった親友!…かな
ミクリオ親友、か…。僕の方は君を忘れてしまってるけどね
スレイ今はそうかもしれないけど、いつか必ず思い出してくれる日が来るよ
スレイ…それに、何も覚えてなくたって、ミクリオはミクリオだった。それがわかれば大丈夫
ミクリオ…?
ローエンおやおや、お二人は昔からのご友人だったのですか
ローエンほっほっ、何はともあれ、ミクリオ様が素晴らしいご友人と再会出来て、何よりです
ミクリオ何を…って、それはいいんだ。とにかくそういう事だから、人工遺物は持って行って構わない
エレノアそんな…ミクリオが、何の抵抗もなく、あっさりと自分から人工遺物を手放すなんて…
ミクリオエレノア。君はこのまま、役目を完遂すればいい
ミクリオそれでも僕は、自分の夢を絶対に諦めない
ミクリオ僕の夢は、多くの人の…ひいてはラザリス様の望む世界の幸福へと繋がっているはずだ
ミクリオ途中で投げ出したらきっと後悔する。だから、どんなに辛くても大変でも、最後まで歩き通してみせるよ
ミクリオこの意志が挫ける事は決してない。この事は、他の貴族達にも改めて伝えておいてほしい
エレノア…怒らないんですか?私は、あなたの大切なものを奪っていこうとしているんですよ?
ミクリオ君にも事情や立場がある。やりたくてやったわけじゃない事は理解しているからね
エレノア
ミクリオ言われた通りに人工遺物を没収して、改めてミクリオも説得しようとした。でも、彼は言う事を聞かなかった
ミクリオ他の貴族達には、そう伝えればいい
???…まさかそう来るとはな
クラトス
ミクリオクラトス…
scene2辿りついた選択肢
クラトス…まさか自分の意志で人工遺物を差し出し、ローエンや私達だけでなく己の夢まで守ってみせるとはな
エレノア…クラトス。ミクリオから、あなたが私に黙って何をしていたのか聞きました
エレノアミクリオを呼び出したというのは本当なのですか
クラトスああ、その通りだ
クラトス幼馴染のミクリオ殿さえいなければ、お前は躊躇する事なく任務を遂行出来るだろうと思ったのでな
エレノア…そのような行動に出たのは、やっぱり…
クラトス…ああ。ヒューム家を守るためには、手段を選んではいられなかった
エレノアクラトス…。どうしてあなたはそこまでして、私の家を守ろうと…
ローエン…エレノア様。クラトスさんは、あなたのお父上の親友だったのですよ
クラトス待てローエン。その話は…
ローエンせっかくの機会です。知っておいた方がよろしいでしょう
ローエンエレノア様のお父上は、死の間際、友であるクラトスさんにヒューム家を頼むと言い残しました
ローエンだからクラトスさんは、ヒューム家とあなたを、何に変えても守ろうと必死に動いておられたのです
クラトス
エレノアクラトス…
エレノア…ミクリオ。あなたが人工遺物を持って行って構わないと言ったのは、私達のためだったのですね
エレノアクラトスの覚悟を尊重し、私やクラトスの立場が悪くならないように、と…
エレノア…ミクリオ、あなたは大切にしていた人工遺物や己の立場を犠牲にしてまで私達を守ろうとしてくれました
エレノア規律や取り決めに縛られず、ぶれる事なく夢を貫き通す強い覚悟と意志を見せた…
エレノア…それに比べて私は、よくない事だと思いながらも、仕方ない事なのだと自分に言い聞かせてばかりで…
エレノア正しいかどうかなんて考えもせず、周りに言われるがままに従うだけでした…
エレノア…私は、何と無知だったのでしょう
ミクリオ
エレノア私は白き獅子を目指す事こそが、ラザリス様への一番の貢献だと、信じて疑わずにここまできましたが…
エレノアこの思想には、ミクリオほどの強い意志はなかったのかもしれません
エレノア今なら素直に認められます。あなたの夢は、信念のこもったとても素晴らしいものだと
エレノア私の過ちに気付かせていただき、ありがとうございます。──そして、申し訳ありませんでした
ミクリオエレノア…
エレノアローエンも、すみませんでした。あなたのミクリオへの想いを、私はよく知っていたのに…
ローエン…お気になさらないでください。エレノア様は従わざるを得なかっただけなのですから…
エレノア本当に、あなた方には頭が上がりません。私は何という事をしてしまったのか…
エレノア何度お詫びをしてもし足りないくらいです
クラトス…私からも謝罪させてくれ。すまなかった
ミクリオ二人共、頭をあげてくれ。僕は謝罪なんか望んでいない
ガイそうそう。あんまりかしこまられても、ミクリオ達だって困っちまうだろ
クレス二人に悪意があってやったわけじゃない事は、みんなわかっているんだし…
エレノアはい…。…その、今さらかもしれませんが…
エレノア今後は私もミクリオのように、自分の意志で正しいと信じられる道を見極めたいと思います
エレノアそのためにも…ミクリオの夢の実現に、協力させていただけませんか
ミクリオ協力?
エレノア──そこのあなた!
骨董商は、はい!
エレノア申し訳ありませんが、回収した人工遺物を元に戻してもらえますか。手数料はお支払いいたしますので
スレイ人工遺物を返してくれるんですか?
ガイこれで博物館も元通りになるんだな!
ミクリオ…いいのか、エレノア?こんな事をしたら、君の立場は…
エレノア心配無用です。貴族の方々も説得してみせましょう
エレノアこれは私が、もう一度きちんと向き合わなければならない問題ですから
ミクリオエレノア…ありがとう
エレノアいえ、お礼を言うのは私の方です。…それと…
ミクリオこの手は…?
エレノア先日出来なかった、和解の握手です。…お願い出来ますか?
ミクリオああ、勿論さ
ローエンほっほっ、和解出来てよかったですね。ミクリオ様、エレノア様
クラトス…ミクリオ殿。偽りの手紙で貴公を誘い出した事、この場で詫びさせてくれ
ミクリオクラトス…
クラトス…だが、独断での行動に関しては、釈明するつもりはない。咎めはいくらでも受けよう
ミクリオ…クラトス。僕はあなたを咎めるつもりはない
クラトス…そうか。貴公も大概甘いな
スレイ何はともあれ、人工遺物の没収がなくなってよかったな、ミクリオ!
ローエンええ、これで少しだけ肩の荷が下りました
ガイ博物館が空になった時は、どうなる事かと冷や冷やしたぜ
クレス本当に。何とかなりそうでよかったよ
ミクリオみんなも、いろいろと手を貸してくれて、感謝している
ミクリオ特にスレイ…あの時君は、夢を諦めるなと声をかけてくれただろう
ミクリオあの一言があったから、僕は折れる事なく立ち向かう事が出来たんだと思う
ミクリオ本当に助かったよ。ありがとう、スレイ
スレイ…どういたしまして!
scene1追憶への行路
ガイ…ふぅ。これで、大体は元通りになったかな
クレスそうだね。見慣れた元の博物館の姿とほとんど変わらないと思うよ
ガイ一時はどうなるかと思ったが、何とかなってよかったな
ミクリオ心配をかけてすまなかった。ありがとう、クレス、ガイ
ガイ気にするなって、友達だろ。それじゃ、俺達はそろそろおいとまするとしようか
クレスミクリオ、また何かあったら、遠慮なく僕達を頼ってくれ
エレノアミクリオ、私達もそろそろ失礼しますね
ミクリオ結局二人にまで手伝わせてしまったな
エレノア私が原因を作ったのですから、これくらいは当然です
ミクリオ他の貴族達に話をすると言ってたけれど…くれぐれも無茶はしないでくれ
エレノアはい、でも大丈夫です。私には頼りになる従者がついていますから
エレノア…これからは、何があろうと私達はあなたの味方です。どうかそれだけは忘れないでください
ミクリオああ、覚えておくよ
エレノアそれでは、失礼します
クラトス邪魔をしたな
スレイ…さっきまで、あんなにたくさん人がいたのに、静かになる時はあっという間だな
ミクリオああ、そうだな
ローエン…ミクリオ様、先ほどの決断、実にお見事でした
ローエン友を助け、自らの夢も守る…。並大抵の覚悟で出来る事ではございません
ローエン本当にご立派になられました。あなたの従者として、誇りに思います
ミクリオよしてくれ。そこまで言われるとさすがに僕もくすぐったい
ローエンしかし、ついこの間まであんなに小さかったミクリオ様が…。時の流れは早いものですね
ミクリオ一体いつの話をしているんだ…
スレイはは、二人は仲がいいんだな
ローエンええ、長くお仕えさせていただいておりますから。…そうです、スレイさん
ローエン今回の事…本当にありがとうございました
スレイオレですか?そんな、オレは何も──
ローエン…あなたには、我が主の夢を守っていただきました
ローエンミクリオ様が夢にかける情熱は、ずっとお側で見てきた私も存じております
ローエンそして、そこに至るまでの、苦悩や喜びも…。だからこそ、私も深く感謝せずにはいれないのです
スレイ何か変な感じだな…。ミクリオの事で、オレが感謝されるのって
ミクリオ…スレイ、何でそんなに嬉しそうなんだ
ローエン…不思議ですね
ローエンスレイさんとミクリオ様が並んでいらっしゃる姿を見ると、何故かとても安心するのです
ローエンまるでずっと昔から、それが当たり前だったかのように…
スレイ
ローエンスレイさん。ミクリオ様と、これからも仲良くして差し上げてくださいね
スレイはい、勿論です!
ミクリオローエン…僕を子ども扱いするのはやめてくれ
ローエンほっほっほ。さて、お二人には積もる話もおありでしょう
ローエンせっかく人工遺物を語れる者同士が出会えたのですから、存分に語り合うとよろしいかと
ローエン私は仕事に戻りますので、何かあったらお呼びください
ミクリオああ。ありがとう、ローエン
スレイ…ここがミクリオの部屋かあ。今のミクリオは、こんなところに住んでるんだな
ミクリオ今の…?僕は昔から、ずっとこの部屋だけど
スレイあ…そうだよな。ごめんごめん。変な言い方しちゃったな
ミクリオ…?
スレイええっと…それにしても、人工遺物の件、何とか一件落着してよかったな!
ミクリオああ、これで思う存分研究に力を注げそうだ
スレイ…ミクリオは、本当に人工遺物が好きなんだな
ミクリオ昔から妙に心惹かれるんだ
ミクリオ別にきっかけと言えるような印象深い出来事があったわけじゃない
ミクリオただ、気付けばそれが当たり前かのように夢中になっていた
ミクリオ…不思議なものだね。これが好きという事なんだろうけど自分でも首をひねるくらいだよ
ミクリオ…けれど、落ち着くんだ
ミクリオこうしている事が僕が僕であるという証明のような…そんな気がして
スレイ
ミクリオ…こんな事、ローエンくらいにしかしゃべった事がないんだけどね。不思議と君には口が軽くなるみたいだ
スレイ…あのさ、ミクリオ
ミクリオ何だい?
スレイこんな事、オレがいきなり話し出したら、きっと驚くと思うけど…
スレイオレ…実は、別の世界で生きてたんだ
ミクリオ…どういう事だ?
スレイオレだけじゃない。ミクリオも一緒だった。オレ達、幼馴染だったんだ
ミクリオちょっと待ってくれ。わけがわからない…
ミクリオスレイも僕も別の世界の人間で…幼馴染、だって?
ミクリオ本気で言っているのか…?
スレイこんな冗談言わないよ
スレイ…昔オレ達が一緒にいた事があるって話したの、覚えてる?
スレイ小さい頃の話かって言われて咄嗟に頷いちゃったんだけど、…あれ、本当は別の世界の話なんだ
スレイオレ達は、小さい頃からずっと一緒に育って…それから、世界を救うための旅に出たんだよ
ミクリオ君は何を言って…
スレイ…ごめん。いきなりこんな事を話しても、やっぱり信じられないよな
ミクリオ…ああ、僕にそんな記憶はない
ミクリオそもそも僕は、君の事だって全く覚えていないんだ…
スレイだけど、嘘じゃないんだ。ミクリオが覚えていないのは、天帝が全てを変えてしまったからで…
ミクリオ天帝…?つまり君は、ラザリス様が僕の記憶を消したと…そう言いたいのか?
スレイうん。でも、ミクリオだけじゃない。天帝は、多分世界自体を書き換えてる
ミクリオそんな突拍子のない事、一体何を根拠に──
スレイ…「人工遺物」
スレイあれは、天帝が創り変えてしまう前の世界の物なんだ。だから、詳しく説明する事が出来た
ミクリオ人工遺物が?そんな、ありえない…
スレイじゃあ、ミクリオは、オレがどうやって人工遺物の知識を手に入れたと考えてるんだ?
ミクリオそれは…
スレイそれにミクリオはオレの事、知ってただろ
ミクリオいや、あれはあくまでも夢の話で…
スレイ…やっぱり、人工遺物の使い方だけじゃ記憶は戻らないか
スレイ本当は、ミクリオがちゃんと記憶を取り戻すまでは会わないつもりだったんだけど──
スレイミクリオが大変だって聞いて、思わず飛び出しちゃって…これじゃ、作戦も台無しだよな
ミクリオ作戦だって?
スレイ本当は、ミクリオを見つけた時、すぐにでも声をかけたかったんだけど…
スレイ…この世界を見て回る内にそれじゃ駄目なんだってわかったんだ
スレイみんな、ミクリオと同じように元の記憶を失ってて…誰もオレの話を信じてくれなかった
ミクリオ…それはそうだろう。自分にない記憶を思い出せ、なんて言われても、戸惑うだけだ
スレイだから、直接会いにいくのは避けて手紙を送ったんだ
スレイ人工遺物の事をきっかけにミクリオの記憶を取り戻せたらって…
スレイ…と言っても、これはオレが思い付いた作戦じゃないんだけどね
ミクリオ…!仲間がいるのか?
スレイ運よく記憶を取り戻してた仲間と合流出来たんだ。今はわけがあって、別行動中だけど…
ミクリオ
ミクリオ…人工遺物は別世界の物と考えれば、様々な事に説明が付く。理解出来る点があるのも確かだ
スレイミクリオ…
ミクリオでも…信じられない。いや、信じてはいけないんだ
ミクリオラザリス様が、僕達の記憶を書き換えているだなんて…
ミクリオそう…そんな事を言う君は、まるで──
スレイ……咎人みたいだ、って?
ミクリオ…!
ミクリオ…ああ、そうだ。人を惑わす言葉…そう思われても仕方ない事を言ってるんだぞ、君は…
スレイはは、そう…だな。でも、これは全部事実なんだ
ミクリオ…君の目的は何なんだ。どうして、僕にそこまで…
スレイ…多分、今のミクリオにはわからないと思う…
スレイすぐには無理かもしれない。でも、少しでもオレの言葉が届くなら…
スレイミクリオ。オレと一緒に、来てくれないか
スレイ一緒に旅をすれば、オレの言った事が嘘じゃないって証明出来るはずだ
スレイきっとお前の記憶だって取り戻せる。そして、今度こそみんなと世界を──
ミクリオ…少し、考えさせてくれないか
ミクリオいきなり多くの情報が入ってきたから混乱しているんだ。整理するのに時間がほしい
スレイ…そうだよな。わかった、ゆっくり考えてきてくれ
ミクリオ
scene2追憶への行路
ミクリオ──こことは違う別の世界、人工遺物の真実、失われた記憶…
ミクリオ…あんな話、簡単に信じられるわけがない
ミクリオそう…咎人の可能性がある者は、迷わず白き獅子に突き出すべきだ
ミクリオそれなのに、どうして僕は……
スレイミクリオ。オレと一緒に、来てくれないか
ミクリオ…僕は一体、どうすれば…
ローエンおや、ミクリオ様。もうお話を終えられたのですか?
ミクリオローエン…
ローエンてっきり、スレイさんと人工遺物の話に花を咲かせているものと思っておりましたが
ミクリオ
ローエン…表情が冴えませんね。どうかなさいましたか
ミクリオ…すまない。少し、相談に乗ってくれないか
ミクリオ実は、スレイからとんでもない話を聞かされてね…
ローエン──スレイさんは別の世界の住人で、人工遺物はその世界の物だった…ですか
ローエン…それはまた、何とも突拍子もないお話ですな
ミクリオスレイの言う事に不思議な説得力や検証の余地があるのは事実なんだが、あまりに現実離れしていて…
ローエン素直に信じていいものなのか判断しかねている、と。…なるほど、難しい話です
ミクリオスレイの言う話は本当なのだろうか、それとも、彼は……
ミクリオ…ローエン、君はどう思う?
ミクリオ僕の考えは無視していい。この話を聞いてどう感じるのか、客観的な意見がほしい
ローエンそうですねぇ…
ローエン確かに、にわかには信じがたい話だと思います。別の世界というのも聞いた事もありませんし…
ミクリオそうか…
ローエン…ですが、きっと真実なのでしょうね
ミクリオ…!
ローエンそもそも、人工遺物自体が正体不明の不思議な物なのですから、何があってもおかしくありませんし
ローエン何より、スレイさんはミクリオ様をとても大事に思っていらっしゃいます
ローエンそんな彼が、あなたを騙すような事を言うはずがない…そう感じます
ミクリオ…そうか
ローエン先ほど、スレイさんに旅に誘われたとおっしゃっていましたね
ミクリオああ。それがどうかしたか?
ローエンせっかくのお誘いなのです、博物館や貴族達の事は私に任せて、旅に出てみてはいかがです?
ミクリオ…!
ローエン彼と世界各地を回り、人工遺物と世界の謎を調べる事に魅力を感じておいでなのでしょう?
ミクリオそれは、確かにそうだが…スレイの話の事もあるし、僕が長期間屋敷を空けるわけには…
ローエンこちらの心配はいりませんよ。エレノア様やクラトスさんの助けも得られるでしょう
ローエンそれに、人工遺物に詳しいスレイさんと行動を共にすれば、研究もきっと捗ります
ローエンミクリオ様は、思う存分、ご自身の夢を追ってきてください
ミクリオ…僕は…
ローエンミクリオ様。今一度、ご自分の気持ちと素直に向き合ってみてくださいませ
ローエンそうすれば、誰を信じたいのか、そして、何がしたいのか…おのずとおわかりになるはずです
ローエンそれがどのようなものであろうと、このローエン、最後までお力になると誓いましょう
ミクリオ……そうだな。もう少し、考えてみる事にする
ローエンええ。どうか後悔だけはされませんよう、よくお考えください
scene3追憶への行路
スレイ
ミクリオ…待たせたね
スレイミクリオ…!
ミクリオ…単刀直入に言うよ。僕は君の事を咎人だと思っている
スレイそう…だよな
スレイ…ミクリオがオレを警戒するのもわかる。けど、オレは──…!
ミクリオ…でも、僕は、君の話が虚言だと断定する事も出来ないでいるんだ
ミクリオこうして迷っている事自体、咎人である君に惑わされているんじゃないか、と思うほどに…
スレイ…もしかして、オレを白き獅子に突き出そうとしてるのか…?
ミクリオ本来ならそうすべきだろうね…。けど僕は、真実を突き止めるため君に同行する事に決めた
スレイ…!本当か!?
ミクリオああ。旅をしながら、人工遺物や、君の言う別の世界について調べる事にする
ミクリオその中で確証が持てたら君を信じる。だが、もし全てが君の妄言だとわかったら…
ミクリオその時は即座に然るべき処置を取り、咎人として、君を白き獅子に突き出す
スレイ…!
ミクリオ僕はラザリス様に対して、忠誠を誓っている
ミクリオ今回のエレノアの一件を経て、ますますその思いは強くなったと言ってもいい
ミクリオだから、そのラザリス様に仇を為すかもしれない君を、放っておく事は出来ない
ミクリオ僕が同行するのはあくまでも、人工遺物の研究、及び、咎人かもしれない君の監視が目的だ
スレイ監視…
ミクリオ場合によっては、僕と君は敵対する可能性だってあるだろう
スレイそれでもいいよ。ありがとう、ミクリオ
スレイ…そっか…ミクリオと、また旅が出来るんだな…
スレイはは、思い切って話してよかった!記憶をなくしてるのは寂しいけど、やっぱりすごく嬉しいよ
ミクリオ…喜ぶところか?僕は君を警戒しているとはっきり告げたんだぞ?
スレイあはは、そういえばそうだな。でも、オレにとっては、一緒に旅が出来る事の方が大事なんだ
ミクリオ……。君の考えている事は時々よくわからないな
スレイさてと。まずはどこへ向かおうかなー
ミクリオそれなら、市都ファルカームに行ってみないか?
スレイ別にいいけど、何かあるのか?
ミクリオ最近、ラザリス様がその街を視察に訪れたそうだ
スレイそういえば、天帝はすごく視察に熱心なんだっけ
ミクリオああ。だけど、よく考えたら、視察の目的や理由も僕達は何一つとして知らないんだ
ミクリオだからまずは、ラザリス様のお考えを知る事が、スレイの話を見極める鍵になるんじゃないかと思ってね
ミクリオそのためには、実際に視察した街へ行ってみるのが一番だろう
スレイ…天帝について調べる事が、みんなの記憶や世界を取り戻すヒントにもなるかもしれないし…
スレイよし、決まりだ。ファルカームへ向かおう!
スレイ…あ、でも、その前にローエンさんや友達のみんなに挨拶してきた方がいいんじゃないか?
ミクリオいや、その必要はない。既にローエンには話してある
ミクリオそれに、少し街を離れるだけだ。二度と会えなくなるわけでもないし別れの挨拶なんて大げさだよ
ミクリオ…事情を話せば、かえって余計な心配をかける事になるかもしれないしね
スレイ…そっか、そうだよな
ミクリオわかったなら急ごう。あまり時間が経つと、正確な証言が得られなくなってしまうからね
スレイあ、うん…そうだな。それじゃ、出発しよう!
スレイミクリオ…必ず、お前の記憶を取り戻させる
スレイそして今度こそ、みんなで一緒に世界を取り戻すんだ!

NameDialogue
scene1不屈の心
ベルベット……
ティア…!あなた、もう起き上がって平気なの?
ベルベットもう?遅いぐらいだわ。シャングレイス脱出から、何日経っていると思ってるの
ティアまだ数日よ、ベルベット。一人では動けないぐらい重傷だったんだから、無茶しないで
ベルベット…これだけ動ければ十分よ
ティアでも…
ベルベットここまで世話してくれた事には礼を言うわ
ベルベット崖から落ちた時もあんたの譜歌とやらがなければ危なかったのも事実…
ベルベット──だけど、あんたに従うつもりはない
ティア……
ベルベットそれに、あんただって人の世話を焼いている場合じゃないはずよ
ティア…そうね
ティア…兄さんに剣を向けられたあの時、すべてを思い出したわ…
ティア私は…何があっても兄を止めなくちゃいけない
ベルベット…兄を止める…
ティア元の世界で起きた晶化も兄とラザリスによるものだった
ティアこの世界を新たに創り上げたのも、兄さん達の仕業と考えて間違いないはずよ
ベルベットそこまでわかっているなら、なおの事大人しくなんてしていられないでしょ
ベルベットラザリスを討つためにも、今は情報を集めないと…
ティア…本気で行くつもりなのね
ベルベット身体さえ動くなら、足を止める理由はないわ
ティア…白き獅子が、まだあなたを捜しているとしても?
ティアあなたが寝ている間にも彼らは捜索を続けていたわ
ベルベット…それでも。これ以上、時間を無駄にするわけにはいかない
ベルベット元の世界に帰ってあいつを殺す…。…あたしには、立ち止まってる暇なんてないのよ
ティアあいつ…。それって、ラザリスではない別の誰かの事を言っているのよね?
ティアあなた、前に言っていたわ。元世界で「やるべき事」があるのだと
ベルベット
ティアベルベット…あなたはその人を討つために、一刻も早く元の世界に戻ろうと──
ベルベット…あんたには関係ないでしょ
ベルベットあたしは行く。あんたもせいぜい、捕まらない事ね
ティアあ、ちょっと…!
ティア…討つべき人物……
ティア…ベルベット、待って!
scene2不屈の心
ベルベットはぁ…はぁ…どうしてついて来るのよ
ベルベット…うぐっ…!
ティア…!あなた、傷が開いて…
ティアベルベット、そのままじっとしていて
パアアア…
ティア完治とまではいかないけど、これで動くのは大分楽になったはずよ
ベルベット…あんた前に、自分の術じゃ応急処置ぐらいしか出来ないって言ってなかった?
ティア…あの時は、ああ言うしかなかった
ティア怪我を完治させてしまったら…あなたはきっと、今のように無茶をすると思ったから
ベルベット…それがわかってるなら、どうして今度は治療する気になったの?
ティア…ベルベット。私も一緒について行く事に決めたわ
ベルベット…本気?
ティア…自分の身を顧みず戦うあなたの姿、見ていられないわ。それに──
ティア…あなたと私、少しだけ似ている気がしたの
ティアだから、あなたの事を放っておけないのかもしれない
ベルベット…ただそれだけの事で、何で…
ティアそれだけじゃない。この世界を元の姿に戻したい気持ちは私も一緒だもの
ティア目的は一緒なんだから、協力しあえるはずよ
ティア戦力は少しでも多い方がいい…違うかしら?
ベルベット…好きにすればいいわ。あたしの邪魔をしないならそれで構わない
ティア……
ティア本当は、他のみんなとの合流を急ぐべきなのかもしれないけど…
ベルベットついて来るつもりなら早くしなさい。今日中に街に入りたいわ
ティア…!ええ、今行くわ
ティアそろそろ街道に出るころかしら
ベルベット油断しない事ね。あんたの言葉が確かなら、白き獅子がまだ近くに──
ガサガサ…
ベルベット…!!
チャキ!
???うわっ、剣!?…っ、あなたは…!
???ジュード!?何なんだ、君達は…
ティアジュード、ルドガー!?
ジュードティア…!
ルドガー…ジュード、知り合いなのか!?
ジュードあ…えっと…ティアはそうなんだけど…──ってそれどころじゃない!
ガサガサ…
ジュード僕ら、魔物から逃げてるところだったんだ!
グルルルル…!
ティアなんて数…!
ベルベット…白き獅子じゃないだけ幸いだけど…さっさと片付けるわよ…!
scene3不屈の心
ベルベットはああっ!
バシュッ
ギャオオオッ!
ベルベットはぁ…はぁ…片付いたわね。それで…
ベルベット…あんたの知り合い、って事でいいのよね?
ティアええ。…改めて、二人共久しぶりね。無事でよかったわ
ジュードお互いにね。…と、その前にティア、ルドガーの事なんだけど……
ルドガー…俺と君は、初対面だよな?俺の事、知っている口ぶりだけど…
ティア…!ひょっとして、ルドガーはまだ…
ジュードうん…。記憶を取り戻していないんだ
ルドガー記憶…?って事は、もしかして…
ジュードああ、えーっと。ティアはその…僕達の仲間だよ。君は覚えてないと思うけど
ルドガー……
ティアルドガー、そんな顔しないで。警戒するなと言ったところで今は難しいのかもしれないけれど…
ジュードところでティアその人は…もしかして帝都で…
ティア…彼女はベルベット。わけあって、行動を共にしているの
ジュード…そう、なんだ
ジュード…よろしく、ベルベット。僕はジュードで、こっちが…
ルドガー…ルドガーだ。よろしく
ベルベット
ジュード…えっと。よ、よろしくね
ティアそれより二人共、どうしてこんなところに?
ジュードあ、うん。実は僕達、レイザベールに向かってて──
ルドガー──ジュード。この人達は…咎人、なんだろう?簡単に目的地を話しては…
ジュード…ルドガーが不審に思うのも警戒するのもわかる
ジュードけど大丈夫だよ、僕が保証する。だからもう少し…せめてエルに会うまでは、僕を信じてほしい
ルドガージュード…
ルドガー…わかった、今はジュードを信じるよ
ティアエルって確か、ルドガーの…?
ジュードうん、レイザベールにいるんだ。彼女と会えば、ルドガーの記憶も取り戻せるんじゃないかと思ってね
ティア
ティア…ねえ、ベルベット。私達もジュード達に同行してはどうかしら?
ベルベット…何のために?そんな事に時間を割いている余裕はないはずよ
ベルベットついて行きたいなら、あんた一人で勝手に行けばいいわ
ティア二人は以前、元世界の晶化を止めようと一緒に戦った仲間なの
ベルベット
ティアルドガーの記憶が戻れば、ラザリスと戦う時にきっと力になってくれるわ
ティアあなただって、今のままじゃ戦力不足だってわかっているでしょう?
ベルベット…わかったわ
ベルベットレイザベールまでは同行してあげる。でも、その男の記憶が戻らなかったらそれまでよ
ティアそれで構わないわ
ジュード…話はまとまった、かな?
ティアええ、ごめんなさい、ジュード。待たせてしまって
ティア聞いての通り、私と彼女もレイザベールまで同行しようと思うのだけど…
ジュード勿論だよ。心強い仲間が増えるという意味では大歓迎だけど…
ジュードルドガーもそれで構わないかな?
ルドガー…ああ、構わない
ティア…そう言ってもらえてよかったわ
ジュードそれじゃあ、レイザベールに向かおうか
ティアええ、行きましょう
scene1いつかの団欒
ヴァン…そうか、わかった。もう下がっていい
神兵はっ!
ヴァン……
ラザリス…何の報告?
ヴァン珍しいな。お前が私の動きに興味を持つとは
ラザリスまた囮にでも使われちゃたまらないからね
ヴァン…なるほど。では、また咎人を逃がされてはたまらないので、答えるとしよう
ラザリス……
ヴァン新たな咎人が出たようだ
ラザリス…何だ、またその話?いい加減飽き飽きしたよ
ヴァンそれがお前の目覚めを邪魔した相手だとしても、か?
ラザリス…へぇ、あの時の
ラザリス…けど、どうだっていい
ラザリスどうせ咎人達は全て消えるんだ。それまで無様に足掻けばいい
ヴァン……
ラザリス本当に、ヒトって愚かな生き物だね
ヴァン…果たして、本当に愚かなのは誰なのか…
ヴァンこちらはこちらで、策を考えておいた方がよさそうだ
ジュードふぅ、着いたね。ここがレイザベールか
ジュードさて、どこから捜そうか──
ティアところでジュード。エルの方は記憶を取り戻しているの?
ジュードいや…多分あの様子だと、まだ…
ティア…そう。ルドガーと会う事で互いに記憶を取り戻せたらいいけど…
ジュード…うん、そうだね。あんなに互いを大切に想い合ってた二人だし…僕もそう願うよ
ベルベット
ベルベットそれで、そのエルっていう子はどこにいるのよ
ジュードえ、えーっと…それはまだこれから…
ジュード──って、ああっ!?
ルドガー…!?ど、どうしたんだ、ジュード
???エルさん、よーく聞いてくださいね。一人で街の外に出ちゃ、絶対に駄目です!
エルわかってるよ!チェルシーはちょっとカホゴすぎ!
チェルシー何が過保護なものですか!街の外には魔物がたくさんいて、危険なんです!
チェルシー覚悟もなく飛び出してはいけません!これは遠慮近憂ですよ!
エルもー。チェルシーの言う事、時々よくわかんないよー
ジュードおーい、エル!
エルあれ、ジュード!?
チェルシー…?エルさんのお知り合いですか?
エルうん。カルミナ街で会ったんだ。ジュードだよ!
チェルシーそうだったんですか。はじめまして、ジュードさん。チェルシーと申します
ジュードはじめまして、よろしくね
エルどうしてジュードがレイザベールに?もしかして、ルドガーの事連れてきてくれたとか!?
ルドガージュード、その子が…
エルあなたがルドガー!?カルミナ街の食堂の!
ルドガーあ、ああ。君がエル、だな。わざわざ俺に会いに来てくれたとか
エルうん!エル、ルドガーの料理、すっごく食べてみたかったんだ!
エル今日はエルのために来てくれたって事だよね?エル、ちょうどお腹空いてるよ!
ルドガーあ、いや、まだ作るとは──
エルほらほら早く!エルのお家はこっちだよ!
ルドガーわ、わかった。だから、そんなに引っ張らないでくれ
チェルシーもーっ、初対面の人を無理やり連れて行っちゃ駄目ですってば~!
ティア…元気な子ね
ジュードあはは…本当にそうだね
ティアだけど…エルを見てもルドガーの様子に変化はなかったわ
ティア…記憶、戻るといいのだけれど…
ジュードきっと大丈夫だよ
ジュードルドガーにとって、エルが大切な子だっていうのは間違いないと思うんだ
ジュード記憶が改変されていたとしても、自分の中に残っているものは確かに存在しているから…
ジュードルドガーの中にも、誰かに料理をふるまう約束だけはずっと残ってた
ジュードだから僕は、ルドガーとエルの絆を信じるよ
ティア…そうね
ティア弱気な事を言ってごめんなさい。私達もルドガー達を追いましょう
ジュードうん、行こう
ベルベット……
ベルベット誰かのために料理をする、か…
scene2いつかの団欒
エルむぐ、むぐ、あむ…
チェルシーエルさん!淑女として、もっと落ち着いてマナーをしっかりと…
エルえ~?チェルシーは細かすぎ!美味しく食べるのがイチバンだよ
エルルドガー!この料理、どれもすっごく美味しいよ!
ルドガーそれはよかった
ティア…本当に美味しいわね
ジュードまさか僕達の分まで作ってくれるなんて…
ルドガーせっかくだったし、みんなで食べた方が美味しいかと思ってね
ベルベット…みんなで食事、ね…。そんなの、いつ以来かしら…
ルドガー…?ベルベット、どうかしたのか?
ベルベット別に。何でもないわ
ジュードところで、ルドガー。その…何か思い出したりは…?
ルドガー…いや。特には何も…
ジュード駄目かぁ…
ルドガー……
エルんぐっ……ぷはー!何これ、すごく美味しい!
エルこんな美味しいスープ、エル、初めて飲んだかも!
エルそれに…初めてなのに何だか懐かしいかんじ
エルルドガー!今日は来てくれてありがとう!
ルドガー…っ!?
エルエル、ルドガーのスープが一番好き!
ルドガー…今のは一体…?
ルドガー俺は、前にもエルにスープを…?いや、そんな覚えは…
ルドガーまさか…
ベルベット…どうやら駄目だったみたいね
ジュードうん…。でも、諦めるつもりはないよ
ジュード他にも何か記憶を刺激する事があるかもしれないし…いろいろ試してみるつもり
ベルベットそう…好きにすればいいわ
エルはむ、むしゃ…んぐ。ふぅ、ごちそうさま!お腹いっぱい~
ルドガー…ああ、お粗末様。口にあったなら幸いだ
ベルベット…ちょっと待ちなさい、エル
エルうん?
ベルベットトマト、残してるわよ
エルうぐっ…!
ルドガーあ、本当だ。綺麗に残ってる…
ベルベット好き嫌いせず、全部食べなさい
エル…エルのは好き嫌いじゃなくてシュチョーのケンリだもん
ベルベット大きくなれないわよ?
エルむー…わかった
ジュード……
ベルベット…何?言いたい事があるなら言ったら?
ジュードあ、いや…。ベルベットって、子どもの扱い上手だなって思って
ベルベット…。別に、ただの慣れよ
ジュードへぇ…もしかして、弟とか妹とかがいるのかな?
ベルベット……
ジュードベルベット?
ベルベットあたしの事は今は関係ないでしょ。それより、ルドガーの記憶を戻す事を考えなさいよ
ベルベットあたしは、悠長に記憶が戻るのを待つつもりはないから
ベルベット情報収集が終わり次第、明日には街を発つわ
ティア
ジュードとりあえず他にも試してみよう。ルドガー、もう少しだけ付き合ってくれないかな?
ルドガー…あ、ああ、わかった。俺としてもこのままで終わりってのはすっきりしない
ベルベット…勝手にしなさい。あたしは、先に宿を探してるわ
scene3いつかの団欒
ジュードおはよう、ルドガー。よく眠れた?
ルドガーおはよう。ああ、よく眠れたよ
ジュード…昨日あの後も、エルと一緒に遊んでたんだよね?やっぱり何も思い出さない?
ルドガー…ああ
ジュードそっか…。なかなか難しいね
ルドガー
ティアおはよう、二人共。…その様子だと、いい結果は得られなかったみたいね
ジュードうん、まあ…
ジュードそっちはどう?昨日、街で聞き込みしたらしいけど…
ベルベットラザリスが視察の終了を宣言したそうよ
ジュードえ、どうしてまた…
ベルベットさあ。理由なんてどうでもいいわ
ベルベットルドガーの記憶が戻る気配もないし、あたしはこのまま帝都へ向かう
ジュードちょ、ちょっと待って──
???み、みなさんっ!
チェルシーはぁ、はぁ…!
ジュードえっ?チェルシー?どうしたの?
チェルシーあ、あの!エルさんを見ませんでしたか!?
ルドガーエル?いや、見てないけど…
チェルシーそう、ですか…。実は今朝から姿が見えなくて…
ルドガー何だって…?心当たりはないのか?
チェルシーわかりません…。けど、今日は二人でカルミナ街へ買い出しに行く約束をしてたんです
チェルシー子どもじゃないから一人で行けると自信満々だったからもしかしたら一人で街の外に…
ティア…!もしそうだとしたらエルが危ないわ
ジュード…万が一があったらいけないし、手分けして捜した方がいいと思う
ルドガー万が一…
ルドガー…急いで捜そう!チェルシーはもう一度街の中を頼む!
ルドガー俺達は街の外へ──
ベルベット…あたしには関係ない事ね
ティアベルベット…!
ジュード…わかった。じゃあ、ティアとルドガーと僕で、街の外を捜そう
ティア…わかったわ、急ぎましょう
ルドガー無事でいてくれよ…エル!
チェルシーみなさん…よろしくお願いします!
ベルベット……
scene1覚悟を纏いて
ルドガーエル…どこにいったんだ?
ティアこの辺りにはいないわね。遠くまで行ってないといいんだけど…
ジュードカルミナ街の方へ行ってみよう。もし向かっているなら、途中で追いつけるかもしれない
ティアそうね、急ぎましょう
ルドガー
ルドガーあの時浮かんだエルの言葉…もしかしたら、俺は本当に──いや、けどジュード達は咎人だし…
ルドガー…それより今は、エルを捜さないと
ルドガーはぁ…。こっちにも、いない…
ジュード…エル!いたら返事をしてくれ!
ティア…ねえ、みんな。一度レイザベールへ戻ってみてはどうかしら
ティアこれだけ捜しても見つからないのよ。もしかしたら、彼女は街から出ていなかったのかもしれない…
ジュード…そうだね。エルの足で、これ以上遠くまで行っているとも思えないし…
ジュードルドガーもそれでいいかな?
ルドガー…ああ、そうだな。一度街に戻って…
???キャー!
ルドガー…!
ルドガー…今のは、エルの声だ…!
ジュードあっちからだ…行こう!
エルこ、来ないで…
グルルル
エルあっち行ってよ!
ガアアアアッ!
エルいやーーっ!!
バシュッ
エルえっ…?
ルドガーよし、当たった!エルー!大丈夫かー!?
エルあれって…ルドガー!?た、助けてーっ!!
ティア早く助けないと、囲まれているわ!
ルドガー待ってろ!すぐにそっちに行くから!
ジュードくっ…!魔物の数が多すぎるよ…!
ルドガーそこを、どけ──!
scene2覚悟を纏いて
ルドガーエル!よかった、無事だな
エルル、ルドガー…
グルルル
エルやっ…!まだ魔物が…!
ルドガーエル、俺から離れるな
エルう、うん…
ジュード何とかルドガーはエルのところまで辿りつけたみたいだけど…
ジュードくっ…魔物の数がさらに増えてる…!
ティアこれじゃ、彼らのところへ行けないわ
ルドガージュード達も手一杯だ…。俺だけで何とか…!
エル
ルドガー…大丈夫、俺に任せて
ルドガー必ず一緒に帰ろう。そしたら今度は、昨日のスープの特別バージョンを作ってやる
エルルドガー…
エル…うん。約束だからね?
ルドガーああ、約束──…
ルドガー……!
ルドガー──俺が帰って来たら、エルの大好きなスープをたっぷり作ってやる
エルホント!?
ルドガーああ、腕によりをかけた大好きなスープの特別バージョン、作るって約束するよ
エル…うん。約束だからね?
ルドガーああ、約束だ
ルドガーま、また、俺の知らない記憶…?…ぐっ!
エルルドガー!?頭、痛いの!?
ルドガーだ、大丈夫だ…。これくらい、何て事──
ルドガーうっ…!また…
エル気をつけて行って来てね、ルドガー
エルメガネのおじさんとルルの事も、エルがちゃんと守るから
ルドガーエル…それに、兄さん…?そうだ、あの時俺は二人に見送られて……
ルドガーくっ…
ルドガーエル!兄さん!ここにいるのか!?いるなら返事をしてくれ!
ルドガー俺は……二人を守る事が…
エルルドガー…!
グルルル…
エルっ!こ、このー!あっちいけー!
ルドガーえ、エル…?
エルルドガー!街の外では、カクゴが必要なんだよ!
エルルドガーは今、苦しそうだから!エルがカクゴして、ルドガーを守るから!
ルドガー覚悟……!
ユリウス『その覚悟…身をもって示せ』
ルドガーそうだ…俺は…
エルきゃああ!
ジュード…!ルドガー!危ない、魔物が…!
ティアエル──!
ズバッ!!
エル……
ルドガーエル、怪我はないか!?
エルうん、大丈夫──
エル…!ルドガー、そのカッコウ…
ルドガーさっきは守ってくれてありがとう。でも、もう大丈夫…お蔭で「覚悟」を思い出したよ
ルドガーエル…今度こそお前を守る、絶対に
ルドガーはあああああああっ!
ザシュッ、ザシュッ
エルル、ドガー?
エル…!
ティアルドガー、もしかして──
ジュードどうやら思い出したみたいだね。ティア、こっちも負けてられないよ、一気に片を付けよう!
ティアええ、そうね
scene3覚悟を纏いて
ジュードはぁ、はぁ…何とか、倒せたみたいだね
ティアええ…
ルドガーエル、どこも怪我はないか?
エル…う、うん
ルドガーそっか…、よかった
エル
エルあのね、ルドガー…エルさっき──
グ、グルルル
ジュード待って!その魔物、まだ息が──
ガアアアアッ!
エルきゃっ…
ルドガーくっ…!エル!俺の後ろに──
ザシュッ
ルドガー…?
ベルベット
ルドガー…ベルベット!?どうして…
ベルベット…さっさと、その子を連れて、街に戻るわよ
ルドガー…あ、ああ
ティア…ベルベット
ルドガーベルベット、さっきはありがとう
ベルベット…別に。あたしは、あたしの目的のために動いただけよ
ベルベットそれに…
エル……
ルドガーベルベット?
ベルベット…何でもないわ。もうこの話はいいでしょ
ティア…。もしかして、彼女なりにエルを心配していたのかしら…
ルドガーああ…そうかもしれない
ベルベット…何か言ったかしら?
ティア…いえ、何も
エル…ねえ、ルドガー
ルドガーん?
エルあのね、さっきのルドガーの黒いカッコウどこかで見た時ある…
エルそれにルドガーを見てると、胸がもやもやする…何でかな?
ルドガー…!もしかして記憶が…
ルドガー……
ルドガー…エル、怖い思いをして疲れただろ?そんな事、気にしなくていいんだ
エルルドガー…
ルドガーほら、チェルシーに顔を見せて安心させてやろう
エル…うん
ジュード…いいの?確かに、記憶を取り戻さない方が安全ではあるけど…
ルドガー…もうエルを恐ろしい目にはあわせたくないんだ
ティアルドガー…
ドンッ
ジュード!?す、すみません、ぶつかってしまって…
???いえ…こちらこそ前方不注意でした
???…!あなたは…
ベルベット…何?
???…いえ、失礼いたしました。私の思い違いのようです
???噂の人物は単独犯という話ですし、軽率に騒ぐべきではありませんね…
ジュード何だったんだろう…?
ルドガーよくはわからないが…どことなく、街の様子がおかしいような…?
ルドガー何だか、さっきから視線を感じるような気がして…
ジュード僕もだよ。…気のせいかとも思ったんだけど
ティア…嫌な予感がするわね…
チェルシーエルさーん!
エルチェルシー!
チェルシーエルさん、よかったぁ。心配してたんですよ
エル…ごめんなさい
チェルシーとりあえず、家に帰りましょう。みなさんも、その…早くこの街を出た方がいいかもしれません
ジュード…?それってどういう…
チェルシー…実は、街で噂になってるんです。ベルベットさんが、例の脱獄した咎人なんじゃないかって…
チェルシー私、誤解を解こうとしたんですけど誰も信じてくれなくて…
ベルベット
エル…ベルベット
ベルベット…時間が惜しいわ。帝都シャングレイスへ向かうわよ
ジュード僕達も行こう。エル、チェルシー短い期間だったけど、楽しかったよ
ティア…さようなら
エルえっ!?みんな、行っちゃうの…?
ルドガーエル、俺は…
エルルドガー、行っちゃやだ!
ルドガーごめん、エル
ルドガー俺には、どうしてもやらなきゃいけない事があるんだ
エルやだ!せっかく仲良くなれたのに…
チェルシー…エルさん、わがままを言ってはいけませんよ
エル…でも
ルドガーエル、必ずまた会えるよ
エル…うん、わかったその代わり、指切り!
ルドガー指切り…ああ
ルドガー次こそ絶対…エルのために特製スープを作るって約束するから
エル…絶対?
ルドガーああ。絶対に、だ
ティアルドガー…
ベルベット
ルドガー──さて、それじゃ行こうか。天帝の元に
ジュード…うん、そうだね
ジュード早くこの世界を何とかしないと…。エルのためにも…
scene1犬も歩けば…
レイヴン…もう行ったみたいね。出てきても大丈夫よ、ヴェイグ
ヴェイグああ。…わかっていたとはいえ、やはり厄介だな
レイヴン白き獅子達もしつこいね~。この街に戻ってきてから数日たってもまだ警戒が緩まないなんて
ヴェイグ…それも、お前の作戦の内だろう?
レイヴンま、そうなんだけどねぇ
レイヴンこれだけ白き獅子がいれば、ベルベットちゃんの情報も得られるだろうし、それに──
ヴェイグ咎人の噂があるこの街にいれば、噂を聞きつけた仲間がやってくるかもしれない…
ヴェイグお前のその意見に納得したから、オレもエリーゼも行動を共にしているんだ
レイヴンうんうん。若者は物わかりがよくて助かるねぇ
レイヴンで、どうよ。何かいい情報は手に入った?
ヴェイグ…いや。少女の咎人…エリーゼの噂が前よりも広まっているのを確認しただけだった
レイヴン帝都から逃げてきた、奇妙な人形を持った咎人の女の子ってヤツ?
ヴェイグそうだ。お前も聞いていたか…。他はどうだった?
レイヴン残念ながらおっさんも収穫なし。今のところ、広がってるのはエリーゼちゃんの噂だけみたいね
レイヴンま、そのお蔭で俺達二人はこうして情報収集出来てるんだけど
ヴェイグ…だが、今日も大した情報は得られなかった
レイヴン仲間がこの街にいるとしても、俺達みたいに隠れてるだろうからね。焦らず情報収集といきましょ
レイヴンそれよりほら、また巡回が来る前にさっさと隠れ家に戻りますよーっと
ヴェイグ…そうだな。急ごう、エリーゼが待っている
レイヴンはいよ
エリーゼはあ…ヴェイグもレイヴンも、まだ帰って来ないんでしょうか…
ティポ待ってるだけなんて退屈だよねー
エリーゼ…でも、仕方ありません。咎人であるわたしの噂は、街いっぱいに広まっちゃってますし…
エリーゼわたしが見つかるわけにはいかないですから
ティポエリー…
ギィィ…
ティポ今の何の音ー?
エリーゼ…!窓のところに何かいます!
ティポエリー!あれってもしかして…
???……
エリーゼこ…来ないでください…!
ティポち、近付くなー!
ヴェイグそれにしても、いつの間にあんな隠れ家を用意していたんだ?
レイヴンおっさん、裏で世界を飛び回るようなお仕事をしてたからね。隠れ家は多いのよ
レイヴンあそこもその中の一つってだけ
レイヴン記憶が戻る前とはいえ、徹底的に身分を隠して手配したから、突き止められる事はまずないわ
レイヴンそれこそ、ラザリスをはじめ、ヴァンや白き獅子にだってバレる事はないわよ
ヴェイグそうか…それなら安全だな
レイヴンさ、もうすぐ隠れ家に到着──……あら?窓が開いてる?
ヴェイグ確か出る時は締まっていたな。エリーゼが開けたのか
レイヴン…危ないから絶対に外に出るな、人がいる事も気取られるなって何度も言ったのに…?
ヴェイグ…!まさか…エリーゼ!
レイヴンあ、ちょっと青年!一人で行っちゃ危ないっての!
ヴェイグエリーゼ!無事か!
エリーゼヴェ、ヴェイグ…!
ティポわーん!ヴェイグくーん!こわかったよー!
ヴェイグよかった、無事だったんだな…。怪我はないか?
エリーゼは、はい。わたしもティポも無傷です…
レイヴン何があったのか、説明出来る?
エリーゼそれが…
???ワフッ!
レイヴンへっ!?犬の声…!?
レイヴン捕獲しなきゃ!…って、ん?この手触りは…
???ワウン!
レイヴンんんん?この鳴き声ともふもふ感、もしかして…?
レイヴン…おたく、ラピードよね?
ラピードワフン!
レイヴンはー…まさかワンコにこんな形で再会するとはねぇ
エリーゼあの…レイヴン。知っている犬なんですか?
レイヴン知ってるも何も、このワンコは…
ヴェイグユーリの相棒だ
レイヴンありゃ、ご存知だったようで
ヴェイグユーリとラピードには随分と世話になった
ティポペットじゃなくて相棒なんだねー
レイヴンペットとか言うと噛まれるかもよ?このワンコ、おたくらが思ってるよりずっと賢いんだから
レイヴンたまーにこっちの言う事全部理解してるんじゃないかって思うくらいにはね
エリーゼでも、大丈夫なんでしょうか…。ラピードは、その…
レイヴン記憶の事?問題ないでしょ。思い出してなきゃ、わざわざ会いに来たりしないって
ラピードワン!
ヴェイグ無事で何よりだ
レイヴンま、相手が人間じゃないんじゃ、あちらさんも咎人かどうかなんてわかるわけないわな
ラピードワウン!ワウン、ワウン、ワウン!!
レイヴンへっ?急にどうしたのよ?
ラピードワンワン!
エリーゼ…何だか、ついてこいって言ってるみたいですよ?
レイヴン…そうなの?
ラピードワウン!
レイヴン…ちょっとおっさん行ってくるわ。二人はここで留守番しててちょうだい
エリーゼえっ、レイヴン一人で行くんですか?
レイヴン街をうろつくのよ?何があるかわからないでしょ
ヴェイグ…注意を怠るなよ
レイヴンわーかってるって。じゃ、案内よろしくね、ワンコ
ラピードワォン!
scene2犬も歩けば…
レイヴンちょっとワンコ、あんまり強く押されたらおっさんこけちゃ…
騎士団員1ん?その犬…またお前か…
レイヴン…!
ラピードワンワン!ワォン!
騎士団員1…そいつはあんたの犬なのか?
レイヴンいや、まあ、知り合いというか、何というか…
騎士団員1飼い主ならちゃんと躾けといてくれ。数日前から、ずっとついてきては吠えられて、困ってるんだ
レイヴンあー、それはそれは、どうもすみません…
レイヴン…ちょっとワンコ、おたくが連れて来たかったのって本当にここなの?
ラピードワフン
騎士団員1ったく、この犬のせいで子どもまで後をついてきて巡回が変な行列になっちまうし
騎士団員1そのせいで「ワンコ隊長」なんて変なあだ名つけられたりして…はあ
レイヴンそ、それは…迷惑かけちゃったみたいで…
騎士団員1仮にもクロー隊長の精鋭部隊の一員である俺が、ワンコ隊長って…
レイヴン…!な、なるほど…ワンコはユーリの匂いを知らせようとしてたってわけ…
レイヴンただ…非常にまずい展開じゃね?コレクローには顔が割れてるし、もし鉢合わせなんて事になったら…
レイヴンえーっと、ワンコにはしっかり言い聞かせておきますんで!それじゃあ、おっさん達はこれで…
騎士団員2──おい、伝令だ!クロー隊長から、新しい咎人の情報の伝達だ!
レイヴンげっ!
騎士団員2少女の咎人と行動を共にしている、ぼさぼさ頭の、うさんくさい中年男らしい
騎士団員1ぼさぼさ頭の、うさんくさい、中年男…
レイヴン…そんじゃ、さいならーっと…
騎士団員1おい、待てそこの男!伝令の特徴と一致しているようだが、事情聴取の協力をお願いしたい
レイヴンや、やだなー!確かにおっさんはぼさぼさ頭の中年だけども…
レイヴン咎人がこんな風に、堂々と街中を歩いてるわけないじゃなーい!
騎士団員1ふむ…確かにそうなんだが…人相書きとも実によく似ている。偶然の一致にしては出来過ぎている
騎士団員1咎人が増えているこのご時世、不安の芽は摘まねばならぬのだ。御同行願おう
レイヴンい、いやいや!真面目なのは結構だけど、時間の無駄だと思うわよ?
レイヴンほら、犬を連れ歩くとか悪目立ちするような事をするほど、咎人も馬鹿じゃないでしょ?
騎士団員2心苦しいのだが、これも決まりでな。クロ―隊長にちょっと顔を見せてくれるだけでいいんだが…
レイヴンだけ、って…それが一番困るのよ…
騎士団員2すまないな。それでは、駐屯所へ──
???──待ってください!
スタンこの人は俺の知り合いだ!と、咎人なんかじゃない!
カイルそうです!この人は、えーと…す、すごくいい人です!
レイヴンスタン!?それに…あー、君は…
カイルあっ、えっとオレはカイルです!
カイルレイヴンさんの事は、父さ…スタンさんから聞いてて…
レイヴンあー、そうだった、カイル君だったねぇ!おっさんど忘れしちゃってたわ!
騎士団員1…いきなり何だ、お前達は
スタンこの人の知り合いで、仲間です!
スタン何度も言うけど、この人はその、咎人なんかじゃないです!だから連れて行かないでくれ!
レイヴンスタン…
騎士団員2だがなあ…咎人の人相書きともここまで一致している男を、放っておくわけには…
カイルち、違うんです!この人は、その…本当は見た目よりも真面目な人なんです!
レイヴンんん!?ちょ、少年!?
スタンそ、そうなんだ!こう、今までの自分を変えたくなって無理をしちゃったというか…!
カイル髪型も普段はちゃんとしてるし、すっごく誠実な…中年男なんです!
レイヴン…そ、そーなのよ!たまには雰囲気変えようかなーなんて思っちゃったりして?
騎士団員1…何だか三文芝居みたいだが、お前達の言ってる事は本当なのか?
騎士団員2まさかお前達も、咎人の仲間じゃ…
レイヴンあー…いやいや、よく考えてみてよ
レイヴン言ってる事はボロクソだけど、必死におっさんを助けようとしてる善人の鑑みたいな青年と少年よ?
レイヴンこんないい子達が、人心を惑わす咎人なんかだと思う?
騎士団員1…それは…
レイヴンそれにほら、さっきの報告で、女の子の咎人と一緒だって言ってたじゃない
レイヴンその女の子は、一体どこにいるのよ
騎士団員2まあ、確かに…。ここにいるのは、犬と男だけだな
レイヴンね?全然違うでしょ?だからさっきも言ったように、人違いだって
騎士団員1…そうか。そう、だな。外見が一致しているだけで疑ってすまなかった
騎士団員2まあ、うさんくさい中年男なんて、捜せばいくらでもいるだろうしな…
レイヴンわかってくれて何より!それじゃあおっさん達は、これでおいとまさせてもらうわね!
レイヴン青年と少年、それからワンコ!お仕事の邪魔しちゃ悪いから、さっさと帰りましょ!
スタンあ、う、うん!
カイルす、すみませんでした!
ラピードワウン!
レイヴンそれじゃ、失礼しました~
レイヴンいやー、ありがとね、お二人さん。演技はダイコンだったけど、助かったよ
スタンア、アハハ…
レイヴン…で、念のため確認なんだけど、おたくらは二人共、記憶が戻ってるって認識でいいのね?
スタンああ!やっぱりレイヴンも思い出してたんだな!
カイルオレはちょっと違うんですけど…元の世界を知ってるっていう意味なら合ってます!
レイヴンそう、そりゃよかった。情報交換もしたいし、まずはおっさん達の隠れ家に行こうか
レイヴン待ってる子達もいる事だし、ね
scene3犬も歩けば…
レイヴンただいま~
エリーゼレイヴン、ラピード、おかえりなさ──……!
スタンエリーゼ!それにヴェイグも!二人もここにいたんだな!
エリーゼスタン…!どうしてここに…?
ヴェイグ無事だったのか…!
ティポスタン君、久しぶりー!
スタンはは、ティポも元気そうでよかった!
カイルこの人達が、スタンさんと一緒に世界を救うために戦った仲間…
エリーゼ…あの、えっと…
カイルあ、ごめん。挨拶もしないで…!オレ、カイルです!よろしく!
ティポカイル君ねー。よろしくー
レイヴンんじゃ、挨拶も済んだ事だし、話の続きと行きましょっか。おたくら咎人を捜してるんだっけ?
カイルあ、はい──
カイル…というわけで、オレ達はリアラとソフィを捜すために「咎人の少女」の噂を追って来たんだ
カイル…けどまさか、咎人の少女がエリーゼの事だったなんて…
レイヴン落ち込まなくてもいーんじゃない?情報がないって事は、まだ捕まってないからかもしれないしねぇ
スタンそうだよ!それにほら、こうして新しい仲間とも会えたじゃないか!
カイル…そうですね。オレも、もっと前向きに考えなきゃ
カイル二人はきっと無事だ。仲間も増えて来てるし、すぐに二人とも再会出来るって…
スタンうんうん、その調子だ!この街に二人がいないってわかっただけでも大収穫だよ
スタンレイヴンさん達が先に調べておいてくれたお蔭だな
レイヴンそんなに褒めても、これ以上は何も出ないわよ~
エリーゼレイヴンの作戦通りですね!ここで待っていたら、本当に仲間と会えました!
ティポこの調子なら、どんどん仲間が増えていくかもしれないねー!
カイルえっ、でも、これ以上この街にいるのは危険なんじゃ…
レイヴンそうなのよね~。多分おっさん、白き獅子に目をつけられちゃったし
エリーゼえ!?
ヴェイグどういう事だ?
カイルレイヴンさんの捕縛命令も白き獅子に広まってるみたいなんだ
ヴェイグなるほど…。確かに、これ以上は危険だな
レイヴンそうね~。出来れば、夜の間にカルミナ街まで移動しちゃいたいところだけど
ヴェイグこれ以上粘る必要もないだろう。二人でも仲間が増えただけ、幸運だ
レイヴン着いて早々で悪いんだけど、二人もそれでいい?
スタンああ、俺は大丈夫!体力なら有り余ってるからさ
カイルオレも平気です!みんなの安全の方が大事ですから
レイヴン話が早くて助かるわ~。…ワンコも一緒に来る?
ラピードワゥン!
レイヴンうーん…さっぱりわかんないけど、まあ了承してるって事でいいのよね
レイヴンそれじゃあ今夜、闇に紛れて街を出るって事で!
カイルはい!わかりました!
scene1囚われた少女達
カイルふわぁ…
スタン大丈夫か、カイル。徹夜で移動じゃ、さすがに眠いよな…早く宿をとって仮眠を──
ヴェイグ──待て
カイルえっ?
レイヴンあちゃー…まさかこっちに来てるとはねぇ
クロー例の咎人連中はどこだ?
騎士団員1はい、現在連行しています。すぐこちらにお連れ出来ると思いますが…
クローああ、頼む
カイル白き獅子…!まさか、待ち伏せ!?
レイヴン…いや、どうやらそんな雰囲気じゃなさそうね
エリーゼ誰か、捕まっちゃったんでしょうか…
ラピードクゥン…
クローしかし、どこもかしこも咎人だな
騎士団員1最近、咎人が増えているようです。このままでは人々の不安も…
クローま、心配ねぇよ。その心配も近い内になくなる
騎士団員1…?隊長、それは一体どういう…
クロー近々帝都で行うラザリス様の演説…詳しい事はそこでわかるさ
レイヴン帝都で演説…
ヴェイグ…生誕祭以外にラザリスが演説をするなんて異例中の異例だ
レイヴンああ。なーんか、こいつは匂うねぇ
騎士団員2隊長!捕縛した咎人を連行しました!
クローっと、ようやくか
カイルえっ…!?あれって…
???
???
カイルリアラ!ソフィ!
スタンあっ!おい、カイル!
scene2囚われた少女達
カイルリアラ…!やっと見つけたよ!
リアラ…!
カイルソフィも見つかってよかった!二人共、オレと一緒に──
騎士団員2おい、何だお前は!
カイル…あ、オレは、その…
リアラ
リアラあなた、誰?
カイル…えっ?
リアラあなたなんか知らない
カイル…リアラ…?
ソフィ…わたしも、あなたの事は知らない
カイルソフィまで…!?一体、どうして──
クロー知り合いかどうかは知らないが…見ての通り、今咎人のそいつらを移送してるところだ
クロー咎人と話すのはご法度。そんな事も知らないってわけはねえよな?
クロー帝都まで行かなきゃならないんだ。こんなところで面倒事はごめんだぜ
カイルそんな事させない…!どうしても二人を連れて行くって言うなら──
スタンわーっ!ま、待ってください!
スタンこいつ、誰かと間違えてつい飛び出しちゃったみたいで…
カイルえっ?スタンさん、オレは…もがっ!
スタンお邪魔してすみませんでした!
クロー
騎士団員1隊長、いかがされますか?
クロー知り合いだって言ってんのはあいつだけだし、勘違いなんだろ。それより、咎人の移送を再開しろ
騎士団員2はっ!
クロー…にしても、結局見つからず、とはな
クローてっきりあいつを捕まえたと思ってたのによ
クローレイヴン…あいつだけはオレが…!
カイル…レイヴン…?
scene3囚われた少女達
スタンふー、危なかったな
カイルくっ…早くあいつらを追わないと!
スタンあっ、ちょっと待てって、カイル!
カイルどうして!?早く、リアラ達を助けに…
レイヴン行ってどうするのよ
カイルどうって…
スタンカイル、少し落ち着け。二人が庇ってくれたのを無駄にするなよ
カイルえっ…?
スタンあの子達が、返事をしていたら、カイルも咎人だと疑われたかもしれないだろ?
スタンあの子達は、その事に気付いてお前を庇ってくれたんだよ
カイルそんな…でも、だったらなおさら早く助けなきゃ──
レイヴンまあまあ、そう焦りなさんなって、少年
レイヴン連れて行かれたって言っても、すぐにどうこうされるわけじゃない
カイル…!レイヴンさん、何か知ってるの!?
カイル──天帝が、咎人を晶化させる…?
カイルだとしたら、なおさら早く助けなきゃ──
レイヴンだから、落ち着きなって
レイヴン事を急いで、大切なものを失ってしまったら元も子もないわよ
カイルレイヴンさん…?
レイヴン安心しなよ、少年。すぐにどうこうされるわけじゃないって、さっきも言ったでしょ?
レイヴン救済の儀式が行われるまでには、何日間かの猶予があるはずよ。それを有効に使わないと
レイヴン帝都に行くにしても、策ぐらいは練っていかないとね
エリーゼでも、どうすれば…
レイヴン何言ってんの~?絶好の機会が、目の前に転がってるじゃない
スタン絶好の機会?
ヴェイグ…!ラザリスの演説か
レイヴンそういう事~
カイルえっ?どういう事?
ヴェイグラザリスが表に出てくるなら、そちらに警備を割かざるを得ない。その時ならば…
カイル他のところは手薄になる…!
エリーゼで、でも、ラザリスが演説なんて、今までなかった事ですよね?
ティポ何だかアヤシー
ヴェイグ嫌な予感がする…。簡単に、行くと決めていいものか?
スタンうーん、確かに…
ラピードワフン…
レイヴン…ま、得体が知れないのは確かね
レイヴンけど、虎穴に入らずんば虎子を得ずとも言う事ですし
レイヴン仲間を救うためには、思い切って飛び込んでみるしかないんじゃない?
スタンそれもそうですね。それに、何かあっても俺達には仲間がいる!
エリーゼ…はい!絶対、負けません!
ヴェイグ…ああ、そうだな
カイル待ってて、リアラ、ソフィ!必ず、助け出すから…!
レイヴンそうそう、その意気よ
レイヴン…それに、ラザリスが出てくるなら、ベルベットちゃんもきっと帝都に──
カイル…そういえば、レイヴンさんって、クローとはどういう関係なんですか?
レイヴンへっ?
カイル聞いちゃったんです。クローがレイヴンさんの名前を口に出していたのを…
カイル何だか、すごい悔しそうな顔で…オレ、目に焼き付いちゃって…
レイヴンあー…まぁ、いろいろとね
レイヴンでもま、気にしなくていいわよ。おっさんの事よりカイルの仲間の方の心配をしなさいな
カイルレイヴンさんだって、オレにとっては大事な仲間ですよ!
レイヴンカイル…
カイル勿論、リアラ達の事は心配ですけど…
カイルでも、レイヴンさんやスタンさん…エリーゼやヴェイグさんの事だって、オレは仲間だと思っています
カイルだから、何かあったら言ってください。力になりたいんです!
レイヴン…ははっ、そいつは頼もしいわね
レイヴンじゃあ、何かあったら遠慮なく頼む事にしようかしらね~
カイルはい!
エリーゼ仲間…そうですね…!カイルも、リアラもソフィも、みんな仲間です…!
ヴェイグああ。必ずリアラ達を助けよう
ラピードワフッ!
カイルみんな…
スタンよし!それじゃあ、この先の行動は決まったな
カイルはい!──リアラ達を助けに行きます!
エリーゼまずは、帝都に移動ですね!
カイル行こう、帝都へ!
レイヴンラザリスが演説、ねぇ…。果たして鬼が出るか、蛇が出るか…
レイヴン
エリーゼレイヴン、置いて行っちゃいますよ!
レイヴンあぁ、ごめんごめん。すぐ行くからね~
scene1尋ね人と世界の囁き
ラザリス……
ラザリスやっぱりね…「世界の意志」が逃げ出してる
ラザリスくっ…あの忌々しい存在…!どこまでも、僕の邪魔をして──…
???ラザリス、ここにいたか
ラザリス
ヴァン…こんなところで何をしている?
ラザリス取るに足らない存在を、どう料理するか考えているだけさ
ヴァン…ほう。ならば、いい策がある
ヴァン「世界の意志」も咎人も、一気に片付けるいい手段がな…
ラザリス……。なら、君に預けようか
ラザリス君の実力を知るいい機会だしね
ヴァンこれも天の采配か…
ヴァンこの状況、利用しない手はないな
コレット…はぁ…はぁ…ここまで来れば、もう大丈夫かな?
ゼロスああ…誰かに追われてる感じもないし…大丈夫そうじゃん?
ゼロス俺達が逃げ出した事、まだ気付かれてないみたいだな
コレット…うん…
ゼロスちょっとちょっと。暗い顔すんなって、コレットちゃん!
コレットあ…えっと…いろいろあったから、まだ混乱してて…
コレットどうしてラザリスは、人を晶化させたりなんか…
ゼロス……。ラザリスの考える事なんて知ったこっちゃねぇけどな
ゼロスこれだけは言えるぜ。今のこの世界を創ってるのは、ヴァンとあいつだ
コレット…うん。元の世界で自分が晶化された時の事、ちょっとだけ覚えてるよ
コレットでも、そこからこの世界が創られただなんて…
ゼロス俺はわりと早くから記憶を取り戻す事が出来てさ
ゼロス同じく記憶を取り戻してたスレイと再会して手分けして仲間を捜す事にしたんだ
ゼロスだけど、俺は白き獅子に捕まっちまって…
ゼロスあとは、コレットちゃんも知っての通りラザリスに晶化されたってわけだな
コレットそうだったんだ…
コレットほんとのラザリスは、みんなが讃えるようないい人じゃないんだね…
ゼロスコレットちゃん…
ゼロスまっ、ラザリスなんかの事でコレットちゃんが胸を痛める必要なんてないんだしさ
ゼロスとりあえずマール村へ行って、これからの事を考えようぜ
コレットマール村?
ゼロスああ、白き獅子に捕まる前、俺が拠点にしてたとこでさ
ゼロスそこなら借りてた家もまだ残っているはずだし、態勢を整えるにもいいと思ってさ
ゼロスどう?コレットちゃんが頷いてくれたら、俺さま張り切って案内しちゃうよ
コレット私はいいけど…でも、だいじょぶなの?
コレットマール村の人って、ゼロスが咎人って知ってるんじゃ…
ゼロスああ、へーきへーき!
ゼロス俺さまが捕まったのは別の場所だし、マール村の人達は俺が咎人だって知らないと思うぜ
コレットそれなら安心だね
ゼロスんじゃ、決定!マール村にしゅっぱーつ!
scene2尋ね人と世界の囁き
ゼロスはぁーやっと着いたぁ…
ゼロスコレットちゃん、大丈夫?疲れたんじゃない?
コレットううん、私は平気だよ
ゼロスならよかった。コレットちゃんに何かあったら、俺さま、立ち直れないし~
ゼロス追っ手が来てる様子もねぇし、少しはゆっくり出来そうだな
コレット…でも、これからの事もちゃんと考えなきゃ…
コレットラザリス…天帝をどうにかすれば、この世界は元に戻るんだよね…?
ゼロス…ま、多分そういう事になるだろうな…
コレットゼロス…?
ゼロスあー、悪い。俺達が、天帝の御座で片を付けてりゃこんな事になってなかったと思ってさ
ゼロスだから、今度こそはきっちりヴァンを倒してラザリスを止めてみせるぜ
ゼロス…これ以上、世界をあいつらの好きにさせるつもりはないからな!
コレットそっか…ゼロスはもうちゃんと決めてるんだね
ゼロスま、当面の目標はその時の仲間を集める事だな
コレットうん…!
ゼロスまずは、スレイとミクリオ。ルドガー、スタン、ヴェイグティアちゃんにエリーゼちゃん…
ゼロス世界丸ごと変わってるって言うなら、ロイドだっているだろうな。あと…ルークとか
ゼロスこうして並べてみると結構な大所帯じゃないの?
コレットあはは、賑やかでいいんじゃないかな
ゼロスえ~?女の子達はともかく、野郎共がぞろぞろいてもなぁ
コレットでも心配なんだよね?
ゼロス…やだなぁ、コレットちゃん。俺さまが心配なのは、女の子達だけだって~
ゼロス野郎はあくまでそのおまけ
コレットじゃあ、まずはどうやって他のみんなと合流するかを考えないとだね
ゼロスそこはもうバッチリ。俺さまに死角なし、ってね~
ゼロス俺さまが白き獅子に捕まっちまう前、まだスレイと行動を共にしてた時…
ゼロスマール村を拠点にしてるってスレイに話したんだよな
コレット…それじゃあ!
ゼロスああ、もしかしたら、スレイがここに来たかもしれない
ゼロススレイはミクリオを捜しに行くって言ってたし、他の仲間の事も知ってるかも?
コレットじゃあスレイが来たかどうかマール村の人達に聞いてみればいいんだね!
ゼロスおっ、さすがコレットちゃん。話が早い~!とりあえず、村で聞き込みだな!
ゼロスはぁ~駄目だ、誰も知りやしねぇ…!
コレットスレイを知ってる人どころか、見たって人もいないね…
ゼロスこれで村の中は一通り回ったし…スレイのヤツ、この村には来てないのかもなぁ
ゼロス…まさか、スレイまで捕まったなんて事…
コレットそんな…諦めずに聞き込み続けようよ
ゼロス…いや、どっちにしろ、今日はここまでにしとこうぜ
コレットえ、でも…
ゼロスそろそろ日も暮れそうだしな。ここまでずっと逃げっぱなしだし、続きは明日にしようぜ
ゼロス最近はただでさえいろんな事が立て続けに起きてるし、俺さま、もうクタクタよ
ゼロスコレットちゃんも、疲れてんだろ?休める時には休んでおかねえと
コレットん…そだね。じゃあ、ゼロスの家に戻ろっか
ゼロスそうこなくっちゃ!
scene3尋ね人と世界の囁き
コレット…すっかり暗くなったね
ゼロスったく…一体、スレイはどこにいるんだか…
コレット…。あのね、ゼロス
ゼロスうん?何なに、コレットちゃん
コレットえっと、その…ロイドやみんなは、大丈夫かな…?
ゼロス……
コレット今になって急に不安になっちゃって…みんな、どうなってるんだろ…ロイドは…無事、なのかな?
ゼロス…。だーいじょうぶだって~。コレットちゃんは心配しすぎ
ゼロス他の奴ならともかくあのロイドくんよ?
ゼロス案外けろっと記憶を取り戻しててもおかしくないでしょ
コレットそう…だよね…
コレット──うん、ロイドだもん。きっと、だいじょぶだよね!
ゼロスそれに、もし仲間の誰かが晶化されちゃってたとしても、こっちにはコレットちゃんがいるだろ
ゼロス俺さまを助けてくれたあの力があれば、何にも怖い事なんてないって!
コレットでも、私…この力の事、まだ何も知らなくて…どうやって使えばいいかも、まだ…
ゼロスコレットちゃん…
コレットあっ…ご、ごめんね、変な事言っちゃった
ゼロス…いや、急にそんな力を手に入れて、戸惑わない方がどうかしてるよな
ゼロスけど、ラザリスに対抗出来るすげえ力である事も間違いないんだし悪いもんではないと思うぜ
ゼロスそれに、この俺さまがついてるんだぜ?
ゼロスなぁんも心配する事はねえって
コレットゼロス…うん…ありがと…!
コレット……!
ゼロス…?コレットちゃーん?どうした?
コレットえ、と…私にも、よくわからなくて…
コレットけど、どこからか、呼ばれたような気がするの…
ゼロスどこか…?
コレットうん…。村の近くに、何か──?
scene1望郷の景色
ミクリオ…ファルカームへ行くより、帝都に向かった方がいいかもしれないな…
スレイえっ!?突然、どうしたんだ…?
ミクリオ先ほど行商人から聞いてきたんだが…帝都で演説を行う事が決まっているらしい
スレイ演説って事はラザリスと直接会える──
ミクリオああ。…しかし、最後の視察地であるファルカームも見ておく価値はあると思っている
ミクリオこれまで頻繁に行っていた視察を急に取り止めると宣言された背景も気がかりではあるからね
ミクリオスレイはどう思う?
スレイ……
ミクリオ…スレイ?ちゃんと話を聞いているのか?
スレイ…ミクリオ、地面に何かある
ミクリオ何だって?君は人の話を何だと思って…
スレイ小言はあと!とにかく、ミクリオも調べてみてくれ
ミクリオ全く──…
ミクリオ…!
ミクリオこれは…まさか遺跡か?こんなところにあるなんて…
スレイ完全に埋まっちゃってるみたいだ。詳しく調べられないかな…
ミクリオどこかに入口があるのかもしれない。だが、これだけじゃ──
ピシッ…
スレイん?
ピシピシッ…!
ミクリオなっ、まさか地面が──
ズザザザッ!
スレイミクリオ!
スレイふぅー、間一髪
ミクリオ頼むよ、早く上げてくれ──
ゴゴゴ…
スレイうわあああっ!
ミクリオうわあああっ!
ミクリオくっ…!双流放て!
ミクリオツインフロウ!
スレイいって…
スレイ…ってあれ?確か、前にもこんな事…
ミクリオ咄嗟の判断だったけど、上手くいったろう?これで貸し借りなしだ
スレイ…ふ、やっぱりミクリオはミクリオだな
ミクリオ…?
スレイそれにしても、ここは…
ミクリオ…どうやら、遺跡の中みたいだね
スレイすごいな…!中は思ったより綺麗なままだ!
スレイ天井の脆さから見ても、かなり古い遺跡なのかな…?それに、この構造は…
ミクリオ待て、スレイ。これが古い遺跡だと決めるのは、早計じゃないか?
ミクリオおそらく、天井の上に土が重なり、人の行き来があった事で、そこだけ脆くなってしまったんだろう
スレイでも、土に埋もれるって事は、それだけこの遺跡が建ってから時間が経ったって事だろ?
ミクリオ…本当にそうなのか?もしかしたら、最初から地下に建造した可能性も…
???おっ…!もしかして、スレイとミクリオか!?
???おーい、二人共、無事かー!!
スレイ…あれ?今の声って…
ミクリオスレイ、地上だ!誰か降りてくる
ゼロスよっ…と
スレイやっぱり!ゼロス、久しぶり!
ゼロスおう!いや~まさかこんなとこでお前らと再会する事になるとはな
ゼロスっと、それより…
ゼロスコレットちゃーん!下りられそうかい~?
コレットう、うん…だいじょぶ、だよ…っと!
スレイコレットまで!
コレットスレイ、久しぶり!
ゼロスそれで…コレットちゃん。どう?間違いなさそう?
コレットうん…この中からだと思う…上で探してた時より近くなってるよ
ゼロスじゃあ、やっぱりこの遺跡に…
スレイゼロス、ここについて何か知ってるの?
ゼロスいんや。俺さま達も、それを調査しに来たんだよ
ゼロススレイ、お前もよかったな。ちゃーんとミクリオと会えたみたいで
ゼロスおいおいミクリオ~、聞いたぜぇ?お前ってばこっちの世界じゃ「貴族のお坊ちゃん」やってたとか
ゼロスでひゃひゃ!柄じゃねぇっての。本当の名家のお坊ちゃんと言えば、気品溢れる俺さまのような──
ミクリオ…誰なんだ、君達は
コレットえっ…?
スレイあー…いや、話すと長くなるんだけど…
ミクリオ
ゼロス…記憶、まだ戻ってなかったんだな…
スレイうん、まあ…
スレイだけど、大丈夫だよ。記憶が戻ってなくても、ミクリオはミクリオだ
ミクリオ…君達は、みんな咎人なのか?
コレットあっ…えと、私達は…
ミクリオスレイ。まさかこいつらと共謀して、僕をここに連れてきたんじゃ…
スレイ違う!オレはそんな…!
ゼロスおいおい、俺さま達はそんな事してねぇって
ミクリオ咎人の言う事なんて──
スレイ…待ってくれ!
ミクリオスレイ…
スレイゼロス達と会ったのは偶然だよ。そうじゃなくても、オレ達はミクリオを騙そうなんて思ってない
ミクリオ…だったら証明してくれ
スレイえっ…
ミクリオ君達が…スレイが僕を騙していないと証明してほしい
コレットミクリオ…
スレイ…ごめん。オレにはまだ、その手段がない
ミクリオ…それなら僕は、君を疑い続けなければならない
ゼロス…けっ、酷ぇ言い草だな。よりによってスレイがお前の事、騙したりするわけ──
スレイいいんだ、ゼロス。今は、それでもいい
ミクリオ…あっさりしているな
スレイそうかな?それは…きっとオレがミクリオの事を信じているからだと思う
ミクリオ君が、僕を…
スレイ行こう、ミクリオ。ここで言い合うよりも、出口を探した方がいいと思う
ゼロス…だな。俺達の事を信じられなくて白き獅子に突き出すにしろ、まずは外に出なくちゃいけないだろ
ミクリオ…わかった
ミクリオだが、ここから地上まで上がるのはさすがに難しそうだ
ミクリオ全く…。もし共謀していたわけじゃないなら何故二人共下りてきてしまったんだ
ミクリオ地上に人がいてくれれば、脱出も楽だっただろうに
コレットそれは…
ゼロスしょうがねぇだろ。俺達は探し物があるんだよ
スレイそういえば、さっきも地上よりも近いとか調査とか言ってたよね
ゼロスああ。俺さま達はマール村に滞在してたんだよ
ゼロスその時に、コレットちゃんが村の外から何かを感じるって言ってよ
ミクリオ…随分と曖昧だね
コレットえと…ごめんなさい。自分でも上手く説明出来なくて…
ゼロスこっちにも、ただの気のせいじゃ済ませられない事情があんだよ
スレイじゃあ、ゼロス達はその「何か」を探してこの遺跡に?
ゼロスそっ。コレットちゃんがここだって言うし、間違いないっしょ
スレイ遺跡に隠された「何か」かぁ…!
ミクリオ…スレイ、今の状況を忘れてないだろうな
スレイでも、ミクリオも気になるだろ?地下に埋まってる遺跡から感じる「何か」だなんてさ
スレイこの遺跡の年代を特定出来ればゼロス達が探してるものについてもわかるかもしれない!
ミクリオ…そういう事なら、僕は壁に施されているレリーフが気になるね
スレイ確かに…!天井だけだとわかりにくかったから…
ゼロスやれやれ、リフィルさまとは違うタイプの遺跡馬鹿だな、こりゃ
scene2望郷の景色
ミクリオ結構、歩いてきたと思うが…出口は見つからないな…
ゼロスコレットちゃん、「何か」の方はどーよ?
コレット…ううん。まだ駄目みたいすごく近くまではきてると思うんだけど…
コレット…あっちの方とか、どかな?
スレイよし、行ってみよう
ミクリオこれは…出口、だったものだな
スレイうん。結晶が出口を塞いでしまってるんだ…
ゼロスこりゃ、別の出口を見つけるしかなさそうだな。コレットちゃんも、行こうぜ
ゼロス…コレットちゃん?
コレットゼロス、あれ…!
ゼロスちょっと、コレットちゃん!?どこに行くんだ…!
ゼロスうわっ…!
スレイすごい…光の玉だ!
ミクリオ…何だ、こんなもの…見た事がないぞ!
コレット私が感じていた「何か」は、この光の玉だったのかも…
コレットこれが…私を呼んで…
コレットきゃっ…光が…強く…!
ゼロスおいおい、大丈夫なのか?光の玉が、どんどん大きくなるぞ!
コレット光の中に…何か見えて…
スレイ…!すごい…景色が映し出されてる。それに、これって──
スレイイズチだ!イズチだよ、ミクリオ!うわぁ、懐かしいな…!
ミクリオ…いや。僕は、こんな場所は知らない
スレイあー…そっか。ごめん、つい
ミクリオ
ミクリオスレイ、ここは…どんな場所なんだ?スレイと…それから、僕にとって
スレイミクリオ…
スレイ──イズチは、オレとミクリオが育った場所なんだ
スレイオレが導師になった旅に出るまで、オレ達、ずっとここでジイジに育てられたんだよ
スレイ懐かしいなジイジ…よく手を焼かせちゃってた気がする
スレイミクリオの真名を知った時もそうだ。羨ましがるオレをジイジが宥めてくれて──
ミクリオ僕の、真名…?
ミクリオ…っ!
ゼロス…!光の玉が小さくなっちまった…!
コレット景色も…見えなくなったね
ミクリオ真名…聞いた事ない言葉、見た事もない場所のはずなのに…
ミクリオそれに、今の衝撃は一体……
スレイミクリオ…?もしかして、何か思い出したのか?
ミクリオわからない…けど、僕は──…
ゼロス…混乱中ってか。この様子だと、どうやら何かがミクリオの記憶を刺激したのかもな
ゼロス俺さまが記憶を取り戻した時も確かこんな感じだったし
コレットえっと、とにかくどこか休める場所を──
???貴様ら、そこで何をしている!
スレイ…!あれは…もしかして──
scene3望郷の景色
スレイ白き獅子…!?何で…
騎士団員抵抗はやめてもらおう。大人しく我々に従うんだ!
スレイくっ…!突然何だって言うんだ…!
???待て、あまり脅かすんじゃない
ミクリオあの格好…白き獅子の騎士団の幹部…!?
ファングお前ら、ここは立入禁止区域だぞ。一体どうやって入ってきたんだ?
スレイ立入禁止区域だって…!?
ゼロス光の玉がある遺跡が、何だって立入禁止区域なんかに…!
ファング光の玉?何の話だ?
ファングとにかく、ここに一般人が立ち入る事は許可されて──
ファングん…?
コレットえ…
ファングお前は、確かあの時の子じゃないか。その服…神子になれたんだな!
ファングでも、だったらなおさら何でこんなところに…
コレットあなた…
ファングえーっと、確か…名前は…コレット──
コレットあなた…ロイド、ロイドだよね…!?
ゼロスなっ…!?
ファング…お前…
ファングどうしてその名前を知ってるんだ…?
scene1大切な人、大切な名前
ゼロスコレットちゃん…今、何て…
スレイロイドだって…!?
コレットねえ、ロイド…ロイドなんだよね…?
コレット顔が見えなくてもわかるよ…その声、その仕草…ロイドだよ…!
ファング…確かに、俺の本当の名はロイドだ。けど、その事を知ってるのは、限られた一部の人達だけ…
ファングどうしてお前が知ってるんだ…?
コレット…お願い、ロイド!私の…私達の事、思い出して!
コレットジーニアスやリフィル先生の事とか…昔から、ずっと仲良しだったよね?
コレットそれに、リタとか、ルークとか…一緒に戦った、みんなの名前だよ?思い出せない?
ファング
コレットお願い、ロイド…思い出して…
コレットあなたは、私達にとって…私にとって大切な人なの…。だから…
ファングさっきから、一体何の話を──…!
ファング…そうか
コレットロイド…!
ファングもしかして、お前…咎人に…
コレット…!そんな…
ファングだったら…大人しく投降してくれ。そうしたら俺達だって手荒な真似はしない
コレットロイド…
スレイオレ達も戦う気はないよ。ただここから出られたら、それで…
ファングそれは出来ない。咎人を見逃すわけにはいかないからな
スレイ…くっ…!
ファング…投降する気はないみたいだな
ファングなら、仕方ない…。──その咎人を捕らえろ
騎士団員はっ!
コレットそんな…ロイド!
scene2大切な人、大切な名前
スレイ頼む…どいてくれ!
キンッ!
ミクリオおい、スレイ…!騎士団に刃向かうなんて、正気か!?
スレイオレ達だって戦いたくない!けど…
ゼロスここで大人しく捕まるわけにはいかねーんだよ。何とか逃げる隙を作らねーと…
コレット……
騎士団員くっ!この咎人達、強い…!
ファング…俺がやる
騎士団員隊長!
ファングコレット…ラザリス様にお仕えする神子になれたっていうのに…まさか、咎人になるなんて…
コレット待って…私はロイドと、戦いたくなんて──
ファングそうはいかない。大人しく拘束させてくれ
ゼロス待てよ、ロイド
ゼロスいくら記憶がないって言ってもそれはあんまりなんじゃねぇか?
コレットゼロス…
ゼロスその子はな…お前が世界で一番剣を向けちゃいけねぇ相手なんだよ!
ゼロス行くぜ、ハニー!その目、覚まさせてやる…!
ファング来い…!どの道、咎人は全員捕まえなきゃならないんだ!
ゼロスおおぉっ!
ファングはぁっ!
ゼロスさすが、やるじゃねえか!
コレットロイド…ゼロス…こんなの、悲しすぎるよ…
スレイコレット、下がって!
コレットスレイ…でも…
スレイ今はこの場を乗り切るしかない。何とかして、ここから脱出しよう!
コレット…うん、わかった
スレイゼロス!オレが突破口を開いてみる!それまで何とか、ロイドの方を!
ゼロスああ、頼んだぜ!
騎士団員抵抗はやめろと言っている!
スレイごめんなさい、大人しく捕まるわけにはいかないんだ!
騎士団員くそっ…咎人め…!
ミクリオ咎人…
ミクリオそうだ、僕は白き獅子に協力して咎人を捕まえなければならない…。それこそが、ラザリス様のため…
ミクリオなのに…
ファングはああっ!
ゼロスどわぁっ!
ファング…!ちっ、こっちにも!
ミクリオいや、僕は…
ファング何?…そういえば、お前はさっきから抵抗しないな。咎人じゃないのか?
ゼロスくっ、ミクリオ!お前は下がってろ!
ミクリオ…確かに咎人になったつもりはないが…
ファングそれなら、何で咎人達と一緒に?騙されていた…とかか?
ミクリオなっ…!
ミクリオ違う、別に騙されていたわけじゃ…
ファング咎人に惑わされるんじゃない!
ファングそいつらを信じたところで咎人は、いずれラザリス様が全て、粛正する
ファング近々シャングレイスで行う演説でも…ラザリス様は、それを証明してくださるだろう
ミクリオラザリス様の、演説…?
ファング…さあ、今ならまだ間に合う。咎人の言葉に耳を貸すな!
ゼロスおいおい、ハニー。お前の相手はそっちじゃねぇ、この俺さま、だろ
ゼロスほら、来いよ
ファング…なら、遠慮なく行くぜ
ファングうおおおおっ!
ミクリオくっ、違う…咎人に惑わされてなんて…
騎士団員この咎人め…!力づくでも捕縛するぞ!
ガキィン!
スレイくっ…!
ゼロスっと。…ようスレイ、奇遇じゃねえの
コレットゼロス、スレイ、だいじょぶ!?
ゼロスへーきへーき…って言いたいとこだけど、俺さま達、結構ピンチじゃね…?
ゼロス全員ぶっ倒していいなら、どうにでもなるんだけどさ
スレイけど、この白き獅子の人達もただ記憶を改変されているだけだと思うと…
スレイ出来るだけ人を傷付けずに、何とかこの場を切り抜ける方法を考えないと…!
ファング総員、奴らを包囲しろ!
騎士団員はっ!
スレイ囲まれた…!?
ファングもう逃げ場はない。…これが最後の通告だ、大人しく投降してくれ
コレットロイド…
ミクリオ
ゼロスはは…随分と手際がいいじゃねーか。お前、本当にロイドか?
ファングどこでその名を聞いたか知らないが…今、お前達の目の前にいるのはロイドじゃない
ファング白き獅子のファングだ。ラザリス様を──そして、この世界を守る騎士だ!
コレット守る…。この世界を…
スレイ…それは、オレだって同じだよ
スレイオレ達の世界は、天帝によって闇に包まれてしまった
ファングラザリス様によって、だって…?
ファング…さすが咎人だな。そんな話、信じられるわけないだろ
ゼロスま、そうだよな…。今は話すだけ無駄ってか
スレイだとしても、オレ達の意思は変わらない
スレイ…必ず元の世界に光を取り戻してみせる…!
スレイ決めたんだ。オレは世界を導く光になるんだって
スレイ…だから従えない。ロイドとは戦いたくないけど、でも、捕まるわけにもいかないんだ
スレイ──オレは絶対に諦めない!
ミクリオ…!
スレイあの壁画では、導師が聖なる剣を掲げ闇を切り裂き…そこからまぶしい光が差し込んでた
スレイもしオレが導師になって、あの壁画と同じ事が出来るなら…この世界の導きの光になれるなら──
スレイ…オレは導師になる。どんな試練だって、乗り越えてみせる!
ミクリオ今のは…スレイ……君、なのか…?
ミクリオ導きの光…導師……くっ、僕は──…
ミクリオ…うっ!
ミクリオ──晶化現象が何だ。そんなもの、僕が何とかしてやるさ
ミクリオへっぽこ導師の、君の力なんて借りなくてもな!
ミクリオけど…スレイ。もし君も、世界を守りたいと…本気で思っているのなら
ミクリオ特別に、僕を手伝う事を許してやる
スレイ
スレイ…ぷっははは…!
ミクリオ笑うな。僕は真剣に言ってるんだぞ
スレイごめん…でもおかしくて
スレイそうか…そうだったんだな
スレイこの世界を、守りたい──…。これは、オレ一人の夢じゃない
スレイこれは、オレ達の…
ミクリオ───夢…
ミクリオ
スレイミクリオ…?うわっ…!
ザシュ!
ファングお前達の相手はこの俺だ!よそ見してる場合じゃないぞ
コレットロイド…!
ゼロスちっ…!
ファングこれで終わりだ…!
スレイくっ…!もうやるしかないのか…!
scene3大切な人、大切な名前
ファングくっ!
ファングなかなかやるな。──だが!
スレイうぐっ!
ファング何のつもりか知らないが、お前、本気で戦ってないだろ
ファングそれじゃあ俺は止められないぞ!戦意がないなら、大人しく──
ミクリオ…スレイ!
スレイミクリオ…?
ファング…!何のつもりだ!?お前は咎人じゃないはず──
ミクリオスレイ、僕の真名を!
スレイえっ?そ、それってまさか──
ミクリオどうした?まさか、忘れたわけじゃないだろうな
スレイ…!
スレイははっ、忘れるわけないだろ──
スレイいくぞ、ミクリオ!
ミクリオああ!
コレットゼロス、見て…!
ゼロス神依…!?って事は…ミクリオのヤツ、記憶を…
ゼロスへっ、あいつら…やりやがったな
ファングくっ…!こんな力を隠し持っていたなんて…
ファングだけど、俺も引くわけにはいかない!はあっ!
スレイ
ファング…どうした?何で反撃してこないんだ…?
スレイ君はオレ達の敵じゃない
スレイ行くよ、ミクリオ!
ミクリオああ!…出口をふさぐあの結晶だって、僕達の力なら──
スレイ・ミクリオはああぁーっ!
パリィイイーーン…!
ファングな……!?まさかラザリス様の結晶を砕ける奴がいるなんて…!
スレイ今だ、ゼロス、コレット!
ゼロスおっ、スレイやるぅ!
コレットでも、ロイドが…
ゼロスコレットちゃん、早く!外に逃げるなら今しかないぜ!
コレット…う、うん。わかった!
スレイよし、行こう!
ファング
騎士団員ファング様追わなくてよろしいのでしょうか?
ファングああ、見逃してやれ
ファング宰相が言ってたのは奴らだ。焦らなくてもどの道、シャングレイスで片が付く
スレイはぁ、はぁ…ここまで来たら、大丈夫かな
ミクリオ……
スレイん?どうかしたのか、ミクリオ
スレイ…って、そういえば記憶、本当に戻ったんだな!
ミクリオああ、君のお蔭でね
ミクリオ…いろいろとすまなかった。本当にありがとう、スレイ
スレイミクリオ…お礼なら、オレも言わないと
スレイオレを信じてくれてありがとう。それと、…おかえり!
ミクリオスレイ…ああ、ただいま
コレットロイド…
ゼロスコレットちゃん…
ゼロスしっかし、驚いたよな~。あのファングがロイドくんだったなんて
コレットうん…。そだね、驚いちゃった
コレット……
ゼロスそんな顔しなくても大丈夫だって。ミクリオだって記憶を取り戻したんだ
ゼロスロイドくんの記憶も、きっと…いや、絶対に取り戻せる。そうだろ?
コレットゼロス…うん、そだね
コレットミクリオ、記憶が戻ってよかったね
ミクリオああ。いろいろと心配をかけたね
ゼロス…これでミクリオの記憶も戻ったか
ゼロス…ロイド、あんまりコレットちゃんに心配かけんじゃねぇぞ
ゼロス…それにしても、何で白き獅子の奴らは俺達を追いかけて来なかったんだ?
スレイ確かに…あっさり引いてたよな
ミクリオその事なんだが、一つ気になる事がある
スレイミクリオ、何か気付いたのか?
ミクリオファングが言っていたんだ。ラザリスは近々、咎人を全て粛正するつもりで──
ミクリオシャングレイスで行う演説にて、それが証明されるらしい
コレットシャングレイスで演説…
ゼロスそこで咎人相手に何かしようってのか?
コレット大変!もしかしたら記憶を取り戻した仲間が他にもいるかもしれないのに…!
スレイうん、何をするつもりかはわからないけど放ってはおけない!
ミクリオ…決まりだね
ミクリオ僕達の次の目的地は、シャングレイスだ
scene1動乱の帝都
ジュードさすがに、すごい人だかりだねまだ演説会場の広場まで距離があるのに…
ティア…改めて、この世界におけるラザリスの影響力の強さがわかるわね
ベルベット
ジュード急ごう。この人混みでは、演説が始まるまでに広場にたどり着けないかもしれない
ルドガーふぅ…何とか間に合ったな
ジュード…始まるみたい。──あれは!
ヴァン
ティア…兄さん
街の男おぉ…ヴァン様だ!
街の女ヴァン様ー!
ヴァンエンテレスティアの民よ、静粛に
ヴァンまずは天帝ラザリス様のために集まってくれた事に感謝を
ヴァン…さて、集まってくれたみなに、言っておきたい事がある
ヴァン咎人の事だ
ヴァン先の生誕祭に現れた咎人を始め、最近咎人が数を増やしつつある。嘆かわしい事だ…!
ヴァンしかし、エンテレスティアの民よどうか安心してほしい!
ヴァン世界は今、ラザリス様の手により、完全なものへと近付いている
ヴァン世界が完全なものになれば、もう、これ以上、咎人が増える事もなくなるのだ
ヴァンその時こそ、真の平和な世が実現するだろう!
ヴァン故に!我々はみなに、咎人の根絶を約束しよう!
街の女ああ!ラザリス様のお力で、咎人はもう完全に居なくなるのね!
街の男ラザリス様ー!ヴァン様ー!咎人共を根絶して完全な世界をー!
ティア
ジュード咎人を根絶…か。僕達は元の世界の事を思い出しただけなのに…
ルドガーああ…。だけど、これがこの世界での普通なんだよな…
ティアええ…実際に記憶を取り戻すまでは、私もこの街の人達と同じように考えていたわ
ティア咎人は、虚言で人を惑わせる…と
ティア一方的に嘘だと決めつけて…、それを理由に消えてほしいだなんて…それこそ恐ろしい考え方なのに
ベルベット…どうでもいい事よ。自分のやるべき事が決まっていれば、他人の意見なんて関係ない
ジュード…強いね、ベルベットは
ジュードけど、世界が完全になればこれ以上咎人が増えなくなるって言ってたよね
ルドガーそうだな…。完全な世界ってどういう事だ…?
ベルベット…さあ。それよりも、ラザリスはどうしたの?全然出てこないじゃない
???お前達!そこを動くな!
ジュードえっ…!?
ベルベット…!
scene2動乱の帝都
レイヴン不届き者はお前さん達ですかい?
ベルベット…!あんた…!
レイヴンやぁベルベットちゃん、元気そうで何より。おっさん心配してたのよ?
カイルレイヴンさん!?何やってるの…!?
スタン先にどんどん行っちゃうから、びっくりしたよ
エリーゼジュード!
ティポジュード君だー!
ジュードえ…?エリーゼ!ティポ!
ジュード僕の事がわかるって事はもしかして…
エリーゼはい…、元の記憶は取り戻しました。ジュード、また会えてよかった!
ティポうわー!ジュード君!よかったよー!
ティアスタン、ヴェイグ…みんな無事でよかったわ
スタンティアこそ!
ヴェイグ全員、記憶は取り戻しているようだな
ラピードワオーン!
ルドガーはは、勿論ラピードもな
レイヴンいや~感動の再会だねぇ。おっさんもベルベットちゃんと会えてよかったよかった
ベルベット…あんたには用はないわ。用があるのはラザリスだけよ
スタンそういえば、今日の演説ってラザリスが出るって話だったよな?
カイルはい、ラザリスが演説をしている間にリアラ達を助け出さないと…!
レイヴン勿論潜入するなら、ラザリスの顔を拝んでからよ
レイヴンと言っても…案の定、出てきてないみたいだけど
ベルベット…案の定?一体どういう意味?
レイヴン元々、ラザリスが表に出てくるのは生誕祭か視察の時ぐらいだったのよ
ヴェイグ…つまり、今回は初めから出てくるつもりがなかった、と?
レイヴンそういう事。しかも、白き獅子の姿もないし、これはひょっとすると──
ベルベットどうでもいいわ。ラザリスが出てないなら、こっちから乗り込んで…
ヴァン──これより、咎人の一掃を行う!
ヴァン帝都を封鎖し、白き獅子総出で街中に検問をかける
ヴァン市民のみなには突然の取り決めで迷惑を掛けるが理解いただきたい
ヴァンこの機に、帝都に忍び込んでいる咎人共を一掃しようではないか!
ルドガーなっ…!まさか、これって──
カイルこの演説自体がオレ達を誘き寄せる罠だったって事…!?
ヴァンさあ、ラザリス様!いまこそ咎人に裁きを与える号令を!
ラザリス
ラザリス…エンテレスティアのみんな、どうか協力してほしい
ラザリス今日、ここで!咎人共を一掃する!白き獅子達よ!咎人に裁きを!
騎士団員1咎人に裁きを!
騎士団員2世界に平和を!
スタン白き獅子…!?広場を囲まれてる!
カイルこの時のために隠れてたんだ!
ベルベット──ラザリス!
ジュードえっ…!?ベルベット、どこへ…!?
ベルベットラザリスをここで殺す!
スタンなっ!?そんな無茶な事…!
レイヴンおっさんも、ここは逃げる事をオススメするけど
ベルベットあたしに構うな!ラザリスさえ殺せればそれで…!
カイル駄目だ!こんなに白き獅子もいて、ラザリスまで辿り着けないよ!
カイル事を急ぐと、大切なものを失う可能性だってあるんだから…!
スタンカイル…
ベルベット…くっ…!目の前に、あいつがいるのに…!
ヴェイグとにかく、見つかる前にこの広場を離れるべきだ
ヴェイグこっちだ…!急いで…──なっ!
エリーゼそんな!広場の門が閉じられて…!
ルドガー後ろ、もう追っ手が来てる!このままじゃ逃げ場が…!
ラピードグルルル…!
ティア言っている傍から…追いつかれたみたいね
ロアー観念しろ、咎人共。逃げ場はないぞ
ベルベット…!あんたはあの時の…
ベルベットそこを退きなさい!あんたに用はないの
ベルベット退かないって言うのなら──力づくでも通してもらうわ!
scene3動乱の帝都
ベルベット…はぁっ!
ロアー…お前、前よりも剣筋が冴えているな
ベルベット無駄口を叩く余裕はないはずよ。はあああっ!
バサッ
ロアーくっ…!
ティアロアーのフードが…!
ジュード…!あれって、まさか…
エリーゼそんな…!ミラ…嘘です…!
ベルベットこれで終わりよっ!
ロアーしまっ──!
エリーゼミラ…っ!駄目!
ジュードエリーゼ…!ミラ…!
ガキィィィン!
ベルベットなっ!?
ジュード待って、ベルベット…!
ロアー!?何故私を…
ベルベット白き獅子を庇うつもり…!?
ジュードそうだけど…でも、この人は…ミラは…
ティポいくらベルベット君でもダメなものはダメなんだよー!
ベルベット邪魔するなら容赦しないわ!あんた達もろとも、叩き切って──
ガキィィン!
ベルベット…っ!?
スレイふぅ…間に合った…のかな?
ジュードスレイ…!?
スレイ状況は上手く掴めないけど、今は味方同士で戦っている場合じゃない
ベルベット…ふん…!
ルドガーおい!門が開いていくぞ!
ヴェイグどういう事だ…!?
コレットみんな!
ミクリオ全員無事みたいだね
ティアミクリオ、それにコレットも…!?
コレット今、ゼロスが門を開けてくれてるの!
コレットみんなが脱出したあと、すぐにまた閉めるから…!みんな、急いで街の外に!
ロアーそうはさせん!
ミクリオ白き水よ、崩落せよ…スプラッシュ!
ロアー…なっ!
ミクリオさあ、急いで!じきに門が閉まるよ
エリーゼまって、ください…!あの…話を…
ラピードワン!ワンワン!
ジュード…くっ、エリーゼ!今は、一旦外に出よう!
エリーゼ
レイヴンベルベットちゃんも。今は一刻も早く脱出すべきだと思うけど?
ベルベット…くっ!
カイルリアラ…ソフィ…!
スタンカイル、二人の事は…
カイル…大丈夫です。必ず、また迎えに来ますから!行きましょう、スタンさん!
スタン…ああ!
ロアーくっ…、逃げられたか…!
ロアー
ロアーだが…。あの時、彼らは何故私の事を──…

NameDialogue
scene1夢への誘い
ヴァン…では、作戦の報告を聞かせてもらおうか
ヴァン我々は咎人達を一網打尽にするため、ラザリス様の演説を囮にした。相応の成果がほしいところだが…?
ロアー…すまない。今一歩のところで逃してしまった。私の失態だ
クローオレ達全員の、だろ?
ファングああ…。今回は、白き獅子全体の作戦だった。ロアーだけの失敗じゃない
クローすぐに駆けつけられればよかったが…奴らの力量を見誤ってた
ロアークロー…ファング…
ファングけど…変だよな。あの広場の門はどこよりも警備を手厚くしてたはず、だろ?
ファングなのに、あんな簡単に突破されるなんて…
クローそいつに関してはオレも気にはなってたもんでな。ちと調べてみたんだが──
クロー門の警備兵は想定の半数以下で、かなり手薄な状況になっていたらしい
ロアー半数以下、だと?何故そのような事に…
クロー上層からの指示って話だが、オレ達隊長格も身に覚えはねぇし…
ロアー
ヴァンその調査は後だ。それより逃げた咎人達の行方は、追っているのだろうな?
クロー当然、部下達に捜させてるさ。オレ達も、報告が終わり次第すぐに捜索に加わるつもりだ
ファングああ。見つけたら、今度こそ捕まえてやる…!
???(ラザリス)…信用出来るとでも?
ロアーラザリス様…!
ラザリス……
ヴァン…報告は以上だな。お前達は引き続き、咎人の捜索を続けよ
ロアー言われずともわかっている。次こそは、必ず…
ファング…あ、そうだ。ラザリス様、もう一つだけ報告が
ラザリス
ファング咎人の中に…宮廷神子に選ばれた女の子がいました
ファング名前は、コレット。もしかしたら、ラザリス様も知っているかもと思って…
ラザリス…知っているよ。あの中にいた事も、ね
ファングまさか宮廷神子まで咎人になっちまうなんて…
ヴァン…ファング。もう下がれ
ファングあ、ああ。それじゃあラザリス様、失礼します
ヴァン…さて、聞いての通りだ。咎人達は見事、白き獅子の包囲網を突破した
ラザリス…君達がちゃんと働いていれば、問題ないはずだったろう
ヴァン奴らの力を見くびっていた事は認めよう…
ヴァン咎人など大した脅威ではないと思っていたが、そうも言っていられぬようだ
ヴァンこのまま泳がせておけば、再び我々の邪魔になりかねん
ラザリス…悪足掻きが好きな連中だね
ヴァン悪足掻きで済めばいいが、万が一という事もある。次の一手を打たねばならんな…
ヴァンさて、どうしたものか──…む、ラザリス、どこへ行く?話はまだ…
ラザリス…これ以上君と話しても、何も変わらないだろうからね
ヴァン…ふっ。ようやく、か…
ヴェイグ──ひとまず、追手は振り切れたようだな
ゼロスよしっ、全員無事だな?
スタンゼロス!お前も無事そうで安心したよ
ゼロス野郎に心配されても嬉しくねえっつーの
ゼロスそれより、俺さまのお蔭で全員逃げられたんだから、もっと感謝してくれてもいいんだぜ?
レイヴンちょっとちょっと、手柄独り占めってのは聞き捨てならないわねぇ~
コレットふふ、みんなで頑張ったんだもんね。ね、ミクリオ?
ミクリオああ、そうだな。僕らも協力したって事を忘れないでもらいたいね
ゼロスぐっ…ま、まあそういう事だな、うん!俺さま達に感謝しろよ?
ジュード…それにしても、よくあの門を開けられたね
ジュード警備兵を撒くのも大変だったんじゃない?
ゼロスいやいや、簡単だったぜー。拍子抜けするくらいに、な
ヴェイグ…どういう事だ?
ジュード──そんな…あの状態で警備が手薄だったなんて…
スタンうーん…。ヴァン達は、最初から俺達を逃がすつもりだったのか?
レイヴンそんなわけないでしょ…って言いたいとこだけど。どうにも、敵さんの動きが読めないわね
ヴェイグ…ああ。どこか、不気味な感じがする
ラピードワフゥ…
ミクリオ…!そ、それよりさっきから気になっていたんだが──
ミクリオ誰かの飼い犬かい?
ティポ怖がらなくても大丈夫ー!ラピード君は仲間だよー。戦えるし、頼りになるんだー
ミクリオ別に、怖がってるわけじゃ…。まるで僕達の会話を聞いてるみたいだから、驚いただけで…
スレイ仲間と言えば、さっきから気になってたんだけど、ティアと一緒にいる人って…?
ベルベット……
ティアそうね、ひとまず落ち着いたし、彼女の紹介もしないといけないわね
レイヴンなら、ここらで一度全員で自己紹介ってのはどう?
レイヴン人数も多くなってきたしお初の人もちょこちょこいるだろうし
スレイ確かにそれがいいかも。それじゃあ、オレから──
ミクリオ…なるほど。どこかで見た事があるような気はしていたが──
ミクリオ…君が生誕祭でラザリスを襲撃した人物だったとはね
ベルベット
コレットカイルの仲間も、咎人として捕まっちゃったんだね…
カイルうん。だから絶対に助けないと…!
レイヴンしかし、こうして見るとかなりの人数になったわね
レイヴンこれだけいれば、敵さんと戦う事になっても心強いわ
ジュード…戦う、か…
エリーゼ…ミラ…
ルドガ―…大丈夫か?二人共
ジュードう、うん…ごめん。まさか白き獅子のロアーがミラだなんて思っていなかったから…
エリーゼこのままミラが思い出してくれなかったら…また戦わなくちゃいけないのかな…
コレット……ロイドとも…
ヴェイグ
スレイ…あのさ、いろいろあってみんな混乱してる事も多いと思う
スレイでも今はまずこれからどこへ行くのか、考えない?
ミクリオ同感だ。追っ手は撒いたと言っても、ここに留まるのは得策じゃないからね
レイヴンおっさんも賛成。せっかく逃げたのに、追いつかれたら元も子もない
ティアええ、この後の事を考えるにしてもどこか安全な別の場所へ行ってからの方がいいと思うわ
カイルでも、これだけの人数で落ち着ける安全なところなんてなかなか見つからないんじゃ…
ルドガーああ。宿を取ろうにもいつどこから俺達の話が漏れるかわからないし…
ゼロスそれなら心配ないぜ。マール村にある俺さまの家を使えばいい
レイヴンマール村、か。確かに住人も少ない長閑な村だし、ナムザ街の隠れ家よりは安全かもね
ラピードワフッ!
ジュードそうと決まったらすぐにでも出発しよう
エリーゼそう…ですよね。ここでぼうっとしてちゃ、いけませんよね
ティポうんうん!みんなを助けるためにも、まず動きださなきゃねー!
スタンよし、それじゃあマール村に向かおうか。ゼロス、案内頼む
ゼロス任せとけって。じゃ、早速出発──
ベルベット…ちょっと待って。その前に、あんた達二人に聞きたい事がある
エリーゼえ…?
ジュード僕達に聞きたい事…?
scene2夢への誘い
ベルベット白き獅子を庇ったのは、ロアーがあんた達の知り合いだから?
ジュードそ、それは…
ゼロス…いやいやベルベットちゃん。そういう話は後にして、とりあえず、俺さまの隠れ家に──
ベルベットこっちは、あんた達のせいで危険に晒されたのよ
ジュード…ミラは元の世界で僕達の仲間だったんだ
ジュードそのミラを傷付けるのは…
エリーゼわたしもジュードと同じ気持ちです。それで…
ベルベット…だったら適当にいなせばよかった。ここにいる全員が危険に晒されたのよ
ジュードでも…ミラは強いし、適当に戦って抑えるなんて出来ないよ
ベルベット…甘すぎる。そんな認識じゃ世界は取り戻せない
ジュードそんな事…!…君にはわからないんだよ
ベルベット……
ベルベット足を引っ張られるくらいなら、あたしは外れるわ
スタンえ?ベルベット、一体どこに──
ベルベット決まってるでしょ、シャングレイスに戻るのよ。今ならラザリスもいる
スレイ一人で戻るって…そんなの無茶ですよ!
ベルベットあたし一人で十分よ。足を引っ張る人間がいるより、よっぽどね…
カイルど、どうしよう?早く止めないと、本当にシャングレイスに戻っちゃうよ
レイヴンとはいえ、あのお嬢さんはちょっとやそっとじゃ聞かないわよ
カイルでも、たった一人で帝都に戻るなんて、いくらなんでも無茶だよ!
コレット同じ目的を持つ仲間なのに、どしてこんな風になっちゃうのかな…
スレイ……
ラピードクゥン…
スレイミクリオ、オレちょっとベルベットさんを追いかけるよ
ミクリオ耳を貸すとは思えないけど
スレイけど、今戻ったって捕まるだけだ。さすがに放っておけない
ルドガ―…ベルベットも、根は悪い奴じゃないと思う
ルドガ―彼女、意外と子どもに優しくてさ。前にもエルが危ないところを助けてくれたんだ
ルドガ―それに、エルに食べ方の注意もしてたっけ
ルドガ―その時のベルベットは、面倒見のいいお姉さんって感じだった
ヴェイグベルベットが…?
ティア…そうね。きっと、あれが本当の彼女…私もそんな気がしたわ
ゼロス面倒見のいいお姉さん、か。うーん、とてもじゃねぇがそんな風に見えないけどな~
ティア…何が原因かは私にもわからない、けれど──
ティア変わらざるを得なかった理由が、彼女にはあるんだと思う
スレイ理由…
スレイとにかくオレ、行ってくるよ
スレイ一人で挑んでも無謀だって事くらいベルベットさんもわかってるはずだし
スレイ譲れない理由があるって言うならそれを聞いてからでも遅くないと思う
コレットあ、スレイ…!
ミクリオ二人を追いかけよう
ティア待って、私が行くわ
ティア…ベルベットと話をする。彼女と一緒にいた時間は誰より長いし私の話なら聞いてくれるかもしれない
レイヴン…なら、お二人に任せようかね。揃って行ったところで神経逆撫でするだけって気もするし
ティア…ありがとう、レイヴン
scene3夢への誘い
スレイおーい!ベルベットさーん!
ティアようやく追いついた…
ベルベット…何しに来たの
スレイもう一度、ベルベットさんときちんと話がしたくて…
ベルベットあんた達とこれ以上話す事なんてないわ
スレイちょ、ちょっと待って!
スレイ今シャングレイスに戻っても、白き獅子の警備はより厳重になっているはずだ
スレイそんな中に飛び込んで行ったら、わざわざ捕まりに行くようなものです
ベルベットあんた達に心配されなくても、何も真正面から突っ込んだりしないわ
スレイけど、一人で動くのは危険だ。ベルベットさんとオレ達の目的は世界を取り戻す事、ですよね
スレイなら、みんなで──
ベルベット無理ね
ベルベットラザリスを倒すには白き獅子との戦闘は避けられない
ベルベット情に流されていたら足元をすくわれるわ。一緒に行動するのはこっちが危険よ
スレイそれは…
ティアでも、ジュードとエリーゼにとって、ミラはそれこそ家族のようなものなの
ベルベット「家族」…ね
ティア家族に剣を向けるなんてそんな事、簡単に出来るものじゃない
ティアまして、行方不明だったところに突然敵として現れたんだもの。二人が混乱するのも無理はないわ
ベルベット…そんなの、あたしには関係ない
スレイ関係なくはないよ。ベルベットさんにもいるでしょ?
スレイ大切な家族が…
ベルベット…!
ベルベット…そんなもの、もういないわ。あたしにいるのは殺すべき相手だけよ
ティア…ベルベット、やっぱりあなたも家族に何か──
キュィィィィィィィン
スレイな、何だこれ!うわ、まぶしっ…
ティアこれは魔法陣!?一体何が…!
ベルベットっ…!誰!?姿を見せなさい!
???(ラザリス)…君の本当の願い。僕がかなえてあげるよ
ベルベットあたしの…願い…?一体、何を言って…
???(ラザリス)ふふ…
キュィィィィィィィン
ベルベット…っ!あんたは…一体…!
スレイくっ…目が…二人共大丈夫か!?
ティア何も見えないわ…!一体何が起こって──……
scene1幻影の故郷
スレイ何だったんだ、今の…。急に、すごい光に包まれて…
スレイ二人共、怪我はない?
ティアえ、ええ…私は大丈夫。それにしても、ここは一体…?
スレイどこかの村…?でも、何で──
ベルベットここは…!
ベルベットまさかそんな…ありえない…
ティアベルベット…?この村の事知っているの?
ベルベット知ってるなんてものじゃないわ。だって、この村は──
ゼロスおーい、お前ら大丈夫かー?
スレイゼロス!ゼロス達もここに?
ゼロスああ、何が何やらさっぱりだぜ
コレット突然すごい光に包まれたと思ったらいつの間にかここに来てて…
ジュード…ここ、どこなんだろう?
ティア周囲が光り出した時に、一緒に魔法陣を見たわ。多分、転移魔法だったのね…
レイヴンなるほど。それでみんな仲良く、見知らぬ村に飛ばされたってわけね
カイルでも…何か変な村じゃない?
カイルさっきから村人に話しかけてるけど反応しないし…っていうか、オレ達が全然見えてないって感じで
ルドガー魔法陣に光、見知らぬ場所…この感じ、天帝の御座を思い出すな…
ヴェイグああ、移動する時の感覚がよく似ていた…
スレイって事は、これって…やっぱりラザリスの仕業なのか…?
ティア断言は出来ないけれど、その可能性は高いわね
コレットどうしてこんな事…ラザリスは…どこに行ったのかな
ミクリオ…わからないけど、近くで潜んでいる事も考えられる
レイヴンうーん、それはどうかしらねぇ。だとしたら、匂いでワンコ辺りが気付きそうなもんだけど…
ラピード…クウン
コレットうーん、ワンちゃんにもわからないなら、何もないのかな?
カイル確かに、どこかにラザリスが潜んでるようには思えないかも。のんびりした、いい村って感じだし
ジュード僕達がいないように扱われている事はおかしいけど…
ルドガー天帝の御座で会った兄さんやクレア…意思こそ本人達の物だったが、彼らは実体のない「幻影」だった
ルドガーここも、もしかしたらラザリスが創り出した幻なんじゃ…
ティア…確かに、有り得ない話じゃないわ
ジュード幻影か…。まるで覚めない悪夢のようだね…
カイル悪夢…。あ!夢って事は、ほっぺつねったら目が覚めるんじゃないですか?
ギュムッ!
カイル…いってぇー!
ジュードそういう夢、じゃなくて…
ティポカイル君、ほっぺまっかっかー!
エリーゼい、痛そうです…
スレイそ、そんなに強くつねらなくても…
カイルうう、つねり損だった…
ヴェイグ幻影かどうか、確証はないが、ここから脱出する事が優先だ。手分けして調査して現状を把握しよう
ゼロスだな。スタンと俺、それからルドガーで村の南側でも見てくるか
ヴェイグなら、ラピードはオレと一緒に来てくれ。村の西側を見に行こう
ラピードワフッ!
エリーゼヴェイグ、わたしとティポも付いて行きます!
カイルじゃあ、オレ達は──
スタンカイル達は、スレイと一緒にベルベットについててやってくれ
スタン…ベルベットの様子、何だかおかしいだろ?何かあったら、頼むな
カイルは、はい!じゃあ、みんな気をつけて!
ベルベット……
スレイベルベットさん、さっきこの村に心当たりがありそうでしたけど…
ティア教えて、ベルベット。この村は一体…
ベルベット…ここは、あたしの故郷よ
コレット故郷…?
ジュードって事は、この村は元の世界の…
ベルベットそうよ。この世界にあるはずのない場所…なのに、どうして…
カイル元の世界にある場所がここに…?一体、何がどうなって──
ベルベット…っ!
スレイベルベットさん!?一体どこに──
カイルあ、ちょっと二人共!
ミクリオ急いで追いかけるぞ!
scene2幻影の故郷
ベルベットやっぱり…全部あの時のまま…
ベルベットみんな!あたしよ!ベルベットよ!返事をして!
ベルベットあたしが見えてないの!?ねぇ、答えてよ!
スレイベルベットさん…
カイル…やっと追いついた
ジュードそれにしても、こんなに呼びかけてるのに…
コレットうん…。本当に私達の事が見えてないのかな…
レイヴンベルベットちゃんの声すら聞こえないようじゃ、ねえ…
スレイうん…
ティア…転移する直前、声が聞こえたわ。ベルベットの本当の願いをかなえてあげるって…
ティアこの村も、住人達も…彼女を陥れるための幻影だと思うのだけれど…
ミクリオだとしたら、村人が彼女に何もしてこない理由が解せないな…
ベルベット
ジュード他にもまだ、この村には何かあるのかもしれない。無闇に行動するのは危険だと思う
ベルベット…わかってるわ、そんなの。これは幻、幻に決まってる…
ベルベット今更こんな幻覚見せられたって、あたしは──
???…お姉、ちゃん?
ベルベット…!この声、まさか…!
???やっぱり、お姉ちゃんだ!
ベルベットライフィセット…そんな、どうして…
スレイ…ライフィセット?ベルベットさん、この子は──
ベルベットラフィ…本当に、ラフィなの…?
ライフィセットずっと待ってたんだよ。お姉ちゃんが戻ってくるのを…
ベルベット嘘よ…そんな…。だって、ラフィはあの時…!
ベルベットこれは…幻…絶対に騙されない…。こんなの…
ライフィセット…おかえりなさい、お姉ちゃん
ベルベットああ…あったかい……
ベルベットラフィ…本当に、生きて…!
scene1あるはずのない再会
ベルベットラフィ…
ライフィセットお、お姉ちゃん、そろそろ放してよ。みんな見てるし…
ベルベットお願い、もう少し…もう少しだけ、このままでいさせて…
ライフィセットう、うん…
レイヴンあらら…あのツンツンなベルベットちゃんが、随分デレデレじゃないの
カイルベルベットさんのあんな顔、初めて見たよ
スレイ
ミクリオだが、それよりも気になるのはあの少年だ…
ジュードうん…。知り合いのようだけど、あの子とだけ会話が出来るなんてちょっと妙だよ
レイヴンそりゃあ…普通に考えたら、ラザリスの罠──
ベルベットそんな事はわかってるわ!
ベルベット…でも、この子は……ラフィは…!
ライフィセットお姉ちゃん…力、強い…。苦しいよ…
ティアベルベット…。その子は、一体…
ベルベットこの子は…ライフィセットは、弟よ。死んだはずのね
ジュード死んだはずって…!それじゃあ……
ベルベット
コレットそんな…亡くなったはずの人が生きてる空間なんて…
ミクリオ…間違いない、彼はラザリスの創った幻影だろう
ミクリオまさか死者まで再現するなんて…
カイルそんなのって…
ベルベットそうよ、生きているわけがない…。ラフィは死んだはずよ。あの日、あたしの前で…
ライフィセットお姉ちゃん、どういう事…?僕は、ここで生きてるよ…?
ベルベットラフィ…。違うの、ここにいるあんたは、ラザリスの仕掛けた罠で…
ライフィセットえっと…よくわからないんだけど、お姉ちゃん、悪い夢でも見たの?
ベルベット悪い…夢…
ライフィセット…そうだよね、お姉ちゃんだって怖い夢も見るよね…
ベルベットいいえ、あれは夢なんかじゃない…でも、このラフィは、ちゃんと…生きてる…
scene2あるはずのない再会
ベルベットラフィ…ラフィ…
ライフィセット大丈夫だよ、お姉ちゃん。ただの悪夢なんだから。僕はここにいるでしょ
ジュード…仲のいい姉弟なんだね
レイヴン…いやいや、少年。この場合は「仲のよかった」が、正しいんじゃない?
レイヴン死んだ人間は生き返らない。それが現実よ
レイヴンベルベットちゃんも、わかってるんでしょ?
ベルベット…わかってる。これはラザリスの罠で、このライフィセットは偽者だって…
ライフィセットお姉ちゃん…?
ベルベットでも、あと少しだけ…こうさせていて…
ティアベルベット…
ライフィセット……
ライフィセット本当に、あと少しだけでいいの?
ベルベット…え?
ライフィセット本当はずっとこうしていたいよね?現実になんて、戻りたくないよね?
ベルベットラフィ…何を…
ティアベルベット?どうかしたの?
ベルベットティア達には聞こえてない…。あたしにだけ…?
ライフィセットそうだよ。お姉ちゃんだけに聞いてるんだ
ライフィセットお姉ちゃん。さっきから、ずっと思っているはずだよ
ライフィセットこのままでいたい。このまま、僕と一緒に暮らしたい
ライフィセット──復讐なんて、もうどうでもいいって
ベルベットなっ…
ライフィセット自分を強く見せるのはやめようよ。お姉ちゃんは、もっと、ずっと、弱い人間なんだから
ベルベットラ、ラフィ…何を…
ライフィセット僕のために復讐するって言いながら、本当は楽な方に逃げているだけ。自分が苦しみたくないだけ
ベルベットち、違う…あたしは…
ライフィセットだから僕が偽者だってわかっていても振り払う事が出来ないんだ
ベルベット偽者…あんた、やっぱりラザリスの…
ライフィセットそれでもお姉ちゃんは、僕と一緒に暮らしたいと思ってるよね
ライフィセットその方が楽だから。辛い道から、逃げられるから
ベルベットふざけるな!あたしはラフィの復讐を、この手で…
ライフィセットでも、本当は忘れたい
ベルベット…っ!
ライフィセット辛い事は全て忘れたい。復讐も、最愛の弟の死も…
ライフィセットこんな苦しい記憶は、全部忘れて楽になりたい
ベルベット違う!そんな事、あたしは…!
ライフィセット…忘れていいんだよ?それで、ここで一緒に幸せに暮らそうよ
ライフィセット復讐も、憎しみも、元の世界も、全部忘れてずっと幸福に暮らすんだ
ベルベットや、やめて…あたしは…あたしはラフィのために…
ライフィセット…だからさ。僕のためだなんて、嘘ばっかりつかないでよ
ベルベットえ…
ライフィセットだって、そうでしょ?僕が死んだ事なんて、お姉ちゃんにとって──
ライフィセット忘れちゃいたいと思うくらい、どうでもいい事じゃないか
ベルベット違う!あたしは…ただ…
ベルベットあたしは──…う…うう…
ベルベットうああああああああっ!!
ティアベルベット!?
スレイと、突然どうしたんだ!?
ベルベットあああっ!うわあああああっ!
コレットべ、ベルベット、落ち着いて!
カイルそんなに剣を振り回したら、ライフィセットが…!…あれ?
ミクリオライフィセットの姿がないぞ。一体どこに…
グルルルル…!
スレイなっ…、この魔物…!確か天帝の御座でも…
ミクリオラザリスが使役している魔物のようだね
レイヴンって、言ってる間に来るわよ!
ベルベットうあああああああっ!!
カイルベルベットさん!?
ティア…っ、ベルベットは私が!みんなは魔物をお願い!
scene3あるはずのない再会
スレイ…ふぅ。何とか片付いたみたいだな。みんな、怪我はないか?
カイル平気平気!何ともないよ!
ティア私達も無事よ。みんな、ありがとう
ベルベットっはあ…はぁ…っ、ラフィはどこ?それにあの、結晶の魔物……
ベルベット結晶…くっ…ラザリス…、よくも!
チャキッ
ティアベルベット!?もう魔物は倒したわよ!
コレットお、落ち着いて…!武器をしまって──
ベルベットうるさい!邪魔をするな!
コレットきゃっ!
ベルベットラザリス…あいつは侮辱したのよ…あの子の死を、苦しみを…あの子の姿を使って……よくも…っ!
ベルベット絶対に、許すものかぁっ!
ベルベット…はあ、はあ……ぐっ…
スレイ…!ベルベットさん、その腕は──
ベルベットうあああああああ!
バシュウ!
スレイ魔物を、ベルベットの手が吸収した…!?
レイヴンそれだけじゃ済まなさそーよ!
ベルベットっぐ、ああああっ!
バキッ!
ミクリオあんな大木を、腕一本で軽々と…
スレイくっ!このままじゃみんなも危ない!ベルベットさんを止めないと…
レイヴンだな…!すごい力だけど、数人で押さえ込めば何とか…
ジュード僕も手伝います!
スレイよし、行くぞ!
ベルベットあああああっ!
スレイうわあっ!?
ミクリオみんな、大丈夫か!?
レイヴンいてて…男三人を軽々振り払うとは…
ジュードでも、これだけの力…長くは続かないはず…!
レイヴンつっても、いつ終わるかわかんないしどうしたもんかね…
ベルベットぅ…あ…っ!
ドサッ
レイヴンふう、何とか助かったわね…
カイルでも、完全に気を失っちゃったみたいだ
スレイひとまず、どこか休めそうなところに運ぼう
ティアええ、そうね。かなり消耗しているみたいだし、ちゃんと休ませないと
ベルベット……
ジュードティアとコレットは、ここでベルベットを見てて
ジュード僕達で手分けして休めそうな家を探してくるよ
コレットうん、わかった。さっきの魔物の事もあるし、みんな、気をつけてね
スレイ駄目だ、どこの家も鍵がかかってる。ミクリオ、そっちはどう?
ミクリオこっちも駄目だ…
カイルあっ、この家は入れそう!中は誰もいないみたいだし…
ジュードじゃあひとまず、その家を使わせてもらおう
レイヴンそうね
スレイ…それにしても、ベルベットさんのあの腕は何だったんだろう…?
ミクリオ…凄まじい力だったな。まるで、憎しみそのもののような…
スレイうん、オレもそう感じた。でも、どうしてそんなものが彼女の腕に…?
スレイベルベットさんは一体──
scene1ベルベットの素顔
コレットジュード、ベルベットは?
ジュード大丈夫だよ。落ち着いたみたいで、今はぐっすり眠ってる
コレットそっか…よかったぁ
ティアひとまず、ここなら落ち着けそうね
ラピードワフッ!
カイルわっ…ラピード?
ヴェイグ…ここにいたんだな。ラピード、案内助かった
ラピードクゥーン
ティアヴェイグ…それに、みんなも。村の様子はどうだった?
ルドガー村自体はそう広くないし、村人と会話が出来ない以外は特に変わったところはなかったよ
ルドガー…村の中にはね
スレイ村の中には?…何かあったのか?
ゼロス異常も異常、普通なら有り得ないっての
ヴェイグああ…出口がない村なんて、あるはずがない
ミクリオ出口がない、だって?どういう事だ
ルドガー…村の出入口や広場、いろんな場所から何度も村の外へ出ようとしたんだけどな
エリーゼ歩いてる内にいつの間にか村に戻されてしまって外に出られないんです…
ティポぼくもうヘトヘトー
カイルそれじゃ、オレ達…ここに閉じ込められたって事?
ルドガー…今のところは、そういう事になるな
カイルそんな…早くここから出て、リアラ達を助けなきゃいけないのに…!
ラピードクーン…
スタンあー…でもさ、今までもいろいろあったけど、何とか乗り切れたんだ
スタン今回だって力を合わせればきっと村からも出られるよ!だろ、みんな?
スレイ…うん、オレもそう思う。こんなところで諦めるわけにはいかない
ヴェイグああ。世界もクレアも、必ずこの手で救ってみせる
コレットみんな…。そだよね、きっと何か方法はある…出来るよ、うん!
ラピードワンッ!
レイヴンうーん、いいねぇ。まさに青春、若人はこうでなくっちゃ
レイヴン元気な若者を見てると、おっさんも頑張ろうって気になるねえ
ジュードでも、戻ってもまたミラと戦う事になるんだよね…
スタンそれは…
レイヴンそうねぇ、それまでに記憶を取り戻したりでもしない限りは、ね
エリーゼ……
レイヴン二人共、そう暗い顔しなさんなって。ま、避けて通りたい気持ちはすんごいわかるけどね
レイヴン…でも、逃げてたって仕方ないしいつかはちゃんと向き合わないと
レイヴンでないと将来、ロクな大人にならないわよ~?なんてね
ジュードレイヴン…
ゼロス…あんたが言うと、説得力がすげーな
ミクリオ確かに、レイヴンの言う事も一理ある
ミクリオ僕達は、世界を取り戻すために行動してるんだ。それを忘れたら意味がない
スタンそれはそうだけど…だからって、仲間に剣を向けるのは誰だって嫌だろ?
ジュード…いや、レイヴンやミクリオの言う通りだよ
ジュードミラと戦う事を恐れて逃げてたら目的を果たせないし、…そうなればミラを救う事も出来ないって事だ
ジュード……僕は、いつもの「本当のミラ」に戻ってほしいんだ
ジュードそのためにも、今のミラとしっかり向き合って…前に進まないと
エリーゼジュード…
エリーゼわたしも本当のミラに会いたいです…
エリーゼ本音を言えば、やっぱりミラと戦うなんてしたくないです…。けど…
エリーゼでもそれが…ミラを助けるのに避けられない事なら…今度は、わたしも逃げません
エリーゼミラも、元の世界も…わたしが必ず取り戻します…!
ティポよーし、やってやるー!
レイヴンそうそう、その意気よ。頑張れ若人、ってね
ゼロスでもよ、世界を元に戻そうにもまずはこの村から出ないとなぁ
ティアそうよね…
ミクリオその事なんだが…
ミクリオこの村はベルベットの故郷で、死んだはずの弟も生きている…
ミクリオ状況から鑑みて、ここはベルベットの過去を再現した空間という事だろう
ミクリオ…そしてこれは、ラザリスが彼女を陥れるために見せている幻術の類…
カイルそれって、つまり…
スレイこの空間から出る鍵はベルベットさんの過去にあるって事か
ミクリオ…ああ、おそらくね
ジュード…とにかく、彼女が目覚めたらこの話をしてみようよ。あの腕の事も気がかりだし
スレイ…うん、そうだな
ゼロスあれ?そういやベルベットちゃんの姿が見えねぇな
コレット今は眠ってるよ、少し、いろいろあって…
ヴェイグいろいろ?
スレイああ、えっと…実は──
scene2ベルベットの素顔
ベルベットん…
ベルベットここは…、あたしの家…?
ティアよかった…ベルベット、目が覚めたのね
ゼロス…今、「あたしの家」って言ったか?
ジュードこの家だけ鍵が開いてたんだけど、まさかベルベットの家だったなんて
ゼロス偶然にしちゃ、出来すぎだっての。ラザリスに踊らされてるみたいで、気分悪いぜ
ベルベットそうだ…ラフィ!ラフィ!
ジュードあっ、ベルベット…!
ティアあの部屋よ。行ってみましょう
ベルベットラフィ!
ライフィセット…あ…お姉ちゃん…?どうしたの、慌てて…けほ、こほっ…
ライフィセット後ろの人達は、お姉ちゃんのお友達?
ベルベット…ラフィ…
ベルベットさっきとは雰囲気が違う…これも、偽者だっていうの…?
ティアえ…どうして…?
コレットさ、さっきまでこの家には誰もいなかったはずなのに…!
スレイ…もしかして、ベルベットさんが起きたのと同時に現れたのか…?
カイルでも、一体どうして…
ライフィセットげほっ!げほげほっ!
ベルベットラフィ!
ベルベット…ちょっと、すごい熱じゃない!
ライフィセットお姉ちゃん…。ごめんね、心配かけて…
ベルベット心配って、そんなの…
ベルベット…スレイ、水よ
スレイえっ?
ベルベット水よ、早く汲んできて。ラフィ、熱が出てるから
スレイあ、うん…!
ライフィセットお姉ちゃん…?
ベルベットラフィ、ちゃんと寝てなさい。ほら、しっかり布団かけて…
ベルベット待ってて、すぐに何か食べられるものを作るわ
ティアベルベット…
ベルベット…手伝いはいらないわ。一人でやった方が早いから。…後で味見は頼むかもしれないけど
ティアえ、ええ…
ゼロス驚いたな…
ミクリオああ。いつの間にライフィセットはあの部屋で寝ていたんだ…?
ルドガーそれに、ミクリオ達から聞いた話だとあの子は、もう亡くなっているんだよな…?
コレットうん…ベルベットが、そう言ってたよ
エリーゼさっきのベルベット…何だか別の人、みたいでした…
ティポねー。ベルベット君、優しかったよー
ルドガーエルと話していた時もやけに面倒見がいいと思ったけど…
ジュードうん…ライフィセットがいたから、だったんだろうね
レイヴンあれがベルベットちゃんの本来の姿…なのかもしれないわね
ライフィセットえっと…
ヴェイグ…どうした。寝てなくていいのか?
ライフィセットお姉ちゃんがたくさん友達を連れて来るなんて、珍しくて…あの、何か迷惑かけてないですか?
ゼロスまぁ、迷惑っていうか…
ライフィセットお姉ちゃん、その…不器用な人だからみなさんに誤解されてないか心配で…
ライフィセット本当はすごく優しいんです。だから…嫌いになったりしないでください
コレットうん、勿論だよ
カイルベルベットさんはオレ達の大切な仲間だからね!
スタンそれに、一人じゃちょっと危なっかしいもんな
ライフィセットよかった…お姉ちゃんの事、よろしくお願いします
ジュード…あの子、いい子だね
ゼロスそうだな…、もう亡くなったって聞いたけど、病気が原因か…?
レイヴンいや、ベルベットちゃんを見てる限りもっと違う原因がありそうな気がするわ
ジュードうん。僕もそんな気がするよ…。でも、何があったんだろう…?
ベルベットお待たせ、ラフィ。シチューが出来たわよ。あんたの好きなカレー味で
ライフィセット…ホウレン草入ってない?
ベルベット好き嫌いしてると、大きくなれないわよ
ライフィセットうう、でも…
ベルベット…冗談よ。今日は、ホウレン草は抜いてあるわ
ライフィセット本当?やったあ!
ベルベットその代わり、食べ終わったらきちんと薬を飲んで、ぐっすり眠る事。いいわね?
ライフィセットはぁい…
スレイベルベットさん、水はここに置いておけばいいですか?
ベルベット…ええ。悪いわね
ミクリオあのベルベットが、礼を…?
ティポほんとのほんとに別人みたいー!
ベルベットふぅ…
ベルベット…ジュード、ラフィの具合はどう?
ジュードぐっすり眠ってるよ。薬もちゃんと飲んでくれたし
ミクリオ…何だか不思議な感じだな。幻影なのに、本当に生きてるみたいだ
ベルベット…!
ベルベット………
レイヴン…ねえ、ベルベットちゃん?あの子、本当に自分の弟だって思ってたりする?
ベルベット…有り得ないって、頭では理解しているわ
ベルベットでも、声や姿、好き嫌いまで、…全部記憶の中のあの子と同じなの
ベルベット忘れもしない、あたしの弟…ラフィそのものなのよ…。だから、ついあの頃みたいに…
スレイベルベットさん…
スレイ聞いてもいいですか?二人に…過去に何があったのか
ベルベット……
スレイさっきまでの…弟と一緒にいたベルベットさんは普段のあなたと全然違った
スレイどうして、あなたがそんなに変わってしまったのか…教えて欲しいんです
ベルベットそうね…。あたしのせいでこの空間に巻き込んだのは事実だしあんた達には聞く権利があるわ
ベルベットあたしが…元の世界に戻らなきゃいけないその理由を…
scene1憎しみの原点
スレイベルベットさん…あなたとライフィセットに何があったのか聞かせてほしいんです
ベルベット…どこから話そうかしら。そうね…
ベルベットあたしは、この村で育ったの
ベルベット姉さんの夫だった義兄さんと、弟のラフィと三人で、この田舎村で暮らしてた
ジュード夫“だった”…?
ベルベット姉さんは義兄と結婚する前に死んでしまったから
ジュードそう、だったんだ…。ごめん…
ベルベット姉さんが亡くなった後も変わらず義兄はあたし達の面倒を見てくれた
ベルベット血の繋がった兄弟みたいに…ううん、それ以上によくしてくれたわ
ベルベット狩りも戦いも、全部義兄さんが教えてくれた。ウリボアの狩り方も、立ち回りも
レイヴンなるほど。ベルベットちゃんの戦いは、お義兄さん仕込みなのね
ヴェイグその義兄は、相当な腕だったんだな。ベルベットの太刀筋を見ればわかる
ティポかっこいいよねー!シュバーッ!ってカンジでー
ラピードワフッ!
ベルベット…義兄さんは、誰よりも強かったわ
ベルベットあたしには戦い方を、病気がちな弟には勉強を教えてくれていた
ベルベットラフィもあたしも、…義兄さんが大好きだった
ベルベット毎日、二人のために料理を作って、掃除と洗濯をして…そんな毎日だったわ
ベルベット時々、ラフィと喧嘩したり…小さな失敗をする事もあったけど、穏やかで、幸せな日々だった
ミクリオ何だか、今の彼女からは、想像出来ないな…
スレイ…うん。話を聞く限り、幸せそのものって感じだけど…
ティア…ベルベットの家族は、すごく仲がよかったのね
カイルうん。話聞いてるだけで、楽しそうだなってわかるくらい
ルドガーああ…すごくいい家族って感じだけど…
ベルベットいい家族…か。そうね、あたしもそう思ってた。…あの日までは
エリーゼ…あの日?
ベルベット…あの日、たった一晩の内に、何もかもが崩れ去ったわ
スレイ……
scene2憎しみの原点
ベルベット…ん?外が騒がしいわね
ベルベット何かあったのかしら?
ベルベットこの窓からなら、村の方が見えるはず…
グルルルル
ベルベットなっ…!どうして、魔物の群れが村に!
ベルベット早く逃げなきゃ!ラフィ!義兄さん!
ベルベット…ラフィ?どこにいるの!?義兄さん!?
ベルベット二人共、いない…?
ベルベット義兄さんはきっと魔物退治に出たんだわ…!でも、ラフィは…?
ベルベット身体の弱いあの子が、魔物に襲われなんかしたら…
ベルベット…ううん、そんな事考えちゃ駄目!とにかく、捜さなきゃ!
ベルベット一体、どこに行ったの?ラフィ!義兄さん!
グルルルル
ベルベットそんな…!村のみんなが魔物に襲われて…何でこんな事に──
ガアアアアッ!
ザシュッ
村の女きゃー!
ベルベット…!そんな…
村の男早く逃げろ!
ガアアアアッ!
村の男ぎゃああ!
ベルベットあぁ…友達も、おばさんも、みんな…
ベルベットそうだ、ラフィ…早くラフィを捜さないと!
ベルベットはぁっ、はあっ…!ラフィ、どこに行っちゃったの…!?
ベルベット村中捜しても、どこにもいないなんて…
ベルベットまさか…森を抜けた岬に行ったんじゃ…!
ベルベット村にいなかったらもうあそこしか…
ベルベットラフィ!どうか、無事でいて…
scene3憎しみの原点
ベルベットはぁ、はぁ…
ベルベット森の中も…魔物だらけで…はぁっ、何とか、ここまで来れたけど…
ベルベット…ラフィ、ここにいるの?いたら返事をして!
ベルベット…!あそこにいるのは…
ベルベット…やっぱり!ラフィ!義兄さん!
ベルベットあぁ…よかった。二人共無事で…
ベルベット義兄さん、ありがとう。ラフィを守ってくれて…
???
ベルベット…?義兄さん?
ライフィセットお姉ちゃん…来ないで!
???
チャキ
ベルベット義兄、さん…?
ベルベットどうして…どうしてラフィに剣を向けるの…?
???
ベルベット…ねえ、義兄さん、何か言ってよ
ライフィセットお姉ちゃん、逃げて!
ベルベット──義兄さん、やめて!!
ザシュッ
ライフィセットお姉、ちゃん……
ベルベットラフィ!そんな…うそ…
???
ベルベットどうして…義兄さん、ねぇ、どうしてよ…?
ベルベット何で、ラフィを……大切な弟を…
ベルベットうあああああああっ!!!
scene1伝えたい気持ち
ベルベット
ルドガーお義兄さんが…
カイル家族が、家族を殺すなんて…そんなのって…
ジュードどうしてそんな酷い事を…
ベルベット…弟が殺された理由はわからない。けど、あの日の事は全部、昨日の事のように覚えているわ
ベルベット…今でも、目を閉じれば鮮明に思い出せる。弟が殺された光景を…!
ベルベットあたしは、義兄を絶対に許さない…!
ティアあなたの言ってた「やるべき事」…それは、義兄への復讐だったのね…
ベルベット…そうよ
ベルベットだからあたしは元の世界に戻らないといけない。何としてでもね…
コレットベルベット…
ミクリオ…事情はわかった。けどまだ一つ、疑問が晴れない
ミクリオ君の左手…その力は一体何なんだ?
レイヴン生まれつきのものじゃないよね?
ベルベット…弟が殺された時、あたしの身体に変化が起きたの
ベルベット原因も正体もわからない。この手は、何でも喰らう…
ベルベット一度暴走すればあたしにも制御出来ない
レイヴン暴走…なるほど、それがさっきのってわけ
ゼロス家の回りの木やら地面やら、ボコボコだったもんな
スタン魔物の大群でも来たのかと…。あれ、ベルベットがやったのか…!
ベルベット元の世界では自在に使えてたわ。けど、こっちに来てからはあんた達の見た通り
ベルベットだから今まで使わないようにしてた。だけど…
ベルベット……疼くのよ、この腕が。この世界に来てから、ずっと
ベルベットこの左手はあたしの憎悪の象徴…
ベルベットラザリスの創った憎しみのない世界からすれば、この手は「異物」なのかもしれない
ルドガーこの世界の異物…
カイルねえベルベットさん。疼くって事はその腕、痛いの?
ベルベット…どうって事ないわ。ラフィの痛みに比べたら、こんな痛み…
エリーゼベルベット…
ヴェイグだが、痛むのなら無理はしない方がいい
ベルベットそんな事言ってられないわ。あの時の事を話して、再認識出来た
ベルベットあたしは、早くここから出て、元の世界に戻らなきゃいけない
ベルベット弟の仇をとるためにね
スレイその話なんだけど…この空間を出る鍵はベルベットさん、多分、あなたの過去にある
ベルベット……
スレイ…オレ達、やっぱり協力しませんか?
スレイライフィセットと接するベルベットさんを見て思ったんです
スレイ…ジュード達の気持ち、理解してないわけじゃないんだって
スレイだから──
ベルベットここに来た時、ラフィが言っていたわ
ベルベット「復讐も、憎しみも、元の世界も、 全部忘れてずっと幸福に 暮らすんだ」…って
ベルベット…つまりこの場所は、ラザリスの世界にとって都合の悪いあたしを閉じ込めるための罠…
ベルベットあたしにずっとここにいたいと思わせる、幻の監獄なのよ
ベルベット脱出の鍵があたしだなんて、そんな事、あんたに言われなくてもわかってる
ジュードベルベット…その、何て言うか…上手く言えないけど──
ベルベットとにかく、あたしの記憶にあんた達を巻き込んだのは悪いと思ってる
ベルベットここから出る鍵は、あたしの執着にある…。それは……
ベルベット…あんた達に迷惑はかけない。自分の過去には自分でケリをつけるわ
ティアあ…、ベルベット…!
スレイ……
scene2伝えたい気持ち
スタン…ベルベット、行っちゃったな。ライフィセットを連れてどこへ行くつもりなんだろう…
コレット二人で一緒にいたいのかな…。元の世界に戻ったら、もう会えないもんね…
カイルベルベットさんの大切な弟さんは、もう…
エリーゼそれに、大好きだったお義兄さんに裏切られるなんて、そんな事って…
ルドガー家族が家族を殺すなんて、到底、受け入れられないよな…
ヴェイグああ…、あの頑なな態度の裏にはこんな事情があったとは…
レイヴン相当、キツかっただろうね…
ジュード……
ティアベルベット…
ティポでもー、ケリをつけるなんてどうするんだろーねー?
ジュード…ベルベット、ここから出る鍵は自分の執着って言ってたよね
ルドガーああ、確かそうだったな
ジュードこの場所にある、ベルベットの執着って…やっぱり、ライフィセットじゃないかな…?
ゼロスその執着をどうにかするって、もしかして…
コレットそんな…!ベルベットを止めなきゃ!
ラピードワンワン、ワオーン!
スレイ……
ミクリオ…スレイ、何を考え込んでいるんだ?
スレイ…わからないんだ
スレイベルベットさんは今現実と向き合って前に進もうとしてる。…果たすべき目的のために
スレイそれをオレ達が簡単に引き止めてしまっていいのかな
ジュード
スレイ駄目だ、いくら考えても正しい答えが見つからない…
ミクリオ確かに、難しいところではある。けど、…君らしくないな
ミクリオ導師になる覚悟を語った時の明快さはどこへいったんだ?
スレイ導師…
ミクリオ導師は世界を導く存在だろう?
ミクリオそれはつまり、正しい決断を導く存在、という事だ
ミクリオ今のベルベットは、目の前の問題を解決するために自分の心を殺そうとしている
ミクリオでも君は…いや、僕らはその方法が「正解」であっても「正しい」とは思っていない
スレイ正解だけど、正しくない…。そうだよ。オレは、ベルベットさんに傷付いてほしくなくて…
ミクリオなら、その想いをそのままベルベットに伝えてみたらどうだい?
ミクリオ気持ちをまっすぐに伝えるのは君の得意技、だろ
スレイそのままの気持ち…
スレイだったら、オレは──
スレイありがとう、ミクリオ!オレ、ちょっと行ってくる!
ティア待ってスレイ、私も──
ミクリオティア。今はスレイに任せてくれないか?
ティアミクリオ…でも…
ミクリオ頼む、スレイを信じてほしい
ティア…わかったわ
scene1心の在り方
ライフィセットお姉ちゃんと散歩なんて、久しぶりだね
ベルベットええ、そうね
ライフィセットいいの?こんなに遠くまで来て。いつもならお姉ちゃん、怒るのに…
ベルベット…今日だけは、いいのよ
ライフィセットふーん…あ。見てお姉ちゃん、綺麗な花が咲いてる
ライフィセット何て花だろう。見た事ないなあ
ライフィセットそうだ、摘んで行って家に飾ろうよ!
ベルベット…そう、ね。じゃあ、摘んでくれる?
ライフィセットうん、まかせて!
チャキ…
ベルベット……ラフィ…
ベルベット…っ、これは偽者…ラフィは、もう…!
ベルベットせめて、一撃で終わらせてあげる………痛みなんて、感じる暇もないくらいに──…
ベルベットあああああっ!
ガキーーーン!
ベルベットなっ!?
スレイま、間に合った…!
ライフィセットな、何!?え…お、お姉ちゃん…?
ベルベットスレイ…!
スレイ待ってください、ベルベットさん!オレの話を聞いてください!
ベルベット聞く必要はない!あたしは、その子を殺す!
ライフィセットお姉ちゃんが、僕を…どうして…
ライフィセット……
ドサッ
ベルベット…何で邪魔したの!?あんたの目的も、ここから出る事でしょう!
スレイこんなやり方は駄目だ!最愛の弟を…自分の手で殺すなんて
ベルベットその子は幻なのよ!
スレイそうだとしても…簡単に割り切れるものじゃない!
スレイ姿も声も、仕草も…全部大切な人と同じなんだ
スレイこのやり方じゃ、ベルベットさんが救われない
ベルベット…!
スレイだから、オレはライフィセットを守る
スレイベルベットさんが諦めるまで、ずっと、何度でも!
ベルベット…あたしがラフィを殺そうとして、あんたがラフィを守るって…
ベルベット…めちゃくちゃよ。あんた、思った以上に変わった奴ね
スレイあ…諦めてくれた…?
ベルベット…話を聞くだけよ。それから…
ベルベットラフィをこんなところに寝させておけない。木陰に移動させるわ
スレイ…オレも手伝います
scene2心の在り方
ベルベット…それで。あんたは、あたしに何を求めてるのよ
ベルベットあたしはこの方法でしかここから出られないと思ってる。だから、そうしようとしたのに…
ベルベット…あんたが止めなかったら、今頃あたしは…
スレイ…オレは、ベルベットさんが弟を殺さなくてよかったと思ってる
ベルベット…何よそれ。じゃあ、ここから出られなくてもいいって言うの?
スレイいや、そう言うわけじゃなくて…。今のあなたにライフィセットを殺させちゃ駄目だって思って…
ベルベット…同情でもしてくれたわけ?
スレイ違う。ただ、確認したかったんです
スレイベルベットさんはこの方法で、本当にいいと思ってるのかなって
ベルベット……
スレイ弟を殺す事を受け入れて心から納得出来てるなら、オレは止めません
スレイだけど、オレにはそんな風に見えないから
ベルベット……
ベルベットあたしの目的は、復讐よ。そのためにはここから出なきゃならない
スレイでも、本当は弟を殺すなんて事したくないはずだ
ベルベットあたしの感情なんてどうでもいいの。ただ、ラフィさえ…あの子さえ殺せばそれで全部──
スレイ駄目だ!そんな事したら、ベルベットさんの心が壊れてしまう…
スレイそんなんじゃ、ここから出られたって意味がない
スレイ本当のライフィセットもきっと、そんな事は望んでないと思う
ベルベット…!
スレイ…オレには、ベルベットさんが「復讐」っていう目的に振り回されてるように見えます
スレイ優しい気持ちとか、悲しい気持ちとか本当はもっと、いろんな感情があるはずなのに──
スレイ全部を「憎しみ」で抑えつけて、自分の心と向き合おうとしてない
スレイ左腕の暴走も、それが原因なんじゃないですか?
スレイ…まるで、自分の感情にもがき苦しんでる今のあなたみたいだ
ベルベット───っ!だったら、どうしろって言うのよ…!
ベルベットあたしに、復讐はやめろとでも言うつもり!?
スレイ…いや、そうじゃない
スレイでも、目的に振り回されて自分の心を見失っちゃ駄目だ
ベルベット
スレイ…探そうよ。あなたの心が犠牲にならずに済む別の脱出方法を
スレイ何かに振り回されるんじゃなくて、あなたがあなたらしくいられる別のやり方が、きっとあると思う
ベルベットあたしが…あたしらしく……
ベルベットまさかあんたにそんな事言われるなんてね…
スレイえ…?
ベルベット正義の味方を気取った甘い奴、そう思ってた
ベルベット復讐の話をしたところでどうせ理解されずに止められるんだろう、って
スレイうーん、正直言うと、「復讐」そのものはよくない事だって思います
スレイけど、その憎しみも含めてベルベットさんだと思うから、想いは否定はしたくないって言うか…
ベルベット…ふ、変わった奴ね
ベルベット復讐はよくないけど憎しみの感情は否定しない、なんて言ってる事めちゃくちゃじゃない
スレイで、でも、これがオレの気持ちだから…
ベルベットまあ、いいわ。で、そこまで言うなら別の方法って奴にアテはあるわけ?
スレイえっと、それは…
ガサッ
ベルベット魔物!?出てきなさ──
コレットわ、待って!私だよ!
ベルベット…あんた達
スレイコレット!それに、みんなまで…
ティアごめんなさい、立ち聞きする気はなかったのだけれど…
ラピードクゥン
scene1向き合う決意
スレイみんな、急に出てくるから驚いたよ
カイルその…ごめん!
カイルなかなか戻って来ないからみんなで様子を見にきたんだけど、二人の話し声が聞こえて、つい…
ジュードベルベット、あのさ…
ベルベット……
ジュード…ごめん。僕、君の事を誤解してたと思う
ジュードミラの事を言われた時、君には僕達の気持ちなんかわからないだろうって思ってた
ジュード…でも、違った。君にも何より大切に想う相手がいた
ジュード幻影とわかってたってライフィセットを殺すなんて事、本当はしたくなかったはずだよね
ジュードだけど君は、逃げずにちゃんと弟と向き合おうとした
ジュード…あの時は、酷い事言ってごめん
ヴェイグ…オレ達も誤解していた。事情も知らず、お前がただ強情をはっていると…
ベルベット……
コレット…あのね、ベルベット。私達もスレイと同じ気持ちだよ
コレット復讐は、その…あまりいい事じゃないと思う
コレットでも、ベルベットには必要な事で…それがあるから、今のベルベットがいるんだよね?
ミクリオ人は、様々な感情で動いている。君が君であるために必要な感情であるなら…
ミクリオたとえそれが、誰かに復讐するという物であっても簡単に否定する事は出来ない
ティア憎しみの感情が今のベルベットを支えているなら…それはきっと、必要な感情なのよ
ベルベット……ふ、まさかあんた達までそんな事言うなんてね…
スレイオレ、世界が変わってからずっと感じてた事があるんだ
スレイこの世界の人達は憎しみの感情がなくなってる。だから、争いのない平和が続いてて…
スレイ…でもさ、憎しみだってオレ達がオレ達であるための大切な一つの感情だ
スレイそれに蓋をして無理やり作った平和なんて…それでいいはずがない
カイル…うん。本当はあるのに無理矢理なくすなんてそんなのおかしいって言うか…
スタン俺もそう思うよ。いろんな気持ちが沸き上がるのが当たり前の事なんだ
レイヴン世の中、綺麗なだけじゃないってね。だからこそ面白いってところもあったりするのよね
コレット…そだよね。この世界は綺麗、だけど…やっぱり歪んでると思う
ベルベット…そうね、だから直すのよ。あたし達の手で──
ティアあたし達…?ベルベット、それって…
ベルベットジュード、エリーゼ。あんた達に一つだけ忠告よ
ベルベット…同じヘマしたら許さないから
ジュード……うん、大丈夫だよ
ジュードミラを助けるためにも…もう、現状から目をそらしたりしない
エリーゼわたしもです…。ミラも世界も、必ず取り戻したいから
ベルベット…わかったわ
コレットよかった、ベルベット…。今度こそ、一緒に…
ゼロス何だか、スレイがおいしいところ持っていった感じがするなー
スレイそんな事ないよ、って言うか、むしろみんなの──
ベルベットそういえばスレイ、あんたにはもう一つ言っておくわ
スレイな、何ですか…?
ベルベットその堅苦しい敬語はやめて。あと、さんを付けて呼ぶのも、ね
スレイ…!ああ、わかった
スレイじゃあ…改めてよろしく、ベルベット
カイルよーし、そうと決まればラザリスを倒して世界を取り戻そう!
レイヴン…と、その前に。まずはここから脱出しないと
カイルあ、そっか…
ルドガーさすがにここで話し合うのもなんだから移動しないか?
ベルベットそうね。…ラフィもあのままにしておけない
ゼロスなら、一旦ベルベットちゃんの家に帰ろうぜ
スタンそうだな。よし、それじゃ行こう
ベルベットあたしがあたしらしく、か…
scene2向き合う決意
ヴァン──ふん、ラザリスもようやく重い腰を上げたか…
ヴァンこれからは、もう少し協力的に動いてくれればいいが…
???ヴァン、少しいいか?
ヴァン…何用だ?
ロアーラザリス様の姿が見られない
ロアー公務などの予定はないはずだが、…何か知らないか?
ヴァンラザリス様なら、所用で宮殿を離れている。しばらくは戻らんだろう
ロアー所用だと…?我らの警備もなしに、一体どこへ──
ヴァンロアー、少々差出がましいぞ。戻れば知らせる、それまでは下がっていろ
ロアー…承知した
ヴァン…ふ
ヴァンさて、果たしてどのように転んでいくか…
レイヴン──とりあえず、弟くんは部屋に寝かせたわよ
ベルベット…悪いわね
レイヴンベルベットちゃんのためならお安い御用~、ってね
スタンそれで、これからどうしようか?
ジュードベルベットとライフィセットが鍵になっているのは、間違いないと思うんだけど…
ベルベット…あたしに、一つ考えがある
ミクリオ考え?
ベルベットこの左手よ…
ティア…!もしかして、あの力を…?
コレット駄目だよ…!そんな事したらまた力を抑えられなくなっちゃうかも…
ベルベット心配ないわ。今なら大丈夫…そんな気がするから
ベルベットそれより心配なのは、思惑通り上手くいくかって事…
カイルう、うーん、いまいち話が見えないんだけど…
ルドガーベルベット、君は一体何をしようとしてるんだ…?
ベルベット四の五の説明するより見せた方が早い
ベルベット…とにかく、やるわ。あたしらしいやり方でね
スレイベルベット…
スレイ…わかった、ベルベットを信じるよ
ベルベットこんなおままごとは終わらせるわ。…全て、跡形もなくね
コンコン
ベルベット──ラフィ、入るわよ
……
ベルベットラフィ?
エリーゼあれ…?誰もいません…!
ゼロスさっきまでここで大人しく寝てたってのに、いつの間に…
ヴェイグどこへ行ったんだ…?
ミクリオ手分けして村の中を捜してみよう
ベルベット…いいえ、その必要はない。ラフィの居場所なら見当がつくわ
ベルベット…こういう時、あの子は大体あそこにいるの
ベルベット付いて来て、案内する
scene1自分らしくあるために
スタン…すっかり暗くなっちゃったな
レイヴンあの少年ってば本当にこんな場所にいるのかしら…
ライフィセット
ジュード…いた、ライフィセットだ
コレットけど、あの様子…
カイルもしかして、泣いてるの…かな
ライフィセット…!お姉ちゃん…
ベルベット
ライフィセット僕、お姉ちゃんと岬でお別れする夢を見たんだ…
ライフィセット僕、すごく怖くて…お姉ちゃんが僕の事、置いて行っちゃうんじゃないかって…
ライフィセットねえ、お姉ちゃん。これからもずっと一緒だよね?どこにも行かないよね…?
ベルベット……
ゼロスずっと一緒、ね…。これもラザリスが言わせてるのか?
ルドガーだろうな…。ベルベットの一番辛いところを突いているんだ
スレイ…きっと大丈夫だよ。信じよう、ベルベットを
ライフィセット僕ね、ここでずっと待ってたんだ。お姉ちゃんが帰ってきて、また一緒に暮らせるのを
ライフィセットだから、お姉ちゃんが帰ってきてくれて、すごく嬉しい
ライフィセットまた前みたいに、二人で幸せに暮らせるんだから
ベルベットラフィ……くっ──…!
チャキンッ!!
ライフィセットお、お姉ちゃん?どうして剣なんて…!
ベルベット…黙りなさい。あんたはラフィじゃない…
ベルベットその子の顔で、その声で…嘘を並べたてるのは許さない!
ライフィセットお姉ちゃん…どうしちゃったの?こんなの、お姉ちゃんらしくないよ
ベルベット黙れ、と言ったわ
ライフィセット
ベルベットあたしらしくない、ですって?…笑わせないで
ベルベット永遠の苦しみだろうが構わないわ。あたしは立ち止まらない…戦って戦って、戦い続ける
ベルベットいつか、あの子の復讐を果たすまで
ライフィセット
ライフィセット…それが、君の答えかい?
ベルベットそうよ。思い通りにならなくて、残念だったわね
ライフィセット…馬鹿だね。せっかく機会をあげたのに
ライフィセット…やれ
グルルルル……
コレットまた結晶の魔物…!一体どこから……
エリーゼすごい数…囲まれてます!
スタン本性を現したな、偽者め!
ティアくっ…みんな、気をつけて!
ヴェイグまずい…囲まれたぞ!
ラピードワフッ!!
スレイ…ああ。いくぞ、みんな!
レイヴンつっても、こんだけの数まともに相手してたら、それこそ永遠に終わらないわね
ティポじゃあ、どーすんのさー!
ミクリオこういう時は、まず小集団に別れて──
ミクリオ各自、層の薄いところから突破!狙いを分散させるんだ!
ジュードわかった!よし…みんな、行こう!
ベルベットあたしの前に立ち塞がるものは全部、なぎ倒す!
scene2自分らしくあるために
ギャゥン……
ティアはあ…はあ…今ので最後の一匹ね。ベルベット、スレイ、無事!?
スレイうん。こっちは大丈夫
ベルベット…問題ないわ
スレイ他のみんなは…村中に散ったか。乱戦だったからな…
ティアきっと大丈夫。この程度の相手に遅れを取るような人達じゃないわ
ティアそれよりも、問題は……
ライフィセットお姉ちゃん…村から出て行っちゃうの?
ベルベットラフィ……いいえ。ラフィの姿を借りたあんた!
ライフィセット……!お姉、ちゃん…?
ベルベット偽者でも構わないわ。…聞きなさい
ベルベットさっき言ってたわね。今のあたしは、あたしらしくないって
ライフィセット…うん。お姉ちゃんはもっと優しい人だよ
ライフィセットそんな怖い顔、ちっとも似合わない…
ベルベット…違うわ。これこそがあたしなのよ
ライフィセット何言ってるの?僕は知ってるよ、本当のお姉ちゃんを
ライフィセット身体の弱い僕を、つきっきりで看病してくれた、優しいお姉ちゃんの事を…
ライフィセットでも、今のお姉ちゃんはまるで別人みたいだよ。本当のお姉ちゃんはそんな人じゃない
ベルベットそうね…。確かに、あたしは変わった
ベルベット忘れたくても忘れられない、あの夜からね
ベルベット何度考えたかわからない。もっと早く気づいていれば…もっと力があったなら…
ベルベットそうしたら、目の前で…むざむざ弟を失わずに済んだ
ベルベット弟を…ラフィを、助けたかった。でも、出来なかったわ。本当に…つらくて、苦しかった…
ライフィセット…大丈夫だよ、お姉ちゃん。そんなの、全部悪い夢だから
ライフィセット僕はここで生きてるよ。これからも、一緒にこの村で、平和に暮らそう?
ベルベット…駄目よ、そんな事出来やしない。この憎しみがある限り、絶対に
ライフィセットどうして?お姉ちゃんだって、僕と一緒にいたいと思ってるんでしょ?
ベルベット…あたしはそんな事、望んでいない!
ライフィセット…?
ベルベット今ここで真実から目を背け憎しみを忘れ、あんたを選ぶなんて絶対にしない!
ベルベットこの憎しみを否定すれば、あの子への気持ちも嘘になる!
ライフィセットお姉ちゃんの苦しみは僕にもわかる。でも、僕は──
ベルベットあたしの痛みも、苦しみも!あたしだけのもの…!全部ひっくるめて、あたしなんだ!
ベルベットあの子の上辺だけをなぞったお前に、お前なんかに!わかってたまるものか!
ライフィセットそんな…お姉ちゃん、本気で言ってるの?
ライフィセット復讐したって、何も手に入らないよ。そんな意味のないものに、ずっと囚われ続けるの?
ライフィセット本当に、それでいいの?
ベルベットこの復讐に意味があるかどうかは、あたしが決める
ベルベット今はただ、自分の本当の心に従うわ。…それが、「あたしらしさ」になると思うから
スレイベルベット…
ベルベット復讐のために、あの子のために…。まずはここから出るわ
ライフィセットそう…。じゃあ、僕を…殺すんだね。お姉ちゃん
ティア…ライフィセットの雰囲気がまた──ベルベット、気をつけて!
ベルベット……
ライフィセットいいよ。でも、よく覚えておいてね?僕を殺した、その感触を
ライフィセットそれが…お姉ちゃんに一生付きまとうものだよ。そして、最後に残るもの…
ベルベット
ライフィセット憎しみを抱いたまま生きる?そんな事は出来ないよ。憎しみは君も周りも全て汚していく
ライフィセットそんな感情を抱いてまで生きようなんて…お姉ちゃんは本当に傲慢で醜いね
ベルベット…そうかもしれない。でも、これがあたしの生き方だ
ベルベットそしてこれが…あんたへの答えよ!!
スレイベルベットの左手が…!でも、前の時とは様子が違う…?
ティアええ、見た目は前と変わらないけど以前のような禍々しさは感じられないわ…
スレイベルベット!
ベルベット…大丈夫よ。黙って見てなさい!
ライフィセット醜い姿だ…さあ、やりなよ
ベルベット…言われなくても!
ベルベットはあああああああっ!!!!
ライフィセット……!…これは一体!?
ティア空が割れて…いいえ、ベルベットの力が空間を切裂いているの…!?
スレイああ、さっきの暴走以上の力だ。信じられない…それにこれは、切裂くっていうより…
ベルベット喰らい尽くせぇええええええ!!!
ライフィセットそんな…空間を…いや、形成するマナごと、全て喰らう気?そんなの、無理に決まってる!
ベルベット…あたしはっ、あたしらしく!あたしのやりたいようにする!!
ベルベットたとえ偽者でも…ラフィの姿をしたあんたを直接この手にかけるくらいなら…
ベルベット空間ごと喰らい尽くして全てを否定してやる!
スレイ空が…いや、空間が崩れるぞ!二人共、掴まれ──
ティアベルベッ──
ライフィセット……ちっ
バリイイイン!!
ベルベットここは…
ベルベット何も…、誰もいない…
ベルベット……ラフィ
ベルベット偽者は偽者、か…
???──ちゃん……お姉ちゃん!
ベルベット…!その声、まだ…しつこいわよ、いい加減に──
ライフィセット……
ベルベットもしかして、本当の……
ベルベットラフィ…
ベルベット……ごめん
ベルベットもう少し…もう少しだけ待っていてね…ラフィ
ベルベット…う、……ラ…フィ…、ラフィ──…!
ベルベット…!ここは…転移前にいた場所…?
ベルベット戻ってこられたのね…
ベルベット……
ベルベット…ラフィ、ありがとう……
スレイう、…ん…
スレイ…い、てて………あれ?…オレ、何で…
ベルベット…あの空間は消え去ったわ。跡形もなく全てね
スレイそっか、ありがとうベルベット
ベルベット…それは──
スレイ…っと、よし、ちゃんと全員いるな。みんな起こさないと!ほら、ベルベットも手伝って
ベルベット……
ミクリオ──空間が裂けたあの光景、あれはベルベットの力だったのか…
カイルしかも、空間を壊したんじゃなくって食べちゃった、とか…
レイヴンいやー、まさかそんな豪快な事をやってのけちゃうなんてね。さすがベルベットちゃんだわ
ジュードそれにしても、よくあんな方法を思いついたね
ベルベット前に暴走に飲まれた時、あたしはこの左手で魔物を喰らった…
ベルベットそれで思ったのよ。あいつの力で創った魔物を喰えるなら空間自体喰えるんじゃないかってね
ベルベット…賭けのような物だったけど、上手くいってよかったわ
エリーゼすごい力ですよね…。ラザリスの力を食べちゃうなんて…
ティポベルベット君、すごーい!
コレットそれに、今回は暴走しないでちゃんと力を使いこなせてたよね
スタン確かに、そういえば…
ルドガーけど、何で急に?確かこっちに来てからはずっと制御出来なかったって話じゃ…
ベルベットそれは…スレイ、あんたのお蔭かもね
スレイえっ、オレ?
ベルベット「あたしらしく」いよう…あんたに言われてそう思ったの
ベルベットそしたら、この手の疼きが少し和らいだような気がしたわ
スレイ…そっか
ベルベット結局、ラフィはあの空間と共に消え去った
ベルベット…だけど、闇雲にラフィを手にかけようとしたあの時とは違う
ベルベット今はちゃんと納得出来ているの、これでよかったって
ベルベットだから…ありがとう。…さっきは言いそびれたわ
スレイベルベット…
カイル…思ったんだけどさ、ベルベットはそうやって笑ってる方がいいね
コレットうん!ライフィセットと話している時以外で初めて見たかも
ゼロスそのギャップがたまんないぜぇ!俺さまもう、首ったけになっちゃうかも~
ベルベット馬鹿言わないで。別に、笑ってなんか──
ベルベット……まあ、何でもいいわ
ティアふふっ
レイヴンよーし、とにかく無事に出られた事だし、早いとこマール村に移動するとしますか
ジュードうん、その方がいいと思う。ラザリスがまたいつここへ来るかわからないし──
???遅い、ね。もういるよ、君達の傍に
ヴェイグなっ…!今の声…
ラピードウウウッ…
ラザリス…とんだ茶番だね
スレイラザリス…!
ミクリオくっ…、確かに気配はなかった…!
ティア一体、いつの間に…
ベルベットラザリス…。よくもあんな幻を…
ラザリス……
ラザリスくく…いい夢だっただろう?
ラザリスずっとあの世界に閉じこもっておけばよかったのに…残念だよ
ベルベット許さない…!あんただけは絶対に…
ベルベット今度こそ逃がさないわ。覚悟なさい、ラザリス!

NameDialogue
scene1天帝
ベルベット──今度こそ逃がさないわ。覚悟なさい、ラザリス!
ベルベット不愉快な幻を見せてくれたお礼は、きっちり返させてもらうわよ
ラザリス心外だね。僕は君が望む夢を見せてあげただけだよ
ラザリス弟とずっと幸せに暮らすという、儚い幻想をね…
ベルベットあれがあたしの望んだ夢だなんて、笑わせるわ。ただ上っ面をなぞっただけの紛い物よ
ベルベット誰にも、あたしの想いを…あたしらしくいる事を否定させない。たとえ、天帝様でもね
ラザリス…ふん、これだからヒトは…
コレットラザリス…
スレイ…お前がやった事は許せない…!
スレイ閉じ込めるだけじゃなくベルベットの大切な思い出を踏みにじるなんて…!
ラザリス僕の世界を汚す醜い咎人には、勿体ないほどの贈り物だったと思うけどね
ティア世界を汚す、ですって…?私達は自分達の世界を取り戻そうとしているだけよ
ミクリオ…ああ、これ以上好きにはさせない
ラザリスあんな世界のどこがいいんだい?
ラザリスエンテレスティアを見てごらんよ。元の世界と違って争いはないし、誰もが笑顔で生きている
ラザリス僕が管理しているお蔭さ
ミクリオ…確かに争いはない。だが、君達のやり方は間違っている
ラザリス…君「達」?ヴァンの事かな
ラザリス僕とあれを、一緒にしないでほしいね
カイル…?ラザリスとヴァンは仲間じゃないの?
ラザリス冗談じゃないよ。僕達はただ、利害が一致しているだけ
ラザリス…君達だって、自分を囮に使うような相手と親しくしようとは思わないだろう?
ルドガー囮?何の事だ?
ラザリス…見てたはずだよ。そこの咎人が、公衆の面前で捕えられた瞬間を
ジュード…!それってもしかして、生誕祭の…?
ラザリスヴァンの計略に乗せられているとも知らずに…憐れだね
ベルベット
レイヴン…なるほどね。今の話でようやく見えたわ
レイヴン不思議でならなかったのよねぇ
レイヴン咎人狩りに夢中の天帝様がベルベットちゃんを脱獄させろーなんて指示、出しちゃうとかさ
レイヴン…つまりあれは、ヴァンへの意趣返しだったってわけね
ラザリス…ふっ…
スタン…?ラザリスがレイヴンさんに指示…?それってどういう…
ヴェイグ記憶を取り戻す前のレイヴンは天帝に仕えていたんだ
ゼロスはー、そういう事。どうりであちらさんの事情にやたら詳しかったわけだ
ベルベット…あんたとヴァンの関係なんて今はどうでもいい
ベルベットあんた達二人が揃って葬り去られる事に変わりはないんだから
ラザリス…勝手だね。あんな腐りきった世界にしておいて
ラザリス世界を食いつぶしていたのは君達なのに
コレット…ラザリス…
コレット…!また、あの時と同じ…
コレットいろんな…感情が…流れ込んで…!
コレットあなたは、やっぱり…
scene2天帝
ラザリス──あの世界は、ヒトの手によって死にゆく運命だった
ラザリス…だから、僕がもらった
ラザリス僕なら世界も、君達醜いヒトだって生かしてやれる
カイルそんな事ない!オレ達は自分で自分の未来を手に入れられる!
スタンカイルの言う通りだ。俺達はお前に頼る気はない!
エリーゼあなたのやり方は間違ってます…!
ティポそーだ、そーだ!
ルドガー俺達の絆を勝手に書き換えて、偽りの人生を与える…その先に幸せがあるなんて思えない
ヴェイグ嘘で作り上げられた平和は、いつか必ず壊れる日が来る。オレ達が記憶を取り戻したように
ラピードウゥゥ…!
ラザリス…醜いね。そういう君達のエゴに溢れた考えが、世界を食いつぶすって、気づいてる?
チャキッ
ベルベットエゴでも何でも構わない。…あたしは絶対に認めないわ。あんたも、あんたの創ったこの世界も
スレイああ。オレ達の世界はここじゃない。必ずお前達から取り戻す…!
ラザリス…確信したよ
ラザリス君達は、目障りで…不愉快で…僕の世界には不要な者達だ
ラザリス…今、この場で排除しよう
ティア…!来るわ…!
ジュードみんな、気を付けて──
コレット待って!
ミクリオコレット…?
ラザリス君は…
コレットあのね…やっぱり私、あなたのやり方が正しいとは思えないよ
コレット…でも、初めて会った時からずっと思ってました。あなたと話がしたいって…
ラザリス
ベルベット下がりなさい、コレット。話が通じる相手じゃない──
コレット宮廷神子として会った時に私が話した事、覚えてるかな…?
コレットファルカームで初めて会った時、あなたの気持ちを感じた…
コレット暗くて、寂しくて、苦しい…そんな、辛い感情が流れ込んできたって
ラザリス…ああ、そんな事もあったね
コレットすごく強い感情で、今まで感じた事のない想い…あれからずっと、今も胸に残ってるの
コレット…ねえ、ラザリス
コレットあなたがこの世界を創った理由…もしかして、その感情と何か関係あるんじゃないかな…?
ラザリス…何だって?
コレット私達の世界を晶化させてみんなの記憶や感情を奪った。それはとても酷い事だけど…
コレットでも、もし…どうしてもこうしなくちゃならない理由があなたにあったとしたら…
コレット私が力になる事は出来ないのかな…?
ルドガーコレット…?何を…
コレットそしたら、こんな事しなくても──
ラザリス世界を食いつぶし、殺そうとしていたのはヒトだ!!元凶である君に何が出来る!?
ラザリス僕の力になりたいだって…?
ラザリス…じゃあ、僕のモノになってよ。抗わずに今を受け入れてさ
コレット
ラザリス…これ以上の会話は無駄だね。そろそろ黙ってもらうよ
ゼロスこの光…!俺達を晶化させる気か!
スレイくっ──…!
ラザリスさようなら、そして永遠におやすみ。愚かな咎人達
scene1拒絶の光壁
ラザリス──さようなら、そして永遠におやすみ。愚かな咎人達
ピキ…ピキピキッ
ジュード結晶が…!
ルドガーくっ、間に合わ──
コレット…ダメぇっ!!
カイルうわあぁ…っ!
カイル…って、あれ?何ともない…?
ラピードワゥン…?
レイヴンけど…周囲は結晶だらけよ。なのに、どういうわけかおっさん達だけ晶化から免れて…
ラザリス…!
コレット今の感覚って、もしかして…
ラザリス…っ!だったら、もう一度──
コレット…──!
コレットお願い、世界の意志…!本当に私の中にいるなら、力を貸して!
カイル…!また無事だ!
ヴェイグ晶化を防いだ…!今のはまさか…
ゼロスああ、例の力だ。そうだろ、コレットちゃん?
コレットうん…
コレット世界の意志が私の言葉に応えてくれたみたい…
スタンそれって、前にゼロスを助けたっていう…
ラザリスちっ…
スレイまさか晶化を解くだけじゃなく防ぐ事も出来るなんて…
ミクリオ間一髪だったが、この力は今後、僕達にとってとても有効な手段だ
ベルベット…そうね。これであんたの奥の手は封じたも同然だわ
ベルベットそうでしょ、ラザリス
ラザリス世界の意志め…どこまでも僕の邪魔を…!
ラザリスだが、君達を消す方法はこれだけじゃない。…行け!!
グオオオオッ!!
ティアまた結晶に覆われた魔物…!
ベルベット晶化が効かないから、魔物に襲わせるってわけ?ずいぶん単純ね
ラザリス…ふっ
グオオッ!!
コレット…!
ルドガーまずい!魔物が…!
ゼロスコレットちゃん!危な──
ミクリオツインフロウ!
バシュッ!
グオォ…
ミクリオ怪我はないか!?
コレットう、うん。だいじょぶだよ。ありがとう、ミクリオ
ミクリオ無事ならいいさ
スレイコレット!ミクリオ!二人共大丈夫か!?
コレットスレイ、ゼロス…
ゼロス助かったぜ、ミクリオ
ゼロスコレットちゃんに怪我でもさせりゃハニーに顔向け出来ねぇからな
ミクリオなら、まだ油断は出来ないぞ
ラザリス…また邪魔が入ったか
ジュード気をつけて!また魔物がくるよ!
エリーゼまだあんなにたくさん…!?
ベルベット数が多くても関係ない…ラザリスもまとめて、さっさと倒すわよ!
スタンああ!俺達全員が力を合わせれば、数の差なんて関係ないさ!さあ、行くぞ!
ラピードワオ──ンッ!!
scene2拒絶の光壁
スレイ──これで、最後だ!
ザシュッ!
グオォ…
ベルベット当てが外れたわね、ラザリス。こんな魔物くらいなら、いくらでも相手になってやるわよ
スレイ今度こそ、オレ達の世界を返してもらう!
ラザリス…。…ふふっ
ラザリスまさか、ここまでやるとはね
ラザリスやっぱり君達は、僕を煩わせる存在だ
レイヴン評価してくれるのは嬉しいけど、…わかったなら、さっさと観念した方が身のためよ?
ラピードウウウッ…
ラザリス…そうだね。僕も手段は選んでいられない
ラザリス細々と芽を摘むのはやめにして、…確実な手段を取る事にするよ
スレイ確実な手段…?
ラザリス…はあああああああああっ!
ティアきゃあっ!?
スタン何だ、この光…!目が…
ミクリオさっきの晶化の力とは別物だ!それにこの揺れは一体──
コレットラザリス…!
カイルくそっ、何かする前に止めないと──!
レイヴン待てカイル!迂闊に突っ込むな!
ゴゴゴゴゴゴゴ…!!
ベルベットくっ…!何が起きて──…!
ジュード酷い揺れだ!みんな、身を屈めて…!
ラザリス──ああああああああああっ!!
ルドガーやっと収まったか…一体何が起こったんだ…?
ヴェイグ…!あれを見ろ!
コレット光の…柱?すごくおっきい…
ジュードシャングレイスから伸びてる…!あれは一体…
ラザリス…結界だよ。君達の希望を絶つためのね
ラザリスこれでもう、誰も宮殿には入れない
ラザリス不本意だけど、仕方ないね。「特異点の修復」を急ぐためには
スタン特異点…?
ルドガー一体何の事だ…?
ラザリス君達が刻んだこの世界の「傷」。…許されざる悪逆だよ
ティア「傷」…?…確か、前に兄さんも言っていたわ
ティア「あの時の傷が、 不穏分子を生み出す事になった」と
スレイオレ達がつけた、あの時の傷…
スレイ…!ミクリオ、それってもしかして…
ミクリオ…ああ。天帝の御座で見た結晶の花…おそらく、あれにつけた傷の事だろう
ジュードヴァンの言ってた「不穏分子」って、きっと「咎人」の事だよね。だとしたら…
ヴェイグオレ達のように元の記憶を取り戻す者がいるのは、「特異点」の影響という事か?
エリーゼじゃあ、その傷を…特異点を修復されてしまったら──
ラザリス全てが僕色に塗り替わりあるべき姿に戻る。…ただそれだけの事だよ
コレットそんな…
キュィィィィィィィン
カイル…!また何か…!
ティア魔法陣…!まさか転移で逃げるつもりじゃ──
ベルベット行かせないわ!
ラザリス無駄だよ
ピキピキピキッ!!
ミクリオなっ、壁を…!?
ベルベットくっ…!
コレット──待って、ラザリス!
ラザリス
コレット少しでいい…少しだけでいいの!話を聞いて…!
スタン駄目だっ、コレット!
コレット変な事言ってるのはわかってる。でも、それでも私──…
ラザリス僕と来るかい?
コレット…え?
エリーゼな、何を言うんですか…!コレットがあなたに従うわけないじゃないですか!
ティポコレット君は絶対に連れていかせないんだからねー!
ラザリス…ほらね。世界の意志も君達も、僕の言葉に耳を貸そうともしない
ラザリスだから、僕も元の世界を…世界の意志を否定するんだ
ラザリスさようなら、醜いヒトの子。己の無力を嘆きながら終わりを待つといいよ
シュンッ
ヴェイグ逃がしたか…!
ラピードクゥン…
ゼロスしょうがねぇよ。幸い目的地はハッキリしてるし、まず今後について話し合いといこうぜ
ミクリオああ。奴を逃がしはしたが、コレットの力については収穫が──…コレット?
コレット
ベルベット…ラザリスの事なら諦めなさい。話してどうにかなるような奴じゃない
ゼロスコレットちゃん…悪ぃけど、こればっかりは俺さまもベルベットちゃんと同意見だぜ
ゼロス…覚えてるだろ、元の世界がどうなっちまったのか…
コレットうん…わかってるよ
コレット…でも…
コレット否定されるから、否定するなんて…そんなの、寂しすぎるよ…
ゼロスコレットちゃん…
ベルベット
scene1希望の糸口
レイヴンお待たせ~。調査隊、只今帰還しましたよっと
ベルベット遅い
レイヴンベルベットちゃん相変わらず辛辣…もうちょっと労ってくれてもいいんじゃな~い?
ベルベットはいはい、ご苦労様。で、どうだったの?
レイヴンん?それだけ…?おっさん、せっかく命がけで調査しに行ったってのに──
ミクリオレイヴン、話が進まないから少し大人しくしていてくれ
レイヴン…へいへい。最近の若者はおっさんに厳しいんだから…
ラピードワフン…
ヴェイグそれで、肝心の結界について何かわかったのか?
ミクリオ結論から言うと、大した情報は得られていない
ミクリオレイヴンの手引きで誰にも気づかれずに宮殿の近くまで行けたはいいが──
ミクリオ…ラザリスの言っていた通りだ。宮殿を覆う光は侵入を阻む壁のようになっていた
ミクリオあれがある以上、中に侵入するのはまず難しいだろう
スレイ結界を壊せないかいろいろ試してもみたんだけど、何をやってもビクともしなくて…
コレット私も…世界の意志に力を貸してって語りかけてみたけど、どうする事も…
ルドガーそっか。破壊出来ない上に、コレットの力でもどうにもならないとなると…
ゼロス…今のところ打つ手なしか
レイヴンそーゆう事。さっぱりお手上げ状態なんで、切り上げて帰って来たってわけ
ティポそっかー。ざんねーん
エリーゼでも、わからないって事がわかりました…それも大事な情報です
ゼロスま、そういう事にしといてやるか。街に突入して宮殿まで強行突破~って選択肢は消えたワケだし…
ティア
ゼロスって、ティアちゃんそんな小難しい顔してどうしたんだ?
ティア…特異点について、情報を整理していたの
ティア私達のような元世界の記憶を持つ者を生み出す特異点…
ティアそれは、かつてスレイ達がつけたこの世界への傷で──
ティアその傷を修復するという事は、記憶を取り戻す者が新たに生まれなくなるという事…
エリーゼそれって…ミラや他のみんなはもう記憶を取り戻せなくなるって事ですか…?
ティアおそらくね。…けれど、本当にそれだけなのかしら
スタン…?どういう事だ?
ジュードティアは多分、最後にラザリスが言ってた言葉がひっかかってるんだよね
ティアええ…
ミクリオ「全てが僕色に塗り替わり あるべき姿に戻る」…
ミクリオつまり、まだ記憶を取り戻していない人達への影響だけじゃなく──
ミクリオ記憶を取り戻した僕達までもが再び、以前のような偽の記憶で塗り替えられてしまう
ミクリオ…そう考えられるという事さ
カイルなっ、オレ達まで!?何でそんな…
スレイ…いや、でもミクリオ達の言う通りかもしれない
スレイラザリスはあの時、「確実な手段を取る」って言ってた
スレイその上で、あの時オレ達を置いて転移したって事は…
ジュードいちいち僕達の相手をしなくても特異点さえ修復してしまえば、目的は果たせる…そういう事だよね
スレイうん
ヴェイグ…確かに、そう考えれば全ての辻褄は合うな
ゼロスはっ…なるほどねぇ。俺さま達の「希望を断つ」とか言ってやがったのもそういう意味かよ
エリーゼでも、もしわたし達まで記憶を消されたりしたら…ミラ達を助けられなくなってしまいます…!
ティポそんなのダメだよー!
カイルやっぱりすぐにでもその「特異点の修復」を止めないと…!
ルドガーだが、そもそも「特異点」って何なんだ?
ルドガーこの世界の傷という事はわかったがそれがどういう物でどこにあるのか、何もわかっていない
ルドガー止めようにもラザリスを倒すしか方法はないが、あの結界がある以上それも…
エリーゼ
コレット
ベルベット…行けるわ。いや、行くのよ。絶対に
ベルベットあの異空間だって破壊する事が出来たんだから、結界も潰す方法も必ずあるはずよ
ベルベット…あたしは一度、ラザリスに飲まれて自分らしくいる事を諦めかけた
ベルベットでも、もう諦めない。どんな壁が立ち塞がろうと、前に進み続けるわ
ジュードベルベット…
スレイオレもベルベットと同じ気持ちだ。諦めずにみんなで探そう、結界を突破する方法を
スレイ特異点が修復されてしまう前にオレ達の世界や仲間…奪われた全部を取り戻さないと!
ジュード…うん、そうだね。落ち込んでたって何も変わらない、二人の言う通りだと思う
コレットみんなを救うためにも、とにかく今は、前を見ないと…
カイルみんなで協力すれば絶対に何か見つけられるはずだ!
レイヴンま、結界を越える他に道はないしね
スレイ…よし、そうと決まれば早速作戦会議だ
ミクリオああ。どんな手段でもいいから一刻も早く結界を突破する策を考えよう
ベルベット…そうね
scene2希望の糸口
ヴァン──ようやく結界を展開したか
ヴァンラザリスよ、随分と手を焼かせてくれたものだ…
ヴァン長かった…しかし、まもなくだ
ヴァン…特異点の修復さえ終われば、ようやくこの世界は完全なものとなる
ヴァンふ…
レイヴン──さてと、どうしたもんかねぇ。手段を選ばないとは言ってもぶっ壊す事すら出来ないわけだし
エリーゼあの…ミラ達はこの結界について、何も知らないんでしょうか…?
エリーゼもし知ってるなら、ミラ達の記憶を取り戻しさえすれば教えてくれるかも…
ミクリオ…それは難しいだろうね。特異点が修復されていない以上、彼らもまた咎人になり得るという事だ
ミクリオそんな状態で、ラザリスやヴァンが彼らに結界の事を詳しく話しているとは思えない
エリーゼそう、ですよね…
カイルそういえば…白き獅子って今どこにいるんだろう?
コレットロイド達は宮殿の中にいるんじゃないかな
コレットさっき街に行った時、街の人の混乱を鎮めようとしてる神兵達を見たの
コレットそこに、白き獅子の騎士は一人もいなかったから
スタン宮殿の中でラザリスの護衛をしてるって事か
ジュード護衛…?待って、それって少し変じゃない?
ジュード街の混乱を鎮めるなら民衆から絶大な人気と支持を得てる白き獅子の方が適役だ
ジュード…なのに、そこに神兵を配置して白き獅子に自分を警護させるなんて事本当にするのかな…?
ジュード結界で覆われてるって時点で宮殿内は、既に安全なのに…
ベルベット…つまり、あんたの見解でいくと白き獅子は宮殿内にいない、そういう事ね?
ジュードうん、多分
ジュード街中にはいないみたいだから、何か別の指示を受けて別の動きを取ってる、とか…
ゼロスなるほどね
ゼロスま、何してるかまではわかんねぇが今回のラザリスの動きと関係あると見て間違いねぇって事だな
ルドガー…ミラ達と剣を交える事態になる前にラザリスとヴァンを倒してしまえたら本来はそれがベストなんだけどな
レイヴンさすがに難しいとは思うけどね。…でもまあ、何にしてもあの結界をどうにかしない事には進まないってね
スレイやっぱり、そうだよな
ラピードクゥン…
スタンうーん、ラザリスが創った結界だし晶化と同じで、俺達の知らない特殊な力によるものだとは思うんだけど…
スタンあの結界がどういうものなのか…せめて、もう少し詳しい仕組みがわかればいいのにな
カイル結界の仕組み…
カイルあっ!
コレットカイル、どしたの?
カイルもしかしたら、あの結界をどうにかする方法がわかるかも!
スレイ…どういう事だ!?
カイルハロルドって言う、元世界の記憶を持ってる仲間がいるんだ
カイル世界を元に戻す方法を自分なりに探してみる、って今は別行動してるんだけど…
カイル目的はオレ達と一緒でしょ?だから、もしかしたら結界の事も調べてるんじゃないかなって
カイルそれに、上手くいけば特異点の事だって何かわかるかもしれない
スタン…確かにハロルドなら、俺達が考え付かないような解決法を見つけてくれるかもしれないな
コレットそれなら、会いに行ってみようよ!
ベルベットその人はどこにいるの?
カイル市都アルメリアだよ!咎人って事を隠しながら居候してる
レイヴンあらあら、世の中咎人狩りで大騒ぎの中よくもバレずにまあ…
カイルへへ、頼もしい仲間だからね
ヴェイグ…とにかく、そうと決まれば早くここを発つぞ。時間はいくらあっても惜しい
スレイうん!それじゃあ、早速──
スタン…!ちょっと待ってくれ。何か聞こえないか?
グオォォォ!
ザシュッ!ズバッ!
ルドガーこの音…誰かが魔物と戦っているのか!
ジュード行ってみよう!
ラピードワォン!
カイル確かこっちの方から──…いた!あそこだ!
グオオオオオオッ!
???はあっ!
ザシュッ!
スタン…!あれって、もしかして…
ベルベット…いい太刀筋だけど、多勢に無勢ね。加勢してさっさと終わらせるわよ!
スタンああ!行くぞ!
scene1失われゆくもの
ベルベットはああっ!
グオォ…
カイルふう、今ので最後かな…
スタンああ、ご苦労さんカイル
スタンそれにしても驚いたよ!こんなところで再会するなんてさ。な、リオン!
リオン…ふん、こっちの台詞だ
カイルでも、リオンさんに怪我がなくてよかった…
リオンあの程度の魔物相手に遅れをとるような僕じゃない
リオン…だが、早く倒せたのは確かだ。一応加勢の礼は言っておく
スタンはは、リオンは相変わらずだなぁ。けど、どうしてここに?
リオン調査をしていた。ハロルドに頼まれてな
カイルハロルド!?リオンさん、あの後ハロルドと合流したんですか?
リオンああ。立入禁止区域の調査をしている時に会った
カイルそうだったんだ…あ、じゃあもしかしてハロルドも一緒にここに来てたりするんですか?
リオンいない。頼まれた、と言っただろう
カイルへぇ…ハロルドなら、こういうのは自分で見たがると思ったんだけど…
リオン来たがってはいたが、あいつは今身動きが取れる状況じゃない
カイル…!ハロルドに何かあったんですか!?
リオン咎人として白き獅子に追われている
カイルええっ!?た、大変だ!捕まる前に助けに行かなくちゃ…!
リオン話は最後まで聞け
リオンとっくに、ファルカームにある僕の家に移動済みだ
リオンそこで図々しくも研究とやらに没頭している
スタンリオン、ファルカームに家なんて用意してたのか!さすがだな
リオン…この世界の僕にあてがわれた偽りの家だ。僕のものじゃない
カイルでも、結果的にハロルドを守ってくれたんですよね?ありがとうございます、リオンさん!
リオン…ふん
レイヴンいやーしっかし、ちょうどいいタイミングで会ったもんだわね
リオン…どういう事だ?
ルドガー実は俺達、今からハロルドに会いにアルメリアに行こうとしていたんだ
エリーゼすれ違いにならなくてよかったです
スタンそういうわけだから、リオン、悪いけど案内を頼めるか?
リオンあいにくだが僕はまだ別の用がある
カイル用?
リオン…知りたければ、あいつに直接聞け
ジュードって事は、その用事はそのハロルドさんから頼まれた調査の一環なんだね
リオンそういう事だ
スタンそうか…残念だけど、用事があるなら仕方ないな
ティア居場所がわかっただけでも十分よ。そろそろ私達は行きましょう。事態は一刻を争うわ
カイルそうだね。よし、今度こそ行くぞ!ハロルドのいる、ファルカームに!
ラピードワオーン!
ジュード──エリーゼ、大丈夫?しばらく歩き詰めだけど
エリーゼはい、大丈夫です
ティポジュード君、やっさしー!
ベルベットファルカームまで、あと少しね
コレット…あれ?
ゼロスコレットちゃん?どうかしたのか?
コレットえと…今、誰かに呼ばれた気がして…
ルドガー呼ばれたって、誰かいるのか…?でもこの辺りには、街や村はなかったと思うけど…
ゼロス…いや、多分呼んだのは人じゃない。この近くには、例の遺跡がある
ゼロスなあコレットちゃん。その感覚、あの時と同じヤツじゃないか?
コレットうん…きっと、そうだと思う。前と同じ、不思議な感じ…
コレット…でも、どしてかな。前より、声が小さいというか…私を呼ぶ力が、弱まってる…?
スレイえ?
ミクリオ
ミクリオ確か、以前あの遺跡にコレットを呼び寄せた力の正体は、不思議な光の玉だったな…
ジュード光の玉?
スレイああ、えっと…この近くに地下遺跡があるんだ
スレイ白き獅子が守ってた立入禁止区域らしいんだけど、その中に不思議な光の玉があって──
スレイコレットが近づくと反応して、元の世界にあるオレとミクリオの故郷イズチを映し出したんだ
ヴェイグそんな物が何故立入禁止区域に…?
コレット…それはわからないけど、ロイド達も光の玉の事は何も知らないみたいだったよ
ベルベット白き獅子ですら…?
ジュード…何か引っ掛かるね、元の世界を映す光の玉なんて。しかも、その声が小さくなってるとか
ルドガーもしかしたら、ラザリスの行動と何か関係があるんじゃないのか?
ミクリオ…確かに考えられなくはないな
レイヴンなら、ここは二手に分かれてそれぞれ調べてみるってのはどう?
レイヴン一方は、引続きファルカームを目指して結界について調べる
レイヴンで、もう一方は、その立入禁止区域の遺跡に行って光の玉を調べる、って具合にさ
レイヴン…結界の方だってまだ確かな事がわかるとも限らないし、情報は多いに越した事はないでしょ?
ゼロス確かにそれがいいかもな。こんだけ人数もいりゃ、分かれても戦力的にも問題なさそうだし
コレットうん、私も賛成だよ。あの光の玉の事はやっぱり気になるし…
ヴェイグ…決まりだな
ティアじゃあ、早速誰がどこに行くのか決めましょうか
スレイ遺跡の方は、コレットとゼロス。あと、オレ達も一緒に行くよ。いいよな、ミクリオ
ミクリオ勿論だ。あとはそうだな、あの遺跡は白き獅子の管轄でもある
ミクリオその点を踏まえると念のためにもう何人か、同行してくれると助かるんだが…
エリーゼじゃあ、わたし行きます
ティポぼくだってー!いつでもエリーと一緒だもんねー
ヴェイグオレとルドガーも一緒に行こう
ルドガーああ。これでちょうど半々くらいになったんじゃないか?
カイルえっと…オレだろ、あとスタンさんと、ラピードと──…
カイル…うん、ちょうど半分くらいだ!
ベルベットそうと決まれば、早速行くわよ
ラピードワフッ!
スレイ…よし、じゃあ少しの間別行動だ
スレイ遺跡の調査が終わったらオレ達もファルカームに向かうよ
ジュードうん、わかった。…それじゃあ、僕達は行くよ
カイルみんな、気を付けて。また後で!
コレットありがと。カイル達も気を付けてね!
scene2失われゆくもの
カイルレイヴンさん!ファルカームはこっちでいいんですよね!
レイヴンそうそう。そのまままっすぐねー
カイルよーし、ラピード!街が見えたら競走しよう!
ラピードワンワン!
スタンははっ、二人共元気だなぁ
レイヴンそのエネルギー、分けてもらいたいくらいだわ…
カイル元気はオレの取り柄なんで!
カイルそれに、決めてるんだ。どんなにつらい時でも、足を止めたりしないって
カイル英雄は、先を恐れないで前に進み続けるものだと思うんです!
レイヴン英雄…?
スタンカイルの父親はすごい英雄らしいんだ。憧れで、目標なんだってさ
レイヴン…へえ。そりゃすごいわね
カイルはい!オレもいつか、父さんみたいになってみせます!
スタンカイルならきっとかなえられるよ
カイルへへ、ありがとうございます!
レイヴン英雄、ね…
ベルベット──カイルは本当に元気ね
ティアふふ、そうね
ジュード
ティア…ジュード、どうかしたの?
ジュード
ベルベットちょっと、ジュード。聞いてるの?
ジュード…あ、えっと…ご、ごめん!僕に何か用事?
ベルベット
ベルベット…何考えてるのかは知らないけど、あんまり気を張ってると長く持たないわよ
ベルベットカイルみたいに…とまでは言わないけど、もう少し肩の力を抜いてもいいんじゃない?
ジュードえ…?…あ、ありが、とう…?
ベルベット…何よ、その反応。失礼ね
ジュードあ、いや…何て言うかベルベットが僕を気遣ってくれるとは思わなくて…
ジュード…って、ああその…悪い意味じゃなくて──…
ベルベット別にいいわよ。今までを思えば当然の反応だと思うし
ジュードうう、ごめん…
ベルベットだから気にしてないってば
ティア…ふふっ。ベルベットも、心配したならしたと素直に言えばいいのに
scene3失われゆくもの
ヴェイグ…ここにも白き獅子はいないみたいだな
スレイ立入禁止区域にすら一人も警備がいないなんて…
エリーゼ…やっぱり、ラザリスから何かの任務を命じられているのでしょうか…?
ティポ何だか不気味ー
ゼロスまあ何であれ、今の俺さま達にしたら好都合だけどな。行こうぜ、コレットちゃん
コレットうん──…、きゃっ!
ルドガーコレット!?
ミクリオ危ない!
ミクリオ怪我はないか?
コレットだいじょぶだよ。ありがと、ミクリオ。…また助けられちゃったね
ミクリオこれくらい大した事じゃないさ。それより、足場がよくないから気を付けて進んでくれ
コレットうん!
コレットあった!これだよ!
ルドガーこれが、元世界の景色を映しだす光の玉なのか…
ティポわわわ!光の玉がおっきくなったよー!
エリーゼ本当に、コレットが近付いたら反応しました…!
エリーゼ景色が映っています…!
ヴェイグこれは…ウィンドルのバロニアか…?
スレイあれ、本当だ…前は確かにイズチが見えたのに
ヴェイグ…元の世界の景色だが、映し出す場所はその時々で違うという事か
ルドガー…懐かしいな。「元の世界の名残」とでも言うべきか
ミクリオ
スレイん?あれ、この光の玉…何か小さくない?
コレットほんとだ…確かもっとこう、大きかったよね
ゼロス言われてみりゃ、一回りは違うな。どうなってんだ、こりゃ…
コレットもしかして…これが私を呼ぶ力が小さくなった理由、なのかな…
ミクリオ
ミクリオもしかしたらだけど…
ミクリオこの光の玉が、ラザリスの言っていた「特異点」なんじゃないか?
ゼロス…何だって?
ミクリオ特異点は、ラザリスやこの世界にとって害をもたらす傷口…
ミクリオそれが目に見える形として現れたのが僕達の世界の名残であるこの光の玉だとしたら…
ヴェイグ…確かに、元世界の記憶所持者を生み出す特異点の性質からして、考えられない話じゃないな
スレイ光の玉の力が弱まったのも、ラザリスが動き出してたのと同じタイミングだし…
ルドガーじゃあ、立入禁止区域として白き獅子に警備させて、誰も近付けないようにしていたのも…
ルドガー迂闊に民衆を近づかせて、元の記憶を取り戻しでもしたら面倒だから、って事か?
ミクリオ…詳しい事はわからないがこの光の玉がラザリス達にとって──
ミクリオ蓋をしておきたい厄介なものである、という事は間違いないだろうね
エリーゼじゃあ、やっぱり本当にこの光の玉が…
ティポそうとしか考えられないもんねー
スレイ…って事は、「特異点の修復」は「この光の玉を消し去る事」にになるよな…?
ヴェイグだが、特異点が本当にこの光の玉だとして、何故コレットに反応するんだ?
ゼロス…もしかしたら、コレットちゃんの「世界の意志」ってヤツも元世界の“何か”なんじゃねぇのか?
コレット元の世界の…
ゼロス考えてもみろよ。晶化を解く、防ぐ…どっちにしてもラザリスに対抗する力、だ
ゼロスミクリオの野郎が言うように、本当に特異点が、元世界の名残なんだとしたら──
ゼロスラザリスに反発するもん同士、互いに共鳴すんのはごく自然な事だと思うぜ
コレット
スレイとにかく、この事は一刻も早くみんなに知らせた方がいい
ミクリオ同感だ。急いでファルカームへ行こう
ルドガーああ
scene1掴んだ希望と選択肢
カイルよし、ファルカームに到着だ!
レイヴンさーて、んじゃま早速目的のお家に向かうとしますか。スタン、案内頼める?
スタンああ、任せてくれ。リオンからバッチリ聞いておいたから
スタン確か…えーっと、…あっちの方だったかな?
カイルあれ?向こうじゃありませんでした?
スタンえー、そうだったか?何かこっちのような気もしてきたな
ベルベット…駄目ね、アテにならないわ
ジュードそ、そうだね…
レイヴンはあ…しゃーない、街の人に聞いて探すしかないわね──…って、ありゃ、ワンコ?
ティア何かの匂いを嗅いでる…?もしかしてラピード、案内してくれるのかしら?
ラピードワフッ!
レイヴンついて来いって言ってるみたい
レイヴンいやーさっすがワンコね。…というわけで、とりあえずついてってみるとしようかね
ベルベット…あんた、犬が何言ってるかわかるの?
レイヴンいんや、ほぼカンよ。ワンコとお話しするのは誰かさんの専売特許だったしね
レイヴンただまあ、違ってたらワンコ本人から文句が出るだろうからおおむね合ってるって事でしょ
ベルベット適当ね…
ジュードまあまあ、とにかくほら、ラピードの後を追ってみようよ
ティアここがリオンの家…
ラピードワン!
カイルハロルド、中にいるかな?
ジュード声をかけてみようか
コンコン
ジュードすみません、誰かいませんか?
ティア…反応がないわね
カイルもしかして、出かけてるのかな?
スタンハロルドは追われてるんだろ?一人で出歩いたりするかなぁ
ベルベット居留守でも使ってるんじゃないの?カイル、あんた知り合いなら呼びかけてみたら?
カイルあ、それもそっか!
カイルおーい、ハロルド~!オレだよ、カイルだよー!リオンさんから聞いて会いに来た──
レイヴンちょっとちょっと!少年、声大きすぎ!あっちもこっちもわけありなんだからもう少し静かに…
???…今の声、もしかしてカイル?
ガチャ
ハロルドやっぱりカイルじゃない!無事でよかったわ!
カイルハロルド!
スタン元気そうでよかった!
ハロルドあら、スタンもいたの。こんな事なら、もっと早く出てくるんだったわ
ティアやっぱり、私達を警戒して隠れていたのね
ハロルドまぁ、一応追われてる身だからね。知らない声しか聞こえなかったら、そのまま無視するつもりだったわ
ハロルド…で、あんた達はどちら様?
カイルティア達はオレの仲間だよ。実はオレ達…
ハロルドちょい待ち。とりあえず、中に入ってくれる?誰に見られるかわからないしね
スタンそうだな、話は中でしよう
scene2掴んだ希望と選択肢
ジュード──というわけで、カイルの提案で、研究者であるあなたの見解を聞きに来たんです
ハロルドなるほどなるほど…宮殿の結界に特異点の修復、世界の意志を宿した女の子ねぇ…
ハロルド興味深い研究対象がいっぱいじゃない。グフフ、腕が鳴るわ~
カイル相変わらずだなぁ…まあ、楽しそうで何よりだよ
カイルそれで、どうかな?結界や特異点について何か知らない?
ハロルドそうねえ、とりあえずちょっとついてきてくれる?
ティアどこへ行くの?
ハロルド私の部屋。見せたい物があるのよ
ハロルドさ、入って入って!
カイルお邪魔し…うわっ、アルメリアのハロルドの部屋そっくり!
カイルまた勝手に改造したの?リオンさんが見たらなんて言うか…
ハロルド大丈夫よ。最初は文句言ってたけど、最近は何も言わないし。受け入れてくれたんだと思うわ
ジュードそれは…受け入れたと言うか、諦めただけなんじゃ…
ハロルドいいのよ。お互い咎人同士、持ちつ持たれつって奴なんだから
レイヴンうーん、なかなかぶっ飛んだお嬢さんだねぇ
ラピードフン…
ハロルドほら、いつまでもそんなところに立ってないで、早く座りなさいな。話す事はいっぱいあるんだから
ティア…それで、私達に見せたい物って何かしら?
ハロルドこれよ
カイル…何これ、地図?いくつか印がついてるけど…
スタンこっちは大きな丸が書かれた紙がたくさん…場所も書かれてるな
ハロルドええ。何か所かある立入禁止区域の場所と、そこで見つけた謎の光の玉について書き記したものよ
ジュード光の玉…!
レイヴンこれ、全部ハロルドちゃんが?
ハロルドさすがに一人じゃ大変だから、リオンにも手伝ってもらったわよ
ハロルドこの光の玉は、調べられた範囲全ての立入禁止区域にあったわ
ハロルド白き獅子…というかラザリスは、どうしてもこれを人に見られたくなかったみたいね
ベルベット見られたくないのは…多分、この世界じゃありえない光景が見えるからよ
ハロルド何それ、どういう事!?
カイルああ、ええっと…
ハロルド──世界の意志に反応して元の世界の景色を見せる、か。ふむふむ、なるほど
ハロルド…推測にはなるけど、その光の玉は、元の世界の欠片とか残滓みたいな物なのかもね
ジュード元の世界の欠片?
ハロルドラザリスが消し切れなかった、元の世界の記憶や記録なんかが見えるようになってるって事
ハロルドそして、それがラザリスの言う「特異点」なんじゃないかしら
スタンなっ…光の玉が特異点…だって!?
ハロルドそ。ラザリスにとってのこの世界のあるべき姿…それは、元の世界の要素が介在しない世界よ
ハロルドとなると、本来存在しないはずだった元の世界の要素である光の玉は、既にこの世界にとって異物でしかない
ハロルドつまりは、ラザリスが必死に消そうとしてる特異点である可能性が限りなく高いってわけ
ジュードじゃあ、ラザリスの言ってた「特異点の修復」はその光の玉を消すって事…?
ハロルドまあ、そういう事になるわね
ハロルドにしても…元の世界の情報がたっぷり詰まった光の玉、か
ハロルド時間をかければ、そこから特異点の修復を食い止める事も出来るかもしれないわね
ティアそれは本当なの!?
ハロルド理論上は可能なはずよ。具体的な方法は調べないとわからないけど
カイルそれでも十分だよ!新しい方法を見つけてくれてありがとう、ハロルド!
スタンよし、ならその方法を探して特異点の修復を食い止めよう!
スタン俺達さえ記憶を書き換えられたりしなければ、あいつらを倒して元の世界を取り戻す事は出来る!
ラピードワフッ!
ハロルドただねえ…その方法は、正直推奨出来ないわ
レイヴンどういう事?
ハロルドラザリスは、既に特異点の修復を始めたんでしょ?
ハロルド調査して、方法を発見して、実行。それをするだけの猶予を、与えてくれる相手とは思えない
ベルベット…まあ、そうでしょうね
ハロルドもし仮に時間があったとしても、ラザリスやヴァンが妨害を仕掛けないわけがない
レイヴンまあ、そりゃそうよね。自分達の計画を邪魔されないようにあちらさんも必死だろうし
ベルベット…やっぱり、特異点の修復が終わる前にあいつらを倒すしかないって事ね
ハロルドそうなるわね
スタンじゃあ問題はやっぱりあの結界、だよな
カイルねぇ、ハロルド。結界の事は何かわからないの?
ハロルド任せてちょうだい。ちょうど今そっちについても調べてたところだから
ハロルドただ、そのためにもまずは情報を入手しないと。予定だとそろそろ…
ピーッ!ピーッ!
ジュードうわあっ!?な、何の音!?
ハロルドお、ナイスタイミング!リオンの奴、首尾よくやってくれたみたいね
スタンリオン?そういえば、ハロルドに用事を頼まれてたって…
ハロルドええ。リオンには、私の発明品を持って結界を調査しに行ってもらってたの
カタカタ…
ジュード発明品ってどんな物なんですか?
ハロルド簡単に説明すると、エネルギーの量と流れを測定するための道具よ
ハロルドあの結界が現れてからこの世界のエネルギーが少しだけ不安定になっててね
ハロルドちょっと気になったから、調べていたところだったのよ
ベルベットそれで、何かわかったの?
ハロルドちょおっと待ってねー
カタカタ…
ハロルドふむふむ…リオンから送られてきた情報によると…
ハロルドどうやら、あの結界に向かって何か大量のエネルギーが流れ込んでるみたいね
ハロルドおそらく集めたエネルギーを使って、強力な結界の構築を行ってるんだわ
ジュード結界の構築…?
ハロルド…っと、よし。そのエネルギーの供給元になってる場所がわかったわよ
ハロルドちょっと、この地図を見てくれる?
ハロルド一つはここ、大陸南部にある「蒼流の神殿」ね。もう一つは北西にある「翠樹の神殿」
ハロルドそして最後の一つが、北東にある「虹雲の神殿」よ
スタンあれ…この神殿ってどれも、凶暴な魔物が棲みついてるって噂のある場所だよな?
ティアええ。付近の住人すらも立ち寄らない危険な場所だと、兄さんから聞かされていたわ
レイヴン
ハロルドその噂自体も、ラザリスやヴァンが広めたものかもしれないわね
ハロルドそれぞれの神殿内には「核」があるはずだから。安易に人が近づかないようにって
カイル「核」…?
ハロルドエネルギーの源…言ってみたら、結界の電池ってとこね
ハロルドそれが何でどんな形のものなのか、詳しい事はわからないけど必ずあるはずよ
ベルベットじゃあ、その核を破壊すれば…
ハロルドエネルギーの供給は止まる…すなわち、結界は解除されるって事ね
カイルじゃあ、すぐにでも行こうよ!その「核」のある神殿に!
ジュードそうだね。コレット達が来たらすぐに動き出した方が──
レイヴン…とその前に、おっさんみんなに言わないといけない事を思い出しちゃったわ
ベルベット何?
レイヴン行方知れずの白き獅子さん方の動向について、よ
レイヴン…あの三人は今、その「核」とやらの守護についてると考えて間違いない
カイルレイヴンさん、何か知ってるの!?
レイヴンハロルドちゃんの話にあった神殿…あの三つは、確か白き獅子の管轄でね
レイヴン蒼流の神殿はクロー隊、翠樹の神殿はファング隊が。んで、虹雲の神殿はロアー隊
レイヴン…ってな具合に、各神殿を各隊が面倒みるように担当が割り振られてるってわけ
レイヴンって言ってもまあ、あの辺りは実際魔物が多くて──
レイヴン担当こそ割り振られているものの、白き獅子も足を踏み入れる事自体滅多にないって話だけどね
レイヴン…けど、そんな神殿にそれぞれ重要な核があって、オマケに白き獅子の動向は不明
レイヴンそうきたら、最奥に待っているのは当然…
カイルそんな…!じゃあ、核を壊すためには…
ジュード
ベルベット
スタン…でも、行く前に知れてよかったよ。戦う事は避けられなくても、何か策は考えられるかもしれないし
スタン思い出してくれて助かったよ、レイヴンさん!な、みんな?
レイヴンおっさんもいろいろとしゃべってくれたクローに感謝でもすべきかね
カイル…やっぱり、レイヴンさんとクローは仲がよかったんですね
カイル二人はきっと、ただの仕事仲間よりもっと…特別な何かがあるとは思ってたけど
レイヴンはは、ただの腐れ縁みたいなもんよ。ま、そのお蔭で、こっちの世界でも繋がってられたのかもしんないけどね
ベルベットこっちの世界でも…?
ティア…もしかしてレイヴン、あなた、元の世界でもクローと知り合いなの…?
レイヴンあれ、言ってなかったっけ?クローの正体、…あれはユーリよ。ね、ワンコ
ラピードワフッ!
ティアユーリですって…!?そんな、嘘…
ジュードそんなの聞いてないよ…!一体いつからその事を?
カイルユーリ…ユーリ…あ、確か前にイニル街で会った人だ!
レイヴンおよ、まさかの少年まで知り合いだったなんて
スタン…って言うか、何でこんな重要な事今まで黙ってたんですか!?
レイヴンえ?まさかこんなに責められるなんて…
ジュード当たり前だよ!他のみんなもきっとすごくびっくりすると思う…
レイヴンうーん、だってほら、改まって言うようなもんでもないじゃない?
スタンだけど…
ハロルド…まあまあ、そこまでにしなさいな。結果、避けられない戦いを目前にちゃんと真実がわかったんだから
ハロルドでしょ?レイヴン
レイヴンそうそう、ハロルドちゃんの言う通り!
ティア…やっぱり、あの三人と戦う事は避けられないわよね
カイル出来れば、戦わずに核だけ壊せたら一番いいんだけど…
ジュード
scene3掴んだ希望と選択肢
ゼロスはぁ~。やぁっと着いたぜー
ルドガーリオンの家、だったか
エリーゼレイヴン達はハロルドって人とちゃんと会えたんでしょうか…
???おーい、みんなー!
スレイあっ、カイル!それに、ティアとレイヴンさんまで!
ティアみんな無事みたいね
ティポもしかして、ぼく達をお迎えに来てくれたのー?
レイヴンまぁね。そろそろ着くんじゃないかと思って街の様子を見ながら待ってたのよ
コレットそなんだ、三人共ありがと!
カイル他のみんなもリオンの家で待ってるよ。さ、早く行こう!
ハロルドおかえりー。無事に仲間と合流出来たみたいね
コレット無事に合流出来てよかった!ね、ラピード!
ラピード…ワゥ
ミクリオ…このまま再会を喜んでいたいところだけど、みんなに話さなきゃいけない事がある
スタンああ、そうだな。俺達もみんなに聞かせたい事がある
ハロルドちょうどいいわ。ここらで情報交換といこうじゃない?
ゼロス──おいおい、マジかよ。まさかクローがユーリだなんて…
ヴェイグ…ラピードがレイヴンを白き獅子のところへ誘導したのもそれが理由だったのか
レイヴンごめんね。まあ、別に隠してたつもりじゃなかったんだけども…
ティア…後は、光の玉の事ね。まさか、スレイ達の故郷だけでなく今回はバロニアを映しただなんて…
ティアやっぱりあれは、元の世界の欠片であり特異点なのね
ヴェイグああ。まさかこっちでも同じ結論に至っていたとはな…
ルドガーコレットに宿る世界の意志も、おそらく元の世界と関わりがある事は確かだと思う
コレットあの様子だと、多分…既に特異点は弱まり始めてると思う…
スレイうん…特異点が完全に修復されるまであまり時間がないって事だ
ミクリオ僕達が思っている以上に、事態は切迫している…
カイル一刻も早く、特異点の修復を止めさせないと…!
ゼロスそれで、肝心の結界の事は何かわかったのかよ?
ベルベット…ええ、結界を解く方法をハロルドが見つけてくれたわ
コレットほんと!?どうすればいいの!?
ベルベット帝都の結界に力を送っている神殿が三つあるみたい。そこにある「核」を壊せばいい
ベルベット核の破壊は、三手に分かれて一気に潰そうって話になったわ
ハロルド既に、ラザリスの修復の影響は出てるみたいだし──
ハロルド全員で一か所ずつ回ってる時間なんて残されてないだろうからね
ルドガー…そっか。じゃあ、誰がどの神殿に行くのか決めないとな
カイルうん。けど、その前に…みんなにも話しておかないといけない事がある…
ミクリオ何だ?
スタンミラ、ロイド、ユーリの三人がそれぞれの神殿で核を守ってるみたいなんだ…
コレット…!それってもしかして…
エリーゼミラと…戦う…
ベルベット
レイヴン…まあね、突然聞かされてびっくりするのもわかるけどもさ。こればっかりは、覚悟決めなきゃ
ベルベット何も無理に縁の深い相手のところに行く必要もないしね
ジュード
レイヴン…って事で、おっさんはクローのいる蒼流の神殿に行かせてもらうとしようかね
レイヴンワンコ、勿論おたくも一緒でしょ?
ラピードワォーン!
レイヴン…今度は俺が助けるって、本人に宣言しちまったからね
カイルレイヴンさん…
ジュード…そう、だよね。助けたいなら、戦う事から逃げずに自分の手で取り戻さなきゃ…
ジュード決めた。僕はミラのところへ行くよ
エリーゼジュード…
ベルベット
コレット
コレット…私、やっぱりファングの…ロイドのところに行きたい!ううん、絶対に行く!
ゼロスコレットちゃん…
スタン戦うしかないってわかってるけど、やっぱり気が重いよな…
スレイうん…。みんな、戦わないで助けられたらいいのに…
ミクリオ…気持ちはわかるが、難しいだろう。あまり期待させるような事は言わない方がいい
エリーゼ…わたし、は…
ヴェイグ…今すぐに決めなくてもいいんじゃないか?
ヴェイグ大切な事だろう。しっかり考えた方がいい
エリーゼ…ヴェイグ…
ハロルドそうね。もうすぐ日も落ちるしどの道、行動は明日からになる
ハロルド一晩じっくり考えてみるのもいいと思うわ
ベルベットええ、そうしましょう
scene1未来の英雄、過去の英雄
レイヴンうぃ~…ヒック。たっだいま~
スタンレイヴンさん、おかえりなさ…うわっ!顔真っ赤!
レイヴンいやあ、ちょいとばかし羽目を外しちゃったかな?あ、晩ご飯まだ残ってるぅ?
ヴェイグ…今持ってくる。そこに座って待っていてくれ
レイヴンうはは、ありがとね青年~
スタン大丈夫ですか、レイヴンさん。足元フラフラしてますけど…
レイヴンえ~?まだまだ平気よ~。息もクサくないでしょ~?はあ~っ
スタンう…っ!ど、どう考えても飲みすぎですって!
ラピードクゥン…
スタンほら、ラピードも鼻押さえてうずくまっちゃってますよ!
レイヴンあらま、失礼しちゃうわ~
ヴェイグ…ほら、持ってきたぞ。水も用意したから飲め
レイヴンあんがと、助かる~。うひゃひゃ
カイルレイヴンさん、やっと帰って来た!こんな時間までどこ行って…って、クサッ!
ヴェイグ来てしまったか…タイミングが悪かったな
カイルもう、明日は大切な仲間と戦うっていうのに、何やってるんですか!
レイヴンそんなかたい事言わないでよ。おっさんなりの気合いの入れ方って奴なんだからさ~
レイヴンそれよりほら、少年もおっさんと一緒に飯でもど~お?
カイルオレはいいです!…レイヴンさん、もう休んだ方がいいんじゃない?
レイヴンつれないわね~。たくさん食べないと大きくなれないわよ~?
レイヴンそれに、ご飯はみんなで食べた方が楽しいでしょ。ね、スタン?
スタン俺!?えっと…そ、そうですね…?
ラピードワンッ!
レイヴンほら、スタンもラピードも同意してるじゃない
カイルええぇ…
スタンごめん、カイル…俺にはレイヴンさんを止められない…
レイヴンほらほら、いいから座んなさいって♪
カイルいやいやいや…あ、ヴェイグさん!ヴェイグさんからもレイヴンさんに何か言って…
ヴェイグ…諦めろ、カイル。飯につき合うだけだと思って割り切るんだ
カイルそんなあ!?
レイヴンほらほら、観念しちゃいなさいよ。カ・イ・ル・くん♪
カイル…もー!わかった、食べるよ!いただきます!!
scene2未来の英雄、過去の英雄
スタンやっぱりレイヴンさんの言うとおりみんなで食べると楽しいよな!
ラピードワフッ!
カイルもぐもぐ…やっぱり美味しいなぁ、ルドガーさんの料理!
ヴェイグジュードやミクリオ、それとベルベットも手伝ったらしいな
スタンみんな手際がよくて助かったってルドガーが言ってたぞ
カイルへぇ、みんなすごいなぁ。どれも本当にすっごく美味しい…!
スタンあはは、カイルは本当に美味しそうに食べるなぁ
ヴェイグ…よかったら、オレのも食べるか?
カイルいいの?ありがとう!
レイヴン…何だかんだ言ってたわりにはもりもり食べてるわね、少年
カイルえへへ…食べ始めたら止まらなくて…
カイルそれに、こうやっていつでも万全の状態にしておいてこそ、英雄になれるんじゃないかと思って!
レイヴン
ヴェイグそういえば、カイルの父親は英雄なんだったな
カイルうん!困っている人を放っておけなくて仲間のためなら何だって出来て…
カイルみんなの事を励ましてくれる…そんな英雄にオレもなりたいんだ!
スタンカイルは本当に父親の事が大好きなんだな
カイルはい!父さんはオレの憧れで、理想の英雄そのものですから!
レイヴン──英雄なんて、そんないいもんじゃないよ
カイル…え?
レイヴン昔、ね。いたのよ
レイヴン何一つ成し遂げる事はなく、それどころか仲間を全て失うような最悪の結果を残したのに…
レイヴン周りから、英雄と呼ばれて、崇められちゃった男がね…
カイル…!
レイヴン勿論そいつは、そんな称号なんて求めてなかった…けど、気付いたら世間様では英雄扱い
レイヴンどんなに違うと訴えても、誰も認めてくれなかった。みんな、彼を英雄だと褒め称えたよ
レイヴン…英雄ってのは、なろうとしてなるもんじゃない。周りが勝手にそう呼び出すもんなのよ…
ヴェイグ
スタンレイヴンさん…
ラピードクゥン…
カイル
レイヴン…あはは、なーんてね。そんな話をこの前本で読んだのよ
カイル…そんな事ない
レイヴンカイル?
カイルその人が、みんなから英雄って呼ばれるようになってたなら…
カイル何一つ成し遂げてないなんて事は、絶対にないよ!
レイヴン…!
カイルもしその時に何も出来てなかったとしても、その人はきっと、その先で何かをやり遂げてたはずだ
カイルその人が英雄って呼ばれてたなら、オレはその人の事を信じる!間違いなく、本物の英雄だって!
レイヴンカイル…
レイヴン…若いわねぇ。おっさんついてけないわ
レイヴン少年のキラキラした瞳は年寄りには眩しすぎる…あまりの輝きに溶けちゃいそう
カイルもう、レイヴンさんってばすぐにそうやって茶化す…!
スタン…レイヴンさん、酔ってます?
レイヴン酔ってないわよー。本気で酔ったら、おっさんもっとぐでんぐでんになってるからね
ヴェイグ既に十分ぐでんぐでんに見えるが…
ラピードワゥ…
レイヴン大丈夫!朝になったらちゃんとしゃっきりしてるから
レイヴン…半端な覚悟で戦えるような生易しい相手じゃないからね
カイル…!…
カイル…レイヴンさん。オレ、明日はレイヴンさんと一緒に蒼流の神殿に行く事にするよ
レイヴンあら、またずいぶん急ね。…もしかしておっさんが明日二日酔いで倒れないか、心配してる?
カイル違うよ!オレはただ、レイヴンさんの力になりたいって思ったんだ!
レイヴン少年…?
カイルミラさんも、ユーリさんも、ロイドさんも、みんなソフィと一緒に戦ってくれた大事な仲間で…
カイル本当は三人共のところに行きたいけど選べる道は一つだから…
カイルそれならオレは、レイヴンさんの覚悟の力になりたい
カイル真っ先に仲間と戦う覚悟を決めたあなたの力に
カイル…何だかそれが、オレが憧れる英雄へ近付くための一歩になるって、そんな気がするから…
レイヴン少年…
レイヴン…なーんかこう、ここまでド直球に言われちゃうとさすがに照れちゃうじゃない
カイル…?オレ、何か変な事言ったかな?
スタンあはは、大丈夫だよ。カイルらしい決断だと思う
スタンうん、決めた。俺も蒼流の神殿に行く事にするよ
カイル本当ですか!またスタンさんと一緒に戦えるんですね!
スタンああ。ミラもロイドも大事な仲間だ。でも、だからこそ二人の事は信頼するみんなに託す事にする
スタン…カイルの覚悟も見届けたいからな
レイヴンええ…二人して、ちょっとおっさんに優しすぎない?おっさん感動で泣いちゃいそう…
レイヴンけどまあ、二人がそう決めたんならおっさんは止めないけどね。って事で、明日はよろしくね、二人共
カイル・スタンはい!
ヴェイグ
scene3未来の英雄、過去の英雄
カイルすぴー…
スタンむにゃむにゃ…
レイヴンあらま、二人共ぐっすりね
ヴェイグ後で毛布でもかけておこう。風邪をひかれては困るからな
レイヴンふふ、青年やっさしー。…ま、未来の英雄様が風邪でダウンなんて、格好つかないもんね
ヴェイグ…レイヴン。さっきの英雄の話だが、もしかしてあれは──…
レイヴン知らない騎士の話よ
ヴェイグ…そうか
レイヴンそういえば、ヴェイグは明日どこに行くか決めたの?
レイヴン青年の事だし、やっぱりエリーゼちゃんと一緒にミラちゃんのとこ?
ヴェイグいや、オレもユーリのところへ行く。お前の手伝いをさせてもらおう
レイヴンあら意外。エリーゼちゃんはいいの?
ヴェイグああ。エリーゼは自分の力で困難に立ち向かおうとしている。オレの力は必要ない
ヴェイグそれに、ジュードも一緒なら大丈夫だ
レイヴン…そう。ならいいわ
ヴェイグ…それに何より、ユーリには返さなければならない恩もある
レイヴン恩…?
ヴェイグクレアを…オレの大切な家族を救うのに力を貸してくれたんだ
ヴェイグ…その借りを返すためにも、オレはユーリの元へ行く
レイヴン
ヴェイグ…じゃあ、オレは部屋に戻る。また明日
レイヴン…ふ
レイヴン…いやー熱い熱い。若者は元気だねぇ、全く…
ラピード…ワフン?
レイヴン…熱すぎて、おっさんも当てられちゃいそうよ
scene1強い心
ミクリオ…はあ、全く。大事な戦いの前だと言うのに、レイヴンは浮かれすぎだろう…
ミクリオ静かになるまで、どこかで一休みでも──……ん?
コレット…ふぅ
ミクリオコレット
コレットあ、ミクリオ
ミクリオすまない。考え事の邪魔をしてしまったか?
コレットううん、平気だよ。ちょっとぼーっとしてただけだから
ミクリオそうか。だが気を付けてくれ、夜に女の子が一人でいるのは…
コレットあはは、そだね。何かあったら大変だよね
コレット心配してくれて、ありがと。ミクリオ
コレットでも、魔物に襲われた時とか、遺跡で転びそうになった時とか、ミクリオは助けてくれたよね
ミクリオ仲間として当然の事をしたまでだ。…それが、どうかした?
コレット私、いつも守られてばかりだから…
ミクリオ
コレットロイドにもいつも守られてたのに…私はあの時、ロイドを助けられなかった…
コレット私がもっと強かったら…
ミクリオコレット…
ワンッ!
ミクリオ…!なっ、犬…!?
コレットわぁ、可愛いワンちゃん!でもどうしてこんなとこに…?
コレットお母さんはどしたの?
ワンッ!ワンッ!
コレットあ、待って!
ミクリオ行ってしまったな
コレット私、心配だしちょっと見てくる!
コレット…きゃっ!?
ミクリオお、おい、大丈夫か!?
コレットえへへ、また転んじゃった。ありがと、ミクリオ
ミクリオ全く、危なっかしいな…
ワンッ!
コレットあ、ワンちゃんが行っちゃう!待って!
ミクリオあっ、おい!待つんだ!君こそ一人じゃ危ないだろう!
scene2強い心
コレット──ワンちゃん、無事お母さんと会えたみたい。よかったね
ミクリオ散々走り回らされたけどね…飼い主と母犬が捜し回っててくれて助かったよ
コレットふふっ、ミクリオ、一緒に捜してくれてありがと!
ミクリオいや…僕はほぼ離れたところで見ていただけだし、別に…
コレットそんな事ないよ。犬が苦手なのに、頑張って一緒に捜してくれたでしょ。それで十分
ミクリオなっ…ち、違う!ぼ、僕は吠えられるのが嫌なだけで別に犬自体が苦手なわけじゃ…
ミクリオ…コホン。そんな事より、さっきの話に戻るけど…
ミクリオ…コレット、君は今のままでも十分強い人だと思う
コレットえ…?
ミクリオそれぞれ行き先を決めようってみんなで話していた時、…あの時、僕は驚いたんだ
ミクリオてっきり君はロイドと戦うのを嫌がると思っていたから…
コレット…戦う事はね、やっぱり嫌だよ
コレット想像しただけですごく怖いし、悲しくなるし、辛いもん…
ミクリオなら、何故──
コレット逃げたくなかったの。逃げたってロイドは助けられないから
コレット…どんなに苦しくても、悲しくても、やっぱりロイドに会いたい。ロイドは、私の大切な人だから
コレットだから、ちゃんと向き合いたい…
ミクリオコレット…
ミクリオ…僕の目に狂いはなかったようだね。君はやっぱり、とても強い心の持ち主だと思う
コレットえへへ、そかな?そうだといいな…
ミクリオ明日は僕も君と一緒に翠樹の神殿に行くよ
ミクリオ僕にとっても、ロイドは大切な仲間だ
ミクリオ…彼を救うためにも必ず「核」を破壊して結界を解き、ラザリスを倒そう
コレット…うん。ありがと、ミクリオ
???あ────っ!!
ミクリオ君は…
scene3強い心
ミクリオ──何だ、君か。全く、驚かさないでくれ
コレットほんとだよ。急に大声なんて出すからびっくりしちゃった…
ゼロスおいおい~、今更とぼける気か?ミクリオ
ゼロス俺さま見ちゃったぜぇ
ゼロスお前がコレットちゃんをナンパしてんのを、よ
ミクリオなっ…!?ち、違う!変な勘違いをしないでくれ!
ミクリオどこをどう見たら、そんな風に見えるんだ…!?
ゼロス「僕は君と一緒に行くよ…」…とか何とか、格好つけながら言ってたじゃねぇか
ゼロスありゃ完全に口説きにかかってたね。雰囲気もそれっぽかったし~
ミクリオだから、ただ行先を決めただけ──
ゼロス…ミクリオ、残念だがお前はコレットちゃんと二人きりにはなれねぇぜ
ゼロス何故なら、明日は俺さまも一緒だからな
コレット…!ゼロス、一緒に来てくれるの?
ゼロスあったり前だろー?俺さまが行かずに誰が行くってな。それに──…
ゼロス…忘れたまんまにはさせねぇ。あいつの記憶は俺が絶対に取り戻させてやる
ゼロスなーんて、な
ミクリオゼロス…
スレイ…明日、オレも混ぜてもらってもいいかな?
ミクリオスレイ…!君もいたのか
コレット混ざるって…スレイも一緒にロイドのところに来てくれるって事…?
スレイうん、そのつもり
スレイ…正直、三人共大切な仲間だし明日どこに、誰の元へ行けばいいのか悩んでたんだ
スレイけど、コレットやミクリオ、ゼロスの想いを聞いて心は固まった
スレイ一緒に翠樹の神殿に行こう
スレイ今度こそロイドを助けたい…その気持ちは、オレも同じだから
ミクリオスレイ…
コレットうん、…そだね。ありがとう
ゼロスむむ…もしかして、スレイもコレットちゃん狙い…?恋のライバルがまた一人…!
スレイええ!?
ミクリオどうして君は、すぐにそういう話に持っていくんだ…
ゼロスいやだって、今のは完全にそういう流れだったでしょ?
ミクリオどこがだ!
スレイうーん…コレットはいい子だけど、狙うとか、恋とか、そんな風に考えた事は──
ミクリオスレイも真面目に返さなくていい!
ゼロスうひゃひゃひゃ!スレイ、ナイスボケ!
コレット…ふふっ。みんな、ありがと
scene1覚悟をもって、歩みを共に
ルドガー…みんな、どこに行くか、大体決まってきたみたいだな
ジュードうん。覚悟を決めた感じって言うのかな。みんな、いい顔をしてたよね
ジュードあと決まってないのは…ルドガーとエリーゼ、そしてティアとベルベット…だね
ジュードルドガーはどこに行くか決めた?
ルドガー俺はジュードと一緒に行くよ
ジュードいいの?
ルドガーああ。ミラには、俺もエルも、いろいろと世話になったからな
ジュード…そっか
ルドガー…この世界で記憶を改変されてもう一度ジュードと出会ってから、いろんな事があったよな
ルドガー…ジュードがいなければ、俺は大事な事を忘れたまま漠然と生きていたんだと思う
ルドガー俺が記憶を取り戻せたのも、エルと再会出来たのも、全部ジュードのお蔭だ
ジュードそんな、大げさだよ。全部ルドガーが頑張ったからだし、むしろ僕の方がたくさん助けられて…
ルドガーはは、ジュードは本当に謙虚だな
ジュードルドガーが褒めすぎなんだよ。僕達はお互いに助け合ってここまで来たんじゃないか
ルドガー…ああ、そうだな。俺達はそうやってここまで来た
ルドガーだからこそ俺は、今回も一緒に戦いたいと思っている
ジュードルドガー…
ルドガーだから俺は、虹雲の神殿に行くよ
ジュード…うん。ありがとう
ジュード一緒にミラを救おう。僕達の大切な仲間を取り返す…そのためにも、絶対核を壊さないと
ルドガーああ。ミラには何度も助けられたからな。今度は、俺達が助ける番だ
コンコン
ジュードはい?
???夜遅くにすみません…今、ちょっといいですか…?
ジュードエリーゼ?あ、今開けるから待ってて
エリーゼお邪魔します…
ティポこんばんはー
ジュードエリーゼ…
エリーゼあの…明日の事で、ジュードに聞きたい事があるんです
ジュード僕に…?
エリーゼ行き先の話が出た時、ジュード、ミラのところに行くってすぐに答えたじゃないですか…
ジュード…うん、言ったね
エリーゼジュードは…ミラと戦う事が怖くはないんですか?
ジュード
エリーゼわたしは…やっぱり怖いです
エリーゼ現実から目をそらさない、前に進むって決めたのに…いざとなったら足が竦んでしまって…
エリーゼそんな自分が、情けなくて、悔しいんです…!
ジュード…僕だって、不安がないって言ったら嘘になるよ
ジュード僕以外に頼れる仲間はたくさんいるし、任せるのもありかもしれない
ジュード僕だって、出来る事なら、ミラと戦いたくなんてないよ。話し合いで解決出来ればって思う
エリーゼ
ジュード──でも、それじゃ駄目なんだ
ジュードミラの事が大切だからこそ、他の人に任せて逃げたり、目をそらしたりはしたくない
ジュードたとえ戦う事になったとしても…僕は、僕の手で、ミラを助けたいんだ
エリーゼ自分の手で、助ける…
エリーゼわたし、ミラを傷つけるかもってずっと迷ってました…
エリーゼでも、ジュードの話を聞いて、覚悟が決まりました
エリーゼわたしも虹雲の神殿に行きます
エリーゼわたしも、前に進むって決めたから。この手でミラを助けたいです。たとえ、ミラと戦う事になっても
ティポぼくもエリーと同じ気持ちー!みんなで核をぶっ壊して、ミラ君を助けよーね!
ジュード…うん。一緒に行こう、ミラのところに
エリーゼはい!
ジュード…よし。それじゃあ、悪いけど、僕はちょっと出掛けてくるね
ルドガー出掛けるって、どこにだ?
ジュード僕の決意を伝えておきたい人がいるんだ
scene2覚悟をもって、歩みを共に
ティア…ねえ、ベルベット。一つ聞いていいかしら
ベルベット何?
ティア明日の事なんだけど、どこに行くか決めた?
ベルベット…適当に人の足りないとこに入るわ。ラザリスに繋がるなら、どこでも同じだもの
ティア…そう
コンコン
???──ベルベット、ティア。少し話がしたいんだけど、入っても大丈夫かな?
ティアジュード?ええ、いいわよ。どうぞ
ガチャッ
ジュードお邪魔するよ
エリーゼお、お邪魔します…
ルドガー夜遅くにすまないな
ティアルドガーとエリーゼ達も一緒だったのね
ティポぼくもいるよー!一緒に行きたいってジュード君にお願いしたんだー!
ベルベットはいはい、どっちにしても結構な大所帯ね。それで?
ジュード明日の事で、話があるんだ
ベルベットああ、その話。あんた達は決まったの?
ジュードうん。僕達は、全員ミラのところに行く
ベルベット…へぇ
ジュード前にも言った通り、ミラは僕達の大切な仲間だ。本当なら、戦いたくなんてない…
ジュードだけどラザリスの異空間に閉じ込められていた時、僕は、君に約束した
ジュード現状から、目をそらしたりしないと
ベルベット
ジュード大切な仲間だからこそ、僕らの手で、ミラを助けたい。たとえ、戦う事になったとしても
ジュード一度目をそらしてしまった事実と、今度こそ、何が起こってもちゃんと向き合いたいって思った
ジュードだから、僕らは僕らのやり方で、大切な仲間を取り戻してみせる。そう覚悟出来たのは、君のお蔭だよ
ベルベット…本当に、戦えるのね?
ジュード戦うよ
ジュードそれがミラを…大切な人を助けるためになるのなら
エリーゼわたしもジュードと同じ気持ちです。ミラを助けるためなら、ミラとだって戦います…!
ベルベット
ベルベットあんた達の覚悟はわかったわ。でも、どうしてそれをわざわざあたし達に言いに来たの?
ジュードシャングレイスでは迷惑をかけちゃったから、今度は大丈夫って伝えておきたかったのと…
ジュードベルベットに、僕達の戦いを見届けてほしいって、お願いしたかったんだ
ベルベット
ティアそれって…私達も、あなた達と一緒に虹雲の神殿に来てほしいという事?
ジュードうん
ベルベット…あんた、それ本気で言ってるの?
ジュード僕の覚悟が口だけじゃないって、ちゃんと見てもらいたいんだ
エリーゼ一緒に来てください…!
ルドガーそれとも、二人共既に向かう場所が決まってるのか?
ベルベット…いいえ、どこでもいいと思ってたわ
ベルベットだから、頼まれるような事でもない。…あたしはあたしの目的で、結界の核を破壊しに行く
ベルベット…あんた達の覚悟も、そのついでに見る事になるかもね
エリーゼベルベット…!ありがとうございます!
ティアふふ。私も、喜んで一緒に行くわ
ジュード…ありがとう、二人共
ジュードそれじゃあ、僕達はこれで。明日はよろしく
エリーゼおやすみなさい
ルドガー遅くに邪魔してごめんな。それじゃあ、また明日
ティアええ、おやすみ
ティポばいばーい!
ベルベット…何をしに来たかと思えば
ティアそれだけ、彼らは本気なのよ。明日の戦いに
ベルベット
ティア…ふふっ
ベルベット…何よ。人の顔見て笑ったりして
ティアいえ…ただ、最初の頃に比べると、ずいぶん雰囲気が柔らかくなったと思っただけよ
ベルベット…変な事言わないでくれる。ほら、明日に備えて早く寝るわよ
ティア…ベルベット。明日はよろしくね
ハロルド──それじゃ、最後にもう一度行き先の確認をしてくれるかしら?
コレットロイドのところには、私、ミクリオ、スレイ、ゼロスだよ
カイルユーリさんのところが、オレ、スタンさん、レイヴンさん、ヴェイグさん、ラピード!
ジュードミラのところには、僕、ルドガー、エリーゼ、ベルベット、ティアだね
ハロルドふむふむ…ま、いい感じに戦力がばらけたんじゃないかしら?
エリーゼヴェイグ…気を付けてくださいね
ヴェイグお前もな。…お前ならきっと、ミラを救える
エリーゼはい!
ハロルド念のためもう一度説明するけど、あんた達は、それぞれの場所にある「核」を破壊する事
ハロルドそうすれば結界が解けて、宮殿に入れるようになるはずよ
スレイそれじゃあ、核を破壊したら、そのまま宮殿で落ち合う、って流れの方がよさそうだな
ヴェイグいや、宮殿では敵に近すぎる。全員が揃うまで待ってくれるとは思えない
ジュードそれなら、リッカ村はどうかな?
ジュードあそこなら、レイアがいる。何かあった時に協力してくれるはず
ミクリオ僕も、集合場所はリッカ村が適していると思う
レイヴンよーし、それじゃあ、集合場所はリッカ村って事で決まりね
ラピードワン!
スタンみんな、油断せずに…絶対に核を破壊して戻って来よう!
コレットうん!それで、全員無事に会おう!
ジュードそうだね。その時はきっと、ミラ達も一緒だよ
ティアええ。そうなるように全力を尽くしましょう
ベルベット…全員準備はいいわね。それじゃあ、行くわよ
スレイああ!みんな、リッカ村でまた会おう!

NameDialogue
scene1美脚健脚、格闘少女
スタンふぅ。あの光の柱にも大分近づいたな
ヴェイグみんな、疲れてないか?ずっと歩き通しだから、少し休憩するか?
カイルいえ、大丈夫です!先を急ぎましょう!
レイヴン若い子は元気だねえ…おっさんはもうクッタクタ!そうだ少年、おぶってくれたり──
ラピードワン!ワンワン!
レイヴンうわわ!ちょ、冗談、冗談よワンコ!自分で歩くから、押さないでってば!
カイルはは、ラピードは気合入ってるな!ほらレイヴンさん!あの光の柱までもうすぐですよ!
カイルあそこに、蒼流の神殿があるんですよね?
レイヴンその通り。ハロルドちゃんの話だとあの光の柱は例の核が放ってるものらしいし
ヴェイグラザリスの結界を構築しているエネルギーの供給元か…不気味だな
スタンけど、こっちにとってはいい目印だ。迷わなくて済むもんな!
カイルあの光の柱を目指していけば、核にたどり着ける…!確かに便利ですね!
レイヴンわかってると思うけど、核の破壊は簡単にいかないよ?
スタン白き獅子…ですね。昨日の話だと、蒼流の神殿にはユーリの部隊が…
レイヴンそういう事
カイル…だとしても、絶対に核は壊さないと!ユーリさんも助けなくちゃならないし
カイルって事で…ほら、早く行きましょうよ!
レイヴンふーむ…
レイヴンはあ…。少年、肩の力抜きなって。焦ったってしょうがないから
カイルあ、…ごめんなさい。元世界の運命がかかってると思ったら…
レイヴン気持ちはわからなくもないけどね。こういう大変な時こそ平静を保っていられた方の勝ちよ?
カイルでも、ユーリさんと戦う事になってもレイヴンさんは平気なんですか?…大切な仲間なのに
レイヴン大切な仲間、ね…
レイヴンあいにくだけど、別にそんな立派なもんじゃないよ
カイルえ?でも…みんなが行き先を決める時ユーリさんのところに行くって真っ先に言いましたよね?
ラピードワン!
レイヴンま、青年には借りがあんのよ。ちょっとしたね
レイヴンそれを返しに行くだけ
カイルユーリさんに借り…?それって一体──
レイヴンその話はまた今度、ってね
カイルそうやってまたはぐらかす…
スタンまあまあ、カイル。また話してくれるって言ってるんだし
カイルでも…
ヴェイグレイヴンにもいろいろと事情があるんだろう
ヴェイグ…気になるのはわかるが今は目の前の事に集中するべきだ
カイル
ラピードガルルルル…ワン!
レイヴンどこ行くの、ワンコ!?
???きゃあっ!
スタンまずい!向こうで女の子が魔物に襲われてるぞ!
カイル本当だ!助けないと!
ヴェイグああ、急ぐぞ…!
scene2美脚健脚、格闘少女
スタンふぅ…!倒し切れたか
カイル君、大丈夫?怪我はない?
???あ…うん。あの、助けてくれてありがとう
コハクわたしはコハク・ハーツ。あなた達は?
カイル…コハク?あれ…何か、どこかで…
レイヴンん?少年?どうかしたの?
カイルああ、思い出した!そうだ、確か元の世界で──
カイルもがが!?
スタンな、何でもないよ!だよな、カイル
コハクでも、今何か言おうと…
スタンあー…いやその、何て言うか君がちょっと俺達の知り合いに似てたから…
コハクそう、なんだ?
レイヴン…ちょっとちょっとスタン?
ヴェイグまさか、元の世界の知り合いか?
スタン前に少し話した事があって…
レイヴンなるほど…
レイヴン悪いけど、今はあの子の記憶を取り戻すのは、後回しにさせてちょうだい
レイヴン下手な事して、こっちが咎人だってバレるわけにもいかないし
スタンはい…わかってます。コハクのためにも、核の破壊が最優先、ですよね
カイルんー!んー!
スタンおっと、口を塞ぎっぱなしだった。ごめんな、カイル
カイルぷはっ…!
コハク…えっと、何こそこそ話してるの?
レイヴン…ああ、ごめんね。ちょっと、相談事よ
レイヴンあ、おっさんはレイヴンよん。そいでこいつがラピード
ラピードワン!
ヴェイグオレはヴェイグ。隣にいるのがカイルとスタンだ
コハクそう、よろしくね
コハクそれにしても、あなた達…この辺では見ない顔だね。旅人さん?
カイルえーっと、それは…
レイヴンややや!よーく見たら、なんつー美少女!
コハクは…はあ
レイヴンおまけにまぶしいばかりの美脚!おっさん目がつぶれちゃう!
カイルち、ちょっとレイヴンさん…!
レイヴンこんな足場の悪いところで転んだりしたら大変よ?
レイヴンそうだ!よかったら、おっさんが近くの街まで送って──
コハクはぁっ!
レイヴンうぉっと!?
カイルす、すごい蹴り…
コハクわたしはこの足で、一人で帰れるから心配はいらないよ
レイヴンはは…そうみたいね。余計なお世話だったみたいね
レイヴンそれじゃあおっさん達は先を急ぐから、コハクちゃんも気を付け──
コハクどこに行くの?そっちには蒼流の神殿しかないけど…
レイヴンえ?
レイヴン…へえ、蒼流の神殿っていうのがあるんだ。おっさん、知らなかったなぁ
コハク知らないの?それじゃあ、何でこんなところに…
コハク…もしかして、あなた達もあの光の柱の事を調べに来たの?
カイルえ、何でわかったの!?
スタンこら、カイル!そんな簡単にばらしちゃ…!
スタン…ん?「あなた達も」って事は…
ヴェイグお前も、光の柱を調べに?
コハク…本当は、魔物がいて危険だから神殿には近づくなって、言われてるんだけどね
コハクけど、光の柱が出現してから村のみんなも不安がってるし…
コハクみんなが安心出来るものなのか、確かめてみようと思って
コハクだから、あなた達も同じように光の柱を調べに来たのかと…
カイルもしかして…コハクは蒼流の神殿に行ってきたの?
コハクうん。中をのぞいてみたんだけど…聞いてた通り、魔物がいっぱいいて
コハクわたし一人じゃ無理だと思って引き返してきたところだったの
レイヴンそれは賢明な判断ね
レイヴンそれじゃ、光の柱の調査はおっさん達がやっとくからさ、コハクちゃんは村に帰って──
コハクでもよかった!仲間がこんなに増えるなんて、頼もしい!
ラピード…ワフ
コハクねえ、わたしも蒼流の神殿に連れて行ってくれない?道案内くらいなら出来るし
レイヴン残念だけど、そいつはダーメ。いくらコハクちゃんのお願いでも、ね
レイヴンさっき自分で言ってたじゃない。危ない場所なんだって
コハクそうだけど…
コハク実は一度村に帰って、しっかり準備をしてからもう一度来ようと思っていたの
コハクあなた達が一緒なら準備をする手間も、一人で神殿に入る必要もなくなるし…
カイル…ねえ、レイヴンさん。一緒に行きませんか?
スタン確かに、女の子を一人で放っておくわけにはいかないし…
レイヴンけど、ねぇ…
ヴェイグ…あの様子だと、どっちにしろ後で一人で調査に来るつもりらしい
ヴェイグ後から鉢合わせするよりは、同行させた方がいいんじゃないか?
レイヴン…ま、それもそうね。後で面倒な事になるよりは…
レイヴンわかったわ、コハクちゃん。とりあえず神殿までの案内、頼める?
コハクホント?やったぁ!それじゃあ、早速行きましょう!
カイルあ、ちょっと待ってよコハク!
スタン俺達も行こう、ヴェイグ
ヴェイグああ
レイヴン…けど、どこまで一緒に行くかはしっかりと考えないと──…って!ちょっと!?
レイヴンもー、少しはおっさんの話を聞いてちょうだいよ。おっさん泣いちゃうよ!
レイヴンはあ…。コハクちゃんを上手く言いくるめて、神殿から遠ざけるしかないか
scene1蒼流の神殿へ
コハクみんなー、こっちだよこっち!
レイヴン…案内してもらったのはいいものの、どう言いくるめたもんかね
スタンところで、その蒼流の神殿はどこにあるんだ?
ヴェイグそれらしい建物は見当たらないが…
カイルっていうか、滝しかない…
コハクやっぱりそうだよね。神殿っていうくらいだし、わたしも最初はてっきり建物だと思い込んでた
コハクでもね、実はこの大きな滝こそが蒼流の神殿なんだよ!
レイヴン滝の中が…?
コハクうん。とにかく入口に案内するから、ついてきて
カイルわかった!
スタン二人共、足元に気を付けて…っておい、待てって!カイル、コハク!
ラピードワウ
レイヴン
ヴェイグ二人共行ってしまったな。…問題はここからどうやってコハクと別れるか、だ
スタンレイヴンさん、何かいい方法はないかな?
レイヴンうーん、あの様子じゃ一筋縄じゃいかないだろうし
レイヴンはあ…何かの拍子にコハクちゃんの記憶が戻ったりしたら万々歳なんだけどねえ
レイヴンま、コハクちゃんの件は引続き考えるとして、とにかく今は二人を追いましょ
ヴェイグそうだな
scene2蒼流の神殿へ
ラピードワフッ!
スタンどうした、ラピード?何か見つけたのか?
カイル特に何もないみたいだけど…
ラピードワン!
ヴェイグん…おい、ここを見てみろ。地面に足跡がたくさんあるぞ
スタン本当だ。でも、ここって一般人は近づくなって言われてるんだろ?何で足跡がこんなにあるんだ?
レイヴン…こいつは、軍靴の跡ね
ヴェイグ白き獅子か…
コハクさっき一人で来た時は気付かなかった…
レイヴン足跡は消えかかってるしね。よく見なきゃわからないよ
コハクでも、どうして白き獅子がここに…あっ!もしかして彼らも光の柱の事、調べに来たのかな?
コハクだとしたら、何か話が聞けるかもしれないね!
カイルあ、うん…えーっと、そうだね
コハクよーし、それじゃはりきって行こう!神殿の入口はもうすぐだよ!
レイヴン
コハク…さあ、神殿の入口に着いたよ
カイルこれが…!
レイヴン随分物々しい雰囲気ね。こりゃ大層大事なもんが隠されているんだろうねえ
ヴェイグしかし、こんなところに入口があるとはな…
カイルコハク、よく見つけられたね。オレだったら見逃してたかも
コハクあはは…実はわたし、前からこの辺りにはよく来てたんだ
コハクそれでね、偶然この扉を見つけちゃって…
カイルえ、でもこの辺りって近づいちゃ駄目だって話じゃ…
コハクそれはその…ここで捕れる淡水イカが味噌との相性が抜群だったから…!
レイヴンイカ!?まさかそのためにこんなとこまで来てたなんて、よっぽど好きなのね…
ヴェイグ…まあ、お蔭で無事たどり着けたわけだが
スタンああ、そうだな。コハクがいてくれて助かったよ!
コハクえへへ、お礼なんていいよ。でも、気を付けてね?この中は魔物でいっぱいだから
カイルわかってるよ!よーし、それじゃあ早速…
ズズズ…
ギャオオオッ!
カイルうわぁっ!
バタンッ!
ヴェイグカイル、大丈夫か!?
カイルだ、大丈夫です…。開けた瞬間目の前に魔物がいたからちょっと驚いただけで…
スタンまさかあんなところで待ち構えてるなんて…
レイヴンこりゃ気を付けて開けるしかないね。みんな、構えて──
コハクあ、そういう事なら任せて!
カイル…どうするの?
コハク見ててね…
コハク…はぁあ!
ドガンッ!!
ギャウッ!
スタン何て、威力だ…!扉ごと魔物を蹴り飛ばしたぞ…
コハクふぅ、結構固かった…!
レイヴンははは…あまりコハクちゃんを怒らせない方がよさそうね
ヴェイグ油断するな…!奥から魔物が押し寄せて来るぞ!
scene3蒼流の神殿へ
カイルせいっ!
ギャウウッ…!
カイル…よし、今のでとりあえず最後かな
コハクそれじゃ、神殿の中に入ろう!
レイヴンああ、ちょっと待ってコハクちゃん!
コハク…?
レイヴンおっさんからの提案なんだけど…
レイヴン今回みたいに、魔物達がまたいつ飛び出しちゃうかわからないでしょ?
レイヴンあんな凶悪な魔物が外に出てったら、近くの村が襲われるかも…
レイヴンだから、ここで魔物を逃がさないよう見張っておく必要があるとおっさん思うのよね
レイヴンそして今の戦闘を見て、おっさん、ピンッと来たのよ!
レイヴンあのすごい足さばき!見張り役に一番ふさわしいのはコハクちゃんに違いないってね!
コハクでもわたし、神殿の中を調べないと…扉は閉めておけば大丈夫じゃない?
レイヴンその事なんだけど…ほら、コハクちゃんが蹴ったせいで閉まらなくなっちゃってる
コハクあ…
ヴェイグ頼む、コハク。神殿を調べている間に村が襲われたら元も子もない
スタン光の柱の事はちゃんと調べて来るよ。だから俺達に任せてくれ!
コハク…わかったよ。わたしはここに残る。魔物が出て来ないように見張ってるね
スタンありがとう!
スタンそれじゃあ、俺達行ってくるよ
コハクちゃんと無事に戻ってきてね!
scene1夢と現実
カイル…これでよかったのかなあ?何か、コハクを騙してるみたいで…
レイヴンこれもお互いのため、世界のためよ
レイヴンさて、核の破壊と青年との再会…。ここからが本番ね
スタンにしても…ここは妙な部屋だな
ヴェイグ壁に小部屋がいくつもあって、鉄柵に囲われている…
カイル牢屋みたいだね
レイヴン…暗くて小部屋の奥まで見えないねえ
ヴェイグ白き獅子も…いないな
ヴェイグここにもいないとなると…上の階か
スタン随分静かだよな…魔物もいないみたいだし…
レイヴン最初のであらかた倒しちゃった?…でも、たったあれだけなんて妙ねぇ
ヴェイグひとまず、慎重に進むとしよう
ヴェイグそれと、気を付けるのは魔物だけじゃなく…
ガゴゴゴゴゴゴゴッ…
カイルおわぁぁぁぁ!?お、落とし穴──っ!?
ラピードワフッ!
スタンカイル!?大丈夫か?
カイルぎ、ぎりぎり、何とか…
ヴェイグ罠にも気を付けよう…と、言おうと思ったんだが…
レイヴン早速、か。全く、先走りすぎなんだから
ヴェイグ穴の淵に手をかけてなければ、危ないところだったな
レイヴンどれどれ?うわー…すごく深い穴。こりゃ落ちたらタダじゃすまないぞ
カイルか、観察するより…引き上げてもらえると助かります!
ヴェイグと、そうだったな。スタンは右を持ってくれ、オレは左を持つ
スタンわかった。それじゃあ引き上げるぞ
スタンいくぞ、せーの…!
カイルふう、助かったぁ…
カイルありがとうございます。スタンさん、ヴェイグさん
スタンこういう事もあるから、もっと慎重に行こうな
スタンそれにしても、落とし穴か…。厄介だな
ヴェイグ侵入者を捕えるための罠なのだろうか
レイヴンん?これはもしかして……
ガゴゴゴゴゴゴゴッ…
カイルうわっ!また床が抜けて…ちょっとレイヴンさん、一体何を──
レイヴンなるほどなるほど…そういう事ね
ヴェイグこの仕掛けについて何かわかったのか?
レイヴンこれはどうも罠ってわけじゃなさそうね
レイヴン単に経年劣化で床が落ちやすくなってるだけ
レイヴン…ほら、こういうとことか
ギィ…ガゴゴゴッ!
カイルうわっ!?また…!
スタンもろくなってる床は落ちるんだな
レイヴンそーゆー事
カイルそうとわかれば安心ですね!よーし、じゃあしっかり足元に注意して──
ギギギギギッ…
スタン…ん?今の音は何だ?
ヴェイグ床が落ちたというわけではなさそうだが…
ギギギギギギギギギギッ…
カイルな、何だ…!?また…
ラピード…グルルルルッ!
レイヴン…!この気配は…
グォオオオオオ!!
スタンなっ…魔物!?しかも大群…!?
カイルさっきまでどこにもいなかったのに…こいつら、一体どこから出てきたんだ!?
スタン…!壁の小部屋の鉄柵が全部開いてるぞ
カイルもしかして、あの中にいたのか…?でも、何で急に…!
レイヴン決まってるでしょ、誰かさんがおっさん達に向けて魔物の群れを放った
レイヴン…そうとしか考えられない
ヴェイグ…床抜けとは違ってこっちはれっきとした罠という事か
カイルとにかく、早く何とかしないと!
ヴェイグなら、不用意に動かずここで迎え撃つべきだ…
レイヴンそうね。気乗りはしないけどうっかり床抜けに巻き込まれたらたまったもんじゃないし
ラピードワオーーーン!
スタンみんな、来るぞ!構えろ!
カイル…はい!
scene2夢と現実
カイルくそっ…!こいつら、どれだけいるんだよ…!
スタン倒しても倒しても…数が多すぎてキリがない…!
ラピードグルルルルッ…!
レイヴンくっ…これじゃ消耗戦だ。まずいな…
レイヴンまだ青年はおろか、核の元にすら辿りつけていないってのに
カイル…なら、ここはオレが引き受けます!その間にみんなは上に向かってください!
スタンこの数を一人で!?無茶だ!
ヴェイグここにたった一人で残ったら、間違いなく死ぬぞ…!
カイル大丈夫です!
スタン大丈夫って、どうしてそんな事…
カイルだって英雄はこんなところで死んだりなんかしませんから!
レイヴン
カイルだから、みんなは早く上に──
レイヴンやれやれ、この馬鹿野郎が…
ゴンッ
カイルいったぁ!?な、何するんですか!レイヴンさん!
レイヴン全員でも厳しい状況だってのに、たった一人で何とかなるわけないでしょ
カイルけど…!
レイヴン英雄だから大丈夫だって?
レイヴン馬鹿な事言ってないでここは全員で切り抜けるのよ
カイル
レイヴン…って、勝手に仕切っちゃったけど、みんなもそれでいい?
スタンうん、俺もその方がいいと思う
ヴェイグ一人も欠けず突破しよう
ラピードワオーン!
カイル……
レイヴン体力の問題は後で考えるとして…──さあ、行きますか!
scene3夢と現実
スタンこいつで、最後だ!
ザシュッ
グガアアア!!
ヴェイグ…はあ、何とかなったな…
レイヴンあー、疲れた…全く。本当にギリギリだったわ…
カイルはぁ…はぁ…
スタン…カイル。さっきは何であんな事、言い出したんだ?
カイル…だって、ユーリさんや元の世界を救うためにも…誰かが上の階に行かないと…
スタンだからって、カイル一人が残ってどうにかなる状況じゃなかった。そうだろ?
スタンあまり無茶はしないでくれ…な?
カイルでも…
レイヴン…やれやれ。少年、ちょっといいかしら
カイル…何ですか、レイヴンさん
レイヴンおっさんからの忠告よ
レイヴン「英雄」に憧れるのは結構だけど、夢や憧れに囚われるなんて事、あっちゃいけないよ
レイヴンましてそれが原因で命を落とすなんて馬鹿馬鹿しい事なんだから
カイル…!別に死ぬつもりなんて…!
カイル…オレはただ、一人でも何とか出来るって本当にそう思ったから……
レイヴンおっさんには、そうは見えなかったけど
レイヴンみんなで戦った後でさえ息を切らしてるくらいだったのに、一人で太刀打ち出来るわけがない
レイヴンもっと自分の力量をわきまえて、冷静に周りを見極めないと
カイルオ、オレは…ちゃんと見極めてるつもりで…!
スタンまあまあ、二人共
スタンいろいろと言いたい事があるかもしれないけど、今は言い争ってる場合じゃない
スタンいつまた魔物が現れるとも限らないし、とにかく先に進んだ方がいいんじゃないのか?
レイヴン…ごめんごめん。スタンの言うとおりだね
レイヴンおっさんの説教話はこのくらいにしてさっさと上を目指すとしますか
スタンカイル、お前もそれでいいよな?
カイル…はい。それで大丈夫です…
カイル
ヴェイグ…レイヴン、一ついいか?聞きたい事があるんだが
レイヴンうん?何?
ヴェイグ…レイヴンは「英雄」に、随分とこだわっているように思える
レイヴン…そう?そんな風に見えた?
ヴェイグいつものレイヴンなら、飄々と受け流すか、茶化して終わりだ
レイヴン英雄を語る時だけ、らしくないって言いたいわけね…
ヴェイグああ
ヴェイグ前に話していた英雄の話…あれはやはり、レイヴン自身に関係があったんじゃないか?
レイヴン…どうしてそう思ったのかしら?
ヴェイグ…あの話をしている時、どこか実感がこもっているように感じた
ヴェイグまるで自分の経験を語るかのような、そんな話し方だったからな
レイヴンあー、あの時は酔いすぎたみたい。余計な事、言っちゃったかねぇ
レイヴン…て言うか、おっさんと英雄の話がそんなに気になる?
ヴェイグ仲間の事を知っておきたいだけだ
レイヴン……
レイヴン…少年
カイルは、はい…
レイヴンこの前話した「英雄」の話、もう少し詳しく話す事にしたわ
レイヴンあれね、実はおっさんの昔話でね
カイル…えっ?
レイヴンあんまり気持ちのいい話じゃないし、少年の夢を壊すかもしれない
レイヴンそれでも、聞きたい?
カイル…はい、聞きたいです。どんな話でも
レイヴンそう…わかった
レイヴンじゃあ話すけど、ちょっとここじゃ駄目ね。また魔物が現れるかもしれないし
レイヴンとりあえず先に進みましょうか。話はその先でするわ
カイルはい…!
scene1喪失の英雄譚
ヴェイグ階段を登ってみたが…ここもさっきと同じような部屋か
レイヴンえーっと、壁の小部屋に魔物はっと…
スタン…いないな。今度こそ間違いなく
ヴェイグ相変わらず、白き獅子の姿もないな。上層で待ち構えているという事か…?
レイヴンあと気がかりなのは一つだけね
レイヴンそーれっと!
ガゴゴゴゴゴゴゴッ…
スタンここも床がボロボロだ
レイヴン引き続き足元にはご注意を、っと…
ヴェイグ…それで、レイヴン。さっきの話の事だが…
レイヴンお?話?何の話だったかしら
ヴェイグ
レイヴン嘘、嘘。ちょっと場を和ませようとしたおっさんなりの冗談だから
レイヴンそれじゃあ、聞かせてあげるわ。英雄と呼ばれた…ろくでもない男の話を
カイル
レイヴン…おっさんはね、昔はシルヴァラントに仕える騎士だったのよ
カイルレイヴンさんが?意外です…
ヴェイグ全然そうは見えないな…
レイヴンおっさんもそう思う。今からしたら考えられないね
レイヴンと言っても、その実は褒められたもんでもなくって
レイヴン放蕩息子がそのまま騎士になったようなものだから…
レイヴン任務はいい加減だし、酔って女の子を引っかけたり
カイル何だか…今と全然変わらないような…
レイヴン今よりやる気はあったけどね。情熱と呼べるような…何せ若かったし
レイヴンま、そんな感じで騎士生活を送って、仲間も出来たわけよ
レイヴン信頼のおける同僚とか、ちょっと小生意気な後輩とか
レイヴンそれと…目標になる憧れるような先輩もいたしね
カイルレイヴンさんが憧れるなんてきっとすごい人だったんですね
レイヴン…そうね。おっさんだけじゃなくて、みんなの憧れの的だった
レイヴンその人に出会って、心を入れ替えたつもりで特訓して…
レイヴンそして、ようやくその人に追いついたと思った
レイヴンけど…、あれは十年くらい前だったかしら。シルヴァラントで内乱が起きたのよ
スタン内乱…?もしかして、キムラスカの国境近くで起きたっていう…
レイヴンお。詳しいのね
ヴェイグ…あれほどの内乱だ。シルヴァラントの国民なら誰でも耳にした事はあるだろう
ヴェイグ多くの街が消失し、たくさんの市民の命が失われたと聞く
レイヴン…そうね。何もかもがめちゃくちゃになった酷い争いだったわ
レイヴン自国民だけに留まらず隣国キムラスカの、とある街まで巻き込む事になったくらいだし
カイル大きな内乱だったんですね…
レイヴンその戦いで同僚も部下も、そして…憧れだった上司も全員死んだわ
レイヴンそして最後に、俺自身も…
スタンえっ…?でも、レイヴンさんは生きて…
レイヴンその後にいろいろあってね
レイヴン…まあ、そんなこんなで何とか生き返ったはいいけど、気付けば俺は世間から英雄扱い
レイヴン内乱を終わらせるために散った「救国の英雄」ってさ
カイル救国の、英雄…
レイヴン──冗談じゃない
レイヴン仲間も、憧れも…何一つ守れなかった男が英雄?…笑わせてくれる
カイルレイヴンさん…
レイヴン生きる理由をなくした男はどうなったと思う?
レイヴン命令を聞くだけの騎士として、ただ国に尽くす存在になった
レイヴン…そこからまた紆余曲折あって今のおっさんに至るわけだけど
レイヴンま、それはとりあえず今は置いておきましょう
レイヴン…以上が、おっさんの知ってる英雄の話
ヴェイグそれが…レイヴンが英雄にこだわる理由か…
カイルだから、英雄なんていいもんじゃないって…
スタンレイヴンさんが話してた事、ようやく繋がった気がする…
ラピードワフ…
カイル
scene2喪失の英雄譚
カイル
ヴェイグあの「救国の英雄」がまさか生きていたとはな…
スタンしかも、それがレイヴンさんでさらにはそんな背景まであったなんて…
スタン命を懸けて内乱を終わらせた勇敢な英雄…
スタン俺達はずっとそう聞かされてきたけど…結局は表側の話しか知らなかったって事だよな…
レイヴン…ちょっとちょっと、そんな辛気臭い顔しないでよ
レイヴンでもまあ、真実なんてさ所詮はそんなもんよ
カイル…あの、レイヴンさん
レイヴンうん?どうしたの、少年
カイルオレ…その…
ラピード…!ワウッ!ワウッ!
騎士団員1…!こいつらは…やはり例の咎人共か。クロー隊長の仰った通りだ…
騎士団員2例の魔物の罠は突破してきたらしい。様子を見に来て正解だったな
スタン…!白き獅子のお出ましか!
ヴェイグユーリはいないな…。…となると、まだ上か
レイヴン全く…もう少し休ませてくれてもいいんじゃない?
騎士団員1はっ、何をふざけた事を…
騎士団員1これより上層へは行かせん、…まあ、行ったところでどうせ我々の守備は突破出来んがな…!
騎士団員2お前達の身柄はこの場で私達が拘束する!…総員、構え!
カイルぐっ…
レイヴンせっかちだねぇ。それじゃ、話の続きは後にして…
ヴェイグ今は目の前の敵に集中する!来るぞ…!
カイル…わかりました!
レイヴンよしよし。んじゃまあ、かかってきなさいよ。白き獅子共
scene3喪失の英雄譚
ヴェイグはっ…!
ザシュッ!
騎士団員1ぐぅぅ…おのれ咎人め…
ドサッ
スタン…よし、終わったな
レイヴンはー、連戦は疲れるわぁ。やっぱり無理するもんじゃないねぇ
ヴェイグそれより、やはりユーリはオレ達の侵入に気付いていたらしいな
レイヴンまあ、あの不自然な魔物の罠の時点でそうだろうと思ってたけどね
スタンしかも、あの口振りだとこの先白き獅子との戦いは避けられそうにない
レイヴン…そうねぇ
カイルあ、あの、レイヴンさん!
レイヴンん?何?
カイルえっと、さっきの話なんだけど…オレ…その…
カイルレイヴンさんが英雄にどういう事を感じてるとか、そういうの、全然考えられてなくて…
レイヴンやれやれ…
レイヴン何を気にしてるのか知らないけど、おっさん、昔の事は整理ついてんの
レイヴン…おせっかいな奴らがいたからね
カイルおせっかいな奴ら…?それって、もしかして…
レイヴンとにかく、さっきは悪かったね
カイルいえ…。オレの方こそ、ごめんなさい
カイルレイヴンさんにそんな過去があったって知らなかったとはいえ…
カイルそれに、みんなが言うようにさっきは無謀だったと反省してます…
レイヴンわかってくれたならそれでよし、ってね
レイヴンそんじゃ、おっさんの話はこれで終わり
ヴェイグレイヴン、辛い話をさせてすまなかった
レイヴンだから言ったでしょ~?もう整理ついてるって
ヴェイグそうか。ならいいんだが…
スタンとにかく、そろそろ先に進もう。いつまでもここで立ち止まっているわけにはいかない
レイヴン若者と違っておっさんには休息が──…と言いたいところだけど、そうも言ってられないね
レイヴンさてと、行きますか
カイル…レイヴンさんにあんな過去があったなんて…
スタンカイル、何をやってるんだ?行くぞ!
カイル…はい、今行きます!
scene1変えられる未来
レイヴンそろそろ半分登ったくらいか。さーて、お次は何が出るか…
ヴェイグ本命には近づいているはずだが気は抜けないな
レイヴンでもま、気張るのもほどほどにね。何かいる時は、ワンコも教えてくれるでしょ
ラピードワンッ!
スタン…あれ、カイルは?
カイル
スタンおーい、カイル?
カイル…へっ?は、はい。何ですか、スタンさん
スタンやっぱり上の空だったな。敵がいつ出てくるかわからないんだ、気を付けないと
カイルは、はい。ごめんなさい…
スタン…もしかして、レイヴンさんの事で悩んでたのか?
カイル…はい。オレ、レイヴンさんの事情とか、何も考えてなかったなって…
カイル知らなかったとはいえ、無神経な事たくさん言っちゃったから…
スタンカイル…
スタン…カイルは、今どう思ってるんだ?レイヴンさんの事情を聞いて
カイル…オレ、レイヴンさんの気持ちはわかったつもりです
カイルでも…レイヴンさんが何一つ守れなかったなんて…そんな風にはやっぱり思えないんです
カイル…仲間を守る事が出来なかったのは事実かもしれないけど……
カイルそれでも、英雄だってみんなから認められた人なんです。きっと何かは成し遂げたはずで…
カイルこれからも、何かを成し遂げられる人だって…そう思うんです!
カイルだからその…何て言うか、レイヴンさんに自分自身の事、信じてほしいって言うか…
カイルあと、オレ達の事も…
スタンそうか…。それが、カイルの気持ちなんだな
カイル…はい!
スタンそれなら、一緒に考えてみよう。どうしたらレイヴンさんが自分自身を信じられるようになるか
カイルうーん、レイヴンさんが英雄って呼ばれるのを受け入れられないのは仲間を救えなかったから、ですよね…
スタンああ。でも、過去を変えるなんて事は出来ないしな…
カイルそうですね…、過去はさすがに──…
カイル…あっ!
スタンカイル?何か思い付いたか?
カイルはい、多分…!
カイルオレ、もう一度レイヴンさんと話してみます!
ヴェイグどうやら、ここが三階のようだが…
レイヴン人っ子一人いない…。白き獅子は上層で固まってるのかねぇ
カイルレイヴンさん!オレ、聞きたい事があるんです!
レイヴンうおっ!ビックリしたぁ!急に追い付いてきたと思ったらどうしたのよ、少年
カイル教えてください。ユーリさんと、何があったのか!
レイヴンユーリ?何よ突然
カイルレイヴンさんが言ってた「おせっかいな奴ら」って、ユーリさんの事じゃないですか?
レイヴン…へえ、少年案外察しがいいのね
レイヴンそうよ、ユーリ達の事。でも、改まって話すような事じゃ──
カイルいえ…ちゃんと聞かせてください!
カイル…知りたいんです
カイルユーリさんを助ける事が、レイヴンさんが自分自身を信じられるきっかけになるかもしれないから
レイヴン…!
カイルレイヴンさんが英雄って呼ばれる事を受け入れられないのは、かつての仲間を救えなかったからだ…
カイル…過去に戻ってあの時の仲間を助ける事は出来ないかもしれません
カイルけど、未来なら…今目の前にいるユーリさんの事は助けられます!
レイヴン
カイル今のレイヴンさんがあるのはユーリさん達の「おせっかい」のお蔭なんですよね
カイル…レイヴンさん。ユーリさんを…大切な仲間を、今度こそ助けましょうよ!
レイヴン少年…
カイルオレ、レイヴンさんの事大切な仲間だと思ってるんです
カイルだから、レイヴンさんには自分自身を信じてほしい…!
カイルそのためには何としてもユーリさんを助けないと駄目なんです!
カイル…だから、二人の事をちゃんと知りたい
カイル知った上で、レイヴンさんの力になりたいんだ!
レイヴンカイル…
スタンレイヴンさん、俺とヴェイグも同じ気持ちですよ
ラピードワフッ!
レイヴンやれやれ、おたくらまで…。暑苦しいったらないね
ヴェイグレイヴン、お前はオレ達に余計な気遣いをかけさせまいと考えているのかもしれないが──…
レイヴン…買い被りすぎよ。単純に話すほどの事じゃない、それだけ
ヴェイグそれも本音かもしれない。だが、レイヴンが自分の事を隠しすぎるのも事実だ
ヴェイグ無理に話せとは言わない。だが…オレ達もレイヴンの気持ちを理解したい
スタンああ。カイルの言う通り、俺達はレイヴンさんの力になりたいんです
カイル聞かせてください!お願いします…レイヴンさん!
レイヴン…はぁ、若いってのはいいねぇ。そういうまっすぐな目に、おっさん弱いんだわ
レイヴンどっかの誰かさんも、そんな目をしてたっけね…
レイヴンわかった、おっさんの負け。聞きたいって言うなら、聞かせてやろうじゃないの
カイルあ、ありがとうございます!
レイヴン礼を言われるような話じゃないよ。ま、暇潰しだと思って聞いておくれや
scene2変えられる未来
レイヴン…あれは確か、青年達に初めておっさんの素性を明かした日だったかね
カイル素性って…
レイヴン当時のおっさんにはもう一つの顔があったのよ。シュヴァーンって言う騎士の顔が…
ユーリ──レイヴン…いや、今はシュヴァーンか
ユーリあの時は取り逃がしちまったが、まさかこんな形で再会する事になるなんてな
シュヴァーン……
ユーリ聞きたい事は山ほどあるが、今は急いでんだ。そこを通してくんねぇか
ユーリ…それとも、本気でやり合うつもりか?
シュヴァーン
チャキッ
シュヴァーンシルヴァラント騎士団隊長首席シュヴァーン・オルトレイン、……参る
ユーリちっ、馬鹿野郎が…
シュヴァーン……ぐっ…
ユーリはあっ…はぁっ…
シュヴァーン俺の負け…のようだな
シュヴァーン……殺せ
ユーリ何だと…?
シュヴァーン国のため、俺は剣になった。命令を完遂するためだけに存在する国の剣だ
シュヴァーン…それがこの様だ。唯一の使命すらこなせないなら生きている意味はない
シュヴァーン何より元々死んだ身だ、今さら命など惜しくもない。…わかったら殺れ──
ユーリ一人で勝手に終わった気になってんじゃねぇ!
バキィ!
シュヴァーン…つっ!
ユーリ何が死んだ身だ!あんたの身体はまだ動くじゃねえか!
ユーリ国の剣だと…?なら、オレの目の前にいるのは誰だ?
シュヴァーン…何?
ユーリ情けねえツラしたただのおっさんだ。オレには「国の剣」なんて御大層なもんには見えねえな!
ユーリその目で見ろ。足で歩け。てめえの頭で考えろ!
ユーリ他人にゆだねてんじゃねえよ…てめえの人生だろうが。シャンと生きやがれ!
シュヴァーン俺の…人生…
スタンそんな事が…
レイヴン…こっぴどく叱られちゃってねえ。ありゃーほんとに立場なかったわよ
レイヴンま、でもそのお蔭で目が覚めてね。もっぺん、自分の人生を生きてみようかって気になったわけ
レイヴンもっとも、今はまだ生きる意味を探してるところだけど
カイルそれじゃあ、ユーリさんは人生の恩人って事ですか?
レイヴン大げさに言うとそんなとこねえ。いやぁ、頭があがらないわ
レイヴン青年も、おっさんなんて「裏切り者」って捨て置けばよかったのに…
レイヴンまぁ、そんな奴だから自然に仲間が集まってたわ
レイヴン「凛々の明星」って言ってね。おっさんやワンコもそこに属してた
レイヴン…当時の仲間達は、今この世界のどこにいんのかすらわかんない状況だしね
レイヴンだから、青年を助けてやれんのはおっさん達だけってわけ。ね、ワンコ
ラピードワフッ!
スタンその仲間達の事…大切だったんですね
レイヴン…そういう言い方も出来るかな
レイヴン
レイヴン…あ、まずいわ。じわじわ効く。我ながら超恥ずかしくない?コレ
スタンそんな事ないですよ!いい話じゃないですか!
ヴェイグ…ああ恥ずかしがる必要はない
カイルやっぱり聞いてよかったです…!オレ、レイヴンさんの力になります!
カイル今度こそ必ず、オレ達の仲間を…
カイルユーリさんを助けましょう!
スタンああ。レイヴンさんの話をここまで聞いて、負けるわけにはいかないよな
ヴェイグ…レイヴンには、ユーリに「借り」を返させなければな
ラピードワンッ!
レイヴン…それじゃ、遠慮なく力を貸してもらおうかね
カイルへへへ…。任せてください!
…グ…ルル…
ヴェイグ…待て、何か聞こえないか?
レイヴン…ああ、いるね。こりゃ魔物の声だ
ラピードガウッ!ガウッ!
スタン後ろ!?…って事は下の階か…!
ヴェイグどうする、魔物が来る前に先へ進むのも手だが…
レイヴン…残念だけど、その暇はないみたい
グルルルァ!!
ヴェイグ相当な数だ…。まだこれほど残っていたとは…!
カイルくっ…!こっちは急いでるんだ、邪魔するな!行くぞぉーっ!!
scene3変えられる未来
カイル蒼破刃!!
ギャウゥ…
カイルくそっ!いくら倒してもキリがないよ!
レイヴン焦ったら駄目よ、少年。数は多いけど、こいつらも無限に湧き出るわけじゃないんだから
ゴゴゴゴゴゴ…
騎士団員1──何の騒ぎだ!
騎士団員2…!まさか咎人がここまで!?
レイヴンこんな時に…全く、空気読めっての
騎士団員1四階への守りを固めろー!
カイル扉の向こうは上への階段…。騎士達が集まって来る!
レイヴン何が何でも登らせないつもりね。このまま階段に向かうのは…ちょっとキツいかも
スタン…みんな、まずは階段前の騎士達を蹴散らそう!
レイヴン魔物を引き連れて?下手すりゃ挟み撃ちよ
スタンけど、上手くいけば騎士達も魔物と戦闘になる
ヴェイグ隙を見て、扉を閉められればいいが…!
カイル行きましょう!扉が開いている内に!
騎士団員1咎人共が来るぞ!
騎士団員2魔物にも注意しろ!
カイルどけぇーっ!
ザシュッ!
騎士団員1ぐっ!
ドサッ
カイルみんな急いで!扉を閉め──!?
グルルルァ!!
カイルくっ、魔物が…!うわあっ…!
ザシュッ!
ギャウゥ…
スタンカイル、どうした!扉は閉まらないのか!?
カイルそれが…
ヴェイグまずい、動きそうにないな…
スタンそんな…!さっきは普通に開いたのに…
ヴェイグ連中の仕業かもしれないな。…何にせよ、魔物が押し寄せて来る、このままではらちが明かない…!
スタンなら…
スタンカイル、レイヴンさん、ラピード!
スタンここは俺とヴェイグで食い止める、みんなは先へ進んでくれ!
レイヴンあんた達…!
ヴェイグ…核とユーリを頼む
カイルでも…!
騎士団員2先へは行かせん!
ヴェイグお前の相手はこっちだ!
ザシュッ!
騎士団員2ぐあっ!
ドサッ
レイヴン…ここは頼んだよ、二人共!
スタン任せてください!絶対、無茶はしないし…そりゃあっ!
ギャウゥ…
スタン負ける気もない!
レイヴン頼もしいわね。…行くわよ、カイル、ラピード
ラピードワンッ!
カイル…ヴェイグさん、スタンさん!気を付けて!
ヴェイグ心配するな、行け!
スタン上の方は頼んだぞ!それと…カイル!
カイルは、はい!
スタン…頑張ってこい!
カイル…はいっ!!必ず、ユーリさんを助け出します!
スタンひとまず、ここは送り出せたか…無事にたどり着いてくれよ…!
ヴェイグあいつらなら大丈夫だ。オレ達が…抑えていればなっ!
ギャウゥ…
スタンはは、心強いな!それはそうと、勝手に俺と一緒に残らせちゃって悪かっ──
グルルルァ!!
スタンしまった…!
ヴェイグスタン、伏せろ!
パキパキパキッ!!
グ…ギャ…ガ…!!
スタンす、すごいな…あれだけの魔物を一瞬で氷漬けに…ありがとう、ヴェイグ!
ヴェイグそれより、次が来るぞ!
スタンよーし…俺も負けてられないな!どおりゃあああっ!!
ゴオオオオッ!!
グギャアアッ…!
ヴェイグフッ…「すごいな」か。これだけの炎を扱っておいて、よく言う
スタン情けないところばっかりじゃ、先に行ったみんなにも笑われるからな!
ヴェイグでは…背中は任せるぞ、スタン!
ヴェイグ絶氷刃!
スタンああ、お互いにな!こいつら全員、一匹だって通さない!
スタン爆炎剣!
グルルルァアアッ!!
スタン・ヴェイグうおおおおおおおっ!!
パキパキパキッ!!
ゴオオオオオッ!!
ギャオオォン……!
騎士団員3この咎人共、何て強さだ…!
グルルルァ!!
騎士団員3ちっ!邪魔をするな、魔物め!
ヴェイグどうやら、三つ巴になっているようだ
スタンああ…少しは楽になるといいな
スタン…こっちは必ず食い止める。任せたぞ、カイル…!
scene1咎を断つ爪
騎士団員1止まれ!ここは通さんぞ!
カイルレイヴンさん、待ち伏せされてます!仲間を呼ばれたみたいです!
レイヴンま、そうなるわね。止まれと言われて止まるわけにはいかないけどさ
カイルですね!そこをどけえっ!
騎士団員1うぐっ…!
カイル…はあっ…ふう…ん…?レイヴンさん、あれ見てください!
カイル外から光が…!きっと、あそこが頂上ですよ!
レイヴン…っは、そりゃよかった。おっさん、こいつらの相手に飽き飽きしてたとこよ
レイヴンさっさと突破して、先に行くとしますか!
騎士団員2そうやすやすと通すと思うな、咎人共が!!
レイヴン…ふっ!!
騎士団員2ぐっ…これだけの数を相手にして、まだ歯向かうか…!
レイヴンやすやすとなんて思ってないよ。こちとら二人も欠けてんだからさ…。ま、お勤めご苦労さん
騎士団員2お…おの…れ…!
レイヴンふぅ…大体片付いたみたいね。少年、ワンコ、そっちはどうよ?
ラピード…ワフ!
カイル問題なし!行きましょう!
レイヴンふ、頼もしくて結構結構
レイヴン青年もお待ちかねだろうし…それじゃあいっちょ、本命にご対面といこうじゃないの!
カイルはい!!
カイルうわっ、眩しい!
カイルここが最上階…!ついに──
カイル…!レイヴンさん、あのクリスタル…!
レイヴン…へえ、まさかあんなにもギラギラ光ってるなんてね。一目瞭然じゃない
カイルじゃあ、やっぱりあれが…
レイヴン例の「核」って事で、間違いないでしょ
レイヴン勿論…お守りは付いてるけど
クロー…来たか
カイル……
ラピード…ワオーン!
レイヴンとっくに臨戦態勢ってわけね。厳重な警戒にあの派手なクリスタル…わかりやすくていいわ
カイルあれを壊せばいいってわけですね
クローさせやしねえよ。ただ、ここまで来たのは褒めてやる
レイヴンお蔭様で戦う前からクタクタだけどね
クロー…ふ、よく言うぜ
チャキンッ!
クロー…一応聞いておくが、大人しく捕まる気は当然ねぇよな?
レイヴン…ちょっと見ない内にくだらない質問をするようになったのね
クローなら仕方ねぇ。ちょっと痛い目見てもらうぜ
レイヴンやだねえ、ピリピリしちゃって
クローさせてんのはあんただろ。…それより、何故天帝の命を狙う?
レイヴン別に命までは狙ってないわよ。おっさん達はただ…元の世界を取り戻しにきただけ
クロー取り戻す?…これだから咎人の言う事は聞いちゃいられねぇ
クローお前達がやってる事は天帝の守る平和の破壊…。だから天帝は結界を張った
クローこの結界はな、天帝が命の危機を感じない限り、発動しないって話だ
クローその結界の核を潰しに来たって事はお前らはつまり、天帝の命を狙う者って事だろ
レイヴンふーん…そんな風に説明を受けて守備させられてるってわけね
レイヴンま、大体合ってる事にしといてあげるわ
レイヴン…こっちとしても細かい事情とかさ、言いたい事は山ほどあるんだけど…今さらだわ
レイヴンここまで来たら、お互いやる事は変わんないでしょ
レイヴンまずはそのクリスタル、ぶっ壊させてもらうわ
クローさせるわけにはいかねぇ。全力で叩きのめす!
レイヴンくく…
クロー何がおかしい?
レイヴンいや、天帝に忠実な騎士様の割に随分とおしゃべりだなーと思ってね
レイヴン「咎人の言葉に耳を貸すな」だっけ?ラザリスの言いつけで確か、そんなんがあったでしょ
クロー……何が言いたい。はっきり言ってみろよ
レイヴンただ忠実に使命を全うするだけなら、言葉を交わす必要なんてないのよ。とっとと襲ってくればいい
レイヴンなのにそうしないって事は…本当は出ちゃってるんじゃないの?
レイヴン本物の青年の感情、がさ
クロー何だと…?
レイヴン…他人の命令に従ってるなんてらしくないじゃないの、ユーリ
クロー…!おい、いくらあんたにでもその名前を教えた覚えはないぜ
レイヴンこの世界では、ね
クロー…ちっ
カイルユーリさん、思い出してください!レイヴンさんは、あなたの大事な──
クロー黙れ。お前らの虚言に付き合う気はない
クロー総員、かかれ!咎人共を捕えろ!
カイルちょ…ユーリさん、話を──…!
レイヴンありがとよ、少年。けど、もう戦闘は避けて通れないわ
カイル…レイヴンさん。って、あれ、ラピードは…?
ラピードワウッ!
騎士団員3気を付けろ!そいつはただの犬じゃない!
カイルラピード、いつの間に…!
騎士団員4くそっ、抜かれた!クロー隊長、申し訳ありません!犬が一匹、そちらに!
クローちっ、そいつはオレがやる。お前らは構わずその二人をやれ!
騎士団員4…はっ!
レイヴンふ、ワンコってば随分気合入ってるじゃない
レイヴンこっちも負けてらんないってね。…それじゃ、行きますか!
カイルわかりました!
scene2咎を断つ爪
ラピードワンッ、ワンッ!
クロー頼もしいペット連れてるじゃねえか。躾はなってねえみてえだがな
ラピード…!ウウウッ…!
クロー遊んでやるよ。来な、犬っころ
ラピードワウッ!
クローふっ…なかなかいい攻撃だが…まだまだ!
ザシュッ!
ラピードグ、ウゥッ!
クロー攻撃が直線的過ぎるぜ。周りが見えてないみてぇだが、どうした、何かに怒ってんのか?
ラピードワウウウッ!
カイル大丈夫か、ラピード!
騎士団員他の心配をしている余裕があるのか、咎人!
カイルくそ…!
カキーンッ!
カイルうっ…!本当に強いな、こいつら…
レイヴンひとまずは目の前の敵に集中しなさい…!
レイヴン心配ないわ。あのワンコの事よ、一筋縄じゃいかない…!
ラピードグルルルル!
クローおっと…へえ、やるじゃねぇか犬っころ。部下にほしいくらいだぜ
ラピード…ッ!ワォーン!!
クローぐっ…!単なるペットのじゃれつきとはわけが違うってか
クローふ、何度も近くで見たがまた一段とキレがよくなって──…
クロー…!
クロー「何度も近くで見た」だと…?オレは一体、何を言って…
ラピードワンッ!!
ザシュッ!
クロー…ちっ!
カイルユーリさんの襟が…!
レイヴンやっと青年の素顔を拝めたわね
ラピードワンッ!
クロー犬っころだと思って手加減してたが…
チャキンッ!
クロー悪かったな。こっからは、本気で叩きのめしてやる
ラピードワオーーーーン!
カイルはあぁぁ!
ズバッ!
騎士団員ぐ、ぐふっ…!
ドサッ…
カイルはぁっ…はぁっ…!あと、少し…!
レイヴン騎士達もだいぶ減ってきたし少年、ちょっと休んでてもいいのよ?
カイル…っ、まだいけます!
レイヴン少年は元気だねぇ…。こりゃ、おっさんももうひと頑張りしなきゃ駄目だね…!
scene3咎を断つ爪
レイヴン…はぁっ!
騎士団員おのれ、咎人め…お許しを、ラザリス、さ…ま…!
ドサッ…
レイヴンいっちょ…あがり、かね…ぜぇっ…
カイルは、はい…。一人一人、すごい気迫で…、はぁっ…手強かった…
カイル……っ。そうだ、ラピードは!?
クローはぁ…はぁ…。ここにいるぜ、坊主
ラピードグ…ウゥ…
カイルそんな…ラピード!?しっかりしろよ、ラピード!
ラピード
カイル息はある…!けど、ボロボロだ…
レイヴン…容赦ないじゃない
クロー当然だろ…ぐっ…!こっちも無傷じゃ済まなかった。…ったく、信じられねえ犬だぜ
クロー何にせよ、次はお前達だ
レイヴンへっ…そりゃお互い様でしょ。そっちこそ、残りはおたくだけよ
クローまさかうちの部下達が揃ってやられちまうとはな
クローだが、所詮は半人前のガキ一人と肩で息するおっさんが一人…。今のあんたらならオレ一人で十分だ
レイヴン…見くびってもらっちゃ困るね。こう見えて…おっさんまだまだ元気よ?
クローはっ、そんな面してよく言うぜ。立ってんのも精一杯だろ
クローだが、あんたの実力はオレもよく知ってる。見くびるつもりなんざねえさ
クロー…あんたの息が整う前に一瞬で、ケリつけさせてもらうぜ
レイヴン…!速い…!
レイヴン避けきれな──
クロー…しばらく、寝ときな。レイヴン
カイルくっ…させるもんか!間に合えっ…!
ガキーンッ!
カイル…!?つっ──…!
クローオレの一撃を受け止めた事は褒めてやるぜ。だがその腕、いつまでもつか…!
カイルくっ…!
クローはああっ!
ザシュッ!
カイルうわあぁっ!?
レイヴンカイル!
カイル
クロー殺しちゃいねえよ。気を失って寝てるだけだ
レイヴンっ…!てめえ、いい加減に──…くっ!
クローもはや抵抗する力すら残ってねえってか
レイヴン…ったく、情けないね
クロー…レイヴン、お前もここまでだ
クロー帝都に連行する。それまではこのガキと一緒に大人しく寝てな
チャキッ…
クロー…それじゃあな。いい夢見ろよ、おっさん
レイヴンくっ…
レイヴン俺は…
レイヴン俺はまた、救えないまま──
scene1自分の正義
クロー──いい夢見ろよ、おっさん
レイヴン……
カキーーンッ!
レイヴン…?今のは…
クローお前…!
カイルはぁ…はぁ…レイヴンさんは、…オレが守る!
クロー…当分目覚める事はねえと思ってたがまだそんな力が残ってたとはな
カイル…甘く見るなよ!オレはまだ…、まだ戦える!はああああぁぁぁぁっ!!
キンッ!キンッ!
クローどうした?太刀筋、ふらついてるぜ!
カイルくっ…!
レイヴン少年…!
カイルはぁ…はぁ…
カイル立ってください、レイヴンさん!
カイルここで立たなきゃ、また仲間を助けられない…!そうでしょ!?
レイヴン…!
カイルユーリさんを助けるんじゃなかったんですか!?
カイル「借り」を返さなくていいんですか!?
カイルだったら…、だったら向き合って戦わないと!
レイヴン少年…
カイルレイヴンさんならきっとユーリさんを助けられます!
カイル──英雄だから!
カイルオレはレイヴンさんを信じる!だから…レイヴンさんも自分自身を信じてください…!
クロー何をごちゃごちゃと…!はっ!
ズガッ!
カイルうぐっ…!
クローおいおい、もう終わりか?
カイルはぁ…はぁ…ま、まだだ!今ぶっ倒してやるから覚悟しろよ!
カイルはあーっ!
レイヴン…英雄、ね。言ってくれるじゃない
レイヴン…全く、おっさん使いの荒い少年だわ
レイヴン…でも、少年の言う通りね。借りを返すまで、諦めるわけにはいかないものね…!
scene2自分の正義
キンッ!ガキイィン!
カイルはぁ…はぁ…くぅ!
クローおい、もう剣を持つ力も残っていないんじゃねえのか?
カイルそんな事…ないっ!
クローまぁ、いいさ。これで、終わりにしてやる…!はぁっ!
ガキィィインッ!
カイルうっ、うわああああっ!
レイヴンカイル!
カイルうっ…!
レイヴン少年、大丈夫!?
カイル…だ、大丈夫です…!オレはまだ…、全然…
レイヴンカイル…
レイヴン悪かったね、ここまで頑張らせて
レイヴン…後はおっさんに任せなさい
カイルレイヴンさん…
カイル…オレ、レイヴンさんなら絶対に立ち上がってくれるって思ってました…
レイヴンはは…。お待たせ──っと
クローやる気になったのか?
クローさっきまで、何もかも諦めたような顔してたくせに
レイヴンおっさんには退くに退けない理由があるからね
レイヴン大人として…情けない背中は見せらんないでしょ
クロー…へえ、勘違いしてたぜ。あんたはもっと枯れた人間だと思ってたが
レイヴン何を言ってんのよ。水を与えたのはおたくでしょーが
クロー…覚えてねぇな
レイヴンあったのよ。青年が、おっさんの心を潤わせてくれた事が
クロー……やっぱり咎人だな。聞くんじゃなかったぜ
レイヴンあら、年上の話は素直に聞いておくものよ?
クロー口車には乗らねぇよ。オレは白き獅子として、あんたを捕まえる…それだけだ
レイヴン白き獅子として、か…
レイヴンふ、まるで昔のおっさんみたいね
レイヴン騎士として盲目的に国に仕えてたあの頃の俺と同じ…
クローあんたが国に仕える騎士だと?何を寝ぼけた事言って──…
クローうっ…!
クローな、何だ…?頭が…
シュヴァーン──殺せ
ユーリ何だと…?
シュヴァーン国のため、俺は剣になった。命令を完遂するためだけに存在する国の剣だ
シュヴァーン…それがこの様だ。唯一の使命すらこなせないなら生きている意味はない
クローくっ…!今のは……
カイルユーリさん…?もしかして記憶が…!?
レイヴンへぇ、いい兆候じゃない。ちょっとはおっさんの言う事信じる気になった?
クロー…馬鹿言うな。信じるわけねぇだろ
クロー咎人の術だか何だか知らねぇが、不発に終わったな
レイヴンったく、何を言っても駄目か
レイヴンけど、こうやって見てると、あの時偉そうにおっさんに説教たれた青年と同じ人物だなんて思えないね
レイヴン…自らの正義を見失って騎士として天帝に仕えてるなんて、全然ユーリらしくない
クローオレらしさだって?あんたにオレの何がわかる
レイヴンわかってるよ。少なくとも、今のお前さんよりはね
カイルオレにだってわかります…!ユーリさんが、大切な事を忘れちゃってるって!
クロー…何を言おうが無駄だぜ。オレはあんたのように、咎人の言葉に惑わされやしない
レイヴンやれやれ、頭が固いねぇ
レイヴンやっぱり、あの時の俺みたいに…
レイヴン一発ぶん殴らないと、治らないみたいだな
クロー上等だ。返り討ちにしてやるよ
レイヴン…少年、今こそお前さんの力が必要よ
レイヴン「今度こそ」仲間を助けたいの。…手伝ってくれるんでしょ?
カイル…!はい、勿論です!
レイヴンよーし、それじゃあ…
レイヴンいくぞっ…!!
カイルうおおおおおっ!
クロー来い…!
scene3自分の正義
レイヴンはぁ…はっ…ごほっ…。随分いい顔になったじゃない、ユーリ
クローぐっ…がはっ…!はぁ…はぁ…
クローまさか、このオレが…くっ…!
カイルはぁ、はぁ…ユーリさん、ここまでにしましょう…!これ以上戦う必要は──
クロー…いや、まだだ。お前ら咎人は必ず捕える
クローそれに、天帝の命をあんたらに狙わせやしな──
レイヴンいい加減にしな、青年
レイヴン青年の意思はどこにあるのよ
レイヴンおたくが今必死になってやろうとしてる事のどこに正義が?
レイヴン…ふざけんじゃねえ!
クロー
カイルレイヴンさん…
レイヴン正義を他人にゆだねてんじゃないよ
レイヴン「その目で見ろ。 足で歩け。 てめえの頭で考えろ!」
クロー…!
レイヴン…ユーリ、おたくが教えてくれたんでしょうが
クローくっ…!また、この感覚──…
ユーリ一人で勝手に終わった気になってんじゃねぇ!
バキィ!
シュヴァーン…つっ!
ユーリ何が死んだ身だ!あんたの身体はまだ動くじゃねえか!
ユーリ国の剣だと…?なら、オレの目の前にいるのは誰だ?
シュヴァーン…何?
ユーリ情けねえツラしたただのおっさんだ。オレには「国の剣」なんて御大層なもんには見えねえな!
ユーリその目で見ろ。足で歩け。てめえの頭で考えろ!
クローくそっ…!また、頭の中に──
レイヴン思い出したかい?青年
レイヴン…いい加減やめにしようや。他人にゆだねんのはさ
レイヴン──てめえの人生だろ、シャンと生きやがれ!
scene1明星は再び瞬く
レイヴン──てめえの人生だろ、シャンと生きやがれ!
クロー…!その、言葉は──…
クローうっ…!
カイルユーリさん!?まさか…!
クロー…………
クローオレは…
レイヴン目ぇ覚ましな、ユーリ!
クローえ、おいちょっと待て!おっさ──
バキィ!
クローいって…。おっさん、やり方が荒っぽいぜ…
レイヴンはぁ、はぁ…。おや…?
レイヴンその様子、もしかして…
クロー…ああ、思い出したさ。お蔭様でな
カイルやっぱり!ユーリさん、記憶が…!
レイヴンおっさんの拳が効いたのね
ユーリいや、あんたが殴る直前には記憶は取り戻してた。明らかに余計な一発だ
レイヴンええ!?そ、そうなの…?
レイヴン…まあまあ、おっさんも前に一度おもっきし青年にぶん殴られた事あるしさ
レイヴンほら、覚えてるでしょ?勝手に終わった気になってんじゃねぇ!とか言って
レイヴンだからほら、お互い様って事で~
ユーリそんな事もあったっけな。…ったく、執念深いおっさんだぜ
レイヴン少年もよく頑張ったわね
レイヴンいやー、さすがのおっさんも今回はちょっとマズイと思ってたのよね
レイヴン何せほら、青年ってば容赦なかったじゃない?
ユーリ…はいはい、悪かったよ
レイヴンでも、青年もこうして記憶を取り戻す事が出来たし…
レイヴンこれも少年が協力してくれたお蔭。ありがとね…カイル
カイルレイヴンさん…。力になれたならよかったです!
カイルオレ、レイヴンさんの事信じてました
カイルレイヴンさんなら、絶対ユーリさんを助けられるって
レイヴンふ、まあね
レイヴン…俺様にかかれば、記憶の一つや二つ、取り戻すのなんて楽勝よ!なーんて──
ユーリやれやれ、どこが楽勝だって?もうよれよれじゃねーか
レイヴンうっ…。…て、それ青年が言うの?
ユーリそれより、クリスタルの事はいいのか?
ユーリお前ら、あれが目当てで来たんだろ?
カイルそうだった!オレ達、あのクリスタルを壊しに来たんだ!
カイルレイヴンさん、早くクリスタルを壊しましょう!
レイヴンはいはい、わかってるよ。んじゃ、最後の大仕事と行きますか
レイヴン青年、あんたはワンコの事見ててやってちょうだい
ユーリああ、勿論言われなくてもそうするさ
ユーリ…相棒だからな
カイル──これがクリスタルか。近くで見ると、やっぱり強い力を感じる…
レイヴンそりゃそうでしょ。あんなでっかい結界を作る力を送ってるんだから
レイヴンじゃ、少年。とっととやっちゃって!
カイルえっ、オレがやるんですか!?
レイヴン少年なら出来ると思ってるから言ってるのよ
レイヴンおっさんが見届けてるからさ、ばっちり決めてみせなさい
カイル…わかりました!
カイル…はあああっ!
パキイィンッ!
カイル空に伸びてた光が消えていく…。これでやっと…
レイヴンそうね
レイヴン…さてと。これで核も残り二つ…他のみんなも上手くいってるといいんだけど
カイルみんなならきっと、大丈夫ですよ!
カイルそれより…
カイル…あの、レイヴンさん
レイヴンん?
カイルさっきの戦い…レイヴンさん、本当にかっこよかったです
レイヴンこの少年は、何を言い出すかと思えば…
カイルユーリさんを助けて、核も壊せた。やっぱりオレ、レイヴンさんは英雄だと思います
レイヴン…そうだとしたら、少年のお蔭だけどね
カイルえ?今何て…
レイヴン何でもないわ、こっちの話
レイヴン…それより少年、まだ英雄になりたいって思ってる?
レイヴン憧れの英雄も、成れの果てはこーんなおっさんだったりするのよ
カイルはい!むしろ、レイヴンさんの事を知って憧れる英雄がもう一人増えました
カイルオレは父さんやレイヴンさんのような英雄になります、絶対に!
レイヴン少年…
レイヴンお前さんならなれるよ、きっと
scene2明星は再び瞬く
レイヴンユーリ、ワンコの様子はどう?
ユーリああ、ようやく意識は取り戻した。命には別状なさそうだが…
ユーリ見たところ、自力で歩けるようになるまでは少し時間がかかりそうだな
ラピードクゥン…
ユーリ…悪かったな、ラピード
ユーリそれとレイヴン。あんたにも随分と世話かけちまったな
レイヴンさて、何の事かしらね~。おっさん忘れっぽいからなーんも覚えてないわ
レイヴン…でもまあ、これで貸し借りなしってわけだし、あんま気にしなくていいんでない?
ユーリレイヴン…
ユーリ…ふ、それもそうだな
カイルふふっ
レイヴンん?少年、何笑ってんのよ
カイルあ、いや、二人は本当に仲がいいんだなーって思って──
レイヴン少年~、前にも言ったはずよ。おっさん達は単なる腐れ縁みたいなもんだって
レイヴンそんな暑苦しい青春みたいな関係じゃないんだって
カイルえぇ~?うーん、やっぱりどう見ても仲良しだと思うんだけど…
レイヴン…さてと。ここはもう用済みだし、そろそろおいとましますか
カイルそうですね、スタンさんやヴェイグさんの事も気がかりだし…!
ユーリスタンとヴェイグ…?あいつらも一緒なのか?
カイルはい。オレ達を先に進ませるために、二人は下の階に残ってくれたんです
レイヴンあー…その辺りの事とかおっさん達の目的の事とか、青年にも話しておいた方がよさそうだな
レイヴン下へ降りながら諸々の事情は説明するわ
ユーリああ、頼む
ユーリ…それじゃ、早速行くか。ラピードはオレが担いで連れて行く
カイルよーし、行きましょう!
scene3明星は再び瞬く
スタンはぁ…はぁ…。ヴェイグ…
ヴェイグ何だ…?
スタン生きてるか?
ヴェイグ…生きてなきゃ返事は出来ないだろう
スタンははっ、そりゃそうか
ヴェイグよし、スタン。大分休めたし、そろそろ──
カイル…あっ!スタンさん!ヴェイグさん!
スタンカイル…?レイヴンさん、ラピード…、それにユーリも…!
レイヴン無事でよかったわ。お互いボロボロだけど
ヴェイグ…ユーリ、記憶が戻ったようだな
ユーリああ、お蔭様でな
ユーリおっさんから事情は聞いたぜ。二人にも随分と心配かけちまったみたいだな
スタンいや、構わないさ!ユーリが戻って来てくれて本当によかったよ
ヴェイグところで、例の核はどうなった?
レイヴンちゃーんと壊したよ。空に伸びてた光の柱も、綺麗さっぱり消えたし
スタンそっか、よかった…!
カイルそれより、この魔物の数…スタンさん達が全部倒したんですか?
カイルしかも、騎士達まで同時に…
スタンああ。かなり大変だったけどヴェイグと一緒だったからな、どうって事ないさ
ヴェイグああ。安心して背中を預けられた事が勝因だ
カイルたった二人で…すごい。さすがです!
ユーリ…この騎士達は死んでんのか?
ヴェイグいや、気絶させただけだ
スタンこの人達も記憶を改変されてるだけだ。罪はないからな…
ユーリ
カイルこのままにしておくのは可哀想ですね…
レイヴンそうね。いつまた魔物達が出てくるかわかったもんじゃないし
ユーリ心配ない、オレがここに残るさ
ユーリ記憶を操作された偽りの世界であれこいつらは一応、オレの部下だったわけだ
ユーリなら、オレが面倒見る…それが筋ってもんだろ?
ユーリ騎士ってのは気乗りしないが、むざむざ見殺しにも出来ねえしな
カイルユーリさん…
ユーリま、上手い事クローのふりしてりゃオレに危害が及ぶ事もないだろ
レイヴンそれもそうね
ユーリそれじゃ、決まりだな。…っつーわけで、ラピード。お前ともここで一旦お別れだ
ユーリヴェイグ、こっからは代わりに担いでやってくれねえか?
ヴェイグああ、勿論だ。来い、ラピード
ラピード……
カイル…?ラピード?
ラピードワフ、ワフワフッ!
ユーリ…やれやれ
レイヴンん?どしたのワンコ
ユーリああ、ここに残るってよ
ユーリオレの事、よっぽど心配してくれてるみてぇだな
ヴェイグふ、頼もしいな。さすがお前の相棒だ
スタンラピード、ユーリの事頼んだぞ!
ラピード…ワフッ!
ユーリそれじゃ、ひとまず決まりだな
ユーリ…こいつらの安全が確認出来たらオレ達もすぐに後を追う
カイルはい!必ず、追って来てくださいね!
レイヴンよーし、そんじゃおっさん達もさっさと神殿から出るとするかね
カイル…!そういえば、入口でコハクを待たせたままじゃない!?
ヴェイグそうだったな。もう随分時間が経ってる気がするが、まだいるだろうか
レイヴン問題は、光の柱の事何て説明するかね。さて、どうしたもんか…
スタンまあ、何とかなるって!
レイヴン…何とかって、何よ。コハクちゃんを怒らせたら、あの強烈な蹴りが飛んでくるわよ
レイヴン下に着くまでにマトモな言い訳考えないと…
カイル……。と、とにかくオレ達は行きます!
カイルユーリさんとラピードも気を付けて!また会えるの、楽しみにしてます!
ユーリおう、またな
ラピードワフッ!

NameDialogue
scene1神殿への道程
ゼロスいやー、結構歩いて来たな。さすがに疲れたぜ…
スレイうん。でも、そのお蔭で光の柱にも大分近づいてきた
ミクリオ翠樹の神殿に着くのももうすぐじゃないか?
コレットうん…!あともう少し、頑張らなきゃ
コレットそだ、私、ちょっと先の様子を見てくるね?みんなはここで待ってて!
スレイあ、コレット…って行っちゃった
ミクリオきっと、落ち着かないんだろうな。覚悟したとは言え、ロイドを相手にするんだ、無理もないよ
ゼロス
ゼロス…なあ、ここまでは順調に来てるよな?
スレイそうだけど…どうかした?
ゼロスずっと強行軍だったし、ちょっとどこかで休まねぇか?
ミクリオそれは、コレットのためかい?
ゼロスおうよ。さっきも元気な風に見せてたけど、ありゃ上辺だけだろうし
ゼロスそれに俺さま達だって、肝心の神殿で十分に動けないんじゃどうしようもねーぜ?
ミクリオ確かに、出来れば休息をとりたいけど…少し難しいだろうね
ミクリオこの辺りに休めそうな場所はないし、街もない。戻って休むにしても人目を気にしなければならない
スレイそうだな。…オレ達の事がばれて、騒ぎになったらまずいもんな
ミクリオそれに何より時間が惜しい。今は一刻も早く核を破壊しないと
ゼロス
コレットみんなー!こっち、道があったよー!
ゼロスおう!すぐ行くぜ、コレットちゃん!
ゼロス…ま、ミクリオの言う通りだな。よっしゃ、んじゃさっさと神殿まで行っちまおうぜ
ミクリオそうだね。今は少しでも早く問題を解決するのが一番の方法だと思う
スレイよし…じゃあコレットに合流しよう!
scene2神殿への道程
コレット
ミクリオ光の柱を見ているのかい?
コレット…うん、やっぱり気になっちゃって
コレットあの光の柱は結界の核から出てて…確か光の下に神殿があるんだよね
スレイうん、ハロルドさんはそう言ってたな
コレットロイドもそこに…
ゼロス…だろうな。白き獅子が咎人の捜索を放り出してまで守りに入ってんだ
ゼロスそうすんなりと、核を破壊ってわけにはいかねぇだろうな
ミクリオああ、だが僕達も逃げるわけにはいかない
ミクリオ例えロイドと戦う事になっても…
スレイでもさ、ロイドの記憶が戻る事だってあるかもしれないだろ?
スレイそうなれば、戦う理由はなくなる。ロイドの記憶を戻す方法を考えてみてもいいんじゃないか?
ミクリオそれが出来れば最善だろうね…。けれど、僕らにはその明確な手段がわからない
ミクリオ僕の記憶が戻った時だって、スレイと共に行動していても時間がかかったんだ
ミクリオ…その間スレイを疑い続けながら…ね
スレイそっか…
ミクリオ特異点の修復は今も続いている。やはり僕達は核の破壊を最優先で考えるべきだと思う
ゼロス…あれもこれもってのは、虫がよすぎるのかねぇ
ゼロスロイドの野郎、世話かけさせやがって…
コレットだいじょぶだよ、ゼロス
コレット私、決めてるから。世界からもロイドからも逃げない、今度は私が助けるって
スレイコレット…
スレイよし!世界とロイドを取り戻すために、オレ達ももっと気合を入れていこう!
ミクリオ肩に力が入りすぎると空回りするよ、スレイ
スレイいいだろ?ロイドはオレ達にとっても大事な仲間なんだからさ
ゼロス…ま、気楽に行こうぜ。核を破壊する前に、バテるわけにはいかねぇしな
コレットまだ光の柱にも辿りつけてないもんね
ミクリオああ、僕達の戦いは神殿の中に入ってからが本番だ
ミクリオロイドだけじゃない、あちらはラザリスの結界を守るためにあらゆる手を尽くしてくるだろう
コレットうん…!それも覚悟の上だよ
スレイ大丈夫、みんながいればきっと何とかなるさ
ミクリオ…よし。じゃあ、まずは神殿に到着しないとね
スレイああ、行こう!
ゼロス…ロイドから逃げない、かコレットちゃんの言う通りだよな
ゼロス待ってろよハニー、俺さまが目を覚まさせてやるぜ…!
scene1遺跡好きの学者先生
コレット見て、光の柱まであと少しだよ
スレイそうだな。にしても、わかりやすい目印があって助かった~
ミクリオああ。神殿の事は名前と大まかな場所以外、ほとんど情報が出てこなかったからね
ミクリオあの光の柱がなかったら神殿を探すのさえ一苦労だったよ
ゼロス…うん?おい、向こうから誰か来るみたいだぜ
コレット…!
???ふう、疲れたわね…
コレットあ、あなたは…!
???あら?えーっと…
???知り合いか?リフィルさん
リフィルいえ、覚えはないのだけど…どこかで会った事あったかしら…?
コレットあ…え、えっと…
ゼロス会いましたとも、夢の中でね。こんな美人、忘れるはずがない
リフィルちょ、ちょっと、何よあなたは…
ゼロスまさか現実でも会えるなんてこれはもう運命!でしょ
リフィル…はぁ
リフィルそう思うなら、自分の名前くらい名乗ってはどうかしら?
ゼロスおっと、これは失礼!胸の高まりに我を忘れてたぜ
ゼロス俺さまはゼロス・ワイルダー。気軽にゼロスくんって呼んでくれよな!
???あはは、面白い奴だな
ティトレイおれはティトレイだ。よろしくな
ゼロスお付きの男にゃ興味ねぇな
ティトレイ…まぁ、別にいいけどよ。リフィルさんに手を出すのはやめておいた方がいいぜ
ティトレイ何せこの人、学者のくせにすぐ──
リフィルすぐ…何かしら?
ティトレイいや…。手が出るなんて、そんな失礼な噂があったような気が…
リフィル噂、ね。まぁいいわ、ティトレイ、この件は後でゆっくり聞かせてもらうわね
ティトレイか、勘弁してくれ~
スレイえっと…学者さんなんですか?
リフィルええ、そうよ。ちょうどこの先の森で薬草を取って来たところなの
ティトレイおれはその護衛。魔物がよく出てくるからな
リフィルあなた達も森へ?
スレイはい。あの光の柱が気になって
リフィルああ、あれね。本当に不思議な光よね…
リフィルあの光は森にある大樹から出ているみたいだし、一体何なのかしらね?
ミクリオ大樹から…?それでは、やはりその付近に翠樹の神殿があるという事か…
リフィルお前もそう思うのか!?
ミクリオっ、あ、ああ…
リフィルそう…昔から、森のどこかに翠樹の神殿があると噂されている
リフィルその噂を元に精査を重ね、私も何度も探してみた。しかし、未だに見つけられてはいない…
リフィルもしこれが、巧妙に隠されているためだとしよう。だがそうなると、その理由は何だ?
リフィル何のために、そしてどういう歴史的背景で造られたのか。非常に興味深い…
ティトレイおーい、リフィルさん。リーフィールーさーん
リフィル何だ!?ティトレイにはこの素晴らしさが理解出来ないのか!?
ティトレイほらほら、みなさん呆気に取られてるでしょ!!
コレット…遺跡、お好きなんですね
リフィルええ!遺跡や歴史的建造物に興味があるの。本業以外の、趣味みたいなものね
ゼロスふ、ふーん…
ティトレイ何だ、その妙な反応?
スレイいや、リフィルさんと同じように遺跡が好きな人がいたなって…
リフィルあら、私と気が合いそうね。是非とも会って話がしてみたいわ
スレイそれが…遠くに住んでいて、会いに行くのは難しいというか…
リフィル…それは残念ね
リフィル…あら。もうこんな時間だわ。ティトレイ、私達はそろそろ街へ帰りましょうか
リフィルあなた達、もし神殿を見つけたら是非詳しく教えてほしいわ。私達はアルメリアにいるから
スレイわかりました
リフィル…ああ、それと森に白き獅子の方々がいたからくれぐれも迷惑はかけないようにね
コレット白き獅子が…
ティトレイんじゃあな。気を付けて行けよ
ゼロスいや~、何とか誤魔化せたな
コレットごめんなさい。思わず、リフィル先生に声かけちゃって…
コレット咎人だって知られちゃうかもしれなかったのに
ミクリオ知り合いなら無理もないさ、気にする事はないよ
ゼロスそうそう。俺さまだって、思わずリフィルさま~って、呼びそうになったもんな
コレットありがと。次からはちゃんとするね
ミクリオそれより、気がかりなのは白き獅子の方だ
スレイ森にいるって話だったし、ここから先は、もっと警戒して進んだ方がいいな
コレットそだね。私達が捕まったりしたら、世界はこのままになっちゃう
コレットロイドやリフィル先生も、私やゼロスの事を思い出せないまま…
コレットそんなのは悲しすぎるよ
ゼロス大丈夫だって、コレットちゃん。俺さまがついてるんだからよ!
ミクリオゼロスがついているのはともかく、世界を元に戻せさえすればきっとみんなの記憶も元に戻るさ
ミクリオそのためにもまずは神殿に辿りつかないといけない
コレットうん…!進もう、みんな
コレットリフィル先生も、ロイドも…今度は私が助けなくちゃ…
scene2遺跡好きの学者先生
スレイあれがリフィルさんの言ってた大樹…
コレットすごい…他の木とは桁違いの大きさだよ
ゼロスおいおい、こりゃとんでもねぇな…
ミクリオ聞いた通り、光の柱も大樹の頂上から伸びているようだ
スレイ本当だ。…でも、ここから見た感じ神殿みたいな建物は見当たらない
ミクリオああ、僕もそこが気になっている。大樹を神殿とは呼ばないだろうし
コレットでも、光が出てるって事は核はこの大樹の上の方にあるんだよね?
ミクリオああ、それは間違いないと思う
スレイもしかして、この大樹の中に神殿があるんじゃないか?
コレット樹の中に神殿が?
ミクリオこれだけ巨大なら考えられなくはないけれど、僕らの知る限りそんな神殿は今まで一度も見た事も聞いた事もない
スレイ確かに今まではないけど、そうだったら面白いと思わないか?
ミクリオ…それは否定しないよ。だが、だとすれば気になるのは、どのようにして造られたのか、だ
ミクリオ大樹を土台に後から造られたのか、それとも、神殿を覆うように大樹が成長したのか…気になるな
ゼロスはあ…忘れてた。こいつらもこういう考察大好きな遺跡馬鹿だった…
ゼロスとにかく、それを確かめるためにももっと近くに行ってみようぜ
ゼロスハッキリ言ってここからじゃなーんも見えねぇ。だろ?
ミクリオ確かに、ゼロスの言う通りだな
スレイそれじゃ、先に進もう!
コレットうん!
コレット待っててね、ロイド…
scene1門前の攻防
スレイ見えた!大樹の根本だ!
コレットあれは…扉?
ゼロス…おい、あそこを見てみろよ。扉を守ってるの、あれって白き獅子じゃねーのか?
ミクリオああ、間違いない。という事は、あれが翠樹の神殿への入口か
ミクリオまさか本当に大樹の中に神殿があるなんてね
ゼロス後は、あの中に入るだけか…。入口の騎士が邪魔だな…
ゼロスどうするよ?力ずくでご退場願うか?
ミクリオいや、それは避けたいね
ミクリオ正面からの戦いとなれば、増援を呼ばれる可能性がある
コレットそだね。それにあの人達も記憶を改変されてるだけだし…
スレイでも、彼らに気付かれないで侵入するにはどうしたらいいんだろう
スレイこの辺り、扉までは隠れる場所もないし…
ミクリオ何かで気を引く…のも難しいか。彼らがそう易々と扉の前をがら空きにするとは思えない
スレイうーん…あ!…じゃあさ、こういうのは?
スレイ誰かが気を引いてる隙に、他の人が後ろから奇襲をかけるんだ
ミクリオ確かに、一瞬で気絶させれば最小限の被害で済むし、仲間も呼ばれない、か…
ゼロスいいじゃねぇか。それならいけそうだな
ミクリオとなると陽動側と奇襲側、二手に分かれる必要があるね
コレット
コレットあのね、私が陽動側じゃ駄目かな?
ゼロスいやいや!?コレットちゃん、それは危ないって!
ミクリオゼロスに賛成だね。陽動側は、一歩間違えれば騎士達に捕まってしまう危険な役だ
コレットで、でも…
ミクリオこれは僕とスレイが適任だろう。いざとなれば神依も使えるからね
スレイそうだな。オレ達が引き付けるから、コレットはゼロスと一緒に奇襲を頼めないかな?
コレット
ゼロスコレットちゃん、心配すんなって。大丈夫、いざとなりゃ俺さまが守ってやるからさ
コレット…うん。ありがと、ゼロス
scene2門前の攻防
スレイ準備はいいか?ミクリオ
ミクリオ…ああ、行こう
騎士団員1こちら異常なし。そっちはどうだ?
騎士団員2こっちも何も見つからない。…本当に敵なんか…むっ!?
スレイ白き獅子だな!
ミクリオそこをどいてもらおうか…!
騎士団員1貴様ら…咎人か!
騎士団員2たった二人でここに来るとは…!舐められたものだな
ゼロス残念。二人じゃないんだわ。これが
騎士団員1なっ、こいつら後ろから──
コレットご、ごめんなさい…!
ゼロスよっと!
バシッ!
騎士団員1ぐぁ…ファング、様に報告を…
ドサッ
スレイふぅ…上手くいったね。戦闘にならなくてよかった
ミクリオ一瞬だったし、これなら神殿の中の騎士達にも僕達の事は気付かれていないだろう
ミクリオけど、油断はせずに行こうか。見張りは彼らだけじゃないかもしれない
ゼロス別の奴に見られちまっても困るしな。早いとこ入っちまおうぜ
ミクリオそうだね。よし、扉を開けるよ
ガゴゴゴゴゴ
ミクリオ見たところ敵の姿はない…か?
スレイっ!ミクリオ!上だ!
グルルルル!
ミクリオ…魔物!?一体どこから!?
ゼロス大樹の表面にくっついてやがったんだ!
ギャオオ!
ミクリオくっ、ツインフロウ!
バシュウッ!
ミクリオ…ふぅ。これで──
コレットミクリオ、まだ魔物が!
グオオオオッ!
ミクリオくっ…!さっきの魔物の陰に潜んでいたのか!
スレイまるで最初の魔物は囮みたいだ…!──まさか、魔物同士が連携してるのか…!?
コレット危ない!
ドゴッ!
コレットきゃっ!
ミクリオコレット!僕を庇ったのか…
ゼロスてめぇ!食らえ!
ザシュ
グギャアアッ…!
コレットうぅ…
ミクリオっ…!怪我はないか!?コレット!
グルルルル!!
スレイミクリオ!まだ魔物が残ってるぞ!
ミクリオくっ、こいつら…!どんどん数が増えて…
ゼロスこのままじゃ囲まれちまうぞ!
コレット私は平気…だから、先に魔物を!
ミクリオしかし…!
スレイミクリオ!今は魔物を倒す事を優先しよう!
ミクリオ…!わかった、さっさと片付けてしまおう…!
scene3門前の攻防
ゼロスこいつで最後だ!
ザシュ!
ギャウゥ…
スレイ…ふぅ。これで全部かな
ミクリオああ。…コレット、大丈夫か?
コレットうん、だいじょぶだよ。心配かけてごめんね
ミクリオそうか…よかった
コレットミクリオこそ怪我とかない?
ミクリオ僕は大丈夫だ。君のお蔭だな…ありがとう
コレットそんな、守るのは当然だよ
コレット守られるばかりじゃ、駄目だから…
ミクリオコレット…?
ゼロスしっかし、上から魔物が降ってくるとはなぁ。たまげたぜ
スレイうん、意表をつかれたな
ミクリオ…さらに注意するよ。こんな事はもうないようにね
コレット白き獅子は、さっきの見張りだけだったのかな?
ミクリオそうみたいだ。けど、神殿内には確実にいるだろうね
スレイ魔物と白き獅子…どっちにも注意しないとな
ゼロスま、何が来たって俺さまが返り討ちにしてやるぜ
コレットっ…!だいじょぶ…腕はちゃんと動く…
コレット頑張らないと…!
scene1コレットの隠し事
ファング
騎士団員ファング様。どうかされましたか?
ファング…いや、何でもない。クリスタルの様子を見ていたんだ
騎士団員しかし、ラザリス様の命を狙う輩…やはり、あの遺跡にいた咎人達なのでしょうか
ファングああ、おそらく奴らだ
ファングシャングレイスで決着がつくと思っていたが…まさかこんな事になるなんてな
ファング今回はラザリス様の命がかかっている
ファング全力で警戒を続けてくれ
騎士団員はっ!
ファング…あの遺跡の咎人達か
ファングコレット…だったよな
ファングあいつは俺の名前を知っていた…一体どうして…?
ファングいや、今はそんな事どうだっていい
ファング奴らは咎人だ。それに今はラザリス様の命まで狙ってる…そんなの許されない事だ
ファング必ず、この手で捕まえてみせる…!
ミクリオこれが神殿の内部か…
ゼロス壁や床に枝が絡みついてやがる…
スレイすごい…まるで神殿と大樹が一体になってるみたいだ
スレイこんな時でもなければ、隅々まで探検してみたいなぁ…!
ミクリオ確かにこの場所は興味深いね。どうやって作られたのか、大樹がここまで成長したわけとは──
ゼロスおいおい、今はそれどころじゃねーだろ?早いとこ進もうぜ
スレイそうだよな。ごめん、先へ進もう
コレット道は…こっちみたいだね。明かりもあるし
スレイでも、こうも薄暗いと魔物に気付けないかもな…。注意して進もう
ゼロスさっきの不意打ちはやばかったぜ。いきなりすぎだっつの
スレイでもさっきの魔物、何か変だったような…?
コレット変?
ミクリオ確かにね。連携してきたというか、妙に統率が取れていた…一体何故──
グオオオオオ!
コレットえっ、魔物…!?警戒はしてたはずなのに…!
ゼロスおいおい、マジかよ冗談だろ。囲まれちまってるじゃねーか!
スレイいつの間に…!気配なんて全然感じなかった…!
ミクリオくっ、応戦するぞ!
scene2コレットの隠し事
スレイこいつら、やけに手強い…!
ミクリオやはり、この動きは…!間違いなく、何かに統率されている!どういう事だ!?
グルアアアア!
ゼロスこのっ…!しつこい奴は嫌われるぜ!
ザシュッ!
ゼロスよし、いっちょ上がり!
スレイゼロス、後ろ!
グルアアアア!
ゼロスうおっと!?
ミクリオ仲間が倒された隙に、後ろに回っただと…?そんな連携までしてくるとは…
ゼロス油断ならねー奴らだな…
グルルルァアアッ!!
スレイコレット、そっちに魔物が行ったよ!
コレットうん!任せて──
コレットっ…!
ミクリオコレット!?まずいっ!
グオオオオッ!!
スレイくそっ、間に合え…!
ガギィン!
スレイはあっ!
ギャウウッ…!
スレイ…ふぅ。コレット、大丈夫?
コレットう、うん…助けてくれてありがと
スレイ今のが最後の魔物だったみたいだな。とにかく、無事でよかったよ
ゼロス
ゼロスなぁ、コレットちゃん。何かあったのか?さっき、動きがおかしかったぜ
コレットえ?そ、そんな事ないよ?
ミクリオいや、僕にもそう見えた。あの一瞬、動きが止まったような…
コレットそ、それは…ちょっと気合が入りすぎちゃったのかな…?
コレットでも、次は大丈夫だから。ほら、早く進もう
ミクリオ
scene3コレットの隠し事
ミクリオそれにしても、どうしてこうも魔物に不意打ちされるんだろうか…?
スレイああ、ここの魔物は何かおかしいよ。魔物同士で連携するなんて
ミクリオ…そうだね。普通なら群れで襲ってくる程度だ
ゼロス自分を犠牲にして他の奴に攻撃させるなんて、いくら何でも頭よすぎだよな
ミクリオコレット、君はどう感じた?
コレット……
ミクリオコレット?
コレットえ…!あ、ごめん…ぼーっとしちゃってた
ゼロス…コレットちゃん、やっぱり何か変だぜ?
コレットそ、そんな事…痛っ…!
スレイコレット…!
スレイ腕が痛むのか…?もしかして、さっきの魔物との戦闘でどこか怪我したんじゃ…
ミクリオ…そうだ、さっきの戦闘でも腕をかばっていたね?
コレットち、違うよ…これは…
ゼロス…コレットちゃん、悪ぃが腕、ちょっと見せてもらうぜ
コレット…うん
ゼロスおいおい…!めちゃくちゃ腫れてるじゃねぇか!
ミクリオ…この怪我は、神殿の入口で魔物から僕をかばった時のものか…?
コレットあ、えと…
ミクリオすまない…僕が油断したせいだ。でも、どうして隠したりなんか…
コレットた、大した怪我じゃなかったから…だから、だいじょぶだよ
コレットそんな事より、先を急がなきゃ。核を早く壊さないといけないし…
コレットロイドの事だって、私が頑張らなくちゃ…
ゼロス
ゼロスなぁ、コレットちゃん、そんなに無理しなくてもいいんだぜ?
ゼロスそれによ、ロイドの相手ならコレットちゃんの代わりに俺が──
コレット──駄目っ!
ゼロスっ…!?
コレットあっ…ご、ごめんねゼロス…。おっきな声出しちゃって…
コレットでも、これは私がやらないといけない事だから
コレットロイドは私が助けなくちゃ…。いつまでもこのままじゃいられないから…!
ミクリオ
ゼロスだけどよ──
グルルル…!
スレイ魔物の声…!また来たのか!?
ミクリオ…話は後だね。今はここから離れよう
コレットうん…そだね。早く進もっか…
ゼロスコレットちゃん、怪我してるだろ?俺さまが肩を貸して──
コレットありがと。でも、一人で歩けるよ
ゼロスコレットちゃん…
scene1仲間であるという事
スレイ…ふぅ。何とか逃げ切れたみたいだな
ゼロスしっかし、魔物が多いよなぁ…。白き獅子まで出てこねぇのはいいけどよ
コレットそういえば、白き獅子を見ないね
ゼロスああ、全然姿を見せねぇ。一体どこに潜んでるんだ?
スレイここに来るまでに彼らを見たのは、神殿の入口だけだよな
ミクリオおそらく最上階にいるんだろう
ミクリオ僕達を待ち構えるために、兵力を分散して配置するのは魔物に襲われて効率が悪い
スレイつまり、核を守るために、その周りに集まってるって事か
ミクリオそういう事さ。途中の階層で、彼らと会わなくて済むけど──
スレイ代わりに、一度に全部を相手しないといけなくなる…
ゼロスだったら、ここで態勢を整えとこうぜ。見たところ魔物もいねぇようだし
ゼロスコレットちゃんの怪我の事も、いい加減何とかしねぇと
コレット…ごめんね
ゼロス気にすんなって~。俺さま達も、ちょうど休みたいと思ってたところだったからさ
ミクリオコレット。腕の怪我を見せてくれ
コレット…うん
ミクリオ結構酷いな…。少しじっとしていてくれ
パアアア…
ミクリオ完治とまではいかないけどこれでかなり楽になるはずだ
コレット…うん。ありがと、ミクリオ
ミクリオとは言え、無理は禁物だ。あまり動かしたりしないように
ゼロス大事に至らなくてよかったぜ…
コレットゼロスも…ごめんね
ゼロスん?何の事だ?
コレットさっきの事。ゼロスが私の代わりに、ロイドと向き合ってくれるって言ったのに…
コレット私、咄嗟に「駄目っ!」なんて、ゼロスに酷い事言っちゃった…
ゼロスああ、いいっていいって~。俺さま全然気にしてねぇから
コレット
ミクリオ…コレット、少し聞きたいんだがいいだろうか
コレットあ、うん。何かな…?
ミクリオ何故、怪我を隠していたのか聞かせてほしい
ゼロスいいじゃねぇか、もう終わった事なんだし
ミクリオ駄目だ、聞く必要がある。大事な事なんだ
ミクリオ庇ってくれた事には感謝しているし申し訳ないとも思っている…でも、怪我を隠していた事はまた別だ
ミクリオ前の戦いは、スレイが間に合ったから何事もなかったけれど…
ミクリオもっと早くに怪我について打ち明けくれていれば、何か対策を練る事だって出来たはずだ
ミクリオ…違うかい?
コレット…そう、だね
コレットでも、怪我の事をみんなが知ったらみんなきっと私を庇ってくれる…。それじゃ駄目だと思ったの
スレイえーっと、どういう事…?
コレットあのね、私、今までたくさんの人に助けられて、守られてきたんだ…
コレット元の世界では、いつもロイドが側で守ってくれて
コレットさっきだって、危ない陽動役はスレイとミクリオが…
コレットゼロスにも気を使わせちゃってる
ゼロスコレットちゃん…
コレットでも、今回も守られてばっかりじゃ、私がここにいる意味がなくなっちゃう
コレット私は…今のロイドと向き合いたい…
コレットロイドは幼馴染でかけがえのない大切な人だから…
コレットだから…ちゃんと向き合って、私が助けないといけない
コレットそのためにも、今度は私がみんなを助けて、守らないと…って思ったの
ゼロス
スレイそれで、さっきゼロスが任せろって言った時、あんな反応だったのか…
コレットうん…
コレットその上、怪我の事がばれちゃったら──
コレットそう思ったら、どうしても言えなくなっちゃって…
ゼロス…なるほど、な。そういう事なら言いにくいのもちょっとはわかるぜ
コレット…でも、結局みんなに迷惑かけちゃってる
コレットごめんね。私のせいで…
ミクリオ
ミクリオ迷惑って…君は本当にそう思っているのか?
コレットえ…?
ミクリオ仲間を頼る事が、周りにとって迷惑な事だと…本当にそう思っているのか?
コレットう…うん。今まで力になれてなかったから…
コレットでも、もう大丈夫だよ。これ以上迷惑はかけない──
ミクリオコレット、それは間違っているよ
scene2仲間であるという事
ゼロスおい、ミクリオ。コレットちゃんだっていろいろ考えて──
スレイ待って、ゼロス
ゼロス何だよ?
スレイここはミクリオに任せてくれないか?何か考えがあると思うんだ
ミクリオコレット。君がロイドを大切な人だと思っているのは知っている
ミクリオだからロイドと向き合うのは自分だというのも理解出来る
ミクリオけど、君は一人で背負いこみすぎなんじゃないのか?
コレットそ、そんな事は…
ミクリオあるよ。現に君は怪我を隠した。放置する方が危ないというのに
コレットう…
ミクリオ…大切な人の力になれないのが、悔しい気持ちは僕にもよくわかる
ミクリオ僕だって…似たような経験をしたから
コレットミクリオも…?
ミクリオああ、前にスレイといろいろあってね
ミクリオ君がどんな想いでいるか…。どれほど悩んでいるかは少しは理解出来ると思う
ミクリオ…だからこそ、自分の傷を隠すなんてやめてくれ
ミクリオ誰かに守られるだけの人も、誰かを守るだけの人もいないんだ
コレットでも、私は──
ミクリオコレットだってそうだ
ミクリオ僕らがコレットを助けたように、コレットが僕らを助けた事だって、たくさんある
コレット私がみんなを…?
ミクリオああ。だから僕らは君を信頼して背中を任せるし、君が危ない時は助けるんだ
ミクリオそうじゃなかったら、一体何のための仲間なんだい?
ミクリオ迷惑だなんて言わないでくれ
コレットミクリオ…
コレット…うん、そだね
コレット私、間違ってたみたい。ロイドを助けたい、みんなを守りたい…
コレットそればっかりになってて…。みんなの事を…仲間と一緒って事を忘れてた
ゼロス
コレット私はロイドと向き合いたい。この気持ちに変わりはないけど…
コレットみんなで…一緒に向き合ってもらっても、いい…かな?
ミクリオ勿論。当然だろ、仲間なんだから
ミクリオ核を破壊して、一緒にロイドを助けよう
スレイああ、オレ達にとっても、ロイドは大切な仲間だしね
コレット…うん。ありがとう、二人共
ゼロス…あー、コレットちゃん。俺からも話をしていいか?
コレットうん、どしたの?
ゼロス実は…ロイドの事、俺も自分で何とかしようと思ってたんだ
ゼロス手前勝手に二人を戦わせるわけにはいかねーとか息巻いてな
コレットそうだったんだ…
ゼロスだけどそれじゃ、ミクリオの言う通りコレットちゃんの事を信じてねぇって言ってるようなもんだよな
コレットそんな事ないよ…ゼロスは私の事を気遣ってくれたんでしょ?
ゼロスそんないいもんじゃねぇさ
コレットゼロス…
ゼロスだからさ、改めて言わせてくれ。…俺達とロイドのところへ行こう
ゼロス一緒に、世界を元に戻してハニーの目を覚まさせてやろうぜ
コレットお願いするのは私の方だよ。よろしくね、ゼロス
ゼロスこちらこそだぜ、コレットちゃん
ミクリオ話はまとまったようだね
スレイよし、それじゃあ次の階に──
グルルルル…!
ゼロスって、また魔物かよ!
ミクリオ…おかしいな
スレイああ。さっきから警戒はしているのに…。ずっと不意を突かれっぱなしだよな?
ミクリオ気配を隠して近づいてきたんだろう。戦いの時の動きといい、頭がよすぎるな…それに──
コレットまた囲まれちゃってる…
スレイこの数の魔物が気配を隠して、取り囲もうとするなんて…。やっぱり何か変だ…
ミクリオ考えるのは後だ!今はここを突破しよう!
scene1神殿の主
スレイはぁ、はぁ。何とか三階までたどり着いたね
ゼロスくそっ、あいつら妙に強いな…。お蔭で余計な体力を使っちまったぜ
ミクリオけど、倒しきる事は出来た。このまま最上階まで…
コレット…!みんな、あれ!
フォォォォ…
ゼロス何だ、あのデカブツは…
スレイこの大きさは…。みんな、注意して!
…!
ゼロスおっと、気付かれたみたいだ。だが先制はもらった──
フォォォォォォォッ!!
ミクリオくっ!?こいつ一体何を…!
グガァアアアアアア!!
コレット見て、魔物が!
ゼロスいきなり沸いてきやがった!?
スレイこっちにもだ!こいつら、どこかに隠れていたのか?
フォォォォォォォッ!!
グガァアアアアアア!!
ゼロスうおっと!こいつら、なかなかやるじゃねーの!
ミクリオさっきの行動といい、あの大きな魔物の鳴き声に反応しているような…まさか!
スレイこの大きな魔物が、他の魔物を統率しているのか…?
ゼロス…なるほど、このデカブツが親玉か。なら話は早ぇ!
ミクリオああ!あいつを倒せば、指揮がとれなくなるはずだ
スレイそうだな!他の魔物の動きだって、今みたいにはいかなくなるかもしれない!
コレットでも、あの魔物を守るように他の魔物達が…
スレイよし、だったらまずは周りの魔物を一掃しよう!
scene2神殿の主
ゼロス雑魚はこいつで最後だ!
ザシュ!
スレイよし、後はこの親玉だけだ…!
フォォォォォ!!
スレイ一気に叩こう!オレは正面から行く!ゼロスは後ろから頼む!
ゼロスよし!食らえ!
スレイせいっ!
ガキィン!
スレイ…弾かれた!?
ゼロス硬すぎだろ、こいつ!
フォォォォォ!!
ゼロスうぉっ!?危ねぇ!
コレットゼロス…!
ゼロス大丈夫大丈夫~!大振りだからそう当たらないって
スレイでも…これは相当手強いぞ
ミクリオ硬い体は攻撃が通らない、か…。でも眼の部分、あそこならどうだろう
ゼロスなるほどな、確かに硬そうには見えねぇが…
コレット動いてる状態で、狙って攻撃するのは難しいかも
ミクリオここはみんなで連携を取るべきだろう
ミクリオまず、僕が術であいつの足を止める。そうしたらスレイとゼロスはあいつの両腕を押さえてくれ
スレイわかった!
ゼロスおう、任せとけ!
ミクリオ動けなくなったあいつに、術を叩き込むのは…コレット、君に頼めるかな
コレットやってみる…。ううん、任せて!
フォォォォォ!!
ミクリオよし、それじゃあ──
コレット行こう、みんな!
scene3神殿の主
ミクリオ今だ!アイスシアーズ!
フォォォォォ!?
ミクリオよし、動きが止まった…!スレイ!ゼロス!
スレイわかってる!
ゼロス防御はさせねぇぜ!はあっ!
ヒュン!ガシッ!
スレイ大人しくしてもらうぞ!
ミクリオコレット、今だ!
コレットその御名の元、この汚れた魂に裁きの光を降らせたまえ…
コレット──行くよ、ジャッジメント!
ドーンッ!
フォォォォォォォ…
コレットはぁ…はぁ…。やった…?
ミクリオああ、気絶したようだ
スレイこの様子だと、しばらくは動かなさそうだな
ミクリオそうだね、何よりも時間が惜しい。こいつは放っておいて、早く核を破壊しに行こう
コレット急がなきゃ、だもんね。次の階にはどこから進むんだろ…?
スレイあ、見て。親玉が居た後ろ、扉があったぞ
ゼロスこいつは…いかにも、って感じだな
ミクリオおそらくあの先が最上階、そこに核があるはずだ。勿論、白き獅子も…
ゼロスしかし、さっきの戦いであんだけ大騒ぎしたんじゃ、さすがに侵入はばれちまってるよなぁ
ミクリオああ、おそらく騎士達は臨戦態勢だ。問答無用で戦いになるかもしれない
コレット
ゼロス大丈夫かい?コレットちゃん
コレットうん、みんながいるから平気だよ。それに覚悟はしてきたから
コレット…ロイドも、世界も私達が助けよう
ゼロスおうよ、さくっと核をぶっ壊してハニーの驚く顔でも拝んでやろうぜ
スレイああ、オレ達なら大丈夫!
ミクリオ…みんな、準備は出来てるみたいだね
コレットうん、行こ!
scene1罪を砕く焔牙
コレット…ここが最上階…!
騎士団員来たか!平和を乱す不届き者め!
スレイ白き獅子…!
ゼロスしっかし、これは…予想以上の数だな
ミクリオそれだけ核が重要という事だろう。油断するなよ、みんな
コレット…!
コレット見て、あの大きなクリスタル!もしかして──
ファング…そう、これが結界の「核」だ
コレットロイド…!
ファング…やっぱり、お前達だったか
ファングどんな理由があるのか知らないが、これはラザリス様の命にも等しいもの
ファング誰にも、指一本触れさせない!
コレット…でも、私達も引けない。本当の世界を、ロイドを取り戻すために
ファング俺を取り戻す…?咎人の虚言も大概にしてくれ
ファングお前達はここで捕まえる。…だけど、俺は咎人だからって、傷つけていいとは思ってない
ファング最後にもう一度だけ聞いておく。投降するつもりはないか?
ファングラザリス様は争いを望んでるわけじゃない
ファング悪いようにはしない。他の咎人達と同じようにお前達の事も救済してくれるはずだ
ファング俺からも掛け合ってやるから
コレットロイド…
ゼロスははっ…。あんな風になっちまっても、元の性格までは変わらないんだな
ゼロス一応俺さま達、お尋ね者なのによ
コレットうん。ロイドらしいよね…
コレットねえロイド。やっぱり私達の事、思い出せない?
ファング思い出すも何も何度も言ってるだろ。俺はお前達の事なんか知らない
ゼロスったく…つれねー野郎だな
ファング…やっぱり咎人の言葉なんて嘘ばっかりだ
ミクリオ待ってくれロイド、僕達は──
ファングどうしても、投降する気はないみたいだな…。だったら仕方ない……
ファング総員、構えろ!
騎士団員はっ!
スレイ…ちょっと話したくらいじゃ、記憶を取り戻すのは難しいか
コレットうん…でも、諦めない。核を壊して、世界も、ロイドも元に戻さないと…!
ミクリオそうだね。いつか機会は訪れるはずさ。だから今は、核の破壊に集中しよう
ファングやっぱり目的は核の破壊か。お前達はどうしてそんな事を…
ファングけど、ラザリス様の命を狙うなら…容赦はしないぞ
コレットわかってる…
コレットロイド…何を言われたって、私達は絶対に諦めないよ!
ファング…そうか
ファング行くぞ!奴らを捕えるんだ!
騎士団員はっ!
ゼロス来るぜ、コレットちゃん!
コレットうん、戦いたくはないけど…ここだけは引けない!
スレイミクリオ!神依で一気にクリスタルを壊そう!
ミクリオわかった!
スレイ&ミクリオルズローシヴ──
ファングさせるか!
ガキィン!
スレイぐっ…!?
ミクリオスレイ!
騎士団員2よそ見している暇はないぞ!お前の相手はこっちだ!
ミクリオくっ…!このっ!
スレイこれじゃ神依が出来ない…!
ファングあの力は厄介だからな。お前達二人に隙は与えない!
ファングそっちの二人も捕まえるんだ!
ゼロス来いよ、そう簡単には捕まらないぜ
コレットうん。私が、みんなを守る!
scene2罪を砕く焔牙
スレイはあっ!
騎士団員くっ…申し訳ありません。ラザリス様…ファング様…
ゼロスはぁ、はぁ…。これで後はお前だけだな、ハニー
ミクリオ数ではこちらが優勢だ…。大人しく諦めてくれないか?
ファング…ここで諦めたらラザリス様を裏切る事になる。それに…
コレットはぁ…はぁ…
スレイ…ふぅ
ファングそっちこそ随分、疲れてるみたいじゃないか
コレットううん、まだまだ…やれるよ
ファング…お前達は、何でそこまでしてラザリス様の命を狙うんだ?
ゼロスへっ、別にラザリスがどうこうってわけじゃねぇ
ゼロスただ、ラザリスに俺さま達の大事なものが奪われちまってな…
ファング大事な、もの…?
ファングいや、誰かから何かを奪うなんて事ラザリス様がするはずない
ゼロスやれやれ、自分が奪われたってのに、何にも気付いてねぇんだもんな…
ゼロスなあ、ハニー。俺さま達ってば、元の世界では仲間だったんだぜ?
ファングバカを言うな。お前と仲間になった覚えなんて、俺にはない
ゼロスけっ…バカはお前だっての
コレットゼロス…
コレットねぇ、ロイド…。星のカケラを探して遺跡に行ったの覚えてないかな…
コレットあの時ゼロスを誰よりも信じてたのはロイドだったよね…!
コレット記憶はないかもしれないけど…でも、ロイドの心は変わってないはずだよ?
コレット今…何も感じない?信じたゼロスが、ロイドのためにここまで来てくれたんだよ…!
コレット仲間の…友達のために…!
ファング何を…星の…カケラ…?くっ…
ゼロスああ、そうだな…仲間だの友達だのいつもそう言ってたのはお前じゃねぇかロイド
ファング…やめろ!そんな事言った覚えはない
ファング俺を惑わせようったってそうはいかない
ゼロス…やれやれ。何を言っても無駄ってか
ゼロスけどな、それでも俺さまもまだ諦めるわけにはいかねーんだわ
ゼロスお前が言ってたんだぜ、友達はそんな軽いもんじゃない、そう簡単にやめられるかよ、ってな!
ファング…!その言葉は…
ファング…っ!?
ロイドバカはお前だ、ゼロス。お前だって今まで俺の事を、ずっと友達だって言ってただろ?
ロイド友達ってのは、そんなに軽いものじゃないんだ。そう簡単にやめられるかよ
ファングぐっ…何だ、今のは…!
ファング俺の知らない光景が…
コレットロイド…?
ファング…今のはお前達の仕業か?咎人の言葉が人を惑わせるって、こういう事だったんだな
パサ…
ファング本気で行かせてもらう。もうお前達の言葉は聞かないぞ!
ミクリオ…!
スレイ来るぞ、みんな!
コレットうん!私は逃げないよ、ロイド!
ゼロスちょっと痛い目にあっても我慢してくれよ、ロイドくん
ファング違う!俺の名は…ファング!白き獅子のファングだ!
ファングこの世界を守るためだ…これ以上、お前達を野放しにするわけにはいかない!
scene3罪を砕く焔牙
ゼロスはあ、はあ…
ファングはあ、はあ…
ファング…まさかここまでやるなんてな。けど、これで終わりだ…!
ファング決めてやる!喰らえ──
ゼロスちっ!一撃で全員ぶっ飛ばそうってか…
ゼロスさせるかよ!
スレイゼロス!?待て、一人じゃ無茶だ!
ファング焔牙翔双斬──!!
ゴオオオオオオ!!
ミクリオスレイ!ゼロス!
スレイうぐっ…!
ゼロスつっ…!
ドサッ
ファング仲間を庇ったか…。でも、その二人はもう動けないはずだ
コレットそんな…
ファングあとはお前達だけ、だな
ミクリオくっ…!
コレットミクリオ、あれ…!
騎士団員1はぁ…はぁ…すみません、隊長…
騎士団員2…すぐに、この者達を捕えます…!
ミクリオ騎士達…!まだ動けたのか…!
ファングお前達はコレット──そっちの咎人を拘束してくれ
騎士団員1…はっ!さぁ、大人しくこちらへ来い!
コレットいや!離して…!
コレット私はロイドを…!
騎士団員2こいつ、いつまで抵抗を──
ファング…心苦しいけど、女の子一人に、あれだけの数だもう勝目はない
ファングこれで後はお前だけだ。今からでも遅くない、投降しろ
ミクリオ愚問だね
ミクリオ僕も諦めはしない!最後まで、抵抗させてもらう
ファングお前…!
ミクリオ双流放て!ツインフロウ!
バシャァ!
ファングその程度の術、正面からなら簡単に避けきれる!
ファング戦うっていうなら、容赦はしない!
ミクリオくっ──
ファング終わりだ!
ガキィィィン…
ミクリオぐぅぅっ…!
ファングもう諦めてくれ。お前達の負けだ
ミクリオ……いや、諦めるのは君の方だ
ファングこの状況でお前は何を言ってるんだ。もう手は残されてなんか──
ミクリオあるさ
ミクリオ本当の記憶を失っている君の隙が、ね
ファング隙、だと…?
ファング…!
騎士団員1なっ──!
騎士団員2ぐわぁ!
ファングそんな、騎士達が…!?
コレット…っ!はぁ…はぁ…
ファングコレット一人であいつらを…!?
ミクリオ彼女はただの女の子じゃない。ちゃんと戦う力を持ってるのさ、僕らを守れるくらいのね
ファング…くっ!
ミクリオコレット!
コレットうん!クリスタル…今なら!
ファング駄目だ!クリスタルだけは絶対に──
ミクリオここは通さないさ!
ミクリオアクアサーペント!
バシュウ!
ファングなっ…!
ミクリオロイド…いや、ファング。君の負けだよ
ミクリオ彼女は強いんだ。──君は、忘れているだろうけどね
ファングぐっ…こんな事が…!
ミクリオコレット、急げ!クリスタルを!
ファングやめろ!!
コレット…ロイド、必ずあなたを助けるから…
コレットやぁああああああ!!
パキイィンッ!
scene1蘇る、いつかの約束
コレット…やった!
ミクリオああ、光の柱も消えた
ミクリオ君に助けられたね、コレット
コレットミクリオ!ううん、私の方こそ助かったよ…!
ファングそんな、クリスタルが…
コレットロイド…
ファングお前達…よくも…!
ファング絶対に捕まえて──
ゴゴゴゴゴゴ…!
ファング…何だ!?
コレット揺れが…近づいて来る…?
フォォォォォォ!
ミクリオこ、こいつは!?
コレット下の階にいた魔物…!もう起きちゃったの!?
フォォォッ!
ミクリオまずい!あいつスレイ達の方へ…!
フォォォッ!
スレイ……
ゼロス……
コレットミクリオ!お願い、二人のところに行ってあげて!
ミクリオしかし…
コレットだいじょぶ、魔物は私が引きつけるから…!だから、その間に二人を助けて
ミクリオコレット…
ミクリオ…わかった。だけど、無茶はしないでくれ
コレットうん…!
ファングお前達何を──
コレットロイドも早く逃げて!…魔物さん!こっちだよ!!
フォォォォォォ!
ドガァァン!
コレットきゃっ…!
ファング…ちぃっ!そこをどくんだ!
コレットえっ、ロイド…!?
ファング来い、俺が相手だ!
ドガァァァ!!
ファングぐぅっ!
コレットもしかして…私を庇ってくれたの…?
ファング見過ごせなかっただけだ。咎人を捕まえるのが、俺の任務だからな!
フォォォォォォ!
ファング…くそっ!避けきれないか…!
コレットさせない!
フォォォォォォ!
コレットロイドは私が守る!
ファングな、何を!?そこを退け、俺はお前の敵で──
コレットロイドだって、さっき助けてくれたでしょ?
ファングあれは…!
コレットそれにね、ミクリオに聞いてわかったんだけど…
コレット誰かに守られるだけの人も、誰かを守るだけの人もいない──
コレットお互いに助け合うのが、仲間なんだって
ファング
コレット私はロイドに守られて、助けられてばっかりだったよね…
コレットたくさんもらってばっかりで、返しきれないけど…。今、少しだけ返すね…!
ファングお前は何を言って…
コレット…さぁ!あなたの相手は私だよ!ほら、こっちに来て!
フォォォォォ!
コレットきゃあっ!
ファングくっ…何してるんだ。俺の事など放っておけ!
ファングこのままだとお前が──
コレット大丈夫、それより動けそうならロイドは少しでも遠くに逃げて
ファング何だ…一体何なんだお前は!
コレット…私はロイドの幼馴染だよ
コレット前とは逆だけど、今度は私から言うね
コレット「大切な仲間なんだから、 助けるのは当たり前」
コレットロイド、私に任せて
コレット大切な仲間は、必ず守るから!
ファング…っ!
ロイドコレットは大切な幼馴染だ。助けるのは当たり前だろ
ロイド今回だって、俺が必ず守るって約束する
コレットまだ、まだ…。私が守らなきゃ…あぅっ!
フォォォォォ!
コレットあっ…!
キイイイィンッ!
ファング
コレットえ?ロイド…?
ファングはあっ!
ザシュ!ザシュッ!
フォォォォォ!?
ズシン…
ファングふぅ…。一安心、かな
コレット…守って、くれたの?
ファング当たり前だろ
ファングコレットを必ず守るって、約束したからな
コレットもしかして、記憶…
ロイドああ、コレットやゼロス…みんなのお蔭だ
ロイドあと…守られてばかりだって言ってたけど、助けられてるのは俺の方なんだぜ
コレットロイド…!
ロイドお、おい、コレット!?
コレットおかえり…おかえり、ロイド!
ロイド…ああ、ただいま。悪かったな、ずっと…
コレットううん、だいじょぶ
コレットクリスタルも壊したし、ロイドも一緒に──
キシャアアアア!
ロイドここの魔物達…!親玉がやられた事で、今度は自由に暴れ始めたか!
ロイドこの数は…まずい…!
コレット…だいじょぶ。だって、私達二人だけじゃないから
ロイド何を…
グオオオオッ!
???はあっ!
バシュン!
グゥゥゥゥ!?
ロイドお前は……!
ミクリオ遅れてすまない、二人共
コレットミクリオ!
ミクリオ彼らの治療に手間取ってね
スレイごめん、遅くなった!
ゼロスおう、こっからは挽回させてもらうぜ!
ロイドスレイ、ゼロスも…!傷は大丈夫なのか!?
ロイド…二人共、さっきは悪かった!忘れてたとはいえ、俺…
スレイ気にする事ないって!記憶を書き換えられてたんだしさ
スレイそんな事より、ロイドの記憶が戻ってよかったよ!
ゼロスちくしょ~、ハニーめ!コレットちゃんを独占しやがって。そこは俺さまの役目だろ!
ロイドゼロスは相変わらずだな。でも、何だか安心するよ
ロイド…みんな、心配かけてごめんな。もう大丈夫だから、俺も一緒に戦わせてくれ
スレイああ!一気に魔物を片付けよう
ミクリオ相手もお待ちかねのようだしね
グルルルルァッ!
ロイドよーし、それじゃあ行くぞ!
コレットうん!
scene2蘇る、いつかの約束
スレイふぅ…何とかなったな
ゼロス全くよ~、魔物にも遠慮してほしいもんだぜ
ゼロスせっかくの感動の再会が、台無しじゃねぇか
スレイだけど、本当によかったよ
コレットうん、ロイド…帰ってきてくれたんだよね。ほんとに、ほんとによかった…
ロイド
ロイド…その…みんな。改めて、本当にありがとう
ゼロスおうよ、この礼はたーっぷりとしてもらうからな
スレイ元に戻ったなら全てよし!だよな、ミクリオ
ミクリオああ。それとお礼を言うなら、コレットに頼むよ
ミクリオ君の事を一番心配してたのは、コレットなんだから
ロイドそっか…そうだよな。コレット、ありがとう!
ロイドやっぱ、コレットには助けられっぱなしだな
コレットそんな事ないよ?私の方こそ、助けるのが遅くなってごめんね
ゼロスところでよ、ハニー。今の状況って理解出来てるか?
ロイドうーん…かなりまずいって事だけは何となく…
ロイドだけど、記憶が混乱してて…出来れば詳しく教えてくれないか
スレイうん、実は──
スレイ──という事なんだ
ロイドそうだったのか…。なるほどなー
ゼロスロイドくん、本当にわかってんのか~?
ロイドわ、わかってるよ!ラザリスとヴァンを何とかしないとまずいって事だろ?
ミクリオまあ、大体そういう事だね。とは言え、僕らも理解出来ていない事がまだまだ多いけど
スレイそういえば、ロイドは白き獅子の隊長だったんだよね?
ロイドん?ああ、それがどうかしたのか?
ミクリオ…なるほど。ロイドなら、ラザリス達に関する情報を何か持っているかも…という事か
ミクリオロイド、何でもいいんだ。ラザリスやヴァンについて知っている事を教えてくれないか
ロイドうーん…情報って言われてもな…。あいつらの事はほとんど何も…
ロイドここの事だって、ヴァンから「ラザリスの命に関わるから、 核を守れ」って言われてたくらいだ
ロイドラザリスについて詳しい奴なんて、ヴァンくらいなんじゃないかな…
ミクリオそうか…。隊長だった君なら、と思ったが…
ロイドごめん、力になれなくて…
ロイドむしろ、俺の方がわかんねぇ事ばっかだ
ロイド記憶を変えて、仲間に刃を向けさせるなんてさ…
ロイドラザリスやヴァンはどうしてそんな事をさせるんだよ…
コレットロイド…
ゼロスまー、核は結局コレットちゃんに壊されて、守れてなかったけどな!
ゼロスしっかり見させてもらったぜ~。あの時のロイドの顔っつったら。やめろ!ってすげー剣幕でやんの
ロイドあ、あの時は俺、本気で焦ってたんだから仕方ないだろ!
ゼロスいつか話のネタにしてやろーっと
ロイド勘弁してくれよ~…
コレットふふっ。ロイドとゼロス、すっかり元通りだね
ミクリオ…話を戻そうか
スレイオレ達は、ラザリスの結界を解くために核を壊しているんだ
スレイここ以外だと、ミラとユーリがいる場所にも核がある
スレイそっちにも今、みんなが向かってるよ
ロイドそうなのか…
ロイドでも、ミラもユーリも、きっと思い出してくれるはずだ。俺みたいにな!
ゼロスでもハニーは頑固だったな~。ミラさまとユーリなら戦う必要すらないんじゃねぇ?
ロイドぐっ…!も、もういいだろ、それは!
ロイド他のところはともかく、ここにはもう用はないんだろ?
ロイドなら、俺もみんなと一緒に──
ミクリオいや、ロイド。出来れば君には頼みたい事がある
ミクリオ今はまだ、ラザリスやヴァンに、君の記憶が戻った事は知られていない
ミクリオなら、部下の騎士達を使って、裏から僕達に協力してもらう事は出来ないか?
スレイそうか、ミラやユーリとも協力して…上手くすればヴァン達をかく乱出来るかもしれない
ロイドなるほど…ファングのふりを続けるって事だな。ああ、やってみるよ!
ゼロスちゃんとやれんのかよ、ファング様~?
ロイドおう、任せとけって!
ロイドラザリス達の事だって何かわかるかもしれないし──
ロイドそれにこの世界じゃ、騎士達は俺の仲間なんだ。倒れたまま放ってはおけないしな
コレットふふ、ロイドらしいね
ロイドコレットとはまた離れる事になっちまうけど…
コレットだいじょぶ、きっとすぐに合流出来るよ
ゼロスんじゃまぁ、行きますか。リッカ村でいいんだよな?
スレイああ。みんな無事に帰ってきてるといいな
コレットロイド、また会おうね!
ロイドああ!約束だ!

NameDialogue
scene1ミラという存在
ジュードふう…神殿まではまだ距離があるね
エリーゼ急がないと…。特異点の修復が終わっちゃいます…
ティポ早くミラ君を助けないとー!
ティア…確かに急ぎたいところだけど、神殿までの道中で白き獅子が待ち伏せているかもしれない
ティア慎重に進んだ方が賢明よ
ルドガーそうだな…
エリーゼでも…
ジュード気持ちはわかるよ、エリーゼ。僕も、どうしても気がはやるから…
ジュードでも、ここはみんなの言う通りだよ。ミラを助けるためにも、慎重に進もう
エリーゼジュード…
エリーゼ…そうですね。少し焦っていたかもしれません…
ベルベットミラ…ね
ベルベット…ちょっといい?そのミラについて、聞いておきたい事があるんだけど
ジュードうん、僕達で答えられる事なら何でも聞いて
ベルベットあいつは何者なの?
ベルベット以前戦った時、詠唱もせずに術のようなものを使ってきたわ
ジュード詠唱なしで…。たぶん、それはミラの力の一つだと思う
ベルベットミラの力…?
ベルベット地、水、火、風の力ね…。…あの時の力はそれだったわけね
ティア今度は不意を突かれないように気を付けましょう
ルドガーとはいえ、その力を抜きにしてもミラは強い。もし戦いになればきっと厳しい状況になるな…
ジュードうん…。それでミラが諦める事はないだろうし…
ジュードミラは自分の責務を果たすために突き進む人だから
ベルベット…責任感が強くて迷いがない、ってわけね
エリーゼはい、だからこそミラはとても頼りがいがある仲間なんです
ルドガーそうだな。俺もエルも、ミラには世話になったんだ
ティア晶化現象の原因を突き止められたのも彼女のお蔭よ
ティアミラがいなければ兄さんが晶化現象を引き起こしていたなんて…わからなかったかもしれないわ
エリーゼでも、そうやって晶化現象を調べている途中に…ミラは、わたしの目の前で晶化して…
エリーゼだから、今度は…今度はわたし達の番なんです
エリーゼまた…仲間だって、呼び合えるように…!ミラを助けないと!
ベルベット…とにかく、あんた達にとってミラってのが大きな存在なのはわかったわ
ベルベット…それが今や、敵の幹部…か
ティアベルベット?
ベルベット…ふざけた話ね。それより…気を付けなさい!
ガルルルルルル…!
ジュード魔物か!
ベルベット時間が惜しい。速攻で倒すわよ!
scene2ミラという存在
ジュードこれで最後だ!はああっ!
バキィッ!
ギャオォン…!
ベルベット…ミラが相手じゃ、こう簡単にはいかないでしょうね
ジュードうん。でも、ある程度は対応出来ると思う
ベルベット…妙に自信あるのね。策でもあるの?
ジュードミラの戦い方はずっと近くで見てた。完璧にとは言えないけど、どんな攻撃か予想は出来るよ
ルドガーそうか…。戦い方の癖っていうのは、そうそう変えられないもんな
ジュードうん。もっとも、そんな予想をするような状況にならないのが一番なんだけどね…
ジュード…それでも、もしミラが本気でかかって来たら、かなうかどうかはわからない
ジュード僕一人の力じゃ出来る事は限られると思う。…みんなの力が絶対に必要なんだ
ジュードだから、力を貸してほしい!元の世界とミラを、取り戻すために!
エリーゼ勿論です!わたし達で…絶対に!
ティポ取り戻すぞー!
ティアそうね。私達にとっても、大事な事だもの
ルドガーああ、俺もミラには恩がある。それに、みんな最初からそのつもりで来てる
ベルベット…あくまで核を壊すのが目的よ。それさえ忘れなければ、文句はないわ
ジュードうん、勿論わかってるよ。核の破壊は、僕達が果たさなきゃならない事だ
ベルベット…ならいいわ
ジュードそれじゃあ、案内は任せて。この先は、僕がこの世界で住んでた街の近くなんだ
ジュードさあ行こう、みんな!
scene1霧の中の戦い
ロアー──その力を──────ここに…!
ロアー集え!!
キュイーーン…
ロアー…ふう。想定より時間がかかってしまったが…
ロアーこれで、私がいる限りクリスタルは守られる…
騎士団員ロアー隊長。準備はいかがでしょうか…?
ロアー問題ない。先ほどのものはあくまで最後の保険のようなものだがな
ロアー…隊の皆はここに集まっているな
騎士団員はっ。隊長のご命令通り、総員、クリスタル周辺で待機させております
ロアーそうか、ならばいい。警戒を怠るな
ロアーこのクリスタルはラザリス様の命にも等しい。何に代えても守るぞ
騎士団員はっ!!…しかし隊長、よろしいのでしょうか
ロアー何がだ?
騎士団員出すぎた真似を承知で申し上げます。総員をクリスタルに配置した事で、階下の警備に手が回りませんが…?
ロアーああ…その点は心配ない
ロアー既に、手は打ってあるからな。お前達は、クリスタルを守る事のみに集中してくれ
ジュード見えた…あれだよ、みんな。雲の向こうにうっすら見える…あそこが虹雲の神殿だ
ティポすっごーーーい!!雲の上に神殿が浮いてるよー!
ティアこれは…驚いたわね。こんな光景、初めて見るわ
ルドガーなるほど…。虹雲の神殿って呼ばれるわけだ
エリーゼ…でも、よく見れば雲の上に神殿があるわけじゃないんですね
ティポほんとだ、雲の中にうっすら地面が見えてるー
ジュードうん、そうなんだ。ここから遠くに見えるあの神殿まで、ちゃんと地続きだよ
ルドガーただ、雲のせいで視界は悪そうだ。あまり入り組んでないといいが…
ティア…神殿から光の柱が伸びてる。あそこに核があるのは間違いないようね
ティアでも、この辺りに白き獅子の気配はない…。神殿で待ち構えていると見るべきね
エリーゼやっぱり、あそこにミラが…
ジュード
ベルベット…さっさと行くわよ
ベルベットこうしている間にもラザリスがいつ特異点の修復を終えるかわからないんだから
ルドガー…はは、相変わらずだな
ティアけれど、ちゃんと私達に声をかけてくれるようになったわ
ジュードうん、そうだね。今は「自分一人」じゃなく僕達と一緒に進もうとしてくれてる
ジュード…さあ、置いてかれない内に僕達も行こう。ミラのところへ
エリーゼはい。ミラ、待っててください…!
scene2霧の中の戦い
ジュードうーん…。わかってたけど、かなり霧が深いね…
ルドガー…視界がほぼ真っ白だ。はぐれないようにしないとな
ティアええ、一度はぐれたら合流は難しそうだものね
ティポうー、遠くから見た時はもっとふわふわだったのにー!
ジュードしょうがないよ、ティポ。ほら、みんなの側から離れないでね
ティポりょーかいー!
エリーゼベルベットも一人で先に進んだら駄目ですよ
ベルベットわかってるわよ。それにしても…本当に鬱陶しい霧ね
ルドガーああ。光の柱のお蔭で方向は見失わずに済むが、問題は敵が現れた時だな…
ルドガーこの視界じゃ接近に気付けないし、もし乱戦になったら敵味方の区別も難しい
ベルベット…対策の立てようもないわ。警戒する他ないでしょうね
ジュードうん。神殿にさえたどり着けば、視界の問題はなくなるはず…。とにかく、前に進もう
ルドガー参ったな…。進んでいるはずなのに、神殿に近付いている気がしない
ティアそれでも、進むしかないわね。大丈夫。確実に近付いているはずよ
ベルベット…!全員、止まりなさい
ジュード…!?ベルベット、この気配は…
グオオオオオオオッ!
ティポで、でたーーー!
ジュードくっ…!ここまで接近を許すなんて…!みんな、気を付けて!
scene3霧の中の戦い
ジュードせいっ!
…グルルル…!!
ジュードくっ…!攻撃しようとするとすぐ霧に紛れて──…
ルドガーこの悪状況にも慣れっこってわけか。さすがはここに巣食う魔物だな…!
ティアでも、数は減ってきたわ!そろそろ終わりのはずよ!
ジュードお互いが見える範囲に固まろう!バラバラに戦ったら魔物達の思うツボだよ!
ベルベット…その方がいいわね
ウウゥ…
ジュードあれは…!ベルベット、後ろから来るよ!
ガウッ!!
ベルベット…!!はあっ!!
ザシュッ!
グッ…グルルルル…!!
ベルベットちっ、仕留め損ねた!そっちに行ったわよ!
ジュード任せて!
ベルベットそいつは傷を負ってる!動きは鈍ってるはずよ!
ジュードわかった!それなら…ここだ!
バキィッ!
ギャオォン…
ルドガーどうやら今の魔物が最後みたいだな
ティアふう…ひとまずは安心ね。それにしても、二人共いい連携だったわ
エリーゼはい、すごいです!ジュードとベルベット、息ピッタリでした!
ベルベット…まあ、今のは悪くなかったわ
ジュード…!あ、ありがとう…!
エリーゼ…ベルベットとジュードが仲よくなったみたいで嬉しいです
ベルベット…何よ、いきなり
ティポ仲よしだからー、さっきみたいにレンケイ出来たんだよねー!
ジュードな、仲よし…なの、かな?
ベルベット…勝手に言ってなさい
ベルベット先に行くわよ
ティアベルベット、一人じゃ危ないわ
ルドガー俺達も行こう
エリーゼあっ…!入口がありました!ここから入れそうですよ
ジュード白き獅子に見つからないように忍び込めればいいけど…
ルドガーいや、おかしいぞ…?見たところ、見張りが一人もいない
ベルベット好都合、ではあるけれど。さすがに罠でしょうね
ティア…。こうは考えられないかしら?
ティア白き獅子からすれば、私達の目的が結界の核にある事は明白よ
ティアだったら最初から核の近くで守りを固めて、待ち伏せていれば間違いはない
ルドガー…理屈は通るな。もっとも、だからと言って油断は出来ないが…
ティアジュードはどう思う?
ジュード…ティアの予想、当たってるんじゃないかな
ティポどーしてー?
ジュードほら、光の柱をよく見て。光が出ている根本…一番眩しい場所は、神殿の上の方だ
エリーゼ…本当です。あれは最上階みたいですね
ジュード核があそこにあると考えると…
ジュードティアの予想通り、下の方の警備が手薄なのも説明がつかない?
エリーゼ確かに…。じゃあ、ミラは最上階にいるって事でしょうか…?
ジュード可能性は高いと思う
ベルベットそうだったら願ったりかなったりね。いちいち足止めされるよりは楽でいいわ
ルドガー…とは言え、それでも最上階まで素通りは出来ないだろうな。何らかの罠はあると考えるべきだ
ジュードうん。気を付けて進もう、みんな!
scene1水源をたどって
ベルベットここまで特に問題なく進んでこられたけど、これは…
ジュードうん…この部屋…どうなってるんだろう
ザアアアアー…
エリーゼあちこちから水が流れ込んでるみたいです…
ティア流れ込んだ水で、部屋が池のようになってるわね…。辛うじて足場は残ってるけど
ルドガー…だけど、これだけの水があるなんて不自然だな
エリーゼはい。水源がどこにも見当たらないです
ジュードうん。霧で視界はぼやけてたけどこれほどの水を引いてるなら、水音くらいは聞こえてたはずだし
エリーゼじゃあ、この部屋の水は一体どこから…?
ベルベット警戒するに越した事はないわ。慎重に、上の階へ続く道を探すわよ
ジュードうん。水中も怪しそうだけど、まずは歩ける部分から調べてみようか
ルドガーそうだな
ティアそれじゃあ、私達はあっちを──
エリーゼあっ…!あれ、何でしょう?水の中でキラキラ光って…
ティポキラキラの奥にも、何かあるよー!
エリーゼ…?本当です。何かうっすら見えて…
ベルベット…!下がりなさい!
シャアアアアアアアッ!!
ティポうわーーーっ!!魚の魔物!
ルドガーそうか、こいつの鱗が光っていたんだ…!
ベルベットくっ…!消えろっ!!
ザシュッ!!
シャアアァ…
エリーゼあ、ありがとうございます。ティポを助けてくれて…!
ティポベルベット君、ありがとー!
ベルベット礼を言うのはまだ早いわ。…ほら、来るわよ!
シャアアアアアアアッ!!
ジュードすごい数だ…!くっ!みんな、構えて!
scene2水源をたどって
ティア何とか、倒せたみたいね…
エリーゼあの…みんな、ちょっと来てくれませんか?
ジュードどうしたの?エリーゼ
エリーゼあそこ、見てください
ティア水が深くてよく見えないけど…。あれ、扉かしら?
ジュード本当だ、もしかしたら、上の階への道かもしれない…。よく見つけたね、エリーゼ
エリーゼ何かあるって、さっきティポが教えてくれたんです
ティポえへへー、ぼくのお蔭だよー!
ルドガーお手柄だな、ティポ
エリーゼあっ、あともう一つあるんです
エリーゼほら、あそこ…滝みたいになってるところの奥に、青白く光る球のようなものが…
ティア確かに…球体があるわ。あれは何かしら?
ジュードうーん…扉と、球か…
ルドガー扉までは潜っていくしかない…が、やはり難しいな。水中は魔物だらけだ
ティアええ、危険すぎるわ。そもそも、この深さじゃ息が続くかもわからないし…
ティア上手く扉まで行けても、すんなり開かないかもしれない
ベルベット水を抜く方法があればいいんだけど…
ジュードとなると、怪しいのはあの球だね
エリーゼジュードは、あの球が水源だと思いますか?
ジュード断定は出来ないけど…。あまりに不自然だし、他に説明がつかないからね
ベルベットなら、壊せばいい
ジュード…問題は、あそこまで行く方法かな
ルドガー直接は無理でも、ティアやエリーゼの術なら届くんじゃないか?
ティアそうね…やってみましょう
ジュードじゃあ、まずは…。いや…待って、何か聞こえる!
バシャーンッ…
ティポこ、この音はー!また魔物ー!?
ベルベット球の前に結局魔物を相手にしなきゃいけないってわけね
シャアアアアアアアッ!!
エリーゼ来ました…!みんな、気を付けてください!
scene3水源をたどって
ベルベットこの…!しつこいわね!
ザシュッ!!
シャアアアアアアアッ!!
ルドガーかなり頑丈な奴だな!それに水中からの攻撃は、どこから来るのか予想しづらい…!
ジュード霧の中で戦った奴らより厄介だね。水中で加速してくるせいで、動きが捉えきれないよ
ベルベットちっ…どうにか奴らの動きを止められれば、片付けられるんだけど…!
ティア
ティア…相手が水中にいるなら、何とか出来るかもしれない
ベルベットどうやって?術だって、あの速さじゃ避けられるわ
ティア当てなくても…上手くいくと思うわ
ティア少しだけ援護を頼めるかしら
ルドガーわかった。任せてくれ
ティア水の中なら衝撃が広がっていくはず…
ティア…バニシングソロゥ!!
ドンッ!!
シャッ…シャアアアアアッ!?
ルドガー魔物の動きが止まった!?
ジュード術の衝撃で気絶させたんだ…!今だよ、みんな!
ベルベット言われなくても…はあああっ!!
ザシュッ…!!
シャアアァ…!
ルドガーよし!やったみたいだな!
ジュード…他に魔物はいないみたいだね
ジュードティアのお蔭で助かったよ
ティア上手くいってよかったわ
ルドガーああ。あとは、あの球を壊すだけだな
エリーゼそれなら、今度はわたしにやらせてください
ティポエリーにお任せー!
エリーゼはい。それじゃ、いきますよ…!
エリーゼネガティブゲイト!
バキィイイン!
ズ…ズズズズズズ!!!!
ルドガーこ…この揺れは!?
ジュードみ…みんな、見て!あれだけあった水が…!
ジュードどんどん引いていくよ!
ティポわ、わ、わー!あっという間になくなっちゃったー!
ルドガー揺れも徐々に収まってきた…。やっぱり、あの球が大量の水を作り出していたんだな
エリーゼ…!あれ、見てください!扉のところに行けるようになりました
ベルベットよし、行くわよ…!
ティアええ、先を急ぎましょう
ジュード…水を生み出す仕掛け、か。あの球は最初からあった…?
ジュードそれとも…
ルドガージュード、考え事なら後にしよう。ベルベット達に置いて行かれるぞ
ジュードえっ…?っと…、そうだね。今は進もう…!
scene1孤立した二人
ジュードふう、結構長い階段だったね。ここが二階か…
ルドガー水の次は岩だらけの部屋、か…
エリーゼ何だか不気味です…。通路がすごく狭くて、どこを見ても岩の壁ばかり…
ティアエリーゼの言う通り、かなり入り組んでるみたいね
ベルベットまあ、ただの通路って事はないでしょうね。油断せずに行くわよ
ジュードうん。何か気付いた事があったら、すぐに教え合おう
ルドガーああ…って、いきなり道が分かれてるな…
エリーゼ次の階に続いてるのは、どっちなんでしょう?
ジュード…もし間違えたら、かなり時間を取られそうだね。慎重に進まないと──
ゴゴゴゴゴゴゴ…!!
ティポ何だー!?
ティアこの揺れは…地震?
ルドガーどんどん揺れが激しくなっていくぞ!みんな、固まって…
ズズズ…ドン!!
ジュードうっ…!今度は何!?
エリーゼい、岩です、ジュード!いきなり大きな岩が飛び出してきました!
ティア退路を塞がれている…!いけない、前に走って!閉じ込められるわよ!
ベルベットここもタダじゃ通してもらえないってわけね…!
ゴゴゴゴゴ…!
ティアあちこちで岩が隆起してる…!
ルドガー手当たり次第って感じだな…!少しでも立ち止まったら、まずい…!
ズズズ…
ジュードくっ…!この道も塞がってる…!
ジュードみんな、脇道に逃げよう!こっちに──
ボゴォン!!
ジュードし、しまった!足元から…!
ベルベットちいっ…!!
エリーゼあっ…!ジュード!ベルベット!!
ボゴォン!!ボゴォン…!!
ルドガー危ない、エリーゼ!
エリーゼでも…!でも、二人が壁の向こうに!!
ティポジュード君ー!ベルベット君ー!
ジュードいたたっ…すごい大岩…。ベルベット、大丈夫?
ベルベット問題ないわ。あたしよりも、向こうの心配をするべきね
ジュードそうだ…!他のみんなは!?
ジュードみんな!僕の声が聞こえる!?
エリーゼジュード!はい、聞こえます…!
ジュードよかった…。僕もベルベットも無事だよ。そっちはどう?
ティアかすり傷程度で、全員無事よ。ただ…問題はこの岩の壁ね
ルドガー何とか壊そうとしてるんだが、まるでビクともしない。ただの岩じゃなさそうだ
ティポガチガチのゴリゴリだよー…
ベルベット…合流は難しそうね。どうするの?
ジュード…仕方ないか。ここで合流するのはひとまず諦めよう
ジュードルドガー、そっちの通路は完全に塞がれてる?
ルドガーいや。通路が入り組んでるお蔭で塞がってない道もありそうだ
ジュードそれじゃあ、お互い別の道を探してこの階を抜けよう。今は、その方がいいと思う
エリーゼ…そうですね。この先で道が繋がってるかもしれませんし
ティア…なら、急いだ方がいいわ。揺れは収まってるけど、いつまた岩が隆起してくるか…
ジュードうん。とにかく、早くこの階を抜けないとね
ルドガーわかった。お互い気を付けよう
エリーゼジュード、後で合流しましょうね…!
ベルベットあたし達も行くわよ。グズグズしてる時間はないんだから
ジュードそうだね。行こう、ベルベット!
scene2孤立した二人
ベルベット進んでも進んでも岩壁ね。本当に出口に近付いてるのかわからなくなってくるわ
ジュード一応、通ったところに目印は付けてるから、進んではいるはずだよ
ジュードそれにしても、みんなは大丈夫かな…
ベルベット心配する必要はないでしょ。誰か一人がはぐれたわけでもないんだから
ジュード…そうだね。向こうも同じ事を言ってるかも
ベルベット余計な心配をするのも、されるのもごめんよ
ベルベットそれに、世界とミラを取り戻すつもりならうろたえてる場合じゃないでしょ
ジュード…うん。ねえ、ベルベット
ベルベット何?
ジュード何て言うか、その…
ベルベット…言いたい事があるなら、はっきり言いなさいよ
ジュード…ありがとう
ベルベット…何の事よ?
ジュード…僕がここに来れたのは、ベルベットのお蔭みたいなものだから
ジュード大切な仲間だから、ミラは僕自身の手で助けたい。そのためなら、戦う覚悟も出来てる
ジュードでも、その覚悟は…君の言葉と行動があったからこそ持てたものなんだ
ジュードだから、一度しっかりお礼を言いたくて
ベルベット…全く。買いかぶりもいいとこね
ベルベット悪いけど、あたしはあたしのやりたいようにやってるだけよ
ジュードわかってる。…でも、僕はベルベットのお蔭だと思ってるんだ
ベルベット売った覚えのない恩に、礼なんていらないわ
ジュード…そっか、ならわかった。お互いの勝手って事にしよう。お礼を言うのも、受け取らないのも
ベルベット
ベルベット代わりに一つ、聞いてもいいかしら
ジュードうん…何?
ベルベットミラの話の続きよ
ベルベット…ティアが前に言っていたわ。あんた達にとってミラは「家族」のようなものだって
ジュード…家族、か。うん、それも正しいと思う
ジュードでも、それ以上に…ミラは僕やエリーゼにとって特別な人なんだ
ベルベット
ジュードミラは自分の使命や困難に、正面から挑んでいく人だった。どんな時だって…
ジュードそんな姿を見てる内に、僕も変わらないとって思うようになれたんだ
ジュード誰かに引っ張られるだけじゃない、僕の力で出来る事があるんだ、ってね
ベルベット…つまり憧れや目標にしてるって事?
ジュードそんな感じ、かな。ミラがいたから、今の僕がいるんだ
ベルベットなるほど…だからそんなにも必死なわけね
ジュードうん。それに…ラザリスがミラを無理やり従わせているのが、絶対に許せないんだ
ジュードミラは自分の使命をすごく大切にしてた。使命を果たすために自分はいる、ってくらいにね
ジュード…なのに今は偽物の使命を上書きされて、ラザリスにいいように使われてる…
ジュードきっとミラだけじゃない…。他にも大勢「自分」を捻じ曲げられてしまった人がいて…
ジュードその分、悲しい思いをしてる人がいるはずなんだ
ジュードだから、一刻も早く核を壊して世界を元に戻さないと…!
ベルベット…変わってしまった人、それを悲しむ人…か
ジュード…でも、改めて思い返すと、ミラに助けられてばっかりだったな…
ジュード…だから今度は僕の番なんだ
ベルベットミラを取り戻す事が、あんたの恩返しってわけね
ジュードうん。追いかけてばかりじゃ駄目だから
ジュードミラがここまで僕を引っ張ってきてくれたなら…
ジュード今度は僕がこの手でミラを助け出したいんだ!
ベルベット…あんたの想いはよくわかったわ
ベルベットせいぜい頑張んなさい。あたしはあたしの目的のために動くけど…
ベルベット…まあ、少しくらいなら力を貸すわ
ジュードベルベット…
ベルベットあくまで世界を取り戻すためよ。あんたとミラの事はあたしには関係ない
ジュードうん…それでも、ありがとう
ベルベット
ベルベット…!見て、どうやら出口みたいよ
ジュード本当だ!よかった、どうにか突破出来たね
ジュードエリーゼ達は近くにいるかな?ちょっと様子を見てくるよ…!
ゴゴゴゴゴゴゴ…!!
ベルベット…この揺れは!
ジュードあと少しなのに…!また岩壁だ!
ゴゴゴゴ…!!
ベルベット隆起する速度が段違いね…あっという間に囲まれたわ
ジュードそれだけじゃないみたい!あれを見て!
グオオオ…!
ベルベット岩壁と一緒に魔物まで出てくるとはね…!
グオオオオッ!!
ベルベット来るわよ!
ジュードくっ…!こんなところで…負けられない!
scene3孤立した二人
ジュード砕けろっ!
バキィッ!
ゴ…ゴ、ゴゴッ……!
ベルベットちっ…この魔物達、倒しても倒しても、岩から無限に湧いてくる…!
ジュードむしろ、戦う前より増えてるような…っ!
ジュード──危ない!後ろ!
ベルベットっ!?
ガッ!
ジュードくっ…何て重い攻撃だ…!受け止めるのが精一杯…!
ジュード…ベルベット!僕がこいつを抑えている内に、早く!
ベルベットええ!
ザシュッ!
ベルベット助かったわ…。けど、らちが明かない
ジュード数が多すぎる…!それに…
ベルベットこれ以上後ろには下がれないか…!完全に囲まれたわね
ジュード何か手は…
ジュード…ん?
ゴゴゴゴゴゴゴ…!!
ジュードまた…地面が揺れ出してる!?
ベルベットまだ魔物が増えるって言うの!?
ゴゴゴゴ…ッ!!
ジュード待って!壁にひびが…?
ドドドドドドッ…!
ジュード岩壁が、粉々に崩れた!?
ベルベット一体何が起こって…
???ジュード!ベルベット!二人共、無事ですか!?
ジュードこの声は…エリーゼ!
ティポこらー!ぼくらもいるぞー!
ルドガーどうやら間一髪だったみたいだな
ベルベットそっちも、全員無事みたいね
ベルベット…それで、これはあんた達がやったの?
ティアええ。通路を進んでる途中、一階にあった球体とよく似たものを見つけたの
ティアたった今破壊してきたわ。やっぱりあの球体は階層ごとの仕掛けを解く鍵のようね
ジュードありがとう、みんな!助かったよ…!
グオオーーーッ!!
ジュードあとは魔物…!
ベルベットふん…岩壁がなくなったせいか、もう増えないみたいね…!
ティア残りの魔物も片づけましょう!
エリーゼみんな揃えば、こんな魔物怖くありません!
ジュードよし、一気に蹴散らそう!
ジュードはっ!!
バキィッ!
グ…オ、オオッ……!
ルドガー今ので終わりだな
ティポみんな、お疲れー
ベルベット本当よ…。この先も妙な仕掛けばかりなわけ?
ティア気が抜けないけど…今は、とにかく先に進みましょう
ジュードうん、気を付けて行こう
scene1傷ついたとしても
ベルベット水没した部屋に、岩壁だらけの通路と続いて…
ゴオオオオオオオッ!!
ルドガー三階は大竜巻か!何て風の勢いだ…!
ジュード水、岩…そして、風か…。これってやっぱり…
ティア何かあるとは思ってたけど、随分大掛かりな仕掛けね…!くっ…!
エリーゼ立ってるのがやっとです…!
ティポと、飛ーばーさーれーるー!
ジュードエリーゼ、ティポをしっかり押さえてて!
エリーゼは、はい!ティポ、早く腕の中に…
ティポ離さないでねー、エリー!
ルドガー…!
ルドガー見てくれ、みんな。竜巻の向こうに階段がある。きっとあれが次の階への道だ
ティポあっさり見つけたー!うーん、でもー…
エリーゼあの竜巻のせいでとても近付けません…
ティアそうね…でも、見たところ部屋自体はかなり開けてるわ
ベルベットここは大広間みたいなものね。なら、竜巻さえ何とかすれば…
ティア壁にいくつもある小部屋が気になるけど…
ティア竜巻以外に障害らしきものはないわ。あれを止める方法を考えましょう
ルドガー…それなら、まずは「あれ」だな
ジュードうん…球体、だね
ルドガー一階でも二階でも、あれを壊した事で道が開けた
ルドガーここの竜巻だって例外じゃないはずだ
ジュードそれに、今回はわざわざ球体を探す必要もなさそうだよ
ベルベット…そのようね。これ見よがしに置いてあるわ
ゴオオオオオオオッ!!
エリーゼで、でもあそこ、竜巻の中心ですよ…!?
ティア…壊せるか、試してみましょう
ティア──ホーリーランス!
バシュウゥゥ…
エリーゼ竜巻にかき消されてしまいました…
ティアすごい勢い…。これではいくら術を放っても無駄ね
ベルベット…接近して壊すしかないってわけね。辺りを調べるわよ
ピィイイイッ!!
ジュード今のは!?
ピィイイイッ!!
ティア鳥型の魔物!壁の小部屋から、次々出て来るわ!
ルドガーいや…おかしいぞ。あいつら、俺達じゃなく竜巻の方に突っ込んでないか?
エリーゼ本当です…!この風じゃ、魔物も上手く飛べないんでしょうか?
ベルベットそんな間抜けなら、倒す手間が省けるわ。もっともあたしには…
ベルベット旋回してるように見えるわね。…獲物を狙う鳥みたいに
ジュード…そうか!あの動き…竜巻に乗って、勢いを増すつもりだ!
ベルベットしっかり構えなさい、あんた達。中途半端に受け止めると、吹き飛ばされるわよ!
ピィイイイッ!!
ジュード来る…!やるよ、みんなっ!
scene2傷ついたとしても
ジュードうぐっ…!
ティアジュード!今回復するわ…!
パアアア…
ジュードありがとう、ティア
ジュードこの魔物…本当に速い。どうしても反応が遅れるよ…!
エリーゼ狙いが付けられません…!
ティア…!あれを見て…!
ジュード魔物達が急に不規則に…?
ルドガーさっきとはまた違う動きだ…!あいつら、一体何をしようと──
ビュオオオオ…!!
ティアくっ、すごい風よ…!
ジュード…!あの魔物の動き、それに突風…
ジュードまさか…
ティアジュード、何か気付いたの?
ピィイイイッ!!
ジュードまずい!みんな、下がって!
ビュオオオオッ!!
ルドガーくっ、すさまじい風だ…!一体何が──
ザシュ!
ルドガーうっ…!
ジュードぐっ…!やっぱり、かまいたちだ…!
ベルベットかまいたち…!?
ジュードうん…!あの魔物達は竜巻を利用して周囲に空気の刃を生み出してるんだ!
ザシュ!ザシュ!
ジュードぐぅ…!!
ベルベットジュード…!ちっ…、あれじゃ避けきれない…!
エリーゼみんな傷だらけです!このままじゃ身が持ちません…──つっ…!
ティアエリーゼ!
ルドガー…!魔物達がまた…
ティア今の内よ…!再びかまいたちが放たれる前に一度引いて──
ジュードいや、駄目だ!
ジュードこの状況で引いたら、きっと今の距離にだって近づけなくなる…
ジュードそれはつまりこの先へ進む機会を失うって事だ
ジュード…危険なのはわかってるけど、それでも引くわけにはいかないよ
ジュードミラのためにも
ベルベット
エリーゼジュード…
エリーゼそう、ですよね…。こんなところで引き下がるわけにはいきません…!
ティポうん、エリー!ミラ君待ってるもんねー
エリーゼ球体は…わたしとティポで壊します
ルドガーだけど…どうやって?
エリーゼわたしとティポで一番強い術をありったけの力を込めてぶつけます…!
エリーゼいつもより力を貯めるのに時間がかかりますが、それならきっと…!
ティポあんな竜巻になんか負けないぞー!
ルドガー待ってくれ、エリーゼ
ルドガー仮にあの竜巻を突破出来るとして…最初から使わなかったのには何か理由があるんじゃないのか
エリーゼ
エリーゼ…あの竜巻を越えるだけの力を貯めるには時間がたくさん必要なんです
エリーゼその間、無防備になってしまうので…
ルドガーなっ…!
ティア駄目よ、そんな危険な目に遭わせられないわ
エリーゼ…ティア、大丈夫です。ただただ無防備になるつもりはありません
エリーゼみんなの力、貸してくれませんか?
エリーゼ力をためる間だけでいいんです、わたし達を守ってください
エリーゼそしたらきっと何とかしてみせます…!
ジュードエリーゼ…
ジュード…わかった。魔物は先行して僕らが倒すよ
ジュードかまいたちは作らせないし、二人に魔物を近づかせもしない。みんなもそれでいい?
ルドガー…ああ、わかった
ティア全力でエリーゼ達を守ると約束するわ
ベルベット…決まりね。なら早速魔物潰しに動くわよ
ジュードうん、行こう!
エリーゼよろしくお願いします、みんな!
エリーゼ…始めます!
scene3傷ついたとしても
ジュードはああっ!!
バキィッ!
ピ…ピィイ…!!
ジュードはあ…、はあ…っ!間に合ったか…
ティアけれど、魔物が一向に減らないわ…
ベルベットかまいたちこそ防げているものの、これじゃキリがないわね…!エリーゼ、まだなの!?
エリーゼもう少しです……!
ティポあとちょっとだよー!
ルドガー…くっ!また魔物が増えて──…!ベルベット、後ろだ!
ピィイイイッ!!
ベルベット…!しまった、死角から…
ジュード危ない、エリーゼ!魔物がそっちに──
ピィイイイッ!!
エリーゼ…!
ザシュッ!
エリーゼうう…っ!
ジュードエリーゼ!
ティア一度下がって!こうなったら、何か別の方法を──
エリーゼだ、大丈夫です…!続けます!
エリーゼもうすぐ…準備が出来ますから…!
ティアエリーゼ…
ベルベット……
ピィイイイッ!!
ルドガー…!エリーゼ、後ろだ!さっきの魔物がまた──
ジュード…!させないっ!
ザシュッ!
ジュードぐ…ううっ!!
ティポジュ、ジュード君ー!ぼく達を庇って―…!
ルドガー二人共、大丈夫か!?
ベルベットダメージ覚悟の捨て身で庇うなんて…全く無茶を…!
ジュード二人には…近寄らせない!
バキィッ!
ピ…ピィイ…!!
エリーゼジュード…みんな…!準備、出来ました!
ジュードよし…!それじゃ、頼むよエリーゼ!ティポ!
エリーゼはい!…この一撃、無駄にはしません!
ティポ行くよー!エリー!
ティポ目標ロック!
エリーゼチャージ完了…
エリーゼ発射!!
ルドガーティポが竜巻の中に…!
ティポエリーも頑張ってるんだー!ぼくだって、負けてらんないよー!
ティポ覚悟しろー!!
ティポただいまー!
エリーゼ・ティポリベールゴーランド!!
ズオオオオオオッ!!!
ジュードすごい…!エリーゼの術が…球体ごと竜巻を飲み込んでいく!
エリーゼお願い…壊れて!!
バキィイイン!
ベルベット竜巻が…
ルドガー止んだ…!
ティポへへー、やったねー!
エリーゼこれで…次の階に…うっ…!
ジュードエリーゼ!今、傷を治すから…!
エリーゼわ…わたしは後でも大丈夫です。ジュードだって、わたし達を庇って、傷だらけで…
ティア動いちゃ駄目よ、二人共!今回復するから、じっとして…!
ティア…はい、これで終わり。幸い傷は浅かったから、動くのに支障はないはずよ
エリーゼはい。もう大丈夫、です
エリーゼみんな…。守ってくれて、ありがとうございます
ルドガーいや、礼を言われるどころか…守り切れなくて、すまなかった
ティアありがとう、エリーゼ。お蔭で次の階に進めるわ
ベルベット……
ベルベットジュード…あんた、よくあんな無茶するわね
ジュードえ…?
ベルベット魔物の攻撃を生身で受けて…一歩間違えれば死んでたわよ
ベルベットそれにエリーゼ、あんたも。魔物が目の前にいるのに、どうして──
ジュード・エリーゼ……
ベルベット何よ、きょとんとして…。ちゃんと今の話、聞いてたの?
ジュードう、うん。勿論。ただ、ちょっと意外で…
エリーゼはい…ベルベットなら、わたし達の気持ちはわかるはずですから
ベルベット…どういう事よ?
ジュードだって…誰かのために戦ってるのは、ベルベットだって一緒でしょ?
エリーゼわたし達と、同じです
ベルベット……!
ティア確かに、無茶の仕方はそっくりね。…さて、それじゃ行きましょうか
ジュードうん。先へ進もう。時間も気になるからね
ティポあれー?ベルベット君、ボーっとしてると置いてっちゃうぞー
ベルベットすぐに…追いつくわ。先に行ってなさい
ティポへんなのー
エリーゼ早く来てくださいね、ベルベット!
ベルベット
ベルベット大切な人のために戦っているのは、あたしもあの子達も、一緒…か
scene1覚悟に応えて
ジュードかなり登って来たね
ティポまだミラ君のところに着かないのー?
ジュード…最上階は、近いかもしれないよ
ルドガーわかるのか?神殿の外観からすると、半分以上は来ていると思うが…
ジュード根拠というほどでもないんだけどね。…今までの階を思い出してみて
エリーゼ水浸しの部屋に、岩壁の通路、あと、竜巻の部屋…ですね
ティポそれがどーしたのー?
ジュード多分…それらはミラが仕掛けた罠だと思うんだ
ティア…可能性は高いわね。水、地、風…全部、彼女の司る力だわ
ジュードそして全ての階には鍵になる球体があった
ジュードやっぱり最初に予想した通り、白き獅子は全員核の近くにいて…
ベルベットあの仕掛けで、あたし達を足止めする気だったってわけね
ジュードうん。そう考えれば、残るはあと一つ。火だけなんだ
エリーゼそれじゃあ、次の階を越えれば…!
ルドガー核…そしてミラが俺達を待ってるって事か
ジュードその可能性は高いと思う
ジュード…とにかく進んでみよう。何にせよ、核に近づいているのは確かだから
ゴオオオ…
ベルベットあんたが言ってた事、当たりみたいよ
ジュードけど、正直ここまでとは思ってなかったよ…
ティア見て、部屋の中央に例の球体もあるわ
ジュードまずは壊せるか試してみよう
ジュード…って、うわっ!
ゴオオオオオッ!!!
ジュード危なかった…!あれに近づくと、炎の勢いが強くなるんだ…!
エリーゼ術なら、どうでしょう…?──えいっ!
ズオオッ!
ゴオオオオオッ!!!
ティア…駄目ね。下の階と同じ、全て炎で打ち消されてしまったわ
ルドガーやっぱりここも直接破壊するしかなさそうだな
ルドガーしかし、竜巻と同じでここの炎の勢いも凄まじいな…
エリーゼもう一度、わたしとティポで…
ゴオオオオオッ!!!
ジュードあの炎の勢いじゃ、ティポが無事じゃ済まなさそうだね…
ティポぼく、燃えちゃうー!?
エリーゼべ、別の方法を考えましょう、ティポ
ルドガーとは言え、この熱じゃ長居するのも難しそうだな…
ティアええ…それに炎のせいか息も苦しく──
ガチャン!
エリーゼ何ですか…今の音…?
ジュード…!まさか!
ベルベットやられたわね…。入ってきた扉が塞がれてる。術か何かみたいだけど…
ティア
ティア…駄目ね、簡単には開きそうにもない
ルドガーまずいな…このまま進む事も戻る事も出来なければ炎にやられるぞ
エリーゼはあ…はあ…そんな…
ジュードくっ…何かあるはずなんだ。必ず、打開するための方法が…
ベルベット
ティア待って!あれは…
ヴォオオオオ!!
エリーゼま、魔物です!炎の中から!
ジュードくっ…!
ベルベット…仕方ない。まずはこいつらを片付けるわよ!
scene2覚悟に応えて
ジュードはあっ…!はあっ…!何とか魔物は倒せた、けど…
ゴオオオオオッ!!!
エリーゼはあ…はあ…
エリーゼい、息が……
ドサッ
ルドガーくそっ…エリーゼ…っ
ティア…くっ
ドサッ
ルドガーティア…!
ベルベットはあ…はあっ…ちょっと、まずいわよ…
ジュードすぐに炎を消さないと、このままじゃみんな…
ゴオオオオオッ!!!
ジュード
ジュードルドガー、ごめん…。もしもの時はミラの事をお願い
ルドガージュード…?まさか…
ルドガーやめろ…!
ルドガー駄目だ…!!炎に突っ込むなんて
ジュードだけど……!
ベルベット
ベルベット…どきなさい
ジュードベルベット…?
ベルベット何、呆けた顔してんのよ……
ベルベットミラのところまで行って……世界も、元に戻すんでしょ…?
ジュード…!うん、勿論だよ…!
ベルベット…あたしも、同じよ
ベルベットあたしも…早く帰らないといけない…
ベルベットラフィのため…復讐を果たすために…っ……!
ベルベットだから…ここは任せなさい
ジュードえ…?
ジュード待って…!ベルベット、何を…!
ゴオオオオオッ!!!
ルドガーベルベット…!くっ、炎の中に突っ込んで…!
ジュードどうして…君が…!
ゴオオオオオッ!!!
ベルベットく、ぅ…!たかが、炎くらい…!
ベルベット…はああっ!!
ジュードあれは…腕の力で、炎を喰らっている…?
ベルベットぐっ…ううう…っ!!
ルドガーベルベット…!戻って…!いくら君でも…!
ベルベットふん…!こんなもので、あたしは…!
ゴオオオオオッ!!!
ベルベットうぅっ!!
ジュードベルベット!!
ベルベット…あたし達は…!
ベルベット止められや…しないわ!!
ゴオオオオオッ!!!
ベルベット…砕け散れ!!
バキィイイン!
ジュード炎が…収まった…
ベルベットこれで、少しは涼しくなったわね…。ぐっ…!
ジュードベルベット!!
エリーゼ…けほっ!けほっ!あれ…息が…
ティアうっ…炎が消えてる…?
ルドガーエリーゼ!ティア!よかった…目を覚ましたんだな
ベルベットふっ、どうやら全員無事みたいね…
エリーゼベルベット…!その火傷…!
ティポボロボロだよー!
ティアまさか炎に突っ込んだの…?何て無茶を…
ベルベット…別に、生きてるんだからいいでしょ
ジュード先に一言くらい言ってよ!心配するじゃないか!
ベルベットふん…。何度も言ってるじゃない
ベルベットあたしは、あたしのために──…
ベルベット
ベルベット…いえ、いいわ。…今回は、あんた達のためって事にしておく
ジュードえ…?ベルベット、今…
ベルベット…ほら、さっさと次の階への道を探してきなさい
ベルベット先を急ぐわよ。ミラとこの世界の両方、元に戻すんでしょ?
ジュード…うん。ありがとう、ベルベット
ベルベット…ふん
ルドガーそれじゃあ、俺達は次の階への道を探してくる
ジュードティア。ベルベットの事、お願い
ティアええ、任せて
ベルベット……
ティア…ベルベット。変な事を言うようだけど…あなた、また少し変わった気がする
ベルベット別に…変わったわけじゃない。ただ、気付いただけよ
ティア…何に?
ベルベット自分の気持ちの…正体、かしらね
ベルベット元々、あの子達の覚悟はわかってた。この神殿に入ってからは、尚更よ
ベルベット言葉と行動で、自分達の覚悟が本物だって証明してきた。そんな姿を見てたら…気付いたのよ
ベルベットあの子達がミラを想う気持ちは、あたしがラフィを想う気持ちとよく似てるんだ、って…
scene1忠義の証
ジュード…水、地、風、火。これで四つとも突破してきた
ベルベット次が最後の階になる可能性が高いわけね
ジュードうん。核を守るため、白き獅子が待ち構えてると思う
ジュード…勿論、ミラもそこにいる
ルドガー下の階に白き獅子はいなかった。やはり全戦力はこの上に固められてるはずだ
ティアええ。少なくとも、人数の不利は避けられない。気を引き締めないとね
エリーゼはい。ここで壊せないと、意味がありません
ティポせっかく頑張ったんだもんねー、やってやるぞー!
ジュードティポも気合十分だね
ジュード…それで、改めて聞いてほしいんだ。簡単にだけど、作戦を立ててみたから
ベルベットへえ…。じゃ、早速聞かせてもらいましょうか
ジュードうん、まずは──
ルドガー…理に適った作戦だと思う。俺は異存ないよ
ベルベットそうね。わかりやすくていいわ
ティアええ。その作戦でいきましょう。一番確実性があるもの
ジュード…目的はあくまで核の破壊。それが最優先だよ
エリーゼミラを傷つけなくて済むならそれが一番ですよね
ルドガーああ。みんなで力を合わせよう。核は、必ず破壊する!
ティポおー!燃えてきたぞー!!
ベルベット…悔いの残らないよう、やり切るわよ
ジュード…うん!行こう、みんな!
ロアー…来たか
ジュードミラ…!
騎士団員
ベルベットおまけの騎士共も、雁首揃えてお待ちかねよ
ティア彼らの背後にあるクリスタル。あれが核ね…!
ルドガーああ、敵の布陣から見ても間違いない!
ロアー四つの階層を突破し、ここまで来るとは…
ロアー咎人と言えど、お前達は相当の覚悟を持っているようだな
ロアー…しかしそれもここまでだ。お前達はここで捕えられる、私の手によってな
ジュード…ミラ!
ロアー…!
エリーゼわたし達がわかりませんか…!本当に…何も
ティポミラ君ー!ぼくだよ、ティポだよー!
ジュードミラ…!僕達の声、僕達を見ても君は何も感じない?
ロアー感じる、か…
ロアーああ、感じているとも。お前達から名を呼ばれるたびにな…
ジュード…!
ロアー教えてもいない私の本当の名──
ロアー──それを咎人などに気安く呼ばれる屈辱を、な
ジュード…くっ
エリーゼそん、な…
ロアーお前達は何故、私のその名を知っている?
ロアーそして…もう一つ。そこの、黒髪の少年
ジュード……
ロアー帝都でお前達を捕えようとしたあの時、お前は私を庇ったな
ロアー答えろ。あれは一体どういう事だ?
ジュード答えは、一つだよ。…君が僕達の仲間だから
ロアー…仲間?
ジュードラザリスは…元々僕達が住んでいた世界を創り変えてしまったんだ
ジュードそれだけじゃない…!
ジュードそこにいた人が仲間と過ごした大切な記憶、使命まで…全部を書き換えた
ジュード僕達と君はラザリスを阻止するため、一緒に戦っていたけど…結局、世界は変えられてしまった
ロアーふむ…つまり、私は別の世界に、別の人間として新たに生を受けた、という事か?
ジュードそうだよ…!それが真実なんだ、ミラ!
エリーゼ思い出してください…!ジュードも、ティポもティアもルドガーもみんな仲間だったんです!
ロアー
ジュードだから…!僕達は、元の世界を取り戻したいだけなんだ!
ジュード君とだって、戦うつもりなんてない!そのクリスタルさえ壊せれば、それでいいんだ…!
ロアー…ふっ。よくわかった
エリーゼ…ミラ、わたし達の言う事、信じてもらえましたか…?
ロアー勘違いするな。虚言に惑わされる私ではない
ロアー…だが、興味深かったぞ。お前達咎人とは、本で読むよりも奇抜な事を言うのだな
ジュード…ミラ、僕は!
ロアー──総員、抜剣!
騎士団員1はっ!
ジャキンッ!
ティアジュード、エリーゼ!今はやるしか…!
ベルベット来るわよ!
ベルベットはああっ!
ザシュッ!
騎士団員1攻撃が軽い…!かなり疲労しているようだな
ベルベットちっ…!
ジュード数が多い…!やっぱりそう簡単にクリスタルは壊させてくれないよね…!
ルドガー…だが、道がないなら作るまでだ。そうだろ、ジュード
ジュードうん!ティア、エリーゼ、お願い!
ティアええ、任せて!手はず通りにやるわよ!
エリーゼはい!
騎士団員2何をするつもりか知らんが、みすみすやらせるものか!
ルドガーそれはこっちの台詞だ!
ルドガーはああああああっ!
ガキンッ…!!!
騎士団員2な、何だ?貴様…一体…!
ルドガー…!
ルドガーはああっ!!
ジャキンッ!
騎士団員2ぐぅっ!
ルドガーお前達だって記憶を改変されているだけ…だから、傷つけたくはない
ルドガーけど、俺達の前に立ち塞がるっていうなら、悪いが手加減はできないよ
ルドガー元世界のため、そしてミラのために…少しだけ眠っててくれ!
ルドガーはあああっ!
騎士団員2くっ…!陣形が崩されて…!
騎士団員1だが、いくら一人が粘ったとしても数の有利は覆せまい…!
ティアルドガーだけじゃない…!
騎士団員1…っ!
ティアグランドクロス!
騎士団員1しまっ…ぐああっ!
ティアルドガーが作ってくれたこの瞬間、無駄にしないために…
ティア私達が道をつくるわ
騎士団員2咎人共の策にはまったか…!
騎士団員2被害状況を報告しろ!陣を再編し、一度立て直すんだ!
ティアさせない…!エリーゼ、今よ!
エリーゼはい!行きますよ、ティポ!
エリーゼ・ティポリベール・イグニッション!
騎士団員2なっ…!おのれええっ!!!
ズオオオオオッ!!
ティアやったわ…!上手く騎士達を弾き飛ばせたわね
ティアルドガーの骸殻の力で斬り込み、私とエリーゼの術で突破口を開く…
エリーゼジュードの作戦通りです!道が開けました!
ルドガージュード!ベルベット!今の内に早く!
ルドガー核は任せた!残った奴らは、俺達が相手をする!
エリーゼお願いします、ジュード!ミラを…わたし達の世界を、取り戻しましょう!
ジュードみんな…ありがとう!
ベルベットさあ、けりを付けるわよ!
scene2忠義の証
ロアー…ここまでたどり着くとはな
ロアーならば、この私が相手をしよう!
チャキンッ!
ジュードそうはいかないよ…!君と向き合うために、僕は…ここまで来たんだ!
ベルベット隙を作って核を壊す、だったわね。…やるわよ、ジュード
ジュードうん!頼りにしてるよ、ベルベット…!
ロアー何をごちゃごちゃと…来ないならこちらから行くぞ!
ロアーはああっ!
ガキィンッ!
ロアーほう…今のを受け止めるか
ジュード当たり前だよ。僕は君に倒されるわけにはいかない!
ジュードミラ…!思い出して…僕達の事を…元の世界を!
ロアーいつまで虚言を吐けるか…やってみろ!
ジュードうおおおっ!
ロアーはあっ!
ヒュッ!ガキィンッ!
ジュードよし、これでミラは抑えた…!
ジュードベルベット!
ベルベット手筈通りね。悪いけど、クリスタルは壊させてもらうわよ
ロアー
ベルベットもらった!
ベルベットはああっ!!
ガキン───!
ベルベット馬鹿な…弾かれた!?
ベルベットクリスタルの周りに…何かある!
ロアー…ふっ
ロアークリスタルは壊させん!ファイアボール!
ゴオオオオオッ!
ベルベットちっ!
ジュードベルベット、大丈夫!?
ベルベットええ
ベルベットでも何なの、さっきのは…?
ロアークリスタルを守る障壁だ。私の命を源とする特殊な術…
ロアーつまり、この私を倒さなければ決して破れる事はない
ベルベットちっ…
ジュードそれってまさか──
ジュード障壁を解くには君の命を奪わないといけないって事…?
ロアーお前達が私に敵うなら、だがな
ジュードそんな…
ロアー…何を怖気づいている?敵を討つ覚悟もせずにこの場へ来たわけでもあるまい
ジュード違う、僕は──
ロアー諦めろ、咎人。私がいる限り、お前達の刃が天帝に届く事はない
ジュードミラ……
ベルベットとことんラザリスに尽くすつもりってわけね。…馬鹿な事を
ロアークリスタルはラザリス様の命に等しい
ロアーならば、私も命を賭けて守る。それが白き獅子である、私の使命だ
ジュード…っ!ミラ、待って!
ジュード僕達が戦う必要はないんだ!それに君を殺すなんて…僕には…!
ロアーふっ、それで私を惑わせようとしているつもりか?愚かな…
ザシュッ!
ジュードっ…!!
ロアー──終わりだ、咎人
ベルベットさせるか…!
ガキィイン!
ロアー…邪魔をするな、と言うのも無理な話か
ベルベットちっ…!
ジュードベルベット…!
ベルベット…ジュード、あたしはそんな情けない顔を見るためにここに来たんじゃないわ
ベルベット──あんたでしょ、あの時…
ベルベット覚悟を見届けてほしいって言ったのは…!
ジュード…!
ジュード…ベルベット
ジュード…ありがとう。僕は決めたんだった…
ジュードもう、迷ったりしないって
ベルベットふん…わかればいいわ。ひとまず、ここは任せなさい
ベルベットその間にどうすればいいか考えて。あんた、得意でしょう
ジュードうん…!
ロアー余裕だな…。面白い、まずはお前から倒すとしよう
ベルベット出来るものならね…!
ベルベットはああっ!!
ヒュッ…キィンッ!ガキィンッ!
ベルベット思えばあんたの相手もこれで三回目…いい加減飽きてきたわ
ロアーそうだな…最初はガハラム山、次は帝都の広場…そして今…
ロアーお前とは妙な縁がある
ロアーだが、今が決着の時だ。お前も…それを望んでいるだろう
ベルベット…ふっ
ロアー…何かおかしいか?
ベルベット…違うわよ。ただ…そうね。残念だけど、決着はつけられそうにないわ
ベルベット…あんたの相手はあたしじゃないから
ロアー何…?
ジュード
ベルベット…じゃ、そういう事だから。後は任せたわよ
ジュードうん…!ありがとう、ベルベット
ザッ…
ジュード…ミラ。命を賭けて使命に立ち向かう君は、やっぱりミラだ
ジュードそんな君がいたから、僕はここに立っていられる
ジュードだから、今度は僕の番だ。君も…世界も…どっちも救うよ
ロアー…咎人の虚言は聞き飽きた
ロアー腑抜けたかと思えば、今度は私とあの女の決着を邪魔するか
ロアー…覚悟は、出来ているな?
scene3忠義の証
ルドガーよし…騎士達は全員倒した!ティア、エリーゼ!ジュード達の援護に行こう!
???加勢は必要ないわ
ティアベルベット!?ミラはどうなって…?
ベルベット障壁を張られたせいで核が壊せないの
ベルベットその障壁を破るには、ミラの命を奪うしかない…みたいね
エリーゼ…そんな!ミラと世界、どっちかを選べって事ですか…!
ティポそんなの、出来っこないよー!
ルドガーああ、状況が悪すぎる。尚更放っておけないだろう…!
ベルベットあいつはミラも世界もどっちも救うって言ってたわ
ベルベット本人がそう言うんだからあたしは約束通り、それを見届けるだけよ
ティアベルベット…
ティアそうね…ジュードがそう言うのなら私も彼の為す事を見守るわ
ルドガー…危険だと思ったら、すぐに助けよう
エリーゼはい。でも、ジュードは…どうやって…
ベルベット
ジュードはあっ…はっ…!
ロアーくっ…まさかここまでやるとはな…
ロアーよく受け流すものだ…まるで私の動きを知り尽くしているかのように
ジュードはあっ…はあっ…。うん、ミラの動きはずっと隣で見て来たからね
ロアー虚言を…
ロアーだが、長くは持つまい。次で決めるぞ
ジュードその前に一つ、聞いてもいいかな
ジュードあの障壁を破る方法…君は自分を倒すしかないって言ってたけど
ジュード…術者である君の意思ならどうかな?
ロアーいきなり何を言うかと思えば、くだらぬ問いを
ロアー私がラザリス様を裏切るとでも言うのか?
ジュード君が元のミラに戻れば…ね
ロアー言わせておけば…咎人め
ジュード君が僕の問いを否定しないのなら、やる事は決まってる
ジュード──今、この場で君の記憶を取り戻す
ジュードそして、ミラ。元に戻った君自身の手で、障壁を解除してもらう!
ロアーいい加減にその虚言をやめろ…!
ロアー咎人と言えど、命まで取る気はなかったが…
ロアー私の忠誠と、ラザリス様をこれ以上愚弄する事は許さん…!
ロアーその口、黙らせる!
キン!ガキィン!
ジュード…僕は決めたんだ。目をそらさないって
ジュード…だから、ミラ。僕は君からもう、一歩も引かない
ロアー…お前、何故構えを解く?
ジュード君から逃げないためだよ
ジュード思い出して。そして…みんなで一緒に帰ろうよ、ミラ
ロアー…そうか。私の覚悟と忠誠を愚弄し、あまつさえ…
ロアー戦いの決着すらつける気はないというのか!
ザシュッ!!
ジュード…ぐっ!ううっ!
ロアーどうしたっ…!拳を構えろ!はああっ!!
ズバッ!!
ジュード逃げないって…言ったんだ…!
ロアーこ、のっ…!!まだそのような事を──
ロアー…くっ……!
ジュードはあっ…ぐぅっ…どう、したの…斬らないの?
ロアー…何故だ…何故避けない?何故、無抵抗で私の剣を受ける…
ロアー咎人だろうと、自分の命は惜しいだろう
ジュード…うん、勿論
ジュードでも…ミラが命を賭けてるんだから、僕だって…同じように命を賭けるよ
ジュードはあ…はっ…それに、僕は死なない。絶対、記憶を取り戻してくれるって、信じてるから
ジュード僕は君を知ってる…君の強さを
ロアー何を言って──
ジュード思い出して、ミラ!
ロアーくっ、それ以上…その名で呼ぶな!
ドシュッ…!
ジュードつっ──…!
ロアーなっ…お前、素手で剣を受け止めたのか…?
ロアーくっ、何故いつもそんな無茶ばかり──
ロアー「いつも」…だと?私は何を……
ジュード危ない!ミラ!!
ミラ…!
イフリートグオオオオッ!
ズガッ!!
ジュードう…っ
ロアー何だ…何なのだ、この光景は…!
ジュードミラ…!もしかして、元の記憶が…
ロアー有り得ない…。でたらめを言うな、咎人!
ロアーもういい…終わりにしよう!
エリーゼジュード…!
ルドガーくっ…、これ以上見ていられない──
ベルベット駄目よ
ルドガーベルベット…?何で…
ティアこのままじゃ危険よ。ミラの攻撃を無抵抗で受け続けたら──
ベルベット…言ったでしょ、覚悟を見届けるって
エリーゼベルベット…
エリーゼ…ごめんなさい。でも、わたし…見守ってるだけなんて出来ません!
ベルベット
ジュードう…っ、ぐぅ……!
ロアーはあっ…はあっ…。これでも、まだ…足りないか…っ!
エリーゼやめてください、ミラ!わたしです、エリーゼです!
ティポミラ君ー!もうやめようよー!
ロアー黙れ!私の名を…呼ぶな!
ロアー私は白き獅子の…ロアーだ!私は私の果たすべき使命のために…お前達を討つ!
ジュードミ、ラ…
エリーゼジュード!動いちゃ駄目です…!
ティポ死んじゃうよー!!
ジュード大丈夫、だよ…エリーゼ
ジュード「使命」…
ジュードミラ…君はいつもそうやって、全部…一人で抱え込もうとする、よね
ジュードうぐっ…はあっ…はあっ…
エリーゼジュード…!
ジュード思い出すよ…四大の暴走を鎮めないとって、焦って周りが見えなくなった時の事…
ロアー──っ!?
ジュード確かに、マナや精霊達を感じ取れるミラと僕達は立場が違う…
ジュードでも、この世界に生きているという点では、一緒のはずでしょ?
ミラ
ジュードこの世界を何とかしたい、何とかしなくっちゃって気持ちを、誰もが持っているはずなんだ
ジュードだから…一人で背負わず、僕達の事を頼ってほしいんだ
ロアーくっ…私に一体何をした…
エリーゼもしかしてミラ、記憶を…
ジュード…ね、エリーゼ。ミラはいつも…いつも…そうだったよね
エリーゼ…!
エリーゼはい、ミラはいつもそうです。微精霊が晶化してしまった時だって、誰も頼らずに悩んで…!
ロアー…うぅっ!
エリーゼわたしだって…ティポやジュード、それにミラが晶化してしまったら……
エリーゼ…そう考えただけで、すごく怖くて…
エリーゼわたしにとって、みんなすごく…大切なんです。だから──……
エリーゼ一人で抱え込まないでください…
ロアー一人で、抱え込むな…?
エリーゼそうです。あの時、そう言ったじゃないですか
ロアー…!この光景…この感覚は…!
ジュード君は一人じゃないんだ、ミラ!僕らは君と一緒に生きていきたい!ミラと一緒に、歩いていきたいんだ!
ロアーやめろと言っているだろう!その名を…その名を呼ぶな!
ロアー…私はお前達の事など──…私は…私は…!
エリーゼミラは、ミラです!
ロアー違う…私は…!白き獅子の…!
ジュードミラは、誰かに操られるような弱い人じゃない!そうでしょ、ミラ!
ロアーうう…あああああ!!
ジュードミラ!
ロアー…黙れ
チャキンッ!
ロアーそれでも…我が、「使命」は……!
エリーゼミラ…?
ロアーこれで終わりだ…!
ロアー──ギルティカル、フェイト!!
ティアあの強烈な光は…!
ルドガーあんなのを食らったら…!
ベルベット……
ロアーっ…!避けなければどうなっても知らんぞ!
エリーゼミラ!
ジュード帰ってきてよ…!
ロアー…!──…つっ!お前達……!
ジュードミラ
エリーゼミラ!
ロアー……!お前達は…いや、君達は──…!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
ロアーくっ…!!駄目だ、やめろ─────ッ!!!
scene1おかえり
ジュード……
ジュードあれ…どうして僕達……
エリーゼミラの術が…外れた…?
ロアージュード!!エリーゼ!!
ジュードミ、ラ…?
エリーゼもしかして…!
ミラああ、君達のお蔭で全て思い出せた。本当にすまない、君達をこんな──
ジュードはは…このくらい大丈夫だよ。でも、記憶が戻って本当によかった…
ジュード本当に──ってあれ…?
ミラおっと!大丈夫か、ジュード!
ジュードあ、あはは。何だか安心したら、どっと疲れが出ちゃって…
ミラ私が不甲斐ないばかりに、心配をかけた…
ジュード…何て事ないよ
ジュードだって、こうしてミラは帰ってきてくれたから
ジュードおかえり、ミラ
ミラ…ああ。ただいま、ジュード
エリーゼミラー!!!
ティポミラぐんーーー!!!
ミラおっと…二人共、急に抱き着くと危ないだろう
エリーゼお帰りなさい…!お帰りなさい、ミラ!
ミラ…記憶がなかったとは言え、剣を向けてしまった私を迎えてくれるのか?
エリーゼそんなの当たり前です…!
エリーゼだって…わたしはこうしてミラと話せるだけで嬉しいんですから…!
ミラ…ああ、私も記憶を取り戻せてよかったよ
ルドガーははっ、熱烈だな。まあ、あれだけミラの事を想っていたから仕方ないか
ティアふふっ…そうね。本当によかった
ミラルドガー、ティア…!お前達にも、礼を言わなくてはな。本当に…ありがとう
ジュードミラ、あのクリスタルに張られている障壁を解除してほしい。僕達はあれを壊すために来たんだ
ミラ…わかった。では、手早く済ませてこよう
ジュード僕も行くよ…うぅっ
ミラジュード!
ベルベット…あたしが行くわ。あんた達はそこで待ってなさい
ジュードベルベット…ありがとう
ベルベット…あたしは自分の手で壊すまで安心出来ないだけよ
ミラお前は…。いや、話は後にしよう
scene2おかえり
ミラはあっ!!
ミラふう…これでいい
ベルベット…ふん、どうするのかと思えばまさか本人に解かせるなんてね
ミラジュードらしい方法だ。最後まで諦めずに危機的状況で成すべき事を成す…
ミラ…今回もまた助けられたな
ベルベットじゃあ、やるわよ。はあっ!!
パキイィンッ!
ベルベットよし、これでクリスタルは壊せた
ミラ…ベルベット、だったか。少しいいだろうか
ベルベット何?
ミラ私はミラ、ここにいるジュード達の仲間だ。改めて礼を言わせてほしい
ミラ助けてくれて本当に感謝している。ありがとう
ミラ…それと、すまなかった
ミラ記憶を失くしていたとは言え、私はこれまでに何度もお前に剣を向けてきた
ベルベット記憶を変えられてた頃の話なんて、どうだっていいわ。元々責める気もない
ベルベットそれに、あんたを助けたのはあたしじゃなくてあの子達よ。礼を言われる義理もないわ
ミラ…ああ。エリーゼも少し見ぬ間に大人になった
ミラ…もっとも、さっき抱き付かれた時の事を思うと、まだまだ子どもかもしれないが
ミラ…ふっ
ベルベット…ジュードは?あの子もまだまだ子ども?
ミラ…ジュードか。彼は、ずっと前から大人だ。むしろ…
ミラ今回の一件で、私の方が追い越されてしまったかもな
ベルベット…へえ
ミラどうした?私は…何か変な事を言っただろうか
ベルベット少し、聞いていた話と違うと思っただけよ
ベルベットそういうどっちが強いか、みたいな事は口にしない印象だったから
ミラふっ…。私にも感情はあるからな…
ミラすぐに抜き返すさ。失望させるのは…嫌だからな
scene3おかえり
ミラ…そうか。事のいきさつは皆の説明で理解出来た
ミララザリスは必ず倒さねばな。私も最大限力になろう
ミラこの後の集合場所は、リッカ村…と言っていたな?
ルドガーああ、その予定だよ
ミラでは、ジュード達は先にそちらへ向かってくれ。私は後で合流する
ティポえー!せっかく元に戻ったのにー?
ミラお前達は帝都に向かうのだろう?
ミラならば相手の戦力は少ない方がいい、白き獅子はここで抑えておこう。私にしか出来ない役目だ
エリーゼでも…ミラ…!
ジュードエリーゼ、ここはミラに任せよう。大丈夫、また会えるから
エリーゼ…わかってます。わたしだって、わがまま言うほど子どもじゃないです
ティポ一緒に行こうよー、ミラ君ー!
エリーゼ…ティポ、我慢しましょう
ミラすまないな、エリーゼ。ひと段落ついたら、すぐに合流するよ
ミラほら、善は急げだ。行ってくれ、皆
ルドガーせっかくの再会だが、仕方がないか
ティア積もる話はまた今度、ね
ジュードミラ、くれぐれも無理はしないようにね。それじゃあ…気を付けて!
ミラああ、お前達も
ジュードふう…。何とか外に出れたみたいだね
ジュードベルベット、少しいい?
ベルベット…どうしたの
ジュードまだ、お礼を言ってなかったから
ジュードミラを助けられたのは君のお蔭だよ。本当にありがとう
ベルベット助けたのはあんた達でしょ。あたしは何もしてない
ジュードそんな事ないよ。あの時、クリスタルを破壊するためにミラを倒そうとする事だって出来た
ジュードでも、そうしなかった。つまり、僕らのために、時間をくれたんだよね
ベルベットはぁ…。相変わらず、いちいち理屈っぽいわね
ベルベットでも、そうね。貸し一つ、って事にしといてあげるわ
ジュードうん、ちゃんと返すから任せてよ
ルドガー二人共、話しているところ悪いがあれを見てくれ
ジュードあっ……!
ベルベット光の柱…他の神殿も全部消えてるわね
エリーゼよかったです…!他のみんなも無事クリスタルを壊せたんですね
ティアええ…!
ベルベットこれであいつのもとに行けるはず!待ってなさい、ラザリス…!
ジュードよし、リッカ村に急ごう、みんな!
scene1同志との再会
ジュードやっと着いた…!リッカ村…
エリーゼすっかり暗くなってしまいました…
ルドガーでも、お蔭でこっそり忍び込めた。明るい内は、見つかる可能性が高いからな
ティア誰かさんは特に、大暴れしてるものね
ベルベットふん。そろそろあんた達も、手配書くらい出回ってるんじゃない?
ジュードかもしれないね。ひとまず、早くレイアを捜して──
村人…ん?誰かそこにいるのか?
ルドガーまずいな、こっちにくるぞ…!隠れろ、みんな!
エリーゼで、でもみんなが隠れる場所なんて…
ティポわ、わ、みつかっちゃうよー!
???みんな…!こっちこっち…!
ジュードその声は…レイア…!?一体どこに…
レイア後ろ、後ろ…!ほら、こっちの道なら安全だよ
ジュードわかった…!
レイアふう、何とか見つからずに済んだね。…それよりみんな、久しぶり!
レイア光の柱が消えたから、そろそろだって思って見張ってたの
ジュードそっか、ありがとう。お蔭で助かったよ。ところで、他のみんなは?
レイア安心して。みんな少し前に到着してジュード達の事、待ってるよ
ティア無事だったのね。よかった…
レイアそれじゃ、早速行こっか
レイア見かけない顔の人もいるから挨拶…といきたかったけど、今は後回し!まずは拠点まで案内するね
ルドガー拠点か…。って事は、ロランドファミリーのみんなもいるんだよな
ジュード会えるのは嬉しいけど、咎人だってバレないように気を付けないとね
レイアそれなら心配いらないよ。今は、みんな留守にしてるから
ルドガー留守?
レイアその辺の事も後で説明しないとね。…それじゃ、行こう。ついてきてね
ジュードうん、わかった
scene2同志との再会
レイヴンなーんか、こうして顔合わせるのも久しぶりの気がするわ
ミクリオけれど、安心したよ。これで全員揃ったみたいだ
コレットおかえり、みんな
ジュードただいま。みんな無事で安心したよ
スレイジュード達こそ大きな怪我はなさそうでよかった
ゼロスしっかし、遅かったじゃねーの!お前ら随分、遅れての登場だぜ
ベルベット仕方ないでしょ、一番遠い神殿だったんだから
レイヴン全くよ。お蔭でおっさん達、余計な苦労しちゃったんだから
エリーゼえ?余計な苦労、って…?
レイアあ、あはは!実は、ね…?
レイヴンそれがねぇ…ジュードの仲間だって言っても、レイアちゃんが信じてくれなくってさ
レイアだ、だって、ジュードやルドガーと全然感じが違ったし…!
レイヴンえ…!?悲しい…おっさんは悲しいわ!ちょっと老け込んでるからって…!
ベルベット…あんたがうさんくさすぎるのよ。当然の反応だわ
レイヴンべ、ベルベットちゃんまで…
ヴェイグ最初に会ったのが、レイヴンだったからな…。オレ達も誤解を解くのに苦労した
カイルそうそう、スタンさんが顔見知りじゃなかったら、危なかったですよ
ミクリオ…ちょうどそれで揉めてる頃、僕達も村に着いたんだ。ある意味、手間は省けたが
スタンま…まあいいじゃないか!今はこうして、仲良くなれたし…!
コレットうん、ジュード達を待ってる間、たくさんお話し出来たよ
ティア…それじゃあ、私達も情報共有しないとね
ジュードそうだね。まずは、クリスタルだけど──…
カイル…じゃあミラさんも、白き獅子の足止めに残ったんだ…
レイヴン結局全員残ったわけか…。ま、あの三人なら大丈夫でしょ
スレイうん、オレもそう思うよ。…とにかく、これで帝都の結界は解けた
スタンああ。後は帝都に乗り込んで、ラザリスを止めるだけだ!
ミクリオまずは状況の確認をしよう。レイア。帝都は今、どうなっているんだ?
レイア…結界が解けた後、ラザリスの安否を気遣った人達で、帝都は大騒ぎになったの
レイアヴァンから無事だって発表があったから、何とか収まったんだけど…
レイア街は今、ピリピリしててネズミ一匹見逃さない、って感じだよ
ジュード当然と言えば当然だよね…。侵入するのは容易じゃないか
レイアうん。しかも…それだけじゃないの
ベルベットどういう事?
レイア街の人達の中には、ラザリスの役に立とうって有志で警備を始めた人もいてね
レイアロランドファミリーのみんなも、これに参加してるせいで留守にしてるんだ…
ミクリオ少しでも見つかれば大騒ぎになるか。一筋縄ではいかないな…
レイア街の人も、白き獅子も、神兵も、本当は記憶を改変されただけの人達。あまり対立はしたくないよね
レイアロランドファミリーのみんなと鉢合わせちゃう事だってあるし…
ジュードうん。手荒な真似は極力避けたいね
スレイこっちは傷つけたくないのに、向こうは捕まえようって気合が入ってるのか…
ミクリオ僕達からすれば、記憶を改変された人達を人質にされてるようなものだ
レイヴンま、ラザリスからしたら、憎~い人間がどうなろうと知ったこっちゃないって事でしょ
カイルん~。何かその辺、引っ掛かるんだよなあ…
レイヴンどうしたのよ、少年
カイルラザリスって、人間が嫌いって感じなのに、何でこんな世界を作ったんだろう?
カイル平和な世界なんて創らないで、憎いなら壊せばよかったんじゃ?極端な話ですけど…
レイヴンふーむ…そうね。その辺に関しちゃ、おっさんも気になってたわ
レイヴン人間の扱いが妙に丁寧…ってのも、変な言い方だけど。なーんか、違和感あってね
ゼロスああ…。人間を嫌っておきながら、人間を生かしておくなんて、一体どういう事なんだ?
ミクリオしかもわざわざ、一人一人の記憶を改変してまで…
スレイ何か裏があるのかな?憎しみ以外の何かが…
ヴェイグそれに関しては、本人に聞く他ないだろう
コレット……
コレット私は…やっぱりラザリスにも、事情があるんだと思う
ゼロスコレットちゃん、だからそりゃあ──
コレットわかってる。ラザリスのしてる事は、私だって許せない…
コレットでも…でもね。だからって、あの時感じた気持ちは…簡単に忘れられないよ
ジュードコレット…
コレットわかり合えないからって、諦めちゃうのは…多分、違う…
コレット自分でもよくわからないけど、そう思うの
レイヴンま…無理に気持ちの整理をつける必要はないわよ、コレットちゃん
ティアそうね。簡単に解決出来るような問題でもないもの
コレット…そだね。ごめん、みんな。今は、悩んでてもしょうがないよね
レイア…それじゃあ、みんな!話も落ち着いたし、とりあえずご飯にしよう?
レイア何はともあれ、まずは腹ごしらえだよ!
スタン腹ごしらえ…!そう言えば、夕食まだだったもんな
ティポやったー!!
ジュードそうしようか。明日のためにしっかり食べよう!
scene1決意の形
スタンいやー、食べた食べた
カイルオレも、お腹いっぱい…。はー、美味しかった…
ルドガーさて、片付けてくれてるレイアを手伝ってくるかな
ヴェイグ…いや、手伝いは必要ないそうだ
ルドガーあれ、ヴェイグにジュードも。必要ないってどういう事だ…?
ジュード僕達も手伝うつもりだったんだけど…追い出されちゃった
ジュード「みんな戦い詰めだったんだから、 大人しく休んでて!」だってさ
コレットレイア、気を使ってくれたんだね
ゼロスいいねえ~…!そういう気配りの上手な子、俺さま好きよ?
ティアせっかくの好意だし、甘えさせてもらいましょう
ティア勝負はもう、明日だもの。今日は英気を養わないと
スレイそうだな。オレ達でヴァンとラザリスを止めよう
ミクリオああ、天帝の御座での借りも返さないと
ティアええ…兄の望んだこの世界を、自分の目で見て改めてわかった
ティアみんなの大切な記憶を改変して成り立つ平和なんて間違ってる。その間違いは、私が必ず正すわ
ティア妹として…家族としてね
ルドガー…そうだな。向こうがどんな理屈を並べても、俺達には助けたい人達がいる
ルドガー兄さん、そしてエル。…もう二度とエルに怖い思いはさせられないからな
ヴェイグ助けたい人はそれぞれいる。だからこそ、その人達のために元の世界を取り戻す
ヴェイグ…クレアはオレの迎えをずっと待っているからな
エリーゼ大切な人のためにわたし達は戦ってきました。だから絶対みんなと一緒に…
ティポ元の世界を取り戻すんだ―!
ゼロスへっ。涼しい夜だってのに、急に熱くなっちまったな~
スタンそんな事言って、ゼロスもあいつにはもう負けられないだろ?
ゼロスあー、お前も相変わらず熱い奴だな。でもまあ、今回ばかりは俺さまも、クールな美男子じゃいられねーわ
ゼロス…やられっぱなしは性に合わねえ。とっとと片付けて、元の世界を取り戻そうぜ
スタンああ!俺達なら、今度こそ勝てるさ!
カイルきっと大丈夫ですよ!今度はオレ達だっているんですから!それに…
カイル父さんみたいな英雄になるなら、ラザリスみたいな奴に負けられないですから!
ジュードカイルの言う通りだ。何とか、ミラを助ける事は出来たけど…
ジュード記憶を上書きして…人の生き方を捻じ曲げてしまうラザリスは許せないよ
レイヴンま、ありゃあ気分悪いからね。どの道、ここまで来ちゃったからには負けられないし…
レイヴン若人に当てられて世界を取り戻すってのも、悪くないわ
カイルはい!リアラもソフィも…そして世界も!オレ達が絶対取り戻しましょう!
ベルベットそうね…理由は違っても、目的はみんな一緒。一刻も早く、この世界を元に戻す
ベルベットそのためなら…ラザリスだろうが、ヴァンだろうが、まとめてなぎ払うまでよ…!
コレットラザリスの事…私は、みんなみたいにまだ答えを出せない…
コレットでも、ラザリスと向き合うにはとにかく特異点の修復を止めないと!まずはそこからだよね!
ゼロスおうよ!…さーて、それじゃそろそろ寝るとしますか
ジュードそうだね。明日も早いし、今日はもう身体を休めよう
エリーゼわたし、レイアに部屋の場所を聞いてきます
ティアそれなら、私も一緒に行くわ。お休みなさい、みんな
ベルベット
キィ…
スレイ…?ベルベット?
ミクリオよし、明日の朝にここに集合だな。…って、スレイ。どこに行くんだ?
スレイちょっと夜風に当たってくる。すぐに戻るから、先に寝ててくれ
scene2決意の形
スレイ多分、こっちに来たと思ったけど…。…ああ、やっぱりいた
ベルベットスレイ…。何か用?
スレイ君が外に出た時、妙に険しい顔をしてたから
スレイどうかしたのかなって
ベルベット…別に
スレイ
スレイ明日…全てが終わったら、やっぱり復讐の旅に戻るの?
ベルベット当然よ。あの子の無念は必ず晴らすわ
ベルベットそれだけが、あたしのいる理由なんだから
スレイ…そっか
ベルベットそう言うあんたはどうなの?
ベルベット元の世界を取り戻してその後、何をしたいの?
スレイオレ?オレは世界を巡るつもりだよ
スレイオレは導師として元の…みんなの暮らす世界を守りたい
スレイそのために世界を旅して…行った事のない場所や、会った事のない人に会ってみる
ベルベット漠然とした話ね…
スレイうーん、そうかな…あ、じゃあこういうのは?「元の世界で、改めてみんなに会う」
ベルベット
スレイこんな状況だけど、みんなと会えたのは嬉しいからさ。最近は、そんな事も考えてるんだ
ベルベット…あんた、物好きね
スレイそんな事ないよ。それにこの中には、勿論ベルベットだって入ってる
スレイ君はオレ達の仲間だ、きっと会いに行くよ
ベルベットあたしに?
スレイああ。いつか、きっと
ベルベット……
ベルベットそれはないわ
スレイ…!
ベルベット元の世界に戻れば、あたしとあんたの道は正反対よ
ベルベットあたしは人を殺す復讐の道、あんたは人を助ける救世の道…
ベルベット…決して交わる事はない。あんただって、そのくらいわかっているはずでしょ
スレイ……
スレイ……わかってる。多分…そう、なんだと思う
ベルベット
スレイ
ベルベットでも…「この世界」では、違う
スレイえ…?
ベルベットまるで違うはずなのに、あたし達は今同じ道を歩いてる
ベルベット仲間、なんて言い方をするつもりはないけれど…
ベルベット明日の戦いは、あんたに背中を預けるわ、スレイ
スレイベルベット…
スレイ…ああ、任せて!
スレイ一緒に世界を取り戻そう
ベルベット…ええ
スレイ…それじゃ、オレ戻るよ。ベルベットもあんまり遅くならないように
スレイおやすみ
ベルベット…おやすみ
ベルベット待っていて、ラフィ。仇をとるまで、あたしは戦い抜くから…!
スレイ全員、いるよな?
ミクリオああ、後はレイアを待って、出発するだけだ
ジュード結局、巻き込む形になっちゃったな…
レイア何言ってんの!
ジュードわっ…!!レ、レイア!
レイア記憶を取り戻した後、私だって頑張ってたんだからね!そんな事気にしなくていいの!
レイア帝都の案内は、ばっちりしてあげるから!
ジュードうん…わかってる。お願いするよ。これがこの世界での最後の戦いだもんね
レイヴンんじゃ、準備完了って事でいいわね。目的は昨日確認した通り
コレットまず一番に、特異点の修復を阻止、だね
カイルそれから、ラザリス達を倒して…!
スレイ世界を取り戻そう!
ベルベット行くわよ。帝都…シャングレイスへ!

NameDialogue
scene1残された刻
ジュード…この辺りなら大丈夫かな。みんな、こっちだよ
ゼロスやれやれ…。帝都に着いたはいいけどよ、これじゃまるでコソ泥だぜ
ルドガー人目に付くだけでも危険だからな。仕方がないさ
レイヴン…そうねえ、レイアちゃんに聞いてた通りかなり警戒されてるわ。ほら、あれ…
見回りの男1おい、咎人はいたか?
見回りの男2いいや。ただ、宰相様の話じゃもう帝都に来ててもおかしくないとよ
見回りの男1よーし…!ラザリス様の命を狙う罰当たりめ、絶対に捕まえてやる…!
カイル街の人達、めちゃくちゃ殺気立ってますね…!
エリーゼ…あの人達は、有志の見回り…なんですよね?
ティポみんな、目がギラギラしてるよー
ジュード…うん。ラザリスが狙われてるのは街中に知れ渡ってるみたいだ
ヴェイグ咎人とばれたら、最悪の場合…強行突破も有り得るか
コレット…やっぱり街の人達とも戦うんだね。白き獅子の人達とだって、ほんとは戦いたくないのに…
スタンだから、そうならないように人目は避けたいって事だよな
ミクリオそうだね。やはり、この人数で動くと咎人とばれる可能性が高いと思う
ミクリオ道中で話した通り、三組に分かれよう
スレイまずはオレとミクリオ、それにコレットとゼロスの組だな
レイヴンおっさんの組は、少年とスタンとヴェイグ。何とまあ、花がない組み合わせよ
ジュード僕達は…ベルベットに、エリーゼとティポ。それに、ティアとルドガー…
ジュードあと、レイアも僕達と一緒でいいよね?
レイア勿論!
レイア──っとと…大声禁物…!
ゼロス三組で別々に街を進んで宮殿を目指すってわけだ。とにかく目立つな、が合言葉だな
コレット合流場所は宮殿前でいいんだよね?
ミクリオああ。三組が揃った時点で突入する
ルドガーでも、どうやって突入するんだ?人目につかない道があればいいが…
ティア隠し通路…もあるけど、この状況で使うには危険だと思うわ。兄さんが何か対策をとっているはずよ
ベルベット同じ手は通用しないって事ね。まあ、当然か…
ミクリオ…他にも道はあるかもしれないが、まずは宮殿前に行く事にしよう
ミクリオ中に入る方法は、その時の状況を見て考えるしかない
ルドガーそうだな…ここで話してても結論は出ないか
ベルベットあとはラザリスの居場所ね
ベルベットティアの話じゃ宮殿の上層部って話だったけど…間違いないの?
ティアええ。私が宮殿にいた頃…ラザリスと兄さんしか入れない階層があったわ
ティアいるとしたら、あそこしかない。宮殿の中を駆け上がる形になるわね
カイル特異点の修復は、絶対に止めさせなきゃ…!
ゼロス…でもよ、特異点の修復って、どうやって止めりゃいいんだ?ラザリスを倒しちまえば終わりか?
スレイそれはわからないけど…。宮殿に結界まで張ったのは、邪魔をされたくないからだと思う
ミクリオああ。それほどまでに修復に集中しなければならないか、あるいは…
レイヴン大掛かりな装置を使ってるのかもね。邪魔者にそれを壊されちゃ、おしまいとか?
スタン特異点を修復する装置か。本当にそれがあるなら、わかりやすいですね
ジュードいずれにしても、ラザリスの元にたどり着く事が先決だよ
ジュード…僕達の動きが知られている以上、ラザリスも特異点の修復を急ぐはずだ
エリーゼはい…!時間との勝負、です…!
ティポ早く行こー!
ジュードそれじゃあみんな、宮殿前で会おう
scene2残された刻
ラザリス…忌々しい特異点も、あと少しで…
ラザリスもうすぐだ…。もうすぐ…僕の世界が完成する
ラザリスそうすれば…やっと、僕は──
カイル思ったよりは、すんなり進めてますね
ヴェイグああ…だが、油断は禁物だ。怪しまれる前に、ここを抜けよう
レイヴンそうね、この分なら宮殿に一番乗り出来るんじゃない?
カイル宮殿…。いよいよ、ですね
カイルあそこにはリアラとソフィもいるんだ…
スタンそうだったな…。前に捕まったところを見た時は、助けられなかったけど…
カイルはい。絶対ラザリスを止めて、二人を今度こそ助けます!
スタンああ、俺達も力を貸すから安心してくれよな!
カイル…はい!
ヴェイグ…待て
カイルヴェイグさん?
ヴェイグ何か…妙な感じがしないか?
スタン誰かに見られているのか?おかしいな、気配はないぞ
ヴェイグいや、そうじゃない。…空気が震えているような──
コオオオオオッ……!
スタンうっ…!なっ…何だ、この光!?
カイル空の様子が変わってる…!これも、ラザリスの仕業!?
レイヴン攻撃を受けた感じはないけど…妙な事になってるのは間違いないね
レイヴンこの空の様子は異常だわ…。おっさんこんなの初めて見るし
スタン一体、何がどうなってるんだ?
ハロルドこれは、まずい事になったわね
カイルうん…。何かよくない事が起こって…
ハロルド
カイル──うわあっ!?ハロルド!?
リオン…相変わらず騒々しい奴だ。街の人間に怪しまれるだろう
スタンリオンも…!二人共、どうしてここに?
ハロルドどうしてって、単純な話よ
ハロルド三つの光の柱が消えたんだからあんた達は当然、帝都を目指すでしょ?
ハロルドだから、ちょっと前から帝都であんた達の事待ってたの。手伝ってあげようと思ってね
リオン…この事態だ。お前達だけには任せられないからな
リオン僕達の方でも帝都の状況を探っていたわけだ
ヴェイグそうか…助かる
カイルねえ、ハロルド。あの空が何なのかわかる?
ハロルドそうねえ。まずは天文と気象の見地から説明を…
レイヴンちょーっと待った。ここは一つ、手短に…
ハロルドあ、そう?それじゃあ簡単に言ってあげる
ハロルドあの空の様子は、世界が完全になろうとしてる証ね。特異点修復の影響よ
スタンまさか、ラザリスはもう修復を…!
ハロルド話は最後まで聞く!
ハロルド…歪みを直すだけとはいえ、ラザリスでもそう簡単には出来る事じゃないの
ハロルド今頃、人知を超えた莫大な力があの宮殿の中に渦巻いてるはずよ
ハロルドつまり、それが外気に影響を及ぼしてこの歪んだ空を生み出してると推測するわ
レイヴンふうむ…。その推測が正しければまだ特異点の修復は終わってないって事?
ハロルドその通りよ。おそらくだけど、猶予はあるわ
リオン…もっとも、時間はほとんどないと見ていいだろう
ハロルドそうね。これまでの観測でも、小規模な世界の歪みは確認してた
ハロルドでも今回みたいな現象は初めてよ。いよいよ本格的にヤバいって事は間違いない
ヴェイグ…この機会を逃せばもう後はないという事だな
ハロルドええ。特異点の修復はもう、いつ終わってもおかしくないわね
スタンわかった。いろいろ教えてくれて、ありがとう
レイヴンお二人さんはこの後どうするつもり?
カイルハロルドとリオンさんも一緒に…
ハロルドああ、それなんだけど、私達は別行動を取るわ
リオン宮殿に向かっているのは、お前達だけじゃないだろう
ヴェイグああ。出来るだけ目立たないよう、三組に分かれて動いている
ハロルドそれなら、このまま少人数で行きなさいな
ハロルド私とリオンはもう少し辺りを調べてみるわ
ハロルド他の仲間も、手伝えるかもしれないしね
カイルそっか…。じゃあ、オレ達は宮殿に行くよ。二人も気を付けて
ハロルドちょい待ち。…あんた達に一応伝えとくわ
カイル何?
ハロルドヴァンによるとこれまでに捕まっていた咎人の問題は解決したらしいわよ
カイルえっ…!
リオン…光の柱が消えた後、ヴァンが民衆を落ち着かせるために演説をした
リオンその時、確かにそう言っていたな
ハロルドカイル、あんた核を壊しに行く前、リアラ達が目の前で捕まったって言ってたわね
ハロルド…解決したってどういう事かわかる?
レイヴンもしかしたら…救済されたって事かもね
カイルそれって!?
ハロルド救済って言うのは?
カイル…晶化の事だよ。多分、二人はもう晶化させられたんだ
カイルくそっ、オレがもっと早く二人を助けていれば…
スタンカイル、まだ…
カイル…大丈夫です、スタンさん
カイルオレが何とかしてみせます。世界を取り戻せば二人にまた会えるはずですから
スタン…ああ、そうだな
ヴェイグ
ハロルド…まあ、安心しなさい。こっちも出来る限りの事はするわ
リオン早く行くぞ。いつまでもここで立ち話は出来ない
リオン僕も世界は取り戻したいからな
スタンああ!そっちも気を付けてくれ
ヴェイグ…大丈夫か?
カイルそりゃ…辛いです
カイル…でも、へこたれるつもりはありませんよ
カイルリアラ達は、オレを信じて庇ってくれたんです
カイルだったら、今やるべきは悲しむ事じゃない
カイル晶化された人も、記憶を書き換えられた人も…みんなオレが助けるんです!
カイルそれこそが、信じてもらったオレのやるべき事です!
ヴェイグそうか…。愚問だったな。忘れてくれ
スタンはは…!カイルが言うと、絶対出来るって気がしてくるな!
レイヴン…そーね。能天気なんだか、心強いんだか…。不思議な少年だわ
レイヴン…とはいえ、そのお蔭でユーリに借りを返せたのも事実か
レイヴン今度は世界に恩を売るってのも、悪くないわね。全速力で行こうじゃないの、少年
カイル…はいっ!行きましょう!宮殿はすぐそこです!
scene1苦渋の道
ジュードこの空…戻る気配がないね。やっぱり、ラザリスの仕業かな?
ルドガー他に心当たりもないし、きっとそうなんだろう
ベルベット…何のつもりかはわからないけど、気にしていて作戦に遅れが出たら意味ないわ
ティアそうね。とにかく先を急ぎましょう
エリーゼはい。次は…あっちの通りを行きましょう。誰もいないみたいですし…
レイアじゃ、わたしの後について来て。誰か来たら、教えるから──
???レイアさん…?帝都に来ていたんですね。…それにあなたは
ジュード…!君はすず…!
すず…ジュードさん
エリーゼい、いつの間に…。さっきまで、確かに人の気配はありませんでした…!
すず私、忍者ですから。…!!
ベルベット
すず…エステルさん、こっちへ来てください!
レイアま、待ってすず!わたし達、今ちょっと急いでて…
エステルすず、どうしたんです?
ジュードえ、エステル…。久しぶり、だね
エステルあ、レイアに、ジュード!帝都にいらしてたんですね!
エステルそれに、ルドガーも…!お久しぶりです…!そちらの方達は、お友達ですか?
エリーゼ…あの…
ティア悪いけどちょっと急いでいて…。自己紹介はまた今度でいいかしら?
エステルあ、すいません…。引き止めてしまって…
エステル…あれ?でも、あなたはどこかで…
ベルベット
すず
ベルベット…そこら中を旅してるから、どこかで見かけたのかもね
エステル…そう、ですか?でも、つい最近見たような…
ルドガー…エステル。再会出来たのは嬉しいけど、今は失礼するよ
レイアそ、そうそう!今度ゆっくり紹介するからさ!また──
すずいえ。それは出来ません
エステルどうしたんですか、すず?怖い顔をして…
すずエステルさん。この女性の格好…手配書のものと一致しています
エリーゼ手配書…!
すずこの人は、ベルベット・クラウ…!ラザリス様の命を狙った咎人です!
すずそれに他の人達も、手配書に書いてある特徴に似ている人ばかり…
ティア…いつの間にか私達の手配書も回っていたのね
すず…レイアさんが一緒にいるのに、そんなはずはないと思いましたが…証拠が出揃ってます
すず答えてください。どうして咎人とジュードさん達が一緒にいるんですか?
ジュードそれは…!
エステルレイアやジュードが…咎人だって言うんですか?
エステルそ…そんなの、何かの誤解です!…そうでしょう、レイア?
レイア
エステル…そう…なんですよね?ねえ、ジュード?
ジュード
エステル…どうして、答えてくれないんですか…
すず…あなた達を捕えます。大人しくしていただけるのであれば、手荒な事は…
ジュード…ごめん。それは出来ないよ
ジュード僕達は、この先に行かなくちゃならないから
エステルやめてください、ジュード!この先は…ラザリス様の宮殿です!
エステルこれじゃやっぱり、あなた達まで…!
見回りの男おい、お前達!騒がしいけど、何かあったのか!?
エステルあっ…え、ええっと…この人達は…
ルドガーまずいな。人が集まってきた…
ベルベットやるしかないなら、やるだけよ
レイア…待って!ここはわたしが引き受けるよ。みんなは先に行って!
ジュードレイア…!
レイアこんな風になっちゃったけど、ファミリーのリーダーだもん。これはわたしの役目だよ
ジュード…わかった。行こう、みんな!
すず待ってください!あなた達を逃がすわけには…!
レイア行かせないよ、すず!
エステルレイア…!一体…どうしてしまったんです!?
レイア本当に…ごめんね
レイアでも、ここは通せないんだ
見回りの男ロランドファミリーがもめてると思ったら、手配書で見た奴らだ!みんなで囲め!
見回りの女ここは通さないわよ!
ティアくっ…!これじゃ、もう言い逃れは出来ないわね…!
エリーゼ完全に、囲まれてます…
ティポ捕まっちゃうよー!
見回りの男1おい、そこの女はラザリス様を襲った咎人だぞ…
見回りの男2ここまで潜り込んでいたのか…!一体、何を企んでる!?
ジュードくっ…この人達と戦うわけにはいかないけど…抜け道が完全に塞がれてる
見回りの男1動くな、大人しくしろ!
見回りの女この先で、何をするつもりなの…?あの方の身には、指一本だって触れさせないから!
見回りの男2そうだ…またラザリス様を襲うつもりだったんだろう!?そんな事、俺達がさせないぞ!
ティア待って!お願いだから、私達の話を聞いて!
見回りの男1うるさい!ラザリス様の言葉は絶対なんだ。お前達の言葉なんて聞く気はない
見回りの男2お前達を捕まえて、兵に引き渡してやる!
エリーゼお願いです…!ここを通してください
見回りの男1やっぱりだ…!やっぱりラザリス様を…!くそっ、これでも…くらえ!
ヒュッ!
エリーゼきゃっ…!
ジュード石!?くっ──
ガッ!
ジュードエリーゼ!大丈夫!?
エリーゼはい…助かりました、ジュード…!
ティポ何するんだよー!
ルドガーやめろ!こんな子どもに、石を投げるのか!?
見回りの男2うるさい!みんな早く捕まえるぞ!
ティア…ラザリスへの妄信は思った以上みたいね
ジュード…うん。僕達はどうあっても悪なんだ
ベルベット全く…
チャキン!
見回りの男1…っ!お、お前!やるってのか!
ベルベット笑わせないで。あんた達なんか相手にならないわ
見回りの男1なっ…何だと!?
ベルベット…見てられないのよ。顔を歪ませて、口汚く罵って、挙句子どもに石まで投げる…
ベルベット憎しみのない世界とやらは、どこにいったわけ?
見回りの女…憎しみ?よくわからないけど、私達はラザリス様を守りたいだけよ!
ベルベット誰かを守るためなら、何の疑問もなく人を傷つける…
ベルベットそれが正しいとされるなら、そんな世界、歪んでる…!
ベルベット…だから──
ジュード…!
ベルベット──この歪んだ世界は、あたしが壊す!!岩斬滅砕陣!
ドゴォオ!!
見回りの男1なっ…地面が、吹っ飛んだ!?
ジュードみんな、今の内だ!突っ切るよ!
見回りの男1ま、待て…!ごほっ、ごほっ…!くそ、土煙で目が…!
ベルベットまいたみたいね。…ちゃんと反応してくれてよかったわ
ジュードもう何度も一緒に戦ってるからね
ルドガーしかし…ラザリスへの妄信があれほどとは…
エリーゼわかってたつもりでしたけど…。いざ目にしてみると…辛いです
ベルベットそれだけラザリス達のやってる事が異常なのよ。さ、行くわよ
ジュードうん。早く、世界を元に戻さないと…!
スレイ…何だか街が騒がしくなってきたな
ミクリオああ、あっちはジュード達の進んだ辺りだね…
コレットみんな、だいじょぶかな…?
スレイそれでも今は先に進むしかないよ。上手くやってくれてるはずと信じよう
ゼロスそれっきゃねーな。こっちも状況は同じだ。いつ邪魔が入るかわかんねえ
ゼロス…っと。噂をすればって奴か?
???…止まってください
ゼロス…なかなかキリッとした可愛い子ちゃんだが、ちょーっと急いでるのよねー
???私は話をしに来たんです
スレイミクリオ、彼女は…
ミクリオわかってる…。久しぶりだね、エレノア
エレノアはい。本当に…お久しぶりです
エレノアまさか、このようなところで出会ってしまうなんて…
scene2苦渋の道
ミクリオレイザベールから警護に来たんだな、エレノア
エレノア
ミクリオだったら話をしている暇はない…そうじゃないか?
エレノア…はい。確かに私がここにいる理由はラザリス様を守るためです
エレノアだからこそ、はっきりさせたい事があるんです
エレノア…以前、帝都から逃げ出した咎人と手引きした者の情報が届きました
コレットえっ、手配書が出回ってるって事?
エレノアええ、そこにはおおよその年齢に背格好、髪の色も書かれていました
エレノア率直に言います。ミクリオ、あなたには咎人の疑いがかけられています
ミクリオ
エレノアその上で問います。あなた達は何をしにここまで来たのですか?
ミクリオ
エレノア私は…ミクリオが咎人だなんて信じたくはありません
エレノアだから、この緊急事態にあなたもラザリス様の警護に来たんですよね?
ミクリオ
エレノア答えてください…ミクリオ!
ミクリオ…エレノア。僕達には、大事な目的がある
ミクリオそのために、宮殿まで行かなければならない
ミクリオ…僕に言えるのは、それだけだ
エレノア目的…ですか
エレノア…それでは説明になっていません。その目的とは何ですか?
ミクリオ
エレノアもう一度聞きます。…咎人ではないんですよね?
ミクリオ…君に嘘はつけないな
ミクリオ僕達は…咎人だ
エレノア…!わかりました…なら…!
チャキン!
ミクリオ僕達に戦う意思はない。武器を収めてくれ、エレノア
ゼロスそれにこの人数差だ。捕まえるにしても応援を呼びに行った方がいいぜ?
エレノアその隙に逃げるのでしょう?私を見くびらないでください
エレノア戦う意思がないのなら…。黙って倒されてもらいますよ…!
ゼロス…しゃーねーか
コレットやっぱり…戦いになっちゃうんだね…
ミクリオロイドの時と一緒だよ。これが、この世界の歪みなんだ
スレイ記憶を捻じ曲げられた人と戦うのは…やっぱり慣れないな
ミクリオああ、僕だって戦いたくはない…
ミクリオだが、彼女の意志の強さはよく知ってる。…避けられないさ
エレノアやる気になったみたいですね
エレノアあなたが咎人になったというのなら…せめて、私の手で捕まえます…!
エレノア行きますよ…ミクリオ!!
scene3苦渋の道
ミクリオもう限界だろう、エレノア!武器を収めてくれ
エレノアまだまだ…!私はまだ戦えます…!
ミクリオあくまでも戦うつもりなんだね…。なら…ツインフロウ!
エレノアなっ…!!
バシュ!
ミクリオ僕らの勝ちだ、エレノア
エレノア今の攻撃…何故、槍だけを…?
エレノアどうして…?その気になれば、私にとどめをさす事だって簡単だったはず…!
スレイそんな事、君ならよくわかるはずだ
スレイ君を傷つけたくないんだよ。…ミクリオは
エレノア
ミクリオ聞いてくれ、エレノア。さっきも言った通り、僕にはやるべき事がある
ミクリオそれは…何に代えても成し遂げないとならない事だ
ミクリオ咎人となった僕を、信じてくれとは言わないよ
ミクリオだが、ここは黙って通してくれないか
ミクリオ…友人として、お願いする
エレノア…友人…だからこそです
ミクリオ…!
エレノアあなたには大きな恩があります。それに報いるためにも、私は…かつてのあなたを取り戻したい
コレットミクリオは何も変わってないよ…。友達なら、あなただってわかってるはずだよね?
エレノア…ええ…わかっています
エレノアわかっているんです…!
ミクリオエレノア…?
エレノアラザリス様に、害をなそうとしているのは明白なのに…。それ以外は…
エレノアそれ以外は何も変わってない…!
エレノアそんなあなたと戦うなんて、嫌に決まっています!
エレノアでも…でも!ラザリス様を狙うあなたは間違っているはずなんです…!
エレノアだから友人の私が、ミクリオを間違った道に行かせないように…。だから、私は──
ミクリオもういい、エレノア
エレノア…っ
ミクリオ僕達は先に進むよ。止めたいのなら、その槍を拾ってくれ
ミクリオ僕は君とは戦いたくない。けど、後は君の判断に任せるよ
エレノア私は…私は…っ!
ミクリオ…行こう、みんな
ミクリオエレノア…苦しませてすまない
エレノア…ここで槍を拾うのが正しい事のはずなのに!私はどうしてっ…
ミクリオ
ゼロスいいのか?あの可愛い子ちゃんを置いて行って?
ミクリオもう時間がない。僕の都合でこれ以上、足止めされるわけにはいかないだろう
コレットあの子…動けないみたい
スレイミクリオの事を想っているからこそ、ラザリスへの忠誠が邪魔して板挟みになってるんだ…
ミクリオ記憶の改変…。今までも随分苦労してきたけど、今は腹が立って仕方がないよ
ミクリオこんな世界は…許せない
ミクリオ宮殿へ急ごう。みんなが待ってる
スレイああ…!
scene1世界の中心へ
ルドガー…この道も見張られている。引き返すか?
見回りの男こっちだ、こっちへ逃げたぞ!
エリーゼ駄目です…!後ろからも来てます…!
ベルベットもう宮殿は見えてる。突っ切る方が早いわ
ジュード仕方ないね…。あまり戦いたくはないけど──
カイル…みんな、こっちこっち!
ジュード…あっ、カイル!
レイヴンおっさんもいるよ
レイヴン向こうに細い裏路地があってね。案内するから、付いて来な
カイル急いで!見つかる前に、街の人達をやりすごさないと!
ジュード…ふう。助かったよ、二人共
カイル間に合ってよかった!なかなか来ないから、みんな心配してたんだ
ティアみんなって事は…スレイ達も合流してるの?
レイヴンおたくらの少し前にね。人目に付かないとこで待ってたのよ
カイル誰かが追われてるみたいだったから、レイヴンさんと一緒に見に来たんだ
カイルみんな、この先で待ってるよ
ジュードみんな…。ごめん、遅くなったみたいだね
ゼロスお前らも…ってあれ?…レイアちゃんがいなくね?
ジュード…レイアはエステルとすずから僕達を逃がしてくれたんだ
ジュードロランドファミリーのリーダーである自分の役目だって言ってね
コレットそっか…。レイアらしいね
ゼロスしっかし、お前ら随分派手に暴れたみたいじゃねえか?全く、ひやひやしたぜ
ティア他に方法がなかったの。どうにか傷つけないようにして切り抜ける事は出来たけど…
スレイはは…あちこちで騒ぎを起こして、オレ達、何だか悪役みたいだな
ベルベット…何のんきな事言ってんのよ
ヴェイグ…とにかく、全員合流出来たな
ヴェイグだが、喜んでいる時間はない
ミクリオああ、宮殿に突入する前にいろいろと確認したい事がある──
ジュード…なるほどね。この空の異変は、そういう事だったんだ
ゼロスそう聞くとますます不気味だぜ。とっととラザリスを止めねえとな
ヴェイグ肝心の宮殿の突入方法だが…
ミクリオ本当は忍び込むのが一番いいんだ。だが、隠し通路はティアの言うように罠を張られている可能性が高い
ジュード何より他の道を探す時間も惜しい。探している間に特異点が修復されるかもしれないからね
ジュードそうなるとやっぱり正面の道を通るのが最善だよ
レイヴン…ただねえ。そう簡単に通してくれそうにないのよ
レイヴン宮殿前は警備でぎっちり。特に宮殿に続く大扉の前は、蟻一匹通さないって感じね
カイルここまで来たんだ…!だからって、引き返すわけにはいかないですよ!
スタンああ、止まってる暇はないんだ!正面から突破しよう!
レイヴン…ま、そうなるわね
ベルベットとっくに覚悟は決めてるわ
ベルベット──宮殿前に出るわよ、構えて!
チャキン!
神兵1来たぞ!咎人共だ!
スレイやるぞ、みんな!
scene2世界の中心へ
ルドガーみんな、立ち止まるな!とにかく前に進むんだ!
神兵1通しはしない!
ギィイン!
ルドガーくっ…!
ティアルドガー、下がって!──ホーリーランス!
神兵1おい、もっと応援を呼べ!咎人を通すな!
ジュードどんどん兵が集まってくる!
ヴェイグ個々の力も相当なものだ…!これ以上、集まるとまずい
レイヴンその前に振り切りたいところだけど一歩進むだけでも一苦労…!
ミクリオまずいな、時間がないのに。このままじゃ…!
エリーゼいえ、諦めちゃ駄目です!──リベールイグニッション!
ズオオオオッ!
神兵1ぐうっ!?
エリーゼみんな、今です!先へ行ってください!
ジュード一人でここに残る気!?無茶だよ、エリーゼ!
エリーゼ無茶なのはわかってます…!でも、このままじゃ誰も助けられません…!
ティポジュード君ー!ラザリスを止めてー!
エリーゼそうです…!一人でも多く、ラザリスのところへ──
神兵2あの子どもか…!もう撃たせんぞ!
エリーゼ…っ!
ヴェイグ──させん!絶氷刃!
パキィン!
神兵2き、貴様…!
エリーゼヴェイグ…!
ヴェイグエリーゼ、オレが攻撃を防ぐ
ヴェイグお前達は先に行ってくれ…!
スレイいや、二人を置いて行けない!
ヴェイグ違う。任せてくれ、と言っているんだ
ヴェイグオレ達がいる限り、こいつらを追わせはしない
ヴェイグ──そうだろう、エリーゼ?
エリーゼ…はい!行ってください、みんな!
ベルベット…進むわよ!
ジュード…わかった!通り抜けるまででいいから、無茶しないでよ、二人共!
神兵3おのれ、そうはさせるか…!──後衛部隊!
神兵4点火!
ティア──大砲!?
ティアみんな伏せて!
ドオオオオンッ!
ジュードぐうっ…!みんな、大丈夫!?
ミクリオ…ああ、直撃は避けた!
ゼロスくそっ、危ねえじゃねーか…!これをまた撃たせるわけにはいかねえな
コレットあっ…ゼロス!?
神兵4ちっ…上手く避けたか。だが、二発目はそうはいかん…!
ゼロス──おっと、させねーよ!サンダーブレード!
バシュウッ!
神兵4ぬうっ…!?
ゼロス後ろからこそこそ狙いやがって、卑怯な奴らだぜ!
ゼロス今度は俺さまが相手だ。ありがたく思えよ?
神兵3たった一人で何が出来──
ゴオオオオオオオッ!!
神兵3なっ…何だ、この炎は!?
スタン一人じゃないさ…俺もいる!
ゼロスおいおい、何ついて来ちゃってんのよ
スタン一人で相手するのは大変だろ?ゼロスが術で牽制してくれたお蔭で、距離は詰めやすかったよ
ゼロスったく…。ただでさえヴェイグに先越されてるってのに、これじゃ格好つかねえな~
スタン十分格好いいよ、ゼロスは
ゼロス野郎に褒められてもな…。…ま、たまには悪くねえか
神兵3術に気をとられたあの一瞬で、ここまで距離を詰めて来るとは…!気を付けろ、こいつら手練れだぞ!
ゼロスへっ、案外見る目があるじゃねえの。ご期待に応えて、お前らにゃ二度と大砲は撃たせねえぜ
スタン…そういう事だな。ここは俺とゼロスが引き受ける!みんなは先に行ってくれ!
カイル…スタンさん!
スタンカイル、お前なら大丈夫だ!みんなと一緒に、ラザリスを止めてくれ!
レイヴンへっ、ああまで言われちゃ、万が一にも失敗出来ないじゃないの
コレット行ってくるね、二人共!
スレイ…みんな、扉が見えた!
神兵5咎人共を止めろ!
神兵5どうせ扉は開かん!取り囲んで一網打尽だ!
ティア…わかってたけど、そう簡単には扉まで行けないみたいね
レイヴン今の騒ぎを前にしても、扉の前を固めてる奴がいるわけね。冷静すぎて嫌になるわ
ミクリオだが、みんなのお蔭で守りの一部が崩れてる。この隙に、どうにか…!
ルドガー…俺に任せてくれ
ジュードルドガー?
ルドガーエリーゼ、ヴェイグ、ゼロス、スタン…!みんながここまで送ってくれたんだ
ルドガーその想い、無駄には出来ない!
ルドガーはああああああっ!
神兵5なっ…何だ、あいつは!?
ルドガーみんな、そのまま走り続けるんだ!扉までの道は、俺が開く!
神兵5ま、まずい…!来るぞ、奴の正面を固めて──
ルドガー遅い!
神兵5くっ…!こいつ、強い!
ベルベット…やるわね。連中の守りが崩れた!扉を開けるわよ!
ルドガー今だ、みんな!早く宮殿の中へ!
ルドガーここは俺が守り抜く!
ミクリオ…すまない、頼む!
ルドガー後ろの心配はしなくていい。だから…この先は任せるぞ、みんな
ルドガーエルとの約束…いや──
ルドガー他のみんなの抱えてるもの全部、ここで託すぞ!
ルドガー俺達の世界を…頼む!
スレイ任せてくれ!
ベルベット必ず、成し遂げるわ
ベルベット…だから、無事でいなさい。あんた達の犠牲の上、なんて後味が悪いわ
ルドガー…ああ!わかった!必ずまた、後で会おう!
ルドガー…さてと後はここを守り切るだけだな
エリーゼみんなが、ラザリスを倒すために…元の世界を取り戻すために…!
ヴェイグオレ達は一歩も引かない!
ゼロスここから先は…誰一人通さないぜ
スタン…さあ、来い!俺達が相手だ!
scene1書き換えられた日々
スレイくっ…わかってたけど、宮殿の中も神兵だらけだ!
カイルどいてくれ!お前らの相手をしてる暇はないんだ!
ギィイン!
神兵1あの包囲網を突破して来るとは!しかし、我々が通しはしない!
スレイ無理にでも通らせてもらう!オレ達を信じてくれたみんなのためにも…!
ティアそうね。止まってる暇はないわ。上の階を目指しましょう!
神兵2抜かせ!我らがそう簡単に行かせるか!
ベルベットあんた達の都合なんて、どうだっていいのよ!
神兵2あくまで、抵抗するか…
神兵1…総員、距離を取れ!手はず通りだ!
コレット…あ、あれ?下がっちゃったよ
神兵1咎人共、ここから先は通さん
レイヴンあらら…随分慎重になっちゃって。無暗に突っ込んで来てくれれば、もうちょい楽なんだけどねえ
ティア恐らく…兄さんの指示ね。向こうにしてみれば、特異点修復さえ終わればいいんだから
ミクリオまさか、修復が終わるまでここで時間を稼ぐつもりか?
ベルベットいちいちこいつらに付き合ってたら、キリがないわ。無理矢理にでも突破するわよ!
スレイよし、ベルベットに続くぞ!
神兵2くっ…!回り込んで進路を塞げ!
ミクリオそうはさせない!
コレットえいっ!
バシュウッ!
神兵2ぐああっ!!
ティア…!今の内よ!
カイルみんな、走って!
神兵1くっ…待て!
ジュードよし、包囲網を抜けた!
神兵1追え、追え―っ!
コレットでも、まだ追って来てるよ…!
レイヴンそりゃそうなるでしょうね…!ずっと追われてちゃまずいわ。おっさんの体力が心配、ってね
カイルあいつらを、どっかでまかないと!
ティアみんな、こっちよ!
ベルベット当てがあるの?
ティアええ。この辺りなら、私の庭みたいなものよ
ティア…こっちよ。この先に…
キィ……ガチャン!
神兵1ちっ…どこに行った、咎人め
神兵2扉の閉まる音がした。この辺りに隠れているのは間違いない
神兵1手当たり次第に捜せ。もはや逃げられん、袋の鼠だ!
ティア…どうやら、行ったみたい。みんな、全員いるわね?
コレットうん、だいじょぶだよ。ちょっと驚いちゃったけど
ジュードまさかあそこから隠し通路に入れるなんてね
スレイあれは知らないとわからないな。ティアがいてくれて助かったよ
ジュードそうだね。よし、行こう
scene2書き換えられた日々
スレイ見通しはあまりよくないな…。みんな気を付けて進もう
コレット…神兵の人達には、まだ気付かれてないかな?
スレイ一応、扉の前は塞いできた。少しは時間稼ぎになるはずだ
ジュードうん。今のところは静かだし、上手くまけたんじゃないかな
ティア…気は抜かないでね。ずっと追われながら戦うよりはいいけど──
ティア前に言った通り、兄さんが罠を張っている可能性が高いわ
ミクリオ実際、あの状況じゃ他に手はなかった。仕方がないさ
レイヴンせいぜい警戒するしかないねえ…
レイヴン…にしても、隠し通路がこんなところにもあったとはね
ティア…子どもの頃は、宮殿から外に出れなかったからこういう通路は格好の遊び場だったわ
ティア急に時間が出来た時とか、こっそり部屋を抜け出して、それで…
ティア
コレットどうしたの、ティア?
ティア…ああ、ごめんなさい。いろいろと思い出していたら、つい
ティア私には確かにこの宮殿の記憶がある。探検したり、兄さんと一緒に遊んだりした記憶が…
ティア勿論、この思い出は偽物だってわかってる…でも、どこか信じられない気持ちもあるのよ
ティア植え付けられた記憶なのに…。確かに私の中に根を張っているのね…
ミクリオエレノア…僕の友人も、ラザリスへの忠誠と感情の板挟みになっていたよ
ジュードロランドファミリーのみんなもね…
ジュードそれに、街の人達の様子もはっきり言って、異常だった
コレット私達も記憶を取り戻せてなかったら、あんなふうだったかもしれないんだよね…
コレットみんなとも敵同士になってたのかな。元の世界の記憶を取り戻せて、ほんとによかったよ
ベルベット元の世界の記憶、か…あたしは最初から持ってたわ
スレイそういえばこの世界に来てからずっと、左腕がうずくって…
ベルベットええ、もしかしたら…
ベルベット記憶もこの左腕のせいか…。あたしの憎しみが強すぎて、消せなかったのかもね
ジュードラザリスの世界を破るほどの力を持った左腕なんだし、有り得るかもしれないね
レイヴンおっと、そんな事言ってたら…そろそろ、出口じゃない?
レイヴンあの光の漏れてるとこでしょ?ティアちゃん
ティアええ、そうよ
ティアあの扉の向こうに、見張りがいるはず…
ベルベット飛び出して、一気に片付けるわ
ベルベット…行くわよ!
神兵1…む?なっ…咎人──
スレイはあっ!
ドサッ…
ジュード──…ふう、何とかなったみたいだね
ティアでも、思っていたより見張りの兵は少なかったわ。…これは何か意図があるのかしら?
レイヴン確かに、あの切れ者にしちゃ少し甘いかもね
スレイとにかく、今は好都合だ。少しでも早く先に進めるなら、それに越した事はない
ジュードうん、急ごう。ティア、案内をお願い
ティアええ、あそこが上の階への階段よ。だけど…
神兵2…!見つけたぞ!ラザリス様の命を狙う咎人共め!
スレイ階段前は神兵が見張ってるか…。当然だよな
ジュード戦いは避けたいところだけど、ここは行くしかない…!
scene1今、英雄として
ミクリオあの神兵達、まだ追って来るようだね
神兵1咎人達を捜せ!こちらに逃げたはずだ!
ジュード…!その扉に入ろう!
コレット…この部屋、ちょっと、雰囲気が違うみたい…
ミクリオ…随分広いな。儀礼用の大部屋だろうか
レイヴン…?いや、この床の紋様はどこかで…
キンッ!キィィィィッ…!
ベルベット…っ!この光は…!?
レイヴン…まずい!みんな、下がれ!
カイルえっ…うわあっ!!
キンッ!キンッ!キンッ!
ジュードな、何だ…!?うわああっ!
カイルいてて…!何するんですかレイヴンさん!いきなり引っ張るなんて──
レイヴンいやいや、悪いね。でも…少年だけでも間に合ってよかったわ
カイルオレだけでも、って…他のみんなは?
レイヴン…部屋の様子を見てみなって
カイル…え!?み、みんな!
スレイくっ…!ここまで来て罠にはまるなんて…!
ミクリオまんまとやられたな…。あの一瞬で、僕達の身体を縛る術があるとは…
レイヴン侵入者拘束用の罠よ。床の紋様が昔見たのとよく似てるし、間違いないわ
ベルベットふん、こんなもの──
レイヴンあっ…!ちょ、ちょい待ち──
バチッ…バチチチッ!!!
ベルベットくっ…!?あああああっ!!!
コレットべ、ベルベット!今のは…!?
レイヴンやっぱりね…。ちょっとでも刺激を与えると、電流が流れるようになってんのよ
ベルベットあんたね…!そういうのはっ…先に言いなさい
レイヴン言う前に暴れたでしょーが…
レイヴン確か解除方法は…
神兵1…ここにいたか!観念しろ、咎人!
カイル神兵…!追いついて来たのか!
レイヴン全く…どいつもこいつも、人の話聞いてくんないんだから…!
カイルここは…やるしかないですよ!増援なんか呼ばれたら、まとめてやられちゃいます!
レイヴンわかってるよ、少年!気は進まないけど…ちょっと眠っててもらおうか
scene2今、英雄として
カイルくっ…こいつら、強い…!
神兵1仲間を庇いながら戦えるほど、我らは甘くはない…!大人しく投降するのが身のためだ
カイルくそっ、勝手な事言いやがって…!
レイヴン安い挑発に乗るんじゃないの。闇雲に突っ込んでも、返り討ちに遭うだけよ
カイルでも、このままだと、いずれ他の奴らに見つかっちゃいますよ!
レイヴン…そうねえ。考えがない事もないんだけど…
カイル何でもいいです…!この状況を突破出来るなら!
レイヴン…この術の起点は床の紋様のはず。だから、あの紋様さえ崩せば拘束は解けるはずなのよ
レイヴン本当は鍵になるところから一つずつ崩してくつもりだったんだけど…。こう邪魔が入ってちゃ、それも無理
レイヴンとなると…一か八か、紋様自体を粉々に壊すしかないわ
カイルじゃあ、すぐに…!
レイヴンちょっと待った!話は最後まで聞きなって──
神兵1投降する気はないようだな。ならば…!
キーンッ
レイヴンくっ…と言っても、ゆっくり話す時間はないみたいね
レイヴン少年、手っ取り早く言うと紋様を壊したら、状況が悪化するかもしれないのよ
カイル悪化って…みんなを傷つけるかもしれないって事ですか?
レイヴン傷つくだけならいいさ。もっと悪い結果になるかもしれない
レイヴンで、問題はそれでもやるかどうか…
カイルそんな…!
ベルベット…迷う必要はないわ!やりなさい!
スレイそうだ!オレ達に構わず──
バチバチバチッ!!
スレイぐうっ…!
カイルみ、みんな!
スレイ…大丈夫だ。オレ達に構わず、思い切りやってくれ!
カイルだ、だけど…
神兵2罠を解く時間など与えん!
ガキン!
レイヴン…っ!少年、悪いけどおっさん、神兵を抑えるのに手一杯!
レイヴン少年の方が罠に近いし、迷っているところ悪いけど任せるわ
カイル…はい。レイヴンさんは、神兵を頼みます!
神兵1何をごちゃごちゃと…!はあっ!!
レイヴンふっ!
ギィン!!
神兵2貴様…!一人で我々を相手にすると言うのか?
レイヴン聞いてたでしょ。あんたら団体様の相手はおっさんだけ
レイヴンしばらくの間、世間話にでも付き合ってよ
カイルレイヴンさん、少しの間…お願いします!
レイヴンこの人数相手にすんの、結構しんどいんだからね!
レイヴン紋様が削れちまえばどこを攻撃してもいいはず…。さっさと済ませちまいな!
カイルこれしか方法がないんだ…。行くぞっ…!
カイル爆炎剣!
ギィイン!
カイルなっ…何だ!?弾かれた!?
バチバチバチッ!!
ティアああっ…!!
カイルし、しまった!電撃が…!
カイルごめん、みんな…!痛い思いをさせて…。やっぱりこの方法じゃ──
ティアあ…謝らないでいいわ。おそらく、紋様自体に防御術式がかかっているのよ…!
カイル…くっ!もっと強い力じゃないと駄目なのか…!
カイル…だけど、もしそれで失敗したらもっとみんなを傷つけるんじゃ…
ベルベット…あんたのさっきの攻撃じゃ、壊れるものも壊れないわ
カイルえっ…
ティア…カイル、私達の身体を気遣う事はないわ。さっきの攻撃は迷いがあった
カイルで、でもオレのせいでみんなを傷つけるかもって思ったら…
ジュード…カイル、僕達を信じてくれないかな
カイル信じる?
スレイこんな罠で、オレ達はやられたりしないって事だよ
ミクリオああ、だから思いきり攻撃してくれ!
カイル…!そっか、そうだよね…!オレ、やるよ
カイル…みんなを信じるんだ。次こそ、大丈夫
scene3今、英雄として
カイルくそっ…このっ!!
ギィイン!
カイル駄目だ…!何度やっても壊れない!本気で攻撃してるのに…
カイルどうすればいい…どうすればいいんだ…!?
レイヴンくっ…!
カイルレイヴンさん!!
レイヴンいたた…あらら、少年も随分追い詰められてるじゃない
カイルみんながオレのせいでボロボロに……このままじゃ…
レイヴンおっと少年!勘違いすんじゃないの!
レイヴン焦りが出て当然よ。自分の行動一つに仲間の命、かかってんだからさ…
レイヴンでも、それで自分を見失うなんて…少年らしくないんじゃないの?
カイルえっ…?
レイヴン全部救いたいって啖呵まで切ったんだからさ。救ってみせなよ
カイル…わかってます…!救いたいって言ったのに、こんなの情けないって
カイルこのままじゃ、世界どころかみんなも…
ベルベットその時はその時よ。中途半端に痛めつけられ続けるよりはマシかもね
カイル…!
ティアでも、あなたに出来ないと思うなら私もベルベットも最初から任せたりしてないわ
ジュードそうだよ、カイルなら出来るって僕達は信じてる。だから、後は君がやり遂げるだけだ!
カイル…そうだ。オレ、大事な事を忘れるとこだった
カイル…オレがみんなを信じてるのと同じようにみんなオレを信じてくれてる
カイルなら、オレが出来るのはみんなが信じてくれたオレを、信じ抜く事だ!
カイルスタンさん達、そしてリアラ達もオレを信じて託してくれたんだ
カイル…必ず助けるから!
神兵2させるか!
バシュッ!
神兵2ぐっ…!き、貴様…!
レイヴン少年!正直おっさんもう限界よ。だから…根性見せな!
カイル…はい!これで決める…!
カイル行くぞ──
カイル爆炎剣!!
ギィイン!
カイル…!
カイルまだだ!信じて信じて…
カイル信じ抜く!!
スタンカイル、お前なら大丈夫だ!みんなと一緒に、ラザリスを止めてくれ!
カイルオレだけの力じゃない…!信じてくれた人達のために…!
カイルぶち抜いてやるっ!!
カイル燃えろ!!爆炎…連焼!!!
ゴオオオオオオッ!!
カイルいけええええっ!!
ピキッ…ピキピキッ…!
バリィィン!!
スレイ身体が自由に動く…ありがとう、カイル!
カイルへ、へへ…!よかった、みんな…
ベルベット礼を言うわ。後の神兵はあたし達が引き受ける
ジュードうん、レイヴンを助けないとここから出る事も出来ないしね
カイルだったら、オレも行かなきゃ…
ミクリオ今ので相当疲弊しているはずだ。大丈夫なのか?
カイルこれくらいでへこたれてちゃ、ラザリスは倒せないよ!やってやるさ!
ベルベット…そう。なら、止めないわ
神兵1術を解いたからどうしたというのだ!ここで我らが貴様らを捕らえる!行くぞ!
レイヴンち、ちょっとー!?終わったんなら、おっさんの事も早く助けてー!?
ベルベット…うるさいわね。わかってるわよ
ベルベットそれじゃ、さっさと突破するわよ!
カイルはい!…よーし、行くぞ!
scene1神域への扉
ティア…着いたわ。この先が、ラザリスと兄さん以外立入禁止にされていた場所よ
スレイ…どうやら、敵はいないみたいだ
スレイジュード、後ろの様子は?
ジュード…大丈夫。神兵達は振り切れたみたいだよ
レイヴン結構、結構。少しばかり遠回りだったけど、お蔭で目立たずに済んだわ
レイヴンしかしまあ…えらく面倒くさそうなところに来ちゃったねえ…
コレットすごく大きな門…!こんなに大きいの、どうやって開けばいいのかな?
ミクリオ開閉装置のようなものは見当たらないが…。ティア、何か知らないか?
ティアごめんなさい。私が知っているのは、ここの場所だけなの
レイヴンおっさんも話に聞いた事があるくらいで、ここまで来たのは初めてよ
ジュード何か仕掛けてあるのは間違いないね。ただの扉じゃないみたいだ
コレット何だろう、これ。光の線が、何本も…
レイヴン封印用ってとこかね。厳重にもほどがあるでしょうに
ベルベット力押しはお気に召さないみたいね
ミクリオ確かに、このままでは無理そうだ。扉自体も巨大だが…重さの問題じゃないみたいだな
ジュードこの光線が扉を封印してる…。そう考えて間違いないと思う
レイヴンじゃあ、まずはそこからかね。とりあえず、光線を解けば…
レイヴン──ん?この気配…!
ウウウウウッ…!
ティア晶化した魔物だわ!一体どこから…!
コレット数がたくさん…どんどん来てるよ!
カイル魔物の相手はオレ達がやるよ!その間に、扉を!
ベルベットええ、もうやってる!
ベルベットはあっ!
バキィン!
ベルベットなっ…!?
ティア光線が…再生した!?
ジュード今のは…!
ジュード点滅…いや、補完し合っている…?どうなってるんだろう…?
ウウウウウッ…!
スレイ考えるのは後だ!封印が解けないなら、まずは魔物を蹴散らそう!
ベルベットちっ、仕方ないか…!
scene2神域への扉
スレイみんな、大丈夫か?
ティア問題ないわ
ティアでも、困ったわね…。まさか封印が解けないなんて
コレット直る前に、扉を開けちゃえないかな?
ミクリオいや。近くで見ていたが、かなりの再生速度だった
ミクリオあれじゃ、扉を開けようとする間もなく再生が終わってしまう
レイヴン宮殿を丸ごと結界に包むような相手だからねえ…。こういうのは天帝様の得意分野ってわけだ
ベルベットだったら再生が間に合わないくらい、一瞬で粉々にしてやるだけよ
カイルそうですよ、全員でかかれば、何とか…!
レイヴンいや、ここは落ち着いて突破口を見つけた方がむしろ時間短縮になると思うね
レイヴン再生はしたけど、確かに光線は消えた。この封印も無敵ってわけじゃないでしょ
スレイオレもそう思う。解けない封印を張れるなら、とっくにそうしてるはずだ
スレイ宮殿の結界だって、クリスタルを破壊する事で解けた。何か…必ず方法はあるはずだ
ジュード…。方法なら…あるかもしれない
ベルベット…へえ?
スレイ何か気付いたのか、ジュード?
ジュードうん。扉の封印だけど…一度に全て破壊する必要はないと思う
ジュードさっき、光線が再生する直前…二本だけ、他と違う光を放っているものがあったんだ
ミクリオ…言われてみれば、その違う光を放つ光線が真っ先に再生を始めたように見えた
ジュードうん。そして後から他の光線も再生した…
ジュード多分…最初の二本が他の光線を再生させる鍵になっていると思うんだ
ジュードこの二本はお互いに補完し合ってるんじゃないかな
カイルじゃあ、その二本を壊せばいいんだ!
レイヴンいや…口で言うのは簡単だけどね?二本が補完し合うっていう事は…
ジュード壊すタイミングが少しでもズレたら、どちらかが再生し始めて…失敗するって事だよ
ジュードこの封印を突破するには、「全く同時に」二本の線を破壊する。…それしかないと思う
カイル全く同時って…
スレイそれならオレ達に任せてくれ!いいだろ、ミクリオ
ミクリオああ、僕達が一番息を合わせやすい
ジュード…ありがとう。頼むよ、二人共!
ティアここは二人に任せるわ
ジュードまずは僕が一部の線を破壊して、どれが鍵になっているか見極める。その後は…お願いするよ
スレイよし、そうと決まったら早速やろう。念のため、みんなは扉から離れて──
ウウウウウッ…!
カイルこの声…また晶化した魔物か!もう、いちいち邪魔するなよ!
レイヴン…もしかして、こいつら扉に近付くと出て来るようになってんのかね?
ベルベット…どっちだっていいわ。あたし達は──
ズバッ!
ギャウゥ…!
ベルベット──こいつらを蹴散らせばいい!邪魔はさせない
ジュードベルベット達が止めてくれてる間に……はあっ!
バキィィン!
スレイジュード!鍵はどれだ!?
ジュード右から二番目と、一番左の線だよ!間違いないと思う!
スレイよし…ミクリオ
ミクリオああ、いくぞ
スレイ・ミクリオはあああああっ!!
バキィィン!
カイルや、やった…!?
ジュード封印が消えていくよ!成功したんだ!
スレイやったな、ミクリオ!
ミクリオああ!よし、扉を開けよう
ティア通れるだけの隙間が出来たわ!みんな、中へ入って!
ズズ…ズズズズ…ズン!!
レイヴン扉を閉めて…よし、魔物は入ってきてないわ
ジュード…上手く、いったね
カイル二人のお蔭だよ!
スレイオレ達だけじゃないさ。みんなの力あってこそだ
ベルベット…そうね
ベルベットほら、息も整ったなら進むわよ。ラザリスはすぐそこのはず
ミクリオああ、そうだな。じゃあ、行こうか
スレイよしっ、あと少しだみんな!
scene1戦争と平和
スレイ大分進んで来たけど…。今までとは、かなり雰囲気が違うな
ベルベット妙に薄暗い…。気味が悪いわね
コレット──!この感じ…!
ジュードコレット?
コレット今ね、ラザリスの感情が私の中に流れ込んできたの
コレット…たぶん、ラザリスは近くにいるよ
ジュードもういつ現れてもおかしくないって事だね。気を引き締めていこう
カイルあ、えーと…ちょっといい?
ティアどうしたの、カイル?
カイルあの、あそこ…上の方に、何かあるんだけど…何だろう、あれ?
ティア…!あれは、まさか…!
コレット天啓の石碑…!どうしてここに…
ベルベット天啓の石碑…?どこかで聞いたような気がするわ
スレイ時代の節目に起こった出来事が書かれた石碑だよ
スレイヴァンは、この石碑を利用して元の世界で戦争を起こし、晶化現象を早めたんだ
ミクリオそしてラザリスの出現とこの世界の誕生に繋がった。だが、まさかこの世界にもあるとは…
ミクリオラザリスと天啓の石碑に、一体どういう関係があるんだろうか
ベルベット…とにかく、これが今回の厄介の元なのは理解したわ
コレット石碑自体に害はないよ。こんなにたくさんあるのは、初めて見るけど…
ジュードひとまず、先に進もうか。ほら、あれ扉じゃないかな?
スレイ…この扉は!
ミクリオああ、まさかここにもあるなんて思わなかった…
ティアコレットがいたのが幸いね。これだったら…開けられるわ
コレットえっ?
レイヴン何なに?お三方この扉知ってんの?
ティア元の世界で、ラザリスの居城に乗り込んだ時にね
スレイああ、天帝の御座にこれと同じ扉があったんだ
ミクリオ扉の上部に石碑と同じ紋章がある。間違いない
ティア以前は、神子であるゼロスの力で扉は開いたのよ
ティアだから…コレット。あなたなら、この扉を開けられるかもしれないわ
コレット…よくわからないけど、石碑と同じようなものって事だよね?じゃあ…やり方はわかると思う
コレットみんな、離れててね。えっと…
コレット大いなる世界の意志よ。我が主たる地上の神よ
コレット我、コレット・ブルーネルを汝の代行者と認めるならば…
コレットその言葉を我に聞かせたまえ──
スレイ…!成功だ!門が光りだしたぞ!
ミクリオいや、待て…
ミクリオ門だけじゃない。この部屋そのものが光ってないか?
コレット…し、失敗しちゃったかな?でも、前に石碑を読んだ時と同じ感じだったのに…
ティア…もしかして、この部屋全体が天啓の石碑と同じもので出来ているのかしら
ミクリオ確かに、それなら部屋が発光している説明はつくが…
ベルベットとにかく気を付けなさい。光が収まってきたわよ
カイル…本当だ。これで扉は開くのかな?とりあえず試して──
ブウゥ──ン…
カイル…って、うわあ!何かいっぱい出てきた!!
ティアこれは…鏡?
ミクリオいや、空間に何か…映し出されているみたいだ
スレイみんな、静かに。…何か声が聞こえるぞ…?
──を…!!戦い…──奪え!!
見つけ出し…──!!必ずや、我が国に持ち帰るのだ!
レイヴン何だ、こりゃ…!何かの…記録か…?
コレット多分だけど…元の世界で起こった事を映し出してるのかも
コレット天啓の石碑は、過去の出来事を記したものだから…
スレイじゃあこれは、元の世界の過去…?いや、それにしても…!
ジュードうん。これ、戦いの記録ばかりだよ。映し出されてるもの、全部…!
進め!国のためだ!邪魔をするなら民衆とて容赦するな!
やめて!やめてください…!せめて、この子だけは…!
レイヴン…!!あの腕章、まさか…!
カイルどうしたんですか?
レイヴン…嫌なもん見せてくれるじゃない。こいつは…!
レイヴン…シルヴァラントの…内乱だ
ティア
レイヴン…間違いない。10年前…この戦場にいたからね。忘れようにも忘れられないのよ
ティア…私にも、記憶があるわ
ティアシルヴァラントの内乱に、キムラスカの街も巻き込まれて…
カイルそれって…!レイヴンさんが話してくれた…
レイヴン…内乱に巻き込まれた街に、嬢ちゃん達もいたわけね…
ティアええ。そこで、私達は両親を失った。兄さんが騎士を志したのは、あれからよ
ジュード…!みんな、こっちの光を見て!これって…!
ミクリオこの男は…!ヴァンだ!間違いない!
ヴァン──しっかりしろ!あと少し…あと少しで友軍が…!
いいえ…私は、もう駄目です…。どうか…この国を…!家族を…!
ヴァン待て!逝くな…逝くな!!
カイルな…何だよ、これ…。さっきから、仲間が死んでばかり…!
ティア…!これは恐らくソドスの内乱ね。こっちの光は、その記録を映し出しているんだわ
ティア…兄さんは、この内乱のある作戦で騎士団の部下、ほとんどを失ったの
ヴァン…!!何故だ…何故死なねばならん…!!何故、お前達が…!!
ヴァン戦争…殺し…憎しみ…!!いつ終わるのだ…?一体、いつになれば…!
ヴァンその間、私に…私達に死に続けろと言うのか!?ならば…!!
ヴァンならばいっそ──!!
ジュード…これって
レイヴン…知られざる秘密って奴か
ティア思えば、兄さんは両親を失ってからずっと考えていたのかもしれない
ティア争いのない世界…。何も失わずに済む世界…。ただ、それだけを…
レイヴン…そんで、ようやく一人前の騎士になったところで…ソドスの内乱が起きたってわけか
レイヴン守れるだけの力を手に入れたはずが、仲間を全員失って…世界に絶望した
レイヴン新世界を創ったのは、そのためか…。…わからなくは、ないかもね
スレイ…あの強さの裏には、そういう理由があったのか…
ティア…それでも、兄さんは間違っている
ティア間違っているのよ…!
ベルベット
ティア兄さんの想いを知っても…。いえ、知ったからこそ…
ティア私が止めなくてはならない。あの人の家族として…必ず!
スレイくっ…またこの光か…!
カイル…見て!散っていた光が集まっていく…!
scene2戦争と平和
コレットまた、空間に何か映って…
スレイ…何だ?この光景、見覚えが──
スレイまさか、これは…!?
スレイこの光景、やっぱりそうだ!天帝の御座…結晶の花だ!
ミクリオああ、間違いない。だが…一体どうして…?
ジュード…静かに。何か聞こえてくるよ
???…──して。…どうして…!!
コレットこの声…ラザリス!
ラザリスどうして!わからない、わからない!わからないわからない、わからない!
ラザリス何でこんな…こんなもののために!僕は消えなくてはいけないんだ…!
ラザリス…こんな…ヒトなんかのために!
コレット…!!
カイル今のって…ラザリス、だよね?
ティアえ、ええ…。そのはずよ
ベルベット人間のために…あいつが、消えなくてはならない?何を言ってるの…?
レイヴンさっきの記録が本物なら…。今のも、ラザリス自身の記憶って事になるのかね…
ジュード…ラザリスにも、ヴァンみたいに新しい世界を創る理由があったって事かな…?
コレット…うん…きっとそう
コレットやっぱり、私が感じた気持ちは嘘じゃなかったんだ…
コレット今のラザリス…すごく辛そうだった
ジュードうん。まるで、人間のために生かされてるみたいな言い方だったね…
カイルそれじゃあラザリスは、人間の敵じゃなかったって事?
ジュードそうとは言い切れないけど…。あの取り乱し方は普通じゃないよ
コレットうん…ただの憎しみじゃない。感情が絡み合って、どうしようもない…そんな感じだった
ジュード…ラザリスと人間の間には、何か深い繋がりがあるのかもしれない
ミクリオさっきのラザリスから感じたのは悪意だけじゃなかった。それは確かだが…
スレイだからと言って、この世界の存在を認めるわけにはいかない…だろ?
レイヴンそりゃ勿論
レイヴンまあ…人間を憎んでいるなら、何でこの世界で生かし続けるのか…そこは引っ掛かるけどねえ
コレット晶化は人の負の心で進むんだよね?
コレットだから、さっきの記録はそういう戦争の悲劇を映したものばかりだったんじゃないかな
コレット立入禁止の場所にあった事を考えても、あの記録がラザリスと無関係とは思えないよ
コレットラザリスの行動の理由が人間なら…私達はそれを知るべきだと思う…
ベルベット…どんな理由があろうと、ラザリスを許すわけにはいかないわ
コレットラザリスのした事は許せない…。でも、私は…やっぱりこのまま戦うのは嫌だよ
ベルベット
コレットもし何か繋がりがあるなら、きっとわかり合えると思う
コレットそれに、もしわかり合えなくても…せめて戦う理由くらいは知りたいよ
コレット…今の声を無視するなんて…出来ない
ベルベット…あんたの気持ちは十分わかったわ。なら、全て説明してもらえばいい。扉も開いたみたいだしね
ベルベット本人に直接確かめてみなさい。人間とどういう関係があるのかを
ベルベット特異点の修復さえ止めれば、話す機会くらいあるでしょう
スレイ…そうだな。行こうか、みんな
コレットうん。きっとわかり合える…
コレットそうだよね、ラザリス…
scene1天帝の守護者
スレイ…この階は、さっきと変わらない雰囲気だな
レイヴン石碑が浮いてないくらいかね。よかった、よかった。何度もあんなもん見たくないし
ジュードラザリスのところまであと少しのはずだよ、いよいよ──
ズ…ズズズズ…!!
ミクリオこの揺れは…!?
ベルベットラザリスの攻撃…じゃないか。地震みたいね
カイルもしかしてこれもハロルドが言ってた、特異点の修復の影響なのかも…!
ミクリオ…休んでいる暇はないな。次の階が最上階のはずだ、先を急ごう
コレット待って、ミクリオ!何かいるよ!
グルルル…!!
ミクリオ…また魔物か。着実にこちらの体力を削るつもりだな…!
レイヴン上手い事隠すもんだわ、ほんと。こっちはもう顔も見たくないってのに逃げる暇も与えてくれないんだから
スレイ…構えるんだ、みんな!来るぞ!
ベルベット何度襲って来ようが一緒よ…!
scene2天帝の守護者
ベルベットくっ…!しつこいわね
ザシュッ!
ギャウゥ…!
ジュードはあっ…はあっ…!今ので、最後だね…!
レイヴンはあ…。おっさん、もう体力の限界に近いわ
スレイけど、休む時間もない。このまま行くしか…!
ティアええ…階段はあそこよ。罠がないか、今調べて──
ズズズズ…!!
レイヴン…おいおい、また地震かい
カイル…違います、レイヴンさん!これは…地震じゃない!
コレットこの気配って…
ベルベット…っ!階段から離れて!来るわ!
グ…ググ…グオオオオオオオオッ!!
ジュードなっ…巨大な…竜!?
コレットやっぱり…!私、宮廷神子の試験でこの竜を見た事があるよ!
コレットあの時の竜もラザリスが作り出してたんだ…!
ベルベットこれまでの魔物とは明らかに違う。簡単には通してくれなさそうね…!
ジュードコレット、試験の時はどうやってあの竜を突破したの?
コレットえっと、あの時は…祭壇にクリスタルがあって──それが出現の鍵になってたの!
コレットだから、クリスタルを戻せば、この竜も消えるはずだよ!
ミクリオクリスタルか…!それを見つければ──
グオオオオオオオオッ!!
スレイっ!来るぞ!みんな、避けろ!!
ドゴォオン!
レイヴン…間一髪ね…!全く、冷や冷やさせるわ…
ジュード近くにクリスタルは見当たらないし…探す余裕もなさそうだね
ティア…これは試験じゃない。最初からクリスタルなんて用意されてないのかもしれないわ
ジュードそれなら、直接叩くしかないか…!
グオオオオオオオオッ!!
ベルベットせいぜい吠えてなさい…!やるわよ!
scene3天帝の守護者
スレイ…はあっ…はあっ!これで…どうだっ!
ザシュッ!
グウウゥ…ッ!
ミクリオ効いている…!一気にたたみかけるぞ!
ティアこれでとどめ──
グオオオオオオオオッ!!
コレット──きゃああっ!!
ドゴォオン!
カイルぐ…ううっ…!み、みんな…!大丈夫…?
ベルベットあんな攻撃で…!やられや…しないわ…!
レイヴン腕の一振りで、全員吹っ飛ばすとはね…!ったく、まだそんな力が…!
フウゥゥ…フウゥウ…!
ジュード…!今ので向こうも限界みたいだ…!これを逃すわけには…
ティア早く態勢を立て直さないと…!
ズズズズ…!!
スレイこの揺れは…!?
コレットまさか…嘘…
グオオオオオオオオッ!!
ベルベット二体目の…竜…!
レイヴンおいおい、勘弁してよ…。もう少しだったってのに…!
オオッ…オオオオッ!
ミクリオブレスが来る…!みんな、逃げるんだ…!
コレット駄目…!足が…動かない…!
ゴオオオオオッ!
コレット…っ!!
ジュード駄目だ、これじゃ避けきれない…!!くうっ…!!
???──ならば、受け止めるまでだ!
ジュードえっ…
バシュウウッ…!
コレット竜のブレスが、消えた…?
ジュードこれは…精霊術?──まさか!?
ミラ待たせてしまったな、ジュード
ジュード…ミラ!来てくれたんだね!
ミラああ。どうやら、私達は間に合ったようだな
コレット私達って…じゃあ、もしかして…!
???はああっ!!
ザシュッ!
グオゥッ!?
???よそ見してんなよ、デカブツ!
???ワン!
ザシュッ!ザシュッ!
グウウゥ…ッ!
コレットロイド…!それに…!
レイヴン青年に、ワンコじゃないの!
ユーリ情けねえぞ、おっさん。年だ年だと言ってたら、本当に膝やっちまったか?
レイヴン…言ってくれるねえ。こっちは戦い詰めでボロボロだったのよ?
ユーリ…みてえだな。宮殿前の連中も、かなりギリギリだったし…
カイルスタンさん達は無事なんですか!?
ミラ私達も神兵を押さえるのを手伝っていたのだが…
ロイドキリがないって事で、こっちを助けるよう送り出されたんだ
ロイドコレット達に「安心してくれ」って、伝言を預かってきたよ
コレットよかった…
グオオオオオオオオッ!!
ユーリおっと!これ以上、無駄話をしてる時間はねえみてえだな
フウゥゥ…フウゥウ…!
ミラ相手は二体…。だが一体は深手を負っているようだな
ジュードかなり追い詰めたんだけど、後から二体目が出てきたんだ
ジュードラザリスが作り出してる魔物なら、まだ何体も出てくる可能性があるよ
ユーリ…へっ。とりあえず、弱ってる方から片付けるか
ロイドああ、数を減らさないとな!
ミラ私はもう一体を引き付ける。ジュード、君達はその間に回復してくれ
ジュードありがとう、三人共
グウゥゥ…オオオッ!!
ロイド随分好き勝手やってくれたな…!
ロイド──くらえ!獅吼烈風!!
グオッ…!!
ロイド動きは止めたぞ!今だ!
ユーリああ、上出来だぜ!やるぞ、ラピード!
ラピードワン!!
ユーリ爪竜連牙斬!はああっ!!
ラピードワン!ワオーン!!
グッ…オオ…!!グオオオオオオオオッ…!?
ズ…ズズゥン!!
スレイやった…!
カイル竜が、消えていく…
ミラ流石だな。私も負けていられない
グオオオオオオオオッ!!
ミラお前の相手はこっちだ──カタラクトレイ!
グウウゥゥ…オオオオ!
ミラやはり、簡単には倒れないか…!
ゴオオオオオッ!
ミラくっ…!
ロイド大丈夫か!?すぐに行く!!
ユーリちっ…!二体目は厄介そうだな
ティアこれでみんな動けるはずよ…!
ジュード早くあいつを倒さないと…!
ユーリ…いいや。お前らには先に行ってもらうぜ
ミラここに留まる時間は、もうないはずだ
ロイドそうだな。こいつの相手は、俺達に任せてくれ
ミクリオしかし…!
ユーリお前らを先に進ませるために、オレ達は来たんだぜ?
ミクリオ…!!
ミラ目的を見誤ってはいけない
ジュード…ミラ
ミラ誰しも役目というものがある
ミラお前達の役目は、この先にいるラザリスを止める事だ
ロイドそれに、俺達だけじゃない…。いろんな奴の助けがあったからこそ、ここまでたどり着いたんだろ?
ロイドお前達ならやれる!そう思ったから、みんな力を貸してくれたんだ
ロイドここまで来て大トカゲの相手なんかしてる場合かよ!こんな奴、どうって事ないさ!
ユーリ…そういうこった
ユーリ行けよ。ラザリスの野郎が、首長くして待ってるぜ
レイヴン…そうね。ここは一つ、後始末お願いするわ
ユーリへっ…。最後の詰めをしくじるんじゃねえぞ
カイルはい!絶対、世界を元に戻してきますから!
ロイドそれだけ元気があれば大丈夫だな!行って来い、みんな!
コレット…うん!全部…終わらせてくるよ!
ミラああ。任せた
ジュード…よし。行こう、ラザリスのところへ!
グオオオオオオッ!
ミラふっ…そういきり立つな。お前の相手は、私達がしてやる…!
ベルベットこの階段の先にラザリスがいる…。覚悟はいいわね?
レイヴン泣いても笑っても、これが最後ってか
カイル準備万端です!行きましょう!
ミクリオ聞きたい事は山ほどあるが…。まずは、特異点の修復を阻止する!
コレットうん…!みんなのためにも、絶対止めないと!
ベルベットこれで決まるわ。あたし達の全てを…取り戻すわよ!
scene1世界の掟
スレイ…ここが最上階
ベルベットやけに静かね
ジュードラザリスはどこに行ったんだろう
ティア兄さんの姿も見えないわ
カイル二人でどこかに隠れてオレ達を待ち構えてるのかも…
カイル…!なっ、あれは…
スレイ光の玉が何個も…ミクリオ、これって…
ミクリオああ、おそらく特異点だろう。遺跡で見たものと同じだ
ミクリオけど、妙だな。何故こんなところに…?しかも、複数集まって──
バチバチッ…!ジジ…キィンッ!
カイルうっ、眩しい!何が起きて…
レイヴン光の玉だ…!けど、一つ消えちまったぜ?
コレットこの感じ、もしかして…
???──そうさ。今この瞬間に特異点はまた一つ、修復された
ベルベットラザリス…!
ラザリスふふ…
ラザリス本当に諦めが悪いんだね、君達は。…けど、もう終わりだよ
ラザリス──傷はまもなく完治する
ラザリスあの光の玉の消滅と共に、この世界は完全なものになるんだ
ミクリオつまり、この世界に残存する特異点の数は…
レイヴンあと三つ、か
コレットねえ、ラザリス
コレット…教えて。あなたはどうしてこんな事をするの?
ラザリス…君はまだそんな事を?
ラザリスわからないよ。知ったって何になるんだ
カイルオレ達、聞いてしまったんだ。石碑の部屋で、ラザリスの声を…
ジュード消えたくない、…どうして自分が消えなくちゃならないんだって
コレットラザリスの本当の気持ちが知りたいの。じゃないと私達…
ラザリス……
レイヴンま、どんな理由であれ元の世界を返してもらうってのは譲るつもりはないけども
ラザリスくっ…くく……
ラザリス思い上がりも甚だしいな。僕を憐れんでるの?
コレットそうじゃないよ…!ただ、理由を知ったら、私達は話し合えるかもって──
ラザリスふざけるな!!!!
ラザリス……君達にはわからない!何も!何も!
ベルベット…交渉決裂ね
コレットラザリス…
バチバチッ!ジジジ…キィンッ…!
ティアまた、光が…!
ジュードこれで残りは二つ…
ミクリオ…まずいな。消滅が思ったより速い…!
スレイくっ…何とかして食い止めないと…!
ラザリス…無駄だよ。僕が存在する限り、この修復は止められない
コレットそんな…
ベルベットのんびりおしゃべりしてる時間はないってわけね
ベルベット…なら、仕方ないわ。今この場であんたを倒すまでよ
スレイああ…!
コレット……
ラザリス…ふ、来なよ
scene2世界の掟
ベルベットはああっ!
ラザリス──無駄だよ
ピキピキッ!
ジュード弾かれた…!
カイルまたあの壁…
ラザリスはあ…はあ…そろそろ終わりにしようか
ラザリス…行くよ、ディバイン──
レイヴンさせないっての!
ラザリスくっ…!
スレイ今だ!ミクリオ!
ミクリオああ!
スレイ・ミクリオルズローシヴ=レレイ!!
ラザリス…ふっ
スレイえ…?まさか…何で…!?
ミクリオ神依出来ないなんて、こんな事──
ティアそんな、どうして…!
ラザリス──世界の掟(ワールドルール)
コレットえっ…空中に、目…?
レイヴンこいつはまた随分と悪趣味な術ね。薄気味悪いったらなんの…
ラザリスこの二人のつまらない力を僕が禁じたのさ
ミクリオくっ…
ラザリス僕の世界に背いた君達には、報いを受けてもらうよ…!
ラザリスはあああっ!
バシュッ!
スレイうぐっ…!
ジュード空中の目が攻撃を…!?スレイ!
スレイ大丈夫…!だけど、神依が封じられるなんて一体どうやって…
ラザリス忘れたのかい?ここが誰の世界なのか
ラザリス僕には敵わない。君達のやっている事は全部無駄なんだ
ベルベット無駄はどっちかしらね
ベルベットこのくらいの事じゃあたし達は止まらないわ
ミクリオ神依が使えなくとも勝機を失ったわけじゃない
スレイうん、オレ達には仲間がいる
カイルそうだ…!まだ希望はあるよ、オレ達は諦めない!
ラザリス…希望、か。ヒトはいつもそれだ
ラザリス都合よく耳触りのいい言葉を並べて自分達が正義だと主張する…
ラザリス全く、どこまで愚かしい──…つっ…
コレットラザリス…?
ピキッ…
ジュード…!ラザリスの身体が結晶に覆われて…
ラザリスくっ…
レイヴンどういう事よ?晶化ってあいつの力だろうに
ミクリオ力を使いすぎたんじゃないのか
ベルベット好都合じゃない。今の内に一気に──
コレット待って、ベルベット!
コレット少しでいいの…お願い、話させて…!
ベルベット
ベルベット…急いで。時間はないわ
ラザリス……
コレットラザリス、お願い。教えてほしいの
コレットあなたは、一体何者なの?どうしてこんな事をするの?
コレットあなたのあの感情は…絶望は、どこから生まれるのか…
コレットそれがわかれば、私達にも出来る事があるかもしれないから…
ラザリス
ラザリス……影…
ラザリス…そう、僕は「世界の影」さ
コレット世界の、影…?
ラザリス最初は意思も自我もない、ただ世界の歴史を静かに刻むだけの存在だった
レイヴン「天啓の石碑」か…
ラザリス…けど、あの日全てが変わった
ジュードあの日…?
ラザリスディセンダーによる世界の再生さ。あの力の余波で僕は思考と実体を手に入れた
レイヴンディセンダーって確か、カノンノちゃんの事だっけ
ジュード…そっか。そして、見たんだね。世界の…争いや苦しみを
ラザリスああ、ああ…思い出しただけでうんざりだ
ラザリス君達の世界では、ヒトがヒトを見捨てている。国が民衆を、親が子を、友が友を…
ラザリス大地が疲弊するまで自らのエゴのために争いを繰り返し、生き物を殺し、奪い、捨てて!!
ラザリス…確信したよ。君達の欲が満たされる事はない…
ラザリスそれを追い求めていく中で、いずれ世界だけじゃなく自らをも死滅させるだろうって
ラザリス…だから僕がもらったんだ!世界ごと、全部!
カイルだからって…世界を全部好きなようにしていいわけないだろ!
ラザリスふっ…。醜き憎きヒト…けど、安心して。死なせはしないよ
ベルベット…どういう事?あんたは争いを繰り返す人間に絶望してたんでしょ
ラザリス耐え難い事実だけど、僕はヒトの意識の集合体のようなもの…
ティアそれってつまり、私達人間が全ていなくなればあなたも存在し得ない…
ラザリスそうさ。僕を生んだのは君達ヒトの愚かな行為だ。…なのに、世界を返せだって?
ラザリス…僕に、このまま死ねと!?傲慢にも程があるよ!
ラザリスどうせ全てが腐り、滅びるまで争って奪い合うだけなのに!
ラザリスだったら何で、何故、僕を……
コレットラザリス…違うの、そうじゃな──
ラザリスあああああああっ!!
パキパキ…パリンッ!
ミクリオ…!ラザリスの身体の結晶が砕けた…!
カイルうっ、すごい力…!吹き飛ばされそうだ…!
コレットラザリス…!
ラザリス…君達には、生きてもらうよ
ラザリス僕の理の中でね
バチバチッ…!ジジ…キィン……
ジュード光の玉が、また…これで特異点はあと一つ…!
レイヴン…タイムリミットね。お話はここまで、戦闘再開といくわよ
コレットでも…!ラザリスが…!
ミクリオコレット、これ以上、特異点を失うわけにはいかないんだ…
コレット
ラザリス
scene3世界の掟
ベルベットはあ…はあ…!ここまでよ、ラザリス…!
ラザリスやるじゃないか…。でも……時間を使いすぎたね
ジジ…ッ!……バチバチ…
カイル…っ!光の玉が消えかかってる!
ラザリス…終わりだ!僕の世界が完成する…!
キィンッ…!
ジュードそんな、最後の光の玉が…
ラザリス…さようなら、咎人達
──ドクンッ!
カイルうっ、何だ…これ!?頭が割れそうに…っ!
ティアもしかして、これは…っ!
ラザリス…処理さ。君達が僕の世界の民へ戻るためのね
──ドクンッ!
レイヴンうぐっ…さすがにまずいわ…これ…!
ベルベットくっ…!このままじゃ…
コレット…っ、お願い…力を貸して、世界の意志……!
ミクリオコレッ…ト…?
コレット元世界のために…ラザリスと向き合うために…
コレット…今、この記憶を失うわけにはいかないの──…!
ジュード…!痛みが消えた…!
スレイもしかして、コレットの中の世界の意志が…?
ラザリスちっ…最後まで僕の邪魔を…
ラザリスけど、一時的に免れたところでどうせすぐに──
ピキピキピキッ!
ラザリス…う、…ああ……っ…!!
ティア…!ラザリスがまた晶化していく…!
スレイ今の戦闘で、力を使い果たしたのか…
ミクリオあれでは、もう…
コレットラザリス!
ラザリス……近寄る…なっ!
コレットあなたが生まれた理由や私達人間に絶望していた気持ち…全部知った上で、思うの
コレット元の世界であなたと一緒に生きたいって
ラザリス
コレット…確かに私達はあなたが見てきたように多くの争いを繰り返してきた
コレット…けどね、それでもこうやって長い間滅びる事なく歴史を刻んでこられたのは──
コレット人間があなたと同じように争いのない平和を望んできたからじゃないかな
ラザリス……ヒトが、僕と同じ?何を馬鹿な…
コレットだってあなたは「人間の意識の集合体」なんだよね?
コレットそんなラザリスが望む事だもん、きっと人も、みんな同じ気持ちを持ってるって事だよ
ラザリス……!
コレット世界には大勢の人がいるからぶつかる事もたくさんあると思う
コレットけどその度に、人は考えて…それじゃいけないって思い直して、前に進んできたんじゃないかな
コレット…それはきっと、これからも同じだよ
コレット時に道を間違えるかもしれないし時間がかかるかもしれない
コレットでも、その気持ちがあれば確実に、争いのない平和に向かって前進していけると思うの
スレイコレット…
ベルベット……
コレット──だからお願い、ラザリス。私達の事を信じて、見守っていてくれないかな
コレット世界や人間…そしてあなたの事、必ず守っていくって約束するよ
コレットあなたは世界の影なんかじゃない。平和を願うあなたの意志は、私達の世界そのものだと思うから…
ラザリス……!僕と…同じだって…?
ジュードラザリス、僕達も同じ気持ちだよ
ジュード君が創ろうとした争いのない世界は必ず僕達自身の手で実現させる
ミクリオ世界と人の滅び…僕らとしても見過ごせない問題だからね
カイルオレも、未来の時代でも変わらない平和を守り続けていけるように努力する!
ラザリス……無理さ。ヒトは変わらない
ティアそんな事ない。人は必ず変わっていけるわ
ティア時間がかかるかもしれないけれど、必ず
ラザリス……そんなの、嘘だ…
ベルベット少なくともここにいる全員、嘘をつくような連中じゃない事だけはあたしが保証してあげる
ベルベット…さあ、どうするの?世界を元に戻すなら殺しはしないわ
ベルベットけど、戻さないって言うなら、あんたを殺してこの世界ごと潰すしか選択肢はなくなる
ラザリス…僕は…君達と交わる事は出来ない……
コレットラザリス!どうして…
ラザリス僕はずっと見てきたんだ。繰り返し繰り返し、ずっと…
ラザリス今は都合よくそう言ってても最後は必ず裏切る。…ヒトはそういう生き物なんだ
スレイラザリス…
ベルベット…わかった。それがあんたの答えなのね
チャキッ
ラザリス…もう手遅れだよ
ラザリス完全体になったこの世界は、僕を殺したところで元には戻らない
カイルそんな…!何か方法はないの!?
ラザリス……
ラザリス…僕なら──
ザシュッ!!
パキィィィィンッ!!
ラザリス…かはっ……!
コレットえ…?
ドサッ
???──機は熟した
ティア…!あなたは…
ヴァン…真の世界が到来したのだ
スレイヴァン…!!
ヴァン今までご苦労だった。哀れな人形ラザリスよ
ジュードどうしてヴァンがラザリスを…!
ベルベット…あんた、裏切ったのね
ヴァン……
scene1楽園の支配者
ベルベット──ヴァン…。あんた、ラザリスを裏切ったのね
ヴァン裏切るも何も、仲間として手を組んだつもりなど毛頭ない
ヴァン不要になったものを片付けた、ただそれだけの事だ
カイルそれって、世界が完全体になったからラザリスはいらなくなったって事…?
ティア兄さん…、あなたという人は…
ラザリス…はっ………やはり…食えない奴だね…
ラザリス端から僕を…利用して──……う、っ…!
コレットラザリス!
ヴァン…ほう、まだ息があったとはな
ヴァンだが、ここまでだ
ヴァン国という隔たりのないこの新世界エンテレスティアを舞台に人間は一からやり直す
ヴァン…人間自らの意思で、だ。お前の理とやらは必要ない
ラザリス…く……っ!
ヴァンだが、ラザリスよ。これまでの働きには感謝しているぞ
ヴァンあの日、絶望を介してお前と通じていなければ、私一人では成し遂げられなかった
ヴァン…せめてもの礼だ。今、楽にしてやろう
チャキッ
ヴァン安らかに眠るがいい──
スレイ駄目だ!させない!
ガキィンッ!
ヴァン…何故止める?ラザリスはお前達にとっても敵。恨みはあるだろう
スレイ…ラザリスは自分を守ろうとした。だからこの世界を創ったんだ…!
スレイそうなったのにはオレ達にだって責任がある
ラザリス……っ…
ティア兄さん、私達が相手よ。ラザリスには近づかせないわ
ヴァンティア、お前もラザリスに与するのか
ティア正解なんてわからないわ。でも、兄さんが間違ってるのはわかる
ティアラザリスと私達が共存出来る未来があるかもしれない。その選択肢を断たないで!
ヴァン共存か…。ふ、相変わらず温いな
ジュード確かに、争いがなくなれば結果的には多くの人が助かる
ジュードけど、そのための方法が元世界の結末なんだとしたら、あまりにも犠牲が大きすぎる…!
ヴァン元より業は背負うつもりだ。全ては人間のため…未来が繋がればそれでいい
ミクリオ人間のため、だって?詭弁にしか聞こえないね
レイヴン親を亡くし、部下を亡くし…それでも変わらず続く戦争
レイヴンそんな世界に絶望するおたくの気持ち、少しはわかるつもりだったんだけどね
ヴァン救国の英雄であるあなたが?…心外だな
ヴァンあの悲劇を二度と繰り返さぬためには、この世界が必要なのだ
レイヴンそうかい。…けどね、気づいてる?
レイヴンおたくのしてきた事は、戦争を起こした奴らや、俺を英雄に仕立て上げた連中と同じだって
カイル…そうだ!人間の未来のためと言いながら、目の前の命を踏みにじる!
カイルそんな身勝手な未来なんて、オレ達が許さない!
ヴァン前にも言ったはずだ。お前達の理解を求める気はないと
ヴァン…既に世界は成った。人の手による完全な世界が、これから紡がれていくのだ
チャキッ
ヴァンそのためにも…、そこを退け。ラザリスを始末する必要がある
コレット駄目だよ…!そんな事、絶対にさせない
ラザリス……
ベルベットヴァン…初めて会った時から思ってたわ。あんたはあいつに似てるって
ベルベット自分の理想を振りかざし、あたしから弟を奪ったあいつとね
ベルベットあたしはあんた達みたいな奴らを絶対に、死んでも認めない!
ヴァン相容れぬのは先刻承知。…かかってくるがいい!
scene2楽園の支配者
ヴァンはあっ!
スレイぐっ、すごい気迫だ…!
ベルベット気圧されないで!全力でぶつかるわよ!
ヴァン一時の感情…覚悟のない剣で、この私を止める事は出来ん!
カイル覚悟がないなんて…勝手に決めるな!覚悟がなきゃ、ここまで来てない!
ヴァン大人しくこの世界を受け入れたらどうだ
ヴァンお前達とて記憶を取り戻す前は、この世界で何事もなく穏やかに暮らしていたはずだ
ティア…そうね。この世界での暮らしは平穏だった
ティアでも…あれはまやかしよ
ティア兄さんは本当にそれでいいの?…こんな偽物の世界が、兄さんの望んだ世界なの?
ヴァン今は偽物の記憶、世界であろうとやがて真実になる。覚めなければ、それは夢ではない
ベルベット…気に入らないわね。そうして嫌な事から目を背けていればいいって考えは
ベルベット…あたしは、この世界に来た時から元の記憶を持っていたわ
ベルベット…だからこの世界がどんなに素晴らしかろうが知らないし知りたいとも思わない
ベルベットただ…弟を殺したあいつも、この世界でその記憶を失ってのうのうと生きてるというなら…
ベルベットそんな事は絶対に許せない。全てを思い出させた上で必ず、この手で殺すわ…!
ヴァン…ふん、まるで憎しみの化身だな。そのような感情が争いを生むと言う事がわからんのか
ベルベット憎しみがなければ争いは起きない?そのために記憶を改変する?そんなの、楽をしたい奴の言い訳よ
ベルベットこんな世界、全部この手で喰らってやるわ!
スレイ…ヴァン。オレもベルベットの言う通りだと思う
スレイ確かにこの世界は、争いを生まないかもしれない。みんな平和に暮らしてるし
スレイけど、すごく歪なんだ…
スレイ憎しみの感情を…本来あるはずのものを奪って、それでいいなんて間違ってる!
スレイ悲しい事や辛い事があったら、怒ったり憎んだりするのが人間だ!
スレイそれがない世界なんて、本当の平和だとは言えない!
ヴァンやはりまだ青いな。言ったはずだ、いずれ私と同じ境地にたどり着くと
スレイオレは、あなたとは違う答えを必ず見つけてみせる
ミクリオああ。きっとみんなが知恵を出し合えば、平和な未来は訪れるはずなんだ
カイルそうだ!争いのない世界は、この手で掴んでみせる!
ジュード勿論、それがどれだけ困難な道のりかはわかってる
ジュードけど、いつか成し遂げてみせるよ。それが僕らの意志だ。あなたの好きなようにはさせない!
レイヴン…若い子達もこう言ってるし、信じてあげてもいいんじゃないの?
コレットあなたは結果が全てだって言った…。でも、本当にそうなの?あなたの心は痛んでないの…?
ヴァンくどい、私の信念は揺るがぬ…!互いに譲れぬものがあるならば、その剣で示してみよ!
ベルベット言われなくても、そのつもりよ!
scene3楽園の支配者
スレイ・ミクリオ蒼の四連!
ヴァンそれが届かぬのは知っているだろう!
ベルベットだったらこれはどう!
ヴァン遅い!
ベルベットくっ…!
コレットみんな……
ラザリス
コレット…わたしは、ここにいるよ。あなたを守るために
ラザリス僕が、君なんかに?
ラザリス……嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ!
コレット…覚えてる?ブランの花束を渡した事
ラザリス花…?
コレット私は宮廷神子になって、あなたを助けたい…支えたいって思ったんだ
ラザリスああ…僕がそう仕向けたからね
コレット今も、そう思ってるよ。あなたは苦しんでるから
コレット傍にいて助けたいって思う気持ちは、変わらないよ
ラザリス……っ…
ヴァン──どうした?お前達の力は所詮、その程度か
レイヴンくっ…さすがね…!一筋縄じゃいかないか
スレイ次で決めよう。力を合わせれば必ず倒せる…!
ミクリオスレイ。まずは僕達で奴を引き付けよう
カイルその後、オレ達が全力で叩き込む!
ティア半端な力じゃかわされて反撃を食らうわ
ベルベット…わかってる。必ずあいつをぶっ飛ばすわよ!
ラザリス……何故、君達は戦う?
ラザリスヴァンを倒したところで、この世界の完成はもう揺るがない
ラザリスどうしてこんな無意味な戦いを…
コレットラザリスを、守りたいから。あなたは私達の世界そのものだから
コレット一緒に、生き抜きたいの
ラザリス……
ヴァン争いしか生まぬ世界のために、まだ歯向かうか!
ミクリオ苦しい過去を忘れ、憎しみのない世界で生きるのは確かに楽だろう…だが!
スレイそんな事しなくてもオレ達は自分の力で乗り越えられる!
スレイ・ミクリオはあああああっ!!
ガキンッ!
ヴァンぐっ…!だが、その程度…!
ヴァンせあ…っ!
ザシュ!
スレイくっ…
ミクリオしまった、神依が…!
ヴァンこれで終わり──…
???いいえ、まだよ!
バシュウ!
ヴァンくっ…!ティアか
ティア兄さん…
ティア私、兄さんがたくさんの争いの中でどれだけ辛い思いをしたか、わかってるつもりよ。だけど…
ティア元の世界にはかけがえのないものもたくさんあった
ティア築き上げてきた友情、仲間との絆とたくさんの笑顔、それに、家族で過ごした思い出……
ティアそれら全てをなくしていいと、本気でそう思ってるの!?
ヴァン…くどいぞ、ティア!
ヴァン何度も言ったはずだ。大義の前に、そのような些細な事は捨て置かれるものだ!
レイヴンはっ…笑わせるね。おたくの都合を押し付けるなっての!
ヒュンッ!
ヴァンふん、温い──
レイヴン今よ、少年!
ヴァンなっ…、後ろか!?
カイル父さんやみんなの歩んできた歴史を全部なかった事にするなんて、オレが許さない!
カイルはああっ!
ザシュッ!
ジュード僕は…逃げないよ!自分で信じた未来を、守りたいから!
ドゴッ!
ヴァンぐはっ…!
ヴァンはあ、はあ…愚かな……
ヴァンだが、私は絶対に負けん…!
ジュードまだ立っていられるなんて…!
ミクリオ一体どこにそんな力が…
ベルベットでも、目的のため、他を斬り捨てる奴には負けないわ
ベルベットでしょ、スレイ?
スレイベルベット…。ああ、そうだな!
ヴァン──私の理想を邪魔する者は、全て消し去ってくれる!
スレイそうはさせない!オレ達はオレ達の世界に戻るんだ!
ベルベットええ、この世界を壊してでもね…!
ベルベットスレイ、行くわよ!
スレイああ!
ベルベットはあああああっ!
ヴァンぐあああ…っ…!
ヴァン……う…、ぐ…
ヴァン…見事…だ……
ヴァン…だが、それでも……我が大義は成し遂げねばならぬ…!
ヴァンぬおおおおおおおっ…!
ティア…!まずい、すごいエネルギーだわ…!
ヴァン…この世界は、我が希望…!この身に代えても……必ず、守ってみせよう…!!
ミクリオまさか、僕達諸共、道連れにする気じゃ…
ベルベットくっ、そんな事──
ヴァン……ふっ、…もう遅い…!
???うわああああああ!
ピキ…ピキピキ…
ヴァンぐぅっ…!
スレイヴァンが晶化!?もしかして、これ──
ラザリス…はあ…はあ…っ…
ベルベットラザリス…
ヴァンぐっ…!…お前にまだ、これほどの力が残っていたとはな……
ラザリス僕を…見くびるからだよ
ピシッ…ピシッ…!
コレットラザリス…!そんな…
ヴァン相討ちか……ふ、それも悪くない……。お前さえ消えれば、私の役目は…
ラザリスふっ…、君の思い通りにはならない、よ…
ヴァン…!?
ピシッ…ピシッ…!
ヴァン何故だ…!まさかほだされたとでも──
ラザリスこれは…僕の世界だ。君のじゃない…
ヴァンくっ…、おのれ……!
ヴァンお前達もじきに気づく…!この世界が……唯一の…答えだった、と──
ピキピキピキ…!!
カイルヴァンが、完全に晶化した…
ラザリス……っ、う…!
コレットラザリス…!…助けてくれて、ありがとう
ラザリス世界の、意志…
ピキピキピキ…
ジュード晶化が…
コレットそんな…、駄目だよ!だってせっかく……
ラザリス僕には、もう、何も見えない…わからないんだ…
ラザリスあとは…君達の、好きにすればいい…
コレットラザリス…
ラザリス…さようなら、…僕の…世界……
ピシッ──
カイル──っ!ラザリスに、ひびが…!
ガシャーーン!
コレットそんな…嘘…ラザリス…
コレットラザリスーーーーーー!!
コレットラザリス…
スレイ…ラザリスはオレ達を助けてくれたの、かな…
レイヴン結果的にはそういう事になるのかね
ジュード何て言うか…やりきれないね。まさかこんな幕引きになるなんて
ティア真相はわからないけど…ラザリスに感謝すべきなのかもしれないわね
コレット……
カイル…コレット、大丈夫?
コレットラザリスには犠牲になってほしくなかった…
コレット私も…私の中にある「世界の意志」も…
スレイうん、オレもそう思うよ…
コレット
ベルベット感傷に浸ってる時間はないわ
ベルベットあたし達にはまだやる事がある
ミクリオベルベットの言う通りだ。二人はいなくなったけど、元の世界へ戻せたわけじゃない
スレイああ…。でも、ラザリスがいない今どうやって…
ジュードん?あれ…ちょっとみんな、窓の外を見て!
ティア空を舞っているのは…光の粒子…?あれは一体……
ジュードすごい…まるで、世界が溶けていくみたいだ…
レイヴン…ん?ねえ、あそこに見え始めてる雪の大陸って、ひょっとして…
ミクリオア・ジュールだ…!間違いないよ
ベルベットそれってつまり、世界が元に戻り始めてるって事…?
ティアでもどうして…?特異点がなくなった今、手の打ちようはないはずじゃ…
スタンおーい、みんな!
カイルスタンさん!?それに、他のみんなまで!
ヴェイグようやく追いついた。無事終わったみたいだな…
ゼロスさすがにボロボロみたいだけどな
ルドガー世界が元に戻りかけてるって事は、決着がついたんだろう?
ミクリオ確かにラザリスとヴァンは倒した。…けど、これがどういう事かは僕達にも…
エリーゼ何があったんですか?
スタン…そっか。じゃあ、世界が元に戻り始めた理由はわからないって事か
コレットううん、きっとラザリスだよ。私達に世界を返してくれたんだと思う
コレット…私にはわかるよ
ルドガーラザリスが…?
ミクリオ確かにこの世界の創造主であるラザリスなら、可能かもしれないが…
エリーゼでも、ラザリスは砕けて…
スタン…エリーゼ、俺達に出来る事は、悲しむ事ばかりじゃない
ヴェイグああ。ラザリスへの宣言通りオレ達は世界をちゃんと平和に導いていかなければならない
スレイうん。時間はかかるかもしれないけど、でも、絶対実現させないと
スレイそれがオレ達の使命だと思う
ベルベット…そうね。またこんな厄介事を起こされても面倒だし
コレットラザリスにもうあんな想いをさせないためにも頑張らないと
レイヴン…そういえば、青年達とは途中で会わなかった?
ルドガーユーリ達?いや、会わなかったけど…
スレイどこ行ったんだろう?お礼を言いたかったんだけど…
ゼロスま、あいつらなら大丈夫だろ
スタンああ!元の世界に戻ったらまた会えるし、その時に言えばいいんじゃないか?
ジュード元の世界でお礼を、か…。本当にそれが出来るのかな…
カイル…どういう事?
ミクリオこの世界での記憶を維持しておくのは難しいかもって事だろう?
ジュード…うん。世界が元に戻れば記憶自体もその世界のものに戻る、そう考えるのが自然かなって
エリーゼじゃあ、この世界での旅も…みんなとの思い出も全部忘れてしまうんですか…?
ジュード断定は出来ないけど…覚悟はしておいた方がいいと思う
ティア…!?光の粒子が…、これは一体…
エリーゼわたし達に集まってきています…!溶けていく世界と同じ…
ルドガー俺達も、元の世界に戻ろうとしている…?
ヴェイグおそらく…
スレイじゃあ、これが…みんなとの最後の別れになるかもって事?
ベルベット……帰れるなら、いいわ。それに──
ベルベット記憶がなくなるかどうかだって誰にもわからない。それこそ、帰ってみないとね
ゼロスそういう事!俺さま元の世界に戻っても、絶対にベルベットちゃんの事は忘れないぜ!
レイヴンおっさんも同感。こーんなクールビューティー、忘れられるわけないってね
ジュードはは…。二人とはちょっと違うけど、僕もこの旅は忘れられない…いや、忘れたくはないかな
ミクリオ…ああ。僕もそう思うよ
コレット光が強くなってく…!
エリーゼヴェイグに光の粒子が集まって……!まさか……
ヴェイグ…時間のようだな。なら、一言だけ言わせてくれ
ヴェイグ…お前達のお蔭でクレアも元に戻るはずだ。感謝をしてもしきれない
ヴェイグ共に戦った事は忘れない。…向こうでもよろしくな
カイルうわ、次はオレみたいだ。あの…みんな、今までいろいろとありがとうございました
カイルレイヴンさん、オレ、ちゃんと英雄になるから!
カイルあ、あと父さ…スタンさん!その、えっと…あ、はは…やっぱ何でもないです。それじゃあ!
スタンカイル…何言おうとしたんだろう?ま、いいか。また会えるだろうし
スタンリオンとか、ここに来られなかった人達にもお別れをしたかったけどな。とりあえず、また会おう!
ゼロスティアちゃん、ベルベットちゃん、エリーゼちゃん、コレットちゃん、キミ達のお蔭で世界は救われたぜ
ゼロスあー、あと野郎達にも一応お礼を言っておくかな。今回の旅、まあまあ悪くなかったぜ
ジュードゼロスは変わらないな…。でもそれがゼロスのいいところだよね
ジュードベルベット…。君のお蔭でミラと向き合えた。ありがとう、向こうでもよろしくね
エリーゼわたし…すごく成長出来たような気がします。みんなとの旅のお蔭です
エリーゼだから、絶対に忘れたくありません。また会えるのを楽しみにしてますね!
レイヴンおっさんも、若者達にパワーもらっちゃってすっかり若返っちゃったわ
レイヴン大事な事はきっちり終わらせたし悔いなしって感じ!じゃね、みんな。また会いましょ
ティア私もみんなには感謝してる。本当にありがとう。兄さんの事は何て言えばいいのか…
ティアでも、家族だからこそ想いは継ぎたいと思うの。兄さんとは違ったやり方で…
コレットうん…。私も誰もが笑える世界にしていきたいって思うよ
ルドガーああ。みんなで平和な世界を築いていこう。俺達なら、大丈夫だ
ルドガー手始めに、元の世界に戻ったらエルに特製のスープを作ろう。みんなも食べに来てくれ。待ってるよ
ミクリオ…どうやら僕も、元の世界に戻る時が来たみたいだ。記憶が消えたら残念だけど…
ミクリオでも、世界を救えて本当によかった。スレイ、一足先に帰っているよ
スレイああ!またな、ミクリオ!
スレイ…っと、オレももう行かないといけないみたいだ
スレイベルベット…君と旅が出来て、本当によかった。ありがとう
ベルベットあたしも。あんたにはいろいろ驚かされたけどね
スレイこれまでの旅が、オレ達全員の絆をつないでくれたんだ。それはこの先もきっと変わらない
スレイまた会おう!それじゃ!
ベルベット……絆、か
ベルベットあんた達との旅、悪くなかったわ。…ありがとね
エリーゼ──ジュード!
ジュードあれ…エリーゼ?それにルドガーとヴェイグまで。どうかしたの?
ルドガーほら、差し入れの特製スープだ。ジュードにも食べてほしくて作ってきたんだ
ヴェイグオレからもあるぞ。クレアがピーチパイを焼いてくれた
ヴェイグ白桃のシロップ漬けが安くなってたから、大量に作ってしまったらしい
ジュードありがとう!今日はご馳走だね
ルドガーそう言えば、クレアも無事戻ったみたいでよかったよ
ヴェイグああ、みんなのお蔭だ。晶化した人は勿論木々や草花も全て元に戻ったようだ
エリーゼ本当によかった…。大事な人も、大切な記憶ももう二度と失いたくないですね…
ルドガーああ、だからこそこの平和は守らないと
ジュードそうだね。みんなが出来る事を少しずつ頑張ればいつかきっと…
カイルスタンさーん!
スタンカイルじゃないか!どうだ?ルイニス街にはそろそろ慣れたか?
カイルはい!けど、えっと、その…。オレ達そろそろ自分達の故郷に帰ろうって事になって…
カイルそれで…お別れに来たんです!
スタンそうなのか…。残念だけど、仕方ないよな
カイルオレ、スタンさんみたいな英雄になりたいと思います。強くて格好いい英雄に!
カイルそれに、一緒に旅をしたみんなもすごい格好よかった…。憧れの英雄がたくさん出来ました!
スタンははっ。そっか、よかった!でも、みんなすごい人達だって事は俺も知ってるよ
スタンカイルならきっとなれるさ。強くて格好いい、立派な英雄に!
カイルはい!オレ、頑張ります!
カイル…それじゃあ、リアラ達が待ってるから行きます!スタンさん、お元気で!
カイル……本当にありがとう、父さん
レイヴン…いや~、よかったよかった。こうして平和に酔えるのも世界が元に戻ったお蔭だわ~
ユーリなーに言ってんだ。向こうでもしょっちゅうベロベロだったじゃねぇか
レイヴンそれはそれ、これはこれ!
レイヴン…それにしてもまさか青年が例の世界の事、ちゃんと覚えてるなんてね~
レイヴン大抵の人は忘れてるみたいなのに。もしかして、おっさん達は向こうで記憶を取り戻してたから~、とか?
ユーリさあな。理屈はわかんねぇけど
ユーリそれはそうと、うちの王様も晶化から復活したって話だ
レイヴン聞いた聞いた。ウィンドル王の復帰で四大国の復興も進んでるし、世は全て事もなし!ってね
ユーリだな。…っておいおい、おっさん。飲みすぎは禁物だぜ。もう若くないんだからよ
レイヴン大丈夫、大丈夫。若い子にたくさん刺激受けて、おっさんも若くなってるからさ~
ロイド──そっか。それじゃあ、天啓の石碑は全部なくなっちまったんだな
ゼロスああ。まあ、ラザリスが作ってたもんだって言うしな
ロイドラザリスがいなくなって、一緒に消えるのも当然って事か…
ロイド…コレット、ラザリスの事…大丈夫か?
コレットうん、だいじょぶだよ
コレット…私ね、ラザリスは今もこの世界をずっと見ている、そんな気がするの
コレット石碑はなくなったけどラザリスがいた事は本当だよ
コレットだからちゃんと頑張らないと。約束を守れるように
ロイド…コレットの言う通りだな。よーし、ラザリスに胸張れるように俺達も頑張ろうぜ!
ゼロスおうよ。まーたおっかねぇ事企まれちゃたまんねぇからな
コレット…うん!
スレイうーん…!この辺りまで来ると、帰って来たって感じがするよな!
ミクリオジイジは心配しているだろうね。早い内に、顔を見せておこう
スレイああ!で、それが終わったら…
ミクリオ新しい旅、だろ。ライラも誘って
スレイうん、約束したからな。でも…また旅に出るって言ったら、ジイジに怒られるかな…?
ミクリオどうだろうね。導師になった君が世界を巡る旅に出るのは、当然の事だと思うけど…
スレイまあ、何とか説得してみるよ
ミクリオお手並み拝見、だね。じゃあ、僕はその間に身支度を整えておくよ
スレイうん、わかった。それと、…ありがとなミクリオ
ミクリオお礼なんていいよ。僕がやりたくてやってる事だ。勿論、これからの旅も
ミクリオだから、お礼じゃなくて…改めてよろしく頼むよ、スレイ
スレイミクリオ…ああ、こちらこそよろしく!
ティア──ベルベット、行くのね
ベルベットええ
ティア一言だけ、お礼を言わせて
ティアあの世界では多くの事であなたに助けられたわ。…ありがとう、ベルベット
ベルベット感謝される事じゃないわ。あたしはあたしのやりたいようにやっただけ
ベルベット目の前の邪魔な敵を倒そうとしたら、あんた達が一緒になった、それだけよ
ティア…それでも、感謝してるわ。本当にありがとう
ベルベット
ベルベット…言いたい事はそれだけ?なら、あたしはもう行くわ──
ティア待って!…また、会えるわよね?
ベルベットどうかしら。別に会う理由なんてないもの
ティア…ベルベット
ベルベットでもそうね…また、いつか…どこかで会えたらいいわね