Name | Dialogue |
scene1 | 旅立ち |
スレイ | この辺りに来ると帰って来たって感じがするよなぁー! |
ミクリオ | 遺跡が地下にあって空気がかなりよどんでいたからね。無理もない |
ミクリオ | さっき話していたけど、イズチには戻らずに行くんだろう? |
スレイ | ジイジに探検の許可はもらってるし遺跡探検の場所を一個増やしても問題ないって! |
ミクリオ | 全く…。それで?ここから次に行く遺跡の場所、ちゃんと地図で調べたのか? |
スレイ | 勿論。これから行くレユ遺跡はシルヴァラントの方だったよな? |
ミクリオ | ああ。この前行ったサザ遺跡から比較的近い場所にあるはずだ |
スレイ | サザ遺跡か。確か、あそこは内部にも晶化現象が発生し始めていたな… |
ミクリオ | … |
ミクリオ | 晶化現象、か… |
スレイ | イズチで暮らしているだけなら一見何にも変わらないように思えるけどさ |
スレイ | 旅をしていると、晶化現象が徐々に広がっている噂ばかり耳にしないか? |
ミクリオ | …確かにそうかもしれない |
ミクリオ | 大地や草花にしか影響しなかったものが、昆虫や動物にも生じ始めているという話も聞く |
ミクリオ | 僕もずっと気にかかってはいるけど── |
| ザザザ…ドサッ! |
スレイ | …! |
スレイ | 何か木から落ちて来たみたいだ。何だろう? |
ミクリオ | …スレイ、あそこだ |
| |
スレイ | これは… |
スレイ | 鳥だ…!鳥が凍って──…いや待てよ、これってまさか… |
ミクリオ | ああ、晶化だ…!間違いない |
スレイ | そんな…!助けてやらないと…! |
| カッ!カッ! |
ミクリオ | 傷付けないように気をつけろ |
スレイ | わかってるって! |
| カッ!カッ! |
スレイ | …駄目だ、いくら叩いてもヒビすら入らない… |
ミクリオ | … |
ミクリオ | 動物が晶化したのを実際に見るのはこれが初めてだ |
ミクリオ | ウィンドルの国王が晶化したと聞いた時は、にわかに信じがたかったけど |
ミクリオ | こうして鳥が晶化しているのを見ると、現実味を帯びてきたな |
スレイ | … |
| |
スレイ | …ミクリオ。オレ、決めたよ |
スレイ | 晶化現象について、もっと知りたい。そのための旅に出る |
ミクリオ | 近くの遺跡を探索するのとはわけが違う。自分が言ってる事の意味、わかってるのか? |
スレイ | …いろいろ危険はあると思う。でも、自分で確かめないといけない |
スレイ | 世界に今、何が起きてるのか… |
ミクリオ | 各国の学者、研究者達が未だに何も解明出来てないという話だ |
ミクリオ | 学者や研究者でもない君が見ても何かが変わるわけじゃ… |
スレイ | それもわかってる |
スレイ | けど、旅をすれば、世界各地の情報を集める事だって、広める事だって知識のないオレにも出来るし… |
スレイ | それに、こんな風に動物達が晶化していくのを見ているだけなんて、オレは嫌だ |
ミクリオ | スレイ… |
ミクリオ | わかった。じゃあ、僕も一緒に行く |
スレイ | ミクリオ…いいのか? |
ミクリオ | スレイを、一人で行かせるのは心配だからな |
ミクリオ | それに、原因不明の晶化現象に不安を抱いているのは僕達だけじゃない |
ミクリオ | イズチのみんなもだ。みんなのためにも僕達に出来る限りの事をしよう |
スレイ | ありがとう。ミクリオが来てくれるなら、心強いよ |
ミクリオ | ただし、ジイジを説得出来たらの話だ |
ミクリオ | 今回は、いつもの遺跡探索とはわけが違う |
スレイ | う…問題はそれだ |
ミクリオ | だけど、ジイジの説得すら出来ないようじゃ、晶化現象の情報を集める事なんて到底出来ない |
ミクリオ | そこは、スレイのお手並み拝見といったところかな |
スレイ | ど、努力はする… |
ミクリオ | とりあえず、一度イズチに帰ろう。ジイジに旅の許可をもらいに! |
スレイ | ああ |
スレイ | …っと、その前にミクリオ、待ってくれ |
ミクリオ | 何だ? |
スレイ | この鳥を、村に持って帰って安全な場所に移そう |
スレイ | 晶化を解く方法が見つかったらまた飛べるかもしれないし |
ミクリオ | スレイ… |
scene2 | 旅立ち |
ジイジ | このバッカもーーん! |
スレイ | うっ… |
ミクリオ | … |
ジイジ | 何が晶化現象の事をもっと知りたい、じゃ! |
スレイ | やっぱり…こうなるよなぁ… |
ジイジ | お前の事じゃ、詳しく知れば、次は何とかしたいと言い出すに決まっとる! |
スレイ | そ、それは知ってみないとわかんないけど… |
ジイジ | 原因不明の現象に立ち向かう事が危険な旅になるかもしれん事くらいわかっておらんわけではなかろう? |
ミクリオ | スレイなりに考えてはいるみたいですが… |
ジイジ | … |
ジイジ | …許そう |
ミクリオ | え? |
スレイ | 本当!?ジイジ |
ジイジ | …スレイ、お前は幼い頃から、人間には見えぬこの特殊な杜でワシらと共に暮らしてきた |
ジイジ | それが故に、世の中の事はどこか遠くに捉えていただろうと思う |
ジイジ | しかし、お前は人間だ。それに、人間と天族もお互いが無関係というわけでもない |
ジイジ | お前が、やるべき事を見つけて広い世界に出るというなら止める理由などない |
スレイ | …ジイジ… |
ジイジ | 晶化現象の事は、杜の者達もみな気にしておる。人間が晶化したという話も聞こえて来とるしな |
ジイジ | 今のところイズチの者は無事じゃが…お前達の言う通り、ワシら天族なら同じ目に遭わんとは言い切れまい |
ジイジ | 自分のため、みなのため…各地で知り得た情報や経験はきっと何らかの役に立つはずだ |
ジイジ | 行くからには、覚悟を持って気をつけて行ってこい。何かあれば、力にもなろう |
スレイ | ジイジ…ありがとう!オレ、頑張るよ。晶化現象をもっと知って── |
スレイ | …って、あれ?でも…最初から許すつもりだったなら、オレ達、怒鳴られ損じゃ… |
ジイジ | それはそれ、これはこれじゃ |
スレイ | 何か釈然としない…けどまあ、いいか |
スレイ | 善は急げだ。すぐ旅の支度を整えるよ! |
ジイジ | やれやれ…あわただしい奴じゃのぅ |
ミクリオ | ええ、全く。…でもジイジ、許してくれてありがとうございます |
ジイジ | なに、いずれ来たであろう時が来ただけの事じゃ |
ジイジ | …ミクリオよ、スレイの気持ちはまっすぐで正しい。じゃが、それ故の困難も多かろう |
ミクリオ | …はい |
ジイジ | いかなる時も二人で力を合わせ、無事、帰ってこい。…よいな? |
ミクリオ | ジイジ…。当然、そのつもりです |
ジイジ | …うむ。では、旅に出るにあたって、いくつか助言をしておこう。まずは── |
| |
スレイ | 来た来た。遅いぞ、ミクリオ |
ミクリオ | ジイジにいろいろ心構えを聞かされていたんだ |
スレイ | みんなに挨拶も済ませたし、出発しよう。まずはどこへ向かおうか? |
ミクリオ | その事なんだけど、ジイジからいい話を聞いたよ |
ミクリオ | メルトキオに「図書館」という、歴史的資料や文献が多く集められた施設があるらしい |
スレイ | へえ、面白そうだな!そんなところがあるなんて、さすが大都会だな |
ミクリオ | まずはその図書館に行って、晶化現象の情報を探すのがいいと思う |
スレイ | だな。じゃあ、メルトキオに向けて出発!と、行きたいところだったけど… |
| ガサッ |
ミクリオ | …はあ。やれやれ、水を差してくれるね |
| |
| ガルルル! |
スレイ | 行くぞ、ミクリオ! |
ミクリオ | ああ! |
scene1 | 不思議な少女 |
スレイ | それにしても、本当にいい天気だな |
ミクリオ | ああ、そうだね |
スレイ | こうして見ていると、のどかで平和な、いつもの光景なんだけど… |
スレイ | その一方で、晶化現象は徐々に広がってて…。何だか信じられないよな |
ミクリオ | だが、それがまごう事なき現実だ。僕らも目の当たりにしただろう?晶化現象が発生した鳥を… |
スレイ | うん…さっきの鳥… |
スレイ | 結晶の中で、まるで時間が止まったみたいに固まってたけど、生きてるよな…? |
ミクリオ | 見ただけでは何とも言えないね |
ミクリオ | 結晶が解ければ、すぐにでも飛び立ちそうに見えたけど… |
スレイ | 生きてるといいよな。あの鳥も、ウィンドルの国王も… |
ミクリオ | … |
ミクリオ | …そのウィンドルの王様なんだけど、例の天啓、覚えてるかい? |
スレイ | 『命源は燦爛たる結晶となり、 猛き君主を醒めぬ夢へ攫った』 |
ミクリオ | 『零れ落ちた星の雫は、 波紋の如く世界に拡がる』 |
ミクリオ | この天啓について、ウィンドル国王の晶化を予言したものじゃないかって噂が流れているらしい |
スレイ | 予言?そんな話になってるのか…。ミクリオはどう思う? |
ミクリオ | 猛き君主…確かに、ウィンドルの国王は年若いにも関わらず、立派な人物らしい |
ミクリオ | 燦爛たる結晶という言葉も、晶化現象を暗示していると読めなくはない |
ミクリオ | あれを未来予知だと捉える者が出てくる事自体は、理解出来なくはないね |
スレイ | そっか… |
ミクリオ | ただ、「天啓は未来予知だ」と人間が本気で考えるようになったら、少し厄介な事になると思う |
スレイ | 厄介? |
ミクリオ | それがいい事ならまだしも、今回の王の晶化みたいに実は不吉な内容だった場合さ |
ミクリオ | 晶化の件があって、世間には微かだけど不安が広まってる |
ミクリオ | その不安が一気に高まるような事態も… |
スレイ | そんな事起きるのか?あくまで噂なんだし… |
ミクリオ | いや、むしろ当然だよ。晶化現象が人、動物、植物、何にでも起こり得るという事は── |
ミクリオ | 晶化したそれ自体の命が失われるかもという心配以前に、まずは食糧の問題が出てくる |
スレイ | それはわかるよ。晶化がどんどん拡大していったら、漁も狩りも収穫も全部出来なくなるもんな |
ミクリオ | そう。晶化してしまったものは、どう考えても食べられそうにない |
ミクリオ | 僕達天族と違って、人間が生きていくには一定量の食糧が絶対に必要だろ? |
スレイ | 晶化のせいで、世界中で飢餓が起きるかもしれない、か… |
スレイ | … |
scene2 | 不思議な少女 |
ミクリオ | やっとメルトキオだね |
スレイ | 久しぶりだけど、相変わらず賑やかな街だな |
スレイ | まずは…ジイジから聞いた「図書館」ってところだな。どこにあるんだろう |
ミクリオ | 誰かに聞いてみたらどうだい? |
スレイ | うん、それもそうだな。あの、すみませ── |
街の男1 | やっぱりこの間の天啓は、これから起こる事を暗示した未来予知なんだって |
街の男2 | 未来予知といや、他国の連中の中には我が国が未来予知を独占してるって非難してる奴もいるらしい |
スレイ | 未来予知を独占?そんな話も出てきているのか… |
ミクリオ | 天啓はこの前広場で公開していたはず。何だってそんな話に── |
| ドンッ! |
??? | きゃっ!? |
スレイ | うわっ!? |
ミクリオ | スレイ!? |
スレイ | いてて… |
??? | ご、ごめんなさい…!急につまずいちゃって…怪我してませんか? |
スレイ | オレは全然…!こちらこそ、すみません! |
スレイ | 君の方こそ、派手に転んだみたいだけど大丈夫、かな? |
??? | 私はだいじょぶです。こういうの慣れてるから… |
スレイ | 慣れてる? |
??? | えへへ…私、ドジだからうっかり転んだりする事が多くて。今だって── |
??? | ……? |
スレイ | …どうかした? |
??? | あれ?えっと… |
??? | 何だろう…不思議な感じがする。あなたのすぐ傍、まるで誰かがいるみたい… |
ミクリオ | …!ひょっとして、この女の子僕の気配を感じ取っているのか? |
スレイ | まさかそんな──…あの…もしかしてわかるんですか? |
??? | …?うん、えと… |
??? | おーい、コレット!どこだー? |
コレット | あ、ロイドー!こっちこっちー |
ミクリオ | …はっきり見えるわけではないみたいだ |
スレイ | 以前もこんな事あったな |
ミクリオ | ああ、異常な天変地異が続いていた頃だね。遺跡探索中に壁が崩れて生き埋めになりかけた時だ |
ミクリオ | あの時もこんな風に僕の存在に気付いた人がいたね。ミラ、という女性だったか |
ロイド | 一人で急に行くなって!慌てて転んだらどうするんだ |
コレット | もう転んじゃった。えへへ |
ロイド | おいおい…大丈夫か? |
ロイド | コレットがすみません…って、お前は…! |
スレイ | あなたは確かミラさんと一緒にいた… |
ロイド | やっぱり!何か見た顔だと思ったんだよな |
ロイド | 俺はロイド。ロイド・アーヴィングだ!えっと、確か名前は… |
スレイ | スレイって言います。覚えていてくれたんだ |
ミクリオ | 噂をしていたら、あの時の人に会うなんてすごい偶然だ |
コレット | ロイド、この人と知り合い? |
ロイド | 大精霊の事を調べていた時にな。ミラが感じ取った妙な気配を追ってたら──… |
スレイ | あ、あの時は危なかったんですよね!遺跡の壁が崩れてきて、逃げ出したところにちょうど… |
ロイド | そうそう!驚いたぜ!遺跡の中から音がしたと思ったら急に人が飛び出してくるんだもんな |
ロイド | …で、コレットは何でスレイと一緒にいるんだ? |
コレット | 私がつまづいてぶつかっちゃったんだよ。本当にごめんなさい |
ロイド | そうだったのか…。スレイ、コレットが迷惑かけてごめんな。怪我はしてないか? |
スレイ | オレは本当に大丈夫。ロイドさん、心配してくれてありがとう |
コレット | 迷惑かけちゃったお詫びに何か私に出来る事…ありませんか?街の案内とか… |
ミクリオ | スレイ。この人達に、図書館の事を聞いてみてはどうだろう |
スレイ | …だな。ロイドさん、コレットさん、ちょっと聞きたいんですが── |
ロイド | ロイドでいいよ。見たところ、歳も変わらないし |
コレット | そだね!私もコレットって呼んでくれてだいじょぶだよ! |
スレイ | ロイドとコレット、だね。改めてよろしく |
スレイ | この街に大きな図書館があるって聞いたんだけど、どこかな? |
ロイド | 図書館に用があるのか?いいぜ、案内してやるよ! |
スレイ | え、いいのか?二人でどこかに行くところだったんじゃ… |
コレット | だいじょぶだよ。私達もちょうどそっちの方に用があったから。ね、ロイド! |
ロイド | ああ! |
ミクリオ | …いいのか、案内までさせて。場所を聞くだけでも十分だと思うけど |
スレイ | 図書館まで案内してもらうだけだし、それくらいなら問題ないって |
ロイド | …?どうしたんだ、スレイ独り言か? |
スレイ | な、何でもないさ。二人共、ありがとう。図書館までの道案内、お願いするよ |
コレット | うん!任せて! |
ロイド | それにしても、図書館に用なんて…。遺跡探検といい、スレイは勉強が好きなんだな |
スレイ | …そうかな?単に遺跡や歴史に興味があるってだけだよ |
コレット | ふふ、ロイドは図書館が苦手なんだよね? |
スレイ | 苦手?図書館には本があるって聞いたけど… |
ロイド | 本しかないからなぁ…。頭が痛くなっちまうんだ |
コレット | ロイドもたまにはリフィル先生と一緒に──… |
街の女 | 神子様!聞きたい事があってずっと捜しておりました…! |
コレット | えと、それは… |
街の女 | 先の天啓が、未来予知だと他国で噂されているようです。それは本当でしょうか? |
ロイド | 悪い、そういう話は、神殿のフィリア司祭に聞いてくれ。コレットは何も知らないんだ |
街の女 | はあ… |
ロイド | やれやれ。最近、ああいう連中が増えたな |
コレット | うん…。でもみんな、それだけ心配してるって事だと思うよ |
ミクリオ | 神子って事はこの子が例の天啓を読み解いた… |
スレイ | …みたい、だな |
ロイド | まあいいや、気を取り直して行くとしようぜ |
スレイ | あ、ああ |
scene1 | お騒がせな科学者 |
ミクリオ | ここがメルトキオ図書館…。ここまで案内してくれたあの二人に感謝しないとな |
スレイ | うん、親切な人達だった。それにしても、コレットっていう子不思議な雰囲気があったな |
ミクリオ | たまに僕の方を見ていたからやっぱり何か感じていたんだろうな。さすがは神子なだけあるね |
スレイ | 神子って、近寄りがたい感じの人なのかと思ってたけど、随分穏やかで親しみやすかったな |
ミクリオ | 一緒にいたロイドの影響が大きいのかもしれないね。すごく仲がよさそうだった |
スレイ | それにしても… |
スレイ | すっげー…山のように本がある! |
ミクリオ | まさに知の殿堂と呼ぶにふさわしい施設と言えるね |
スレイ | これだけ多くの本があると、きっと遺跡に関する文献もたくさんあるんだろうなあ…! |
ミクリオ | …さて、そろそろ目的の文献を探そう。スレイ、君はこの棚を… |
スレイ | あ…ミクリオ、この本… |
ミクリオ | …!もう見つけたのか?どれどれ… |
ミクリオ | ってこれ、遺跡の本じゃないか!スレイ、僕達がここへ来た理由は── |
??? | …コホン! |
スレイ・ミクリオ | …? |
??? | あなた達、ここは公共の場所よ。大声で話すのは感心しないわね |
??? | …って、あら?あなた一人…?誰かと話しているような気がしたのだけれど |
スレイ | …あ、えっと…すみません、今のはオレの独り言で… |
??? | 随分大きな独り言ね。…ともかく図書館では静かになさい。基本的なマナーは守らないと |
スレイ | ごめんなさい、今後は気をつけます |
??? | 素直でよろしい。あら、その本…あなたも遺跡に興味があるの? |
スレイ | え、ええ。遺跡をよく探検したりします |
??? | 素晴らしい!若いのにいい趣味をしているわね |
??? | その本、スヴェン卿の代表作、「夢とロマンを追い求めて」ね。私も何度も読んだわ |
??? | その本が気に入ったなら、師匠のザマランの著書もお勧めよ |
??? | 各国を旅をして得た知識を元に考察された物語仕立ての本は一読の価値があるわ |
スレイ | へえ、面白そうですね…!今度必ず読んでみます |
スレイ | その、あなたも…遺跡がお好きなんですね |
??? | 好き?…ふっ |
??? | 好きとか嫌いとか、そんな単純な捉え方で言い表せるものではないわ |
??? | そもそも私にとって、遺跡とは──… |
子ども | リフィル先生~ |
リフィル | いけない。つい熱くなるところだったわね。生徒達を引率しているのに |
リフィル | あなたとは、またゆっくり話をしてみたいわ。私はリフィル・セイジ。あなたは? |
スレイ | オレは、スレイって言います |
リフィル | ふふふ。ではまたね、スレイ |
ミクリオ | …あの人も、僕達に負けず劣らず騒がしかったと思うけど |
スレイ | あはは。でもいい人だったね。時間がある時に、遺跡の話をしてみたいな |
スレイ | …よし、じゃあそろそろ本格的に晶化現象の事を調べようか |
ミクリオ | そうだな。スレイ、君はそっちの棚を頼む。僕は奥を見てくる |
スレイ | りょーかい! |
スレイ | …うーん、手がかりになるような本は見つからないな…。ミクリオは? |
ミクリオ | こっちもだ。歴史書を中心に見ているけど…。晶化…生物学の方がいいだろうか |
スレイ | これだけの数だもんな、そう簡単に見つかるはず── |
??? | ぎゃーーー! |
| ドサドサドサ! |
スレイ | な、何だ!?今の悲鳴は… |
ミクリオ | 向こうの方から聞こえてきたぞ。スレイ、行こう! |
スレイ | ああ! |
scene2 | お騒がせな科学者 |
ミクリオ | スレイ、見ろ! |
スレイ | あんなところに、人が…!? |
パスカル | た~す~け~て~!お~ち~る~! |
ミクリオ | 脚立が傾いてる…!あんな高いところにある本を取ろうと…? |
| グラッ… |
スレイ | あっ…!危ない!倒れる! |
パスカル | ひいい~もうダメ~! |
ミクリオ | くっ…!間に合うか…! |
| |
パスカル | ぐえっ、いった~… |
パスカル | …くない。あれ? |
スレイ | 二人共大丈夫か!? |
| |
ミクリオ | くっ…… |
パスカル | 大丈夫…だけど…何で!?あたし今落っこちて…なのに、痛くないし… |
パスカル | んん?何というか、誰かに抱えられたような…!?超常現象、はあり得ないとして… |
パスカル | だとすると…君…?じゃないよね。離れてるし |
スレイ | あ、はい… |
パスカル | じゃあ、誰だろ?他には誰も見当たらないのに |
ミクリオ | …やれやれ… |
スレイ | えぇ~っと… |
パスカル | ん…そういえば君、さっき「二人共大丈夫」って言ったよね? |
パスカル | それって、あたし以外にもう一人いるって事だよね? |
ミクリオ | 何なんだ、この人間…。随分食いついてくるな |
パスカル | つまり、あたしには見えないもう一人が、君には見えてる?その人が助けてくれたって事? |
パスカル | それって誰なの?透明人間?まさか幽霊!?ねえねえ! |
スレイ | ええと…それはつまり… |
ミクリオ | …スレイ |
スレイ | ごめん…。何かこの人、すごく言い逃れしにくいっていうか… |
スレイ | ええっと…信じてもらえないかもしれないけど、確かに、ここにはもう一人います |
スレイ | 天族っていう特殊な種族で、普通の人間の目には見えないんだ |
パスカル | 天族…!?初めて聞く…!でも、どうして君はその「天族」が見えるの? |
スレイ | それはオレが天族のみんなと一緒に育ったから…かな? |
パスカル | うーんと、天族って、おばけや精霊とは違うんだよね。見える人もいるし、触れるし… |
パスカル | ふむふむ…。ねぇ、今はどこにいるの~? |
ミクリオ | 全く……。旅に出てまだ間もないのに、ハプニング続きにもほどがある… |
パスカル | あ、そうだ!自己紹介が遅れてごめんね。あたしパスカル。 |
スレイ | あ、オレは…スレイです。天族の友達は、ミクリオ |
パスカル | スレイにミクリオだね。よろしく~ |
パスカル | それよりミクリオ、助けてくれてありがとう! |
ミクリオ | …妙な人間だな。僕の事が見えていないのに、この押しの強さは何なんだ? |
スレイ | あ~、えっと、ミクリオが、「どういたしまして」って |
パスカル | そっかそっか!で、二人は図書館で何してたの? |
スレイ | オレ達は、晶化現象について調べるためにここに来たんです |
パスカル | お~、奇遇だね!実はあたしもなんだよ |
パスカル | 謎に包まれた晶化現象…そのメカニズムを解明したいと思ってね |
パスカル | ヒントを探しに来てみたんだけど、気付いたら空中にいてさ~あはは! |
パスカル | そうだ!見えないけど、天族は存在してる…って事はあれが使えるんじゃないかな? |
スレイ | あれって? |
パスカル | えーっとね、ちょっと待ってね。今出すから… |
| ごそごそ… |
スレイ | …? |
ミクリオ | 鞄にいろんなものが入っているな…。どうにも嫌な予感がするけど… |
パスカル | じゃーん!取り出しましたるこの解析機1号! |
スレイ | 解析機? |
パスカル | 晶化物の解析のために作ってみたんだけど、結局未知の物質としかわからなくってさ |
パスカル | 役には立たなかったんだけど不可視物質を可視化するものだからもしかして天族にも作用するかも! |
ミクリオ | まさか…そんな事あるはずないだろう |
スレイ | …本当に、ミクリオが…? |
パスカル | 理論上はいけるはずだし、構造にも間違いないはずなんだ |
パスカル | まあ、天族に試した事は勿論ないけど、光を当てるだけ。害もないよ |
スレイ | …だってさ、ミクリオ。どうする? |
ミクリオ | 断わるに決まってるだろ。怪しすぎる |
スレイ | パスカルさん、ミクリオはやっぱり不安だって |
パスカル | 大丈夫大丈夫!自分にも試したけど何ともなかったから。ほら、自分にやってみるよ? |
パスカル | ここのボタンを、チャカチャカポン…っと! |
| ピピピピ…パチン! |
スレイ | あ!そっちは…! |
ミクリオ | う…眩しい…! |
スレイ | ミクリオ…! |
パスカル | わお!そんなとこにいたんだ!やったね、大成功ー!トロピカルヤッホ~ゥイ!! |
ミクリオ | 何?僕は今、君に見えているのか…!? |
スレイ | オレの目には何も変わってないんだけど… |
パスカル | スレイには元々見えてたんでしょ?そりゃ変わらないよ |
パスカル | へえ、君がミクリオなんだ。はじめましてー! |
ミクリオ | 本当に僕が見えているのか…?…念のため聞かせてくれ、僕は、何本指を立てている? |
パスカル | 2本! |
ミクリオ | 正解だ…。本当に僕が見えているのか。あんな…胡散臭いもので…? |
スレイ | あれ?姿だけじゃなくて声も聞こえてるんじゃないか?普通に会話してるみたいだけど… |
パスカル | あれ、そういえば…!これは思わぬ効果だね、大発見! |
スレイ | …もう何が何だか。ミクリオ、身体に異変はないか? |
ミクリオ | …特に異常は感じない。今のところ、だけど |
パスカル | ごめんごめん!何ともなかったから結果オーライって事で! |
ミクリオ | 元には戻せるのか? |
パスカル | 出来ると思うよ。元に戻りたい? |
ミクリオ | …いや、今はいい。せっかくだし、聞きたい事がある |
ミクリオ | …パスカル、君は科学者のようだけど世界中で広がる晶化現象についてどこまで知ってるんだ? |
ミクリオ | 晶化したウィンドルの国王や動物達は生きているのか、死んでいるのか… |
スレイ | 晶化について、もし知ってたらオレ達に教えてほしいんです |
パスカル | ああ、それならちゃんと生きてるよ。晶化した動物を調べたら、生命反応があったから |
スレイ | よかった…やっぱり生きてるんだな |
パスカル | でも、長期間観察したわけじゃないから、この状況が続いたらどうなるかはわからないけど… |
パスカル | 今生きてるからこそ、何としてもこのメカニズムを解明して晶化を解く方法を見つけたいんだ |
ミクリオ | …全くの未知の現象に対応策が見つかるというのは、確かに大きな意味があるけど… |
パスカル | ねえ!だったら、協力しようよ!目的だって同じなわけだし |
スレイ | 協力…ですか。オレ達でよかったら── |
ミクリオ | …もう一つ聞きたい。どうしてそこまで簡単に、僕達を信用出来る? |
スレイ | ミクリオ… |
ミクリオ | 目には見えない天族という種族。君にとっては魔物にも等しいはずだ。なのに何故? |
パスカル | だって助けてくれたし、二人共いい人なのは間違いないでしょ? |
パスカル | それにミクリオって、何だか弟君に雰囲気似てるんだよねぇ |
パスカル | 目つきとか後ろのヒラヒラとか、色とか!! |
ミクリオ | 色!?そもそも、弟君って誰の事だ…?彼女には姉弟がいるのか? |
スレイ | …正直オレもよくわかんないけど、すごく気に入られたんじゃないか、ミクリオ… |
パスカル | ささ、話もまとまった事だし、さっそく調べものしていい? |
パスカル | あ、そうだ!その前に、崩れてきた本片付けないとだよね?二人も手伝ってよー! |
ミクリオ | やれやれ… |
scene1 | 記された伝説 |
パスカル | ──そっか。スレイとミクリオは遺跡が好きなんだね~ |
パスカル | あたしも、遺跡は研究の一環でいくつか行った事あるよ |
スレイ | へえ…!じゃあ、シルヴァラントにあるサザ遺跡は行った事はある? |
パスカル | あー、行った事あるかも。…確か、大きな壁画がある遺跡じゃなかった? |
スレイ | そうそう。変わった表現技法の壁画がある遺跡だったんだ |
ミクリオ | サザ遺跡、か… |
パスカル | 何なに?その遺跡が、どうかしたの? |
ミクリオ | 最近そこに足を運んだんだけど、遺跡内部の草木にまで晶化現象が発生していてね… |
パスカル | そっか…遺跡の中にまで影響が出てきてるんだね… |
ミクリオ | … |
スレイ | ん?どうしたんだ、ミクリオ |
ミクリオ | いや…想像していた以上に、図書館には数多くの書物が集められているんだと思ってね |
パスカル | メルトキオの図書館は、他の国の図書館と比べても特に充実してるんだよ |
スレイ | へぇ…!確かに、すごい量だもんな… |
パスカル | だからこそ、期待してたんだけど…肝心の晶化現象の資料はなかなか見つからないんだよね~ |
パスカル | 晶化現象に注目が集まったのもここ最近だから、研究資料は図書館に集まってないのかも |
ミクリオ | リチャード国王の件からか…。何にせよ、せっかく来たんだ、もう少し手分けして調べよう |
ミクリオ | 僅かな情報も、今の僕達には次の手がかりになるかもしれない。やるべき事はやっておかないとね |
| |
スレイ | うーん… |
パスカル | これにも、ないな~ |
ミクリオ | これも違うな… |
スレイ | へえ…。すごい、こんなものが… |
ミクリオ | 何か見つかったのか、スレイ? |
スレイ | あ、いや。晶化現象とは関係ないんだけど、面白そうな記述を見つけてさ |
スレイ | ほら、この本なんだけど、面白い話が書かれてる |
パスカル | どんな話? |
スレイ | 「湖の乙女の護りし祭壇の聖剣を 抜きし者、求めし答えを 必ずや得るであろう」だって |
パスカル | どの地域の言い伝えかなぁ…。こんなの初めて聞いたよ? |
スレイ | 求めし答え…。これが何を示しているのか、何だか気になってさ |
ミクリオ | 史実が元になっているかはわからないけど、おそらく英雄譚の一種だろうね |
パスカル | 聖剣を抜いた人が知りたい事わかっちゃうって事でしょ? |
スレイ | …って事は、オレ達が抜けば晶化現象について何かわかるのかな? |
ミクリオ | あくまで伝説だ。そんな都合のいい話はさすがにないだろう |
パスカル | それに、その一文だけだと聖剣の場所もわからないしね~ |
ミクリオ | …スレイ、今は晶化現象を調べる事が先決だ |
スレイ | そうだよな。…何か、気になっちゃって。オレ、あっち見てくるよ |
ミクリオ | スレイ…? |
scene2 | 記された伝説 |
パスカル | うーん…かなりの量の文献を調べたけど… |
スレイ | 結局肝心の晶化現象に関しては、何にもわからなかったな |
街の女性 | …きゃっ |
ミクリオ | 失敬、すまなかった |
街の女性 | こちらこそ、ごめんなさいね? |
ミクリオ | … |
パスカル | ミクリオ?そんなとこで固まっちゃって、どうかした? |
ミクリオ | いや、やっぱりパスカル以外にも、全ての人間に見えているんだなと思ってね |
ミクリオ | スレイ以外の人間と普通に対話出来るというのは意外と新鮮味がある |
パスカル | あ、そっか。今までは、ミクリオが話してても相手には聞こえないはずだもんね |
ミクリオ | 当然だけど、すれ違う通行人の視線も感じる。不快ではないけど、今までにはなかった感覚だ |
スレイ | …ミクリオ、もしかして街を歩くのが嫌なのか? |
ミクリオ | そんなわけない。たった今、不快ではないって言ったじゃないか |
スレイ | ああ。…でも、何かあったらオレ達に遠慮しないでくれよ? |
ミクリオ | スレイ…さすがにそれは気にしすぎだよ。気持ちはありがたいけど… |
パスカル | ふふ、それじゃあこれからどうしよっかね~? |
スレイ | オレ達も図書館以外は…。結局、振り出しに戻っちゃったな |
パスカル | うーん、情報集めに関してはここが最有力候補だったし…街の人に聞いてみるとか── |
街の男1 | 聞いたか?ウィンドルの話。辺り一面に結晶が、ゴロゴロあるって話だ |
街の男2 | ああ、怖い話だな。各地で見られるようになったとはいえ何でまた、特定の地域がそんな… |
全員 | …! |
ミクリオ | スレイ…! |
スレイ | ああ… |
スレイ | すみません、今の話詳しく教えてくれませんか |
街の男1 | 何だ、ウィンドルの晶化現象の話か?実は、噂なんだが── |
パスカル | 晶化現象が特に進行した地域かぁ…。一体、何があったんだろ? |
ミクリオ | 晶化に結びつく何かがあった…と考える事も出来るけど… |
ミクリオ | さすがに、ウィンドルのどこかまでは彼らも知らなかったようだ。確かめるのは難しいかもしれないね |
パスカル | どうするの、二人共? |
スレイ | …ウィンドルへ行こう |
ミクリオ | まあ当然だね。ウィンドルに入れば、どこの地域かわかるかもしれないし |
パスカル | うんうん、あたしも賛成~!三人で頑張ろ~! |
ミクリオ | 三人、って…パスカル、まだ一緒に来る気なのか? |
パスカル | 何で~?駄目かなぁ?二人といると、楽しそうだし! |
パスカル | 得意不得意の分野はあるけどいろいろ役には立てると思うよ? |
スレイ | さっきの機械のお蔭でミクリオが見えるようになったんだし頼りになるのは確かだけど… |
パスカル | じゃあ、決まり!先を急ぎたいけど、今日はもう遅いし… |
| きゃあああっ! |
| |
ミクリオ | 今の悲鳴は…!? |
パスカル | スレイ、ミクリオ!あれ見て、魔物が街の中に…! |
スレイ | こんな街中に…!行こう! |
scene1 | 強者の博物学者 |
スレイ | ここはもうウィンドルなんだよな? |
パスカル | うん、そうだよ |
ミクリオ | ここまでは何事もなく来れたけど、異常に晶化が進んだ場所の情報も手に入らずじまいか… |
パスカル | バロニアへ行けば、誰かしらは何か知ってるんじゃない? |
ミクリオ | バロニア…、ウィンドルの王都か… |
パスカル | あそこにはあたしの知り合いもいるし… |
| ザザッ…! |
スレイ | …!こっちに何か向かって…!? |
??? | 危ない、よけろ! |
パスカル | ふぇ? |
| グオオオッ! |
スレイ | うわっ! |
??? | 逃がすか! |
| ガッ!ズカッ! |
| ギャウウー! |
スレイ | 強い…! |
??? | 驚かせてすまん。怪我はなかったか? |
スレイ | あ、いえ!大丈夫です。あなたこそ… |
??? | オレは見ての通り無傷だ。君達は旅人のようだがどこから来た? |
スレイ | イズ…いえ、シルヴァラントからです |
スレイ | オレ、スレイって言います。こっちはミクリオにパスカル |
ウィル | ほう、礼儀正しい若者だな。オレはウィル・レイナードだ |
ウィル | この辺りは魔物が多い。十分気をつけて旅を続けてくれ |
ウィル | 最近は魔物だけでなく、他にも不穏な現象が起きているしな |
ミクリオ | 不穏な現象… |
パスカル | それってもしかして、晶化現象の事だったり? |
ウィル | ああ。近頃は植物だけじゃなく動物や魔物にまで晶化が見られるようになった |
ウィル | とはいえ、この辺りの晶化具合はこの間訪れた遺跡の周りと比べれば軽微なものだがな |
パスカル | 晶化が進行した場所にあるウィンドルの遺跡…。ひょっとして、これってビンゴ!? |
ウィル | …何だ? |
ミクリオ | その遺跡は、ウィンドル国内に? |
ウィル | ん、そうだが…君達、遺跡に興味があるのか? |
スレイ | ウィルさん、その遺跡の場所を教えてもらえませんか? |
ウィル | あんな場所に一体何の用だ?物見遊山で訪れるような場所ではないぞ |
スレイ | オレ達、晶化現象の事を調べているんです |
ミクリオ | 危険かもしれない、というのは十分承知しているつもりだ |
ミクリオ | だが、その晶化が進んだ遺跡にあの現象と結びつく手がかりがあるかもしれない |
スレイ | オレ達の住んでいた場所でも晶化があちこちで起きてて… |
スレイ | だから、知りたいんです。晶化って何なのか…、世界に何が起きてるのか… |
ウィル | …なるほど。理由はわかった |
パスカル | でも、そんな危険な場所に何しに行ってたの? |
ウィル | こう見えてオレの本職は博物学者だからな。その遺跡へは珍しい化石を求めて辿りついたんだ |
パスカル | おお、なるほど~。まだ見ぬものへの探究心だね!それで、場所はどこ~? |
ウィル | 遺跡の名は、ピュール遺跡。バロニア北部の湖近くにある遺跡だ |
ウィル | あの辺りは辺鄙な場所で、魔物もここ以上に多い。行くならくれぐれも注意した方がいい |
ミクリオ | 情報の提供、感謝する。スレイ、パスカル、教えてもらった遺跡に行ってみよう |
スレイ | うん!ウィルさんも気をつけて |
ウィル | ありがとう |
ウィル | ああ、スレイ。もし行くのなら遺跡内の最深部に行ってみるといい。面白いものがそこにある |
スレイ | 面白いもの…? |
ウィル | 最深部には祭壇があるんだ。その中央の台座に剣が刺さっている |
ウィル | オレも抜いてみようと剣を握ったがびくともしなかった…。力には自信はあるつもりなんだがな |
ウィル | もしかしたら、何かの儀式のために作られたのかもしれないが、正体はわからずじまいだ |
パスカル | 祭壇に剣…?あれ?どっかで聞いたような… |
スレイ | …! |
スレイ | 図書館で読んだ、伝説の一節…! |
ミクリオ | … |
パスカル | だとしたら、その遺跡に伝説の湖の乙女がいたりして! |
ミクリオ | …偶然にしては出来すぎているような気がするけど… |
スレイ | ミクリオはあの伝説の事、気にならないか? |
ミクリオ | …勿論、気にはなる。ただ……いや、ここで話していても仕方ない。まずは目的地を目指そう |
パスカル | いやぁ、思わぬ新展開!あたし達ツイてるかも~ |
スレイ | ウィルさん、貴重な話、ありがとうございました! |
ウィル | 役に立ったのなら、何よりだ |
ウィル | それにしても、君は礼儀正しいな。セネルに君の爪の垢を煎じて、飲ませてやりたいものだ |
ミクリオ | …? |
ウィル | いや、こっちの話だ。では、オレもそろそろ行く。くれぐれも気をつけてくれ |
スレイ | はい! |
パスカル | よーし!ピュール遺跡を目指して、しゅっぱーつ! |
scene2 | 強者の博物学者 |
スレイ | ──あれは… |
パスカル | ん?スレイ、どうかしたの? |
スレイ | あそこに見える大きな街…あれがバロニア? |
パスカル | そうそう。あ、せっかくだしちょっと寄ってく?新しい情報の収集も兼ねて |
ミクリオ | さっきのウィルという男も遺跡周辺は魔物が多いと言っていた。準備は万全に整えたい |
パスカル | それもそうだね。んじゃあ、行こうか~ |
| |
スレイ | ここも王都なだけあって、すっごい都会なんだなぁ。メルトキオと同じくらい? |
ミクリオ | いや、それ以上かもしれない。建造物もかなり違う |
ミクリオ | メルトキオは宗教に縁のある建物が多かったけど、それに比べて… |
街の女 | ねえ、広場で大公殿下が演説をするんだってさ |
街の男 | 何の話をするんだろうな。聞きに行ってみるか |
スレイ | ミクリオ、セルディク大公って確か… |
ミクリオ | リチャード国王が晶化した事を、公言した人物だ。どんな演説を行うのか… |
パスカル | ねぇ、二人共聞きに行ってみない?何か新しい情報があるかも |
ミクリオ | 確かに…。国王の晶化状態について何か発表があるかもしれない |
パスカル | よし、広場に行こっか。こっちだよー |
scene1 | 二つの騎士団 |
スレイ | すごい人だかりだ… |
ミクリオ | それだけ国民が、自国の動向を気にしているって事だろう |
パスカル | 二人共、こっちこっち!ここからなら見えやすいよ! |
| |
スレイ | …へぇ~、ここなら演説する場所も見えるね |
パスカル | あ、セルディク大公が出てきたみたい |
| |
セルディク | 親愛なるウィンドル王国の民よ! |
ミクリオ | 始まったか… |
スレイ | あれがセルディク大公… |
セルディク | 私は今、深い悲しみと、強い憤りに包まれている! |
セルディク | 悲しみの理由は他でもない。諸君が敬愛する国王陛下が痛ましいお姿になられたが故だ |
| |
セルディク | 知れ渡っている通り…リチャード国王陛下は、晶化現象に倒れてしまわれた! |
セルディク | 晶化現象の解決法がない今、亡くなった、と認識せざるを得ない状況である… |
| |
| ざわ…ざわざわ… |
街の男 | リチャード陛下…おいたわしい… |
街の女 | どうしてこんな事に… |
セルディク | そして憤りの理由は…この重大な事実が、民に対して伏せられていたためだ! |
セルディク | 私が真実を明らかにしたからこそア・ジュールのガイアス王も動き、ようやく事実が明るみになった |
セルディク | この事を忘れてはならない。私があの時動かなければ、真実は今も尚伏せられたままだっただろう |
セルディク | すなわち、諸君はいつ我が身に降りかかるかわからない晶化現象を警戒する事すら出来ずにいたのだ |
セルディク | 本来ならば、即刻真実を公表し、諸君らへ用心を促すべきだったはず。にも関わらず、今のこの国は── |
セルディク | 民の身を案ずるどころか、他国との情勢が不利になる事を恐れ事実を隠蔽した… |
セルディク | これは許すまじき行為だ。陛下…いや、我が甥リチャードも決してこんな事態は望まないはず |
セルディク | 今も尚、陛下の周囲にいる臣下の者達は、自らの保身を優先し続けている |
セルディク | そんな我が国の今の体制を信用する事が出来るのだろうか?忠誠を尽くす事が出来るだろうか? |
セルディク | 今改めて、諸君らに問い掛けたい |
| ざわ…ざわざわ… |
街の男 | 何という事だ…。国民の安全を最優先にしないとは… |
街の女 | リチャード国王がいれば…これからどうしたらいいの? |
セルディク | 諸君らは舵取りの利かぬ船に乗っているも同然…ではこの状況を打開するにはどうするべきか? |
セルディク | その答えは諸君の目の前にある。そう、私だ! |
セルディク | 私なら亡き陛下に代わって、ウィンドルを束ね、この腐りきった国の体制を変える事が出来る! |
セルディク | 旧弊にとらわれる事のない、全く新しい王国を作る事が出来る!私はただ、諸君を守りたいのだ! |
街の男 | そうだ、こんな状況では大公殿下が王になった方が… |
街の女 | 私達をお導き下さい、セルディク大公殿下! |
| |
ミクリオ | …妙だな |
スレイ | どうしたんだ?ミクリオ |
ミクリオ | かく言うセルディク大公だって重役である一人だ。陛下の叔父でもある |
ミクリオ | 十分に発言権がある立場のはずだ。こんなあからさまな体制批判を、国民に向ける必要はないと思うけど… |
スレイ | 言われてみれば… |
街の男 | でも、陛下はまだ生きているんじゃ… |
街の女 | いいえ!今のウィンドルにはセルディク大公殿下しかいないわ! |
ミクリオ | そもそもこれは、本当に国民の声…なのか? |
ミクリオ | 同意の声がすぐ上がる事にも妙な違和感を覚える…。聴衆の中に彼の仲間が紛れているんじゃないのか |
パスカル | 確かに変だね?噂だけど、そんなに評判いい人じゃなかった気がするなぁ… |
街の男 | 大公殿下万歳! |
街の女 | ウィンドルには、新しい王が必要だ! |
セルディク | 諸君の熱い声、私の耳にしかと届いている。今こそ──… |
??? | お待ち下さい! |
セルディク | む? |
パスカル | ん?あれって…アスベルじゃん! |
ミクリオ | パスカルの知り合いか? |
パスカル | うん |
セルディク | お前達、知っているぞ。騎士団のアスベル・ラントにフレン・シーフォだな |
セルディク | たかが一介の騎士が大公たる私の演説を妨げるか |
アスベル | 不敬に対するお咎めは、後でいくらでも受けます |
アスベル | しかし、事実と異なる事が本当のように喧伝されるのを、看過するわけにはいきません! |
フレン | アスベルの言う通りです。リチャード陛下は生きておられます |
フレン | それに、事実の公表が遅れたのは、民を不安に陥れたくないという配慮からだと伺っております |
アスベル | 決して民を蔑ろにしたわけではありません。デール公もそう仰られていました |
セルディク | ふん…デールの言う事など、あてになるか。所詮あやつは、陛下の腰巾着にすぎぬ |
セルディク | 民を不安に陥れたくない?笑わせるな |
セルディク | そうやって手をこまねいている間に我が国の民が危機に見舞われたら、どう責任を取るつもりだったのだ |
フレン | …っ!ですが、我々も手をこまねいていたわけでは… |
セルディク | 諸君、今のやり取りを聞いたな?これではっきりわかっただろう! |
セルディク | 今のウィンドル騎士団は、国と民を守るという本分を忘れた、国王の私兵に過ぎぬという事が! |
アスベル | なっ、そんな事── |
セルディク | ふん、ちょうどいい機会だ。ここでお披露目といこう。私が組織した、「赤の騎士団」を! |
スレイ | 赤の騎士団…? |
| ザッ、ザッ… |
セルディク | 諸君、これが赤の騎士団。王国に真の忠誠を尽くす、勇敢、清廉なる騎士の集まりだ |
セルディク | 騎士団を率いる団長には、信頼のおける人物を任命した |
セルディク | 紹介してやろう。来い、カーツ・ベッセル! |
カーツ | … |
アスベル | セルディク大公! |
アスベル | 国王陛下のお許しも得ず、新たな騎士団を組織するなど、越権行為ではありませんか! |
フレン | そうです。私兵というなら、これこそ私兵ではありませんか。陛下がお認めになるわけが── |
セルディク | 黙れ!一介の騎士に過ぎない貴様達に指図されるいわれはない! |
セルディク | 大公セルディクの名において命じる。今すぐこの場から去れ! |
街の男1 | そうだ、出て行け! |
街の女1 | 赤の騎士団、万歳! |
アスベル | そんな…! |
街の男2 | いいや、そんな事はない!アスベル様、フレン様の言っている事は間違ってない! |
街の女2 | そうよ!ウィンドル騎士団はいつでも私達を助けて下さった、私はフレン様達を信じるわ! |
街の男1 | 甘い!これを機に、騎士団の構成は一新すべきだ! |
街の女1 | ウィンドル騎士団は必要ない!これからは赤の騎士団がいるもの! |
フレン | くっ…何て事だ… |
パスカル | アスベル… |
フレン | …アスベル、行こう |
アスベル | フレン!しかし… |
フレン | 大公の言う通り、我々は一介の騎士に過ぎない。この場を覆すのは難しい |
フレン | これ以上騒ぎが大きくなっても不利になるばかりだ。ここは一旦引いた方がいい |
アスベル | … |
アスベル | わかった… |
| |
カーツ | … |
セルディク | 諸君、すまなかった。とんだ邪魔が入ってしまったな。さあ、話を続けよう |
街の男 | 大公殿下、万歳! |
街の女 | ばんざーい! |
ミクリオ | …晶化の情報を期待していたけど、まさかここまではっきりと、この国の現状を理解出来るとはね… |
ミクリオ | 今後、ウィンドルのような国が他にも出てくる可能性は十分にある… |
スレイ | …よくない雰囲気だと思うけど、オレ達には何も出来ないんだよな… |
パスカル | …スレイ、ミクリオ、行こ! |
スレイ | え?行くってどこに? |
パスカル | アスベルのとこ。このまま放ってはおけないよ |
ミクリオ | さっきの騎士のところ?行って何を── |
パスカル | いいから、早く早く! |
スレイ | ちょ…パスカル!?そんなに引っ張ったらミクリオの腕が!! |
scene2 | 二つの騎士団 |
フレン | ──まさかこんな事になるとはね。「赤の騎士団」か… |
アスベル | 騎士団まで用意していたなんて…この機会を狙ったとしか考えられない |
アスベル | セルディク大公は、以前から陛下を目の敵にしているところがあったからな |
フレン | だからといって、陛下の不在で国民の不安を煽るとはあんまりなやり方だ…! |
アスベル | 彼は有能な王になれるかもしれない。だが、大公の野心を考えたら、他国との摩擦は避けられない… |
パスカル | アスベル! |
アスベル | …!パスカルじゃないか |
パスカル | 広場での騒ぎ、見てたから追って来たんだ。大変だったね? |
アスベル | まあな… |
フレン | アスベル、知り合いなのか? |
アスベル | ああ、こっちはパスカルで、この二人は… |
パスカル | 二人共あたしの友達だよ。メルトキオで知り合ったんだ! |
| |
スレイ | えーっと…はじめまして、オレ、スレイって言います |
ミクリオ | ミクリオだ。よろしく |
アスベル | 俺はアスベル・ラント。そして、こっちはフレン |
フレン | フレン・シーフォだ。よろしく |
スレイ | 二人共騎士団の人、でしたね?よろしくおねがいします |
| |
パスカル | それにしても、大丈夫?国の体制とかアスベル達の事とか、すごい言われようだったけど… |
アスベル | 大丈夫…ではないかな |
ミクリオ | 質問してもいいだろうか。国王の件を、敢えて伏せていたというのは── |
アスベル | 国民や他国との混乱を避けるため、公にしなかったのは事実だ |
アスベル | だからといって、危険を野放しにしようとしていたわけじゃない |
フレン | うん、それより問題はセルディク大公だ |
フレン | さっきの演説では、陛下の事を心配しているような口ぶりだったが、実際は反国王派と言ってもいい |
アスベル | その陛下がいない今を狙ってセルディク大公が狼煙をあげた、という事だ |
ミクリオ | なるほど… |
フレン | 大公が陛下の一件について国が方針を慎重に検討していたのを知らなかったはずがない |
フレン | おそらく、それを意図的に捻じ曲げて人々の前で発表したんだ。この国の実権を握るためにね |
ミクリオ | ならつまり、あの会場に集まった人間の中には… |
フレン | …大公の手の者が紛れ込んで周囲の人々を煽っていた可能性は否定出来ない。証拠は何もないけどね |
アスベル | 国王の不在をいい事に、不安を抱える国民の支持を掴む手段に出るなんて…これから何をするつもりなんだ… |
パスカル | アスベル… |
スレイ | 問題ばかり、なんだな… |
アスベル | リチャードは必死に国を立て直してきた。それを壊すような事は絶対にさせない…! |
スレイ | … |
アスベル | リチャードは生きてる…。必ず生きてるって、俺は信じてる |
フレン | …本当なら、今すぐにでも陛下を救い出す方法を探しに行きたいところなんだ |
フレン | だけど、この状況で僕達がここを離れるわけにはいかない |
アスベル | 「赤の騎士団」…。セルディク大公が、まさか騎士団まで作られるとはな |
フレン | また争いの種とならなければいいが… |
スレイ | あの──…アスベルさん、フレンさん…! |
フレン | 何だい? |
スレイ | オレ達、今、晶化現象について調べてるんです |
ミクリオ | どういう現象なのかがわかれば、リチャード国王を救う方法も見つかるかもしれない… |
ミクリオ | まだ何もわかってない。だから、助けられないと決まったわけでもない |
スレイ | 何かわかったら、すぐにお二人に知らせに来ます! |
スレイ | だから、お二人は安心してウィンドルと、街のみんなを守ってあげてください |
パスカル | そうそう!調査の事はこっちに任せて! |
アスベル | スレイ、ミクリオ…パスカルも。ありがとう、そう言ってくれると助かるよ |
フレン | うん、僕からもお礼を言わせてもらうよ。ありがとう |
フレン | …。スレイ、君は何だか不思議な人だな |
フレン | 君の言葉はまっすぐで…どんな事でも何とかなりそうな…そんな気分にさせられる |
スレイ | えっ… |
アスベル | 俺もやる気をわけてもらった気がする。ありがとう、スレイ |
スレイ | そうですか? |
パスカル | んじゃ、名残惜しいけど先を急ぐ事にしますか! |
パスカル | 助かる命は、ちゃーんと助けたいしね |
フレン | 助かる命? |
パスカル | そうそう。生命反応はあるけど、それがいつまで持続するかは── |
アスベル | ちょっと待ってくれ、パスカル。生命反応があったって……今の話は本当なのか? |
パスカル | うん、それは間違いないよ。晶化した生物数体のサンプルを使って確認したから |
アスベル | って事は…リチャードは本当にちゃんと生きてるって事だよな…? |
アスベル | よかった、本当に…! |
フレン | ああ…! |
スレイ | … |
パスカル | ごめんごめん、早くそれを教えてあげればよかったね |
パスカル | …あ、そうだ! |
パスカル | ねえねえ、アスベル。バロニアの北にあるっていうピュール遺跡を知らない? |
アスベル | ピュール遺跡…?いや、聞いた事もないな。フレンは知ってるか? |
フレン | いや、僕も聞いた事はない。バロニアの北…本当なのかい? |
パスカル | え~おっかしいなあ…。確か湖のほとりにあるって話だったんだけど… |
フレン | 湖…?確かに湖ならバロニアの北の森を北東に抜けた先にあるにはあるが… |
フレン | バロニアの北には他に湖はないし、そこの事だろうか…? |
アスベル | あそこは国内でも晶化が特に進行していると聞く。そんなところに行って大丈夫か? |
パスカル | だからこそ、何かあるんじゃないかって睨んでるんだ。とにかく行ってみるよ、ありがと! |
ミクリオ | いろいろと話が聞けてよかった。感謝する |
アスベル | こちらこそ。道中はくれぐれも気をつけてくれ |
フレン | 何かあればいつでもまたバロニアへ立ち寄ってくれ。協力は惜しまない |
スレイ | ありがとう、アスベルさん、フレンさん |
ミクリオ | 彼らはリチャード国王を随分慕っていたみたいだね |
ミクリオ | 楽観は出来ないけど、彼らのような騎士がいるなら、ウィンドルはきっと大丈夫だろう |
パスカル | アスベル達のためにも、ますます頑張っちゃわないと! |
| |
街の女 | きゃああっ! |
スレイ | …!?あの悲鳴は? |
パスカル | あ、あっち!女の人が魔物に襲われかけて… |
| ガルルルル! |
スレイ | まずい!ミクリオ! |
ミクリオ | ああ! |
scene1 | 燦然たる湖 |
パスカル | やーっと、たどり着いた!ここが例の湖だね |
スレイ | 大きな湖だなー! |
スレイ | …!ミクリオ、パスカル、あれ…! |
ミクリオ | 晶化現象か |
パスカル | あちこち晶化しちゃってる…。今まで見てきたところより晶化が進んでいるのは間違いなさそう |
スレイ | よし、とりあえずは湖の周辺を見て回ってみよう |
ミクリオ | この辺りで見られるのは植物の晶化ばかりだ |
スレイ | その点はイズチと変わらないな |
ミクリオ | ここまで酷くなかったけどね… |
ミクリオ | 進行が進んでいると聞いていたから人間にも影響が出ているかもと思ったけど… |
スレイ | この近くに街や村はなさそうだし少し安心だな… |
スレイ | そういえば、ウィルさんが教えてくれたピュール遺跡はどこにあるんだろう |
ミクリオ | 確かに見かけないな。湖のほとりって話だったけど |
パスカル | …あ!ねえ、あれがそうじゃないかな? |
パスカル | ちょっと奥まった地形の…ほら、あそこ。端っこがのぞいてる |
スレイ | …本当だ。あれがピュール遺跡…? |
ミクリオ | 外観からすると、神殿か何かか?それも、かなり古い様式のようだけど |
スレイ | 今まで見て来た遺跡とは何か雰囲気が違うな… |
ミクリオ | ああ、周囲の自然の美しさも相俟ってどこか神聖な雰囲気があるね… |
パスカル | ねえねえ!この辺りに新しい発見はないしあの中に入ってみようよ! |
パスカル | 岸沿いに岩場を伝っていけば近くまでいけそうだよ |
ミクリオ | あんな足場が悪そうなところを?本当に大丈夫なのか? |
パスカル | 気をつけて行けば大丈夫だって!あたしの後について来てね~ |
スレイ | 危ないからゆっくり進も──って、パスカル!早いな… |
ミクリオ | 全く…岩場から滑り落ちても知らないぞ |
scene2 | 燦然たる湖 |
ミクリオ | 遺跡の中はこんな風になっていたのか |
スレイ | 外はだいぶ風化が進んでたけど、中はこんなに綺麗なんだな |
スレイ | 何となくだけど、空気まで澄んでるように感じる… |
ミクリオ | かなり辺鄙な場所だ。人間が立ち入る事はほとんどなかったんだろうね |
スレイ | …うーん、本当にそれだけかな? |
パスカル | うん?どういう事? |
スレイ | …よくわからないけどまるで誰かがここを守っているような── |
| ウオオーー…… |
スレイ | …!今のは…魔物の遠吠えか? |
ミクリオ | 僕達が立ち入った事に気がついたのかもしれない。…ここから先は気をつけて進もう |
スレイ | そうだな… |
| |
| ウオオオオオーーー…! |
ミクリオ | 魔物の声が近付いてきたな |
パスカル | しかも、一匹じゃなくて何匹かいるっぽい? |
スレイ | あ! |
パスカル | え?何なに?言ったそばから魔物が出てきちゃった!? |
スレイ | あ…驚かせてごめん。魔物じゃなくってほら、これ── |
| |
ミクリオ | 壁画か… |
パスカル | 随分大きいね~!何か雰囲気あるかも? |
ミクリオ | 描かれているのは、剣を掲げる英雄の図、といったところか |
パスカル | ひょっとして、この英雄の持ってる剣が例の聖剣なんじゃない? |
ミクリオ | 可能性はあるかもしれない。この遺跡にあるという剣が、本当に伝説の聖剣であればの話だけど |
スレイ | … |
スレイ | …何だろう、この感覚… |
スレイ | 絵に込められた強い想いが伝わってくるような── |
| グオオオオオッ! |
| |
パスカル | また魔物の声…!この先から聞こえるよ…! |
| ザシュッ!ズバッ! |
ミクリオ | 待つんだ!この音…誰か戦っている… |
スレイ | …!あれは… |
??? | …! |
| ガウウッ! |
スレイ | ミクリオ!あの女の人! |
ミクリオ | どうしてこんなところに…!急いで助けよう! |
パスカル | え!?女の人って何の事!?あたしには魔物しか見えな──… |
パスカル | ちょ、ちょっとスレイ!ミクリオ!置いてかないでぇ~!! |
scene1 | 紅蓮の試練 |
スレイ | …ふう、何とか片付いたな |
??? | … |
ミクリオ | 君も…天族なんだな |
ライラ | はい。ライラと申します |
スレイ | 君、大丈夫?怪我はない? |
ライラ | …はい。助けていただいて、ありがとうございます |
ライラ | あなたは…天族でなく人間の方ですね |
ライラ | 私達の姿が見えて、声も聞こえてらっしゃるようですが… |
スレイ | オレ、小さな頃からずっと天族に囲まれて育ったんだ。そのお蔭かな?天族が見えるんだ |
ライラ | そうなのですか… |
ミクリオ | … |
スレイ | それにしても…こんなところで天族に会うとは思わなかったな |
ライラ | ふふふ、ちょっと事情がありまして… |
スレイ | オレはスレイ。こっちはミクリオで、この人はパスカル |
パスカル | はいはーい、パスカルで~す!自己紹介も大事だけど… |
パスカル | あたしも話に混ぜてよ~!スレイ達だけで盛り上がってずるい~! |
スレイ | そっか、ごめんごめん。実は── |
パスカル | 天族がいるんだよね?さっきから魔物しか見えなかったし。それで、どこにいるの~? |
ミクリオ | パスカルの目の前だ |
パスカル | まさかの目の前!ここに新しい天族の人が…! |
パスカル | ねえねえ!解析機を使ってミクリオと同じように、あたしにも見えるようにしていい? |
スレイ | ライラ、パスカルが持っているあの道具を使うと、普通の人にも天族の姿が見えるようになるんだ |
スレイ | 君に使ってもいいかな? |
ライラ | まあ、そんな事が…?…何か問題はないのでしょうか? |
ミクリオ | 僕もあれを使用されたけど、特に異常はなかった。心配はないと思う |
ライラ | …そうなのですね。それでしたら、お願いいたします。パスカルさん |
ミクリオ | 構わないそうだ |
パスカル | やった!えっと、正面の方向ね?ではでは、ここを…ポチっとな! |
ライラ | きゃっ! |
パスカル | ゴメン、驚かせちゃったね。出てきた!またまた大成功~!初めまして、ライラ! |
パスカル | やっぱり女性の天族だったんだぁ。スレイがさっき女の人って言ってたしそうかな~って思ってたんだよね |
パスカル | しかも、すっごい美人! |
ライラ | まあ、美人だなんて… |
パスカル | その美人さんに、お願い! |
パスカル | ぎゅーってしてもいい?天族の触り心地を知りたいなぁって |
ミクリオ | 触り心地って… |
パスカル | ミクリオのが成功した後、すごく疑問に思ってたんだよねぇ。…駄目? |
ライラ | えぇ~と、少しだけでしたら… |
パスカル | ありがとー! |
パスカル | ぎゅーっ! |
パスカル | なるほどなるほど…。なーんだ、普通の女の人と変わらないねー |
ミクリオ | …僕に来なくて助かった |
パスカル | ん~?何なに?ミクリオも触っていいの? |
ミクリオ | 丁重にお断わりするよ |
ライラ | ふふっ。パスカルさん、とても明るい方ですのね |
ミクリオ | …… |
ミクリオ | ところでライラ、君はどうしてこんなところに? |
ライラ | ミクリオさんは同じ天族ですからおわかり頂けると思いますが、私は元々ここで暮らしていたのです |
ライラ | ただ最近になって、晶化現象が急激に広がってしまって… |
スレイ | オレ達はまさにその晶化現象を調べるためにここに来たんだ |
パスカル | 晶化現象が進行してるこの地域へ来れば、何か問題解決のヒントを得られるんじゃないかなぁ、ってね? |
ライラ | つまり、晶化現象の原因を解明しようとしていらっしゃると… |
ミクリオ | 始めは植物にしか発生しなかった晶化現象が、近頃は動物にまで起きるようになってる |
スレイ | このまま晶化現象が進行し続けたらその内、人や天族にも影響が出るかもしれない |
ミクリオ | 現に、道中で立ち寄ったウィンドルでは国王が晶化してしまい混乱状況に陥っていた |
ライラ | …想像していた以上に、大変な状況になっているのですね… |
スレイ | ちょっとした事でいいんだ。この辺りで、晶化現象と関係してそうな事に心当たりってない? |
スレイ | オレ達にどこまで出来るか、まだわからないけど… |
スレイ | どんなに小さい事だっていい。何か手がかりを見つけたいんだ! |
スレイ | 人も天族も、動物もみんな、安心して暮らせるように… |
ライラ | …… |
ライラ | スレイさん、助けて頂き何とかお役に立ちたいのですが… |
ライラ | 晶化現象に関しては私も、何も知らないのです |
スレイ | そっか… |
ライラ | 申し訳ありません… |
スレイ | ううん!そんな事ないよ!オレの方こそゴメン。自分の事ばっかりだった |
ミクリオ | …僕も一つ聞いていいかい?この遺跡に暮らしていた君ならもしかしたら知っているかもしれない |
ライラ | はい、何でしょうか? |
パスカル | はいはーい!この遺跡の中に、剣が刺さった祭壇ってないかなぁ?伝説に出てくるようなすっごいの! |
ミクリオ | …… |
ライラ | 祭壇に刺さった剣…。みなさんは聖剣もお探しだったのですか? |
スレイ | 聖剣!?ライラ、ここには本当に聖剣があるのか!? |
ライラ | まだご存じの方がいらっしゃったんですね。もう随分と昔の事ですのに… |
スレイ | 図書館にあった本で読んだんだ、聖剣の伝説について |
ライラ | はい、それは事実ですわ。この遺跡の奥には、確かに聖剣の祭壇が存在します |
ミクリオ | 本に記載されていた伝説、ウィルから得た情報、全て重なっていたわけか |
パスカル | おお~!じゃあもしその聖剣を抜く事が出来たらいろいろわかるかも…! |
ライラ | 聖剣は、晶化現象とは直接関わりのないものですわ |
ライラ | それでも尚、聖剣の元へ行きたいと思われますか? |
スレイ | …伝説には「求めし答えを得られる」って書いてあったんだ |
スレイ | だから、その聖剣が手に入ったら今のこの状況を何とか出来るんじゃないかって思って… |
ライラ | …わかりました。それでは、聖剣の祭壇までみなさんをご案内します |
スレイ | いいの!? |
ライラ | はい、スレイさんが望まれるなら |
スレイ | ミクリオ、パスカル!早く行こう! |
ミクリオ | …本物の聖剣か。ウィルは抜く事が出来なかったと言っていたけど… |
パスカル | まあま、とりあえず見せてもらおうよ! |
scene2 | 紅蓮の試練 |
ライラ | あれが聖剣です |
スレイ | ……! |
パスカル | 本当に剣が突き立ってる!どうやって刺したんだろ? |
ミクリオ | もっと近寄って見てみても? |
ライラ | 勿論です。さあ、前へどうぞ |
スレイ | … |
スレイ | まさか、本当にあったなんて… |
パスカル | この剣、綺麗だね。全然傷んでない。随分古い伝説の剣、だよね? |
スレイ | 文献には、この聖剣を抜くと、求めし答えを得る事が出来るって書いてあったけど |
パスカル | 剣に向かって、言えばいいのかな?晶化現象の原因を教えてーって |
ミクリオ | …さすがに会話形式で聖剣が答えを返してくれるわけではないだろう… |
パスカル | スレイ、剣抜けるか、やってみなよ |
スレイ | オレが?…いいのかな? |
ライラ | … |
ライラ | スレイさん… |
スレイ | 何?やっぱり触っちゃまずかったかな? |
ライラ | この聖剣は、かつて世界を救った救世主である「導師」が携えていたものなのです |
ライラ | この剣を抜くという事は、導師になるための試練に挑むという事を意味します |
スレイ | 試練…? |
ライラ | …スレイさん。私達を視認出来るあなたには、導師となる素養がおありだと思います |
ライラ | だから私は、あなた方をここへお連れしたのです |
ミクリオ | …… |
パスカル | あ!もしかして…伝説の一節に書いてあった、聖剣を護る湖の乙女っていうのは… |
パスカル | ひょっとして、ライラの事? |
ライラ | はい。その呼ばれ方は、少し恥ずかしいのですけど… |
ミクリオ | その聖剣が全く抜けなかったという話も聞いた。それはつまり… |
ライラ | お察しの通り、この聖剣が試練を課す剣だからですわ。素養のない方に抜く事は出来ません |
スレイ | …ライラ、教えて欲しい。その「導師」って何なんだ? |
ライラ | 導師とは、天族と一体化する事の出来る特別な人間の事です |
スレイ | 天族と一体化…? |
ライラ | 天族の力を身に纏う「神依」を行う事で、天族特有の力を我が物として扱う事が出来る人間… |
ライラ | それが導師です |
ライラ | 神依とは、その導師と天族、双方の力を飛躍的に高める秘術の名ですわ |
ミクリオ | 神依… |
ライラ | これまでの長い歴史の中で、導師は存在していました |
ライラ | …ですが、素養を持つ者の少なさ故にここ久しくは出現が途絶え── |
ライラ | 遂には、人々や天族の記憶から忘れ去られていったのです |
ミクリオ | だからイズチでも導師の事は伝わっていなかった… |
ライラ | 私はこの地で、長きに渡りこの聖剣を護ってきました |
ミクリオ | … |
ライラ | 何の道具も必要とせず、天族を視認出来る天性の素質… |
ライラ | そして、人と天族、それに動物…全てをわけ隔てなく救いたいと願う純真でまっすぐな想い── |
ライラ | 導師となるには、いずれも欠けていてはいけない要素なのです |
ライラ | スレイさんは、私が拝見した限り、その必要な要素の全てを、兼ね備えている方だと思います |
ライラ | 私の役目は、そういった素養のある人間を見出し、導師となる道を指し示す事… |
スレイ | オレが… |
ライラ | スレイさん、剣を抜いたその瞬間、…導師となるための試練が始まります |
ライラ | ですが、その試練は望まぬ内に巻き込まれて、乗り越えられるものではありません |
ライラ | 導師になりたいという意思がないのでしたら、剣に触れないようにしてください |
スレイ | …… |
スレイ | ライラ、さっき導師は神依が使える人間だって言ってたよな?…本当に、それだけなのか? |
ライラ | …さすがですわ。仰る通り、「神依の使い手」が導師の本質ではありません |
ライラ | かつて、この世界は大きな混乱に見舞われました。もうずっと昔の事ですが… |
ライラ | その時、世界を救ったのが、先代の導師です |
ライラ | 導師とは、その闇に呑まれた世界の運命を覆す事が出来るまさに「導きの光」… |
スレイ | 導きの光… |
ライラ | 今、世界に暗い影が忍び寄っている事は、私も知っています |
ライラ | このような時に、スレイさんがこの地を訪れた事は、ただの偶然ではないのかもしれません |
ライラ | みなさんが調べている晶化現象。それが、いずれ世界中を巻き込む巨大な災厄となり得るのだとしたら… |
ライラ | …確かな事は私にもわかりません。だから、スレイさんご自身で決めて頂きたいのです |
スレイ | …… |
パスカル | いいんじゃない?せっかく導師になれるって言ってるんだし、なっちゃえば |
パスカル | 要は、スレイがどーんとパワーアップするって事だよね?晶化現象もぱぱっと解決するかも? |
ミクリオ | 待ってくれ。簡単に決めていい話じゃない… |
ミクリオ | 確かに僕らは晶化現象を追っている。でも、その事が導師になる事と繋がっている確証はない… |
スレイ | …ライラ、さっき言ったよな。剣を抜くという事は、導師になるための試練に挑む事だって |
ライラ | はい。導師となるためには、厳しい試練を乗り越えていただく必要があります |
ライラ | 素養さえあれば、必ず導師になれるわけではありません。強い意志と力を示さなくては… |
ライラ | そして、その試練を乗り越え導師になれたとしても、その先の道のりはとても険しい… |
ライラ | 導師は、世界を導く光となる存在。世界の運命を背負うその使命はとても重いのです |
ミクリオ | それは、苦渋の決断を迫られる事もあるかもしれないとそういう意味なのか? |
ライラ | …それだけではありません。人に疎まれ、心を打ちのめされる事も… |
パスカル | うぅ~、聞けば聞くほど、導師になるってすごいオオゴトっぽいね… |
ライラ | …スレイさん。私からお話したい事はこれで全てですわ |
ライラ | 聞かせてください。…スレイさんは、導師となる事を望まれますか? |
スレイ | … |
スレイ | オレは── |
ミクリオ | …スレイ、剣を抜くのは待ってくれ。僕からも確認したい。本当にいいのか? |
スレイ | …さっきさ、ライラが言ってただろ?このタイミングでオレがここに来た事は、偶然とは思えないって |
スレイ | オレもそう感じてたんだ。この遺跡に入った時から何か不思議な感じがして… |
スレイ | それに、ここに来るまでにパスカルやアスベルさん達と出会った事も偶然じゃなかったんじゃないかって… |
スレイ | オレ達、ここに来るまでの旅で今の世界がどうなっているか、少しだけど見てきただろ? |
ミクリオ | …晶化現象は各地で進んでいる。そしてそれを端緒として、人々の心に不安が募っている… |
スレイ | 晶化しちゃったあの鳥も、リチャード国王も、一刻も早くオレは助けたい |
スレイ | この気持ちは、間違いなくオレの本心だよ |
ミクリオ | 全く…君はどこまでも… |
スレイ | そうだライラ、途中にあった壁画だけど、あれって導師を描いているのかな |
ライラ | あ、はい。それが何か…? |
スレイ | …やっぱり |
| |
スレイ | あの壁画では、導師が聖なる剣を掲げ闇を切り裂き…そこからまぶしい光が差し込んでた |
スレイ | もしオレが導師になって、あの壁画と同じ事が出来るなら…この世界の導きの光になれるなら── |
| |
スレイ | …オレは導師になる。どんな試練だって、乗り越えてみせる! |
| ギュッ |
| |
| スラッ… |
パスカル | 聖剣が… |
ミクリオ | 抜けた… |
ライラ | スレイさん…やはりあなたは… |
| |
| ゴオオッ! |
ミクリオ | 何だ、この炎は!? |
スレイ | くっ…! |
パスカル | 見て、炎が何かの形に! |
| グルル…! |
スレイ | こいつは!? |
ライラ | 炎の化身たる鳳凰…これが試練ですわ |
スレイ | つまり、こいつと戦えばいいって事か |
ライラ | その通りです…! |
ミクリオ | スレイ、僕は君につき合うと言った。それはいつでも、どんな事が起きようと変わらない |
スレイ | …ミクリオ…! |
パスカル | あたしも手伝うよ!いっちょやりますか! |
スレイ | うん!ありがとう、みんな |
| グオオオオオッ! |
スレイ | 来るぞ! |
scene3 | 紅蓮の試練 |
スレイ | はあ…はあ… |
スレイ | これで…どうだ! |
| ズバーーッ! |
| グオオオオーーーッ! |
ミクリオ | やったか… |
スレイ | ああ!鳳凰が消えてく… |
| |
パスカル | 強かったぁ。さすが試練だね…。何とか勝ててよかったよ~ |
ライラ | お見事ですわ、スレイさん。無事、試練を乗り越えられました。一安心ですわね |
スレイ | ああ、ありがとうライラ。これでオレは───……うっ! |
ミクリオ | …!どうしたんだ、スレイ! |
パスカル | ちょ…何これ…!?何かスレイに光が集まり始めて… |
スレイ | う…あ…熱い…身体が… |
ミクリオ | スレイ!?大丈夫か、スレイ!? |
スレイ | やば…も、もう駄目…… |
| ドサッ |
ミクリオ | スレイ、大丈夫か。しっかりしろ、スレイ! |
スレイ | … |
パスカル | …大丈夫。意識を失ってるだけ、みたい |
ミクリオ | ライラ、これはどういう事だ!?僕達はちゃんと鳳凰を倒した、なのにこれは── |
ライラ | …大丈夫ですわ、ミクリオさん。命に別状はないはずです。おそらく、しばらく寝込む事にはなりますが… |
ミクリオ | しばらく寝込む…?どういう事なんだ? |
ライラ | スレイさんは無事試練を乗り越えられました |
ライラ | 導師になるという事は、すなわち天族と一体化するための「器」となるという事です |
ライラ | そのための身体作り、と言ったところでしょうか |
ミクリオ | 人が天族の力を受けるための「器」になる。そのための変化で、スレイは… |
ライラ | はい。人が持ち得ない力を、突然身体に収める事になるのですから… |
パスカル | とにかく、スレイを休める場所に連れてってあげなきゃ |
ライラ | それがよろしいかと。数日は高熱にうなされてしまうかもしれません… |
ライラ | 私も同行させていただきますわ |
ミクリオ | それなら、まずバロニアへ戻ろう。ここからだと、あの街が一番近いと思う |
パスカル | うん、そうだね |
ミクリオ | 二人にはすまないけど、なるべく急ぎたい。スレイは僕が担ぐ。パスカル、君は荷物を頼めるか? |
パスカル | はいよ~ |
| |
スレイ | … |
ミクリオ | …スレイ、辛いだろうが少し耐えてくれ |
| |
ライラ | …スレイさん、本当にお疲れさまでした |
ライラ | …先ほども申し上げた通り、今日お会いしたのはきっと偶然ではありません |
ライラ | これから大変になりますが…どうか今は、ゆっくり休んでくださいね |
Name | Dialogue |
scene1 | エルとの約束 |
ルドガー | それじゃ兄さん、行ってくるよ |
ユリウス | ああ。エルとルルの事は任せておいてくれ |
ルドガー | ロイヤル猫缶ばかりねだって、兄さんを困らせるなよ、ルル |
ルル | ナァ~ |
エル | … |
ユリウス | エル、いつまでもそんなところでむくれていないで、ルドガーを見送ってやってくれないか |
エル | … |
ユリウス | やれやれ。ずっとあの調子だ |
ルドガー | 俺が話すよ、兄さん |
ルドガー | エル、昨日ちゃんと話しただろう?納得していないのか? |
エル | … |
エル | どうしてダメなの? |
エル | エルはアイボーじゃなかったの? なのにどうして、一緒にバロニアに行ったらダメなの? |
ルドガー | エル…何度も言ってるだろう。晶化現象の事は何もわかっていない |
ルドガー | 必要以上に外出は避けてほしいんだ。ましてや、バロニアまでなんて連れて行けないよ |
エル | …連れてけなくない |
ルドガー | それに、バロニアに着いたらお城の知り合いに会うつもりなんだ |
ルドガー | お城にはいろんな偉い人もいるんだ。子どもと一緒には── |
エル | エル、コドモじゃないもん |
ルドガー | お城の人はそう思ってくれないよ。だからといって、街中でエル一人待たせるわけにもいかないだろう? |
エル | だって…エルも、ルドガーと一緒にショーカのこと調べたい… |
ルドガー | エルには、俺のいない間兄さんと、街のみんなの事を守って欲しいんだ |
エル | おじさん、すぐトマト食べさせようとするからイヤ |
ユリウス | トマトは栄養満点で、身体にすごくいいんだぞ |
エル | エルはトマト食べなくても、これからちゃんと成長するからいいんですー |
ユリウス | ルドガーがいない間に、エルのトマト嫌いを克服させようと思ったが…この分だと難しそうだ |
ルドガー | はは、トマト嫌いは筋金入りだからな |
ルドガー | じゃあエル。俺が帰って来たら、エルの大好きなスープをたっぷり作ってやる |
エル | ホント!? |
ルドガー | ああ、腕によりをかけた大好きなスープの特別バージョン、作るって約束するよ |
エル | …うん。約束だからね? |
ルドガー | ああ、約束だ。それじゃ、出発するよ |
エル | エル、街の外までルドガーをお見送りする! |
ユリウス | 俺も行こう |
ルル | ナァン |
ルドガー | エル、兄さん、それにルルまで。みんな、ありがとう |
scene2 | エルとの約束 |
ユリウス | ──ところでルドガー、晶化現象についてだが、何から調べるつもりだ? |
ルドガー | 知りたい事は山ほどあるけど…特に気がかりなのは晶化した生物の生死、だ |
ルドガー | 街の人が見せてくれた晶化した蝶を見て、ぞっとしたよ |
ユリウス | 植物だけじゃなく、昆虫すらも…。晶化現象は、確実に進行していっているからな… |
ユリウス | リチャード国王の例もある。今後は動物や人間にも広まっていくのかもしれない |
ルドガー | もし仮にそうなってしまった時、晶化した生物は生きているのか、救い出す方法があるのか… |
ルドガー | …結晶の性質を知るためにもまずはそれを調べてみようと思う |
ユリウス | なるほど |
ユリウス | 確かに、そういった性質を知る事は対策方法は勿論、晶化の実態を知る大きなきっかけとなるかもしれないな |
ユリウス | …そういえば、バロニアにはアテがあるような事を言っていなかったか? |
ルドガー | ああ。あそこの騎士団にアスベル達がいる。彼らなら、何か知っていると思うんだ |
ルドガー | アスベルはリチャード国王とも親しいようだったしね |
ユリウス | 国王に近い場所から情報を、か…。有力な情報が得られそうではあるな |
ユリウス | 俺は俺で、調べてみよう。そっちは頼んだぞ |
ユリウス | …それにしても、晶化現象とは一体何なのだろうな |
ルドガー | 今は何とも── |
エル | もー!ルドガーとおじさん、二人でお話してばっかり! |
ルル | ナァー! |
ユリウス | はは、ごめんごめん。…エル、まだ少し機嫌が悪いな |
ルドガー | みたいだな… |
| |
ルドガー | 二人共、見送りはこの辺りまででいいよ |
エル | …うん、わかった |
ルル | ナァー… |
ユリウス | 一人忘れてる、って言ってるぞ? |
ルドガー | はは、ルルも忘れてないって |
ルドガー | あ、エル…。この前拾った四つ葉のクローバーだけど… |
エル | あれなら、ちゃんとフーインしたよ! |
ルドガー | 封印…? |
エル | ショーカゲンショーは、キケンかもしれないからガラスの入れ物に入れたよ |
ルドガー | そうだったのか… |
エル | ねえ、ルドガー |
エル | ルルも、あんまり外に一人で出しちゃダメだよね |
ルドガー | ルルか…。そうだな… |
ユリウス | ルルを閉じ込めておくのは、難しそうだがな |
ルル | ナァ? |
ルドガー | エル、俺がいない間ルルの事、出来るだけ目を離さないでいてくれるか? |
エル | うん、任せて!ルドガーも… |
エル | ショーカゲンショーの事で何かわかったら、エルにすぐ教えてくれる? |
ルドガー | ああ、勿論だ。エルは俺の相棒だからな |
エル | うん! |
ルドガー | それじゃあ、兄さん、後の事は頼むよ |
ユリウス | ああ、わかった。気をつけてな |
エル | 気をつけて行って来てね、ルドガー |
エル | メガネのおじさんとルルの事も、エルがちゃんと守るから |
ユリウス | ん?何かおかしいな |
ルドガー | はは、兄さんと守ってくれって言ったつもりだったんだけどな… |
エル | 行ってらっしゃーい |
| |
ルドガー | さて…と。バロニアへの道はこっちだな |
ルドガー | …エルも、晶化を心配していろいろ考えていたんだな… |
ルドガー | エルのためにも、晶化現象の事をちゃんと調べないとな |
| ガサッ! |
ルドガー | …!?何だ今の音は… |
| |
| ガルルルル! |
ルドガー | くっ、魔物か…! |
scene1 | 三人の旅人 |
ルドガー | 相変わらず大きな街だな |
ルドガー | 何もなければ、珍しい食材とか見て行きたいけど…寄り道は今度だな。まずは、王宮へ向かわないと |
ルドガー | とはいえ、国王が晶化した一件で、王宮も警備が強化されていそうだ… |
ルドガー | 騎士団も忙しいかもしれない。取り次いでもらえるだろうか…。…うん? |
街の男1 | セルディク大公以外、誰がいるって言うんだ! |
ルドガー | …! |
街の男2 | 今のウィンドルには、新たな王が必要だ!大公殿下に立っていただくしかない! |
街の女1 | 何言ってるんだい。ウィンドルの国王陛下は、リチャード様しかいないよ! |
街の女2 | リチャード様が亡くなられたと決まったわけでもないのに、次の王様の話なんて許さないわ! |
ルドガー | 大公殿下…セルディク大公の事か |
ルドガー | 国王が晶化した状態じゃ、国民も不安だし、代わりの王の話が出ても不思議じゃないか… |
ルドガー | 晶化現象で、みんな不安がっている。それはイニル街だけじゃない… |
ルドガー | 何か俺に出来る事はないだろうか… |
| ニャー |
ルドガー | お?こんなところに猫が… |
ルドガー | どうした?こんな人通りの多いところに、出てくると危ないぞ |
ルドガー | 首輪があるから飼い猫みたいだが…。食べ物が欲しいのか? |
??? | ああっ、見つけたっ! |
ルドガー | えっ! |
| ギニャーー! |
ルドガー | あ、逃げた…! |
| |
??? | どいたどいたどいたーーっ! |
ルドガー | おっと |
??? | そこの猫、待てーーっ! |
ルドガー | 何だ、今の。猫を追いかけてるのか? |
??? | はあ…はあ…こっちの方に来たはずなんだけど |
??? | うーん、いないみたいだね。あ、ちょっと、そこの人! |
ルドガー | 俺、かな? |
??? | うん、君だよ。今、やたら元気のいい男の子が走って行かなかった? |
??? | えーと、あ、その子、この子と双子で、顔が似ているんだ |
ルドガー | 双子…か。ああ、ついさっき見かけたよ。猫を追いかけていた男の子だろう? |
??? | あ、きっとそうです! |
??? | どっちに行ったかな? |
ルドガー | この通りをまっすぐ進んで、向こうの路地に入って行くのが見えたけど |
??? | 向こう…どこの路地ですか?あの、お花屋さんの角ですか? |
ルドガー | いや、そこじゃなくて、ここからだと四つ目の…。いや、その次か? |
??? | あー、もう、わかんないから、お兄さん、ホント悪いんだけど案内してくれない? |
??? | その男の子…ディオって言うんだけど、バロニアには不慣れなんだ |
??? | このまま放っておいたら、確実に迷子になると思います… |
ルドガー | それは大変だな。わかった、案内しよう |
??? | ありがと! |
メル | あ、ご挨拶遅れてすみません。わたしはメルといいます。こちらはロディさん |
ロンドリーネ | 本名はロンドリーネね。ロディは愛称。よろしく! |
ルドガー | 俺はルドガー。よろしく、二人共 |
scene2 | 三人の旅人 |
ルドガー | あそこだ!あの子が捜してたディオじゃないか? |
ディオ | はあ… |
ロンドリーネ | そうそう、あの子!ディオくん発見! |
メル | ディオ! |
ディオ | あ、メルにロディ。駄目だったよ |
メル | 駄目だったよ、じゃないでしょ!何も言わずに飛び出して行ったら、心配するじゃない |
ロンドリーネ | 結局、猫は捕まえられなかったの? |
ディオ | 捕まえたは捕まえたよ。オレじゃなくて別の人が、だけど |
ディオ | その捕まえた人は飼い主とも知り合いだからって、連れて行っちゃった |
ロンドリーネ | ま、それなら結果オーライだね。よかったよかった |
メル | わたし達、さっき街の広場で迷い猫の張り紙を見つけたんです。で、ちょうどその時猫が前を通って… |
ロンドリーネ | 可愛そうな迷い猫を捕まえようとディオくんが張り切って一人で飛び出して行ったってわけ |
ルドガー | あの猫、やっぱり飼い猫だったのか。無事飼い主の元に帰れそうでよかったよ |
ディオ | それが、よかったけどよくなかったんだよ |
メル | …?どうしてディオはそんなにがっかりした様子なの? |
ディオ | 謝礼をもらい損ねたからさ。オレがあの猫を捕まえていれば、今頃は… |
メル | …呆れた。お礼が欲しくて、あんなに張り切ってたわけ? |
ディオ | そりゃそうさ。だってオレ達、お金がなくて朝から何も食べてないんだぞ |
ルドガー | お金がなくて…?昼も過ぎてる時間だし、食べてないなら空腹も限界じゃ… |
ロンドリーネ | うう、思い出させないでよ。路銀も尽きてきたから、なるべく節約してるんだ |
メル | この先、旅も続けられなくなっちゃいますね…。どうしよう… |
ルドガー | 君達、旅をしているのか。子どもと女性だけで? |
ディオ | 子ども…ってバカにするなよ!立派に旅してるっての! |
メル | ロディさんも、戦うととっても強いんですよ。頼りになるんです |
ロンドリーネ | 双子ちゃん達だって、すごい力持ってるんだから。そこらの魔物なんかイチコロだよ |
ルドガー | へえ…。そのすごい力を持ってるけど、資金の底が尽きた、と |
ルドガー | 食事が出来ないくらいの金欠って…結構一大事じゃないか? |
ロンドリーネ | うう、そうなんだよねぇ…。お金がない、となると稼ぐしかない |
メル | それはそうですけれど、私達、まだ子どもだし、どうやって…? |
ロンドリーネ | 君、この街の人…だよね?ホント何から何まで悪いけど、私に何か仕事紹介してくれない? |
ルドガー | 俺もここの街の人間じゃないんだ。いきなり訪れた街でお金を稼ぐとしたら…大道芸とか? |
ロンドリーネ | 大道芸…か。うん、いいかも!ここは人通りが多いから、歌とか踊りとかいいかもね |
ディオ | 歌とか踊りっていきなり言われても、オレ達にそんな事… |
ロンドリーネ | 出来るって。双子ちゃんの得意な事は、なーんだ? |
メル | あ、なるほど。服を着替えればいいんですね! |
ロンドリーネ | ご名答! |
ルドガー | 服を着替える…?着替えると、どうなるんだ? |
メル | わたし達、いろいろな職業の服を着て、その職業になりきる事が出来るんです |
ロンドリーネ | なかなかのものだよ。見たら君も、驚くと思う |
ロンドリーネ | 善は急げ、だね。ルドガー、人手が欲しいから手伝ってくれない? |
ルドガー | えぇ!?いや、俺これから行くところが…… |
ディオ | どうせやるなら、街で一番人が多い広場でやろうぜ! |
ロンドリーネ | いい考え!さあ、みんな、こっちこっち! |
ルドガー | お、おい、ロディ──…はぁ…仕方がないか |
| |
ロンドリーネ | さあさあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! |
ロンドリーネ | 双子の旅芸人、メルディオ一座がバロニアにやって来ましたよ! |
ルドガー | 上手いもんだな。みんなこっちを向いたぞ |
ロンドリーネ | 関心さえ引きつければ、後はこっちのもの。頼むよ、双子ちゃん! |
メル | ららら~~~♪ |
街の男 | おお、なんて可愛らしい。しかも、なんて上手なんだ!まるで天使の歌声のようだ |
メル | るるる~~~♪ |
街の女 | 小さい吟遊詩人さんだこと!いい声だねえ |
ロンドリーネ | バードの服を着れば、メルはたちまち、一流の吟遊詩人に早変わりってわけ |
ルドガー | 本当に熟練の歌い手みたいだ。メルの歌でみんな足を止めてる |
ロンドリーネ | でしょ?でも、これだけじゃないんだな!まあ、見てて |
ロンドリーネ | 美少女吟遊詩人に続きましては、少年剣豪の登場!技の冴えをご覧あれ! |
ディオ | はああっ! |
ディオ | えいっ!やあっ!たああっ! |
ルドガー | すごい…!あんな大きな剣をいとも容易く操ってる |
ロンドリーネ | 今のディオは、剣豪だからね |
ロンドリーネ | …いかがです、お客さん?メルディオ一座の公演、たーっぷりとお楽しみ下さい! |
メル | ららら~~~♪ |
ディオ | はっ!やあっ!とうっ! |
街の男 | いいぞ、二人共! |
街の女 | 晶化現象が起きて以来、久しぶりにこんなに笑った気がするよ。これは、おひねりを奮発しないとね |
ルドガー | 街のみんなも楽しそうだなこれが二人のすごい力、か… |
ルドガー | あ、投げ銭はこちらにお願いします!投げ銭はこちらへ! |
| |
ディオ | すげえ!あっという間に、お金がこんなにたまったぞ! |
ロンドリーネ | 作戦は成功だね!二人の頑張りの成果だよ |
メル | わたし達だけじゃありません。お二人がいてくれたお蔭で思い切ってやれました |
ロンドリーネ | ルドガー、ありがとう。これ、おひねりのおすそ分けね |
ルドガー | いや、お金はいいよ。俺は大した事はしていない。三人の力だ |
ルドガー | 俺もすごく楽しませてもらったし、街の人達の笑顔が見られてよかった |
ロンドリーネ | ルドガー…。そっか、じゃあ今回は遠慮なくいただくね。本当に助かったよ |
ディオ | これでまた、旅を続けられるな |
ルドガー | …君達は何で旅をしているんだ?今は晶化現象で、外は危険かもしれないのに |
ロンドリーネ | 私、人を捜してるんだ。どうしても会いたい人がいてさ |
ロンドリーネ | 双子ちゃん達は、それを手伝ってくれてるんだ |
ルドガー | 会いたい人、か… |
ロンドリーネ | それじゃ、懐も暖まったし、そろそろ行こうか、双子ちゃん |
ディオ | おう!まずはメシ食いに行こうぜ! |
メル | ルドガーさん、本当にありがとうございました |
ルドガー | いや、こちらこそ楽しかったよ。道中、気をつけてな。危険そうなところには近付くなよ |
メル | はい、そうします。ご忠告、ありがとうございます |
ディオ | じゃあ、行こうぜ!ルドガー、今日はありがとな |
メル | ディオ!ルドガーさんは年上なんだから、ちゃんと敬語で話しなさいよ |
ロンドリーネ | それじゃ、私達は行くとするよ。またどこかで会えるといいな |
ルドガー | ああ、そうだな。君達が、捜している人に会える事を祈ってるよ |
ロンドリーネ | …うん、ありがとう! |
scene1 | 同志との出会い |
ルドガー | ロディにディオにメルか…おもしろい三人組だったな |
ルドガー | …さて、俺もそろそろ本来の目的に戻るとするか |
ルドガー | 王宮はあっちだな。この道を行けば──…ん? |
青果商 | ちょっと、そこのお兄さん。新鮮なトマトはどうだい?甘くて美味しいよ! |
ルドガー | へえ、こんなに熟したトマトならデザートにアレンジ出来そうだし、エルもきっと食べられるだろうな… |
ルドガー | いや、俺はこれから用があるんだから、買い物は… |
| |
??? | おー、このトマトおいしそう!おじさん、ちょうだい! |
青果商 | お姉ちゃん、見る目あるね。いくつ欲しい? |
??? | パスカル、勝手に買おうとしないでくれ。まだ何を作るか決めてないだろ |
パスカル | ん~?トマトはそのまま食べられるけど? |
??? | そういう問題じゃない。必要のない材料をわざわざ── |
パスカル | それじゃ…焼く?焼きトマト! |
??? | 調理法の話でもない… |
パスカル | え~、違うの?トマトは柔らかくて栄養もあるし、病み上がりのスレイにもいいと思うけどな |
??? | 栄養があるのはその通りだけど、物事には順序というものがあるだろ |
ルドガー | …あのー、話しかけても? |
パスカル | ん?なあに? |
ルドガー | 俺、よく料理をするんだけど、リゾットがいいんじゃないか? |
ルドガー | トマトでも、お米と一緒に煮込めば病み上がりでも食べやすいと思う |
パスカル | へえ、いいねぇ、それ。食べたい!ミクリオ作って! |
ミクリオ | やれやれ…。了解した、君達の提案に乗ろう。あとで作り方を調べておく |
パスカル | 宿の人に聞けばいいんじゃない?お兄さん、いい事教えてくれてありがと! |
ルドガー | どういたしまして。その人も早くよくなるといいな |
ミクリオ | …… |
ミクリオ | …心遣い、感謝する |
パスカル | 病気っていうか、ただ寝込んでるだけっていうか…。大した事はないんだ |
パスカル | とにかく、早く戻ろっか。ご飯食べてスレイが元気になったら晶化現象の調査も再開だね! |
ルドガー | …君達も、晶化現象の事を調べているのか? |
パスカル | 君達もって、お兄さんも? |
ルドガー | ああ。とは言っても、情報を求めてバロニアに来たばかりで何も知らないんだ |
ルドガー | よかったら、何か知っている事があれば教えてくれないだろうか? |
青果商 | ちょっと!あんた達!立ち話ならよそでやってくれないかい? |
ルドガー | すみません、今移動します。あ、その前にトマト買うんだったな |
パスカル | おじさん!トマト5個ちょーだい!いや、やっぱり6個かなあ… |
ルドガー | その前に、何人分作るんだ?それによると思うんだが… |
ミクリオ | …… |
ミクリオ | 晶化を調べている、か… |
| |
パスカル | お待たせ!えっと、お兄さんのお名前は? |
ルドガー | ああ、自己紹介が遅れてすまない。俺はルドガー・ウィル・クルスニク。イニル街から来たんだ |
パスカル | あたしはパスカル。で、こっちはミクリオ。よろしく、ルドガー |
ミクリオ | …よろしく |
ルドガー | 晶化現象の事なんだけど… |
ミクリオ | その前に、一つ聞かせてほしい。バロニアに来たばかりという事だけど具体的には、いつこの街に? |
ルドガー | …? |
ミクリオ | 先日の大公による演説と赤の騎士団…街の住人達にも混乱は生じているし、正直、僕も敏感になっている |
パスカル | ん~、悪い人には見えないけどなぁ~ |
ミクリオ | パスカルの印象や勘を理解出来ないわけじゃない。それでも、今は時期が時期だ |
ミクリオ | ルドガー、無礼な事を聞いている自覚はある。だが、答えてもらえないだろうか |
ルドガー | 俺がこの街へ来たのは少し前の事だ |
ルドガー | …それより、赤の、騎士団…だっけ?その騎士団の名前は初めて聞いたな。アスベル達がいる騎士団とは違うのか |
パスカル | あれ?ルドガーってアスベルの事、知ってるの? |
ルドガー | ああ、アスベルとは前に行動を共にした事がある |
パスカル | おお~!それなら大丈夫!ミクリオ、ルドガーならきっと力になってくれるよ! |
ミクリオ | また「知り合いの知り合い」か…旅に出てからはずっとこうだな。出来すぎた偶然が次々重なってくる… |
ミクリオ | …ルドガー、大変失礼をした |
ミクリオ | 改めて名乗るけど、僕はミクリオ。先ほどの発言、許してほしい |
ルドガー | いや、いいんだ。街の様子を見ると無理もないよ |
パスカル | それじゃ、まとまったところで!立ち話もなんだし、宿に行かない? |
ミクリオ | …この機会だし、全員で顔合わせしておくのも悪くないか。ルドガーの都合はどうだい? |
パスカル | みんなで話した方が何かと話が早いでしょ?ね、いいかな? |
ルドガー | …じゃあ、そうさせてもらおう。荷物持つのを手伝うよ |
パスカル | ありがと~!じゃあ、半分お願い。宿はこっちだよ! |
scene2 | 同志との出会い |
スレイ | へえ…。これが導師の衣装…オレに似合ってるかな、ライラ? |
ライラ | とてもよくお似合いです。スレイさんのお身体に採寸も合っているみたいですね |
スレイ | うん、ぴったりだ。結構動きやすいよ! |
スレイ | …なぁ、ライラ |
スレイ | オレ、導師になったんだよな |
スレイ | あの後倒れて、ずっと寝込んでたからさ |
スレイ | 今でも、あれは夢だったんじゃないかって… |
ライラ | 夢ではありませんわ。スレイさんは聖剣を引き抜き、見事、試練を乗り越えられました |
ライラ | 遠からず、自分が導師であると強く実感する時が訪れるでしょう。私も持てる限りの力をお貸しします |
スレイ | そっか…。ありがとう、ライラ |
| |
パスカル | ただいま~。おっ、スレイ、起きたんだ!ライラの言う通りだったね |
ミクリオ | 気分はどうだい?ふらつきとかはないか? |
スレイ | よく寝たー!って感じで何ともない。ピンピンしてるよ |
ミクリオ | ならいい…。それで?その格好は何なんだい? |
スレイ | ライラがくれたんだ。カッコいいだろ? |
ライラ | かつての導師の衣装を元にご用意いたしました |
パスカル | へ~、そうなんだ。何か、長いマントが導師様ーって感じがするよ! |
ミクリオ | 馬子にも衣装だね |
スレイ | ちぇー…。…あれ、そっちの人は? |
パスカル | この人はルドガー。買い物で悩んでた時に会ったんだ。ルドガーも事情があるらしくてさ |
ルドガー | 初めまして、君がスレイ?俺はルドガー。よろしく |
| |
スレイ | ルドガーさん…はい、よろしくお願いします |
ライラ | 私はライラと申します。パスカルさん?その事情と言うのはどういった? |
ミクリオ | 彼は僕達と同じく、晶化現象について調べているんだ |
ルドガー | 調べに来た、というのが正しいかな。バロニアに来たばかりで、まだ何も掴んではいないんだ |
ライラ | お一人で来られたようですが、ルドガーさんの街で晶化現象は… |
ルドガー | ああ。俺の住むイニル街でも街中で植物の晶化が進んでいる |
ルドガー | 最近は昆虫も晶化するようになった。このままだと動物や人間にも晶化が起こり始めるかもしれない |
パスカル | 原因や実態もわからないから、ね。いつどうなってもおかしくはないし… |
ルドガー | 対策や解決方法があるのか…、少しでも早く情報を掴んで、みんなを安心させたいんだ |
スレイ | ルドガーさんの気持ち、オレもわかります |
ミクリオ | 僕達も住んでいた村の側で、晶化した鳥を見つけた事がある |
ルドガー | そうか…。やっぱり、地域によっては動物の晶化も起きているんだな… |
ルドガー | 晶化した動物がどうなるか、情報は?もう助からないのか? |
スレイ | 鳥を覆った結晶を割ろうと思って結構強く叩いたんですけど、ヒビ一つ入らなくて… |
ミクリオ | 今の僕達では手の施しようがないだろうね |
ルドガー | そんな… |
パスカル | でも、諦めるわけにはいかないよ。中の生物は生きてるんだし |
ルドガー | …!中の生物が生きてるって…それは本当か!? |
パスカル | うん、間違いないよ。だからこそ、晶化現象のメカニズムを解明して、中の生物を助け出したいんだよね |
ミクリオ | 彼女は、ああ見えて科学者らしい |
ライラ | 私も変わった発明品を見せていただきましたわ |
ルドガー | そうなのか…人は見かけによらないな。でも、それを聞いて少し希望が持てたよ |
パスカル | でも、わかってるのはそれだけなんだ |
パスカル | 熱を加えても、衝撃を加えても少しも欠けないし。それ以上の事は… |
ルドガー | 晶化現象が発生し始めた時期や原因などもわからないのか? |
パスカル | 時期も各地域で異なるだろうし…この国の情報だけで判断は難しいかも |
スレイ | じゃあ、やっぱり過去の記録とか? |
ライラ | どうでしょうか。今のような状況は私ですら見た事も聞いた事もありませんし… |
ルドガー | …?あなたですら、というのは…? |
ライラ | あら、ふふ、何でもありません。こちらの話ですわ |
ミクリオ | 過去という観点で言えば、以前の天変地異がまず思い出される |
ミクリオ | ある時から突如発生し、世界全土に急激に拡大したところにも共通性があるしね |
スレイ | 確かに、原因不明ってところも一緒だよな |
パスカル | ふむふむ…言われてみればそんな気もするね |
ルドガー | 前にあった天変地異との関連性か…。俺もその可能性は考えた |
ルドガー | この晶化現象は大精霊に関わりがあるかもしれないって… |
スレイ | 大精霊?あれ、どこかで聞いたような… |
ルドガー | 本当か?大精霊を知っているのは一部の人だけだと思っていたんだが… |
ルドガー | あの異変は、彼らが暴走状態になってしまったため、起きてしまったんだ |
スレイ | …あ、思い出した!確かミラさんと会った時だ。みんな大精霊がどうのって話してて… |
ルドガー | ミラと知り合いなのか? |
スレイ | だいぶ前だけど、シルヴァラントの遺跡探検中に会った事があって… |
ミクリオ | またここでも知り合い同士か…。僕達の世界は、実は意外なほど狭くて小さいのかもしれない… |
ルドガー | ああ。すごい偶然だな… |
ミクリオ | それで、その大精霊とは? |
ライラ | 世界を形成する上で欠かせないさまざまな自然を司る存在の事ですわね |
ライラ | 自然を司るという点では、私やミクリオさんが使う天響術とも関わりがあると言えます |
スレイ | そんな存在がいるんだ…。知らなかった |
ライラ | 自然を司り、世界の均衡を保つのに欠かせない大精霊が暴走したとなれば先の天変地異も頷けますね |
パスカル | ん~…じゃあ、大精霊について調べた方がいいのかなぁ? |
ルドガー | いや、可能性はなくはないが、晶化現象はどの自然現象とも結びつかない |
ルドガー | 大精霊に絞って動くのは賢明ではないと思う |
パスカル | うーん…そうかあ…。なかなか手がかりが見つからないね |
スレイ | だけど、人数が増えた分だけ情報は確実に増えたよ。この調子で── |
| ぐー |
ライラ | ふふ。みなさん、つい話し込んでしまいましたが、少し休憩にしませんか? |
ミクリオ | すまない、スレイ…。君がこの三日間、飲まず食わずなのを失念していた……くく…… |
スレイ | 笑うなよ、ミクリオ! |
パスカル | じゃあ、ご飯にしよ!考えるのはその後!お腹が空いちゃうと、何にも出来ないもんね! |
ミクリオ | 僕が準備してくる。メニューはトマトリゾットだと決まっていてね |
スレイ | 何かおいしそう!楽しみにしてるからな、ミクリオ! |
ルドガー | せっかくだから、俺も手伝うよ。いろいろ話も聞かせてもらったし、作り方はまだ聞いてないだろ? |
パスカル | 頼りになるねぇ、ルドガー!よく料理するんだっけ? |
ルドガー | ああ、レシピを変えて作ったりしてる。トマト料理が好きな兄がいるんだ |
ミクリオ | お願いしよう。厨房はこっちだ |
スレイ | はぁ~!美味しかったぁー! |
ルドガー | 作りすぎたかと思ったけど残さず食べたな。よっぽど空腹だったんだな… |
ミクリオ | それにしても、あの手際のよさ…掛け値なしに素晴らしい腕だった。参考にさせてもらうよ、ルドガー |
スレイ | 食べた事ないものばかりで、本当にどれも美味しかった!ごちそうさま! |
パスカル | あたしも食べ過ぎちゃったよ~。食べたら眠くなっちゃった…。ふあ… |
ルドガー | はは…。喜んでくれてうれしいよ |
| わあああーーっ!パチパチパチ… |
ミクリオ | …何だ?これは住民の喚声?拍手も聞こえるが… |
| よう、待ってました! |
| こっちを見たわ! |
ライラ | 誰か来たみたいですわね |
ルドガー | ちょっと様子を見てくるよ。何があったのか…少し気になる |
スレイ | オレも行きます!ミクリオはどうする? |
ミクリオ | 当然、僕も行く。急ごう、スレイ、ルドガー |
パスカル | わああ、みんな待って~! |
scene1 | 不穏な予感 |
ライラ | すごい人だかりですね |
パスカル | 有名人でもいるのかなぁ~? |
ルドガー | ひょっとして、またロディ達が大道芸を…? |
ミクリオ | スレイ、あそこだ |
スレイ | …誰か来る。あれは! |
| ザッザッザッ… |
カーツ | … |
街の女1 | カーツ様、万歳! |
街の女2 | カーツ隊長、頑張ってください! |
| ザッザッザッ… |
ルドガー | 何だ、これは…? |
| ざわざわ… |
街の男 | また戦争になるんじゃないのか…? |
ライラ | 歓声は大きいですが、不安そうな顔つきの方も多いですね… |
ルドガー | 今のはウィンドル騎士団か?知っている顔は見なかったが… |
ミクリオ | あれが先日結成された赤の騎士団だ。正規のウィンドル騎士団とは別の指揮系統で動いているらしい |
ルドガー | 騎士団を結成…?リチャード国王は晶化していると聞いたが… |
パスカル | セルディク大公が勝手に作ったんだよ |
ルドガー | セルディク大公が? |
スレイ | 街の外へ行くみたいだ。どこへ向かってるんだろう? |
ライラ | 少数精鋭といった印象を受けました。重要な任務、なのかもしれません |
ルドガー | … |
パスカル | ルドガーは、セルディク大公の事は詳しい? |
ルドガー | 国王に代わる指導者として、国民の支持を集め出しているとは聞いたが… |
ルドガー | どんな人物かまでは知らない。君達は何か知っているか? |
ミクリオ | 僕やスレイは、この前行われた大公の演説を直接聞いたくらいだね |
ミクリオ | 正直に言って特段弁の立つ人物でもない、という印象だった |
パスカル | それでね、反国王派でお城の中での評判はよくないんだって |
パスカル | なのに民衆の前で、リチャードは死んだ!なんて勝手な事言って… |
パスカル | 自分こそみんなを引っ張る指導者なんだって言い回ってるみたい |
ルドガー | そんな事が… |
スレイ | 赤の騎士団…。あのセルディク大公の命令で動いてる部隊、か… |
ライラ | ただ事ではなさそうですわね… |
ルドガー | 俺の街では、セルディク大公は国を憂いて動いている人物だと伝わっていたが… |
パスカル | とにかく、アスベルとフレンに会いに行こうよ。二人なら何か知ってるだろうし |
ミクリオ | パスカル、僕達は元々晶化現象について相談していたんだ。それを忘れないでくれ |
パスカル | 勿論覚えてるよ~!騎士団には晶化の情報も入ってるかもしれないし、聞いてみよう! |
ライラ | …どうされますか? |
ルドガー | 勿論だ、俺はそのためにバロニアに来たんだから |
スレイ | なら早速、アスベルさんとフレンさんに会いに行ってみよう! |
scene2 | 不穏な予感 |
ウィンドル兵 | お前達を、城内に入れるわけにはいかん!立ち去れ! |
パスカル | ええ~。どうして?そこを何とか。お願い! |
ウィンドル兵 | あまりしつこいようだと、不穏分子で身柄を拘束するぞ |
ルドガー | そんな… |
??? | ルドガー…。ルドガーですよね? |
ルドガー | エステル!? |
エステル | 窓から姿が見えたのでもしかしてと思って…。どうしたんです? |
ルドガー | アスベルに聞きたい事があって来たんだが、中に入れてもらえないんだ |
エステル | アスベルなら今、ちょうど会議中のはずですけど…急を要する話ですか? |
ルドガー | 今出て行った赤の騎士団についてなんだが…エステルは何か知ってるか? |
エステル | …! |
エステル | …わたしも詳しく知っているわけではありませんが、わかる範囲でならお話は出来ます |
エステル | 少し待っててください。門番の方に、みなさんをお城に入れてもらえるよう、話してきますから |
スレイ | …ルドガーさん、あの人と知り合いなんですか? |
ルドガー | ああ、前に会った事がある。彼女はエステル、この国の姫殿下だ |
ライラ | 王族の方ともお知り合い… |
エステル | すみません、今、警備がとても厳しくなっていて、建物への立ち入りは禁止されているそうなんです |
エステル | 代わりに外出の許可を得てきました。少し、場所を移しませんか? |
ルドガー | 構わないよ。ありがとう |
ミクリオ | …大丈夫なのか?王族間のいざこざに巻き込まれる可能性は── |
ルドガー | ミクリオの心配はわかるよ。そういう可能性も、あるかもしれない |
ルドガー | ただ、エステルは自分の危険を顧みず国民を救おうとする優しい人だ |
ルドガー | ここで彼女の話を聞いておくのはこの先、大きな意味を持つと思う |
スレイ | …あの、エステリーゼ様、オレ達まで一緒に行っちゃって本当に大丈夫ですか? |
エステル | あ、はい、大丈夫です。それと、私の事はエステルって呼んでください |
エステル | 親しい人達はみんなそう呼んでくれますから |
エステル | それではみなさん、こちらへ |
ルドガー | ああ、行こう |
scene1 | 心強い協力者 |
エステル | ──みなさんは晶化現象を調べているんですね |
スレイ | まだ動き始めたばかりだけど、それがきっかけでルドガーさんとも知り合ったんです |
ルドガー | それで、アスベル達に晶化現象の事と赤の騎士団の動向を聞こうと思って来たんだけど… |
エステル | そうだったんですね。…実は、アスベルとフレンは今、セルディク大公に謁見中なんです |
ミクリオ | 赤の騎士団の事で、だろうか |
エステル | はい…。この派兵を止めるよう、訴えるためでした。それなのに… |
パスカル | 派兵って…何だか物騒じゃない? |
ルドガー | さっき街中でどこかへ出向いて行く赤の騎士団を見かけた |
ルドガー | 周りの声援とは裏腹に、騎士団の面々はまるで戦いにでも向かうような顔つきだった |
エステル | …赤の騎士団の行先はおそらくシルヴァラントだと思います |
エステル | 大公殿下が「新たなる天啓が出現した」という報告を受けた直後の事ですから |
ライラ | 新たなる天啓…? |
ルドガー | それは…ついこの前、メルトキオで公開された天啓とは別の新しい天啓って事…か? |
エステル | はい。そう聞いています |
ミクリオ | 確かなのか?この前現れた天啓は百年ぶりだと聞いていたけど… |
ライラ | 私も、これほど短い期間に天啓の出現が続くというのは記憶にありません |
パスカル | セルディク大公はどこでその情報を手に入れたんだろ? |
エステル | 赤の騎士団の長を務めるカーツという人が持ち帰ったそうです |
ミクリオ | …あの男か。どんな人物なんだ? |
エステル | すみません。わたしもよく知らないんです |
エステル | ウィンドルへ来たのは最近の事だと聞きますし… |
スレイ | 他から移って来たばかりの人がいきなり騎士団の団長になるって… |
エステル | はい。普通は騎士団に長く勤めて功あった者から選ばれるのですが… |
エステル | 今回は、赤の騎士団を含め、大公殿下がお一人でお決めになったようなんです |
パスカル | うーん…。ますます怪しい… |
ルドガー | それで、天啓が現れたというのは本当なのか? |
エステル | それは…わたしにもわかりません |
エステル | 石碑の存在そのものが多くの謎に包まれていますし、どんな事が起こり得るのかまでは… |
ミクリオ | 気になるな。セルディクに情報をもたらしたカーツ自身は、そもそもどうやってその情報を得たのか… |
パスカル | 石碑が出現した事は確か神子だけが感じ取れるって話だったっけ |
スレイ | 普通に考えたら、神子本人か、その周りの人達から話を聞いたって事になるけど… |
エステル | 情報の出所はわかりません…。ですが、大公殿下が天啓に関心を持っている事は間違いありません |
エステル | おそらくカーツ団長は、石碑出現の真偽を確かめるために神子に会いに行ったのでしょう |
エステル | 石碑の捜索にも、天啓の読み解きにも、神子の存在は欠かせないそうですから… |
ルドガー | でも、どうしてそこまでして天啓を手に入れようとするんだ? |
エステル | 大公殿下によれば、天啓には未来の事が記されているそうです。だから次の天啓もきっとそうだ、と… |
エステル | 予め未来を知る事が出来れば、他国に対して優位に立てる、そう考えているんだと思います |
スレイ | そんな理由で、本当に騎士団を…? |
ライラ | 未来を知る…… |
ルドガー | 天啓の内容やその真偽はひとまず置いておこう。それより、正式な騎士団ではないとはいえ── |
ルドガー | ウィンドルの騎士団がシルヴァラントに向かったという事が大きな問題だ |
エステル | はい…。この事をシルヴァラント側がどう受け止めるか、とても心配です |
ミクリオ | 他国まで出向いて行くんだ。赤の騎士団が何もせず、大人しくしているとは考えにくい |
パスカル | 大公の考える事だもん。何が何でも手に入れようとしそうだね |
ルドガー | 二国の争いの火種になり兼ねない |
エステル | わたしもそれを懸念しています |
エステル | …ただでさえ今は、晶化現象やリチャード陛下の事でみんな、不安に思っているんです |
エステル | それなのに、こんな事をして何事もなく済むとは思えません。そう思って訴えたのですが… |
ライラ | …相手は、聞く耳を持ってはくれなかったのですね |
エステル | はい。それでフレン達がもう一度、大公殿下に直接訴えに行ったんです |
スレイ | そうだったのか… |
ルドガー | そうだ、エステル。リチャード陛下の具合はどうなんだ? |
エステル | それは…何とも言えません。未だに結晶を取り除くための方法も掴めていないようですし… |
パスカル | …そうなんだ…。やっぱり、何もわかっていないの? |
エステル | はい…。それに、事が事だからか研究も制限されているみたいで… |
ミクリオ | 下手な情報を外に漏らされてはいらぬ不安を抱かせてしまうかもしれないからね。理解は出来る判断だよ |
ルドガー | …王宮なら、何か晶化について情報があると思っていたんだが、エステルも知らないとなると… |
パスカル | うーん、何をどうすればいいんだろ… |
エステル | … |
ミクリオ | 新たな天啓…か |
ミクリオ | 晶化と天啓…あながち無関係じゃないかもしれない |
パスカル | どういう事? |
ミクリオ | …最近になって晶化現象が発生した事、立て続けに石碑が現れている事── |
ミクリオ | そして、天啓に記されていたと思われる出来事が、現実に起こってしまっている事… |
ライラ | それらがどこかで関連しているかもしれない、そうお考えなのですね? |
ミクリオ | ただの勘だけどね |
ルドガー | …よし。俺が赤の騎士団を追おう |
ルドガー | アスベル達には会えなかったけど、エステルからいろいろ聞けたし |
ルドガー | 何より今は赤の騎士団が気になる。動向を探って、場合によっては彼らを止めないと |
スレイ | ルドガーさん、オレ達も一緒に行きます |
ルドガー | スレイ、どうして君が? |
ミクリオ | 以前、スレイはシルヴァラントの神子と偶然行きあったらしい |
スレイ | 今起きてる事、早く教えてあげたいんです。コレットが危ないかもしれない |
ミクリオ | そうだね…。それに、赤の騎士団が動いている事がシルヴァラントで知れ渡ったら… |
スレイ | 一気に大きな騒ぎや、混乱になる事だってあるかもしれない。それだけでも心配だよ |
ミクリオ | おそらく、あのロイドが護衛役だ。戦いの心得はあるようだったけど、騎士団相手なら多勢に無勢だね… |
ルドガー | そうか、一緒に来てくれると心強いよ |
ルドガー | よし、行くと決まったら急ごう。赤の騎士団に追いつけなくなる |
エステル | 赤の騎士団を追う…。あの、でしたらわたしも一緒に行っては駄目でしょうか? |
エステル | わたしがカーツ団長に会って直接話をしてみます! |
ルドガー | エステル。赤の騎士団は俺達に任せて、君はここにいてくれないか? |
ルドガー | ここに残って大公の監視と説得を続けてほしいんだ |
エステル | でも…ルドガー、みなさん…。本当に大丈夫ですか? |
ルドガー | ああ。その代わり、ここで大公達の事を頼むよ |
エステル | …そう、ですね…。わかりました。赤の騎士団の事はみなさんにお任せします |
エステル | あ、そういえば、ルドガーはユーリの事もご存知です? |
ルドガー | 軽く面識がある程度だけど… |
エステル | 実は、赤の騎士団の件はユーリにも相談しているんです |
エステル | ユーリの事ですから、もしかしたらもう赤の騎士団の後を追って出かけたかもしれません |
エステル | もし会う事が出来れば、きっと力になってくれると思います |
ルドガー | そうか。ユーリに会えたら、エステルの事伝えてみるよ |
スレイ | ユーリ…。どんな人なんですか? |
エステル | そうですね、少し口が悪くて、素直じゃないところもありますけど…でも、とても頼りになる人ですよ |
エステル | きっと、みなさん方とも仲良しになれると思います |
ライラ | エステルさんがそこまで仰る方なら、きっと素敵な方なのでしょうね。お会い出来るのが楽しみですわ |
ルドガー | よし、じゃあそろそろ俺達も行こうか |
スレイ | はい! |
scene2 | 心強い協力者 |
ルドガー | ──エステル、見送りは大丈夫だ。君は王宮に戻った方がいい |
エステル | わかりました。みなさん…ありがとうございます。何とお礼を言ったらいいか… |
エステル | ユーリに会ったらよろしくと伝えてください |
スレイ | はい。必ず |
エステル | 本当にお願いするばかりで何も出来なくて…すみません |
ライラ | お気持ちはお察しします…。ですが、エステルさんだからこそ出来る事が、きっとあると思いますわ |
ルドガー | エステルは引続き、セルディク大公と国民の事を頼むよ |
エステル | …はい。大公殿下にはなかなかお会いしていただけないのですが…何とか頑張って説得してみます |
エステル | このままではリチャード陛下にも顔向け出来ませんから |
エステル | みなさんもどうか気をつけて。旅の無事をお祈りしています |
スレイ | ありがとう、エステルさん |
| |
スレイ | さてと、まずは宿に戻って出発の準備をしないと── |
ミクリオ | スレイ、一つだけ言っておく。君はまだ体調が万全じゃない…。止めはしない、だから無理もするな |
スレイ | サンキューな、ミクリオ。でも大丈夫!よく寝て、よく食べたし、バッチリだよ! |
ルドガー | ……! |
??? | … |
ルドガー | あの男… |
ルドガー | 待っ── |
??? | … |
ルドガー | …消えた? |
ライラ | ルドガーさん…どうされました? |
ルドガー | ああ、視線を感じて振り返ったら、一瞬だけど黒ずくめの男が見えた… |
ルドガー | 俺達の話を聞かれていたのかもしれない |
ミクリオ | …ずっと見張られていたのか? |
スレイ | オレ達の事をどこかの密偵だって思った、とか? |
ルドガー | エステルも王族の一人だからな…。セルディク大公も警戒しているのかもしれない |
| ガサッ |
パスカル | …!何の音!?例の覗き見さん…!? |
| |
| ガルルルル! |
ライラ | 魔物ですわ! |
scene1 | 黒い翼 |
ミクリオ | 魔物がこんなところまで…。晶化の影響か? |
ルドガー | 騎士団の警備も行き届いてなさそうだな |
ライラ | 私達を監視していた者の事は少々気がかりですが、早く街を発った方がよさそうですね |
スレイ | うん、早くコレットに知らせないと… |
ルドガー | シルヴァラントの神子…。確か、護衛が付いているって言ってたよな? |
ミクリオ | 正確には、昔からの友人、幼馴染という感じだったけどね。闘いの術は身につけていると思う |
ルドガー | それでも、危険な事には変わりないだろうな |
ミクリオ | 神子に接触を図るとすれば、赤の騎士団の行先はメルトキオで間違いないだろう |
スレイ | だな! |
パスカル | …ねえ、ごめん、みんな!あたし、エステルを追いかけていいかな? |
スレイ | どうしたんだ、急に…? |
パスカル | ここに残って、晶化現象の事、もっと調べたいんだ |
パスカル | エステルに頼み込めば、リチャードの近くに行って研究出来るかもしれない… |
パスカル | アスベル達とも約束したし、早くリチャードの事も何とかしてあげたいって思うから |
スレイ | パスカルがそうしてくれるなら、オレ達としても心強いよ |
パスカル | ありがとう、スレイ!絶対何か掴んでみせるよ! |
ルドガー | 別れるのは残念だけどエステルやアスベル達の力になってやってくれ |
パスカル | 任せて!何かわかったらすぐに知らせるよ。…って事で、これ、渡しとくね |
ライラ | これは、何かの機械…でしょうか? |
パスカル | うん、通信機だよ!これを使えば離れた場所にいても話が出来るんだ |
スレイ | 解析機とか、通信機とか…パスカルは何でも作れるんだな |
パスカル | まあね~♪てなわけで、はい。スレイに渡しとくね |
ミクリオ | その道具の使い方は? |
パスカル | んとね、このボタンを押すと話せてこっちのボタンをね、ピコピコポンだよ! |
スレイ | ぴ、ピコピコポン? |
ミクリオ | …すまない、もう少し詳しく説明してくれないか |
パスカル | えー。十分詳しいんだけどなぁ。えーっとね、ボタンを押している時に話が出来るのね、それから… |
スレイ | ふむふむ… |
ミクリオ | 操作そのものは単純なんだな |
パスカル | というわけで、よろしく!エステルに追いつかないと~ |
ライラ | パスカルさん、どうかお気をつけて |
パスカル | みんなも!またね~! |
ミクリオ | 嵐のように去って行ったな |
スレイ | ちょっとさみしいんじゃないか、ミクリオ? |
ミクリオ | そんなんじゃない。静かになったなと思っただけだよ |
ライラ | ふふ、賑やかな方でしたからね |
ルドガー | さあ、俺達もそろそろ行こう。赤の騎士団に追いつかないと |
ルドガー | …! |
ルドガー | あれは、さっきの…! |
ルドガー | みんな、すまない…!少しここで待っててくれ! |
スレイ | ル、ルドガーさん!? |
scene2 | 黒い翼 |
ルドガー | はあ、はあ… |
ルドガー | 間違いない、絶対にあの男だ… |
ルドガー | 何か理由があって俺達の話を聞いていたのか…?一体、何のために…? |
ルドガー | 確か、こっちの方へ来たはず──… |
ルドガー | …いた! |
ルドガー | 待て! |
??? | … |
ルドガー | お前は一体何者だ…? |
ルドガー | 俺達が話をしていた最中、誰かの視線を感じた。あれは、お前じゃないのか? |
ルドガー | 何が目的で俺達の話を聞いていたんだ? |
??? | … |
ルドガー | 答えるつもりはない、という事か…? |
ルドガー | 質問を変える。どうして今度は姿を消さず、俺の前に姿を見せたんだ? |
??? | …敢えて言うなら、お前達相手に姿を隠す必要はない、という事がわかったからだ |
ルドガー | …どういう事だ? |
??? | それ以上の答えなどない |
ルドガー | じゃあ、何故俺達の話を…?何か知りたい情報があったからじゃないのか? |
??? | 答える義理はない |
ルドガー | 待て! |
ルドガー | …!また消えた… |
ルドガー | あの機敏な身のこなし…何者なんだ? |
ルドガー | 姿を隠す必要はない…敵ではない、という事か…? |
ルドガー | … |
scene3 | 黒い翼 |
ライラ | ──あ、スレイさん!ルドガーさんがいらっしゃいました |
ルドガー | みんな…突然すまなかった |
スレイ | ルドガーさん、やっぱり… |
ルドガー | ああ、例の黒ずくめの男がいたんだ。気配を感じて咄嗟に追いかけたんだが… |
ルドガー | 結局詳しい事は何も聞き出せなかった |
スレイ | 立ち聞きされてたのは間違いないんですよね? |
ルドガー | ああ、おそらく |
ミクリオ | 正体は何だ?状況を考えれば、エステルを監視していた大公の密偵の線だけど… |
ルドガー | その可能性もなくもないが…「俺達に姿を隠す必要はなくなった」と言っていた |
ミクリオ | それは僕達の話を聞いて、敵ではないと判断した、という事か |
ルドガー | 断言は出来ない…。ただ、敵意は感じなかった |
ライラ | となると、全く別の勢力が遣わした者、という事になるのでしょうか… |
ルドガー | どうだろう…。とはいえ、正体がわからない以上警戒するに越した事はない |
ミクリオ | ああ。スレイ、念のためだ。さっきの通信機でパスカルにも知らせておこう |
スレイ | りょーかい。早速これが役に立つな |
ルドガー | 気を取り直して、俺達も出発しよう |
スレイ | はい! |
Name | Dialogue |
scene1 | 昼下がりの買い物 |
ジェイド | ──それにしてもセルディク大公の動きには驚かされますね |
ガイアス | … |
ジェイド | 新たなる天啓の出現… |
ジェイド | その内容も定かでない内に、奪取のために他国に兵を派遣するとは正気の沙汰とは思えません |
ジェイド | あるいは、知られていない何らかの情報を掴んでいる可能性もありますが… |
ガイアス | … |
ジェイド | シルヴァラントより公表された前回の天啓── |
ジェイド | その内容は、リチャード陛下の晶化を予知したものだという噂がまことしやかに囁かれています |
ジェイド | 察するに、今回の天啓もそうした未来を予知したものだと大公は考えたのかもしれません |
ガイアス | …そのようだな |
ジェイド | 陛下、一つお伺いしてもよろしいですか? |
ガイアス | …何だ |
ジェイド | 天啓が未来予知であるとの説、陛下はどうお考えですか? |
ジェイド | もし本当に天啓が未来を告げるようになったのだとしたら── |
ガイアス | 馬鹿げた事を言うな |
ガイアス | … |
ジェイド | 失礼しました。愚問でしたね |
ガイアス | いずれにせよ、天啓をあのような男に渡すわけにはいかない |
ガイアス | …ジェイド、例の準備は進めているか |
ジェイド | ええ、勿論抜かりはありません |
ジェイド | 必要な面々も戻って来た事ですし、ご心配には及びませんよ |
ガイアス | ふむ… |
ジェイド | では、私はこれで失礼いたします |
| |
ガイアス | … |
ガイアス | …断じて、セルディク大公の好きにはさせん |
| |
??? | ヴェイグ、待って。歩くのが早いわ |
ヴェイグ | すまない、クレア。つい、いつもの癖で |
クレア | ふふ、そうね。ヴェイグは昔から、歩くのが早かったものね |
ヴェイグ | … |
クレア | メルトキオまで買い出しする事になるなんてね。ヴェイグがついて来てくれて助かるわ |
ヴェイグ | クレアを一人で行かせるわけにはいかないからな |
ヴェイグ | …? |
クレア | ヴェイグ、どうかした? |
ヴェイグ | … |
クレア | あんなところにも、晶化現象が… |
クレア | …村の人に聞いたわ。ウィンドルの国王陛下にも晶化現象が起きてしまったって |
クレア | まさか人間にも発生するものだなんて思わなかったわ…。これから人にも広まってしまうのかしら |
ヴェイグ | ウィンドルの国王の件以来、その話は聞いていない。心配しすぎだ |
クレア | そう…よね。何事もなければいいのだけれど… |
| |
クレア | あ、街が見えてきたわ |
ヴェイグ | ピーチパイの材料はあるだろうか… |
クレア | ふふ、ヴェイグったら。大丈夫よ、今までメルトキオで、欲しいものが手に入らなかった事なんてないもの |
ヴェイグ | あそこは市場も盛んだからな。早いところ買い物を済ませよう |
クレア | ええ |
scene2 | 昼下がりの買い物 |
クレア | そんなにするんですか?どうしようかしら… |
ヴェイグ | どうした? |
| |
クレア | ピーチパイに使う白桃のシロップ漬けを買おうと思ったんだけど… |
クレア | 1500ガルドだと聞いて… |
ヴェイグ | 随分高いな |
クレア | でしょう?普段の倍もするから驚いて… |
商人 | 言っておくが、別にぼったくってるわけじゃねぇ |
商人 | 例の晶化現象って知ってるだろ?あれにうちが取り引きしてる農園がやられちまったんだよ |
クレア | まあ…。晶化現象が農園に…? |
商人 | 知り合いに頼んで、何とかモノだけは調達しているが、値段ばかりはどうしようもねえ |
商人 | これでも良心的なんだぜ。信じてくれ |
クレア | そんな事が起こっていたんですね… |
クレア | じゃあ…いいわ。白桃のシロップ漬けを一瓶ください |
商人 | 一瓶でいいのか?今後はもっと手に入りにくくなるかもしれねえよ |
クレア | ええ。買いだめしておきたかったのだけど、今日はこれだけにしておくわ |
クレア | もっと買いにくくなるかもしれないけど…だからこそ、買い占めるわけにはいかないわ |
クレア | だから、ごめんなさいヴェイグ。今回作れるピーチパイは、少し量が減ってしまうかもしれないけど… |
ヴェイグ | 今は事情が事情だ。オレは構わない |
商人 | すまないね |
| |
ヴェイグ | …これで買い出しは終わりか? |
クレア | ええ、そうね。一通りは揃ったかしら |
クレア | …それにしても、食糧が手に入りにくくなってしまうなんて… |
クレア | でも、植物が晶化するって事は、穀物や作物も当然そうなるって事よね |
クレア | 私、晶化現象の事を甘く考えていたのかもしれないわ |
ヴェイグ | クレア… |
ヴェイグ | とにかく、一度村へ帰ろう。今ここでオレ達が話したところですぐに解決出来る問題じゃない |
クレア | …それもそうね。わかったわ |
ヴェイグ | … |
scene1 | シルヴァラントの神子 |
クレア | あ…! |
ヴェイグ | どうかしたのか? |
クレア | ごめんなさい、ヴェイグ。お隣のおばさんに届け物を頼まれていた事をすっかり忘れていたわ |
クレア | 村へ帰る前に、寄り道してもいいかしら |
ヴェイグ | よし、行こう |
| |
クレア | 確か、この辺りにある家だったはず…。ええと、地図は… |
ヴェイグ | 表通りと違って静かだな。王宮のすぐ裏手だからか人の通りも少ない |
クレア | 住宅街みたいね。広場辺りとは違って閑静だわ |
ヴェイグ | …!? |
ヴェイグ | 何だ?向こうから誰か来る |
| |
シルヴァラント兵 | 神子様、お急ぎくださいませ |
??? | でも… |
シルヴァラント兵 | 陛下直々のご命令です。どうか… |
??? | ロイド…本当にいいのかな?私達だけで行っちゃって…ゼロスの事も── |
ロイド | あいつなら心配ないって。今頃一人でどこか安全な場所に身を潜めてるはずだ |
ロイド | 簡単に捕まるようなヘマはしないだろ。ゼロスの事を信じようぜ、コレット |
コレット | …うん |
シルヴァラント兵 | 神子様、急いでください。いつ追手が来るかわかりません |
シルヴァラント兵 | あなたの身に何かあっては国の一大事です |
ロイド | 本当かわからない情報でこの人数の護衛がつくのは少し大げさすぎる気もするけどな… |
ロイド | …ん?誰かいるぞ… |
ヴェイグ | …! |
シルヴァラント兵 | む?お前は何者だ?そこで一体何をしている |
ヴェイグ | ただの通りがかりだ。この近くに用があって── |
シルヴァラント兵 | 今の話を聞いていたのか?赤の騎士団ではなさそうだが… |
シルヴァラント兵 | 市民を装った刺客かもしれん。何かあってからではまずい… |
| |
シルヴァラント兵 | 捕えろ! |
ヴェイグ | 何だって? |
クレア | 待ってください!私達は本当にただの民間人です。刺客だなんて、そんな… |
シルヴァラント兵 | 女もいたのか…だが仕方がない。念のためだ、まとめて捕まえろ! |
ヴェイグ | やめろ!クレアに触るな! |
| |
ロイド | ちょっと待ってくれ! |
ヴェイグ | …!お前は… |
| |
ロイド | …やっぱり!ヴェイグじゃないか! |
クレア | ヴェイグ…あなた、この人と知り合いなの? |
ヴェイグ | ああ、確か… |
ロイド | この人は、俺の知り合いだ。刺客なんかじゃない。大丈夫だ |
シルヴァラント兵 | …そうでしたか。失礼しました |
| |
ロイド | 驚かせてごめんな、ヴェイグ。この人達もいろいろと事情があってさ… |
ヴェイグ | あ、ああ…すまない、お前は… |
ロイド | 俺はロイド。お前、覚えてるかなぁ…ヴィズリー遺跡の仕掛けの事で話を聞かせてもらった… |
ヴェイグ | 幼なじみを助けると言っていたな |
ロイド | そう、それ!あの時はありがとな!前に話してた幼なじみだけど、隣にいるコレットがそうなんだ |
コレット | えっと…こ、こんにちは |
クレア | こんにちは。私はクレア・ベネット。よろしく |
ヴェイグ | …そうか、無事だったのなら何よりだ |
| |
ロイド | 久しぶりに会えたし、いろいろと話したかったけど…急いで街を出ないといけないんだ |
クレア | 何かあったんですか? |
ロイド | …ヴェイグ達なら話しても大丈夫かな |
ロイド | ウィンドルの「赤の騎士団」が神子を狙っているという情報が入ってきたんだ |
ヴェイグ | 赤の騎士団…?さっきも聞いた名だが |
ロイド | ウィンドルのセルディク大公が作った新しい騎士団らしい |
クレア | 神子を狙うとはどういう事なんでしょう |
コレット | 天啓の石碑が新たに出現したんです |
クレア | 天啓?この前現れたのとは違うもの、という事ですか |
コレット | 赤の騎士団はそれを手に入れるため神子に必ず接触してくるって王様が… |
ヴェイグ | そうか、天啓の石碑を見つけるにも読むにも、神子が必要だからな… |
シルヴァラント兵 | 神子様、ロイド様。知人とはいえそれ以上は…。それにゆっくりしている暇はありません |
コレット | わかっています…。でもやっぱり、ゼロスが… |
ロイド | コレット、心配なのは俺も同じだ。だから、ゼロスの事は俺に任せてくれ落ち着いたら、俺が捜しに行く |
コレット | うん…ありがとう、ロイド |
ロイド | いろいろ騒がせてごめんな。先を急ぐから、俺達は行くよ |
ヴェイグ | …ああ |
コレット | またどこかで会えたらいいですね?さようなら、二人共 |
クレア | 気をつけて |
ヴェイグ | 行ったようだな |
クレア | コレットさん、大丈夫かしら…。神子だからって危険な目に遭うなんてかわいそうだわ |
ヴェイグ | ああ… |
クレア | それに、新しい天啓の石碑が現れたって…本当かしら。つい最近前回の儀式があったばかりよね |
ヴェイグ | あの時は百年ぶりという事もあって街ではかなり盛り上がっていたと聞いたが… |
クレア | 神子が言うのだから事実なんでしょうけど… |
ヴェイグ | クレア、オレ達も用を済ませて帰ろう。探していた家はどっちだ? |
クレア | 地図によると、こっちのようね |
ヴェイグ | よし、なら急ごう |
scene2 | シルヴァラントの神子 |
クレア | お届け物も無事届けた事だし、村に帰ったらピーチパイ作りに取りかかるわね |
ヴェイグ | そうだな。オレも何か手伝おう──… |
ヴェイグ | …? |
クレア | どうしたの、ヴェイグ |
ヴェイグ | …何だ、あれは…。こっちに向かってくる |
??? | … |
ヴェイグ | あれは騎士か…? |
街の男 | 見ろよ、あれ…。兵士を引き連れて…一体何事だ? |
街の女 | あの国旗…ウィンドルの騎士団じゃないのかい? |
ヴェイグ | ウィンドル…? |
| |
| ザッ、ザッ… |
??? | 私はセルディク大公の命を受け、ウィンドル王国の公用としてこのメルトキオを訪れた騎士団の者だ |
??? | 騎士団は見世物ではない。見物をしている者は早々に立ち去れ |
ヴェイグ | セルディク大公…という事は、彼らがロイド達の話していた赤の騎士団…? |
クレア | そうみたいね。でも…何かしら、怖いわ |
| |
| きゃあああ! |
ヴェイグ | …!何だ、今の声は…! |
クレア | ヴェイグ、あれを見て!魔物が…! |
| グオオオオッ! |
クレア | こっちに向かって来るわ…! |
ヴェイグ | 何故こんなところに…! |
街の男 | うわあああっ! |
街の女 | 助けてええっ! |
ヴェイグ | まずいな。みんなパニックを起こしている |
ヴェイグ | クレアは避難しろ。オレが魔物を… |
クレア | …! |
クレア | ヴェイグ!子どもが魔物に狙われて… |
男の子 | た、助けてー! |
| グオオオ! |
ヴェイグ | くっ…!させるか! |
クレア | あ、ヴェイグ…! |
??? | … |
scene3 | シルヴァラントの神子 |
ヴェイグ | …何とか間に合ったか。大丈夫か? |
男の子 | う、うん…ありがとう、お兄ちゃん |
クレア | ヴェイグ!よかった、二人共無事で… |
ヴェイグ | クレア…!避難しろと言っただろう |
クレア | 魔物はあなたが倒してくれたしもう大丈夫… |
クレア | …あら? |
男の子 | うう、ひっく… |
クレア | 少し膝を擦りむいたみたいね。念のため、消毒しておかないと── |
??? | …そこを退け |
クレア | え…? |
| |
??? | 大怪我でないなら、他で手当てをしろ。道の中央に居られたら邪魔だ |
ヴェイグ | なっ… |
??? | 二度は言わない |
クレア | ごめんなさい、今避けますから… |
??? | … |
ヴェイグ | … |
街の男1 | …聞いたか?今ここで何が起きたのかは、あいつらも見ていたはずなのに… |
街の男2 | ああ、あの三人は何も悪くない。人の国へ押し入って来たよそ者風情が、何を偉そうに…! |
街の女 | 公用だか何だか知らないけど、あの傲慢な態度は気に入らないね |
ヴェイグ | …クレア、移動しよう。その子はオレが抱える |
クレア | ありがとう、ヴェイグ |
シルヴァラント兵 | 何の騒ぎだ?……! |
シルヴァラント兵 | …失礼ながらお尋ねする。貴殿らは何者か。何用で我が王国に来たのだ? |
カーツ | 我々はウィンドル王国に所属する赤の騎士団。私は団長を務めるカーツ・ベッセルだ |
カーツ | 神子との謁見の場を設けていただきたい |
ヴェイグ | 神子… |
シルヴァラント兵 | 突然何を…。神子様と貴殿らを会わせる事は出来ない |
カーツ | 私はウィンドルの代表として、正式に要求をしている |
カーツ | 貴公に、それを拒む権限があるのか? |
シルヴァラント兵 | 何を… |
カーツ | …悪いが、貴公では話にならない。国王陛下と直接話をさせてもらおうか |
ヴェイグ | 兵士でもこの騒ぎを鎮める事は出来ないのか… |
クレア | ヴェイグ… |
??? | まあ…一体何事ですか? |
シルヴァラント兵 | あ、あなたは! |
| |
カーツ | 貴女は… |
フィリア | 初めてお目にかかります。神殿の司祭を務める、フィリア・フィリスと申します |
カーツ | その名前は、聞き覚えがある。天啓の儀式も執り行っていた方のようだが… |
カーツ | 我々が謁見を求めているのは司祭ではなく、神子だ |
フィリア | そうおっしゃらず |
フィリア | これでも微力ながら、国王陛下のご公務のお手伝いなどもさせていただいている身です |
カーツ | 国王陛下の手伝いを、か…。儀式だけを行うただの司祭ではないようだな |
フィリア | 司祭には違いありませんが…。まずは私がお話をお伺いいたしますわ |
scene1 | 対峙 |
クレア | ヴェイグ…さっきの子どもは? |
ヴェイグ | 大した怪我でなかったようだ。元気そうだったから、家に帰るように言っておいた |
ヴェイグ | あれがフィリア司祭…。確か、国王が病床に伏していた時に政務を代行していた人だ |
クレア | まあ、名前は知っていたけど、あんなに若い女性だったの…? |
| |
カーツ | ほう…それではまず、貴女にお話させていただこう |
カーツ | 私はカーツ・ベッセル。ウィンドル王国赤の騎士団の団長を務めている |
フィリア | ウィンドルからの使者の方ですね。本日はどういったご用件でしょうか |
カーツ | 新たな天啓が出現したとの情報を得た |
カーツ | 事の真偽と、天啓の内容の開示のため大公に代わり神子との謁見を要求する |
フィリア | 貴国がどのようにして、その情報を手に入れたかはわかりませんが── |
フィリア | 新たな天啓の石碑が出現した事は紛れもない事実ですわ |
カーツ | そうか…。ならば、その内容を知りたい |
フィリア | それは出来ませんわ |
カーツ | 何故だ?天啓は世界全体にまつわる星の記憶であり、シルヴァラント一国に属するものではない |
カーツ | 全ての国が、等しくその内容を知る権利があるはずだ |
フィリア | 天啓の石碑は、出現した事がわかっただけでまだ発見には至っておりません |
フィリア | 従って、天啓の読み解きに関してもこれから、という事になります |
カーツ | … |
フィリア | カーツ様の仰るように、天啓は誰もが知る権利を持つものです |
フィリア | 石碑を見つけ、儀式にて内容を読み解いた暁には、その全てを開示するとお約束しますわ |
カーツ | 儀式まで神子や石碑の所在を明かさないのは、独占しているのと変わりがないのではないか? |
フィリア | 私達は、天啓の石碑の出現を神のご意志と捉えております |
フィリア | そして、長きにわたりその伝統と儀式を守って参りました |
フィリア | そのため、天啓の読み解きや保管などは、これまでと変わらず我が国が主管出来ればと |
カーツ | …神子に会わせる気もなければ、今後も独占をしていく、というわけか |
フィリア | 独占をするために主管しているわけでも神子に会わせないわけでもありません |
フィリア | 当代の神子は、あくまで普通の方という事もありますし…ご理解いただけると幸いですわ |
カーツ | … |
ヴェイグ | ロイド達が話していた通りだな。赤の騎士団は何としてでも神子に会いたいらしい… |
クレア | いくら何でも、いきなりやって来て会わせろ、なんて乱暴だわ… |
カーツ | フィリア司祭…貴女は、この国にある疑念が向けられている事はご存知だろうか |
カーツ | 我が国では、国王陛下晶化の一件を受け、天啓に関する一つの認識が覆りつつある |
カーツ | 天啓は、過去の出来事を記したものではなく未来予知ではないのか、と… |
フィリア | … |
カーツ | …我々は、貴国に対しこう考えている |
カーツ | これまでにも、貴国の都合によって隠された天啓があるのではないか? |
カーツ | 過去に公表された天啓の内容も、実際に事が起きてから公表したのではないか? |
カーツ | 貴国には、天啓が未来予知である事を知りながらその事実を伏せ、情報を改ざんしている疑いがある |
カーツ | …故に、貴国の管理下において開示された天啓は信用出来ない、それが我が国の見解だ |
フィリア | そんな…! |
| |
ヴェイグ | 天啓が改ざんされた情報だって…? |
クレア | まさか、そんな事… |
フィリア | 神に誓って、そのような不正はございませんわ |
カーツ | 先の天啓の公表も、我が国の混乱を招く意図があっての事…そうも考えられる |
フィリア | ……!いいえ、決してそのような事は… |
カーツ | この目で見ない限りは信じるに値しない |
カーツ | 国王が晶化したという実害がある我が国には天啓を開示要求する権利がある… |
カーツ | それでも尚、我が国の要求を拒むようであればそれ相応の措置を取る事になる |
| ざわざわ… |
街の男 | 天啓の儀式に不正だって?そんな、まさか… |
ヴェイグ | 相応の措置って…武力を行使するって事か…? |
クレア | ヴェイグ… |
カーツ | …再度要求する。神子へ取り次ぎ願── |
| |
| ガツッ |
カーツ | …! |
クレア | 石…!?一体誰が… |
男の子 | 司祭様をいじめるな! |
| ヒュッ |
| |
| ガツッ |
クレア | ヴェイグ、あの子、さっきあなたが助けた子じゃない? |
ヴェイグ | 帰るように言っておいたのに… |
男の子 | お前なんか、出て行け! |
| ヒュッ |
| ガツッ |
カーツ | … |
フィリア | いけません、そんな事をしては…! |
赤の騎士団員 | 無礼者!団長に何をするか! |
クレア | やめてください! |
ヴェイグ | クレア! |
赤の騎士団員 | 貴様は… |
クレア | … |
scene2 | 対峙 |
ヴェイグ | クレア! |
赤の騎士団員 | 貴様は… |
クレア | … |
赤の騎士団員 | 女、そこを退け! |
クレア | 退きません…!この子に手荒な真似をするのはどうかやめてください |
ヴェイグ | クレア…!オレの後ろに下がるんだ |
クレア | …大丈夫よ、ヴェイグ |
クレア | 確かにこの子は、人に石を投げるという、してはいけない事をしました |
クレア | でも…だからといって、こんな小さな子どもに騎士が手を出していいはずがありません |
赤の騎士団員 | うるさい!黙っていればこの女…! |
ヴェイグ | 待て! |
ヴェイグ | クレアに手出しはさせない…! |
ヴェイグ | お前達は都合が悪くなると、すぐに武力に頼るのか? |
赤の騎士団員 | なっ… |
ヴェイグ | 神子の事にしたって同じだ。権利や便宜を主張し武力行使を仄めかしていたが── |
ヴェイグ | 武力を振るう事に正当な理由などあるわけがない。…争いが起きて、苦しむのは民衆だ |
| |
カーツ | … |
フィリア | … |
クレア | みなさん、ご自分の周囲を…隣の人の表情を見てください |
クレア | 原因不明の晶化現象に、新たに現れた天啓…。この世界は大きな問題に直面しています |
クレア | そして今、みなさん不安と疑いの表情でここに立っています |
クレア | …そんな時に、このような些細な事で争っていていいのでしょうか |
クレア | 争いで相手を制すやり方は、決して本質的な解決にはなりません |
クレア | こんな時だからこそ、国も、立場も越えて、お互いの手を取り合うべきではないでしょうか |
フィリア | クレアさん、ですね。あなたのお考えに、私も賛同いたしますわ |
カーツ | … |
フィリア | カーツ様、先ほどの男の子の非礼については私からもお詫び申し上げます |
フィリア | また、神子と話がしたいとの事ですが… |
フィリア | 神子はこの街にはおりません。これは偽りなき事実ですわ |
フィリア | 従って、ここで争う事は無意味です。恐縮ながら、お引取り願えませんか |
カーツ | … |
赤の騎士団員1 | いかがいたしますか、団長。神子がこの街にいないなどとは思えませんが… |
赤の騎士団員2 | 私も同感です。あのような虚言に惑わされては…! |
街の男 | 司祭様が嘘をつくはずないだろ!馬鹿な事言ってねえで、とっとと出て行きやがれ! |
街の女 | そうよそうよ! |
民衆 | かーえーれ!かーえーれ! |
カーツ | … |
赤の騎士団員1 | くっ…おのれ。こちらが大人しくしていれば… |
赤の騎士団員1 | お前達、いい加減にしろ。さもないと… |
| スチャッ |
ヴェイグ | 剣を抜く気か…!? |
フィリア | いけません、それだけは! |
カーツ | よせ、お前達── |
??? | ワウッ! |
赤の騎士団員1 | うわっ!? |
ヴェイグ | 犬…!? |
??? | ナイスだ、ラピード |
??? | やれやれ、騎士ってのはいつから市民相手に剣を振り回すのが仕事になったんだ? |
ヴェイグ | 誰だ…? |
カーツ | お前は…ユーリ・ローウェルか |
カーツ | 元ウィンドル騎士団員だったな。お前がここにいるという事は、……エステリーゼ殿下か |
ユーリ | …訳知りってわけか。ま、なら話が早い |
ユーリ | もう少しお前らの様子を見てるつもりだったんだが、生憎そうもいかなくなっちまった |
ユーリ | これ以上、おいたするつもりならまずはオレの相手をしてもらうぜ |
ラピード | ワンッ! |
ユーリ | おっと、悪い悪い。ラピード、お前もだな |
カーツ | … |
赤の騎士団員2 | 一民間人が我々に楯突くとは…!どけ!どかぬなら──! |
カーツ | …待て |
ユーリ | …! |
カーツ | 神子がいないこの街にこれ以上留まる理由はない。撤退するぞ |
赤の騎士団員2 | しかし団長…!神子不在の情報も確かなものだとは… |
カーツ | …あの情報は確かなものだ。司祭の目を見ればわかる |
カーツ | …それに、一定の成果は得られた。これ以上の長居は無用だ |
カーツ | 行くぞ |
| ザッ、ザッ、ザッ |
| |
クレア | 行ったみたいね…よかった |
ヴェイグ | ああ… |
scene1 | クレアの想い |
クレア | …ぼく、大丈夫だった? |
男の子 | うん… |
クレア | 怪我がなくてよかったわ |
クレア | でも、人に向かって石を投げるのはよくない事だわ。もうしないって約束出来る? |
男の子 | …わかった、約束する |
クレア | ふふ、いい子ね |
フィリア | ヴェイグさん、クレアさん、先ほどは本当にありがとうございました |
クレア | いえ、私達はただ思った事を言っただけです。ね、ヴェイグ? |
クレア | …あら? |
| |
ヴェイグ | …ユーリと言ったか |
ユーリ | ん? |
ヴェイグ | オレは、ヴェイグ・リュングベル。さっきは助かった、ありがとう |
ユーリ | 別に何もしちゃいないさ。それより、さっきのお前らだ。見てたぜ、演説 |
ユーリ | お前らの声がみんなを動かした。大したもんだ |
ヴェイグ | いや、オレは何もしていない。あれはクレアのお蔭だ |
ユーリ | 何にせよ、あんな連中相手に真向から一席ぶつなんざ、相当肝が据わってんな |
ヴェイグ | ああ。だが、だからこそ放っておけないんだ |
| |
クレア | ヴェイグ!と、あなたは先ほどの… |
ユーリ | お、噂をすれば… |
クレア | さっきは助けてくださって、ありがとうございました |
フィリア | ユーリさん、私からもお礼を。あなた方がいなければ、事態は悪化していた事でしょう |
フィリア | 街の人達も、みなさんにお礼を言いたいと仰っています |
ユーリ | 気にすんなよ。それにそもそもあいつら、オレの国のモンだ。威張れた話じゃないんでね |
フィリア | まあ、そう仰らず。あちらで街の人達がお待ちしています |
クレア | …こう言ってくださってるし、行きませんか? |
ラピード | ワフッ! |
ユーリ | …ったく、堅苦しいのは苦手なんだがな |
フィリア | ふふ。では、こちらへ |
ヴェイグ | …わかった |
scene2 | クレアの想い |
ヴェイグ | … |
街の男1 | あ、来たぞ! |
街の女1 | さっきはありがとうね。兵士がやって来て怖かったけどあんた達のお蔭で救われたよ |
街の女2 | あなた、こんなに華奢なのに騎士団に立ち向かうなんて勇気があるねえ。かっこよかったよ |
クレア | みなさん…ありがとうございます |
街の男2 | あんた達の話を聞いて、俺達もいろいろ考えさせられたよ |
街の男1 | 今は、こんなちんけな事で争ってる場合じゃねえ、みんなで協力しなきゃってな |
クレア | そうですね、みなさん、今は不安でいっぱいだと思います |
クレア | 不安で、怖いからこそ、衝突してしまう事、混乱してしまう事もあると思いますが── |
クレア | 一人でも多くの人が、わかり合おうとする気持ちを持てば、争わなくたって解決出来ると思うんです |
フィリア | …そうですね。クレアさんの仰る通りだと思いますわ |
ユーリ | あの赤の騎士団の連中にも少しは響いてるといいんだがな |
ユーリ | ま、何はともあれ大事にならなくてよかったぜ |
ヴェイグ | そうだな |
男の子 | ワンちゃん、お前も助けてくれてありがとな |
ラピード | ワンッ! |
ヴェイグ | …ん?ラピードは人の話がわかるのか? |
ユーリ | どうだかな |
街の女3 | みなさん、本当にありがとうございます |
フィリア | 私も国を代表してお礼申し上げますわ |
ヴェイグ | 礼を言われるほどの事ではないが… |
ユーリ | 素直に受け取っておけって |
| |
??? | あーあ…せっかく面白いものが見れると思ったのにー…つまんないの |
??? | そう思わない、デクス? |
デクス | そうだね、アリスちゃん。ったく、あいつは何だって… |
デクス | …まあいい。安心してよ、オレなら大丈夫さ! |
デクス | キミの王子様、デクスがその願いをかなえてあげるよ! |
アリス | わかったから、近寄らないで!その香水、相変わらず臭いんだからにおいが移っちゃう |
デクス | 臭い…… |
デクス | って、アリスちゃん!?どこに行くんだ |
アリス | …ふふ♪アリスちゃん、いい事思い付いちゃった |
デクス | いい事…? |
アリス | そう、い・い・事♪ |
アリス | 元はと言えば、全部あの女…… |
アリス | …アリスちゃん、ああいう、キレイ事ばっかりな女だーい嫌いなの |
アリス | だからちょーっと、可愛がってあげようかなぁと思って。うふふ… |
scene1 | 忍び寄る二つの影 |
フィリア | ──それでは、みなさん。国王陛下への報告もありますので私はこれで… |
ユーリ | 一人で大丈夫か? |
ユーリ | 兵隊さんも赤の騎士団見張りに行っちまったし、なんなら送るぜ? |
フィリア | まあ…、ありがとうございます。でも、一人で大丈夫ですわ |
ヴェイグ | いや、あんな事があった後だ。用心した方がいいだろう |
ヴェイグ | オレ達も同行しよう |
フィリア | そうですね、では、お言葉に甘えさせていただきますわ |
女の子 | 司祭さまー |
フィリア | あら、あなた達…どうしたんですか? |
女の子 | いつもみたいに、面白いお話聞かせてー |
男の子1 | ぼくも聞きたい! |
男の子2 | ぼくもぼくもー! |
ヴェイグ | …大人気だな |
クレア | 司祭様は、街の人にとても慕われているのね |
フィリア | そうですね、お話したいのは山々なのですが… |
ユーリ | お前ら、司祭様はこれから王様んとこに行くんだとよ。お話はまた今度にしてやってくれ |
男の子1 | ええー |
女の子 | でも、司祭様のお話聞きたいよ… |
クレア | 無理を言って、困らせてはいけないわ |
クレア | …そうだわ。代わりに、お姉ちゃんがみんなにお話をしてあげましょうか? |
男の子2 | 本当!? |
ヴェイグ | クレア…いいのか? |
クレア | 私達の用は済んでるし、あなたが司祭様をお見送りするまで時間があるわ |
クレア | それに見て、この子達。こんなにも期待に目を輝かせているのよ? |
男の子1 | お姉ちゃん、こっちこっち。こっちでお話しして |
クレア | …はいはい、すぐ行くわ。ちょっと待ってね |
フィリア | すみません、クレアさん。お手数をおかけしてしまって |
クレア | いいえ、いいんです。自分で言い出した事ですし |
クレア | そういうわけだからヴェイグ、この辺りにいるからまた後で落ち合いましょう |
ヴェイグ | わかった。すぐ戻る |
フィリア | クレアさんは、本当にお優しい方ですね |
ヴェイグ | …ああ |
ユーリ | んじゃ、早いとこ王様のとこに行くとしようぜ。行くぞ、ラピード |
ラピード | ワウッ! |
フィリア | ありがとうございます。では、私達も参りましょうか |
scene2 | 忍び寄る二つの影 |
フィリア | ユーリさんはエステリーゼ殿下のご指示でメルトキオまで? |
ユーリ | 指示っていうか相談されたんだよ。何かキナ臭い連中が動いてるんで気になるってな |
ユーリ | で、そいつらがいきなり出かけるってんで、大慌てで後を追っかけて来たってとこだ |
ヴェイグ | ユーリ、お前はウィンドルの人間、赤の騎士団側の人間だろう? |
ヴェイグ | 彼らの邪魔するような事をして大丈夫だったのか? |
ユーリ | おいおい、確かにオレはウィンドルの人間だが、あいつらの仲間呼ばわりはご勘弁願いたいね |
フィリア | …ウィンドルの中でも、混乱があるようですね |
ユーリ | オレも詳しくは知らないんだけどな。そういや、さっき神子は街を出たって言ってたが、ありゃ本当なのか? |
フィリア | はい、セルディク大公が天啓に強い関心を示しているという情報が入ってすぐ── |
フィリア | 国王陛下が神子の二人の身を案じて昨晩、避難を命じられました |
フィリア | 恐れていた事態が、これほど早くに起こるとは、想定外でしたが… |
ユーリ | 二人?神子ってのは二人もいんのか? |
フィリア | ええ、天啓にまつわる特殊な力を持つ神子は二人います |
ヴェイグ | そういえば、そんな事を言っていたな… |
ヴェイグ | でも、一人は別行動を取っているようだが、そっちは大丈夫なのか |
フィリア | …!ヴェイグさん、それは本当ですか? |
ヴェイグ | あ、ああ。知らなかったのか?実は、少し前に── |
フィリア | まさか、ヴェイグさんがコレットさんとお会いしていたなんて |
ユーリ | オレとしちゃ、あのゼロスの奴がそんな特別な存在だったって事の方が衝撃だけどな |
フィリア | 私はてっきり、ゼロスさんはコレットさん達と一緒に街を出たものだと… |
ヴェイグ | ゼロスっていう奴にはロイドみたいな護衛や見張りはついていなかったのか? |
フィリア | 神子の保護命令が出たのはつい昨晩の事ですから… |
フィリア | 今日、街を出る手筈になっていましたので、夜明け前にお一人で出られたのかもしれません |
ユーリ | おいおい、向こうにしてみりゃどっちか捕まえれば済むんだろ?何考えてんだ、ゼロスの奴 |
ユーリ | あのカーツって奴の様子じゃ、セルディクは天啓の解読にだいぶご執心みたいだし |
フィリア | ゼロスさんが心配です。すぐに国王陛下にお伝えしなくては |
ユーリ | ま、そうは言ってもゼロスはあれで剣の腕も立つ。そう簡単に捕まらないとは思うぜ |
ユーリ | もう一人の…コレットだったか?そっちもロイドがついてるんならとりあえず、大丈夫だろうが… |
ユーリ | そのコレットの居場所が赤の騎士団には見つからない自信はあんのか? |
フィリア | ええ、詳しくはお話し出来ませんがまず見つかる事はないかと |
ヴェイグ | とはいえ、絶対に安全という事はない |
ユーリ | だな。あの赤の騎士団どもが次に何をやらかすつもりか、目を離さない方がよさそうだ |
ラピード | ワンッ |
| |
フィリア | ──それでは、私はここで。お見送りありがとうございました |
フィリア | いろいろとお話も聞けてよかったですわ。早く国王陛下にお伝えしないと |
フィリア | クレアさんにもよろしくお伝えください |
ヴェイグ | わかった、伝えておこう |
ユーリ | オレんとこのもんが迷惑かけて悪ぃが、またその内話を聞かせてもらえると助かる |
フィリア | はい。私に出来る事でしたら、協力は惜しみませんわ |
ヴェイグ | ユーリ、お前はこれからどうするんだ? |
ユーリ | そうだな。何をするにしたって、もう少し情報が欲しいとこだが… |
ユーリ | このまま赤の騎士団を追ってみるか、それとも一度バロニアに戻るか…ま、そんなとこだ |
ヴェイグ | そうか… |
ユーリ | にしても、新しい天啓とはな。こちとら晶化現象だけで満腹だってのに迷惑なこった |
ヴェイグ | カーツという男が言っていたが、天啓が未来予知というのは本当なのだろうか |
ユーリ | どうだろうな。前回の天啓とリチャード王の件を結び付けたがってる奴は多いみたいだが |
ヴェイグ | だが、ウィンドルは…いや、セルディク大公はそう考えているから神子を探しているんだろう? |
ユーリ | カーツって奴の言葉を信じるならそういう事になるんだろうな |
ユーリ | ああいう手合いの事だ、大方予め未来を知る事が出来りゃ何かと好都合とか思ってんのかもな |
ヴェイグ | そういう事か… |
男の子 | あ、いた!三つ編みのお兄ちゃん! |
ヴェイグ | お前は…クレアと一緒にいた… |
ユーリ | 血相を変えてどうした。何かあったのか |
ラピード | グルル… |
男の子 | お姉ちゃんが…お姉ちゃんが… |
ヴェイグ | …!?クレアがどうかしたのか |
| |
男の子 | …さらわれちゃったんだ! |
男の子 | おかしな男の人と女の人が突然来て… |
ヴェイグ | 何… |
ヴェイグ | どういう事だ…誰にだ!?何故… |
ユーリ | 落ち着け、ヴェイグ! |
ユーリ | …おかしな男と女ってのは何もんだ?赤の騎士団とは違うのか? |
ラピード | …! |
ラピード | ガウッ! |
ユーリ | どうした、ラピード? |
| ガルルル! |
ユーリ | くっ…!こんな時に魔物か! |
scene1 | 追跡 |
ヴェイグ | クレア!いたら返事をしてくれ! |
ヴェイグ | 本当にクレアはこの森にいるのか…? |
ユーリ | 気持ちはわかるが慌てんなって。どうだ、ラピード? |
ラピード | クゥン… |
ヴェイグ | …?ラピードが立ち止まって… |
ユーリ | どっちに向かうか熟考中ってとこみたいだな |
ユーリ | このハンカチの匂いをたどってここまで来たわけだが…犬の鼻でなくとも、ひでえ匂いだなこりゃ |
ラピード | ウルルル… |
ヴェイグ | かなり迷っているようだが大丈夫なのか…? |
ユーリ | いい加減な判断でオレ達にハズレつかませたくないんだよ |
ユーリ | だろ、ラピード |
ラピード | ワウッ! |
ヴェイグ | …ラピードが動き出した |
ユーリ | そうこなくっちゃな。よし、オレ達も追おうぜ |
| |
ユーリ | あの子どもの話だと、おかしな男女の二人組が現れて、クレアをさらったって事だったが… |
ユーリ | そいつらに心当たりは? |
ヴェイグ | …いや、見当もつかない。さらわれる理由なんてあるはずもない |
ユーリ | となると、手がかりはこの香水だか何だか知らないが、ひでえ匂いのハンカチだけか |
ユーリ | いかにも見つけてくれって感じで落ちてたわけだが、だとすると連中の狙いは… |
ヴェイグ | 誰であろうと許しはしない…!クレアは必ず救い出す |
ヴェイグ | クレアは…オレにとって家族も同然なんだ |
ヴェイグ | 子どもの頃に両親を亡くし、育ての親でもある祖父とも死別したオレは── |
ヴェイグ | クレアの家に引き取られて、以来、実の子ども同様に育ててもらった |
ヴェイグ | だから、失うわけにはいかないんだ。絶対に… |
ユーリ | …なるほどな |
ユーリ | …よし、ラピード。ペースを上げられるか? |
ヴェイグ | …? |
ユーリ | オレ達は勝手についてくから、お前は全力疾走で頼む |
ラピード | ワウッ!! |
ヴェイグ | …突然どうしたんだ |
ユーリ | なに、お前の熱さにちっとばかしあてられた、ってとこだ |
ユーリ | 急げる限り急ぐ。その代わり、遅れるんじゃねえぞ? |
ヴェイグ | ユーリ… |
ヴェイグ | …ああ、急ごう! |
scene2 | 追跡 |
アリス | 街の中と違って、草木がたくさんある森の中はだいぶ晶化現象が進んでるのね |
アリス | キラキラしてとってもキ・レ・イ♪ |
デクス | うんうん、宝石のようでキレイな…まるでオレのアリスちゃんみたいだ! |
アリス | うるさい!バカデクス! |
アリス | いくら宝石みたいにキレイでも、こんなのと一緒にされてアリスちゃんが嬉しいわけないでしょ |
デクス | ご、ごめんよアリスちゃん! |
アリス | そんな事より、ちゃんとクレアちゃんを見張ってなさいよ。大事な大事なエサなんだから |
デクス | 大丈夫だよ、ちゃーんと手足を縛って動けなくしてあるからさ! |
クレア | … |
アリス | そ、ならいいけど。それよりクレアちゃんのお友達の方は大丈夫なの? |
デクス | 心配無用だよ。とっておきの証拠を残してきたんだ |
アリス | とっておき? |
デクス | ああ!魅惑の香水「メロメロコウ」を染み込ませたハンカチさ |
アリス | え~!?そんなので本当に上手くいくの? |
デクス | 大丈夫!オレのかぐわしき香りにメロメロになったあいつらが、もうすぐここに── |
| |
ラピード | ガウッ! |
アリス | あ…! |
ヴェイグ | クレア! |
クレア | ヴェイグ! |
ユーリ | おかしな男女の2人組、ね。クレアをさらったのはこいつらか |
アリス | あら?本当に来ちゃった♡ |
デクス | はっはっはっ!な、アリスちゃん、言った通りになっただろ? |
アリス | だから…デクスは臭いから近寄らないでって何回言ったらわかるのよ! |
ユーリ | 何なんだ、こいつらは?赤の騎士団とも違うみたいだが |
ヴェイグ | 覚えのない顏だ。それより──… |
ヴェイグ | クレア! |
アリス | ダ・メ! |
アリス | ヴェイグちゃん、だっけ?勝手に動かないでね |
アリス | アリスちゃん、こういう可愛い女の子の腕をへし折るの、だーい好きなの♪ |
ヴェイグ | くっ…! |
アリス | …それにしても、意外と来るのが早かったわね。アリスちゃんびっくりしちゃった |
アリス | そんなにもクレアちゃんが大事?のこのこと、こんなところまで来るなんて、本当おバカさん♪ |
ヴェイグ | クレアに手を出すな! |
ユーリ | どこの誰だか知らねえが何が狙いだ?まさかオレらを誘き出すため、とか言わねえよな |
アリス | ご名答♪ |
ヴェイグ | …なら早く、その目的を言え |
アリス | …ズバリ言うと、メルトキオ襲撃!ぐっちゃぐちゃにしてほしいの♪ |
ユーリ | メルトキオを… |
ヴェイグ | ぐちゃぐちゃに、だと…? |
ラピード | クーン |
アリス | クレアちゃんを返すか・わ・り♪あの子が無傷で助かるんだったら、ヴェイグちゃんも嬉しいでしょ? |
ヴェイグ | …馬鹿な!そんな事出来るはずがない |
デクス | アリスちゃんがやれって言ったらやるんだよ。この女がどうなってもいいのか! |
ヴェイグ | くっ… |
クレア | ヴェイグ、駄目!この人達の言う事を聞いちゃ… |
デクス | おーっと!人質は口を挟まない方がいいぜ? |
| ジャキ…! |
クレア | …っ! |
アリス | あんまりギャーギャーうるさいと…無傷でヴェイグちゃんのところに返してあげないわよ? |
ヴェイグ | やめろ! |
ラピード | グルルッ… |
アリス | ほーら、どうするの?クレアちゃんの事返してほしい?それとも、このまま見捨てる? |
アリス | …大人しく従うしかないと思うけど♪ |
ヴェイグ | くっ…! |
ユーリ | で?具体的に何をすりゃいいんだ? |
ユーリ | 国王でも暗殺すりゃ満足か?それとも、ご希望でもあんのか? |
クレア | …! |
ヴェイグ | ユーリ…!お前正気か!? |
ユーリ | しょうがねえだろ。やらなきゃ、クレアが無事に返ってこねえってんだから |
ヴェイグ | クレアは勿論救いたい、だが、街を襲撃する事なんて── |
ユーリ | …ま、取りあえず適当に合わせとけって |
ヴェイグ | …? |
アリス | ユーリくん、ね。案外話のわかる男じゃない。そういう人、アリス嫌いじゃないカモ |
デクス | なっ…アリスちゃん!?ユーリ、てめぇ!アリスちゃんにはこのオレが…… |
アリス | デクス、うざーい。ちょっと静かにしててくれるかな |
デクス | ご、ごめんよ… |
アリス | そうね~。今のユーリくんの案もすーっごくステキなんだけどー… |
アリス | …とにかく、街も人もみーんなぐっちゃぐちゃにしてくれたらそれでいいかなぁ♪ |
アリス | 憎しみの感情が生まれたら、後は勝手に争いを広げてくれる……人間ってそういうものだから♪ |
ヴェイグ | 争いの拡大…それが本当の狙いか… |
ユーリ | …なるほどな |
アリス | ふふ、物分かりがいいのね?じゃあ、とっとと行きなさ── |
デクス | …!アリスちゃん、危ない!! |
アリス | …! |
| バシッ! |
ユーリ | ちっ… |
アリス | ふう、あっぶな~い!ギリギリセーフ… |
アリス | …アリスちゃんを騙したのね?そういう悪いコ達は許さないわよ。デクス!その子を── |
ヴェイグ | させるか! |
| ガキン! |
デクス | くっ…! |
クレア | ヴェイグ! |
ヴェイグ | クレア、今行く! |
デクス | 行かせねえぞ! |
ラピード | ガウッ!! |
デクス | うわっ…! |
ヴェイグ | クレア…!今縄を切るからな…! |
ヴェイグ | よし、立てるか!?行くぞ! |
クレア | え、ええ…! |
ユーリ | どうやら上手くいったみたいだな |
ラピード | ワフッ |
クレア | ラピードのお蔭よ。ありがとう |
ユーリ | ヴェイグ、ナイスだったぜ |
ヴェイグ | …いや、礼を言うのはこっちだ。奴らに隙が出来たのは、お前の策のお蔭だ |
アリス | も~!デクスったら何やってるのよ、みすみす彼女を逃がすなんて…! |
デクス | くっ、アリスちゃんの前でよくも…大恥かかせやがったな!絶対に、許さねえ! |
ヴェイグ | それはこっちの台詞だ…!覚悟するんだな |
| チャキ… |
デクス | アリスちゃんは下がってて、ここはオレがやる |
デクス | …お前ら、全員あの世行きだぁ! |
ヴェイグ | …さっさと来い! |
scene1 | 悲嘆の結晶 |
デクス | はあ…はあ… |
ヴェイグ | はあ…はあ… |
アリス | あらあら、デクスと互角に渡り合うなんて… |
デクス | ハッ、ただのでくの坊じゃなかったか |
デクス | だが、まだまだだ!デクスさまの実力はこんなもんじゃ… |
アリス | …そこまでよ |
デクス | アリスちゃん!?何で…!? |
アリス | もう十分楽しんだじゃない。ぐずぐずしてるとあの人に叱られちゃう |
デクス | …アリスちゃんがそう言うならお前達、アリスちゃんに感謝しろよ! |
ヴェイグ | 待て!逃げる気か? |
アリス | …逃げる?バカ言わないで。ヴェイグちゃん達に、少しの猶予をあげるだけ♪ |
ヴェイグ | … |
アリス | あなた達とはまた会いそうな気がするわ |
アリス | …その時は、今度こそこのアリスちゃんが天国に連れて行ってあ・げ・る♡ |
アリス | さ、デクス。行くわよ |
デクス | アリスちゃんとならどこへでも! |
| |
ユーリ | やれやれ、勝手に手を出してきて勝手に引き上げていきやがった。何だったんだ、あいつら |
ヴェイグ | クレア、大丈夫か…? |
クレア | ええ、平気よ。助けに来てくれてありがとう |
クレア | ユーリさんに、ラピードまで…。巻きこんでしまってごめんなさい |
ユーリ | 気にする事はねえさ。悪いのは全部あの馬鹿どもだ |
クレア | そうだわ…私と一緒にいた子ども達、あの子達は無事なのかしら…? |
ヴェイグ | ああ、心配ない。ついでに言うと、その子達がオレ達にクレアの事を知らせてくれたんだ |
クレア | まあ、そうだったの…。無事で安心したわ |
ユーリ | にしても、あいつら一体何者だ? |
ユーリ | 無茶振りしてきた割にはヴェイグに敵わないとみるとあっさり身を引きやがった |
ユーリ | それに、あの人がどうとかって誰か裏にいるような口ぶりだったが… |
ヴェイグ | 自分達ではなくオレ達にメルトキオを襲撃させようとしたのも解せない |
ヴェイグ | 争いの拡大とか言っていたが…どういう事だ |
ユーリ | ただの人さらいとはちっとばかし違うみたいだし、しばらく用心した方がいいかもな |
ヴェイグ | ああ |
ユーリ | ま、何にせよだ。一旦メルトキオへ戻るとすっか |
クレア | それがいいと思うわ。子ども達も早く安心させてあげたいし |
ヴェイグ | …クレア、歩けるか |
クレア | ええ、大丈夫よ |
クレア | あ…! |
クレア | ごめんなさい。少しだけ待っててもらえるかしら?髪飾りを落としたみたい |
クレア | きっとそこの小屋の中だわ。最初あそこに連れて行かれたの。急いで取ってくるわね |
ヴェイグ | … |
ユーリ | 彼女、縛り上げられてた割には特に怪我もなかったみたいでよかったな |
ヴェイグ | 街での騒動といい、助けられてばかりだな。お前達には本当に感謝している |
ユーリ | よせよ、お互い様って奴だ。街ではオレも、助けてもらったようなもんだしな |
ラピード | ウウウ…! |
ヴェイグ | …ラピード、どうかしたのか? |
| |
ラピード | ウウウウウ…! |
ユーリ | …気をつけろ。何か様子がおかしい |
ヴェイグ | クレアは… |
ユーリ | …そう言えば、ちっとばかし時間がかかりすぎだな |
ヴェイグ | ちょっと様子を見て来る |
| |
ヴェイグ | …クレア、髪飾りは見つかったのか? |
ヴェイグ | ……妙に静かだな |
ヴェイグ | クレア、一体何をして── |
ヴェイグ | …! |
ヴェイグ | あ… |
| |
ヴェイグ | そんな……嘘だ… |
ヴェイグ | クレ…クレ…ア…… |
クレア | … |
ヴェイグ | クレアーーーーーーーーーッ!! |
scene2 | 悲嘆の結晶 |
スレイ | ──街の人の話だと、多分こっちの方向で合ってると思うんだけど… |
ミクリオ | やはり赤の騎士団は動いていたね |
ミクリオ | 早々に街中で騒ぎを起こすなんて、一体何を考えているのか… |
ライラ | はい。エステルさんが懸念していた通りになってしまっています |
スレイ | 結局オレ達は入れ違いになっちゃったけど… |
ルドガー | 話を聞く限りでは、大事に至る前に収束したみたいだ |
ミクリオ | 事を鎮めたのは、男女二人組と後から加わった黒髪で長髪の男。それと犬一匹、か── |
ルドガー | おそらく、聞いた外見からするとその黒髪の男というのがユーリの事だと思う |
ミクリオ | 真っ向から騎士団と対峙するなんてその人間も随分命知らずみたいだね |
ライラ | …そういえば、一番初めに騎士団を止めようと飛び出したのは一人の女性だったとか |
ミクリオ | 怪我人が出てなくて本当によかったよ |
ミクリオ | でも、その後に慌てて街を出て行ったっていうのは… |
ルドガー | 何事もない事を祈るが… |
ルドガー | とにかく、ユーリに追いつこう |
ライラ | …? |
ライラ | みなさん、待ってください。何か音が聞こえませんか? |
ミクリオ | …本当だ。この鈍い音は一体… |
ルドガー | あの小屋からか? |
スレイ | 何かあったのかもしれない…行ってみよう! |
ルドガー | ああ…! |
scene1 | 決意の時 |
ヴェイグ | クレアーーーーーーーーーッ!! |
ユーリ | !?ヴェイグ!? |
ラピード | ウウ…! |
ユーリ | ちっ…! |
| |
ユーリ | ヴェイグ、どうした、一体何が──… |
ユーリ | …!こ、これは… |
ラピード | ウウウ… |
| |
クレア | … |
ヴェイグ | … |
ユーリ | マジかよ…。たったあれだけの間に晶化しちまったってのか…? |
ヴェイグ | クレア… |
ヴェイグ | …くっ! |
ユーリ | 待てよ、ヴェイグ。何をする気だ! |
ヴェイグ | 決まっている、クレアをここから出すんだ!今助けてやる…! |
| ガツッ! |
| ガツッ! |
ユーリ | やめろ、ヴェイグ!中のクレアまで傷付くかもしれねえだろ! |
ヴェイグ | だが…! |
ヴェイグ | くっ…!欠ける事すらしない…! |
ラピード | クーン… |
ヴェイグ | …クレアがこうなってしまったのは、あいつらのせいか…? |
ユーリ | アリスとデクスの事か?気持ちはわかるが、それはないと思うぜ |
ユーリ | もし奴らに人間を晶化する力があるなら、オレ達も無事じゃ済まなかったはずだ |
ヴェイグ | … |
ラピード | …! |
ラピード | グルル…! |
ユーリ | ラピード… |
ユーリ | …ん?誰か来る…!まさか奴らか…? |
| |
スレイ | 今、声が聞こえた |
ミクリオ | 誰がいるかわからない。用心した方がいい |
ルドガー | とにかく、中を調べてみよう── |
| |
ユーリ | …誰だ! |
ヴェイグ | … |
スレイ | あなたは… |
ルドガー | ユーリ…!君だったのか |
ユーリ | お前…ルドガー?どうしてこんなとこに |
ルドガー | 君を捜してたんだ。事情はあらかた聞いている、会えてよかっ── |
| |
ライラ | …! |
ライラ | み、みなさん…あれは… |
スレイ | …!そんな… |
| |
クレア | … |
ルドガー | 晶化、現象… |
ヴェイグ | … |
scene2 | 決意の時 |
ユーリ | なるほどな。エステルから聞いてメルトキオに来たのか |
ルドガー | ああ。結局、俺達が街に着いた頃には赤の騎士団が出て行った後だった |
ルドガー | 街の人達に話を聞いたら、すぐに君達の事を教えてくれてその情報を元にこの森に来たんだが… |
ルドガー | …まさか、こんな事になっていたとはな |
ヴェイグ | … |
ルドガー | …と、すまない、紹介が遅れた。スレイにミクリオ、それにライラだ |
スレイ | よろしくお願いします |
ライラ | よろしくお願いいたしますわ |
ミクリオ | … |
ラピード | ワウッ! |
ミクリオ | …よ、よろしく |
ヴェイグ | … |
ライラ | 大変な事になりましたね…。コレットさん達は無事との事でそちらはよかったのですが… |
スレイ | 人が晶化してしまうなんて… |
ミクリオ | 以前見た、晶化した鳥と同じ…。まるでこの中だけ、時間の流れが止まっているみたいだ… |
ヴェイグ | … |
ルドガー | リチャード陛下が晶化したと聞いた時から、いつかこんな事になるのではないかと心配していた |
ルドガー | シルヴァラントでも人の晶化…恐れていた事が遂に起きてしまった… |
ヴェイグ | くっ…!この結晶さえ砕ければ…! |
ルドガー | ヴェイグ…!やめるんだ! |
ヴェイグ | 止めるな、クレアが…!クレアが…! |
スレイ | …オレ達も、晶化した鳥を助け出そうとしたけど、無理でした。ヒビすら入らなくて… |
ミクリオ | 叩いて破壊出来るなら、ウィンドルの国王だって、救い出されているはずだ |
ヴェイグ | だが、早く救い出さなければ命が…! |
ライラ | 結晶の中の生命は生きているそうです。晶化現象に見舞われたとしても |
ミクリオ | 知り合いの言葉の受け売りだが、信憑性はあると思う |
ヴェイグ | …クレアは大丈夫、という事か…? |
ルドガー | ひとまずは…。しかし、このままこの状態が長く続けば安心は出来ない… |
ヴェイグ | … |
ユーリ | という事らしい。だから今は早まるな、ヴェイグ |
ヴェイグ | そうか…それを聞けただけで少しは… |
ユーリ | ちょっと外に出ないか?外の空気を吸って落ち着いた方がいい |
ヴェイグ | … |
| |
スレイ | クレアさんを誘拐したっていう二人組はいったい…? |
ユーリ | 正体はわからずじまいの無茶苦茶な連中だが、只者じゃなさそうだったな |
ユーリ | おまけに、口振りから察するに誰かの指示で動いているようだった |
ヴェイグ | … |
ルドガー | 晶化現象に、赤の騎士団に、新しい天啓… |
ルドガー | それに加え、何か企みのある二人組…また世界に何か…大きな事が起ころうとしているのか? |
スレイ | 世界に起きようとする、大きな事… |
ライラ | スレイさん… |
ユーリ | やれやれ、次から次へと、どうなってんだろうな、この世界は |
ラピード | ワンッ |
ヴェイグ | 世界が大変なのはわかっている。だが…オレは、クレアを救いたい |
ヴェイグ | そのためなら、何だってする |
スレイ | … |
ヴェイグ | 晶化を元に戻す方法を絶対に突き止めてみせると、クレアに誓う |
スレイ | ヴェイグさん、よかったらオレ達と一緒に行きませんか? |
スレイ | オレも、晶化した人達を助けたいんです |
ミクリオ | 僕も同意見だ。何事も、仲間が多いに越した事はない |
スレイ | ミクリオ… |
ルドガー | 俺達は協力し合えるはずだヴェイグ、一緒に行こう |
ヴェイグ | … |
ヴェイグ | …わかった。そうさせてもらおう |
ヴェイグ | クレアは必ず救い出す…何としてでも |
Name | Dialogue |
scene1 | 再起 |
スタン | アグニラス山…ここに来るのも随分久しぶりだな |
リリス | … |
スタン | リリス、結構歩いたけど、疲れてないか? |
リリス | ううん、大丈夫。疲れたわけじゃないよ。ちょっと考え事してただけ |
リリス | …あれ?それより、あの二人はどこに行ったの? |
スタン | あっちの方見て来るって先に行っちゃったぞ。追いかけるか |
リリス | うん、そうだね |
リオン | ──聞いていた話の通りだな。ルイニス街とは比べ物にならないほど晶化が進んでいる |
ルーティ | そうね、岩も木も土も、結晶に覆われて…歩きにくいったらないわ |
スタン | リオン、ルーティ、何か見つかったか? |
リオン | いや、今のところ目新しい発見はない |
スタン | そっか… |
リリス | どうしてこんな事になってしまったんでしょう… |
ルーティ | リリス? |
リリス | …さっき、見たんです。晶化してしまったリスを |
リリス | 動物まで晶化し始めて…ルイニス街もいつか、同じようになるんでしょうか… |
ルーティ | その可能性は考えられるわね |
ルーティ | 場所によってまちまちだけどウィンドルでも、シルヴァラントでも晶化現象は進行してる |
ルーティ | ルイニス街やバロニアも、この山ほどではないけど、だんだん広まっているのは確かだし… |
リリス | それじゃあ、ルイニス街は前の氷漬けの時みたいに── |
スタン | させない! |
リリス | お兄ちゃん… |
スタン | それだけは絶対にさせない。あんな想いをするのはもうたくさんだ |
スタン | 今のところルイニス街は大きな被害はないけど… |
スタン | 早く晶化現象の原因を見つけて進行を食い止めるんだ |
ルーティ | そんなの、わかってるわよ |
リオン | そのために僕はここまで来た |
リオン | しゃべっている暇があるなら辺りの結晶を調べて、一刻も早く手がかりを探せ |
ルーティ | ちょっと、リオン…!? |
ルーティ | …あーもう、相変わらずほんっと勝手なんだから |
ルーティ | リリス、あいつの言った事は別に気にしなくていいから |
リリス | ありがとう、ルーティさん。でも、リオンさんの言う通りだと思います |
リリス | …私も頑張って何か手がかりを探してみますね! |
ルーティ | …それにしても、厄介な事になったもんね |
スタン | ああ…。俺達も勿論だけど、街のみんなもすごく不安がってる |
スタン | 避難した方がいいのかもって話も出たんだけど… |
ルーティ | でも、今やどこの街でも大なり小なり晶化は進行してるからね… |
スタン | うん…。だから、尚更不安なんだ |
スタン | …ルーティ、本当ありがとうな。街の事を心配して戻って来てくれて |
ルーティ | 気にしなくていいわよ。お礼は、後でたんまりもらうから |
スタン | ええ、お金を取る気か? |
ルーティ | 当たり前でしょ? |
ルーティ | …でも、今回は特別にまけてあげてもいいわよ |
ルーティ | あの街の事が心配なのは、あたしだって同じだし |
ルーティ | 以前、ルイニス街が大変だった時何も出来なかったからね… |
スタン | ルーティ… |
スタン | あの時は仕方がなかったんだし気にする事はないさ |
スタン | そういえば、面倒を見てる子ども達の方は今どうしてるんだ? |
ルーティ | 面倒見のいい妹分が出来てさ、その子に頼んであるわ |
スタン | そうか、それならよかった |
スタン | …よし、何はともあれ俺達も行こう |
スタン | 小さな事でもいい、晶化に関する手がかりを探さないと |
ルーティ | そうね |
scene2 | 再起 |
ルーティ | うーん…。あちこち見て回ったけど、特に変わったものは見つからないわね |
リリス | 晶化が進んでる地域に来たら何かわかるかもって思ってたのに… |
ルーティ | まあ、考えてみればそう簡単に見つかるわけないか… |
ルーティ | あたし達より遥かに頭のいい研究者ですら、未だに何も掴めてないって話だし |
スタン | … |
リオン | スタン、さっきから黙り込んで何を考えている? |
リリス | 何か気付いた事でもあった? |
| |
スタン | やっぱり…晶化現象には大精霊が関係してるんじゃないか? |
リリス | 大精霊…? |
リオン | … |
リオン | この世界を形成する上で欠かせない自然を司る存在の事だ |
スタン | 前にさ、世界各地で地面に大きな亀裂が出来たり、いろんな異変が起きてただろ? |
スタン | あれは、大精霊が暴走状態になってしまった事が原因で起きてたんだ |
ルーティ | って事は…今回もその大精霊が? |
スタン | はっきりは言えないけど…。大精霊の影響かもって考えたら納得がいくっていうか… |
リオン | 確かに、これだけ広い範囲に影響を及ぼせる要因となるものは、そう多くもないはずだ |
リオン | …可能性としては、僕も考えた。だが、僕達が知る大精霊の中にこういった力を持つ者はいない |
スタン | うーん、そうか… |
| |
スタン | あ…でも、精霊って確か俺達が知ってる他にももっとたくさんいるって話じゃなかったか? |
スタン | ミラやクラースさんに話を聞けば、晶化の力を持つ精霊がいるかどうかわかるかもしれない |
リオン | …それ以前に、ミラにさえ会えれば大精霊が暴走しているかどうかまでわかるだろうがな |
スタン | …あ、そうか! |
スタン | さすがリオン、頭いいな |
リオン | そんな事でいちいち褒めるな |
ルーティ | 何だかよくわからないけどまずは、そのミラって人に会いに行くわけね |
ルーティ | で、その人はどこ? |
リオン | 僕は心当りはない。スタン、お前は知っているのか? |
スタン | ……あれ、そういえばミラってどこに住んでるんだっけ? |
リリス | お兄ちゃんたら…居場所もわからないのにどうやって会いに行くの? |
スタン | あはは… |
ルーティ | はあ、呆れた…。じゃあ、もう一人のクラースか… |
ルーティ | 精霊に詳しいクラースって、確か変わったトンガリ帽子を被ったあいつの事よね |
ルーティ | その人ならバロニアにはよく出入りしてるはずだし、街に行けば居場所がわかるかも |
リリス | さすがルーティさん、いろいろ知ってるんですね |
ルーティ | まあね。それで生活してるからね |
リオン | 精霊の話を聞くという事なら、コルテア街のキールもいいかもしれない |
スタン | キール…って、前にイフリートの事でいろいろ教えてくれた人だな |
スタン | 確かに、精霊の事を知っているみたいだった |
スタン | よし、キールにも会いに行こう |
リリス | ここからだと、まずはコルテア街、その後にバロニアへ向かうって事ね |
リオン | …いや、僕は直接バロニアに行く。情報集めは早い方がいいだろう |
リオン | コルテア街を経由するより東の森をさっさと抜けた方が早い |
スタン | 確かに、二手に別れた方が早いと思うけど… |
リリス | リオンさん、一人で行くつもりですか?それはさすがに危険だと思います |
リオン | 足手まといになる者がいない分その方がよほど身軽だ |
ルーティ | ったく、まーたそんな事言って…。いいわ、あたしが一緒に行く |
ルーティ | 街の事も大体わかるし、情報屋のツテもある。リオン一人に任せるより効率的に動けると思うわ |
リオン | … |
ルーティ | 何よ、不満でもあるわけ? |
リオン | …ふん、勝手にしろ |
ルーティ | じゃ、そういう事で。それぞれ話を聞けたら、ルイニス街で落ち合いましょ |
ルーティ | って事で、リオン行くわよ |
リオン | 僕に指図するな |
リリス | 二人共気をつけてくださいね! |
スタン | もう行っちゃった… |
スタン | まあ、あの二人なら、心配はいらないな、うん |
リリス | そうだね。じゃあ、私達も行こっか |
スタン | そうだな |
| カサッ… |
リリス | …?今の音は──… |
| |
| ガルルルル! |
スタン | …!リリス危ない、魔物だ! |
scene1 | 行き交う者達 |
スタン | ようやく着いたか |
リリス | コルテア街…前にお兄ちゃんと一緒に来たよね |
スタン | ああ、買い物でメルトキオに行った帰りの事か |
リリス | そうそう!お兄ちゃんがバテちゃって休憩がてらここに立ち寄って… |
スタン | バテたって…仕方ないだろ。大量の食材を買い込んで、それをずっと抱えてたんだから |
リリス | ふふ、そうだったね |
リリス | 少し前の出来事なのに、すごく昔の事みたいに感じる |
リリス | やっと、いつも通りの生活に戻れると思ったのに、こんな事になってしまうなんて… |
スタン | リリス、大丈夫さ。きっと何とかなる |
スタン | 早くキールを見つけよう |
リリス | うん、そうだね |
リリス | お兄ちゃんはそのキールさんっていう人のお家、知ってるの? |
スタン | いや、家までは知らない。けど、この街には知り合いもいるし… |
リリス | そっか。じゃあ、その人に会いに行けば何とかなりそうだね |
スタン | ああ、そうだな |
キール | ──メルディの手紙によると、リンネル村でも晶化現象が少しずつ広がっているらしい |
キール | 最近じゃ、動物が晶化しているのを見たって書いてある |
ファラ | ア・ジュールでも晶化現象が進んでるなんて…。この辺りだけじゃなかったんだね |
ファラ | 手紙には、近頃村にまで魔物が出るようになったとも書いてあるね |
リッド | 腹を空かせた魔物が食糧を求めて来るってワケか。コルテア街もそうだしな… |
キール | 街に侵入する魔物の事もそうだが、晶化現象の方も何とかしないとどんどん状況は悪化するばかりだ |
リッド | 何とかって言っても…どうすりゃいいんだ? |
ファラ | …リチャード国王の事もあるし、いつかは人間も、次々と晶化してしまうのかな…? |
リッド | 今のところ、他に人が晶化したって話は聞かねえけどな |
リッド | それに、国もこの状況を黙って見てるとも思えねえけど |
キール | 悠長に待っていられるものか。各国の為政者達が、状況を正しく認識出来ているかどうかだって── |
スタン | おーい! |
ファラ | あ… |
スタン | リッド、ファラ!それにキール! |
リッド | 何だ、スタンじゃねえか。久しぶりだな。どうしてここに? |
スタン | キールに用があって来たんだ。すぐ会えてラッキーだったな |
スタン | それに、お前達って知り合いだったんだな!驚いたよ |
リッド | まあ、みんなこの街で育った幼なじみだからな |
ファラ | 久しぶりだね、スタン! |
ファラ | …と、一緒にいる人は? |
リリス | 初めまして。リリス・エルロンです。兄がいつもお世話になってます |
ファラ | へえ、スタンの妹さん…!そう言われると…似てるかも! |
ファラ | こちらこそ、よろしくね |
キール | ところで、スタン。リッドやファラでなく、何故わざわざぼくを訪ねてきたんだ? |
スタン | ああ、それなんだけど── |
| |
キール | ──晶化現象の原因が、大精霊にあるかもしれない、か… |
スタン | まあ、もしかしたらってだけで何の確証もないんだけどな |
リリス | キールさんならその辺りの事、知ってるんじゃないかって兄が言うものですから |
リッド | 今ちょうどオレ達も晶化現象の話をしてたところだったんだ |
スタン | へえ、そうだったのか |
| |
ファラ | 大精霊かあ…。どう思う?キール |
キール | …あくまで現時点における推測だがその可能性は低いと思う |
キール | 大精霊が操る力はぼく達にとってなじみ深い、自然現象に結びついている |
キール | 例えば、炎を司るイフリートならアグニラス山の噴火、氷を司るセルシウスなら湖などの氷結── |
キール | 大精霊の影響で起きていた以前の異変も、これらの結びつきが顕著にあらわれていた |
キール | だが、晶化のような自然現象も、結晶を操る精霊も、ぼくの知る限り存在しない |
キール | ただこれも、調査を進める内に見解が変わるかもしれないが |
キール | いずれにせよ、晶化現象についてはもっと詳しく調べる必要がある |
キール | もしかしたら気候や環境によって、国や地域でも発生している事象に違いがあるかもしれない |
キール | だから、ぼくはこれからア・ジュールのリンネル村まで行ってみるつもりだ |
リッド | キール、本気か? |
スタン | リンネル村だって?どうしてまた? |
キール | 実は昨日、そこに住んでいる知り合いから手紙が来た |
キール | 各地の事象に違いがないか確かめる意味でも、ア・ジュールへ行ってみるのは有意義な事だと思う |
ファラ | その案に賛成!メルディの事も心配だし、わたし達も一緒に── |
キール | ファラ達はこの街に残ってくれ。魔物が入ってくる可能性は、この街も同じはずだからな |
キール | 晶化現象の調査と、ついでにメルディに会いに行くくらいならぼく一人でも十分だ |
ファラ | キール一人で行くなんて、危ないよ |
リッド | 道中、魔物が出たらどうすんだ |
キール | 魔物一匹ぐらい、ぼく一人で片付けるさ |
リッド | すっげえ素早い、強そうな魔物が襲ってきたら?しかも何匹も。…本当に大丈夫か? |
キール | だ、大丈夫だって言ってるだろ!心配いらない! |
ファラ | 変に頑固だよねえ… |
ファラ | でも、キールの言う通り街も心配だし… |
スタン | キール、俺達も一緒に行きたいんだけど駄目かな? |
キール | お前達が? |
リリス | いいの?お兄ちゃん。リオンさん達との合流は? |
スタン | 向こうもまだ用事は済んでいないだろうし、俺達は俺達でもう少し調べた方がいいと思うんだ |
スタン | キールと一緒に行けば晶化現象について、何かわかるかもしれないし |
リリス | それもそうだね…。リオンさん達に報告出来る事はたくさんあった方がいいもの |
リッド | 目的が同じならいいんじゃねえか。キール一人じゃなんだが、スタン達が一緒なら、オレ達としても安心だしな |
キール | なっ…ぼくを子ども扱いするな!さっきも言ったがリンネル村に行くくらい── |
リリス | 私達が同行するのはやはり駄目ですか? |
リリス | キールさんのようないろいろとお詳しい方にご一緒させていただけると私達も助かります! |
キール | あ、いや…別に駄目だとは言ってない |
スタン | じゃあ、一緒に行こう!よろしくな! |
キール | …あ、ああ |
スタン | リンネル村まではどうやって行くんだ? |
キール | まずは、シルヴァラント港へ向かう。そこから船で移動だ |
ファラ | 三人共、気をつけてね |
リッド | 無茶はすんなよ |
scene2 | 行き交う者達 |
キール | ふう…ふう… |
リリス | キールさん、大丈夫ですか? |
キール | 二人共、足が速いな… |
スタン | ごめんごめん。つい急ぎ足になっちゃって…ゆっくり歩くよ |
キール | いや、このままでいい。余計な気遣いは無用だ |
リリス | でも、かなり歩きましたし、この辺りで一休みでも── |
??? | おいしい果物はいらんかね~ |
キール | あれは、行商人か? |
スタン | お、ちょうどいいな。せっかくだし、休憩がてらみんなで果物でも食べないか? |
リリス | 賛成!果物は移動に便利だし、いくつか買っておこうよ |
スタン | よし、じゃあ俺、ちょっと行って買ってくるよ |
リリス | 私も一緒に行くわ。キールさんはここで休んでてくださいね |
キール | …ああ |
リリス | 果物、何が売ってるのかな?楽しみ── |
スタン | …ん? |
ルーク | おい、おやじ。美味そうだな。そのリンゴくれ |
行商人 | へい、毎度! |
| ガリッ |
ルーク | うん、なかなかいい味じゃねーか。よし、あと3個ほどもらっていくぜ |
行商人 | あ、ちょっとお客さん、お金! |
ルーク | っと、そうだったな…。どうもまだ慣れねえや |
ルーク | えーっと、いくらだ? |
スタン | ルーク! |
| |
ルーク | だ、誰だ! |
ルーク | …って、何だ、スタンかよ。何でこんなとこに… |
ルーク | ん?隣の奴は… |
リリス | あ、妹のリリスです。兄がいつもお世話になってます |
ルーク | ああ、そうか。確かお前、妹がいたんだっけな |
スタン | まさかこんなところで会えるなんてな! |
| |
スタン | ルークは今、何をしてるんだ? |
ルーク | な、何って…見りゃわかんだろ。リンゴを食ってんだ! |
スタン | それは見ればわかるけど…。どこかに向かうところなのかなって |
ルーク | ん? |
ルーク | あ、ああ、ちょっとな… |
スタン | まあ、いいか。それより、俺達、晶化現象の事調べてるんだ |
スタン | ルークの住んでるキムラスカでも晶化現象は起きているのか? |
ルーク | 晶化現象か…。ああ、街の中でも発生しはじめたな。気味悪ぃぜ |
スタン | キムラスカでも…。どこも一緒なんだな… |
ルーク | リチャードの野郎も晶化しちまったって話だし、何だっつーんだろうな… |
ルーク | またあの大精霊の時みたいに面倒な事になってなけりゃいいけど… |
スタン | ルークも気になってるんだな… |
スタン | だったらさ、ルークも俺達と一緒に来ないか? |
スタン | 今別行動取ってるんだけど、リオンも晶化現象の事調べてるんだ |
スタン | またみんなで協力すれば早く解決出来るかもしれないだろ? |
ルーク | … |
ルーク | …いや、悪ぃけど俺は一緒には行けねえ |
ルーク | 晶化現象の事も気にはなるけど…今はそれどころじゃねえんだ |
スタン | …?何かあったのか? |
ルーク | あー…いや、別に何でもねえ! |
ルーク | と、とにかく俺は忙しいっつー事だ。それじゃあな! |
スタン | え?お、おい…ルーク? |
リリス | 随分落ち着かない様子だったね |
スタン | 久しぶりに会ったのに、ろくに話せなかったな… |
行商人 | お兄さん、さっきの人の知り合い?じゃあ、あの人のお代払ってくれないか |
スタン | ええ!?ルーク支払い忘れたのか? |
リリス | 仕方ないですね…。じゃあ、私達の分と合わせたお代を払いますね |
スタン | やれやれ…。でも、まあこれで果物も手に入ったし── |
| |
| うわあっ! |
スタン | …!今の声は、キールか!? |
リリス | お兄ちゃん、大変!キールさんが魔物に囲まれてる! |
スタン | 休んでたところに不意打ちされたのか…! |
スタン | キール、今行くぞ! |
scene1 | 突然の悲しみ |
ルーティ | うっわ、ここ、道が狭いわね…。木が覆い茂って険しいったら何の… |
リオン | 本当にこっちでいいんだろうな |
ルーティ | 方角的には間違いないはずよ |
ルーティ | …うん、何とかいけそうね。図体がでかい人だと、通り抜けられるか怪しいけど… |
ルーティ | あんたなら、私と身体の大きさが変わらないし問題ないわね |
リオン | …… |
ルーティ | ん? |
ルーティ | 何よ、相変わらず仏頂面な奴ね。さ、行くわよ |
リオン | … |
ルーティ | ふー、何とか通り抜けられたわね… |
ルーティ | …にしても、リオン。あんたってばどこまで冷たいわけ? |
ルーティ | 倒れたあたしを無視して一人で先に行くなんて |
リオン | 単に転んだだけだろう。怪我もしていなかった |
ルーティ | だからって、手も貸さないなんてどういう事よ |
ルーティ | お蔭であたしだけこんなに服が汚れちゃったじゃない… |
リオン | …僕の知った事じゃない。さっさと行くぞ |
ルーティ | はあ…何かどっと疲れちゃった。ちょっと休憩しましょ |
ルーティ | ほら、ちょうどあそこに小屋が… |
ルーティ | …ん?誰かいるみたいね |
リオン | 住人じゃないのか |
ルーティ | あんな小屋に…? |
| |
ヴェイグ | … |
ルドガー | ヴェイグ、ユーリ達もメルトキオから戻って来た事だ。そろそろ出発しよう |
ヴェイグ | わかっている。だが… |
ユーリ | クレアの事とあの二人の事、一緒にフィリアに話しといたぜ |
ユーリ | 時々、様子を見るようにしてくれるそうだ |
ヴェイグ | そうか… |
ライラ | ヴェイグさん…。やはり、立ち去り難いですよね |
ヴェイグ | せめてクレアを動かす事が出来ればよかったのだが… |
ユーリ | 結晶はしっかり地面に根付いてやがるからな…。どうしようもねえ |
ミクリオ | 気休めかもしれないが…結晶は頑丈だ。誰も危害を加える事は出来ない |
スレイ | …辛いと思うけど、クレアさんを救うためにも、オレ達に出来る事なら何でも手伝うよ |
ヴェイグ | みんな、ありがとう… |
ヴェイグ | …クレア… |
ヴェイグ | オレは行く。元に戻す方法を探しに |
ヴェイグ | 必ず、ここから救い出してやる。絶対にだ。だから── |
ルドガー | ああ、ヴェイグ。必ず助けよう |
ラピード | ワンッ! |
ユーリ | …ん? |
ユーリ | どうした、ラピード。魔物…ってわけじゃなさそうだな |
ミクリオ | …人か? |
リオン | ルドガー、それにユーリか… |
ユーリ | お、何だ、リオンじゃねえか。こんな辺鄙な場所で会うとは奇遇だな |
スレイ | あれ、あなたは確か… |
ルドガー | …? |
ルドガー | スレイ、リオンと知り合いなのか? |
スレイ | あ、うん。前にミラさんと会ったのと同じ時に一度… |
ルーティ | リオンの知り合い? |
ルーティ | あたしはルーティっていうの。よろしくね |
リオン | ウィンドルに住むお前達がこんなところで何をしている? |
ユーリ | まあ、話せばちっとばかし長くなるんだがな |
ルーティ | …何か、重苦しい雰囲気ね。聞いちゃ悪かったかしら |
ユーリ | リオンとその連れってんなら心配はいらねえだろ |
ユーリ | …話すがいいか、ヴェイグ? |
ヴェイグ | …ああ |
リオン | … |
ルーティ | はあ… |
ヴェイグ | … |
ルーティ | 国王晶化の事も聞いてはいたけど…こうして実際に人の晶化を目の当たりにすると…ショックだわ |
リオン | くっ… |
ルーティ | 何かごめん。一番辛いのはヴェイグなのに |
ヴェイグ | …いや、いいんだ |
ルーティ | 晶化現象…早く何とかしないとね… |
ルドガー | …リオンとルーティはバロニアに向かうと言ってたよな |
ルドガー | 今、話し合ってたんだけど、俺達もバロニアに行くのに同行してもいいか? |
リオン | …お前達がか? |
ルドガー | 大精霊の関与については俺も可能性の一つとして考えてはいたんだ |
ミクリオ | 的を一つに絞るのは避けて情報収集にあたっていたけど、結局大した情報は得られていない |
スレイ | だからこれからは、少しでも可能性のある大精霊の事を調べてみようと思うんだ |
ルドガー | ミラの居場所は、俺達も知らないしな…。クラースに会いに行くのがよさそうだ |
リオン | …好きにしろ |
ルーティ | いいんじゃない?ただし案内料はもらうわよ? |
スレイ | 案内料? |
リオン | この女の言う事は真に受けるな |
リオン | しかし、クラースのところに行っても情報が得られる保証はないぞ |
ミクリオ | それは覚悟している。スレイ、今からパスカルに連絡を入れてくれ |
ミクリオ | クラースという人物に会いたい。可能なら連絡を取って、渡りをつけられないかってね |
スレイ | わかった!早速かけてみるよ |
ルーティ | …へえ、これで話が出来るの?便利なもん持ってるのね |
ライラ | はい、パスカルさんはああいった便利な道具を作るのがお得意のようですわ |
| ツー、ツー、ツー… |
| ピッ |
パスカル | はいはーい |
スレイ | あ、パスカル?オレ、スレイだけど |
パスカル | おー、どしたん?何かあった? |
スレイ | 実はオレ達、精霊研究者のクラースさんって人を捜してるんだけど… |
スレイ | その人が今バロニアにいるかどうか、調べられないかな? |
パスカル | 研究者…なら、ちょうどいいかも!今あたし、街の研究施設に来てるんだ |
パスカル | そのクラースって人も研究者なら周りの人に聞けばすぐわかるかも! |
パスカル | でもさ、何で精霊の研究者に?晶化現象の調査じゃなかった? |
スレイ | その晶化現象と大精霊に何か関係があるかもしれないから、少し調べてみようって話してるんだ |
パスカル | なるほどねぇ。聞いてみるね! |
スレイ | うん、ありがとう |
パスカル | スレイ、お待たせー!わかったよ、クラースの事 |
パスカル | 何かね、随分前にバロニアの北にある森に行くって街を出たみたい |
パスカル | 何でもそのクラースも晶化について調べてるんだって。森へ行ったのもきっとその一環だろうって |
スレイ | バロニアの北の森か…。そのクラースさんは晶化現象について何か情報を掴んでるのかな? |
パスカル | う~ん、そこまではちょっとわからなかったよ |
リオン | …まさか、クラースも晶化現象の調査に乗り出しているのか? |
ミクリオ | バロニアの北にある森に向かった… |
ユーリ | なら、予定通りバロニアに行きゃ会えるかもな。遅かれ早かれ街には戻るだろうし |
スレイ | ありがとう、パスカル。とりあえず、急いでそっちに行くよ |
パスカル | りょーかい!じゃあ、また会えるかもだね! |
パスカル | ……っと、そうだ |
パスカル | さっき赤の騎士団がバロニアに戻って来たみたいなんだけど…。結局どうなったの? |
スレイ | 赤の騎士団がバロニアに… |
ユーリ | …! |
スレイ | パスカル、その話も詳しく聞かせてくれない? |
パスカル | なるほど。そっちもいろいろと大変だったんだね |
パスカル | とにかくスレイ達が無事でよかった。だけど… |
パスカル | リチャードだけじゃなくて他の人にも晶化が起きちゃったんだ… |
スレイ | うん… |
パスカル | これからもっと多くの人達に、晶化現象の影響が広がる可能性もあるかもしれない… |
スレイ | … |
パスカル | そうしないためにもあたし頑張るよ。少しでも早く晶化現象を解明出来るように |
スレイ | パスカル… |
スレイ | うん、オレ達も頑張るよ |
ライラ | クラースさんはバロニアの研究所に行けば会えそうですね |
ユーリ | 赤の騎士団が大人しくバロニアに戻ったって事がわかったのも収穫だったな |
ルドガー | 早速バロニアに向かおう。急いだ方がいい事に変わりない |
ヴェイグ | なら、シルヴァラント港か… |
リオン | ああ |
| |
キール | 港に入港したぞ |
スタン | ここがア・ジュールか。思ってたより随分近いんだな。あっという間に着いた気がする |
リリス | それは、お兄ちゃんがぐーすか寝てたからでしょ! |
キール | スタン一人だったら、確実にあのまま寝過ごして、シルヴァラント港に逆戻りする羽目になっていただろうな |
スタン | あはは…。これからもよろしく頼むよ、リリス |
リリス | もう、本当お兄ちゃんったら… |
スタン | …にしても、風が随分冷たいな。シルヴァラントとは全然違う |
キール | この辺りはまだマシだけど、リンネル村辺りは一面雪景色だ。油断していると風邪を引くぞ |
スタン | よし、じゃあ気合を入れてかないとな!キール、案内を頼むよ |
キール | わかった |
scene2 | 突然の悲しみ |
リリス | ──くしゅん! |
スタン | 言ってたそばから…大丈夫か、リリス? |
リリス | うん、平気 |
キール | リンネル村はもうすぐだ。着いたらメルディの家に行けばいい。暖まらせてもらおう |
リリス | メルディさん…その人がキールさんの知り合いなんですよね |
キール | ああ── |
??? | あれ、キール…? |
| |
キール | メルディ! |
メルディ | やっぱり、キール。メルディが手紙読んで来てくれたか? |
キール | まあ、晶化現象を調べる意味も兼ねて、だけどな |
キール | …ああ、そうだ。二人の事も紹介しておく。スタンと、その妹のリリスだ |
スタン | よろしく |
リリス | よろしくお願いします! |
メルディ | あ…うん。よろしくな |
| |
メルディ | … |
キール | …? |
キール | メルディ、元気がないな。どうかしたのか? |
メルディ | キール… |
メルディ | あのな…実はクィッキーが… |
メルディ | クィッキーが晶化してしまって…… |
| |
キール | 何だって!?手紙にはそんな事書いてなかったぞ |
メルディ | 手紙を出すまでは、元気だったよ。なのに…突然…… |
メルディ | けど、メルディ何も出来なくて…… |
スタン | クィッキー…? |
キール | クィッキーは、メルディといつも一緒にいる友達なんだ |
リリス | そんな… |
リリス | メルディさん、お気を落とさないでください |
スタン | メルディ…。よかったらその友達のところに俺達を案内してくれないか? |
スタン | 何か、出来る事があるかもしれない。辛いだろうけど… |
メルディ | …はいな |
キール | … |
| |
スタン | ──友達っていうから人間だと思い込んでたけど、クィッキーは動物だったんだな |
スタン | 大事な友達には変わりないけど… |
リリス | うん… |
リリス | でも、やっぱりあのリスと同じ…。結晶にはヒビすら入らないね |
スタン | こんな家の中でも晶化って起こるんだな… |
キール | … |
キール | ふーむ… |
メルディ | キール、何かわかったか? |
キール | コルテア街の近くでも晶化した動物は何度か見たが…それらと特に変わりはない |
キール | クィッキーは晶化して間もない…という事だったが |
キール | コルテア街で晶化して時間が経過した同じくらいの大きさの動物とほとんど差異を見つける事は出来ない |
キール | つまり、一度晶化すれば環境や状況に影響される事なく同じような結晶になるという事だ |
スタン | それって、どういう事なんだ? |
キール | 気温や経過時間など、諸条件によって事象に相違が見られれば、そこから何か発見があるかと思ったんだが |
キール | 何の相違も見当たらないとなると… |
リリス | 何とも言えないって事なんですね… |
メルディ | クィッキーはどうなるか…? |
メルディ | …もう、助からないのか? |
キール | 助からないとは言ってない。だが、少なくとも今はどうしてやる事も出来ない… |
メルディ | … |
スタン | …メルディ、あのさ。前に俺の住む街で、街も人も全部氷漬けにされた事があったんだ |
スタン | ここにいる妹のリリスも被害にあった |
スタン | …だから、今のメルディの気持ち、俺はすごくよくわかるよ |
メルディ | … |
スタン | 原因も解決方法も、最初は全然わからなかったけど、今はほら…街もリリスも、みんなを助けられてる |
スタン | どんな事にも必ず原因があると思うんだ。晶化現象も同じだ |
スタン | 時間はかかるかもしれないけど、みんなで協力すれば絶対何とか出来る |
スタン | …俺はそう信じてるんだ |
メルディ | スタン… |
メルディ | …そうな。メルディ、落ち込んでた |
メルディ | でも、何もしないはもっと駄目だな |
メルディ | スタン、ありがとな。クィッキーがためにもメルディ頑張る |
リリス | よかった。メルディさん、少し元気になってくれたみたい… |
| |
| 大変だ!誰か来てくれ! |
スタン | …!何だ…!? |
キール | 外の方から聞こえた。一体何が── |
レイア | メルディ、ここにいたんだね! |
メルディ | レイア!何かあったか? |
レイア | 村の中に魔物が入ってきたらしいの! |
メルディ | 魔物がまた…! |
レイア | みんなは避難してるよ。メルディも外には出ないでね。わたしは魔物退治に行くから! |
メルディ | レイア、待って!メルディも… |
スタン | 魔物なら、俺達がやるよ!君、連れてってくれ! |
レイア | あなた達が…? |
キール | ぼくも行く。人数は多い方がいい |
スタン | リリス、メルディを頼む |
リリス | わかった。ここは任せて。いざとなったら私も戦うよ! |
レイア | みんなありがとう!じゃあ、ついて来て! |
scene1 | 雪中の探索者 |
リリス | …メルディさん、気の毒だったね |
スタン | ああ…。何とかしてクィッキーを助けてやりたいな |
キール | …とはいっても、はっきり言って手詰まり状態だ |
キール | あれから周辺の晶化を見て回ったけど、気候は違えどコルテア街との違いが見られない |
リリス | リオンさん達はどうなったかな? |
リリス | 無事クラースさんに会えて何か話が聞けてるといいけど… |
キール | リオン…?それにクラースって確か… |
スタン | ああ、精霊研究者のクラースさんだ。俺の仲間のリオンとルーティが、その人に話を聞きに行ってる |
キール | そうか…。大精霊と晶化現象は直接的な因果関係はなさそうだが… |
キール | 精霊を専門に研究している人物なら、精霊という観点から何か、有益な情報を持っているかもしれないな |
スタン | じゃあ、俺達は一旦ルイニス街に帰って、リオン達と合流しよう |
キール | なら、ぼくはコルテア街に戻るか |
キール | 過去の事例からわかる事がないか、片っ端から文献を── |
レイア | あ、いたいた。あなた達、ちょっと待って! |
スタン | あれ、君はレイア…だよな? |
レイア | さっきは魔物退治ありがとう! |
リリス | いえ、お気になさらず!当然の事です |
キール | その礼を言うために、ぼく達の後を追いかけてきたのか? |
レイア | うん。それもあるし、メルディの事もお礼を言いたくて |
レイア | スタンの言葉にも元気をもらったみたいだし |
レイア | 何より、キールが会いに来てくれて嬉しかったみたいだよ |
キール | そ、そうか… |
スタン | キールも、せっかく友達に会いに来たんだからもっとゆっくりすればよかったのに |
キール | 今は、晶化現象を調べる事が優先だ |
レイア | メルディも、邪魔しちゃいけないって思って引き止めなかったみたい |
レイア | けど、スタンも、キールも、リリスも絶対また立ち寄ってね |
スタン | ありがとう、レイア。必ずまた会いにくるよ |
レイア | うん!途中まで見送りさせてね |
レイア | どこに行くんだっけ |
リリス | シルヴァラントに戻ろうと思うんです |
レイア | じゃあ、向かうのは港だね。行こっか |
| |
キール | ふう…ふう… |
レイア | 大丈夫?慣れない雪道を歩くのは大変でしょ |
キール | 大丈夫だ…と言いたいが、正直、骨が折れる |
キール | ふう… |
リリス | そろそろ休憩しましょうか |
レイア | でも、ここは寒いし…休憩出来るところはもう少し先なんだ |
スタン | キール、おぶってやるよ!ほら! |
キール | んなっ…!そんな情けない真似をしてたまるか! |
スタン | そうかなあ… |
スタン | ん?あれは… |
リリス | お兄ちゃん、どうかしたの? |
スタン | 向こうに誰かいる |
キール | …?何だか様子が… |
キール | みんな、静かにするんだ |
| |
??? | … |
??? | … |
| |
スタン | あれは、ア・ジュール軍かな…? |
キール | 何人か兵士を従えているし、おそらくそうだとは思うが… |
リリス | あんなところで何をしてるんでしょう |
レイア | …ひょっとして、雪山に向かおうとしてるのかも |
キール | あの山には何かあるのか? |
レイア | 確か、奥に古い遺跡が… |
レイア | でも、山の中はよく吹雪になるから地元の人でも滅多に立ち入らないんだ |
レイア | そんなところに、どうして軍が…? |
スタン | … |
スタン | よーし、少しだけ… |
スタン | そーっと、そーっと… |
リリス | ちょ、ちょっとお兄ちゃん!盗み聞きは駄目だよ |
キール | リリスの言う通りだ。相手は軍の人間だぞ、見つかりでもしたら、ただじゃ── |
レイア | スタン、行っちゃった… |
キール | なっ、どうして勝手に…! |
キール | はあ…仕方ない、ぼく達も後を追おう |
リリス | わかりました…。うちの兄が…すみません… |
scene2 | 雪中の探索者 |
スタン | ──よし、ここまで来れば十分だな |
リリス | 十分、じゃないわよ…!これで見つかっちゃったらお兄ちゃんのせい── |
キール | 静かにしてくれ。あいつらの会話が聞こえない |
レイア | キールも結局乗り気だね… |
??? | はあ!?それ本気で言ってんのかよ |
??? | こんなチンケな雪山に天啓の石碑なんかあるわけねえだろ |
??? | 過去の記録を調べた |
??? | これまで出現した石碑は人里離れた遺跡に出現した事例が多い |
??? | つまり、この雪山の遺跡にも出現の可能性がある、という事だ。大人しく従う事だな、アグリア |
アグリア | ちっ、何を偉そうに。あたしに命令すんじゃねえよ、ウィンガル |
アグリア | 大体、てめーはどうする気だ |
ウィンガル | 神子の捜索にあたる |
アグリア | なら、お役目交代しろよ。あたしがその神子って奴をとっ捕まえて来てやるよ |
ウィンガル | お前が行けば神子は使い物にならなくなる |
ウィンガル | 何故お前が石碑捜索に当てられているのか、その意味を理解しろ |
アグリア | アハ~。アハハハ!そういう事なら仕方ねえな |
アグリア | …にしても、ジェイドの奴!あたしらにばっかり面倒事を押しつけやがって |
アグリア | つか、何の確証もねえのに、しらみつぶしに探すなんか無謀すぎんだろ |
ウィンガル | 神子が手に入れば、石碑の出現場所の特定もそう時間はかからん |
ウィンガル | それまでは無謀だろうが何だろうが、言われた通りにやってもらう。何より、これは陛下の命だ |
アグリア | … |
キール | 陛下…ガイアス王の事か |
リリス | 天啓の石碑を探しているみたいですね |
スタン | 天啓の石碑ってこの前メルトキオで発表されたばかりだよな? |
キール | 新しい天啓の出現か。噂には聞いていたが… |
キール | けど、こんなに短い期間で、立て続けに天啓が出現するなんて未だかつて例のない出来事だ |
キール | それに、石碑出現の知らせも国による公式な発表じゃないし、情報の真偽すら疑っていたんだが… |
リリス | でも、ア・ジュールがそれを探してるって事は情報は本物だったって事なのかな? |
レイア | そういえば…天啓の話で思い出したんだけど… |
レイア | 前に公表された天啓は、ウィンドル国王の晶化を予言した未来予知だって噂もあるよね |
レイア | 実際はどうなんだろう… |
キール | 何とも言えないな…。天啓の一節はそうとも捉えられるが、それが確かなものだという根拠はない |
キール | だが逆に、そういった可能性も否定しきれない、という事でもある |
キール | 無関係と切り捨ててしまうには、タイミングがあまりにも重なり過ぎているからな |
スタン | うーん、そう言われてみれば… |
スタン | じゃあ、俺達も天啓について調べてみるのもいいかもしれないな |
レイア | ねえ、それより気になるのは神子の事だよ。捕まえるって話してたよね…? |
リリス | …? |
リリス | あれ、お兄ちゃん…。ア・ジュール軍の人達がいなくなって… |
スタン | 本当だ…! |
スタン | 今さっきまでそこにいたはずなのに、一体どこに…… |
| |
アグリア | アハ~。こいつはまた、随分間の抜けたネズミ共だね |
アグリア | 盗み聞きならもっと上手くやんな。バレバレだっての |
スタン | しまった、見つかった! |
ウィンガル | ここで何をしている |
リリス | そ、それは… |
レイア | と、とにかく、逃げよう! |
キール | くっ…! |
ウィンガル | …無駄だ |
リリス | きゃ…! |
スタン | リリス! |
リリス | い、痛… |
スタン | やめろ!リリスを放せ! |
アグリア | させるかってーの!おらおら |
スタン | うわっ!? |
リリス | お兄ちゃん…! |
スタン | 速い…!何て動きだ |
キール | この身のこなし…ただの一兵士とは思えない |
ウィンガル | もう一度聞く。ここで何をしている |
レイア | わたし達、悪気があったわけじゃなくって…そ、その── |
アグリア | アハ~、わかったぞ。お前ら赤の騎士団の間者だろ。こんな間抜けを寄越しやがって |
スタン | 赤の騎士団…?それって確か、ウィンドルの…? |
キール | そんなのとは全く無関係だ!ぼく達はただ── |
ウィンガル | …いずれにせよ、こちらの動きを漏らされては厄介だ |
ウィンガル | お前達、この者達をカン・バルクへ連行しろ |
ア・ジュール兵 | はっ!直ちに |
| |
リリス | そんな…! |
レイア | やっ…、やめて!放してよ! |
ア・ジュール兵 | 大人しくしろ! |
アグリア | アハハハハ!バカなネズミ共、監獄にぶち込まれちまいな |
ウィンガル | … |
スタン | くっ…! |
scene1 | 地下牢にて |
スレイ | ここがシルヴァラント港…!たくさん人がいるんだな |
ミクリオ | ちょうど船が着いたばかりのようだからね。そのせいだよ |
ライラ | どこから来た船なのでしょう? |
ユーリ | あの船はウィンドルのもんだな |
??? | 誰かー!ルイニス街に向かう人おらへん? |
ルドガー | ん?…迷子か? |
ラピード | ワフゥ? |
??? | あ、そこの兄ちゃん!ウチの事、ルイニス街まで連れてってくれへん? |
ルーティ | ん?待って…この声と喋り方…まさか…… |
??? | はあ…困ったなあ |
??? | こんなぎょうさん人がおるんに、だーれもウチの頼みを聞いてくれへん |
??? | みんないけずやわ…。これからどないしよ |
ルーティ | エルマーナ! |
エルマーナ | えっ、ルーティ姉ちゃん!?嘘やろ、何でこんなとこに… |
ルーティ | それはこっちの台詞よ!あんたこそ、何でシルヴァラントに… |
エルマーナ | そんなん、ルーティ姉ちゃんに会いに来たに決まってるやん!いや~会えてホンマよかったわあ |
ルーティ | 会いに来たって…あの子達は?あたしがいない間、ちゃんと面倒見ておくように頼んだじゃない |
エルマーナ | ちょっと緊急事態が起こってん。子どもらはとりあえず一番年長のジンに頼んできたんや |
ヴェイグ | …知り合いか |
ミクリオ | …みたいだね。いい加減慣れてきたよ… |
ルーティ | 緊急事態って何よ? |
エルマーナ | それがな…ウチな、今朝、ウチの子ら連れてバロニアの近くの森を散歩しててん |
エルマーナ | そしたらチビ達の一人が急に騒ぎ出してな |
ルーティ | …何よ?何があったの? |
エルマーナ | ウチ慌てて駆けつけたら、そこには大きな晶化した塊があったんやけど… |
ルーティ | ちょっと、何?早く言いなさいよ |
| |
エルマーナ | クラースのおっちゃんが…晶化しとったんや |
ヴェイグ | …!まさか… |
リオン | なっ…、クラースだと!? |
エルマーナ | ルーティ姉ちゃんも顔くらいは知っとるやろ? |
ルーティ | エルマーナ、それ、本当なの!?見間違いじゃなく、絶対!? |
エルマーナ | い、痛い痛い!そないに肩ぐーって掴まれたら… |
エルマーナ | …でも、絶対やで!あのトンガリ帽子にヘンな柄やで、見間違うわけあらへん |
エルマーナ | つい昨日一昨日まで普通に街中歩いとったのにな… |
ルドガー | 人間が晶化だって…? |
ライラ | また、起きてしまったのですね… |
ルーティ | だから、あたしに知らせにこんなとこまで来たのね… |
エルマーナ | ルーティ姉ちゃんが晶化の事調べるって言うとったのもあるけど、それよりも… |
エルマーナ | チビ達もショック受けて怖がっとる。ルーティ姉ちゃんにはよ帰って来てほしいんや |
ユーリ | くそっ…。何てこった。また人が晶化しただと? |
リオン | しかも、それがよりにもよって、捜していたクラースとは… |
スレイ | …クラースさんは、今どうしてるんですか? |
エルマーナ | ウチも子どもらを引き離して落ち着かせるのが精いっぱいで、そのままにしとるんや… |
ミクリオ | 幼い子ども達にはショックが大きいだろうね。無理もない… |
ルーティ | リオン、悪いけどエルマーナと一緒に行く事にするわ |
ルーティ | あんたはどうする?クラースは晶化してしまったけど… |
リオン | …クラースから話を聞く事が不可能だとわかった以上、バロニアへ行っても仕方がない |
リオン | 僕は一度ルイニス街に戻りスタンと合流する |
リオン | キールから何か情報を得ているかもしれん |
ルーティ | そう、わかったわ。一旦調査出来なくなるけどスタン達にはよろしく言っといて |
ルーティ | クラースの事は、あたしが様子を見に行ってみるわ |
リオン | ああ… |
ユーリ | オレは、バロニアに戻るぜ。赤の騎士団がこれから何をするつもりか、気になるしな |
ラピード | ワウッ! |
ミクリオ | スレイ、僕達はどうする? |
スレイ | クラースさんの事が気になるけど… |
ミクリオ | ああ、きっとクレアさんと同じだ。僕達にはきっと手の施しようがない |
スレイ | 一刻も早く助けるには、とにかく情報が必要…だよな |
ヴェイグ | オレ達も、リオンと一緒に行くのがよさそうだ |
スレイ | うん! |
ルドガー | 赤の騎士団の動きも気になるけど…。それはユーリやエステルに任せよう |
ライラ | はい、それぞれに出来る事を一つ一つ行っていけば、それがいつかきっと実を結ぶはずです |
ルドガー | ああ。…というわけで、リオン。引続きよろしく頼むよ |
リオン | …勝手にしろ |
| |
スタン | … |
キール | … |
レイア | … |
リリス | … |
| コツ…コツ… |
キール | …来たか? |
| カチャ… |
ア・ジュール兵士 | 食事だ |
| ガチャンッ |
キール | こんなところでじっとしていられるものか。ぼく達を早くここから出せ |
キール | こんな地下牢に…一体いつまで閉じ込めておくつもりだ |
スタン | すみません、随分時間が経つけど…俺がここにいる事あの人に話してくれましたか? |
ア・ジュール兵士 | ああ。だが、それ以上の事はわからん |
キール | これじゃまるで犯罪者扱いだ! |
キール | どうしてぼくがこんな目に… |
レイア | まさかこんな事になるなんて… |
リリス | お兄ちゃんの知り合いの人、本当にアテになるの? |
スタン | 偉い人って感じだったから、多分何とか出来るはずだ |
スタン | 話せばわかってくれるとは思うんだけど、それもここに来てくれない限りは… |
スタン | …みんな、本当ごめんな。こんな事に巻き込んじゃって |
レイア | 仕方ないよ。あの人達を見て変だって思ったのはわたしも一緒だったし |
| コツ…コツ… |
リリス | あ…!また足音が… |
スタン | 今度こそ来てくれたのか? |
キール | ふん。どうせまた期待外れに終わるに決まって── |
??? | おやおや。私の知り合いだと主張する犯罪者がいると聞いて来てみれば… |
ジェイド | お久しぶりですね。まさかあなたとこんなところで再会するとは夢にも思いませんでしたが |
スタン | ジェイドさん! |
スタン | 来てくれたんですね!ありがとうございます |
キール | ジェイド…?何者なんだ? |
ジェイド | おや、知らない顔もいるようですね。私はジェイド・カーティス。ア・ジュールの軍人です |
scene2 | 地下牢にて |
スタン | ──というわけで、俺達は晶化現象について、調べていただけなんだ |
スタン | 話を立ち聞きしたのはよくない事だと思うんだけど…でも、本当に間者なんかじゃない |
リリス | 兄の言ってる事は全て本当です!お願いです、信じてください… |
ジェイド | ふむ… |
キール | こちらの言い分など、全く信用していないという顔つきだな |
ジェイド | これはすみません、生まれつきこういう顔なものでして |
ジェイド | 要するに、皆さん自分達が無実であり、釈放されるべきだとそう主張するわけですね |
スタン | そういう事なんだ。何も嘘なんかついていません。ジェイドさん… |
ジェイド | わかりました。釈放を認めましょう |
レイア | 本当!?よかった…! |
キール | こんなあっさり…?あのウィンガルって奴らは、聞く耳すら持たなかったのに |
ジェイド | スタンの事は私も多少は知っていますからね。少なくとも嘘はついてなさそうですし |
ジェイド | それにあなた方が我が国に害をなせるとは到底思えませんのでね |
ジェイド | それとあなた方を捕えたウィンガルとアグリアの事は許してやってください。彼らも仕事でして |
スタン | いや、俺達こそ、誤解させるような事してすみませんでした |
ジェイド | では、解錠します。どうぞ皆さん、外へ |
| カチャ… |
キール | いやにあっさりしていて気味が悪いな |
レイア | キール、細かい事は気にしない!ようやく外に出られるんだから |
リリス | うーん…!長かったですね… |
ジェイド | このまま外に案内してもいいのですが、皆さんお腹は空いていませんか? |
ジェイド | せっかくですし、よければ、牢獄の食事よりましなものを提供させていただきますが? |
スタン | 本当ですか!何から何までありがとう、ジェイドさん! |
scene1 | ア・ジュールの思惑 |
レイア | ふー!おいしかったー!さすが王宮の料理は違うなあ |
リリス | 本当に、ごちそうさまでした。ジェイドさん |
ジェイド | いえ、こちらこそいろいろ興味深い話を聞けて何よりでした |
ジェイド | ──それにしても、シルヴァラントから海を越え、わざわざリンネル村まで赴くとは |
ジェイド | 皆さんの行動力には驚かされますね |
キール | とは言っても、結局大した情報は得られなかったが |
スタン | ジェイドさん、ア・ジュールでも晶化現象は広まっているんですよね? |
ジェイド | ええ。他国と比べてどれほどかはわかりませんが、かなり広範囲で起きていると聞きます |
リリス | やっぱり、そうなんですね… |
ジェイド | さて、ここを抜ければ城の外です。名残惜しいですが、この辺で… |
| |
キール | …その前に、聞いておきたい事がある |
ジェイド | 何でしょう |
キール | ウィンガルとアグリア…あの二人は、新たに出現した天啓の石碑を探すと言っていた |
キール | しかもそれが、陛下の命であると |
ジェイド | …… |
キール | 陛下とはガイアス王の事だろう。何故彼は、天啓の石碑を探し出そうとしているんだ |
スタン | それを言うなら、神子もです。二手に分かれて、石碑と神子の両方を捜そうって話してた |
スタン | しかも、見つけ次第神子を攫うみたいな口振りでした。本当にそんな事を? |
ジェイド | …ふむ |
リリス | ふ、二人共…!今ここであんまりそういう話は… |
レイア | そうだよ。変な事言って機嫌を損ねたら、また地下牢に戻されちゃうかも… |
| |
ジェイド | いえ、どうぞ続けてください。なかなか興味深いお話ですので |
キール | なら、もう一つ聞きたい。あの二人はぼく達の事を赤の騎士団の間者だと誤解した |
キール | つまり…赤の騎士団、すなわちウィンドルも天啓の石碑や神子を探しているという事ではないのか? |
スタン | ウィンドルも…? |
キール | 何故、天啓が今頃になってこんなに関心を寄せられているんだ?天啓には何があるというんだ |
ジェイド | なるほど。間者でないと言い張る割に随分しっかりと会話を盗み聞いていたようですね |
レイア | あああ…まずい。絶対まずいよ、この流れ |
キール | ぼく達の間でも、晶化現象と天啓は何か関わりがあるかもしれない、と話していたところだったんだ |
キール | あんた達の国王が何故天啓の石碑を手に入れようとしているのか知っておきたい |
ジェイド | 晶化現象と天啓が関係している…、なかなか面白い考えですね |
ジェイド | つまりあなた方は、天啓が晶化現象を解決するヒントになるのではないか、そうお考えだというのですね |
スタン | かもしれない、と思っています |
ジェイド | なるほど。そういえば、天啓を未来予知だとする説がありますが、あなた方もそれを信じているのですか |
キール | いや、そういうわけじゃない。その説に関して言えば、肯定も否定もしない |
キール | 晶化の進行具合や前の天啓の内容から可能性の一つとして念頭に置いているだけだ |
ジェイド | それだけの理由で、天啓と晶化現象が関係していると考えるのはいささか早計な気もしますがね |
キール | だ、だから、別にそうだと言い切ってはいないだろう |
スタン | じゃあ、ジェイドさんは、無関係だと思いますか? |
スタン | 今は他に、手がかりがないんです。可能性があるなら―― |
??? | ウィンガルが捕えた間者というのはお前達か |
スタン | あなたは…! |
??? | … |
ジェイド | これは陛下 |
リリス | 陛下…という事は、この方は… |
レイア | ガイアス王… |
キール | … |
ジェイド | 彼らは間者ではありませんよ。尋問の結果、無関係と判断して釈放したところです |
ガイアス | そうか… |
スタン | …ガイアスさん。ア・ジュールでは晶化現象について何かわかっている事はあるんですか? |
リリス | お兄ちゃん…! |
ガイアス | …それについては、現在調査中だ。成果はほとんど上がっていない |
ガイアス | しかし被害が拡大し続けている以上、何らかの対策は必要だろう |
ガイアス | 今はやる事が山積みだ。お前達も用が済んだのなら帰れ |
キール | そんな状況でありながら、軍にわざわざ天啓の石碑と神子を捜索させているのは何故でしょうか |
キール | 天啓は未来予知、そうお考えですか?だから、ウィンドルやシルヴァラントより先に見つけようと? |
ガイアス | 天啓が未来予知かどうかなど重要な問題ではない |
ガイアス | 不確かな情報に振り回されて余計な混乱と争いを招く…それが一番愚かな事だ |
スタン | なら、何で… |
ガイアス | そこまでの理由を、お前達に話す道理はない。それに… |
ガイアス | 答えはじきにわかる |
ジェイド | 陛下、どちらへ |
ガイアス | 外だ |
スタン | …待ってください! |
スタン | ガイアスさん、一つ確認させてください |
スタン | 神子を攫おうとしているのは本当ですか |
ガイアス | … |
スタン | 何か考えがあったとしても、無理矢理に連れて行くなんて見過ごす事なんて出来ません |
キール | そっちの方が、より多くの混乱と争いを招く行為だと思いますが |
ガイアス | お前達がそう思うのであれば、それで構わない。だが、邪魔をするのであれば容赦はせん |
ガイアス | その事だけは肝に銘じておけ |
ジェイド | やれやれ、あの陛下に詰め寄るとは無茶をするものですね |
リリス | もう、お兄ちゃん、ひやひやさせないで |
レイア | 怖かった… |
ジェイド | まあ、ああ見えて存外、お優しいところもあるのですがね |
ジェイド | それはそれとして、一つ忠告しておきます |
ジェイド | 今回は見逃しますが、あまり民間人が軍の作戦行動を詮索しすぎるようだと── |
キール | …しかし… |
リリス | すみません、気をつけます! |
レイア | みんな、早く帰ろう!えーっと、出口は… |
ジェイド | よい心がけです。こちらへどうぞ |
スタン | … |
scene2 | ア・ジュールの思惑 |
レイア | はあ…ようやく解放されたね |
リリス | 風が気持ちいい… |
キール | しかし、まさかあんな形でガイアス王と会う事になるとはな |
スタン | リンネル村へ行こう、とコルテア街を出た頃はこんな事になるなんて… |
キール | わかったのは…ア・ジュールが新しい天啓と神子を手に入れようとしてる事くらいか… |
キール | その意図は結局教えてもらえなかったが |
スタン | ガイアス王は、何か考えがあるんだろうけど… |
レイア | わたし達に怒ってるというより、もっと別の事に集中しているみたいな感じだったね |
キール | 未来予知かどうかは重要でないと言っているのに、何故天啓の石碑を欲しがるのか… |
レイア | 未来予知かあ…。わたしはそれならそれでもいいと思うんだけどなあ |
リリス | どうしてですか? |
レイア | 今、みんなが探している石碑に今後起こり得る出来事が書かれているかもしれないんでしょ? |
レイア | だとしたら、晶化現象に関わる情報や最悪の事態を避けるヒントだってわかるかもしれないし |
キール | そう上手くいくとも思えないが… |
キール | 未来予知だったとしてそれを平和的に利用されるかはわからない |
レイア | うーん、そっか、そうだよね… |
キール | …今ある情報で、未来予知説とは別に晶化現象と天啓の関わりについて答えは出せそうにない |
キール | だが、ウィンドル国王の例もある。新しく現れたという天啓に晶化現象について何か記されているかも… |
スタン | じゃあ、これからは天啓についても一緒に調べてみた方がいいな |
キール | ああ、そうだな。ア・ジュールもウィンドルも我先にと天啓の石碑を探している状況だ |
キール | 晶化現象と関係はないかもしれないが両国は、天啓には何か重要な意味があると考えている事は確かだろう |
リリス | 天啓の事もだけど、その前に神子の事も心配ですね。大丈夫でしょうか… |
キール | さすがにシルヴァラントもその点は警戒しているだろう |
スタン | とにかく、すぐシルヴァラントに戻ろう。リオンとも合流しなくちゃ |
キール | ぼくも一度コルテア街に帰って、調査を仕切り直す事にする |
キール | ア・ジュールにいても、これ以上得られる情報は特になさそうだしな |
レイア | わたしもリンネル村に戻る事にするね |
スタン | 見送りだけのはずだったのに、こんなところまで、本当にごめんな |
レイア | いいんだよ。何ともなかったんだし |
キール | メルディにも、よろしく伝えてくれ。何かわかったら、手紙を書く |
レイア | わかった!伝えておくね |
キール | よし、そうと決まれば早速ア・ジュール港へ向かおう |
スタン | ああ! |
Name | Dialogue |
scene1 | ミラの行方 |
ジュード | エリーゼ、魔物がそっちへ行ったよ |
エリーゼ | わかりました。ティポ、行きますよ! |
ティポ | まかせてー、エリー! |
ティポ | とりゃー! |
| グオオオオッ! |
エリーゼ | ジュード、今です |
ジュード | よし! |
ジュード | 行くよ!はああああっ! |
| ズガッ!! |
| ギャウウッ! |
| |
エリーゼ | 何とか倒せました… |
ティポ | ふー、やれやれってカンジー |
ジュード | この辺りは随分と魔物が多いね |
エリーゼ | そうですね。…でも、今朝行った湖の遺跡と比べると晶化したところは少ない気がします |
ジュード | あそこは今まで見た中で一番晶化の進行が酷かったな |
エリーゼ | 本当にここにミラがいるんでしょうか… |
ジュード | 湖の遺跡で会った旅人は、ミラがこの森に向かったって言ってたけど… |
ジュード | 森といっても広いから、すぐには見つけられないね… |
ティポ | ミラ君どこまで行ったんだろー? |
エリーゼ | ミラもわたし達と一緒で、晶化現象の事を調べてるんでしょうか |
ジュード | 今この世界に来てるって事は多分そうじゃないかな |
エリーゼ | だとしたら、やっぱり晶化現象は大精霊と何か関係が…? |
ジュード | うーん…どうかな…。可能性はあるとは思うけど… |
ジュード | それを知るためにも、やっぱりミラに会って話を聞いてみないと |
エリーゼ | そうですね… |
ジュード | とにかく、もう少しこの辺りを捜してみよう。それでいい? |
ティポ | ジュード君のお願いならいいよー |
エリーゼ | わたしも、大丈夫です |
scene2 | ミラの行方 |
ジュード | うーん、あちこち見て回ったけどミラはいないね |
エリーゼ | どこか別の場所に移動してしまったんでしょうか… |
ジュード | 話を聞いてから随分時間も経ってるしね… |
ティポ | 入れ違っちゃったのかなー? |
エリーゼ | あ… |
| |
ジュード | どうかしたの? |
エリーゼ | … |
ティポ | わー、すごいピンクー!でも、カチンコチンだね… |
エリーゼ | こんなに可愛いお花なのに… |
ジュード | エリーゼ… |
| |
エリーゼ | 初めて晶化現象を見た時は、こんなに広まってしまうなんて思いもしませんでした |
エリーゼ | みんな結晶を見て綺麗だ、宝石みたいだって言っていましたし… |
エリーゼ | けれど、その内木々や草花だけじゃなく動物も晶化し始めて── |
エリーゼ | 怖かったんです…。なのに、どうしたらいいかわからなくて… |
ティポ | エリー… |
エリーゼ | ジュード、訪ねて来てくれてありがとうございます |
エリーゼ | ジュードが来てくれなかったら、今も不安で何も出来ないままでした |
ジュード | こちらこそ。エリーゼとティポが協力してくれて僕も心強いよ |
ジュード | エリーゼの怖い、不安だって気持ちはすごくよくわかる |
ジュード | 人間が晶化したって話も聞くしね… |
ジュード | このままだと、住むところや食べ物に困る人も出てくるかもしれない |
ティポ | 普通の暮らしが出来なくなっちゃうねー |
ジュード | うん。そうならないためにも落ち着いて解決方法を探す事が大切だと思うんだ |
エリーゼ | 解決方法…見つかるでしょうか… |
ジュード | すぐには見つからないかもしれないけど… |
ジュード | 例えば、今朝行った湖の遺跡とこの辺りじゃ、晶化現象の進行具合にかなり違いがある |
ジュード | こういった小さな事だって、実際に各地を見て回らなかったらわからなかった事だよね |
ジュード | データを見比べていけば、何か一定の法則性が導き出せるかもしれない… |
エリーゼ | 少しずつだけど前進してる…そういう事ですか? |
ジュード | 今のところ、核心に迫る大きな発見はないけど… |
ジュード | 何もしないでじっとしているよりはいい方向に動いている、僕はそう思うよ |
エリーゼ | …ジュードの言う通りですね |
エリーゼ | 今は、わたし達に出来る事を精一杯頑張らないと… |
ティポ | よーし、ミラ君捜し再開だー! |
| ガサッ! |
エリーゼ | …!今そこの草むらが揺れました…! |
ティポ | ひょっとしてー!? |
| |
| グオオオッ! |
ジュード | 魔物か…! |
scene1 | ティポのピンチ |
エリーゼ | ミラ…やっぱりいませんね |
ジュード | そうだね。これだけ捜しても見つからないって事は── |
ジュード | どこか別の場所へ移動してしまったのかも |
ティポ | えー、そんなあー |
ジュード | こればっかりは仕方ないね… |
ジュード | 一度、近くの街へ行って今日は休もうか |
エリーゼ | なら、イニル街…ですね。確かここからそう遠くないはずです |
ティポ | よーし、じゃあイニル街へゴーゴー! |
ジュード | ティポ、休むって聞いた途端はりきりだしたね |
エリーゼ | 暗くなる前に森を出ましょう |
| ガサッ… |
エリーゼ | …?今の音は… |
| |
| グオオオッ! |
ジュード | 魔物か…!二人共、気をつけて── |
| ガブッ |
ティポ | うわー!エリー!ジュード君ー! |
ティポ | たーすーけーてー!ぼくがさらわれるー |
エリーゼ | そんな…、ティポ…! |
ジュード | くっ…! |
ジュード | エリーゼ、後を追いかけよう!ティポを助けなくちゃ |
エリーゼ | はい…! |
| |
ジュード | 待て! |
エリーゼ | ティポー!! |
ティポ | エリー!ジュード君! |
ジュード | ティポを離せ! |
ジュード | …!? |
| ガルルルルル… |
エリーゼ | ジュード…!大変です、他にも魔物が… |
ジュード | これは…! |
ジュード | もしかして僕達は誘い出されたのか…? |
| グルルルル…! |
エリーゼ | … |
ティポ | 囲まれてるよー! |
| グオオオオッ! |
ジュード | …!エリーゼ、危な── |
??? | させるか! |
| |
| バシイッ! |
ジュード | …? |
エリーゼ | え…? |
| |
ミラ | エリーゼ、ジュード、怪我はないか? |
エリーゼ | ミラ…! |
ジュード | どうして… |
ミラ | 説明は後だ、あの魔物を倒してティポを救出する |
ジュード | うん、そうだね…! |
| ガルルルル! |
ティポ | たすけてー!そろそろ食べられちゃうよー |
エリーゼ | 待っててください、ティポ!今助けます! |
scene2 | ティポのピンチ |
ジュード | ふう…何とか魔物は倒せたみたいだね |
ティポ | エリー! |
エリーゼ | ティポ!無事でよかったです…! |
| |
エリーゼ | ジュード、ミラ…本当にありがとうございました |
ミラ | 皆無事でよかった。それより、お前達はこんなところで何をしている |
ミラ | この辺りは魔物も多く危険だというのに… |
ジュード | それなんだけど、実は僕達、ミラを捜してたんだ |
ミラ | 私を? |
| |
エリーゼ | 北東にある湖に行ったんです。そこの遺跡で会った旅人から、ミラがこの森に向かったと聞いて… |
ミラ | ああ、魔物に難儀していた旅人か。そういえば、そんな話をした覚えがある |
ジュード | 中々見つからないから半ば諦めかけていたんだけど、運よく会えてよかったよ |
ティポ | これもぼくがさらわれたお蔭だねー |
ジュード | まあ、結果オーライって事でいいのかな…? |
ミラ | 私を捜していたと言ったな。何かあったのか? |
エリーゼ | あ、はい。実はミラに聞きたい事があって── |
ミラ | ──なるほど。お前達は晶化現象を調べていたのか… |
エリーゼ | ミラ、晶化現象は大精霊と何か関係あるんでしょうか |
ミラ | いや、その線はまずないだろう |
ミラ | 各地で結晶を見て回ったが、大精霊の中に、あのような結晶に結び付く力を持つ者はいない |
エリーゼ | そうですか…。少し安心しました |
ジュード | ミラは、どうして人間界に来たの?てっきり晶化現象を調べているんだと思ったんだけど |
ティポ | 何か気になる事があるのー? |
ミラ | …マナに異変が起きているのだ |
ジュード | えっ…それはどういう事?ミラ |
ミラ | 減っている…というより、妙な感じだ。これまでに感じた事のないような違和感がある |
ミラ | 言葉で表現するのは難しいのだが── |
ミラ | ……む? |
エリーゼ | ミラ? |
ミラ | なるほど。四大に、こう話してはどうかと言われた |
ミラ | マナは、以前のような急激な減少や変化はないのだが… |
ミラ | マナの一部が停滞していて、僅かだが循環に支障をきたしているようだ、と |
エリーゼ | マナが停滞… |
ミラ | ああ。それで私達はそういったマナの変化を感じ取り、人間界へやって来たところ |
ミラ | 世界中でこのような晶化現象というものが広まっていた、というわけだ |
ジュード | マナの変化と晶化現象…、この二つが関わっているっていう可能性はないのかな? |
ミラ | 十分に考えられる話だ |
ミラ | いろいろと調べてみたが、マナの変化と晶化現象の発生時期は重なっているようだからな |
ジュード | 大精霊の影響じゃないって事はわかったけど… |
エリーゼ | 別の不安が出てきました… |
ジュード | うん…。晶化現象がマナにまで悪影響を及ぼしているのかもしれないね |
ミラ | ああ、それが心配だ |
ミラ | こうして調べている中で、さまざまな生物が晶化している光景を目にして来た… |
ミラ | マナの事もだが、晶化現象が世界を蝕んでいる現実がある以上、原因を突き止めるべきだと考えている |
エリーゼ | そうですよね… |
エリーゼ | だったら、ミラ…わたし達と一緒に晶化現象の事、調べてくれませんか…? |
エリーゼ | …原因を知りたいんです。どうしてこんな事が起きてるのか |
ミラ | エリーゼ… |
ミラ | ああ、勿論だ |
ミラ | お前達と協力出来れば私としても心強いよ |
ティポ | やったー!ミラ君ゲットー |
ジュード | ありがとう、ミラ |
ジュード | …とにかく、今日はもう遅いし本格的な調査は明日からにしない? |
ジュード | ちょうどさっき、イニル街で休もうって話をしていたんだ |
ミラ | それもそうだな。では、早速イニル街へ向かうと── |
| ドサッ |
ティポ | 何なにー?今の音ー? |
エリーゼ | そこの草むらで音がしました… |
ジュード | 魔物ではなさそうだけど…。見に行ってみよう |
ジュード | … |
ジュード | …?魔物じゃない…これは… |
エリーゼ | …大きな結晶?晶化現象、みたいですね |
ジュード | うん…。でも、何だろうこれ。今まで見たのと様子が違う |
ティポ | 何なにー?どこがおかしいのー? |
ティポ | あ!わかった!中に何にもないんだ! |
エリーゼ | …本当です |
ジュード | そうか。今まで見た結晶の中には草花や動物とか…晶化の対象物となるものが必ず中にあったね |
ジュード | こんな事もあるなんて…。ひょっとして、新しい発見じゃ── |
| |
ミラ | …!待て、ジュード…! |
ミラ | これは──… |
エリーゼ | ミラ…?どうかしたんですか |
ミラ | …くっ |
ティポ | ミラ君の顔が怖いよー |
ミラ | … |
ミラ | …そうか、お前達にはこの結晶の中身が見えないのだったな |
ジュード | 見えない…って事はミラ、もしかして…! |
ミラ | …精霊だ。この結晶の中には精霊がいる |
ミラ | 精霊が、晶化してしまったのだ… |
エリーゼ | そんな…! |
ジュード | … |
ミラ | この世界には、お前達の知る大精霊以外に、微精霊と呼ばれる存在もいる |
ミラ | 微精霊の持つ力そのものは微力だが、…それでも、自然を保つために尽力してくれている大切な存在だ |
ミラ | そんな彼らまでもが…晶化してしまったというのか…? |
ジュード | ミラ… |
エリーゼ | …この結晶に、微精霊が…。どうしたら… |
ジュード | エリーゼ、晶化したものは、もう… |
ミラ | … |
ミラ | …行こう。これ以上ここに留まっていても今してやれる事は何もない |
エリーゼ | ミラ… |
ティポ | 行っちゃったね |
ジュード | … |
エリーゼ | 一体、どうしたら… |
scene1 | 涙の答え |
エリーゼ | … |
| コン、コン |
エリーゼ | はい |
ジュード | 僕だけど、ちょっといいかな? |
エリーゼ | はい、どうぞ |
ジュード | 明日の話をしようと思って来たんだけど── |
ジュード | あれ、エリーゼとティポだけ?ミラは? |
エリーゼ | あ、ミラは… |
ティポ | 外に行っちゃったよー |
ジュード | こんな夜に、一人で? |
エリーゼ | はい、少し夜風に当たってくると…。日も暮れて暗いから止めようとしたんですが… |
ジュード | …そっか |
ジュード | やっぱりミラ、あの晶化した微精霊の事がショックだったのかな… |
エリーゼ | …そうかもしれません。街へ来るまでもずっと考え込んでいるようでしたし… |
ティポ | だよねー |
ジュード | …前にさ、ミラが言ってたんだ。四大精霊は、かけがえのない家族のような存在だって |
ジュード | それと同じように、微精霊達もミラにとっての友達や仲間…、そういう大切な存在なんだと思う |
エリーゼ | 友達… |
ジュード | 僕達はまだ、実際に人が晶化しているのを目にしていない。けど、もし見たとしたら… |
ティポ | ガーンってなるよねー。ミラ君みたいにー |
エリーゼ | … |
エリーゼ | …ミラが心配です。ジュード、少し様子を見に行きませんか…? |
エリーゼ | 正直ミラに何て言ってあげたらいいのか、わかりません… |
エリーゼ | でも…その…… |
ジュード | エリーゼは、ミラのために何かしてあげたいんだね |
エリーゼ | はい…! |
ジュード | じゃあ、ミラのところに行こう。エリーゼのその気持ちを伝えればいいんじゃないかな |
ティポ | よーし、みんなでミラ君のところに行こー! |
| コン、コン |
ティポ | ミラ君が帰って来たのかな?…と思ったら、あれー? |
宿の主人 | 悪いね、こんな夜遅くに…。お客さん、あんたお医者さんだって言ってたよな? |
ジュード | え…僕ですか?ま、まあ…正確にはまだ研修中の── |
宿の主人 | よかった、助かった! |
宿の主人 | 実は、別の部屋に泊まってるお客が、急に腹が痛いって言い出してさ。悪いけど、診てもらえないかな |
ジュード | わかりました。僕でよければ、是非 |
ジュード | …ごめん、エリーゼ |
エリーゼ | わかりました。わたし、ミラのところへ行ってますね… |
ジュード | 様子を見て、患者さんが大丈夫そうなら僕も後から行くよ |
ジュード | ミラが見つからなくても、街の外まで行かないようにね。くれぐれも気をつけて |
ティポ | 大丈夫だよー、エリーにはぼくがいるからー |
エリーゼ | …じゃあティポ、ミラのところへ行きましょう |
ティポ | うん!レッツゴー! |
scene2 | 涙の答え |
エリーゼ | ミラ…どこまで行っちゃったんでしょうか… |
ティポ | あ!見て、エリー。あれミラ君じゃないー? |
| |
ミラ | … |
エリーゼ | ミラ…!見つけました… |
ミラ | エリーゼにティポ…。お前達、どうしてここに…? |
| |
エリーゼ | えっと…それは──… |
ティポ | ミラ君が落ち込んでるんじゃないかって心配になって見に来たんだよー |
エリーゼ | ティ…ティポ…! |
ミラ | 私が…?それでわざわざ捜しに来てくれたのか? |
エリーゼ | …は、はい |
ミラ | …心配をかけてしまったか。平静を保っていたつもりだったが… |
ミラ | …エリーゼ、すまなかったな |
エリーゼ | そんな…ミラが謝る必要は全然ないです…! |
エリーゼ | あんな光景を目の当たりにしたらびっくりして…悲しいのは当然です |
ミラ | … |
エリーゼ | ジュードが言っていました。ミラにとって、精霊達はすごく大切な存在だって |
エリーゼ | 上手く言えませんが…そんな大切な存在が晶化してしまったら、辛くないわけありません |
エリーゼ | わたしだって…ティポやジュード、それにミラが晶化してしまったら…… |
エリーゼ | …そう考えただけで、すごく怖くて… |
エリーゼ | わたしにとって、三人共すごく…大切なんです。だから──…… |
エリーゼ | 一人で抱え込まないでください… |
ティポ | …エリー、泣いてるのー? |
エリーゼ | あれ…?どうして、こんな…… |
ミラ | エリーゼ… |
エリーゼ | ごめんなさい、ミラ…。わたし…こんなつもりじゃ… |
ミラ | いや、構わないさ。…エリーゼ、礼を言うぞ。私はもう大丈夫だ |
ミラ | ああいう事態を予想していなかったからな、意表を突かれたというのは事実だ |
ミラ | しかし、ただ動揺ばかりしていたわけではないぞ |
ミラ | あの晶化した微精霊のためにも、晶化現象の実体を探り事態の進行を食い止めねば… |
ミラ | そう己に言い聞かせていたところだ |
ティポ | それって、ミラ君はもう元気になったって事ー? |
ミラ | ふふ、まあそんなところだ |
エリーゼ | …よかったです。それを聞けて少し安心しました… |
エリーゼ | わたしなんかじゃ、大した事は出来ないかもしれません… |
エリーゼ | でも、ミラと同じ気持ちです。みんなと一緒に、晶化現象を何とかしたいです |
ティポ | ぼく達も協力するよー |
ミラ | …ありがとう |
ミラ | そうだな…私は一人ではない。四大もいるし、エリーゼ達もいる |
ミラ | 打つ手は必ずあるはずだ。そう信じて、一緒に頑張ろう |
エリーゼ | …はい! |
ティポ | がんばろー! |
??? | ──話もまとまったところで、そろそろ宿に戻らない? |
エリーゼ | …え? |
ジュード | 明日から、より気合を入れて晶化現象を調べないといけないのに風邪でも引いたら大変だよ |
ティポ | ジュード君ー! |
ミラ | いつからいたのだ? |
ジュード | 少し前にね。それより安心したよ、ミラが元気になってくれて |
ジュード | これもエリーゼのお蔭だね |
エリーゼ | そんな…わたし全然何も… |
ミラ | …いや、お前達がいて、本当によかったよ。ジュードにも心配をかけたな |
ジュード | いいんだよ。それじゃ、宿に戻ろうか |
エリーゼ | そうですね |
ティポ | よーし、早く寝よー! |
| |
| うわあああ! |
エリーゼ | 今の悲鳴は…! |
ミラ | …!あれを見ろ! |
ジュード | どうやら街の中に魔物が侵入してきたみたいだ…! |
エリーゼ | 大変です…!魔物を退治しないと… |
ジュード | うん、行こう! |
scene1 | イニル街の二人 |
ティポ | おひさまがぽっかぽかー |
エリーゼ | はい、気持ちのいい朝です |
ジュード | 夕べ話した通り、次はシルヴァラントへ向かうって事でいいかな? |
ミラ | ああ、それで問題ない。あの大陸はまだ私も調べていない |
ミラ | それに、お前達が耳にしたというアグニラス山の話も気がかりだ。次の目的地としては妥当だろう |
エリーゼ | 周辺の地域より、晶化現象が進んでいるって話ですよね… |
エリーゼ | 昨日行った湖の辺りと、どっちが進んでいるんでしょうか… |
ジュード | うーん、どうなんだろう…。それを確かめるためにもやっぱり行ってみるしかないね |
ティポ | よーし、じゃあシルヴァラント目指してレッツ── |
??? | わあ…!ぬいぐるみがしゃべってる…! |
エリーゼ | …? |
エル | しゃべるなんて変なぬいぐるみー!どこで買ったの? |
エリーゼ | えっと…それは… |
ミラ | エル…?やはりエルではないか |
エル | ミラ…!どうしてここにいるの? |
ジュード | ひょっとしてミラ、この子と知り合いなの? |
ミラ | ああ、彼女はエル・メル・マータ。以前この街へ来た時に世話になったのだ |
ミラ | ルドガーとユリウス、二人の事はお前達も知っているだろう?エルは彼らと共に暮らしている |
エリーゼ | ルドガー達と…そうなんですね |
エル | この人達、みんなミラのお友達? |
ミラ | ああ。彼女はエリーゼ、それにジュードとティポだ |
エリーゼ | よろしく…お願いします |
ジュード | よろしくね |
ティポ | よろし──… |
エル | … |
ティポ | そんなに見つめられるとぼく困っちゃうー |
ジュード | 随分と気に入られたみたいだね、ティポ |
ミラ | 元気そうで何よりだ、エル。ルドガーやユリウスも変わらず元気にしているか? |
エル | うん!でも、ルドガーは今いないよ。ショーカのこと調べに行ってるの |
エリーゼ | ショーカ…あ、晶化現象の事でしょうか…? |
エル | うん |
ジュード | ルドガーも僕達と同じように、晶化現象の事を気にかけていたんだね |
ミラ | もう少し早く会う事が出来れば協力する事も出来ただろうが…惜しい事をしたな |
エリーゼ | ユリウスさんも一緒でしょうか… |
エル | あ、メガネのおじさんなら── |
??? | …エル。なかなか戻って来ないと思ったらこんなところにいたのか… |
ユリウス | ルドガーと約束しただろう?今は出来るだけ、晶化したものには近付かないと── |
ユリウス | …ん?君達は… |
ミラ | ユリウス、久しぶりだな |
エリーゼ | お久しぶり…です |
ユリウス | …まさか君達がこの街に来ていたとはな。変わりないようで安心したよ |
ユリウス | ルドガーもこの場にいたら君達との再会を喜んでいただろうが… |
ジュード | 晶化現象を調べに行ったんですよね。エルから聞きました |
エリーゼ | ルドガーは何か、晶化現象についてわかったんでしょうか…? |
ユリウス | いや、家を出たきり戻って来ないところを見ると、難航しているんだと思う |
エリーゼ | そうですか… |
ティポ | せっかく話が聞けると思ったのにー |
ユリウス | 君達も晶化現象の事を調べているのか? |
ミラ | ああ…と言っても、私達もまだ大した手がかりは掴めていないが |
ユリウス | そうか…。やっぱり、そう簡単には── |
エル | ねえねえ、おじさん |
ユリウス | ん?エル、どうかしたのか? |
エル | 立ちバナシもなんだし、ミラ達をお家にショータイしてそこでお話したらどう? |
ユリウス | ああ、確かにエルの言う通りだな。話に夢中で全然気がつかなかったよ |
ユリウス | …という事で、みんな、話の続きは家でどうだろう? |
ユリウス | まあ、ルドガーがいないし大したもてなしは出来ないかもしれないが… |
エリーゼ | …どうしますか? |
ミラ | …ふむ、ユリウスもこう言ってくれている事だ、その言葉に甘えるとしようか |
ティポ | わーい、サンセー! |
ジュード | じゃあ、少しだけ…。何だか気を遣わせちゃってすみません |
エリーゼ | エルも、ありがとうございます |
ユリウス | よし、じゃあ早速行こうか。エル、みんなを家まで案内してやってくれないか? |
エル | うん!エルに任せて! |
scene2 | イニル街の二人 |
ルル | ナァ~ |
ティポ | なー |
ルル | ゴロゴロゴロ… |
ティポ | ごろごろー |
エル | …あ!ティポ、今のルルのマネっこでしょ |
ティポ | 似てるでしょー。エルのマネっこだって出来ちゃうんだよーぼく |
エル | えー、本当? |
エリーゼ | …みんな、とても仲良しになったみたいです |
ジュード | ふふ、本当だね |
ミラ | ところで、お前達も晶化現象を調べていると言っていたが… |
ユリウス | ああ。以前の異変の事もあって、俺もルドガーも大精霊との関連が気がかりではあったんだ |
エリーゼ | …やっぱり、真っ先にそう思っちゃいますよね |
ユリウス | だが、君達と会った事で大精霊の関与はないとわかった。これは新たな発見だな |
ユリウス | 同じ目的で動いている君達なら、旅の道中でルドガーに会う事もあるかもしれない |
ユリウス | その時は、是非この事実を知らせてやってくれ |
ジュード | 勿論です |
ユリウス | それにしても、ルドガーは今どこにいるんだろうな… |
ユリウス | 君達はこの後、どこに向かうつもりなんだ? |
エリーゼ | シルヴァラントです。晶化現象が進んだ地域があると聞いてそこを目指そうと… |
ユリウス | シルヴァラントか… |
ユリウス | そう言えば、新たな天啓の石碑が出現したらしいな。どこもその噂で持ちきりのようだ |
ミラ | 天啓の石碑…?それは一体何だ? |
ジュード | …あ、そうか。ミラは知らないかもしれないね |
ジュード | 天啓の石碑っていうのは、時々この世界のどこかに出現する不思議な石碑の事だよ |
ジュード | そこには、時代の節目となるような過去の出来事が記されていて、それを天啓って呼んでるんだ |
ミラ | 誰かが記録として残しているという事か? |
エリーゼ | それは…わからないんです |
ミラ | わからない? |
ジュード | うん。何せ、ある日突然現れるからね |
ジュード | その場所がわかるのも、その石碑を読めるのもシルヴァラントの神子だけって話なんだ |
ユリウス | 天啓の石碑の出現自体は、遥か大昔の時代から確認されているようだが── |
ユリウス | 現代科学をもってしても、未だその原理は解明されていない |
ミラ | …ほう。で、その天啓の石碑が出現したと… |
エリーゼ | その話が本当ならそれも不思議なんです |
ミラ | 何故だ? |
ユリウス | 先日、百年の時を経て天啓の石碑が見つかったばかりなんだが… |
ユリウス | またすぐ次の石碑が出現したらしい。こんなに短い期間で現れた事は過去の記録にはないとの事だ |
ミラ | ふむ… |
ジュード | まあ、今までの出現に関して規則性があるわけじゃないからたまたまかもしれないし── |
ジュード | 昔過ぎて、その記録もアテに出来ないかもしれないけどね |
ユリウス | それよりも気がかりなのは、前回公表された天啓の内容の方だ |
ジュード | 過去の出来事と符合しないっていうのは、これもまた不思議な話ですよね |
ミラ | いずれにしろ、例のない事態が続いて注目を集めているというわけか |
エリーゼ | はい… |
ティポ | … |
エリーゼ | …ティポ、もう遊び終わったんですか? |
ティポ | しー!エルもルルも遊び疲れて寝ちゃったよー |
エリーゼ | …え? |
エリーゼ | … |
エリーゼ | …ふふ、本当ですね |
ミラ | さて、そろそろ出発するとするか。ユリウス、いろいろと聞かせてくれてありがとう |
ユリウス | 余談が過ぎてすまなかった、随分長く足止めさせてしまったな |
ジュード | いえ、こちらこそ。お茶までご馳走になってありがとうございます |
ユリウス | そうだ、シルヴァラントに行く、と言っていたな… |
ユリウス | 最後にもう一つ、いいだろうか |
ユリウス | 赤の騎士団について行商人から気になる話を聞いた |
エリーゼ | 赤の騎士団…? |
ユリウス | ああ。リチャード国王の晶化後、セルディク大公が新たに作った騎士団だ |
ユリウス | だから、国王承認の騎士団とは言えないのだが… |
ユリウス | その行商人がシルヴァラントとの国境付近の街で、赤の騎士団を見かけたらしい |
ユリウス | 魔物や盗賊の討伐というよりも、調査か捜索をしに行くといった風情だったそうだが… |
ジュード | わざわざ他国に出向いて…?一体何があったんだろう |
ティポ | おかしな事にならないといいねー |
ミラ | ああ。いずれにせよ、用心すべきだな |
エリーゼ | ユリウスさん…忠告ありがとうございます |
ユリウス | ああ、気をつけて |
ジュード | よし、それじゃあ行こう |
scene1 | 港での再会 |
ティポ | シルヴァラント港についたー! |
エリーゼ | ふう… |
ジュード | エリーゼ、大丈夫?船に酔わなかった? |
エリーゼ | はい、何とか… |
ジュード | よかった。じゃあ、降りようか |
| |
エリーゼ | 人がたくさんいます… |
ミラ | ちょうど別の船も、到着したばかりのようだ。そのせいで港が混んでいるのだな |
ジュード | あ、どうやらア・ジュールからの船みたいだね |
ミラ | む…? |
ジュード | ミラ、どうかしたの? |
ミラ | 今、見知った顔が混じっていたような… |
ジュード | え?本当に? |
ミラ | … |
ミラ | …見失ってしまったようだ |
ジュード | これだけ人が多かったら捜すのは難しそう──…あれ?エリーゼ? |
ミラ | 確かに一緒に船から降りたはずだが… |
| |
エリーゼ | えっと…すみません…!その…通してくださ…… |
ティポ | ムギュー!痛いよー! |
エリーゼ | ティポ…!きゃっ…! |
| |
ミラ | まずいな…人混みに流されてしまったか |
ジュード | エリーゼ!どこ? |
ティポ | ミラ君ー!ジュード君ー!助けてー! |
ジュード | ティポ…?いた、あそこか…! |
| |
エリーゼ | すみません、あっちに行かせてくだ… |
エリーゼ | 押し潰されて……う… |
??? | すみませーん!ちょっと通してください! |
エリーゼ | …? |
スタン | よっと! |
エリーゼ | きゃっ…!? |
ティポ | エリーが浮いたー!? |
スタン | はあ…こんな小さな女の子が押し潰されそうになってるのに、みんな我が先にと…全く… |
スタン | 君、どっちに行きたいんだ…って、あれ!?君は確か… |
ジュード | エリーゼ、大丈夫!? |
ティポ | うわー!エリー抱っこされてるー!離せ―!怪しい奴めー! |
エリーゼ | 降ろしてください…! |
スタン | ええ!?ちが、怪しい者じゃ…今降ろすから、暴れないでくれ…! |
エリーゼ | … |
スタン | ふう… |
ジュード | ありがとう、スタン。危うくはぐれてしまうところだったよ |
エリーゼ | ありがとう…ございました…。スタンとは気付かなくて… |
スタン | はは、周りの人から変な目で見られちゃったな |
ティポ | だってビックリしたんだもん。ね、エリー |
ミラ | 見たような顔だと思ったらお前だったか、スタン |
スタン | ああ、久しぶりだな!まさかこんな形でミラに会えるとは思ってもみなかったよ |
スタン | 港には今着いたところか? |
ミラ | ああ、ウィンドルからの便でな |
スタン | そっか。俺達も今ちょうどア・ジュールからこっちに帰って来たところなんだ |
ティポ | ア・ジュールにいたのー?それに、俺達ってー? |
スタン | あ、あれ?そう言えばあの二人はどこに… |
??? | お兄ちゃーん! |
??? | ちょっと、もう!急に一人で走って行くからびっくりしたじゃない |
??? | 本当だぞ。せめて声くらいかけて──…ん?お前達は… |
スタン | ああ、紹介するよ。こっちはエリーゼとティポ、それにミラとジュード |
スタン | みんな、前に一緒に旅をしていた仲間だ |
??? | あなたがミラさん…!兄から話は聞いています |
リリス | 私、リリス・エルロンと申します。うちの兄がいつもお世話になってます |
ミラ | お前がスタンの妹か…。前に話を聞いた事があるぞ、こちらこそよろしく頼む |
キール | ぼくはキール・ツァイベル。よろしく |
ジュード | こちらこそ、よろしく |
エリーゼ | よろしくお願いします… |
スタン | ところで、みんなは何の用でシルヴァラントに? |
ジュード | ああ、実は僕達、今晶化現象について調べていて、アグニラス山へ行こうと── |
スタン | 晶化現象を…?実は俺達もなんだ! |
エリーゼ | スタン達も…? |
スタン | ああ、俺達がア・ジュールに行ってたのもそのためだったんだ |
ジュード | ルドガーといい、スタンといい…晶化現象に不安を感じてたのはやっぱりみんな同じなんだね |
リリス | みなさんが向かおうとしているアグニラス山へは、私達、少し前に行ってきました |
ティポ | えー、そうなのー? |
エリーゼ | その山では晶化現象が進んでると聞いて、わたし達ここまで来たんです… |
エリーゼ | よかったら、状況を教えてもらえませんか…? |
ジュード | ──じゃあ、アグニラス山では特にめぼしい情報は得られなかったんだね |
スタン | ああ。晶化現象が進んでいるのは進んでいたんだけど、それ以上は… |
ミラ | …となると、私達も行ったところでわかる事はなさそうだな |
リリス | そうかもしれません… |
エリーゼ | これからどうしましょう… |
スタン | それなら、俺達と一緒に来ないか? |
スタン | 俺達、これから一旦ルイニス街に戻って、リオンと合流する予定なんだ |
スタン | リオンもリオンで晶化現象を調べているから、何か有力な情報を掴んでいるかもしれない |
キール | …そうだな、一度みんなの情報を擦り合わせればいいんじゃないか? |
ジュード | うん、いい考えだね。そうさせてもらおう。いいかい?みんな |
エリーゼ | はい…!いいと思います |
ミラ | 私も異存はない |
ティポ | 決まりだねー |
リリス | じゃあ、一緒にルイニス街を目指しましょう |
エリーゼ | はい…! |
scene2 | 港での再会 |
スタン | ──まさか精霊まで晶化してしまうなんて… |
キール | ぼく達は自分の目で精霊をじかに観察する事が出来ない |
キール | だからその事実を知る事が出来たのは貴重だな |
リリス | となると、もしかして今まで見た結晶の中に、精霊がいたかもしれないんですね… |
スタン | 晶化現象が大精霊に関わるものじゃないって事がわかったのはよかったけど… |
スタン | 別の疑問が出てきたな… |
キール | ミラが感じているマナの変化も気になるな |
リリス | 一体何が 起こってるんでしょう… |
ジュード | まだわからない事だらけだけど、それでも、徐々に新しい情報を得られていると思う |
ジュード | みんなで力を合わせればきっと道は開けるよ |
エリーゼ | ジュード…。そうですよね |
ティポ | 頑張らなくちゃ。ね、エリー! |
エリーゼ | はい…! |
| ガサ… |
ミラ | …!今の音は… |
スタン | そこの草むらだ。何かいるぞ! |
エリーゼ | ひょっとして、魔物じゃ… |
| |
| グルルルル! |
ティポ | 出たー! |
キール | …!しかも、よりによって厄介な奴と出くわしたな… |
スタン | ああ… |
ジュード | 厄介な相手ってどういう事? |
スタン | あの魔物は、この辺りに棲息する魔物の中でも特に危険な奴なんだ…! |
キール | 奴らは群れで動く…!近くに仲間が… |
| グオオッ! |
エリーゼ | …! |
リリス | やっぱり、いましたね…! |
スタン | ミラ、ここは手分けして当たろう。俺とキールとリリスは正面を引き受ける! |
ミラ | わかった。エリーゼ、ジュード、ティポ、私達は背後の新手を片付けるぞ! |
ジュード | 了解! |
エリーゼ | わかりました…!ティポ、準備はいいですか? |
ティポ | おっけー、エリー! |
scene3 | 港での再会 |
ミラ | …よし、終わったな |
エリーゼ | こっちにいた魔物は全部倒せました… |
ジュード | スタン、そっちはどう?怪我はない? |
スタン | ああ、大丈夫だ |
キール | やれやれ… |
リリス | みんなで一緒だったから何とか撃退出来ましたね |
リリス | …!エリーゼ!後ろ… |
| |
| ガサッ! |
エリーゼ | え…? |
ミラ | くっ、まだ残っていたか…! |
| ギャウウウウ! |
ジュード | エリーゼ!危ない! |
エリーゼ | …! |
| ドサッ |
| ピキ…ピキピキ… |
エリーゼ | え……? |
| ピキピキピキッ…! |
| |
ジュード | なっ!?ま、魔物が──… |
ミラ | これはまさか…! |
スタン | … |
スタン | これは一体…どういう事なんだ…? |
キール | 魔物が…晶化した、だと…… |
リリス | こんな一瞬にして… |
ミラ | … |
ティポ | エリー、怪我はない? |
エリーゼ | わたしは大丈夫です…、そんな事より…… |
ジュード | 驚いた…あんなに激しい動きをしていたのに… |
スタン | まさか魔物が晶化する瞬間を目の当たりにするなんて |
ミラ | … |
ミラ | そうか…そういう事だったのか… |
ジュード | ミラ?そういう事って…何かわかったの? |
ミラ | …ああ、この結晶の正体だ。目の前で見て、初めてわかった |
スタン | 結晶の正体だって!?それは一体…… |
ミラ | …マナだ。おそらく、そう考えて間違いない |
ジュード | 何だって…? |
エリーゼ | 結晶の正体が…マナ…… |
scene1 | 結晶の正体 |
エリーゼ | ──ミラ、結晶の正体がマナって、どういう事ですか…? |
ミラ | マナは、あらゆる生命の源だ。精霊以外でも、どんな生物であれマナの恩恵を受けている。魔物もだ |
ミラ | だが、先ほど魔物が飛び掛かり、晶化した瞬間、魔物の周りのマナまでもが動きを止め、固まった… |
ジュード | マナが、固まる… |
ティポ | マナが、氷みたいに固まっちゃったーって事ー? |
ミラ | ああ、まさにそんな感じだ。固まると同時にこのような結晶となり皆にも見えるようになった… |
ミラ | マナは消失したわけではない。だからこうして晶化する様を目の当たりにするまでは私もわからなかった |
スタン | うーん…。つまり、マナはなくなったわけじゃないけどマナとしての意味がなくなってる… |
スタン | それって、マナが減ったって事と変わりないんじゃないのか? |
ミラ | そうだな…。本来の働きが出来ないという意味ではそうだろう |
スタン | 待ってくれ!って事は、このまま晶化現象が進行し続けたら… |
ミラ | …マナは循環する事によって、世界に調和をもたらすという本来の役割を果たす |
ミラ | その循環が滞り、役割を果たせないとなれば… |
ジュード | その調和が崩れ、世界中にさまざまな弊害が出るって事だよね |
エリーゼ | そんな… |
ミラ | 魔導器を使用した過去の騒動のような局所的で、大規模な変化ではない |
ミラ | 急激に環境が悪化し、世界の均衡がすぐさま崩れる、という事はないだろうが… |
キール | だが、世界中のマナが蝕まれている現実は変わらない… |
スタン | という事は、いずれは大精霊も晶化してしまうんじゃ… |
ミラ | …その危険性は、人間も、大精霊も同じだ |
ミラ | さっきも言ったように、急激な変化ではない |
ミラ | 以前のような事態にすぐはならないだろう… |
ジュード | だとしても…。やるべき事は変わらないね |
エリーゼ | はい…。植物も、人間も精霊も…こうして晶化しているのを見るのは辛いです |
リリス | その前に、このままでは食糧に困ってしまう事になるんじゃないでしょうか |
キール | 悠長な事を言ってられる状況じゃないな |
スタン | 早く、晶化現象の原因を突き止めないと…! |
ミラ | ああ。今は何よりも必要なのは晶化につながる手がかりだ |
スタン | そうだな。早くルイニス街に戻ってリオンと合流しよう |
キール | すまない、ぼくはここで。一旦コルテア街へ帰る |
キール | 結晶がマナの塊だという事がわかった |
キール | それを踏まえながら、情報を整理していろいろと調べてみる |
スタン | そっか、わかった。キール、いろいろとありがとう |
リリス | 本当にお世話になりました。街までの道のりも気をつけてください |
キール | ああ。何かあればまた知らせる。それじゃあ |
スタン | それじゃ、俺達も行こうか |
エリーゼ | はい |
scene2 | 結晶の正体 |
リオン | 家も見てきたが…どうやらスタン達はまだ戻っていないらしいな |
スレイ | いつごろ戻ってくるか、わからないんですか? |
リオン | 距離的にはあいつらの方が先に帰っていると思っていたが… |
ヴェイグ | 目的地がコルテア街なら、ここからそう遠くない。その内戻って来るだろう |
ルドガー | 今は待つしかないな |
ミクリオ | …いろいろ気がかりだね。そもそも、そのスタンという人間が、目的の人物と会えたのかどうか… |
ライラ | 時間がかかっているという事は何か別にやる事が出来てしまったのかもしれませんね |
スタン | さ、着いたぞ! |
エリーゼ | ここがルイニス街… |
ティポ | きれいな街だねー |
エリーゼ | 確か以前、街全体が氷漬けになってしまったと聞きました |
ジュード | その時の街の光景は今でもはっきり覚えてるけど…まるで見違えたね |
リリス | これも全部みなさんのお蔭ですね。本当に感謝してます |
ミラ | いや、この街が救われたのはスタンやリオンの強い想いがあったからだ |
ティポ | あー!リオン君はっけーん!何かたくさん人がいるよー |
スタン | 本当だ。誰だろう。ルーティはいないみたいだけど… |
スタン | おーい、リオン! |
リオン | …?今聞き覚えのある声が… |
スレイ | ひょっとして、あの人達が…? |
| |
スタン | ごめんごめん、待たせたか? |
スタン | …あれ、そこにいるのって… |
エリーゼ | ルドガーです…! |
ジュード | まさかこんなに早く会える事になるなんてね |
ルドガー | 久しぶり、スタン。まさかミラ達と一緒だったとはな |
スタン | そういうルドガーこそ、何でリオンと一緒に? |
リオン | 途中で会ったからだ |
リオン | お前は何故ミラと一緒にいる。居所は知らないと言っていたはずだが |
スタン | さっきシルヴァラント港で偶然会ったんだ |
リオン | 港だと…? |
リオン | コルテア街へ行ったはずじゃなかったのか?キールはどうした |
ミラ | キールも一緒だったが、今しがたコルテア街へ帰ると別れたばかりだ |
| |
エリーゼ | 何だか人がたくさんいますね…。初めて見る人も… |
リリス | エリーゼ、緊張してるの? |
エリーゼ | はい、少し… |
ティポ | 大丈夫だよ、エリー。ぼくがついてるから |
ミラ | ん?もしかして、そこにいるのは… |
ジュード | 君は確か、前に遺跡で会った… |
スレイ | はい、スレイです |
スレイ | 覚えてもらえてて嬉しいです。な、ミクリオ? |
ミクリオ | … |
ミラ | む…?お前は…それに奥の女も… |
スタン | えっと…。スレイ、ルドガー以外は初めて会うよな? |
スレイ | …実はあの時、ミクリオも一緒にいたんだ。みんなには見えてなかっただけで |
ミクリオ | …スレイ、話すのか? |
スレイ | 機会がなくて、ちゃんと話せてなかったけど、このままじゃ面倒な事も多いだろ? |
ミクリオ | …まあ、そうだけどね |
スレイ | あの時俺が話してた天族の話、覚えてますか? |
ジュード | えっと、確か…普通の人間には見えないとか |
リオン | ミクリオがその天族だと言うのか? |
スタン | えええ!? |
スレイ | ミクリオだけじゃなくて、こっちのライラも天族なんだ |
スレイ | いろいろあって、今は普通の人にも見えるようになってる |
ルドガー | ライラもなのか!? |
ライラ | ふふ。実はそうなんです |
ミラ | …なるほど。どうりで不思議な気配を感じるわけか |
ヴェイグ | どう見ても人間だが…。全く気付かなかった |
ルドガー | 俺もだよ。でも、そうだと言われたら何故か妙に納得出来る気はするかな |
スタン | ところで、リオンと一緒にここへ来たって事は、やっぱりみんなも晶化現象の事を調べてるのか? |
ルドガー | ああ。君達がそのために動いていると聞いて、一緒に来たんだ |
エリーゼ | …みなさん、晶化現象の事を調べていたんですね。何だかうれしいです |
ティポ | 仲間がいっぱいー |
リリス | そういえば、リオンさんはクラースさんと会えたんですか? |
リオン | …いや、間に合わなかった |
スタン | 間に合わない…?それってどういう── |
| |
ヴェイグ | 晶化だ… |
| |
エリーゼ | え…? |
リオン | クラースは、晶化してしまったんだ… |
ミラ | 何…!? |
ジュード | そんな…! |
スタン | …リオン、詳しい話を聞かせてくれ |
リオン | … |
scene1 | 結びつく符合 |
スタン | クラースさんに、クレアさんか… |
スタン | …ヴェイグ、クレアさんの事は何て言えばいいのか… |
スタン | 俺も、リリスがルイニス街で氷漬けになった時は本当に辛かった。今はこうして元気だけど… |
スタン | だから、クレアさんもきっと助け出せる。俺も一緒に頑張るよ |
ヴェイグ | ああ…。ありがとう、スタン |
リリス | クラースさんも心配ですね… |
リリス | ルーティさんの面倒見ているという子ども達も、クラースさんを見てびっくりしたでしょうし… |
スタン | うん、ルーティがバロニアに戻るのも仕方がないな |
リオン | 精霊も晶化か…。くそっ、一体どうなってるんだ |
ライラ | 事態は、私達が想像していた以上に複雑で、深刻なのかもしれませんね |
ミクリオ | ああ…。考えを根本から改める必要がありそうだ |
スレイ | 人間も、精霊もって事は、やっぱり天族にも… |
ミクリオ | 勿論。念頭に置いておくべきだ… |
エリーゼ | 結晶の中の命が無事だとわかって少し安心はしましたが… |
エリーゼ | でも、それも…いつまで無事でいられるかはわからないんですよね… |
ルドガー | …ああ。一刻も早く助け出してやらないとな |
ルドガー | ともかく、ミラの話を聞いて大精霊が関わっていないという事がわかったな |
ルドガー | それと、結晶の正体もだ |
リオン | 結晶がマナだとはな… |
スレイ | 世界を司るエネルギーで、人間や精霊、世界そのものを支える生命の源…それがマナなんですよね |
ライラ | 水が凍ったり、大地から石や鉱物が生まれる事は自然の摂理です。ですが、マナの結晶化は… |
ミラ | 言える事は一つ…晶化現象が起きれば、マナは本来の働きを失う |
ミラ | マナの減少に等しい状況を生み出している、という事だ |
スレイ | これからどうなるんだろう… |
リオン | このまま晶化現象が進み続ければ悪影響が出るだろうな。晶化現象それ自体が厄介だというのに… |
スレイ | 悪影響… |
ヴェイグ | 結晶がそのマナというものだとわかったが、どうして結晶になってしまうのかはわからないままか… |
スタン | それに加えて、天啓の事も気になる。赤の騎士団の事はア・ジュールで耳にしたけど… |
リオン | …まさか、お前がア・ジュールにまで行って牢屋に入れられたとはな。よくも無事で帰って来たものだ |
リリス | 本当に肝を冷やしました… |
ルドガー | でも、話を聞いてわかったよ。バロニアで見かけた黒ずくめの怪しい男の正体が… |
スレイ | あの男がスタンさんの言うウィンガルって人だとしたらバロニアでの目的は、偵察? |
リリス | かもしれません…。赤の騎士団を警戒していたみたいですから… |
ヴェイグ | メルトキオでの一件を考えるとウィンドルも天啓に深い関心がある事は明らかだ |
ジュード | じゃあ、ユリウスさんが見たっていう赤の騎士団の動きも… |
ヴェイグ | これまでの経緯から言って石碑捜索のために、神子が必要なんだろう |
エリーゼ | え…。じゃあ、いろんな国が神子を捜しているって事ですか? |
ティポ | 神子が危ないって事ー? |
リリス | どこかに身を潜めているとはいえ…ずっと隠れているわけにもいかないですし、かわいそうです |
エリーゼ | …どうしてどの国もそんなに天啓を気にするんですか? |
ミクリオ | …一つは自国の利益のため。赤の騎士団については少なくともそうだと聞いている |
ミクリオ | 彼らは、以前の天啓が未来予知であるという説を信じているみたいだからね |
スタン | ア・ジュールの真意はわからずじまいだったな… |
ヴェイグ | しかし、ア・ジュールまで動き出したとなれば、状況は更に緊迫するだろう… |
ライラ | クレアさんを誘拐した二人組はどこかの国の刺客だったのでしょうか |
ミクリオ | さっきのウィンガルの例もある。可能性は否定出来ないけど… |
リオン | いずれにせよ、メルトキオ襲撃を企てる連中だ。シルヴァラントに害を加えようとしているのは明らかだ |
ルドガー | …さてと。今わかっている事はこのくらいか |
スタン | 問題は、ここからどう動くかだな |
ミクリオ | 結晶の正体や各国の動向と、僕達が把握出来た事は多い。ただその上で── |
スレイ | …うん。やっぱりまずは、晶化現象の原因を突き止めなきゃいけないと思う |
ルドガー | そうだな。マナの異変とも関係しているならより一層早く手を打つ必要がある |
ヴェイグ | だが、具体的にどう動けばいいのか… |
ヴェイグ | マナを感知出来るミラですら、どうして結晶化してしまうのかはわからないのだろう |
ミラ | …ヴェイグの言う通りだ。これが未知の現象である事は変わらない |
ルドガー | つまり、情報は得られたものの、状況に大きな進展はなしって事か… |
スレイ | でも、だからこそ何か行動を起こさないと |
スレイ | ちゃんとした確証がなくても止まったままよりはずっといいと思うんだ |
スタン | …だったらさ、天啓を調べてみるっていうのはどうかな? |
エリーゼ | 天啓を…ですか? |
スタン | ああ。ひょっとしたら、晶化現象と天啓…この二つは何か関わりがあるかもしれない |
エリーゼ | … |
scene2 | 結びつく符合 |
ヴェイグ | 晶化現象と天啓に関わりがあるというのはどういう事だ? |
スタン | ここに来る前にキール達と話してたんだ |
スタン | 前回の天啓は、リチャード国王晶化の一件を暗示した未来予知だっていう話もあるし… |
スタン | …もしそうだとしたら、新しい天啓にも、何か晶化現象の事が書かれてるかもしれない |
スタン | …まあ、何か確証があるってわけじゃないんだけど |
スレイ | そう言えば、前にミクリオも… |
ミクリオ | 僕のはただの勘だけどね |
ミラ | ちなみに、以前公表されたという天啓はどういった内容なのだ? |
スレイ | えっと、確か… |
スレイ | 『命源は燦爛たる結晶となり、猛き君主を醒めぬ夢へ攫った』… |
スレイ | 『零れ落ちた星の雫は、波紋の如く世界に広がる──』 |
スレイ | これで全文、かな |
エリーゼ | 燦爛たる結晶…多分これが晶化現象の事だってみなさん考えてるんですよね |
ミラ | 猛き君主…これがリチャードを示すと… |
ジュード | …?あれ、ちょっと待って |
ジュード | だとしたら、その「命源」ってひょっとしたら、マナの事を指してるんじゃない? |
エリーゼ | …!本当です… |
ライラ | 世界を司る生命の源であるマナ。確かに意味合いとしては一致しますね |
エリーゼ | やっぱり、前の天啓が未来予知だという、あの噂は本当なんでしょうか… |
スレイ | …単なる偶然にしては、当てはまるものが多すぎると思う… |
スタン | … |
スタン | …みんな、やっぱり天啓について調べてみないか? |
スタン | 天啓については、存在自体が未知のものだし断言は出来ないけど |
スタン | それでもやっぱり調べてみる価値はあると思うんだ |
スタン | このまま各地の晶化現象の状況を見て回ってるだけじゃ、どうにもならないし… |
ルドガー | 違った角度から探ってみるのは悪くないと思うが… |
ヴェイグ | …オレは異存はない。晶化現象に関する情報が得られるなら何であろうと構わない |
ミクリオ | …半信半疑ではあるけど、当座の目標とするという事なら問題はないと思う |
エリーゼ | …じゃあ、決まりですね |
ヴェイグ | なら、まずはメルトキオへ行き、コレットの居場所を調べるのはどうだ |
ヴェイグ | …神子の協力を得て天啓の石碑を探し出すんだ |
スタン | 神子か…。そういえば、ゼロスは一人で街を出て行ったって話だっけ。大丈夫かな… |
エリーゼ | ア・ジュールまで神子を捜してるんですよね…。心配です |
ミラ | ああ、一人は危険だ…。会う事が出来ればよいのだが… |
ヴェイグ | 会える見込みが少しでもあるとすればコレットだろう。彼女の行方はフィリア司祭が知っているはず |
ジュード | けど、その人に聞いても神子の居場所教えてもらえないんじゃないかな? |
ジュード | 仮にも王命でその身の保護を受けているわけだし… |
ヴェイグ | わからないが、今は彼女が頼みの綱だ |
ヴェイグ | それに、仮にフィリア司祭が駄目だったとしても、神子の居場所に繋がる鍵はあの街をおいて他にない |
ルドガー | …確かに、ヴェイグの言う通りだな |
スタン | よし、そういう事ならとにかくメルトキオへ行こう。あの街に行って── |
リオン | スタン。僕はこの街に残る |
スタン | ええ!?どうしてだ、リオン? |
リオン | さっき言っていた二人組だ。ルイニス街とメルトキオは目と鼻の先だ |
スタン | そう言えばそうだな…。確かに危ない…じゃあ、俺も残った方が… |
リオン | 僕一人で十分だ。その代わり、お前は晶化現象の事を何とかしろ。必ずな |
スタン | …わかった、街の事は任せた。晶化現象の事は任せてくれ! |
リオン | 早速、街の様子を見て回ってくる。街の人間にも警戒するよう伝えなくてはな |
ミラ | 相変わらずだな、リオンは… |
ミクリオ | 彼はいつもああなのか? |
スタン | まあ、大体は。でも、ああ見えてリオンは本当にいい奴なんだ |
スタン | …リリス、お前もこの街に残ってくれないか? |
リリス | えっ…。でも、お兄ちゃん… |
スタン | リオンの手助けをして一緒にこの街を守ってほしいんだ |
リリス | うん…。それはわかるんだけど… |
スタン | いくらリオンの腕が立つと言っても、何かあった時に一人で街を守るのは大変だろうし |
リリス | わかったよ。家の事も、街の事も心配だものね。こっちの事は任せておいて |
リリス | でも、これだけは約束して!みなさんの言う事ちゃんと聞いて、無茶な行動しないでね! |
リリス | 周りに迷惑かけちゃダメだよ!怪我もしないで、早く帰って来てね!あと、ちゃんと朝起きる事! |
スタン | わ、わかったよ、リリス |
ライラ | ふふ、いい妹さんですね |
ティポ | 仲がいいんだねー。ぼくとエリーもだけどー |
スタン | はは…。リリスも、いつもあんな調子なんだ |
スレイ | じゃあ改めて、オレ達も出発の準備だ! |
エリーゼ | そうですね |
エリーゼ | 天啓…。晶化現象の謎を解く鍵となるんでしょうか… |
Name | Dialogue |
scene1 | 逃亡の神子 |
ゼロス | … |
赤の騎士団員1 | ちっ、見失ったか。逃げ足の速い奴だ、どこへ逃げた? |
赤の騎士団員2 | そう遠くへは行っていないはずだ。何としてでも、神子を捜し出すぞ |
| |
ゼロス | … |
ゼロス | …よし、行ったか。赤の騎士団、ね…。ったく、しつこい奴らだな |
ゼロス | 野郎に追いかけられる趣味は、持ち合わせてねーっての |
ゼロス | …にしても、国王の言ってた通りだな。連中が神子である俺を捜してるのは事実だ |
ゼロス | 他国にまで乗り込んできてなりふり構わず横暴な振る舞い…、上の奴は一体何考えてんだか |
ゼロス | 俺が狙われてるなら、同じ神子であるコレットちゃんも… |
ゼロス | …ここで心配してても仕方ねぇか。ロイドも側にいるだろうしな…、国王の指示通り上手く避難してるだろ |
ゼロス | それより、問題はこっちか…。この状況をどう切り抜ける── |
| ずでんっ |
ゼロス | …! |
女の子 | いたた… |
ゼロス | おいおい…大丈夫か?って、よく見りゃさっき街で会ったおチビちゃんじゃねーか |
ゼロス | 立てるか?こんなところで何してんだ? |
女の子 | お兄ちゃんが森の方に逃げて行くのが見えたから…捜していたの。お礼が言いたくて… |
女の子 | さっきは街のみんなを助けてくれて本当にありがとう |
ゼロス | 礼って…わざわざそのためだけに…? |
ゼロス | 俺さまが魅力的なのはわかるけど、こんなところまで来たら危ないぜ?例の怖い連中がウロウロしてるし… |
ゼロス | 送ってやりたいのは山々なんだが…おチビちゃん…一人で帰れるか? |
女の子 | …うん、大丈夫。じゃあね、神子のお兄ちゃん |
ゼロス | ふ~、行ったみたいだな |
ゼロス | …今は俺さまと一緒じゃない方が安全だろうし、仕方ねえな |
ゼロス | …ったく、礼なんていいのによ。元はと言えば、あれは神子の俺が街にいたからで… |
ゼロス | … |
ゼロス | …だ~、やめだやめ、辛気臭ぇ。何はともあれ、俺さまも早いとこここから離れた方がよさそうだ |
scene2 | 逃亡の神子 |
ゼロス | … |
ゼロス | もうそろそろ大丈夫だろ。よし、今の内に── |
| |
赤の騎士団員1 | 見つけたぞ!こんなところに隠れていたのか |
ゼロス | くそ…まだいやがったか。めざとい奴らだな |
赤の騎士団員2 | シルヴァラントの神子よ、今度はもう逃がさん!我々に同行願おう |
ゼロス | …やれやれ、しつこい野郎は嫌われるぜぇ~? |
ゼロス | それとも、そんなに俺さまの事がだ~い好きなわけ? |
赤の騎士団員1 | …ふん、こんなふざけた奴が神子とはな |
ゼロス | まぁ、冗談はさておき、お前達が神子に固執してるのは天啓のためなんだろ? |
ゼロス | 今まで見向きもしなかったくせに何で急に天啓へ興味が湧いたのか、俺さま気になるな~ |
赤の騎士団員2 | お前に話す事は何もない |
ゼロス | 詳しい事情も教えず、天啓を読み解くために黙ってついて来いってか? |
ゼロス | えらく勝手なもんだな。それが赤の騎士団のやり方かよ |
ゼロス | はっきり言っておくぜ。俺さまはお前達みたいな奴らに、協力する気はさらさらねえ |
ゼロス | お前らの欲しがってる天啓に関しても何もしゃべらないし、内容を読み解く気もねえよ |
赤の騎士団員1 | それはまかり通らぬ。天啓の導きは、全ての国でわかち合うべきもの |
赤の騎士団員2 | 我が国にも内容を知る権利があり、故に神子たるお前は我が国に協力する義務がある |
ゼロス | シルヴァラントは隠してねえだろ。ちゃんと公表してる |
ゼロス | お前ら、しかもその内容が偽物とか言ってるらしいじゃねえか。言いがかりも甚だしいぜ |
赤の騎士団員1 | 何とでも言え。同行を拒むなら、力ずくで従わせるまでだ |
ゼロス | ハッ。たった二人で俺さまをどうにかしようなんて舐められたもんだな |
ゼロス | まあ、そのふざけた神子ってのに、負けるんだけどな?お前らはよ |
赤の騎士団員2 | 貴様…。その減らず口、叩けないように── |
??? | 待て! |
ゼロス | おっと、もう一人いたのかよ。ま、二人も三人も同じ── |
ゼロス | ……ん?あれはまさか…! |
女の子 | お兄ちゃん…! |
ゼロス | さっきのおチビちゃん…!? |
ゼロス | おい、お前ら!その子に何をする気だ! |
赤の騎士団員3 | 我々は森で道に迷っていたこの少女を保護しただけだ |
ゼロス | ちっ、どうせその子と引き替えに、俺さまを拘束しようって魂胆だろ |
赤の騎士団員3 | 我々は犯罪者ではない。あくまで神子殿に、自主的な協力を要請するだけだ |
ゼロス | よく言うぜ…そっちの奴、さっき力ずくって言ってたぜ? |
赤の騎士団員1 | さあ、神子殿。どうする? |
ゼロス | くっ…! |
??? | 少女と神子、いずれも渡すわけにはいかない |
ゼロス | …? |
赤の騎士団員3 | 誰だ、お前は! |
クロエ | 私はシルヴァラントの騎士、クロエ・ヴァレンスだ |
クロエ | 見たところ、貴殿らは我が国の騎士ではないようだが、ここで何をしている? |
赤の騎士団員2 | ちっ、シルヴァラントの騎士か… |
クロエ | 我が国の民を保護してくれた事には礼を言う |
クロエ | 後の事は我々で対処する。その少女をこちらへ |
赤の騎士団員3 | …どうする? |
赤の騎士団員1 | 今ここでシルヴァラントの騎士と事を構えるのは賢明ではない。一旦退く。その子は解放しろ |
| |
クロエ | 君、大丈夫か |
女の子 | う、うん…。怖かったけど、何ともないよ |
ゼロス | さっきはどうなるかと思ったぜぇ…!ありがとな?セクシーな子猫ちゃん |
クロエ | なっ…誰がセクシーだ…!それに、子猫ちゃんとは… |
女の子 | お姉ちゃん、ありがとう。お兄ちゃんにも、また助けてもらっちゃったね |
クロエ | 騎士として当然の事をしたまでだ。怪我がなくてよかった。……それより、神子殿 |
ゼロス | …わかってる。奴ら、まだ物陰に潜んでこっちの様子を窺ってやがるな |
クロエ | 今は奴らを撒くのが得策か…。神子殿、その娘を抱えて走れるか? |
ゼロス | 楽勝楽勝、任せとけって |
女の子 | お兄ちゃん…? |
ゼロス | そんな不安そうな顔すんなよ。おチビちゃんは、俺さまにしっかり掴まってればいいから |
ゼロス | クロエちゃん、だったな。俺さまが合図を出したら一斉に走る。準備はいいか? |
クロエ | ああ、いつでも問題ない |
ゼロス | … |
ゼロス | ……よし、今だ! |
scene1 | 王都からの使者 |
ゼロス | ──よし、何とか上手くいったみたいだな |
クロエ | そのようだな。奴らの気配は近くに感じられない |
ゼロス | ほら、おチビちゃん。街はすぐそこだ。ここまで来れば、迷わずに帰れるな? |
女の子 | うん、大丈夫!ありがとうお兄ちゃん、お姉ちゃん。じゃあ、行くね |
クロエ | ああ、気をつけてな |
| |
ゼロス | やれやれ、とんだ災難だったぜ |
クロエ | 神子を手に入れるためとはいえ、あんな小さい子まで利用するとは… |
ゼロス | 咄嗟に逃げちまったが、このまま連中を放っておくのはちょっと厄介だな |
クロエ | ああ…。だが、手は打ってある |
クロエ | 国王も赤の騎士団を警戒し、国内の警備兵を増員している |
クロエ | 神子殿を見つけた時、街の頼りになる若者を使いに走らせた。まもなく兵が駆けつけるだろう |
ゼロス | クロエちゃんが騎士と知ってひるんでたし、兵が来ればあいつらも下手な事はしねえか… |
| |
ゼロス | それはそうと、クロエちゃんがシルヴァラントの騎士だって話は、本当だったんだな |
ゼロス | 今の話を聞くまで、てっきりその場しのぎの嘘だと思ってたけど |
クロエ | 失礼な。れっきとした騎士だ。…と言っても、まだこの国に仕えて日は浅い |
クロエ | 言わば、見習い騎士とでも言おうか |
ゼロス | なるほど、それで見覚えがないわけだ。変だと思ったんだよな〜 |
ゼロス | 街でキミみたいな美人な子猫ちゃんを見かけてたら、俺さま絶対声かけてるしな |
クロエ | だ、だから誰が…!神子という神聖な立場にありながら、よくも軽々しくそんな事を… |
ゼロス | 神子だからって関係ないだろ?クロエちゃんは、背もスラっと高くてスタイル抜群って感じだし── |
クロエ | や、やめてくれ。背の事は、自分ではあまりいいと思っていないんだ |
ゼロス | え〜、もったいない。せっかくのチャームポイントなのに |
クロエ | う、うるさい!それより神子殿── |
| |
ゼロス | しっ!何か聞こえる… |
クロエ | …!これは、足音…?ひょっとして赤の騎士団か!? |
ゼロス | まだ諦めてないのかよ?くそ、とことんしつこい奴らだぜ… |
クロエ | 一旦ここから離れた方がよさそうだ。行こう、神子殿 |
ゼロス | ああ! |
scene2 | 王都からの使者 |
クロエ | ここまで来れば、もう大丈夫だろう |
ゼロス | クロエちゃん、ありがとな。あとはもう俺さま一人で大丈夫だぜ |
クロエ | 礼など不要だ。これは任務だからな |
ゼロス | 任務? |
クロエ | 行方不明の神子捜索だ。国王陛下から密に命を受け、貴公を捜していたのだ |
ゼロス | …そういう事ね |
ゼロス | ま、遅かれ早かれ国王の使いが追って来るとは思っていたけどよ… |
クロエ | 単刀直入に言おう。神子殿、貴公を隠れ家へ案内する。私と一緒に来てほしい |
クロエ | 貴公が街を出てすぐの事だが、赤の騎士団がメルトキオに来て騒ぎを起こしたのは知っているか? |
ゼロス | あいつらが…? |
クロエ | ああ。私はその場にいなかったのだが大騒動に発展するかもしれない危険な状況だったそうだ |
クロエ | 他にも、メルトキオの襲撃を企てていたという怪しい二人組の存在も耳にしている |
ゼロス | メルトキオ襲撃だと…!街はどうなったんだ!?セレスは…!? |
クロエ | 大丈夫だ、神子殿。その襲撃はある者達のお蔭で未然に防げた |
クロエ | セレス…妹殿も王宮内で無事だ |
クロエ | だが、肝心の二人組は取り逃している。よって今、メルトキオは警戒態勢だ |
ゼロス | そうか…。油断出来ない状態だな…。その二人は赤の騎士団じゃないのか? |
クロエ | 手口から言っても考えにくい。それに、さすがに彼らも王都襲撃など企てないと思う |
クロエ | しかし、赤の騎士団は要注意だな。他国にまで乗り込み、神子捜索まで始めるとは… |
ゼロス | それだけじゃねぇ。クロエちゃんも見ただろ、あいつらのやり口 |
ゼロス | さっきのおチビちゃんの街にいた時、偉そうな態度で、連中が街に入ってきやがったんだ |
ゼロス | 神子を匿う事は重罪だー、知っている事を全て話せー、とか住民に詰め寄ってよ |
クロエ | 武器も持たぬ者に何という事を…!住民達はさぞ怖い思いをしただろうな |
ゼロス | ああ。みんなその態度に震え上がってたぜ |
ゼロス | で、俺さまもそれを見かねて、つい姿を見せちまった |
ゼロス | あいつらの目を引き付ける事には成功したんだが… |
クロエ | …その代わりに、神子殿が追い回される羽目になった、と。しかし… |
クロエ | 仮にも一国の騎士を名乗る者の行動とは思えない。まるで賊だ |
クロエ | 他国に無断で踏み入り、民を脅すなど決して許される行為ではない |
クロエ | 国王陛下も赤の騎士団を警戒しておられた |
クロエ | すぐにでもこの事実を報告して早急に手を打つ必要があるな |
ゼロス | … |
クロエ | その前に、まずは貴公の身の保護だ。私と共に── |
ゼロス | ごめん!クロエちゃん! |
クロエ | えっ… |
ゼロス | いくら可愛いクロエちゃんの頼みでも俺さま、そのお願いだけは聞いてあげられないんだよねぇ… |
ゼロス | って事で、国王によろしく〜! |
クロエ | なっ…!待ってくれ、神子──… |
クロエ | 勝手すぎる…!神子たる自覚はないのか? |
クロエ | とにかく、こうしていられない。急いで神子殿を追わねば… |
scene1 | 衝突する焦熱 |
ゼロス | 右よし、左よし…!上手くやり過ごせたみたいだな |
ゼロス | … |
ゼロス | …隠れ家か |
ゼロス | …悪いな、クロエちゃん。俺はそこに行くわけにはいかねえんだ |
ゼロス | さて、と。クロエちゃんと赤の騎士団の連中に見つからない内に── |
??? | 一足遅かったな、神子殿 |
| |
クロエ | 隠れても無駄だ |
ゼロス | ク、クロエちゃん!?何で!? |
クロエ | 草むらからその赤い髪が垣間見えたのでな |
ゼロス | あらら…俺さまとした事が… |
クロエ | 神子殿、一人で行動するのは危険だ |
クロエ | いつまた赤の騎士団の連中と出くわすとも限らない。だから、私と一緒に── |
ゼロス | やべえ!後ろから赤の騎士団が! |
クロエ | 何!?…どこだ?どこにもいないぞ? |
クロエ | あ!神子殿!どこへ行く! |
ゼロス | 俺さまの首に縄をつけたいなら、是非ともプライベートの方でよろしく子猫ちゃん♪ |
ゼロス | じゃあな! |
クロエ | なっ…!まさか私を欺くとは…! |
クロエ | 困った神子様だな… |
| |
ゼロス | よしよし、向こうに行ったみたいだな |
ゼロス | さすがのクロエちゃんでも、まさか俺さまが木の上にいるとは思わねえだろ |
ゼロス | しばらくここでやり過ごすか… |
クロエ | ここは随分と眺めがいいんだな |
ゼロス | げっ、クロエちゃん!?いつの間に隣に…!? |
クロエ | 私をまこうなどと考えない方がいい。大人しく… |
ゼロス | あっ、あんなところに空飛ぶブッシュベイビーが! |
クロエ | えっ!?…あっ、神子殿! |
クロエ | またか… |
| |
ゼロス | はあ、はあ…よし、これだけ引き離せば… |
クロエ | 遅かったな、神子殿 |
ゼロス | うおっ!?どうして俺さまの行く手に先回り出来るんだよ? |
クロエ | 日頃の鍛錬の賜物だ |
クロエ | 逆に神子殿は、いささか身体が鈍っているのではないか?この程度で息を切らせるとは |
ゼロス | 俺さまも体力には自信ある方で………ん、あれは…? |
クロエ | 同じ手はもう食わないぞ |
| |
ゼロス | 違う、向こうだ!何か煙が出てる |
クロエ | …!本当だ |
ゼロス | ひょっとして、クロエちゃんのお仲間が狼煙をあげているのか |
クロエ | …いや、違う。軍の狼煙とは色味が異なる。それに、狼煙にしては… |
ゼロス | 煙が、いくつも上がっている。ただの焚火じゃねえな |
クロエ | 確かあの辺りには小さな村があったはずだ…! |
ゼロス | …何だか悪い予感がするぜ |
ゼロス | クロエちゃん、悪ぃが、鬼ごっこはここまでだ |
クロエ | 神子殿、待て!私も行く! |
scene2 | 衝突する焦熱 |
クロエ | こ、これは…! |
クロエ | 村がめちゃくちゃに… |
ゼロス | この様子は…。建造物から何から人の手で壊されたらしい… |
ゼロス | …いつかの光景を思い出すな。くそっ… |
クロエ | 誰がこんな酷い事を… |
クロエ | まさか、赤の騎士団が…? |
ゼロス | …いや、さすがのあいつらでもたかが神子を捜す事だけのためにここまでやるとは思えないけどな |
ゼロス | 今は目の前の状況をどうにかしようぜ |
ゼロス | まだ誰か逃げ遅れてるかもしれない。見て回るぞ! |
クロエ | ああ、そうしよう。私はあっちを見てくる、貴公はこの辺りを── |
??? | 誰もいないよ。いたとしても、そんな瓦礫の下でとっくにくたばってるさ |
??? | あのバカ二人にしちゃ、きっちり仕事したみたいだしね |
ゼロス | 誰だ!? |
??? | … |
クロエ | …何者だ! |
??? | 名乗る必要はないね。どのみち、アンタ達には関係ない |
ゼロス | 関係ない、ねぇ…。少なくとも村がこうなってる事には関係あるんじゃねぇの? |
??? | それこそボクは無関係さ。まあ信じるかどうかは勝手だけどね |
??? | ボクはただ村の連中が逃げ惑うのを見ていただけさ。なかなか面白い見世物だったよ |
クロエ | さきほど、二人、と言っていたな |
クロエ | メルトキオ襲撃を企てたのは男女二人組だったと聞いている。まさか…! |
ゼロス | …緑の仮面野郎さんよ。この村をやったのはそいつらで、お前も奴らの仲間ってわけか? |
??? | あんなバカと一緒にしないでもらいたいね |
クロエ | ちゃんと答えろ!はぐらかすようなら、肯定とみなす! |
ゼロス | 知ってる事、洗いざらい全部吐きな。嫌だとは言わせねえぞ |
??? | 初対面相手に随分喧嘩腰だね。こんなチンケな村一つがそんなに大事だっていうのかい? |
クロエ | チンケだと…!住む者達にとっては、大事な場所に変わりはない |
クロエ | これ以上、愚弄するような事を言うならば、私はこの国の騎士として黙ってはいない! |
??? | ふん、ならどうするのさ? |
??? | ひ弱な騎士と放蕩神子ごときがいくら吠えたって、今さらこの村は元に戻りはしない |
ゼロス | な… |
クロエ | ひ弱な騎士…誰の事を言っている! |
クロエ | 我が剣がひ弱かどうか、お前の身体で確かめてみるがいい! |
ゼロス | クロエちゃん、やめろ! |
クロエ | はああああ! |
??? | ふん、目障りだね。いいさ、少し遊んでやるよ |
| ザシュッ |
クロエ | うあああ! |
ゼロス | クロエちゃん!大丈夫か! |
クロエ | ああ、大丈夫だ…。大した事はない… |
ゼロス | …女の子に手を上げる野郎はロクな奴がいやしねぇーな |
| チャキッ |
??? | …今度は神子様直々にお相手してくれるのかい? |
??? | 光栄じゃないか。来なよ |
| ゴオオッ |
クロエ | …!あの技は…!? |
ゼロス | クロエちゃん?!危ないから下がってろ! |
クロエ | 駄目だ!神子殿を守るのが私の務め、私も共に戦う…! |
scene3 | 衝突する焦熱 |
??? | 放蕩神子にしちゃ、なかなかやるじゃないか |
ゼロス | お前なんかに誉められても嬉しくねえっての |
クロエ | 抵抗はここまでだ。大人しく全てを話してもらおう── |
??? | …ここまでなのはどっちかな |
??? | はああっ! |
クロエ | 何…!? |
ゼロス | クロエちゃん、危ねえ!! |
| ドゴオオオオッ |
ゼロス | ぐあっ…! |
クロエ | 神子殿!! |
クロエ | くっ、おのれ…! |
??? | ははっ。女を庇って傷を負うとは伊達に女好きじゃないってわけだ |
ゼロス | この…野郎… |
謎の兵士 | シンク様。お待たせしました |
ゼロス | シン…ク…? |
シンク | 遅かったね。お蔭でとんだ茶番さ |
謎の兵士 | 申し訳ありません。すぐに出発しましょう |
シンク | …シルヴァラントの神子。アンタとはまた会う事もあるだろう |
シンク | 続きはその時にとっておくよ |
クロエ | …どこに行く! |
ゼロス | よせ、クロエちゃん。人数的に分が悪ぃ…。それに、俺さまちょっと限界…だ |
クロエ | …!神子殿!大丈夫か? |
ゼロス | 口だけじゃない、ってか…くそっ… |
scene1 | それぞれの軌跡 |
ゼロス | ──いでででっ! |
クロエ | 痛いだろうが、少し我慢してくれ。… |
クロエ | これでよし、と… |
ゼロス | はぁ〜…痛かったぜぇ |
クロエ | すまないな、私には簡単な手当てくらいしか出来ないが… |
ゼロス | これだけ出来れば、十分十分!さっすがクロエちゃん!ありがと〜! |
| |
クロエ | 礼を言うべきなのは私の方だ。さっきは庇ってくれて助かった |
クロエ | 貴公を守るべき立場なのに、守られてしまったな |
ゼロス | 可愛い女の子を守るのは男として当然っしょ?気にしないでいーって! |
ゼロス | …それより、気になる事があってよ。あの仮面に、シンクって名前…… |
クロエ | 何か思い当たる事でもあるのか? |
ゼロス | 前に、あちこちの村でよからぬ事を吹聴して、住民を不安に陥れている野郎がいたんだ |
ゼロス | 俺は直接会っちゃいねえが、仲間がそいつとやり合った事がある |
ゼロス | …その時の男が緑髪の、妙な仮面をつけたシンクって野郎だったんだ |
クロエ | という事は、さっきの男が…? |
ゼロス | 偶然とは思えねえだろ? |
クロエ | 確かに…あのようなめずらしい仮面を被り、同じ名を名乗る者などそういないだろうし… |
クロエ | 不安を煽る…か。奴め、一体何を企んでいる… |
ゼロス | あの口ぶりだと、例の二人組と関わりがあるのも間違いはなさそうだが… |
ゼロス | そうだ、クロエちゃん、村の中はどうだった? |
クロエ | 瓦礫の下をくまなく見てみたが人がいる様子はなかった |
クロエ | シンクという男も言っていたが…おそらく皆避難した、という事だろう |
ゼロス | はあ…、ったく。赤の騎士団といい、面倒な事ばかり増えやがる… |
クロエ | 残念だが、これが我が国の現状だ |
クロエ | いや、我が国だけではない。今や世界中の国々が混乱に巻き込まれようとしている |
クロエ | そして…その渦中にいるのが我が国の神子…貴公だ |
ゼロス | … |
クロエ | 神子殿、何故そうまでして国に匿われる事を頑なに拒む? |
クロエ | 赤の騎士団が神子捜索に動き出している事は貴公も目にしたはずだ |
クロエ | 神子が赤の騎士団の手に落ちたら御身の危険のみならず国内外にさらなる混乱を招く |
クロエ | 神子として自覚を持ってほしい。そして、国王陛下のお考えも── |
ゼロス | そんな事はわかってる。…けど、クロエちゃんも見ただろ?さっきの女の子を人質に取るやり方… |
ゼロス | 何の関係もない奴らを巻き込んで、どんな手段も厭わない…。神子の俺を捜す目的のためだけに |
ゼロス | あんなもん見せられて俺だけが安全なところに隠れるなんて出来るわけねーだろ |
クロエ | 神子殿…?ひょっとして、それで私から逃げて… |
ゼロス | … |
クロエ | …神子殿、すまなかった。神子としての自覚を持てなどと、酷い事を言ってしまったな |
クロエ | まさかそんな風に考えていたとは思ってもみなくて… |
ゼロス | …構わねーよ。神子って立場に関して言えば、実際、クロエちゃんの言う通りだし |
ゼロス | ただ、他人が思うほど神子っていう肩書きに思い入れはないからな、俺さま |
クロエ | …… |
ゼロス | 生まれた瞬間、神子って決められて今回みたいに追い回されたり、周囲から特別扱いされたり… |
ゼロス | 酷い時には命を狙われたりした事もあったんだぜ? |
ゼロス | 神子とは名ばかりの受難の日々…!…たまんねーよ、ホント。なりたくてなったわけじゃねぇのに |
クロエ | … |
クロエ | …貴公は、神子である事を受け入れられずにいるのか? |
ゼロス | 受け入れるも何も、俺さまが神子だって事はこれからも変えられる事じゃないし |
ゼロス | ただ、何て言うか…他人を巻き込んでまで、神子として扱われるのにはまっぴらだ、って事 |
クロエ | …王命に背き、一人街を出た理由はそれか |
ゼロス | まあ、こういういろんな事が妙に息苦しくて逃げ出したってのもあるけど── |
クロエ | …この、こんじょなし! |
ゼロス | …クロエちゃん? |
クロエ | 神子という立場故に、貴公が複雑な想いを抱いている事はわかった |
クロエ | けど、だからと言って一人で行動すればどうなる? |
クロエ | 皆に心配をかけ結果、このような騒動にも繋がってしまった |
クロエ | …これは単なる「逃げ」だ。逃げたところで、その息苦しさから解放される事はない |
クロエ | 貴公も言ったはずだ、自分は神子だと。それは変えようのないものだと |
クロエ | ならば、いくら苦しくとも、逃げ出さずにそれを受け止め、乗り越えるべきではないのか? |
ゼロス | … |
クロエ | …偉そうな事を言ってしまったな。でも、貴公の気持ち、わからなくもないんだ |
クロエ | 私も、人知れず家の事で深く傷付き多くの事に悩んできた |
クロエ | 状況を打破しようと何度も試みた。誰に頼るわけでもなくたった一人でな |
クロエ | だが、結局全ては空回りに終わり、気付けば周りの人達にたくさんの迷惑をかけてしまっていた |
クロエ | そんな私を支えてくれたのは、仲間だ。彼らのお蔭で、自分の未熟さに気付く事が出来たんだ |
クロエ | 今の自分があるのは、頼れる仲間達がいるからだと思っている |
クロエ | …だからこそ、貴公にも言いたい。貴公は決して一人で生きているわけではないのだという事を |
クロエ | アウリオン殿やフィリア司祭、それに、貴公の妹のセレス…皆貴公の事を心配していた |
ゼロス | … |
クロエ | 赤の騎士団の事は、一層警戒を強めるよう国王陛下へ上申する。…だから、頼む |
クロエ | 貴公を想う者達のためにも、今はまず、自分の身の安全を一番に考えてくれないか |
ゼロス | クロエちゃん… |
| |
ゼロス | … |
ゼロス | …確かに俺は、自分の殻に閉じこもって、一人で逃げてただけなのかもな… |
ゼロス | …よし、わかった。クロエちゃん、隠れ家まで案内頼むぜ |
| |
クロエ | …!神子殿、わかってくれたのか |
ゼロス | クロエちゃんみたいな美人にそこまで言われちゃ、さすがの俺さまも断れないでしょ |
ゼロス | あ、その代わり一つ条件があるんだ |
クロエ | 条件?それは何だ? |
ゼロス | 俺さまの事、名前で呼ぶ事!貴公とか神子殿とか、距離を感じて俺さま悲しいっていうか〜 |
ゼロス | あ、何だったら、ダーリン♡とかでも── |
クロエ | だ、誰が…!…なら、ワイルダー、…これでどうだ |
ゼロス | おお、何か新鮮…!けど、何でそっち〜?どうせならゼロスくん♡とか…… |
クロエ | これで十分だ…!全く…。ほら、馬鹿な事言ってないで早速行くぞ |
ゼロス | ちぇっ、まあでも神子殿よりはマシか…って、待ってくれよ、クロエちゃーん! |
scene2 | それぞれの軌跡 |
コレット | はあ…はあ… |
コレット | あっ! |
| バタッ! |
ロイド | コレット、大丈夫か!? |
コレット | いたた…。うん、だいじょぶだよ。ちょっと転んだだけだから |
コレット | ごめんね、心配かけて |
ロイド | こっちこそ、急かしてごめんな。でも、今は少しでも早く、ここから逃げた方がいい |
ロイド | 辛いかもしれないけど、少しの間我慢してくれ |
コレット | うん… |
ロイド | 何だってこんな事に… |
| |
| ズドーーーン! |
コレット | すごい音…!ロイド、やっぱり戻った方がいいんじゃ… |
ロイド | …駄目だ!引き返すわけにはいかない…急ごう、コレット |
コレット | …う、うん |
| |
ゼロス | ──いやあ、それにしてものどかでいい天気だなー |
ゼロス | こんな日に、クロエちゃんと二人っきりでデート出来るなんて俺さま超ラッキー♪ |
ゼロス | 見て見てクロエちゃん。あちこちの結晶に太陽の光が反射してとっても綺麗だろー? |
クロエ | 何がデートだ…。隠れ家へ向かっているだけに過ぎない |
クロエ | それにあの結晶は、晶化現象のものだろう |
クロエ | 近頃じゃ、人間まで晶化していると聞くのに…綺麗とは少々不謹慎だと思うが |
ゼロス | 晶化現象…うーん、そうか。確かにあんまいい話は聞かねえな…。んじゃ、あの花ならどうだ? |
ゼロス | 可憐に咲くあの美しい花は、まるでクロエちゃんのよう…… |
クロエ | わかったわかった |
ゼロス | あ、今俺さまを軽くあしらったろ〜?出会った頃はもっとこう、真っ赤になって照れたりしてたのに |
クロエ | ワイルダー、ちょっと静かにしてくれないか。集中出来ない |
ゼロス | …ん?それはメモ?隠れ家の地図か何かか? |
クロエ | ああ、アウリオン殿から頂いたのだ。隠れ家への入口は、メルトキオ北部の湖辺りだと書かれている |
ゼロス | アウリオン殿…って、クラトスの事だよな |
ゼロス | …さっきも思ったんだけど、クロエちゃんはクラトスとも知り合いなんだな |
クロエ | ああ、私の直属の上官だ。いろいろとよくしてもらっている |
ゼロス | そういう事か。ま、二人はお堅い者同士合うかもしれねえ── |
| ガサッ… |
クロエ | ワイルダー、気をつけろ。そこの草むらに何かいる! |
| ガルルルル! |
ゼロス | ちっ、魔物か! |
scene1 | 隠れ家にて |
| ガサ…ガサ… |
ゼロス | ったく…、この辺りは草が生い茂って藪みたいになってるな… |
ゼロス | デリケートな俺さまの美肌に傷がついちまうぜ… |
クロエ | 隠れ家だからな。人が近寄りにくい方が都合がいいのだろう |
ゼロス | にしたって、さすがにこれは──…おっ、開けた場所に出るぞ |
| |
ゼロス | はあ…しんどかった〜。あの道は出来ればもう通りたくないぜ |
ゼロス | ん?あの扉か?隠れ家への入口ってのは |
クロエ | ああ、あそこから地下洞窟へ入る。隠れ家はその先にあると……ん? |
クロエ | ワイルダー、あれを見ろ。扉の前に誰か倒れている! |
| |
クロエ | 隠れ家の警備に当たっていた者か…。扉の錠前も外されている、これはただ事ではないな… |
ゼロス | おい、しっかりしろ!一体、何があったんだ? |
シルヴァラント兵 | う…。だ、大丈夫だ…。しかし…敵が…中に…神子様が…… |
クロエ | 敵だと…!?もしかして、赤の騎士団か!? |
シルヴァラント兵 | …早く、神子様を追って…く…。… |
クロエ | …君!大丈夫か! |
ゼロス | …気を失ったみたいだな。安静にしてれば問題なさそうだ |
ゼロス | …どこの誰だか知らねーが、早いところ隠れ家へ向かった方がよさそうだな |
ゼロス | 優秀な幼なじみが付いてるとは思うがコレットちゃんが心配だ… |
クロエ | 同感だ。急ごう、ワイルダー |
ゼロス | ああ…! |
| |
クロエ | ──次の分岐は右、その先にある通路は左だ |
ゼロス | 噂には聞いていたが、相当ややこしいな、この洞窟 |
ゼロス | クラトスのメモがなければ確実に迷子になっちまうだろうな |
ゼロス | でもまあ、逆に言えば内部構造把握していれば、敵を寄せ付けにくいって事か |
クロエ | ここは古くから、戦時中などの王族の緊急避難場所として使われていたという話だ |
クロエ | それ故に、シルヴァラントでも限られた人間しか知らない |
クロエ | これらの要素も、ここが神子の避難場所として選ばれた理由なのだろう |
ゼロス | それにも関わらず、ここを嗅ぎつけた…。その侵入者は何者だ? |
クロエ | わからないが…警備兵が簡単にやられている。気をつけて進もう |
scene2 | 隠れ家にて |
ロイド | ──コレット。そこの水で布を濡らしたから、足…冷やしておこうぜ |
ロイド | 手当らしい手当は出来ないけど何もしないよりはマシだろ |
コレット | ごめんね、ロイド。わたしがドジなばっかりに |
ロイド | 謝る必要なんてないさ。ほら、くじいた方の足出して |
コレット | うん… |
ロイド | よっと。どうだ? |
コレット | 冷たくて気持ちいいよ。ありがとう |
ロイド | さっき転んだ時にすぐ手当していれば、よかったんだけど… |
コレット | いいんだよ。ロイドは私を助けてくれるために一生懸命だっただけだから |
コレット | 昔からそうだったよね。私が神子だから、ロイドにはいつも迷惑ばかりかけちゃって… |
コレット | でも、いつも必ず守ってくれた… |
ロイド | 俺は迷惑だなんて思った事ないぞ。コレットは、大切な幼なじみだ。助けるのは当たり前だろ |
ロイド | 今回だって、俺が必ず守るって約束する |
コレット | ロイド… |
ロイド | にしても、ここがバレるなんて…。安全じゃなかったのかよ |
コレット | やっぱり、早く外に移動した方が… |
ロイド | 洞窟の中は入り組んでるし、途中にも兵士は配備されている。簡単にここまでは来られないはずだ |
ロイド | 仮に来たとしても、俺が必ず何とかする |
ロイド | 今はもう少しここで休もう。逃げ切るためにも。な? |
コレット | うん、ありがとうロイド |
| コツ…コツ… |
コレット | …!ロイド、今の… |
ロイド | ああ、誰かの足音だ。まさか、こんなに早く追手が…? |
ロイド | コレット、念のためそこの岩陰に隠れてろ |
コレット | でも… |
ロイド | いいから早く |
コレット | う、うん… |
ロイド | … |
ロイド | 誰だ…? |
scene1 | 侵入者 |
ゼロス | ──クロエちゃん、まだか?結構歩いた気がするんだけど… |
クロエ | まもなくだ。この道の先に少し開けた場所があるはずなのだが… |
クロエ | 見ろ、あそこだ |
| |
クロエ | これが、隠れ家か… |
ゼロス | 噂通り大層な建物だな…。こんなところになきゃ、普通に住めそうな感じだぜ? |
??? | うう… |
ゼロス | …?今何か聞こえなかったか |
クロエ | うめき声だ…。あっちの方から聞こえた…!行こう、ワイルダー |
| |
ゼロス | 何てこった…。兵士達が倒されて… |
ゼロス | おいおい、まさかここまで踏み込まれちまってるのか…! |
クロエ | 何て事だ… |
シルヴァラント兵 | うっ… |
クロエ | 無事か、しっかりしろ! |
シルヴァラント兵 | あ…あなたは、ゼロス様…?お逃げください…敵が… |
ゼロス | 侵入者の事は知ってる。それより、コレットちゃんとロイドはどこだ? |
シルヴァラント兵 | …神子様は…洞窟の奥です…。賊が到達する前に、ロイド殿と共に避難するようお願いしました…… |
ゼロス | 洞窟の奥…。その賊も二人の後を追っただろうな |
クロエ | 侵入者は、誰だ?賊って…赤の騎士団ではないのか? |
シルヴァラント兵 | …正体不明の二人の男です。顔を覆い隠していましたので、詳しい事は私にも…… |
クロエ | 二人の男だと…?たった二人でこれだけの兵を倒したというのか…? |
シルヴァラント兵 | …こうはしていられません。私も…神子様の後を──…うぐっ… |
ゼロス | 無理すんなって。そんな身体で行ったところで、何が出来んだよ |
ゼロス | コレットちゃん達の事は、俺さま達が何とかする。お前は大人しくここで寝とけ |
シルヴァラント兵 | …気をつけてください。二人共相当な剣の使い手です。片方は凄まじい威力の術を使います |
ゼロス | …やっかいな相手だな |
クロエ | ワイルダー。お前はここに残って身を潜めていてほしい |
ゼロス | はぁ?何言ってんだよ、クロエちゃん |
クロエ | 自分の立場を忘れたのか。お前も神子なんだぞ。狙われているのは、お前だって同じだ |
クロエ | それなのに、わざわざ敵の前に、身をさらしに行ってどうする |
ゼロス | …ふっ、ようやく俺さまの事をお前って呼ぶようになったな |
クロエ | す、すまない。つい… |
ゼロス | いや、その方がずっといいぜ。距離が縮まったって感じがしてよ |
クロエ | こんな時にまでふざけた事を… |
ゼロス | でひゃひゃ!とにかく、俺さまも一緒に行くぜ |
ゼロス | 相手は二人って話だが、兵士達のやられっぷりからすると、ただ者じゃないって事は明らかだ |
ゼロス | そんなところにクロエちゃん一人で行かせられるわけねーだろ |
ゼロス | 俺さまに任せとけって。ちゃんと守ってやっから |
クロエ | なっ、それは私の役── |
ゼロス | …あの二人の事も、必ず |
クロエ | ワイルダー… |
クロエ | …わかった。なら、一緒に行こう |
ゼロス | おう、そう来なくっちゃな! |
クロエ | 例え何があったとしても、お前の事は私が守る |
ゼロス | 言うねぇ、クロエちゃん。今俺さまグッときちゃったぜ |
ゼロス | …よし、行くか |
scene2 | 侵入者 |
ロイド | … |
| コツ…コツ… |
ロイド | …!お前は… |
ルーク | ロイド… |
| |
ロイド | ルーク!ルークじゃないか |
ロイド | …はあ、何だよもう。てっきり敵だと思って身構えちまったじゃないか… |
ロイド | でも、何でキムラスカのお前が?ひょっとして国王が応援を要請してくれたとか? |
ロイド | 何にしても助かった。お前が来てくれて、すげー心強いよ |
コレット | ロイド…?だいじょぶなの? |
ロイド | あ、コレット!安心しろ、ルークは仲間だ。出てきても大丈夫だよ |
ロイド | ほら、よく話してただろ?光の神殿で一緒に戦って、大精霊の時にも… |
コレット | あっ、この人が…! |
コレット | えと…初めまして、コレットです。ロイドからあなたの事はよく聞いてたの |
ルーク | …ひょっとして、こいつが神子の…? |
ロイド | ああ。神子で、俺の幼なじみでもあるんだ |
ルーク | 幼なじみ、か… |
ロイド | …? |
ロイド | あ、そうだ。それより、今はどういう状況なんだ? |
ロイド | お前がここに来れたって事は、ひょっとして、例の侵入者はもう捕まえられたって事か? |
ルーク | … |
ロイド | ルーク?…何だよ、黙りこくって。まさか、どこか怪我したとか… |
ルーク | ロイド…。俺は… |
ロイド | ルーク…? |
ルーク | ……出来ればお前とは戦いたくねえ。だから── |
| |
ルーク | 神子を…。コレットを引き渡してくれ |
ロイド | …どういう事だ?シルヴァラント国王からの命令か?それともキムラスカの── |
ルーク | …それは言えねぇ。とにかく、俺はコレットを連れて行かなくちゃなんねーんだ |
コレット | え…? |
ロイド | おいルーク、お前、何言ってんだ…?…変な冗談はやめてくれよ。何で、お前がコレットを── |
ルーク | …冗談でこんな事言えるかよ。マジだ。大マジだっつーの… |
ロイド | …本気、なのか?もしかして、侵入者っていうのは… |
ロイド | 嘘だよな?お前が兵をなぎ倒して来たってのか? |
ルーク | …… |
| |
ロイド | そんな…!何でだよ!何で、お前が… |
ルーク | 神子の力が必要なんだよ!このままじゃ、取り返しのつかねー事になっちまう! |
コレット | 取り返しのつかない事…? |
ロイド | 事情があるなら話してくれ!そしたら、こんな事しなくても協力する事だって出来るかも── |
ルーク | 駄目だ…!そいつは言えねえ… |
ルーク | ……けど、信じてくれ。コレットの身は安全だ、悪いようにはしねえって約束する |
ルーク | お前にもいつか絶対全部話す! |
ルーク | …だから、頼む。今は何も聞かねーで、神子を渡してくれ |
| |
ロイド | ルーク… |
ロイド | …駄目だ、それだけは聞けない。いくらお前の頼みでも、だ |
ロイド | ルークは大切な友達だ。けど、俺にも守らなきゃいけない大切な約束があるんだ |
ロイド | コレットを渡すわけにはいかない…!絶対に… |
ルーク | どうしても駄目なのか…?なら、俺は──… |
ルーク | くっ… |
| チャキ… |
ロイド | …!本気、なんだな?お前が俺に剣を向けるなんて… |
ルーク | 俺だってこんな事はしたくねー!お前と戦うなんて… |
ルーク | …けど、こうするしかねーんだ!最悪の事態を避けるためには、神子が必要なんだよ…! |
ルーク | せやっ! |
| カキーンッ |
ロイド | くっ…!やるしかないのか…! |
ロイド | はあっ! |
コレット | ロイド!ルーク!やめて!友達なのに…! |
| カキーンッ |
ルーク | ちっ…!このわからずやが! |
ロイド | どっちがだ! |
コレット | どうしてこんな事に…! |
ロイド | コレット、ここは危ない!離れてろ! |
コレット | でも… |
ロイド | いいから、早く! |
コレット | う、うん… |
ルーク | …ロイド、もう一回だけ聞くぞ。本当に、本当に神子を渡す気はねーのか? |
ロイド | コレットは渡さない!何度聞かれたって、その答えは変わらない! |
ルーク | ……だったら、仕方ねえ。悪く思うなよ |
| チャキッ |
ルーク | うおおおおおっ! |
ロイド | くっ…! |
scene1 | 目の前にある事実 |
クロエ | ワイルダー!そこにも兵士が倒れている…! |
ゼロス | くそ…ここもかよ。おい、しっかりしろ! |
シルヴァラント兵 | う…う… |
クロエ | 隠れ家とその周辺警備を命じられた兵士達は、いずれも国の精鋭と聞いている |
クロエ | それが突破されるとは…。敵は一体何者なのだ |
ゼロス | …妙だな。これだけの兵士が倒されてるってのに、今まで一人も致命傷には至っていない |
ゼロス | ただの偶然とは思えねぇな… |
クロエ | …私も同じ事を思っていた。手加減が出来る、という事は逆に相当腕が立つ証拠… |
ゼロス | 何か、空恐ろしいというか…気味が悪ぃぜ |
クロエ | 今はあれこれ考えている暇はない。先を急ごう。メモによればこの先が最深部だ |
ゼロス | コレットちゃん、ロイド…。二人共無事でいろよ…! |
ゼロス | こんな広い空洞部があるなんて… |
クロエ | おそらくここが最深部だろう。二人はどこに── |
ゼロス | …!あれは… |
| |
ロイド | … |
ゼロス | ロイドっ!!おい、しっかりしろ! |
ロイド | う…ぐ…… |
ゼロス | 一体何があった!?お前がこんなにやられるなんて… |
クロエ | 貴公一人か?コレット殿はどこへ… |
ロイド | コレット… |
ロイド | そうだ、コレット! |
ロイド | コレット、どこだ!?いないのか!? |
クロエ | …ここには、誰もいないようだ |
ゼロス | やっぱりコレットちゃんも一緒だったのか…。となると、敵に… |
| |
ロイド | そんな…!くそ…くそっ!! |
ロイド | 何でこんな…!絶対守るって約束したのに…コレット…! |
ゼロス | ロイド、落ち着け |
クロエ | …アーヴィング殿。侵入者の姿を見たか?どのような輩が一体こんな… |
ロイド | … |
ロイド | ルークだ… |
ゼロス | 何だって!?ルークって、あのルークか?キムラスカの… |
ゼロス | …冗談、ってワケじゃなさそうだな。あのルークがコレットちゃんを攫うなんて── |
ロイド | 俺だって信じたくはなかった!今だってまだ信じられない… |
| |
ゼロス | ルークとは友達だったんだろ?信じたくないのも、無理ないわな。 |
ロイド | 正直さ、よくわからないんだ…。あいつが俺達の前に現れて、神子を渡せって… |
ロイド | 勿論俺は断った。それでもあいつは…退かなかった |
クロエ | それで戦いになったのか… |
ゼロス | 相手はルーク一人だったのか?敵は二人って聞いてたんだが |
ロイド | 二人…?いや、俺の前に来たのはルーク一人だったぞ |
ロイド | ルークと一対一でやりあってて… |
ロイド | あれ、待てよ…?そうだ…戦ってたら、突然背後からすごい衝撃が来て… |
ロイド | 目の前が真っ白になって…。その技のせいで気を失ったんだと思う |
クロエ | もう一人が、アーヴィング殿の背後から技を放った、という事か |
クロエ | それまでは、物陰で様子を見ていたのだろう。そして、神子のコレット殿を… |
ロイド | …まさかあの場にもう一人いたなんて… |
ゼロス | とにかく、コレットちゃんが攫われちまったって事は間違いなさそうだな… |
ゼロス | ルークの野郎と、そのお仲間に… |
ロイド | …くそっ!どうしてルークはコレットを… |
ロイド | 素直じゃないところもあるけど、すっごくいい奴なんだ。こんな事するなんて信じられない…! |
ゼロス | … |
ゼロス | お前の気持ちはわからなくねーけど、友達が裏切るような事をしたのは紛れもない事実だ |
ゼロス | いつかの俺さまみたく、何か事情があんのかもしれねえし…本人に聞くしかねぇよ、こればかりは |
ロイド | ゼロス… |
クロエ | ワイルダーの言う通りだ。今は、事実を受け止めるしかない |
ロイド | それは、わかってるけど… |
| ダダダ… |
クロエ | 足音…!誰か来る…! |
ゼロス | おいおい、今度は誰が来るってんだ… |
| ダダダッ… |
ロイド | …足音は一人じゃなさそうだ |
ゼロス | 団体さんかよ…。…ん?あいつらは──… |
scene2 | 目の前にある事実 |
ロイド | …足音は一人じゃなさそうだ |
ゼロス | 団体さんかよ…。…ん?あいつらは──… |
| |
クラトス | ロイド!無事か!? |
| |
クロエ | あれは…アウリオン殿! |
| |
クラトス | クロエか…?それにゼロスも…。お前達もここに来ていたのか |
クロエ | 私達も今さっき到着したところです |
スタン | はあ…無事で安心したよ。でもまさか、ゼロスまで一緒にいるなんてな |
ゼロス | スタン!?お前何でここに…って、ルドガーやエリーゼちゃんまで…何がどうなってんだ? |
ルドガー | 俺達は、君達神子の行方を捜してメルトキオを訪ねていたんだ |
ルドガー | そこに、突然知らせが入って隠れ家襲撃の事実を知ってね |
エリーゼ | クラトスにお願いして同行させてもらったんです… |
ティポ | みんなで助けに来たんだよー |
クラトス | 隠れ家の場所は本来機密事項だが、急を要する事態だったからな… |
クラトス | 彼らの人となりや実力を信じ、私が特別に同行を許可したのだ |
ゼロス | そういう事か。見かけねえ野郎もいるみたいだが… |
ルドガー | そうか、初対面だな。紹介するよ。スレイ、それとヴェイグだ |
ルドガー | あと、他にも何人か仲間がメルトキオに残ってる |
ヴェイグ | …よろしく |
ゼロス | 俺さまはゼロス…って、あれ?スレイ…だっけ?お前の方は何かどっかで見た事あるような… |
スレイ | はい、ゼロスさんとは前に一度、メルトキオの遺跡で会った事が… |
ゼロス | あ、思い出した!確か遺跡で生き埋めになりかけてた、あの時の! |
スレイ | えっと…。別に生き埋めになりかかってたわけじゃ… |
クラトス | ——それより、ゼロス、ロイド。コレットはどこにいる? |
ロイド | … |
クラトス | どうした、ロイド。まさか… |
ゼロス | …クラトス、俺から話す |
| |
スタン | そんな…!ここを襲ったのは、本当にあのルークなのか? |
スタン | 信じられない…。そんな事する奴じゃない! |
ルドガー | …君達を疑うわけじゃないけど、俺もにわかには受け入れられない |
ゼロス | …お前らの言いたい事はわかるぜ。でも、これが事実だ… |
エリーゼ | 何か事情があったんじゃないでしょうか…。でも… |
ヴェイグ | 例え事情があったとしても、許される事ではない… |
スレイ | コレットは大丈夫かな… |
クロエ | 悪いようにはしない、ファブレがそう話していたと言うが、それもどこまで信じられるか… |
ロイド | 俺はルークの言葉、信じてやりたい。でも、ルークの仲間って奴がそれを守るかは、わからない… |
クラトス | これまでの大体の経緯がわかった。…少々厄介な事になりそうだ |
クラトス | あくまで推測だが…ルークの行動は、キムラスカの意志が絡んでいる可能性がある |
ロイド | キムラスカの…? |
クラトス | ああ。彼は王位継承権を持っている。関係があると考えるのが普通だろう |
スレイ | 神子が攫われたのが、キムラスカの指示…? |
ヴェイグ | キムラスカまで天啓を得ようと動き出していると? |
エリーゼ | そんな…。キムラスカの目的も自国の利益のため、なんでしょうか… |
スレイ | 真相はわからないけど…今回のコレットの事といい… |
スレイ | 天啓を巡る混乱は、どんどん大きくなってる気がする。世界中を巻き込むくらいに… |
ルドガー | …天啓、か |
ルドガー | 戦争にだってなりかねないのに…各国がこれほどまでに天啓を欲しがるのは何故なんだ…? |
スタン | 晶化現象で世界中が力を合わせないといけないって時に… |
ティポ | 一体どうなっちゃうのー? |
ロイド | … |
クラトス | とにかく、ここでずっと話していても仕方がない |
クロエ | そうですね。一旦外に… |
| ガサッ… |
ゼロス | おい、そこに何かいるぞ! |
| |
| グオオオオオ! |
スタン | こんなところに魔物が!? |
scene3 | 目の前にある事実 |
ティポ | ふー。やっと外に出られたねー |
スレイ | 来た時も思ったけど、随分入り組んだ場所だな… |
エリーゼ | はい…。一人だったら、絶対に迷ってました |
ロイド | コレット… |
クラトス | …自分を責める気持ちもわかるが、あまり気に病むな、ロイド |
クロエ | アウリオン殿の言う通りだ。自分を責めるのはよせ |
ロイド | …わかってる。何ていうか、ただ頭の整理が追いついてないだけだ |
ゼロス | ロイド… |
クラトス | …ともあれ、コレットを攫ったのがルークだという事は事実だ |
クロエ | はい…。国王陛下に報告しなければ… |
クロエ | そうなると、キムラスカと我が国は緊張状態になるでしょう |
ヴェイグ | 今後の成り行きによっては、最悪、戦争という可能性もある… |
スレイ | 戦争… |
エリーゼ | そんな…!怖い…です… |
ゼロス | 赤の騎士団の動きもあってウィンドルとうちの国もぎくしゃくしちまってるし… |
スタン | それに、ア・ジュールも何か企んでいるみたいだ |
ルドガー | そんな状況で、シルヴァラントとキムラスカが戦争なんて事になったら… |
ゼロス | ウィンドルやア・ジュールも黙っちゃいねぇかもな… |
スレイ | そんなの、絶対に駄目だ…!どうにかして止めないと…! |
エリーゼ | クラトス…。王様に戦争をしないように頼んでもらえないですか? |
クラトス | …私自身も勿論、お前達同様、戦争は是が非でも避けるべきだと考えている |
クラトス | それは、国王陛下も同じだ。これまでも、常に他国との関係を良好にするべく努めていらした |
スタン | それなら… |
クラトス | …だが、キムラスカの関係者によりコレットが攫われてしまった事は、紛れもない事実だ |
クラトス | さらに、今回の一件で、我が国の多くの兵達は負傷している… |
クラトス | …言ってみれば、キムラスカへ報復する材料は揃っている状況だ |
ロイド | 報復だって…!?そんな…! |
ロイド | ルークの行動にキムラスカ王家が関わってるとはまだ言い切れない |
ロイド | なのに、報復なんて… |
クラトス | 無論、状況が不明瞭な今、すぐにその決断が下される事はないだろうが、最悪の場合… |
ロイド | … |
ロイド | なあ、クラトス。ルークの件、国王へ報告するのは待ってくれないか |
ヴェイグ | …ルークは友であるお前に剣を向け、幼なじみを誘拐したんだぞ。それでも庇うと言うのか? |
ルドガー | ヴェイグ… |
エリーゼ | … |
ロイド | 違うんだ、ヴェイグ。ルークを庇うわけじゃない。ただ俺は、確かめたいんだ |
ロイド | …ルークと剣を交えた時、俺には迷ってるように見えた |
ロイド | あいつってさ、口は悪いし乱暴だし、人から誤解されやすいところもある。けど、根は優しくて、まっすぐでさ |
ロイド | 一緒に戦った時の事…思い返せば思い返すほど、今回のルークの行動が変に思えるんだ |
ロイド | 本当の事がわかるまで…俺は、ルークを信じたい。友達だからな |
スレイ | ロイド… |
ゼロス | …ったく、ロイドくんはほーんとお人好しだなぁ… |
ゼロス | お前がそこまで言うなら、俺さまもルークを信じる事にするか |
ロイド | …? |
| |
ゼロス | 覚えてるか?ロイド。前に俺が今のルークと同じように、コレットちゃんを攫った時の事 |
ゼロス | あの時の俺には、いろーんな事情があってさ… |
ゼロス | でも、お前だけは何があっても俺の事を信じてくれてた |
ゼロス | …だからよ、何ていうか、今回は俺さまもルークの野郎を信じてやろうかなー…って |
ロイド | ゼロス… |
ゼロス | ほら、ハニーが言うみたいにあいつがマジでわけありだったら、ちょっとかわいそうじゃね? |
ゼロス | …まあでも、それで別に理由なんか何もなかったらそれこそぶっ飛ばしてやるけどな |
クロエ | ワイルダー、お前… |
| |
スタン | ゼロス、やっぱりお前いい奴なんだな!…うん、俺も二人と同じ意見だ |
スタン | 大精霊の暴走の影響でこの世界が危ないって時も、ルークはいつも一生懸命だった |
スタン | リオンと一緒で素直じゃないところもあるけど、…でも絶対理由もなくあいつがこんな事するとは思えない |
スタン | …俺もルークを信じたい |
スレイ | …そのルークさんって人、みんなから信頼されてるんですね |
ルドガー | …ああ。同じものを目指し、共に戦った仲間だからね |
スレイ | 仲間…… |
ヴェイグ | …みんなのルークに対する気持ちはわかった。では、もう一人の男の方はどうだ? |
ヴェイグ | ルークは一人で動いていない。その男が何か今回の鍵を握っているんじゃないか? |
ゼロス | 相当な強者らしいな。しかもこの手際のよさ、ルークの仕業と思えねぇ |
クラトス | ここも、内部構造を把握していなければ必ず迷う。国家機密であるはずの情報をどこで手に入れた? |
ロイド | そいつの顔、誰も見ていないんだよな…。俺も存在に気付けなかった… |
ゼロス | …どっちにしろ、現状じゃ情報が少なすぎるだろ。ルークの方から当たるしかねぇな |
ゼロス | …てなわけで、クラトス。俺は今からキムラスカへ行ってくる |
クロエ | キムラスカだと?それは、もしかして… |
ゼロス | 勿論、真相を確かめに、だ |
ゼロス | 今回の件にキムラスカが噛んでない事を証明しねーと大変な事になっちまうだろ? |
ゼロス | あと、ルークの情報も知りたいしな。何のためにこんな事をしたのか、今どこにいるのか |
スレイ | 確かに、ルークさんの事がわかれば、コレットの手がかりも何かか掴めるかもしれない |
クラトス | しかし、この状況下で神子であるゼロスを一人、行動させるわけには… |
ロイド | なら、俺がゼロスと一緒にキムラスカへ行く。それなら問題ないだろ? |
クラトス | …止めてもお前達は聞かないだろう。だが、何者かに神子が攫われた事は報告せざるを得ない |
クラトス | となれば、国王陛下も速やかに真相究明に乗り出すはずだ |
クラトス | そうなってしまったら、いくら私でも事実を隠し通す事は出来ないだろう |
ロイド | とにかく急げって事だよな。勿論、端からそのつもりだ |
スレイ | ゼロスさん、ロイド。オレ達も同行させてください |
ゼロス | スレイ…お前達も、か? |
スレイ | うん。コレットがこんな事になって放っておけない |
ヴェイグ | …そうだな。コレットはキムラスカに連れて行かれた可能性もある |
ヴェイグ | 俺達にも、コレット救出の手助けをさせてくれ |
ロイド | スレイ、ヴェイグ…。すっげー心強いよ、ありがとな |
スタン | コレットも勿論だけど、ルークの事も気がかりだな… |
ルドガー | ああ、事実を確かめたい。ルークの真意は何なのか、キムラスカの意向は何なのか… |
ルドガー | じゃないと、最悪の事態を避ける事は出来ないからな |
エリーゼ | わたし達に出来る事なら何でもします…! |
ティポ | ぼくもハリキって頑張っちゃうぞー |
ゼロス | よーし、ならみんなで行こうぜ。いいよな、ハニー? |
ロイド | ああ、勿論だ!改めてありがとう、みんな |
クロエ | 心強い仲間がたくさんいるんだな、ワイルダー |
ゼロス | …まあな |
ヴェイグ | なら、まずはメルトキオに戻り仲間と合流しよう |
スレイ | うん!その後大急ぎでキムラスカだ! |
クラトス | メルトキオまでは私達も同行させてもらおう。行くぞ、クロエ |
クロエ | はっ、わかりました。アウリオン殿 |
ゼロス | … |
ゼロス | コレットちゃん、それに、ルーク…。二人共待ってろよ… |
Name | Dialogue |
scene1 | 捜索 |
ティア | ──本当にこの森にルークがいるの、ミュウ? |
ミュウ | はいですの!ここでご主人様を見かけたって、街の人に教えてもらったですの |
エミル | 今度は見つかるといいね、ルーク |
ティア | ごめんなさい、エミル。騎士であるあなたまで付き合わせてしまって |
エミル | 国王陛下のご命令なんだからティアが謝る必要なんてないよ |
エミル | それに、ルークの事は僕もマルタも心配してたんだ |
ティア | みんなに心配をかけて…。ルークは本当にどこに行ってしまったのかしら |
エミル | 何か大変な事に巻き込まれてなければいいんだけど… |
ミュウ | ご主人様、心配ですの… |
エミル | ルークはある日突然屋敷から姿を消してしまったんだよね |
ティア | …以前から、屋敷を抜け出して勝手に出かける事はあったけど何日も戻らないなんて事はなかったわ |
ティア | 今思い返してみれば、こうなってしまう兆候はあったのかもしれない |
ティア | でもあの時の私は、晶化現象や人々の不安の事ばかり考えていたんだわ |
ティア | ……こんな事ならもっとルークに注意を向けておくべきだった |
エミル | 仕方がないよ…。実際、ティアは調査に駆り出されたりすごく忙しそうだったし… |
ミュウ | そうですの。ティアさんは悪くないですの |
ティア | いいえ、私は彼の教育係よ。ルークがいなくなった事は私の責任でもあるわ |
ティア | とにかく、早くルークを見つけて屋敷に連れ戻さないと |
エミル | うん、そうだね。とりあえず、周辺を捜してみよう |
ミュウ | はいですの! |
scene2 | 捜索 |
ミュウ | ご主人様、いないですの… |
ティア | ここも空振りみたいね… |
エミル | 今歩いてきた限りだと、この森は建物もないし…ここに留まってるとは考えにくいね |
ティア | ルークを見たという話はいくつか耳にしたけれど、そのどこにも姿が見当たらないなんて… |
エミル | 一箇所に留まらず、各地を転々としているって事かな…? |
ミュウ | ご主人様、どこに行ってしまったですの…? |
ティア | ガイがウィンドル方面まで足を伸ばして捜索しているらしいけど何か手がかりを掴んでないかしら… |
エミル | どうだろうね…。何かわかるといいんだけど… |
エミル | そういえばティア、ルークに兆候があったって言ってたよね。何があったの? |
ティア | そうね…。無断で屋敷を抜け出す事は今までにもあったんだけど… |
ティア | 失踪直前は、長時間の無断外出が多くなって…。問い詰めてみたら街の外まで出かけてるみたいだったわ |
ティア | そんなに長い時間出かけるなんて一体どんな用事なのかしら、と思ったんだけど… |
ミュウ | ボクも気になっている事があるですの |
ミュウ | 長いお出かけから帰ってきたら、ご主人様、いつもご機嫌だったですの |
ミュウ | だから、お出かけしようとした時ボクも一緒に行きたいってお願いしても絶対ダメだって… |
ティア | ルークがご機嫌…?何をしに行ってたのかしら… |
ミュウ | ガイさんはかわいい女の子に会いに行ってるんだろって言ってたですの… |
ティア | えっ… |
エミル | ルークに限ってそれはないんじゃ… |
エミル | あ…そういえば、僕もルークの事で思い出した事があるよ |
エミル | いなくなる何日か前、街中で偶然ルークと会ったんだ |
エミル | 声を掛けたんだけど、そわそわして落ち着きがなくて…話を早く切り上げて行っちゃたんだ |
ティア | ますますわからないわ。本当に女の子と会っていたとも思えないけど… |
エミル | ルークが一人で出かけるようになったのはいつから? |
ティア | そうね…エミルも覚えているかしら。旅の行商人が街を訪ねて来て… |
エミル | ああ、珍しいものをたくさん売りに来てたね。お蔭で街がすごく賑わって… |
ティア | ええ。確かその日、私はルークを捜しに街に出て—— |
ティア | …! |
ティア | まさか…ううん、気のせいよね… |
ミュウ | ティアさん?どうかしたですの? |
ティア | …な、何でもないわ |
ティア | それより捜索を続けましょう。ここにはいないみたいだし、最寄の街に行ってみてはどうかしら |
ミュウ | いい考えですの!ご主人様も、お腹が空いて街でお食事中かもしれないですの! |
エミル | なら、ルイニス街だね。ここからだと一番近いと思う |
ティア | ルイニス街ね。行ってみましょう |
| ガサ…! |
ミュウ | みゅ?今、そこの草むらで何か… |
| |
| ガルルルル! |
ティア | ミュウ、危ない!魔物よ! |
scene1 | 強面の人気者 |
エミル | あ、ルイニス街が見えてきたよ。もうすぐだね |
ティア | 何かルークに関する手がかりが見つかるといいのだけれど… |
ミュウ | …! |
ミュウ | ティアさん、エミルさん! |
ティア | どうかしたの? |
ミュウ | 今、すっごく大きな男の人が街の方に向かって行ったですの |
ミュウ | とっても急いでる感じでしたの! |
ティア | 大きな男の人…? |
エミル | …そういえば、噂で聞いたんだけどこの辺りの村や街が何者かに襲撃される事件が起きてるらしいんだ |
エミル | 少し前にもメルトキオの北の森にある村が被害にあったとか… |
ティア | そんな事が… |
エミル | うん。関係ないかもしれないけど、一応警戒はした方がいいかもしれない |
ティア | …わかったわ。念のため、後を追ってみましょう |
| |
エミル | 街に着いたけど…ミュウが見た大きな男の人の特徴は他にある? |
ミュウ | はいですの。上半身裸で筋肉ムキムキでしたの! |
エミル | ええっ。相当強そうだね、その人… |
ティア | 何者なのかしら… |
??? | こんにちは。旅の方ですか? |
ティア | ええ、そんなところよ |
??? | もしかして、メルトキオの方からいらっしゃったとか? |
ティア | いえ、私達はキムラスカの…バチカルから |
??? | そうですか… |
エミル | …? |
リリス | あ、すみません。突然驚かせちゃいましたよね…!私、リリス・エルロンって言います |
リリス | 少し前に私の兄がメルトキオに向かったんです。以来どうしてるかずっと心配で… |
リリス | メルトキオから来られた人なら何か話が聞けるかもしれないと思ってつい… |
エミル | お兄ちゃん? |
リリス | はい。スタン・エルロンって言うんですけど── |
ティア | スタン…?ひょっとして、あの… |
エミル | そういえば…確かにスタンはルイニス街に住んでるって話してたよね |
リリス | 兄をご存知なんですか!?わあ、聞いてみてよかったです…!なら、もしかしてリオンさんの事も… |
ティア | ええ。知っているわ |
リリス | ──ルークさんが戻ってこない…?じゃあ、ティアさん達は、ルークさんを捜してこの街に? |
ティア | ええ。この辺りで彼を見たっていう話を聞いたので、もしかしたらここにいないかと思って |
リリス | あの…この街でじゃないんですけど私、ルークさんに会いましたよ |
ティア | …!それは本当なの? |
ミュウ | リリスさん、詳しく教えてほしいですの! |
リリス | えっと…兄とシルヴァラント港に向かう道中の事なんですけど… |
リリス | 果物を買おうとしていたルークさんに兄が声を掛けたんです |
ミュウ | ご主人様、元気そうだったですの? |
リリス | 元気は元気だったみたいですけど…でも、何だかそわそわして落ち着かない様子でしたね |
ミュウ | ご主人様そわそわしてたって、エミルさんの話と同じですの… |
ティア | 他に何か覚えてないかしら。誰かと一緒だとか、どこに行くつもりなのかとか… |
リリス | 一人でしたよ。それで、兄が晶化現象について一緒に調べないかって誘ったんですけど… |
リリス | 今はそれどころじゃない、忙しいから私達と一緒に行く事は出来ないって話していました |
エミル | それどころじゃない、か…。何の事だろう…? |
リリス | 兄はもっとゆっくり話したかったみたいなんですけど、そのまま立ち去ってしまったものですから… |
エミル | そっか…。スタンにも話せない事なのかな…? |
| |
| わああああーーっ! |
ティア | 今の声は!? |
ミュウ | 向こうの方から聞こえてきたですの |
エミル | …!ひょっとして、さっきミュウが見かけた人が何か…!? |
リリス | えっ、何かあったんですか? |
ミュウ | さっき、この街にすっごく大きくて強そうな人が入って行くのを見たんですの! |
エミル | 近頃、シルヴァラントで村が襲われる事件があったから、心配になって… |
リリス | そんな…!大変、今はリオンさんも街にいないのに… |
エミル | リリスさん、ごめんなさい。真っ先にその事を伝えるべきだった… |
ティア | エミル、ミュウ!声のした方に行ってみましょう! |
リリス | 私も一緒に行きます! |
scene2 | 強面の人気者 |
エミル | 見て、向こうに人だかりが…! |
ティア | 誰かを取り囲んでいる…? |
ミュウ | あの人…ボクが見かけた人ですの! |
エミル | 大変だ!男の子が抱えられて…! |
ミュウ | 助けてあげないとですの! |
リリス | あ!あの人は…! |
リリス | ふふっ。みなさん、心配しなくて大丈夫ですよ! |
ミュウ | みゅ…? |
| |
??? | ガハハハハ! |
街の男 | コングマンさん、随分と久しぶりだねえ |
街の女 | またこの街に来てくれて嬉しいよ |
男の子 | ねえねえ、コングマン!次はぼくを持ち上げてー! |
| |
エミル | 悪い人どころか… |
ミュウ | すごい人気者ですの…! |
リリス | あの人はコングマンさんって言うんです |
リリス | お兄ちゃんやリオンさんとも仲がよくて、この街にもよく遊びに来てくれるんですよ |
リリス | 確かに身体もすごく大きいし顔もちょっと怖いですけど、とっても優しくていい人なんです |
ティア | どうやら私達の早とちりだったみたいね |
ミュウ | みゅううう… |
| |
リリス | コングマンさーん! |
コングマン | おう、リリス!元気でやってるか |
リリス | はい、お蔭様で!コングマンさんも元気そうで安心しました |
コングマン | おうよ、この通りだぜ。ガハハハハ! |
コングマン | …と、そうだ。スタンとリオンはどこにいる?急いで話したい事があってな |
リリス | お兄ちゃんは多分しばらく帰ってこないと思います |
リリス | あと、リオンさんも今は街の外を見回りに行ってて…。夕方には戻ると思いますけど |
| |
コングマン | そうか…。何だってこんな時に二人共… |
リリス | 何かあったんですか? |
コングマン | いや、実はさっき晶化した人間を見つけちまってな |
コングマン | この街の近くの森だし、あいつらにも知らせておこうと思って立ち寄ったんだが… |
リリス | 晶化した人間って…そんな…! |
エミル | 晶化現象か… |
ティア | …晶化現象の被害が、そんなところにまで…! |
リリス | それで、その人の様子は…助ける事は出来ないんですか? |
コングマン | いろいろ試してはみたんだがな…。あの様子だと難しそうだ |
リリス | そうですか…。リオンさんが街に戻ったら、私も様子を見に行きます |
ミュウ | 大変ですの… |
リリス | 晶化現象の事は、お兄ちゃんやリオンさんもすごく心配しています |
リリス | 今お兄ちゃんが街にいないのも、晶化現象の事を調べに行ってるからなんです |
コングマン | なるほどな。そういう事情だったか |
リリス | 本当は私もお兄ちゃん達と一緒に行きたかったんですけど、街を狙う不審人物の情報もあって… |
リリス | それで、リオンさんと一緒にこの街に残る事にしたんです |
コングマン | 不審人物だと?ったく、混乱に便乗して悪さをする悪党って奴だな |
コングマン | …よし、そういう事なら俺様もしばらくこの街にいるぜ |
リリス | 本当ですか?そうしてもらえると、すごく心強いです |
コングマン | 任せとけ。ガハハハハ! |
コングマン | …ところで、リリスと一緒にいるのは誰だ?この街では見かけねえ顔だな |
リリス | あ!すみません、つい話に夢中になってしまって… |
ティア | 挨拶が遅れてごめんなさい。私はティアと言います。こちらは、ミュウとエミル |
エミル | 初めまして、コングマンさん。よろしくお願いします |
コングマン | おう、よろしくな!ガハハハハ! |
ミュウ | コングマンさん、いい人だったですの! |
リリス | ふふ、でしょ? |
リリス | みなさん、お兄ちゃんやリオンさんの知り合いなんです。人捜しでこの街に来られたみたいで |
コングマン | ほう。誰を捜してるんだ?場合によっちゃ、力になれるかもしれねえぜ |
ティア | 実は… |
コングマン | ルーク・フォン・ファブレ…か。うーん… |
エミル | やっぱり、知らないですよね… |
コングマン | 名前に心当たりはねえが…白い服を着た赤髪の男ってのには覚えがあるぞ |
コングマン | 腹筋が見える服を着ていたな。腰に横に剣を差していて… |
ミュウ | ご主人様ですの!間違いないですの! |
ティア | 詳しく聞かせてもらえますか? |
コングマン | ありゃあ、数日前の夜の事だ。俺様はこの近くの森を抜けようとしていたんだがよ |
コングマン | たき火を囲んで野宿してる二人の男を見かけてな。その一人がそんな身なりだった |
エミル | …!誰かと一緒にいたって事ですか? |
コングマン | ああ、大柄な男がもう一人な。湖近くの気味悪い森ん中だってのに、えらく楽しそうに話し込んでたぜ |
コングマン | 親子ってほど歳は離れちゃいねえ。かと言って友達って感じでもねえし…ありゃあ、師匠と弟子ってとこか |
コングマン | 山にこもって剣の修行でもしてたんじゃねえのか? |
ティア | 師匠と弟子…… |
エミル | 話を聞いた印象だと、ルークみたいだけど…。でも、どうしてそんなところに… |
ミュウ | ご主人様と仲良くお話していた人の事も気になるですの |
ティア | … |
ティア | …二人共、情報提供感謝します。私は、これで失礼します |
エミル | ちょ、ちょっとティア…?話はまだ…… |
リリス | 行ってしまいましたね…。突然どうしたんでしょう? |
ミュウ | 何だか様子が変だったですの… |
エミル | とにかく、ティアを追わないと…。すみません、僕達も行きます |
エミル | リリスさん、コングマンさん、お話ありがとうございました。街の事もどうかお気をつけて…! |
ミュウ | さよならですの! |
コングマン | お、おう… |
コングマン | おいおい、何だありゃ。随分あわただしい連中だな |
リリス | ルークさんの事が、すごく心配なんだと思いますよ |
リリス | さあ、コングマンさん。私達も今後の事を話し合いましょう |
コングマン | そうだな。何人たりともこの街に危害を加えさせないぞ! |
scene1 | 消えない傷 |
ティア | … |
エミル | ティア、待って! |
ティア | エミル… |
| |
エミル | はあ…やっと追いついた… |
エミル | いきなりどうしたの? |
ミュウ | リリスさんもコングマンさんもびっくりしてたですの… |
ティア | …!そうよね…私… |
ミュウ | ティアさん…?何だか悲しい顔になってるですの |
エミル | 何かあったの…? |
ティア | … |
| |
ティア | ルークと一緒にいるのは…私の兄だわ |
エミル | ティアの、お兄さん…? |
ティア | ヴァン・グランツ…あなたも名前くらいは知ってるはずよ |
エミル | ヴァン・グランツ…ってまさか、あの…! |
ミュウ | エミルさんはその人の事を知ってるですの? |
エミル | キムラスカの騎士で彼の名前を知らない人はいないよ。騎士団の総長なんだ |
ティア | “元”総長よ。数年前に失踪してしまって既にその地位は解かれているわ |
エミル | でも、若い年齢ながらにして騎士団の総長まで登りつめたすごい騎士、って聞いてるよ |
エミル | 剣の腕は勿論、人望も厚くて、当時の騎士達はみんな彼に強い憧れを抱いていた… |
エミル | 僕が騎士団に入った時には既に不在だったから、人から聞いた話ばかりなんだけどね |
ミュウ | ティアさんのお兄さんはすごい人だったんですの!知らなかったですの! |
ティア | … |
エミル | …でも、どうしてティアはそのヴァンさんがルークと一緒にいると思うの? |
ティア | 前に一度、バチカルの街中でそれらしい人影を見かけた事があるの |
ティア | その時は見間違いだと思って、深く気に留めなかったのだけれど… |
ティア | 今思うと、やっぱりあれは兄さんだったんだわ |
エミル | それはいつ頃の事? |
ティア | 旅の行商人が街に来た日…。ルークが頻繁に一人で出かけるようになった時期に重なるわ |
エミル | …! |
ティア | さっきの話を聞いて、思い当たったのよ |
ティア | 兄さんは失踪する前、ルークに剣術を指導していたの |
ティア | 彼は兄さんの事を師匠と呼んで、なついていたわ |
ティア | 兄さんが姿を消した時は、食事もろくに取れないくらい落ち込んでしまうほどにね |
ミュウ | ご主人様… |
エミル | …でも、本当にヴァンさんだとして何でルークが? |
エミル | ヴァンさんがいなくなってから、随分経つはずだし… |
エミル | それに、本当に街に帰ってきたんならまずは誰より先に妹のティアに会いに来るはずじゃ── |
ティア | …それはどうかしら |
ティア | 何も告げずに姿を消しておいて今さら── |
ティア | … |
ミュウ | ティアさん…? |
エミル | ティア… |
エミル | ごめん、その…何ていうか──… |
ティア | いいの、気にしないで |
エミル | え、えっと…よければコングマンさんの話していた湖の辺りに行ってみない? |
エミル | 何か手がかりが掴めるかもしれないし |
ミュウ | ボクもエミルさんに賛成ですの!ティアさんも一緒に行くですの |
ティア | …そうね |
ティア | …行きましょう |
scene2 | 消えない傷 |
ミラ | ──それにしても、まさか隠れ家を襲撃したのがあのルークだったとはな… |
ジュード | …うん。僕も未だに信じられないよ |
ゼロス | んなの、俺さま達の方がびっくりしたっての。なあ、スタン |
スタン | うん、そうだな |
ライラ | 直接対峙されたロイドさんはショックも大きいですよね… |
ロイド | …確かに、最初は頭が真っ白になっちまったけど… |
ロイド | でも、今はもう大丈夫だ。あいつを信じるって決めたからさ |
エリーゼ | バチカルでルークの事がわかれば、コレットの居場所についても手がかりがあるかもしれません… |
ティポ | 何か情報があるといいねー。悪い事じゃないといいけどー |
ヴェイグ | …キムラスカの陰謀だとすれば何も教えてもらえないかもしれないが… |
スレイ | うーん、そうだよな。争い合うような事にならないといいんだけど… |
ミクリオ | そのルークって人が王族である以上、国ぐるみの意図と捉えるのが自然だと思う |
ミクリオ | ルークの同行者の素性もわからないから確定は出来ないが… |
ミクリオ | そもそも、よそ者の僕達に国の内情を簡単に教えてくれるとは思えない |
ルドガー | バチカルにはティアやガイ、エミルにマルタ、俺達の知り合いも数多くいる |
ルドガー | 彼らなら何か事情を知っているかもしれないし、協力を仰ぐ事も出来るだろう |
スタン | とにかく、行けば何とかなるさ。心配してもしょうがない |
スレイ | うん、そうだな |
ライラ | …ところで、そのバチカルまではまだ距離があるのでしょうか? |
スタン | ああ、えーっと…まだ半分ってとこじゃないかな |
ゼロス | 何なに〜?ライラちゃん、ひょっとしてお疲れ?だったら、俺さまがおぶって── |
ライラ | まあ、ゼロスさんったら。お気持ちだけで十分ですわ |
ゼロス | そ、そう… |
ゼロス | じゃあ、ミラさまどう?あ、それかエリーゼちゃんでも── |
ミラ・エリーゼ | … |
ヴェイグ | お呼びではないそうだ |
ゼロス | とほほ… |
| |
エミル | ──コングマンさんが言ってたのは確かこの辺りだと思うんだけど… |
ミュウ | 何だか薄暗くて怖い森ですの… |
ティア | そうね。まだ昼過ぎだというのに陽の光がほとんど入ってこないし── |
ティア | …! |
ティア | 二人共、これを見て |
エミル | たき火の跡だ…!そんなに日にちは経ってないみたい。誰かがいたのは間違いなさそうだよ |
ティア | コングマンが言っていた通りね。やっぱり、ルークがここに… |
エミル | リリスさんもシルヴァラント港へ行く前にルークと会ったらしいし…この辺りで何かしていたのかな…? |
ティア | ルーク…。シルヴァラントで何を…? |
| ガサ… |
ミュウ | 何かいるですの! |
| |
| ガルル… |
エミル | 魔物だ…!それに… |
| ガルルルル… |
ミュウ | 囲まれてしまったですの…! |
ティア | 一斉に目の前の敵を片付けるしかなさそうね。誰かがやられたら背後を取られるわ |
エミル | …そうだね。じゃあ、僕が合図をしたら攻撃開始だ。二人共、準備はいい? |
ティア | ええ、いつでもいいわ |
ミュウ | わかったですの! |
エミル | よし、今だ! |
scene1 | 追憶 |
ティア | ──何とか魔物は倒せたわね |
エミル | ふう、よかった。どうなる事かと思ったけど… |
ティア | 二人がいてくれて助かったわ。ありがとう、エミル、ミュウ |
エミル | こちらこそ。それじゃ、もう少しこの辺りを… |
| ガルルルル! |
ミュウ | みゅ? |
ティア | 魔物…!?まだ残って… |
エミル | ミュウ、危ない! |
??? | はあっ! |
| ザシュッ! |
| グオオオオーーーッ! |
| |
??? | …ふぅ、間に合ってよかった。大丈夫? |
ミュウ | た、助かったですの!感謝ですの! |
??? | どういたしまして。怪我がなくて本当よかったよ |
ティア | ありがとう。ミュウを助けてくれて |
??? | いえ、お礼なんて。オレは、たまたま近くを通りかかっただけなんです |
??? | おーい!スレイ!ったく、どこ行ったんだ? |
??? | 確かこっちの方に走って行ったはずだが… |
ミュウ | また誰か来るですの…! |
??? | …スレイ、全く君は。何も言わずに走り出したら心配するだろう |
スレイ | ごめん、ミクリオ。この人達が魔物に襲われそうになってるのが見えたから、つい反射的に… |
ミュウ | この人はボクを助けてくれたですの!怒らないであげてほしいですの… |
ルドガー | ん?君はミュウ…?それに、ティアとエミルまで… |
ティア | ルドガー!?どうしてあなたがここに? |
スレイ | ルドガーさんの知り合いだったんですか? |
スレイ | …あれ、ちょっと待てよ?ティアさんとエミルさんってどこかで聞いたような… |
ゼロス | おいおい、もう忘れたのかよ。さっき話しただろ、バチカルに俺さま達の知り合いがいるって |
ゼロス | …いや〜、でもまさかこんなところで愛しのティアちゃんに会えるなんて俺さま運命感じちゃう |
スタン | うん、本当に驚いたよ。ちょうどティア達のところにも行こうって話してたから |
ティア | ゼロス、それにスタンまで…。私達のところへ来ようとしていたってどういう事かしら |
エリーゼ | あの、わたし達…いろいろと知りたい事があってバチカルを目指してたんです |
エミル | 知りたい事…? |
| |
ティア | ルークがシルヴァラントの神子を!?そんな…まさか信じられないわ… |
ミュウ | そうですの…。ご主人様がそんな事するわけないですの…! |
ジュード | ティア、ミュウ… |
エミル | みんなの事を疑うわけじゃないけどやっぱり僕も信じられないよ… |
ロイド | …みんなの気持ちはわかるよ。実際にルークを目の前にした俺だって最初は何が何だか… |
ロイド | でも、俺が目覚めたらコレットがいなくなってた。直前まで剣を交えてたルークも… |
エミル | … |
ミュウ | ご主人様… |
ティア | でもどうして…ルークがそんな事を… |
ルドガー | それを確かめるために、バチカルへ行こうとしてたんだ |
ティア | 確かめる…? |
ゼロス | ルークの真意も勿論だが、キムラスカ国王や国そのものが関わっていたのかどうかを、だ |
ゼロス | その答えによっちゃ、キムラスカとシルヴァラントで戦争が起きちまうかもしれねぇ |
エミル | 戦争って、そんな… |
| |
ティア | …あなた達が知りたいと言っていたのはこの事だったのね |
ティア | ルークに関して言えば、そんな大それた事をするわけない、そう言いたいところだけど… |
ルドガー | 何かあったのか、ティア? |
ミュウ | 実はご主人様…しばらく前から行方不明なんですの |
ヴェイグ | 行方不明だと…? |
エミル | うん…。僕達も今ちょうどルークの行方を追っていたところなんだ |
ティア | けど、ルークが陛下の命で行動しているという可能性は低いと思うわ |
ヴェイグ | …それはどうしてだ? |
ティア | 新たな天啓にまつわる情報はキムラスカにも入ってきているわ |
ティア | 拡がる晶化現象… |
ティア | その不安もあいまって、どこの国も天啓に対する関心が高くなっている… |
ティア | そんな中でインゴベルト陛下はウィンドルとシルヴァラントの関係が悪化しつつある事を懸念されていたわ |
ティア | そんな陛下が火に油を注ぐような事をそれもルークにさせるなんて考えられない |
ティア | ルークの事を心配されて騎士団や私に捜索を命じられたのも、他ならぬ国王陛下だもの |
ルドガー | なるほど…。確かに、今の話を聞く限りキムラスカは関わってなさそうだ |
エリーゼ | じゃあ、ルークは自分で…? |
ゼロス | …そいつはどうだろうな。神子をさらうって事は、目的は天啓絡みだろうし… |
ゼロス | ルークの野郎があんなもんに興味を持つとは思えねぇ |
ゼロス | 前にヴェイグが言ってたけどよ、あいつと一緒にいたお仲間の入れ知恵なんじゃねぇか? |
ティア | 仲間…? |
スタン | ああ、隠れ家を襲撃したのはルークともう一人、男が一緒だったらしいんだ |
ヴェイグ | 複雑な内部構造を完全に把握し、更には、厳重な警備態勢の中たった二人で神子をさらったそうだ |
ヴェイグ | 相当な強者である事は確かだが、そいつが何者なのか、尻尾すら掴めていない |
ティア | …………! |
ライラ | ティアさん、どうかされましたか?顔色が… |
ティア | …その人物に心当たりがあるの |
スタン | 本当か!?ティア!教えてくれ、一体誰なんだ? |
ティア | ……私の兄よ |
ジュード | なっ… |
ロイド | ティアの兄貴だって…? |
scene2 | 追憶 |
ルドガー | ──なるほど。そんな事情があったのか |
スタン | ルークが師と慕っていて、一緒にここで野宿をしていた… |
スタン | それを聞くと、神子をさらいに来たもう一人の男はヴァンさんっていう気もするけど… |
ロイド | ヴァンとルークは何でこんな事を? |
ティア | それは…私にもわからないわ |
ティア | でも、これまで集めた情報からして、兄さんが関係しているのは間違いないと思う |
ティア | 神子の隠れ家を突き止めて中の構造の情報を手に入れ、大勢の警備を倒す… |
ティア | 兄さんならそれくらいはやってのけるはずよ |
ティア | ルークが私だけでなく、ガイにまで何も告げず、行方をくらますなんておかしいとは思っていたのだけど… |
ティア | それが、ルークが深く慕っている兄さんの指示によるものなら合点がいくわ |
スレイ | ヴァンは、ティアさんのお兄さんなんですよね?何か話を聞かされてなかった? |
ヴェイグ | …それに、自分の兄がそんな事をしたとどうして言い切れるんだ? |
エミル | それは… |
ティア | …いいのよ、エミル。私が話すわ |
ティア | 数年前に失踪したきり、私は兄さんとは一度も会っていないの |
スタン | どうしてヴァンさんは失踪したんだ?いつから? |
ティア | 昔、キムラスカで盗賊の暴動に端を発した大きな内乱が起きた事があったの |
ゼロス | ひょっとして、ソドスの内乱の事か? |
エミル | ゼロスさん、知ってるの? |
ゼロス | まあ、隣国の事だしな。詳しくは知らねぇが、名前だけは聞いた事がある |
ティア | 激しい戦いの後、争いは終息、兄さんの部隊も役目を解かれたのだけど── |
ティア | 撤収の途中、兄さんは部下達にも何も告げず、突然姿を消してしまったの |
ティア | …兄さんとはそれきりよ。何のために、どこに行ったのか、私には何一つわからないわ |
スレイ | …騎士団の総長まで務めたって事は相当すごい人だよね |
ティア | …私が覚えている兄さんは、戦争をなくしたいという強い正義感と信念を持つ人だった |
ティア | ルークも剣術の師というのを超えて兄さんを慕っていたわ |
ティア | でも…今となっては私はどこまで兄さんの事を理解していたのかわからない |
ティア | あんな風に突然いなくなるなんて… |
エミル | ティア… |
ジュード | 大変だったんだね、ティアも… |
エリーゼ | … |
ティア | …ごめんなさい。今は、私の事よりシルヴァラントとの関係の方が重要だわ |
ミクリオ | 神子の誘拐にキムラスカが関わっていないのは本当のようだけど── |
ミクリオ | 問題は、シルヴァラント国王がその事を納得するかどうかだね |
スレイ | だな… |
エミル | そういう事なら、インゴベルト陛下に親書をいただけるよう頼んでみたらどうだろう? |
エミル | キムラスカとシルヴァラントはずっと友好関係を築いてきたし… |
エミル | 陛下の正式な書面があれば、シルヴァラントもキムラスカが関与をしてないって信じてくれるんじゃ… |
ロイド | なるほど! |
ロイド | …でも、キムラスカ国王が書いてくれるかどうか… |
ティア | 陛下だって、争いは望まないはずよ。望みはあると思うわ |
ゼロス | んじゃ、予定通り向かうはキムラスカだ |
ミラ | 国王への取り次ぎはお前達に頼めるか、ティア |
ティア | ええ、勿論よ |
ミュウ | ティアさん…ご主人様は無事なんですの…? |
ティア | そうね…多分、いえ、きっと無事よ。だから今はバチカルに戻って出来る事をしましょう |
ミュウ | みゅうう…わかったですの… |
スレイ | じゃあ、キムラスカへ—— |
| ガサガサッ…! |
ミュウ | …!今の音は何ですの? |
| |
| ガルルルル! |
スタン | みんな、魔物だ!気をつけろ! |
scene1 | 不条理な感情 |
ヴェイグ | ──ようやくキムラスカに入ったか |
ティポ | えー!まだ入ったばっかりー?じゃあ、バチカルはー? |
ミュウ | もっともっと先ですの!ティポさん、疲れたですの? |
ティポ | ぼくヘトヘトだよージュード君おんぶー |
ジュード | はいはい、騒がないの、ティポ。そろそろ休憩にするかい? |
エリーゼ | そうですね…でも… |
スタン | いいんじゃないか?みんなそろそろ疲れてるだろうし、ここらで休憩にしても |
ゼロス | そうだな。野郎はまだしも、か弱い女の子達に無理強いするのはかわいそうだし〜 |
スレイ | じゃあ、あの辺りでどうですか?日陰が出来ててちょっとゆっくり出来そうだし |
ティポ | サンセー!そうと決まったら、ミュウ君、早速あっちに行こー! |
ミュウ | は、はいですの…! |
エリーゼ | ティ、ティポ!待ってください! |
ミラ | …やれやれ、疲れているのではなかったのか? |
ルドガー | はは…。俺達も行こうか |
ティポ | はー、やっと休憩出来るぞー!エリーも早くこっちに── |
| ぼよんっ |
ティポ | ムギュー! |
ヴェイグ | ぐ… |
エリーゼ | ティポ、前を見なきゃ…! |
エリーゼ | ごめんなさい、ヴェイグ… |
ヴェイグ | 何ともない。ティポ、お前の方こそ大丈夫か? |
ミュウ | ヴェイグさん優しいですの! |
ティポ | 優しいのー?じゃあ、ぼくここで休むぞー |
ヴェイグ | … |
エリーゼ | ティ…ティポ、駄目です!ヴェイグだって疲れてるのに、肩になんて乗っちゃ… |
ヴェイグ | 構わない。こういうのには慣れているからな |
ライラ | まあ!ティポさん、ヴェイグさんの肩にしっくりなじんでますわね |
ティポ | おおー!いつもと眺めが違って見えるー!居心地もバツグン!ミュウ君もおいでよー |
ミュウ | ボクもですの…?いいんですの? |
ティポ | ほらほら、もう片方の肩が空いてるよ— |
ミュウ | じゃあ、お言葉に甘えて…失礼するですの |
ミュウ | 周りがよく見えるですの!木の上にいるみたいですの! |
ティポ | でしょでしょー?ん?何だこれー!シッポみたいー |
ヴェイグ | む… |
エリーゼ | …ティポ!ヴェイグの三つ編みで遊んじゃ駄目ですよ! |
ライラ | ふふ、ヴェイグさんは変わった生き物に好かれやすい方なのですね |
エリーゼ | その…すみません、ヴェイグ… |
ヴェイグ | …大丈夫だ |
スレイ | ──ライラ達、何だか楽しそうですね |
ゼロス | そうだな。…っていうかよ、スレイ。俺さまずっと気になってたんだけど… |
ゼロス | 何でお前ってそういう硬い言葉使いなわけ? |
スタン | 言われてみればそうだな。俺の事もスタンさんって呼ぶし |
スレイ | うーん…。何でって言われても、特別な理由があるわけじゃないんですけど… |
スタン | …あれ?でも、ミクリオには普通に話してるよな? |
ミクリオ | それは慣れだよ。僕達は幼い時からずっと一緒に育ってきたからね |
ルドガー | 慣れ、か… |
ルドガー | ま、別に無理強いする事でもないが、俺達に気を使ってやっているなら、その必要はないな |
ゼロス | よーし、いい事思いついたぜ。俺さま達でスレイのしゃべり方を特訓してやらねぇか? |
スレイ | しゃべり方の特訓…ですか? |
ミクリオ | そうだな。まずはその、さん付けを取ってみるのはどうだろう? |
ミクリオ | あとは、僕と話す時のようにみんなに接する事を心掛けてみるとか |
スタン | そうそう。俺達もう友達なんだから、もっと気楽に話しかけてくれよ!ほら! |
スレイ | えーっと…スタン。今日はいい天気です…だ |
ミクリオ | ですだって、スレイ。おかしな事言い出してるぞ |
スレイ | ははは…ごめんごめん。意識して話し方を変えるのって、案外難しいな |
ゼロス | なら、俺さまが例文を出してやるから、スレイ、ちゃんと後に続くんだぜ? |
ルドガー | ゼロスの例文…?何か不安だな |
ゼロス | やぁハニー、今日もきれいだな〜!よかったらこれから、俺と二人きりでデートしないかい? |
スレイ | ハ、ハニー?って、誰の事? |
ゼロス | いいから!ほら、真似してみろって |
スレイ | や、やぁ、ハニー。今日もきれいだ… |
スレイ | …って、何だか違うような気がするんだけど… |
ゼロス | はい、深く考えない。次行くぞ! |
ゼロス | なぁ、そこの子猫ちゃん、俺さまとアツーい夜を過ごさない〜? |
スレイ | …それ、ビミョーに言い方変わっただけでさっきと同じじゃないか…? |
ゼロス | わかってないねぇ〜、スレイくんは。女の子のハートを射止めるには適度に砕けなきゃ駄目なんだよ |
スレイ | ええっ!?いつから女の子を射止める話になったんだ!? |
スレイ | オレ、こんなナンパみたいなセリフ、恥ずかしいよ! |
ルドガー | ははっ。その調子だ、スレイ |
スレイ | …ん? |
スタン | 今ゼロスと普通に話してたぞ |
スレイ | …あ。言われてみれば! |
ミクリオ | どうやら上手い事、誘導されたみたいだね |
ゼロス | さっすが俺さま!狙い通りだなぁ〜! |
ミクリオ | …狙ってやっていたようには見えなかったけどね |
スレイ | どっちにしろ、お蔭で自然に話せるようになったよ。ありがとう、ゼロス! |
ジュード | ──大丈夫かな。ヴェイグ、ティポにもてあそばれているみたいだけど… |
エミル | はは、本当だ。ヴェイグは無口っぽいけどなつかれる何かがあるんだろうね |
ジュード | エリーゼもみんなと打ち解けられてるみたいだしよかったよ |
エミル | それを言うならミュウもだよ。ルークがいなくなってから、ずっと元気がなくて心配だったんだ |
ミラ | それにしても、厄介な事になったものだな… |
ロイド | 本当にな…。俺がミラと会う時って大体いつもこんな時ばかりだよな |
ミラ | ふっ、確かにそうかもしれないな |
ロイド | …今回はルークの事もあるし今までのとはちょっとわけが違う |
ロイド | でも、考え込んでる場合じゃないな。…コレットを早く助け出すためにも気合入れないと |
ミラ | 私も出来る限りの事はする。無理はするなよ、ロイド |
ロイド | ああ、ありがとう |
ティア | … |
エミル | …ティア? |
ジュード | あれ?エミル、どこかに行くの? |
エミル | あ、うん少し…!すぐ戻るよ |
scene2 | 不条理な感情 |
ティア | … |
ティア | 兄さん… |
ティア | ルーク… |
ティア | 一体何を考えているの…?どうしてこんな… |
ティア | ふう… |
??? | …ため息ってね、吐くと幸せが逃げちゃうんだって。知ってた? |
ティア | 誰…? |
エミル | 今のはマルタの受け売りだけどね。…隣、座ってもいいかな? |
ティア | エミル…。え…ええ、構わないけど |
エミル | … |
エミル | 気に病むなって言われても、難しいよね、やっぱり |
ティア | …そうね |
ティア | …ルークったら、本当に何を考えているのかしら |
ティア | これまでの出来事で彼もいろいろと学び、経験を積んで成長したものだと思っていたのよ |
ティア | なのに、こんな大それた事をするなんて… |
エミル | … |
ティア | 晶化現象で国中の人々が不安に陥っている時なのに、それどころじゃなくなってしまったわ |
ティア | シルヴァラントとキムラスカの関係だって危くなって… |
ティア | …本当に困ったものね。ルークは自分がした事の意味をわかっているのかしら |
エミル | … |
エミル | …ティア。ルークは成長してると思うよ |
| |
エミル | こんな事言ったらルークは怒るだろうけど、最初会った時はわがままなお坊ちゃんって感じだった |
エミル | でも、命の危機にさらされながら何度も戦って、たくさんの仲間に出会って、彼は変わったと思う |
エミル | そんなルークが、何の理由もなく混乱を招くような事をするはずない。何か事情があるんだと思う |
エミル | ティアも、本当はそう思ってるんだよね |
ティア | …そうね。彼はわがままだけど、少なくとも争いを望んだりはしない |
エミル | ティアにとってショックな事が続いて頭が整理出来ないんだよね、きっと |
ティア | …そう、かもしれないわ |
ティア | 行方不明だった兄さんが突然現れて、ルークと一緒に神子の誘拐に関わっているかも…なんて… |
ティア | 信じられるはずがないわ…。でも… |
エミル | ティア、これだけは聞いて |
エミル | 一人で全てを抱え込もうとしたり、思い詰めたりしないで? |
エミル | 辛い時は辛いって、言っていいんだよ? |
エミル | 僕じゃ少し頼りないかもしれないけど話だったらいつだって聞くし… |
エミル | それに、ティアと同じようにルークを信じてる人達がいるよ。僕や、ミュウ以外にも |
| |
ティア | …そうね |
ティア | そう言ってもらえて、少し気が楽になったわ。…ありがとう、エミル |
エミル | …よかった。じゃあ、みんなのところに戻ろう |
ティア | ええ |
scene1 | 漆黒の騎士 |
ルーク | … |
ルーク | ロイド…ちくしょう…! |
??? | う……ん… |
ルーク | …! |
| |
コレット | …あれ?ここは…? |
ルーク | やっと起きたのかよ |
コレット | あなたは… |
ルーク | 随分寝てたよな。腹とか減ってな── |
コレット | …! |
ルーク | …怖がらなくていいだろ。何にもしねえよ |
コレット | あなたは…ルーク?ロイドはどうなったの? |
ルーク | …あいつなら無事だ。気を失っただけだ |
コレット | 本当…? |
ルーク | 嘘なんかつかねえ |
ルーク | そりゃ…疑うのも無理ねえけど… |
ルーク | 俺だって出来ればあいつと戦いたくなんかなかった。けど… |
コレット | どうして… |
コレット | どうしてこんな事してまで、私が…神子が必要だったの? |
ルーク | …… |
ルーク | 世界戦争を止めるためだ |
コレット | 世界戦争…!? |
ルーク | 今、新しい天啓を取り合っていろんな国がいがみあってんだろ |
ルーク | そのせいで、下手すりゃ近い内でっかい戦争にまでなるかもしんねえ |
ルーク | だから、お前をア・ジュールに連れて行くんだ |
コレット | ア・ジュールに…? |
ルーク | 戦争を止められるとしたら神子のお前とア・ジュールだけなんだ |
コレット | … |
ルーク | …怖がらせちまって悪かった |
ルーク | けど、信じてくれ。ロイドに言った事は嘘じゃねえ |
ルーク | 悪いようにしねーって約束する。ロイドの代わりに、俺が最後までお前を守る |
ルーク | だから、頼む。戦争を止めるために力を貸してくれ |
ルーク | …嫌なんだよ。戦争とか、そんな馬鹿みたいなもんで人が死ぬのを見るのは… |
コレット | …ルーク。顔を上げて? |
コレット | 詳しい話を聞いてもいいかな…。私に出来る事なら、協力したいって思うから… |
ルーク | コレット… |
| |
ロイド | ──お、バチカルが見えてきたぞ |
ライラ | ふぅ…ようやくですわね。長い道のりでした |
エリーゼ | …?何か、様子がおかしい…です |
ヴェイグ | 本当だ。黒煙が上がっている… |
ティア | …!まさか、何かあったんじゃ…! |
ミラ | …ただ事ではないな。皆、急ごう |
| |
スレイ | そんな…!何で街が燃えて… |
ミクリオ | 酷い光景だ…。この街に一体何が… |
街の男 | 別のところからも火が出たぞ! |
街の女 | 誰か…痛い…助けて… |
子ども | うう…お母さん…怖いよ… |
ゼロス | 酷ぇな…。戦争でもおっ始まったのかよ… |
街の男 | う、うう… |
ジュード | 大丈夫ですか? |
ジュード | 酷い怪我だ…!今治療します |
ロイド | ジュード、俺も手伝うぜ…! |
ティア | 何て事なの…! |
ティア | すみません!一体何があったんですか!? |
街の男 | 真っ黒な鎧の謎の騎士達が数人、突然街に現れたらしい |
ティア | 真っ黒な鎧… |
街の男 | そいつらが大暴れして街のいたるところで被害が出てる… |
街の男 | 特に連中が最初に入って来た街の北東部では、大勢の負傷者が出てるとか── |
エミル | 何だって…!? |
エミル | 街の北東って言ったらマルタが… |
ルドガー | エミル、どこに行くんだ!? |
ミュウ | ティアさん大変ですの!街の北東にはマルタさんがいるですの! |
ティア | マルタが!? |
ティア | でも、ここの人達も放っておけないしどうしたら… |
ヴェイグ | 北東部が特に酷いなら、二手に別れたらどうだ? |
ジュード | ここは、僕が残るよ。もう一人くらい、誰か残れるかい? |
ライラ | では、私が。みなさんはどうか、北東部の方へ…! |
ティア | ありがとう、ジュード、ライラ。私達はエミルを追いかけるわ |
スタン | くそ…!何でこんな事に… |
scene2 | 漆黒の騎士 |
マルタ | う……ん… |
マルタ | あれ…、ここは… |
女の子 | …!ママ、お姉ちゃんが目を覚ましたよ |
マルタ | あなたは確か…… |
マルタ | うっ…! |
女の子の母親 | まだ動かないで…!あなたは怪我してるのよ |
マルタ | 怪我…?私一体何を──… |
マルタ | 思い出した…。確かあなた達が、真っ黒な鎧の騎士に襲われそうになって… |
女の子 | うん…。お姉ちゃんがわたしとママを庇って助けてくれたんだよ |
マルタ | そっか…二人共無事だったんだ |
マルタ | 本当によかった… |
女の子の母親 | でも、そのせいであなたがこんな事に…。本当に何と言ったらいいのか… |
マルタ | 気にしないでください |
マルタ | …エミル。エミルがいたらきっと、同じ事をしたよね… |
マルタ | よかった、あなたがこの街にいなくて |
エミル | マルタ! |
マルタ | エミル…!?何で、ここに…? |
| |
エミル | 怪我をしてこの家に担ぎ込まれたって聞いて…それより傷の具合は…!? |
マルタ | あ、うん…少し痛みはあるけど大丈夫だよ、このくらい |
ティア | それほど深くはなさそうね。よかった… |
ミュウ | マルタさん、心配したですの… |
マルタ | ティアとミュウまで…。戻って来てたんだね。ありがとう、心配してくれて… |
| |
ルドガー | その様子だと命に別状はなさそうだな… |
マルタ | …!あなたは確か、ルドガーさん…?どうして…? |
エミル | ルークの捜索中に偶然会ったんだ。いろいろと事情があって、キムラスカまで一緒に来たんだよ |
ティア | 怪我をしているのに悪いんだけど…マルタ、何があったのか話せるかしら |
マルタ | …うん。わかった。みんなに、聞いてほしい |
| |
エミル | ──じゃあマルタは、さっきの親子を庇って漆黒の騎士と… |
マルタ | うん… |
マルタ | もう駄目かもって思った時に味方の騎士が駆けつけてくれて、それで何とか助かったみたい… |
マルタ | けど、ごめん。それ以上の事は覚えてなくて… |
ミラ | きっと味方を見て安心して気を失ったのだろう |
エリーゼ | 怖かった…ですよね |
エミル | …ごめん、マルタ。僕が一緒にいれば、キミをこんな目に遭わせたりしなかったのに… |
マルタ | ううん、エミルのせいじゃないよ。だから、そんな顔しないで? |
ゼロス | 可愛いマルタちゃんをこんな酷い目に遭わせやがって… |
ゼロス | その騎士達、見つけたら許さねぇぞ |
スレイ | うん…。マルタもだけど、たくさんの人が怪我を負ってる… |
ヴェイグ | シルヴァラントの神子が攫われてキムラスカに疑いが…と思ったら、今度はそのキムラスカが襲撃… |
ティポ | 何が起こってるんだろー? |
ミクリオ | その漆黒の鎧の騎士達は一体何者なんだろう…。どこかの国の軍隊か? |
スタン | うーん、どうだろうな。漆黒の鎧を着た騎士なんて聞いた事ないけど |
ルドガー | ヴェイグが前に会ったという、アリスとデクスの一味か? |
ヴェイグ | …わからない。少なくともオレが会った二人は黒い鎧など着てはいなかったが |
ゼロス | その仲間っぽいシンクも鎧ではなかったし、連れてた兵士も真っ黒な鎧じゃなかったな… |
ミクリオ | 赤の騎士団とも違う。どこかの国が正体を隠すために擬装したという可能性もあり得るが… |
ティア | マルタ、何か他に心当たりはない?敵の正体に繋がる何かを見たとか… |
マルタ | そういえば…彼らが話しているのを、ちらっと耳に挟んだ気がする |
マルタ | 確か、騎士の一人が、サレ様って呼ばれてたような… |
ミラ | サレ…? |
ロイド | あれ…その名前、どこかで聞いたような… |
ミラ | 確か、クレスの故郷の村を襲った相手ではないか? |
ロイド | ああ、そうか!前にクレスが話してたよな |
スレイ | 村を襲われたって…。何があったんだ? |
ミラ | 私達の仲間のクレスが住むトーティス村が、以前謎の敵に襲われたらしい |
ロイド | 村の人の多くが殺されて、随分と酷い有り様だったって… |
ロイド | その敵の首謀者が、確かサレっていう男だった |
エリーゼ | そんな酷い事が… |
ゼロス | …って事は、今回もその男が? |
ミラ | …いや、それはないはずだ。クレスは確かにサレを倒したと話していた |
スタン | じゃあ、同じ名前の別人って事か?…でも、そんな偶然ってあるのか |
マルタ | あの騒ぎの中だし、もしかしたら私の聞き間違いかも… |
ミクリオ | 彼らの目的は…?もう、撤退したのだろうか |
マルタ | 駆けつけた兵士が追い払ったって、気を失う前に聞いた気がする。その後の事は…わからない、ごめんね |
ヴェイグ | …とにかく、これ以上ここで話していても答えは出ない |
スレイ | うん…。街の人達の救護に当たろう |
エリーゼ | …はい! |
スタン | …ああ、みんなで手分けしようぜ! |
エミル | …ごめん、ティア。僕はもう少し、マルタの傍についてるよ |
ティア | 勿論よ。ミュウも一緒にいてあげて |
ミュウ | わかったですの |
ティア | 安静にしていてね、マルタ |
マルタ | うん… |
scene1 | 報復か、謀略か |
ジュード | ──応急処置ですが、もう大丈夫ですよ |
男の声 | ありがとうございます… |
ジュード | 安静にしていてください |
女の声 | 助けて… |
ライラ | ジュードさん、まだ負傷者はたくさんいるようです |
ジュード | うん…。そうだね、行くよ |
エリーゼ | ジュード!手伝います! |
ジュード | エリーゼ、戻って来たの? |
ティポ | 今、みんなで手分けして救護に走ってるよー |
スレイ | ここはどうだ?ジュード |
ジュード | 兵士も駆けつけて来てくれたけど…この様子だとまだまだ人手は足りてない |
スレイ | そうか…。じゃあ、オレ達も手伝うよ |
ライラ | スレイさん、ミクリオさん。私と一緒にあちらの方の見回りをお願いしますわ |
スレイ | ああ! |
ミクリオ | 隠れたまま動けなくなっている人がいるかもしれない。注意深く捜そう |
スレイ | … |
ライラ | スレイさん、どうかされましたか? |
スレイ | どうして罪のない人達がこんな風に傷付けられないといけないんだろう… |
スレイ | こんなやるせない気持ちって…… |
ライラ | スレイさん… |
ミクリオ | スレイ…この光景を前に、いろんな感情が沸き起こるのはよくわかる |
ミクリオ | けど、今はそれよりもやるべき事があるんじゃないか? |
スレイ | …うん、そうだ。考え込んでる場合じゃないよな |
スレイ | 今は、一人でも多くの人を助けよう! |
スタン | まずいな、建物もかなり崩れてる… |
スタン | どうしてもあの光の雨の時の事を思い出してしまうな |
ミラ | …ルナの一件か。確かにあの時も── |
街の男 | あんた達、手を貸してくれないか?家族が瓦礫の下に! |
ミラ | どこだ…!すぐに行く、案内してくれ |
スタン | 俺も行くぞ! |
ティア | 酷い有り様ね…。しかも、被害は住宅地ばかり… |
ヴェイグ | 漆黒の騎士の姿はやはり見えないな。さすがにこれだけキムラスカの騎士が動き出しては撤退したか |
ルドガー | おそらくな… |
ルドガー | …ティア。ここは俺達に任せて君は王宮に向かうんだ |
ティア | え? |
ルドガー | 王宮になら、漆黒の騎士の情報も入っているかもしれない。今の状況を確認してきてほしい |
ヴェイグ | それに、国王に一刻も早くルークの事を伝えた方がいいだろう。こんな時だから尚更だ |
ゼロス | なら俺さまも、シルヴァラントの代表としてティアちゃんと一緒に行くとするか |
ロイド | 俺も一緒に行く。キムラスカの国王に会わせてほしい。実際にルークに会ったのも俺だし |
ティア | …そうね、わかったわ。ゼロス、ロイド、行きましょう |
ゼロス | とっとと済ませて早いとこ戻って来ようぜ |
scene2 | 報復か、謀略か |
インゴベルト六世 | ──信じられん。まさかルークがシルヴァラントの神子を連れ去ったなど… |
インゴベルト六世 | しかも、そこにあのヴァンまでもが関わっていると… |
ティア | 兄の関与については、確証を得たわけではありませんが…その可能性は限りなく高いかと |
インゴベルト六世 | ふむ… |
インゴベルト六世 | ただでさえバチカルは今、謎の騎士達の襲撃を受け大変な状況だと言うのに |
インゴベルト六世 | ルークとヴァン…、二人して何と言う事をしてくれたのだ |
ゼロス | … |
インゴベルト六世 | 新たな天啓の出現を巡って、シルヴァラントとウィンドルが揉めている事は把握していたが |
インゴベルト六世 | そこに何故ルークやヴァンまでもが… |
ティア | ルークの事は教育係である私の責任です。それに兄の事も… |
ティア | この不始末は私が必ず…… |
インゴベルト六世 | 早まるな、ティアよ |
インゴベルト六世 | これはシルヴァラントと我が国の国交に関わる…いや下手をすれば戦争にさえなりかねん事態だ |
インゴベルト六世 | まずは、我が国に対するシルヴァラントの疑念を早急に晴らさねばならぬ |
インゴベルト六世 | それを伝える親書を用意する。使者の方、シルヴァラント国王にお渡し願いたい |
インゴベルト六世 | それと同時に、ルークと神子の行方については、我が国が責任を持ち突き止める事も約束する |
ロイド | よかった…。これでひとまず安心、だな |
ティア | ありがとうございます、陛下 |
ティア | 私もルークと神子の捜索、並びに兄の関与の究明に全力を尽くします |
インゴベルト六世 | うむ、頼んだぞ。今回の件をいち早く知らせてくれたそなた達には、心から感謝している |
インゴベルト六世 | …それにしても、晶化現象に始まり、ルークの問題行動今回の襲撃… |
インゴベルト六世 | 次から次へと問題が起きている |
インゴベルト六世 | 民の不安は高まる一方だ…。これからどう対処すべきかよくよく考えねばなるまい |
ティア | …陛下、街を襲った騎士達はもう街には残っていないのでしょうか |
インゴベルト六世 | うむ、騎士団が出動してまもなくその者達は撤退した。少数精鋭で、上手く逃げられてしまったそうだ |
ゼロス | 正体は、わからないままか… |
キムラスカ兵 | 陛下!謁見中のところ恐れ入ります |
インゴベルト六世 | 何事か。騒々しい |
キムラスカ兵 | 襲撃者達のものと思われる遺留品を発見いたしました。襲撃者の手ががりになるかと… |
インゴベルト六世 | 何と…。この者達の事なら大丈夫だ、見せるがよい |
ティア | これは腕章…? |
ロイド | …!まさか…これって… |
ゼロス | おいおい、冗談きついぜ |
ティア | あなた達、これに見覚えが…? |
ロイド | ああ…。この腕章は… |
ロイド | シルヴァラントの軍のものだ… |
ティア | …!どうしてそんなものが… |
インゴベルト六世 | この街を襲撃した騎士達は、シルヴァラントの兵士だというのか? |
インゴベルト六世 | まさか、神子の誘拐に対しての報復攻撃か──? |
ロイド | なっ…!それは絶対にあり得ない! |
ロイド | クラトスも言ってた…シルヴァラント国王はこれまでも争いを避けるよう努めていた、って |
ロイド | それなのに、こんな事…これはきっと何かの間違いだ…! |
ゼロス | 落ち着けって、ロイドくん。そもそもシルヴァラントの騎士は黒い鎧なんか着てないぜ? |
ティア | …恐れながら陛下、これは陰謀めいたものを感じます |
ティア | 神子の事があるとはいえ、いきなりシルヴァラントが宣戦布告もなしに我が国に攻め込むとは思えません |
ティア | 何者かが、シルヴァラントに罪を着せようとしているのではないでしょうか |
インゴベルト六世 | そなたの言いたい事はわかる。私とて陰謀の匂いを感じないわけではない |
インゴベルト六世 | これまで我が国とシルヴァラントは、長きにわたって友誼を育んできた |
インゴベルト六世 | シルヴァラント国王の事もよく存じ上げている。軽率な方とは思っておらぬ |
ティア | では… |
インゴベルト六世 | だが、事は国家の存亡に関わるのだ |
インゴベルト六世 | 我がバチカルが侵入を受け大きな被害が出た。これは紛う事なき事実だ |
インゴベルト六世 | そして今、ここにこの腕章だ。ただちに偽物と断じるのは早計であるように思われるのだ |
ロイド | くっ…! |
ゼロス | …国王陛下、よろしいでしょうか? |
ゼロス | もう一人の神子が攫われた直後、私達はこのバチカルへ来ているのです |
ゼロス | いくらなんでも、シルヴァラントが兵を差し向けるにはいささか、早すぎる気はしませんか? |
ティア | … |
キムラスカ兵 | 陛下…!いかがいたしますか |
インゴベルト六世 | ふむ…… |
ティア | 陛下… |
インゴベルト六世 | …よかろう。事は重大かつ深刻だ。なればこそ慎重を期さねばならぬ |
インゴベルト六世 | 親書を書こう。まずはルークの事を片付ける |
インゴベルト六世 | そなた達は引き続き謎の騎士の正体を調査するように |
キムラスカ兵 | はい!かしこまりました! |
ティア | 陛下…、ありがとうございます |
ロイド | よかった… |
scene3 | 報復か、謀略か |
ロイド | ふー。どうなるかと思ったぜ… |
ゼロス | ようやく、キムラスカへの疑念を晴らしたと思ったのに… |
ゼロス | 今度は漆黒の騎士がシルヴァラントの腕章持ってたって…一体、何がどうなってやがる… |
ロイド | 漆黒の騎士達がシルヴァラント兵のはずはないけど… |
ティア | …とにかく、まずはみんなと合流しましょう。考えるのはそれからがいいわ |
| |
ルドガー | ──大変だったな…。けど、キムラスカ国王から親書をもらえたのは救いだ |
ルドガー | これで、両国の衝突を避けられるといいんだが… |
スタン | でも、別の問題が…。謎の騎士団がバチカルを襲撃なんて… |
スレイ | 念のための確認だけど、今回の襲撃がシルヴァラントの仕業って可能性は、本当にないんだよな? |
ロイド | ああ。神子の一件にルークが関わっていた事はクラトスが伏せているはずだ |
ロイド | それに、シルヴァラントがこんな奇襲みたいなマネをするとは思えない |
スタン | じゃあ、やっぱり誰かがシルヴァラントの仕業に見せかけようとしたって事か…? |
ジュード | 陰謀にしては稚拙なやり方な気がするけど、一時的な混乱には役立ちそうだね… |
ジュード | 現にキムラスカ国王や発見した兵士は動揺しただろうし |
ミクリオ | 疑念や不安を煽る材料としては十分って事か… |
ルドガー | 誰が、何の目的かはわからないが… |
ルドガー | 神子の誘拐と今回のバチカルの襲撃でキムラスカとシルヴァラントの関係は軋み始めている… |
ミラ | …その二国だけではない |
ミラ | 神子が誘拐された事を知れば、ウィンドルのセルディクが黙ってはいないだろう |
スタン | それを言うなら、ア・ジュールもだ。天啓の石碑を探しているし… |
ヴェイグ | キムラスカも、ルークが神子誘拐に関わっていた事で後始末に動かざるを得なくなったしな |
スレイ | どこの国も、天啓によって振り回されてる |
エリーゼ | どうしたらいいんでしょうか… |
ゼロス | ここで悩んでても仕方ねぇよ。まずは出来る事を、だろ? |
ロイド | そうだな…。とりあえず、俺は一度シルヴァラントに戻る事にするよ |
ロイド | ルークの件は、キムラスカの国とは無関係らしいって事しか結局わからなかったけど… |
ロイド | キムラスカが関わってない事実を伝えるためにも、この親書は一刻も早くシルヴァラント国王に届けないと |
ティア | ありがとう、ロイド。そうしてくれると助かるわ |
ロイド | …本当はすぐにでもコレットを捜しに行きたいけど |
ロイド | これを出来るのは俺しかいないからさ |
ティア | ごめんなさい。コレットとルークの事は何としてでも私が── |
ゼロス | ティアちゃん、そりゃねーぜ。まるで一人でルーク達を追う、みたいな口振り… |
スタン | 俺達だって、ルークやコレットの事は心配なんだ。同行させてくれ |
ルドガー | それに、今の各国の動向は神子と天啓が鍵となっている…、そんな気がするんだ |
ティア | あなた達… |
ティア | …そうね。真相はルーク…いえ、兄さんが握っているのかもしれない |
ティア | 必ず…突き止めないと |
ルドガー | …ゼロス、お前だって神子なのにシルヴァラントに戻らなくていいのか? |
ゼロス | 戻っても王宮に軟禁されるだけだし…ミラさまにティアちゃん、エリーゼちゃんと一緒の方がいいぜぇ |
ゼロス | 何より、俺さまは「神子」だぜ?天啓絡みの件じゃ何かとお役に立てるはずだ |
ロイド | まあ、それがいいんじゃないか?ゼロスは王宮にいてもじっとしていられないだろうし… |
ゼロス | ちょ、ちょっとロイドくん…。俺さまを何だと思ってるのよ… |
ロイド | へへっ、悪い悪い!みんなと一緒なら、俺も安心だ |
ティア | ありがとう、ゼロス。みんな。何としてでもコレットを救出しましょう |
ジュード | なら、そっちの事は一旦みんなに任せてもいいかな? |
ミラ | ジュード、どうかしたのか? |
ジュード | 街はおおよそ鎮静化したけど、治療が必要な人はまだたくさんいる |
ジュード | だから、僕はもう少しこの街に残ろうかなって |
ティポ | ジュード君はお医者さんの卵だもんねー |
エリーゼ | ジュードならそう言うかもって思ってました… |
エリーゼ | でも…ジュードと別れるのは… |
ジュード | 大丈夫だよ、エリーゼ。ミラだっているし |
ジュード | それに、みんなともちゃんと打ち解けられたじゃない |
エリーゼ | …はい |
ティア | …ありがとう、ジュード。今のこの街にとってあなたの存在は何より心強いわ |
ティア | …もしミュウとエミル、マルタと会う機会があったら、よろしく伝えてくれるかしら |
ティア | 特にミュウには…必ずルークを連れて帰るからって |
ジュード | うん、わかった。それじゃ行くね。街の状況が落ち着いたら、僕もまた合流するよ |
ミラ | ジュード、気をつけてな |
スタン | …行ったな。よし、じゃあ俺達も早いところ動き出すとしようか |
ライラ | そうですわね。まずはどこへ向かうかですが… |
ルドガー | 結局、ルークの行方については情報が得られなかったな… |
ミクリオ | 神子を攫ったとなれば次にする事は天啓の石碑を読み解く事だろうね |
スレイ | 確かに…。…でも、天啓の石碑って、まだ見つかってないんだよな? |
ヴェイグ | となると、今頃コレットの力を使って、石碑を探しているかもしれないな |
ロイド | そこに行けば、ルークかコレットが…?でも、どうやってそこに… |
ゼロス | おいおい、俺さまも神子だって事を忘れてない?「あれ」なら俺さまも使えるんだけど |
エリーゼ | あれって…何ですか? |
ゼロス | まあまあ、後で見せてやるって。って事で、目的地は俺さまに任せてとにかく街を出ようぜ |
ティア | 今街を離れる事は心苦しいけれど、今は、コレットを追わなくては… |
ティア | …行きましょう |
Name | Dialogue |
scene1 | ゼロスの導き |
ルドガー | ──バチカルの事は気がかりだが…天啓の石碑がある場所へ向かうべきだろう |
ルドガー | それで、どこへ向かうかなんだが… |
スレイ | ゼロス、さっき言ってた「あれ」って? |
ゼロス | まぁまぁ、急かすなって。俺さまが言ってたのは、こいつの事だ |
ヴェイグ | …これか |
エリーゼ | 宝石…ですか?とってもきれいです |
ティポ | 何か不思議ー。ヘンな模様が入ってるよー |
ロイド | この紋章…これと同じような石、コレットも持ってたぞ。確か「天晶石」…だったっけ |
ゼロス | さすがハニー、正解だ。こいつは、代々神子に受け継がれてるもんなんだ |
ゼロス | 本当かどうかは知らねぇが、何でも、天啓の石碑と同じ石で出来てるらしいぜ |
ゼロス | 天啓の石碑が現れた時には光ってそれを知らせてくれるし、場所を聞いたら教えてくれる |
ゼロス | 天啓の石碑を探すには欠かせない代物だ |
ライラ | そのような不思議な石が…。ですが、場所を教えてくれるというのは、一体どうやって? |
ゼロス | 神子がこいつに語りかけると、石碑のある場所が頭の中に浮かんでくるってわけ |
ティア | 頭の中に…? |
ゼロス | 早速やってみるとするか…。ちょっと待ってな? |
ゼロス | … |
ゼロス | 大いなる世界の意志よ。我が主たる地上の神よ |
ゼロス | 我、ゼロス・ワイルダーを汝の代行者と認めるならば、石碑の在処を我に知らしめよ── |
| |
スタン | …!天晶石が…光り始めた… |
ライラ | これは… |
ゼロス | … |
ゼロス | …見えてきた。……遺跡みてぇだ |
ゼロス | かなり大きいな…周囲に人家はねぇし随分静かに見えるが…。おっ、草木の一部は晶化してる… |
ヴェイグ | 遺跡があり、晶化が見られる場所…。本当に見えているようだな… |
ティア | ゼロス、地名や国はわからないの? |
ゼロス | うーん、そこまでは…。他に目立ったものは特になさそうだし…。この辺りの風景には似てるけどよ |
| |
ミラ | とは言っても、世界には遺跡も数多く存在する。何とか絞り込む事が出来ればいいのだが… |
スレイ | その遺跡に特徴とかないかな?どんな素材で建てられてるか、とか何階建て、とか… |
ゼロス | 印象的なものがぼんやり浮かんでくる感じで、はっきりとした全体像が見えるわけじゃねぇんだけど… |
ゼロス | …周辺に、石造りの柱みたいなのがいくつも建ってるっぽいな。地面も石畳に覆われていて… |
ゼロス | …うーん、俺さまどっかで見たような… |
エリーゼ | 本当ですか?何とか思い出せないでしょうか… |
ゼロス | パッとは思い出せねぇな。よくある遺跡なのかもしれねぇ… |
スレイ | なら、遺跡の壁はどう?絵が描かれてたり、何か特徴的な彫刻があったりしない? |
ゼロス | ああ、レリーフみたいなもんがある。ありゃ何だ…人型か?壁一面にぎっしり埋め尽くされてて… |
スレイ | 壁一面を覆う人型レリーフに、周囲にいくつもの石柱と、石畳…。ミクリオ、これって… |
ミクリオ | ああ、おそらくガステア帝国時代の様式だろうね |
スレイ | だとしたら、今のシルヴァラントに多く見られる遺跡だな。けど、大きいものとなると… |
ミクリオ | …ルカン遺跡、だね |
スレイ | ああ。行ったのは随分前だけど、大きくて、状態もよかったしあそこじゃないか? |
ミクリオ | 僕も同じところを思い浮かべた。ガステア帝国様式の遺跡は何基か見たけど── |
ミクリオ | ルカン遺跡以外は、石柱がほとんど崩れて跡しか残っていなかった |
ミクリオ | ゼロスがいくつもの石柱を見たというなら、多分あそこだろう |
ティア | 二人共、随分と詳しいのね |
スレイ | オレ達、昔から遺跡が好きでよくあちこち探検したりしてたんだ |
| |
ゼロス | ふう、こんなもんだな |
スタン | これで全部?随分あっさりしてるんだな |
スタン | ミラが大精霊の気配を感じる時みたいな感覚はないのか?方向とか、近さとか… |
ゼロス | それが出来りゃ、苦労しねぇんだが… |
ロイド | 神子が見た断片的な情報を手がかりに捜索部隊を出す… |
ロイド | 前回の石碑を探す時も確か、こんな感じだったぞ |
ヴェイグ | …なるほど。本来、ある程度時間も人手もかかる作業というわけか |
ゼロス | そういう事。簡単にはいかねぇってわけよ |
スタン | 確かに、見えてるのは神子だけじゃ、探すのは一苦労だよな… |
ルドガー | そうは言っても、探すしかない。今のところ有力なのは、スレイの言う遺跡という事になるが |
スレイ | 可能性はあると思う。ルカン遺跡はゼロスが見た遺跡と様式や特徴がすごく似てるんだ |
ミクリオ | それに、この様式の遺跡でしっかりした形を残しているものは、僕達の知る限りではそこくらいだ |
ミラ | 行ってみる価値はありそうだな |
ヴェイグ | スレイ、ミクリオ。その遺跡はどこにあるんだ? |
スレイ | ルイニス街の南側だよ |
スタン | へぇ…ルイニス街の近くなのか |
スタン | そんなの、あったっけ… |
ミクリオ | 知らないのも無理はない。普段、人が立ち入るような場所じゃないからね |
ティア | とにかく、他にあてがないならその遺跡へ行ってみるべきだわ |
ゼロス | うーん… |
ライラ | ゼロスさん、どうかしたのですか? |
ゼロス | ああいや、さっきの人型のレリーフ、やっぱどうにも気になってよ… |
ゼロス | 絶対どっかで見たはずなんだよなー。それをどうにか思い出そうとしてるんだけど──… |
エリーゼ | スレイ達の言う遺跡とは別なんですか…? |
ゼロス | いや、そこじゃないと思う。ルイニス街の南じゃなくて、あれは… |
ゼロス | あ! |
ルドガー | 思い出したのか? |
ゼロス | ああ。俺さまがメルトキオを出て一人で各地を転々としてた頃だ |
ゼロス | 休む場所を探してた時だったか、シルヴァラント港の近くの森である遺跡を見つけたんだ |
ゼロス | その遺跡に、例の人型のレリーフがあったような気がする… |
ゼロス | 後で、近くの住人からそれは“ロミス遺跡”だって教えてもらった |
スレイ | ロミス遺跡…?聞いた事ない遺跡だ |
ライラ | でも、天晶石から直接教えを受けたゼロスさんが似ていると仰るのなら、可能性はかなり高いと思いますわ |
ルドガー | だとしたら、そっちも行先候補になるな |
スタン | けど、キムラスカを抜けてルイニス街とシルヴァラント港に向かうとなると、方向が違う |
エリーゼ | どっちへ行きますか…? |
ティア | 待って。どちらかに絞って、予想が外れてしまった場合、時間の損失が大きいわ |
ティア | 幸い、人数もいる事だし二手に分かれてそれぞれの遺跡へ向かってはどうかしら |
ミラ | そうだな、私もそれがいいと思う |
ヴェイグ | …おおよその方針は決まったな。誰がどっちへ行くかは向かいながら決めればいい |
ヴェイグ | ロイドも、一刻も早くメルトキオに向かわないといけないだろう |
ロイド | ああ。このまま途中までみんなと一緒にいくぜ |
ゼロス | よし、そんじゃ早速だけど出発としますか |
スレイ | ああ、行こう! |
scene2 | ゼロスの導き |
ヴェイグ | ──ようやくこの辺りまで帰って来たか |
スタン | ルイニス街方面なら、この先にある街道を南に行けばいい |
ゼロス | それじゃ、ここらで誰がどっちに行くか決めるとするか |
スレイ | オレとミクリオはルカン遺跡に向かう事にするよ |
ミクリオ | 前も行った事のある場所だから、案内も出来るしね |
ライラ | では私も、スレイさん達に同行させていただきますわ |
ゼロス | 俺さまはロミス遺跡に行くぜ。道もしっかり覚えてるしな |
ミラ | 私はゼロスの方に行こう。エリーゼも一緒に行くか? |
エリーゼ | …はい。ありがとうございます、ミラ |
ゼロス | ミラさま…!やっと俺さまの魅力に気づいちゃった!?そんなに俺さまと離れたくないなんて〜 |
ミラ | ああ。お前が真面目にやるか心配だからな |
ティポ | よかったねーゼロス君、ミラ君がカンシしてくれるってさー |
ゼロス | か…監視って。おいおい、そりゃねーぜ… |
ゼロス | でも!エリーゼちゃんも来てくれるならまさに両手に花♪ |
ゼロス | エリーゼちゃん、もし疲れたらどこだろうと、俺さまが運んであげるからな〜? |
エリーゼ | あの…えっと…… |
ルドガー | じゃあ、俺もそっちに行こうかな。ゼロスの軽口に戸惑ってるエリーゼを放っておけないしね |
ゼロス | 誰が軽口だよ。俺さまはいつも本気だっての |
ロイド | お前なぁ…。その本気が駄目なんだって |
ティポ | ヴェイグ君も一緒に行こー |
ヴェイグ | ああ、構わないが… |
ティポ | またブランコさせてねー |
エリーゼ | ティポ!ヴェイグの髪の毛で遊んじゃ駄目です…! |
スタン | あはは。仲がいいな。俺はスレイ達と一緒に行くよ。あの辺りの事はみんなよりは詳しいし |
ティア | なら、私もルカン遺跡に行くのが人数的によさそうね |
ミラ | よし、ほぼ半分に分かれられたな。それでは早速──… |
スレイ | ちょっと待って。どちらかが、天啓の石碑を見つけた時の事を話し合っておこうよ |
ミクリオ | そうだな。ついでに、天啓の石碑についてもどんなものか教えてくれないか |
ミクリオ | こっちには、ゼロスはいないしね |
ゼロス | っと、それもそうか。天啓の石碑についてだが…これを見てくれ |
ゼロス | 石碑には、この天晶石の紋章と同じもんが刻まれてる |
ゼロス | 材質も同じだな。石碑の表面は、こいつみたいにつるっとしてる |
ゼロス | あとはそうだな…過去の例から言うと石碑の大きさは、そこらの大柄な野郎よりもずっと大きかった |
ゼロス | 外見の特徴はそんなところか。ま、今回も必ずそうだとは言い切れねぇけどな |
スレイ | それでも、どんなものかわからないよりは全然いいよ。ありがとう、ゼロス |
ティア | …石碑の元へ行けば、ルーク達に会えるかもしれないわ |
ロイド | ああ、そうすればコレットも… |
ロイド | …よし、そろそろ俺はメルトキオに向かうよ |
ロイド | …ゼロス、それにみんな。コレットとルークに会えたら、二人の事…必ず助けてやってくれ |
ゼロス | …おう、任せとけって、ハニー!ま、ルークはとっ捕まえてお仕置きだけどな |
ゼロス | お前こそ、国王への説明、しっかり頼んだぜ? |
ロイド | わかった。みんなも気をつけて。またな! |
ヴェイグ | オレ達も出発するか |
スレイ | うん。ロイドのためにも頑張らないとな |
スレイ | そうだ、天啓の石碑がなかったらもう一方の遺跡へ向かって落ち合う形でいいかな? |
ヴェイグ | ああ、それがいいだろう。ルーク達からすれば、そこは用済みという事だろうからな |
ルドガー | ここからは別行動だが…ルークとコレットだけが現れるとは限らない。十分用心してくれ |
ティア | そうね、もしかしたら向こうは大勢で行動しているかもしれないし、お互い、無茶な行動は──… |
| ガサッ! |
エリーゼ | 今、そこの草むらで音がしました…!みなさん、気をつけてください! |
| |
| グオオオオッ! |
ティポ | 出たー!魔物だー!しかも、何かいっぱいいるしー! |
ミラ | 手分けして一掃する、準備はいいな? |
スレイ | ああ、いつでも! |
scene1 | 兄妹の絆 |
ライラ | ──さてと、ルドガーさん達も出発しましたし、私達も行きましょうか |
スタン | うん、そうだな。ルイニス街の南なら、ここを南下して森に入るのがいいと思う |
スレイ | わかった。こっちだね |
スタン | …にしても、まさかルイニス街の近くにそんな珍しい遺跡があったなんてな |
スタン | 確かにあの辺りの森には結構遺跡はあるみたいだけど、あんまり気に留めた事はなかったし |
ミクリオ | 遺跡に興味や関心がないなら知らないのも無理はないさ |
ティア | スレイ達はどうやってその遺跡を? |
スレイ | 歴史の記録を調べてる時に、偶然ルカン遺跡に関する記述を見つけたんだ |
スレイ | それで実際に見に行ったんだけど、スタンの言う通り、あの辺りは他にも遺跡が多くて楽しかったよ |
スタン | へえ~…。わざわざ実際に見に行くなんて二人共、相当遺跡が好きなんだな |
スレイ | ああ。いつか世界中の遺跡を見て回るのが夢なんだ。な、ミクリオ |
ミクリオ | 今はそれどころじゃないから当分お預けだけどね |
ミクリオ | でも、いつかは必ず |
ティア | 二人は本当に仲がいいのね |
スタン | 親友なんだな。親友…いや、兄弟かも? |
ミクリオ | 兄弟って…?スレイと僕がか!? |
スタン | いいじゃないか。親友でもあり、兄弟でもある関係って |
ライラ | スタンさんにも、素敵な親友と妹さんがいらっしゃいますものね |
スタン | へへ、まあな! |
スタン | リオンとは、スレイ達みたいにいつも一緒にいるわけじゃないけど… |
スタン | でも、いざという時は必ずお互いに助け合える親友だ |
スタン | リリスはそうだなぁ…朝寝坊した時は怖いけど、それ以外では優しいかな |
スタン | 細かい事によく気づくし、家の事だったら大抵任せられるし、頼りになる大切な家族だよ |
ライラ | ふふ、今の話をリリスさんが聞いたら、きっと喜ぶと思いますわ |
ティア | …そんな風に思ってくれるお兄さんがいて、リリスは幸せね |
スタン | そうかな?いつも心配ばっかりかけてって怒られてるけど… |
ティア | …… |
スレイ | ティア… |
ライラ | ティアさん、あの… |
ティア | …ごめんなさい。何でもないの |
ティア | さ、先を急ぎましょう |
スタン | ちょ、ちょっと待ってくれ、ティア! |
scene2 | 兄妹の絆 |
ティア | … |
スタン | ティア…ごめん。ティアは兄妹の話題なんて、嫌だったよな |
ライラ | ティアさんの気持ちも考えず、軽率でしたわ。すみませんでした… |
ティア | え、そんな…。ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったの |
ティア | スタンやリリスの話を聞くのはとても楽しいわ |
スタン | … |
スレイ | ティアを育ててくれたのはヴァンなんだよね? |
ティア | ええ。でも…私が物心ついた頃には兄さんは騎士団に入っていて忙しかったし… |
ティア | 挙句、妹の私にすら何も言わず、いなくなってしまうし… |
スタン | ティア… |
ミクリオ | … |
スレイ | あのさ、ティア。ティアとヴァンにも、ちゃんと兄妹の絆はあると思うんだ |
ティア | え…? |
| |
スレイ | お兄さんが親代わりになって妹を育てるのってすごく、大変だと思う |
スレイ | しかも、騎士団の仕事をしながらティアの面倒を見てたんだ。ティアを大切に想ってなきゃ出来ないよ |
スレイ | 少なくともオレが兄の立場だったとしたらそう思うんだ |
ティア | … |
スレイ | ティアも、ずっとヴァンの事気にかけてたよね |
スレイ | ちゃんと想い合ってる兄妹だと思う。スタンとリリスとは違った形ではあるけど |
ティア | スレイ… |
| |
スタン | そうだよ、ティア。ヴァンさんには何か、帰れない事情があるのかもしれないしさ |
スタン | 今度会ったら、リリスみたいに |
スタン | 「どこ行ってたの!」 |
スタン | って叱ってやればいいんじゃないか? |
ライラ | ティアさんが、ですか?それは見てみたいですわ |
ティア | スレイ、スタン…。ありがとう |
ティア | 兄さんと会ったら、ちゃんと話をしたいわ |
スレイ | うん。きっと出来るよ |
スタン | 場合によっては、ケンカになるかもしれないけど、何も話さないよりは全然いいと思う |
スレイ | オレもミクリオとはよくケンカするよな?でも、すぐに仲直りするし |
ミクリオ | ああ…。だがスレイ、僕達はいつから兄弟になったんだ? |
スレイ | ん?いいだろ、ミクリオ。もう兄弟って事でさ |
スレイ | 小さい時からずっと一緒に育ってきたんだし |
スタン | そうなると、やっぱりスレイが兄でミクリオが弟って事になるよな? |
ミクリオ | なっ…!どうして僕が弟なんだ!?しかも「やっぱり」って… |
スタン | え?だって…… |
ミクリオ | …まさか、スタン。身長差で決めたんじゃないだろうな? |
スタン | ギク!あはは… |
ライラ | あら…もしかして図星でしたか?スタンさん |
ミクリオ | 納得出来ない…!大体、スレイが兄だとして── |
スレイ | 少なくともオレが兄の立場だったとしたらそう思うんだ |
ミクリオ | … |
ミクリオ | ……まあいいか |
スタン | え?言いかけて途中でやめるとか気になるじゃないか! |
ミクリオ | 別に。弟でも何でもよくなっただけだ |
スレイ | …?何か、急に心変わり? |
ミクリオ | そういう事で構わないよ。とにかく、この話はもう終わりだ |
スレイ | ミクリオってそういうところあるよな |
ミクリオ | そういうところって、どういうところだ? |
スタン | ははっ。やっぱり兄弟みたいだ |
ティア | 本当にね |
ミクリオ | 全く… |
ライラ | …!みなさん、お話はここまでのようですわ |
ミクリオ | あれは、魔物か…! |
スレイ | ここで迎え討つぞ。みんな構えて! |
scene1 | 選んだ道 |
ティポ | ──ゼロス君、まだー?このままだとエリーが疲れて倒れちゃうよー |
エリーゼ | 大丈夫ですよ、ティポ。もう少し頑張りましょう |
ゼロス | んー。スレイ達の行った遺跡に比べりゃこっちの方がちっと遠かったかもしれねぇな… |
ゼロス | よし、んじゃエリーゼちゃん。約束通り、俺さまが運んでやるぜぇ!なんなら、おんぶしてやろうか? |
エリーゼ | 結構です… |
ゼロス | 遠慮しなくていいんだぜ?やましい気持ちなんか、これっぽっちもないんだし |
ゼロス | ほら、心を開いて、思い切って俺さまの胸に飛び込んで── |
ミラ | おんぶ、ではなかったのか?なら、胸ではなく背中だろう? |
ミラ | ゼロスは相手が女性なら誰にでもそんな調子だな。その様子だと、クロエとかいうあの女騎士にも… |
ゼロス | クロエちゃんはセクシーキュートだからねぇ〜。赤面するところも可愛かったし〜 |
ゼロス | でも、安心してくれ。今の俺さまの瞳にはミラさま、キミしか映ってないから♪ |
ミラ | …。石碑捜索の方は真面目に頼むぞ |
ルドガー | ゼロスの奴、ずっとあんな調子だけど、疲れないのかな? |
エリーゼ | こっちが疲れます… |
ルドガー | はは…やっぱり? |
ミラ | やれやれ、あんなお調子者が神子なのだから、わからぬものだな |
ヴェイグ | …ゼロスは、ああやって振舞う事で辛い状況をやり過ごしているんだろう |
ルドガー | えっ… |
ヴェイグ | …と、ロイドが話していた |
エリーゼ | そういうものなんですか…?確かに、ゼロスは天啓の事で危険な目に遭ってるみたいですけど… |
ティポ | そんな深刻には見えないけどー? |
ルドガー | はは…、本当のところはどっちなんだろうな |
ヴェイグ | ……! |
ルドガー | あ!ヴェイグ!どこに行くんだ? |
ルドガー | ヴェイグ…? |
エリーゼ | 何か見つけたんでしょうか? |
ティポ | ヴェイグ君、どうかしたのー? |
ルドガー | … |
ルドガー | 俺、ちょっと行ってくるよ |
ルドガー | エリーゼ達は、ゼロスやミラとここで待っていてほしい |
エリーゼ | あ、ルドガー…! |
ティポ | …行っちゃったね |
scene2 | 選んだ道 |
ヴェイグ | ……人では、ないのか… |
ヴェイグ | クレア… |
ルドガー | ヴェイグ!急にどうしたんだ。この木に何かあるのか? |
ヴェイグ | いや、人が晶化しているのかと思ったんだが、ただの朽ちた木だったようだ… |
ルドガー | …そうか |
ヴェイグ | …この辺りも、晶化が進んでいるな |
ヴェイグ | 晶化現象も見慣れてきたが、注意深く見れば、自然の中もどんどん広まっていっている… |
ルドガー | ああ…だんだん、当たり前になってきている自分が怖いな |
ヴェイグ | …晶化したクレアを救いたい、その一心でお前達とここまで来たが事態はどんどん深刻になっている |
ヴェイグ | 神子の誘拐や、村やバチカルの襲撃、そして新しい天啓…。晶化現象を調べるどころではないな |
ルドガー | ヴェイグ…。もしかして、俺達と一緒に来た事を… |
ヴェイグ | …違うんだ、そんな顔をしないでくれ。後悔しているわけじゃない |
| |
ヴェイグ | お前達と行動を共にした事で、結晶がマナだとわかった。それは大きな進歩だ |
ヴェイグ | オレ一人で動いていたら、きっとそれすらわからなかっただろう |
ルドガー | でも…ヴェイグはやっぱり、クレアの事を優先したいだろう? |
ヴェイグ | …勿論、オレの旅の目的はクレアを救う事だ |
ヴェイグ | しかし、クレアを助ける方法は未だにわからない。その手がかりはお前達との旅の先にあると思う |
ヴェイグ | あのまま晶化したクレアの傍にいても何も出来なかった。こんな状況を知る事も出来なかった |
ヴェイグ | 各地で起こる襲撃も、神子の誘拐も、国同士のいさかいも…放っておくわけにはいかない |
ヴェイグ | 今やっている事に、間違いはない…そう思っている |
| |
ルドガー | そうか…。話を聞けて、少し安心したよ |
ルドガー | 実は、旅の間ずっと気になっていたんだ |
ルドガー | 夜、お前が一人外に出て物思いに耽っているのを、何度か見かけた事があってね |
ルドガー | 次々いろんな事が起こって、俺達はこうして走り回ってるけど…ヴェイグはどんな気持ちなのかって |
ヴェイグ | …… |
ルドガー | クレアの事は、俺もあの場にいたからわかっている。ヴェイグがどれほど苦しんでいるかも |
ルドガー | 今すぐ彼女を救い出したい、そう思っているはずなのに… |
ヴェイグ | そんなに心配をかけていたのか…。すまなかったな |
ルドガー | でも、よかったよ。お前の言葉を聞けて |
ルドガー | ヴェイグって普段あんまり何を考えてるのかわからないからさ |
ヴェイグ | …そんなに仏頂面だったか? |
ルドガー | はは…。少し、ね。でも、最近はエリーゼ達とも打ち解けてきたみたいでよかったよ |
ルドガー | クレアの事で、みんな、お前をずっと心配してたんだ。弱音とかも吐かないし |
ヴェイグ | 弱音なんて…吐いていられない |
ヴェイグ | クレアを救う事と、今世界に起きている問題を解決する事は同じ道の上にあると考えている |
ヴェイグ | だから、心配はない |
ルドガー | …わかった。これからはもっと何でも話してくれ。今みたいにな |
ルドガー | クレアの事も、世界で起こってる問題も必ず俺達で解決しよう |
ヴェイグ | ああ…。そうだな |
??? | ヘヘヘーイ! |
ティポ | いいねいいねー、男同士の友情ってヤツー? |
ルドガー | ティポ! |
エリーゼ | …すみません。お話の邪魔しちゃ駄目って言ったんですけど… |
ティポ | ナイショ話はずるいよー。ぼくも混ぜてー |
ルドガー | 残念だけど、男同士の大事な話は今終わったところだ。な、ヴェイグ? |
ヴェイグ | ああ、すまなかったな。ティポ |
ティポ | ガーン!ひどいよー!ルドガー君とヴェイグ君のバホー! |
ゼロス | おーい、何やってんだー? |
ゼロス | 野郎同士のおしゃべりを待ってるほど俺さまはヒマじゃねーんだぞー |
エリーゼ | ゼロスが呼んでます… |
ルドガー | それじゃ、行こうか |
scene1 | ロミス遺跡にて |
ゼロス | ──長旅ご苦労さん。ようやく目的の場所に到着したぜ |
エリーゼ | ここが、ロミス遺跡… |
ティポ | デッカイ遺跡だねー |
ヴェイグ | オレの住むスールズ村の近くにも遺跡は多く見られるが、ここまで大規模な遺跡は珍しい |
ヴェイグ | 人型のレリーフというのはどれの事だ? |
ゼロス | あれだあれ。やっぱり、さっき見えたのと似ている気がするな |
ミラ | ゼロスの話していた石柱もあるな |
ルドガー | ゼロス、実際に見てどうだ?天晶石で見た例の遺跡で間違いなさそうか? |
ゼロス | ああ、似てる…と思う。あとは中を探してみるしかねぇ。入ってみようぜ |
| |
ミラ | …皆、待ってくれ |
ルドガー | どうしたんだ?ミラ |
ミラ | ルークやコレット…それにその仲間もいるかもしれないという話をしたな |
ミラ | 今この辺りに人の気配はないが、警戒は怠るな |
ゼロス | わかってるって、ミラさま〜。おかしな奴らが出てきたら、俺さまが守ってやっからよ |
エリーゼ | もし、中にいるのがルークだったら、ルークと戦わなきゃいけないんでしょうか… |
ミラ | 何とも言えないな。話をしてわかり合えればいいが、ロイドですらそうはいかなかった… |
エリーゼ | … |
ヴェイグ | …とにかく、覚悟して進むしかない |
ルドガー | ああ、そうだな |
ゼロス | よし、行きますか! |
scene2 | ロミス遺跡にて |
ミラ | ──ふむ…。これは違う…か。エリーゼ、そっちはどうだ? |
エリーゼ | こっちの石にも紋章はありません |
ルドガー | うーん、天啓の石碑らしきものは見つからないな… |
ヴェイグ | 既に大部分は見て回った。やはりここは、天啓の石碑がある遺跡ではないという事か…? |
ゼロス | うーん…。建物の中も俺さまが見た感じと似ているようなんだが… |
ゼロス | とにかく、まだ全部は見れてねーしハズレとも言えねぇ。頑張って探そうぜ |
ルドガー | そうだな…。とはいえ、時間も惜しい。急ごう |
ティポ | ハズレだったら、スレイ君達のところに行かないとだしねー |
ミラ | この先もまだ見ていなかったな |
ヴェイグ | ああ、まだだ。おそらく見てない部屋はそう多くはないだろう。行くぞ |
| |
ヴェイグ | ──ここは、広間か… |
ルドガー | 他に通路はないところを見ると、どうやらここが最後の部屋らしい |
エリーゼ | でも…石碑らしきものはありませんね… |
ゼロス | ハズレって事か… |
ヴェイグ | 残念だが、そう考えるのが妥当だろう隈なく見たはずだ |
ゼロス | マジかー…。悪ぃ、みんな |
ミラ | つまり、天啓の石碑があるのはルカン遺跡の可能性が高いという事か |
ミラ | なら、急いだ方がいい。ここの調査は切り上げて、スレイの元へ── |
ゼロス | …と、その前に。いい加減、出てきたらどうだ?そんなとこでこそこそしやがってよ… |
ルドガー | えっ…!? |
| |
ウィンガル | … |
ルドガー | お前は、ウィンガル…! |
| |
ウィンガル | …ほう、名乗った覚えはないが |
ルドガー | スタンからいろいろと話は聞いている |
ウィンガル | スタン…。なるほど |
エリーゼ | 確か、ア・ジュールの軍人なんですよね… |
ゼロス | ア・ジュールだと?何でそんな奴がこんなところに… |
ウィンガル | あの男から話を聞いているなら、大方予想はついているはずだ |
ルドガー | 天啓の石碑、か… |
ウィンガル | ここへ来る理由などそれ以外ない |
ルドガー | …まさか、もう見つけて運び出された後なのか? |
ウィンガル | いや、ここにはなかったようだ。お前達も無駄足だったな |
ルドガー | 待ってくれ、ウィンガル。お前はどうやってここに来た? |
ルドガー | 石碑の在処について、お前達は何の情報も持っていなかったはずだ |
ウィンガル | …… |
ヴェイグ | オレ達がここへ来られたのは神子のゼロスの助言があったからだ |
ヴェイグ | コレットがいなくなった後にこの場でお前に出くわすなど、偶然にしては出来すぎている |
ゼロス | って事は…お前、コレットちゃんから何か聞いたのか?コレットちゃんはどこだ!? |
ウィンガル | … |
エリーゼ | 何か知ってるんじゃないですか?教えてください…! |
ウィンガル | …確かに神子は、我が国にいる |
ルドガー | 何故コレットがア・ジュールに?無事なのか? |
ウィンガル | 無論だ。今は我々に協力している |
ゼロス | 協力、ねえ?無理矢理従わせてる…、こっちはそう思うのが自然だけどな? |
ウィンガル | … |
ミラ | お前らの目的は何だ?何故ア・ジュールは、天啓の石碑を手に入れようとする? |
ルドガー | ルークの事も何か知っているんじゃないのか? |
ウィンガル | …これ以上、お前達に話す事はない |
ゼロス | おっと、そうはいかないぜ。洗いざらい吐いてもらう |
ウィンガル | …何度も言わせるな。これ以上に話す事はない、そこを退け |
ルドガー | いや、退かない |
ルドガー | お前達が神子の一件に関わりがあるとわかった以上、このまま行かせるわけにはいかない |
ルドガー | …詳しい事情を話してもらうぞ、ウィンガル |
ウィンガル | …力ずくでも、というわけか |
ヴェイグ | 素直に話せば手荒な真似はしない。多勢に無勢だ |
ウィンガル | …それはどうかな |
ミラ | やる気のようだな… |
ウィンガル | 降りかかる火の粉は…払わなければならない |
ルドガー | 来るぞ…! |
scene3 | ロミス遺跡にて |
ウィンガル | … |
ルドガー | これ以上の抵抗は無意味だ |
ヴェイグ | これだけ人数差があってはどうにもならない |
ゼロス | おい、ウィンガル。そろそろ観念して話したらどうだ? |
ウィンガル | … |
ウィンガル | …愚かなものだな。全ては直にわかるというのに |
ゼロス | てめぇ…行かせるか! |
ゼロス | せやっ! |
ウィンガル | … |
ゼロス | へっ…俺の攻撃をかわせるとは、まだ余力を残してたってワケか |
ウィンガル | …そんなに事実を知りたければ、カン・バルクへ来い。神子もそこにいる |
ウィンガル | 来なくても、近い将来我らの目的は知れるがな |
ルドガー | それって、どういう… |
ウィンガル | 遊びはここまでだ |
| |
ティポ | わー!まぶしー! |
エリーゼ | 目が…! |
ゼロス | 目くらましか…! |
| |
ルドガー | う…。収まった…か… |
ミラ | 皆、無事か? |
エリーゼ | はい、大丈夫です…。だんだん見えるようになってきました |
ヴェイグ | ウィンガルには逃げられたか… |
ゼロス | くそ、あの野郎…。姑息な手を使いやがって |
ルドガー | 直に答えがわかると言っていたが何の事だ? |
ミラ | …わからないが、カン・バルクで何かがあるのだろう |
エリーゼ | これから、どうしますか…? |
ゼロス | 勿論、カン・バルクに行く。コレットちゃんはそこにいるって話だし |
ティポ | いいのー?おびきよせるためのワナかもよー? |
ヴェイグ | それでも、コレットの身の安全を考えれば行くべきだろう |
ヴェイグ | コレットの件について、ア・ジュールが何かを握っているのは確かだ |
ルドガー | その前に、スレイ達と合流しよう。この事を伝える必要がある |
ミラ | …そうだな。ルカン遺跡はどうだったのだろうか。気になるな |
ゼロス | ルークの奴もあっちに行ってるかもしれねぇな |
ヴェイグ | …それだけじゃない。あの様子だとア・ジュールも… |
エリーゼ | スレイ達が危険です…! |
ルドガー | とにかく、急ごう |
scene1 | ルカン遺跡にて |
スタン | ──ほら、見てくれ。この紋章なんだけど… |
ミクリオ | …ふむ、やっぱり間違いない。この紋章は、ゼロスの天晶石に刻まれていたものと全く同じだ |
ティア | だとしたら、やっぱりこの石碑が… |
スレイ | 天啓の石碑──… |
| |
スレイ | それにしても、すごいな。想像してたよりずっと大きかった… |
ライラ | そうですわね。大きさも勿論ですが、この石碑… |
ライラ | 何か特別な、独特の気配を感じます。これが「天啓の石碑」というものなのですね… |
スタン | あと、このつるつるの表面…。ゼロスが言ってた通りだ |
ティア | ええ、まるで人の手で磨かれたように滑らかだわ |
スレイ | 他の遺跡でも、こんなのは見た事がない… |
| |
ミクリオ | 前にここに来た時、この石碑はなかったはずだ。あったら絶対に覚えている |
スレイ | ああ…。でも、こんな大きなものがある日突然現れるなんて、どういう事だ? |
ミクリオ | さっぱりわからないな。誰かがわざわざここまで運んで来るとは思えないし… |
スタン | そういえば、この石碑…。文字も何も刻まれてないけど肝心の天啓はどうやってわかるんだ? |
ティア | 私達の目には見えていないだけで、神子が見ればわかるのかもしれないわ |
ティア | 天啓を読み解く事が出来るのは神子だけだと言うし |
スタン | ゼロスって実はすごい奴なんだな |
ライラ | ゼロスさんがこちらへ来ていればよかったですね…。内容がすぐにわかったかもしれません |
スレイ | とにかく、天啓の石碑を見つけられてよかった |
ミクリオ | ロミス遺跡に行ったゼロス達も、いずれこっちに来るだろう |
ティア | それに、天啓の石碑があるという事はきっと、ルークや兄さんも… |
ライラ | … |
ミクリオ | とにかく、無事石碑も確認出来た事だし、一旦遺跡の外に出ないか? |
ミクリオ | 幸いここに、僕達以外の気配は感じられない。ルーク達が来るとしても、多分これからだ |
スタン | 言われてみればそうだな。ゼロス達と合流する意味でも外の方が都合がよさそうだ |
スレイ | よし、そうと決まれば行こう |
ティア | ええ |
scene2 | ルカン遺跡にて |
ティア | 遺跡の入口は一つだったわ。そこさえ押さえれば、誰が来たとしても視認出来る |
ミクリオ | なら、入口付近で身を隠そう。相手の出方がわからない以上、様子をうかがうのが得策だ |
スレイ | ──ルークさん達が来るとしたらコレットも一緒かな? |
ミクリオ | その場で天啓を読み解かせるつもりなら、可能性はあるだろうね |
スタン | 心配だな…。ルークに限ってコレットを傷付けるなんて事、するとは思えないけど… |
ティア | …だとしても、彼がコレットと一緒に行動しているとも限らない…。もし他の誰かだったら… |
スタン | … |
ライラ | でも、神子がいないと天啓を読む事が出来ません。他の方と一緒だとしても危害を加えるとは思えませんわ |
ミクリオ | ライラの言う通りだと思うが、楽観は禁物だ |
ミクリオ | もしコレットが協力を拒んだり、抵抗したりしたらどうなる? |
スレイ | それは… |
ティア | ミクリオの言う通りね。向こうの目的もわからないし… |
ティア | ルークと兄さんの事も気になるけどまずはコレットを助ける事を考えましょう |
スレイ | うん、勿論だ |
| |
スレイ | ようやく外に出られたな |
スタン | 誰もいないみたいだ。ゼロス達がここまで来るにしてもさすがにまだ時間はかかるよな |
ティア | 今の内に身をひそめられる場所を確保しましょう |
スタン | わかった。なら、俺はあっちを見に── |
??? | アハ〜。金髪ネズミはどこに行くって? |
スタン | 誰だ…!? |
| |
アグリア | またお前かよ。懲りもせずこそこそ何やってんだ? |
スタン | アグリア…!一体いつからそこに… |
アグリア | ああ?結構前からいたっての。このマヌケ野郎が |
ティア | 気配がまるで感じられなかった…。彼女は一体… |
スタン | 彼女はアグリア。ア・ジュールの軍人だ |
スレイ | スタンやリリス達を捕まえてカン・バルクに移送したっていう… |
ティア | ア・ジュールの軍人が、どうしてここに…。まさか… |
アグリア | 天啓の石碑目当てに決まってんだろ |
アグリア | てめーらも中で見たんだろ?あれを回収しに来たのさ |
スレイ | …!それを知ってるって事は… |
ミクリオ | お前は…ア・ジュールはルークと手を組んでいるのか? |
アグリア | ルーク?ああ、あの赤毛の長髪野郎の事か? |
アグリア | 笑わせんじゃないよ。誰があんなクソガキと手なんか組むか |
アグリア | キムラスカの王族だか何だか知らねーが、陛下に偉そうな口を利きやがって |
アグリア | お蔭でこっちはわざわざこんなとこまで来るハメになっちまった |
ティア | どういう事?ルークのせいでここに来たって… |
ティア | まさかルーク達に会ったの?だから、この場所を知って… |
アグリア | ふん、だったら何だって言うんだ? |
スレイ | って事は、ルークさんは今ア・ジュールにいるのか…? |
ミクリオ | しかも、天啓の石碑の情報をガイアス王に渡した… |
スタン | …でも、どういう事だ?今、ルークとガイアスさんが協力してはいないって言ってたよな? |
ライラ | …アグリアさん、コレットさんの居場所についてはご存知ないですか? |
ライラ | 彼女は無事なんでしょうか?ルークさんと共にア・ジュールにいるのでは── |
アグリア | ガタガタうるせーんだよ!ババアは黙ってろ! |
| |
アグリア | はああっ! |
ライラ | …! |
ミクリオ | くっ…!させるか! |
ミクリオ | アイスシアーズ! |
アグリア | ぐあっ!! |
アグリア | 痛ぇ…くそっ、身体が… |
スレイ | ライラ!大丈夫か!? |
ライラ | ええ、ミクリオさんのお蔭で無事ですわ |
ミクリオ | 僕も問題ない。それより… |
アグリア | てめえ…よくもやってくれたな! |
スタン | 先に手を出して来たのはお前じゃないか! |
アグリア | …決めたぜ。てめーら全員、まとめてグチャグチャにしてやる! |
スレイ | …!ミクリオ、みんな、来るぞ! |
ミクリオ | 望むところだ…! |
scene3 | ルカン遺跡にて |
アグリア | うぐっ…! |
スタン | ここまでだ、アグリア |
ミクリオ | 大人しく全てを話すならこれ以上の攻撃はしないが、どうする? |
スレイ | オレ達は事実を知りたいんだ。話を聞かせてくれないか? |
アグリア | てめーらと話す事なんざ何もねぇ…。調子に乗んじゃねーぞ、このクソネズミ共! |
アグリア | 絶対に許さねえ…。こうなったら…… |
ティア | …!様子が変だわ、みんな気をつけて! |
アグリア | 全員今すぐ死ね!ロギズ──… |
??? | ストーップ!そこまで! |
スレイ | 今の声は…? |
アグリア | ……ちっ |
??? | はぁ〜、よかった間に合った… |
ティア | …!あなた──…! |
scene1 | 真相の一端 |
ティア | …!あなた──…! |
??? | 久しぶり、ティア。まさかこんなところで会えるなんて♪ |
ティア | アニス…! |
アグリア | ちっ、アニスの知り合いかよ。ったく、どうりでうぜーわけだ |
アグリア | 確か、そこの金髪もジェイドの知り合いとか何とか言って地下牢から解放したよな? |
アグリア | ったく、いちいち邪魔しやがって…。癇に障る奴らだ |
アニス | はいはい、アグリアってば、相変わらず口が悪いんだから |
アグリア | てめーみたいに媚びたような口利く方がよっぽど気持ち悪ぃんだよ |
アニス | アグリアこそ、そうやって誰にでもすぐ噛みつくの、やめた方がいいと思いまーす |
アニス | 気が短すぎるって言うかー、嫌われるって言うかー |
アグリア | いちいち口うるせぇな。大体、人手を寄越せとは言ったがお前を呼んだ覚えはねえ |
アニス | こっちだって呼ばれた覚えはないもんね。陛下の命令で来ただけだしー |
アニス | 大事な任務だから、陛下もきっと万全を期したかったんじゃないかなあ |
アグリア | けっ。何でこんな奴と… |
| |
スレイ | …な、何なんだ?この二人…。言い合ってるけど仲間同士なんだよな? |
ティア | 彼女はアニス・タトリン。れっきとしたア・ジュールの軍人よ |
ライラ | という事は…アニスさんも天啓の石碑を確保するためにここへ来たのですか? |
アニス | うん、そーだけど…何で知ってんの?一応、機密情報のはずなんだけど |
ティア | アニス。私はルークを捜しているの |
ティア | あなた達が今ここに来たのはルークからの情報によるものと聞いているわ |
ティア | あなた達ア・ジュールは、ルークや兄さんの起こした一件に関わっているの? |
アニス | ティアのお兄さん…?それって── |
??? | はい、そこまでですよ、アニス |
スレイ | 今度は誰だ? |
??? | こんな場所に思いがけない客人ですね |
スタン | ジェイドさん…! |
ジェイド | あなたとはよく会いますね、スタン。それにティア、あなたまでいるとは |
ティア | … |
scene2 | 真相の一端 |
スタン | ──ジェイドさん、あなたまでここに来るなんて…。それに、その大勢の兵士は…? |
ティア | 天啓の石碑の回収部隊…ですね? |
ジェイド | おや、そこまでご存じでしたか |
アグリア | ったく、随分待たせやがって |
ライラ | アグリアさんは私達よりも先に石碑を見つけ、応援を呼んでいたのですね… |
ミクリオ | ああ、そのようだ |
スタン | ジェイドさん、聞きたい事があります |
ジェイド | 何でしょう? |
スタン | コレットは、ア・ジュールにいるんですか? |
スタン | …ア・ジュールはルーク達と手を組んで、神子を… |
スタン | コレットを誘拐したんですか? |
ジェイド | 誘拐…ですか |
ジェイド | 少なくとも、我々ア・ジュールはそのような行為には関与していません |
ミクリオ | なら、どうやってここに?神子の力なしにここがわかるはずがない |
ミクリオ | しかも、コレットがさらわれた直後にあなた達は現れた。いくら何でもタイミングがよすぎる |
ミクリオ | 神子を従わせて情報を聞き出したんじゃないのか? |
ジェイド | ああ、どうやら勘違いされているようですね |
ジェイド | 私は誘拐に関わっていないとは言いましたが、神子と関わりがないとは言っていません |
スタン | どういう事ですか? |
ジェイド | 数日前の事です。ルークがシルヴァラントの神子を連れ我が国を訪ねて来ましてね |
ティア | …! |
ジェイド | 今は二人共、我が国に滞在しいろいろとご協力いただいています |
ジェイド | この場所を突き止められたのもあなた方のお察しの通り、コレットのお蔭というわけです |
スタン | コレットは無事なんですね |
アニス | 当然ですよー。大事なお客さんだし |
ティア | ルークは何故ア・ジュールに?何の目的で… |
ジェイド | 詳しい事情は聞いていません。彼なりにいろいろと考えた上での判断ではあったようです |
ジェイド | …もっとも、それが彼自身の考えなのかどうかは疑問の余地がありますが |
ティア | どういう事ですか、大佐 |
ジェイド | 言葉通りの意味ですよ。随分と彼らしからぬ思い切った行動に思えましたのでね |
ジェイド | それより私からも、質問してよろしいですか? |
ジェイド | さきほどのルーク“達”、と言いましたね。ルークには仲間がいるという風に聞こえますが… |
ジェイド | それが何者なのか、掴んではいませんか? |
スレイ | それは… |
ティア | …大佐、ガイアス陛下の元に現れたのは、ルークとコレットだけだったんですね? |
ジェイド | ええ。お二人だけでした。だから奇妙に思いましてね |
ティア | …ルークは私の兄、ヴァン・グランツと行動していると思われます |
ジェイド | ヴァン・グランツ…。確か以前、キムラスカの騎士団総長を務められていた方ですね |
ジェイド | 実際にお会いした事はありませんが、とても有能な方だったそうですね |
ジェイド | …ふむ、なるほど。お蔭でいろいろと疑問が解けました |
スタン | えっ…。一体何が… |
ジェイド | いえ、こちらの話です。おしゃべりはここまでにして、用件を済ませましょう |
ジェイド | すみませんが、そこを通してもらえますか |
ジェイド | 我々には、天啓の石碑を国へ持ち帰るという急ぎの任務がありますので |
ティア | 待ってください。まだ聞きたい事があります |
ティア | 大佐は…ルークの、彼の目的をご存知なんですか? |
スレイ | コレットの事も聞きたい。誘拐されたコレットが“協力”してるっていうのは変です |
ミクリオ | 誘拐との関与を否定したけど…ア・ジュールにコレット達がいるのに無関係というのは俄かには信じがたい |
ジェイド | そうですねぇ、一つ言えるとすれば私の発言に嘘はありません。これは保証します |
ジェイド | 信じるも信じないもあなた方の自由ですがね |
ライラ | そんな… |
アニス | …何だか、納得出来ないって顔してますよ、大佐? |
ジェイド | おや、困りましたね。誠心誠意を込めてお話ししたつもりでしたが |
アグリア | …ちっ!何を遠慮してんだ!こんな奴ら、蹴散らしてしまえばはえーだろうが! |
アグリア | おら、さっさとそこを退け!退かねーなら今度こそてめーら全員まとめて── |
ジェイド | やめなさい、アグリア。気が急くのはわかりますが、彼らと事を構える必要はありません |
ジェイド | いたずらに事を荒立てるのは、陛下も望んでおられないはず |
ジェイド | 私達が、今こうして動いているのは何のためなのか、よく考える事です |
アグリア | ……けっ |
ティア | …大佐。あと一つだけ教えてください |
ティア | ア・ジュールは…あなた達は天啓の石碑で、何をしようとしているのですか? |
ジェイド | …今は言えませんが、焦らなくても、数日の内に全て明らかになりますよ |
ジェイド | ああ、そうです。よければあなた方もカン・バルクへ来ませんか? |
ジェイド | 実際に見ていただければ私達の目的も、よりご理解いただけると思います |
ジェイド | 神子についても、こちらの用が済めばシルヴァラントにお帰しするつもりですし |
ジェイド | それに…ティア、上手くいけばあなたのお兄さんに会えるかもしれませんよ |
ティア | … |
ミクリオ | 何故、今ここで、詳しい事情を話さない? |
ジェイド | 神子の誘拐に関しては、我々は関与していませんので何も申し上げる事が出来ません |
ジェイド | 我々の目的というのも、国家機密に当たりますので今はご容赦願います |
スタン | コレットはそれで納得しているのか? |
ジェイド | ええ、そのはずです。我が国に来た時も、緊張こそすれ脅されてはいないようでしたし |
ジェイド | ちなみに、我が国が神子を保護している事は、シルヴァラントへもご連絡済みですよ |
ジェイド | そろそろシルヴァラント国王のお耳にも届いている頃でしょう |
ティア | シルヴァラントに…!? |
ジェイド | それまでの間は勿論我が国で責任を持って神子の身はお守りします |
スレイ | そこまで言うなら、コレットは無事なんだろうけど… |
ティア | …大佐、本当に、あなた達を信じていいのですね? |
ミクリオ | …ティア、いいのか? |
ミクリオ | 彼の言っている事が、全て本当だとも限らない |
ミクリオ | 赤の騎士団のように、よからぬ目論見がある可能性だって否定出来ないぞ |
ティア | …周りを見て。私達は今、大勢のア・ジュール兵に囲まれているわ |
ティア | 私達を押さえる事は容易いのにアグリアを制止し、こうして話せる限りの情報をくれた… |
ティア | …何より、彼らの上にいるガイアス陛下は小細工を嫌う人物よ |
ティア | 何をお考えであるにせよ、姑息なやり方をするとは思えないわ |
スタン | そうだな。ティアの言う通りだ。それに、ジェイドさんも信頼出来ると思う |
スタン | 前にア・ジュールの牢屋に入れられた時も助けてもらったしな |
スレイ | …わかった。二人がそう言うならオレも信じるよ |
ミクリオ | そういう事なら、僕も異論はない。ここで無理に抵抗しても、さすがに勝ち目はなさそうだしね |
ジェイド | いやあ、ご理解いただけたようで何よりです |
ジェイド | アニス、アグリア!兵達を連れ、直ちに天啓の石碑を回収しに向かってください |
アニス | はい!では、みなさん行きますよー!ほら、アグリア案内して! |
アグリア | お前に指図されたくねー |
ジェイド | 騒がしい部下ですみませんね |
ティア | …大佐。ルークは、兄さん…ヴァンの事は何も言わなかったんですね |
ジェイド | ええ、今あなたから聞いて初めて知ったくらいです |
ティア | そうですか… |
ジェイド | …まあ、いずれにしろ、我々はあなた達の信用を裏切るような事はいたしませんので、ご安心を |
ジェイド | では、そろそろ私はこれで。運搬の段取りがいろいろとありますのでね |
スレイ | …わかりました。お気をつけて |
ジェイド | 次にお会いするのはカン・バルクで、ですかね。それでは |
ライラ | 行ってしまわれましたね。これからどうしましょう… |
ミクリオ | こんな形で、ア・ジュール軍に天啓の石碑を持っていかれる事になるなんてね… |
スタン | 一時はどうなるかと思ったけど、コレットが無事だって事がわかっただけよかったよ |
ティア | ルークの居場所も掴めたわね。そこにいれば、あるいはいずれ兄さんも… |
スレイ | カン・バルクへ行こう。そうすれば真実がわかるかもしれない |
スタン | …よし、そのためにもまずはゼロス達と合流しよう。みんなにもこの事を伝えないと |
スレイ | ああ! |
scene1 | 合流、そして |
ゼロス | ──お、ようやくルイニス街が見えてきたぜ |
ルドガー | 何だかどっと疲れたな… |
エリーゼ | そうですね…。結局ルーク達に会えませんでしたし、石碑も見つかりませんでした… |
ミラ | ああ。だが、わかった事もある。気を落とす事はない |
ミラ | ルイニス街で少し休憩しよう。エリーゼ、あと少し頑張れるか? |
ティポ | ミラ君に応援してもらったら頑張れるよねー、エリー |
エリーゼ | はい。そういえば、スレイ達の方はどうだったんでしょうか… |
ヴェイグ | …天啓の石碑がなかった場合は、もう一方の遺跡へ向かい、落ち合う事になっていたはずだ |
ヴェイグ | ここまでスレイ達と会わなかったという事は… |
ゼロス | 天啓の石碑を見つけたのかもしれねぇ |
ルドガー | その可能性は高い…。いずれにせよ心配だな、ア・ジュールの事もあるし── |
ゼロス | ん?向こうから来るのってひょっとして… |
ミラ | …噂をすれば何とやら、だな |
| |
スレイ | ゼロス、ルドガー!それにみんな! |
スレイ | ちょうどよかった。オレ達もみんなに会いに向かってたとこなんだ |
エリーゼ | わたし達も今ちょうどスレイ達の話をしていたんです |
ルドガー | スレイ、ルカン遺跡はどうだったんだ?ここにいるって事はまさかそっちもハズレだったのか? |
| |
ミクリオ | …天啓の石碑なら見つかった |
ティポ | ホントー!?やったー! |
ティポ | …けど、みんな浮かない顔してるー。どうしたのー? |
ミラ | …何があったのだ?ルーク達にはやはり会えなかったか? |
ティア | ええ、残念だけど…。一応、彼らの居場所に関する情報は得られたわ |
ルドガー | 居場所を? |
ゼロス | おいおい、まさかア・ジュールの奴らから聞いたんじゃねぇだろうな? |
スタン | 何でわかるんだ、ゼロス? |
ヴェイグ | オレ達の方にも、ア・ジュールの人間が現れたんだ |
ヴェイグ | やはり、天啓の石碑を探しに、ルカン遺跡へも派兵していたようだな |
エリーゼ | じゃあ、見つけた石碑は… |
スレイ | …うん。ア・ジュール軍が運び出した |
ルドガー | … |
スタン | なぁ、…話すと長くなりそうだし、ルイニス街に行って詳しく話さないか? |
ヴェイグ | ああ、こちらもみんな疲れている。それがいいだろう |
ライラ | これからの事もいろいろ相談した方がよさそうですわね |
スタン | いいお店があるんだ。案内するよ |
scene2 | 合流、そして |
スタン | ──ごめん、遅くなった |
スタン | みんなと食べるからって言ったんだけど、リリスが俺の好物を用意してくれてさ |
ティポ | スタン君、ずるーい。何食べたのー? |
スタン | マーボーカレーだよ。美味しかった! |
ライラ | まあ、うらやましいですわね。街の方達もお変わりないようですし何よりです |
スタン | 晶化現象は少し酷くなってるけど、例の二人組は来てないみたいだしよかったよ |
スタン | 今はリオンもいるし、コングマンっていう強力な助っ人も、街の警護を手伝ってくれてるから安心だけどな |
ティア | あの二人がいてくれたら確かに心強いわね |
スタン | ところで、ルカン遺跡であった事は聞いたか? |
ゼロス | ああ、大体はな |
ルドガー | ウィンガルと会った後、スレイ達の事を心配していたんだが嫌な予感はやっぱり当たってたんだな |
スレイ | ジェイドさん達も、コレットの助言を元に石碑の在処を探してたみたいだからね |
ミラ | お互い神子の助言で動いているのだから当然と言えば当然だろう |
ティポ | コレット君が無事みたいでよかったねー |
エリーゼ | シルヴァラント国王にもちゃんと話は伝わってるみたいですしきっとロイドの耳にも入りますよね |
ヴェイグ | …だが、結局ルークが何のためにコレットをア・ジュールへ連れて行ったのかはわからないままだ |
ティア | ルークはカン・バルクにいるそうよ。会って話をする事が出来ればいいのだけど… |
ゼロス | ウィンガルとかいう奴も行けばわかるみたいな事言ってたな… |
ゼロス | どいつもこいつも肝心な事を言わねぇで勿体ぶりやがって |
ミラ | ガイアスの事だ。きっと考えがあっての事だと思うが… |
スタン | うん…。俺がガイアスさんに会った時、それは強く感じた |
スレイ | …とにかく、カン・バルクに行こう |
スレイ | コレットやルークさん達の事は勿論、ア・ジュールの計画や天啓…、気がかりな事がたくさんある |
エリーゼ | ア・ジュールは天啓の石碑をどうするつもりでしょうか… |
ミクリオ | 神子と天啓の石碑…。これを手元に置くという事は考えられるのは一つだ |
ゼロス | ああ。神子に天啓を読み解かせる…、それだけなら、神子を直接石碑のところに連れて行けばいい |
ゼロス | けど、それをしないって事は… |
スレイ | …!まさか、ア・ジュールは天啓の儀式を行うつもりなのか? |
スタン | 普通に考えるとそうだけど…一体何のために? |
スタン | ガイアスさんは、赤の騎士団と違って天啓が未来予知だとかいう話も信じてなさそうだったし… |
ティア | それを知るためにも、カン・バルクに行くべきだと思うわ |
ゼロス | …その前に、ちょこっとだけメルトキオに寄り道だ。コレットちゃんの件を報告しねーと |
ライラ | ゼロスさん、コレットさんの事ならシルヴァラントには連絡がいっているはずですが… |
ゼロス | だとしても、ちゃんと確かめないと安心出来ねぇからさ |
ゼロス | …それに何より、一刻も早くロイドに伝えてやりたいしな |
スレイ | ゼロス… |
スレイ | わかった。ゼロスの言う通りカン・バルクに行く前にメルトキオへ寄ろう |
ルドガー | ああ。そのくらいの時間はあるだろう。必要な物を買い足して出発しよう |
スタン | 出発前に、俺、ちょっとリオンのところに行ってきてもいいか? |
スタン | 街の事任せきりだし、少し話しておきたいんだ |
??? | …その必要はない |
ミラ | …!その声は… |
リオン | … |
スタン | …リオン!まさかお前の方から会いに来てくれるなんてな |
リオン | 勘違いするな。聞きたい事があっただけだ |
リオン | さっきリリスから聞いたが、これからア・ジュールへ行くらしいな |
スタン | うん。そこにいけば、ルークやコレットの事、それに次の天啓の内容もわかるはずだ |
スタン | ア・ジュールが天啓によって何をしようとしているかも… |
スタン | だからごめん、街の事…またリオン達に任せきりになるけどもう少し── |
リオン | …言ったはずだ。街の事は僕に任せて、お前は晶化現象を何とかしろと |
リオン | 天啓は晶化現象の進行と何らかの関係があるかもしれない |
リオン | それに今各地で起きている襲撃事件…世界に何か起きようとしているのは確かだろう |
リオン | お前はカン・バルクに行って、天啓によって何が起きようとしているのか、見届けて来い |
スタン | リオン… |
リオン | 僕がこの街を守り抜くのは当然の事だ。お前に謝られる筋合はない |
スタン | リオン…。ごめん…、いや、ありがとう! |
スタン | 次々といろんな事が起こるけど…でも、必ず晶化現象の事は解決してみせるから |
スタン | だから、引続き街の事をよろしく頼む、リオン |
リオン | …ふん |
ヴェイグ | …行ってしまったぞ |
ゼロス | 久しぶりに顏見たと思ったら、愛想のかけらもない野郎だなぁ… |
ミクリオ | 彼は何しに来たんだ?不機嫌そうだったが… |
スレイ | えーと、つまり、自分にこの街の事は任せてスタンはスタンで頑張れって事? |
ルドガー | スタンと一緒で、旅立つ前に顔を見ておきたかったのと、リオンなりの激励だったんだろう |
ミラ | ふっ…素直じゃないところは相変わらずだな |
ライラ | それでもわかり合える男同士の友情…。まさに青春ですわね |
エリーゼ | 二人はあれで仲良し…なんですね。不思議です… |
ライラ | エリーゼさんにも、わかる時が来ますよ |
スレイ | …じゃあ、オレ、必要な物を買い足して来るよ |
ミクリオ | スレイ、僕も手伝おう。出発は出来るだけ早い方が—— |
| |
| きゃあああああ!魔物よ! |
| 助けてー! |
ティア | …!今の声は… |
ヴェイグ | 外だ…。街の中に魔物が侵入したらしい |
スタン | 行こう、助けないと! |
scene1 | 雪の都カン・バルク |
ジェイド | ——と、いうわけで我々は無事にカン・バルクまで天啓の石碑を運び出す事が出来たわけです |
ガイアス | … |
ジェイド | …それにしても、ルカン遺跡でティア達と会った時に、おそらくそうだろうと踏んではいましたが |
ジェイド | やはりティア達はもう一人の神子の助言を得ていたのですね |
ウィンガル | ああ。赤い髪の…ゼロスという男の神子だ |
ジェイド | 何はともあれ、現れたのが赤の騎士団やシルヴァラント軍でなくてよかったです |
ウィンガル | ああ。面倒な事になっただろうからな |
アグリア | にしても、ウィンガル、お前あのネズミ共の仲間にやられて逃げ帰って来たんだって? |
アグリア | 一体何やってんだよ。「ア・ジュールの黒き片翼」さんがよぉ? |
アニス | やられて困ってたのはアグリアの方でしょ? |
アニス | ウィンガルは単に適当にあしらって帰ってきたってだけだと思うけど? |
アグリア | はあ!?それは、てめーらがいいところで邪魔したからだろーが! |
アニス | はいはい、じゃ、そういう事にしといてあげる |
アグリア | 何だとアニス!このブス──… |
ウィンガル | …アグリア、そこまでにしろ。陛下の御前だぞ |
アグリア | …!…… |
ジェイド | あなたもですよ、アニス。無闇に人をからかうような物言いは感心出来ませんね |
アニス | むー、大佐だってよくそういう物言いするじゃないですかー |
ジェイド | 私は時と場所を弁えますから。ね、陛下 |
ガイアス | … |
ウィンガル | それより陛下…、本当に儀式を執り行うのですか |
ウィンガル | 儀式を執り行えば、奴の得体の知れない思惑に乗せられる事になるかもしれません |
ガイアス | ……ヴァン・グランツか |
ウィンガル | はい。ルークの話を聞く限りは心配無用という感じでしたが、話は変わってきました |
ガイアス | …確かに、奴の企みは定かではない。神子の引き渡しに姿を見せなかったのは気になる |
ガイアス | だが…、この状況を変える方法はただ一つ |
ガイアス | 儀式は滞りなく準備を進めろ |
ウィンガル | …御意 |
ガイアス | 各国への連絡はどうなっている |
ウィンガル | …そちらも抜かりなく。各国の代表者も続々と到着しています |
ウィンガル | 儀式は予定通り明日、執り行えるかと |
ガイアス | …うむ |
??? | おい、ちょっといいか? |
ジェイド | ルーク… |
ルーク | 取り込み中、悪ぃ。ただティアにばれたって聞いて… |
アグリア | おい、てめー!王の間にまで勝手にズケズケと入って来やがって、ぶっ殺す── |
アニス | ちょっと!キムラスカの王族にそんな事したら戦争だよ、もー |
ルーク | あ?何か知んねーけど相変わらず騒がしい奴らだな |
ルーク | それより、石碑が見つかったのはいいけど…その、儀式の方は大丈夫なのか? |
ジェイド | 万事順調ですよ。コレットを保護している事もティア達に伝えてあります |
ジェイド | ルーク、あなたがここにいる事もね |
ルーク | …それは言わなくてもよかったのによ |
ジェイド | 話の流れ上、仕方ありません。あなたの事を心配していましたよ |
ルーク | … |
ルーク | …知られちまったもんは仕方ねぇ。で、天啓の石碑はどこにあるんだ?赤の騎士団も探してるんだろ? |
アニス | 儀式予定の場所に設置してますよ。ちゃんと警備もしているのでご安心ください♪ |
アニス | 後で私と一緒に見に行きましょう、ルーク様♡ |
ルーク | お、おう、後でな。こんなに早く見つかるとは思ってなかったぜ |
ルーク | コレットのあの証言だけで本当に見つかるなんてよ…。儀式はいつ行うんだ? |
ガイアス | …明日だ。お前はどうする。席を設けるか? |
ルーク | いや、俺はまずいだろ。遠くから隠れて見物してる |
ルーク | …ついに明日か。これでウィンドルの赤の騎士団も少しは大人しくなんだろ |
ルーク | シルヴァラントだって文句言わなくなるだろうし、争う原因はなくなる |
ルーク | そしたら、戦争なんてもんも起きねーし、誰も死ななくて済む |
ルーク | 儀式が終わったら、コレットもロイドの元に帰せる |
ルーク | …だよな? |
ジェイド | ええ、コレットの事は安心してください。ルークも協力ありがとうございます |
ウィンガル | … |
ルーク | べ、別にいいんだ、それは。俺、コレットにこの事伝えてくる |
ルーク | じゃあな、ガイアス。明日は頼んだぜ |
ガイアス | … |
アグリア | ちっ、何だあいつ。急に入ってきてべらべらと… |
ジェイド | ルークは、最後まで協力者の事を口にしませんでしたね。陛下、やはりこれは… |
ガイアス | …ああ。おそらくヴァンに口止めされているのだろう |
ガイアス | ルークの監視を続けろ。儀式までに必ずヴァンと接触するはずだ |
ジェイド | …わかりました |
| |
スレイ | ──すっげー…!ここが、ア・ジュール |
スレイ | 雪が多く降る地域だってジイジから聞いてたけど想像以上に真っ白で綺麗だな! |
ミクリオ | これだけ雪が多いと棲息する動物や、人々の暮らしにも随分影響するだろうね |
ヴェイグ | ようやく着いたのはいいが、時間を食ってしまったな |
ミラ | だが、メルトキオへ行ってよかった。ちゃんとコレットの事も伝わっていた事が確認出来た |
| |
ルドガー | それに、思わぬ情報も手に入ったしな |
ライラ | ガイアス王が自国にシルヴァラントの代表者を招いたというお話でしたね |
エリーゼ | はい…。確か、フィリア司祭が向かったと言ってました |
ヴェイグ | ロイドも護衛として同行しているらしいし、コレットにもいち早く会えるだろう |
スタン | でも、何でア・ジュールに呼んだんだろうな?重要な会合をしたいって話らしいけど… |
スタン | ア・ジュールがしようとしている事に関係あるんだよな? |
ティア | おそらくそう考えて間違いはないでしょうね |
スレイ | ロイドと会えなかったのは残念だったな、ゼロス |
ゼロス | 入れ違いは仕方ねーな |
ゼロス | 俺さま達も行く場所は一緒だし、すぐに会えんだろ |
ルドガー | とにかく急ごう。ここからカン・バルクまでもまだ距離はあるし── |
ティポ | あ、雪が降ってきたー!見て、エリー |
エリーゼ | 本当ですね…!ふわふわして綺麗です… |
ゼロス | 雪、か… |
スレイ | ゼロスも雪が珍しいのか? |
ゼロス | …いや、そういうわけじゃねぇけど雪はあんまり好きじゃねぇんだ |
スレイ | そうなんだ?こんなに綺麗なのに |
ゼロス | おっ、意外にスレイってばロマンチスト?なかなか隅に置けないねぇ〜! |
ゼロス | …でもまぁ、あの時と今は違うしな。クロエちゃんの言う通りだ |
スレイ | ゼロス…? |
ゼロス | 悪い悪い!何でもないって!さっさとカン・バルクに行こうぜ〜! |
ティポ | オッケー!ゴーゴー! |
scene2 | 雪の都カン・バルク |
ティポ | みんなー、こっちこっちー!早くしないとおいてくよー |
ヴェイグ | ティポの奴、随分とはりきっているようだが…この街には来た事があるのか? |
エリーゼ | はい、何度か買い物に |
エリーゼ | とても美味しい果物を売ってるお店があるんです…。ティポもわたしもそれが大好きで… |
ゼロス | ははーん、さてはあいつ俺さま達をその店に誘導しようと先陣切ってるってわけか |
ゼロス | いっつも誰より先に疲れたーって騒いでるのに、やけに元気だし…。魂胆みえみえ、ってヤツ? |
スタン | ま、いいじゃないかゼロス。そんなに美味しいなら、俺もその果物食べてみたいし── |
ティポ | …! |
ティア | ティポ?急に止まってどうしたの? |
ティポ | 人がうじゃうじゃいるー。これじゃ、うまー!なナップル食べに行けないしー |
ルドガー | 本当だ…。それに、何だかみんなざわついていないか? |
スレイ | ひょっとして、ジェイドさん達が何かしてるのか? |
ミラ | …あっちだ。あそこに人が集まっている |
ミクリオ | 何だろう。僕達も行ってみよう |
ティア | そうね |
| |
ライラ | ──随分と開けた場所ですね。大勢の人が集まっているようですが… |
エリーゼ | …!見てください…真ん中に何か、すごく大きなものが… |
スレイ | あれは… |
| |
スタン | 天啓の石碑だ…! |
ヴェイグ | あれが… |
ルドガー | どうしてこんなところに…。やっぱりア・ジュールは、ここで天啓の儀式を行おうと…? |
ゼロス | 予想的中、ってか?こんな大っぴらに儀式なんかしたら、何処の国の連中も大騒ぎになるぜ |
??? | 天啓の儀式…その話、本当です? |
ティア | …!あなた達は… |
エステル | お久しぶりです、みなさん |
スレイ | エステルさん!それにアスベルさんまで… |
アスベル | まさかこんなところでまた会えるなんて思っても──……あれ? |
アスベル | そこにいるのはミラ?…と、ゼロスやスタン、エリーゼまで一緒なのか? |
| |
ティポ | ぼくを忘れるなー! |
アスベル | ご、ごめんティポ…!…でも驚いたよ。まさかみんなが一緒にいるなんてな |
ミラ | 皆それぞれ晶化現象を追って旅をし、目的を同じくした仲間だ |
スタン | こういう時はみんなで協力し合わないとな!アスベルもそう思うだろ? |
アスベル | ああ、そうだな |
ゼロス | そんな事より!いや〜、エステルちゃん、久々にその麗しい姿見れて俺さまハッピー♪ |
エステル | ふふ、わたしもみなさんと久しぶりにお会い出来て嬉しいです |
エリーゼ | ゼロスって…ある意味尊敬します… |
ルドガー | ぶれないよな… |
ルドガー | ところで、エステル、アスベル。二人はどうしてここに? |
スタン | ウィンドルの方は落ち着いたのか? |
エステル | いいえ、相変わらずなんですが…。ガイアス陛下からセルディク大公とわたしに招聘がありまして |
ルドガー | 何だって?ウィンドルもか?シルヴァラントも呼ばれてるらしいんだが… |
アスベル | 四大国の代表で大事な話し合いをしたいとの事だ |
ゼロス | って事は、キムラスカも…?ガイアスは一体何を… |
エステル | わたしも、このような形でお招きを受けるのは初めての事で戸惑いました |
エステル | 大公からは、わたしは国に残るようにと言われていたのですが… |
ティア | まさか、心配でアスベルと共にお忍びでいらしたのですか? |
エステル | はい… |
ミクリオ | 国に残れ、か…。まるでウィンドルの代表は自分だと言ってるみたいだ |
アスベル | セルディク大公はリチャードやエステリーゼ様をないがしろにしている… |
アスベル | それに、今回の会合の席で他国に対して敵対するような事を口にしないか心配だ |
アスベル | ただでさえ、赤の騎士団の派兵でシルヴァラントとの国交は不穏な状況だというのに |
アスベル | 火に油を注ぐような事にならないといいんだが… |
スレイ | アスベルさん… |
エステル | 大公殿下の様子も気になりますし、もし何かあったらと思うといても立ってもいられなくて… |
ルドガー | エステル… |
ゼロス | だーいじょうぶだってぇ!エステルちゃんは、俺さまがきっちり守り抜いてみせるからよ! |
スタン | ゼロスの言う通りだ。いざとなったら俺達もいる。安心してくれ |
エステル | みなさん…。ありがとうございます…! |
ヴェイグ | それにしても…シルヴァラントだけではなく四大国全てが招集されていたとは… |
エリーゼ | びっくりしました…。どういう事でしょうか… |
アスベル | それも気になるが、さっきの話…。これからここで天啓の儀式が行われるっていうのは本当なのか? |
ゼロス | 多分、な。あそこにあるのは天啓の石碑だ。そう考えるのが自然だろ |
アスベル | あれが石碑…。ユーリに聞いたけどゼロスも神子の一人なんだろ。石碑はお前が読み解くのか? |
ゼロス | いや、俺じゃねぇな。おそらく… |
ゼロス | そういえば、アスベル達は知らねぇんだよな。まあ、うちの国で起こった事だから当然だけど… |
アスベル | …?何かあったのか…? |
スレイ | …うん。実は── |
アスベル | ルークがシルヴァラントの神子を!?本当なのか、それは… |
エステル | とても信じられません… |
スタン | …まあ、そうだよな。俺達も最初は耳を疑ったし |
エステル | 連れ去られた神子がご無事なのはよかったですが、でも…、何故ア・ジュールに… |
スレイ | オレ達もその真相を知るためにここに来たんです。そしたら、こんな事になってて… |
ティア | 現時点では私達も確かな情報は持っていないの |
アスベル | そうか… |
| うおおおお! |
ゼロス | 歓声…?何の騒ぎだ? |
ヴェイグ | 城の方から誰か出てきたようだ |
スレイ | あれは──… |
scene1 | 始まりを告げる蒼光 |
ヴェイグ | ──城の方だ。誰か出てきたようだ |
スレイ | あれは──… |
| |
ガイアス | … |
ジェイド | … |
ウィンガル | … |
| |
ミラ | ガイアスだ |
スレイ | あの人が、ア・ジュールの国王… |
スタン | ジェイドさんとウィンガルも一緒だな |
ゼロス | 見ろ、その後ろ… |
| |
フィリア・ロイド | … |
| |
ヴェイグ | フィリア司祭とロイドか |
ルドガー | ウィンドルのセルディク大公も続いて出てくる |
アスベル | … |
| |
ナタリア・セルディク | … |
| |
ティア | ナタリア…!彼女がキムラスカの代表として来たのね |
スレイ | ティア、知ってるの? |
ティア | ええ。彼女は国王陛下の娘であり、ルークの婚約者でもある |
スレイ | どの国も国王じゃなく名代って事か |
ミクリオ | 無理もないさ。騒動の影響でどの国も混乱状況にあるはずだ。国王が国を離れるわけにはいかないだろう |
エリーゼ | …アスベル、バロニアは大丈夫なんですか? |
アスベル | 何とかな…。街の事はフレンとウィンドル騎士団に託してきたんだ |
アスベル | ユーリは、各地を荒らしている人物の調査と警戒をしてくれてる |
アスベル | バロニア付近でおかしな動きがあればフレンと連携して先手を打ってくれるはずだ |
ヴェイグ | そうか。ユーリ達がいるなら心強いな |
ミラ | それにしても、ただならぬ雰囲気だな… |
ミラ | ガイアス達の周囲も厳重な警備で固められている |
ルドガー | 多分、各国代表陣の護衛だろう。赤の騎士団のカーツもいるし…そうそうたる顔ぶれだ |
アスベル | エステリーゼ様、セルディク大公に気付かれないよう、もう少し後ろに… |
ゼロス | エステルちゃん、こっちこっち!俺さまの陰に隠れなよ〜。ここならよく見えるし! |
エステル | あ、ありがとうございます、ゼロス |
ヴェイグ | ゼロス、もう大丈夫とは思うがお前もあまり目立たないようにな |
ゼロス | はいはい、わかってますって |
スタン | …考えてみると、これってすごい光景だよな |
ライラ | ええ、そうですね。名代とはいえ、各国の代表が一堂に介しているのですから |
ティア | 重要な出来事に立ち会っているのは間違いないわね |
ナタリア | …ガイアス陛下、私は重要な会合があるとうかがってっておりましたが… |
ナタリア | それをここで行うおつもりですの? |
セルディク | それに、目の前にあるこれは一体…?何かの石碑のように見受けられるが… |
セルディク | まさかこれは…天啓の石碑か!?一体どのような手段でこの石碑を…! |
ガイアス | … |
フィリア | 神子の力で見つけたのですね。神子コレットは今、この国で保護されていると聞いています |
セルディク | 神子がア・ジュールに…?どういう事です? |
フィリア | ガイアス陛下、事情をお聞かせいただけませんか? |
ガイアス | コレットは、まもなくここへ来る事になっている |
ガイアス | まずは順を追ってこちらからお話させていただく |
フィリア | … |
ジェイド | セルディク大公のご質問、石碑の入手方法については私がお答えさせていただきます |
ジェイド | 私はジェイド・カーティス。ア・ジュール軍大佐です。以後お見知りおきを |
ジェイド | 天啓の石碑は神子の協力を得て我々が発見し、今日まで保管しておりました |
セルディク | … |
ティア | …各国の代表陣にも何が行われるかは知らされていないようね |
ルドガー | ああ、様子がおかしい。みんなこの状況を飲み込めていないようだ |
ミクリオ | ここに集まっている人達は全員そうなんじゃないか? |
スレイ | …うん。あんなにすごかった歓声も止んですっかり静まりかえってる… |
エステル | … |
ガイアス | …各国代表の方々、急な招請にも関わらずお集まりいただき感謝する |
ガイアス | 集まった民にも、謝意を表したい |
| ガイアス陛下、ばんざーい! |
| ばんざーい! |
ガイアス | では、早速本題に移らせてもらう |
ガイアス | 本日これより、この場にて天啓の儀式を執り行う |
ガイアス | 他でもない、天啓を巡る混乱に終止符を打つためだ |
ナタリア | まぁ…! |
セルディク | 天啓の儀式だと…? |
フィリア | そんな… |
ガイアス | ウィンガル、神子をここに |
ウィンガル | はい、ただいま |
コレット | … |
ロイド | コレット! |
コレット | ロイド…!それに、フィリアさんも…! |
フィリア | コレットさん…!ご無事でしたか? |
コレット | 二人共、心配かけちゃったよね、ごめんなさい |
ロイド | いや、俺の方こそ、守るって言ったのに…ごめん |
ロイド | …ガイアス王、コレットがここにいる理由を教えてくれ |
ロイド | 内容によっては、今すぐコレットを連れて帰るぜ |
コレット | ロイド、あのねガイアスさんは悪くないの… |
ガイアス | … |
コレット | …ここに来たのも、これから儀式を行うのも無理矢理じゃない |
コレット | 私自身も望んでここに呼んでもらったんだよ |
ロイド | コレット…それは本当なのか? |
コレット | うん。話せば長くなっちゃうけど…本当だよ |
コレット | ロイドもきっと、ルークとも仲直り出来るはずだから |
ロイド | ルーク… |
ロイド | …わかった。コレットがそう言うなら |
フィリア | … |
ゼロス | おーおー、国王サマの前で遠慮ないなぁ…ロイドくん。まぁ、無理もねーけどな… |
ゼロス | 何話してるか気になるけどよ、コレットちゃんは無事みたいだな |
エリーゼ | 二人が会えただけでもよかったですけど… |
スレイ | そうだね。それにしても、やっぱりこれは天啓の儀式が目的だったんだな |
アスベル | それが、天啓を巡る混乱を止めるって…どういう事だ? |
スタン | みんな、またガイアスさんが話し始めるよ…! |
ガイアス | …昨今、新たな天啓が出現したと噂が広まったのをきっかけに、各国の間に緊張が高まっている |
ガイアス | 天啓の石碑を手中にしたいと欲するウィンドルと、手放したくないシルヴァラント |
ガイアス | 両国の不和は、傍目にも明らかでこのままでは戦争も起こり兼ねない |
ガイアス | 先日、ウィンドルの赤の騎士団がメルトキオに侵入したという話を聞いた |
セルディク | …我が国に対して批判をしようとでも言うのか?ガイアス陛下。そもそもあれは… |
ガイアス | 俺は事実を述べたに過ぎない。セルディク大公、話はまだある |
セルディク | … |
ガイアス | 我が国は、そうした国家間の争いを回避するために今日この場を設けた |
ガイアス | 第三者的、中立の立場として、我が国が民の前で儀式を執り行い、天啓をここに公表する |
セルディク | 何だと…! |
フィリア | … |
ナタリア | … |
ガイアス | 内容を公表する事で公平性は保たれ、各国が抱く疑念も解消されるだろう |
ティポ | ア・ジュールは混乱を収めるために石碑を手に入れたって事ー? |
エリーゼ | はい、多分… |
ティア | 私達との戦闘を避けようとしたのも…そういう事だったのね |
スタン | だったら、俺達に話してくれればよかったのに |
ミクリオ | 情報流出を懸念したんだろう。各国家に大きく関わる問題だからね |
フィリア | …ガイアス陛下のお考えはわかりました |
フィリア | しかし、天啓の儀式は、我がシルヴァラントに伝わる由緒正しき伝統の儀式── |
フィリア | それを、我が国にご相談もなく執り行うのは、いささか乱暴ではありませんか |
ガイアス | 貴国の伝統を否定する気はない。だが… |
ガイアス | 先日のリチャード陛下の一件以来、ある疑念が貴国に向けられている。それはご存知だろう |
フィリア | … |
ガイアス | こういった不審や不穏を解消するためには、形式に捉われず公然に儀式を執り行う事が最善だ |
ガイアス | 我が国は、天啓を崇拝する文化もなくそれを独占する気も毛頭ない |
ガイアス | 公平性という意味では、我が国が妥当…そう思わぬか、セルディク大公? |
セルディク | … |
ガイアス | ナタリア殿下。少し前にキムラスカの王都バチカルが襲撃されるという事件があったそうだが── |
ガイアス | そちらは何とか鎮静化したものの、首謀者は未だ不明と聞く |
ナタリア | はい、仰る通りですわ |
ガイアス | 話によると、シルヴァラントの仕業ではないかと噂が飛び交っていると… |
フィリア | いいえ、そのような事実はありませんわ |
ガイアス | ただの噂だという事は重々承知している。問題なのは、今起こっている各国の関係悪化だ |
ガイアス | ただでさえ晶化現象によって世界中は不安に包まれている |
ガイアス | このような時こそ、各国の協調が必要だ。天啓という不確かなものに振り回されている場合ではない |
ガイアス | よって、これより行う天啓の儀式に、各国の代表者である貴君らに参列をお願いした次第だ |
ガイアス | 同意いただけるだろうか |
ナタリア | 全てを明らかにし疑念の芽を摘む…そういう事ですわね |
ナタリア | 各国間のわだかまりをなくす事に繋がるのであれば…儀式を見届けさせていただきますわ |
ガイアス | 感謝する、ナタリア殿下 |
ガイアス | セルディク大公殿下、フィリア司祭殿の意見はどうだろうか |
フィリア | … |
ガイアス | 特に異論がないようであれば、これより儀式を執り行う |
フィリア | …我が国は、天啓を独占、改ざんする意志は全くありません |
フィリア | しかし、その疑いが向けられているのも事実。それを晴らすいい機会かもしれません… |
フィリア | ただ、これはやはり、我が国の意志を無視したものです |
フィリア | 今ここで儀式を阻みはしませんが同意したとは申し上げられません… |
ガイアス | それについては了解している。天啓の石碑も、神子も必ずお返しすると約束しよう |
ガイアス | …セルディク大公殿下。貴公はいかがだろうか |
セルディク | …… |
セルディク | …異論はあるまい。ウィンドルの代表として、偽りがないか見届けるとしよう |
ジェイド | では、僭越ながら天啓の儀式を始めさせていただきます |
ジェイド | 神子殿、どうぞ石碑の元へ |
コレット | はい… |
スタン | 儀式が始まるようだ…。ウィンドルもシルヴァラントも納得したのかな |
ゼロス | まぁ、ああまで言われちゃ何も言えねぇってのが本音だろうがな |
エステル | 今わたし達にはこの儀式を見守る事しか出来ませんね… |
スレイ | そうですね… |
scene2 | 始まりを告げる蒼光 |
ティア | ──そろそろ始まるみたいね |
ゼロス | … |
| |
ガイアス | では、コレット。始めてくれ |
コレット | はい… |
コレット | …… |
コレット | 大いなる世界の意志よ。我が主たる地上の神よ |
コレット | 我、コレット・ブルーネルを汝の代行者と認めるならば… |
コレット | その言葉を我に聞かせたまえ── |
| |
スレイ | …!コレットの言葉に反応するみたいに… |
ルドガー | 石碑が光り始めた… |
アスベル | これが…天啓の儀式… |
ナタリア | なんて神秘的な光でしょう… |
フィリア・ガイアス | … |
コレット | … |
コレット | 『地上のあらゆる命源は 刹那に燦爛たる結晶と化し、 人々の心を凍てつかせる』 |
コレット | 『翳りを帯びた四光の一角は、 遂に、闇の帳に包まれていく──』 |
コレット | … |
| |
ナタリア | あらゆる命源が…結晶と化す… |
フィリア | 四光…それに、闇の帳とは一体… |
セルディク | やはり今回も… |
| ざわ…ざわざわ… |
ガイアス | … |
コレット | あの…私… |
ロイド | …コレット、大丈夫だ。みんな、ちょっと驚いてるだけだから |
| |
ヴェイグ | …今のが天啓、なのか? |
エリーゼ | 多分…。でも、どういう意味でしょうか… |
ミクリオ | 前の天啓の例から考えると「燦爛たる結晶」というのは、晶化現象を示してるんじゃないか? |
ルドガー | 命源がマナの事なら晶化現象が、更に進行するって意味か…? |
エリーゼ | これ以上、ですか…?まさか… |
スレイ | それに…四光…四つの光… |
スレイ | ひょっとして、四大国の事…? |
アスベル | 四大国って意味なら「翳り」というのがこの関係悪化した今の世界情勢を指しているのか? |
ティア | その一角が闇の帳に包まれる、つまり… |
ヴェイグ | 四大国の一国に何か大きな災厄があるかもしれない… |
ミクリオ | 最悪、国家の滅亡とも考える事が出来るね |
エステル | そんな…! |
スタン | 待ってくれ。これはやっぱり未来を予知しているのか? |
スタン | 晶化現象に関する事も何か書いてたらって思ったけど…。まさか、…こんな…… |
エステル | スタン… |
ゼロス | …気が動転してんのは俺達だけじゃなさそうだぜ |
スタン | え… |
街の男 | 今の内容って、晶化現象の事を言ってるのか…? |
街の女 | そんな不吉な事言わないでよ…! |
街の男 | でも、今の内容…過去の出来事にそんな事あったか…? |
街の男 | それだけじゃない。ウィンドル国王の晶化を暗示した前の天啓とも内容が似てないか…? |
ライラ | 街のみなさんにも動揺が広がっていますわ… |
ミクリオ | あんな内容を聞かされた後では無理もない |
ミラ | …セルディクが出てきたぞ |
セルディク | ガイアス陛下。私はウィンドル代表として、貴国のやり方に賛成は出来ない |
セルディク | 今のこの状況を見るがいい。天啓を巡る争いに終止符を打つと言いながら、実際はこのザマだ |
セルディク | 陛下がなさった計らいは、さらなる混乱を生み出したに過ぎん |
ガイアス | … |
セルディク | そもそも天啓が戯言などと何故、陛下に断言が出来る? |
セルディク | 前回の天啓は明らかに、我が国のリチャード陛下が晶化現象に蝕まれる事を暗示していた |
セルディク | 今回にしてもそうだ。天啓と現在の世界情勢を鑑みても、暗示と捉えるのが妥当だ |
セルディク | 私の聞いていた通りだ。天啓はやはり未来予知なのだ…! |
ガイアス | … |
ジェイド | … |
セルディク | …ガイアス陛下の方こそ、他国に協力すると見せ、その実争いを煽り疲弊させているのではないか? |
ウィンガル | …陛下を愚弄するか |
ガイアス | よせ、ウィンガル |
ガイアス | セルディク大公、話は後だ |
| ざわざわ… |
街の男 | この国は大丈夫なのか…? |
街の女 | 嫌よ、あたしはまだ死にたくないね!この国だけは勘弁しておくれ… |
ガイアス | 皆の者、聞くがいい |
ガイアス | 天啓が未来予知である、そのような説があると聞くが… |
ガイアス | それは重要な問題ではないと考えている |
ガイアス | 天啓とは「何の根拠もない、不確かな情報」だ |
フィリア | … |
ガイアス | ただ一つ言える事は、不確かな情報に振り回され余計な混乱と争いを招く…これこそが最も愚かな事である |
ガイアス | 今こそ、天啓に対する認識を改めて欲しい |
ガイアス | そして、このようなものに踊らされる事なく世界中の者が意志を一つにし、協調すべきである |
セルディク | … |
ナタリア | … |
| ざわざわ… |
街の女 | 陛下はああ仰られるけど… |
街の男 | 晶化現象もどんどん酷くなってるし、天啓と全く関係ないなんて… |
エステル | ガイアス陛下の仰る事も、もっともなのですが… |
ゼロス | 晶化現象の進行が感じられる今、不安が勝るのは無理もねぇ… |
セルディク | …ガイアス陛下。つまり、我が国ウィンドルもア・ジュールに協力しろと? |
ガイアス | 民のためだ。引いては、貴国のためでもある |
セルディク | 我が国には、我が国のやり方がある。ア・ジュールに与する気はない |
セルディク | ここにもう用はない、失礼する。カーツ、行くぞ |
カーツ | はっ…! |
ナタリア | …行ってしまいましたわ |
フィリア | …天啓の儀式が、こんな事に… |
ガイアス | …ジェイド、儀式は終わりだ。俺がもう一度民に説明をしよう |
ジェイド | では陛下、こちらに |
ガイアス | ああ |
ガイアス | …──! |
ガイアス | あいつは… |
ジェイド | …?どうかされましたか、陛下 |
ガイアス | …いや、後で構わん |
スタン | セルディク大公…怒って帰っちゃったぞ |
ルドガー | …まずい流れになったな |
アスベル | あの様子では…戻って、またよからぬ事を始めるかもしれない |
エステル | ガイアス陛下の仰る通り、各国が協力すべき時だと思うのですが… |
アスベル | セルディク大公は、聞く耳を持ってくれません… |
エステル | アスベル、わたし達も急いでウィンドルに戻りませんか? |
エステル | フレンやユーリにもここであった事をお知らせして今後の事を相談しましょう |
アスベル | …わかりました。すぐに出発しましょう |
アスベル | …スレイ、俺達は一旦国へ戻って、ここであった事をウィンドルの仲間達に知らせる |
アスベル | 何かこちらで動きがあればまた知らせるよ |
スレイ | うん、わかった |
エリーゼ | 二人共、気をつけてください… |
アスベル | ああ、ありがとう。それじゃ |
エステル | 失礼します |
スレイ | …まさか、こんな事になるなんて |
ヴェイグ | …ああ。ウィンドルが今後どう出るか、気がかりだ |
ゼロス | フィリア司祭もな。…ガイアスの話全部を納得してるように見えないし… |
ティア | ナタリアも困惑してるようね…。各国の反応見ていると、キムラスカもどこかに肩入れもしにくいと思うわ |
ルドガー | 天啓の儀式を行う事でむしろ…事態が悪い方へ傾いている気がするな |
エリーゼ | そんな… |
ティア | そうさせないためにも──… |
ティア | …!あれはまさか… |
スタン | …?ティア? |
ゼロス | お、おい…!ティアちゃん!? |
ライラ | 行ってしまいましたわ…。一体どうされたんでしょうか |
ミクリオ | わからない。けど、随分慌てていたな |
ガイアス | …… |
scene1 | 決別 |
ルーク | ──何か、変じゃねーか?セルディクの野郎も帰っちまったし、みんな何かざわついてるみてーだし |
ルーク | ここからじゃあんま見えねーけど、ひょっとして、天啓の儀式で何かあったんじゃ… |
??? | お前が心配するような事はない。全ては上手くいっている |
ルーク | …ならいいんだけどよ |
ルーク | どの国にも天啓の情報も渡った。いがみ合う理由もその必要もねえ… |
ルーク | 争いの元はこれでなくなったよな、ヴァン師匠? |
ヴァン | くくく… |
ルーク | 師匠?何がおかしいんだよ? |
ヴァン | …概ね及第点だ |
ルーク | …? |
ルーク | あっ!どこへ行くんだよ、師匠? |
ヴァン | …ルーク、お前とはここまでだ |
ルーク | え? |
ルーク | ここまでって…何言ってんだよ、師匠 |
ヴァン | これより先、お前は必要ない。ついて来るな |
ルーク | 必要ないって…へ…へへっ、んな悪い冗談、師匠らしくねーぞ |
ルーク | ようやく世界戦争だって止められたのに── |
ヴァン | …ルーク、お前が望む世界は今のこの世界だ。だが、私は違う |
ヴァン | 私とお前の求める世界は、別のものなのだ |
ルーク | 師匠…? |
| |
ティア | ルーク、どこなの! |
ティア | さっきの窓辺で見た人影…間違いなく、兄さんとルークだった |
ティア | 何故こんなところから…?儀式を見ていたの…? |
ティア | この屋敷のどこかにいるはず…! |
scene2 | 決別 |
ティア | はあ…はあ… |
ティア | 確か、この辺りだと思ったのだけれど──… |
??? | ふざけんな! |
ティア | 今の声は、ルーク…!…あっちだわ |
ティア | …!いた… |
| |
ルーク | どういう事だよ…それ。俺と師匠の求める世界が別って… |
ヴァン | … |
ルーク | 意味わかんねーよ!師匠だって同じじゃねーのか? |
ルーク | 世界戦争を止めようって… |
ルーク | この世界を守ろうとしてたじゃねーか! |
ヴァン | … |
ティア | …? |
ティア | どういう事なの…?言い争っているようだけど… |
ティア | … |
ルーク | おい、何とか言ってくれよ!師匠…! |
ヴァン | …私は最善の手段を取ったに過ぎん |
ルーク | え? |
ヴァン | これまでの事は全て、私の理想を実現するため… |
ヴァン | 争いこそが理想を生むのだ |
ルーク | 争いが理想を…?それ…本気で言ってんのか? |
ルーク | 師匠は、争いを望んでたって事かよ!? |
ルーク | 神子の力を借りて、戦争を止めたいって話してた。あれは、嘘だったのか…? |
ルーク | 久しぶりにバチカルに戻ってきて一番に俺に会いに来てくれたのも、全部…… |
ヴァン | … |
ルーク | …へっ、嘘だな。俺は信じねえ… |
ルーク | そんなの、俺は信じねーぞ! |
ルーク | 師匠、言ったじゃねーか。久しぶりに俺に会えて嬉しかったって |
ルーク | 隠れ家に行く前の日の夜、森で一緒に野宿した時だっていろんな話をしてくれた… |
ルーク | そんで、言ったよな…。俺の力が必要なんだって── |
ヴァン | ルーク…、お前は相変わらずだな。もう少し成長していれば違う道があったかもしれんが… |
ルーク | 師匠… |
ヴァン | …お前はキムラスカ王家に連なる身。故に今回の計画で必要不可欠であったガイアスとの接触も容易い |
ヴァン | それだけの事だ。お前は私にとってただの都合のよい駒に過ぎない |
ルーク | …! |
ルーク | 何で…何でそんな── |
ティア | 今の話は本当なの?兄さん… |
ルーク | ティア…!?お前、何でここに… |
ヴァン | ティア… |
ティア | 答えて! |
ティア | 神子をさらったのも、全ては兄さんが企てた事で、そのためにルークまで利用して…… |
ティア | そこまでして実現したい理想って何なの…?兄さんの目的は一体── |
ヴァン | …お前にも、いつかわかる日が来る |
ティア | そのいつかは、今よ。このまま黙って兄さんを行かせるわけにはいかないわ |
ティア | 兄さんはシルヴァラントに侵攻し、神子をさらうという大罪を犯した… |
ティア | これほどにまで兄さんを慕い、信じてきたルークを裏切ってまで… |
ティア | 兄さん…あなたは一体どれだけの人を苦しめれば気が済むの!? |
ルーク | ティア… |
ヴァン | … |
ティア | 納得のいく説明をして。でないと、私… |
ヴァン | …私に刃を向けるのか、ティア |
ヴァン | 出来れば、お前とは戦いたくはなかったが…止むを得ん |
ヴァン | 私の理想の実現を妨げる者は、何人だろうと排除せねばならん |
ティア | …! |
scene3 | 決別 |
ヴァン | … |
ティア | はあ…はあ… |
ヴァン | 強くなったな、ティア。随分と訓練を積んだのだろう |
ヴァン | …しかし、まだ詰めが甘い |
ティア | …! |
ヴァン | ティア、悪く思うな |
ルーク | やめろーーっ!! |
| |
| ザシュッ! |
| |
ルーク | くっ…! |
ティア | ルーク…!あなた、どうして… |
ルーク | うるせー… |
| |
ヴァン | ほう…私の剣を受け止めるとは |
ヴァン | だが、その左腕…しばらく使い物になるまい |
ルーク | …そんなの…今はどうでもいい… |
ルーク | そんな事より師匠…、何でこんな事すんだよ! |
ルーク | 俺だけならまだしも…何でティアまで裏切れるんだよ!こいつは師匠の妹だろ!? |
ティア | ルーク… |
ヴァン | … |
ルーク | 俺だって…師匠を信じてた |
ルーク | 一緒に来てくれ、力を貸してくれって言われて嬉しかったんだ… |
ルーク | ただその言葉を信じて、ここまでついて来た。……けど、だけど! |
ルーク | もうたくさんだ!あんたなんか、こっちから願い下げだ! |
ヴァン | ルーク… |
ヴァン | ふっ… |
ルーク | …な、何がおかしいんだよ!俺は本気で怒って── |
ティア | ルーク!兄さんの様子が変よ、気をつけて── |
ヴァン | はあああっ! |
| |
| ズバーーーッ! |
ルーク | うわあああああっ! |
ティア | きゃあああああっ! |
| |
ヴァン | … |
ヴァン | …雪か |
??? | ──止まれ |
ヴァン | これはこれは… |
ガイアス | 貴様、ヴァン・グランツだな |
ヴァン | 私をご存知とは、身に余る光栄ですな |
ガイアス | …貴様に聞きたい事がある |
ヴァン | ほう、ア・ジュールの国王陛下が、私ごときに直々にお尋ねとは |
ガイアス | お前は、此度の天啓の内容を予め知っていた…、そうだな? |
ヴァン | 何故そのように思われる? |
ガイアス | 儀式の最中に見つけた貴様の顔だ。そこにそう書いてあった |
ガイアス | …知らぬとは言わせん |
ヴァン | ふ…ならばどうすると? |
ガイアス | … |
ヴァン | … |
| ガキーーン! |
ガイアス | はああああっ! |
ヴァン | ぬうううんっ! |
ガイアス | 天啓を公に晒そうとした目的は民衆の混乱だけではない…そうだろう! |
ガイアス | 真の目的は何だ!何故、天啓の内容を知っていた? |
ヴァン | …答える義理はない |
ヴァン | 敢えて一つ、言うとすれば儀式を執り行ってくれた事に対する陛下への感謝、か… |
ガイアス | ふざけた事を…! |
ガイアス | うおおおおっ! |
ヴァン | おおおおおっ! |
scene1 | 「鍵」となる者 |
ティア | … |
ティア | う… |
??? | ティアさん、お目覚めになられたのですね |
| |
ティア | ここは… |
ライラ | 王宮の一室ですわ。ガイアスさん達が手配してくださいました |
| |
ティア | 私…気絶していたのね… |
スレイ | うん。広場の近くの屋敷で倒れてる二人を見つけたんだ |
スレイ | ライラが治療してくれたから二人共、怪我はもう大丈夫だと思うけど… |
ティア | …二人… |
ティア | …!そうだわ、ルークは…!? |
ルドガー | 大丈夫、隣で寝てるよ |
| |
ルーク | … |
ティア | … |
ミラ | 安心しろ。ルークの方も命に別状はないそうだ |
ティア | …よかった |
ゼロス | それにしても、つれないなあ、ティアちゃんは。何も言わずに一人で行っちゃうし… |
スタン | しばらく戻ってこないと思ったら、ルークと一緒に倒れてて…。見つけた時は心臓が止まるかと── |
ティア | ごめんなさい、心配かけて… |
エリーゼ | いいんです、ティアとルークが無事だったならそれで… |
ティポ | そーそー。命あってのモノダネってねー |
ティア | 天啓の儀式は…あの後、どうなってしまったの? |
ヴェイグ | セルディク大公が帰国の途に就いた後、それを追ってエステルとアスベルも帰国した |
ミクリオ | その後、シルヴァラントとキムラスカの両国は、協力して混乱を解決する事にひとまずは賛同した… |
ミクリオ | だが、あくまで名代での合意だ。彼らが国へ帰って、各々国王と相談しまた動きがあるだろう |
ゼロス | 天啓の儀式をあんな風に強引に執り行ったとなると、シルヴァラントは納得しないだろうな |
ルドガー | ナタリア王女も諸手を上げて賛成とは言えなかったようだ |
ルドガー | 襲撃事件の首謀者もわかっていない中あんなやりとりを見せられたんだ。無理もない |
ティア | 街の人達は大丈夫だったのかしら |
ルドガー | 儀式の後、改まった場でガイアス王が民衆へ語りかけたんだ。自国の民は必ず守ると |
スタン | そのお蔭で、みんなの混乱は一旦、収まったみたいだけど… |
ティア | そう…。ガイアス陛下は、ア・ジュールの国民からの信頼も厚いものね |
ティア | でも、内容が内容なだけにこのまま済むとも思えない。これからが肝心だわ |
エリーゼ | そうですね… |
スレイ | ティア、オレ達も聞いていいかな? |
スレイ | あの屋敷で、ルークさんと何があったのか… |
ティア | …ええ |
スレイ | ──まさか、あの屋敷にヴァンもいたなんて |
スレイ | しかも、ルークさんとそんな話を… |
ティア | …… |
ゼロス | そっか…。やっぱハニーが言ってた通りだな |
ゼロス | ルークはルークなりに、自分の信念に基づいて行動してたってわけだ |
ゼロス | まあ、結果として間違えてた事に変わりねーと思うけど |
ミラ | そうだな…。だが、そこに世界を守ろうとする奴の強い意志があったのは事実だ |
ミラ | 何ともやりきれない気持ちになるな… |
ティア | ええ… |
ルドガー | とにかく、二人が無事で本当によかったよ |
ゼロス | 俺さまの愛しのティアちゃんを守ったってところだけは、しっかりあいつを褒めてやらねぇと── |
ルーク | ん… |
スタン | …!ルーク、起きたのか? |
ルーク | いてて…って、あれ…お前ら…… |
ルーク | …久しぶりだな。何だか、見た顏がそろってるけど… |
ルドガー | ルーク、気分はどうだ? |
ルーク | ルドガー…。そっか、俺… |
ルーク | 頭は、大丈夫だ。はっきりしてる… |
エリーゼ | 気を失ってた二人を見つけて、みんなでここに運んだんです |
ルーク | エリーゼも…スタンにゼロス、ミラまで… |
ルーク | 後は、と…… |
ルーク | … |
ルーク | ロイド…。あいつはいねーか… |
スレイ | ロイドは、コレットやフィリア司祭と一緒にシルヴァラントへ帰国したよ |
ルーク | ん?お前は… |
スレイ | あ、オレはスレイって言います。こっちはミクリオ、それにライラ |
ミクリオ | よろしく |
ライラ | よろしくお願いします、ルークさん。みなさんからお話は伺っていましたわ |
ヴェイグ | …オレも会うのは初めてだ。ヴェイグだ、よろしく頼む |
ルーク | ああ…よろしくな |
スレイ | ルークさん、コレットを連れ去った時の事ロイドから聞きました |
スレイ | ここにいるみんなも勿論だけど、特にロイドはルークさんの事をすごく心配してたんだ |
ルーク | 心配…?怒る事はあっても、心配なんて… |
ティア | …あなたを信じていたからよ |
ルーク | 俺を… |
ゼロス | ロイドは言ってたぜ。何があってもお前を信じる、お前には何か事情があるんだろうって |
スレイ | みんなもルークさんを信じてる。だから、真相を知りたいってここまで来たんだ |
ルーク | … |
ルーク | 俺…戦争を止めたくて、これはしょうがないんだ、みんな後でわかってくれるって… |
ルーク | けど…結局、ただ師匠に利用されてただけだったんだな… |
ルーク | たくさんの人達に迷惑かけちまって、俺…どうしたら… |
ティア | …そうね。神子は無事だったとはいえ、あなたが大変な事をしたのは事実 |
ティア | あなたや兄さんの行いで多くの人が傷付き、危険に晒された |
ティア | あなたはその事を受け止めた上で深く反省し、償わなければならない |
ルーク | …ああ、わかってる…と、思う |
ルーク | 許してもらえるかわからねーけど、俺…償いたい |
ルーク | 教えてくれ、ティア。俺は…何からすればいい? |
ティア | …まずは、キムラスカに戻り陛下に事情をご説明しましょう |
ティア | シルヴァラントに向かうのは、正式な形で謝罪を申し入れてからの方がいいわ |
ティア | それと、本気で償うつもりがあるなら全部、私に聞くんじゃなくて自分で考えなくては駄目よ |
ルーク | …わかった |
ルーク | …ティア、いろいろありがとな |
ティア | 私はあなたの教育係よ。でも…私からもお礼を言わせて |
ティア | あの時庇ってくれた事、そして、私が言えなかった事を言ってくれた事 |
ティア | ありがとう、ルーク |
ルーク | お、おう… |
ジェイド | 皆さん、お話し中のところ失礼しますよ |
スタン | …ジェイドさん! |
ジェイド | お二人共、目を覚まされたようですね |
ジェイド | 早速で申し訳ないのですが、ルーク、ティア、動けるようなら私と一緒に来ていただけますか |
ジェイド | うちの陛下があなた方とお話がしたいと仰ってまして |
ルーク | …わかった、今行く |
ルーク | ──…うっ! |
ルドガー | ルーク…!無理はしないでくれ |
ルドガー | ほら、俺の肩を貸すよ。掴まってくれ |
ルーク | 悪ぃ、ルドガー… |
スレイ | ジェイドさん、オレ達も一緒に行っていいですか? |
ジェイド | それはまあ構わないでしょうが…全員、ですか? |
ライラ | あまり大人数で行ってはちゃんとお話出来ませんわね。私は残りますわ |
ミラ | では、私も残るとしよう。ここまでに得た情報の整理でもしておく |
ミラ | そうだ、ミクリオ、お前がいろいろ助言をくれると助かるのだが… |
ミクリオ | …ああ、構わない。スレイ、僕もここで待つ事にするよ |
スレイ | りょーかい。それじゃ、少し待ってて |
ルーク | 待たせたな、ジェイド。案内頼む |
ジェイド | では、参りましょうか。こちらです |
scene2 | 「鍵」となる者 |
ティポ | 何だかここ、金ピカピンだねー! |
エリーゼ | だ、駄目ですよ、ティポ!ここは王様の部屋なんですから……あ…! |
ガイアス | …来たか |
ウィンガル | … |
スレイ | ガイアス陛下だ、それに、隣にいるのは… |
ルドガー | ウィンガルだ |
ティア | …ガイアス陛下、まずはお礼を。部屋を手配いただいたようで、ありがとうございました |
ガイアス | 礼など不要だ、当然の事をしたまで。それより── |
ガイアス | ルーク、それにティア。お前達に聞きたい事がある |
ガイアス | ヴァンの居所に心当たりはないか |
ルーク | …!師匠の事、何で知って… |
ウィンガル | お前の背後にいたヴァン、その存在は以前から認識している |
ルーク | 最初っから知ってたのか…? |
ジェイド | あなたに協力者がいるのではないかというのは初めから疑っていましたが── |
ジェイド | それがヴァンだと確信したのは、ティアの話を聞いてからです |
ルーク | そうだったのか… |
ジェイド | ヴァンに自分の事は言わないように言われていたのですね |
ルーク | ああ、そんなところだ。黙ってて…悪かった |
ガイアス | それより、質問の答えはどうなのだ |
ティア | 兄の行方についてはわかりません。あの場で倒れて、気がついた時にはもう… |
ルーク | 俺も、どこに行ったかまではわからねぇ… |
ジェイド | 何か、この後の目的とか行先も?隠れ家にしている場所ですとか、ご存知ないですか? |
ルーク | 天啓の儀式をやれれば、それで全部終わるはずだったんだ。その後の事は、何も… |
ルーク | 今までどこにいたかも、さっぱり知らねぇ。各地を転々としていたとしか… |
ガイアス | ふむ… |
スレイ | あの…、少しいいですか、ガイアス陛下 |
ガイアス | …? |
スレイ | 初めまして。オレ、スレイって言います。一つ聞きたい事があるんですけど── |
スレイ | どうしてヴァンを捜してるんですか? |
ガイアス | …天啓の内容だ |
ルーク | そういえば、天啓の内容ってどんなのだったんだ? |
スタン | そうか、ルークはあの時屋敷の中にいたんだもんな。知らなくて当然か。スレイ、言える? |
スレイ | ああ、覚えてるよ |
スレイ | 『地上のあらゆる命源は 刹那に燦爛たる結晶と化し、 人々の心を凍てつかせる』 |
スレイ | 『翳りを帯びた四光の一角は、 遂に、闇の帳に包まれていく──』 |
ルーク | へぇ…命源…、それに結晶…。よく、意味はわかんねぇけど… |
ヴェイグ | …その天啓に何か引っかかる事が? |
ガイアス | …おそらく、ヴァンは天啓の儀式を執り行う以前からこの内容を知っていた |
スレイ | 天啓の内容を事前に…!? |
ティア | どうして兄さんが、そんなものを… |
ゼロス | いや、んな事あり得ねぇ…。二人の神子しか読めないはずの天啓を何でヴァンが…! |
ガイアス | …儀式の最中だ。天啓の内容に観衆がざわめき立つ中、俺はヴァンの姿を捉えた |
ガイアス | ルーク、お前と共に屋敷から儀式の様子をうかがっていた奴の姿だ |
ルーク | …… |
ガイアス | 奴は、天啓の内容を知れる場所にいなかった。なのに、会場の不穏な空気に微笑みを浮かべていた… |
ガイアス | 普通なら何があったかと焦るはずだ。あれは、明らかに儀式での混乱を予期していた顔つきだった |
ガイアス | 事実を問い質すため、俺は奴の元へ向かった |
ティア | 兄には会えたのですか? |
ガイアス | ああ |
ガイアス | 剣を交えたが、結局口を割らぬままその姿を消した |
エリーゼ | そんな… |
ルーク | 師匠は、天啓の石碑の内容については何も言ってなかったぞ |
ウィンガル | ヴァンがお前を初めから利用するつもりだったのなら、それも当然だろう |
ルーク | …… |
スレイ | でも、ヴァンはどうして天啓の内容を前もって知る事が出来たんだろう? |
ルドガー | あの石碑が、ヴァンの作り出した偽物だという可能性は? |
ゼロス | いや、それはないと思うぜ |
ゼロス | 天晶石にもちゃんと反応してたし、今までの石碑と同じように神子によって読み解けたわけだしな |
ヴェイグ | 確かに偽物なら、どれも出来るはずがないな… |
エリーゼ | じゃあやっぱり…今回の石碑は本物って事ですか…? |
ジェイド | それはわかりませんが、今回の天啓が仕組まれたものだとすれば納得のいく点があるのは確かです |
ジェイド | 天啓の儀式を執り行うにあたり、悪い未来予知めいたものが現れる可能性は考慮してはいたのですが |
ジェイド | 晶化の更なる進行のみならず四大国の国交が悪化したこの時期に一国の滅亡とも取れる一節とは… |
ジェイド | まるで、誰かが故意に各国間の不審を深め、更なる争いを引き起こそうとしているかのようです |
ゼロス | …そう考えれば、確かに今回の天啓には何かカラクリがありそうだな |
ガイアス | …いずれにせよ、ヴァンが天啓について重大な鍵を握っている事は間違いない |
ガイアス | それともう一つ、奴には何らかの真の目的があり、そのために天啓を利用している事も… |
スレイ | 真の目的… |
ジェイド | … |
ルーク | 師匠…、あんたは一体何を… |
ティア | ……兄さん |
Name | Dialogue |
scene1 | 次なる一歩 |
ライラ | スレイさん達が、お戻りになりましたわ |
スレイ | ただいま |
ミクリオ | お帰り。ガイアス王との話し合いはどうだった? |
スレイ | うん、簡単に話した内容を説明するよ |
ミクリオ | 天啓とヴァンが繋がっている、か… |
スレイ | それで、これからの話なんだけど… |
スレイ | オレはヴァンの行方を探るべきだと思う |
スレイ | 今回の天啓に関した一連の騒動、裏で動いていたヴァンの目的はこれだけじゃ終わらない気がする |
ゼロス | 賛成だ。ヴァンを放っておけねぇからな |
エリーゼ | 今回の天啓に、晶化と関係したような言葉があった事も気になりますね |
ヴェイグ | ああ。ヴァンを追って天啓について何かつかめれば晶化を解決する手がかりになるかもしれない |
ティア | …私も賛成よ。兄さんには聞きたい事がたくさんあるもの |
スレイ | みんな同じ意見みたいだね。…必ずヴァンを見つけよう |
ルーク | 師匠の目的… |
エリーゼ | …ルークはキムラスカに戻るんですよね |
ルーク | あ、ああ。まずはやっちまった事の落とし前をつけねーとだからな… |
ルーク | 伯父上にちゃんと話して、それから、ロイドとコレットにも謝りに… |
??? | 何だ、思ったよりも、元気そうじゃないか |
ガイ | 迎えにきたぜ、ルーク。全く、心配かけやがって |
ルーク | ガイ…!? |
ティア | どうしてあなたが…? |
ガイ | 陛下から名指しで命があったんだ。カーティス大佐から連絡があったってな |
ティア | 大佐から…? |
ジェイド | これからの事を思えば、気心の知れた人間が側にいた方が何かといいと思いましてね |
ルーク | ジェイド、お前… |
ジェイド | それにキムラスカ王家の方には恩を売っておいた方が今後のためにもなりますから |
ルーク | …けっ、一瞬でもいい奴かと思って損したぜ |
ルーク | ガイも…わざわざア・ジュールまで、悪かったな |
ガイ | 気にするな。俺も直接顔見たかったしな |
ティア | ガイ、キムラスカへはすぐに戻る予定なの? |
ティア | ルークの傷は塞がったけど、まだ回復しきってないの。熱もあるみたいだし… |
ガイ | ああ、それについてはさっき話を聞いた |
ガイ | ちゃんと回復してからキムラスカに連れ戻すつもりだ。しばらくはア・ジュールに滞在だな |
ジェイド | 私も病人をすぐに追い出すような事はしませんよ。回復するまでこちらでお過ごしください |
ジェイド | その代わり、ガイにはいろいろと働いてもらいましょうかね |
ガイ | 何でそうなるんだ… |
ルーク | お、おい。俺なら平気だ。早くキムラスカに帰ろうぜ |
ティア | ルーク…焦っても、状況はよくならない。まずは、ちゃんと回復してからよ |
ルーク | だけどよ…! |
ガイ | ティアの言う通りだ、ルーク。顔色、まだよくないぜ。それじゃ剣もまともに振れないだろ |
ルーク | … |
ルーク | …わかったよ。じっとしてりゃあいいんだろ |
ルーク | …ティアはすぐ師匠を追うんだよな? |
ティア | ええ、兄さんの目的を必ず暴いて見せるわ |
ジェイド | ほう。皆さん、ヴァンを追うのですか? |
スレイ | はい、ヴァンと天啓との関係やこの後の動きも気になりますし |
ジェイド | なるほど…と言う事であれば、ア・ジュールも協力しましょう |
ジェイド | 皆さんがヴァンの行方を捜すなら全面協力せよ、と陛下より仰せつかっていますので |
ヴェイグ | 一国の後ろ盾を得れられるのはありがたいが… |
ティア | …ご協力、感謝いたします。必ず兄は私達が捕まえます |
ミラ | ティア、いいんだな?ア・ジュールに捕縛されたヴァンがどうなるか… |
ティア | …ええ、承知の上よ。この先、ア・ジュールが協力してくれた方が動きやすいわ |
ティア | 兄さんは、きっとよくない事を引き起こそうとしている。実行する前に私が止めないと… |
ジェイド | 同感です。我々も出来る限りの協力をします |
ジェイド | それで皆さん、まずはどちらに向かうつもりなんですか? |
スレイ | それは…これから考えようかと思っていたんですけど… |
ミクリオ | みんなが席を外している間にミラやライラと話していたんだがシルヴァラントはどうだろうか |
ミラ | 各地で起こっている村や街への襲撃…特にシルヴァラントが多いのが気になるのだ |
スレイ | シルヴァラントか…。天啓とも関わりが深いし、いいかもな |
ルーク | そういえば…師匠とシルヴァラントで一緒に行動していた時── |
ルーク | 途中でどこかに出かけたり、誰かが会いに来たり…今思えば他の奴と連絡とっていたような… |
ジェイド | なるほど…ヴァンはシルヴァラントでも何か起こそうとしているのかもしれませんね |
スレイ | じゃあ、決まりだ。シルヴァラントに向かおう |
ジェイド | それでは、ア・ジュール軍には皆さんを協力者として伝えておきます |
ジェイド | 何かわかった事があれば各地のア・ジュール兵を通してご連絡いただけますか? |
ジェイド | シルヴァラントまで行くと難しいかもしれませんが、出来る限りお願いします |
スレイ | わかりました。他国にいても必要があれば何とかして連絡します |
ティア | ガイ…ルークの事、お願いね |
ガイ | ああ、任せてくれ。…ティアもヴァンの事、頼む。複雑な立場にはなるだろうが… |
ティア | 心配いらないわ。…兄さんは私が必ず止める |
ルーク | …。ティア…何だ…その… |
ルーク | お、お前も気をつけろよな…! |
ルーク | 俺もけじめつけたら師匠を捜しに行くからよ |
ティア | …わかったわ |
ティア | じゃあ、先に行ってるわね |
scene2 | 次なる一歩 |
エリーゼ | シルヴァラント…って事は先にア・ジュール港へ向かうんですよね? |
ヴェイグ | …ああ。シルヴァラントへ行くなら、それが一番早い |
ルドガー | 天啓か…。ヴァンはその内容を先に知っていたんだろうか… |
スレイ | ガイアス陛下が言うにはその可能性もありそうだけど… |
スレイ | 『地上のあらゆる命源は 刹那に燦爛たる結晶と化し、 人々の心を凍てつかせる』 |
スレイ | 『翳りを帯びた四光の一角は、 遂に、闇の帳に包まれていく──』 |
エリーゼ | その天啓が、これから起こる事だとしたら… |
エリーゼ | 晶化が進行して四大国のどこかが滅亡する、って事なんでしょうか… |
スタン | 天啓の内容が本当かどうかはわからないけど…無視出来る内容じゃないよな |
ティア | それに兄さんがルークに言った、争いこそが理想を生む、という言葉も気になるわ |
ティア | 争いで生まれる理想なんて…私は認められない |
スレイ | うん…そんなの間違ってる |
ゼロス | 何にせよ、まずはヴァンの行方を掴まない事には…ってわけか |
| |
男の声 | うわあああ!? |
ティア | あの悲鳴は…!? |
スレイ | 誰かが魔物に襲われている。助けよう! |
scene1 | 広がる波紋 |
スレイ | 怪我はありませんでしたか? |
男 | ありがとう。あんた達が来てくれなかったらどうなっていたか |
ゼロス | 側に俺さま達がいて、命拾いしたな?見たところ…一人旅か? |
男 | この辺りで行商を…って、ああっ! |
ヴェイグ | どうした? |
男 | 商品が駄目になっちまってる!せっかくここまで担いで来たのに、あの魔物のせいで… |
男 | 今日はついてないぜ。妙な二人組に絡まれるわ、魔物に襲われるわ… |
ティア | 妙な二人組…?盗賊ですか? |
男 | いや、物盗りではなかったんだが港からここまでの道中でリンネル村の場所を聞かれてな |
スタン | リンネル村…レイアやメルディがいるところだ。どんな人達だったんですか? |
男 | 男女二人組で、女の方は可愛らしい子だったんだが、男の方がその子の言いなりで… |
ヴェイグ | 男女二人組… |
男 | とにかく本当に助かった。それじゃあ、俺はそろそろ行くよ |
ミラ | 気をつけて行くのだぞ |
ミクリオ | 僕達も行こうか |
ヴェイグ | … |
エリーゼ | ヴェイグ?どうかしましたか? |
ヴェイグ | いや…とにかく急ごう |
scene2 | 広がる波紋 |
スレイ | この辺り…前に通った時より晶化が進行したように感じないか? |
エリーゼ | はい…。それに大きな結晶も増えているような気がします |
ミクリオ | 僕達がここを通ったのはカン・バルクでの天啓の儀式の前だ。そんな短期間に…? |
ミラ | …何だ、この感じは… |
スレイ | どうかした?ミラ |
ミラ | マナに違和感を感じる… |
エリーゼ | マナに…?ミラ、前にもそんな事を言ってましたよね |
スタン | ああ、確か結晶の正体がマナだってわかった時の話だよな |
ミラ | いや、あの時とはまた違う…。マナそのものに勢いがないような… |
ルドガー | マナの勢い? |
ルドガー | …おっと、誰か来たみたいだ |
男1 | この辺りも晶化が酷くなってきたな… |
男2 | 全くだ…。晶化に追われて村ごと移住したってところもあるって聞くもんな… |
ライラ | 今のお話、私達だけでなくみなさんも同じように感じているようですわ。それに、村ごと避難なんて… |
| |
スレイ | 天啓にあった通りに晶化が進行しているのか…? |
スタン | 天啓は仕組まれたものの可能性が高いって話だったけど… |
ゼロス | 前にも言ったが、石碑自体が本物なのは俺が保証するぜ。偽物だと天晶石は反応しねーからな |
ミクリオ | そもそも、晶化現象自体、仕組んで起こせる事じゃなさそうだしね |
ティア | そうね。でも、天啓が本物だろうと偽物だろうと私達のすべき事には変わりないわ |
ティア | そこに兄さんが関与し、よくない事を企んでいるなら何としても止めなくては |
| |
エリーゼ | ティア… |
ゼロス | 全く…兄貴は妹を守るってのが当たり前のはずなのによ |
ティア | … |
ゼロス | 俺だって妹の事を守れてる、とは言いきれねぇし、ヴァンにも何か事情があるのかもしれねぇが |
ゼロス | 妹のティアちゃんに刃を向けるなんて…やっぱり許せねぇ |
スタン | うん…。俺もリリスと戦うなんて… |
スタン | …そんな事したら確実に返り討ちに遭う気がする… |
ミラ | そうだな。リリスの腕は相当なものだった。潜在能力で言えばスタン以上かもしれん |
ゼロス | スタン以上って…それどんな妹だよ… |
エリーゼ | でも、兄弟って何だか憧れちゃいます |
エリーゼ | わたしには兄弟がいないので…。みんなの話を聞くと、少しうらやましいです |
ミラ | ふむ…ならば私を姉、ジュードを兄と思えばいい |
エリーゼ | ミラとジュードを…ですか? |
ミラ | エリーゼのような妹なら、私は大歓迎だ |
エリーゼ | えっ、えっと…ミラ…? |
ティポ | すごいよー!エリー、ミラ君がお姉ちゃんだってー |
エリーゼ | ありがとうございます…嬉しいです… |
ゼロス | ちょーっと待った—!ミラさまだけずるいぜ! |
ゼロス | だったら俺さまも、エリーゼちゃんのお兄さまになっちゃおーっと! |
ゼロス | ジュードは今いないし、俺さまは実際兄貴なわけで…きっと頼りになるぜ? |
ルドガー | お、じゃあ俺も立候補しようかな |
スタン | ルドガーもか? |
ルドガー | ああ。自分には強くて頼りになる兄がいるけど… |
ルドガー | 自分が兄という立場だったらどんな感じなんだろうって思っていたんだ |
エリーゼ | どうしましょう、ミラ。いきなり大家族になっちゃいました… |
ミラ | お前達、勝手に兄を名乗るな。まずは私に話を通してもらおう |
ライラ | ふふっ。ミラさん、それではお姉さんというより、娘を心配するお父さんみたいですわ |
ミラ | そうか? しかし、一番に姉に名乗り出たのは私だ |
ミラ | 案ずるな、エリーゼ。姉としてお前にふさわしい兄達を見定めてやるぞ |
エリーゼ | ミラったら… |
ルドガー | ははっ、こんな強いお姉さんがいちゃ俺達の入る余地はなさそうだな、ゼロス |
ゼロス | そうだなぁ…。俺さま達、お呼びじゃない感じ? |
エリーゼ | そんな事ないです、ルドガーやゼロスがお兄さんだってわたし… |
ティポ | お兄ちゃんならぼくはヴェイグ君がいいなー |
ヴェイグ | ティポが…オレの…弟…? |
ティポ | ぼくが弟じゃ…いやなの? |
ヴェイグ | 嫌というわけではないのだが… |
ティポ | もー、どっちなのー!はぐー! |
ヴェイグ | !?む、むぐぐぐ…! |
エリーゼ | あ、ティポ!ヴェイグを食べちゃ駄目です! |
ミクリオ | ヴェイグの頭を丸飲み…!?ティポは一体どんな構造を… |
スタン | ん?誰かがこっちに向かってくるぞ |
ティア | あれは…ア・ジュール兵ね。随分急いでいるようだけど、何かあったのかしら… |
スレイ | …!話を聞いてみよう |
スレイ | すみませーん!何かあったんですか? |
ア・ジュール兵1 | 何だお前達は。任務中だ、民間人は… |
ア・ジュール兵2 | 待て、その格好は…スレイ殿ですか? |
スレイ | はい。オレの事何で知って… |
ア・ジュール兵2 | 失礼いたしました。カーティス大佐からお話は聞いております |
ア・ジュール兵2 | 我々はリンネル村襲撃の知らせを受け現場に向かっているところです |
ミラ | リンネル村が!? |
ア・ジュール兵2 | ええ、先の天啓の公表以降、ア・ジュール各地で街や村の襲撃が多発しております |
ア・ジュール兵2 | 今回の襲撃もその一つかと…。それでは我々は急ぎますので、これにて… |
ミラ | 街や村が襲われているだと?一体誰がそんな事を… |
ルドガー | リンネル村って、さっき行商人が妙な人物に場所を尋ねられたと言っていたが |
ライラ | 何か関係があるんでしょうか… |
ヴェイグ | 何とも言えないが…。まさか… |
スタン | どっちにしろ、リンネル村にはレイアやメルディがいる。放っておく事は出来ないよ |
スレイ | よし。オレ達もすぐに、リンネル村に向かおう |
スタン | 頼む…二人共無事でいてくれ |
scene1 | 非情なる運命 |
スタン | ここがリンネル村だ。だけど… |
スタン | あちこち建物が崩れて…この前来た時から様子が変わってる |
ティア | 酷いわね… |
ライラ | 場所によっては被害から免れているところもあるようですが、それでも… |
ミラ | …リンネル村は以前も襲撃を受け、被害を受けた事がある |
ミラ | ようやく人々の心も癒えた頃に何故またこのような被害に… |
ゼロス | 一体どこのどいつの仕業だ。まともな人間のやる事とは思えねぇな |
ヴェイグ | 襲撃者は立ち去った後のようだが… |
スレイ | うん。ア・ジュール軍も来てるみたいだしオレ達は村の人の救助を優先しよう |
スレイ | 怪我をした人や逃げ遅れた人がまだ辺りにいるかもしれない |
ルドガー | そうだな、急ごう |
スタン | レイアやメルディは無事かな… |
ティア | 負傷者の治療はエリーゼと私で引き受けるわ。行きましょう |
| |
ティア | そっちはどうだった? |
スレイ | 怪我人の数は思ったより少なかったよ |
スレイ | 村で襲撃犯に立ち向かった人達がいたみたいで、そのお蔭で被害が抑えられたんだって |
ルドガー | 俺も、村の人から話を聞いたんだが… |
ルドガー | 何でも村を襲撃した者が、シルヴァラント兵を名乗っていたらしい |
ティア | その話、私も聞いたわ。そのせいで、みんなシルヴァラントに対する怒りを口にしている |
エリーゼ | 本当にシルヴァラントが、やったんでしょうか…? |
ゼロス | それはねぇな。確かにうちの国はア・ジュールで行った天啓の儀式に不満はあるだろうが… |
ゼロス | だからと言って、リンネル村を襲撃する理由なんてねぇし、何より動きが早すぎる |
スレイ | そうだな、オレもシルヴァラントの仕業とは思えない |
ミクリオ | わざわざシルヴァラント兵だと触れ回っているようにも思えるな。この手口、何かに似てないか? |
ティア | …バチカルが漆黒の騎士団による襲撃を受けた時ね |
エリーゼ | 何だか…すごく嫌な感じがします。見えない敵に追いつめられるような |
ルドガー | あれ…?そう言えば、スタンの姿が見えないな |
ライラ | お知り合いの様子を見に行かれるとかであちらの方へ… |
ミラ | きっとレイアのところだろう。彼女の事も心配だ、私達も行ってみよう |
| |
スタン | レイア…本当に大丈夫なのか…? |
レイア | うん、そんな心配しなくても大丈夫だよ。大した怪我はしてないし |
レイア | メルディもちゃんと治療してくれたしね! |
メルディ | はいな。メルディが腕を信じるよ! |
| コンコン |
レイア | あれ、お客さんかな?はーい、今開けまーす |
ミラ | 久しぶりだな、レイア。スタン、やはりここにいたな |
レイア | わっ、ミラ! |
スレイ | すみません…大勢でいきなり押し掛けて |
レイア | ううん、大丈夫!みんなスタンやミラのお友達? |
スタン | うん、晶化現象を調べる中で出会った仲間達なんだ |
スレイ | オレはスレイって言います |
スレイ | えっと… |
スタン | そっか、スレイ達は初めてだよな。こっちがレイアで |
スタン | そっちがメルディだ |
スレイ | よろしく、レイア、メルディ |
スタン | そうだ…ごめん、みんな勝手に行動しちゃって |
ミラ | いや、心配する気持ちはわかるさ。レイア、その怪我はやはり襲撃で…? |
レイア | そうなの。村を襲ってきた奴らと戦った時にやられちゃって… |
スタン | でも、村の人達は感謝してたよ。レイア達のお蔭で、被害はかなり抑えられたって |
レイア | そっか…。少しでもみんなの役に立ったならよかった… |
ミラ | ところで、怪我は大丈夫なのか…? |
レイア | うん!それは大丈夫!動かすとちょっと痛むけど… |
ミクリオ | 襲ってきたのは、どんな奴らだったんだい? |
レイア | 男と女の二人組だったよ。男の方が大剣使いで、女の方が鞭使い |
レイア | 変わった人達だったけどすっごく強かったよ。結局逃げられちゃったし… |
ヴェイグ | その武器…。レイア、その二人の特徴を他には覚えてはいないか? |
レイア | うーん、そう言えば戦っている時に男の人からすごい匂いが… |
スタン | …匂い? |
レイア | そうそう、すごい刺激臭なの。本人は香水だーって言ってたけど… |
ヴェイグ | …オレは、その二人に心当たりがある |
ティア | 本当なの、ヴェイグ? |
ヴェイグ | ああ。女の名はアリス、男の名はデクス… |
ヴェイグ | 奴らはメルトキオ襲撃を企てていて…クレアを人質に、オレに手を下させようとした |
ミラ | 卑劣な奴らだな… |
ヴェイグ | その二人の特徴が、これまで聞いた話と合致している |
ヴェイグ | 行商人が話していた二人組もおそらく同一人物だろう |
ゼロス | メルトキオ襲撃を企てた二人なら俺さまもクロエちゃんから聞いた事があるぜ |
ゼロス | 襲撃にヴェイグを利用しようとしていたのは初耳だけどな… |
ティア | バチカルの襲撃者とは別よね…。でも、メルトキオを襲おうとした人達がリンネル村まで…? |
ゼロス | わざわざシルヴァラント兵を名乗っていたなんて、ただの愉快犯じゃなさそうだな |
| |
女の声 | 助けて!誰かー! |
ライラ | !外から悲鳴が…! |
男の声 | みんな逃げろ!魔物の群れが襲ってきたぞ! |
レイア | 大変!すぐに何とかしないと! |
レイア | …うっ… |
ミラ | 無理はするな、レイア。ここは私達に任せろ |
スレイ | 村には怪我した人達がいる。これ以上、被害を大きくはさせない! |
ルドガー | ああ、行こう! |
scene2 | 非情なる運命 |
ゼロス | せやっ! |
| グオオオッ! |
スレイ | これで終わりだ! |
| ギャウウウウ! |
| |
ルドガー | …今ので最後か。村にこれ以上の被害が出なくてよかった |
ゼロス | しっかし、改めて見渡すとこの村も結構、晶化が進んでるな… |
エリーゼ | 原因は何でしょう…。このまま進行が続けば、天啓の通りになってしまいます… |
スタン | そうだな…。以前との違いと言えば、襲撃を受けた後って事だけど… |
スタン | 襲われたからって晶化が進行するわけでもないだろ? |
ゼロス | クロエちゃんと一緒の時に襲われた村を見た事があるけどよ |
ゼロス | 別に晶化が進行した、っていう感じはなかったぜ? |
スレイ | そうだね…。街道も晶化が進んでいたけど何も破壊されてなかったし |
ミラ | それ以外に以前との大きな違い…と言えばマナの働きが鈍くなっている事だが… |
ミラ | そうか…晶化はマナの結晶化…マナの働きが鈍れば… |
ルドガー | ぶつぶつ言って…どうしたんだ?ミラ |
| |
ミラ | …晶化が進行している原因がわかったかもしれん |
ゼロス | マジかよ…!? |
ヴェイグ | 教えてくれ、ミラ。一体何が原因なんだ? |
ミラ | まだ推測の域は出ないが…。最近の急速な晶化の進行、その原因はおそらく、マナの不活性化だ |
ゼロス | …何だ、そりゃ? |
| |
ミラ | …マナというものはこの世界に存在する全てのものが持ち合わせている生命の源だ |
ミラ | マナは人や生き物の感情の影響を受けやすく… |
ミラ | 苦しい、悲しいという「負の感情」を持つ者が増えれば、マナの勢いは落ちてしまう |
スタン | …それが「マナの不活性化」… |
ティア | なるほど…。でも、そのマナの不活性化と晶化はどう関係しているのかしら |
ミラ | その仕組みは未だ不明だが…結晶がマナである以上、晶化と無関係とは思えない |
ミラ | 現在の状況から言って、不活性化の影響を受けマナの晶化が促進されていると考えられないか? |
スレイ | それってつまり、大勢の人が不安や悲しみを感じると晶化が進行する…って事? |
ルドガー | あり得る話だな… |
ミクリオ | 大国の一つがなくなるそんな天啓に不安を覚えないはずがないからね |
ゼロス | だけどよ、ミラさま。さっき俺さまが言った村の事はどう説明するんだ? |
ゼロス | かなり酷い有様だったけどよ…晶化は進んでなかったぜ |
ミラ | マナの不活性化は局所的ではなく世界全体で起こるものだ |
ミラ | 村で悲劇的な事が起こったからと言って、その村だけマナが不活性化するものでもない |
ミラ | このところ高まりつつあった晶化現象や世界情勢の不安…それは先日の天啓の公表で飛躍的に広がった |
ミラ | マナに対する影響という点ではこちらの方が大きかったのだろう |
ゼロス | まあ、そうだよな… |
スレイ | マナの不活性化が、晶化を促進…。じゃあ、みんなの不安や恐れを取り除かないとこのままじゃ… |
エリーゼ | でも逆を言えば、みんなの負の感情を減らせば晶化の進行も抑えられるって事ですよね? |
エリーゼ | 進行の原因がわかっただけでもよかったです |
エリーゼ | せっかくミラが見つけてくれた手がかりですから…わたし、出来る限りの事をしたいです |
ゼロス | エリーゼちゃん… |
ゼロス | そうだな、よし!俺さまに任せときな |
スレイ | 任せとけって…ゼロス、何かいい手はあるの? |
ゼロス | いや、別にねーけどよ。こんないたいけなエリーゼちゃんが頑張るって言ってるんだぜ? |
ゼロス | 俺さま達がそれ以上に頑張らなくて、どうするって話だよ |
ティア | 呆れた…でも、確かにゼロスの言う通りかもしれないわね |
ライラ | はい。今の私達にはゼロスさんのこういう明るさと割り切りが必要ですわ |
エリーゼ | ありがとうございます、ミラ。ミラのお蔭で、また一歩進めた気がします |
ミラ | 当然だろう。私はエリーゼの姉なのだからな |
エリーゼ | ふふ…そうでしたね。ミラ、これからも── |
| |
ミラ | くっ…!? |
エリーゼ | ミラ? |
ミラ | 離れろ、エリーゼ! |
エリーゼ | きゃっ…! |
| |
| ピキ…! |
エリーゼ | そんな…ミラ!? |
| ピキピキピキッ…! |
スレイ | ミラが…晶化した…! |
ヴェイグ | …! |
ゼロス | …っ!何だよ、これ… |
エリーゼ | あ…ああ…そんな…嘘です… |
エリーゼ | こんな…今まで、話して… |
エリーゼ | ミラ…返事をしてください!ミラ!ミラ!! |
ティア | …エリーゼ、落ち着いて。離れた方がいいわ |
エリーゼ | 嫌です!離れません!お願いです…嘘だと言ってください…ミラ…! |
scene1 | 決意の夜 |
レイア | 宿の人が、お代は結構ですから、好きなだけ休んで行ってくださいって |
メルディ | 魔物から村を助けてくれた、感謝のキモチだって言ってたよー |
メルディ | みんなが来てくれなかったら村はもっと大変だった。助かったよ |
スタン | 当然の事をしたまでだよ。それにしても、レイアも怪我しているのにありがとう |
レイア | ほとんど治ってるしこれくらい、どうって事ないよ |
レイア | でも…ミラが晶化しちゃうなんて… |
スタン | うん…俺達も、どうしたらいいのか… |
メルディ | メルディが友達のクィッキーも晶化した…。みんなの気持ち、すごくよくわかるよ |
メルディ | 手伝える事があったら言ってな |
ティア | …ありがとう |
ヴェイグ | … |
ルドガー | まさか…あんな事になるなんて |
ゼロス | 誰も予想なんざしてなかったしな…。目の前でミラさまが、晶化しちまうなんてよ… |
スレイ | 晶化現象が起きる瞬間を、初めて目の当たりにしたけど… |
スレイ | まるで現実じゃないみたいだった。それこそ、悪い夢でも見ているような… |
ライラ | そうですわね…。私も同じように感じましたわ |
ティア | 頭では事象を理解していたつもりだったけどこんなに衝撃的なものだなんて… |
ヴェイグ | … |
ルドガー | とにかく。これから何をするにせよ、まずは俺達が気持ちを落ち着けないと |
ミクリオ | 今日はこのまま、この宿で休息を取るべきだろう |
ゼロス | 到底休める気分じゃねーけどな… |
ティア | ええ… |
スレイ | エリーゼは、戻ってこないね…。まだミラの傍かな |
ライラ | エリーゼさんは、ミラさんの事を特に慕っていましたから… |
ゼロス | そうだな…。それが目の前で晶化なんて…キツすぎるぜ |
スレイ | うん。でも、いつまでも一人にしておくわけには… |
ヴェイグ | オレが迎えに行こう |
ルドガー | ヴェイグがか?俺も一緒に… |
ヴェイグ | いや、オレに任せてくれ。その方が、エリーゼとも話がしやすい |
ルドガー | …わかった。頼んだよ、ヴェイグ |
ゼロス | ヴェイグがわざわざ話…なんて意外だな |
ルドガー | ヴェイグは家族同然の人が晶化してしまった経験があるから気持ちがよくわかるんだろう |
スレイ | 今はヴェイグに任せよう。…きっと二人で帰ってくるよ |
scene2 | 決意の夜 |
エリーゼ | … |
ヴェイグ | …エリーゼ |
| |
エリーゼ | あ、ヴェイグ… |
ティポ | エリーを迎えに来てくれたのー? |
ヴェイグ | ああ…そうだ |
エリーゼ | …ごめんなさい、ヴェイグ。心配をかけてしまってますよね… |
エリーゼ | もう行かなくちゃ、みんなのところに戻らなくちゃって、思ったんですけど… |
エリーゼ | 晶化した人や物は、どうする事も出来ないって、わかっているのに…ミラがいない事が怖くて… |
エリーゼ | どうしても…ここから離れられなくて… |
ヴェイグ | …そうか |
エリーゼ | お願いです。もう少しだけ…ここにいてもいいですか |
エリーゼ | あと…ほんの少しでいいんです… |
ヴェイグ | …わかった |
エリーゼ | ありがとうございます… |
| |
エリーゼ | ヴェイグ…わたし、何も出来ませんでした |
エリーゼ | ミラが…目の前で晶化していくのに…わたし…何も出来なかった |
ティポ | エリー… |
エリーゼ | わたしは晶化を解決したくて、旅に出たんです… |
エリーゼ | でも、いざ旅に出てもジュードやミラに助けられてばっかりで…! |
エリーゼ | 結局わたし一人じゃ…何も出来ないんです… |
エリーゼ | みんなのように、強く、なんて無理なんです…! |
ヴェイグ | … |
エリーゼ | 弱いですよね…わたし。ミラは大切な精霊が晶化してもすぐに前を向いていたのに… |
エリーゼ | わたしは今も…すっごく…怖くて…ここから動け…なくて… |
ヴェイグ | 弱い、か… |
ヴェイグ | …家族とも思っている、大切な人がそうなってしまったら動けなくなるのも当然だ |
ヴェイグ | オレも、クレアが晶化してしまった時は我を失っていた |
ヴェイグ | クレアを包む結晶を砕こうと何度も剣を振るったし、その場からすぐに動けなかった |
エリーゼ | ヴェイグも…? |
ヴェイグ | ああ。その時は、共にいたユーリやスレイ達に助けられたがしばらくは闇の中にいるみたいだった |
ヴェイグ | オレがここまで来られたのは、みんなのお蔭だ |
ヴェイグ | オレ一人では、晶化が進行する原因も突き止められなかっただろう |
ヴェイグ | エリーゼ、親しい者を失って悲しむ事が弱い、か? |
ヴェイグ | それは違う。それは当然の事だ。本当に弱いという事は自分の弱さを他人に背負わせる事だ |
エリーゼ | 他人に、弱さを…? |
ヴェイグ | ああ。自分が弱い故に、他人を傷つけたり困らせたり…他人に対する思いやりをなくす事だ |
ヴェイグ | お前は、ミラも、みんなも大切に想っている。だから弱いわけではない |
エリーゼ | だけど…ミラがいないと…一人じゃ怖くて動けなくて… |
ヴェイグ | お前は一人ではない。同じ晶化に立ち向かう者として…オレがお前と共に歩もう |
ヴェイグ | 忘れるな。ミラを大切に想うお前がいるようにお前を想う者が必ずいる |
ヴェイグ | だから… |
| |
ヴェイグ | 一人で抱え込むな |
エリーゼ | …! |
| |
エリーゼ | 不思議です…。わたしも同じ言葉をミラに言った事があるんです |
ヴェイグ | そうだったのか… |
エリーゼ | だから、今のヴェイグの気持ち、わかる気がします |
エリーゼ | そうですよね…わたしにも、心配してくれる仲間がいるんですよね |
ヴェイグ | オレだけじゃない…スレイやティア、ゼロス達だって同じ気持ちだ |
ヴェイグ | 恐れで動けないというのであれば、この手を取れ、エリーゼ |
エリーゼ | …!はい…! |
| …ギュッ |
エリーゼ | …わたし、決めました。もう、恐れません、ヴェイグ達と前に進みます…! |
エリーゼ | この手を、ヴェイグを…みんなを信じます |
ティポ | エリー、元気になったー? |
エリーゼ | はい、ティポにも心配かけてごめんなさい |
ヴェイグ | もう大丈夫そうだな |
エリーゼ | こんなところで落ち込んでいたら強いミラに笑われてしまいますから |
ヴェイグ | ミラが教えてくれた手掛かりもある。ミラも、クレアも必ず救おう |
エリーゼ | そうですね、ヴェイグ。ミラが教えてくれた手掛かり…無駄にはしません…! |
エリーゼ | ミラ…必ず元に戻します。だから待っていて… |
ヴェイグ | … |
エリーゼ | ヴェイグ、迎えに来てくれてありがとうございました |
ティポ | やっぱり頼れるお兄ちゃんだねー♪ |
ヴェイグ | …ティポのか? |
ティポ | …嫌なの?じー… |
ヴェイグ | …いや、光栄だ |
ヴェイグ | それにしても…ミラは他の人間の晶化とはすこし様子が違うな |
ヴェイグ | …というより、何だ?ミラの周りに寄り添うように別のものが晶化して… |
エリーゼ | 多分、四大精霊だと思います。いつもミラの傍についている精霊達です |
ヴェイグ | なるほど…。目には見えないものがいるという事か |
ヴェイグ | ミラの見えない仲間達も、助けてやらないとな |
エリーゼ | はい…! |
ヴェイグ | だいぶ遅くなった。みんな心配している。早く戻ろう |
| ガサッ… |
| |
| ガルルルル! |
エリーゼ | …! |
ティポ | ま、魔物だー! |
scene1 | 残された手掛かり |
ヴェイグ | 思わぬ邪魔が入ってしまったな |
エリーゼ | そうですね…。でも、これでみんなのところに帰る事が── |
スタン | あ、ヴェイグ、エリーゼ! |
ヴェイグ | スタン…それにみんなも。…どうして全員で外に? |
ゼロス | ヴェイグは迎えに行ったきり帰ってこねーし…エリーゼちゃんの事も気になってな? |
ルドガー | 魔物が出たって話もあったから、心配でいてもたってもいられなくて… |
ティア | 本当に心配したのよ。エリーゼ、大丈夫? |
エリーゼ | はい…今さっき、魔物には遭いましたけど… |
ヴェイグ | 二人で協力して倒せたから問題はない |
ティポ | ヴェイグ君とエリーはいいコンビになるねー |
スレイ | とにかく、無事でよかったよ |
スレイ | ヴェイグと一緒なら、大丈夫だろうとは思ったけど、もし何かあったらって思って… |
ルドガー | それで、全員で迎えに来たんだ。心配は取り越し苦労だったようだけど |
エリーゼ | みんな…ごめんなさい…心配をかけてしまって |
ゼロス | いいって事よ!エリーゼちゃんの気持ちは、よーくわかってるつもりだぜ |
スタン | 悲しいのを堪えて、無理して明るく振る舞う必要なんてないんだからな |
エリーゼ | みんな…ありがとうございます。…ヴェイグの言う通り、ですね |
ティポ | みんな優しいねーぼくカンドーしちゃったー |
エリーゼ | ミラが晶化した事はまだ悲しいですけど… |
エリーゼ | わたしにはミラの他にも、こんなにも多くの大切な仲間がいる… |
エリーゼ | わたしは…一人じゃないんだって改めて、そう感じました |
スレイ | エリーゼ… |
エリーゼ | ミラの時のような悲しみを、この世界からなくすために…必ず晶化現象を解決してみせます |
エリーゼ | 大切な事に気付かせてくれて、ありがとうございます、ヴェイグ… |
ヴェイグ | いや… |
ゼロス | 何なに、なんか通じ合ってない?仲良しになっちゃって…二人で何を話したんだ? |
エリーゼ | ふふっ。ひみつ、です! |
スレイ | エリーゼが少し元気を取り戻したみたいで安心したよ |
スレイ | 今日はもう休んで、明日の出発に備えよう! |
エリーゼ | はい…! |
scene2 | 残された手掛かり |
スレイ | このまま予定通りに行くなら、ア・ジュール港へ向かうんだけど… |
ヴェイグ | 村を襲ったアリスとデクスの行方が気になるな |
スタン | 何の意図があるかはわからないけど野放しには出来ないな |
ヴェイグ | ああ…放っておけば奴らはまたどこかを襲撃するだろう…。オレ達が止めなければ |
エリーゼ | そうですね… |
スタン | レイア、メルディ。村を襲撃した奴らがどっちの方へ姿を消したとか覚えてないかな |
レイア | うーん、確かア・ジュール港の方へ行ったと思う |
ティア | なら、どちらにしろア・ジュール港を目指すのがよさそうね |
ゼロス | 今のところ、情報はそれだけだしな…新しく情報を集めるにしたって人が多い港なら都合がよさそうだ |
スレイ | よし、じゃあこのままア・ジュール港へ向かおう! |
エリーゼ | レイア、メルディ…晶化したミラの事、よろしくお願いしますね |
レイア | うん!任せておいて。わたし達がしっかり見てるから |
メルディ | 安心して、行ってくるがいいよー |
エリーゼ | ありがとうございます |
エリーゼ | …ミラ、少しだけ待っててくださいね |
ヴェイグ | そろそろ、出発しよう |
| |
スレイ | ──それにしても、晶化が進行する原因は、マナの不活性化だなんて… |
ミクリオ | マナを感じ取れるミラでなければ、絶対に辿り着く事の出来ない手掛かりだったね |
エリーゼ | マナを、感じ取る… |
エリーゼ | 今思えば、ミラはあの時、自分の周りのマナの異変を感じてわたしを突き飛ばしたんですよね… |
スタン | 言われてみれば… |
スタン | じゃあ、ミラがそうしなければ、エリーゼも晶化していたかも…? |
エリーゼ | ミラが守ってくれたんですね… |
エリーゼ | わたし、ミラの分まで、一生懸命頑張らないと… |
ティポ | そうだね、エリー |
ゼロス | まずは…この状況を何とかしねぇとな |
ゼロス | 世界中の人の不安を鎮めないとマナが不活性化し、晶化現象がどんどん進行する… |
ヴェイグ | そしてそれが更なる不安を呼んで、さらに晶化を進める…。悪循環だな |
スレイ | 晶化現象を解決するために、オレ達がやらなくちゃいけない事は多い |
スレイ | まずは天啓を巡る混乱を収めて、みんなの不安を少しでも抑える事が優先かな |
ミクリオ | そうだね。それが出来れば、少なくとも晶化現象の進行を遅くする事は出来るはずだ |
エリーゼ | 大変でしょうけど…みんなとなら出来る気がします…! |
スレイ | ああ。ミラの分まで、オレ達が必ず晶化現象を止めよう |
ティア | まずは近くにいるはずのアリスとデクスを止めなくては… |
ティポ | ア・ジュール港はまだかなー? |
スタン | そろそろ見えて来るはずだけど… |
ゼロス | ん?向こうから誰かがこっちに向かって来るぞ。またア・ジュール兵か? |
ルドガー | 違う。あれは… |
旅の男 | はあ、はあ…あんた達、港へ行くのか?危ないからやめとけ! |
スレイ | 何かあったんですか? |
旅の男 | 港は今、おかしな二人組に襲われて大混乱しているんだよ |
ヴェイグ | 二人組…。武器は大剣と鞭だったか? |
旅の男 | ああ、その通りだ。キムラスカ兵だと自分で言っていたが… |
ヴェイグ | 名乗っている軍が違うな…。しかし、武器や手口から見ればアリスとデクスに間違いない |
ルドガー | ア・ジュール港まで…!一足遅かったか… |
エリーゼ | 急ぎましょう!港の人達を助けないと…きっと出来る事があるはずです! |
スレイ | ああ!見過ごすわけにはいかない…! |
ティア | !待って、みんな! |
旅の男 | ひっ…!? |
| |
| グオオオオッ! |
ミクリオ | くっ、こんな時に魔物が! |
scene1 | 港の襲撃者達 |
ルドガー | ア・ジュール港に着いたぞ。被害はどうなってる? |
ミクリオ | この辺りに目立った損害はないようだが…みんな逃げた後だろうか? |
ライラ | あちらの方から何か音が…? |
| ズドーン!ドドーン! |
ティア | すごい音…何かを壊しているような… |
エリーゼ | アリスとデクスかもしれません…! |
スレイ | 行ってみよう! |
| |
アリス | うふふ…アリスちゃん、今日も絶好調。鞭にも力が入っちゃう♡ |
デクス | 最高だよ、アリスちゃん!これでここにいる連中にも、アリスちゃんの美貌が焼付いたはずさ |
アリス | キムラスカの名前もしつこく出しといたし…仮にキムラスカが関与を否定しても疑念は残るわね |
アリス | もっともっと憎しみ合ってみーんな不安になっちゃえばいいのよ |
アリス | そうすれば、あの人の計画の実現も遠くはないわ…こんな世界とは早くサヨナラしちゃいましょ |
デクス | どこまでもお供するよ、アリスちゃん! |
スタン | 見つけたぞ!男女の二人組、あれがヴェイグが言ってた連中か? |
ヴェイグ | ああ、間違いない |
デクス | アリスちゃん、何やら胡散臭そうな奴らがやって来たぜ |
ティポ | 胡散臭い奴らに、胡散臭いって言われたー! |
デクス | しかし、思っていたより、早くに邪魔が入ったな。どうしてだ? |
アリス | んもー。デクスのせいよ!そんなくっさい香水つけてるから目立っちゃったのよ! |
アリス | このバカデクス!バカ!バカ! |
| ビシッ!ビシッ! |
デクス | ああっ、ごめん、ごめんよアリスちゃん! |
スレイ | えっ?何で仲間を叩いてるんだ? |
エリーゼ | い、痛くないんでしょうか… |
ゼロス | おいおい、聞きしに勝る変わりもんじゃねぇか… |
ヴェイグ | アリス!デクス!お前達はまだこんな事を… |
アリス | あらぁ、ヴェイグちゃんじゃない。やっぱりまた会えた♡これって運命、なのかしら? |
デクス | なっ…!?アリスちゃんとこんなぬぼーっとした奴が…!? |
アリス | デクス、うざーい。ごちゃごちゃ言うの、やめてくれる? |
ヴェイグ | リンネル村での襲撃もお前達の仕業だろう |
ヴェイグ | リンネル村ではシルヴァラント軍を名乗っていたようだが…何故、他国の名前を騙るんだ |
アリス | 何の事かしら?アリスちゃん、わかんなーい |
ヴェイグ | とぼけるな! |
デクス | お前…!アリスちゃんになんて口の利き方だ! |
アリス | …それで?ヴェイグちゃんは何しに来たの? |
ヴェイグ | …これ以上の勝手は許さない。それから、何故こんな事をするのか洗いざらい吐いてもうらう |
アリス | イヤ、って言ったら? |
ヴェイグ | 力づくでも止める |
デクス | はっ、相手になってやるぜ。ここで会ったが百年目ってな! |
ヴェイグ | … |
デクス | 覚悟しろ、このでくの坊め! |
ヴェイグ | くっ…! |
エリーゼ | させません!ティポ、行きますよ! |
ティポ | うん!とりゃー! |
デクス | ぐわッ! |
ヴェイグ | …! |
ヴェイグ | …エリーゼ |
エリーゼ | 今度はわたしがヴェイグを助けます! |
エリーゼ | ヴェイグはわたしの大切な仲間ですから…! |
ヴェイグ | …そうだったな…頼む。だが…無理はするな |
エリーゼ | はい…! |
アリス | ふーん、今度はその子をお守りしてるんだ? |
アリス | あんなにクレア、クレア—って言ってたのに、乗り換えちゃったのかしら |
ヴェイグ | …クレアは晶化した。お前達から助け出したすぐ後にな |
アリス | へぇ、クレアちゃんが?ヴェイグちゃん、可哀想ー |
ヴェイグ | …クレアは必ず助け出す。お前達が何を企んでいようとな |
アリス | やだやだ、ヴェイグちゃんってほんっと暑苦しいんだから |
デクス | それに、そんなお子様とじゃあオレとアリスちゃんには敵わないぜ! |
スレイ | ちょっと待った!オレ達もいるぞ! |
アリス | あら。全員で寄ってたかってアリスちゃんに襲いかかるつもり?やだー、こわーい |
ティア | あなた達の行いは到底見過ごせるものではないわ。抵抗しても無駄よ |
アリス | 抵抗…?そんな必要、ないと思うけど? |
| |
男の声 | うわあああ!魔物の群れが襲ってきた! |
女の声 | あちこちから一斉に…!助けて! |
ゼロス | なっ…!こんな時に魔物の群れだと? |
スタン | 最悪のタイミングだ…! |
アリス | あらあら、たーいへん。どうしちゃったのかしら。うふふ… |
ミクリオ | まさか、魔物の群れも、お前達の仕業か! |
ライラ | 魔物を港におびき寄せたのですか…!? |
| ガルルルル! |
ルドガー | …!別の方からも!? |
ミクリオ | まずい、被害が広がってしまう…! |
ティア | ア・ジュール兵も応戦してるけど…数が多いわ! |
ヴェイグ | スレイ、こいつらの相手はオレがする。魔物の方を頼む! |
エリーゼ | わたしもヴェイグと一緒に戦います! |
スレイ | …わかった!ヴェイグとエリーゼはその二人を抑えてくれ! |
スレイ | 他のみんなは手分けして魔物を片付けよう! |
ゼロス | エリーゼちゃん、無茶はするなよ…! |
エリーゼ | みなさんも、気をつけて…! |
ルドガー | 俺達は向こうだ。ティア、行こう! |
ティア | ええ、これ以上被害は広げさせない…! |
ヴェイグ | … |
アリス | うふふ… |
scene2 | 港の襲撃者達 |
アリス | お仲間がいなくなっちゃったわね。それでもまだやる気なの? |
エリーゼ | わたしとヴェイグがいます…あなた達には負けません…! |
ティポ | そうだ!そうだー! |
デクス | ハッ。たった二人で勝てるとでも?笑わせてくれるぜ! |
ヴェイグ | …エリーゼは強い。お前達よりずっとな |
アリス | あら、言ってくれるじゃないどうしてそうまでして私達に向かってくるのかしら |
ヴェイグ | オレはこれ以上、クレアやミラのような、晶化現象の被害者を出したくないだけだ |
アリス | ふぅん… |
アリス | きっとヴェイグちゃん達は、争いは破壊と破滅しかもたらさないと思ってるんでしょうね |
アリス | それは違うわ。争いこそが理想を生むのよ |
ヴェイグ | 争いこそが理想を生む…だと? |
エリーゼ | それってヴァンが言っていたという言葉と同じ… |
アリス | 争ってもらうには、もっとお互い疑ったり憎しみあったりしてもらわないとね♡ |
デクス | アリスちゃんが争いを望むなら、オレはその望みを叶えるだけだからな |
エリーゼ | だから、他国の名を騙って破壊行動をしているんですか…? |
アリス | ふふ、そーいう事♪ |
ヴェイグ | 答えろ。お前達はヴァンと繋がっているのか? |
アリス | さあ?誰の事かしら? |
ヴェイグ | お前達は間違っている。理想のために多くの人が苦しんでいいというのか? |
エリーゼ | それに、こんな事を続ければ晶化が進行します…! |
エリーゼ | それだけは、絶対に駄目です!わたしが…止めます! |
デクス | アリスちゃんに何を…!させるか! |
エリーゼ | きゃっ!? |
| ズバッ!ガキーーン! |
ティポ | エリー!? |
エリーゼ | あれ、何ともない… |
デクス | くっ…! |
ヴェイグ | お前の相手はオレだ…! |
デクス | 身を挺してかばうとはな…へっ…少しはかっこいいじゃねぇか |
ティポ | ヴェイグ君ー!助かったよー! |
エリーゼ | すみません、ヴェイグ…怪我してませんか? |
ヴェイグ | 大丈夫だ、何ともない |
アリス | どうやらヴェイグちゃんとわかり合うのは、絶望的に無理みたいね |
アリス | だったら…残る答えはひ・と・つ♡ |
ヴェイグ | いくぞ、エリーゼ。…アリスの術は任せた |
エリーゼ | はい…ヴェイグは私が守ります。任せてください! |
デクス | ここで幕引きにしてやるぜ、来い、でくの坊! |
ティポ | 来るよー! |
scene3 | 港の襲撃者達 |
ヴェイグ | …はああっ! |
| ズバッ! |
デクス | ぐっ…! |
アリス | ちょっと、しっかりしなさいよデクス!押されてるじゃない! |
デクス | わかってるって…だけどこいつの剣、速い上に重くて… |
アリス | ああもう、頼りないんだから!いいわ、だったらおチビちゃんの方を… |
ティポ | エリーにチビとか言うなー! |
エリーゼ | やっ! |
| ビシッ! |
アリス | うっ…!ちょっと、いい加減に… |
ティポ | ヴェイグ君、ひるんだよ! |
ヴェイグ | これで…終わりだ! |
アリス | …! |
デクス | アリスちゃんっ! |
| ズバーーーーッ! |
エリーゼ | 今度はデクスが… |
ティポ | アリスをかばったー? |
ヴェイグ | … |
| |
アリス | デクス…! |
デクス | へへ…アリスちゃん、大丈夫かい? |
アリス | バカ…あんな体勢で飛び込んで来たら、攻撃食らうに決まってるじゃない! |
デクス | いいんだよ、オレはアリスちゃんさえ守れりゃ |
デクス | う… |
アリス | デクス、ちょっと!しっかりして! |
アリス | 最後まで守るって言ったじゃない!死ぬなんて許さないんだから! |
デクス | へへ…アリスちゃん、やっとオレの事を見てくれたね… |
デクス | ヴァンの奴に会ってからアリスちゃんは…ずっと…あいつの話ばっかりで… |
デクス | でも今は…オレに死ぬなって言ってくれる…。それだけで… |
アリス | デクス!デクス!! |
アリス | そんな…こんなのって… |
ヴェイグ | … |
| |
デクス | ぐう… |
ティポ | …ぐう? |
エリーゼ | 寝息みたいですね… |
ヴェイグ | 気を失っただけのようだな |
| |
アリス | !? |
アリス | も〜!デクスのバカ!心配かけるんじゃないわよ! |
アリス | アリスちゃん、デクスが死んだと思って取り乱したじゃない。本当、バカみたい! |
ヴェイグ | … |
ティポ | じー… |
アリス | ええと…今のやりとり、聞いてた? |
ヴェイグ | ああ |
エリーゼ | すみません…全部聞いてました… |
アリス | んもー!あの人の名前も出しちゃうし、いろいろ台無し!デクスのせいよ! |
ヴェイグ | やはりお前達は、ヴァンと繋がりがあったのだな |
ヴェイグ | 詳しい話を…聞かせてもらうぞ |
scene1 | 繋がる線 |
ヴェイグ | お前達と、ヴァンとの関係は? |
アリス | さあ、何の事かしらね? |
エリーゼ | 今更とぼけても駄目です… |
ティポ | きりきり吐けー |
ヴェイグ | では質問を変えよう…ヴァンは今、どこにいる? |
アリス | 知らなーい |
ヴェイグ | あまりふざけるようだと… |
ティポ | 容赦しないぞー |
アリス | …本当に知らないのよ。あの人は神出鬼没で私達は言われるままやってるだけだし |
アリス | 居場所なんてこっちが知りたいくらいだわ |
デクス | むにゃ…アリスちゃ〜ん… |
アリス | はぁ…のんきに寝ちゃって…何かいろいろどうでもよくなっちゃった |
アリス | 話は終わりね。これ以上、ヒントをあげるつもりはないわ |
エリーゼ | なっ…!勝手すぎます! |
アリス | だってーこのままじゃアリスちゃん、一方的に損した気分だしー |
アリス | それに…お迎えも来たみたいだしね |
ア・ジュール兵1 | 動くな! |
ア・ジュール兵2 | 港湾施設破壊の容疑で、お前達を拘束する |
アリス | あーあ、こうなっちゃったら逃げるのはさすがに無理かな。デクスもこんなだし |
デクス | ぐう…アリスちゃ…ぐむっ… |
アリス | も〜、さっきから私の夢を勝手に見ないでよ!気持ち悪い! |
ヴェイグ | ア・ジュール軍か。こっちに来たという事は、スレイ達が魔物を… |
ア・ジュール兵2 | ええ、スレイ殿をはじめ、みなさんのご活躍もあって、港の被害は最小限に抑えられました |
エリーゼ | よかったです… |
ア・ジュール兵2 | 我々は陛下の命を受けて、各地で騒動を起こしていた者達を追っておりました |
ア・ジュール兵2 | あの二人はカン・バルクへ連行し、厳しく取り調べさせて頂きます |
アリス | …というわけで、残念だけどヴェイグちゃん達とのお話は、こ・こ・ま・で♪ |
エリーゼ | 全然悪びれていませんね… |
ヴェイグ | あの調子じゃ、ここで締め上げても何も言わないだろうな… |
ヴェイグ | 後はア・ジュールに任せよう |
スレイ | ヴェイグ、エリーゼ!大丈夫だったみたいだね。怪我はない? |
ヴェイグ | ああ。それよりも話したい事がある |
スレイ | アリスとデクスが、ヴァンと繋がってる…? |
ティア | あの二人まで… |
ヴェイグ | 詳しい事は口を割らなかったが…間違いない |
ゼロス | …って事は、あの二人と繋がってるっぽい事を言ってたシンクもヴァンの仲間って事か? |
ミクリオ | そう考えるのが自然だろうね |
ヴェイグ | アリスとデクスは、他国の軍を名乗り、各国の不信感を煽り、争いが起きる事を望んでいた… |
ヴェイグ | ヴァンはアリス達を使って晶化を進行させようとした、とは考えられないか? |
スレイ | 争いが多くなれば、それだけ多くの人が負の感情を持つし、結果的に晶化が進行するもんな… |
ルドガー | 晶化の進行…天啓の一節にも繋がる |
ルドガー | まるで、天啓の通りになるようにヴァンが行動しているみたいだ |
エリーゼ | それにアリスも口にした争いこそが理想を生む、というヴァンの言葉… |
エリーゼ | わたしは、晶化を進行させて理想を果たす、という意味に思えるんです… |
ティア | 兄さんは、わざと晶化現象が進むように仕向けている…? |
ティア | だけど晶化現象を進める事で実現する理想なんて… |
スタン | 本当の事はまだわからないけどヴァンのやっている事が晶化の進行に繋がる事は事実だ |
ルドガー | 晶化に天啓…ばらばらだった線がヴァンへと繋がってきた感じがするな |
| |
アニス | みなさん、無事に合流出来たみたいですね |
エリーゼ | あなたは…? |
アニス | ア・ジュール軍所属の軍人、アニス・タトリンでーす♪ |
アニス | スレイやティアとはちょっとした知り合いってとこなのです |
ティア | アニス、あなたがア・ジュール軍の増援部隊を指揮していたのね |
アニス | へへーすごいでしょ!陛下と大佐に、国内の治安回復の任務を任されたんだもんね |
ゼロス | 俺さま達が魔物と戦ってる時に颯爽と登場して、戦いに協力してくれたのよ |
アニス | 怖かったですけどぉ…ゼロス様のために、私、頑張っちゃいました♪ |
ゼロス | あぁ、本当に助かったぜぇ!ア・ジュール港に常駐している兵と俺さま達だけじゃ厳しかったからな |
アニス | きゃわ〜ん♪お役に立ててうれしいですぅ |
スレイ | …ミクリオ、アニスってさっきの戦闘中、「てめー、ぶっ殺す!」とか言ってたよな? |
ミクリオ | ああ、僕も聞いた。それに、今の彼女は僕達と話す時と様子が違う |
ミクリオ | ゼロスが名家の出身だと聞いてからあの調子だね |
ティア | ちょっと、アニスったら… |
アニス | ぶー…ティアのケチ。玉の輿のチャンスなんだよ?ちょっとくらいいーじゃん |
アニス | はぁ…本当はもっと早く到着する予定だったんですけどー |
アニス | あちこちで、他国の軍を騙った連中が暴れてるから、もう大変で |
アニス | 取り締まりはしないといけないし、住人の誤解も解かないといけないし |
アニス | やる事が多すぎて、あちこちたらい回し!大佐ってば人使い荒すぎ! |
ライラ | まあ…。リンネル村やこの港だけではないんですね |
アニス | でも、ようやく指示を出していたリーダー格の二人を捕縛したし少しは収まると思います! |
ア・ジュール兵 | お話し中、すみません。ご報告が… |
アニス | 報告?何なに… |
アニス | うんうん…わかった。じゃ、よろしく |
スレイ | 何かあったのかな |
ミクリオ | まさかまたどこかで、騒動が起きたっていうんじゃないだろうね? |
アニス | うん、当たり。今度は他国ですがシルヴァラントのメルトキオで大規模な暴動が… |
ゼロス | メルトキオで!?おいおい、マジかよ… |
スタン | どうして次から次に… |
ルドガー | ここまで立て続けに起こると作為的なものを感じる…。またヴァンが関わっているのかも |
スレイ | だな…オレ達もすぐ、メルトキオに向かおう |
アニス | そう言うと思って、軍の船を手配しときました!乗ってってください |
ライラ | そんな事まで…よろしいのですか? |
アニス | みんなには協力を惜しまないようにって、陛下から仰せつかってますから♪ |
アニス | 国の看板を背負ってるこっちと違って、みんなは自由に動けますしー |
アニス | でも、その分しっかり働いてくださいね♪ |
スレイ | そうだ、アニス。ガイアス陛下に伝えて欲しい話があるんだ |
アニス | ほえ?何ですか? |
スレイ | 晶化の進行が、マナの不活性化に原因があるみたいで… |
アニス | マナの不活性化…? |
スレイ | うん。マナの働きが悪くなるって事なんだけど |
スレイ | それは人々の不安や恐れから生まれていて、それが晶化現象の進行を早めてる… |
スレイ | そうミラが突き止めたと、伝えてもらえないかな |
ゼロス | あと、今捕まえた二人の他に緑の髪で、仮面を被ったシンクって奴にも注意しろってな |
ゼロス | そいつもヴァンと、繋がってるはずだからよ |
アニス | マナの不活性化に、シンクか… |
アニス | うん、伝えておきます |
アニス | じゃ、私はこの辺で。アリスとデクスをカン・バルクに連れて行きます |
スタン | ああ、気をつけてくれ |
アニス | はい!あ、ゼロス様〜。さみしいですけど、また近い内にお会いしましょうね♪ |
ゼロス | アニスちゃんならいつでも大歓迎!またな〜? |
エリーゼ | それじゃ…アニスの手配してくれた船に乗りましょう |
ヴェイグ | ああ、そうだな |
scene2 | 繋がる線 |
ライラ | シルヴァラント港に、到着したようですわ |
スレイ | ア・ジュール軍の方には本当にお世話になりました |
スレイ | ガイアス陛下やジェイドさんにもありがとうございますと伝えてください |
ア・ジュール兵 | メルトキオの暴動は、かなり規模が大きかったと聞いております |
ア・ジュール兵 | くれぐれもご用心を |
| |
ゼロス | まさかア・ジュールの軍船に乗って、帰国する事になるとは思わなかったぜ |
エリーゼ | 前にミラと一緒に来た時と同じで港には人がたくさんいますが… |
ミクリオ | でも…何だか以前の活気がある雰囲気ではないね |
スレイ | あぁ…みんなどこか表情が暗い感じがする |
ルドガー | メルトキオで起きた暴動の影響なのか…? |
スタン | みんな不安そうだな。前と同じ港は思えない… |
ヴェイグ | 早く何とかしなければ… |
ゼロス | こんなところで時間を潰してる余裕はねぇ。早くメルトキオに向かおうぜ |
| |
ゼロス | お前ら、歩くのが遅いぜ。これじゃあ日が暮れちまう |
ルドガー | さすがに急ぎすぎじゃないか?全体のペースを考えた方がいい |
ゼロス | …悪い、少しゆっくり行こう |
スタン | ゼロス、焦ってるみたいだな |
ゼロス | メルトキオは俺さまの故郷だからな。よりにもよって王都で…暴動なんて信じられねぇくらいだ |
ゼロス | …セレス、無事でいてくれよ |
スレイ | 港にいた人達を見ても思ったけど、早く争いを止めないと、不安が広がる一方だ |
スタン | そして広がった不安や悲しみはマナの働きをどんどん鈍らせる… |
エリーゼ | そう…ですよね |
エリーゼ | やっぱり急ぎましょう。わたし、頑張ります |
ティポ | でもー、ぼくはヘトヘトかもー |
ゼロス | いやいや。お前はエリーゼちゃんに抱かれてるだけじゃねーか… |
| |
男の声 | うわあああ!?魔物が! |
ティア | 誰かが魔物に襲われているわ! |
スレイ | 助けよう! |
scene1 | 動乱のメルトキオ |
ゼロス | 大規模な暴動ってわりには街は随分静かだな… |
ルドガー | すでに暴動は治まった後って事か? |
ルドガー | でも、そこかしこで建物が崩れたり地面に瓦礫が散乱している |
ティア | やっぱり、何か大きな騒動があったのは間違いないようね |
ヴェイグ | 兵士の姿が多いな…。軍が鎮圧したようだが… |
ライラ | 逆に街の人はまばらですね…。出歩いている人達も表情が暗いようです |
ミクリオ | みんな、屋内に潜んで事態の推移を見守っているのかもしれない |
エリーゼ | 前に来た時は、人もたくさんいて、華やかだったのに…こんなになってしまうなんて… |
ゼロス | 何でこんな事に…。ちょっとその辺の兵士に話を聞いてみるか |
ゼロス | なぁ、ちょっといいか? |
シルヴァラント兵 | これは神子様…!ご無事でしたか? |
ゼロス | ああ、問題ねーよ。それより暴動の件、詳しい話を聞かせてくれるか |
シルヴァラント兵 | はい、この度のコレット様の誘拐や、他国での天啓の儀式の不始末でフィリア司祭が糾弾され… |
シルヴァラント兵 | それに煽られた一部の兵や民間人が騒ぎを起こしたのです |
ゼロス | フィリア司祭が…!?何で彼女がそんな目に遭わなきゃなんねぇんだ |
ヴェイグ | 暴動の主導者はいるのか? |
シルヴァラント兵 | はっきりした事は不明なのですが一部ではグレバム元大司祭が関わっているのでは…という噂が |
ゼロス | グレバム…あいつか。まぁ、あり得そうだな… |
スタン | そのグレバムって言うのは誰なんだ? |
ゼロス | うちの大司祭様だったんだ。前に教団を牛耳っていた…な |
ゼロス | フィリア司祭の師匠みたいなもんだ |
ルドガー | フィリア司祭の師匠だって?聞く限りだと、いい人には思えないけど… |
ゼロス | 昔は敬虔な信者だったらしいが…いつしか権力第一になって、今じゃ信仰なんか二の次さ |
ゼロス | 何やかんやで教団を追い出された後も地位を奪われた、ってフィリア司祭によく突っかかってたもんよ |
ティア | 酷い話ね…。仮にも聖職者なんでしょう? |
ゼロス | 聖職者が全員、聖人君子ってわけじゃねーし。世の中ってのはそんなもんだ |
シルヴァラント兵 | おお!神子様。お戻りになられたのですね |
ティポ | ゼロス君、有名人だねー |
シルヴァラント兵 | ここでお会い出来てよかったです。セレス様も、神子様の安否を大変気にかけておいででした |
ゼロス | …!よかった、無事だったんだな |
シルヴァラント兵 | 勿論です。今は街の郊外の安全なところに避難しておられます |
シルヴァラント兵 | 今からご案内いたします。セレス様も喜ばれるでしょう |
スタン | 行って来いよ、ゼロス。妹が心配なんだろう |
ヴェイグ | …その事があるから、シルヴァラント港からここまで急いで来たのだろう |
ゼロス | すまねぇな、恩に着るぜ。セレスの無事を見届けたら、すぐ戻ってくるからよ |
ゼロス | つーわけで、案内を頼むぜ |
シルヴァラント兵 | こちらです |
スレイ | オレ達はオレ達で、もう少し街の様子を調べよう |
ミクリオ | フィリア司祭に直接話が聞けないだろうか? |
ルドガー | じゃあ、神殿の方へ行ってみるか |
ティア | 騒ぎのあった後だし、どうなってるかわからないけど…とにかく当たってみましょう |
scene2 | 動乱のメルトキオ |
ゼロス | おいおい、どこまで行く気だ? |
ゼロス | どんどん人気のない方へ向かってるみてーだが…本当にこっちにセレスがいるのかよ? |
シルヴァラント兵 | … |
ゼロス | …いつの間にか兵の数も増えてるみてぇだが…。何を企んでんだよ? |
シルヴァラント兵 | このまま私達と一緒にお越しください、神子様 |
ゼロス | 嫌だ、って言ったら? |
シルヴァラント兵 | どうか従ってください。手荒な真似はしたくありません |
ゼロス | 野郎の言う事を聞く趣味はねぇよ |
| |
シルヴァラント兵 | 神子をこの場で拘束する!構えよ! |
ゼロス | ちっ…!邪魔するからには怪我するのは覚悟しろよ…! |
??? | お待ちください! |
ゼロス | あ、あんたは…! |
| |
スレイ | フィリア司祭、神殿にいなかったな |
ライラ | どこに行かれたのでしょう…。心配ですわ |
スタン | 街の人にも、話を聞いてみたけど今回の騒動には戸惑っている人が多かったな |
ヴェイグ | そもそも何が起きているのかさえ、把握出来ていない人も多い… |
エリーゼ | このままでは、不安な気持ちばかりが募ってしまいますね… |
| |
??? | そこのお前達、止まれ! |
ティア | シルヴァラントの兵士に…誰かしら。軍人ではないようだけど… |
??? | そこの者達。我々に同行願おうか。抵抗するならば捕える |
スレイ | えっ、ちょっと…どういう事ですか? |
ミクリオ | あなたは一体…? |
ティポ | いきなり、何だー! |
シルヴァラント兵 | 無礼な!グレバム様に何という口を! |
ティア | グレバム…!ゼロスが話していた人ね |
エリーゼ | この人が暴動を…? |
ルドガー | …すみません、何故俺達が同行を求められているのか理由を聞かせてください |
グレバム | お前達はア・ジュールの軍船に乗って入国したとの情報がある |
グレバム | 敵国の間者であろう。大人しく投降しろ! |
スレイ | 敵国ってどういう意味ですか?ア・ジュールとシルヴァラントは、戦火を交えていないんじゃ… |
グレバム | 我々シルヴァラントの民の精神的支柱たる、天啓 |
グレバム | その天啓を貶める国など、敵国も同然だ |
グレバム | 更には、ア・ジュール軍を名乗る者共が、シルヴァラント領の街や村を襲ったという話も聞く |
グレバム | 無辜の民を襲うとは、許しがたき蛮行である! |
エリーゼ | アリスとデクス達の事ですよね… |
ティア | グレバム様、誤解です。各地の襲撃はア・ジュールを騙る別の者がやった事… |
ティア | その主導者の二人はア・ジュールで捕らえられました |
スタン | それに、ガイアス陛下は天啓を侮辱するつもりなんてありませんでした |
グレバム | ア・ジュール側からなら何とでも言えよう… |
ミクリオ | 僕達はア・ジュールの人間ではないんだが… |
グレバム | 敵の甘言に耳を貸すものか!もうよい。兵士達よ、この者共を捕らえよ! |
シルヴァラント兵 | はっ! |
ルドガー | 聞く耳は持ってくれないようだな…! |
ヴェイグ | ここで捕まるわけにはいかない。やるしかないか…! |
scene3 | 動乱のメルトキオ |
グレバム | 貴様ら…見苦しく抵抗しおって |
グレバム | それだけ抵抗するのは、やはりやましいところがあるからだろう! |
ティポ | 言いがかりはヤメロー! |
スタン | 俺達は暴動が起きたって聞いて様子を見に来ただけなんだ! |
グレバム | 増援を回せ!さっさとこいつらを捕えるのだ! |
ミクリオ | …!まずいぞ、スレイ。後ろからもシルヴァラント兵が… |
スレイ | 囲まれる…! |
スレイ | ん?でもあれは… |
シルヴァラント兵 | グレバム様、残念ながら増援は諦めた方がよろしいかと |
グレバム | お前達…私の配下の兵ではないな |
グレバム | !それにお前は… |
フィリア | グレバム様、この方達の事は私にお任せくださいませんか |
エリーゼ | フィリア司祭… |
フィリア | 確かにこの方々はア・ジュールから渡ってこられましたが、いずれも私のよく知る人達です |
フィリア | 我々シルヴァラントにも協力していただいています。怪しい方などいらっしゃいませんわ |
グレバム | そうは言えど、この時勢だ。ア・ジュールの間者かもしれん。厳しく尋問を… |
ゼロス | 尋問なんて必要ねーぜ。こいつらの身元は、神子の俺さまも保証すっからよ |
スレイ | ゼロス!フィリア司祭と一緒だったのか |
ゼロス | 俺さまも危ういところをフィリア司祭に助けてもらったんだ |
グレバム | 神子殿…ご無事でしたか |
グレバム | フィリア、お前はいつまでたっても小娘だな |
グレバム | 神子殿を好き勝手に行動させ、あまつさえ得体の知れぬ者達と通じ… |
グレバム | それが我が国に付け込まれる隙を与えるのだ。しっかり監視しておくんだな |
フィリア | グレバム様… |
フィリア | …ご心配、ありがとうございます。心して務めて参ります |
グレバム | ふん、綺麗事ばかりではどうにもならんぞ。おい、お前達 |
スレイ | は、はい。オレ達ですか? |
グレバム | 今回は見逃してやるが、即刻この国から立ち去れ。今度会ったら問答無用に捕らえるぞ |
| |
ライラ | まぁ…すごい剣幕でしたわね… |
フィリア | すみません、お見苦しいところを…。あなた達にも我が国の者がご迷惑をおかけしました |
ヴェイグ | フィリア司祭のせいではない。気にするな |
フィリア | いえ、私がもう少ししっかりしていればこんな事には… |
スレイ | でも、ちょうどよかった。オレ達、フィリア司祭に会いに行くところだったんです |
スレイ | さっき神殿に行ったけど留守で… |
フィリア | そうだったのですね。それは失礼しました |
フィリア | 今から神殿に戻ります。よろしければ、一緒に参りませんか? |
スレイ | お願いします |
| |
ゼロス | さて、と。フィリア司祭、俺さまがいない間に何があったか話してくれねぇか? |
フィリア | はい…。実は、先日ア・ジュールで天啓が公表された後この国では大きく事情が変わりまして |
フィリア | 前々から、兆候はあったのですがグレバム様を中心とする勢力がついにしびれを切らしたようです |
ゼロス | …えーっとだな、他の国の人間にもわかるように説明すると |
ゼロス | うちの国は信仰に厚い国だが、それはそれとして王家中心に他国と協調して平和的に自国を守ってる |
ゼロス | でも中には、信仰深いあまり、過激な考えや行動に出る奴もいて… |
ゼロス | その急進派の代表格がグレバムだ |
フィリア | …そして、急進派の方々は天啓を侮辱したとしてア・ジュールに強く反発を覚えたようです |
フィリア | 先の儀式で判明した天啓の内容はア・ジュールへの天罰と捉え |
フィリア | ア・ジュールは滅ぶべきだと主張される方もいらっしゃいます |
スレイ | そんな…。だからオレ達がア・ジュールから来たと知ってあんなに警戒をしたのか |
ティア | では、何故フィリア司祭が急進派の目の敵になるんですか? |
ゼロス | グレバムは教団のトップに返り咲きたいんだよ。それには穏健派のフィリア司祭が邪魔なんだろ |
フィリア | 私は、神に仕える身です。国王陛下と協調し争いを避ける道を選んでいるだけです |
フィリア | グレバム様は、本来信仰心に満ち、みなを牽引する立派な御方だったのですが… |
フィリア | さる事情で教団を去られた後は、権力者と結びつきを深められたようで… |
フィリア | これまでは国王陛下が上手く取りなしておられたのですが |
フィリア | 昨今の騒ぎに乗じる形で、発言力が増してきています |
ティア | 厄介ね |
スレイ | ところで、グレバムはゼロスを見て随分驚いていたみたいだけど…ゼロスも捕まりそうになったのか? |
ゼロス | ああ。偽の兵士に騙されてな |
ゼロス | しっかし、ちょうどいいところにフィリア司祭が現れて助かったぜ |
ルドガー | ゼロスを捕まえてどうするつもりだったんだ?ゼロスはこの国の人間なのに… |
ゼロス | 急進派にとっちゃ、神子は象徴みたいなもんだからな。自分の手駒にするつもりだったんだろ |
スタン | 怖いな…。じゃあ、結局妹のセレスには会えなかったのか? |
ゼロス | まあな。でもフィリア司祭がちゃんと保護してくれてるらしい。さすが、頼りになるぜ |
フィリア | 国王陛下が、騎士団にグレバム様を監視するよう命じられていて… |
フィリア | その関係で私の下にも、情報が届いていたので、先回りして動く事が出来たんですわ |
ゼロス | 騎士団って事は、クラトスやクロエちゃんが? |
フィリア | はい、あのお二人はグレバム様の動向を探っていらっしゃるようです |
エリーゼ | グレバムを捕まえる事は出来ないんですか…? |
フィリア | グレバム様が、暴動を主導した明確な証拠もないので… |
フィリア | それに今は、急進派に対する民衆の支持も、高まっていますし |
ミクリオ | 下手にグレバムを拘束したら、また暴動が起きかねないね |
フィリア | はい…少なくとも国王陛下は、そうお考えのようです |
フィリア | ですから私としても、今回のように、出来る範囲で目を配るくらいしか… |
フィリア | 何とか穏便に、事が収まるようにしたいのです |
| |
グレバム | 忌々しい連中だが…しばらくは泳がせておくか… |
シンク | とんだ邪魔が入ったみたいだね |
グレバム | む…シンクか |
シンク | そんな構えなくてもいいよ。別にあんたを非難しに来たわけじゃない |
シンク | アリスやデクスを倒したと言っても所詮あいつらは烏合の衆。放っておけばいいさ |
シンク | それより、準備が出来たよ |
グレバム | 本当か?ではすぐ出立の準備に取りかかるとしよう |
グレバム | ふふふ…いよいよだ。私が再び表舞台に返り咲く時が来た |
グレバム | 天啓を成し遂げ、私が民衆の支持を勝ち取り、この国を立て直す…! |
グレバム | そのために、お前にも存分に働いてもらうぞ、シンクよ |
シンク | ああ、任せておきなよ |
scene1 | 不穏の種火 |
フィリア | ──そうですか…ア・ジュールでも騒動が… |
フィリア | キムラスカやウィンドルでも、他国の兵を名乗る謎の勢力が、各地を襲撃していると聞きますが… |
スレイ | その襲撃を行っていた実行犯がオレ達がア・ジュール港で捕まえた二人なんです |
ヴェイグ | 今はア・ジュール軍で取り調べを受けているはずだ |
ルドガー | しかし、各地で起こった騒動が全て彼らの仕業とは限らない。他にもこんな事が起こったら… |
エリーゼ | 不安や悲しみを感じる人が、増えて晶化現象が進んでしまいます… |
フィリア | 先ほどのお話にあったマナの不活性化…ですね |
フィリア | 確かに我が国でも、晶化によって住む場所を追われた人々がメルトキオへと避難してくるなど── |
フィリア | 晶化の進行を感じる出来事はこのところ多くなってきていました |
フィリア | 時期的にはちょうど新たな天啓が公表された後からです |
フィリア | 人の負の感情と、マナの不活性化… |
フィリア | …確かにミラさんの見つけた手掛かりは正しいもののように感じますわ |
エリーゼ | ミラ… |
フィリア | …そう言えば、ゼロスさん。先ほどのお話で名前の出たシンク…という者 |
フィリア | 実はグレバム様とそのシンクに似た外見の者が接触しているという情報が |
ゼロス | シンクだと?この街にいるかもしれないのか… |
ルドガー | …シンクはアリス達と同様、ヴァンに繋がっているという話だったな |
スレイ | グレバムとシンクが通じているという事はヴァンとも関係がありそうだね |
フィリア | グレバム様の影響力が強くなったのも、その者が現れてからと言う事もあり── |
フィリア | クロエさんが中心となって行方を追っているのですが、手掛かりすらつかめていません |
ティア | 兄さんはグレバムまで動かそうと…? |
シルヴァラント兵 | 司祭様。グレバム様が、手勢を連れて街を出たとの情報が |
シルヴァラント兵 | 目的は不明ですが、シンクらしき者も現れたとか |
フィリア | それは…!すぐ陛下にご報告しないと |
フィリア | すみません、みなさん。この件と、先程伺った情報をお伝えするため私は王宮に参ります |
| |
スレイ | なら、オレ達は、グレバムの後を追おう |
ミクリオ | そう言うと思った。メルトキオを出たらグレバムは容赦なく向かってくるぞ |
スレイ | うん。わかってる。覚悟の上だよ |
ティア | 私も、スレイに賛成よ |
ティア | どんな些細な手掛かりでも、兄さんに繋がりそうなら確かめないわけにはいかないわ |
ゼロス | グレバムの真意も、確かめないといけねーしな。メルトキオを出て何するつもりだか |
ティポ | 行くしかないねー |
| |
フィリア | グレバム様の追跡でしたら、我が国の騎士も… |
ゼロス | いや、ヴァンの影があるんだ。敵はグレバムだけじゃねぇ |
ゼロス | 街の警備、それに民衆達の不安…それを考えると、今騎士団は出来るだけ街に残しておくべきだ |
ゼロス | だから、グレバムの事は俺さま達に任せて、まずはこの国の安全を第一に考えてほしい |
フィリア | わかりました。この街は勿論、近隣地域の安全は私達の方で必ず何とかします |
フィリア | グレバム様の事は一旦あなた方にお任せします |
ゼロス | ああ。その代わりと言っちゃなんだが…セレスの事は頼んだぜ |
フィリア | ええ、勿論です。セレスさんは私が責任もってお守りいたします |
スレイ | よし、それじゃ出発しよう。グレバムを追いかけなくちゃ |
ライラ | そうですね |
scene2 | 不穏の種火 |
スレイ | 騎士団の情報によると、グレバムはシルヴァラント港へ向かったみたいだ |
ライラ | 急いで向かいましょう |
ミクリオ | フィリア司祭と話が出来てよかった。シルヴァラントの騎士団も助力してくれるよう伝達するそうだし |
スタン | ロイドやクロエ、クラトスさんもいるし、心強いよな |
ゼロス | おいおい、頼れるのって、ロイドくん達だけだと思ってる?俺さまを忘れてもらっちゃ困るぜ〜 |
エリーゼ | ゼロス…フィリア司祭にセレスの話をしている時はすごく真剣だったのに |
ティポ | すっかりいつものゼロス君に戻っちゃったねー |
ゼロス | それは違うなぁ、エリーゼちゃん。俺さまはいつだって本気よ? |
ルドガー | それにしても…グレバムはこれから、何をする気なんだろう |
ティア | 手勢を率いて港へ向かっているなら他国に向かおうとしている可能性が高いわね |
ミクリオ | グレバムとわずかな手勢だけで他国とやり合うとは考えにくいが… |
ミクリオ | ヴァンやシンクの影もある。実際の戦力は未知数だ。油断は出来ないね |
スレイ | うん、わかってる!グレバムの真意を確かめよう! |
エリーゼ | 頑張りましょう…!どんな事が待ち受けていてもわたしはみんながいれば乗り越えられます! |
ライラ | そうですわね |
ライラ | それに、フィリア司祭も話していましたが、晶化で住む場所を失った人達も出始めています |
ライラ | 人々の恐怖、悲しみが強くなる…そんな状況だからこそ… |
スレイ | 導師の出番、って事だよね。わかってるよ、ライラ、オレはそのために導師になったんだ |
ライラ | はい! |
スレイ | …よし。みんな、一刻も早くグレバムの元に急ごう! |
Name | Dialogue |
scene1 | 追走 |
スレイ | 騎士団の情報で港の方に進んできたけど… |
エリーゼ | グレバム達の姿は見えませんね… |
スタン | 奴らの目的もはっきり分からないし、気持ちばかり焦るな |
スレイ | メルトキオを出る直前にシンクに接触したみたいだって話だったけど |
スレイ | やっぱり今回もシンクやヴァンが裏で動いてるって事なのかな? |
ゼロス | 教団を抜けた後でも、グレバムは国内では影響力があったからな。利用価値はあるんだろ |
ヴェイグ | …アリスが口にしていた争いこそが理想を生む、という言葉… |
ヴェイグ | グレバムも奴らと同じなら混乱や争いを起こそうとしているのだろうな |
ミクリオ | グレバムを支持する人もいるって事は一部のシルヴァラントの兵や民衆も動かせるかもしれないね |
スタン | ア・ジュール港の時よりも大きな騒動になりかねない… |
ミクリオ | ああ…。スレイ、グレバムを見つけた後はどうするんだい?わかってるとは思うけど… |
スレイ | うん…争いなんか起こしたら晶化現象を進行させる原因になってしまう… |
スレイ | 暴動や混乱を起こそうとしてるならその前に何とか説得出来ればいいんだけど… |
ミクリオ | それは難しいかもしれないな。スレイ、最悪の場合も考えておいた方がいい |
ルドガー | なら、グレバムがどの程度の手勢を率いているのか、前もって調べておいた方がいいかもな |
ミクリオ | そうだね。でも、奴の後ろにはヴァンやシンクがついているかもしれない。慎重に事を進めよう |
ヴェイグ | 彼らがこの街道を通ったのなら、目撃者も大勢いるはずだ… |
エリーゼ | そういう人達に、話を聞けるかもしれませんね |
スレイ | そうだね。誰かいたら声をかけてみよう |
scene2 | 追走 |
スレイ | この辺りの街道は人が結構いるな。話が聞けそうな人は… |
ミクリオ | スレイ、向こうの人に聞いてみるのはどうだろう? |
スレイ | 行商人…かな?声をかけてみよう |
スレイ | あの、すみません。この辺でシルヴァラント兵の集団を見ませんでしたか? |
スレイ | メルトキオの方から来たと思うんですが… |
行商人 | ああ、見たぜ。二、三十人くらいの一団が港の方に向かって行ったな |
ヴェイグ | …やはり他国を攻められるほどの人数ではなさそうだな… |
エリーゼ | そう…ですね |
行商人 | …旅の途中かい?悪い事は言わねぇ、今港に行くのはやめた方がいい |
スレイ | …港で何かあったんですか? |
行商人 | さっきの話に出た兵士もそうだが、キムラスカの反乱軍もシルヴァラント港に向かってる |
ティア | 反乱軍ですって!?キムラスカで一体何が…? |
行商人 | …例の新たな天啓の発表以来、キムラスカではア・ジュール軍による襲撃事件が相次いでいてな |
行商人 | 動こうとしない本国に不安と怒りを覚えた民衆が、独自に打倒ア・ジュールを掲げて蜂起したんだ |
スタン | そんな…!ア・ジュールがそんな事するわけがない…! |
行商人 | 俺の知り合いにその反乱軍に参加してる奴がいてな。そいつから聞いたんだが… |
行商人 | キムラスカの襲撃を命令されて逃げてきたア・ジュールの少年兵士が証言したんだと |
行商人 | キムラスカを今、襲撃しているのはア・ジュールだってな |
ルドガー | その話が本当なら、酷い話だが… |
行商人 | その少年は素顔を隠すため仮面までつけているっていう話さ。ア・ジュールがよほど恐ろしいんだな |
ゼロス | 仮面の…そいつ、緑髪じゃなかったか? |
行商人 | そこまでは知らねぇな。とにかく、港の方は穏やかじゃねぇ |
行商人 | 反乱軍はキムラスカ騎士団の制止も及ばず港にまで到達してる。引き返した方が身のためだぞ |
スレイ | …忠告、ありがとうございます。あなたも気をつけて |
| |
ヴェイグ | …キムラスカの反乱軍か…。ゼロス、その少年兵というのは… |
ゼロス | 間違いなくシンクの野郎だろうな。ア・ジュールがキムラスカを襲うなんて話、振り撒きやがって |
ゼロス | キムラスカの騎士団も止められなかったなんて… |
ティア | 漆黒の騎士による王都の襲撃もあったし、各地でもそんな事があったとなると… |
ティア | キムラスカ騎士団の戦力も分散していたんでしょうね |
ミクリオ | …待ってくれ。そのシンクが動かしたキムラスカの反乱軍が港に向かっているという事は… |
スレイ | …!グレバムと港で合流するつもりなんじゃ… |
スタン | まずいな…。グレバムはキムラスカの反乱軍とア・ジュールに攻め入るつもりか? |
スレイ | それだけは止めないと…!急いでシルヴァラント港へ向かおう! |
scene1 | グレバムの行方 |
エリーゼ | シルヴァラント港までもう少し…というところですが… |
ヴェイグ | キムラスカの反乱軍とグレバムが合流するとしたらシルヴァラント港だろうな… |
ヴェイグ | 奴らが港に着く前に追いつきたいところだが |
ルドガー | ああ。港ともなれば人も増える。無関係な人は巻き込みたくないしな |
スタン | グレバムは手勢を連れて大人数で移動しているんだろ? |
スタン | なら、少人数のこっちの方が速く動けているはずだ。きっと追いつけるさ |
ゼロス | 追いついたらグレバムにはシンクについても洗いざらい吐いてもらわないとな |
ゼロス | あの仮面野郎にはでっけー借りがあるからよ |
エリーゼ | ヴァンについても何か知っているでしょうか…? |
ゼロス | どうだろうな。シンクの影はチラついてるが… |
ゼロス | グレバムは権力にご執心だ。ヴァンだかシンクはそこを上手く利用してるだけじゃねぇか? |
ルドガー | ヴァンは…権力が欲しいとか私腹を肥やしたい、とかじゃないんだよな… |
ティア | …兄さんは、何か強い信念を持って動いていると思うわ。権力とは別の… |
ゼロス | だよなぁ。それなら騎士団長の座に居座ってただろうし |
エリーゼ | …自分の理想を成し遂げるために争いをする… |
エリーゼ | 争いで生まれる理想なんて本当にあるんでしょうか… |
ティア | そんなもの、あるはずはないわ。でも…何だか、底知れないものを感じるの |
ティア | 兄さんは、私達の想像もつかない事を考えているのかもしれない… |
スレイ | ティア… |
スレイ | そうだとしても、目の前で起こる争いや晶化現象を放っておく事は出来ない |
スレイ | みんなが幸せに暮らせる世界をオレは守りたい。それが導師の役目だと思うから |
ミクリオ | …そうだね。そのためにも、早くグレバムに追いつきたいが… |
スレイ | そろそろだと思うんだけど… |
エリーゼ | あっ…見てください、向こうに大勢の人が見えます…! |
ミクリオ | シルヴァラント軍の装備…グレバムに追従した兵士達、だな |
スタン | 兵士達の中心にいるあの男は…! |
ゼロス | 間違いねぇ、グレバムの野郎だ! |
scene2 | グレバムの行方 |
スレイ | やっと追いついた! |
ゼロス | ったく手間かけさせやがって… |
グレバム | お前達は…! |
グレバム | …神子殿、これはどういう事ですかな?お見送りに来てくださったのですか |
ゼロス | 期待してもらってるところ悪いが、そうじゃないんだな、グレバムさんよ |
スレイ | あなたに聞きたい事があって、ここまで追いかけてきました |
グレバム | 言ったはずだ。即刻この国から去れ、と。それなりの処罰は覚悟の上だろうな? |
ティア | … |
グレバム | 神子殿、あなたは我が国の象徴とも言える方… |
グレバム | そのあなたが他国の間者と行動を共にしているなど民衆が何と思うか… |
ゼロス | さぁーて、それはどうだろうな?少なくとも、あんたよりは俺さまの方が国民からの信頼も厚い |
ゼロス | あんたの行動の方が、みんなはどうかと思うんじゃね?元・大司祭サマ? |
スレイ | それに、オレ達は、ア・ジュールの間者なんかじゃありません |
グレバム | 黙れ!これ以上私の邪魔をするのなら容赦はしないぞ |
ティア | お待ちください、グレバム様。兵士を連れて一体どこへ向かわれるのですか |
ティア | 国王陛下やフィリア司祭の与り知らぬところで兵士を動かしては反乱と受け取られかねないはずです |
グレバム | ほう、この私が反乱だと?笑止千万とはまさにこの事だな |
グレバム | 私の行動は全て国を想う故だ。貴様らのようなよそ者にとやかく言われる筋合いはない |
グレバム | それにフィリアなど…たまたま今の地位にあるに過ぎないただの小娘だ。話にならぬ |
スレイ | …もう一つ質問があります。あなたとシンクの関係は? |
グレバム | 知らぬわ!貴様ら、自分の立場が分かっておらぬようだな |
グレバム | 話は終わりだ。おい、お前達! |
| |
兵士 | はっ! |
スレイ | …!囲まれた! |
グレバム | 今度はフィリアの助けは入らんぞ。神罰を覚悟せよ |
グレバム | かかれ! |
ミクリオ | 仕方ない、行くぞ、スレイ! |
scene3 | グレバムの行方 |
ヴェイグ | …これで終わりだ |
ルドガー | 兵達は全員片付けた。残るはお前だけ… |
グレバム | おのれ…役立たず共が… |
スレイ | お願いします。話を聞かせてください |
スレイ | あなたが兵を連れて、シルヴァラント港に向かっているのはどうしてなのか… |
スレイ | それにキムラスカの反乱軍もまるで示し合わせたように港に向かったし、もしかして── |
グレバム | ええい!貴様らに聞かせる話はない! |
ゼロス | 何でもいーけどよ、供回りはみんな伸びちまってるんだ。いい加減観念しろよ |
ゼロス | 俺さまとしては、ついでにシンクの野郎との関係も吐いてくれると嬉しいんだけどな~? |
グレバム | ぬう… |
??? | …繋がりはあるさ。そう言えば満足かい? |
スレイ | 誰だ…!? |
ゼロス | この声…まさか…! |
シンク | 久しぶりだね、「神子様」 |
ゼロス | へっ…!会いたかったぜ、仮面野郎…! |
scene1 | 烈風のシンク |
ゼロス | シンク、探す手間が省けたぜ。お前の方から出てきてくれたんでな |
シンク | 別にボクは会いたくなかったけどね。仕方なくさ |
ミクリオ | タイミングがよすぎる。まさか、隠れて様子を伺っていたのか? |
シンク | 隠れて?お前達が気付かなかっただけさ |
ゼロス | …相変わらずいけ好かねー奴だな |
シンク | それにしても、グレバム。せっかくのご自慢の配下も形無しだね |
シンク | まだ動けそうな奴らを連れて、アンタは先に行きなよ |
シンク | ここはボクが引き受けてやるからさ |
グレバム | …。任せたぞ |
スタン | 待て! |
シンク | 通さないよ |
スタン | 何だってグレバムをかばうんだ!やはりお前達は仲間なのか? |
シンク | 仲間…?フン、反吐が出る言葉だね。あんなのは駒でしかない |
ゼロス | どうしようもねぇ奴だな。人は道具扱いで女の子にも平気で手を上げる… |
シンク | あの女騎士の事かい? |
シンク | 強者が弱者を支配する…それが世の中の仕組みだ。ゴミはゴミの扱いをするだけさ |
ゼロス | …確かに、そういう考え方もある。俺さまもそれは認めてやるよ |
ゼロス | ただな、世の中全ての仕組みがそれだけじゃないって事…痛いくらいに教えてやるぜ |
シンク | はっ!面白い事言うね。全てが満たされた環境で育ってきた神子に何がわかるっていうのさ |
シンク | 思い知らせてやるよ。このボクがね…! |
| ヒュッ! |
ゼロス | おっと! |
エリーゼ | ゼロス! |
ゼロス | これくらい大丈夫だって!ここは俺さまに任せてみんなはグレバムを頼む! |
ルドガー | 一人でシンクを止める気か? |
ゼロス | このガキんちょには俺さまがしっかり世間の厳しさをわからせてやらねぇと |
ゼロス | こいつも俺さまの事はずいぶん気に入らないみてーだしな |
スレイ | オレも残るよ。みんなは先に行って… |
シンク | …そう上手くいくとは、思わないでほしいね |
| …ザッ |
ルドガー | 茂みから伏兵が…!? |
兵士 | ここを通しはせん! |
ゼロス | …やってくれるじゃねぇの |
シンク | いちいち怒らないでよ。使える駒は用意しておくものさ |
ヴェイグ | シンクが連れてきた援軍、か…。まずはこいつらを片付けるぞ |
エリーゼ | はい…!でも数が… |
ルドガー | …散開して、各個撃破しよう。取り囲まれるとまずい |
スレイ | ゼロス…! |
ゼロス | スレイ、お前は目の前の敵に集中しろ!こいつは俺さま一人で十分だ! |
スレイ | …わかった。でも、気を付けて…! |
ティア | … |
シンク | さっさと来なよ、神子様 |
ゼロス | お望み通りにしてやるぜ! |
scene2 | 烈風のシンク |
シンク | はっ! |
ゼロス | そんな攻撃、食らうかよ! |
ゼロス | 今度はこっちの番だ! |
シンク | 甘い! |
ゼロス | 答えろシンク、お前やヴァンは、一体何を企んでやがる? |
ゼロス | グレバムを手駒にして…何を起こす気だ! |
シンク | ふん…さぁね。ボクはヴァンの奴に、手を貸してやっているだけさ |
シンク | この世界に…復讐するためにね |
ゼロス | …正気の沙汰じゃねぇな。もっと他にする事ねーのかよ |
シンク | 神子として、生まれながらに全てを持っているアンタにとやかく言われたくないね |
シンク | 他人から必要とされ、優遇されてきた…そんな人生を送ってきたアンタにはね |
ゼロス | … |
シンク | そら!まだまだ行くよッ! |
| シャッ! |
| ガツッ! |
ゼロス | くっ…!この…! |
ゼロス | 何でヴァンに従う!?ヴァンが起こそうとしてんのは戦争だろ!? |
ゼロス | ヴァンに従っていい事あんのかよ! |
シンク | あるさ。少なくともこんな世界を終わらせてくれる |
ゼロス | お前まだガキじゃねぇか。何でそんなに世界を憎むんだ? |
シンク | …ボクは生まれた時から何も持たず、誰からも必要とされなかった。いわば、からっぽの存在だ |
シンク | この世界はボクを必要としていない。だからボクも、必要としない |
ゼロス | …それで、世界を呪ってんのか |
ゼロス | やりきれねぇな…。まるで昔の自分そっくりだ |
ゼロス | 俺も、生まれながらに神子だった…。だけど、自分で望んだ事じゃない |
シンク | …何でもいいけどさ。さっさとやられてよ |
ゼロス | でもな…俺が神子じゃなきゃ、ロイドやコレットちゃん…仲間のみんなに出会えてなかった |
シンク | 仲間…?はっ、急に何を言い出すんだか。あまり笑わせないでよね |
シンク | 所詮、人間なんて利害の一致で結びついているだけさ |
ゼロス | それはお前が誰も信じてねぇから、わからねぇだけだ |
ゼロス | さっき誰からも必要とされないって、お前は言ったよな? |
ゼロス | だったら、自分で居場所を作ればよかったんじゃねぇか? |
ゼロス | 自分が憎んでいた世界でも、信じてくれる奴はきっといる。俺がそうだったようにな |
シンク | 馬鹿馬鹿しい…。アンタみたいな放蕩神子に説教されたくないね |
シンク | 守りが疎かになってるよ! |
ゼロス | …! |
| ガキーン! |
ゼロス | くそっ…!剣が…! |
シンク | これで終わりだ! |
| ヒュッ! |
| ガツッ! |
シンク | ぐっ…!足が… |
シンク | ナイフだと…一体どこから… |
ティア | ゼロス、動きを止めたわ!早く剣を! |
ゼロス | サンキュー!ティアちゃん! |
scene3 | 烈風のシンク |
ゼロス | これでしまいだぜ! |
| ズバーーッ! |
シンク | うっ、こんな…事が… |
ゼロス | もう一度聞くぜ、シンク。ヴァンの野郎は、今どこにいるんだ? |
ゼロス | ヴァンやお前達は、一体何を企んでやがる? |
シンク | ボクは… |
シンク | こんな世界…大嫌い…なだけ、ただそれだけさ… |
| ドサッ… |
ゼロス | シンク… |
ゼロス | ふう… |
| |
ティア | 終わったようね、ゼロス |
ゼロス | ティアちゃーん♡あのナイフ捌き、俺さま惚れ惚れしちゃったよー! |
ティア | あ、ええ… |
ゼロス | まさに息ぴったり、完璧なタイミングだったよな! |
ゼロス | これもひとえに、愛の成せる技!やっぱり二人が結ばれるのは運命… |
ティア | ナイフはまだあるのだけれど…あなたにもお見舞いしてあげた方がいいのかしら |
ゼロス | ちょっ…!ジョークだよ、ジョーク!そんな恥ずかしがるなって~ |
ティア | 全く…シンクと戦っている時は、真剣な顔をしてたのに… |
ティア | そのままではいられないのかしら? |
ゼロス | 俺さまはいつだって真剣そのもの!今だってティアちゃんに… |
ゼロス | …いでっ |
ティア | 腕は立つし、機転も利くのに… |
ティア | ゼロス、あなたシンクに私の存在を気付かせないないためにわざと挑発していたでしょう? |
ゼロス | ひゃひゃひゃ!ティアちゃんからの熱い視線、気付かないワケないだろ? |
| |
スレイ | ゼロス、ティア! |
スタン | シンクは退けたのか? |
ゼロス | おう、シンクなら俺さまとティアちゃんで… |
ゼロス | って、ええ!? |
ティア | いない…逃げたの?あの傷で動けるなんて… |
ゼロス | 仲間が連れて行ったのか?そんな気配もなかったが… |
ゼロス | …悪ぃ、逃がしちまったらしい。あの傷じゃ、しばらくはまともに動けないとは思うが… |
スレイ | いや、二人が無事だったならよかった |
ゼロス | そっちはどうだったんだ?戻って来たって事は、グレバムは… |
ミクリオ | シンクの部下は全て退けたが…残念ながらグレバムには逃げられてしまった |
ゼロス | 結局シンクからヴァンの情報を引き出せなかったし目的はわからないままか… |
スタン | とにかく、港には向かったはずだ。急いでグレバムを… |
| ピピピ… |
エリーゼ | この音は… |
スレイ | パスカルの通信機だ。もしもし? |
パスカル | あ、スレイ?久しぶりー!元気そうでよかったー♪ |
スレイ | うん、パスカルも相変わらず元気そうで安心したよ |
スレイ | でも、連絡くれるなんてどうしたの? |
パスカル | うん、実はちょっと気になる事があってさ、スレイには伝えた方がいいかなって思って |
パスカル | 赤の騎士団が何だかみょ~な動きをしてるんだよね |
スレイ | 妙な動き…? |
パスカル | うん、急に兵士達を集めたと思ったらそのまま、ウィンドル港の方へ向かって行っちゃったんだ~ |
スレイ | 赤の騎士団が、ウィンドル港に…!? |
パスカル | うん、セルディク大公も一緒だったし…怪しいでしょ? |
パスカル | それに港にはキムラスカからの反乱軍も集まってるらしいし… |
ルドガー | ウィンドル港に、キムラスカの反乱軍か…。赤の騎士団も動き出したなんて… |
ヴェイグ | グレバムの目的地もそこだろう。予想以上に相手の動きは早い、と言う事か… |
スレイ | パスカル、貴重な情報をありがとう。通信機があって助かったよ |
パスカル | また何か動きがあったら連絡するね。スレイ達も気を付けて! |
パスカル | じゃね~!ばいば~い! |
スレイ | 今のパスカルの話… |
スレイ | セルディク大公率いる赤の騎士団、キムラスカの反乱軍、それにシルヴァラントのグレバム… |
スレイ | この三つが手を組もうとしてるって事なのかな |
ミクリオ | おそらくね。そして、今までの話からすると、その三つの勢力の共通の敵はア・ジュールだ |
ヴェイグ | ア・ジュール相手に戦争を起こそうとしているのか…! |
エリーゼ | 戦争…まさかそんな… |
スタン | とんでもない事になってしまう… |
ティア | とにかく急ぎましょう!グレバムがウィンドル港に渡る前に追いつかないと… |
スレイ | ああ、行こう! |
scene1 | 導師と天族 |
エリーゼ | シルヴァラント港を目指して進んで来ましたが… |
ティポ | 真っ暗になっちゃったねー |
スタン | グレバムに追いつくために少しでも先に進みたいけど… |
ヴェイグ | 戦闘による消耗もある。ここは一度休むべきだと思う |
ヴェイグ | グレバムも港に着いていたとしてもわざわざ夜に船を出さないだろう |
スレイ | そうだな、今日はこの辺りで休もう |
ルドガー | じゃあ手分けして、野営の支度だな |
ティア | なら今日は私が夕食を用意するわ |
ゼロス | お、ティアちゃんの手料理か。俺さま楽しみ~! |
| |
エリーゼ | この料理…ティアが作ったんです…よね? |
スタン | まさかボアの丸焼きがどかんと出てくるとは |
ミクリオ | 随分と豪快だな… |
ティア | 何か変だったかしら? |
ヴェイグ | いや。とてもうまそうだ |
ゼロス | ティアちゃんの料理っていうから女の子らしいもんを想像してたけど…こういうの、ギャップってやつ? |
ゼロス | 疲れた時はこういう料理だよなぁ!くぅ~!さっすがティアちゃん! |
ティア | あまり手の込んだものより、野営する時にも困らないような料理を教わる事が多かったから |
スタン | もしかして、お兄さんから? |
ティア | …ええ。兄さんは、料理もとても得意だったわ |
ゼロス | へぇ、キムラスカの騎士団元総長がねぇ…。何でも出来るんだな |
スレイ | すっごくいい匂い!早く食べよう |
ライラ | そうですわね |
スレイ | いただきます! |
| |
スタン | ふう~。ごちそうさまでした! |
ゼロス | 素材を生かした味付けで最高にうまかったぜ! |
エリーゼ | お腹がいっぱいで…動けません… |
ティポ | エリーのお腹がまんまるになってるー |
エリーゼ | わっ、ティポ、お腹触っちゃ駄目です…! |
ルドガー | ははっ。ちゃんと食休みした方がいいぞ |
| |
スレイ | …ライラ。聞きたい事があるんだけどいいかな? |
ライラ | はい、何でしょう? |
スレイ | 実は…『神依』について教えてもらいたいんだ |
ライラ | 神依…ですか |
スタン | …カムイ?それって何だ? |
ゼロス | さあ?俺さまも初耳だな |
ミクリオ | …スレイ、この際だしみんなにも導師や神依の事を話しておいた方がいいんじゃないか? |
スレイ | そうだな。実は── |
| |
ルドガー | なるほど、それが導師…闇に包まれた世界を導く光か |
ルドガー | スレイ達と出会った当初に聞いた事はあったが… |
エリーゼ | スレイにはすごく大きな使命があるんですね… |
スレイ | まだまだ、ライラに助けてもらってばかりだけどね |
ティア | 天族と一体化出来る神依…そんな術があるなんて知らなかったわ |
ゼロス | でも、その神依っての…俺さまはまだ見た事がねぇぞ |
ティポ | ぼくもないー |
スレイ | そうなんだ。オレは導師にはなったけど、まだ神依化出来ない |
スタン | …神依化出来ない?どういう事なんだ? |
スレイ | 何度かライラに聞いたんだけど、神依についてはまだ早いからって教えてくれなくて… |
ライラ | それは… |
スレイ | ライラが何か理由があってオレに神依の話をしないのはわかってるよ |
スレイ | でも、天啓や晶化、それにウィンドル港に集まる赤の騎士団や反乱軍… |
スレイ | これから、オレ達が立ち向かっていく問題はどんどん大きくなってる |
スレイ | その問題に立ち向かうために…オレは、神依の力が必要になる時がきっと来ると思ってるんだ |
スレイ | 晶化現象や天啓を取り巻く混乱で困ってる人達のためにもオレは知っておきたい |
スレイ | だから、ライラ神依の事、話してくれないかな |
ライラ | スレイさん… |
ライラ | あなたのお気持ち、考えはしっかりと聞かせて頂きました。それに、導師としての考え方も… |
ライラ | …わかりました。神依についてお話します |
スレイ | ライラ…!ありがとう |
ライラ | …ただ、スレイさんが仰ったようにこれまで神依に関して、詳しくお伝えしなかったのには理由があります |
ミクリオ | その理由、とは? |
ライラ | 実は…神依には、導師と天族の双方が、大きな決断をする必要があるのです |
ライラ | その為、お話しする機会を、ずっと考えていました |
ティア | 大きな決断…。何か危険や代償があるのかしら |
ライラ | 導師が正しい方法で行えば神依自体は安全なものなのですが… |
ライラ | それより問題となるのは、導師と天族の「契約」です |
エリーゼ | 契約、ですか…? |
ライラ | はい、そもそも神依とは導師が天族と一心同体となり、行使するもの… |
ライラ | 神依化には、導師と天族を繋ぐものとして特殊な契約が必要になります |
ライラ | そして…神依の契約を結べば両者の繋がりは、とてつもなく強いものとなります |
ライラ | それは互いの運命すらも、共有するほど… |
スレイ | それってつまり…オレの役目や目的にミクリオやライラを巻き込むって事だよね… |
ライラ | 巻き込むというか…運命共同体ですわ |
スタン | うーん…それって、今までと何が違うんだ? |
スタン | スレイとミクリオはずっと一緒に過ごしてたんだし… |
ライラ | この先どんな困難があったとしても、契約した導師と天族は運命を共にする事になります |
ライラ | スレイさんが、行くと言えば例えそれが地獄でも、共に行かねばなりません |
ミクリオ | 待ってくれ、ライラ。その言い方はあんまりだろう |
ライラ | すみません、少し意地の悪い言葉になってしまったかもしれません |
ライラ | でも…ミクリオさん、あなたもよく考えてください |
ライラ | これからもスレイさん…導師と共にあり続ける契約を結んだとして── |
ライラ | よい事も悪い事も、全て共にする事になるんです。その覚悟が、あなたにありますか |
ミクリオ | ああ。勿論だ。だから契約を──… |
スレイ | ミクリオ…!これは今すぐに決める問題じゃない |
ミクリオ | だけど…! |
ライラ | 導師との契約はとても重要な事です。 |
ライラ | ですから、この場ですぐ答えを出さなくていいと思います |
スレイ | …そうだな。オレだけの問題じゃない事は分かったよ |
ライラ | …私はいつでもスレイさんと契約いたしますわ |
ライラ | …湖の乙女として、聖剣の担い手に身を捧げる覚悟は、旅立ちの時に出来ています |
スレイ | ライラ…ありがとう。しっかりオレの答えを出すよ |
ミクリオ | … |
ゼロス | …まあ何だ。スレイもミクリオもどうするにせよ、あんまり思いつめんなよ |
ルドガー | 仮にその神依ってのが出来なくたって、俺達もいるしな。何とかなるさ |
スタン | 導師だからって一人で背負う事はない |
エリーゼ | みんなで頑張りましょう…! |
スレイ | うん、そうだね。…ありがとう、みんな |
スレイ | …少し周りを見てくるよ。みんなは先に休んでて |
| |
ミクリオ | 覚悟…か |
| |
スレイ | 天族との契約… |
ミクリオ | 随分暗い顔をしているな |
| |
スレイ | ミクリオ…先に休んでくれてよかったのに |
ミクリオ | 悩んでいる君を放っておくわけにもいかないだろう? |
ミクリオ | …スレイ、さっきの神依についての話だけど |
ミクリオ | 僕は、君と契約する事に何も不都合はないと考えてる |
スレイ | これは簡単に決めていい問題じゃないだろ |
ミクリオ | …時間をかけたからって、変わる問題でもないと思うけど |
ミクリオ | ライラだって、決心をしている。何で僕にはそんなに躊躇するんだ? |
スレイ | ライラはライラ、ミクリオはミクリオだろ |
ミクリオ | そんなに僕は頼りないか |
スレイ | そんな事言ってないだろ! |
スレイ | …ひとまず、今日は休もう。明日はシルヴァラント港に行ってグレバムに追いつかないと |
ミクリオ | … |
scene2 | 導師と天族 |
ティア | 一通り港を捜してみたけど…グレバムの姿はなかったわ |
エリーゼ | もう出航してしまったんでしょうか… |
スタン | うーん…これからどうする?スレ… |
スレイ | … |
ミクリオ | … |
スタン | スレイとミクリオ…。今朝からずっと静かだな… |
エリーゼ | 二人とも、何だか元気がありませんが…大丈夫ですか? |
スレイ | うん…平気だよ。な、ミクリオ? |
ミクリオ | ああ。いつも通りだ。僕は、ね |
エリーゼ | 体調が悪かったりしたら遠慮なく言ってくださいね |
スレイ | うん。ありがとう、エリーゼ |
ライラ | … |
ヴェイグ | ゼロスはどこだ?一人だけ戻っていないようだが… |
スタン | あ、ちょうど戻ってきたよ |
ゼロス | 待たせたな。その辺で聞き込みしてきたぜ |
スレイ | お疲れ様、どうだった? |
ゼロス | 残念だが、悪い知らせだ。グレバムは先にウィンドル港に向かっちまってる |
スレイ | 何だって…! |
エリーゼ | いくら何でも早すぎませんか? |
ゼロス | 日の出と共にウィンドルからの迎えの船で出航したらしい |
ゼロス | グレバムみたいな大物が兵を連れてウィンドルに向かったとあって港の人間は驚いたらしい |
ルドガー | やられたな…。しかも、ウィンドルからの迎えって事は赤の騎士団か? |
ゼロス | それに兵を連れて、って事は…あらかじめここで集めた兵士と合流するつもりだったんだな |
ゼロス | さらにもう一つ… |
ゼロス | ウィンドル港に集まってる赤の騎士団とキムラスカ反乱軍は打倒ア・ジュールを謳ってるらしいぜ |
ヴェイグ | 打倒ア・ジュールだと…? |
エリーゼ | ミクリオの言っていた通りです… |
ルドガー | そうだな、急がなきゃ…! |
| |
男の声 | うわああああ!? |
ミクリオ | 今の声! |
女の声 | きゃああああ!?魔物の群れが! |
ゼロス | チッ、またかよ。さっさと片付けようぜ |
ティア | ええ、被害が出る前に撃退しないと |
| ガルルルル! |
ミクリオ | この程度の魔物なら… |
スレイ | …!ミクリオ、一人で突っ込むな! |
| グォオオオオ! |
エリーゼ | !?大変です!後ろからも来てます! |
スレイ | そんな…! |
ヴェイグ | スレイ、こっちはオレ達に任せろ!ミクリオの方へ! |
スレイ | わかった!ライラ、援護を頼む! |
ライラ | はい!お任せください! |
scene3 | 導師と天族 |
ミクリオ | これで最後…! |
ミクリオ | はっ! |
| ギャウウウッ! |
ミクリオ | ふう… |
スレイ | ミクリオ! |
ミクリオ | …スレイ |
| |
スレイ | 一人で魔物に突っ込むなんて無茶、ミクリオらしくないぞ! |
ミクリオ | この程度の魔物なら、僕だけでも問題ないさ |
ミクリオ | …それともスレイは僕が魔物に引けを取ると思っているのか? |
スレイ | そういう事じゃないだろ! |
ミクリオ | じゃあどういう意味なんだ。はっきり言ってくれればいいだろ |
スレイ | 何でそんな言い方になるんだよ。ミクリオを助けに来ただけなのに… |
ミクリオ | 誰もそんな事、頼んでないだろ |
スレイ | ミクリオ…お前…! |
ライラ | お二人とも!その辺で… |
ライラ | 魔物も全て退治したようですし、みなさんと港の被害状況を確認しませんか? |
スレイ | …うん、そうだな |
ミクリオ | …僕は向こうの様子を見てくる |
スレイ | 待て!一人で行くなって… |
| …グルル… |
ミクリオ | …!魔物の声…!? |
スレイ | ミクリオ、右だ! |
ミクリオ | 何…!? |
| グアアアアッ! |
| ザシュッ! |
スレイ | ミクリオ! |
ライラ | ミクリオさん! |
ミクリオ | っつ…! |
ミクリオ | この…くらえ! |
| ズシャーーッ!! |
| ギャウウウウ! |
スレイ | ミクリオ、大丈夫か!? |
ミクリオ | この、くらい… |
スレイ | 傷が深い…!すぐに治療しないと…! |
scene1 | 離れる心 |
ミクリオ | う… |
| |
スレイ | 気付いたか、ミクリオ。気分はどう? |
ミクリオ | ああ…大丈夫だ |
スレイ | ライラ達がすぐに治療してくれたんだけど… |
ミクリオ | …そうか、お礼を言わないと…。みんなは? |
スレイ | 全員、別室で休んでるしお礼は明日でいいよ |
スレイ | それより、ずっと考えてたんだ。ミクリオ、聞いてくれ |
ミクリオ | …ああ、何だい? |
スレイ | これは提案なんだけど、一度、イズチに戻ってみたらどうかな? |
ミクリオ | …は? |
スレイ | 長い間留守にしているし、ジイジ達の様子を見てきてもらいたいっていうのもあるけど… |
スレイ | ミクリオからイズチのみんなに、外の世界がどうなっているかって情報を共有出来るだろ? |
| |
ミクリオ | …スレイ! |
スレイ | …! |
ミクリオ | そんな回りくどい言い方されるのは御免だ |
ミクリオ | はっきり言ってくれ邪魔だからイズチに帰れって |
スレイ | 違う!ミクリオ、オレは… |
ミクリオ | 僕が足手まといなら足手まといだと、正直に言えばいい |
スレイ | …! |
スレイ | …だったら、ちゃんと言うよ |
スレイ | オレは…今のミクリオとは一緒に行けない。だから、一度イズチに帰ってほしい |
ミクリオ | スレイ… |
ミクリオ | ああ、わかったよ…!お望み通り、イズチに戻ってやるよ! |
| |
| コンコン |
ライラ | ミクリオさん、スレイさん?入りますよ |
ミクリオ | くっ… |
スレイ | ミクリオ…! |
ライラ | ミクリオさん!? |
スレイ | … |
scene2 | 離れる心 |
ライラ | ──すみません。お二人のお話を聞いてしまいましたわ |
ライラ | スレイさん…ミクリオさんの後を、追わなくてよろしいのですか |
スレイ | … |
スレイ | …オレだって本当は、ミクリオとずっと一緒に行きたいって思ってる |
スレイ | だけど…オレのやりたい事に、あいつを巻き込むわけにはいかない |
ライラ | …それが、ミクリオさんの望みでも? |
スレイ | 昨日みたいに言い争いになっちゃったら、それが本当にミクリオの望みなのかわからないだろ? |
スレイ | だから、冷静に考えてほしいんだ。契約してからじゃ遅いし |
スレイ | もし違ったら、ミクリオの自由を奪う事になる。それだけは嫌だから |
ライラ | スレイさん… |
スレイ | ライラは、導師がどんなものかよくわかってる。でも、ミクリオは違う |
スレイ | オレが自分の意志で導師になる道を選んだように、ミクリオにもミクリオの道を選んで欲しい |
スレイ | だからこれでいいんだ…少なくとも今は |
ライラ | スレイさん…そこまでお考えになられていたのですね |
ライラ | それなら私から何も言う事はありませんわ |
ライラ | でも…ミクリオさんを一人にしていいのですか?まだ回復しきってないのでは… |
スレイ | ミクリオなら大丈夫。あの状態で宿の外には行かないよ |
スレイ | かといって…今は戻って来ないと思う手堅いクセに意地っ張りだから |
スレイ | ライラ、今話した事は、みんなには言わないでおいてもらえるかな。これはオレ達の問題だから… |
ライラ | はい…わかりましたわ |
ライラ | 手堅いクセに意地っ張り…意地っ張りはお互い様なのでしょうけど… |
ライラ | … |
| |
スレイ | ごめん、遅くなって! |
ティポ | スレイ君遅いよー。船が出ちゃうでしょー? |
エリーゼ | あれ、ミクリオやライラは一緒じゃないんですか? |
スレイ | ライラはもうすぐ来るよ |
スレイ | ミクリオは… |
スタン | …?どうしたんだ?何か、あったのか? |
スレイ | ミクリオは、宿に残ってる。イズチに帰る事になったんだ |
ルドガー | えっ…。それは本当なのか? |
ヴェイグ | そんなに怪我の状態が悪いのか…? |
ティア | 確かに軽い怪我ではなかったけれど…治療はちゃんとしたはずよ? |
スレイ | うん、それは勿論。怪我自体は、心配いらないと思う |
スレイ | ただ、一度イズチに戻って、外の世界がどうなっているかジイジ達に伝えてもらおうと思って |
ルドガー | 急な…話だな |
ルドガー | スレイとミクリオの間で話がついたなら、俺達がどうこう言う筋合いじゃないが… |
ゼロス | …本当に、いいんだな? |
スレイ | …うん |
ゼロス | …そうか。だったらもう何も言わねぇよ |
スタン | わかった。でも、挨拶くらいしたかったな… |
エリーゼ | 寂しい、ですね… |
スレイ | 急でごめん、みんな |
スレイ | でも、オレ達は早くウィンドル港へ向かわないと |
スレイ | ウィンドルがどんな状態かわからないけど…十分注意していこう |
ヴェイグ | ああ。しかし、ライラがまだ… |
ティア | あ、ちょうど来たわ。ライラ!こっちよ! |
ライラ | …すみません!お待たせしてしまいましたね |
エリーゼ | 何かあったんですか? |
ライラ | いえ、大丈夫です。少し野暮用…といったところですわ |
スレイ | …よし、じゃあ気を取り直して出発しよう |
scene1 | 戦乱の狼煙 |
スレイ | さて…ウィンドル港に着いた…けど |
エリーゼ | グレバムや赤の騎士団の姿は見当たりませんね… |
ティア | 港の様子は…少し騒がしいように感じるけど… |
ルドガー | 赤の騎士団やキムラスカの反乱軍と合流したのだろうか… |
ゼロス | とにかく、その辺の奴らに話を聞いてみよーぜ。何かわかるかもしれねぇ |
スタン | そうだな。手分けして聞き込みしてみよう |
| |
ジェイド | ──以上、ここまでの情報をまとめますと、 |
ジェイド | キムラスカは、自国の有志により結成された勢力を、正式に反乱軍と断定しました |
ジェイド | シルヴァラント国王は、グレバムの動かす一部勢力との関係を否定しています |
ガイアス | …ウィンドルはどうだ |
ジェイド | セルディク大公が自らの勢力を拡大すべく、国内の貴族や軍に働きかけている模様ですが… |
ジェイド | 戦争反対派の声もあり、両者のせめぎあいが続いています |
ガイアス | …しかし、セルディクが強硬な手段に出るのは時間の問題だろう |
ガイアス | …天啓公表直後にこの状況…天啓に影響された可能性もあるか… |
ウィンガル | お話し中に失礼いたします。陛下、急ぎご報告したい事が… |
ガイアス | ウィンガルか。何だ |
ウィンガル | …先ほど、国境警備隊より報告が入りました |
ウィンガル | 我が国とウィンドルの国境に多数の軍勢が現れ、警備隊と戦闘を開始した模様です |
ジェイド | …! |
ガイアス | ウィンドル軍が動いたか… |
ウィンガル | いえ、ウィンドル軍だけではありません |
ウィンガル | ウィンドル、シルヴァラント、キムラスカによる連合軍だと名乗っているとの事です |
ジェイド | 連合軍?陛下、これは… |
ガイアス | …動き出したようだな |
ガイアス | とはいえ、ウィンドル軍といってもセルディクが動かしているのだろう |
ガイアス | 正規軍が総力を挙げて来たとは思えん。数だけは揃えたか |
ガイアス | シルヴァラントやキムラスカの軍勢に関しても、同じ事が言える |
ウィンガル | 寄せ集めの兵のようではありますが、現在国境を攻撃されているのは事実です |
ウィンガル | 前線から増援の要請が来ています。こちらもすぐ兵を派遣すべきかと |
ガイアス | ああ、構わん。それはお前に任せる |
ガイアス | ただし、スレイ達の情報により、戦争が晶化現象を助長させる事が判明している |
ガイアス | 戦闘行為はあくまで最小限に留め、民の安全を最優先するよう各部隊に通達しろ |
ウィンガル | 晶化現象を危惧する陛下のお考えはわかりますが |
ウィンガル | あまり消極的な姿勢だと、時間稼ぎにしかならないのでは |
ガイアス | わかっている。時間稼ぎで構わん |
ガイアス | ジェイド、急ぎ各国との会合の場を設けよ |
ジェイド | …はい。少々骨が折れそうですが、何とかやってみましょう |
ガイアス | … |
scene2 | 戦乱の狼煙 |
スレイ | ウィンドル港の人達にいろいろ話を聞けたのはよかったんだけど… |
ルドガー | 正直、認めたくない状況だな… |
スレイ | ああ…。すでにグレバムは赤の騎士団や反乱軍と合流していて… |
スレイ | しかも、国境付近では、その一団とア・ジュール軍との間で戦闘が始まっていたなんて… |
ヴェイグ | 巷では、そのグレバム達の一団…連合軍、と呼ばれていた |
スタン | 連合軍…本当にア・ジュールを攻めるなんて…奴ら、何て事を… |
ゼロス | 間に合わなかったな… |
エリーゼ | このままじゃ、たくさんの人が犠牲に… |
ヴェイグ | 世界中の晶化の進行も加速するかもしれない… |
スレイ | … |
| |
スレイ | いや、まだ望みはある。きっとまだ、やれる事があるはずだ |
ライラ | スレイさん… |
スレイ | オレはみんなが安心して暮らせるそんな世界を守りたい |
スレイ | だから、戦争が起こっているなら、止めなくちゃいけないんだ! |
スタン | スレイ… |
エリーゼ | はい…私だってミラやジュードのために頑張るって決めました |
ヴェイグ | …そうだな |
スタン | 戦争を止める、か…こうなったらそれしかないな! |
ゼロス | おいおい、でも俺さま達だけじゃ何にも… |
エリーゼ | ゼロス…ゼロスも手伝ってくれますよね…? |
ゼロス | うっ…。エリーゼちゃんにそんな目で見つめられると、ノーとは言えねぇな |
ゼロス | 矢でも鉄砲でも持って来いってんだ |
| |
スレイ | みんな…!ありがとう |
スレイ | ガイアスさん達…ア・ジュールの協力は得られるはずだから、連合軍を何とか… |
ティア | その連合軍だけど、かなり急ごしらえなのか、あまり統率が取れていないみたい |
ティア | 寄せ集めの集団にしか見えなかったって言う人もいたわ |
ティア | 手勢だけでは足りずに傭兵を多く雇い入れて、人が増えた事で物資の補給も追い付かないらしいわ |
ゼロス | ふーん…物資の補給ね…。まぁ急ごしらえの軍隊だからそうもなるだろうな |
ルドガー | そもそも連合軍は何故ア・ジュールを狙うんだろうか? |
エリーゼ | そういえば、フィリア司祭が話していましたが… |
エリーゼ | 天啓をないがしろにした天罰でア・ジュールが滅ぶべきだと言う人もいるとか |
ゼロス | どこか一国が滅ぶなら、先にア・ジュールを滅ぼせばいいって考えなんじゃねぇの? |
スタン | 身勝手な考えだけど…そういう事なんだろうな |
女の声 | きゃああ!? |
エリーゼ | 今の声は…? |
ヴェイグ | 向こうの路地裏の方から聞こえたようだが… |
ティア | 行ってみましょう |
| |
スレイ | あ…! |
ライラ | 女の人が… |
傭兵1 | 俺達はお国の為に戦う兵士だぜ |
傭兵2 | ア・ジュールへ行くための足代が足りねえんだ。ちょっとでいいんだ、用立ててくれよ |
ティア | やめなさい!人を脅して、お金を巻き上げようだなんて最低だわ |
ゼロス | 絵に描いたようなゴロツキだな |
傭兵1 | 誰がゴロツキだ!邪魔するなら容赦しねぇぞ! |
スタン | 向かってくるか…! |
scene3 | 戦乱の狼煙 |
ゼロス | どうだ、まだやる気か? |
傭兵1 | くっ、こいつら強え…逃げろ! |
女 | ありがとうございました。危うく、またお金を取られるところでした |
ライラ | また…?今のが初めてではなかったのですか |
女 | はい…セルディク様による徴兵の影響か最近はああいう輩が増えて、港の治安が悪くなる一方で… |
ティア | そうだったの… |
ルドガー | 戦争で仕事を求めてきた傭兵達だろうな。それも粗暴な輩だったが… |
スレイ | これも戦争による弊害なんだな… |
| |
エリーゼ | 連合軍に攻められているア・ジュールは大丈夫でしょうか? |
ルドガー | ア・ジュール軍は強いし、正規軍で統率もとれている。早々に敗れる事はないだろうが… |
ルドガー | 争いが晶化の進行に繋がる事がアニスを通じて伝わっているはずだ |
ルドガー | それを知っていれば、恐らく積極的な攻撃は避けるだろう |
ヴェイグ | しかし、防戦一方となればア・ジュールが厳しい立場になる… |
スタン | 早く、グレバムやセルディクのいるところまで行かないとな |
ティア | そこまで行くのはかなり険しい道のりになりそうね… |
スレイ | 少しでも早く、戦いを抑える事が出来ればいいんだけど |
ゼロス | なら、俺さまにいい考えがあるぜ! |
エリーゼ | いい考え、ですか? |
ゼロス | ああ。連合軍は数は多いが、質は大した事はねぇ。さっきの傭兵崩れを見ればわかるだろ |
ゼロス | ちょっとつつけばほころびが出やすいはずだ |
ルドガー | というと? |
ゼロス | ティアちゃんがさっき、物資の補給が間に合っていないって言ってたろ? |
ゼロス | 補給が間に合っていないという事は補給部隊の警備もおそらく手薄だ |
ゼロス | 補給部隊を邪魔しつつ、前線に向かう…そうすれば移動しつつ戦力を効率よく削げるぜ |
ゼロス | 腹が減っては戦は出来ねーからな |
ティポ | なるほどねー! |
エリーゼ | …少し、悪い事をする気持ちになりますね… |
ヴェイグ | まあ、有効な手段なのは確かだろうオレは賛成だ |
ルドガー | 連合軍に正面から挑む事は出来ないが、それなら俺達でも出来そうだしな |
スレイ | 上手くいくかな… |
ゼロス | 案ずるより産むが易しってな。特に反対がないならやってみようぜ |
| |
ミクリオ | スレイ達は今頃、ウィンドル港か… |
ミクリオ | …いや、もう僕には関係ない話か。考えても仕方ない |
ミクリオ | …この宿も、そろそろ引き払わないと |
ミクリオ | ん…?テーブルの上に、何か… |
ミクリオ | これは…手紙…? |
ミクリオ | … |
ミクリオ | 手堅いクセに意地っ張り、か… |
scene1 | 戦地を目指して |
ゼロス | 待て待て待てーい! |
連合軍兵 | な、何だ、お前達は!? |
ゼロス | さあさあ、全員大人しくしな |
ゼロス | お前達の運んでる荷物、前線に送る補給物資だろ? |
ゼロス | 悪いけど、俺さま達のために、そいつをここへ置いてってくんねぇか |
連合軍兵 | 何を馬鹿な事を…そんな事が出来るわけがなかろう! |
ゼロス | やっぱり駄目? |
連合軍兵 | 当たり前だ! |
| |
ゼロス | そーかい。んじゃ仕方ねぇな。こっちも事を荒立てたくはなかったんだが… |
ゼロス | 先生~!ティポ先生~!お願いしま~す! |
| ガサガサ… |
連合軍兵 | な、何だ!?まだ誰か… |
| |
ティポ | がおおおーーー! |
連合軍兵 | 魔物…!?しかも、こんな巨大な…! |
ティポ | たーべーちゃーうーぞー! |
連合軍兵 | うわあああ!? |
ゼロス | お帰りはあちらでございまーす、ってな |
| |
ゼロス | でひゃひゃひゃ!また上手くいったな~ |
ゼロス | しっかし仮にも軍の補給部隊だってのに、気概がねぇ奴らだなぁ… |
スレイ | ゼロス…楽しそうだな |
エリーゼ | こんな事していいのでしょうか… |
ゼロス | エリーゼちゃんはそう言うけど、先生本人はノリノリみたいだぜ? |
ティポ | がるるるるー |
エリーゼ | もう、ティポったら… |
村人 | 本当に…この食料持って行っていいのかい |
ティア | はい。今回の騒動でお困りでしょうし… |
村人 | ありがとう、みんなで運ぶよ |
ルドガー | 奪った品も近隣の住人に渡せるし、いい事づくめだな |
ゼロス | うーん、この案を考えた俺さま、やっぱり天才? |
スタン | 調子いいなぁ、ゼロスは… |
ヴェイグ | とはいえ、目的は戦場だ。これから危険も多くなるだろう |
ライラ | ええ…。気を付けて進みましょう |
scene2 | 戦地を目指して |
カーツ | 第2大隊が敵の防衛線を突破し、ア・ジュール領内に侵入いたしました |
カーツ | 第4大隊も敵部隊を敗走させ、目下追撃を行っています |
セルディク | よくやった。ア・ジュール軍も大した事はないな |
セルディク | かつて我が国が、ア・ジュールを相手にして、これほど勝利を重ねた事はなかった |
セルディク | これぞまさに、私が真のウィンドル国王としてふさわしい資質を持つ事の証だ |
セルディク | この勢いのまま、一気にカン・バルクまで攻め入るぞ! |
カーツ | 大公殿下の仰せのままに。それと…少々、気になる報告が |
セルディク | 何だ? |
カーツ | このところ、後方からの補給物資の到着が、滞り気味になっています |
カーツ | なんでも、輸送ルートに現れる盗賊と魔物の仕業のようでして |
セルディク | 何をやっているのだ…。まあよい。少々物資の到着が遅れたからといって大きな影響はあるまい |
セルディク | 物資が足りなくなる前に、さっさとカン・バルクを陥落させてしまえば済む話だろう |
カーツ | …仰る事はごもっともです。しかし、戦に物資は欠かせぬものであるのも事実 |
カーツ | この後、ア・ジュールは中央から増援を寄越すはずです。今後に備え補給路は確保すべきかと |
セルディク | ふむ…。しかし何もお前が行かずとも、他の隊長に向かわせればいいのではないか? |
カーツ | 大公殿下の仰るように、戦況はこちらが優勢です。少しの間私が離れても問題はありません |
カーツ | 賊はこの近くのようです。迅速に、確実に仕留めて参ります |
セルディク | そこまで言うならお前に任せる。わが軍の物資を付け狙う卑しい賊を速やかに成敗しろ |
カーツ | はっ… |
セルディク | さあ…もうすぐだ。私はウィンドルとア・ジュールを束ねる頂点となるのだ |
セルディク | くくく… |
| |
ティポ | がーおー! |
ウィンドル兵 | うわあああ!? |
| |
ゼロス | よし、また成功~! |
スタン | 結構な数の補給部隊を妨害してきたな |
ルドガー | しかし連合軍の侵攻は、予想していたよりずっと早いようだ… |
ルドガー | この分だと、守る側のア・ジュールも、かなり苦戦しているだろう |
エリーゼ | 心配ですね… |
スレイ | ん…?あれは… |
| |
エリーゼ | あ… |
ヴェイグ | 森が… |
ティア | 完全に晶化しているわね… |
スレイ | ここまで進んでるなんて… |
ライラ | … |
スレイ | 前に、ウィンドルに来た時もかなり晶化現象は進んでたけど… |
スレイ | ここまでじゃなかったよな、ミクリオ… |
スレイ | あっ…と |
ゼロス | おいおい、ミクリオは故郷に帰ったんだろ?しっかりしてくれよ? |
エリーゼ | スレイ…無理してませんか? |
スレイ | はは…大丈夫。ついクセで呼んじゃっただけだよ |
エリーゼ | それならいいんですが… |
ルドガー | しかし、これだけ広い範囲の晶化を見たのは、初めてだ… |
スタン | やっぱり戦争が始まった事が関係してるのかな |
ヴェイグ | 戦火が拡大していったら…今よりもっと早い速度で晶化現象が進行するかもしれないな… |
ティア | …そんな事させないわ。そのためにも戦争なんて早く終わらせないと |
| ピキ…! |
スレイ | …! |
| ピキピキピキッ! |
スレイ | 晶化だ…!みんな、ここから離れろ! |
| ピキンッ! |
エリーゼ | また大量の木が… |
ゼロス | 一度にまとめて晶化しやがった…こんな調子で広がってたのか |
スタン | 目に見える速さで…!このままじゃ本当に…! |
スレイ | 早く…戦争を止めないと…! |
ライラ | … |
scene1 | 双槍の襲来 |
スタン | この辺も晶化が進んでるな…。さっきの森程じゃないけど… |
ルドガー | 元々ウィンドルの北部…ア・ジュールとの国境に近いこの辺は晶化現象の進行が早かったそうだが… |
ライラ | … |
スレイ | ライラ、どうかしたの? |
ライラ | … |
スレイ | …ライラ? |
ライラ | あ、はい、何でしょう |
エリーゼ | 何か気がかりな事があるんですか? |
ライラ | すみません…ちょっと考え事を |
ライラ | 私が長くいた湖の遺跡も、ここからはそう遠くないので… |
ライラ | 遺跡ごと、晶化しているのでは…そんな事を考えていました |
スレイ | …ライラはあの場所に思い入れがあるんだね |
ライラ | ええ、思い出深い場所ですから。自分の家みたいなものでしょうか |
スタン | 家…か。リリスやリオンは大丈夫かな… |
ルドガー | イニル街まで、この晶化が及んでいないと信じたいが…。エルや兄さんは… |
ティア | … |
| |
ゼロス | うーん…補給部隊が見つからねーな |
ティア | 少しでもア・ジュール軍の手助けになっていればいいのだけれど |
ゼロス | こういうのは、ジワジワ効いてくるもんさ |
ヴェイグ | 何もしないよりはいいだろう。もうすぐ国境だ。戦場は近いぞ |
ゼロス | …お!補給部隊発見!行こうぜ、先生 |
ティポ | はーい! |
スタン | はは…ティポも張り切ってるな |
エリーゼ | ティポが不良にならないか…心配になります |
scene2 | 双槍の襲来 |
連合軍兵 | うわあああ! |
ゼロス | よし、これでまた、補給部隊を一つ退散させてやったぜ |
ティポ | 順調だねー♪ |
| |
??? | いたぞ!こっちだ! |
スレイ | …!?兵が戻ってきたのか? |
| |
連合軍兵 | 全員動くな!これ以上の狼藉は許さん! |
ルドガー | 武装兵…連合軍か…! |
ゼロス | ちっ、ついにバレて救援に来やがったか |
??? | 我が軍の兵站を妨害しているのは、お前達だな |
ゼロス | ん…?お前は…? |
ヴェイグ | カーツ…! |
カーツ | む…。お前は…以前メルトキオで… |
カーツ | …まあいい。我々の邪魔をするのであれば、誰であろうと容赦はしない |
ティア | いずれ増援が来るかもしれないと思ってはいたけど…赤の騎士団の団長自らが来るなんて… |
ゼロス | 何にせよ、そっちからやって来てくれたのなら好都合だ |
カーツ | お前達の目的は何だ。何故、連合軍の補給部隊を襲撃する? |
スレイ | 戦争を止めるためだ。それ以外に理由なんてない |
スレイ | 負の感情は晶化現象を助長する原因にもなってる。だから、戦争なんて早くやめないと… |
カーツ | 晶化現象を助長する…?お前、どこからその情報を得た? |
スレイ | オレ達の仲間が突き止めた事だ。その仲間も、晶化してしまったけど… |
エリーゼ | … |
ルドガー | お前達も、これ以上争うのはやめてくれ。本当に取り返しのつかない事になる |
カーツ | … |
連合軍兵 | カーツ隊長、あの者達の言っている事は… |
カーツ | 我々を惑わせようとする敵の妄言だ。耳を貸す必要はない |
カーツ | あの者達を捕らえる。大公殿下の元へと連れ帰るぞ |
ヴェイグ | …!オレ達が大人しく捕まるとでも? |
ティア | そうね。全力で抵抗させてもらうわ |
ゼロス | 赤の騎士団の団長を押さえる事が出来れば戦力を削ぐ事にもなる… |
ルドガー | だな…みんな、注意していこう。連れてる兵士も少なくない |
カーツ | …いくぞ! |
scene1 | 二人の夢 |
カーツ | ぐっ… |
ゼロス | どうだ?俺さま達の実力、思い知ったか |
ヴェイグ | お前の部下は全員退けた…。これ以上の抵抗は無意味だ |
カーツ | 無意味だと…?そんな事はない…私には…果たすべき…役目が… |
スレイ | そんな傷で…どうして、まだ立ち上がってくるんだ |
ライラ | 何があなたをそうまで駆り立てるのですか? |
ゼロス | もう、やめとけって。セルディクなんて胡散臭い奴に、忠誠を尽くす必要はねーって |
カーツ | うるさい…お前達に何がわかるというのだ |
ヴェイグ | ずっと…引っかかっていた。何故お前はセルディクに付き従っているのだろうかと |
ヴェイグ | あの時、街の人に剣を抜こうとした部下を止めただろう |
ヴェイグ | お前は考えなしに動いているようでもないし、単なる出世欲で動いているようにも見えない |
カーツ | … |
ヴェイグ | 何か事情があるのではないか? |
カーツ | …私はただ、世界に平和を取り戻したいと思っているだけだ |
ティア | 矛盾しているわ。だったら何故戦争を起こそうとするの? |
ティア | それに平和を望むというなら、私達と目的は同じよ。争う理由なんて… |
カーツ | 違う。お前達の行為は、真の平和の到来を、邪魔しているにすぎん |
スレイ | オレ達が邪魔…?どういう事だ? |
カーツ | 私は何としても、理想を実現させる。そのためなら… |
カーツ | この命…惜しくはない! |
カーツ | うおおおおっ! |
スタン | 突っ込んで来るぞ! |
スレイ | くっ! |
ゼロス | ちっ…どうなっても知らねーぞ! |
??? | そこまでだ。引き際を知れ、カーツ |
ティア | …!? |
ルドガー | カーツを止めた…!?あの男は…? |
ティア | 兄さん…! |
ヴァン | …ティアか |
スレイ | ティアの…お兄さん? |
スタン | と言う事はあの人がヴァン… |
ルドガー | 何故ここに…! |
| |
カーツ | ヴァン…! |
ヴァン | 手酷くやられたな、カーツ |
カーツ | くっ…まだ、私は… |
スレイ | まさか、カーツもヴァンと繋がっていたのか? |
ルドガー | 連合軍も…いや、そもそも赤の騎士団もヴァンが糸を引いていたという事か…! |
ヴァン | お前達も小賢しい真似をしてくれたものだな。しかし、もう戦いが止まる事はない |
ティア | 兄さん! |
ティア | 一体何をしているの?あなたの目的は何なの? |
ティア | 答えて、兄さん! |
ヴァン | …ティア、言ったはずだ。私の理想を妨げる者は何者だろうと排除する、と… |
ヴァン | それを聞いてなお、私の前に立ちはだかると言うのならば今度こそ… |
| |
| チャキ… |
ティア | …やはり、答えてはくれないのね |
スタン | やる気か…?また妹に剣を向けるのか、ヴァン! |
エリーゼ | ティアが、可哀相です…! |
ゼロス | 酷い兄貴もいたもんだ。許せねぇな、同じ兄としちゃ… |
ヴェイグ | ここで決着をつけるぞ…! |
スレイ | たとえどれほど強くても、オレ達の力を合わせれば… |
ライラ | 勝機はあるはずですわ |
ティア | いいわ、兄さん。あなたに一切話をするつもりがないのだとしても |
ティア | 私達は力ずくでも、あなたを止めてみせる! |
ヴァン | … |
スレイ | 行くぞ! |
scene2 | 二人の夢 |
スタン | うぐっ… |
ヴァン | …甘いっ |
| ズバッ! |
スタン | うわあっ!? |
スレイ | スタン! |
ゼロス | よくもスタンを! |
| ズドッ! |
ゼロス | うっ… |
スレイ | ゼロス! |
スレイ | 何て強さだ…。オレ達を、一人で圧倒するなんて |
ヴェイグ | カーツ達と戦った後とはいえ…差がありすぎる… |
ティア | 兄さん…! |
ヴァン | …これで終わりだ |
ティア | あの技…!危険よ、みんな退いて! |
ヴァン | 星皇… |
ヴァン | 蒼破陣! |
| ズバーーーーッ! |
エリーゼ | きゃああああっ!? |
ティポ | ぎゃーーーーっ! |
| |
ヴァン | … |
ヴェイグ | うっ…! |
スレイ | みんな…! |
スタン | くそっ… |
ゼロス | くっ…体が…尋常じゃねぇ強さ…だぜ… |
スレイ | …その剣の腕、正しく使えば多くの人を守る事が出来る力なのに…! |
スレイ | どうしてお前は戦乱を望むんだ…その先に何を求めている! |
ヴァン | …若き剣士よ。お前もいずれ理解する時が来る。この世の不条理と絶望を |
ヴァン | 人の力では、変えられぬものがあるという事をな |
| |
スレイ | …っ! |
スレイ | …ライラ、神依だ |
ライラ | !スレイさん… |
スレイ | みんなを守りたい。今こそ神依の力が必要なんだ! |
ライラ | はい、わかりましたわ |
ヴァン | …!何か隠し玉があるようだな |
ヴァン | させるか! |
スレイ | …! |
ライラ | スレイさん…!危ないッ! |
| ズバッ! |
ライラ | きゃああっ!? |
スレイ | ライラ! |
ヴァン | これで仲間は全て倒れた。負けを認め、運命を受け入れるがいい |
スレイ | …嫌だ |
スレイ | たとえ、一人になってもオレは諦めるわけにはいかない! |
スレイ | みんなが安心して暮らせる世界を守るんだ。それがオレの…導師の役目だ! |
ヴァン | ほう、背負うものはあるようだな。…ならば、全力で応えてみせろ |
| チャキ… |
ルドガー | く、来るぞ、スレイ…逃げ… |
スレイ | 逃げない…!オレは、諦めない! |
ヴァン | …散れ。その剣、次の世で正しく振るわれる事を祈ろう |
| |
??? | ──全く。君って奴はどこまでも… |
スレイ | …!? |
| ザァアアアア… |
| |
ヴァン | む…!水の壁…!? |
スレイ | これって…まさか… |
ミクリオ | 一人で無茶するなんて君らしくないぞ、スレイ |
| |
スレイ | …ミクリオ |
ライラ | ミクリオさん…! |
スレイ | ミクリオ…どうしてここに…! |
ミクリオ | ──うぬぼれるな。何が僕のためだ |
ミクリオ | 確かに、僕は手堅いクセに意地っ張りだ |
ミクリオ | 君が契約を拒んだ事で余計に意地を張ったさ |
ミクリオ | だけどな、スレイ。君は肝心な事がわかってない! |
ミクリオ | イズチを出て、今まで旅をしてきたこの世界を守りたい… |
ミクリオ | 自分だけがそう考えてるなんて思うな。これは紛う事ない… |
ミクリオ | 僕自身の意志だ! |
スレイ | ミクリオ… |
ミクリオ | 晶化現象が何だ。そんなもの、僕が何とかしてやるさ |
ミクリオ | へっぽこ導師の、君の力なんて借りなくてもな! |
ミクリオ | けど… |
ミクリオ | スレイ。もし君も世界を守りたいと…本気で思っているのなら |
ミクリオ | 特別に、僕を手伝う事を許してやる |
| |
スレイ | … |
ミクリオ | … |
スレイ | …ぷっ |
スレイ | ははは…! |
ミクリオ | 笑うな。僕は真剣に言ってるんだぞ |
スレイ | ごめん…でもおかしくて |
スレイ | そうか…そうだったんだな |
スレイ | この世界を、守りたい──…。これは、オレ一人の夢じゃない |
| |
スレイ | これは、オレ達の… |
ミクリオ | ──夢だ |
ライラ | スレイさん…ミクリオさん… |
ゼロス | …ったく、やっぱりケンカしてたんじゃねぇか |
ルドガー | 戻ってきてくれて…よかった |
| ザシャアア!! |
スレイ | 何だ!? |
ミクリオ | …!時間稼ぎにしかならなかったか…! |
ヴァン | ふっ、なかなか面白い術を使うな |
スレイ | ヴァン…! |
スレイ | ミクリオ、手伝ってくれ!神依を…! |
| キィィィンーー… |
スレイ | !?身体が、光に…何だこれ… |
ライラ | これは、神依の…! |
ライラ | スレイさん、まさか教えてもいないのに感覚を…!? |
スレイ | 力が…漲ってくる…。神依を…発動出来る…のか…? |
ヴァン | お前達、一体何のつもりだ? |
スタン | …させるかっ! |
| ザッ… |
ヴァン | む… |
スタン | …スレイ、ミクリオ、ヴァンは俺達が足止めする! |
ルドガー | 早く神依を!今、ヴァンに勝つにはそれしかない! |
スレイ | …わかった!ライラ、この後はどうすれば!? |
ライラ | この後は… |
ヴァン | 貴様ら…まだ立ち上がるか |
ゼロス | ああ…悪いがここを通すわけにはいかないんでね |
ヴァン | 邪魔だ! |
| ドカッ! |
エリーゼ | 私だって負けるわけにはいかないんです…! |
ティポ | ここは絶対通さないぞー! |
ミクリオ | ライラ!契約の方法を教えてくれ! |
ライラ | 天族が持つ真の名…それを捧げれば契約は完了します |
ライラ | ミクリオさん…真名を教える事が天族にとってどういう意味なのかはわかりますね? |
ライラ | 覚悟の上、スレイさんに真名を… |
スレイ | ミクリオの真名?そんなのとっくに |
ミクリオ | 教えているさ! |
ライラ | まあ…! |
| |
スレイ | よし!いくぞ、ミクリオ! |
ミクリオ | …遅れるなよ、スレイ! |
| |
| |
ライラ | やりました…やりましたわ!神依です! |
スレイ | これがオレ達の… |
ミクリオ | 神依…! |
ヴァン | 何を…! |
スタン | うわあぁ! |
ミクリオ | スレイ、みんなが! |
スレイ | わかってる、いくぞ、ミクリオ! |
ミクリオ | ああ、さっさと終わらせよう |
ミクリオ | 君には後で言いたい事が山ほどあるしね |
スレイ | ははっ、オレだってさ…! |
ヴァン | …! |
scene3 | 二人の夢 |
スレイ | これで…どうだ! |
スレイ | はあっ! |
| ズンッ! |
ヴァン | ほう… |
ゼロス | すげぇ…俺達が全員でかかっても、まるで歯が立たなかったヴァンを… |
エリーゼ | 押してます… |
ティポ | スレイ君達、すごいーっ! |
ライラ | 初めてでこんなに使いこなせるなんて… |
ヴァン | …!なかなかやるな… |
スレイ | はあ…はあ… |
ヴァン | 導師──スレイと言ったか。私の敵として、よく覚えておこう |
スレイ | 逃げるのか!? |
ヴァン | まだその時ではない…。私も今ここで、倒れるわけにはいかんのでな |
ヴァン | 勝負は預けておく。決着はいずれ… |
スレイ | まだ…終わりじゃない! |
ミクリオ | 逃がすか! |
ヴァン | はぁっ! |
| ズシャッ! |
ミクリオ | 砂塵を巻き上げたのか…! |
スレイ | うっ…!視界が…! |
ティア | 兄さん! |
スレイ | ヴァン、待て! |
スレイ | くっ… |
スレイ | ヴァンが消えた… |
ミクリオ | ヴァンだけじゃない。カーツの姿も見えないぞ |
スレイ | 一緒に連れて行ったのか… |
スレイ | まだ遠くへは行っていないはずだ。今なら… |
ミクリオ | いや、それは無理だ。みんなを見るんだ |
スレイ | あ… |
| |
ティア | … |
ライラ | ティアさん、大丈夫ですか?しっかりなさってください |
エリーゼ | ティア…!気を失ったようです…! |
ティポ | うわーん!ティア君がー! |
| |
ミクリオ | …今はみんなの手当てを優先すべきじゃないか? |
スレイ | そうだな…みんなボロボロだ |
ミクリオ | 周囲を引き続き警戒しつつ、治療を行おう |
スレイ | わかった |
scene1 | 約束を胸に |
ティア | う… |
ライラ | …! |
| |
ティア | …?ここは… |
ライラ | 目を覚まされましたね、ティアさん |
エリーゼ | ここは…ヴァンと戦った森の近くにあった村です |
ライラ | 幸い、この村は連合軍と関わりがなかったので負傷した私達をみなさん快く受け入れてくれました |
ティア | そうだったの… |
| コンコン |
エリーゼ | はい |
スレイ | ティアの具合はどう? |
スレイ | …よかった、目を覚ましたんだね |
ライラ | はい。たった今 |
スレイ | 向こうの部屋で、これからの事を話し合おうと思うんだけど… |
スレイ | ティアは起きられる…? |
ティア | ええ、大丈夫よ。すぐに行くわ |
ゼロス | ティアちゃん!怪我はどう? |
ティア | 休ませてもらったしもう大丈夫よ。ありがとう |
ヴェイグ | そうか… |
スタン | しかし、スレイ達の神依…導師と天族の一心同体ってああいう事だったんだな |
スタン | 突然ミクリオが現れた時はびっくりしたけど |
ティポ | 戻ってきたーと思ったらいきなり男のユージョーしてたねー |
ミクリオ | みんなには迷惑をかけてしまった。本当にすまない |
スレイ | みんな。ごめん… |
ルドガー | 何はともあれ、丸く収まったならよかったよ |
エリーゼ | ミクリオが戻って来てくれて、心強いです…! |
ルドガー | さ、ティアも目を覚ました事だし、情報を一度整理しよう |
スタン | ヴァンは…あの場に現れて、カーツに引き上げるぞって言ってた |
ヴェイグ | …つまり、ヴァンとカーツは…いや、連合軍とヴァンは繋がっている |
ゼロス | …ヴァンがカーツやシンクを使って、連合軍をまとめあげた、ってのが正しいのかもしれないな |
ルドガー | おそらく、赤の騎士団もヴァンがカーツに作らせたんだろう。セルディクを上手くそそのかして… |
ルドガー | カーツは、戦争を止めようとする俺達の行為が、平和の邪魔だと言っていた |
エリーゼ | 争いこそが理想を生む…ですか |
スタン | 晶化を進行させる争いを起こす…って事は、ヴァンは晶化を望んでいるんだろうか |
ルドガー | ヴァンの理想が何なのかはわからないが… |
ゼロス | アリスやデクスも利用して各地の混乱も煽ってたから、晶化が目的って線は強いかもな… |
ティア | 晶化の進行に関係している…確かに辻褄が合うかもしれない |
ティア | その仮定が正しければ、兄さんは…世界にとっての敵になるわね |
ライラ | ティアさん… |
ティア | 晶化現象が、兄さんにとってどんな意味があるのかまではわからないけれど… |
ティア | とにかく、今は戦争を止める事が先決よ |
スレイ | ヴァンが争いや晶化を望んでいるなら戦争を止めようとするオレ達とまた戦う事になるよな? |
エリーゼ | そう…ですね |
ゼロス | 急いで追いつきたいところだけど今は満身創痍だしよ…少し休んで立て直した方がよくねぇか |
ヴェイグ | ああ。ヴァンは強い…。それにこの先は戦場だ。万全を期すべきだろう |
ルドガー | よし、じゃあ今日は解散して明日に備えよう |
ミクリオ | …ライラ |
ライラ | はい、何でしょう、ミクリオさん |
ミクリオ | 手紙、ありがとう。お蔭で誤った判断をしなくてすんだよ |
ライラ | ふふ。お役に立てて何よりです |
ミクリオ | おやすみ |
スレイ | …手紙って? |
ライラ | 何でもありませんわ。それより、スレイさん |
スレイ | 何?ライラ |
ライラ | その…スレイさんとミクリオさんの神依、素晴らしかったです |
ライラ | 初めて神依をしたとは思えないくらい息がぴったりで… |
ライラ | お二人がこれまでに培った、絆の賜物なのでしょうね |
スレイ | そうやって改めて言われると、何だか照れるな…。でも、ありがとう |
ライラ | スレイさん、私が前にお話しした事を、覚えていらっしゃいますか? |
ライラ | 導師は闇に飲まれた世界を救う事が出来る、「導きの光」だという事… |
スレイ | 勿論、忘れていないよ |
ライラ | 導師であるスレイさんには… |
スレイ | わかってる。過酷な運命が待ち受けてるんだろ? |
スレイ | それでも、オレは決めたよ。ミクリオと約束したんだ |
ライラ | ふふ。そうでした。言うまでもありませんでしたね |
スレイ | それで…ライラにも改めて言うけど |
スレイ | ライラも、オレと契約してほしい。オレに力を貸して |
スレイ | ライラにも過酷な運命ってやつを背負わせてしまう事になるけど… |
ライラ | スレイさん… |
ライラ | 晶化が進む中、こんな事を言うのは不謹慎かもしれませんが… |
ライラ | 私、スレイさん達と旅をするのが、とても楽しいんです |
スレイ | 楽しい? |
ライラ | ええ。晶化現象や、戦争が今目の前で起こっていますが… |
ライラ | 旅の中で、スレイさんやみなさんといると、笑いも絶えませんし…何より、とても頼りになります |
ライラ | みなさんとなら、きっとどんな困難も乗り越えていける…そう思うんです |
スレイ | ライラ… |
ライラ | そして、スレイさんとミクリオさんの神依を見て、確信しました |
ライラ | スレイさんが導師として歩き始めた今、スレイさんならきっと平和を取り戻せると |
ライラ | だから、スレイさん。改めて聞くまでもないですわ |
スレイ | …ありがとう、ライラ |
スレイ | よし、じゃあ晶化現象の問題が解決して、平和な世界を取り戻せたらオレとミクリオと三人で旅して回ろう |
スレイ | 世界にはまだまだ、オレ達の知らないところがたくさんある |
スレイ | いろんな場所へ行って、いろんな景色や、人…街を、たくさん見に行こう |
ライラ | はい!…約束、ですわね? |
スレイ | ああ、約束だ |
スレイ | これからもよろしく頼むよ、ライラ |
ライラ | はい、こちらこそ。スレイさん |
スレイ | それじゃ…明日も早いし、そろそろ休んだ方がいいよね |
ライラ | そうですわね、おやすみなさい、スレイさん。また、明日 |
スレイ | うん、また明日。おやすみ、ライラ |
scene2 | 約束を胸に |
ティポ | ヴェイグ君、おはよー! |
エリーゼ | おはようございます |
ヴェイグ | …おはよう。エリーゼ、ティポ |
ティア | これで全員揃ったかしら? |
スレイ | いや、ライラがまだみたいだ |
ゼロス | 何だ、ライラちゃんが遅れるなんて珍しいな? |
エリーゼ | そう言えば…私が出て来る時、まだ部屋にいましたね |
ティポ | ライラ君、今日はゆっくりだねー |
スレイ | おーい、ライラ、大丈夫? |
ライラ | すみませーん!すぐ行きますー |
| ガタタッ! |
ミクリオ | 家具にぶつかったのか? |
スレイ | ライラー、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。オレ達なら… |
| |
| ピキ… |
スレイ | え…?何か光って… |
ミクリオ | …! |
ミクリオ | スレイ、離れろ! |
| |
| ピシッ…ピシッ…! |
ミクリオ | これって…! |
スレイ | まさか…晶化!? |
ルドガー | しかも宿ごと…!これじゃ中のライラは… |
スレイ | ライラ!すぐに助けに…! |
| ピキッ! |
スレイ | くっ… |
スタン | うっ…! |
| ピキピキピキッ…! |
スレイ | ラ、ライラが…まだ中に… |
エリーゼ | ミラの次はライラまで…?こんなのって… |
ティポ | エリー… |
ゼロス | くそっ…!ライラちゃん…! |
ティア | … |
スレイ | そんな…約束したのに…ライラ… |
| |
エリーゼ | スレイ… |
エリーゼ | 晶化を解決して、ライラを元に戻しましょう |
ミクリオ | そうだ…結晶の中の命は生きている… |
ミクリオ | スレイ…悔しいが今は堪えよう |
スレイ | … |
スレイ | ありがとう、二人とも。大丈夫、もう…決めたから |
ヴェイグ | …決めた? |
スレイ | うん…オレ、昨日ライラと約束したんだ |
スレイ | 晶化現象をなくす事が出来たら一緒に世界を見て回ろうって… |
ルドガー | 約束… |
スレイ | …なのにオレがここで止まったらそれだけ晶化の解決が遅くなるだろ |
スレイ | だから…ライラが晶化したのはショックだし、心細いけど… |
スレイ | オレは立ち止まらない… |
ゼロス | …そうだな。いい事言うじゃねぇか少しは導師らしくなってきたってか? |
エリーゼ | きっとミラや…他の晶化した人達もずっと待ってます…! |
スレイ | うん。オレが…いや、オレ達でライラを…晶化した人達を必ず元に戻そう…! |
ヴェイグ | …ああ |
ティア | こんな…こんな事を兄さんが望んでいるかもしれないなんて… |
ティア | もし、そうなのだとしたら、許せない…絶対に止めないと… |
スレイ | ライラ…少しだけ、待っててくれ…! |
Name | Dialogue |
scene1 | 少女を捜して |
スレイ | 戦場まで、あと、どれくらい距離があるのかな |
ルドガー | 戦場は…ア・ジュールとウィンドルの国境付近…この森を抜けた先だな |
ミクリオ | 戦場へ乗り込む時も近いって事か… |
スレイ | 何だ、ミクリオもしかして怖いのか? |
ミクリオ | そんなわけないだろう。君こそ、初めての戦場に驚いて逃げ出さないといいけど |
スレイ | 戦場が初めてなのはミクリオだって一緒だろ? |
スタン | ケンカするのは仲がいい証拠だな |
ティポ | やっぱりスレイ君とミクリオ君はこうでなくっちゃねー |
エリーゼ | ふふっ、ですよね |
ゼロス | ま、俺さまとハニーの仲にはまだまだ遠く及ばねぇけど?でひゃひゃひゃ! |
スレイ | はは…まいったな |
ヴェイグ | それにしても、神依…。すごい力だったな |
ヴェイグ | あれだけの威力…体力の消耗も激しそうだが、何ともないか? |
スレイ | うーん、戦ってる時は夢中だから気にしなかったけど… |
スレイ | 確かにいつもの戦いよりは疲れがとれないっていうか、だるいというか… |
ミクリオ | そうなのか… |
ティア | それだけ負担があるという事かもしれないわね |
ゼロス | 俺さま達だっているんだし、ここぞって時の切り札でいいんじゃねぇ? |
ゼロス | 今のところあのヴァンに対抗出来るとすれば、お前達の神依の力くらいなんだからよ |
スレイ | ヴァン…。次に会った時こそ、決着をつけないと… |
ミクリオ | ああ、奴をこれ以上野放しに出来ない |
ミクリオ | 戦争の被害が広がれば晶化現象にも影響が出るしね |
ルドガー | 実際、最近の晶化の進行は早まっているように感じるしな… |
スレイ | うん…ライラの時だってあんな… |
ゼロス | 晶化の進行か… |
ゼロス | そういや、他の連中は元気でやってるのかね… |
スタン | ルイニス街のリリスやリオン…みんな無事だといいけど |
エリーゼ | ジュードは大丈夫でしょうか… |
ティポ | 心配だねー |
スタン | ん…?あれは… |
| |
スタン | 村だ…! |
ゼロス | こんなところにも、村があったのか |
エリーゼ | あ…見てください、あれ… |
ルドガー | ここにも晶化の被害が… |
ティア | 建物が呑み込まれている…。ライラの時と一緒ね… |
ヴェイグ | やはり、どこも晶化現象の進行が加速しているようだな… |
| |
男の子 | うう… |
スタン | …?おーい、君、どうしたんだ?困ってるみたいだけど |
男の子 | 妹が一人でどこか行っちゃったみたいなんだ |
ゼロス | 妹? |
男の子 | 全然見つからなくて…晶化や魔物とか、心配で… |
スタン | そうなのか… |
スタン | よし、俺達も捜すのを手伝うよ! |
男の子 | えっ、いいの? |
スタン | いいだろ、みんな? |
ゼロス | ああ。今は物騒な世の中だ。いたいけな女の子を放っておけねぇな |
スレイ | よし、じゃあ手分けして捜そう |
| |
女の子 | ぐすっ…お母さん… |
女の子 | お母さんの大好きだったお花、たくさん持って行ってあげるからね。待っててね |
??? | …そこのキミ、ちょっといいかな |
女の子 | 誰…? |
サレ | … |
女の子 | 騎士さん…? |
サレ | そんなに怖がらなくてもいい。聞きたい事があるだけさ |
サレ | この辺りに村があるだろう?場所を教えてもらえないか。キミの住んでいる村だよ |
女の子 | … |
| |
漆黒の騎士 | 早く答えろ! |
女の子 | きゃっ…! |
サレ | やれやれ、声を荒げるのはよくないよ |
サレ | でも、ちゃんと答えてくれないと僕もキミにお仕置きしないといけなくなるなぁ |
女の子 | うう…。お兄ちゃん… |
scene2 | 少女を捜して |
スタン | そうか…。君のご両親は、晶化現象に巻き込まれて… |
男の子 | うん…。それに魔物もすごく増えてて…この前も、村の外で出くわしちゃって |
ティア | まぁ…。大丈夫だったの? |
男の子 | その時は赤いバンダナの兄ちゃんが助けてくれたんだ |
スタン | 赤いバンダナの…?それって… |
男の子 | おれにはもう妹しか家族がいないんだ。おれが守ってやらないと |
男の子 | なのに…どこ行ったんだろう…。無事だといいんだけど… |
スタン | 大丈夫だ!俺達が絶対見つけるよ! |
ゼロス | スレイやルドガー達も別の場所を捜してるし、手分けすれば大丈夫だろ |
ゼロス | しかし…闇雲に捜すのも効率が悪いな何か手がかりとかねぇのか? |
男の子 | 手がかり…? |
ティア | 何でもいいの。直前に話していた事とか、思い出してみて |
男の子 | そういえば…母ちゃんの話してたな |
男の子 | あ、ブランの花摘みにいったのかも!妹はその花が大好きで、よく母ちゃんと摘みに行ってたんだ |
男の子 | 村の外れにたくさん咲いてる場所があって、ブランの花畑って呼ばれてる |
男の子 | でも… |
スタン | どうかしたのか? |
男の子 | 花畑のある場所は魔物がよく出るから、子どもだけで近寄っちゃいけないって言われてて… |
スタン | 何だって…!すぐにその花畑に向かおう。案内してくれるか? |
男の子 | こっちだよ! |
ティア | … |
ゼロス | どうした、ティアちゃん。早く行こうぜ |
ティア | ごめんなさい。ちょっと、兄さんの事を思い出したの |
ティア | 私と兄さんも、似たような境遇だったから |
ゼロス | ティアちゃん… |
ゼロス | わかった。その悲しみは俺さまが癒してやらねーとな! |
ゼロス | さぁ、俺さまの胸に飛び込んで── |
ゼロス | …うぐっ! |
ティア | さ、急ぎましょ |
| |
ティア | …?何か落ちているわ |
ゼロス | ん?これは…髪飾り── |
男の子 | …妹のだ! |
スタン | やっぱり花畑に行ったのか |
ティア | 間違いなさそうね。急ぎましょう |
ゼロス | 俺さまはスレイ達にも声をかけてくる。お前らは先に行っててくれ |
スタン | わかった、頼む── |
| |
| ガルルルル! |
男の子 | …!兄ちゃん、魔物が…! |
スタン | 大丈夫だ、下がって! |
ゼロス | ちっ、急いでるって時によぉ! |
scene1 | 宿命の刃、紅蓮の刃 |
ティア | ここがあなたの言っていた、花畑? |
男の子 | うん、確かこの辺りで── |
| |
サレ | 仕方ないね。キミがいけないんだよ? |
スタン | やめろーっ!! |
| ガキーン! |
サレ | む… |
クレス | 何とか間に合った…!君、怪我はないかい? |
女の子 | う、うん… |
ティア | あれは…? |
男の子 | バンダナの兄ちゃんだ! |
スタン | クレス…! |
スタン | やっぱりバンダナの兄ちゃんってクレスの事だったんだな! |
クレス | スタン!?何故、君がここに… |
スタン | 俺達は戦場へ向かう途中さ。クレスこそどうして? |
クレス | …僕がいるのは、ここにいるサレが理由だ |
サレ | … |
クレス | サレがまだ生きている…。生きて、前と同じ事を繰り返しているという噂を聞いてね |
クレス | それでずっと、捜していたんだ…。やっと見つけたぞ! |
ティア | サレ…思い出したわ。バチカルが襲撃された時、マルタが名前を口にしていたわね |
ティア | 一緒に漆黒の騎士がいるのも、聞いていたのと同じ…。バチカルを襲ったのもあなた達ね |
サレ | ああ、そうさ。さすが王都、といったところかな |
サレ | 大勢の人間が苦しみ、もだえる様を見るのは最高だったね |
クレス | サレ、お前はまた、罪のない人々を手に掛けているんだな |
サレ | フッ…ははははは! |
サレ | 誰かと思えば、あの時のキミか。その節は世話になったね |
サレ | 僕を心配して、顔を見に来てくれたのかい?心配いらない、この通り絶好調さ |
クレス | 何故だ…!お前はあの時、確かに僕が倒したのに! |
サレ | バロニア北部の地下墓地の話かい?あそこでは僕も不覚を取った |
サレ | 自分でも、生きていたのが不思議なくらいさ |
サレ | 今、こうして自由に動き回れるようになったのはヴァンのお蔭かな |
スタン | ヴァンのお蔭…? |
ティア | あなたも、兄さんとつながっているのね… |
サレ | キミ達、ヴァンの知り合い?世間は狭いね |
クレス | ここへも襲撃目的で近づいたのか! |
サレ | キミに教える必要はないと思うけどね |
クレス | サレ…! |
サレ | どうする?また前のように、僕の邪魔をするつもりかい? |
サレ | それなら、全員斬り捨てるまでだけど |
スタン | …君、妹を連れて、安全なところに避難するんだ |
男の子 | う、うん |
スタン | ここから先へは行かせない。クレス、俺達も一緒に戦うぞ! |
サレ | 傑作だ。たった三人だけで勝てると思ってるのかい? |
サレ | お前達、出番だ。さっさとこいつらを片付けるよ |
漆黒の騎士 | はっ…! |
スレイ | スタン!大丈夫か!? |
ルドガー | 何があった…!?それに…クレス!? |
ゼロス | 詳しい話は後だ。こいつら、キムラスカを襲った漆黒の騎士達だ…! |
ヴェイグ | 逃がすわけにはいかないな…! |
スタン | ああ、行くぞ! |
scene2 | 宿命の刃、紅蓮の刃 |
クレス | サレ!これ以上、お前達の好きにはさせない! |
| ズバッ! |
漆黒の騎士1 | ぐっ…! |
ゼロス | これでも食らいな! |
| ズシャッ! |
漆黒の騎士2 | ぐおっ! |
エリーゼ | ここまでです! |
ティポ | どーん! |
漆黒の騎士3 | ぐはっ! |
サレ | ふん、なかなかやるじゃないか |
スタン | …そろそろ観念したらどうだ? |
クレス | …!スタン、危ない! |
スタン | えっ!? |
| ビュッ! |
スタン | おわっ!? |
ミクリオ | …槍!?一体どこから… |
スレイ | スタン、大丈夫か!? |
スタン | 何とか…誰だ!? |
ハスタ | オッス、オラ、ハスタ!友達のピンチに、華麗に参上だゾ! |
サレ | …別に友達になった覚えはないけどね |
ハスタ | はい、「友達になった覚えはない」頂きました!頂いちゃいました! |
ハスタ | サレ先生、かっけーっ!でも俺、気にしないから。混ぜてもらえればいいんでおじゃるよ |
ハスタ | 肉をずぶりとやる感触だけ楽しませてくれれば構わないからサ |
クレス | な、何だお前は…サレの仲間…なのか…? |
ハスタ | さてさて、ここで問題です。オレさまの正体は何でしょう? |
ハスタ | 1ば~ん、通りすがりのハンサム |
ハスタ | 2ば~ん、子連れのわけあり剣士 |
ハスタ | 3ば~ん… |
エリーゼ | この人…ウィンドルの元騎士です。前にわたしやアスベル達を襲ってきた事が… |
ティポ | またお前かー! |
ハスタ | カットカットォ!まだ問題の途中でしょうが~!お兄さんびっくりだよ? |
ハスタ | ま、でもサ…。子どものする事だ…許して── |
ハスタ | あーげない!オレさまダイ激怒!!罪を憎まず人を憎む!お前ら皆殺し決定でありんす |
エリーゼ | あなたがどうしてこの人と一緒に行動しているんですか? |
ハスタ | こう見えても、オレさま達、元同僚なんでごわす☆いいねェ、麗しき友情! |
サレ | そんなものはないよ。たまたま会っただけの関係さ |
スタン | ハスタ…。お前もヴァンの仲間なのか? |
ハスタ | ヴァン?何それ?美味しいの? |
ゼロス | とぼけやがって… |
スレイ | お前達は何でヴァンと手を組むんだ? |
サレ | 好き勝手にやらせてくれるからさ。それ以上でもそれ以下でもない |
ヴェイグ | そんな理由で…!ヴァンが何をしようとしているのか知らないわけじゃないだろう |
ヴェイグ | お前のような奴らのせいで一体どれだけの人を苦しめている…! |
サレ | ギャーギャーうるさいね。お説教は嫌いなんだ |
クレス | 意味もなく…多くの人の命を奪ったのか! |
スタン | 許せない…! |
サレ | だったらどうする?力づくでも止めるっていうのかい? |
サレ | やれるものなら、やってみるがいいさ |
スタン | この…! |
ハスタ | またまた隙ありィ! |
スタン | うわっ!? |
クレス | スタン! |
スタン | 大丈夫だ… |
ゼロス | スタン!気を抜くなよ! |
スタン | ああ、わかってる |
| ドーンッ! |
スレイ | 何だ!? |
エリーゼ | 大変です…!村から煙が… |
サレ | ふふっ… |
スレイ | …!これもお前達の仕業か…!? |
サレ | 宴が始まったようだね |
スタン | ゼロスやスレイ達は、村を頼む!ここは俺に任せろ! |
ミクリオ | しかし… |
クレス | 僕もスタンと一緒に戦う! |
クレス | すぐに倒して合流する!みんなを…村のみんなを助けてくれ! |
ハスタ | おっととー。自信満々自信過剰!まぶしーねー!そこのキミ! |
ゼロス | ふざけたヤローだが…クレス、スタン!ぜってー負けんなよ! |
スレイ | 村に急ごう! |
ティア | 二人共、気をつけて! |
スタン | 俺は…お前達を許さない |
スタン | あんな幼い子を手に掛けようとし、楽しいからというだけの理由で村や街を襲うお前達を! |
クレス | サレ、僕とお前の間には、深い因縁がある |
クレス | 今度こそ、その因縁の鎖を断ち切ってみせる! |
サレ | フン。その必死さ…ウザいね |
サレ | キミ達のような連中を見ていると、もっといじめたくなるんだよね |
サレ | ハスタ、こいつらは僕達に、切り刻まれるのが望みのようだ。かなえてやろうじゃないか |
ハスタ | 言われなくても、そのつもりですよっと! |
scene3 | 宿命の刃、紅蓮の刃 |
クレス | スタン、畳みかけるぞ! |
スタン | ああ、任せてくれ! |
ハスタ | いやん!オレさま大ピ~ンチ! |
ハスタ | あわれ、ハスタさまは正義の味方を前に、あえなく敗れるのでショウか? |
スタン | はあああっ! |
クレス | うおおおっ! |
| ズバーーッ! |
ハスタ | ぐっ…! |
ハスタ | …ピンポーン!正解は |
ハスタ | やられないけどやってやる、ですよっと! |
スタン | こいつ…。変な事ばかり言ってるけど、相当やるな |
クレス | ああ。油断は出来ない。僕達も全力でかからないと |
ハスタ | サレ先生、どーっすか、あの麗しい友情っぷり!こっちも見せつけますか! |
サレ | うるさいな…。ハスタ、少し黙っててくれるかな? |
ハスタ | お呼びでない?はい!ハスタくん、残念! |
| |
サレ | …クレス、だっけ?キミも大概しつこい男だね |
サレ | そんなにキミの故郷…トーティス村が大切? |
クレス | … |
サレ | 傑作だったな。目の前で親を殺され、泣き叫ぶ子どもの顔…焼け落ちる建物… |
サレ | キレイになってよかっただろう?感謝してほしいくらいさ |
クレス | サレ…! |
サレ | ふふふ…。いいね、その顔。もっと歪ませてみたくなる |
| |
スタン | 黙れ! |
スタン | これ以上クレスの村の事をそんな風に言うな!黙らないならお前を… |
クレス | スタン…! |
クレス | ありがとう。僕なら大丈夫だ |
クレス | あいつはああやって僕達を挑発しているんだ。話なんて聞かなくていい |
スタン | だけどっ…! |
サレ | ふん… |
クレス | サレ、お前は何故、そうやって各地の街や村を襲い続けるんだ |
サレ | 僕はいつも面白そうな方についてるだけさ |
スタン | 面白そう…?そんな理由で…! |
クレス | …なるほど。お前は変わっていない。前に戦った時から、全く |
クレス | そればかりか、前よりいっそう、負の思想に捕らわれてしまっている… |
クレス | そんなお前を正す事は、もう出来ないんだろう |
サレ | その偉そうな言い方、虫酸が走るね |
サレ | キミは自分が高見に立って、こちらを見下ろしているつもりなのかな |
サレ | おためごかしはやめるんだね。何が正すだ。本当は僕を恨み、殺したくてたまらないんだろ? |
サレ | だったらやってみればいい。やれるものならね |
ハスタ | もういい?やっちゃっていい?黄昏ちゃうその前にサー |
クレス | 来るなら来い。僕達は…負けない! |
スタン | ああ、返り討ちにしてやる! |
クレス | 食らえっ! |
スタン | これでどうだ! |
| ズバッ! |
| バシュッ! |
サレ | ぐっ… |
ハスタ | あんまり…調子に乗ってんじゃねーぞ |
ハスタ | このドグサレ共があっ! |
| ヒュンッ! |
| ガツッ! |
ハスタ | こいつ…俺の槍を受け止めた!? |
スタン | はあああっ! |
ハスタ | くっ、こいつら… |
クレス | スタン、これで決めるぞ!僕の因縁をここで絶つ! |
スタン | ああ、やってやる! |
サレ | 何…!? |
クレス | うおおおおおおっ!燃え上がれ、紅蓮の刃! |
スタン | これが!俺達の全力だ! |
クレス・スタン | 殺劇舞荒剣!! |
| ズバババババーーーッ!! |
サレ | うわああああっ!? |
ハスタ | ぎゃああああっ!? |
| バタッ! |
| |
クレス | 終わったか…。スタン、大丈夫か? |
スタン | ああ、何ともない |
クレス | 村が…あの子達が心配だ |
スタン | スレイ達が向かってくれたから大丈夫だとは思うけど… |
クレス | 僕達も村へ急ごう! |
| |
スタン | みんな! |
スレイ | スタン!クレス!大丈夫だった? |
スタン | ああ。こっちは何とか片付いたよ |
ルドガー | こちらも、漆黒の騎士達は全て退けた |
ミクリオ | 幸い、村の人に危害が及ぶ前に止められたよ |
クレス | よかった… |
| |
女の子 | あの…お兄ちゃん達… |
スタン | ん? |
女の子 | 助けてくれて…ありがとうこれ、お花… |
スタン | ああ!摘みに行ったお花か!こっちこそありがとう! |
男の子 | どうして勝手に花畑へ行ったりしたんだ。駄目だって言われてただろ |
女の子 | ごめんなさい…お母さんにブランの花を見せたくて… |
男の子 | さっきみたいに怖い目にあったらどうするんだよ! |
スタン | まぁまぁ。責めないでやってくれよ。無事だったんだしさ |
スタン | 優しい妹じゃないか |
男の子 | うん… |
スタン | これからあの花畑に行く時は、必ず兄ちゃんに相談するんだぞ |
スタン | そうでないと、兄ちゃんが心配するからな。約束だ |
女の子 | うん、約束する! |
スタン | よし、いい返事だ! |
ティア | じゃあ、私達は行くわね |
スタン | 元気でな!仲良くやるんだぞ! |
男の子 | 本当にありがとう! |
エリーゼ | 仲のいい兄妹でしたね… |
スタン | あの女の子見てたらリリスを思い出すな。まぁ、リリスはたくましかったけど… |
ルドガー | 一日も早く晶化現象を解決し、この村も元通りにしないとな |
ヴェイグ | ああ…そうだな |
スレイ | ところでスタン、遅くなっちゃったけど…その人は? |
スタン | ああ!スレイやミクリオは会った事がなかったっけ |
スタン | 紹介するよ、クレスだ。ウィンドルのトーティス村に住んでる俺の仲間だ! |
スレイ | オレは、スレイって言います。よろしく、クレスさん |
クレス | ああ、よろしく! |
クレス | ところで…みんなは戦場に向かってるって聞いたけど、どうしてなんだい? |
スタン | 実は… |
クレス | …なるほど。それで戦場に… |
クレス | 事情はわかったよ。それにしても、そのヴァンと言う男…気がかりだね |
ティア | ええ… |
ゼロス | クレスはこれからどうすんだ? |
クレス | みんなの話を聞いて、各地の街や村を襲っているのは、サレ達だけじゃないとわかった |
クレス | これ以上被害を出さないために、村や街の様子を見て回ろうと思ってる |
クレス | 戦場に近いところの方が襲撃を受けやすいだろうし、しばらく同行してもいいかな? |
スレイ | 勿論です! |
エリーゼ | クレスが一緒なら、心強いです… |
ルドガー | よし、それじゃそろそろ出発しよう |
scene1 | それぞれの戦い |
クレス | これは… |
ミクリオ | 辺り一面が、晶化しているね |
スレイ | 前に見た森と同じだ…。広範囲が一気に晶化したのかも |
クレス | これほどの規模の晶化は初めて見たよ |
クレス | …こんな事が、他の場所でも起きているなんて |
ゼロス | 残念だが、このまま晶化が進行すればこんなのが珍しくなくなるぜ |
| |
クレス | さっきの村の人達は、大丈夫だろうか…。それに僕の故郷も… |
エリーゼ | …? |
ティア | エリーゼ、どうかした? |
エリーゼ | 今、何か聞こえたような気がして… |
ティポ | 誰かの話し声みたいだよー |
??? | 誰!?立ち聞きするなんて怪しいヤツ! |
ルドガー | …えっ!? |
クレス | あーーー!君は…! |
エリーゼ | もしかして…知っている人ですか? |
| |
ロンドリーネ | あれ…?クレス!?…に、ルドガー! |
クレス | やっぱり!ロディだったんだね |
ロンドリーネ | 二人共久しぶり!まさか、こんなところで会うなんて |
ルドガー | 元気そうだね |
ゼロス | おい、お前ら…!誰だよこの超絶キュートでセクシーな女の子はよぉ! |
クレス | 僕の知り合いだよ。ロディって言うんだけど |
ロンドリーネ | 本名はロンドリーネね。ロディは愛称。よろしく! |
ルドガー | ははっ。前に会った時も、まるきり同じ台詞を言ってたね |
ティア | ルドガーとも知り合いなのね |
ルドガー | ああ。前にバロニアで会ったんだ |
ロンドリーネ | あの時は楽しかったね。双子ちゃんが大道芸を披露してさ |
ルドガー | そういえば、ディオとメルは、一緒じゃないのか? |
ロンドリーネ | うん、今はね。ちょっと別行動中なんだ |
ゼロス | 何だよルドガー、楽しそうに話してんじゃねーか。俺さまも混ぜてくれよー |
ゼロス | ロディちゃん、俺さまはゼロス!ゼロスくんって呼んでもいいぜ? |
ロンドリーネ | あはっ、面白い人だねー。とりあえずよろしく! |
エリーゼ | また始まりました… |
ティア | もはや治る見込みのない病気みたいなものかしら |
クレス | それで、ロディ、どうして君はここに? |
ロンドリーネ | あっ!えっと…そうだった… |
ロンドリーネ | 実は、ずっと捜していた人がようやく見つかったんだけど… |
クレス | 本当かい!?よかったじゃないか、ロディ! |
ロンドリーネ | でも…その…クレスにとっては… |
クレス | …? |
ロンドリーネ | まずいよね…。ああ…どうしよう…すぐにどっかに隠して… |
| |
ダオス | 何をしている、早く行くぞ |
ロンドリーネ | わー!出てきちゃ駄目だって! |
クレス | なっ…! |
クレス | お前は…ダオス!? |
ダオス | … |
| |
スレイ | えっと…あの人もクレスさんの知り合い? |
スタン | そうみたいだけど… |
クレス | … |
ダオス | … |
ミクリオ | わけありみたいだね… |
ロンドリーネ | ああ…やっちゃった… |
scene2 | それぞれの戦い |
クレス | … |
ダオス | … |
ゼロス | 何だありゃ…向こうの空気、重すぎるぜ |
ルドガー | ロディが人を捜しているという話は聞いていたが、それがまさかクレスの因縁の相手だったとはな |
ティポ | ねーねー、ゼロス君。これってもしかして、男女のシュラバってヤツ―? |
ゼロス | ん~、そういう惚れた腫れたのとは違う話みたいだぜ |
ゼロス | ちょっち俺さま達には口が出せない雰囲気だなぁ… |
エリーゼ | 大丈夫なんでしょうか… |
クレス | …ダオス。戻って来ていたんだな |
ダオス | … |
クレス | 一体何が目的だ? |
ダオス | 貴様に話す筋合いはあるまい |
クレス | 答えてくれ。もし前と同じなら… |
ロンドリーネ | わー!待って!私が答えるから |
ロンドリーネ | ダオスは今、晶化現象を解決するための調査をしてるところなの |
ロンドリーネ | そうだよね、ダオス? |
ダオス | ふん… |
スレイ | 晶化現象を…? |
クレス | どういう事だ。何故お前がそんな事を… |
クレス | お前は人間を滅ぼす気でいたんじゃなかったのか |
ティア | 人間を滅ぼす、ですって…? |
ロンドリーネ | いやいや…ちょっとした誤解といいますか… |
ダオス | … |
ダオス | …全ては我が故郷、デリス・カーラーンを救うためだ |
ダオス | そのためにはマナが必要…だが、肝心のマナが晶化していてはどうにもならんからな |
ダオス | 故に晶化の解決方法を探っている。マナさえ確保出来ればこの星の人間の事など知った事ではない |
クレス | …ダオス |
スレイ | あの…ダオスさん、晶化した結晶がマナだって事、知ってるんですか…? |
ダオス | 当然だ…ん? |
ダオス | お前のその出で立ちは… |
スレイ | え、何ですか? |
ダオス | …貴様はマナを感じる事が出来るのか? |
スレイ | 感じられるのはオレじゃなくてオレの友達です。彼女から聞いた事ですけど… |
スレイ | ダオスさんもマナを感じ取れるんですか? |
ダオス | … |
ダオス | …鍵を握っているのは、案外、貴様という事もありうるか |
ロンドリーネ | どうしたのダオス?何の話を… |
| |
| ズドーーーン! |
| |
スレイ | 何だ、今の音!? |
スタン | 魔物が襲ってきた!しかも数が多い! |
ロンドリーネ | そんな…! |
ダオス | フン、たかがこの程度の数。私一人でどうにでもなる |
クレス | いや、僕達も戦う |
ダオス | 貴様…私の力を軽んじるのか? |
クレス | 自分達の身は自分達で守るだけだ |
ダオス | …勝手にしろ |
ティア | 魔物が突っ込んで来るわ! |
scene3 | それぞれの戦い |
スレイ | これで…どうだ! |
| グオオオオッ!! |
スレイ | よし…!こっちは片付いたかな… |
ミクリオ | スレイ、見ろ。クレスとダオスの二人… |
クレス | せいっ! |
| ズバッ! |
| グオオッ! |
ダオス | はあっ! |
| ギャウウッ! |
スレイ | すごいな、あの二人… |
ミクリオ | ああ。クレスの剣の腕も相当だけど… |
ゼロス | 何だ、あのダオスって奴…すげぇ強ぇ…! |
スレイ | 世の中には、とんでもない実力の持ち主が、まだまだいるんだな |
スレイ | オレ達も負けていられない…! |
ヴェイグ | しかし魔物の数が多い…一体あとどれくらいいるのか… |
エリーゼ | 向こうからまた魔物が来てます! |
| グオオオオオオオオオッ!! |
ティポ | わー!何だこいつ、おっきいぞー!! |
ティア | 何て大きい魔物なの…今までに見た事がないわ |
ダオス | マナの異常による影響を受けて、変容したのかもしれん |
ダオス | さすがに片付けるのは少々手間がかかるか… |
クレス | 相手がどれほど大きくて強くても、やるしかない! |
ダオス | …単発の攻撃をただ繰り返しても、おそらくあの魔物に効果はない |
ダオス | 最大の攻撃で一気に決める必要があるか… |
ダオス | 貴様、私の術に合わせて攻撃しろ。そのくらいは出来るな |
クレス | …見くびらないでほしいね。不本意だけど、やるしかないみたいだ |
ダオス | ふん… |
ダオス | 行くぞ…! |
ダオス | はああっ! |
クレス | はああああっ! |
| ズババババーーッ! |
| グオオオオーーッ! |
ゼロス | よし!クレス達があのでかいのを倒したぞ! |
スタン | こっちももう一息だ、残った魔物を殲滅しよう! |
エリーゼ | はい! |
ティポ | まっかせてー! |
| |
ヴェイグ | 何とか終わったか… |
ダオス | … |
クレス | 待ってくれ、ダオス |
クレス | 晶化現象を追っている、という事は…今は人間の味方なのか |
ダオス | …くだらない質問だ。人間などどうでもいい、と言っただろう |
ダオス | 我が願いは、デリス・カーラーンを救う事、ただそれだけだ |
ダオス | 人間を滅ぼす事で晶化現象が解決するのであれば…私は躊躇なく、それを実行するだろう |
クレス | …っ! |
ロンドリーネ | 待って、クレス! |
ロンドリーネ | ダオスもさ、それはあくまで、仮の話でしょ? |
ダオス | ふん… |
クレス | ダオス!まだ話は… |
ロンドリーネ | ねぇ、クレス…ダオスの事、今は私に任せてくれないかな…? |
クレス | ロディ…。だけど… |
ロンドリーネ | 実は私…小さい頃に、あの人と一緒にいた事があってね |
クレス | あのダオスと…? |
ロンドリーネ | うん。その頃はあんな感じじゃなくて、もっと優しい人だった |
ロンドリーネ | でも、そんなあの人は、ある日突然、私の前からいなくなったの |
ロンドリーネ | どうしたんだろうって、ずっと心配し続けて… |
クレス | それでダオスを、捜しに出たのか |
ロンドリーネ | うん…トーティス村の話は聞いたし、ダオスが人間相手に戦争を起こした事も知ってる |
ロンドリーネ | けど、私が知っているダオスは、そんな人じゃない |
クレス | … |
ロンドリーネ | どうしてあの人がそんな事をしたのか、いろいろ調べたけど、どこにも記録が残ってなくて… |
ロンドリーネ | だから私は、理由が知りたいの |
ロンドリーネ | 昔の優しかったダオスと、人間を憎む今のダオス。どっちが本当の彼なのか |
クレス | … |
ロンドリーネ | 駄目…かな |
クレス | …わかった |
ロンドリーネ | 本当!? |
クレス | 理由はどうあれ、ダオスが今、晶化現象を防ごうと動いているのは事実だしね |
クレス | ロディも傍にいるなら、滅多な事はしないと思うから |
ロンドリーネ | ありがとう、クレス! |
クレス | でもダオスが再び人間の敵となって、僕達に戦いを挑んで来るのなら |
クレス | その時は僕も容赦しない。それは、忘れないで欲しい |
ロンドリーネ | うん… |
ゼロス | あー、ロディちゃん。真剣に話してるとこ、口を挟んで悪いんだけどよ |
ゼロス | ダオスの奴、だいぶ遠くまで行っちまったみたいだぜ。このままだとはぐれるぞ |
ロンドリーネ | えっ!?あ、本当! |
ロンドリーネ | ちょっとダオス、待って!私を置いていかないで! |
ロンドリーネ | じゃあね、クレス。ルドガーも。それにみんなも! |
| |
エリーゼ | 慌ただしいですね… |
ヴェイグ | そうだな… |
クレス | じゃあ、みんな。そろそろ僕は行くよ |
ゼロス | そういや、この辺りの街や村を見て回るって言ってたもんな |
クレス | ああ。これ以上、サレやハスタのような連中の好きにはさせない |
スタン | クレスがこの辺りのみんなを守ってくれるなら俺達も安心だ |
クレス | その代わりと言うわけじゃないけど戦争を…必ず止めてほしい |
クレス | 君達なら、きっと出来ると信じているよ |
スレイ | はい、約束します |
クレス | ありがとう。それじゃ、一旦ここで別れよう |
ルドガー | ああ、またな |
ヴェイグ | また会おう |
エリーゼ | クレスも気をつけてください… |
ティア | 無事を祈っているわ |
ミクリオ | さて。僕達も行こうか |
スレイ | ああ、そうだな |
| |
エステル | ガイアス陛下、本当に行かれるのですか? |
エステル | 陛下自ら戦場に赴くなんて… |
ガイアス | 全ては我が民のため、引いては他国のためでもある。この程度は当然の事だ |
ガイアス | 連合軍が交渉に応じない以上、この方法しかない |
ガイアス | これというのも殿下やフィリア司祭、ナタリア殿下のご尽力のお蔭だ |
ガイアス | 改めて、礼を述べる |
エステル | 陛下が四大国を一つにまとめたからこそ成し得たのです。礼には及びません |
ジェイド | 陛下、出立の準備が整いました |
ガイアス | …わかった |
エステル | ガイアス陛下…必ず…必ず、戦争を、晶化現象を止めましょう! |
ガイアス | ああ。必ず。それでは、これで失礼する。…行くぞ、ジェイド |
ジェイド | はっ |
scene1 | 二つの切り札 |
スタン | この先が、ア・ジュールとウィンドルの国境… |
エリーゼ | ウィンドル港で聞いた話だとそこが戦場になっているはずです |
ルドガー | 戦争を止めて、晶化の進行を防ぐ。これからが本番だな |
ゼロス | …にしても、戦争を止める、か |
ゼロス | とは言え相手は軍隊だし、どうしたもんかな |
スレイ | 簡単な事じゃないけど、きっと何か方法があるはずだ |
スレイ | 今は戦場を目指して── |
| ドーンッ!! |
ゼロス | うお…!何だ今の… |
ヴェイグ | 爆発か…?森の先からだったが… |
ルドガー | …どうやら思ったより戦場が近いようだな |
スレイ | …行ってみよう |
| |
兵士 | ウオオオオオオッ! |
兵士 | ワアアアアアアッ!! |
ゼロス | くそっ…。わかっちゃいたが、ひでぇな… |
スレイ | これが…戦争なのか…。どうして傷つけ合わなくちゃいけないんだ… |
ティア | 「争いこそが理想を生む」… |
ティア | 間違ってるわ。こんな事で生まれる理想なんて… |
ヴェイグ | 戦争によって生まれた負の感情…ここにはそれが満ち溢れている… |
ヴェイグ | それが、晶化現象を加速させるのなら今は最悪の状況だ… |
スタン | うん…実際、戦場までの道中でも晶化現象の進行はかなり早くなってた |
スレイ | このままだとあの晶化した森のように世界中が晶化に包まれるかも… |
ルドガー | くっ…一刻の猶予もない…! |
| |
連合軍兵士1 | ──おい!誰かいるぞ! |
スタン | 連合軍…! |
連合軍兵士1 | ア・ジュール軍だ!やれ! |
連合軍兵士2 | はっ! |
ルドガー | 違います、俺達は… |
ゼロス | ルドガー、話なんて聞いてくれねぇ。さっさと逃げるぞ! |
ルドガー | あ…ああ!みんな、走れ! |
連合軍兵士2 | おい!お前! |
エリーゼ | きゃ… |
ヴェイグ | エリーゼが…! |
連合軍兵士1 | おっと。逃げるならこの子は八つ裂きだぜ? |
エリーゼ | みんな…! |
ティポ | やめろー!エリーを離せー! |
ゼロス | エリーゼちゃんを人質に…!てめぇ…! |
連合軍兵士2 | いいから、武器を置け! |
スタン | 言う通りにするしかないのか… |
連合軍兵士1 | よし…全員、このまま── |
??? | ──その子から手を離してもらおう |
連合軍兵士2 | なっ!? |
??? | はぁあああ! |
連合軍兵士2 | ぐぁ…!な、何だお前は…! |
アスベル | エリーゼは俺の友人だ。傷つける事は許さない…! |
スレイ | あなたは…! |
エリーゼ | アスベル…!? |
連合軍兵士2 | くそっ、援軍などと…!おのれ! |
連合軍兵士1 | 怯むなっ!数ならこちらの方が── |
??? | 蒼破ッ!! |
連合軍兵士2 | なっ…!?剣が弾かれた…!? |
ユーリ | まだやるつもりか? |
ユーリ | 人質を取るなんざ騎士の風上にも置けねぇな |
ヴェイグ | ユーリ!何故お前まで… |
ゼロス | 次から次へと…どうなってんだこりゃ… |
アスベル | お前達。もうすぐここにはア・ジュール軍がやってくる |
アスベル | 退くなら今の内だ |
連合軍兵士1 | チッ…分が悪いか。ここは退く…行くぞ! |
ユーリ | あの手の輩はどこにでもいるのな |
エリーゼ | ありがとうございます、ユーリ、アスベル。助かりました… |
エリーゼ | でも、どうして二人がここに…? |
アスベル | 詳しい事は後で説明するよ。この先に味方の軍勢がいる。もう少し安全な場所に移ろう |
アスベル | 案内する。こっちだ、付いてきてくれ |
スレイ | はい…! |
scene2 | 二つの切り札 |
アスベル | この辺りでいいはずだ |
スレイ | ここが…?さっきは味方のところへって話でしたけど… |
ユーリ | そう焦んなよ。すぐ来るはずだ |
ルドガー | 来るって…一体誰が── |
ウィンガル | ふん…何とか無事の様だな |
スレイ | ウィンガルさん!それにア・ジュール軍の人達も… |
アスベル | 哨戒中にウィンガルがみんなを見つけてね |
アスベル | 彼の的確な指示があったから急な動きにも対応出来た |
ルドガー | そうだったのか…。ありがとう、ウィンガル |
ウィンガル | お前達には全面的に協力せよ、と陛下から仰せつかっているだけだ |
ルドガー | それでも、助けられた事に変わりはないよ |
ヴェイグ | ユーリ達はア・ジュール軍に合流したのか…? |
ユーリ | ああ。少し前からここでの防衛に加勢してる。協力してるのはオレ達だけじゃないぜ |
ウィンガル | キムラスカとシルヴァラントの正規軍が援軍としてこちらに向かっている |
スレイ | キムラスカやシルヴァラントが…!? |
ウィンガル | ああ。それも全て陛下の取り付けた四大国の同盟によるもの… |
ルドガー | …! |
スレイ | 四大国の…同盟…!?いつの間に…そんな事… |
ウィンガル | 連合軍のア・ジュール侵攻を見かねたガイアス陛下が… |
ウィンガル | 晶化が進行する原因を説明し、その進行を止めるためにも戦争の終結に各国に協力を仰いだ |
ミクリオ | それって… |
スレイ | アニスがガイアス陛下に伝えてくれたんだ…! |
ウィンガル | そして使者としてエステリーゼ殿下、ナタリア殿下、フィリア司祭がカン・バルクに会し… |
ウィンガル | 戦争を止めるという同意の元、同盟を結んだ |
スタン | すごい…!ア・ジュール軍側が圧倒的に優勢になるって事だよな? |
ルドガー | ガイアス陛下は戦力差を明らかにし不要な戦闘を避けるのが狙いだったんだな |
エリーゼ | 同盟が結ばれたのなら戦争は終わるんです…よね? |
ティア | いいえ…そんな簡単に戦争が収まるとは思えないわ |
ユーリ | まぁな。現にセルディクやグレバムの野郎は聞く耳を持っちゃいねぇ |
アスベル | ア・ジュールの停戦の申し入れも聞かず、攻撃を続けている |
エリーゼ | そんな…! |
ルドガー | …! |
ルドガー | おい、あれって…! |
連合軍兵士 | いたぞ!こっちだ! |
ルドガー | 連合軍の兵士…! |
スタン | しかも、すごい数だ |
ウィンガル | 大規模な戦いになるのは避けたい。…一時撤退すべきか |
ウィンガル | 総員、退避!これより砦へと戻る |
ウィンガル | 連合軍との戦闘は最低限に抑え、帰還する事を第一とせよ |
ア・ジュール兵 | ハッ…!! |
ウィンガル | この先に我が国の砦がある。お前達もアスベル達と共にそこを目指せ |
ルドガー | お前は行かないのか? |
ウィンガル | あの敵の数だ。このまま全員で動けば、いずれ追いつかれ混戦状態に陥るだろう |
ウィンガル | 必要最低限の戦いに留めるためにも俺はこの場に残り奴らを食い止める |
スタン | なっ…、一人で無茶だ! |
ウィンガル | …問題ない、俺には“切り札”がある |
スレイ | 切り札…? |
scene3 | 二つの切り札 |
ルドガー | ──ウィンガル、その切り札って一体何なんだ? |
ウィンガル | 増霊極(ブースター)…一時的に戦闘力を引き上げる装置だ |
ウィンガル | 本来は陛下をお守りするためのものだが、今は緊急事態だ。この程度の雑兵ならわけもない |
ルドガー | 戦闘力を… |
ルドガー | なら、俺も残るよ |
ルドガー | 俺も似たような事が出来るんだ。この数の敵だ、残るなら一人より二人の方がいい |
ルドガー | 遅れは取らないはずだ |
ウィンガル | …勝手にしろ |
スレイ | ルドガー、ウィンガルさん。オレも残ります! |
ウィンガル | スレイ、お前達は砦に早く戻ってもらいたい。人数が多ければ離脱も難しくなる |
ルドガー | 大丈夫だ。時間を稼いだら、俺達もすぐに合流するよ |
スレイ | わかった!でも、十分気をつけて! |
アスベル | よし、砦までは俺が先導する! |
ユーリ | 一気に駆け抜けるぜ! |
連合軍兵士 | なめられたもんだな!そう簡単に逃げられると── |
| ガキン! |
| |
ルドガー | お前達の相手はこっちだ |
連合軍兵士 | …たった二人で足止めなど! |
ウィンガル | …出来るだけ余計な戦闘は避けろ。いいな? |
ルドガー | ああ、わかってる |
ルドガー | でも、まさかお前と並び立つ事になるなんてな |
ウィンガル | …お前から名乗りを上げたのだ。期待外れの力でない事を祈る |
ルドガー | …ああ、勿論だ! |
ルドガー | はぁああああ! |
ウィンガル | … |
ウィンガル | オオッ…! |
連合軍兵士 | な…何だ…この二人姿が変わって… |
ルドガー | ここから先は、通さない…! |
scene1 | ガイアスの秘策 |
ルドガー | あらかた片付いたか…うっ… |
ウィンガル | 次の追手がくる前に俺達も砦に帰還する |
ウィンガル | …肩は貸さんぞ |
ルドガー | ふっ…お前も怪我してるじゃないか。大丈夫だ、案内してくれ |
| |
ゼロス | …何とか無事に砦までたどり着けたが… |
エリーゼ | ルドガーとウィンガル…二人は大丈夫でしょうか… |
スレイ | きっと、大丈夫だ。あの二人なら… |
ア・ジュール兵 | ウィンガル様が戻られました! |
スタン | …!戻ってきたか…! |
| |
ルドガー | みんな… |
ウィンガル | … |
スレイ | ルドガー!ウィンガルさん!よかった… |
エリーゼ | 二人共…怪我してます…!すぐに治療します! |
ティポ | うわーん!ルドガー君ー!死なないで― |
ルドガー | はは…。大丈夫だよ、ティポ。こんな傷で死なないさ |
ジェイド | おやおや、随分と無茶をされたようですね |
ウィンガル | ジェイド…。お前も来ていたのか |
ジェイド | ええ、次の作戦で私も戦線に出る事になりましてね |
ジェイド | …ああ、そうです。皆さん、帰還早々ですみませんが少しお話したい事があります |
ジェイド | お二人の治療が終わってからで構いませんから、私のところへ来てもらえませんか |
スレイ | オレ達ですか?それは勿論大丈夫ですけど… |
ヴェイグ | いいのか?この砦の外ではまだ戦いが続いているぞ |
ミクリオ | こうしている間にも、晶化現象が進行してしまうかもしれないというのに… |
ジェイド | 承知しています。だからこそ、ですよ |
スレイ | わかりました。治療が終わったらすぐに向かいます |
ジェイド | それはよかった。ウィンガルも、一緒に来てください |
ウィンガル | ああ、わかった |
ユーリ | んじゃ、オレ達は仕事に戻るとするか |
アスベル | みんな、また後にでも |
スレイ | はい!ありがとうございました! |
エリーゼ | お話って何でしょうか… |
ヴェイグ | オレ達に何かさせるつもりかもしれないな |
ゼロス | あいつは食わせ者だからな。ろくな予感がしねぇな |
ルドガー | まあまあ、実際に聞けばわかるさ |
ルドガー | いっつ… |
ティア | ルドガー、じっとして。もうすぐ終わるわ |
スレイ | … |
| |
ジェイド | 陛下、スレイ達を連れてきました |
ガイアス | …ご苦労 |
ウィンガル | 陛下…!? |
ゼロス | おいおい…マジかよ。何で王様がこんなとこにまで来てるんだ? |
ガイアス | 国の危機、民の危機に立ち向かうのは王の務めだ |
ガイアス | …何より此度は、やるべき事がある |
スレイ | やるべき事? |
ガイアス | それは後で話すとしよう |
ガイアス | スレイ。お前達はヴァンと接触したと聞いたが… |
スレイ | はい…。ヴァンには逃げられたけど…直接対峙してわかった事があります |
ガイアス | …言ってみろ |
スレイ | 実は── |
ガイアス | …なるほどな |
ガイアス | やはり連合軍はヴァンの手引きによるものだったか |
スレイ | はい、ヴァンは部下を使ってセルディクやグレバム…を焚き付けていたようです |
ウィンガル | …どうりで連合軍と言いつつ連携が取れていないはずだ |
ジェイド | ヴァンは戦闘が長引けばいいと思っているので、軍隊の質など二の次なのかもしれません |
スレイ | はい、それで晶化を進行させようとしているんだと思います |
ティア | 現に、私達がここに来るまで晶化現象の進行はかなり大規模なものとなっていました |
ガイアス | 奴の目的が晶化と言うならば…作戦の実行はより急がねばならんな |
ルドガー | …作戦と言うのは? |
ジェイド | それが皆さんをお呼びした理由です |
ガイアス | この戦争を止める。そのための作戦を遂行する |
ガイアス | お前達の力を借りるぞ |
ヴェイグ | …! |
スレイ | 戦争を…止める… |
scene2 | ガイアスの秘策 |
ティア | 戦争を止める作戦…ですか?一体どんな… |
ガイアス | このまま正面でやりあっていても時間もかかるし互いに消耗するばかりだ |
ガイアス | だが、所詮奴らは寄せ集めの集団… |
ガイアス | 各勢力の指揮をしている頭を一度に潰してしまえば指揮を失い、連合軍は瓦解するはずだ |
ミクリオ | セルディク達、各勢力の首魁を狙った同時攻撃…という事か |
ティア | それが出来れば、確かに被害は最小限かもしれません |
ティア | でも、彼らだけを叩くなんてどうやって… |
ウィンガル | 要はセルディクやグレバム達を孤立させられればいい…そうお考えですね? |
ガイアス | ああ |
ウィンガル | となると、砦の付近に連合軍の主戦力を集めセルディクらから引き離す… |
ウィンガル | それには何か、砦に引き付ける「餌」が必要ですが──… |
ウィンガル | …!まさか… |
ガイアス | そう。その「餌」こそがこの私だ |
スタン | なっ──…! |
ウィンガル | …いけません、陛下!だからこの砦まで来たというわけですか |
ガイアス | 戦場では確実に効果がある手段を選ぶのは当然だろう |
ウィンガル | しかし…! |
ガイアス | 私が戦場に出れば、セルディク辺りは喜々として兵を回してくるだろう |
ティア | そんな…それではガイアス陛下の危険は免れません |
ガイアス | そんな事は百も承知だ。こうしている間にも晶化は進行する、他に手はあるまい |
スレイ | でも… |
ジェイド | 心配には及びません。陛下は一人で軍隊相手に渡り合える超人的な強さですし |
ジェイド | それに、我々が止めたところで一度決めたらテコでも動きませんから |
ガイアス | お前達には、敵の首魁を叩く役目を担ってもらいたい |
スレイ | え… |
ウィンガル | 陛下、そこまで彼らの力を… |
ガイアス | …敵主力の引きつけは我が国の軍で行う。やってくれるか |
スレイ | はい…!勿論です、ガイアス陛下 |
スレイ | 何としても戦争を止めます。オレ達はそのために来たんです |
ガイアス | 頼んだぞ |
スレイ | はい…! |
scene1 | 作戦開始 |
スレイ | ──なるほど。じゃあ、オレ達の目標はセルディクって事ですね |
ア・ジュール兵 | はい、これが作戦を図にまとめたものになります |
ア・ジュール兵 | 敵の主力が砦に集中した後、みなさんは敵陣後方へ回ってください |
ア・ジュール兵 | なお、セルディクは殺さず拘束するよう陛下から命を受けております |
ティア | わかりました |
ゼロス | でも、あいつが大人しく従うわけはねぇ。激しい抵抗は覚悟しとこうぜ |
ヴェイグ | そうだな…。だが、作戦通りに行けば戦争を止められるだろう |
ア・ジュール兵 | では、私はこれで。出陣の際はまたご連絡します |
ルドガー | いよいよ、戦場だな…。後は出陣を待つだけか |
ヴェイグ | ああ、しかしすごい数の兵だ…。エリーゼ、ティポはぐれるなよ |
エリーゼ | はい、ヴェイグならどこにいても見失いません |
ティポ | ヴェイグ君、おっきいもんねー |
ミクリオ | それにしても、自ら戦場に出て敵を引き付けるなんて、思い切った事をする王様だな |
ティア | ガイアス陛下は元々、武勇に優れたお方よ。今の地位もその力あってのものだとか… |
ティア | 勿論、それ以上に聡明な方でもあるのだけれど |
ミクリオ | 僕達の役目だって相当危険な事には変わりないけどね |
スレイ | ああ、セルディクの本陣まで乗り込んで攻撃… |
ティア | 一度敵の懐に飛び込めば撤退はやすやすと出来ないわ。文字通り命がけね |
スタン | グレバムやキムラスカの反乱軍も他の三国からの援軍がそれぞれ同時に叩くんだよな |
ルドガー | っていう話だったけど…ん? |
クラトス | む…お前達は |
エリーゼ | クラトス! |
ゼロス | それにクロエちゃんまで~♡俺さまに会いに来てくれたのかい?もう、感激だぜ~ |
クロエ | 別に、ワイルダーに会うためにやって来たわけじゃない |
| |
エリーゼ | ここにいるって事は…もしかしてクラトス達もこの後の作戦に参加するんですか? |
クラトス | そうだが…お前達もか? |
スレイ | はい、オレ達はセルディクのところへ |
クラトス | そうだったのか…。こちらはグレバムだ |
クロエ | 先のメルトキオでの暴動はグレバムの仕業だったと判明した… |
クロエ | 国の代表を騙り、独断ア・ジュールへと攻め込んだあの男は必ず私達の手で止める |
クラトス | …あの暴動の後、お前達には世話になったようだな |
クラトス | 国を出たグレバムを追ってくれたとフィリア司祭からお聞きしている |
ゼロス | まぁ、結局は取り逃がしちまったけどな… |
クロエ | こちらもすぐに追う事が出来ればよかったのだが… |
ゼロス | お?そう言えばロイドは一緒じゃねぇんだな |
ゼロス | お前らが来てるなら当然ついてきそうなもんだが |
クラトス | ロイドは遅れて来ると言っていた |
クラトス | やらなければならない事が自分にはあると、な |
ゼロス | うへ~…また、何か厄介な事に首突っ込んでんのかねぇ |
ゼロス | 苦労性と言うか、お人好しというか… |
スタン | …ん? |
ヴェイグ | どうしたんだ、スタン |
スタン | ジェイドさんが出て来たぞ |
クラトス | ア・ジュールの指揮を執る彼が出て来たという事は… |
ルドガー | そろそろ出撃、って事か |
scene2 | 作戦開始 |
スレイ | ──ジェイドさん! |
ジェイド | おや、スレイに皆さん。クラトス殿も一緒ですか |
ルドガー | ああ、そこで一緒になったんだ |
ジェイド | それはちょうどよかった。皆さんに目指していただく敵陣についてお話があります |
ヴェイグ | 後方に展開しているとは聞いているが… |
ジェイド | ええ。しかし、相手の動きはギリギリまでわかりません |
ジェイド | こちらで斥候を放っていますので現地で報告を受けてください |
ジェイド | ただ…敵地での合流になります。何が起こるかはわかりませんので十分注意を |
ルドガー | わかりました |
スタン | キムラスカの反乱軍とはどこが戦う事になるんだ? |
ジェイド | キムラスカの騎士団ですね |
ジェイド | グレバムならシルヴァラント軍という風に、その国の軍隊が処理に当たるというわけです |
ミクリオ | だったら僕達が追うセルディクは… |
アスベル | ──セルディク大公は俺達ウィンドル騎士団が共に事に当たろう |
アスベル | 大公のやった事…その始末をつけるために、俺も力を尽くす |
ユーリ | オレも手伝うぜ。お姫様に頼まれちまったしな |
エリーゼ | アスベル、ユーリ…! |
ティア | 二人が一緒なら心強いわね |
ジェイド | この作戦にはア・ジュールの…いや、世界の運命がかかっています |
ジェイド | セルディクら各首魁への襲撃…敵主力の砦への誘導… |
ジェイド | そのどちらが欠けても作戦は成り立ちません。お互いに最善を尽くしましょう |
スレイ | はい…! |
クラトス | 了解だ |
アスベル | 絶対に成功させましょう…! |
ジェイド | ──では、作戦開始です |
scene1 | 動乱の果てに |
ヴァン | …カーツか |
カーツ | 指示通り、連合軍の残存戦力を結集させた |
カーツ | 準備が整い次第、全戦力をもって砦への突撃を開始させる予定だ |
ヴァン | そうか…。ご苦労だった |
ヴァン | ところで、傷の具合はどうだ |
カーツ | 治療は受けている。問題ない |
ヴァン | …そうか、無理はするな |
カーツ | …ああ |
ヴァン | ──しかし、四大国の同盟とは面白い事になってきたな |
ヴァン | 四大国がこのような正式な形で手を組んだのは、これが初めてだ |
ヴァン | …カーツ、お前はこれをどう読む? |
ヴァン | この同盟を機に、国家間の争い…ひいては人間同士の争いがこの世から根絶すると思うか? |
カーツ | …言うまでもなく、有り得ない。一時的に戦乱が収まる事はあっても、じきに必ず綻びる |
カーツ | 奴らの目的は、あくまで連合軍に対抗するための仮初めのものにすぎない |
カーツ | 争いのない真の理想世界…それを実現出来るのは私達だけだ |
ヴァン | …うむ |
ヴァン | だが、さすがに四大国の同盟を持ち出されては連合軍も長くは持つまい |
ヴァン | 当初は戦争を長期化させる事で晶化現象を進める予定だったが、そうも言ってはおれん |
ヴァン | 故に、次の総攻撃をもって我々は理想を実現する |
カーツ | 総攻撃…犠牲も多く出るだろうな |
ヴァン | ああ。しかし、それは必要な犠牲なのだ |
カーツ | …わかっている |
ヴァン | 世界の変革を共に見守ろうではないか、カーツ |
カーツ | ああ。…だがその前に、片付けておきたい事がある |
ヴァン | …… |
| |
スレイ | ──戦場を迂回して、進んで来たけど… |
クロエ | 今のところ敵兵は見かけないな |
ルドガー | 敵軍のほとんどが砦に引き付けられたのは確かなようだな |
クラトス | ガイアス陛下自身が囮になるというのはやはり随分効果があったようだな |
スタン | 意外と楽に進めそうだな |
ティア | とは言え、慎重に進まなくては。勘付かれては意味がないわ |
ゼロス | だってよ、大人しくしてろよスタン |
スタン | ゼロスこそ |
アスベル | 斥候から情報をもらうように言われているんだが… |
ルドガー | ああ、合流地点はさっきジェイドさんから聞いた。まずはそこを目指そう |
エリーゼ | あ… |
| ピキ…ピシッ…ッ… |
ゼロス | また、晶化現象か移動中だけでも何度目だ…? |
ルドガー | 進行具合が目にも明らかだな |
ユーリ | ぐずぐずしてらんねーな |
ヴェイグ | この辺りが合流地点のはずだが… |
エリーゼ | 斥候部隊の方は見当たりませんね…。少し遅れているのでしょうか? |
ティア | 困ったわね。待っている余裕もないというのに |
| |
??? | うわああああ!? |
スタン | 今のは悲鳴…!?どこだ…!? |
ユーリ | おいおい、待てって。敵かもしれねぇぜ? |
クラトス | …だが、斥候部隊かもしれん。だとすれば放っておくわけにはいかない |
スレイ | 確かめに行こう! |
エリーゼ | この辺りから聞こえたようでしたが… |
連合軍兵士 | この…!…くらえ! |
ア・ジュール兵 | うぐっ…! |
ゼロス | おいおいおい…!やべぇぞ!あれ斥候部隊の奴だろ!? |
スタン | 一人で敵に囲まれてるぞ!今助ける! |
連合軍兵士 | …!援軍か!貴様らも叩き斬って… |
スレイ | やめろ!オレ達は戦いたいわけじゃない! |
スレイ | 戦争は晶化現象を進行させる、それを止めたいだけなんだ |
連合軍兵士 | ふっ…騙されんぞ |
連合軍兵士 | グレバム様は仰ったのだ…これは天啓をないがしろにしたア・ジュールへの罰だと |
連合軍兵士 | 正しく罰を与えた我らだけが晶化現象から救われると! |
ゼロス | あの野郎…よくもそんなでたらめを |
スレイ | 騙すつもりはない!話を聞いて── |
連合軍兵士 | 黙れ!貴様らもア・ジュールに与するならば天罰を受けるぞ…! |
スレイ | くっ… |
クラトス | せぁっ!! |
| ドサッ… |
スレイ | …クラトスさん |
クラトス | 気絶させただけだ |
クラトス | グレバム達は人々の不安を掻き立て利用している |
クラトス | この者達のように、不安から戦争に参加している者も多い… |
スレイ | 早く止めなきゃ…! |
アスベル | 斥候は無事か? |
ティア | ええ、幸い怪我は浅いわ。…えっ? |
ア・ジュール兵 | あの…こ、これを… |
ア・ジュール兵 | 敵陣の配置を記してます… |
スレイ | ありがとう…!これでセルディク達の位置がわかる |
ティア | あなたは砦に戻った方がいいわ。私が同行しましょう |
ア・ジュール兵 | 私は大丈夫です…!一人なら何とか隠れつつ砦まで戻れますから |
ルドガー | だけど、その怪我では… |
ア・ジュール兵 | ついていけば足手まといになる…。作戦を成功させるためにも…お願いします…! |
ティア | …わかったわ |
クロエ | 貴公の勇敢な行動に感謝する。私達が必ず作戦を成功させる |
クラトス | …行くぞ。猶予はない |
| |
クラトス | …グレバムの軍勢はこちらだな。では、我らはここで別れよう |
クロエ | 皆の健闘を祈る。…ワイルダーも無事でな |
ゼロス | クロエちゃん…俺さまの事を心配してくれるなんて感激だぜ |
ゼロス | はっ…クロエちゃん、やっぱり俺さまの事を… |
クロエ | 全然違う! |
クロエ | 全く…こんな時だというのに軽口は相変わらずだな |
ゼロス | でひゃひゃ!いつも通りが一番って事さ |
ゼロス | …クロエちゃんもあんまり固くならねぇほうがいいぜ |
クロエ | ワイルダー… |
クロエ | 貴公は、何が真剣なのか冗談なのかよくわからんな… |
クロエ | まぁ…だが、今のは忠告としてありがたく受け取っておく |
クラトス | …そろそろ行くぞ、クロエ |
クロエ | はっ |
クロエ | では、これで失礼する |
ティア | そちらも気をつけて |
スレイ | 早く、決着をつけよう。みんな戦いたくて戦ってるわけじゃないんだ… |
スレイ | 晶化も戦争も…全部終わらせてみんなの元の生活を取り戻す |
スタン | だな… |
ヴェイグ | オレ達も進もう。セルディクの軍勢はこのすぐ先だ… |
scene2 | 動乱の果てに |
セルディク | ええい!まだ、砦を落とせないのか! |
連合軍兵士1 | 大規模な攻撃を行っていますが、戦線がこう着状態を脱せず… |
セルディク | 何故攻めきれない!聞けばガイアスまで前線に出ていると言うではないか |
セルディク | ここで奴を打ち取れば一気に勝ちを決められるものを… |
セルディク | カーツはまだ戻らないのか! |
連合軍兵士2 | セルディク大公!ご報告が…! |
セルディク | 騒々しい、どうしたと──お、お前は… |
アスベル | 今すぐに兵を引いて投降するんだ!セルディク大公! |
スレイ | この戦いは、晶化の進行を助長させてる…! |
スレイ | これ以上、戦争を続けさせるわけにはいかない! |
セルディク | 晶化を助長だと…?はっ、馬鹿な事を |
セルディク | アスベル・ラント!お前はウィンドルの騎士でありながらエステリーゼと共に他国に与したな! |
セルディク | ガイアスもガイアスだ。エステリーゼと同盟を交わしたからといって、効力などあるものか! |
セルディク | 断じて許せん!ガイアスも、お前も、エステリーゼも全員度し難い愚か者だ |
ユーリ | ったく。悪党ってのは、何で自分の立場がわかんねえ奴ばっかなのかねぇ |
アスベル | セルディク大公…あなたのやっている事は間違ってる |
アスベル | あなたの判断により、今、多くの人々が晶化の危機に晒されている |
アスベル | 私欲のためにこんな争いを起こし、人々を苦しめ…そんな事が許されると思うのか! |
セルディク | 黙れ!一介の騎士風情が大公である私に何と言う口の利き方だ! |
アスベル | …本当ならこんな事態になる前に俺達が止めるべきだった。その責任は自分達でとる… |
アスベル | お前は、ここで必ず止める! |
ユーリ | オレは騎士でも何でもねぇ。だけどよ、国民や他国を巻き込むあんたのやり方は見過ごせねぇな |
ユーリ | ここら辺で終わりにしちゃどうだ? |
セルディク | ごちゃごちゃと…!そもそも、何故このような奴らの侵入を許した |
セルディク | 兵士どもは何をやって… |
ヴェイグ | 兵の大半は砦に集結している。お前の命令でな。ここまで来るのにさほど苦労はしなかったぞ |
ルドガー | ここを守るのは僅かな護衛の兵士のみ…。覚悟するんだな! |
セルディク | 不敬な…!ウィンドルの王となるこの私に…お前達、覚悟は出来ているのだろうな |
アスベル | ウィンドルの王はリチャードだけだ…! |
セルディク | ア・ジュールに身を売った愚か者が! |
セルディク | やれ、兵士達よ!全員殺して構わん! |
連合軍兵士1 | はっ!! |
アスベル | ウィンドルのため、戦争を止めるため、そして何よりリチャードのため… |
アスベル | お前の野望を、この場で完全に挫いてみせる! |
スレイ | やるぞ、みんな! |
scene3 | 動乱の果てに |
アスベル | はぁっ! |
連合軍兵士1 | くっ… |
ゼロス | さぁ、いい加減観念しとけって |
セルディク | 忌々しい…!何故私がこのような… |
セルディク | 兵は残ってはいないのか! |
ルドガー | もう諦めろ。連合軍は砦の攻略に出払って… |
エリーゼ | …!向こうから…何か来ます |
ティア | あれは… |
カーツ | … |
セルディク | おお、カーツ!戻ったか! |
セルディク | いいところに戻ってきた!こいつらを打ち払え、カーツ! |
カーツ | … |
アスベル | カーツ…! |
カーツ | …もう遅い。お前達、剣を下せ |
スレイ | もう遅い?どういう事だ? |
カーツ | 今、連合軍は残る全ての戦力をもって砦へと突撃した |
カーツ | …そろそろ始まるはずだ |
スレイ | 何の話を… |
| パアアーー……ッ! |
カーツ | … |
セルディク | な、何だこの光は!? |
スレイ | この光は…まさか晶化の…!? |
| ゴゴゴゴゴ…! |
ティポ | わー!地震まで! |
ミクリオ | 大きいぞ!みんな、伏せろ! |
エリーゼ | きゃ…っ! |
ヴェイグ | エリーゼ! |
| パアアアアーーーッ! |
| |
ユーリ | 何も見えねえ!どうなってやがる!? |
スタン | くっ…何が…! |
ミクリオ | おい…スレイ…あれ…… |
スレイ | なっ…何だよ、これ…! |
| |
scene1 | カーツの覚悟 |
クロエ | 見つけたぞ、グレバム…! |
グレバム | ええい、このような者どもに攻め入られるとは…。兵は何を── |
| ゴゴゴゴゴ…! |
| |
クラトス | これは…! |
連合軍兵士 | グ、グレバム様、しょ、晶化が…うわあーーッ! |
| ピキピキピキッ…! |
グレバム | …晶化現象か!?何という規模なのだ… |
グレバム | くっ…! |
| ピキッ…! |
グレバム | 馬鹿な…私がこんなところで…終わるはずが… |
| ピキピキピキッ…! |
| |
クロエ | な…!グレバム…まで… |
クラトス | 無事か、クロエ…! |
クロエ | わ、私は大丈夫です…! |
クロエ | しかし、こんな勢いで一気に晶化するなんて事… |
クロエ | 考えたくありませんが…遅かった、と言う事なのでしょうか… |
クラトス | …まだ、わからん |
クラトス | だが、我々もここに留まっていれば晶化に飲まれかねん |
クラトス | 考えるのは後だ、今は退くぞ |
クロエ | はっ… |
セルディク | こ、これは… |
スタン | な、何なんだ、あれは…!何が起きたんだ? |
ヴェイグ | 晶化現象…? |
ミクリオ | こんな規模で…!? |
ユーリ | おいおい…これウィンドルの方まで広がってんじゃ… |
ルドガー | まさか…連合軍の突撃…それがマナの不活性化を…? |
カーツ | 四大国の同盟の前に、連合軍とはいえ勝ち目などない |
カーツ | しかし、勝つ必要などない。負の感情を生めば晶化現象は進む |
カーツ | 無謀な攻撃による不安や痛み…その効果は絶大だったようだな |
ヴェイグ | そのためにこんなにも多くの人に苦しみを…! |
カーツ | 理想のためだ。そして、その価値はあった |
カーツ | …ウィンドル領土の大半は晶化に飲み込まれた |
アスベル | な──、ウィンドルが…!? |
カーツ | 四光の一角…即ちウィンドルは闇の帳に包まれたのだ |
エリーゼ | それって、天啓の…!四光の一角って、ウィンドルの事だったんですか…? |
スタン | 闇の帳…それがこの大規模な晶化だって言うのか…? |
カーツ | そうだ、天啓は成就した |
カーツ | ここまでの広範囲に影響が及ぶとは想定外だったがな |
ユーリ | ウィンドルが晶化する事を端から知ってたってわけか… |
アスベル | 許せない…、どうしてこんな酷い事を… |
セルディク | おい、カーツ!一体どういう事だ… |
セルディク | ウィンドルは我らの祖国…。ようやく手に入れた私の国だ |
セルディク | ……貴様、何を企んで── |
| ビシュッ! |
セルディク | ぐぅ…! |
エリーゼ | …え |
ルドガー | カーツが…セルディクを刺した…!? |
セルディク | カ、カーツ…貴様… |
セルディク | 私に…王となる私にこんな事をして許されるとでも── |
カーツ | お前が王だと?…笑わせるな |
カーツ | 私欲のために、自国の民をも平気で危険に晒すような貴様に、その資格はない |
| ザシュッ |
セルディク | ぐふっ… |
| ドサッ! |
アスベル | カーツ!? |
アスベル | どうしてお前がセルディク大公を…!? |
ゼロス | どうなってやがる… |
ティア | …これもヴァンの命令なの? |
カーツ | …答える必要はない |
スレイ | カーツ…お前は一体… |
カーツ | … |
カーツ | ──残すはお前達だ |
カーツ | お前達は必ずヴァンの障害となる。始末をつけなければなるまい… |
カーツ | 故に、このカーツ・ベッセルが引導を渡そう |
| ザッ… |
連合軍兵士 | カーツ様に栄光を…! |
スタン | 連合軍!?どうして戦力が残って… |
カーツ | この者達は、セルディクではなく我らの理想にのみ付き従う者達だ… |
ゼロス | …なるほど。お前はそうやってセルディクの下で、自分の息のかかった手駒を増やしてきたんだな |
ユーリ | 利用するだけ利用して、用済みとなりゃ即始末… |
ユーリ | そんなやり方の奴が語る理想なんざ、何の説得力もないっての |
カーツ | …何とでも言うがいい |
スレイ | カーツ…天啓が成就したと言ったな |
スレイ | お前達はそのために戦争を…? |
カーツ | ああ…。一国の晶化によって、理想への扉が開く… |
スレイ | そんな… |
カーツ | お前達にも引導を渡してやろう。…かかれ! |
連合軍兵士 | はっ…! |
スレイ | くっ…こっちだってまだ聞きたい事がある |
スレイ | ここで退くわけにいかない。全部答えてもらう! |
スタン | 来るぞ…! |
scene2 | カーツの覚悟 |
スタン | はあ…はあ… |
ミクリオ | 何とか…兵士達は退けたが… |
ヴェイグ | 油断するな、まだカーツが残っている |
カーツ | … |
ルドガー | …カーツ、教えてくれ |
ルドガー | 争いのない世界を謳ってどうして、争いを引き起こす? |
スタン | それに、お前達の言う理想…目的って、一体何なんだ |
スタン | 世界から争いを無くすために何故、晶化現象が必要なんだ…! |
カーツ | ……私からも、お前達に一つ問おう |
カーツ | 結局、人は戦う道しか選ぶ事は出来ない。そう思った事はないか |
ティア | それは… |
ゼロス | したり顔で悟ったような事を言ってんじゃねぇよ |
ゼロス | その戦いを仕組んでんのはお前達だろうが |
カーツ | …その通りだ |
カーツ | しかし、これは世界を変えるための…いわば最後の痛み |
エリーゼ | 最後?どういう事ですか? |
カーツ | 二度と人間が争う事のない世界を作る…その理想を実現するための、最後の戦いだ |
カーツ | これまで世界各地で、お前達も様々な局面を見聞きしただろう |
カーツ | 己の利益、感情のために大勢の人間を苦しめる… |
カーツ | セルディクやグレバムのような輩はどこにでもいるという事もわかっているはずだ |
ティア | …… |
カーツ | セルディクとしばらく行動を共にして、私も改めて痛感した |
カーツ | やはりこの世界は、終わらせなければならない。理想は実現されねばならぬ |
ティア | そのために晶化現象を引き起こしたというの? |
カーツ | そうだ。晶化現象こそが…全てを変えてくれる |
スレイ | セルディクやグレバム…お前の言うように自分の利益しか追い求めない人間も、確かにいる… |
スレイ | でも、そのために無関係な人、大勢を犠牲にするなんて間違ってる! |
スレイ | ましてや戦争や、晶化現象だなんて… |
カーツ | 重要なのは結果だ |
カーツ | すでにウィンドルは天啓の通りに晶化した… |
カーツ | ウィンドルの大規模な晶化は人心に更なる不安を生み、晶化は世界中に波及するだろう |
エリーゼ | そんな…! |
カーツ | 諦めろ。お前達に晶化の進行は止められん |
スレイ | …いいや、まだだ!まだ終わりじゃない! |
スレイ | オレは導師になる時に誓ったんだ。世界を導く光になるって |
スレイ | ミクリオとの夢も…ライラとの約束も…ここで諦めるわけにはいかない |
スレイ | …お前達が晶化を望むならオレ達はそれを止めてみせる! |
カーツ | …ならば、ここで果てよ。ヴァンに仇なす者は私が討つ。理想の礎となるがいい…! |
scene3 | カーツの覚悟 |
スレイ | はあああっ! |
| ズバッ! |
カーツ | むう…っ! |
カーツ | …くっ………不覚…及ばなかったか…… |
カーツ | だが、諦めん……何としても理想を…実現して…みせる… |
カーツ | これは必要な事なのだ…。永続するはずの痛みは…私達が…必ず…終わらせる……! |
スレイ | …よせ、カーツ!今動いたら… |
カーツ | …この身など、どうなろうが──……ぐふっ…! |
スレイ | カーツ… |
スレイ | …あなたにも信念がある事はわかった。けど… |
| |
スレイ | もう一度、言う。オレは、あなたの考えを認める事が出来ない |
スレイ | 誰かの理想のために、たくさんの人が犠牲になるなんて事、あっちゃいけない |
スレイ | この世界に生きる者達、みんなが手を取り合うべきだ |
カーツ | …ふ、青いな…… |
カーツ | …今、世界に必要なのは、理想を実現する、意志と力…… |
カーツ | …スレイと言ったか…。…その甘さは…いずれお前の命取りとなるだろう…… |
スレイ | それでも!オレは必ず、オレが正しいと思うやり方で、世界を救ってみせる! |
カーツ | …信じる道であれば、進むがいい。だが──… |
カーツ | …きっとその先で、お前もまた…絶望を…知る事に…な…る…… |
カーツ | …… |
スレイ | カーツ… |
エリーゼ | … |
ヴェイグ | 奴にもここまでする理由があったのかもしれない… |
ルドガー | 確かに方法は間違っていたけれど俺達と目指すものは近かったのかもしれないな… |
スタン | …でも、それって何だか悲しいな |
スタン | 出会い方が違えば手を取り合う事も出来たかもしれない |
エリーゼ | …そう、ですよね |
スレイ | … |
スレイ | それでも…オレは自分の心が正しいと思った道を進むよ |
ミクリオ | スレイ… |
| |
??? | ──正しい道…。しかし、それが人を争いへと導く |
??? | 自分の正義を信じ、自分だけが正しいと信じ… |
ティア | …この声 |
ゼロス | ついに出てきやがったか… |
ヴァン | そして、その行き詰まりが、今のこの世界だ |
スレイ | ヴァン…! |
Name | Dialogue |
scene1 | ヴァンの理想 |
ティア | 兄さん…! |
スタン | どうしてここに… |
ルドガー | カーツを助けに来たのか…? |
ヴァン | カーツ…やはりここに居たか |
ヴァン | セルディクやこの者達など捨て置けばいいものを… |
カーツ | セルディク…あの男をどうしても許せなかった、それだけの事だ |
カーツ | …それに、こいつらは必ず理想の妨げとなる… |
カーツ | ぐふっ… |
ヴァン | カーツ… |
カーツ | ヴァン……、後は頼む。必ず我らの理想を実現してくれ… |
カーツ | 戦乱で失った友は戻らない…… |
カーツ | だが、私のような苦しみはもう、誰にも… |
ヴァン | 安心しろ。私がこの手で必ず実現してみせる |
カーツ | 最後まで…見届ける事が出来ず、すまない… |
カーツ | ヴァン…どうか… |
ヴァン | カーツ…。お前は私にとって真の同志であった |
ヴァン | せめて、安らかに眠れ |
カーツ | ふっ… |
カーツ | … |
ヴェイグ | カーツ… |
エリーゼ | ひょっとして、あの人は戦争で友達を…… |
ゼロス | そうみてぇだな |
スレイ | ヴァン… |
スレイ | お前やカーツがセルディク達のように私利私欲で動いているとは思えない |
スレイ | 理由を聞かせてほしい |
ヴァン | …スレイ |
ヴァン | お前は、人々が安心して暮らせる世界を作ると言ったな |
ヴァン | そして、そのためにお前達は晶化現象を止めようとする |
ヴァン | …しかし、それは間違いだ。お前達のやり方で世界は変えられん |
エリーゼ | どういう事ですか…? |
ヴェイグ | 晶化現象で多くの人々が苦しんでいる… |
ヴェイグ | それを止める事が何故間違っていると言うんだ? |
ヴァン | …ならば、問おう |
ヴァン | これまで様々な危機が世界を襲い、その度に幾人もの英雄が世界を救った |
ヴァン | しかしどうだ、この世界から争いはなくなったか? |
ヴァン | ──否、人の業は新たな災厄を呼びその連鎖は未だ尽きる事がない |
アスベル | そんな事はない!少しずつだが世界も、人々も変わり始めている |
アスベル | 正しい想いを繋ぎ、間違いを正していけば争いを完全になくせるはずだ |
ユーリ | 世界を変えようってんなら、人間全部が変わらなきゃいけねぇ。どうしても時間がかかっちまうさ |
ユーリ | 時間がかかったとしても、オレ達が変わらなきゃ意味がねぇ |
ヴァン | いつかは…きっと…そんな微かな希望にすがるのもいい |
ヴァン | だが、現実を見ろ。そのいつかの希望を待つ中で痛みや犠牲が日々生まれている事を |
ヴァン | 戦乱が生む大きな犠牲、人を失う痛み…お前達は真実から目を背けているにすぎん |
ミクリオ | … |
ヴァン | 故に、私とカーツは決めたのだ。これを最後の犠牲にすると |
ヴァン | 世界を晶化で覆う事で、全ての争いを根絶させると── |
スレイ | … |
scene2 | ヴァンの理想 |
ゼロス | 争いを根絶… |
ヴァン | …そうだ。この世界は欺瞞と矛盾に満ちている |
ヴァン | 国同士の戦争、権力争い、人々の騙し合い…挙げていけばきりがない |
ヴァン | 人間というものは、争いをやめられない存在だ。今の世界であり続ける限りはな |
ヴァン | 故にこの世界を変える… |
ヴァン | この世界に蔓延る争いの連鎖を断ち切るのだ |
スタン | どうしてそれで晶化現象が必要になるんだ!? |
スタン | そんな事をしたら、争いどころか人間までいなくなるって事だろ! |
エリーゼ | スタンの言う通りです…!どうして晶化にこだわるんですか…? |
ヴァン | 晶化は滅びにあらず。救世に他ならない力だからだ |
ルドガー | 晶化が救世…だと?どういう事だ? |
ヴァン | 晶化とは、大いなる救世主「天帝」による力… |
ヴェイグ | 天帝…? |
ティア | それは一体… |
ヴァン | 天帝の目覚めと共に世界全土は晶化に包まれる… |
ヴァン | そして、この世界の浄化が果たされるのだ── |
スレイ | …… |
scene1 | 天帝 |
スレイ | 天帝…それに、世界の浄化…… |
スタン | その天帝っていうのが晶化現象を引き起こしてる元凶なのか…? |
ティア | …兄さん、答えて。その天帝とは一体何なの? |
ヴァン | …時が来ればわかる |
ゼロス | おいおい、この期に及んでもったいつける気かよ |
ヴァン | 目覚めは近い。語らずとも、じきにわかるという事だ |
ヴェイグ | …なら、浄化の事を話せ |
ヴェイグ | 晶化で覆われて浄化が果たされる…それが救世とはどういう事だ |
ヴァン | 全てが無に帰る。国も、人も、全てだ |
ヴァン | この世界を捨てる事こそ救世…、これこそが浄化… |
ルドガー | 全てを無に帰し、世界を… |
エリーゼ | 捨てるって事は…今のこの世界をなくすって事ですよね…? |
ティポ | そんなのイヤだよー |
ゼロス | …ふざけるな!お前に何の権利があってそんな事を… |
ヴァン | お前達に許しを乞う気などない |
ヴァン | だが、既に時は満ちた。どうあがこうと、天帝による浄化は免れん |
ヴァン | …見るがいい。この周辺を始め、既にウィンドルのほぼ全域が晶化した |
ユーリ | …後はお前さんが手を下すまでもなく誰もが絶望や不安を抱くってワケか… |
ミクリオ | 晶化現象は瞬く間に広がる…このままでは世界中が… |
アスベル | くっ…! |
エリーゼ | そんな… |
ルドガー | … |
スレイ | ヴァン… |
scene2 | 天帝 |
ヴァン | … |
ティア | ……あなたの考えはわかったわ。この行いが、争いの連鎖を断ち切るためのものだという事も |
ティア | でも…今の惨状はどう? |
ヴァン | … |
ティア | あなたが誘発させた戦争で多くの人々が巻き込まれ、命を落としている |
ティア | それに、晶化現象も…。数えきれないほどの人々に未だ苦しみを与えているわ |
ヴァン | これは最後の痛みだ |
ティア | そんなの言い訳よ。あっていい犠牲なんてあるわけない |
| |
| チャキ… |
ティア | 兄さん…、あなたは私が止める。それが妹として私に出来る最後の事よ |
ヴァン | … |
| |
ジェイド | ──ウィンドルにおける大規模な晶化現象の全容は、まだ掴めておりません |
ジェイド | 確実に言えるのは、かつてない規模で晶化現象が一気に発生したという事です |
ジェイド | それを機に、一時この砦に総攻撃を仕掛けてきた軍勢の大半は晶化、残りは混乱の内に敗走… |
ガイアス | セルディクやグレバムらの行方は? |
ジェイド | 晶化の進行で捜索は困難を極めており残念ながら行方は掴めておりません |
ジェイド | ただ、状況から考えると晶化に巻き込まれた可能性も高いかと思われます |
ジェイド | 戦闘自体は収束しつつありますが、今はそれよりも… |
ガイアス | 晶化の進行か… |
ジェイド | はい。ウィンドルの晶化以降、被害の進行は一層早まっています |
ガイアス | …カン・バルクへ戻る。急ぎ次の策を打たねば |
ガイアス | 砦の兵には、引き続き晶化被害の調査と負傷者の保護に徹するよう伝えよ |
ガイアス | あとは作戦のもと首魁の元へ向かったスレイ達や同盟軍の捜索だ |
ガイアス | 捜索部隊の指揮はお前に命じる。必ず、見つけ出してこい |
ジェイド | ええ、わかりました陛下 |
scene1 | 決別の一閃 |
ヴァン | ──ティア。やはり、私に刃を向けるのだな |
ティア | 言ったはずよ。私はあなたを止めると |
スレイ | ティアだけじゃない。オレ達だって同じ気持ちだ |
アスベル | 戦争を引き起こし、リチャードやウィンドルを晶化させたお前を許さない…! |
ゼロス | これ以上…お前の思うようにはさせねぇ |
ヴァン | 威勢のいい事だ。だが、あいにく勝機はない |
ヴァン | カーツとの激闘を経て満身創痍である今のお前達には── |
ティア | だとしても、やらなければならないのよ…! |
ティア | はああっ!! |
| |
ヴァン | せいっ!! |
ティア | うっ… |
| |
ルドガー | ティア! |
スタン | 一人で突っ込むな! |
| |
ヴァン | ティアよ… |
ヴァン | お前は誰よりよく理解しているはずだ。私には勝てないという事を… |
ティア | 実力は圧倒的にあなたが上…。けれど…私が止めなければならない |
ティア | 例え、刺し違えたとしても──… |
ヴァン | ……我が妹ながら愚かな事だ。憂いは全て、ここで断ち切る他なさそうだな… |
ヴァン | … |
ヴァン | はあああっ!! |
スレイ | ティア!!くっ…、今助けに── |
| |
??? | させねぇ! |
| ガキーンッ!! |
ミクリオ | あれは… |
| |
ルーク | ──おい、ティア。お前が命をかける必要なんてねぇ!俺に任せろ |
ティア | ルーク…!あなた、どうして… |
ヴァン | ほう…まさかお前がここに来るとはな |
ロイド | ルークだけじゃない、俺も一緒だ! |
ロイド | ヴァン!ルークを騙して、コレットをさらわせたお前を俺は絶対に許さない! |
ヴァン | ふ… |
スタン | ルークに、ロイド…!?何で二人がここに…? |
ゼロス | おい、何がどうなってんだ! |
| |
ルーク | 詳しい話は後だ!それより… |
ルーク | この大規模な晶化…全部あんたの仕業なのか…!?師匠! |
ヴァン | その通りだ。晶化こそ、理想への扉… |
ルーク | くっ…! |
ルーク | …これ以上師匠の思い通りにはさせねー |
| チャキッ |
ロイド | ああ!ヴァンを絶対に止めるぞ、ルーク! |
ヴァン | ふっ…来るなら来い、まとめて相手をしてやる |
ルーク | …いくぞ!! |
ルーク | うおおおおおっ! |
| |
ユーリ | …早速おっ始めやがったな。相変わらず、気の早い奴らだ |
ティア | とにかく、私達もすぐに加勢して── |
ルドガー | ……!いや、そういうわけにもいかなさそうだ |
| ドドドド… |
エリーゼ | …?これは地響き、でしょうか… |
ヴェイグ | あれは…! |
| ガアアアアッ! |
スレイ | 魔物の群れ…!? |
ティポ | ショーカの方からどんどんくるよー! |
ヴェイグ | あんな大量に… |
ミクリオ | 晶化現象の影響か…!? |
アスベル | くっ、よりによってこんな時に… |
ゼロス | ヴァンの事はルーク達に任せて魔物を片付けるぞ! |
ゼロス | あいつらなら、その間くらい踏ん張れんだろ |
スタン | …うん、そうだな。俺もそう思う! |
スレイ | …行くぞ! |
scene2 | 決別の一閃 |
ヴァン | ──せやっ! |
ルーク | くっ… |
ヴァン | 避けたか…、ならば…! |
ルーク | …!ロイド!後ろへ下がれ! |
ロイド | ああ、わかった! |
ヴァン | ふっ…私の動きを読んでいるな |
ヴァン | 正直驚いているぞ、ルーク。ここまでやるとはな |
ルーク | その剣も、太刀筋も全部、稽古で嫌ってほど見てきたんだ。楽にやれるとは思わねー方がいいぜ |
ヴァン | 私の剣をよく見、覚えた事は褒めてやろう。だが── |
ヴァン | それは私も同じ… |
ヴァン | はああっ! |
ルーク | くっ |
ロイド | ルーク、大丈夫か!? |
ルーク | ああ、かすっただけだ…! |
ヴァン | さあ、ここからどうする。私に教えられた剣で、私を越える事など出来んぞ |
ルーク | やってみなくちゃわからないだろ! |
ルーク | 最後にもう一度だけ聞く。こんな事、望んでやってるってのか? |
ロイド | ルーク… |
ヴァン | 何度聞かれても答えは変わらん。晶化こそが人間を救済する最善の手段── |
ヴァン | その考えは何一つ変わらん。お前と再会した時からな |
ルーク | もう、俺の知ってる師匠じゃないんだな |
ルーク | 争いを無くしたいなら、他にもっといい方法があるはずだ!こんなやり方絶対間違ってる…! |
ヴァン | …元より、お前に同意を求めるつもりはない |
ルーク | 師匠…! |
ヴァン | …くどいぞ、ルーク |
ルーク | …あんたと決別した時からずっと考えてた。もしかしたら、話せばわかってくれるかもって |
ルーク | けど…、もうわかった。これ以上は何も言わねー |
ルーク | 俺は…俺なりの方法でこの世界を変えていく!そのためにヴァン!あんたを倒す! |
ヴァン | 師を越えると言うのか。…ふん、面白い |
ルーク | はああああっ! |
| カキーンッ! |
ルーク | …! |
ヴァン | 脇が甘い、お前の悪い癖だ |
ルーク | くそ…っ! |
ヴァン | お前の限界はこんなものか… |
ロイド | そう決めるのはまだ早いぞ! |
ロイド | はあっ! |
ヴァン | させん! |
| ドカッ! |
ロイド | うぐっ…! |
ヴァン | ロイドと言ったな。二刀流も悪くはないが、私には──… |
ヴァン | …!貴様、もう一本の剣はどこに… |
ロイド | へ、へへ…ルーク、今だ…! |
ヴァン | くっ…、後ろか! |
ルーク | 遅いぜ…!これでも食らえ! |
| ザシュッ! |
ヴァン | ぬうっ…! |
ロイド | ヴァンに一太刀入った!いいぞ、ルーク! |
ルーク | よし! |
ヴァン | …… |
ヴァン | 私を越える、そう言ったなルーク。ならば、私も全力で応えてやろう |
| ブオンッ!! |
ルーク | …!!ロイド、離れろ! |
ロイド | 何!? |
ヴァン | もう遅い!はああああっ!! |
| |
ティア | …!今の光…、まさか── |
??? | はあっ! |
| ギャウウッ! |
スレイ | 大丈夫!?ティア! |
ゼロス | おいおい、ティアちゃん!目の前に魔物がいるってのに、よそ見はさすがに危ないぜ? |
ティア | ごめんなさい、助かったわ… |
ティア | でも、今の光、見たでしょう? |
ヴェイグ | ヴァンか… |
エリーゼ | ルークとロイドが心配です |
ルドガー | 早く戻らないと…! |
アスベル | みんなはルーク達の方へ!残りの魔物なら俺とユーリで十分だ |
スタン | アスベル…でも… |
ユーリ | お前らのお蔭であらかた片付いた。こっちが終わったらすぐに合流する! |
ミクリオ | …スレイ、ここは彼らに任せて、僕達は行こう |
スレイ | ああ。ありがとう、アスベル、ユーリ…! |
scene3 | 決別の一閃 |
ティア | ──いたわ!ルーク、ロイド! |
スタン | …!待て、あれは…… |
ゼロス | おい…、嘘だろ…? |
エリーゼ | そんな… |
ルドガー | ルーク!ロイド! |
ルーク | …… |
ロイド | ……う… |
ミクリオ | 息はある…! |
ヴェイグ | だが、酷い傷だ。エリーゼ、治癒術を… |
エリーゼ | はいっ… |
ティポ | ルーク君、ロイド君がんばってー |
ティア | 兄さん…、あなたは… |
ヴァン | 全力で来たので全力で応じたまでの事 |
ヴァン | ──…っつ… |
ルドガー | …!その腕… |
ティア | 大きな深い傷…二人にやられたのね |
ヴァン | …目覚めたら伝えてやれ。中々いい太刀筋だった、とな |
ヴァン | 無論、目覚めればの話だが |
スタン | 許せない…今この場でお前を倒す…! |
ゼロス | 覚悟しな、ヴァン! |
スレイ | ミクリオ! |
ミクリオ | ああ、わかってる |
スレイ・ミクリオ | ルズローシヴ=レレイ!! |
ヴァン | 神依か…。ふっ、だが──… |
| ズズ… |
エリーゼ | …!何か変な感じがします…! |
ティア | これは一体… |
スタン | 雷鳴か…!? |
| ズドドドドド───ン!! |
ルドガー | な、何だ!地震まで…!? |
ヴェイグ | いや、これは…!大気が振動している…!? |
スレイ | ぐっ…! |
| |
| |
ヴァン | …ふっ |
ゼロス | 収まったか… |
| |
ミクリオ | 一体何が起きたんだ… |
スレイ | …みんな、空だ!あれを見て! |
| |
ティア | あれは一体…!? |
エリーゼ | お城…でしょうか… |
ヴァン | ようやく現れたか…。天帝の御座よ |
スタン | 天帝の… |
ゼロス | 御座だと…!? |
ルドガー | という事は、あそこに天帝が…… |
ヴェイグ | …!これは何だ…?雪のようなものが降り始めたぞ |
ティポ | でも、これ冷たくないよー |
エリーゼ | …!雪じゃありません…これ…小さな結晶です…! |
ルドガー | 御座の出現と結晶の雪…ヴァン…これは…! |
ヴァン | 言ったはずだ、目覚めの時は近いと |
ヴァン | まもなくだ。地上は全て晶化で包まれる… |
ヴァン | 世界の浄化が始まるのだ |
ルドガー | くっ…!何だ、このすさまじい光は…! |
エリーゼ | 眩しくて、目が… |
ティア | …天帝の御座よ。あそこから放たれている…兄さんを照らしているわ…! |
ゼロス | 天帝からの迎え、ってわけか…! |
ヴァン | …ふ、まあそんなところだ。この段階までくれば、最早私の役目は浄化を見守る事のみ |
スレイ | 駄目だ、行かせない!今ここで決める…! |
スレイ・ミクリオ | 蒼の四連!いっけええええ! |
| バシュウウウ!! |
ヴァン | …無駄な事 |
| パキィィィンッ! |
エリーゼ | 光が、消えました… |
ゼロス | ヴァンの野郎もな… |
ルドガー | … |
スタン | くそっ、あと少しのところで… |
スレイ | …けど、まだ終わりじゃない。あそこに天帝がいる。そしてヴァンも… |
ヴェイグ | 追いかけなくては… |
ゼロス | でも、どうやってあんなとこ… |
ティア | 今は、ルークとロイドの手当が優先だわ |
ルドガー | そうだな…エリーゼ、二人はどうだ? |
エリーゼ | もう少し、お時間もらえますか? |
ティア | ルーク… |
scene1 | 揺るがぬ心 |
ルーク | う… |
ルドガー | …!ルーク、目覚めたのか!? |
ルーク | …あれ、…俺…… |
スタン | ルーク…!よかった…! |
| |
ヴェイグ | …お前とロイド、二人共かなり危険な状態だったんだ |
ルーク | …!そうだ、師匠…ヴァンは──… |
ルーク | うぐっ…! |
スレイ | 駄目だよ、ルークさん!急に動いちゃ… |
ルーク | そんな事はどうでもいい…!それより師匠は…!? |
ティア | …取り逃がしたわ。あなたとロイドが必死に戦ってくれたのに…ごめんなさい |
ルーク | そんな…!くっ… |
スタン | ルーク、まだ動かない方がいい! |
ミクリオ | …今は安静にすべきだ。応急処置を施したとはいえ、傷はかなり深い |
ルーク | ロイド…。ロイドは無事なのか…? |
ゼロス | ああ、心配すんな。少し前に目覚めて、今あっちでエリーゼちゃんが看てる |
ルーク | そっか… |
ティア | …ルーク、何故あなた達がここに? |
ティア | ロイドと一緒だったという事は神子誘拐の件は── |
ルーク | …ああ、ちゃんとけじめは…つけたぜ。約束した通りな |
ルーク | あれから、ガイと一緒に国に帰って伯父上とちゃんと話したんだ。…師匠の事も全部 |
ルーク | 事情は理解してくれたけど、体面もあるからって屋敷で謹慎って事になったんだ |
ルドガー | 謹慎か…。でも、ならどうやってここに? |
ロイド | …俺が話したんだ。キムラスカの王様に |
スタン | ロイド…!起きて大丈夫なのか? |
ロイド | …ああ、大丈夫だ。ありがとな、スタン |
ティア | ロイド、国王陛下に話したというのは… |
ロイド | …特別な事は何も言ってない。ただ、ありのままを話しただけだ |
ロイド | コレット本人がルークの罪を否定してる |
ロイド | だから罰を与える必要はない、ルークを解放してくれって。うちの国王もそれをわかってくれた |
ルーク | コレットに、そんな事言ってもらえる資格なんて俺にはねーんだけど、な |
ルーク | ロイドにも、また助けられちまった |
ゼロス | クラトスが言ってた「ロイドのやるべき事」はこの事だったのか |
ロイド | …ま、そんなとこだ |
ティア | …改めてお礼を言わせて。二人共、さっきは助かったわ |
ロイド | 礼ならルークに言ってやってくれ。あの時咄嗟に割って入ったのはルークの判断だからな |
ルーク | …別に俺は…ただ──… |
| |
ティア | …ルーク、あなたに助けてもらうのはこれで二度目ね |
ティア | …まだ迷いがあった私だったら兄さんにあれだけの傷を負わせる事すら出来なかったわ |
ティア | 自分のしてきた事に向き合って…ちゃんと乗り越えてきて強くなったのね、ルーク |
ティア | 私を…助けてくれて、ありがとう |
ルーク | …! |
ルーク | …… |
ヴェイグ | …とにかく、二人共意識を取り戻した事だ、ここから離れた方がいい |
ゼロス | そうだな…。またさっきみたいに魔物の大群が来るとも限らねぇ |
ミクリオ | ヴァンを追うにしても一度体制は立て直すべきだしね |
スレイ | よし、じゃあ砦に向かおう。ガイアス王やジェイドさん達もこっちの報告を待ってるはずだし |
ルドガー | ああ、そうだな。ルーク、立てるか?肩を貸すよ |
ルーク | …おう。サンキュな、ルドガー |
ゼロス | 俺さまの肩は高いぜ?なんてな…ほらよ、ロイド |
ロイド | 悪いな、ゼロス |
ユーリ | おし、準備完了。行くとすっか |
スタン | ああ! |
エリーゼ | …!みなさん、待ってください |
エリーゼ | あそこに何か… |
ティポ | キラキラしてるよー! |
アスベル | …? |
スレイ | …!あれって… |
| |
スレイ | これってまさか、晶化の結晶…──の破片…? |
アスベル | 晶化の結晶って砕けないはずじゃなかったのか…? |
ヴェイグ | ああ、そのはずだ。力ずくは何度も試したが…、これは一体… |
ミクリオ | …!スレイ、これは… |
スレイ | ああ、さっきの神依だ…!ヴァンに向けて撃った技が、確かこの辺りに当たって… |
ユーリ | おいおい、マジかよ…。何やっても傷すらつかなかった結晶が… |
ルドガー | …神依は俺達の想像していた以上にすごい力なのかもしれないな |
スレイ | …そう…なのかな? |
ティア | とにかく、行きましょう。ここは危険よ。ルーク達を安静に出来る場所へ |
スレイ | ああ、そうだな。それじゃあ、出発しよう |
scene2 | 揺るがぬ心 |
ヴェイグ | ここも晶化が酷いな… |
ミクリオ | …ああ。今までにない規模と速さで晶化現象が起きたのは明白だね |
スレイ | … |
スレイ | ウィンドル全土が晶化したって話、やっぱり本当なのかな… |
ゼロス | …わからねぇがカーツやヴァンの口振り的に嘘だとは思えねぇ。残念だが… |
アスベル | 信じたくはないが…これではバロニアに戻る事すら… |
ルドガー | … |
ルーク | …──うぐっ! |
スタン | …!大丈夫か、ルーク? |
ティア | 傷が疼くのね…。これだけ歩いたのだもの、無理もないわ |
ゼロス | ハニーも結構キツそうだし、どこかで一度休んだ方がいいかも── |
??? | …それはあまりお勧め出来ませんねぇ |
スレイ | …!あなたは… |
| |
ジェイド | ようやく見つけました。まさかルーク達まで一緒だとは思いもしませんでしたが |
スタン | ジェイドさん!?どうしてここに… |
ジェイド | 陛下の命です。あなた方を捜しに来ました |
| |
ユーリ | 砦の作戦はどうなったんだ? |
ジェイド | 砦へ押し寄せていた軍勢は、例の晶化を機に逃げ去りましたよ。まるで蜘蛛の子を散らすように |
ゼロス | さすが、寄せ集めの軍…。逃げ足だけは早いってワケか |
ジェイド | 首魁達は全滅したようですし、連合軍は最早壊滅したと考えて頂いて大丈夫ですよ |
ジェイド | これも皆さんのお蔭ですね |
スレイ | 全滅…?って事は、他の二国も…? |
ジェイド | ええ。さきほどシルヴァラント軍の皆さんと再会出来ましてね、グレバムは晶化に飲まれたと報告が |
ジェイド | キムラスカの反乱軍の指揮官についても同様です |
ジェイド | あなた方の対象であるセルディクもここまでの道のりの中で戦死しているのを発見しました |
スレイ | …それなんですけど、実は、セルディクを討ったの、…カーツなんです |
ジェイド | カーツが…? |
エリーゼ | はい…。それを報告するためにわたし達、砦に向かってたんです |
ジェイド | ……なるほど。あなた方しか知らない何かがいろいろと起きていたようですね |
ジェイド | それに…上空に現れた城とこの降り注ぐ結晶の雪… |
ジェイド | 何かご存知ですか? |
ルドガー | ああ、大体は… |
ジェイド | では、カン・バルクまで皆さんをお送りします。陛下の前でお聞かせ願えますか |
エリーゼ | カン・バルク…ですか? |
ジェイド | ええ。陛下は次の対策のため、既に砦を出られ首都へお戻りになられています |
ジェイド | すぐ近くに我が軍の救護部隊が待機しています。まずはそちらへ案内しましょう |
ジェイド | 救命用の担架もありますのでルーク達への身体の負担も軽減出来るかと |
ゼロス | そいつは助かるな。早いとこ案内を頼むぜ、ジェイド |
ジェイド | ええ、ではこちらへ |
scene3 | 揺るがぬ心 |
ゼロス | ──ふぃ~、ようやくカン・バルクに到着だ |
スレイ | この辺りの晶化はそこまで酷くないな |
ミクリオ | ああ。道中晶化が発生する場面を何度も見かけていたからね。少し心配だったけど、安心したよ |
ジェイド | …さて、ひとまずルークとロイドの二人ですが… |
ジェイド | 傷の状態が酷く、その影響か発熱などの症状も見られますので軍医の元へ移送しようかと |
ティア | 私も付き添います |
ジェイド | ええ、是非 |
アスベル | ──じゃあ、俺とユーリもここで一旦失礼するよ |
アスベル | エステリーゼ様に、セルディクやカーツの一件を報告しないと |
ルドガー | エステルはこの街にいるのか? |
ユーリ | ああ。同盟の一件以降、ここの王宮に滞在してる |
ヴェイグ | なるほどな |
ユーリ | それじゃ、またな? |
エリーゼ | はい…!二人共、ありがとうございました |
ティポ | アスベル君、ユーリ君、またねー! |
ゼロス | ──にしても、とんでもねぇ事になっちまったな |
スタン | 大規模な晶化現象の発生と天帝の御座、それに結晶の雪まで… |
ルドガー | ウィンドル全土の晶化…、あれは本当なんだろうか |
ミクリオ | それは… |
クロエ | ──皆、ここにいたか |
クロエ | ガイアス陛下から皆が街に帰還したと聞いて、様子を見に来た |
ゼロス | クロエちゃん!無事だったんだな |
ルドガー | グレバムは晶化したと聞いてクロエ達は大丈夫か心配していたんだ |
クロエ | 危ない目にも遭ったが、何とか巻き込まれず戻って来られた |
スタン | そうだ…!今回の大規模な晶化の状況について何か話を聞いてないか? |
クロエ | 詳しい事はまだ調査中らしく、確かな情報とは言い切れないが… |
クロエ | やはり今回の晶化現象は、ウィンドル全域に及んでいる可能性が高いらしい |
| |
ルドガー | …! |
クロエ | 王都バロニアを始め、周辺にある街や村も飲み込まれてしまったと… |
ルドガー | イニル街は?何か聞いていないか? |
クロエ | いや、そこまではわからない…。ただ、とにかくあれだけの規模だ。無傷と言う事は考えにくいだろう |
ルドガー | …… |
シルヴァラント兵 | ──クロエ殿!ここにおられましたか |
クロエ | ん?どうかしたのか |
シルヴァラント兵 | クラトス様がお呼びです。至急王宮へお戻りください |
クロエ | わかった、すぐ行く |
クロエ | では、すまないが私はこれで。皆の無事を確認出来てよかった |
ゼロス | お互いに、な。クラトスにもよろしく伝えといてくれ |
| |
スタン | …ウィンドルの晶化…。やっぱり間違いないんだな… |
ルドガー | いや…、まだわからない。この目で見たわけでもないし… |
ルドガー | それに、例え街が晶化したとしても、逃げ延びる可能性だって十分考えられる…… |
ルドガー | …きっとそうだ。エルや兄さんなら…きっと… |
エリーゼ | ルドガー… |
スレイ | とにかく、ヴァンを追いかけて天帝の御座へ行こう |
スレイ | 晶化を食い止めてオレ達の手でこの世界を守らないと |
スタン | ああ、そうだな |
| |
ミクリオ | …鍵は、晶化の元凶である天帝だ。ヴァンは天帝が目覚めれば、世界は完全に晶化すると言っていた |
ミクリオ | 裏を返せばそれは、天帝が目覚めるまで、まだ猶予があるという事だろう |
ヴェイグ | ならば、…その天帝とやらが目覚める前に倒せばいい |
ヴェイグ | おそらくそれで世界全土が晶化に覆われるという最悪な結果は避けられる |
ミクリオ | …いや、それだけじゃない。ヴァンは天帝の持つ力こそが晶化現象だと話していた |
ミクリオ | だとしたら、天帝を倒せば既に晶化してしまった人や物も元に戻るかもしれないね |
エリーゼ | 天帝を倒して、みんなを…… |
ゼロス | なるほどな。わかりやすくていいじゃねぇか |
ゼロス | 根本の元凶である天帝を何とかすりゃ一発逆転、ってわけだ |
スタン | 問題は、どうやって空にあるあの御座へ行くか |
スレイ | ジェイドさんに相談してみよう。あの人なら何か知恵を貸してくれるかも──… |
ミクリオ | …待ってくれ |
ミクリオ | 天帝は倒すとしても、だ。それとは別に、もう一つ大きな問題がある |
ルドガー | …晶化現象の加速、か… |
ミクリオ | ああ…。今回の大規模な晶化を機に人々の不安や絶望が急激に世界中に募り始めている |
ミクリオ | カン・バルクへ来るまでにも嫌というほど何度も目にしたはずだ。晶化が発生する瞬間を… |
ミクリオ | 晶化の進行は今までとは比にもならないほど加速している |
ミクリオ | 元凶である天帝を倒す事も重要だが、同時に世界に拡大する負の感情を鎮め晶化の進行を抑える必要がある |
エリーゼ | 世界に拡大する負の感情を… |
エリーゼ | 天帝も倒さないといけないのに……わたし達だけでそこまで出来るんでしょうか… |
ティア | ──自分達だけじゃどうにもならないなら他の人に協力を仰ぐしかないわ |
エリーゼ | ティア…!ジェイド…!戻ってきてたんですね… |
ジェイド | お話し中、失礼しますよ |
ゼロス | ロイドとルークはどうなったんだ? |
ティア | 二人共しばらく安静に、との事よ。特にルークの方は、以前の傷が祟ったみたい |
ティア | 完治するまでにはかなり時間がかかるようだわ |
ルドガー | そうか…。二人にはしばらくゆっくりと休んでもらわないとな |
スタン | ところでティア、協力を仰ぐって…誰にだい? |
ティア | ここはカン・バルクよ。頼めるとすればガイアス陛下しかいないわ |
ティア | 四大国を取りまとめたあの方なら必ず実現出来る… |
スタン | 確かに…ガイアスさんしか考えられないな |
ヴェイグ | 彼が声を掛けてくれれば各国の代表も協力してくれるだろう |
ジェイド | 皆さんにそこまでの信頼を寄せていただいて、きっと陛下もお喜びになるでしょう |
ジェイド | そうと決まれば、早速相談しに行かれてはいかがでしょう? |
ジェイド | 陛下も皆さんからの報告をお待ちです |
スレイ | はい、わかりました |
scene1 | ア・ジュールの切り札 |
ガイアス | ──よく無事に戻った |
ティア | ご心配ありがとうございます。ガイアス陛下もご無事で何よりです |
ガイアス | セルディクの一件については、既にジェイドから話は聞いている |
ガイアス | 加えて、お前達から何か私に話があるとも |
スタン | はい。ガイアスさんにしか頼めない事なんだ |
ガイアス | …話を聞こう |
ジェイド | スレイ、その前にヴァンの事や例の「天帝の御座」など、順を追ってお話いただけますか |
スレイ | わかりました |
ガイアス | ──ヴァン…。やはりあの上空の城は、奴によるものだったという事か |
ガイアス | さらには、連合軍による戦争はこの大規模な晶化を引き起こす事が狙いだったと… |
スレイ | …はい |
ジェイド | 晶化の元凶である天帝…その正体は一体何なんでしょうね |
ジェイド | …いずれにせよ、ヴァンがそのような得体の知れない者と共謀していたとは想定外でしたが |
ルドガー | 天帝についてはこれ以上の詳しい情報は得られていない |
ゼロス | だが、それでも世界が完全に晶化しちまうのを避けるには、天帝の目覚めを防ぐしか方法はねぇ |
ヴェイグ | …元凶を潰せば、今各地を蝕んでいる晶化自体も解決出来る可能性が高いしな |
| |
スレイ | …だからオレ達は天帝の御座に行こうと思ってます |
スレイ | そこでガイアス陛下、あなたに頼みたい事があるんです |
スレイ | 今人々の間で加速してる不安や絶望…そういう負の感情を鎮めて、晶化の進行を食い止めてほしいんです |
ガイアス | … |
エリーゼ | ウィンドルの晶化の事で世界中の人達の不安は今ピークに達してます… |
エリーゼ | そのせいで、晶化の進行はどんどん勢いを増してて… |
ティポ | あちこちでたっくさんショーカが起きちゃってるんだよねー |
ティア | 人々の不安を和らげ、混乱を鎮められるのはガイアス陛下…あなたを措いて他なりません |
ミクリオ | 四大国を取りまとめたあなたにしか出来ない事だ |
スタン | お願いします、ガイアスさん。天帝の事は必ず俺達が何とかする、力を貸してほしいんです! |
ガイアス | … |
ガイアス | …約束しよう。地上の事は俺に任せておけ |
ガイアス | 四大国で連携を取り全世界の民の混乱を鎮めてみせる |
スレイ | ガイアス陛下…!ありがとうございます |
スレイ | オレも約束します。天帝の目覚めを防ぎ、必ずこの世界を守ると |
ガイアス | …ああ |
ジェイド | …ところで皆さん、天帝の御座へはどうやって行くつもりですか? |
スレイ | それなんですけど……何かいい方法、ありませんか? |
スレイ | ジェイドさんなら何かいい手を知ってるかもって、相談しようと思ってたんです |
ジェイド | おやおや…。勇敢な意気込みとは裏腹に、行く当てもなかったとは |
ジェイド | そうですねぇ、空に行く…ですか。まあ、ない事もないのですが── |
ガイアス | 構わん、ジェイド。あれを託せ |
ゼロス | …?あれって一体… |
ガイアス | 相手が空なら、こちらも飛ぶ。それだけの事だ |
スレイ | 空を…! |
scene2 | ア・ジュールの切り札 |
スレイ | ──空を飛ぶって一体… |
ガイアス | 空を駆ける船、飛空船だ |
エリーゼ | 飛空船…? |
ヴェイグ | そんなものが… |
ゼロス | ア・ジュールは兵器の研究も盛んだからな。その技術の賜物ってワケか |
スタン | そんなすごそうなもの…俺達が使ってもいいんですか? |
ガイアス | 世界の一大事に立ち向かう者に出し惜しみする事はなかろう |
ジェイド | 世界が晶化してしまっては元も子もありませんしね |
ジェイド | 陛下のお話にあったように我が国では飛空船を開発しています |
ジェイド | それを用いれば、天帝の御座まで上昇する事は可能でしょう |
ジェイド | いえ、寧ろ他に手段はないと言った方が適切かもしれませんね |
ジェイド | ──ただ…、懸念がないわけでもありません |
ミクリオ | 何か問題があるのかい? |
ジェイド | この飛空船はまだ開発途中…試作機は一機しかなく、試運転もほとんどしていません |
ジェイド | とてもじゃありませんが、安全とは言い切れない状態です |
スレイ | ジェイドさん、ありがとうございます。でも、オレ達なら大丈夫です |
ガイアス | … |
ミクリオ | 御座へ行ける唯一の方法、その飛空船が安全と言えなくても… |
スレイ | 乗らないって選択はないです |
ルドガー | ああ。天帝の御座へ乗り込むと決めた時から既に覚悟は決まってる |
ティア | ええ、そうね |
エリーゼ | ガイアスさん、ジェイドさん…飛空船を貸してください…! |
ガイアス | …よいな、ジェイド |
ジェイド | ええ、危険を承知の上でスレイ達が望むのなら私も止めはしません |
ガイアス | 我が国の飛空船を用いてお前達を天帝の御座まで送り届けよう |
スレイ | ありがとうございます! |
ガイアス | 一刻の猶予もない。出発は明朝だ。ジェイド、直ちに出発の準備を進めろ |
ジェイド | 明朝…無理を仰いますね |
ガイアス | 不可能か? |
ジェイド | いえ、間に合わせます |
ガイアス | スレイ、お前達もだ。準備は今日中に済ませておけ。足りないものは用意させよう |
ガイアス | …それと、身体の方もしっかり休める事だ。部屋を用意させておく |
スレイ | ガイアス陛下…。いろいろとありがとうございます |
スレイ | オレ達、必ず天帝の目覚めを防ぎます |
ガイアス | …ああ、頼んだぞ |
scene1 | みんなの夢 |
スレイ | ふう──…あれ?みんなここにいたんだ |
ルドガー | お、スレイも来たか |
ゼロス | その様子だと、お前もどうせ眠ろうと思ったけど、やっぱり眠れなかったってクチだろ |
スレイ | うん、まあ…。って、ひょっとしてみんなも? |
ヴェイグ | そんなところだ… |
スレイ | そっか。…あれ、ミクリオは来てないのか? |
ティア | さっきまでここにいたのだけれど、外の空気を吸いたいと言って、出て行ったわ |
エリーゼ | すぐに戻るって言ってましたけど… |
スレイ | …そっか |
スタン | …しかし、何なんだろうな、これ。次の日に特別な事が控えてると、前の晩に眠れなくなるって言う… |
ルドガー | エルもよく言ってたよ。寝なきゃいけないのにそわそわして眠れないーって |
ルドガー | 俺達も今、まさにその状況なんだろうな |
ゼロス | あーそうそう。そわそわ、だな。いやーわかるぜ、その気持ち |
ゼロス | 俺さまもカワイ子ちゃんとのデートの前日は、もう…ドキドキそわそわして──… |
ティア | … |
エリーゼ | … |
ゼロス | おいおい、いつものツッコミはどーしちまったんだよ? |
ゼロス | 緊張すんのはわかるけどよ…今からそんなカチカチになっても仕方ねぇだろ |
エリーゼ | すみません…ゼロスの言う事もわかるんですが… |
エリーゼ | ミラやライラ…晶化した人達みんなの運命がかかっていると思うと… |
ティポ | どうしたって、バクバクしちゃうよねー |
スレイ | 明日は決戦だからな… |
スタン | うん… |
ヴェイグ | …エリーゼ |
ヴェイグ | そんなに気負う必要はない。明日はオレ達も一緒にいる、一人じゃない |
エリーゼ | ヴェイグ… |
エリーゼ | そうですよね、みんなと一緒ならきっと何とか出来る… |
エリーゼ | …ありがとうございます。ヴェイグのお蔭で安心出来ました |
ティポ | さっすがヴェイグ君ー。ゼロス君とはやっぱ違うねー |
ゼロス | ちぇー、何だよ、この扱いの差はよー |
スレイ | それにしても…飛空船があるなんて、すごいよな |
スレイ | もし今起きてる問題が全部無事に解決したら… |
スレイ | その時は飛空船を借りて、世界中を旅するのも悪くないかも |
ルドガー | 今起きている問題が、全部無事に解決したら、か |
スレイ | ライラと…約束したんだ。一緒に世界中を旅して回ろうって |
スレイ | でも、まずはライラをオレとミクリオが育ったイズチに案内したいな |
スタン | 天族がいるっていうところだろ?俺も行ってみたいな |
スレイ | 勿論、みんなにも来てほしい。歓迎するよ! |
ヴェイグ | オレは、クレアを迎えに行って… |
エリーゼ | クレアさん、目が覚めたらびっくりしますよね… |
ヴェイグ | いや…クレアの事だ。笑顔で村に帰ろうと言うだろう |
ヴェイグ | そういえば、メルトキオで食糧を買いに出かけていたんだった |
ヴェイグ | また買い物しなおして…村に戻って豪勢な食事で祝うのもいいかもしれないな |
ティア | ふふ、素敵ね |
ルドガー | オレもイニル街に帰ってエルや兄さん…ルルにたくさんご馳走を用意して… |
ルドガー | そうだ。エルに特別に美味しいスープを作ってあげないと |
スタン | スープ? |
ルドガー | ああ、街を出る前に約束したんだ。帰ったら作ってやるって |
エリーゼ | 約束…そうだったんですか… |
ルドガー | あの時は、街にエルを残していく方が安全だと思っていたんだ |
ルドガー | まさか…こんな事になるなんて |
スタン | ルドガー… |
エリーゼ | エルは、きっとルドガーの帰りを信じて待っていると思います |
エリーゼ | 早く全部終わらせてエルにスープ、作ってあげてください |
ルドガー | エリーゼ… |
ルドガー | …ああ、二人は絶対に無事だ。信じるよ、もう揺れたりしない |
エリーゼ | はい…! |
スタン | そのスープを作る時は、エリーゼとティポも呼んであげたらどうだ? |
ティポ | ぼく達もー? |
スタン | ああ!人数が多い方が楽しいだろ。ちょっとしたパーティーみたいでさ |
ルドガー | はは、そうだな。エリーゼさえよければ是非来てくれ |
エリーゼ | はい…きっと行きます。ありがとうございます…! |
ティア | よかったわね |
スレイ | 今のオレ達が置かれてる状況が、危ないって事は確かだけど… |
スレイ | 解決まで、後一歩のところまで来てるのも確かなんだよな |
ヴェイグ | その通りだ… |
スタン | 早く元の生活に戻れるように、力を合わせて頑張ろう |
ティア | そうね、何としても… |
ゼロス | …だな |
ルドガー | …ああ |
スタン | それにしても…ミクリオは一体どこまで行ったんだ? |
ティア | …そうね。城内だし何かあったとは考えにくいけど、さすがに遅すぎる気がするわ |
スレイ | ちょっとオレ、様子を見てくるよ |
scene2 | みんなの夢 |
スレイ | ──ミクリオの奴、一体どこまで行ったんだ? |
スレイ | すぐ戻るって言ってたみたいだけど、王宮の近くにはいなかったし… |
スレイ | …あっ、いた! |
スレイ | おい、ミクリオ! |
ミクリオ | …スレイ |
スレイ | こんなところにいたのか。戻るのが遅いから、心配したんだぞ |
スレイ | みんなも心配してる。早く帰ろう |
ミクリオ | …ああ |
| |
スレイ | ミクリオ…?どうかしたのか?ぼーっと空なんか見上げて──… |
スレイ | あれは月…。それに… |
スレイ | もしかして、ずっと天帝の御座を見ていたのか? |
ミクリオ | ああ… |
| |
ミクリオ | 明日…僕達は、あそこへ向かうんだよな |
スレイ | うん |
ミクリオ | … |
ミクリオ | …天帝の御座を眺めながら今までの旅の事を思い出していたんだ |
スレイ | … |
スレイ | …ミクリオ、オレ、思うんだ |
スレイ | ミクリオと一緒にイズチを出てから世界中を旅してきて、辛い事や悲しい事がたくさんあった… |
スレイ | けど、それだけじゃない。信頼出来る仲間とも出会えたし、楽しい事もあった |
ミクリオ | そうだね… |
スレイ | まだまだオレ達が知らない事、もっといっぱいあると思う… |
スレイ | この世界を、もっと見てみたい…。だから、守らないと…オレ達で |
ミクリオ | スレイ… |
ミクリオ | ああ、僕も同じ気持ちだ |
ミクリオ | この世界を、僕達の手で守ろう |
スレイ | オレ達の夢…絶対かなえような、ミクリオ |
ミクリオ | ああ、絶対に |
??? | こんな夜更けにデートですかぁ? |
スレイ | …ん? |
ミクリオ | …何だ? |
| |
ゼロス | 何だ、じゃねーよ。二人だけで盛り上がりやがって |
ティア | ごめんなさい、盗み聞きをするつもりはなかったのだけれど |
スタン | スレイ達が心配で、俺達も様子を見に来たんだ |
ルドガー | でも、杞憂だったみたいだな |
| |
ゼロス | なーにがオレ達の夢、だよ。天帝の御座に乗り込むのは、お前らだけじゃねぇぞ |
スタン | そうそう、だから俺も入れてくれよ。「俺達の夢」ってな! |
ティポ | そうだそうだー |
エリーゼ | わたし達の夢でもあります… |
ティア | ここにいないルークやロイドの夢でもあるわ |
ヴェイグ | 仲間達全員…いや、世界中全ての人々の、な |
スレイ | …うん、そうだな。みんなの言う通りだ |
スレイ | よーし!明日は上手くいく。そんな気がしてきた |
| |
スタン | それじゃ、そろそろ帰ろう。風邪を引いたりしたら、ガイアスさんに怒られるぞ |
ゼロス | ふー、散歩したお蔭で何とか眠れそうだな |
ルドガー | 安心して寝坊するなよ? |
エリーゼ | ティア…今日は一緒に眠ってもいいですか? |
ティア | ええ、いいわ |
ヴェイグ | これを、最後の夜には──させない |
スレイ | うん。みんなが、安心して暮らせる世界にしてみせる |
スレイ | 行こう、みんな── |
scene1 | 託された翼 |
スレイ | ──ここが、例の… |
ジェイド | はい、テノス兵器工場です。その名の通り、主には兵器の研究、開発、生産を行っています |
ジェイド | かつては、魔導兵器なども作っていましたね |
エリーゼ | 魔導兵器… |
ジェイド | 飛空船もここで開発しています |
ジェイド | …念のため、お伝えしておきますが |
ジェイド | この工場への立ち入りは勿論、飛空船の存在も全て我が国の重要な軍事機密です |
ジェイド | 陛下があなた方をここへ案内する事を許したのは信頼あってのもの… |
ジェイド | 他言無用でお願いしますよ |
スレイ | 勿論、約束します |
スタン | ところでジェイドさん、飛空船…船っていうからには操縦する必要がありますよね? |
スタン | ひょっとして、ジェイドさんが操縦を? |
ジェイド | いえ、私は地上に残りますよ。やる事が山積みですからね |
エリーゼ | え…じゃあ誰が… |
ゼロス | 俺さま達でやれって言われてもそいつは無理な話だぜ? |
ジェイド | 心配には及びません。操船については、専門の訓練を受けた我が国の者を付けます |
ルドガー | …それはよかった。御座に着く前に墜落…なんて事になったら大変だ |
ヴェイグ | 笑えない冗談だな |
ジェイド | ですが、彼はあくまで操船のための人員です |
ジェイド | 兵士ではなく、技術者です。実戦経験もありませんので戦力にはならないかと |
ゼロス | あくまで、戦うのは俺さま達だけって事だな |
スレイ | わかりました |
ジェイド | ヴァンがどれほどの戦力を擁しているのかは不明ですが、一筋縄ではいかないでしょう |
ジェイド | 今更言うまでもありませんが、重々お気をつけください |
ヴェイグ | …ああ、そのつもりだ。何と言っても得体の知れない天帝が眠る場所だ |
ミクリオ | どれほど守りを固めているか、何が起こるか…想像もつかない |
ルドガー | だけど、何が待ち受けていようと、必ず乗り越えてみせる |
ティア | ええ、必ず… |
ジェイド | では、飛空船のところまでご案内しましょう |
scene2 | 託された翼 |
ジェイド | ──こちらが、皆さんにお貸しする飛空船です |
ミクリオ | これが… |
スレイ | 空を飛ぶ船…! |
ティポ | でっかーい! |
ゼロス | やっぱりア・ジュールは油断ならねぇな。こっそりこんなもんを作るなんて |
ジェイド | お褒めに預かり光栄ですね |
ゼロス | ったく…褒めてねぇっての |
| |
ルドガー | それより、試運転もろくにしていないって話だったがちゃんと飛ぶのか? |
ジェイド | 浮遊試験は成功してますし、水平移動も問題ありません |
ジェイド | ただ、先日もお話した通り開発途中の試作機です |
ジェイド | 御座のある高度まで上昇するのは初めての試みです |
エリーゼ | … |
ヴェイグ | …それでも、行くしかない |
ティア | ええ、そうね |
スレイ | このまま世界が晶化していくのを黙って見てるわけにはいかない |
スレイ | オレ達の世界はオレ達が守らないと |
??? | ──覚悟は鈍っていないようだな |
スタン | その声は…ガイアスさん…! |
ガイアス | … |
ジェイド | 陛下、お忙しいのではありませんでしたか? |
スレイ | ひょっとして、見送りに来てくれたんですか…? |
ガイアス | …そんなところだ |
ガイアス | ──スレイ、それにお前達。世界の命運はお前達に懸っていると言っても過言ではない |
ガイアス | 地上の事は我々が全力をもって対処する |
ガイアス | お前達も必ず、やり遂げろ |
スレイ | ガイアスさん… |
スレイ | はい…必ず天帝の目覚めを防ぎ、ヴァンの野望を止めてみせます! |
スタン | みんなが晶化に奪われたもの、全部、取り返してきます |
ヴェイグ | ああ、必ずだ |
ガイアス | うむ… |
ア・ジュール兵 | ──陛下!ジェイド大佐! |
ガイアス | 何事だ |
ア・ジュール兵 | 結晶の雪がどんどん激しくなっています…! |
ア・ジュール兵 | おそらくその影響でしょう、各地の晶化現象も爆発的に進行しているとの報告が… |
ティア | …まずいわ |
ミクリオ | ああ…。僕達に残された時間は僅かという事だね |
ヴェイグ | …急いだ方がいい |
ガイアス | 飛空船へ急げ。すぐに発進させよう |
エリーゼ | わかりました…! |
ミクリオ | 遂に決戦、だな |
ルドガー | ああ… |
エリーゼ | 次に、地上へ帰ってくる時は晶化現象はなくなってるはずです |
エリーゼ | そしたら、ミラも…ライラも… |
ヴェイグ | クレアも、みんなの生活も…全部、元通りだ |
ティア | ええ…。あの人の思うようにはさせない |
ゼロス | んじゃ、さっさと天帝とヴァンの野郎をとっちめに行こうぜ! |
スレイ | よし、みんな。飛空船に乗り込もう! |
スレイ | 目指すは天帝の御座だ。そこで、全ての決着をつける…! |
Name | Dialogue |
scene1 | 雲上の楼閣 |
スレイ | ──ここが、天帝の御座… |
ルドガー | …ようやく着いたな |
ゼロス | 途中、墜落すんじゃねぇかと気が気じゃなかったが、何とかな |
ヴェイグ | それより……すさまじいまでの景色だな。見渡す限り一面晶化している |
ルドガー | それだけじゃない。見てくれ、あの城… |
ルドガー | あれは晶化現象じゃない。結晶そのもので作られている |
スタン | 飛空船から見た時も思ったけど、相当でかくないか? |
エリーゼ | 綺麗…ですが…何だかすごく…嫌な感じがします |
スレイ | あれも、天帝が作ったんだよな… |
ミクリオ | そう考えて間違いないだろうね。天帝は晶化の元凶と言うし |
ミクリオ | あの城に、周辺の結晶…。「天帝の御座」とは名ばかりではないらしい |
ルドガー | …天帝とヴァン、彼らがいるとすればあそこか |
ティア | おそらく… |
ゼロス | なら、早いとこ行こうぜ。ここで突っ立ってても仕方ねぇ |
スレイ | うん、そうだな |
ゼロス | …ってワケだ。俺さま達は行く、飛空船の事は任せたぜ |
ア・ジュール兵 | はっ、どうかお気を付けて |
| |
スタン | …にしても、すごい高さだな、ここ。雲が足下に見える |
ゼロス | 滅多に見られる景色じゃねぇぜ。しっかり見とけよ、スタン |
ミクリオ | スレイ、見てくれ。ここから地上の景色が見える |
| |
スレイ | …!すごい、これがオレ達の世界… |
スレイ | こんなにも広かったんだな… |
スレイ | 今見えてる景色が世界のほんの一部だなんて、信じられないっていうか… |
ミクリオ | ああ… |
| |
ヴェイグ | 晶化で覆われた大陸…あれがウィンドルという事か |
ティア | ええ。そして、地理的にあの辺りが王都バロニアね |
ティア | 結晶に覆われていてここからじゃ街がある事すら確認出来ないけれど… |
スタン | 大陸の中でも特に酷い状態って事か… |
エリーゼ | イニル街はどうですか…?確か、バロニアの近くに──… |
ルドガー | 確認したけど…イニル街も晶化に巻き込まれた事は間違いなさそうだ |
エリーゼ | …!そんな… |
エリーゼ | ごめんなさい、ルドガー…わたし… |
ルドガー | …大丈夫だよ、エリーゼ。エルと兄さんはきっと無事だ |
ルドガー | 俺はそう信じてる |
エリーゼ | ルドガー… |
ヴェイグ | …想像はしていたが、被害はかなりの広範囲に及んでいる |
スレイ | うん…。バロニアから結構距離のあるピュール遺跡まで、完全に晶化してしまったみたいだし |
ゼロス | ピュール遺跡? |
ミクリオ | あそこに見える大きな湖…そのほとりにある遺跡で、僕達が初めてライラと出会った場所なんだ |
ゼロス | ライラちゃん…そっか |
スレイ | ……やっぱりこんなの間違ってる。この綺麗で広い世界を晶化で覆い尽くすなんて |
スタン | ああ、そんな事はさせないさ。絶対に |
ティア | …そのためにも、先を急ぎましょう。私達に残された時間は限られて── |
| |
| グオオオオッ!! |
ヴェイグ | …!今のは何だ…!? |
エリーゼ | 魔物でしょうか…? |
ルドガー | まさか…!何でこんなところに…… |
| |
| グウウウ…! |
ティポ | で、でたぁー!? |
ゼロス | …!いや…待て、何か変だぞこいつら!? |
スタン | 本当だ…!こんな魔物、見た事も── |
| ギャウウウウウッ!! |
ティア | まずいわ、こっちに向かってくる…! |
スレイ | なら、戦うまでだ!行こう、みんな! |
ヴェイグ | ああ! |
scene2 | 雲上の楼閣 |
スレイ | ──くっ…! |
ミクリオ | 無事か、スレイ! |
スレイ | ああ、大丈夫だ!それより… |
| ギャウウウ…! |
ゼロス | ちっ、あれだけやったってのにまだ元気なのかよ!ったく、どうなってんだ… |
ルドガー | 攻撃の威力は勿論、硬さも他の魔物とは比にならない…! |
スレイ | …よし、ならこれでどうだ! |
スレイ | はああっ! |
| グオオ…オオ…… |
スレイ | ふぅ…何とか倒せたか |
スタン | 今ので最後みたいだな…。はあ、びっくりした |
| |
ティア | それにしても、この魔物…一体どういう事なのかしら |
ティア | 体の一部が晶化しているわ |
スタン | けど…それっておかしくないか?今まで人や動物が晶化した状態で動けた事なんて一度もない |
エリーゼ | そうですよね… |
エリーゼ | 前に目の前で魔物が晶化したのを見た事ありますけど… |
ティポ | カチンコチーンってなったよねー |
ヴェイグ | …!いや、これは晶化じゃない。よく見てみろ |
ヴェイグ | 晶化は物質を結晶で覆う…、だが、こいつらの体はその一部が結晶そのもので出来ているようだ |
ルドガー | それって…あの城と同じって事か? |
スレイ | だとしたら、この魔物も天帝が… |
ミクリオ | 大いに考えられるね |
ゼロス | そういう事かよ。ったく、どうりでおかしいと思ったんだ |
ゼロス | 地上ならまだしも、こんな突然現れた御座に魔物が巣食ってるなんて── |
ルドガー | む…? |
エリーゼ | この光…ひょっとしてゼロスの天晶石、ですか…? |
ゼロス | …!何で今… |
スタン | 確か、天啓の石碑が出現した時に、それを知らせてくれるーとか何とか言ってたような──… |
スタン | ……え?って事は、もしかして新しい天啓の石碑が!? |
ティア | そんな、まさか…! |
ゼロス | 今までの経緯からして多分そういう事だろうけど… |
ゼロス | …何にせよ、とにかく試してみるか |
| |
ゼロス | … |
スタン | …どうだ? |
ルドガー | 何か見えたか? |
ゼロス | ……ああ、よーく見えるぜ |
ティア | だとしたら、やっぱり天啓の石碑が出現したと言うのは事実なのかもしれない |
ゼロス | ……けど、まさかな。こいつは厄介な事になってきやがった |
ヴェイグ | どういう事だ?ゼロス、お前には何が見えている |
ゼロス | …結晶の橋、だ |
スレイ | 結晶の…!?それって… |
ゼロス | …ああ。おそらくこの御座にある橋って事だろうな |
ゼロス | 周辺の景色も似てるし、何より、橋の先に例の城が見えた。あの様子だと、多分城まで通じてる |
スタン | 待ってくれ!つまり、この天帝の御座に新たな石碑が現れたって事か…? |
エリーゼ | でも、どうして今…?それもよりによってわたし達のいる御座に現れるなんて… |
ミクリオ | …ヴァンやカーツ達は天啓についてあらゆる情報を持っていた |
ミクリオ | さらに天帝という存在を加味すれば天啓自体、彼らが操っていたという可能性も十分に考えられる… |
ミクリオ | これがもし、仕組まれたものだとしても何ら不思議は── |
ゼロス | …! |
ルドガー | どうかしたのか、ゼロス |
ゼロス | 何なんだこれ…。急に風景が乱れて………これは光…? |
ゼロス | あ…くそっ!駄目だ… |
ヴェイグ | …? |
ゼロス | …ああ、今見えてた橋の風景が急に切り替わって、何かこう…一瞬、でっかい光の渦が見えた |
ゼロス | すぐに真っ暗になって何も見えなくなっちまったが…ありゃ一体何だったんだ…? |
ティア | …それも、結晶のあるこの辺りと似た景色だったの? |
ゼロス | いや、多分違う。何か…星がたくさんあって、晴れた日の夜空みたいって言うか… |
ゼロス | …何にせよ、気味が悪い。こんな事は初めてだからよ |
スタン | 光の渦、か… |
ヴェイグ | …とにかく、まずは最初に見えたという結晶の橋を探そう |
ヴェイグ | 例の城に繋がっているなら、尚の事、探さない手はない |
スレイ | うん、そうだな。それに… |
スレイ | これがもし、ヴァンによって仕組まれたものなんだとしたら、避けては通れない道だと思う |
ゼロス | よし…なら、行こうぜ |
スレイ | ああ! |
scene1 | 仲間を信じるという事 |
ミクリオ | ──見ろ、行き止まりだ。これ以上先へは進めない |
スタン | ええっ!?またなのか…? |
ルドガー | はあ…これで何度目だ? |
ティポ | ぼくもうヘトヘトだけどー |
エリーゼ | まるで迷路ですね…。結晶が複雑に入り組んでいて正しい道が見つけられません… |
ゼロス | ったく、お目当ての城はずっと見えてるってのによ… |
スレイ | 仕方ないよ、地道に進める道を探すしか方法はないんだし |
ヴェイグ | …ああ。よし、引き返すぞ |
ゼロス | ちぇっ… |
| |
スタン | …それにしても、すごい結晶だよな。天帝って一体何者なんだ… |
ティア | 普通の人間じゃないという事だけは確かだと思うわ |
エリーゼ | 天帝はヴァンよりも強いという事なんでしょうか…? |
ミクリオ | 正直なところ、天帝について僕達はほぼ情報を持っていないから断言こそ出来ないけど── |
ミクリオ | これだけの能力を持っている以上ヴァンと同等、…いや、それ以上と捉えておいた方がいいだろうね |
ルドガー | そうなると、やっぱり鍵になるのは「神依」か… |
ティア | ええ、そうね。私達の切り札である事はこの先も変わらないわ |
ヴェイグ | 寧ろ、神依の力で結晶を砕ける事もわかった |
ミクリオ | 晶化を生み出す天帝にも有効である可能性が高い、そういう事か |
スタン | じゃあ、やっぱり二人の神依は、決戦の時まで温存しといた方がよさそうだな |
スレイ | うん、オレもそう思う |
スレイ | …天帝とヴァンを討つ、その時まで神依化はしない |
スレイ | そのためにはみんなの助けが必要だ。力を貸してほしい |
ルドガー | 勿論、端からそのつもりさ |
ゼロス | 言われなくてもな |
ティア | あなた一人じゃない。これは私達みんなの戦いよ |
エリーゼ | みんなで力を合わせて、天帝とヴァンを倒しましょう…! |
スレイ | ありがとう、みんな |
ミクリオ | … |
ヴェイグ | どうかしたのか、ミクリオ |
ミクリオ | …何でもない、気にしないでくれ |
ティポ | ミクリオ君、何だか嬉しそうなカオー |
ミクリオ | なっ…!何でもないと言ってるだろう。ほら、先を急ぐぞ |
スレイ | どうしちゃったんだ、ミクリオ…? |
ゼロス | さあ… |
ヴェイグ | とにかく、先を目指そう… |
ヴェイグ | 肝心の城にたどり着けなければ話にならない |
ルドガー | それもそうだな── |
| |
| グオオオオオッ! |
スレイ | …!今のって… |
ティア | 魔物だわ…!それもすぐ近くに… |
エリーゼ | ひょっとして、また晶化した魔物でしょうか… |
ミクリオ | だとしたら、厄介だね |
スタン | みんな、気をつけろ!どこから出て来るかわからないぞ |
ルドガー | …来た!みんな、構えるんだ |
scene2 | 仲間を信じるという事 |
スレイ | ふう…何とか倒せたけど…やっぱり気のせいじゃないよな…? |
ルドガー | ああ。この晶化した魔物の強さは尋常じゃない |
エリーゼ | 地上で見る魔物とは明らかに違います… |
スタン | あんなのがこれからもわんさか出てくるのかな…? |
ゼロス | おいおい、シャレになんねぇぞ |
ゼロス | ヴァンと戦う前に、あんなのとやり合ってばかりいたら体力がもたねぇっての |
ミクリオ | 無駄な戦闘を避けるためにも早く進むべき道を探そう |
ティア | それがいいわ。急ぎましょう── |
| |
| ピシッ! |
スレイ | うわっ!? |
ルドガー | 晶化か…! |
スレイ | 駄目だ、今ので道が塞がった |
ヴェイグ | 何故急に… |
ティア | 仕方ないわ、あっちの道へ行きましょう |
エリーゼ | わかりました── |
| ピシッ! |
ヴェイグ | …!下がれ、エリーゼ! |
| ピキッ!ピシピシ! |
ティポ | わー!?こっちも塞がっちゃったー! |
ルドガー | …道が次々に塞がっていく。まずい状況だな |
ミクリオ | 何が起きてるんだ?急にあちこちで晶化が…… |
ヴェイグ | それだけ地上の晶化も広がっているという事なのか…? |
エリーゼ | そんな… |
スタン | 諦めるのはまだ早い!こっちだ! |
| ピキッ!ピシピシ! |
スタン | くっ、こっちもか!だったら── |
| ピキッ!ピシピシ! |
スタン | くそっ…! |
ティポ | このままだとぼく達晶化させられちゃうかもー |
ゼロス | ちっ…ヴァンの野郎、俺さま達を監視でもしてんじゃねぇだろうな |
スタン | 例えそうだとしても、そんなの関係ない |
スタン | どんな邪魔が入ろうと俺達に出来るのはそれを乗り越える事だけだ |
スタン | そして絶対に乗り越えてみせる!だろ? |
スレイ | スタン… |
| |
ゼロス | ぷ… |
スタン | え?ゼロス、何で笑ったんだ? |
| |
ゼロス | …いや、お前ってヤツは、つくづく単純な野郎だなーと思って |
ヴェイグ | …だが明快だ |
スタン | そうか?…俺はただ自分に出来る事は精一杯やろうって思ってるだけなんだけどな |
ルドガー | お前のそういう前向きな性格のお蔭で、いつも助けられてるよ |
スレイ | スタンの言う通りだ、諦めるのはまだ早い |
スレイ | みんなで手分けして道を探そう。きっと見つかるはずだ |
スタン | ああ! |
scene1 | 神子の覚悟 |
スレイ | ──ようやくたどり着いた… |
スレイ | ここが、結晶の橋…! |
エリーゼ | すごく大きいですね… |
ヴェイグ | ゼロス、お前が天晶石を通じて見たのは確かにこの橋か? |
ゼロス | ああ、ばっちりな。間違いねぇ |
スタン | って事は、天啓の石碑もこの辺りに? |
ゼロス | …のはずだが、それらしいもんは今のところ見当たらねぇな |
ティア | 城の正門へ続いているようね。奥に城壁が見えるわ |
エリーゼ | あの大きな門から城内に入れそうです… |
ミクリオ | …かなり見晴のいい場所だ。危険な気もするが…そうも言ってられないか |
ルドガー | ああ、けど警戒するに越した事はない。みんな、注意して進もう |
| |
スタン | すげぇ…近くで見ると本当にでかいな |
ティア | 橋も城壁も、全て結晶で出来ているのにここは違うのね |
スレイ | とにかく中に入ろう |
エリーゼ | それが…駄目みたいです。この門、固く閉ざされてて… |
ティポ | むぎゅー!押してもビクともしないしー |
ゼロス | …なるほどな。そりゃ、力じゃ開かねぇわ |
スタン | ゼロス、それどういう事だ…? |
ゼロス | ほら、あれ見てみな。この門のずっと上の方…真ん中に何か、見えねぇか? |
スレイ | …!あれってまさか…天啓の石碑と同じ紋章…!? |
ミクリオ | …本当だ、間違いない |
ヴェイグ | まさか、これが新たに出現した天啓の石碑だとでも言うのか…? |
ゼロス | 他にそれらしきもんが見当たらねぇところを見ると多分そういう事なんだろうな |
ルドガー | けど、何故なんだ…?天啓の石碑は、その名の如くただの巨大な石碑なんじゃないのか? |
ルドガー | まさかこんな風に建造物の一部に組み込まれてるなんて… |
ゼロス | ああ、こんなのは俺さまだって聞いた事もねぇ |
ゼロス | …けどまあ、四の五の言ってても仕方ねぇ、試してみりゃ全部わかんだろ |
ティア | 試すって… |
ゼロス | お決まりのヤツよ。まあ、見てなって |
| |
ゼロス | 大いなる世界の意志よ。我が主たる地上の神よ |
ゼロス | 我、ゼロス・ワイルダーを汝の代行者と認めるならば… |
ゼロス | その言葉を我に聞かせたまえ── |
スレイ | …!門が光り出した…! |
ミクリオ | カン・バルクで見た儀式と同じ光景だな |
ヴェイグ | やはり、この門が天啓の石碑── |
ゼロス | …!くっ… |
| |
ゼロス | うわあっ!! |
| |
エリーゼ | …!ゼロス!大丈夫ですか!? |
ゼロス | いっつ…… |
スタン | 何なんだ、今のは!?急にゼロスが吹っ飛んで… |
ゼロス | わからねぇ…。けど、何か様子が変だ…! |
ゼロス | 何か…石碑に触れた瞬間ドス黒い絶望みたいな感覚が頭ん中に流れ込んできやがった |
ゼロス | 苦しくなったと思ったら急にすげぇ力で吹っ飛ばされてて… |
ティア | 絶望…? |
ヴェイグ | それが何なのかはわからないが、この門が天啓の石碑でないという事ははっきりしたな |
ゼロス | ちっ…さっきの光の渦と言い、今回の門と言い、一体何なんだ…? |
ミクリオ | …あくまで推測だが、天啓の石碑は天帝が作り出した物…そうは考えられないか? |
スタン | 天帝が…? |
ミクリオ | ヴァンは天帝と共謀している |
ミクリオ | 石碑を作ったのが天帝だとすれば晶化と天啓、ヴァンがそれらを意のままに操っていた事にも頷ける |
ミクリオ | …そしてこの門も。天啓の石碑でない以上、この城に備え付けられた「ただの門」… |
ミクリオ | この御座と共に天帝が作ったと考えるのが妥当じゃないか? |
ミクリオ | 無論、ただの門と言ってもあの様子じゃ、天帝の力が強く及んでいるのは間違いないと思うけど |
スレイ | …そうだな |
スレイ | …もし、ミクリオの言う通りなら天晶石が光ったのは石碑が出現したからじゃなくて… |
ミクリオ | ああ、天帝の力そのものに反応を示したという事だと思う |
ティア | …確かに神子は天啓の石碑に干渉出来る |
ティア | 従って、その創造主である天帝自身の力を感知したという事も、考えられない話ではないわ |
ルドガー | だとしたら、さっきゼロスが天晶石を通じて見た光の渦や、感じた絶望… |
ルドガー | それらは全て天帝に関係するものという事なのかもしれないな… |
ゼロス | …冗談じゃねーぞ。何で俺さまが天帝なんかの…!ちっ、本当に一体何者なんだ… |
ヴェイグ | …事実はその目で確かめればいい。そのためにも、まずは開門だ |
スタン | 門を開けられるとしたら、天帝に干渉出来る可能性があるゼロス…やっぱりお前しかいないって事だ |
ゼロス | …どうだろうな。あいにく吹き飛ばされたばっかりだぜ |
スタン | 大丈夫、お前なら絶対── |
| |
| ドドドドド! |
スタン | な、何だこの音…!? |
エリーゼ | 地面が揺れてます…! |
ヴェイグ | 地震か…?いや、ここは地上じゃない。そんなはずは──… |
ティア | …! |
ティア | …みんな、あれを見て。橋の向こう側よ…! |
ルドガー | あれは…魔物の群れか!? |
スレイ | いや、群れなんてレベルじゃない…。あんな大群、地上ですら見た事もない…! |
ヴェイグ | どうする、戦うか…? |
ティア | …相手は、例の晶化した魔物よ。さっきの数でもあれほど苦労したのにとてもじゃないけど一掃するのは…… |
ティポ | じゃあ、どうしたらいいのー!? |
スタン | …俺達であいつらを食い止めよう! |
エリーゼ | え…?食い止めるって… |
スタン | 門の事はゼロスに任せる。他のみんなで、橋のこっち側に魔物を寄せ付けないようにするんだ |
スタン | 一掃するのは難しいとしてもゼロスが門を開けるまでの間、食い止める事くらいは出来るはずだ |
ゼロス | おいおい、無茶言うなよ。お前も見ただろ、さっきの! |
ゼロス | 天帝の力だか何だか知らねぇがこの門は俺を拒んでやがる。開けられる保証はどこにもねぇ |
ゼロス | だったら、一旦全員でここから退却して態勢を立て直すとか── |
スレイ | いや…、それじゃ駄目だよ |
スレイ | 城内に通じるのは多分、この門だけだと思う |
スレイ | 今ここから退けば、この場は占拠されるだろうし、そしたら二度と近付けなくなる |
ゼロス | …っ!だが── |
| ギャウウウウッ! |
ヴェイグ | …!まずい、あまり時間はないぞ… |
スタン | …ゼロス、お前しかいないんだ |
スタン | お前なら絶対に開けられるって、俺は信じてる。だから、…ここは頼む! |
スタン | みんな、行こう!急がないと…! |
スレイ | ああ…! |
ゼロス | お、おい…!スタン! |
ゼロス | 行っちまいやがったか…ちっ… |
ゼロス | … |
ゼロス | くそっ…やるしかねぇのかよ…! |
| |
ヴェイグ | ──来たぞ、奴らだ |
スレイ | ああ…! |
| ドドドドド… |
| グオオオオオッ! |
スタン | スレイ、ルドガー、ヴェイグ、三人は俺と一緒に前衛で戦ってくれ! |
ルドガー | わかった! |
ティア | 私とエリーゼとミクリオは援護するわ |
ティポ | ぼくも頑張るぞー! |
スタン | ここは俺達が食い止める。…頼んだぞ、ゼロス |
スタン | 行くぞ、みんな!はああっ! |
scene2 | 神子の覚悟 |
スタン | せいっ! |
| ズバッ! |
| ギャウッ! |
スタン | 次だ! |
スレイ | はあ…はあ… |
| グオオッ! |
スレイ | くっ…! |
スタン | させるかっ!たああっ! |
| ズシャーッ! |
| グアアーッ! |
スタン | 大丈夫か、スレイ! |
スレイ | ああ、助かったよ。ありがとう、スタン |
スタン | 気にするな。互いに助け合わないと |
ルドガー | …にしても、まずい状況だな。倒したところで、次から次へと出てくる |
スタン | …ゼロスが門を開けるまでの辛抱だ。俺達がここで踏ん張らないと |
ヴェイグ | そうだな… |
| |
ゼロス | くっ…、またさっきのドス黒いヤツが… |
ゼロス | ……いや、けどまだだ…。まだうんともすんとも言ってねぇし今手を放すわけには──… |
| |
ゼロス | うわあああっ! |
| ズシャーッ… |
ゼロス | い…つっ…… |
ゼロス | くそっ…!やっぱ一筋縄じゃいかねぇか… |
ゼロス | ……ちっ |
| |
ミクリオ | ──はああ! |
| ギャウウ…! |
ミクリオ | よし、倒せた… |
ミクリオ | エリーゼ、ティポ!そいつが片付いたらヴェイグの応援を頼む! |
エリーゼ | わかりました…! |
ティア | 私もルドガーとスタンのところへ。ミクリオ、あなたもすぐにスレイのところへ行って── |
ティア | …!強い光…門の方だわ。さっきから何度も… |
ミクリオ | 遠巻きであまり見えないが、ゼロスも苦戦しているようだな… |
ティア | 大丈夫かしら… |
エリーゼ | ミクリオ、ティア!急いでください、スレイ達が…! |
ティポ | 早くー! |
ミクリオ | …わかった、今行く! |
ティア | … |
| |
ゼロス | はあ…はあ… |
ゼロス | くそっ──……!うぐっ… |
ゼロス | 意地でも通さねぇってか… |
ゼロス | …けど、ようやく何か、掴めてきた気がすんぜ… |
ゼロス | この門の拒絶は天帝の意志…。あの気味の悪い絶望感も、多分あいつの…… |
ゼロス | …ちっ、思う通りにさせてたまるかよ… |
ゼロス | とっとと開きやがれ…! |
| |
スレイ | ──スタン!そっちにまた一体行った! |
スタン | …大丈夫だ、任せろ! |
ルドガー | はあ…はあ… |
ヴェイグ | くっ… |
ミクリオ | みんなかなり消耗しているな… |
エリーゼ | スタン、その怪我…!今治療します── |
スタン | …いや、俺はいい!それより今は魔物を倒す事が優先だ… |
スタン | とにかく今は、ここで俺達が踏みとどまらないと… |
ヴェイグ | それよりゼロスの方は…?まだ開門出来ていないのか? |
ミクリオ | 残念ながら、あまり芳しくはないようだ… |
ルドガー | ゼロス… |
スタン | 心配いらないさ。ゼロスなら、必ずやってくれる |
スタン | ああ見えてやる時はやるし、頼りになる奴だって事、俺は知ってる |
スタン | 俺はゼロスを信じてる…!だから、絶対大丈夫だ! |
スレイ | スタン… |
スレイ | …うん、スタンの言う通りだ、ゼロスを信じよう!オレ達もまだやれる |
スタン | よし、行こう! |
スレイ | ああ! |
エリーゼ | 二人共、後ろを振り返らないんですね… |
ティポ | ゼロス君の事、信じてるんだねー |
ティア | スタンはまっすぐな人よ。だからこそわかる事もあるんだと思うわ |
ルドガー | 俺達も行こう、もうひと踏ん張り── |
ヴェイグ | …!今の光… |
ミクリオ | ゼロスのいる門の方だ…! |
ミクリオ | これまでにも何度か見かけたが、あれほど強い光は……。何か、嫌な予感がする… |
ティア | …様子を見てくるわ。みんなはスタン達の後を追って |
ルドガー | ああ、わかった…! |
scene3 | 神子の覚悟 |
ゼロス | …… |
ティア | ゼロス! |
ゼロス | う… |
ゼロス | ティア…ちゃん…? |
| |
ティア | 無事なのね、よかった…。一体何があったの |
ゼロス | …見ての通りさ。天帝の力にねじ伏せられたってワケ |
ティア | 酷い傷…全身傷だらけじゃない…。今手当を── |
ゼロス | いや、それより…スタンに…あいつらに伝えてくれ |
ゼロス | …この門を開くのはやっぱ無理だ。一旦退いて、別の道に行けって |
ティア | …!ゼロス、あなた… |
ゼロス | …天啓だって読めるし、この門も、神子の俺なら何とか出来るかもって思ってた |
ゼロス | けど……やっぱそう簡単にはいかねーな |
ゼロス | もう少し…、あと少しで天帝の力を抑え込めそうなのに、ギリギリのところで届かねぇ… |
ゼロス | …これも俺が神子って宿命から逃げてた罰なのかもな |
ゼロス | クロエちゃんのお蔭でちょっとは変わったと思ってたけど…ま、これ以上は俺には── |
ティア | 諦めないで。あなたなら出来るはずよ、必ず |
ティア | スタンが言ってたわ。あなたなら必ずやり遂げる、信頼のおける友達なのだと… |
ティア | 一度も振り向く事なく、今も必死に戦っているわ。あなたを信じて |
ゼロス | スタン…、あいつ… |
ティア | それはみんなだって同じ… |
ティア | …なのに、あなたがあなた自身を信じないでどうするの? |
| |
ゼロス | …!俺が、俺を…… |
ゼロス | … |
| |
ゼロス | …何か、わかった気がするぜ。俺があの門を開けなかった理由… |
ゼロス | あの門をこじ開けられる、今なら自信を持ってそう思える |
ゼロス | …ありがとな、ティアちゃん |
ティア | ゼロス… |
ティア | お礼なら、私じゃない。スタンに言うべきね |
ゼロス | …よし、もっかい試してみる |
ゼロス | ティアちゃん、危ねぇから下がっててくれよ |
ゼロス | …天帝様が何者かは知らねぇが、お前の力は俺がねじ伏せる!今この場でな |
ゼロス | 俺はもう逃げも隠れもしねぇ… |
ゼロス | 神子の宿命を持ってこそこの俺さまだ! |
ゼロス | 神子、神子って今まで散々な目に遭ってきたが…それも全部、認めてやるよ |
ゼロス | 俺さまの役目だったんだ、ってな |
ゼロス | だから、今くらい…俺さまの役に立ちやがれ──!! |
| |
| ゴオオッ |
ゼロス | くっ…! |
ティア | …!この風は一体…!? |
ゼロス | へっ…、最後の悪あがきかよ。けど、諦めな!意地でも打ち破って── |
| ゴオオオオオオッ |
ゼロス | なっ…!?まずい、身体が飛ばされ── |
ティア | 大丈夫よ…!私があなたを支える |
ゼロス | ティアちゃん…!危ねー事すんじゃねぇ、下がってろって言っただろ! |
ティア | そうもいかないわ…!あなたが柄にもなくこんなに頑張ってるのよ |
ティア | スタンや、私達みんなの想いに応えるために… |
ゼロス | …! |
ゼロス | ふ…残念だけど、そいつはちょっと違うぜ |
ゼロス | …理由はもっと単純だ |
ゼロス | …スタンの野郎にばっかカッコイイとこ取られんのが…シャクなだけ…ってな! |
ゼロス | はあああ…! |
ティア | …!光が強くなって──… |
ゼロス | うおおおおっ!!! |
| ズズ… |
ティア | 門が…! |
| |
スタン | ──せやあっ! |
| ザシュッ! |
スタン | ふう… |
ルドガー | …この辺りの魔物は大分減ったな |
エリーゼ | はい…。でも、見てください…まだ向こうからあんなに…… |
スレイ | くっ…! |
ヴェイグ | そろそろ限界か…。スタン、これ以上は── |
??? | ──ここに留まるのはこれまでよ |
スレイ | ティア! |
ティア | 無事開門したわ。みんな、こっちに |
ティポ | ホントー!?助かったー! |
スタン | ティア、ゼロスは…? |
ティア | 無事よ。向こうであなた達を待ってるわ。行きましょう |
スタン | ああ! |
| |
ゼロス | はあ…はあ… |
スタン | やったな、ゼロス!さすがだよ! |
ゼロス | …へっ、これくらい、俺さまにとっちゃ朝飯前よ |
ルドガー | そういう割にかなり傷だらけって感じだけど… |
ゼロス | 何だよ、うるせーなー。ボロボロなのはお前らだって一緒だろ |
スレイ | はは…言われてみたら、確かにみんなボロボロだな |
スタン | …とにかくありがとうな、ゼロス。お前ならやってくれるって信じてたよ |
ゼロス | …!お、おう、当たり前だろ。俺さまを誰だと思ってんだ |
ゼロス | そんな事より、さっさと行こうぜ。城ん中に |
ミクリオ | それなんだが…ひょっとしてこの門…異空間にでも繋がっているのか? |
ヴェイグ | …暗くてよく見えないが、確かに異様な雰囲気が漂っている |
エリーゼ | お城の中じゃないんですか…?少し怖い気もしますが… |
スタン | それでも、ここまで来て進まないって選択はない。そうだろ?みんな |
ゼロス | ああ、勿論だぜ |
スレイ | よし、じゃあみんなで飛び込もう、一斉に |
スレイ | ここまでだって力を合わせて乗り切ってきたしこの先もきっと大丈夫だ |
エリーゼ | はい、そうですね…! |
ルドガー | じゃあ、行くとするか |
スタン | おう!せーのっ! |
scene1 | 揺蕩う結晶 |
スレイ | ──この空間は一体… |
スレイ | まさか城の中がこんな事になってたなんて… |
スタン | ああ…。何か、信じられないっていうか… |
ヴェイグ | …どうやら本当に異空間という事らしいな。これも天帝の力、なのか…? |
エリーゼ | …星のようにキラキラと宙を漂っているのは全て結晶の欠片でしょうか…? |
ティア | そのようね。まるで星の大海だわ… |
ヴェイグ | オレ達のいるこの場も結晶で出来ているようだな |
ゼロス | なるほどな。異空間に浮遊する結晶の島ってワケか… |
ミクリオ | そう呼ぶには相応しくない不純物が多く含まれているようだけどね |
スレイ | これは…建物の残骸か何かか…? |
ミクリオ | そのようだね。まるで廃墟か何かが晶化したようだ |
ルドガー | それより、ここと同じような島が他にもあるようだな |
スタン | 本当だ…。空間の奥に点々と見える |
スレイ | このどこかに天帝とヴァンがいるのかな? |
ゼロス | …ああ、そいつは間違いなさそうだぜ。見てみろよ、あれ |
ゼロス | 向こうの方に、一際大きな光があんだろ |
スレイ | …!あれってもしかして… |
ルドガー | 天晶石で見たっていう光の渦…なのか? |
ゼロス | ああ、間違いねぇ。天帝がいるとしたら、多分あそこだろ |
ティア | だとしたら、兄さんもきっと… |
スタン | よーし、目指すべき場所はこれでハッキリした。早速行こう、あの光の渦に |
ルドガー | 空間内の至るところでここと同じような結晶の島が点在しているのを見た |
ルドガー | それを頼りに進めば多分光の渦の方に行けると思う |
ルドガー | …問題はそれが、光の渦までちゃんと繋がってるかって事だけど |
スレイ | わからないけどそれしか方法がないなら先へ進んで確かめるしかない |
ヴェイグ | …ああ |
ティア | ひとまず、近くの結晶の島へ通じる道を探しましょう |
ミクリオ | …その前に一つ話しておきたい |
ミクリオ | 光の渦を目指すとして、この特殊な空間について僕らは何の情報も持っていない |
ミクリオ | 常識の通じない空間だし僕らの想像を超える弊害だって十分に起こり得るだろう |
ミクリオ | ここから先はより慎重になって進むべきだ |
ティア | そうね。一人一人が気を引き締めてかからないと |
ティア | 最悪、私達がバラバラになる事だってあるかもしれないし── |
エリーゼ | …!もしそうなったら、わたし… |
スレイ | …そうなった時は、あの光の渦を目指せばいい |
スレイ | オレ達の目的地はあそこだろ?そこに行けば、必ずみんなと再会出来る |
エリーゼ | スレイ… |
スレイ | 大丈夫だよ、エリーゼ。まだそうなると決まったわけでもないし |
スレイ | 他のみんなも、それでいいよな? |
ティア | ええ、異論はないわ |
ヴェイグ | ここの規模もわからない以上、闇雲に行方を捜すよりはよほどわかりやすい |
ティポ | 決まりだねー! |
ゼロス | ま、でもはぐれないのが一番だけどな |
スタン | それじゃ、早いところ動き出そう |
スタン | まずは、ここから他の結晶の島に通じる道を探す、だよな? |
ルドガー | ああ。とは言ってもこの島もそれなりに広い。手分けして当たろう |
ティア | ええ、そうね |
ヴェイグ | ──この辺りは断崖絶壁だな。向こう側に島は見えるが、そこへ続く道はなさそうだ |
スレイ | にしても、改めて見るとすごい空間だな…。こんなの初めて見たよ |
スレイ | 天帝は、何の意図があってこんな空間を作ったんだろう… |
ルドガー | それはわからないけど、きっと何か意味や理由があると── |
ヴェイグ | …! |
ルドガー | ヴェイグ?どうかしたのか? |
ヴェイグ | この結晶を見ろ。他の瓦礫に比べ、原型を留めている |
ルドガー | これは…何かの遺跡かな? |
スレイ | 多分そうだと思う。あれ…でもこの意匠って、どこかで見たような…… |
スレイ | …!これって、まさかピュール遺跡の…… |
ルドガー | それって確か、ライラと初めて会ったっていう… |
ヴェイグ | スレイ…、ならあれもピュール遺跡の物か? |
スレイ | …!そんな… |
| |
スレイ | これは、導師の壁画だ…! |
ヴェイグ | …何故そんな物がここに? |
スレイ | わからない…。けど、間違いない。これもピュール遺跡にあった物だ… |
ルドガー | かなり古いものなんだな。随分と崩れてる… |
スレイ | いや、実物はこんなんじゃなかった |
スレイ | 状態はよかったし、目立った傷だって何も── |
| |
ミクリオ | ──スレイ!こっちに道を見つけた、来てくれ! |
スレイ | …!ああ、わかった |
ルドガー | …壁画の事も気がかりだけど今は先へ進んだ方がよさそうだな |
スレイ | うん… |
scene2 | 揺蕩う結晶 |
ルドガー | ──ミクリオ、“道”を見つけたって言ってたけど… |
ルドガー | まさかあの、小さい結晶の浮島の事を言ってるのか…? |
ミクリオ | ああ、そうだ |
ゼロス | おいおい…。慎重に、とかさっき言ったヤツどこのどいつだよ… |
エリーゼ | この浮島を飛び越えてあの島まで渡るって事ですよね…?無茶です… |
ティポ | こんなの落っこちたら死んじゃうよー! |
ミクリオ | …仕方ないだろう。僕だって出来れば勧めたくはないがここくらいしか進める道はない |
ティア | そうね…。いろいろと見て回ったけれど他に目ぼしいところはないわ |
スタン | なら、渡るしかないな。ちょっと危険だけど、選んでられないし… |
エリーゼ | …… |
ヴェイグ | …大丈夫だ、エリーゼ。お前が跳ぶ時はオレが支える |
スレイ | うん、オレも。危なかったらちゃんと助けるから安心して、エリーゼ |
エリーゼ | …はい |
ゼロス | んじゃまあ、行くか… |
スタン | おう! |
ヴェイグ | ──はっ! |
| ヒュッ |
| スタッ |
スタン | よし、ヴェイグも到着…と。あとはエリーゼだけだな |
ティポ | エリー、頑張ってー!あと1回ジャンプ成功ー! |
エリーゼ | …… |
ヴェイグ | …エリーゼ、これが最後だ。跳べるか? |
エリーゼ | はい…わかってはいるんですが…うう… |
ヴェイグ | …勇気を出して跳べ。オレが必ず受け止める、さあ |
ティポ | エリー!ヴェイグ君の腕に向かってジャーンプ! |
エリーゼ | わかりました…じゃあ… |
エリーゼ | えいっ |
| ヒュッ |
| スタッ |
エリーゼ | ふぅ… |
ティポ | やったね、エリー! |
ヴェイグ | …二人共、大丈夫そうだな |
エリーゼ | はい…!ありがとうございます |
ゼロス | さて、エリーゼちゃんも無事にこっち側に来れたワケだし早速探索と行くか |
スレイ | うん、そうだな。また次の道も探さないと──…! |
ルドガー | どうかしたのか?スレイ |
スレイ | …いや、結晶に残骸が含まれてるのはここも一緒なんだなと思って… |
ヴェイグ | だが、さっきの物とは違う。ピュール遺跡の物ではなさそうだな |
ミクリオ | ピュール遺跡…? |
スレイ | そうなんだ。遺跡にあった導師の壁画…、ミクリオも覚えてるだろ? |
スレイ | 結晶の中にあの壁画があったんだ |
ミクリオ | 何だってそんな物がここに…? |
スレイ | わからない…。少し崩れたりはしてたけど、全く同じ物だったと思う |
ゼロス | じゃあ、ひょっとしてここらの残骸も──… |
スタン | スレイ、ミクリオ!この旗って…ウィンドルのものじゃないか!? |
ルドガー | …!見せてくれ、スタン |
ルドガー | …かなりボロボロになっているがこれはウィンドルの国旗だ。間違いない |
スレイ | って事は、この周辺にある建物の残骸は… |
ルドガー | おそらく、バロニアにまつわる物だと思う。これを見てくれ |
ルドガー | この瓦礫に組み込まれているのはウィンドル騎士団の紋章…。騎士団の拠点はバロニアだ… |
ヴェイグ | ピュール遺跡にバロニアだと…? |
スタン | そんな、まさか… |
ゼロス | …ああ、どっちも晶化しちまったとこだな |
ミクリオ | これは偶然なのか…?それとも… |
スレイ | もしかして、この空間で晶化してる残骸って全部地上で晶化した物なのか…? |
ティア | 関係していても不思議じゃないわ。晶化とこの空間…いずれも天帝の力によるものだもの |
ルドガー | …… |
ヴェイグ | もしそうだとしたら、晶化した人もここに……? |
エリーゼ | … |
ゼロス | …でもよ、それなら何で「残骸」なんだ…?ここにあるもんは全部崩れてる |
ゼロス | バロニアは確かに晶化したけど別に戦争や暴動があったわけでもねぇ |
ゼロス | 国旗がこんなボロ雑巾みたいになったりよ…、瓦礫化しちまってんのは変だろ? |
ティア | 確かにそうね… |
ティア | これまでみた晶化でも、結晶の中の物が破損する事はなかったわ |
スレイ | うーん… |
ミクリオ | 今考えていてもその答えは出ないだろうね… |
スタン | 答えは天帝のみぞ知るって事か… |
ルドガー | …… |
scene1 | 思い出の残骸 |
スタン | ──2つ目の島に来て随分と歩いたけど…、ここも結構広いんだな |
ティア | ええ…。光の渦までもまだ結構あるようね…見える景色が変わらないわ |
ヴェイグ | …この空間内だと確かに距離が掴みにくいがさっきより前進している事は確かだ |
エリーゼ | そうですね… |
ミクリオ | む…?あそこにあるのは何だ |
| |
スレイ | これは…赤い結晶…? |
スタン | こんなの初めて見るけど、これも晶化の結晶なのか…? |
ミクリオ | いや…地上は勿論、この御座へ来てからも見た事がない |
ゼロス | 何だか不気味だな… |
ヴェイグ | ああ…。むやみやたらに近寄らない方が── |
ルドガー | …!あれは… |
ゼロス | あ、おい!ルドガー、待てよ! |
ティア | 何か見つけたのかしら… |
スレイ | 行ってみよう |
| |
ルドガー | …… |
ルドガー | やっぱり…!何で…どうしてこんな… |
ヴェイグ | ルドガー、何があった? |
ティア | これは、民家の一部かしら…。随分と崩れているけれど── |
エリーゼ | …!ルドガー…もしかして… |
| |
ルドガー | ああ…間違いない、俺の家だ |
スタン | なっ…!見間違いって事はないのか? |
ルドガー | … |
| |
エリーゼ | そんな…… |
ヴェイグ | …… |
ルドガー | くっ… |
ルドガー | エル!兄さん!ここにいるのか!?いるなら返事をしてくれ! |
スレイ | ルドガー… |
ミクリオ | …! |
ヴェイグ | 何だ、この光は…… |
ゼロス | さっきの赤い結晶だ…! |
| |
エリーゼ | え…? |
ティア | …!これは一体…!? |
スタン | エリーゼとティアの足下に魔法陣が…! |
ヴェイグ | くっ…!エリーゼ! |
ルドガー | ティア、そこから離れろ! |
ルドガー | …! |
ヴェイグ | く…っ!? |
スレイ | ヴェイグ!ルドガー! |
| |
| シュン! |
スタン | お、おい…どういう事だ…? |
ティア | 二人が消えて… |
ゼロス | おい、ヴェイグ!ルドガー!! |
エリーゼ | そんな… |
スレイ | くっ…! |
ミクリオ | …!あれは… |
ティポ | また赤い結晶が光り出したー!? |
スタン | まずい…!ここにいたら危険だ! |
スレイ | みんな、ここから離れよう! |
ティア | こっちよ、急いで! |
scene2 | 思い出の残骸 |
エリーゼ | ──はあ…はあ… |
ゼロス | ここまで来ればひとまず大丈夫だろ… |
ティア | エリーゼ、大丈夫? |
エリーゼ | はい、わたしは…。でも… |
ティポ | うわーん!!ヴェイグ君もルドガー君も消えちゃったよー! |
スレイ | 二人は一体どこに… |
ティア | 少なくともこの近くにいない事は確かだと思う… |
スタン | …!ティア、何か知ってるのか!? |
ティア | 今の魔法陣…おそらく「転移術」の一種よ |
スレイ | 転移術…? |
ミクリオ | つまり二人は、どこか別の場所へ飛ばされたという事か… |
ゼロス | おいおい、どこに飛ばされたって言うんだよ |
ティア | そこまでは、私にもわからないわ… |
ゼロス | くそっ…あの赤い結晶…ヴァンの仕掛けた罠なのか? |
ミクリオ | その可能性も勿論否定出来ないが…腑に落ちないところもある |
ミクリオ | 僕達を排除する事が目的なら、もっと致命傷を負わせる術を仕込む事も出来たはずだし… |
エリーゼ | とにかく、二人を捜さないと… |
ティア | エリーゼ… |
スタン | 転移って事は、たどり着いた先がどこであれ二人は無事って事だよな? |
ティア | おそらく… |
ティア | けれど、その先に何が待ち受けているのかわからないし、安全とは…… |
スレイ | …いや、きっと大丈夫だよ |
スレイ | 転移先でどんな困難が待ち受けていたとしても、あの二人なら必ず乗り越える |
スレイ | だからオレ達はこのまま光の渦を目指そう。二人を信じて |
スタン | スレイ… |
スタン | …そうだよな。あの二人なら絶対に大丈夫だ |
ゼロス | 何だかんだ言ってあいつら相当タフだしな。そう簡単にくたばりゃしねぇだろ |
エリーゼ | でも… |
スレイ | エリーゼ、さっきオレが話した事、覚えてる? |
エリーゼ | …!バラバラになった時は光の渦を目指す… |
スレイ | うん |
スレイ | 二人がもしこの城内にいるとしたらあの光の渦に向かうはず。だろ? |
ミクリオ | それに…一刻も早く、天帝の目覚めを止めなくてはならない |
ミクリオ | そのためにも…今は前に進まないと |
ティア | そうね…。私もそう思うわ |
エリーゼ | … |
エリーゼ | そうですね…。みんなの言う通りだと思います |
エリーゼ | わたし達は天帝とヴァンを止めるために、ここまで来たんですもんね… |
エリーゼ | …二人の事は心配ですが、再会出来る事を信じて今は前に進むべきだと思います… |
ティポ | きっとまた会えるよねー! |
スレイ | よし…じゃあ行こう |
エリーゼ | はい…! |
スタン | あそこに見える浮島から別の結晶の島へ行けそうだ |
ゼロス | なら、早いとこ行くとしようぜ |
スレイ | ああ…! |
scene1 | 虚ろに燃える炎 |
ゼロス | ──よし、ようやく次の島に着いたな |
スタン | ここもまた、いろんな残骸が結晶に紛れてるな… |
エリーゼ | あそこに見えるのは風車の羽か何かでしょうか… |
ティポ | こっちにはデッカイ柱があるー |
ティア | けれど、いずれも原型は留めていないわね… |
スレイ | これもやっぱり地上で晶化した物なのかな… |
スタン | … |
エリーゼ | ここまでで見つかったのは建物や遺跡の残骸ばかりですけど… |
エリーゼ | ヴェイグが言ってたようにもしかしたら…晶化した人もどこかに── |
ミクリオ | …!スレイ、あれを見てくれ |
| |
スレイ | あれって、まさか… |
スタン | 剣が台座に突き刺さってる… |
ゼロス | スレイ、あの剣がどうかしたのかよ |
スレイ | …これを見てくれ |
| |
エリーゼ | これは…スレイの剣…? |
ティア | …!あの台座に刺さっている剣と全く同じ物だわ |
スレイ | あれは…オレが導師になった時に手にした聖剣なんだ |
スタン | 導師になった時…?って事は、あの残骸も──… |
ミクリオ | …ああ、ピュール遺跡の一部という事だろう |
ミクリオ | だが、どういう事だ?何故ここに聖剣がある… |
スレイ | …オレ達が聖剣を手にしたのは遺跡が晶化する前の話だ |
スレイ | つまり、ピュール遺跡が晶化した時には聖剣はなかったはずなんだ |
ティア | なら、この聖剣は偽物という事…? |
スレイ | おそらく… |
ゼロス | じゃあ、今まで見た残骸も地上で晶化した物を真似て作った偽物って事かよ…? |
スタン | 何でそんな事… |
ミクリオ | いずれにせよ、今の僕達にとって益がある物とは到底思えない |
ミクリオ | 赤い結晶の事もあるし、無闇に近付くのはやめた方が── |
| |
| ボッ! |
エリーゼ | え…? |
| ゴオオッ!! |
| |
スタン | 何だこれ!?急に炎が… |
ゼロス | くっ…!すげぇ勢いで広がりやがる! |
スレイ | これってまさか…! |
scene2 | 虚ろに燃える炎 |
スタン | ──くっ!一瞬にして炎に囲まれたぞ! |
ゼロス | 急に何が起きて… |
ティア | 急いでここから離れましょう。今ならまだ── |
スレイ | みんな、身構えるんだ…! |
エリーゼ | …!何か知ってるんですか…? |
ミクリオ | ただの炎なら逃れられたかもしれないが、そうはいかないという事だ… |
スタン | 何だって…!?それって一体── |
| グルルル… |
スタン | …!あいつは… |
ティポ | 何かとんでもないのが出てきたー! |
エリーゼ | あんな魔物…見た事もありません…! |
| グオオオーーッ! |
ミクリオ | やっぱり出てきたな、鳳凰…! |
ティア | 鳳凰…? |
スレイ | ああ…、かつてオレ達が導師の試練で挑んだ炎の化身だ |
スレイ | …まさか、聖剣だけじゃなく鳳凰の試練までそっくりそのまま再現するなんてな… |
エリーゼ | そんな…… |
| |
| グオオオッ! |
エリーゼ | きゃっ! |
ゼロス | どうやらすんなり通してはくれなさそうだぜ |
スレイ | だからって、ここで立ち止まるわけはいかない! |
ミクリオ | ああ、そうだな |
| グオオオオッ! |
スレイ | みんな、行くぞ! |
scene3 | 虚ろに燃える炎 |
エリーゼ | ──えいっ! |
ミクリオ | はあああっ! |
| ズシャッ |
| グオオ… |
ティア | スレイ、今よ! |
スレイ | わかった! |
スレイ | これでどうだ!はああああっ!! |
| ズバッ! |
| グアアッ! |
| |
スレイ | 何とか倒せたか… |
ゼロス | ふう…これでようやく先へ進めるぜ |
スタン | …にしても、スレイ達も大変だったな。あんなのが試練だったなんて |
ティポ | ぼくはもう二度と会いたくないけど── |
| グオオ… |
| |
| グオオオオオオッ!! |
ティア | …!みんな、気を付けて…!鳳凰が… |
ティポ | わーっ!? |
スレイ | ティポが捕まったぞ…! |
エリーゼ | 駄目です!ティポを返してください…! |
スタン | エリーゼ!危ない、近付いちゃ── |
| グオオオッ! |
スタン | …うぐっ! |
ゼロス | スタン! |
ゼロス | くそっ…!この── |
| グオオオッ! |
ゼロス | うわっ…! |
スレイ | ゼロス!! |
ミクリオ | まさか、まだ息があったなんて…! |
スレイ | くっ…! |
スタン | う… |
ゼロス | ちくしょ…つっ… |
エリーゼ | スタン、ゼロス…!そんな… |
ティポ | 死なないでー |
ミクリオ | …あの二人、傷を負ったようだ。エリーゼが看ているが…多分すぐには動けないだろう… |
ミクリオ | この状況、どうすべきか… |
ティア | 鳳凰をこちら側に引き付けて、私達だけで何とかする、それしか方法は── |
スレイ | … |
スレイ | ティア、君はみんなを頼む。鳳凰はオレとミクリオで何とかする |
ティア | あなた達二人で…?けれど、一体どうやって… |
ミクリオ | スレイ、まさか… |
スレイ | ああ…。力を貸してくれ、ミクリオ |
ティア | 駄目よ、スレイ!神依の力は決戦の切り札…今その力を使うのは── |
スレイ | 勿論、その時もやるさ |
スレイ | 天帝の目覚めやヴァンを止めて、この世界を救う…それは何があってもやり遂げる |
スレイ | そのためにも、今目の前にいる鳳凰を倒してみんなを助けないと…! |
スレイ | 神依は特別な力かもしれないけどそれだけじゃ駄目なんだ |
スレイ | 世界を救うにはみんなの力が必要不可欠だ! |
ミクリオ | スレイ… |
ティア | …わかったわ。なら、ここはお願い |
スレイ | うん!じゃあ、ミクリオ! |
ミクリオ | ああ、わかった! |
スレイ・ミクリオ | ルズローシヴ──… |
??? | ──ちょっと待ったー!その必要はねぇ!! |
スレイ | …!あれは… |
| |
ゼロス | せやあっ! |
| ザシュッ! |
| グオオッ! |
ゼロス | スタン!今だ、叩き込め! |
スタン | わかってる…!はああっ! |
| ザシュッ! |
| グアアア…ア… |
エリーゼ | これで最後です…!行きますよ、ティポ! |
ティポ | おっけー、エリー! |
エリーゼ | せーのっ!えいっ! |
| ズシャーーーーーッ!! |
| グ…ア…… |
| |
スタン | はあ…はあ…何とか間に合ったか… |
ティポ | 炎もすっかり消えちゃったー! |
ゼロス | 助かったぜ、エリーゼちゃん。応急処置ありがとな |
エリーゼ | いえ…二人共…よかったです |
スレイ | ──みんな…!よかった、無事だったんだな… |
スタン | …何とか、エリーゼのお蔭でな |
ゼロス | …それより、お前らが神依化しちまう前にどうにか出来てよかったぜ… |
ティア | あれは、あなた達を救って先へ進むためのやむを得ない判断だった… |
ティア | そんな言い方は… |
スタン | あ…いや、ごめん。別に責めたいわけじゃないんだ |
エリーゼ | …スレイ達の話してる事、聞こえてたんです |
エリーゼ | 世界を救うには仲間がいないと駄目だって… |
エリーゼ | だから知ってます。どんな想いで神依化しようとしたか… |
スタン | ほら、神依を温存するって話の時にスレイ、言ってただろ?俺達に力を貸してほしいって |
スタン | …本当ならその切り札こそ俺達が守らないといけないのに |
スタン | 俺達のためにそれを使わなくちゃならないって何か、情けないって言うかさ… |
スタン | だから、俺達としては何としてでも神依化しちゃう前にどうにかしたかったって事 |
スタン | …だよな、ゼロス? |
ゼロス | ま、後で俺さま達のせいで本領発揮出来ない~とか言われてもシャクだし? |
スレイ | みんな… |
ティア | どうやら、互いに互いを想い合っていたという事のようね |
ミクリオ | そのようだね。でも、結果としてよかったよ。切り札は守れたわけだから |
スレイ | …うん、そうだな。ありがとう、みんな |
ゼロス | …何だよ、改まって。スタンのアツさに当てられてんじゃねーのか? |
スレイ | はは…、そうかもしれないな |
スタン | えー!?何で俺… |
ティア | 気にする事ないわ、褒め言葉よ |
スタン | そう…なのか? |
ゼロス | そうそう。そんな事より、とっとと先へ進もうぜ |
スレイ | うん、そうだな。急がないとヴェイグやルドガーを待たせる事になっちゃうかも |
エリーゼ | そうですね…!では、行きましょう |
ティポ | レッツゴー! |
scene1 | 切り結ぶ双剣 |
ルドガー | …… |
ルドガー | う…くっ… |
ルドガー | ここは、一体…? |
??? | ──目が覚めたか… |
ルドガー | …!その声は… |
ヴェイグ | … |
ルドガー | ヴェイグ…! |
| |
ルドガー | 他のみんなはどこに…?それに、赤い結晶や俺の家も── |
ヴェイグ | …お前が目覚める前に周辺を見て回ったが、ここにはオレ達以外は誰もいない |
ヴェイグ | 見覚えのある物も何一つなかった |
ヴェイグ | …どうやらオレ達はどこか別の島へ飛ばされてしまったという事らしい |
ルドガー | 別の島に…?そうか、あの時確か魔法陣が出現して俺とヴェイグが… |
ルドガー | 俺達だけって事は、ティアとエリーゼは助かったのかな? |
ヴェイグ | …そうだと信じたい |
ヴェイグ | とにかく、ここにいても仕方ない。道を探そう |
ルドガー | 道と言っても…元いた島はどこだ? |
ヴェイグ | わからない。見渡す限りどこも同じ景色だからな |
ヴェイグ | だが、望みはないわけじゃない。あれを見ろ |
ルドガー | あれは、光の渦──……!そうか… |
ルドガー | そう言えば、御座に入ってすぐの頃スレイが話してたな |
ルドガー | バラバラになるような事があれば、光の渦を目指そうって |
ヴェイグ | スレイ達もおそらくあそこへ向かっているだろう。いずれ合流出来るはずだ |
ヴェイグ | それに…例え合流出来なかったとしても、オレ達が目指すべき場所があの光の渦である事は変わらない |
ルドガー | …ああ、そうだな |
ルドガー | 天帝の目覚めを止めて、元の世界を取り戻す……必ず… |
ルドガー | とにかく、他の島へ進める道を探そう |
ヴェイグ | … |
ルドガー | ──この辺りは何もないな。相変わらず残骸があちこちにあるが、目ぼしい物もないし…… |
ヴェイグ | …ルドガー |
ルドガー | どうかしたのか、ヴェイグ |
ヴェイグ | 無理はするな… |
ルドガー | …! |
ルドガー | …はは、やっぱり俺あの時すごくうろたえてたよな |
ルドガー | 心配ありがとう、ヴェイグ。…俺は大丈夫だよ |
ルドガー | 家の残骸を見つけた時は、さすがに動揺したし、もしかしたら…って思ったけど… |
ルドガー | エルや兄さんの姿はなかった。だからきっと二人も無事なはずだ |
ヴェイグ | ルドガー… |
ルドガー | あ、いや…クレアの事があるのに、何かその…ごめん |
ヴェイグ | …無事を信じる気持ちはわかる。お前が謝る事じゃない |
ルドガー | そう言ってもらえると助かるよ |
ルドガー | …それにしても、何なんだろうな、あの残骸… |
ルドガー | さっきの島で見た俺の家もピュール遺跡やバロニアの物と同じでかなり破損していた… |
ルドガー | あれは本当に、地上の物なんだろうか… |
ヴェイグ | 偽物だと? |
ルドガー | 何の確証もないけどな。…単に俺がそう信じたいってだけなのかもしれないし |
ヴェイグ | ルドガー…、やっぱりお前は… |
ルドガー | …いや、二人の無事は信じてるよ。ただ、後悔だけはどうしても消せないんだ |
ルドガー | 二人の傍にいればよかった、守ってやればよかった、その想いだけはどうしても… |
ルドガー | はは、情けないな。こんな中途半端な状態、兄さんが見たらきっと怒られるよ |
ヴェイグ | 守ってやればよかった…か |
ヴェイグ | …言われてみれば、オレも同じだな |
ルドガー | クレアの事か… |
ヴェイグ | ああ。既に決意は固まっている…だが、その想いだけは今も消えない |
ヴェイグ | 消せるとすれば、あの笑顔を再び見る事がかなうその時だけなんだろう… |
ヴェイグ | だからこそ、オレは何としてでもクレアを救う |
ヴェイグ | もう二度と、失わないように… |
ルドガー | ヴェイグ…… |
| コツ…コツ… |
ヴェイグ | …? |
ルドガー | これは、足音…?もしかして、スレイ達か…!? |
ヴェイグ | いや、ヴァンという可能性もある |
ルドガー | 向こうから近付いてくる、念のため警戒して── |
ルドガー | …!そんな…まさか…… |
ヴェイグ | …ルドガー?一体どうしたと── |
| |
ユリウス | … |
ルドガー | 兄さん…何でここに……! |
ヴェイグ | …!お前の兄…なのか…? |
ルドガー | 答えてくれ、兄さん!何でここにいるんだ…? |
ルドガー | エルはどうした?どうやってここに──… |
ユリウス | … |
ルドガー | どうして何も言ってくれないんだ!?答えてくれ、兄さん… |
ヴェイグ | もしかして晶化したのか…? |
ルドガー | ヴェイグ…!そんなはずはない、兄さんが晶化するなんて… |
ルドガー | …そうだ、兄さんがここにいるわけがない。来られるわけがない |
ヴェイグ | ルドガー… |
ルドガー | …お前は兄さんの姿をした偽物だ。天帝やヴァンが仕向けた罠に違いない |
ユリウス | … |
| チャキ… |
ルドガー | …! |
ルドガー | くっ…! |
ルドガー | やはり、お前は… |
ユリウス | … |
ヴェイグ | …待て、ルドガー。何か様子がおかしい… |
ルドガー | …そりゃそうさ。だってあれは、偽物なんだから… |
| |
ルドガー | だが、そうとわかれば…──容赦はしない! |
ルドガー | うおおおっ! |
ユリウス | … |
ヴェイグ | 待て、ルドガー!! |
ヴェイグ | その男…攻撃はしてきたが、本気でお前を斬ろうとしているようには見えなかった…きっと何か──… |
| コツ…コツ… |
ヴェイグ | …!また足音か…! |
ヴェイグ | …くっ、今度は一体誰── |
ヴェイグ | …!お前は…… |
scene2 | 切り結ぶ双剣 |
ヴェイグ | ──どうしてお前がここに… |
ヴェイグ | …答えてくれ、クレア…… |
クレア | 『ヴェイグ…』 |
ヴェイグ | 頭の中に声が…!?これは一体… |
| |
ヴェイグ | クレア…お前は本当にクレアなのか…? |
クレア | … |
ヴェイグ | お前は確かに晶化したはずだ… |
ヴェイグ | 天帝の力によって、この空間に…?それとも、別の何か、なのか…? |
クレア | 『久しぶりに会ったのに 怖い顔ね、ヴェイグ』 |
ヴェイグ | …クレアなのか? |
クレア | 『ふふ、変な人。 あなたに嘘吐いた事なんて ないでしょ?』 |
クレア | 『あなたは私を守ってくれた。 今もこうして私を助けようと 一生懸命じゃない』 |
クレア | 『だから、そんな顔しないで…』 |
ヴェイグ | お前は…本当に… |
クレア | 『もうすぐ全ては終わるわ。 そしたら、お願い。 私を迎えに来て』 |
クレア | 『一緒に帰りましょう、 私達のスールズ村に…』 |
ヴェイグ | …!クレア…お前はやはり── |
| |
ルドガー | せやっ! |
| ガキンッ! |
ルドガー | はあ…はあ… |
ユリウス | … |
ルドガー | 偽物のくせに…兄さんと同じ姿で、同じ動きを… |
ルドガー | この…っ!惑わされはしない! |
ルドガー | 兄さんが晶化したなんて、俺は絶対に認めない…! |
ルドガー | はああっ── |
| |
ヴェイグ | 待て、ルドガー! |
ルドガー | ヴェイグ!何で── |
ヴェイグ | …正しく見極めろ。お前の兄が本当にただの偽物なのか… |
ヴェイグ | …あれを見てくれ |
| |
クレア | … |
ルドガー | …!あれは…クレアか…? |
ヴェイグ | クレアは晶化した。だが…あそこにいるクレアは紛れもなく本人の意思を持っている |
ヴェイグ | おそらくはお前の兄もクレアと同じ状態だ… |
ルドガー | じゃあ… |
ルドガー | 兄さんも晶化に…… |
ユリウス | … |
ユリウス | 『…ルドガー』 |
ルドガー | …!頭の中に声が…!? |
ヴェイグ | …クレアの時もそうだった |
ヴェイグ | きっと、直接お前に語りかけているのだろう |
ルドガー | じゃあ… |
ルドガー | 本当に兄さん…なのか…? |
ユリウス | 『ああ…そうだ』 |
ルドガー | 兄さんも晶化に巻き込まれてしまったんだな… |
ユリウス | 『ああ…。 エルも守る事が出来ず、 本当にすまなかった』 |
ルドガー | 兄さんが謝る事じゃない。俺こそ、傍で守ってやれなくてすまなかった… |
ルドガー | しかも、兄さんが晶化した事を受け入れられずにあんな… |
ユリウス | 『…それは構わない。 それだけお前は俺達を信じようと してくれていただけの事…』 |
ユリウス | 『──だが、結果として見誤った』 |
ユリウス | 『お前はわかっていたはずだ、 この現実を。…だが目を逸らした、 俺達を信じるという理由を付けて』 |
ユリウス | 『違うか?』 |
ルドガー | それは… |
ユリウス | 『お前の想いもわからなくはない…。 だが、そんな生温い意志で、 本当に目的を果たせるのか?』 |
ルドガー | …確かに俺は、兄さんの言う通り現実を受け入れられなかった |
ルドガー | 頭のどこかではわかっていたけど…やっぱり認めたくなかったんだと思う |
ルドガー | …けど、それと覚悟は別だ!目的は必ず果たす、何があっても… |
ルドガー | 兄さんやエル、それにクレア…。この世界は必ずこの手で救う! |
| |
ユリウス | 『…いい覚悟だ。 なら、その覚悟…身をもって示せ』 |
| |
ユリウス | 『はあああああっ!』 |
ルドガー | …! |
ユリウス | 『本気で来い、ルドガー。 俺すら倒せないようなら、 お前に世界を救う事など出来ない』 |
ルドガー | …兄さん |
ルドガー | ──わかった… |
ルドガー | 全身全霊をもって示すよ。この覚悟が本気だって事を…! |
ルドガー | はああああああっ! |
ルドガー | 行くぞ、兄さん! |
ユリウス | 『…来い、ルドガー!』 |
scene3 | 切り結ぶ双剣 |
ルドガー | はあ…はあ… |
ユリウス | 『はあ…はあ…』 |
| |
ヴェイグ | … |
クレア | … |
| |
ユリウス | 『…見事だ、ルドガー』 |
ユリウス | 『……っ…!』 |
ルドガー | …! |
| |
ルドガー | 兄さん! |
ユリウス | 『ルドガー、 …お前の覚悟は本物のようだな』 |
ユリウス | 『今のお前なら、 必ず目的を果たせるだろう』 |
ルドガー | 兄さん… |
ルドガー | うん…。必ずやり遂げるよ…そして兄さんを…みんなを救うから |
ユリウス | 『ふ…』 |
ヴェイグ | 何だ、この光は…! |
ルドガー | ──…!兄さんとクレアが…! |
クレア | 『…ヴェイグ、自分を信じて。 あなたならきっと大丈夫。 見守っているわ』 |
ユリウス | 『…ルドガー、 お前もその覚悟を忘れるな』 |
ユリウス | 『俺達の心はお前達と共にある…。 それを忘れず、先へ進むんだ──』 |
ヴェイグ | …!クレア…! |
ルドガー | 兄さん──! |
ヴェイグ | … |
ヴェイグ | …二人共消えてしまったな |
ルドガー | …ああ |
ヴェイグ | …!ルドガー、あれを… |
ルドガー | あれは…浮島…? |
ヴェイグ | …ああ。次の結晶の島へ続いているようだ |
ルドガー | おかしいな。あんな物なかったような…… |
ルドガー | …!ひょっとして… |
ヴェイグ | …ああ、あの二人はオレ達を救うために、ここへ来てくれたのかもしれないな |
ルドガー | ……そうだな |
ルドガー | …ありがとう、兄さん |
ルドガー | よし、ヴェイグ。あの道を進もう、みんなと再び会うために |
ルドガー | そして── |
ヴェイグ | オレ達の目的を果たすために、な |
scene1 | 友を想えば |
スレイ | ──光の渦がかなり大きく見えるようになってきたな |
ミクリオ | それだけ近付いてるって事さ。ここまでくればあと少しだ |
エリーゼ | …ヴェイグとルドガーの姿はまだ見えませんね… |
スタン | この広さだしな… |
スタン | この空間内にいたとしてもすぐに合流、とはいかないだろうな |
エリーゼ | …… |
ティア | きっとその内会える、それを信じて今は先へ進みましょう |
エリーゼ | そうですね… |
ゼロス | …ったく、あいつらも罪なヤツだぜ。こんな可愛いエリーゼちゃんを不安でいっぱいにさせるなんて── |
| ズズ… |
ティア | …?何の音? |
| |
| ゴゴゴゴゴ…! |
スタン | なっ…!島が揺れてる…! |
ミクリオ | 大きいな…。気を付けろ、きっと何か… |
| ビシッ! |
ゼロス | くそっ、足下にヒビが…! |
ティア | ゼロス、大丈夫!? |
| ビシビシビシッ! |
| ガラガラ…! |
ティポ | 地面が崩れちゃったよー |
ゼロス | あっぶねー…危うく一緒に落っこっちまうところだったぜ… |
ミクリオ | 気を抜くのはまだ早い。あれを見てくれ… |
スレイ | …!周囲の島がどんどん崩れ始めてる… |
ゼロス | 揺れてんのはこの島だけじゃねぇって事かよ!? |
ミクリオ | この空間全体で何か異変が起きているようだ…! |
スタン | そんな…!一体何が… |
ティア | 天帝が目覚めかけているのかも…。光の渦が今までにないほどの強い光を帯び始めている… |
エリーゼ | 本当です…!さっきまで普通だったのに… |
| ビシッ! |
| ガラガラ… |
ゼロス | ちっ…また足下が崩れ始めた… |
| ズゴゴゴ…! |
スタン | しかもこの揺れ…さっきより大きいぞ |
スレイ | あれこれ考えるのは後だ、とにかくここを離れよう…! |
ティア | 向こう側へ行きましょう…!ここよりは崩落が少ないわ |
ゼロス | …ああ、わかった! |
スレイ | ──みんな、あと少しだ!大きな壁の残骸…あの辺りまで止まらずに走ろう! |
スタン | ああ、わかった…! |
| ゴゴゴゴゴ…! |
エリーゼ | きゃっ…! |
スレイ | エリーゼ! |
スタン | 大丈夫か!? |
エリーゼ | はい、何とか… |
| ビシッ! |
| ガラガラガラ! |
ティア | まずいわね…こっちにまで崩落が──… |
| ビシッ! |
エリーゼ | …! |
エリーゼ | スレイ、危ないっ!──ティポ! |
ティポ | まかせて、エリー! |
ティポ | えーい!! |
| ドンッ! |
| |
スレイ | うわっ!? |
ティア | スレイ!エリーゼ! |
| ガラガラガラッ…!! |
| ズズズ… |
| |
ミクリオ | これは…! |
ゼロス | 島が…完全に分断されちまった… |
スレイ | くっ…!何で… |
ゼロス | エリーゼちゃん!俺さまが受け止めてやる。思い切って跳べ! |
ミクリオ | 無茶を言うな。エリーゼ一人で跳び越えられる距離じゃない |
ミクリオ | それに…その距離はどんどん広がって… |
エリーゼ | …みんな、先に行ってください |
エリーゼ | わたしなら大丈夫ですから… |
スレイ | そんな事出来るわけないだろ…! |
スレイ | オレがそっちに行く、エリーゼはそこで待ってて── |
エリーゼ | 駄目です! |
エリーゼ | 今、スレイがこっちに来たらきっともう戻れません… |
エリーゼ | いいから、行ってください |
スレイ | けど… |
エリーゼ | ヴェイグやミラ…これまでわたしはたくさんの人達に助けてもらいました… |
エリーゼ | だから今度は、わたしが…… |
| ズゴゴゴゴゴ… |
| |
スタン | …!エリーゼ! |
ゼロス | くそっ…!エリーゼちゃんがどんどん離れて… |
スレイ | エリーゼ…エリーゼ!! |
| |
ティポ | エリー… |
エリーゼ | これでよかったんです…これで… |
エリーゼ | けど…ミラやヴェイグのように強くあるのは難しいですね… |
エリーゼ | やっぱり少しだけ…怖いです… |
??? | …一人で抱え込むなと、言ったはずだ |
エリーゼ | …!その声は、まさか──… |
scene2 | 友を想えば |
エリーゼ | ──その声は、まさか… |
ティポ | もしかしてー! |
| |
ヴェイグ | …ああ、待たせてしまったな |
エリーゼ | ヴェイグ…!!無事で本当によかった… |
ティポ | って事は、ひょっとしてー! |
ルドガー | ああ。俺もいるよ、ティポ |
エリーゼ | ルドガー! |
ヴェイグ | 二人共、心配かけた──…むぐっ |
ルドガー | こ、こら…ティポ!駄目だろ、ヴェイグの顔に飛びついちゃ… |
ティポ | だって、だってー! |
| ゴゴゴゴ… |
エリーゼ | …! |
ヴェイグ | …とにかく急いでみんなのいる島へ渡ろう |
エリーゼ | ですが…あの距離はさすがに… |
ルドガー | 大丈夫だよ、エリーゼ |
ルドガー | はあああああっ! |
エリーゼ | …!ルドガー、その姿… |
ルドガー | この状態なら、エリーゼを抱えたままでも跳べる。さあ、こっちに |
エリーゼ | けど、ヴェイグは… |
ヴェイグ | オレは心配ない。…一人なら何とかなる |
ルドガー | ティポ、お前も一緒に |
ティポ | ありがとー |
ルドガー | よし、じゃあ行くぞ |
ヴェイグ | …ああ |
ルドガー | せーの! |
ルドガー | それっ! |
ヴェイグ | はっ! |
スレイ | ──とにかく、オレがエリーゼのところに行く |
スレイ | みんなはこのまま光の渦を目指して、先に── |
??? | …その必要はありません |
スレイ | …! |
エリーゼ | みんな… |
ティア | エリーゼ!それにルドガーとヴェイグも! |
ティポ | ぼくだっているけどねー! |
ルドガー | ちょっと、久しぶりだね |
ヴェイグ | …全員揃っているな |
スタン | 二人共無事だったんだな。よかった…! |
ティア | しかも、エリーゼまで一緒に戻ってくるなんて… |
ヴェイグ | …心配をかけてすまなかった |
ルドガー | 無事みんなと再会出来て、本当によかったよ |
エリーゼ | スレイの言った通りですね…。またヴェイグとルドガーに会えました |
スレイ | うん、そうだね |
スレイ | それとエリーゼ、さっきは助けてくれてありがとう |
スレイ | エリーゼが助けてくれなきゃ今頃オレは、この奈落の底だ |
エリーゼ | …よかったです |
ゼロス | とにかく、全員無事で何よりだ |
スタン | 光の渦までもう少しだ。あと一息、乗り切ろう! |
ティポ | おー! |
scene1 | 迫る覚醒の時 |
スレイ | ──ようやく揺れも収まって来たな |
スタン | 天帝の目覚め…ひとまずは落ち着いたと考えていいのかな…? |
エリーゼ | どうでしょうか…。光の渦の輝きが強いままなのが少し気になります… |
ゼロス | 嵐の前の静けさってヤツなのかもな |
ミクリオ | とにかく、残された時間が僅かな事は確かだ。急いで次の島への道を探そう |
スレイ | …そういえば、ルドガーとヴェイグが転移した先ってどんなところだったんだ? |
ルドガー | 転移…? |
ティア | あの赤い結晶の事よ。魔法陣やあの状況から転移だろうと予想していたの |
ティア | …あの時は助かったわ。本当ならルドガー、あなたじゃなく私が飲み込まれるはずだった… |
ルドガー | …いや、全然構わないよ。寧ろ、行けてよかったと思ってる。そうだよな、ヴェイグ? |
ヴェイグ | …ああ |
エリーゼ | 行けてよかった…? |
ティポ | それってどういう事ー? |
エリーゼ | ──信じられません。まさか、ユリウスとクレアが… |
ヴェイグ | …理屈はわからないが、この空間は地上で晶化した物や人を再現しているという事だろう |
スタン | でも…腑に落ちないのはオレ達が見た聖剣、だよな… |
ミクリオ | …ああ。聖剣があの場に存在していた時点で、現実の物とは状況が乖離している |
ティア | それは、酷く破損した他の残骸にも言える事だわ… |
ティア | ……もしかしたら、この空間には何か大きな秘密が隠されているのかもしれない |
ゼロス | …なるほどな |
ゼロス | …ここのもんは晶化した物を真似て作った偽物だと思ってたけど一概にそうでもねぇって事か… |
ルドガー | 難しいな。幻影とでも言うべきか…実物じゃないという意味では、兄さん達も“偽物”と言える |
ルドガー | …ただ、これだけは断言出来る |
ルドガー | 兄さんとクレア…二人の意思は、紛れもなく本人の物だったって |
スレイ | …うん。二人の話を聞いて、オレもそう感じたよ |
スレイ | ユリウスさんもクレアさんも…きっと、二人に伝えるべき強い想いを持ってたんだろう |
スレイ | …人は想いを伝えられる |
スレイ | それを知った時、わかり合う事だって出来るんだ |
ミクリオ | ……ああ、そうだな |
スタン | にしても、本当に何者なんだろうな、天帝って… |
スタン | 城に着けば何かわかるかもって思ってたけど…結局何もわからずじまいだ |
ゼロス | わかってる事と言や、ただの人間じゃねぇって事くらいか。後は…謎が深まるばかりだぜ |
ゼロス | …さてと、次の島への道探し、再開といくか |
ティア | ええ、そうしましょう |
scene2 | 迫る覚醒の時 |
ゼロス | ──浮島を見つけたぞ。こっからあの島に行けそうだ |
ヴェイグ | 光の渦との距離からして、おそらくあの島が終着点だな |
ルドガー | よし、じゃあ早速行こう。俺が先導する |
ルドガー | みんなも後に続いて──…ん? |
スレイ | … |
ミクリオ | …スレイ、どうかしたのか? |
エリーゼ | 光の渦を見てたんですね |
スレイ | うん… |
スレイ | あそこにいるんだよな、天帝とヴァンが… |
ヴェイグ | ああ… |
スレイ | …ヴァンの言う世界の浄化ってさ、本当に世界を晶化させるだけ、なのかな? |
スタン | どういう事だ? |
スレイ | この世界を晶化で覆い尽くし世界を浄化させる、それが目的だとヴァンは言ってた… |
スレイ | けど、オレ達がこの空間内で見た建物の残骸や晶化した人達… |
スレイ | これらは何か、ヴァンの目的とは別の意図があるような気がしてさ |
スレイ | 何て言うか…繋がらないんだ |
スレイ | 共謀しているはずの二人…、世界を無に帰そうとするヴァンと偽物を作り出す天帝の力が…… |
スレイ | …それで思ったんだ。世界を晶化させる事は目的じゃなく、ただの通過点なんじゃないかって |
スタン | それってつまり…世界が晶化した先に、ヴァンの本当の目的があるって事か…? |
スレイ | うん… |
ティア | …そういえば兄さんが言ってたわ。この世界を捨てる事こそが救世…それが浄化なのだと |
ティア | スレイの言う通りだとしたら、その「救世」が意味するものこそが兄さんの真の目的なのかもしれない… |
ゼロス | でもよ…その救世って何なんだ? |
ミクリオ | 何かはわからないけど、天帝の力によるものである事はおそらく間違いないだろう |
ミクリオ | …あの時の僕らは、天帝がこれほどの力を持つ存在だとは認識していなかった |
ミクリオ | だからこそ、その「救世」という言葉の意味を深く捉えていなかったが── |
ミクリオ | 天帝の力を知った今なら、その解釈も頷ける |
ヴェイグ | …晶化の先に、ヴァンが望んでいるもの…か |
エリーゼ | … |
ティア | …兄さん、あなたは一体…… |
スレイ | …ティア。その答えもじきにわかるよ |
ティア | ええ、そうね… |
ルドガー | …よし、そろそろ行くとしよう |
scene1 | 三つの虚像 |
スタン | ──ここが終着点か |
ゼロス | 何か、いかにもって感じだな…。他の島とまるで雰囲気が違う |
ミクリオ | 建物もほとんど原型を留めているし、まるでどこかの神殿や遺跡にでも来たような気分だ… |
ティポ | うんー、ヘンなカンジー |
エリーゼ | …!見てください、あそこに階段があります |
ルドガー | 随分と長い階段だが、その先に見える光は… |
ヴェイグ | …ああ、例の光の渦に続いてるんだろう |
スレイ | 遂にここまで来たんだな |
スタン | ああ、一時はどうなる事かと思ったけど全員で無事にたどり着けてよかった |
ティア | そうね…。けれど、ここからが正念場よ |
ティア | 相手は兄さんと、得体の知れない力を持つ天帝──… |
ティア | きっとこれまでにはないほど厳しい戦いになるわ |
スレイ | …うん、覚悟は出来てるよ。な、ミクリオ? |
ミクリオ | ああ |
スタン | ヴァンの思うようにはさせない…! |
ゼロス | 天帝の野郎もな。何者か知らねぇが目覚める前にぶっ倒してやる |
ティア | 気合は十分ね。なら、行きましょう。天帝とヴァンの元に── |
| |
??? | 『──そうはさせないよ』 |
| |
スタン | …!今のは一体…!? |
ミクリオ | 頭の中で声が…! |
ヴェイグ | これは…クレアの時と同じだ |
スレイ | 何…!?じゃあ、もしかして… |
| コツ…コツ…コツ… |
ティア | 上よ、階段から誰か降りてくる…! |
ルドガー | 誰だ!姿を見せろ! |
??? | 『うふふ…久しぶりね。 まさかこんな形で再会するなんて やっぱり運命かしら♡なーんてね』 |
| ザッ… |
ミクリオ | …! |
ゼロス | まさか、お前ら…… |
scene2 | 三つの虚像 |
ティア | ──どうしてあなた達が… |
| |
アリス | … |
デクス | … |
シンク | … |
ヴェイグ | アリスにデクス…!? |
ゼロス | それに、シンクの野郎まで…!何でお前達がここにいるんだよ!? |
ルドガー | こいつらも兄さんやクレアと同じって事さ…! |
スタン | それって…地上で晶化したって事か…!? |
ミクリオ | …確か、アリスとデクスの身柄はア・ジュールが拘束していたはずだ。だとしたら…… |
スレイ | …!まさか…ア・ジュールも晶化に…? |
スタン | そんな…ガイアスさんやジェイドさんも… |
ルドガー | くっ…! |
シンク | 『相変わらず騒々しいね、アンタ達。 …けど、それもここまでだ』 |
アリス | 『ここから先は ぜーったいに通さないんだから』 |
ゼロス | ちっ、お前らと遊んでる暇はねぇっての!どきやがれ |
シンク | 『…言ったはずだよ、通さないって』 |
ゼロス | おいおい、晶化してまでまだヴァンに従うってのかよ? |
シンク | 『ふん、勘違いしないでほしいね。 誰も好き好んでヴァンに 付き従っているわけじゃない』 |
シンク | 『もうすぐ迎える この世界の終わり……、 ボクはただ、それを見たいだけさ』 |
シンク | 『はっ!』 |
| シャッ! |
| ガキーンッ! |
ゼロス | ちっ…! |
アリス | 『アハハ♪ シンクってば相変わらず 血の気が多いんだからぁ』 |
アリス | 『ま、アリスちゃん、 …そういう人嫌いじゃないケド♪』 |
デクス | 『くっ…おい、シンクてめぇ! オレのアリスちゃんの前で、 かっこつけやがって!』 |
ヴェイグ | …おい、アリス、デクス。ふざけるのは大概にして、今すぐそこを退け |
アリス | 『バカね、ヴェイグちゃんったら。 そんな事、聞かなくたって 答えはわかってるク・セ・に♪』 |
アリス | 『…デクス、行きなさい! 邪魔されて捕まった時の お返しよ』 |
デクス | 『アリスちゃんのお望みとあらば! …覚悟しろよ、お前ら?』 |
| チャキ…! |
スレイ | … |
ティア | 厄介ね…、強敵揃いよ |
エリーゼ | どうしますか…? |
ヴェイグ | …決まっている。やるしかない |
スタン | ああ、答えは一つだ! |
スレイ | 例えどんな障害が立ち塞がろうと、オレ達は前に進む |
スレイ | やろう、みんな! |
ミクリオ | ああ…! |
ティア | わかったわ…! |
scene3 | 三つの虚像 |
シンク | …… |
ゼロス | お前の相手すんのもよ…、いい加減飽きて来たぜ |
ゼロス | これで終わりにすんぞ、…シンク! |
ゼロス | せやああっ!! |
| ズバッ! |
シンク | 『ぐっ…』 |
| ──ドサッ |
ゼロス | …ったく、奇妙な縁だな、お前とは。こんなとこでもまた会うとはよ… |
ヴェイグ | アリス、デクス… |
ヴェイグ | お前達がオレ達の前に立ち塞がるのであれば、退けるだけだ…何度でも |
ヴェイグ | エリーゼ!ティポ! |
エリーゼ | はいっ! |
ティポ | いっくよー! |
ヴェイグ | はあああっ! |
| ズバッ! |
エリーゼ | やぁっ! |
| ドーンッ! |
アリス | 『うっ…』 |
デクス | 『く、くそっ…』 |
| |
スタン | 何だ、この光は…!? |
ルドガー | …じきにわかるよ |
| |
ティア | 三人の姿が…消えてしまったわ |
エリーゼ | …何だか不思議な感じがしますね。まるで夢だったようで… |
ヴェイグ | …あいつらも、意思は本人の物のようだったな |
ゼロス | けどまあ…いくら敵だとは言え、姿を真似た幻影ってのは、あんま気分のいいもんじゃねぇな |
スタン | まあ、そうだな… |
ティア | ……とにかく、これで私達の行く手を阻む者はいなくなったわ |
ティア | 行きましょう、あの階段の先へ |
スレイ | うん。あの先にある光の渦…きっとそこに天帝とヴァンがいる |
スレイ | これが本当の、最後の決戦だ |
ミクリオ | …いよいよだな |
ティア | 兄さんの…いえ、ヴァンの過った理想にはここで必ず終止符を打つわ… |
ゼロス | ああ、これ以上あいつらに好き勝手させるワケにはいかねぇからな |
ヴェイグ | 天帝を倒し、クレアを…晶化に奪われた全ての物を取り返してみせる… |
ルドガー | 必ずやり遂げてみせるさ |
ティポ | ぼくもがんばっちゃうもんねー |
エリーゼ | みんな一緒なら大丈夫です…!絶対に負けません |
スタン | 俺達の世界は、俺達が救う! |
スレイ | これで全ての決着がつく…いや、つけるんだ |
スレイ | …みんな、天帝の目覚めを止めてこの世界を必ず救おう。オレ達全員の力で! |
全員 | おおっ! |
ルドガー | よし、じゃあ先へ進もう |
| |
スレイ | …ミクリオ |
スレイ | どうしたんだ、行かないのか? |
ミクリオ | さっきのみんなへの言葉… |
スレイ | ああ、決戦の前だし気合を…と思ったんだけど…変、だったかな? |
ミクリオ | いや、悪くなかったと思う。ただ、スレイ… |
| |
ミクリオ | 君は変わったな |
スレイ | オレが? |
ミクリオ | 昔の君なら、こういう時、他人を巻き込んでしまったと考えていた |
ミクリオ | 一緒に戦おう、なんて絶対に言わなかったと思う |
スレイ | そうかな… |
ミクリオ | 一人で抱え込むの、大好きだったろ |
スレイ | …うっ |
スレイ | …でも、ミクリオの言う通りかもしれないな |
スレイ | 導師になって、みんなと旅をして…その中で神依の事もあったりさ |
スレイ | 少しわかるようになった気がするんだ |
スレイ | みんなの背負ってるものや、抱え込んでる想いが… |
スレイ | そういう想いを知ったら、オレ一人で戦うのは何か違うなって思ったんだ |
ミクリオ | …うん、そうだな |
ミクリオ | 何にしても、いい変化だよ。君も成長するって事だな |
スレイ | ははっ、よかった。じゃあこれでミクリオも安心してオレに付いて来られるな! |
ミクリオ | はぁ、君は…。たまに褒めるとすぐこれだ… |
ミクリオ | 僕は君に付いていく気なんてこれぽっちもない |
ミクリオ | 君の隣、ここが僕の居場所だ |
スレイ | ミクリオ… |
スレイ | うん、そうだった |
スレイ | 行こう、ミクリオ。一緒に世界を救うんだ |
ミクリオ | ああ、君は僕がいないと駄目だろうしな |
スレイ | そっちこそ! |
scene1 | 夢と理想の果て |
スレイ | ここに天帝が… |
ミクリオ | 待て、スレイ…! |
スレイ | …!! |
| |
ヴァン | …よもや、ここまで至るとはな。その執念、賞賛に値する |
スレイ | …! |
ティア | …兄さん |
ミクリオ | スレイ…ヴァンの後ろにあるもの… |
| |
スレイ | 巨大な晶化の…結晶…花のように見えるけど… |
スタン | …結晶の花…?ここに、天帝が…!? |
ヴァン | そう、これこそが天帝… |
ヴェイグ | これが…晶化現象の元凶…! |
ゼロス | そいつを目覚めさせてたまるかよ…! |
ヴァン | 無駄だ。天帝はじき目覚める |
ヴァン | 世界の全ては晶化に包まれ、そして浄化が果たされる… |
スレイ | …ヴァン、答えてくれ |
ヴァン | … |
| |
スレイ | この天帝の御座の中に入ってここまで到達するまでの間… |
スレイ | いくつもの不完全な形の建物を見かけた |
スレイ | それは、この地上で晶化したはずのもの達だった… |
スレイ | 世界の浄化…それはただ晶化で世界を覆い尽くすだけじゃないだろ? |
スレイ | 晶化の先に、何を求めているんだ? |
ヴァン | …ほう |
ティア | 兄さん、答えて…! |
ヴァン | … |
ヴァン | それに気付くとは…。…カーツがお前達を危険視していたのも頷ける |
ヴァン | 世界を晶化させた先にあるもの…それは「新世界」 |
スレイ | 新…世界…? |
ヴァン | 争いなき世界、一から全てをやり直せる世界を創る… |
ヴァン | それが私の掲げる世界の浄化だ |
ゼロス | 本気で言ってやがんのか…? |
エリーゼ | ありえないです…新しい世界を創るだなんて… |
ティポ | そーだそーだー! |
ヴァン | 現にお前達はここに来るまでに見てきたはずだ |
ヴァン | 天帝が創り出す世界…その幻影を |
ルドガー | …!まさか… |
ヴェイグ | クレアや…ルドガーの兄の事か…? |
ヴァン | あれも、ここでお前達が見た建物も晶化を通じて創り上げたこの世界の“写し”だ |
ティア | そんな…仮に新しい世界が創れたとしても人々から争いはなくなりはしない… |
ティア | 兄さんだってわかっているはずだわ! |
ヴァン | …争いの根源となるものは全て天帝の力で無に帰す |
ヴァン | 争いで命を落とす事、虐げられる事… |
ヴァン | 苦しみや悲しみ、これらからの解放だ |
エリーゼ | 天帝は、そんな力まで持っているんですか…? |
ヴァン | お前達が受け入れさえすれば共に新世界で歩む道もあろう |
ゼロス | はんっ、仲間にしてくれる、ってか? |
スレイ | ヴァン… |
スレイ | きっと…争いをなくしたいって気持ちはオレ達も、あなたも同じなんだ |
ヴァン | … |
スレイ | けど… |
スレイ | 大勢の人が生きてる以上考え方が違ったりするのは普通の事じゃないか? |
ミクリオ | みんな、守りたいもの欲しいものは違うからね |
ミクリオ | 望みや願いが強いほど、自分と違う考えを持つ人を憎む事もあるかもしれない |
ミクリオ | 最悪の場合、そこから衝突してしまって争いになるだろう |
ミクリオ | だからって、その解決方法が争いの根源を無に帰すだって…? |
スレイ | オレ達は、思いを伝えられるし、知る事も出来る。わかりあえないわけじゃない |
スレイ | 時には、仲間と喧嘩だってするさ。でも喧嘩して相手の気持ちを初めて知ったりも出来る |
スレイ | 信頼ってこういう事の積み重ねだろ |
ヴァン | …愚かな |
ルドガー | 積み上げてきた、人の絆や想い…お前にそれを否定する資格はない! |
ゼロス | いい加減好き勝手やるのもおしまいにしようぜ? |
スタン | 俺達みんなの世界を…お前の思うようにさせない! |
エリーゼ | はい!ミラやジュード…それにここにいるみんな… |
エリーゼ | 大切な人達がいるこの世界をなかった事になんてさせません! |
ヴァン | どこまでも愚かな幻想にしがみつこうというのだな |
ヴァン | それでは争いにまみれたこの世界は救われない |
ティア | 確かに、争いをなくす事は容易い事じゃないわ。けど、人は変わっていく事が出来る |
ティア | 私は変わる事の出来た人を知っている… |
ティア | 粗暴で…わがままな事もあるけど…必死に世界に立ち向かっているわ…! |
ヴァン | 私は世界の在り方を問うているのだ |
ヴェイグ | 世界の在り方…それは迷い…苦しみ…、そして成長し、生きる事だ |
ミクリオ | ああ、僕達はそうやって生きていける |
スレイ | それを教えてくれた「この世界」をオレ達は守る |
スレイ | だから、その考えを受け入れる事は出来ない…! |
ヴァン | …やはり、相容れぬか |
| |
| キィン…キン… |
ミクリオ | 結晶の花が…! |
| |
ヴァン | ──目覚めだ。世界の浄化が始まる |
ヴァン | お前達が何と喚こうと運命は変わらぬ |
ヴァン | ここで天帝の目覚めに立ち会える事を幸福に思うがいい |
スレイ | させない!その結晶の花を破壊出来れば…! |
ヴァン | …天帝には指一本触れさせん |
ヴァン | ──導師。君の覚悟を見せてくれ |
ヴァン | 私と、君のどちらが正しいか──…この剣で語ろう |
スレイ | …ミクリオ! |
ミクリオ | ああ!やるぞ、スレイ! |
スレイ・ミクリオ | ルズローシヴ=レレイ! |
スレイ・ミクリオ | 行くぞ、ヴァン!! |
ヴァン | この欺瞞と矛盾に満ちた世界に執着する者共よ…来るがいい! |
ヴァン | 世界を浄化させる前に排除してくれる! |
| |
ヴァン | …簡単には倒れぬか |
ヴァン | だが、甘い! |
ヴァン | はあぁぁ!! |
スタン | うぐっ…重い…! |
ヴェイグ | この人数相手に渡り合えるとは… |
エリーゼ | はぁはぁ…ティポ、大丈夫!? |
ティポ | ま…まだまだー!エリーといっしょに、頑張るからねー! |
ゼロス | 攻撃を避けられてるわけじゃねぇ…ダメージは与えてんだろ…! |
ルドガー | どこかに隙はあるはずだ…そこを狙う…! |
ティア | 押し切るわ…! |
ヴァン | 無駄だ…! |
ヴァン | …! |
ティア | …?何、今のは… |
ヴェイグ | 集中力、体力…底なしか…? |
ゼロス | さすが、世界を作り替えようとしているだけはあるな… |
ゼロス | ルークの野郎、こんなのと稽古してやがったのかよ… |
ティア | ルーク… |
ティア | …さっきの様子…それに、今の動きは…なら…! |
ティア | スレイ!左腕を狙って!私は足止めを…! |
スレイ | 左腕…?そうか…ルークの!わかった! |
ヴァン | ふん…今更左腕など…痒くもないわ |
ミクリオ | それはどうかな |
スレイ | 全力でいくぞ! |
スレイ・ミクリオ | 蒼の四連! |
ヴァン | この程度…! |
スレイ | まだまだ…!ミクリオ!! |
スレイ・ミクリオ | 蒼海の──八連!! |
ヴァン | くぅ…!! |
スレイ | 全てを、貫け── |
スレイ・ミクリオ | 蒼穹の十二連!!! |
ヴァン | しまっ… |
ティア | 崩れた…!! |
| |
ミクリオ | 今だ!全部ぶつけるぞ!スレイ!! |
スレイ | ああ! |
| |
ミクリオ | 水神招来! |
スレイ・ミクリオ | 我が弓は蒼天!蒼き渦に慚愧せよ! |
スレイ・ミクリオ | アクアリムス──ッ!! |
| |
| ズシャアァァ──ッ!! |
| |
ヴァン | ぐあああぁぁぁ…っ!! |
スレイ | はぁ…はぁ…どうだ! |
ヴァン | くっ…あと少し……持ちこたえれ…ば… |
| … |
ティア | 兄さん… |
ルドガー | 倒した…のか? |
スタン | やった…! |
ヴェイグ | 急げ!あの結晶の花を破壊しよう |
ルドガー | でも、あれも晶化の結晶と同じものならそう簡単には… |
スタン | スレイ、ミクリオ…!神依の力で…!頼む…! |
スレイ | ああ、やるしかない…! |
ミクリオ | スレイ、一撃にありったけの力をこめるぞ! |
スレイ | わかった…!行くぞ、ミクリオ! |
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ルドガー | 何だ…!?結晶の花が光っている…? |
ヴェイグ | それだけじゃない、花が開き始めて…! |
エリーゼ | これが…天帝の目覚め…? |
エリーゼ | ──きゃっ!? |
ティポ | うわぁぁぁぁーっ! |
スレイ | どうした!? |
ティポ | エリー!エリーが、エリーが! |
エリーゼ | あ…あぁ…嘘…動け…ません… |
| ピキ…ピキ──… |
スレイ | まさか…晶化現象…!? |
ティポ | スレイ君、助けて!エリーを助けてあげ── |
| ピシィッ── |
エリーゼ | ティポ!?いや…! |
ミクリオ | お、おい、スレイ。他のみんなも晶化が…! |
スレイ | これが天帝の力だっていうのか…!? |
ヴェイグ | 諦める…ものか…こんな、もの… |
ヴェイグ | おおおおっ!! |
| ガキン! |
ヴェイグ | っ…ぐっ… |
| パキンッ…ピキピキ… |
エリーゼ | みんな…! |
スレイ | ヴェイグ!!エリーゼ!! |
スレイ | みんな、すぐ助けに… |
ミクリオ | 駄目だ、スレイ!今は集中してくれ! |
スレイ | でも…! |
ゼロス | しゃんとしろ、スレイ! |
ゼロス | お前らまで晶化しちまうわけにはいかねぇだろ…! |
スタン | 晶化はもうすぐ世界に広がる!時間がないんだ! |
スタン | 大丈夫だ、スレイ…!この世界は取り戻せる…! |
スレイ | ゼロス…スタン…! |
| ピキッ…パキ… |
| …ピキッ…ピシッ… |
ルドガー | スレイ!決着をつけるんだ! |
ルドガー | 頼む、みんなを…!この世界を…! |
| ピシピシ…ピキッ… |
スレイ | ルドガーッ!! |
ミクリオ | …くっ |
スレイ | …う、うう |
ミクリオ | !スレイ |
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| カラン…カラン… |
ヴァン | ハッ…もう剣も握れんか… |
スレイ | ヴァン…お前… |
ミクリオ | まだ…動けた…のか…!? |
ヴァン | …我が理想の成就は…お前達に止めさせはせん…! |
| ヒュッ! |
ヴァン | ぐっ…これは一体… |
ティア | はぁ…はぁ… |
ヴァン | ティア…お前か… |
ティア | お願…い…スレイ…兄さんを… |
ティア | 止…め… |
| ピキ……ピキッ… |
スレイ | ティア…ッ |
ヴァン | 愚かな… |
ヴァン | 何故わからぬ。私の理想が… |
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スレイ | 言っただろう!オレ達は、今の「この世界」を守る! |
スレイ | ヴァン…!これで終わりだ… |
スレイ | この一撃で世界を晶化から解き放つ…! |
スレイ | みんなをお前から…天帝から…取り戻す!! |
スレイ | 蒼穹… |
スレイ・ミクリオ | ── 一閃!! |
スレイ・ミクリオ | いっけええええーッ!!! |
ヴァン | … |
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| ピシ……ピキピキッ… |
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| … |
| …… |
??? | レイ…── |
??? | ス…レイ…──… |
??? | ──スレイッ!! |
スレイ | ミ…ミクリオ…? |
ミクリオ | よかった… |
ミクリオ | 大丈夫か?一気に力を放出して気を失ってたんだ |
スレイ | そう…なんだ |
スレイ | そうだ…ヴァン…結晶の花は…!? |
ミクリオ | ヴァンは君が気を失ったのと同時に晶化してしまった |
スレイ | ヴァンまで…そうか… |
ミクリオ | 結晶の花は… |
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スレイ | ヒビが… |
ミクリオ | 何とか傷付ける事は出来たみたいだね |
スレイ | あぁ!これなら破壊出来る…! |
ミクリオ | …!? |
スレイ | あと一撃…あと一撃だけでいい。それで決める…! |
スレイ | ミクリオ…!もう一度神依を… |
| ピキッ── |
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スレイ | え…? |
ミクリオ | スレイ。すまない… |
ミクリオ | 最後まで一緒に──… |
| ピシッ──ピキピキ… |
スレイ | ミク…リ…オ? |
スレイ | 嘘…だろ。そんな… |
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| トンッ… |
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スレイ | …! |
スレイ | …お前…は──… |
??? | クスッ… |
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??? | …おやすみ |
??? | そして |
??? | おはよう僕の世界── |