Name | Dialogue |
scene1 | 戦場の少女 |
アスベル | この辺りには誰もいない…みんな無事に撤退できたようだな |
| |
| ゴゴゴ… |
アスベル | また揺れている…。…この地震は一体いつまで続くんだ? |
アスベル | 辺りの地割れもひどいしこの様子じゃいつ地面が崩落してもおかしくなさそうだ… |
アスベル | よし、そろそろ俺も撤退してリチャードにウィンドル軍撤退完了の報告を… |
アスベル | …ん?あれは… |
アスベル | 女の子…?まさか…どうしてあんなところにまだ人が残っているんだ!? |
| |
アスベル | おい、しっかりしろ。おい! |
??? | … |
アスベル | 気を失ってるのか。怪我は…特になさそうだな |
アスベル | とにかく、ここは危険だ。安全なところへ連れて行こう |
アスベル | よっ…と… |
| |
??? | ん… |
アスベル | 起きたか? |
??? | あ… |
??? | あなたは…? |
アスベル | 俺はアスベル・ラント。ウィンドル王国の騎士だ。君の名も教えてくれるか |
??? | 私は… |
カノンノ | …カノンノ。うん、そう。カノンノだよ |
アスベル | わかった。カノンノ、ここにいるのは危険だ。俺と一緒に安全な所へ行こう |
カノンノ | あ、うん… |
アスベル | 一人で歩けるか? |
カノンノ | うん、大丈夫 |
アスベル | よし。それじゃ、出発しよう |
scene2 | 戦場の少女 |
アスベル | カノンノ、君はどうしてこんな危険な場所にいたんだ? |
アスベル | この辺りが戦争の激戦区である事は誰しもが知っているはず。なのに、こんな場所にいるなんて… |
カノンノ | うーん、どうしてかな… |
アスベル | 君一人か?他に誰か、一緒にいなかったのかい? |
カノンノ | ううん、一人…だと思う |
アスベル | だと思う、か…。…あ、じゃあ、住んでいるところは? |
カノンノ | うーん…ごめん、わからない |
アスベル | ひょっとして、記憶喪失――…まさかこの戦争に巻き込まれて… |
カノンノ | …? |
アスベル | …ごめん、カノンノ。今無理に思い出す必要はないんだ。まずは、安全の確保を―― |
カノンノ | あ…! |
| チャリ… |
アスベル | ネックレスか、綺麗だな。それに、変わった形をしている。星をモチーフにしているような…? |
カノンノ | …これはとっても大切なものなんだよ絶対に放しちゃいけない、そんな気がするの |
アスベル | …そうか。そのネックレスが何か、君の手掛かりになればいいな。大事に持っておくんだぞ |
| ゴゴゴ… |
カノンノ | さっきから、地震が多いね |
アスベル | ああ。この分だと、おそらくウィンドル全域で、被害が出ているだろう |
アスベル | あちこち見て回ったが、もう他にウィンドル軍は残っていないようだ早くバロニアへ帰還した方がいいな |
カノンノ | バロニアって? |
アスベル | ウィンドルの王都、俺の住んでいる街さ。そうだ、カノンノも一緒に来ないか? |
カノンノ | 私も?どうして? |
アスベル | おそらく君は今、戦争もしくはこの大地震のショックで、一時的に記憶が混乱している状態なんだと思う |
カノンノ | 記憶が混乱… |
アスベル | ああ。帰る場所もままならない今、一人でこの辺りをうろつくのは危険だし…どうだ? |
カノンノ | …うん、そうだね。じゃあ私、一緒に行くよ!ありがとう、アスベルさん |
アスベル | ああ。よし、そうと決まったら早速… |
| |
| ガルルル! |
カノンノ | な、何!?今の… |
アスベル | 魔物か! |
scene1 | バロニアを目指して |
カノンノ | そういえば、アスベルさんは騎士だって言ってたけど、どんな事をしているの? |
アスベル | 国王陛下と、国…あとは民を守る、それが騎士の務めだ |
カノンノ | すごい!立派なお仕事だね!じゃあ、アスベルさんの住むバロニアってどんなところ? |
アスベル | ウィンドル王国の中心にあって、多くの人が住んでいる都だ。すごく栄えていて、賑やかな街だよ |
アスベル | 俺は物心がついた頃からバロニアで暮らしてるんだ |
アスベル | バロニアには親友もいるし、俺にとって思い入れの深い故郷の街なんだ |
カノンノ | 故郷… |
アスベル | このところ、いろんな事があってリチャードも苦労しているから、俺も何とか力になりたいんだけどな |
アスベル | あ、リチャードっていうのはウィンドルの国王なんだが、俺の親友なんだ |
カノンノ | アスベルさん、王様と知り合いなの?すごいね! |
アスベル | いや、友達がたまたま王様だっただけで…他にもシェリアって… |
アスベル | う…! |
カノンノ | あ…! |
| |
カノンノ | …!アスベルさん…!この崖は…!? |
アスベル | この辺りにこんな崖はなかった…地震の影響がここまでとは… |
アスベル | ウィンドル…いや、世界中がこんな事になっているとしたら…くっ、早くバロニアへ戻らないと! |
アスベル | … |
アスベル | 亀裂の両端も見えない…どうやら完全に大陸が分断されてしまったようだな |
アスベル | 方角的にはこの崖の向こうにバロニアへ続く道があるはずだが、亀裂を越える事は出来なさそうだ |
カノンノ | そんな… |
アスベル | …陸路でバロニアへ戻れないとなると海路を使うしかないが…西にある港はア・ジュールの領内… |
アスベル | 俺一人でも危険なのにカノンノを連れたまま、国境を越えて港まで行けるだろうか? |
アスベル | …考えても他に方法はない、か。カノンノ、来た道を戻る事になるが、西の方へ行こう |
アスベル | 少し遠回りにはなってしまうが、港からウィンドル方面への船が出ていたはずだ |
アスベル | 危険な道だが、俺についてきてくれ。少なくとも、ここに留まるよりは安全なはずだ |
カノンノ | 帰れる方法はあるんだね…よかった!じゃあ、早速港を目指そう |
アスベル | ああ…ん?あれは… |
| |
??? | 困りました… |
??? | どうしよう、エリー。ジュード君、やっぱりこの下に落っこちちゃったのかな? |
アスベル | おい、君達!そんなところで何をしている? |
??? | …! |
アスベル | 君達…こんなところでどうした?保護者はいないのか? |
??? | わたし達…ウィンドルから来てて…ジュードを…お友達を捜してるんです |
??? | お前達こそ、誰だー!? |
カノンノ | ぬいぐるみが喋った… |
アスベル | 驚かせてすまなかった。俺達は怪しい者じゃない |
アスベル | 俺はウィンドル王国の騎士、アスベル・ラントだ。こっちはカノンノ |
??? | … |
エリーゼ | わたしは…エリーゼ・ルタス。この子は…お友達のティポ…です |
アスベル | エリーゼにティポか、よろしく。それにしても…こんなところに友達がいるのか? |
アスベル | 両軍撤退しているとはいえここは戦場だ。地震も頻発しているし一刻も早く家に―― |
エリーゼ | ジュードを…見ませんでしたか? |
カノンノ | ジュード…さっきも言っていた、お友達? |
ティポ | そうそうー、地面ががーっと揺れて気付いたらジュード君、いなくなってたんだよねー |
アスベル | …まさか、この亀裂に? |
エリーゼ | わかりません…。はぐれてからずっと亀裂の周りを捜してるんですけど、見つからなくて… |
エリーゼ | … |
アスベル | そういう事だったのか…。だったら、君達も俺達と一緒に来ないか? |
カノンノ | 私達、この亀裂の向こう側にあるバロニアへ向かってる最中なの。よかったら一緒に行こうよ |
ティポ | …どうする、エリー。悪い人達じゃないみたいだけどー |
エリーゼ | でも…ジュードを捜さなきゃ… |
アスベル | バロニアへ着いたら、俺が騎士団にそれらしい人を見なかったか尋ねてみる。だから一緒に行こう |
エリーゼ | … |
ティポ | エリー、これだけ捜しても見つからなかったんだし、バロニアなら何か知ってる人がいるかもよー |
エリーゼ | そうですね…じゃあ、お願いします |
カノンノ | よかった。じゃあ改めてよろしくね、エリーゼ、ティポ |
エリーゼ | … |
カノンノ | …ん?エリーゼ、どうかした? |
エリーゼ | カノンノの髪…ピンクでかわいい…です |
カノンノ | …そ、そうかな?ありがとう |
アスベル | 女の子二人にぬいぐるみか…何だか、不思議な顔ぶれになってきたな |
scene2 | バロニアを目指して |
アスベル | やっとア・ジュール港についたな…ここは敵地だから、目立つ事は控えて、おとなしくしていてくれよ |
カノンノ | ウィンドルへ行く船、出てるといいね |
アスベル | さすがに普通の船は無理だろう…。戦時下に敵国へ向かう船なんてそうそうないよ |
ティポ | えー、じゃあ、何で港に来たのー!船が出てないなら意味ないよー! |
アスベル | しっ!ティポ、大きな声を出すな。こういう時に出航する船は軍用…おっと、隠れて! |
| ザッザッザッ… |
カノンノ | ア・ジュール軍の兵士だね…あんなにたくさん… |
アスベル | よし、あの兵士達の後をつけてみよう。二人ともついて来てくれないか |
ティポ | あーっ!アスベル君!ぼくを数に入れてないぞー! |
エリーゼ | …ティポをのけ者にしないでください |
アスベル | ごめんごめん。三人とも…これでいいか? |
ティポ | もー、忘れないでよねー |
??? | … |
??? | あ、戻って来た。首尾はどうだった? |
ア・ジュール兵 | はっ。タトリン殿のご命令通り、ウィンドル港へ向かう民間船を一隻、何とか手配いたしました |
ア・ジュール兵 | 民間船も、天変地異の影響でほとんど破損しておりました。しばらくはこの港から船は出せないでしょう |
ア・ジュール兵 | 我々は作戦通り、密輸船に偽装してウィンドル港へ侵入、任務を遂行します |
ティポ | 何だかこうやってると、ぼく達スパイみたいだねー |
アスベル | しっ! |
アニス | ご苦労様。じゃあ準備が出来次第、現地に向かってね |
アニス | 私は本部に戻って、大佐に報告しとくから。よろしくー |
| ザッザッザッ… |
エリーゼ | 今、話をしていた女の子も、ア・ジュール軍の関係者…ですか? |
アスベル | ああ。口ぶりからして間違いないだろう |
アスベル | あの兵士達、ウィンドルへ潜入して国内の状況を探るようだ。放置してはおけない |
エリーゼ | …! |
カノンノ | どうしたの、エリーゼ? |
エリーゼ | そこの岸壁のへりに、何かが… |
| |
| グオオオオッ! |
ティポ | わー!魔物だー!? |
scene1 | 最悪の再会 |
カノンノ | あ!あそこにさっきの兵士達がいるよ |
ア・ジュール兵 | 準備を急げ!完了し次第出航する |
アスベル | くそっ、何とかして止めたいがここで騒ぎを起こしても捕まるだけだ…何か手はないのか… |
カノンノ | アスベルさん、あの船はウィンドルまで行くんだよね? |
アスベル | そうだな…このまま放っておくと残念ながらそういう事になる |
カノンノ | だったら、あの船に乗ってウィンドルに行くのはどうかな? |
アスベル | !?密輸船に偽装しているとはいえ敵国の軍隊が乗っているんだ…! |
アスベル | ……いや、待てよ。いいアイディアかもしれない… |
ティポ | えー!?アスベル君、本気なのー!? |
エリーゼ | お願いして乗せてもらえるような船じゃないですよね…? |
アスベル | ああ。最初はこっそり乗り込むしかないだろう。船がウィンドル港に着くまで身を隠して… |
アスベル | 港に着いたところで港の軍に協力を要請して奴らを捕まえてもらおう |
アスベル | 無茶な手段かもしれないがア・ジュール領内に残るのも危険だし他の船も出る気配はなさそうだ |
アスベル | こんな手段で申し訳ないが、俺と一緒に船に乗ってもらえないか? |
カノンノ | …あの船に乗ればウィンドルヘ行けるんだよね。だったらやってみようよ |
エリーゼ | …怖いですけど、それしか方法がないのなら、わたしも…それがいいと思います |
ティポ | 残っても、ウィンドルの人が、ア・ジュールにいるのは危険だしー |
アスベル | …ありがとう。三人の身に危険が及ばないよう、俺が必ず守ってみせる |
カノンノ | じゃあ、急いで船に乗り込もう!もう出航だって言ってたし |
エリーゼ | はい…! |
??? | … |
??? | ヒューッ。思わぬところで獲物発見。美味しくいただいちゃいますか?いただかれちゃいますか? |
scene2 | 最悪の再会 |
| ボーッ… |
カノンノ | 汽笛が鳴ってる |
エリーゼ | 今、船はどの辺りにいるんでしょう…? |
アスベル | ア・ジュール港を出てだいぶ経つ。そろそろウィンドル港に着いてもいい頃だ |
ティポ | うまく船に乗り込めてよかったねー |
アスベル | まあな…。だが、最後まで油断は禁物だ。みんなしっかり荷物の隅に隠れて―― |
カノンノ | 何だかスリルがあって楽しいね |
ティポ | だねー |
エリーゼ | ハラハラします… |
アスベル | …。みんなこの緊迫した状況を本当に理解しているんだろうか… |
ティポ | 入り口に鍵もかけたし、大丈夫だよー!アスベル君、心配しすぎー |
エリーゼ | 気持ちはわかりますけど… |
カノンノ | アスベルさんがそうやって張りつめすぎてると、私達まで緊張しちゃうかも |
アスベル | う…そうか。ごめん |
アスベル | はあ…俺もまだまだ未熟だな。もう少し心に余裕を持たないとな |
カノンノ | アスベルさんなら大丈夫だよ。そのうち出来るようになると思う。何となくだけど… |
アスベル | 励ましてくれてありがとう。カノンノは優しいな |
| |
ア・ジュール兵 | おい、話し声が聞こえないか?船倉に誰かいるのか? |
アスベル | …! |
| ガチャガチャ! |
ア・ジュール兵 | 中から鍵がかかってる…!やはり誰かいるんじゃないか?おい! |
| ドンドン! |
ティポ | どうしよう、気付かれちゃったよー! |
エリーゼ | このままここに、立てこもりますか…? |
アスベル | いや、そんな事をしてもいずれ扉をこじ開けられ、見つかってしまうだけだ |
アスベル | …俺が出る。カノンノ達はここで隠れているんだ |
カノンノ | 私も一緒に… |
アスベル | いや、俺一人でいい。みんなは隙を見つけて、別の場所へ移動、いいな? |
| ドンドン! |
ア・ジュール兵 | 早くここを開けろ!…くっ… |
アスベル | … |
| ガチャ… |
ア・ジュール兵 | … |
アスベル | すみません。俺は… |
| ドサッ! |
アスベル | え…? |
カノンノ | いきなり倒れた…? |
エリーゼ | どうしちゃったんでしょう…? |
??? | さてさてここで問題です。このア・ジュール兵は、どうしていきなり倒れたんでしょーか |
ティポ | 誰!? |
アスベル | この声は…! |
??? | 1ば~ん 波がとっても高いから2ば~ん 海がとっても青いから3ば~ん 船に乗れて嬉しかったから |
ティポ | さ……さんばん! |
??? | ぶっぶ~、正解は5番! |
ティポ | 聞いてないよー! |
ハスタ | ハスタ様の気まぐれですよっと! |
アスベル | ハスタ隊長!? |
ハスタ | あっれー、アスベル君、ウィンドル軍を除名されたオレをまだ隊長って呼んでくれるのー? |
カノンノ | アスベルさんの知り合い…? |
ハスタ | アスベル先生ェ…。いたいけな女子を二人もはべらせて、何とも楽しそうですなあ |
アスベル | あなたは戦争中に国王の命に背いて勝手に略奪を行った罪で指名手配されていたはず… |
アスベル | 一体どこにいたんですか?それに、この倒れた兵士達は… |
ハスタ | 質問は順番にでおじゃるよ!もっともそうしたところで、素直に答えるとは限らねーデスが |
ハスタ | 騎士団は除名じゃなくてやめたのサ。陛下ってば、ツキモノが落ちたようにすっかりおとなしくなっちまったし |
アスベル | 今の陛下が、本当の陛下です。騎士団を辞められたとはいえ不敬な発言は止めてください |
ハスタ | これからどうしよ~とか途方に暮れてたんだけど、いきなりの戦争再開!天変地異! |
ハスタ | オレさまの時代アゲイン!そう思って張り切ってたところで、アスベル先生を見かけたってワケ |
ハスタ | アスベル君、昔リンネル村でオレさまにケチつけたの覚えてる~? |
ハスタ | アレが未だオレさまの中でプッツンきたまま忘れられなくて~いっそ殺してもいいかな~って思いまして |
アスベル | それで、見かけた俺達の後をつけてきた、という事ですか… |
エリーゼ | …この人、すごく嫌な感じ、です… |
ハスタ | さあ、初めましての方も含めてここで潔く死んでもらおうか。オレの気晴らしにね… |
ティポ | いやー!そんなの理不尽ー! |
ハスタ | 人生とは理不尽なものなのサ。ドゥーユーアンダスタン?オーケイ、レディゴー! |
アスベル | くっ…! |
scene1 | シルヴァラントの傭兵 |
ハスタ | う~ん…ああ、お花畑が見える…な~んちゃってェ! |
アスベル | ハスタ…。今でも、あなたのやり方が正しかったとは到底思えない |
アスベル | そんなあなたですが… |
アスベル | 一度は隊長を務めた方のこんな姿は見たくなかった… |
ハスタ | よし、聞くんだいい子達。こういうのはどうだろう?オレをいっそ仲間にするというのは? |
ティポ | ええー |
エリーゼ | そんなの…嫌です… |
カノンノ | この人…正気? |
ハスタ | おいおい、オレの脳内会議では過半数で即時可決なんだぜ?何て冷たい反応!ひどくなーい? |
| ガタンッ… |
ハスタ | お、どうやらお船が港に到着したようデスね |
ハスタ | よし、そこで提案その3だ |
ティポ | その2はどうなったのさー! |
ハスタ | かわいこちゃんをババッとさらって、オレさま華麗にエスケープ! |
ハスタ | きゅぴーん! |
カノンノ | アスベルさん!! |
ティポ | カノンノ君がさらわれたー! |
アスベル | 待て!! |
| |
アスベル | こんな卑怯な真似はやめてください! |
ハスタ | んん~、ボクちん、そういうの全然気にしない主義! |
ハスタ | おお~っと、それ以上近付くなよ。かわい子ちゃんのどてっ腹に大きな風穴が開いちまうゼ? |
カノンノ | アスベルさん…ごめんなさい… |
ティポ | 最低だー! |
エリーゼ | 卑怯…です… |
ハスタ | いいねェ、この、いかにもって感じの悪役感!オレさま最高!ヒーハー! |
アスベル | …?あれは… |
| バシィッ! |
ハスタ | グフゥォァッ! |
| |
??? | 大丈夫か |
カノンノ | う、うん… |
アスベル | カノンノーーッ! |
アスベル | 怖かっただろう…怪我はないか?どこか痛めなかったか? |
カノンノ | だ、大丈夫だよ。捕まってたのは、ちょっとだけだから |
ハスタ | おぅのぅれぇ、せっかく勝ったと思ったのにまさかこんな目に…あぁぁな口惜しやぁぁ |
ハスタ | な~んてね!はい、お時間終了です。形勢不利になったし、か~えろっと! |
アスベル | ハスタ! |
ハスタ | 覚えとけよ、カッコつけマン。あとそこのロン毛野郎も。アスタ・ラ・ビスタ・ベイベー! |
| |
アスベル | か、カッコつけマン… |
アスベル | …と、とにかく兵士を呼ぼう。ハスタは彼らに追ってもらった方がいい |
エリーゼ | ア・ジュールの船も捕まえてもらわないといけませんね |
アスベル | そうだな。それと… |
??? | … |
アスベル | カノンノを助けていただいて、ありがとうございました |
カノンノ | ありがとうございます |
??? | たまたま奴の死角にいたのでな。そう恐縮しなくてもいい |
クラトス | 私はクラトス・アウリオン。傭兵だ |
クラトス | あの地震後、治安が悪くなっている。旅をするなら気を付ける事だな |
アスベル | 俺はアスベル・ラント。ウィンドルの騎士です |
アスベル | 何かお礼をしたいのですが… |
クラトス | 出来る事をしたまでだ。ああいう男は私も好かん。気にするな |
アスベル | あいにく持ち合わせもないし…バロニアへ戻れば、いろいろ融通も利くのですが… |
クラトス | バロニア?ちょうど、私もバロニアへ向かっていたところだ |
アスベル | では、一緒に行きませんか。バロニアには知り合いがいるので、お仕事をご紹介出来ると思います |
クラトス | …それは助かる。では、ありがたく同行させてもらおう |
アスベル | よろしくお願いします |
エリーゼ | クラトスみたいな強い人が一緒に行ってくれると心強いですね |
アスベル | じゃあ、行きましょう。俺は警備班に報告と指示を出してきますね |
scene2 | シルヴァラントの傭兵 |
カノンノ | ウィンドルって、ア・ジュールとは景色が違うんだね |
アスベル | 向こうは雪がたくさん降ったりして、気候もだいぶ異なるからな |
アスベル | それにしても…この辺りの森はちっとも変わらないな |
アスベル | 昔何度か遊びに来た事があるよ |
カノンノ | そうなんだ… |
アスベル | あの時は楽しかったな。みんなで弁当を食べたり、ひなたぼっこしたり… |
ティポ | ひなたぼっこ気持ちよさそー |
エリーゼ | 楽しそう…です |
| |
| ゴゴゴ…! |
カノンノ | 地震…! |
クラトス | とてもひなたぼっこを楽しめる状況ではなさそうだな |
アスベル | そうですね…。それに、今は一刻も早く、バロニアを目指さないと |
アスベル | 戦争は中断状態とはいえリチャードやシェリア、それに街の人達の事も心配ですし… |
エリーゼ | ジュード達の事を知っている人がいないか捜さないと…です |
アスベル | そういえば…クラトスさんは傭兵ですから、各国の事情に詳しそうですね |
クラトス | そうだな。それなりには情報も入ってくる |
アスベル | 今、世界はどうなっているんですか? |
アスベル | キムラスカやシルヴァラントも、異変に見舞われているんですか? |
クラトス | どこも似たり寄ったりだそうだ |
クラトス | 地震の影響で崩壊する街…さらには大陸に生じた亀裂に飲み込まれる者も続出しているらしい |
クラトス | さらにはあの港で会った男のように、この混乱に乗じて悪事を働く者も後を絶たない |
アスベル | …ハスタ…あの後、捕まえられただろうか |
ティポ | この地震ってさー自然現象なのかなー? |
クラトス | そうだ、と言いたいところだが… |
アスベル | 何か気になる事でも? |
クラトス | シルヴァラントにあるルイニス街を知っているか? |
アスベル | はい。以前に騎士団の任務で訪れた事があります |
アスベル | あの街がどうかしましたか? |
クラトス | 今回の異変と機を同じくして、街全体が氷漬けになった |
アスベル | 氷漬け…?住んでいた人達は? |
クラトス | 無論、一緒に凍った |
カノンノ | そんな… |
エリーゼ | 怖い…です |
クラトス | そういう事だ。今各地で起きている異変が、ただの天災とは考えにくい |
クラトス | あまりに不自然な点が多いからな |
アスベル | そうですね…この世界は、一体どうなってしまったのか… |
| ガサッ… |
ティポ | そこの草むらに何かいるよー |
エリーゼ | ウサギか何かでしょうか…? |
| |
| ギャオオオッ! |
カノンノ | 違う!魔物…! |
scene1 | 忘れられた祭壇 |
アスベル | 結構歩いたな… |
アスベル | だが、バロニアまでもう少し…よし、このまま一気に進もう |
カノンノ | う、うん… |
エリーゼ | ふう… |
クラトス | … |
クラトス | …アスベル。この辺りでいったん、休憩を挟んではどうだ? |
アスベル | ここで、ですか? |
アスベル | バロニアまであと少しです、街の事も気がかりですし、ここは一気に… |
クラトス | カノンノもエリーゼも、だいぶ疲れている。このまま進むのは酷だと思うが |
アスベル | あ… |
カノンノ | …わ、私は大丈夫だよ! |
エリーゼ | …わたしも、まだ頑張れます! |
ティポ | もう動きたくないよーゆっくり休んでお菓子を食べたいよー |
エリーゼ | ティ、ティポ! |
アスベル | …クラトスさん、ありがとう |
アスベル | みんな、すまない。ここで休憩にしよう! |
アスベル | 確かこの奥に、泉があります。冷たい水を飲めば元気が出るかも… |
ティポ | わーい、泉、泉ー!エリー、行こ! |
クラトス | 私も一緒に行こう。アスベルはここで、カノンノを見ていろ |
アスベル | わかりました |
| |
アスベル | ティポの奴、動きたくないとか言ってたわりに結構元気じゃないか |
カノンノ | ごめんね、アスベルさん。足手まといになっちゃって |
アスベル | あ、いや…カノンノが謝る事はない。俺の方こそ気付けなくてすまなかった |
カノンノ | ううん、仕方ないよ。それだけバロニアの事が、心配だったんだよね |
アスベル | はは、まずはみんなの身の安全を確保しようと焦っていた |
アスベル | そして、バロニアの事も… |
アスベル | バロニアには、俺の大切な人やものがたくさんあるんだ |
カノンノ | 大切なもの、か…。何だかうらやましいな |
カノンノ | ここまでの旅の間、アスベルさんがリチャードさんやシェリアさんの事を話してくれた時… |
カノンノ | すごく優しい顔をしてた |
カノンノ | アスベルさんにとって二人やバロニアはとっても大事な存在なんだよね |
アスベル | あ… |
アスベル | …その、ごめん。カノンノはまだ記憶が… |
カノンノ | 大丈夫だよ、気にしないで!その事も、そのうち何とかなるって思ってるし |
カノンノ | バロニアもきっと大丈夫!勿論、リチャードさんやシェリアさんも |
アスベル | カノンノ… |
アスベル | ああ、そうだな |
アスベル | カノンノの記憶の事も、きっと何とかするからな |
カノンノ | うん、ありがとう。その気持ちだけでもうれしいよ |
| |
ティポ | ただいまー! |
カノンノ | おかえりなさい |
エリーゼ | アスベルとカノンノに冷たいお水を汲んできました |
アスベル | ありがとう、エリーゼ。助かるよ |
クラトス | もう少しここで休んでから、出発するのがいいだろう |
アスベル | はい、そうしましょう |
scene2 | 忘れられた祭壇 |
ティポ | アスベル君、バロニアまだー? |
アスベル | あと本当にもう少しだから。もう少しでこの森を抜ける。そうしたら… |
カノンノ | …? |
エリーゼ | どうしたんですか、カノンノ |
カノンノ | 何だか…この森の奥が、気になって… |
クラトス | 気になる…?魔物でもいるのか? |
カノンノ | … |
アスベル | おい、カノンノ! |
ティポ | カノンノ君、何かヘンだったよー!追いかけよー! |
アスベル | カノンノ、待つんだ! |
| |
カノンノ | あ… |
エリーゼ | ここは…? |
クラトス | 祭壇のようだな。それもかなり古い |
アスベル | 森の奥にこんな場所があるなんて、知らなかった… |
カノンノ | 祭壇…崩れちゃってる… |
ティポ | 地震のせいかなー? |
カノンノ | 何だろう、ここ… |
カノンノ | 懐かしい…?ううん、そうじゃない…何かわからないけど、不思議な感じ… |
アスベル | ここに来た事があるんじゃないのか? |
カノンノ | そうかな…わからない |
カノンノ | …?これ、何だろ |
| |
クラトス | 石版だな。何やら文字が書かれているようだが |
エリーゼ | 何て書いてあるんでしょう…? |
カノンノ | あ… |
ティポ | カノンノ君のネックレスが、光ってるよー! |
アスベル | どういう事だ…? |
カノンノ | 私にもわからない… |
カノンノ | でも、何かが…何かの力が伝わってくるような感じがするよ… |
カノンノ | これは一体――… |
??? | どうやらそのネックレスは、精霊の存在に反応しているようだな |
アスベル | 誰だ!? |
| |
??? | … |
カノンノ | あなたは一体… |
クラトス | …いつからそこにいた? |
??? | …俺にかまける前に魔物を倒す方が賢明だと思うが |
??? | …手は貸してやる |
エリーゼ | どういう――…! |
| |
| グオオオオッ! |
ティポ | うわーー!また魔物だよー! |
アスベル | …くっ! |
scene1 | カノンノのネックレス |
クラトス | 終わったか… |
カノンノ | あ、あの… |
??? | おい、お前! |
??? | そのネックレスをどこで手に入れた?いつ?どうやって? |
??? | お前は精霊について何を知っている?他に反応のあった場所は?全て答えろ! |
カノンノ | あ…あの…私… |
??? | 隠すな、言え! |
アスベル | やめろ!カノンノが怖がっているだろう! |
エリーゼ | やめてください…! |
ティポ | そだー!強引すぎるぞー! |
??? | ちっ…お前はこの娘の何だ? |
アスベル | 俺はアスベル・ラント。カノンノは大切な仲間だ |
??? | 仲間、だと? |
アスベル | ああ。俺の仲間は俺が守る。お前に勝手な事はさせない! |
??? | … |
リヒター | 俺はリヒター・アーベント。精霊について調べている |
クラトス | 精霊だと? |
クラトス | …そのようなものを調査するお前が、カノンノに何の用があるというのだ? |
リヒター | …。話したところでお前達にはわからん |
クラトス | … |
リヒター | 質問はこれで全部か? |
リヒター | 次はお前に答えてもらおう。まずはそのネックレスの話からだ |
カノンノ | …リヒターさん、ごめんなさい。私、以前の事をよく覚えていなくて |
カノンノ | どこでネックレスを手に入れたとか、そういうの、全然わからないんです |
リヒター | … |
アスベル | これで気は済んだか?それじゃ俺達は、そろそろ出発しよう |
リヒター | …ちょっと待て。お前達はこれからどこへ行くんだ? |
エリーゼ | バロニア…です |
リヒター | … |
リヒター | …奇遇だな。俺もそこへ行く予定だ |
ティポ | ホントー?カノンノ君についてきたいだけじゃないのー!? |
リヒター | 目的地が同じなのだから同行しても問題はないだろう? |
アスベル | いや、俺は反対だ |
アスベル | 危険人物でないか、確証が持てない。カノンノ、お前も怖いだろう? |
カノンノ | …調べ事をしてて、それについて知りたかったんだよね? |
カノンノ | 悪気があってしたわけじゃないなら私は気にしないよ |
カノンノ | 私も自分の事なら必死になっちゃうかもしれないし |
エリーゼ | …カノンノは優しいんですね |
カノンノ | それに、このネックレスの事なら私も知りたいから… |
カノンノ | リヒターさんが力になってくれそうな気がするの |
カノンノ | だからアスベルさん、私からもお願い。リヒターさんと一緒に行きたいの |
アスベル | …カノンノがそこまで言うなら… |
アスベル | リヒター、共に行こう。ただし、もうカノンノに怖い思いをさせないでくれ |
リヒター | …ああ |
クラトス | … |
scene2 | カノンノのネックレス |
ティポ | バロニアに着いたー!ジュード君の事何かわかるかなー? |
カノンノ | ここがバロニア… |
アスベル | ああ。だけど…いつもと雰囲気が違うな |
| ゴゴゴ… |
エリーゼ | また地震…です |
アスベル | この異変のせいかな… |
アスベル | 普段はもっと活気に溢れて、賑やかな街なのに… |
アスベル | 空気は張り詰めているし、出歩く民も数えるほどしかいない |
アスベル | …いるのは警戒にあたる兵士達ばかりだ… |
クラトス | 戦争と異変で物流が滞り、物資も少なくなってきているはずだ。そういう事も影響しているのだろう |
アスベル | なるほど…。建造物の被害がそこまで酷くない事が唯一の救いだな… |
リヒター | …その理由は、ここが「王都」だからだろう。国の都だ、壊れた建物もすぐ補修されるはずだ |
アスベル | そういう事か… |
アスベル | だとしたら、他の街は…?シェリアは… |
アスベル | くっ… |
カノンノ | アスベルさん…大丈夫、大丈夫だよきっと! |
アスベル | …そうだな |
アスベル | とにかく、一旦俺は城へ…リチャードの元へ向かう |
アスベル | みんな、一旦ここで待っていてくれるか? |
エリーゼ | アスベル、わたし達、ジュードの事知っている人がいないか調べていてもいいですか? |
ティポ | カノンノ君も一緒だよー |
カノンノ | 私達の事は気にしなくて大丈夫!ゆっくりリチャードさんと話して来てね |
アスベル | ああ、わかった。リヒター、お前はどうするんだ? |
リヒター | … |
リヒター | もう少しお前達と一緒にいてやる |
エリーゼ | 別に一緒にいたいなんて、頼んでませんけど… |
クラトス | 私もエリーゼ達に同行しよう。心配せず行ってくるがいい、アスベル |
アスベル | 助かります。じゃあ、俺は行ってくる! |
リヒター | … |
scene1 | 故郷への帰還 |
アスベル | ただいま戻りました、リチャード陛下 |
リチャード | アスベル!よかった、無事だったんだね |
リチャード | 撤退の殿という任務を頼んだものの地震も続くし、気が気ではなかったよ |
リチャード | 今は他に誰もいない。かしこまって話す必要はないよ。君が無事で本当によかった… |
リチャード | 前線で起きた事に関しては、既に報告を受けた。もう戦争をしている場合ではないな… |
アスベル | ああ。地震はこの辺りでも起きているみたいだが…あの辺りはすさまじいものだった… |
リチャード | ア・ジュールとの国境付近は地割れの影響で大陸が分断されたと報告を受けている |
リチャード | あんな状態ではア・ジュール軍も進軍出来ないだろうから、当面は侵攻の恐れはないだろうし… |
リチャード | あの魔導器を再び使う事なく戦争を収束出来ればいいんだが… |
リチャード | 今回起きた異変は、僕が許されざる選択をした事に対する天罰なのかもしれない… |
アスベル | 天罰って…どういう事だ? |
リチャード | せっかくソフィ達が、僕を邪念から解き放ち、やり直す機会をくれたというのに… |
リチャード | その機会を、僕は無にしてしまった。敵への反撃とはいえ魔導器を使用し、戦争で大勢の兵達を死なせて… |
アスベル | リチャード… |
アスベル | 確かに、戦争は再開してしまった… |
アスベル | けど、あの時リチャードが応戦の指示を出さなければ、この国は確実に滅んでいた… |
リチャード | … |
アスベル | これが正しい判断だったのかは俺にもわからない…だけど――… |
アスベル | だけど…この国を守るための判断をしたお前を俺は全力で支えたいと思う |
アスベル | お前は一人じゃない。俺にも、お前の重荷を背負わせてくれ |
リチャード | アスベル… |
アスベル | 異変の事は、それこそお前への天罰なんかじゃない。あれは天災――… |
アスベル | …天災…? |
リチャード | …アスベル、どうかしたのか? |
アスベル | あ、いや。何でもない。とにかく、自分一人で責任を背負い込むのはよせ |
アスベル | この状況からどうやってこの国を守り救っていけるかを共に考えよう。俺達や、この国のみんなで… |
リチャード | アスベル…その気持ち、嬉しいよ。感謝する |
リチャード | だが…やはり僕は国を統べる者として己の責任を軽く考えたくはないんだ |
アスベル | リチャード… |
リチャード | …そういえば、シェリアさんとは無事に会えたかい?君を心配してバロニアまで出向いていたようだが… |
アスベル | シェリアが…? |
リチャード | まだ会えていないのか…。しばらく街で君の帰りを待つと言っていたが… |
アスベル | そうか…ありがとうリチャード。街へ戻ったら、シェリアを捜してみるよ |
| |
アスベル | リチャード、落ち込んでいたな…。大丈夫だろうか… |
アスベル | リチャードのために…この国のために、俺に出来る事は一体――… |
ティポ | 何一人でブツブツ言ってんのー |
アスベル | うわあ!?びっくりした! |
カノンノ | おかえりなさい、アスベルさん |
エリーゼ | アスベル、大丈夫ですか…?ずっと一人でしゃべってました |
アスベル | ごめん、少し考え事をしていたんだ… |
アスベル | それはそうと、お前達の捜していたジュードっていう友達の事は何かわかったのか? |
エリーゼ | いえ…、バロニアでもそれらしい話は聞けませんでした… |
ティポ | もしかしたら、本当に亀裂に落ちちゃったのかもー… |
アスベル | そうか… |
アスベル | カノンノ、お前はどうだ?何か思い出したか? |
カノンノ | 記憶の方は全然… |
カノンノ | でもね、クラトスさんにいろんな話を聞いたよ。シルヴァラントの事とか… |
リヒター | ただの傭兵にしては、いろいろと知りすぎている気もするがな |
クラトス | … |
アスベル | あ!そうだ、そういえばシェリアがこの街に来ているとリチャードが言ってたんだ |
カノンノ | 本当に!?よかったね、アスベルさん。じゃあ早速シェリアさんのところに… |
騎士 | アスベル殿!お待ちください! |
アスベル | どうした?何かあったのか!? |
騎士 | ユーリさんが、城に押し入ろうと城門でフレン隊長ともめています…!今にも決闘でもしそうな剣幕です |
ティポ | 決闘だってー! |
アスベル | …あの二人が?そんな馬鹿な! |
騎士 | とにかく、私達では、あの方達を止められません! |
アスベル | わかった。すぐ行く |
騎士 | ありがとうございます!私は、念のため増援を呼んできます! |
scene2 | 故郷への帰還 |
カノンノ | あそこに、にらみ合っている人達がいるよ |
アスベル | 間違いない、ユーリとフレンだ!何だってこんな事に… |
| |
ユーリ | どけよ、フレン。悪ぃが、お前と遊んでる暇はねえんだ |
フレン | 出来るわけないだろう。そんな頭に血が上っている状態の君を陛下に会わせる事など出来ない! |
| |
クラトス | どうやらまだ決闘には至っていないようだな… |
ティポ | でも、今にも戦いが始まりそうー!怖いよー |
| |
フレン | 一体どうしたっていうんだ。いくら君でもこんな… |
ユーリ | どうもこうもねえ。やっと終わりかけた戦争をまたおっぱじめやがって |
ユーリ | おまけに、人がせっかくイニル街の魔導器をぶっ壊したってのに、またあんな物騒なもん出しやがって |
フレン | 戦争再開は陛下にとっても苦渋の選択だったんだ。魔導器の使用だって… |
ユーリ | 向こうが仕掛けてきたから、だろ? |
ユーリ | んな事はわかってる。けど、それで大勢死んだ |
フレン | 応戦しなければもっと大勢の人間が死んだかもしれないんだぞ! |
| |
リヒター | 魔導器、と言ったな… |
カノンノ | アスベルさん、魔導器って? |
アスベル | ア・ジュールを迎え撃つにあたり、急遽、今回の戦闘に投入される事が決まった装置の事だ |
アスベル | 兼ねてから我が国で研究していた魔導器を、兵器として機能させるべく手を加えられたと聞いている |
| |
ユーリ | あの魔導器を使い続けりゃ、そんなもんじゃ済まなくなる。わかってるはずだぜ |
フレン | …戦争が最善の道だとは言わない。だけどこの国を守るために、あの時は他に方法がなかった! |
ユーリ | かもな。けど、戦争だけでもたくさんなのに話はそれじゃ終わらねえんだ |
ユーリ | この国を守ろうとして、世界をおしゃかにしちまうんじゃ意味ねえだろ |
フレン | 世界?何を言っているんだ?我々はあくまで防衛のためにあれを… |
ユーリ | そういう意味じゃねえよ |
ユーリ | この世界にはマナってのがあってな。そいつが世界のあらゆるもんを支えているんだそうだ |
ユーリ | あの魔導器はマナを大量に消費する。それがこの天変地異を引き起こしてんじゃねえかって話だ |
フレン | 世界を支えるマナ…それが天変地異を… |
フレン | 本気で言っているのか? |
ユーリ | 冗談でこんなとこまで来やしねえよ |
フレン | … |
ユーリ | … |
フレン | … |
フレン | …そうだな。僕の知っているユーリは不真面目だけど、少なくともこういう冗談を言うような男じゃない |
ユーリ | ほっとけ |
フレン | それに重大な事であればあるほど、憶測で動いたりもしない |
フレン | わかった。君を陛下に会わせよう。ただし、もう少し頭を冷やしてからだ。いいね? |
ユーリ | …オレとしちゃ、お前が信じてくれたんなら任せて帰りたいくらいだけどな |
フレン | そういうわけにはいかないだろう。第一、もっと詳しい話があるはずだ |
ユーリ | まあ、な。例えば── |
騎士 | フレン隊長、ご無事ですか!皆、ユーリ・ローウェルを押さえろ! |
ユーリ | おっと、時間切れか。申し開きはガラじゃねえ。後、任せた |
| |
フレン | ユーリ!恩赦を無駄にするような無茶だけは── |
ユーリ | その恩赦もこの世あっての物種だからな。それより魔導器の件、頼んだぜ |
ユーリ | 世界を終わらせたくなけりゃ二度と国王の奴に使わせるんじゃねえぞ! |
フレン | ユーリ、待ってくれ、ユーリ! |
| |
ティポ | アスベル君ー、あのユーリって人行っちゃうよー? |
アスベル | … |
アスベル | …ユーリを追いかけよう! |
scene3 | 故郷への帰還 |
アスベル | ユーリ!待ってくれ! |
ユーリ | あん?何だお前…ってアスベルじゃねえか |
アスベル | ユーリ、すまない。立ち聞きするつもりはなかったんだがさっきの話、詳しく聞かせてほしい |
アスベル | 今起きている異変の原因が、魔導器にあるというのは本当か? |
ユーリ | オレが聞いた限りでは、な。マナは生命の源。で、魔導器はそのマナを動力源にするって話だ |
ユーリ | 魔導器を使えば使うほどマナは激減、世界の調和とか秩序とかいったもんが壊れちまうんだとさ |
ユーリ | 今、世界中で、地震だの亀裂だの、おかしな異変が起こってんだろ。その原因がこれってわけだ |
アスベル | ユーリ…その話は一体どこで… |
ユーリ | 知り合いに、その手の事に詳しい奴がいてな |
ユーリ | そいつからの受け売りだよ |
アスベル | 世界の調和と秩序が壊れる、その結果が…この大地震だっていうのか? |
| |
リヒター | 「マナ」に目をつけるとは、な…なかなか興味深い奴だ |
カノンノ | リヒターさん…? |
アスベル | …異変は天災とは考えにくい |
アスベル | …ユーリの話が本当なら、クラトスさんが前に話していた読みの通りですね |
クラトス | 出来れば、そうあってほしくはなかったがな… |
アスベル | …おかしいとは思っていたんだ。未だかつて起きた事のないほどの大きな地震が頻発するなんて… |
アスベル | でも、その異変の原因が俺達の使った魔導器だったなんて… |
アスベル | 幸い、リチャードは魔導器の使用に積極的じゃない。魔導器が今後大量のマナを消費する事はないだろうが… |
アスベル | … |
ユーリ | 起きちまった事は取り消せねえ。肝心なのは、それでどうするか、だ。違うか? |
アスベル | … |
カノンノ | アスベルさん… |
ユーリ | ま、国王がもう魔導器使うつもりがねえんなら、ここに用はねえ |
ユーリ | とんだ無駄骨だぜ、ったく |
ユーリ | そんじゃ、オレは行くぜ。あんまり調子こいてる余裕はなさそうなんでな |
ユーリ | オレ達自身の手で何とかするってティルグの奴に大見得切った以上、ちったあ頑張るさ |
エリーゼ | ティルグ…? |
ユーリ | ん?ああ、こっちの話だ。じゃあな |
アスベル | … |
アスベル | …ユーリ、待ってくれ!俺も君と共に行く |
ユーリ | アスベル…? |
アスベル | 異変を止めたいんだ。この国を…この世界を守りたいんだ! |
アスベル | 自国を守るための判断だったとはいえ俺達は、取り返しのつかない事をしてしまった |
アスベル | 世界からしてみれば、勝手な事を言っているのはわかってる |
アスベル | だけど、今の俺に出来る事は、壊れ始めている世界を守る事だ! |
ユーリ | わかった、わかった。相変わらず生真面目な奴だな |
ユーリ | 別に構わねえさ。ただ条件が一つある |
ユーリ | この異変を止めるためには、とにかくもう、あの魔導器を使わせるわけにはいかねえ |
ユーリ | もしまた魔導器が使われるようならその時は国王と事を構える事だってあり得る |
ユーリ | それでも来るか? |
アスベル | …そうならないよう全力を尽くすのも俺の義務だと思っている |
カノンノ | アスベルさん… |
アスベル | カノンノ…。すまない…お前の記憶の事も何とかしてやらなきゃならないのに… |
カノンノ | ううん、それはいいの。どうにかしようとして戻るものじゃないし |
カノンノ | そんな事より、私もアスベルさん達と一緒に行ってもいいかな? |
カノンノ | 私、自分の住んでいたところすらまだわからないままだけど… |
カノンノ | それでも世界の事をもっと知りたいし、守りたいって思う。だから… |
アスベル | 勿論、それは構わないが… |
アスベル | 俺達と一緒だと、何かと大変な事になるかもしれないぞ? |
アスベル | それに、危険に巻き込んでしまう可能性だって―― |
カノンノ | 大丈夫だよ!アスベルさんったら本当に心配性なんだから |
アスベル | そ、そうか… |
アスベル | …よし、わかった。カノンノ、お前も一緒に行こう。何があっても俺が必ず守るからな |
カノンノ | うん!またよろしくね、アスベルさん |
アスベル | …あ、そうだ!これを機に、その「アスベルさん」って呼び方はやめにしないか? |
アスベル | 俺の事は「アスベル」でいい |
アスベル | 新たな旅立ちを機に、堅苦しいのは抜きって事でさ |
カノンノ | …うん!何だか、本当に「仲間」って感じがするね |
カノンノ | ありがとう、アスベル |
アスベル | いや、こちらこそありがとう。じゃあ、改めてよろしくな |
エリーゼ | …その天変地異って、あの亀裂も関係してるんでしょうか…? |
ティポ | もしそうなら、アスベル君について行けばジュード君が見つかるかもー! |
エリーゼ | …でも、わたし達がついて行くと迷惑になってしまうかもしれないです… |
アスベル | 迷惑なんて、そんな事はないさ。お前達の捜しているジュードの事も引続き、一緒に捜そう |
エリーゼ | アスベル…ありがとうございます。これからもよろしくお願いします… |
クラトス | 私もこのまま同行しよう |
クラトス | 世界の危機…決して他人事ではないからな |
カノンノ | リヒターさんは? |
リヒター | …このまま共に行ってやろう |
ティポ | え~、まだついてくるのー |
アスベル | クラトスさんに、リヒター… |
アスベル | 二人共ありがとう。心強いよ |
ユーリ | おいおい、いきなりまた大所帯になっちまったもんだな |
ユーリ | ま、よろしく頼むぜ |
アスベル | ユーリ、改めてよろしく頼むよ |
ユーリ | ああ、当てにさせてもらうぜ |
アスベル | ああ! |
リヒター | 既に暴走は、取り返しのつかない段階に至っている |
リヒター | 果たしてどこまで食い止められるか… |
クラトス | … |
リヒター | 何、ほんの戯れ言だ |
クラトス | … |
Name | Dialogue |
scene1 | 異変の影響 |
| ゴゴゴゴ… |
リッド | おっと…今度の地震は大きいな |
リッド | こんなのがずっと続いたら、街が潰れちまう。早く収まってもらわねぇと… |
??? | リッドー! |
リッド | ファラ、無事だったか? |
ファラ | うん、わたしは大丈夫。リッドこそ何ともない? |
リッド | ああ。見ての通り、ピンピンしてるぜ |
ファラ | よかった |
ファラ | …それにしても、何なんだろうね。この大きな地震… |
ファラ | とにかく、街のみんなが心配だし見て回らなきゃ! |
ファラ | リッドも手伝ってくれない? |
リッド | おい、ファラ! |
リッド | 行っちまった…やれやれ。相変わらずのお節介だな |
リッド | 仕方ねぇ、オレも行くか…。ファラ、待てって! |
scene2 | 異変の影響 |
ファラ | とりあえず、大ケガをした人はいないみたいだね |
リッド | ああ、けど安心は出来ねえぞ。地震はまだ続くかもしれねえだろ |
リッド | こんな調子で続いたら、崩れる建物だって出るかもしれねえ |
ファラ | そっか。そうなる前に建物の補強をしておかないといけないよね! |
街の男 | リッド、ファラ!大変だ!崩れた外壁から魔物の群れが入ってきた! |
リッド | 何だって!? |
ファラ | 大変!何とかしないと |
ファラ | リッド、行こう! |
リッド | やれやれ、今日は本当に慌ただしい日だな… |
リッド | ああ、わかった。行くって |
| |
| ガルル… |
??? | エミル… |
エミル | 安心しな。マルタの事は俺が守ってやる |
エミル | はああっ! |
| ギャウウッ! |
エミル | よし!終わったぜ |
| グオオッ! |
リッド | おい、後ろだ!まだ終わってねえ、油断するな! |
エミル | えっ!? |
| バシッ! |
| ギャオオッ! |
| |
リッド | ふぅ、危なかったな |
エミル | あ、ありがとうございます。助けてくれて |
ファラ | あなた達、見ない顔だね。どこから来たの? |
エミル | ええと…キムラスカから… |
エミル | 僕はエミル・キャスタニエです |
エミル | こっちはマルタ・ルアルディ。よろしくお願いします |
マルタ | どうも… |
ファラ | よろしくね、二人とも |
リッド | お前ら、旅行か何かか?早くキムラスカに帰った方がいいぜ |
エミル | 僕達もそうしたいと思ってはいるんですが… |
| ガルルルル! |
| |
ファラ | また魔物が! |
リッド | まだいたのかよ。エミル、マルタ、ここはオレ達に任せて逃げろ! |
エミル | 僕も一緒に戦います。マルタ、離れてて! |
マルタ | う、うん |
ファラ | 来るよ! |
scene3 | 異変の影響 |
リッド | ふう。何とか倒したか |
エミル | マルタ、終わったよ |
マルタ | … |
ファラ | 慣れない土地で怖い目に遭って、怯えてるんだね。でももう安心… |
| ズガガガガッ! |
エミル | また地震!? |
リッド | 今度のはさらにでかいぞ! |
ファラ | な、何これ… |
マルタ | エミル…! |
| ズザッ! |
| |
マルタ | …! |
エミル | マルタ! |
リッド | 地面に亀裂が!? |
ファラ | ウソ…! |
マルタ | エミル! |
マルタ | きゃああああっ! |
ファラ | 大変! |
エミル | マルタ…!マルターッ!! |
リッド | やめろ、エミル!お前まで落ちちまうぞ! |
エミル | は、離して!早くしないと間に合わない! |
ファラ | いくら大地震っていっても、地面にこんな大きな亀裂が出来るなんて… |
エミル | 離してくれ…!離せ…! |
エミル | 離せって…言ってんだろうがあああ! |
リッド | うおっ!? |
エミル | マルタ、今行くぞ! |
| |
| バシィッ! |
エミル | ぐあっ! |
ファラ | 亀裂に虹色のバリアが現れてエミルが弾かれた…?一体何が起きたの? |
エミル | くそっ、間に合わなかった…! |
エミル | お前のせいだぞ!お前が邪魔しなけりゃ…! |
リッド | オレのせいで間に合わなかったってどういう事なんだ?説明してくれ。全くわからねえよ |
エミル | うるせえ! |
エミル | ちくしょう…マルタ、待ってろよ! |
ファラ | エミル… |
ファラ | …リッド、エミルの後を追おう! |
リッド | な、何でだよ!? |
ファラ | マルタが亀裂に落ちちゃったんだよ!?早く助けないと! |
リッド | …ああ。わかったよ。放っておけってのもムリな話だしな |
リッド | …行こうぜ |
scene1 | 亀裂の謎を追って |
エミル | 他の亀裂が発生する様子もない…。駄目だ… |
エミル | マルタ、ごめん…。僕がついていながら… |
ファラ | あ、いたいた。エミルー! |
エミル | あなた方は… |
エミル | さっきはごめんなさい。せっかく助けてもらったのに、あんな態度を取っちゃって… |
リッド | いや…別にそれはいいんだけどよ。お前を止めたのはオレだしな |
リッド | …なあ、ファラ。こいつ、たまに話し方が変わるけど何なんだろうな… |
ファラ | わたし達の方こそごめんなさい。一緒にいたのに、マルタを助けられなくて… |
エミル | … |
ファラ | エミル、あなたはあの亀裂について何か知ってるみたいだったけど、よかったら話してくれない? |
エミル | この街へ来る前にも、別のところで亀裂が生じるのを目の当たりにしたんです |
エミル | その時も人が飲み込まれて…。助けようとしたんだけど、さっきと同じように弾かれて |
リッド | なるほどな。それで、ああなる事を知ってたのか |
エミル | あれは地震によってできたただの亀裂なんかじゃありません |
エミル | うまく言えないけど…あの亀裂からは何か、異質な力が溢れ出ているんだと思います |
ファラ | じゃあ、その力のせいで、亀裂の中に入れないって事? |
リッド | でも、それはおかしくねえか?現にマルタは目の前で… |
エミル | そう、だから僕思ったんです。亀裂が出来たその瞬間だけ、入れるんじゃないかって… |
ファラ | だからさっき、急いで亀裂に飛び込もうとしてたんだね |
リッド | …そりゃ、知らねえとはいえ止めちまって悪かったな |
リッド | …で、エミルはこれからどうすんだ? |
エミル | 勿論、何としてでもあの亀裂の中に入って、マルタを助けに行きます |
エミル | マルタは絶対に生きている。あの亀裂の奥底で、僕が来るのを待ってるんだ。だから… |
ファラ | 助けに行くんだね!きっと無事だよ。わたしも信じる! |
ファラ | ねえエミル、よかったら、わたし達にもマルタを助けるのを手伝わせてくれない? |
リッド | わたし達って…おいファラ、オレもかよ!? |
ファラ | だって、わたし達の目の前でマルタが落ちちゃったのに助けられなかったんだよ? |
ファラ | ねえエミル、お願い。わたし達にも手伝わせて |
エミル | 協力してもらえるなら、僕は助かりますけど…本当にいいんですか? |
ファラ | もちろん!ねえ、リッド |
リッド | やっぱりこうなるワケか。まあ、ファラがいりゃあこうなるよな |
リッド | で、具体的にはどうするんだ?マルタを助ける方法に心当たりでもあんのかよ? |
ファラ | 王都メルトキオに行ってみない? |
ファラ | あそこなら人も大勢いるから、あの亀裂の力について何かわかるかも |
リッド | …ファラ。街はどうすんだよ。魔物が入って来た時に誰が相手すんだ? |
ファラ | う~ん。確かにそうだけど…。街に残ったって、根本の解決にはならないじゃない |
ファラ | だったらメルトキオへ行って、情報を集めた方がいいって |
ファラ | エミルもそう思わない? |
エミル | あ、はい。僕もそれがいいと思います |
エミル | 場所については、お任せします |
エミル | シルヴァラントの事はよくわからないし |
ファラ | よ~し、決まり!街の事はちゃんと他の人にお願いしてメルトキオへ向かおう |
ファラ | というわけで、改めてよろしくね、エミル! |
エミル | あ、はい。よろしくお願いします |
リッド | やれやれ…勝手に決めやがって |
scene2 | 亀裂の謎を追って |
ファラ | そっか…エミルはキムラスカの騎士なんだ |
リッド | 今起きている異変が、この辺りだけって事はねぇだろうからキムラスカもきっと大変なんだろうな |
エミル | はい。本当はすぐにでも国へ帰るべきなんだろうけど… |
ファラ | そうかも知れないけど、とにかく今はマルタを助ける事だけ考えよう?ね? |
エミル | …そうですね。ありがとうございます |
| ゴゴゴ… |
リッド | おっと、また揺れ始めたな |
エミル | …!どうかこれで亀裂が発生してくれるといいんだけど |
| ズザッ! |
| |
リッド | おい、あそこだ!亀裂ができたぞ! |
エミル | よし、今度こそ! |
| バシッ! |
エミル | うっ…! |
ファラ | エミル、大丈夫!? |
ファラ | …本当に弾かれちゃったね…。どうしたらいいんだろう |
エミル | 亀裂の中には謎の力がはびこっているみたいで…飛び込んでも、こんな風に虹色のバリアに弾かれるんです |
エミル | やっぱり、故意的に入るのは難しいのかな |
ファラ | 諦めるのはまだ早いよ! |
ファラ | 次に見つけたら、すぐに、三人で飛び込もう |
リッド | オレもかよ!? |
ファラ | 当然でしょ。マルタを助けないといけないんだから |
リッド | 考えなしに飛び込むのはやめた方がいいんじゃねえか? |
リッド | 先がどうなってるかわからねえ |
リッド | それに、そもそも違う亀裂から中に入って、マルタのいるところに繋がってるのかもわからねえだろ |
エミル | 亀裂に飛び込むのは僕だけでいいです。リッドさんやファラさんにそこまでさせるわけには… |
ファラ | 大丈夫! |
ファラ | わたし達、マルタが見つかるまで、とことん協力するつもりだから |
リッド | とことんって… |
リッド | おいおい、だからファラ、勝手に―― |
??? | バイバ! |
エミル | ばいば? |
リッド | この声、まさか… |
??? | ワイール!リッド!ファラ! |
ファラ | メルディ!?メルディじゃない!元気だった? |
メルディ | はいな!ゲンキだったよぅ |
メルディ | メルディ、またリッドがファラ、二人と会えて嬉しいよー! |
エミル | えっと…お友達? |
ファラ | うん!紹介するね |
ファラ | この子はメルディ。昔、一緒に旅をした事があるんだ |
メルディ | 「はじめがまして」!メルディだよぅ。よろしくー! |
リッド | それを言うなら「はじめまして」な |
リッド | …ところでメルディ、お前こんなところで何してんだ? |
メルディ | うんとなー、実は今、困った事がなってて… |
ファラ | 困った事…? |
| ガルルルル! |
| |
エミル | あ、あれは…みんな、魔物だ! |
リッド | 話くらいさせろっての…。仕方ねえ、先にあいつを片づけるぞ! |
scene1 | メルトキオの夜 |
リッド | ふう、何とか片付いたか |
メルディ | いきなり魔物が襲ってきて、ビックリだなー |
ファラ | 話が途中になっちゃったけど… |
ファラ | メルディ、困った事って何?わたし達でよければ力になるよ |
メルディ | ほんとか!? |
メルディ | あのな、メルディな、同じ村に住んでる友達のレイアが事、捜してるよ |
リッド | メルディが住んでるところって、確かア・ジュールの、リンネル村だったよな |
メルディ | はいな!そのリンネル村、前にウィンドルが兵士達に襲われてしまったよ… |
メルディ | 村を建て直すがために、メルディとレイア、それに村の人達、みんなで頑張ってたけど… |
メルディ | ある日、レイアが買い出しに行った。でも、そのまま帰って来なかったよ |
メルディ | メルディ、レイアが事心配…。それで捜しに来たんだよぅ |
ファラ | そうだったの… |
リッド | そのレイアってのは、どこまで買い出しに行ったんだ? |
メルディ | えとな… |
メルディ | 確かシルヴァラントのメルトキオってトコロ |
ファラ | 何だ、わたし達の行くところと一緒じゃない! |
メルディ | バイバ!本当か? |
ファラ | 本当、本当 |
ファラ | だったらこのまま一緒に行こうよ。せっかく会えたんだし |
メルディ | ワイール!ファラが一緒、メルディ嬉しいよ!ありがとな! |
ファラ | えっと、そうそう |
ファラ | この人はエミル。メルディと同じで友達を捜してるんだ |
エミル | よ、よろしくお願いします。メルディさん |
メルディ | エミルも友達捜してるかー |
メルディ | 早く見つかるといいな!…エミルが友達は、マイゴなのか? |
エミル | 迷子っていうか…うん、まあそんなところですね |
メルディ | そっかー |
メルディ | メルディ、力になれる事あったら協力するよぅ! |
エミル | ありがとう |
ファラ | じゃあ、改めて…メルトキオへ向け出発! |
scene2 | メルトキオの夜 |
エミル | ここがメルトキオか…大きな街ですね |
エミル | バチカルと同じくらいかな |
リッド | まあ、王様が住んでるところだしな |
メルディ | 思い出した |
メルディ | そういえばメルディ、前もここ来た事あったよ |
メルディ | あの時はルークと、ミュウと、プレセアも一緒だったなー |
エミル | ルーク?それって、ルーク・フォン・ファブレの事? |
メルディ | はいな |
メルディ | エミル、ルークが事知ってるのか? |
エミル | 同じキムラスカの人間だから |
エミル | そっか、メルディさんはルークとも知り合いなんですね |
ファラ | へえ、偶然だね |
リッド | 世界ってのは思ったより狭いんだな |
リッド | さて、情報を集めるとするか |
ファラ | 亀裂の力に関する情報と、メルディの友達のレイアの情報だよね |
ファラ | 早く見つかるといいけど… |
| ゴゴゴ…! |
リッド | 地震だ! |
エミル | どこかに亀裂は――… |
エミル | いや、今度のは揺れが小さい、駄目だ… |
ファラ | ここ!って時は出ないんだね。悔しいなあ |
リッド | そう都合よくできるはず―― |
リッド | …つかオレ達、地震が起こるのを待ってるみたいで、何か妙な気分になるな… |
メルディ | …? |
ファラ | どうしたの、メルディ? |
メルディ | あそこにいるの… |
メルディ | レイア! |
エミル | ガイさん! |
ガイ | エミルじゃないか。こんなところでどうしたんだ? |
レイア | メルディ?どうしてここに? |
メルディ | レイア、無事でよかったー! |
メルディ | メルディ、レイアが事心配で、捜してたんだよぅ! |
エミル | 僕はマルタを助けるために…ガイさんこそどうしてメルトキオに? |
ガイ | 実はルークが行方不明になってな。それで捜して回っているとこなんだ |
エミル | え!?ルークがいなくなったって…まさかルークも亀裂に? |
ファラ | …それにしてもエミルの友達と、メルディの友達が、一緒にいるなんて… |
リッド | 偶然もここまで重なると、恐ろしいぜ。ホント、世界ってのは狭いんだなぁ… |
ガイ | マルタが…そうか。そっちも大変だったんだな |
エミル | ルークがいなくなったのも、もしかしたら…マルタと一緒で、亀裂に飲み込まれたのかも… |
ガイ | その可能性は考えた事がなかったがあり得ない話じゃなさそうだな |
ガイ | 亀裂の情報も集めた方がよさそうだ |
ガイ | エミル、しばらく俺も君達に同行させてくれないか |
エミル | はい、僕も助かります |
エミル | えっと、レイアさんはどうされるんですか? |
ファラ | えっと…ねえ、待って |
ファラ | 聞いてもいい?レイアとガイは、元々知り合いだったの? |
ガイ | いや、会ったのは最近だ |
ガイ | 故郷へ帰れなくて困ってたから、相談に乗っていたのさ |
メルディ | レイア、どうしてリンネル村に帰れなかったか? |
レイア | この大地震で出来た地割れのせいであちこちの道が崩れちゃったんだ |
レイア | 船もみんな欠航になっちゃって、どうしよう!って困ってた時にガイと会ったんだよ |
レイア | でも、そんな状態なのに、メルディはよくこっちに来られたね |
メルディ | メルディがこっちに来た時はまだ船が動いてたよ!でも、港が着いた時にドーンってなってな、大変だったよ |
レイア | そっか。船に乗ってる時じゃなくてよかったよ |
レイア | 海上も結構大変な事になってるって話だし… |
ファラ | いろいろあったみたいだけど…メルディ、無事レイアに会えてよかったね |
メルディ | はいな!ファラ達がおかげ!ありがとな! |
リッド | これからメルディ達はどうするんだ? |
リッド | レイアと一緒に、村に帰る方法を探すのか? |
メルディ | うーん…そだなー |
レイア | その事なんだけど… |
街の女 | きゃあああ! |
| |
ガイ | !何だ!? |
| ガルルルル! |
レイア | 魔物!?こんな人の多い街で…! |
リッド | ったく、次から次へと…。行くぞ! |
scene3 | メルトキオの夜 |
ガイ | 何とか倒したか |
ファラ | 王都なら治安もいいかと思ったけど、そうでもないんだね |
リッド | 大地震の影響もあるし、今はどこもかしこもこんな感じなんだろ |
リッド | コルテア街もどうなっている事やら… |
レイア | ねえメルディ、リンネル村に帰るのは、もう少し後にしない? |
レイア | ガイには色々助けてもらったし、ルークっていう人を一緒に捜してあげたいと思うんだけど |
メルディ | メルディも同じ事考えてたよぅ! |
メルディ | ルークはメルディが友達、心配よ |
メルディ | それに、エミルとも約束したよ |
メルディ | エミルが友達捜すの、メルディも協力するって |
エミル | お二人とも、ありがとうございます |
ガイ | 申し出はありがたいが、本当にいいのか? |
レイア | いいって!村へ帰るにも、どのみち方法は探さなきゃいけないし |
レイア | …というわけで、今後ともよろしく! |
ファラ | わあ、仲間が増えたね!楽しくなりそう! |
リッド | すっかり大所帯になったなあ… |
ガイ | そろそろ日も暮れる事だ |
ガイ | 今日は宿に泊まって、明日からまた行動再開としないか? |
リッド | そうしようぜ |
リッド | いい加減疲れたし、腹も減ったしな |
ファラ | じゃあ、宿を探そうか |
| |
リッド | 何だファラ、まだ起きてんのか |
ファラ | うん。ちょっとね。…昔の事、思い出しちゃって |
ファラ | …人がこうやっていなくなると、どうしても、思い出しちゃうんだ |
ファラ | 子どもの頃にあった、街の大火事の事 |
リッド | …昔の事じゃねえか。あの時、オレ達ガキに何ができた?あれは誰かの火の不始末。それだけだろ |
ファラ | それでも!それでも… |
ファラ | 人は死んじゃったし、街もひどい有様だった |
ファラ | わたしにも本当は何か出来たんじゃないかって今だって夢に見るくらい… |
リッド | お前がやたらと人にお節介をやくようになったのはその頃からだ |
リッド | …あと、自分が無理してまで他人を庇うようになったのもな |
ファラ | …そう、だったっけ |
リッド | そうだよ。今回の事だってそうだろ? |
リッド | 困った人は放っておけない。それだけで動いてる。違うか? |
ファラ | わかんない。自覚…ないかも |
リッド | …そっか |
リッド | …いいんじゃねえか?ファラらしくて |
ファラ | ひっどーい。バカにしてる? |
リッド | してねえよ |
ファラ | …ねえ、リッド。わたし、マルタを助けたい |
ファラ | エミルが苦しまないように |
ファラ | それからルークも。顔も見た事ない人だけど、それでガイが喜ぶなら |
リッド | …ああ。そうだな |
ファラ | リッド。わたし、リッドが幼なじみでよかった |
リッド | …は?いきなり何言い出すんだよ |
ファラ | リッドって、面倒くさいとか、やれやれ、とか言うけど何だかんだ言って、助けてくれるから |
ファラ | …いつも、ありがとう |
リッド | バーカ。何言ってんだよ |
リッド | ファラがしおらしいなんて、珍しすぎて大雨が降っちまう |
ファラ | …ふふ。明日は大きな傘が必要だね |
ファラ | 何か、話したらすっきりしたかも |
ファラ | 眠れないからどうしようかって思ってた |
リッド | …そっか。よかったな。寝れんなら、早く寝とけよ |
ファラ | …うん。ありがとう |
ファラ | リッドは? |
リッド | オレも寝るよ |
リッド | じゃ、おやすみ |
ファラ | …おやすみ、リッド |
scene1 | 突然の別れ |
リッド | ふああ… |
ガイ | おはよう、リッド。夕べはよく眠れたか? |
リッド | まあな。さて、これからどうすんだ? |
ガイ | とにかく、まずは情報集めだな。有益な手がかりが、掴めるといいんだが |
ファラ | 王様のところへ、話を聞きに行くのはどうかな? |
レイア | それってお城を訪ねるって事だよね。いきなり行って、入れてくれるようなものなのかな? |
メルディ | メルディが前にルークと来た時は、すぐに入れたよぅ!王様はビョーキで会えなかったけどな |
ガイ | それは、ルークが一緒にいたからじゃないか。ああ見えて、あいつはキムラスカ国王陛下の甥だし |
レイア | へえ、そのルークって、そんなに偉い立場の人だったんだ |
ガイ | 偉いというか、まあそんなところさ |
ガイ | とにかく、まずは街の人達に話を聞くとしよう |
ファラ | うん!王様に会えるツテも見つかるかもしれないしね |
レイア | じゃあ、みんなで手分けして情報収集…しばらくしたら、ここでまた集合って事でいいかな? |
ガイ | ああ、わかった。それじゃ、早速行こうか |
エミル | 亀裂の力に関する手がかりが見つかりますように… |
メルディ | エミル!メルディ頑張るよ!キレツが情報、集めるからな! |
ファラ | リッド、さぼらないで、ちゃんとやらないと駄目だよ? |
リッド | へいへい |
リッド | うーん、いろんな話は聞けたもののイマイチぱっとしねえな |
ファラ | そうだね…。でも、わたし達は駄目でも他のみんながいい情報を見つけてきてくれるかもだし |
リッド | お、エミルとレイアが戻って来たぞ |
ファラ | あ、向こうからメルディも戻ってきた!おーい! |
レイア | リッド、ファラ、何かわかった? |
リッド | いいや。そっちは? |
レイア | 駄目。わたしの方も収穫なし |
エミル | 今回の異変の影響で、みんなが困っているって事はよくわかったけど肝心な情報は全然… |
メルディ | メルディもダメだったよ…。役に立てなくてごめんな |
ファラ | そっか…。あとはガイを待つしかないね |
ガイ | やあ、みんなそろってるな |
エミル | どうでした? |
ガイ | いや駄目だったよ。ルークに関してはろくに情報が得られなかった |
ガイ | ここまで足取りが掴めないとなると、例の亀裂に飲み込まれたって可能性もいよいよ無視できないな |
メルディ | ルーク… |
レイア | 亀裂の方は、何かわかった? |
ガイ | ああ、手がかりと呼べるかどうかまだわからないが、そっちは少し気になる話を聞けた |
ガイ | この国の司祭様が中心になって、今回の異変に関する情報を集めているそうなんだ |
ガイ | その司祭様に会えば、何かわかるかもしれない |
ファラ | 司祭様だったら王様よりは会うのは難しくない…のかな? |
ガイ | そこは断言できないな。何でも国王に代わって政務を執り行うほどの立場らしいからな |
メルディ | そのシサイサマは、フィリアが事か?フィリアなら前に神殿で会ったよー |
ガイ | 本当かい?だったら多少は望みがあるかもしれないな |
レイア | メルディ、いつの間に司祭様と…。でも、知り合いがいるなら司祭様もきっと会ってくれるよね |
ガイ | …ただ、司祭様は今神殿にはいない。南のスールズ村にいるらしいんだ。ここで帰りを待つか、それとも… |
ファラ | 待ってなんていられないよ!わたし達も今すぐ、スールズ村に向かおう |
ガイ | そう言うだろうと思ったよ。それじゃ、このままみんなでスールズ村へ行くって事でいいか? |
エミル | はい、急ぎましょう! |
レイア | そうそう、早く行かなきゃ入れ違いになっちゃうかもしれないし |
メルディ | はいな! |
ファラ | リッドもそれでいいよね? |
リッド | …嫌だって言っても、ファラの事だからみんなを引っ張ってでも行くんだろ? |
ファラ | えへへ…じゃあ、決まりだね!行こう、スールズ村へ! |
scene2 | 突然の別れ |
| ゴゴゴ…! |
メルディ | あ、ジシン! |
ガイ | 頻繁に地震が起きるものの、ここ最近は、揺れの小さいものばかりだな |
エミル | … |
ファラ | 大丈夫だよ、エミル。司祭様に会えばきっと何かわかる。きっといい方法が見つかるよ |
ファラ | だから今は、スールズ村に行く事だけを考えよう?大丈夫だから。ね? |
リッド | いい方法、ねぇ…。本当にあればいいけどな |
ファラ | あるよ。あるって信じなくちゃ。大丈夫、イケる、イケる! |
レイア | ファラはいつも前向きなんだね |
ファラ | そうかな?うん、そうかも。でも、元気があってもなくても、とにかく、やってみなくちゃ! |
リッド | … |
| |
| ゴゴゴゴゴ…! |
エミル | また揺れ出した |
ガイ | 気をつけろ!今度はでかそうだぞ! |
| |
| ズザッ! |
メルディ | バイバ!? |
ファラ | ウソ、メルディの足元に亀裂が…!危ない、メルディ!! |
リッド | おい、ファラ!? |
| ドンッ! |
ファラ | きゃああああっ!! |
リッド | ファラーーーーーーーーーっ!! |
レイア | ファラが亀裂に…そんな… |
メルディ | あ…あ… |
リッド | くっ…ファラ!今行く! |
| バシィッ! |
リッド | ぐっ! |
エミル | 駄目だ…間に合わない! |
リッド | ファラ、ファラーーー!!…くそっ! |
ガイ | リッド達を弾いた…今のが例の「亀裂にはびこる力」なのか… |
レイア | そんな…どうして…! |
メルディ | リッド…リッド、ごめんな…メルディがせいで、ファラが…メルディがもっと、しっかりしてたら… |
リッド | …くそ…! |
| ジリ… |
エミル | …!魔物か!? |
| ガルルルル! |
レイア | こんな時に…! |
リッド | … |
scene1 | 仲間を信じて |
リッド | … |
エミル | ファラさんまで亀裂に落ちてしまうなんて… |
レイア | リッド… |
メルディ | リッド、ごめんな…。メルディがせいで、ファラが…ファラが… |
リッド | ファラがお前を助けたくてやったんだ。お前が謝る事じゃねえよ |
メルディ | でも… |
リッド | … |
エミル | リッドさん、あの… |
リッド | …なあ、エミル |
リッド | 亀裂に飲み込まれた連中は…生きてるんだよな |
エミル | …あ、はい。僕は絶対そうだって信じてます |
リッド | 信じる…か。まあ、そうでもねえと自分がやってる事、ワケわからなくなっちまうもんな |
ガイ | ああ、俺もそう思う。だから俺達もやれる事をしよう |
レイア | …うん。まずは一刻も早くスールズ村に行こう。それでフィリア司祭に会わなきゃ |
リッド | …そうだな |
リッド | …ま、ファラの事だ。あいつなら大丈夫だろ |
リッド | むしろ、先に落ちたヤツらの事を助けてるんじゃないか? |
リッド | そうでもなってたら、それこそファラに「来るのが遅い」って怒られちまう |
リッド | ほら、とっとと方法を探そうぜ |
エミル | リッドさん…うん、そうですね! |
ガイ | よし、それじゃスールズ村に急ごう。みんな、いいな? |
レイア | うん! |
リッド | … |
メルディ | リッド… |
メルディ | ファラ、マルタ…みんな…待っててな、メルディ達が助けるよ。絶対に… |
scene2 | 仲間を信じて |
リッド | …ん? |
レイア | 向こうから誰か来るよ |
??? | あん? |
エミル | この人…ただ者じゃない。すごい迫力だ… |
| |
??? | ワレら!通行の邪魔じゃ。もっと端っこ歩かんかい |
レイア | …!ごめんなさい。今すぐ… |
リッド | どく必要はねえよ、レイア |
リッド | こっちは普通に歩いてるだけだろ。文句を言われる筋合いはねえ |
??? | ホウ。ワイにそがあな口きいて、ただで済むと思うちょるんか |
ガイ | リッド、よせ |
リッド | …別に何もしてねえよ |
??? | スカした兄ちゃんじゃのォ。普段のワイなら見逃しちゃるところじゃが… |
??? | 今のワイはすこぶる虫の居所が悪い。ちょっとツラ貸してもらおうかの |
エミル | リッドさん…どうしましょう… |
| |
| ゴゴゴゴ…! |
リッド | …! |
??? | …! |
メルディ | みんな!あっちが地面にヒビ入ってるよぅ!間に合うか!? |
リッド | 何だって!?行くぞ、エミル!! |
??? | ちょお、ワレ!待たんかい! |
リッド | お前と話してるヒマなんてねえんだよ!オレ達はあの亀裂に入らなきゃなんねえ! |
??? | ワイもそこに用があるんじゃあ! |
リッド | はあ!? |
エミル | うわっぷ!?リッドさん、急に止まらないで! |
メルディ | あ~…。間に合わなかったよぅ… |
レイア | …この距離だったら、どちらにしろムリだったかもね… |
| |
??? | …というワケじゃ。ワイは何としても子分達を助けんといけん |
レイア | そっか。あなたの仲間も亀裂に落ちちゃったんだね… |
??? | 後から飛び込んでも弾かれるしのう。入る方法を知っちょるなら聞こうと思ったんじゃが、ジャマして悪かった |
リッド | どっちにしろ間に合わない距離だったんだ。お互い様って事にしておこうぜ |
モーゼス | ワイはモーゼス・シャンドル。ワレらの名前も、聞かせてもらえるか |
リッド | オレはリッド・ハーシェル。一緒にいるのはエミル、ガイ、メルディ、レイアだ |
リッド | モーゼス、あの亀裂の事で知っている事があったら、教えてくれないか |
モーゼス | ワイも詳しい事は知らんが…あの亀裂に飲み込まれたもんは、相当な数に登っとるようじゃ |
モーゼス | で、これは噂じゃが、あの亀裂から生きて帰ってきたっちゅう人間もおるらしいんじゃ |
モーゼス | リスだかサルだかって名前の、亀裂に飲み込まれたもんを助けて回っとるヤツがおるとか… |
エミル | それ本当ですか!?じゃ、その人達を見つければ亀裂に飲まれたマルタも… |
モーゼス | あくまで噂じゃ。ワイは自力で何とかしよう思っちょる |
モーゼス | ワイが知っとるのはそんなとこじゃ。他の子分が各地で情報集めちょるから何かわかったら教えちゃる |
モーゼス | ワレらの仲間が無事に見つかるよう、祈っちょるからの |
メルディ | モーゼスがコブンもな |
モーゼス | オウ。またどこかで会えるといいの |
ガイ | 一時はどうなるかと思ったが、貴重な情報も聞けたし、結果的によかったな |
リッド | 亀裂に落ちた人を助けようとしてるヤツがオレ達の他にもいるんだな |
レイア | そうだね。モーゼスも言ってたけど、それだけ多くの人が、あの亀裂に飲まれたって事だよね… |
メルディ | みんな無事でいてほしいよ…。ファラもマルタも…他の人も… |
リッド | … |
ガイ | 亀裂に飲み込まれた人達を助けている連中がいるという話も気になるな |
メルディ | それってフィリアが事か? |
エミル | どうなんだろう… |
エミル | …!また向こうから誰か来ます |
ガイ | あれは…人じゃない、魔物だ! |
| ガルルルル! |
リッド | ったく、次から次へと! |
scene1 | 司祭の行方 |
ガイ | ここがスールズ村か。やっと着いたな |
エミル | フィリア司祭はどこだろう。せっかくここまで来たんだから、会えるといいけど |
リッド | メルディは前に会った事があるんだよな。顔、まだ覚えてるか? |
メルディ | はいな、オボえてる!でも、この辺りにはいないみたいよ |
レイア | うーん…入れ違いになったりしてなければいいんだけど |
エミル | 向こうから誰か来る。あの人に聞いてみましょう |
エミル | あの… |
??? | おい! |
エミル | は、はい!何でしょう? |
??? | お前達、コハクを見なかったか? |
リッド | コハク?コハクって何だ?何の話だ? |
??? | 長い黒髪、目はぱっちり、色白で、元気な俺の妹だ! |
レイア | ああ、なるほど。コハクって、人の名前だったんだ |
ガイ | いや、すまないが見ていないと思う。何か他に特徴はないのか? |
??? | …ええい、もういい! |
メルディ | 行っちゃったよぅ。すごく怒ってた。コハクってヒトも、亀裂が落ちたか? |
リッド | …わかんねえけど、そうなのかもな。今やどこでも誰かが誰かを捜してるって感じだな |
エミル | はい… |
レイア | 本当、一体どうなってるんだろう…。地震もずっと続いてるし、このままじゃもっと被害が… |
リッド | … |
ガイ | 気がかりなのも無理はないが、とにかく今は、最初の予定通り、フィリア司祭を捜さないか? |
リッド | …ああ、そうだな |
scene2 | 司祭の行方 |
??? | どこ行っちゃったんだろう… |
レイア | あれ?あの子… |
エミル | 長い黒髪、目はぱっちり…それにとっても色白だ |
ガイ | さっきの男が捜していたのもそんな特徴の人じゃなかったか…? |
レイア | きっとそうだよ!よかった、亀裂に飲み込まれてたってわけじゃなかったんだね! |
??? | あなた達、ちょっといいかな? |
??? | わたし、シングって男の子を捜してるんだけど、どこかで見なかった? |
リッド | さっき会った男の事か?それだったら… |
??? | え、会ったの?どこで? |
??? | コハク!ここにいたのか! |
??? | あ、お兄ちゃん。シングは見つかった? |
??? | いや、いねえ…。つか、そっちは捜してねえ |
??? | もう!ちゃんと捜してって言ったじゃない |
コハク | っと、ごめんね。わたしはコハク・ハーツ。こっちは兄のヒスイだよ |
ヒスイ | 何だお前達か、また会ったな |
リッド | おいおい、今気付いたのかよ… |
ガイ | そのシングという人はどうしたんだ?ひょっとして姿を消したのか? |
コハク | うん…。あちこち捜してるんだけどなかなか足取りを掴めなくって… |
レイア | まさか、その人も地震の亀裂に飲み込まれてしまったんじゃ… |
ヒスイ | その人、も…? |
リッド | ああ。オレ達は仲間があの亀裂に飲み込まれちまって、助ける手段を探してるところだ |
コハク | そうなんだ… |
レイア | …それでわたし達、フィリア司祭に会いに来たんだ。この村にいるって聞いたんだけど |
コハク | 司祭様なら、さっき出ていったよ。わたし達の故郷のシーブル村に向かったって聞いたけど |
メルディ | 残念…イレチガイかー |
レイア | 落ち込んでる場合じゃないよ。わたし達もすぐシーブル村に向かおう |
ガイ | シーブル村はここからだと、西の方角だったか…そんなに遠くないはずだ |
リッド | よし、行くか |
コハク | あなた達の大切な仲間が、無事に見つかるよう、祈ってるからね |
ヒスイ | お前らも、亀裂とやらに飲み込まれんなよ! |
エミル | あなた達も! |
scene1 | それぞれの想い |
リッド | ここがシーブル村か |
ガイ | 今度こそフィリア司祭に会えるといいんだがな |
レイア | 見て。向こうに人だかりができてる |
エミル | あれは… |
村の男 | 妻を助けていただき、ありがとうございます! |
村の女 | このご恩は、一生忘れません! |
??? | ユリウスさん、私からもお礼を申し上げます。本当にありがとうございます |
ユリウス | いや… |
メルディ | あ、いた!あのヒトがフィリア! |
エミル | やっと会えた… |
ガイ | 一緒にいる男は誰なんだろうな |
リッド | 話をすればわかんだろ。行こうぜ |
リッド | なあ、ちょっといいか。聞きたい事が―― |
村の女 | お願いします!どうか私の子も、あの亀裂から助け出してください! |
村の男 | 私の恋人も…ユリウスさん、あなただけが頼りなんです! |
リッド | …ユリ…ウス?ひょっとして…モーゼスが言っていた「リスだかサルだか」の…? |
リッド | ユリウス、とかいったか、亀裂に飲み込まれた人達を救い出してるのはあんたか? |
ユリウス | ああ、そうだが…君達は? |
エミル | モーゼスさんに聞いた話は本当だったみたいですね |
ガイ | ああ、そうらしいな |
リッド | …オレ達はあの亀裂に入る方法を探してる |
リッド | どうやったら入る事ができんだ?その方法を教えてくれ |
ユリウス | … |
エミル | お願いします!あなたの邪魔はしません! |
メルディ | メルディもお願いするよ!ファラを…みんなが事助けたいよ! |
ユリウス | みんなを助けたい、か… |
フィリア | まあ、メルディさん…! |
フィリア | ユリウスさん、私からもお願いします。彼らの話を聞いてくださいませんか? |
ユリウス | 司祭の君にそこまで言われては、断るわけにはいかない。それにそれなりの事情もあるようだしな |
レイア | 「時空の歪み」…? |
ユリウス | ああ。今大陸の各所に生じている亀裂の先にある空間を、俺達はそう呼んでいる |
ユリウス | 何かの影響を受け、時空に歪みが生じたと考えられるが…詳しい事は俺にもわからない |
ユリウス | 時空の歪みはただの空間じゃない。異世界に通じるトンネルのようなものだと考えた方がいい |
ガイ | 異世界…? |
ユリウス | …時空を隔てて存在するこことは全く別の世界さ |
メルディ | ファラ達はそのイセカイに落ちてしまったか? |
ユリウス | 亀裂に飲み込まれたのなら、その可能性が高いだろう |
リッド | 落ちた後はどうなる?無事なのか? |
ユリウス | それは何とも言えん。向こうにも魔物がいるからな |
フィリア | ユリウスさんは、時空の歪みに飲み込まれた人々を何人も救っているそうです |
フィリア | 私もこの亀裂について調べている時にユリウスさんと出会ったのです |
リッド | ユリウス、頼む。オレ達もその時空の歪みに、連れて行ってくれないか? |
エミル | 僕達にはどうしても助けたい人がいるんです。どうか…! |
ガイ | 俺からも頼む。捜している奴がそこにいるかもしれないんだ |
ユリウス | … |
ユリウス | だが、俺も時空の歪みに巣食う魔物達を把握出来ているわけではない。中には凶暴なものもいるだろう |
ユリウス | それに…例えば俺が死んだ場合など、時空の歪みから出られなくなる可能性がないわけでもない |
ユリウス | そんな危険なところに、君達を連れて行くわけにはいかない。その仲間の事は俺に任せて―― |
リッド | …確かに危険なところかも知れねえ。でも、このまま黙って待ってる事なんて出来ねえんだ |
リッド | 頼む、連れて行ってくれ |
エミル | うん…!どんな危険なところでも構わない…絶対にマルタを…みんなを助け出したいんだ! |
ガイ | ああ。それに、仲間だけじゃない、他の人達を救い出すのにも、協力させてくれ |
ユリウス | 君達… |
フィリア | この方達なら、大丈夫だと思います |
フィリア | 上手く説明はできませんが、彼らからは強い意志の力を感じます。きっと、あなたの助けになるでしょう |
ユリウス | …わかった。君達を連れて行こう |
レイア | やった! |
ユリウス | その代わり、絶対に無理はしない事。何かあればすぐに脱出する、だから俺から離れない事を約束してくれ |
リッド | ああ、わかった |
ガイ | その点は任せてくれ |
ユリウス | よし。ではさっそく出発だ |
レイア | よかった…!これでみんなを救う事ができる |
エミル | 司祭様、ありがとうございます |
フィリア | 神のお導きと、ご加護があらん事を… |
scene2 | それぞれの想い |
ユリウス | 詳しい説明は省くが、俺と弟のルドガーには、特別な能力がある |
ガイ | その能力を使って、時空の歪みとこの世界を行き来してるってわけか |
レイア | ねえ、ユリウス。さっき話していた「時空の歪みを生じさせた影響」って… |
ユリウス | 何が影響させたのか…その原因は不明だ。いろいろ調べてはいるんだが |
ユリウス | だから、もし君達も向こうに着いて、何か気付いた事があれば、随時俺に教えてほしい |
メルディ | はいな!メルディ、気づいた事あったらたくさん言うよ! |
リッド | …「時空の歪み」の原因、か。ファラ達は助けるにしても |
リッド | どうしてこんな事になったのか、その原因を突き止めてどうにかしねぇとな… |
リッド | じゃねえと、いつまた誰かがそいつに飲まれちまうかわかったもんじゃねえし |
エミル | リッドさんの言う通りです。僕達に何が出来るか、今はまだわからないけど… |
レイア | それでも、わたし達の出来る事からやってくしかないよね |
レイア | そのために、まずはみんなを救い出さなきゃ! |
ガイ | ところで…一体どこまで行くんだ? |
ユリウス | 亀裂にはびこる虹色のバリアのような力の存在は知っているか? |
リッド | ああ、それは知ってる。そいつに弾かれたせいで、中に入る事ができなかったからな |
ユリウス | そうか。今向かっている地点には、その力が比較的弱い亀裂がある。…そこから中へ進入する |
ユリウス | これだけ大所帯での移動だ、歪みへ与えるリスクの可能性を考えると、ここを出発地点とするのがベストだ |
リッド | なるほどな |
ユリウス | さあ、この先だ。行こう |
scene3 | それぞれの想い |
エミル | あ… |
リッド | こんなでかい亀裂が… |
ユリウス | ここから時空の歪みに進入する |
ユリウス | 俺が能力を発動すれば、そう簡単に引き返す事は出来ない。覚悟はいいな? |
レイア | 勿論!絶対にみんなを助け出すんだから! |
メルディ | ファラ、マルタ、待っててな!メルディ今から行くよ |
ガイ | ルークの奴もうまい事そこにいてくれるといいんだが… |
ユリウス | よし、ではみんな、少し下がっていてくれ… |
リッド | 頼むぞ、ユリウス |
ユリウス | … |
| |
ユリウス | …はああああっ! |
| |
エミル | 光り出した… |
レイア | うっ…!どんどんまぶしく―― |
ユリウス | む…? |
リッド | お、おい!亀裂の奥から何か…あれは何だ!? |
ユリウス | あれは…! |
Name | Dialogue |
scene1 | 墜落の果てに |
??? | …様 |
??? | …人様 |
??? | …ご主人様、しっかりしてくださいですの! |
ルーク | う… |
| |
ルーク | うるせえぞ、ブタザル!耳元でぎゃーぎゃー大声出しやがって |
ミュウ | みゅうう…ごめんなさいですの |
ルーク | ったく…ん?見慣れねえ光景だな…おい、ここはどこだ? |
ミュウ | ご主人様、覚えてないんですの? |
ルーク | 覚え…あ、そうか。思い出したぞ |
ルーク | 森を歩いてたら、いきなりでっかい地震が起きて、それで地面が割れたんだ |
ミュウ | その通りですの。ご主人様は地面に出来た亀裂に飲み込まれたですの |
ミュウ | ボク、ご主人様を助けようとして、でも助けられなくて…一緒にここへ落ちて来たんですの |
ルーク | じゃあここは、亀裂の底っつー事か。薄暗くて、周りがどうなってんのかよくわからねーな |
ミュウ | 空も見えないですの。どれくらい下まで落ちたのか、見当もつかないですの |
ルーク | マジかよ。ま、そんだけ落ちた割にはどこも怪我してねーのはラッキーだったな! |
ルーク | よし、とにかく早いとこ上に登れる道探さねーとな。行くぞ、ブタザル! |
ミュウ | はいですの! |
scene2 | 墜落の果てに |
ルーク | …何だよここ。地震で出来たっつー割には、やけにだだっ広くねえか? |
ミュウ | ボクもそう思ったですの。何だか不思議な場所ですの… |
ルーク | ったく、わけがわからねー。変な地震は起きるし、戦争は再開しやがるし… |
ルーク | せっかく星のカケラの一件も片が付いて、のんびりできると思ったのによ… |
| カタ… |
ミュウ | 何か音が聞こえたですの…! |
ルーク | ん?誰かいるのか? |
| ガウウウウッ! |
| |
ミュウ | みゅうう! |
ルーク | 魔物だと!? |
ミュウ | ご、ご主人様、どうしたらいいですの!? |
ルーク | どうするも何も、戦うしかねーだろ! |
| グオオオオッ! |
??? | はっ! |
| ズバッ! |
| ギャウウッ! |
| |
ミュウ | すごいですの!魔物を一撃で倒したですの…! |
??? | 大丈夫だったかい、キミ達? |
ルーク | …お前、誰だ? |
コンウェイ | ボクはコンウェイ・タウ。キミは? |
ルーク | キムラスカのルーク・フォン・ファブレだ。名前くらいは知ってんだろ? |
コンウェイ | ルークくん…。いや、残念ながら知らないな |
ルーク | 何で知らねーんだよ!俺は有名人だぞ!選ばれし者としての俺の活躍、聞いてんだろ? |
コンウェイ | 「選ばれし者」…心当たりはないね。キミ、本当に有名人なのかい? |
ルーク | おい、何だよその言いぐさ。世界中で話題になったっつーのに知らないお前が… |
ルーク | …って、ああ、そうか。そういやこの話って、うちの国じゃ一部の人間しか知らねーんだっけ… |
コンウェイ | …なるほど。どうやらボク達は面白い事態に遭遇しているようだね |
ミュウ | 面白い事態って何ですの? |
コンウェイ | それは――…ん? |
| ガウウッ! |
| |
ルーク | ちっ、また魔物かよ! |
コンウェイ | 話は後だ。先にあいつを片付けよう。キミ達は下がっていてくれるかな? |
ルーク | あんな奴、どうって事ねーよ。お前こそ下がってろ。さっきの借りを返してやるからな! |
scene1 | 時空の歪み |
| ギャウウウ! |
ルーク | よし、これで終わりっと! |
コンウェイ | へえ、言うだけあって、なかなかの実力だね |
ルーク | へっ、まあな |
ルーク | そんな事よりここは一体何なんだ? |
ルーク | 亀裂の底にしちゃ広すぎるし魔物まで出てくるなんてよ… |
ルーク | お前、何か知らねーのか? |
コンウェイ | 亀裂の底…? |
ルーク | ああ、地震でできた亀裂に飲み込まれちまってよ。気付いたらここに来てたっつーわけだ |
コンウェイ | 亀裂に飲まれて、か…。キミが別の世界の住人である事はわかっていたけれど… |
コンウェイ | …まさかそんな方法でここへたどり着いていたなんてね |
コンウェイ | ここは「時空の歪み」と呼ばれる、特別な空間だよ |
ルーク | 時空の歪み?何だそりゃ。聞いた事ねーぞ |
コンウェイ | そうだろうね。この類の空間は滅多にお目にかかる事が出来ない希少な空間… |
コンウェイ | 何か特別な作用がなければ、本来なら中に人が入り込む事すら出来ないような場所さ |
ルーク | ますますよくわかんねーけど、何でそんなとこに地面の亀裂が繋がってんだよ? |
コンウェイ | それはボクにもわからない。興味深い話だとは思うけどね |
ルーク | お前の興味とかどうでもいいっつーの!マジで何なんだよ、ここは… |
コンウェイ | 別々の世界を結びつける、結節点とでも言えばいいかな |
コンウェイ | 要するにキミ達は、別の世界へ通じるトンネルの中にいるようなものだって事さ |
ルーク | トンネルか…。何かわかったよーな、やっぱわかんねえよーな… |
ミュウ | コンウェイさんは、どうしてそんな事を知っているんですの? |
コンウェイ | ボクはキミ達とは別の世界の住人でね |
コンウェイ | 以前からいろいろな世界を渡り歩いているんで、その手の事には詳しいのさ |
コンウェイ | もっとも、今いるこの世界には不意に迷い込んだクチなんで、不明な点も多いんだけど… |
ルーク | 別の世界とかマジかよ… |
ミュウ | ボク達、元の世界に、戻れるんですの? |
コンウェイ | 少なくともここからでは無理だね。キミ達の世界に通じるゲートを見つけないと |
ルーク | ゲート? |
コンウェイ | 別の世界への入り口となりうる場所さ |
ルーク | 何かいろいろややこしいな…。まあ、じゃ、そのゲートを探そうぜ。コンウェイ、お前も手伝えよ |
コンウェイ | 随分強引なんだね、キミは |
ミュウ | はいですの。ご主人様はいつもこうですの! |
ルーク | 適当な事言ってんじゃねーぞ、このブタザル! |
ミュウ | みゅうううう! |
コンウェイ | まあ、一緒に行くのは構わないよ。ボクもちょうど、自分の世界に戻る手段を探していたところだしね |
ルーク | よし、決まりだな。それじゃ早く行こうぜ |
ミュウ | よろしくですの! |
scene2 | 時空の歪み |
ルーク | なあ、コンウェイ。どこまで行けばお前の言ってたゲートっての、見つかるんだ? |
ミュウ | さっきの場所から、もうたくさん歩いたですの… |
コンウェイ | それはわからないよ。すぐかもしれないし、ずっと見つからないかもしれない |
ミュウ | もしずっと見つからなかったら、どうなるですの? |
コンウェイ | この世界で一生を過ごすか…それともボクと一緒に、いろいろな世界を旅してみるかい? |
ルーク | …どっちもお断りだっつーの!俺は一刻も早く、元の世界に戻りてーんだよ |
コンウェイ | まあ、キミならそう言うだろうと思ってたよ |
??? | …を出して。ほら |
ルーク | ん?ブタザル、今何か言ったか? |
ミュウ | ボク、何も言ってないですの |
ルーク | じゃあ、コンウェイ、お前か? |
コンウェイ | ボクも喋ってないよ |
ルーク | 変だな…確かに今、何か声が聞こえたような… |
ミュウ | …!ご主人様、今ボクにも聞こえたですの! |
ルーク | 俺達の他にも誰かいるって事か? |
コンウェイ | 珍しい事もあるものだね、まさかボク達の他にも人間がいるなんて |
ルーク | あっちの方から聞こえたよな?よし、行ってみようぜ |
| |
マルタ | エミル…エミル… |
ティア | マルタ、しっかりして。落ち込んでいる場合じゃないわ。とにかく行動しないと |
| |
ルーク | あれ…?何だよ、ティアにマルタじゃねーか |
ティア | ルーク!? |
マルタ | あ… |
ルーク | 何やってんだ、お前ら。こんなとこで |
ティア | 何って…ガイと手分けしてあなたの行方を捜していたのよ |
ティア | その最中に、地震によって出来た亀裂に飲み込まれてしまったの |
ティア | …でも、とりあえずあなたも無事だったみたいだし、よかったわ |
ルーク | よくねえだろ!俺を捜してるお前まで落ちてどうすんだっつーの! |
ルーク | …って、待てよ。それじゃ、俺が落ちたとこ以外にも亀裂が出来てるって事なのか? |
ティア | ええ、その通りよ。飲み込まれてしまった人もたくさんいるみたい |
ミュウ | マルタさんも、ティアさんと一緒に飲み込まれたんですの? |
マルタ | … |
ティア | 彼女と会ったのは、ここへ来てからよ。元々はシルヴァラントにいたそうよ |
ルーク | シルヴァラント!?そんなとこで落ちて、ここまで歩いてきたのかよ? |
ティア | そんなに歩いたようには見えないけど…もしかしたら全ての亀裂がここに繋がってるんじゃないかしら |
コンウェイ | どうやらキミ達のいた世界は、よほど不安定な状態になっているようだね |
ティア | ルーク、こちらは…? |
ルーク | そうだ、紹介しておくぜ。こいつはコンウェイってんだ。俺もさっき会ったばかりだけどな |
ティア | 私はティア・グランツ…ひょっとして、あなたがルークを助けてくれたのかしら? |
コンウェイ | うん。まあそんなところかな |
ティア | ありがとう。お蔭で助かったわ |
ミュウ | ボク達、元の世界へ通じるゲートを探してるですの。ティアさん達も、一緒に行くですの |
ティア | ゲート…?よくわからないけど、そこに行けば元の世界に戻れるの?わかったわ、行きましょう。マルタ? |
マルタ | … |
ルーク | 何だよマルタ、珍しく黙り込んで。エミルと離ればなれになって、落ち込んでんのか? |
マルタ | … |
ルーク | … |
ルーク | けっ、それにしても、エミルもだらしねーな |
ルーク | ここに一緒にいないって事は、マルタが亀裂に飲み込まれるのを黙って見てたって事だろ? |
ティア | ルーク!?あなた、何を… |
マルタ | 違う!エミルはちゃんと、私を助けようとしてくれたもん! |
マルタ | 見てもいないくせに、勝手な事言わないで! |
| ガルルル…! |
ミュウ | 今、何かうなり声が聞こえなかったですの? |
コンウェイ | 聞こえたね。これは恐らく… |
| |
| ガルルルル! |
ティア | 魔物!? |
コンウェイ | やっぱりね |
ルーク | やっぱりね、じゃねーだろ!来るぞ! |
scene1 | 大精霊・クロノス |
ティア | あんな魔物がいるなんて…ここは一体何なの? |
ルーク | コンウェイの話じゃ、時空の歪みとかいうとこらしいぜ |
ティア | 時空の歪み…? |
ルーク | 俺もよくわかんねー。詳しく知りたきゃコンウェイに聞けよ |
ルーク | ほらマルタ、さっさと行くぞ |
マルタ | … |
ルーク | …ずっとこっちでぐずぐずしてると、エミルの奴に忘れられちまうぞ。それでもいいのかよ? |
マルタ | エミルはそんな薄情じゃないよ!勝手な事言うと許さないんだから! |
ルーク | 何だ、元気じゃねーか。ったくよ |
ティア | ルーク…もしかしてマルタを気遣って…? |
マルタ | え… |
ルーク | な、うるせー! |
ルーク | 何で俺がこいつの気遣いなんかしなきゃなんねーんだよ! |
マルタ | …もう!行くなら早く行きましょ!こうしている時間がもったいないもん! |
ミュウ | マルタさんが元気になったですの! |
| グオオッ! |
コンウェイ | 今のも魔物のうなり声かな?他にもいるみたいだね |
??? | 食らえ! |
ティア | この声…誰かが魔物と戦っている!? |
マルタ | ねえみんな、向こうを見て! |
ルーク | あれは… |
??? | くっ…こいつ、手強いな… |
| グルルル… |
コンウェイ | 苦戦しているみたいだね |
ルーク | 何だよ、しょうがねーな。面倒かけやがって |
ルーク | とおっ! |
| ズバッ! |
| ギャウウッ! |
ルーク | おい、大丈夫か? |
??? | う、うん。助けてくれてありがとう |
ジーニアス | ボクはジーニアス・セイジ。もしかして君達も、例の亀裂に飲み込まれて…? |
ティア | ええ、そうよ |
| |
ジーニアス | …だったら、少し協力してくれない? |
ルーク | 協力?何をだよ? |
ジーニアス | ボク達がいるこの変な場所は何か精霊の働きによるものだと思う |
ジーニアス | だからボク、その精霊に会って、元の世界へ帰してもらおうと思って… |
ティア | その精霊捜しを手伝って欲しい、という事かしら |
ジーニアス | うん |
| |
コンウェイ | 精霊の活動が時空の歪みの原因になるというのはあり得る話だね。なかなか興味深いな |
コンウェイ | キミが言う事が事実だとしたら、それがこの時空の歪みから出る手っ取り早い方法だろうね |
ルーク | 本当にゲートっての探すより確実なのか?適当な事言ってたら承知しねーからな |
ルーク | …じゃ、さっさとその精霊ってのを捜そうぜ |
ジーニアス | ありがとう! |
ティア | それで、その精霊はどこに行けば見つかるのか、あてはあるの? |
ジーニアス | 気配を追って来てたんだけど、さっきの魔物との遭遇で見失っちゃって… |
ジーニアス | おそらく、この近くにいるとは思うんだけど… |
マルタ | じゃあ、この辺りをみんなで捜せばいいって事ね! |
ジーニアス | うん! |
ルーク | じゃあ、さっさと行こうぜ |
scene2 | 大精霊・クロノス |
ジーニアス | そういえば、まだみんなの名前を聞いてなかったね |
ルーク | ああ、俺はルーク。こっちはティアにマルタ、コンウェイ、あとブ…ミュウだ |
ミュウ | よろしくですの! |
ジーニアス | よろしく…って、もしかして君、ルーク・フォン・ファブレ? |
ルーク | おっ、何だ?俺の事知ってんのか? |
ジーニアス | ボク、ロイドと友達なんだ。それで君の話を聞いてて… |
ルーク | ロイドの友達だって、マジかよ!あいつ元気にしてんのか? |
ジーニアス | うん!今頃は世界中で起きている異変からみんなを救おうと、あちこち駆け回ってるんじゃないかな |
ルーク | へっ、あいつらしいや |
ルーク | な、コンウェイ、聞いたろ。やっぱ知ってる奴は知ってんだよ。俺の事 |
コンウェイ | ボクがキミを知らなかった事を、まだ気にしていたのかい? |
ミュウ | ご主人様は、物事をよく覚えているですの! |
マルタ | それ、執念深いって言うのよ |
ルーク | だーっ!うるせーぞ、お前ら! |
ティア | みんな静かにして。何だか周囲の空気が変わったわ |
| |
ジーニアス | …精霊の気配だ。きっとすぐ近くにいる。ここからは慎重に行った方がいいね |
コンウェイ | 精霊を実際にこの目で見るのは初めてだよ。楽しみだな |
ミュウ | 何だか不安ですの… |
マルタ | エミルがいてくれれば、心配なんてしなくて済むのに… |
ルーク | …!あれは… |
??? | … |
ティア | あれが…精霊? |
ジーニアス | 間違いない。前に調べた文献で、記述を見た覚えがあるよ。あれは確か… |
ジーニアス | そう、クロノスだ。時空を操る強力な精霊だよ |
クロノス | ぐっ… |
マルタ | 何だか苦しんでるみたい |
ミュウ | 辛そうですの… |
ルーク | けっ、俺達がこんな目に遭ってるのはあいつのせいかもしんねーんだろ?だったら、別に気にする事ねーよ |
ルーク | さっさと話をつけて、元の世界に戻してもらおうぜ。おい、お前! |
ジーニアス | 待って、ルーク。何だか様子が変だ! |
| |
クロノス | ぐ…はぁ、はぁ… |
クロノス | ぐああぁぁぁ! |
コンウェイ | おやおや、怒らせてしまったようだよ |
マルタ | ルークの馬鹿!もっと慎重に行動しなさいよ! |
ルーク | 何でだよ!俺はただ話しかけただけだっつーの! |
コンウェイ | この様子じゃ、一戦交えるのは避けられそうにないね |
ティア | 精霊と戦う… |
クロノス | なに…が…起きている…力が…抑えられない…! |
ジーニアス | …来る! |
scene3 | 大精霊・クロノス |
ルーク | これでも食らえっ! |
クロノス | ぐああっ! |
ティア | どうなったの…? |
クロノス | … |
コンウェイ | 動きが止まったみたいだね |
ルーク | へっ、手間取らせやがって。俺にかかればこんなもんだぜ |
マルタ | ルーク一人で戦ったわけじゃないでしょ |
ミュウ | でも、どうしてクロノスさんは怒っていたんですの? |
ジーニアス | …それはボクにもわからない。文献で見たクロノスのイメージとは違うし、やっぱり様子がおかしいよ… |
ジーニアス | でも、とにかく話をしてみなきゃわからないよね… |
コンウェイ | 不用意に近付いて大丈夫なのかい? |
クロノス | うおおおっ! |
マルタ | また暴れ出したわ…! |
| |
ジーニアス | …! |
ルーク | ジーニアス、危ねえ! |
| ブオッ! |
ルーク | うおっ!? |
ルーク | ぐっ…か、身体が…!くそっ、何だこれ!?飲み込まれるぞ…! |
ティア | ルーク! |
ミュウ | ご主人様! |
コンウェイ | これは…!別の世界へ飛ばされるのか?でもこんな現象、今まで見た事が… |
ルーク | くっ…う、うあああああっ!! |
ジーニアス | ルーク!?ルーク、一体どこへ!? |
ミュウ | 大変ですの…!ご主人様が消えてしまったですの! |
scene1 | 奇妙な出会い |
ルーク | ぬおおおおおおおおーーーっ!? |
| |
ルーク | おおおおーー……って、あ、あれ?ここは… |
ルーク | 森…?ここは一体… |
ルーク | おいミュウ!ティア!マルタ!コンウェイ!ジーニアス! |
ルーク | ちっ、誰もいやしねえ… |
ルーク | つーか、さっきまでいたあの空間とは全然違うな… |
ルーク | ひょっとして、俺だけどっか別の場所に飛ばされちまったのか? |
ルーク | 見たとこ、ただの森みてーだし、空も見える…もしかして元の世界に戻って来たのか? |
ルーク | ティア達も飛ばされてるかもしれねーし…とにかく、少し捜してみた方がいいよな |
| ガサガサッ |
| |
ミュウ | …! |
ルーク | お、早速ブタザル発見! |
ルーク | 何だよ、やっぱりみんなも戻れてたんだな |
ルーク | …やり方は乱暴だったけどよ、クロノスの奴、ちゃんと俺達を元の世界に戻してくれたみたい── |
ミュウ | クロノス?元の世界って何ですの? |
ルーク | は?何って…おいおい、何言ってんだ? |
ミュウ | ティアさん、ガイさん!来て欲しいですのー! |
ガイ | どうした、ミュウ。見つけたのか!? |
ティア | …! |
ルーク | よし、ティアも発見、と |
ルーク | けどガイ、お前、いつの間に合流したんだ? |
ガイ | お前…ここで何をしている?ここは一般人は立ち入りを禁止されている森だぞ? |
ティア | 気を付けて、ガイ。アッシュ様を狙う刺客かも知れないわ |
| |
ルーク | アッシュ?刺客?お前らまで何言ってんだ? |
ガイ | …ティア、少なくとも刺客には見えないな。多分、迷い込んだんだろう |
ティア | だとしても、万が一にも間違いがあるわけにはいかないわ。捕えて尋問すべきだと思うわ |
ルーク | だーっ!いい加減にしろよ、お前ら。怒るぞ! |
ガイ | 何だかおかしな奴だな。確かに、話くらいは聞いた方がいいかもしれないな |
ティア | ええ。それにもしかしたらアッシュ様を見ているかもしれないし |
ルーク | …もういい。お前達のつまらねー冗談に、これ以上つきあうのはまっぴらだ |
ルーク | 俺は一人で帰る。お前らは勝手にしろ! |
ガイ | あ、おい、待て! |
scene2 | 奇妙な出会い |
ルーク | … |
ミュウ | あ、ガイさん、こっちですの! |
ルーク | だーっ、ついてくんな!しつこいんだよ、ブタザル! |
ガイ | どこに行くつもりなんだ?少し話を聞かせてもらいたいんだが |
ルーク | 決まってんだろ。バチカルに帰るんだよ |
ティア | そっちはシルヴァラントに向かう道よ |
ルーク | うっ… |
ミュウ | 大丈夫ですの。ガイさんもティアさんもひどい事したりはしないですの |
ルーク | だからいい加減にしろよ。何なんだよ。意味分かんねー── |
| ガサッ… |
??? | ガイ、ティア!ここに――… |
| |
??? | …! |
??? | お前は… |
ルーク | えっ…? |
| |
ガイ | アッシュ様! |
ティア | どこにいらしたんですか、アッシュ様 |
ミュウ | アッシュ様!やっと見つけたですの! |
ルーク | こいつが、アッシュ…? |
アッシュ | 何者だ?この森に無断で入るとは… |
ルーク | い、いや、俺は… |
ティア | 申しわけありません。どうやって侵入したのか… |
アッシュ | ふん、まあいい。とにかく、この間抜け面は捕えておけ |
ガイ | はっ、ただちに |
ティア | おとなしく言う事を聞いておけばよかったのに…馬鹿な人 |
ルーク | お、おい、ティア!ガイ!お前ら、本気でこんな奴の言う事聞く気かよ!どうなってんだ! |
アッシュ | …うるさい奴だ。おい、もう構わないから、この場で斬り捨ててしまえ |
ガイ | え、ですが、さすがにそれはまずいのでは…。国王陛下の方針にも反します |
アッシュ | ちっ、ならば構わん。俺が直接片を付けてやる! |
ルーク | な、ちょっと待てよ!俺はそんな… |
アッシュ | 今さら言いわけか!死ね、屑が! |
ルーク | じょ、冗談じゃねえぞ! |
scene1 | アッシュという男 |
アッシュ | ぐっ…! |
ルーク | これで終わりだ! |
ミュウ | アッシュ様! |
ガイ | そうはさせない! |
| |
ルーク | な、何だよお前ら…。どうしてみんなして、そいつの事をかばうんだよ |
ルーク | ガイ、ティア!お前らはその…俺の教育係だろ!? |
ルーク | それにブタザル!お前の主人は…俺じゃねーのかよ!? |
ルーク | それなのに…どうして… |
ティア | 近寄らないで |
ルーク | ティア…! |
ティア | まさかアッシュ様に勝つなんて…。やはり、うつけの振りをした刺客だったのね |
ガイ | ああ、危うく騙されるところだった。だがこれ以上、アッシュ様に手は出させないぜ |
ミュウ | ですの! |
ルーク | お前ら…マジかよ。マジでそんな事… |
ルーク | … |
ルーク | 何だよ…何で…何がどうなってんだよ… |
ルーク | …くそっ! |
| |
アッシュ | 逃がすな!あいつを捕らえろ! |
ガイ | はっ! |
ティア | わかりました |
| |
ルーク | やっと振り切ったか…?しつこく追いかけてきやがって |
ルーク | …ったく、何が刺客だ。冗談じゃねっつーの |
ルーク | ガイもティアもミュウも、あんな奴の肩を持ちやがって。何がどうなってんだ |
ルーク | あいつら…あいつらだけは何があっても俺の味方だと思ってたのによ… |
ルーク | あー、やめだやめだ!これ以上考えたって仕方ねえ。とにかくバチカルだ |
ルーク | バチカルに帰ってそれで…って、待てよ。どっちに行きゃいいんだ? |
ルーク | ん?誰かいるぞ…? |
??? | どうして…?どうしてわたし、こんな… |
ルーク | 何だ、あの女。何か様子が変だぞ… |
ルーク | …待てよ、またさっきみたいな目はたくさんだ。ここはちょっと隠れて様子見だな |
??? | … |
ルーク | どこへ向かってんだ…? |
scene2 | アッシュという男 |
??? | … |
??? | ここは…一体どこなの…? |
ルーク | …何だ?ここはどこって、まさかあいつ… |
ルーク | 俺みたいに飛ばされてきたのか? |
ルーク | いや、まだわかんねえぞ。あのアッシュの手下かもしんねーし… |
??? | あの街は本当に… |
??? | そんな…どうして…あれはずっと昔に――… |
??? | あ…あああ… |
ルーク | ん?どうしたんだ?急にガタガタ震え出したぞ? |
??? | まさか…まさか… |
ルーク | 何だ、あいつ。どんどん様子が変になってくじゃねーか |
??? | あああああ…! |
ルーク | だーもう、くそっ! |
ルーク | おい! |
??? | !? |
ルーク | 急に震えたりなんかして、何があったんだよ!? |
??? | あ…あそこ… |
ルーク | あそこ…? |
| |
ルーク | 何だ…火か? |
ルーク | って、街が燃えてるじゃねーか…! |
| グオオオオッ! |
街の男 | うわああああっ! |
街の女 | きゃーーっ! |
ルーク | 魔物の声に人の悲鳴…まさか…襲われてるのか…!? |
ルーク | …!おい、お前ひょっとしてあの街の… |
| ガサッ! |
ルーク | …! |
| グオオオッ! |
ルーク | ちっ、こっちにまで来やがった!おい、お前! |
??? | え…? |
ルーク | ぼさっとしてんじゃねえ!逃げるか一緒に戦うか、どっちかにしろ! |
scene1 | 少女と心の闇 |
ルーク | ふう、何とか倒せたみてーだな |
??? | … |
ルーク | って、おい!何でじっとしてんだよ!ありゃお前の街じゃねーのかよ!? |
??? | そう…だと思うけど…何かが違う…でも… |
??? | あ…ああ…やめて…!火を、消さないと…!!人が、死んじゃう…!…ううっ!! |
ルーク | おい、どうした!? |
??? | おか、しいな…身体が、震えちゃって…動かない… |
??? | 昔の事だって…子どもの頃の事だろってリッドが言ってくれたのに… |
ルーク | あーもう意味わかんねー!お前の街も何かあったってのかよ? |
??? | …うん。子どもの頃に、街が火事になったの…人が死んで…大変な事になって… |
ルーク | 子どもの頃って、何だ昔の話かよ。それより今の方が重要じゃねーの? |
街の女 | きゃあああ! |
ルーク | !だーもう、何で俺がこんな事! |
??? | …どこに行くの? |
ルーク | 知るかよ、くそっ!ただ、これ以上悲鳴とか聞きたくねーんだよ! |
??? | で、でも… |
ルーク | そこでうだうだやってたきゃ勝手にしろ!俺は行くからな! |
??? | あ… |
??? | … |
??? | 街を救う… |
??? | わたしにも…できるのかな…今なら…できるのかな…? |
??? | …昔の事より…今の事の方が重要… |
??? | …待って!わたしも行く! |
scene2 | 少女と心の闇 |
ルーク | って、何だよ結局来たのかよ。お前本当に大丈夫なのか? |
??? | うん、平気…。街を助けるって走っていったあなたの姿を見て、思ったの |
??? | わたしも…今だからこそ、出来る事をしなくちゃって |
ルーク | …だったら好きにしろよ。足手まといになるんじゃねーぞ |
??? | うん、ありがとう… |
女の子 | きゃああっ! |
| グオオオオッ! |
ルーク | おい、やめろ!! |
| バシィッ! |
| ギャオオッ! |
ルーク | 怪我はねーか? |
女の子 | う、うん。お姉ちゃん、お兄ちゃん、ありがとう… |
??? | 早く逃げて。街を出て、火事が収まるまでは森に隠れているといいよ |
ルーク | ふーん、お前、一応ちゃんと戦えんだな |
??? | …うん。そう、みたい。あなたのお蔭、かな |
ファラ | そういえば、まだ名前を聞いてなかったね。わたし、ファラ |
ファラ | あなたは? |
ルーク | 俺はルーク。ルーク・フォン・ファブレだ |
ファラ | ありがとう、ルーク。元気付けてくれて |
ルーク | …別にそんなんじゃねーよ |
ルーク | 目の前でうじうじされてたんじゃ迷惑ってだけだっつーの |
| グオオオオッ! |
ファラ | 新手の魔物!? |
ルーク | ちっ、一匹だけじゃなかったのかよ |
ファラ | これ以上、好きにはさせない! |
scene3 | 少女と心の闇 |
ルーク | 今度こそ終わったか? |
ファラ | だといいんだけど… |
| ガウウッ! |
ルーク | まだいるのかよ! |
| グオオッ! |
ファラ | ルーク、気を付けて!こっちからも来てる! |
ルーク | だーっ!どんだけいやがるんだ! |
| グルル… |
ファラ | これ以上増えると、さすがに二人じゃ厳しいね |
ルーク | くそ… |
| グオオッ! |
ファラ | くっ…! |
| ズバッ! |
| ギャウウ! |
ルーク | 今のは…!? |
??? | 二人とも大丈夫か? |
ルーク | 誰だ、お前? |
ルドガー | 俺はルドガー・ウィル・クルスニク。君達を助けに来た |
ファラ | わたし達はまだ平気!だからお願い早く街の人を避難させてあげて! |
ルドガー | 君の気持ちもわかるけど、俺は「君達」のような人を助けるために活動をしているんだ |
ファラ | わたし達を…助けに? |
| グルル… |
ルーク | …何だあの魔物… |
ルーク | 黒いモヤみてえなもので身体がおおわれてやがる… |
ルドガー | 時歪の因子(タイムファクター)…ここにいたか。先にあいつを倒そう! |
ルドガー | 説明は後でするよ |
ルーク | なっ、何だその格好…!? |
ルーク | …ちっ、しょうがねえな。後でちゃんと話聞かせろよ!いくぞ、ファラ! |
ファラ | あ…うん! |
scene1 | 再会、そして脱出 |
ルドガー | はああっ! |
| ズバッ! |
| ギャウウッ! |
ルドガー | よし、あとはこの魔物…時歪の因子を破壊すれば元の世界に戻れる |
ルーク | お、おい、お前…今変身してたよな?一体どうなってんだ!? |
ファラ | 変身した途端すっごく強くなったし…あなた…何者なの? |
ルドガー | 変身…ああ、驚かせてごめん |
ルドガー | この骸殻の力を使わないと、時歪の因子を破壊出来ないんだ |
ルーク | ガイカク…?何だそりゃ… |
ルドガー | 特異な力だし、あまり公にはしていないんだ |
ファラ | ちょ、ちょっと待って。あなた、ルドガーって言ってたよね。話の続きを聞かせてくれる? |
ルドガー | ああ、そうだったな |
ルドガー | いきなりだけど…君達はこの世界の住人じゃない…、そうじゃないか? |
ファラ | え… |
ルーク | 何言ってんだ?この世界も何も俺は… |
ルドガー | …うーん、言い方が少し悪かったかな |
ルドガー | じゃあ、これならどうだ? |
ルドガー | 君達が今いるこの世界は、君達が本来知っているはずの世界と、微妙に何かが違っていたりしないか? |
ファラ | あ… |
ルーク | …そうだ! |
ルーク | 俺を知ってるはずの奴らが俺の事知らねーとか言って… |
ファラ | 何年も前に起きたはずの出来事が、当時ととても似た場所でまた繰り返されてて… |
ルドガー | やっぱりそうか |
ルーク | どういう事なんだ!?ルドガー、お前知ってるのか? |
ルドガー | ここは分史世界といって、君達が元々いた世界から分岐した別の可能性の世界なんだ |
ファラ | 別の…可能性… |
ルーク | 時空の歪みってのを聞いた事あるけどよ、それとは違うのか? |
ルドガー | 元の世界とは別世界、という点では同じだけど基本的には別物だよ |
ルドガー | そうだな…分史世界と元の世界をつなぐ空間が時空の歪み、という感じかな |
ルーク | …よくわかんねー。けど、ちっと安心したぜ |
ルーク | やっぱりあいつらは、俺の知ってるあいつらじゃなかったって事だよな |
ファラ | ねえ、ルドガー。この分史世界から、元の世界に戻る事は出来るの? |
ルドガー | ああ、それは俺に任せてくれ |
ルドガー | 君達を救い出すために、ここへ来たんだから |
ルドガー | 本来、分史世界へは、骸殻の力を持つ人間しか入る事が出来ないんだけど、 |
ルドガー | 時空の歪みの影響で、君達みたいに力を持たない人達が分史世界に迷い込むようになってしまったんだ |
ルドガー | だから、今俺と兄さんで迷い込んだ人達を助けて回ってるんだ |
ルドガー | 早速、君達を連れて元の世界へ脱出したいんだけど、いいかな? |
ルーク | そういや助けるって言ってたよな。じゃあ早速頼むぜ… |
ルーク | って、ちょっと待った! |
ルドガー | どうかしたのか? |
ルーク | その…元の世界に戻る前に、時空の歪みに行く事は出来ないか? |
ルーク | まだ他にも何人かいるんだ |
ルドガー | 他にも仲間がいるって事だよな?わかった、時空の歪みに連れて行くよ |
ルドガー | 分史世界と違って、時空の歪みへは骸殻の力を使えば自由に行き来できるんだ |
ルーク | 本当か?本当に行けるんだな?おし、頼んだからな! |
ルドガー | 任せてくれ。それじゃ、いくぞ! |
ルドガー | はっ! |
scene2 | 再会、そして脱出 |
ミュウ | ご主人様… |
ティア | ルークがどこへ消えたのか、捜す手がかりはないの?ジーニアス |
ジーニアス | ゴメン…ボクも、クロノスの事は文献で見た事くらいしかわからなくて…一体何が起きたのか… |
ティア | コンウェイ、あなたは何かわかる? |
コンウェイ | いや。ボクの知らない現象だったから、はっきり言ってお手上げだね |
ミュウ | みゅうう…ご主人様、どこへ行ったんですの… |
ジーニアス | ボクのせいだ…。ボクがあの時、不用意にクロノスに近付いたりしたから… |
マルタ | ルーク… |
ルーク | すげー。本当に戻って来れたぜ |
マルタ | ル、ルーク!? |
ミュウ | ご主人様! |
ルーク | よう、お前ら。よしよし、ちゃんと全員揃ってるみてーだな |
| |
ジーニアス | ルークーー!無事だったんだね、よかったよー! |
ミュウ | みゅうう~~!ご主人様、嬉しいですの~~! |
ルーク | …! |
ルーク | …ちょっと待てよ、お前ら、本当に俺の知ってるお前らだよな? |
マルタ | はあ? |
ティア | 何を言っているの、ルーク? |
ルーク | いや、あれは何とかって別の世界だしガイとかも見当たらねーし、…大丈夫っぽいな |
ミュウ | ご主人様…大丈夫ですの? |
マルタ | さあ…? |
ティア | ルーク、しっかりして。あなたが何を言っているのか、さっぱりだわ |
マルタ | 別のところに飛ばされた時に、頭でも打ったんじゃないの? |
ルーク | おっ、そのうっせー口調…!へへっ、やっぱり本物だな |
ミュウ | ご主人様、何だか嬉しそうですの |
ティア | マルタの言った通り、頭でも打ったのかしら…? |
マルタ | き、気持ち悪い…どうしちゃったの…? |
コンウェイ | ところで、キミと一緒に現れた二人は誰だい? |
ルーク | ん?ああ、忘れてたぜ。ファラとルドガーだ。こっから飛ばされた先の世界で会ったんだ |
ルドガー | 初めまして。ルドガー・ウィル・クルスニクだ |
ファラ | わたしはファラ。これから、よろしくね |
| |
マルタ | …!あれ…あなた、確か… |
ファラ | マルタ…! |
ファラ | マルタだよね?よかった!無事だったんだね! |
ティア | 知り合いなの、マルタ? |
マルタ | あ、うん。元の世界で、私が亀裂に落ちる直前に出会ったんだけど… |
マルタ | ファラ、どうしてあなたがここに?あと、エミルは無事? |
ファラ | エミルはどうにかしてあなたを助けようと、あちこち駆け回ってたんだよ |
ファラ | わたしとリッドも、その手伝いをしてたんだけど…わたしだけ亀裂に落ちちゃって |
マルタ | そうだったんだ…。ファラ、ありがとう…戻ったらみんなにもお礼言わなくちゃね |
ルドガー | 落ちた人を助けようとして亀裂に落ちている人もいるのか… |
ルドガー | 根本的な原因を突き止めて解決しないと、どうにもならなそうだな… |
マルタ | エミル…。お願い、どうか無事でいて… |
ファラ | マルタ…。きっと大丈夫だよ。だから、早く元の世界に戻らないとね |
ルーク | …あ、そうだ!そういえばクロノスはどうした!? |
ルーク | あの野郎、俺をあんなところに… |
ジーニアス | それが… |
| グオオオッ! |
| |
ルーク | クロノスか!? |
コンウェイ | 違うね。あれは別の魔物だ |
ルドガー | 突っ込んで来るぞ! |
scene3 | 再会、そして脱出 |
ルーク | ったく、てっきりクロノスかと思ったのに…雑魚はお呼びじゃねーっつーの! |
ティア | クロノスだったら、ここにはもういないわ |
ジーニアス | ルークを別のところに飛ばした後、クロノスもどこかへ行っちゃったんだ |
ルーク | 何だよ、捕まえておけよな! |
ルーク | せっかく戻って来たら、借りを返してやろうと思ったのに |
コンウェイ | …当初の目的を忘れてないかい?最初はあくまでクロノスと、話し合いをする予定だったはずだけど |
マルタ | ルークが近寄ったら、怒って襲い掛かって来たんだよね |
マルタ | ルークが何か変な事したんじゃない? |
ミュウ | ご主人様… |
ルーク | いやだから、俺は話しかけただけだっつーの! |
ルーク | それに、元の世界へはルドガーが連れて帰ってくれるんだ |
ルーク | だから別に問題ねーだろ |
コンウェイ | へぇ、キミが…。時空の歪みを自由に出入りできる力なんて、興味深いな |
ルーク | 俺がクロノスにあっちに飛ばされたからこそ、ルドガーに会う事が出来たんだからな |
ルーク | 元の世界に戻れるのは言ってみれば俺のお蔭だよな! |
ティア | …呆れた |
ルドガー | これから君達を元の世界へ連れて帰る |
ルドガー | みんな、俺の周りに集まってくれ |
ティア | 無事に出られるといいのだけど… |
ルーク | 心配すんなって。さっきもちゃんとここへ帰って来たんだからよ |
ルーク | …ん?つか、コンウェイ |
ルーク | お前は自分の世界に帰る方法を探してたんじゃねーのかよ? |
コンウェイ | まあ、必ずしもここに帰る手段があるとは言い切れないし…それに、少し興味が湧いてきたんだ |
コンウェイ | キミ達の世界に… |
ルーク | ふーん。ま、お前がいいんなら別にいいけどよ |
ルドガー | それじゃあ、準備はいいか? |
マルタ | うん!無事にエミルのところに帰れますように…! |
ミュウ | お願いしますですの… |
ルーク | 行き先、間違えるんじゃねえぞ |
ルドガー | ああ、任せてくれ。じゃあ… |
ルドガー | いくぞ、元の世界へ! |
Name | Dialogue |
scene1 | 捉えた違和感 |
| ゴゴゴ…ゴ… |
リタ | やっと揺れが収まった…一体何なのよ、この地震は |
| ゴゴゴ…! |
リタ | …!また…! |
| ズバッ! |
リタ | 地面に亀裂まで…。どう見てもただ事じゃないわね |
リタ | とにかく、急いでメルトキオに戻った方がよさそうだわ |
| |
リタ | 街もいつになく騒然としてるわね…。あんな大地震が起こったんだし無理ないけど… |
リタ | それにしても、さっきのあの光…。タイミングから考えて、地震の発生に何か関係してる可能性も――… |
リタ | … |
リタ | 光…海の向こうからでも見えるほどの…あれだけの強さを出せるもの… |
リタ | …まさか… |
リタ | 調べてみる必要がありそうね。あの本…確か図書館の書庫よね。面倒だけど行かなきゃ |
??? | … |
scene2 | 捉えた違和感 |
リタ | …算出される力の総量…なるほど…ありえない話じゃない。でもどうして… |
??? | およ、こんなところで何してんの、リタっち? |
| |
リタ | レイヴン!?…って、いきなり驚かすんじゃないわよ!おっさんこそ何してんのよ! |
レイヴン | いやあ、リタっちが深刻そうな顔して図書館に入っていくのが見えたから、どうしたのかなーって思ってさ |
リタ | まあ深刻は深刻だけど…別におっさんには関係ないでしょ |
レイヴン | おーおー、冷たいねえ。まあ、そう言わずに、俺様に相談してみなさいって |
レイヴン | こう見えても人の相談に乗るの、結構得意な方なんよ? |
リタ | どこがよ。うさんくさいわね |
リタ | …まあ、いいわ。ちょうど考えを整理したいと思ってたとこだし、あんたを壁だと思って喋る事にする |
レイヴン | ちょ、壁って… |
リタ | あたし、さっき妙な光を見たの。場所は、ウィンドルとア・ジュールの国境地帯辺りだと思う |
リタ | で、その閃光について、思い当たる節があったからここでいろいろ調べてたってわけ |
レイヴン | ウィンドルとア・ジュールの国境の閃光?またまた、そんなの見えるわけないでしょ。それより地震よ大地震 |
リタ | 壁がしゃべるな!その光がこの大地震の発生に関係してるかもしれないんだから |
レイヴン | え、それホント? |
リタ | あたしが見た閃光の正体は、魔導器(ブラスティア)。おそらくそれは間違いないわ |
レイヴン | なるほど。リタっちは魔導器の専門家だもんねぇ。そんで何かしら気付くところがあったと |
レイヴン | で、それがどうこの大地震と関係してるわけ? |
リタ | あれだけの閃光の原因として考えられるものは多くないわ。魔導器は、その数少ない一つ |
リタ | で、その直後の地震でしょ。関連性があると考える方が自然じゃない |
リタ | でもあくまで仮説だし、わからない事も多すぎる。だから確かめないと |
リタ | それに本当にあれが魔導器だとしたら、相当無茶な事をしてるはずよ |
リタ | そんな事するバカはとっちめてやらないとあたしの気が済まないわ |
リタ | 大体、海を越えて視認できるなんて既存の魔導器とはケタ違いの出力よ。そんなの研究していたとしたら… |
リタ | 何であたしを呼ばないのよ! |
リタ | …って、そうじゃなくて、国境で何でそんな魔導器を… |
レイヴン | 戦闘用に特別な魔導器を使ったとか?国境の辺りで見えたってんなら、いかにもありそうな話じゃない? |
レイヴン | ウィンドルとア・ジュールが戦争を再開、魔導器を使って派手にやりあったとかね |
リタ | それはそうかもしれないけど… |
リタ | …そもそも、もうすぐ和平交渉をするってところまで修復された二国が、何でまた戦争を始めたりするのよ? |
レイヴン | さあねえ。魔導器と大地震の関係はともかく、戦争なんてのは案外、簡単に始まるもんかもよ? |
レイヴン | ちょっとしたきっかけで火がついてそのままあっさりケンカ沙汰…人間同士よくある話でしょ |
リタ | 政治に興味ないあたしでさえ、両国が和平を急いでたって事は知ってる。それなのに… |
レイヴン | ふーん。何がそんなに気になるのかおっさんにはわからんけど、でも実際、どうするわけ? |
リタ | 自分の目で確かめる |
レイヴン | はい? |
リタ | これ以上ここであれこれ考えてたって仕方がないもの。行って確かめる |
レイヴン | 行くって、あの、リタさん?もしかして国境地帯の事、仰ってる?戦争やってるかもしれないのに? |
リタ | 危険かもしれないけどしょうがないわ。本当に未知の魔導器があるなら確かめないと |
レイヴン | いやいやリタっち。いくら何でもそりゃ無茶でしょ。もうちょっと考えた方がいいって |
リタ | じゃあどうすればいいのよ。傭兵でも雇えっての?そんな金ありゃしないわよ |
レイヴン | いやそうじゃなくてね…あーもう、しょうがない。こうなったら、おっさんも付き合いますよ |
リタ | はあ?あんた、話聞いてた?あたしは観光に行くわけじゃないの!わかってる? |
レイヴン | だからよ。リタっち一人、そんなとこ行かせたとなれば、周りから何て言われるやら。ね? |
リタ | はあ…なら好きにすれば?おっさんがいようがいまいが役に立つとは思えないけど |
レイヴン | ありがとー、リタっち!よし、じゃあ早速しゅっぱ~つ! |
| |
リタ | …何なのよ、あの呑気っぷりは。バカっぽい… |
リタ | …何だか一気に、先行きが不安になってきた…。本当に大丈夫なの?あのおっさん… |
scene1 | 国境地帯への道 |
レイヴン | んでリタっち、国境地帯へはどうやって行くつもり?やっぱり船で? |
リタ | そうね。シルヴァラント港へ行ってウィンドル港かア・ジュール港、先に着く船に乗ろうと思ってる |
レイヴン | おっさんは、どちらかといえばウィンドル経由の方がいいかなあ。寒いところは苦手でさ |
リタ | あんたの希望なんて聞いてないから |
リタ | っていうか、この状況で船が出てるかどうかだって── |
| |
| ゴゴゴ… |
レイヴン | おおっと。また地震… |
レイヴン | 一向に収まる様子がないけど、一体世界に何が―― |
| ズゴゴゴゴ…! |
レイヴン | ちょっとちょっと…!これ、今までより大きいんじゃない? |
| |
| ズザッ! |
レイヴン | リタっち、足元!!地面にヒビが…! |
リタ | え!?ちょ、落ち――…!! |
??? | はあっ! |
レイヴン | なっ!? |
| |
??? | 大丈夫か |
リタ | う、うん… |
リタ | って、あんた!ヴェイグ!? |
リタ | 久しぶりじゃない。前にロイドと一緒にあんたを訪ねて、遺跡の事を教えてもらったわよね |
ヴェイグ | ああ、あの時の… |
リタ | …あ、ありがと。助かったわ |
リタ | それにしても、こんなところで会うなんて偶然ね |
??? | よかった、間に合ったみたいね |
レイヴン | …!ちょっと…!この輝かしいお嬢様はどこの誰様!? |
ヴェイグ | 俺の幼なじみの…クレアだ |
クレア | クレア・ベネットです。よろしく |
レイヴン | クレアちゃんね!俺様はレイヴン。よろしく~! |
クレア | よろしくお願いします |
| |
リタ | はあ、このおっさんは…全く。…ところで、あんた達はどうしてここに? |
ヴェイグ | …メルトキオに用がある |
リタ | こんな状況で出歩くとか正気なの? |
リタ | って、人の事言えた義理じゃないわね |
| ゴゴゴ… |
レイヴン | ううむ、また揺れたねえ |
クレア | ヴェイグ、村は大丈夫かしら…。みんなが心配だわ |
ヴェイグ | ああ…早く用を済ませて村へ戻ろう。それにしても、この地震は一体… |
ヴェイグ | 地震の規模、それに頻度も… |
ヴェイグ | 世界に何らかの異変が起きているとしか思えない… |
リタ | 同感ね。これだけ続くのは普通じゃないわ |
クレア | この地震の影響で世界中が混乱してて船も休航しているみたいだし…どうなってしまうのかしら… |
リタ | えっ、ちょっと、それ本当!? |
リタ | あたしら、これから港へ行って、船に乗るつもりだったんだけど |
ヴェイグ | それは諦めた方がいい |
ヴェイグ | 海も荒れているし当分は難しいだろう |
レイヴン | あちゃー、やっぱしか |
レイヴン | となると陸路でウィンドルへ行くしかないかねえ |
リタ | …そうするしかないか |
リタ | 何としてでも、あの光の原因を自分の目で確かめてやるんだから! |
ヴェイグ | 地震の影響を受け、どこも足場が悪い状況だ。道中はくれぐれも気をつけろ |
リタ | ありがとう、あんた達もね |
クレア | あ、そうそう。ちょっと待って |
クレア | もしよかったらピーチパイを持っていかない? |
クレア | お腹が空いたら、どうぞ |
リタ | …いいの?結構、手が込んでるみたいだけど |
クレア | ええ。今日の朝に焼いたばかりで、作りすぎてしまったの |
リタ | じゃあ、ありがたくもらっとくわ。ありがと |
ヴェイグ | では、オレ達はもう行く |
ヴェイグ | またどこかで会おう |
| |
レイヴン | いやあ、クレアちゃん、美人だったねえ |
リタ | そんなに気に入ったなら、向こうについていけば? |
レイヴン | そんな事言わないでって。リタっち~! |
リタ | うざ… |
レイヴン | そんなつれなくしないで、もらったピーチパイでも食べて、機嫌直してってば |
リタ | …何このピーチパイ。すごく美味しい |
レイヴン | クレアちゃんは料理も上手か |
レイヴン | これで甘いものじゃなかったらよかったんだけどねえ |
リタ | 美味しいものを食べたら、何か元気出てきたわ |
リタ | じゃ、改めてウィンドルへ向かうわよ |
レイヴン | へいへーい |
scene2 | 国境地帯への道 |
レイヴン | ようやくウィンドルに入った…やっぱり歩きだと疲れるねえ |
リタ | 不満があるなら、ついてくんのやめたら? |
レイヴン | もー、リタっちったら、冷たいんだから |
リタ | リタっちって言うな! |
レイヴン | おーっと、向こうに村らしきものを発見! |
レイヴン | あそこでちょっち休憩しない? |
リタ | …あのバカ、疲れたって言いながら、元気に走ってんじゃない |
| |
レイヴン | はて、この村は一体…? |
リタ | あんまりのんびり出来そうな雰囲気じゃないわね… |
リタ | そこかしこの民家に焼けたような跡… |
リタ | 大きな火事でもあったのかしら |
レイヴン | 地震の影響…ではなさそうだねえ。修理されてる部分もあるみたいだし… |
レイヴン | 過去に戦場になった、とか? |
リタ | ア・ジュールがここまで攻めて来たって事? |
リタ | 国境からはだいぶ離れてるけど… |
| |
??? | あんた達、旅の人? |
リタ | …! |
アーチェ | あたし、アーチェ・クライン。あんた達は? |
リタ | リタよ。リタ・モルディオ |
リタ | こっちはただのおっさん |
レイヴン | ただのおっさんって… |
レイヴン | まあおっさんだけど。俺様はレイヴン。よろしくね |
アーチェ | リタにレイヴンね、よろしく! |
アーチェ | ここはトーティス村だよ。あんた達、ここには初めて来たの? |
リタ | あ、うん。まあ… |
アーチェ | だったら、びっくりしたでしょ?あちこち焼け焦げててさ |
アーチェ | 元騎士団員に悪い奴がいてさ、そいつにやられたらしいよ |
アーチェ | ひどい事するよね |
リタ | 何よそれ… |
アーチェ | あ、でもその悪い奴はクレスが倒してたって話なんだけどね |
アーチェ | そんな事があって村の人もだいぶ減ったけど、今は残った人達で何とか村を再建しようとしてるの |
アーチェ | あたしは元々旅人だったんだけど、ここで手伝っている内に、放っておくわけにもいかなくなってさ |
レイヴン | 再建のお手伝いをしてるってわけね |
レイヴン | 偉い!アーチェちゃん、偉いよ!おっさん感動して泣いちゃう |
アーチェ | 当ったり前じゃない! |
アーチェ | …ま、あたしが勝手に居ついてるってのもあるんだけどね |
??? | おーい、アーチェ!油売ってないでこっち手伝えよ! |
| |
アーチェ | うっさいわねぇ!あたしは人と話してんの!後でちゃんと行くわよ! |
チェスター | 早く来いよ!って…ん?お前達誰だ?見ない顔だな |
アーチェ | リタにレイヴンだよ。二人は旅人で… |
アーチェ | えーと…どこから来たんだっけ? |
リタ | シルヴァラントよ |
チェスター | シルヴァラント…? |
チェスター | わざわざこんなところに何で―― |
村の男 | うわあ!魔物だ!チェスター、助けてくれ! |
チェスター | ちっ、また魔物かよ!どこからともなく現れやがって…今行く! |
| |
レイヴン | ありゃ結構な大物だねぇ…リタっち、どうする? |
リタ | 決まってんでしょ! |
リタ | ほらおっさん、あたし達も加勢するわよ! |
レイヴン | はいはい、じゃあいっちょ行くとしますか! |
scene1 | 悲劇の村、トーティス |
アーチェ | 助かったーありがとね!二人とも強いんだねー、びっくりしちゃった |
リタ | あんた達こそ、なかなかやるじゃない |
チェスター | 二人が加勢してくれたお蔭で助かったぜ。ありがとよ |
チェスター | ところで…お前達、どうしてわざわざシルヴァラントから? |
リタ | ああ、その話ね… |
アーチェ | 妙な閃光、ね… |
リタ | うん、あの光は地震の発生と関連しているんじゃないかって疑ってるんだけど |
レイヴン | さらに言えばその光、戦争再開の印だったんじゃないかなーっておっさん、予想したんだけど。どう? |
チェスター | お前達の予想通り、ウィンドルとア・ジュールが戦争を再開したのは事実だ… |
チェスター | さらに、その戦闘でウィンドル軍が新兵器を投入したって噂も耳にした |
リタ | 新兵器…。それが魔導器かもしれないって事ね |
リタ | はあ…。そもそも魔導器ってのは、人間の生活を豊かにする目的で生み出されたはずなのに… |
レイヴン | …そんな便利な装置も、ちょっと手を加えれば、簡単に人を殺すための兵器になってしまうって事よ |
チェスター | …でもよ、リタの言う光と地震の関係性が本当だったとしたら…許せねえよ…! |
チェスター | あいつらの戦争のせいで、各地で大地震が起きてるって事だろ? |
チェスター | 軍人同士勝手に戦争するだけでも迷惑だってのに… |
チェスター | ちょっと前だってオレ達の村をめちゃくちゃにして… |
チェスター | この村の次は、世界か…?あいつらは、一体どれだけのモンを犠牲にすりゃ気が済むんだよ! |
アーチェ | チェスター… |
チェスター | … |
チェスター | …よし、決めた。リタ、オレもお前達と一緒に行く! |
チェスター | 知りたいんだ、真実を… |
アーチェ | ちょっと、チェスター!クレスとの約束を忘れたの?この村はどうすんのよ!? |
アーチェ | 村の復興はまだ途中で、さっきみたいに魔物だって簡単に入ってきちゃう状況だし… |
アーチェ | あんたまで村を離れちゃったら残された村の人達はどうすんの?一体誰がみんなを守るの? |
チェスター | それはそうだけど…でも、オレは―― |
アーチェ | クレスにも村を頼むって言われたんでしょ! |
アーチェ | 親友の頼みを無視するの? |
チェスター | そうは言ってねえよ! |
村の男 | おーい、チェスター!手が空いたらこっちに来てくれ!見せたいものがあるんだ! |
チェスター | … |
アーチェ | ねえ。あんたはクレスにさ、ただ村の守り「だけ」を任されたとでも思ってんの? |
アーチェ | みんなあんたをすっごい頼りにしてるんだからさ |
アーチェ | そこは、あたしでも代わってはあげられない…代わりたくても、代われないの |
レイヴン | 慕われてんだねえ |
チェスター | …そんなんじゃねえよ |
チェスター | みんながオレを頼りに…か。そう、だな… |
チェスター | 今オレが離れちまったら、せっかくここまで再建した村も、魔物に荒らされちまうかもしれねえ |
アーチェ | そうそう。あんたはそれでいいのよ。あんたはこの村を守んなきゃ。死んじゃった妹のためにもさ |
アーチェ | その代わり… |
アーチェ | このあたしがリタ達についてって、真実を見てきてあげる |
チェスター | はぁ!? |
レイヴン | アーチェちゃんが? |
アーチェ | そ。あたしの実力は、もうわかったでしょ?バンバン力になっちゃうから! |
リタ | ありがとう、アーチェ。あんたが一緒に来てくれると、心強いわ |
チェスター | 全く、相変わらず勝手なヤツだな… |
チェスター | じゃあアーチェ、そっちは頼むぞ。後、クレスの事もな |
アーチェ | そうそう。放っておけないよね!クレスったら戦争が再開したって聞いた途端飛び出してっちゃってさ! |
アーチェ | ま、その事も何かわかったらちゃんと知らせてあげるから!どーんと任せなさいって☆ |
レイヴン | 丸く収まったところで、それじゃ、そろそろ行くとしますかね |
レイヴン | このまま例の国境地帯へ向かう? |
リタ | ええ、勿論 |
レイヴン | …あ、確かその途中にバロニアがあったよね。先にそっちに寄った方がいいかも |
リタ | 何でバロニアに寄らなきゃいけないのよ。これ以上の寄り道なんてゴメンだわ |
レイヴン | でもさ、この国とア・ジュール、戦争になってんのよ |
レイヴン | いろいろ準備とか…やる事があるでしょ |
アーチェ | あー、それがいいかも |
アーチェ | ヘタに動いて牢屋にでも入れられたら、それこそリタは調査に行けなくなるじゃん |
リタ | うー…もう!わかったわよ! |
リタ | とっとと行って、用事済まして一日でも早く国境に行くわよ! |
レイヴン | せっかちだねえ。ま、それじゃ、バロニアを目指すって事で |
アーチェ | じゃあ行ってくるね、チェスター!しっかり村を守るのよ!何かあったら許さないんだから! |
チェスター | バーカ。オレがいる限りそんな事させねえよ |
チェスター | 三人とも、気を付けて行けよ! |
scene2 | 悲劇の村、トーティス |
レイヴン | ふいー。ようやくバロニアに到着っと |
リタ | 相変わらず大きな街ね |
リタ | でも、何だか前に来た時とは様子が違う…。活気に欠けるっていうか |
アーチェ | 確かにいつもはもっと賑やかだよね。やっぱり戦争が始まったのと、地震が頻繁に起きてるせいかなあ |
リタ | そうかもね… |
レイヴン | さて、じゃあ始めますかね |
リタ | 具体的に何を準備するのよ?無駄な寄り道までさせといて |
レイヴン | まあまあ。ここは情報収集が鉄則ってもんよ |
レイヴン | おっさんに任せときなさいって |
アーチェ | そうだね。魔導器の事とか新兵器の事とか、光の事とか…知ってる人がきっと見つかるよ |
リタ | …そんなうまくいくものなの? |
リタ | うーん…一通り聞いて回ったけど… |
アーチェ | 新兵器の事は、みんな知らないみたいだね |
レイヴン | わかった事といえば、戦争が再開したキッカケくらいか |
レイヴン | みんな口を揃えて、ア・ジュールが攻撃を仕掛けてきたからだって話してたねえ |
レイヴン | そもそもの両国の争いの発端は星のカケラを巡って、ウィンドルがア・ジュールに攻め込んだって話よね |
レイヴン | ア・ジュールはその事を根に持ってて和平交渉をエサにウィンドルを油断させて、総攻撃を仕掛けた… |
アーチェ | …ウィンドルはア・ジュールの攻撃に対抗するために、やむなく兵器を使った、みたいな感じかな? |
リタ | まあ、ア・ジュール側の話を聞いていない以上、まだ何とも言えないけどね |
リタ | …よし。こうなったら奥の手よ。二人とも、お城へ行くわよ |
アーチェ | あたし達がいきなり行って、お城へ入れてくれるかな? |
リタ | 何とかなるでしょ。あそこには知り合いもいるしね |
レイヴン | 知り合い…ああ、そういう事ね |
| |
警備兵 | 怪しい者を城内へ通す事は、まかりならん |
リタ | 何でよ! |
レイヴン | リタっち…さっきの余裕は一体どこに… |
リタ | うっさい、おっさんは黙ってて! |
リタ | 仕方ないわね…こうなったら、中に入る事は諦めるわ |
リタ | 代わりに、エステル… |
リタ | エステリーゼをここへ呼んでくれる? |
警備兵 | お前のような不審者がエステリーゼ様と知り合いなわけがないだろう。嘘をつくならもっとマシなものにしろ |
リタ | なっ…嘘なんかつくわけないでしょ! |
リタ | あたしはエステル…、エステリーゼの… |
警備兵 | エステリーゼ様の、何だ? |
リタ | だから、エステリーゼの…… |
警備兵 | だから、何だと言うのだ!フン、どうせ答えられんのだろう。ほら、さっさと立ち去れ! |
レイヴン | リタっち、どうしたのよ?言えばいいじゃない、友達だって |
リタ | …う、うっさいわね! |
リタ | あーもうっ、早く呼びなさい!じゃないと、ファイア… |
レイヴン | わー!ちょっとちょっと!ここでファイアボールはまずいって! |
アーチェ | ん?お城の中から、誰か出て来たよ |
??? | 何の騒ぎです? |
リタ | あ、エステル…ちょうどいいところに来たわ! |
エステル | まあ、リタ!来てくれたんですね! |
警備兵 | ほ、本当にエステリーゼ様と、お知り合いだったのか…? |
リタ | だから言ったじゃない。これでもまだあたしを疑うっての? |
警備兵 | し、失礼いたしました!ご無礼のほど、お許しください! |
レイヴン | 嬢ちゃん、久しぶり。元気してた? |
エステル | レイヴンも一緒だったんですね! |
エステル | はい、わたしは元気です。二人もお元気そうで何よりです |
アーチェ | ねえねえ、リタ。まさかこのエステリーゼ様ってウィンドルのお姫様とか…? |
リタ | うん、そうよ |
アーチェ | お姫様と友達だったなんて二人ともすごいんだねえ。驚いちゃった… |
エステル | ええと、そちらの方は…? |
レイヴン | ああ、この娘はアーチェちゃん |
レイヴン | トーティス村再建のお手伝いをしてるんだって |
エステル | まあ、ではクレスの… |
エステル | 初めまして、エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインです |
アーチェ | は、初めまして! |
アーチェ | エステリーゼ・シデひゅ…シデス・ひゅら…? |
エステル | あ、エステルって呼んでください。言葉も普通でお願いします。二人のお友達ならわたしのお友達ですから |
エステル | …それより、どうしたんです?こんな大変な状況の時に、揃ってバロニアへ来るなんて… |
リタ | それなんだけど、実は―― |
街の女 | きゃあああ! |
警備兵 | な、何だ!? |
街の女 | 魔物が突然街へ入ってきて… |
| |
アーチェ | …!大変、早く助けないと! |
エステル | はい、行きましょう! |
警備兵 | エステリーゼ様…!魔物退治へは私が―― |
リタ | いいから!魔物の事はあたし達に任せてあんたはここを守る、いい? |
警備兵 | で、ですが…! |
エステル | 城内には国王陛下もいらっしゃいます |
エステル | 魔物を中へ入れるわけには行きません! |
レイヴン | おっさんはお任せしたいとこだけど、そういうわけにもいかないか |
レイヴン | よし、みんな!俺様の後に続いて… |
レイヴン | …って、もう行っちゃった!?おっさん悲しい… |
scene3 | 悲劇の村、トーティス |
エステル | これで魔物はいなくなりましたね。みなさん、ありがとうございます |
アーチェ | あんなの、どうって事ないわ! |
アーチェ | そんな事よりエステル、さっき「クレス」って言ったよね? |
アーチェ | エステルはクレスとも友達なの?クレスが今どこで何をしてるのか、知らない? |
エステル | クレスなら、少し前にバロニアへ来ていました |
エステル | 今はもう行ってしまいましたけど… |
エステル | どこに向かったのかは、わたしも聞かなかったのでわかりません |
エステル | すみません… |
アーチェ | うーん。入れ違いってヤツかあ。本当どこで何やってんだろ |
リタ | ところで、エステル。さっきの話の続きで、あんたに頼みがあるんだけど… |
| |
エステル | ──なるほど、そうだったんですね |
レイヴン | 嬢ちゃんは、今回の戦いでウィンドルが投入した新兵器について何か知らないの? |
エステル | 確かにリタの言う新兵器が投入されたという話は聞いています |
エステル | でも、魔導器かどうかはわかりません |
エステル | ア・ジュールの所有する兵器は特殊な力を持つそうで、普通の兵器だと対抗出来ないそうです |
エステル | …ア・ジュールの兵器が魔導器であるのかも、わかりません。ごめんなさい、リタ |
リタ | そっか… |
リタ | でも別にあんたが謝る必要なんてないわよ |
アーチェ | ねえ、両国の新兵器が魔導器かどうかって重要なの?兵器って事には変わりないじゃん |
レイヴン | リタっちにとっては重要なのよ。魔導器大好きだもんね、リタっち |
リタ | う、うっさい! |
エステル | 魔導器…そういえば… |
リタ | 何か思い出したの? |
エステル | 確か、西にあるイニル街に、魔導器研究に使っていたという施設があると聞いた事があります |
リタ | イニル街…? |
リタ | あれ、その街の名前…どっかで聞いたような…… |
リタ | あ、思い出した!! |
リタ | そこって確か、一時変な病気が流行ってたとかどうとか… |
アーチェ | 変な病気…何それ、こわいじゃん!今は勿論、治まってるんだよね? |
リタ | そのはずよ |
リタ | ま、あたしも人づてに聞いた話だから詳しくは知らないけど |
レイヴン | 魔導器の研究施設…リタっち、これは行ってみる価値アリじゃない?何かわかるかもよ? |
リタ | うーん…正直これ以上寄り道したくはないんだけど。あたしが行きたいのは国境だし… |
リタ | でも、もしかしたらこの国の魔導器があの光や地震と関係があるかもしれないんだし、調べる価値はある、か… |
エステル | …リタ、わたしも一緒に連れて行ってもらえませんか? |
リタ | いきなり何言い出すのよ、エステル |
リタ | 自分の国がこんな状態の時にあんたみたいな立場の人間が… |
エステル | 戦争が再開されると知った時からずっと考えていたんです |
エステル | 本当にこうするしかないのかって |
エステル | わたしだけじゃありません。陛下も、最後までその判断を出すのに悩ましい様子だったそうです |
エステル | 結局、答えは出ないまま、応戦せざるを得ない状況となり戦争再開になってしまいましたが… |
レイヴン | 嬢ちゃん… |
エステル | 戦争そのものばかりか、それが異変を引き起こしているとしたら。二重に人々を苦しめているとしたら… |
リタ | エステル…。まだそうだと決まったわけじゃないわ |
エステル | だからこそ、異変の原因を突き止めなければならないと思うんです |
エステル | 出来れば自分の目で…耳で知りたい。そして責任を取りたいと思うんです。ただの我がままかもしれませんが… |
エステル | リタがお城に来たのは偶然じゃないって思うんです。お願いです。一緒に連れて行ってください |
リタ | エステル… |
リタ | 分かった。そこまで言うなら。だけど、一つ言っとくわ |
リタ | あたしは、この件であんたが責められる必要なんてないと思ってるから |
リタ | あたしはただ真相が知りたいだけ |
リタ | だからその…あんたがここで責任を感じる必要はないっていうか… |
エステル | …わかってますよ、リタ。ありがとうございます |
アーチェ | じゃあ、改めてよろしくね。エステル! |
アーチェ | …うわあ、お姫様と旅なんてすっごいじゃん! |
レイヴン | さてさて、そんじゃ警備に見つかってお尋ね者にされる前に、さっさと行こうじゃないの |
レイヴン | って、よく考えたら四人で男はおっさん一人…こりゃなかなか照れるねえ |
リタ | 誰も気にしてないから、好きなだけ勝手に照れてれば? |
レイヴン | ひどっ! |
アーチェ | これでもっと賑やかになるね!さってと、じゃ、次の目的地のイニル街に向かおっか |
scene1 | リタとエステル |
アーチェ | ねえ、結構歩いた気がするんだけど…イニル街って、遠いの? |
エステル | そこまで遠くはないはずですが…ひょっとして、道に迷ってしまったのでしょうか… |
レイヴン | この辺りで、一旦休憩にしない?おっさん、歳だから疲れちゃって |
リタ | 情けない… |
アーチェ | まあ、何だかんだでずっと歩き通しだったしね。少しくらいならいいんじゃないの? |
リタ | 仕方ないわね。まあいいわ、この時間を利用して… |
エステル | リタ、どこへ行くんです?あ…読書ですか? |
リタ | まあね |
レイヴン | 何なに?わざわざ別のとこなんて行かないで、ここで読めばいいじゃないの |
リタ | 気が散るから嫌。言っとくけど、邪魔したらぶっ飛ばすからね |
レイヴン | お~こわいこわい |
アーチェ | ま、いいんじゃない?一人で集中したい時もあるでしょ。あたしもちょっと散歩してくるね |
エステル | … |
| |
リタ | よいしょっと…この辺りなら静かだし、集中できそうね |
リタ | … |
エステル | … |
| ガサガサ… |
リタ | ん…?何か音が…まさか、魔物…? |
??? | ナァ~ |
リタ | 猫!?こんなところで…あんた、どこから来たの? |
リタ | ふーん。毛並みもいいし、野良じゃなさそうね |
リタ | ほら、おいでおいで |
リタ | ナァ~♪ |
??? | … |
リタ | ナァ?ナァ~ |
リタ | あ…ちょっと! |
リタ | あーあ、行っちゃった… |
エステル | 可愛かったですね |
リタ | にゃーっ! |
リタ | エ、エステル…!ちょ…何でここに… |
エステル | リタと少しお話がしたいなって後を追ってきたんです |
リタ | … |
エステル | …? |
| |
| ギャオオオオ! |
エステル | これは…魔物の声です! |
リタ | もしかしてあの猫…大変! |
| グルルルル…! |
??? | フーッ! |
エステル | あそこにいました! |
リタ | ちょっと!その子から離れなさい! |
scene2 | リタとエステル |
リタ | よかった、無事みたいね |
??? | ナァ~♪ |
エステル | リタにお礼を言ってるみたいですよ |
リタ | そ、そう?どうだか |
リタ | 今度は気をつけて帰んなさいよ |
エステル | 行ってしまいましたね |
リタ | それでエステル…さっきの事なんだけど…その… |
エステル | リタ、猫が好きなんですね。物真似、とても上手でした |
リタ | …!あ、あれはその―― |
エステル | わたし、リタの新たな一面が見られて、すごく嬉しいです |
エステル | リタの事、もっと好きになりました |
リタ | …!ば、バカな事言ってないでほら、みんなのところに帰るわよ! |
エステル | え?リタ?でも、今休憩し始めたところで… |
リタ | もう終わり!この話も休憩も、終わりよ…! |
エステル | …? |
レイヴン | あ、いたいた。二人ともどこに行ってたのよ? |
レイヴン | アーチェちゃんもどこかに行っちゃったみたいだし… |
エステル | 向こうの方に猫がいて、それでリタが… |
リタ | わー!!…えーっとその… |
リタ | そう、向こうで少し話してたの!…それだけよ! |
レイヴン | 話?何の話をしてたのよ? |
リタ | そ、それは… |
エステル | あ…それは、その…内緒です!わたしとリタ、二人だけの秘密です! |
リタ | …ほっ |
レイヴン | えー、ずるい。おっさんにも教えてよ。でないと泣いちゃうから |
リタ | か、勝手に泣け! |
リタ | とにかく、別におっさんにわざわざ話すような事じゃないわよ |
レイヴン | 隠し事なんてリタっち冷たい…じゃあエステルちゃん、教えて? |
エステル | …ふふっ、二人だけのヒミツです |
リタ | …! |
レイヴン | えー。ずるいずるいずーるーいー |
リタ | と、とにかく…これで休憩は終わり! |
リタ | ほら、おっさん、あんたはさっさとアーチェを呼んでくる!いい? |
レイヴン | へいへーい…まったく人使い荒いんだから… |
scene1 | イニル街の傷跡 |
リタ | へえ、ここがイニル街… |
レイヴン | 見たところ普通の街だけど…本当にこんなとこで、魔導器が研究されてたっていうの? |
??? | ナァ~ |
アーチェ | あー、あんなところに猫が… |
エステル | …!リタ、あの猫… |
リタ | うん、さっき街道で見た子に間違いないわね |
レイヴン | おんや、リタっち。あの猫と面識有って感じ? |
リタ | ま、まあ、ちょっとね…って |
リタ | あ…! |
アーチェ | 行っちゃったね… |
リタ | … |
エステル | …リタ、あの子の後、追いかけてみませんか? |
リタ | え… |
アーチェ | あ、それいいじゃん! |
アーチェ | 聞き込みしようにもアテもないし、あの子の飼い主とかちょうどいいかも |
レイヴン | そういう事なら早いとこ追いかけた方がいいんじゃない? |
レイヴン | あの猫、見た目の割に足が速そうだったし |
リタ | え、ええと… |
エステル | リタもほら、早く行きましょう! |
リタ | わ、わかってるわよ! |
| |
??? | はい、ルル。ご飯だよ |
ルル | ナァ… |
??? | もしかして、ロイヤル猫缶がいいの? |
??? | 駄目だよ、あれは晩ごはんの時だけ!ルドガーにも言われてるんだから |
リタ | あの猫、ルルって言うんだ… |
??? | あれ?あなた達、誰? |
エステル | こんにちは。その猫、あなたが飼っているんです? |
エル | ルルの飼い主はエルじゃなくて、ルドガーだよ。エルはお世話をしてるだけ |
エル | ルドガーはね、ちょっと前にエルのおうちのお隣に引っ越してきたの |
エル | でも、この前のジシンでエルのおうち壊れちゃったから… |
エル | 今、ルドガーのところでイソーローしてるんだ |
アーチェ | そっか。いい人がお隣でよかったね |
エル | うん! |
リタ | ところでエル、そのルドガーって人はどこ?あたし達聞きたい事があるんだけど |
エル | ルドガーは、今いないよ。メガネのおじさんと一緒にヒトダスケしに行くんだって。 |
アーチェ | メガネのおじさん? |
エル | メガネのおじさんは、ルドガーのお兄ちゃんだよ |
エル | ユリウスって名前なんだけど、エルはメガネのおじさんって呼んでるんだー |
エル | 二人とも、出かけちゃったから、エルがお留守番してるの |
レイヴン | ありゃりゃ…エルちゃん、こんなに小さいのに一人でお留守番してるなんて…偉いのね |
リタ | まあ、いないなら仕方ないわね |
リタ | じゃあ一応聞くけど、エル、あんた魔導器について何か知らない? |
リタ | この街に、魔導器を研究してた施設があるって聞いて来たんだけど |
レイヴン | ちょ、ちょっとリタっち!こんな小さな子に聞いたってさすがにわかるわけ―― |
エル | うん、知ってるよ |
レイヴン | え、本当に!? |
エル | 前に王様が作ってた魔導器はもう壊れちゃってるけど、それでもいいならエル、案内するよ |
エステル | 是非、お願いします |
レイヴン | ほへー聞いてみるもんだねえ |
アーチェ | こんな小さい子が魔導器の事知ってるなんて、ちょっと意外~ |
リタ | じゃあ、早速お願いするわ。ルル、また後でね |
ルル | ナァ~ |
scene2 | イニル街の傷跡 |
エル | ここだよ |
リタ | ここが例の研究施設…? |
エル | うん。ここで魔導器を作ってたんだよ |
エル | たくさんハイエキが出てそのせいで街の人がいっぱい変なビョーキになっちゃったの |
リタ | …廃液…なるほど、それが奇病の正体ってわけね。どういう―― |
エル | エル、ミラとユーリと一緒に魔導器を壊して、そうしたら、みんなのビョーキが治ったんだよ |
リタ | はあ!?ユーリが魔導器を壊した!? |
レイヴン | ユ…ユーリって、まさか…あの黒髪長髪の青年の事かしら…? |
エステル | 騎士団を脱退したという話は聞いていますが…まさかユーリが壊したなんて… |
リタ | 壊すとか何考えてんのよ! |
リタ | …あ、でも奇病の原因になってたのよね。うー… |
リタ | その場にあたしがいたら、きっと壊さずに止める方法を見つけられたかもしれないのに… |
エル | リタは、魔導器壊すのイヤだったの?…ビョーキでみんなが、困ってても? |
リタ | そ、そんな事言ってないでしょ! |
リタ | ただ…本当に悪いのはそういう使い方する奴で、魔導器は、その… |
エル | ふーん… |
アーチェ | それにしても、魔導器って本当は人の生活を豊かにするいいものなんでしょ? |
アーチェ | なのに、扱い方によっては簡単に凶器になっちゃうんだね… |
リタ | … |
リタ | それは魔導器に限った話じゃないわ。どの道具であっても同じ事でしょ |
レイヴン | まあ、そうだわねえ |
エステル | じゃあ早速、中に入ってみます? |
エル | 入り口はこっちだよ。前はハイスイコウから入ったんだけど今はフツーに入れると思うよ |
レイヴン | そりゃありがたい。おっさん、水に濡れるのは勘弁よ |
| |
アーチェ | 何にもないわね… |
エステル | せめて残骸でも残っていればよかったんですが… |
エル | 怖い顔した兵隊さん達がいろいろ持って行っちゃったよ |
リタ | まぁ、見張りもいない研究所に、大事なもの残すバカはいないわよね。でも逆に… |
リタ | ここまで綺麗に何もないとよっぽど人には知られたくない事をしてた、って考えるのが妥当ね |
リタ | それが何かがわからないのは悔しいけど |
レイヴン | 結局、バロニアでもイニル街でも、大した収穫はなかった、か。おっさん、面目ないわ |
リタ | 別に大して期待してなかったし。やっぱりこのまま国境地帯に… |
アーチェ | あー、ごめん、それ無理! |
リタ | な、何よ、いきなり大声出して |
アーチェ | イニル街の手前で聞いたんだけど、国境の辺りにすごい地割れが出来て大陸が分断状態なんだって |
アーチェ | 伝えるの忘れてた、ごめん! |
リタ | 忘れてたって、あんたねえ…って、じゃあ、もうこのまま進んだって意味ないって事じゃない |
レイヴン | こりゃ国境は諦めるしかないかねえ。閃光の原因探るどころじゃないわ |
リタ | …国境は仕方ないわね。アーチェの話が本当ならそもそも封鎖されているかもしれないし |
リタ | それに、ウィンドルの新兵器は魔導器かどうかわからない、ってエステルも言ってたわけだし… |
リタ | だったら、他の方法で光の正体を探るまでよ。あたしはア・ジュールに行くわ |
レイヴン | へ?ア・ジュール!? |
リタ | そう。ウィンドル側は手詰まり。国境にも行けない |
リタ | となれば、次はア・ジュールを調べるのは当然よ |
アーチェ | ア・ジュールか…。じゃあ、ウィンドル港から船でア・ジュールへ向かうんだね |
アーチェ | っていうか、エステルを敵国に連れて行っちゃっていいの?見つかったらまずいんじゃない? |
エステル | それは…でも出来ればわたし、やはり最後まで一緒に行きたいです |
エステル | 駄目でしょうか… |
レイヴン | まあ、ここから一人で帰れってのも、それはそれで無茶だわなあ |
レイヴン | あ、でもさ、クレアちゃん達の話じゃ船止まってんじゃなかったっけ? |
レイヴン | 動いてりゃいいんだけどねえ |
エル | お話、終わった? |
エル | エル、そろそろ帰らないとだし |
リタ | …ああ、そうだったわね。エル、案内ありがと。助かったわ |
エル | どういたしまして。じゃあ、エルは帰るね! |
エル | あ、そうだ! |
エル | もしルドガーとメガネのおじさんに会ったら、エルは元気だよって、伝えてくれる? |
アーチェ | おっけ。もし会えたら、とびきり元気にしてたよって伝えておいてあげる |
エル | ありがとう! |
リタ | じゃ、そろそろ行くわよ |
scene1 | ア・ジュールの協力者 |
アーチェ | ウィンドル港に着いたけど…海、荒れてるね… |
船員 | 現在、各国行き定期船の航行は全て休止です。再開の見込みは立っていません! |
リタ | やっぱりまだ船は動いてないか… |
リタ | でも、何としてもア・ジュールに行かなきゃ…! |
リタ | …あそこに小船があるわ。海が荒れていようが非公式だろうが渡航できれば何でもいい。行くわよ |
アーチェ | ちょっとぉ!リタ、本気なの!? |
アーチェ | 行きたい気持ちはわかるけどさあ、これ、命に関わっちゃうレベルだよ? |
レイヴン | おっさんもアーチェちゃんに賛成~。この状況で無断で国境越えなんて無謀過ぎ! |
レイヴン | 命あっての物種だよ? |
リタ | 来たくないなら来なくていいわ。あたしは一人でも行ってみせる |
エステル | わたしも行きます! |
エステル | あ…小船の近くに人がいます!交渉してみましょう、リタ! |
アーチェ | あ~ん、もう!誰も行かないなんて言ってないでしょ! |
アーチェ | 置いていくなーー!! |
レイヴン | あ~あ~、みんなしてもー。これが若さってやつ? |
レイヴン | しょうがないね、どーも… |
| |
エステル | あの、すみません。この船の持ち主の方です? |
??? | …?そうだが… |
レイヴン | ただの船乗りにしては鋭い目つき…ただもんじゃなさそうねえ |
エステル | わたし達、どうしても、ア・ジュールへ行きたいんです。船を出していただけませんか? |
??? | この状況を見てわからないのか?今、海に繰り出すのは危険だ。悪い事は言わない、やめておけ |
エステル | 海が荒れているのはわかっています |
エステル | でも…それでも、行きたい…いえ、行かなければならないんです |
??? | … |
リタ | あたし達、今回の戦争で使われた兵器について調べてるの。それがこの天変地異の原因かもしれないから |
リタ | だから、どうしてもア・ジュールに行く必要があんのよ。わかる? |
レイヴン | ちょっと、リタっち。そんな上から目線な… |
??? | …天変地異の原因だと? |
??? | 確かに、ただの自然現象とは思えないほどの事態だが… |
エステル | 詳しい事はまだわかりません |
エステル | ですがア・ジュールへ行けば何か手がかりが得られるかもしれないんです…! |
??? | お前達、そんなに必死に天変地異の原因を探ってどうする? |
??? | 原因がわかれば得る物でもあるのか? |
エステル | 苦しんでいる人々を助けるのに、何かできる事があるなら行動したい。それだけです |
リタ | …あたしは新兵器の正体を確かめたい。それだけよ |
リタ | それが本当に魔導器で、変な使い方してるなら、相手をぶん殴ってでも止めさせるわ |
??? | 詳しい事情はわからない、…けど、お前達が真剣だって事はよくわかった |
??? | …いいだろう。ア・ジュールへ連れて行ってやる |
アーチェ | ほんと!? |
??? | ただし、この異変の影響で海も大荒れ…それに、いつまた大地震が来るとも限らない |
??? | それ相応の覚悟をしておけ |
レイヴン | 念のため、聞いておきたいんだけど、覚悟って… |
??? | 勿論、海の藻屑となる覚悟だ |
レイヴン | あー、やっぱり… |
セネル | 俺はセネル・クーリッジ。海上から人々の救助活動を行っているシーブル村のマリントルーパーだ |
セネル | …本来ならば人命救助を行う立場の俺が、人が死ぬかも知れない荒れた海に船を出す事自体間違っているが… |
セネル | 最近、天変地異を境に人が行方不明になる現象が何件も確認されている |
セネル | 俺は海に落ちたのではないかと考え、独自に調査を進めていた |
セネル | だが、手がかりはなしだ |
セネル | …お前達が天変地異の調査をしているというなら、情報が交換条件だ |
セネル | …了承するなら全員すぐに乗り込め |
エステル | わかりました。何かわかったらセネルにもお知らせしますね! |
エステル | よろしくお願いします |
レイヴン | とほほ…藻屑にならないといいけど… |
scene2 | ア・ジュールの協力者 |
セネル | ア・ジュール港の近くに着いた。歩けばすぐ港街に入れるだろう |
セネル | …藻屑にならなくてよかったな |
リタ | よくないわよ…気持ち悪い…うっぷ |
アーチェ | リタってば船酔いー!?ちょっと、大丈夫なの? |
セネル | じゃあ、俺はもう行く。ここに長居していると、ア・ジュールの奴らに目を付けられる |
エステル | ありがとうございました、セネル。このご恩は忘れません |
セネル | 交換条件の事、忘れるなよ。俺も何かわかったら知らせる |
セネル | …またな |
アーチェ | うん、まったねー |
レイヴン | やれやれ。改めて考えると旅に出てからいろんな人に会って、いろいろ手助けしてもらったもんだねぇ |
エステル | はい。こんな風に世界中の人々が手を取り合う事ができれば、戦争など起こらないと思うのですが… |
アーチェ | ほんとよね…どうして戦争なんか―― |
リタ | うえっぷ… |
レイヴン | ちょっとリタっち、本当に大丈夫?顔色真っ青よ? |
ア・ジュール兵 | お前達、何者だ。どこから来た? |
エステル | あの、わたし達は… |
レイヴン | …嬢ちゃんは立場上あまり顔を出さない方がいいかもね。後ろに下がっといで |
エステル | は、はい… |
リタ | …あたし達、シルヴァラントから来たの |
ア・ジュール兵 | シルヴァラントだと?目的は? |
リタ | …ちょっとした調べ物。船酔いで気持ち悪いから、もう行っていいでしょ? |
ア・ジュール兵 | 怪しいな。お前達、本当はウィンドルのスパイなんじゃないのか? |
アーチェ | は?何言ってんの。そんなわけないじゃん! |
ア・ジュール兵 | いいや、やはり怪しい。こうなったら全員の身柄を拘束し、徹底的に調べてやる! |
レイヴン | そりゃまずい…ねえ旦那ぁ、そう固い事言わないでさ、ね? |
ア・ジュール兵 | 抵抗すると痛い目に遭わせるぞ! |
| |
リタ | あーもう、うっさい! |
リタ | 人が気持ち悪くて吐きそうなのに、ごちゃごちゃ騒ぐんじゃないわよ! |
リタ | あたしは、あんたらの国が使った兵器の事を知りたいだけ!邪魔するとぶっ飛ばすわよ!! |
ア・ジュール兵 | 何だと…! |
レイヴン | あちゃー…リタっち、それだけは言っちゃ駄目 |
ア・ジュール兵 | 兵器の偵察…!?お前達、やはりウィンドルのスパイだな!全員牢屋にぶち込んで―― |
??? | あー、ちょっと待ってくれ。彼らはオレの知り合いだ |
| |
ア・ジュール兵 | あ、あなたは…スパーダ・ベルフォルマ様! |
スパーダ | お役目ご苦労 |
スパーダ | 彼らの対応についてはオレに任せてくれ。いいな? |
ア・ジュール兵 | はっ! |
??? | 君達、大丈夫?乱暴な事されなかった? |
| |
スパーダ | オレについてきな。何、悪いようにはしねェよ |
アーチェ | …う…うん。わかった… |
アーチェ | ど、どうしようもないもんね、この場合… |
| |
スパーダ | 無事に脱出成功っと。うまくいったな、ヒャハハハ! |
スパーダ | おっと、自己紹介がまだだったな |
スパーダ | オレはスパーダ、こいつはルカだ。よろしくな |
ルカ | よろしくね |
アーチェ | スパーダにルカだね。二人ともありがと!お蔭で助かったよ |
エステル | リタ、船酔いの方は大丈夫です? |
リタ | うう…ようやく治まったって感じ |
レイヴン | お蔭で助かったけどもさ、おたくら、何だってあんな事してくれたわけ? |
スパーダ | そいつが、うちの兵器の事を話してたからさ。オレ達も調べてたところでな |
スパーダ | 単刀直入に聞くぜ。お前達、魔導兵器の事、どこまで掴んでる? |
リタ | 魔導兵器…? |
リタ | やっぱり、ア・ジュールの所有する兵器は、魔導器を使ったものなの? |
スパーダ | あ?そんな事も知らなかったのか |
スパーダ | 何だ、もっといろんな事を知ってるのかと期待したんだがな |
エステル | お役にたてなくて、すみません… |
レイヴン | そういうおたくらは、どれくらいの事を知ってるのよ? |
スパーダ | 軍事用に開発した魔導器を、うちの国じゃ魔導兵器って呼んでる |
スパーダ | ヤバそうな代物だったんで、一度ぶっ壊したんだが、どういうわけか今回の戦争に投入したって話だ |
スパーダ | オレ達が壊した魔導兵器の他にも隠し持っていたのか、あるいは新たに作り出したのか… |
リタ | …ふうん、なるほどね。あんた達が魔導兵器について、何を疑問視してるかは何となくわかったわ |
リタ | …それで、今回の戦争で使われた魔導兵器ってのは、今どこにあるの? |
スパーダ | おそらく、北東にあるテノス兵器工場だろうな。元々そこで作ってたもんだし |
ルカ | それに…僕達見たんだ、テノス兵器工場にすごい数の資材が持ち込まれるのを… |
アーチェ | テノス兵器工場…ねえ |
アーチェ | 待って。あんたら、何でそこまで知ってるなら自分達で調べに行かないワケ? |
アーチェ | あんた達の疑問もそこに行けば解決するんじゃないの? |
スパーダ | ま、それにはウチもいろいろと理由があんだよ。だから、信じる信じないはお前らに任せる |
スパーダ | オレの実家はカン・バルクにある |
スパーダ | ベルフォルマ家って言えば、すぐにわかる。待ってるぜ |
リタ | 待ってるって…どういう意味よ。調べて来て情報を寄越せっての? |
リタ | …そもそも、あんたア・ジュールの人間なんでしょ?どうしてあたしらに情報なんか… |
スパーダ | だから言ったろ?ワケありなんだよ。オレやルカは今、自由に動ける状況じゃねェんだ |
スパーダ | じゃ、同じ魔導兵器を調べるモン同士仲良くしようぜ!ヒャハハ! |
ルカ | 詳しく話せなくてゴメンねじゃあ、また! |
アーチェ | …怪しいわね。テノス兵器工場だっけ?これが罠って可能性ない? |
レイヴン | そうねえ。はいそうですかって言って行ってみてとっ捕まるのはちょっとね |
リタ | なら、カン・バルクに行くべきね。ベルフォルマ家ってのを調べましょ |
リタ | …また寄り道なのは気に食わないけど |
リタ | 問題はア・ジュールの本拠地にエステルを連れて行く事になるって事だけど… |
エステル | わたし…やっぱりみなさんの足かせになっているんですよね。すみません… |
リタ | そ、そういう意味で言ったんじゃないわよ! |
リタ | とにかく目立たないようにすればいいんだから。いい? |
| ガサ… |
レイヴン | ん?今何か音がしなかった? |
| |
| ギャオオオオ! |
アーチェ | ちょ、ちょっと!いきなり魔物なんて…! |
リタ | ったく…あたし達、あんたの相手をしてる暇なんてないの!悪いけど、さくっと終わらせるわよ |
scene1 | 食えない男 |
エステル | ここがア・ジュールの都、カン・バルクなんですね。見咎められず入れてよかったです |
リタ | さ、とっととベルフォルマ家ってのを探して、素性を探るわよ。って…また地震!? |
| |
| ゴゴゴ… |
アーチェ | …収まった。結構頻繁に揺れてるけど、今回のはちょっと大きかったね |
レイヴン | 戦争が再開したのに加えてこう地震が続いた日にゃ、みんなしんどいわよねぇ |
アーチェ | でも、もたもたしてられないじゃん。ほら、ベルフォルマ家の情報を集めようよ! |
リタ | そうね。これで誰も聞いた事がない家ならあたし達は騙されてたって事がわかる |
リタ | 早くわかればそれだけ早くここを離れられるってもんだし |
エステル | すみません、リタ…わたしがいるばっかりに… |
リタ | だ、だからあんたのせいじゃないってば!ほら、あんたら調査!目立つのはナシ!後でここに集合ね! |
レイヴン | もし万が一何かあったら、リタっちにどやされるからエステル嬢ちゃんはおっさんと一緒に行動ね |
リタ | どやされるじゃ済まないわよ。しっかり任せたわよ、おっさん |
| |
アーチェ | …ホンモノじゃん!!ベルフォルマ家って、ア・ジュールのホンモノの貴族じゃん!! |
リタ | ますますもって意味がわからないわ。あのスパーダって奴が偽者かと思ったけど、容姿も噂のままだったし |
レイヴン | 普通、貴族がお上に楯突くなんてするもんじゃないからねえ。こりゃ信用してもいいんでないの? |
エステル | 名高い一族のようですし、あまり目立っては動き辛いという話も納得がいきます |
リタ | 確かにあいつにはリスキーな話よね。目的はよくわからないけど、あのスパーダって奴は信用してよさそう |
アーチェ | じゃあスパーダが言ってたテノス兵器工場ってトコに行ってみる? |
リタ | そうね。でもせっかくここに来たんだし、もう少し情報収集して行っても―― |
レイヴン | …!?しっ。…みんな静かに。ここの兵士だ。話が聞けるかもしれないよ |
| |
ア・ジュール兵 | タトリン様、お帰りなさいませ |
リタ | …! |
??? | ただいま。大佐はどこ? |
ア・ジュール兵 | カーティス大佐でしたら、いつものカフェにいらっしゃいます |
??? | また?まあいいか。じゃあ私、大佐に報告しに行ってくるから |
ア・ジュール兵 | はっ |
エステル | リタ、今の… |
アーチェ | カーティス「大佐」だってさ。この国の相当偉い人じゃん |
リタ | あの女の後をつけるわよ。その大佐って奴を言いくるめて、うまい事情報を引き出してやる |
レイヴン | やれやれ。面倒な事にならなきゃいいけどね |
scene2 | 食えない男 |
??? | 大佐ー! |
??? | おや、アニスではないですか |
リタ | あれがカーティス大佐って奴?てか、軍人なのにカフェでお茶しながら部下に報告させるってどうなの? |
アニス | 部下があちこち駆け回っている時にこんなところで優雅にお茶だなんて、ずるくないですか |
??? | これも情報収集の一環ですよ。市井の人々の声に耳を傾けるのも、大事な事ですからね |
アニス | ふーん…まあいいですけど。言いつけ通り、ウィンドルの件、進めておきましたよ~☆ |
??? | ご苦労様でした。後は、有力な情報を持ち帰る事を期待して待ちましょうか |
| |
レイヴン | リタっち。おっさんにはわかる。ああいう輩は相手にしたらいけないタイプよ |
リタ | 大佐だか何だか知らないけど、そこに軍の幹部がいるのよ?こんな機会逃す手はないわ |
リタ | 誰も知らない魔導兵器の情報を聞き出す、絶好のチャンスじゃない。行ってくるわ |
リタ | …ねえ、そこのあんた達! |
レイヴン | え、ちょ、ちょっと、おっさん知らないよ~!? |
アニス | …? |
??? | どなたですか? |
リタ | 単刀直入に聞くわ。魔導兵器の事を教えなさい |
アニス | …! |
??? | これはこれは…いきなりすごい事を尋ねますね。何故そんな事を知りたがるんですか? |
リタ | あたしは魔導器の研究者よ。魔導器を使った兵器を作ったりして、あんた達、一体どういうつもりなの? |
リタ | それにあんたの国が魔導兵器を使って戦争再開させたそうじゃない。何考えてんのよ。バカじゃないの? |
アニス | 何言ってんの?先に仕掛けてきたのは、ウィンドルじゃ―― |
??? | まあまあ、アニス |
??? | いやー、興味深いですね。まさかカフェで魔導器研究者の方と話をする機会があるとは思いませんでした |
??? | ご質問の魔導兵器の件ですが、残念ながら詳しい事はお教えできません。重要機密ですから |
??? | ところであなた、魔導兵器の事をどこで知ったのですか?機密情報ですから本来、知るはずがないのですが |
??? | 知るはずのない情報を知っているあなたは尋問対象となる資格を十分満たしていると言えます |
??? | とはいえ、この店で騒ぎを起こしたくありませんので… |
??? | 情報元を教えていただければ、見逃して差し上げますよ |
??? | 悪い取引ではないと思いますがね。いかがです? |
レイヴン | …リタっち!これ以上は、ヤバいって…! |
リタ | 情報の出処?研究者としての、あたしのカンよ。何か文句ある? |
??? | …勘、ですか。わかりました。…そういう事にしておきましょうか。今は、ね |
??? | では、話は終わりです。騒ぎにならないうちに、早めにお帰りになる事をお勧めしますよ |
アーチェ | も、もう!リタってば無謀過ぎるよ!ヒヤヒヤさせないでよぉ…! |
リタ | …気に食わないわね、あの軍人。もういいわ、行きましょ |
アニス | 大佐…あの連中… |
??? | … |
| |
レイヴン | ちょっと、リタっち、おっさん正直肝が冷えたわよ。目立つの禁止って自分で言っておいてさ |
リタ | 食えない奴だったわ。あのまま話してても、ボロなんて絶対に出さなかったでしょうね |
エステル | あのまま話していたら、リタが捕まってしまったかも知れないんですよね… |
リタ | カフェにいるから騒ぎを起こしたくないなんて、わざとらしいにもほどがあるわ。これから見張られるかも |
アーチェ | うう~。やめてよね~。もうこの街から離れた方がいいよ。こうなったらテノス兵器工場に逃げ込んじゃおうよ |
レイヴン | …ますます敵の懐に入る感じがして、おっさん嫌だわ。ま、向こうさんにとっては予想外だと信じたいとこだね |
scene1 | 導き出した答え |
アーチェ | さっすが…兵器工場ってだけあって、大きい建物ね。警備も随分と厳重だし… |
リタ | スパーダの言ってた通り、ここに魔導兵器が存在する可能性は高そうね |
| |
ア・ジュール兵1 | 異常はないか |
ア・ジュール兵2 | はっ |
アーチェ | …で、どうやって中に入るのさ?軍事機密だし、見張りもいるしさっきみたいな直球じゃあ |
アーチェ | 入れてもらえるどころか捕まっちゃうのがオチだと思うけど… |
リタ | 正面から入れないなら、裏から入るまでよ |
エステル | …侵入するって事です?そんな事をしてしまって、大丈夫でしょうか… |
レイヴン | 大丈夫…じゃあないと思うけどね。見つかったら、牢屋に入れられてそんでもって拷問とかされて――… |
アーチェ | … |
リタ | 捻り潰すわよおっさん…って言いたいところだけど、おっさんの言う事は一理あるわ |
リタ | 何度も言ってるけどあたしは魔導器を変な使い方する奴が許せないの。これはそのあたしが勝手にやってる事 |
リタ | だから、嫌ならついて来なくていい。ましてや軍事機密の施設に乗り込むんだから。殺される可能性だってあるわ |
レイヴン | …それでもリタっちは行くんだよねえ |
リタ | 当然でしょ。何のためにここまで来たのよ。このまま帰るなんてごめんだわ |
アーチェ | だよね~。リタって「こう!」って決めたら、絶対諦めなさそうだもんね…オッケー。あたしも行く |
アーチェ | あたし、逃げ帰ったなんてチェスターに言いたくないもん。…笑われるし |
エステル | リタ、わたしも行きます。止めたって駄目です! |
レイヴン | ま、こうなるのはわかってたけどね。おっさんだけ帰るなんて出来ないし、さ、こっちこっち |
エステル | え?レイヴンは侵入できる場所を知ってるんです? |
レイヴン | こういうのは排水口って相場が決まってるもんよ、嬢ちゃん。じゃ、行きますかね |
| |
エステル | よいしょ…っと。あ、通路のような場所に出ましたね。侵入成功です! |
レイヴン | 嬢ちゃん、嬉しいのはわかるけど声の大きさに気をつけてね。そこらに兵士、うじゃうじゃいるから |
リタ | …ますますもって怪しいわね。絶対に魔導兵器作ってる奴ぶっとばしてやる |
アーチェ | …向こうから兵士が来る…!みんな、隠れて! |
| コツ…コツ…コツ… |
| … |
リタ | … |
レイヴン | …行ったかしら? |
アーチェ | もう大丈夫だと思う。ふう、ひやひやしちゃった |
エステル | 中も警備は厳重みたいですね |
リタ | 見つかったら一巻の終わりね。…手早く済ませましょ |
ア・ジュール兵 | お前達、何者だ!? |
アーチェ | やば!もう見つかっちゃったじゃん!! |
ア・ジュール兵 | 貴様達、さてはウィンドルのスパイだな? |
レイヴン | 残念。うちらの所属はバラバラ、言わば連合国の部隊ってとこかね |
リタ | バカ言ってんじゃないわよ!みんな、逃げるわよ! |
ア・ジュール兵 | 待て! |
scene2 | 導き出した答え |
リタ | まだ追いかけてくる…ったく、しつこいわね!エステル、そこの扉よ!入って! |
エステル | はい! |
| バタン! |
| … |
| … |
アーチェ | …逃げ切ったかな?ちょっと距離あったもんね。扉に入るところは見られなかったと思うけど |
レイヴン | でも、見つかるのは時間の問題よ。向こうも血眼になって捜してるだろうし |
リタ | 通路にいる兵士の気配がなくなったらこの部屋を出て魔導兵器の探索。発見、調査次第すぐに脱出。いい? |
エステル | わかりました! |
リタ | 実物を調べればわかるかもしれない。この異変を引き起こした原因が…。ううん。絶対に突き止めてやるわ… |
??? | そこにいるのは誰? |
リタ | …!何、あんた…? |
レイヴン | 浮いてる… |
??? | あなた達…見ない顔ね。新しく入った人? |
レイヴン | そ、そうそう!おっさん達最近配属になった新人。よろしくね、お嬢さん |
??? | そう…。で、私に何か用かしら?魔導兵器の調整なら、もう少し時間がかかるわよ |
リタ | …魔導兵器!?これが…!? |
レイヴン | …調査するも何も、この部屋が魔導兵器の実験室だったワケね。こら、ツイてるわ |
??? | …本当はこんな兵器、もう使いたくなかったんだけどね。ガイアスも、よく思ってないし… |
エステル | ガイア…いえ、陛下が…?そうなんですか… |
リタ | ねえ、この国…えーっと…あたし達の国の魔導兵器って、いわゆる一般的な魔導器と同じなの? |
??? | 原理的にはね。ただ、魔導兵器はその力を最大限に引き出せるよう、魔導器の出力を上げたもの |
??? | そのせいで、魔導兵器が消費するマナの量は、通常の魔導器とは格段に違う… |
リタ | なっ…それは本当なの!? |
??? | ええ。あなたの指す一般的な魔導器が何なのかはわからないにせよ、比にもならないわ |
リタ | 比にもならないって…。そんな…何て事なの… |
レイヴン | あーちょっと、リタっち?いまいち状況が飲み込めないんだけど今一体どういう話になってんの? |
リタ | …マナってのは、あらゆる生命の源でこの世界の調和を司る物質の事で、魔導器の動力源でもあるの |
リタ | そのマナがなくなれば、人間はおろか、世界そのものの生命にだって影響が出てくる |
アーチェ | 世界そのものの、生命…? |
エステル | じゃあ、魔導兵器を使用した今は、マナが大量に消費され、世界の命が蝕まれている状態だという事です? |
??? | …そういう事よ。もしかしたら、今この世界で起きている異常も… |
レイヴン | …!て事はリタっちの予想通り… |
リタ | そんな危険なものだって知りながら何でそんなもの使ったのよ!?攻撃するにしても何か別の―― |
??? | …背に腹は代えられない |
??? | 向こうが魔導器を使っていたのよ。こちらも対抗措置を講じていなければこの国は滅んでいたわ。確実にね |
エステル | …!それじゃ、ウィンドルの新兵器も、やはり魔導器だったんですね… |
エステル | あの…教えてください、ウィンドルの魔導器も、この国の魔導兵器と同じ仕組みなのでしょうか? |
??? | このマナの枯渇状況からみて、マナを食い潰しているのはウィンドルの魔導器も同じでしょうね |
エステル | そんな… |
リタ | …当然よね。出力の高い魔導器を使用すれば、消費するマナの量も比例して上がる… |
リタ | 予感はしてたけど、両国とも魔導器を使ってた…それも最悪な使い方で…!許せない…!! |
??? | …?あなた、一体――… |
ア・ジュール兵 | ミュゼ様!不審者が内部に侵入しました。ウィンドルの工作員かもしれません! |
アーチェ | …!やば… |
ミュゼ | ウィンドルの工作員ですって…?まさかあなた達… |
ア・ジュール兵 | こ、こいつらは…!!ミュゼ様、こいつらが侵入者です!間違いありません! |
レイヴン | ちっちっち。若人。我々は連合国の部隊だってば。ウィンドルだけじゃないんだよね |
ミュゼ | やたらと魔導器に詳しい子がいるとは思ったけど、ウィンドルのスパイだったなんてね |
ミュゼ | よほど自信があるのかしら |
ミュゼ | でも…、ガイアスのために作った魔導兵器をみすみすウィンドルの人間に渡すわけにはいかないわ! |
レイヴン | いやだから、うちらはウィンドルの人間だけじゃないんだけど…おっさんの話、聞いてくんない? |
リタ | 作ったですって!?こんなバカな真似したのはあんただっていうの!? |
エステル | リ、リタ、落ち着いてください。あの、ミュゼさん、わたし達は…! |
ミュゼ | ごちゃごちゃうるさい!あなた達はここで始末するわ! |
scene3 | 導き出した答え |
ミュゼ | …っ!やるわね…!でも、これで私を止められると思わないで |
リタ | 別にあんたを殺したいわけじゃない。あたしはただ魔導器でバカな真似をするのをやめさせたいだけで… |
ミュゼ | どんな御託を並べても無駄よ。あなたの目的はこの魔導兵器の情報を盗む事でしょう |
エステル | 侵入するという手段を取った事は謝ります!ですが、決して情報を盗むつもりなんて… |
ミュゼ | 本当かしら。そもそも、先に攻撃を仕掛けてきたのはウィンドルよ。これ以上ガイアスの邪魔はさせない! |
レイヴン | だからこっちはウィンドルじゃなくてって、聞く耳持たずを地で行ってるわこりゃ |
ミュゼ | 今度こそ、覚悟しなさい! |
??? | 双方、そこまでです |
リタ | あんた…! |
アーチェ | カン・バルクの何とか大佐じゃん!まさかホントにつけられてたってワケ!? |
ミュゼ | ジェイド!?…なぜ止めるの? |
ジェイド | この方達に下手な事をすると、ウィンドルとの関係が、余計こじれてしまいますのでね |
ミュゼ | どうして?たかがスパイの一人や二人… |
ジェイド | それが、たかがでもないんですよ。ですよね。エステリーゼ・シデス・ヒュラッセイン殿下? |
リタ | なっ…!あんた、エステルの正体を知って… |
レイヴン | …そりゃそうでしょ。カン・バルクでリタっちが勝手に聞きに行っちゃうしおっさん、アピール頑張ったんだから |
リタ | は、はあ!?あんたがエステルの事、バラしたっての!?あのメガネに!?ふざけんな! |
レイヴン | じゃないとあの場で処刑だって。それに顔バレてないワケないでしょ。嬢ちゃんが、さ。…でしょ? |
ジェイド | どこまで本気かは図りかねましたが必死に彼女の顔を指さしていましたからね。いやあ、見ものでした |
ジェイド | リタでしたか。あのままあなたが魔導兵器の情報源を教えてくれれば私はどちらでもよかったのですが |
ジェイド | テノスに向かったという情報を得たので、ここで待たせてもらいましたよ。殿下が殺されては厄介ですからね |
ミュゼ | 王族が工作員なんてね…。いきなり戦争を仕掛てきたりするし、ウィンドルは何を考えているのかしら |
リタ | ウソね。ア・ジュールが先に仕掛けたって聞いたわ。卑怯なのはどっちなの? |
ジェイド | …無駄な議論はその辺にしませんか、二人とも |
ミュゼ | 無駄な議論?攻め込んできたのは、ウィンドル。これは間違いない事でしょう? |
アーチェ | …あのさ、何かおかしくない? |
アーチェ | 今さ、この戦争仕掛けたのってウィンドルとア・ジュール、両方だって言い合ってたじゃん |
アーチェ | 何でどっちかってわかんないの?どうしてどっちもなの?同時に仕掛けたんだったらわかるよ? |
アーチェ | でも、違うんだよね?これっておかしくない?でさ、思ったんだけど… |
レイヴン | いや、それはどっちもただ自分の都合のいい事を言ってるだけなんじゃ… |
アーチェ | 勿論そうかもだけどさ、でももし、どっちも正しかったらどうなるのかなーって |
エステル | …どういう事です? |
ジェイド | 興味深い話です。続けてください |
アーチェ | 要するに、最初の一発目はどっちの国も撃ってないって事だよ。この戦争が始まる時のさ |
ジェイド | …その可能性に思い当たったのはあなたが最初ではありませんよ。ここに報告書があります |
リタ | …報告書? |
ジェイド | はい。我が軍が作成したものです。攻撃時間について記録が残っています |
ジェイド | ウィンドルからの攻撃、7時12分。我が軍の応戦時刻、7時…20分 |
ミュゼ | ウィンドルから攻撃を仕掛けたっていうのはまぎれもない事実ね |
ジェイド | ところが記録は、これだけではないんですよ |
ジェイド | 私の部下がウィンドルにいましてね。そこで入手したウィンドルの攻撃時間の記録です |
レイヴン | …それこそスパイってわけね。それで? |
ジェイド | …この記録によればア・ジュールからの攻撃が7時12分、と記録されています |
リタ | それ、ウィンドルもア・ジュールも同じ時間に攻撃を始めたって事になるじゃない |
ミュゼ | …どういう事?偽物を掴まされているんじゃない? |
ジェイド | その点は私も疑いました。ですのであなたにお聞きします。エステリーゼ様 |
エステル | は、はい |
ジェイド | このサインと印鑑に見覚えは? |
エステル | ウィンドルが使用しているものです。…間違いありません |
ミュゼ | つまり、その書類はウィンドルの正式な記録という事?でも、この人が嘘をついている可能性だってあるわ |
ジェイド | 確かにその可能性は否定できません。時間をかけて真贋を調べる事も出来ますが、必要ないと思いますよ |
ミュゼ | ジェイド、あまりはぐらかさないで。…あなた、第三者が攻撃をしたって言いたいの? |
リタ | 第三者…?あたしが見た最初の光が、第三者によるものの可能性…? |
リタ | …確かにあの爆発だけがケタ違いだった。それもシルヴァラントから視認できる程の威力… |
ジェイド | 話が早い方ばかりで助かります。私もこの両国の報告書を読んでから疑問を持つようになりましてね |
ジェイド | とはいえ、私もア・ジュールの軍人。戦時下で迂闊な事を言えば、自分の首が危ないんですよ |
ジェイド | それに戦争や天変地異で国民が不安がっている中、こんな紙切れで皆が皆、納得するとも思えません |
ジェイド | そこにあなた方が現れたんですよ。ウィンドル王族に魔導器に詳しい方、その他もろもろがね |
レイヴン | その他もろもろ…随分な言われようだ事 |
ジェイド | さて、ここからが本題です。エステリーゼ様、この状況をどうお考えですか? |
エステル | わたしは…戦争を終わらせたいです。真実をリチャード陛下に伝え、すぐにでも停戦を |
エステル | それにミュゼさんが言っていた事も気になります |
エステル | 魔導兵器の使用でマナが減り、天変地異にも関係があるかもしれない、という事が |
リタ | …もし戦争を誘発、魔導兵器を使用させ、マナを枯渇させようとしている第三者がいるとしたら… |
ミュゼ | …目的は戦争や地震だけかしら?マナがなくなれば、命どころか世界が破滅するのよ |
ジェイド | 推論はそこまでにしましょう。ここで予想を立てたところで全ては机上の空論にしかなりません |
レイヴン | 確かにね。最初の爆発、第三者の存在天変地異、マナの枯渇。ぜーんぶ仮定のまま話が進んじゃってるからね |
アーチェ | じゃあそれぜーんぶ確かめに行くって事?誰が? |
ジェイド | もちろん、あなた方と私がです |
ミュゼ | ジェイド、あなた本気!?相手は敵国ウィンドルの人間よ! |
ジェイド | ああ、そうでした。ではみなさん。いかがでしょうか。私を「捕虜」にしてみては? |
リタ | はあ!?捕虜!?…あんた、何考えてんのよ! |
ジェイド | 極めて現実的かつ建設的に物事を考えているつもりですよ |
ジェイド | 別に好きで戦争をやっているわけではありませんのでね。ですが止めるにも理由と証拠が必要です |
ジェイド | 先程も言いましたが、私はこの国の軍人ですので、ウィンドルを正々堂々調べるわけにもいきません |
ジェイド | もちろんスパイを使って探る事はできますが、リスクもあります |
レイヴン | バレれば、国間の仲はますます険悪になる、って事ね |
ジェイド | その通り。ですので、私はあなた方の捕虜になり、同行する事で堂々とウィンドルに入ろうと思います |
アーチェ | 無茶苦茶だよ… |
ジェイド | …という事で、今から私はあなた方の捕虜になります。こほん。「あー、捕まってしまいましたー」 |
リタ | …あんた絶対楽しんでるでしょ。まあいいわ。情報も聞けたし、次はこいつ連れてウィンドルに行きましょ |
エステル | …あの、リタ! |
リタ | 何、エステル。気になる事でもあったの? |
エステル | …わたしも捕虜として、ここに残ろうと思います |
リタ | な、何でよ!あんたが残る意味なんて―― |
エステル | あります。カーティス大佐を捕虜とした場合、この国の方が怒ると思うんです |
エステル | これ以上国の関係を悪くしたくはありません。ですから… |
エステル | わたしは独断でア・ジュールへ停戦を申し込みに行った事にできませんか? |
ジェイド | …ふむ、助かりますがやや困りもしますね |
ジェイド | 私がウィンドルに行った場合、エステリーゼ様を捕虜とした国の人間として非難される事になります |
エステル | でしたら、リチャード陛下に親書を。それと、リタ達にもウィンドル内を調査できるよう、手紙を書きます |
ジェイド | それはありがたい。感謝しますよ。…という事です、ミュゼ。彼女の事を宜しくお願いします |
ミュゼ | …ジェイド。今の状況で、ガイアスを置いていくつもり?もし、ガイアスを裏切るのであれば… |
ジェイド | そこは信用していただくしかないですね |
ジェイド | それに陛下は大丈夫ですよ。…あなたもいますしね |
ジェイド | ここしばらく陛下にも会っていないでしょう?彼女を連れて行くのは城へ帰るいい口実だと思いますが? |
ミュゼ | …わかったわ。ガイアスもあなたの事は信頼しているし。この人を連れて城へ帰るわ |
エステル | 本当ですか!?よかった…よろしくお願いしますね、ミュゼさん |
ミュゼ | …ミュゼでいいわ |
ジェイド | くれぐれも丁重な扱いをお願いしますよ。何かあった場合…わかっていますね? |
ミュゼ | わかってるわよ! |
ジェイド | 結構です。それと、皆さんも私の事はジェイドと呼んでください |
アーチェ | うう~。こいつおっかないよぉ… |
レイヴン | おっさんも同感。おっかなーい |
エステル | こんな事を言い出してごめんなさい、リタ。でも、わたし、リタを信じて待っていますから |
リタ | エステル… |
エステル | お願いです。戦争を止めてください。わたしも、出来る事をしますから。どうか…気をつけて |
リタ | わかったわ。…任せて |
レイヴン | おーっとリタちゃん、泣いちゃう?寂しくて泣いちゃう感じ? |
リタ | うっさい、おっさん!! |
ジェイド | いやー、楽しそうな仲間で心が躍りますねぇ |
アーチェ | あたしはあんたがおっかなくて心が重いわよ… |
Name | Dialogue |
scene1 | 襲撃 |
ミラ | ウンディーネ!イフリート!シルフ!ノーム! |
ミラ | 一体どこへ行ってしまったのだ…。こんな事は今まで一度も―― |
ミラ | …む? |
ミラ | このただならぬ気配は一体… |
ミラ | まさか、人間界で何か異変が起きているのか…? |
| ゴゴゴ… |
ミラ | …!?何だ、この音は… |
| |
| ゴゴゴゴゴ…! |
| メリッ…! |
ミラ | なっ…空間に穴が空いた、だと!? |
ミラ | 何という力だ…このままでは吸い込まれて―― |
| ゴォォォ!! |
ミラ | くっ…!これまでか… |
| |
ミラ | … |
ミラ | う… |
| |
ミラ | む…? |
ミラ | ここは……人間界か? |
ミラ | …! |
ミラ | これは一体どういう事だ…!?地面は大きく割れ、辺り一面が荒廃している… |
ミラ | それに、このマナの激減…。さっき感じた人間界の異変の原因は、これだったのか… |
ミラ | まさか、ウンディーネが話していた戦争再開が原因か? |
ミラ | …いずれにせよ、地上にこれほどの影響を及ぼすほどのマナの減少はいまだかつて見た事がない… |
ミラ | ん?これは、精霊達の気配… |
ミラ | … |
ミラ | 激減したマナの影響を受けこの世界の精霊達に何か異変が生じているようだ… |
ミラ | 今のは…ウンディーネの気配…!? |
ミラ | …そうか、あいつらも私同様人間界へ落とされていたというわけか |
ミラ | イフリート達も気がかりだが、まずは気配が一番近くに感じられるウンディーネを捜そう |
| ゴゴゴゴゴ…! |
ミラ | 地震か!?強い揺れだ…! |
ミラ | おそらく、この地震もマナの減少が原因なのだろう |
ミラ | …この激減したマナを元に戻さねば、近い将来、人間界は滅びる |
ミラ | それだけではない。人間界と精霊界は表裏一体、精霊界にも大きな影響が出るだろう |
ミラ | …今思えば、精霊界で突然空間に穴が空いたのも、人間界のマナが激減した事が原因だったのだろう |
ミラ | …クレスやユーリ、ルーク、それにロイド…。皆はどうしているだろうか? |
ミラ | 無事であってくれるといいが… |
scene2 | 襲撃 |
| ゴゴゴ…! |
ミラ | また地震か… |
ミラ | 早く四大と合流し、マナ減少の原因を突き止めなければ… |
??? | そう上手くいくかな? |
ミラ | …む?お前達は… |
ミラ | …どうやら友好的な雰囲気ではなさそうだな |
ミラ | 私に何の用だ? |
??? | おやおや、強気な態度だねぇ。俺達なんて恐れるに足らないって事か? |
ミラ | それもあるが、そもそも私はお前達に行く手を阻まれる理由などないからな |
??? | 理由がない?ははは、度胸はいいけど、察しはあまりよくないみたいだな |
??? | 君は俺達の目的を邪魔しようとしている。行く手を阻まれるのには十分な理由だと思うが? |
ミラ | 何だと…?お前達は何者だ? |
??? | 今ここで死んでいく君に名乗る必要なんてないだろ? |
| |
| ゴゴゴゴゴ…! |
ミラ | くっ…こんな時に地震か!? |
| ズザッ! |
ミラ | 地面に亀裂が… |
??? | くく…順調だな |
ミラ | …順調?何の話だ? |
??? | ま、直にわかるさ |
部下 | リドウ様。この女の始末は、我らにお任せください。リドウ様は精霊の回収を |
リドウ | 精霊の方は既に手は打ってある |
リドウ | …けど、やらなきゃならない事は山積みだしな。ここは君達に任せるとしよう |
ミラ | 精霊の回収だと…待て!お前は一体何を…! |
部下 | おっと。貴様の相手は我らだ |
ミラ | 邪魔をしないでもらおう!奴にはまだ聞きたい事がある! |
scene1 | 思いがけぬ再会 |
ミラ | はあ…はあ… |
| ザッ、ザッ… |
ミラ | なっ、新手だと…!? |
部下 | この女は弱っているぞ!全員で挟み撃ちにするんだ! |
ミラ | くっ…! |
部下 | 逃がすな、追え! |
| |
ミラ | 行ったか…? |
ミラ | あの程度の敵をさばき切れぬとは…四大の助力なしだと、私はここまで無力なのか… |
ミラ | それにしても、あの男…リドウといったか |
ミラ | 精霊の回収と言っていたが、何を企んでいる…? |
ミラ | そもそも人間界において、精霊の存在を知る者は限られていると聞く |
ミラ | それに地震で生じた亀裂を奴が見た時の反応… |
ミラ | マナ減少の原因にも、何か関係があるとみるべきだろうな |
ミラ | あの男…リドウにはもう一度会って、詳しい話を聞き出さなければなるまい |
ミラ | そのためにも、まずは四大を捜し出し、力を取り戻さねば… |
ミラ | 早くウンディーネの元に… |
ミラ | うっ…… |
ミラ | だが、思っていた以上に、身体に傷を負ってしまったようだな… |
??? | あれ――?もしかして、ミラ? |
| |
ミラ | …!ジュード! |
ジュード | ミラ、どうしてこんなところに―― |
ジュード | …ちょっと待って!ミラ、全身傷だらけじゃない!? |
ミラ | …心配するな、ジュード。これくらい、どうという事はないよ |
ジュード | そんなの駄目だよ!すぐ治療するからそこに座って! |
| |
ミラ | 楽になった…ジュード、ありがとう |
ジュード | …ミラ、何があったの?ミラがこんなに傷だらけになるなんて… |
ミラ | ……。話をすると長くなるが… |
ジュード | …じゃあ、今多発している地震は人間界のマナが激減している事が原因になっていたんだ… |
ミラ | おそらくな。だから、私は一刻も早く四大を捜し出し、マナ減少の原因を取り除かねばならない |
ジュード | ミラを襲ったリドウっていう人も何か知っていそうだね |
ミラ | ああ。私もそう考えている |
ミラ | 奴にはもう一度会って、詳しい話を聞き出さなければなるまい |
ジュード | (…でも、四大精霊の力がない ミラをこのまま一人で 行かせたら――) |
ミラ | ところで、ジュードは何故こんなところにいたのだ? |
ミラ | 街からもだいぶ離れた場所のようだが… |
ジュード | 僕は知人に頼まれ事をされて、エリーゼと一緒にカン・バルクへ向かっているところだったんだ |
ミラ | エリーゼも一緒だったのか? |
ジュード | うん。でも、向かっている最中、ウィンドルとア・ジュールの国境地帯で大きな地震に遭って… |
ジュード | 地面が崩落するぐらい大きな揺れだったんだけど、身を伏せて何とか凌いだんだ |
ジュード | でも…、気付いたらエリーゼがいなくて… |
ミラ | はぐれてしまった、というわけか |
ジュード | うん…。あちこち捜してみてはいるんだけど、見つからなくって… |
ミラ | そうか…。エリーゼ、無事だといいが… |
ミラ | …ジュード。すまないが私は先に急がねばならない。エリーゼの事は頼むぞ |
ジュード | … |
ジュード | …ねえ、ミラ。僕も一緒に行っていいかな? |
ジュード | 今のミラは四大精霊の力が使えないんでしょ?ミラを襲った人達の事もあるし、放っておけないよ |
ミラ | …エリーゼの事はどうする? |
ジュード | わかってる。エリーゼの事だって諦めたわけじゃないよ |
ジュード | これだけ捜したのに見つからないのはエリーゼがもう別の場所に移動しているからだと思うんだ |
ジュード | 僕もここから移動するんだったら、あてもなく移動するより、ミラと一緒に行動した方がいい |
ジュード | それなら、ミラの手伝いも出来るし、行く先々でエリーゼを捜す事も出来るでしょ? |
ミラ | …… |
ジュード | 僕じゃ四大精霊の代わりとまではならないだろうけど、出来る限り力になるから |
ジュード | 駄目、かな…? |
ミラ | ふふふ…。相変わらず君はお節介だな |
ミラ | では、共にエリーゼを捜しながら行く事にしよう。私もエリーゼの事が心配だからな |
ジュード | …ありがとう、ミラ! |
ミラ | では、まずここから南へ向かおう。先ほどからウンディーネの気配を感じる。そう遠くはないはずだ |
ジュード | わかった。この辺りは国境付近だから、戦争に巻き込まれないように気を付けよう |
scene2 | 思いがけぬ再会 |
ミラ | …ここは、汽水湖か |
ジュード | 確かここは、テレヌ湖……って、あれ?こんなに大きな湖だったかな? |
ミラ | ふむ、異変の影響が地形にも変化を及ぼしているのだろう。…さて―― |
ミラ | ウンディーネ、私だ!出て来てくれ! |
| ゴオオ… |
ジュード | 水面に渦が… |
| ゴオオオオ…! |
| |
ウンディーネ | … |
ジュード | これが水の大精霊ウンディーネ…? |
ミラ | ウンディーネ、無事か?もう大丈夫だ。さあ、私の元へ… |
ウンディーネ | ウウウ… |
ジュード | ミラ、ちょっと待って。何だか様子がおかしい―― |
ウンディーネ | グオオオオッ! |
ミラ | ウンディーネ…何をする!?私がわからないのか…? |
ウンディーネ | ガアアアアッ! |
ジュード | 駄目だ!ミラの声は、ウンディーネに届いていないみたい! |
ミラ | どうしたというのだ…!?ウンディーネ…! |
ウンディーネ | グオオオオッ! |
ミラ | うっ…! |
ジュード | ミラ!! |
ジュード | こうなったら…力づくでも止めないと… |
ミラ | 待て、ジュード。ウンディーネを攻撃するのは… |
ジュード | でも…このままだとミラが傷つく一方だよ! |
ミラ | …だが!くっ、どうすればいいのだ… |
ウンディーネ | グアアアアッ! |
ミラ | …! |
| バシィッ! |
ウンディーネ | グアッ! |
ジュード | 君は…? |
??? | 大丈夫か |
ミラ | あ、ああ。すまない… |
??? | 何をためらっているのか知らないが、相手は本気だ。このままだと、二人共死ぬぞ |
ジュード | ミラ… |
ミラ | … |
ミラ | …止むを得まい。ウンディーネを止める |
ミラ | ジュード、力を貸してくれ! |
ジュード | うん!わかった、ミラ! |
| |
ウンディーネ | グルル… |
??? | また来るぞ! |
scene3 | 思いがけぬ再会 |
ウンディーネ | ウウ… |
??? | …よし、何とか倒せたようだな |
ミラ | … |
??? | …どうした? |
ミラ | ウンディーネがこうなってしまった原因もマナだろう |
ミラ | マナが減少し、自我を保てなくなっているのかもしれん |
ミラ | この様子だと、ウンディーネに限らず他の精霊達も自我を失い、暴走状態にあるやもしれん |
ジュード | 暴走状態… |
ミラ | …何としてでもマナ減少の原因を突き止めなくては… |
??? | おい、お前達…見ろ! |
ジュード | ウンディーネの身体が…消えていく…? |
ミラ | いや、これは… |
??? | 何が起こった?新たな攻撃か? |
ミラ | そうか…。もう大丈夫なのだな |
ジュード | ミラ、ウンディーネは…? |
ミラ | …ああ、心配ない |
ミラ | ウンディーネは私の元に戻った事により姿を見せる必要がなくなっただけだ |
ジュード | そっか、よかった… |
??? | よくわからないが…もう危険はないと考えていいのか? |
ミラ | 大丈夫だ。さっきはすまなかったな、礼を言う |
ジュード | ありがとう、お蔭で助かったよ。僕はジュード、こっちはミラ。君は? |
セネル | セネル・クーリッジ、シーブル村のマリントルーパーだ |
ミラ | ふむ…そうか |
セネル | …?誰に返事をしている? |
ジュード | さっきの精霊…ウンディーネと話しているんだよ。ミラ、何かわかった? |
ミラ | いや…ウンディーネにも今この世界で何が起きているのかはわからないようだ |
ミラ | ただ、このマナの減少は、やはりウィンドルとア・ジュールの戦争再開が関係している可能性が高い |
ミラ | 人間界のマナが急激に減少したのは二国間で戦争が再開された後からだ |
ミラ | ウンディーネ達が、私の前から急に姿を消したのも、戦争によって急激にマナが減少した事が原因だろう |
ジュード | そうなると、マナに大きな影響を与えるような原因が戦争にはある、って事になるよね |
セネル | …やっぱりあいつらの推測通りか… |
ミラ | …?セネル、お前何か知っているのか? |
セネル | ここでお前達と会う前に、似たような事を話す奴らと会った |
セネル | この天変地異の発生は、戦争で使われた兵器が原因かもしれない、…そう話していた |
ミラ | 兵器だと…?その話をしていた者達は、今どこにいるか知っているか? |
セネル | 真相を探るために、ア・ジュールへ向かったようだ |
ジュード | ア・ジュール… |
セネル | さて、俺はそろそろ行く |
セネル | お前達がこの先、この異変の原因を追究しようと考えているなら、…またいずれ会う事になるだろう |
ミラ | セネル、お前はこれからどうするのだ? |
セネル | お前達やあいつらの話が本当なら、この異変を放っておく事は出来ない |
セネル | 未だに地震は頻発しているし、被害も一向に減る気配がない。…もはや根本の原因を取り除く他ないだろう |
ミラ | 私達もお前も目指すところは同じ、という事だな |
セネル | ああ。俺は海の見回りをしつつ引き続き情報を集める事にする。何かわかったら知らせよう |
ジュード | ありがとう、セネル!気を付けてね |
ジュード | さて、僕達も行こうか。次はどこかな? |
ミラ | 少し待っててくれ |
ミラ | ……。ここからさらに南の方角に、シルフの気配を感じる |
ジュード | じゃあ、このまま南に進もう |
ミラ | ああ。ウンディーネの事もある、早くシルフを捜し出そう |
ミラ | (…マナ減少の原因は戦争の再開。 では、リドウの行動も 戦争と何か関係しているのか?) |
ジュード | ミラ、どうかしたの? |
ミラ | いや、何でもない。それでは、出発しよう |
scene1 | 精霊を案ずる者 |
ジュード | 森に入ってしばらく経つね。結構奥の方まで来たけど、ここにシルフがいるの? |
ミラ | ああ。正確には森を抜けた先だが。おそらく、風の通りがいい場所にいるのだろう |
ジュード | なるほど……ん? |
ジュード | …!ミラ、あれ! |
| |
| ガアアッ! |
??? | うっ…! |
ジュード | 魔物相手に、苦戦をしているみたい!ミラ! |
ミラ | わかった。行くぞ、ジュード! |
ミラ | はああっ! |
| ズバッ! |
??? | …!? |
ジュード | 下がっていてください!いくよ!僕達が相手だ! |
| |
ジュード | もう魔物はいないね。怪我はありませんか? |
??? | ああ、大丈夫だ。君達のお蔭で助かった。感謝する |
??? | む…?これは精霊の気配か…? |
ミラ | 人間にしては感覚が鋭いな。ウンディーネが私の傍らにいる |
??? | ウンディーネといえば…水を司る大精霊じゃないか!まさか契約に成功したという事か? |
ミラ | 契約?何だそれは? |
??? | 精霊を喚び出すには、その精霊と「契約」を交わす必要がある。どの文献にもそう書いてあるだろう? |
ミラ | …?人間の知識や常識で、私を測られても困るのだが… |
ジュード | ま、まあまあ!話がややこしくなりそうだからその辺りで… |
??? | そうか、すまない。精霊の話を聞くと冷静さを欠いてしまうようだ。助手にも注意されているんだがな |
クラース | 私はクラース・F・レスター。精霊の研究をしている |
クラース | 最近頻発している大地震の影響で、世界各地の精霊達に異変が起きているのではないかと、私は考えていてな… |
クラース | それを調べようと、この森に来たんだが、さっきの魔物と鉢合わせてしまった |
ミラ | 精霊の異変…?お前も気付いていたのか。人間ながら大したものだ |
クラース | …私にも理由はよくわからないが、精霊の気配のようなものは、昔から感じる事が出来るようなんだ |
クラース | だから研究者を志しているのかもな。…さて、その話しぶりだと君達も精霊の異変に気付いていたようだが |
ミラ | ああ。彼らは今、暴走状態に陥っている可能性が高い |
クラース | 暴走状態…?精霊が暴走とは…信じられんな。やはり地震が関係しているのか…? |
ジュード | 僕達は、その精霊達を救うために動いてるんだ。…って言っても、目的はそれだけじゃないんだけどね |
ジュード | … |
ミラ | 大丈夫だ、ジュード。…エリーゼも必ず見つかる |
クラース | … |
ミラ | どうだクラース、お前も私達と共に来るか? |
クラース | 君達があのウンディーネと共にあるというのならば、研究者である私にとっては願ってもない話だ。頼む |
クラース | ジュード、といったか。そのエリーゼという人を捜すのも、手伝わせてもらおう |
ジュード | ありがとう、クラース |
クラース | しかし…君は一体何者だ?契約なしにウンディーネと共にあり、精霊が暴走しているという情報まで… |
ジュード | その辺りはあまり気にしない方向で…とにかく、先へ進まない? |
ミラ | ああ、そうだな |
scene2 | 精霊を案ずる者 |
クラース | …なるほど。話は理解した。まさか精霊達の異変の背景でそんな事が起きていたとはな… |
ミラ | この状況を打破するためにも四大の力は必要不可欠だと考えている |
クラース | しかし、何度聞いても驚かされる。契約もなしにウンディーネと行動を共にしているなど… |
ミラ | 信じられないか? |
クラース | いや、そういうわけではない。現にこうして気配を感じているからな |
クラース | 精霊を研究している私からすれば何としてもその原理を解き明かしたいところではあるが… |
クラース | 契約をしていないとなれば、精霊との関係性の違いか…?ミラ、一つ質問をさせてもらおう |
クラース | ミラから見て、四大精霊はどういう存在なんだ? |
ミラ | そうだな。口うるさい小姑みたいな奴ら…という感じだろうか |
クラース | こ、小姑…!? |
ミラ | 驚く事でもないだろう?精霊にも人間と同様感情があるし、性格も、皆それぞれ違う |
ミラ | 例えば、ここにいるウンディーネは温厚だが、シルフは少々皮肉屋な性格だ |
ミラ | 皆それぞれ私への接し方が違うが、私に世話を焼きたがるところは変わらないな |
クラース | なるほど…。非常に興味深い話だな |
ミラ | そうか?人間同士でも、そういう事はあるだろう? |
クラース | そうかもしれないが、人間同士でも、なかなか他人を指して「口うるさい小姑」とは言えないものだ |
ジュード | ミラにとって、四大精霊はきっと家族のようなものなんだね。お互いを理解し合っている感じがするよ |
ミラ | 家族か…。ふむ…深く考えた事はなかったが、そうなのかもしれないな |
クラース | 人間と精霊が互いを理解し合う、か…確かにそのような関係を築ければ契約など必要ないのかもしれないな… |
ジュード | あはは…そうだね、僕もそう思うよ |
| |
| ヒュウウ… |
ジュード | ん?風が… |
クラース | 周囲の気配が変わったな。これは… |
ミラ | よく気付いたな。ここにシルフがいる |
クラース | シルフ…風の大精霊か…! |
ミラ | シルフ!私だ! |
シルフ | … |
ジュード | これがシルフ…! |
クラース | これぞまさしく文献で見た大精霊…!確かに様子がおかしいようだな…。どれどれ…文献との違いは… |
ジュード | 不用意に近付くのは危険だよ! |
| |
シルフ | グオオオオッ! |
クラース | うおっ!? |
ジュード | クラース、大丈夫? |
クラース | ああ、すまない。本物の大精霊を見るのは初めてでやや興奮してしまったようだ |
ジュード | 気持ちはわかるけど、今のシルフは危険だよ |
ミラ | シルフ…やはりお前も暴走して、我を失っているようだな |
ジュード | ミラ… |
ミラ | ああ、わかっている |
ミラ | シルフ…少しの間、がまんしてくれ。すぐに正気に戻す! |
クラース | なっ…大精霊と戦うというのか!?確かに暴走状態とは聞いていたが、そんな無謀な事は―― |
シルフ | グアアアアッ! |
ジュード | 来るよ!ミラ、クラース、気を付けて! |
scene3 | 精霊を案ずる者 |
シルフ | ウ…ウ… |
クラース | はあ、はあ…。ま、まさか世界を支える存在と戦う事になるとはな…予想もしていなかった… |
ジュード | ミラ、どう? |
ミラ | シルフ…すまなかったな。もう大丈夫だ |
クラース | 消えた…だが、気配はまだここにあるな。一体どういう状況なんだ…? |
ジュード | ええと、ウンディーネの時もそうだったんだけど、安定したからもう姿を見せる必要がないんだって |
クラース | そうか…無念だ…。文献との違いを検証したかったのだが… |
ミラ | 心配ない。今はウンディーネと共に私のすぐ傍にいる。だが…… |
ジュード | …どうかしたの? |
ミラ | …いや、ウンディーネもそうだったのだが、シルフも弱っているように見えるのが気になってな |
ミラ | お前達、どうしたのだ? |
ミラ | そうか…そういう事か… |
ジュード | 何かわかったの? |
ミラ | …ウンディーネもシルフも、マナ減少の影響で、力が弱体化してしまっているようだ… |
ジュード | じゃ、四大精霊の力を取り戻しても、ミラの力が完全に元通りになるわけじゃないって事…? |
ミラ | ああ…マナの減少を食い止めなければ、状況は悪くなる一方だ |
クラース | … |
クラース | シルフだけでなく、四大精霊を取り戻すだと…?何とも信じがたい… |
クラース | …いや、しかし現にシルフの気配は彼女の傍にある。ふむ…信じざるを得ないようだ… |
ミラ | ……。すまないが、先を急ごう |
ジュード | …そうだね。四大精霊を捜し出さないといけない状況は変わらないし |
ミラ | ああ…。次はノームのところへ向かおうと思う |
クラース | ノーム…地の大精霊か。ミラは居場所がわかるのか? |
ミラ | ここからさらに南…シルヴァラントの方だな |
ジュード | シルヴァラント…。大陸を移動する前にエリーゼに会えればいいんだけど… |
ミラ | ジュード… |
scene1 | ロイドの友 |
クラース | よし、シルヴァラントへ入ったな。この辺りで一休みしていくか? |
ミラ | 私は別に疲れてはいない。それより… |
ジュード | …やっぱり見つからない |
ミラ | エリーゼの事か? |
ジュード | あ、ああ…ミラ!ごめん、知らない間に二人から離れちゃってたみたいだね… |
ジュード | 結局ここまで、何の手がかりも掴む事が出来なかったなと思って… |
ジュード | これだけ捜しても会えないって事はひょっとして、あの国境地帯の亀裂と一緒に飲み込まれてしまったとか… |
ミラ | …。可能性は否定出来んが、まだそうと決まったわけではない |
ミラ | 大陸が分断された際に亀裂を隔てて離ればなれになった可能性だってある |
ジュード | …だとしたら、エリーゼはア・ジュールに…? |
ミラ | ああ。あくまで可能性の一つに過ぎないが… |
ミラ | …とにかく、諦めるのはまだ早い。エリーゼの事は私も心配だ。一段落着いたらア・ジュールへ行ってみよう |
ミラ | 戦争の事もある。なるべく早く捜しに行かねばな… |
ジュード | ミラ…。そうだね、ありがと―― |
ミラ | おっと… |
若い女1 | ちょっと、何ぼーっとしてるのよ! |
??? | まあまあ、抑えて抑えて、俺さまのかわいい子猫ちゃん達ーそこのクールな彼女ー、怪我はない? |
ミラ | この程度で怪我などしていたら、身がもたないぞ? |
若い女2 | んまあ、何その態度!せっかくゼロス様が心配して、声をかけてくださったというのに! |
クラース | やれやれ。世界がこんな状態だというのに、呑気な奴らもいるものだ… |
若い女3 | 何よこのオッサン!ゼロス様は大地震の中私達を助け出してくれた王子様―― |
ジュード | ああ、火に油を…ど、どうもすみませんでした!ほら、もう行こう、ミラ |
ゼロス | ミラ…?もしかして光の神殿へ行ったミラか? |
ミラ | ああ、そうだが |
ゼロス | そうか!あんたがあのミラさまか!いやあ、会いたかったぜ~! |
ゼロス | ロイドくんから話は聞いてるぜ。一緒に光の神殿へ行ったって |
ミラ | なるほど。ロイドの知り合いだったか |
ゼロス | ミラさまには、是が非でも言わなきゃならねえ事があるんだ。と、その前に… |
ゼロス | 子猫ちゃん達をすぐそこの街まで送り届けてくるから、少しここで待っててくれ |
ジュード | え…でも… |
ゼロス | なぁに、すぐ戻るからよ! |
ミラ | …。騒々しい男だな |
| |
ゼロス | まず礼を言わせてくれ。妹のセレスを助けてくれて、ありがとな! |
ミラ | 妹…そういう事か。話が繋がったぞ |
ミラ | ロイドが星のカケラに願い、救おうとしていたのはお前の妹の事だったのだな |
ゼロス | ああ。ミラさまのお蔭でセレスもすっかり回復してる。本当にありがとう |
ミラ | イニル街の事は、私だけの功績ではない。ユーリ、エル…皆で力を合わせたからこそ成し得たのだ |
ミラ | …それにしても、不思議な巡り合わせだな。まさかこんな形でロイドの友人に出会うとは… |
ミラ | 今、ロイドはどうしているのだ? |
ゼロス | ロイドなら、シルヴァラントのある街を救うために、王都を飛び出したって話なんだけど… |
ゼロス | それ以降の足取りが掴めなくて、俺さまも今こうして捜してるってわけ |
ゼロス | ロイドには、いろいろ世話になったし力になれる事があんなら…と思ってな |
ミラ | 友人を捜しているという割には、女子を脇にはべらせて、楽しそうにしているようだったが |
ゼロス | さっき子猫ちゃん達も言ってただろ?俺さまは、困ってるあの子達を助けてあげただけ! |
ゼロス | ま、俺さまってばどこへ行っても大人気だからさ、あの子達が懐いちゃうのも仕方ないんだけどな |
ジュード | 何か、変わった人だね… |
ミラ | 何はともあれ、ロイドが無事だとわかって安心したぞ。また会えるとよかったのだがな |
ゼロス | …だったら、ミラさまも俺さまと一緒にロイドを捜すのを手伝ってくれない? |
ミラ | ふむ…。そうしたいのは山々だ。だが、マナの減少を食い止めなければこの世界が滅びてしまうからな |
ゼロス | 世界が滅びるだって?何か、やばそうだけど詳しい話を聞かせてくれ… |
ゼロス | まさか、そんな状況だとは… |
ゼロス | …。だったら、俺も一緒に行くぜ |
ジュード | …!でも、その友達は… |
ゼロス | 別にその四大精霊って奴を集めながらでも、ロイドは捜せるだろ?どこかでバッタリ会うかもしれねえし |
ゼロス | 何より、そんな話を聞いて、放っておけるわけねえだろ |
ゼロス | ミラさまにも恩がある、そいつも返さないといけねえしな。俺さま、案外役に立つぜ? |
ミラ | …やはりロイドの友、だな。いいだろう、こちらとしても助かる |
ゼロス | …? |
ゼロス | あ、そういや俺さまちゃんと名乗ってなかったよな |
ゼロス | 俺さまはゼロス・ワイルダー。よろしくな! |
ジュード | ゼロス、だね。僕はジュード、あと、こっちはクラース |
ジュード | 改めて、これからよろしく―― |
ゼロス | あ、野郎はどうでもいいやそんな事より、はりきって行こうぜ! |
クラース | 何というか…軽そうな男だな |
ジュード | そ、そうだね… |
scene2 | ロイドの友 |
ミラ | それにしても…ウィンドルとア・ジュールは、何故戦争を再開したのだ? |
ミラ | 私達は光の神殿で、世界中に満ちていた負の感情を浄化する事をティルグに願い、かなえられた |
ミラ | その上で、実際の世界平和は自分達の手で成し遂げると、皆で誓い合った |
ミラ | 現に両国は戦いをやめ、和平交渉を開始するところまで進んでいたはずだ |
ミラ | それなのに、何故…。お前達は戦争が再開された理由を知っているか? |
ゼロス | 何でも、ア・ジュールが突然攻撃を仕掛けてきたのがきっかけって話だぜ |
ゼロス | ま、元々のあの二国の争いは星のカケラを求めてア・ジュールに攻め入ったウィンドルの国王が原因だ |
ゼロス | 今更態度を改めたところで、ア・ジュールが許せるはずがねえと思っても、不思議じゃねえよな |
ゼロス | …何にせよ、今はこの異変の影響で戦争どころの騒ぎじゃなくなっちまってるけどな |
ジュード | そっか。これだけ地震や地割れが多発していると、軍の被害も大きくなるもんね |
ゼロス | ああ。特に戦場だった国境地帯が巨大な地割れで崩壊しちまったからな |
ゼロス | どっちの軍も撤退を始めて、いまじゃ事実上の停戦状態になっているらしいぜ |
クラース | 私も、戦争のきっかけについてはゼロスと同じ認識だ |
ミラ | ア・ジュールの攻撃か…。これについてもちゃんと調べる必要がありそうだな… |
ジュード | このまま戦争が続くと、ますますマナが減っていくっていう事だよね? |
ミラ | セネルの話だと戦争に、何らかの兵器が使用されているらしい。おそらくそれが原因の可能性が高い |
ミラ | 今は停戦状態とはいえ、戦争が再開されれば、さらにマナの枯渇は進む。そうなる前に―― |
| ゴゴゴ…! |
ゼロス | おっと、地震か |
ゼロス | これもそのマナの減少が原因なんだよな… |
ゼロス | まさか、この大地震の背景にそんなスケールのでかい話が隠れていたとはな… |
ジュード | エリーゼ…無事だといいけど… |
ミラ | ジュード、君だけでもエリーゼを捜しに行ってもいいのだぞ? |
ジュード | ううん。一人でもやれる事は今とあまり変わらないからね。だったら、ミラの手伝いをしながらの方が―― |
| ガサ… |
クラース | む…? |
| |
| ギャオオオオ! |
クラース | みんな、気を付けろ。魔物だ! |
scene1 | 寂寞の荒野 |
ゼロス | こりゃまた…随分と荒れ果てた、寂しいところに来たもんだな |
ジュード | ここにノームがいるの? |
ミラ | ああ。間違いない |
クラース | 確かに精霊の存在を強く感じる。興味深い場所だ |
ゼロス | 興味深い、ねえ…。俺さまにはその感覚はわかんねえなー |
クラース | それは残念だ。お前との感性の違いという奴だろう。そもそも精霊というものはだな―― |
ゼロス | あー!俺さま話を聞くなら、野郎よりミラさまがいい!出来れば、二人っきりで |
クラース | …確かにミラには劣るが、私にも精霊の知識はあるっ! |
ジュード | まあまあ、二人ともその辺りで |
ミラ | む… |
ジュード | どうしたの、ミラ? |
ミラ | 気配が乱れている… |
クラース | …ああ、確かにこれまでの様子とはまた少し異なる |
ゼロス | 俺さまは何も感じないけどなー。ジュード、お前は? |
ジュード | 僕も何も… |
ミラ | この先にノームがいる |
ミラ | だがこの気配は……誰かと戦っているのか…? |
ジュード | 戦ってるって…一体誰が… |
ゼロス | 俺さま達の他にも、四大精霊を正気に戻そうとしてる奴がいるって事か? |
ミラ | …!まさか、リドウ…? |
クラース | お、おい!ミラ!?どうしたんだ突然…! |
| |
ジュード | リドウって…確かミラを襲った… |
ゼロス | ジュード!お前も早く来い! |
ジュード | う、うん! |
scene2 | 寂寞の荒野 |
??? | グオオオオッ! |
??? | このヤロウ、コハクを離しやがれ! |
ミラ | あれは…リドウではなかったか |
ミラ | ノーム!やめろ! |
ジュード | 傍に人が…やっぱり戦ってるみたいだ! |
クラース | 一人はノームに捕まっているんじゃないか? |
ゼロス | 女の子の前でかっこつけようとして、いらんちょっかいでも出したのかね |
ジュード | すぐに助けないと! |
ノーム | グオオオオッ! |
??? | 危ない…!お兄ちゃん避けて!! |
??? | くっ…駄目か…! |
| ガシッ! |
??? | え…? |
ミラ | 間に合ったか…おい、大丈夫か? |
??? | ああ、ギリギリ何とかな。…ところでお前達は―― |
ミラ | 説明は後だ。それよりあの娘は… |
??? | 俺の妹のコハクだ |
ゼロス | 妹だと…? |
??? | ここを歩いていたら、いきなりあのヤロウに襲われて… |
クラース | あのヤロウ呼ばわりは感心しないな。あれは地の大精霊、ノームだぞ! |
??? | ああ?そんな事知るかよ!精霊だろうが何だろうが、コハクを傷つけるヤツは許さねえ! |
ゼロス | ふっ… |
ジュード | ゼロス…? |
ゼロス | それだったら…かっこいいとこ見せねーとな |
ノーム | グアアアアッ! |
??? | くっ、また…! |
| ザンッ! |
ゼロス | おいたはここまでだぜ |
クラース | …まるで別人のような動きだったな、ゼロス。どうかしたのか? |
ゼロス | なーに、妹を守ろうと必死になっているそこの兄貴にちょっとばかり共感しただけ |
ゼロス | 兄貴ってのは…妹を守るもんだからな |
ゼロス | それにまあ…ロイドくんの熱血ぶりに感化されちまったのかもな |
ミラ | …大口を叩くだけあって腕も確かなようだな。見直したぞ |
ゼロス | だろ? |
ミラ | …それにしても、あの温厚なノームが人に襲い掛かるとは… |
ノーム | グオオオオッ! |
ミラ | 待っていろ、今正気に戻してやるぞ…! |
scene3 | 寂寞の荒野 |
??? | ふう…助かったぁ… |
??? | コハク!大丈夫か!? |
| |
ゼロス | コハクちゃん、俺さまの活躍見てくれた?キミのために、俺さま頑張ったんだぜ |
??? | ゴルァ!俺の目の前で、コハクをナンパしてんじゃねー! |
コハク | あ、あはは… |
ジュード | ゼロス…戦ってる時は、あんなにきりっとして、かっこよかったのに… |
| |
クラース | これがノーム…地の大精霊か。ふむふむ…なるほど…!やはり、ついてきた甲斐があった…! |
ミラ | よく頑張ったな、ノーム |
??? | あいつ、何やってんだ?倒した魔物を嬉しそうに眺めて |
ジュード | 魔物じゃなくて「精霊」だよ。クラースが聞いたら、また怒るよ… |
コハク | え…あれ…?さっきの魔物…じゃなくて、精霊が消えた… |
??? | 一体何が起きたんだ…? |
クラース | 話せば長いが、あのミラという女性につくと、姿を現す必要がなくなるそうだ |
??? | へぇ。わかったようなわかんねぇような…危険がねぇなら問題ないけどよ |
ミラ | ああ…わかっている。マナ減少の影響で、お前達の力が元に戻っていない事も |
ミラ | 精霊界と人間界、そしてお前達のためにも必ずマナ減少の原因を取り除く |
ミラ | そのためにはノーム、お前の力が必要なのだ。…すまないが力を貸してくれ |
ミラ | ありがとう…。あとはイフリートが戻れば再び皆が集まる。もう一息だ… |
クラース | … |
クラース | …なるほどな。うむ。今なら理解出来る |
ジュード | ん?何が? |
クラース | 前に話した事を覚えているか?お前はミラと精霊は家族のようなものだ、と言った |
クラース | 私は精霊と繋がるには、契約しかないと考えていた。だが…違う。今確信したよ |
クラース | 彼らには契約など必要としない、深い絆がある。心から繋がっているんだ |
ジュード | クラース…うん。そうだね |
コハク | あの、さっきは助けてくれて本当にありがとう!わたしはコハク、こっちは兄のヒスイだよ |
ジュード | コハクとヒスイ、だね。君達はどうしてこんな何もないところを歩いていたの? |
コハク | わたし達、行方不明になった友達を捜していて、たまたまここを通りかかったの |
ヒスイ | まあ、俺はシングなんてどうでもいいがな |
コハク | あなた達、シングを見なかった?すごく元気がよくって、明るい男の子なんだけど… |
ジュード | シング…うーん、聞いた事はないな…。力になれなくてごめんね |
ゼロス | 俺さまも記憶にねえな。しかし、そっちも人捜しなんてな…大地震の影響を改めて思い知らされるぜ |
ジュード | エリーゼの次は、シングか…地震のせいで行方がわからない人って他にもたくさんいるのかもしれないね |
| ゴゴゴ…! |
コハク | あ、地震… |
ヒスイ | またか…。この地震は一体いつまで続くんだ?本当にいい迷惑だぜ |
ミラ | 酷くなる事はあっても、まだしばらくは収まるまい… |
ヒスイ | …それはどういう事だ? |
ゼロス | …というわけだ。ま、俺さまも精霊やマナ云々の事はあんまりよくわからねえけどな |
コハク | 不思議な力のはびこった亀裂があちこちに出来てるって話だし、何か変だとは思ってたけど… |
コハク | まさか、そんな状況だなんて… |
ヒスイ | … |
ジュード | ミラ、次はどこへ? |
ミラ | 次はイフリートだ。これで全ての四大が揃う事になる |
ゼロス | そいつさえ取り戻せば、ミラさまも本調子になるってわけだな!んじゃ、はりきって行こうぜ! |
コハク | あの、わたし達も、一緒に行っていいかな? |
ヒスイ | コハク?まさか… |
コハク | このままだと世界が崩壊してしまうって事でしょ?そんな話聞いて、放っておけないよ |
コハク | それに、みんなも人捜しをしてるなら協力し合えるかもしれないし |
ミラ | コハク… |
ゼロス | 勿論!コハクちゃんなら大歓迎さ。あ、野郎は別にいいから |
ヒスイ | 俺も行くに決まってんだろ!コハクがあのノーテン菌を捜しに行くってだけでも心配だってのに… |
ヒスイ | お前みてえな野蛮な男がいるところにコハクを任せられっかよ! |
ゼロス | ちぇっ、うるさい兄貴付きかよ… |
| ゴゴゴ… |
クラース | む…?またか…。地震発生の頻度が増しているように感じるのは気のせいか?それに―― |
| |
| ゴゴゴゴゴゴ…!! |
ミラ | …何だ!?このすさまじい揺れは! |
ジュード | 立っているのもやっとだ…! |
| ズガッ! |
コハク | そ、そんな…地面に亀裂が…! |
ヒスイ | くっ、風も強いぞ…!何なんだ突然…何が起きてる!? |
ミラ | 大地が震えている…これは、まさか… |
scene1 | 成すべき事は… |
| ゴゴゴ… |
コハク | ようやく収まったみたいだね… |
ミラ | … |
クラース | … |
ジュード | 今度の地震は、随分大きかったね |
ヒスイ | ああ、今までの地震とは比べものになんねぇな。こんなにでっかい亀裂まで出来ちまって… |
クラース | … |
ジュード | クラース?それにミラも…二人共どうしたの?急に黙りこくって… |
ミラ | … |
クラース | 私は精霊と話が出来るわけではないがかなり危険な予感がする。何故だか違和感を覚えた… |
クラース | これは…精霊達からの警告…なのか? |
コハク | 精霊達からの…警告? |
ミラ | …事態は、想像以上に深刻な状況にある、という事だ |
ミラ | 世界のマナの残量からして、枯渇寸前とはいえ、もう少し余裕があるものだと思っていた |
ミラ | …だが、マナは予想だにしない速さで今も尚、減り続けている |
ジュード | マナが?…でも、どうして?原因だった戦争は今は停戦状態なはず… |
ジュード | そうなると、戦争の他にもマナを減少させる原因があるっていう事? |
ミラ | …おそらくな。その原因として考えられるとすれば、大精霊達の暴走の影響… |
ジュード | 大精霊…?それってイフリート達の事? |
ミラ | いや、違う |
クラース | 大精霊とは、精霊の中でもより強大な力を持つ精霊達の事だ。そこに分類される精霊は、四大精霊だけではない |
ジュード | そんな… |
ミラ | その大精霊達が暴走する事で、自然の均衡が崩壊し、マナの減少を加速させている |
ミラ | …あくまで、これも推測に過ぎんがな |
ゼロス | ミラさまの言う通りなら、それって相当やばいって事? |
ミラ | … |
クラース | とにかく…一刻も早くイフリートの元へ行った方がよさそうだ |
ミラ | ああ…この大地震は、世界のうめきそのもの… |
ミラ | 早急に手を打たなければ、本当に取り返しのつかない事になる… |
ジュード | あ…ミラ!クラース! |
ゼロス | …行っちまったぜ |
ヒスイ | あの二人、相当ピリピリしてやがったな |
ジュード | 仕方ないよ…。あの二人…特にミラは精霊達の事やマナについて直に感じ取る事が出来る… |
ジュード | きっとそれほどまでに切羽詰まった状況って事なんだと思う |
コハク | ミラ… |
ゼロス | とにかく、見失う前に早くあの二人を追いかけようぜ |
コハク | うん、そうしよう! |
ジュード | … |
ジュード | ミラ… |
scene2 | 成すべき事は… |
コハク | アグニラス山がこんな火山になってるなんて…。本当にここにイフリートが? |
クラース | ああ、強い気配を感じる。…それにしても、いかにもイフリートが好みそうな場所だ |
ミラ | … |
| |
ヒスイ | おい、ミラ!一人で突き進むのは危険―― |
ヒスイ | ったく…何だありゃ。人の話をまるで聞いてねえ |
コハク | わたし達…ひょっとしてついて来なかった方がよかったかな? |
ゼロス | ないない、それはないって。ミラさまは今、少しばかりナイーブなだけ! |
ゼロス | コハクちゃんが心配する必要は全くないから! |
ジュード | … |
| |
ミラ | 急がねば… |
ジュード | ミラ、気持ちはわかるけど、そんなに焦るのはよくないよ |
ミラ | …焦らずにいられる状況だと思うか?今世界がどれほど危うい事態なのか君達はわかっていないのだ |
ジュード | 確かに僕達はミラみたいに精霊やマナ、それに世界の状況を把握出来ていないのかもしれない |
ジュード | …けど、今のミラが明らかに冷静さを欠いているって事はわかるよ |
ミラ | …何だと? |
ジュード | イフリートに会って、正気を取り戻させるために戦うんでしょ? |
ジュード | …なのに、ミラがそんな状態じゃ危険だと思うよ |
ミラ | … |
ゼロス | ジュードくんも大変だねえ。せっかく尽くしても、肝心のミラさまがあれじゃな |
ジュード | 別に僕は尽くしているつもりはないよ |
ジュード | ミラが焦るのも仕方ないと思う |
ジュード | …ただ、今のミラはいつもと違うからすごく心配なんだ |
ゼロス | ジュードくんは健気だね |
| |
ミラ | この辺りか… |
クラース | ああ、私も感じる。濃密な気配を |
ミラ | イフリート、私だ。出て来い! |
コハク | …!ねえ、お兄ちゃん…この空気の感じ… |
ヒスイ | ああ。張りつめてきやがった。何が出て来るんだ? |
イフリート | … |
ゼロス | あれが…イフリートか? |
クラース | ああ、あれこそが火の大精霊…だが、これは… |
ジュード | 今までに会った他の四大精霊の時とは雰囲気が全然違う…! |
クラース | 暴走がそれだけ、深刻化しているという事か…? |
イフリート | グオオオオッ! |
ゼロス | おっと、いきなりかよ。あっぶねー |
クラース | 相当気が高ぶっているようだ。こちらも覚悟してかからなければ間違いなく返り討ちに遭うぞ |
ジュード | そうだね。全員で協力して… |
ミラ | イフリート!すぐに元に戻す! |
ジュード | なっ、ミラ!!一人で先走るのは危険だ! |
イフリート | ガアアアアアッ! |
ヒスイ | 突っ込んで来るぞ!みんな、備えろよ! |
scene3 | 成すべき事は… |
ヒスイ | ったく、キツイ戦いだったぜ… |
コハク | すごい力だったね…これが暴走した四大精霊… |
ミラ | 全く…時間がないというのに… |
ゼロス | ミラさま…。ノームと戦った後はもう少し優しかったのに… |
クラース | よほど余裕がないのだろう |
ジュード | … |
ジュード | あ…イフリートが動いて… |
ジュード | 危ない!ミラ!! |
ミラ | …! |
イフリート | グオオオオッ! |
| ズガッ!! |
ジュード | う…っ |
クラース | ジュード! |
ゼロス | 大丈夫か!? |
コハク | 大変! |
ヒスイ | しっかりしろ! |
ジュード | ぐっ… |
ミラ | ジュ、ジュード… |
ミラ | イフリート!目を覚ませ…!! |
| ザシュッ!! |
イフリート | … |
ミラ | くっ… |
ジュード | ん… |
ミラ | ジュード、大丈夫か!?しっかりしろ! |
ジュード | あ、あれ…僕は…? |
クラース | イフリートの攻撃からミラをかばった後気絶したんだ。痛むところはないか? |
ジュード | えっと…うん、大丈夫だよ |
ジュード | …って、そうだ!イフリートは…!? |
ミラ | ああ、無事正気を取り戻した。今、お前を心配そうに覗き込んでいる |
ジュード | …成功したんだね!よかった… |
ジュード | これで無事、四大精霊がみんな揃ったって事だよね |
ミラ | ジュード… |
ミラ | …すまない、君の忠告を聞き入れるべきだった。確かに私は、焦るあまり冷静さを欠いていた |
ミラ | それゆえに、イフリートの状態を見極める事も出来ずに、がむしゃらに挑んでいき…結果、君を傷付けた… |
ジュード | ミラ… |
ミラ | 世界の事もそうだ。目的を成す事だけに囚われていた |
ミラ | マナや精霊、世界の動きにもっと目を向けながら動いていれば、事態は変わっていたかもしれない… |
ジュード | …何もかもを一人で抱えすぎないで大丈夫だよ |
ミラ | …? |
ジュード | 確かに、マナや精霊達を感じ取れるミラと僕達は立場が違う… |
ジュード | でも、この世界に生きているという点では、一緒のはずでしょ? |
ミラ | … |
ジュード | この世界を何とかしたい、何とかしなくっちゃって気持ちを、誰もが持っているはずなんだ |
ジュード | だから…一人で背負わず、僕達の事を頼ってほしいんだ |
ミラ | ジュード… |
ミラ | お前達… |
ミラ | …ああ、そうだな |
クラース | 四大精霊と話をしているのか? |
ミラ | ああ、四大に叱られた。ジュードの言う通りだとな |
ミラ | …皆、すまない |
コハク | 謝る必要はないよ、ミラ |
コハク | あなたが世界を救いたいと思う強い気持ちがあるからこそ、必死だったんだと思うの |
ヒスイ | シングのヤツも突っ走りがちだけどお前もそういうタイプだったとはな。意外だったけど、悪かないと思うぜ |
ゼロス | それにさ、自分の駄目なところに気付いたなら直していけばいい。それだけの話だろ? |
クラース | 人は失敗を重ね、誤りを自覚する事で成長するものだ。何も気にする事はない |
ジュード | ミラは一人じゃないよ。僕も…みんなもいるから |
ミラ | ジュード、それに皆…ありがとう |
| |
クラース | では、気を取り直していくか |
ゼロス | 次のミッションは、マナの減少を食い止める、だっけ? |
ミラ | ああ、そうだ。そのためには、マナを減少させている全ての要因を潰す必要がある |
ミラ | マナをここまでの状況に追いやった根本の原因は、ウィンドルとア・ジュールの戦争のはずだ。だが… |
コハク | 今は、停戦を余儀なくされている、…だよね? |
ジュード | …という事は、さっきミラが言ってた大精霊達の暴走を鎮めて自然の均衡を元に戻す事に注力すべきなのかな? |
ミラ | そうなるな。…とはいえ、二国の戦争も遅かれ早かれ再開する事になるだろう |
ミラ | こちらも、早々に対処する必要はありそうだが… |
クラース | そっちも警戒しつつ動くしかないだろうな |
ヒスイ | ああ、そうだな |
ミラ | …ところで、ジュード…それにクラース、ゼロス、コハク、ヒスイ。お前達はこの先どうする? |
ミラ | 皆、それぞれ目的があるだろう? |
ミラ | 各地にいる大精霊達を鎮めるとなれば辺境の地へ赴く機会も増える |
ミラ | 戦争が再開されれば、戦地に行く事もあるかもしれない。そうなると再会出来る機会も… |
クラース | 大精霊に会える機会など滅多にあるものではない。無論、私は同行させてもらう |
ゼロス | ミラさまったら、水臭えな。ここまで来たら俺さまも最後まで一緒に行くぜ? |
ゼロス | ロイドの奴がここにいたら、きっと間違いなくミラさまと一緒に行く道を選ぶと思うぜ |
ゼロス | そう考えれば、ミラさまに協力する事は、俺さまからすりゃあいつに力を貸してるも同然だろ? |
コハク | わたし達も一緒に行くよ、ミラ!シングを捜してるのは今も一緒、だけど… |
コハク | 無事会えたとしても、この世界がなくなってしまったら本末転倒でしょ? |
コハク | 大精霊達を鎮めていく中でシングに会えないとも限らないし。ね、お兄ちゃん? |
ヒスイ | …シングの奴はどうでもいいが、コハクがミラと共に行くというなら俺も一緒に行く、それだけだ! |
ミラ | クラース、ゼロス、コハク…それにヒスイ…感謝する |
クラース | ジュード、お前はどうする?兼ねてから捜しているエリーゼを捜しに行っても、誰も咎めはしないぞ |
ジュード | ううん、僕も一緒に行く。エリーゼが気がかりなのは今も変わらないよ |
ジュード | だけど、これ以上マナが減少したら、この世界そのものが破滅しちゃうかもしれない… |
ジュード | だから、そうしないためにも、僕はこのままミラを手伝うよ。勿論、エリーゼを捜しながらね |
ゼロス | ぐぬ…まだ見ぬエリーゼちゃんと麗しのミラさまを両天秤に… |
ゼロス | 今のは聞き捨てならねえセリフだな、ジュードくん~? |
ジュード | …え?あの…僕、そんな意味じゃ… |
クラース | ま、何はともあれ話はまとまったか。では、時間もない事だ、早速動き出すとしようか |
ミラ | ああ! |
Name | Dialogue |
scene1 | 悲劇の街 |
リオン | … |
リオン | 何故だ… |
リオン | 何故こんな事になってしまったんだ… |
リオン | …くっ、何としてでも―― |
??? | リオン! |
| |
リオン | スタン…!いつ戻って来た? |
スタン | たった今だよ!それよりこれはどういう事なんだ!?街が氷漬けじゃないか!! |
リオン | … |
スタン | リリスは!?街のみんなは!? |
スタン | …! |
スタン | みんなこの中だって言うのかよ!街ごと氷漬けで…まるで時間が止まったみたいに… |
スタン | 俺が…俺が今助けてやるからな! |
スタン | うぉおおおおっ!! |
| ガン!ガン!ガン! |
リオン | …やめろ、スタン。拳で叩こうが、剣を当てようが無駄だ |
リオン | この氷は炎でも溶けない。力任せに砕く事も出来ない |
リオン | 仮に砕けたとしても、中にいる人間が傷付く可能性の方が高い |
リオン | この氷は、普通の氷ではない。…おそらく何か特別な力が働いているのだろう |
スタン | そんな… |
| |
| ゴゴゴ… |
リオン | また地震か… |
スタン | この地震のせいで、他の街でもあちこちで建物が壊れたり、地割れが起きているみたいなんだ |
スタン | それでルイニス街が心配になって、戻って来たんだけど、まさかこんな事になっていたなんて… |
スタン | …なあ、リオン。街がこうなったのは地震が頻繁に起きているのと何か関係があるんじゃないか? |
リオン | …僕が知るわけないだろう |
スタン | そうだよな…。くそっ…!俺にはどうする事も出来ないのか…! |
リオン | … |
スタン | どこへ行くんだ、リオン!みんなを置いてく気か!? |
リオン | …ここにいても仕方あるまい。僕はメルトキオに行く |
スタン | メルトキオ? |
スタン | ああ、そうか!情報収集に行くんだな!確かにあそこなら人もたくさんいるし |
スタン | よし!俺も一緒に行く!みんなを助けるためだもんな! |
リオン | …勝手に決めるな。何故僕が、お前と行動を共にしなければならない |
スタン | どうしてこうなったのかわからないけど街を救いたいのは俺も同じだ! |
スタン | みんなを…この街を元に戻さないと!だから…! |
リオン | … |
リオン | …勝手にしろ |
スタン | リリス…みんな…待っててくれ。必ず助けてやるからな…! |
スタン | リオン!待ってくれよ! |
scene2 | 悲劇の街 |
スタン | でも、突然どうしてこんな事に…。どうすればみんなを助けられるんだ? |
リオン | … |
スタン | なあリオン、何かあてはあるのか? |
リオン | …あればとっくにやっている |
スタン | そうだよな…。街が氷漬けなんて聞いた事もないもんな |
リオン | … |
スタン | …なあ、リオン。やっぱり、この地震と街の氷は何か関係があるんじゃないか? |
スタン | こんな何回も起きる大きな地震は今まで一度だってなかったし、それに街が凍るなんて話も聞いた事がないし |
スタン | それがこんないっぺんに起こるなんて何か関係があるとしか… |
リオン | うるさい、僕が知るか! |
リオン | お前が考えるだけ無駄だ。少し黙ってろ |
スタン | …ごめん。そうかもな。何もわからないのに、俺ばっかり喋ってもしょうがないよな |
スタン | よし、まずは情報収集だ!話はそこからだよな、リオン! |
リオン | …ああ |
スタン | リオンが街のみんなの事を、本当に大切に想っていたのは知ってる。…何としてでも俺達で救おうな |
リオン | …。知ったような口を利くな。お前に僕の何がわかると―― |
| |
| ゴゴゴ…! |
スタン | また地震だ、大きいぞ! |
| ゴゴゴゴゴ…! |
??? | キャアアーーッ! |
リオン | …!? |
??? | だ、誰かーっ! |
スタン | あれは…女の子か!?亀裂に落ちそうになってるぞ! |
| |
リオン | ちっ…!おい!手を伸ばせ! |
??? | えっ…!?う、うん! |
| |
??? | た、助かったぁ…。ありがとう、剣士さん |
スタン | 助かってよかったよ。でも、こんな深い亀裂に飲み込まれたらどうなっちゃうんだろうな |
リオン | スタン、覗き込むのはよせ。足を滑らせて落ちても… |
| バシィッ! |
スタン | うわっ、何だこれ!? |
スタン | 七色の光に弾かれたような…?どうなってるんだ? |
??? | 亀裂が出来た瞬間は落ちるんだけど、そのあとすぐバリアみたいなものが張られて、入れなくなるみたいなの |
リオン | ただの亀裂ではない、という事か… |
??? | あ、改めてお礼を言わなきゃ。本当にありがとう、助かったわ |
ルビア | 自己紹介も遅れちゃった。あたし、ルビア・ナトウィック。あなた達は? |
スタン | 俺はスタン・エルロン。こっちはリオン・マグナスだ |
ルビア | スタンにリオンね。ホントありがと。もう少しでその亀裂に落ちて、どこかへ消えちゃうとこだった |
リオン | 消える…?「死ぬ」と考えるのが普通のように思うが… |
ルビア | ううん。ちょっと違うみたいなの。さっきも軽く話したけどあたしが聞いた話だと… |
スタン | まさかそんな事が… |
リオン | … |
ルビア | …とにかく、本当に助かったわ。カイウスを捜すあたしまで行方不明になっちゃうわけにはいかないしね |
ルビア | じゃあ、あたしはもう行くわ。助けてもらっておいてなんだけど、あなた達も、亀裂には気を付けてね! |
スタン | ああ、ルビアも気を付けて! |
| |
スタン | 人を捜してるって言ってたな。一人で大丈夫かな?またさっきの亀裂に巻き込まれなきゃいいけど… |
スタン | ルイニス街の氷といい、今の亀裂の話といい…おかしな事ばかりだな |
スタン | 何だってこんな妙な事が立て続けに起こるんだ…? |
リオン | …まさか、な |
スタン | ん?リオン、何か言ったか? |
リオン | 何でもない。それより、向こうを見てみろ |
| グオオオオッ! |
リオン | …魔物だ |
スタン | ええっ!?気配なんてまるでなかったのに! |
scene1 | 友達 |
スタン | メルトキオに着いたな。そういえば、前にここに来た時はルーティが一緒だったっけ |
スタン | ルーティ、亀裂に落ちてなければいいけど |
リオン | …ふん、あの女の事だ。亀裂に落ちるとしてもタダで落ちるとは思えんな |
??? | リフィル先生、やっぱりジーニアスは街にはいないんじゃないか…?街の外を捜しにいこうぜ |
リフィル | 待って、ロイド。この状況で気軽に街を離れるのは… |
リオン | あいつは… |
| |
ロイド | ん?リオン…?リオンじゃないか! |
スタン | 知り合いか? |
リオン | そんなところだ |
ロイド | 久しぶりだな、元気だったか?ん?今日は友達も一緒か |
スタン | ああ!俺はスタン・エルロン、よろしくな! |
ロイド | 俺はロイド・アーヴィング。で、こっちはリフィル先生だ! |
リフィル | リフィルよ。よろしくね |
ロイド | しかし、リオンにこんな賑やかな友達がいるなんて、何か意外だな |
リオン | 友達だと?勘違いするな。そんな関係でもないし、こいつが勝手について来ただけだ |
スタン | ええっ?そうなのか!?俺はリオンの事、友達だと思ってたんだけどなあ |
リオン | ふん。勝手に言っていろ |
リオン | いいか?この際だから、はっきり言っておく。お前とは断じて、友達なんかじゃない |
リオン | 僕はお前のように、能天気で、図々しくて、馴れ馴れしい奴が大嫌いだ |
ロイド | お、おい…リオン…何もそこまで… |
スタン | うーん。それでも俺は、やっぱりリオンの事を、友達だと思ってるんだけどなあ |
リオン | …この馬鹿が。いいか、何度も同じ事を言わせるなよ |
リフィル | 喧嘩するほど仲がいいとは言うけど…そこまでにしなさい |
リオン | だから違うと言っている!一体僕とこいつのどこが仲がいいと… |
ロイド | まあまあ、…で、リオン達はどうしてメルトキオに? |
リオン | それは… |
スタン | リオン、ここは俺が話すよ。二人共聞いてくれ。実は―― |
ロイド | まさか、ルイニス街がそんな事に…!? |
リフィル | 氷漬けだなんて…。疑うわけではないけれど、にわかには信じがたい話ね |
リオン | …紛れもない事実だ |
ロイド | うーん。何かよくわからねえけど、それって本当に自然の力なのか?何か、ええと…「わざと」みたいな? |
スタン | お、ロイドもそう思うか?実は、俺もそう考えてたんだ |
スタン | 前に聞いた亀裂の変な力の事も気になるし…とにかく俺は街の事も「自然の力じゃない」って考えてる |
ロイド | 自然の力でもそうじゃなくても、ルイニス街を放っておくわけにはいかないよな。先生、どう思う? |
リフィル | 話を聞いた感じだと、普通の氷とは思えないわね。ただ熱して溶かすというわけにもいかないでしょうし… |
リフィル | 確証はないけれど…炎の大精霊イフリートの力を用いれば何とか出来るかもしれない |
リオン | 精霊…イフリート、だと? |
リオン | おい。その話、詳しく聞かせろ |
スタン | リオン…?どうしたんだよ。急に |
リオン | スタン、お前は黙っていろ。…リフィルと言ったな。精霊がいる場所を知っているなら、教えてくれ |
リフィル | …ごめんなさい。私は専門ではないから、詳しい事はわからないわ |
リオン | …そうか |
リフィル | それに、今の話もあくまで確証のない一つの可能性でしかない |
リオン | … |
スタン | でも、今のところそれしか考えられる方法がないなら試すしかない!そうだろ?リオン |
リオン | …ああ |
リフィル | …だったら、クラースを訪ねてみるといいわ |
リオン | …クラース? |
リフィル | ええ、ウィンドルにいるクラース・F・レスター。精霊研究の第一人者よ |
リフィル | その人に聞けば、もっと確かな事がわかるでしょう |
スタン | リオン、行ってみよう。少しでも街を救える可能性があるなら、賭ける価値はある |
リオン | …そうだな |
ロイド | よし、だったら俺も一緒に行く! |
リオン | …お前が? |
ロイド | 俺も友達のジーニアスを捜すために街を出ようと思ってたんだ。どうせなら一緒に行こうぜ! |
ロイド | 同じ国の街がそんな事になってるのに黙って見てるわけにはいかないしな! |
ロイド | いいよな?先生 |
リフィル | そうね、いい提案だと思うわ。ただ、私はこの街を―― |
| ゴゴゴゴ…! |
| |
ロイド | また地震か!こんな時に… |
街の男 | リフィル先生、大変です!今の地震で学校の壁が崩れて…!と、とにかく来て下さい! |
リフィル | 何ですって?わかりました、すぐ行きます |
リフィル | …ロイド。ジーニアスの事も気がかりだけど…やっぱり私、この街を離れるわけにはいかないわ |
リフィル | もしかしたらちょっと遠出しているだけかもしれないし、街の外を捜すのはあなたに任せます |
ロイド | うう…確かに、リフィル先生がいなくなると困る人は大勢いるもんな |
リフィル | ルイニス街の氷については、私も調べておきます。何かわかったら知らせるようにするわ |
リオン | …ああ |
スタン | リフィルさん、ありがとう!それじゃあ行くか、リオン、ロイド |
ロイド | ああ!リフィル先生、ジーニアスの事も必ず何か手がかりを掴んでくるから |
リフィル | ええ、ありがとう |
ロイド | …さて、そのクラースって人はウィンドルにいるって話だったっけ? |
スタン | ああ、そう言ってたな |
リオン | ならばバロニアだ。あの街にはアカデミーや研究施設があると聞いた事がある |
リオン | クラースは研究者だ。面識がある者がいてもおかしくはない |
スタン | さすがリオン、頭いいな!じゃあ、バロニアに行こう。改めてよろしくな、ロイド! |
ロイド | こちらこそ!リオンも、よろしくな |
リオン | … |
ロイド | 何だ?どうしたんだ?リオンの奴 |
スタン | …多分、リオンはルイニス街の事で頭がいっぱいなんだと思う |
ロイド | そういう事か。まあ、確かに住んでるところが氷漬けなんて、とんでもねえ話だもんな |
ロイド | とりあえず、リオンを見失う前に追いかけようぜ! |
スタン | ああ、そうだな! |
scene2 | 友達 |
ロイド | あ、そういえば、このところウィンドルへ行く船はずっと欠航してるって聞いたぞ |
スタン | じゃあ港へ行っても無駄か。ウィンドルへ向かうなら、東に歩き続けるしかないかあ |
リオン | … |
スタン | なあ、本当に俺達について来てよかったのか、ロイド? |
ロイド | 気にすんなって。どうせ俺もジーニアスを捜しに、あちこち行くつもりだったしさ |
ロイド | それに「友達」が困ってるのを、見過ごすなんて出来ないし |
リオン | …また「友達」か。まさかとは思うが… |
ロイド | もちろんお前の事だよ、リオン!俺達、友達だろ? |
スタン | お!だよな!俺もリオンとロイドの事は「友達」だと思ってるぜ! |
ロイド | おう! |
リオン | …くだらん。勝手に言っていろ。何故こうも馬鹿ばっかり集まるんだ。僕は先に行く |
ロイド | う…。相変わらず容赦ねえなー |
スタン | あはは。口ではああ言ってるけど、きっとリオンも俺達の事、友達だって思ってるよ |
ロイド | そうだよな。あいつ、あんま素直じゃないだけだよな |
スタン | ところで、クラースって人はどういう人なんだろう? |
ロイド | あのリフィル先生と知り合いってくらいだからな。きっとすごい精霊マニアだと思うぜ |
リオン | … |
ロイド | ちなみにリフィル先生は、筋金入りの遺跡マニアなんだよ。通じるものがあるんじゃないかな |
スタン | へえ…そうなのか。早いところ会いに行かないとな |
スタン | あと、ジーニアス!ロイドの友達のジーニアスも早く見つかるといいな |
ロイド | ああ、そうだな!…なあスタン。俺思ったんだけどさ、お前、面白い奴だよな |
スタン | え?そうか?俺もロイドと話してるとすっごく楽しいぞ? |
ロイド | そっかあ。気が合うのかもな、俺達! |
スタン | そうだなー!俺もそう思うよ!改めてよろしくな、ロイド! |
リオン | …気が合うも何もあいつらの共通点は間違いなく「馬鹿」だと思うが… |
リオン | 何故こうも僕の周りには… |
リオン | …はあ |
scene1 | バロニアの情報屋 |
リオン | ここがバロニアか…。被害状況はメルトキオと大差ないようだな |
スタン | メルトキオもバロニアも王都だしな。それなりに頑丈なんじゃないか? |
スタン | …とはいえ、やっぱり地震の影響か街の空気はどんよりしているな。まあ、この状況じゃ仕方ないけど… |
ロイド | とにかく、クラースとジーニアスについて、何か知らないか街の人達に聞いて回ろうぜ |
リオン | ああ |
| |
ロイド | どうだった? |
スタン | 駄目だ…クラースの事を知っている人はいたけど、居場所までは…。そっちは? |
ロイド | 俺もだ…。ジーニアスに至っては全くの空振りだったし…。リオン、お前はどうだった? |
リオン | …有益な情報はなかった |
スタン | 全滅か…でも考えてみればそれも当然か。これだけ大きな街なんだし |
ロイド | 確かに、顔も知らない人を聞き込みだけで捜し出すのは難しいかも知れないな |
スタン | …!リオン、どこへ行くんだ? |
リオン | …こうしている時間が惜しい。僕は他の場所に行く |
ロイド | 待てって。こういうのはちゃんと分担して情報を集めた方がいい。勝手に行ったらわからなくなるだろ? |
スタン | ロイドの言う通りだ。他の場所で聞き込みをするにしても分担した方が効率的だと思うんだ |
リオン | … |
ロイド | じゃあ、あっちに移動して、場所の分担を―― |
??? | ちょっとそこ、どいて! |
リオン | …! |
スタン | この声…! |
??? | どいてって言ってんの!何でこんな狭い道で話し込んでるの?通行の邪魔じゃない! |
| |
スタン | ルーティ!ルーティじゃないか!バロニアにいたんだな!無事でよかった… |
ルーティ | あら、スタンじゃない。それにリオンまで… |
ルーティ | …あんた達、いつの間に、一緒にバロニアに来るほど仲良くなったの? |
リオン | 別に仲良くなったわけじゃない。こいつらが勝手について来ただけだ |
ルーティ | ふーん。あっそ…ってこんな事してる場合じゃなかった! |
ルーティ | あたし急いでるの!じゃあね! |
| |
スタン | あ、ルーティ!どうしたんだよ!待てって! |
リオン | おい、スタン!何故追う必要がある?放っておけ |
スタン | 何でって…ルーティは情報屋だからだよ!クラースの事も知ってるかもしれない! |
リオン | ちっ。…仕方ない。追うぞ! |
scene2 | バロニアの情報屋 |
スタン | ルーティ、いないな…どこに行ったんだ? |
ロイド | いたぞ、あそこだ! |
| |
| ガルルル… |
女の子 | ルーティお姉ちゃん… |
ルーティ | 大丈夫。あたしがついてるわ |
ロイド | …子どもを魔物から助けようとしているのか!? |
スタン | こうしちゃいられない!ルーティ、加勢するぞ! |
リオン | …全く、面倒事ばかりだな… |
| ズバッ! |
| ギャウウッ! |
女の子 | あ、ありがとう… |
ルーティ | 怪我がなくてよかったわ。ほら、先にうちに帰ってなさい |
| |
ルーティ | あんた達、助っ人ありがとね。頼んだわけじゃないけど、一応お礼は言っとくわ |
ロイド | まだ自己紹介をしてなかったな。俺、ロイド・アーヴィング。よろしくな! |
ルーティ | ルーティ・カトレットよ。詳しい事は、面倒だからスタンにでも聞いて |
スタン | え?ええっと…ルーティは俺やリオンと同じく、ルイニス街に住んでたんだ |
スタン | …とにかく、ルーティが無事で本当によかった |
スタン | リリスだけじゃなくルーティにまで何かあったら、俺… |
ルーティ | リリス…?ちょっと、話が見えないんだけど。あんたの妹に何かあったの? |
ルーティ | そんな…ルイニス街が氷漬けに? |
リオン | ああ、そうだ |
スタン | リリスも、街の人達もみんな…一緒に氷漬けになってるんだ |
スタン | それで、精霊イフリートの炎なら、その氷を溶かせるかもしれないって話を聞いて… |
ロイド | 精霊に詳しいクラースに会うために、バロニアまで来たってわけさ。そうだよな、リオン? |
リオン | …ああ、そういう事だ |
リオン | ルーティ。お前は情報屋だろう?知っているなら、すぐにクラースの居場所を教えろ |
ルーティ | クラース…?クラースねえ… |
ルーティ | ああ、身体中に妙なペイントをしてる精霊研究者のクラース・F・レスター! |
スタン | 知ってるのか!?さすがルーティ! |
ルーティ | あたしは直接面識ないんだけどちょっと変わった風貌だから、それなりに有名なのよ |
リオン | どこに行けば会える? |
ルーティ | 残念だけど、今はこの街にいないわ |
リオン | 何だと? |
ルーティ | 少し前に街を出てったって話よ。…旅支度をしていたとも聞いたし、この街には戻らないんじゃないかしら |
スタン | そんな… |
ロイド | クラースがどこに向かったか、わからないか? |
ルーティ | うーん…さすがにそこまではね… |
リオン | … |
スタン | どこへ行くんだ、リオン? |
リオン | クラースがいないなら、この街に用はない。近隣の街を片っ端から訪ねて、行方を捜す |
ロイド | …そうだな、近くの街に立ち寄ってる可能性だってあるし… |
スタン | そうだ、ルーティも一緒に来ないか?いつまた地震が起きるかわからないしそれに―― |
ルーティ | …ルイニス街の事は心配よ。リリスの事も、街のみんなの事も。だけど… |
女の子 | ルーティお姉ちゃん…あっちにも一人ぼっちの子がいるの…あと大人の人が、魔物がまた出たって |
ルーティ | …わかった!すぐ行くから、先におうちに連れて行ってあげて!魔物はあたしが何とかするわ。急いで |
スタン | あの子達は…孤児か…? |
ルーティ | …そうよ。この大地震の影響で親とはぐれて、孤児になってしまった子達がたくさんいる |
リオン | … |
ルーティ | スタン。悪いけどあたしはこの子達を置いて、あんた達と一緒には行けない |
スタン | ルーティ… |
スタン | ああ!ルイニス街の事は、俺達で何とかする!だからルーティも全力でその子達を守ってやってくれ! |
スタン | でも、地震は今も続いてる。…ルーティがみんなを支えるなら、ルーティが気を付けないとな |
ルーティ | バカね。あたしがそんなヘマするわけないじゃない。あんた達こそ気を付けるのね |
ルーティ | あ、それと!今回の情報料は特別にまけとくわ!でも、次はきっちりもらうからね |
ロイド | なっ…金を取るのか? |
ルーティ | 当然でしょ。情報ってのは大事な商売品なのよ? |
スタン | 相変わらずだなあ… |
ルーティ | じゃ、またね! |
ロイド | ルーティ、偉いな。たった一人で街を駆けまわって、子ども達を助けてるって事だろ? |
スタン | 俺、ルーティがあんなに頑張ってるのはじめて見たかも。子どもには優しいのかもな。な、リオン |
リオン | …無駄話はいい。さっさと街を出るぞ |
ロイド | …あ、ああ… |
スタン | そうだよな。俺達は俺達の出来る事をしないと。情報集め、頑張ろうな! |
scene1 | 異変の原因 |
スタン | … |
ロイド | どうした?スタン |
リオン | …? |
スタン | ごめん、ここでちょっと待っててくれないか? |
ロイド | …!わかった、あれだろ?大自然の摂理! |
スタン | おお!すごいなロイド!そうそう、その通り!いい勘してるな! |
ロイド | いや、俺もちょうど行きたいと思ってたんだよ |
リオン | … |
スタン | じゃあ一緒に行くか! |
ロイド | いいぜ!リオンもどうだ? |
リオン | 誰が行くか! |
ロイド | たまには一緒もいいもんだぞ? |
リオン | ふざけるな。行きたければさっさと行け。ぐずぐずしていると置いて行くぞ |
ロイド | わかったよ。じゃあちょっと、待っててくれよな |
リオン | …全く |
リオン | … |
リオン | …あいつら、どこまで行ったんだ?いつまで待たせれば気が済む――… |
??? | きゃあっ! |
リオン | 今の悲鳴は… |
| |
| グルル… |
??? | …くっ…負け…ません…! |
リオン | はっ! |
| ズバッ! |
| ギャオオッ! |
リオン | おい、怪我はないか |
??? | は、はい。助かりました。ありがとうございますあの、あなたは…? |
| |
スタン | リオン、お待たせ! |
ロイド | ん?その子は… |
??? | ミントだ |
ミント | アルヴィンさん! |
スタン | アルヴィンさんにも連れがいたのか。俺はスタン、こっちはロイドだ。よろしくな! |
スタン | リオン、紹介するよ。アルヴィンさんだ |
リオン | …リオン・マグナスだ |
アルヴィン | よろしくな |
ミント | みなさん、よろしくお願いします |
リオン | … |
ロイド | せっかくだから景色のいいところで、と思って探している途中で偶然知り合ったんだ |
リオン | 余計な時間を使うな! |
スタン | 悪い悪い |
アルヴィン | そういえば、スタン達から聞いたぜ。人を捜してるんだってな。えーと…何とかっていう… |
リオン | …クラース。クラース・F・レスターだ |
ロイド | それと、ジーニアスもな! |
ミント | みなさん、クラースさんをお捜しなんですか? |
リオン | 知っているのか? |
ミント | はい。あの方でしたら… |
| きゃああああっ! |
| |
スタン | …!向こうから悲鳴が! |
ロイド | 行ってみよう! |
リオン | おい、話はまだ…! |
リオン | …ちっ! |
scene2 | 異変の原因 |
スタン | 女の人が魔物に襲われてる! |
女 | た、助けて…! |
ロイド | 今行く! |
スタン | はあっ! |
| ズバッ! |
| ギャウウッ! |
ミント | 大丈夫ですか? |
女 | は、はい… |
女 | …つっ、膝が… |
アルヴィン | 膝を怪我しているようだな。ミント、治療出来るか? |
ミント | はい、今…! |
女 | 楽になりました…ありがとうございます |
ミント | この辺りは魔物が多いみたいですから、気を付けてくださいね |
女 | はい…!すぐに帰ります。このご恩は忘れません |
| |
ロイド | あの人、無事でよかったなー。それにミントは治癒術が使えるんだな。すげえや |
スタン | 俺はロイドもすごいと思うけどなあ。足すっごい速いんだな!あっという間に走ってったし |
ミント | ロイド…ロイド…さん?あ…もしかして、ロイドさんって… |
ミント | …あの、ロイドさん。ひょっとして、クレスさんをご存知ではありませんか? |
ロイド | クレス?ああ、知ってるぜ!…って、ミントもクレスの知り合いなのか? |
ミント | はい! |
アルヴィン | へえ、共通の知り合いがいるのか。世間って狭いもんだな |
ミント | クレスさんからロイドさんの話を聞きました。とても強くて、いつもみなさんを引っ張っていたとか… |
ロイド | クレスの奴、そんな事言ってたのか?…何だか照れるな! |
ロイド | クレスこそ、すっごく強くて頼りになる奴だったぜ! |
ロイド | …そういえば、今あいつは? |
ミント | 戦争が再開したと聞いてトーティス村を飛び出して行ったそうなのですが |
ミント | 詳しい事は私にもわかりません。無事でいてくれるといいのですが… |
スタン | ん?ちょっと待ってくれ。さっき、戦争って言ったか?どういう事だ? |
アルヴィン | …もしかして知らないのか?ウィンドルとア・ジュールの戦争がまた、再開したって話だぜ |
ロイド | な、何だって!?それ、本当か!? |
ミント | はい、間違いありません。何でも国境付近の戦場は特に被害が深刻だそうで… |
| |
スタン | 知らなかった…そんな事になっていたなんて |
リオン | …戦争の話はどうでもいい。それより、お前はクラースを知っていると言っていたな |
ミント | は、はい… |
リオン | どこに行けばそいつに会える? |
ミント | クラースさんは、普段からあちこち出歩く事が多いので、正確な場所は私にも… |
ミント | ただ、最後にお会いした時は、シルヴァラントの方へ向かうとおっしゃっていましたが |
リオン | シルヴァラントだと…! |
スタン | 俺達の国じゃないか!まさか入れ違いになったとか…? |
リオン | … |
ロイド | … |
スタン | …ん?どうかしたのか、ロイド? |
ロイド | 何で戦争がまた起こってんだ…?俺達がティルグと約束したのは、そういうのをやめさせるって事で… |
スタン | ティルグ…? |
ロイド | いや、こっちの話だ。…そんな事よりアルヴィン、二国の戦争再開について知っている事を教えてくれ |
ロイド | そもそもあの二国の戦争は終結して、和平交渉を進めてるって話じゃなかったのか? |
アルヴィン | 何でも、ア・ジュールがいきなり奇襲攻撃を仕掛けたらしいぞ |
アルヴィン | 特殊な兵器を使われたからウィンドルも応戦せざるを得なかったという話らしいが… |
ロイド | 特殊な兵器…。まさかミラが話していた魔導兵器とか何とかじゃ… |
アルヴィン | ミラ…?もしかしてミラ=マクスウェルの事か? |
ロイド | …!アルヴィンもミラの事知ってるのか? |
スタン | そのクレスって人といい、ミラって人といい…何だかすごい偶然だな |
ロイド | ああ…でも、だったら話は早い。ミラいわく、魔導兵器はマナっていう生命の…えーっと、何だっけ… |
アルヴィン | 生命の源たるマナを、エネルギーにしている、か? |
ロイド | そうそう、それだ!だから、そのア・ジュールが使った兵器が魔導兵器だったとしたら… |
ミント | そのマナを消耗してしまう、という事ですか? |
ロイド | ああ、それもごっそりって話だ…。生命の源っていうくらいだし、かなりの悪影響が出るはず… |
ロイド | 確か、ウィンドルでも同じような魔導器を作ってて、それが原因である街では変な病気が流行ったらしい |
アルヴィン | そりゃ、イニル街の話だろうな。奇病が流行ってるって話は聞いてたが、原因は魔導器か |
ロイド | ああ、そうなんだ。俺の仲間の妹もそれにやられた… |
ロイド | ミラは魔導兵器があると、この世界が滅びるって言ってた…。だから使わせないように壊したって |
リオン | … |
| ゴゴゴ…! |
ミント | また地震が… |
スタン | 本当に多いよな。世界は今、どうなってるんだろう |
アルヴィン | ふむ…これはもしかしたら、もしかするかもな |
ミント | 何がですか? |
アルヴィン | 今みたいな地震もそうだが、このところ世界中で異変が起きてるだろ? |
アルヴィン | その事と、戦争が再開したのは、もしかしたら関係があるんじゃないかと思ったのさ |
リオン | … |
ミント | 確かにタイミング的には、同じですが…そんな事があり得るんでしょうか |
アルヴィン | あくまで推測だけどな。けど、魔導兵器ってのを使うとマナが大量になくなるんだろ? |
アルヴィン | 本当に戦争で魔導兵器が使われたならマナがかなり減少しているはずだ |
アルヴィン | イニル街の事もあるし、何が起きても不思議じゃない状況とは言えるかもしれないな |
スタン | じゃあ…もしかして、ルイニス街が氷漬けになったのも… |
アルヴィン | 氷漬け…どういう事だ? |
ロイド | …俺達がクラースを捜してるってのも氷漬けの街を救うためなんだ |
アルヴィン | …なるほどな。大体話はわかったぜ |
ミント | それで、クラースさんを捜し、精霊について話を聞こうとしているのですね… |
リオン | …ああ、そうだ |
スタン | ルイニス街の氷も、やっぱり…その魔導兵器ってヤツの影響なんじゃないのか? |
アルヴィン | 想像も出来ない事がこういくつも重なって起きてりゃ、可能性としてあり得る話だと思うが… |
スタン | …!じゃあ、ルイニス街を救うためには、その魔導兵器を何とかしないと、って事になるのか? |
リオン | … |
アルヴィン | そうかもしれないが、全ては推測だ。まず魔導兵器が本当に異変に関係しているか。調べるならそっからだろ |
ロイド | そうだな!じゃあ、まずはイニル街へ行ってみないか? |
ロイド | 魔導器があって、奇病が発生したのもあの街だ。何かわかるかも―― |
リオン | …無駄だ |
スタン | …リオン? |
リオン | 魔導器だか魔導兵器だか知らんがそんな事を調べても、時間の無駄だと言っている |
アルヴィン | …無駄、ね。確かに推測に過ぎないが、そこまで断定出来るものかね? |
リオン | 試す価値はない。あの街に必要なのは、精霊の力だけだ |
アルヴィン | … |
リオン | お前達がイニル街を目指すなら好きにすればいい。僕はクラースを追う |
ロイド | でも… |
リオン | だから、行きたければ、行けと言っている! |
リオン | 勘違いするな。…僕は初めから、お前達と行動を共にする気などない |
リオン | お前達がどこへ行こうと、何をしようと、知った事か |
リオン | 僕は僕の判断で動く。当初の予定通り、クラースを捜し、精霊の情報を得る |
アルヴィン | おやおや、仲間割れか? |
スタン | … |
スタン | …わかった。シルヴァラントへ戻ろう |
ロイド | スタン… |
スタン | …リオンはただ、あの街を救いたいだけなんだ |
スタン | 街を救いたくて、リフィルさんに精霊の情報をもらって…必死に追いかけて来たんだもんな |
スタン | 急に方向転換をしようと思っても、納得できない気持ち、俺、わかるよ。だろ?リオン |
リオン | … |
アルヴィン | ま、俺の話もあくまで推測だしな |
スタン | じゃあ、当初の通り、精霊捜しと、その手がかりになるクラースって人に会う事を優先しよう |
ロイド | …そうだな!ま、戦争に関してはクレスも動き出してるみたいだし… |
ロイド | 俺も引続き、クラース捜しを手伝う事にする!ジーニアスの事も手がかりすら掴めてないしな |
ミント | あの、でしたら私達も、ご一緒させていただけませんか? |
ミント | 私は世界の異変と戦争で傷付いた人を一人でも助けられるのなら、と思い、旅に出ました。ですが… |
ミント | 氷漬けの街と聞いて、黙ってなどいられません。氷を溶かした後は、きっと治癒の力が必要になると思うんです |
ミント | ですから、私もルイニス街のみなさんを助けるお手伝いをさせてください |
ミント | あ…すみません、アルヴィンさん。勝手に話を進めてしまって |
アルヴィン | 俺は構わないぜ。今はミントの用心棒だからな。何なりと仰せのままに |
スタン | さ、リオン!改めて、みんなで一緒にシルヴァラントに戻ろう! |
ロイド | じゃ、まずはメルトキオってとこか。急ごうぜ! |
リオン | … |
アルヴィン | ありゃりゃ。そっちの少年はご機嫌斜めか? |
ロイド | いや、ずっとあんな調子だ。それだけ余裕がないって事だろ |
アルヴィン | …余裕がない、ねぇ |
scene1 | 疑心 |
アルヴィン | どうだ?クラースの情報は聞けたか? |
ロイド | いや、何も…。それらしい人を見たって話もない |
スタン | …俺もだ。クラースは、メルトキオに来てないんじゃないか? |
ロイド | シルヴァラントの王都だし、立ち寄るんじゃないかと思ったんだけどな |
ロイド | 先生の話じゃジーニアスもまだ戻って来てないらしいし…本当にどこ行っちまったんだろう… |
ミント | どうしましょう…他の街に向かいますか? |
リオン | ああ |
スタン | じゃあ、コルテア街なんかどうだ? |
スタン | あそこはルイニス街からも近いし、ひょっとしたら何か知ってる人がいるかもしれない |
リオン | コルテア街か…いいだろう。どのみちしらみつぶしに街を回るつもりだ。どの街からでも構わん |
ロイド | 決まりだな。じゃあ早速… |
| バサバサ… |
ミント | あら?向こうから、鳥が飛んで来ましたよ |
スタン | 何だ?あの鳥…アルヴィンさんの手に止まったぞ |
アルヴィン | ほい、ご苦労さん |
| バサバサ… |
ミント | アルヴィンさん、鳥を飼っているんですか? |
アルヴィン | 知り合いと連絡のやり取りをするのに使ってるのさ |
アルヴィン | … |
アルヴィン | …なるほどな |
アルヴィン | 今届いた情報によると、メルトキオの南に、大規模な亀裂が出来たらしいな |
スタン | 大規模な亀裂…。妙な力が働いてるっていう、あの亀裂か? |
アルヴィン | さあ、どうだろうな。そこまでは書いていない |
アルヴィン | あんたらの知る亀裂か、はたまた、何か別の事象で出来たものか。直接見てみない事にはわからないな |
アルヴィン | 行って確かめてみるか? |
リオン | …聞かれるまでもない。行く必要はない |
アルヴィン | … |
アルヴィン | 前にミラから聞いたんだが、精霊ってのは、いろいろと不思議な事象を起こす事が出来るんだとさ |
リオン | その亀裂は精霊の力によるもの。…そう言いたいのか? |
アルヴィン | その可能性も、あるんじゃないかって話だ |
アルヴィン | それに考えてもみろよ。コルテア街へ行ったところで、クラースに会えるとは限らない |
アルヴィン | 一方で、もしその亀裂が精霊にまつわる物なら、そっちの方にクラースが現れる可能性は高い |
アルヴィン | 今の話を聞いた上で、おたくはどう思う? |
リオン | … |
リオン | …いいだろう。そこまで言うなら行ってやる。早く行くぞ |
アルヴィン | … |
ロイド | アルヴィン、リオンを説得するの、うまいな |
アルヴィン | 何となく考えてる事がわかるんだよ。案外、似た者同士なのかもな |
ミント | いずれにせよ、早く精霊の手がかりが見つかるといいですね |
スタン | うん、そうだな。じゃあ亀裂のところへ行こうか |
ロイド | ああ、そうしよう |
scene2 | 疑心 |
ロイド | これが亀裂か… |
リオン | … |
ミント | 随分、大きいんですね |
スタン | 確か、亀裂が出来た瞬間だけ落ちるって話だったよな。想像するだけでぞっとするよ |
ロイド | ジーニアス…まさか亀裂に落ちちまったって事はないよな… |
リオン | … |
スタン | リオン…どうした? |
リオン | …いや。亀裂がここまで大規模なものだと思っていなかった。それだけだ |
ロイド | そうだよな…。こうやって改めて見ると、やっぱり自然現象じゃないんじゃって… |
アルヴィン | 悪かったな、リオン。あてが外れちまって |
リオン | もういい。ここにクラースはいない。精霊の情報もない。次はコルテアへ向かうぞ |
ミント | そうですね、では早速――…! |
| |
| グルル… |
スタン | くっ!魔物か! |
| グアアアアッ! |
リオン | ちっ…邪魔をするな! |
scene3 | 疑心 |
ロイド | 日が暮れたな…足元がだいぶおぼつかなくなってきたぞ |
ミント | 無理に進むのは危険です。今日はこの辺りまでにしてあの小屋で休みませんか? |
スタン | 小屋?…ああ、本当だ!旅人用の小屋なのかな?…俺、ちょっと見てくるよ! |
リオン | … |
スタン | みんなー!やっぱりここは、旅人用の小屋みたいだ!野宿よりは安全だし、ここで休ませてもらおう! |
| |
ミント | …ちょっと、落ち着きましたね |
ロイド | ミントが小屋を見つけてくれてよかったよ。あのままじゃ夜通し歩くか、野宿するところだったからな |
ロイド | …そういえば、アルヴィンってミントの用心棒なんだっけ?どこで知り合ったんだ? |
ミント | アルヴィンさんが魔物と戦って怪我をした時に、たまたま私が通りかかったんです |
アルヴィン | それで、治療してもらった礼に、用心棒を買って出たってわけさ。こう見えても義理堅いんでね |
ロイド | 偶然の出会いって奴か。俺が最初にリオンに会った時も、そんな感じだったよな |
ロイド | 森で魔物に襲われそうになったところを助けてくれたのが最初で、その後にルイニス街で再会したんだ |
ロイド | 俺の幼なじみのコレットがさらわれて大変だった時もリオンが情報をくれてさ… |
ロイド | 本当、リオンにはいろいろと助けてもらいっぱなしなんだぜ。ありがとな! |
スタン | へえ。さすがリオン!やるなあ! |
リオン | 別に、大した事じゃない |
ミント | 人と人の縁って、不思議ですよね。たまたま出会った人と、すごく仲良くなったり… |
ロイド | クレスともそうだったのか? |
ミント | そ、そういう意味で言ったわけではありません…! |
ロイド | …ん?そういう意味って、どういう意味だ? |
スタン | そういえば、俺とリオンはどうやって知り合ったんだっけ? |
リオン | …さあな |
スタン | えーっと…確か、何か気付いたらいつの間にか知り合いになってて、街の人達も、みんな優しくて… |
リオン | … |
スタン | ルイニスは本当にいい街なんだ。居心地はいいし、みんないい人で…それに食べ物だってうまい |
ロイド | そうそう、宿の飯がうまかった。コレットやリタも喜んでたよ |
スタン | それなのに…どうしてあんな事に… |
ミント | スタンさん… |
アルヴィン | 今考えると、お前達二人が氷漬けに巻き込まれなかったのが唯一の救いだな |
スタン | ああ、本当にな。…そういえばリオン、お前はどうして巻き込まれずに済んだんだ? |
スタン | 俺が街に戻った時、既に街は氷漬けで、リオンがたった一人で街を見てて… |
リオン | それは… |
アルヴィン | … |
リオン | …僕も、街の外にいたんだ |
スタン | そうか…って事は、街が氷漬けになった瞬間は見てないって事だよな… |
スタン | どうやって氷漬けになったのかを見ていたら、街を救う方法がわかるかもしれないと思ったんだが… |
ロイド | 気を落とすなよ、スタン。とにかくイフリートを捜そうぜ。それできっとどうにかなる。な? |
リオン | … |
アルヴィン | … |
| |
| ホウ…ホウ… |
リオン | … |
アルヴィン | どうした、リオン。眠れないのか? |
リオン | お前は…。僕に何の用だ |
アルヴィン | そんな怖い顔するなよ。俺も目が冴えちまってな。せっかくだ、少し話でもしないか? |
リオン | お前と話す事など何もない |
アルヴィン | 本音をひた隠しにして振る舞うってのも、結構大変なもんだよな |
リオン | …! |
リオン | …何の話だ |
アルヴィン | あくまで一般論さ。別におたくの事を、言ってるわけじゃない |
リオン | … |
アルヴィン | それはそうと、一つ聞かせてくれ。どうしてそうまでして、精霊を捜す事にこだわる? |
リオン | …ルイニス街を救うためだ |
アルヴィン | でも、その方法ってのも確実なものじゃないんだろ?スタンやロイドが言ってたぜ |
アルヴィン | だが、その割に随分と「精霊」に固執するんだな |
リオン | … |
リオン | 何が言いたい? |
アルヴィン | お前が精霊にそこまでこだわるのは、何か理由があるんじゃないかって事だよ |
リオン | フン、くだらん。勝手に言っていろ |
アルヴィン | ま、確かに証拠があるわけじゃない。…一応、もう一度聞いておくぜ。何か理由があるんじゃないのか? |
リオン | 答える必要もない |
アルヴィン | …仕方ない。じゃ、俺は答えてももらえないショックに打ちひしがれながら寝るとするか |
アルヴィン | じゃあな。おやすみ |
リオン | あいつ…わざわざ今の話を、僕にするために起きてきたとでもいうのか…? |
リオン | …アルヴィン、か。わけのわからない奴だ。あいつの目的は何だ…? |
scene1 | コルテアでの収穫 |
| チュン…チュン… |
リオン | … |
アルヴィン | お早い出発で |
リオン | …! |
アルヴィン | 一人でどこに行くつもりだ? |
リオン | お前…何を考えている? |
アルヴィン | こうなるんじゃないかと思って、早起きして待ってた甲斐があったな |
アルヴィン | おーい、みんな起きた起きた!出発するぞ! |
ロイド | うー、おはよう…何だ、アルヴィンもリオンも、もう支度終わってるのか |
アルヴィン | そういう事だ。ロイドも急いでくれ。あと、スタンは? |
ロイド | あれ…? |
スタン | すこー…すこー… |
アルヴィン | まだ夢の中か。ロイド、起こして来てくれるか? |
ロイド | ああ |
ミント | おはようございます |
アルヴィン | おはよう。さすがミントは女子だな。朝からぴしっと決まってる |
ミント | そんな事は… |
ロイド | おいスタン、起きろ |
スタン | むにゃむにゃ…あともうちょっと…すかー… |
リオン | … |
ロイド | 早く起きろって。もう寝てるのお前だけなんだぞ |
スタン | すこー… |
アルヴィン | ほら、早く支度しろよ。あいつに置いて行かれるぞ |
スタン | うぅ…ん…? |
スタン | あ、アルヴィンさん、みんな…おはよう |
ロイド | 急ごうぜ、スタン!マジで置いてかれちまう |
スタン | …置いて行かれるのはいやだな…うん…起きるよ… |
リオン | …おい。お前、何を考えている? |
アルヴィン | 別に大した事は考えてないって。単純におたくの事が心配なだけさ |
リオン | … |
スタン | お待たせ。じゃあコルテア街に向かうか |
ロイド | よし、出発だ! |
scene2 | コルテアでの収穫 |
ミント | ここがコルテア街ですか |
スタン | クラースって人に会えるか、せめて手がかりだけでも見つかるといいんだけどな |
リオン | … |
| ゴゴゴ… |
アルヴィン | おっと、また地震か |
街の女 | また地震よ…!早く逃げないと! |
街の男 | ああ!またあの亀裂が出来るかもしれない!足元には注意しろよ! |
スタン | 亀裂って…あの変な力の…? |
リオン | む…? |
ロイド | 街の中に、こんなに大きな亀裂が…! |
スタン | ひどい有様だ…。この街の人達が地震を怖がる理由がわかった気がする… |
??? | ふむ…地震後の亀裂の状態に、変化は特になし、と。全く、休む暇もないな |
??? | それにしても、リッドとファラの奴、亀裂について何か情報を掴んだだろうか |
| |
リオン | おい、そこのお前 |
??? | …?ぼくに何か用か? |
リオン | クラース・F・レスターという男を捜している。心当たりはないか |
??? | クラース…? |
ロイド | 精霊マニア…じゃなかった、研究者。身体にペイントをしてるらしくて見た目はかなり特徴的らしいんだけど |
??? | 身体に…ああ、そういえば… |
アルヴィン | 心当たりがあるのか? |
??? | 名前は知らないが、それらしい人物の話は聞いた |
ミント | 本当ですか? |
??? | ああ、何人かで連れ立ってアグニラス山へ向かったという話を耳にした |
ロイド | アグニラス山? |
??? | 南の火山だ。何でも、イフリートの調査のためという話らしいが… |
スタン | イフリートだって!? |
??? | 驚くのは当然だ。あの大精霊イフリートだからな |
ロイド | それなら知ってる。リフィル先生に話を聞いてるからな。でも、この辺に火山なんてあったか? |
??? | いや、なかった。最近出来たものだ |
??? | 大地震や亀裂の発生…世界に起きている異変と同時期に突然、山が噴火して出来たんだ |
??? | それまで火山活動がなかった山だ。普通なら考えられない現象だって事でイフリートの関与が予想されている |
アルヴィン | って事は、クラースだけでなく、同時にイフリートにも会えるかもしれないって事だな |
リオン | …ああ |
ミント | 私達もすぐに向かいましょう。南へ行けばいいんですね? |
??? | ああ |
スタン | 貴重な情報をありがとう。助かったよ |
??? | もし首尾よくイフリートを見つけられて、またこの街に戻る事があったら、詳しい話を聞かせてくれ |
??? | 本当はぼくも行きたいんだが、ここの亀裂の調査があるから、今は動けそうにない |
アルヴィン | 覚えておくよ。そういや、名前を聞いてなかったな? |
キール | キール・ツァイベルだ |
ロイド | ありがとな、キール!じゃあ、早速行こうぜ! |
リオン | ああ |
| |
アルヴィン | まさかここへ来てイフリートの情報を聞けるとはな |
スタン | イフリート…。これでルイニス街を救えるかもしれないって事だよな… |
ロイド | ああ…そうだな!やっと有力な手がかりを得たんだ。急いで向かおうぜ! |
scene1 | 手がかりを追って |
アルヴィン | ここがアグニラス山か…。ただの山が、突然こんな状態になっちまったって事だよな? |
ロイド | …まだ信じられない。ここは本当にシルヴァラントか? |
ミント | やはりイフリートが関わっているんでしょうか… |
アルヴィン | イフリートといえば、確か炎の大精霊って話だったよな |
アルヴィン | そう考えると火山を創る事くらい造作もなさそうだが…実際のところはどうなんだろうな? |
スタン | もしこの炎がイフリートの力で出来ているなら、ルイニス街の氷も溶かせそうな気がする! |
スタン | …だろ?リオン!ようやく希望の光が見えてきたぞ! |
リオン | …そうだな |
スタン | リオン?どうした?嬉しくないのか?気分でも悪いのか? |
リオン | …何でもない |
アルヴィン | … |
ロイド | よし、じゃあ進むか。クラースとイフリートが奥でお待ちかねだぜ |
リオン | …!ここからでも熱気が伝わってくる… |
スタン | 向こうの方からみたいだ… |
ロイド | もしかしてこの熱気の先には… |
アルヴィン | イフリートがいるって事か…! |
スタン | そうか…よし!気合いを入れないとな! |
ロイド | ああ、俺もだ!一気に駆け抜けてやろうぜ、イフリートのところまで! |
| |
アルヴィン | スタンもロイドも、随分力が入っているな |
ミント | 無理もありません。ずっと追っていた大精霊がそこにいるかもしれないのですから |
リオン | イフリート、か… |
scene2 | 手がかりを追って |
スタン | 暑い… |
ロイド | さすが火山だな…俺も汗だくだ… |
アルヴィン | 早々に飛ばしすぎてバテてんじゃねえか、お前ら… |
ミント | でも…奥に進むにつれて熱気よりも、気迫のようなものを強く感じるようになった気がします |
リオン | ああ、そうだ――…! |
スタン | あれ…?何か急に空気が軽くなったっていうか… |
ミント | 私も感じます。どうしてでしょう? |
ロイド | まさかイフリートが、いなくなっちまったんじゃ? |
アルヴィン | もしかしたら先客がいて、そいつが何かしたのかもしれないぞ |
スタン | じゃあ、クラースって人じゃないか?キールが言ってたじゃないか、火山に向かったって! |
リオン | ちっ…!ようやくここまで来たというのに… |
| カラ… |
ロイド | リオン、危ない!足元が崩れるぞ! |
| ガラガラガラッ! |
リオン | くっ…! |
| |
スタン | リオン!! |
スタン | 大丈夫か |
リオン | あ、ああ…すまない。助かった |
アルヴィン | お… |
スタン | へへ… |
リオン | …どうした?何故、僕の顔を見て笑う? |
スタン | いや、リオンに礼を言われたのが嬉しくてさ。めったにないだろ? |
リオン | …礼を言ったつもりはない。いいから行くぞ |
スタン | おう! |
アルヴィン | …青春だねえ。見てるこっちが気恥ずかしくなるな |
ミント | リオンさんは冷たく振舞っているようですが、みなさん全員、仲がいいという事なんでしょうね |
| グルルルル… |
ロイド | ん?今のは… |
| ギャオオオオッ! |
ロイド | みんな、気を付けろ!魔物だ! |
scene3 | 手がかりを追って |
リオン | …終わったか |
アルヴィン | やれやれ。とんだ足止めを食ったな |
アルヴィン | それにしても…あれ以来熱気も静まってきているようだな。イフリートはいなくなったって事か? |
ミント | わかりません。とにかく、先を急いでクラースさん達を捜すのがいいと思います |
ロイド | そうだな、奥にいたんなら何か知ってるかもしれないし… |
リオン | …!あれは… |
スタン | リオン、どうしたんだ?急に立ち止まって――って、…あの身体の柄は… |
ミント | クラースさんです! |
アルヴィン | あれは…?どういうわけか、俺の見慣れた顔もいるようだ |
ロイド | まさか、こんなところで会えるなんてな…よし、行こうぜ! |
リオン | … |
Name | Dialogue |
scene1 | 動き始めた影 |
| ゴォォォ… |
??? | … |
| キイイーーン… |
| キイイイイーーーーンン…! |
??? | … |
??? | ここも…手遅れか |
??? | … |
| |
リッド | お、おい!亀裂の奥から何か…あれは何だ!? |
エミル | 光り出した… |
レイア | うっ…!どんどんまぶしく── |
ユリウス | む…?あれは…! |
ルーク | うおおおおーーーっ!? |
マルタ | ちょっとルーク、そんなに大声出さないでよ。耳がキーンってなるでしょ |
ルーク | う、うっせえな、ちっと驚いただけだっつーの! |
ティア | ここは… |
ミュウ | 元の世界ですの?戻って来たですの? |
コンウェイ | へえ… |
| |
ガイ | ルーク!?それにティアとミュウも! |
ルーク | ガイ!? |
マルタ | あーっ!エミル!! |
エミル | マルタ…!無事だったんだね! |
リッド | ファラ! |
ファラ | リッド!?メルディ!? |
メルディ | ワイール!ファラが帰って来たよう!それにルークもいるよう! |
レイア | こんな偶然って…とにかくよかったよ、みんな無事で |
ルドガー | 兄さん! |
ユリウス | ルドガー、無事のようだな。偶然だが、彼らの仲間を連れて帰って来てくれたようだな |
ガイ | ふう… |
ルーク | 何だよ、ガイ。俺に会えて嬉し泣きしてんのか? |
ガイ | まあ、泣くってほどじゃないが、お前の顔を見たら、何だかどっと疲れが湧いてきたよ |
ファラ | リッド…心配かけちゃったよね。ごめん |
リッド | そんな事ねえよ。お前だったら何とかやってると思ってたからな |
リッド | ま、無事でよかったよ |
マルタ | エミル、私を助けるために、駆け回ってくれたんでしょ?ファラから聞いたよ |
マルタ | ありがとう…やっぱりキミは、私の王子様だね |
エミル | え、いや…そんな事… |
コンウェイ | これがキミ達の世界か。自然豊かないい場所のようだね。それと… |
コンウェイ | お迎えの人達も個性的な人が多い。興味深いな |
ジーニアス | はは…そうだね |
scene2 | 動き始めた影 |
リッド | 分史世界…? |
ルーク | ああ。お前も知ってる時空の歪みとはまた別に、そういうところがあんだよ |
ルーク | 俺達はそこへ飛ばされちまったんだ。だよな、ルドガー? |
ルドガー | ああ |
メルディ | ブンシ世界…よくわからないけどファラとルークが無事でメルディ嬉しいよぅ |
ファラ | ルドガーとルークのお蔭だよ。わたし一人じゃ絶対出て来られなかったと思う |
ルーク | そんな事より、クロノスの奴、あの野郎、俺をあんなところに…絶対もう一回ぶん殴ってやる! |
マルタ | まだそんな事言ってる…相変わらずしつこい |
ガイ | ははは… |
ガイ | まあ何にしても、無事でよかったよ |
ユリウス | クロノスか…どうも引っかかるな |
ルドガー | 兄さんも?実は、俺もなんだ |
レイア | どういう事? |
ユリウス | クロノスといえば、時空を司る大精霊だと聞いた事がある |
ユリウス | 時空の歪みにそのクロノスがいたという事は、この時空の歪みはやはり異変の影響などではなく… |
ジーニアス | うん。時空の歪みはクロノスの能力によって作られた空間だと思う。異変の影響とは思えない |
ルーク | 何かわかんねーけど、時空の歪みがクロノスのせいだっつーんなら異変だってそれが原因じゃねえのか? |
ガイ | そう言い切るにはまだ情報が足りないんじゃないか。もっと調べてみない事にはな |
ファラ | … |
ファラ | …わかった、みんなで異変の原因について調べよう! |
リッド | ファラ、お前また… |
ファラ | 原因がわかればきっとこの異変は止められるよ! |
ファラ | リッドもそう思わない? |
ファラ | たくさんの人が苦しんでるんでしょ?わたしに出来る事なら、何でもしたいから |
リッド | …ファラ |
リッド | まあ、それもそうだな。またおてんばファラにいなくなられて捜しに行くのも面倒だし |
ジーニアス | ボクも賛成! |
ジーニアス | …クロノスの様子が変だった事も気がかりだし、今世界で何が起きているのか、調べてみるべきだと思う |
ルドガー | ああ、そうだな |
ルーク | 俺もやる。このままじゃ収まらねえ |
ルーク | けど調べるって、何からすりゃいいんだ? |
ティア | 待って、ルーク。何をするにしても、まずは陛下にあなたの無事を知らせないと |
ティア | ただでさえ大変な状況よ。何も知らせないまま、次の行動に移るのは、混乱を広げるだけだわ |
メルディ | …。メルディ、異変が事心配よ…リンネル村が事も心配だよぅ… |
ルーク | … |
リッド | おいおい、何むくれてんだよ。仕方ねえだろ。物には順序ってモンがあんだよ |
ルーク | べ、別にむくれてなんかねえ! |
ガイ | …とにかく、全員で一緒に行動する必要もないわけだし誰がどうするのか一度整理してみないか? |
ファラ | そうだね、それがいいかも。じゃあ早速… |
| ガルル… |
ジーニアス | ん?このうなり声… |
| ギャオオオオ! |
| |
ミュウ | ま、魔物ですの! |
リッド | やれやれ…話をしてる最中だってのに |
scene3 | 動き始めた影 |
ルドガー | さてと。邪魔が入ったけど、改めて誰がどうするか決めないとな |
ルーク | 俺は異変の原因を調べに行くぜ |
ルーク | 伯父上にはティアが知らせりゃ、俺が行く必要はねーし |
ティア | ルーク、ちょっとあなたね… |
ファラ | わたしはルークと一緒に行くよ!何としてでもこの異変を止めなきゃ |
リッド | …となると、自動的にオレも、だな |
リッド | ファラ一人じゃ何するかわからねえ |
ガイ | なら俺も行かないわけにいかないか。今度こそ、ルークから目を離さないようにしないとな |
ガイ | ティア、すなまいが、ルークの言うように、陛下への報告は君に頼むよ |
ティア | あなたもなの、ガイ? |
ティア | はあ…止めても無駄みたいね |
ティア | わかったわ。それなら先に行って。陛下に報告したら私も後を追うから |
コンウェイ | ボクもルークくん達と行くよ。その方が、いろいろと面白いものが見られそうだしね |
ジーニアス | 勿論、ボクもね |
ユリウス | なら、ルドガーも同行させよう。俺も行きたいが、亀裂に飲まれた人を放っておく事は出来ないからな |
ルドガー | よろしく |
ファラ | うん、こちらこそ |
ファラ | ルドガーが一緒に来てくれるのは心強いよ |
ミュウ | ボクは勿論ご主人様と一緒に行くですの! |
ティア | それなんだけど、ミュウ。あなたは私と一緒に、一度戻った方がいいかもしれないわ |
ティア | 出発する時、気になる噂を聞いたの。チーグルの森でも異変が起きているらしいって |
ミュウ | みゅ!?チーグルの森が大変な事になってるですの!? |
ルーク | お、おい、マジなのか?被害とか… |
ティア | 詳しい事はわからないわ |
ティア | でも各地の異変は見たでしょう?もう、どこだろうと楽観は出来ない状況なんだと思うわ |
ティア | …その意味ではルーク、あなたの選んだ行動は、確かに今すべき事かもしれない |
ティア | ミュウの事は私に任せて |
ルーク | …わかった |
ミュウ | で、でも…ご主人様と離れるのは心配ですの… |
ルーク | う、うるせぇっ!ブタザル。とっとと行けよ |
ルーク | お前なんかいても足手まといだしな |
ルーク | なんだったら、当分戻らなくていいくらいだぜ |
ミュウ | みゅうぅぅぅ… |
エミル | 僕はマルタと一緒に、一旦キムラスカに帰ります |
エミル | マルタを無事街まで送り届けたら後から合流しようと… |
マルタ | エミル、気を付けてね |
メルディ | メルディはレイアと、リンネル村に戻るよ |
レイア | 村がどうなってるか心配だからね |
レイア | ガイが捜していたルークも無事に見つかったし! |
ガイ | 二人共、いろいろ手伝ってくれてありがとうな。本当に助かったよ |
レイア | いいって、いいって!助かったのはお互いさまでしょ |
ユリウス | リンネル村はア・ジュールか。それなら船がいるな |
ユリウス | 俺と一緒に来るといい。フィリア司祭に船の手配を頼んでみよう |
メルディ | ホントか!?ワイール!ありがとな! |
リッド | よし。これで全員の行き先が決まったな |
| ゴゴゴ… |
エミル | また地震だね |
ガイ | ここでのんびりしている余裕はなさそうだな。早速出発するか |
レイア | そうだね。名残惜しいけど… |
リッド | みんな、気を付けろよ |
ユリウス | 何かあったら、必ず力になる |
ルドガー | ああ |
ファラ | みんなで力を合わせれば、きっと何とかなるよ |
ファラ | うん、イケるイケる! |
ルーク | 話は終わったのかよ?んじゃ、行こうぜ |
scene1 | 街道沿いの廃墟 |
ティア | それじゃ、私達も行くわ。ガイ、ルークの事、頼んだわね |
ミュウ | みゅうう、ご主人様、心配ですの… |
ガイ | 心配ないさ。ルークだってもう子どもじゃないんだ。そうだろ、ルーク? |
ルーク | うるせーぞお前ら |
ルーク | ごちゃごちゃ言ってねーでさっさと行けっつーの! |
エミル | じゃあね、ルーク |
マルタ | みんなに迷惑かけないでよ! |
コンウェイ | ルークくんは、周囲の人間に信用されていないようだね |
ガイ | 信用されていない、か… |
ガイ | それは少し違うな |
ガイ | 何だかんだ言ってみんなルークの事が心配なんだよ。いい意味でさ |
ガイ | それにルークだって気遣ってるのさ。ミュウが行きやすいようにわざときつい言い方したりしてな |
コンウェイ | … |
コンウェイ | ルークくんはああ見えて意外と気を使うのか。ボクの認識不足だったね |
リッド | メルディ達も出発したみたいだな |
ファラ | うん。ユリウスが一緒だから、心配はいらないと思う |
ジーニアス | じゃあ、ボク達も行こうか |
ジーニアス | まずはそうだな…異変の発生について調べてみる事にしない? |
ガイ | なら、ウィンドルとア・ジュールの国境地帯へ行ってみるのはどうかな |
ガイ | 会ったばかりの頃にレイアから聞いたんだ。両国の国境地帯で突然巨大な亀裂が生じた、ってね |
リッド | 巨大な亀裂…ここより大きいのか? |
ガイ | 比べものにならないだろうな。何せ、大陸が分断される規模だそうだからな |
ファラ | 大陸が分断…!? |
ファラ | それってもう、「亀裂」なんて規模じゃないじゃない |
ガイ | 巨大亀裂は一連の異変のかなり早い時期に出現したらしい。あるいは何かあるのかもしれないな |
リッド | その可能性はなくはねえな |
リッド | じゃあ、その国境地帯に行ってみるか |
ルドガー | ここからだったら、陸路でウィンドルに入り、北上していくルートがよさそうだな |
ルーク | よし、そうと決まれば早速行こうぜ! |
scene2 | 街道沿いの廃墟 |
ルーク | ふー… |
ガイ | どうした、ルーク。もう疲れたのか? |
ルーク | うるせーな。こう見えても俺は、デリケートなんだよ |
ファラ | 近くに街か村でもあれば、ひと休み出来るんだけど… |
リッド | 向こうに何か建物が見えるぞ |
ルーク | 本当か!? |
ルーク | よし、行こうぜ!ぐずぐずすんじゃねーぞ、お前ら! |
コンウェイ | いきなり元気になったね |
ジーニアス | 調子がいいなあ |
| |
コンウェイ | あれは…風車か? |
ルドガー | ひどい…まるで廃墟みたいだ |
ガイ | かなり徹底して破壊されているな。やられたのは最近のようだが |
ジーニアス | どうしてこんな事に… |
ファラ | … |
リッド | ファラ、一応言っておくがこの街は… |
ファラ | …大丈夫。ここがわたし達の街じゃない事は、ちゃんとわかってるから |
コンウェイ | 地震が多いとは聞いていたけれどこの様子、地震の被害とは思えないね |
コンウェイ | 建物の崩れ方もそうだし、周辺に漂う黒煙…異変の影響にしては不自然な点が多すぎる |
ルドガー | それって、人為的に破壊されているって事か? |
リッド | 誰が一体こんな事を? |
ルーク | 戦争にしても前線からは遠いよな |
ガイ | 怪我人がいるかもしれない。念のため、この辺りを見て回ろう |
ルドガー | ああ、そうだな。じゃあ俺はこっちを── |
| ガサ… |
リッド | ん?今瓦礫の辺りから音が… |
ルーク | 何だ、誰かいるのか? |
| |
| ガアアアアッ! |
ジーニアス | 危ない!ルーク離れて!魔物だ! |
scene3 | 街道沿いの廃墟 |
ルーク | せいっ! |
| ズバッ! |
| ギャウウウッ! |
ルーク | へっ、なめんなっつーの。俺にかかればこんなもんだぜ |
ガイ | やれやれ。終わったか |
??? | 君達、大丈夫かい!? |
リッド | ん?誰だ? |
| |
??? | 誰かが魔物と戦闘をしてるような音が聞こえたから、来てみたんだけど… |
??? | どうやら戦いは、既に終わっていたようだね。みんな、怪我はないかい? |
ルーク | クレス!クレスじゃねーか! |
クレス | ルーク!? |
ファラ | 知り合い? |
クレス | ああ。ルークとは光の神殿で出会ったんだ。大切な仲間だよ |
ジーニアス | ああ、あの…ロイドから話は聞いてるよ |
ルーク | こんなところでお前に会えるとは思わなかったぜ。一体何やってんだ? |
クレス | 僕はウィンドルとア・ジュールの戦争が再開された原因を、探っていたんだ |
クレス | 戦場でついに魔導器が使われてしまったという噂もある… |
クレス | ティルグに顔向け出来ないよ… |
ルーク | 魔導器!?…って、あの魔導兵器の仲間だよな。ヤバいんじゃないのか? |
クレス | ああ…。いろいろ情報を聞いて回って得た情報だから、間違いない |
コンウェイ | その「魔導器」とは、どういうものなんだい? |
クレス | この世界に充満しているマナを消耗して動く特殊な機械の事だよ |
クレス | そのマナというのは世界を司るエネルギーで、枯渇すれば世界が危機に陥るそうなんだ… |
ルーク | 確か、マナが減ったら生き物もみんな死んじまうとか何とか… |
コンウェイ | なるほどね |
ルドガー | どうしてそんなものを… |
ジーニアス | … |
クレス | 最近、世界中で異変が起きているのは君達も知っているだろう? |
クレス | 僕はあれも、魔導器の使用によるマナの減少が原因じゃないかと思っているんだ |
ジーニアス | 異変の全てがそのマナの減少のせいだって事? |
クレス | うん、おそらくね |
ジーニアス | … |
ルーク | マジかよ…何であんなヤバイもん使って戦争なんかやってんだよ… |
リッド | だとしたら、一刻も早くその魔導器ってヤツが使われるのを止める必要があるんじゃねえのか? |
リッド | 今は戦争どころじゃないとはいえ、状況が落ち着きゃ、いつまた使うかもわからねえし |
クレス | ああ、同感だよ。僕もそれを国王に伝えるためにバロニアへ向かおうと思っていたところなんだ |
クレス | 肝心の、戦争が再開された原因まではわかっていないけど、この情報は一刻も早く伝えるべきだと思ってね |
| |
ルーク | よし、わかった。そういう事なら俺達も一緒に行くぜ! |
ファラ | …そうだね、今ですらこんなひどい状態なのに、これ以上魔導器を使わせるわけには… |
ジーニアス | …本当に魔導器が全ての原因なのかな? |
ルドガー | ジーニアス? |
ジーニアス | 時空の歪みにはクロノスが関わってる。…マナの減少で発生した現象だとは思えないんだ |
コンウェイ | 確かに、あの空間の中でボク達はクロノスに会った。時空の歪みは彼の力の影響なんじゃないかな |
ジーニアス | 今の話を聞いて、魔導器の使用がまるっきり関係ないとは思わないけど…それでも、やっぱり腑に落ちないよ |
ガイ | ふむ…まだ何か未知の要素があるって事か |
リッド | やれやれ、面倒になってきたな |
リッド | …じゃあ、ここでまた二手に別れりゃいいんじゃねーか? |
リッド | 別にどっちに進んだところでこの異変をどうにかしたいっていう目的は同じわけだし |
ルーク | しょうがねえな。で、誰が誰とどうすんだ? |
ルドガー | …よし、俺はジーニアスと一緒に行こう |
ルドガー | 魔導器の話は信憑性が高そうだけど、時空の歪みにクロノスが関わっている以上、こっちも無視は出来ない |
ルドガー | クロノスと戦う事になったら、俺の能力が役に立つだろうし |
コンウェイ | ボクもジーニアスくんと行こう。そっちの方が面白そうだ |
ルーク | 何だよ、みんな国境地帯行きかよ |
ルーク | クレスと一緒にバロニア行くのは俺とガイだけか? |
ガイ | もともと国境行きを提案したのは俺なんだが…まあ構わないさ |
ファラ | だったらわたしとリッドが、ルーク達と一緒に行くよ |
リッド | …はあ、また勝手に決めやがって |
リッド | どうもオレとガイはお守役から抜けられねえみたいだな |
クレス | 話はまとまったようだね |
クレス | じゃあ、そろそろ行こうか。バロニアへは僕が案内するよ |
ルーク | おう、頼んだからな、クレス |
コンウェイ | それじゃ、ここで一旦お別れって事でいいかな? |
ルーク | 何かわかったら、必ず教えろよ。忘れたら承知しねえからな! |
ルドガー | ああ。こっちも終わったらそっちに合流する |
ルドガー | じゃあ、気を付けて |
ファラ | ルドガー達もね |
ガイ | ジーニアス達は行ったな |
リッド | じゃ、オレ達も早速バロニアへ向かうとしようぜ |
scene1 | 追い求めていたもの |
クラース | よし、時間もない事だ、早速大精霊達を鎮めるために動くとしよう |
ミラ | ああ! |
ヒスイ | ん…? |
| ザッザッザッ… |
| |
ロイド | おーい、ミラ! |
ミラ | ロイド…?どうしてここに |
ゼロス | なっ、ロイド!? |
ロイド | あれ、ゼロスもいたのか?何でミラと一緒に? |
ミント | クラースさん! |
クラース | おお、ミントじゃないか! |
ジュード | アルヴィン! |
アルヴィン | よう、ミラにジュード。奇遇だな |
コハク | お兄ちゃん、もしかしてみんな知り合いなのかな? |
ヒスイ | そうみてぇだな。偶然再会、っていうにしちゃヘンな場所だけどよ |
ゼロス | ハニー元気にしてたかい?いきなり街を飛び出したって聞いて、俺さま心配してたんだぜ~? |
ロイド | まあ、いろいろあってな |
ロイド | それより、ジーニアスを知らないか?行方がわからないんだ |
ゼロス | 何だ、ジーニアスもかよ |
ロイド | 今はほら、変な亀裂があちこち出来たりしてるだろ?落っこちたりしてないか、心配でさ |
ゼロス | うーん…少なくとも俺の耳には入ってねーけどな |
ゼロス | でも、あいつの事だし大丈夫だろ |
ミント | 私達、クラースさんを捜していたんです。お会い出来てよかった |
クラース | 私を捜していた?何故だ |
ミント | それは… |
| |
リオン | お前がクラース・F・レスターか |
リオン | 精霊に詳しいそうだな。イフリートはどこにいる? |
スタン | 火山を登ってくる途中で、急に熱気が静まったように感じたから何かあったのかと思って |
クラース | イフリートの事なら、私よりも、ミラに聞くといい |
ミラ | イフリートならここにいるぞ。お前達の目には見えないだろうが |
リオン | 傍に…いる、だと? |
スタン | 本当か!?…だったら力を貸してくれ。ルイニス街が大変なんだ |
ジュード | ルイニス街…? |
クラース | …どういう事だ?事情を話してくれ |
リオン | …ああ、わかった。だが、時間もない、話は山を下りながら、だ |
scene2 | 追い求めていたもの |
ミラ | 街全体が氷漬けになっただと…? |
リオン | …ああ |
スタン | 建物だけじゃなくて、街の人も一緒に凍ってしまったんだ。俺の妹のリリスも… |
ロイド | リフィル先生が言うには、炎の精霊イフリートの力を借りれば、何とか出来るかもしれないって |
ミント | それで精霊に詳しいクラースさんを捜していたんです |
アルヴィン | ま、そういう事だ |
クラース | なるほどな…。確かにその氷が精霊の力によるものだとしたら、イフリートの力で救えるかもしれない |
クラース | だが、今ある情報だけで判断する事は難しい… |
クラース | …ミラ、どう思う? |
ミラ | ふむ… |
ミラ | 街が丸ごと氷漬けになるとは…ただの自然現象とは思えないな |
ミラ | 精霊が原因となっている可能性も、否定は出来ない。実際、氷を司る精霊も存在している |
リオン | … |
ロイド | 氷を司る精霊…じゃあ、そいつの仕業かもしれないって事か? |
ミラ | あくまで一つの可能性だ。まだそうと決まったわけではない。実際に見てみない事にはわからない |
スタン | だったら一緒に来てくれないか?頼む! |
ミント | 私からもお願いします…!どうかご協力いただけませんか? |
リオン | … |
ミラ | ううむ… |
アルヴィン | 何か気がかりな事でもあるのか? |
ジュード | 気がかりというか… |
ジュード | 僕達はマナの減少を食い止めるため、世界中にいる大精霊の暴走を鎮めに行こうと話していたんだ |
ミラ | ルイニス街の事も気がかりだがこちらも一刻を争う状況でな… |
コハク | ミラの身体が二つあればよかったのにね |
ヒスイ | それよか、イフリートを二つに分けりゃいいんじゃねぇか? |
クラース | お前達!精霊を二つに分けるなどと、滅多な事を言うな。トカゲのしっぽとは違うんだぞ |
クラース | こほん。…では、こうしよう。大精霊の事は、私が先行して調査を進めておく |
ゼロス | クラースが? |
クラース | ミラほどではないが、私も精霊に関する知識は持っているし多少なら気配も感じ取れる |
クラース | 精霊の調査は私が進めておくからその間に、ミラはリオン達とルイニス街へ行ってはどうだ? |
クラース | イフリートの力を試すのは、ミラにしか出来ない事だしな |
ジュード | それはいい案かもしれないね |
ジュード | もしルイニス街の件に精霊が関わっているとしたら、何か情報を得られるかもしれないし…一石二鳥じゃない? |
ミラ | 確かに。…では、精霊捜しはクラースに任せて私はルイニス街へ向かう事にしよう |
クラース | 何かあればメルトキオで落ち合おう、いいな? |
ミラ | ああ |
スタン | やった!これでみんな助かるかもしれないな!なあ、リオン! |
リオン | …ああ、礼を言う |
コハク | じゃあ、わたしとお兄ちゃんはクラースさんと一緒に行くよ。一人で行くよりは心強いでしょ? |
ヒスイ | 俺達がバッチリ送り届けてやるよ。クラースならコハクにちょっかい出す事もねぇだろうしな |
ロイド | じゃあクラース、コハク、ヒスイ以外は全員でルイニス街を目指すって事でいいんだな? |
アルヴィン | いいんじゃねーの?それじゃ、時は金なりだ。早速出発しようぜ |
ミラ | すまないな、クラース |
ミント | 私からもお礼を…。クラースさん、ありがとうございます |
クラース | 気にするな。ルイニス街の件、上手く解決するよう祈っている |
コハク | みんな、気を付けてね!途中でもしシングに会ったらわたし達の事、伝えておいてね! |
ゼロス | おう、任せとけ!コハクちゃんも気を付けてな!野郎二人はどうでもいいけど! |
クラース、ヒスイ | … |
ミラ | さて。それではルイニス街へ案内してもらおうか |
スタン | 任せてくれ! |
リオン | 念のためもう一度聞く。イフリートは確かに、お前の傍にいるのだな? |
ミラ | ああ |
リオン | そうか。それならばいい |
アルヴィン | … |
scene3 | 追い求めていたもの |
ミラ | む…? |
リオン | どうかしたのか? |
ミラ | この近くから、妙な気配を感じるこれは…大精霊…? |
ジュード | 近くに大精霊がいるって事? |
ミラ | いや。まだそうと決まったわけではない。似ているような、違うような… |
リオン | … |
ジュード | この近くに何かの気配があるのは間違いないんだよね?だったら、正体を確認してみようよ |
ミラ | わかった。では行ってみよう |
アルヴィン | さて。何が出てくるのかね |
| |
ミント | ここは…遺跡ですか? |
リオン | そのようだ |
ジュード | ここに大精霊が…? |
| ズズーーーン! |
ロイド | 何の音だ!? |
スタン | 遺跡の中から聞こえてきたぞ。何か崩れたんじゃないか? |
| ドドドドド…! |
??? | うわあああああ!? |
アルヴィン | 悲鳴? |
ゼロス | 誰か出て来るぞ! |
??? | わああああ…って、あ、あれ?あなた達は…? |
ロイド | それはこっちのセリフだ。大丈夫か? |
ミント | お怪我はありませんか? |
??? | あ、うん。心配してくれてありがとう |
スタン | 中で何があったんだ? |
??? | 遺跡を見てたら、いきなり壁が崩れ始めて…… |
アルヴィン | かなり古い遺跡のようだしな。ちょっとした弾みで崩壊しても、おかしくはないだろうな |
??? | あー、もったいない!いい遺跡だったから、もっとじっくり見たかったのに! |
ゼロス | 危うく生き埋めになりそうになったくせに、よくそんな事言えるな |
??? | オレ、遺跡が好きなんだ。珍しいモノが見られるんなら少しくらいの危険は何ともないよ |
ロイド | 遺跡好きかあ…リフィル先生と話が合いそうだな |
リオン | ミラ、大精霊の気配はどうなった? |
ミラ | …こいつだ |
ミント | え? |
ミラ | 例の気配は、この男から発せられている。間違いない |
ミラ | お前は誰だ?ただ者ではないな |
スレイ | オレはスレイ。ただの人間だよ。何か感じるっていうのはミクリオの事かな? |
スレイ | ほら、ここに… |
リオン | ふざけているのか?今僕達の目の前にいるのはお前だけだ |
スレイ | そっか。ちょっと違う気がしたんだけど… |
スレイ | やっぱりみんな「普通の人間」なんだね |
スレイ | オレの友達…ミクリオは天族なんだ |
ミント | …天族?何でしょう、初めて聞きました |
スレイ | 天族っていうのは人間とは違う種族で、普通の人間には見えないんだ |
スレイ | 実は今もオレの隣にいるんだけど、誰にも見えてないんだよね? |
ジュード | そうだね。僕には君の姿しか…ミラは? |
ミラ | 私の目にも見えない。だが、何かの気配は確かに感じる |
アルヴィン | どうやらミラが感じ取っている気配はその天族とやらのもののようだな |
スレイ | 気配がわかるだけでもすごいと思います。ミラさん、ですよね? |
スレイ | 他の人にはない特別な力を感じる……よくはわからないけど、ミラさんのすぐ傍に何か…… |
ミラ | 四大の存在に気付いたか。やはりただ者ではないな |
ミラ | スレイと言ったな。よかったら、私達と一緒に来ないか? |
スレイ | オレ達も…? |
ミラ | お前のような人間は初めて会う。ミクリオという天族の事ももっと知りたいしな |
スレイ | 道に迷っちゃったみたいだし、そうさせてもらえると助かります |
スレイ | な?ミクリオ? |
スレイ | え?でも、悪い人達には見えないよ……それは……まぁそうだけど………… |
スレイ | えっと、すみません |
スレイ | せっかく親切にしてもらったけど、オレ達やらなきゃいけない事があって… |
スレイ | もう少しこの辺りを調べて、大丈夫そうだってわかったら、みなさんと一緒に行きたいです |
スレイ | わがままですけど… |
ミラ | ああ。それで構わない。また会えるのを楽しみにしているよ |
スレイ | ありがとうございます! |
スレイ | ……うん。わかってる |
スレイ | それじゃ、オレ達は行きます。みなさんも気を付けて |
スタン | じゃあな! |
ミント | 変わった方でしたね… |
アルヴィン | どこかズレてたしな。悪い奴じゃなさそうだが |
ミラ | 彼…いや、彼らか。彼らの事は気がかりだが、縁があればまた会えるだろう |
スタン | じゃあ改めて、ルイニス街へ向かおう |
ジュード | うん、そうだね |
scene1 | 不穏な足音 |
ミント | …!これは… |
ゼロス | 本当に街全体が凍っちまってる… |
アルヴィン | 今まで疑っていたわけじゃないが、ここまでとはな… |
リオン | … |
ジュード | ミラ、どうなの?やっぱり街がこうなったのって、精霊が原因? |
ミラ | …… |
ミラ | いや、精霊の気配は感じられない。別な要因のようだ |
ロイド | 精霊の力でもないなら、一体どうやって… |
アルヴィン | …なあミラ、おたくならイフリートの力を自在に制御できるだろ? |
アルヴィン | 原因の方はさておき、イフリートの炎でこの氷を溶かせないか、試してみたらどうだ? |
ミラ | そうだな。力をうまくセーブすれば、人に危害を与えずに済むだろう |
スタン | 頼む! |
リオン | … |
ミラ | イフリート! |
ゼロス | どうだ…? |
ミラ | …駄目だ。イフリートの炎でも、氷を溶かすどころかびくともしない |
ミラ | 力を抑えているとはいえ、炎の大精霊の力だ。ただの氷であれば何かしらの変化はあるはず |
ジュード | じゃあ、この氷は… |
ミラ | ああ、何か特殊な力を使って作られたもしくは特殊な力が氷に作用している、という事だろうな… |
スタン | そんな… |
リオン | くっ、イフリートでも駄目か… |
スタン | 街を救う唯一の望みだったのに…一体どうすれば… |
アルヴィン | リオン、スタン… |
リオン | … |
ミラ | 力になれず、すまない… |
スタン | … |
ロイド | でも、あれだ…!これで精霊の力でもどうにもならないって事はわかったしそれだけで前進した、そうだろ? |
スタン | そうだけど… |
リオン | … |
ロイド | 二人共、そうがっかりするなって! |
ロイド | まだ他にも手はあるはずだ。諦めなきゃ絶対に何とかなる!そうだろ? |
スタン | …ああ、そうだな。ロイドの言う通りまだ諦めるわけにはいかない…そうだよな、リオン? |
リオン | …! |
リオン | 黙れ!お前に何がわかると── |
ミント | リオンさん、どうかしましたか?あまり顔色が優れないようですが… |
リオン | …済ませなければならない用を思い出した、それだけだ。お前達はここにいろ |
スタン | お、おい…リオン? |
ロイド | 用って何だろうな? |
アルヴィン | … |
ゼロス | さてと。ミラさま、これからどうする?クラース達と合流するか? |
ミラ | そのつもりだが、その前にもう少しだけ街を調べさせてくれ |
ミラ | 原因を探る手がかりがどこかにあるかもしれない |
ミント | そうですね、みんなで手分けして探しましょう |
スタン | じゃあ俺が、街を案内するよ。凍ってる人に触ったりしないように気を付けてくれよ |
アルヴィン | … |
ジュード | アルヴィン?何か気になるものでも見つけた? |
アルヴィン | …ん、いや別に。ちょっと考え事をしていただけさ |
ロイド | それじゃ頼むぜ、スタン |
スタン | ああ |
アルヴィン | … |
scene2 | 不穏な足音 |
リオン | こんなところにいるとは一体どういうつもりだ |
リオン | … |
リオン | 僕の行動を、逐一お前に報告する義理はない |
リオン | … |
リオン | …言うまでもない。他に手段がないのはわかっている |
リオン | … |
リオン | …消えろ。目障りだ。僕が何をすべきか…そんな事はお前に言われなくてもわかっている |
| |
ロイド | 大精霊の暴走!? |
ミラ | ウィンドルとア・ジュールの戦闘が中断された今もマナ減少が続くのはおそらくそれが原因だろう |
ジュード | 世界中のマナが減少する事が、大精霊の暴走を誘発し、さらなるマナの減少につながる… |
ジュード | その一連の流れが、世界各地で異変を引き起こす原因にもなっているって事だよね |
ミラ | そうだ |
アルヴィン | 悪循環だな… |
ゼロス | その悪循環を止めるためにミラさまと動き出そうとした矢先、お前達と出会ったってわけさ |
ロイド | 異変の原因が、マナの減少と関係があるかもしれないってのは、やっぱり当たってたんだな |
アルヴィン | ま、そういう事になるな |
ミラ | 今、世界はマナ減少によって自然界のバランスが大きく崩れている |
ミラ | その影響でこの街が氷漬けになった可能性も考えられなくはない |
ミラ | 自然界の力が歪んだ形で氷に作用していたとしたら、イフリートの炎が利かなかった事にも納得がいく |
リオン | … |
スタン | あ、リオンおかえり!もう用事は済んだのか? |
リオン | ああ |
ロイド | …なあ、リオン。話があるんだ、聞いてくれ |
リオン | 何だ? |
| |
スタン | リオンがいない間にミラ達から話を聞いたんだ、大精霊の暴走について… |
リオン | 大精霊の暴走、だと…? |
ミント | ミラさんはこの街を覆っている氷は、今世界中で起きている異変と関わりがあるとお考えのようです |
リオン | …で、その大精霊の暴走がこの異変とどう関わっているというんだ? |
アルヴィン | 平たく言えば、暴走する大精霊達を鎮め、異変を止める事が出来れば、街の氷は溶けるかもしれないって事さ |
リオン | … |
ロイド | …なあリオン、ミラに協力して一緒に大精霊を鎮めに行こうぜ? |
スタン | リオンがすぐにでも街を救いたいと考えてるのはわかってる |
スタン | けど、街を救える方法は今のところ、これしか思い付かない |
スタン | やる事が大きいだけに、街が元に戻るまで、少し時間がかかるかもしれない。それでも── |
リオン | 大精霊か…、…いいだろう |
ロイド | …本当か!? |
アルヴィン | へえ、今回はやけに素直だな。またいつかの仲間割れが勃発しちまうんじゃないかと冷や冷やしてたんだぞ |
リオン | …。それしか方法がないならばそれを成し遂げるだけだ |
ロイド | とにかくよかったよ、リオン。何としてでも異変を止めて、この街を救おうぜ! |
ミント | よかったですね。スタンさん、ロイドさん |
スタン | な?俺の言った通りだったろ?リオンはちゃんと話せば、きっとわかってくれるって |
アルヴィン | … |
リオン | それで、肝心の大精霊はどこにいる? |
ゼロス | ウィンドルの方だってよ |
ミラ | 詳しい場所はわからない。気配を辿りながら進む事になるだろう |
ジュード | ウィンドル方面だと、ここから少し離れてるね。早速、行ってみよう |
ロイド | ああ、そうだな |
リオン | … |
アルヴィン | … |
scene1 | 大精霊アスカ |
スタン | ここは、確かテムザ山だっけ…? |
ミント | この山に、本当に大精霊がいるんですか? |
ミラ | 間違いない、この山中から強い気配を感じる |
ゼロス | 言われてみれば、確かにそれっぽい感じがするな |
ロイド | 大精霊の気配がわかるのか?ゼロス、すごいな! |
ゼロス | いやあ…ミラさまに言われて何となく、そんな気がしただけ |
ジュード | クラースだったら、何か感じ取れたのかもね |
リオン | … |
アルヴィン | どうした、リオン? |
リオン | …別に。少し考え事をしていただけだ |
ロイド | ルイニス街の事か?…やっぱり一刻も早く助けたいよな。気持ちはわかるよ |
リオン | … |
スタン | リオン、辛いだろうけど聞いてくれ。俺達が今やろうとしている事は決して回り道なんかじゃない |
スタン | 大精霊を鎮め、異変を止める事が街を救う事にもつながる。そう信じて、行動しよう |
リオン | …ああ |
ミラ | では、進むとするか |
アルヴィン | さて…何が待ち受けているやら |
scene2 | 大精霊アスカ |
アルヴィン | へえ、山道の脇にこんな広い洞窟があったとはな… |
ゼロス | ミラさま、ここに大精霊が? |
ミラ | おそらくな。この奥から強い力を感じる |
ジュード | 確かに、そう言われるとひんやりとしてる気がするよ。空気が張り詰めてるっていうか… |
リオン | … |
スタン | ん?あそこに何か影が…大精霊か…? |
リオン | …! |
??? | … |
ロイド | いや、あれは人間だ… |
| キイイイーーーン |
??? | グオオオオオオオ…! |
ロイド | な、何だ今の声は!? |
ミント | 魔物でしょうか?あの人は一体何を… |
ミラ | …!まさか… |
ジュード | ちょっと、ミラ!?突然どうしたの!? |
| ビシッ! |
??? | グウウ… |
??? | む… |
??? | …やはり、ここも同じか |
??? | … |
??? | お前達は…?ここへ何をしに来た |
ミラ | お前こそ、アスカに剣を向け一体何をしている? |
??? | アスカを知っているのか |
??? | グ…ゥ… |
リオン | これが、大精霊か… |
ミラ | ああ、光を司る大精霊…アスカだ |
??? | … |
| チャキ… |
ミラ | 私達は大精霊の暴走を鎮めるためにここへ来た。お前の行いによっては今ここで戦ってでも止めさせてもらう |
??? | 剣をしまうがいい。無意味を重ねても仕方あるまい |
| チャキ… |
リオン | …勘違いするな。貴様にその気があろうがなかろうがそんな事は関係ない |
リオン | 逃がすか倒すかを決めるのは僕達だ。…さあ、何をしていたのか言え |
??? | 知らずともよい事を聞かせるつもりはない |
??? | だが大精霊を鎮める試み…敢えて行うというなら止め立てはすまい |
??? | それが無益な試みであろうとも |
ゼロス | な、何だって?何でそんな事がお前にわかるんだよ |
ジュード | そうだよ!四大精霊の暴走だって鎮める事が出来たんだ、ミラになら必ず出来る! |
??? | … |
| |
アスカ | グオォ…! |
ミント | …!ミラさん、大精霊の様子が… |
ミラ | 何!? |
アスカ | グオオオオオオオッ!! |
アルヴィン | おーおー、いきり立ってるねぇ。さっきまでは大人しそうにしてたのに完全にお目覚めってわけか |
スタン | すごい迫力だ…!立ってるだけで、足がすくむような…これが、大精霊アスカ…! |
ロイド | ミラ、どうする?今にも突っ込んで来そうな勢いだぞ! |
ミラ | どうやら戦闘は避けられないようだ。力ずくで大人しくさせるしかない |
??? | 人の身で大精霊に挑むか。だが忠告はした |
リオン | ちっ、あの男… |
ミラ | リオン!今は目の前にいるアスカに集中しろ |
ミラ | 相手は大精霊だ。気を抜くなよ! |
リオン | …ああ |
scene3 | 大精霊アスカ |
リオン | はあっ! |
| ズドッ! |
アスカ | グオオオオオッ! |
アスカ | オ…オ… |
スタン | 何とか大人しくなったか…? |
アルヴィン | ああ、多分な |
ミラ | よし、今の内だ。アスカに正気を取り戻させる |
ロイド | どうやって? |
ミラ | 私のマナを分け与えるのだ |
ミラ | かつて今のアスカと同じ状況にあった四大が自我を取り戻したのは、私のマナを感じ取ったからだ |
リオン | … |
ジュード | ミラ、気を付けて |
ミラ | わかっている。イフリートの時と同じ轍は踏まない |
ミラ | もうすぐだ…必ず救い出してやるぞ、アスカ |
アスカ | グ… |
ミント | 待ってください!様子が…!暴走が鎮まっていないのでは…!? |
アスカ | ガアアアッ! |
ゼロス | なっ、危ねえ! |
アルヴィン | ミラ、危険だ。アスカから離れろ! |
ミラ | …何故だ?どうしてアスカは正気を取り戻さない…!? |
リオン | ちっ…! |
アスカ | グオオオオッ! |
ジュード | ミラ、危ない!! |
| バシィッ! |
ミラ | 四大!? |
スタン | な、何だ今の!? |
ジュード | 間に合ってよかった…四大精霊が守ってくれたみたいだ |
ミラ | どういう事だ…?何故、アスカの暴走を鎮められない |
ミラ | 確かに四大はこの方法で鎮められた。アスカも同じ大精霊である事は変わりない。一体どうなっているのだ… |
アスカ | グオオオオオオッ!! |
| ズザッ!! |
| |
ロイド | くっ、速い…!さっきより凶暴になってねえか!? |
スタン | 俺もそんな気がする…!これ以上は危険だ、一旦ここから離れた方がいいんじゃないか? |
ミント | …私もそれがいいと思います!態勢を立て直しましょう、ミラさん! |
ミラ | しかし…! |
ジュード | ミラ、大丈夫だよ。きっとアスカは救える、だから今は一旦退こう、いいね? |
ミラ | くっ…! |
| |
アルヴィン | 参ったな。あれじゃ手も足も出ない |
ミラ | …すまない結局、あの男の言った通りだった… |
ロイド | ミラ… |
ジュード | 落ち込まないで、ミラ。詳しい事はわからないけど、僕、思うんだ |
ジュード | 四大精霊の暴走を鎮める事が出来たのは、ミラと四大精霊の間に特別な絆があったからじゃないかな? |
ミラ | 特別な絆、だと…? |
ジュード | 僕、ミラが四大精霊を救っていく姿を見てたじゃない?…で、思ったんだ。本当に家族みたいだなって… |
ジュード | ミラの四大精霊を想う気持ちがマナを通じて彼らに伝わり、きっと彼らも、ミラの元に帰りたいって頑張った… |
ジュード | 互いに想い合ってるからこそ、四大精霊は自我を取り戻す事が出来たんじゃないかな? |
ジュード | だから…ミラの力不足とか、そういう事じゃないと思うんだ |
ミラ | ジュード… |
ジュード | 四大精霊を救えたんだ、きっとアスカの暴走を鎮めて救ってあげる事は出来ると思う |
ジュード | だからミラ、その方法を一緒に探そう? |
ミラ | …ああ、そうだな。ありがとう、ジュード |
| |
アルヴィン | いやー、優等生。ちょっと見ない間にえらく大人になっちゃって |
ジュード | え?そ、そうかな…ただ思った事を言っただけ… |
ゼロス | 前にも思ったんだけど、ジュードくんって大人しそうに見えて実は案外やり手だったり… |
ロイド | ん?ジュードが何だって? |
ゼロス | ああ、いや…こっちの話だ。とりあえずメモメモ…っと… |
ジュード | ちょ、ちょっとみんなー!茶化さないでよ |
ミント | とにかく、ジュードさんのお蔭でミラさんの心も落ち着いたようですし… |
スタン | ああ、一安心だ。な、リオン? |
リオン | …馬鹿馬鹿しい |
ロイド | それにしても、あの男…一体何者だったんだろうな |
ロイド | まさか…アスカを暴走させてた、なんて事、ないよな? |
リオン | 何故そう思う? |
ミラ | 確かに、あの男が剣を向けたのとアスカのマナが激しく乱れたのは同時だったが… |
アルヴィン | ふむ…マナを乱れさせて、暴走を促進させようとしていたところ俺達とかち合って退いた… |
アルヴィン | っていう事か? |
スタン | だけど、大精霊を暴走させるって…そんな事が出来るのか? |
ミラ | あの男の剣が魔導器の類だったとすれば…不可能ではないはずだ |
ロイド | …!そういう事か… |
ミント | でも、どうしてそんな事を… |
ミラ | 理由はわからない。だが… |
ミラ | 私達とは別の目的で、精霊に近付こうとする者は奴の他にも存在する |
ジュード | それってまさか…リドウの事? |
リオン | …! |
アルヴィン | … |
ミラ | ああ。リドウとあの男の行動は私達と明らかに敵対している |
ミラ | そう考えれば、あの二人が組んでいる可能性も考えられなくはない |
ジュード | そ、そんな… |
ゼロス | そのリドウって奴、何者だ? |
ミラ | 私は人間界に来て早々、謎の集団に襲われた。それを率いていた男の名だ |
ミラ | リドウは、精霊を回収する事を目的として動いているようだ。そのために、私が邪魔なのだと… |
リオン | … |
ミラ | 詳しい事は私にもわからない。再び会い、情報を聞き出す必要があると考えていたところだ |
アルヴィン | リドウ、ねえ… |
リオン | …アルヴィン、リドウを知っているのか? |
アルヴィン | … |
アルヴィン | んー… |
アルヴィン | …いや、どこかで聞いた事があるかどうか考えていたんだが、悪ぃ、勘違いだったわ |
リオン | … |
ゼロス | 何だよ。思わせぶりな態度取りやがって |
アルヴィン | はは、すまんね |
スタン | とにかく、目的はみんな違うけど精霊をどうにかしようと考えてるのは俺達だけじゃないって事だよな… |
ロイド | けど、絶対あいつらの好きにさせるわけにはいかない。そうだろ、ミラ? |
ミラ | ああ、あの男の事はともかく、リドウが大精霊を狙っているのは紛れもない事実だからな |
ミラ | 大精霊を守るためにも、暴走を鎮める方法を探さなければ… |
リオン | … |
ミラ | …! |
ミラ | ああ、四大も感じているのか |
ジュード | どうしたの? |
ミラ | ここから北西の位置、そこから何か、不思議な力の気配を感じる… |
ミラ | 詳細はわからないが、その力に安らぎを感じ取れる |
ミラ | もしかしたら、この力でアスカを救う事が出来るかもしれない |
ロイド | 北西っていったら、バロニアの方角か?その力って一体… |
リオン | …ミラ、その情報は確かなのか? |
ミラ | 勿論だ |
リオン | ならば、そこへ向かいその力の正体を突き止める… |
リオン | 今は打つ手なしの状況だ。可能性があるなら調べてみる価値はあるだろう |
アルヴィン | 俺もリオンの意見に同感だ。例え期待しているものじゃなくとも情報は多いに越した事はないからな |
ロイド | よーし、じゃあ早速向かおうぜ。ミラと四大精霊の導く場所に! |
ジュード | そうと決まったら、ミラ。早速案内してよ |
ミラ | ああ、任せてくれ |
リオン | … |
scene1 | 忠告 |
アーチェ | エステル、大丈夫かな |
ジェイド | 心配ですか?ああ見えて、ミュゼは結構面倒見がいいんですがねえ |
ジェイド | 一応、釘も刺しておきましたし、エステリーゼ様の事は心配いりませんよ、多分ね |
リタ | 多分って…あんた、わざと不安にさせようとして言ってるわね |
ジェイド | おや、心外ですねえ。どんな相手にも誠実であれ、というのが私の信条なんですが |
レイヴン | 自分で誠実ですっていう奴に限って、大体裏があるもんだけどねえ |
リタ | おっさんが言うと説得力あるわね。…まあ今さら言っても無意味だし、さっさとウィンドルに行くわよ |
リタ | 急げばそれだけエステルも早く解放されるんだし |
アーチェ | まずはア・ジュール港だね。前はセネルに送ってもらったけど、今度はどうする? |
ジェイド | ああ、それでしたら、特別船を手配するよう、指示を出しておきましたから |
リタ | バカに手回しがいいわね |
ジェイド | どうも。そういう性分なもので |
アーチェ | 自分で船の手配をする捕虜なんて、普通いないと思うけど |
ジェイド | いいじゃありませんか。その捕虜の助けがあるお蔭であなた方は海を越えられるんですから |
ジェイド | まあ、細かい事は気にせず張り切ってウィンドルへ行きましょう |
レイヴン | こんだけ胡散臭い捕虜もそうそういないわよ? |
リタ | あーもう…何だか頭が痛くなってきた… |
scene2 | 忠告 |
レイヴン | さて。港まで戻って来ましたよっと |
ジェイド | 私は船の様子を確認してきます。大丈夫だとは思いますが、手違いがあってはいけませんから |
リタ | ちょっとあんた、勝手に… |
アーチェ | 行っちゃった |
レイヴン | あんなフリーダムな捕虜、前代未聞よね |
アーチェ | 放っといて大丈夫?あいつ、逃げるんじゃないの? |
リタ | わからないけど…あいつ自身、ウィンドルには行きたがってるわけだし |
リタ | ここであたし達を裏切っても何の意味もないはずだけど… |
アーチェ | 釈然としない、って感じだよね~。気持ちはわかるよ。あいつ、意味わかんないもん |
レイヴン | しかし、何とも大変な展開になったもんだねえ |
アーチェ | ホントにね。トーティス村を出る時には、こんな事になるなんて想像もしてなかったよ |
アーチェ | 両国の戦争を誘発し、マナを枯渇させようとしている第三者…本当にいるのかな |
リタ | あたしは今のところ、それが一番可能性が高いと思ってる。だから必要なのは証拠よ |
リタ | 何としても見つけないと…エステルのためにも |
| |
??? | 第三者…何故そう思う |
レイヴン | なっ、いつの間に… |
リタ | あんた、誰? |
アーチェ | あたし達の話、聞いてたの? |
??? | どうやってその推察に至ったにせよ、深入りはやめておくがいい |
リタ | 何を言って…って、あんた、何か知ってるの? |
??? | … |
リタ | な…無視!?待ちなさいよ、あんた! |
レイヴン | リ、リタっち!?ちょっとどこ行く── |
| |
| ドンッ |
リタ | きゃっ!いたた… |
ジェイド | これはすみません、お怪我は──と、あなたでしたか |
リタ | あんたこそどこ見てんのよ!…って、そんな事よりあいつは!? |
アーチェ | 行っちゃったみたい。この人混みじゃあ追いかけるのはムリだね |
リタ | ああ…もう! |
ジェイド | どうしたんです、そんなに慌てて。一体何があったんですか? |
リタ | 今、怪しい男がいたのよ!あの口振り…今回の第三者について何か知ってるかもしれない |
アーチェ | 少し話してただけなんだよ。なのに、話の全部を理解してるみたいな感じだったし… |
ジェイド | それは興味深いですね。第三者と関わる人物、あるいは当事者の可能性も… |
ジェイド | いずれにせよ、これまで以上に注意を払った方がよさそうですね |
レイヴン | 旦那の部下を使ってこの辺りを調査させておいた方がいいんでない? |
ジェイド | ええ、勿論そのつもりです。…ですが、皆さんは波止場へ。船の準備が整ったようです |
ジェイド | 時間が惜しい。私達は予定通り、このままウィンドルへ向かいましょう |
リタ | …仕方ないか。その代わり、しっかりあんたの部下に捜させなさいよ! |
scene1 | 招かざる来訪者 |
クラトス | さて、アスベル、ユーリ、これからどうする? |
アスベル | まず俺達が向かうべきところはア・ジュールだ |
アスベル | 今回の戦争でア・ジュールが投入した兵器も、我が国の魔導器と同じ類の特殊兵器だと聞く |
ユーリ | おいおい、それってまさか…魔導兵器の事か? |
アスベル | …ああ。その事もあって、リチャードは魔導器を使用するという苦渋の決断をした |
ユーリ | どっちもどっちってか。やれやれ想像以上に最悪って奴だな、ったく |
ユーリ | …とにかくそうとわかりゃさっさとア・ジュールに向かおうぜ |
ユーリ | 魔導兵器の使用は何としてでも止めさせなきゃならねえからな |
アスベル | ああ、そうだな |
クラトス | 話はついたようだな。次の目的地はア・ジュールか |
アスベル | はい。カノンノやエリーゼには来た道を引き返す形になってしまってすまないけど… |
エリーゼ | 大丈夫です |
ティポ | ぼくもー!それにジュード君、ひょっとしたらア・ジュールにいるかもだしー |
カノンノ | 私も、全然構わないよ!それより…アスベル、シェリアさんを捜さなくていいの? |
カノンノ | この街にいるんだよね?見つかった? |
アスベル | いや、さっきから捜してみてはいるんだけど、この辺りにはいないみたいだな… |
アスベル | ひょっとしたら、地元に戻ったのかもしれない |
カノンノ | そんな…。アスベル、あんなに心配してたのにシェリアさんと会えないなんて… |
ユーリ | おいおい、何だか深刻っぽい話みたいだが、大丈夫なのか? |
アスベル | カノンノ、ユーリ…ありがとう |
アスベル | シェリアの事なら大丈夫だから。この件が落ち着いたら会いに行こうと思ってる |
アスベル | だからカノンノもそんな顔するな。な? |
カノンノ | アスベル…。うん、わかった |
アスベル | よし、じゃあ早速── |
??? | あーーーーっ! |
ティポ | なになに、今のー!? |
??? | ユーリ!ユーリじゃない! |
ユーリ | リタ?お前、こんなところで何やってんだ |
リタ | あんたこそ何やってんのよ!って、今はそんな事はいいわ |
リタ | 本当はフレンを捜してたんだけど…この際あんたでいいわ!来て! |
ユーリ | おいおい、何の真似だ。こっちだって取り込み中── |
リタ | 取り込み中なのはこっちも一緒よ!エステルの身が危ないの! |
ユーリ | 何!? |
アスベル | エステリーゼ様の身が危ないって、どういう事だ!? |
ユーリ | あいつ、まさか城にいないのか? |
リタ | 詳しい話は後!いいからとにかく来て! |
アスベル | 行こう、ユーリ!エステリーゼ様に何かあったら… |
ユーリ | ったく、あのお姫様、今度は何やらかしたんだか… |
scene2 | 招かざる来訪者 |
ユーリ | それで?一体オレ達をどこまで連れて行く気だ? |
リタ | いいからもう少しだから黙って──ほら、あそこ! |
リヒター | あの大勢の兵士達は…おい、あそこに何がある? |
クラトス | 誰かを取り囲んで、尋問しているように見えるが… |
警備兵 | 捕虜というには態度が大きすぎる!そもそも貴様はア・ジュールのどういう役職の人間なのだ? |
ジェイド | しかるべき方にお会いした時に、きちんとお話しますよ。失礼ですが、あなた方のような末端ではちょっと |
レイヴン | あの、ちょっと旦那ぁ…もう少し穏便な態度を取った方がいいんでないの? |
アーチェ | レイヴン、言ってもムダだって。こいつ、明らかにこの状況を楽しんでるじゃん |
リタ | ちょっと!大人しく待ってろって言ったでしょ! |
レイヴン | おろ、ユーリじゃん。ご無沙汰~ |
ユーリ | おっさんまで…。お前ら、マジで何やってんだ? |
アスベル | あいつは…! |
カノンノ | アスベルの知り合い? |
アスベル | 知り合いというか、一方的に知っているというか… |
ジェイド | いや、これはどうも。予想していた以上の歓迎ぶりですね。感激ですよ |
アスベル | … |
アスベル | 何故あなたがここにいるんですか?ア・ジュール軍大佐、ジェイド・カーティス殿 |
クラトス | ア・ジュール軍の大佐だと… |
ジェイド | おや、私の事をご存知でしたか。それなら話が早い |
ジェイド | 実は私、この度貴国の捕虜となってしまいまして。こうして連行されて来た次第です |
リヒター | 捕虜だと?そんな様子には到底見えん |
ティポ | リヒター君に同感ー!捕虜のくせに態度がデッカイぞー |
ジェイド | はっはっは、まあとにかく、こちらの警備の方々にも信じてもらえず、困っていたところですよ |
リタ | それで、フレンを連れてくれば何とかなるかもって思って捜してたんだけど… |
ユーリ | 代わりにオレを見つけて、連れて来たってわけか |
ジェイド | まあエステリーゼ様からお預かりした親書もありますから、いざとなればそれをお見せしようとは思ってました |
ジェイド | ただ、いきなりそれに頼るのも安易すぎると思いまして |
アーチェ | やっぱり楽しんでる… |
ユーリ | で、エステルは今どこに? |
リタ | ア・ジュールで保護されてる。ジェイドを捕虜にする代わりに、彼女が向こうに残るって言い出して |
アスベル | 何だって… |
ユーリ | 自分から、か。エステルらしい話だな |
アスベル | 何て事だ…。あの方はご自分の立場を、わかっているのか… |
ユーリ | 慌てるなよ、アスベル。こいつらの様子からして、そうヤバイ状態にはなってなさそうだぜ |
ユーリ | とにかく、状況はわかった。こいつらの身元はオレが保証するから放してやってくれねえか? |
警備兵 | フレン隊長がお前の誤解を解いて下さった |
警備兵 | お前を捕まえるようなマネはしない。ただ、「元」騎士団員のお前に保証されてもな… |
ユーリ | だ、そうだ |
リタ | 何よそれ。役立たずじゃない! |
アスベル | だったら俺も保証しよう。その人達の身元は問題がない |
警備兵 | わかりました。アスベル殿でしたら、問題ありません |
エリーゼ | アスベル、信用されているんですね |
ユーリ | 日頃の行いの差ってやつか。やれやれ |
レイヴン | ふいー、助かった~ |
アーチェ | ホントのホントだよ!ジェイドの悪ふざけのせいで一時はどうなる事かと思った~ |
リタ | でも、あの場にアスベルがいてくれて助かったわ |
アスベル | …ではカーティス大佐。何故このような事になったのか、事情を聞かせてもらえますか |
ジェイド | そうですねえ…と、言いたいところですが… |
| ガルルルル… |
ジェイド | 招かれざる客が来たようです。話はその後ですね |
レイヴン | 騎士団何やってんの!こんなところに魔物がいちゃまずいでしょうが! |
アスベル | くっ…! |
scene1 | 新たな情報 |
アスベル | ウィンドルとア・ジュールの戦争を誘発し、マナの枯渇を目論む第三者がいる…? |
ジェイド | 現時点ではあくまで仮説にすぎませんがね |
クラトス | ここまでの仕掛けだ、マナの枯渇が最終目的ではなかろう。放置してはおけないな |
ユーリ | くだらねえ事をしでかしてるくだらねえ奴らの親玉か。さっさとぶっ倒すに限るな |
リヒター | … |
リタ | で、とにかくウィンドル側にもそれを伝えようって事になってジェイドとここまで来たってわけ |
ジェイド | アスベル、あなたはこの国の騎士ですね?私をリチャード陛下の元に連れて行っていただけませんか |
アスベル | …事情はわかりました。ですが、まず先に確認させて下さい、カーティス大佐 |
アスベル | エステリーゼ様の安全は、本当に保証されていますね? |
アスベル | もしあの方の身に何かあれば、ウィンドルとア・ジュールが手を取る事は、未来永劫ないでしょう |
ジェイド | そこは信用していただくより他ありません。私にあるのは軍人としての公的な身分だけですから |
ジェイド | 万が一の時は、私の身をいかようにしていただいても結構ですよ。王族の代価には不足でしょうがね |
アスベル | …わかりました。あなたを国王陛下の元へご案内します |
アスベル | そこで改めて、今の第三者のお話をお願いします |
ジェイド | 話が早くて助かります。いや、あなたがいてくれて本当によかった |
ジェイド | あなたはリチャード陛下と特別親しい間柄のようですからね。アスベル・ラントさん |
アスベル | …!そんな事まで知っているんですか |
ジェイド | 何、他国に関する情報収集は安全保障上の基本ですから |
レイヴン | さらっと笑顔で言ってるけどもさ、何か空気ぴりぴりしてきてない? |
ユーリ | 捕虜が聞いて呆れるな |
エリーゼ | 怖いです… |
リタ | ほんと、とんだ食わせ者よね。油断ならないったらないわ |
アスベル | では、陛下のところへ行きましょう |
ジェイド | ええ、よろしく頼みますよ |
クラトス | … |
scene2 | 新たな情報 |
ジェイド | …ふむ。以前来た時のバロニアはそれは活気に満ちた街だったと記憶していますが |
ジェイド | さすがにあの時と同じというわけにはいかないようですね。これも戦争と異変の影響といったところでしょうか |
リタ | あんた、ア・ジュールの人間のくせにバロニアの事詳しいの? |
ジェイド | ええ、何度も訪れていますから。他国の軍人ですので、常に堂々と、というわけではありませんが |
エリーゼ | そんな簡単に、来られるんですか…? |
ジェイド | 物事、その気になればやり方はいくらでもあるものですよ |
アスベル | …。まずは我が国の警備体制を根本的に見直さないと駄目だな… |
カノンノ | 何だかよくわからないけど…アスベル、大変そうだね |
ルーク | おい、ユーリ!ユーリじゃねーか! |
ユーリ | あん?って…ルークか!? |
ルーク | へっ、元気そうじゃねーか!バロニアに来たらいるんじゃねーかってクレスと話してたとこだぜ |
ユーリ | って事は、クレスも来てんのか? |
クレス | 久しぶり、ユーリ。何だかこうして揃うと懐かしいね |
ユーリ | まあな。けど、今日は一体どうなってんだ?お前らは何で── |
アーチェ | あーっ、クレスじゃん! |
クレス | アーチェ、どうして君が?もしかして、チェスターも一緒かい? |
アーチェ | チェスターもホントは来たがってたんだけどね…トーティス村を離れるわけにはいかないでしょ? |
クレス | そうか…。でも、チェスターがいてくれるなら村は安心して任せられるよ |
ルーク | それにしても、「選ばれし者」が三人も偶然会うなんて、すげえよな |
ルーク | あとはミラとロイド、それにソフィがいれば完璧だったのによ |
ジェイド | おやルーク。私との再会は、喜んでいただけないんですか?寂しいですねぇ |
ルーク | げっ、ジェイド!?…ってア・ジュールの軍人のお前が何でここにいるんだ? |
ジェイド | この度私、捕虜になりましてね。リチャード陛下のところへ、連行されていくところなんですよ |
ルーク | リチャード…って国王の事か?ちょうどいい。俺達も国王に用があるんだ。一緒に行くぜ |
アスベル | そんな簡単に言われても相手は国王陛下だぞ? |
ガイ | あー、雑な言い方ですまない。一応、ちゃんとした理由があるんだ |
リッド | 国王陛下に、どうしても報告しなきゃならねえ事がある。オレからも頼む |
アスベル | うーん…とにかく、まずは事情を── |
| |
| うわあああ! |
ファラ | 今の悲鳴はもしかして…リッド、行こう! |
リッド | ったく、休む間もねぇな。先行くぜ |
クラトス | 話は街に入り込んだ魔物を倒してからだ |
scene3 | 新たな情報 |
リヒター | 時空の歪みだと… |
ルーク | ああ。俺達はそこへ行ってたんだ。だよな、ファラ |
ファラ | うん |
ジェイド | 実に興味深い話ですね。国境地帯に出来た亀裂からも、その時空の歪みへ行けるのですか |
リッド | どうだろうな。だが、時空の歪みについては今オレ達の仲間が調べてるはずだ |
アスベル | 確かに、大陸のあちこちで亀裂が起きていたのは目撃したけど、まさかそんな事になっていたなんて… |
ユーリ | 世界中のマナが枯渇してる状況だ、何が起きても不思議じゃねえって気はするけどな |
クレス | ミラがいてくれたら、これらの異変についても、もう少し詳しい事がわかっただろうけど… |
エリーゼ | ミラと知り合いなんですか? |
ユーリ | 前に一緒に旅をした事があってな |
アーチェ | クレス達が見たっていう廃墟の話も、気になるね |
アスベル | 地理的にも戦線からは遠いし…戦争の影響とは考えにくいな |
ジェイド | 私が把握している限りでは我が軍は国境地帯にしか展開していなかったはずです |
ジェイド | 規律から逸脱した部隊がいないと断言は出来ませんが、単独で敢えて敵地奥深く侵入するとも思えませんね |
クレス | 戦争の影響でないとすると、異変の影響なのか…? |
リッド | いや、あの廃墟は誰かの意志によって破壊されたものだ。でないとあんな痕が残るわけがない |
リタ | だとしたら、やっぱり… |
リヒター | 戦争を引き起こさせた第三者の行い、という可能性も出てきたな |
カノンノ | 何にしたってひどいよ、そんなの… |
クラトス | … |
ルーク | とにかくこれで俺達の話はわかったはずだし、国王のところに行くので文句ねえだろ? |
アスベル | ああ、そうだな。確かに、国王陛下に伝えておいた方がいい情報だ |
ガイ | ちなみに当初の目的は、魔導器の使用をやめるよう、リチャード陛下に訴える事だったんだが… |
ファラ | そっちは既にみんなも気付いてたんだね。よかった… |
ユーリ | ま、何にしてもここまで話がでかくなっちまったんじゃ、国王を巻き込んだ方が早いだろうな |
アスベル | とにかく、陛下の元へ行きたいところだが…さすがにここにいる全員で王宮へ行くのは気が引ける |
クラトス | 無論、国王陛下の事を考えても、ここは王宮へ赴く人間を絞るべきだろう |
アスベル | そうですね。じゃあ… |
| |
カノンノ | …決まった? |
アスベル | ああ。まずは捕虜であるカーティス大佐と、あとはリタ。そしてルーク、リッド、クレス |
アスベル | 案内役の俺とユーリ以上7名だ |
ユーリ | オレもかよ |
リタ | 古巣でしょ。文句言ってんじゃないわよ |
アスベル | ルーク、リッド、クレスには、異変の影響である時空の歪みと廃墟の件の報告をしてほしい |
ルーク | またさっきと同じ話をすんのかよ。しゃーねーな |
リッド | 堅苦しいのは苦手なんだけどな…。この際仕方ねえか |
クレス | 大丈夫だよリッド、僕もあまり得意じゃないから |
ジェイド | よろしく頼みますよ、皆さん。私としても、ここまでやってきて骨折り損にはしたくありませんからね |
クラトス | 待ってくれアスベル、私も是非、その場に同行させてほしい |
ティポ | 急にどうしたの?クラトス君ー? |
クラトス | 私は傭兵だが、実はシルヴァラント国王陛下の意を受けて活動している |
クラトス | その立場から、どうしてもリチャード陛下にお話ししたい事があるのだ |
アーチェ | ちょっと待ってよ。一介の傭兵にそんな重要な事頼むかなぁ?本当に王様の依頼なの? |
クラトス | あまり気軽に見せるものではないが…この通り、国王直筆の親書もある。これで信用に足るか? |
レイヴン | へー、ちゃんと本物みたいね。いい雇用主がいておっさんうらやましいわ― |
アスベル | シルヴァラント国王の…!そうだったんですね。何か事情があるだろうとは思っていましたが… |
アスベル | わかりました。ではクラトスさんも一緒に |
ルーク | 今度こそ決まりか?じゃあ、ぐずぐずしてねーで、早いとこ国王の元へ行こうぜ! |
ユーリ | 残り8人は留守番だな。おっさん、年長者なんだからしっかり引率してくれよ |
レイヴン | えー。せっかく待ってる間、酒場にでも行こうと思ってたのに |
ガイ | 相手はウィンドル国王なんだ。キムラスカ王家としての立場を忘れるなよ、ルーク |
ルーク | わ、わかってるっつーの!おい、レイヴン、しっかりガイの奴、見張っとけよな! |
レイヴン | へいへーい。ま、ゆっくり行っといでー |
リタ | …やっぱり不安だわ、あのおっさん… |
カノンノ | それじゃ、行ってらっしゃい、アスベル |
アスベル | ああ、ありがとうカノンノ! |
scene1 | 不思議な力の正体 |
ミラ | ここは、バロニアか。確かに、北西の方角といえば、ここしか思い浮かばなかったが… |
ジュード | まさかバロニアだったなんてね |
スタン | 何か、俺達バロニアとメルトキオを行ったり来たりって感じだよな |
ロイド | お、そういえば…本当だな! |
リオン | …全く、呑気な奴らだ |
リオン | それよりミラ、例の力の気配はこの街の中にある、という事か? |
ミラ | …ああ、間違いない |
ゼロス | この街の、一体何に反応してるんだろうな |
アルヴィン | ま、行って確かめりゃすぐにでもわかるさ |
ジュード | そうだね、早速行ってみようか。じゃあミラ、案内を── |
| がぶっ |
| |
ジュード | も、もが~! |
| |
ミント | …!ジュ、ジュードさんの顔に… |
スタン | ぬいぐるみがかぶりついた…?これは… |
ジュード | ぷはっ! |
ジュード | ちょっと、こんな事するのってまさか… |
ティポ | ジュード君ー! |
ジュード | ティポ! |
ジュード | って事はエリーゼもここに…? |
エリーゼ | ジュード! |
ジュード | エリーゼ! |
ジュード | よかった、無事だったんだね!ずっと捜してたんだ |
エリーゼ | ジュード!わたし、わたし…よかった…ぐすっ |
ティポ | 死んじゃってたらどうしようってずっと心配だったんだよー!ジュード君のバカー! |
ジュード | ええっ、ご、ゴメンよ。エリーゼ、ティポ… |
ティポ | ゴメンで済んだらケーサツはいらないよー!うわーん! |
エリーゼ | ううっ、ジュード、ぐすっ… |
ジュード | どう、落ち着いたかな? |
エリーゼ | はい…泣いちゃって、すみません。でも、ジュードが無事で本当によかった |
エリーゼ | わたしもずっとティポと一緒に捜してたんです |
ティポ | そうそうー!アスベル君やカノンノ君も協力してくれたんだよねー |
ミラ | ジュード、無事エリーゼが見つかってよかったな |
アルヴィン | 元気そうで何よりだ、お姫様 |
エリーゼ | …!ミラとアルヴィンも一緒だったんですね |
カノンノ | エリーゼ?どうかしたの? |
ミラ | …! |
エリーゼ | あ、カノンノ!ごめんなさい、捜していた人を見つけたので、つい… |
ジュード | 君がカノンノ? |
ジュード | エリーゼと一緒に、僕を捜してくれてたんでしょ?ありがとう |
カノンノ | あなたが、ジュードさん? |
カノンノ | よかった、無事だったんだ! |
カノンノ | エリーゼもティポもあなたの事すごく心配してたんだよ。本当によかった── |
ティポ | ねーねー、カノンノ君のネックレス、何か光ってるけどー? |
カノンノ | …え?この光は… |
リオン | …! |
リオン | ミラ、これはまさか… |
ミラ | … |
カノンノ | …? |
scene2 | 不思議な力の正体 |
ゼロス | このネックレスは一体…?これがまさか例の不思議な力とか? |
カノンノ | 不思議な力…?それって何の事? |
リオン | 僕達が聞きたい。そのネックレスは何だ、どこで手に入れた? |
カノンノ | え?えーっと…どうやって手に入れたかはわからない… |
カノンノ | でも多分、とても大切なものだと思う |
リオン | 多分、だと…?ふざけているのか |
カノンノ | そ、そうじゃなくって…何ていうか… |
エリーゼ | ふざけてなんかいません。カノンノは今…記憶が混乱してるんです |
エリーゼ | だから、これ以上の事は… |
ミラ | 記憶が混乱…何かあったのか? |
カノンノ | 気が付いたら一人で国境地帯にいて… |
カノンノ | その前の事は何も思い出せないの。ごめんね |
リオン | … |
スタン | 覚えてないんだったら仕方ない、そうだろ?リオン |
リオン | … |
カノンノ | ううん、私こそ役に立てなくってごめんなさい |
ティポ | うーん、何かこのカンジ、リヒター君と会った時と一緒だねー! |
ティポ | そう思わない、カノンノ君? |
カノンノ | 確かに、そう言われれば… |
カノンノ | … |
カノンノ | 何かの力が伝わってくるような不思議な感覚までもがあの時と同じ… |
ロイド | あの時って何の話だ? |
カノンノ | 前にね、同じようにネックレスが光った事があるの |
カノンノ | その時に、リヒターさんは精霊に反応してるって言ってた |
アルヴィン | 精霊に反応、だと…?って事はミラ… |
ミラ | ああ、間違いない。感じ取っていたのはこの力… |
ミラ | …四大? |
ミラ | …! |
ミラ | これは一体…? |
ミント | ミラさん?四大精霊に何かあったんですか? |
ミラ | 暴走後に失われていたままだった四大のマナが回復していく… |
ミラ | 私のマナを分け与えても、完全に復調するまで至らなかったのだが |
ミラ | これなら暴走前の力を取り戻せそうだ |
リオン | ネックレスの影響か? |
ミラ | そのようだ。ネックレスから温かい力が伝わってくる、そう四大は話している |
カノンノ | 温かい力… |
ミラ | …カノンノ、私達はお前のネックレスについて少しでも情報が欲しい |
ミラ | さっき話していたリヒターという奴の元へ案内してくれないか? |
カノンノ | うん、わかった…!さあこっち、リヒターさんはみんなと広場の方にいるはずだよ |
リオン | よし、じゃあ早速その広場へ向かうぞ |
scene1 | リヒター・アーベント |
ガイ | そういえば、カノンノとエリーゼの姿が見えなくないか? |
レイヴン | またまた、そこにいるでしょ…ってあれ!? |
アーチェ | げっ、いないじゃん!あの二人、何だか楽しそうな様子でしゃべってたのに |
ファラ | 大変、捜しに行かなくちゃ!近頃じゃ魔物が街に入り込んで来る事だってめずらしくないし… |
ガイ | そうだな。何かあってからでは遅い、辺りを手分けして―― |
リヒター | …! |
リヒター | その必要はなさそうだ |
アーチェ | あ、帰って来たみたい!あんた達一体どこ行ってたのよ!…って、ん?一緒にいるのって… |
ミント | まあ、アーチェさん!アーチェさんまでバロニアにいるなんて、偶然ですね |
アーチェ | ミントこそ、こんなところで何してるのよ!それに、カノンノ達と一緒だし |
ミント | ついさっき知り合ったんです。ある方に用があって、カノンノさんにここへ連れて来てもらったんです |
ファラ | ある方…? |
カノンノ | リヒターさん、少しこの人達の話を聞いてあげてほしいんだけど… |
リヒター | そのネックレスの光は……! |
リヒター | …お前は何者だ?この状況下で、どうやってそいつらの暴走を鎮めた? |
ミラ | …驚いたな、四大の存在を感じ取っているようだな。それに── |
リオン | …ああ。「この状況下」と言った。今大精霊に起きている事態も既に把握している、といったところか |
カノンノ | リヒターさん…?そうなの…? |
リヒター | … |
リオン | おい、お前。ネックレスから放たれる力の正体は何だ?答えろ |
リヒター | …。まずはお前達の事を知りたい。その上で必要な事を教えよう |
ガイ | おいおい、一体何がどうなってるんだ…? |
レイヴン | 大精霊の暴走…?また途方もない話が出てきたみたいだけど、本当なのそれ? |
ミラ | ああ、間違いない。一刻の猶予も許されないほど事態は深刻だ |
ファラ | やっぱり、時空の歪みもクロノスの影響だったって事だよね |
ミラ | 状況からして、その可能性は高いだろう |
ミラ | 戦争や異変、第三者…お前達の話と大精霊の暴走は全て関連があるはず |
ガイ | ジーニアスが言ってたクロノスの様子が変だって話は、暴走の影響だったって事だな |
ロイド | 精霊って言われても未だにピンと来てないのに…さすがジーニアスだよな |
ロイド | その二つが関係してる事に気付くなんて… |
ゼロス | けど、やっぱハニーの言ってたようにあいつ亀裂に落ちちまってたんだな。ま、助かったみたいだけどよ |
レイヴン | んで、おたくらはその大精霊の暴走を鎮めるために動いてるって話だけどもさ |
レイヴン | それと、カノンノちゃんのネックレスがどう関係してるわけ? |
ミラ | 私達は不思議な力の存在を感じ、それをたどってここ、バロニアに来たのだ |
ガイ | 不思議な力? |
ミラ | …カノンノのネックレスから発されている力だ |
ミラ | この力を受け、四大の枯渇したマナは今、徐々に回復し始めている |
ミラ | もしかしたら、この力を使えば大精霊の暴走を鎮める事が出来るかもしれない |
カノンノ | まさか… |
ジュード | 確かに、四大精霊を救ったって事は、他の大精霊に効果があるって可能性も十分考えられるね |
リオン | 詳細を聞こうにも、カノンノは記憶が混乱している状況だ…。これ以上この力について知る術はない |
リオン | そこで、お前なら何か知っているのではないかとここへ来た |
アルヴィン | …これは現状を打破する大きな切り札になるかもしれないな。何でもいいから知ってる事を話してくれないか? |
リヒター | … |
リヒター | …まさか、そんな力だったとはな |
リヒター | だが、これは俺にとっても好都合…ディセンダーに頼らずとも、大精霊の暴走を鎮める事が出来るかもしれん |
ゼロス | ディセンダー…?それは一体何の事── |
リヒター | 急かすな。…順を追って説明してやる |
カノンノ | … |
scene2 | リヒター・アーベント |
エリーゼ | リヒター、一つ質問があります。あなたの目的は何なんですか…? |
エリーゼ | …ずっと気になっていたんです。ここまでついて来たのも、カノンノを見張るのが目的みたいで… |
リヒター | …俺は、大精霊について独自に調査を進めていた。全ては暴走を止めるためにな |
リヒター | お前達の言ったように、確かに、俺は今の大精霊の状況に早い段階で気付いていた |
アーチェ | 早い段階って、どれくらい前なの? |
| |
リヒター | 異変が起こり始めて間もない頃だ。思い付く限りの方法を試し、大精霊の暴走を鎮めようとしたが駄目だった |
リヒター | それで、俺は最後の望みである「ディセンダー」を捜す事を決めた。…こいつらと出会ったのはその時だ |
カノンノ | ディセンダー… |
ロイド | それ、さっきも言ってたよな?ディセンダーって、一体何なんだ? |
ミラ | 「世界の危機に誕生し、 世界を再生させる存在」… |
リオン | …!お前、知っているのか? |
ミラ | いや、私もディセンダ―についてはその程度の知識しかない |
リヒター | 世界の危機というのは万物の礎となる大精霊の危機を指す |
ゼロス | って事は、大精霊が暴走している今、そのディセンダーは誕生しているかも、って事か? |
リヒター | ああ。ディセンダーは、世界のバランス異常を正すべくして生まれる存在 |
リヒター | そいつの力をもってすれば大精霊の暴走は収束、それと同時に世界異変も収まる可能性が高い |
ファラ | それで、ディセンダーを捜してたんだね |
アルヴィン | おたくの事情はわかったが、結局、ネックレスの力は何なんだ? |
リヒター | …それを調べるために俺はこの娘に同行、監視してきた |
リヒター | 大精霊に悪影響を与えるようならネックレスは破壊する。必要ならこの娘も… |
カノンノ | … |
エリーゼ | そんな…ひどいです |
ティポ | このヒトデナシー! |
リヒター | … |
ミラ | だが、ネックレスの力の効果を知った今、その必要はなくなった。違うか? |
リヒター | …ああ |
リヒター | むしろ、お前達の話が本当だとしたら情報の少ないディセンダーを追うより遥かに現実的だとさえ感じている |
レイヴン | とにかく、このネックレスが精霊の暴走を鎮める鍵になりそうって事はわかったけど… |
レイヴン | 結局のところ、それ以外は全くわからないって事ね |
| |
リオン | カノンノ、お前は本当に何も思い出せないのか? |
カノンノ | …ごめんなさい、本当に──… |
カノンノ | … |
スタン | まあ、落ち着けよリオン。ミラも言ってただろ? |
スタン | 詳しい事はわからないにせよ、このネックレスの力があれば、大精霊の暴走を鎮める事が出来るかも… |
カノンノ | リプリ…カーム… |
カノンノ | うっ… |
アーチェ | ちょ、ちょっとカノンノ!?大丈夫? |
カノンノ | うん、大丈夫…ありがとう |
ミラ | リプリカーム…カノンノ、それは何だ? |
カノンノ | わからない…けど、もしかしたら、このネックレスの力の事かもしれない |
カノンノ | どうしてかわからない…、だけど、そんな気がするの… |
リオン | 他に何かわからないのか? |
カノンノ | 思い出そうとしたら…頭が…これ以上の事は…ごめんなさい |
ファラ | 大丈夫、大丈夫だよ。無理に思い出そうとしないで |
カノンノ | ミラさん…、ごめんなさい。私、本当に何にもわからなくて…でも、これ── |
ミラ | ネックレスを私にくれるというのか?お前の大切なものなのだろう? |
カノンノ | いいの。…これが世界を救うためになるなら、私が持ってるよりあなたが持っている方がいいと思う… |
ロイド | で、でもいいのか?記憶を取り戻す手がかりになるかもしれないのに… |
カノンノ | ありがとう、…でも本当にいいの!私もこの人達と一緒で、世界を救いたいって思ってる。だから… |
カノンノ | これはあなたが持ってて! |
ミラ | カノンノ…、礼を言うぞ。必ずお前の願いをかなえると約束──…む? |
リヒター | …! |
リオン | 光が消えた、だと… |
ミラ | …それだけじゃない。四大へのマナの供給も、光の消失と同時に止まったようだ |
カノンノ | ど、どうしてそんな… |
エリーゼ | カノンノが持っている時だけ効果を発揮するという事でしょうか… |
ミラ | そのようだな…。気持ちはありがたいが、これはカノンノへ返した方がよさそうだ |
スタン | これからどうする?…って言ってもカノンノに協力してもらうしか方法はない気がするんだけど… |
ミラ | …ふむ |
ガイ | まずは王宮へ行くべきじゃないか? |
ガイ | 今ルーク達が国王の元へ行ってるのはさっき話したと思うが、大精霊の暴走については誰も一切把握していない |
ガイ | だがミラが言ったように、もしこれが戦争や異変とも関わりがあるなら、切り離したままではおけないはずだ |
ガイ | この際、合わせて国王に伝えて協力を得られるよう働きかける方がいいと思うんだが |
アルヴィン | 俺もガイの意見に同感だ。ミラ、カノンノを連れて事の状況を説明をしてこいよ |
ミラ | ああ、確かにそれがよさそうだな。ではカノンノ、行くぞ。他の皆はここで待っていてくれ |
カノンノ | 国王様かぁ…。私、上手く説明できるかな |
リオン | 待て、僕も行く。他の者の情報にも興味がある |
アルヴィン | おいおい、おたくも行くのかよ。あまり大勢はどうかと思うぜ? |
スタン | ミラ、俺からも頼むよ!ルイニス街に関する情報が聞けるかもしれないし |
ミラ | わかった、リオンも来るといい。ここで揉めても仕方あるまい |
リヒター | …では、この件の報告は頼んだぞ |
ミラ | リヒター、どこへ行くつもりだ |
リヒター | 俺がここへ来たのは、この娘のネックレスについて調べるため。もうここに用はない |
ミラ | 元のように単独で動く形に戻る、という事か |
リヒター | その方が性に合っている |
ミラ | …わかった。精霊に関して感覚の鋭いお前がいてくれれば心強いが…仕方ない |
ミラ | 何かわかったら知らせてくれ |
リヒター | …そのつもりだ。暴走している大精霊の情報が入れば知らせよう |
ジュード | 行っちゃったね。…ひょっとしてリヒターって、クラースみたいに精霊に詳しかったりするのかな? |
ミラ | どうだろうな…。とにかく時間もない事だ、カノンノ、リオン、行くとしよう |
リオン | ああ |
scene1 | 明らかになる真実 |
リチャード | …戦争を誘発し、マナの枯渇を目論む第三者か… |
ユーリ | 突拍子もねえ話だが、いろいろつじつまは合う |
アスベル | リチャード、どうだろうか? |
リチャード | 確かに、カーティス大佐の所持している攻撃記録は、正真正銘、我が国のものだった |
リチャード | 念のため、我が軍の保有している別の攻撃記録も再調査させたが…結果は同じ── |
リチャード | 両軍共に同時刻に被弾したという事実… |
リッド | という事は、やっぱり最初の攻撃はウィンドルでもア・ジュールでもないって事だよな |
リタ | 目的は何であれ、最初の攻撃が第三者によるものだって事は間違いなさそうね |
ルーク | …許さねえ。どこの誰だか知らねーが、ふざけた真似しやがって! |
リチャード | 同感だ。…そうとわかれば手をこまねいてはいられない |
リチャード | 真実をガイアス王に告げ、今この機をもって正式に和平交渉を締結する必要がある |
リチャード | 第三者の煽動に巻き込まれない体制を作り上げなければ… |
クレス | 僕もそれがいいと思います。事実を知ればガイアス王もきっと理解を示してくれるはずです |
ジェイド | その点は心配無用でしょう。もとよりガイアス陛下も戦争など望んではおられませんから |
クラトス | ならば私も、シルヴァラント国王陛下のお考えを、リチャード陛下にお伝えしよう |
クラトス | 国王陛下は、国民及び自国の防衛を最優先にお考えになられている |
クラトス | そのために、二国が今後も戦争を遂行する意志があるのかどうかを非常に気にされていた |
アスベル | クラトスさんはそれを見極めるためにこの国に…? |
クラトス | ああ、そういう事だ。事前に詳しい事を話せずすまなかった |
クラトス | だが、今こうしてリチャード陛下にお会いし、ウィンドルがこれ以上争う意志がないという事は重々理解した |
クラトス | 我が国の国王陛下もきっと、世界の和平実現に向けお力を貸してくださる事だろう |
ルーク | だったら俺も、伯父上に話をするぜ。そうすりゃキムラスカも、足並みを揃えられるしな |
ユーリ | そういやルークはこう見えてキムラスカ国王の甥とかいうお偉いさんだったっけな |
ルーク | こう見えて、は余計だっつーの! |
クレス | でも、これでうまくいけば、ウィンドルとシルヴァラント、それにキムラスカ三国の協力体制が作れるね |
アスベル | ああ、後は我が国とア・ジュールさえ手を携える事が出来れば… |
リチャード | それは是が非でも実現させたい。カーティス大佐、仲介の労を取っていただけるだろうか |
ジェイド | そのために拝謁したと言っても過言ではありませんからね。謹んでお受けします、リチャード陛下 |
リチャード | では早速ア・ジュールへ向かう。アスベル、準備を── |
アスベル | な、リチャード…!?まさか直接ア・ジュールへ行こうと考えてるわけじゃないよな…? |
リチャード | …ア・ジュールは事実を知らない。いつ再び魔導兵器を起動させてもおかしくない状況だ… |
アスベル | 事態が一刻を争う状況なのはわかってる!だけど、お前が直接乗り込む事には賛成出来ない |
アスベル | …リチャード、頼む。和平交渉の件は俺に任せてくれ!必ず話をまとめてみせる |
リチャード | アスベル… |
リチャード | …わかった、この件は君に任せる。だが、失敗は許されない…何としてでもガイアス王の理解を得てくれ |
アスベル | ああ、必ずだ! |
scene2 | 明らかになる真実 |
ジェイド | リチャード陛下御自らお見送りいただけるとは恐縮です |
リチャード | いや、こちらこそ身を挺してまで状況を知らせてくれた事に感謝するよ |
リチャード | それと、エステリーゼの件だが… |
ジェイド | 殿下の事はご心配なく。責任をもって可能な限り速やかに安全な帰国の手配をいたします |
リタ | エステル、待っててね。もう少しだから… |
警備兵 | ええい、駄目なものは駄目だ! |
クレス | ん…? |
ユーリ | 何だ?随分騒がしいな |
クラトス | あれは… |
警備兵 | 何度言えばわかる。身元のはっきりしない者を、王の元へ通すわけにはいかん! |
リオン | ちっ、ならば仕方ない。力ずくで通るしか── |
カノンノ | あっ、アスベル! |
アスベル | カノンノ!? |
ユーリ | おいおい、一緒にいるのはまさかミラか? |
ミラ | ユーリ!それにクレス、ルークも…皆、元気そうで安心したぞ |
クレス | まさかミラがまた、この世界にいるなんて… |
ルーク | つか、何でカノンノと一緒にいんだよ? |
アスベル | カノンノ、どうしたんだ?街で待っているはずじゃ… |
カノンノ | 会えてよかった。アスベルに聞いてもらいたい事があって、後を追ってきたの |
リチャード | アスベル達の知り合いかい?ならば心配はいらない、通してくれ |
警備兵 | はっ… |
ミラ | お前がウィンドルの国王か… |
リチャード | ああ、そうだが君は… |
ミラ | ミラ=マクスウェルだ |
ミラ | …今回の争いをきっかけにこの世界は未だかつてない破滅の危機に晒されている |
ミラ | お前は一国の王として、魔導器が世界に与える影響を考えた事はあるのか? |
アスベル | …!おい、そんな事いきなり… |
リチャード | …いや、いいんだアスベル。本当の事だ |
リチャード | 今起きている状況については、アスベル達から話を聞いた |
リチャード | 魔導器の使用によるマナの枯渇…全ては僕の責任だ。すまなかった |
アスベル | リチャード… |
ジェイド | …で、あなた方の話とは? |
ジェイド | この一刻を争う危機的状況で、まさか王宮に押し入ってまでして糾弾したかったわけではないでしょう? |
ミラ | …すまない。今はその事について話している場合ではなかった |
リオン | 僕達がここへ来たのはお前達に知らせなければならない重要な話があるからだ |
リッド | 重要な話? |
リタ | カノンノが一緒って事は、あたし達が得た情報は大体把握済でしょ?他にもまだ何かあるっていうの? |
リオン | ああ。お前達も知らない事だ |
リチャード | …わかった、とにかく再び王室へ。詳しい話はそこで── |
| |
警備兵 | うわあああっ! |
ルーク | な、何だ!? |
警備兵 | 王宮前に魔物が出現!突破されるぞ! |
| グオオオオオッ! |
ユーリ | …ちっ、こんなところにまで魔物が入り込んで来るとはな |
クラトス | 止むを得ん、先にあの魔物を始末するぞ |
クレス | よし、みんな!行こう! |
scene1 | 決断と決意 |
リチャード | 大精霊の暴走… |
ミラ | ああ、それが今現在、世界が直面している最大の危機だ |
ミラ | 戦争を止め、これ以上魔導器を使用しない状況を作る事も勿論重要だが、大精霊の暴走を鎮めない事には… |
リッド | 世界崩壊は免れねえって事か… |
リチャード | 何という事だ… |
ルーク | でもよ、大精霊の暴走を鎮めるったって具体的にどうすりゃいいんだ? |
リオン | …おい、カノンノ |
アスベル | …? |
カノンノ | このネックレスを使うの |
カノンノ | ここから溢れ出るリプリカームは、苦しむ大精霊達にマナを与え癒す事が出来るんだって |
リタ | リプリカーム…? |
アスベル | 確かに、以前リヒターがネックレスは精霊に反応している、と言っていたが… |
ルーク | マジかよ、何でそんな事が出来んだ? |
ミラ | 原理は今のところわかっていない。だが、現にこのリプリカームが四大のマナを補ったのは事実── |
ミラ | その事を踏まえると、おそらく、この力を使えば大精霊の暴走を鎮められる |
ユーリ | なるほど。マナの枯渇で暴走したならそれを補えば暴走を鎮められる、そういう事だな |
クレス | まさかカノンノのネックレスにこんな力があったなんて… |
カノンノ | 自分でも驚いてる。…最初は少し戸惑ったけど、今はすごく嬉しいよ |
カノンノ | 私もみんなの役に立てる、一緒に世界を救う事が出来る |
アスベル | カノンノ… |
リオン | とにかく、これで状況はわかったはずだ |
リッド | 大精霊捜しは一刻を争うって事か。急ぐのは性分じゃねえけどやるしかねえな |
ミラ | …リチャード、おそらく既に理解しているだろうが改めて言わせてくれ |
ミラ | 和平交渉と同時に、事態の収拾を全世界で協力して行える体制を築いてほしい |
リチャード | …ああ、約束しよう。ア・ジュールとの和解も勿論進めるが… |
リチャード | キムラスカ、シルヴァラントも含め、世界で一致団結出来る体制を必ず作り上げてみせる |
ジェイド | 既に事態が個々の国家の利害を超えたものとなっている以上、協力は最善の道でしょう |
ジェイド | 私もア・ジュールの軍人として及ばずながら、微力を尽くしますよ |
ルーク | 当たり前だっつーの!お前んとこの国も魔導兵器ぶっ放ったんだろーが |
リチャード | …アスベル、事情が変わった。やはり僕も一緒に行く。思っていた以上に時間がないようだ |
アスベル | それは駄目だ!さっきも言ったが、この件は俺に任せて、リチャードは… |
リチャード | いや、駄目だ。ガイアス陛下とお会いして、直接話をつける |
リチャード | ここに来て、事態はより深刻な状況である事がわかった |
リチャード | 我が国とア・ジュール間のわだかまりを取り除き、迅速かつ確実に協力体制を作り上げる必要がある |
アスベル | それは、勿論わかっている!国王だからだけじゃない、友達としてお前が心配なんだ! |
リチャード | アスベル、ありがとう。さっきは君の言葉に甘え、任せる事を考えたが… |
リチャード | ア・ジュールと、このように争う関係になるに至った根本の原因は僕のかつての行いにある |
リチャード | ここで全てのわだかまりを取り除くには、やはり僕が出向ききちんと話をする事が必要だと思う |
リチャード | 時間がないという事もあるが、直接、誠意をもってガイアス陛下に謝意を伝えたいんだ |
リチャード | …それに、アスベル。君も力を貸してくれるんだろう? |
アスベル | リチャード… |
アスベル | …はぁ。わかった、わかったよ。全く、お前には敵わないな |
ジェイド | 僭越ながら私も賛成は出来ません。状況的にあまりに危険すぎます |
ジェイド | ですが、陛下御自ら出向かれたとなれば、ガイアス陛下も好感を抱かれる事は間違いないでしょう |
リッド | ややこしい事はわからねえが、出るヤツが出てきっちり話を終わらせる。…そういう事ならオレも賛成だ |
クラトス | 確かに、間に人を介さない分、話が早いのは確かだろう |
クレス | 僕は、今の国王陛下の想いを尊重したい。そういう意味で、リッド達と同意見かな |
リタ | 話はまとまった?とりあえず、待ってるみんなのとこに戻りましょ |
カノンノ | うん! |
scene2 | 決断と決意 |
アーチェ | あ、クレス達が帰って来た!おーい!こっちこっち! |
カノンノ | 何だか改めて見ると… |
アスベル | 結構な大所帯だな… |
スタン | リオン、おかえり!大精霊の話はちゃんと出来たのか? |
リオン | ああ |
ユーリ | 何だ、ロイドもいたのか。久しぶりだな、元気だったか |
ロイド | ユーリ!みんないるって聞いてたから会えるの楽しみにしてたんだ! |
ルーク | あとは、ソフィがいりゃみんな揃うのによ |
ミラ | 仕方あるまい。ソフィは生きている時代が違うからな |
クレス | そうだね、でも住む世界が違うミラともこうして会えてるんだから、きっといつかまた会えるさ |
ロイド | それにしてもクラトス!まさかこんなところにいるなんて、また傭兵の仕事か? |
クラトス | まあ、そんなところだ。…と、ゼロスも一緒だったか |
ゼロス | 今気付いたのかよ!俺さまってばそんなに存在感薄い…? |
ファラ | リッド、おかえり!どうだった?やっぱり王宮の中って緊張する? |
リッド | んー、まあ確かに豪華だったぜ。緊張は…どうだろうなあ。よく覚えてねえや |
クレス | ミント!?まさか君がこんなところに… |
ミント | クレスさん…!無事でよかったです |
ガイ | …なあ、ルーク、お前の隣にいるのってまさか… |
リチャード | … |
ルーク | ああ、こいつか?ウィンドルの国王だよ |
エリーゼ | え… |
ティポ | ほ、本物ー!? |
アスベル | おいルーク!陛下を「こいつ」呼ばわりは── |
リチャード | 僕は構わないよ。ほら、ちょっとしたカモフラージュになるかもしれないしね |
レイヴン | ちょっとちょっと!大声でする話じゃないっしょ。けど、何だって王様直々に? |
リタ | 協議の結果、一緒にア・ジュールへ行く事になったのよ |
アルヴィン | 何だって?そりゃ驚きの展開だな |
アスベル | …その話なんだけど、みんな、少しいいかな? |
| |
アスベル | みんなも知っていると思うが、さっき国王陛下やカーティス大佐と一連の出来事について協議した |
アスベル | 事態は深刻で、各国が手を取り合い協力体制を作る事が必要だという結論に至った |
アスベル | 俺達は二国間の戦争をここで収束させ大精霊の暴走を鎮めるという大きな問題の解決を目指す事になる |
アスベル | …みんな、大変な事だとは思うが引続き、力を貸してほしい |
ファラ | 勿論だよ!ね、みんな! |
ガイ | アスベル、実はその事について、こっちでもみんなで話し合ってたんだ |
アルヴィン | 当面の大きな目的としては大精霊を鎮める事だが、他にも宙に浮いている問題がいろいろとある |
アルヴィン | …だが、一刻を争う事態だ。呑気にみんなで固まって情報を一つずつ洗っている時間はない |
リッド | 手分けして動くべき、そういう事か? |
ガイ | ああ、その通りだ |
ガイ | 大精霊の暴走については、アスベル達に一任し、俺達は別の情報収集にあたろうと思う |
ジェイド | 確かにいろいろと交錯した状況ですしその方が効率よさそうですが、調べるのは第三者についてですか? |
レイヴン | そそ。正体どころか目的も何もわからない状況っしょ?それじゃ手の打ちようがないってね |
ジュード | 各地の被害状況も調べるつもりだよ。僕達が動き出したところで、すぐに被害が収まるわけじゃない |
ジュード | 現に今も尚苦しんでいる人達はたくさんいるからね |
ガイ | 主にこの二つの件で動くべきだという話でまとまったんだが、どうだろうか? |
アスベル | ああ、俺もその方がいいと思う。みんな、ありがとう |
ルーク | よし、そうと決まりゃ誰がどう動くか、手っ取り早く決めちまおうぜ |
| |
ガイ | よし、じゃあまずア・ジュールへ向かうのは… |
アスベル | 国王陛下と── |
リチャード | 堅苦しいから、いつも通り呼んでくれていいよ |
アスベル | あ、ああ、そうだな。そうさせてもらうよ。では── |
アスベル | リチャードとカーティス大佐、それにミラ、リオン、リッド、ルーク、リタ、カノンノ、俺の9人だ |
カノンノ | 足手まといにならないように頑張るから、よろしくね |
リタ | 外交と大精霊要員…妥当なとこね |
レイヴン | じゃあ次は、第三者について調査する面子かね |
ゼロス | まずは俺さまだろ、それにレイヴン、あとロイドとスタンも。それと… |
ユーリ | オレも混ぜてもらうとすっか。一番荒事に出くわしそうだしな |
アーチェ | あ、待って待って!あたしとクレスも一緒に行くから、全部で7人かな |
ミント | 私達は、被害状況の調査と人命救助にあたります。同行者は… |
ジュード | 僕とミント、それにファラ、エリーゼ、ティポ…、かな |
アルヴィン | あー優等生、俺もこっちに混ざるわ。男手が必要な事もあるだろ? |
アルヴィン | そうだ、リオン。あんまり一人で突っ走るなよ?わかっちゃいると思うがな |
リオン | … |
ジュード | アルヴィン、ありがとう。あと、出来ればガイもこっちに来てくれると助かるんだけど、どうかな? |
ルーク | へ?ガイは俺と一緒だろ? |
ガイ | ルーク、お前な…。さっきの人選、ちゃんと聞いてなかっただろ |
ガイ | 正直、護衛役としてはやっと見つけたお前とまた離れるのは問題なんだが…状況が状況だ、ジュードと行くよ |
ガイ | 後でティアにどやされるだろうが、今のお前ならきっと大丈夫だと思う。頑張れよ、ルーク |
ルーク | なっ、お、俺はもともと大丈夫だっつーの! |
エリーゼ | クラトスはどうするんですか? |
クラトス | 私は一度メルトキオへ戻る。国王陛下に状況報告をせねばならんからな |
エリーゼ | そうですか…気を付けてくださいね |
クラトス | ああ、ありがとうエリーゼ |
スタン | 今この場にいる仲間だけじゃなく、クラースさんとか、他のところで動いてる仲間とも協力出来るといいな |
ロイド | ああ、そうだな。みんなの力を合わせて何としてでもこの世界を救おうぜ |
ティポ | みんなで頑張ろー! |
ルーク | ユーリ達は出発したみてーだな |
リッド | そのようだな。そうこう言ってる間にジュード達も早速動き出したみたいだぜ |
ミラ | では、私達も出発するか |
リオン | ああ |
リチャード | …アスベル。こんな形で君と行動を共にする事になるとは思わなかったよ |
リチャード | この状況で少し不謹慎かもしれないが昔を思い出されるようでどこか気持ちが昂っている |
アスベル | 確かに、子どもの頃はよく一緒にいろんなところへ出かけたよな |
アスベル | 成長してお前は王になり、俺は騎士になって、そう簡単に一緒に出かけられなくなってしまったしな |
アスベル | そう考えると、俺も今この状況に相応しくないが少しわくわくしている気がするよ |
リチャード | …アスベル |
リチャード | 無事大精霊達の暴走を鎮め、かつての平和な世界を取り戻す事が出来たら、昔のように、共に出かけよう |
リチャード | そのためにも必ず、ア・ジュールと手を取り合い、協力体制の構築を成し遂げてみせる |
scene1 | 二国の王 |
ジェイド | 長旅お疲れ様でした。ここがア・ジュールの都、カン・バルクです |
リチャード | ここが…カン・バルク… |
ミラ | どうしたリチャード?ここへ来るのは初めてか? |
リチャード | 幼い頃に一度来たっきりだ。それ以降もずっと訪れたいと思っていたがなかなか機会がなくてね |
リチャード | …雪に包まれる立派な街並み、我が国では見る事の出来ない光景だ。相変わらず、素晴らしい都だよ |
ジェイド | お褒めに預かり光栄です。きっとガイアス陛下もお喜びになると思いますよ |
リタ | そんな事より、あんた、エステルはどこなの? |
ジェイド | 殿下はミュゼと一緒にいるはずです。気がかりなのはわかりますが、今は陛下の元へ行くのを先に願います |
リタ | わ、わかってるわよ! |
アスベル | ふう… |
リオン | どうした?深いため息などついて |
アスベル | いや、無事にたどり着けてほっとしただけさ。道中、気が気じゃなかったからな |
ルーク | 心配性だな、アスベルは |
リッド | まあ、アスベルの立場を考えたら心配するのは当然だろうけどな |
カノンノ | 大変だったね、アスベル。お疲れさま |
警備兵 | カーティス大佐、お疲れ様です |
ジェイド | ご苦労。陛下は王宮に? |
警備兵 | はい。リチャード陛下のご来訪を、お待ちしているとの事です |
ジェイド | だ、そうです。それではうちの陛下のところへ、ご案内しましょう |
scene2 | 二国の王 |
??? | リチャード陛下、我が国までのわざわざのご足労、痛み入る |
リチャード | お初にお目にかかる。ガイアス陛下 |
ガイアス | ようやく会えたな |
リチャード | ああ、ようやくだ |
カノンノ | すごい緊張感… |
アスベル | 戦争最中にある国同士の初対面だからな |
リタ | ちょっと、大丈夫なんでしょうね。いきなり斬り合ったりとか… |
リオン | … |
リチャード | まず初めに、謝罪を。既に使者を通し伝わっているとは思うが、改めて自らの言葉で伝えたい |
リチャード | 先の星のカケラを巡る争乱においては貴国に多大な迷惑をかけた。心より、お詫び申し上げる |
リチャード | 本当は貴国の民を前に頭を下げ、謝罪の意を伝えたいくらいだ |
アスベル | リチャード… |
リチャード | それと、今回の戦闘再開の件も。第三者の煽動があったとはいえ、決断を下した僕の責任は免れない |
ガイアス | あらかたの話はミュゼから聞いた。その件に関しては俺も貴国の行いを批判する気はない |
ガイアス | 言うなれば同罪であろう |
ガイアス | さらに貴公の潔い態度と、ここまで乗り込んできた勇気は称賛に値する |
リチャード | ガイアス陛下… |
カノンノ | よかった… |
ジェイド | 安心するのはまだ早いですよ。ようやく入口をくぐっただけですからね |
ミラ | 問題はここからだがな |
リッド | ったく…見ているこっちがハラハラするぜ |
リオン | …!あれは… |
ミュゼ | ミラ、しばらくね |
ミラ | ミュゼ… |
ガイアス | 来たか、ミュゼ。客人は? |
ミュゼ | ええ、ここに… |
リタ | エステル! |
アスベル | エステリーゼ様! |
エステル | リタ…!それに…リチャード陛下…? |
エステル | 陛下ご自身がア・ジュールに…わたしのせい、ですよね…。申し訳ありません |
エステル | アスベルも…心配をかけてしまいました |
アスベル | ご無事で何よりです |
リチャード | 元気そうで安心した。困った事はなかったかい? |
エステル | あ、はい。この国の方々には大変よくしていただきました |
ジェイド | との事ですが、納得していただけましたか、リタ? |
リタ | や、約束守ったってだけじゃないの。偉そうに言ってんじゃないわよ |
リチャード | エステリーゼ。君が祖国を愛するがゆえ、このような行動に出たという事は理解している |
リチャード | だがそれと同等に、君も祖国の人々に愛されている。その点は忘れないで欲しい |
リチャード | こんな状況下で、もし君の身に万が一の事があれば人々の悲しみは計り知れないからね |
エステル | はい…本当に申し訳ありませんでした |
ガイアス | ジェイドも無事に戻った事だ。エステリーゼ殿下は、この場でお返ししよう |
ガイアス | …さて、挨拶は終わりだ。本題に入る |
リチャード | ああ |
ガイアス | 大精霊の暴走か… |
ガイアス | 第三者の存在に関してはミュゼから報告を受けていたが、問題はそれだけではないという事か |
ガイアス | …それで、リチャード陛下は、これからどうするべきだと考える? |
リチャード | まずは、現在停戦状況となっている戦争の完全終結を改めて宣言したい |
リチャード | それと同時に、我が国と貴国間において和平交渉を開始させたいと考えている |
ガイアス | … |
リチャード | … |
ガイアス | …続けてくれ |
リチャード | 先ほど説明した通り、事態は、未だかつてないほど深刻な状況だ |
リチャード | 世界各国が一丸となり、協力し合える体制を作る事こそ、事態を収束させるために必要な事だと考えている |
リチャード | 万全の体制を構築した上で、全ての真相解明と、問題解決に向けた共同調査の実施を提案したい |
ガイアス | … |
リタ | 妥当な提案でしょ。今の状況で戦争なんて馬鹿やってる場合じゃないんだし |
ミラ | ああ、これが成立すれば魔導器及び魔導兵器の使用は止められる事になるからな |
ジェイド | … |
アスベル | …ジェイド? |
リチャード | 既にシルヴァラントの国王陛下にも、僕の意志は伝わっているはずだ。おそらく、協力を得られると思う |
リチャード | また、キムラスカとの連携も、そこにいるルークに仲介を頼めば不可能ではないだろう |
リチャード | 世界中の国が、同じ目的の下、協力し合えるかもしれない。そのためにも… |
ガイアス | …まずは我が国と貴国が手を取り合う必要があるというわけか |
ガイアス | リチャード陛下、貴公の考えはわかった。おそらく俺が陛下の立場でも、同じ事を提案しただろう |
リチャード | では… |
リオン | …まずいな |
リッド | リオン?まずいって、何が── |
ガイアス | …だが、首を縦に振る事は出来ぬ |
ルーク | な、何でだよ!? |
ガイアス | 理由は簡単だ。両国間に出来た溝は、お前達が考えているほど浅いものではない |
アスベル | ガイアス陛下… |
ガイアス | …はっきりと言う。我が国は今、貴国への憎悪で溢れている |
ガイアス | ウィンドルに裏切られた、そう考えているのだ |
アスベル | しかし、それは第三者による煽動で── |
ガイアス | 第三者の存在があったところで我が国の民の感情は変わらん |
ガイアス | いかなる状況であれ、ウィンドルが我が国へ再び攻撃を放ったのは事実だ |
ガイアス | 自国の行いについての懺悔を口にし平和を誓った矢先にも関わらず、だ |
リチャード | それは──… |
ガイアス | 応戦したのは我が国も同じ。その立場を棚に上げて貴国のみを非難するつもりは毛頭ないが… |
ガイアス | いざ戦争再開となった時に疼き出すのはかつての古傷だ |
ガイアス | 私欲による無意味な侵略、非道な暴挙…抑えようとしていたはずの感情は憤りと共に溢れ始める |
ガイアス | この感情こそが、貴国の侵略行為の真の傷痕… |
ガイアス | 貴公の判断により負わされた心の傷は決して癒える事のない傷として、今も尚、俺の民を苦しめている |
リチャード | ガイアス陛下… |
ガイアス | 貴国と手を取り合うという事は互いに信じ、背を預け合う事… |
ガイアス | 貴国とは、いかなる状況においても出来ん相談だ |
ミュゼ | … |
ジェイド | 陛下… |
ミラ | ガイアス、お前の言い分はわかる。だが…お前も状況は理解したはずだ |
ミラ | 今ここでア・ジュールの協力がなければ、世界は確実に崩壊する。すなわち、お前の愛する国の民も── |
リチャード | …いや、ガイアス陛下の言う通りだ。僕はそれだけの事をした、理解はしている |
アスベル | リチャード… |
リチャード | …だが、それを承知の上でも、引き下がる事は出来ない。世界の存亡がかかっているのだから |
ガイアス | … |
リチャード | …ガイアス陛下。あなたの言葉の意を重々理解した上で尚重ねてお願いしたい |
リチャード | 今この時だけでもいい。どうか、力を貸してくれないだろうか |
リチャード | 貴国が、我が国への信頼を欠いているのは全て、僕に責任がある |
リチャード | 今後の対応については、その行いから判断してくれて構わない。僕の命を懸けてもいい |
アスベル | …リチャード…! |
ガイアス | … |
リチャード | …この事態は、貴国の協力なしに収拾する事は不可能なんだ。だから、どうか頼む! |
リチャード | 貴国の民も、我が国の民も、国なんて関係ない。ただ、人々と世界を救いたいんだ… |
ガイアス | … |
ガイアス | …ジェイド、俺の剣を持て |
ジェイド | …かしこまりました、陛下 |
ルーク | お、おい、何が始まろうとしてんだ? |
カノンノ | 剣って…どういう事…? |
アスベル | …リチャード…事によっては割って入る |
リチャード | アスベル。ここは僕とガイアス陛下の交渉の場だ。下がっていてくれ |
アスベル | …リチャード… |
ジェイド | 御剣をお持ちしました |
ガイアス | リチャード陛下。繰り返して言うが、この状況での貴国との和平交渉に応じる事は出来ぬ |
ガイアス | だが、今回に限り…己の直感に従って決断したいと考えている |
ミュゼ | ガイアス!?あなた本気なの!? |
ガイアス | …リチャード陛下、剣を取れ。貴公が信頼に値するかどうか、その身をもって証してもらいたい |
アスベル | そんな…! |
リチャード | 剣を交えれば全てがわかると? |
ガイアス | 極めて原始的で直截なやり方だが、それゆえ真実は見極めやすい |
リタ | 国王同士の決闘で決めようっていうの!?無茶苦茶よ! |
リッド | おいおい、本気かよ…!とんでもねえ王様だな |
アスベル | リチャード、駄目だ!いくら何でもそんな危険な事は…! |
リチャード | わかった。お受けしよう |
ミラ | … |
アスベル | リチャード! |
リチャード | そうする事で、僕の想いを証明出来るのなら拒む理由は何もない |
リチャード | 全ての決意を剣に込め、渾身の力でお相手しよう |
ガイアス | いい覚悟だ |
アスベル | 俺も援護するぞ、リチャード。お前を守ると約束したんだ |
ミュゼ | ガイアスが直接戦う事はないわ!私がガイアスの代わりに戦う! |
リチャード | アスベル、駄目だ。手出しはするな。これは僕とガイアス陛下の交渉なんだ |
ガイアス | ミュゼ、お前も邪魔はするな |
アスベル | くっ…! |
ジェイド | 全く予想外の展開というわけでもないですが…こうなってはもう見守るしかありません |
リタ | ちょ、ちょっと正気なの!?あんたのところの王様だって大怪我するかもしれないのよ? |
| |
ガイアス | では見せてもらおう。リチャード陛下の覚悟を! |
リチャード | 行くぞ! |
scene3 | 二国の王 |
リチャード | これでどうだ! |
| ズバッ! |
ガイアス | ぐっ…! |
ミラ | 決まったな |
リチャード | ガイアス陛下…今、わざと僕の剣を… |
ガイアス | … |
ミュゼ | ガイアス! |
ジェイド | 陛下、大丈夫ですか? |
ガイアス | …問題ない |
リチャード | ガイアス陛下…、僕の想いを感じていただけただろうか |
ガイアス | 鋭く、それでいて真っ直ぐでいい剣筋だ。私欲のみで国を動かす王の剣とはとても思えぬ |
ガイアス | リチャード陛下、貴公の誠意と民を想う気持ちは十分に伝わった |
リチャード | では… |
ガイアス | まずは、一時休戦を俺の責任において保証する。現状で俺に出来る事はここまでだ |
ガイアス | …だが、この剣を介し、貴公の誠意はしかと受け取った |
ガイアス | 今は難しくとも、我が国と貴国がわかり合える日はいずれ来るかもしれん |
ガイアス | 和平交渉が始められる時はそう遠くないかもしれんな |
リチャード | ガイアス陛下…。あなたの誠意に心から感謝する |
ガイアス | … |
ミュゼ | ガイアス…本当にいいの? |
ガイアス | 俺に二言はない |
ミュゼ | … |
リッド | 一時休戦か…現状を考えればそれが限界って事か |
リオン | そういう事だろう。だが、この二国において大きな前進である事は間違いない |
カノンノ | アスベル、これでよかったの? |
アスベル | ああ。これは今後に向けての大きな一歩だ。一時休戦を、恒久的平和へと繋げていけばいい |
ジェイド | 一時はどうなるかと思いましたが、何とか収まるところに収まったようで何よりです |
リタ | 何、他人事みたいに言ってんのよ。自分の王様が危険だったかもしれないってのに |
ジェイド | うちの陛下はあれしきでは堪えませんよ。勿論、いざという時は割って入るつもりでしたがね |
ガイアス | 大精霊の暴走を鎮めるための共同調査に関しては、可能な限りの協力を約束する |
ガイアス | 調査にあたる者は、我が国を自由に往来して構わない。要請があれば、援助もいとわぬ |
ガイアス | 我が国の協力体制については、ジェイド、お前が指揮を取れ |
ガイアス | 調査に出る必要があれば、それも許可する |
ジェイド | やれやれ、やはりそうなりますか。かしこまりました |
リタ | これで戦争に関しては、ひとまず落ち着いたわね |
エステル | はい。両国が刃を交える事は、なくなるはずです。陛下を信じましょう |
ルーク | ったく、冷や冷やさせやがって。けど、これで次の行動に移れるって事だよな! |
アスベル | ああ、そうだな |
アスベル | 大精霊の暴走を鎮めつつ、第三者の正体を探る…やるべき事はまだまだ山積みだが── |
アスベル | この二国が手を取り合った今、世界は一丸となって俺達に力を貸してくれるだろう |
カノンノ | 私達も頑張らなきゃね…! |
リッド | まあ、何とかなるだろ |
ミラ | では、話はまとまった事だ、早速大精霊を捜すとしよう |
リオン | ああ…そうだな |
Name | Dialogue |
scene1 | リチャードの想い |
ルーク | ──上手い事話もまとまって、これで肩の荷が一つ降りたって感じだな! |
リッド | ああ、そうだな。とにかく、これでもう魔導器や魔導兵器が使われる心配はなくなったってわけだ |
リチャード | みんな、本当にありがとう |
リチャード | 無事ガイアス陛下の力添えを得る事が出来── |
リチャード | 更には我が国とア・ジュールの関係修復においても、講和への足掛かりを得る事が出来た |
リチャード | みんなからの報告がなければ、この交渉は勿論、事態の把握すら出来ていなかっただろう |
リチャード | …下手をすれば、自らの手でこの世界を崩壊させていたかもしれない |
エステル | リチャード陛下… |
リチャード | 改めて、礼を言わせてほしい。これも全て、みんなのお蔭だ。心から感謝する |
アスベル | 何を言うんだ。それは俺達も同じだ |
アスベル | あのガイアス陛下を相手に、よく渡り合えたと思う。それは紛れもなくリチャード、お前のお蔭だ |
リタ | まあ、そうね。国王同士の直談判だったからこそ上手くいったようなもんじゃない? |
リッド | 難しく考える必要はねえよ。誠意ってのがあいつに伝わったんだろ |
ミラ | …リチャード。かつての行いから、私はお前に対しいい印象を持っていなかった |
ミラ | だが、お前は変わろうとしている。ガイアスとの話でそれがよくわかった。認識を改めねばな |
リチャード | …ありがとう。勿論、僕に出来る事は何でもする。…だが、認識を改める必要はない |
リチャード | いくら償おうとも、僕の行いによって出来た人々の心の傷や苦しみ、恐怖を完全に取り除く事は出来ない |
リチャード | …だからこそ、過去の行いも含めて僕を見ていてほしいんだ |
リチャード | 彼らの痛みや想いを受け止め、その上で僕は全力を尽くしたい、かつての平和な世界を取り戻すために |
ミラ | リチャード…お前の想いはわかった。お前の変わっていく様を、私達がしっかり見届けよう |
リチャード | ああ、ありがとう |
エステル | リタ、それにみなさん、本当にありがとうございました。わたしも出来る限りお手伝いします |
アスベル | ありがとうございます、エステリーゼ様 |
カノンノ | 早速だけど…私達が次にやるべき事は、大精霊の暴走を鎮めるって事かな? |
リオン | ああ。戦争の原因となった第三者の調査に関しては、スタン達が動いているはずだからな |
ジェイド | これはどうも、皆さんお揃いで |
リタ | 何、またあんた?ついさっき別れたばっかりじゃない |
ジェイド | リチャード陛下とエステリーゼ殿下を船までお見送りするよう、ガイアス陛下より仰せつかりましてね |
カノンノ | 二人共、帰っちゃうの? |
リチャード | この状況下で、いつまでも国を空けているわけにはいかないからね |
エステル | わたしは出来れば、このままリタ達と一緒に行きたいのですが… |
アスベル | 駄目です |
エステル | …そうですよね…やっぱり…。わかりました。リチャード陛下と共にひとまず国に戻ります |
エステル | リタ、何かあればすぐにバロニアへ来てください。わたしに出来る事があれば、何でもしますから |
リタ | わかったわ。ありがと、エステル |
ジェイド | では、港に参りましょうか。あまり船員を待たせては気の毒ですしね |
リッド | じゃあ、オレ達も一緒に港まで見送りに行くか |
リタ | そうね。行きましょ |
scene2 | リチャードの想い |
リチャード | ん…? |
アスベル | あれは… |
アスベル | フレンじゃないか!護衛兵を引き連れているようだが… |
フレン | やあ、アスベル。どうやら無事だったみたいだね。陛下と殿下の護衛、ご苦労様 |
フレン | 国王陛下、エステリーゼ殿下、お迎えにあがりました |
エステル | フレン、どうしてここに? |
フレン | 陛下がご出発された後、ユーリと会い、話を聞きました |
フレン | 護衛はアスベルのみと聞き、慌てて全力で後を追い、つい先ほど、港で船と合流しました |
リチャード | なるほど。世話をかけたね、フレン |
ジェイド | いやはや、今日は歴史的な日ですね。国王陛下と、ウィンドルが誇る高名な騎士お二方のご来駕を賜るとは |
カノンノ | 高名な騎士って…? |
リオン | …騎士、というからにはフレンとアスベルの事だろうな |
リッド | なるほどな。お前らは前からジェイドに名前を知られてたってわけだ |
ルーク | そんなにすげー事か?俺もキムラスカじゃ、知らない奴はいねーけどな |
リタ | 何自慢してんのよ。それは別に当たり前でしょ |
リタ | でも、戦争が続いてたらウィンドルの要人がカン・バルクを訪れるなんてあり得なかったわけだし |
リタ | そう考えると、確かに結構すごい事かもしれないわね |
リチャード | アスベル、フレンも来てくれた事だ。見送りはここまでで大丈夫だよ |
アスベル | え?でも… |
リチャード | 時間がないのだろう?君達はすぐにでも次の行動に移った方がいい |
アスベル | …そうか。わかった。そうさせてもらう |
フレン | 心配ないよ、アスベル。陛下と殿下は、僕がウィンドルまで安全にお連れすると約束する |
エステル | みなさん、どうか気を付けて。何かあれば必ず力になります |
アスベル | エステリーゼ様、ありがとうございます |
リッド | あんたらの協力は必要不可欠だ。何かあったらすぐに連絡する。その時はよろしく頼むぜ |
リチャード | 勿論だ。ではアスベル、僕達は行く。吉報を待っているよ |
アスベル | ああ、約束するよ。必ずやり遂げてみせる |
フレン | それでは参りましょう |
ジェイド | 私はこのまま陛下達と港まで行きます。皆さん、それではお元気で |
リタ | …さてと、エステル達も無事に行ったわね |
ルーク | よし、じゃあ俺達も早いとこ動き出そうぜ。…で、どこへ行けばいいんだ? |
リオン | まずは所在のはっきりしているアスカの元へ戻るべきだろう |
ミラ | ああ、私も同感だ |
アスベル | そのアスカっていう大精霊は、テムザ山にいるという話だったよな |
ミラ | そうだ |
ルーク | ちょっと待てよ、テムザって確かウィンドルの山じゃねーか!そういう話は早く言えっつーの! |
ルーク | エステル達の船に乗ってテムザまで行けばよかっただろ! |
リッド | そうかもしれねえけど、お偉方の船に便乗ってワケにもいかねえだろ、普通 |
アスベル | ああ、そうだな。俺達は俺達の力で出来る事をするべきだ |
リタ | 何でもいいけど、船がいるならさっさと探せば── |
| きゃああああ! |
| |
リタ | 何、今の!悲鳴!? |
カノンノ | みんな、向こうから魔物が! |
| ガアアアアッ! |
アスベル | くっ、こいつ…! |
scene1 | 新たな気配 |
ルーク | よし、魔物は片付いたし、とっととアスカの元へ行こうぜ |
リタ | とんだ邪魔が入ったわね急ぎましょ |
ミラ | …!これは… |
アスベル | ミラ…? |
リオン | どうした。四大精霊が何か言っているのか? |
ミラ | いや、そうではない。だが、ただならぬ気配を感じるのだ… |
カノンノ | ただならぬ気配…それってまさか、アスカの…? |
ミラ | …いや、この気配はテムザ山とは逆の方向…もっと近い場所から感じられる |
リッド | って事はアスカじゃなくて、別の大精霊の気配がするって事か? |
ミラ | ああ、おそらくそう考えて間違いはなさそう── |
リッド | …ん?何か騒がしいのがいるな |
| |
スパーダ | だから何度言ったらわかンだよ。ルカはここに残れって |
ルカ | いくらスパーダでも一人じゃ危険だよ。僕も一緒に行く |
スパーダ | 心配してくれるのは嬉しいけどよ── |
ミラ | あれは…スパーダ? |
リタ | ルカ!? |
スパーダ | お?ミラじゃねーか。久しぶりだな!それと一緒にいる顔にも見覚えが… |
リタ | リタよ。その節は世話になったわね |
| |
スパーダ | へえ、まさかお前がミラの仲間だったとは思いもしなかったぜ。世間ってのは案外狭いモンだな |
スパーダ | ところでリタ、前に話してた魔導兵器はどうなった? |
リタ | ひとまず当座の危険はなくなったわ。だからって他にも問題が山積みなのは変わらないけど |
ミラ | スパーダは、ここで何をしていたのだ?随分と騒がしかったようだが |
ルカ | 実は… |
スパーダ | ここから西にあるニブル湖が凍ったってんで、ちと様子を見に行こうと思ったのさ |
ルーク | 湖が凍った?すっげーな。寒い国だとそんな事になんのか |
スパーダ | バカ言え、いくらア・ジュールが寒いからって、そうそう湖は凍らねェよ |
アスベル | …?どういう事だ? |
ルカ | …何だか不自然なんだ。湖は勿論、その辺り一帯まで氷漬けの状態になってしまったみたいで… |
リオン | 氷漬け…だと? |
ルカ | うん…。極寒のア・ジュールでもそんな異常寒波が起こった事は今まで一度だってない… |
リオン | … |
スパーダ | さらにその寒波が広まってやがって、近隣の村まで被害が及んでるって状況らしいぜ |
スパーダ | 本当だとしたら放っては置けねェ。一度調査に行って、本当なら陛下に陳情しようと思ってたんだ |
ミラ | まさか… |
リッド | ア・ジュールの西といえば…確かメルディがいるリンネル村があるところか? |
ルーク | ああ、そうだそうだ。行った事があるから間違いねーぜ |
アスベル | リンネル村… |
スパーダ | よく知ってるな。そのリンネル村も、下手すりゃ影響を受けてるかもしれねェ |
リッド | 何だと!?それじゃあメルディ達が危ねえじゃねえか! |
スパーダ | そうかもな。どうなってるかわからねェから、まずニブル湖に調査に行こうと思ってんだ |
ミラ | そういう事か。…なら、スパーダ。私達をその湖へ案内してくれないか? |
リタ | 大精霊の事はどうするわけ?そりゃ氷漬けの話も気にはなるけど、こっちだってあまり時間が── |
ミラ | だから行くのだ |
リオン | …まさか、その湖の氷漬けも大精霊によるものだというのか? |
ミラ | 私が強い気配を感じたのもここから西の方角だ。…湖の氷が大精霊の影響である可能性は高い |
リオン | … |
カノンノ | …ねえ、みんな。行こう、その湖に。今にも被害が及びそうな村があるのに放ってなんかおけないよ |
アスベル | ああ、俺もそれがいいと思う。その氷が大精霊の力の影響だとしたら遅かれ早かれ、いずれは行く事になる |
アスベル | だったら今は、アスカよりも、村の安全がかかっているこちらを優先させるべきだ |
リッド | オレも同感だ。さくっと片付けちまえば、リンネル村に影響が出る前に何とか出来るかもしれねえ |
リタ | わかった。聞いての通りよ、スパーダ。あたし達も一緒に行くから |
スパーダ | お前達が同行する事は構わねェが…何がどうなってんだ?大精霊がどうとか…話が見えねえ |
ミラ | 事情は道々説明する。今は時間がない |
スパーダ | …わかったよ。まあミラ達なら、信用出来るしな |
スパーダ | ルカ、そういうわけで、オレはこいつらと行く。それなら問題ないだろ? |
ルカ | う、うん。わかったよ…これだけ人数がいれば、安心…かな |
ルカ | みなさん、どうかスパーダの事を、よろしくお願いします |
スパーダ | そんじゃ、早速出発すっか |
ルーク | 湖を氷漬けにしちまう大精霊か…。一体どんな奴なんだろーな |
リオン | … |
scene2 | 新たな気配 |
ミラ | …そういう事情で、暴走した大精霊を鎮めるために行動しているのだ |
スパーダ | まさか、オレの知らないとこでそんな事態になってたとはな… |
スパーダ | …決めた、オレも協力するぜ。大精霊の暴走と世界の危機…決して他人事じゃねェからな |
ミラ | お前ならきっと、そう言ってくれると思っていた。よろしく頼むぞ、スパーダ |
カノンノ | ふう… |
アスベル | 大丈夫か、カノンノ。カン・バルクから歩き通しで、疲れたんじゃないか? |
カノンノ | ううん、平気だよ |
アスベル | 無理はするなよ。いざとなったらお前をおぶってやる事だって── |
リタ | おぶるって…アスベル、あんたねえ、いくら何でも心配性すぎない? |
リッド | 確かにリタの言う通りだな。子どもじゃねえんだし、一人で歩けるだろ。な、カノンノ? |
カノンノ | ありがとう、アスベル。本当に辛かったら言うから、大丈夫だよ |
カノンノ | それよりも…私、本当についてきてよかったのかな。足手まといになってないかな |
アスベル | そんな事はないさ。カノンノはよくやってる |
リッド | ああ、そんな心配すんなよ |
カノンノ | でも私、みんなみたいに、強くないし… |
ミラ | 戦うだけが強さではない。強さの形は、人それぞれで誰にでもあるものだ |
ルーク | お、いい事言うじゃねーか。だいたいお前にはリプリカームって力があるんだし、それで充分だろ |
カノンノ | うん…。ありがとう、みんな |
リッド | それにしても、カノンノのネックレスに、まさかあんな特殊な力があったなんてな |
アスベル | …そうだな。俺も驚いたよ |
アスベル | 変わった形のネックレスだし失った記憶の手がかりになればいいと思っていたが |
アスベル | まさか世界の危機を救うために必要となるものだなんて… |
アスベル | その時は、想像すらしなかったよ |
カノンノ | アスベル… |
カノンノ | 私も驚いてるよ。でも、それと同時に嬉しいとも思ってる |
カノンノ | 私は今もまだ、自分がどこの誰なのかわかってない。正直に言うと、少し不安だったの |
カノンノ | …でも、このネックレスが、世界を救う力を持っているって知ってすごく嬉しかった |
カノンノ | 何だか、得体のしれない自分が世界に認めてもらえたって気がして… |
カノンノ | …なんてね!なかなか記憶が戻らないから少し不安になってただけ…!単純に嬉しいよって話だよ! |
アスベル | カノンノ… |
カノンノ | とにかく…!無事、このリプリカームで大精霊の暴走を鎮められるといいね |
ミラ | …ああ、頼むぞカノンノ |
リオン | おい、お前達… |
ルーク | ん?どうかしたのかリオン── |
リオン | …無駄話はそこまでにしてさっさと歩け |
ルーク | んだよ、相変わらず愛想悪ぃ奴だな |
スパーダ | 随分ピリピリしてんな、あいつ |
ミラ | 無理もないだろう。今回の件はリオンにとっても無関係ではないからな |
リッド | 無関係じゃない…?何があったんだ?リオ── |
| |
| カサ… |
リタ | …?今、そこの雪の塊、動かなかった? |
| グオオオオッ! |
リッド | 雪じゃねえ、魔物だ! |
ルーク | ったく、紛らわしいんだっつーの! |
scene1 | 逸る気持ち |
ミラ | む?あれは集落か…? |
スパーダ | リンネル村だ。ニブル湖は、この先をもう少し西へ進んだところにある |
リッド | あれがメルディの村か。あいつ、無事だといいんだけどな… |
ルーク | へえ、前の戦争で焼かれた建物が、だいぶ建て直されてるみてーだな |
リッド | そんなに復興してんのか。メルディの奴、頑張ってるんだな |
アスベル | … |
リタ | 今のところ、氷結で大きな被害は出てなさそうだけど…ここから例の湖まではどのくらいあるの? |
スパーダ | そんなに遠くはねえよ。今被害が出ていなくても、楽観は出来ねェ距離だと思うぜ |
ルーク | ったく、とことんついてねー村だな。次から次へと厄介事に巻き込まれてよ |
リッド | …前にメルディから聞いたよ。村の連中は、何も悪い事なんてしてないのにな |
アスベル | … |
カノンノ | アスベル、どうかしたの?何だか悲しそうな顔してる |
アスベル | …いや、何でもない。ちょっといろいろと思い出しただけさ |
リタ | ミラ、例の気配はどうなの? |
ミラ | …ああ、ここへ来て大精霊の気配はより高まっている |
ミラ | ここからもう少し西…その辺りに大精霊がいるはずだ |
リオン | 西…やはり、湖か |
ミラ | おそらくな |
カノンノ | じゃあ、ニブル湖へ急いだ方がよさそうだね |
ルーク | あーあ。せめて村に寄って腹ごしらえくらいしたかったぜ |
| カサ… |
アスベル | 気持ちはわかるが仕方ないさ。あとで寄れるなら寄って、その時に── |
アスベル | …ん? |
カノンノ | あ、ウサギ… |
| トトト… |
リッド | お、よかったなルーク。どうやら飯にありつけそうだぞ |
リタ | 飯って…リッド、あんたまさかあのウサギを獲るつもり? |
ルーク | マジかよ。そんな事出来るのか? |
リッド | オレは猟師だぜ。まあ見てろって |
メルディ | ダメーーーー!!! |
リッド | うおっ!?な、何だ? |
ルーク | メルディ!? |
| |
メルディ | リッド、あのウサギ、ごはんと違うよぅ!あれは村の女の子が友達! |
リッド | ペットって事か? |
メルディ | はいな。だから食べるのダメ。触るはいいよ。でも、優しくしてな? |
メルディ | …って、あれ?ウサギ、もういないな |
リオン | お前の声に驚いて、とっくに逃げたぞ |
メルディ | バイバ!大変!すぐに追いかけないと!メルディ、ウサギが事サガしてたよ! |
メルディ | この辺りは魔物もオオカミもたくさんいるよ。放っておいたら、ウサギ、食べられちゃうよぅ! |
メルディ | お願いよ!ウサギが事、捕まえて欲しいよぅ!ウサギ、みんなが友達! |
リッド | ウサギが友達って言ってもなぁ… |
リオン | おい、こんな事に無駄な時間を使うつもりか?僕達にはやる事があるはずだ |
メルディ | ヒドいよぅ!みんなは、友達が怖がっててもヘーキか? |
カノンノ | …ねえ、みんな。メルディのお願い、聞いてあげない? |
リタ | そりゃ、気持ちはわからないでもないけど… |
アスベル | …よし、メルディ。やってみよう。友達は放っておけないもんな |
メルディ | バイバ!本当か!?ありがとな!メルディも頑張るよぅ! |
リッド | …やれやれ。これじゃあ捕まえようとしたオレだけが悪者みたいじゃねえか |
リッド | わかったよメルディ、オレもやる |
スパーダ | ウサギはあっちに行った。やるなら早くやっちまおうぜ |
ミラ | ああ。皆、急ぐぞ! |
scene2 | 逸る気持ち |
カノンノ | いた!あのウサギじゃない?メルディ |
メルディ | そう、あのウサギ!よかった、魔物に食べられてないよー! |
アスベル | 見つけたはいいが、どうやって捕獲したらいいんだ?傷付けるわけにもいかないし… |
リッド | そこで猟師の出番ってわけだ。アスベル、カノンノ。何かロープになりそうなものはねえか? |
カノンノ | えっと…あ、植物のつるならここにあるよ |
リッド | 上等だ。アスベル!そいつが逃げねえように、オレの反対側に回ってくれ! |
アスベル | わかった! |
リッド | これを輪っかにして──よっと! |
| ヒュンッ! |
| キュッ! |
カノンノ | わあ!足に絡まった! |
リッド | 無傷で捕獲完了、ってわけだ |
アスベル | へえ、上手いもんだなあ |
リッド | メルディ、ウサギは任せた。今度は逃がすなよ |
メルディ | はいな! |
メルディ | やったー!捕まえたよー! |
アスベル | よかったな |
リッド | ああ、そうだな。もう少しで食われちまうところだったからな |
リッド | …ルークに |
ルーク | おい!飯だっつったのはリッド、お前じゃねーか!俺は悪くねえ! |
??? | メルディー! |
メルディ | あ、レイア! |
レイア | ウサちゃん捕まった?…って、リッドにルーク!それに、ミラも…! |
ミラ | 久しぶりだな、レイア |
メルディ | リッドがお蔭で、無事にウサギを捕まえられたよー |
レイア | ありがとう、リッド。でも、どうしてここに? |
ルーク | この近くのニブル湖が氷漬けになったってんでちょっと様子見に来たんだよ |
レイア | あの氷の事ね…。本当にどうしてこんな事になっちゃったんだろ… |
メルディ | リンネル村がオトナ達、みんな集まって、これからどうするか相談してるよ |
レイア | …湖のすぐ傍にあった小さな村が氷に覆われてしまったみたいなの |
レイア | この様子だと、リンネル村がああなってしまうのも時間の問題だろうって… |
レイア | それに、聞いた話だと逃げ遅れた人達の何人かが、氷漬けになっちゃったっていうし… |
ミラ | 村も、人々も氷漬けに… |
リオン | …くっ |
アスベル | おいリオン、待ってくれ。どこへ行くんだ? |
リオン | …ニブル湖に決まっているだろう |
リタ | ちょっと待ちなさいよ。もう少し二人の話を聞いた方がいいわよ。情報は多いに越した事ないんだから! |
リオン | 勝手にしろ、僕は先に行く |
リタ | さっきから何なの、あいつ! |
ミラ | … |
ミラ | …この際だ、リオンについて少し話しておく |
スパーダ | まさかシルヴァラントにも氷漬けになった街があるなんてな… |
アスベル | ルイニス街の話はクラトスさんから聞いていたが、そこまでひどい状況だったとは… |
カノンノ | …リオンさんはきっと、自分の街と、今回の出来事を重ねてしまったんだね |
ルーク | ったく…それならそうと、早く言えっつーの |
ミラ | 私も実際にルイニス街をこの目で見たが、悲惨な状況だった。リオンが焦る気持ちもわからなくはない… |
リタ | だったら早いとこリオンを追った方がよくない?あの調子じゃあいつ、一人で大精霊に挑みかねないわよ |
リッド | 確かにな。じゃあ、早速── |
レイア | 待って、ミラ! |
レイア | 大精霊とか、あまりよくわかってないけど、わたし達も手伝うよ |
レイア | …村を守りたいの。だから、出来る事は協力させて |
ミラ | レイア…。なら、お前達は村へ戻って万が一の事態に備えてほしい |
ミラ | 状況によっては、村を出て避難する必要が出て来るかもしれない |
メルディ | せっかく村の修理、みんなで頑張ったのにまたなくなってしまうか? |
リッド | 大丈夫だ。そんな事にならないように、みんなで何とかする |
ルーク | 大精霊を大人しくさせたらまた来るから、そん時はうまい飯食わせろよ |
メルディ | …わかった、たくさん用意して待ってるよぅ |
レイア | リンネル村の事は任せて。みんな、気を付けてね |
アスベル | ああ、ありがとう。よし、じゃあ行こうか |
カノンノ | うん! |
| |
リオン | … |
ミラ | リオン! |
ルーク | やっと追い付いたぜ…、つか、早すぎんだよ、お前。面倒かけやがって |
リッド | ホントだぜ。焦んのもわかんなくねえけど、ちょっとは待ってろって |
アスベル | リオン、ミラから事情は聞いた。お前の気持ちはわかるけど、一人で行くのは危険だ |
ミラ | 私もイフリートと戦った時、今のお前と同じように一人で抱え込んで焦っていた。だからこそ言う── |
ミラ | 一人で全てを背負い込むな、もっと私達の事を頼ってほしい |
ミラ | お前の傍には、同じ目的を持って行動する私達がいる。それを忘れないでくれ |
リオン | … |
リオン | …わかった |
リタ | とにかく、これで全員揃ってニブル湖へ行けるわね |
スパーダ | よし、じゃあ先へ進もうぜ。こうしている間にもドンドン時間は過ぎてくからな |
リッド | …っと、悠長に話してるヒマもなさそうだぜ。魔物のおでましだ |
| |
| グオオオオッ! |
scene1 | ニブル湖の異変 |
ルーク | …はーくしょん!うう…さみぃ |
リタ | バカっぽい。そんな腹出しの格好なんかしてるからよ |
ルーク | なっ…バカとは何だ!べ、別に腹は寒くねーし! |
リタ | そんな真っ赤なお腹して…どの口が言うんだか |
ルーク | …! |
リッド | 腹出しっぱなしにしてりゃ意外と慣れるモンだぜ |
リッド | で、今はどの辺だ?そろそろ例の湖に着くのか? |
アスベル | 近付いてはいると思う。リンネル村の辺りと比べると徐々に冷え込みが増してきているし |
スパーダ | ああ、この丘を登ればもう湖畔が見えるはずだぜ…ほら、見えてきたろ…って… |
リオン | む…? |
カノンノ | まさか、あれが…? |
| |
ミラ | …! |
リタ | 湖って…見えるのはでっかい氷の山ばかりじゃない |
リッド | どうりで寒いと思ったぜ。あんな巨大な氷の塊が、すぐ近くにあるんじゃな |
ルーク | で、湖は一体どこなんだよ? |
スパーダ | …あそこだ |
ルーク | あ?だから、氷の山しかねーじゃん。俺が聞いてんのは、湖で── |
スパーダ | だから、その氷山のとこだって。元は、あそこが湖!地図で見ても間違いはねェ |
アスベル | …まさか、湖の水が凍って氷山になったとでも言うのか?そんな事が本当にあり得るのか? |
スパーダ | 湖が凍る事自体めったにねェ話なんだ。ましてや氷山なんて…普通じゃあり得ねェよ! |
カノンノ | つまりこれは普通じゃなくって、大精霊の力… |
リオン | おいミラ、大精霊の気配は? |
ミラ | …間違いない、あの氷山の中だ。強い力を感じる。氷を砕き、今にも飛び出してきそうなほどの強い力だ… |
ミラ | 力の主は、セルシウス。氷を司る大精霊…そう考えて間違いないだろう |
リッド | なっ…氷を司る大精霊だって!?そんな奴がいんのか? |
ミラ | ああ、この氷山を見て確信した。これほどまでに強大な氷の力を使える大精霊は彼女しかいない |
ミラ | まさか、セルシウスほどの大精霊まで暴走に飲み込まれていたとは… |
リオン | … |
スパーダ | そのセルシウスって奴は強いのか? |
ミラ | 精霊の中でもかなり強力な力を持つ大精霊だ。苦戦を強いられる事になるだろう… |
ミラ | 覚悟してかからねば、返り討ちに遭う。確実にな… |
リッド | それでも、やるしかねえんだろ? |
ミラ | ああ、その通りだ |
リオン | …セルシウスの暴走を鎮めなければ…。…何としてでも |
リタ | やらないと、あたし達の世界が破滅してしまうんだし。贅沢言ってる余裕なんてないわ |
アスベル | そうだな。相手が強力な大精霊でも、力を合わせればきっと何とかなる、そう信じて進むしかない |
カノンノ | 私も、出来る限りの事はするよ |
ミラ | …覚悟は揺らいでないな。安心したよ |
ルーク | 今更怖気づくかっつーの!風邪ひく前に、とっととあの氷山を調べに行こうぜ |
scene2 | ニブル湖の異変 |
ルーク | セルシウスは氷山の中にいるんだよな?って事は入口を探さねーと… |
カノンノ | 私もそう思ってさっきから探してるんだけど…それらしいものは── |
カノンノ | …! |
アスベル | カノンノ、どうした?何か見つけ… |
| |
アスベル | …!これは…! |
リオン | どうかしたのか? |
アスベル | リオンは来るな! |
リオン | 何…? |
リタ | アスベル、あんた何を言って── |
リタ | …あ |
ミラ | これは… |
リオン | …! |
ルーク | な、何だこりゃ!?人間が、こ、氷漬けに…マジかよ… |
リッド | リオンに来るなって言ったのは…これがあったからか… |
スパーダ | ひでえな…。話には聞いてても、実際に見ると… |
リタ | …ルイニス街の人達もこんな風になってしまったの? |
リオン | …ああ |
アスベル | とにかく、一刻も早くセルシウスの元へ急ごう。暴走を鎮められたらこの人達を救えるかもしれない…! |
| |
| ヒュオオオオオ! |
カノンノ | きゃあっ!? |
リタ | ちょっと、いきなり吹雪!? |
ルーク | …っぷ!目を開けてられねーぞ! |
アスベル | みんな、大丈夫か!? |
| ビシッ! |
リオン | 何の音だ? |
| ビシッ!ビシビシビシッ! |
スパーダ | まずいぜ!周辺の氷が割れ始めてる! |
リッド | おいおい、冗談じゃねえぞ。氷の下は湖だろ?落ちたら死んじまうじゃねえか! |
アスベル | このままでは危険だ。足場のしっかりしたところまで一旦退避しよう! |
リタ | でもこの吹雪じゃ、どっちへ進めばいいのか… |
| ゴゴゴ… |
| ズゴゴゴゴゴ! |
ルーク | じ、地震まで始まりやがった!マジでこのままじゃヤバいっつーの! |
アスベル | まずい、足場の氷にヒビが…! |
| |
リッド | おいみんな、向こうに洞窟の入口がある。ひとまずあそこに避難するぞ! |
スパーダ | え、洞窟?それはそれで危ねェんじゃ… |
リッド | 足場が割れるよりはマシだろ。急げ! |
ミラ | リッドに続け!遅れるな! |
| ズガガガガガッ!ガラガラガラッ! |
ルーク | うわっ!?今度は氷山まで崩れて来やがった! |
リオン | くっ…! |
アスベル | カノンノ、どこだ?カノンノーーッ! |
scene1 | それぞれの動向 |
ルーク | アスベル、おい!しっかりしろ! |
アスベル | う、うう… |
| |
アスベル | あ…ルーク… |
ルーク | ったく、焦らすなっつーの。なかなか起きねーから死んじまったのかと思ったじゃねーか |
リタ | リオンとスパーダを見つけてきたわよ。二人とも怪我はない? |
スパーダ | ああ、何とかな… |
リオン | 吹雪と地震は収まったのか…? |
リタ | みたいね。あくまで今のところは、だけど |
アスベル | カノンノは?あと、ミラとリッドも |
ルーク | それが…さっきから捜してるんだが、三人共見つからねーんだ |
アスベル | 何だって…! |
スパーダ | そういや、洞窟の入口がどうこうって誰かが叫んでたな。あれ、リッドの声だったような… |
アスベル | 洞窟に逃げ込んだって事か?でもそんな洞窟、どこに… |
リタ | みんなを捜すついでに一応見たんだけど、それらしいものはなかったわ |
ルーク | さっきの氷山の崩落でこの辺りの様子も様変わりしちまったしな… |
リタ | 崩れた氷の下に閉じ込められたりしてなきゃいいけど… |
アスベル | そんな…! |
アスベル | とにかく、みんなを捜そう! |
| |
リッド | …?ここは…洞窟の中か? |
リッド | いてて…さっきのすさまじい吹雪と地震は一体何だった……ん?あれは… |
リッド | おいミラ、カノンノ、しっかりしろ! |
カノンノ | ん…、リッド…?あれ…ここは…? |
ミラ | …洞窟の中か、何とか避難出来たようだな。他の者達は? |
リッド | この辺りには見当たらない。ひょっとしたら他の奴らは洞窟の外にいるのかもしれねえな |
カノンノ | そんな… |
リッド | とにかく一度外に出て、他の奴らを捜そう。入口は… |
ミラ | あそこのようだが… |
カノンノ | 氷が崩れて完全に塞がってしまってる… |
リッド | この状態じゃ出ようにも出られねえな。外から入ってくるのも難しそうだ |
ミラ | ならば、イフリートの力を使うか。大精霊の力による氷だ、イフリートの炎なら溶かす事が出来るはずだ |
リッド | いや、やめた方がいい。ここは洞窟だ。ヘンに崩して落盤でもすりゃ、それこそ大惨事だ |
ミラ | 確かにそうだな。…それはそうと、リッド、身体は動くか? |
リッド | ああ、大きなケガもねぇし、いつも通り戦えるぜ。急にどうした? |
ミラ | …幸か不幸か、この洞窟はセルシウスの居場所に繋がっている。気配がぐっと近く感じられるのだ |
ミラ | 洞窟の奥から冷気も吹き寄せている。まず間違いあるまい |
カノンノ | そんな…。奥へ進めば出口があって出られるかもしれないのに… |
ミラ | 覚悟を決めるしかないだろう。ここにずっと留まっているわけにもいかないからな |
リッド | このまま三人でセルシウスの元へ行く…そういう事だな |
カノンノ | 三人で…? |
ミラ | ああ。おそらく先ほどの吹雪も、この氷山も、全てはセルシウスの力によるものだ |
ミラ | ここから出るにも、セルシウスの暴走を鎮める他ない |
カノンノ | 私達だけでセルシウスと渡り合うなんて…本当に出来るのかな…? |
リッド | 確かに戦力としては半分以下だけど…まあ、何とかなんだろ |
カノンノ | … |
ミラ | ああ、いずれにせよ、ここで立ち止まっても仕方あるまい |
リッド | そうだな。んじゃ、さっさとセルシウスのところへ行くとしようぜ |
カノンノ | … |
scene2 | それぞれの動向 |
リオン | 洞窟への入口は見つかったか? |
リタ | 駄目ね。こっちは見当たらないわ |
アスベル | くそ、一体どこにあるんだ?こんなに探しても見つからないなんて… |
スパーダ | おい…!もしかして、ここじゃないか? |
| |
アスベル | …! |
ルーク | ここが…って、完全に崩れて塞がってんじゃねーか。どうりで気付かなかったわけだぜ |
リオン | …外でこの様子だ、中の方も何かしらの影響が出ているだろう |
スパーダ | おいおい、あいつら本当に無事なのかよ… |
アスベル | とにかく、急いで入口を塞いでいる氷を取り除こう |
リタ | あたしに任せなさい。術でぶっとばすわ! |
リタ | ファイアボール! |
| ズバッ! |
| シュン…ッ |
ルーク | なっ、…あれだけの炎をぶつけられたのにびくともしてねーぞ |
リタ | …!もう1回いくわよ! |
| ズバッ! |
| シュン…ッ! |
アスベル | 駄目だ… |
リオン | … |
| |
カノンノ | ふう… |
リッド | 妙な気分だな。だいぶ歩いたような気がするが、辺りの風景が変わらねえ…本当に進んでんのか? |
カノンノ | 確かに、ずっと氷に囲まれてて、同じところをぐるぐる歩いているみたいだね |
ミラ | 安心しろ、セルシウスの気配は徐々に強まっている。私達が進んでいる事は確かだ |
リッド | それを聞いて安心したぜ。…にしてもすげーな、この氷。ここが湖だったなんて信じられねえぜ |
カノンノ | うん…大精霊の力ってすごいんだね。氷山の中に入って、改めてそう感じるよ |
カノンノ | ねえ、ミラさん…出来るかな、私達…セルシウスを鎮められる? |
カノンノ | だって、こんなすごい力を持っているんでしょ |
ミラ | 上手くいく保証はどこにもない。だが、皆と合流出来ない以上、私達だけでやるしかない |
カノンノ | … |
カノンノ | うん…それはわかってる…けど… |
リッド | 不安なのか? |
カノンノ | …うん |
| |
リッド | …カノンノ、お前も見ただろ?あの氷漬けになっちまった奴らを |
リッド | 今ここでオレ達がやらなきゃあっという間に広まってあちこちで同じ事が起きちまう |
カノンノ | それは駄目…!何としても食い止めなきゃ… |
リッド | だろ?だったら、厳しかろうが何だろうが、オレ達三人でセルシウスの暴走を鎮めるしかねえ |
カノンノ | … |
リッド | まあ、そんな心配すんな。人間腹をくくりゃあ大体何とかなるってもんだ |
リッド | 少なくともオレはこれまで、それでやって来られたからな。だから、お前も大丈夫だろ。多分な |
カノンノ | 腹をくくる… |
カノンノ | …うん、そうだね。そうだよね |
カノンノ | 不安ばかり言ってても仕方ないよね。何としてでも私達はやり遂げなきゃならないんだもん |
リッド | ああ、その意気だ |
カノンノ | うん!…ありがとう、リッドさん |
ミラ | リッド… |
| |
カノンノ | …よーし、元気出てきた!二人共、心配かけてごめんね。もう大丈夫だから |
ミラ | わかった。では改めて、先へ進もう──……と、言いたいところだが… |
| グルルル… |
ミラ | その前に、片付けなければならない相手がいるようだ |
| ガアアアアッ! |
リッド | ったく。これ以上面倒事を増やすなって! |
scene1 | 大精霊セルシウス |
リタ | ファイアボール! |
| ズバッ! |
| シュン…ッ |
スパーダ | こんだけの炎をぶつけて、やっと、チュンチュンの涙ほどしか溶けねえなんて… |
ルーク | くそっ、火が駄目ならと思って斬りつけてみたけど、それも駄目みてーだ |
ルーク | 全力で叩き斬ろうとしてもびくともしねーし、下手すりゃ剣の方が折れちまいそうだ |
リオン | … |
アスベル | くっ…!こうなったら、全員で一斉に技を── |
リオン | …無駄だ、やめておけ |
ルーク | リオン…? |
リオン | この氷は、ルイニス街のものとは違いわずかではあるが溶けはするようだな |
リオン | だが、こんな氷山に囲まれた中では何をしたところで無意味だ |
アスベル | そんな…じゃあ、一体どうすれば… |
| |
カノンノ | そういえば…アスベル達、大丈夫だったかな? |
リッド | あいつらなら心配ねえだろ。まあ、今頃オレ達がどうなったかとやきもきはしてるだろうがな |
ミラ | …! |
カノンノ | ミラさん?どうかしたの? |
ミラ | …セルシウスだ、近いぞ。気配が強まって── |
カノンノ | あ…ネックレスが… |
リッド | 光り出したな…これは、セルシウスの気配に反応してるって事だよな? |
ミラ | ああ、間違いない |
ミラ | しつこいようだが改めて言っておく。これから私達がまみえるセルシウスはとにかく強力な大精霊だ |
ミラ | 暴走に陥り、理性を失っている状態となれば危険性はさらに高い |
リッド | ああ、わかってる |
ミラ | …さらにはこの人数だ。私達の連携が上手くいくかどうかが勝敗の分かれ目となるだろう |
ミラ | 協力し合い、しっかりと連携を取れれば勝機はある。だが、逆に乱れるようであれば… |
リッド | …死ぬ、って事だろ |
カノンノ | 私、頑張るよ。絶対、二人の足手まといにはならないようにするから |
リッド | よし、何が何でもセルシウスの奴を正気に戻してやろうぜ |
カノンノ | うん…! |
ミラ | よし、では先へ進もう。ここからは、いつセルシウスが姿を現してもおかしくない。慎重にな |
scene2 | 大精霊セルシウス |
アスベル | この冷気の中では、炎の威力も弱まって氷を溶かす事は出来ない…。一体どうすれば… |
リオン | … |
スパーダ | 思うんだけどよ… |
スパーダ | 今頃三人で、大精霊のところに向かってるんじゃねーか?オレがあいつらの立場ならそうするぜ |
アスベル | そんな… |
ルーク | 三人が無事で、出口がなくて、奥に進むしかないってんならそうかもな |
リタ | …普通の手段で溶かせないこの氷を何とかするためには、根本の原因を排除する必要があるのは確かだけど… |
アスベル | だが、相手は大精霊だぞ?彼らの脅威はミラから聞いている。たった三人で挑むなんて無茶だ! |
リオン | …だが、他に選択肢がないならば例え無茶でもやるしかないだろう |
スパーダ | ま、ミラがいるから大丈夫だろ。あいつとは前に一緒に戦った事があるから、実力はよく知ってる |
ルーク | それを言うなら、リッドもそれなりに腕は立つはずだぜ。まあ、俺にはかなわねーけどな |
リタ | …アスベル、カノンノの事が心配なのはわかるけど、今はこれ以上どうしようもないわ |
リタ | 大精霊の事を一番よく知ってるミラが一緒なら、多分、そんな軽はずみな真似はしないと思う |
アスベル | … |
アスベル | 心配なのはカノンノだけじゃない。あの二人は強いし、信頼もしているがやっぱり無茶だ… |
アスベル | 合流する手立てを諦めては駄目だここでじっとしていても何も前には進まない… |
アスベル | 洞窟の入口がわかりにくかった例もあるし…もう一度探してくる! |
スパーダ | 心配で、いてもたってもいられねーか。まあ、それもそうだな |
リタ | あたし達も他に入口がないか探してみましょ。要は合流出来ればいいんだから |
ルーク | ま、ここで寒い中、何もしねーでじっとしてたって仕方ねーしな。やろうぜ、リオン |
リオン | 僕に指図するな。お前に言われなくともそうしている |
| |
ミラ | …!…近いぞ |
カノンノ | ネックレスの光も、ますます強くなったみたい |
リッド | いよいよお出ましってわけか |
| ヒュウウ… |
カノンノ | …!冷たい風が… |
リッド | この冷気…何だか妙な感覚だぜ。ゾクゾクするっていうか… |
ミラ | セルシウスも私達の存在に気付いているようだな |
リッド | 威嚇してるってわけか |
ミラ | そんなところだろう。暴走して正気を失っているとはいえ本能で察知するのは可能な── |
| ビュンッ! |
カノンノ | …! |
ミラ | カノンノ、危ない! |
| ズバァァァッ!! |
ミラ | うっ…! |
カノンノ | ミラさん!? |
リッド | 何だ、この氷の槍みてえなのは!?冗談じゃねえぜ!おい、ミラ大丈夫なのか!? |
ミラ | 大丈夫だ…これくらいの傷、何ともない… |
カノンノ | 嘘だよ。こんな深い傷…何ともないわけないじゃない!立ってる事さえ辛いんじゃ… |
ミラ | …何ともない、大丈夫だ。心配するな… |
カノンノ | でも…! |
リッド | おい、向こうを見ろ! |
カノンノ | あれは… |
??? | … |
リッド | あいつがまさか、セルシウスか…? |
ミラ | ああ、そうだ |
カノンノ | だとしたら、この氷の槍も… |
セルシウス | ウウウ… |
リッド | …随分と怒ってるみてえだな。どっからどう見てもマトモに話は出来なさそうだ |
ミラ | 暴走に飲み込まれているからな。…力ずくで大人しくさせるしか方法はあるまい |
| |
セルシウス | ガアアアアッ! |
| ビュンッ! |
ミラ | またさっきの攻撃か…!カノンノ、避けろ! |
カノンノ | …!駄目、間に合わな── |
| バシッ! |
リッド | ふう…間一髪だな。カノンノ、大丈夫か? |
カノンノ | う、うん…ありがとう。もう駄目かと思った… |
ミラ | 何とか間に合ったか…。リッド、礼を言うぞ |
リッド | 「連携」だろ?気にすんな。そんな事より… |
リッド | おい、セルシウス!目を覚ましやがれ! |
セルシウス | ウウウウウ…! |
リッド | 呼びかけても無駄、か。だろうなあ。やっぱりミラが言うように、力ずくで大人しくさせるしかねえみてえだ |
| チャキ… |
リッド | 行くぞ、セルシウス。…これもお前のためだ、悪く思うなよ |
ミラ | 待っていろ、今暴走から解放してやる… |
セルシウス | ガアアアアッ!! |
カノンノ | 来るよ!二人共気を付けて! |
scene3 | 大精霊セルシウス |
カノンノ | 本当に倒せた、の…?私達、本当に… |
カノンノ | 信じられない… |
リッド | ああ、…結構手間取ったけど何とかなったみてえだな |
カノンノ | や、やった…! |
ミラ | リッド、負傷しているようだが…大丈夫か? |
リッド | この程度ならどうって事ねえよ |
ミラ | そうか…ならよかった。お前が前に出て戦ってくれたお蔭だ。助かったよ |
リッド | お前こそ、深手を負っているとは思えないくらいの動きだ。大したもんだぜ |
リッド | それにカノンノ、お前も。よく頑張ってくれたな |
カノンノ | 私なんてまだまだ…セルシウスを倒せたのは本当に二人のお蔭── |
ミラ | う… |
| |
| ドサッ! |
カノンノ | ミラさん!? |
リッド | おいおい、大丈夫かよ…ってこいつはヤバイな。すぐに手当しねえと… |
ミラ | …大丈夫だ。このくらいの傷、何とも… |
カノンノ | お願い、動かないで…!押さえても血が噴き出しちゃう…! |
ミラ | カノンノ、私の事は後回しでいい、それより早くセルシウスの元へ…。リプリカームを与えるのだ |
ミラ | 枯渇状態にあるセルシウスのマナを補えば、暴走は鎮まり正気を取り戻すだろう |
ミラ | …私達もこの状況だ、この機を逃せば、再びセルシウスを抑止する事は難しい… |
カノンノ | でも… |
リッド | カノンノ、頼む。ミラはオレが見てる。だから今の内にやってくれ |
カノンノ | わかった。じゃあ… |
セルシウス | グ…グァ… |
カノンノ | …! |
ミラ | リッド!まずい…セルシウスが…! |
| |
セルシウス | グオオオオオオオッ! |
リッド | ちっ…させるかよ! |
| ビュンッ! |
カノンノ | …!?狙いは私じゃない…?まさか… |
カノンノ | リッドさん、危ない!!氷の槍が…! |
リッド | 何っ…!? |
| ズバッ! |
カノンノ | …っ! |
ミラ | …っ! |
リッド | ぐ… |
カノンノ | …!ウソ…!リッドさん…!氷が…胸に…刺さってる…!? |
カノンノ | そんな… |
| ビュンッ!ビュンッ! |
ミラ | カノンノ、危ない!離れろ! |
リッド | 悪ぃ…カノンノ…逃げ…てくれ… |
| ドサッ! |
ミラ | リッド…! |
カノンノ | そんな…嘘でしょ…?ねえ、リッドさん…リッド… |
カノンノ | リッドーーッ!! |
scene1 | 同じ想いを胸に |
カノンノ | リッドさん…!もう少し頑張って、今そっちに── |
ミラ | カノンノ、やめるんだ!気持ちはわかるが、今動くとセルシウスの標的になるぞ! |
カノンノ | でも…リッドさんは…胸を押さえて…倒れてるのに…!早く手当て…手当てをしないと… |
カノンノ | …死んじゃうよ…! |
ミラ | 今は自分の事を考えるんだ!…リッドだってお前が傷付く事を望んではいない |
カノンノ | でも… |
セルシウス | ウウウ… |
ミラ | セルシウス… |
ミラ | リッドすまない…私の判断が間違っていた… |
ミラ | アスベル達を信じて待つ事も出来たのだ…それを…… |
セルシウス | ウウウウ…! |
ミラ | カノンノ、私が隙を作る。その間に逃げろ |
カノンノ | え? |
ミラ | 私達には世界を救うために、大精霊の暴走を鎮めるという使命がある |
ミラ | この使命を遂行する意志を持っていたのはリッドも同じ… |
ミラ | リッドのためにも、ここでお前まで失うわけにはいかない |
カノンノ | ミラさん… |
カノンノ | 私もやる…例え二人でも、絶対にセルシウスの暴走を鎮めよう |
ミラ | カノンノ…いいのだな? |
カノンノ | …うん! |
ミラ | …わかった。ありがとう、カノンノ。私の背中はお前に任せたぞ |
ミラ | セルシウス!お前の暴走は必ず私達が鎮めてみせる! |
セルシウス | シャアアッ! |
scene2 | 同じ想いを胸に |
カノンノ | はあ…はあ…セルシウス、いい加減目を覚まして! |
セルシウス | シャアアッ! |
ミラ | セルシウスが元の勢いを取り戻している… |
ミラ | それにここは…。どうやら私達は戦いながらより動きやすい広い場所へ誘導されていたようだな |
| ビュンッ! |
カノンノ | …! |
ミラ | くっ…!危ない、カノンノ! |
| ドン! |
| ザシュ! |
ミラ | うぐっ…! |
カノンノ | ミラさん…! |
ミラ | 私の事は気にするな…それより、怪我はないか…? |
カノンノ | ミラさんが庇ってくれたから私は大丈夫だけど、でも… |
セルシウス | ウウウ…! |
| ビュンッ! |
カノンノ | っと…!危ない、もう少しで… |
ミラ | ぐっ…! |
カノンノ | ミラさん、大丈夫!? |
ミラ | 無論だ…と言いたいところだが、さすがにこうも攻撃が続くといささか厳しい… |
ミラ | こちらに攻撃を仕掛ける隙すら与えてくれそうにないからな |
セルシウス | ガアアッ! |
| ビュンッ! |
| シャアアッ! |
| ビュンッ! |
ミラ | まずい…このままでは── |
セルシウス | ガアアアアッ! |
| ビュンッ! |
| ザシュ! |
カノンノ | うっ…! |
ミラ | カノンノ! |
セルシウス | ウオオオッ! |
カノンノ | …! |
| |
| バシィッ! |
| |
カノンノ | … |
カノンノ | …? |
ミラ | セルシウスの動きが止まった…?これは一体… |
| |
セルシウス | ウ… |
| |
リッド | …もう終わりにしようぜ、セルシウス |
| |
カノンノ | …!その声は…まさか… |
| |
リッド | ああ、オレだ |
ミラ | リッド!まさか、生きていたのか… |
リッド | 当たり前だろ。勝手に殺すなよ |
カノンノ | でも、胸に氷が刺さったのに…! |
リッド | 胸?オレが食らったのは肩だよ。運がいい事に左肩、ときたもんだ。左腕はヤバそうだが、剣は振れそうだ |
リッド | あの氷のせいで肩は痛えし、本当はあのまま昼寝してたかったけど寒くて寝てなんかいられねえよ |
リッド | 昼寝の続きは、こいつをどうにかしてから、だな。…さ、やろうぜ |
カノンノ | 昼寝って…もう…リッドさん…! |
ミラ | ふっ、お前という奴は… |
リッド | おい、ミラ、カノンノ。お前らもケガ、ひでえじゃねえか |
カノンノ | 大丈夫だよ、このくらい! |
ミラ | ああ、私も問題ない |
リッド | そうは思えねえがな…まあ…やるしかねえよな |
リッド | よし、これ以上体力を消耗する前に連携して一気に攻撃を畳みかける。いいな? |
カノンノ | うん! |
ミラ | ああ |
リッド | それじゃ、もうひと踏ん張りといくか |
リッド | 覚悟しろよ、セルシウス!今度こそケリをつけてやる |
| |
セルシウス | ウウウ…! |
scene3 | 同じ想いを胸に |
リッド | これで…どうだ! |
| ズバーンッ!! |
セルシウス | ウ… |
| |
| ドサッ |
| |
カノンノ | 今度こそ終わった…? |
ミラ | ああ…大丈夫だろう |
セルシウス | … |
リッド | よし…今の内だ。カノンノ、リプリカームを |
カノンノ | うん |
ミラ | また突然暴れ出すかもしれん。警戒を怠るな |
カノンノ | 大丈夫、わかってるよ |
カノンノ | ネックレスが光り出した… |
リッド | うっ…このまぶしい光は…っておいおい、光がセルシウスの身体に流れ込んで… |
ミラ | セルシウスの枯渇したマナがどんどん回復している…。四大の時と同じだ |
リッド | じゃあ、これでセルシウスの暴走は鎮まるってわけだな |
ミラ | 実際にリプリカームを暴走した状態の大精霊に与えるのはこれが初めてだ |
ミラ | ゆえに、まだ断言は出来んが、この様子ならおそらく問題ないだろう… |
カノンノ | あ、光が収まった… |
ミラ | む…!今、セルシウスが動いたぞ。気は抜くな |
リッド | 頼むから、正気に戻ってくれよ…?さすがにもう一度やり合うのは勘弁だぜ |
カノンノ | お願い…! |
セルシウス | う… |
セルシウス | ここは…?わたしは…何を…? |
リッド | セルシウスが喋った…って事は…、暴走はちゃんと鎮められたのか? |
ミラ | ああ、そのようだな |
カノンノ | よかった…! |
セルシウス | あなた達は…? |
ミラ | 私はミラ=マクスウェル、隣の二人は、リッドとカノンノだ |
ミラ | …セルシウス、お前はマナの枯渇により今まで暴走状態に陥っていたのだ |
セルシウス | マナの枯渇…それに、暴走…? |
セルシウス | まさか、そのような事になっていたなんて… |
カノンノ | 何も知らない間に暴走に陥ってしまったんだね…。かわいそう… |
セルシウス | ええ…最後に覚えているのは一瞬にして世界中のマナが減少していった事… |
リッド | それが、お前達大精霊を暴走させたきっかけだったって事だろうな |
セルシウス | とにかく、これ以上人に被害を及ぼす前にわたしを止めてくれた事…本当に感謝するわ |
ミラ | 礼ならカノンノに言うといい。お前の暴走を鎮める作用をしたのは、彼女のリプリカームという力だ |
セルシウス | リプリカーム…? |
カノンノ | このネックレスから溢れ出る力の事だよ。あなた達精霊にマナを与えて癒す事が出来るんだって |
セルシウス | そんな力が存在するなんて、初めて知ったわ |
ミラ | …やはり、お前も知らないのか。精霊にまつわる力だ、誰かが知っていてもおかしくないはずなんだが… |
セルシウス | とにかく、本当にありがとう。カノンノ、リッド、ミラ… |
カノンノ | ううん、いいんだよ。役に立てたなら私も嬉しい |
セルシウス | それにしても…わたしは取り返しのつかない事をしてしまったのね… |
ミラ | 湖畔の辺りで氷漬けになっていた人々の事か… |
カノンノ | セルシウスの力なんだよね?氷を溶かせば、助かるんじゃないの? |
セルシウス | …いいえ。わたしの力は自然の力と同じもの… |
セルシウス | 氷漬けになった人は助からないでしょう…。…ごめんなさい… |
リッド | 雪山で遭難したのと同じって事か… |
セルシウス | …本当にごめんなさい。暴走していたとはいえ、誰かを傷付けるつもりなどなかったのに… |
ミラ | お前が悪いわけではない。悪いのはこの状況を裏で煽ってる奴だ |
リッド | それに、オレ達人間のせいでもある。まんまとそいつの企てに乗せられて魔導器を使っちまったんだから |
カノンノ | そうだよね… |
ミラ | …とにかく、これでセルシウスは正気を取り戻した。湖周辺の危機は一旦去ったと捉えていいだろう |
ミラ | だが、これで終わりではない。セルシウスの他にも、世界の各地で暴走状態に陥っている大精霊がいる |
セルシウス | … |
リッド | そうだな。のんびりしてられねえ。早いとこ、ここから外へ出ないとな。アスベル達も待ってる事だろうし |
カノンノ | セルシウス、この氷山から出られるよう、力を貸してくれる? |
セルシウス | ええ、勿論。その前に── |
セルシウス | わたしもあなた達の目的に協力させて |
セルシウス | 暴走していたとはいえ、多くの人間達を傷付けた事に変わりはない。…その償いをしたいの |
セルシウス | それに、今も尚、わたしと同じように暴走し苦しんでいる仲間がいる…。放っておけないわ |
カノンノ | セルシウス…。あなたの気持ちはわかる、勿論、断る理由なんてないよ |
リッド | こんだけ強いセルシウスが力を貸してくれるっていうならむしろ、ありがてえ話だと── |
ミラ | …!これは… |
カノンノ | ネックレスが光って…──でも、何だろうこれ…?何だか今までとは様子が… |
セルシウス | …カノンノの意志にネックレスが共鳴している |
リッド | 共鳴…?それは一体どういう事だ? |
セルシウス | …どうやら、そのネックレスはわたしとあなたを結ぶ、契約の証となってくれるみたい |
ミラ | 契約…確かクラースが話していたな。精霊を喚び出すには契約を交わす必要があると… |
セルシウス | ええ、人間と精霊が共にあろうとすると「契約」が必要となる |
セルシウス | その契約に必要不可欠となるのが契約の証 |
セルシウス | カノンノ、そしてそのネックレス。…これが、あなたの「役割」なのかも知れないわね |
カノンノ | まさか、そんな事が… |
リッド | カノンノの意志に共鳴してるって事は契約はカノンノにしか出来ない、そういう事だよな? |
ミラ | リプリカームの事も踏まえると、そう考えるべきだろうな。…ますます不思議な代物だ |
リッド | …まさか、リプリカームだけじゃなくそんな役割まで果たしちまうとか、すげえな… |
セルシウス | …カノンノ、もう一度聞かせて。あなたとの契約のために… |
セルシウス | このわたしを…人を殺してしまったわたしを…受け入れてくれる…? |
セルシウス | もしあなたや、あなたの仲間達がわたしを受け入れてくれるのならば… |
セルシウス | そのネックレスをわたしに向かって、掲げて… |
カノンノ | …うん、わかった。やってみるね。みんな…いいよね? |
リッド・ミラ | ああ、勿論だ |
カノンノ | セルシウス…私達に力を貸して──… |
リッド | おい、セルシウスはどこだ?消えちまったのか…? |
カノンノ | …ううん、ここにいるよ |
リッド | な、ネックレスの色が変わった…!?まさか、この中に? |
カノンノ | そうみたい。セルシウスみたいなきれいな色になったね |
ミラ | 契約は成功した、という事か。…セルシウスか、とても心強い味方が出来たな |
リッド | ま、とにかくこれでカタは付いた事だし外へ出ようぜ。あいつらも待ってんだろ |
ミラ | ああ、そうだな |
| |
ルーク | ──駄目だ。どーにもなんねー! |
アスベル | くっ…こうしている間にもカノンノ達は…。何か手はないのか…? |
リオン | 精霊に詳しいクラースやリヒターがいれば、何かいい手を思い付いたかもしれんが… |
| ビシッ! |
リタ | …!ねえ、ちょっとあれを見て!氷山が… |
| ビシッ!ビシビシビシッ! |
スパーダ | な、何だ?すげえ勢いでヒビが…まさか崩れちまうんじゃ…! |
| ドカッ!スザ…ガラガラガラッ! |
| |
ルーク | なっ、氷が砕けて穴が… |
ミラ | ようやく外に出られたようだな。リッド、長らく肩を借りてすまなかったな |
リッド | 別に構わねえ、こっちの肩は無傷だ。やれやれ、出るのも一苦労だったな。カノンノ、お前も怪我は大丈夫か? |
カノンノ | うん、私は大丈夫だよ。二人こそ早く手当しなくちゃ |
| |
アスベル | カノンノ!リッド!ミラ! |
リタ | 無事だったのね! |
リオン | …こいつらのどこが「無事」なんだ。どう見ても「無事」には見えん |
スパーダ | 中で何があった?まさかセルシウスと戦ったのか? |
ミラ | ああ、何とかセルシウスの暴走を鎮める事に成功した。更には私達に力を貸してくれると… |
アスベル | セルシウスが…?それは一体どういう事だ? |
ミラ | 世界を救いたいという想いは人間も精霊も同じ、という事だ |
リタ | それにしてもあんた達、本当に三人だけでやってのけたっていうの? |
リッド | …他に誰がいんだよ。まあ、苦労したのは確かだけどな… |
アスベル | そうか…協力出来なくてすまなかった |
カノンノ | 謝らないで。あの状況じゃ、仕方なかったよ |
ルーク | ま、とにかく結果オーライって事でいーんじゃねーの? |
ルーク | じゃ、リンネル村に戻ろうぜ。メルディ達にも、避難する必要はねーって伝えなきゃなんねーし |
リタ | それにリッド達もちゃんと手当した方がいいんじゃないの?ボロボロよあんた達。早いとこ── |
リオン | 待て。その前に確認しておきたい。氷漬けになった人間は、元に戻るのか? |
カノンノ | それは… |
ミラ | …残念ながら無理だ。湖の氷はいずれ自然に元に戻るが、…命は救えない |
ミラ | すまない… |
リオン | くっ… |
ミラ | リオン、聞いてほしい |
ミラ | ここで起きた現象は、ルイニス街とは別だ。お前の街で起きた現象に精霊は干渉していない |
ミラ | ルイニス街の氷の原因がわからない以上断言は出来ないが、街の人々を救える可能性はある。だから── |
リオン | …わかっている |
リッド | リオン…。氷が溶けたら、せめて丁寧に弔ってもらえるといいな… |
スパーダ | ああ、そうだな。ガイアス陛下にはオレが責任を持って伝えて、頼んでおくよ |
ミラ | ありがとう、スパーダ |
カノンノ | あ、ネックレスが…セルシウスが何か言ってるの…? |
ミラ | …すまない、そう言っている。ひどく心を痛めているようだ |
リオン | … |
ミラ | ニブル湖で失った命は、決して忘れない…これからの行動で償っていきたい──だそうだ |
アスベル | …そうか… |
リッド | …うぐっ…! |
カノンノ | リッドさん!?みんな、お願い。リンネル村でリッドさんとミラさんを休ませてあげて!ひどいケガなの…! |
スパーダ | ったく、喋ってる場合じゃねェだろ!お前らホントにボロボロじゃねーか!…おら、オレに掴まれよ! |
アスベル | 俺も手伝う。みんな、急いでリンネル村へ向かおう! |
Name | Dialogue |
scene1 | 次に目指すは、再び── |
| ゴゴゴ… |
リドウ | こうして高い場所から見下ろすと、俺達の計画は順調に進んでいる事が目に見えてわかる |
リドウ | いい光景だと思わないか? |
??? | ああ、そうだな。くく…大精霊の力がこれほどのものだったとはな |
リドウ | … |
??? | それはそうと、こうやって顔を合わせるのはあの時以来か |
??? | 思わぬところで得た大精霊の暴走という大きな戦力で、当初の計画よりも事は遥か順調に動いている。だが── |
リドウ | … |
??? | 私達のこの計画を揺るがそうと目障りな「虫」が動いている事にはお前も気付いているな、リドウ |
リドウ | 勿論。…けど、脅威じゃない |
リドウ | 今更どうあがこうと、この状況を覆す事は不可能。そうだろ? |
リドウ | そんな一匹の「虫」を気に掛けるより俺達は速やかに計画を成し遂げるべく動く方が賢明ってものさ |
??? | …ふん、いいだろう。確かに現時点ではお前の言う通り、さしたる脅威ではない |
??? | だがいずれ、奴とまみえる日は必ず来る事になるだろう。その時には、必ず息の根を── |
??? | む…? |
リドウ | どうかしたのか? |
??? | 僅かではあるが、大精霊どもの暴走する勢いが弱まった…? |
リドウ | 弱まった…? |
??? | … |
??? | これは一体… |
| |
ミラ | う… |
レイア | ミラ…? |
ミラ | レイア… |
レイア | よかった。目が覚めたみたいね |
ミラ | ここは… |
レイア | リンネル村だよ。まさか、覚えてないの? |
ミラ | いや、完全に覚えていないわけではないが…どうやら村に着いた瞬間気を失ってしまったようだな |
レイア | 村に着くなりその場で倒れ込むくらいボロボロだったもんね |
ミラ | つっ… |
レイア | あ、無理しちゃ駄目だよ。怪我の治療をしたばかりなんだから |
ミラ | いや、今はのんびり寝ている暇など……そうだ、リッドとカノンノは? |
ミラ | 確か、あの二人もかなりの傷を負っていたはずだが |
レイア | リッドも随分大怪我を負ってたみたいだけど、だいぶ回復したかな |
レイア | カノンノの方は、怪我の程度が軽かった事もあってもう何ともないって |
ミラ | …そうか。それはよかった |
| |
リッド | ミラ、起きたか。具合はどうだ? |
ミラ | 私の心配をするよりも自分の具合は大丈夫なのか? |
リッド | ああ、完全復活とまではいかないけどマシになってきたぜ |
ルーク | やっと起きたのかよ。このまま目が覚めないんじゃねーかとヒヤヒヤしたぜ |
ミラ | ああ。皆に心配をかけてしまったな、すまない |
リタ | 別に謝る事ないわよ。これだけの大怪我を負ったんだから少しくらい休んで当然よ |
メルディ | はいな。メルディもそう思うよ |
ミラ | …?スパーダの姿が見えないようだが |
ルーク | ああ、あいつなら俺達と一緒にお前らをここまで運んだ後、カン・バルクに戻ったぜ |
ルーク | ニブル湖の状況を、ガイアスに伝えるんだってよ |
レイア | ミラが目覚めたらよろしく伝えてほしいって言ってたよ |
ミラ | そうか… |
アスベル | リッドとカノンノから詳しい話は聞いた。氷山の中では、大変だったな |
アスベル | …何より、みんなが無事でいてくれて本当によかった |
リッド | ま、結果何とかなったからよかったものの、今思い返したら結構な冷や汗モンだったよな |
カノンノ | うん…もう駄目かもって何度も思ったけど、リッドさんとミラさんのお蔭で何とか切り抜ける事が出来たよ |
カノンノ | …ミラさんが起きたら、改めてお礼を言いたいと思ってたの。本当にありがとう |
ミラ | いや、礼を言いたいのは私も同じだ |
ミラ | リッドがいない間、私の背中を守ってくれたのはカノンノ、お前だからな |
カノンノ | ミラさん… |
リオン | とにかく、これでリプリカームに大精霊の暴走を鎮める効果がある事は立証された |
リタ | しかも、その大精霊があたしらに力を貸してくれる事になるなんてね。想像もしなかったわ |
リッド | 心強い味方が出来たって事は確かだぜ。あいつの力は実際に戦ったオレ達がよく知ってる |
リオン | …カノンノ、例のネックレスは? |
カノンノ | ここにあるよ |
| |
カノンノ | あのセルシウスがネックレスの中にいるなんて、何だか今でも不思議な感じ… |
ルーク | だよな。話は聞いたけど信じられねーっつーか… |
ミラ | だが、彼女はここにいる。紛れもない事実だ |
リオン | … |
アスベル | リオン、どうかしたのか?ネックレスをじっと見つめて… |
リオン | …何でもない。大精霊がその中にいる、と言われても実感がわかない、と考えていただけだ |
リオン | そんな事より、ミラも目覚めた事だ。速やかに次の大精霊のところへ向かうべきではないのか? |
ミラ | そうだな。私達にはゆっくりしている時間など── |
ミラ | うっ… |
アスベル | ミラ…!大丈夫か?気が焦るのはわかるが、無理はするな |
ミラ | いや、そういうわけにはいかない |
ミラ | こうしている間にも、大精霊の暴走による影響で事態は刻々と悪化している |
ミラ | 早く手を打たねば、手遅れになる。今すぐここを発つべきだ |
リタ | そんな事言って、大丈夫なの?そりゃ時間がないのはわかるけど… |
カノンノ | ミラさん…何かあったらすぐに声をかけてね…? |
ミラ | …ありがとう、カノンノ |
リッド | なら、早いとこ行くとしようぜ。次の目的地は… |
リオン | 言うまでもない、大精霊アスカのいるテムザ山だろう |
ミラ | ああ。前にアスカと会った時は結局傷付けるだけ傷付け、暴走を鎮めてやる事は出来なかった |
ミラ | …今度こそ、必ず救ってやりたい |
リオン | … |
リタ | だったら、まずはア・ジュール港ね。そろそろ船も用意出来てるだろうし |
ミラ | 船…? |
アスベル | スパーダが、今回の報告と合わせて船を手配するよう、話をしておいてくれる事になってるんだ |
ミラ | …そうか。では、その厚意に甘えるとしよう |
カノンノ | うん!じゃあ出発しよう |
scene2 | 次に目指すは、再び── |
ミラ | 世話になったな |
レイア | ううん、全然いいの!それより、村を救ってくれて本当にありがとう |
メルディ | 村がなくならなくてメルディ本当に嬉しいよぅ。ありがとな! |
リッド | 氷漬けの心配はなくなったにしろ、まだ異変が収まったわけじゃねえ |
リッド | もし何か起こったら次はお前らが村を守るんだぞ |
メルディ | はいな!マカせてほしーよ、リッド! |
カノンノ | ん?あの人達は…? |
レイア | あ、来た来た!みんなが助けてくれたウサちゃんの飼い主と、そのお母さんだよ |
女の子 | あの…どうもありがとう |
リッド | ああ、あの時のか。もうウサギを逃がすなよ? |
女の子 | うん! |
母親 | みなさんには本当にお世話になりました |
アスベル | 礼を言うのはこちらです。村の再建で大変な時に、こんな大勢で押しかけてしまって |
ルーク | メシも食わせてもらったしな。城のほどじゃねーけど、結構うまかったぜ |
女の子 | また村に遊びに来てね。約束だよ? |
リタ | わかった、約束する。また来るわ |
女の子 | じゃーねー! |
ミラ | それでは私達も行くか。レイア達も、村の再建を頑張ってくれ |
レイア | うん、ありがとう。みんなもね!何かあればいつでも声をかけて。出来る事なら何でもするから |
メルディ | はいな!みんながところにすぐ駆けつけるよ |
アスベル | ああ、その時はよろしくな |
カノンノ | リンネル村の人達、みんな温かくていい人達ばかりだったね |
リタ | あたしらがニブル湖から戻った時は不安で仕方ないって顔してたけど、元気を取り戻したみたいでよかったわ |
ルーク | あの調子なら、割とすぐに再建出来んじゃねーか? |
アスベル | そうだな。彼らのためにも、一刻も早く他の大精霊の暴走も鎮めて平和な世界を取り戻さないとな |
カノンノ | うん…! |
ミラ | よし、では行こう。ここから南下すればア・ジュール港、地割れで足場が悪いから注意して── |
| ガサガサ… |
カノンノ | 何…?今、そこの草むらで何か… |
| |
| ガルル… |
リオン | 魔物か…! |
| グオオオオッ! |
scene1 | すれ違う気持ち |
??? | 大精霊の暴走が弱まる、可能性として考えられるとすれば… |
リドウ | 各地にいる大精霊の内、自我を取り戻した奴がいるって言いたいわけ? |
??? | それしか考えられん |
??? | …だが、今の状況で大精霊が自発的に自我を取り戻す事は不可能だ |
リドウ | 考えられるとしたら、誰かが大精霊に自我を取り戻させた、という事かな |
??? | 他に考えられる可能性はない |
リドウ | … |
??? | あの「虫」の仕業か?…いや、奴の力をもってしても、成し得るとは思えない。だとしたら… |
??? | …リドウ。お前が襲撃したという例の女…確か、取り逃がしたという話だったか |
リドウ | 部下からそう報告を受けている。その物言いだと、あの女が暴走を鎮めたと思っているわけだ |
??? | そう考え得る事が出来る |
リドウ | へえ… |
??? | くっ!どのような手立てを用いたのだ… |
??? | 大精霊の暴走は、今や計画遂行には欠かせない「手段」の一つと言える |
??? | これらを止められるわけにはいかない。断じてな |
??? | …リドウ、今すぐ例の女を捜し出し始末する。お前も手を貸せ |
リドウ | その必要はないさ |
??? | …何? |
リドウ | 既に手は打ってある |
リドウ | …と、そういえば、今回君を呼び出した理由についてまだ何も話していなかったな |
??? | 呼び出した理由…だと? |
リドウ | ああ、世界各地を襲撃して回るのはもうやめにしよう、そう言いに来たんだ |
??? | …!貴様…それはどういう意味だ |
??? | 私達の行いはマナ枯渇を促進…即ち、大精霊の暴走を促進させている |
??? | 動く事をやめれば、どうなるかは察しがつくはずだが |
リドウ | へぇ…やっぱり、そこまで気付いていたんだ。さすがだな |
リドウ | …だからこそ、俺達は襲撃をやめて、静かに「その時」を待つべきなんだよ |
リドウ | 大精霊の暴走が鎮まる時、俺達は新たな力を手に入れる… |
リドウ | くくく、楽しみだね… |
??? | … |
??? | …どういうわけか、説明してもらおうか |
| |
カノンノ | ア・ジュール港に着いたね |
アスベル | 船の手配は既に整っているはずだ。…と言っても港は案外広いし探すのは大変そうだな |
ルーク | なら聞いてみりゃ早いだろ。おい、そこのお前! |
リタ | お前って…あんたね、少しは言い方ってもんを── |
ア・ジュール兵 | お前達は…! |
ミラ | 私達はガイアスの知り合いだ。船の手配の話が通っているはずだが、どこへ行けばいい? |
ア・ジュール兵 | … |
リッド | ん?もしかして、話が通ってねえのか? |
ア・ジュール兵 | …話は聞いている。船に乗りたければ桟橋へ行け |
ルーク | けっ、何だよあいつ。感じ悪ぃな |
リタ | あんたの言い方が気に障ったんじゃないの? |
アスベル | …とにかく、話は通っているみたいだし桟橋の方へ行ってみよう |
カノンノ | うん、そうだね |
ジェイド | ──そうそう、船の操舵係に、これを渡すのを忘れないでくださいね |
アニス | …… |
アニス | …大佐ぁ、本当にここまでしてあげる必要あるんですか? |
ジェイド | これが私達にとっても大事な作戦である事はわかっていますよね、アニス |
アニス | それはわかってますけどぉ… |
アニス | … |
ジェイド | …釈然としない様子ですね。備えあれば憂いなしという奴ですよ |
アニス | …でも、大佐── |
ジェイド | あなたの納得出来ない気持ちもわからないではありませんがね、アニス |
ジェイド | ですが、これは個人の感情より重要な話です。あなたも軍人ならそこは割り切るよう願いますよ |
アニス | … |
リタ | ジェイド!?何でまたあんたがここに… |
ジェイド | またご挨拶ですねえ。皆さんの船を用意していたんですよ。スパーダから話は聞いています |
カノンノ | ジェイドさんも、一緒に行くの? |
ジェイド | そうしたいのは山々ですが、あいにくとやる事が山積みでしてね。宮仕えの悲しいところです |
ジェイド | ウィンドルまでは私の部下が案内しますのでその点はご心配なく |
ルーク | 部下ね。ま、誰でも構わねーけどよ……ん?って、アニスじゃねーか |
アニス | ほえ?ルーク様!?どうしてこんなところに… |
ジェイド | おや、そういえばアニスには話していませんでしたね |
ジェイド | ルークも大精霊の暴走を鎮めるためにウィンドルの皆さんと行動を共にしているんですよ |
リタ | 別にここにいる全員がウィンドルの人間ってわけじゃないけどね |
アニス | … |
ルーク | おいアニス、お前が俺達をウィンドルまで案内してくれるのかよ? |
アニス | それは…うー、大佐に聞いてください |
ルーク | …何だ、アニスの奴。いつもと何か様子が違ったな。怒ってるみたいっつーか… |
ミュゼ | どうしてそんな態度になるか、ちょっと考えればわかるんじゃないかしら? |
リタ | ミュゼ!?あんたまで来てたわけ!? |
リッド | ちょっと考えればわかるって、どういう意味だ? |
ミュゼ | 今回のウィンドルとの一時休戦を快く思わない者がこの国には大勢いるという事よ |
ミュゼ | ア・ジュールの民は、ウィンドルを許したわけじゃない。そこは忘れないで欲しいわね |
アスベル | … |
ルーク | まだそんな事言ってんのかよ。今は過ぎた事なんか構ってる場合じゃねーだろ |
ミュゼ | あなたはキムラスカの人間でしょ?なら、ア・ジュールの人間の気持ちはわからないでしょ? |
ルーク | 何だと、てめえ…! |
アスベル | …やめろ、ルーク |
ルーク | ちっ…んだよ、ったく… |
ミュゼ | ミラ、あなたもあなたよ。どうしてこんな連中と一緒に行動するの |
ミラ | 私はこの世界を救うために、必要だと思う事をしている。何も不思議な点はないはずだが |
ミラ | ミュゼ、お前には世界を救いたいという気持ちはないのか? |
ミュゼ | … |
カノンノ | ミュゼさん… |
アスベル | 心配するな、カノンノ。これはちょっとした気持ちのすれ違いだ。いつか必ずわかり合える… |
リオン | …そうには見えんが… |
ジェイド | まあ、うちもいろいろですから。とにかく、船へ向かいましょうか。準備は既に整っていますので |
リッド | ああ、そうしてくれ |
ジェイド | ちなみに、ウィンドルまでは迂回する航路を使います |
ジェイド | 最短航路の海域が、どうやら大荒れのようでしてね。無理はしない方がいいでしょう |
アスベル | 構いません。急いでいるとはいえ、その海域で何かあっては元も子もありませんから |
リタ | …あまり揺れないといいんだけど。船酔いはもうこりごりだわ |
ジェイド | 迂回航路なら、その辺りも大丈夫ですよ。…では、こちらへ |
scene2 | すれ違う気持ち |
ルーク | ジェイドが言っていた通り、海、全然荒れてねーな。迂回して正解だったってわけか |
リッド | 今のところはな。でも油断は禁物だぜ。海の上は天候も変わりやすいって言うし |
リタ | このまま何事もなくウィンドルまでたどり着く事を祈るわ… |
ア・ジュール兵 | … |
アスベル | あ、ちょっといいかい?ウィンドルまで、あとどれくらいだろう? |
ア・ジュール兵 | … |
アスベル | あ… |
カノンノ | …行っちゃったね。聞こえてなかったのかな…? |
ルーク | この距離で聞こえねーはずねえだろ。無視しやがったに決まってるぜ |
ルーク | …けっ、相変わらず感じ悪ぃな |
リッド | せっかく休戦したってのにこれじゃ、本当の和平実現は当分先になりそうだな |
アスベル | …仕方ないさ。つい先日まで、彼らにとってウィンドルは憎き敵国だったんだ |
アスベル | そう簡単に、全てを水に流せるはずがない |
カノンノ | … |
ミラ | カノンノ、どうかしたのか?何か考え込んでいるようだが |
カノンノ | あ、うん…アスベルと会ったばかりの頃の事を思い出してたの |
カノンノ | あの時も、ア・ジュールからウィンドルまで、こうやって船に乗ったなって |
カノンノ | ずっと船倉に隠れてたから、外の景色は見られなかったけどね |
リタ | 船倉?何でそんなところに…って、まさか、忍び込みでもしたわけ!? |
アスベル | う…それしか方法がなかったんだ。俺の立場も明かせなかったし… |
リッド | だからって、さすがに密航はまずいんじゃねえのか?お前一人ならまだしも… |
カノンノ | でも、アスベルはちゃんと私の事もエリーゼの事も守ってくれたよ? |
ルーク | おいおい、カノンノだけじゃなくエリーゼも一緒だったのかよ。ったく、ガキ連れでよくやるぜ… |
アスベル | し、仕方ないだろ!みんなを守りつつ、安全にバロニアへ帰るにはあれしか方法がなかったんだから |
アスベル | ルークだって、俺の立場に置かれたらきっと同じようにしていたさ |
ルーク | やるかっつーの、んな事 |
アスベル | いや、やるさ!それしか手段がなかったんだからな |
リオン | 全く、どいつもこいつも騒がしい馬鹿ばかりだな |
リタ | ここはあんたに賛成するわ。くだらない事で言い争って本当バカっぽい… |
カノンノ | …でも、こんな風に大精霊を捜して世界中を回る事になるなんて、あの時は想像もしてなかったな… |
ミラ | 不安か? |
カノンノ | …不安といえば、そうなのかもしれない |
カノンノ | ミラさんとリッドさんのお蔭で何とか無事にセルシウスを元に戻す事は出来た |
カノンノ | …けど、私がいた事でミラさんとリッドさんは酷い怪我を負ったし… |
カノンノ | 大精霊の暴走を鎮めるのに私の力が必要だとしても、私のせいで誰かを傷付けたくはないよ |
リッド | カノンノ… |
ミラ | 私の傷の事は気にするな。あれは油断していただけの事だ |
カノンノ | でも… |
ミラ | …リッドが倒れた後、二人でセルシウスに立ち向かった時の事を覚えているか? |
ミラ | 迷いが消えたお前は、あの時の私にとってとても心強い存在だった。だからこそ、背中を預けられた |
ミラ | …カノンノ。お前は強い心を持っている。それを忘れないで欲しい |
カノンノ | ミラさん… |
リッド | そうだぜ。セルシウスを相手にあんだけやり合えたんだ、もっと自信を持っていいんじゃねえのか? |
カノンノ | リッドさん…。二人共、本当にありがとう |
カノンノ | あ…ネックレスが… |
ミラ | セルシウスがお前に語りかけている。お前の心まで傷付けてしまった事を謝りたいそうだ |
ミラ | お前のように苦しむ人間をこれ以上生まないためにも、他の大精霊の事も救い出してほしい、そう言っている |
カノンノ | セルシウス、あなたもありがとう…。あなたの気持ちはわかってる、一緒に力を合わせて頑張ろうね |
ルーク | 何だあいつら、急に仲良くなりやがって気持ちわりーな |
アスベル | 仲良く…? |
アスベル | ふっ、確かにそうかもしれないな |
| |
アスベル | …よーし、カノンノ。これを機に、俺以外のみんなの事も名前だけで呼んでみたらどうだ? |
カノンノ | …え?アスベル、突然どうしたの…? |
アスベル | その方が、より「仲間」って感じがするだろ?お前も言ってたじゃないか |
ルーク | そういや、カノンノってアスベル以外の奴の事は「さん」付けで呼んでるよな |
アスベル | 元々は俺の事もアスベルさんって呼んでたんだ |
アスベル | だが、堅苦しいのはよそうって事で呼び名を改めたんだ。な、カノンノ? |
カノンノ | うん |
リッド | へぇ。言われてみりゃ確かに堅苦しいってのもわからなくはねえが…ま、オレはどっちでも構わねえぜ |
リタ | 別にカノンノの呼びやすいように呼べばいいんじゃないの? |
カノンノ | 本当?じゃあ… |
カノンノ | ふう… |
カノンノ | …リッド、ミラ、ルーク、リタ、リオン、それにアスベル…みんな、改めてよろしくね! |
ミラ | ああ |
リタ | はいはい、よろしく |
ルーク | 俺もそれでいいぜ…って、何だよ、リオン。お前も返事くらいしろよな |
リオン | …僕は呼び名なんかに興味はない。好きにすればいいだろう |
ルーク | んだよ。相変わらずノリの悪い奴── |
| |
| ズズーーン! |
リッド | っと!?何だ、この揺れは! |
リタ | まさか、暗礁にでも乗り上げたんじゃ…? |
リオン | …!違う、あれを見ろ! |
| |
| ガアアアアアッ! |
ルーク | ちっ、魔物かよ! |
ミラ | 船の上は揺れるから、態勢は崩さないように気をつけろ! |
scene1 | 危難の海 |
リオン | …終わったか |
リッド | 何とかな。ったく、突然何だって── |
| ズズーーン! |
アスベル | 今度は何だ…!?船体が急に傾いたぞ? |
リタ | まさか、また魔物!? |
ア・ジュール兵 | 大変だ!船倉から浸水して船が沈みかかっているぞ! |
リオン | まさか、さっきの魔物の仕業か? |
カノンノ | そんな…! |
ルーク | じょ、冗談じゃねーぞ!こんな海のど真ん中で沈んじまったらおしまいじゃねーか! |
ミラ | なら、今出来る事をするしかないだろう。何か方法はないのか? |
ア・ジュール兵 | 船倉の穴はいったん塞ぐが、それでもこの船は港までは持たないだろう |
ア・ジュール兵 | とにかく最短航路で陸地を目指し、なるべく陸に近いところで救命艇に乗り換えるしかない |
アスベル | 最短航路って、確か… |
リオン | ああ、海域が大荒れになっているという話だったな |
リタ | ちょっと…そんな危ないところに浸水した状態で突っ込むなんて自殺行為じゃない! |
ア・ジュール兵 | このまま迂回航路で目的地を目指しても確実に船は沈む… |
ミラ | それしか方法がない、という事だな。…わかった、ここはお前達の判断に任せよう |
ミラ | 船の事は私達より彼らの方が専門だ。従うしかあるまい |
ルーク | くそ、何でこんな事になんだよ…。いいかお前ら、何としても絶対無事に陸地にたどり着けよな! |
ア・ジュール兵 | お前に言われるまでもない! |
リッド | やれやれ…一難去ってまた一難とは、この事だな |
リオン | … |
カノンノ | お願い…どうか無事に目的地に着いて…! |
scene2 | 危難の海 |
| ズズズ…! |
ルーク | うおっ!?ますます船体が傾きやがった! |
リオン | 喫水線もだいぶ上がっている…!かなり浸水が進んでいるようだ |
リッド | おいおい、間に合うのかよ… |
アスベル | もう少しだ…もう少しだけ、もってくれ! |
ミラ | む…、あれは…? |
リタ | 何よあれ…海が割れてる!?ちょっと、あれってまさかルーク達が言ってた時空の歪み…? |
ルーク | 言われてみりゃ確かに似てるような…マジかよ、海にまであんなもんが…まるで馬鹿でかい滝みてーじゃねえか |
リッド | まさか大陸だけじゃなく海にまであんなモンが出来てたとはな… |
カノンノ | この辺りの海域が荒れてるのは、あの海面に発生した亀裂のせいだったのかも… |
| ザアァァァ…! |
カノンノ | きゃあっ!? |
アスベル | カノンノ、大丈夫か! |
ルーク | おい、何やってんだよ。ちゃんと船を操縦しろ! |
ミラ | いや、あの滝の勢いに飲まれ船が流されているのだ |
リオン | くっ…このままじゃ船体ごとあの亀裂に飲み込まれてしまう…!もっと出力を上げられないのか!? |
ア・ジュール兵 | …ぐああ! |
リオン | おい、何かあったのか?…! |
| グオオオオオッ! |
リタ | なっ、魔物!?こんな時に何でよ、もう! |
リッド | …仕方ねえ、一気に片を付けるぞ! |
scene3 | 危難の海 |
リタ | ファイアボール! |
| ズバーン! |
| グオオオオッ |
ルーク | ったく、こんなタイミングに出てきやがって、空気読めっつーの! |
リッド | …っと、船はどうなった?亀裂から少しは離れられたのか? |
| ザアァァァ…! |
リオン | いや、離れるどころかますます亀裂に近付いている |
リタ | 何かさっきより船体の傾きもひどくなってない?まずいわ、このままじゃ… |
ミラ | む…?そういえば、アスベルとカノンノの姿が見えないようだが… |
カノンノ | みんなー!大変! |
リタ | 何、カノンノ!?どうしたの? |
カノンノ | 船を操縦していた兵士さんが、意識を失ってたのさっきの魔物にやられたみたい… |
リッド | 何だって!?…そりゃ、亀裂に近付くわけだ。確か舵は甲板にあったよな。急ぐぞ! |
カノンノ | うん |
| |
アスベル | おい、しっかりしろ! |
ア・ジュール兵 | う…うう… |
ミラ | ここにいたか、アスベル |
リオン | どんな具合だ?舵を取れる状態なのか? |
アスベル | とりあえず、応急処置を施した |
アスベル | 意識は戻ったみたいだが…腕に酷い傷を負っていてとても舵を取れる状態じゃない |
ルーク | なっ、…それじゃあこの船の操縦は誰がすんだよ!俺は出来ねーぞ? |
ア・ジュール兵 | う、うう…もう駄目だ… |
ア・ジュール兵 | よりによって、ウィンドルの連中と一緒に死ぬ事になるなんて… |
アスベル | 諦めるな!まだ終わりじゃない! |
ア・ジュール兵 | 気休めを言うな…。この船の操縦士は俺一人だ、もうあの亀裂から逃れる術はない |
アスベル | 大丈夫だ。俺が船を操縦する |
カノンノ | アスベルが?そんな事出来るの? |
アスベル | この人は腕を負傷しているが、幸い意識はあるようだ。やり方を聞いて、俺が舵を取る |
ア・ジュール兵 | …!? |
アスベル | 頼む、教えてくれないか! |
ア・ジュール兵 | … |
アスベル | 死んでしまえばそれまでだ、今は敵も味方も言ってられないだろう。世界を救うために協力してくれ…! |
ア・ジュール兵 | …。…仕方がない。いいか、まずは―― |
アスベル | ありがとう!だいたいは把握出来たよ |
ア・ジュール兵 | うう…不覚だ |
アスベル | …こんなところで、誰も死なせたりはしない。全員でウィンドルまでたどり着こう |
| ザアアアアア! |
ルーク | うぉっ!?ますます引っ張られてくぞ! |
リッド | …よし、アスベル。早いとこ頼む。このままじゃオレ達全員があの亀裂に飲み込まれちまう |
アスベル | わかった |
| |
リタ | どう?何とかなりそう? |
アスベル | くっ…操縦は問題なさそうだが亀裂の勢いが強すぎて…思うように進まない! |
リタ | そんな… |
カノンノ | …!そうだ…セルシウス、お願い、力を貸して…! |
| ピシィィィッ…! |
| ザァァ…… |
リッド | 滝の一部が凍って…亀裂に吸い込まれる水の勢いが弱まってるぞ |
ルーク | おし!これなら何とかなるかもしれねえ!アスベル、今の内だ! |
アスベル | わかってる!何とかしたいのは山々なんだが… |
リオン | ちっ…まずい、船の浸水も深刻だ。このままだと沈没も時間の問題だろう |
アスベル | …そうだ!船が浸水しているところも、凍らせればいいんじゃないか? |
リタ | やってみる価値あるわね |
カノンノ | セルシウス、お願い…! |
| ピシッ…! |
| … |
| ズ…ズズ… |
リタ | …駄目か。表面が凍っているみたいだけど、浸水の勢いの方が強いわ |
アスベル | くっ!時間稼ぎにしかならないって事か |
カノンノ | … |
リタ | 亀裂に飲み込まれるか、沈没か…そんなの、どっちもごめんよ!何とかならないの!? |
| ドドド… |
ミラ | …この音は? |
リッド | …おい!向こうから何か来るぞ! |
リオン | あれは…ア・ジュールの船か? |
| |
ジェイド | 皆さん、急いでこちらへ!アニス、牽引ロープを! |
アニス | わかってます! |
| ヒュンッ! |
| |
ルーク | ジェイドにアニス!?お前らどうして… |
| |
ジェイド | その説明は後です!皆さん、こちらに乗り移ってください |
| |
リッド | わかった。みんな、急げ! |
ア・ジュール兵 | う… |
アスベル | よかったな、これで助かるぞ!よし、俺の肩に掴まれ。少し傷が痛むかもしれないが辛抱しろ |
ア・ジュール兵 | あ、ああ… |
| |
| ズズズ… |
リタ | 沈んでく…。あと少し遅かったら、あたしらもあの船と一緒に沈んでたわね |
| |
ジェイド | 何とか間に合ったようで何よりです。私としても来た甲斐がありました |
ミラ | 礼を言うぞ、ジェイド。…だが、どうして私達の居場所がわかったのだ? |
ジェイド | ああ、これのお蔭です。出航前にあなた方の船に、これと同じものを仕込ませていただきましてね |
リオン | これは、通信機…か? |
リッド | 通信機って、そいつはどういう事だ?オレ達の話を盗聴してたって事かよ? |
ジェイド | 盗聴とは人聞きの悪い。万が一に備えての処置ですよ |
ジェイド | 私にしてみれば、皆さんが互いにどう呼び合うかなんて別にどうでもよい事ですから |
ルーク | しっかり盗み聞きしてんじゃねーか! |
ジェイド | まあともあれ、現にこうして功を奏したわけですし、それでよかったとしませんか? |
アスベル | …確かに、結果救われた事には変わりませんね。ありがとうございます |
リタ | 相変わらず、いちいち鼻に付くけど… |
リッド | アスベルとセルシウスにも感謝しねえとな |
アスベル | 俺はあまり大した事は出来なかったけどな…。まあ、全員無事で本当によかったよ |
ア・ジュール兵 | … |
| |
ジェイド | さて、危険も去った事ですし、このまま皆さんをウィンドルまでお送りしましょう |
ジェイド | こちらの船は最新式で、出力も大幅に向上していますから、今度こそ快適な船旅を約束しますよ |
ルーク | だったら最初から、こっちに乗せろっつーの |
ジェイド | まあそう言わずに。こちらにもいろいろと事情がありましてね |
ジェイド | それでは改めて…ウィンドルへ向けて全速前進! |
scene1 | マナの異変 |
??? | … |
??? | …まさかと思っていたが、実際に大精霊が姿を消している以上、事実と考えるしかあるまい |
??? | だが、どういう理屈だ…?あの状況から自ら正気を取り戻す事は不可能のはず。だとすれば── |
??? | …あの女か |
??? | … |
??? | いずれにせよ大精霊の存在しないこの場に用はない── |
??? | …いや |
??? | マナの減少する速度も緩やかになっている |
??? | 大精霊の暴走が鎮まったとはいえ、それだけでマナ減少がここまで急速に緩やかになるとは考えにくい |
??? | 考えられる可能性は一つ |
??? | … |
??? | 奴め…何を企んでいる |
| |
ジェイド | 長らくご苦労様でした。ウィンドル港に着きましたよ |
ルーク | やれやれ…やっとかよ |
リタ | ア・ジュール港を出航した時は、こんな大冒険になるとは思わなかったわ… |
アスベル | お忙しいところ、わざわざありがとうございました |
ジェイド | いえいえ。こうして無事にお送り出来て、よかったですよ |
ジェイド | あなたの身にもし何かあれば、リチャード陛下の心象が著しく悪化した事でしょうしね |
ア・ジュール兵 | あの…アスベル殿… |
カノンノ | あ、あなたは船を操縦してた── |
ア・ジュール兵 | …さっきはありがとうございました。あなた達のお蔭で、何とかこうして生き延びる事が出来ました |
アスベル | 礼ならカーティス大佐に。結局のところ、俺は何も出来ていませんから |
ア・ジュール兵 | いえ、私の心が折れそうになった時、懸命に励ましてくださいました |
ア・ジュール兵 | 私は…あなた達ウィンドルの方々の事を誤解していたかもしれない |
ア・ジュール兵 | あなた達のこれからの無事を心よりお祈りしています。それでは…! |
ジェイド | いがみ合っていた者同士が、共に苦難を乗り越える事で信頼を育む…美しい光景ですねぇ |
アニス | … |
ジェイド | ほら、アニスもお礼を言わないと。あの兵士は、あなたの直属でしょう |
アニス | …ありがとうございました |
アスベル | あ、いや…どういたしまして |
ジェイド | それでは、私達はア・ジュールへ戻りますね |
ミラ | 気をつけて帰ってくれ。いろいろと助かった |
ジェイド | いえいえ。またお会いする機会を楽しみにしていますよ |
カノンノ | …アスベルが言ってた通りみんなただ、気持ちがすれ違ってしまってるだけなのかもしれないね |
アスベル | …ああ。時間はかかるかもしれないがいずれは手を取り合う事が出来る。改めて俺も、そう感じたよ |
ミラ | 何はともあれ無事ウィンドルへ到着した事だ。早速テムザ山へ向かうとしよう |
リオン | …ああ |
scene2 | マナの異変 |
ルーク | あれから結構歩いたけど、テムザ山はまだなのかよ。たりぃ… |
ミラ | 安心しろ、もうすぐ着く。この道をさらに南へ進めば──…ん? |
リオン | どうかしたのか? |
ミラ | マナに変化が生じている…これは一体… |
カノンノ | 変化…? |
ミラ | … |
ミラ | …やはり、気のせいではなさそうだ。わずかではあるが、マナの減少速度が緩やかになっている |
ミラ | 無論、完全に止まったわけではないが… |
アスベル | セルシウスの暴走を鎮めたから、という事じゃないのか? |
ミラ | 確かにセルシウスの暴走を鎮めた時もマナの減少速度は変化したが、その時よりさらに遅くなっているのだ |
ミラ | …セルシウスの暴走を鎮めた以外にも、マナに影響する何かが起こったという事か…? |
リッド | …何かよくわかんねえけど、マナの減り具合がマシになったって事なら、いい事じゃねえのか? |
ミラ | だといいが… |
リオン | 腑に落ちない点があるにしろ、原因がわからないなら、今考えたところで仕方ないだろう |
アスベル | …それもそうだな。確かに気がかりではあるけど、いい方向に動いているのかもしれない |
アスベル | これによって俺達のやるべき事が変わるわけじゃないし、今はとにかくアスカの暴走を鎮める事を考えよう |
ミラ | …ああ、そうだな。では、気を取り直して先へ進むと── |
| ガサ… |
リタ | みんな、気をつけて!すぐ近くに何かいる! |
ルーク | 魔物か!? |
リッド | …そのようだぜ。みんな、気をつけろ! |
scene1 | アスカ、再び |
ミラ | ようやく、戻って来られた… |
ルーク | ここがテムザ山か。そういや、クレス達と合流する前近くを通ったっけな |
リッド | ああ、何かでっけえ山があるとは思ってたけど、まさかここに大精霊がいたなんてな |
アスベル | ああ、俺も何だか信じられない、というか…不思議な気分だ |
カノンノ | 不思議な気分? |
アスベル | テムザ山には今まで何度も来た事があるんだ。前回は確か、ユーリと一緒だった |
ルーク | ユーリと?男同士でピクニックでもしてたのかよ? |
アスベル | まさか!騎士団を抜けたばかりのユーリと、行動を共にしていたんだ |
アスベル | フレンがユーリを追って来て、二人が戦う羽目になってしまって…大変だったんだぞ |
リタ | ふーん、あの二人が…そんな事があったのね |
リッド | リオンは、前にミラと一緒にここへ来て、アスカとやり合ってんだよな? |
リオン | ああ |
リオン | だが… |
ルーク | セルシウスでうまくいったんだ。前の時の失敗は気にしなくていーんじゃねーの? |
ルーク | リプリカームの効果はお墨付きなんだろ? それにこの俺もいるんだしな! |
リタ | …はあ、あんたのその自信は一体どこから沸いてくるんだか… |
ミラ | … |
カノンノ | ミラ、一緒に必ずアスカを救ってあげようね! |
ミラ | …ああ、そうだな。よし、では山を登るとしよう |
ミラ | アスカは中腹にある洞窟にいた。まずはそこを目指そう |
ルーク | よーし、待ってろよ、アスカ! |
scene2 | アスカ、再び |
リタ | ここが、例の…? |
アスベル | こんなところに洞窟があったなんて初めて知ったよ |
リッド | 異変の影響であちこち地形が変わっちまってる。こいつが元々あったモンかはわからねえけどな |
ミラ | …皆、気を付けろ。周囲の気がかなり張り詰めている |
ルーク | この奥にアスカがいるっつー事か |
カノンノ | うん、間違いないみたい…。ネックレスも反応を示してる |
リオン | … |
ミラ | …待てリオン、単独で動くのは危険だ。以前とは違うただならぬ気配を感じる |
ミラ | アスカの暴走がより進行しているのだろう… |
アスベル | 暴走が進行!?…確かに、前にミラ達がここへ来てから時間も経っているが、でもだからって… |
ミラ | それ以外にも、思い当たる事はある… |
リオン | …あの男か |
リタ | あの男って? |
ミラ | 前にここへ来た時、妙な男に出くわしたのだ |
ミラ | 奴は、魔導器とおぼしき剣を向けアスカに何かを施していた |
ルーク | ブ、魔導器だって!?それって一体… |
リオン | その男がアスカのマナを乱し暴走を促進させようとした。…僕達はそう考えている |
ミラ | 具体的にその男が何をしていたか確証がない分、あくまで仮説にすぎないがな |
カノンノ | そんな… |
リタ | 魔導器で精霊に干渉…?そんな魔導器があったとして、どうしてそんな事を… |
リッド | さあな。想像もつかねえよ。リタは魔導器に詳しいんだろ? |
リッド | その魔導器を使ってるヤツに心当たりはねえのか? |
リタ | わからない…。研究者だとしてもそんな魔導器が存在するなんて聞いた事ないし… |
リタ | あ! |
リタ | 妙な男、で思い出したけど、あたしも前にア・ジュール港でわけ知り風な怪しい男に会ったわ |
アスベル | わけ知り風って、どういう事だ? |
リタ | 今回の一連の出来事について、何か知ってそうな感じだった |
リタ | 一連の戦いの裏事情を知る…あるいは、例の第三者に直接何らかの関わりを持っているのかも… |
リタ | そういえば、そいつの事はジェイドが部下を使って調査してくれてるはずなんだけど、どうなってんのかしら |
ミラ | いずれにせよ、今回の一連の出来事に誰かの陰謀が関わっている事は明らかだ |
ミラ | 私の見た男とリタの会った男が、何者かわからないにせよ、警戒は怠らないに越した事はない |
ミラ | リドウの事もあるしな |
ルーク | ん?リドウ?何だそれ、初耳だぜ? |
ミラ | 私を襲撃した男だ。精霊回収を目的としているが故に邪魔な存在となる私を消そうとした |
リオン | … |
カノンノ | そんな…一体何のために… |
ミラ | 目的まではわからない。…だが、私とは相反する目的を持ち動いている事は確かだ |
リタ | …なら、そのリドウって奴と例の怪しい男が共謀してる可能性も無きにしも非ずって事ね |
ミラ | ああ、私もそう考えていた。二人は、明らかに私達とは敵対した行動をとっているからな |
ルーク | ま、リドウだか何だか知らねーがその辺りの事は、ユーリやクレスが調べてんだし、大丈夫じゃねえの? |
リッド | ああ、だといいんだけどな… |
| |
カノンノ | あ…みんな!ネックレスの光が急に強く… |
ミラ | …これは警告だ。アスカが近付いて来ている…! |
リオン | 僕達の存在に気付いたようだな |
アスカ | ウッ…ウオオォォォォォォッ! |
アスベル | …!これはアスカの──…くっ、何だ!?このすさまじい風は一体…!? |
リッド | おい、まさかあれが…! |
アスカ | グオオオーーーッ! |
アスベル | これが大精霊アスカか… |
リタ | すごい迫力…。さすがは大精霊ってとこね |
カノンノ | でも、何だか苦しそう |
ルーク | 苦しんで…そういやクロノスも苦しんでたよな。…って事は、待てよ、あの時のあいつも暴走…? |
アスカ | グオオオオオッ! |
ミラ | アスカ…。今度こそ必ず救い出してみせる! |
| |
アスカ | グアアアアアアアアアッ! |
リッド | 来るぞ! |
scene1 | 引き離された仲間 |
ミラ | アスカ、これで最後だ…目を覚ませ! |
| ザシューーーッ! |
アスカ | グア… |
アスカ | ガ… |
ルーク | はあ…はあ…よし、これで大人しく── |
アスカ | グオオオオッ! |
アスベル | くっ…駄目か! |
リッド | あれだけの攻撃を与えたのに…まさか効いてねえとか言うんじゃねえだろうな…! |
リオン | …いや、アスカをよく見てみろ。傷はある。効いていないはずがない |
ミラ | リプリカームを与えるためにもアスカの暴走を一時的に鎮める事は必要不可欠だ… |
ミラ | もう一度、攻撃を仕掛ける…皆、援護を頼む! |
ルーク | しょうがねえな、任せろ! |
リタ | あたしは遠方から援護するわ!カノンノ、あんたもここにいなさい |
カノンノ | うん、わかった |
| ズドッ! |
アスベル | ぐっ…! |
アスカ | グアアアア! |
リオン | ちっ… |
アスカ | ガアッ!! |
ミラ | くっ…アスカ!お前を傷付ける事は本意ではない… |
ミラ | 頼む、早く大人しくなってくれ…! |
| ザシュッ!! |
アスカ | グア… |
リッド | ミラの攻撃でアスカが怯んだ!みんな、今の内だ! |
ルーク | よし、行くぜアスカ!! |
アスカ | グアア… |
アスカ | グアアアアアアッ! |
ルーク | な、おい…!どこに行きやがんだ── |
カノンノ | きゃあっ!? |
リタ | なっ、カノンノがアスカに捕まったわ…! |
アスベル | カノンノ!!アスカ、カノンノを離すんだ! |
ルーク | おい、あの野郎、まさかあのまま飛び去ろうっつーんじゃねーだろうな!? |
ミラ | そうはさせるか! |
| ガシッ |
アスカ | グオオオーーッ! |
リオン | ミラ!アスカに掴まって、何をする気だ! |
アスベル | 更に高く…!カノンノをどこへ連れて行く気だ!? |
リッド | ミラ!無茶すんな!早く降りろ! |
| バサァッ、バサァッ |
アスベル | おい、待て!ミラ、カノンノ! |
アスベル | カノンノーーッ! |
ルーク | ミラーーッ! |
| |
カノンノ | お願い、話を聞いて!アスカ! |
ミラ | カノンノ、今は何を話しても無駄だ。それより振り落とされないようしっかりと捕まっていろ |
ミラ | 隙を見て、お前を安全な場所へ連れて行く、だから今は── |
アスカ | グアアアアーーッ! |
ミラ | なっ…!!このまま振り落とす気か!? |
カノンノ | お願いアスカ、ミラを落とさないで!こんな高さから落ちたら…! |
アスカ | クアアアアーーッ! |
ミラ | くっ…!落ちる!カノンノ、私が行くまで、無事で…! |
カノンノ | そんな… |
カノンノ | ミラ!ミラーーーーーーッ!! |
scene2 | 引き離された仲間 |
リオン | アスカはこの洞窟の天井の穴から飛び去った。おそらく山頂の方を目指せば… |
ルーク | 途中で見つけられるかもしれねーって事だよな?よし、なら早いとこ追いかけようぜ! |
リッド | ああ、それがいい。早く追いつかねえと見失っちまう |
リタ | あたしらは大精霊の居場所を感知出来ないしね…。急いだ方がいいわ |
アスベル | …カノンノ、ミラ。すぐに行く、どうか無事でいてくれ… |
| |
ミラ | うっ…ここは… |
ミラ | …ああ、そうか私は落下して──… |
ミラ | …そうだ、カノンノ!? |
ミラ | うっ…!落下した時の衝撃で…傷を負ったか |
ミラ | だが、幸い大きな傷にはなっていないようだ |
ミラ | 四大… |
ミラ | 心配をかけてすまない、私は大丈夫だ。カノンノもアスカも、必ず救ってみせる…! |
ミラ | お前達も落下の衝撃から私を守ってくれたのだろう?弱っているのに、すまないな |
ミラ | …いや、だが休む暇はない。カノンノを追わねば… |
ミラ | 世界や大精霊を救うにはカノンノの存在は不可欠だ… |
ミラ | 取り返しのつかない事態になる前に何としても…! |
ミラ | … |
ミラ | …アスカは山頂の方か。よし、早速── |
| カラ… |
ミラ | む…?頭上から石が… |
| |
| グオオオオッ! |
ミラ | …くっ、魔物か!あいにくだがお前と遊んでいる時間はない! |
scene1 | 想いの果てに |
ミラ | ようやく山頂にたどり着いたか。アスカとカノンノはどこだ…?この辺りにいるはずだが… |
アスカ | ギィィッ |
ミラ | ここにいたか…。アスカ、今お前をその苦しみから救い出してやるぞ。だからカノンノを… |
ミラ | …!アスカ…カノンノはどこだ?彼女をどこへやった!? |
ミラ | まさか…! |
アスカ | グアアッ! |
ミラ | くっ…馬鹿な、何て事を…!! |
ミラ | カノンノはお前を救える唯一の存在、それをお前は…! |
アスカ | ガアアッ! |
ミラ | くっ… |
アスカ | グオオッ! |
ミラ | はあ、はあ…話が通じるはずもないか。ならば──… |
アスカ | ガアアアアッ! |
ミラ | なっ…!あの速さは避けきれな── |
| バシィッ! |
アスカ | グアッ! |
ミラ | 何だ…?何が起きた? |
??? | こんなところで死ぬつもり?世界を救うって話は嘘だったのかしら |
ミラ | …!お前は… |
| |
ミラ | ミュゼ…どうしてお前がここに? |
ミュゼ | …そんな事より、ミラ。あなたの捜しものは、この子でしょ? |
カノンノ | … |
ミラ | カノンノ! |
ミュゼ | 大丈夫よ、気を失っているだけだから |
ミラ | ミュゼ、お前がカノンノを救ってくれたのか? |
ミュゼ | この子が死んで困るのは別にあなた達だけじゃないって事よ |
ミラ | 確かにそうだな。だが、理由は何であれ礼を言う |
ミラ | ここでカノンノを失えば、大精霊を救う事はおろか、世界も破滅の一途をたどる事になっていたからな |
ミュゼ | …何があってもこの子だけは守れ、…ガイアスからの指示よ |
ミュゼ | …とにかく、これで私の役目は終わり。この子は返すわ |
ミュゼ | どういう理由か知らないけど、ウィンドルの連中もいない状態で勝機はない |
ミュゼ | この子を死なせたくないなら今は身を引くべき── |
| |
アスカ | グアアアアアアアッ!! |
ミラ | …! |
ミラ | …ミュゼ、悪いがついでにもう一つ頼みを聞いてくれないか |
ミラ | 安全な場所へカノンノを連れて行き、守ってやってほしい |
ミュゼ | …あなたはどうするのよ |
ミラ | 私はここでアスカと戦う |
ミュゼ | …無茶な事言わないで |
ミュゼ | 一人で太刀打ち出来る相手じゃない事くらい、あなたが一番よくわかっているはずよ |
ミュゼ | 更には全身に傷を負って…そんな状態で戦うなんて死ににいくも同然── |
ミラ | …アスカの力はよく知っている。だが、それでも今引く事は出来ない |
アスカ | ガアアアアッ! |
ミラ | 来い、アスカ!お前の相手はこの私だ!! |
ミュゼ | ちょっと、ミラ! |
scene2 | 想いの果てに |
カノンノ | う… |
ミュゼ | … |
カノンノ | ん…あれ…ミュゼさん? |
ミュゼ | あら、やっとお目覚め? |
カノンノ | どうしてミュゼさんが…?私…確かアスカに連れ去られて… |
カノンノ | …そうだ、ミラ!ミラも一緒だったの…!でも、途中でアスカに振り落とされてしまって… |
ミュゼ | 振り落とされて…?…あの全身の傷はそういうわけだったのね |
カノンノ | 全身の傷って…ミュゼさん、ミラに何かあったの!?ミラは大丈夫な── |
| ドォーーン! |
カノンノ | …!何の音!?あっちの方から聞こえて… |
| |
アスカ | ガアアアアッ!! |
ミラ | くっ… |
| |
カノンノ | あれは… |
ミュゼ | …見ての通り、ミラはアスカと戦ってるわ |
カノンノ | まさか一人で…? |
ミュゼ | ええ、そうよ。止めたって聞きやしないんだから… |
カノンノ | 大変…一人だなんて無茶だよ…!私もそっちに… |
ミュゼ | …待ちなさい。あなたをミラのところへ行かせるわけにはいかないわ |
カノンノ | ミュゼさん!?お願い、そこを通して…! |
ミュゼ | 駄目よ。あなたが死ねば、世界を救う手だてはなくなって、ガイアスが悲しむもの |
カノンノ | … |
| |
ミラ | はっ! |
アスカ | グオオオッ! |
ミラ | くっ、寸時に攻撃をかわされたか…ならば、これでどうだ! |
| ザシュッ! |
アスカ | グア… |
ミラ | よし、今の内に一気に──… |
アスカ | ガ…ガアアッ!! |
ミラ | なっ…! |
| ズカッ! |
ミラ | うぐっ…! |
| |
カノンノ | ミラ…!! |
ミュゼ | … |
カノンノ | お願いミュゼさん!ミラのところに行かせて…!このままじゃミラが… |
ミュゼ | …駄目よ |
カノンノ | 一人でアスカを倒すなんて無理だよ!ただでさえ、ミラはセルシウスと戦った時に深い傷を負ってる |
カノンノ | その傷だって完全に癒えてないのに、新たな怪我まで負って…。一人でどうにか出来る状態じゃ… |
ミュゼ | そんな事、あなたに言われなくてもわかってるわよ |
ミュゼ | ミラには忠告したわ。一人で敵う相手じゃない、あなたを連れて身を引けと… |
ミュゼ | それでも聞かなかったのはミラよ。…自業自得だわ |
カノンノ | 自業自得…? |
カノンノ | どうしてそんな風に言えるの!?ミラは必死に頑張ってるんだよ、世界と大精霊達を救うために |
カノンノ | 私欲のために戦ってるんじゃない…。…お願いだから、そんな言い方はしないで…! |
ミュゼ | … |
| |
ミラ | はあ…はあ……せめてもう少し、思うように身体が動けば… |
アスカ | グオオ! |
ミラ | …アスカの動きにはまるで隙がない。やはりミュゼの言ったように勝機は微塵もないのか…? |
アスカ | ガアアアアアッ! |
ミラ | うっ! |
ミラ | …ぐ…それでも…私は諦めるわけにはいかない |
ミラ | 必ず救い出してやるぞ…アスカ! |
| |
ミュゼ | ミラ… |
ミュゼ | どうして?どうしてそこまでして一人で立ち向かおうとするの…? |
ミュゼ | ここで身を引き、態勢を立て直し新たに挑む事だって出来たはず。なのに──… |
カノンノ | ミラは、一刻も早くアスカを救い出してあげたいんだと思う… |
ミュゼ | アスカを…? |
カノンノ | うん。このネックレスの力の存在が明らかになる前、ミラは一度アスカと戦った事があるみたい |
カノンノ | その時は、結局アスカを救う事が出来なかったみたいで…ミラ、本当に悔しそうにしてた |
カノンノ | 今身を引いたら、その分アスカの苦しみは長引く。…そんな風に考えてるんじゃないかな |
ミュゼ | … |
カノンノ | それに、ミラってね、四大精霊やセルシウスと、よく話をしているの |
カノンノ | いつも本当に楽しそうで何だか、親友だったり家族と話しているみたいな感じなんだよ |
ミュゼ | 家族… |
カノンノ | そう、家族。ミラにとって大切な存在だからこそ、どんなに不利な状況でも逃げずに救おうとしてるんだと思う… |
ミュゼ | … |
カノンノ | ミュゼさん…お願い。私をミラのところに行かせて |
カノンノ | 私にとって、ミラは…みんなは、大切な存在なの!失いたくないよ… |
ミュゼ | … |
ミュゼ | …ごめんなさい、カノンノ |
ミュゼ | あなたの気持ちは十分伝わったわ。…だけど、答えは変えられない、私にはあなたを守る義務があるから |
カノンノ | な、何を… |
| |
アスカ | グオオオッ! |
| ズドッ! |
ミラ | うっ…! |
ミラ | …やはり、どうあがこうと私一人では無理なのか…? |
ミラ | くっ…四大が万全の状態であれば…一人でも… |
ミラ | …いや、私には仲間がいる。せめて、アスベル達がここにたどり着くまではやられるわけには── |
アスカ | ガアアッ! |
ミラ | …!あれは… |
| バサバサ… |
ミラ | アスカが遥か上空へ…まずい、まさかこの一撃で私を仕留めるつもりなのか…? |
ミラ | くっ、何としてでもこの攻撃だけはかわさねば… |
| ズキン! |
ミラ | うっ…こんな時に足の傷が… |
アスカ | グアアアアアアアアアッ!! |
ミラ | しまった…! |
| ドカッ! |
ミラ | …! |
ミュゼ | …全く、手のかかる妹ね |
ミラ | ミュゼ!? |
ミラ | どうして戻って来た!?カノンノは… |
ミュゼ | あの子は無事よ。そんな事より── |
| |
アスカ | ガアアアアッ! |
ミュゼ | まずは目の前のアスカをどうにかすべきね |
ミラ | あ、ああ |
ミュゼ | …ミラ、あなたは下がってなさい。その傷じゃ足手まといになるわ。アスカは私が倒す |
ミラ | いや、アスカは私が救う。ここで引き下がる事はしない。断じてな…! |
ミュゼ | 本当に聞きわけのない子…。なら勝手にしなさい、邪魔になるようなヘマはしないでよね |
ミラ | お前こそ、遅れを取るなよ! |
scene3 | 想いの果てに |
ミラ | これで決める! |
ミュゼ | 受けなさい! |
ミラ・ミュゼ | はあああああっ! |
| ズバーーーーッ!! |
アスカ | クアアアアーーーッ! |
アスカ | ア…アア… |
| |
ミュゼ | 何とか大人しくなったみたいね |
ミラ | ああ、そのようだな… |
ミラ | でもまさか、一時は対立し剣を交えたお前と、こうして共に戦う事になるとはな… |
ミラ | …妙な感覚だった。いや、だが姉妹である事を考えれば本来は自然な形なのかもしれんが |
ミュゼ | … |
ミラ | …ミュゼ、礼を言う。今日は二度も危機を救われたな |
ミラ | どちらの時も、お前が来てくれていなければ私は確実にやられていただろう |
ミラ | アスカを倒す事が出来たのもお前の協力があっての事だ |
ミュゼ | 協力って…、勘違いしないでよね。私はあくまでガイアスからの指示、…ガイアスのためにやった事よ |
ミラ | ガイアスの指示はカノンノを守る事、だろう? |
ミラ | それなら、私に構わずカノンノを連れここから立ち去れば済んだ事、…私を救ったのはやはりお前の意志だ |
ミュゼ | う、うるさいわね!意志なんて、そんな明確なものは何もないわ…ただ── |
カノンノ | ミラ!ミュゼさん! |
ミラ | カノンノ!…無事だったか! |
カノンノ | うん、私は大丈夫。ずっとあそこの岩陰に隠れてたから |
カノンノ | それより…ミラとミュゼさんこそすごい怪我…大丈夫なの? |
ミラ | ああ、問題ない。ミュゼもこう見えてタフだからな |
ミュゼ | タフって…それは褒めてるのかしら? |
カノンノ | … |
ミラ | そうだ、それよりもカノンノ、早速アスカにリプリカームを与えてやってほしい |
カノンノ | うん、そうだね! |
ミュゼ | … |
ミラ | 早速始めてやってくれ |
カノンノ | うん!アスカ…お願い、元に戻って──… |
アスベル | カノンノ!ミラ! |
リタ | 二人とも大丈夫!?…って、そこに倒れてるのってアスカじゃない! |
リオン | ネックレスの光がアスカに… |
リッド | ああ、セルシウスの時と同じだ |
ルーク | あれが大精霊の暴走を鎮めるリプリカームって奴なのか…? |
カノンノ | お願い、どうか…アスカを助けてあげて… |
アスカ | クウウ… |
ミラ | …アスカ?私の言っている事がわかるか? |
アスカ | … |
ミラ | アスカ… |
ミラ | 皆、アスカは無事正気を取り戻す事が出来たようだ |
リオン | … |
アスベル | 暴走が鎮まった、という事だよな…よかった… |
ミラ | …カノンノ、お前に礼を言っているぞ |
カノンノ | ううん、お礼ならミラに言って。あなたを救うために必死に頑張ってくれたんだよ |
カノンノ | 例えリプリカームがあったとしても、ミラがいなかったら、きっとあなたを救う事は出来なかった |
ミラ | カノンノ… |
アスカ | … |
ミラ | いや、礼には及ばん。むしろ、もっと早く救ってやれなかった事を詫びねばいけないくらいだ… |
ミラ | …それよりアスカ。目覚めたそばからすまないが、私達に力を貸してくれないか |
ミラ | お前と同じ暴走状態に陥り今も尚苦しんでいる大精霊が世界各地にいる |
ミラ | それにより自然の調和が取れなくなり世界の命を蝕んでいる状況だ… |
ミラ | 既にセルシウスの協力は得られる事になっている。…アスカ、お前の力も貸してほしい |
アスカ | … |
ミラ | アスカ… |
アスベル | ミラ、アスカは何て言ってるんだ? |
ミラ | …快く承諾してくれた。私達と共に、仲間と世界を救いたいそう言ってくれている |
カノンノ | アスカ…ありがとう。あなたが力を貸してくれる事、本当に心強く思うよ |
リッド | …なら、契約ってワケだな |
リタ | 確か精霊の力を借りるにあたって必要な儀式、よね |
ミラ | ああ。ではカノンノ、早速ネックレスを |
カノンノ | うん! |
| |
リオン | ネックレスの色がまた変わったな |
リタ | 未だに信じられないわ、この中にセルシウスとアスカがいるなんて… |
リオン | … |
ルーク | それよりミラ、大丈夫なのかよ?どこもかしこも傷だらけじゃねーか |
ミラ | ああ、心配は無用だ |
リオン | …そうには見えんがな |
アスベル | 遅くなってしまって悪かったな。あちこち必死に捜し回ったんだがなかなか見つけられなくて… |
リタ | カノンノとミラがいなきゃ、あたしらは大精霊の気配すらたどれないものね |
リッド | …にしても、まさかお前達だけでアスカを倒しちまうなんてな |
カノンノ | 私は何もしてない、アスカを倒せたのはミラと── |
カノンノ | …あれ? |
ルーク | あ?他に誰かいるのか?お前ら二人だけじゃねーのか? |
ミラ | … |
| |
リオン | ミラ、どういう事だ?お前達以外にも誰かいたのか? |
ミラ | …ああ。私の姉がな |
アスベル | 姉…? |
ミラ | ああ、危険を顧みず私の窮地を救ってくれた、この上なく心強い、頼れる姉だ |
リタ | ──これでアスカの暴走も無事鎮められたわけだけど…次はどこへ行けばいいの? |
ルーク | …なあ、次はクロノスのところに行かねーか? |
リオン | クロノス…。時空の歪みにいたという大精霊か |
ルーク | ああ、アスカを見て思ったんだ。あいつもきっと暴走してたんじゃねーかって。だから… |
カノンノ | きっと、今も苦しんでるんだよね… |
ルーク | … |
ルーク | …わからねえ。けど…あの時の借りは返さねえと俺の気がすまねえ |
ルーク | あいつを元に戻して…そしたら、もう一回ぶん殴ってやる! |
リッド | 元に戻してから、か。へえ、案外いいとこあんじゃねえか |
ルーク | う、うっせーな!とにかく、クロノスのところに行く!いいなお前ら! |
ミラ | 私は異存なしだ。奴なら既に居所もわかっている事だしな |
ルーク | 何はともあれ、まずはメルトキオの方へ向かおうぜ |
ルーク | 時空の歪みの入口がある亀裂はあっちの方だろ |
リタ | ちょっと待って。ルドガーかユリウスの力がないと亀裂には入れないんじゃなかった? |
ルーク | そ、そんなのわかってるっつーの!メルトキオに行きながらどうやって会うか考えればいいだろ! |
リタ | バカっぽい…… |
カノンノ | とにかく、早速出発しようよ!メルトキオに向かう時に、どこかでばったり会えるかもしれないし |
アスベル | それもそうだな。じゃあ、行くとしよう! |
Name | Dialogue |
scene1 | メルトキオを目指して |
ユーリ | …ここもひでえ有様だな |
ロイド | こんなように廃墟みたいになった街や村を見るのは、これで何度目だ? |
ゼロス | 数えちゃいねーが、相当な数だな。しかも、世界中のあちこちで起きてやがる… |
クレス | くっ…一体何のためにこんなひどい事を… |
レイヴン | 目的はわからんけども、これがもし例の第三者の仕業だとしたら、相当、執念深そうな連中だねえ |
スタン | 最初に第三者の話を聞いた時、本当にそんな奴がいるのかなって思ったんだけど… |
スタン | こうして実際に破壊された村を見て、本当なんだって実感したよ。…これは間違いなく人の仕業だ |
ユーリ | ああ。ただの火事でこんな風に焼けたり崩れたりはしないもんだ。やったのは目的と意志をもった奴だ |
ロイド | ウィンドルとア・ジュールの戦争を引き起こしたのもその第三者だとすると… |
ロイド | かなりでっかい組織なのかもな… |
クレス | うん。範囲も広いし、規模も大きい。少なくとも敵が一人でない事は確かだと思うよ |
アーチェ | こんな事…絶対に許せないよ!何としてもそいつらの正体を突き止めないと |
ユーリ | 何とか尻尾を掴めるといいんだが…この様子じゃ大した手がかりはなさそうだな |
スタン | なら、別の村に行ってみよう。確か、ここからもう少し進んだ先に村があったはずだ |
ゼロス | …よし、早速行ってみようぜ |
| |
リッド | …それにしても、まさかあのミュゼがミラの姉だったとはな |
リッド | カン・バルクで会った時も特別親しい感じもなかったし、姉妹だとは思ってもみなかったぜ |
ミラ | 姉妹とはいっても、私もそれを知ったのは最近の事だ |
ミラ | お前達が気付かないのも無理はない |
ルーク | けどよ、だからってあの女が本当に助けてくれるなんて、何か未だに実感湧かねえっつーか… |
カノンノ | …ミュゼさんは優しいよ、とても。ミラとアスカが戦っている時も二人の事、ずっと見てたし |
ミラ | … |
カノンノ | …きっとね、すれ違っていたミュゼさんと私達の気持ちが一つになったんだよ |
アスベル | カノンノ…。ああ、きっとそうだな |
アスベル | にしても、肝心のミュゼはどこへ行ってしまったんだ?一言、礼を言いたかったんだが… |
ミラ | おそらくア・ジュールへ戻ったのだろう。じきに会えるさ |
リタ | …ま、何はともあれ、お蔭でアスカの暴走は鎮められたわけだしあたしらも先を急ぎましょ |
リオン | ああ、そうだな |
scene2 | メルトキオを目指して |
ルーク | やっとシルヴァラントに入ったぜ。あの先にあんの、メルトキオだよな?まだ結構距離がありそうだな |
リタ | 文句言わないの。それだけ、時空の歪みの亀裂にも近づいたって事なんだから |
リッド | ああ、でも先にルドガーかユリウスを捜さねえと、だろ?オレ達だけじゃ亀裂に入れねえからな |
リタ | ユリウスは、亀裂に飲み込まれた人達を助けるために、時空の歪みを行き来してて… |
リタ | ルドガーは、ジーニアス達と一緒にウィンドルとア・ジュールの国境地帯に行ってるはずなのよね? |
リオン | …ジーニアスと一緒にいる、だと?なら、目的地はこのままメルトキオで問題はないはずだ |
リオン | 国境地帯での調査を終え、奴が街へ戻って来ていれば、ルドガーの居場所を聞く事が出来るかもしれん |
リッド | リオン、お前ジーニアスの事知ってるのか? |
リオン | 僕が知っているのはリフィルだ。彼女には弟がいて名がジーニアスだと前に聞いた事があっただけだ |
ルーク | へえ、あいつにも姉貴がいたのかよ |
ミラ | とにかく、一度メルトキオへ行ってみるか |
アスベル | … |
リタ | そうね… |
リタ | って、ちょっと聞いてんの、アスベル? |
アスベル | え…ああ、ごめん。メルトキオへ行くって話だったよな? |
カノンノ | …アスベル、どうかしたの?何だか元気ないみたい |
アスベル | …いや、少し驚いていただけだ |
アスベル | 正直戦場じゃないシルヴァラントまでこんなひどい状態になっているとは思ってなかったからさ… |
カノンノ | そうだよね。地震のせいであちこちに亀裂があるし |
リタ | 崩れている建物も、目立つわね |
アスベル | 改めて事態の深刻さを感じた、というか…気付いたんだ |
アスベル | 今、この世界に安全だと言い切れる場所なんてどこにもないんだって… |
カノンノ | アスベル… |
カノンノ | もしかして…シェリアさんの事、考えてた? |
アスベル | あ、うん…。よくわかったな? |
アスベル | 今頃どうしているかと思ってさ |
アスベル | あいつ、大人しそうに見えて、結構無茶するところもあるからさ。危ない目に遭ってないといいけど… |
カノンノ | やっぱりあの時、シェリアさんを捜すべきだったね。そうすれば直接話も出来たのに… |
カノンノ | アスベル、次に会えそうな機会があったら、絶対ちゃんと会いに行ってね? |
カノンノ | シェリアさんだってきっと、すごく心配してると思う… |
アスベル | ああ、そうだな── |
| ガサッ |
リタ | …?ねえ、今そこで何か動かなかった? |
ミラ | ああ、黒い影が見えた。そこの草むらに何か… |
| ガルルルル! |
ミラ | 魔物か…! |
scene1 | 尋ね人の行方 |
シェリア | そうですか、この辺りでは騎士は見かけていないんですね…。ありがとうございます |
シェリア | …ふぅ |
シェリア | こっちも駄目ね…。国境地帯の方にもいなかったし、本当にどこに行っちゃったの…? |
シェリア | 戦場に出向いていた他の騎士団員達はみんな帰って来たっていうのにどうしてアスベルだけ… |
シェリア | …やっぱり、何かあったとしか… |
シェリア | …あら? |
シェリア | ここは一体どの辺りかしら…?初めてかも、この森… |
シェリア | 考え事をしている内に道を間違えてしまったのかしら…。…とにかく、ここを早く出ないと |
シェリア | もう、またここ…!?しんっじられない! |
シェリア | どう進んでも辿り着く場所は同じ…。ひょっとして、ますます迷い込んでしまってるんじゃ… |
シェリア | やっぱり…あのままバロニアに留まっていた方がよかったのかな… |
シェリア | …ううん、そんな事ない怪我してる人を助けられた事もあったじゃない。それに… |
シェリア | アスベルが危険な目に遭ってるかもしれないのに、ただ待ってるなんて私には出来ない…! |
シェリア | とにかく…一刻も早くここから出てアスベルを捜さなくちゃ── |
| カラ… |
シェリア | …? |
| ガラガラガラ…! |
シェリア | …!崖が崩れ…! |
シェリア | きゃああああっ! |
| ドサッ! |
シェリア | う… |
シェリア | どうしよう…身体が動かない…痛い… |
シェリア | 私…このまま死んじゃうの…? |
シェリア | アスベル…お願い、助けて…アスベル… |
| |
リッド | メルトキオはもうすぐか。もっと歩くかと思ったけど、意外と早かったな |
ルーク | どこがだよ!ずっと歩きづめで、ようやくじゃねーか! |
リタ | こら、文句ばっか言ってんじゃないわよ |
アスベル | …? |
カノンノ | アスベル、どうかしたの? |
アスベル | 今、誰か…俺の事を呼ばなかったか? |
ミラ | 誰も呼んでいないぞ |
リオン | 僕も何も聞こえなかった |
リタ | 空耳か何かじゃないの? |
アスベル | そうか…気のせいならいいんだが… |
アスベル | さあ、あと少しだ。メルトキオへ急ごう |
カノンノ | うん! |
scene2 | 尋ね人の行方 |
カノンノ | ここがメルトキオ… |
アスベル | ああ、シルヴァラントの王都だ。もしかして、見覚えがあるのか? |
カノンノ | そうだといいなと思ってあちこち見てたんだけど特に何も… |
アスベル | そうか… |
ルーク | よし、それじゃ早速、ジーニアスの姉貴って奴のとこに行ってみようぜ |
ミラ | リオン、場所はわかるのか? |
リオン | ああ、概ね見当はつく |
リッド | よし。なら、さっさと行こうぜ |
| |
アスベル | うん?あれは… |
リオン | あの女がリフィルだ。他の奴は知らな── |
ルーク | ルドガーじゃねーか!ジーニアスとコンウェイまで一緒かよ! |
コンウェイ | やあ、キミ達。久しぶりの人と初めましての人が混ざっているようだね |
リフィル | あら、あなたはリオン… |
リタ | …手がかりを探しに来て、あっさりその当の本人に会えてしまうとか、何だか拍子抜けだわ |
ミラ | ああ。だがルドガーを捜す手間は省けた。リオンの提案に乗って正解だったな |
ジーニアス | ルーク、リッド。二人共どうしてここに? |
ルーク | それはこっちのセリフだっつーの!国境地帯から戻ってたんならとっとと連絡寄越せよ! |
ジーニアス | ごめん、ごめん…。実はボク達も、ついさっき帰って来たところなんだ |
ジーニアス | …それより、ちょうどよかったルーク達に話したい事があるんだ。すごい事がわかったんだよ! |
ジーニアス | 今、世界中で異変が起きているのは、各地の大精霊がおかしくなったのが原因だったんだ |
ジーニアス | ボクはクロノスが今回の異変と関わりがあるって言ったよね?その仮説は正しかったんだよ! |
リッド | ああ、まあそうだな |
ジーニアス | …?何か反応薄い… |
ルーク | あのな、そんな事、俺達もとっくの昔に気付いてるっつーの |
ジーニアス | えー、知ってたの?せっかくみんなの役に立てると思ったのになあ |
ルドガー | ところで、さっき俺を捜す手間がどうのって話してたよな? |
ルドガー | もしかして、それも異変と何か関係あるのか? |
ルーク | っと、そうだった。ルドガー、俺達をもう一度、クロノスのところへ連れてってくれよ |
ルドガー | クロノス…時空の歪みか。まずは、状況を説明してくれ |
ミラ | …わかった |
ルドガー | …大精霊の暴走、そういう事だったのか |
コンウェイ | でも、まさかキミ達が既にその暴走を鎮めるべく動き出していたとはね |
リオン | 時空の歪みにいるクロノスも、おそらくマナ減少の影響を受け、暴走状態に陥っているはずだ |
アスベル | 世界の崩壊を食い止めるためには一刻も早くクロノスの暴走を鎮めなければならない… |
アスベル | そのために、力を貸してくれないか? |
ルドガー | 勿論だ。この世界は俺達全員で守るべきだ、喜んで協力するよ |
カノンノ | よかった… |
アスベル | じゃあ早速、時空の歪みに入れるという亀裂へ向かおう |
コンウェイ | ボクも引き続き同行させてもらうよ。暴走する大精霊を鎮めるなんて、そう見られるイベントじゃないしね |
ジーニアス | ボクも行く! |
リフィル | 駄目よ、ジーニアス。あなたは私と一緒に街の人達の手助けをする、そう約束したでしょう |
ジーニアス | でも… |
リフィル | 約束は約束です。それに、メルトキオに留まっていればロイドが戻って来るかもしれない |
リフィル | ロイドは、あなたを心配してずっと捜してくれていたのだから会って、きちんとお礼を言いなさい |
ジーニアス | わかったよ、姉さん…一緒に行くのは諦める。君達、クロノスの事は任せたからね |
リッド | ああ。どうなるかわからねえが、やれるだけやってみるさ |
リタ | それじゃ、早速時空の歪みへ向かいましょ。ルドガー、よろしく頼むわ |
ルドガー | わかった。じゃあ早速メルトキオの南にある大きな亀裂へ向かおう。移動はそこから── |
| |
| きゃあああ! |
カノンノ | な、何!?今の悲鳴は… |
| ガルルルル! |
アスベル | まずい、あんなところに魔物が…!早く仕留めないと街の人達が… |
リオン | ちっ、面倒な奴らだ…。仕方ない、さっさと片付けるぞ |
scene1 | いざ、時空の歪みへ |
ゼロス | この村もひどいもんだな |
ロイド | 状況からすると、この村が破壊されたのは最近みたいだ |
クレス | くっ…。何でもいい、とにかく何か手がかりになりそうなものを── |
レイヴン | ちょい待ち。向こうから誰か来るみたいよ? |
スタン | 村の住人か? |
アーチェ | …わかんない。とにかくみんな隠れて!ほらほら! |
??? | … |
ユーリ | あいつは…? |
クレス | わからない。でも、あの人が持つ雰囲気…ただ者ではなさそうだ |
スタン | …ちょっと待て。あいつ、確か前に会った事があるぞ |
クレス | 本当かい?どこで? |
ゼロス | ミラさま達とテムザ山へ行った時だ。俺さまも一緒だったからな、間違いねえぜ |
アーチェ | あ、あたしもあたしも!前、ア・ジュール港であいつに会ったよ! |
ロイド | 何だって?って事は、そっちでもあいつは大精霊に何かしてたのか? |
アーチェ | 大精霊に何かって…ちょっとロイド、それ、どういう… |
レイヴン | しっ…みんな、声がでかいって |
??? | …そこで何をしている |
クレス | 気付かれた…! |
ユーリ | …やれやれ。こんな大所帯じゃ息を潜めるのも一苦労ってか。仕方ねえな |
??? | お前達は… |
スタン | あの時以来だな。俺達の事、覚えてるか? |
ゼロス | ここで会えたが百年目ってな。お前さんには聞きたい事がたくさんあるんだよ |
??? | …… |
アーチェ | ちょっと、待ちなさ── |
ユーリ | そう慌てんなって |
ユーリ | 時間を取らせるつもりはねえ。ちょいとばかし、こっちの質問に答えてくれりゃいいだけだ |
??? | … |
ユーリ | 単刀直入に聞くぜ。この村をこんな風にしたのはあんたか? |
??? | …… |
ユーリ | ここだけじゃねえ、あちこちの街や村がこんな目に遭っていて、オレ達はその犯人を追っている |
ユーリ | もう一つ。ウィンドルとア・ジュールの戦争再開を仕掛けた奴がいるらしい |
ユーリ | そのせいで、大精霊って奴が暴走して、今、世の中はとんでもない異変に見舞われている |
ユーリ | オレ達はこの両方が同じ奴の仕業だと睨んでいる |
ユーリ | そこへ来てオレ達の行く先々に現れるあんただ |
ユーリ | 答えてくれ。あんたなのか?あんた、何者なんだ? |
??? | 以前にも忠告したはずだ。深入りはするな、と |
レイヴン | こっちが真剣に尋ねてんのに、そりゃあんまりな答えじゃないの? |
??? | ならば聞くがいい。この村より後、滅びた街はない |
スタン | 何だって… |
クレス | どうしてそんな事がわかるんだ? |
ゼロス | 決まってんだろ、こいつが破壊の手を止めたからだ。やっぱりこいつが俺さま達の捜してた── |
| |
| ゴゴゴ… |
ロイド | …!まずい、地震か!? |
| ゴゴゴゴゴ…! |
スタン | みんな、気を付けろ!大きいぞ! |
アーチェ | 何だってこんな時に…って、ちょっと!あいつが行っちゃう…! |
ロイド | おい、待て!話はまだ済んでな── |
| ドドーーン! |
クレス | くっ…!家が崩れてくるなんて…! |
| |
スタン | 逃げられた…。手がかりを掴むチャンスだと思ったのに |
ゼロス | 悪運の強い野郎だぜ。次に見つけたら、今度こそ取っ捕まえてやる |
クレス | 何か事情を知っていそうだったし、やっぱり例の第三者はあの男なんだろうか…? |
ロイド | 事情に詳しいだけじゃない。あいつには、アスカをより暴走させてたって疑惑もあるしな |
アーチェ | だとしたら、やっぱりあいつが今回の首謀者って事? |
ユーリ | …どうだろうな |
レイヴン | およ、青年、何か思うところでもあんの? |
ユーリ | ってわけでもないんだが…ただそう簡単に決めつけていいもんなのか気になってな |
レイヴン | まあ、関わりありそうってだけで判断するのは、確かにねえ |
クレス | …どちらにせよ、ここで彼に話を聞けなかったのは痛かったね |
ロイド | ああ、そうだな |
ユーリ | … |
| |
アスベル | ルドガー、例の亀裂まではあとどれくらいで着くんだ? |
ルドガー | そう遠くない。この先を進んだところだ |
ミュウ | ご主人様、会いたかったですの! |
エミル | ルーク!リッドさん!それに他のみんなも! |
ルーク | エミル、それにブタザル!?お前らこんなとこで何やってんだ? |
| |
ミラ | ルーク達の知り合いか |
リッド | ああ、お前達と合流する前に時空の歪みを一緒に調べてた仲間だ |
エミル | マルタ達を無事バチカルまで送り届けた事だし、僕もみんなと合流しようと思って |
ミュウ | ボクもご主人様のお手伝いをするですの! |
ルーク | うるせえ!っていうか、エミルはまだしも、ブタザル、お前はチーグルの森の事が… |
ミュウ | 森の方は、ティアさんやエミルさんが力を貸してくれたお蔭でもう大丈夫ですの! |
ミュウ | 心配してくれてありがとうございますですの。やっぱりご主人様は優しいですの! |
ルーク | だ、誰が心配してるんだっつーの! |
ルーク | 俺はただ、お前が途中で放り出したら俺の立場がねえと思ったっつーか… |
リッド | エミル、マルタはどうしているんだ? |
エミル | うん。バチカルや近隣の街の人達の救護活動に当たってるよ |
ルーク | へー、あいつの事だから絶対うだうだ言うかと思ったのに、案外すんなり出て来られたんだな |
エミル | 状況が状況だしね。そうも言っていられないよ |
リッド | ま、そりゃそーだな |
エミル | ところで、みんなはこれからどこへ? |
ミラ | 時空の歪みだ。クロノスの暴走を鎮めるためにな |
リオン | そのために、入口となる亀裂を目指している |
ミュウ | だったらボク達も、お供させて欲しいですの |
エミル | お願いします |
ルーク | …しょうがねーな。足手まといになんじゃねーぞ? |
カノンノ | 心強い仲間が増えたね。ね、アスベル |
アスベル | ああ! |
リタ | 今さら少し増えたって関係ないけど、とにかく亀裂に行くんでしょ。急ぎましょ |
ミラ | ああ、そうだな |
scene2 | いざ、時空の歪みへ |
エミル | 王様に会ったり、各地の大精霊を鎮めて回ったり…ルーク達は本当に大忙しだったんだね |
ルーク | ま、まあな!俺の活躍がなけりゃ、今頃この世界は崩壊してたぜ |
ミュウ | さすが、ご主人様ですの!今ボクがこうしていられるのもご主人様のお蔭ですのー! |
リタ | はいはい、バカやってればいいわよ |
コンウェイ | 世界の滅亡か…ボクはこれまでにもいろんな世界を見てきたけれど… |
コンウェイ | この世界は、そうだな…言うなれば存在そのものが安定を欠き、揺らいでいる── |
コンウェイ | 今は小康状態にあるみたいだけれども中々危険な状態だと思うよ。急いだ方がいいんじゃないかな |
ミラ | ああ、状況は勿論把握している。だからこそ、こうして私達も必死に動いているのだ。手遅れになる前にな |
カノンノ | 一日も早く世界を元に戻して、みんなが元通り暮らせるようになるといいね |
アスベル | そうだな。必ず事態を収拾させて、この危機を乗り越えないと── |
| |
| ゴゴゴ… |
リオン | …!地震か… |
| ゴゴゴゴゴ! |
エミル | …!大きい! |
アスベル | みんな、気をつけろ! |
| ズザッ! |
| |
カノンノ | …! |
ミュウ | カノンノさん、危ないですの! |
リタ | 二人の足下に亀裂が!? |
ミラ | カノンノ!ミュウ! |
カノンノ | きゃあああーーーっ!? |
ミュウ | ご、ご主……! |
ルーク | ブタザル!カノンノ! |
| ガシッ |
ミュウ | みゅううぅ!ご主人様、そんなに強く引っ張ったら痛いですのー! |
ルーク | うるせえ!落っこちたくなけりゃ、我慢しろ── |
ルーク | …って、うわわっ!? |
ルーク | うおおおおおおおおっ!!? |
リオン | ルーク! |
アスベル | くっ、そうはさせな── |
| バシィッ! |
アスベル | うわっ!? |
ミラ | アスベル、大丈夫か |
アスベル | 亀裂に飛び込もうとしたら光に弾かれて…今のは一体!? |
リッド | この亀裂には、特殊なバリアみたいなモンがあって、故意に中に入ろうとすると弾かれちまうんだ |
リッド | ルークが一緒に入れたのは偶然、ってヤツだろうな |
コンウェイ | ルークくんはつくづく時空の歪みと縁が深いみたいだね |
アスベル | くそっ、目の前にいたのに…俺は…っ |
リッド | …!アスベル、嘆いているヒマはねえぞ |
| ガサッ! |
アスベル | …くっ、魔物か |
| グルルルル! |
scene3 | いざ、時空の歪みへ |
アスベル | はああ! |
| ズバッ! |
| ギャウウッ! |
ミラ | よし、魔物は倒したな |
アスベル | くっ…カノンノ、ルーク、ミュウ…! |
ルドガー | アスベル、気を落とすな。ここから追えなくても心配ない。そのために俺がいる |
ルドガー | 当初の予定通り、亀裂から時空の歪みに侵入し、カノンノ達を捜し出すんだ |
アスベル | ルドガー… |
アスベル | ああ、そうだな。ありがとう |
リタ | それにしても、さっきアスベルを弾いた力ってやっぱり… |
ミラ | ああ、確証はないがおそらくあの力もクロノスによるものだろう |
ミラ | …嫌な予感がする |
コンウェイ | 奇遇だね、ボクもだ。クロノスの暴走がより深刻な状況になっていないといいけれど |
リオン | とにかく、先を急ぐべきだ |
ルドガー | そうだな。ルークがついているとはいえ、早く合流するに越した事はない |
アスベル | すぐに追いつくからな。どうか無事でいてくれ… |
scene1 | 侵入 |
ルドガー | みんな、ここが例の亀裂だ。ここから時空の歪みへ向かう |
リオン | …相変わらず桁外れの大きさだ |
リタ | リオン、あんたここに来た事があるの? |
リオン | ああ。その時は時空の歪みの存在すら知りもしなかったがな |
エミル | 時空の歪みに侵入したら、ルーク達にはすぐ会えるんですか? |
ルドガー | いや、それは何とも言えない。運よくルーク達の近くへたどり着ければいいけど… |
コンウェイ | これまでの話の中で何となく察しはついているかもしれないけれど向こうは普通の場所じゃない |
コンウェイ | キミ達が今いるこの世界の常識が、そのまま通用するとは思わない方がいいよ |
アスベル | それじゃ、カノンノ達は…! |
リッド | 落ち着け、アスベル。コンウェイだって、別に会えないって言ってるわけじゃねえだろ? |
アスベル | う…そうだな。ごめん、つい焦って |
リタ | とにかく、行きましょ。ルドガー、お願い |
ルドガー | わかった。ではみんな、下がっていてくれ |
ルドガー | … |
ルドガー | …はああっ! |
ミラ | この光は…! |
エミル | 前にユリウスさんがやった時と、同じだ |
アスベル | ま、まぶしい…! |
| |
| ポタ…ポタ… |
| …ピチャン! |
ルーク | うっ…冷てえ |
| |
ルーク | ん…?ここは… |
ルーク | …そうか。時空の歪みに落っこちて… |
ルーク | って、そうだ!おい、カノンノ!ブタザル!大丈夫か!? |
カノンノ | ん… |
カノンノ | あれ…、ルーク…? |
ルーク | どうやらお前らも怪我はねえみてーだな |
カノンノ | 私、一体何を……あ、そうか。私が亀裂に飲み込まれそうになって、ミュウとルークも… |
ルーク | そういうこった。ったく、段取り狂っちまったぜ |
カノンノ | って事は、ここが時空の歪み…? |
ルーク | ああ。しかも俺達しかいねーんだ。これからどうすりゃ…って |
ルーク | 起きろっつーの、このブタザル! |
| ボカッ |
ミュウ | みゅううう!? |
ミュウ | 痛いですのー…あ、あれ?ご主人様…どうしてここにいるんですの? |
ミュウ | あの時亀裂に落ちたのはボクとカノンノさんだけで… |
ルーク | 憶えてねーのかよ!お前が落ちそうになったから…って忘れてんじゃねえ! |
ミュウ | そうだったですの!ご主人様はボクを助けようとしてくれたですの、感謝ですの! |
ルーク | ったく…ま、今さら言ったってしょうがねーか。とにかく行くぞ、お前ら |
| |
ミュウ | どこへ行くですの? |
ルーク | どこって、クロノスを捜すに決まってんだろ。そのためにここ目指してたんだから |
カノンノ | でも…!クロノスと戦う前にここでアスベル達を待った方が… |
ルーク | 大丈夫だろ。ルドガーの奴が一緒なんだし、すぐ追いついてくるって |
ルーク | それに、俺達が先行してクロノスを見つけておけば、手間も省けるってもんだろ |
ルーク | おら、わかったら二人共とっとと行くぞ! |
カノンノ | う、うん… |
ルーク | …よし、クロノス。待ってろよ! |
ミュウ | みゅうう…本当にボク達だけで、大丈夫なんですの…? |
scene2 | 侵入 |
リオン | …ここは時空の歪みの中か? |
ルドガー | ああ。既に侵入している |
リタ | ここが時空の歪み…こんな風になってんのね。興味深い… |
リッド | ファラの奴、こんなとこに来てたのか… |
アスベル | カノンノ! |
エミル | ルーク!ミュウ! |
ミラ | 返事がないな。どうやらカノンノ達は、この近くにはいないようだ |
コンウェイ | せめて、三人が一緒だといいんだけどね。バラバラだと捜すのも大変だから |
ルドガー | とにかく今は、カノンノ達と合流する事を最優先に考えよう |
ミラ | ああ、それがいい。仮にクロノスに遭遇しても、カノンノの力なしに暴走を鎮める事は出来ないからな |
リタ | もしカノンノ達と会う前に、クロノスを見つけちゃったら? |
リオン | 暴走を鎮める手だてなしに、クロノスを刺激するのは避けるべきだ |
エミル | クロノスとの戦闘を避けながら、ルーク達と合流する…そういう事ですか? |
アスベル | ああ、それが最善の策だろう |
アスベル | ミラ、クロノスの気配には常に注意を払って、何かあったら声をかけてほしい |
ミラ | 勿論だ |
リッド | よし。方針も決まったところで、動くとしようぜ |
| |
カノンノ | …時空の歪みって、随分広いんだね |
ミュウ | ボク達も初めてここに来た時はたくさん迷ったですの… |
ルーク | ああ。どこまでも同じような景色で進んでんのかどうかも、さっぱりわからねえ |
カノンノ | …ねえ、ルーク。私達、本当にアスベル達と合流出来るのかな…? |
ルーク | …何とかなんだろ。前にここに来た時も、結構いろんな奴と出くわしたし |
ルーク | それにいざって時はこの俺がいるんだから、心配いらねーって |
ミュウ | はいですの!ご主人様はとっても強いですの! |
カノンノ | ふふ、そうだね。ありがとう、ルーク、ミュウ |
| ガサ… |
ミュウ | みゅ…? |
ルーク | どうした、ブタザル? |
ミュウ | 今何か音が聞こえたですの… |
ルーク | ああ?何も聞こえねえぞ?カノンノ、お前は聞こえたか? |
カノンノ | ううん…私も何も── |
| ガサ…! |
ミュウ | やっぱり何かいるですの…!カノンノさんの後ろ── |
| |
| ガウッ! |
ミュウ | みゅ!? |
カノンノ | ミュウ、危な── |
| ガウウッ!! |
カノンノ | きゃあっ… |
ルーク | カノンノ大丈夫か!?くそっ、一匹じゃねえのかよ! |
カノンノ | ルーク、駄目!動かないで…囲まれてる…! |
ルーク | くそっ、まさかここは…魔物の巣なのか!? |
| ガウウウウッ! |
scene3 | 侵入 |
カノンノ | えいっ! |
| ズバッ! |
| ギャウウッ! |
カノンノ | はあ…はあ… |
ルーク | おいカノンノ、無理すんな! |
ミュウ | 息を切らして、苦しそうですの… |
カノンノ | だ、大丈夫…まだまだ… |
| グオオオオ! |
ミュウ | ま、また別の魔物が出てきたですの… |
ルーク | ちっ…!次から次へと |
カノンノ | はあ…はあ……うっ |
ミュウ | カノンノさん! |
カノンノ | あ…ごめんね、ミュウ…ありがとう、大丈夫だよ |
ルーク | くそっ、カノンノは限界みてーだし、このままじゃマジでヤバいな |
ルーク | 逃げようったって、この有様じゃ逃げ切れそうにねーし… |
カノンノ | ルーク達だけなら大丈夫だよ…!…私がここで足止めする、その間に二人は早く── |
ルーク | なっ…馬鹿言ってんじゃねえ!んな事出来るわけねーだろ! |
カノンノ | でも… |
ルーク | でも、じゃねえ!駄目なもんは駄目だっつーの!! |
ルーク | 忘れたのかよ。クロノスを元に戻せんのはお前だけなんだからな! |
| グルル… |
ミュウ | ご、ご主人様、また囲まれたですの…! |
ルーク | …こうなったら仕方ねえ。俺が奴らを引き付けるからその隙にお前らは逃げろ |
ミュウ | みゅ!?それは駄目ですの!ボクはご主人様を守るですの! |
ルーク | るせぇ!言う通りにしろ! |
カノンノ | ルーク…駄目だよ、そんなの… |
ルーク | うだうだ言ってんじゃねえ!魔物に食われたいのかよ!とっとと行けっつーの!! |
ミュウ | ご主人様…わかったですの!カノンノさんを安全なところに連れてったらすぐ戻ってくるですの! |
ミュウ | カノンノさん!急ぐですの! |
カノンノ | そんな…ルーク…!ごめんなさい…ごめん… |
ルーク | …ったく、手間かけさせんじゃねえっつーの |
ルーク | おい、お前ら、魔物の分際で好き勝手させねえ! |
カノンノ | はあ…はあ… |
| ドタッ! |
ミュウ | カノンノさん!? |
カノンノ | うっ…足が… |
| グオオオオッ! |
ルーク | あ、こらてめえ、どこ行きやがる… |
ルーク | って、カノンノ?!まだ、そんなとこにいたのかよ!? |
ルーク | くそっ、魔物の奴!お前の相手は俺だ!戻ってきやがれ! |
ルーク | 駄目だ、カノンノ、逃げろ!カノンノ!! |
| ヒュンッ! |
| ズドッ! |
| ギャウウウッ! |
カノンノ | え…?な、何が…? |
ミュウ | 矢が飛んできて魔物をやっつけたですの…! |
ルーク | 矢だって…?一体誰が… |
| |
??? | そこのあなた!怪我はなくって? |
ルーク | な…ナタリア!?どうしてお前がここに… |
ナタリア | ルーク…?あなた、ルークですの!? |
アッシュ | ナタリア、間に合ったか? |
ルーク | お前は…アッシュ!? |
アッシュ | …! |
カノンノ | ルークの…知り合い? |
ルーク | お前…けど、あれは別の世界の…何で… |
アッシュ | ちっ…! |
scene1 | 二人の赤髪 |
ルーク | おい、ナタリア。どういう事だよ、何でお前がこいつと一緒にいんだよ! |
ナタリア | 何でって、お友達だからですわ。あなたこそ、どうして彼の事を知っているんですの? |
ルーク | どうしてって…分史世界で俺はそいつと── |
カノンノ | はあ…はあ… |
ミュウ | カノンノさん、大丈夫ですの? |
カノンノ | ごめんね…足手まといになっちゃって… |
ルーク | ったく無理すんなよ。お前、俺と違ってあんまり頑丈じゃなさそうなんだし |
ミュウ | そうですの!無理は禁物ですの! |
ルーク | それはそうと、おいアッシュ!何でお前がここにいんのか、説明しろ |
| |
アッシュ | … |
ルーク | お前はルドガーの言ってた分史世界の人間じゃねーのかよ…って |
ルーク | …いや、待てよ…? |
ルーク | ひょっとして分史世界の奴が時空の歪みに入り込んで…って事は…このナタリアもあっちの世界の…? |
アッシュ | …?何をわけのわからん事を… |
ルーク | だーっ!頭がこんがらがってきた! |
ルーク | この際何でも構わねー!とにかく、お前を見てるとムカつくんだよ!とっとと消えろ! |
ナタリア | ちょっとルーク、そんな言い方をするものではありませんわ |
ルーク | うるせーな!お前こそ何なんだよ「お友達」って。そんな事、納得出来るわけねーだろ |
ルーク | 大体、王位継承者で、俺の婚約者のくせにこんなとこでふらふらしてんじゃねえっつーの |
カノンノ | こ、婚約者…? |
ミュウ | ナタリアさんはキムラスカの王女様で将来ご主人様と結婚する事が決まっているですの! |
ルーク | どこで知り合ったか知らねーが、どうせそいつに何か調子のいい事言われたんだろ |
ナタリア | まあ、何を仰いますの!?アッシュはそんな人では── |
アッシュ | ナタリア、よせ |
アッシュ | そんな屑は放っておけ。いちいちつき合う必要もない |
ナタリア | ですけど… |
| |
ルーク | な…!屑だと…!?俺は屑じゃねー!ふざけんな! |
ルーク | それに話はまだ終わってねーぞ!待てよこら! |
カノンノ | ルーク! |
ミュウ | ご主人様! |
scene2 | 二人の赤髪 |
ルーク | くそっ、あいつらどこ行きやがった? |
ミュウ | ご主人様、向こうですの! |
アッシュ | …ここは前に通った場所だ。くそっ、どうなってやがる…! |
ナタリア | どこもかしこも変わり映えしない景色ですわね…どうすればここから出る事が出来るのでしょう |
ルーク | おい、お前ら! |
ナタリア | ルーク!? |
ルーク | その様子だと、道に迷って困ってんだろ。ざまあねえな |
アッシュ | … |
ルーク | ここは時空の歪みって呼ばれる、特殊な空間だ。闇雲に歩いても元の世界には戻れねーんだよ |
アッシュ | …時空の歪み、だと? |
ルーク | 俺の仲間のルドガーは別だけどな。そいつには、この時空の歪みを出入りする特殊な能力がある |
ルーク | ナタリア、俺達と来いよ。話したとこ、お前はいつも通りだし分史世界の住人じゃねーって気がする |
ルーク | 俺達はもうすぐルドガー達と合流するから、一緒に来ればここから出られるぜ |
ルーク | だけどアッシュ、お前は駄目だ |
ナタリア | な… |
カノンノ | ルーク…アッシュさんだけ、ここへ置いていくつもりなの? |
ルーク | しょうがねえだろ。こいつは分史世界って別の住人だ。俺達の世界に来たって── |
ナタリア | ルーク、さっきから何を仰ってますの?アッシュは他の世界の人なんかじゃありませんことよ |
ルーク | ああ?そんなはずないだろ。俺はこいつを分史世界で見たんだ |
ルーク | こいつが俺達と同じ世界の住人なら、こいつは一体何者なんだよ |
ナタリア | 何者って、私のお友達ですわ。それだけでは不十分ですの? |
ルーク | こんな場所でいきなりそんな話されたって、簡単に信じられるかっつーの! |
ルーク | おい、アッシュ、答えろ!お前は何者なんだよ! |
アッシュ | …… |
アッシュ | 俺は…俺はお前の… |
ルーク | あ? |
ミュウ | みゅ? |
アッシュ | …いや、何でもない |
ナタリア | …アッシュ? |
ルーク | 何だ?言いかけた事があるなら最後まで言えよ!おい! |
アッシュ | うるせえ、屑!お前なんざと馴れ合うなんぞ俺の方こそ願い下げだ! |
ルーク | 何だとこの野郎…! |
カノンノ | ルーク、駄目! |
ミュウ | ご主人様、落ち着いてですの! |
アッシュ | こいつの馬鹿面を見ていると反吐が出る。行くぞ、ナタリア |
ナタリア | あ、お待ちになって、アッシュ! |
ミュウ | 行ってしまったですの… |
ルーク | 何だあの野郎、思わせぶりな態度ばっかしやがって。むかつくっつーの! |
ルーク | ナタリアもナタリアだ!そんなにあいつがいいなら、勝手にしろ! |
カノンノ | ルーク… |
ミュウ | アッシュさん、何だかご主人様に雰囲気が似てたですの。心配ですの… |
ルーク | ああ?あいつと俺が似てるってのか?ふざけんじゃねーぞ、このブタザル! |
ミュウ | みゅううう!ごめんなさいですの! |
カノンノ | …ねえ、ルーク。二人の後を追わなくていいの?このままじゃきっと… |
ルーク | 放っとけ。野垂れ死にしたけりゃ、勝手にしろっつーんだ |
カノンノ | でも… |
ルーク | あいつらがどうなろうと俺には関係ねえ! |
カノンノ | ルーク… |
| ガサ… |
カノンノ | …え?今の音… |
| |
| グルルルル! |
ミュウ | ご主人様、魔物ですの! |
ルーク | …ちっ! |
scene1 | 未来からの来訪者 |
リッド | やれやれ…ルーク達の姿はどこにも見当たらねえな |
コンウェイ | 時空の歪みは広大だからね。注意深く捜していくしかないと思うよ |
リオン | ルドガー。お前の力でルーク達の居場所を探知する事は出来ないのか? |
ルドガー | すまない、そこまでは… |
エミル | そう上手くは、いかないって事ですね… |
アスベル | どこだ…?カノンノ達は一体どこに── |
| ゴゴゴ… |
リタ | え…?待って、これって地震…? |
ミラ | … |
| ゴゴゴゴゴ…! |
リオン | 時空の歪みの中でも地震が起こるのか… |
コンウェイ | 普通なら、考えられないんだけどね |
アスベル | だけど、現にこうして起きている。一体どういう事なんだ…? |
ミラ | …どうやら、近くにクロノスがいるらしい |
ミラ | 今の揺れと同時期に大精霊の強い力を感じ取った |
ルドガー | だとしたら、まずいんじゃないのか?ルーク達と合流する前にクロノスと遭遇したら… |
ミラ | … |
リタ | カノンノ抜きで戦うのは無意味よ。今すぐここから離れるべきだわ |
ミラ | …いや、待て。この状況は逆に好機かもしれない |
アスベル | 好機…?ミラ、説明してくれ。どういう事なんだ? |
ミラ | カノンノはネックレスを通じクロノスの気配を感知する事が出来る |
ミラ | 仮にカノンノがクロノスの居場所を突き止めたとしよう。そうすれば、彼らは確実に動く…クロノスの元へな |
リタ | 待って。ミラには悪いけど、そうはならないと思う |
リタ | カノンノは、ルドガーの能力の事も知ってるし、あたしらがすぐに助けに来るだろう事もわかってるはずよ |
リタ | いくらクロノスの存在を感知したってさすがにあたし達と合流する前に向かうなんてバカはしないと思う |
ミラ | ああ、カノンノ一人ならクロノスから身を潜め、私達を捜していたかもしれない |
ミラ | だが、ルークが一緒だとしたら…おそらくクロノスの元へ向うだろう。じっとしていられる性格ではないしな |
ミラ | ルークは確かに短気でわがままだが、剣の腕はたつ。クロノスとも少しの間なら渡り合えるはずだ |
ミラ | …ルークは、かつて光の神殿でも行動を共にした仲間だ。彼の性格と腕は、多少わかるつもりだ |
アスベル | そんな…、カノンノ達だけでクロノスに挑むなんて無茶だ…! |
ミラ | あいにく、ルーク本人はそうは考えていないだろう |
アスベル | じゃあ俺達が取るべき最善の手は、このままクロノスの近くで待つって事か? |
ミラ | ああ。危険を伴うが、このままあてもなく捜し回るよりは、会える見込みは高い |
リタ | なるほどね…。確かにルークならやりかねないわね。わかった、前言撤回するわ |
リオン | 僕も異論はない。クロノスと戦闘にならない距離を保つ事もミラがいればどうにかなるだろう |
ミラ | それについては、任せてくれ |
ルドガー | じゃあ、決まりだな |
リッド | 罠を仕掛けて、獲物がかかるのを待つ時に似てるな。猟師のオレには馴染み深い感覚だぜ |
アスベル | カノンノ…こっちへ来てくれよ… |
| |
| … |
カノンノ | ルーク…やっぱり、ナタリアさん達の後を追った方がいいよ |
ミュウ | ミュウもその方がいいと思うですの。ナタリアさん達が心配ですの |
ルーク | 俺に指図すんじゃねー!だいいち、離れてったのはあいつらだろーが! |
カノンノ | そうだけど…でも、このままじゃ二人共時空の歪みからずっと出られなくなっちゃうよ… |
カノンノ | それに、さっきアッシュさん、ルークに何か言いかけていたよね? |
カノンノ | もう一度、ちゃんと話をした方がいいと思う |
ルーク | … |
カノンノ | こんな機会は滅多にないかもしれないよ |
カノンノ | アッシュさんもきっと伝えたい事あるんじゃないかな? |
カノンノ | 私がルークの立場だったらアッシュさんと話をしようとするよ |
カノンノ | その時の感情で話をしないまま、それっきり会う事もなくて… |
カノンノ | もしその人に何かあったら、私はきっと、話をしなかった事を後で後悔すると思うから |
ルーク | … |
ミュウ | ボクもご主人様に、そんな想いはして欲しくないですの… |
ルーク | だー!指図すんなって言っただろ!わーったよ、追えばいいんだろ!追えば! |
カノンノ | 本当に!? |
ミュウ | やっぱりご主人様は優しいですの! |
ルーク | やかましい!勘違いすんじゃねえ!俺はただ、あいつらが勝手に死んだら後味悪いって思っただけだからな! |
ルーク | ましてや、あのアッシュの野郎なんかどうだっていいんだ |
ルーク | ただ、ナタリアの奴があいつと一緒にいるから仕方なく追いかけてやるだけだ! |
カノンノ | うん、それでいいよ。それじゃ急いで行こう! |
ミュウ | 行くですの! |
ルーク | って、こら、お前ら!俺より先にずんずん行くんじゃねー! |
scene2 | 未来からの来訪者 |
カノンノ | ナタリアさんとアッシュさん、どこに行ったのかな |
ミュウ | もうこの辺りにはいないかもしれないですの… |
ルーク | ったく、はた迷惑な連中だぜ。大人しくじっとしてろっつーの |
| ズドーーーン!ドゴーーーン! |
カノンノ | な、何?何かすごい音が… |
ミュウ | 何かが暴れているみたいですの! |
| ギャウウッ! |
ルーク | 今の声…魔物か!? |
カノンノ | ナタリアさん達が、魔物と戦ってるんじゃない?助けないと! |
カノンノ | ナタリアさん、アッシュさん!大丈夫── |
カノンノ | …って、あれ…? |
??? | ふう… |
ミュウ | みゅみゅ!?違う人ですの! |
ルーク | …!あいつは…! |
| |
??? | …あ、ルーク |
ルーク | ソフィ!やっぱりお前かよ! |
カノンノ | ルークの知り合い? |
ルーク | ああ、ミラやユーリ達と同じ光の神殿に一緒に乗り込んだ仲間だ |
ルーク | またお前に会えるとは思ってもみなかったぜ!しかもこんなところでよ! |
ソフィ | ここ…どこなの?知らないところみたい… |
ルーク | 時空の歪みってんだ。何でも別の世界同士を繋ぐトンネルみたいな空間なんだと |
ソフィ | 時空の歪み… |
カノンノ | あの…こんにちは |
ソフィ | …こんにちは |
ルーク | おっと、そうだった。紹介するぜ。カノンノと── |
ミュウ | ミュウですの。よろしくですの! |
ルーク | あ、こら、勝手に自己紹介してんじゃねえ、このブタザル! |
ソフィ | カノンノに、ミュウだね。よろしく。わたしは、ソフィ |
ルーク | ったく…。で、何でソフィは、こんなところにいるんだ? |
ソフィ | 実は…またわたし達の時代でおかしな事が起きてて… |
ソフィ | 過去に原因があるかもっていう話になって、わたしが調べる事になったの |
ソフィ | それでリアラに、転移させてもらったんだけど… |
ルーク | リアラって確か、未来にいるソフィの仲間だったよな |
ソフィ | うん…。でも転移してる途中で、突然変な感じになって |
ソフィ | 急にどこかへ引っ張られる感じになって、気付いたらここにいたの |
ルーク | 引っ張られる感じ、か…。もしかしたらそいつも、クロノスの影響かもしれねーな |
ソフィ | クロノス? |
ルーク | 時空を司るとかいう大精霊だ。こっちはこっちで、また大変な状況になってんだよ |
| |
ソフィ | そんな事になってたんだ…大変だったんだね |
ルーク | …まあ、つーわけで、俺達はクロノスの暴走を鎮めなきゃならねーんだ |
ルーク | ソフィ、お前も俺達と来いよ。お前の時代の妙な異変って奴もこの影響かもしれねーだろ |
ソフィ | うん、いいよ。わたしの調べる事にも関係してるかもしれないし |
ミュウ | ソフィさんが一緒に来てくれると、心強いですの |
カノンノ | うん、そうだね |
ルーク | 他の奴らも時空の歪みに来てるはずだからそのうち会えると思うぜ |
ルーク | …って言っても、お前に馴染みがあるのはミラくらいか…。アスベルとか、知らねーだろ? |
ソフィ | …!アスベルがいるの? |
カノンノ | ソフィさん、アスベルとも知り合いなの? |
ソフィ | うん。…でも、こっちのアスベルはまだわたしの事を知らないと思う |
ミュウ | みゅう~…何だかややこしいですの… |
ルーク | まあいいや。とにかく行こうぜ。まずはナタリア達を見つけねーと |
| カラ… |
ソフィ | …!そこに何かいる! |
| |
| ガルルル! |
カノンノ | みんな、気をつけて!来る! |
scene1 | クロノスとの再会 |
ルーク | …あれ?って事はもしかしたら──… |
ミュウ | …?ご主人様、どうかしたんですの? |
ルーク | いや、思ったんだけどよ、ソフィは未来の世界から来ただろ? |
ルーク | …って事はつまり、お前が生きてる時代まで、この世界は滅びないっつー事じゃねーのか? |
カノンノ | 確かに、そう言われてみたら… |
ソフィ | 必ずしもそうなるかはわからない… |
ソフィ | ジューダスが言ってたの、未来はとても変わりやすいものなんだって |
ルーク | ジューダス?誰だ、そいつ? |
ソフィ | ジューダスは友達だよ |
ルーク | 何かよくわからねーけど、つまりは、アテには出来ねーって事か |
ルーク | ちえっ、いい考えだと思ったのに、そう甘くはねーってか |
ルーク | ま、ソフィだってこうやって自分の時代を救うためにここへ来てんだもんな |
カノンノ | ふう… |
ミュウ | カノンノさん、大丈夫ですの? |
カノンノ | ううん、大丈夫。心配かけてごめんね |
ソフィ | さっきからずっと同じような場所を歩いてる… |
ルーク | そうなんだよな。前もそれで苦労したぜ |
ソフィ | こうやってただ歩いてるだけで、クロノスを見つけられるの? |
ルーク | ああ、その点は大丈夫だ。大精霊が近くにいれば、カノンノのネックレスが光るからな |
ソフィ | そうなんだ。すごいね |
カノンノ | どうしてそうなるのか、理由はわからないんだけどね |
カノンノ | あ… |
ミュウ | ネックレスが光り始めたですの! |
ルーク | 言ったそばからマジかよ! |
ソフィ | この近くにクロノスがいる…? |
カノンノ | ナタリアさんとアッシュさん、大丈夫かな |
ルーク | 考えたらあいつら、クロノスの事は何も知らねーだろうし、俺達より先に出くわしたらヤベーかもな… |
カノンノ | 早くクロノスを見つけないと |
ミュウ | 頑張るですの! |
ソフィ | うん、頑張ろう |
scene2 | クロノスとの再会 |
カノンノ | ネックレスの光が… |
ミュウ | ますます強くなっているですの! |
ルーク | どこだ?クロノスの奴、どこにいやがる! |
ソフィ | …! |
ソフィ | 空気が震えてる…何かが近くで戦ってるみたい |
カノンノ | まさかナタリアさん達が…!? |
ルーク | くそっ…ソフィ、空気が震えてるのは、どっちの方向かわかるか? |
ソフィ | …多分、あっち… |
ルーク | よし、お前ら、急ぐぞ! |
| |
ミュウ | …見つけたですの! |
クロノス | グゥゥ… |
ナタリア | アッシュ、私に構わず、お逃げになって! |
アッシュ | 馬鹿な事言うな!そんな事出来るわけねえだろうが!つっ…! |
カノンノ | アッシュさん、怪我してる…! |
ソフィ | ルーク、行かなきゃ…あの人達死んじゃう…! |
ルーク | ちっ…! |
ナタリア | アッシュ、駄目ですわ!退かなくては! |
ナタリア | あなた一人ならここから逃げる事も出来ますわ。ですから… |
アッシュ | 何度も同じ事を言わせるな!俺だけ逃げるなどとそんな── |
クロノス | グアアッ! |
ナタリア | アッシュ! |
アッシュ | くっ…! |
| バシィッ! |
アッシュ | な…!? |
| |
ルーク | …けっ、さっきの借りはこれで返したからな! |
ナタリア | ルーク…! |
アッシュ | お前…どうしてここに… |
ルーク | …どうしても何も、俺達はこいつの暴走を鎮めるために時空の歪みへ来たんだよ |
アッシュ | 暴走…だと… |
ルーク | 大精霊のクロノスってんだ。時空の歪みもこいつの暴走のせいだ |
ルーク | …こいつの相手は俺がやる。お前はナタリアを連れて後ろに下がってろ! |
ナタリア | ルーク…この魔物は普通の魔物ではありませんわ!あなた一人ではどうにも── |
ソフィ | ルークだけじゃないよ、わたしもいる |
ナタリア | … |
ルーク | っつーわけだ。とにかく、お前らは大人しく傷の手当でもしてるんだな! |
アッシュ | … |
| |
クロノス | グウウ… |
ソフィ | クロノス…何だか苦しそう |
カノンノ | 今まで会った他の大精霊も、みんなこんな感じだったよ… |
ミュウ | 助けてあげないといけないですの |
ソフィ | そうだね…何としても |
ルーク | やっと会えたぜ、クロノス。待ちわびたぜ。お前とは── |
クロノス | ガアアアアッ! |
ルーク | 何だよ、最後までしゃべらせろよ!せっかく、会ったら何て言うかずっと考えてたのに! |
クロノス | グオオオッ! |
ソフィ | ルーク、来るよ! |
ルーク | ちっ、ったく…せわしない奴だぜ! |
scene3 | クロノスとの再会 |
ソフィ | やああっ! |
| バシィッ! |
クロノス | グア…! |
ルーク | はああっ! |
| ズバッ! |
クロノス | グ…ウウ… |
ルーク | はあ…はあ…今の攻撃は手ごたえがあったぜ…!どうだクロノス、何とか言えよ |
クロノス | ウ…アア…ア… |
| ドサッ! |
ミュウ | クロノスの動きが、止まったですの! |
カノンノ | これでリプリカームを与えられる…! |
ルーク | いてて…へっ…何とかなったみてーだな |
ソフィ | うん…、よかった… |
ルーク | おい、ナタリア、アッシュ。…お前らの方は大丈夫なのか? |
ナタリア | ええ…あなた達のお蔭で傷を癒す事が出来ましたし、随分楽になりましたわ |
アッシュ | … |
ナタリア | それにしても…まさか本当にあの魔物を倒すなんて… |
ルーク | …ま、俺にかかりゃ余裕だぜ。それとさっきも言ったけど、こいつは魔物じゃねえ。大精霊だ |
ナタリア | 大精霊… |
ルーク | よし、カノンノ、こいつがまた動き出さねえ内に早いとこ暴走を鎮めちまえよ |
カノンノ | あ、うん…!わかった、すぐに── |
| |
クロノス | グ…ァ… |
ナタリア | ルーク、後ろ!クロノスが…!! |
ミュウ | クロノスがまた動き出したですの! |
ルーク | なっ…!たいがいしぶとい野郎だな…!大人しくしてろっての! |
クロノス | グオオ… |
ルーク | って…まさかその構え…また俺達を分史世界へ飛ばそうとか考えてんじゃねーよな…? |
ルーク | そうはさせるかよ!! |
ミュウ | ご主人様…!ボクも手伝いますの! |
ルーク | これでも食らえっ!はああああっ! |
| ズバーーッ! |
クロノス | グ… |
ルーク | よし、今度こそ… |
ルーク | うぉっ!?しまっ…! |
ミュウ | みゅ…か、身体が──… |
ソフィ | ルーク!?ミュウ!? |
カノンノ | どうなってるの!?光がまぶしくて二人が見えない…!ルーク!ミュウ! |
ルーク | ぬおおおおーーーーっ! |
ミュウ | みゅうううーーーーっ! |
| |
ソフィ | う…光が収まったみたい… |
ソフィ | ──ルーク…?ルーク!? |
ナタリア | そんな…ルークとミュウが…消えてしまいましたわ… |
アッシュ | クロノスの姿もない…!くそっ、馬鹿な!一体どこへ… |
カノンノ | そんな…ルーク!ミュウ! |
scene1 | 死闘 |
リオン | クロノスの気配を感じ取ったのはこの方向で間違いないんだな? |
ミラ | ああ、間違いない!あのすさまじい力は間違いなくクロノスのものだ |
ミラ | …だが、この感じは…… |
ミラ | おそらくクロノスは今、何者かと戦闘状態にある |
ルドガー | 何者か…か。せめて一市民でない事を願うばかりだ |
ミラ | 安心しろ、その可能性は低い。相手が戦う術を持たない人間なら、このような強い力を放つはずがない |
アスベル | だとしたら、カノンノ達か…?くっ、とにかくこのまま急いでクロノスの元へ── |
ミラ | …!これは… |
リッド | どうした、ミラ? |
ミラ | クロノスの気配が消えた…何が起きたというのだ…? |
リタ | ちょっと…それって一体どういう事なのよ!? |
ミラ | …私にもわからない。すぐ傍にあったはずの強い気配が跡形もなくこつ然と消えたのだ |
コンウェイ | …もしかしたら、例の分史世界ってところに移動してしまったのかもしれないね |
ルドガー | 分史世界か、大いに考えられる話だな… |
リタ | …あるいは、ルーク達がクロノスを倒して暴走を鎮めたとか?楽観的すぎる気もするけど… |
エミル | とにかく、さっきクロノスの気配があった場所まで行ってみよう |
| |
ルドガー | …あそこに、誰かいるみたいだ |
アスベル | …!カノンノ! |
カノンノ | アスベル! |
ソフィ | アスベル…? |
アスベル | …?そうだけど、君は一体… |
ミラ | ソフィ…ソフィではないか! |
ソフィ | ミラ…! |
アスベル | ソフィ…? |
エミル | あなたは…ナタリア様…!?どうしてこんなところに… |
ナタリア | …?あなたは?どうして私の事を…? |
エミル | …!失礼いたしました、私はキムラスカ王国の騎士、エミル・キャスタニエです |
ナタリア | まあ、キムラスカの… |
リッド | 知らない奴らがいると思ったら、みんな誰かの知り合いみたいだな |
リタ | そうみたいね |
アスベル | それにしてもカノンノ、本当に無事でよかった…。どこも怪我はないか? |
カノンノ | 私は大丈夫…! |
カノンノ | でも、ルークとミュウがクロノスと一緒に… |
コンウェイ | …消えた、という事かな? |
アッシュ | 何故わかる? |
コンウェイ | 既に経験済みだからね。ま、前回はクロノスの同行はなかったけど |
コンウェイ | …それにしても、二度も同じ手にかかるなんてルークくんも懲りないなあ |
リタ | あんたね…そんな呑気な事言ってられる場合じゃないでしょ? |
リタ | ルーク達がクロノスと一緒にどこか孤立した空間へ行ったとしたら…状況はかなりまずいわ |
ミラ | ああ、相手はクロノスだ。とてもじゃないが、ルークとミュウだけで、倒せる相手ではない… |
ミラ | 仮に上手く倒せたとしても、カノンノがここにいる以上クロノスを鎮める事は出来ない… |
アスベル | …カノンノ、とにかく詳しい状況を聞かせてくれ |
カノンノ | うん… |
| |
ルーク | ぬおおおおーーーっ! |
ルーク | …っと、ここはどこだ…?例の分史世界って奴か!? |
ルーク | クロノスの野郎…また性懲りもなく俺をわけのわからねー場所に飛ばしやがって… |
ミュウ | ご主人様! |
ルーク | ブタザル!?何でお前までこっちにいんだよ |
ルーク | …! |
| |
クロノス | … |
ルーク | そこにいたのか、クロノス |
ルーク | 俺達を放り出して逃げ出したわけじゃなかったんだな。誉めてやるぜ |
クロノス | グアアアアアア! |
ルーク | って、何だよ…!あれだけ叩きのめしてやったのにもう元気を取り戻しやがって |
ルーク | …こっちはさっきの戦いでヘトヘトだってのに、不公平じゃねーか |
クロノス | …グ…ウ…アアアアッ! |
ミュウ | でもやっぱり…苦しそうですの |
ルーク | … |
クロノス | グ…ウ…ウ… |
ルーク | おい、クロノス。お前、今「暴走」してるって自覚あんのかよ? |
ルーク | その暴走って奴、お前自身の意志じゃねーんだろ?そんなの悔しくねーのかよ!? |
クロノス | グ…ア… |
ルーク | 大精霊のくせに悔しくねーのかよ、何とか言ってみろよ! |
クロノス | グオオオオオオッ!! |
ミュウ | ご主人様…!危ないですの! |
ルーク | くそっ、問答無用かよ。暴走してんのに俺の声なんか聞こえるわけねーか… |
ルーク | … |
ルーク | …上等じゃねえか。こうなったら力ずくでも、目を覚まさせてやる |
ミュウ | ミュウもご主人様と一緒に、戦うですの! |
ルーク | 馬鹿、お前に何が出来るんだよ。邪魔だから引っ込んでろ |
ミュウ | ご主人様、怪我してるですの…ボクはご主人様を守るですの!頑張るですの! |
ルーク | だからってお前が戦えるわけじゃねーだろが!危ねーから下がれ! |
ミュウ | 嫌ですの!ご主人様一人で戦わせないですの! |
クロノス | グアアアアアアッ!! |
ルーク | ちっ…、しょうがねえ。勝手に死ぬんじゃねえぞ、ブタザル! |
scene2 | 死闘 |
リタ | やっぱり、ミラが感じ取ったのは、あんた達とやり合ってた時に放ったクロノスの力だったのね |
リッド | で、ルーク達が飛んでったのはやっぱり分史世界とかいうところなのか? |
ルドガー | そこまではわからない。カノンノの話を聞いただけでは何とも… |
コンウェイ | 時空の歪みは、いろんな世界と通じているからね。可能性を挙げればキリがないよ |
ルドガー | 残念だが、コンウェイの言う通りだ |
ルドガー | さらには、暴走したクロノスの力は時空の歪み内のみにとどまらずあらゆる時空に影響を及ぼしている |
ルドガー | 新たなる空間が出来ている事も考えられる以上、下手に動く事は避けた方がいい |
リオン | 手の打ちようがないという事か… |
ナタリア | 私のせいですわ…。私とアッシュを助けようとしたためにルークはこんな… |
エミル | ナタリア様、ご自分を責めないでください。ナタリア様のせいではありません |
ミラ | エミルの言う通りだ。例えお前達がいようがいまいが、ルークの選択は変わらなかったはずだ |
アッシュ | … |
リタ | ねえ、もしルークとミュウがクロノスを倒す事に成功したら、ここへ戻って来る事は可能なの…? |
ミラ | 仮にそうする事が出来たなら一時的にクロノスの力は消失する。可能性としては十分にある、が… |
アスベル | ルーク…とミュウだけでクロノスを倒す事自体が難しい、そういう事か |
ミラ | ああ…。ルークに限った話ではなく、大精霊が相手である以上誰であっても厳しいだろう |
ソフィ | そんな… |
コンウェイ | いずれにせよ、今はルークくんに一縷の望みを託す他ないだろうね |
エミル | ルーク…君なら出来る…。僕は信じて待つよ |
カノンノ | ルーク…ミュウ…どうか無事で戻って来て… |
アスベル | … |
アッシュ | ちっ… |
ソフィ | アスベル… |
アスベル | 君は…ソフィだったね |
ソフィ | うん… |
アスベル | そうか、君だね…。リチャードを助けてくれたのは |
ソフィ | あ…、うん…アスベル、わたしの事知ってるの? |
アスベル | ああ、リチャードから話は聞いてる。まさかこんなところで会う事が出来るなんてな |
アスベル | ずっと会いたいと思ってたんだ。直接お礼が言いたくてさ、…本当にありがとうな |
アスベル | リチャードは俺の大切な友達なんだ。君がいなければあいつを失うところだった |
ソフィ | ううん、いいの。リチャードはわたしにとっても大切な友達だから |
ソフィ | それと、…アスベルも。この時代のアスベルに会えて、わたし本当に嬉しいよ |
アスベル | この時代の…? |
ソフィ | リチャードが元に戻って、未来が変わって… |
ソフィ | 今ではわたしの時代にもアスベルがいるんだよ。今よりだいぶ大人だけど |
アスベル | そ、そうか…。そういう話を聞くと、何だか不思議な感じだな |
ソフィ | アスベル…ルークの事、本当にごめんなさい。わたし、すぐ傍にいたのに… |
アスベル | ソフィのせいじゃない。気にする事はないさ |
アスベル | ルークとミュウの無事を、一緒に祈ろう |
ソフィ | うん…! |
| |
ルーク | がはっ…!ぐ…強ぇ… |
クロノス | … |
ルーク | ちくしょう…ここに来て形勢逆転…かよ… |
ルーク | … |
ルーク | くっ…駄目だ…身体がびくとも動かねー… |
ルーク | ミラはミュゼと二人でアスカの暴走を鎮めたってのに…俺じゃ無理だっつーのかよ… |
ルーク | …おいブタザル…無事か…? |
ルーク | お前…傷だらけじゃねえか!だから引っ込んでろっつったのに… |
ルーク | … |
クロノス | グアア… |
ルーク | くそっ…!クロノスがこっちに来るってのに…身体が…動かねえ… |
ルーク | マジかよ…こんなとこで、俺、死んじまうのか…? |
ミュウ | みゅ…う… |
ルーク | 何だ、ブタザル…動けんのかよ…だったら、お前だけでもさっさと逃げ── |
ミュウ | ご主人様を殴ったら…駄目です…の |
ルーク | ばっ…馬鹿、何やってんだ!そんなとこに突っ立ってたらクロノスの野郎に… |
| ガッ! |
ミュウ | みゅううぅ… |
ルーク | そらみろ!動けるならさっさと… |
ミュウ | みゅ…ご主人様は…ボクが…守るですの…! |
ルーク | わけわかんねー事言ってんじゃねえ!いいから早く── |
| ドガッ!! |
ルーク | やめろ!早く逃げろって!マジで死んじまうぞ…! |
ミュウ | ご主人様を…守る…ですの… |
ルーク | ブタザルのくせにかっこつけてんじゃねえ!お前なんかに守ってもらう必要はねえんだ。いいから早く── |
ミュウ | ご主人様は…いつもボクの事を…気にかけて…優しくしてくれるですの… |
ミュウ | ボクは…そんなご主人様が…大好きですの…だから──… |
| バキィィィッ!!! |
ミュウ | … |
ルーク | おい…ブタザル…? |
ミュウ | … |
ルーク | …ブタザル!?返事をしろよ…おい! |
ミュウ | … |
ルーク | まさか…ミュウ! |
クロノス | グアア… |
ルーク | … |
ルーク | クロノス、この野郎…!! |
ルーク | 何でだよ…!ブタザルの事なんか放っときゃよかっただろーが! |
ルーク | 何で…何でこんな…! |
ルーク | 許さねえ…絶対に許さねえぞ!! |
クロノス | ウウウ… |
| |
ルーク | 俺のこの手でぶっ飛ばして、二度と立ち上がれなくしてやる! |
ルーク | 覚悟しやがれ、クロノス! |
クロノス | グオオオオオオッ!! |
ルーク | うおおおおっ! |
scene3 | 死闘 |
ルーク | はあ…はあ…思い知ったか、この野郎… |
クロノス | グ… |
ルーク | …これで、終わりだ! |
| ズバーーーッ! |
クロノス | グ…アア…ア… |
| ドサッ! |
ルーク | … |
ルーク | …おいブタザル、終わったぜ |
ミュウ | … |
ルーク | へっ…まるでボロ雑巾じゃねーか……ったく、ブタザルのくせに余計な事するから…こんな事に…… |
ルーク | … |
ルーク | …なあ、お前がいなくなっちまったらティアもガイも悲しむじゃねーか…どうしてくれんだよ… |
ミュウ | … |
ルーク | 本当に…本当に余計な事しやがって──… |
| ドサッ! |
| |
リオン | …僕達が知っている情報は、大体こんなところだ |
ナタリア | クロノスの暴走を鎮める、ルークが話していた事はそういう事でしたのね… |
リッド | それはそうと…ナタリアがキムラスカの王女だって事は、エミルから聞いたけどよ… |
リタ | ナタリアと一緒にいるアッシュは、何者なわけ? |
カノンノ | … |
ナタリア | アッシュは…私の古くからの友人ですわ |
ナタリア | たまたま二人でいる時に、亀裂が生じて…それでそのままここへ… |
アッシュ | … |
コンウェイ | ま、細かい事はいいんじゃないかな。今はルークくんの無事を祈ろう |
カノンノ | あ…ネックレスが… |
ミラ | …!大精霊の気配だ。近いぞ |
アスベル | ひょっとして、ルーク達がクロノスを倒したんじゃ… |
リオン | …だといいが。念のため、すぐに戦闘に入れるよう身構えておけ |
| … |
アスベル | ルーク!ミュウ! |
ソフィ | クロノスもいるよ! |
リオン | これが…クロノス… |
リッド | そんな事より、これを見ろ…!ルークもミュウもひどい怪我をしてるじゃねえか |
エミル | …!まさか… |
ミラ | …辛うじて息はしているようだが、二人共虫の息だ。すぐに治療しなければ手遅れになる |
ナタリア | ルークは私がやりますわ! |
ソフィ | ミュウはわたしが |
エミル | 二人の容態はどうですか? |
ナタリア | それが…傷が想像以上に深くて…大丈夫だと信じたいのですけど… |
ソフィ | ミュウも…。回復が追い付かなくてどんどん弱くなっていく… |
カノンノ | そんな…!嫌だよそんなの! |
アスベル | 落ち着け、カノンノ。今は出来る限りの事をして、様子を見るしかない |
カノンノ | …。ルーク、ミュウ… |
カノンノ | ありがとう、二人のお蔭で無事クロノスの暴走を鎮めてあげる事が出来るよ |
カノンノ | …ここからは私達に任せて、ゆっくり休んでね |
ミラ | カノンノ… |
ルドガー | ネックレスの光が…クロノスに注がれているのか? |
アッシュ | これが…大精霊の暴走を鎮める力… |
リッド | それにしても、ルークの奴、まさか本当にクロノスをぶっ倒して戻って来るとはな… |
ミラ | …ああ、私も驚いている。クロノスを相手にまさかここまで…… |
リタ | だからって…こんなボロボロになっちゃ… |
ソフィ | ミュウ… |
ソフィ | クロノスがわたし達みんなをどこかへ飛ばそうとした時もルークと一緒に庇ってくれたね… |
ソフィ | だから、今度はわたし達が助けるよ。だからもう少し、頑張って…! |
アスベル | ルークもミュウも本当によく頑張ってくれた |
アスベル | カノンノの事もきちんと守り切ってくれたんだ…なのに、ここで倒れては駄目だ…! |
ナタリア | …それだけじゃありませんわ |
ナタリア | ルークは、私やアッシュの危機も救ってくれましたのよ。危険を顧みず、勇敢に… |
ナタリア | ですわよね、アッシュ…? |
アッシュ | … |
アッシュ | …ああ |
カノンノ | アッシュさん… |
カノンノ | リプリカーム、終わったよ |
コンウェイ | さて、クロノスの様子はどうかな? |
クロノス | う… |
ミラ | 己を取り戻す事は出来たか、クロノス? |
クロノス | 我は…ここは一体── |
リオン | どうやら、正気を取り戻したようだ |
クロノス | 正気だと…?一体何の事を話している…? |
クロノス | マナの枯渇…まさか世界がこのような事態に陥っていたとはな |
カノンノ | …うん。だからね、今こうしてあなた達の暴走を鎮めて回っているの |
カノンノ | この世界には、今もまだ暴走状態に陥り苦しんでいるあなたの仲間達がいる |
カノンノ | …そのためにも、クロノス。私達に力を貸してもらえないかな? |
クロノス | 我をこのような事態に貶めたのは身勝手な貴様ら人間の愚かな行為が原因だろう? |
クロノス | それをこの期に及んで我に力を貸せとはよく言えたものだ |
ミラ | クロノス… |
ミラ | お前の怒りは理解出来る。人間の身勝手さに苛立つ気持ちも。…だが、人間全てがそうではない |
ミラ | 私もかつてはお前と同じように考えていた |
ミラ | 一部の人間の行いから全てを判断し人間は争いを好む愚かな生き物だ、…そう感じた事もある |
ミラ | だが、気付いたのだ。全てがそうではないのだと… |
クロノス | … |
カノンノ | ねえ、クロノス。この二人を見てほしい |
| |
| … |
カノンノ | ルークとミュウは、あなたを暴走の苦しみから解放するために必死にあなたに立ち向かったんだよ |
クロノス | … |
カノンノ | ぶっきらぼうなところもあるけど、ルークはあなたの事を必死に救い出そうとしてた |
カノンノ | あなたの言うように、人間には愚かな一面もあるかもしれない |
カノンノ | でも、こういう人間もいるって事もわかってもらえると嬉しいかな… |
クロノス | … |
アスベル | カノンノ… |
カノンノ | …じゃあまたね、クロノス。もし、また苦しくなったりしたらすぐに私のところへ来て |
カノンノ | その時は、このリプリカームで少しは楽にしてあげられると思うから |
リッド | お、おい…カノンノ?何言ってんだ?だって、契約はまだ── |
カノンノ | …ううん、いいの。契約はお互いの信頼関係があってこそ成り立つものだと思う |
カノンノ | クロノスが望んでない今、無理強いするわけには── |
クロノス | …しばらくの間なら、力を貸してやっても構わん |
リオン | …! |
カノンノ | え…?どうして…本当にいいの? |
クロノス | 勘違いしないでもらおう。精霊達を危機から救うためだ |
クロノス | …それにそこで寝ている奴らへの借りもある |
カノンノ | …クロノス、ありがとう。勿論、あなたの気が済むまでの間でいいよ |
| |
エミル | ネックレスの色が変わったね。…これが契約出来たって印? |
カノンノ | うん |
ナタリア | でも、何だかいたたまれませんわ…。世界崩壊の脅威となっている大精霊の暴走が人間の行いによる結果だなんて |
アスベル | それはそうだな。クロノスの話していた事は間違ってはいなかった |
アスベル | 俺達人間は今一度自分達の行いについて深く考える必要がある… |
ルドガー | よし、そろそろ元の世界へ戻ろう。時空の歪みでやるべき事は、これで片付いたはずだ |
リオン | …ああ |
コンウェイ | じゃあボクは、ひとまずここで失礼するよ |
リッド | 何だ、行っちまうのかよ |
コンウェイ | キミ達の世界も十分堪能したし、ボクも本格的に自分の世界へ戻る手だてを探す事にするよ |
コンウェイ | クロノスが正気に戻った今、時空の歪みと他の世界の繋がりも閉じてしまうかもしれないからね |
ミラ | そうか…寂しくなるな。今までいろいろと助かった、感謝している |
リタ | 達者でね |
コンウェイ | キミ達もね。まあ縁があったらまた会おう |
コンウェイ | そのうちまたひょっこり、この世界に顔を出せるかもしれない。その時はよろしく |
リッド | ルークが寝てる間に行っちまうなんてあっさりしたモンだな。ま、コンウェイらしいけど |
リタ | さて、そろそろあたし達も戻るとしましょ |
アスベル | そうだな、ルーク達もちゃんとベッドで休ませた方がいいだろう |
アスベル | ルークは肩を担げば何とか運べそう──…あ |
アッシュ | …こいつは俺が担ぐ |
アスベル | アッシュ…?だけど、お前も傷の具合が… |
カノンノ | 任せても大丈夫だよ。ね?アッシュさん |
アッシュ | …ふん |
ナタリア | 私からもお願いしますわ。アッシュの望むようにさせてあげてくださいませ |
アスベル | …?ああ、勿論構わない。よろしく頼むよ |
| |
ルーク | … |
アッシュ | ふん、屑なりに頑張ったってとこか。だが、これしきでいい気になるなよ。まだ先は長いんだからな… |
アスベル | よし、それじゃあ早速ここから出よう。ルドガー、頼めるか? |
ミラ | …いや、アスベル。少し待ってくれ |
ルドガー | どうかしたのか? |
カノンノ | …ふふ |
リオン | …カノンノ? |
カノンノ | …みんな、あのねクロノスが、私達を元の世界に帰してくれるんだって…! |
リッド | へえ、案外いいとこあんじゃねえか |
リタ | ついさっきまで、契約する事すら拒んでたのが嘘みたいね |
カノンノ | きっと、ルークやミュウ、それにみんなの想いを理解してくれたんだと思う |
アスベル | …ミラ、クロノスに伝えてくれるか?ありがとうって |
ミラ | ああ、勿論だ |
アスベル | よーし、じゃあ改めて…みんなで帰ろう、俺達の世界に。カノンノ、クロノス準備はいいか? |
カノンノ | うん! |
カノンノ | 行くよ、クロノス。力を貸して──… |
Name | Dialogue |
scene1 | 勝利の代償 |
リフィル | ふう… |
ジーニアス | どう?姉さん |
リフィル | 二人共峠は越したわ。時間はかかるけど、何とか持ち直すでしょう |
カノンノ | よかった…! |
リタ | ルークもミュウも助かるのね。ほっとしたわ |
リッド | 一時はどうなる事かと思ったぜ。ま、無事で何よりだ |
アスベル | ああ、そうだな。本当にありがとう、ジーニアス、リフィルさん |
リフィル | ここへ来るまでに施した応急処置が功を奏したのよ。賢明な判断だったわ |
リフィル | …さてと、ここはあなた達に任せて私はそろそろ戻るわね |
リフィル | 彼らが目を覚ますまで、ゆっくりしていくといいわ。…後はお願いね、ジーニアス |
ジーニアス | うん、任せといて |
ジーニアス | あーあ、二人共こんなにボロボロになっちゃって… |
ルドガー | まさかルーク達だけでクロノスに勝ったなんてな |
ミラ | 何とか勝利を得たが、その分、代償も大きい |
エミル | …そうだね。二人共助かったからいいものの、ここまでひどい怪我を負うなんて |
アスベル | ルーク達はしばらくここで安静にしていてもらわないとな |
ソフィ | ルークとミュウが治るまで、わたし達もここにいるの? |
リオン | …いや、僕達に立ち止まっている時間はない |
リタ | そうね、二人はここに残してあたしらだけで次の大精霊のところへ行くしかないわ |
カノンノ | ルーク…ミュウ… |
ジーニアス | 大丈夫、二人の事はボクが責任を持って見てるから安心して |
エミル | 僕もここに残ります。二人が心配だし… |
ミラ | お前達が見ていてくれるならルーク達も心強いだろう |
ルーク | う… |
ソフィ | ルーク!? |
ルドガー | 意識が戻ったのか? |
ルーク | あれ…?ここ、どこだ…? |
ジーニアス | ボクの家だよ。思ったより早く意識が戻って安心したよ |
ルーク | ジーニアス…?お前の家っつー事は、ここはメルトキオか…? |
リッド | ああ、結構前に戻って来たんだ。お前はずっと意識がなかったからわからないのも無理ねえけどな |
ルーク | …そうか、俺は確か時空の歪みでクロノスと戦って…… |
アスベル | ルーク、本当によくやってくれたな。お前達のお蔭でクロノスの暴走を鎮められたんだ |
カノンノ | それだけじゃないよ、クロノスが私達に協力してくれる事になったの。本当にありがとう、ルーク |
ルーク | いや…俺はただ…ブタザルの奴が── |
ルーク | そうだ、あいつは!?ブタザルはどこだ!? |
リタ | ミュウならあそこに── |
ミュウ | … |
ルーク | ……!!くっ…! |
カノンノ | ちょ、ちょっとルーク!?駄目だよ急に起き上がったりしたらまた傷が… |
ルーク | うるせー…!傷なんかどうでも── |
ルーク | いつっ…! |
ソフィ | ルーク、無理しちゃダメ |
ルーク | おい、ブタザル… |
ミュウ | … |
ルーク | ブタザル!おい、起きろ!おい!! |
ルーク | くそっ…やっぱり…だから逃げろってあれほど… |
ルーク | …… |
エミル | ルーク…。大丈夫だよ、安心して。ミュウは生きてる |
ルーク | へ?……マジか?本当か、エミル!? |
エミル | うん、本当だよ。ちゃんと息してるでしょ? |
ルーク | ……本当だ。弱々しいけど…息してる… |
ルーク | …けっ、何だよ!ブタザルのくせに脅かしやがって、こいつ… |
エミル | 安心した? |
エミル | …それなら、そろそろ腕を放して欲しいんだけど? |
エミル | 嬉しいのはわかるけど、そんなに強く掴まれると… |
ルーク | なっ、べ、別に嬉しいとかそんなんじゃねーっつーの! |
ルーク | てっきり死んだと思ってたからびっくりしただけだ! |
ルーク | つーか、お前らもお前らだ!生きてるなら生きてるって早く言えよ! |
リタ | あんたが勝手に早合点しただけでしょ。ほんと、バカっぽいんだから |
ルーク | お前らがそろいもそろって辛気くせー顔してるからだろーが!俺は悪くねえ! |
カノンノ | ルークは本当にミュウの事が大好きなんだね |
ルーク | 誰がだよ!こいつを死なせたらティア達に何言われるかってだけで── |
ソフィ | …ふふ |
ルーク | あ、こら!何笑ってんだソフィ! |
リッド | 何はともあれルークも怪我はしてっけど一応元気そうだし、一安心だな |
アスベル | ああ、そうだな |
ルドガー | …よし、ルークの目覚めも確認出来たところで、今度こそ出発しようか |
ルーク | 出発?次の大精霊のところか? |
ミラ | ああ、そうだ |
ルーク | そうか。じゃあ、俺も一緒に… |
ルーク | いてっ! |
ジーニアス | 駄目だよ、ルーク。大人しく寝てないと |
エミル | 大精霊の事はしばらくみんなに任せてルークは治療に専念して。僕も一緒にいるから |
ルーク | けっ、こんな傷、屁でもねーよ。動いてる内に治るっての |
カノンノ | 駄目だよ。アッシュさん達とも約束したの、ルークに無理はさせないって |
ルーク | アッシュ…!?そういやあいつらは一体どこに… |
アスベル | メルトキオまで一緒に戻って来たんだけどな、その後すぐにどこかへ行ってしまったんだ |
カノンノ | アッシュさんもナタリアさんもルークの事、すごく心配してたんだよ |
カノンノ | だから約束したの、ルークの事は安心して任せて、無理はさせないからって |
ルーク | ナタリアはともかく……あいつが俺の心配なんかするわけねーだろ |
カノンノ | 本当だよ…!気を失ったルークをここまで運んでくれたのもアッシュさんなんだよ |
ルーク | あいつが俺を…?信じらんねえ… |
アスベル | いや、カノンノの話は事実だ。彼自身も傷を負っていたし、俺が運ぶと言ったんだが、それでもって… |
ルーク | マジかよ…。何であいつがそんな… |
ルーク | って、いてて…くそ |
アスベル | ルーク…? |
リオン | いずれにせよ、今の負傷した状態のお前では足手まといだ。…まずは傷の治療に専念しろ |
ミラ | …私も同感だ。傷が癒えたらまた合流すればいい |
ルーク | …… |
リタ | ちょっと、あいつ大丈夫なの?何かぼーっとしちゃってるけど |
エミル | うーん、僕にもわからない…。急にどうしちゃったんだろう |
ジーニアス | …とにかく、ルーク達の事はボクらに任せて、君達は早く動き出した方がいいんじゃない? |
リッド | それもそうだな |
リオン | ミラ。次の大精霊の居場所はどこだ |
ミラ | …ここから西の方角に大精霊の強い気配を感じる |
ソフィ | 西…じゃあ、そっちの方に向かえばいいんだね |
アスベル | ああ |
リッド | じゃあなルーク、オレ達は行く |
ルーク | … |
ミラ | では、エミル、ジーニアス後は頼んだぞ |
エミル | うん、わかった。みんな、気をつけて |
ジーニアス | 外まで見送るよ。みんな、行こう |
scene2 | 勝利の代償 |
リタ | ありがと、ジーニアス。見送りはここまででいいわ。ルーク達の事、頼んだわよ |
ジーニアス | うん、任せて。姉さんもいる事だし、二人の事は心配いらないよ |
ジーニアス | …それにしても、コンウェイが帰っちゃったのは残念だったなー。もっといろいろと話したかったのに |
ルドガー | 縁があればまた会えるだろ。そうガッカリするなよ |
エミル | ちょ、ちょっとルーク!駄目だって… |
ルーク | うるせー!邪魔すんじゃねーって言ってんだろ! |
カノンノ | あれって… |
| |
エミル | ごめん、みんな…。頑張って止めたんだけど全然言う事聞いてくれなくて… |
ルーク | おい、お前ら!俺を置いて行こうったって、そうはいかねーからな! |
ソフィ | いつものルークに戻ってる… |
アスベル | そ、そうだな… |
ルーク | ここまで来たからには追い返したって無駄だからな。俺も一緒に行くぜ! |
アスベル | 一緒にって、無茶を言うな。そんな大怪我をしているのに |
ルーク | こんな怪我、どうって事ねーっつーの! |
ルーク | 大体、怪我が完全に治ってねーのはミラやリッドも一緒だろ |
リッド | う…それは…まあ… |
ルーク | ほらみろ!なのに俺だけなんて不公平じゃねーか |
ルドガー | いや、でも… |
ルーク | そんなに俺を休ませたけりゃさっさと大精霊、全部元に戻そうぜ。そうすりゃ俺も休んでやるからよ |
ソフィ | … |
| |
ルーク | 何だよ、ソフィ。文句でもあんのか |
ソフィ | ううん、そうじゃない |
ソフィ | ルークが大精霊を心配してるって気持ちはわかった。…だから、来てもいいよ |
ルーク | 別に心配してねーっつーの。俺はただ早いとこ面倒事を終わらせたいってだけで… |
ソフィ | うん、わかった。…でもね、一つだけ約束してほしいの |
ソフィ | 辛くなったらすぐに言って。わたしがルークを守るから |
ルーク | …わーったよ、ったく。必要ねーけど、約束してやる。これでいいか? |
ソフィ | うん、ありがとう |
リタ | 結局ついてくるわけ?みんな、あんたのためを思って言ってたってのに、呆れた… |
リタ | とにかくついてくる以上、絶対足手まといになんじゃないわよ?いい? |
ルーク | へっ、任せとけっつーの! |
ルーク | じゃ、そういう事でエミル、それにジーニアス、ブタザルの面倒は頼んだぜ |
エミル | …う、うん、わかった。ルークも気をつけて |
リオン | …よし、そうと決まればさっさと行くぞ。お前達、これ以上無駄に時間を使うな |
ルーク | 無駄って言い方はねーだろ!大体リオン、お前はいつも── |
| |
| きゃああああっ! |
ルドガー | 何だ、今の悲鳴は… |
ミラ | 見ろ、魔物だ! |
| ガルル… |
リッド | やれやれ、これじゃあまた「時間を無駄にするな」ってリオンに言われちまうな |
アスベル | 街の人達に被害が及ぶ前にあの魔物を倒さないと…。よし、みんな急ごう! |
scene1 | 大精霊の気配 |
ロイド | …あれからあちこち見て回ったけど新たに破壊された街や村は見つからなかったな |
スタン | あいつの言った通りだったって事か… |
アーチェ | やっぱ、あの白い髪のヤツが犯人なんじゃない?犯人じゃないとわかんないような事知ってたじゃん |
ゼロス | 俺さまもアーチェちゃんに同感だ。あいつがアスカを暴走させてたって事とも話が繋がるし… |
ユーリ | … |
クレス | ユーリ、君はどう思う?何か引っかかっている事があるように見えるけど |
ユーリ | ん? |
ユーリ | ああ…まあ、大した事じゃねえんだがちっとばかし気になる事があってな |
ユーリ | あいつが犯人だとして、何で出くわした時、オレ達には手を出さなかったのか… |
スタン | う~ん。わからないけど、俺達の方が人数が多かったから、とか、そんな理由じゃないのか? |
ユーリ | 街一つ滅ぼしてのけたのかもしれない奴がか?どうだろうな |
ユーリ | それに、あいつが例の第三者って奴だとしたら、単独ってのも考えにくいんじゃないのか |
レイヴン | うーん…まあ、確かに… |
ユーリ | テムザ山でロイド達が最初に会った時点で、言ってみりゃ奴はオレ達の目的を知ったわけだ |
ユーリ | もし、あいつが第三者なら尻尾を掴もうとしているオレ達を野放しにする理由がわからねえ |
クレス | なるほど。確かにそうだね… |
ロイド | じゃあ、あの男は第三者じゃないって事か? |
ユーリ | それも現時点じゃ断定出来ないな。詳しい事情を知る存在だって事は間違いねえだろうけどな |
ゼロス | だったら、何にせよやる事は一緒だ。何としてもあの男を捜し出して、洗いざらい吐かせるしかねーだろ |
ユーリ | …まあな |
レイヴン | とにかく、当面の目的はあの男の捜索って事で決まりかね |
クレス | ああ。…とは言うものの彼の行先は見当もつかないし、どこへ向かったらいいんだろう… |
| ドガッ! |
ロイド | ん?この音は何の音だ? |
| |
| ガルルルル! |
| グオオオオ! |
| バキィッ! |
スタン | 叩きつけるような音と…魔物の声が…たくさん…? |
アーチェ | 近くで誰かが魔物と戦ってるんじゃない!? |
レイヴン | 音だけじゃ何とも言えんけど、もしかしたら、助けが必要だったりするかもねえ |
クレス | とにかく、音のする方へ行ってみよう! |
| |
ルーク | いてて…。…ったく、クロノスの野郎手加減なしで殴りやがって… |
カノンノ | 仕方ないよ。あれはクロノスの意志じゃないんだし… |
カノンノ | クロノスが言ってたよ。ルーク達に借りが出来た、それを返すために私達に力を貸してくれるって |
カノンノ | きっとルーク達に、とても感謝してるって事だよ |
ルーク | … |
ルーク | …けっ、まあ仕方ねーからそういう事にしてやるけどよ |
カノンノ | ふふっ |
ルドガー | じゃあ、俺はそろそろ行くよ |
ルーク | ん?何だ、ルドガー、一緒に来ないのかよ? |
ルドガー | ああ、俺は兄さんと合流して時空の歪みに取り残された人達を一緒に助けに行く |
ルーク | そうか…ってそういや、時空の歪みはどうなったんだ? |
ルドガー | 現状はそのままで、完全にこの世界との繋がりが断たれるのは、先の話になると思う |
ミラ | あれだけの空間だからな、完全に繋がりを断つには時間が必要だ |
ルーク | って事は…また地震が起きたら時空の歪みに落っこっちまうかもしれねーって事か? |
カノンノ | それは安心して。その心配はなくなるみたい |
ミラ | クロノスが自我を取り戻した今、亀裂が生じたとしても、時空の歪みと繋がる事はない |
ミラ | 更に言えば、幸いマナの減少も徐々に緩やかになっている |
ミラ | 地震などの異変も静まりつつある事を踏まえると、亀裂が発生する事自体少なくなっていくだろう |
ルーク | ややこしいな…要するにどういう事なんだ? |
ルドガー | 要は、新たな被害が出る事はない、後は取り残された人達を救い出せば、一件落着って事だ |
ルーク | よくわかんねーけど、とにかくもう大丈夫って事だな |
ルドガー | ま、そんなところだ |
アスベル | ルドガー、今まで本当にありがとうな。お蔭でいろいろと助かったよ |
アスベル | ここからは別行動になるが、時空の歪みに取り残された人達を必ず救い出してあげてほしい |
ルドガー | ああ、勿論。絶対最後の一人まで救い出してみせる |
ルドガー | …それじゃ、俺はそろそろ行くよ。また俺で力になれる事があったらいつでも声をかけてくれ |
リッド | ああ、ユリウスにもよろしく伝えておいてくれ |
scene2 | 大精霊の気配 |
リッド | この辺りの魔物は凶暴なヤツが多いから注意して進めよ |
アスベル | …ん? |
アスベル | ああ、そういえば、リッドはコルテア街に住んでるって言っていたな |
リッド | ああ。異変が起こる前は、この森でよく狩りをしてたからな、それなりに詳しいぜ |
リッド | そういや、ルイニス街も近いよな。リオンなら、この辺りの事に詳しいんじゃねえのか? |
リオン | …さあな |
カノンノ | この森の荒れようじゃ動物達も居場所をなくしてしまってるかもしれないね… |
リタ | それは魔物にも言える事ね。森を出て、周辺の街や村に被害を与えてなきゃいいけど |
ルーク | …つーか、ミラ。何かどんどん森の奥に進んでるけど方向、合ってんのかよ? |
ミラ | ああ、問題ない。目指す方角は、概ね変わりない |
リッド | この方角って言ったら、コルテア街があるところじゃねえか |
アスベル | そんな…ミラ、大精霊はコルテア街にいるのか? |
ミラ | いや、今の時点では正確な位置まではわからない |
ソフィ | 街じゃないといいね… |
アスベル | とにかく、大精霊の居場所が特定出来ないとしても急いだ方がいい |
カノンノ | うん、そうだね。ミラ、引続き道案内を… |
| ガサッ |
リッド | …!今の音はまさか… |
| |
| ガルルル! |
リッド | やっぱり魔物か! |
scene1 | 偶然の再会 |
ロイド | あちこちに魔物の死体が…。戦闘は既に終わったみたいだな |
ゼロス | ああ、…にしてもこれだけの魔物を倒すなんてただ者じゃなさそう── |
| |
| ガアアッ! |
アーチェ | なっ、魔物!? |
レイヴン | うおっと…!まだお仲間が潜んでたか |
セネル | …どけっ! |
セネル | ふっ、はっ、食らえっ! |
| ギャウウッ! |
| |
セネル | ふう… |
クレス | 素手で魔物を…君は一体…? |
セネル | すまない、驚かせてしまったな |
セネル | 俺はセネル・クーリッジ。シーブル村の… |
アーチェ | あーっ!!誰かと思ったらセネルじゃん! |
ロイド | 何だアーチェ、知り合いか? |
レイヴン | そそ、リタっち達とア・ジュールに行った時にお世話になったんよ。なー、セネルちゃん |
セネル | お前達…。まさかこんなところで再会するとはな。他の二人は一緒じゃないのか? |
アーチェ | 二人?ああ、リタとエステルの事ね。今はいろいろあって別行動してるの |
アーチェ | それより、あんたこそどうしてこんなとこに?海で救助活動を続けるって話じゃなかったっけ? |
セネル | …少し気になる話を聞いてな |
セネル | 海の荒れは収まりつつあるし、救助活動は中断して、今はその「気になる話」を追う事にした |
クレス | 気になる話…?セネル、よかったらその話、僕達にも聞かせてくれないかい? |
セネル | ああ、勿論だ |
セネル | 西にある小さな孤島を知っているか? |
ゼロス | ルイニス街の西にある孤島…確かバレル島だったか |
セネル | ああ。そこで妙な雷雲が発生しているらしい |
セネル | そいつは、普通じゃ考えられないほどの速さで拡大、遂には本土に差しかかるまで広がっているそうだ |
ゼロス | 雷雲ねえ…雷が鳴って、大雨が降るってだけじゃねーの? |
セネル | ただの雷雨だけなら、俺もわざわざ調べになんか行かない |
ユーリ | って事は、何か妙なとこがあんだな |
セネル | 雨は降らないらしいが、雷がな。自然現象で起こる雷とは比にもならない威力だって話だ |
アーチェ | 比にもならない威力ってどんくらいなのよ? |
セネル | これ以上の事は俺にもわからない、だから確かめに行くんだ |
セネル | その情報が本当だとしたら…雷雲が拡大している以上周辺の街にも被害が出る可能性がある |
スタン | … |
ユーリ | 異常な威力の落雷か…嫌な感じだな |
クレス | …僕も同じ事を考えてたよ。ひょっとすると、これは、大精霊の影響なのかもしれないね |
ユーリ | 考えられるな。ま、オレは専門じゃねえし詳しい事はわからねえが |
セネル | 大精霊の影響?一体どういう事だ? |
セネル | お前達はミラとも知り合いなんだな |
ユーリ | て事は、お前もか?世間ってのは案外狭いもんだな |
レイヴン | あのさ、もし本当に大精霊絡みなら、ミラちゃん達にこの雷の話、伝えた方がいいんでないの? |
クレス | そうだね…彼女に伝えた方がいいとは思うけど… |
ユーリ | 慌てんなって。本当に大精霊が関わってんなら、ミラだってもう向かってるかもしれねえぜ |
セネル | ミラが…そうか。なら、お前達、俺と一緒にシーブル村へ来るか? |
アーチェ | シーブル村…?何で?孤島はルイニス街の西にあるんじゃ… |
セネル | バレル島へ行くには、シーブル村から船を出し、南の海上を進むしか方法はない |
セネル | …仮にミラが動き出しているとしたら遅かれ早かれ、必ずシーブル村を目指す事になるだろう |
レイヴン | 闇雲に動くよりは、セネルくんに同行した方が、ミラちゃん達と会える可能性は高いって事ね |
ゼロス | じゃあ、今はあの男の捜索は後回しにしよーぜ!俺さま、野郎よりミラさまを追う方がいいっ! |
スタン | …なあ、セネル…その雷雲の事だけど、今どの辺りまで広がってるんだ? |
セネル | バレル島から一番近い街…ルイニス街の上空辺りまで拡大していると聞いている |
ロイド | ルイニス街だって!?おい、スタン… |
スタン | …ああ |
スタン | …悪い、みんな。俺、一旦ルイニス街に行くよ。ここからならそう遠くないし |
セネル | ルイニス街へ?今街へ行ったとしても、お前がそこで出来る事はないだろう? |
スタン | ルイニスには妹のリリスがいるんだ。もし雷が当たったら…! |
セネル | 妹か… |
セネル | …スタン、だったらなおさら、街へ行くのはよせ |
スタン | 何でだよ! |
セネル | …妹を救いたいなら、俺と一緒に来て大きな被害になる前に落雷を止める方法を探すべきだ |
セネル | 俺にも妹がいる。お前の気持ちは痛いほどわかるが、むやみに突っ走らず冷静になれ |
スタン | セネル… |
ロイド | スタン、俺もそれがいいと思う。ここはみんなでシーブル村に向かってミラを捜そう |
スタン | シーブル村だな、わかった。…リリス…街のみんな…絶対に雷は止めてやるからな…! |
セネル | よし、そうと決まれば早速行こう |
| |
リッド | コルテア街はもうすぐだ |
リッド | まさか本当に大精霊がコルテア街にいるって言うんじゃねえだろうな… |
ミラ | いや、気配はここからさらに北西…。被害を心配するならおそらくルイニス街の方だ… |
ルーク | お、おい、待てよリオン! |
ミラ | そうか…ルイニス街は今も…… |
リオン | … |
| |
ミラ | …リオン、気を落とすな。気休めにしかならないかもしれないが聞いてくれ |
ミラ | 私達が出会ってすぐの頃、氷漬けの街を元に戻すべくイフリートの力を借りた事を覚えているか? |
リオン | …ああ。それがどうした |
ミラ | 大精霊イフリートの力を用いても、街の氷が溶ける事はなかった。すなわち── |
リオン | …あの氷に覆われている以上ルイニス街が大精霊の影響を受ける事はない、という事か… |
ミラ | 確証はないが、その可能性は高い |
リオン | … |
リオン | …ふん、まさか街があの氷に守られる事になるとはな。皮肉なものだ |
ルーク | わかるように言えよ。つまりルイニス街は大丈夫って事か? |
リタ | 多分ね。でも、切羽詰まってるって状況に変わりはないわよ |
リタ | それにルイニス街だけじゃないわ。あの辺だって、他にも街や村はたくさんあるし |
アスベル | リタの言う通りだ。とにかく俺達は一刻も早く大精霊の元へ急いだ方がいい |
ソフィ | うん、急ごう |
scene2 | 偶然の再会 |
アーチェ | 孤島に行ってミラと会えると思う?別の大精霊のところに行っちゃってすれ違っちゃったりしないかな? |
ユーリ | どうだろうな。けど、バレル島で何が起きてるか、確かめるのも無駄じゃないだろ |
ゼロス | ん?おい、みんな…向こうから来る奴らってもしかして… |
ミラ | ユーリ? |
ユーリ | ミラ…!?…おいおい、偶然にもほどがあるだろ |
アーチェ | ホント、嘘みたい… |
アスベル | 俺達もびっくりしたよ |
ミラ | まさか、大精霊の気配を追って来てお前達と会う事になるとはな |
ロイド | …大精霊の気配…!?やっぱりそうだったのか! |
ロイド | 聞いてくれミラ。セネルの話だと―― |
カノンノ | 西の孤島に発生した妙な雷雲…? |
ソフィ | ミラ…それって… |
ミラ | ああ、発生している現象から考えても大精霊による影響とみて間違いはなさそうだ |
ミラ | 更に言えば、雷雲の発生したバレル島は、私達が追っていた大精霊の気配と同じ方角にある |
リオン | つまり、僕達の追っていた大精霊こそルイニス街周辺に雷雲をもたらしている元凶、という事か… |
スタン | リオン、早く何とかしないと、ルイニス街が── |
リオン | …街への影響は今のところ問題ないと考えていいようだ |
スタン | 問題ない…?それはどういう事だ? |
リオン | 街を覆う氷だ。同じ大精霊であるイフリートの炎でも、影響を受けなかった事を考えると… |
スタン | 雷の影響も受けないって事か!? |
ミラ | …おそらく、だがな |
スタン | よかった…少し安心したよ。とはいえ、雷は何とかしないとな |
スタン | ルイニス街の氷が結局何なのか、全然わかってないし、確実に安全だとも言い切れない |
スタン | それに、例えルイニス街が大丈夫だとしても、他の街が危険に晒されてるかもしれないし |
スタン | そうだろ、リオン? |
リオン | ああ… |
スタン | なら、俺もバレル島に連れて行ってくれ!このまま黙って見てるなんて、俺には出来ない! |
クレス | …よし、じゃあ、こうしないか? |
クレス | 僕達は、引続き第三者を追う。大精霊の事はミラ達に任せたい |
クレス | スタン、君はミラ達と一緒に大精霊のところへ行くといい。第三者の事は僕達で何とかするから |
スタン | クレス… |
クレス | ミラ、これでどうかな?彼にとってあの街は、家族のいる大切な場所なんだ |
クレス | だから、同行させてやってほしい |
ミラ | わかった。スタン、では共に行くぞ |
スタン | ありがとう! |
ロイド | やっぱり大精霊だったんだな… |
ユーリ | どうやってお前らにそれを伝えたもんかと思ってたんだが手間が省けて助かったぜ |
ミラ | 私達もここでユーリ達に出会わなければルイニス街に向かっていただろう |
ミラ | まさか、気配のありかが海を隔てた孤島にあったとは、想像すらしていなかったからな |
アスベル | …とにかくこれで大精霊の居所ははっきりした。俺達は急いでバレル島へ向かうべきだ |
ソフィ | うん、わかった |
リッド | バレル島に行くにはシーブル村に行かないといけねえんだったな |
セネル | ああ。そこからでしか島へは行けない |
ルーク | 決まりだな。んじゃ、とっとと行こうぜ |
アスベル | ユーリ、情報ありがとうな。大精霊の事は任せてくれ、必ずどうにかする |
ユーリ | ああ、頼んだぜ。オレらは第三者の情報収集に専念させてもらうさ |
ロイド | 大精霊の事、頼んだぜ! |
リタ | おっさん、あんたもぼーっとしてないでしっかり働きなさいよ |
レイヴン | へいへい。全く、たまに会ったと思えば、つれない言い草なんだから… |
ロイド | じゃあ、俺達は行くぜ。しっかりやれよ! |
ゼロス | 俺さまもミラさまと一緒に行きたいけど、ま、しょーがねえかぁ。気をつけろよー! |
カノンノ | うん!みんなも、気をつけてねー! |
ソフィ | シーブル村… |
アスベル | ソフィはシーブル村に来た事があるのか? |
ソフィ | うん。優しい人達がたくさんいてすごくいいところだった |
アスベル | そうか、それはよかったな。村の人達と久しぶりに会えるといいな |
アスベル | じゃあ、改めて出発しよう。みんな、準備はいいか? |
| ガサ… |
リオン | …!待て、そこの茂みに何かいる |
カノンノ | ひょっとして… |
| ガアアアアッ! |
ルーク | けっ、魔物かよ! |
scene1 | シーブル村へ |
セネル | ここまで来れば、シーブル村まではあと少しだ |
ミラ | そうか──…ん?あれは… |
| ガルル… |
フィリア | … |
セネル | 誰かが魔物に襲われているようだな |
スタン | 大変だ、助けないと! |
アスベル | ああ! |
??? | たああーーーっ! |
| ズバッ! |
| ギャオオオッ! |
セネル | あいつ… |
アスベル | …?セネルの知り合いか? |
??? | フィリア、大丈夫!? |
フィリア | はい…!ありがとうございます、シングさん |
セネル | シング! |
シング | あ、セネル!どこ行ってたんだよ |
セネル | それはこっちの言い分だ。お前こそどこへ行っていた? |
シング | それが…実は、時空の歪みってところにうっかり迷い込んじゃってさ |
シング | 詳しく話すと長いんだけど、ユリウスさんって人に助けてもらってようやく戻って来れたんだよ |
ソフィ | あ!シング…! |
シング | ソフィ! |
シング | …って、あれ!?オレも知った顏がちらほら… |
シング | みんなに久しぶりに会えて嬉しいよリタも一緒にいるんだね! |
リタ | いつぞやは情報提供、助かったわ。お蔭で赤い髪の男もコレットも見つける事が出来たわ |
フィリア | こんにちは、ルークさん |
ルーク | フィリアじゃねーか。何でメルトキオの司祭がここにいるんだ? |
セネル | 司祭? |
シング | 少し前までは、オレを助けてくれたユリウスさんの手伝いをしてたらしいんだけど… |
シング | 今はいろいろあってシーブル村で怪我人達の救護を手伝ってくれてるんだ |
スタン | へえ。この状況で司祭様がいてくれるなんて、村の人達も心強いだろうな |
シング | ところでセネル、コハクとヒスイを見なかったか?ずっと村に帰ってないらしいんだ |
スタン | コハクとヒスイって、兄妹の?その二人なら、俺、ちょっと前に会ったぞ |
スタン | …って待てよ、そういえばシングを捜してるとか何とか言ってたような… |
シング | ええーっ!?コハクはともかく、ヒスイまでオレを捜しに? |
シング | それは悪い事しちゃったな… |
シング | でも無事でよかった、ずっと心配してたんだ |
スタン | 二人共元気そうだったよ。確か今は、クラースさんって人と行動を共にしてるはずだ |
シング | ありがとう、スタン。二人の事がわかって安心したよ |
シング | 本当はオレも二人を捜しに行きたかったんだけど、今は村も物騒な事になっててさ… |
シング | さっきの魔物、見ただろ?ああいった魔物がしょっちゅう村に侵入して来るような状態なんだ |
フィリア | シングさんが戻られてからは、魔物の被害がかなり減ったんですがそれでも怪我人は後を絶たなくて… |
セネル | それで、シーブル村に留まり救護を手伝ってくれてるのか… |
フィリア | ええ… |
シング | でもまあ、セネルも村に戻って来たしシーブル村もこれでちょっとは安心かな? |
セネル | …いや、シング。悪いが、俺はまた少し村を離れなければならない… |
シング | …何かあったのか? |
スタン | ああ、実は… |
フィリア | バレル島に妙な雷雲…ですか |
シング | へぇ…そんな事になってたんだ |
セネル | シーブル村の事も気がかりだが、雷雲を放っておけば被害が生まれる可能性が高い |
スタン | 島から近い街や村にも危機が迫ってるんだ。一刻も早く孤島へ行かないと! |
シング | だったら、村の事は心配しないで!オレが頑張るからさ |
シング | フィリアも手伝ってくれてる事だし、こっちはこっちで何とかするよ |
セネル | すまないな |
シング | じゃあ、とにかく早いところ村へ戻ろう |
フィリア | そうですね |
scene2 | シーブル村へ |
セネル | よし、村に着いた |
セネル | …にしても随分と荒れているな。これも天変地異の影響か… |
シング | うん、オレが戻って来た時にはもうこんな感じで── |
| |
| きゃああ! |
シング | …!あの悲鳴は!? |
女の子 | た、助けて… |
| グルルル… |
リッド | おいおい、まずい状況だぜ。村のど真ん中に魔物が…! |
アスベル | その子に手出しはさせない! |
| バシッ! |
| ギャウウッ! |
| |
リタ | ふう…アスベルが咄嗟に割って入ったお蔭で何とか間に合ったみたいね |
フィリア | 怪我はありませんでしたか? |
女の子 | う、うん…ありがとう |
シング | はあ…全く、心臓が止まるかと思ったよ。近頃はあんな事ばっかりさ |
シング | さっきは魔物を追いかけて村の外へ出てたんだけど…やっぱり村を離れちゃ駄目だね |
ソフィ | あんなにいいところだったシーブル村がどうして… |
ミラ | これも全て、異変の影響なのだろうな |
セネル | …シング。こんな状況で、お前一人に村を任せてすまないが… |
シング | 気にしないで!確かにもう少し人手が欲しいけど、魔物はそんなに強くないし、オレ一人で何とかするよ |
ソフィ | … |
ソフィ | ねえ、シング。わたしがここに残って手伝う。それだと少しは助かる? |
アスベル | ソフィ…お前、いいのか? |
ソフィ | うん。この村はね、わたしが前にこの時代に来た時に、初めて来た場所なの |
ソフィ | 村の人達はみんな親切でわたしにとても優しくしてくれた |
ソフィ | それにね、シングとコハクに助けてもらった事もあるんだよ |
ソフィ | だから、今度はわたしがシングや村のみんなを助けたい… |
カノンノ | ソフィ… |
シング | 力を貸してくれるっていうならオレ達としては大助かりだけど…でも、ソフィ、本当にいいのか? |
ソフィ | うん、いいよ |
シング | それなら、ありがたくお願いするよ!ありがとう、ソフィ |
フィリア | 私からもお礼を…。ありがとうございます、ソフィさん |
ソフィ | アスベル…。わたしはこの村に残る、だから、大精霊の事はお願いしてもいい? |
ソフィ | …大精霊の事は、すごく大事な事だってわかってる。けど、困ってるシングを置いていけない… |
アスベル | ああ、わかるよ、ソフィ。大丈夫、大精霊の事は俺達に任せてくれ。必ず暴走を鎮めると約束する |
ソフィ | …ありがとう、アスベル! |
ソフィ | あと、ミラ…ルークの事、見ててあげてね。無理しないように… |
ミラ | 大丈夫だ、目を配っておく |
ルーク | あのな、お前ら!二人そろって俺をガキ扱いすんじゃねー! |
セネル | …とにかくソフィ、本当に感謝する。だが、ここは安全だとは言えない。十分に気をつけてくれ |
ソフィ | うん、ありがとう。セネル達も気をつけてね |
セネル | ああ!じゃあ、みんな行こう。船は波止場に係留してある |
リオン | …!またか… |
| |
| ガルル… |
リッド | やれやれ、また魔物かよ。ソフィもこれから大忙しだな… |
ルーク | とにかく、とっとと片付けちまおーぜ! |
scene1 | 雷鳴響く孤島 |
ルーク | おい、岩にぶつかるぞ! |
セネル | 大丈夫だ、よけられる! |
リタ | こっちに大きい渦があるわ! |
セネル | わかってる! |
アスベル | それにしてもひどいな、この海域は…難所なんてものじゃないぞ |
リオン | そこかしこに岩があり、潮の流れも早い。確かに抜けるのは容易ではないな |
ミラ | … |
リッド | なあ、ミラ。さっきから全く話してないよな。何か気になる事でもあるのか? |
ミラ | …いや、何でもない。気にするな |
アスベル | …?本当に大丈夫なのか? |
ミラ | ああ、心配をかけてすまない。今は無事この荒れた海を乗り越えられる事だけを祈ろう |
カノンノ | うん、そうだね… |
カノンノ | お願い…どうか無事に、バレル島に着けますように… |
| |
リタ | 何とか無事にたどり着けたわね…。船酔いしてる余裕すらなかったわ |
ルーク | ふー…本当にもう何度も死ぬかと思ったぜ… |
リッド | にしても、これだけ大荒れの海で何とか島までたどり着けたのはセネルの腕のお蔭かもな |
スタン | ああ、本当だな。ありがとな、セネル |
セネル | 礼には及ばない。むしろ本番はここからだ |
アスベル | ああ。それにしても、この薄暗さは… |
リオン | 陽の光が全く入らないな…。まるで雷雲が全てを遮っているようだ |
| ゴゴゴ… |
カノンノ | 雷の音…?今にも落雷しそう── |
| ズドドドドーーーン!! |
カノンノ | きゃあっ!?言ってるそばから… |
ルーク | …おいおい、やべーんじゃねえのか?あんなでっかい稲光を見たのは初めてだぜ… |
リッド | ああ…それに稲光から雷が落ちるまでそんなに間がなかった。こいつは近いな… |
リタ | って事は、大精霊も… |
リオン | …! |
スタン | カノンノのネックレスが、光り出した…? |
ミラ | 間違いない、大精霊はすぐ近くにいる |
ミラ | この雷雲を生み出している、雷を司る大精霊…ヴォルトがな |
カノンノ | ヴォルト… |
リオン | …行くぞ。相手がどんな大精霊であろうと、やる事は同じだ |
アスベル | ああ、リオンの言う通りだ。…みんな、一刻も早くヴォルトを捜し出そう! |
scene2 | 雷鳴響く孤島 |
| ゴゴゴゴ… |
ルーク | ずっと空がゴロゴロ鳴ってやがる。またいつ雷が落ちてきても、おかしくねえぞ |
リタ | ちょっと、やめてよ。そういう事言うと… |
| ズドドドドーーーン! |
カノンノ | きゃーっ!! |
リッド | うおっ、またかよ! |
リタ | だからやめてって言ったのに! |
ルーク | た、ただの偶然だ!俺のせいじゃねっつーの! |
アスベル | カノンノ、大丈夫か? |
カノンノ | う、うん…いきなりでびっくりしたけど… |
スタン | まずいな…。こんな調子じゃ、いつ雷に打たれてもおかしくないぞ |
ミラ | …だが、それでも行くしかない。今私達が行かなければ、この雷が各地の街を襲う事になる |
アスベル | そうはさせない…!必ず止めてみせるさ |
セネル | …よし、みんな。出来るだけ姿勢を低くしながら進め。警戒は怠るなよ |
カノンノ | う、うん…! |
| |
リオン | …!ここは… |
リッド | 木が焼けて煙が出てる…。さっきのでっかい雷が落ちたんだろうな |
ルーク | マジかよ…。ズタズタの黒焦げじゃねーか… |
アスベル | 想像していた以上に深刻な事態だ…。こんな落雷が直撃したら、人間なんてひとたまりもない… |
リオン | … |
スタン | なあリオン。ちょっといいか? |
| |
スタン | これまでみんなが戦ってきたっていう大精霊の話、聞いたよ。すごい力を持ってるんだってな |
リオン | … |
スタン | みんなあちこち怪我してるみたいだし…これまで相当苦労してきたんだろうな |
リオン | …だから、何だ? |
リオン | 大精霊の話を聞いて怖気づいたのなら帰れ。セネルに帰りの船を出してもらえばいい |
スタン | 帰りたい、なんて言ってないだろ!むしろその逆だ |
リオン | 逆…? |
スタン | …リオン、俺さ、みんなから話を聞いて考えたんだ |
スタン | ヴォルトとの戦いは、俺達が前に出て戦わないか? |
リオン | …何?お前、何を考えている? |
スタン | ええと…。ほら、ルークとかリッドとか…みんな、結構ひどい怪我じゃないか |
スタン | 俺は今のところ、大きな怪我もしてないだろ?だから、だよ |
スタン | これ以上怪我人を増やさないために、俺とリオンで頑張りたいんだ。リオンと俺なら、きっとやれる |
リオン | … |
スタン | お前がルイニスのために頑張ってる事はわかってるつもりだ。だから、俺もその手伝いがしたいんだよ |
リオン | スタン… |
リオン | … |
スタン | ごめん、説明がわかりにくかったか?ええと、だからさ… |
リオン | お前の下手な説明はもういい。無駄口を叩く暇があるならさっさとヴォルトを捜せ |
| |
スタン | おい、リオン…! |
スタン | …って、行っちゃったか。どうしたんだ?リオンの奴… |
リッド | やれやれ。スタン、お前も大変だな |
アスベル | 口では大丈夫だって言っていても、リオンはやっぱりルイニス街の事が気がかりなんだろう |
ミラ | …だとしても、視界や足場の悪いこの状況で、単独で動く事には賛成出来ない |
スタン | ミラの言う通りだな…。とにかく、リオンを連れ戻さないと |
スタン | おーい!リオ── |
| ズドドドドドーーーーン!!! |
ルーク | ぐあっ! |
ミラ | ルーク! |
カノンノ | きゃあっ! |
アスベル | カノンノ!? |
リオン | 今の落雷…まさか! |
アスベル | う… |
カノンノ | アスベル、大丈夫!?私を守ろうとして、こんな… |
アスベル | よかった…無事みたいだな。俺の事は心配しなくていい、大丈夫だから… |
ミラ | …ルーク、立てるか? |
ルーク | ぐ…あ、ああ、なんとかな。てっきり全員消し炭にされたと思ったけどよ… |
リタ | ミラが咄嗟に防御陣を展開してくれたからよ。でなかったら今頃… |
リタ | って、セネル、あんたその肩…! |
セネル | …問題ない、気にするな。それよりも今の落雷…あれじゃ気配を感じ取るのは難しそうだ |
リッド | ああ、本当にこんなの直撃したら笑えねえよ… |
スタン | すごい雷だったな…。これがただの雷だったとしたら、ヴォルトはもっとすごいんだろうな… |
| |
リオン | おい、お前達!無事か!? |
アスベル | ああ、何とかな…。リオン、お前は大丈夫か? |
リオン | 僕は何ともない。…だが、ヴォルトと戦う前に負傷者を増やす事になるとは… |
リッド | …とにかく、ここから離れるべきだ。また雷が落ちてくるようじゃ、次こそ一巻の終わりだろうしな |
リオン | よし、動ける者から離れろ。今度は分散した方がいいだろう。直撃の確率が減る |
リオン | …スタン、僕に掴まれ |
スタン | ああ、助かるよ。ありがと── |
スタン | …なっ…!リオン、後ろ…!! |
リオン | …! |
| |
ヴォルト | ヴヴヴ |
カノンノ | …!みんな、ネックレスの光がどんどん強くなってる… |
リオン | では、こいつが… |
ミラ | ああ、間違いない。ヴォルトだ |
リタ | こっちが負傷してから出て来るなんて、いい度胸してるじゃない…! |
ルーク | けっ、どんなマネをしようが結局お前が俺達に倒されるって事は変わらねーけどな! |
ヴォルト | ガガガ |
セネル | …!ヴォルトを見ろ、光を帯び始めたぞ… |
ヴォルト | ガガ…ガガガ… |
アスベル | どうやら、一気に俺達にトドメを刺すつもりでいるらしい…! |
スタン | みんな、気をつけろ!来るぞ! |
scene1 | 大精霊ヴォルト |
スタン | リオン、今だ! |
リオン | はああっ! |
| ズバッ! |
ヴォルト | ヴヴ… |
セネル | はあ…はあ…やったか? |
リッド | いや、まだだ…。だが、ヤツは確実に弱ってるぞ!リオン、今の内にトドメを刺せ! |
リオン | 言われなくてもわかっている |
ヴォルト | ヴヴヴ…ガガ… |
リオン | これで…終わりだっ! |
ヴォルト | ガガガガガガ |
| バチバチッ |
リオン | …!ヴォルトの周囲に光が…まさか、これは──…まずい! |
ミラ | …! |
リオン | お前達、離れろ!! |
| ズババババッ! |
リオン | ぐっ…! |
カノンノ | きゃあああっ! |
アスベル | カノ──…ぐああっ! |
ルーク | うわあああっ! |
リッド | うぐっ! |
スタン | ぐわああっ!! |
ミラ | くっ…! |
| |
スタン | う… |
リオン | スタン、大丈夫か |
スタン | 何とか…リオン、お前は…? |
リオン | ああ。僕は無事だ |
カノンノ | アスベル…何度も庇ってもらってありがとう…大丈夫…? |
アスベル | 俺は大丈夫だ…、それより、みんなは…!? |
ルーク | みんな…何とか無事みたいだ。つか、今度こそマジで死んだかと思ったぜ… |
ミラ | 渾身の一撃を放ったというわけだな。何とか全員直撃は免れたようだが… |
セネル | また、ミラの防御陣に助けられたな |
ミラ | ああ…。だが、今の雷撃でもう防御陣は展開出来そうにない… |
リタ | …ヴォルトはどこ!?姿が見当たらないわ |
リオン | 雷撃を放った後、ここから去って行った |
リオン | 周囲の木々をなぎ払いながらあの森の奥に入って行った |
スタン | あいつは逃げたって事だよな?だとしたら、きっとヴォルトも相当なダメージを負っているはずだ |
スタン | すぐに追いかけよう! |
リッド | そうだな…逃がすわけにはいかねえ |
ルーク | つっ… |
ミラ | ルーク、傷が痛むのか? |
ルーク | このくらい何ともねえ…!…お前ら、とっととヴォルトをぶっ倒して元に戻すぞ |
カノンノ | うん…! |
リオン | …こっちだ。動ける奴は僕について来い |
スタン | ああ、わかった! |
scene2 | 大精霊ヴォルト |
リタ | 見事に辺りの木々はズタボロね。すごいエネルギーだわ… |
スタン | 大精霊の力がここまでのものだなんて…。話は聞いてたけど、想像以上だ… |
ルーク | …ああ、あの雷撃はヤバすぎるぜ |
セネル | ミラのお蔭で何とか直撃せずに済んでいたが、次まともにあいつを食らったら… |
リオン | おそらく全滅は免れないだろう。例え生き残る者がいたとしてもカノンノを失えばそれまでだ… |
アスベル | 何か方法はないのか…?ヴォルトの雷撃を避けて倒す方法は… |
リタ | 今までだってギリギリだったのよ?近づけばそれだけ不利になるわ |
リッド | なら、雷撃を放つ前に倒しちまうってのはどうだ? |
ルーク | どうやってだよ!あれだけみんなで攻撃してもまだ倒せなかったんだぞ!? |
ミラ | …いや、出来ない事もなさそうだ。あまり気は進まないがな… |
アスベル | なっ…本当か!? |
ミラ | ああ。さっきのヴォルトとの戦闘の最中、奴の周囲のマナの密度が大きく低下する変化が見られた |
カノンノ | マナの密度が低下…?それってどういう事? |
ミラ | 簡単に言えば、一時的にヴォルトが無防備な状態になった、という事だ |
ミラ | その機を狙えばおそらく一瞬で片を付ける事も出来なくはないだろう… |
スタン | じゃあ、そのタイミングを狙うべきだ。そうだろ? |
ミラ | …ああ、だが── |
リオン | …その攻撃方法にはお前の気の進まぬ理由がある、という事だな |
ミラ | …察しがいいな。いや、リオンは気付いていたか… |
アスベル | ヴォルトの身体が光に包まれた瞬間だって…? |
リオン | ああ。間違いない。ヴォルトは光に包まれた後に雷撃を放っていた |
セネル | …つまりは、その瞬間こそヴォルトを倒せる唯一のタイミングだって事か? |
ミラ | そういう事だ |
リッド | それって…失敗したら、問答無用で雷撃を食らっちまうって事だよな。さすがに、それは無茶じゃねえのか? |
ミラ | 勿論、無茶は承知の上だ。だが、ヴォルトの雷撃がある以上、この方法しかないだろう |
スタン | そんな… |
リオン | 闇雲に挑んだところで、雷撃が放たれれば、どのみち終わりだ |
リオン | …命を懸けるなら、僕は勝機のある方法を選ぶ |
アスベル | リオン… |
アスベル | ああ、そうだな、俺もリオンに賛成だ! |
セネル | 俺も反対はしない。だが、その方法でいくとしてももう少し詳細を詰めた方がいい |
リタ | 同感ね。うっかり全滅はごめんだわ。それに、さっきみたいに逃げられないようにもしないと |
リッド | じゃあ、オトリ作戦ってのはどうだ? |
カノンノ | オトリ? |
リッド | ああ。ヴォルトが無防備な状態を狙うトドメ役は誰か一人に任せて残りは全員オトリ役になるんだ |
リッド | オトリ役は分散して攻撃を仕掛けてヴォルトの注意を引きつけておくってワケだ |
ミラ | いい案かもしれない。ヴォルトの気が逸れる分、トドメ役の成功率は上がる |
セネル | 少なくとも、闇雲に突っ込むよりは勝算がありそうだ |
ルーク | けど、誰がそのトドメ役をやるんだ?そいつが失敗したら元も子もねーって事だろ? |
カノンノ | うーん… |
スタン | その役目、俺はリオンが相応しいと思うんだけど、どうかな? |
スタン | 剣の腕はみんな知ってるだろ?それにリオンはすごく冷静だし…俺はリオンが適任だと思うんだ |
ミラ | 確かにその通りだな。リオンの腕が立つというのは、私も同感だ |
カノンノ | ヴォルトの雷撃にいち早く気付いて私達に声を掛けてくれたのもリオンだったしね |
アスベル | 確かに、観察力や判断力という部分でもリオンは鋭いし、申し分はない |
リッド | 素早さって点でも問題ねえしな。スタンの言う通り、オレもリオンが適任だと思うぜ |
セネル | 俺も特に異存はない |
ルーク | いつも態度がそっけないのは気にいらねーけどな |
リタ | この際態度はどうでもいいでしょ。やる事さえやってくれれば |
アスベル | …そういうわけだ。リオン、お前にトドメ役を頼みたい。引き受けてくれるか? |
スタン | 勝手に進めてごめんな、リオン。押し付ける気はないんだ。大切な役だし…リオンに決めて欲しい |
リオン | 僕は… |
リオン | … |
| |
リオン | …いいだろう、引き受けてやる。だがスタン、勘違いするなよ。僕は別に臆しているわけじゃない |
リオン | お前達が僕の足を引っ張らないか心配だった、それだけの事だ |
スタン | ははは、リオンらしいな!…頼むぞ、リオン! |
リオン | …やり遂げてやるさ、必ずな。ただし、お前達は誰一人として僕の足を引っ張るな。…いいな? |
スタン | ああ、勿論約束するよ。な、みんな? |
リッド | おう!オレは元々猟師だからな。こういうヤツなら任せとけって |
ルーク | それより、リオン!お前、役割重大なんだからな! |
ルーク | 言ってみりゃ、俺達の命はお前にかかってんだから…集中してやれよ、マジで! |
リオン | そんな事は言われなくてもわかっている |
アスベル | よし。方針も決まって、光明が見えてきたな |
カノンノ | うん、そうだね |
スタン | みんな、リオンを信用してるんだな!俺もずっとお前を頼りにしてたけど…やっぱりお前はすごいよ、リオン! |
| |
リオン | … |
スタン | …どうした、リオン?やっぱり不安になったのか? |
リオン | …何でもない。考え事だ。…カノンノ、お前は僕と一緒に来い |
リオン | オトリ役から離れたところで待機し、僕がヴォルトを仕留めた後で僕のところに来い。いいな? |
カノンノ | え…? |
カノンノ | 私は大丈夫だよ。みんなと一緒に、オトリ役をやるから |
リオン | お前は、オトリ役よりももっと重要な役目を担っている。忘れたわけではあるまい? |
カノンノ | で、でも… |
アスベル | …カノンノ、俺からも頼む。ここはリオンの指示に従ってくれ |
カノンノ | アスベル…私大丈夫だよ?みんなと一緒にきっと上手く── |
ミラ | カノンノ、私も二人と同意見だ |
カノンノ | ミラ… |
ミラ | お前には大精霊の暴走を鎮めるという重要な役割がある |
ミラ | ここで万が一お前を失えば世界を救う希望を失う事になる… |
ルーク | 大精霊の暴走を鎮められるのはカノンノしかいねーしな |
カノンノ | … |
アスベル | …お前を信じていないわけじゃない。ただ、この作戦は危険だ、下手すれば全滅する可能性だってある |
アスベル | お前には、お前にしかやれない事があるんだ |
カノンノ | …うん、わかった。じゃあ私は、リオンと行って、離れて待ってるね。みんなの無事を祈ってる |
リタ | あんたこそ、気をつけなさいよ。油断してやられんじゃないわよ |
スタン | よし!それぞれ役割も決まったところで、早速動きだそう |
セネル | ああ、そうだな。ヴォルトはこの森を更に奥へ進んだところにいるはずだ |
リッド | じゃ、早いとこ行くとしよう… |
リッド | …ん? |
| ガサガサッ! |
リオン | …!そこの陰に何かいるぞ! |
リタ | まさかヴォルト…!? |
| |
| ガルルルル! |
ルーク | 魔物かよ!…ったく、もう作戦失敗かと思ったじゃねーか!脅かすんじゃねえっつーの! |
scene1 | 雷雲を切裂く者 |
セネル | …! |
セネル | …みんな、姿勢を低くしろ。見つけたぞ、ヴォルトだ… |
リタ | あんなところに… |
リッド | おい、こっちだ。気付かれたらまずい。注意しながら進むぞ |
| |
ヴォルト | … |
| |
スタン | 大丈夫、まだ気付かれてはなさそうだな |
ルーク | へっ、今度はこっちから奇襲をかけてやるぜ。覚悟してろよ、ヴォルト…! |
ミラ | では皆、準備はいいな?先ほど決めた作戦の通りに動いてくれ |
リッド | ああ、問題ねえ。攻撃は頼んだぜ、リオン |
リオン | …わかっている |
カノンノ | アスベル… |
アスベル | 俺達の事は大丈夫だ、お前はリオンの指示に従って自分の身を守ってくれ、いいな? |
カノンノ | う、うん… |
ルーク | よし、それじゃ始めよーぜ!ヘマするなよ、お前ら! |
| |
スタン | うおおおおーーっ! |
ヴォルト | …! |
ルーク | 今度は逃がさねーぞ、ヴォルト! |
ヴォルト | ジジ…ガガガガ… |
アスベル | そうだ…こっちを見ろ。お前の相手は俺達だ |
ミラ | ヴォルトの注意を引きつけつつ、雷撃のタイミングを見極めなければ… |
リタ | リオンの奴、大丈夫なんでしょうね。失敗したら承知しないんだから |
| |
カノンノ | 始まった…みんな大丈夫かな… |
カノンノ | …大丈夫だよね。きっと。うん、絶対大丈夫 |
リオン | … |
| |
スタン | せいっ! |
セネル | ふっ!はっ!食らえっ! |
ヴォルト | ガガガ…ガガガ |
リタ | やっぱり大して効いてない…雷撃はまだなの!? |
リッド | …!光に包まれ始めてる…ひょっとしたら… |
アスベル | 来るか…!? |
セネル | …いや、まだだ! |
ルーク | くそっ、まぎらわしい事してんじゃねーよ! |
ヴォルト | ヴヴ… |
ミラ | もっとだ…!もっと攻撃を重ねてヴォルトの気を引くんだ! |
スタン | よし!来い!うおおおおっ! |
scene2 | 雷雲を切裂く者 |
セネル | はあっ! |
| ズドッ! |
ヴォルト | ヴヴヴ |
アスベル | 次はこっちだ。食らえ! |
| ズバッ! |
ヴォルト | ヴ… |
リッド | さっきから相当攻撃を当ててるぞ。この分だと雷撃を出す前に、決着をつけられるんじゃねえか? |
ヴォルト | ヴヴ…ガガガッ! |
| ヴンッ! |
リッド | うおっ!? |
ミラ | 油断するな、リッド!これしきの事でヴォルトが倒れるとは思えん |
スタン | さっき逃げたのは一体何だったんだよ! |
ルーク | ぐっ…くそっ…!さっきの傷が… |
リタ | ちょっと、ルーク!?…まずいわ、このままじゃあたしらの方が先にバテちゃいそう… |
ヴォルト | ジジ…ガガガガ… |
| バチバチ… |
スタン | みんな、あれを見ろ…!ついに雷撃の準備が始まったんじゃ… |
ミラ | …!間違いない、ヴォルトの周辺にあるマナの密度に変化が生じている |
セネル | ここからが本番だな…! |
アスベル | あと一息だ。みんな、頑張ろう! |
| |
カノンノ | 見て、ヴォルトの方…!ヴォルトに光が集まって来てる… |
リオン | … |
カノンノ | 雷撃を放つ準備をしてる…きっとそうだよね、リオン? |
カノンノ | …リオン?私の事をじっと見てるけど…何かついてる…? |
リオン | …そういうわけじゃない |
カノンノ | …とにかくお願い、みんなのところに行ってあげて!指示通り私はここで待ってるよ |
カノンノ | リオンの攻撃はきっと成功する…私もみんなも信じてるよ。だから── |
リオン | …来い |
カノンノ | …え? |
カノンノ | リ、リオン?そんなに腕を強く引っ張らないで…ねえ、どうしたの…? |
リオン | …黙ってついて来い |
カノンノ | で、でも…みんなが…!一体どこに行くの!?ねえ、リオン…!? |
リオン | … |
| |
ヴォルト | ジジ…ガガ |
| バチバチバチッ…!! |
リッド | どうやら本格的に雷撃を放つ準備に入ったみたいだな…!攻撃を仕掛けるにはいい頃合いだ |
リタ | そうね。後はリオンが、上手く決めてくれれば… |
スタン | 頼むぞ…リオン! |
| |
カノンノ | 本当に、どこに行くつもりなの…?ヴォルトやみんなのいるところから、どんどん遠くなっちゃうよ? |
リオン | … |
カノンノ | リオン、お願い…わけがわからないよ…ねえ… |
リオン | … |
リオン | …お前はただ黙って僕に従えばいい |
カノンノ | リオン… |
| |
| バチバチバチッ…! |
リタ | ちょっと、スタン!リオンはまだなの!?ヴォルトの奴、今にも雷撃を放ちそうな勢いよ!? |
スタン | じきに来るはずだ…!だからもう少し踏ん張ってあいつの注意を引きつけててくれ! |
ヴォルト | ガガガガガガ |
アスベル | ヴォルトを覆っている光がどんどん増している…攻撃するなら今が絶好の機会だ…! |
セネル | くっ…なのに何故来ない!?このままじゃ…本当に間に合わないぞ…! |
ルーク | だーっ!何やってんだよリオンの奴! |
スタン | ルーク、最後まで信じろ!!大丈夫だ、必ず来る…!リオンは必ず… |
| バチバチバチッ!! |
リッド | ちっ、駄目だ、もう間に合わねえ…! |
スタン | そんな…!絶対そんなはず…… |
ミラ | … |
| ズバーーーーッ! |
ヴォルト | ジ…ジジ… |
リタ | うっ…!光が拡散して視界が… |
| |
セネル | 光が収まった…。今のは一体…? |
リオン | …どうやらヴォルトの雷撃は収まったようだ |
スタン | リオン…!! |
ルーク | ったく、遅えんだよ!ギリギリすぎるっつーの! |
ミラ | …いや、ルーク。リオンの攻撃は絶妙なタイミングで繰り出されている |
ミラ | マナの密度の変化には十分に注意を向けて見ていた。それは間違いない… |
ミラ | ヴォルトの攻撃パターンにもあの短時間で気付いていたリオンだ |
ミラ | 雷撃のタイミングも観察していたのかもしれないな |
アスベル | そうだったのか…。俺も、遅いと感じていたが時期を見計らってたんだな… |
スタン | さすがリオンだ!本当にありがとうな!これでヴォルトも倒せて── |
リオン | …いや、まだだ |
ヴォルト | ヴヴヴ… |
リタ | ちょっと、嘘でしょ!? |
セネル | …いや、だが見てみろ。ヴォルトの様子が明らかにおかしい。攻撃は確実に効いている |
ミラ | 今なら、雷撃を気にする事なく、攻撃を仕掛けられる。全員で一気に畳みかけるぞ! |
アスベル | ああ! |
リッド | 行くぞ、ヴォルト! |
ヴォルト | ガガガ |
scene3 | 雷雲を切裂く者 |
リオン | はああああっ! |
| ズバーーン! |
ヴォルト | ヴ… |
ヴォルト | … |
ルーク | ヴォルトの奴、やっと大人しくなりやがった |
リッド | やれやれ、ようやくってワケか |
リタ | 8人がかりでやっとだなんて、ほんと随分と手こずらせてくれたもんだわ |
スタン | 本当にな…って、ほら見てみろよ。今気付いたけど、周辺があちこち焼け焦げてるぞ |
アスベル | うわ…本当だ…おそらくヴォルトの電撃の影響だろうな |
セネル | …周辺の様子もそうだが、それだけじゃない。スタン、お前顔をやけどしてるぞ |
スタン | え?…あれ、本当だ。全然気付いてなかったよ |
ミラ | これくらいで済んだのは、むしろ幸いだ |
ミラ | これまで相手にした大精霊と比べても、ヴォルトの強さは相当なものだったからな |
リオン | … |
スタン | やったな、リオン!絶対決めてくれるって、俺、信じてたよ! |
リオン | うるさい!耳元で大声を出すな |
スタン | へへ… |
アスベル | ところで…カノンノはどこだ? |
リタ | そう言えば、姿が見えないわね。リオン、あんた一緒だったわよね?カノンノはどこに行ったの? |
リオン | … |
アスベル | どうしたんだ…?…まさか、カノンノの身に何かあったんじゃ… |
アスベル | リオン、カノンノはどこだ…?教えてくれ、一体何が── |
カノンノ | おーい! |
カノンノ | はあ…はあ…みんな、無事でよかった…! |
アスベル | カノンノ…!どこにいたんだ!?姿が見えないから、てっきり何かあったのかと思って… |
カノンノ | ごめんね、戻って来るのが遅くなっちゃって…心配をかけちゃったみたいだね |
カノンノ | でも、まずはその事で、リオンにお礼を言わなきゃ…。さっきは本当にありがとう |
リタ | 何の話? |
カノンノ | 実はね、本当なら私はそこの木の影に隠れておく話になってたんだけど…ほら、見て |
リッド | ん?黒焦げになって倒れてる木が… |
リッド | ってまさか… |
カノンノ | うん、あのままあそこにいたら私もきっと今頃無事ではいられなかったと思う |
カノンノ | けどね、リオンが機転を利かせて私を別の安全な場所まで連れてってくれたの |
カノンノ | リオン、さっきは本当にありがとう! |
リオン | …ああ |
カノンノ | じゃあ、私は早速ヴォルトのところに行くね |
アスベル | リオン、カノンノの事、本当にありがとう。俺からも礼を言わせてくれ |
リオン | …僕は… |
リオン | … |
カノンノ | ──ありがとう、ヴォルト… |
リオン | ヴォルトとの契約は終わったのか? |
カノンノ | うん |
ミラ | セルシウス、アスカ、クロノス、そしてヴォルト…これでまた新たなる大精霊を救う事が出来たな |
リオン | これで4体か… |
アスベル | 大精霊との戦闘は苦難を強いられる事も多いが着実に成果は得られてる |
ルーク | この調子でやっていけば、異変が収まる日も結構近いって事だよな? |
リッド | ああ、徐々にではあるが着実にマシにはなってきてるしな |
リタ | あと少し…引続き、頑張らないとね |
カノンノ | うん! |
カノンノ | …あ、見て。空が… |
| |
リッド | お、陽の光か…? |
セネル | 辺り一面に広がっていた雷雲が晴れてきたようだな |
カノンノ | きれい… |
アスベル | ああ、きれいだな |
スタン | ああいう風にさ、俺達のやっている事が、世界を照らす光になるといいよな |
アスベル | …きっとそうなる、いや、必ずそうしてみせるさ |
カノンノ | アスベル… |
カノンノ | うん、そうだね!よーし、これからも頑張ろうね、みんな! |
アスベル | ああ! |
リオン | … |
Name | Dialogue |
scene1 | キムラスカの異変 |
シング | ──にしても、本当によかったよ。そのオトリ作戦が成功して… |
ソフィ | …失敗してたらみんな死んじゃってたんだよね |
フィリア | 腕利きの剣士だという噂は兼ね兼ね耳にしておりましたが、さすがですわ、リオンさん |
ルーク | 何かリオンだけがおいしいとこ持ってったみてーで、気に入らねーけどな |
リオン | 勘違いするなよ。そもそも僕が自ら志願したわけじゃない |
ルーク | んだよ、その態度!そうやっていつも偉そうにしやがって、むかつくっつーの! |
スタン | 待ってくれ、ルーク。リオンは悪気があって言ってるんじゃないんだ |
リッド | まあ、細かい事はいいじゃねえか。ヴォルトも元に戻ったし、オレ達も全員無事だったワケだろ? |
ルーク | あのな、そうやってお前らが甘やかすから、こいつがどんどん調子に乗って── |
リタ | あーもう、うっさい!いい加減にしないとファイアボールぶち込むわよ!? |
| … |
アスベル | さてと…じゃあ気を引き締めて、そろそろ行こうか、みんな |
シング | 傷の方はもう大丈夫なの?村に戻ってきた時はかなり傷だらけだったのにさ |
カノンノ | フィリアさんやソフィのお蔭でみんなよくなったみたい! |
リッド | 柔らかいベッドでたっぷり寝させてもらったからな。体力もすっかり回復したぜ |
シング | そっか、ならよかった。またいつでも立ち寄ってよ |
ミラ | ああ、そうさせてもらう。礼を言うぞ、シング |
セネル | …シング、ヴォルトの件も落ち着いたし俺も一旦この村に残ろうと思う |
セネル | 魔物の襲撃も続いているようだしな |
シング | そうしてくれると助かるよ。みんながバレル島へ行った後も結構大変だったんだ。な、ソフィ? |
ソフィ | うん |
ソフィ | それでね、アスベル…。わたしももう少し村に残りたい。しばらく様子を見ていたいの |
セネル | ソフィ…、俺達としては助かるが本当にいいのか? |
ソフィ | うん。セネルもいるけど…心配がなくなるまでちゃんと見届けたい… |
アスベル | そうか、わかった。その判断はソフィに任せるよ |
ソフィ | ありがとう |
ミラ | 次の目的地だが、まずは北へ向かう。詳しい事は歩きながら話そう |
フィリア | みなさん、どうかお気をつけて。これからの旅のご無事をお祈りいたしますわ |
シング | あ、そうだ。もしどこかでまた、コハク達に会ったら、オレは無事だから帰って来てって伝えてよ |
ミラ | ああ、勿論だ。会えた折には必ず伝えておく |
シング | 助かるよ。じゃあ、みんな気をつけて! |
ルーク | おう!お前らこそ魔物にやられんじゃねーぞ! |
scene2 | キムラスカの異変 |
リオン | …で、次はどこに行くんだ?大精霊の居所について、何かあてはあるのか? |
ミラ | ああ、目星はついている。次に向かうのはキムラスカだ |
ルーク | キムラスカ?マジかよ、俺んとこに大精霊がいるってのか!? |
ミラ | ああ。バレル島への道中、わずかだが大精霊の気配を感じていた |
リッド | あ、ひょっとしてセネルの船に乗ってた時か? |
アスベル | そうだ、確かあの時ミラが急に黙って… |
ミラ | ああ。その時感じ取った気配は脅威には値しない小さなものだった。ゆえに── |
リタ | …あたしらの注意がヴォルトから逸れないために、敢えて言わなかったってわけ? |
ミラ | そういう事だ |
ルーク | でもよ、キムラスカに大精霊がいるなんて本当なのか?そんな話、今まで聞いた事ねーぞ |
リオン | 普通の人間は大精霊の存在を知らない。僕達もミラ達に話を聞くまで知らなかっただろう |
リタ | つまり、ルークが知らなくても別に不思議じゃないって事ね |
アスベル | とにかく、キムラスカの状況を確認しに行こう |
スタン | そうだな、じゃあ早速キムラスカを目指して──……ん?あれって、もしかして… |
コハク | クラースさん、早く早く! |
クラース | 待て待て。そんなに急がせてどうするつもりだ |
ヒスイ | ったく、それでもそんなトロトロ歩いてちゃ間に合うもんも合わなく── |
ミラ | クラース、コハク、ヒスイ! |
ヒスイ | ミラ!? |
コハク | あ、お兄ちゃん!リオンやスタンも一緒にいるよ! |
| |
スタン | コハク!元気そうだな! |
リオン | … |
コハク | スタンもリオンも元気そうだね!久しぶりに会えて嬉しいよ |
クラース | お前達、シーブル村から出て来たのか? |
ミラ | ああ、その通りだ。これからキムラスカへ行く |
スタン | こんなに早く二人に会えるなんて!シングから伝言を頼まれたんだ。「オレは無事だから帰って来て」って |
スタン | 二人の事、すごく心配してたから早く伝えられてよかった |
コハク | 帰って来て…?ひょっとして、シングはシーブル村に帰ってるって事!? |
スタン | ああ!入れ違いにならなくてよかったな。早く会いに行ってやってくれよ |
リオン | それより、お前達は何故このタイミングで戻って来た? |
ヒスイ | この大陸の西の方にあるバレル島付近で、すごい雷雲が発生してるのを知ってるか? |
クラース | その辺りから大精霊の気配を感じ取ってな。調べに行こうとしてたんだ |
コハク | バレル島へは、シーブル村からしか行けないの。だから、村に戻ってセネルに船を出してもらおうと思って |
| |
リッド | なるほど、そういう事か。だったらもう、心配はねえぜ。な、カノンノ? |
カノンノ | うん!その雷雲を生み出していた大精霊…ヴォルトは、ここにいるよ |
クラース | …む?ここにいるとは一体どういう事だ?まさか… |
ミラ | ああ、ヴォルトは正気を取り戻し私達に力を貸してくれる事になった |
クラース | そうか…。暴走を鎮めるだけではなく契約まで取り交わしていたとはな… |
クラース | どうりで、行く先々で大精霊が姿を消しているわけだ |
コハク | わたし達はずっと、ミラ達が回った場所を追うかたちで進んでたんだね |
ヒスイ | ったく…二度手間だったって事かよ |
クラース | 仕方ないだろう。大精霊の気配を感じ取れるとはいえ私とミラでは能力に雲泥の差がある |
クラース | …にしても、本当にすごい事だ。あの強大な力を持つ大精霊達の暴走を鎮めるとは… |
ミラ | 皆で力を合わせなければ到底成し得る事は出来なかっただろう |
リタ | それとカノンノのリプリカームね。結局のところ、その力があるからこそ暴走を鎮める事が出来るんだし |
クラース | …彼女が切り札という事か |
クラース | ふむ…中々に興味深い能力だ。大精霊を救うというその力を、是非この目で見てみたい |
ヒスイ | なら、クラース。お前はミラ達と一緒に行ったらいいんじゃねえのか? |
ヒスイ | 俺達は村へ戻るだけになっちまったし何も一緒に来る必要もねえだろ |
コハク | やっとシングに会えるんだね |
ヒスイ | シングの事はどうでもいいが、村が魔物に襲われてるってのは、聞き捨てならねえ。何とかしねえと |
クラース | だが、村の方は大丈夫なのか?状況も状況だ、人手は多いに越した事はないだろう? |
コハク | そっちはきっと大丈夫だよ! |
コハク | シングやセネル、それにソフィや司祭様まで手伝ってくれてるみたいだし |
コハク | クラースさんは大精霊に詳しいし、ミラ達といた方が力を発揮出来るんじゃないかな? |
クラース | ふむ、ではお前達の言葉に甘えて私はミラ達と同行させてもらおう。それで問題ないか? |
アスベル | 勿論です。現状大精霊に関してはミラに頼りきりなので、俺達としても、とても助かります |
ミラ | アスベルの言う通りだ。お前がいてくれれば心強い。是非力を貸してくれ |
リッド | よし、決まりだな。じゃあ早速行動開始と行こうぜ |
コハク | じゃあみんな、気をつけて |
スタン | そっちもな。シング達によろしく! |
リタ | さ、あたしらも早いところキムラスカへ向かいましょ |
| |
リオン | む… |
| ガサガサッ! |
アスベル | この気配は… |
| |
| ギャオオッ! |
アスベル | やはり魔物か! |
scene1 | 胸騒ぎ |
エステル | ここがキムラスカの王都、バチカル…ようやくたどり着きましたね |
フレン | はい。想定していたよりも遥かに時間がかかってしまいました |
フレン | エステリーゼ様もお疲れでしょうしまずは、宿屋でご休息を取られてはいかがですか? |
エステル | ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ、フレン |
エステル | それより一刻も早く、キムラスカ国王にお会いしたいです |
エステル | リチャード陛下の名代としてこの国に来たからには、必ず務めを果たさないと |
フレン | エステリーゼ様…。わかりました。ではこのまま行きましょう |
フレン | それにしても、リチャード陛下もよくエステリーゼ様のキムラスカ行きをお許しになりましたね |
エステル | …本当は陛下がご自分で行くとおっしゃっていたんです |
エステル | でも、世界中で異変が起きている今、陛下がウィンドルを離れるべきではないと思ったんです |
エステル | それで、わたしが代わりに行く事を陛下に提案しました |
エステル | 最初は反対されましたけど、フレンが同行するならと、認めてくださいました |
フレン | 陛下の期待に応えられるよう全力を尽くします |
エステル | すみません。巻き込むようなかたちになってしまって |
フレン | とんでもありません。王族の方々をお守りするのは、騎士団員の当然の務めですから |
エステル | ありがとうございます、フレン。それでは、キムラスカの王宮へ行きましょう |
フレン | はい |
| |
スタン | ルイニス街、何ともなくてよかったな!リオン |
リオン | ヴォルトの雷の影響がなかったと言うだけだ。依然氷漬けなのは変わらない… |
リッド | ルイニス街も過ぎたからバチカルももう遠くないな |
ルーク | ああ。景色にも見覚えがあるぜ |
カノンノ | バチカルはルークの生まれ育った街なんだよね |
ルーク | まあな。そこらの街とは大違いの都会だぜ。景色はいいし食いものは美味いし── |
リオン | 無駄話はそこまでにしてさっさと歩け |
ルーク | なっ、無駄話とは何だ!バチカルに来た事もねーくせに! |
スタン | バチカルなら俺もリオンも前に行った事あるぞ |
スタン | 確かに、ルークの言うように食いものがすごい美味かった!だよな?リオン |
リオン | …ふん |
ルーク | …き、来た事あるならあるって言えっつーの。何なんだよ、ったく… |
カノンノ | 大精霊の件が落ち着いたら、バチカルをゆっくり見て回りたいな。その時は案内をお願いしてもいい? |
ルーク | お、おう、任せとけ |
ミラ | … |
アスベル | ミラ、どうかしたのか?もしかして、大精霊の気配を… |
ミラ | ああ。先ほどよりも強い気配を感じる。北西の方角だ |
クラース | 私はまだ何も感じないが…ミラが言うのだから、間違いないのだろうな |
リタ | ここから北西…ねえ、それって、もろにバチカルの方じゃない |
ルーク | …おいおい、まさかバチカルに大精霊がいるとか言うんじゃねーだろうな |
ミラ | それはまだわからない。そうでない事を祈る他ない |
アスベル | …とにかく急ごう |
scene2 | 胸騒ぎ |
リオン | バチカルが見えた。ミラ、大精霊の気配は? |
ミラ | ますます強くなっている。この近くにいるのは、間違いなさそうだ |
アスベル | もしかして、本当に街の中に…? |
ルーク | それマジ勘弁だぜ。けど、今のところ何か起きてる感じはねーよな…? |
ミラ | … |
クラース | どうしたんだ、ミラ |
ミラ | 意識を集中して、大精霊の気配を探っている。場所を特定出来るかもしれない |
ミラ | … |
リタ | どう?上手くいきそう? |
ミラ | バチカルの北にある高い山岳…。あそこから強い気配を感じる |
ルーク | 北の山岳?あの辺りの山に大精霊がいるって事か? |
ミラ | おそらくな |
カノンノ | 山に気配があるなら街は大丈夫だって事だよね |
リオン | …いや、安心するのはまだ早い。あの山岳は、街からそう離れていない |
リタ | そうね。本当に暴走している大精霊があの山岳にいるなら、いつバチカルに被害が及んでもおかしくないわ |
スタン | そんな… |
クラース | ミラ、山岳にいるのはどの大精霊なのかはわからないのか? |
ミラ | 残念だが、場所を特定するだけで精一杯………!これは… |
| |
カノンノ | みんな…!ネックレスが光り始めたよ…! |
クラース | 感じる…私も精霊の気配を感じるぞ。これは… |
リッド | おい、山岳の方を見ろ!頂上が光ってるぞ! |
リタ | 何よ、あの光…!拡散したと思ったらまるで雨みたいに降り注いで… |
スタン | あんなの初めて見た…まるで光の雨だ…! |
クラース | レイという光の術があるが、それを強化したもののようにも見えた |
ミラ | レイか…。あれが大精霊の仕業だとすると、もしかして… |
アスベル | …!あれを見ろ!バチカルから煙が上がってないか!? |
カノンノ | うん!煙が見える! |
リオン | ちっ、光の雨の影響か…! |
ルーク | まさか今のでバチカルが…くそっ! |
リッド | おい、ルーク! |
アスベル | みんな、ルークを追おう!大精霊の事も気がかりだが、バチカルも放っておけない! |
カノンノ | うん! |
ミラ | やむを得ないな |
スタン | …!っと、ちょっと待て。その前に厄介なのが来たぞ…! |
| ガルルルル! |
リオン | ちっ、魔物か…!こいつは僕がやる、お前達は先に行け |
リタ | あたしも手伝う。さっさと片付けるわよ! |
scene1 | 破壊の雨 |
エステル | …というわけで、ウィンドルとア・ジュールの戦争の危機は、ひとまず回避されました |
エステル | 今は世界が直面している危機を共に乗り越えるべく、手を携え、協力体制を築きつつあります |
エステル | つきましては、キムラスカとも是非連携を強化したいと、こうしてお願いに上がった次第です |
インゴベルト六世 | ふむ… |
フレン | … |
エステル | シルヴァラント国王陛下にも同じ提案を行い、ご快諾いただいています |
インゴベルト六世 | ふむ…それは結構な事だ。だが、よその国はよその国。我が国は我が国であるからな |
エステル | …あの、もしかして、わたしの申し上げた事に、何かご懸念がおありでしょうか? |
インゴベルト六世 | いや、そういうわけではない |
インゴベルト六世 | リチャード陛下のお考えはよくわかった |
エステル | では… |
インゴベルト六世 | とはいえ、極めて高度な問題だ。そう簡単に答えを出すわけにもいかぬ |
インゴベルト六世 | 政に軽挙は禁物。その点はご理解いただけような |
エステル | は、はい…。それは勿論… |
フレン | … |
| |
| ズドドドドーーン!! |
エステル | …! |
フレン | エステリーゼ様!伏せて下さい! |
インゴベルト六世 | 今のすさまじい音は…衛兵、一体何事だ!? |
衛兵 | 申し上げます!突然街の北部に光の雨が降り注ぎ、一部の建物が損壊しました! |
フレン | 光の雨…?原因は何なのです!? |
衛兵 | いえ、今のところ不明です…。ですが、損壊の範囲は広く負傷者も出ている可能性があります |
衛兵 | 陛下とエステリーゼ殿下におかれましては、ただちに安全な場所にご避難いただきたく! |
インゴベルト六世 | うむ、わかった。では、エステリーゼ殿下、私と一緒に── |
エステル | …いえ、わたしは残ります |
フレン | エステリーゼ様…? |
エステル | わたしは治癒術が使えます。怪我人が出ているかもしれないのに自分だけ避難するわけにはいきません |
エステル | わたし、街に行って負傷者の救助に協力します! |
フレン | エステリーゼ様!お待ち下さい! |
インゴベルト六世 | … |
| |
リタ | この橋を渡ればバチカルに入れるのね。この辺りには特に被害はなさそうだけど… |
アスベル | 煙の出所はどこだ? |
スタン | あ、あれ!向こうだ! |
リッド | 北側の方か…。山岳に近い地域で被害が起きてるってワケか |
ルーク | マジかよ…。あの辺りは建物が密集してる地域だぞ… |
クラース | だとしたら、建物の損壊に火災…いずれにせよ、何かの拍子で被害が一気に拡大する恐れがある |
リオン | とにかく行くぞ。こうして話している時間すら惜しい |
カノンノ | うん、そうだね |
ミラ | では、皆、急いで街の北側に向かうぞ! |
scene2 | 破壊の雨 |
リッド | おい、あれを見ろ!建物が燃えてるぞ! |
カノンノ | 大変…!早く火を消さないとどんどん燃え広がっちゃう…! |
ミラ | ウンディーネ、頼む! |
| ザザーーッ! |
クラース | おお! |
アスベル | 火が消えた… |
リタ | いい判断ね。やるじゃない、ミラ |
ミラ | 安心するのはまだ早い。火は消し止めたが、至るところで建物が崩れかけている… |
スタン | あんなのに、街の人達が巻き込まれたら── |
カノンノ | 見て!向こうに子どもが! |
| |
男の子 | ふえ…ママ、どこ…? |
| |
| ズズ… |
ルーク | おい、ガキ!後ろの建物が崩れるぞ、こっちに走れ! |
カノンノ | ル、ルーク! |
| ガラガラ… |
男の子 | …! |
リタ | 駄目…!間に合わな── |
ティア | はっ! |
ルーク | あっ!? |
| |
| ガラガラガラッ! |
リッド | 建物が崩れちまった…。間に合ったのか…? |
スタン | …!よかった…無事みたいだぞ! |
アスベル | 間一髪だったな。助かってよかった… |
| |
ティア | 怪我はない? |
男の子 | うん…だいじょうぶだよ…お兄ちゃん、お姉ちゃんありがとう… |
母親 | 坊や! |
男の子 | あ、ママー! |
母親 | この子を助けていただいて、ありがとうございました |
ティア | この辺りは危険です。早く安全なところに避難してください |
母親 | はい、わかりました |
| |
ルーク | ティア! |
ティア | ルーク!?それにリッドまで…どうしてあなた達がここに? |
リッド | まあ、それについてはいろいろとあってな。話せば長くなりそうだ |
ティア | そう…。それより、少し前にメルトキオにいるエミルから手紙を受け取ったわ |
ティア | ルーク、あなたが怪我を負ったとあったけど…大丈夫なの? |
ルーク | ああ、もう何ともねーよ。それより── |
| きゃああああっ! |
| |
クラース | 今度は何だ!? |
カノンノ | 向こうを見て! |
| グルルルル… |
スタン | 魔物だ!山岳の方から降りてきたのか…? |
アスベル | 何であれ、放ってはおけない。みんな、行こう! |
scene1 | エステルとの再会 |
ティア | まさかそんな事になっていたなんて… |
ティア | ひょっとしてルークが怪我したというのも… |
リッド | ああ、大精霊との戦いの中で負ったもんだ |
ティア | エミルからの手紙にかなり重い傷を負ったとあったの |
ティア | すぐにでもメルトキオに向おうと思っていたのだけど…見たところ、元気そうね |
ルーク | 言ったろ、もう何ともねーって。それより、その手紙の中にブタザルの事は何か書いてあったか? |
ティア | ええ、あったわ。ミュウはまだメルトキオで療養しているそうよ |
カノンノ | そっか…早く回復してほしいね |
ルーク | …大丈夫だろ。エミルやジーニアスがみてんだから |
ルーク | それより、今は大精霊だろ。そっちを先に何とかしねーと |
ティア | 光の雨…あなた達の話では、その原因である大精霊が山岳にいるんだったわね |
ミラ | ああ。街に一番近い山から大精霊の気配がする |
ティア | 街に一番近い山…グーベック山ね |
ミラ | 光の雨が降る位置から考えてもそのグーベック山にいる可能性が高い |
クラース | 光の雨は、これだけ広範囲に被害を及ぼしている。一刻も早く止めなければ… |
スタン | …だけど、街の方も結構な被害だ。このまま放って行くっていうのも── |
衛兵 | ティア様! |
ティア | どうしたの? |
衛兵 | こちらにウィンドルのエステリーゼ殿下はいらっしゃいませんでしたか? |
アスベル | エステリーゼ殿下…!? |
リタ | ちょっと、どういう事!?エステルがここにいるって… |
ティア | エステリーゼ殿下は、ウィンドル国王陛下の名代として、現在我が国にいらっしゃっているの |
アスベル | 名代って、一体どういう事だ? |
ティア | 詳しい事は私も聞いていないわ |
ティア | …でも、エステリーゼ殿下は陛下と共に、安全な場所へ避難していただいているのではないの? |
衛兵 | それが…突然いなくなられてしまいまして |
アスベル | な… |
リタ | 何ですって!? |
衛兵 | その場にいた者の話では、街へ行き人々の救助に協力する、と王宮を出られたようです… |
リタ | あの子らしい話だけど、無茶よ!いつまた光の雨が降ってくるかも分からないのに…! |
ティア | …まずいわ。殿下ご自身の事も気がかりだけど、それだけではすまない |
ティア | …キムラスカ国内で、もし殿下の身に何かあれば、国際問題にもなり兼ねないわ… |
アスベル | …ティアの言う通りだ。一刻も早くエステリーゼ様を見つけ出さないと… |
アスベル | おそらくエステリーゼ様はこの地域におられるはずだ。みんな、悪いが協力してほしい |
リタ | 当然よ。あたしはあっちを捜すわ! |
カノンノ | わたしはこっちを見てくるね |
リッド | 仕方ねえ、オレ達も見に行くぞ、リオン |
リオン | 全く、世話の焼ける… |
scene2 | エステルとの再会 |
リッド | おい、こっちだ!エステルがいたぞ! |
| |
リタ | エステル! |
| |
エステル | リタ!?どうしてここに? |
リタ | どうしてもこうしてもないわよ。エステルこそ、何やってんのよ! |
エステル | 何って、街がひどい事になって怪我人もいるみたいだったので、それで… |
リタ | ああもう!いつもそうなんだから! |
リタ | ちょっとは立場ってもんを考えなさいってのよ。何かあったらどうするつもり? |
エステル | あ…すみません… |
リタ | …まあ、あんたらしいけどね… |
フレン | アスベル、しばらくだね |
アスベル | フレンもいたのか |
フレン | ああ。エステリーゼ様の護衛でね |
アスベル | そうか…。フレンが一緒なら、ここまで心配する必要はなかったか |
アスベル | ところで、エステリーゼ様 |
エステル | はい |
アスベル | エステリーゼ様は、リチャ…国王陛下の名代としてこの国へいらしたと伺いました |
アスベル | こんな状況で恐縮ですが、手短に事情をお聞かせいただけませんか? |
エステル | わかりました。実は… |
| |
ミラ | なるほど。リチャードは、各国との協力体制を強化すべく動いてくれていたのだな |
エステル | はい。シルヴァラント国王陛下にはご協力をいただける事になりました |
エステル | キムラスカとも同じように出来たらと思うんですが、これまであまり交流がなかったので… |
クラース | それで国王の代理として、エステリーゼ殿下がキムラスカへ来ていた、というわけか |
ルーク | そういや、伯父上には俺が話をつけるって言ってたのにそのままだった。悪ぃ… |
エステル | いえ、そんな、気にしないでください |
エステル | キムラスカとウィンドルの今後を考えれば、むしろこれはいい機会だと思います |
エステル | リチャード陛下もきっと、そう考えてくださると思います |
アスベル | リチャード…。あいつも遠く離れたウィンドルから、世界を守ろうと頑張っているんだな… |
フレン | ああ、だからこそ僕らも全力で陛下を支えなければ。そうだろう? |
アスベル | そうだな |
エステル | それにしても、さっきの光の雨、驚きました… |
エステル | 大精霊というのは、あれほどの力を持った存在なんですね… |
ティア | …本当に大精霊がグーベック山にいるなら、すぐにでも向かうべきだわ |
ティア | これほどの被害を出すあの光の雨が次はバチカルの中心部を襲わないとも限らない |
ティア | そうなったら、被害の大きさは想像を絶するものになるわ |
リオン | 中心部の被害で済めばいいがな。街全体が壊滅する事だって十分に考えられる |
ルーク | そんな真似させるかよ。よし、早いとこ、大精霊の暴走を鎮めに行こうぜ |
スタン | でも、街の方は大丈夫なのか?この様子じゃ混乱を収めるにも人手が必要だろ… |
ティア | それはそうだけど、それでも今は光の雨の元凶をどうにかする方を優先させるべきだと思うわ |
ミラ | 同感だ。皆、ここはティアに任せて私達はグーベック山へ急ごう |
ティア | エステリーゼ殿下も、この場は私にお任せいただき、急いで避難なさってください |
エステル | …ごめんなさい、ティア。わたしはアスベル達と共にグーベック山に行こうと思います |
リッド | 何だって…? |
アスベル | 無茶です、エステリーゼ様!ご自身の身と立場を考えてください |
アスベル | キムラスカでもしあなたの身に何かあれば、国同士の関係にも取り返しのつかない事態に陥ります |
フレン | 私もアスベルと同感です。ここは避難すべきです。危険すぎます |
エステル | …王族としての立場の重さはわかっているつもりです |
フレン | でしたら…! |
エステル | ……わたしはリチャード陛下の名代として、両国の協力関係を築くためにここに来ました |
エステル | そのためには、この国のみなさんの信頼を得る事が不可欠です |
エステル | でも危険が迫っている時、自分だけ安全な場所に逃げる者の言葉に耳を傾ける人はいないと思います |
エステル | それにこの地区の被害を見れば、バチカルのどこにいても危険な事に変わりはないと思います |
エステル | ですから、今なすべき最善はこれ以上被害を出さない事。そのためにわたしも協力したいんです |
アスベル | ですが、エステリーゼ様…! |
エステル | お願いです、アスベル、フレン。わたしにも出来る事をさせてください |
フレン | エステリーゼ様… |
リタ | …相手は強大な大精霊だし、エステルみたいな治癒術師がいてくれれば、心強いのは確かね |
アスベル | リタ!?ちょっと待ってくれ、そんな軽はずみな事を言って── |
リタ | エステルの言ってる事は無茶に聞こえるかもしれないけど理に適っていると思う |
リタ | ここに残ったって、次にまたあの光の雨が襲ってきた時無事に済む保証はどこにもない |
リタ | といって、今この街を離れればエステルの言う通り、誰も彼女の言う事なんて聞かなくなる |
リタ | それに、どのみちグーベック山の大精霊はどうにかしないといけないんだし |
リタ | だったら下手に残るよりあたし達に力を貸してくれた方がまだいいと思うわ |
エステル | リタ…ありがとうございます! |
リタ | ただし、一つ約束して。絶対に一人で勝手な行動は取らない事。いい? |
エステル | ……はい! |
アスベル | …わかりました。では、一緒に行きましょう |
フレン | アスベル!?本気で言ってるのか? |
アスベル | ああ。エステリーゼ様のお気持ちは十分に理解したし、リタの言う事も一理ある |
アスベル | …フレン、エステリーゼ様の事は、何があっても守ると約束する。だから── |
フレン | …わかった、なら、僕も一緒に行こう |
フレン | 僕はリチャード陛下から直々にエステリーゼ様の護衛役を仰せつかっている |
フレン | エステリーゼ様が行く以上、それがどこであろうと、僕も行くよ |
エステル | フレン…。いつもすみません |
フレン | そんな、気にしないでください。騎士として当然の事ですから |
フレン | たとえ何があろうとエステリーゼ様は私がお守りします |
フレン | …とういうわけだ、アスベル。そう長い間ではないと思うが、よろしく頼む |
アスベル | ああ、こちらこそ |
リオン | 話はまとまったようだな。なら、さっさと行くぞ |
ルーク | ああ、ぐずぐずしてたら、また光の雨が降ってくるかもしれねーしな |
ティア | …そうね。次はもっと大きな被害が出るかもしれないし |
ティア | 本当は市民をバチカルから避難させるべきなのかもしれないけど…多すぎて、すぐには難しいわね |
ティア | それに街の外は外で魔物がいる危険があるし、どうすればいいのかしら… |
クラース | …その話で一つ相談だ。私はこの街に残ろうと思うんだが… |
カノンノ | クラースさんが…? |
クラース | 能力としては劣るが…私もミラやカノンノのネックレスと同様、大精霊の気配を感じ取る事が出来る |
クラース | 光の雨がまた降るような事があれば、事前にそれを感知し、住人に注意を促す事も出来るだろう |
ティア | …一応、軍の緊急用の鐘を使えばバチカルのどこだろうと知らせる事だけは出来ると思うけど… |
クラース | 避難には間に合わないだろうし、被害がなくなるわけでもなかろうが警告がないよりはマシだろう |
リッド | でも、いいのかよ?リプリカームで大精霊を救う瞬間を見たくて、オレ達と来たんだろ? |
クラース | 人命を守る事の方が大切だろう。私は次の機会を待つさ |
ミラ | クラース、ありがとう。街にお前がいてくれれば心強い。頼んだぞ |
クラース | そう言ってもらえるとありがたい。では、大精霊の事は任せたぞ |
スタン | 俺もここに残ろうと思う |
リオン | 何だと? |
スタン | 大精霊の方はさ、リオンやみんながいるから、大丈夫だって思えるんだ |
スタン | …でも、街の方はただでさえ人手も足りなそうだし…何ていうか、放っておけないんだ |
ティア | ありがとう、二人共。本当に助かるわ |
ルーク | けど、お前ら何で…その、キムラスカは別にお前らの国でもねーのに… |
スタン | ええと…上手く説明出来ないけど、俺がそうしたいって思っただけだよ。大精霊の事は、任せたからな! |
ルーク | …おう、任せとけ! |
リタ | さて、じゃあ早速大精霊のところに向かうとしましょ |
ティア | この先を真っ直ぐ進んだところにグーベック山の山道へ通じる道がある。そこから行くといいわ |
リッド | わかった。じゃあとっとと行こうぜ |
ルーク | 待ってろよ、大精霊! |
scene1 | グーベック山の大精霊 |
カノンノ | ここがグーベック山… |
リッド | 大精霊がいるとしたら、やっぱり山頂か? |
ミラ | おそらくはな。光の雨が降る直前、山頂が光るのが見えた |
エステル | 既に大精霊が移動していて、もう山頂にはいないという可能性はないんです? |
リタ | 否定は出来ないわね。こうして歩いている間に、いきなり襲われるかもしれない |
リオン | その通りだ。油断するなよ |
エステル | そうですよね…気を引き締めないと |
アスベル | エステリーゼ様、足下にもお気をつけください。崩れやすくなっていますので |
エステル | あ、はい |
フレン | 道がところどころ崩れているのは、例の光の雨のせいだろうか? |
ルーク | わかんねーけど、いくら崖沿いだからって、ここまで歩きにくいもんか?ったく、たりぃ… |
ミラ | 光の雨もそうだが、これだけの荒れようだ。以前に頻発していた地震の影響でもあるだろう |
| ガラ… |
| ガラガラガラ…! |
エステル | …! |
リタ | エステル、危ない! |
フレン | エステリーゼ様、大丈夫ですか!? |
エステル | は、はい…リタのお蔭で…何とか… |
エステル | すみません、リタ。早速助けてもらってしまって |
リタ | 別に大した事ないわ |
リッド | 二人とも崖から落ちるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたぜ |
エステル | 役に立つどころかいきなり足手まといになって、駄目ですね、わたし… |
リタ | だ、だから今のは崖が勝手に崩れただけで、別にあんたのせいじゃないってば |
リタ | そうだ、ルーク、あんた大精霊の件が片付いたら、国王にこの道、整備するように言いなさいよ |
ルーク | へ?な、俺が?何でそんな事… |
リタ | あんた、国王の甥なんでしょ?たまにはその立場を役立てなさいよ |
リタ | あんた達もエステルを守るのが仕事なんでしょ!もっとしっかりしなさい! |
フレン、アスベル | すみません… |
| |
エステル | ふふ… |
リタ | エステル?どうかしたの? |
エステル | いえ…こうやってリタと話すのも、久しぶりだなって |
リタ | そういや、そうね。ア・ジュールで再会してからもそれ以降は別行動だったし |
エステル | はい。一緒にイニル街に行ったり、兵器工場に忍び込んだりしたのが随分昔の事のようです |
エステル | 何ていうか…こんな風に言うと怒られてしまうかもしれませんが… |
エステル | リタと旅をした時間はわたしにとって、とても有意義で、それでいて楽しい時間でした |
エステル | またこうして、リタと行動を共にする事が出来て嬉しいです |
リタ | う、嬉しいって…あんたねえ。これは遊びじゃないんだからしゃきっとしなさいよ |
エステル | …そうですよね、すみません |
リタ | だからそうじゃなくて、別に謝って欲しいとかじゃなくて、えーと… |
エステル | …? |
リタ | あーもう!何でもない!この話は終わり!ほら、さっさと先を進むわよ! |
エステル | リタ…? |
scene2 | グーベック山の大精霊 |
カノンノ | ふう…ふう… |
ミラ | カノンノ、疲れたのか? |
カノンノ | ううん、平気だよ。みんな頑張ってるんだから、これくらい… |
アスベル | 気持ちはわかるが、無理はするなよ |
カノンノ | うん、大丈夫──……あっ! |
リッド | カノンノのネックレスが光り出したぞ |
ルーク | って事は、この近くに大精霊がいるのか? |
ミラ | …いや、大精霊の気配に動きは見られない |
カノンノ | うーん…何だかいつもの光り方と少し違うような… |
アスベル | 言われてみれば…確かにそんな気も── |
ミラ | …!この声は… |
ミラ | お前は…アスカか? |
アスベル | アスカって、ネックレスの中にいるアスカだよな?…何かあったんだろうか |
ミラ | … |
ミラ | …ふむ |
フレン | ネックレスの中の大精霊と対話しているのか… |
フレン | 話には聞いていたが、実際に見ると何とも不思議な感じだな |
ミラ | …わかった、約束しよう |
ルーク | おいミラ、アスカの奴、何だって? |
ミラ | この山にいる大精霊について教えてくれたのだ |
ミラ | 私も、光の雨を見た時にもしやとは思っていたが… |
リタ | 正体がわかったってわけ?何者なの、その大精霊は |
ミラ | 大精霊の正体は月を司る大精霊、ルナ… |
エステル | ルナ… |
ミラ | ああ、この山岳に入ってすぐ、アスカはルナの存在を感じていたらしい |
ミラ | 彼女はアスカの対になる存在…言わば、パートナーのようなものだ |
ミラ | いつ何時でも互いを必要とし、寄り添うように過ごしてきた |
ミラ | …かつての自分のように苦しんでいるルナを、一刻も早く救い出してやってほしい── |
ミラ | アスカはそう訴えている… |
カノンノ | アスカ… |
アスベル | ミラに語りかけてまで知らせたいんだ、それほど真剣だという事だろうな |
エステル | アスカにとって、ルナはとても大切な存在なんですね。何とか救い出してあげたいです |
リタ | …そうね |
ルーク | …よし、とにかくさっさとルナのところへ急ごうぜ |
ミラ | ああ。アスカとの約束は必ず果たす |
カノンノ | 疲れたなんて言ってられない、急がないと…! |
| カラ… |
フレン | …!待つんだカノンノ! |
カノンノ | え…? |
| |
| ガアアア! |
リッド | カノンノ、伏せてろ! |
| ザシュ! |
カノンノ | リ、リッド…!ありがとう |
リオン | ちっ、まだだ!いつの間にか挟まれている! |
| ガアアアアアッ!! |
アスベル | 来るぞ!フレン、そっちを頼む! |
フレン | ああ、任せてくれ! |
scene1 | 大精霊ルナ |
フレン | だいぶ上の方まで来たみたいだな。バチカルがよく見渡せる |
アスベル | もうすぐ頂上みたいだしな。…にしても、よかったよ。ここまで無事にたどり着けて |
フレン | 大丈夫か、ずいぶん気を張り詰めているように見えるけど |
アスベル | エステリーゼ様の御身を預かってるんだ、当然だろ |
アスベル | それにしても、フレン、お前には迷惑をかけてしまって悪かったな |
フレン | 迷惑? |
アスベル | 騎士団の事さ。大精霊の件があるとはいえ、騎士団の任務はお前や他の団員達に任せきりになってしまってる |
フレン | 気にする事はないさ。それに、君の方がよほど重い任務を負っているんだからね |
フレン | ウィンドルの事だけじゃない、各国や、世界の存続をかけて戦っているんだ |
フレン | 迷惑どころか、同じ騎士団の一員として誇りに思うよ |
アスベル | フレン…ありがとう。俺も同じように、お前やリチャード、騎士団の仲間達を誇りに思ってるよ |
アスベル | みんなの協力があったからこそここまで来れた、そう思うんだ。引続き、一緒に戦おうな! |
フレン | 勿論だ。もう一息、頑張ろう |
リタ | 盛り上がってるとこ悪いんだけど、そろそろ話進めてもいい? |
アスベル | リタ!?…あ、ああ、もう大丈夫だ |
ミラ | どうやら、あの辺りが山頂らしい。…ルナの強い気配が感じられる |
カノンノ | ネックレスもほら、反応し始めてるの |
フレン | いよいよ、という事か… |
ミラ | ここからは、いつルナと戦闘になったとしてもおかしくはない |
ミラ | 常に警戒を怠らず、慎重に近付いて──… |
ミラ | …!これは… |
| |
ルーク | ミラ!?何かあったのかよ |
ミラ | くっ…まずい状況だ… |
ミラ | この辺り一帯のマナの密度に、変化が生じ始めている。これはおそらく… |
リオン | 光の雨を降らせる予兆、という事か… |
ミラ | ああ… |
エステル | なら急いで止めないと!これ以上バチカルの人々を危険に晒すわけにはいきません! |
ミラ | うむ…慎重に進んでいるような余裕はなさそうだ。前言撤回だ |
リッド | やれやれ…んじゃ一気にルナを追い詰めるとしようぜ |
アスベル | よし、行こう! |
カノンノ | どうかお願い…間に合って…! |
scene2 | 大精霊ルナ |
リオン | 山頂に着いたぞ |
リッド | どこだ…ルナはどこにいる? |
フレン | …!ひょっとしてあそこにいるのは… |
エステル | あれが…ルナ… |
| |
ルナ | … |
| |
ルーク | なっ、何だ!?すげー光がルナを包んで… |
ミラ | 光の雨だ…!まずい、この規模だとバチカルはおろか、周辺一帯に影響が及ぶ事になる…! |
カノンノ | そんな…!駄目だよ、止めなくちゃ! |
アスベル | わかってる!だがこの距離だと、もう… |
リタ | ぶっ飛べ!ファイアボール! |
ルナ | …! |
| シュゥゥゥ… |
ルーク | ルナの光が消えた…? |
リタ | よかった…何とか間に合ったみたいね |
エステル | リタ…!さすがです…!! |
リッド | 術でルナの邪魔をしたってワケか。あの状況でよく考えたな |
リタ | 一か八かだったけどね。しかもこれでルナにこっちの存在が気付かれちゃったわ |
ルナ | グゥゥ… |
フレン | こっちを睨んでいる…。完全に僕達を敵だと認識したらしい |
カノンノ | …!みんな、ネックレスがまた光って…これってもしかして…アスカ? |
ミラ | …ああ。アスカが必死に訴えかけている、ルナを救ってくれ、とな… |
ミラ | ルナは苦しんでいる。苦しみ、悶えている、辛くて見ていられない、と… |
リッド | 何とかしてえのはオレ達だって同じだぜ。でも、そのためには── |
リタ | あんた達、避けて! |
ルナ | グアアッ! |
| ドン! |
| ズドーン! |
エステル | きゃあっ! |
フレン | エステリーゼ様! |
エステル | はい、何とか大丈夫です…!…って、あ、カノンノ!? |
カノンノ | ルナ、お願い!話を聞いて!ここにアスカがいるの!あなたの事をとても心配してる! |
ルナ | グオオッ! |
| ドン!ドン! |
カノンノ | また攻撃を…そんな…お願い、聞いて── |
リオン | …ちっ!カノンノ!ぼさっとするな!! |
| ズドーン!ズドドドーーン! |
エステル | リオン、カノンノ!…よかった、間一髪のところで間に合いましたね。でも、このままじゃ… |
リオン | …無駄だ、カノンノ。暴走状態で僕達の話を聞く大精霊が今までにいたか? |
カノンノ | でも… |
ルナ | グアア! |
アスベル | 危ない、カノンノ! |
カノンノ | …! |
リタ | スパイラルフレアッ! |
| シュゥゥゥ… |
ルナ | グゥゥゥッ…! |
リタ | カノンノ、下がって!リオンの言う通り、今は話が通じる状態じゃないわ |
カノンノ | そうだね…ごめんなさい、リタ |
ミラ | とにかく、一刻も早くルナを大人しくさせる、暴走を鎮めるにはそれしか方法はない |
ルーク | けど、どーすんだよ!また光の雨とか出されたりしたら、うかつに近寄ることも出来ねーぞ! |
リタ | …あたしが術であいつの邪魔をするわ |
リタ | その間にあんたらは近づいて一気に叩いて |
エステル | そんなことしたら、リタがルナに狙い撃ちにされかねないです! |
リタ | このままうだうだやっててまたルナに光の雨降らされるよりマシでしょ。さっさとやるわよ! |
リタ | あたしだって、無限に術を使えるわけじゃないんだから |
リッド | …わかった、じゃあ、ここは任せたぞリタ |
エステル | リタ…無理はしないで。約束ですよ |
リタ | あんたもね。大丈夫、任せなさい! |
リタ | さあ、ルナ!これ以上、そのふざけた力は使わせないわよ! |
ルナ | アアアアッ! |
リタ | ファイアボール! |
| シュゥゥゥ… |
ルナ | グオオッ! |
リタ | ファイアボール! |
| バシュゥゥ… |
ルナ | … |
リタ | はあ…はあ… |
リタ | もう打ち止め?案外大した事ないじゃない |
ルナ | グオオオオ! |
リタ | 何?バカにされてくやしいってわけ?なら、そんな離れたところにいないでもっとこっちに来たらどう? |
ルナ | ウオオオオオッ! |
リタ | …かかったわね |
ルナ | …! |
リオン | はっ! |
| ザシュッ! |
ルナ | グアッ…!? |
リオン | …やったか? |
ルーク | こら、リオン、お前また自分だけいいとこ持っていきやがって! |
リオン | 意識してやっているわけじゃない。勘違いするな! |
ルナ | ググ… |
フレン | あれだけの攻撃を受けてまだ立ち上がるのか…? |
アスベル | 彼女らは普通の魔物とは違う。相手は大精霊…ここからが本番だ |
ミラ | リオンの攻撃が効いているのは間違いない。皆、一気に決着をつけるぞ! |
カノンノ | うん…! |
ルナ | グオオオオオーーッ! |
scene3 | 大精霊ルナ |
フレン | はあ…はあ… |
アスベル | どうだ…? |
ルナ | ウ… |
エステル | ルナ… |
リタ | 気をつけて、エステル。まだ油断は禁物よ |
エステル | は、はい |
| ズズズ… |
| ガラガラ… |
リッド | うおっと!?危ねえ、足場が崩れやがった… |
リオン | 気をつけろ、リッド。ルナとの戦いの影響で、足場の状態は更に悪くなっている |
アスベル | 今にも、あちこちが崩れ落ちそうだ… |
フレン | アスベル、あまり身を乗り出すと危険だ |
ルナ | ウウウ… |
ミラ | …!まずい、ルナの様子が── |
| |
ルナ | グオオオ…! |
| |
フレン | う、浮かび上がった…距離を取ろうとしているんだ! |
リッド | 見ろ、ルナに光が集まって…まさかあれは光の雨か!? |
リタ | させるもんですか!また術で── |
| |
ルナ | グオオオオオッ! |
| |
リタ | …駄目、間に合わない!みんな、逃げて! |
アスベル | くっ…光の雨で足場が…!みんな、急げ!この一帯が崩落するぞ…! |
| |
| ズドドドドドド…! |
リオン | ちっ、崩落が始まったか…! |
| ゴゴゴゴゴ… |
ルーク | うぐっ…! |
ミラ | ルーク、大丈夫か!?私の手を取れ! |
リッド | 行くぞカノンノ!もう少し…踏ん張れ! |
カノンノ | うっ…うん…! |
| ズドドドドドド…! |
リタ | いっつ……まずいわ…エステル、早くここから── |
| ズザッ! |
リタ | なっ…あ、足場が…! |
エステル | リタ!! |
| ゴゴゴゴゴ… |
アスベル | くっ、砂埃のせいで視界が… |
アスベル | みんな、無事か!? |
フレン | アスベル!エステリーゼ様とリタがいない! |
アスベル | 何だって!?そんな…エステリーゼ様!リタ! |
フレン | エステリーゼ様ーーー! |
scene1 | 大切な存在 |
| ズズズ… |
リッド | ようやく崩落も収まったみてえだな |
カノンノ | 砂埃も晴れて、視界もだいぶよくなってきた… |
リオン | ルナの姿が見当たらない。混乱に乗じて逃げられたようだな |
リッド | どっちにしろ、今襲いかかられてまずいのはオレ達の方だ。案外ラッキーだったかもしれねえぜ |
リッド | それより、みんな大丈夫か? |
ミラ | ああ、何とかな。多少傷を負った者もいるが皆、致命傷でなかった事は救いだな |
ルーク | いつつ…にしても、ヤバかったな |
ルーク | リタのお蔭で咄嗟に逃げたからよかったけどよ…って、ん?そういやあいつ、どこ行ったんだ? |
カノンノ | リタだけじゃない…。エステルさんやフレン、それに、アスベルも── |
リッド | いや、待て。あれを見ろ!誰か、こっちに向かってくるぞ |
アスベル | みんな無事だったか、よかった…! |
フレン | エステリーゼ様とリタも一緒か!? |
ミラ | いや、ここにはいない |
フレン | そんな…。まさか、さっきの崩落に巻き込まれてしまったんじゃ… |
リオン | … |
リオン | …そう考えて間違いはなさそうだ。見ろ、あいつらが立っていた足場は大きく崩落している |
カノンノ | そんな… |
リッド | とにかく、すぐ助けに行かねえと |
ミラ | もしや、ルナはリタ達を狙っているのか…? |
| |
アスベル | ミラ、それは一体どういう事だ?まさか、ルナはリタ達の後を追って行ったとでも言うのか!? |
ミラ | ルナの気配の動きからしてそう考えられるだろう… |
ルーク | くそっ!何だよ、ルナの奴、人数が少ない方を狙うなんて卑怯じゃねーか! |
ミラ | おそらく常にルナの攻撃を食い止める役をこなしていたリタに狙いを定めたのだろう |
アスベル | 何はともあれ、二人が心配だ…早く行こう! |
リッド | ああ |
フレン | エステリーゼ様…、リタ…。二人共、どうか無事でいてくれ…! |
| |
リタ | う… |
リタ | いたた…あれ…?ここは一体… |
リタ | …!そうだ。確か、ルナの放った光の雨のせいで足場が崩れちゃって… |
リタ | ──って事は、あれ…?崩落に巻き込まれたはずなのに… |
リタ | …ああ、なるほど。この茂みがクッション代わりになって助かったってわけね |
リタ | エステル…それにみんなは…?ちゃんと避難出来たのかしら… |
リタ | …とにかく、こうしちゃいられないわ。早くみんなのところに戻らないと── |
??? | う… |
リタ | …!今の声って…まさか! |
エステル | … |
リタ | エステル!大丈夫なの!?今そっちに行くから! |
scene2 | 大切な存在 |
リタ | エステル!エステル!! |
エステル | う… |
| |
エステル | あ…リタ |
エステル | 怪我…ありませんか? |
リタ | かすり傷よ、どうって事ないわ。あんたこそ… |
エステル | わたしも大丈夫です。…リタが無事で安心しました |
エステル | ところで、ここ…一体どこなんです? |
リタ | 覚えてる?ルナが光の雨を降らせて崖が崩落したの |
リタ | それでエステルが──…って、そうだ!思い出した…! |
リタ | どうしてあんな危ない事したのよ! |
エステル | …何の事です? |
リタ | 覚えてないの?足場が崩れた時、あんた、あたしを助けようとしたでしょ! |
リタ | だから、あんたまでこんなところに落ちちゃったんじゃない! |
エステル | そうでしたっけ? |
リタ | そうよ!無茶はしないって約束したのに、もう…! |
エステル | …ごめんなさい、リタ |
エステル | あの時、わたし…無我夢中で正直、自分がどう動いたのかよく覚えていないんです |
エステル | でも、わたしにとってリタはかけがえのない大切な友達です |
エステル | その友達を守りたいと思った。それだけははっきりと覚えています |
エステル | そしてその事を後悔はしていません |
リタ | エステル… |
リタ | …まあ、助けてくれたのは事実だし…その、一応、お礼は言っとくわ。…ありがと |
リタ | けど、こんな思いはもうこりごり。心臓がいくつあっても足りないわ |
リタ | 倒れてるあんたを見た時だって本当に心臓が止まったかと思ったし… |
リタ | …あたしだって、もしエステルがいなくなったら… |
エステル | え?リタ、今何て… |
リタ | …!な、何でもない!とにかく、行くわよ! |
リタ | アスベル達は今頃ルナと戦ってるだろうしあたしらも早く合流しないと |
エステル | それもそうですね。じゃあ、また山頂を目指して── |
エステル | …!リタ、待ってください!あれって… |
| |
ルナ | … |
| |
リタ | ルナ…!どうしてここに!? |
| |
ルナ | グアア… |
| |
リタ | わざわざあたしらの方を追っかけて来るなんて、よほど腹に据えかねてんのね |
リタ | …ま、無理もないわね。散々あんたの邪魔してやったし |
エステル | ルナ…!リタはあなたを救うために… |
リタ | エステル、今話しかけたって無駄よ |
リタ | …ここはあたしが何とかする。エステル、あんたは下がってて |
エステル | … |
リタ | ちょっと、エステル!? |
エステル | わたしもリタと一緒に戦います |
リタ | 駄目よ!言ったでしょ、もうさっきみたいな思いをするのはこりごりだって… |
エステル | …わたしだって、リタの事が心配なんです! |
エステル | わたし、リタと助け合う関係でありたいです |
エステル | どちらか一方だけが相手に守られるのではなく、対等に… |
リタ | エステル… |
リタ | …仕方ないわね。そこまで言うならいいわ、あたしと一緒に戦って |
リタ | ただ一つ、約束よ。絶対に死なないってね |
エステル | 勿論です…!その約束、リタも必ず守ってくださいね |
リタ | 当たり前でしょ |
| |
ルナ | グググ…! |
| |
リタ | さあ、来なさいルナ! |
リタ | あたしらが大人しくさせてあげるわ! |
| |
ルナ | グアアアアアッ!! |
scene3 | 大切な存在 |
リタ | ぶっ飛べ! |
| ドドーン! |
ルナ | グオッ! |
リタ | よし、あと少し…!エステル、お願い! |
エステル | はああっ! |
| ズバーーッ! |
ルナ | グアアアアーーー…! |
ルナ | アア… |
| ドサッ |
| |
エステル | はあ…はあ…ルナが大人しくなって… |
リタ | そうね…随分手こずらされたけど |
リタ | いっ…つ… |
エステル | リタ! |
エステル | リタ、大丈夫です? |
リタ | あはは… |
リタ | さすがにちょっと、頑張り過ぎたみたい |
リタ | ルナの攻撃に合わせてずっと術を撃ちっ放しだったし… |
エステル | それだけじゃありません。今の戦いでも、わたしの事をずっとサポートしてくれてましたよね |
エステル | ごめんなさい。わたし、結局リタのお荷物になってしまって── |
リタ | そんな事ないわよ。あんたがいたからこそ、あたしだって頑張れたんだし |
エステル | リタ…! |
リタ | まあ、こんな事そうそうやるもんじゃないけどね。って……いたた… |
エステル | リタ、動かないでください!とにかく、すぐに治療します |
リタ | あたしの事は後でいいわ!それより、急いでカノンノをここに連れてこないと… |
リタ | ルナにリプリカームを与えられるのは大人しくなってる今しかないんだから |
エステル | …わかりました。でも、リタを置いてはいけません。さあ、わたしの肩につかまって |
リタ | あ、ありがと… |
フレン | エステリーゼ様!リタ! |
エステル | フレン!アスベル! |
| |
アスベル | よかった、二人共無事だったみたいだ… |
ルーク | お、おい、あそこに倒れてんのってまさか… |
ミラ | ルナ…!お前達、まさかたった二人でルナを倒したのか…? |
リタ | …まあね。来てくれて、ちょうどよかったわ。カノンノ、ルナをお願い |
カノンノ | うん、わかった…! |
| |
カノンノ | さあルナ、今からリプリカームを──…って、あれ…?ネックレスが光って… |
カノンノ | あ…この光…。もしかして、アスカが何か言ってるの? |
ミラ | ああ。ルナを心配して懸命に声を掛けている |
ミラ | …アスカ、大丈夫だ。カノンノを信じろ |
カノンノ | 約束するよ、ルナは必ず助けるからね、アスカ… |
カノンノ | じゃあ、いくよ |
リオン | 終わったようだな |
リッド | ルナの様子はどうだ? |
ルナ | う… |
ルナ | …ここは…どこ…?あなた達は一体… |
エステル | よかった…目覚めたようですね |
ルナ | 私は…今まで一体何を… |
ルナ | …!アスカ…アスカはどこ?アスカがいなければ、私は──… |
カノンノ | 落ち着いて、ルナ。アスカならここにいるよ |
ルナ | え…? |
ルーク | うおっ!この光は何だよ!何でこんな急に──……って、うわあ! |
アスカ | … |
ルナ | アスカ…! |
ルナ | ああ…アスカ…よく無事で… |
ルーク | ったく、いきなり現れやがって驚かすなっつーの! |
カノンノ | ずっと会いたかったんだよね、本当によかった… |
エステル | 大切に想う相手と、ようやく再会出来たんですね。…よかったです |
リタ | …うん、そうね |
ルナ | そうですか…。世界がそのような事態に陥っていたとは… |
ルナ | アスカや私、それに他の仲間達をも救ってくれたあなた達には多大なる恩義があります |
ルナ | 私もあなた達に力を貸しましょう |
カノンノ | …ルナ、ありがとう!すごく心強いよ |
ルナ | では、契約の証に誓いを…。私もアスカと共にあなた達を見守っています |
フレン | ルナがネックレスに…。これで契約完了という事か… |
アスベル | ああ、また一人頼もしい仲間が増えたな |
エステル | これで、ルナとアスカはずっと一緒にいられるんですよね。…本当によかった |
リタ | そうね……うっ… |
| |
リッド | おい、リタ!大丈夫なのか? |
リタ | 平気よ、このくらい。少し休めば治る── |
エステル | 駄目です、リタ。今度こそちゃんと治療させてください |
リタ | だ、大丈夫よ。傷ならエステルだって… |
エステル | わたしの方が軽傷です。リタが身を呈して守ってくれましたから |
エステル | だから、今度はわたしの番です |
リタ | わ…わかったわよ、もう… |
カノンノ | リタとエステルさんって、本当に仲良しなんだね |
カノンノ | お互いがお互いをとても大切に想ってるのが、見てて伝わってくる… |
カノンノ | 何だか、ルナとアスカみたいだね |
リタ | なっ…!ちょっとそこ、何バカ言ってんのよ!あたしらは別にそんな── |
エステル | はい。わたしにとって、リタはかけがえのない大切な存在です |
リタ | 大切な…存在… |
リタ | … |
| |
エステル | みなさん、お待たせしました。リタの応急処置は終わりました |
リタ | だから、別に元から大丈夫だって言ってるのに… |
ルーク | おいおい、何が大丈夫だよ。腰抜かしてたくせに強がってんじゃねーっつーの! |
リタ | 強がってなんかないわよ!あんたなんか年中腰抜かしてるくせに! |
ルーク | なっ!誰が年中腰抜かしてるだ、この── |
リッド | やれやれ、元気になった途端これかよ… |
リオン | …歩けるようになったのならとにかく山を下るべきだ |
ミラ | 光の雨の危機は去ったのだ。この事を早く街の者にも伝えてやらなければならないからな |
アスベル | そうと決まったら、早速バチカルへ戻ろう |
カノンノ | うん…! |
Name | Dialogue |
scene1 | 面影 |
リッド | さて、ルナの暴走も鎮まった事だ。そろそろバチカルへ戻るとしようぜ |
ミラ | そうだな。もう心配はない事を街の人達に伝えてやらなければ |
エステル | … |
フレン | エステリーゼ様、どうしましたか? |
エステル | あ、はい。見てください。ここからだとバチカルの街がすごくよく見えるんです |
カノンノ | 本当だ。きれいな街並み… |
フレン | 何とか僕達が街を出た時以上の被害を出さずに済んだようだね |
アスベル | そうだな… |
エステル | バチカルへ戻ったら、インゴベルト六世陛下にも、謝罪しなければなりませんね |
エステル | いきなり飛び出したりしてしまって、ご心配をおかけしているかもしれませんし… |
リタ | なら、ルークを連れてったら?こんなんでも一応、国王の甥だし |
ルーク | こんなんでも、は余計だっつーの! |
エステル | ふふ、大丈夫ですよ、リタ。自分のした事のけじめは自分でつけるつもりですから |
リオン | とにかく、ここに留まる理由はもうない。行くぞ |
アスベル | そうだな、では行こう。みんな、足元には注意してくれ |
scene2 | 面影 |
カノンノ | …ふう。無事に山を下りて、街に戻って来られたね |
アスベル | 街の人達の混乱ももう収まっているみたいだな。少し安心したよ |
ティア | ルーク! |
ルーク | おう、ティア。救護活動は上手くいってんのか? |
ティア | ええ。光の雨が降らなくなったから本格的に活動を始めているわ |
ティア | ところで、あなた達が戻って来たという事は大精霊の暴走は鎮められたのよね? |
リッド | ああ、安心してくれ。そっちの心配はもういらねえ |
リオン | グーベック山にいた大精霊ルナは、正気を取り戻した。この街が再び光の雨の被害に遭う事はない |
クラース | ルナ…月の大精霊か。任せたのは確かだが、やはりこの目で見てみたかったものだな |
スタン | …にしても、さすがだな!みんななら絶対何とかしてくれるって信じてたよ |
ミラ | ルナの暴走を鎮められたのはリタとエステルの活躍があったからだ |
ミラ | 二人がいなければ、あのままルナを取り逃がしていたかもしれない |
ティア | 何はともあれ全員無事で本当によかったわ。バチカルを守ってくれてありがとう |
ティア | …じゃあ、早速だけど私は陛下の元へ向かうわ。事態の収束をご報告しないと |
エステル | わたしもご一緒させていただいて構いませんか?ちょうど国王陛下の元へ伺おうと思っていたので… |
ティア | わかりました。ご案内いたします |
フレン | アスベル、僕はエステリーゼ様に随行する |
アスベル | ああ、わかった。大精霊の事は俺達に任せてくれ |
フレン | すまない、健闘を祈るよ |
アスベル | ありがとう、そっちもな。エステリーゼ様を頼む |
エステル | リタ、それじゃここでお別れですね |
リタ | え?あ、ああ、そうね |
エステル | …無茶は駄目ですよ? |
リタ | そりゃあたしのセリフ!あんたこそ気をつけなさいよ。後先考えないですぐ突っ走るんだから |
エステル | はい、わかりました |
ティア | ルーク。あなたの事は、私から陛下にお伝えしておくわ |
ルーク | おう、頼むぜ。大精霊の暴走を鎮めてる事ちゃんと伝えてくれよな |
ティア | …みんな、彼が調子に乗って無茶をしないように見てもらえると助かるわ |
アスベル | ああ、任せてくれ。ルーク、団体行動だぞ? |
ルーク | あのな、人をガキ扱いすんじゃねえっつーの! |
リッド | さてと。オレ達も、次の大精霊のところへ行かないとな |
クラース | よし、今度こそ私はお前達と共に行くからな |
女の子 | お兄ちゃん!無事だったのね!ずっと捜してたのに一体どこに行ってたのよ!? |
スタン | うわっ!ごめん、リリス……じゃないな。ええと、君は? |
女の子 | ご、ごめんなさい!私の兄に後ろ姿が似てたから…。じゃあ、やっぱりお兄ちゃんは… |
スタン | 君の兄さんがどうかしたのか? |
女の子 | 閉じ込められたかもしれないの!街の人達の話だと、崩れた家があるって聞いて… |
女の子 | これだけ捜しても見つからないならもうそこしかないの…!お願い、手伝っていただけませんか!? |
スタン | 何だって!?わかった、すぐ行く! |
スタン | …みんな、ごめん。俺はもう少しここに残って街の人達の手助けをしようと思う |
ミラ | スタン…。そうだな、光の雨が止まったとはいえまだ街の一角はこの状況だ |
ミラ | お前さえ構わないなら、その方が、街の人々からしても心強いかもしれないな |
スタン | ああ、俺はそうしたい。むしろ、何て言うか…放っておけないんだ |
スタン | さっきの子、リリスに似てたのもちょっとあるかも知れないけど、俺はこの街のみんなを助けたい |
カノンノ | リリス…さん? |
リオン | …スタンの妹の名だ |
アスベル | 妹…!じゃあひょっとして、ルイニス街の氷に… |
スタン | …うん。そうなんだ |
カノンノ | そんな…。初めて聞いたよ |
スタン | ルイニス街の氷は俺の力じゃどうにもならないから…かな。あまりみんなに話したくなかったんだ |
スタン | ルイニス街で何も出来なかったから…だからこそ、俺の力で助けられる人がいるなら、助けたい |
スタン | 勝手ばかりでリオンやみんなには悪いけど、俺── |
リッド | いや、別に全然悪くなんかねえよ。街の人を助けてやりてえのはオレ達だって同じだしな |
スタン | ありがとう、リッド。でも、大精霊の事も早く何とかしないといけない |
スタン | バチカルみたいな被害に遭う人達をなくすためにも…。みんなにこの先を託したいんだ |
ルーク | …考えたら俺こそ残んなきゃなんねーのに何つーか、その…ありがとな |
スタン | そう言ってもらえると、気が楽になるよ。この街は、俺に任せてくれ! |
スタン | リオン、勝手言ってごめんな?後で必ず追いかけるからさ |
リオン | …別にお前が、どこで何をしようと僕には関係ない |
リオン | 後になって、来る来ないも僕が知った事か。好きにしろ |
スタン | ははは。リオンらしいな。…じゃあみんな、大精霊の事は頼むよ!またな! |
リタ | ホント相変わらずね、あんた。また後で会おうって、素直にそう言えばいいのに |
リオン | …ふん。お前とルークには言われたくない台詞だな |
ルーク | おい、待てよ!何でそこで俺の名前が出るんだよ! |
リッド | …やれやれ。人数減っても会話の内容は変わらねえなあ |
カノンノ | 仲良くなったって事だよ!ほら、言うでしょ?喧嘩するほど仲がいいって |
アスベル | はは、そうだな。よし、じゃあ俺達もそろそろ── |
| |
街の男 | ひいぃ、助けてくれ! |
クラース | む…?何事だ? |
ミラ | …!見ろ、向こうに魔物が! |
ルーク | くそっ、おい!魔物のくせにでかい顔すんじゃねえ! |
scene1 | 邂逅 |
リッド | で、次はどこへ行けばいいんだ? |
クラース | 救護活動を手伝っている時に、街の人間にも話を聞いてみたが、めぼしい情報は得られなかったな |
アスベル | そうか…。ミラ、大精霊の気配は感じないのか? |
ミラ | 先ほどから探ってはいるのだが近くにはいないようだ |
ミラ | 少し待ってくれ。意識を集中し、さらに遠くまで大精霊の気配を探ってみる |
クラース | 相変わらずすごいな、ミラは。出来る事ならその能力、私にもわけてほしいところだ |
ルーク | 何だよ、クラースは出来ねえのか?お前も精霊が好きなんだろ? |
クラース | 残念だが興味と素質は別の話だ。ミラと私では素質に格段の違いがあるからな |
ミラ | … |
ミラ | …!見つけたぞ |
リッド | どこにいるんだ? |
ミラ | ああ。南東の方角から、大精霊の気配を感じる |
ミラ | 伝わってくる気配の感じからすると、ここからかなり距離はありそうだ |
リタ | 南東って事はシルヴァラントの方って事よね |
アスベル | とにかく南東へ向かってみよう。大精霊に近づけばミラが場所の特定をしやすいだろうし |
ルーク | だな。…にしても、大精霊ってのは一体どんだけいるんだ? |
ルーク | これまでも結構な数の大精霊を元に戻して来たけど、終わりが見えねえっつーか… |
ミラ | そうぼやくな。ここまで私達がやって来た事は、確実に成果となって表れている |
ミラ | マナの減少速度も、以前よりずっと緩やかになったし、自然の均衡も元に戻りつつある |
アスベル | 異変が収まりつつあるようだと俺も思っていた |
アスベル | 頻繁に起きていた地震も少なくなって来ているしな |
リタ | そうは言っても、暴走したままの大精霊が残っている以上、ここで止めるわけにはいかないんでしょ |
カノンノ | うん、そうだね。他の大精霊もみんな助けてあげないと |
リオン | 何はともあれ先に行くぞ。ミラ、場所の特定を急げ |
ミラ | 勿論だ |
scene2 | 邂逅 |
リタ | それにしても、バチカルって案外広い街なのね。メルトキオと比べても負けず劣らずだったわね |
ルーク | 言ったろ、バチカルは大都会だって。メルトキオなんかと一緒にすんなっつーの |
アスベル | そろそろシルヴァラント領内に入ったはずだが… |
リオン | ああ。ここはメルトキオ近郊の森だ |
ルーク | … |
ミラ | む?どうかしたのか、ルーク。何をそわそわしている? |
ルーク | べ、別に、そわそわなんかしてねーよ |
ルーク | … |
リタ | 思いっきりしてるじゃないの、落ち着きないわね。何か気になる事でもあるわけ? |
ルーク | だから、何でもねーって! |
カノンノ | ルークはミュウの事が心配なんだよね? |
ルーク | あ…ち、違うっつーの!むしろ、ブタザルの事なんかすーっかり忘れてたっつーの! |
リタ | わざとらしい… |
カノンノ | せっかく近くまで来てるんだし少し様子を見に行ってもいいんじゃないかな? |
ルーク | …いい。ジーニアス達がついてるはずだし、それに…今は大精霊を見つける方が先だろ |
アスベル | ルーク…。そうだな、早く── |
??? | きゃあっ!? |
クラース | 何だ!?今の悲鳴は… |
ミラ | 女の声だったな… |
アスベル | 魔物に襲われているのかもしれない。行ってみよう! |
リオン | 待て、アスベル! |
| |
アスベル | …! |
| ガルルルル! |
リッド | げっ、マジで魔物が出やがった! |
ルーク | こいつがさっきの悲鳴を上げてた奴を襲ったのかよ? |
クラース | いや、悲鳴が聞こえたのはもっと遠くの方だった。この魔物はおそらく関係ないだろう |
リタ | とにかく、さっさと片付けるわよ! |
アスベル | ああ! |
scene3 | 邂逅 |
リッド | ったく、魔物に足止めされたお蔭でとんだ時間を食っちまったぜ… |
アスベル | さっきの悲鳴は確かこの辺りから聞こえたはずなんだが… |
カノンノ | 見て!あそこ! |
ミラ | あれは…ミントにジュードではないか!何故こんなところに… |
クラース | おーい、ミント、ジュード! |
ジュード | え?クラース…?それにミラも! |
| |
ミント | お久しぶりです、みなさん |
カノンノ | さっき、こっちの方で悲鳴が聞こえて駆けつけてきたんだけど…ひょっとして、今のって… |
ミント | あ、私です。薬草を採っていたら、いきなり魔物が出て来て… |
ジュード | でも、魔物の方は倒したから、もう大丈夫だよ |
ミント | みなさんに心配をかけてしまったようですね。すみません |
クラース | いや、構わんさ。誰も怪我をしていないなら、それでいい |
リタ | それはそうと、あんた達二人だけなの? |
ルーク | そういや、確かバロニアで別れた時は、ガイや他の奴らも一緒だったよな |
ミント | あ、みなさんでしたら──… |
ガイ | ルーク! |
ルーク | 何だ、いたのかよ。噂した途端に現れるとか、相変わらずだな、ガイ |
ガイ | そういうお前こそ、変わりなさそうじゃないか。安心したよ |
カノンノ | エリーゼ、ティポ、久しぶり!またこうして会えて嬉しいよ |
ティポ | ぼくもだよー! |
エリーゼ | はい!わたしも嬉しいです |
ファラ | リッド、ちゃんとみんなの役に立ってる?迷惑をかけたら駄目だよ |
リッド | 迷惑なんてかけてねえよ。ファラこそ、まわりを見ずに突っ走ったりすんなよ? |
アスベル | よし、せっかく会えた事だ、お互いの情報を交換しておくか |
リタ | そうね |
| |
ミント | 本当に聞いた通りですね。順調なようで何よりです |
リオン | 聞いた通り、だと? |
ガイ | ああ、実は救援活動で各地を回っていた中で、みんなの話は耳にしてたんだ |
ルーク | 俺達の話?誰から聞いたんだよ? |
ジュード | レイア達だよ |
ミラ | レイア…?では、リンネル村へも行ったのか? |
ファラ | うん!メルディとも会ったよ。そこで、ニブル湖の大精霊とか、みんなの活躍は聞いてたの |
ジュード | それから徐々に地震も減ったし、亀裂の被害も聞かなくなったから、順調なんだとは思っていたけど… |
ガイ | まさか既に5体もの大精霊を元に戻したなんてな。大したもんだ |
ルーク | 任せろっつーの。残りの大精霊も全部元に戻してみせるぜ |
ミラ | まだ油断は出来ない。先日のバチカルのような被害が、どこかの街で出ないとも限らないからな |
ミント | バチカル…。光の雨が降った、という話でしたね… |
ガイ | なぁ、ジュード。俺達の次の目的地は、バチカルにしてもいいか? |
ガイ | 被害が大した事なさそうとはいえそれでも非常時には違いない。きっと何か必要とされると思うんだ |
ファラ | わたしもそう思う。行こう?バチカルならそう遠くないし! |
ファラ | 大精霊はリッド達が何とかしてくれるでしょ? |
リッド | 何とかって、お前なあ… |
ガイ | それに、やはり自分の街だけに気になるんだ。我がままなのはわかってるんだが…頼むよ |
ジュード | そうだね。きっと人手は多いに越した事はないだろうし。よし、じゃあ僕達はバチカルに行こう |
エリーゼ | 決まり…ですね |
ティポ | よーし!バチカルへゴーゴー! |
ミント | みなさん、ちょっと待ってください。そういえば、アルヴィンさんの姿が… |
リオン | … |
ミラ | そうか、アルヴィンも同行していたのだったな。どこへ行ったのだ? |
エリーゼ | 野暮用がある…とか言ってましたけど… |
ティポ | せっかく気分が盛り上がったのに、何だよもー!アルヴィン君のバホー! |
ジュード | アルヴィン…一体どこへ行ったんだろう…? |
リオン | … |
scene1 | 頼れる仲間 |
リドウ | ──これだけ言っても本当に気は変わらないのか? |
アルヴィン | ったく…。おたくも大概しつこいねえ |
アルヴィン | 何度言おうが、俺の答えは同じ、お前の悪趣味に付き合う気はさらさらないね |
リドウ | …ふうん、相変わらず食えない奴だね。ま、それならいいけど |
リドウ | 滅びゆくこの世界と運命を共にしたいって言うなら止めはしないさ。じゃあな |
アルヴィン | 待てよ |
リドウ | … |
アルヴィン | 俺達が今何をしているか、お前はよく知っているはずだ |
リドウ | 何が言いたいのかな? |
アルヴィン | 俺達と相反する行動をしているお前を俺が大人しく見逃すと思うのか? |
アルヴィン | …お前とは、気付けばそれなりに古い付き合いになるが、それも今日までだな |
| カチャ… |
リドウ | おいおい、そんな物騒なものをこっちに向けないでくれよ |
リドウ | 何より、俺をここで殺しても意味ないぜ |
アルヴィン | …どういう意味だ? |
リドウ | 俺一人を殺したところで、世界が死ぬ運命は変えられないからだ |
アルヴィン | お前以外にも、同じような事を企んでる仲間がいるって事か? |
アルヴィン | だが、ここでお前を殺さないでいい理由にはならないな |
リドウ | なるほど。確かにそうだな |
リドウ | …だけど、俺が死んだら困る奴がいるんだよね。それも君の知り合いに |
アルヴィン | 何? |
リドウ | 「みんなの頼れる仲間」に対して君が今みたく銃を向けられるとは俺には到底思えないがな |
アルヴィン | …! |
リドウ | ほら、隙が出来た! |
アルヴィン | つっ…! |
リドウ | 歴戦の傭兵さんでもさすがにうろたえちゃったみたいだね |
リドウ | せいぜい気をつけなよ。特に背中には、ね |
アルヴィン | …!!待て、リドウ… |
アルヴィン | 逃げ足の速い奴だ… |
ジュード | 本当に、どこに行っちゃったのかなアルヴィン… |
リオン | あの男が戻って来るまで、僕達が待っている必要はないだろう。…行くぞ |
リタ | そうね。いつまでもこんなところで時間を無駄には── |
ファラ | あ、戻って来たよ! |
アルヴィン | おーおー、これはこれはみなさんおそろいで |
ティポ | アルヴィン君、遅いぞー! |
エリーゼ | アルヴィン…!今まで何をしていたんですか |
アルヴィン | あれ?さっき野暮用だって、エリーゼ姫に伝言しなかったっけか? |
ガイ | 野暮用にしたって、少々長すぎるんじゃないのか |
ミント | あまりにも帰って来ないものですから何かあったのかと心配したんですよ |
アルヴィン | 悪い悪い。ほら、この通り何ともないさ |
リオン | … |
アルヴィン | … |
アルヴィン | 何だ、リオン?俺がいなくて寂しかったのか? |
リオン | …僕に馴れ馴れしい口を利くな。目障りだ |
アルヴィン | 何だよ、一緒に旅した仲じゃねえか。相変わらずつれないねえ |
カノンノ | リオンとアルヴィンさんって仲がよかったんだね |
ミラ | 仲がいい、か…。アルヴィンが一方的に仲良くしているといったように見えるが… |
アルヴィン | おいおい、ミラ。そりゃねえだろ |
アルヴィン | …ま、とにかくこうしてまた会えて、よかったよ。ひとまず安心したぜ |
リオン | … |
クラース | あの二人、何かあったのか? |
アスベル | クラースさんもそう思いますか?何だか急にリオンがピリピリし出したというか… |
ジュード | アルヴィン、僕達はこれから、バチカルへ向かおうと思うんだけど |
アルヴィン | へいへい。ミラ達も一緒か? |
ミラ | いや、私達は大精霊の気配を追い南東の方角を目指す。バチカルとは反対だな |
アルヴィン | そうか… |
アルヴィン | …じゃあ俺も、ここからはミラ達について行くとしようかね |
リオン | …! |
アルヴィン | 各地の被害も収まりつつあるし、ここからは大精霊の方に力を入れた方が── |
リオン | 断る。お前はジュード達とバチカルに行け |
アスベル | …リオン? |
リオン | こっちの人手は十分足りている。お前はミントの用心棒だっただろう?それを投げ出す気か? |
ガイ | ああ、そう言えばそんな話だったな。駄目じゃないか、職務怠慢だぞ |
ガイ | さっきだってジュードがお前の代わりしてたんだからな |
リオン | … |
アルヴィン | そういえば、そうだったわ。悪ぃ悪ぃ。じゃあ、俺はバチカル組だな |
アルヴィン | …で、いいんだよな、リオン? |
リオン | … |
ジュード | よし、そうと決まったら僕達は早速バチカルへ向かうよ。お互い頑張ろうね! |
アスベル | ああ!街にいるスタンやティア達にもよろしく伝えてくれ |
ガイ | わかった。それとルーク、あまり無茶するなよ? |
ルーク | 言われなくてもわかってるっつーの! |
カノンノ | じゃあみんな、気をつけてねー! |
リッド | あいつらは行ったみてえだな。じゃ、そろそろオレ達も行くか |
クラース | そうだな |
リオン | … |
アスベル | … |
scene2 | 頼れる仲間 |
シェリア | う… |
ルビア | …! |
シェリア | ここは…? |
ルビア | よかった、目が覚めたのね! |
シェリア | あなたは…? |
カイウス | 目を覚ましたって!? |
ルビア | こら!女の子が寝てるところにノックもなしに入って来るなんて、サイテーよ、カイウス! |
カイウス | うわっ、ごめん!後で出直すよ! |
| トントン |
カイウス | …ちょっと時間あけたけど、どうだ?入っていいか? |
ルビア | さっきは突然でごめんなさい。カイウスを入れても構わない? |
シェリア | え、ええ。どうぞ… |
| |
ルビア | あたしはルビア・ナトウィック。こっちのうるさいのは、カイウス・クオールズよ |
カイウス | うるさいは余計だよ |
シェリア | 私はシェリア…シェリア・バーンズよ |
ルビア | 具合はどう? |
シェリア | ええ、大丈…つっ…! |
ルビア | あ、無理はしないで!まだ怪我は治ってないんだから |
カイウス | ルビアと一緒に森を抜けようとしていた時に、あんたが倒れているのを見つけたんだ |
カイウス | 近くが崖になってたから、そこから落ちて来たんだろうなって |
シェリア | そういえば… |
ルビア | 呼び掛けても全然目を覚まさないから心配になって、近くにあったこの村まで運んで来たのよ |
シェリア | 村…? |
カイウス | ここはトーティス村ってとこらしい。オレ達は初めて立ち寄ったんだけど…知ってる? |
シェリア | ここがトーティス村…。名前は知ってるけど、来るのは私も初めてだわ |
シェリア | 確か、少し前に自国の騎士団に襲われて…。たくさんの人が犠牲になったって… |
ルビア | うん…。だけどね、みんな立て直すために頑張ってるんだって |
ルビア | この宿屋のおばさんも、通りがかる旅人や商人が休めるようにって無理して続けているみたい |
| ざわ…ざわ… |
シェリア | …?何かしら。随分と外が騒がしいみたいだけど… |
カイウス | ああ…何か変な仮面を被った奴が村の広場で演説をしてるんだよ |
シェリア | 演説…? |
カイウス | まあ、オレは興味ないけどさ。そんな事より、シェリアが目を覚ましてよかったよ |
シェリア | ごめんなさい、私のせいで。あなた達には他に用事があったんじゃない? |
ルビア | ううん、気にしないで。あたし達は故郷へ帰るだけだったから |
カイウス | オレ達は旅の途中だったんだけど、大地震が起きたり、地面に変な亀裂が出来たりしただろ? |
カイウス | だから、少し心配になって故郷に帰ろうって話になったんだ |
シェリア | そうだったの…時間を取らせてしまったのね。ごめんなさい |
シェリア | 私はもう大丈夫よ |
ルビア | でも… |
シェリア | 心配してくれてありがとう。故郷や大切な人達を心配する気持ち、私にもわかるわ |
シェリア | きっと故郷の人もあなた達の事心配していると思うわ。だから、早く帰ってあげて |
シェリア | あなた達は命の恩人ね。助けてくれて、本当にありがとう |
カイウス | シェリア… |
カイウス | …わかった。じゃあお言葉に甘えて。行こう、ルビア |
ルビア | う、うん。それじゃあ… |
ルビア | シェリアはアスベルって人を捜してるんでしょ?見つかるといいわね |
シェリア | …!ど、どうしてアスベルの事を!? |
カイウス | 気を失っている時に、何度もそのアスベルって奴の名前を呼んでたんだってよ |
カイウス | アスベル、どこなの…とか、どうか無事でいて…とか言ってたんだろ?だよな、ルビア |
シェリア | あ… |
ルビア | も、もうカイウス!余計な事言わないで!! |
ルビア | それじゃあ、あたし達は行くね。怪我が完全に治るまで、無理しちゃ駄目よ |
ルビア | ゆっくり休んでいいって、宿屋のおばさんも言ってたから |
シェリア | うん、ありがとう。あなた達も気をつけて行ってね |
カイウス | また会おうな! |
| |
| ざわ… |
シェリア | あ…また… |
男の声 | 何か、胡散臭い話だな。本当に財宝なんてあるのか? |
女の声 | そんな眉唾物の話なんて信じられないよ… |
男の声 | いや、でも財宝があるなら… |
シェリア | …何だか、あまりいい雰囲気じゃなさそうね。何の話をしているのかしら… |
| |
リタ | ──ジュード達、無事にバチカルに着いたかしら |
リッド | どうだろうな。道中何もなけりゃ、そろそろ着いていてもいい頃だろうが |
リオン | … |
アスベル | リオン、ちょっといいか? |
リオン | …何だ? |
アスベル | アルヴィンと何かあったのか? |
リオン | …何故そんな事を聞く |
アスベル | お前達のやり取りを見ていて少し気になったんだ。不穏な空気だった気がして… |
リオン | …何もない |
アスベル | そうか…。だったらいいんだが、何かあればいつでも── |
リオン | お前には関係ない |
アスベル | リオン… |
ルーク | 何だ、喧嘩か? |
カノンノ | リオン、行っちゃったね。アスベル、リオンがどうかしたの? |
アスベル | …いや、大した事じゃないんだ。そんな事より先を急がなくちゃな |
リタ | ……? |
scene1 | 閉ざされた扉 |
シェリア | いたた… |
シェリア | うーん、ああは言ったもののやっぱりまだ少し傷が痛むわね… |
| ざわ… |
シェリア | …!あ、あれが噂の仮面の男…? |
??? | ──もう一度言う!国王やその取り巻きの言う事を、決して信じてはならない! |
??? | あいつらは狡猾だ。甘言に惑わされてはいけない。自分以外はみんな敵と知れ! |
??? | みんな知っているはずだ!戦争を止めると言った傍からあいつらは戦争を再開した! |
中年の男 | そうだ…国王のやる事は、何も信用出来ねえ… |
??? | 国王はこの村の事など決して顧みはしない! |
??? | 何故なら、この村にした仕打ちを微塵も悪いと思っていないからだ |
??? | 真に村を復興したいと思うのなら国の助けにすがろうなどと思ってはならない! |
??? | 生き延びたければ自力で財を成せ!幸い、この村の近くには財宝が眠るとされる遺跡がある! |
??? | この石を見るがいい。これこそがその遺跡の財宝に至る鍵だ! |
??? | この村が受けた仕打ちを繰り返すのが嫌ならこれを使って力を掴むがいい! |
若い女 | 遺跡の鍵って…あんなのただの石じゃない… |
中年の女 | どこへ行くんだい |
若い男 | 家に戻って、武器を探す。決めたよ。俺はシンクについていく |
中年の女 | 何を言っているんだい!?こんな話を信じるのかい? |
若い男 | 待っているだけじゃ駄目なんだ!遺跡の財宝があれば復興が出来るじゃないか |
中年の男 | それにシンクは誰よりこの村の事を考えてくれている…! |
中年の男2 | 俺もついて行くぞ! |
シェリア | そんな…リチャード陛下はちゃんとこの村の事を考えてるわ…。どうしてこんな話をしているの? |
チェスター | みんな、こいつの妄言に、耳を貸すな! |
シンク | 妄言とは、言ってくれるね |
チェスター | 遺跡や財宝なんて嘘っぱちだ!あったらとっくに持って行かれてるぜ! |
チェスター | それに、この村にはちゃんと国からの使者が来て、復興のために調査をしていったんだ! |
チェスター | みんな、こいつの話に耳を傾けるな!根拠なんかどこにもねえ! |
シンク | ボクの言葉を信じるなって言うけどさ。アンタがそう言い切る根拠は何なのさ? |
シンク | ボクは遺跡の場所を知っているし、こうしてその鍵も持っている。それが嘘だっていう証拠は? |
チェスター | 何? |
シンク | 国からの使者だって、形だけかもしれないし、それこそ偽者だったかもしれない |
チェスター | そんな事は… |
シンク | この村がかつてどんな目に遭ったか、ボクは知っているよ。自国の騎士団に一方的に蹂躙されたんだ |
チェスター | それは… |
シンク | アンタだって家族の一人くらい犠牲になってるんじゃないの? |
チェスター | 違う…妹は…アミィは… |
シンク | そらみなよ。それなのにまだ、あんな奴らを信じて助けを待つって言うのかい? |
チェスター | くっ… |
シェリア | やめなさい! |
シェリア | どうしてあなたは、そうやって人の心を不安にさせる事ばかり言うの? |
シェリア | 確かにこの村は、かつてとてつもない悲劇に見舞われたわ… |
シェリア | 国王陛下は直接その事に関わってはいなかったけれど、自らの責任を痛感されている! |
シェリア | そして二度と同じ悲劇を起こさない事を誓って、平和の実現に向けて努力しているの |
シェリア | 私は王都バロニアで、そうした努力を実際目にしてきた。嘘ではないわ! |
シンク | ふーん、バロニアで実際に目にしてきた、ね。だから信じろってわけだ |
シンク | じゃあ、今この村の状況をどう説明するのさ。このどこが復興が進んでるっていうのさ? |
シェリア | 今は…世界各地で起きた異変に一つ一つ対応されているわ!事態が落ち着けばきっと── |
シンク | どこでも、おめでたい奴ってのはいるもんだね…目障りだよ |
チェスター | おっと。手を出そうってのか?そうはさせねえ! |
シンク | フッ… |
チェスター | 何っ!? |
| ガスッ! |
チェスター | うぐっ…!は、速すぎる…そんな、馬鹿な… |
| ドサッ! |
シェリア | 大丈夫ですか!?しっかりしてください! |
シンク | 粋がる割には大した事ないね |
シンク | さて、また邪魔されても面倒だ。この際、二人まとめて退場してもらった方がいいかもね |
村の男 | シンク、この二人はまた騒がれないようにオレ達が連れてくよ! |
シェリア | …! |
| |
ルーク | ──あれ?もう日が暮れたのかよ? |
リタ | そんなわけないでしょ、バカね。まだそんな時間じゃないわ |
リオン | 日が暮れたのではない、これは霧のせいだ。辺り一帯に霧が立ち込めている |
クラース | しかも、ただの霧ではないぞ。闇のような、黒い霧だ…。これは一体… |
ルーク | 霧?これ霧なのか?霧って白いモンだろ!? |
アスベル | 視界が遮られるほどの「黒い」霧…。こんなもの、今まで一度も── |
アスベル | …もしかして、これは…! |
ミラ | ああ、大精霊によるものだろう。先ほどから、気配が格段に強くなっている |
カノンノ | って事は、今度の大精霊は「霧」に関係する大精霊っていう事…? |
ミラ | いや、これは霧ではなく、闇そのもの…。気配の主は、闇の大精霊シャドウだろう |
クラース | …シャドウか。そういう事ならこの状態にも納得がいく |
ルーク | なら、早速そのシャドウって奴を捜そうぜ |
リタ | …見つからないわね |
リッド | シャドウの闇のせいで視界が悪いのも厄介だな |
ルーク | 本当にここであってんのかよ? |
ミラ | 間違いない。気配のありかはこの周辺、そう遠くはないはずなのだが… |
カノンノ | あ… |
リタ | カノンノのネックレスが光った!?って事は、やっぱり── |
リオン | …徹底的に周囲を捜索するしかなさそうだ |
リッド | でも、これだけ捜していねえのに、他にどこを── |
アスベル | おい、みんな来てくれ!ここに大きな岩がある! |
ルーク | 岩?その岩がどうかしたのかよ?別に珍しくも何とも… |
アスベル | よく見てくれ。岩に割れ目があって、そこから下に降りられるようになっている |
アスベル | それに、シャドウの闇もここから出ている |
リタ | この下に洞窟でもあるのかしらね |
ミラ | … |
ミラ | 確かにこの裂け目の奥から、気配を感じる |
カノンノ | ネックレスも少し光が強くなったみたい! |
リオン | …よし、降りるぞ |
アスベル | ああ! |
scene2 | 閉ざされた扉 |
| キキィィ…! |
ルーク | うおっ!な、何だ今の!? |
リッド | 落ち着けルーク、ただのコウモリだ |
ルーク | な、何だよ…脅かすなっつーの! |
リタ | それにしても…ほんっと暗いわね、ここ。洞窟にしても妙にひんやりしてるし… |
ミラ | そうだな。いかにもシャドウが好みそうな場所だ |
アスベル | みんな、足元に注意して進んでくれ。カノンノ、お前も気をつけて歩くんだぞ |
カノンノ | うん、大丈夫! |
カノンノ | ありがと──…あっ! |
リオン | ぼさっとするな |
カノンノ | あ、ごめん。ありがとう、リオン |
リッド | こう暗くちゃ歩きづれえったらねえな… |
カノンノ | あ…! |
| |
ミラ | これは…大精霊、アスカとルナの力だな |
カノンノ | ふふっ、ありがとう!アスカ、ルナ!歩きやすくなったよ |
ルーク | へへっ、こりゃ便利だな! |
ミラ | む…? |
アスベル | どうかしたのか、ミラ? |
ミラ | …どうやら、行き止まりのようだ |
ルーク | マジかよ!?ここまで来て冗談だろ! |
リタ | …ちょっと待って。ここ、ただの壁じゃないわ。あれを見て |
| |
リオン | …扉か |
カノンノ | 本当だ、大きい扉…。でも、どうしてこんなところに扉が? |
アスベル | 理由は見当もつかないが…ミラ、シャドウの気配はこの奥で間違いないか? |
ミラ | ああ、そのようだ |
ルーク | だったら、早いとこ開けちまおうぜ。おいリッド、お前も手伝えよ |
リッド | 仕方ねぇな… |
リッド・ルーク | せーの! |
| … |
リオン | 微動だにしていないようだが… |
ルーク | おい、リッド!お前手抜いてんじゃねーぞ! |
リッド | 冗談よせよ。オレは全力出したって |
アスベル | 古そうな扉だし、傷んでいてそう簡単に動かないのかもしれない |
カノンノ | だったら、全員で一斉に押してみようよ |
アスベル | ああ、それがいい。じゃあ、行くぞ!せーの…! |
リッド | このっ…! |
ルーク | ぐぬぬ! |
ミラ | はぁぁっ! |
リタ | …駄目ね。やっぱりびくともしない |
クラース | どうやら力ずくで開けるのは難しそうだ。これは参ったな… |
カノンノ | ねえ、みんなちょっと見て。ここに変なくぼみがあるよ |
アスベル | くぼみ…?本当だ。…何だか不思議な形だな。人の手で作られたものみたいだ |
リタ | …扉の仕掛けを動かすためのものかしら |
クラース | もしそうだとするとそこにはまるものが鍵の役割を果たしそうだな |
リタ | 専門外だから断言は出来ないけど、可能性はあると思……あれ? |
ルーク | 何だ?どうかしたのかよ |
リタ | よく見たら、この仕掛けと扉の意匠、何だか見覚えがある… |
リタ | …もしかして、ここってあの「封じられた遺跡」なんじゃ… |
クラース | 「封じられた遺跡」だと? |
リッド | まさか!あれって単なる言い伝えじゃねえのかよ? |
リオン | …いや、現にこの扉は言い伝えのように、鍵で硬く閉ざされている。可能性としてあり得ない話ではない |
ルーク | お前ら、俺にもわかるように話せっつーの!つーか、そんな話聞いた事ねーぞ |
リタ | そりゃあんたは知らないでしょうよ。でもシルヴァラントじゃこれは割と有名な言い伝えなの |
クラース | シルヴァラントに?ああ、それでリッドやリオンは知っているというわけか |
アスベル | その「封じられた遺跡」っていうのは一体何なんだ? |
リタ | この大陸のどこかにあるという「人々の望むもの」が眠る遺跡よ |
リタ | それを持ち出される事を恐れた大昔のシルヴァラントの王が、遺跡ごと封じたって言われてる |
リタ | ただのおとぎ話みたいだけど、真面目な歴史書とか学術書にも言及があるんで気になってたのよね |
アスベル | 人々の望むもの?それは一体何なんだろう… |
ルーク | どうせ隠し財宝だとか、そういうもんじゃねーの? |
ミラ | いや、そういった物質的なものではなく、特別な力のような目には見えないものかもしれんぞ |
リッド | ま、何でも構わねえが、シャドウがこの奥にいるなら、まずこの扉を開く方法を見つけねえと |
クラース | …という事は、鍵となるものを探し出す必要があるが |
カノンノ | 鍵なんて一体どこにあるの…? |
クラース | 少なくとも、ここには落ちてないだろうな。そんな親切な話があるはずがない |
リタ | そうね…ここをもっと調べてもいいけど… |
リタ | もしここが本当に例の遺跡なら手間だけどメルトキオまで戻った方がいいかも |
リタ | あそこの図書館なら文献も充実してるし、何か手がかりが見つかるかもしれない |
リオン | 確かに、闇雲に探すより手がかりを見つけられる可能性は高そうだ |
アスベル | よし、メルトキオに戻ろう |
ルーク | マジかよ。ここまで来て引き返すのかよ、ったりぃ… |
リオン | …やむを得ん。そうと決まれば、さっさとここから… |
| グルルル… |
リッド | おい、今のは── |
| |
| ガルルル! |
ミラ | 魔物か! |
scene1 | 仮面をつけた男 |
チェスター | う… |
シェリア | …! |
シェリア | 大丈夫…? |
チェスター | お前… |
チェスター | いつっ…ここはどこだ…? |
シェリア | 広場近くの小屋の中。閉じ込められたの |
チェスター | そうか… |
チェスター | …さっきはすまねえ。割って入ったのに庇ってやれなくて…情けねえよ |
チェスター | あのシンクって奴の演説はオレが止めるべきだったんだ |
チェスター | あいつの取り巻き…あいつらは村の奴らなんだ…。お前を巻き込んで…すまねえ |
シェリア | 助けてくれたんだもの、謝る事なんてないわ |
チェスター | オレはチェスター・バークライト。この村の住人だ。お前、そういや確か怪我をして… |
シェリア | ええ、たまたま通りがかったカイウスとルビアって二人が運んでくれたと聞いたわ |
シェリア | 私はシェリア。シェリア・バーンズよ |
チェスター | シェリアか。お前には感謝してるぜ |
シェリア | 私に感謝?どうして? |
チェスター | 村が襲われたのは事実だ。そのせいで妹も死んだ。国王を恨んでねえって言やあ、ウソになる |
チェスター | あいつの話を聞いている内に心の底にしまっていたはずのあの時の感情がどんどん溢れてきて… |
チェスター | … |
シェリア | チェスター… |
シェリア | この村がどんな目に遭ったか、私も聞いていたわ |
シェリア | あなたがそんな風に考えてしまうのも、仕方のない事だと思う |
チェスター | ああ…でも、お前の言葉を聞いて完全に目が覚めたぜ。ありがとな |
チェスター | あいつは村の人々の悲しみを、利用している |
チェスター | つらい気持ちにつけ込んで財宝だなんだって言って村のみんなを煽っているんだ |
チェスター | 遺跡の財宝の話で村のみんながバラバラになっちまって…。こんなんじゃ復興もままならねえ |
チェスター | 財宝の話だって眉唾もんだ…。せっかくここまでみんなで頑張って来たってのに… |
シェリア | シンクが村の人達をいたずらに煽って村の復興の足止めをしているのだとしたら、見過ごせないわ |
シェリア | まずはここから脱出しないと…!全てはそこからよ |
チェスター | ああ、そうだな |
| |
クラース | メルトキオまで、あとどれくらいだ? |
リッド | あと半分弱ってとこじゃねえか?そう遠くないとは思うが |
クラース | …!まだ半分近くもあるのか… |
リタ | ちょっとクラース。何よ、まさかもう疲れたとか言うんじゃないでしょうね? |
クラース | …そのまさかだ。ずっと歩き── |
??? | あー!!! |
カノンノ | …!な、何今の声…!? |
アーチェ | リター!みんなー!久しぶりー!って、あれ、クラースも一緒じゃん! |
リタ | アーチェ!?あんたこんなところで何してんのよ? |
アスベル | ユーリ達は一緒じゃないのか? |
アーチェ | それがさ、ちょっといろいろあって今はあたしとクレスだけ別行動してんの |
アーチェ | …って、そうそう!そのクレスがいなくなっちゃったんだ~。みんな一緒に捜すの手伝ってよ! |
ルーク | いなくなっただあ?どーせお前の方がうろうろしててはぐれたんじゃねーの? |
アーチェ | 違うってば!ホント失礼しちゃう! |
アーチェ | とにかく捜して!アーチェちゃんのお・ね・が・い★ |
クラース | 人使いが荒いな。やれやれ… |
scene2 | 仮面をつけた男 |
リッド | 見つけたぞ、クレスだ! |
リオン | あれは… |
| ガルルル… |
クレス | やああっ! |
| ギャウウッ! |
クレス | ふう… |
アーチェ | クレス! |
クレス | アーチェ!どこへ行ってたんだ。捜したんだぞ…って、あれ? |
クレス | アスベル達も一緒だったのか。君達がアーチェを見つけてくれたのかい? |
ルーク | 見つけてくれた…?ははーん、そういう言い方するってことは、やっぱはぐれたのは… |
アーチェ | あーもう!バカ!違うって言ってんでしょ! |
ミラ | ところで、お前達は何故ユーリ達と別行動を取っているのだ? |
カノンノ | もしかして…喧嘩しちゃったとか? |
アーチェ | 違う違う!ついさっきまで一緒にいたし、全然そういうんじゃないよ |
クレス | 今は別行動だが、ユーリ達とは後で合流する手筈になっているんだ。その点は心配いらないよ |
アスベル | じゃあ、どういう事なんだ? |
クレス | 偶然君達と再会して以来、僕達は引続き第三者の情報を追っていたんだ |
アーチェ | その中でね、ある村に立ち寄ったの。そこで妙な光景を目にしてさ… |
リタ | 妙な光景? |
クレス | …その村の人達は、みんなどこか様子がおかしかったんだ |
クレス | 妙に疑心暗鬼な様子だったり、攻撃的になっていたり… |
アーチェ | それで、少し探りを入れてみたの。そしたら、仮面を付けた妙な男が村を訪れていた事がわかってさ |
クレス | 詳しい事情はわからないけど、どうやら彼が村人達に何かよからぬ事を吹き込んだらしいんだ |
クレス | その男の名前はシンクと言うらしい |
アスベル | 仮面の男…シンク… |
カノンノ | …ねえ、アスベル。ひょっとしてその人って |
リオン | 心当たりがあるのか? |
アスベル | ああ、俺とカノンノが出会って間もない頃に、仮面を付けた男に会った事があるんだ |
アスベル | 彼は街頭に立って、人々を煽ったり不安に陥れるような演説をしていた |
カノンノ | アスベルが必死に止めようと説得を試みたんだけど話を聞いてくれなくって… |
アスベル | その彼もシンクと名乗っていた…。仮面も付けていたし、行いからしてもおそらく同一人物だと思う |
クレス | …! |
アーチェ | クレス、とにかく急ごう!早くトーティス村に帰らないと |
ルーク | トーティス村?何だよ、急に。あの村がどうかしたのか? |
アーチェ | さっきの話には続きがあって、その仮面の男、次はトーティス村に向かったって話なの |
クレス | トーティス村は僕の出身地だ。先の事件でみんな、身体にも心にも深い傷を負っている… |
クレス | そんな彼らが、おかしな演説で不安を煽られでもしたら、と思ったらいても立ってもいられなくてね… |
アーチェ | それで、あたしとクレスは一旦トーティス村に向かうために別行動させてもらってたってワケ |
カノンノ | そんな… |
アスベル | … |
リタ | ただでさえこんな状況でみんなが不安を抱えてるってのに、本当最低ね、そいつ… |
リッド | とにかく、事情はわかった。お前達は早いとこトーティス村へ帰ってやれよ |
クレス | ありがとう、リッド。そうさせてもらうよ |
クレス | じゃあ、僕達はこれで── |
アスベル | クレス、待ってくれ! |
カノンノ | アスベル…? |
アスベル | 俺は前にシンクに会った時、彼のやっている事を止める事が出来なかった… |
アスベル | 彼が未だに、人々に不安や失望といった悪い影響を与え続けているんだとしたら… |
クレス | アスベル…。君のせいじゃない |
アスベル | いや、止められる機会があったんだ。あの時、彼を止めるべきだったんだ |
アスベル | …すまない、リオン、ミラ、リッド…俺もクレス、アーチェと共にトーティス村へ行く |
アスベル | シンクに、何の目的があるのかわからない |
アスベル | けど、行く先々でみんなを不安に陥れているのだとすれば |
アスベル | 今、シンクを食い止めなければ、この先トーティス村や他のところでも混乱を招き続けるかもしれない |
アスベル | みんなは、あの扉を開ける手がかりを見つける事を優先してほしい |
リオン | だが──… |
リッド | 別にいいんじゃねえのか?全員で動いたところで、オレ達はすぐシャドウに会えるわけでもねえし |
リタ | そうね。遺跡の情報を集めるだけなら、あたしらだけでも問題ないわ |
ミラ | 確かに、アスベルの言うように、人の心をかき乱すような者を放っておくのは危険だ |
クラース | ふむ…同感だな。そんな物騒な状況になっているならもう少し誰か同行した方がいいだろう |
クラース | 幸い、急を要しているとはいえ私達が今動ける事といえば、情報収集しかない事だしな… |
アスベル | ありがとう…。クラース、みんな |
リタ | あたしはメルトキオに行くわよ |
ルーク | 俺はトーティス村に行くぜ。図書館で調べものとかたりぃし |
ミラ | 私もトーティス村に行こう |
ミラ | メルトキオより遺跡に近いトーティス村ならば、シャドウの気配の変化があった時に動きやすい |
リッド | じゃあオレは、メルトキオに行くかな |
リオン | 僕もメルトキオへ行く。一刻も早く、手がかりを手に入れたい |
クラース | 私もメルトキオへ行こう。調べ物ならば協力出来る事もあるだろう |
アスベル | カノンノは…トーティス村は危険かもしれない… |
クラース | いや、カノンノはアスベルと一緒の方がいいだろう |
カノンノ | うん。私も、シンクの事は止めたい! |
カノンノ | アスベルと一緒に、トーティス村に行くよ! |
ミラ | どうやら上手く二分したようだな。では、早速それぞれ動き出すとしよう |
リタ | いいわ。こっちは任せといて |
リタ | じゃ、行くわよ |
アスベル | 頼んだぞ、みんな。トーティス村の件が片付いたら、こちらもすぐメルトキオに向かう |
カノンノ | みんな、気をつけてね! |
ミラ | 私達はトーティス村に急ごう |
クレス | ありがとう、助かる。村へは僕が案内するよ。さあ、こっちだ |
アスベル | ああ、頼む! |
scene1 | 遺跡の鍵 |
| ドン!ドン! |
チェスター | …ちっ。これだけ体当たりを繰り返しても、開きやしねえ! |
シェリア | あまり無理はしないで… |
シェリア | 誰か!いませんか?! |
シェリア | 何の反応もないわね…。外まで声が届いていないのかしら |
チェスター | この小屋は、今じゃガラクタまみれの廃屋みたいになっちまってるが、元々は食料を備蓄していたところだ |
チェスター | だから壁も扉も、とりわけ頑丈に作られてる。以前の騒動の時も燃えずに残ったしな |
シェリア | 扉に体当たりしても開かなかったり、外に声が届いてる様子がないのは、そういう事だったのね… |
シェリア | 私達に打てる手は、何かないのかしら… |
チェスター | そうだな… |
チェスター | 壁も扉も駄目となると、あと狙えるのは上だけだな |
シェリア | 上って…屋根? |
チェスター | そういう事だ。確か、この小屋の屋根は木製だ。木ならぶち破る事も出来るだろ |
チェスター | 弓があれば楽勝なんだが、あいつに取られちまったみたいだし… |
チェスター | …仕方ねえ、ここにあるもので何とかするしかねえな |
チェスター | …よし、落ちてた廃材で何とか弓矢っぽいものを作れたぞ |
シェリア | すごい…。随分手先が器用なのね |
チェスター | 村を再建するために、いろいろな事をやったからな。…危ないから離れててくれ |
チェスター | それじゃ、行くぞ…はっ! |
| ビュンッ! |
| バゴーーーン! |
| ガラガラガラッ…! |
シェリア | きゃっ!? |
チェスター | おっと、大丈夫か?破片に気をつけろよ |
シェリア | ええ、ありがとう。大丈夫よ |
チェスター | 何とか成功だな。あのくらいの穴なら人も通れそうだ。後はあそこから出るだけだ |
シェリア | でも、どうやって?だいぶ高さがあるし、壁を登るのは難しそうだわ |
チェスター | 任せとけって。オレに考えがある |
チェスター | さてと… |
| |
ミラ | ここがトーティス村か… |
ルーク | クレスから話は聞いてたけど、こんなひでえ有様になってたのかよ… |
クレス | これでもかなり持ち直した方なんだ |
アーチェ | そうだね、みんな、村の再建のために一生懸命頑張ったもんね |
カノンノ | アスベル…この村、前に何かあったの? |
アスベル | それは… |
クレス | ちょっと前に、不幸な事件に巻き込まれてね。…壊滅近くまで追い込まれたんだ |
カノンノ | え… |
カノンノ | そうだったんだ…。ごめんなさい、私、何にも知らなくて… |
アーチェ | いいのいいの。カノンノが謝る事じゃないよ |
中年の女 | おや、アーチェにクレス。戻って来たのかい |
アーチェ | あ、おばさん! |
アーチェ | 最近村の様子はどう?変な奴が来てたりしない?仮面を被ったヤツなんだけど |
中年の女 | ああ、シンクの事かい? |
中年の女 | やだね、あんないい子を変な奴だなんて |
中年の女 | シンクは、あたしらの村を助けてくれるって言ってくれているんだよ |
中年の女 | 国なんて当てにしてられないからね。いい子が来てくれて助かったよ |
ルーク | …いい子、だってよ。仲良くやってるみたいじゃねーか |
ミラ | そうだな… |
クレス | それで、そのシンクは、今も村に? |
中年の女 | ああ。広場で話をしているよ。クレス、あんたも腕が立つんだからシンクを手伝ってあげなよ |
アーチェ | あれ?そういえば、チェスターは? |
中年の女 | チェスターかい?あの子はちょっとね… |
アーチェ | 何かあったの? |
中年の女 | 村で騒ぎを起こした女の子がいて、何故かその子を守ろうとしてそれで一緒に捕まってるらしいよ |
クレス | 捕まったって…どこにいるんですか!? |
中年の女 | なに、心配する事はないさ。今は村の空き小屋で、二人そろって頭を冷やしているだけだよ |
中年の女 | じきに出て来るはずさ |
アーチェ | 女の子って、誰?あたしの知ってる人? |
中年の女 | いいや、村の子じゃないね。全くのよそ者さ |
アーチェ | よそ者って言ったって… |
クレス | チェスターの事も心配だ…。とにかく、広場の方に行ってみよう!空き小屋もその辺りにある |
アスベル | ああ、案内を頼む! |
scene2 | 遺跡の鍵 |
ミラ | ここが広場か |
クレス | …!村のみんながこぞって集まっている。これは… |
カノンノ | アスベル、あそこを見て! |
アスベル | あれは…! |
シンク | … |
アスベル | やっぱり、シンクだったか… |
ルーク | あいつがシンクか。本当に仮面被ってんのかよ… |
村の男 | シンク、財宝の眠る遺跡はどこにあるんだ? |
シンク | この村の南、シルヴァラント領にある |
村の女 | 遺跡には魔物がいるんじゃないの? |
シンク | 心配いらないさ。魔物はボクが蹴散らしてあげよう |
ミラ | 村の南…シルヴァラントにある遺跡だと? |
カノンノ | それってシャドウのいる遺跡の事? |
ルーク | おいおい、あんなところに村の連中をつれてこうってのかよ? |
シンク | みんな、準備はいいか!村の復興のために遺跡に出発する |
村人達 | おー! |
アスベル | 待ってくれ! |
シンク | …! |
シンク | 誰かと思ったらアンタか |
アスベル | シンク、お前が行こうとしている遺跡はとても危険な場所だ |
アスベル | そんな場所に村の人達を行かせるわけにはいかない |
シンク | ここでもボクの邪魔をしに来たのかい。相変わらずしつこいね |
クレス | 村の人達を危険な目に遭わせるような真似はやめてくれないか |
アーチェ | そうだよ!せっかくここまで立ち直ったのに! |
アーチェ | ここでみんながバラバラになったら今度こそ、この村は駄目になっちゃう! |
シンク | ふん… |
ミラ | …このように各地の人々を混乱させて回る、お前の目的は一体何なのだ? |
ルーク | わざわざあっちこっちで適当な事吹き込んでんじゃねーぞ! |
シンク | 適当?ボクは力のない人達のために自分が出来る事をしているだけさ |
シンク | この村の人達に必要な事を教えて自発的な行動を促したに過ぎない |
シンク | こうやって横槍入れると言う事はアンタ達も財宝が目当てなのかな? |
カノンノ | 違うよ!あの遺跡は危なくて…! |
シンク | どうだかね。そんな事を言って財宝を横取りする気なんじゃないの? |
村の男 | 何だって… |
アスベル | …! |
クレス | 村のみんな…。僕の話を聞いてくれ! |
クレス | 僕達は財宝なんてなくても村を元に戻せる。そうだろう? |
クレス | 今までこうしてやって来れたんだこれからだって、出来るはずだ! |
村の若者 | クレス… |
クレス | 自分達の力を信じてくれないか?僕やチェスターも、出来る事をする。今までと同じように!だから…! |
村人達 | … |
シンク | … |
シンク | …この村に寄ったのは無駄足だったみたいだね |
シンク | アンタらみたいな奴はさっさと潰しておけばよかったよ |
ルーク | てめえ、やる気かよ! |
シンク | ああ、そうさ。今度こそアンタ達には消えてもらう |
| |
クレス | みんな、来るぞ! |
scene3 | 遺跡の鍵 |
シンク | くっ… |
ミラ | 動くな。その傷では、もうまともに戦う事は出来まい |
ルーク | へっ、いくら腕に自信あったって、この人数相手に喧嘩売るなっつーの |
アスベル | シンク、こんな事はもうやめるんだ。俺達は別にお前と争いたいわけじゃない |
シンク | ふん…情けをかけているつもりかい?反吐が出るね |
カノンノ | 私達は別にそんなつもりじゃ… |
シンク | アンタ達の空虚な言葉で、ボクの心が動く事は断じてない。説得出来るなんて思わないでほしいね |
アーチェ | まだ抵抗するつもり? |
シンク | そうしたいのは山々だけど…さすがに分が悪い。ここは退かせてもらう |
ルーク | おい、待てよこら! |
チェスター | おっと、待ちな |
シェリア | あなたをこのまま行かせるわけにはいかないわ |
シンク | …! |
アーチェ | チェスター! |
チェスター | お、アーチェにクレス!戻って来てたのか |
アスベル | シェリア!まさかお前だったのか!? |
シェリア | ア、アスベル!? |
カノンノ | あれがシェリアさん… |
クレス | 君達は空き小屋に捕まっていたと聞いていたんだけど、無事だったんだね。安心したよ |
チェスター | 小屋の中にあった廃材で、弓の代用品を作ってな。そいつで屋根をぶっ飛ばしたのさ |
シェリア | それから、鉄の棒に縄を括りつけて、外まで飛ばして…何とか脱出する事が出来たの |
ミラ | 上手く機転を利かせたようだな |
クレス | さすがチェスターだ |
チェスター | …みんながこいつの事を止めてくれたみてえだな。助かったぜ |
チェスター | こいつはな、財宝が眠る遺跡の鍵を持ってる、とかぬかしやがって |
チェスター | あるかもわからねえ財宝の話にみんなを巻き込もうとしてたんだ |
ミラ | 何…シンクは遺跡の鍵を持っているのか!? |
チェスター | 鍵って言っても、こいつが持ってたのは変な形の石だぞ? |
ルーク | 変な形の石…。おいおい、それってまさか… |
シンク | 「封じられた遺跡」の鍵さ。この村の南にある遺跡のね |
アスベル | …! |
シンク | ふーん…その反応…。アンタ達はこの鍵が必要なんだ… |
アスベル | シンク、お前、本当に鍵を持っているのか? |
シンク | ふふっ…こんな鍵ボクにはもう必要ないからね… |
シンク | くれてやるよ! |
カノンノ | あっ──! |
アーチェ | おっとっと!危ないじゃない!誰かに当たったらどーすんのよ! |
シンク | 人間は、絶望や恐怖に、打ち勝つ事は出来ない…。せいぜい、闇に飲まれてくればいい |
アスベル | 闇に飲まれるだって…?それは一体どういう── |
シンク | … |
アスベル | 待て!シンク! |
チェスター | あいつ!…逃げられたか! |
カノンノ | また、逃げられちゃった… |
アスベル | 他のところで、同じような事を繰り返すのだろうか… |
ルーク | どうだっていいだろ、あんな奴。どうせあんだけ痛めつけられてりゃしばらくは何も出来ねーって |
チェスター | 今度はぜってぇ村に近寄らせねえよ、あんなヤツ! |
scene1 | 迫る侵食 |
アスベル | …それにしても、まさかこんなところでシェリアに会うなんてな |
シェリア | 本当、私も驚いたわ。あれだけ捜し回って、足取りすら掴めなかったのに |
アスベル | 捜し回ったって…俺の事をか? |
シェリア | ええ… |
シェリア | しばらくバロニアで待ってたんだけど、どうしても会えなかったから |
シェリア | 諦めて故郷に帰る前に、少しだけ周辺の街や村を、巡ってみる事にしたの |
シェリア | その途中で迷い込んだ森の中で崖から落ちちゃって…気付いたらこの村に運ばれてて |
アスベル | ごめん…シェリアがそんな事になっていたなんて、俺、全然知らなくて… |
シェリア | いいの。私が勝手にやっていただけだから気にしないで |
シェリア | でもそうやって怪我をしたから、この村に来られて、アスベルにも会えたのよね。不思議なものだわ |
アスベル | 俺もバロニアにいる時に、シェリアが来てるって聞いて、ちょっと捜してみたんだけど… |
アスベル | あの時もっと、気にすればよかったな |
シェリア | 仕方ないわよ。アスベルにはやらなくちゃいけない事が、たくさんあったんでしょう? |
アスベル | …まあな |
シェリア | ねえ、アスベル。一体何があったの?よかったら話してくれない? |
アスベル | ああ、勿論だ。実は── |
シェリア | 大精霊…。そんな存在がいるのね |
シェリア | 普通じゃ考えられない異変が、各地で起こっていた事は知ってるわ |
シェリア | …でもまさか、その原因が大精霊だったなんて… |
アスベル | ああ。…でも、それもじきに全て終わる |
アスベル | みんなで力を合わせて、大精霊を元に戻す事に成功しているんだ |
アスベル | ただ…次のシャドウっていう大精霊のところへ行くのには、ちょっと手間取ってるけどな |
シェリア | シャドウ? |
アスベル | 闇を司る大精霊…だそうだ。シルヴァラントの南東にある遺跡にいるのはわかってる |
アスベル | ただ、その地下遺跡の入口である扉は硬く閉ざされていて、開けるには鍵が必要だったんだ |
シェリア | それが、さっきシンクが投げた石なのね? |
アスベル | 本物だという確証はないけど、有力な手がかりである事は間違いない |
アスベル | 早速みんなを集めて出発しよう |
| |
クレス | 何はともあれ、この村の騒動は収まった。アスベル達の協力のお蔭だよ |
クレス | みんなにはしばらく村の外に出ないように頼んできたよ。安全になったら知らせないとな |
アーチェ | このまま、遺跡に財宝探しに行かれても困っちゃうからね。シャドウの事もあるし |
アーチェ | あ、シンクと一緒にいた村の人がシンクが逃げて行ったって話をしてくれたみたいだよ |
アーチェ | これで村のみんなに話が伝わって騙されてたって事に気付いてくれるといいんだけど |
シェリア | 私とチェスターを閉じ込めた事も反省してるって伝えてくれたわ |
チェスター | 一時はどうなる事かと思ったけどこれならもう村は大丈夫だろ |
アーチェ | わざわざ来てくれてありがとね! |
ルーク | ま、上手い具合に探してたもんも見つかったし、結果オーライって奴じゃねーの? |
ミラ | では、私達はメルトキオへ向かいリタ達と合流後、再び例の地下遺跡に向かおうと思う |
クレス | 僕も一緒に行くよ。今度は僕の方に、君達の手助けをさせてほしい |
ルーク | クレスはユーリ達と合流する事になってんじゃねーのか? |
クレス | みんなとは、この村で落ち合う事になってるんだ |
クレス | もし僕が君達と行ったとしてもアーチェから状況は伝わるだろうし心配はいらないよ |
ミラ | そういう事なら、是非力を貸してほしい。クレスが共に来てくれるなら私達としても心強い |
チェスター | 本当はオレも一緒に行きてえところだが、シンクの一件の後始末をしないといけねえ |
シェリア | 私もここに残ってチェスター達の手伝いをするわ |
シェリア | …って言っても、怪我がまだ完治してないからやれる事には限りがあると思うけど… |
アスベル | シェリア…大丈夫か? |
シェリア | 私の事は心配しないで。アスベルこそ、あまり無茶はしないでね |
シェリア | カノンノの事も、ちゃんと守ってあげるのよ |
カノンノ | シェリアさんに会えてよかった。想像通り優しくて素敵な人… |
カノンノ | アスベルから話を聞いてどんな人だろうって、ずっと気になってたから本当に嬉しかったよ |
シェリア | ふふっ、私も会えて嬉しかったわ。カノンノ、アスベルの事をお願いね。しっかり見ててあげて |
カノンノ | うん、任せて! |
クレス | よし、それじゃ僕達はそろそろ行こうか |
アスベル | ああ! |
scene2 | 迫る侵食 |
ルーク | シルヴァラントに入ったか。早いとこリタ達と合流して鍵が手に入った事を知らせねーとな |
アスベル | だから、まだその石が遺跡の鍵と決まったわけじゃ… |
ミラ | …! |
カノンノ | ミラ?急に立ち止まったりして、どうかしたの? |
ミラ | …少しまずい状態だ |
クレス | まずいって…それは一体何の話だい? |
ミラ | シャドウだ…。奴の気配が、以前に比べて急激に高まっている |
アスベル | 何だって… |
ルーク | お、おい、あれ…南東の方。あれ、シャドウの闇じゃねーのか!? |
カノンノ | 本当だ…!これだけ距離があるのに、こんなにもはっきり見えるなんて… |
ミラ | シャドウによる闇が大陸を侵食し始めている… |
ミラ | これは、すぐに止めなければ取り返しのつかない事になるぞ… |
ルーク | 具体的に、どうなるんだよ? |
ミラ | 大陸中、ひいては世界全体が闇に包まれる事になる。そうなれば… |
アスベル | 光がなくなれば植物は枯れて、食べものもなくなる… |
ミラ | そうだ。それに、食糧不足は飢えをもたらすだけではなく、争いも引き起こす事になるだろう |
ミラ | ただでさえ、光のない生活は、不安を増長させ、人間の心を蝕む |
ミラ | 闇を司る大精霊とは、それだけの力を持つ存在なのだ |
ルーク | とんでもねー野郎だな… |
クレス | それがここまで拡大してるって事は、時間がないって事じゃないのかい? |
ミラ | ああ…。まさかこの短時間で、ここまで急速に影響が拡大するとは… |
ルーク | だったらさっさと遺跡に行ってシャドウの奴を止めちまえばいいんじゃねーのか? |
アスベル | この石が地下遺跡の鍵である確証はないが、この形状はあの扉にあったくぼみと似ている |
アスベル | 今なら閉ざされた扉の先に入れるかもしれないしな… |
クレス | それを確かめる意味でも、今はまず地下遺跡に向かう事を優先すべきだと思う |
ミラ | そうだな…。シャドウの事は、早めに対処する必要がある。可能性があるのであればそれに賭けよう |
アスベル | よし、じゃあ進路を変更してとにかく俺達は地下遺跡を目指そう |
ミラ | ああ。リタ達には申し訳ないが…。異変に気付いて駆けつけてくれるとよいのだが |
ルーク | おし、決まりだな!じゃあとっとと行こうぜ |
カノンノ | うん! |
| ガサッ! |
クレス | …!今の音、まさか… |
| |
| ガルルルル! |
アスベル | 魔物か!…みんな、時間もない事だ。協力して一気に切り抜けよう! |
scene1 | 育まれる絆 |
アスベル | さて、ようやくここまで戻って来たな |
クレス | 話を聞いて、どんなところかと思っていたけど…想像以上に空気が重いね |
カノンノ | 霧も前より濃くなったみたい。視界がさらに悪くなったね… |
アスベル | アスカとルナが照らしてくれなければとても歩いて来られなかったな |
ミラ | それほど、シャドウの状態が悪化しているという事だ。先を急ごう |
カノンノ | あ…ネックレスが |
クレス | この扉の先にシャドウがいるんだね |
ルーク | とにかく、早いとこ例の石でここを開けられるかどうか試してみようぜ |
アスベル | ああ、そうだな。よし、じゃあこのくぼみに例の石をはめてみるぞ |
カノンノ | お願い…上手くいって…! |
| ゴト… |
ミラ | どうだ…? |
| ガコン! |
| |
| ズズズ…! |
カノンノ | 扉が開いたよ! |
ルーク | そら、俺の言った通りだったろ!やっぱりこいつがこの扉の鍵だったじゃねーか! |
ミラ | とにかく、あまり猶予はない。慎重に進みつつも、早い段階でシャドウを見つけ出さなければ… |
クレス | ああ、そうだね… |
scene2 | 育まれる絆 |
クレス | 中は、さらに暗いね。それに音も何一つ聞こえない…。不思議な感覚だ |
アスベル | 確かに静かだ…。音が、遠くに吸い込まれていくような… |
クレス | …何だか懐かしいね。あの時を思い出すよ |
ルーク | あの時? |
クレス | この先何が起こるのかわからない…、光の神殿の中を進んでいた時も今と似たような感覚だった |
ミラ | 確かに、わからなくはないな |
ルーク | そういやあ、今ってあの時の顔ぶれが半分もいるんだな… |
アスベル | 光の神殿か…。三人は、光の神殿で初めて会ったんだっけ? |
クレス | うん。そんなに昔の事じゃないのに、こうやって改めて話すと、随分懐かしく感じるね |
クレス | 最初はさ、お互い警戒し合って、連携も上手くいかなかったんだ |
ミラ | 最初だけではなかったぞ。途中で分裂の危機に陥った事もあっただろう |
ルーク | …いろいろあったのは確かだけどよ。け、けど、最後は何とかなったんだし、いいじゃねーか |
アスベル | そんな事があったのか…。何だか今のみんなを見てると信じられないな |
クレス | 勿論、今はそうじゃないけどね。でも、知り合った当初は本当にいろんな問題があったさ |
クレス | 今となってはそれもいい思い出だけど |
カノンノ | 何だか、今のみんなみたいだね |
アスベル | ん? |
カノンノ | 最初はね、ただ世界を救うっていう目的のために一緒に行動しているって感じだったけど、今は違う |
カノンノ | 何だろう、本当の仲間っていうか…日に日にね、みんながすごく仲良くなっていってる気がするよ |
アスベル | カノンノ… |
アスベル | …ふっ、何だか他人事みたいに言ってるけど、お前もその中の一人なんだって事、忘れるなよ? |
カノンノ | …!うん、そうだね。ありがとうアスベル |
ミラ | 確かに…いつの間にかお前達にも躊躇なく背中を預けられるほどの信頼が芽生えている |
ミラ | …不思議なものだな。何か特別な話をしたわけでもないのに |
ルーク | … |
クレス | 信頼や友情、仲間との絆が生まれる瞬間なんてきっと、そういうものなんだよ |
ルーク | …お前ら、よくそんな臭い事平然と言えるな。聞いてて背中がむずむずしてきたっつーの! |
ルーク | おら、くだらねー事言ってねーで、さっさと先に進むぞ! |
アスベル | …?ルークの奴、突然どうしたんだ? |
カノンノ | ふふっ、大丈夫だよ。きっと恥ずかしいだけで── |
ルーク | …!うおっ、何だこいつ!?いつからここにいた!? |
ミラ | ! |
| |
??? | … |
ルーク | な、何だよこいつは…! |
クレス | ひょっとして、こいつがシャドウか! |
アスベル | ああ。状況的に間違いないはずだ |
ミラ | 待て。妙だ…奴からは気配を感じない… |
カノンノ | 私のネックレスも反応してないよ |
ルーク | じゃあ、目の前にいるこいつはシャドウじゃなくて何だっつーんだよ! |
| ヒュンッ |
ルーク | うおっと! |
アスベル | 今は考えている場合じゃないこのまま戦うぞ! |
scene3 | 育まれる絆 |
アスベル | はああっ! |
| ズバッ! |
シャドウ? | … |
カノンノ | やった…!シャドウが倒れたよ! |
ミラ | … |
ルーク | 何だ、他の大精霊と比べると全然大した事なかったな |
クレス | こいつは本当に大精霊なのか? |
アスベル | 手ごたえはないが…カノンノ!念のため、シャドウにリプリカームを |
カノンノ | うん! |
ミラ | …!カノンノ待て、奴の様子がおかしい |
カノンノ | え? |
ルーク | ちっ、また復活するっつーなら、そうはさせ── |
| シュウウ… |
カノンノ | どうして?!…シャドウが消えて… |
クレス | これは…!アスベル、今までもこういう事はよくあったのかい? |
アスベル | …いや、こんな事象が起きた事はない。一体何が起きているんだ…? |
ルーク | もしかして逃げやがったのか!? |
カノンノ | …!あ、あれ…見て! |
| |
シャドウ? | … |
ミラ | くっ!いつの間に…!? |
クレス | 消滅したわけではなく、瞬間的に移動したのか…? |
ルーク | …!お、おい…、こっちにも別のシャドウが… |
シャドウ? | … |
アスベル | なっ…!シャドウが2体も…! |
ミラ | 何!? |
ルーク | くそっ、しかも挟み撃ちかよ! |
クレス | とにかく、迎え撃つしかない!みんな、互いに背中を預けるように立つんだ! |
アスベル | わかった!カノンノ、早く俺達の傍に──…!カノンノ!? |
シャドウ? | … |
カノンノ | …! |
ルーク | おい、あいつカノンノを狙ってやがるぞ! |
アスベル | くそっ…カノンノ!! |
??? | せいっ!! |
| ズバッ!ズバズバッ! |
| シュウウ… |
| |
アスベル | !? |
カノンノ | シャドウが…消えて… |
??? | 危ないところだったな。大丈夫か? |
カノンノ | あなた達は── |
scene1 | 大精霊シャドウ |
カノンノ | あなた達は── |
| |
ルーク | ユーリ!ロイド!それに… |
ソフィ | みんな…! |
クレス | ソフィまで…! |
ミラ | どうしてお前達がここに…? |
ユーリ | トーティス村へ行って、アーチェ達からお前らの話を聞いてな |
ロイド | メルトキオに追いかけても行き違いになるかもと思って俺とユーリは先回りしたんだが… |
ロイド | さらに俺達の読みの先行ってたな!封印されてたっぽい扉が開いてて驚いたぜ |
ルーク | てっきりリタ達が来たのかと思ったら、お前らだったのかよ |
ユーリ | 来たのがオレ達じゃ不満か? |
ルーク | べっ、別にそんな事言ってねーだろ! |
ミラ | とにかく、よく来てくれた。礼を言う |
アスベル | それにしてもソフィ、どうしてお前がここにいるんだ?シーブル村にいたはずじゃ… |
ソフィ | みんなが行ってから少ししてコハクとヒスイが村に戻って来たの |
ソフィ | だからもう大丈夫かなって思ってアスベル達と一緒に行こうとキムラスカに向かったの |
ソフィ | そしたら、その途中の村で黒い霧の話を聞いて…。村の人達がすごく怖がってたから… |
アスベル | 放っておけなくなって、調べに来たのか |
ソフィ | うん |
ロイド | で、黒い霧の発生地点を見つけてここに来た時に、俺達と会った。…だよな?ソフィ |
ソフィ | それでね、ロイド達と一緒にみんなを捜していたの、でも明るかったからすぐ見つけられたよ |
ロイド | そういえば、何でお前らの周りこんなに明るいんだ? |
ミラ | 大精霊、ルナとアスカが力を貸してくれているのだ |
ロイド | へー便利だな!俺達、ここまで来るのに苦労したんだぜ? |
ユーリ | レイヴンとゼロスはメルトキオに向かったぜ。アーチェは村に残るってよ |
クレス | うん…そうだろうな。アーチェには、村の事を頼んできたから |
クレス | レイヴン達は、リタの方と会えるといいんだが… |
| |
ユーリ | それはそれとして、今のが例の大精霊って奴か?思ったより手応えなかったんだが |
ロイド | そうなんだよ。弱いとまでは言わないけど、こう…もっと強いのを想像してたから |
ルーク | そんな事ねえっつーの。他の大精霊はマジでヤバかったんだ。ただ、シャドウだけが… |
ミラ | やはり、そうか… |
アスベル | ミラ?何かわかったのか? |
ミラ | 先ほど私達が倒したのは、おそらくシャドウの「幻」だ |
ミラ | 奴らはシャドウであり、シャドウではない |
ルーク | シャドウなのにそうじゃない…?おい、わけがわからねーぞ。どういう事だよ |
ミラ | つまり、シャドウの力で生み出された本体とは異なる別の存在という事だ |
ロイド | 要するに、その…今倒した奴は偽者って事だよな? |
ミラ | ああ、簡単に言えばそうだな |
クレス | 近くに現れても、ミラやカノンノが全く気配を感知出来なかったのは、そのせいか |
ソフィ | どうして、偽者だってわかるの? |
ミラ | 奴と戦っている最中、私は目の前のシャドウからではなく別の場所に気配を感じていた |
ミラ | 今も、シャドウの気配は途絶えていない。本体は別の場所にいる |
ユーリ | なるほどな。その本体を倒さない限り、いくら偽者倒したって無駄ってわけだ |
カノンノ | なら、急いで見つけないと |
ルーク | ったく、たりぃけどやるしかねえな。ユーリ、ロイド、ソフィ、お前らも手伝えよ |
ソフィ | うん。そのためにここに来たんだよ |
ロイド | ん?よく見たら、光の神殿に行った時の顔ぶれが全員そろってるじゃないか! |
ユーリ | 今頃気付いたのか?そういう巡り合わせらしいぜ、オレ達は |
ロイド | 何だ、だったら早く教えてくれよ! |
カノンノ | 頼もしい仲間が来てくれたね |
アスベル | ああ。この顔ぶれなら、シャドウ本体を相手にしても決してひけを取らないはずだ |
クレス | よし。それじゃ、シャドウの本体を捜そう |
ユーリ | ああ |
scene2 | 大精霊シャドウ |
ユーリ | ──にしても、この「封じられた遺跡」ってのは、どういうもんなんだ? |
ユーリ | ただの遺跡にしちゃ、作りが随分頑丈に見えるし、雰囲気もちっとばかし特別な気がするんだがな |
ロイド | 「封じられた遺跡」の話は俺も聞いた事あるってくらいでそこまで詳しい事はわからないんだ |
ロイド | ましてや本当に存在してたなんて、それすら信じられないくらいだ |
カノンノ | そうなんだね。でも大丈夫、きっとリタ達がいろいろと調べてくれてるよ |
ルーク | リタの奴、俺達が先に遺跡に入った事を知ったら、また怒鳴り散らすんじゃねーのか? |
ミラ | そうか?きっとリタもあの黒い霧を見れば私達がどういう行動を取るかわかってくれると思うが |
ロイド | 黒い霧が広がっている様子は、俺達も確認したぜ。しかも、どんどんひどくなっていって… |
ロイド | あれを放っておいたらまずいって事は俺達だってわかったよ。だから、リタもわかってくれるって! |
ルーク | ならいーけどよ、後でぎゃあぎゃあ言われんのは… |
ユーリ | …おっと、おしゃべりはそこまでみたいだぜ |
ソフィ | ひょっとして、シャドウ…? |
ミラ | …ああ、奴らだ |
| |
シャドウ(幻) | … |
シャドウ(幻) | … |
シャドウ(幻) | … |
カノンノ | 今度は3体も…! |
ルーク | ったく、次から次へと湧き出てきやがって…うぜーんだよ! |
| ヴンッ…! |
ロイド | …?あれ…?シャドウが消えて── |
シャドウ(幻) | … |
アスベル | …!まずい、こっちだ!囲まれたぞ… |
ユーリ | 見かけによらず素早いこった。さてどうしたもんだ、これは? |
ミラ | シャドウの本体よりは戦闘力が劣るとはいっても、普通の魔物よりは遥かに強い |
クレス | わずかでも背を見せれば確実にそこを突いてくるだろうね…。下手に動くのは避けた方がいい |
ロイド | なら、3体まとめて倒す…とか? |
ユーリ | ま、それしか思いつかねーな |
クレス | よし、じゃあ僕が様子を見て合図を出す |
クレス | ユーリ、ルーク、ロイド、ミラ、ソフィ。君達は一斉にそれぞれの「幻」の元へ散ってくれ |
クレス | そして、アスベル。君はこの場に留まり、何としてでもカノンノを守ってほしい |
カノンノ | え…? |
ユーリ | この分だと、いつどこから新たな「幻」が湧き出て来るか、わかったもんじゃねえって事だろ |
アスベル | しかし… |
ロイド | カノンノに何かあったら大変だろ?何たって俺達の切り札だぜ |
ミラ | このシャドウは私達に任せてアスベルはカノンノを守る事に専念してほしい |
ルーク | 何だよ、俺達だけじゃ不安だとでも思ってんのかよ |
アスベル | いや、そういうわけじゃない。だけど、みんなだけが危険に身を晒すなんて── |
ユーリ | 偶然にもこうやってオレ達がここに集まったのも、そうしろっていう誰かさんのお導きかもしれねえぜ? |
ソフィ | もしかして、ティルグかな? |
クレス | ティルグか…。そうかもしれないね。じゃあ、とにかくみんな、行こう! |
ユーリ | よし、あいつはオレに任せろ! |
ルーク | お、おい!待てよユーリ!そうやっていつも一人で、カッコつけようとすんじゃねー! |
ミラ | 私も遅れを取るわけにはいかんな。ロイド、ついて来れるか? |
ロイド | 当然! |
クレス | ソフィ、残りの「幻」は僕達二人で何とかしよう!準備はいいかい? |
ソフィ | うん! |
| |
カノンノ | アスベル…! |
アスベル | 大丈夫だ。ここはみんなを信じて任せよう |
アスベル | 彼らはあの「選ばれし者達」だ。俺達にとっては、この上なく心強い味方だよ |
scene1 | 闇を打ち払いし者 |
リタ | はあ… |
リッド | あの様子だと、遺跡の鍵を手に入れるのは難しそうだな |
クラース | ふむ…。遺跡の由来や鍵の形状の情報が手に入ったまではよかったのだがな… |
リオン | 肝心の鍵のありかがわからないのでは、どうにもならん |
リタ | まさかその鍵となる石が、盗まれていたなんて…! |
リッド | ま、ないものは仕方ねえさ。とにかく、これ以上打つ手はねえし、早いとこアスベル達と合流しようぜ |
クラース | 急ぐと言っても…彼らはメルトキオに来ると言っていただろう |
クラース | 随分と時間も経ってしまったが彼らはまだトーティス村にいるのだろうか |
リオン | 仮にいないとしても、鍵がない以上あいつらも他に行く場所はない。僕達との合流を急ぎここへ来るはずだ |
リッド | じゃあ大人しく待ってようぜ移動して行き違いになるのはごめんだ |
クラース | …! |
リオン | …クラース、どうかしたのか? |
クラース | これは…? |
リタ | …もしかして、シャドウの気配を感じ取ってるの? |
クラース | 何となくだがな |
クラース | これほど離れた場所にいる私ですら感知出来るという事は、事態は着実に深刻さを増しているという事か… |
レイヴン | あ、いたいた、リタっち発見! |
ゼロス | 地下遺跡に関する調査は順調か? |
リタ | おっさんにゼロス!?何であんた達がここに? |
レイヴン | そりゃ勿論、リタっち達のお手伝いをするためよ |
ゼロス | 大変だったんだぜ?レイヴンが絶対図書館にいるって言ったのに、行ったらいなかったしよ |
リッド | そいつは惜しかったな。図書館なら、この街に来て一番最初に行ったぜ |
クラース | そこで、ある程度遺跡に関する情報を手に入れた後、場所を移して鍵の情報を追っていたというわけだ |
レイヴン | なるほどね。…ところで、アスベル達はまだここには来てないのかな? |
リタ | …?来てないけど? |
ゼロス | …って事は、レイヴン? |
レイヴン | アスベル達はシャドウのいる遺跡に向かったって線が濃厚だねえ |
リオン | 遺跡へ向かった、だと? |
リタ | どういう事?説明して |
リッド | じゃあ、そのシンクって仮面の男が遺跡の鍵を持ってたのか |
ゼロス | そういう事。で、それを持ってアスベル達はこの街に向かうって話していたらしいんだが… |
レイヴン | どうやら来てないみたいだしひょっとしたら、先に地下遺跡に行っちゃったのかもね |
リッド | その石が本物かどうか試しにでも行ったのか? |
リタ | アーチェにそう言ったからには最初は本当にメルトキオに行くつもりだったんだと思う |
クラース | …ミラが大精霊の異変を強く感じ、その石が本物の鍵だと信じて賭けに出た── |
クラース | 考えられるとしたら、そんなところか |
リッド | 何はともあれ、あいつらが地下遺跡に向かっている以上、オレ達もすぐに後を追うべきじゃねえのか? |
リッド | クレスや、ユーリ、ロイド達が追いかけてるとはいえ人数は多いに越した事はねえだろ |
クラース | ああ、そうだな |
レイヴン | んじゃ、早速向かいますか |
ゼロス | おう! |
| |
ユーリ | …どうやらシャドウの「幻」はあらかた片付いたようだな |
ソフィ | とても動きが早くてどうしようかと思ったけど、何とかなったね… |
カノンノ | みんな、ありがとう。やっぱりすごく強いね |
アスベル | さすが息が合っていて、俺の出る幕はなかったみたいだな |
クレス | 倒した数はこれで6体か…。一体何体いるんだろう |
ミラ | シャドウ本体の暴走を鎮めるまで、無限に現れると思っておいた方がいい |
ミラ | 「幻」をいくら倒そうと、本体の力は弱っている気配はない…。「幻」と本体は全くの別物と考えていいだろう |
ソフィ | 本体を倒さないと終わらないって事なんだね… |
ユーリ | それはそれで厄介だな…。戦闘力は大した事ねえとはいえ、数によっちゃこっちがへばっちまう |
ルーク | だったら早いとこ本体を見つけてケリつけよーぜ |
ミラ | そういう事だ。では、先を急ごう |
アスベル | ああ! |
scene2 | 闇を打ち払いし者 |
アスベル | ユーリ達6人がそろうのって久しぶりなんだよな? |
ユーリ | ん?そういやそうだな。何人かとは時々顔合わせちゃいるが |
クレス | 6人全員がそろうのはあの時以来だよね |
ロイド | 何だか本当懐かしいよな。そんなに昔の事じゃないはずなのに |
クレス | 本当だね。僕もさっき、同じ事を言ったばかりさ |
ミラ | 私達が共に行動したのはほんの短い間に過ぎなかったが、随分いろんな事があったな |
ルーク | らせん階段じゃ、てっきりユーリが死んじまったと思ったしな |
ロイド | そうだそうだ、そんな事もあったよな |
ユーリ | さすがにオレもあん時はどうなるかと思ったが、ま、お蔭さんでこうしてまた会えたってわけだ |
カノンノ | ふふ、でもさっきは本当に驚いたよ。久しぶりに一緒に戦ったはずなのに、全員の息がぴったりなんだもん |
アスベル | そういられるのはきっと君達6人が強い絆で結ばれているからだろうな |
アスベル | 君達と同じ目標を持ち共に進む事が出来て、本当に心強いよ |
ユーリ | …相変わらず律儀な奴だな、お前も。けど、心強いのは同感だ |
ユーリ | ま、共に進むにはちっとばかしクセのある奴ぞろいだけどな |
ロイド | そうだなあ。我の強い連中だから、衝突も多かったし… |
ミラ | 我の強さで言うと、今協力してくれている者達も負けず劣らずだがな |
アスベル | ふっ、…確かにそうかもしれないな |
ルーク | まーなんつーの?「英雄」が一緒なら心強くて当然つーか… |
ミラ | 「英雄」ではない、正しくは「選ばれし者」だぞ? |
ルーク | お、同じようなもんだろ。いちいち細かい事気にすんなっつーの! |
ソフィ | ふふっ |
ソフィ | あのねアスベル。わたしアスベルとも絆で結ばれてるって、そう思うよ |
クレス | そうだね、僕達は仲間だ。何があってもアスベルとなら乗り越えて行けると信じてるよ |
アスベル | …ありがとう、みんな |
ミラ | む…! |
ソフィ | どうしたの、ミラ。何か見つけた? |
ミラ | シャドウの気配が急激に強くなった…近いぞ…! |
カノンノ | あ、私のネックレスも…! |
ユーリ | へえ、本当に独りでに光るんだな |
アスベル | …!あれは… |
| |
シャドウ(幻) | … |
シャドウ(幻) | … |
ロイド | みんな、早速おでましだぞ |
クレス | 「幻」の方か…!それにしても、何て数なんだ…。次々と現れて… |
| ズズズ…! |
シャドウ(幻) | … |
ソフィ | 囲まれる…! |
ミラ | シャドウの気配が強い…この中にシャドウの本体がいるぞ |
ルーク | けっ、「幻」を隠れ蓑にしようってわけかよ! |
ユーリ | こう多いと、いちいちミラに本体を見分けてもらうより、まとめてぶっ倒した方が速そうだな |
クレス | 元よりそのつもりさ。アスベル、カノンノを頼む |
アスベル | わかった!カノンノ、下がってくれ! |
| チャキッ |
カノンノ | ううん、今度は私も戦う! |
カノンノ | こんなに相手の数が多いんじゃ、みんなに任せきりには出来ないもの |
カノンノ | それに私も、みんなの役に立ちたいの。お願い! |
アスベル | カノンノ…。わかった、絶対に無茶はするなよ。あと、俺の傍から離れるな |
カノンノ | うん! |
クレス | 気を抜くな!この数だ、本物のシャドウを取り逃がしてしまうかもしれない! |
ミラ | よし、やるぞ! |
ルーク | おう! |
ミラ | はっ! |
クレス | とうっ! |
ソフィ | やああっ! |
ルーク | うおおっ! |
ロイド | 倒れろ! |
ユーリ | こいつはどうだ! |
アスベル | 食らえっ! |
カノンノ | たああっ! |
シャドウ(幻) | … |
| シュウウウ… |
ルーク | よし、やったぜ!これでかなり数が減って── |
| ズズズ…! |
シャドウ(幻) | … |
クレス | くっ…また新手が… |
ロイド | 倒しても倒しても次々に湧いてくる。これじゃ、きりがないぞ! |
ルーク | おいミラ、やっぱ早いとこシャドウの本体を見つけられねーのかよ!? |
ミラ | さっきから試みているが戦いながらでは── |
| ゴオオオオオ… |
アスベル | 黒い霧が…! |
ミラ | …!まずい、皆、伏せろ! |
ソフィ | えっ…!? |
| バシュンッ!!! |
カノンノ | きゃあっ! |
ソフィ | カノンノ!危ない…っ! |
クレス | くっ…みんな…大丈夫か? |
カノンノ | う、うん…ソフィが助けてくれたから |
ソフィ | うっ… |
アスベル | ソフィ…!怪我をしたのか?…大丈夫か? |
ソフィ | うん…ありがとう…アスベル |
ユーリ | ちっ、なるほどな。これが大精霊様の本気ってわけか |
ルーク | ああ、ミラの一声のお蔭でマジ助かったぜ… |
ミラ | …だが、これではっきりした。今の攻撃を放ったのが、シャドウの本体だ…! |
シャドウ | グ…アアア… |
クレス | あいつが… |
ミラ | 奴を倒せば「幻」も消えるはず |
ユーリ | そうとわかりゃ、早いとこ仕留めちまうか。行くぜ! |
ソフィ | うん! |
ロイド | うおおおおっ!「幻」は邪魔だ、そこをどけ! |
| ザシュッ!ズバッ! |
ロイド | はあ…はあっ |
| ズズズ…! |
シャドウ(幻) | … |
ルーク | …ロイド!後ろだ、くそっ! |
ルーク | おらあっ!! |
| ズバッ! |
カノンノ | はあ…はあ… |
シャドウ(幻) | … |
アスベル | …囲まれた。俺が合図をするまで動くな |
カノンノ | うん…わかった…! |
アスベル | こっちだ…。俺の方に引きつけて… |
アスベル | …今だ! |
アスベル | はああっ! |
| ザシュッ! |
ミラ | はっ! |
| ズバッ! |
ミラ | よし、道は開けた…!これで本体の元へ── |
| ズズズ…! |
シャドウ(幻) | … |
ミラ | くっ…!また新たな「幻」が…! |
ユーリ | ミラ、屈め! |
ユーリ | お前ら、邪魔だっ! |
| ズバーッ! |
クレス | はあっ! |
ソフィ | たあっ! |
| ズバッ!ザシュッ! |
クレス | …まずい、倒しても倒しても「幻」の数は増える一方だ…! |
ソフィ | シャドウに近づけない…!みんなも辛そう…このままじゃ… |
クレス | きっと何か方法があるはずだ、シャドウの本体に近づく方法が──… |
シャドウ | グアア… |
| ゴオオオオオ… |
クレス | …!あれは… |
ソフィ | シャドウの本体にシャドウの「幻」が集まってる… |
ロイド | おい…あれだけいた「幻」達がどんどん消えてくぞ? |
シャドウ | ガアアアアアアアッ! |
| バシュンッ!! |
| |
アスベル | …うっ…… |
アスベル | 何も見えない…。みんな!無事か…!? |
クレス | …アスベル…、ああ…僕は何とか…。他のみんなは── |
ミラ | くっ…シャドウの攻撃がここまでとは… |
カノンノ | ルナとアスカ…どうしちゃったの?明かりが消えちゃった |
ミラ | いや、消えたのではない… |
ミラ | 先ほどの攻撃で吐き出した闇が光も飲み込むほど強いのだろう |
ロイド | そんな… |
シャドウ | グアア…アアッ… |
ルーク | ちっ、シャドウの野郎!あっちか? |
ソフィ | ルーク…! |
クレス | 闇雲に動いては駄目だ!仲間を傷付けてしまうかもしれない |
ロイド | くそっ…。シャドウは、どっちだ…?ちっとも目が慣れねえ…! |
ユーリ | こうも暗いと攻撃されてもわからないな |
ミラ | 攻撃が来る前に何か手立てを考えねば… |
ソフィ | わたし達…このまま死んじゃうのかな…? |
ユーリ | 気が早い事言うなって。こういうのは諦めの悪さが肝心── |
シャドウ | グア…アア… |
全員 | … |
ロイド | …シャドウの奴、なかなか攻撃してこないぞ…!いるのか? |
カノンノ | わからない…。本当に何にも見えなくて、まるで真っ暗な闇に飲まれたみたい── |
アスベル | 闇に…?…あの時シンクが言っていたのはこの事だったのか…? |
ミラ | 闇に飲まれろ…、シンクは去り際にそう言い放っていったな… |
クレス | 人間は、絶望や恐怖に打ち勝つ事は出来ない…とも言っていた |
アスベル | … |
ユーリ | フン…。陰気な奴が言いそうなこった |
シャドウ | グオオオオオオオオッ!! |
カノンノ | …!もう駄目…今度こそ… |
ユーリ | ちっ…! |
| |
アスベル | …。守ると決めたんだ… |
アスベル | この世界を…大切な仲間のいるこの世界を、何としても守ると心に決めたんだ… |
アスベル | 感覚を…心を澄ませば…見極められるはずだ |
シャドウ | グオオオオオオオオッ!! |
アスベル | そこだっ!! |
| ズバーーーーーーーーッ!! |
| |
アスベル | はあ…はあ… |
シャドウ | グア…アア… |
ミラ | …!やったのか…! |
カノンノ | そうみたい!アスカとルナの光でみんなが見えるようになったよ! |
アスベル | …ここで倒れるわけにはいかない。俺達の肩には、世界の存亡や大切な者達の命がかかっている…! |
アスベル | だから…絶対に、負けられない…! |
アスベル | 闇も、恐怖も、自分自身が生み出した幻だ! |
カノンノ | アスベル… |
クレス | …うん、そうだね。アスベルの言う通り、僕達は絶対に負けられない |
ソフィ | この世界は、わたし達の大切な世界だから… |
ロイド | …よし、みんな!今がチャンスだ!一気に奴を叩くとしようぜ! |
ルーク | ったく、…んな事お前に言われなくてもわかってるっつーの! |
ユーリ | んじゃ、気が変わらない内にとっととやろうぜ |
ミラ | 皆、アスベルに続け!全員の力を結集するのだ |
カノンノ | うん! |
アスベル | みんな…ありがとう! |
アスベル | 何としてでも、お前の暴走は鎮めてみせる…行くぞ、シャドウ! |
アスベル | はああああっ! |
scene3 | 闇を打ち払いし者 |
アスベル | これで終わりだ! |
| ズバーーーーーーッ!! |
シャドウ | グア…ア…ア… |
シャドウ | … |
アスベル | はあ…はあ……終わった、か…? |
ロイド | そうみたいだな |
ユーリ | そう願いたいね。もう一戦ってのはちょいとばかしキツイぜ |
カノンノ | ふう…終わった…よかっ──… |
| トスンッ |
アスベル | カノンノ!?大丈夫か? |
カノンノ | え!?うん!大丈夫…!…その…何て言うか、ほっとしたら急に力が抜けちゃって… |
ミラ | 何だ?腰を抜かしたのか? |
カノンノ | う…た、多分… |
アスベル | ふっ…ははは…! |
カノンノ | もう!笑わないでよ…! |
アスベル | ごめんごめん。さあ、カノンノ、リプリカームを頼む |
カノンノ | あ、そうだね、座り込んでる場合じゃないね |
カノンノ | シャドウ、もう、落ち着いたかな? |
シャドウ | … |
カノンノ | シャドウ? |
ルーク | おい!何とか言えっての! |
シャドウ | … |
シャドウ | …我……力を示せし者と契約す… |
アスベル | シャドウ…俺達に力を貸してはくれないだろうか… |
ロイド | 契約してくれるのか!? |
ルーク | 何だよ!俺やカノンノの事は無視したくせにアスベルにはやけに素直じゃねーか! |
ユーリ | やれやれ…物わかりがいいのか何なんだか |
ミラ | シャドウの闇を打ち払ったのはアスベルだ。力を示したアスベルに応えたのだろう |
カノンノ | そうだったんだね! |
シャドウ | … |
ルーク | しゃべれるなら最初からそう言えっての… |
カノンノ | ──ありがとう、シャドウ… |
ロイド | シャドウがネックレスに…。これで契約が完了したって事か? |
カノンノ | うん、そうだよ。ほら、ネックレスの色が変わったでしょ?ここに、シャドウがいるって事だよ |
クレス | 話には聞いていたけど…実際目の当たりにすると不思議な感覚になるね |
| |
アスベル | …カノンノ、本当によく頑張ったな |
カノンノ | ううん、私なんかより、アスベルだよ! |
カノンノ | シャドウに勝てたのは、アスベルのお蔭だよ。本当にありがとう |
カノンノ | シャドウが契約してくれたのも、アスベルの強さを認めてくれたんだよ |
アスベル | 俺のお蔭だなんて、そんな…。これはみんなで力を合わせた結果だよ |
ソフィ | …でも、あの時アスベルが立ち上がっていなかったら、みんな無事じゃなかったかもしれない |
ミラ | ソフィの言う通りだ。シャドウの攻撃から守ってくれた、という点でもそうだが── |
ミラ | 何より、半ば諦めかけていた私達を再び奮い立たせてくれたのもまた、アスベルだ |
クレス | 僕も同じように思うよ。これは紛れもなく、君が導いた勝利だ |
アスベル | みんな…。…ありがとう |
アスベル | …でも、これだけは言わせてくれ |
アスベル | 俺の行動がきっかけだったとしても、やっぱり勝因は、あの時みんなが立ち上がってくれた事だと思う |
アスベル | 俺一人では成し遂げられなかったし、それはみんなも同じなんだ。…だから、俺からも言わせてほしい |
アスベル | みんな、本当にありがとう |
ロイド | アスベル… |
ユーリ | …ふっ。どんな時もアスベルはアスベル、だな |
ルーク | ああ、そうだな。頑固っつーか、何ていうか… |
アスベル | 頑固だって…?そ、そうかなあ… |
クレス | はは、悪い意味じゃないよ。気にしなくていいさ |
ユーリ | ま、何はともあれ、シャドウの暴走はこれで鎮まったわけだ |
ロイド | となると、遺跡周辺を覆っていた黒い霧も… |
ミラ | ああ、徐々に解消されるはずだ |
ソフィ | よかった… |
アスベル | よし、じゃあそろそろ外へ出ようか |
ルーク | ああ、そうしようぜ。外の様子も知りてーしな |
クレス | うん、じゃあ行こう! |
| |
ユーリ | さてと。外はどんな具合だ? |
ソフィ | 黒い霧が全部消えたわけじゃないけど…少し薄くなったみたい |
クレス | でも、最初にここに来た時と比べたら、随分明るくなってる気がしないか? |
ロイド | この調子だと完全に解消されるまで、そう時間はかからなさそう── |
リタ | ちょっと、あんた達! |
ルーク | お、リタじゃねーか! |
ロイド | そっちも無事に合流出来たんだな |
ゼロス | 何だかんだ言ってリタちゃん達を捜し出すまで結構時間食っちまったけどな |
レイヴン | それより、みなさんそろって随分と清々しい顔しちゃって…、その様子だとひょっとして… |
カノンノ | うん。シャドウの暴走は無事鎮められたよ!あと、契約も交わしてくれたの |
クラース | やはりそうか…。薄らと感じていた気配が、道中急になくなったから、そのような気はしていたが… |
ミラ | すまないな、クラース。本来はお前達と合流してから地下遺跡へ向かうはずだったのだが… |
クレス | 遺跡周辺が深刻な事態に陥っていたんです。それで、僕達だけで先を進もうという判断になって… |
クラース | いや、そんな事だろうと大体想像はついていた。その判断は正しかったと思うよ |
クラース | ……ただ、私が大精霊と縁がないだけなのだろう…。はあ…また見られなかったか… |
ルーク | だーっ!うじうじすんなっつーの! |
リタ | それにしても遺跡の鍵が手に入るなんて運がいいわよね |
アスベル | ああ、俺も驚いたよ。実は── |
リッド | オレ達もあれからこの地下遺跡についていろいろと調べてたんだ |
リッド | 例の石は、メルトキオのとある家系で代々大切に守られてきた |
リッド | ちゃんとその家は存在してたんだがオレ達が訪ねた時にはもうなかったんだ |
リッド | 地割れで家屋が半壊したところに盗みが入ったらしい |
ルーク | 何者かに盗まれた…?じゃあ、その犯人がシンクだったって事かよ? |
リタ | そいつが持ってたんだから、その可能性が高いでしょうね。誰かからもらったのかもしれないけど |
クレス | シンクは、何でその鍵を持ってたんだろう。そこにいるのはシャドウだって知っていたようだし |
ミラ | 確かに…。前にリタ達が話していた「人々の望むもの」と思しきものも、何もなかったしな |
クラース | …それについても、話そう。今回の調査の中でいろいろとわかった事があるのだ |
リタ | ここが、前にあたしらの話してた「封じられた遺跡」である事は間違いないわ |
リタ | …ただ、伝わっていたものと現実は少し違ったみたいだけどね |
カノンノ | 違った? |
リッド | この地下遺跡は、過去に存在したとある王族の墓なんだとよ |
ユーリ | 墓だって?…そういや、確かに古い遺跡にしてはやけにしっかりした造りだったっけな |
リタ | 昔この大陸には二つの国があったの。でも、時代が流れる中で、ある時一つの国となった |
ソフィ | それが、今のシルヴァラントって事? |
リオン | そういう事だ。そして、歴史の闇に消えたもう一つの国の王族があの遺跡にあるものを封じた |
リッド | けど、長い年月が経つ中で、元の歴史は忘れ去られちまって… |
ロイド | 俺達の知ってる「封じられた遺跡」の話になったってわけか… |
ミラ | …だとすると、あの扉の仕掛けは墓が荒らされる事を防ぐための仕掛けだったという事か |
クラース | そうだ。鍵となる例の石は、失われた王族の血を継ぐ者が代々厳重に管理してきたそうだ |
アスベル | それで、さっき話していた鍵が盗まれたって話に繋がるわけか… |
リッド | ま、何はともあれお前達が無事でほっとしたぜ |
リタ | …ったく、ほんとそれよ。心配して急いでこっちに来たのに何か損した気分じゃない |
ルーク | 仕方ねーだろ、黒い霧が広がって相当ヤバい状況だったんだ……つーかやっぱり… |
リタ | …?何がやっぱり、よ? |
ルーク | おい、ミラ。な、やっぱ俺の言った通りだろ? |
ルーク | リタの事だから、絶対後で何かごちゃごちゃ言ってくるって── |
リタ | ごちゃごちゃとは何よ、失礼ね。あんたの事だからどうせ── |
ミラ | …違うんだ、聞いてくれ。その話なら続きがあって、お前ならきっとわかってくれるだろうと── |
リタ | 何よ、ミラ。あんたまでこのバカと一緒になってそんな話してたってわけ? |
リオン | …リタ、落ち着け |
リッド | やれやれ、リオンの言う通りだ。結果何とかなったんだし、この際細かい事はどうでも── |
リタ | 全然細かくないわよ!だいたい遺跡を調べるチャンスだって逃しちゃったし──…あ! |
リタ | そうだ、せっかくここまで来たんだし遺跡の扉が開くところくらい見てみたいわね… |
リタ | って事で、ルーク。案内しなさいよ |
クラース | おっ、遺跡に行くのか?私も連れて行って── |
ルーク | だー!もう、付き合いきれねーっつーの! |
カノンノ | あ…ルークが逃げた |
リタ | あ、こら!ちょっと、遺跡の中で何見たのか教えなさいよ! |
アスベル | ルーク、リタ!? |
ソフィ | 行っちゃったね… |
ユーリ | この期に及んで鬼ごっことはルークの奴、元気なこった |
レイヴン | リタっちもね。ここへ着くまで相当ピッチ上げてお疲れモードだったってのに… |
カノンノ | ふふっ、でも何だかみんな楽しそう |
アスベル | … |
アスベル | …本当だな |
ルーク | だから!中は暗いから危ねぇんだって! |
ソフィ | …戻って来た |
リタ | あんた達はその暗い中をどうやって進んだってのよ |
ロイド | ああ、それは大精霊が周囲を照らしてくれて── |
クラース | 何!大精霊が!?カノンノ、是非私にも見せてほしい! |
カノンノ | ええ!クラースさん!? |
アスベル | 待ってください!大精霊をむやみに喚び出しちゃ駄目ですよ! |
ゼロス | おいおい、カノンノちゃんまで連れてかれちゃったぜ |
ロイド | 何だかみんな楽しそうだしいいんじゃないのか? |
リッド | …オレは腹減ったな |
ミラ | 私も、お腹が空いてきたな…。誰か食べ物を持って来ていないか? |
リオン | もう少し我慢しろ。全く…自分勝手な奴ばかりだ |
クレス | … |
クレス | アスベルは、いい仲間に出会えたね |
ソフィ | …みんなにこにこしてて、楽しそう |
ユーリ | …さてと、そんじゃ遺跡探検組の気が済むまで、ここで一休みさせてもらうとすっか |
クレス | うん、そうしよう |
Name | Dialogue |
scene1 | 理想の世界 |
ユグドラシル | … |
ユグドラシル | …リドウか |
ユグドラシル | マナの減少速度が、一段と緩やかになった |
リドウ | へぇ。奴らがまた大精霊を、鎮めたって事だね。順調なようで結構だ |
ユグドラシル | くく…そうだな |
リドウ | 楽しそうだねぇ。まあ、それも当然か |
リドウ | もうすぐ世界に真の平和が訪れるとなれば、楽しくないわけがない |
ユグドラシル | … |
リドウ | 君の目指す世界は、俺が望む世界そのものでもある |
リドウ | 理想の世界の到来まで、あと少しだ… |
ユグドラシル | …お前の言う通り、私達の計画はあと僅かで完遂する |
ユグドラシル | あれを叩き起こす時もそう遠くはないだろう |
リドウ | つまり、俺達の仕事も大詰めってわけだ |
リドウ | じゃあ…せっかくだから、少し下準備でもして来るよ |
ユグドラシル | 下準備だと?一体何をしようというのだ、リドウ |
リドウ | 君は知らないかもしれないけど、俺はこう見えても、心配性でね… |
リドウ | この目で確認しておかないといざ、何かあった時に何も対処出来ないと困るだろう? |
リドウ | だから念には念を入れておこうと思ってさ |
ユグドラシル | そんな事か。…好きにするがいい |
リドウ | 相変わらず冷たいねぇ。でも、まあいいさ。じゃあ、行かせてもらうよ |
リドウ | …例のあれは大陸の南東、だったか。少し骨を折る事になりそうだが…まあ、目的の為なら安いものか |
| |
ソフィ | …!ミラ達が帰ってきたよ |
リッド | よう、お帰り |
リオン | 例の鍵は、元の持ち主に返せたのか? |
ゼロス | おう、ばっちりだぜ! |
クレス | 後はロイド達の帰りを待つだけだね |
リオン | …どうやら、戻って来たようだぞ |
カノンノ | ただいま。遅くなってごめんね |
アスベル | いや、大丈夫だ |
ソフィ | お帰りなさい。ミュウには会えたの? |
ルーク | ん?ああ、まあな |
クラース | ジーニアスとエミルが、しっかり看病している。もう少しで完治するだろう |
ミラ | そうか。それはよかった。ルークもこれで一息つけたのではないか? |
ミラ | ずっと気にかけていただろう? |
ルーク | なんで俺がブタザルの事なんか気にかけなきゃなんねーんだっつーの! |
ロイド | 嘘をつくなって。ミュウが元気になってるのを見て、あんなに喜んでたじゃないか |
ルーク | なっ…!つーか喜んでたのは俺じゃなくて、お前の方じゃねーか! |
カノンノ | ロイドもジーニアスに、やっと会えたしね |
ロイド | そうなんだよ。ずっと会えてなくてさ |
ロイド | やっぱり直接顔を見ると安心出来るよな! |
クラース | 私もリフィルと会って、話が出来たのはよかった。実に有意義な時間だったよ |
クレス | どうやらみんな、それぞれ目的を果たせたようだね |
ユーリ | だな。そんじゃ、本来の目的に戻るとすっか |
scene2 | 理想の世界 |
ミラ | では私達は、次の大精霊の元へ向かおう |
ミラ | 大精霊の気配を掴めないか、探ってみる。少し時間をくれ |
ミラ | … |
クラース | 私もミラのように、広範囲で大精霊の気配を感じ取れればいいんだが… |
リッド | まあ仕方ねえだろ。ミラは特別、ってヤツだ |
リタ | 少しとはいえ、人間の身で、大精霊の気配を感じ取れるだけでも十分すごいと思うけど |
ミラ | …!? |
ミラ | これは…? |
リオン | どうした、ミラ。大精霊の気配が見つかったのか? |
ミラ | 確かに気配は見つかったのだが… |
ミラ | … |
ルーク | 何だよ。もったいつけてねーで、早く教えろよ |
ミラ | 何やら、気配が奇妙なのだ。なんと説明すればよいのか…こんな感覚は初めてだ… |
ソフィ | 奇妙…? |
カノンノ | 今までミラが、こんな風に言った事ってなかったよね… |
ミラ | … |
ルーク | なんだかわかんねーけど、ここで突っ立ってるわけにもいかねーんじゃねーの? |
リッド | それもそうだな。ミラ、どこから気配を感じたんだ? |
ミラ | ウィンドルの方面だ |
アスベル | な…!ミラ、案内を頼む |
ゼロス | んじゃ俺達は、例の第三者捜しの続きだな |
レイヴン | それに関しちゃ、もう少しこの街で聞き込みして情報を集めてみてもいいんじゃない? |
ユーリ | 確かに特に他にあてがあるわけでもねえし、いいんじゃないか? |
ユーリ | となりゃ、オレ達はこのままここに残るとして、とりあえずミラ達を見送るとするか |
カノンノ | わざわざありがとう |
ゼロス | いいんだって。子猫ちゃん達のためなら、お安いご用さ |
クレス | こ、子猫ちゃん…。そ、それじゃ、行こうか |
アスベル | ああ |
| |
ユーリ | …街の外、それもこうして開けた場所だと、空が広いな |
リッド | いい天気だなあ。これぞ出発日和ってヤツだ。…オレは昼寝してた方がいいけど |
リオン | …おい |
リッド | 冗談だって。…でもよ、こうも天気がいいと、平和なんだな、って感じがしてくるだろ? |
クラース | ふむ、一理あるな。我々も多少は空を見る余裕が出てきた、という事だろうか |
リタ | そういえば世界のマナの減少は順調に歯止めがかかっているのよね? |
ミラ | ああ。大精霊の暴走を鎮める事でマナの減少はより緩やかになっている |
アスベル | このまま大精霊を救っていく事が出来れば、マナ枯渇の危機も止められる |
ソフィ | 頑張らないと… |
ミラ | ああ、そうだな |
リオン | … |
カノンノ | …?リオン、どうかしたの? |
リオン | いや…何でもない |
クレス | それじゃ、見送りはこの辺りまでにして僕達は街へ戻ろうか |
アスベル | ここまで来てくれて、ありがとう |
ゼロス | 気をつけて行けよ。無茶して怪我でもしたら、つまらねーからな |
リタ | そっちもね |
ロイド | じゃあ、またな! |
レイヴン | 健闘祈ってるよー |
scene1 | 異なる気配 |
カノンノ | ミラ…さっき言ってた奇妙な気配ってどういう事なの? |
ミラ | これまで感じて来た大精霊の気配と異なるのだ |
ミラ | 例えるならそうだな…音がいいだろうか? |
ミラ | すごく小さい音で今までに聴いた事がない異質な音、といったところだ |
ルーク | なんだそりゃ。それで何がマズいんだ? |
リオン | これまで見てきた大精霊と何かが違うかもしれないと言う事だろう |
リタ | 相手は大精霊よ。何が起きているのかわからないなら用心するに越した事はないわ |
ミラ | そうだな。警戒は怠らないようにしよう。どうも悪い予感がするのだ |
ルーク | お、おい、悪い予感って…脅かすなよ |
ミラ | 気配の質を鑑みると、この気配の小ささが引っ掛かってな… |
ミラ | 暴走が行きすぎ、衰弱状態にでもあるのか… |
カノンノ | … |
アスベル | 例え今までと違ったとしても、俺達は前に進むしかない |
アスベル | …大丈夫だ。俺達はこれまでだって、様々な苦難を乗り越えてきた |
アスベル | 俺達がこれまで成し遂げた事、ここまでやって来られた自分の力を、信じよう |
ミラ | …そうだな |
ミラ | お前達の言う通りだ。私達のやるべき事は一つしかない |
リオン | …早く大精霊の元へ向かうぞ |
scene2 | 異なる気配 |
??? | …! |
??? | この気配は… |
??? | 残るはかの者のみのはず |
??? | …しかし大精霊にしては気配が弱い。あの女の仕業か? |
??? | …確かめねばなるまい |
ユーリ | おっと、待ちな |
??? | … |
クレス | それらしい人物の目撃情報を得て急いで後を追って来たけど、どうやら当たりだったみたいだね |
ロイド | ようやく会えたな世界中を散々捜し回ったぜ |
ユーリ | あんたに聞きたい事が山ほどある。悪ぃが少し付き合ってくれねえか |
??? | … |
| |
リッド | やれやれ、あれから随分歩いたな… |
リオン | …この森か?ミラが大精霊の気配を感じたのは |
ミラ | ああ。間違いない |
カノンノ | あれ、この森って確か… |
ソフィ | 知ってるの? |
アスベル | 前にカノンノやエリーゼ達と一緒に、通った事があったよな |
カノンノ | そうそう。アスベルと会って、まだ間もない頃だったよね |
カノンノ | そう言えば、あの時…森の中に古い祭壇があったね |
アスベル | 大精霊がいるのって、もしかして、あの祭壇か? |
カノンノ | きっとそうだよ!あの祭壇のところで、ネックレスも光ってたし |
クラース | 古い祭壇か…興味深いな |
ルーク | 心当たりがあるなら話が早えーや。さっさとその祭壇とやらに行ってみよーぜ |
アスベル | 確かこの森には、魔物も多く生息していたはずだ。気をつけて進もう |
| カサ… |
リタ | …何かいるわ! |
リッド | …アスベルの言う通りだな。早速お客さんのお出ましのようだ |
| |
| ガルルルル! |
カノンノ | …!ま、魔物! |
ルーク | おいおい!お呼びじゃねぇぞ! |
ソフィ | みんな、気をつけて! |
scene1 | デューク・バンタレイ |
??? | … |
??? | お前達に話す事など何もない |
ゼロス | おいおい、そりゃないだろ。こっちはお前と話したくてわざわざ会いに来たってのによ |
クレス | なら、僕達の話を聞いてくれないか? |
クレス | 僕達は、今回の大精霊を巡る一連の騒動の、黒幕ともいうべき第三者を追っている |
クレス | ウィンドルとア・ジュールの戦争を再開させたり、おそらくだけど各地の破壊行為を行ったりしているんだ |
クレス | 実を言うと、あなたがその第三者じゃないかという意見も出ていたんだけど… |
??? | … |
レイヴン | まあ実際にうちらと事を構えようとする様子がないんで、そこは違うかもって言ってたんだけどね |
ロイド | だけど、お前はアスカを暴走させてただろ? |
??? | … |
クレス | 話す気がない事はわかっているけど、どうかこれだけは教えて欲しい。君がアスカを暴走させたのかどうかを |
クレス | 僕達はあなたがどういう立場でどういう行動を取っているかわからないんだ |
ユーリ | オレ達が用があるのはクレスの言う黒幕だけだ |
ユーリ | それがあんたじゃないってんなら早いとこ、誤解を解いて、次を当たりたいんだがな |
??? | … |
ロイド | 何か言ってくれよじゃないとお前が何をしたいのかわからないだろ! |
ゼロス | よせって、ロイドくん |
ゼロス | 俺達の仲間が今、大精霊の暴走を鎮めて回ってる |
ゼロス | だけど、全ての大精霊の暴走を鎮めても、混乱の原因を作った黒幕を野放しにしてたんじゃ意味がねえ |
クレス | 僕達はその黒幕を、何としても見つけたいと思っている |
クレス | あなたは何か知っていそうだったからこうして話をしに来たんだ |
??? | …なるほどな |
??? | だがそれにしてもあの女、どのような手段を使って大精霊を…? |
ユーリ | あの女ってのが誰の事かは知らねえが大精霊の暴走を鎮めてんのはカノンノだぜ |
レイヴン | そそ。リプリカームって力がずばーっと大精霊をね |
レイヴン | って、おっとおっさん、ちょいとしゃべりすぎちゃったか |
??? | リプリカーム… |
??? | … |
ロイド | っ、おい待てよ |
??? | お前達に付き合う理由はない。私は私の意志に従うまで |
??? | …ユグドラシルの好きにはさせぬ |
ユーリ | ユグドラシル? |
レイヴン | なんとかその辺の話、もう少し聞かせてくれないもんかねえ。協力出来るかもしれないっしょ? |
??? | 協力する事など何もない |
レイヴン | もう行っちゃうの? |
ゼロス | おいおい、せめて名前くらい教えてくれてもいいだろ? |
デューク | …デューク・バンタレイ。それが我が名だ |
ユーリ | デューク… |
ユーリ | あっ、おい!話はまだ── |
| |
| グルオオオオオ! |
ゼロス | 魔物っ?!こんな時に邪魔なんだっての! |
レイヴン | あらら、やっこさんが行っちゃうんだけど |
ユーリ | ちっ、数が多い。今は魔物を片付けんのが先だ! |
クレス | みんな、武器を構えるんだ!行くぞ! |
| |
クレス | …ふう、魔物の群れは撃退出来たけど、デュークが行ってしまったね |
ゼロス | まだ遠くには行ってないはずだ。さっさと追いかけようぜ |
ゼロス | あの口振りからするとまだ情報が出てきそうだ |
クレス | …僕はユグドラシル、という人の名前らしきものも気になる。その人物が黒幕なんだろうか? |
ロイド | そのユグドラシルって奴の事、デュークは、何か知ってるみたいだったよな |
レイヴン | だねえ。となると早いとこ、追いかけた方がいいんでない? |
ゼロス | 野郎だけど仕方がねぇ、聞きたい事はまだまだあるってな |
ユーリ | よし、デュークの後を追うぞ |
クレス | ああ! |
| |
ミラ | ふむ… |
リオン | どうだ、ミラ |
ミラ | やはり、今進んでいる方角で、間違いないようだ。この先に大精霊はいる |
ミラ | 相変わらず気配が小さいままなのは気になるが… |
ルーク | けどよ、本当にこの森の中に祭壇なんかあるのかよ?別に普通の森にしか見えねーけど |
アスベル | 俺も前に見つけるまで全然知らなかったんだが、祭壇があるのは間違いないよ |
カノンノ | 私の記憶が確かなら、そろそろ祭壇が見えてくるはずだよ |
scene2 | デューク・バンタレイ |
アスベル | ほら、ここがその祭壇だ |
ソフィ | 祭壇…崩れてるね… |
リタ | 規模はそんなに大きくないけど、結構凝った造りをしているわね |
カノンノ | あ…ネックレスが |
リオン | 光り出したな |
カノンノ | 前もこの祭壇の近くに来たらネックレスが光ったんだよ |
ルーク | …?いつもこんな光り方だったか? |
カノンノ | どうだろう…いつもより光が弱いような気もするけど |
アスベル | そう言えば前は、リヒターが一緒にいて、精霊に反応しているって言い出したんだったな… |
ミラ | ディセンダーを捜す過程で、ここでアスベルやカノンノ達とリヒターが出会ったという事か |
ルーク | ディセンダー? |
アスベル | 何なんだ、そのディセンダーって |
ミラ | うん?お前達には説明していなかったか |
カノンノ | ディセンダーはね、世界の危機に際して誕生し、世界を再生させる存在… |
カノンノ | 世界のバランスが崩れた時にそれを正すべくして生まれる存在だったよね? |
リオン | ああ。確かにそう言っていた |
ミラ | 私達も、それ以上に詳しい事を知っているわけではないのだがな |
ミラ | 世界の危機というのは、万物の礎たる大精霊の危機だとリヒターが言っていた |
ミラ | そしてこの度の大精霊の危機でディセンダーが誕生しているかもしれんとな |
アスベル | ディセンダー…世界を再生させる存在、か |
ルーク | ふーん。そんな奴がいるのか。だったら俺達が苦労しなくても、そいつが何とかするって事か? |
ミラ | ディセンダーについては未知なるところが多いのだ。確実に存在する保証もない |
クラース | 不確実な存在に頼る事なく、自分達の力で目的を達せられるよう努力すべきだな |
リタ | ま、そういう事よね |
リッド | とりあえず…この祭壇あたりに大精霊がいるのは間違いねえんだな? |
ミラ | ああ |
ソフィ | でも…いないみたい… |
アスベル | そうだな…。ここで立ち話をしていても、始まらない |
| |
ミラ | …ここか… |
リッド | ミラどうかしたのか |
ミラ | …僅かだがここから大精霊の気配を感じる |
カノンノ | 祭壇の下に入れるんだね。あの時は外からしか見てなかったから… |
| ザザザッ |
リオン | …!下がれ、カノンノ |
カノンノ | え、あっ! |
| |
| ガルルルル! |
ミラ | 魔物か!行くぞ! |
リッド | わかってるって!ったく、祭壇の中から魔物がこんにちはってか?笑えねえぜ |
リタ | みんな、来るわよ! |
scene1 | ヴェンデ遺跡 |
ロイド | みんな、こっちだ! |
クレス | ここは… |
レイヴン | 森…だねえ |
ユーリ | デュークの奴、この森の中に入っていったのか? |
ロイド | デュークの立ち去った方角からいくと、こっちで間違いない |
クレス | 待ってくれ。彼は、僕達をまこうとしているのかもしれない |
ロイド | どういう事だ? |
クレス | この辺りは、僕の故郷のトーティス村からそんなに離れていないんだけど |
クレス | この森は慣れない人間にとっては迷いやすい、厄介な場所だよ |
レイヴン | 面倒くさいところに入ってくれちゃったのね |
ゼロス | ふーん…何の変哲もない森に見えるけどな |
ユーリ | この森自体が、デュークの目的地だって可能性はあるか? |
クレス | それはないんじゃないかな…迷いやすい点を除けば、ゼロスの言う通りただの森だから |
ロイド | じゃあ、通り抜けようとしているだけって事か。森を出た先はどうなってる? |
クレス | 平原だよ。森の出口からだと王都バロニアと、イニル街が近いと言えば近いかな |
ゼロス | 大体の位置がわかったぜ。俺さまもイニル街には、行った事があるしな |
レイヴン | デュークの目的地は、バロニアかイニル街のどちらかはたまた、また別のどこかか… |
ゼロス | よし。だったらこうしようぜ森を迂回して、デュークの先回りをする |
ゼロス | それで、バロニアとイニル街、どっちへ向かうかはっきりわかる地点で、奴を待ち伏せるのさ |
ゼロス | 後をつけているのがバレてるなら、デュークに追跡をあきらめたと勘違いさせる事も出来るんじゃない? |
ロイド | さえてるな、ゼロス! |
ゼロス | 任せてくれ。こういう計算はお手の物だぜ |
ユーリ | そう上手く運べばいいけどな。ま、とにかくやるだけやってみるか |
クレス | ああ |
| |
ルーク | ふーん…祭壇の下は結構広いんだな |
リッド・リタ | … |
リッド | 入口が小さかったから、中も大した事ねえかと思ったけど…雰囲気あるよな… |
リタ | へ、変な事言ってんじゃないわよ。大精霊がいるんなら、普通じゃなくて当然でしょ |
クラース | 各所の損壊具合から推察するに、相当昔に作られた物だろう |
クラース | …む?このレリーフ… |
ソフィ | クラース、どうかしたの? |
クラース | このレリーフに用いられている意匠を、前に文献で見た事がある |
クラース | 文献に書かれていたのは…そうだ、ヴェンデ遺跡だ!こんなところに存在していたとは… |
ミラ | ヴェンデ遺跡だと!? |
カノンノ | ミラ…? |
リオン | 何故、そんなに驚く? |
ミラ | ここがヴェンデ遺跡ならば…皆にあらかじめ伝えておくべき事がある |
ルーク | 伝えておくべき事? |
ミラ | 私が感じた気配の正体…大精霊の正体に関してだ |
ミラ | この遺跡の奥にいるのは、おそらく──… |
scene2 | ヴェンデ遺跡 |
??? | ぐ… |
??? | う…うう… |
??? | やめろ…私を蝕むな… |
??? | 私は屈しない…何があろうと… |
| |
ミラ | この遺跡の奥にいるのは、おそらく──オリジン |
リオン | オリジン? |
クラース | 根源を司る大精霊それがオリジンだ |
ミラ | …!クラースはオリジンを知っているのか? |
クラース | ああ。文献から得た知識にはなるが… |
クラース | 精霊の王と呼ばれている事やヴェンデ遺跡は、かつてオリジンを祀るものであった事は知っている |
リタ | …本当にここがオリジンに関係ある遺跡だとして、ここにいるのがそのオリジンだって確証はあるの? |
ミラ | この場に大精霊の気配があるという事実とクラースの話を併せて考えると可能性は高いだろう |
ミラ | だが何故だ…?感じる気配がこれほどまでに小さいとは |
リオン | オリジンに何かあったという事か? |
ミラ | それもわからない。確かめるためにも、私達は先に進まなければ |
アスベル | …よし。行こう |
| カラ… |
リタ | …?! |
| グオオオオオ! |
リタ | 魔物!?ああもう、こんな時に! |
scene1 | 人間と精霊 |
ロイド | デュークの奴、まだなのか?待ち伏せしてから結構経ったと思うんだけど… |
クレス | そろそろだと思うけどなぁ… |
クレス | あの森を出て、バロニアなりイニル街へ向かうとすれば、必ずこの場所を通るはずだからね |
レイヴン | …!ちょい待ち!向こうから来るお一人様は… |
ユーリ | どうやらゼロスの作戦勝ちだな。気付かれる前に、みんな、急いで隠れろ |
レイヴン | さてと、やっこさん、この先の分かれ道、どっちに進むのかな? |
クレス | 右へ行けばバロニア、左へ行けばイニル街だけど… |
ロイド | あれ… |
ゼロス | 何だあれ。右でも左でもねえ。真っ直ぐ進みやがった |
レイヴン | 真っ直ぐ…っていうとどこに着くんだっけ? |
クレス | 別の森にぶつかるね |
ユーリ | また森かよ。どういうつもりなんだ、あいつ? |
クレス | 森を抜けてさらに先へ進むと、ア・ジュールとの国境地帯が見えてくる |
ロイド | もしかして、ア・ジュールを目指してるのか? |
ユーリ | 方角だけじゃ見当もつかねえな。ここで考えてたって埒あかねえし追いかけるしかないんじゃねえか? |
クレス | そうだね。彼との距離が離れる前に出発した方がよさそうだ |
| |
クラース | ふうむ… |
リッド | どうした、クラース。さっきから壁ばっか見てっけど…気になるモンでもあんのか? |
クラース | いや、なに…感慨に耽っていたのさ |
クラース | 今まで文献の中でしか知りえなかったヴェンデ遺跡が、こんなところにあったとは、とな |
ソフィ | 有名なところなの? |
クラース | ああ!研究者の間ではな。しかしどこに存在しているかまではわからなかったんだ |
カノンノ | じゃあもしかして、大発見…って事? |
リタ | その筋の人達にとってはそういう事になるんじゃない?あたしは畑違いだけど |
ルーク | ま、俺は興味ねーけどな |
リタ | あんたが興味ないのは別に考古学に限った事じゃないでしょ。バカっぽい |
ルーク | なんだと!バカとは何だよ、バカとは! |
ソフィ | … |
リタ | …どうしたの、ソフィ?物珍しそうに見回したりして |
ソフィ | 昔の人はどうしてこの遺跡をつくったのかなって思ったの。お家だったのかな |
クラース | 人間にとって大精霊とは、かつて畏怖と敬意の対象だったからな |
クラース | そうした精霊を敬う気持ちが、こうした祭壇や神殿を造らせたのさ |
カノンノ | でも、そんなに敬ってたのに今の人が大精霊を知らないのはどうして? |
クラース | 人間が精霊を忘れてしまったのだ。昔はもっと身近な関係だったようだ |
アスベル | 何故忘れてしまったのだろうか… |
クラース | 文明の発展に伴い人間は精霊達の力を必要としなくなり、それ故精霊も人間に近寄らなくなった |
クラース | 詳しい事は私にもわからないがそんなところだろうか |
クラース | 今回の大精霊の暴走の一件は勿論不幸な出来事ではあるが… |
クラース | 一方で、人間の精霊に対する理解を深めるいい機会にもなりうると思う |
リッド | そうだな |
リオン | お前達、無駄話をするのは構わんが、油断はするなよ |
ルーク | 言われなくてもわかってるっての。慎重に進まねーとな |
scene2 | 人間と精霊 |
ユーリ | デュークの奴、真っ直ぐ森の奥へ進んでるようだが…あいつ、どこ目指してんだろうな |
ゼロス | 行けども行けどもただの森だな。こんなところに目的地があるとは考えにくいぜ |
ゼロス | ん…?おい、あれを見ろ |
デューク | … |
| |
ロイド | 何だあれ。祭壇か?デュークの奴、祭壇の下に入ってくぞ |
レイヴン | ただの森と思いきや、こんな古めかしい代物があるとは驚きだわ |
ロイド | ここがデュークの目的の場所だったって事か? |
レイヴン | その可能性が大きそうだねえ。もっともただの抜け道って事もありえるけど |
ゼロス | これからどうするよ?つっても、ここまで来たんなら後を追うしかないと思うけどな |
ロイド | … |
レイヴン | およ?どうした、少年 |
ロイド | かなり古そうな遺跡だしさ。…気味が悪いっていうかなんか出そうなところだよな! |
ユーリ | 馬鹿言ってねえでさっさと行くぞ |
| |
カノンノ | あれ…? |
アスベル | カノンノ? |
カノンノ | 今、何か聞こえなかった? |
リオン | 何か、とは? |
カノンノ | うめき声…みたいな… |
ルーク | う、うめき声…?おい、ソフィお前なんか聞こえたか? |
ソフィ | うん、聞こえなかったよ? |
リタ | そ、空耳じゃないの? |
リッド | … |
クラース | いや、そうとも言えない。私にも、それらしい声が聞こえた |
アスベル | クラースさんまで… |
ソフィ | ミラは? |
ミラ | …私も聞こえた。うめき声というより、むしろ叫び声だったが |
リオン | …誰かがいるのだろう。大精霊か…あるいは人間か |
ミラ | …やはりまだ小さいが気配が増してきている |
ミラ | この気配の質からして、大精霊である事は間違いないだろう。そして、オリジンの可能性が高い |
カノンノ | あ…ネックレスが光り出したよ |
クラース | 私も気配を感じる |
ソフィ | だんだんオリジンに、近付いてるって事だね |
リタ | そういう事ね。とにかく、このまま進みましょ |
ルーク | いきなりその辺りから飛び出して来たりしねーだろうな… |
ルーク | ん? |
| |
| ガルルルル! |
ルーク | うわっ!言ってるそばから、本当に出て来やがった! |
リオン | 落ち着け。こいつはただの魔物だろうが |
リタ | バカ言ってないでやるわよ! |
ミラ | ああ。すぐに撃退するぞ! |
ルーク | わ、わかってるっての!くそっ、ただの魔物なんかに負けるかよ! |
scene1 | 再生の能力 |
ルーク | ところでよ…オリジンって、どんな大精霊なんだ? |
リッド | あ、それオレも知りてえ |
アスベル | そうだな。また戦う事になるのなら、あらかじめわかっている事は知っておきたい |
ソフィ | どんな力を持っているのかな |
リタ | クラースはどれくらい知ってるの? |
クラース | 具体的な能力に関しては知らないな |
クラース | 精霊の王と呼ばれているが、何を以ってそう呼ばれるに至ったのか… |
カノンノ | 王っていうくらいだから、すっごく強いとか…? |
リオン | どうなんだ、ミラ? |
ミラ | オリジンは根源を司る大精霊だ。その能力は物質の再生── |
リッド | 物質の再生…? |
ミラ | 物質を本来の姿に戻すそれが物質再生の能力だ |
ミラ | 例えば…壊れた物を元に戻す…。そんな力だと説明すればわかりやすいだろうか? |
クラース | そんな能力を持っているなら人々から畏怖や敬意の念をもたれてもおかしくない |
クラース | その能力が精霊の王たる所以か… |
ミラ | オリジンは長きに渡りこの世界を守ってきた精霊だ。人間にあまり干渉はしないが、 |
ミラ | オリジンの協力が得られたらあるいは、今の荒れ果てた世界を元に戻す助けになるかもしれんな |
カノンノ | オリジンって、そんなにすごい力を持ってるんだね… |
ソフィ | オリジン…手伝ってくれるといいね |
アスベル | …オリジンの暴走を鎮めないとな。その上で協力を仰げれば一番だ |
リッド | 物質ってのはよくわからねえけど何度も復活して全然倒せねえヤバイ奴って事はないよな? |
ルーク | そんなんだったら悪夢どころじゃねーな |
カノンノ | …暴走でオリジンが苦しんでいるのなら、早く癒してあげたいよ |
リオン | …なら、さっさと先に進め。置いていくぞ |
リタ | あ、ちょっと待ちなさいよ、リオン!…ほんっと、無愛想なんだから |
リタ | でもまあのんびりしてるわけにいかないのも確かね。行くわよ、カノンノ |
カノンノ | う、うん!わかった! |
scene2 | 再生の能力 |
??? | う…、ウ… |
??? | うおお…オオオ! |
| |
アスベル | 何だ、今のうなり声は!? |
カノンノ | …っ、この声!さっき聞いた声と同じだよ! |
リタ | 今度はあたしにも聞こえたわ。どうやら近いみたいね。みんな油断禁物よ |
ソフィ | カノンノのネックレスの光が、強くなってるね… |
カノンノ | うん…でも、強く光った後に時折光が弱くなったりしてて…変な光り方なの |
ミラ | 気をつけろ。この気配…これまで暴走していた大精霊達とは違う…いったい何が… |
クラース | 私にも伝わってくるぞ。強く、そして奇妙な気配が |
リッド | ミラとクラースがそろって言ってんだ。まじで気を引き締めねえとな |
リオン | …いつ遭遇してもいいように、警戒しながら進むぞ |
ルーク | ああ |
| ルオオ… |
ソフィ | ?今、また声が聞こえたよね。これって… |
| |
| グルオオオオオオ! |
リッド | !? |
リッド | っ、ちっ。また魔物か?こいつらに用はねえってのによ! |
| ガアアアッ! |
リッド | !うおっ、危ねえな! |
カノンノ | 大丈夫!? |
アスベル | 相手がただの魔物だからと言って、油断は禁物だ。いくぞ! |
scene1 | 大精霊オリジン |
アスベル | かなり歩いて来たが…そろそろ最奥部に近いみたいだな |
リッド | ああ。途中の道と比べると、ここは明らかに特別な部屋っぽいしな。ここで最後なんじゃねえか? |
ミラ | 私もそう思う。…オリジンの気配の高まりが尋常ではない |
ソフィ | …! |
カノンノ | どうしたの、ソフィ |
ソフィ | みんな、向こうを見て。何かいるよ! |
ミラ | っ!あれは…っ! |
??? | う…グッ… |
クラース | この気配…!間違いない、大精霊だ!まさか実際にこの目で見れるとはっ… |
カノンノ | あれが…オリジン… |
ルーク | 感動してる場合かっつの!なんかすげー苦しそうだし…やっぱり暴走してんじゃねーのか? |
カノンノ | …!すぐに助けなきゃ… |
アスベル | カノンノ、この状況だと何があるかわからない。俺の後ろに下がるんだ |
リッド | ああ、近づくにしても慎重にな… |
??? | …ぐ…ウ… |
??? | む…? |
??? | お前達…何者だ? |
ミラ | …!オリジン、私達を認識出来るのか…? |
オリジン | 私の名を知っている…? |
ミラ | まさか、暴走に飲み込まれていない大精霊がいたとは…! |
ミラ | こうして意思の疎通が出来るとは思っていなかったぞ |
オリジン | …っ私に寄るな…! |
カノンノ | …! |
オリジン | ぐ、う…ウオオ… |
リタ | やっぱり苦しそう…まるで何かと戦ってるみたい |
オリジン | うぐ…ッ…私が、っ負ける、わけには…! |
ミラ | …!オリジン、お前まさか自らの意志で暴走を抑制しているのか? |
オリジン | …ッウウ…ぐ… |
アスベル | 自らの意志で暴走を抑制って…そんな事が可能なのか? |
リオン | これまで暴走を抑制出来る大精霊はいなかったが… |
リタ | でも、実際に今、オリジンは暴走を抑え込もうとしているように見えるわ |
リッド | 信じられねえけどよ。これが精霊の王の力、ってヤツなのか? |
ミラ | オリジン、安心してくれ。お前の苦しみ、私達にならば取り除く事が出来る |
オリジン | 何…? |
ミラ | 私達の仲間には、お前を助けられる力を持つ者がいるのだ |
ミラ | カノンノ、行けるか? |
カノンノ | うん |
オリジン | この娘は… |
オリジン | …!私に何を… |
ルーク | いいから、大人しくしてろって。今から治してやるから |
ソフィ | お願い、オリジン。カノンノの事を信じて。きっとすぐ、楽になるから |
オリジン | !?これは…?苦しみが和らいで… |
オリジン | グゥ…うおお… |
アスベル | あと少し、我慢してくれ。オリジン… |
ミラ | カノンノは必ず、お前を救い出してくれる。私達を信じてくれ |
scene2 | 大精霊オリジン |
オリジン | うぐ…ッ…ウオオオッ!ぐぅ、っ |
ソフィ | …大丈夫かな、オリジン。苦しそう… |
ミラ | しかし、オリジンの失われていたマナは回復している。大丈夫だ、きっと助かる… |
オリジン | …っうおおおおおっ! |
オリジン | … |
アスベル | 光が収束していく…もう暴走の心配はないのか? |
クラース | おそらく… |
カノンノ | ふう…終わったよ。これでもう、大丈夫だと思う |
ルーク | どうだ?ちゃんと楽になっただろ? |
ソフィ | 具合はどう? |
オリジン | … |
オリジン | 完全にとはいかないが…かなり快復したようだ |
カノンノ | !よかった… |
オリジン | …不思議なものだ。私の異変を、人間が収めるとは |
オリジン | 改めて聞くがお前達は一体何者だ?それに、そのネックレス… |
カノンノ | このネックレスには、大精霊の暴走を鎮める力があるみたいなの |
オリジン | 暴走を、だと?…なるほどな |
オリジン | 私を蝕んでいた、あの苦しみは暴走ゆえのものだったのか |
ミラ | しかし大したものだな、オリジン。今までよく暴走に飲まれず自我を保ち続けたものだ |
オリジン | 一度は屈したが自らの意志の力で、意識を取り戻したのだ |
ミラ | !まさか一度は屈した暴走に対するとはさすがと言うべきか |
オリジン | しかしこの苦しみは幾度も私を蝕もうとしてきた |
オリジン | 屈してはならないと、苦しみの中抗い続けていた。そこにお前達が来たのだ |
ミラ | なるほど…暴走への抵抗。それがここに来るまでに感じていた奇妙な気配の正体か |
リタ | ミラが捉えていた大精霊の気配が弱々しかったり、奇妙だと感じていたりしていたのは |
リタ | オリジンが暴走に抵抗していたって言うのと、抵抗してその力を消耗してたから、って事ね |
ミラ | ああ、そういう事だ |
オリジン | …私からもお前達に、聞きたい事がある |
ソフィ | 聞きたい事? |
オリジン | …この世界の事だ。私が暴走を抑え込んでいた間、この世界に何があった? |
オリジン | あれだけ世界に満ちていたマナがほぼ枯渇しているようだ。その理由を、お前達は知っているな? |
アスベル | ああ。知っている事を全て話そう |
オリジン | …人間の行いのせいで世界のマナが枯渇しかけ… |
オリジン | 私を含む各地の大精霊を暴走させ世界中に異変を起こすとは… |
オリジン | その上で私の力を借りたいと言うのか |
オリジン | いつの世も愚かなものだな。人間は |
ミラ | お前が人間にそう思うのもわからないでもないが |
ミラ | しかし今日の混乱を引き起こしたのも人間なら、贖おうとしているのもまた同じ人間なのだ |
オリジン | … |
クラース | あなたは物質再生の能力を持っていると、ミラに聞いた |
ソフィ | その力をわたし達が世界を元に戻すために貸して欲しいの |
アスベル | 俺達はこの世界を救いたい…そのためにここまで来たんだ |
オリジン | … |
オリジン | …この世界を救いたい、か |
オリジン | 私も長きに渡り、この世界を見守って来た… |
オリジン | 愚かな行いをする者それを正そうとする者…先ほど、ああは言ったが |
オリジン | 人間にも様々な考えを持った者がいる、という事はわかっている。そして何より… |
オリジン | 現にお前達は私を救ってくれた。その事には感謝している |
カノンノ | じゃあ… |
オリジン | だが、その事と、私がお前達に力を貸すかどうかは、また別の話だ |
リオン | 何だと… |
オリジン | 世界を救うなどと口で言うのは簡単な事だ |
オリジン | お前達に力を貸したとして人間がまた同じ過ちを繰り返さないという根拠がどこにある? |
アスベル | オリジン…お前の問いに対する答えになるか、わからないけど… |
アスベル | 今回の一件で、俺達のほとんどは、初めて大精霊の存在を知った |
アスベル | 今まで当たり前だと思っていた世界のありようが、精霊達の力で守られていたものだとわかった |
アスベル | そんな精霊達の存在を、踏みにじるような行為をした事は、本当に申し訳なかったと思っている |
アスベル | けどこれだけは信じてくれ。俺達人間は、世界を元通りにしたいと、心から思っている |
アスベル | …初めはただ、自分の周りの仲間を守りたかった |
アスベル | 世界を救おうと動き始めた時もそうだ。けど、その旅の途中で新たに出会った仲間や人々、大精霊… |
アスベル | 彼らに触れて、守りたいと感じるものはより一層増えた |
アスベル | そして、世界そのものの大切さを深く知ったんだ |
アスベル | こんな状態になってしまってからようやくその事に気付くなんて、遅すぎるかもしれない |
アスベル | お前の言うように人間は同じ過ちを繰り返すかもしれない… |
オリジン | … |
アスベル | でも…俺達は何度だって世界を救うために立ち上がって見せる。だから俺達に力を貸してくれ! |
リッド | …オレからも頼む。もうあんな思いはまっぴらだ |
ルーク | 俺からも頼むぜ。戦争とかもうこれ以上見たくねえ |
リタ | あたしも同感。どうせなら壊すより作り上げる事がしたいしね |
クラース | どうか聞き届けてくれ |
リオン | … |
ミラ | どうだろうか、オリジンよ |
オリジン | 心よりそう願うならお前達の覚悟のほどを私に示すがいい |
ソフィ | …!覚悟って… |
ルーク | お、おい、構えたりして何の真似だ。まさか、暴走鎮めてやったってのに、戦うってのかよ!? |
| |
オリジン | 世界に対する想い。そして私が力を貸すに相応しい力を持った者達なのか… |
オリジン | お前達の全てを戦いの中で我に見せるがいい |
| ブウウーーンン! |
ミラ | …?何だ…力が… |
オリジン | はあああぁっ!! |
| ガキィィン! |
リッド | 大丈夫か、ミラ! |
ミラ | あ、ああ…すまない、リッド… |
ソフィ | ミラ…? |
リオン | よそ見をするな!来るぞ! |
オリジン | 二度目は外さん。私の力…見せてやろう! |
scene1 | 共闘 |
カノンノ | はあ…はあ… |
ソフィ | う、くっ… |
オリジン | どうした。これがお前達の全力か?他愛もない… |
オリジン | たかがこの程度の覚悟で世界を救いたいとは、笑わせてくれる |
ルーク | ふざ、けんな…そんな事、ねえっつーの |
クラース | とはいえ、やはり強い…これで本当に、衰弱していたのか |
リタ | …さすが精霊の王と呼ばれるだけの事はあるってわけね… |
ミラ | … |
リオン | 先ほどから気を散らしすぎだ。何をしている、ミラ |
ミラ | …すまない、リオン。実はこの戦いが始まってから四大の力が上手く発揮出来んのだ… |
アスベル | 四大精霊の…? |
ミラ | 戦いに入る直前、オリジンが周囲一帯に独自の力場を展開したようだった… |
リッド | それで上手く戦えないって事か? |
オリジン | 多少力を奪ったくらいでもう音を上げるのか? |
オリジン | その程度の意志で世界を救うなど到底不可能! |
ソフィ | な、何を…? |
オリジン | はあああっ!! |
ルーク | うわあっ!? |
リタ | きゃああっ!? |
リオン | ぐっ… |
ミラ | うっ… |
カノンノ | つ、強すぎるよ… |
オリジン | もう終わりか。口程にもないな… |
アスベル | くっ…! |
カノンノ | ここで… |
ソフィ | 終わるわけには…! |
オリジン | … |
ルーク | …?オリジンが動きを止めた? |
オリジン | ──誰だ |
デューク | オリジン…既に暴走から解き放たれていたか |
ミラ | …っ!お前! |
リタ | あんた、あの時の! |
scene2 | 共闘 |
デューク | … |
ミラ | テムザ山以来だな。またしても大精霊の元で会うとは…何をしに来た? |
リタ | あんた、ア・ジュール港でも思わせぶりな事を言ってたわよね |
ミラ | ん? |
リタ | え? |
カノンノ | …えっと、どういう…二人共この人の事を知ってるの? |
ミラ | 二人共、だと?もしやリタの言っていた怪しい人物はまさか… |
リタ | そのようね。ミラとあたし、同じ相手を怪しんでたみたい |
デューク | … |
ルーク | な、何だよ。やる気か? |
クラース | 今ここで、別の相手とも戦うのは、かなり厳しいぞ… |
カノンノ | 私達、どうすれば… |
デューク | …お前は…こんなところにいたとはな |
カノンノ | …え? |
オリジン | ふむ… |
オリジン | どうやらお前は、普通の人間とは違う存在のようだな |
デューク | … |
オリジン | ここへ何をしに来た。単なる傍観か? |
アスベル・リッド | … |
デューク | … |
オリジン | 沈黙、か。ならば私もこれ以上聞かぬ |
オリジン | 早々に、決着をつけるとしよう |
ソフィ | …!また来るよ! |
オリジン | はああああ!! |
デューク | …! |
| カシーーーーンン!! |
カノンノ | え…? |
リタ | あたしらを…かばった? |
ルーク | ど、どうなってんだ? |
オリジン | 貴様…どういうつもりだ |
デューク | これ以上、傷つけさせるわけにはいかぬ |
オリジン | なるほど。…いいだろう |
オリジン | この者達と手を組み、私に挑むというのであればまとめて相手をしてやる |
リオン | おい、お前…オリジンと戦うつもりなのか? |
デューク | … |
ルーク | オリジンに向かって剣を構えやがった…マジでやる気みたいだ |
ミラ | どうやら、そのつもりのようだな |
クラース | ふむ…これは心強い味方が出来たと思っていいのか… |
ルーク | 味方って、大丈夫なのかよ、こんな奴信用して |
リッド | 考えるのは後だ!ぐずぐずしてっと、また攻撃が来るぜ! |
| |
アスベル | わかった!よし、みんな、もう一度行くぞ! |
アスベル | 何としてもオリジンに、俺達の事を認めてもらうために! |
カノンノ | うん、そうだね! |
ミラ | 行くぞ、お前達! |
ルーク | だーもう、こうなりゃ、やってやるぜ! |
リタ | どうせ決着つけなきゃならないんだし、やるわよ! |
ソフィ | うん、行こう!わたし達なら…大丈夫! |
scene3 | 共闘 |
アスベル | これが俺達の、想いの全てだ…っ! |
| ズバーーーーッ!! |
オリジン | うおおおおっ! |
アスベル | はあ…っはあ…っ |
オリジン | くっ… |
| ドサッ |
リッド | お、終わった…のか? |
ルーク | わからねえ、けど… |
クラース | 動きは、完全に止まったようだ |
デューク | … |
| |
リオン | …! |
オリジン | … |
ソフィ | オリジン…! |
リッド | おいおい、まだやんのか!? |
オリジン | お前達の覚悟のほど、確かに見極めさせてもらった |
アスベル | … |
オリジン | 強き想いは、戦いに宿る。お前達の一撃は、私が動くに値する重みと受け取った |
カノンノ | じゃあ… |
オリジン | お前達と契約を結び、私の力を貸す事を約束しよう |
アスベル | ありがとう、オリジン! |
ルーク | やった…!へへっ、やったぜ! |
リタ | よかった…。これで駄目ならどうしようかと思ったわよ |
オリジン | …その想いに偽りない行動を示せ、人間よ |
リッド | ああ、わかってるさ |
ミラ | 私からも礼を言わせてくれ。ありがとう、オリジン |
オリジン | …これからどうするかは、お前達次第だ |
ミラ | ああ、そうだな |
オリジン | では契約を |
リオン | …カノンノ |
カノンノ | うん! |
デューク | … |
ミラ | … |
リッド | ミラ? |
ミラ | お前には聞きたい事がある。テムザ山でアスカに何をしていたのだ? |
デューク | 何もしてなどいない。確かめただけだ |
リタ | はっきり言いなさい!何を確かめたって言うの? |
デューク | お前達の理解など求めてはいない。また理解も出来まい |
ミラ | アスカを暴走させたわけではない…そういう事か? |
ルーク | じゃあ、俺達を助けてくれたし敵じゃないって事か? |
デューク | 大精霊の暴走を鎮めるという目的に関する限りにおいてはな |
| |
クラース | 終わったのか? |
カノンノ | うん |
クラース | なるほど…今までもこうやって大精霊と契約して来たのか。興味深い… |
| |
ソフィ | カノンノのネックレス今までと色が変わったみたい… |
カノンノ | 本当だ。虹色になったね! |
ソフィ | きれい… |
リオン | … |
アスベル | 契約も無事終了したし、ミラに次の大精霊の居場所を探って貰おう |
ミラ | ──… |
リッド | どうだ? |
ミラ | …何も感じない。どうやらこのオリジンが、最後のようだ |
ルーク | って事は… |
アスベル | 全ての大精霊の、暴走を鎮めたって事だよな? |
ミラ | …ああ |
リタ | やったじゃない! |
リオン | … |
ルーク | ん?どうした、リオン。嬉しくねーのかよ? |
リオン | 別に…そんな事はない |
アスベル | 先程は手を貸してもらえて助かりました |
デューク | … |
ルーク | あ!おいちょっと待てよ |
リタ | そうよ、あんたにはまだ聞きたい事があるわ |
リタ | 戦争を誘発してマナを枯渇させようとしている第三者がいるかもって話をしてた時、 |
リタ | 深入りはやめておけってあんた言ったわよね。あれはどういう意味? |
デューク | … |
アスベル | 実は俺達の仲間が、ウィンドルとア・ジュールの戦争を引き起こしたと思われる人物を追っているんです |
アスベル | もし、何か知っている事があれば教えてもらえないでしょうか |
デューク | 戦争…第三者…。以前、同じ問いをしてきた者達がいた。あれはお前達の仲間か |
リッド | !ユーリ達を知ってるのか? |
デューク | … |
リッド | オレ達以外でこいつに黒幕の話を聞くっつーんなら、ユーリ達に間違いねえ。それで、どうなんだ? |
アスベル | 大精霊の暴走もマナの減少が原因です |
アスベル | マナの減少を誘発しているのもその第三者だと俺達は睨んでいます |
アスベル | 大精霊の暴走が鎮まったとはいえ放って置くわけにはいかないんです |
デューク | … |
??? | 黒幕はユグドラシルって奴らしいぜ |
デューク | … |
??? | そうなんだろ、デューク? |
ルーク | お前…! |
ルーク | ユーリじゃねえか! |
ソフィ | クレス!ロイドも… |
クレス | ソフィ、こんなところに来ていたんだね |
ゼロス | あ!ミラ様やカノンノちゃんリタちゃんもいるじゃないの |
レイヴン | はぁい、皆の衆、お元気? |
リタ | …おっさんにゼロスまで?何よ、勢揃いじゃない |
カノンノ | みんな…どうしてここに… |
ユーリ | そこのデュークを追いかけてたらたまたま、な |
ユーリ | やっと追いついたんだ。いい加減、ユグドラシルの事も含め、聞かせてもらうぜ、デューク |
リッド | おい、ちょっと待ってくれよ。そのユグドラシルってのは、誰なんだ? |
ルーク | そいつがウィンドルとア・ジュールの戦争の原因を作った奴って事なのか? |
デューク | 戦争など奴の計画のほんの一部にすぎん |
リタ | つまり、ユグドラシルは戦争を誘発した第三者で今回の騒動の黒幕って事? |
デューク | … |
ユーリ | 否定しねえって事は、あながち間違ってもいない。そう解釈させてもらうぜ |
デューク | …好きにするがいい |
ミラ | どうやら私達の、次にやるべき事が決まったようだな |
ルーク | そのユグドラシルって奴を見つけ出して、ぶっ飛ばせばいいって事だろ! |
デューク | … |
アスベル | …デューク |
アスベル | あなたはこれからどうするんですか? |
アスベル | もしかして、あなたもユグドラシルを倒す気ですか?だったら、俺達と… |
デューク | 無用だ |
デューク | 私は誰の手助けも必要としていない。…お前達も期待はするな |
ユーリ | あっ、おい! |
アスベル | 駄目か…少しはわかり合えたかと思ったんだが |
ゼロス | まあ仕方ねえよ。相当な偏屈野郎みてーだしな |
リッド | まあ、いいんじゃないか?ユグドラシルって奴を探してればまた会えるかもしれないだろ |
リッド | それより早くここから出ようぜ |
リタ | 大精霊の暴走も鎮まった事だし、安全になったって他の人達にも教えてあげないとね |
カノンノ | そうだね。ここに来るまでにお世話になった人達にも教えてあげたいね |
アスベル | ここからだとバロニアが近いな |
アスベル | まずはリチャードに報告をして各国に大精霊の暴走は全て鎮めたと伝えてもらおう |
アスベル | それから、一度関係者で集まってこれまでの事を情報交換しないか? |
カノンノ | みんなで集まるの、楽しみだね、リオン! |
リオン | …好きにしろ… |
ユーリ | よし。そんじゃとりあえず、バロニアを目指すとしようぜ |
scene1 | ひとときの休息 |
ルーク | ──なんでやっと街に戻ってきたのに宿で一息つく暇もなく、引っ張り出されなきゃなんねーんだよ |
ルーク | つーか、そもそも俺達をどこに連れてく気なんだ、アスベル? |
クラース | リチャード陛下への報告は終わったのだろう? |
アスベル | ああ。大精霊の危機が去った事は報告し終わった |
アスベル | 今はバロニア城に向ってる。みんなを連れてくるようリチャードに言われたんだ |
アスベル | 今まで協力してくれた人達を集めて近況報告出来たらいいなって話をしたら |
アスベル | リチャードの方で関係各所への連絡や、集まる場所の提供をしてくれるってさ |
ソフィ | すごいね、リチャード。お城に行くだけでいいの? |
アスベル | そうみたいだ |
ロイド | !おい、みんな!向こうを見てみろ! |
ユーリ | ん?何だ? |
レイヴン | あそこにいるのは、もしかして… |
| |
シェリア | アスベル!無事でよかったわ |
アスベル | シェリアこそ元気そうで何よりだ |
リタ | ちょっ、エステル!あんたもここに来たの? |
エステル | はい、リチャード陛下にリタ達が帰ってきたと聞いたんです。無事でよかったです、リタ |
ジュード | ミラ!聞いたよ、大精霊の暴走を鎮め終えたんだって? |
ミラ | ああ、そうだ |
ティア・ガイ | ルーク! |
ルーク | ティア!?と…ガイもじゃねえか!なんでお前ら… |
ファラ | リッド、大丈夫だった!? |
リッド | ファラ!ああ、まあな。この通り生きてるぜ。なんとかな |
スタン | 無事か、リオン! |
リオン | …当然だ |
リチャード | やあどうやらみんな、来たようだね |
アスベル | リチャード…ありがとう、みんなを集めてくれて |
リチャード | アスベルの提案は僕も素晴らしいと思ってね。場を整える役割くらい任せて欲しかったのさ |
リチャード | 各国には君から伝えられた大精霊の暴走は鎮まり、直面の危機は過ぎ去った事 |
リチャード | そして、ユグドラシルと呼ばれる今回の騒動の黒幕と思しき人物が浮上した事も伝えてあるよ |
リタ | 各国からの使節に、縁のある人達…よくもまあこれだけ揃えたもんね |
リチャード | ここに集った人達にも、もちろん伝えてあるけれど、君達の口から直接聞きたいんじゃないかな |
カノンノ | ここにいる沢山の人達と私達…みんなの力が合わさって、ここまで来れたんだね |
アスベル | ああ、そうだな |
ジェイド | ガイアス陛下の名代で参りました。皆さん、この度はご苦労様でした |
アニス | … |
ジェイド | どうしたんです、アニス?ここにいる皆さんのお蔭で我が国も救われたんですよ? |
アニス | そ、そりゃわかってますけどー、うー、なんか釈然としないっていうか…むー |
フィリア | シルヴァラント国王陛下の名代として参りました。心より御礼を申し上げます |
フィリア | 勿論我が国の陛下も、今回のみなさんのご活躍を大変喜んでおられますわ |
ティア | 改めまして、キムラスカ国王陛下の使者として参りました。みなさん、大変お疲れさまでした |
ティア | ルーク、頑張ったわね。正直どうなる事か不安だったけど、…余計な心配だったみたい |
ルーク | 当たり前だろ。ったく…俺を誰だと思ってんだよ |
ガイ | はは、そうむくれるなよ。それだけみんな、お前を気にしてたって事さ。とにかく無事でよかったよ、本当 |
アスベル | 今日は、集まっていただきありがとうございます |
アスベル | 世界が直面していた大精霊に関する危機は収まりました |
アスベル | 俺達が大精霊の暴走を鎮める事が出来たのは、ここにいるみんなや世界中の仲間… |
アスベル | そして、各国が手を携えた結果だと思います |
アスベル | ご協力いただけた皆様にお礼を申し上げます |
アスベル | 今回の件を一つの好機として、各国の交流がますます進んでいく事を願ってやみません |
リチャード | 僕もそう願っているよ |
ジェイド | 私も同感です |
フィリア | ええ |
ティア | そう思うわ |
リチャード | アスベル、挨拶はそれくらいにして次は楽しい話をしよう |
アスベル | 楽しい話? |
リチャード | 実はね、勝手ではあるが僕の方でみんなを労うために食事の席を用意して置いたんだ |
リチャード | それぞれ親しい人達との積もる話もあるだろうからね、どうか存分に楽しんで欲しい |
ロイド | まじか、やったぜ! |
ゼロス | それじゃお言葉に甘えて、存分に楽しませてもらうとするか! |
カノンノ | うわあ、楽しそうだね! |
ソフィ | うん |
| |
リオン | …全く、呑気な奴らだ |
カノンノ | まだ全てが終わったわけじゃないのはわかってるけど… |
カノンノ | こうやってみんなが笑顔でいるのを見ると、私まで嬉しくなっちゃうな |
アスベル | …そうだな |
ルーク | よーし、食うぞ!あんだけ苦労したんだし、このくらいは当然だよな! |
リタ | 呆れた。でもそうね。みんな頑張ったからこそこうやってまた集まれたんだし |
ミラ | 確かに大精霊の事は、一段落したと言っていい。だが肝心なのはむしろこれからだ |
リッド | …ユグドラシル、か |
ミラ | ああ。何としても正体を突き止め、手を打たねばならん |
ルーク | どこのどいつだろうと、見つけ出してぶっ飛ばすだけだろ! |
リタ | そんな簡単にいけば苦労しないわよ。とにかくもっと情報が必要ね |
アスベル | 明日からまた頑張らないと |
ミラ | ああ。そうだな気持ちを引き締めて── |
| |
ティポ | ミラくーん!みんなー! |
ミラ | おお、ティポか |
ティポ | どうしてみんな、こんなところで集まって、真面目な顔してるのー |
ジュード | 一緒に食べようよって、誘いに来たんだけど… |
エリーゼ | お邪魔…でしたか? |
ミラ | ぐーきゅるる~ |
リタ | お腹空いてるんでしょ?行ってくれば? |
リッド | 今のオレ達にだって腹いっぱいメシを食うくらいの権利はあるよな |
リタ | はあ…あんたもルークやミラと一緒なの?好きなだけ食べればいいわよ、もう |
ルーク | 言われるまでもねーっての!ぼやぼやしてっと、全部食っちまうからな! |
ミラ | …そうだな。腹が減っては何とやらと言うからな |
ティポ | わーい!それじゃいこいこー |
ミラ | あ、おい、ティポ!そんなに強く引っ張るな──… |
カノンノ | 大切な人と一緒に過ごせるとみんな元気になるんだね。リチャードさんに感謝しなくちゃ |
アスベル | そうだな。俺達も食事にしよう |
リオン | …ああ |
カノンノ | うん、そうしよう! |
| |
リチャード | アスベル。それにソフィにカノンノも、本当にお疲れ様 |
アスベル | エステリーゼ様から聞いたよ。各国がまとまるきっかけを作ったのは、リチャードだって |
アスベル | ありがとう、リチャード… |
リチャード | 何、僕は僕に出来る事をしたまでさ |
シェリア | アスベル…あなたも無事でよかったわ |
アスベル | シェリア、怪我の具合はどうなんだ? |
シェリア | ええ、もう大丈夫。痛みもなくなったし |
アスベル | それはよかった。今後はあまり無茶をするなよ |
シェリア | それはこっちの台詞よ。アスベルこそ… |
シェリア | ねえカノンノ、アスベルは無茶をしていなかった? |
アスベル | え?いや、していないよな? |
カノンノ | うーん…少し、してたかな |
アスベル | おいおい、カノンノ俺は無茶なんて… |
シェリア | やっぱり…! |
アスベル | やっぱりって──… |
リチャード | ソフィ、また君に、助けてもらったね。何てお礼を言ったらいいか |
ソフィ | リチャードも頑張ったってわたし知ってるよ |
ソフィ | この時代のみんなが頑張ってくれるお蔭で、未来のわたし達があるんだよ |
リチャード | ソフィ…そう言ってもらえると、嬉しいよ |
エステル | お疲れ様でした、リタ。今回も大変だったんじゃないんです? |
リタ | 別にどうって事ないわよ。エステルの方こそ、どうだったの? |
リタ | ティアがキムラスカの使節として来てるって事は…交渉は上手くいったみたいね |
エステル | ええ。インゴベルト六世陛下に、こちらの真意をご理解いただけました |
リタ | やるじゃない。あんたも王族らしくなってきたわね |
エステル | リタ達のした事に比べれば、大した事じゃありません |
リタ | 何言ってんの。そもそも比べるようなもんじゃないでしょ |
エステル | じゃあ、わたし達二人とも頑張った、って事ですね! |
リタ | あ…うん、まあ…そう、ね |
レイヴン | はいはーい、ちなみにおっさんも頑張ったわよー。褒めて褒めて |
リタ | ウザ。あたしはエステルと話してるの。おっさんはお呼びではないの |
エステル | リタったら、そこまで言わなくても… |
エステル | 勿論、レイヴンも頑張ったのは知ってますから |
リタ | あんまり褒めない方がいいわよ。どうせすぐ調子に乗るんだから |
レイヴン | とほほ…リタっちは相変わらず手厳しいのね… |
ファラ | リッド、おめでとう!ついにやったんだね! |
リッド | ありがとよ。まあ、何とか一段落って感じだけどな |
ファラ | 思えば…本当に長かったね。わたしが亀裂に落ちた時から…もう随分経ったなぁ |
リッド | ああ。でも、んな事はもう起きねえ |
ファラ | だね。これもリッド達のお蔭だよあっ、そう言えば… |
ファラ | 旅の間、ちゃんと食事は取れた? |
リッド | そいつは大丈夫だ。…ファラのオムレツは食えなかったけどな |
ファラ | じゃあ村に帰ったら、たっくさん作ってあげるから! |
リッド | そいつは楽しみだ |
ルドガー | やあ、リッド。それにファラも |
ユリウス | お疲れ様 |
リッド | ルドガー達もきてたんだな、お疲れ。時空の歪みに迷い込んだ人達はどうなってるんだ? |
ルドガー | 兄さんと手分けして、全員救出できたよ |
ファラ | よかった…わたしみたいな目に遭う人はもういないって事だよね |
ユリウス | ああ。そういうわけで、俺達も一度、イニル街に帰ろうと思っているところだ |
ルドガー | 兄さん、せっかくだからさ、エルとルルにお土産を買っていこう。長い事、留守番をしてもらったし |
ユリウス | そうだな。ルルはロイヤル猫缶でいいとして…エルのはどうするか |
ルドガー | 女の子が喜ぶお土産を考えるのは、難しいな… |
ファラ | だったら、わたしが相談に乗ってあげるよ! |
リッド | 相談に乗るのはいいけど、変なモン選ぶなよ、ファラ |
ルドガー | ファラ、よろしく頼むよ |
ファラ | うん。わたしでよければ、いくらでも! |
ミュウ | ご主人様~!会いたかったですの! |
ルーク | だーっ、うるせー!まとわりつくんじゃねえっつーの! |
ガイ | ミュウも元気になって、よかったな |
ミュウ | はいですの!エミルさんとジーニアスさんのお蔭ですの、感謝しているですの! |
エミル | 気にしなくていいんだよ。マルタにも、ちゃんとついてるよう言われてたしね |
ジェイド | いやあ、皆さん。お役目ご苦労様でした |
ジェイド | あなた方ならやってくれると信じていましたよ |
ルーク | へっ、どーだか。取ってつけたように言われたって別に嬉しくねーっての |
アニス | 信用されてませんね~大佐 |
ジェイド | おやおや、心外ですねえ |
ジェイド | ところで今回の件、キムラスカの国王陛下もきっとお喜びでしょうね |
ティア | ええ、国王陛下がよくやったとおっしゃられていたわ、ルーク |
ルーク | へへっ、まあな!俺の活躍、伯父上にも見せてやりたかったぜ! |
ティア | そういうところは相変わらずね…。あなた一人で全部やり遂げたわけじゃないでしょう? |
ルーク | なんだよ、ケチつけやがって。大精霊を相手に俺の剣技がどんだけ… |
ミュウ | あっ、ご主人様、口にケチャップがついてますの!拭いてあげますの! |
ジェイド | はっはっは、どんな英雄でも食事のマナーをおろそかにしてはいけませんねえ |
ルーク | なっ…このブタザル!てめーのせいだかんな! |
ミュウ | みゅうう~! |
ミラ | そういえば、ジュード達の救護活動はどうなった? |
ジュード | 一区切りついたんだ。これからも焦らず着実にやっていこうと思ってるよ |
ミラ | そうだな。それが一番だ |
ミラ | 私達も、今回の黒幕と思わしき人物の名前がわかった |
ミラ | こちらも焦らず、気を引き締めていくよ |
ジュード | はは、ミラらしいね。じゃあ、僕は僕で頑張らないとだね |
ティポ | ジュードくーん、ミラくーん |
ティポ | おいしいケーキが向こうにあるよ。食べに行こうよー |
エリーゼ | 一緒に食べたくて…それで、呼びに来たんです |
ミラ | …だそうだ。どうする、ジュード? |
ジュード | じゃあ僕も、食べに行こうかな。ミラも行くでしょ? |
ミラ | ああ、もちろんだ |
ティポ | じゃあ、みんなでレッツゴー! |
スタン | リオン!こっち来いよ、これおいしいぞ |
リオン | お前には遠慮というものがないのか… |
スタン | 俺達のために用意してくれたんだ食べなきゃ失礼だろ? |
ジーニアス | スタンとリオンって、本当に仲がいいんだね |
ロイド | そうだな。俺とジーニアスみたいなもんか |
スタン | ああ!俺達は大の親友さ! |
リオン | 勝手に言っていろ |
ゼロス | またまたー。恥ずかしがらなくたっていいんだぜ? |
リオン | 恥ずかしがってなどいない。勝手に決めつけるな |
ゼロス | 素直じゃないんだから。まあ、そういう事にしておきますか |
スタン | 俺、リオンならきっと大精霊を何とかしてくれるって、信じてたよ! |
フィリア | スタンさんはリオンさんが大精霊の事を解決してくれるって話をしてくれていたんですよ |
リオン | … |
スタン | リオン…ルイニス街の氷だってこうやって解決出来るって信じてる |
スタン | だから、これからも頑張ろうな! |
アルヴィン | … |
セネル | …お前は誰との会話にも、参加しないのか? |
アルヴィン | こういう場では、みんなが笑い合っている様を眺める方が性に合ってるもんでね |
セネル | お前もそうか。実は俺もなんだが |
アルヴィン | ま、これはこれで、悪くはないよな |
アルヴィン | 距離を置く事で、見えるものもあるしな |
セネル | そうだな… |
リオン | … |
アルヴィン | 何もなければいいんだがな… |
セネル | ?何か言ったか? |
アルヴィン | いや、何でもないさ |
scene2 | ひとときの休息 |
ルーク | ふああ…ねみい |
リッド | ルーク、眠そうだな… |
アスベル | 昨日はみんなと話せたか? |
ルーク | ああ。ブタザルが引っ付いてきてマジうざかったぜ |
アスベル | はは、元気になったようでなによりだな |
リッド | リタも眠そうだ… |
リタ | エステルと話してたら何か話が弾んじゃってね。この位の寝不足なら平気よ |
ルーク | …あとはカノンノとリオンか。遅せーな、あいつら。なにやってんだ? |
リタ | 珍しいわね。ルークが来てるのにリオンとカノンノが来てないなんて |
ルーク | おい…どういう意味だよ |
リタ | 待ち合わせ場所はここって伝えてあるのよね? |
アスベル | ああ。それは間違いない |
リッド | あの二人が寝坊なんて、珍しい事もあるもんだな |
ミラ | もう少し待ってみるとしよう |
リタ | …ちょっと… |
アルヴィン | ん?どうしたんだ、リタ |
リタ | 何でアルヴィンがここにいるのよ |
アルヴィン | お前さん達がバロニアを出る前に、話しておいた方がいいかなーって思った事があってね |
アルヴィン | ぜひ聞いといてもらいたいんだが…聞いてくれるか? |
ルーク | 何だよ、もったいぶらずに話せよ |
アルヴィン | お、ありがとよ |
ミラ | 話というのは? |
アルヴィン | 実はな… |
カノンノ | みんな、大変!大変なの! |
アスベル | どうした?カノンノ |
カノンノ | 私のネックレスが…なくなっちゃったの! |
ミラ | なくなっただと!? |
リタ | !…ちょっと、それって、大精霊達が宿ったネックレスの事!? |
カノンノ | うん。どこを探しても見つからなくて… |
アスベル | それは一大事だな…宿の部屋はくまなく探したのか? |
カノンノ | …うん |
ミラ | 食事の席に忘れていったという可能性は? |
カノンノ | それはないよ。寝る前に枕元にちゃんと置いておいたもの! |
ルーク | じゃあ… |
リッド | あんまり考えたくねえけど…盗まれたって可能性もありえるな |
カノンノ | そんな… |
スタン | おーい!みんなーー! |
ルーク | だーっ!今度は何なんだよ! |
スタン | みんながバロニアからでるなら見送りでもと思って…あれ?リオンは? |
アスベル | まだ、ここには来てないんだ宿にはもういないのか? |
スタン | ああ、てっきりみんなのところにいるのかと思ったんだけど |
ミラ | 待ち合わせの事を忘れて、先に出発したというのか? |
リタ | 行き先も決めてないのに? |
アルヴィン | いや。…おそらく、リドウのところへ向かったんだろう |
リタ | リドウ…? |
ミラ | リドウだと?何故ここでその名が出て来る |
ミラ | お前は何を知っているのだ、アルヴィン! |
アルヴィン | … |
Name | Dialogue |
scene1 | アルヴィンの告白 |
アルヴィン | リオンは… |
アルヴィン | …きっとリドウのところへ向かったんだろう |
リタ | リドウ…? |
ミラ | リドウだと?何故ここで、その名が出て来る |
ミラ | お前は何を知っているのだ、アルヴィン! |
アルヴィン | … |
アルヴィン | そう急かすなって。そんなに睨まなくてもちゃんと話すよ |
アルヴィン | 本当はリオンがいる時に聞いてもらいたかったんだが |
アルヴィン | 話すタイミングが遅くなっちまったな… |
リタ | もったいつけてないで早く話しなさいよ |
アルヴィン | … |
アルヴィン | まずはリドウの目的から話をさせてもらうか |
アルヴィン | 奴は、世界の破滅を目的としているんだ |
ルーク | はぁ!?そのリドウって奴、一体── |
アルヴィン | まあ、待てって!まだ話し始めたばっかりだろ。もう少し聞いてくれ |
ミラ | いや…待て、アルヴィン。何故お前がリドウの目的を知っているのだ? |
アルヴィン | そこは誤解されたくないから答えておくが、実はリドウとは古い付き合いでね |
アルヴィン | 手を組まないかと誘われた事があったんだ |
アスベル | リドウと手を組む…? |
アルヴィン | 勿論断ったぜ |
アルヴィン | ちょっと手荒な方法で奴の事も止めるつもりだったんだが、逃げられちまってな… |
アルヴィン | だが、その時奴は自分一人殺しても無駄だ、みたいな事を仄めかしていてな |
アルヴィン | 他に仲間がいるという事かと思ったものの、確証が持てなかったんだが… |
アルヴィン | 昨晩、ユグドラシルって奴の存在を聞いてピンと来たんだ |
アルヴィン | そのユグドラシルが、リドウと世界を破滅させようとしている奴なんじゃないかってな |
リッド | ユグドラシルは戦争を起こす以外にも計画を用意してるみたいな事デュークも言ってたな… |
ミラ | ユグドラシルが戦争を誘発し、大精霊を暴走させていた行為は世界を破滅させるためだった…と |
アルヴィン | そういう事だ |
アスベル | リドウとユグドラシルが協力関係にあるかも知れない事はわかった |
リタ | でもそこに、リオンがどう関わってくるわけ? |
アルヴィン | リドウは俺達の中に内通者がいるような事も言ってたんだ |
リタ | …リオンがその内通者だって言いたいの? |
ルーク | !?リオンが? |
アルヴィン | 俺の予測だがな |
カノンノ | そんな… |
アルヴィン | 状況からして、リオンはおそらくカノンノのネックレスを持ってリドウの元に向っているだろう |
リタ | あいつが…でも待って。仮にそうだとして、何をするつもりだっていうの? |
リタ | あのネックレスだってカノンノ以外が触れても何の反応もしないのよ? |
ミラ | しかし、あれほどの力を持つ大精霊が宿ったネックレスだ |
ミラ | ネックレスを利用する何かしらの当てもあるのかもしれない |
ルーク | 何にしたって、ロクでもねー事に使われる気しかしねーな |
リッド | アルヴィンの言っている事が本当ならまずい状況なんじゃねぇのか? |
アスベル | …アルヴィンはどうしてリオンが内通者だと思ったんだ? |
アルヴィン | ああ。それについても説明するよ |
アルヴィン | 俺がリオンと出会った頃…。世界の異変の原因が大精霊の暴走にあるとは、明るみになっていなかった |
アルヴィン | それなのに、リオンは初めから大精霊に対して、やたら固執していたんだ |
リタ | 原因がわかる前から大精霊を気にしていたって事? |
スタン | …。それに関しては、アルヴィンの言う通りかも知れない |
リッド | アルヴィンの言う通りかもって、そうなのか?スタン |
スタン | …実は、ルイニス街の氷をどうすれば溶かす事が出来るかリオンと話をしてた時… |
スタン | リフィルさんから大精霊イフリートの話を聞いたんだ |
スタン | その時、リオンの反応が急に変わって… |
ミラ | 出会った当初、確かにリオンとお前はイフリートを捜していたが、それはルイニス街の氷を溶かすためだろう? |
アルヴィン | だが、ルイニス街の氷がイフリートの炎で溶けないと知った後も、リオンの行動は大精霊に固執したものだった |
アルヴィン | それに、お前達と会う前はイフリートを捜すというより大精霊を捜しているような行動も取ってたんだ |
アルヴィン | リオンだけが大精霊の暴走を鎮めるのとは別の思惑でお前達と行動していたと考えれば… |
ミラ | リドウと同じく、リオンも大精霊を回収するために動いていた。そう言いたいのか? |
アルヴィン | ああ |
アルヴィン | もし、リオンがリドウの元に行くなら全ての大精霊がネックレスに宿ったこのタイミングかと考えてな |
アルヴィン | お前達の前で、俺の情報を明かした後リオンに事の真相を追及しようと思っていたんだが… |
カノンノ | ネックレスもなくなっちゃったし、リオンもいなくなっちゃった… |
アルヴィン | ああ。一足、遅かった |
ミラ | …信じがたい事だな |
リッド | 大精霊を回収するためにオレ達と一緒にいたって事か?笑えねえよ… |
ルーク | リオンの奴、ずっと俺達を騙してたっていうのかよ… |
アスベル | リオン… |
カノンノ | … |
スタン | …リオンが俺達を裏切るなんて、そんな事、あるわけがない |
アスベル | スタン… |
スタン | リオンは、ルイニス街が氷漬けになった事を心の底から悲しんでいたんだ |
スタン | そのリオンが…世界の破滅を企むような奴らと、手を組むはずがない! |
スタン | ネックレスを持っていったのがリオンだったとしても、絶対に理由があるはずなんだ… |
アルヴィン | 俺もそう思ってるよ。リオンは何かしらの理由で無理矢理リドウに従わされているんじゃないかってな |
ルーク | 理由って…あ!もしかして何か弱みを握られたとかか? |
アルヴィン | おそらく、な。俺はそう踏んでいる |
カノンノ | リオンの弱みって? |
アルヴィン | 想像の域は出ないが、俺が思いつくのはルイニス街だな |
スタン | リオンはルイニス街を何より大切にしてるから… |
リッド | だとしたら、ルイニス街を盾に取られて従っちまってるのかもな… |
ミラ | リドウがリオンを通じて情報を得ていたのなら、大精霊の宿るネックレスの事も知っていただろう |
ミラ | 信じたくはないが、もしリドウがネックレスを狙い… |
ミラ | そしてアルヴィンの言う通りリオンが内通者だったとすれば… |
ミラ | 今回のネックレスがなくなった件も、リオンが同時に消えた事も辻褄が合うな… |
ルーク | くそっ、何がどうなってんだ。どうすりゃいいんだよ! |
リタ | 考えるまでもないわ。リオンを追いかけるのよ。リドウの元にたどり着く前にね |
ミラ | そうだな。ネックレスを持って行動しているのなら、大精霊の気配をたどればリオンを追えるだろう |
アスベル | 俺達はネックレスがリドウの手に渡るのを阻止しなければ… |
ルーク | だったらぐずぐずしてねーで、早く行こうぜ!追いつけなくなっちまう |
カノンノ | リオン… |
アスベル | 心配するな、カノンノ。必ずリオンを連れ戻し、ネックレスも取り戻そう |
カノンノ | うん… |
scene2 | アルヴィンの告白 |
リオン | 約束の岬はこの先か… |
リオン | … |
リオン | … |
| |
アスベル | とにかく、こうしてはいられない。ミラ、ネックレスは今どこに? |
ミラ | … |
リッド | 気配を探ってるみたいだ邪魔しないようにしようぜ |
アスベル | ああ…すまない |
スタン | …。俺も一緒に行かせて欲しい |
アスベル | スタン… |
スタン | もしリオンが、本当にカノンノのネックレスを持ち出したなら… |
スタン | 何か事情があるはずなんだ。絶対に! |
スタン | それがルイニス街の事なら尚更…。だから何としても俺が助けたいんだ |
アスベル | スタン…そうだな |
ルーク | まあ、リオンも他の奴よりはまだスタンの話の方が聞く耳あるかもしんねーもんな |
カノンノ | うん、そうだよね。一番の友達だもんね |
アルヴィン | 俺も同行させてくれないか |
リタ | あんたも? |
アルヴィン | ま、俺がついてったところで、どうだってのもあるんだが… |
アルヴィン | いろいろと思うところがあってね。俺が上手く動いてたら、こうはならなかったんじゃないかってな |
アルヴィン | それに、リドウの目的は世界の破滅だ。見て見ぬふりはしてられない |
アスベル | …わかった。アルヴィンも一緒に行こう |
アルヴィン | ありがとな、アスベル。急ぎで、ジュード達にも事情を話して来るぜ |
スタン | 俺もユーリ達に、今の状況を伝えてくる。すぐに行くから! |
リタ | じゃ、街の入口で落ち合いましょ。先に行って待ってるから |
scene1 | リオンの行方 |
スタン | みんな、待たせてごめん! |
ミラ | 二人とも来たな。では早速行くとしよう |
リッド | どこに向えばいいかわかったのか? |
ミラ | ああ、大精霊達の気配は南から感じ取れる |
アスベル | よし、みんな。南へ向かおう |
リタ | ええ、急ぎましょ |
カノンノ | うん、行こう… |
スタン | リオン… |
scene2 | リオンの行方 |
アスベル | この辺りは確か、トーティス村の近くだったな |
リタ | そう言えばそうね。ミラ、大精霊の気配は? |
ミラ | トーティス村より南の方から感じる。まだ近くはないな |
スタン | … |
アスベル | リオンの事が気になってるみたいだな…大丈夫か?スタン |
スタン | ああ、大丈夫だ |
アスベル | リオンが誰にも話さずにいたのも何か事情があったのかも知れない。気を落とすなよ |
スタン | …。違うんだ、アスベル。俺は…自分が情けないだけなんだ |
アスベル | 情けない? |
スタン | リオンが一人で悩みを抱えて、苦しんでたってのに… |
スタン | どうして俺はその事に気付いてやれなかったんだろうって |
スタン | 一緒にいたのに、俺はリオンの事何もわかってなかったんだ、って… |
カノンノ | スタン…それは違うと思うよ |
カノンノ | リオンは、みんなに迷惑をかけられないって思ってたんじゃないかな |
カノンノ | そこまでリオンの事考えて落ち込んでるスタンは、情けなくなんかないよ |
スタン | …。そう、なのかな? |
アルヴィン | リオンの事は、これ以上俺らが推測しても仕方がない。後は確かめないとわからない事だ |
スタン | …アルヴィンさんの言う通りまずはリオンに会わなくちゃな |
カノンノ | 今は一刻も早く大精霊の気配に追いついて本当の事、確かめなきゃ…だよね? |
ルーク | アルヴィンの話が本当ならリドウの奴、ただじゃおかねー! |
ルーク | リオンもリオンだ!リドウなんかに従ってんじゃねえっつーの! |
リタ | そうね。あたし達に相談もなしにネックレス持って行った事、後悔させてやりましょ |
リッド | おいおい…。こえーよ |
リッド | …ん? |
| ガサ… |
| |
| ガルルルル! |
リッド | 魔物か…。ことごとくオレ達の邪魔をしてくるな |
アスベル | 時間を無駄にしたくない。このまま突っ切ろう |
ミラ | ああ、そうだな。みんな、行くぞ! |
scene1 | 対峙 |
リドウ | よく来たな、リオン。元気そうで何よりだ |
リオン | ここに呼びだしたのはお前だろう |
リドウ | 何だか怒ってるみたいだねぇ。怖い怖い |
リオン | … |
リドウ | ああ、そうそう。お仲間には、きちんと断りを入れてここに来たのかな? |
リドウ | 何の挨拶もせずに飛び出して来てるんだったら、今頃彼らから悪者扱いを受けてるかもよ |
リドウ | まあ、俺には関係ない事だけどねぇ |
リオン | … |
リオン | …約束の物だ、受け取れ |
| ヒュンッ |
リドウ | おっと |
リオン | そのネックレスに、これまでに契約した全ての大精霊が宿っている |
リドウ | へえ…これにねえ |
リドウ | …ほう… |
リドウ | あれだけの大精霊を、このちっぽけなネックレスに押し込めておけるとは、すごいもんだな |
リドウ | これなら零(ゼロ)の塔を復活させるのも楽そうだ… |
リオン | 零の塔…?一体何の話をしている |
リドウ | 教えてほしいなら特別に教えてやろうか?俺のために動いてくれたお礼だ |
リオン | いちいち勿体ぶるな。僕の時間を潰すつもりか |
リドウ | つれないねえ。まあ、確かに君にとってはいらない情報だろうし… |
リドウ | それよりも、ほら…何だったかな。君が一番気にしていたあの街の事の方がいいか? |
リオン | ルイニス街の氷は、溶かしたんだろうな |
リドウ | おいおい、あんまりがっつくと、嫌われるぜ。言われた事ないか? |
リオン | … |
リドウ | わかったよ。ルイニス街の氷だが── |
scene2 | 対峙 |
リドウ | ルイニス街の氷だが、あれは… |
リドウ | ある意味、確実に解放される。だから、もう君が気にする必要はないんだよ |
リオン | 何…?それは、どういう意味だ |
リドウ | 君がくれた、このネックレスのお蔭で零の塔を復活させる事が出来る |
リドウ | すると、必然的に氷に閉じ込められた君の街は解放される事になるってわけさ |
リオン | … |
リドウ | まぁ、塔が復活するって事は世界の破滅と同義なんだけどね |
リオン | !リドウ、貴様… |
リオン | 街どころか、この世界の人間まるごと消し去ろうというのか |
リドウ | 遅かれ早かれ、塔が復活すれば世界の破滅はやって来る |
| |
リドウ | リオン。君は特別に、俺の手で解放してやるよ |
リオン | その姿… |
リドウ | すぐにルイニス街の連中も後を追わせてやるさこれが俺の優しさってやつだ |
リオン | …もう一度聞く。氷を溶かす手段はないという事か? |
リドウ | あれはね、俺も解き方はわからないんだ |
リオン | わからない?わからないとはどういう事だ |
リドウ | 言葉通りの意味だよ。元に戻す必要がないから、解き方も知る必要もない |
リドウ | あー、絶望させちゃったかな?ま、それもすぐ終わらせてやるよ |
リオン | 終わらせる?それは僕のセリフだ。貴様は僕の手で終わらせてやる |
リドウ | ハッ、言うねえ |
scene1 | ユグドラシル |
リドウ | ぐおおおおっ! |
リドウ | がっ…くそがぁ… |
| ドサッ |
リオン | はぁっ…はぁっ… |
リオン | これは…返してもらう |
| チャリ… |
リオン | ルイニス街の氷を溶かす方法を他に探さなければ──… |
リッド | おい、いたぞ! |
リオン | …! |
スタン | リオン!こんなところまで来てたんだな |
リオン | スタン、それにお前達まで、何故ここに… |
ミラ | ネックレスの中の大精霊の気配を追って来たのだ |
ルーク | ったく、急にいなくなるとか驚かせやがって…って |
ルーク | うぉっ!?人が倒れてるぞ! |
アルヴィン | こいつは…リドウだな |
リオン | … |
カノンノ | リオン…。もしかしてリドウと戦ったの? |
カノンノ | 怪我してない?突然いなくなっちゃって本当に心配したんだから… |
リオン | … |
リオン | 僕は何ともない |
リオン | …これはお前に返しておく。勝手に持ち去って、悪かった |
カノンノ | う、うん… |
| |
アスベル | ネックレスに変わりはないか? |
カノンノ | うん、何ともないみたい |
ミラ | 大精霊達の気配も正常だ |
リオン | … |
アスベル | なぁ…リオン。カノンノのネックレスを持ち去った理由を教えてくれないか |
リタ | それと、どうしてリドウがそこに倒れてるのかも聞きたいわ |
スタン | リオン… |
scene2 | ユグドラシル |
リオン | … |
リタ | カノンノのネックレスを持ち出しておいて、何も話さないつもりなの? |
ミラ | お前なら、そのネックレスがどれほど重要なものかわかっているはずだ |
リッド | 何か事情があったんだろ?リドウのとこにネックレスを持って来なきゃいけない理由が |
リオン | … |
ルーク | へっ、どうせあのリドウって奴に脅されてたんだろ? |
リオン | … |
スタン | リオン… |
アルヴィン | みんなお前の事を心配してここまで来たんだ。何か答えてやれよ、リオン |
リオン | 僕の事を嗅ぎ回っていた奴がわざわざ、ここまで来るとは余程の暇人だな |
アルヴィン | こりゃ、どうも。こいつらもそうだけど、俺も一人で突っ走るお前が心配でね |
リオン | … |
アルヴィン | … |
リオン | 全てが振り出しに戻ったというだけだ |
アルヴィン | それは、ルイニス街の氷の事か? |
リオン | 僕があの時、リドウを止められていれば、こんな事にはならなかった… |
スタン | あの時? |
リオン | 世界に異変が起こったあの日、ルイニス街はリドウからの襲撃を受けたんだ |
スタン | ルイニス街が!? |
リオン | ああ、そうだ。僕はその時にリドウと戦った。だが戦いの最中… |
リオン | 奴はルイニス街の全てを一瞬の内に氷漬けにしたのさ |
スタン | そんな… |
リオン | そして、大精霊を回収し引き渡せばルイニス街の氷を溶かすと言ってきた |
スタン | リドウの奴…!やっぱりか…! |
アルヴィン | リオン、お前… |
リオン | だが、初めから守る気もなかったんだろう |
リオン | ネックレスを渡すと用済みだとばかりに襲ってきたからな |
カノンノ | 初めから守る気がなかったなんて…。じゃあ、街の人達はまだ… |
スタン | … |
ルーク | けっ、リドウの奴、とことんムカつく野郎だな。けど、それでリオンに倒されてちゃ、ざまあねーな |
リタ | だからって無茶しすぎよ。返り討ちに出来たからいいようなものの… |
リッド | にしても、リドウの奴…大精霊の宿るネックレスをどうやって使うつもりだったんだ? |
ミラ | わざわざリオンを使ってまで手に入れようとしたのだ。何も手立てがないと言う事はあるまい |
ミラ | リオンは何かリドウから聞いたりはしていないのか? |
リオン | … |
リオン | ネックレスをどう使うつもりなのかは知らないが… |
リオン | 「零の塔を 復活させる事が出来る」そう言っていた |
アスベル | 零の塔? |
リッド | 零の塔…。聞いた事がない名前だな |
リッド | アルヴィンはリドウと面識があったんだろ? |
リッド | なら、その零の塔ってのも知ってるんじゃないか? |
アルヴィン | いや、初耳だ。リドウと塔に関する会話なんてしてないし、心当たりもない |
リタ | 待って。零の塔…零… |
リタ | どこかで聞いた事あるような…。…あー悔しい、思い出せない! |
ルーク | 負けず嫌いで言ってんじゃねーだろうな… |
スタン | リオン。ルイニス街は今もあのままなんだな… |
リオン | …ああ |
スタン | …っ |
リオン | …無駄足だったな |
スタン | …リオン!俺が言いたいのは、そんな事じゃない! |
スタン | お前は…お前って奴は…! |
スタン | どうして俺に、何も話してくれなかったんだ! |
リオン | …! |
スタン | 俺だってルイニス街を救いたいのに、黙ってるなんて水臭いじゃないか |
スタン | お前は大概の事は一人で出来るしそれはよく知ってるさ |
リオン | … |
スタン | 俺は頼りないかもしれない |
スタン | でも何で一人で抱え込むんだ!俺達、友達だろう! |
リオン | 何度も言わせるな、僕は──… |
スタン | お前が何と言ったって関係ない! |
スタン | 俺はお前が、一人で苦しむなんて嫌だ! |
リオン | リドウを止める事が出来なかった。これは僕の問題だ…。お前には関係ない |
スタン | リオン! |
アルヴィン | 落ち着け、二人とも。リオン、今回はお前が無事だったからよかったようなものの… |
アルヴィン | 独断で動くと悪い状況になった時助けられないだろう |
リオン | 僕を助けるためにお前はあれこれ探っていたというわけか。余計なお世話だ |
リッド | おい、そういう言い方はねえだろ。事情があるにしろ、お前のやり方はいただけねえよ |
ルーク | だよな。ごめんの一言もねーし、こんな友達持ってるスタンも苦労するよな |
リオン | ふん、だからどうした! |
アスベル | 俺達は一緒に戦った仲間だ。少しは信用してくれてもいいだろう? |
リオン | … |
リオン | 僕は──… |
全員 | ! |
カノンノ | 何?この光… |
アスベル | 眩しくて見えない…っ |
??? | 大精霊の回収もままならないか…。リドウめ、口ほどにもない |
アスベル | ! |
アルヴィン | リドウや大精霊の事を知ってるのか? |
ミラ | 何者だ? |
ルーク | 何だこいつ、一体どっから出てきやがった!? |
リタ | 光の羽根…!? |
リッド | まさかこいつがデュークやユーリ達が言ってた… |
ミラ | 世界のマナを減少させて大精霊の暴走を促した存在… |
アスベル | ユグドラシル、なのか? |
ユグドラシル | ほう… |
ユグドラシル | 私の名を知っている人間がいるとは。面白い事もあるものだ… |
アスベル | !お前がユグドラシル…!? |
リタ | 向こうから現れてくれるなんて、捜す手間が省けたわね |
ユグドラシル | 私が直接片を付けなければならないようだな |
アスベル | 何だと? |
ユグドラシル | む… |
カノンノ | …? |
ユグドラシル | ふっ…お前か… |
カノンノ | う…!? |
アスベル | カノンノ、どうした!? |
カノンノ | わからない…。けど一瞬胸が締め付けられて… |
ユグドラシル | くくっ… |
ユグドラシル | そのネックレスを、渡してもらおうか |
カノンノ | ! |
ルーク | おい、ふざけんじゃねーぞ!誰が素直に渡すかっつーの! |
ミラ | アルヴィンの予想通りリドウの仲間は、ユグドラシルだったと言う事か… |
リッド | なら、世界を破滅させようとしている奴って事だな |
リタ | そんな奴に大事なカノンノのネックレスを渡すもんですか |
ユグドラシル | 私の名を知るだけではないのか。実に面白い |
アスベル | お前にカノンノのネックレスは渡さない、ユグドラシル! |
| |
ユグドラシル | ふはははは!誰を前にしてそんな事を言っているのか教えてやろう── |
アスベル | 来るぞ! |
scene1 | 孤高の剣士 |
ユグドラシル | …なるほど。大精霊の暴走を鎮めただけの事はある |
ユグドラシル | それなりにはやれるようだな |
ルーク | !?俺達の攻撃が、効いてないのか? |
リタ | そんな… |
ユグドラシル | だが所詮、お前達の攻撃などこの私にしてみれば、児戯にも等しい |
リッド | 何なんだよ、こいつ…! |
ユグドラシル | お前達に教えてやろう。攻撃とは…こういう事を言う |
| ズドオオオオオンッッ! |
全員 | !? |
アスベル | ──…っ!がはっ! |
リオン | くっ…! |
ミラ | うっ…! |
| |
ユグドラシル | お前達と私の間には圧倒的な差がある事を、理解出来たか? |
カノンノ | …! |
カノンノ | どうして… |
カノンノ | どうしてあなたは、こんな事をするの…? |
ユグドラシル | どうして、だと?くくっ…お前がそれを言うのは非常に滑稽だな |
カノンノ | どういう事? |
ユグドラシル | この世界のたどる道筋に変わりはない。お前達が何をしようとも世界は破滅する |
ユグドラシル | 真の平和のためには世界の破滅が必要不可欠なのだ |
アスベル | 真の平和、だと…? |
カノンノ | 破滅って…そんな… |
リオン | … |
ルーク | 平和のために世界を破滅とか意味不明だっつーの! |
リタ | 大勢の人が巻き込まれた戦争や大精霊の暴走…それが全部、こいつの仕業だったっていうの…? |
ユグドラシル | 愚かな。私はただ導いてやっただけの事 |
ユグドラシル | あるべき世界への回帰のために、必要となる破滅への道筋にな |
ユグドラシル | 人間の間に戦争を引き起こし、マナを濫用させ、大精霊の暴走を引き起こす |
ユグドラシル | それにより世界は荒廃し破滅の一途をたどる… |
ユグドラシル | しかし、零の塔を使うのも面白いと思ってな |
リタ | 零の塔… |
リッド | リオンも言ってたけど零の塔って何なんだよ。たかが塔が世界を破滅させるってのか? |
ユグドラシル | お前達の方がよく知っているだろう?零の塔は、この世界で魔導器と呼ばれる代物だそうだ |
リタ | まさか…。零の塔って… |
リッド | リタ、何か思い出したのか? |
リタ | ええ。昔読んだ文献で、その名前を見た気がする |
リタ | 詳しい事は書いてなかったけど、世界を滅ぼす力を持つ魔導器の塔が、世界のどこかに封印されてるって… |
ユグドラシル | 塔は長き時を経た今、その力を失っている |
ユグドラシル | それを復活させるには、大量のマナが必要なのだ。──そのネックレスのな |
ミラ | …今のカノンノのネックレスは、大精霊が集合した高濃度のマナの塊でもある… |
リッド | 塔を復活させるにはうってつけってわけか |
アスベル | お前はカノンノが全ての大精霊と契約し終えるのを、待っていたんだな |
ユグドラシル | お前達には感謝をしなければならないかもしれないな |
リタ | 文献の通り、世界を滅ぼすほどの力を持つ危険な塔なのだとしたら… |
リタ | …そんな物が存在するなんてにわかに信じがたい話だけど…でももし、その話が本当なら |
リタ | カノンノのネックレスを奪われたらあいつが、世界を滅ぼすだけの力を手に入れてしまうって事よね |
リタ | そんな事、させるわけにいかないわ |
| チャキ… |
リオン | … |
ユグドラシル | 私に剣を向けるとは、愚かな…まだ楯突こうとしているのか… |
リオン | … |
ユグドラシル | こいつらの仲間のふりなどする必要はないぞ |
リオン | … |
ユグドラシル | リドウに協力していた貴様など人間達は信用しない |
カノンノ | 何て事言うの!リオンは私達の仲間──… |
ユグドラシル | 言葉では何とでも言えよう。しかし、こいつがお前達を欺いていた事実は変わらない |
リオン | … |
scene2 | 孤高の剣士 |
ユグドラシル | リドウに協力した時点でお前の手は既に汚れている |
ユグドラシル | その女のネックレスを持って私の元へ来い |
リオン | … |
スタン | おい、ユグドラシル!勝手な事を言うな! |
スタン | リオンの手は汚れてなんかない… |
スタン | リオンはルイニス街のみんなを救いたかったから、リドウに従っていたんだ! |
スタン | 何があろうとリオンは俺の友達で、俺達の仲間だ! |
カノンノ | そうだよ。これまでずっと一緒に頑張って来たんだから! |
リタ | リオン、こんな奴の言う事なんか耳を貸す必要ないわ |
ミラ | 私達はリオンを信頼している。それはこれからも変わらない |
アスベル | ユグドラシルの言葉に耳を貸すな。お前の居場所は、ここにある! |
リオン | … |
ユグドラシル | …とんだ茶番だな |
リオン | ユグドラシル。お前の言う通り僕はリドウに従った |
リオン | だが、勘違いするな。世界を破滅させようとする奴らに同調した覚えはない! |
| チャキ… |
ユグドラシル | くく… |
リオン | 何を笑っている |
ミラ | …! |
リッド | どうした? |
ミラ | カノンノ、避けろ!! |
カノンノ | !? |
| |
リドウ | うおおおおっ! |
| ガキイィィンッ! |
リオン | リドウ…貴様!ぐっ… |
カノンノ | リオン! |
アルヴィン | リドウ、お前まだ…! |
リドウ | ネックレスを…そいつを寄こせ!! |
ルーク | ちっ、カノンノ下がれ! |
リドウ | 俺の邪魔を──…するなああああっっ! |
scene3 | 孤高の剣士 |
リドウ | ぐうぉぉぉ…っ |
リドウ | 俺はぁ…っ、真の平和のために…! |
ルーク | お、おい!まだ、やろうってのかよ!? |
リドウ | その…ネックレスは…俺達のものだ! |
リドウ | 死ねえええっ! |
カノンノ | いやっ…! |
ユグドラシル | … |
リドウ | なっ…! |
ユグドラシル | 「俺達の」と言ったな、リドウ。だが…今邪魔なのは、貴様の方だ |
カノンノ | えっ!?きゃああっ!? |
アスベル | カノンノ!? |
リッド | っと…、カノンノ、大丈夫か? |
カノンノ | だ、大丈夫 |
ミラ | ユグドラシルに突き飛ばされなければリドウの攻撃が当たっていた…。カノンノを助けたのか? |
アルヴィン | ユグドラシルの奴何を考えてやがる…? |
リドウ | な、何故… |
ユグドラシル | リドウ、このままでは私の計画が狂うのだよ |
ユグドラシル | 悪いが、ここで消えてもらおう |
リドウ | 何!? |
| キィィイイン──… |
ルーク | ユグドラシルの奴何やってんだ!? |
アスベル | あの位置だとリオンが攻撃に巻き込まれる! |
カノンノ | そんな…!リオン!逃げてっ! |
ユグドラシル | まずは一つ |
| ズドオオオオオンッッ! |
リドウ | ぐおおおおおっっ! |
リオン | ぐああっ! |
リタ | !リオン…!? |
リッド | おい!ユグドラシルの攻撃で、崖が崩れるぞ! |
| ズズズ…! |
アルヴィン | みんな、下がれ!ここだと全員崩落に巻き込まれる! |
スタン | リオン!!早くこっちに… |
リドウ | うおおおおおっっ!! |
リオン | …!? |
リドウ | せめて、あの女と…、大精霊を巻き添えにしてやる!おおおおおっ──! |
ルーク | リドウ!あいつ、まだ立ち上がれるのかよ! |
リッド | くそっ、カノンノを狙ってこっちに… |
リドウ | うおおおお! |
リオン | くっ…そうはさせん!はああっ! |
| ガキィィンッ── |
リドウ | リオンっ!お前…っ邪魔をするなあああ! |
アスベル | リオンっ!?このままじゃ、お前まで…! |
スタン | リオン!早く逃げ──… |
ユグドラシル | もういい、下がれリドウ。塵芥となり、消えるがいい── |
| ズドオオオオオンッッ! |
| |
| カラ… |
アスベル | … |
アスベル | !? |
リタ | 何よ、これ…崖がまるごと崩れ落ちてるじゃない…! |
カノンノ | そ、んな…リ…オン…?リオンは!? |
ルーク | リオンも、リドウもいねぇ…っ!おい、リオンはどこいったんだよ! |
スタン | まさか、リドウもろとも崩落に巻き込まれて… |
| |
ユグドラシル | 初めから、こうしておけばお前達のくだらない戯言に付き合う事もなかったな |
ユグドラシル | まぁ、目的のものは手に入れたのだ。お前達には感謝しよう |
| チャリ… |
ミラ | あれはっ!カノンノのネックレスが何故奴の元に…! |
リッド | カノンノを突き飛ばした時にネックレスを奪っていたのか!? |
ユグドラシル | くくっ…これさえ手に入れば、お前達に、用はない |
ミラ | 待て、ユグドラシル! |
スタン | リオン!リオン!! |
リタ | 嘘…でしょ?そんな…こんな事って…っ |
カノンノ | リオンっ… |
scene1 | 友を信じる |
全員 | … |
アスベル | リオン… |
アルヴィン | この高さからでは… |
スタン | … |
スタン | …いや、リオンは生きてるはずだ。すぐ捜しに行こう! |
リッド | 崖が吹っ飛んじまったんだぞ?あれじゃ誰だろうと、助からねぇよ… |
スタン | 俺はリオンの事を信じてる。あいつは生きてるはずだ |
ミラ | スタン…気持ちはわかるが… |
スタン | あのリオンがこれくらいの事で死ぬわけないだろ! |
ルーク | … |
カノンノ | 私も、そう思いたい。リオンはきっと生きてるよ |
アスベル | スタン…カノンノ… |
スタン | 俺は…リオンを捜してくる! |
リタ | ちょっと!スタン!? |
リッド | …ん?何だありゃあ |
ミラ | どうした、リッド |
リッド | 海が凍ってないか?ずっとあっちの方まで… |
ミラ | ふむ、確かにそんな風に見えるが…。ともかく、下に降りてみよう |
scene2 | 友を信じる |
| ザッパーン |
カノンノ | いないね…リオン |
スタン | 捜しきれてないところだってある!俺は諦めないぞ |
アルヴィン | … |
リタ | 本当に凍ってるのね… |
リタ | …でも、変ね。この気温で海が凍りつくなんて… |
リッド | 普通の氷じゃねえって事か。だとしたら、大精霊の力で… |
ミラ | …いや、違うぞリッド。あの氷…大精霊によるものではない |
ルーク | じゃあ何だってんだよ、ミラ |
ミラ | あれはおそらく、ルイニス街の氷と同じものだ |
ミラ | 普通の氷でもなく、大精霊によるものでもないとしたら、そう考えて間違いはないはずだ |
スタン | ルイニス街の…。でも、どうしてこんなところに? |
アルヴィン | …もしかすると、海もリドウが凍らせたのかもな |
ルーク | どういう事だよ? |
アルヴィン | ユグドラシルは、南東の方に飛んで行ったろ? |
アルヴィン | ここから南東の方角には島が見える。ユグドラシルはあの島に向かった可能性が高い |
アスベル | ミラ、ユグドラシルの持ち去ったネックレスの気配は… |
ミラ | …そうだな。あの島の方から感じる |
アルヴィン | ユグドラシルもリドウも零の塔について話していた |
アルヴィン | リドウもネックレスを奪ってあの島に行くつもりだったとしたら… |
アルヴィン | 零の塔はあの島にあるんじゃないか? |
リッド | リドウもあの島に行くため、海を凍らせていたってわけか |
リタ | それだけのために、わざわざこんな芸当をやってのけたっていうの? |
リッド | …氷は島まで繋がってるみたいだな |
ルーク | って事は俺達も歩いて島まで行けるって事だろ |
ルーク | どうせユグドラシルは追わなきゃなんねーんだ。ちょうどいいじゃねーか |
リタ | ちょっと、島まで氷の上を歩いて行くっていうの? |
アスベル | 確かに危険かもしれないが…。船を手配している猶予はない。ここを進むしかないだろう |
カノンノ | うん…。そうだね |
スタン | …みんなは、ユグドラシルの行方を追ってくれ |
スタン | リオンは…俺が必ず見つける |
アルヴィン | 俺も残ろう |
アスベル | アルヴィン… |
アルヴィン | アスベル、お前さん達は、ユグドラシルを追うっていう大事な仕事が残ってんだろ? |
アルヴィン | こんな状況だが、やらなきゃいけない事は見失っちゃあいけないぜ |
アルヴィン | リオンならそっちを優先しそうだ。たぶん、だがな |
アルヴィン | だから…リオンの事は俺達に任せてお前達はユグドラシルを追ってくれ |
アスベル | …ああ、そうだな。リオンの事は頼んだ、アルヴィン |
カノンノ | でも… |
ミラ | カノンノ、ここはスタンとアルヴィンに託そう |
スタン | 絶対にリオンを見つけて、ルイニス街も元通りにしてみせるさ! |
カノンノ | スタン…。リオンをお願い |
スタン | ああ、任せてくれ |
リタ | ユグドラシルはネックレスを手に入れた…って事は、いつ例の塔を復活させてもおかしくないのよね |
ミラ | ああ。一刻も早くあの島へと向かうべきだろう |
ミラ | ユグドラシルを止め、この世界を守らねば |
ルーク | くそっ、何だよムカつく!何だってこんな事になんだよ! |
ルーク | ユグドラシルの奴、会ったらぜってーぶっ飛ばしてやる。リオンの分もな! |
リッド | …だな。すぐにユグドラシルを追いかけるぞ |
scene1 | 海上の氷 |
アスベル | この氷、思ったより頑丈だな |
リッド | 寒くないのに氷の上を歩いてるって変な気分だ |
リタ | もしルイニス街の氷と同じなら…炎でも溶けない、削る事もできない、って事よね… |
ミラ | ここら辺りが海岸と島の、ちょうど中間か |
アスベル | そうだな |
カノンノ | … |
アスベル | カノンノ、この辺りからは氷の幅が狭くなっている。もっと真ん中を歩いた方がいい |
ルーク | 海もここまで来ると深そうだな。急に氷が割れたりして海にドボンとかねーだろうな |
リッド | 不吉な事言うんじゃねえよ、全く… |
ルーク | 何だよ、ビビってんのか?冗談に決まってんじゃねーか。さっさと走って抜けちまおうぜ! |
リタ | ちょ、ちょっと!急がなきゃいけないのはわかるけどもう少し慎重に… |
| ピシッ! |
カノンノ | 何の音…? |
アスベル | まさか… |
| ピシッ! |
| ピシピシピシッ! |
ミラ | 氷にひびが…! |
リッド | 見ろ!後ろの氷が崩れてるぞ! |
アスベル | ここも危ない──…みんな、急いで島へ! |
カノンノ | う、うん! |
scene2 | 海上の氷 |
| ビシッ! |
| ビシビシビシッ!! |
リタ | はあ…はあ…ちょっと…。どうなってんのよ! |
ルーク | じょ、冗談じゃねーぞ!溶けたり削れたりしねーんじゃなかったのかよ! |
| ビシィッ! |
| バキバキバキッ! |
ミラ | くっ…!後ろだけでなく、前まで崩れ始めたか! |
リッド | みんな、ついて来れるか?カノンノは? |
カノンノ | うん…平気… |
| ピシッバキバキバキッ! |
カノンノ | きゃあっ!? |
アスベル | …っ!カノンノ! |
カノンノ | だ、大丈夫っ!ちょっと足を取られただけ! |
リッド | よし、もう少しだ! |
アスベル | いや、待て! |
リタ | …氷が割れてるわ。先がつながってない…これじゃ先に進めないわ! |
ミラ | …。これだけ氷が残っていればギリギリ行けるか… |
アスベル | ミラ? |
ミラ | 四大よ、私に力を貸してくれ。ウンディーネ! |
カノンノ | わあ…!氷が集まってくる…! |
リタ | 水流で氷を押さえてくれてるのね |
ミラ | ウンディーネの力で前方の氷を留めている内に、みんな渡れ! |
アスベル | わかった!みんな、急ぐんだ! |
scene1 | 孤島の地下 |
ミラ | …海上の氷は、だいぶなくなってしまったな… |
ルーク | ったく…けど、何とか島にたどり着けたじゃねーか |
リッド | ふー…。ミラがいてくれてよかったぜ… |
リタ | はぁ…はぁ…。どうなる事かと思ったわ。スタン達も大丈夫かしら |
アスベル | 比較的岸の側を捜しているだろうから異変を感じたら、すぐ避難しているとは思うが… |
カノンノ | ミラ、さっきはありがとう。ウンディーネにもお礼を言いたいんだけど… |
アスベル | ああ、そうだな |
ミラ | お前達の声は四大にも届いている。ウンディーネも力になれてよかったと言っているよ |
ルーク | それにしても何で急に氷が溶けだしたんだ?ルイニス街の氷と同じなんだろ? |
ミラ | そのはずだが何故… |
アスベル | あの氷が溶けるきっかけがあったのだろうか? |
リタ | リドウが仕掛けた氷なら本人がいなくなった事で溶けた…とか? |
リッド | …ルイニス街の氷も溶けてたりしてな… |
ミラ | …そう願いたいが…。今はユグドラシルを追う事に専念しよう |
ルーク | っと、あぶねーな。地面に足を取られて、歩きにくいったらねーぜ |
リタ | どこもかしこも泥みたいね。まるでつい最近、海の底から盛り上がって出来たみたい |
アスベル | 新しく出来た島なのか…?ユグドラシルはこの島に向かって行ったんだよな? |
リッド | 塔、なんて見当たらねえぞ… |
ミラ | だが、ネックレスの気配は近い。少なくともユグドラシルは、この島にいるはずだが… |
ミラ | …! |
アスベル | ミラ? |
ミラ | この気配…!マナの急激な流れを感じる |
カノンノ | どういう事? |
ミラ | おそらく、ユグドラシルが、ネックレスに宿る大精霊のマナを奪い始めたのだ |
アスベル | !?何だ、今の光は! |
| ゴゴゴ… |
カノンノ | この音…。地鳴り、なのかな? |
| |
| ゴゴゴゴゴ! |
リタ | 何、地震!? |
リッド | でかいぞ! |
ルーク | お、おい、この地震も、ユグドラシルのせいなのか?! |
| ズズズ… |
カノンノ | 収まる気配がないね… |
リタ | 完全に揺れが収まるのを待ちたいところだけど…。悠長にしてる場合じゃないわね |
アスベル | ああ。ユグドラシルを捜さなければ |
scene2 | 孤島の地下 |
| ゴゴゴ…! |
カノンノ | また大きな揺れが…! |
ルーク | 今度のもでかいぞ! |
| ゴゴゴゴ…!! |
アスベル | くっ…! |
| ズズ… |
リタ | …収まった? |
リッド | いや、まだ細かい揺れが続いてる |
リタ | この調子だと、地震は当分収まらなさそうね |
ミラ | …。この辺りなのだが… |
アスベル | ネックレスの気配か? |
ミラ | ああ |
リッド | ここって…岩が連なってるだけだな |
ルーク | ユグドラシルなんか、どこにもいねーぞ。塔も見当たらねーし |
ミラ | しかし、確かに気配を感じるのだ。この下からな… |
リタ | 下!?って事は地下にユグドラシルがいるっていうの? |
ルーク | 塔に行ったんじゃねーのかよ? |
ミラ | 気配からすれば、この下で間違いない |
アスベル | …という事は、どこかから地下に行けるところがあるのかもしれない。手分けして──… |
リッド | おい、アスベル。わざわざ捜すまでもなさそうだぜ。こいつを見てみろ |
リタ | 何よ、ただの岩じゃない。…あら? |
リタ | 割れ目があるわね。どうにか人が一人通れそうな…。っていうか── |
リタ | よく見たらこの割れ目…自然に出来たんじゃないみたい |
リタ | ひょっとして、まさか… |
リッド | ユグドラシルはこの先にいるって考えてもよさそうだな |
アスベル | よし、降りてみよう。みんな、気を付けてな |
| ガルル… |
カノンノ | !?魔物の唸り声が聞こえるよ |
ルーク | こんなところにも魔物がいるってのかよ!? |
| |
| ガルルル! |
リッド | ちっ、やっぱりか!魔物が飛び出してきやがった! |
アスベル | 倒して先に進む以外、道はない。行くぞ! |
scene1 | 零の塔 |
| ズズ…ズズズ… |
| ピチャン…ピチャン… |
リッド | …っ!つめてぇ…。水が顔に来やがった |
カノンノ | 揺れが起きる度に、水滴が落ちてくるね |
リッド | しかもしょっぺえな。海水か? |
アスベル | 周りは海だからな…。あり得るだろうな |
リタ | 人が歩けるように作られてる… |
リッド | ん?どうしたんだ、リタ |
リタ | ユグドラシルが岩を割ってこの通路を作ったって思ってたんだけど、違うみたい |
リタ | 足場があるのよ、この通路。あいつなら飛べるから足場なんてなくたっていいじゃない? |
アスベル | それなら…。リドウが作った通路かもしれないな |
アスベル | 一人でこの岩場に通路を作るのは難しいと思うが… |
ミラ | リドウに会ったばかりの時は、部下がいたようだった。その者達に作らせたのではないだろうか |
リタ | 何にしても、ろくな事しない連中よ。この先も何があるかわかったもんじゃないわ |
アスベル | ああ…。慎重に進もう |
| |
ミラ | む…。開けた場所に出たな… |
アスベル | ここは…遺跡か? |
カノンノ | 薄っすらだけど、灯りが点いてる… |
リタ | これが、ユグドラシルが言ってた零の塔なの…? |
ルーク | んなわけねーだろ。ここ地下なんだぞ。塔ってのは、地上に建ってるもんだろ |
リタ | そうとも言い切れないわ。文献じゃ零の塔は大昔に封印された事になってる |
リタ | 封印されるような物は大抵の場合、同時に慎重に隠されるものよ |
リタ | もし塔が文献通りのものなら、誰も見つけられない場所… |
リタ | 海の底や地の底に隠す事だって、考えられるわ |
リタ | ユグドラシルは、大量のマナで塔を復活させるって言ってた。そしてあいつはここに来た |
リタ | もしあいつがここで、ネックレスを使っているとしたら… |
カノンノ | ここが…零の塔の中… |
ミラ | 大精霊の気配は、さらにこの下から感じる。ここは、埋もれてしまった塔の上層なのかも知れないな |
ルーク | まだ下があるのかよ… |
ミラ | ああ、おそらくな。下に降りる方法を探そう |
リッド | 扉があるぞ。おっと、これは上に行く階段だな |
カノンノ | みんな、こっちにまだ下に降りられる階段があるよ! |
アスベル | …よし、とにかく、下に行ってみよう。ユグドラシルに追いつかなくては |
リッド | そうだな。こうなったら、とことん行くしかねえ |
scene2 | 零の塔 |
カノンノ | 降りて来たけど…。何だろう、この部屋。すごく嫌な感じが… |
ミラ | む、これは!? |
カノンノ | どうしたの、ミラ? |
ミラ | 大精霊の悲鳴が聞こえる…! |
リッド | おい!みんな、向こうを見てみろ! |
アスベル | ユグドラシルがいたぞ! |
ルーク | やっと見つけたぜ。今度こそ逃がさねえ! |
リタ | ユグドラシルがネックレスをかざしている球体は何…って… |
リタ | まさか、あれは魔核!? |
ユグドラシル | ほう…。ここまで来たのか… |
ユグドラシル | だが…もう遅い |
リッド | 何をして…、くっ…!ネックレスの光が強くなっていくぞ! |
リタ | 魔核に大精霊のマナを注ぎ込んでるんでしょ!それしか考えられない! |
ミラ | マナを吸い取られた大精霊が、苦悶の叫びを上げている…! |
カノンノ | ひどい…もうやめて! |
ユグドラシル | 大人しく眺めていろ。零の塔、復活の瞬間を… |
ルーク | ふざけんな!今すぐそのネックレスをこっちに返しやがれ! |
ユグドラシル | マナの注入が終われば、こんな物いつでも返してやる |
リタ | その前に返せって言ってるのよ! |
アスベル | ユグドラシル!お前の計画はここで止めてやる! |
リッド | 世界の破滅なんてさせねぇ! |
ミラ | 塔の復活などさせない!大精霊達も返してもらうぞ! |
| |
アスベル | みんな行くぞ! |
ユグドラシル | くくっ…無駄な事を… |
scene3 | 零の塔 |
ユグドラシル | … |
ミラ | 今度はどうだ…? |
ユグドラシル | 私の力には到底及ばない…。何故、それが理解出来ない? |
リタ | そんな…! |
カノンノ | 信じられない… |
リッド | 化け物か、こいつ… |
| ズズズ… |
| ゴゴゴゴ!!! |
ルーク | うおっ!また地震かよ!? |
リタ | しかも今までの中で、一番大きいわ! |
アスベル | 何が起きているんだ!? |
ユグドラシル | …これで全ての準備は整った |
ミラ | 魔核が輝いて…!?まさか、マナの流入が終わってしまったというのか!? |
ユグドラシル | くくっ、これは用済みだ。返してやろう |
| ヒュンッ!カツン… |
| カラカラ… |
カノンノ | あ…! |
リタ | ネックレスの光が消えかかってる…! |
ミラ | …大精霊の宿るネックレスをぞんざいに扱うなど! |
| ゴゴゴゴ!!! |
カノンノ | きゃっ! |
ユグドラシル | 遂に零の塔が、復活の時を迎えたのだ |
ユグドラシル | 世界はもはや、破滅から逃れる事は出来ない |
カノンノ | どうしてそこまでして、世界を滅ぼそうとするの!? |
ユグドラシル | ふっ… |
リタ | !?ちょっと、待ちなさいよ!ユグドラシル! |
| ズゴゴゴゴ…! |
ミラ | また地震が…! |
| |
| ゴゴゴゴッ |
| ズドンッ、ガラガラガラ… |
アスベル | 壁が崩れてる!? |
| ドドドドド…! |
リッド | 崩れたところから、水が入って来てるぞ! |
リタ | まさか…海水!? |
アスベル | ユグドラシルは上に向かっていた。とにかく今はあいつを追いかけよう! |
リタ | そうね。みんな、登るわよ! |
| |
| ビシッ! |
| ガラガラガラ! |
| ドドドドド…! |
ルーク | くそっ、あちこち崩れて、どんどん水が入ってきやがる! |
アスベル | すごい勢いだな…。早く上に向かわないと溺れてしまうかもしれない… |
リッド | こっちだ!この扉の先に上に向かう階段が…! |
| ガシャッ! |
リッド | っ!?開かねぇ! |
リッド | この部屋って最初に入ってきた部屋だよな? |
カノンノ | うん!登りの階段がこの先にあったよ! |
ミラ | 鍵が掛かっているのか? |
リタ | 塔にマナを注入した事で、塔の設備が機能し始めたのかも…。それともユグドラシルの奴が… |
| ドドドドド…! |
ルーク | おいおい、どうすんだよ。立ち止まってる間に、ここも水に浸かっちまうぞ! |
アスベル | 仕方がない…。階段の先がどうなっているのかもわからない。これ以上は危険だ |
アスベル | ユグドラシルを追うのは一旦中止だ。元来た通路で地上に出よう! |
ミラ | アスベルの言う通り、今はこの状況から脱する事が先決だ |
リタ | 塔から出るわよ!みんな急いで! |
| |
リッド | 何とか…、外に出られたみたいだな |
リタ | 助かった… |
カノンノ | はぁ…はぁ… |
アスベル | カノンノ、大丈夫か? |
カノンノ | う、うん… |
| ゴゴゴゴゴ…! |
ルーク | また、でかい揺れがっ! |
| ズズズ…! |
| ガラガラガラ…! |
アスベル | 岩が崩れる!みんな、離れるんだ! |
リタ | うっ、立ってられな… |
リタ | …!ちょっと、あれ…! |
カノンノ | 何か、地面から出てくる! |
| |
| ドドドドドド…!! |
| ドドド…!! |
| ドオオオン! |
| |
リッド | あれは… |
ルーク | まさか… |
ミラ | 塔…? |
アスベル | こ、これが… |
カノンノ | … |
リタ | 零の塔…! |
Name | Dialogue |
scene1 | 上へ |
カノンノ | …これが… |
アスベル | 零の塔… |
リッド | こんなでっけえのが地中に埋まってたのか… |
リタ | … |
リタ | 信じられない。巨大な塔が丸ごと魔導器だなんて… |
ミラ | 辺りのマナの流れが変わった。何なのだ、これは… |
ミラ | 胸騒ぎがする。やはりただの塔というわけではないようだ |
アスベル | この塔が「世界を破滅させる」とユグドラシルは言っていたな。兵器を搭載してるという事だろうか |
リッド | それらしいものは見えねえが… |
カノンノ | … |
ルーク | ? |
ルーク | どうした、カノンノ |
カノンノ | 私達が塔から脱出する時、壁や天井が壊れてきて、危なかったよね? |
リッド | ああ。ボロボロ崩れてきたな |
カノンノ | 私には、あの時壊れていたはずの塔の壁が直っていくように見えるんだけど… |
ルーク | はあ?何言って… |
ルーク | って、おい、マジだ!壁の穴が勝手に塞がってってる! |
リッド | 信じられねえ。どういう事だ? |
ルーク | 自分で自分を直してんのか?何なんだよ、この塔。気持ち悪いぜ |
アスベル | あれは塔の力なのか…? |
リタ | どうやら、そのようね。自己修復機能を備えた魔導器なんて聞いた事もないけど |
ミラ | 今まで見てきた魔導器とは一線を画す存在… |
ミラ | 塔自体を攻撃しても無意味という事か |
リタ | ええ。修復が追いつかないほど強力な攻撃でも出来れば別でしょうけどね |
リタ | どのみち、魔導器を止める一番確実な方法は他にあるわ |
ミラ | あの部屋にあった、魔核を壊すのだな |
リタ | 魔核は魔導器の心臓と頭脳を合わせたようなものよ。あれがなければ魔導器は動かない |
リタ | …二つとない貴重な古代の遺産、本当ならそんな事したくない |
リタ | …けど、仕方ないわ |
カノンノ | 魔核って、ユグドラシルが大精霊のマナを注入したあの大きい球体の事だよね |
アスベル | そうか… |
アスベル | よし、なら俺達がやるべき事は決まったな |
ミラ | ああ。塔の魔核を壊すぞ。皆がいる、この世界を救うために |
カノンノ | うん、私も頑張るよ! |
リッド | 目的が決まったんならここで立ってても仕方ねぇ。さっさと行こうぜ |
ルーク | よし、みんな俺に続け!すぐに上まで登って…って |
ルーク | おいリッド!先に行くんじゃねー! |
ミラ | 私達も続くぞ |
scene2 | 上へ |
リッド | ここは… |
ミラ | 最初に入った場所とは全く異なる…。ここが塔本来の最下層部なのだろう |
ルーク | ずいぶん広いな。天井もすげー高いし |
リタ | 広いのはここが基部だからよ。さっき、塔の外観を見たでしょ?基部が大きく、上に行くほど細かった |
リタ | 当然、上に行けば行くほど、内部も狭くなっていく理屈ね |
リタ | 魔核のあったところはここよりかなり狭かった。という事は… |
ルーク | すげー上の方って事か?マジかよ… |
アスベル | 奥に階段が見える。あれを登っていけば、塔の上に行けるかもしれない |
ミラ | そうだな。かなり高さはありそうだが、急ごう |
| |
アスベル | しかし、静かだ。何が起きてもおかしくないと覚悟していたんだが… |
ルーク | 全くだ。気合入れてた分、拍子抜けだっつーの |
リッド | ユグドラシルの奴、何でオレ達に何もしてこねぇんだろうな |
カノンノ | 私達の事、邪魔なはずだよね? |
リタ | 相手にする価値もないって思われてるのかもしれないわよ |
ルーク | 無視かよ。それはそれで腹が立つっつーの!ユグドラシルの野郎! |
アスベル | それよりも気がかりなのは… |
アスベル | 塔は起動されてるよな。なのに何故、何も起きてないんだ? |
リッド | ! |
リッド | そう言やそうだな…。あんなに世界破滅とか言ってたのにな |
アスベル | この静けさが、かえって不安にさせるな… |
ミラ | ここまで来る間に何も起きなかっただけで、これから何があるかはわからないぞ |
リタ | そうね。それに例え塔の機能を止められたとしても… |
リタ | ユグドラシルを野放しにしておいたら意味ないわ。あいつの事だからまた何をしでかすか… |
リッド | ああ。塔の稼働を止めた後は、ユグドラシルを止める。絶対に、だ |
カノンノ | うん。この世界を守る。大精霊のみんなと、約束したから |
| チャリ… |
カノンノ | …あれ?ネックレスが… |
ルーク | おいカノンノ、そのネックレス、何かボーっと光ってんじゃねーか |
カノンノ | まさか、これって… |
ミラ | リプリカームだな。カノンノの手の内に戻った事で、大精霊の力が徐々にだが、戻りつつあるようだ |
ミラ | 心配したが、大精霊達が無事なようで何よりだ… |
リッド | ん?何だ、この光… |
アスベル | …? |
アスベル | これは…宙に浮いて… |
ルーク | よっと、…。掴めないな。実体はないって事か |
リタ | 大精霊の力とかではないわけ? |
ミラ | 彼らの力ではない事はわかる。皆まだ、動ける状態ではないからな… |
アスベル | …。悪いものではなさそうだ。特に異常も見当たらない |
リタ | 気になるけど調べてる時間もないし、今は放っておいて先行きましょ |
リッド | そうだな。登りながら考えりゃいい |
リッド | っと、ん…? |
| |
| グルルルルル… |
カノンノ | 魔物!こんなところにまでいるなんて… |
リタ | こんな塔の中にいる魔物…どんな力があるかわからないわ。みんな、気をつけて! |
アスベル | そう簡単には登らせてはくれないか |
アスベル | みんな、行くぞ! |
scene1 | これまでの旅路 |
アスベル | 何だ、ここは… |
カノンノ | 階段…?ううん、橋かな…? |
リタ | ここを進めっていうの?落ちたら助からない高さよ |
リッド | それしかなさそうだが…。しかし、あの真ん中にある青い光のゲートみたいなのは何だ? |
リタ | 何かの装置みたいね。移動用かもしれないけど、侵入者撃退用の仕掛けかも |
アスベル | どうだろう、探せば他の通路もあるかもしれないが… |
ルーク | んな事言ったって、迷ってる時間はねーんだろ? |
ルーク | ためしに近づいて様子を見てみりゃいいじゃねーか |
アスベル | 早まるなルーク!俺が行く |
アスベル | みんなはここで待っててくれ |
ルーク | なっ、おいアスベル!一人でカッコつけようったってそうはいかねーからな! |
アスベル | あっ、ルーク! |
ルーク | …ほ、ほらみろ。何ともねーじゃねーか |
ルーク | みんな早く来いよ! |
ミラ | 相変わらずだな、ルークは。行くぞ |
アスベル | みんな無事か?さっき、光のゲートの下あたりでちょっとフラッときたんだが… |
カノンノ | そういえば、私もほんの少し… |
リッド | 足場が悪いわけじゃねぇし…。気味が悪ぃな |
リタ | 自己修復すらやってのけるような塔の中だし、変な事されてなきゃいいんだけどね |
ルーク | どうせもうやっちまったんだし、今さら気にしたって仕方ねーだろ。うだうだ言ってねーで行こうぜ |
アスベル | そうだな。ありがとう、ルーク |
scene2 | これまでの旅路 |
リタ | それにしても、ルーク。さっきは何もなかったからよかったようなものの… |
ルーク | んだよ、お前らがぐずぐずしてっからだろ |
リタ | だからって後先考えなしに動けばいいって事にはならないでしょ |
ルーク | そのお蔭で余計な時間かけずに来れたんじゃねーか。感謝されたっていいくらいだっつーの |
リタ | それで周りに気苦労かけてりゃ世話ないって言ってんの |
ルーク | っせーな。いつも無茶ばっかしてるやつにんな事言われたくねえぜ |
リタ | 無茶ってどこがよ |
ルーク | 忘れてんじゃねえ!グーベック山でルナとやりあった時だっつーの |
ルーク | 術で注意引いて自分を囮にしてたじゃねーか。どっちが無茶だっての |
リタ | …あ、あれは…あの時はああするしかなかったんだし、しょうがないじゃない… |
ルーク | しょうがねーじゃねえだろ |
ルーク | 一人で危ない真似すんじゃねーっての! |
リタ | その言葉、そっくりあんたにお返しするわ |
| |
カノンノ | … |
ミラ | カノンノ、何を笑っているのだ? |
カノンノ | やっぱり、日に日にみんながすごく仲良くなってるなぁって思って |
ルーク・リタ | !? |
カノンノ | 仲間との絆があるからこそ、大変だった事や辛かった事もこうして話せるんだよね |
カノンノ | クレスさんも、ミラも前に言ってたよね |
カノンノ | 特別な話をしたわけじゃないけど、いつの間にか背中を預けられるほど信頼してたって |
カノンノ | それって、今のルークとリタみたいな感じなんだろうなって思ったら、嬉しくて… |
アスベル | 仲間、か |
リタ | やめてよ、そういうの |
リタ | そりゃ、信用してなきゃそもそもこんなとこまで一緒に来ないけど… |
リッド | 仲間とか、よくわかんねえけどこうしてここまで来てんだしそうなんじゃねえの? |
カノンノ | …リッドは私が大精霊の暴走を鎮められるか、不安になってた時、私の背中を押してくれたよ |
カノンノ | そういうのが仲間って事だよね |
リッド | そうだったっけか…?覚えてねぇな… |
カノンノ | セルシウスの暴走を鎮める時にね |
カノンノ | ほら、腹をくくる、だよ!リッド |
リッド | ! |
リッド | よく覚えてんな、カノンノ |
カノンノ | えへへ、勇気をもらった言葉だからね |
ミラ | そうだな。セルシウスの時は、リッドにもカノンノにも助けられた。改めて、礼を言う |
リッド | ガラじゃねえけど…そう言ってもらえて嬉しいぜ |
アスベル | 俺達はあの時、リッド達と分断されて、気が気じゃなかったな… |
リタ | そうね、いくらファイアボールを氷に当てても焼け石に水だったし |
リタ | そういえば大精霊の話で思い出したけど、クロノスの暴走を鎮めに行った時… |
リタ | ミラ、ルークの事、褒めてたわよね。短気でわがままだが、剣の腕は立つ、…だっけ? |
ルーク | おい!何だよそれ。短気でわがままって、全然褒めてねーじゃねーか! |
ミラ | いや、褒めているぞ?お前はまだ若い。未熟な部分があるのは当然だ |
ミラ | たとえ未熟な部分があったとしても他の者と協力しあい、乗り越えていく。精霊も、それを見守っているぞ |
リッド | そうだな。オレ達は、欠点だらけの自分達を支えあって何とか生きてるっつー事だ |
ルーク | …なんかみんなして俺を言いくるめようとしてねーか? |
リタ | ま、ルークは置いとくとして、ミラ、あんたには苦手とかあるの?想像がつかないけど… |
ミラ | 勿論だ。私もまた未熟… |
ミラ | 以前、仲間を頼るという事を、ジュードに教えられてな… |
ミラ | それに加えて、この世界の現状だ。未来はいかにあるべきか、常に学び、模索せねば |
ルーク | …なんかミラって悩みも小難しいのな |
リッド | 悩み、か… |
アスベル | リッド? |
リッド | いや、ふいにさ。リオンはずっとルイニス街の事で悩んでたんだな…と思い返しちまって |
アスベル | リオン… |
カノンノ | リオンは… |
カノンノ | … |
アスベル | リオンは命を懸けるなら、勝機のある方法を選ぶと、そう言っていたな |
カノンノ | …うん。あの時はリオンのお蔭で、ヴォルトの暴走を鎮められたけど… |
カノンノ | 今は… |
カノンノ | …… |
ミラ | カノンノ、今はスタン達がリオンを見つけてくれると信じて、前に進むぞ |
カノンノ | ミラ… |
リッド | あんな頑固で意志の強いやつが死ぬわけねえって |
ルーク | あいつならルイニス街の事が心配で死んでも生き返るんじゃねえか? |
リタ | そう、かもね… |
アスベル | スタン達、それにリオンを信じて── |
| |
アスベル | !? |
| ズ─ン…ズズズズズ…! |
カノンノ | 塔が…揺れてる… |
リッド | この揺れ、大きくなりそうだな… |
リッド | みんな、何かに掴まっとけ! |
| …ズズ…ガゴゴゴゴ… |
| |
| …ズズ………ズ…… |
ルーク | 落ち着いたのか? |
ルーク | !? |
ルーク | 光の粒が増えたぞ? |
カノンノ | この光…!集まりながら上へ登っていく…! |
ミラ | まずい、何がきっかけかはわからんが周囲のマナも急激に流れ始めたぞ…この動きは… |
ミラ | ! |
ミラ | まさか、いや…。しかし… |
カノンノ | ミラ? |
ミラ | どうやらこの光の粒は、マナが可視化されたもののようだ |
リッド | これがマナだって?ミラが見えてるものが、オレ達に見えてるって事か? |
ミラ | いや、私はマナが感じ取れるだけでこの目で見ているわけではないのだ |
ミラ | だが、私の感じ取るマナの流れと光の粒の流れを追ってみれば、全く同じ動きをしている |
ルーク | へぇ…こいつが…マナってやつなのか |
ミラ | 何故このような事になっているのかはわからないが、そうだと考えて問題なさそうだ |
アスベル | これも塔の力のせいなのだろうか…。もしそれがミラの言うとおりなら… |
アスベル | 俺達が今見ているように上の階層へと大気中のマナが移動している、という事だよな? |
ミラ | ああ、そうだ。しかし… |
ミラ | ここからは見えないが、上から降りてきているマナの流れも感じる |
リタ | ユグドラシルは魔核にマナを注入したわ。その魔核のマナじゃないの? |
ミラ | いや、それとは異なるマナの塊を感じるのだ |
ミラ | あの魔核からそのもう一つの塊へと、少しだがマナが降りてきている… |
リッド | 別のマナの塊だって? |
ミラ | 何なのだ、これは… |
リッド | そいつが何なのかはわからねぇ。でもよ、動きがあるって事は何かが起きる可能性はあんだろ |
リッド | さっさと確かめねぇとな… |
| |
ミラ | っ!?何だ…? |
ミラ | もう一方の塊に流れ込むマナの量が急速に増えたぞ…! |
| ! |
アスベル | …みんな、急いでくれ! |
アスベル | 塔のこの揺れと、マナの動き、嫌な予感がする── |
scene1 | 一撃 |
| ズズズズズ…ゴゴゴゴゴ… |
ユグドラシル | ほう…始まったか |
ユグドラシル | 零の塔よ、古に封印され忘却されたその真の力…いま存分に、解放するがいい |
ユグドラシル | …! |
ユグドラシル | くくっ、心地よい空気だ… |
ユグドラシル | 愚かな人間共め、所詮お前達など歪みの元凶… |
ユグドラシル | 自らの愚かさゆえにこの塔を作り、そして、その愚かさゆえに死ぬのだ。これが人の必然でなくて何であろう |
ユグドラシル | …私が望む理想の世界のために。まずはくだらん人間と、この世界を綺麗に片さなくてはな |
ユグドラシル | くっ…くくくくく… |
ユグドラシル | ハァーッハッハッハッハ! |
ユグドラシル | 私はここで、この世界の終焉を見物させてもらおう… |
| |
| ズズズズズ…ゴゴゴゴゴ… |
アスベル | …! |
アスベル | 光の粒の流れが速くなってきている…! |
リッド | まるで、何かに引き寄せられてるみたいだぜ |
リタ | これほどの技術が世界の破滅のためだなんて…! |
ミラ | リタ、この塔は長い間封印されていたのだったな? |
リタ | 少なくとも、古い文献にはそう書かれてる |
リッド | 封印するくらいならいっそ塔を木端微塵にふっ飛ばしといてくれればよかったんだけどな |
ミラ | 壊せないから、封じたのか…。この塔は余程恐ろしい代物なのだろう… |
アスベル | くっ…何だ!?急に光が…っ |
カノンノ | ──っ!眩しいっ! |
カノンノ | 光がどんどん集まって… |
| キュンッ!ギュイーンッ! |
ルーク | 今度は何だ?変な機械音がするぞ! |
リタ | 何、ルークっ!?うるさくて聞こえないんだけど! |
リタ | この上で一体何が起きてるっていうの!? |
| |
| ズズズズズ…ズゥン… |
アスベル | …止まった…のか? |
リッド | …っ!みんな、屈めっ! |
ルーク | えっ?どうしたんだリッド!? |
アスベル | あれは…っ! |
アスベル | 上の階層を見てみろ!…光が、溢れて…! |
アスベル | ──…っ! |
| キュイイィィン──… |
| ズドオオオオオンッッッ!!!! |
全員 | なっ!? |
| ゴオッ! |
リタ | わっ、風が! |
カノンノ | 飛ばされるっ!うう… |
ミラ | くっ! |
リッド | 掴まれ、リタ! |
アスベル | カノンノ、こっちへ! |
ルーク | ミラ、手ぇ出せ! |
| …ビュオオォォ… |
| |
カノンノ | 風は落ち着いたね… |
ルーク | 何なんだ、今のは……何がどうなったんだ |
アスベル | 上の階層から、砲撃のようなものが放たれていた…。まさか… |
リッド | ! |
リッド | おい、みんな!あっちの方角を見ろ! |
| |
ルーク | !?何だよ、あれ! |
リタ | 大地が燃えてる! |
リッド | 闇の中で、炎が燃え盛ってる一帯…。今の砲撃のせい、なんだろうな… |
アスベル | …ああ…。さっきの光の方角から言ってもそうだろう… |
リッド | これが、この塔の力か…! |
ミラ | くっ…!森だけではなく、民家にまで火が…! |
ミラ | あそこに住んでいた者は… |
ルーク | みんな、死んじまったって事か…!? |
アスベル | 村も、人も…一瞬で…っ… |
リタ | 何て力…これじゃ本当に世界が滅ぼされてしまう… |
アスベル | ! |
| |
アスベル | そんな事は、絶対にさせない…絶対にだ! |
カノンノ | アスベル… |
アスベル | すぐに出発しよう…!みんな、立てるか? |
ルーク | …なんか急に暗くなったな… |
リタ | あれだけ光の粒が浮いてたのに、攻撃した後、消えたわね |
ミラ | 消えたのは大気中のマナだけではない。魔核とは別のマナの塊も、だ |
| ! |
ミラ | 攻撃の瞬間にマナの塊が消え、その後大気中のマナの流れも止まった… |
リッド | 大気中のマナを使って攻撃したって事か? |
ミラ | いや、あくまであの攻撃は魔核に宿ったマナの一部を消費して撃たれているのだと思う |
ミラ | この辺りの大気中のマナ程度で、あのような破壊力を生み出す事は難しいだろう |
ミラ | おそらく大気中のマナは、攻撃を放つ力を溜める時に引き寄せられた副産物にすぎないのではないだろうか |
リタ | …連続して発射されないところを見ると、一回の発射につきそれなりの時間が必要みたいね |
リタ | 少なくとも、あたし達が塔の入口からここまで上ってくるくらいの時間はかかると見ていいはずよ |
リタ | 塔が地上に出てすぐに攻撃出来なかったのも、起動で力を使ったからだと思う |
アスベル | こんな攻撃が何発も撃たれたら、世界は破滅だ…! |
ルーク | なんて…なんて事しやがるんだ、許せねえぞ!ユグドラシルのやつ! |
アスベル | 落ち着け、ルーク |
ルーク | 落ち着いていられるかよ!俺達の世界を何だと思ってやがる! |
ミラ | ルーク、皆お前と同じ気持ちだ。誰もが危機感を抱いている…。同時にユグドラシルへの怒りもな |
カノンノ | 私も…どうにかしなきゃって思ってる。大精霊の力を…こんな…! |
アスベル | 俺達は、ここにいないみんなの気持ちも背負っている |
リタ | そうね。余計な事を考えている余裕もないわ。とにかく上を目指すわよ |
scene1 | 背中を任せて |
リッド | ふう、開けた場所に出たな |
リッド | ん?何だここは… |
ルーク | 雰囲気ががらりと変わったな。なんか気味が悪ぃ… |
リタ | 不気味なくらい静かね。やたら広いだけで何にもないし… |
アスベル | 奥に見える、あれが出口のようだな |
カノンノ | 階段はここで終わってるから、この部屋を抜けるしかないのかな |
アスベル | ああ、みんな、気をつけて進んでくれ |
| …ガコン…ガコン… |
アスベル | …ん、何の音だ? |
| |
| バキッ…ガコンッ…ガココッ |
リタ | あ、あそこ見て!壁が勝手に動き出してるわ! |
ルーク | 何だ、あれ…どうなってんだ? |
| ヒュンッ…ドゴッ! |
ルーク | うおっ!?危ねぇ!飛んできたぞ! |
リッド | 壁にはまっていた石板が外れた!? |
リタ | 何なのかはわからないけど…!あたし達を狙ってる…!? |
ミラ | …自己修復すら可能な塔だ。侵入者を排除する機能があっても不思議ではない |
アスベル | この塔ならではの防衛装置か…!そして、侵入者というのは… |
リッド | オレ達って事だろ…っと! |
| ズガガガガガッ |
カノンノ | きゃあぁっ! |
ミラ | カノンノ、こっちへ!みんな、早く出口へ急ぐんだ! |
リッド | おいおい、さっきの石板が扉に集まって…出口を塞いでるみてえだぞ! |
リタ | ちょっと!入口もだわ! |
アスベル | これは、俺達を閉じ込めようとしているのか…? |
アスベル | くそっ、しかしこう数が多くては…! |
ルーク | ただの石の分際で…この野郎!食らえ! |
| ガキイィン! |
| ドザァ…ッ |
ルーク | おい、こいつら破壊出来るぞ!こうなりゃ、手当たり次第に叩っ切ってやる! |
リタ | ルーク、飛んでくるやつはあたしらに任せて、あんたは出口の石板を! |
ルーク | 指図すんな!言われなくてもわかってるっつーの! |
ルーク | おりゃああっ! |
| ドザッ… |
ルーク | よし、行けそうだ!もう一回… |
ルーク | ん? |
| フシュウウッ |
ルーク | なっ…こいつ、元通りになりやがった!? |
リッド | …また自己修復かっ…!キリがねぇぞ |
ミラ | まともに壊していては体力を奪われるだけだ…! |
リタ | って言っても、このままじゃ部屋からは出られないし、何か方法は… |
アスベル | カノンノ!俺の後ろに隠れろ!リッドはそっちを頼む! |
カノンノ | う、うん! |
リッド | まずいな…。これじゃ袋のネズミだ |
リッド | ルーク、出口はどうだ? |
ルーク | 駄目だ、何度やっても塞がれちまう…! |
ミラ | リタ、私達はこっちからくる石板を防ごう。ばらばらに動くと防ぎきれない |
リタ | ああ、もー!数が多すぎるわ! |
アスベル | …くっ!俺達を的確に狙ってくるな。まるでどこかから見ているみたいだ |
リタ | …そう、よね。何でこんなに…ユグドラシルが見ているとか? |
リタ | それとも、塔が自律して動作している…? |
リッド | …!? |
リッド | リタ!あれを見ろ!何か変だ! |
リッド | ルークの少し左、その壁の上にあるあの石板だけが、動いてねえ |
ルーク | ん?本当だな。何かコレ光って…? |
リタ | ルーク、どいて! |
リタ | ファイアボールっ!! |
ミラ | !?石板の動きが一瞬乱れたぞ! |
カノンノ | その石板が関係あるのかな? |
ルーク | よおおし! |
| ザンッ… |
| ゴゴゴ…ギュルルルルルッ… |
| …ピシッ… |
カノンノ | あっ!動きが全部止まった…!? |
リッド | やべえ!石板にヒビが…!降ってくるぞ! |
| ドガガガガガッ…! |
scene2 | 背中を任せて |
ルーク | げほっ、げほっ…。すっげえホコリだ…やったのか? |
リタ | うん…。ごほっ…みたいね…さっきの光ってた石板が親玉だったってわけ… |
アスベル | みんな、…いっつ… |
カノンノ | どうしたの、アスベル? |
カノンノ | !手のところ、怪我してる… |
アスベル | カノンノ…心配いらない、大丈夫だ。みんなは、無事か? |
ミラ | こちらは無事だ。出口を塞いでいた石板も崩れた。これで先に進めるぞ |
| |
アスベル | やっと脱け出せたな。どうなる事かと思ったが… |
| |
| ウォーン!グルルルルル… |
全員 | ! |
リッド | 魔物か…。まるで待ち構えてたみてぇに出てきやがって |
ルーク | くそっ、休む暇もねえのかよ。…時間がねえ、倒しながら行くぞ! |
scene1 | 突き動かされる想い |
| ギャオオッ…! |
アスベル | こっちは今ので最後だ。魔物はまだいるか? |
リッド | いや、そいつで全部だ。向かってきたやつは退治しきったぜ |
リタ | こうも度々出てくると、上へと進むだけでも消耗するわね… |
ミラ | …?ん? |
ミラ | 誰か先に進んで魔物を倒してきたのか? |
リタ | 先に?いえ、全員ここから動いてないはずだけど |
ミラ | なら、あの魔物は誰が倒したのだ |
ルーク | へっ? |
| |
リタ | これは…魔物の死体… |
カノンノ | わっ!いっぱい倒れてる… |
リッド | 互いにやりあった…わけでもなさそうだぜ。見ろ…これは刃物によるものだ |
カノンノ | じゃあ…私達以外にも別の誰かがこの階段を登ってるって事…? |
ミラ | そうかもしれん |
ルーク | ユグドラシルのやつの仕業か? |
ルーク | もし違うっていうんなら…誰だっていうんだよ? |
アスベル | …こいつらを倒した者が、俺達の敵でない事を祈ろう。こちらも急がなければ… |
アスベル | ?何だ… |
カノンノ | これって… |
アスベル | 光の粒が増え始めた…!しかも上に流れていくこの動き… |
ミラ | 戦いに気を取られ、気付いていなかったが… |
ミラ | 先ほどと同じだ…。再び魔核からもマナが降りてきて、塊となっている |
リッド | 急いで登って来たけどよ、さっきの部屋でちょいとばかし時間を食っちまったっぽいな… |
ルーク | くそっ、あんなもん何度も撃たせて、たまるかよ!早く行くぞ! |
リタ | 待ちなさい。焦る気持ちはわかるけど、慎重さは忘れるべきじゃないわ |
リタ | ここであたし達が全滅したら、誰も塔を止められなくなるんだから |
ルーク | んな事くらい、言われなくてもわかってるっつーの! |
アスベル | 急ぎつつも慎重に行動しよう |
ミラ | 砲撃が撃たれた場所は近い。みんな、心して進め |
カノンノ | …うん! |
| |
| ビュウウウウッ |
リッド | 何だ、この煙…。きなくせえな |
リタ | 炎…それに、どこもかしこも崩れて自己修復中… |
リタ | でも何で? |
ミラ | ! |
ミラ | 中央にマナの集まっているところがある |
カノンノ | 何かが浮いてるよ! |
ルーク | ずいぶん小せえな。箱…か?光の粒が集まってるな |
アスベル | この部屋の核となるべきものかもしれない。あれは魔核か? |
リタ | 魔核には見えないけど…。それに、この塔の魔核はもっと大きかったじゃない |
ミラ | しかし、あれがマナを集めているのは確かだ |
アスベル | あの砲撃はどこから撃たれたんだろう…。それらしいものは見当たらないが |
リッド | この箱にマナが集まってるんだろ。ならこいつが兵器なんじゃねえのか? |
ルーク | こんなちっぽけなもんが、あんなすげー攻撃をするってのか? |
リタ | …! |
リタ | まさか部屋の中から直接、発射するんじゃ…だから部屋がこんなに崩れて… |
ミラ | 待て…! |
| |
| キュイイイイイン…ギュイイインッ |
カノンノ | 何!?この音…! |
アスベル | うっ…く…っ!光…がっ…! |
ミラ | …っ! |
ミラ | 周囲のマナも引き寄せられている!攻撃をするつもりだ! |
リッド | やっぱりあの核が攻撃を…!早く壊すぞ! |
| ビュウウッ |
ルーク | 熱っちぃ!熱風が…! |
リッド | そこに見えてるってのに近づけねぇ…! |
ミラ | 壊さなければ…! |
リタ | くうっ…っ…こんな至近距離で、あの攻撃を撃たれたら、あたし達もただじゃすまない…! |
| ビュウウウウッ |
アスベル | …っ駄目だ!今は一旦ここから退避しよう!攻撃の巻き添えになるぞ! |
リッド | あれを壊すのは後だ! |
リッド | ここから離れろ!オレ達が死ぬぞ! |
カノンノ | うん…! |
| キイイインッ… |
全員 | ──! |
| カッ── |
| ズドオオオオオオンッッッ |
全員 | ぐぁぁぁっっ!!! |
scene2 | 突き動かされる想い |
| シュウウウゥゥッ… |
アスベル | いっ…つ…生きてる… |
アスベル | 壁に、叩きつけられたか…。身体が…思うように動かない… |
アスベル | 大陸が…。攻撃されてしまった… |
アスベル | !…そ、そうだ、みんなは…!? |
ルーク | うっ…くそっ |
リッド | いってぇ… |
ミラ | くっ…大丈夫か、リタ…? |
リタ | ありがと…あたしは何とか… |
リタ | …!カノンノ!カノンノは…!? |
カノンノ | うっ… |
| |
アスベル | …あんなところに…!カノンノ!大丈夫か!?今助け──… |
| |
| ズズズズ…グラララッ! |
リタ | !天井が崩れ…危ない! |
| ドガアアアアン…ズズ…ズズズ… |
リッド | アスベル、このバカ野郎っ!後先考えず突っ込むな! |
アスベル | 離せっ…カノンノを…助けないとっ! |
アスベル | …カノンノ!動けないのか!? |
カノンノ | ア…ス、ベル… |
| ズズズズ… |
アスベル | このままだとカノンノが…っ、瓦礫に押し潰される! |
リッド | アスベル…落ち着け!死ぬ気か!? |
| ズズズズ…グラララッ! |
ミラ | まずい…!崩れ落ちるぞ!! |
アスベル | くっ… |
| |
アスベル | カノンノおおおっっ!! |
| |
??? | ──ふっ! |
| ドガァンッ |
| ズゥゥン… |
| |
アスベル | !? |
リタ | あれ、は… |
??? | ──いつまでそこにいるつもりだ。さっさと立て、カノンノ |
??? | それともお前はここで死にたいのか? |
カノンノ | う…あ、あなたは…! |
アスベル | お…お前は──…っ |
??? | … |
| |
全員 | リオンっ!? |
| |
アスベル | お前…っ、生きていたのか! |
リオン | …何を呆けている。腑抜けた馬鹿面を晒すな |
リオン | 見てわからないか?生きているに決まってるだろう |
リオン | それともお前達の目は節穴か? |
ルーク | くっ、この嫌味な返し、間違いなく本物のリオンだ。この野郎、生きてたんだな… |
アスベル | …リオン! |
アスベル | お前がっ、お前が生きていて…本当によかった |
リタ | 生きてるなら生きてるで早く顔見せなさいよね…! |
ミラ | リオン、無事で何よりだ… |
リッド | ああ、本当によかった…。お前一体どうやって助か… |
リッド | …っ!リオン!後ろだ! |
| |
| グルウウオオオッ! |
カノンノ | 魔物…!? |
| ザンッ! |
リオン | ふん…。雑魚が。嗅ぎ付けてきたか |
リオン | 時間もない…ここにいては、いずれにせよ倒壊に巻き込まれる |
リオン | お前達はあの出口からとっとと上に登る事だ |
アスベル | しかし…!二人を置いていくわけには…! |
リオン | 分断された以上、個々に行動するしかないだろう |
アスベル | くっ… |
リオン | 別の道は見つけてある。後で合流だ。カノンノは僕が連れていく |
リタ | …アスベル、出来るだけ早くここを離れた方がいいわ。リオンの言う通り、後で合流── |
| ズズズズズ… |
全員 | ! |
ミラ | …修復機能があるとはいえ、この様子では、部屋の崩壊が先だ |
リッド | なら、今のうちに残した仕事を片すしかねえ。あの核を、壊すぞ! |
リタ | ちょっと、待ちなさいよ!あの状態の魔核に衝撃を与えたら、何が起きるか… |
ルーク | んなの知るか!今壊さなくていつ壊すんだっつーの!! |
リタ | それは… |
| ズズズズズッッッ |
全員 | !? |
リッド | ちっ、言ってる場合か!はっ! |
| パキィィンッ |
| シュゥン… |
リタ | !!何も…起きない…? |
ミラ | 壊せたな…。これで大陸を焼く、あの攻撃も止まる |
| ガララ…ッ |
ルーク | いてっ!石が降って来やがった |
リタ | …今の核、この部屋の制御も受け持ってたみたいね |
リタ | こうなれば、部屋全体が崩れるのもすぐよ!急いで! |
アスベル | …リオン!必ず無事に合流すると約束してくれ |
アスベル | カノンノを頼む! |
リオン | わかったから早く行け!ぐずぐずするな! |
| ドドドドドド…… |
| |
ミラ | 何とか、脱出出来たな… |
ルーク | …ったく、どこまで意地が悪いんだっつーの、この塔は |
リタ | ──でも、驚いたわね…。まさかリオンが、それもこんなとこに現れるなんて |
ルーク | ああ、まだ信じられねー気がするぜ。あいつ、実は幽霊だったって事はねえよな? |
ミラ | 腕にまだ怪我を負っていた。以前、ユグドラシルからカノンノを庇った時のものが、完治していないのだろう |
リッド | よく見てるな、ミラ。しかし手負いの状態でカノンノを守り切れるのか? |
アスベル | リオンは後で合流すると言っていた。その言葉を信じて先に進もう |
ルーク | そうだな。さっきの危ねえ核みたいなのは壊せたけど、まだユグドラシルがいるしな |
ミラ | マナは相変わらず上に引き寄せられている…。やはり一刻も早く塔の魔核を壊すべきだろう |
リタ | そうね。カノンノの事はリオンを信じて、あたし達も行きましょ |
scene1 | 戻らない理由 |
カノンノ | …ご、ごめん、リオン。少し休憩してもいい、かな… |
リオン | … |
リオン | つらいのなら我慢せず言え。いざ魔物が出てきた時足手まといになられても困るからな |
リオン | 僕が周囲を警戒しておくからここで休め。あまりゆっくりは出来ないがな |
カノンノ | ……う、うん、ありがとう、リオン… |
| |
リオン | … |
カノンノ | …本当によかった |
リオン | ふん、この状況でか?おかしな奴だな |
カノンノ | ふふっ、違うよ。リオンが、生きていてくれた事だよ |
カノンノ | … |
カノンノ | 夢、じゃ…ないよね…。ふぅ…、はぁ… |
リオン | 少し黙って、息を整えろ |
カノンノ | うん…。そう、だね… |
| |
リオン | …… |
カノンノ | …… |
リオン | …ユグドラシルは、上にいるのか |
カノンノ | …うん。みんなも、そこに向かってるはず… |
| チャリ… |
カノンノ | …また、みんなに心配かけちゃったな |
リオン | … |
カノンノ | リオンは、どうしてここに?スタン達には会えた? |
リオン | ああ。なんとか岸にまでたどり着いて力尽きていたところにスタン達がやってきたらしい |
カノンノ | 二人共、リオンの事をすごく心配してたから、見つかってほっとしたと思うよ |
リオン | … |
カノンノ | 本当に無事でよかった… |
カノンノ | !あっ、そうだ。リドウっていう人は…? |
リオン | リドウの事は知らん。だが、リドウはおそらく死んだのだろう… |
カノンノ | 死んだ…!? |
リオン | スタン達から聞いたが、ミラが海上の氷とルイニス街の氷は同質だと言っていたらしいな |
カノンノ | うん。私もその話は聞いたよ。あと、海を凍らせる必要があるのはリドウしか考えられないって事も |
リオン | 奴は氷を溶かす方法を知らないと言っていた。にも関わらず海上の氷は溶け始めた |
カノンノ | そうだね… |
リオン | となれば、仕掛けた本人の力が消えたのだろう。死という形でな |
カノンノ | … |
リオン | おそらくは、ルイニス街の氷も溶けているはずだ |
カノンノ | でも、どうしてルイニス街には戻らなかったの?すぐにでも街の無事を確認したかったんじゃ… |
リオン | ルイニス街の事は…。不本意ではあるが、スタンとアルヴィンに任せた |
カノンノ | よかったの? |
リオン | ルイニス街の氷が溶けたとしてもユグドラシルによって世界が破滅させられれば、意味がない |
リオン | 奴を確実に仕留める…。僕はそのために来たんだ。お前達だけでは心許ないからな |
カノンノ | …ふふ、つまり、私達を心配して来てくれたって事だよね |
リオン | … |
リオン | …それだけの口が叩けるなら、休息はもう十分だろう。出発するぞ |
カノンノ | うん! |
| |
カノンノ | こっちにも道があったんだ!アスベル達に話してた別の道ってここの事だったんだね |
リオン | ふん、僕が後先考えず動くわけがないだろう |
カノンノ | そっか…あれ?リオン、見て…!壁や床に大きな割れ目が…! |
リオン | これは…。人間業とは思えない太刀筋だな |
リオン | だが、故意に付けられたものだ。誰かが僕達よりも先に、ここを通ったのか… |
カノンノ | この傷跡、先にもあるよ。アスベル達は、ここを通っていないはずだよね… |
カノンノ | そういえば、さっきも誰かが魔物と戦ったような痕跡があった… |
リオン | お前達が通る前にか? |
カノンノ | うん…。魔物同士が戦った跡じゃないってリッドが言っていたよ |
リオン | …となると… |
カノンノ | リオン? |
リオン | いや、何でもない |
リオン | 何者が待っていようと、立ち塞がる者は切り伏せるまでだ。行くぞ |
カノンノ | う、うん…! |
scene2 | 戻らない理由 |
アスベル | ここは、塔のどのあたりだろうか…。もう、かなり登って来たはずだが |
ルーク | なーんもねえ…ん?いや、奥に扉だけがあるぜ |
リタ | ちょっと、迂闊に先に行かないでよ。もっと警戒して… |
ミラ | 何もない…。それがかえって不安にさせるな |
リッド | ん?扉んとこに光の枠みたいのがある… |
リタ | 何か、これ… |
| |
リタ | …え? |
ルーク | うおっ!?何だ!?急に真っ暗になっちまった |
アスベル | みんな!無事か!? |
リタ | ぶ、無事だけど…何も見えない…。下手に動くと危ないわ |
リッド | 本当にな…。目が慣れれば、少しは見えんじゃねえか…? |
| |
アスベル | 何の音もしない。静かだ… |
アスベル | とにかく、出口方面に進んでみよう…。確かこっちだったな |
リタ | カノンノがいたらルナの光で… |
リタ | あたしの魔術で火でも出す?誰か火だるまにしちゃうかもだけど |
リッド | ミラの四大精霊でも無理か? |
ミラ | ふむ、ではイフリートに火を灯してもらおうか |
ルーク | そりゃ助か… |
| ジジ…ジジ… |
| |
アスベル | ん、ルーク? |
| …… |
アスベル | 返事が途切れた?急に気配が… |
アスベル | おーい!みんな、聞こえるか? |
| …… |
アスベル | …くっ、どうしたんだ? |
アスベル | ルーク!リッド!リタ!ミラ!大丈夫か?返事をしてくれ! |
| …… |
アスベル | …一体どうなって…! |
カノンノ | … |
アスベル | …! |
カノンノ | … |
アスベル | カノンノ!? |
アスベル | どうして…。追いついてきたのか!リオンはどうし… |
カノンノ | うん、アスベルに言いたい事があって |
カノンノ | …あのね、アスベル |
アスベル | どうした、カノンノ?どこか痛む──… |
カノンノ | 私…思ったの。もうこれ以上頑張らなくてもいいんじゃないかな |
アスベル | えっ、カノンノ…何を言って… |
カノンノ | 私達がどうあがいたって世界は破滅するんだよ |
カノンノ | 一緒に消えようよ、アスベル |
scene3 | 戻らない理由 |
リタ | ──みんな、どうしたの!? |
リタ | さっきまで傍にいたはずなのに… |
リタ | 誰か、いるなら答えて! |
リタ | !? |
ルーク | はぁっ! |
| ガキィィンッ |
リタ | ルーク!? |
リタ | …くっ、あんた何してんのよ!ふざけるにも限度があるわよ! |
ルーク | ふざけてんのはお前の方だろ?俺はお前を助けてるだけだっての! |
リタ | 助ける?思いっきり攻撃してきたじゃない!っていうか、みんなは… |
ルーク | 逃げたんだろ。正解だぜ。このまま先に進んでも世界なんか救えねーからな! |
ルーク | 家に帰って寝てりゃ、その間に全部が終わる。そっちの方が何も考えなくていいから楽だろ? |
ルーク | リタも、塔を登るのは諦めて、ここから逃げようぜ。あー…面倒くせー… |
リタ | …… |
リタ | 先に謝っとく。ごめん、ルーク |
ルーク | は? |
リタ | はぁっ! |
ルーク | くっ、何すんだよリタ! |
| ドゴォッ! |
| ジジ…ジジジ…… |
リタ | !やっぱり、変だわ。今、あんたの身体が蜃気楼みたいに揺れた… |
リタ | それってあんたに実体はないって事よね |
ルーク | はぁ?実体とか、蜃気楼とか、わけわかんねぇ! |
| ガキィィンッ! |
| ジ…ジジ…… |
リタ | ! |
リタ | また!やっぱりあんた、ルークじゃないわね |
リタ | あんたは幻影よ。映し出されただけのルークの偽者! |
ルーク | 偽者?何言ってんだ。俺は俺だろ |
リタ | 全然違うわよ! |
リタ | ルークは馬鹿だけど、あんたみたいな馬鹿とは違うの。クロノスと戦った時みたいにね |
リタ | 諦める?逃げる?ここまで来て、あいつがそんな事言うとか、ありえないわ! |
ルーク | ちっ! |
リタ | 偽者は消えなさい! |
リタ | ファイアボールっ!! |
| フシュウウウウウッ… |
リタ | …。消えた… |
| |
リタ | あれ?ここって…最初に見えた奥の扉の先? |
リタ | 通り抜けられたって事? |
リタ | …誰もいないわね |
リタ | あの部屋を抜けられたのは、今のところあたしだけって事かしら |
リタ | にしてもあのルーク、中身は本物と違ってたけど、姿は完璧に再現出来てた… |
リタ | そっくりな人間を映し出す…。どんな仕掛けなのかしら──… |
リタ | あっ! |
リタ | そういえば、リッドがここの扉に、光の枠っぽいのがあるって言ってたわね |
リタ | 扉…光…で考えられるのって… |
リタ | !! |
リタ | もしかして、あたし達が塔を登る途中でくぐった光のゲート!? |
リタ | あのゲートをくぐった時身体がふらっとするような感覚があった… |
リタ | それって、あの時にあたし達の情報を読み取ってたって事なんじゃ… |
リタ | この仕掛け、読み取った情報を利用して、仲間割れさせて同士討ちさせようって罠なのかしら |
リタ | はぁ、自滅させようなんて趣味が悪いったらないわよ |
リタ | でも、今のあたし達なら大丈夫よ。きっと、ね… |
scene1 | 真偽の行方 |
ルーク | ──何だよ、みんなどこ行っちまったんだ? |
ルーク | 出口もわかんねーし、右も左も見えねーし、ああ、くそっ! |
| ジジ…ジ… |
リッド | ん?何だ、ルークか |
ルーク | リッド!? |
ルーク | おい、お前どこにいたんだよ!つか、急に出てくんな!びっくりするだろうが! |
リッド | 悪い、迷っちまって… |
ルーク | はー…よかったぜ。このまんま誰も見つかんねーんじゃねーかって… |
リッド | ところでルーク、お前は何で塔を登って来たんだ? |
ルーク | あ?何言ってんだよ。魔核を壊して、ユグドラシルの野郎をぶっ飛ばして、世界を救うためだろ! |
リッド | いや、違うな |
リッド | オレ達は塔を降りた方がいい。そうだろ、ルーク! |
| ザンッ |
ルーク | なっ!?…リッドてめえ、何しやがんだ! |
リッド | 避けたか。グズのルークにしては出来すぎだな? |
リッド | いつもみんなの足手まといでピーピー言ってるくせに |
ルーク | な、何だと、お前何言って… |
リッド | わかんねえ奴だな。オレ達に何度迷惑をかけりゃ気がすむんだ。いい加減お前に愛想尽きているんだぜ |
ルーク | なっ…何だよ、言いたい放題言いやがって! |
ルーク | だいたい、てめえ、今までそんな事、一言も… |
ルーク | …一言も言った事…ねえぞ |
リッド | どうせお前には何にも出来ねぇ。ならオレ達に任せてさっさと塔を降りるんだな! |
| ガキィィンッ! |
ルーク | うわっ、っとと… |
ルーク | …おい、リッド。お前、何か変だ |
リッド | 変? |
ルーク | お前って、すげー前向きってわけでもねぇけど…それでも、後ろ向きって感じでもないだろ |
ルーク | それに、俺には負けるけどよ、何だかんだ言いつつ、お前だってここまで来たんじゃねーか |
ルーク | なのに、らしくねー事ばっか言いやがって!そうじゃねえだろ! |
ルーク | リッドはそんな事言わねえ! |
ルーク | まさか操られてんのか? |
ルーク | でなきゃ…お前は偽者だ! |
リッド | 偽者?何でお前にそんな事言われなきゃいけねえんだよ |
リッド | 甘ちゃんで、世間知らずで、何もわかってないお前に、偽者呼ばわりされる方が頭にくるぜ |
ルーク | うるせえ!!あいつは俺と一緒に世界を救うんだよ! |
ルーク | 俺もあいつもそのために腹くくったんだ。お前なんかがごちゃごちゃ言うな! |
ルーク | てめぇなんか絶対、リッドじゃねぇ! |
リッド | そうやって都合のいいオレしか信じねぇって事か |
| |
リッド | はぁっ!! |
| ガキィィンッ…! |
ルーク | あいつは誰かを邪魔だとか足手まといとか言ったりしねえ! |
ルーク | 面倒臭そうにしてても仲間を放っておけねえのがリッドだろうが! |
リッド | くっ… |
ルーク | うおおおお!! |
| |
ミラ | ──皆、無事か!?誰の声も聞こえない… |
ミラ | しかも、妙だ…。四大の声も聞こえない…。困ったな… |
| カツン…カツン… |
ミラ | っ…誰だ! |
リタ | そんなに驚かないでよ。人を化け物か何かみたいに。失礼ね |
ミラ | そ…そうか。すまない |
ミラ | 目が慣れたのか、姿が見えてきたな。リタが無事でよかった |
リタ | 当たり前でしょ。こんなところでぐずぐずしてるわけにはいかないもの。他のみんなは? |
ミラ | それが、はぐれたみたいでな。声も返ってこないのだ |
リタ | ふーん、なら無闇に動かない方がいいわね |
ミラ | このままここに…か? |
ミラ | いや、とにかく皆と合流して先に進まなければならないだろう |
リタ | 先に進むって…この暗闇の中を?どこに行くのよ。右?左?わからないでしょ?なら… |
リタ | ここにいるのが一番いいわ。何もせずに、誰かが来るのを待ちましょ |
ミラ | …何もせずに、だと |
リタ | そういう事。何もしないのが一番安全だわ |
ミラ | リタ、…お前が慎重に進んだ方がよいと考えていたとしても何もしないは、おかしいだろう |
リタ | どうして?突破口が見えないなら、じっと待つのも一つの手じゃない |
ミラ | リタ…? |
リタ | それにこの塔は古代の知恵の宝庫よ。危険だからってだけで壊すなんて、間違ってる |
ミラ | … |
ミラ | なぁ、リタ。聞いてくれ |
リタ | 何よ、急に |
ミラ | 私はな、お前と自分が少し似ていると感じる事が時々ある |
ミラ | 上手くは言えないが、頑固なところというか…そうだな |
ミラ | 不器用と言った方が正しいかもしれん |
リタ | 不器用? |
ミラ | リタ、お前はいざとなれば自分が危険へと飛び込む。ルナの時のように |
ミラ | 私も…時折、守りたい者のためなら自分の事など忘れてしまったかのように行動してしまう |
ミラ | リタはルークの事を、後先考えないと言うが…案外私達の方が考えてない部分があるのかもしれんな |
リタ | …それがどうしたってのよ |
ミラ | リタ、本来のお前であればここに留まる提案などしないはずだ。何故なら… |
ミラ | 私もここに留まるべきではないと思っているからな… |
リタ | は?ばっかじゃないの?自分とあたしが似てるからって事? |
ミラ | ああ。行動を共にしてきたからこそわかる |
ミラ | リタは、必ず先への道を探す。大切な者を守るためなら、立ち止まる事など考えにもないはずだ |
ミラ | その信頼は揺るぎない |
ミラ | だからリタ…いや、リタの偽者よ |
リタ | ! |
ミラ | 本物のリタをどこへやったのだ? |
ミラ | 答えないというのであれば、少々手荒な真似をさせてもらうぞ |
リタ | …そんな必死になって、馬鹿っぽい |
リタ | 何で進むのよ。死ぬかもしれないのよ?ここに留まれば安全なのに |
ミラ | 進まねばならぬ理由があるからだ。さあ、リタはどこなのだ? |
リタ | どうだっていいじゃない。あんたはここにずっといるんだから |
ミラ | 行く手を阻むというのであれば致し方ない |
ミラ | お前を倒して、前へ進ませてもらう! |
リッド | おーい |
リッド | …はぁ。みんなどこ行ったんだ?無事でいるならいいけどよ… |
アスベル | ──はっ! |
リッド | !? |
| |
| ガキィィンッ! |
リッド | くっ…あ、アスベル!? |
アスベル | はぁっ! |
リッド | ちっ、何がどうなって… |
リッド | おい、アスベル!目ぇ覚ませ! |
アスベル | ふっ! |
| キィィンッ! |
リッド | くそっ、アスベルに攻撃出来るわけねぇだろ!やめろ、アスベル! |
アスベル | 俺は騎士として、守らなければ。この塔を… |
リッド | ぐっ…この塔を…だと? |
アスベル | …無駄だリッド。このまま進んでも、お前達に世界を守る事など出来ない |
リッド | っ!何だ、それは…アスベル、お前らしくねぇぜ! |
リッド | 出来るか出来ねぇかは関係ねぇ。やるか、やらないかだろ!お前は…っ! |
| ガキィィンッ! |
リッド | 守りたいもののためにっ!真っ直ぐなヤツだろうが! |
リッド | はぁっ! |
| ガキィンッ! |
リッド | ちっ、本当にどうなって── |
リッド | !? |
リッド | おい、アスベル!お前、さっき怪我してたはずだよな? |
リッド | そいつが何で、綺麗さっぱり治ってんだよ! |
リッド | はぁっ! |
| ガキィィッン |
| ジジ…ジ… |
リッド | アスベルの身体が揺れて… |
リッド | はっ、やっぱりな。アスベルじゃなかったってワケか |
アスベル | くっ… |
リッド | 幻であっても、その姿でらしくねぇセリフを言われたかねぇぜ! |
リッド | …くらえ、閃空双破斬! |
| ズバアァッ…! |
scene2 | 真偽の行方 |
リタ | …リッド! |
リッド | リタ!みんなも、無事か? |
ミラ | 大丈夫だ、問題ない |
ルーク | ああ。すぐに脱出して… |
ルーク | って、おいリッド、お前、本物だよな? |
リッド | 何を言って… |
リッド | って、そうか!ルークはオレの偽者と戦ったってわけか。オレはアスベルだったが… |
ミラ | アスベルの偽者だと? |
リッド | ああ。にしても何なんだ、あれは… |
リタ | あたしのところにも偽者が出て来た。あれはきっと、あたし達の姿を模して塔が生み出した幻影よ |
ルーク | マジかよ。どうやってそんなの作り出したんだ? |
リタ | 下の部屋で通った、あの不自然な光のゲート…覚えてる?あの部屋の入り口にもあったわ |
リタ | あそことここは多分繋がってるのよ。最初のゲートであたし達の情報を得てあの部屋で幻影を見せたのね |
リッド | 最初あのゲートをくぐった時、いやな感じしたよな…。あの時何かされたんだな |
リッド | 手の込んだ事をしてくれるぜ、全く… |
ルーク | おい、それはいいけど、アスベルはどうしたんだ? |
リッド | 来ないな…。幻影に苦戦しているのか… |
| |
アスベル | ──カノンノ頼む、やめてくれ! |
カノンノ | 全部あなたの自己満足じゃない!もうたくさん…! |
| キィィンッ! |
アスベル | さっきから何を言っているんだ?いつも明るくて、前向きなお前が… |
カノンノ | 明るくして、笑っていないと置いて行かれるから。一人になっちゃうから… |
カノンノ | 考えるのが怖くて、ずっと逃げて前向きなフリしてただけ |
アスベル | ! |
カノンノ | ずっとみんなの顔色をうかがっていたの |
カノンノ | 守ってくれなんて頼んでいない! |
アスベル | カノンノ、お前はそんな事を思って… |
カノンノ | アスベル、もう終わりにしたい… |
カノンノ | 一緒に消えて! |
アスベル | くっ…、カノンノ! |
| キィィンッ! |
カノンノ | みんなに会う前の事なんて何もわからない。弱くて、何も出来なくてみんなの足手まとい |
カノンノ | みんなといていいの?自分に何が出来るのかわからない… |
カノンノ | 記憶がない私なんてっ! |
アスベル | …? |
アスベル | カノンノ…それは…本当にお前自身の言葉なのか? |
カノンノ | …そうだよ。アスベル |
アスベル | …カノンノ、お前は覚えてるはずだ。俺達が出会い、そしてここまで歩いてきた旅の事を |
アスベル | 初め、記憶がないお前を心配していたのは俺の方だ |
アスベル | でも、お前は記憶を見つける事よりも俺達と一緒に行きたいと言ってくれた |
アスベル | 俺達とこの世界をもっと知りたい、守りたいと──… |
カノンノ | やめて…やめて…!そんなの全部嘘よ! |
アスベル | 危険な目に遭うと心配する俺に大丈夫だと笑顔で言ってくれたよな |
| ガキィィンッ! |
アスベル | 俺は、その笑顔を見て、どんな事があろうともカノンノを守ると決めたんだ |
カノンノ | ぐうっ… |
アスベル | 俺は、ずっと笑顔のカノンノに勇気付けられていたんだ。そんなカノンノが… |
アスベル | ここまで来て、自分の気持ちを見失うはずがない! |
カノンノ | あなたに何がわかるの!? |
カノンノ | 私だって消えてしまいたい時がある!いつでも明るいわけがないっ! |
アスベル | だったら、もっと早く投げ出す事も出来たはずだ。俺はずっと一緒にいたからわかる! |
アスベル | 今ここにいるお前は俺と旅をしてきたカノンノとは違う… |
アスベル | お前は…カノンノじゃない! |
| ガキィィンッ! |
カノンノ | アスベ…ル…っ! |
アスベル | 俺はこの世界を救う…!カノンノも、みんなもいるこの世界を…! |
アスベル | カノンノが待っている!俺はこんなところで立ち止まってはいられない! |
| ジジ…ジ… |
カノンノ | ア…スベル…。どう…して…?私の何がわかる…の…? |
アスベル | カノンノ… |
| |
リタ | あっ、来た!遅いじゃない、アスベル! |
アスベル | みんな!先に出ていたんだな。すまない… |
アスベル | カノンノにそっくりな幻影が出てきたんだ…。焦ったよ |
ミラ | それなら、私達も似たような事が起きていた |
アスベル | !本当か!? |
リッド | オレはアスベルと戦ったぜ。本物とは比べ物にならねぇほど駄目なヤツだったけどな |
ルーク | 俺のとこはリッドだったけどよ… |
ルーク | だー!やっぱり思い出したら腹が立ってきたぜ! |
ルーク | おいリッド!お前、俺の事さんざん馬鹿にしやがって! |
リッド | はぁ!?それは、オレじゃないだろ! |
リタ | あたしを襲ってきた偽者のルークは、世界なんか救えるわけない、とか言ってきたわよ |
リタ | ったく、だらしないわよね |
ルーク | んな事言ってねぇ!俺じゃねぇっつーの! |
リタ | そうね。あたしもそう思ったから遠慮なく焼き尽くしてやったわ |
ルーク | …本当にわかっててやったんだろうな |
ミラ | … |
リタ | ミラには、誰の幻影が出てきたわけ? |
ミラ | …リタだ。リタらしくなかったが…故にいろいろと考えさせられたな |
ルーク | 俺はムカつく話ばっかで、考えるまでもなかったけどな |
リッド | 相手によるんじゃねえか?オレは馬鹿馬鹿しくて聞いちゃいられなかったけどな |
アスベル | … |
ミラ | アスベル…? |
アスベル | 確かに、カノンノの顔と声で、あんな事言われると…考えてしまうな |
ルーク | 何だよ?何言われたんだ? |
アスベル | …。例え偽者だったとしても、言われた言葉に一瞬はっとしたんだ… |
アスベル | 明るく、笑っていないと一人になるからって…守ってくれなんて頼んでないと… |
アスベル | 俺は、ちゃんとカノンノの本当の気持ちや望みを理解していたのかと思って… |
リタ | アスベル、あんたまさかその言葉を信じるの? |
アスベル | ! |
アスベル | それはないが… |
リタ | ならいいわ。それを信じるなんて言ったら一発殴ってやるところよ |
リッド | リタの言う通りだな。あれはこの塔が作り出した幻だぜ? |
ミラ | そうだ。その言葉を信じてしまうという事は、本当のカノンノの信頼を裏切ってしまう事にもなる |
ルーク | だいたい、アスベル、お前が迷ってどーすんだよ |
ルーク | カノンノを信じろっつーの! |
アスベル | ! |
アスベル | そうだよな。みんな、ごめん。お蔭で目が覚めた |
ルーク | っていうか、まさかこんな簡単に惑わされるなんて、お前本当にアスベルなのか…? |
アスベル | はは…。ちゃんと俺だよ。みんな、ありがとう。もう大丈夫だ |
アスベル | 俺は、カノンノを信じてる。みんなの事もな |
リタ | ほらほら!先を急ぐわよ!待ちくたびれたわ |
アスベル | すまないな、リタ。行こう! |
| |
リッド | …ミラ、魔核はもう近いんだよな |
ミラ | ああ。このすぐ上にマナを引き寄せる大きな塊を感じる。大精霊のマナを注がれた魔核だ |
アスベル | そうか、急がなければ… |
アスベル | … |
ミラ | …アスベル、何を考え込んでいるのだ。さっきのカノンノの事か? |
アスベル | ! |
アスベル | すまない、紛らわしい態度を取ってしまったな。違うんだ、ミラ |
ミラ | 違う? |
アスベル | ああ、カノンノの事はみんなに言ったように、信じている。それとは別で、何というか… |
アスベル | 今までの旅、これまでの出来事が急に頭の中を巡ったんだ。特に、すべての始まりの、あの時の事が |
ルーク | あの時ってーと、カノンノと出会った時の事か? |
アスベル | そうだ。あの時…カノンノは戦場に倒れていた。その後バロニアまで戻って… |
アスベル | …。故郷やリチャード…みんなを守りたい。最初はただ、それだけだったんだ。でも… |
アスベル | この世界の危機に触れ、それを必死で何とかしたいと旅をして、みんなとも出会った… |
アスベル | そして今、俺はみんなと…仲間と、ここにいる |
アスベル | 俺は…大切な人々のいるこの世界を守り抜きたいだけなんだ。それはずっと変わらない |
ミラ | …そうだな。私も、アスベルと同じ気持ちだ |
リタ | 心配しなくても、そう思ってんのはあんただけじゃないわ |
リッド | オレもな。この世界には、平穏が一番似合うぜ |
ルーク | まあアスベルだけじゃ不安だからな。特別に俺も最後まで付き合ってやるぜ |
アスベル | みんな……ありがとう |
ミラ | 皆、気持ちは固まっているようだな。後はやるべき事を成すだけだが… |
全員 | ! |
| |
| グォオオオオオゥッ… |
ルーク | ここまで来て魔物かよっ! |
リッド | おい!あの魔物の背後…。あれが魔核の部屋に通じる階段か? |
アスベル | 時間が惜しい、正面から突破する!みんな、気を付けろ! |
| ああ! |
scene1 | 魔核 |
ルーク | …ついに来たな |
| ブゥウウウン… |
アスベル | …魔核… |
リッド | ずいぶん禍々しくなりやがって…。早いとこカタつけようぜ |
ルーク | ユグドラシルもいないようだしな。やっちまおうぜ! |
| |
| ゴゴゴゴゴゴゴ… |
ルーク | うおっ…!な、何だ!?すげえ光だ…! |
ルーク | 光の粒子がどんどん集まって… |
ミラ | ! |
ミラ | 魔核のマナの流れが変わった!? |
ミラ | ここよりもさらに上に集約されはじめている。ユグドラシルが向かったところか…? |
ミラ | しかも…!このマナの量、大精霊のものに匹敵するぞ! |
| ! |
リタ | それって…でもそんな莫大な力、一体何に使うっていうの…? |
リッド | 道中にあった兵器みたいな奴は確実にぶっ壊したはずだ。なら、こいつは… |
リタ | あれよりもはるかに強力な攻撃のために準備している…?世界を破滅させるほどの…! |
ミラ | 先ほどの攻撃とは魔核から送られるマナの量が桁違いだ |
ミラ | 先のものでも地域一帯を焼き尽くすほどだった。今度のは止めなければ、世界がなくなるぞ…! |
リタ | 上まで行って探る時間はないわ! |
リタ | 今すぐ攻撃を止めるには、この塔の機能を止めるしか… |
アスベル | つまり、この魔核を破壊するしかないという事だな |
アスベル | よし、いくぞ、ルーク! |
ルーク | 任せろ!くらえ、デカブツ! |
| バシーン! |
ルーク | ぐあっ!? |
ルーク | 何だ、見えない壁みてーなのが… |
リタ | ルーク、アスベル!気を付けて!魔核にシールドみたいなものが… |
リタ | …きゃっ! |
| バシュウッ! |
リッド | うっ…!何か飛んできたぞ! |
アスベル | 光線か!魔核自体も攻撃するのか!? |
リッド | そう簡単には魔核には触らせてもらえねえか! |
ミラ | このシールドを壊すしかない…。リッド、側面を頼む! |
リッド | ああ、わかった! |
リッド | ルーク!お前は反対側だ! |
| ズバババババッ |
アスベル | !魔核からの攻撃が激しい…! |
| ズバババババッ |
ルーク | これじゃ、シールドに当てるどころか、近づく事も出来ねーじゃねーか! |
リタ | よく見て!どこかに攻撃の隙があるはずよ! |
ルーク | 隙だあ!?簡単に言うなよ! |
| バシュウッ! |
リタ | 当てた…!けど…! |
リッド | …いや、まだ弱い!もっと食らわせろ! |
アスベル | わかった!──今だっ! |
| ズバババババババッ |
ミラ | 何!?攻撃がますます激しく…! |
リッド | ぐっ…!一旦退くか…!? |
ルーク | くそっ、避けるだけで、手一杯だぜ! |
ミラ | しかし…こいつを止めないと…! |
| キュイイインッ──… |
アスベル | 力を溜めている…!? |
アスベル | みんな、下がれ――…!! |
scene2 | 魔核 |
| ドオオオオンッッ!! |
| ビシッ!ビシビシッ…! |
全員 | !? |
ミラ | …シールドが、消えた…!?今のは誰が──! |
リオン | 数に頼んでこのザマか。全く… |
ルーク | リオン!? |
リオン | あれくらいの攻撃に手こずるとは情けない |
リッド | リオン、お前…! |
リオン | 何だ、約束は守っただろう。来るのが遅かったとでも言うのか? |
ミラ | 無事で何よりだ… |
ミラ | っ!という事は、カノンノも無事か!? |
カノンノ | 私もいるよ!待たせてごめんね、みんな! |
アスベル | カノンノ!…二人共、無事でよかった! |
ルーク | ったく、お前ら、心配かけてんじゃねーよ! |
リッド | 憎まれ口は相変わらずだな… |
| ヴヴ…ヴヴヴ… |
リッド | おっと!魔核がまた動き始めたぞ! |
リタ | 再会を喜ぶのは後ね! |
リタ | シールドはなくなったけど…!攻撃が余計激しくなった…! |
リタ | リオン!魔核に叩きこめる!? |
リオン | 誰に言っている。当然だ! |
カノンノ | アスベル、私も頑張るよ!援護するから! |
アスベル | リオン…カノンノ…! |
アスベル | ああ!ありがとう! |
リオン | アスベル!今はこいつを破壊する事に集中しろ! |
カノンノ | リオン…そうだね!絶対に──…! |
アスベル | … |
カノンノ | ?アスベル?どうしたの? |
アスベル | カノンノ、俺はカノンノの事を信じてるからな |
カノンノ | …うん!私も、アスベルの事…信じてるよ! |
ミラ | これは、一人の力では無理だ!全員、一気に全力をぶつけるぞ! |
ルーク | おう、渾身の一撃をお見舞いしてやるぜ! |
リッド | 任せろ! |
アスベル | みんな、魔核に一斉攻撃だ!行くぞ! |
全員 | ああ! |
scene3 | 魔核 |
| ズバシュウウウウッ…! |
| ブゥウウ…ゥンン… |
カノンノ | はぁっ…はぁっ…魔核の動きが… |
ルーク | 止まった…のか…? |
| |
| ゴゴゴゴゴ… |
| バキイインッ |
| |
全員 | ! |
アスベル | 魔核が… |
リッド | 何とか壊せた、な… |
ルーク | 塔の、世界を破滅させる攻撃は、止められたんだよな…?マジで死ぬかと思ったぞ… |
ミラ | っ!マナが…! |
カノンノ | ミラ? |
ミラ | 魔核に留まっていた、膨大な量のマナが散った…! |
カノンノ | ! |
ミラ | 魔核が壊れ、マナがなくなった事で、この塔にはもう攻撃する力は残っていないはずだ |
ミラ | 現に上昇していたマナも、次第に流れを止め、散り始めている… |
カノンノ | 本当によかった…!私達、ちゃんと止められたんだよね |
リタ | これで…今度こそ、この塔は魔導器としての機能が失われたはずよ |
リタ | …でも、あたし達がやるべき事がまだ残ってる。そうでしょ? |
アスベル | ああ。この瞬間の、世界の破滅は免れたが… |
リオン | まだ、終わってはいない…。奴を── |
| |
??? | …やはり、貴様達か。魔核を壊したのは |
アスベル | この声は…! |
| |
カノンノ | ユグドラシル…! |
リッド | 奴の姿の一部が、蜃気楼みてえに揺らいでるぜ… |
リタ | あたし達が真っ暗な部屋で戦った幻影と同じ仕組みを使って、姿を現してるんだわ |
ミラ | こやつに攻撃しても意味がないという事か |
ルーク | はっ!残念だったな、ユグドラシル!魔核はもう、ぶっ壊したぜ |
| |
ユグドラシル | …そのようだな。人間風情が、小癪な真似を… |
アスベル | 魔核は失われた。この塔による世界の破滅は起こらない。あとはユグドラシル…お前を止めるだけだ! |
リオン | どうした。怖気づいて、偽の姿しか見せられないのか |
ユグドラシル | …ほう、貴様生きていたのか |
リオン | … |
ミラ | ユグドラシル、お前の負けだ。大人しく… |
ユグドラシル | くくっ…くくく… |
ミラ | …何がおかしい |
ユグドラシル | まぁいい…遊びがすぎた。どうやら、このガラクタを当てにしすぎたようだな… |
リタ | ふん、そのガラクタに必死になってたくせに。あんたのせいで貴重な古代の魔導器が失われたわ |
ユグドラシル | 威勢のいい事だ。そこで吠えているがいい、人間 |
ユグドラシル | いずれにせよ、世界は滅ぶ。塔の力ではなく、この私自身の力によってな |
リッド | !待て、ユグドラシル!どこにいる!オレ達から逃げるのか! |
ユグドラシル | …逃げるだと?ふっ、笑わせるのも大概にしろ |
ユグドラシル | …私は塔の最上階にいる。来たければ来るがいい、貴様らごときに逃げも隠れもしまい |
アスベル | …くっ!ユグドラシルの元へ向かうぞ! |
ルーク | ああ!今度こそぜってー逃がさねえ! |
| |
リオン | … |
アスベル | …リオン、ありがとう。カノンノを助けてくれて |
ルーク | 全く、よく生きてたよな。てっきりもう駄目だと思ったぜ |
リッド | 崖から落ちた後、あれからどうなったんだ? |
リオン | 後にしろ。無駄話をするつもりはない |
カノンノ | あのね、スタンとアルヴィンがリオンを助けてくれたんだって!あと── |
ルーク | ──なるほどな |
リタ | やっぱりルイニス街の氷は、もう溶けたって事ね |
リオン | そう考えるのが自然だろう |
リッド | よかったな、リオン!それで、今度はオレ達を助けに来てくれたのか… |
アスベル | 本当に、来てくれて助かった。ありがとう、リオン |
リオン | お前達だけでは不安だからだ。それに… |
リオン | 全ての元凶、ユグドラシルを倒す。僕はそのために、ここへ来た |
ルーク | 当たり前だ。ユグドラシルなんかに世界を好きにさせてたまるかってんだ! |
カノンノ | 私達が止めなきゃ。もうこれ以上、人を死なせたくない |
リタ | 魔導器を使って人々を苦しめようとする奴は、あたしが許さないわ |
リッド | ユグドラシルを倒して、のんびり暮らせる世界に戻りてえな |
ミラ | ああ、マナを減少させ、この世界を乱す者をこれ以上野放しには出来ない |
| |
アスベル | ここは…初めてこの塔に入った時に来た部屋…? |
ルーク | ユグドラシルはここじゃねえのか。じゃあ、もっと上か? |
リタ | みんな、あれを見て |
カノンノ | 扉が…開いてる!!前に塔から脱出しようとした時は、開いてなかったのに… |
リタ | …?魔核を破壊したからかしら。…それとも… |
ミラ | アスベル。その先はどうなっている? |
アスベル | まっすぐ上に続く階段だ。おそらく、この先にユグドラシルがいる |
リッド | …いよいよ、だな |
アスベル | よし、みんな。行こう |
scene1 | 終わりと始まり |
カノンノ | ふう…ふう… |
ミラ | 大丈夫か?カノンノ |
カノンノ | あ、うん。平気だよ |
リッド | この階段、長ぇな。そろそろ最上階に着いてもいいんじゃねえか? |
アスベル | 最上階か…そこにユグドラシルがいるんだな |
ルーク | 今までの借りを全部返してやる。首を洗って待ってろよ、ユグドラシルの奴! |
リオン | …あいつだけは絶対に許すわけにはいかない。必ず、僕が仕留める |
リタ | あんた一人で先走るんじゃないわよ。あたしら全員でやるんだから |
ミラ | ここにいる者だけではない、この場にいない仲間達の想いも私達は背負っている |
ミラ | その事を忘れないようにしなくてはな |
アスベル | ああ、そうだな。みんなでこの世界を救う── |
アスベル | そのために、ユグドラシルを倒さなければならない。何としてでも… |
| |
リオン | ここは… |
リッド | お前も気付いたか、リオン |
リタ | 何よこれ…気温は変化ないのに、この階に来た途端、急に何だか… |
ルーク | くそっ、肌がちりちりしてうぜえったらねえ。なあ、これって… |
ミラ | 奴はこの階にいる。そう考えて間違いはあるまい |
リッド | やれやれ。いよいよ大詰めってわけだ |
アスベル | … |
ミラ | アスベル…?浮かない顔をしてどうした? |
ルーク | おいおい、まさか今更怖気づいたとか言わねーだろうな |
アスベル | そんなわけないだろ。ただ… |
アスベル | …カノンノ |
カノンノ | どうかした? |
アスベル | …ここまで一緒に連れて来てしまったが、本当に大丈夫か? |
アスベル | 俺達はこれから、最後の戦いに臨む |
アスベル | だが、相手の力は強大だ。勝って、無事に戻れるという保証はどこにもない |
アスベル | それでも…俺達と一緒に来るか? |
カノンノ | アスベル… |
カノンノ | うん。勿論、一緒に行くよ |
カノンノ | …私ね、みんなと出会って、この世界が大好きになったんだよ |
カノンノ | どんな事をしても、この世界を救いたいって思ってる |
カノンノ | だから、私もちゃんと見届けたい。みんなの想いが力となって世界を救うその瞬間を… |
アスベル | カノンノ… |
アスベル | …わかった。それなら、もう俺も何も言わない |
アスベル | …お前も俺達の大事な仲間だ。世界を救うために、何としても最後の戦いに勝利しような |
リオン | 話は終わったか? |
アスベル | ああ。待たせてすまなかった |
リタ | 全く、あんたってほんと心配性よね |
ミラ | だがそれが、アスベルらしいところでもある |
リッド | じゃ、出発と行こうぜ |
| |
カノンノ | … |
カノンノ | 何だろう、この感覚…。私、どこかで同じ光景を見た事があるような気がする |
カノンノ | 優しくて力強い仲間達と、私の中に流れ込んでくる温かい気持ち──… |
scene2 | 終わりと始まり |
リッド | おい、あそこに誰かいるぞ! |
ユグドラシル | … |
リオン | ユグドラシル…! |
リタ | …ちょっと待って!もう一人、誰かいるわ |
ルーク | けっ、まだ手下がいやがんのかよ。邪魔だっつーの! |
ミラ | …いや、違う。奴は… |
デューク | … |
リタ | あんたは…デューク! |
デューク | … |
アスベル | どうしてお前がここに… |
デューク | 私の目的は知っているはず。驚くにはあたるまい |
ミラ | だとすれば、デューク…お前もユグドラシルを倒しに来た、という事か? |
デューク | …そうだ |
デューク | この男は世界をありのままの形から捻じ曲げ、混沌をもたらそうとした |
デューク | 精霊達が鎮まり、当座の危険は去ったとはいえ、その元凶を放置しておくわけにはいかぬ |
ユグドラシル | ふはははは!賢明な判断だ、デューク。マテスでの教訓か? |
デューク | … |
アスベル | マテス…? |
デューク | …我らの故郷。かつて生まれ育ったこことは異なる別の世界の名だ |
リッド | 同郷…?なるほど、だから面識があるような口ぶりで話していたのか |
リオン | そのマテスにいたお前達が、どうしてこの世界にいる? |
デューク | もはや存在しないからだ。この男の手によって |
ルーク | な…おい、それじゃまさか、元の世界を滅ぼして、それで今度はこの世界を滅ぼそうっていうのかよ? |
リタ | ユグドラシル、あんたの目的は何…?いろんな世界をめちゃくちゃにして一体何がしたいっていうの? |
ユグドラシル | 人間どもが構築してきた世界を滅し、全てが無に返った世界、それこそが私の求める理想 |
アスベル | なっ…!お前は自分の理想を求めるためにマテスを滅ぼしたというのか!? |
リッド | 何だよそれ…。お前の私欲、ってヤツで世界を壊してるって事かよ |
ユグドラシル | 私欲ではない、私の理想の世界こそ、真の平和の姿… |
ユグドラシル | 全てが無に返り、地上の生命は全て新たな生命として誕生する事になろう |
ユグドラシル | 種族も血も、全てが一つとなれば何者にも差別される事のない私の理想の世界が確立されるのだ |
リオン | 差別される事のない世界…? |
アスベル | …確かに差別はよくない。でも…だからって、それが世界を破壊させていい理由にはならない |
アスベル | 種族や血が違ったって、話し合って解決していく事だって── |
ユグドラシル | 黙れ! |
ユグドラシル | 話し合えるだと?…馬鹿な。そんな事で解決出来るなら、我が姉マーテルが死ぬ事はなかった! |
ミラ | 死んだ、だと…? |
| |
ユグドラシル | マテスは、異種族間の争いが絶えず…特に人間とエルフの対立が激しかった |
ユグドラシル | ハーフエルフである私達姉弟は、両種族の血を引く存在。ゆえに、双方から迫害を受けてきたのだ |
ユグドラシル | そんな辛い毎日の中でも、姉さまはいつだって笑っていた |
ユグドラシル | ハーフエルフである自分達こそが対立する種族間の架け橋となれる存在なのだと……なのに! |
リッド | …殺された、か |
ユグドラシル | 姉さまは最後まで人間を信じていた。だがある時、その人間に裏切られ、命を落とす事となったのだ |
カノンノ | そんな… |
ユグドラシル | 姉さまは死の間際、私にこう言ったのだ。「この歪んだ世界を戻して」と |
ユグドラシル | 姉さまを殺した人間こそ歪みの元凶…ゆえに私は人間を滅ぼす事にした。姉さまの遺志を実現するためにな |
ユグドラシル | …デューク、ずっと彼方の場所から見ていたお前は知らなかっただろう? |
ユグドラシル | お前が必死に守ろうとしていたマテスはこんなにも血生臭く薄汚れた世界だったのだ |
デューク | たとえそうだとしても変わらず守ろうとしただろう。今またお前を討とうしているように |
デューク | あるがままの世界の存続こそが我が願い。お前が何をしようといささかも揺らぎはしない |
ユグドラシル | デューク…貴様! |
ユグドラシル | …まあいい。お前が何を言おうとマテスでの目的は果たせたのだ |
ルーク | ちょっと待てよ、そのマテスって世界を滅ぼしたんなら、もうそれで十分じゃねーのかよ!? |
ルーク | 何でこの世界まで… |
ユグドラシル | 愚かなる人間共が、私欲のために争いを繰り返しているのはマテスだけではなくこの世界も同じ |
ユグドラシル | この世の生命全てを一つにしてこそ、本当の意味で姉さまの願いをかなえられる |
リッド | ユグドラシル…お前の姉がどういうヤツだったのかオレは知らねえ。けどよ… |
リッド | お前…意味をはき違えてるんじゃねえか?本当にそれがお前の姉の願いなのかよ |
ユグドラシル | …!知った口を叩くな、お前に姉さまの何がわかるというのだ |
ミラ | 確かに、お前の姉は差別のない世界を望んでいたのかもしれん |
ミラ | …だが、結局今お前が人間に対して抱いている感情は何だ? |
リオン | 忌み嫌う人間を滅ぼした上に成立する差別のない世界… |
リオン | 最後まで互いに分かり合う事を諦めず差別をなくそうとしたお前の姉が望む理想の世界だとは、到底思えない |
ユグドラシル | …黙れ!!私は人間共とは違う、差別で人間を滅するのではない! |
アスベル | …ユグドラシル |
アスベル | お前の考えや想いはわかった。確かに、人間はお前の言うように愚かな面もある |
アスベル | せっかくティルグにもらった世界平和への機会も、自らの手で失わせてしまった |
アスベル | 魔導兵器を使い、自然のバランスが保てなくなるほどまでにマナを消耗させた |
アスベル | あの状態が続けば、俺達はきっと、自らの手で世界を崩壊させていただろう |
リッド | ああ…ユグドラシルがきっかけだったとしても、頼まれてもねーのに破壊行為に便乗したのはオレ達人間だ |
アスベル | 皮肉にも、世界の危機をきっかけにこの世界は一つになった。争い、いがみ合ってきた国同士も全て |
アスベル | …そして、本当の危機に陥って初めて守りたいものがたくさんあるこの世界の大切さに気が付いたんだ |
カノンノ | アスベル… |
アスベル | 遅すぎたと思う…でも、今回の危機を経た事で、この過ちは繰り返してはならないのだとみんなが認識を改めた |
アスベル | …お前の話を聞き、亡き姉の事も同じ二度と繰り返してはならない悲劇だと強く思った |
ユグドラシル | … |
アスベル | お前の姉を死に追いやった人間を憎く思うと同時に、同じ人間として悲しい…俺はそう感じてる |
アスベル | ユグドラシル、約束する。お前の想いや理想は、俺が必ずこの世界で実現させる |
アスベル | だから──… |
| |
ユグドラシル | …笑わせるな!人間など信用出来るはずがない!私は私の手で姉さまの理想を貫く |
ユグドラシル | 共感すると言うのなら、私に抗う事をやめ、世界崩壊を受け入れるんだな |
アスベル | お前の姉が望んでいた世界は、全ての種族が共存し、互いに認め合える世界だろう? |
アスベル | 今お前が創ろうとしている「理想の世界」とは違うはずだ! |
ユグドラシル | 黙れ!!違う、姉さまは… |
ユグドラシル | …私は姉さまとの約束を果たすのだ!人間は裏切るもの…お前達は姉さまを殺した人間… |
ユグドラシル | …何を言おうが、歪みの元凶はお前達人間…!!償いの情があるというのならここで朽ち果てろ! |
アスベル | …ユグドラシル |
リタ | …大切な人を失くす辛さ、今のあたしには想像出来る。だから、少しは同情してたのに… |
リタ | こいつ自分の恨みにばかりこだわって、わかり合おうなんて気持ち全然ないじゃない! |
リオン | …だったら、今ここで倒すまでだ。僕達はこの世界を守らなくてはならない、何としてでも… |
ルーク | 勝手な理由で俺達の世界を滅ぼされてたまるかっつーの。みんな、いくぜ! |
全員 | ああ! |
デューク | … |
アスベル | デューク…?お前も力を貸してくれるというのか? |
デューク | …勘違いするな |
デューク | 私は今度こそ世界を守る。そのために必要な事をする。それだけだ |
ルーク | …ったく、終始よくわかんねー野郎だぜ |
リッド | ま、どっちでも構わねえよ。手は多いに越した事ねえからな |
ユグドラシル | 何人集まったところで私の目的を阻止する事は出来ん!さあ、来るがいい! |
カノンノ | ユグドラシルを倒す…!絶対にこの世界は、私達が守──… |
| |
| ドクン! |
カノンノ | …な、何…今のは…? |
scene3 | 終わりと始まり |
ユグドラシル | ぐっ… |
アスベル | ここまでだ、ユグドラシル |
ミラ | 再び立ち上がる事は出来まい。お前の野望もここで潰える |
ユグドラシル | …何があろうと、私は必ず姉さまとの約束は果たしてみせる… |
リッド | まだ立ち上がる気かよ!? |
リオン | そこまで傷ついた身体で立ち上がって何が出来る?無駄だという事がまだわからないのか? |
リタ | そうよ、あたし達は何度でもあんたを倒す!絶対にあんたの思う通りになんかさせない! |
ユグドラシル | …ふん、お前達が何を言おうが私の理想は確実に形成される。その運命は変わる事はない |
ルーク | けっ、負け惜しみも大概にしろっつーの! |
ユグドラシル | …出来る事ならこの手で、姉さまとの約束を果たしたかったが…この際手段は問わぬ |
アスベル | 手段…?どういう事だ、ユグドラシル!何を言っている…? |
ユグドラシル | この世界が滅びる運命は変わらぬ、という事だ。私の生死問わずにその意志は引き継がれる、確実にな… |
デューク | 何…? |
カノンノ | …そんな事絶対にさせない!!あなたの意志が引き継がれ再び危機が訪れようと、私達が全て断ち切る! |
カノンノ | 絶対にこの世界は守ってみせる!あなたの思うようにはさせな──… |
| |
| ドクン! |
カノンノ | う…またこの感覚… |
ミラ | カノンノ、どうした? |
カノンノ | …わからない。何か胸の辺り…変な感じがする…上手く表現出来ないんだけど── |
ユグドラシル | …! |
| ドクン! |
カノンノ | あ… |
| |
リッド | カノンノが光に包まれた…一体何が起きているんだ…? |
デューク | これは──… |
リオン | デューク、何か知っているのか? |
デューク | 能力が発現しようとしている。しかし何故…? |
リタ | カノンノの…能力? |
デューク | あの娘はディセンダーだ |
ユグドラシル | … |
リッド | な、何だって!? |
ルーク | ディセンダーって…前に言ってた世界を再生させる存在、とかいうやつか…!? |
アスベル | カノンノがディセンダー…。デューク、お前はいつからその事を? |
デューク | …ディセンダーが誕生して、まもなくの頃だ |
ミラ | …確かに、カノンノがディセンダーである事を前提として考えれば、今まで腑に落ちなかった事柄の辻褄は合うな |
リッド | でも、何で今このタイミングで能力が発動するんだ?危機的状況なら今までだって、いくらでもあったはずだろ? |
デューク | わからない。何かが引き金になったはずだが |
カノンノ | う…、アスベル…? |
アスベル | カノンノ…!何ともないのか!? |
カノンノ | 今も身体の中で不思議な力が溢れてきてて…変な感じ。でも、大丈夫だよ、ありがとう |
カノンノ | みんなの話もちゃんと聞こえてた…。私、ディセンダーだったんだね |
カノンノ | …だとしたら、私の能力でこの世界を再生させる事が出来るって事だよね? |
ミラ | ああ、おそらくな |
デューク | ディセンダーとして完全に覚醒した時、お前はその再生の力を使う事が出来るはずだ |
リタ | じゃあ、これで世界は救われる…カノンノのお蔭で…そういう事? |
リッド | カノンノ、お前…すごいヤツだったんだな |
ルーク | マジかよ!知ってたんならもっと早くに教えろっつーの! |
デューク | ディセンダーについては未知の要素も多い。一方でその存在を知れば、その力を狙う者も現れるだろう |
デューク | 誰もが軽々しく触れてよい知識ではない |
リオン | …確かにな。だが、これで世界は再生される。…出来るか、カノンノ |
カノンノ | 私、みんなのように強くないし…足手まといになっていないかずっと不安だった |
カノンノ | …だけど、これで私も本当の意味でみんなの役に立てる… |
アスベル | カノンノ… |
カノンノ | ユグドラシル…あなたとお姉さんの意志は、私が引き継いで実現させる。救い、守り抜いたこの世界で |
ユグドラシル | …くくっああ、創り上げてくれ。私の理想の世界を── |
| |
| ドクン!ドクン! |
| |
カノンノ | うっ…ああ… |
リオン | …カノンノ? |
ユグドラシル | …ふははははは! |
デューク | …ユグドラシル、ディセンダーに何をした!? |
ユグドラシル | 言っただろう?運命は変わる事はない、と |
ユグドラシル | この世界は滅ぼされる運命にある。ディセンダーであるこの女によってな |
カノンノ | あああ…! |
ユグドラシル | デューク、お前はディセンダーが誕生した時に存在を察知した、と言ったな? |
ユグドラシル | この女の存在を察知したのは、お前だけではない |
デューク | …! |
リタ | まさかあんた、もうその時にカノンノに何かしてたの!? |
ユグドラシル | くく…察しがいいな。ディセンダーが誕生してすぐ、その身体に一つの種を植え付けたのだ |
ユグドラシル | 発芽した時、この女の持ち得る使命は本来の使命と反転するよう、細工を施した種をな |
リッド | 反転!?…って事は、覚醒した時にカノンノがやろうとする事ってのは再生じゃなくて… |
ユグドラシル | そう、「世界を崩壊させる」だ。私の植え付けた種の発芽タイミングはこの女の変化に乗じる |
ユグドラシル | すなわち、ディセンダーとして完全に覚醒したその時に、世界を破滅させる意志を持つ存在として誕生する |
ルーク | ユグドラシル!てめぇ!! |
ユグドラシル | ディセンダーが誕生したその瞬間から遅かれ早かれ、いつか覚醒する事は決まり切った道理… |
ユグドラシル | …だがまさか、このタイミングでその時が来るとはな…。運命は、私の示す世界を望んでいるようだぞ |
ユグドラシル | ディセンダー、私と姉さまの意志を継ぐお前に、最後のプレゼントだ |
ユグドラシル | 精霊達の力を取り込み、よりその破壊能力を高めるがいい!はあああああ…! |
ユグドラシル | その力を以て、人間も世界も…全てを滅するのだ!全ては…理想の世界のために──… |
カノンノ | ああああっ!! |
リオン | ネックレスが…カノンノの体内に吸収されていく…! |
デューク | …くっ |
アスベル | ユグドラシルーーーッ!! |
リタ | ユグドラシルが消滅した…だけど… |
カノンノ | うう…あ… |
リッド | また光がカノンノを包み始めたぞ… |
ルーク | でも、さっきと光り方が違う…何か様子が変じゃねーか!? |
アスベル | カノンノ、しっかりしてくれ!カノンノ! |
カノンノ | う…ああ…ああああああっ!! |
リタ | カノンノ!?うっ、この光は…!?まぶしくて何も見えない…!! |
scene1 | 世界を再生する者 |
カノンノ | きゃああああっ! |
アスベル | カノンノ!どうした?しっかりしろ! |
ルーク | ユグドラシルの細工のせいか!?一体何が起こってんだ…! |
カノンノ | 身体の内側から…何かものすごい衝動が溢れてきて…飲み込まれそう…ああっ…! |
ミラ | 衝動だと… |
リタ | ユグドラシルの話が本当だとしたら…カノンノはもうすぐディセンダーとして覚醒して… |
リタ | それと同時に、世界を破壊させる存在になる、そういう事…? |
リッド | ああ、そういう事だろうな。けど、きっと何か方法があるはずだ!ユグドラシルの細工を解く方法が…! |
アスベル | ああ、その通りだ!カノンノ、心配はいらない。必ず俺達がどうにかする! |
アスベル | だから、諦めるな!衝動に打ち勝つんだ! |
カノンノ | …みんな… |
デューク | … |
リオン | おい、カノンノを見ろ |
ミラ | あれは… |
リッド | カノンノの様子が… |
カノンノ | … |
デューク | この光の強さと溢れ出すマナ…。ディセンダーの力の発現と明らかに同調している… |
デューク | おそらく、ユグドラシルが植え付けた種の影響と考えて間違いないだろう |
リオン | どうにかその種を取り除く方法はないのか? |
デューク | … |
カノンノ | …ううっ! |
ルーク | カノンノ!大丈夫か!? |
カノンノ | …ごめんなさい、せっかく私、みんなの役に立てる…世界を救えると思ったのに… |
ミラ | …カノンノ、心配するな。お前は、私達が必ず救ってみせる |
リタ | そうよ、一緒に世界を救うんでしょ?あんた自身が諦めたらそれまでよ。弱音を吐くのは許さないわ |
カノンノ | ミラ…、リタ… |
リッド | アスベル… |
アスベル | ああ、絶対にカノンノに世界を壊させやしない…! |
scene2 | 世界を再生する者 |
カノンノ | うう…あああ…あ… |
ルーク | ちっ…カノンノを包む光がますます強くなってるぞ!何とかなんねーのかよ…! |
デューク | …そこをどくがいい |
| チャキッ |
ミラ | デューク!?一体どういうつもりだ… |
デューク | …そこをどけ |
リタ | 質問に答えなさい!その剣で何をしようっての!?答えによっては…許さないわよ |
デューク | ディセンダーの覚醒は目前だ。その時、その力は世界を覆う |
デューク | 取り込まれた精霊達の力さえ今や脅威を高める働きでしかない。その覚醒は世界の破滅と同義だ |
デューク | ならば今排除するしかあるまい |
リオン | そんな事はわかっている!しかし…! |
ルーク | じょ、冗談じゃねーぞ!カノンノを殺すっていうのかよ。何か…何か他の方法があんだろ! |
デューク | お前達は今、その娘の命と世界の存続を天秤にかけているという事を理解しているのか? |
アスベル | …そんな事は理解の上だ!だが…お前も知っているだろう、カノンノがどれほど世界を救う事を望んでいたか |
リッド | ああ。オレ達はカノンノを見捨てるわけにはいかねえ |
デューク | 仮にユグドラシルの細工を解く事が出来たとしても、早晩ディセンダーは覚醒するだろう |
デューク | そうなった時、ディセンダーの力が正しく発現するという保障はどこにもあるまい |
ルーク | だ、だからって、カノンノに絶対悪い影響があるかどうかだってわからねーじゃねーか! |
デューク | どちらに転ぶかわからない以上、私は世界を危険にさらさない方を選ぶ |
アスベル | … |
カノンノ | アスベル…みんな… |
アスベル | カノンノ…!大丈夫だ、しっかりしろ!俺が…俺達が絶対に何とかする! |
カノンノ | う…ああああああああ…っ! |
ミラ | カノンノ!! |
デューク | …時間がない。もう一度言う、そこをどけ |
デューク | 今ディセンダーが覚醒すれば、この世界は確実に滅びる |
アスベル | … |
デューク | どうあってもどかぬのならお前達も排除する |
アスベル | させるかあっ! |
| |
| カキーン! |
| |
リタ | アスベル! |
アスベル | 俺は絶対に諦めない。何としてもカノンノを元に戻し、世界も救ってみせる |
リッド | オレもだ。カノンノが助かる可能性が少しでもあるなら、オレはそれに賭ける |
ミラ | ああ。ここでカノンノを救えなければ本当の意味で世界を救ったとは言えないからな |
デューク | その言葉、覚悟あってのものなのだろうな |
リタ | 覚悟も何も、最初っからずっとあたし達はカノンノを助けるって言ってんでしょ!? |
リオン | それでもカノンノに手をかけると言うのなら、僕達が相手だ |
ルーク | 今さら謝っても遅ぇからな、デューク! |
デューク | …よかろう。ならばこの一戦は世界を賭けたもの。心して来るがいい! |
デューク | はああああああ! |
アスベル | 来い、デューク!カノンノは、俺達が守る!! |
scene3 | 世界を再生する者 |
リッド | せやっ! |
| ズトッ! |
デューク | う… |
| |
リオン | ここまでだ、デューク |
デューク | …何故そうまでしてあの娘を守る。世界を危険にさらしてまで何故… |
デューク | 世界を傷付け、それでも世界に生き…お前達にとって世界とは何なのだ? |
ミラ | デューク、お前の言う事も理解は出来る。だが、同意は出来ない |
ルーク | カノンノと世界、救うなら両方だろ。どっちか選べとか無理だっつーの |
デューク | その情が世界を滅ぼすとしてもか |
アスベル | カノンノを諦めれば世界は救える。だが、カノンノを諦めたら、世界を救えないも同然なんだ |
アスベル | 俺達が世界を守りたいと思う理由はそこに大切なものがあるからなんだ |
アスベル | 故郷や友達、家族。それに、仲間…この世界は、かけがえのない大切なもので溢れている |
アスベル | …カノンノは大切な仲間だ。だから、何としてでも救いたい。可能性があるなら諦めたくないんだ! |
デューク | … |
| |
リタ | ちょっと…カノンノはどこ!?さっきまでそこにいたのに…! |
アスベル | 何…! |
リオン | ちっ、目を離した隙に…。まさか、ディセンダーとして覚醒してしまったのか…? |
ミラ | …いや、そのような気配は感じない。となると、戦いの最中に自分でどこかへ移動したと考えるのが自然か |
リッド | あれだけ苦しんでたんだ。そう遠くには行けないだろ |
ルーク | お、おい!あそこ見ろよ!まだ上があるみてーだぞ…! |
リタ | 階段…?ここが最上階ってわけじゃなかったのね |
アスベル | カノンノはあの先に? |
ルーク | もたもたしてる場合じゃねえ。急いで後を追うぞ! |
リッド | ああ! |
| |
デューク | 大切な仲間がいるからこそこの世界を守りたい、か… |
| |
| ドサッ |
| 光と闇の救世主 |
カノンノ | ウ… |
カノンノ | ア…ア… |
| ドサッ! |
カノンノ | ドウシテ…ドウして私、こんな… |
カノンノ | アスベル…ミラ…リッド…リタ…ルーク…リオン… |
カノンノ | みんな… |
リッド | おい、向こうを見ろ! |
カノンノ | …! |
リオン | カノンノ…!やはりここだったか |
カノンノ | あ… |
ミラ | カノンノ、大丈夫か? |
ルーク | やっと見つけたぜ。いきなりいなくなったからびっくりしたじゃねーか! |
カノンノ | ごめん… |
| |
カノンノ | ごめんね、みんな…私、もう… |
アスベル | 心配するな、カノンノ。俺達が必ずお前を、元に戻してやる |
リタ | ユグドラシルの思い通りになんて絶対させないから! |
カノンノ | 私… |
アスベル | カノンノ。俺達が、初めて会った時の事…覚えているか? |
アスベル | 出会った時のお前は記憶もあやふやで自分の事まであんまりわかってなくて…まるで迷子みたいだったよな |
アスベル | あれから俺達は、いろんなところへ行って、たくさんの人達に出会って、多くのものを見てきた |
アスベル | お前もさまざまな事を考え、感じてきたはずだ |
アスベル | 確かにこの世界は、争いが絶えず、悲しい事や苦しい事がたくさんあるでも、それだけじゃない |
アスベル | 楽しい事や嬉しい事も同じだけ、いや、それ以上に存在している |
アスベル | それら全てを含めて、かけがえのない大切な場所だと思っているのはお前も一緒だろう? |
アスベル | そんな世界を、お前が破壊するわけがない俺達はお前を信じている |
カノンノ | 私…私は… |
| |
カノンノ | う…ウアアアア! |
カノンノ | 「使命を…遂行する…」 |
リタ | カノンノ…? |
カノンノ | 「我が使命…それは… …世界…及び全ての生命の 完膚なきまでの…破壊──…」 |
ルーク | 悪い冗談はよせっての。それじゃユグドラシルみてーだぞ! |
カノンノ | 「時は満ちた… これより使命を遂行する…」 |
リオン | くっ…!何だこのエネルギーは…これでは近づけん! |
ミラ | すさまじいマナだ…。カノンノと精霊が共に暴走して相乗効果が生まれているのか |
カノンノ | ハアアッ! |
リッド | うわっ! |
リタ | きゃああっ! |
ミラ | くっ、腕をかざしただけで、私達全員をたやすく吹き飛ばすとは… |
アスベル | カノンノ、落ち着くんだ!飲み込まれてはだめだ! |
カノンノ | ヤアアアッ! |
ルーク | ぐっ…! |
ルーク | 俺達の声、まるでカノンノは聞こえてねえみてーじゃねえか! |
ミラ | あのすさまじい力…どうやら完全に覚醒してしまったようだ…! |
リッド | そんな…じゃあもう、打つ手はねえって事か? |
アスベル | …いや!俺は絶対に諦めない! |
アスベル | 俺達の声が届かないなら…届くところまで近付けばいい。それだけの事だ |
リタ | アスベル……そうね、あんたなかなかいい事言うじゃない |
リッド | …ま、それしかねえよな |
リオン | ここで諦めるわけにはいかない |
ミラ | カノンノから放たれるマナを跳ね返し何としてもそばにたどり着く…皆、それでいいな? |
ルーク | ああ!…ったく、カノンノのやつ、手間かけさせやがって…!もうひと踏ん張り、やるしかねーか! |
アスベル | 行くぞ! |
カノンノ | トオオオオッ! |
| 光と闇の救世主 |
アスベル | カノンノ… |
カノンノ | … |
全員 | … |
| |
アスベル | 本当にこうするしかなかったのか? |
リオン | … |
リタ | こんな…こんな終わりのためにあたし達、ここまで戦ってきたっていうの? |
リタ | 本当にこれが正しい答えだったの?あの子の望みに応えてあげられたの?… |
ミラ | …私達が止めなければ、カノンノはさらに深い悲しみを背負う事になる |
ミラ | 彼女にそんなものを背負わせるわけにはいかない |
アスベル | … |
リオン | アスベル、カノンノの顔を見てみろ |
アスベル | …? |
| |
ルーク | …笑顔…? |
リッド | 何だか…優しい表情、してんな… |
アスベル | カノンノ……! |
ミラ | リッド…、アスベル……ん? |
| |
デューク | … |
リッド | お前は…デューク |
ルーク | てめぇ、何をしにきた!?カノンノは死んだ…、もう俺達に用はねーはずだろ!? |
リオン | やめろ、ルーク |
デューク | この世界は救われた |
リタ | …!あんた… |
デューク | … |
カノンノ | … |
デューク | …お前達、そこをどけ |
ミラ | …!カノンノに何をするつもりだ! |
| チャキ… |
デューク | … |
アスベル | デューク!!お前──…うっ!! |
ルーク | くっ…このまぶしい光は何だ!? |
リタ | 一体何が起こってるの!? |
リッド | やっと収まったか…今の光は一体……あ、あれは!? |
リオン | カノンノの身体が光に包まれて… |
デューク | … |
アスベル | デューク、お前カノンノに何をしたんだ!? |
デューク | …ユグドラシルの植え付けた種の浄化を試みた。成功するか否かは本人次第だ |
リオン | 種の浄化だと…?そんな事が出来るのなら何故最初に行わなかった |
デューク | 言ったはずだ。細工が解けたとしてもディセンダーとしての力が正しく発現するという保証はどこにもない、と |
リッド | じゃあ、何で今なんだよ。カノンノが死んじまった後なのに…オレが殺したようなもんなのに… |
デューク | 仲間を想う強い気持ち… |
アスベル | …デューク? |
デューク | 事情は変わった。…変えたのはお前達自身だ |
ルーク | 今さらそんな事やって何の意味があんだよ!カノンノはもう… |
デューク | ディセンダーは死んではいない |
リタ | …な、何を言って…だって、さっき確かに呼吸だって… |
カノンノ | うう…っ! |
アスベル | カノンノ!!まさか!? |
デューク | ディセンダーの身体を覆うマナの波動に一瞬だが動きが感じられた |
デューク | 死んでいれば、ありえない事だ |
デューク | 先ほどの戦闘でディセンダーも種も共に消耗し尽した。浄化を試みるなら今をおいてない |
ミラ | カノンノが生きている…! |
デューク | … |
デューク | ディセンダーの身体から放射されるマナの性質が先ほどとは全く異なっている |
デューク | ユグドラシルの種が活動を止めた証拠だろう |
ルーク | 何か…よくわからねえけどとにかく奇跡っつー事だよな |
デューク | あの状態から生きながらえた、これもディセンダーの力によるものか… |
アスベル | …いや、それは違う |
リタ | アスベル? |
アスベル | ディセンダーの能力なんかじゃない。カノンノが必死に生きようと頑張っているからだ |
リッド | …ああ、そうだな。こいつ…頑張ってたもんな |
ミラ | 力が暴走しても、必死に私達の呼び掛けに応えようとしていた |
リオン | きっと、今も…な |
カノンノ | く…ああ…ううっ! |
リタ | カノンノ、どうしたの!?苦しんでるじゃない!どういう事、デューク! |
デューク | 種が停止しても、そこにこめられたユグドラシルの憎悪の念はまだ生きている |
デューク | それがディセンダーの力や精神とせめぎあっている。本人次第と言ったのはそういう事だ |
ルーク | ちっ、ユグドラシルの奴しつけーんだよ!カノンノ、絶対負けんじゃねーぞ!! |
ミラ | 大丈夫だ、お前なら必ず打ち勝てる! |
リッド | オレ達はここにいる!頼む、頑張ってくれ! |
カノンノ | あ…あああああ! |
アスベル | カノンノ!! |
| |
| ――… |
| |
ルーク | な、何だこれ…?まさかこれが、ユグドラシルの植え付けた… |
アスベル | 種──… |
| |
リオン | カノンノの身体に取り込まれていたネックレスも出てきたようだ…。これは… |
リッド | じゃあ、これでカノンノは…!! |
カノンノ | んん… |
アスベル | カノンノ…? |
カノンノ | …あれ…みんな…? |
リタ | カノンノ!! |
リッド | やった…!やったぞ! |
ルーク | ったく、心配させやがって! |
リオン | …戻ってきたか |
ミラ | カノンノ、よく頑張ったな |
カノンノ | みんな… |
アスベル | カノンノ… |
アスベル | …よく帰ってきたな。おかえり! |
カノンノ | アスベル…ただいま…! |
リッド | 何だアスベル、お前、泣いてるのか? |
アスベル | 違う!別に俺は泣いてなんか… |
リッド | ごまかす必要はねえだろ。出るモンは出るんだ。お前もそうだろ、リオン? |
リオン | な、なぜ僕にその話を振るんだ! |
リタ | あんたが一番鼻声になってるからじゃないの? |
リオン | 僕が泣くわけないだろう! |
ルーク | へっ、今さら隠すなっつーの! |
カノンノ | アスベル…みんな…本当にごめんなさい。みんなにはとても辛い事をさせてしまったね |
アスベル | お前が謝る必要はない。あの時、俺達にはああする事しか出来なかった、それだけなんだ |
アスベル | …お前を守ると約束したのに、結局俺は守ってやれな── |
カノンノ | アスベル、それは違う! |
カノンノ | …私、あの時ね、みんなを傷付けて世界も壊してしまうくらいなら死んだ方がマシ、本気でそう思ってた |
カノンノ | みんなは、そんな私の気持ちを守るために戦ってくれた。私の意志を、守ってくれたんだよ! |
カノンノ | 例え、本当に死んでいたとしても、アスベル達に感謝してるこの気持ちは変わらない |
アスベル | カノンノ… |
ミラ | こうしてカノンノが生きていたのもアスベルの強い想いがあったからなのかもしれないな |
リタ | 想いが力になったとでもいうわけ?そんな非科学的な話── |
リッド | まあまあ、そう言うなって |
リタ | … |
アスベル | デューク、本当にありがとう |
デューク | ユグドラシルの思念を退けたのはディセンダー自身。私ではない |
アスベル | …それでも、デュークがいなかったら今こうして再び会える事はなかったかもしれない |
デューク | … |
| |
リッド | …改めて見ると、相当酷い光景だな |
ミラ | ああ、あの美しかった世界の面影は欠片も残っていない |
| |
ルーク | …本当に俺達はこの世界を救えたんだよな? |
リタ | 今更何言ってんのよ!あんた、今までの苦労を忘れたわけ? |
リオン | この有り様だ。疑いたくなるのも無理はない |
アスベル | ユグドラシルもいない。その怨念も討ち消し、脅威となる存在も浄化された |
アスベル | 俺達は世界を救う事が出来たんだ… |
アスベル | 今はまだ、あちこちボロボロだけどみんなで力を合わせればきっと取り戻す事が出来るはずだ |
アスベル | あの美しかった世界の姿を |
ミラ | そうだな。人にはどんな困難をも乗り越える意志の力がある。それに── |
カノンノ | あ…ネックレスが… |
リタ | カノンノのネックレスが光り始めた… |
カノンノ | 精霊達が世界へ還ってゆく… |
デューク | 種が浄化され、ディセンダーが正常化した事で精霊達も再び鎮まり、元の役割に戻ったのだ |
ルーク | いろいろ終わったと思った途端薄情な奴らだぜ…ったく、お前らの暴走のお蔭でどんだけ苦労したと…… |
リオン | 見ろ!あいつらは、ただ世界へ還ったというわけではなさそうだ |
ミラ | 精霊達も世界を元に戻すために、力を貸すと言ってくれている |
ミラ | 人も精霊もこの世界を想う気持ちは一緒だからな |
カノンノ | オリジン、セルシウス…みんなありがとう |
カノンノ | 私も、その使命を果たすね… |
アスベル | う…カノンノ…?この光は一体──… |
リオン | 宙に浮いている、だと…? |
カノンノ | 私はディセンダー…世界を再生させる存在… |
ルーク | ディセンダーって…お前、ユグドラシルの怨念は浄化されたんじゃなかったのかよ!? |
カノンノ | ルーク、大丈夫。私はカノンノ、私のままだよ |
カノンノ | みんなが私を救ってくれた事で本来覚醒すべきかたちで目覚める事が出来たの |
リタ | それって…世界を再生させる存在として、覚醒したって事? |
カノンノ | うん…私、わかったの。私の生まれた理由、成すべき使命、世界の意志が… |
カノンノ | 世界の源より賜りし再生の力でこの傷付いた世界を癒し、美しき世界へと再生させる… |
カノンノ | ここより世界の隅々まで、あまねく届けん… |
ミラ | この光は…柔らかくて、暖かい…これはカノンノの想いなのか |
デューク | これがディセンダー…ひいては世界樹のもたらす真の再生か |
リッド | おい、みんな見てみろ!カノンノの光に包まれたところからどんどん世界が修復されていく… |
| |
| |
カノンノ | …あっ |
アスベル | …おっと! |
カノンノ | あ、アスベル…ごめん!ありがとう |
アスベル | いや、大丈夫だ。カノンノこそ大丈夫なのか? |
カノンノ | 私は大丈夫…ただ… |
カノンノ | ディセンダーの能力がなくなったみたい。使命を果たしたからかな…? |
アスベル | そういう事か…カノンノが無事ならそれでいいんだ |
リタ | ねえ、ちょっと!みんな見て…!あれだけ荒廃していた世界が… |
| |
アスベル | これが…ディセンダーの再生の力… |
ルーク | すげー…本当にキレイに元通りだ… |
リオン | …だが、そう喜んでばかりもいられん。肝心なのはこれからだ |
リッド | ああ、元凶はユグドラシルとはいえ、オレ達人間にも、非がねえわけじゃねえからな |
リッド | 今回のきっかけになった戦争だってそうだし、ユグドラシルの言ってた差別にしたって… |
アスベル | そうだな。互いを想い合ったり、分かり合う気持ちがあれば、どちらも起こり得ないものだ |
リタ | 当たり前に出来そうな事なのに案外、難しかったりするもんよね、ルーク? |
ルーク | ああ!?リタてめえ…何で俺なんだよ! |
アスベル | …とにかく、もう二度と同じ事を繰り返さないためにも、今一度みんなで話し合う必要がある |
デューク | そうするがいい |
デューク | 再び道を誤る事のないよう心して歩め。私は常に見ている |
カノンノ | デューク… |
カノンノ | 約束するよ、同じ事は絶対に繰り返したりしない |
アスベル | デューク、俺も約束する。かけがえのないこの世界をよりよい方向へ導いていく事を |
ミラ | 人間だけではない、精霊にとってもこの世界はかけがえのないもの。私も精霊の主として力を尽す |
デューク | …その言葉、決して忘れるな |
リッド | …デューク、どこへ行くんだ? |
デューク | ここで為すべき事は終わった。これ以上留まる理由はない |
アスベル | そうか。じゃあ、最後に…これだけは言わせてくれ。デューク、ありがとう |
ルーク | 敵か味方か、結局ずーっとよくわかんねぇ野郎だったけど、カノンノも助けてくれたしな! |
ミラ | お前の世界に対する想い、信念はしかと受け取った |
デューク | …さらばだ |
リオン | 行ってしまったな |
リタ | 言葉足らずで、何考えてるのかわかんないところもあったけど、案外いい奴だったのかもね |
カノンノ | うん… |
リッド | …じゃあ、そろそろ俺達も行くとすっか! |
| |
ルーク | くっ、まぶしい… |
リッド | こんなに清々しく晴れた空を見るのは久しぶりだな |
リタ | 風が気持ちいい… |
| |
ミラ | これから私達を待ち受けているのは、果てしなく困難な道のりだろうが…諦めるわけにはいかない |
リッド | そうだな。またこんな事になったらたまったもんじゃないしな |
ルーク | ああ、それにあの調子じゃデュークの野郎も絶対どっかで見張ってるに違いねーし… |
アスベル | 何より、ユグドラシルやデュークのいうような世界にしていく事は、俺達全ての人間に課せられた使命だ |
カノンノ | 私も一緒に頑張るよ |
| |
アスベル | そうだ、カノンノ。帰りに俺の故郷に寄っていかないか? |
カノンノ | うん、行きたい! |
アスベル | よし、決まりだな。きっとみんな、喜んで迎えてくれるぞ |
ミラ | 私も同行させてもらえないか?人の世界をもっと見ておきたい。皆もどうだ? |
ルーク | ったく、面倒くせぇな。でもまあ、そんなに言うんなら行ってやっても── |
リタ | 面倒ならあんたは来なくていいわよ?じゃ、ルーク一人だけ、ここで解散って事で! |
ルーク | ぐ…!な、何でそうなるんだよ…! |
リッド | んじゃ、オレとリオンもアスベル達についてくか!な、リオン! |
リオン | 僕は…!…まあ、いいだろう |
ミラ | よし、では行くとしよう |
リオン | 大切な人達の元に |
アスベル | 俺達の進むべき未来に |
リタ | 希望の明日に |
ルーク | 俺達の帰りを待ってる奴らの元に |
リッド | 交わした約束を果たしに |
カノンノ | それじゃ、出発! |