NameDialogue
マナと異変
エルルドガー!バロニアについたよ!
エルキールにみてもらって、メガネのおじさんのこと、思い出せるといいね
ルドガーメガネの──?
エルまた忘れちゃったんだ…ルドガーのお兄さんだよ
ルドガー忘れるって、何の…ああ、いや、そうか…
ルドガー俺は誰かを忘れてるんだったな…。異変でルークを認識出来なくなった時みたいだ
ルドガー俺にも異変が起きてると考えて、キールに会いに来たって事はわかってるんだが…
ルドガー何を認識出来なくなっているのか、エルに指摘されても次の瞬間には頭から消えているんだ
エル前はエルが言ったら少しは思い出してたのに…
ルドガー不安にさせて、ごめん。きっと何とかして解決するから
エル大丈夫!それまで、エルがルドガーの代わりにちゃんと覚えててあげる!
ルドガーありがとう。エルがいてくれて本当に助かるよ
エルえへへ、頼りになるアイボーでしょ!
エルでも、ほんとにルドガーは負の因子の影響でそうなってるのかな?
ルドガーエルは違うと思うのか?
エルだって、スレイやキールみたいな黒いモヤ、ルドガーには出てないよ?
ルドガー…確かに。それも、キールに調べてもらえばはっきりするはずだ。行こう
エルうん…なにかわかりますように…!
エルすごー!ケンキューシセツってこんなに立派なんだ!
ルドガー四大国の有識者が集まってどんどん大規模になって行ったと聞いていたけど、ここまでとは…
エルこれなら、きっとすぐにルドガーも治してもらえちゃうね!
ルドガーはは、そうだといいな──
???いい加減にして!!
ルドガーな、何だ?聞いた事ある声だった気がするけど…
エルあっちだよ!行ってみよう!
リタ魔導器に罪はないわよ!
ダオス危険な物に違いあるまい。愚かな目的で使われる科学など存在する必要はない
ロンドリーネまぁまぁ、二人共。話が逸れてるから…
ルドガー言い争ってるのは、リタとダオス!?それにロディ!?
エルケンカしてる!ルドガー、とめよう
ルドガーああ。ロディも困ってるみたいだしな
ルドガーロディ!
ロンドリーネルドガー!いいところに、二人を止めるの手伝って
ルドガーああ。何があったんだ?
ロンドリーネえーっと、どこから説明すればいいかな…
リタ説明も何もないわよ!この二人、いきなり来て魔導器を愚かだって言うのよ
ルドガー魔導器…確かに俺もあまりいい思い出はないけどどうしてまた?
ダオス私はくだらぬ言い争いをしに来たわけではない
リタくだらないとは何よ!そっちが言い出したんでしょ!
エルケンカはやめて!エルとルドガーが話聞くから
リタ別に、これ以上話す事なんてないわ
ダオスならば仕方あるまい。この研究施設ごと──
ロンドリーネ待って、ダオス!ちゃんと話し合おう
ダオス……
ロンドリーネえっと…、説明するね。私達は、今世界中で起きてるマナの減少について調べてるの
ルドガーマナの減少?そんな事が起きてるのか?
ロンドリーネうん。前に会った時もそうだったけど私達はダオスの故郷を救うためにマナについて調べてたの
ロンドリーネあちこち旅しながら調べたんだけどダオスの故郷を救うにはこの世界のマナだけじゃ足りないらしいんだ
ダオス…かつてデリス・カーラーンからこの星を調べた時と比べ、明らかにマナが減っている
ダオスその原因の一つは、魔導兵器──特にかつての戦争で使われた魔導器だ
ダオスディセンダーによる世界の再生とマナの晶化現象の解決で少しは元に戻ったようだが…
ダオスまた急激にマナが減少し始めている
ロンドリーネしかも同時期に、魔導器を兵器として使ったウィンドルに大きな研究施設が出来た
ルドガーそれで、また魔導器が兵器として使われてるんじゃないかと調べに来たって事か
リタ何よ。要はマナの減少の原因を知りたいの?だったら最初からそう言いなさいよ
リタ来るなり魔導器を諸悪の根源だ、愚かだとか言うからケンカ売りに来たのかと思ったわ
ロンドリーネごめん。ダオス、ちょっと言い方キツくてさ…
ダオスマナの減少について何か知っているようだな?
リタええ。マナの減少については、あたし達も最近気付いて調べてたのよ
リタ調査報告書を見せるわ
ダオス…こちらで調べたものと一致する
リタこのマナの減り方が魔導器の影響に近い事は認めるわ。大精霊が暴走した時とも一部一致する
ルドガーそんなに!?
エル大精霊のボーソーって、イニル街も凍っちゃって大変だった時だよね?
リタそうよ。でも、大規模な魔導器が使われたなら特有のマナの揺らぎも観測されるはず
リタあたし達の調査では、それは一切観測されなかった。だから原因は魔導器じゃないわ
ダオス…そのようだな
ロンドリーネ魔導器のせいだって決めつけちゃってごめんね
リタわかってくれれば、それでいいわ
ルドガーしかしマナの大量減少か…。そんな事まで起こってたなんて…
リタ実際、その影響で世界各地で地震や集中豪雨が起こってる…憂慮すべき事態だわ
ルドガーえっ、あの異変は、負の因子の影響じゃないのか?俺はてっきり…
リタ問題はそこよ
リタ確かに負の因子の影響が観測された場所に天変地異が集中している
リタここから導き出される仮説…
ルドガー…!まさか、負の因子がマナの減少にも関係している!?
リタそういう事。まだ原理まではわかってないけど調査結果は明確な関連性を示してるわ
ロンドリーネごめん、ちょっと話について行けてないんだけど負の因子って何?
リタそれはルドガーから話してくれた方が早いわね。あたしは話に聞いただけだし
ルドガーああ。わかった
ロンドリーネそんな事が起こってたんだ…
ダオスマナの減少、負の因子、分史世界…
ダオス……
ダオス…収穫はあった
ロンドリーネえっ?ダオス、どこ行くの?
ダオス確かめたい事がある
ロンドリーネちょ、ちょっと待って!じゃあみんな、またね!
エル行っちゃった…
リタ一人で納得してたけど、何だったのかしら…
ルドガーロディも大変だな…
リタさて、問題がひとつ解決したところで次はルドガーの番ね
リタ兄のユリウスの事が思い出せないんだったわよね
ルドガーああ。そうらしいんだ
リタらしいって事は、もう兄がいた記憶すら残ってないようね
リタキールのところに行きましょう。こっちよ
キールよく来たな。手紙をもらった時は驚いたが…
キール…こうして見る限り、いつもと変わらないように見えるな
キールぼくの時は立っていられなくなったが体調に問題はないか?
ルドガーああ…。今はただ、何かを忘れてるという感覚があるだけだ…
エル前はエルが言ったら思い出してたんだよ。でも最近はぜんぜんダメ…
キール進行しているという事か…
リタ負の因子の影響を受けているならマナの流れに特徴が出るはずよね。あたしが見てみるわ
キール助かる
エル負の因子のエイキョウを受けてる人がわかるようになったの?
キールああ。ぼくやスレイ、ルークを調べたところ僅かだがマナの流れに不自然な揺らぎがあった
キールルドガーに負の因子が今まさに憑りついているなら、それが顕著に出るはずなんだ
リタ…で、そのマナの流れだけど…
ルドガー…どうだった?
リタこれまでの調査結果と一致する、負の因子の影響だと思われる反応を示してるけど…
リタこんな反応見た事ないわ。未知の現象よ
キール普通の負の因子とは違うという事か?
リタもう少し調べてみるから、ちょっと待って
リタこの反応…マナの流れ…ルドガーの傍にあるマナから減少してる…?
キール何だって…!これは…負の因子がマナを吸収しているのか…!?
リタ詳しく調べてみないと何とも言えないわね…
ルドガーよくわからないけど、負の因子なんだよな?
リタええ。それは間違いないわ
ルドガー……
ルドガーエル、時計を触らせてくれないか
エルうん
ルドガーみんな、念のため近くのものに掴まっていてくれ
キールルドガー?まさか…
ルドガー……
ルドガー…何も起きないな。時空の裂け目が開く条件は揃ってるのに
ルドガーこれまでも、エルの時計に触れる機会はあったんだ。だけど何も起こらなかった
キールつまり、負の因子とは似て非なるもの…という事か?
リタ…いいえ。確かに負の因子の影響よ。ただ、その働きが大きく抑制されているみたい
リタ魔導器の術式でね
キール何かわかったのか?
リタええ。マナの流れをずっとたどってみたら、見た事もない術式が仕込まれていたわ
リタおそらくこれは魔導器の術式。でも見た事もない、新しい型よ。つまり…
キール分史世界の魔導器か!
エルねぇ、エルわかんない。どういうこと?
キール分史世界には、負の因子の影響を制御出来る高度な魔導器があるという事だ
キールその力で影響が抑制されているからルドガーの異変は、他の人と比べて進行が緩やかなんだろう
リタこの術式を応用すれば異変を少しは抑えられるかも。とんだ拾いものだわ──
リタ──って、えっ、ちょっと待って!何これ!?
ルドガーどうした!?
リタ術式が解かれていくわ!
キール一体、何が起こっているんだ!
リタルドガー、時計を放して!負の因子の影響が、一気に──
ヒュンッ
ルドガー時空の裂け目が…!
エルあっ…わあぁっ!!
ルドガーしまった…!エル!!
リタこれが時空の裂け目…!あたし達も追うわよ!
ルドガーああ!
キール待ってくれ!ぼくとリタは、ここに残ろう
リタどうしてよ!早くしないとエルが危ないじゃない!
キールルドガーに任せるんだ。ぼく達には…特にリタにはこの世界でやるべき事がある
ルドガー…そうだな。さっきの術式ってやつで異変が抑えられるかもしれないんだろ?
ルドガーリタとキールはその研究を進めてこの世界を守ってくれ。エルは、俺が助ける!
リタ…わかったわ。絶対エルと一緒に無事で戻ってきなさい!
ルドガーああ!必ず二人で戻るよ
シュンッ
リタ…閉じたわね
キールああ。心配ない、ルドガーならきっと大丈夫だ
リタ別に心配してないわ。そんな暇なんてないもの
リタさぁ、忙しくなるわよ。まずはさっき見た術式を書き出して解析と計算から始めないと
キールぼくは研究者みんなに伝えて意見を聞いて来る。この研究、必ず成功させないとな
双つの世界
ルドガーここは…バロニアか?
ルドガーそうだ、まずはエルを捜さないと…!
ルドガーおーい!エル!聞こえたら返事をしてくれ!
エルあっ、ルドガー!
ルドガーエル!近くにいてよかった…!
エルエル、待ってたんだよ!
ルドガー無事でよかった。怪我してないか?
エルうん、平気!ここ、別の世界なんだよね?
ルドガーああ、そうだ。負の因子を持つ俺がいる分史世界…兄さんの事を思い出すためにも──
エルあっ!ルドガー、メガネのおじさんのこと、ちゃんと覚えてる!
ルドガーうん?そういえば…
ルドガールークも分史に移動してから認識出来なくなる事はなかったし、分史では異変が収まるのか…?
エルとにかくよかったね!
ルドガーああ。…思い出せるようになると不思議だな
ルドガー兄さんの事を完全に忘れてしまうなんて想像も出来ない…
エルだよね。だからエル、びっくりしたし
ルドガー…とはいってもまだ解決したわけじゃないか
ルドガーこの世界の俺を捜し出さないとな。手始めにこの辺りを調べたいところだけど…
ルドガーこの世界のバロニアは知っているようで知らない街だ。俺達の世界とは街並みが違う
エルそう?エルは見覚えあるけど
ルドガー一見同じように見えても分史世界によって微妙に違うってエルも知ってるだろ?
ルドガー例えばあそこの喫茶店は、同じ建物だけど正史ではパン屋だった
エルでもパン屋さんになる前は喫茶店だった?エル、喫茶店のこと、覚えてるし
ルドガーいや…あのパン屋は28代続くワンダーパン職人の店でかなりの老舗だったはずだ
エルでもエル、あの喫茶店見たことあるよ!
ルドガー別の店と間違えてないか?例えば、そこの角を曲がった先にも喫茶店があるから…
エル…雑貨店
ルドガーえっ?
エルこの先を曲がったら雑貨店がある…と思う。正史世界では、喫茶店のところ
ルドガー…確かめてみようか
エルうん
エルほら、雑貨店!
ルドガー…!本当だ…
ルドガーどうしてエルは初めて来た分史世界の街並みを知っているんだ…?
エルわかんないけど…ここのお店にはねよくパパと一緒に買い物に来たんだ
エルおもちゃを買ってもらったりしたからよく覚えてるよ!
ルドガー俺が道を間違えてるのか…?でも似たような場所は他にないはずだし…
エルパパはここで食器とか買ってたの!エルのお気に入りのお皿もあるよ。こっちに──
ドンッ
エルあっ!
???おっと、すまない
エルううん、だいじょう──
エル……えっ?
ルドガーエル?どうした?
エルパ…パ…?
ルドガー…パパ…?
???エル…!エルじゃないか
エルパパ!パパだ!!
???エル…どうしてここへ…!?
エルパパこそ、どこ行ってたの!?エル、ずっと待ってたんだよ!
ルドガーエル。ちょっと待ってくれ。この人は、分史の人だ。だから──
???失礼だが、あなたは…?
ルドガーあ、えっと、ルドガーと言います。どう説明すればいいのか…
エルルドガーは、エルのアイボーだよ!
エルルドガー、こっちはエルのパパ!
ルドガーあ、ああ…
???ルドガー君と言ったか…娘が世話になったようだね
ルドガーいえ…
ルドガー(この人がエルの父親… あの仮面は…素性を隠す必要が あるという事か…?)
???エルも、寂しい思いをさせて悪かった
???でも大丈夫、パパはちゃんとここにいるよ
エルパパ…
???エル、今までよく頑張ったな
エルパパぁ…!ぐすっ、うわ…うわあぁんっ!!
エルパパぁ、パパぁっ…!!うわああぁぁんっ!!
ルドガー(…分史の別人にしては 話が嚙み合っている。 ただの偶然か…?)
ルドガー(それに、エルはこの街の景色を 覚えていた…。 もしかして、エルは…)
ルドガー(…もう少し話を聞いてみた方が よさそうだな)
???…事情を聞きたいという顔だね
ルドガーはい。少し、話してもいいですか?
???君から見れば私は娘を長期間放っておいた父親…聞きたい事があるのは当然だ
???私も、これまでの事を聞きたい。すぐそこに喫茶店があるんだ。そこで話そうか
ルドガーはい
店員いらっしゃいませ。メニューをどうぞ
ルドガーありがとう。エル、先に──
エルエルはミラクルイチゴチョコパフェ!
エルの父エルはいつもそれだな。私はコーヒーを。ルドガー君は決まったかい?
ルドガーあっ、同じもので…
店員かしこまりました
ルドガー(メニューも見ずに注文するなんて この店に来た事がなきゃ 出来ないな…)
ルドガー(エルは本当にこの世界の…)
エルの父ルドガー君には、本当に世話になったようだね
エルの父世話になった恩人に、仮面の無礼を許してほしい
エルの父ある戦いで、顔に傷を負ってしまってね
ルドガーそんな、気にしないでください
エルの父エルは、迷惑をかけたりはしていなかっただろうか?
ルドガーエルはとてもいい子でしたよ。いつも前向きで頑張り屋で助けられた事も多いです
エルそうだよ!エルはルドガーのアイボーなんだから!
エルの父エルは、誰とでもすぐ仲よくなれるね。ママに似たんだな
エルうん!もちろん、パパにも似てるよ!しっかり者なところとか
エルの父はは、そうだと嬉しいな
ルドガー…こうしてると、二人が親子なんだなってよくわかります
エルだって親子だもん!こんなところでグーゼン会えるぐらい強いキズナで結ばれてるんだよ!
エルの父絆か…そうかも知れないね
エルの父やっと帰宅の目処がたったからエルを迎えに行く前に買い出しに来ていたんだ
ルドガーそうだったんですね。そこにちょうど俺達が来たのか…すごい偶然だ
エルの父…ところで、今日帰るとは伝えていなかったのにどうしてここに来たんだい?
エルあ、そうだった。エル達、ルドガーに起こった異変を解決しに来たんだよね!
ルドガー……
エルルドガー?どうしたの?
ルドガーエル、ちょっと考えたんだけど、せっかくお父さんと出会えたんだ。二人でゆっくり過ごしたらどうだ?
エルえっ?それはもちろんそうしたいけど…いいの?
エルの父私としてはありがたい申し出だが…君はその間、どうするんだい?
ルドガー俺は少し調べたい事があって…街の外にも出るかもしれません
エルの父なるほど。街の外は危険も多いからね
エルそのぐらい、エル平気だよ。それにルドガー、一人で寂しくない?
ルドガー大丈夫だよ。せっかくの親子水入らずなんだ、遠慮せずお父さんと仲よくな
エルうん、わかった!ありがとう、ルドガー!
エルパパ!お家に帰ったら、たくさんお話しよっ!
エルの父ああ
エルそうだ、パパ、荷物いっぱいでしょ!エルも持ってあげるね!
エルの父本当かい?助かるよ
エルそれとね、それとね!えっとー…
ルドガーいつもよりはしゃいでるな…パパに会えなくても平気だと時々強がっていたけど
ルドガーやっぱり寂しかったんだな。…会えて、よかったな
ルドガー(さて、俺は俺の出来る事をしよう)
ルドガー(負の因子に取り憑かれた 分史世界の俺…… 一体どこにいる?)
ルドガー(…ひとまずは、 イニル街の俺の家に行ってみるか)
ルドガー(この分史世界で同じ場所に 住んでいるかはわからないが… 他に手がかりもないしな)
兄からの手紙
ルドガーあった…俺の家…ところどころ街並みは違ったがこの辺りは同じで助かった
ルドガーまぁ、正史と同じように俺が住んでいるとは限らないけど…
コン、コンッ
ルドガーすみません。誰かいらっしゃいませんか?
ルドガー
ルドガー反応はない…人がいる気配もないな、留守か?
ガチャ、キイィ…
ルドガー鍵が開いている…?
ルドガーこれは…ゴホッ、ゴホッ!
ルドガー内装は正史の家と同じだけど…埃まみれだ…
ルドガー床にも…ん?これは?
ルドガー足跡…ここ最近、誰かが出入りしたようだな…
ルドガー足跡をたどってみるか。何か痕跡があるかもしれない
ルドガー食卓の前で折り返している…
ルドガー…ん?テーブルクロスの下に何か…
ルドガーこれは、手紙?
ペラッ
ルドガー「この手紙が 弟に届く事を望む」
ルドガー!!この字は…兄さんの字だ!
ルドガー「事情があって 姿を隠さざるを得ない状況に 陥ってしまった」
ルドガー「助けが必要だ。 今は街外れの廃墟に 身を潜めている」
ルドガーこれだけか…よっぽど慌てて書いたんだな
ルドガー街外れの廃墟、か…行ってみよう
ルドガー確か、この坂を下って…
ルドガー違うな…記憶と街並みが一致しない
ルドガーさっきから同じ場所をグルグル回っているような…
???あのー、もしかして困ってる?
ルドガーあ、はい。実は道に迷ってしまって…
ルドガーあっ…!
???ん?どうかした?
ルドガーい、いや…
ルドガー(エルに似ている…? いやけど、そんな…まさかな)
???…?私の顔に何かついてる?
ルドガーごめん。前に会った事あるような気がして
???え…もしかして口説かれてる?
ルドガーい、いや!そういうわけじゃ…
???あはは、冗談だよ!声かけたのは私の方だもん
???道に迷ってるって言ったよね。どこに行きたいの?
ルドガー街外れに廃墟があるはずなんだけど…知ってるかな?
???うん、わかるよ。でも何の用?あの辺りは何もなかったはずだけど…
ルドガー待ち合わせというか人捜しというか…
???あんなとこで…?ふ~ん、変わってるね
???まぁいいや。案内してあげる
ルドガーありがとう。助かるよ
???どういたしまして。そうだ、名前聞いてもいい?
ルドガールドガーだ。よろしく
???よろしくね。私は、エルだよ
ルドガーえっ…!?
エルん…?
ルドガーい、いや、知り合いに同じ名前の子がいて
ルドガー(やっぱり、 雰囲気も似てるな…。 だから会った事ある気がしたのか)
エル…やっぱりそれ口説き文句じゃない?運命の出会いを演出、的な?
ルドガーいや、本当なんだ。俺の知り合いは、エル・メル・マータって言うんだけど…
エルあれっ!?何で私のフルネームを知ってるの?
ルドガー…どういう事だ?君はまさかこの世界の…いや、でもそれだと…
エルこの世界?
ルドガーあ、いや、なんでも──
エルあっ、わかった!もしかしてルドガーも別の世界から来たんでしょ!
ルドガー俺『も』?
エルもう10年くらい前かな?私、こことは別の世界からやって来たみたいなんだよね
ルドガー…その話、詳しく聞かせてくれないか?
エルこっちに来たばっかりの時はまだ子どもだったから、細かい事はよく覚えてないんだけど…
エルイニル街に来てから家が壊れて大変だったのはよく覚えてるよ
ルドガーそれが10年前の出来事なのか…
ルドガー(家が壊れたのはたしか 大精霊が暴走した頃… ここは正史世界より未来なのか?)
エル…あ、そうだ。最近、この近くに美味しいアイスの店が出来たんだよ
エルルドガーの世界にもある?
ルドガー…いや、ないな
エルだったら是非食べてよ!廃墟まではまだ距離があるし腹ごしらえしない?
ルドガーそうだな。案内してもらってるお礼にご馳走するよ
エルほんと!?やったー!
エルおじさん、フルーツ焼きそばアイス!二つちょうだい!
ルドガーフルーツ焼きそばアイス!?
店主はいよ、フルーツ焼きそばアイス!ソース多めにかけといたよ!
エルありがとう!はい、こっちはルドガーの!
エルこの味が一番なんだから!ささ、食べてみて!
ルドガー
エルどう? 美味しいでしょ!
ルドガー何というか…個性的な味だな…。でも、癖になるかも
エルでしょ!?ルドガー、わかってるね!
???
ルドガーん?
エルどうかした?
ルドガーいや、今ちょっと視線を感じたような…
エルふふん、それはきっと私が注目を集めてるんだよ
エル溢れ出る美貌…美しいのは罪よね。…ぷっ、なんちゃって!
ルドガーはは、そうだな。本当に、大人っぽくて美人だよ
エルえ…あ……ありがと
ルドガー(あの小さなエルと比べたら 本当に大人っぽく見えるよな…)
エルそ、そろそろ休憩は終わり!廃墟に行こう!
scene1強襲
エルついたよ。ルドガーの言ってた廃墟はたぶんここだと思うけど…
ルドガーここが…。案内ありがとう、エル
エルどういたしまして。捜してる人、ここにいるといいね
ルドガーああ。中に入って、様子を見てくるよ
エルいってらっしゃい
ルドガー兄さん、いるか?俺だ、手紙を読んだよ
???その声…
ユリウスルドガー、来てくれたか…!
ルドガー兄さん…!よかった、無事で…
ユリウス何とかな…。…お前は正史世界のルドガーか?
ルドガーああ。兄さんも…だよな。事情があってこの分史世界に来たんだ
ルドガーそこにまさか兄さんがいるなんて驚いたよ
ユリウス俺も驚いた。僅かな可能性に賭けて手紙を残したが本当に見つけてくれるとはな
エルルドガー。捜してる人はいたの?
ユリウス…!お前は…!
ルドガーそうだ、紹介するよ、兄さん。俺をこの廃墟まで案内してくれた、エル──
ユリウスルドガー、離れろ!
ルドガーえっ…?どうしたんだ、兄さん?急に大きな声を出して…
ユリウス俺がここに隠れていた理由──それはこの世界で、ある二人組に襲われたからだ
ユリウスそいつは俺を襲った二人組の内の一人だ!
ルドガーそんな…何かの間違いじゃ…だって彼女は…エル、お前からも──
エル
ルドガーエル?
エルみんな、今だよ!二人を囲んで!
傭兵1おう!
傭兵2やっと出番か!いただいた料金分は働かせてもらうぜ
ルドガーこれは一体…
エル…私が雇った傭兵だよ
ルドガーそれじゃあ、本当に…
エル…自分から人のいない廃墟に向かってくれるなんて、好都合だったよ
エルユリウスまで出てきたのは想定外だけど…捜す手間が省けてよかった
ユリウス…!今回はルドガーが狙いか!
傭兵3悪いな。あんたらに恨みはねぇが、こっちも商売なんだ
ルドガーまさか、道中で感じていたあの視線…こいつらのものだったのか…!
ルドガー何故なんだ、エル!?どうしてこんな事…
エルそんな事、聞いてる余裕あるの?
ルドガーくっ…
ユリウスルドガー、落ち着け!今はこの場を乗り切る、詳しい事はその後だ!
ルドガーああ…!
scene2強襲
ガキィン!
ルドガーくっ…!
傭兵1これを受け取めるとは、中々やるな。だが…
傭兵2隙あり!
ユリウスルドガー!危ない!
キィン!
傭兵2ちっ、防がれた!
傭兵3こっちだ!
ガキン!
ユリウスくぅっ…!
ルドガーはぁ、はぁっ…多勢に無勢か…。逃げる隙も作れない
ユリウスああ。だが…妙だな。殺意は感じられない…。むしろ手加減されているような…
ユリウス…そうか、もし「殺さない事」が任務の内だったら…
ユリウスルドガー。合図をしたら出口にまっすぐ走れ
ルドガーえっ?
ユリウス殺す気がないなら強行突破は容易だ。俺が隙を作るから包囲を破って脱出するんだ
ルドガーでも、兄さんが危険じゃ…
ユリウス大丈夫だ。それに、どう反応するかで彼女──エルの真意もわかるかもしれない
ユリウス俺を信じろ
ルドガー…わかった
ユリウスよし…行くぞ!
ユリウス一迅!
バシュッ!
傭兵1ぐわあッ!
傭兵2こいつ、まだこんな技を!
ユリウス今だ!行け、ルドガー!
ルドガーああ!
エルなっ…!逃がさないよ!
ルドガーエル、そこをどいてくれ…!
エル…みんな!ユリウスを捕まえて!そしたらルドガーは逃げられない!
傭兵3了解!
ユリウスルドガー!俺に構わず走れ!
ルドガーいいや!二人で逃げるんだ、兄さん!
ルドガー舞斑雪!
ズバッ、ズバッ!
傭兵2ぬおっ!?
傭兵3何っ…!
ルドガー兄さん、今だ!
ユリウス助かった!
エルみんな、追いかけて!
傭兵1ああ!仕事は必ずやり遂げる!行くぞ!
傭兵2おう!
エル…はぁ。やっぱり、強いなぁ…
ルドガー…ここまでくれば大丈夫か?
ユリウス少なくとも今は追手はなさそうだ。ここまでくれば通行人も増える奴等もそう手出しは出来ないはず…
ユリウスルドガー。さっきどうして俺を助けに戻った?一人なら簡単に逃げられたはずだ
ルドガー兄さんらしくない質問だな。あの状況なら助けるに決まってるだろ
ルドガー自分が助かるために兄さんを見捨てたりするもんか
ユリウス…そうだな。危ないだろうと言おうと思ったが、結果的に無事、二人共逃げられた
ユリウス強くなったな、ルドガー
ルドガー兄さんからそんな風に言われるとちょっと照れくさいな…。でも、ありがとう
ルドガーそれにしても…エルは、どうして俺達を…。兄さんは何か知ってる?
ユリウスわからない。…もう少し離れた方がいいだろうから歩きながら状況を整理しよう
ユリウスなるほどな。俺が正史世界を離れている間にそんな事になっていたのか
ユリウスそちらの事情はわかった。次は俺の知っている事を話そう
ユリウス俺を襲ったのは先ほどの──10年後のエルと、ヴィクトルいう仮面を着けた男だった
ルドガーヴィクトル…知らない名前だな
ルドガー(仮面を着けた男… エルの父親も仮面だったけど、 まさかな…)
ユリウスああ。俺も初めて聞く名だ
ルドガー襲われた理由もわからないのか?
ユリウスああ。この世界に来て、異常なマナの流れについて調べ始めた矢先だったんだ
ユリウス突然現れた二人に襲撃されて、逃げるので精一杯だった。事情など聞く暇もなかったよ
ユリウスしかも、その時に時計を奪われてしまってな…。今は骸殻能力も使えない
ルドガーまさか、兄さんがそんなに圧倒されるだなんて…
ユリウス…さっきは見ていただけだったがあのエルも腕が立つぞ
ユリウスそれに、ヴィクトルという男は…かなりの手練れだ。骸殻化しても倒せるかどうか…
ユリウス時計を奪われ、骸殻化出来ない今、また襲撃されたら勝ち目はない。それで廃墟に隠れていたんだ
ユリウスあの手紙に一縷の望みを託してな
ルドガー…一体、何が起こってるんだ…。エルと、ヴィクトルという男は一体何の目的で…
ユリウス今の俺達にその事情を知る術はない…
ユリウス今は出来る事を考えよう。この世界のルドガーを捜すんだったな
ルドガーああ。兄さんは、この世界の俺について何か知ってるのか?
ユリウス…いいや。残念ながら、な
ルドガー今のところ何の情報もない…全部が靄の中って感じだ。何から調べればいいんだ…
ユリウス…こうして情報を共有していて少し思い出した事がある
ユリウスもう一度俺達の家へと戻ろう。もしかしたらそこに手がかりがあるかもしれない
ルドガーエルの雇った傭兵達が見張っているんじゃないか?
ユリウスいや、人数が多いとそれだけ目立つ。腕のいい傭兵を雇っているようだし、少数精鋭だろう
ユリウスその人数なら街から逃がさないよう俺達を捜しまわるだけで手一杯だろう
ユリウス見張りに割く人員もいない可能性は高い
ユリウスそこを突いて、調べに行くんだ。この世界の俺達がたどった過去の軌跡をな
オリジンの審判
ユリウス無事、たどり着けたな
ルドガーこの世界の俺達はここに住んでいるのか?
ルドガー埃の積もり方からするに何年も足を踏み入れていないように思うんだけど…
ユリウスああ、お前の言うとおりだろう。おそらく長い間、この家には帰っていないと思われる
ユリウスだが、家具は俺達が使っている物と全く同じだ。俺達の家だと考えていいだろう
ルドガーそう言えば、そうか
ユリウスそして、家具が同じという事は、ここの引き出し…実は二重底になっていてな
ゴソッ
ルドガー底が外れて、中に本が…!知らなかった、こんな仕掛けがあったなんて
ユリウスはは、それは知らないさ。俺の日記の隠し場所だからな
ユリウス正史世界でもここに隠しているからもしかしてと思ったんだ
ユリウス…帰ったら隠し場所を変えておかないとな
ルドガー盗み読みなんかしないよちょっと気になるけど…
ユリウスはは、冗談だよ。それよりほら、日記を確認するぞ
ユリウス俺はこの日記に調査した事なんかを記録しているんだ
ユリウスこの世界の俺も同じだったら何か情報が書かれているかもしれない
ユリウスルドガーに負の因子が憑りついたなら俺は調査するに決まっているからな
ルドガーなるほど。それで日記を読みにここに戻って来たのか
ユリウスさて、読むぞ…
ペラッ
ユリウスふむ…最初の方は正史世界で俺が書いている内容とほとんど同じだな
ペラッペラペラッ…
ユリウス…む。これは…!
ルドガー何か見つけたのか?
ユリウスああ。どうやら、これが…正史とこの世界の分岐点だ
ルドガー世界の分岐点…?そこから歴史が大きく変わってるって事か?
ユリウスそうだ。魔導器を使った大きな戦争、マナの急激な減少と、大精霊の暴走…
ルドガー正史世界でも起こった事件だな。時空の裂け目が出来て、人々が時空の歪みに巻き込まれた…
ユリウスああ。正史では、俺達が骸殻能力でみんなを助け出したんだ
ルドガーという事は、この世界では違うのか
ユリウスああ。どこにも時空の歪みに関する事件が書かれていない
ルドガーそれが、世界の分岐点…?
ユリウスいや、重要なのはこの後だ
ユリウス正史世界ではカノンノがディセンダーとして世界再生を行って解決したんだったな?
ルドガーああ。後でアスベル達から聞いた話だけど…
ユリウスだがこの世界では、どうもその世界の再生に失敗したようだ
ルドガーえ…!?
ユリウス事件の元凶を倒し、ディセンダーの力でマナの消耗が穏やかになったのは確かだ…
ユリウスしかし既に失われたマナは戻らず世界はゆっくりと死に近付いている…
ユリウスこの世界の俺達は、仲間達と共に死にゆく世界を救うため、動いていたらしい
ルドガーそれで、救えたのか?
ユリウス…いや、おそらくこの方法では…
ペラッ…
ユリウス…やはり、上手く行かなかったようだ
ルドガーそんな…
ルドガーやはりって言ったけど、そんなに難しい方法だったのか?
ユリウスああ。難しいさ。それに、分史世界の人達には…絶対に成し得ない方法だ
ルドガーそれって、一体…
ユリウス…彼らは挑んだんだ。クルスニク一族に伝わる伝承──
ユリウスオリジンの審判にな
ルドガーオリジンの審判…?
ルドガーオリジンって、カノンノに力を貸してくれたっていうあの大精霊オリジンの事か?
ユリウス…いや。そのオリジンはおそらく根源を司る大精霊だろう。能力は物質の再生だったはずだ
ユリウス一方オリジンの審判を行っているのは無を司る大精霊…世界を創造したとされる存在だ
ルドガーつまり…オリジンは二人いるのか?
ユリウスああ。その理解で合っている
ユリウス大昔の人々は、物質再生の能力が世界を創造した能力と似たものに見えた…
ユリウス結果、混同した人々はふたりの精霊を同じ名で呼んだ…というのが定説だな
ルドガー…その無を司るオリジンは世界を救う力を持っているんだな。でもこの世界を救ってくれなかった…
ユリウス…正確には、この世界の俺達はオリジンに会う事すら出来ていないはずだ
ユリウス分史世界には存在しないからな…
ルドガー…待ってくれ。知らない事が多すぎる
ルドガー兄さんはオリジンの審判をクルスニク一族に伝わる伝承だって言ったよな
ルドガーだけど俺は、そんな話を聞いた事がない。まずはそこから教えてほしい
ユリウス…そうだな。すまない
ユリウスこの話を今まで教えなかったのは、危険な事に巻き込む可能性があったからだ
ユリウス様々な戦いを乗り越えて来たお前には話してもいい頃合いだろう
ユリウスだが、オリジンの審判を巡って、クルスニク一族がどれだけの犠牲を払って来たかわからない
ユリウスその事をよく覚えておいてくれ
ルドガー…わかった
ユリウス…事の始まりは、およそ2000年前と言われている
ユリウス世界を作ったとされる精霊は三人いて原初の三精霊と呼ばれている。オリジンもその一人だ
ユリウス残りの二人は元素を司るマクスウェル、そして時を司るクロノス…
ルドガークロノス…!大精霊が暴走した時に会った…!
ユリウスああ、ルークが戦って鎮め、カノンノに力を貸してくれたあのクロノスだ
ユリウス彼はオリジンと違い、原初の三精霊本人だった
ルドガー…知らない間に俺は一族の伝承に伝わる存在に会ってたんだな…
ユリウスその原初の三精霊がまだ人と交流していた遥か昔、人々は魔導器を使い始めた
ユリウス当時の魔導器はマナを大量に消費し、世界を蝕むものだった
ユリウス放っておけばマナが枯渇し、精霊の生きられない世界となるだろう
ユリウスオリジンは悩んだ。魔導器というすぎた道具を使う人間を滅ぼすべきか…
ユリウスそれとも警句を与え、自らの過ちに気付かせる事で救いの道を示すか…
ユリウスそうして人類を見定めるべく人間の賢者へと審判の始まりを告げた
ユリウスこの人間の賢者というのが俺達の先祖、初代クルスニクだ
ルドガー初代、クルスニク…
ユリウスオリジンは言った。「人類よ、世界の楔へたどり着け」
ユリウス「さすれば人類は存続し、 最初にたどり着いた者の願いが かなえられる」と…
ユリウスそして世界の楔へたどり着けるようクルスニク一族に骸殻の力を与えてくれた
ユリウスしかし、同時にこの力は審判の終わりを告げるタイムリミットでもあった
ルドガータイムリミット…?
ユリウス骸殻の力は使いすぎれば自分自身が時歪の因子になる。それはルドガーも知っているな
ルドガーああ。だから細心の注意を払って使ってきた
ユリウスだが、この話にはお前には伝えていない続きがあるんだ
ユリウス時歪の因子となった者は新しく分史世界を作る
ユリウス分史世界の数が百万に達した時オリジンは審判が失敗したと判断し、人類を滅ぼす
ルドガーそ、それじゃあ、骸殻能力は、自分の命だけじゃなく人類の存亡にも関わってるのか!?
ユリウスそういう事だ。だが審判を成功させるには骸殻能力を使わざるを得ない
ユリウス世界の楔にたどり着く条件…それは世界に散らばる四つの「道標」を集める事だからな
ルドガー「道標」…
ユリウス元々は全て正史世界にあったらしいが分史が増え、審判に挑む者が増える中で、散らばっていったそうだ
ルドガーそれじゃあ、数ある分史の中から四つの「道標」を探し出さないといけないのか…
ルドガー途方もない話だな…
ユリウス俺もそう思っていた。だがこの分史世界の俺達は、重要な手がかりを掴んでいたようだ
ユリウス「道標」は負の因子を破壊する事で手に入る…そう、日記に書いてある
ルドガー負の因子…!ここでその名が出てくるのか…!
ユリウス…伝承の内容は以上だ
ルドガーこの世界の俺達は、この伝承を頼りにオリジンに願いをかなえてもらって世界を救おうとしたのか…
ルドガーだけど失敗した…。「道標」が集まらなかったという事か
ユリウスいや…。この日記には、苦難の末に、「道標」を集める事に成功したとある
ルドガーそれじゃあ、どうして失敗したんだ?
ユリウス…さっきも言ったが、分史世界の人間にオリジンの審判を達成する事は出来ないんだ
ユリウス原初の三精霊のうち、オリジンとクロノスは…正史世界にしか存在しない
ユリウス分史世界で「道標」を集めても何も起こらないんだ…
ルドガーそんな…そんな事って…
ユリウス「道標」を集めても世界の楔への道は開かれない…。そこで彼らは気付かざるを得なかった
ユリウスこの世界にはオリジン達がおらず、世界の楔へ繋がっていない…つまり分史世界なのだとな
ルドガー……。辛かっただろうな
ユリウス…ああ。だが、この世界の俺達はそれだけでは諦めなかったようだ
ユリウスルドガーが「道標」を集めている間、ジュードを中心に別の方策を練っていたらしい
ユリウスその方法は上手くいったとしてもとても時間のかかるものだったが着実に進んでいた
ユリウス世界が滅ぶのが先か、その方法が成就するのが先か…それだけが問題だったようだ
ルドガー地道に確実に…か。ジュードらしいな
ユリウスルドガーも、オリジンの審判が失敗した後も、決して希望は失わず、ジュードを手伝っていたようだ
ユリウス世界を再生しようと努力するその姿を根源を司るオリジンも近くで見届けていたらしい
ルドガー俺達の世界でも、カノンノの世界再生を見届けると言って力を貸してくれたらしいからな…
ルドガーこの世界では世界再生に失敗した後もずっと傍にいて見守っていてくれたのか…
ルドガー…待てよ。という事は…
ルドガーオリジンなら、この世界の俺が今、どこにいるのか知ってるんじゃないか?
ユリウスなるほど、その可能性はあるな。だがオリジンの居場所はわかるか?
ルドガーオリジンが住処にしていた遺跡ならアスベルから場所を聞いてる。この世界でも同じかわからないけど…
ユリウス他にあてもないんだ。そこに行ってみよう
ルドガーああ。確か、バロニア北部…森の中の遺跡にいたらしい。行こう…!
これまでの事、これからの事
ルドガー
ユリウスどうした?急に立ち止まって
ルドガーああ、ごめん。エルが今どうしてるかなってちょっと気になっただけなんだ
ユリウスそうか…俺達がよく知ってるエルもこの分史世界へ来ているんだったな
ルドガーお父さんと楽しく過ごせているといいな…
エルたっだいま~!
エルほら、パパも!
エルの父…ああ、ただいま
エルの父久しぶりだな、この挨拶を口にするのは…
エルお買い物の片づけ、手伝うね!
エルの父ありがとう。少し見ない間にエルは随分成長したみたいだな
エルえへへ…パパと離れ離れの間に、エルもいろいろあったんだよ!
エルイニル街でへんなビョーキが流行ってユーリやミラと一緒にカイケツしたんだ!
エルの父エルも頑張ってくれていたんだな
エルでしょ?
エルでも、ビョーキが治ったらと思ったら今度はジシンでエルのおうちが壊れちゃったの!
エルだからね、今はルドガーのとこでイソーローしてるの
エルの父そうだったのか。彼には改めてお礼をしないといけないな
エルの父その後は、どんな事をしていたんだい?
エルえっとね、世界中がショーカ現象でパキーンってなっちゃった!
エルの父ショーカ現象?何だいそれは?
エルえっと…人とか植物とか、ぜんぶ氷みたいに固まっちゃっうんだよ
エルの父そんな事が…ショーカ現象…晶化現象か?大丈夫だったかい?
エルイニル街も固まっちゃたけど、すぐに大丈夫になったよ!
エルの父それはよかった。他にはどんな事があったんだい?
エルえっと、急に島が見つかってルドガーがお仕事でお出かけしちゃったり!
エルの父ふむ…
エルあとあと、最近だとルドガーと別の世界へ行って、お姫様を助けたりしたんだよ!
エルエルは捕まっちゃって、ちょっと怖かったけど…
エルの父それは、怖かったな。エルが無事でよかったよ
エルでもね、エルは信じてたよ!ルドガーと友達のみんながエルを助けてくれるって!
エルの父友達、か…
エルうん、お姫様のメルディでしょ!ファラにクィッキーに…みんな友達!
エルみんなすごく優しいし、一緒にいると楽しいんだよ!
エルの父…そうか、いい友達が出来たんだな。パパも嬉しいよ
エルの父さて、そろそろご飯にしようか。エルは何を食べたい?
エルえー、どうしよっかな…
エルの父買い出しに行ってきたばかりだから何でも作れるよ
エルパパのごはん何でも美味しいから迷っちゃうなー
エルうーん…
エルそうだ!やっぱりアレがいいな!スープ!
エルの父ははは…アレか。エルのお気に入りだもんな
エルの父そう言うと思って、エルと会った後、ちゃんと材料は買っておいたんだ
エルえー!じゃあ聞かなくてよかったじゃん!
エルの父ごめんごめん。本人の口からちゃんと聞きたかったんだよ
エルの父それじゃあ久しぶりに腕を振るうとしようか
エルん~!やっぱりパパのスープが一番!
エルの父喜んでくれて何よりだ。作った甲斐があるよ
エルそうだ!パパの料理、みんなにも食べてもらおうよ!
エルの父…みんなに、かい?
エルルドガーでしょ?メガネのおじさんでしょ?ルルに、ミラに、ユーリに…
エルみんなを家に呼んで、パーティーをするの!
エルの父ああ…それは、楽しそうだ
エルえへへ、名案でしょー?よーしけってーい!パパ、約束だからね?
エルの父ああ
エルそれじゃ指切り!
エルの父…ああ、いいよ。ほら、小指を出して
ギュッ…
エル指切りげんまん!指切った!
エルこれで約束──
エルの父うっ…!ぐ、うっ!!
エルパパ!?大丈夫!?
エルの父はぁ、は、はぁっ…ゴホ、ゴホッ!
エルの父大丈夫、ちょっとむせただけだよ
エルほんと…?
エルの父本当だよ…ほら、もうこんなに元気だ
エルの父それより、エル。スープを飲み切ってるじゃないか。おかわりするかい?
エルう、うん…
エルの父すぐに入れてくるよ。待っていてくれ
エルパパ…
scene1失われた時
ああ、これは…またあの時の夢だ──
エル負の因子、この世界にはなかったね
ルドガーそうだな。次こそは必ず──
エルうん!次こそ!
ルドガーああ。俺達の世界を救うために…
ルドガー…こんな調子で本当に負の因子は見つかるんだろうか
エル焦ったらダメだよ、気長にがんばろ!
エル大丈夫、ルドガーには頼りになるアイボーがついてるでしょ!
ルドガー…ああ、そうだった。長い冒険になるけど、ついてきてくれるか、エル
エルもちろん!
ルドガーうおおおぉっ!!
キィン!
ヴィクトルそこをどけ。これが世界を守る、たった一つのやり方なんだ
ルドガーこんな…
ルドガーこんなやり方が許されていいはずがない!
ルドガーお前は、お前はそれでもエルの…!
エルやだ…!パパもルドガーもやめて!
ルドガー俺だって、こんな戦いしたくない!だけど…
ルドガー引き下がるわけには行かないんだ!大事な相棒のために!
エルルドガー…!
ヴィクトル私とて…!だが…これで世界を救えるなら…!
ルドガー世界が何だ!俺は、世界を敵に回してでも守るべきものを守る!
ルドガーうおおおぉっ!!
ヴィクトル来い!
バシュッ──
──ドサッ
エルあ…あっ…
エルパパぁーっ!!
ヴィクトルくっ…あ、ぁ…エ…ル…
ヴィクトルすま…ない…
エルパパ、パパぁーっ!!!
エルパパ、起きてよっ!目を開けてよぉ…!
ルドガーエル…
エルう、うぅ…うぅぅ…
ルドガーわかってくれとは言わない…
エルぐすっ、うぅっ…
エルわかってる…ルドガーはエルを助けてくれたって…
ルドガー
エルエル…カクゴを決めようって思ってた…世界の、みんなの、ためなら…
エルでも…
エルほんとは、怖くて…生きてて、エル…ひっく!
ルドガーエル…それでいい生きている事が間違いだなんて思わないでくれ
ルドガーエルを犠牲にして世界を生かすなんて…そんなの、間違ってる
ルドガー俺はエルを死なせない…絶対に死なせないから…
エル──っ!
エルはぁ、はぁっ…
エル久しぶりに見たな…あの頃の夢…
エル…はぁ。駄目だよ、エル
エルあの頃の私は何も出来なかった…。でも、もう私は子どもじゃない…
エル今度は私が、相棒を守るんだから
ユリウスこの森のどこかに大精霊オリジンのいる遺跡があるんだな
ルドガーああ、この辺りだと思うんだけど…なかなか見つからないな
ユリウス元々は文献でも所在が掴めなかった遺跡、だったか…探すのは大変そうだ
ユリウスちょうどあそこに小屋がある。夜を越す準備もしておこう
ユリウスまだ僅かに日はあるが森の夜は早いからな
ルドガーああ。そうしよう
パチパチパチ…
ユリウス今日は歩き詰めで疲れただろう。俺が見張っておくからルドガーは休むといい
ルドガーありがとう兄さん。俺はまだ平気だから先に休んでいいよ
ルドガー廃墟に隠れていたんじゃろくに眠れてなかっただろ?
ユリウスそうか?じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうとするか
ユリウスしかし見つからないものだな…小さな遺跡というわけでもないんだろう?
ルドガーうん。見落として通りすぎるような大きさじゃないはずなんだ
ルドガーただ…どうにも聞いていたのとは森の景色が違うみたいで…
ユリウス…そうか。正史世界とこの分史世界では辺りの風景が違うのかもしれん
ユリウスこの世界の俺の日記によるとあの天変地異からおよそ十年が経過し世界再生もかなっていない…
ルドガー…確かにそうだ。地震があれば地形は変わるし、樹の位置も変わる
ルドガー景色が違って当然だったんだ。聞いた通りの道をたどったつもりでも全然違う方向に進んでいたのかも
ルドガー明日は今日と違う方角を探してみよう
ユリウスそうだな。明日はきっと遺跡が見つかるさ
scene2失われた時
ルドガー遺跡だ!やっと見つけた!随分、遠回りしたけど…
ユリウス見つかったのならそれでいいさ。早速、中に──
ユリウス…!
ユリウスルドガー!
ルドガーえっ!?
エルはあっ!
キィン!
ルドガーエル…!
ユリウス待ち伏せしていたな?どうしてここがわかった
エルあなた達がこの森へ行くのを見たって情報があって…
エルだったら目的地はここしかないと思った。オリジンに会いに行くんだろうって
ルドガーどうして俺達を狙うんだ!理由を聞かせてくれ!
エル理由?そんなの簡単!
エルあなたがルドガーだからだよ!
エルはぁっ!
カキィン!
ルドガー俺がルドガーだから…?どういう意味だ…?
エル悪いけど、話してる余裕はないの!
ユリウス隙ありだ!
エル…っ!
キンッ
エルうっ…
ユリウス今日は一人か。それで俺達に勝てるとでも?
エル…さぁ。やってみないと、わからないでしょ!
キィンッ
ユリウスくっ…!
ルドガーやめろエル!俺はお前と戦いたくない!
エルだったら黙ってやられてよ!
エルはぁっ!
ガキンッ!
ルドガーエル…!どうしても、やるしかないのか!?
ユリウスルドガー、これ以上は無駄だ。彼女は、お前の知っているエルとは違う
ユリウス割り切れなければ、やられるのはお前だぞ!
ルドガーくそっ、腹を括るしかないのか…
エル覚悟は出来た?今度は、逃がさない!
scene3失われた時
エルはぁ、はぁっ…
ルドガーエル、もう諦めてくれ…!
エル諦める?私の目的はあなたに勝つ事じゃない。必要な物は、もうもらった
ルドガーエル!!
ユリウスやけにあっさり退いたな…
ルドガーエルも俺達と戦いたくなかった…なんて理由だったらいいんだけど
ユリウス…。それより気になる事を言っていたな
ユリウス「必要な物はもらった」…一体、何を…
ユリウス…はっ!ルドガー、時計は!?
ルドガー時計…!しまった、俺の時計がない!
ユリウスこれが目的か…やられたな
ユリウスこれで俺達は二人共、骸殻能力を封じられた。戦力を削ぐのが目的だったのか
ルドガーという事は、また改めて襲撃してくるつもりなんだろうか…
ユリウスルドガー、腹を括っておくんだ。そうしないと、いざという時に剣が鈍るぞ
ルドガーわかってる…
ルドガー…今は前に進むしかないか。エルとはまた会う事になるだろうし
ユリウスああ。今はここ…遺跡に集中しよう
ユリウスエルが言っていた。オリジンに会いにここに来たのだろうと
ルドガーつまり…俺達の考え通り、オリジンはここにいる…!
ルドガーこの世界の顛末がついにわかるかもしれないんだ…!
scene1死にゆく世界
ユリウス随分と広い遺跡だ…。昔は立派な神殿だったのかも知れないな
ルドガーここまで来たんだ。オリジンに会えるといいけど
ユリウスああ、そうだな…
ユリウス(ジュードの確立した方法で 世界は救われるはずだった… それなのに、なぜ──)
ユリウス(…それ以前にあの日記… もしかして、途中で俺は…)
ルドガー…兄さん?何か気になる事でも?
ユリウスいや、何でもない。それより、先を急ごう
scene2死にゆく世界
ルドガー祭壇のようになっている特別な部屋…カノンノ達から聞いていたオリジンの居場所だ
ユリウスここが…
???来たか
ルドガーあなたがオリジン…!
オリジンまさかまた、その顔を見る事になるとはな。ルドガー・ウィル・クルスニク
ルドガー俺の事を知っているんですか!?
オリジン無論。そちらは、ユリウス・ウィル・クルスニク…
オリジンどちらも別の世界から来たのだろう
ユリウス…俺達の事などお見通し、というわけですか
オリジン単純な話だ。この遺跡内での会話は全て私に聞こえている
オリジンそれに…この世界のユリウスがここに来るなどあり得ない事だからな
ユリウス…それは、どういう意味でしょうか
オリジン…説明してもよいが、まずはお前達の目的の詳細を聞かせてもらおうか
ルドガーわかりました。実は…
オリジン…なるほど。この世界のルドガーが原因で正史のお前に異変が…
オリジン負の因子にそんな側面があったとはな
オリジンこの世界でかつて道標を集めた時はそのような様子はなかった
ルドガーそうなんですか?では、どうやって道標にたどり着いたんです?
オリジン分史の位置を座標で表し負の因子が存在する方角を示す装置、それを用いてだ
オリジンそれで候補となる世界を数百まで絞り込んでしらみ潰しにしていったのだ
ルドガー数百…そんなに世界を巡ったのか…
ユリウス分史世界は今や何十万もあると言われている…数百に絞れたなら大したものだ
ルドガーそれでも、大変だったはずだ。なのに、道標を揃えても上手くいかなかったなんて…
オリジン確かにあの時のルドガー達は絶望していた
オリジンだが…まだ希望は残されていた
オリジン道標を集める事とは別に、世界を救うための計画が進められていたのだ
ユリウス…日記にもそうあった。しかし、その計画がどうなったのか肝心なところは書かれていなかった…
オリジン当然だ。その計画が結末を迎える前に…
オリジンこの世界のユリウスは、弟の手にかかって死んだのだからな
ユリウスなっ…!
ルドガー俺が、兄さんを…!?
オリジンユリウスだけではない
オリジン計画の中心人物であったジュード・マティスとリタ・モルディオ
オリジン元ディセンダーのカノンノ・イアハートやアスベル・ラント
ルドガーま、待ってくれ!頼む…少し、待ってくれ…
オリジン……
ユリウス本当に全員、ルドガーが殺したと?
オリジンそうだ。他にも大勢が死んだ。もっとも、私も全ての者の名を覚えているわけではないがな
ルドガーそんな…一体、どうして…
ユリウス…その計画の途中で何があったのか…経緯をお教え願いたい
オリジンいいだろう。では、話を道標を探す旅を終えた直後に戻そう
オリジンルドガーが分史世界を旅している間この世界に残った者達は、新たな魔導器の開発に取り組んでいた
ルドガー魔導器…それでリタの名前があったのか
オリジンそうだ。だが計画自体は、ミラ=マクスウェルの助言を受けたジュード・マティスによるものだ
オリジン使用する際にマナを必要としない新型の魔導器…。彼らはそれをマティス式魔導器と呼んでいた
ルドガーマナを必要としない…!そんな事が可能なんですか
オリジン理論上は可能だ。だが実現するには時間が必要だった
オリジン私も契約の元、力を貸したが…完成する頃にはマナの枯渇は止められぬところまで来ていた
オリジン魔導器を用いたところで世界の死を少し遅らせる事しか出来なかった
オリジンそんな折、新たに世界を救う方法が見つかった
オリジンその発見は一見希望に見えたが…絶望的な結末をもたらした
オリジンルドガーが拒絶し強行しようとする者とその仲間を全員殺したのだ
ルドガー…それでみんなを…。どうしてこの世界の俺はその方法に反対したんですか?
オリジン人の情、というものだろう
オリジンその方法とは、ある一人の人間を犠牲にする事でこの世界を救うというものだった
オリジンだが、それはルドガーにとって、かけがえのない存在だった
ルドガー俺にとって、かけがえのない存在…
オリジンその方法を知った者の一部が、ルドガーからその人間を奪い強行しようとしたのだ
オリジンルドガーは守るために戦った。だがその人間を守り切るには、事情を知る者全てを殺す必要があった
オリジン一人でも生かせば、また同じ事を企む人間が現れると考えての事だろう
ユリウス……
オリジンお前と一部の仲間は戦いを止めようとして殺された
オリジン私はその光景に失望した。世界再生を見届けるという契約はカノンノの死とともに消えた
オリジン世界再生を果たすどころか殺し合いを始めた人間に世界を救えるはずもあるまい
オリジン私は人間を見限り、再びこの遺跡に戻ってきたのだ
オリジン来るべき世界最後の日を人間に関わらず、穏やかに迎えるために
ユリウス…話していただき、感謝します
ルドガー……
オリジンルドガー。一つ聞こう
オリジンお前はまだ、そのかけがえのない存在と出会っていないのだろう
オリジン今のお前なら、どう考える
オリジン大切な者一人か、他の全ての者と世界。どちらの犠牲を選ぶ?
ルドガー大切な者一人と、他の全ての者…それに世界…
ユリウス……
ルドガー俺…俺は…
ルドガーわかりません…。どっちも犠牲にしちゃいけない…そう思います
オリジンだが、どちらかを選ばねばならない時が来る。その時はどうする?
ルドガーそれは…
ルドガー……
ルドガー俺は…どっちも犠牲にしません
オリジン…話にならん
ルドガーそうかも知れません。でも、俺は誰かを犠牲にする話なんてしたくない
ルドガー俺は今まで、いろいろな分史に行って来ました
ルドガーそこでは、何かを犠牲にして世界や大切な人、自分の居場所を守ろうとしている人達と出会いました
ルドガーだけど、最後まで諦めずにいれば…少し見方を変えれば…
ルドガー犠牲が必要だなんて、ただの思い込みだったと気付く事も少なくなかったんです
ルドガーだから俺は、何かを犠牲にする選択をするぐらいなら…
ルドガー最後の最後、人類が滅ぶその瞬間までどちらも犠牲にしない方法を考え続ける!
オリジンお前が決断を鈍らせる事で世界が滅び、大勢が死ぬとしてもか
ルドガー…世界や、大勢の命を救うべきなのは確かです
ルドガーだけど大切な人だって、世界に生きる大勢の一人なんです
ルドガーその一人を犠牲にしてしまったら世界を救ったなんて言えません
オリジン…理想論だな
オリジンだが…お前の進む先、その結末を見届けよう
オリジンお前の行くべき先を示す。そこに行けば、お前は全てを知り、改めて決断に迫られるだろう
ルドガー…今、教えてくれた話で全てじゃないんですか?
オリジン私が語れるのは、私が人間の元を去った時まで。8年近く前の話だ
オリジンお前達の話を聞く限り、あれからまた何かが起こっているようだ
オリジン…いざとなった時、お前が今と同じ決断が出来るのか…見させてもらおう
ルドガー…わかりました
ユリウス大丈夫か、ルドガー
ルドガー…別の世界とはいえ、俺が大勢の仲間を手にかけるなんて……正直、戸惑ってる
ルドガーけど、立ち止まっていられない。俺は、今の俺に出来る事…為すべき事をやらないと
ユリウス…そうだな
オリジン…覚悟は決まったか
ルドガーはい、お願いします
オリジン…では、向かうべき場所について教えるとしよう
scene1守る者、守られる者
ルドガー北東の湖か…そこに一体、何があるんだろう
ユリウス…不安か?
ルドガー…ああ。大切な人を守るために他の人を殺すなんて
ルドガー俺にとっては、兄さんや他のみんなも大切な人なのに…
ユリウス…俺は、少し理解出来る
ユリウス例えば俺にとってお前は大事な弟で、守るべき存在だ
ユリウスもし誰かを傷つけないとお前を守れないのだとしたら…俺は迷わず、お前を守る選択をする
ルドガー…兄さんだけど殺すというのは…
ユリウス…そうだな。しかし、負の因子が憑りついていたらどうだ?
ルドガー…そうか。この世界の俺には負の因子が憑りついているはずなんだ
ルドガー兄さんの言うような、誰かを守りたい気持ちが極端な形で表れても不思議じゃない
ルドガーだからといって…決して許されはしないけど
ユリウスああ。だがお前が気にしすぎる必要はない
ユリウス同じルドガーとはいえ、お前とは別の存在だ。しかも負の因子の影響を受けている
ユリウスお前は、自分がいつか同じように仲間を手にかけるんじゃないかと不安なんだろうが…そうはならない
ルドガー兄さん…。うん、ありがとう
ユリウス…わかっているだろうが、この先、どこかで分史のルドガーと対峙しなければならないんだ
ユリウスどういう出方をしてくるかわからない相手だ。…心の準備が必要だぞ
ルドガー…うん
ユリウス…もし辛いなら俺が一人で分史のルドガーを捜してもいい
ルドガーいや…本人に直接聞いてみたいんだ。一体何を見て、何を感じたのか…
ルドガーどんな事を悩んで、どうしてその選択をしたのかを
ユリウスそうか…。不要な心配だったな
ユリウス行こう。この先の森を抜ければ湖が見えて来るはずだ
ルドガーああ
scene2守る者、守られる者
ルドガー湖が見えて来た。そろそろか…
???待ちなさい!
ユリウスこの声は…!そう簡単にはたどりつけなそうだな
エルこれ以上、先には行かせない!
チャキ
ルドガーエル…!
ヒュンッ
ルドガーくっ…!
ルドガーどうしてだ?この先に何があるって言うんだ!
エル知らずに向かおうとしてるの?
エル…やっぱり、繰り返すの?あの戦いを…
ユリウスここで会えたのはちょうどいい。時計を返してもらうぞ
ユリウスはぁっ!
エルっ…!
エルそんなに必死に時計を取り戻そうとするなんて…
エルやっぱり、ヴィクトルと戦う気なんでしょ!?
ユリウスヴィクトルだと?
ルドガーヴィクトル…彼女と一緒に兄さんを襲ったっていう…。この先にいるのか?
エル…!
エル(知らなかったっていうの? 嘘…それじゃ、今の私の言葉こそ 歴史を繰り返させる…)
ユリウス奴がいるなら、彼女の言う通り時計が必要だ。ルドガー、彼女を捕まえるぞ
エルさせない…!それに、私を捕まえても無駄だよ。ちゃんと隠してあるんだから!
ユリウスなら隠し場所を吐かせるまでだ
エル死んでも言わないよ!あなた達に骸殻能力は使わせない!
エルそれに!捕まる前に私があなた達を倒す!
ルドガー…本気なのか?エル、俺はお前を傷つけたくない
エルだったら大人しくやられて!
ヒュッ、ヒュッ──
ルドガーぐっ…!?
ユリウスルドガー!
ユリウスルドガー、誰も傷つかずにこの場を収める事は不可能だ
ユリウス彼女の戦いに向ける覚悟は本気だ。時計を奪いに来ただけの前回と同じだと思わない方がいい
ルドガーだけど…
ユリウスさっきも言った通り、俺はお前を守るためなら手段を選ばない
ユリウス彼女を傷つけたくないならお前も戦って、無事に取り押さえるんだ
ルドガー…!ああ!
エルお喋りなんて、余裕だね。それとも観念した?
エルこれでトドメ!
ヒュヒュヒュンッ──!
ルドガーはぁっ!
キンキンキン!
エルやっぱり戦うんじゃない。私の事、傷つけたくないなんて、嘘なんでしょ?
ルドガーああ。傷つけたくない。だからって何もしなければ解決するわけじゃないんだ
ルドガー誰も傷つけないために俺は戦う!
エル綺麗事を…。出来るわけないでしょ!!
scene3守る者、守られる者
エルうぅっ…!はぁ、はぁ……
エルまだ…まだっ…!
ルドガーエル…一体何がお前をそこまで…
エルあんな歴史…はぁ、はぁっ…繰り返させないっ!
ガキィッ!
ユリウスまだ動くか…たいした信念だ
エルうぅぅ…!私じゃ、無理なの…?
エルでも、それでも私は…!
ルドガーなあ、エル。教えてくれないか?エルがそこまで頑張る意味…
ルドガー何か事情があるんだろ?話してくれ。協力出来るかもしれないじゃないか
エル
エル私は…
エルヴィクトルを守りたいだけだよ
エルあなたはヴィクトルを殺してしまうかも知れないから…
ルドガー俺が…ヴィクトルを?どうして、そんな風に思うんだ?
エル私のアイボーのルドガー…この世界のルドガーは、殺したから
エル私のパパを…
ルドガーエルのパパ…?まさか、エルの父親がヴィクトルなのか?
エル…そう。あなたはバロニアで会ったよね
ルドガーああ…
エルあなたが会ったのは、この世界のエルのパパ。私のパパは、別の世界にいたの
エル子どもの頃、私は知らない内にこの世界にやって来て…イニル街に住んでた
エル地震で家が壊れてルドガーの家に居候してたの
ルドガー俺達の世界と同じだ…
エルそれからはルドガーのアイボーとして一緒にいろんな冒険をしたの。道標を求めて他の分史にも行った
エルその旅の途中で、私が生まれた世界にも行った
エルそこでルドガーは私のパパに会ったの
ルドガーつまり、こことは別の世界のヴィクトルか…
エルそう。そこでルドガーはパパと対立して…最後には殺した
ルドガー
エル今、同じ状況がこの世界で起ころうとしてる
エルあの時と同じ年齢のエルを連れて、ルドガーがこの世界にやってきて、そしてヴィクトルと会った
エルきっとこの後、ルドガーとヴィクトルは戦う…そしたらヴィクトルは…!
???エル、どうかしたかい?
エル…!
ルドガーあなたは…!
クルスニクの鍵
ヴィクトル私の話をしていたようだが…
エルヴィクトル…!!
ユリウス貴様…!
ヴィクトル…ユリウス
ヴィクトルそう怖い顔をしないでくれ。今日は戦うつもりはないんだ
ユリウス何を勝手な事を
ルドガー待ってくれ、兄さん。この人はエルの父親でもあるんだ
ルドガー戦わずに済むなら、その方がいい。まずは…話を聞きたい
ユリウス…そうだな、すまない
ヴィクトル助かるよ。ここでこれ以上騒ぐ事は避けたい
ヴィクトルエルがさっき眠ったばかりでね
ルドガーエルも近くにいるのか
ヴィクトルああ。この先にある私の家にいるよ
エルヴィクトル…。ごめんなさい、私…
ヴィクトル…?何か謝るような事をしていたのか?
エルそう…じゃないけど…ヴィクトルに内緒でルドガー達と戦ってたから…
ヴィクトル…確かに、無茶をした事は褒められた事じゃない。でも、何か理由があったんだろう?
エル私はただ…ヴィクトルを守りたかったんだ
エルいつも守られてばかりだけど私だって、ヴィクトルのために戦えるんだから…!
エルだから…
ヴィクトルありがとう。その気持ちは嬉しいよ
ヴィクトルでも、危険な事はやめてくれないか
エルうん…
ルドガー一つ、聞いていいか?
ヴィクトル何かな?
ルドガー今の話だと、彼女が俺達を襲った事をあなたは知らなかったようだ
ヴィクトルそうだね
ルドガーなら、あなたがエルと一緒に兄さんを襲ったのは何故だ?
ヴィクトルなるほど、もっともな疑問だ
ヴィクトル…エルがどうして一人で君達と戦おうとしたのか私にはわからないが…
ヴィクトル君達はどちらも、この世界にとって脅威だからだよ
ヴィクトル何故なら、別の世界から来た骸殻能力者は、時歪の因子を破壊して分史世界を壊すだろう?
ユリウス…詳しいな。お前は、何者だ
ヴィクトルそう驚く事でもない。私もこの世界を再生するために力を尽くした者の一人だ
ヴィクトルこの世界が分史世界だと発覚した瞬間から世界の破壊には警戒していたんだよ
ルドガーそういう事だったのか…。でも、世界の破壊の事なら安心してほしい
ルドガー俺達の今の目的は、時歪の因子じゃなくて、負の因子なんだ
ヴィクトル…負の因子か
ヴィクトル…なるほどな。それなら私達が戦う理由はなくなるというわけだ
ユリウス理解が早くて助かるが…本当に今の説明だけで納得出来るのか?
ヴィクトルああ。エルから、過去にルドガー君と道標を集めた時の話を聞いているからね
ヴィクトル負の因子を破壊し、道標を手にすれば時空の歪みを通って元の世界に戻れる事は承知している
ヴィクトルもっとも、この世界に負の因子があり君達がそれを集めているという事は初めて知ったがね
エル……
ルドガーエルも納得してくれたなら時計を返してもらいたいんだが…
エル…私は…
ヴィクトルエル、私からも頼む。彼らにとって時計は大切な物だと知っているだろう?
エル…わかった
エル隠し場所まで案内するよ。二人共ついてきて
ユリウスああ
ルドガー……
ルドガーすまない。時計の事は兄さんに任せてもいいかな
ルドガー俺は彼に聞きたい事があるんだ
ユリウス…?それなら二人で…
ルドガー兄さん、頼む
ユリウス…わかった
エルそんなの、ダメ!
ヴィクトル私は構わないよ
エルヴィクトル!だって、この状況って…
ヴィクトルエル。わかってるよ
ヴィクトル大丈夫だ。私は、あのヴィクトルとは違う…それは君がよく知っているだろう?
エル……
エル…わかった。でも、気を付けてね
ヴィクトルああ。ありがとう
ヴィクトルさて…立ち話もなんだ。大したもてなしは出来ないが、私の家で話さないか
ルドガー…ああ
父と相棒
ルドガーここが…
ヴィクトル長閑でいいところだろう?街から離れているのは少し不便だけどね
ヴィクトルさあ、入ってくれ。お茶でも淹れよう──
ヴィクトルさて、何から話そうか…
ルドガー単刀直入に聞かせてほしい。ヴィクトル…あなたは分史世界の俺なのか?
ヴィクトル…そうだ
ルドガー…!随分あっさり認めるんだな
ヴィクトル隠していたつもりはないよ。気付かれるまで名乗るつもりもなかったがね
ルドガーつまり…あなたがこの世界の兄さんや、仲間達を…
ヴィクトルそこまで知っているのか
ルドガーオリジンが教えてくれたんだ。大切な人を守るためにみんなと戦ったって
ルドガー…その大切な人って、もしかして…
ヴィクトルご察しの通り、私の娘──君と一緒に来たエルの事だよ
ルドガー…エル…
ヴィクトル…君は理解し難い事だろう。だが、これが何度も悩んで出した私の答えなんだ
ヴィクトル私はエルの父親が娘に下した選択がどうしても理解出来なくてね
ルドガー
ヴィクトル彼は…世界を救うために娘を犠牲にする選択をして
ヴィクトル私はエルを守るために…彼の命を奪った
ルドガーエルもそう言っていた…。彼女を犠牲にするっていうのはどういう事なんだ?
ヴィクトルエルは、クルスニクの鍵だ
ルドガークルスニクの鍵…?
ヴィクトルクルスニクの鍵は時空を超越する力を持っている
ヴィクトルその力を持つエルを…時空の歪みに閉じ込めれば、全世界のマナの循環に干渉出来る
ヴィクトルつまり他の分史や正史から、対象の世界にマナを送り込む事が出来るんだ
ルドガーそれでマナの枯渇は解決するとしてもエルは…
ヴィクトル…人間の肉体には寿命がある。だがマナは永久に送り続けなければならない
ヴィクトル…学者の研究によれば、エルの魂を取り出し、魔導器に閉じ込めれば可能だそうだ
ルドガーそんな…
ヴィクトル私も今の君と同じ気持ちだった。だから戦い、エルを守った
ヴィクトルその後も私は悩んだ。自分の娘を犠牲にしようとするのはどういう気持ちなのかと…
ヴィクトル娘のエルが生まれてからもその事について考え続けた
ヴィクトルだが、結局あの世界のルドガーが娘を犠牲にしようとした気持ちは理解出来ない
ヴィクトルいくら考えても、私がエルを犠牲にする選択肢を選ぶ可能性はない
ルドガーだから…エルを犠牲にしようとした人を殺したのか
ヴィクトル先に強硬手段に出たのは向こうだ
ルドガーそれを止めようとした仲間達まで…話し合う事は出来なかったのか?
ヴィクトル話し合わなかったと思うか?私だってこんな結末は望まなかった
ヴィクトル元より話し合いも上手くはいってなかったんだ
ヴィクトル「子どもはまた産めばいい」とまで言われたのだぞ!
ヴィクトル妻は、もう子を産める身体ではなかったのに…!
ルドガーそれは…
ヴィクトルあがきにあがいた末の、これが私の最善だったんだ
ルドガー最善?兄さんを…仲間を傷つけ、殺して、それが最善だったって言うのか!
ヴィクトル私にとっては、娘が平穏に暮らせる事が何より重要だ
ルドガーそんな事…!エルが──
エルむにゃ…ルドガー…?
ルドガー…!
ヴィクトルエル…起きてしまったのかい
エルうん。話し声が聞こえたから
エルパパとルドガーって声がそっくりだね。一人でおしゃべりしてるのかと思った
ルドガーエル…それは…
エルルドガー、迎えに来てくれたの?って事は、分史のルドガー見つかったんだ?
ルドガーいや…どう説明すればいいか…
ヴィクトル…私から説明しよう。エルにもいずれ話さなければならない事だからね
エル…?何のこと?
エルパパが、ルドガーだったの!?
ヴィクトルああ
ルドガーエルは、パパの名前を知らなかったんだな
エルだって、パパはパパだもん。他の人は、ヴィクトルさんって呼ぶし…
エルエルの名前も、エル・メル・マータだし…ルドガーは、クルスニクでしょ?
ヴィクトルエルの名前はママのものなんだ。クルスニク一族だと知られないようにしたかったからね
エルそうだったんだ…
ルドガーエル、平気か…?分史の俺の事もだけど、その…世界を救うために…
エルエルが利用されるかもでしょ?でも、悪い人はパパがやっつけて守ってくれたんだよね!
ヴィクトル…そうだ
ルドガー(悪い人をやっつけた…か…)
ルドガー(ヴィクトルの話し方が上手いのか エルは人が死んだとまでは 思っていないみたいだな)
ルドガー(そしてヴィクトルが ジュードやリタと戦ったとも 思っていない…)
ルドガー(だが、エルにとっても酷な事実を 敢えて伝える必要もないか…)
ルドガー…事情はわかった。でも…今もこの世界はマナ減少が続いてるんだよな
ヴィクトルああ、その通りだ
ルドガーあなたはこの先、どうするつもりなんだ?
ヴィクトル…エルを犠牲にしなくても世界はまだ救えるかもしれない。その方法を私は見つけたんだ
ルドガー何だって…?オリジンは、そんな事一言も…
ヴィクトルこれはオリジンが人間を見限って遺跡に帰った後に発見した新しい方法だからね
ルドガーそれは一体…
ヴィクトル君もよく知っている…負の因子を使う方法だ
ルドガーなっ…!?
エルそれって、分史のルドガーが持ってるんだよね?つまり…パパ?
ヴィクトルそう。今まさに実践しているところだよ
ルドガー…キールが言っていた。負の因子がマナを吸収してるって…
ルドガーまさか、それが…!
ヴィクトルさすがキール…負の因子を憑りつかせた甲斐もあった
エルとりつかせたって…パパが?
ヴィクトル…そうだよ
ヴィクトルかつて負の因子を探す旅をした際、負の因子がマナの流れに影響を与える事を知った
ヴィクトルオリジンの審判に失敗した後も、負の因子の解析は続けられ、魔導器の研究に活かされたんだ
ヴィクトルそして最新のマティス式魔導器では負の因子の力の一部を操れるまでになった
ヴィクトルそこで私は、かつてと同じように負の因子を集めた。ただし破壊せず、そのまま持ち帰った
ルドガーそんな事が可能なのか?
ヴィクトルクルスニクの鍵の力を応用すればな。そのために、かつて相棒として共に旅したエルに手伝ってもらった
エルもう一人のエル…パパのアイボー…
ルドガーあのエルも、クルスニクの鍵なのか…!
ヴィクトルそうだ。そうして集めた負の因子を改造した
ヴィクトル憑りついた者の世界のマナを、この世界へと送るようにね
ルドガーそれじゃあ、スレイも、キールも、ルークもみんな…おかしくなったのはあなたの仕業か!
ヴィクトルそうだ。負の因子が強く影響を出せるよう彼らに助言もした
ルドガーそんな事まで…!
エルパパ…そんな…
ルドガー…一つ、わからない事がある。負の因子がこの世界にマナを送るためのものだとすれば…
ルドガーこの世界の俺…つまりあなたに負の因子がついているのは、何故だ
ヴィクトル私は受信機だ。各世界から送り出されたマナを私の負の因子が受け取っている
ルドガーそれじゃあ、そのためにわざと自分に負の因子を…!?
ヴィクトルさっきも言った通り、負の因子は魔導器で制御出来る。大した問題ではない
ヴィクトル私のこの仮面には負の因子の影響を抑える術式が組み込まれているんだ
ルドガー負の因子の影響を抑える…そうか、リタが言っていた未知の術式…
ヴィクトル君の世界では、未知の技術だろう
ヴィクトルもっとも、この世界でもまだ完璧とは言えない
ヴィクトルこの術式を発動させ続けるには身体への負担が大きくてね
エルあ…。だからあのとき、急に苦しそうだったの?
ヴィクトルああ。心配かけたね。でも、まだ大丈夫…
ヴィクトル私がこうして生きている間は、世界と、大切なエルを守る事が出来る
エルでも…でも…!パパが苦しいんでしょ!?
ヴィクトルそれでもいいんだ…エル、お前を犠牲にするより…ずっと
ルドガーっ…!
ヴィクトル今、私が負の因子を使ってやっている事はクルスニクの鍵の代用品に他ならない
ヴィクトル他の世界を犠牲にし、私自身の命を削り、それでもマナの供給効率は悪い…
ヴィクトルだが…エルを守れるのなら、そんな事、取るに足らない問題だ
エルパパ…
ヴィクトル私の命で代用している間に世界を復活しきるか、それとも別の画期的な策が見つかるか…
ヴィクトルどちらにせよ、エルも世界も犠牲にならない方法は、これしかないんだ…
ルドガーそれでも…間違ってる
ルドガー確かにあなたにとってエルは何ものにも代えがたい大事な存在だろう
ルドガーでも!スレイを案じるミクリオの友情や!
ルドガーメルディのために全てを賭けたキールの想い!
ルドガーお互いを信じ切磋琢磨し続けたルークとアッシュの絆!
ルドガーそのどれ一つとして犠牲にしていいはずがないんだ!
エル…それに、エルパパが苦しむのも嫌だよ
ルドガーヴィクトル…他の方法を探そう。俺や…正史のみんなにも頼んで協力する
ヴィクトル他の方法などない!
ヴィクトル私だって他の方法があると信じていた!
ヴィクトルだから私は、探し回ったんだ!あらゆる世界を旅して、様々な可能性を検討した
ヴィクトル誰も傷つけない…誰も不幸にならない…そんな方法を求め続けていた
ヴィクトルだが、答えは見つからなかった…。どこにも…どんな世界にもなかった!
ヴィクトルそうしている間にも理想を追い求める時間は減り、刻一刻と世界の終わりが近付く
ヴィクトルだったら犠牲にするのは無関係の世界と自分自身だけでいい!これが精一杯だったんだ!!
ルドガーそんなの…
エルダメだよ!
ヴィクトルエル…?
エルパパいつもエルに言ってるでしょ。人からされていやなことは、人にしちゃダメだって
エルパパもみんなも苦しいの、エルは嬉しくない!
エルこんなこと、やめてよ、パパ!
ヴィクトルエル…
ヴィクトルお前も私を認めてくれないのか…?いつも何でもパパの言う事を聞いてくれた、エルが…
エルエル、パパの言うこと聞くよ
エルでもこれは、ルドガーの方が正しいって思う
ヴィクトル私より…ルドガーを信じるというのか…
エル…パパ?
ルドガーそういう話じゃない。エルは自分で考えて意見を言ってるだけだ
エル…そうだよ。パパ、何か、ヘン
ヴィクトル私よりルドガーの方が…エルの事を…わかっていると…
ヴィクトルそうだ…あの時も、エルは…父親を殺した私を受け入れた
ヴィクトル一緒に冒険を重ねると…父親よりも相棒を取るのか、エル…
エル黒いモヤ…!
ルドガー負の因子…!自身を制御出来なくなっているのか
エルそんな…!パパ…!
ルドガーエル、危ない!安全なところに隠れるんだ
エル安全なところって…ルドガー、どうするの!?
ルドガー冷静になってもらうだけだ!エル、俺に任せてくれ
エルう、うん!わかった!
ヴィクトルエル…!エルが、離れて行く…!
ヴィクトルどうして俺よりそいつを選ぶんだ…!
ルドガー制御が出来ていない…?今まで抑えつけていた反動か…!?
ヴィクトルエルを…エルを返せッ!!!
scene1決戦!骸殻VS骸殻
ヴィクトルエルを返せ、ルドガー!
ドカッ
ルドガーくっ…!
ドカアアァァン!!!
パラパラパラ…
ルドガーぐうっ…なんて力だ…壁を突き破るなんて…!
エルルドガー!!
ルドガー来ちゃダメだ、エル!
エルで、でも…!!
ヴィクトルうおおぉぉぉっ!!
ガキィン!
ルドガーぐっ…!兄さんの言った通り、とんでもない強さだ…!
ヴィクトルどうした!そんなものか!
ヴィクトルエルを守るのは、この私だっ!
ギィンッ!
ルドガーくっ…!落ち着けヴィクトル!目を覚ませ!!
ルドガー衝動に吞まれるな!それこそエルを危険に晒すぞ!
ヴィクトル黙れ!!
ルドガー…!?その姿は…!
ヴィクトルその程度で、エルを守れるかぁぁぁっ!!
ドゴォッ!
ルドガーぐっ…!
ヴィクトルお前は弱い!力も!意思も!
ドカッ!
ルドガーうぐっ…!
ヴィクトル理想だけでエルを!世界を守れるなら!
ヴィクトル今ここでやって見せろ!
ガンッ!
ルドガーぐぁぁっ…!
ヴィクトルそれが出来ないなら!ここで死ね!
エルダメえええぇぇぇっ!!
ルドガーうおおおおおっ!!
ガギギィィンッ…!!
ルドガーはぁ、はぁ…この力は…!
ルドガーなんで、時計がないのに…
ヴィクトルお前のそれはエルの力だ!そんな道理もわからずに!
ドガッ!
ルドガーぐぅっ…!
ヴィクトル別の道があるだと!?みんな助かる方法を探せだと!!
ヴィクトルそれは!選択する事を諦めただけだ!
ヴィクトル何も選ばず、何かを守れると思うな!
ルドガー違う!俺は、選ばないんじゃない!
ルドガー何一つ、諦めたくないんだ!
ブンッ!
ヴィクトル…!
ルドガー避けられた…!?
ヴィクトル所詮、その程度だ!
ヴィクトル邪魔をするな!
ガギィッ!
ヴィクトル何っ…!
ユリウス弟が世話になったな
ルドガー兄さん…!
ユリウス全く、話し合いをするんじゃなかったのか…?
ルドガーそのつもりだったんだけど…
ユリウス何故その姿になれているのかわからないが…お前の時計も返してもらったぞ
ルドガーああ
エル…やっぱり、戦う事になったんだ。このままじゃ、ヴィクトルは…
ルドガーエル…。ヴィクトルを守るためにまた俺達と戦うのか…?
エル…ううん。前に私と戦った時、あなた達は言ったよね
エル傷つけないために戦うって
ルドガーああ
エル私もそうする。ヴィクトルをあのままにしておけない
エルそれに、二人が全力で戦ったらあの歴史を繰り返して…ヴィクトルを殺すかもしれない
エルだったら…私が、ヴィクトルを死なせないように押さえつける!
ルドガー…わかった。確かに加減して戦える相手じゃない…エルの言う通りだ
ヴィクトルエル…お前まで、俺を裏切るのか…
エル違う!ヴィクトル…私はあなたを絶対に裏切らない!
エルアイボーだから!あなたを守りたいし、間違ってたら止めるの!
ヴィクトル私が間違っている…?
エルそうだよ!今、怒りのままにルドガーを殺したら、全部無駄になる!
ルドガー…?
エルだから、落ち着いてヴィクトル…!そのまま暴走を続ければヴィクトルの命が危ないんだよ!
エルまたあの時と同じ事を繰り返すのは嫌だよ…!
ヴィクトルあの時…あの、時…?う、うぅっ…!!
エルパパ…!何だか苦しそう…!パパに何言ったの!?
エル信じて!今はヴィクトルの理性に賭けるしかないの
エルパパ…!
エルとにかくここは危険だから、あなたは安全な場所に避難して!
エルあなたが傷ついたらヴィクトルが悲しむから
エルっ…わかった
ヴィクトルお前は…私から何もかもを奪うのか、ルドガー!
ユリウス…理性が負けたようだな
エルまだ!ヴィクトルはこんな衝動に負ける人じゃない!
エルヴィクトルは間違えない!いつでも正しい選択をするの!だから…
エル負の因子の衝動なんかに負けるはずない!そうでしょ、ヴィクトル!
ヴィクトルうぅっ…ぐぐぐっ…エル…私は…
ユリウス動きが鈍った!
エルその調子だよ、ヴィクトル。あとは私に任せて
エルあなたは私が絶対に守る!だって私はヴィクトルのアイボーだから!
エルルドガー、手伝って!
ルドガーああ!
ヴィクトル返せ…!私の全てを返せ、ルドガー!!
scene2決戦!骸殻VS骸殻
ヴィクトルぐっ…
エルはぁ、はぁ…ヴィクトル、落ち着いた?
ヴィクトルこの程度で、私は…!私はぁぁぁぁっ!
ユリウスもうやめろ!その状態で戦い続ければお前の命も危ないだろう!
ヴィクトルなら、これで決着をつけるまでだ!
ルドガーくっ…!わかった、受けてやる!
エル…!待って、やめて…!
ヴィクトルルドガアアァァッ!!
ルドガーうおおおおぉぉッ!!!
エル・エルやめてぇぇぇぇぇっ!!
ヴィクトルなっ…!
ルドガー危ない…!
ドカッ──
ルドガーエル!
エルくっ…痛ったたた…間一髪だったね…
エルうぅ…怖かった…
ルドガー二人共!怪我はないか?
エル私は問題ないよ。それより…
エルパパ…!大丈夫!?
ヴィクトルあ、ああ…心配は、いらないよ…
ルドガー力を使い果たしたのか…
ヴィクトル二人共…危ないじゃ、ないか…
エルだって…!パパもルドガーも、何だか本気だったし
エルそうだよ。ルドガーにもヴィクトルにも…どっちにも死んでほしくないよ
ヴィクトル私を見限って、ルドガーに…ついたのでは…
エルそんな…そんなわけ、ないよ…!
ヴィクトルだが…お前は、俺の事を…間違ってると…
エル間違ってる…でも…パパ、だもん
エルエルの、とっても大事な…大好きなパパ…!
ヴィクトル…!エル…膝を擦りむいてるじゃないか!
エルあっ、ほんとだ…。でもこのぐらい、平気だよ!パパが無事だった方が大切!
ヴィクトル…エルを守るつもりで…エルに怪我を…
ヴィクトル私は…!
ルドガー…!また負の因子が…!
ユリウスいや、待て…!よく見ろ!!
ヴィクトルエル…二度と、傷つけない…
ヴィクトル絶対に…守る…!
ルドガー負の因子を…制御している…!?
巣立ちの時
ヴィクトルくっ…はぁ…はぁ…
ルドガー驚いたな。仮面の助けがあるとはいえ、衝動に打ち克つ事が出来るなんて…
ヴィクトルとはいえ…長く保っていられはしない…
ヴィクトル私が抑えている間に…負の因子を…
ルドガー…ああ、わかった
エル
チャキッ
エルルドガー、違うよ!
ルドガーエル…?
エル二人共、手、出して!
エルこうして、こうして…はい、握手!
ぎゅっ
ヴィクトル…!
ルドガーこれは…!
ヴィクトル負の因子が…道標へと変異し、お前に宿ったんだ
ルドガー道標が…俺にも…
ヒュンッ
ルドガー…!時空の裂け目…!
ユリウス確か時空の裂け目は道標を宿した者がルドガーに触れると現れると言っていたな
ユリウス今、ルドガー自身が道標を宿した…。だから同時に裂け目が開いたのか
ルドガーそういう事か…。言われてみれば当然だけど、いきなりだと驚くな
エル時空の裂け目か…何だか懐かしいね。昔、一緒に冒険した事を思い出すよ
ヴィクトルああ…そうだな。しかし、私もかつて道標を集めたがあんな方法は初めてだ
ヴィクトルエル、どうして知っていたんだい?
エル他の世界で見たんだよ。叩いたりしなくても、仲良くギュッてすればいいの!
ルドガーキールとメルディがそうだったな。なるほど、握手でもいいのか…
ヴィクトル…負の因子を破壊する方法は、力を消耗させ、狂気の元となる感情を崩した瞬間に力を加える…
ヴィクトル今回は私の骸殻で力の消耗が激しかった上、術式で負の因子を抑えていた事も効いたのだろうが…
ヴィクトルこんな方法で破壊出来るとは思わなかった…
ルドガー…ヴィクトル。俺もあなたも、知らない事がきっとたくさんあるんだ
ルドガーこうして人を傷つけずに負の因子を破壊する方法があったように…
ルドガー何も犠牲にせずこの世界を救う方法がきっとどこかにある
ヴィクトル
エル言われちゃったね、ヴィクトル
ヴィクトル…そうだな。数多の世界を調べて回っても見つからなかったが…
ヴィクトル次の世界では見つかるかもしれない。そういう気持ちを忘れていたように思うよ
エルこれで…もうヴィクトルとルドガーは戦わなくていいんだよね?
ヴィクトルああ…
エルよかった…ヴィクトルがちゃんと生きてる!本当に無事でよかった
エル…そういえば、この人誰?あなたもエルって呼ばれてる気がするんだけど…
エル…えへへ。私はエルだよ
エルえっ、同じ名前!?
エルそうじゃなくて…何て言えばいいのかな…
ヴィクトル彼女は、私がかつて一緒に冒険した相棒のエルだ。ルドガーにとってのエルと同じさ
エルんんん…?えっと、パパのアイボーで…ルドガーのアイボーはエルで…
ルドガー簡単に言うと、10年後の未来のエルだ。別の世界の、だけどね
エルそうなの!?すごー!
エルよろしくね、10年前の私。あなたは幸せになるんだよ
エルうん!おとなのエル、すごく美人だね!エルもそういう風になれる?
エルなれるけど、簡単じゃないよ。美容にも結構気を使ってるんだから
エルわかった!エル、ビヨーに気を使う!
ルドガーこうして見ていると姉妹みたいだな
ヴィクトルああ…
ルドガー…あの二人が生きるこの世界を俺も守りたい…
ルドガー俺達の世界に戻ったら、この世界を救う方法はないか、みんなと相談してみるよ
ヴィクトル…ありがとう。私ももう一度、方法を探してみるとしよう
ルドガーああ
ルドガー…それじゃあ、帰ろうか。兄さん
ユリウスいいのか?エルは…
ルドガーエルにとっては、ここが自分の世界だ。だから…
ユリウス…別れの挨拶はしないのか?
ルドガー挨拶すると、辛くなる。それに、エルならきっと──
エルついて行く!
ルドガー…!エル、聞いていたのか
エルルドガーひどい!アイボーを置いて行こうとするなんて!
ルドガーそう言うと思ったから黙って行こうとしたんだ…
ルドガーせっかくパパに会えたのに、また離れ離れになるんだぞ?
エルそれは…
エル
エルパパ…
エルエル、パパと一緒にいたい。けど…
エルルドガーの手助けもしたい。ルドガーは、アイボーだから
ヴィクトルエル…
ルドガーエル、無理しなくても…
エル無理なんかしてない!けど…確かにパパの事も…うーん…
エルエル、難しく考えなくていいよ。エルはどう思う?
エル…エルは…
エルパパ…
ヴィクトル……
エルエルね、ルドガーと一緒に最後まで冒険したい!
ヴィクトルエル…そうか…
エルでも!エル、どこにいてもパパが、一番、大好きだよ!
ヴィクトル…エル…私は…
ユリウス……
ユリウス離れるのは辛いし心配だろう。だが、旅をする事でしか、得られない経験もある
ユリウス信じて送り出してやるのも、家族の務めだ
ヴィクトル…ああ、そうだな
ヴィクトルエル、パパもエルの事が大好きだ。どんなに離れていたって、いつもエルの事を想ってる
ヴィクトルだから、安心して行ってきなさい
エル…うん!行ってきます!
ヴィクトルルドガー。娘を、よろしく頼むよ
ルドガー…!はい!
世界の楔
ヒュンッ
リタわっ!?
キール時空の裂け目!?もしかして…
エルとうちゃーく!
ルドガー無事に戻って来られたな
キールエル!ルドガー!それに…
ユリウスここは…正史世界か?見覚えのない場所だが…
リタもしかして…あんたがユリウス?えっ、何で!?
ルドガー何があったか、説明するよ
リタそう…あの時の世界再生が上手く行かなかった世界だったのね
リタ分史世界にはクロノスがいない分、力が足りなかったのかしら
ユリウスなるほど…あり得る話だな
キールそれにしても、エルの出自に、マティス式魔導器に負の因子の真実…
キール新しい情報が多過ぎだ。そこから導き出される事もかなり多い…
キールあらゆる研究が進展するぞ…どこから手を付ければいいのかわからないぐらいだ!
リタ嬉しい悲鳴って感じね
キール…とりわけ大きな情報は、マナの減少の原因がはっきりわかった事だな
キール負の因子を改造し、新型の魔導器で操っていたなんて…ぼく達には解析出来ないわけだ
ルドガー…それから、二人に相談したい事があるんだ
ルドガー実は俺達の行った世界は、滅びようとしてて──
ビー、ビー、ビー
エルわっ、何!?
キール異変を観測する装置だ!この近くで何か起こる予兆──
ゴゴゴゴゴ!!!!
ルドガー…地震!
エルわわわっ!
リタこれが異変!?でも、こんな規模って…
ユリウスみんな、しゃがむんだ!頭を守れ!!
ミクリオスレイ、どうだった?
スレイ問題ないよ。ライラが紹介してくれた天族がこの村に加護を与えてくれるってさ
スレイ後は村の人達が建物を元に戻すだけだ。オレも手伝いたいけど…
ミクリオ気持ちはわかるが、今は先を急がないとね
ミクリオ何せ世界中の土地を回って、天族の加護を取り戻さないといけないんだから
スレイけど、オレのせいで壊れた建物なんだ。ちょっとぐらい役に立ちたいよ
スレイミクリオ、ごめん。やっぱり、ちょっとだけ手伝ってくる
ミクリオあっ、スレイ…!
ミクリオ全く…仕方ないな。僕も手伝うか。その方が早く──
ゴゴゴゴゴ!!!!
スレイ…!地震!?
スレイそんな…だってここに加護を与えてくれてるのは地の天族…
ミクリオスレイ!これはただの地震じゃない!異常なマナの乱れを感じる!
スレイマナ…?まさか…
ミクリオ何だ、これは…!
スレイミクリオ!?
ミクリオスレイ…!!
スレイミクリオ!!
ビー、ビー、ビー
キールこの反応は…!
メルディバイバ!キール、これ何の音か!?
キール時空間に大きな乱れが発生しているんだ!
メルディ何か起こるか?
キール詳しい事はわからないが…メルディ!近くの物に掴まれ!
メルディえっ…?
ゴゴゴゴゴゴゴ…
メルディバイバ!?
キールこれは地震じゃない…時空に生じた異常で、空間そのものが揺れているんだ!
キールその異常の中心は、メルディ、おまえだ…!
メルディ…!メルディ、どうなるか?
キール別の時空へ飛ばされるかもしれない!この世界の物に掴まっていても無駄だ…
キールメルディ!ぼくの手を握れ!
メルディはいな!
ガシッ
キールこれなら…例え別の世界に行くとしてもぼく達は一緒だ!
メルディキール…!でも、キールも危ない…
キール構うもんか!いいか、この手は絶対に放さないからな!
メルディ…!うん…
メルディバイバ…!
キール何っ…!まさか、これは…
キールしまった!時空の変化はメルディの内側から…!
メルディキールっ!!!
キールメルディ…!待て!
キールメルディーーーっ!!
ルーク次は…ア・ジュールの大使館か。親善大使って忙しいんだな
アッシュ当たり前だ。手分けすれば仕事は半分になるぞ
ルークそうは言ってもな…。俺一人で行ったら嫌な顔する大使や大臣もいるからさ
アッシュフンッ、甘い考えだな。国を代表する親善大使を名乗るなら成果を挙げて一人前だと認めさせろ
ルークわかったよ。…とか言いつつ、しっかりついて来てくれるんだよな
アッシュ…お前の言う通りだ。確かに俺も甘かったな。ここで帰らせてもらう
ルーク待った待った!本気にすんなって!せっかくなんだ、一緒に行こうぜ
アッシュ全く──
ゴゴゴゴゴゴゴ!!
ルークうおっ!?じ、地震か!?
アッシュ…大きいな。それに、妙な感じが…
アッシュ…!これは…
ルークアッシュ!?
アッシュ……
アッシュルーク。やはりこの先は一人で行ってもらう事になりそうだ
ルーク一人でって…アッシュ、お前は…
アッシュ俺の事は心配するな。それよりも親善大使の役目を果たす事だけを考えろ
アッシュ……。お前なら、一人でも──
ルークアッシュ…!
ルークき、消えちまった…何だよ、いきなり!
ルーク意味わかんねぇっつーの!
ルークけど…俺一人で、親善大使の役目、立派に果たせばいいんだろ…!
ルークこっちは心配すんなよ、アッシュ!
ルドガー…止まったのか?
キールそのようだが…観測装置は反応し続けている。まだ何か…
エルわっ、まぶしい!
リタ何よ、この光…!
???何が起こっているんだ!?スレイは…
???バイバ!キール…
???
ルドガー…!
ミクリオ光が収まった…
メルディここは…
アッシュ…見慣れない場所だな
ルドガーミクリオ!メルディ!アッシュ!
ミクリオルドガー!?
アッシュ…?どうなっている?
キールメルディ!?何でここに!?
メルディキール!よかった、一緒に来られたか!?
キールな、何の話だ!?それに、その服装は一体…
メルディ…?キール、メルディが知ってるキール違う
エルもしかして…お姫様のメルディ!?
メルディあっ、エル!元気してたか!?
ルドガーやっぱり…分史のみんな、だよな…?
ミクリオここは…ルドガー達の世界なのか?
ルドガーさっきの異変でみんなここに来たのか…一体どういう事なんだ…?
ユリウスわからない…
ユリウスそもそも骸殻能力を持つ者がいなければ世界を超える事自体、出来ないはず…
ルドガーあの時…クロノスが暴走した時も、時空の裂け目が開いてみんなが世界を移動したけど…
ユリウスクロノス…
ユリウス…!そうか!オリジンの審判だ!
ユリウスこれで四つの道標が正史世界に揃った事になる!
ルドガーそうか…!という事は…
ビー、ビー、ビー
エルわっ、また!?
キールさっきとは別の反応だ!だけど、とても大きい…
リタまた地震でも起きるの!?
キールわからないが…影響範囲は…世界中!?
ルドガー世界規模の異変だって…!?
キール発生の中心点は、バロニア郊外…すぐ近くだ!
ユリウスここに道標が揃った事と何か関係があるかも知れないな…
ルドガー見に行こう。悪いけど、三人もついて来てくれ
アッシュ…仕方ない。だが、説明はしてもらうぞ
ミクリオ全てが突然すぎて理解が追いつかないからね
メルディメルディも混乱してるよぅ
ルドガーわかった。行きながら事情を話すよ
ルドガーみんなに宿った道標の事…それに負の因子をみんなの世界に持ち込んだ、もう一人の俺の事も
キール観測装置の示す座標はこの辺りだが…
ルドガー…!見てくれ、あそこ…!
ヒュン
エル時空の裂け目!
ルドガーいや、何だか様子が違う…あれは…
???「世界の楔」に通じる道だよ
ルドガー…!あなたは…!
ロンドリーネあれが、ダオスが言ってた世界の楔への道…?
ダオスやつらにたどり着かせるわけにはいかぬ…
ロンドリーネ…どうするつもりなの?
ダオス止めるのだ。世界の終わりを