| Name | Dialogue |
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| | 度重なる戦乱を経て、ウィンドル、ア・ジュール、キムラスカ、シルヴァラントの四国は |
| | 不戦と平和を実現するために互いに手を取り合う道を選んだ |
| | アヴァロン島での共同調査が終わった後は、以前より国同士の対話や交流が盛んに行われるようになった |
| | 大きな困難を乗り越え、ようやく訪れた平穏な日々… |
| | 世界中の人々が心の底から願った。「この穏やかで優しい時間がいつまでも続くように」と── |
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| | 時と共に戦禍の記憶は次第に薄れていき、平和な日常が当たり前になっていく |
| | 戦争によって人々が負った心の傷は氷が溶けるようにゆるやかに癒えていった |
| | そして、俺もまた──何者にも脅かされない、平凡で穏やかな暮らしを送っていた |
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| エル | いい匂い!ルドガー、ゴハンまだ? |
| ルドガー | 後は付け合わせの野菜を炒めるだけだ |
| ルドガー | すぐに出来るから、もう少しだけ待っててくれ |
| エル | わかった。じゃあ、エル、ルルと遊んで待ってる…って、あれ? |
| ルル | …… |
| エル | ルル、寝てるの…? |
| ルドガー | ああ…ルルは先にご飯を食べたから、お腹いっぱいになって寝ちゃったのかもしれないな |
| ルドガー | …それか、夕食がカリカリだった事に拗ねてるのかも… |
| ルル | …… |
| エル | どうしてロイヤル猫缶あげないの? |
| ルドガー | 兄さんが甘やかすから、お腹が出てきて…。これ以上太ったら健康にも悪いだろ? |
| エル | えー。このぷにぷに具合が可愛いのになぁー |
| エル | …そーいえば、メガネのおじさん、今日も遅いね |
| ルドガー | 仕事が忙しいんだろうな。最近は夜遅くに帰って来てるみたいだし |
| エル | おじさん、家族との食事は大切なものって言ってたのに… |
| ルドガー | そうだな。本当は兄さんも早く帰って、俺達と一緒に夕食を食べたいと思ってるはずだよ |
| ルドガー | まあ、それに…兄さんならトマト料理を作っておけばその内帰ってくるんじゃないかな |
| エル | …!!ルドガー、エルのはトマト抜きでね! |
| ルドガー | はいはい、わかってるよ |
| エル | まったく、パパとか大人は、なんでトマト好きかなー? |
| ルドガー | はは… |
| ルドガー | よし、出来た。…はい、お待たせ |
| | カタッ…カタッ… |
| エル | おいしそー!いただきまーす! |
| | パクッ |
| エル | ん~~~! |
| ルドガー | …ゆっくり噛んで食べるんだぞ |
| エル | うん!…やっぱりルドガーのゴハン、パパのと同じくらいおいしー! |
| ルドガー | そう言えば、エルのパパは料理上手だって言ってたよな。機会があれば、食べてみたいよ |
| エル | パパが帰ってきたら、エルがたのんであげる!ルドガーにゴハンめぐんであげてって |
| ルドガー | そ、それは楽しみだな… |
| ルドガー | 今まであまり聞いた事なかったけど、エルのパパってどんな人なんだ? |
| エル | んっとねぇ、強くて優しくて…何でもできちゃうんだよ! |
| エル | エルのパパはサイキョーなんだから! |
| ルドガー | …エルは、パパが大好きなんだな |
| エル | そ、それほどでもないよ。パパはエルのこと、大好きっぽいけど── |
| ルドガー | そうか。長い間、家を空けてるけど…どこにいるんだろうな |
| エル | わかんない…。でも、エル、パパと約束したんだ |
| エル | パパが帰ってくるまでいい子で待ってるって |
| ルドガー | エルはちゃんと約束を守ってるんだな。偉いよ |
| エル | まーね!エルはけっこういい子だから |
| エル | それに、パパとの約束を守ったらセーレーが『約束の帽子』にプレゼントを入れてくれるんだよ |
| エル | 今回はエルが一番ほしいもの、セーレーにお願いするヨテイなんだぁー |
| ルドガー | 約束の帽子って…今、エルが被ってるその帽子の事か? |
| エル | うん、そーだよ |
| エル | パパとの約束をちゃんと守ると、朝起きた時、帽子にごほうびが入ってるの |
| エル | いい子には、セーレーがプレゼントをくれるんだって |
| ルドガー | へえ…どんなご褒美が入ってるんだ? |
| エル | もちろん、ぜんぶエルのほしいものだよ |
| エル | イベント限定カラーの万華鏡とかキレイなセミノヌケガラとか |
| ルドガー | 用意するのが大変そうなプレゼントばかりだな… |
| ルドガー | それで、エルが一番ほしいものって、何なんだ? |
| エル | …んー、ないしょ! |
| ルドガー | ええ?教えてくれないのか? |
| エル | 願いごとは人に言うとかなわないんだよ。ルドガー、知らないの? |
| エル | でも、まあ…ルドガーはエルのアイボーだから、特別にパパが帰って来た後で教えてあげてもいーよ |
| ルドガー | わかった。早く、エルのパパが帰って来るといいな |
| エル | …うん。パパが戻って来た後も、ルドガー達に会いに来ていい? |
| ルドガー | ああ、勿論だ。エルのパパが帰って来ても、俺達が相棒な事には変わりないだろ? |
| ルドガー | いつだって遊びに来ていいよ。俺も、兄さんも…それにルルもエルの事、家族みたいに思ってるから |
| エル | うん! |
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| | あの頃は誰もがこの平和が長く続くものだと信じて疑わなかった |
| | けれど、闇は静かに、確実に人々の傍へと忍び寄っていた。そして──… |
| | 後に起こる出来事が、あらゆる世界の運命を左右する事になる。俺達はまだ、それを知らなかった── |
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| ガイ | さて、と。どうするアッシュ |
| ガイ | 親善大使として最初に向かう国は決まったか? |
| アッシュ | ああ。まずは手近な場所からにしようと思う |
| ガイ | となると、シルヴァラントだな |
| ガイ | …急に大役を任される事になったけどナタリアには旅の事、ちゃんと話せたのか? |
| ガイ | 全世界を回る事になるから、当分はキムラスカに帰って来られないだろ |
| アッシュ | 昨晩、会いに行った。各国の土産を楽しみにしていると言っていたな |
| ガイ | はは、ナタリアらしいな |
| アッシュ | …あいつは昔から四国間の関係が安定し、戦争のない世界が築かれる事を願っていた |
| アッシュ | この旅で俺達が戦争の芽を摘んで帰って来ると信じているんだろう |
| アッシュ | この国のためにも、与えられた使命は必ずやり遂げる。親善大使の名に恥じないようにな |
| ガイ | そうだな。俺も誠心誠意、お供させてもらうよ |
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| ルーク | …… |
| ??? | 何を見てんのかと思ったら噂の親善大使様じゃねえか。お供と一緒にいるみてぇだな |
| ルーク | …! |
| 怪しげな男 | 和平交渉の外交を全て任されるとは…次期国王様は相当優秀なようだ |
| ルーク | ああ。あいつは、何でも出来る奴だから… |
| 怪しげな男 | …あいつ一人動いたところで、世界が平和になるわけねえってのに。わらっちまうぜ |
| ルーク | …っ、そんな事…! |
| 怪しげな男 | 何だよ?…あいつが王様になったらお前はどうなる? |
| 怪しげな男 | 誰にも必要とされず…忌み嫌われて、始末されんのがオチだぜ |
| ルーク | …それ、は… |
| ガイの声 | そう言えば、出発する前にルークに会いに行かなくてよかったのか? |
| ルーク | …! |
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| アッシュ | …昨晩あいつの部屋にも足を運んだが、いなかった |
| ガイ | 他の場所は捜さなかったのか? |
| アッシュ | 何故、俺が? |
| ガイ | 何故、って…。兄弟だろ、おまえ達 |
| アッシュ | だからと言って、いちいちあいつの面倒を見ているわけにもいかないだろうが |
| アッシュ | ったく、昼間は勉強も稽古もほっぽりだしてサボってやがるくせに |
| アッシュ | 夜中までどこをほっつき歩いてやがるんだ、ルークの野郎… |
| ガイ | 前は熱心に剣の稽古をしてるみたいだったが… |
| ガイ | 最近は勉強にも稽古にも熱が入らないようだな、ルークは |
| アッシュ | …ちっ… |
| アッシュ | 俺達には、国の未来を切り開く義務がある。生半可な覚悟で成し遂げられる事じゃねぇ |
| アッシュ | あいつには国を背負う者としての自覚が足りねぇんだ。あんな野郎が、俺の弟だなんてな |
| アッシュ | …… |
| ガイ | まあまあ。とにかく俺達はシルヴァラントへ向かおう |
| ガイ | 旅から帰って来る頃にはルークも心を入れ替えてるかもしれないぜ? |
| アッシュ | ふん…。だといいがな |
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| ルーク | そんなの…わかってる |
| ルーク | 俺と、おまえは違うんだ。どんなに頑張ってもアッシュみたいにはなれねぇよ…! |
| 怪しい男 | ──気持ちは固まったか?なら、行くぞ |
| 怪しい男 | あいつらが戻る前に準備を進めねぇとな…。忙しくなるぜ |
| ルーク | ああ… |
| ルーク | …… |
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| クィッキー | クキュウユ… |
| メルディ | だいじょうぶよー。ここまで来たら見つからない。たぶんきっと |
| | ザッザッザッ… |
| メルディ&クィッキー | …! |
| メルディ | 隠れなきゃ…! |
| | ザッザッザッ… |
| メルディ | …行ったか? |
| クィッキー | クィック、クィック! |
| メルディ | 危なかったよぅ。見つからなくてよかったな |
| 街の女 | あら…?お姫様じゃないですか |
| メルディ | バイバ! |
| 街の女 | そんな隅っこの方に隠れて…。どうかしたんですか? |
| メルディ | びっくりしたな。お城の人かと思ったよぅ |
| 街の女 | あらまあ。まさか、またお城を抜け出して来たんですか? |
| メルディ | はいな!こっそり抜け出したの、みんなには内緒な |
| メルディ | メルディ、これから花畑行くよ |
| メルディ | キールがお出掛け、誘ってくれたからな! |
| 街の女 | ふふ…。そうでしたか |
| 街の女 | わかりました。メルディ様を見た事は黙っておきますね |
| メルディ | ありがとな! |
| メルディ | それじゃメルディ、行ってくるよ! |
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| キール | …… |
| メルディ | キール! |
| キール | …… |
| メルディ | …キール、本に夢中な。メルディに気付いてないよ |
| クィッキー | クィッキー、クキクキキ |
| メルディ | なあに? クィッキー |
| メルディ | あ、クィッキー! |
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| クィッキー | クィッキー! |
| キール | うわぁ!? |
| メルディ | びっくりしたか? |
| キール | な、何だ、メルディか。驚かせるなよ |
| メルディ | ちゃんと声、かけたよぅ。キール、本に夢中でメルディに気付かなかったな |
| キール | …悪かった。集中してたんだ |
| メルディ | その本、今キールがしてる研究と関係あるか? |
| キール | ああ。教授から借りたんだ |
| メルディ | キール、いつも勉強しててリッパ、リッパ! |
| メルディ | …だけど、最近ボーッとする事が増えたな。無理してないか? |
| キール | 心配はいらない。あと少しで論文が書き上がるんだ |
| キール | ぼくの論文が認められればマナの研究は飛躍的に発展する。そうすれば、研究費だって… |
| メルディ | キール、お金がほしいのか? |
| キール | …あって困るものじゃないだろ |
| キール | 論文を発表して、ぼくの事を馬鹿にした奴らを見返してやるんだ。立場が違うなんて、言わせるもんか… |
| メルディ | …キール? |
| クィッキー | クィック… |
| キール | …何でもない |
| キール | 行くぞ。おまえに、見せたいものがある |
| メルディ | ホントか?楽しみだよぅ |
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| 侍女 | 姫様! |
| メルディ&キール | …! |
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| 侍女 | こんなところにいらっしゃったんですね。捜しましたよ |
| メルディ | …見つかっちゃったな |
| クィッキー | クィィ… |
| 侍女 | …また、その方とご一緒だったのですね |
| 侍女 | あなた、研究生でしょう?こんなところで遊んでいていいのかしら |
| メルディ | …! |
| メルディ | キールは悪くない!勉強だって頑張ってるよ |
| 侍女 | …姫様、お城に戻りましょう。午後のパーティーに遅れてはいけませんからね |
| メルディ | でも… |
| キール | …今日は帰った方がいい |
| メルディ | …キール、またお出掛け、誘ってくれるか? |
| メルディ | メルディ、キールが一緒がいいよ。キールともっと一緒にいたい |
| キール | …… |
| キール | 心配するな。すぐに逃げたり隠れたりしなくても会えるようになる |
| キール | 今に立派な学者になってやるから見てろよ |
| メルディ | キール… |
| 侍女 | 行きますよ、姫様 |
| キール | …… |
| キール | 待ってろ。…ぼくが必ず、おまえのいる場所まで上っていくからな |
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| ミクリオ | …ここへ来るのは久しぶりだな |
| ミクリオ | なかなか会いに来れなくてすまない。…スレイ |
| スレイ | …… |
| ミクリオ | …君を救う方法は、まだ見つかっていないんだ |
| ミクリオ | 必ず、探し出してみせるってそう約束したのに… |
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| スレイ | っ…う… |
| ミクリオ | スレイ…! |
| スレイ | …大丈夫。そんなに心配するなって |
| ミクリオ | 大丈夫って顔色じゃないだろう…!君はどうして、そうやって… |
| スレイ | ははは。そんなに酷い顔、してる? |
| ミクリオ | スレイ! |
| スレイ | …やっぱりミクリオに隠し事は出来ないな |
| スレイ | なあ、ミクリオ。頼みがあるんだ |
| ミクリオ | …何だ? |
| スレイ | …取り返しのつかない事になる前に、オレを封印してほしい |
| ミクリオ | …! |
| スレイ | たぶんこのままだと、オレがオレじゃなくなる…そんな気がするんだ |
| ミクリオ | …… |
| ミクリオ | …わかった。だけど、スレイが眠っている間に必ず…僕が原因を突き止める |
| ミクリオ | 君一人に全てを背負わせたりしない |
| スレイ | …うん |
| スレイ | なあ、ミクリオ。もし… |
| スレイ | もし、封印が解けてオレが暴走するような事があったら、その時は… |
| ミクリオ | させない!僕が…僕が必ず、探し出してみせる |
| ミクリオ | スレイを救う方法を。絶対に! |
| スレイ | …そっか。ありがとな、ミクリオ! |
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| ミクリオ | …くっ。僕は、どうしたら…! |
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| スレイ | っ… |
| ミクリオ | !?スレイ!? |
| スレイ | ぐ…う…! |
| ミクリオ | そんな、まさか…封印が…! |
| スレイ | …… |
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| スレイ | ここがイニル街か… |
| ミクリオ | 確か、ルドガーが住んでいる街だったね |
| スレイ | うん。バロニアに向かう前に家を訪ねて──… |
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| スレイ | …うっ! |
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| ミクリオ | …!どうしたんだ、スレイ! |
| スレイ | …っ |
| ミクリオ | これは…!? |
| | ドサッ |
| ミクリオ | スレイ!?しっかりしろ、スレイ! |
| スレイ | …… |