| Name | Dialogue |
| scene1 | 不運な幕開け |
| ルカ | うう…。本当に大丈夫なのかなあ…僕達 |
| ロイド | さっきから何ぶつぶつ言ってるんだ?ルカ |
| ルカ | な、何でもないよ。この状況に慣れなくて、ちょっとね… |
| ロイド | 確かに、変な森だもんなあ。木はいちいちでけーし、たまに変な鳴き声も聞こえてくるし |
| ルカ | そうなんだよ…こういう経験って初めてで、どうしても、怖── |
| ロイド | ああ、どうしてもこう…ワクワクしてくるよな!冒険の予感がするっていうかさ! |
| ルカ | え?いや…。そういうわけじゃ、ないんだけど… |
| ロイド | へ?違うのか? |
| ルカ | …ううん。いいんだ…気にしないで |
| ロイド | そうか…?あ、そういや、薪は集まったか? |
| ルカ | あ…うん、どうにか。このくらいでいいかな…? |
| ルカ | ロイドに言われた通り、なるべく乾いてるのだけ拾ってきたけど… |
| ロイド | どれどれ…。おっ、いいやつ拾ってきたな!これならよく燃えるぜ! |
| ロイド | 俺が拾った分も合わせれば、薪は切らさずに済みそうだ |
| ルカ | 煙で誰かが気付いてくれればいいね |
| ロイド | 駄目だったら野宿だな。さてと、この先は… |
| | |
| パスカル | ん~…これでも駄目か…。絶対まだ仕掛けがあるはずなんだけどな~ |
| パスカル | …あ、お帰り~、二人共! |
| ロイド | おう、ただいま。やっぱり、ここに戻って来れたな。って言うより… |
| ルカ | 戻って来ちゃった、だね… |
| ルカ | これで何度目だろう…。やっぱり、ここからは抜け出せないのかな… |
| ロイド | 悪い方にばかり考えるなよ。こうして拠点だって出来たんだ、焦らず行こうぜ |
| ルカ | そっか…それもそうだね。…何かわかった事はあった?パスカル |
| パスカル | そりゃもう! |
| ルカ | えっ!?そ、それって、森を抜ける方法とか!? |
| パスカル | うん、ばっちり! |
| パスカル | まだ何もわからないって事がわかったよ! |
| ルカ | な、何さそれ~… |
| ロイド | パスカルって変な奴だよなー。いろんな奴に会ってきたけど、その中でもとびきりだぜ |
| パスカル | やだな~。そんな褒めても何も出ないよ? |
| ルカ | 褒めてるのかな…? |
| パスカル | まあ見ててよ、あたしがこの装置を解明したら、きっと上手くいくって! |
| パスカル | いい?ここをガチャガチャポンってすると、…ほら、この通り! |
| パスカル | …… |
| ルカ | …何も起きないよ? |
| パスカル | む~、こうじゃなかったか。やっぱり手強いなあ、こいつ |
| ロイド | そういうの、よくわかんねえけどさ。うんともすんとも言わないんじゃ、ただのガラクタなんじゃないか? |
| パスカル | いーや!絶対何かある! |
| ルカ | どうしてそう思うの? |
| パスカル | あたしの勘がそう告げているからね! |
| パスカル | この森のビリビリってやつが、この装置にも関係してるはずだって |
| ロイド | ビリビリ?何だよそれ |
| ルカ | そう言えば森に入る時、そんな事言ってたよね。「ピリピリ、ビョエー!」みたいな |
| パスカル | 全然ちっがーう!ビリビリ、ビャー!だよ |
| パスカル | 塔の扉から森に続く何かとしか言えないんだけど…。そういうのを感じたんだよね |
| ロイド | ふーん。詳しい事はともかく、何となく気持ちはわかるぜ |
| ロイド | この森、いかにも不気味な感じで何かありそうだしな! |
| ルカ | うん…。で、でもさ── |
| パスカル | でしょでしょ!やっぱわかるよね!?面白そうだよねー! |
| ルカ | あ、あの…うう… |
| ロイド | 長居するわけにはいかないけど、それとは別に──っと、悪いルカ。何か言いかけなかったか? |
| ルカ | い、いいんだ。何でもないから、気にしないで |
| パスカル | そう言われると余計気になるよー。言ってみなって |
| ルカ | その…。このまま森を抜けられなかったら、どうなっちゃうのかなって思ったんだ |
| ルカ | ご、ごめん…変な事言って |
| ロイド | 何で謝るんだ?言いたい事があるなら、言っちまえばいいんだよ |
| ルカ | うん、わかってはいるんだけど…。余計な事言って、迷惑かけちゃいけないと思って… |
| パスカル | 引っ込み思案ってやつ?駄目だよルカ!何事も楽しく!好きにやってみなきゃ! |
| ロイド | そうそう!…って、お前はそれでルカを巻き込んだんだろ、パスカル |
| パスカル | あはは、ごめーん |
| ルカ | う、ううん。それはいいんだけど… |
| ロイド | …まあ、ルカの心配ももっともだな。いつまでもこんなところにいるわけにはいかねえし |
| ロイド | あっ、調査隊ってのがいるんだろ?いざとなれば、そいつらが助けに来てくれるって |
| ルカ | 実は…それもそれでちょっと不安があって… |
| ロイド | 調査隊が来るのがか?どうしてだよ? |
| ルカ | うっ…。じ、実は僕、調査隊員なんだ… |
| ロイド | ルカが!?へえー、それでそんな格好してんだな |
| ルカ | うん…。…本当は、本部に寄って配属先とか教えてもらうはずだったんだけど… |
| ロイド | その前に塔を見物してたら、パスカルに会ったわけか |
| ルカ | 配属される前から森で遭難なんて前代未聞だよ… |
| ルカ | 調査隊が助けに来てくれたとしても、きっと怒られる…。うう~… |
| パスカル | しょげててもしょうがないって!大志を抱け、少年! |
| ロイド | そうだぜ。こうなっちまったもんは仕方がないさ |
| パスカル | うんうん!…ところでさ、調査隊って何?その辺よくわかってないんだけど |
| ロイド | 知らないでこの島に来たのか?てっきり、パスカルも研究者か何かだと思ってたぜ |
| ルカ | …僕も。ええっと、調査隊って言うのはね… |
| ルカ | 四大国が合同で結成した組織だよ。いろんな専門家を国中から募って、この島を隅々まで調査するんだ |
| ルカ | 結構、大々的に布告が出てたはずなんだけど…知らない? |
| パスカル | ん~、港でそんな事聞いたような…聞いてなかったような? |
| ロイド | みんなお祭り騒ぎだったぜ。とりあえずアヴァロン島へ!って奴が港にたくさんいたし |
| ロイド | 塔の封印を解けば結構な報酬が出るらしいけど、あまり進展してないみたいだな |
| パスカル | へえ…いーじゃんいーじゃん!研究しがいのあるものがまだたくさんあるって事でしょ!? |
| ルカ | 二人も、サフィアを調べるために島に来たの? |
| パスカル | あたしはそうだね。面白そうなものが見つかったって噂を聞いて来たんだよ |
| ロイド | 俺は、幼なじみが式典に招待されたからな。護衛のために島に来たんだ |
| ロイド | 土産話を持ってくつもりで塔を見に行ってたんだけど、まさかこうなるとはなあ |
| ルカ | あ、えっと…。ごめんね、巻き込んじゃって… |
| ロイド | ははは、気遣わなくていいって。別にルカのせいじゃないんだからよ |
| パスカル | そうそう!気にしすぎると胃に穴開いちゃうよ! |
| ロイド | お前はもうちょっと気にした方が…まあいいか |
| ロイド | とにかく、俺達は三人仲よく遭難中ってわけだ |
| ロイド | 改めて、よろしくな。一人じゃなかったのは運がよかった。力を合わせて森を抜けようぜ! |
| パスカル | あいあいさー! |
| ルカ | うん…よろしく! |
| ルカ | …でも、野宿となると大変だよね。火も食べ物もあるけど… |
| ルカ | お風呂とかも入れないだろうし。僕らはともかく、パスカルは… |
| パスカル | ん?あたしがどうかした? |
| ルカ | その…女性だからさ。お風呂とか入れないの、嫌じゃない? |
| パスカル | いや?あたしは平気だけど。あんなの何日か入らなくったってへーきへーき |
| ルカ | ええっ!? |
| パスカル | 世の中は広いんだよ~。どんな人がいたって不思議じゃないっしょ! |
| ロイド | へえ~。世の中いろんな奴がいるんだな |
| パスカル | あははは!それよりさ、もう一回森の探索に行かない? |
| パスカル | あたし、ずっと装置をいじってたから気分転換もしたいんだよね |
| ロイド | …そうだな。まだ探してない場所もあるだろうし |
| ロイド | 早いとこ、森を抜ける方法を見つけないとな!ルカもいいだろ? |
| ルカ | う、うん!手がかり、見つかるといいけど… |
| scene2 | 不運な幕開け |
| ルカ | はあ、はあ…。二人共、待ってよ… |
| ロイド | っと、悪い。でも、お前結構根性あるな |
| ロイド | 泣き言言いながらも、何だかんだついて来れてるし。案外、こういう探検に慣れてるのか? |
| ルカ | まさか!ただ、友達によく引っ張り出されるんだ |
| ルカ | 「お勉強ばっかじゃ退屈だろ」って… |
| ロイド | おっ、そいつは俺と気が合いそうだな! |
| パスカル | ルカって、やっぱ断れないタイプだよね~ |
| ルカ | うう… |
| ロイド | だから、森に引っ張り込んだお前が言うなって… |
| ルカ | ロイドは慣れてるんだよね?使える薪の見分け方とか、教えてくれたし |
| ロイド | ま、故郷じゃ狩りもやってたからな!こうしてると思い出すぜ、あの巨大イボイノシシを…! |
| ルカ | きょ、巨大イボイノシシ…!? |
| ロイド | おう!そりゃあもうでけー奴でさ、日が暮れても決着がつかなかったぜ! |
| ルカ | へえ…!何かすごいね。そんなの、想像出来ないや |
| ロイド | ルカは狩りとかしなかったのか? |
| ルカ | 僕の家は商家だったから…。そういう経験、ほとんどないんだ。…ちょっと羨ましいかも |
| パスカル | で、どうなったの?その巨大イボイノシシ |
| ロイド | ん?ああ、狩るのに二日かかったぜ。何しろ歩くだけで地響きが── |
| | ズン…!ズン…! |
| ロイド | これこれ!あいつときたら、まさにこんな感じの足音だったんだ!ズン、ズンって…! |
| パスカル | ルカ、もしかして太った? |
| ルカ | 太ってないよ!これ、本当に足音だよ…それも、相当大きな生き物の…! |
| | |
| | ブオオオオオ!! |
| | |
| ルカ | うわあっ!!出たあああ!! |
| ロイド | うわ、でけー!あの時の奴と同じくらいあるぜ! |
| パスカル | 食べても美味しくなさそ~ |
| ルカ | そんな事言ってる場合じゃないよ! |
| | ブオオオオオ!! |
| ロイド | おっ、あいつやる気だぜ!よーし、俺達も負けてらんねえな! |
| ルカ | の、乗り気だ…!こ、こうなったら、やるしかない…! |
| scene3 | 不運な幕開け |
| ルカ | はあっ…!はあっ…!な、何とか…倒せそうだね |
| ロイド | ああ、動きが鈍ってきた!とどめは俺が行くぜ! |
| パスカル | いっただき!ばっしゃ~ん!…って、あれ、ロイド!? |
| ロイド | おりゃああ! |
| ルカ | ま、待ってロイド!!パスカルの術が!巻き込まれちゃうよ! |
| ロイド | へ? |
| | バシュウッ! |
| ロイド | うおおおっ!?何かかすった!! |
| | |
| | ブオオオオオッ!? |
| | |
| ロイド | あ、危ねー…。何とか避けられた… |
| パスカル | ご、ごめんごめーん!ロイドの動き、ちゃんと見てなくって…! |
| ロイド | いや、先走った俺も悪かったしな!次はお互い気を付けようぜ! |
| パスカル | りょーかい!魔物はばっちり吹っ飛ばしたから! |
| ルカ | ほんとだ。向こうでピクピクしてる… |
| ロイド | よーし、そんじゃ今度こそ俺が… |
| | ガサガサ… |
| ルカ | あれ?魔物の後ろで何か… |
| | ガサガサ… |
| | …ドゴッ!! |
| | …ブ、ブオオッ!? |
| ルカ | ま、魔物が飛んで来た!?パスカル!危ない! |
| パスカル | へ? |
| | |
| パスカル | …ぷぎゅ! |
| ロイド | パ、パスカルー!! |
| ルカ | 大変…!パスカルが魔物の下敷きにされちゃった…! |
| ロイド | 今のは… |
| ??? | ああ、吹っ飛ばしたんだ |
| ロイド | …!何だ、お前…!? |
| アイゼン | ただの通りすがりだ |
| ロイド | …今の、お前がやったのか? |
| アイゼン | そう言ったつもりだが。でかい図体が邪魔だったんでな。少しどいてもらった |
| アイゼン | …お前らもそこをどけ。うるさいのが来る前にな |
| ロイド | うるさいの…? |
| ルカ | ロ、ロイド!この魔物、一人じゃ持ち上げられないよ!手伝って──って、あれ? |
| アイゼン | む…お前は |
| ルカ | あ、あなたは確か、式典会場で会った… |
| パスカル | ぷぎゅー!むぐー! |
| ??? | …いた!ようやく追いついたぞ! |
| アイゼン | …ちっ |
| アリーシャ | いい加減逃げるのはやめろ!大人しく話を聞かせてくれれば、こちらとしても…! |
| ロイド | あ、あれ?アリーシャ?こんなところで何やってんだ? |
| アリーシャ | ロイド?どうして、君がここに… |
| ルカ | な、何か…どんどんややこしくなってきたような… |
| パスカル | むぎゅーーーっ!! |
| scene1 | 旅は道連れ |
| ルカ | よい…しょっ!ぜえっ、ぜえっ…! |
| パスカル | ぶはーっ!!危なかった!魔物の下敷きなんて、もう二度とごめんだよ! |
| パスカル | ありがと、ルカ!──って、あら。何かややこしそうな空気だね? |
| ルカ | う…うん。僕にも、何が何だか…? |
| アイゼン | …お前らをどうこうしようって気はない。先に行かせてもらうぞ |
| アリーシャ | いいや、待ってもらう。ロイド、すまないがその男を止めてくれ |
| ロイド | そう言われてもな…。一体何したんだ、あんた |
| アイゼン | 何も。その女が勝手に絡んでくるだけだ |
| アリーシャ | 私は警備役としての役目を全うしているだけだ |
| アリーシャ | この森は一般人の立ち入りを禁じられている。その警告を無視しただろう |
| アイゼン | 悪いが、名も知らん奴の命令を受けるのは性に合わなくてな |
| アリーシャ | …! |
| ロイド | …お、おいおい待てって!そんなバチバチしなくても… |
| アリーシャ | そうはいかない。この島の情報が公開されて以来、サフィアを狙う者は後を絶たないんだ |
| アリーシャ | 近海で海賊の目撃情報もあった。この男の素性がはっきりしない限り、目を離す事は出来ない |
| アリーシャ | 私はシルヴァラントの騎士、アリーシャ・ディフダ!島の警備を担当している! |
| アリーシャ | …今度はそちらに答えてもらうぞ。お前は何者だ? |
| アイゼン | 全く…。見えるってのも一長一短だな |
| アイゼン | …まあ、いいだろう。アイフリード海賊団副長、アイゼン。それが俺の名だ |
| ルカ | か…海賊!?初めて見た…! |
| アリーシャ | …やはり海賊か。随分素直に答えるのだな |
| アイゼン | 追いかけっこも飽きたんでな。第一、わかったところでどうしようもないだろう |
| アイゼン | さっきも言った通り、お前らと事を構える気はない。だが、そっちがやる気なら… |
| アリーシャ | …! |
| ルカ | あわわわわ…!あの人達、早く止めないとまずいよ…! |
| パスカル | そう?んじゃ、ルカが止めてきなよ!ほーら、行ってらっしゃーい! |
| ルカ | え!?ちょ、押さないでよ、パスカ──うわっ…とっと…! |
| アイゼン | …! |
| アリーシャ | …君は? |
| ルカ | へ!?あ…。ルカ・ミルダです…どうも |
| ロイド | あー、ちょっとした成り行きでさ。俺達一緒に行動してんだ。そんで、あっちが… |
| パスカル | パスカルだよ~。何かね、ルカが言いたい事あるんだってさ |
| ルカ | も、もう…パスカルってば!!え、えっと… |
| ルカ | 向こうで聞いてて、その…事情はわかったんですけど… |
| ルカ | やっぱり、喧嘩はよくないと思うし…。もっと穏便に済ませた方が… |
| アリーシャ | …私としても争いは本意ではないが、この男を放っておくわけにはいかない |
| ルカ | で、でも…!今はもっと大きな問題だってあるし… |
| アリーシャ | …大きな問題?一体、何の事だ? |
| ルカ | その…。この森、出られないんです |
| アイゼン | …何だと? |
| ルカ | ひっ!う、嘘じゃありません! |
| ロイド | 本当だぜ。どの道を行っても、同じ場所に戻って来ちまうんだ |
| ロイド | 俺達もいろいろあってここに来たんだけど…。全然抜け出せる気がしねえんだ |
| パスカル | そういうわけだからさ、喧嘩してる場合でもないんだよ |
| アリーシャ | 迷いの森…という事か?そう言われてみると、確かに何度か違和感があった… |
| アイゼン | …振り切れなかったのはそういうわけか。いや… |
| アイゼン | …… |
| アリーシャ | …… |
| ルカ | 二人共、考えこんじゃってるけど… |
| ロイド | …提案なんだけどさ、ここは休戦して一緒に森を抜けないか? |
| アイゼン | …何? |
| パスカル | おー、いいんじゃない?旅は道連れって言うしね! |
| アリーシャ | いや、それは…! |
| ルカ | ロ、ロイド…!この人、海賊だって…! |
| ロイド | でも、人手は多い方がいいだろ?一人で動くのは危険だし、一緒に森を抜ける方法を探そうぜ |
| アイゼン | …断る。つるむつもりはない |
| ロイド | でもよ、さっきも言った通りこの森は── |
| アイゼン | この森については自分の目で確かめる。…ああ、あとお前 |
| アリーシャ | 何だ…! |
| アイゼン | そういきり立つな。お互い、殺し合いが好きって柄でもなさそうだ |
| アイゼン | どうせ振り切れないなら、監視でも何でも好きにしろ。…が、捕縛となれば話は別だ |
| アイゼン | 俺は誰にも従うつもりはない。先に行かせてもらうが、ついてきたけりゃ勝手にするんだな |
| アリーシャ | あっ、待て…くっ! |
| ルカ | …行っちゃった。あの、追わなくていいんですか? |
| アリーシャ | そうしたいところだが…。君達も、遭難してこの森に閉じ込められているのだろう? |
| アリーシャ | 島の警備としても、騎士としても、君達の事を放ってはおけない |
| ロイド | 心配しなくてもいいぜ。行って来いよ、アリーシャ |
| アリーシャ | しかし… |
| パスカル | どうせ同じところに戻って来るだろうしね~。あたし達はそこで待ってるよ |
| アリーシャ | …わかった。では、気を付けてくれ。必ず戻る |
| ルカ | あの二人、一緒にいて大丈夫なのかな…。結構、ピリピリしてたけど |
| ロイド | 海賊って聞いたら、アリーシャも放ってはおけないだろ。それより戻ろうぜ、ルカ |
| パスカル | 適当に走り回ってくれば、あたし達の言う事を信じるようになるって |
| ルカ | う、うん…。海賊か…本当にいたんだ… |
| | |
| アイゼン | …なるほどな |
| ルカ | あっ、アイゼンさん… |
| アイゼン | …ふん。本当だったようだな |
| ルカ | ど、どうも…。ロイド、パスカル!二人が来たよ! |
| パスカル | おっ!お帰りなさーい! |
| アリーシャ | はあっ…はあっ…。ほ、本当に戻って来ている…! |
| ロイド | 俺達も何度か試したけど、結局ここに戻って来ちまうんだ |
| アイゼン | 方向は確認しながら進んだはず…。…なるほどな、確かにお前らの言う通りだ |
| アイゼン | どういうからくりか知らんが、厄介な森だな |
| ロイド | だろー?あんた、海賊って言ってたけど… |
| ロイド | 何か狙ってるにしても、まずはここから出ないとどうしようもないぜ? |
| アリーシャ | …ロイド、本当に海賊と手を組むつもりか? |
| ロイド | アリーシャだって一緒にいた方が都合がいいんだろ? |
| アリーシャ | それは…そうだが |
| ロイド | ならいいじゃないか。人は多い方が楽しいしな! |
| アイゼン | 待て。まだ手を組むとは言ってない |
| パスカル | あれ、結構頑固者だね。今ならあたしもついてくるよ?役に立つよ~? |
| アイゼン | 俺には俺の目的がある。足を引っ張られるのはごめんだ。何より… |
| ルカ | む、無視されちゃったけど… |
| パスカル | うーん、見た目通り冗談通じない人なのかな? |
| | |
| | ブオオオオオ! |
| | |
| ルカ | な、何!? |
| アイゼン | ちっ…やはり来たか |
| アリーシャ | まさか、また魔物?森に入ってから、もう五回目…どうなってるんだ! |
| アイゼン | …さあな。口より手を動かす事だ |
| ルカ | 五回目って…う、うわあ!こっち来た! |
| scene2 | 旅は道連れ |
| ルカ | 魔神剣! |
| | |
| | ブオオオオオ… |
| | |
| ルカ | よ、よかった。やっと倒せた… |
| ロイド | よーし、やったぜ!それにしても…アイゼンだっけ? |
| ロイド | 強いな、あんた!海賊って言ってたけど、みんなそうなのか? |
| アリーシャ | …確かに、拳一つで戦っているとは思えない強さだった |
| アイゼン | 海賊と武器を持たない事は関係ない。お前らも…俺の足を引っ張る心配はなさそうだな |
| アイゼン | …わかった。お前らの提案を飲もう |
| ロイド | おっ、本当か!? |
| アイゼン | だが、その前に一つ覚えておけ。俺は…死神の呪いにかかっている |
| ルカ | シニガミ…死神!? |
| アリーシャ | …どういう意味だ? |
| アイゼン | 冗談の類じゃない。俺の周りには常に災いが渦巻いてる。誰に、どんな形で降りかかるか… |
| アイゼン | それは俺にもわからん。…例えば、むやみに凶暴な魔物を引き寄せてしまう、とかな |
| ルカ | じゃあ、さっきの魔物も…?その、死神の呪いのせいで… |
| アイゼン | …おそらくな |
| アイゼン | 控えめに言って危険そのもの。…それでもいいなら、協力しよう。お前らが決めろ |
| ルカ | ぼ、僕達が…?…ええっと |
| ルカ | …どうしよう…。危険なんだよね |
| パスカル | ん~…よくわかんないけど、あたしは別に構わないよ。にぎやかな方が好きだし |
| ロイド | 俺も言い出しっぺだしな、今更やめようなんて言わないって。ルカは嫌なのか? |
| ルカ | そ、そう言うわけじゃないよ。みんながそう言うなら、僕も… |
| アイゼン | そうか。…で、お前は? |
| アリーシャ | …私の役目は民を守る事だ。お前から目を離す気はないし、彼らを放っておくのも本意ではない |
| アリーシャ | 海賊と一緒に行動する事になるとは思っていなかったが…。ここは協力するのが最善のようだ |
| ルカ | じゃあ、アリーシャさんも…! |
| アリーシャ | 同行させてもらうよ。安心してくれ。騎士として、どんな危険からも守ってみせる |
| アイゼン | 協力するのは、森を抜けるまでだ。…行くぞ |
| ルカ | 行くって…どこに? |
| アイゼン | まだ調べてない場所に、だ。同じところに戻って来るだけで、ある程度の探索は出来るんだろう? |
| ロイド | おっしゃ、そんじゃ── |
| | |
| パスカル | あーーーーっ!! |
| | |
| ルカ | ひいっ!な、何なの、パスカル!? |
| パスカル | 見てよこれ…。あたしの…あたしの装置が~…!! |
| アリーシャ | その、手に持っているものか?…割れてしまったようだが |
| ルカ | あ…ほんとだ。魔物の下敷きになった時、壊れちゃったのかな? |
| パスカル | そ、そんな~!あと少しで完璧に解明して…む?むむむ…? |
| ロイド | まあ…元気出せって!いくら見てたって、壊れたもんはしょうがねーだろ? |
| パスカル | この断面…ふんふん、なるほどね~ |
| ルカ | パスカル…?割れた装置をマジマジ見てどうしたの? |
| パスカル | ほら、ここの断面を見て!割れたにしては、綺麗すぎるでしょ? |
| アリーシャ | …確かに、傷一つないな。どちらかと言うと、これは… |
| パスカル | うん、開いたんだ!装置が古すぎて、接合部分がくっついちゃってたんだよ |
| パスカル | しかも、ここ見て!何かをはめるような窪みがあるよね?きっと、専用のパーツがあるんだよ! |
| ルカ | じゃあ…この装置って元々開けて使うものだったの? |
| パスカル | そういう事!どうりでいくらいじっても、何の反応もなかったわけだよ~ |
| アイゼン | …おい、そいつはこの島で見つけたものか? |
| パスカル | ん?そうだよ~。多分、古代アンマルチアの技術だね |
| ロイド | 前も言ってたけど、何だよ、その古代アンマ何とかって |
| パスカル | あたしのご先祖様にあたる超技術をもっていた一族だよ。大昔に栄えてたんだ |
| アイゼン | 古代アンマルチア…。確かに、以前目にしたものとよく似ているな |
| パスカル | あれ、こういう機械とか得意なの? |
| アイゼン | 機械と言うより遺物にな。職業柄、知識は必要だ。…にしても |
| アイゼン | そういうもんがあるなら早く言え。重要な手がかりになる。くれぐれも雑に扱うなよ |
| パスカル | わーかってるって。それじゃ、装置のパーツも含めて…探索再開だね! |
| アリーシャ | 妙な形になってしまったが…行くしかないか。よろしく頼むよ、みんな |
| ルカ | はい。よ、よろしくお願いします…! |
| scene1 | 古の記録 |
| ルカ | ──ええっ!?じゃあ、アリーシャさんってお姫様なんですか!? |
| ロイド | ああ、シルヴァラントじゃ有名だな |
| ルカ | す、すみません!僕、そうとは知らず… |
| アリーシャ | そうかしこまらないでくれ。王族と言っても末席も末席だ。私はただの騎士にすぎないよ |
| アイゼン | わざわざ騎士にならなくとも、末席とは言え王族ならば不自由なく暮らせるだろう |
| アリーシャ | …私は国のために働くべき立場だ。だが、政治の世界で私に出来る事は少ない |
| アリーシャ | ならば騎士として、犯罪や災害から民を助ける。それが国への貢献にもなると考えた |
| アイゼン | …酔狂な女だな |
| パスカル | アリーシャが王族の人っていうのは納得だね。すごく高貴な感じがするし |
| パスカル | あたしはどっちかって言うと、ルカの方が意外だったなー |
| アリーシャ | どういう事だ? |
| ロイド | ルカは調査隊員なんだってさ。今日、この島に来たばっからしいけど |
| アリーシャ | …そうだったのか?私はてっきり── |
| アリーシャ | あ、いや…何でもない |
| ルカ | …いいですよ。とても調査隊員には見えない…ですよね? |
| アリーシャ | 初めて君を見た時は、その…迷い込んだ要救助者かと。…失礼した |
| ルカ | いいですよ…。ほとんど事実ですし…あはは… |
| パスカル | う~ん、笑顔の中にも悲しさがにじんでるね~ |
| アリーシャ | …おほん!だが、思い出したよ。ミルダという名前には聞き覚えがある |
| アリーシャ | 本部で話題になっていた。最近、優秀な成績で調査隊入りした少年が島にやって来るとね |
| ロイド | へえー!ルカ、お前頭いいんだな |
| ルカ | そ、そうかな?そんな事ないと思うけど… |
| アリーシャ | 筆記も実技も、他の実力者に引けを取らないと聞いたよ |
| ロイド | ああ、確かに!そのでかい剣で魔物と渡り合ってたもんな!いっそ大剣二刀流とかどうだ、ルカ? |
| ルカ | む、無理だよそんなの! |
| パスカル | 魔物との接近戦は任せた!あたしはばっちり援護するから |
| アイゼン | お前の武器は、銃なのか杖なのかよくわからんな |
| ロイド | そういえば、アイゼンは武器を持ってないのか?素手で魔物をぶっ飛ばしてたよな |
| アイゼン | いざという時に得物が壊れては話にならん。信用出来るのは、この拳だけだ |
| ルカ | す、すごい…! |
| アイゼン | …それより、目下の問題を考えろ。また同じ場所に戻って来たぞ |
| パスカル | うーん…。太陽の位置を元に動いてみたけど、今度も駄目か~ |
| ルカ | ど、どうすればいいんだろう |
| アイゼン | …同じ道ばかり進んできた、というわけではないはずだ |
| アリーシャ | 確かに、何度か見覚えのない場所も通ったな |
| アイゼン | ある程度、森の探索は出来そうだ。まだ通っていない場所があるなら、そこに出口があるかもな |
| ロイド | …ん?パスカル、まだその装置をいじってるのかよ |
| パスカル | どうしても気になるんだよね~。…やっぱ、残りのパーツが必要みたいだけど |
| アリーシャ | 装置に関しては、そのパーツを見つけてからだな。今はやれる事をやろう |
| アリーシャ | ひとまず、今度通りすぎた木には目印を付けて行こう。一度通った場所かどうか判断できる |
| パスカル | そだねー。他に出来そうな事は…ルカ、何かないかなー? |
| ルカ | え?えーっと…。太陽を目印に…はもうやったし、いっそ逆走するとか… |
| ルカ | …これも駄目そう。あんまりいい考えが浮かばないや。ロイドはどう? |
| ロイド | そうだな…。こういうのはどうだ? |
| パスカル | おっ!期待しちゃうよ~? |
| ロイド | エルピスの塔に向かって、まっすぐ木を切り倒す!! |
| ロイド | ……なーんてな!いくら何でも無理があるよな |
| アイゼン | …… |
| アイゼン | …よし。目印案で一つ一つ潰していくぞ。時間はかかるがしょうがない |
| パスカル | そだね~。行こ、アリーシャ |
| アリーシャ | ああ。ロイド…念のために言っておくが、あまり乱暴な手は感心しないぞ |
| ロイド | お、おい!本気にすんなって!無視しなくてもいいじゃんか! |
| ルカ | 行っちゃったね…。…ふふっ |
| ロイド | 今笑ってどうすんだよ…。ちょっとした冗談だったんだぜ? |
| ルカ | もう打つ手がなくなったら、最後の手段としては有りかも…? |
| ロイド | 他の打つ手を探すか… |
| ルカ | あはは、だね。…それにしても |
| ルカ | …みんな、すごいね |
| ロイド | …すごい?何がだよ |
| ルカ | こんな状況なのに、みんな前向きって言うか…行動力があるって言うのかな |
| ルカ | 僕一人だと、きっと何も出来ない…。物事を悪い方向にばかり、考えちゃうし |
| ロイド | ああ、そういう事か…。なーに、ルカもその内変われるって! |
| ルカ | だといいけど…。こういう先の見えない状況って、どうしても不安になっちゃうよ |
| ロイド | そりゃそうだろ。俺だって、不安はあるぜ |
| ロイド | でも、どんな事だって、成功するか失敗するかはやってみるまでわかんねーだろ? |
| ロイド | だったら、とりあえずやってみる!やらずに後悔するより、やって後悔する方がいいじゃないか |
| ルカ | …! |
| ルカ | とりあえずやってみる…か。そっか、そうだね…! |
| ロイド | んじゃ、みんなを追っかけようぜ。このままじゃ置いてかれちまう |
| ルカ | うん、行こう! |
| scene2 | 古の記録 |
| ルカ | 目印、付け終わったよ。この辺りも調べ尽くしたかな…? |
| パスカル | 森の出口も装置のパーツも見つかんないし、どうしたもんかな~… |
| アリーシャ | おかしいな。これだけ歩き回っても、森を抜ける手がかりすら見つからないとは… |
| | ガサガサ… |
| アイゼン | …!おい、気を付けろ!そこの茂みに何かいるぞ! |
| アリーシャ | くっ、また魔物か!? |
| ??? | あら…魔物呼ばわりなんて酷いわね |
| アイゼン | …人か? |
| ??? | ええ。少なくとも、戦う気はないわ |
| ??? | …ひとまず、武器を下ろしてもらえるかしら? |
| ルカ | あなたは、一体…? |
| ??? | あら、可愛らしい子ね |
| ルカ | か、可愛い…!? |
| パスカル | お、褒められたけど複雑そうな顔 |
| ロイド | いや、わかるぜ。男が可愛いって言われんのもなあ… |
| アリーシャ | 失礼。私は島の警備を担当している、アリーシャ・ディフダと言う者だ |
| アリーシャ | 彼らと共に、この森の出口を探しているのだが… |
| ジュディス | ご丁寧にどうも、私はジュディス |
| ジュディス | …どうやら、お互いに事情がありそうね。少しお話でもいかが? |
| ジュディス | なるほど…迷いの森ね |
| アリーシャ | そちらの事情も聞かせてもらえるか? |
| ジュディス | あら、ごめんなさい。簡単に言うと、あなた達と同じね。遭難中よ |
| ジュディス | サフィアの情報が公開されたでしょ?島へは観光のつもりで来たの |
| ジュディス | …もう一人、連れがいるんだけど今ははぐれちゃって |
| ルカ | じゃあ、その人も森のどこかにいるかも…。どんな人ですか? |
| ジュディス | 長い黒髪で…。人相はちょっと悪いかしら。全身真っ黒で、狼みたいな顔してるわ |
| ロイド | 何だそりゃ?おっかない奴だなあ |
| ロイド | …ん?待てよ…どっかで見たような…? |
| ジュディス | よく騒ぎに巻き込まれる人だから、どこかで会ってるかもね |
| ジュディス | もし彼を見かけたら私の事、伝えておいてちょうだい。それじゃね |
| ルカ | ええっ!?あ、あの…一人で行っちゃうんですか? |
| ジュディス | ええ。…もしかして、誘ってくれてるの? |
| ロイド | 一人じゃ危ないだろ |
| ジュディス | ふふ、優しいのね。でも大丈夫よ。一人が向いてるの、私 |
| アリーシャ | すまないが、私も立場上、それは看過出来ない |
| ジュディス | 固い事言いっこなしよ、騎士さん。でも、そうね…こうして会ったのも何かの縁かしら |
| ジュディス | 見逃してくれる代わりに…ってわけじゃないけど、これをあげるわ |
| アイゼン | …箱か?かなり小さいな…何だこれは? |
| ジュディス | さあね。森の中で拾ったんだけど、調べても何の反応もないのよ。あなた達、何かわかるかしら? |
| パスカル | あ…!ああああーっ!!! |
| ルカ | うわあっ!もうパスカル!驚かさないでよ… |
| パスカル | ビリビリってきた!!探してた装置のパーツって、きっとこれだよ!! |
| ルカ | えっ…!? |
| アリーシャ | …確かに、装置にはまりそうな形だ。試してみても構わないだろうか? |
| ジュディス | ええ、勿論。お役に立ちそうかしら? |
| | |
| パスカル | よーし、やるよ!…バコッとな! |
| | ポチッ…! |
| | |
| ロイド | お…?おおっ!?すげえ、本当に動き出したぜ! |
| ルカ | 空中に、何か浮かんできた…!?人影が見える…子ども、かな? |
| | |
| 子ども | これで映ってる…よね。えっと、ここが森のおへそで… |
| 子ども | ここからまず、この木を左に曲がるんだったよね |
| アリーシャ | これは…!拠点にしていた場所じゃないか?見覚えがある |
| ルカ | うん。あれだけ何度も戻された場所だし、間違いないと思う…! |
| ロイド | こいつも迷ってんのかな…?おーい!聞こえるかー!?おーい! |
| ロイド | …駄目だ。聞いてねーな、こりゃ |
| パスカル | 通信機ってわけじゃないみたいだね。過去の出来事を記録して、再生してるのかも… |
| パスカル | …って事はこれ、大昔の風景?さすがは古代アンマルチア…! |
| アイゼン | 静かにしろ。どうやら、この子ども…何かを確認してるようだ |
| アリーシャ | …言われてみれば、確かに。しきりに周囲を見回している |
| パスカル | どこかに行こうとしてるみたい。多分…この装置を使って、道順を確かめてる |
| ロイド | …!もしかして、森を抜ける道なのか? |
| アイゼン | 可能性は高い。そうでなければ、わざわざ記録に残す必要もないからな |
| ジュディス | …なるほどね。いいもの見せてもらったわ。…さて、と |
| アイゼン | …… |
| アリーシャ | …これは朗報だな。この道をたどれば、森を抜けられるかもしれない! |
| ルカ | すごい…すごいよパスカル! |
| パスカル | ふふーん、どうだい! |
| 子ども | 木の下をくぐって…最初の別れ道を右… |
| 子ども | 最後に、ここを通って…うん。これでよし、と──…… |
| ロイド | …あれ、光が消えちまった。もう一回見れないのか、パスカル? |
| パスカル | んーと…。うん、大丈夫。何度でも見れるみたいだよ |
| アリーシャ | よし、では一旦森の拠点に戻ろう。光の通りに動けば、問題ないはずだ |
| ルカ | ジュディスさんも…って、あれ?どこに… |
| アイゼン | あの女ならさっき森の奥へ消えたぞ |
| アリーシャ | なっ…どうしてすぐに教えなかった! |
| アリーシャ | …いや、私が彼女をちゃんと止めていれば…! |
| アイゼン | 一人でやりたいと言うなら、そうさせてやればいい |
| アイゼン | 遭難した観光客だとか言ってたが、あの隙の無さはただ者ではない。関わりたくない理由があるんだろう |
| ルカ | でも、一人で大丈夫なのかな… |
| ロイド | 連れがいるって言ってたし大丈夫じゃないか?今から追うにしても、この森だし |
| アリーシャ | …ああ、君の言う通りだ。今はとにかく、森を抜けよう |
| | |
| ロイド | ここを右、左ときて…おっ!みんな、見ろ!開けた場所に出たぜ! |
| ルカ | はあっ…はあ…っ!よかった、やっと森を抜けられる… |
| ルカ | …あれ?でも、随分寂しい場所だね…。こんなとこ、あったかな? |
| アリーシャ | 塔周辺の地理は把握している。…ここはそのどれとも合致しない |
| パスカル | あちゃー。ここまで来て空振りかぁ~… |
| アイゼン | いや…どうやら収穫はあったようだ。先へ進むぞ |
| | |
| ロイド | …家だ!森の中に家があるぜ! |
| ルカ | うん…しかも一つじゃない。ここは… |
| ルカ | アヴァロン島に住んでた人の集落って事…!? |
| scene1 | 夢の中の僕 |
| ルカ | やっぱりだ…。かなり古いけど、家がいくつもある…! |
| アイゼン | …あの子どもはこの集落の住人か。記録していたのは、迷わないための帰り道というわけだ |
| パスカル | ねえねえ!これさ、もしかして大発見なんじゃない!? |
| ロイド | ああ、森を出たわけじゃないが…。ここで何かが見つかるかもな! |
| アリーシャ | よし、中を調べてみよう |
| | |
| ロイド | パスカルが拾った装置みたいなのが結構転がってるな。どれも壊れてそうだけど |
| ルカ | 壊れてても関係ないみたいだよ。…ほら、あれ見て |
| パスカル | はーっ!すっごい!どこもかしこも宝の山だよ~!!! |
| アイゼン | おい待て!はしゃぐのはいいが、家を傷つけるなよ! |
| パスカル | 大丈夫だって!ほら、この壺持ってて! |
| アイゼン | 人の話を聞け── |
| アイゼン | ──む、この壺…!悪くない拵えだ…! |
| ロイド | アイゼンまで盛り上がってねーか?…ま、気持ちはわかるけどな |
| ロイド | 迷いの森に隠された、謎の集落!冒険魂とか、いろいろくすぐられる感じがするぜ! |
| ルカ | でも、家の見た目とかは僕達のものとあんまり変わらないみたいだよ? |
| アリーシャ | …普通の食器や、家具もあるな。超技術の一族と聞いていたが、意外と普通の生活をしていたようだ |
| パスカル | ここがアンマルチア族のいた集落かどうかはわかんないよ?技術だけ流出する事もあるし |
| パスカル | もしくは、質素な人達だったのかも。どっちにしろ、面白いけどね~! |
| ルカ | ここに住んでた人達が、エルピスの塔を建てたのかな? |
| アイゼン | この規模じゃ、あんな塔を建てられるだけの人数は集まらん |
| アイゼン | この島のほとんどはまだ手付かずだ。どこかにもっと規模のでかい…都市と言えるものがあるかもしれんな |
| ルカ | なるほどなあ… |
| ロイド | もっとここを調べてみようぜ!まだ何か見つけられそうだしな! |
| | |
| ルカ | …ん?何だろ、これ |
| ロイド | おーい、みんな!いいもんがあったぜ! |
| ロイド | …って、何だ、ルカも見つけてたか |
| ルカ | うん。これ…ジュディスさんが持ってた── |
| パスカル | あーっ、さっきの箱!二人共、もっとよく見せて! |
| アリーシャ | こっちにもあった。それほど珍しいものではないのかもな |
| パスカル | 多分、装置にはめればさっきみたいに昔の風景を見せてくれるよ! |
| ロイド | よーし!そんじゃ、早速やってみようぜ! |
| | |
| ルカ | ──これが、最後の一個だよ |
| パスカル | よーし、そーれっと…! |
| | ポチッ…! |
| | |
| 女の子 | あはははは、パパ、こっちこっち! |
| 父親 | こーら、もう帰る時間だぞ! |
| 女の子 | えー?もっと遊びたい!ママには、道に迷ったとか言い訳すればいいじゃない! |
| 父親 | まだカタグラフィで撮ってるのに、そんな事言っていいのかなー?母さんに聞かせたら… |
| 女の子 | やだもう、わかったってば!帰りましょ、パパー! |
| 父親 | ははは、いい子だ。そろそろご飯が出来てる頃だな──… |
| | |
| ロイド | …お、これで終わりか。何つーか、普通の家族の風景ばっかだったな |
| アリーシャ | …ああ。私達と何も変わらない。当然と言えば、当然だが… |
| アイゼン | …わかった事もある。この箱の名は「カタグラフィ」。やはり、記録用の装置のようだな |
| ルカ | カタグラフィを入れ替える事で、それぞれ違った過去の記録が映し出される…って事だよね |
| パスカル | みたいだねー。んで、唯一重要そうな情報を持ってたのは…これだったかな |
| パスカル | えいっ! |
| | ポチッ…! |
| | |
| 見張りの男1 | …やれやれ。警備の日が来ると、気が滅入るよ |
| 見張りの男2 | そう言うな。万が一にも、あれをよそ者に渡すわけにはいかないからな |
| 見張りの男1 | しかしなあ。あの森があるだけでも普通の奴は近寄れないんだ。何も一日中立ってなくても── |
| | |
| アリーシャ | …短いが、確かに他のものとは違った感じだな。何かを守っているような口ぶりだ |
| アイゼン | こいつらが立っている場所も、この集落には見当たらん。一瞬だったが、遺跡のように見えたな |
| ルカ | この近くに、何かを守るための遺跡がある…って事ですか? |
| アイゼン | …ああ。この忌々しい森の仕掛けも、その場所を隠すためだろうな |
| パスカル | …ここまでして守るものって、一体何なんだろうねー? |
| ロイド | 決まってるさ!きっと、すっげ―お宝だよ! |
| ルカ | お、お宝…!?それって、サフィアみたいな…? |
| アイゼン | …もしくは塔の封印に関わる何か、という可能性もある |
| ロイド | どっちにしろすげーものって事だろ!遭難してたはずが、面白い事になってきたぜ! |
| アリーシャ | ま、待ってくれ。島内の調査は、基本的に調査隊の管轄だ |
| アリーシャ | …正規の命令も受けていない身で、そんな重要なものを扱ってもいいのだろうか…? |
| ロイド | 考えすぎだって、アリーシャ!まずは見つけてから考えればいいさ! |
| アリーシャ | …あ、ああ |
| パスカル | とにかく、次の目標は決まったね~ |
| ルカ | うん。森を抜けるための手がかりもあるかもしれないし…。その遺跡に行かないと、だね |
| ルカ | あとは、どうやって遺跡の場所を探すかだけど… |
| パスカル | それは何とかなると思う。いろんな記録があったから、背景見れば大体の位置関係はわかるよ |
| アイゼン | …もう少し集落を探せば、地図ぐらいはあるかもしれんな |
| アリーシャ | とにかく、続きは明日にしよう。みんな疲れているだろう |
| ロイド | そうだな。さすがにいろいろありすぎて、疲れちまった |
| アリーシャ | 幸い、寝泊まり出来そうな家には困らない。今日はもう休もう |
| ルカ | …そうですね。じゃあ、僕らは向こうの家を借ります |
| パスカル | はいよー。あたしはもうちょっとカタグラフィいじってるね |
| アイゼン | 俺はもう少しここを探しておきたい。出発は明日の朝だ |
| ルカ | うん。それじゃ…お休み、みんな |
| scene2 | 夢の中の僕 |
| ロイド | さて、と。布団はねーけど、適当に寝るとするか |
| ルカ | いろいろありすぎて、もうクタクタだよ… |
| ルカ | 暖かいベッドが恋しいけど…贅沢は言えないよね。屋根はあるし |
| ロイド | そうそう、野宿よりはずっとマシだろ?んじゃ、お休み! |
| ルカ | うん、お休み。…ふう |
| | |
| ルカ | (ほんと、いろんな事があったな…) |
| ルカ | (父さんに逆らってこの島に来て… 調査隊に入るはずがこんな事に…) |
| ルカ | (きっと怒ってるんだろうな、 父さん…) |
| ルカ | …………すぅ |
| ルカ | …… |
| ルカ | (何だろう…この感覚。 …そうだ、夢だ。 いつも見る、あの夢だ…) |
| | |
| 兵士 | ぐっ…!持った方だが、ここまでか…! |
| | オオオオ!!! |
| ルカ | 戦争の夢。敵に追いつめられたボロボロの兵士。でも、心配いらない |
| 兵士 | 殺すなら殺せ!だが、私がここで倒れても…我らには、彼がついている…! |
| ルカ | そうだ、この人には… |
| | |
| ??? | はああああ!! |
| | ズバッ! |
| | オオオオ…!! |
| | |
| ルカ | 僕が…アスラがついてる。夢の中の、雄々しい僕。夢の中の僕は、こんなにも強い…! |
| 兵士 | …おお!あれほどの巨体を両断するとは…!さすがはアスラ様! |
| アスラ | 間に合ったようだな!怪我はないか! |
| 兵士 | は、はい!ありがとうございます…!私のような一兵卒に… |
| アスラ | 言うな。私と共に戦う者全てが私の同胞。決して見捨てたりはしない! |
| アスラ | さあ立て!共にこの戦を終わらせるのだ! |
| 兵士 | はっ!! |
| ルカ | …かっこいいなあ。僕も、僕もこんな風に…! |
| | |
| ロイド | ぐごおおーっ! |
| ルカ | わあっ!? |
| ロイド | くーっ、くーっ… |
| ルカ | 何だ、いびきか… |
| ルカ | うわ、汗ぐっしょりだ。何だか体も熱いし…。よっぽど興奮してたんだな、僕 |
| ルカ | アスラ…か。夢の中の僕は、あんなに格好いいのに… |
| ルカ | …実際の僕は、いびきに驚いて寝汗をかいてる。何だかなあ… |
| ルカ | あれ…まだ夜も明けてないんだ。変な時間に起きちゃったな |
| ロイド | むにゃむにゃ…。これっと、まってろよぉ… |
| ルカ | …。ちょっと外に出てくるね、ロイド |
| scene1 | 仲間同士 |
| ルカ | 思ったより外は明るいや…。月が出てるせいかな |
| ルカ | これなら、あんまり怖くないかも… |
| ロイド | ぐーーーっ!すーーーっ… |
| ルカ | まだ聞こえてくる。はは、人のいびきで安心するのって初めてだ… |
| ルカ | ちょっとくらいなら、散歩してみても大丈夫だよね |
| | |
| ルカ | 静かだな…。でも、やっぱり怖くない |
| ルカ | これは何だろう?ポスト…いや、ランプかな。何だか不思議な感じ… |
| ルカ | 文字とか細かいところは違うけど、普通の家並みだな |
| ルカ | …昔は人が住んでたんだもんな。こんな風に探検するのも、本当はちょっと失礼だったり… |
| ルカ | …そうだよ。もしかしたら、隠れてるだけでまだ人が住んでるかも── |
| ??? | …ん?そこに誰かいるのか? |
| ルカ | わあああっ!!すいませんでしたーっ! |
| アリーシャ | お、落ち着いてくれ!私だ!アリーシャだ! |
| ルカ | あ、アリーシャさん…!?な、何だ…てっきり幽霊かと… |
| アリーシャ | あはは、安心してくれ。正真正銘、私だよ。こんな時間に、どうかしたのか? |
| ルカ | ちょっと、寝付けなくて。夜風に当たろうと思ったんです。…アリーシャさんは? |
| アリーシャ | 念のため、アイゼンを見張っていた。逃げたらすぐに捕まえられるようにな |
| ルカ | それは、その…お疲れ様です |
| アリーシャ | 何、私の判断でやっている事だ。それに… |
| アリーシャ | それだけが理由ではないと思う。多分、君と同じだ |
| ルカ | 僕と同じって…? |
| アリーシャ | 盗み聞きする気はなかったんだが、私も…人の影と言うか生活の跡が気になってしまうんだ |
| アリーシャ | 今はもう朽ちているが…。ここには確かに人が息づいていた |
| ルカ | はい…。大昔の事だってわかってても、何だか不思議な気分です |
| アリーシャ | ああ。幸せそうだったあの家族…。彼らが暮らした家はここにあるのに、その彼らはもういない |
| アリーシャ | …私が騎士になったのは、ああいう平和な生活を守るためだ |
| アリーシャ | だから…ここにいると妙に寂しいんだ。感傷がすぎると笑うかもしれないが… |
| ルカ | そんな事ないです!僕も…何て言うか…寂しいと、思います |
| アリーシャ | …そうか。カタグラフィ、だったか。あの光景が鮮明すぎたからかな |
| ルカ | すごい技術ですよね。でも、ますます不思議だな… |
| アリーシャ | 何がだ? |
| ルカ | だって、あれだけの技術を持ってた人達ですよ。どこに消えちゃったんだろう、って… |
| ??? | …それこそ、遺跡に行ってみないとわからんな |
| ルカ | ひえええええっ!! |
| | |
| アイゼン | …いちいち騒ぐな。これ以上やかましいのが増えるのはごめんだ |
| アリーシャ | アイゼン…!お前、寝ていたのではなかったのか? |
| アイゼン | 自分の寝床の周りをぐるぐる回り続ける女がいてみろ。休むに休めんだろうが |
| アリーシャ | …き、気付いていたのか |
| アイゼン | 生真面目に警戒するのも結構だが…。次からは気配くらい消しとくんだな |
| アイゼン | 心配しなくても、森を抜けるまでは逃げやしない。…それと、お前 |
| ルカ | はいっ…!? |
| アイゼン | …いつまで震えてるんだ |
| ルカ | み、みんなして驚かすから、足の震えが止まらなくなっちゃって… |
| アイゼン | …あのな。俺が騒いだんじゃない。お前らが俺のところで騒いでたんだ |
| ルカ | は、はい…その通りです… |
| アイゼン | まあいい、話を戻すぞ。この集落の事だが… |
| アイゼン | 俺とパスカルとやらの見立てじゃ、相当古いものなのは間違いない |
| アイゼン | だが、一つわかる事がある。これだけ古い集落にもかかわらず、まるで荒らされた様子がない |
| アリーシャ | …確かに。朽ちてはいるが、何かを壊されたような痕はなかったな |
| ルカ | そう言えば…。本も食器もぼろぼろだけど、荒らされた感じじゃなかった… |
| アイゼン | そうだ。おそらくだが、ここの連中は外敵によって滅ぼされたんじゃなく… |
| アイゼン | 自分達から、この集落を捨てた可能性が高い |
| ルカ | 自分達で…捨てた? |
| アイゼン | 理由まではわからんがな。…話は終わりだ、とっとと行け |
| アリーシャ | わかった。…邪魔をしたな |
| | |
| アリーシャ | …全く、まるで隙のない男だ。海賊とはみんな、ああなのだろうか |
| ルカ | 僕も会ったばかりだから、わからないけど…。本当に悪い人なのかな…? |
| アリーシャ | 少なくとも、四大国の決まりに従う気がないのは確かだな。警戒は怠れないよ |
| ルカ | でも、集落について教えてくれたし… |
| ルカ | みんなで集落を探ってる時も、家具とか丁寧に扱ってて… |
| ルカ | 何て言うか、僕の想像してた海賊とちょっと違うんです |
| アリーシャ | …… |
| ルカ | つ、都合のいい想像かもしれませんけど… |
| アリーシャ | いや…君の言ってる事は事実だ |
| アリーシャ | 今のところ協力関係も続いている。私としても、事を荒立てたくはない |
| アリーシャ | このまま何事もなければいいと思っているよ。…ところで、ルカ |
| ルカ | 何ですか? |
| アリーシャ | 今更だが、私に敬語は必要ないよ。そう堅くては、君もやりにくいだろう? |
| ルカ | そ、そうですか?でも、アリーシャさんは年上だし、立場もあるし… |
| アリーシャ | 妙な経緯ではあるが、私達は仲間同士。立場は対等だ |
| アリーシャ | 今後は呼び捨てで構わないよ |
| ルカ | は…はい、わかりました、アリーシャさん!…あっ |
| ルカ・アリーシャ | …… |
| ルカ | 「わかったよ、アリーシャ」…で、いいんだった |
| アリーシャ | ぷっ…あははは!少しずつ慣れていけばいいさ。それじゃ…お休み、ルカ |
| ルカ | あはは…そうするよ。…お休み、アリーシャ |
| scene2 | 仲間同士 |
| ロイド | よーし。全員揃ってるよな? |
| アリーシャ | ああ…と言うか、君達二人が最後だよ |
| ルカ | ご、ごめん。何度声かけてもロイドが起きなくって… |
| ロイド | 悪い悪い。でもその分、元気は有り余ってるぜ! |
| アイゼン | とにかく、揃ったなら行くぞ。カタグラフィは持ったな? |
| パスカル | もち!遺跡の方向は昨日の内に見当付けてあるから、すぐ見つかるよ! |
| scene3 | 仲間同士 |
| パスカル | ──見つかるはずだったんだけど…。うう~、遺跡のいの字も見当たんないよ~… |
| パスカル | おっかしいな~。カタグラフィの背景からして、この辺のはずなんだけどな… |
| アイゼン | 方向は合ってるはずだが、森の仕掛けでまた迷っているのかもな |
| アイゼン | ぼろぼろだが、地図らしきものも見つけておいた。何とか照らし合わせるしかない |
| パスカル | うーん、そうなるとここがさ~… |
| ロイド | はあ、似たような風景ばっかでいい加減飽きてきたぜ…。ルカもそう思うだろ? |
| ルカ | う、うん… |
| ルカ | (何だろう、この辺。 今までの森と、少し違うような…? そうだ、あそこ…) |
| ルカ | (あそこに見えてるの… ずれた地層だよね。 それも、かなり古い…?) |
| ロイド | ルカ、何か考え込んでるのか? |
| ルカ | い、いや、何でも… |
| | ブツッ… |
| ルカ | ロ、ロイド。今、何か聞こえなかった…? |
| ロイド | いや?鳥か何かの鳴き声じゃないか? |
| ルカ | なら、いいんだけど… |
| ルカ | (昔、父さんの書斎で読んだ気が… 地盤が不安定な土地だと、確か…) |
| | ブツッ…ブツッ… |
| ルカ | (木の根が切れるような嫌な音がする …って。もしかして、ここも…?) |
| アリーシャ | ──やはり方向を間違えてしまったんじゃないか? |
| アイゼン | いや、それに関しては間違いない。何かを見落としてるんだ |
| ロイド | もうちょっと進んでみればわかるんじゃねーの? |
| ルカ | …あ、あの! |
| パスカル | んー?どったのルカ? |
| ルカ | あ、その… |
| ルカ | (つ、つい口出しちゃったけど… この音、ロイドには 聞こえてなかったんだよね) |
| ルカ | (もし、勘違いだったら 出しゃばりになっちゃうし…) |
| ルカ | …ごめん、何でもないよ。気にしないで── |
| | |
| | ブツッ…ブヅッ!! |
| アイゼン | …待て。この音…いかん! |
| | ブツッ…ズ… |
| ロイド | 急にどうしたんだよ、血相変えて? |
| アイゼン | 下がれお前ら!この音…!地盤が崩落するぞ! |
| ルカ | や…やっぱり…!! |
| | |
| | ゴゴゴ… |
| アリーシャ | なっ…!?あ、足下が崩れて…!! |
| ロイド | や、やべえ!ルカ、向こうの岩に飛び移れ! |
| ルカ | う、うん! |
| ロイド | パスカル、アリーシャ!俺達の手を取れ…うわっ!! |
| アリーシャ | …駄目だ!届かな──ぐうっ! |
| | |
| | ズザザザッ! |
| パスカル | お、お助け──うわああっ!?落ちる―!! |
| アイゼン | …ちっ!遅かったか…! |
| ロイド | くそ!二人共見えなくなっちまった!いきなり何だってんだ! |
| アイゼン | 地盤が崩落したんだ。元々不安定なところに、俺達が踏み入ったせいだろうが… |
| アイゼン | …ただの崩落じゃないな。地下深くまで穴が開いてる。…ぼやぼやするな、下りるぞ |
| ロイド | ああ、急いで二人を助けないと…!行くぞルカ!…ルカ? |
| ルカ | ぼ、僕のせいだ…!僕がもっと早く伝えてれば…! |
| ロイド | しっかりしろ、ルカ!今は後悔より先に、やる事があるだろ! |
| ルカ | …!う、うん! |
| ルカ | ごめん…!無事でいて、二人共…!! |
| scene1 | 崩れ落ちた先 |
| ルカ | パスカルー!アリーシャー! |
| ロイド | 二人共、返事しろー! |
| ルカ | …かなり降りてきたのに、全然反応がない…! |
| ロイド | 諦めんな、気を失ってるって事もある! |
| アイゼン | 呼びかけを止めるな。生きているなら、そのうち反応がある |
| ルカ | は、はい…。おーい!おーーーい…!! |
| ??? | ──い…!おーーい! |
| ルカ | …今、何か聞こえた!パスカル!?パスカルなの!? |
| ロイド | あの土の向こうだ!二人共、そこにいるのか!? |
| アリーシャ | この声…ロイドか!?よかった、君達も無事だったか! |
| パスカル | じゃあ、全員無事って事だね~ |
| アイゼン | 運のいい奴らだ。…とにかく、この邪魔な土をどかすぞ |
| ルカ | はい!待ってて、二人共! |
| ロイド | よし…と。大きな怪我はないみたいだな |
| パスカル | いや~、助かったよ。一時はどうなる事かと思っちゃった |
| アリーシャ | ああ、さすがに焦ったよ |
| アイゼン | あの崩落に巻き込まれて、よくこんな軽傷で済んだもんだ |
| アリーシャ | 途中で崩落の勢いが弱まったんだ。一瞬だったが、その間に私の槍をあそこに刺せた |
| パスカル | 崩落が止まるまでずっと掴まってたから、手が痺れちゃったよ~ |
| アリーシャ | だが、上手くいってよかった。一つ間違えたら、二人共土の下だったからな |
| ルカ | 土の、下… |
| アイゼン | 勢いが弱まったというのが気になるな。…少し向こうの様子を見てくるか |
| ロイド | あっ、おい…!…行っちまった。まあ、あいつなら心配ないか |
| ロイド | とにかく二人が無事でよかったぜ。な、ルカ? |
| | |
| ルカ | …ご、ごめんなさい! |
| | |
| パスカル | ん~?どったの、ルカ。顔が真っ青だよ? |
| ルカ | 実は僕…気付いてたんだ。あそこの地面は不安定で…すごく危険な場所なんじゃないかって |
| ロイド | あっ…そう言えば、音がどうとか言ってたな |
| ルカ | うん…。でも、自分の考えが正しいのか自信がなくて… |
| パスカル | それで迷ってたら、本当に足場が崩れちゃった。…って事? |
| ルカ | …う、うん。…僕が迷わずに言ってれば、二人は巻き込まれずに済んだんだ…! |
| ルカ | だからその…本当に、ごめんなさい… |
| アリーシャ・パスカル | …… |
| アリーシャ | 顔を上げてくれ、ルカ。君が謝る事じゃない |
| パスカル | いきなり謝るから、何の事かと思ったよ~ |
| | |
| ルカ | え?で、でも!僕のせいで、二人は大怪我するところで…! |
| アリーシャ | 異変に気付けなかったのは私の未熟さ故だ。君が気に病む必要はないよ |
| パスカル | そうそう。結局あたし達はピンピンしてるんだし |
| ルカ | それはそうだけど… |
| パスカル | む~、まだ言うか!そんな子にはこうだ!こちょこちょこちょ~! |
| ルカ | あは、あはははは!ちょ、やめ…!何するんだよ、パスカルってば…! |
| パスカル | しょぼくれてちゃ駄目だって!ほら、元気元気!それ~! |
| ルカ | あ、あはははは!わかった、わかったよ!もう言わないから、止めてよ~! |
| アリーシャ | …だ、そうだ。そろそろ止めてあげたらどうだ、パスカル |
| パスカル | ラジャー!はい、止め! |
| ルカ | ひー、ひー…!い、いいのかな、本当に? |
| ロイド | 二人が気にしないって言ってんだし、それでいいじゃねーか |
| ルカ | で、でも!いつもだったら、徹底的に怒られたあと、しばらくはいじられるよ? |
| ルカ | 例えば、僕の友達なら── |
| | |
| イリア | はあ~~!?気付いてたあ~!? |
| スパーダ | ル~カ~?何でそんな大事な事黙ってたんだおめェはよォ~? |
| イリア | 仕返し?普段の仕返しなのね?いい度胸してんじゃな~い…。ねえ?ル・カ・ちゃ・ま? |
| スパーダ | こりゃしばらくホットドッグ奢りの刑だな。一番でっけえやつ! |
| イリア | そーね。そのくらいで勘弁してあげる。…あ、あたしドリンク付きね |
| スパーダ | ヒャーハッハッハッハ! |
| イリア | いーっひっひっひっひっひ! |
| | |
| ルカ | ──って感じで! |
| ロイド | …友達なんだよな、そいつら? |
| ルカ | う…ほ、本当は優しいんだよ…?ちょっと誤解されやすいって言うか… |
| ルカ | ほ、ほら!ホットドッグ奢りの刑も結局三回で済んだし! |
| アリーシャ | ふむ。親しさ故に遠慮のない関係…という事か? |
| ルカ | そんな感じ…かな。多分…? |
| アイゼン | …お前ら、いつまで話してる。来い。向こうに面白いものがあったぞ |
| ロイド | アイゼン、何か見つけたのか? |
| アイゼン | ああ。どうやら…ここはもう、遺跡の中のようだ |
| ロイド | 遺跡の中!?どういう事だよ? |
| アイゼン | 説明するより見た方が早い。とにかく、ついてこい |
| | |
| ルカ | …!これって! |
| アリーシャ | 石壁だな…明らかに人間の手で加工されたものだ |
| ルカ | じゃあ本当に…ここがカタグラフィで見た遺跡!? |
| ロイド | どういう事だよ。遺跡は地下にあったって事か? |
| アイゼン | そういう事だ。元から地下にあったのか、緩い地盤のせいで沈んだのか… |
| アイゼン | いずれにせよ、入口が見つからなかったのはこれで説明がつく |
| アリーシャ | では…崩落に飲み込まれた事で、偶然遺跡の中まで来てしまったというわけか |
| パスカル | そっか。遺跡にせき止められたから、崩落もここで止まったんだね~ |
| アイゼン | ここは遺跡の入口ってところか。あちこち崩れてはいるが、瓦礫をどかせば先へ進めそうだ |
| ロイド | だったら、一番奥を目指そうぜ!何かあるとしたら、やっぱりそこだもんな! |
| ロイド | もしかしたら、すげーお宝が眠ってるかも…! |
| パスカル | うん!このまま全部丸裸にしちゃうぞ~! |
| アリーシャ | 遺跡には森を抜ける手がかりがあるかもしれないと話していたんだが…すっかり忘れていそうだな… |
| アイゼン | 行くぞ。いつまた崩れ出すかもわからん |
| ロイド | おう!待ってろよ、お宝ー! |
| ルカ | よーし…みんなのためにも、今度は役に立たないと…! |
| scene2 | 崩れ落ちた先 |
| ルカ | あれ…?この先の通路、随分明るいね |
| アイゼン | 大昔の遺跡に、明かりか。…どうにも不自然な話だな |
| パスカル | 確かに怪しいけど…薄暗いよりはいーんじゃない? |
| ロイド | そういう事だな。とにかく、行ってみりゃわかるさ! |
| | |
| ロイド | …おお~、よく見えるぜ!この辺まで来ると土もないし、本当に遺跡の中って感じがするな |
| パスカル | へえ~、まだ照明が生きてるんだ!…って事は、奥の方には供給元もあるよね? |
| パスカル | ん~、どういう仕組みなんだろ?調べてみたいな~ |
| アリーシャ | 魔物の気配はないな。ひとまずは安心だが…ん?あそこに何か落ちているな |
| ルカ | これは…手帳みたいだね。今の文字じゃないみたいだけど…パスカル、これ読める? |
| パスカル | ん~…さすがにこれだけだと文字の解読は無理かな~ |
| パスカル | でも、ここ見て。図面みたいなのが描いてあるよ |
| ロイド | 遺跡の地図って事か?…あー、でも途中までしか描いてねえみたいだな |
| アリーシャ | こっちには武器も落ちている。錆が酷くて使い物にはならないが |
| アイゼン | 島の人間か、外部の人間か…詳しい事はわからんが、大昔にも先客がいたようだな |
| ロイド | こいつらも、遺跡を調べに来たのかな? |
| アイゼン | 恐らくな。観光目的の物好き、って事もないだろう |
| ロイド | へへっ、探りに来た奴がいたなら、やっぱり奥に何かあるのかもしれねーな! |
| アイゼン | ふ…面白くなってきたな。おい、カタグラフィに反応はないか? |
| パスカル | うーん、特に何もないね~。記録以外の機能はついてないのかも |
| パスカル | でも、この奥に何かがあるってのはあたしも同意見! |
| パスカル | 森に入った時から感じてたビリビリが強くなってきたからね。期待出来そうだよ~! |
| ロイド | へへ、ますますやる気が出てきたぜ! |
| ルカ | …あ、あのう、アイゼンさん。ちょっと気になったんですけど… |
| アイゼン | 何だ? |
| ルカ | この道具の持ち主って、結局どうなったんでしょう…? |
| アイゼン | …こんな半端なところに道具が残っている事から見て、成果があったとは考えにくい |
| アイゼン | 失敗して逃げ出したか…あるいはここで何かに捕まって、遺跡の奥に連れ去られたのかもな |
| ルカ | ひいっ…! |
| アイゼン | 何、気になるならその辺を探してみればいい |
| アイゼン | 怨念だの亡霊だの、その手の話は遺跡につきものだ。本人から話を聞けるかも── |
| ルカ | い、いいです!よくわかりました! |
| アリーシャ | あまり脅かすな、アイゼン。道具があるだけだ、それ以上は何もわからないだろう |
| アイゼン | 軽い冗談だ。先に行ってるぞ |
| アリーシャ | …全く。安心してくれ、ルカ |
| アリーシャ | この先どんな危険があっても、私が君を守ってみせる。騎士の名に懸けて |
| ルカ | か、かっこいい…! |
| アリーシャ | …そうだろうか?少し大げさだったかな |
| ルカ | そんな事ないよ!僕も…僕もきっと、役に立ってみせるよ |
| アリーシャ | ふふ、心強いな。では、先に進もうか |
| | |
| ルカ | ようやく広いところに出た…のはいいんだけど… |
| | |
| | グルルルル… |
| ロイド | この部屋、丸ごと魔物の巣になってるぜ! |
| アイゼン | 蹴散らすまでだ。とっとと終わらせるぞ! |
| scene3 | 崩れ落ちた先 |
| アリーシャ | はっ! |
| | ギャウッ…! |
| ルカ | すごい…あんなにいた魔物が、もうほとんど倒されちゃった! |
| ルカ | よ、よーし…僕だって! |
| | グルルルル… |
| ロイド | …!ルカ!後ろだ!狙われてるぞ! |
| ルカ | えっ… |
| アリーシャ | させない!はあっ! |
| | ギャウッ…! |
| パスカル | アリーシャ、お見事~! |
| アリーシャ | 怪我はないか、ルカ? |
| ルカ | う、うん。ありがとう…! |
| ロイド | よっしゃ、こそこそ隠れてた奴も倒したし、仕上げといこうぜ! |
| ルカ | うん!はああっ! |
| | |
| アイゼン | 片付いたか。結構な数だったな |
| ロイド | これくらいならどうって事ないぜ。お宝はいただきだ! |
| パスカル | ふっふっふ~。油断するな、まだ小手調べと言ったところだ…! |
| ルカ | な、何それ…? |
| パスカル | アイゼンの真似~。どう?似てた? |
| アイゼン | …下らん事してると置いていくぞ |
| パスカル | 結構自信あったんだけどな~。あ、待ってよ~! |
| アリーシャ | ふふ…やれやれだな。では、私達も行こうか |
| ロイド | おう!さーて、次は何があるんだ |
| ルカ | (うーん… みんなの役に立つって 意気込んだはいいけど…) |
| ルカ | (逆に助けてもらっちゃった…。 なかなか上手くはいかないな…) |
| アリーシャ | …ルカ?どうしたんだ、さっきから考え込んでいるようだが… |
| ルカ | え!?な、何でもないよ! |
| ルカ | 先に進まないとね…あはは! |
| ルカ | …ふう。こんな調子で、本当に役に立てるのかな? |
| scene1 | 己の流儀 |
| ルカ | ふう…ようやく広いところに出たね |
| ロイド | でもよ、ここ行き止まりみたいだぜ |
| パスカル | そんな~!ここまで来て収穫なしは勘弁してよ~… |
| アリーシャ | ここまでは一本道だったはず。どこかで道を見落としたのだろうか? |
| アイゼン | 隠し通路があった可能性はあるが…。まずは、この部屋を調べてからだな |
| アリーシャ | 砂地というのが気になる…。ここまでは全て石造りだった |
| ルカ | (よーし… 今度こそ、役に立たないと…) |
| ルカ | それじゃ、僕は床を調べてみるね!何か見つかるかもしれないし |
| パスカル | 何だか張り切ってるね~。もうあんなとこまで行ってるし |
| アリーシャ | ルカ、調べるのはいいが、何があるかわからない。十分に気を付けてくれ |
| | ズ…!! |
| ルカ | うん、わかって── |
| ルカ | うわっ…!? |
| | ドテッ |
| パスカル | ありゃ、こけちゃった。もう、はしゃぎすぎだよ~、ルカ |
| ルカ | あはは、ごめん。…って、あれ? |
| ルカ | お、おかしいな。上手く立てないや…? |
| ロイド | 何やってんだ、あいつ…?ほら、俺が手貸してやるから、そこでちょっと待ってろ |
| アイゼン | …!いや、待て!うかつに踏み入るな! |
| | |
| | ズズズズズ…! |
| | |
| ルカ | 何、これ…!?部屋中の砂が…動いてる…! |
| ルカ | この砂のせいで足が滑って…!早く逃げないと…うわあっ! |
| パスカル | これって…ちょっとまずいんじゃない!?ルカがどんどん流されてくよ! |
| アイゼン | 部屋の端まで離れろ!砂がすり鉢状に陥没していく…俺達の足元まで崩れ始めたぞ! |
| ロイド | んな事言っても…ルカを放っておけるかよ! |
| アイゼン | まずは自分の身を守れ!それに、砂の底を見ろ…何かいる! |
| | キシャアアアアッ!! |
| アリーシャ | 大型の魔物…アリジゴクのようなものか!ルカ、早くこっちに! |
| ルカ | ご、ごめん…砂で滑るせいで、どうしても立てなくて…うわあっ! |
| ロイド | やべえ…!あのまま流されたら、魔物にやられちまう! |
| アリーシャ | パスカル、魔物を術で狙えないか!? |
| パスカル | ここからだと、どうやってもルカを巻き込んじゃう!直接助けるしかないよ! |
| ロイド | くっ…待ってろルカ!今、助けてやる! |
| ルカ | …駄目だよ、ロイド!こっちに来たら、みんなも巻き込まれちゃう…! |
| ロイド | そんな事言ったって、一人で抜け出せるわけないだろ!絶対助けるから、そこで── |
| ロイド | …!まずい!魔物が狙ってるぞ! |
| | キシャアアアアッ!! |
| ルカ | …ううっ!駄目だ、この足場じゃ、とても受けきれない… |
| | ドカッ! |
| ルカ | うわああっ!! |
| ルカ | ぐ…うう…意識…が… |
| ルカ | …… |
| ロイド | 大丈夫か!?おい、返事しろ!ルカっ!! |
| アリーシャ | くっ…!一体、どうすれば…! |
| アイゼン | …決まってるだろう。方法は一つだ |
| アイゼン | お前らはそこを動くな。いいな! |
| アリーシャ | なっ…!?お前、一体何を── |
| | |
| ルカ | う…。何も聞こえない…。砂が、こすれる音しか… |
| ルカ | 確か、魔物に弾き飛ばされて…その後…どうなったんだっけ。思い出せないや |
| ルカ | …… |
| ルカ | 僕、死ぬのかな。こんな事なら…父さんの言う事聞いておけばよかった |
| ルカ | こんな僕がみんなの役に立とうなんて…やっぱり間違ってたんだ |
| ルカ | …でも |
| ルカ | 何も出来ないままは…嫌だな |
| ???(アイゼン) | ──い! |
| ルカ | …?誰だろう。誰かが、呼んでる…? |
| ルカ | …そんなわけないか。また、アスラの夢でも見てるのかな |
| ルカ | 夢、か…僕も、なりたかったな。かっこよくて、頼りがいがある…アスラみたいな人に… |
| ???(アイゼン) | ──い。早──きろ… |
| ルカ | …!気のせいじゃ…ない?一体、誰が── |
| | |
| アイゼン | おい!起きろ! |
| ルカ | ──!こ、ここは…! |
| アイゼン | 意識が戻ったか。見かけより頑丈だ |
| ルカ | ア、アイゼンさん!?どうして!…ごほっ、ごほっ…! |
| アイゼン | いいからそのままじっとしていろ。あまり動くと、どんどん砂に流されて… |
| | キシャアアアアッ!! |
| アイゼン | 今度こそ致命傷になるぞ。おい、お前ら!! |
| パスカル | なーに!?今引っ張り上げる物探してるから、待っててよ~! |
| アイゼン | いや、このままでは間に合わん!脱出は俺の方で何とかする。その間あの魔物の動きを抑えろ! |
| パスカル | わかった!任せといて! |
| アイゼン | やるぞ!…大地よ! |
| | |
| | ゴゴゴゴゴゴゴ…! |
| アリーシャ | これは…術か?土の足場が出来た! |
| アイゼン | ちっ…流砂のせいか、安定しないな。長くは持たない。こいつを伝って這い上がるぞ!行け! |
| ルカ | は、はい! |
| | |
| ロイド | へへっ…そういう事出来るんなら、突っ込む前に言えよな! |
| ロイド | パスカル、魔物は頼んだぜ!俺とアリーシャで二人を引き上げる! |
| パスカル | あいあいさ~!危ないから大きな術は使えないけど…脅かすくらいなら! |
| | |
| パスカル | ウィンドニードル! |
| | ギ…ギギ…!? |
| アリーシャ | 魔物がひるんだ!今のうちだ! |
| | |
| アイゼン | 一気に上まで行くぞ。もたもたしてると足場が崩れる! |
| ルカ | はい…! |
| | |
| ロイド | よし…こっちだ、俺の手を掴め! |
| ルカ | う…も、もう少し…! |
| ロイド | そうだ、そのまま…!引っ張り上げるぞ、せーのっ! |
| | |
| ルカ | ごほっ、ごほっ!!助かった…の? |
| パスカル | よ、よかった~!無事だよね、ルカ!? |
| アイゼン | 衝撃で気絶していただけだ。見たところ大きな怪我はない。 |
| アリーシャ | 無茶をする奴だ…。一歩間違えれば、お前も巻き込まれていたぞ |
| アイゼン | 迷ってる暇はなかったからな |
| アリーシャ | …そうだな。ルカが助かったのはお前のお蔭だ。ありがとう |
| アイゼン | …礼はいらん。それより…問題はまだ残ってるぞ |
| ロイド | ああ、魔物が来るぜ! |
| | キシャアアアアッ!! |
| アイゼン | 獲物を取られてご立腹か。来い。相手をしてやる |
| ルカ | …待って。僕も…戦うよ |
| アイゼン | …… |
| アリーシャ | 無理はしなくていい。ここは私達に任せてくれ |
| ルカ | …大丈夫。このくらいやらないと、みんなに申し訳ないから…! |
| アイゼン | …好きにしろ。行くぞ! |
| ルカ | はい! |
| scene2 | 己の流儀 |
| パスカル | ふい~。何とかなった~ |
| ロイド | あの魔物、相当怒ってたなあ。好き放題暴れやがって… |
| アリーシャ | けほっ…砂まみれになってしまったな |
| ルカ | …ごめんね、みんな。僕のせいで、またみんなを危険な目に遭わせちゃった… |
| ロイド | 気にすんなって。仲間なんだから、助け合って当然だろ! |
| アリーシャ | その通りだ。それに…悪い事ばかりでもない。魔物のいた場所を見てくれ |
| ルカ | 地下への扉がある…!…あの魔物は、あれを守ってたんだ |
| アリーシャ | 結果的に、全員無事に道を切り開けたというわけだ。それだけで十分さ |
| パスカル | そんじゃ、行こっか!ビリビリも強くなってきたし、そろそろお宝が待ってるかもよ! |
| ロイド | おう! |
| ルカ | あの、アイゼンさん… |
| アイゼン | 何だ |
| ルカ | アイゼンさんも…その、本当にすみませんでした |
| ルカ | 僕が先走ったせいで、あんな危ない目に遭わせてしまって… |
| アイゼン | …… |
| ルカ | あの…? |
| アイゼン | …謝罪はいらん。俺は俺のやりたいようにやっただけだ |
| ルカ | …はい |
| アイゼン | …納得出来ないって顔だな。なら、少し言い方を変えてやる |
| アイゼン | 確かに…俺は危険を冒し、お前を助けた。だが、それがお前のためとは限らん |
| ルカ | え…? |
| アイゼン | この森を抜けるまでは協力する。俺はそう言ったはずだ |
| アイゼン | あそこでお前を見捨てるのは、そう決めた俺自身への裏切りになる |
| アイゼン | しいて言うなら、俺のため。俺が俺であるために助けたんだ |
| ルカ | そのためなら…どんな危険も冒すって事ですか? |
| アイゼン | そういう事になるな |
| ルカ | …!怖くはないんですか? |
| ルカ | 僕は…怖い。もし間違ってたら、死んじゃうかもしれないのに…! |
| アイゼン | 自分の舵は自分の意志で取る。それが俺の流儀だ |
| アイゼン | 少なくとも…自分で選んだやり方なら、どうなろうが後悔はしない |
| ルカ | …! |
| アイゼン | 先に行くぞ。そろそろ最下層のはずだ |
| ルカ | 自分の… |
| ルカ | 自分の舵は…自分の意志で取る、か… |
| ロイド | おーい、どうしたルカー!?どっか痛むのかー? |
| ルカ | …う、ううん!大丈夫!今行くよー! |
| scene1 | ルカの作戦 |
| アイゼン | また部屋に出たか。もっとも…今度は期待出来そうだがな |
| ルカ | 何だか、今までと雰囲気が違うような…ここが最後の部屋なのかな? |
| ロイド | かもな。その割には砂も敵も見当たんねーし、結構不用心だけど |
| アリーシャ | …だが、目立つものもある。部屋全体に彫られているのは…壁画だろうか? |
| ルカ | みたいだね。うーん…この感じじゃ、お宝とかそういうのはなさそう… |
| ロイド | ま…まだわかんねーだろ?よく探せばきっと何かあるって! |
| ロイド | な、パスカル!…あれ?どこ行ったんだ、あいつ |
| アイゼン | あいつなら、部屋を見るなり壁の方まで飛んで行ったぞ |
| ロイド | って事は…!おーい、パスカル!何か見つかったのか!?お宝か!? |
| パスカル | ん~?お宝とはちょっと違うけど… |
| パスカル | この壁画、面白そうなものが描いてあるよ!みんなもこっち来て見てみなよ! |
| ロイド | 面白そうなもの?どれどれ… |
| アイゼン | ほう…近くで見ると、なかなか見事な代物だな。 |
| アリーシャ | 絵だけかと思ったが…文字のようなものも彫られているな |
| パスカル | カタグラフィの中に見えた言語と似てるから、多分集落の人達が残したんだと思う |
| ルカ | …文字は読めないけど、絵の方は何となくわかるかも。…これって、エルピスの塔じゃない? |
| アリーシャ | ああ、そのようだ。頂上に輝いている星のようなものは、サフィアだろう |
| アイゼン | 他にも小さな星があるな…。一、二…六つか。こんなものは塔周辺にはなかったが |
| ルカ | 下の方にも何か描いてあるけど…これはよくわからないや。…動物、かな? |
| ロイド | …まあ、確かにすげーけどさ。なあ、他に何か描いてないのか?ほら、お宝の隠し場所とか… |
| パスカル | そういうのは見当たんないけど、まだ壁画はいっぱいあるよ~ |
| パスカル | ほら、向こうにも続いてるし!あたし、あっちの方見てくるね~! |
| ロイド | お、おいパスカル…!行っちまった… |
| ロイド | はあ…あいつは楽しそうでいいよな |
| ルカ | そう言うロイドは、あんまり元気ないね。一応、これも大発見なんじゃない? |
| ロイド | まあ、そうなんだけどよ。何かもやもやするって言うか…期待と違ったって言うか… |
| アイゼン | 全く…わかっていないな |
| ロイド | アイゼン?何だよ、いきなり |
| アイゼン | この壁画を見ろ。精緻、かつ大胆な彫刻。保存状態も悪くない…! |
| アイゼン | 考古学的に見れば、この部屋全体がお宝と言っても過言ではないだろう… |
| アイゼン | 少なくとも、落ち込むような代物ではない。海賊として保証してやる |
| ロイド | な、何か今のお前、俺の知り合いが遺跡を見つけた時に似てるぜ |
| アイゼン | ほう…どこにでもわかる奴はいるものだ |
| ロイド | …その感じとか、特にな。とにかく、俺はもっと一目でわかるお宝を想像してたんだよ |
| ロイド | 金銀財宝とか、未知の秘宝とか…!だから、その…結構地味っつーか、肩透かしっつーか… |
| アイゼン | ふっ…それもまた冒険者の醍醐味だ。まあ、金銀財宝の方が心くすぐられるというのもわかるがな |
| アイゼン | 俺も壁画を調べてくる。邪魔はするなよ |
| アリーシャ | では、壁画はパスカル達に任せるか。私達は森を抜ける手がかりを探そう。ロイドも、それでいいか? |
| ロイド | そうだな…がっかりはしたけど土産話としては悪くねぇし。さっさと帰らねえとな |
| ルカ | そうだね。何か見落としてるかもしれないし、壁画以外のところも探してみよう |
| ルカ | ──うーん…。やっぱり、壁画以外に目立ったものは見つからないなあ… |
| パスカル | …ねえルカー!ちょっと手伝ってよー! |
| ルカ | どうしたの、パスカル? |
| パスカル | お~、来た来た!悪いんだけどさ、肩車してくれる?上の方の文字が見えないんだ |
| ルカ | ま、また?あんまりいい思い出ないんだけど… |
| パスカル | ん~、最初は、そこにいるアイゼンに頼んだんだけどね~ |
| アイゼン | 俺も俺でこの部屋には興味がある。後にしろ |
| パスカル | …だってさ。けちんぼめ~ |
| ルカ | しょうがないなあ…。はい、これでいい? |
| パスカル | うんしょ、っと…。ふーむ。やっぱり、まだ文字は読めないな~… |
| ルカ | 「まだ」って…こんな古い文字、本当に読めるの? |
| パスカル | 時間と資料があればね~。今も数字っぽいのは何とか読み取れるし |
| パスカル | …ただ、あたしの知ってるアンマルチアの文字よりずっと古そうなんだよね~、これ |
| ルカ | 大昔の島みたいだし…やっぱり、使ってた文字も違うんだね |
| パスカル | ん~、単純に時代が古いだけかな…似てるようで別物っぽいと言うか…。うん、やっぱすぐには無理っぽいね~ |
| ルカ | …そっか。でも、パスカルがいてよかったよ。僕達だけじゃお手上げだったし |
| パスカル | アンマルチアの研究はあたしの本分だからね!それに… |
| パスカル | この部屋にはまだ何かあるよ。今までで一番感じるんだよね、こう…ビリビリって!! |
| ルカ | ちょっ、パスカル!急に動いたら危ないよ! |
| パスカル | うわっ、とっと…!ルカ、壁!壁の方に寄って! |
| ルカ | わかったから動かないで!上の方は見えないんだって…! |
| パスカル | いよっと!ふう~、危なかった。壁に手をついたから何とか倒れずに… |
| | |
| | ガコッ…! |
| | |
| ルカ・パスカル | …ガコッ? |
| | |
| | ズゴゴゴゴゴ… |
| ルカ | ちょ…!壁画が動き出したよ! |
| ロイド | な、何だ!?一体何が起こってんだ? |
| | |
| | ゴゴゴゴゴ…ズン! |
| | |
| アリーシャ | 壁画が動いて、扉が現れた…!パスカル、君がやったのか? |
| パスカル | う~ん、たまたまなんだけど手をついて押した所が何かのスイッチだったみたい |
| アリーシャ | 隠し扉というわけか…。この先にもまだ何かありそうだな |
| アイゼン | 厳重さから言って、この先が本命かもしれんな |
| ロイド | 本当か!?へへっ、そうこなくっちゃな!行こうぜ、みんな! |
| ルカ | う、うん! |
| scene2 | ルカの作戦 |
| ルカ | これって…!別の部屋…!?見た事もないものが浮いてる… |
| アイゼン | それも気になるが…本命は部屋の中心だな。あれを見ろ |
| パスカル | な…何あれ!?おっきな装置…! |
| ロイド | 音もするし、光ってるし…!すげーな、今も動いてんじゃないか、あれ!? |
| アイゼン | どういう技術か知らんが好都合だ。壊れてたら、調べようがないからな |
| アイゼン | む…装置の隣にも何かあるな。台座のように見えるが… |
| パスカル | どれどれ~。いじったら台座に反応があるかも…! |
| アリーシャ | 待て、パスカル。まだ何なのかもわからないんだ。慎重に── |
| | |
| | ビーーーッ!ビーーーッ! |
| | |
| アイゼン | …!!これは…警報か!? |
| ルカ | み、みんな!あれを見て! |
| | オオオオオ!! |
| ロイド | お、おい!こんな魔物、今までどこにもいなかったぞ! |
| アリーシャ | 一体どういう事だ…!警戒はしていたのに、ここまで接近を許すとは…! |
| アイゼン | 装置の番人といったところか。邪魔をするというなら…倒すのみだ |
| | ゴッ…! |
| アイゼン | …!!ほう…随分硬いな |
| ルカ | アイゼンさんの攻撃を受け付けてない…!? |
| ロイド | 他の魔物とはわけが違うって事か!どっち道、逃げる気はないけどなっ!行くぜ! |
| アリーシャ | ああ!私も合わせる! |
| | オオオオオ!! |
| ロイド | へっ、魔物の奴、どこ狙ってんだ?何もないところで暴れてるぜ |
| アリーシャ | …随分な大振りだな。避けるだけなら、難しくなさそうだ |
| パスカル | 援護は任せて~!…って、あれ?装置が反応してる…? |
| | ヴーーン…! |
| ルカ | …!!二人共!後ろだよ! |
| ロイド | なっ…!?何だあ!? |
| | ドゴォ! |
| アリーシャ | くっ…ロイド! |
| ロイド | 心配すんなって、ちゃんと避けてるぜ!それより…! |
| アリーシャ | ああ…いつの間にか背後を取られた!一体どういう事だ…? |
| アイゼン | 距離を取って見ていた俺達には、はっきり見えた |
| ルカ | あの魔物…瞬間移動したんだ!攻撃したと思ったら、あそこから消えてなくなって… |
| パスカル | その瞬間、ロイドの後ろに転移したんだよ! |
| ロイド | 何だよ、それ!?あの魔物の能力なのか? |
| パスカル | 違うよ、多分この装置が魔物の動きを補助してるんだ!移動の直前に反応してたし! |
| アリーシャ | 空間を操作しているというのか!? |
| アリーシャ | …!待ってくれ、では、まさかあの森も…! |
| アイゼン | 知らず知らずのうち、俺達もこいつに転移させられていた。それなら説明がつくな |
| ロイド | …!考えてる場合じゃないぜ!魔物が消えた! |
| アリーシャ | …ルカ!そっちだ! |
| | オオオオオ!! |
| | ドゴォ! |
| パスカル | うひゃあっ!…あっぶないな、いきなり出てこないでよ~! |
| ルカ | 動きが全然読めない…!これじゃ、戦いようがないよ! |
| ロイド | くっそ…!こいつは何とか俺が抑える!その間に対策を考えてくれ! |
| ルカ | 何とかって…!一人じゃ危ないよ! |
| ロイド | 考えるより、こっちのが役に立つからな!さあ、来やがれ! |
| | オオオオオ!! |
| ルカ | …わかった!無茶しないでね、ロイド! |
| アリーシャ | さて…魔物本体も頑丈だが、まずはこの転移を止めないとどうしようもないな |
| アイゼン | …ちっ。ここまで来て惜しいが、あの装置を破壊するしかないか |
| ルカ | えっ…? |
| パスカル | 破壊って…!そんな殺生な~、まだ全然調べてないのに~! |
| アリーシャ | 残念だが、私も破壊に賛成だ。貴重な島の遺物と言えど、このままでは危険すぎる |
| アリーシャ | あの動きを止めてからでないと、かなり不利な戦いになるからな |
| パスカル | …う。それはそうだけど… |
| ルカ | パ、パスカル… |
| ルカ | (パスカル…すごく残念そうだ。 そうだよね、転移装置なんて すごく貴重なものだし) |
| アイゼン | どの道、あの装置を止めなければこの森からも出られない |
| アイゼン | この状況では悠長に構えてる時間もないしな。破壊するしかないだろう |
| パスカル | …うぐ。確かに…このままじゃ、みんな危ないもんね… |
| パスカル | すっごくやりたくないけど…うう~… |
| ルカ | (…何とか装置を壊さずに、 魔物を倒せないかな…) |
| ルカ | (でも、あの魔物は正面から 戦うと攻撃を受け付けなかった… 不意をつかないと、それも…) |
| ルカ | (不意…そうだ!! あの装置を使えば…!) |
| ルカ | み、みんな、その… |
| ルカ | (…でも、本当に僕なんかの 考えが上手くいくのかな…) |
| ルカ | (いや、ここで言い出さないと… アリーシャやパスカルを 危ない目に遭わせた時と同じだ) |
| ルカ | (それに…) |
| | |
| アイゼン | 自分の舵は自分の意志で取る。…それが俺の流儀だ |
| アイゼン | 自分で選んだやり方なら、どうなろうが後悔はしない |
| | |
| ルカ | …… |
| アリーシャ | では…いいんだな、パスカル |
| パスカル | ~~~っ!わかった!あの装置、壊しちゃお── |
| ルカ | ──待って! |
| パスカル | …ルカ? |
| ルカ | みんな…僕の…僕の話を聞いてほしい! |
| ルカ | もしかしたら…全部上手くいくかもしれない! |
| scene3 | ルカの作戦 |
| ルカ | 僕の作戦、どうかな…? |
| アリーシャ | …やはり駄目だ。危険すぎる。それでは、君の安全がまるで考えられていない! |
| ルカ | 言い出したのは僕だから…一番危険な役目は、僕がやらなきゃ |
| ルカ | 僕も…みんなの役に立ちたいんだよ |
| アリーシャ | しかし…! |
| ルカ | お願い、アリーシャ。…みんな! |
| パスカル | ルカ…! |
| アイゼン | …やるか |
| アリーシャ | アイゼン! |
| アイゼン | こいつは出来ると思ったから俺達に話したんだ |
| アイゼン | なら、俺達が口を挟む余地はない。無茶が多い作戦だが…俺もあの装置は壊したくないからな |
| ルカ | アイゼンさん…! |
| アイゼン | …ただし、失敗しそうなら装置はすぐに破壊する。それでいいな |
| ルカ | …はい。アリーシャも…お願い |
| アリーシャ | そこまで言うなら…わかった。私も全力を尽くそう |
| ルカ | …ありがとう!ロイド、もう大丈夫だよ! |
| ロイド | …話はまとまったか!?それなら…虎牙破斬! |
| | ズバッ! |
| | オ…オオオオ!! |
| アリーシャ | 魔物がよろめいた…!さすがだな、ロイド! |
| ロイド | へへっ、完全には効かなくても、押し切るくらいなら出来るさ!今のうちだ、みんな! |
| ルカ | うん!今行くよ!それじゃあまず… |
| パスカル | あたしが装置を操作する、だよね!その間、魔物はお願い!アリーシャ!アイゼン! |
| アリーシャ | わかった!ロイド、私達に任せて下がれ!ルカと一緒にパスカルを守ってくれ! |
| ロイド | ああ!…って、その装置、ぶっ壊すとか言ってなかったか? |
| ルカ | 壊さないように作戦を考えたんだ!だから、ロイドも協力して! |
| ロイド | おう!よくわかんねえけど、パスカルを守ってたらいいんだな? |
| ルカ | ロイド…うん。ありがとう…! |
| パスカル | こういう機械は前に使った事あるし、しばらくいじれば操作法はわかるはず…! |
| | ピッ…ピピ…! |
| パスカル | 違う、こうじゃないか…!思ったより複雑だ~!…でも── |
| ルカ | 装置を壊して止められたとしても…あの硬い魔物を倒すためには、もっと大きな力が必要だよ |
| ルカ | だから…逆に装置を利用したいんだ。パスカルに、この装置を操作してもらう |
| パスカル | 操作って…止めるんじゃなくて?一体どうするの? |
| ルカ | うん…どうにかして、僕をあの魔物の上に転移させて。僕が上から飛び込んで攻撃する |
| アリーシャ | 自分が落下する力を使って魔物に斬りかかるという事か… |
| ルカ | そうすれば、正面から攻撃するよりも魔物の不意をつけると思うんだ |
| アイゼン | 向こう見ずな策だな。装置を操作している間、時間稼ぎは俺達がやるとしても… |
| アリーシャ | ああ。本当に装置を動かせるのか、その保証がない |
| ルカ | …も、勿論、無理だと思ったらすぐ壊してもらっていいよ!きっとパスカルだって狙われるし…! |
| ルカ | でも…パスカルなら、動かせると思うんだ |
| パスカル | …! |
| ルカ | 僕達の誰よりも機械に詳しいし…カタグラフィだって、パスカルがいなきゃ使えなかった |
| ルカ | だから… |
| パスカル | …へへ。まっかせて、ルカ!ちょちょいのちょいだよ! |
| パスカル | ──あたしにかかれば、こんな装置くらい無理でも無茶でも何でもないって…! |
| ロイド | アイゼン達が押され始めた!パスカル…そっちはどうだ!? |
| パスカル | もう少し!操作法はわかってきたから、あとは転移システムを見つけるだけ! |
| パスカル | 駄目だ…これも違う!いや、だったら、ここを一時的に解除して…! |
| | ピッ…ピピ…! |
| パスカル | …これだ!この部屋の転移システム! |
| パスカル | …ルカ!準備出来たよ! |
| | オオオオオ!! |
| パスカル | って、うわあ!こっちに来る!? |
| アイゼン | …お前の相手は俺達だ |
| アリーシャ | 行かせるものか!はああっ! |
| | ズバッ! |
| | オッ…オオオ!? |
| ロイド | ひるんだか!さすがだぜ、二人共! |
| パスカル | た、助かった~…そんじゃ、ルカ!今度こそ行くよ! |
| ルカ | うん、お願い! |
| パスカル | …転移装置、作動! |
| ルカ | …っ! |
| | ヴーーン…! |
| ルカ | …!!わ、わわ!本当に転移した! |
| | オオオオオ!! |
| ルカ | 魔物が真下に…!よし、この勢いなら…! |
| ロイド | …そういう事か!いいぜ、やっちまえルカ! |
| ルカ | …行くぞ!はあああああ! |
| ルカ | 裂空斬!! |
| | ズバッ! |
| | オオオオオ!!?? |
| アリーシャ | ルカの攻撃が効いた…!見事な一撃だ! |
| アイゼン | このまま畳みかけるぞ! |
| ルカ | はい! |
| scene4 | ルカの作戦 |
| ルカ | これで…最後だ!はああっ! |
| | オ…オオオ…! |
| | |
| ルカ | …た、倒せた! |
| ロイド | 装置も無事だ。ルカが考えた作戦だったんだよな?すげーな、ルカ! |
| パスカル | これで思う存分調べられるよ~!ありがと、ルカ! |
| ルカ | ぼ、僕は大した事やってないから… |
| パスカル | またまた、すーぐ引っ込んじゃうんだから…ん?何だろ、これ |
| アイゼン | どうした? |
| パスカル | 何かね、装置にさっきまでなかった項目が追加されてて…えい! |
| | ヴーーン…! |
| アリーシャ | …何だ?確かに動いたようだが、装置には何も変化がないな… |
| ロイド | いや…装置の方じゃない!その隣…台座の方から何か出てきたぜ! |
| ルカ | ほんとだ…!ぼんやり青く光ってて…まるで星みたい |
| ルカ | …でも、何だろう。この青い光、どこかで見たような…? |
| アイゼン | ああ、この光には覚えがある。エルピスの塔の頂上にあった…サフィアの輝きによく似ている! |
| パスカル | だよねだよね!?あたしもそう思ってたとこ!って事はさ…! |
| ルカ | まさか…これって、サフィアなの!? |
| scene1 | 憧れへの一歩 |
| ロイド | そうだ…サフィアだ!この青い光、サフィアにそっくりだぜ! |
| ルカ | じゃ、じゃあ、お宝ってサフィアの事だったの!?この…青い星が!? |
| アイゼン | 落ち着け。確かにエルピスの塔から見えた光によく似ているが… |
| アイゼン | 塔のものと比べるとかなり小さい。片手で持てる程度の大きさだ |
| パスカル | 関係はありそうだけどね~。森も遺跡も、これを守ってたんだろうしさ |
| アリーシャ | 驚いたな…。まさか、本当にこんなものが隠されていたとは… |
| ロイド | …よし。お前が取れよ、ルカ |
| ルカ | え…ええ!?どうして僕が…? |
| ロイド | どうしても何も、魔物を倒して装置を止められたのは、お前のお蔭だろ? |
| ルカ | 僕の…お蔭?でも…何度も足引っ張っちゃったし…! |
| アイゼン | そうでもない。実際、装置を使った一撃がなければかなりてこずったはずだ |
| アイゼン | お宝を一番に手にするくらいの働きはしている |
| ロイド | そういう事だ!ほら、行ってこいって |
| ルカ | う、うん…それじゃ |
| | |
| ルカ | …近付いて見ると、本当に眩しいなあ。触っても大丈夫…だよね |
| ルカ | あ…普通に取れた。な、何だか実感わかないよ~…! |
| パスカル | ル~カ~!早く見せてよ、あたしも触りたいんだから~!! |
| ルカ | う、うん…! |
| パスカル | ふむ?ふむふむふむ?見れば見るほど面白いな~、これ! |
| パスカル | ここまで近いとはっきりわかるよ~。あたしが感じてたビリビリは、これが出してるみたい |
| アイゼン | 俺達にはわからんが…何か底知れないものは感じるな。少し貸してみろ |
| アイゼン | …… |
| アイゼン | …特に仕掛けがあるわけではなさそうだ。薄く輝いているだけで反応もない |
| アリーシャ | だが、とても美しい輝きだ。さっきも言っていたが、サフィアに関係するものかもしれない |
| ロイド | ああ!何より…これぞお宝って感じだぜ! |
| ロイド | こういうのを待ってたんだよ!いや~冒険の甲斐があったぜ! |
| アリーシャ | …後は本部に帰ってからだな。パスカル、装置を完全に止める事は出来るか? |
| パスカル | うん。もうちょっと時間をくれれば、完璧に操作法がわかると思うよ |
| アリーシャ | では、それを待って調査隊本部へ戻ろう。装置が止まれば、森も抜けられる |
| パスカル | まっかせて~! |
| アイゼン | …本部か。…潮時だな |
| scene2 | 憧れへの一歩 |
| アリーシャ | さて、そろそろ出口のはずだが…みんな、いるな? |
| ルカ | うん、大丈夫だよ。パスカル達はあっちで話し込んでるけど |
| パスカル | いや~、最後の部屋は大漁だったね!あのあと、青いお宝の他にもいろいろ見つかったし! |
| パスカル | カタグラフィに、機械の残骸…!帰って調べるのが楽しみだよ~! |
| アイゼン | ほとんど破損しているが、収穫としては十分だ。それよりも── |
| ロイド | あの二人、結構気が合うみてーだ。…にしても、元気だよな。俺はさすがに疲れたぜ |
| アリーシャ | 脱出にもそれなりの時間がかかってしまったからな…。もう式典も終わった頃だろう |
| ロイド | げっ…!そ、そんなに時間経ってたのか? |
| ロイド | 後でコレットに謝らないとなあ…。って、そう言えば…! |
| ロイド | 俺は護衛のためだけど…アリーシャも式典に出るはずだったんだよな? |
| アリーシャ | 仕方がない、で済ませるわけにはいかないが…ただ、状況が状況だ |
| アリーシャ | 各国の平和協調を示す場にいられなかったのは残念だが…事情については、私から上に話す |
| ロイド | 俺達も説明するよ。お宝についても、話さなきゃならねーし |
| ルカ | …お宝。お宝かあ… |
| アリーシャ | ん…?ルカ、前をよく見ないと…! |
| | ドテッ…! |
| ルカ | あいたっ…!うう…つまづいちゃった… |
| アリーシャ | …大丈夫か?崩落で足元が不安定になっている。気を付けて進んだ方がいい |
| ロイド | おいおい…せっかくお宝を手に入れたんだぜ。シャキッとしろよ、ルカ |
| ルカ | あはは…何だか信じられなくて。こんな発見するなんて、思ってもいなかったから |
| ロイド | そうなのか?わざわざ調査隊に入ったのに? |
| ルカ | 僕、将来の事で父さんと喧嘩してさ。当てつけって言うか…半分勢いで調査隊に入ったんだ |
| ルカ | でも、はっきりした目的はなかった。いつもと違う環境なら、何かが変わるかもって思ったくらい |
| ルカ | だから…やっぱり信じられないんだ |
| ルカ | そんな僕が、遺跡の中を走り回ったり、戦ったりして、こんなお宝を持ってる事が… |
| ロイド | ったく、しょーがねえな。何度も言うけど、もっと胸張ってりゃいいんだよ |
| ロイド | 遭難してたはずが、遺跡に眠るお宝を大発見!誰が見たって、大手柄なんだぜ |
| ルカ | そうなんだけど… |
| アリーシャ | 嬉しいのはわかるが油断は禁物だぞ。…っと。光が差しているな。どうやら、出口のようだ |
| ロイド | ふい~、ようやくか!さ、行こうぜ! |
| ルカ | う、うん…! |
| | |
| アリーシャ | ふう、ようやく外に出られたか。もうすっかり朝になってしまったな |
| パスカル | そんじゃ、ひとまず昨日泊まった集落まで戻ろうよ~! |
| パスカル | あそこにも持ち帰りたいものがたくさんあるし! |
| アイゼン | ああ。無論、そのサフィアによく似たお宝も調べる必要がある |
| アイゼン | あれだけの技術を持った一族が隠していたものだ。小さいが、どんな力を秘めているか… |
| パスカル | ちょっと!まずはあたしが調べるんだから、盗んだら駄目だよ~! |
| アイゼン | 後でも先でも構わない。詳しい事がわかったら教えてもらう。…その内な |
| パスカル | お?そういう事なら、全然オッケー! |
| ロイド | …って言ってるけど、いいのか、あれで? |
| アリーシャ | いいわけないだろう!これは本部に持ち帰って、しっかりと管理させてもらう! |
| アリーシャ | その後、正式に本部の研究者の手に渡して… |
| パスカル | え~!?そりゃないよ~!横暴だ!断固抗議する! |
| アリーシャ | い、いや、しかし… |
| ロイド | あーもー、みんなのもんって事でいいだろ!ここでもめるなって! |
| ルカ | (みんなの…そうだ。 ロイドは僕のお手柄だって 言ってくれたけど…) |
| ルカ | (僕があの作戦をたてられたのは、 みんなが僕を助けてくれたからだ) |
| ルカ | (僕だけじゃ駄目だった。 僕だけじゃ、このお宝は 絶対手に入らなかった…!) |
| ルカ | そうか…みんなとなら…! |
| パスカル | なーにニヤニヤしてんの、ルカ? |
| ルカ | えへへ…何でもないよ |
| パスカル | ふーん…? |
| ロイド | よーし、それじゃあさっさと森を抜けようぜ! |
| ロイド | へへ…!お宝を持ち帰ったら、きっと大騒ぎになるだろうな |
| ルカ | あはは…そうだね |
| ルカ | (冒険はやっぱり怖かった。 僕一人じゃ、きっとまだ 出来る事は少ないと思う) |
| ルカ | (アスラみたいにかっこよく、 とはいかないけど…) |
| ルカ | (みんなと一緒なら、 僕も変わっていけるかも!) |
| パスカル | ル~カ~?早く帰ろうよ~! |
| ルカ | …うん、今行くよー! |