NameDialogue
scene1脱獄
ベルベット
ベルベット…こんな世界、絶対に認めない
ベルベットラザリス…あんたと、この世界を覆う化けの皮はあたしが剥ぎ取ってやるわ
ベルベットそして今度こそ必ず、この手で「あいつ」を……
ベルベット……
ベルベットそのためにもまずはここを脱出しないと──…
コツ…
ベルベット…!
コツ…コツ…コツ…
レイヴンさーて、例のお嬢さんはどこにいるかなっと…
レイヴンおっ、早速はっけ~ん!宮殿の地下牢に、こんな素敵な美女がいるとはねぇ
ベルベット
レイヴンしっかし、これまたクールビューティな…
カシャンッ
レイヴンん?
ベルベット用件があるならさっさと言いなさい
ベルベットそれとも何、あたしを処刑しにでも来たの?
レイヴンまぁまぁ、落ち着いて。若い子は急ぎ癖があるからよくないわね
レイヴン初対面同士、こういうのはまず挨拶からって相場は決まってるもんでしょ
ベルベットあいにく、処刑人と話してるほど暇じゃないの
レイヴン処刑人?…ああ、お嬢さん何か勘違いしてるみたいだから言っとくけど…
レイヴンおっさん、処刑人でもなければ警備兵でもないし、安心して──
ベルベット…なら、何者なのよ
ベルベットここはラザリスの宮殿よ。それなりに警備だっているはず
ベルベット…関係者じゃないなら、どうやってここまで来たわけ?
レイヴンおよ?安心させるつもりが逆に警戒させちゃった感じかしら
ベルベット…つべこべ言わずに目的を言いなさい
レイヴンまあまあ、そんな怖い顔しなさんなって。せっかくの可愛い顔が台無しよ
レイヴン…それよりお嬢さん、こんな暗い牢獄、とっととおさらばしたいーとか、思わない?
ベルベット…!
レイヴン名前、教えてくれたらこの扉開けてあげてもいいけど~
ベルベット名前…?
レイヴンそそ。名前がわからなけりゃ口説けもしないってね
レイヴンほら、これが条件。どうする?
ベルベット…ベルベットよ
レイヴンベルベットちゃん、ね。へぇ、可愛い名前じゃないの
レイヴン俺はレイヴン、よろしくね。んじゃ、約束通り…
カチャ…カチャカチャ…
ガチャン!
キイイ…
レイヴンはい、この通り。牢の扉が開きましたよっと
ベルベット…本当に助けるのね
レイヴンまぁねぇ。牢に入る前のベルベットちゃんの持ち物もほら、この通り揃えておいたわよ
ベルベットあたしの武器まで…一体どうやって…
レイヴンおっさん、準備いいでしょ
ベルベット
レイヴン手厳しいなぁ。一言くらいくれても罰は当たらないと思うけど
ベルベット
レイヴン無視、ね。はぁ、おっさん悲しい──
レイヴン…っと、ベルベットちゃん。そんなに慌ててどこに行こうっての?
レイヴンラザリス様なら今この宮殿にはいないけど?
ベルベット…!
レイヴンまあ、宮殿って言うか、シャングレイスにはいないって言った方が正しいかも──
ベルベット何であんたがその事を…?
レイヴンなぁに、風の噂でね
ベルベットラザリスはどこなの?知ってるなら言いなさい
ベルベットもったいぶらずに吐いた方が身のためよ
チャキッ
レイヴンうわっと…!剣なんか突き付けて…物騒なお嬢さんだ事
レイヴン…けど、脅したところで無駄よ。だって、おっさんこれ以上の事なーんも知らないし
ベルベット…本当に?
レイヴン本当、本当!信じてって!
ベルベット……
レイヴンほっ…助かった
ベルベットラザリスがどこへ行ったのか…宮殿内の人間から情報を聞き出して居場所を突き止めるしかないわね
レイヴンえ?助けてあげたのに、置き去り?
レイヴンちょ、ベルベットちゃん!待ってってば──
衛兵お前達、そこで何をしている!
ベルベット…!
レイヴンあら、ばれちゃった?もう少しくらい余裕はあると思ってたんだけど
ベルベットちっ…
レイヴンうおっと、待って待って!おっさんを置いてかないでってば!
衛兵脱獄だ!あいつらを捕まえろ!
scene2脱獄
レイヴン──その先を右
ベルベット
レイヴン次は左。そしたら階段があるから、そこを…
衛兵いたぞ、あっちだ!
衛兵逃がすな!
ベルベット…関係者じゃないって割にやけに詳しいのね
レイヴンまぁね
ベルベット…にしても、衛兵の数が多いわ
レイヴンそりゃあね。重罪人を収監してるわけだから、警備も厳しくなるのも当然でしょ
ベルベット重罪人?
レイヴン誰それ、って顔しないの。ベルベットちゃんの事でしょ
ベルベット
レイヴンあのラザリス様を、衆人環視の中襲うなんて前代未聞だわ
レイヴンいやあ、驚いたの何のって。まさかラザリス様に不満を抱く人がいるとはねぇ
レイヴン何が気に入らなかったんだか
ベルベット不満なんかじゃない。そのラザリスが奪ったのよ、あたしの世界を
ベルベットあたしはただそれを取り戻したいだけ
ベルベット…成すべき事のために
レイヴン成すべき事…?
ベルベット
ベルベットこれ以上話す義理はないわ
レイヴンやっぱりつれないねぇ。こうして一緒に、苦難を乗り越えようとしてるのに
レイヴンこうやってるとだんだん俺様に、仲間意識を感じてきたりしない?
ベルベットあんたが何者かもわからないのに、そんなもの芽生えるわけないでしょ
レイヴンあっ…はい、そうですか
ベルベットそれより、出口はまだなの?
レイヴンそれならもうすぐ近くよ。向こうの角を曲がった先
ベルベットそれを早く言いなさいよ
レイヴンいや、でもねえ…
衛兵見つけたぞ!
衛兵ここは通さん!おとなしくしろ!
ベルベット
レイヴンま、当然こうなるわよね。思ったよりも、衛兵の数が多いかも
ベルベット何人いようと関係ないわ。あいつらがあたしの邪魔をするなら、全員倒すだけよ
レイヴンおーおー、勇ましい事で
ベルベット巻き込まれたくなかったら、あんたはどこかへ行けば?
レイヴン今更遅いでしょ。やります、やりますよ
ベルベットそう。だったら行くわよ!
scene1天帝の行方
レイヴンはー…ようやく地下牢から抜け出せたわね
レイヴン道中の衛兵は一人残らず倒したけど、気休めね。脱獄の情報も少しすれば宮殿内に知れ渡るだろうし
レイヴン騒ぎが大きくなる前に、ベルベットちゃんの気になる情報を調べるとしますかね
ベルベット…何であんたがやる気なの。これはあたしの問題よ、ついてこないで
ベルベットラザリスの居場所くらい、あたし自身の手で見つけられるわ。あんたの手を借りなくてもね
レイヴンそうは言われてもこっちにも事情ってのがあんのよ
レイヴンベルベットちゃんが嫌でもおっさんは勝手に手を貸すからね
ベルベットどういう事?あんた、一体何が目的なわけ
レイヴンまあまあ…それより、ほら。こんな話してる暇ないんじゃない?
レイヴン衛兵に気付かれたら応援も来ちゃうし、早く行動しないとね
ベルベット
ベルベットあんたが何をしようと勝手だけどあたしの邪魔はしないで
レイヴンそれは勿論。んじゃ、行きますかね
ベルベットここが大広間かしら…
ベルベット…!
衛兵1そっちはどうだ?
衛兵2特に異常はない。引き続き警備にあたる…
ベルベット…行った…わね
レイヴンここも衛兵だらけね。はぁ、先に進むのも一苦労だわこりゃ
ベルベットでも、あの様子…。あたしが脱獄した事はまだ知れ渡ってなさそう
レイヴンま、けどそれも時間の問題だわね
ベルベット…!
レイヴンまたぞろぞろと…
衛兵3今日も異常なし、っと。ほんと、平和だよなー
衛兵4ラザリス様のお蔭さ。視察であちこち行ってらして大変だろうに
衛兵3民思いの素晴らしいお方だよっと、そうだ。次の見張り番に見回りの報告をしないと
衛兵3その後ヴァン様へのご報告か…緊張するな…
衛兵4粗相のないように気を付けろよ
衛兵3ああ、勿論だ
ベルベットヴァン…確か、ラザリスの側近の──
レイヴン…なるほど。確かに宰相様ならラザリス様の行先を知ってるかもしれないわね
ベルベットなら…
レイヴンベルベットちゃん、宰相様のところに行くつもり?
ベルベットええ
レイヴン宰相様の周りを探るってわけね。随分と大胆な事で
ベルベット今はそれしか方法がなさそうだわ
レイヴンなるほど。それで?
ベルベットあの衛兵の後を追えば確実にヴァンにたどり着ける。でも…
レイヴンだいぶ時間がかかるわね。先に次の見張り番に報告に行くって言ってたから
ベルベットそれだけこっちが見つかる危険も増す…
レイヴンおっさん、お偉いさんの居そうな場所はいくつか見当つくんだけどなぁ…
ベルベット例えば?
レイヴン宮殿の中でも重要な役どころの人は個室を与えられていてねぇ
レイヴン宮殿の上層部にその個室が並ぶ階があるらしいわ
ベルベットなら、そこにヴァンの部屋があってもおかしくないわね
ベルベット時間を無駄に出来ない。そこに向かうわよ
レイヴンはいよ
scene2天帝の行方
ティア
ティア兄さん、部屋に飾る花は、私が選んでみたのだけれど…
ティアその…どうかしら?
ヴァンああ、綺麗だ。それに香りもいい
ティアふふっ、気に入ってくれてよかった
ティア中庭に咲いている花の中から選ぶしかないから、どうしても種類に限りはあるけれど…
ティア
ヴァン…外の世界が気になるか、ティア
ティア…べ、別に、そんな事は……
ティアただ…外にはどんな花が咲いているのか…
ティアひょっとしたら、そこには見た事のない花があるかもしれない…
ティア…そんな風に思っただけよ
ヴァンフッ…お前は正直だな
ヴァンその様子だと、生誕祭に出られなかった事も、まだ気にしているようだが
ティアそれは──…
ティア
ヴァン確かにお前の言う通り、宮殿の外には、ここでは見られぬ多くの花が存在する
ヴァンしかし、その花も踏まれれば終い…。…こことは違い、外の世界はそれだけ危険も多いという事だ
ティア……
ヴァン…わかってくれるな、ティア。私はお前を危険に晒したくないのだ
ティア兄さん…
ティア私の事を心配してくれてありがとう。でも、兄さんが考えているような事にはならないわ
ティア私はそんな兄さんを裏切るような事、したくはないから
ヴァン…そうか。私の杞憂だったようだ
ベルベット今までの階と様子が違うわね。おそらく、ここが…
レイヴン警備が厳重な事で。いかにもお偉いさんがいそうな気配だわ
ベルベット…進みながら、ヴァンの部屋を探すわよ
レイヴンついでに部屋に宰相様が居てくれると、ベルベットちゃんとしては助かるわね
ベルベット居なければ待ち伏せる、それだけの事だわ
scene1深窓の姫君
レイヴンちょっ、ベルベットちゃん、ガンガン行きすぎだって!
レイヴン急ぐ気持ちはわかるけど、もう少し慎重に動かないと…
ベルベット言われなくてもわかってるわ
コツ…コツ…
ベルベット…!
レイヴンん?
ベルベット誰か来るわ。隠れて
ティア兄さんが元気そうで安心したわ。最近忙しそうにしてたから
衛兵1ヴァン様も妹君のティア様にお会い出来て、嬉しそうでしたね
ティアそうかしら…
ティアところで、ラザリス様はいつ頃戻られるのかしら
衛兵1申し訳ありません、自分は存じ上げておらず…
ティアそう…いつも遠方に出向かれて大変ね
レイヴン兄さんって…。あの娘、宰相様の妹?
ベルベットだとしたら…
ベルベット
ベルベット娘の後を追うわよ
レイヴンありゃま。宰相様の部屋探しからいきなり方針変更?
ベルベットあの口ぶり…ラザリスの行方を知っている可能性は高いわ
ベルベットここからヴァンの部屋を探し出すより、あの娘から話を聞き出した方が手っ取り早そう
レイヴンなるほどねぇ。ま、大事になる前に、彼女が話してくれる事を祈るわ
レイヴンさてと、んじゃおっさんはここらでお暇するわね
ベルベット…随分勝手な話ね
ベルベット頼んでもないのについてきたと思ったら、今度は急に去るなんて
レイヴンある程度情報のあてはついたし、おっさんはもう用済みでしょ?
レイヴン可愛いベルベットちゃんのお役に立てて、おっさん大満足~みたいな
ベルベット
ベルベット…止めはしないわ
レイヴンう…最後の最後まで本当クールなんだから…。ま、けど…
レイヴンだいぶ話も出来たし、また今度があればその時はよろしくね
ベルベット今度なんてあるわけ…
レイヴン先はわからないもんだよ?んじゃ、またね。ベルベットちゃん
ベルベット…結局あいつは何だったの…
ベルベット…ま、いいわ。あの娘を追わないと
scene2深窓の姫君
カチャ…
ファラあっ!お帰りなさいませ、ティア様!
ティアただいま、ファラ
ファラヴァン様のところに行ってらしたんですか?
ティアもう、ファラったら、またそんな固い口調で
ティア今は他に誰もいないわ。普通にしてくれていいのよ
ファラそう?じゃあ、そうするね!
ティアええ、その方が私も気が楽だわ。あら…私の部屋を掃除してくれたのね
ティアファラ、いつもありがとう。本当に助かっているわ
ファラお礼なんていいよ。ティアのお世話をするのがわたしの仕事なんだから
ファラほら、見てティア!窓だってピッカピカに磨いておいたんだから
ティアどうりで日の光がいつもより明るく差し込んでいると思ったわ
ファラ本当は窓を開けて、ぱーっと思い切り風を通せるといいんだけど
ティアそれは難しいわね。窓には格子が嵌まっているから…
ファラティア…
ティアそういえば、この間聞かせてもらったお店の話、また聞きたいわ
ファラあっ、ドーナツ屋さんの話ね!実はあそこのお店、昨日から新しい種類のドーナツが売られててね
ファラすっごく美味しいんだ~!今度買ってきてティアにもわけてあげる!
ティアありがとう。その日が楽しみね
ファラうん!楽しみにしてて!
ファラそれじゃ、私そろそろ行くね。何かあったらいつでも声かけてね!
ティアわかったわ。またね、ファラ
カチャ…
バタン
ティア
ティアふう…
カタン…
ティア…!
ティア誰!?
チャキッ
ベルベット動かないで
ベルベットそれ以上動くと、この剣の切っ先が、あんたの喉に突き刺さるわよ
ベルベット大人しくこちらの質問に答えれば、危害は加えない。わかった?
ティア
ベルベット…ラザリスは今どこにいるの?あんたの知ってる事を、洗いざらい話しなさい
ティア
ベルベットさあ、早く──
ティアはあっ!
カシーン!
ベルベットな…!
ベルベットこの状態から、剣を払うなんて…大した身のこなしね
ベルベットどうやら誤解していたみたい。あんた、ただの大人しいお姫様じゃなさそうね
ティアあなたは何者なの…!?どうしてこんな事──
ベルベットもう一度聞くわ。ラザリスは今、どこにいるの
ティア
ベルベット…答えないなら仕方ないわね
チャキ…
ティア…!
scene1欠けた心
ベルベットはああっ!
ティアはっ!
キィィンッ!
ベルベット
ティアはあ…はあ…
ベルベット…まさか宮殿の衛兵よりも強いだなんてね
ベルベット──あんたは何者?
ティア今まで戦った事もないのに、身体が勝手に…
ティア私…どうしてこんな…
ベルベットあたしに聞かれたって知らないわよ。それより…
ティア近寄らないで!
ベルベット
ティア…侵入者ね。あなたこそ、一体何者なの?
ベルベットさぁね。少なくとも味方じゃない事はわかってもらえたかしら
ティア…目的は何?宮殿に侵入した上、こんな事するなんて──
ベルベット言ったはずよ。あたしが知りたいのはラザリスの居場所だと
ベルベット欲しい情報はどんな手段を使ってでも手に入れてみせるわ
ベルベット…そのためなら、何だってする
ティア……
ティアあなた、名前は?
ベルベットベルベットよ。ベルベット・クラウ
ティアベルベット…
ティア…ラザリス様なら、市都ファルカームへ視察に行かれているわ
ベルベットファルカーム…
ティア…ベルベット、一つ聞かせて
ベルベット
ティアあなたがそうまでしてラザリス様を捜す理由は何?
ティアただ行方を知るためだけに、こんな事までするなんて…
ベルベット決まってるじゃない。あいつを殺すためよ
ティアなっ…!
ティアラザリス様を殺すなんて何て事を…っ
ティア私達がこうして平和に暮らせるのもラザリス様のお蔭…なのに──…どうしてそんな…
ベルベット平和ねえ…
ティアそうよ。ラザリス様は常に万物を愛し、私達を幸せへと導いて下さるわ
ベルベットあんたの中のラザリス様はそうなんでしょうね。でもね、それが全部嘘だとしたら?
ティア嘘?
ベルベットどうしてかは知らない。でも、あたしは確信してる
ベルベットこのエンテレスティアは嘘で塗り固められた偽りの世界…
ベルベット見るものの全て、あたしの知っている世界と違う
ベルベット歴史も、平和も、幸せも……そんなもの、全て創られた偽物よ
ベルベットこんな世界、あたしは絶対に認めないわ
ティア偽りの世界…?偽物なんて…そんな…
ティアそんな事あり得ないわ!
ティアエンテレスティアは、ずっとラザリス様の庇護の下、発展してきた
ティア人々はラザリス様が見守る中、互いに認め合い、助け合い、争う事もなく過ごしてきた…
ティアそのエンテレスティアの繁栄の象徴が、今私達のいる帝都シャングレイスなのよ
ティアそれが紛れもない真実、私が実際に生きてきた歴史。決して嘘や偽りのはずがない!
ベルベットあたしは信じろなんて言ってない
ベルベットあんた達みたいなのが何の疑問も持たずラザリスを受け入れ妄信している…
ベルベットこの現実が嫌いなだけ
ベルベット…ま、その信じる感情もこの世界と同じで捏造されたものなのかもしれないけど
ティアそんな…
ベルベットこの世界はおかしい。その原因はラザリスにある
ベルベットだからあたしはラザリスに会って、全てを暴いて見せる
ベルベットあたしの「世界」を取り戻すために
ティアあなたは…
scene2欠けた心
ティア──わからないわ…
ベルベットわからない?
ティアラザリス様を殺そうだなんて…
ティアどうしてあなたは、そんな事を思うの?
ティアあなたをそこまで駆り立てるものは何?
ベルベット聞くまでもないわ。許せないから、あいつを殺す。それだけよ
ティア許せない…
ベルベットあたしには、やるべき事があった。なのに、あいつがそれを邪魔したの
ベルベットそんな事をされたら怒るのは当然でしょ
ベルベットだからあいつを殺して、あたしの世界を取り戻す
ティア…何故許せないの?私には、あなたのその憤りが理解出来ないわ
ベルベットもし、あんたがわけもなく誰かに傷つけられたらどう感じるの?
ベルベットそんな状況でもまだ、相手を憎む感情や怒りがわからないとでも言うつもり?
ティア憎む…?それはどういう感情なの?
ベルベット…本気?
ティア私なら、相手は何故そんな事をしたのだろうと真っ先に考えるわ
ティアそうやって他人を傷付けたのには、きっと何かやむを得ない事情があると思うから
ティア私はその理由を知りたいと思う。ただそれだけ。怒りはおろか、やっぱり仕返しをしようなんて──
ベルベット傷付けるだけの事情があれば殺されたって仕方がない、…そう言いたいわけ?
ティアそれは極論だけれど…でも…
ベルベット…あんたに何がわかるのよ…
ティアベルベット…?
ベルベットそんなもの、あるわけがない。…いや、あったとしてもあたしは認めない…絶対に!
ティア…!?っ…
ベルベットラザリスの居場所を教えてくれた事、感謝するわ
ベルベット後は衛兵に告げるなり、助けを呼ぶなり、好きにすればいい
ベルベットじゃあね
ティアベルベット、まっ…
ティア…!
ティア…今のは…何…
ティアあの人の言葉を聞いた瞬間、何か鼓動が──…
ティアベルベットのような強い意志…私、前にもどこかで…
ティアいえ、そんなはずは…でも…
ティア
scene1逃亡
衛兵1宮殿内に異常はありませんでした。定期報告は以上となります
ヴァンご苦労、下がっていいぞ
衛兵1はっ…それでは──…
バンッ
衛兵2失礼致します!火急のご報告のため無礼を承知で、ただ今申し上げます!
ヴァン何事だ、騒々しい
衛兵2地下牢に捕らえておりました例の咎人が、脱獄した模様です…!
ヴァン何だと…
衛兵2咎人は警備にあたっていた衛兵全てを昏倒させておりました。依然、逃走中です
ヴァン速やかに兵を展開し、行方を突き止めよ
ヴァン既に宮殿を出ているやもしれぬ。全兵士に伝令を…
衛兵3申し上げます!
ヴァン今度は何だ
衛兵3ティア様が行方不明に!ティア様の部屋を警備している者は何者かの襲撃を受け意識がありません
ヴァン…!
衛兵2何と…!同時に…咎人の仕業でしょうか?
ヴァンそう考えるのが妥当であろう
ヴァン…咎人の生死は問わんが、ティアには決して傷をつけるな
衛兵1はっ!
ヴァン私も出るとしよう
衛兵達かしこまりました
タッタッタッ…
ヴァンティア…
ベルベット…こっちも衛兵が押さえてる
ベルベット仕方ないわね。他の出口を…
ティアどこへ行っても無駄よ
ベルベットあんた…
ティア宮殿の外へ通じる全ての出入口は、封鎖されてる。通常の方法で出るのは無理よ
ティアこれだけ緊張感のある宮殿の空気は初めて…
ティアこの警備の状況…侵入者である、あなたの存在に気付いたという事かしら
ベルベットあんたには関係ないでしょ。それとも何?
ベルベットそんな事を言うためにわざわざ追いかけてきたわけ?ご苦労な事ね
ティア…これだけの数の衛兵を真正面からかいくぐるなんて無茶よ
ベルベット無茶でもやるしかないわ
ベルベットそろそろ情報が回った頃だろうと思ってはいたけど
ベルベットまさかたった一匹のねずみ取りにここまで躍起になるなんてね
ティア…ねぇ、聞いてベルベット
ベルベット何?
ティア…この宮殿には秘密の地下通路があるの。それを使えば外に出られるわ
ベルベット
ティアあそこは宮殿の人間でも知っている人はほとんどいないから、衛兵もいないはず…
ティア私ならその通路を案内出来る。昔、一度だけ入った事があるから
ベルベットそうやってあたしを誘い出せば楽に捕まえられるわね
ティア違うわ!そうじゃなくて、私はただ──
ティア…!隠れて…
衛兵1そっちはどうだ?
衛兵2いない。奥を捜そう
タッタッタッ…
ティアこのままだとただ囲まれて捕まるだけよ
ティアどうせなら、逃げられる可能性のある方にかけてみたらどうかしら
ベルベット…不本意だけど、あんたの案に乗るしかないみたいね
ベルベットで、どうすればいいの?
ティア地下通路への入口はこっちよ
ベルベットここが地下通路…
ティア外へ通じる出口はこっちよ
ベルベットねえ。どうしてあんたが、あたしを助けるような真似をするの?
ティア…信じてくれるかどうか、わからないけれど
ティアさっき、あなたの言葉を聞いた時、何か大切な事を思い出したような…そんな不思議な感覚に襲われたの
ベルベット思い出した?
ティアええ…。自分でも上手く説明が出来ないのだけれど
ティアこのままじゃいけない、あなたともっと話をしなくちゃと思って、それで…
ベルベットあんたも酔狂ね。そんな好奇心のために、あたしを追いかけて来るなんて
ベルベット言ったでしょ?あたしの目的。ラザリスを殺すって
ティアそれは…っ!…それは絶対に駄目よ
ベルベットでも、逃がすのね。あたしの事
ティア……。わからない…の…まるで自分が二人いるみたい
ティア本当ならこんな事、許されるはずがないけど…
ベルベットそのお蔭で逃げられそうだし、あたしは助かるけどね
ティア
ベルベット地下通路はまだ続くのかしら
ティア…もう少しで宮殿の外よ。急ぎましょう
scene2逃亡
ベルベット…ここに出るのね
ティアこれが…宮殿の外の景色…
ティアまさか、こんな形で見る事になるなんて…
ベルベット外に出た事がない癖に、よく抜け道なんて知ってたわね
ティア偶然見つけたの。ずっと外を見てみたかったから兄さんにも黙っていたけれど…
ティア…この一歩を越えてしまったら兄さんを裏切ってしまう…そう思ったら、出られなかった
ティアまさかこういう形で役に立つなんて、その時は夢にも思っていなかったわ
ベルベットま、宮殿の外に出たってだけじゃ、安心出来ないわ。急いで帝都を抜けないと…
ベルベット確か…あの辺りだったわね…
ベルベット
ティア
ベルベットちょっと、あんた。どこまでついて来るつもり?
ティアあんたじゃない、ティアよ。ティア・グランツ
ティア私の知りたい事をあなたが知っている気がするわ。だから、私もついていく
ティアそれが何なのか、わかるまで…
ベルベット邪魔なだけよ。来ないで
ティアそれは聞けないわ
ベルベット自分勝手ね…あんた。戦い振りといい、見た目とは大違い
ティア何とでも言って。ラザリス様に会った時、私はあなたを止めなければならないから
ベルベット邪魔するならもってのほかよ。ほら、お姫様は早くおうちに帰って──
ヴァン…やはりここにいたか
ティア兄さん!?
ベルベット…!
ヴァンもしや地下通路を使ったかと思ったが、案の定だったな
ヴァン大方ティアを脅しつけ、無理に案内させたのだろう
ティア違うわ、兄さん!これは…
ベルベットあたしが何を言ったところで、そう思うでしょうね
ベルベットで、どうするの?またあたしをあそこに連れ戻すつもり?
ヴァンいや、そのような煩わしい事はせん
ヴァン…まさかあの時の「傷」がこのような不穏分子を生み出す事になるとはな
ヴァンだが、それも過ぎた事…
ティア「傷」…?兄…さん…?
ヴァンベルベット、お前の持つ意志…それは争いの根源となり得る危険なものだ
ヴァンみすみす見逃すつもりはない
チャキッ…
ティア…!
ティアう…っ、また……
ヴァンこの場で貴様を処刑するとしよう。私はラザリス様のように甘くはない…
ヴァン貴様のような存在、エンテレスティアには不要だ
ベルベット悪いけど、あんたの思惑通りにはならない
ベルベットあたしはラザリスのところへ行く。誰にも邪魔はさせない…!
ヴァンならばその思いも一太刀に薙ぎ払ってくれよう
ヴァンはああああっ!
ガキィィンッ!!
ティアそんな…っ!兄さん、やめて!!
ベルベットはあああああっっ!!
scene1揺り動かすもの
ヴァン
ベルベットくっ…う…
ヴァンあのような大胆な振る舞いに及ぶだけの事はある。それなりには使えるようだ
ヴァンだが…私には、及ばぬ
ヴァンはあああっ!
ズバーーーッ!
ベルベットうぐっ…!
ヴァンとどめだ
ティア待って、兄さん!
ヴァンそこを退くのだ、ティア。私はこの女を処刑せねばならん
ティアいいえ…
ヴァンそこを退け、ティア!
ティアいいえ!
ヴァンティア…私に逆らうのか。あれほど従順だったお前が
ティア逆らうつもりなんてないわ。でも、殺すだなんて…
ティアこの人が、どんな罪を犯したと言うの?
ヴァンそうか、お前は知らなかったな。その者の罪を…
ヴァンその者は先の聖誕祭で、畏れ多くもラザリス様の命を狙った咎人だ
ティア咎人…!?ただの侵入者じゃなかったの…?
ヴァンそればかりか、地下牢を脱獄し、お前を人質に取り逃亡を謀った。断じて許されぬ
ティアそれは…
ヴァン私はラザリス様の側近として、このエンテレスティアを守る義務がある
ヴァン世界の秩序を乱す咎人は始末しなければならないのだ
ティア兄さん…あのね…いえ、何て言えば。違うの…違うのよ…!
ヴァンティア?
ティアまず、私は人質じゃない。自らの意志で、この人に協力したの
ヴァン…!
ティアそれに、罪を犯したとは言え何の話も聞かずにこの場で処刑なんて許されるはずがないわ
ティアそのような事はラザリス様も、決して望んでいない…
ヴァン…ティア、お前は何故こやつの逃亡に手を貸したのだ。何故…!
ティア…ごめんなさい、兄さん。私…どうしてもベルベットに聞きたい事があるの…
ヴァン…!
ティア上手く言えないのだけど、何か心の中で引っ掛かっていてそれがもう少しでわかりそうで…
ティアだから兄さん、お願い。処刑じゃなくて、別の方法を──…
ヴァン
ヴァンティア…
ヴァンそう、か…お前は──…
ティア…?
ヴァン…ふっ、なるほど
ヴァン全ては私の幻想に過ぎなかった。お前だけは、と思ったが──…
ヴァンどうやらそれすらも、私の甘えが見せた夢でしかなかったようだ
ティア…?兄さん、それはどういう──
チャキ…
ティア兄さん!?
ベルベット……妹にまで剣を向ける気?
ヴァン私は理想を実現するためなら、どのような犠牲もいとわぬ
ヴァンそうとも…初めからこうするべきだったのだ
ティアそんな──…
ティア…!
ベルベットティア?
ティアうっ…
ティアあ…ああ…っ
ティア……
ティア兄さん……あなたは…また…
ヴァン
ベルベットヴァン、あんたを見てると、「あいつ」を思い出す…
ベルベット自分の理想とやらのために、平気で誰かを犠牲にする身勝手さ、残酷さ…
ベルベット…本当、そっくり
ヴァン何とでも言うがいい。お前達が束になったところで、私を倒す事は出来ぬ
ティアさせない…わ…絶対に、あの時そう…私は思って…
ティアいえ、そんな事…っなら兄さんとの時間は…?…どれが正しいものなの
ベルベットティア…?
ティアうっ…く…でも、覚えてる。あの時の悲しみも…みんなの思いも…っ
ヴァン…早くにこうしておくべきだったのだ…
ヴァン全ての憂いを、今ここで──…
???待て、ヴァン!
ヴァンお前は…!
scene2揺り動かすもの
???
ティア…「白き獅子」
???ヴァン、この者をお前の一存で処断する事は認められない
???違うか?
ヴァンここにいるのは咎人だぞ
???例えそうであってもだ
???今我々が天帝から受けている命はこの者を地下牢に繋ぐ事
???我らが天帝の意志を曲げる事は許されない
ヴァン
???…剣を引け、ヴァン。引かぬのであれば、私達が相手になる
???ロアーの言う通りだ。例え相手があんただろうが関係ねぇ
???筋は通させてもらうぜ。それがオレ達の流儀だ
???ああ
ベルベット…逃げるわよ!
ティアえっ!?
ベルベットいいから来なさい!
ティアわ、わかったわ!
ヴァン…!
ロアー待て、ヴァン。ここから先には行かせない
ヴァンふっ…お前達の仕事が咎人を私から逃がす事だったとはな
ヴァンとんだ騎士が居るものだ
ロアーいや、逃がしはしない。我々の包囲を持ってすれば追いつく事など容易い
ロアークロー、ファング、咎人は私が追おう
クローりょーかい、任せとけ。んじゃ、後で合流な
ファング宰相、今のあなたに二人を追わせるわけにはいかないんだ
クロー天帝様の意志とは関係なく、その手を汚しちまうだろうからな
ヴァン…失敗は許されんぞ。必ず二人を連れ戻せ
クローああ。オレ達「白き獅子」の名に懸けて
ヴァン
ヴァンティア…
scene1白き獅子
ベルベットはあ…はあ…
ティアはあ…はあ…
ティアうっ…!
ベルベットどうしたの?足でも痛めたわけ
ティアいいえ…そんな事はないわ。大丈夫よ
ベルベットう…
ティアあなたの方こそ、私よりよほど傷ついているわ
ティア無理もないわね…あれほど兄さんの攻撃を受けたのだから
ベルベットこのくらい平気よ
ティア少しだけ、その岩陰で休憩しましょう
ベルベット
パアア…
ベルベット傷が治っていく…あんた、こんな事も出来たのね
ティアええ、まあ
ティア
ベルベットこの辺りは宮殿からも見えない場所なんじゃない?
ティアそうね。今まで見た事のある景色とは全然違う…
ティア…本当なら、今頃この初めて見る景色に感動を覚えていたのかもしれない
ティアけれど、もうそんな気分にはなれなさそうだわ
ティア…兄さん…
ベルベット…ちょっとあんたに聞きたいんだけど
ティア何かしら
ベルベットあの「白き獅子」とかいう連中は何者なの?
ティア正式名称は「帝都騎士団」ラザリス様直属の精鋭騎士団よ
ティアあの白い隊服と気高き振る舞い、獅子の如く勇猛な戦いぶりから白き獅子と呼ばれているわ
ティアさっきの三人は騎士団を取りまとめる幹部…
ティア彼らの顔は、常に隠されていてあの下の本当の姿を見た者はいない…
ベルベットへぇ…
ティア今までも宮殿内で何度か、すれ違った事があるわ…
ベルベットようするにラザリスの、忠実な犬って事ね
ティア
ティア…私も聞いていいかしら
ベルベット何?
ティアどうして一人で逃げなかったの?
ベルベット……
ベルベット…ただの気まぐれよ。理由なんてないわ
ティアそう…
ベルベットさて。傷も治ったし、そろそろ出発するわよ
騎士団員1何をして…ああ、痕跡がある。行くぞ…
ティア待って!兵士の声が聞こえる…
ベルベット身をかがめて。様子を伺うわよ
騎士団員2咎人が逃げたのは、こっちの方だ!
騎士団員1手当たり次第捜せー!!
ガサ…ガサガサッ…
ティア…まずいわね。あの隊服…白き獅子だわ
ベルベット奴らに気付かれる前に移動するわよ
ティアええ…
騎士団員1
騎士団員2そこに誰かいるぞ!
ティア見つかった!?
ベルベットちっ…!走るわよ!
scene2白き獅子
ティア追っ手は撒けたかしら?
ベルベットさあ、どうかしらね
騎士団員1こっちだ!
ベルベットまだ駄目みたい。しつこい連中ね
ティア山の頂上に向かっているけれど、逃げ切れるあてはあるの?
ベルベットそんなの、あるわけないでしょ。あたしもこの辺りは初めて…
ベルベットこれは…!
ティア崖に行き止まり…ね。これ以上は進めないわ
ベルベット飛び降りるのは、さすがに厳しいかしらね
ティアこれだけの高さよ。私達が無事な保証なんて…
ロアーそこまでだ、お前達
ティアあなたは…!
ベルベットふうん。あんたも追っ手に加わってたの
ティアさっきは助けてくれたのに…
ロアー助けただと?助けたつもりなどないぞ
ロアー私達の役目は、あくまで民を守る事
ロアーそこには民が不当に虐げられぬよう目を光らせる事と共に、罪人を捕らえる事も含まれている
ロアー先ほどはヴァンの行き過ぎた行動を止めるため、あのような手段を取ったが…
ロアー咎人であるお前を捕らえ、再び牢に繋ぐのも、同じく私達の責務だ
ベルベット責務ね…嫌だと言ったら?
ロアー少々手荒な手段を取らざるを得ない
ロアー世界にとって害をなす者…咎人はその存在自体が罪だ
ロアーあまつさえ天帝の命を狙い、収監されていた地下牢を脱獄し、さらには人質を取って逃走する…
ロアーお前の重ねた罪は重い。しかるべき裁きを受けねばならん
ロアーお前の行く手は、断崖に遮られている。もはやどこにも逃げられんぞ
ベルベット…誰もあたしを裁く事は出来ないわ。断じてね
ロアーあくまで逆らうか。ならば…
ロアーお前達、下がっていろ
騎士団員1はっ!
ロアー咎人、ベルベット・クラウはこの私…ロアーが騎士の名の元に捕えよう
ティアベルベット!
ベルベットあんたは下がってなさい。こいつのご指名は私よ!
scene3白き獅子
ロアーほう、やるな。だが…!
ガキィィンッ!!
ベルベットぐっ…!
ガンッ、キィンッ!
ロアーそろそろ諦めたらどうだ?
ベルベット…っ、そっちこそね
ロアーふっ!笑わせてくれる…
ロアーはあああああっっ!!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ベルベットぐあっ!
ティアベルベット!?
ベルベット地面から…急に…っ…妙な技を使ってくれるじゃない…
ロアー認めよう、お前は強い。だからこそ少し本気を出させてもらった
ベルベットちっ…
クローよっと、ここにいたか
ファングやっと追いついたな
ロアー来たか、二人共
ベルベットまだ仲間が…
ティア…っ!
ロアー既にお前の体力は限界に達していよう。私達三人を相手にするのは無理だ
ファング無駄な抵抗はよした方がいいぜ
ベルベットあいにく、あたしは往生際が悪いのよ
ロアーあくまで抵抗をやめないか。ならば…
ティア…!今までと構えが違う…
ロアー殺しはしない。私はヴァンとは違うからな
ロアーだが、無傷では済まぬ。覚悟してもらおう
ロアーはああああっ!
ベルベットっ!?
ティア危ない!
ドゴオオオンッ!!
ズ…ズズズズ…ッ
ファングおい、地面が!
ビシッ!
ガラガラガラ…ッ!
クロー崩れるぞ!
ティア!?
ベルベット…ぐっ…
ティア…!
ティアベルベット…っ!
ベルベットあたしは、まだ戦え──…
ベルベット…!くっ…!
ガラガラガラガラ…
ティアベルベット──!!きゃ…っ!
ズザザザザザザッ…ドシャアッ…
ティア…う…っ、くぅ…お願い、間に合って…!
ティア──…
ロアー…まさかあそこまで喰らいついてくるとはな
ファングロアーにここまでの力を使わせるなんて、…咎人ながらすごいヤツだ
クローま、何にせよこの高さから落ちたんじゃ無傷じゃ済まねぇ──
パアアアーーー……ッ!
クロー…!何だ、あの光は…
ファングくっ、眩しい…!
ロアーこれは…!一体崖下で何が起きて…