NameDialogue
scene1逃亡の神子
ゼロス
赤の騎士団員1ちっ、見失ったか。逃げ足の速い奴だ、どこへ逃げた?
赤の騎士団員2そう遠くへは行っていないはずだ。何としてでも、神子を捜し出すぞ
ゼロス
ゼロス…よし、行ったか。赤の騎士団、ね…。ったく、しつこい奴らだな
ゼロス野郎に追いかけられる趣味は、持ち合わせてねーっての
ゼロス…にしても、国王の言ってた通りだな。連中が神子である俺を捜してるのは事実だ
ゼロス他国にまで乗り込んできてなりふり構わず横暴な振る舞い…、上の奴は一体何考えてんだか
ゼロス俺が狙われてるなら、同じ神子であるコレットちゃんも…
ゼロス…ここで心配してても仕方ねぇか。ロイドも側にいるだろうしな…、国王の指示通り上手く避難してるだろ
ゼロスそれより、問題はこっちか…。この状況をどう切り抜ける──
ずでんっ
ゼロス…!
女の子いたた…
ゼロスおいおい…大丈夫か?って、よく見りゃさっき街で会ったおチビちゃんじゃねーか
ゼロス立てるか?こんなところで何してんだ?
女の子お兄ちゃんが森の方に逃げて行くのが見えたから…捜していたの。お礼が言いたくて…
女の子さっきは街のみんなを助けてくれて本当にありがとう
ゼロス礼って…わざわざそのためだけに…?
ゼロス俺さまが魅力的なのはわかるけど、こんなところまで来たら危ないぜ?例の怖い連中がウロウロしてるし…
ゼロス送ってやりたいのは山々なんだが…おチビちゃん…一人で帰れるか?
女の子…うん、大丈夫。じゃあね、神子のお兄ちゃん
ゼロスふ~、行ったみたいだな
ゼロス…今は俺さまと一緒じゃない方が安全だろうし、仕方ねえな
ゼロス…ったく、礼なんていいのによ。元はと言えば、あれは神子の俺が街にいたからで…
ゼロス
ゼロス…だ~、やめだやめ、辛気臭ぇ。何はともあれ、俺さまも早いとこここから離れた方がよさそうだ
scene2逃亡の神子
ゼロス
ゼロスもうそろそろ大丈夫だろ。よし、今の内に──
赤の騎士団員1見つけたぞ!こんなところに隠れていたのか
ゼロスくそ…まだいやがったか。めざとい奴らだな
赤の騎士団員2シルヴァラントの神子よ、今度はもう逃がさん!我々に同行願おう
ゼロス…やれやれ、しつこい野郎は嫌われるぜぇ~?
ゼロスそれとも、そんなに俺さまの事がだ~い好きなわけ?
赤の騎士団員1…ふん、こんなふざけた奴が神子とはな
ゼロスまぁ、冗談はさておき、お前達が神子に固執してるのは天啓のためなんだろ?
ゼロス今まで見向きもしなかったくせに何で急に天啓へ興味が湧いたのか、俺さま気になるな~
赤の騎士団員2お前に話す事は何もない
ゼロス詳しい事情も教えず、天啓を読み解くために黙ってついて来いってか?
ゼロスえらく勝手なもんだな。それが赤の騎士団のやり方かよ
ゼロスはっきり言っておくぜ。俺さまはお前達みたいな奴らに、協力する気はさらさらねえ
ゼロスお前らの欲しがってる天啓に関しても何もしゃべらないし、内容を読み解く気もねえよ
赤の騎士団員1それはまかり通らぬ。天啓の導きは、全ての国でわかち合うべきもの
赤の騎士団員2我が国にも内容を知る権利があり、故に神子たるお前は我が国に協力する義務がある
ゼロスシルヴァラントは隠してねえだろ。ちゃんと公表してる
ゼロスお前ら、しかもその内容が偽物とか言ってるらしいじゃねえか。言いがかりも甚だしいぜ
赤の騎士団員1何とでも言え。同行を拒むなら、力ずくで従わせるまでだ
ゼロスハッ。たった二人で俺さまをどうにかしようなんて舐められたもんだな
ゼロスまあ、そのふざけた神子ってのに、負けるんだけどな?お前らはよ
赤の騎士団員2貴様…。その減らず口、叩けないように──
???待て!
ゼロスおっと、もう一人いたのかよ。ま、二人も三人も同じ──
ゼロス……ん?あれはまさか…!
女の子お兄ちゃん…!
ゼロスさっきのおチビちゃん…!?
ゼロスおい、お前ら!その子に何をする気だ!
赤の騎士団員3我々は森で道に迷っていたこの少女を保護しただけだ
ゼロスちっ、どうせその子と引き替えに、俺さまを拘束しようって魂胆だろ
赤の騎士団員3我々は犯罪者ではない。あくまで神子殿に、自主的な協力を要請するだけだ
ゼロスよく言うぜ…そっちの奴、さっき力ずくって言ってたぜ?
赤の騎士団員1さあ、神子殿。どうする?
ゼロスくっ…!
???少女と神子、いずれも渡すわけにはいかない
ゼロス…?
赤の騎士団員3誰だ、お前は!
クロエ私はシルヴァラントの騎士、クロエ・ヴァレンスだ
クロエ見たところ、貴殿らは我が国の騎士ではないようだが、ここで何をしている?
赤の騎士団員2ちっ、シルヴァラントの騎士か…
クロエ我が国の民を保護してくれた事には礼を言う
クロエ後の事は我々で対処する。その少女をこちらへ
赤の騎士団員3…どうする?
赤の騎士団員1今ここでシルヴァラントの騎士と事を構えるのは賢明ではない。一旦退く。その子は解放しろ
クロエ君、大丈夫か
女の子う、うん…。怖かったけど、何ともないよ
ゼロスさっきはどうなるかと思ったぜぇ…!ありがとな?セクシーな子猫ちゃん
クロエなっ…誰がセクシーだ…!それに、子猫ちゃんとは…
女の子お姉ちゃん、ありがとう。お兄ちゃんにも、また助けてもらっちゃったね
クロエ騎士として当然の事をしたまでだ。怪我がなくてよかった。……それより、神子殿
ゼロス…わかってる。奴ら、まだ物陰に潜んでこっちの様子を窺ってやがるな
クロエ今は奴らを撒くのが得策か…。神子殿、その娘を抱えて走れるか?
ゼロス楽勝楽勝、任せとけって
女の子お兄ちゃん…?
ゼロスそんな不安そうな顔すんなよ。おチビちゃんは、俺さまにしっかり掴まってればいいから
ゼロスクロエちゃん、だったな。俺さまが合図を出したら一斉に走る。準備はいいか?
クロエああ、いつでも問題ない
ゼロス
ゼロス……よし、今だ!
scene1王都からの使者
ゼロス──よし、何とか上手くいったみたいだな
クロエそのようだな。奴らの気配は近くに感じられない
ゼロスほら、おチビちゃん。街はすぐそこだ。ここまで来れば、迷わずに帰れるな?
女の子うん、大丈夫!ありがとうお兄ちゃん、お姉ちゃん。じゃあ、行くね
クロエああ、気をつけてな
ゼロスやれやれ、とんだ災難だったぜ
クロエ神子を手に入れるためとはいえ、あんな小さい子まで利用するとは…
ゼロス咄嗟に逃げちまったが、このまま連中を放っておくのはちょっと厄介だな
クロエああ…。だが、手は打ってある
クロエ国王も赤の騎士団を警戒し、国内の警備兵を増員している
クロエ神子殿を見つけた時、街の頼りになる若者を使いに走らせた。まもなく兵が駆けつけるだろう
ゼロスクロエちゃんが騎士と知ってひるんでたし、兵が来ればあいつらも下手な事はしねえか…
ゼロスそれはそうと、クロエちゃんがシルヴァラントの騎士だって話は、本当だったんだな
ゼロス今の話を聞くまで、てっきりその場しのぎの嘘だと思ってたけど
クロエ失礼な。れっきとした騎士だ。…と言っても、まだこの国に仕えて日は浅い
クロエ言わば、見習い騎士とでも言おうか
ゼロスなるほど、それで見覚えがないわけだ。変だと思ったんだよな〜
ゼロス街でキミみたいな美人な子猫ちゃんを見かけてたら、俺さま絶対声かけてるしな
クロエだ、だから誰が…!神子という神聖な立場にありながら、よくも軽々しくそんな事を…
ゼロス神子だからって関係ないだろ?クロエちゃんは、背もスラっと高くてスタイル抜群って感じだし──
クロエや、やめてくれ。背の事は、自分ではあまりいいと思っていないんだ
ゼロスえ〜、もったいない。せっかくのチャームポイントなのに
クロエう、うるさい!それより神子殿──
ゼロスしっ!何か聞こえる…
クロエ…!これは、足音…?ひょっとして赤の騎士団か!?
ゼロスまだ諦めてないのかよ?くそ、とことんしつこい奴らだぜ…
クロエ一旦ここから離れた方がよさそうだ。行こう、神子殿
ゼロスああ!
scene2王都からの使者
クロエここまで来れば、もう大丈夫だろう
ゼロスクロエちゃん、ありがとな。あとはもう俺さま一人で大丈夫だぜ
クロエ礼など不要だ。これは任務だからな
ゼロス任務?
クロエ行方不明の神子捜索だ。国王陛下から密に命を受け、貴公を捜していたのだ
ゼロス…そういう事ね
ゼロスま、遅かれ早かれ国王の使いが追って来るとは思っていたけどよ…
クロエ単刀直入に言おう。神子殿、貴公を隠れ家へ案内する。私と一緒に来てほしい
クロエ貴公が街を出てすぐの事だが、赤の騎士団がメルトキオに来て騒ぎを起こしたのは知っているか?
ゼロスあいつらが…?
クロエああ。私はその場にいなかったのだが大騒動に発展するかもしれない危険な状況だったそうだ
クロエ他にも、メルトキオの襲撃を企てていたという怪しい二人組の存在も耳にしている
ゼロスメルトキオ襲撃だと…!街はどうなったんだ!?セレスは…!?
クロエ大丈夫だ、神子殿。その襲撃はある者達のお蔭で未然に防げた
クロエセレス…妹殿も王宮内で無事だ
クロエだが、肝心の二人組は取り逃している。よって今、メルトキオは警戒態勢だ
ゼロスそうか…。油断出来ない状態だな…。その二人は赤の騎士団じゃないのか?
クロエ手口から言っても考えにくい。それに、さすがに彼らも王都襲撃など企てないと思う
クロエしかし、赤の騎士団は要注意だな。他国にまで乗り込み、神子捜索まで始めるとは…
ゼロスそれだけじゃねぇ。クロエちゃんも見ただろ、あいつらのやり口
ゼロスさっきのおチビちゃんの街にいた時、偉そうな態度で、連中が街に入ってきやがったんだ
ゼロス神子を匿う事は重罪だー、知っている事を全て話せー、とか住民に詰め寄ってよ
クロエ武器も持たぬ者に何という事を…!住民達はさぞ怖い思いをしただろうな
ゼロスああ。みんなその態度に震え上がってたぜ
ゼロスで、俺さまもそれを見かねて、つい姿を見せちまった
ゼロスあいつらの目を引き付ける事には成功したんだが…
クロエ…その代わりに、神子殿が追い回される羽目になった、と。しかし…
クロエ仮にも一国の騎士を名乗る者の行動とは思えない。まるで賊だ
クロエ他国に無断で踏み入り、民を脅すなど決して許される行為ではない
クロエ国王陛下も赤の騎士団を警戒しておられた
クロエすぐにでもこの事実を報告して早急に手を打つ必要があるな
ゼロス
クロエその前に、まずは貴公の身の保護だ。私と共に──
ゼロスごめん!クロエちゃん!
クロエえっ…
ゼロスいくら可愛いクロエちゃんの頼みでも俺さま、そのお願いだけは聞いてあげられないんだよねぇ…
ゼロスって事で、国王によろしく〜!
クロエなっ…!待ってくれ、神子──…
クロエ勝手すぎる…!神子たる自覚はないのか?
クロエとにかく、こうしていられない。急いで神子殿を追わねば…
scene1衝突する焦熱
ゼロス右よし、左よし…!上手くやり過ごせたみたいだな
ゼロス
ゼロス…隠れ家か
ゼロス…悪いな、クロエちゃん。俺はそこに行くわけにはいかねえんだ
ゼロスさて、と。クロエちゃんと赤の騎士団の連中に見つからない内に──
???一足遅かったな、神子殿
クロエ隠れても無駄だ
ゼロスク、クロエちゃん!?何で!?
クロエ草むらからその赤い髪が垣間見えたのでな
ゼロスあらら…俺さまとした事が…
クロエ神子殿、一人で行動するのは危険だ
クロエいつまた赤の騎士団の連中と出くわすとも限らない。だから、私と一緒に──
ゼロスやべえ!後ろから赤の騎士団が!
クロエ何!?…どこだ?どこにもいないぞ?
クロエあ!神子殿!どこへ行く!
ゼロス俺さまの首に縄をつけたいなら、是非ともプライベートの方でよろしく子猫ちゃん♪
ゼロスじゃあな!
クロエなっ…!まさか私を欺くとは…!
クロエ困った神子様だな…
ゼロスよしよし、向こうに行ったみたいだな
ゼロスさすがのクロエちゃんでも、まさか俺さまが木の上にいるとは思わねえだろ
ゼロスしばらくここでやり過ごすか…
クロエここは随分と眺めがいいんだな
ゼロスげっ、クロエちゃん!?いつの間に隣に…!?
クロエ私をまこうなどと考えない方がいい。大人しく…
ゼロスあっ、あんなところに空飛ぶブッシュベイビーが!
クロエえっ!?…あっ、神子殿!
クロエまたか…
ゼロスはあ、はあ…よし、これだけ引き離せば…
クロエ遅かったな、神子殿
ゼロスうおっ!?どうして俺さまの行く手に先回り出来るんだよ?
クロエ日頃の鍛錬の賜物だ
クロエ逆に神子殿は、いささか身体が鈍っているのではないか?この程度で息を切らせるとは
ゼロス俺さまも体力には自信ある方で………ん、あれは…?
クロエ同じ手はもう食わないぞ
ゼロス違う、向こうだ!何か煙が出てる
クロエ…!本当だ
ゼロスひょっとして、クロエちゃんのお仲間が狼煙をあげているのか
クロエ…いや、違う。軍の狼煙とは色味が異なる。それに、狼煙にしては…
ゼロス煙が、いくつも上がっている。ただの焚火じゃねえな
クロエ確かあの辺りには小さな村があったはずだ…!
ゼロス…何だか悪い予感がするぜ
ゼロスクロエちゃん、悪ぃが、鬼ごっこはここまでだ
クロエ神子殿、待て!私も行く!
scene2衝突する焦熱
クロエこ、これは…!
クロエ村がめちゃくちゃに…
ゼロスこの様子は…。建造物から何から人の手で壊されたらしい…
ゼロス…いつかの光景を思い出すな。くそっ…
クロエ誰がこんな酷い事を…
クロエまさか、赤の騎士団が…?
ゼロス…いや、さすがのあいつらでもたかが神子を捜す事だけのためにここまでやるとは思えないけどな
ゼロス今は目の前の状況をどうにかしようぜ
ゼロスまだ誰か逃げ遅れてるかもしれない。見て回るぞ!
クロエああ、そうしよう。私はあっちを見てくる、貴公はこの辺りを──
???誰もいないよ。いたとしても、そんな瓦礫の下でとっくにくたばってるさ
???あのバカ二人にしちゃ、きっちり仕事したみたいだしね
ゼロス誰だ!?
???
クロエ…何者だ!
???名乗る必要はないね。どのみち、アンタ達には関係ない
ゼロス関係ない、ねぇ…。少なくとも村がこうなってる事には関係あるんじゃねぇの?
???それこそボクは無関係さ。まあ信じるかどうかは勝手だけどね
???ボクはただ村の連中が逃げ惑うのを見ていただけさ。なかなか面白い見世物だったよ
クロエさきほど、二人、と言っていたな
クロエメルトキオ襲撃を企てたのは男女二人組だったと聞いている。まさか…!
ゼロス…緑の仮面野郎さんよ。この村をやったのはそいつらで、お前も奴らの仲間ってわけか?
???あんなバカと一緒にしないでもらいたいね
クロエちゃんと答えろ!はぐらかすようなら、肯定とみなす!
ゼロス知ってる事、洗いざらい全部吐きな。嫌だとは言わせねえぞ
???初対面相手に随分喧嘩腰だね。こんなチンケな村一つがそんなに大事だっていうのかい?
クロエチンケだと…!住む者達にとっては、大事な場所に変わりはない
クロエこれ以上、愚弄するような事を言うならば、私はこの国の騎士として黙ってはいない!
???ふん、ならどうするのさ?
???ひ弱な騎士と放蕩神子ごときがいくら吠えたって、今さらこの村は元に戻りはしない
ゼロスな…
クロエひ弱な騎士…誰の事を言っている!
クロエ我が剣がひ弱かどうか、お前の身体で確かめてみるがいい!
ゼロスクロエちゃん、やめろ!
クロエはああああ!
???ふん、目障りだね。いいさ、少し遊んでやるよ
ザシュッ
クロエうあああ!
ゼロスクロエちゃん!大丈夫か!
クロエああ、大丈夫だ…。大した事はない…
ゼロス…女の子に手を上げる野郎はロクな奴がいやしねぇーな
チャキッ
???…今度は神子様直々にお相手してくれるのかい?
???光栄じゃないか。来なよ
ゴオオッ
クロエ…!あの技は…!?
ゼロスクロエちゃん?!危ないから下がってろ!
クロエ駄目だ!神子殿を守るのが私の務め、私も共に戦う…!
scene3衝突する焦熱
???放蕩神子にしちゃ、なかなかやるじゃないか
ゼロスお前なんかに誉められても嬉しくねえっての
クロエ抵抗はここまでだ。大人しく全てを話してもらおう──
???…ここまでなのはどっちかな
???はああっ!
クロエ何…!?
ゼロスクロエちゃん、危ねえ!!
ドゴオオオオッ
ゼロスぐあっ…!
クロエ神子殿!!
クロエくっ、おのれ…!
???ははっ。女を庇って傷を負うとは伊達に女好きじゃないってわけだ
ゼロスこの…野郎…
謎の兵士シンク様。お待たせしました
ゼロスシン…ク…?
シンク遅かったね。お蔭でとんだ茶番さ
謎の兵士申し訳ありません。すぐに出発しましょう
シンク…シルヴァラントの神子。アンタとはまた会う事もあるだろう
シンク続きはその時にとっておくよ
クロエ…どこに行く!
ゼロスよせ、クロエちゃん。人数的に分が悪ぃ…。それに、俺さまちょっと限界…だ
クロエ…!神子殿!大丈夫か?
ゼロス口だけじゃない、ってか…くそっ…
scene1それぞれの軌跡
ゼロス──いでででっ!
クロエ痛いだろうが、少し我慢してくれ。…
クロエこれでよし、と…
ゼロスはぁ〜…痛かったぜぇ
クロエすまないな、私には簡単な手当てくらいしか出来ないが…
ゼロスこれだけ出来れば、十分十分!さっすがクロエちゃん!ありがと〜!
クロエ礼を言うべきなのは私の方だ。さっきは庇ってくれて助かった
クロエ貴公を守るべき立場なのに、守られてしまったな
ゼロス可愛い女の子を守るのは男として当然っしょ?気にしないでいーって!
ゼロス…それより、気になる事があってよ。あの仮面に、シンクって名前……
クロエ何か思い当たる事でもあるのか?
ゼロス前に、あちこちの村でよからぬ事を吹聴して、住民を不安に陥れている野郎がいたんだ
ゼロス俺は直接会っちゃいねえが、仲間がそいつとやり合った事がある
ゼロス…その時の男が緑髪の、妙な仮面をつけたシンクって野郎だったんだ
クロエという事は、さっきの男が…?
ゼロス偶然とは思えねえだろ?
クロエ確かに…あのようなめずらしい仮面を被り、同じ名を名乗る者などそういないだろうし…
クロエ不安を煽る…か。奴め、一体何を企んでいる…
ゼロスあの口ぶりだと、例の二人組と関わりがあるのも間違いはなさそうだが…
ゼロスそうだ、クロエちゃん、村の中はどうだった?
クロエ瓦礫の下をくまなく見てみたが人がいる様子はなかった
クロエシンクという男も言っていたが…おそらく皆避難した、という事だろう
ゼロスはあ…、ったく。赤の騎士団といい、面倒な事ばかり増えやがる…
クロエ残念だが、これが我が国の現状だ
クロエいや、我が国だけではない。今や世界中の国々が混乱に巻き込まれようとしている
クロエそして…その渦中にいるのが我が国の神子…貴公だ
ゼロス
クロエ神子殿、何故そうまでして国に匿われる事を頑なに拒む?
クロエ赤の騎士団が神子捜索に動き出している事は貴公も目にしたはずだ
クロエ神子が赤の騎士団の手に落ちたら御身の危険のみならず国内外にさらなる混乱を招く
クロエ神子として自覚を持ってほしい。そして、国王陛下のお考えも──
ゼロスそんな事はわかってる。…けど、クロエちゃんも見ただろ?さっきの女の子を人質に取るやり方…
ゼロス何の関係もない奴らを巻き込んで、どんな手段も厭わない…。神子の俺を捜す目的のためだけに
ゼロスあんなもん見せられて俺だけが安全なところに隠れるなんて出来るわけねーだろ
クロエ神子殿…?ひょっとして、それで私から逃げて…
ゼロス
クロエ…神子殿、すまなかった。神子としての自覚を持てなどと、酷い事を言ってしまったな
クロエまさかそんな風に考えていたとは思ってもみなくて…
ゼロス…構わねーよ。神子って立場に関して言えば、実際、クロエちゃんの言う通りだし
ゼロスただ、他人が思うほど神子っていう肩書きに思い入れはないからな、俺さま
クロエ……
ゼロス生まれた瞬間、神子って決められて今回みたいに追い回されたり、周囲から特別扱いされたり…
ゼロス酷い時には命を狙われたりした事もあったんだぜ?
ゼロス神子とは名ばかりの受難の日々…!…たまんねーよ、ホント。なりたくてなったわけじゃねぇのに
クロエ
クロエ…貴公は、神子である事を受け入れられずにいるのか?
ゼロス受け入れるも何も、俺さまが神子だって事はこれからも変えられる事じゃないし
ゼロスただ、何て言うか…他人を巻き込んでまで、神子として扱われるのにはまっぴらだ、って事
クロエ…王命に背き、一人街を出た理由はそれか
ゼロスまあ、こういういろんな事が妙に息苦しくて逃げ出したってのもあるけど──
クロエ…この、こんじょなし!
ゼロス…クロエちゃん?
クロエ神子という立場故に、貴公が複雑な想いを抱いている事はわかった
クロエけど、だからと言って一人で行動すればどうなる?
クロエ皆に心配をかけ結果、このような騒動にも繋がってしまった
クロエ…これは単なる「逃げ」だ。逃げたところで、その息苦しさから解放される事はない
クロエ貴公も言ったはずだ、自分は神子だと。それは変えようのないものだと
クロエならば、いくら苦しくとも、逃げ出さずにそれを受け止め、乗り越えるべきではないのか?
ゼロス
クロエ…偉そうな事を言ってしまったな。でも、貴公の気持ち、わからなくもないんだ
クロエ私も、人知れず家の事で深く傷付き多くの事に悩んできた
クロエ状況を打破しようと何度も試みた。誰に頼るわけでもなくたった一人でな
クロエだが、結局全ては空回りに終わり、気付けば周りの人達にたくさんの迷惑をかけてしまっていた
クロエそんな私を支えてくれたのは、仲間だ。彼らのお蔭で、自分の未熟さに気付く事が出来たんだ
クロエ今の自分があるのは、頼れる仲間達がいるからだと思っている
クロエ…だからこそ、貴公にも言いたい。貴公は決して一人で生きているわけではないのだという事を
クロエアウリオン殿やフィリア司祭、それに、貴公の妹のセレス…皆貴公の事を心配していた
ゼロス
クロエ赤の騎士団の事は、一層警戒を強めるよう国王陛下へ上申する。…だから、頼む
クロエ貴公を想う者達のためにも、今はまず、自分の身の安全を一番に考えてくれないか
ゼロスクロエちゃん…
ゼロス
ゼロス…確かに俺は、自分の殻に閉じこもって、一人で逃げてただけなのかもな…
ゼロス…よし、わかった。クロエちゃん、隠れ家まで案内頼むぜ
クロエ…!神子殿、わかってくれたのか
ゼロスクロエちゃんみたいな美人にそこまで言われちゃ、さすがの俺さまも断れないでしょ
ゼロスあ、その代わり一つ条件があるんだ
クロエ条件?それは何だ?
ゼロス俺さまの事、名前で呼ぶ事!貴公とか神子殿とか、距離を感じて俺さま悲しいっていうか〜
ゼロスあ、何だったら、ダーリン♡とかでも──
クロエだ、誰が…!…なら、ワイルダー、…これでどうだ
ゼロスおお、何か新鮮…!けど、何でそっち〜?どうせならゼロスくん♡とか……
クロエこれで十分だ…!全く…。ほら、馬鹿な事言ってないで早速行くぞ
ゼロスちぇっ、まあでも神子殿よりはマシか…って、待ってくれよ、クロエちゃーん!
scene2それぞれの軌跡
コレットはあ…はあ…
コレットあっ!
バタッ!
ロイドコレット、大丈夫か!?
コレットいたた…。うん、だいじょぶだよ。ちょっと転んだだけだから
コレットごめんね、心配かけて
ロイドこっちこそ、急かしてごめんな。でも、今は少しでも早く、ここから逃げた方がいい
ロイド辛いかもしれないけど、少しの間我慢してくれ
コレットうん…
ロイド何だってこんな事に…
ズドーーーン!
コレットすごい音…!ロイド、やっぱり戻った方がいいんじゃ…
ロイド…駄目だ!引き返すわけにはいかない…急ごう、コレット
コレット…う、うん
ゼロス──いやあ、それにしてものどかでいい天気だなー
ゼロスこんな日に、クロエちゃんと二人っきりでデート出来るなんて俺さま超ラッキー♪
ゼロス見て見てクロエちゃん。あちこちの結晶に太陽の光が反射してとっても綺麗だろー?
クロエ何がデートだ…。隠れ家へ向かっているだけに過ぎない
クロエそれにあの結晶は、晶化現象のものだろう
クロエ近頃じゃ、人間まで晶化していると聞くのに…綺麗とは少々不謹慎だと思うが
ゼロス晶化現象…うーん、そうか。確かにあんまいい話は聞かねえな…。んじゃ、あの花ならどうだ?
ゼロス可憐に咲くあの美しい花は、まるでクロエちゃんのよう……
クロエわかったわかった
ゼロスあ、今俺さまを軽くあしらったろ〜?出会った頃はもっとこう、真っ赤になって照れたりしてたのに
クロエワイルダー、ちょっと静かにしてくれないか。集中出来ない
ゼロス…ん?それはメモ?隠れ家の地図か何かか?
クロエああ、アウリオン殿から頂いたのだ。隠れ家への入口は、メルトキオ北部の湖辺りだと書かれている
ゼロスアウリオン殿…って、クラトスの事だよな
ゼロス…さっきも思ったんだけど、クロエちゃんはクラトスとも知り合いなんだな
クロエああ、私の直属の上官だ。いろいろとよくしてもらっている
ゼロスそういう事か。ま、二人はお堅い者同士合うかもしれねえ──
ガサッ…
クロエワイルダー、気をつけろ。そこの草むらに何かいる!
ガルルルル!
ゼロスちっ、魔物か!
scene1隠れ家にて
ガサ…ガサ…
ゼロスったく…、この辺りは草が生い茂って藪みたいになってるな…
ゼロスデリケートな俺さまの美肌に傷がついちまうぜ…
クロエ隠れ家だからな。人が近寄りにくい方が都合がいいのだろう
ゼロスにしたって、さすがにこれは──…おっ、開けた場所に出るぞ
ゼロスはあ…しんどかった〜。あの道は出来ればもう通りたくないぜ
ゼロスん?あの扉か?隠れ家への入口ってのは
クロエああ、あそこから地下洞窟へ入る。隠れ家はその先にあると……ん?
クロエワイルダー、あれを見ろ。扉の前に誰か倒れている!
クロエ隠れ家の警備に当たっていた者か…。扉の錠前も外されている、これはただ事ではないな…
ゼロスおい、しっかりしろ!一体、何があったんだ?
シルヴァラント兵う…。だ、大丈夫だ…。しかし…敵が…中に…神子様が……
クロエ敵だと…!?もしかして、赤の騎士団か!?
シルヴァラント兵…早く、神子様を追って…く…。…
クロエ…君!大丈夫か!
ゼロス…気を失ったみたいだな。安静にしてれば問題なさそうだ
ゼロス…どこの誰だか知らねーが、早いところ隠れ家へ向かった方がよさそうだな
ゼロス優秀な幼なじみが付いてるとは思うがコレットちゃんが心配だ…
クロエ同感だ。急ごう、ワイルダー
ゼロスああ…!
クロエ──次の分岐は右、その先にある通路は左だ
ゼロス噂には聞いていたが、相当ややこしいな、この洞窟
ゼロスクラトスのメモがなければ確実に迷子になっちまうだろうな
ゼロスでもまあ、逆に言えば内部構造把握していれば、敵を寄せ付けにくいって事か
クロエここは古くから、戦時中などの王族の緊急避難場所として使われていたという話だ
クロエそれ故に、シルヴァラントでも限られた人間しか知らない
クロエこれらの要素も、ここが神子の避難場所として選ばれた理由なのだろう
ゼロスそれにも関わらず、ここを嗅ぎつけた…。その侵入者は何者だ?
クロエわからないが…警備兵が簡単にやられている。気をつけて進もう
scene2隠れ家にて
ロイド──コレット。そこの水で布を濡らしたから、足…冷やしておこうぜ
ロイド手当らしい手当は出来ないけど何もしないよりはマシだろ
コレットごめんね、ロイド。わたしがドジなばっかりに
ロイド謝る必要なんてないさ。ほら、くじいた方の足出して
コレットうん…
ロイドよっと。どうだ?
コレット冷たくて気持ちいいよ。ありがとう
ロイドさっき転んだ時にすぐ手当していれば、よかったんだけど…
コレットいいんだよ。ロイドは私を助けてくれるために一生懸命だっただけだから
コレット昔からそうだったよね。私が神子だから、ロイドにはいつも迷惑ばかりかけちゃって…
コレットでも、いつも必ず守ってくれた…
ロイド俺は迷惑だなんて思った事ないぞ。コレットは、大切な幼なじみだ。助けるのは当たり前だろ
ロイド今回だって、俺が必ず守るって約束する
コレットロイド…
ロイドにしても、ここがバレるなんて…。安全じゃなかったのかよ
コレットやっぱり、早く外に移動した方が…
ロイド洞窟の中は入り組んでるし、途中にも兵士は配備されている。簡単にここまでは来られないはずだ
ロイド仮に来たとしても、俺が必ず何とかする
ロイド今はもう少しここで休もう。逃げ切るためにも。な?
コレットうん、ありがとうロイド
コツ…コツ…
コレット…!ロイド、今の…
ロイドああ、誰かの足音だ。まさか、こんなに早く追手が…?
ロイドコレット、念のためそこの岩陰に隠れてろ
コレットでも…
ロイドいいから早く
コレットう、うん…
ロイド
ロイド誰だ…?
scene1侵入者
ゼロス──クロエちゃん、まだか?結構歩いた気がするんだけど…
クロエまもなくだ。この道の先に少し開けた場所があるはずなのだが…
クロエ見ろ、あそこだ
クロエこれが、隠れ家か…
ゼロス噂通り大層な建物だな…。こんなところになきゃ、普通に住めそうな感じだぜ?
???うう…
ゼロス…?今何か聞こえなかったか
クロエうめき声だ…。あっちの方から聞こえた…!行こう、ワイルダー
ゼロス何てこった…。兵士達が倒されて…
ゼロスおいおい、まさかここまで踏み込まれちまってるのか…!
クロエ何て事だ…
シルヴァラント兵うっ…
クロエ無事か、しっかりしろ!
シルヴァラント兵あ…あなたは、ゼロス様…?お逃げください…敵が…
ゼロス侵入者の事は知ってる。それより、コレットちゃんとロイドはどこだ?
シルヴァラント兵…神子様は…洞窟の奥です…。賊が到達する前に、ロイド殿と共に避難するようお願いしました……
ゼロス洞窟の奥…。その賊も二人の後を追っただろうな
クロエ侵入者は、誰だ?賊って…赤の騎士団ではないのか?
シルヴァラント兵…正体不明の二人の男です。顔を覆い隠していましたので、詳しい事は私にも……
クロエ二人の男だと…?たった二人でこれだけの兵を倒したというのか…?
シルヴァラント兵…こうはしていられません。私も…神子様の後を──…うぐっ…
ゼロス無理すんなって。そんな身体で行ったところで、何が出来んだよ
ゼロスコレットちゃん達の事は、俺さま達が何とかする。お前は大人しくここで寝とけ
シルヴァラント兵…気をつけてください。二人共相当な剣の使い手です。片方は凄まじい威力の術を使います
ゼロス…やっかいな相手だな
クロエワイルダー。お前はここに残って身を潜めていてほしい
ゼロスはぁ?何言ってんだよ、クロエちゃん
クロエ自分の立場を忘れたのか。お前も神子なんだぞ。狙われているのは、お前だって同じだ
クロエそれなのに、わざわざ敵の前に、身をさらしに行ってどうする
ゼロス…ふっ、ようやく俺さまの事をお前って呼ぶようになったな
クロエす、すまない。つい…
ゼロスいや、その方がずっといいぜ。距離が縮まったって感じがしてよ
クロエこんな時にまでふざけた事を…
ゼロスでひゃひゃ!とにかく、俺さまも一緒に行くぜ
ゼロス相手は二人って話だが、兵士達のやられっぷりからすると、ただ者じゃないって事は明らかだ
ゼロスそんなところにクロエちゃん一人で行かせられるわけねーだろ
ゼロス俺さまに任せとけって。ちゃんと守ってやっから
クロエなっ、それは私の役──
ゼロス…あの二人の事も、必ず
クロエワイルダー…
クロエ…わかった。なら、一緒に行こう
ゼロスおう、そう来なくっちゃな!
クロエ例え何があったとしても、お前の事は私が守る
ゼロス言うねぇ、クロエちゃん。今俺さまグッときちゃったぜ
ゼロス…よし、行くか
scene2侵入者
ロイド
コツ…コツ…
ロイド…!お前は…
ルークロイド…
ロイドルーク!ルークじゃないか
ロイド…はあ、何だよもう。てっきり敵だと思って身構えちまったじゃないか…
ロイドでも、何でキムラスカのお前が?ひょっとして国王が応援を要請してくれたとか?
ロイド何にしても助かった。お前が来てくれて、すげー心強いよ
コレットロイド…?だいじょぶなの?
ロイドあ、コレット!安心しろ、ルークは仲間だ。出てきても大丈夫だよ
ロイドほら、よく話してただろ?光の神殿で一緒に戦って、大精霊の時にも…
コレットあっ、この人が…!
コレットえと…初めまして、コレットです。ロイドからあなたの事はよく聞いてたの
ルーク…ひょっとして、こいつが神子の…?
ロイドああ。神子で、俺の幼なじみでもあるんだ
ルーク幼なじみ、か…
ロイド…?
ロイドあ、そうだ。それより、今はどういう状況なんだ?
ロイドお前がここに来れたって事は、ひょっとして、例の侵入者はもう捕まえられたって事か?
ルーク
ロイドルーク?…何だよ、黙りこくって。まさか、どこか怪我したとか…
ルークロイド…。俺は…
ロイドルーク…?
ルーク……出来ればお前とは戦いたくねえ。だから──
ルーク神子を…。コレットを引き渡してくれ
ロイド…どういう事だ?シルヴァラント国王からの命令か?それともキムラスカの──
ルーク…それは言えねぇ。とにかく、俺はコレットを連れて行かなくちゃなんねーんだ
コレットえ…?
ロイドおいルーク、お前、何言ってんだ…?…変な冗談はやめてくれよ。何で、お前がコレットを──
ルーク…冗談でこんな事言えるかよ。マジだ。大マジだっつーの…
ロイド…本気、なのか?もしかして、侵入者っていうのは…
ロイド嘘だよな?お前が兵をなぎ倒して来たってのか?
ルーク……
ロイドそんな…!何でだよ!何で、お前が…
ルーク神子の力が必要なんだよ!このままじゃ、取り返しのつかねー事になっちまう!
コレット取り返しのつかない事…?
ロイド事情があるなら話してくれ!そしたら、こんな事しなくても協力する事だって出来るかも──
ルーク駄目だ…!そいつは言えねえ…
ルーク……けど、信じてくれ。コレットの身は安全だ、悪いようにはしねえって約束する
ルークお前にもいつか絶対全部話す!
ルーク…だから、頼む。今は何も聞かねーで、神子を渡してくれ
ロイドルーク…
ロイド…駄目だ、それだけは聞けない。いくらお前の頼みでも、だ
ロイドルークは大切な友達だ。けど、俺にも守らなきゃいけない大切な約束があるんだ
ロイドコレットを渡すわけにはいかない…!絶対に…
ルークどうしても駄目なのか…?なら、俺は──…
ルークくっ…
チャキ…
ロイド…!本気、なんだな?お前が俺に剣を向けるなんて…
ルーク俺だってこんな事はしたくねー!お前と戦うなんて…
ルーク…けど、こうするしかねーんだ!最悪の事態を避けるためには、神子が必要なんだよ…!
ルークせやっ!
カキーンッ
ロイドくっ…!やるしかないのか…!
ロイドはあっ!
コレットロイド!ルーク!やめて!友達なのに…!
カキーンッ
ルークちっ…!このわからずやが!
ロイドどっちがだ!
コレットどうしてこんな事に…!
ロイドコレット、ここは危ない!離れてろ!
コレットでも…
ロイドいいから、早く!
コレットう、うん…
ルーク…ロイド、もう一回だけ聞くぞ。本当に、本当に神子を渡す気はねーのか?
ロイドコレットは渡さない!何度聞かれたって、その答えは変わらない!
ルーク……だったら、仕方ねえ。悪く思うなよ
チャキッ
ルークうおおおおおっ!
ロイドくっ…!
scene1目の前にある事実
クロエワイルダー!そこにも兵士が倒れている…!
ゼロスくそ…ここもかよ。おい、しっかりしろ!
シルヴァラント兵う…う…
クロエ隠れ家とその周辺警備を命じられた兵士達は、いずれも国の精鋭と聞いている
クロエそれが突破されるとは…。敵は一体何者なのだ
ゼロス…妙だな。これだけの兵士が倒されてるってのに、今まで一人も致命傷には至っていない
ゼロスただの偶然とは思えねぇな…
クロエ…私も同じ事を思っていた。手加減が出来る、という事は逆に相当腕が立つ証拠…
ゼロス何か、空恐ろしいというか…気味が悪ぃぜ
クロエ今はあれこれ考えている暇はない。先を急ごう。メモによればこの先が最深部だ
ゼロスコレットちゃん、ロイド…。二人共無事でいろよ…!
ゼロスこんな広い空洞部があるなんて…
クロエおそらくここが最深部だろう。二人はどこに──
ゼロス…!あれは…
ロイド
ゼロスロイドっ!!おい、しっかりしろ!
ロイドう…ぐ……
ゼロス一体何があった!?お前がこんなにやられるなんて…
クロエ貴公一人か?コレット殿はどこへ…
ロイドコレット…
ロイドそうだ、コレット!
ロイドコレット、どこだ!?いないのか!?
クロエ…ここには、誰もいないようだ
ゼロスやっぱりコレットちゃんも一緒だったのか…。となると、敵に…
ロイドそんな…!くそ…くそっ!!
ロイド何でこんな…!絶対守るって約束したのに…コレット…!
ゼロスロイド、落ち着け
クロエ…アーヴィング殿。侵入者の姿を見たか?どのような輩が一体こんな…
ロイド
ロイドルークだ…
ゼロス何だって!?ルークって、あのルークか?キムラスカの…
ゼロス…冗談、ってワケじゃなさそうだな。あのルークがコレットちゃんを攫うなんて──
ロイド俺だって信じたくはなかった!今だってまだ信じられない…
ゼロスルークとは友達だったんだろ?信じたくないのも、無理ないわな。
ロイド正直さ、よくわからないんだ…。あいつが俺達の前に現れて、神子を渡せって…
ロイド勿論俺は断った。それでもあいつは…退かなかった
クロエそれで戦いになったのか…
ゼロス相手はルーク一人だったのか?敵は二人って聞いてたんだが
ロイド二人…?いや、俺の前に来たのはルーク一人だったぞ
ロイドルークと一対一でやりあってて…
ロイドあれ、待てよ…?そうだ…戦ってたら、突然背後からすごい衝撃が来て…
ロイド目の前が真っ白になって…。その技のせいで気を失ったんだと思う
クロエもう一人が、アーヴィング殿の背後から技を放った、という事か
クロエそれまでは、物陰で様子を見ていたのだろう。そして、神子のコレット殿を…
ロイド…まさかあの場にもう一人いたなんて…
ゼロスとにかく、コレットちゃんが攫われちまったって事は間違いなさそうだな…
ゼロスルークの野郎と、そのお仲間に…
ロイド…くそっ!どうしてルークはコレットを…
ロイド素直じゃないところもあるけど、すっごくいい奴なんだ。こんな事するなんて信じられない…!
ゼロス
ゼロスお前の気持ちはわからなくねーけど、友達が裏切るような事をしたのは紛れもない事実だ
ゼロスいつかの俺さまみたく、何か事情があんのかもしれねえし…本人に聞くしかねぇよ、こればかりは
ロイドゼロス…
クロエワイルダーの言う通りだ。今は、事実を受け止めるしかない
ロイドそれは、わかってるけど…
ダダダ…
クロエ足音…!誰か来る…!
ゼロスおいおい、今度は誰が来るってんだ…
ダダダッ…
ロイド…足音は一人じゃなさそうだ
ゼロス団体さんかよ…。…ん?あいつらは──…
scene2目の前にある事実
ロイド…足音は一人じゃなさそうだ
ゼロス団体さんかよ…。…ん?あいつらは──…
クラトスロイド!無事か!?
クロエあれは…アウリオン殿!
クラトスクロエか…?それにゼロスも…。お前達もここに来ていたのか
クロエ私達も今さっき到着したところです
スタンはあ…無事で安心したよ。でもまさか、ゼロスまで一緒にいるなんてな
ゼロススタン!?お前何でここに…って、ルドガーやエリーゼちゃんまで…何がどうなってんだ?
ルドガー俺達は、君達神子の行方を捜してメルトキオを訪ねていたんだ
ルドガーそこに、突然知らせが入って隠れ家襲撃の事実を知ってね
エリーゼクラトスにお願いして同行させてもらったんです…
ティポみんなで助けに来たんだよー
クラトス隠れ家の場所は本来機密事項だが、急を要する事態だったからな…
クラトス彼らの人となりや実力を信じ、私が特別に同行を許可したのだ
ゼロスそういう事か。見かけねえ野郎もいるみたいだが…
ルドガーそうか、初対面だな。紹介するよ。スレイ、それとヴェイグだ
ルドガーあと、他にも何人か仲間がメルトキオに残ってる
ヴェイグ…よろしく
ゼロス俺さまはゼロス…って、あれ?スレイ…だっけ?お前の方は何かどっかで見た事あるような…
スレイはい、ゼロスさんとは前に一度、メルトキオの遺跡で会った事が…
ゼロスあ、思い出した!確か遺跡で生き埋めになりかけてた、あの時の!
スレイえっと…。別に生き埋めになりかかってたわけじゃ…
クラトス——それより、ゼロス、ロイド。コレットはどこにいる?
ロイド
クラトスどうした、ロイド。まさか…
ゼロス…クラトス、俺から話す
スタンそんな…!ここを襲ったのは、本当にあのルークなのか?
スタン信じられない…。そんな事する奴じゃない!
ルドガー…君達を疑うわけじゃないけど、俺もにわかには受け入れられない
ゼロス…お前らの言いたい事はわかるぜ。でも、これが事実だ…
エリーゼ何か事情があったんじゃないでしょうか…。でも…
ヴェイグ例え事情があったとしても、許される事ではない…
スレイコレットは大丈夫かな…
クロエ悪いようにはしない、ファブレがそう話していたと言うが、それもどこまで信じられるか…
ロイド俺はルークの言葉、信じてやりたい。でも、ルークの仲間って奴がそれを守るかは、わからない…
クラトスこれまでの大体の経緯がわかった。…少々厄介な事になりそうだ
クラトスあくまで推測だが…ルークの行動は、キムラスカの意志が絡んでいる可能性がある
ロイドキムラスカの…?
クラトスああ。彼は王位継承権を持っている。関係があると考えるのが普通だろう
スレイ神子が攫われたのが、キムラスカの指示…?
ヴェイグキムラスカまで天啓を得ようと動き出していると?
エリーゼそんな…。キムラスカの目的も自国の利益のため、なんでしょうか…
スレイ真相はわからないけど…今回のコレットの事といい…
スレイ天啓を巡る混乱は、どんどん大きくなってる気がする。世界中を巻き込むくらいに…
ルドガー…天啓、か
ルドガー戦争にだってなりかねないのに…各国がこれほどまでに天啓を欲しがるのは何故なんだ…?
スタン晶化現象で世界中が力を合わせないといけないって時に…
ティポ一体どうなっちゃうのー?
ロイド
クラトスとにかく、ここでずっと話していても仕方がない
クロエそうですね。一旦外に…
ガサッ…
ゼロスおい、そこに何かいるぞ!
グオオオオオ!
スタンこんなところに魔物が!?
scene3目の前にある事実
ティポふー。やっと外に出られたねー
スレイ来た時も思ったけど、随分入り組んだ場所だな…
エリーゼはい…。一人だったら、絶対に迷ってました
ロイドコレット…
クラトス…自分を責める気持ちもわかるが、あまり気に病むな、ロイド
クロエアウリオン殿の言う通りだ。自分を責めるのはよせ
ロイド…わかってる。何ていうか、ただ頭の整理が追いついてないだけだ
ゼロスロイド…
クラトス…ともあれ、コレットを攫ったのがルークだという事は事実だ
クロエはい…。国王陛下に報告しなければ…
クロエそうなると、キムラスカと我が国は緊張状態になるでしょう
ヴェイグ今後の成り行きによっては、最悪、戦争という可能性もある…
スレイ戦争…
エリーゼそんな…!怖い…です…
ゼロス赤の騎士団の動きもあってウィンドルとうちの国もぎくしゃくしちまってるし…
スタンそれに、ア・ジュールも何か企んでいるみたいだ
ルドガーそんな状況で、シルヴァラントとキムラスカが戦争なんて事になったら…
ゼロスウィンドルやア・ジュールも黙っちゃいねぇかもな…
スレイそんなの、絶対に駄目だ…!どうにかして止めないと…!
エリーゼクラトス…。王様に戦争をしないように頼んでもらえないですか?
クラトス…私自身も勿論、お前達同様、戦争は是が非でも避けるべきだと考えている
クラトスそれは、国王陛下も同じだ。これまでも、常に他国との関係を良好にするべく努めていらした
スタンそれなら…
クラトス…だが、キムラスカの関係者によりコレットが攫われてしまった事は、紛れもない事実だ
クラトスさらに、今回の一件で、我が国の多くの兵達は負傷している…
クラトス…言ってみれば、キムラスカへ報復する材料は揃っている状況だ
ロイド報復だって…!?そんな…!
ロイドルークの行動にキムラスカ王家が関わってるとはまだ言い切れない
ロイドなのに、報復なんて…
クラトス無論、状況が不明瞭な今、すぐにその決断が下される事はないだろうが、最悪の場合…
ロイド
ロイドなあ、クラトス。ルークの件、国王へ報告するのは待ってくれないか
ヴェイグ…ルークは友であるお前に剣を向け、幼なじみを誘拐したんだぞ。それでも庇うと言うのか?
ルドガーヴェイグ…
エリーゼ
ロイド違うんだ、ヴェイグ。ルークを庇うわけじゃない。ただ俺は、確かめたいんだ
ロイド…ルークと剣を交えた時、俺には迷ってるように見えた
ロイドあいつってさ、口は悪いし乱暴だし、人から誤解されやすいところもある。けど、根は優しくて、まっすぐでさ
ロイド一緒に戦った時の事…思い返せば思い返すほど、今回のルークの行動が変に思えるんだ
ロイド本当の事がわかるまで…俺は、ルークを信じたい。友達だからな
スレイロイド…
ゼロス…ったく、ロイドくんはほーんとお人好しだなぁ…
ゼロスお前がそこまで言うなら、俺さまもルークを信じる事にするか
ロイド…?
ゼロス覚えてるか?ロイド。前に俺が今のルークと同じように、コレットちゃんを攫った時の事
ゼロスあの時の俺には、いろーんな事情があってさ…
ゼロスでも、お前だけは何があっても俺の事を信じてくれてた
ゼロス…だからよ、何ていうか、今回は俺さまもルークの野郎を信じてやろうかなー…って
ロイドゼロス…
ゼロスほら、ハニーが言うみたいにあいつがマジでわけありだったら、ちょっとかわいそうじゃね?
ゼロス…まあでも、それで別に理由なんか何もなかったらそれこそぶっ飛ばしてやるけどな
クロエワイルダー、お前…
スタンゼロス、やっぱりお前いい奴なんだな!…うん、俺も二人と同じ意見だ
スタン大精霊の暴走の影響でこの世界が危ないって時も、ルークはいつも一生懸命だった
スタンリオンと一緒で素直じゃないところもあるけど、…でも絶対理由もなくあいつがこんな事するとは思えない
スタン…俺もルークを信じたい
スレイ…そのルークさんって人、みんなから信頼されてるんですね
ルドガー…ああ。同じものを目指し、共に戦った仲間だからね
スレイ仲間……
ヴェイグ…みんなのルークに対する気持ちはわかった。では、もう一人の男の方はどうだ?
ヴェイグルークは一人で動いていない。その男が何か今回の鍵を握っているんじゃないか?
ゼロス相当な強者らしいな。しかもこの手際のよさ、ルークの仕業と思えねぇ
クラトスここも、内部構造を把握していなければ必ず迷う。国家機密であるはずの情報をどこで手に入れた?
ロイドそいつの顔、誰も見ていないんだよな…。俺も存在に気付けなかった…
ゼロス…どっちにしろ、現状じゃ情報が少なすぎるだろ。ルークの方から当たるしかねぇな
ゼロス…てなわけで、クラトス。俺は今からキムラスカへ行ってくる
クロエキムラスカだと?それは、もしかして…
ゼロス勿論、真相を確かめに、だ
ゼロス今回の件にキムラスカが噛んでない事を証明しねーと大変な事になっちまうだろ?
ゼロスあと、ルークの情報も知りたいしな。何のためにこんな事をしたのか、今どこにいるのか
スレイ確かに、ルークさんの事がわかれば、コレットの手がかりも何かか掴めるかもしれない
クラトスしかし、この状況下で神子であるゼロスを一人、行動させるわけには…
ロイドなら、俺がゼロスと一緒にキムラスカへ行く。それなら問題ないだろ?
クラトス…止めてもお前達は聞かないだろう。だが、何者かに神子が攫われた事は報告せざるを得ない
クラトスとなれば、国王陛下も速やかに真相究明に乗り出すはずだ
クラトスそうなってしまったら、いくら私でも事実を隠し通す事は出来ないだろう
ロイドとにかく急げって事だよな。勿論、端からそのつもりだ
スレイゼロスさん、ロイド。オレ達も同行させてください
ゼロススレイ…お前達も、か?
スレイうん。コレットがこんな事になって放っておけない
ヴェイグ…そうだな。コレットはキムラスカに連れて行かれた可能性もある
ヴェイグ俺達にも、コレット救出の手助けをさせてくれ
ロイドスレイ、ヴェイグ…。すっげー心強いよ、ありがとな
スタンコレットも勿論だけど、ルークの事も気がかりだな…
ルドガーああ、事実を確かめたい。ルークの真意は何なのか、キムラスカの意向は何なのか…
ルドガーじゃないと、最悪の事態を避ける事は出来ないからな
エリーゼわたし達に出来る事なら何でもします…!
ティポぼくもハリキって頑張っちゃうぞー
ゼロスよーし、ならみんなで行こうぜ。いいよな、ハニー?
ロイドああ、勿論だ!改めてありがとう、みんな
クロエ心強い仲間がたくさんいるんだな、ワイルダー
ゼロス…まあな
ヴェイグなら、まずはメルトキオに戻り仲間と合流しよう
スレイうん!その後大急ぎでキムラスカだ!
クラトスメルトキオまでは私達も同行させてもらおう。行くぞ、クロエ
クロエはっ、わかりました。アウリオン殿
ゼロス
ゼロスコレットちゃん、それに、ルーク…。二人共待ってろよ…