| Name | Dialogue |
| scene1 | 捜索 |
| ティア | ──本当にこの森にルークがいるの、ミュウ? |
| ミュウ | はいですの!ここでご主人様を見かけたって、街の人に教えてもらったですの |
| エミル | 今度は見つかるといいね、ルーク |
| ティア | ごめんなさい、エミル。騎士であるあなたまで付き合わせてしまって |
| エミル | 国王陛下のご命令なんだからティアが謝る必要なんてないよ |
| エミル | それに、ルークの事は僕もマルタも心配してたんだ |
| ティア | みんなに心配をかけて…。ルークは本当にどこに行ってしまったのかしら |
| エミル | 何か大変な事に巻き込まれてなければいいんだけど… |
| ミュウ | ご主人様、心配ですの… |
| エミル | ルークはある日突然屋敷から姿を消してしまったんだよね |
| ティア | …以前から、屋敷を抜け出して勝手に出かける事はあったけど何日も戻らないなんて事はなかったわ |
| ティア | 今思い返してみれば、こうなってしまう兆候はあったのかもしれない |
| ティア | でもあの時の私は、晶化現象や人々の不安の事ばかり考えていたんだわ |
| ティア | ……こんな事ならもっとルークに注意を向けておくべきだった |
| エミル | 仕方がないよ…。実際、ティアは調査に駆り出されたりすごく忙しそうだったし… |
| ミュウ | そうですの。ティアさんは悪くないですの |
| ティア | いいえ、私は彼の教育係よ。ルークがいなくなった事は私の責任でもあるわ |
| ティア | とにかく、早くルークを見つけて屋敷に連れ戻さないと |
| エミル | うん、そうだね。とりあえず、周辺を捜してみよう |
| ミュウ | はいですの! |
| scene2 | 捜索 |
| ミュウ | ご主人様、いないですの… |
| ティア | ここも空振りみたいね… |
| エミル | 今歩いてきた限りだと、この森は建物もないし…ここに留まってるとは考えにくいね |
| ティア | ルークを見たという話はいくつか耳にしたけれど、そのどこにも姿が見当たらないなんて… |
| エミル | 一箇所に留まらず、各地を転々としているって事かな…? |
| ミュウ | ご主人様、どこに行ってしまったですの…? |
| ティア | ガイがウィンドル方面まで足を伸ばして捜索しているらしいけど何か手がかりを掴んでないかしら… |
| エミル | どうだろうね…。何かわかるといいんだけど… |
| エミル | そういえばティア、ルークに兆候があったって言ってたよね。何があったの? |
| ティア | そうね…。無断で屋敷を抜け出す事は今までにもあったんだけど… |
| ティア | 失踪直前は、長時間の無断外出が多くなって…。問い詰めてみたら街の外まで出かけてるみたいだったわ |
| ティア | そんなに長い時間出かけるなんて一体どんな用事なのかしら、と思ったんだけど… |
| ミュウ | ボクも気になっている事があるですの |
| ミュウ | 長いお出かけから帰ってきたら、ご主人様、いつもご機嫌だったですの |
| ミュウ | だから、お出かけしようとした時ボクも一緒に行きたいってお願いしても絶対ダメだって… |
| ティア | ルークがご機嫌…?何をしに行ってたのかしら… |
| ミュウ | ガイさんはかわいい女の子に会いに行ってるんだろって言ってたですの… |
| ティア | えっ… |
| エミル | ルークに限ってそれはないんじゃ… |
| エミル | あ…そういえば、僕もルークの事で思い出した事があるよ |
| エミル | いなくなる何日か前、街中で偶然ルークと会ったんだ |
| エミル | 声を掛けたんだけど、そわそわして落ち着きがなくて…話を早く切り上げて行っちゃたんだ |
| ティア | ますますわからないわ。本当に女の子と会っていたとも思えないけど… |
| エミル | ルークが一人で出かけるようになったのはいつから? |
| ティア | そうね…エミルも覚えているかしら。旅の行商人が街を訪ねて来て… |
| エミル | ああ、珍しいものをたくさん売りに来てたね。お蔭で街がすごく賑わって… |
| ティア | ええ。確かその日、私はルークを捜しに街に出て—— |
| ティア | …! |
| ティア | まさか…ううん、気のせいよね… |
| ミュウ | ティアさん?どうかしたですの? |
| ティア | …な、何でもないわ |
| ティア | それより捜索を続けましょう。ここにはいないみたいだし、最寄の街に行ってみてはどうかしら |
| ミュウ | いい考えですの!ご主人様も、お腹が空いて街でお食事中かもしれないですの! |
| エミル | なら、ルイニス街だね。ここからだと一番近いと思う |
| ティア | ルイニス街ね。行ってみましょう |
| | ガサ…! |
| ミュウ | みゅ?今、そこの草むらで何か… |
| | |
| | ガルルルル! |
| ティア | ミュウ、危ない!魔物よ! |
| scene1 | 強面の人気者 |
| エミル | あ、ルイニス街が見えてきたよ。もうすぐだね |
| ティア | 何かルークに関する手がかりが見つかるといいのだけれど… |
| ミュウ | …! |
| ミュウ | ティアさん、エミルさん! |
| ティア | どうかしたの? |
| ミュウ | 今、すっごく大きな男の人が街の方に向かって行ったですの |
| ミュウ | とっても急いでる感じでしたの! |
| ティア | 大きな男の人…? |
| エミル | …そういえば、噂で聞いたんだけどこの辺りの村や街が何者かに襲撃される事件が起きてるらしいんだ |
| エミル | 少し前にもメルトキオの北の森にある村が被害にあったとか… |
| ティア | そんな事が… |
| エミル | うん。関係ないかもしれないけど、一応警戒はした方がいいかもしれない |
| ティア | …わかったわ。念のため、後を追ってみましょう |
| | |
| エミル | 街に着いたけど…ミュウが見た大きな男の人の特徴は他にある? |
| ミュウ | はいですの。上半身裸で筋肉ムキムキでしたの! |
| エミル | ええっ。相当強そうだね、その人… |
| ティア | 何者なのかしら… |
| ??? | こんにちは。旅の方ですか? |
| ティア | ええ、そんなところよ |
| ??? | もしかして、メルトキオの方からいらっしゃったとか? |
| ティア | いえ、私達はキムラスカの…バチカルから |
| ??? | そうですか… |
| エミル | …? |
| リリス | あ、すみません。突然驚かせちゃいましたよね…!私、リリス・エルロンって言います |
| リリス | 少し前に私の兄がメルトキオに向かったんです。以来どうしてるかずっと心配で… |
| リリス | メルトキオから来られた人なら何か話が聞けるかもしれないと思ってつい… |
| エミル | お兄ちゃん? |
| リリス | はい。スタン・エルロンって言うんですけど── |
| ティア | スタン…?ひょっとして、あの… |
| エミル | そういえば…確かにスタンはルイニス街に住んでるって話してたよね |
| リリス | 兄をご存知なんですか!?わあ、聞いてみてよかったです…!なら、もしかしてリオンさんの事も… |
| ティア | ええ。知っているわ |
| リリス | ──ルークさんが戻ってこない…?じゃあ、ティアさん達は、ルークさんを捜してこの街に? |
| ティア | ええ。この辺りで彼を見たっていう話を聞いたので、もしかしたらここにいないかと思って |
| リリス | あの…この街でじゃないんですけど私、ルークさんに会いましたよ |
| ティア | …!それは本当なの? |
| ミュウ | リリスさん、詳しく教えてほしいですの! |
| リリス | えっと…兄とシルヴァラント港に向かう道中の事なんですけど… |
| リリス | 果物を買おうとしていたルークさんに兄が声を掛けたんです |
| ミュウ | ご主人様、元気そうだったですの? |
| リリス | 元気は元気だったみたいですけど…でも、何だかそわそわして落ち着かない様子でしたね |
| ミュウ | ご主人様そわそわしてたって、エミルさんの話と同じですの… |
| ティア | 他に何か覚えてないかしら。誰かと一緒だとか、どこに行くつもりなのかとか… |
| リリス | 一人でしたよ。それで、兄が晶化現象について一緒に調べないかって誘ったんですけど… |
| リリス | 今はそれどころじゃない、忙しいから私達と一緒に行く事は出来ないって話していました |
| エミル | それどころじゃない、か…。何の事だろう…? |
| リリス | 兄はもっとゆっくり話したかったみたいなんですけど、そのまま立ち去ってしまったものですから… |
| エミル | そっか…。スタンにも話せない事なのかな…? |
| | |
| | わああああーーっ! |
| ティア | 今の声は!? |
| ミュウ | 向こうの方から聞こえてきたですの |
| エミル | …!ひょっとして、さっきミュウが見かけた人が何か…!? |
| リリス | えっ、何かあったんですか? |
| ミュウ | さっき、この街にすっごく大きくて強そうな人が入って行くのを見たんですの! |
| エミル | 近頃、シルヴァラントで村が襲われる事件があったから、心配になって… |
| リリス | そんな…!大変、今はリオンさんも街にいないのに… |
| エミル | リリスさん、ごめんなさい。真っ先にその事を伝えるべきだった… |
| ティア | エミル、ミュウ!声のした方に行ってみましょう! |
| リリス | 私も一緒に行きます! |
| scene2 | 強面の人気者 |
| エミル | 見て、向こうに人だかりが…! |
| ティア | 誰かを取り囲んでいる…? |
| ミュウ | あの人…ボクが見かけた人ですの! |
| エミル | 大変だ!男の子が抱えられて…! |
| ミュウ | 助けてあげないとですの! |
| リリス | あ!あの人は…! |
| リリス | ふふっ。みなさん、心配しなくて大丈夫ですよ! |
| ミュウ | みゅ…? |
| | |
| ??? | ガハハハハ! |
| 街の男 | コングマンさん、随分と久しぶりだねえ |
| 街の女 | またこの街に来てくれて嬉しいよ |
| 男の子 | ねえねえ、コングマン!次はぼくを持ち上げてー! |
| | |
| エミル | 悪い人どころか… |
| ミュウ | すごい人気者ですの…! |
| リリス | あの人はコングマンさんって言うんです |
| リリス | お兄ちゃんやリオンさんとも仲がよくて、この街にもよく遊びに来てくれるんですよ |
| リリス | 確かに身体もすごく大きいし顔もちょっと怖いですけど、とっても優しくていい人なんです |
| ティア | どうやら私達の早とちりだったみたいね |
| ミュウ | みゅううう… |
| | |
| リリス | コングマンさーん! |
| コングマン | おう、リリス!元気でやってるか |
| リリス | はい、お蔭様で!コングマンさんも元気そうで安心しました |
| コングマン | おうよ、この通りだぜ。ガハハハハ! |
| コングマン | …と、そうだ。スタンとリオンはどこにいる?急いで話したい事があってな |
| リリス | お兄ちゃんは多分しばらく帰ってこないと思います |
| リリス | あと、リオンさんも今は街の外を見回りに行ってて…。夕方には戻ると思いますけど |
| | |
| コングマン | そうか…。何だってこんな時に二人共… |
| リリス | 何かあったんですか? |
| コングマン | いや、実はさっき晶化した人間を見つけちまってな |
| コングマン | この街の近くの森だし、あいつらにも知らせておこうと思って立ち寄ったんだが… |
| リリス | 晶化した人間って…そんな…! |
| エミル | 晶化現象か… |
| ティア | …晶化現象の被害が、そんなところにまで…! |
| リリス | それで、その人の様子は…助ける事は出来ないんですか? |
| コングマン | いろいろ試してはみたんだがな…。あの様子だと難しそうだ |
| リリス | そうですか…。リオンさんが街に戻ったら、私も様子を見に行きます |
| ミュウ | 大変ですの… |
| リリス | 晶化現象の事は、お兄ちゃんやリオンさんもすごく心配しています |
| リリス | 今お兄ちゃんが街にいないのも、晶化現象の事を調べに行ってるからなんです |
| コングマン | なるほどな。そういう事情だったか |
| リリス | 本当は私もお兄ちゃん達と一緒に行きたかったんですけど、街を狙う不審人物の情報もあって… |
| リリス | それで、リオンさんと一緒にこの街に残る事にしたんです |
| コングマン | 不審人物だと?ったく、混乱に便乗して悪さをする悪党って奴だな |
| コングマン | …よし、そういう事なら俺様もしばらくこの街にいるぜ |
| リリス | 本当ですか?そうしてもらえると、すごく心強いです |
| コングマン | 任せとけ。ガハハハハ! |
| コングマン | …ところで、リリスと一緒にいるのは誰だ?この街では見かけねえ顔だな |
| リリス | あ!すみません、つい話に夢中になってしまって… |
| ティア | 挨拶が遅れてごめんなさい。私はティアと言います。こちらは、ミュウとエミル |
| エミル | 初めまして、コングマンさん。よろしくお願いします |
| コングマン | おう、よろしくな!ガハハハハ! |
| ミュウ | コングマンさん、いい人だったですの! |
| リリス | ふふ、でしょ? |
| リリス | みなさん、お兄ちゃんやリオンさんの知り合いなんです。人捜しでこの街に来られたみたいで |
| コングマン | ほう。誰を捜してるんだ?場合によっちゃ、力になれるかもしれねえぜ |
| ティア | 実は… |
| コングマン | ルーク・フォン・ファブレ…か。うーん… |
| エミル | やっぱり、知らないですよね… |
| コングマン | 名前に心当たりはねえが…白い服を着た赤髪の男ってのには覚えがあるぞ |
| コングマン | 腹筋が見える服を着ていたな。腰に横に剣を差していて… |
| ミュウ | ご主人様ですの!間違いないですの! |
| ティア | 詳しく聞かせてもらえますか? |
| コングマン | ありゃあ、数日前の夜の事だ。俺様はこの近くの森を抜けようとしていたんだがよ |
| コングマン | たき火を囲んで野宿してる二人の男を見かけてな。その一人がそんな身なりだった |
| エミル | …!誰かと一緒にいたって事ですか? |
| コングマン | ああ、大柄な男がもう一人な。湖近くの気味悪い森ん中だってのに、えらく楽しそうに話し込んでたぜ |
| コングマン | 親子ってほど歳は離れちゃいねえ。かと言って友達って感じでもねえし…ありゃあ、師匠と弟子ってとこか |
| コングマン | 山にこもって剣の修行でもしてたんじゃねえのか? |
| ティア | 師匠と弟子…… |
| エミル | 話を聞いた印象だと、ルークみたいだけど…。でも、どうしてそんなところに… |
| ミュウ | ご主人様と仲良くお話していた人の事も気になるですの |
| ティア | … |
| ティア | …二人共、情報提供感謝します。私は、これで失礼します |
| エミル | ちょ、ちょっとティア…?話はまだ…… |
| リリス | 行ってしまいましたね…。突然どうしたんでしょう? |
| ミュウ | 何だか様子が変だったですの… |
| エミル | とにかく、ティアを追わないと…。すみません、僕達も行きます |
| エミル | リリスさん、コングマンさん、お話ありがとうございました。街の事もどうかお気をつけて…! |
| ミュウ | さよならですの! |
| コングマン | お、おう… |
| コングマン | おいおい、何だありゃ。随分あわただしい連中だな |
| リリス | ルークさんの事が、すごく心配なんだと思いますよ |
| リリス | さあ、コングマンさん。私達も今後の事を話し合いましょう |
| コングマン | そうだな。何人たりともこの街に危害を加えさせないぞ! |
| scene1 | 消えない傷 |
| ティア | … |
| エミル | ティア、待って! |
| ティア | エミル… |
| | |
| エミル | はあ…やっと追いついた… |
| エミル | いきなりどうしたの? |
| ミュウ | リリスさんもコングマンさんもびっくりしてたですの… |
| ティア | …!そうよね…私… |
| ミュウ | ティアさん…?何だか悲しい顔になってるですの |
| エミル | 何かあったの…? |
| ティア | … |
| | |
| ティア | ルークと一緒にいるのは…私の兄だわ |
| エミル | ティアの、お兄さん…? |
| ティア | ヴァン・グランツ…あなたも名前くらいは知ってるはずよ |
| エミル | ヴァン・グランツ…ってまさか、あの…! |
| ミュウ | エミルさんはその人の事を知ってるですの? |
| エミル | キムラスカの騎士で彼の名前を知らない人はいないよ。騎士団の総長なんだ |
| ティア | “元”総長よ。数年前に失踪してしまって既にその地位は解かれているわ |
| エミル | でも、若い年齢ながらにして騎士団の総長まで登りつめたすごい騎士、って聞いてるよ |
| エミル | 剣の腕は勿論、人望も厚くて、当時の騎士達はみんな彼に強い憧れを抱いていた… |
| エミル | 僕が騎士団に入った時には既に不在だったから、人から聞いた話ばかりなんだけどね |
| ミュウ | ティアさんのお兄さんはすごい人だったんですの!知らなかったですの! |
| ティア | … |
| エミル | …でも、どうしてティアはそのヴァンさんがルークと一緒にいると思うの? |
| ティア | 前に一度、バチカルの街中でそれらしい人影を見かけた事があるの |
| ティア | その時は見間違いだと思って、深く気に留めなかったのだけれど… |
| ティア | 今思うと、やっぱりあれは兄さんだったんだわ |
| エミル | それはいつ頃の事? |
| ティア | 旅の行商人が街に来た日…。ルークが頻繁に一人で出かけるようになった時期に重なるわ |
| エミル | …! |
| ティア | さっきの話を聞いて、思い当たったのよ |
| ティア | 兄さんは失踪する前、ルークに剣術を指導していたの |
| ティア | 彼は兄さんの事を師匠と呼んで、なついていたわ |
| ティア | 兄さんが姿を消した時は、食事もろくに取れないくらい落ち込んでしまうほどにね |
| ミュウ | ご主人様… |
| エミル | …でも、本当にヴァンさんだとして何でルークが? |
| エミル | ヴァンさんがいなくなってから、随分経つはずだし… |
| エミル | それに、本当に街に帰ってきたんならまずは誰より先に妹のティアに会いに来るはずじゃ── |
| ティア | …それはどうかしら |
| ティア | 何も告げずに姿を消しておいて今さら── |
| ティア | … |
| ミュウ | ティアさん…? |
| エミル | ティア… |
| エミル | ごめん、その…何ていうか──… |
| ティア | いいの、気にしないで |
| エミル | え、えっと…よければコングマンさんの話していた湖の辺りに行ってみない? |
| エミル | 何か手がかりが掴めるかもしれないし |
| ミュウ | ボクもエミルさんに賛成ですの!ティアさんも一緒に行くですの |
| ティア | …そうね |
| ティア | …行きましょう |
| scene2 | 消えない傷 |
| ミラ | ──それにしても、まさか隠れ家を襲撃したのがあのルークだったとはな… |
| ジュード | …うん。僕も未だに信じられないよ |
| ゼロス | んなの、俺さま達の方がびっくりしたっての。なあ、スタン |
| スタン | うん、そうだな |
| ライラ | 直接対峙されたロイドさんはショックも大きいですよね… |
| ロイド | …確かに、最初は頭が真っ白になっちまったけど… |
| ロイド | でも、今はもう大丈夫だ。あいつを信じるって決めたからさ |
| エリーゼ | バチカルでルークの事がわかれば、コレットの居場所についても手がかりがあるかもしれません… |
| ティポ | 何か情報があるといいねー。悪い事じゃないといいけどー |
| ヴェイグ | …キムラスカの陰謀だとすれば何も教えてもらえないかもしれないが… |
| スレイ | うーん、そうだよな。争い合うような事にならないといいんだけど… |
| ミクリオ | そのルークって人が王族である以上、国ぐるみの意図と捉えるのが自然だと思う |
| ミクリオ | ルークの同行者の素性もわからないから確定は出来ないが… |
| ミクリオ | そもそも、よそ者の僕達に国の内情を簡単に教えてくれるとは思えない |
| ルドガー | バチカルにはティアやガイ、エミルにマルタ、俺達の知り合いも数多くいる |
| ルドガー | 彼らなら何か事情を知っているかもしれないし、協力を仰ぐ事も出来るだろう |
| スタン | とにかく、行けば何とかなるさ。心配してもしょうがない |
| スレイ | うん、そうだな |
| ライラ | …ところで、そのバチカルまではまだ距離があるのでしょうか? |
| スタン | ああ、えーっと…まだ半分ってとこじゃないかな |
| ゼロス | 何なに〜?ライラちゃん、ひょっとしてお疲れ?だったら、俺さまがおぶって── |
| ライラ | まあ、ゼロスさんったら。お気持ちだけで十分ですわ |
| ゼロス | そ、そう… |
| ゼロス | じゃあ、ミラさまどう?あ、それかエリーゼちゃんでも── |
| ミラ・エリーゼ | … |
| ヴェイグ | お呼びではないそうだ |
| ゼロス | とほほ… |
| | |
| エミル | ──コングマンさんが言ってたのは確かこの辺りだと思うんだけど… |
| ミュウ | 何だか薄暗くて怖い森ですの… |
| ティア | そうね。まだ昼過ぎだというのに陽の光がほとんど入ってこないし── |
| ティア | …! |
| ティア | 二人共、これを見て |
| エミル | たき火の跡だ…!そんなに日にちは経ってないみたい。誰かがいたのは間違いなさそうだよ |
| ティア | コングマンが言っていた通りね。やっぱり、ルークがここに… |
| エミル | リリスさんもシルヴァラント港へ行く前にルークと会ったらしいし…この辺りで何かしていたのかな…? |
| ティア | ルーク…。シルヴァラントで何を…? |
| | ガサ… |
| ミュウ | 何かいるですの! |
| | |
| | ガルル… |
| エミル | 魔物だ…!それに… |
| | ガルルルル… |
| ミュウ | 囲まれてしまったですの…! |
| ティア | 一斉に目の前の敵を片付けるしかなさそうね。誰かがやられたら背後を取られるわ |
| エミル | …そうだね。じゃあ、僕が合図をしたら攻撃開始だ。二人共、準備はいい? |
| ティア | ええ、いつでもいいわ |
| ミュウ | わかったですの! |
| エミル | よし、今だ! |
| scene1 | 追憶 |
| ティア | ──何とか魔物は倒せたわね |
| エミル | ふう、よかった。どうなる事かと思ったけど… |
| ティア | 二人がいてくれて助かったわ。ありがとう、エミル、ミュウ |
| エミル | こちらこそ。それじゃ、もう少しこの辺りを… |
| | ガルルルル! |
| ミュウ | みゅ? |
| ティア | 魔物…!?まだ残って… |
| エミル | ミュウ、危ない! |
| ??? | はあっ! |
| | ザシュッ! |
| | グオオオオーーーッ! |
| | |
| ??? | …ふぅ、間に合ってよかった。大丈夫? |
| ミュウ | た、助かったですの!感謝ですの! |
| ??? | どういたしまして。怪我がなくて本当よかったよ |
| ティア | ありがとう。ミュウを助けてくれて |
| ??? | いえ、お礼なんて。オレは、たまたま近くを通りかかっただけなんです |
| ??? | おーい!スレイ!ったく、どこ行ったんだ? |
| ??? | 確かこっちの方に走って行ったはずだが… |
| ミュウ | また誰か来るですの…! |
| ??? | …スレイ、全く君は。何も言わずに走り出したら心配するだろう |
| スレイ | ごめん、ミクリオ。この人達が魔物に襲われそうになってるのが見えたから、つい反射的に… |
| ミュウ | この人はボクを助けてくれたですの!怒らないであげてほしいですの… |
| ルドガー | ん?君はミュウ…?それに、ティアとエミルまで… |
| ティア | ルドガー!?どうしてあなたがここに? |
| スレイ | ルドガーさんの知り合いだったんですか? |
| スレイ | …あれ、ちょっと待てよ?ティアさんとエミルさんってどこかで聞いたような… |
| ゼロス | おいおい、もう忘れたのかよ。さっき話しただろ、バチカルに俺さま達の知り合いがいるって |
| ゼロス | …いや〜、でもまさかこんなところで愛しのティアちゃんに会えるなんて俺さま運命感じちゃう |
| スタン | うん、本当に驚いたよ。ちょうどティア達のところにも行こうって話してたから |
| ティア | ゼロス、それにスタンまで…。私達のところへ来ようとしていたってどういう事かしら |
| エリーゼ | あの、わたし達…いろいろと知りたい事があってバチカルを目指してたんです |
| エミル | 知りたい事…? |
| | |
| ティア | ルークがシルヴァラントの神子を!?そんな…まさか信じられないわ… |
| ミュウ | そうですの…。ご主人様がそんな事するわけないですの…! |
| ジュード | ティア、ミュウ… |
| エミル | みんなの事を疑うわけじゃないけどやっぱり僕も信じられないよ… |
| ロイド | …みんなの気持ちはわかるよ。実際にルークを目の前にした俺だって最初は何が何だか… |
| ロイド | でも、俺が目覚めたらコレットがいなくなってた。直前まで剣を交えてたルークも… |
| エミル | … |
| ミュウ | ご主人様… |
| ティア | でもどうして…ルークがそんな事を… |
| ルドガー | それを確かめるために、バチカルへ行こうとしてたんだ |
| ティア | 確かめる…? |
| ゼロス | ルークの真意も勿論だが、キムラスカ国王や国そのものが関わっていたのかどうかを、だ |
| ゼロス | その答えによっちゃ、キムラスカとシルヴァラントで戦争が起きちまうかもしれねぇ |
| エミル | 戦争って、そんな… |
| | |
| ティア | …あなた達が知りたいと言っていたのはこの事だったのね |
| ティア | ルークに関して言えば、そんな大それた事をするわけない、そう言いたいところだけど… |
| ルドガー | 何かあったのか、ティア? |
| ミュウ | 実はご主人様…しばらく前から行方不明なんですの |
| ヴェイグ | 行方不明だと…? |
| エミル | うん…。僕達も今ちょうどルークの行方を追っていたところなんだ |
| ティア | けど、ルークが陛下の命で行動しているという可能性は低いと思うわ |
| ヴェイグ | …それはどうしてだ? |
| ティア | 新たな天啓にまつわる情報はキムラスカにも入ってきているわ |
| ティア | 拡がる晶化現象… |
| ティア | その不安もあいまって、どこの国も天啓に対する関心が高くなっている… |
| ティア | そんな中でインゴベルト陛下はウィンドルとシルヴァラントの関係が悪化しつつある事を懸念されていたわ |
| ティア | そんな陛下が火に油を注ぐような事をそれもルークにさせるなんて考えられない |
| ティア | ルークの事を心配されて騎士団や私に捜索を命じられたのも、他ならぬ国王陛下だもの |
| ルドガー | なるほど…。確かに、今の話を聞く限りキムラスカは関わってなさそうだ |
| エリーゼ | じゃあ、ルークは自分で…? |
| ゼロス | …そいつはどうだろうな。神子をさらうって事は、目的は天啓絡みだろうし… |
| ゼロス | ルークの野郎があんなもんに興味を持つとは思えねぇ |
| ゼロス | 前にヴェイグが言ってたけどよ、あいつと一緒にいたお仲間の入れ知恵なんじゃねぇか? |
| ティア | 仲間…? |
| スタン | ああ、隠れ家を襲撃したのはルークともう一人、男が一緒だったらしいんだ |
| ヴェイグ | 複雑な内部構造を完全に把握し、更には、厳重な警備態勢の中たった二人で神子をさらったそうだ |
| ヴェイグ | 相当な強者である事は確かだが、そいつが何者なのか、尻尾すら掴めていない |
| ティア | …………! |
| ライラ | ティアさん、どうかされましたか?顔色が… |
| ティア | …その人物に心当たりがあるの |
| スタン | 本当か!?ティア!教えてくれ、一体誰なんだ? |
| ティア | ……私の兄よ |
| ジュード | なっ… |
| ロイド | ティアの兄貴だって…? |
| scene2 | 追憶 |
| ルドガー | ──なるほど。そんな事情があったのか |
| スタン | ルークが師と慕っていて、一緒にここで野宿をしていた… |
| スタン | それを聞くと、神子をさらいに来たもう一人の男はヴァンさんっていう気もするけど… |
| ロイド | ヴァンとルークは何でこんな事を? |
| ティア | それは…私にもわからないわ |
| ティア | でも、これまで集めた情報からして、兄さんが関係しているのは間違いないと思う |
| ティア | 神子の隠れ家を突き止めて中の構造の情報を手に入れ、大勢の警備を倒す… |
| ティア | 兄さんならそれくらいはやってのけるはずよ |
| ティア | ルークが私だけでなく、ガイにまで何も告げず、行方をくらますなんておかしいとは思っていたのだけど… |
| ティア | それが、ルークが深く慕っている兄さんの指示によるものなら合点がいくわ |
| スレイ | ヴァンは、ティアさんのお兄さんなんですよね?何か話を聞かされてなかった? |
| ヴェイグ | …それに、自分の兄がそんな事をしたとどうして言い切れるんだ? |
| エミル | それは… |
| ティア | …いいのよ、エミル。私が話すわ |
| ティア | 数年前に失踪したきり、私は兄さんとは一度も会っていないの |
| スタン | どうしてヴァンさんは失踪したんだ?いつから? |
| ティア | 昔、キムラスカで盗賊の暴動に端を発した大きな内乱が起きた事があったの |
| ゼロス | ひょっとして、ソドスの内乱の事か? |
| エミル | ゼロスさん、知ってるの? |
| ゼロス | まあ、隣国の事だしな。詳しくは知らねぇが、名前だけは聞いた事がある |
| ティア | 激しい戦いの後、争いは終息、兄さんの部隊も役目を解かれたのだけど── |
| ティア | 撤収の途中、兄さんは部下達にも何も告げず、突然姿を消してしまったの |
| ティア | …兄さんとはそれきりよ。何のために、どこに行ったのか、私には何一つわからないわ |
| スレイ | …騎士団の総長まで務めたって事は相当すごい人だよね |
| ティア | …私が覚えている兄さんは、戦争をなくしたいという強い正義感と信念を持つ人だった |
| ティア | ルークも剣術の師というのを超えて兄さんを慕っていたわ |
| ティア | でも…今となっては私はどこまで兄さんの事を理解していたのかわからない |
| ティア | あんな風に突然いなくなるなんて… |
| エミル | ティア… |
| ジュード | 大変だったんだね、ティアも… |
| エリーゼ | … |
| ティア | …ごめんなさい。今は、私の事よりシルヴァラントとの関係の方が重要だわ |
| ミクリオ | 神子の誘拐にキムラスカが関わっていないのは本当のようだけど── |
| ミクリオ | 問題は、シルヴァラント国王がその事を納得するかどうかだね |
| スレイ | だな… |
| エミル | そういう事なら、インゴベルト陛下に親書をいただけるよう頼んでみたらどうだろう? |
| エミル | キムラスカとシルヴァラントはずっと友好関係を築いてきたし… |
| エミル | 陛下の正式な書面があれば、シルヴァラントもキムラスカが関与をしてないって信じてくれるんじゃ… |
| ロイド | なるほど! |
| ロイド | …でも、キムラスカ国王が書いてくれるかどうか… |
| ティア | 陛下だって、争いは望まないはずよ。望みはあると思うわ |
| ゼロス | んじゃ、予定通り向かうはキムラスカだ |
| ミラ | 国王への取り次ぎはお前達に頼めるか、ティア |
| ティア | ええ、勿論よ |
| ミュウ | ティアさん…ご主人様は無事なんですの…? |
| ティア | そうね…多分、いえ、きっと無事よ。だから今はバチカルに戻って出来る事をしましょう |
| ミュウ | みゅうう…わかったですの… |
| スレイ | じゃあ、キムラスカへ—— |
| | ガサガサッ…! |
| ミュウ | …!今の音は何ですの? |
| | |
| | ガルルルル! |
| スタン | みんな、魔物だ!気をつけろ! |
| scene1 | 不条理な感情 |
| ヴェイグ | ──ようやくキムラスカに入ったか |
| ティポ | えー!まだ入ったばっかりー?じゃあ、バチカルはー? |
| ミュウ | もっともっと先ですの!ティポさん、疲れたですの? |
| ティポ | ぼくヘトヘトだよージュード君おんぶー |
| ジュード | はいはい、騒がないの、ティポ。そろそろ休憩にするかい? |
| エリーゼ | そうですね…でも… |
| スタン | いいんじゃないか?みんなそろそろ疲れてるだろうし、ここらで休憩にしても |
| ゼロス | そうだな。野郎はまだしも、か弱い女の子達に無理強いするのはかわいそうだし〜 |
| スレイ | じゃあ、あの辺りでどうですか?日陰が出来ててちょっとゆっくり出来そうだし |
| ティポ | サンセー!そうと決まったら、ミュウ君、早速あっちに行こー! |
| ミュウ | は、はいですの…! |
| エリーゼ | ティ、ティポ!待ってください! |
| ミラ | …やれやれ、疲れているのではなかったのか? |
| ルドガー | はは…。俺達も行こうか |
| ティポ | はー、やっと休憩出来るぞー!エリーも早くこっちに── |
| | ぼよんっ |
| ティポ | ムギュー! |
| ヴェイグ | ぐ… |
| エリーゼ | ティポ、前を見なきゃ…! |
| エリーゼ | ごめんなさい、ヴェイグ… |
| ヴェイグ | 何ともない。ティポ、お前の方こそ大丈夫か? |
| ミュウ | ヴェイグさん優しいですの! |
| ティポ | 優しいのー?じゃあ、ぼくここで休むぞー |
| ヴェイグ | … |
| エリーゼ | ティ…ティポ、駄目です!ヴェイグだって疲れてるのに、肩になんて乗っちゃ… |
| ヴェイグ | 構わない。こういうのには慣れているからな |
| ライラ | まあ!ティポさん、ヴェイグさんの肩にしっくりなじんでますわね |
| ティポ | おおー!いつもと眺めが違って見えるー!居心地もバツグン!ミュウ君もおいでよー |
| ミュウ | ボクもですの…?いいんですの? |
| ティポ | ほらほら、もう片方の肩が空いてるよ— |
| ミュウ | じゃあ、お言葉に甘えて…失礼するですの |
| ミュウ | 周りがよく見えるですの!木の上にいるみたいですの! |
| ティポ | でしょでしょー?ん?何だこれー!シッポみたいー |
| ヴェイグ | む… |
| エリーゼ | …ティポ!ヴェイグの三つ編みで遊んじゃ駄目ですよ! |
| ライラ | ふふ、ヴェイグさんは変わった生き物に好かれやすい方なのですね |
| エリーゼ | その…すみません、ヴェイグ… |
| ヴェイグ | …大丈夫だ |
| スレイ | ──ライラ達、何だか楽しそうですね |
| ゼロス | そうだな。…っていうかよ、スレイ。俺さまずっと気になってたんだけど… |
| ゼロス | 何でお前ってそういう硬い言葉使いなわけ? |
| スタン | 言われてみればそうだな。俺の事もスタンさんって呼ぶし |
| スレイ | うーん…。何でって言われても、特別な理由があるわけじゃないんですけど… |
| スタン | …あれ?でも、ミクリオには普通に話してるよな? |
| ミクリオ | それは慣れだよ。僕達は幼い時からずっと一緒に育ってきたからね |
| ルドガー | 慣れ、か… |
| ルドガー | ま、別に無理強いする事でもないが、俺達に気を使ってやっているなら、その必要はないな |
| ゼロス | よーし、いい事思いついたぜ。俺さま達でスレイのしゃべり方を特訓してやらねぇか? |
| スレイ | しゃべり方の特訓…ですか? |
| ミクリオ | そうだな。まずはその、さん付けを取ってみるのはどうだろう? |
| ミクリオ | あとは、僕と話す時のようにみんなに接する事を心掛けてみるとか |
| スタン | そうそう。俺達もう友達なんだから、もっと気楽に話しかけてくれよ!ほら! |
| スレイ | えーっと…スタン。今日はいい天気です…だ |
| ミクリオ | ですだって、スレイ。おかしな事言い出してるぞ |
| スレイ | ははは…ごめんごめん。意識して話し方を変えるのって、案外難しいな |
| ゼロス | なら、俺さまが例文を出してやるから、スレイ、ちゃんと後に続くんだぜ? |
| ルドガー | ゼロスの例文…?何か不安だな |
| ゼロス | やぁハニー、今日もきれいだな〜!よかったらこれから、俺と二人きりでデートしないかい? |
| スレイ | ハ、ハニー?って、誰の事? |
| ゼロス | いいから!ほら、真似してみろって |
| スレイ | や、やぁ、ハニー。今日もきれいだ… |
| スレイ | …って、何だか違うような気がするんだけど… |
| ゼロス | はい、深く考えない。次行くぞ! |
| ゼロス | なぁ、そこの子猫ちゃん、俺さまとアツーい夜を過ごさない〜? |
| スレイ | …それ、ビミョーに言い方変わっただけでさっきと同じじゃないか…? |
| ゼロス | わかってないねぇ〜、スレイくんは。女の子のハートを射止めるには適度に砕けなきゃ駄目なんだよ |
| スレイ | ええっ!?いつから女の子を射止める話になったんだ!? |
| スレイ | オレ、こんなナンパみたいなセリフ、恥ずかしいよ! |
| ルドガー | ははっ。その調子だ、スレイ |
| スレイ | …ん? |
| スタン | 今ゼロスと普通に話してたぞ |
| スレイ | …あ。言われてみれば! |
| ミクリオ | どうやら上手い事、誘導されたみたいだね |
| ゼロス | さっすが俺さま!狙い通りだなぁ〜! |
| ミクリオ | …狙ってやっていたようには見えなかったけどね |
| スレイ | どっちにしろ、お蔭で自然に話せるようになったよ。ありがとう、ゼロス! |
| ジュード | ──大丈夫かな。ヴェイグ、ティポにもてあそばれているみたいだけど… |
| エミル | はは、本当だ。ヴェイグは無口っぽいけどなつかれる何かがあるんだろうね |
| ジュード | エリーゼもみんなと打ち解けられてるみたいだしよかったよ |
| エミル | それを言うならミュウもだよ。ルークがいなくなってから、ずっと元気がなくて心配だったんだ |
| ミラ | それにしても、厄介な事になったものだな… |
| ロイド | 本当にな…。俺がミラと会う時って大体いつもこんな時ばかりだよな |
| ミラ | ふっ、確かにそうかもしれないな |
| ロイド | …今回はルークの事もあるし今までのとはちょっとわけが違う |
| ロイド | でも、考え込んでる場合じゃないな。…コレットを早く助け出すためにも気合入れないと |
| ミラ | 私も出来る限りの事はする。無理はするなよ、ロイド |
| ロイド | ああ、ありがとう |
| ティア | … |
| エミル | …ティア? |
| ジュード | あれ?エミル、どこかに行くの? |
| エミル | あ、うん少し…!すぐ戻るよ |
| scene2 | 不条理な感情 |
| ティア | … |
| ティア | 兄さん… |
| ティア | ルーク… |
| ティア | 一体何を考えているの…?どうしてこんな… |
| ティア | ふう… |
| ??? | …ため息ってね、吐くと幸せが逃げちゃうんだって。知ってた? |
| ティア | 誰…? |
| エミル | 今のはマルタの受け売りだけどね。…隣、座ってもいいかな? |
| ティア | エミル…。え…ええ、構わないけど |
| エミル | … |
| エミル | 気に病むなって言われても、難しいよね、やっぱり |
| ティア | …そうね |
| ティア | …ルークったら、本当に何を考えているのかしら |
| ティア | これまでの出来事で彼もいろいろと学び、経験を積んで成長したものだと思っていたのよ |
| ティア | なのに、こんな大それた事をするなんて… |
| エミル | … |
| ティア | 晶化現象で国中の人々が不安に陥っている時なのに、それどころじゃなくなってしまったわ |
| ティア | シルヴァラントとキムラスカの関係だって危くなって… |
| ティア | …本当に困ったものね。ルークは自分がした事の意味をわかっているのかしら |
| エミル | … |
| エミル | …ティア。ルークは成長してると思うよ |
| | |
| エミル | こんな事言ったらルークは怒るだろうけど、最初会った時はわがままなお坊ちゃんって感じだった |
| エミル | でも、命の危機にさらされながら何度も戦って、たくさんの仲間に出会って、彼は変わったと思う |
| エミル | そんなルークが、何の理由もなく混乱を招くような事をするはずない。何か事情があるんだと思う |
| エミル | ティアも、本当はそう思ってるんだよね |
| ティア | …そうね。彼はわがままだけど、少なくとも争いを望んだりはしない |
| エミル | ティアにとってショックな事が続いて頭が整理出来ないんだよね、きっと |
| ティア | …そう、かもしれないわ |
| ティア | 行方不明だった兄さんが突然現れて、ルークと一緒に神子の誘拐に関わっているかも…なんて… |
| ティア | 信じられるはずがないわ…。でも… |
| エミル | ティア、これだけは聞いて |
| エミル | 一人で全てを抱え込もうとしたり、思い詰めたりしないで? |
| エミル | 辛い時は辛いって、言っていいんだよ? |
| エミル | 僕じゃ少し頼りないかもしれないけど話だったらいつだって聞くし… |
| エミル | それに、ティアと同じようにルークを信じてる人達がいるよ。僕や、ミュウ以外にも |
| | |
| ティア | …そうね |
| ティア | そう言ってもらえて、少し気が楽になったわ。…ありがとう、エミル |
| エミル | …よかった。じゃあ、みんなのところに戻ろう |
| ティア | ええ |
| scene1 | 漆黒の騎士 |
| ルーク | … |
| ルーク | ロイド…ちくしょう…! |
| ??? | う……ん… |
| ルーク | …! |
| | |
| コレット | …あれ?ここは…? |
| ルーク | やっと起きたのかよ |
| コレット | あなたは… |
| ルーク | 随分寝てたよな。腹とか減ってな── |
| コレット | …! |
| ルーク | …怖がらなくていいだろ。何にもしねえよ |
| コレット | あなたは…ルーク?ロイドはどうなったの? |
| ルーク | …あいつなら無事だ。気を失っただけだ |
| コレット | 本当…? |
| ルーク | 嘘なんかつかねえ |
| ルーク | そりゃ…疑うのも無理ねえけど… |
| ルーク | 俺だって出来ればあいつと戦いたくなんかなかった。けど… |
| コレット | どうして… |
| コレット | どうしてこんな事してまで、私が…神子が必要だったの? |
| ルーク | …… |
| ルーク | 世界戦争を止めるためだ |
| コレット | 世界戦争…!? |
| ルーク | 今、新しい天啓を取り合っていろんな国がいがみあってんだろ |
| ルーク | そのせいで、下手すりゃ近い内でっかい戦争にまでなるかもしんねえ |
| ルーク | だから、お前をア・ジュールに連れて行くんだ |
| コレット | ア・ジュールに…? |
| ルーク | 戦争を止められるとしたら神子のお前とア・ジュールだけなんだ |
| コレット | … |
| ルーク | …怖がらせちまって悪かった |
| ルーク | けど、信じてくれ。ロイドに言った事は嘘じゃねえ |
| ルーク | 悪いようにしねーって約束する。ロイドの代わりに、俺が最後までお前を守る |
| ルーク | だから、頼む。戦争を止めるために力を貸してくれ |
| ルーク | …嫌なんだよ。戦争とか、そんな馬鹿みたいなもんで人が死ぬのを見るのは… |
| コレット | …ルーク。顔を上げて? |
| コレット | 詳しい話を聞いてもいいかな…。私に出来る事なら、協力したいって思うから… |
| ルーク | コレット… |
| | |
| ロイド | ──お、バチカルが見えてきたぞ |
| ライラ | ふぅ…ようやくですわね。長い道のりでした |
| エリーゼ | …?何か、様子がおかしい…です |
| ヴェイグ | 本当だ。黒煙が上がっている… |
| ティア | …!まさか、何かあったんじゃ…! |
| ミラ | …ただ事ではないな。皆、急ごう |
| | |
| スレイ | そんな…!何で街が燃えて… |
| ミクリオ | 酷い光景だ…。この街に一体何が… |
| 街の男 | 別のところからも火が出たぞ! |
| 街の女 | 誰か…痛い…助けて… |
| 子ども | うう…お母さん…怖いよ… |
| ゼロス | 酷ぇな…。戦争でもおっ始まったのかよ… |
| 街の男 | う、うう… |
| ジュード | 大丈夫ですか? |
| ジュード | 酷い怪我だ…!今治療します |
| ロイド | ジュード、俺も手伝うぜ…! |
| ティア | 何て事なの…! |
| ティア | すみません!一体何があったんですか!? |
| 街の男 | 真っ黒な鎧の謎の騎士達が数人、突然街に現れたらしい |
| ティア | 真っ黒な鎧… |
| 街の男 | そいつらが大暴れして街のいたるところで被害が出てる… |
| 街の男 | 特に連中が最初に入って来た街の北東部では、大勢の負傷者が出てるとか── |
| エミル | 何だって…!? |
| エミル | 街の北東って言ったらマルタが… |
| ルドガー | エミル、どこに行くんだ!? |
| ミュウ | ティアさん大変ですの!街の北東にはマルタさんがいるですの! |
| ティア | マルタが!? |
| ティア | でも、ここの人達も放っておけないしどうしたら… |
| ヴェイグ | 北東部が特に酷いなら、二手に別れたらどうだ? |
| ジュード | ここは、僕が残るよ。もう一人くらい、誰か残れるかい? |
| ライラ | では、私が。みなさんはどうか、北東部の方へ…! |
| ティア | ありがとう、ジュード、ライラ。私達はエミルを追いかけるわ |
| スタン | くそ…!何でこんな事に… |
| scene2 | 漆黒の騎士 |
| マルタ | う……ん… |
| マルタ | あれ…、ここは… |
| 女の子 | …!ママ、お姉ちゃんが目を覚ましたよ |
| マルタ | あなたは確か…… |
| マルタ | うっ…! |
| 女の子の母親 | まだ動かないで…!あなたは怪我してるのよ |
| マルタ | 怪我…?私一体何を──… |
| マルタ | 思い出した…。確かあなた達が、真っ黒な鎧の騎士に襲われそうになって… |
| 女の子 | うん…。お姉ちゃんがわたしとママを庇って助けてくれたんだよ |
| マルタ | そっか…二人共無事だったんだ |
| マルタ | 本当によかった… |
| 女の子の母親 | でも、そのせいであなたがこんな事に…。本当に何と言ったらいいのか… |
| マルタ | 気にしないでください |
| マルタ | …エミル。エミルがいたらきっと、同じ事をしたよね… |
| マルタ | よかった、あなたがこの街にいなくて |
| エミル | マルタ! |
| マルタ | エミル…!?何で、ここに…? |
| | |
| エミル | 怪我をしてこの家に担ぎ込まれたって聞いて…それより傷の具合は…!? |
| マルタ | あ、うん…少し痛みはあるけど大丈夫だよ、このくらい |
| ティア | それほど深くはなさそうね。よかった… |
| ミュウ | マルタさん、心配したですの… |
| マルタ | ティアとミュウまで…。戻って来てたんだね。ありがとう、心配してくれて… |
| | |
| ルドガー | その様子だと命に別状はなさそうだな… |
| マルタ | …!あなたは確か、ルドガーさん…?どうして…? |
| エミル | ルークの捜索中に偶然会ったんだ。いろいろと事情があって、キムラスカまで一緒に来たんだよ |
| ティア | 怪我をしているのに悪いんだけど…マルタ、何があったのか話せるかしら |
| マルタ | …うん。わかった。みんなに、聞いてほしい |
| | |
| エミル | ──じゃあマルタは、さっきの親子を庇って漆黒の騎士と… |
| マルタ | うん… |
| マルタ | もう駄目かもって思った時に味方の騎士が駆けつけてくれて、それで何とか助かったみたい… |
| マルタ | けど、ごめん。それ以上の事は覚えてなくて… |
| ミラ | きっと味方を見て安心して気を失ったのだろう |
| エリーゼ | 怖かった…ですよね |
| エミル | …ごめん、マルタ。僕が一緒にいれば、キミをこんな目に遭わせたりしなかったのに… |
| マルタ | ううん、エミルのせいじゃないよ。だから、そんな顔しないで? |
| ゼロス | 可愛いマルタちゃんをこんな酷い目に遭わせやがって… |
| ゼロス | その騎士達、見つけたら許さねぇぞ |
| スレイ | うん…。マルタもだけど、たくさんの人が怪我を負ってる… |
| ヴェイグ | シルヴァラントの神子が攫われてキムラスカに疑いが…と思ったら、今度はそのキムラスカが襲撃… |
| ティポ | 何が起こってるんだろー? |
| ミクリオ | その漆黒の鎧の騎士達は一体何者なんだろう…。どこかの国の軍隊か? |
| スタン | うーん、どうだろうな。漆黒の鎧を着た騎士なんて聞いた事ないけど |
| ルドガー | ヴェイグが前に会ったという、アリスとデクスの一味か? |
| ヴェイグ | …わからない。少なくともオレが会った二人は黒い鎧など着てはいなかったが |
| ゼロス | その仲間っぽいシンクも鎧ではなかったし、連れてた兵士も真っ黒な鎧じゃなかったな… |
| ミクリオ | 赤の騎士団とも違う。どこかの国が正体を隠すために擬装したという可能性もあり得るが… |
| ティア | マルタ、何か他に心当たりはない?敵の正体に繋がる何かを見たとか… |
| マルタ | そういえば…彼らが話しているのを、ちらっと耳に挟んだ気がする |
| マルタ | 確か、騎士の一人が、サレ様って呼ばれてたような… |
| ミラ | サレ…? |
| ロイド | あれ…その名前、どこかで聞いたような… |
| ミラ | 確か、クレスの故郷の村を襲った相手ではないか? |
| ロイド | ああ、そうか!前にクレスが話してたよな |
| スレイ | 村を襲われたって…。何があったんだ? |
| ミラ | 私達の仲間のクレスが住むトーティス村が、以前謎の敵に襲われたらしい |
| ロイド | 村の人の多くが殺されて、随分と酷い有り様だったって… |
| ロイド | その敵の首謀者が、確かサレっていう男だった |
| エリーゼ | そんな酷い事が… |
| ゼロス | …って事は、今回もその男が? |
| ミラ | …いや、それはないはずだ。クレスは確かにサレを倒したと話していた |
| スタン | じゃあ、同じ名前の別人って事か?…でも、そんな偶然ってあるのか |
| マルタ | あの騒ぎの中だし、もしかしたら私の聞き間違いかも… |
| ミクリオ | 彼らの目的は…?もう、撤退したのだろうか |
| マルタ | 駆けつけた兵士が追い払ったって、気を失う前に聞いた気がする。その後の事は…わからない、ごめんね |
| ヴェイグ | …とにかく、これ以上ここで話していても答えは出ない |
| スレイ | うん…。街の人達の救護に当たろう |
| エリーゼ | …はい! |
| スタン | …ああ、みんなで手分けしようぜ! |
| エミル | …ごめん、ティア。僕はもう少し、マルタの傍についてるよ |
| ティア | 勿論よ。ミュウも一緒にいてあげて |
| ミュウ | わかったですの |
| ティア | 安静にしていてね、マルタ |
| マルタ | うん… |
| scene1 | 報復か、謀略か |
| ジュード | ──応急処置ですが、もう大丈夫ですよ |
| 男の声 | ありがとうございます… |
| ジュード | 安静にしていてください |
| 女の声 | 助けて… |
| ライラ | ジュードさん、まだ負傷者はたくさんいるようです |
| ジュード | うん…。そうだね、行くよ |
| エリーゼ | ジュード!手伝います! |
| ジュード | エリーゼ、戻って来たの? |
| ティポ | 今、みんなで手分けして救護に走ってるよー |
| スレイ | ここはどうだ?ジュード |
| ジュード | 兵士も駆けつけて来てくれたけど…この様子だとまだまだ人手は足りてない |
| スレイ | そうか…。じゃあ、オレ達も手伝うよ |
| ライラ | スレイさん、ミクリオさん。私と一緒にあちらの方の見回りをお願いしますわ |
| スレイ | ああ! |
| ミクリオ | 隠れたまま動けなくなっている人がいるかもしれない。注意深く捜そう |
| スレイ | … |
| ライラ | スレイさん、どうかされましたか? |
| スレイ | どうして罪のない人達がこんな風に傷付けられないといけないんだろう… |
| スレイ | こんなやるせない気持ちって…… |
| ライラ | スレイさん… |
| ミクリオ | スレイ…この光景を前に、いろんな感情が沸き起こるのはよくわかる |
| ミクリオ | けど、今はそれよりもやるべき事があるんじゃないか? |
| スレイ | …うん、そうだ。考え込んでる場合じゃないよな |
| スレイ | 今は、一人でも多くの人を助けよう! |
| スタン | まずいな、建物もかなり崩れてる… |
| スタン | どうしてもあの光の雨の時の事を思い出してしまうな |
| ミラ | …ルナの一件か。確かにあの時も── |
| 街の男 | あんた達、手を貸してくれないか?家族が瓦礫の下に! |
| ミラ | どこだ…!すぐに行く、案内してくれ |
| スタン | 俺も行くぞ! |
| ティア | 酷い有り様ね…。しかも、被害は住宅地ばかり… |
| ヴェイグ | 漆黒の騎士の姿はやはり見えないな。さすがにこれだけキムラスカの騎士が動き出しては撤退したか |
| ルドガー | おそらくな… |
| ルドガー | …ティア。ここは俺達に任せて君は王宮に向かうんだ |
| ティア | え? |
| ルドガー | 王宮になら、漆黒の騎士の情報も入っているかもしれない。今の状況を確認してきてほしい |
| ヴェイグ | それに、国王に一刻も早くルークの事を伝えた方がいいだろう。こんな時だから尚更だ |
| ゼロス | なら俺さまも、シルヴァラントの代表としてティアちゃんと一緒に行くとするか |
| ロイド | 俺も一緒に行く。キムラスカの国王に会わせてほしい。実際にルークに会ったのも俺だし |
| ティア | …そうね、わかったわ。ゼロス、ロイド、行きましょう |
| ゼロス | とっとと済ませて早いとこ戻って来ようぜ |
| scene2 | 報復か、謀略か |
| インゴベルト六世 | ──信じられん。まさかルークがシルヴァラントの神子を連れ去ったなど… |
| インゴベルト六世 | しかも、そこにあのヴァンまでもが関わっていると… |
| ティア | 兄の関与については、確証を得たわけではありませんが…その可能性は限りなく高いかと |
| インゴベルト六世 | ふむ… |
| インゴベルト六世 | ただでさえバチカルは今、謎の騎士達の襲撃を受け大変な状況だと言うのに |
| インゴベルト六世 | ルークとヴァン…、二人して何と言う事をしてくれたのだ |
| ゼロス | … |
| インゴベルト六世 | 新たな天啓の出現を巡って、シルヴァラントとウィンドルが揉めている事は把握していたが |
| インゴベルト六世 | そこに何故ルークやヴァンまでもが… |
| ティア | ルークの事は教育係である私の責任です。それに兄の事も… |
| ティア | この不始末は私が必ず…… |
| インゴベルト六世 | 早まるな、ティアよ |
| インゴベルト六世 | これはシルヴァラントと我が国の国交に関わる…いや下手をすれば戦争にさえなりかねん事態だ |
| インゴベルト六世 | まずは、我が国に対するシルヴァラントの疑念を早急に晴らさねばならぬ |
| インゴベルト六世 | それを伝える親書を用意する。使者の方、シルヴァラント国王にお渡し願いたい |
| インゴベルト六世 | それと同時に、ルークと神子の行方については、我が国が責任を持ち突き止める事も約束する |
| ロイド | よかった…。これでひとまず安心、だな |
| ティア | ありがとうございます、陛下 |
| ティア | 私もルークと神子の捜索、並びに兄の関与の究明に全力を尽くします |
| インゴベルト六世 | うむ、頼んだぞ。今回の件をいち早く知らせてくれたそなた達には、心から感謝している |
| インゴベルト六世 | …それにしても、晶化現象に始まり、ルークの問題行動今回の襲撃… |
| インゴベルト六世 | 次から次へと問題が起きている |
| インゴベルト六世 | 民の不安は高まる一方だ…。これからどう対処すべきかよくよく考えねばなるまい |
| ティア | …陛下、街を襲った騎士達はもう街には残っていないのでしょうか |
| インゴベルト六世 | うむ、騎士団が出動してまもなくその者達は撤退した。少数精鋭で、上手く逃げられてしまったそうだ |
| ゼロス | 正体は、わからないままか… |
| キムラスカ兵 | 陛下!謁見中のところ恐れ入ります |
| インゴベルト六世 | 何事か。騒々しい |
| キムラスカ兵 | 襲撃者達のものと思われる遺留品を発見いたしました。襲撃者の手ががりになるかと… |
| インゴベルト六世 | 何と…。この者達の事なら大丈夫だ、見せるがよい |
| ティア | これは腕章…? |
| ロイド | …!まさか…これって… |
| ゼロス | おいおい、冗談きついぜ |
| ティア | あなた達、これに見覚えが…? |
| ロイド | ああ…。この腕章は… |
| ロイド | シルヴァラントの軍のものだ… |
| ティア | …!どうしてそんなものが… |
| インゴベルト六世 | この街を襲撃した騎士達は、シルヴァラントの兵士だというのか? |
| インゴベルト六世 | まさか、神子の誘拐に対しての報復攻撃か──? |
| ロイド | なっ…!それは絶対にあり得ない! |
| ロイド | クラトスも言ってた…シルヴァラント国王はこれまでも争いを避けるよう努めていた、って |
| ロイド | それなのに、こんな事…これはきっと何かの間違いだ…! |
| ゼロス | 落ち着けって、ロイドくん。そもそもシルヴァラントの騎士は黒い鎧なんか着てないぜ? |
| ティア | …恐れながら陛下、これは陰謀めいたものを感じます |
| ティア | 神子の事があるとはいえ、いきなりシルヴァラントが宣戦布告もなしに我が国に攻め込むとは思えません |
| ティア | 何者かが、シルヴァラントに罪を着せようとしているのではないでしょうか |
| インゴベルト六世 | そなたの言いたい事はわかる。私とて陰謀の匂いを感じないわけではない |
| インゴベルト六世 | これまで我が国とシルヴァラントは、長きにわたって友誼を育んできた |
| インゴベルト六世 | シルヴァラント国王の事もよく存じ上げている。軽率な方とは思っておらぬ |
| ティア | では… |
| インゴベルト六世 | だが、事は国家の存亡に関わるのだ |
| インゴベルト六世 | 我がバチカルが侵入を受け大きな被害が出た。これは紛う事なき事実だ |
| インゴベルト六世 | そして今、ここにこの腕章だ。ただちに偽物と断じるのは早計であるように思われるのだ |
| ロイド | くっ…! |
| ゼロス | …国王陛下、よろしいでしょうか? |
| ゼロス | もう一人の神子が攫われた直後、私達はこのバチカルへ来ているのです |
| ゼロス | いくらなんでも、シルヴァラントが兵を差し向けるにはいささか、早すぎる気はしませんか? |
| ティア | … |
| キムラスカ兵 | 陛下…!いかがいたしますか |
| インゴベルト六世 | ふむ…… |
| ティア | 陛下… |
| インゴベルト六世 | …よかろう。事は重大かつ深刻だ。なればこそ慎重を期さねばならぬ |
| インゴベルト六世 | 親書を書こう。まずはルークの事を片付ける |
| インゴベルト六世 | そなた達は引き続き謎の騎士の正体を調査するように |
| キムラスカ兵 | はい!かしこまりました! |
| ティア | 陛下…、ありがとうございます |
| ロイド | よかった… |
| scene3 | 報復か、謀略か |
| ロイド | ふー。どうなるかと思ったぜ… |
| ゼロス | ようやく、キムラスカへの疑念を晴らしたと思ったのに… |
| ゼロス | 今度は漆黒の騎士がシルヴァラントの腕章持ってたって…一体、何がどうなってやがる… |
| ロイド | 漆黒の騎士達がシルヴァラント兵のはずはないけど… |
| ティア | …とにかく、まずはみんなと合流しましょう。考えるのはそれからがいいわ |
| | |
| ルドガー | ──大変だったな…。けど、キムラスカ国王から親書をもらえたのは救いだ |
| ルドガー | これで、両国の衝突を避けられるといいんだが… |
| スタン | でも、別の問題が…。謎の騎士団がバチカルを襲撃なんて… |
| スレイ | 念のための確認だけど、今回の襲撃がシルヴァラントの仕業って可能性は、本当にないんだよな? |
| ロイド | ああ。神子の一件にルークが関わっていた事はクラトスが伏せているはずだ |
| ロイド | それに、シルヴァラントがこんな奇襲みたいなマネをするとは思えない |
| スタン | じゃあ、やっぱり誰かがシルヴァラントの仕業に見せかけようとしたって事か…? |
| ジュード | 陰謀にしては稚拙なやり方な気がするけど、一時的な混乱には役立ちそうだね… |
| ジュード | 現にキムラスカ国王や発見した兵士は動揺しただろうし |
| ミクリオ | 疑念や不安を煽る材料としては十分って事か… |
| ルドガー | 誰が、何の目的かはわからないが… |
| ルドガー | 神子の誘拐と今回のバチカルの襲撃でキムラスカとシルヴァラントの関係は軋み始めている… |
| ミラ | …その二国だけではない |
| ミラ | 神子が誘拐された事を知れば、ウィンドルのセルディクが黙ってはいないだろう |
| スタン | それを言うなら、ア・ジュールもだ。天啓の石碑を探しているし… |
| ヴェイグ | キムラスカも、ルークが神子誘拐に関わっていた事で後始末に動かざるを得なくなったしな |
| スレイ | どこの国も、天啓によって振り回されてる |
| エリーゼ | どうしたらいいんでしょうか… |
| ゼロス | ここで悩んでても仕方ねぇよ。まずは出来る事を、だろ? |
| ロイド | そうだな…。とりあえず、俺は一度シルヴァラントに戻る事にするよ |
| ロイド | ルークの件は、キムラスカの国とは無関係らしいって事しか結局わからなかったけど… |
| ロイド | キムラスカが関わってない事実を伝えるためにも、この親書は一刻も早くシルヴァラント国王に届けないと |
| ティア | ありがとう、ロイド。そうしてくれると助かるわ |
| ロイド | …本当はすぐにでもコレットを捜しに行きたいけど |
| ロイド | これを出来るのは俺しかいないからさ |
| ティア | ごめんなさい。コレットとルークの事は何としてでも私が── |
| ゼロス | ティアちゃん、そりゃねーぜ。まるで一人でルーク達を追う、みたいな口振り… |
| スタン | 俺達だって、ルークやコレットの事は心配なんだ。同行させてくれ |
| ルドガー | それに、今の各国の動向は神子と天啓が鍵となっている…、そんな気がするんだ |
| ティア | あなた達… |
| ティア | …そうね。真相はルーク…いえ、兄さんが握っているのかもしれない |
| ティア | 必ず…突き止めないと |
| ルドガー | …ゼロス、お前だって神子なのにシルヴァラントに戻らなくていいのか? |
| ゼロス | 戻っても王宮に軟禁されるだけだし…ミラさまにティアちゃん、エリーゼちゃんと一緒の方がいいぜぇ |
| ゼロス | 何より、俺さまは「神子」だぜ?天啓絡みの件じゃ何かとお役に立てるはずだ |
| ロイド | まあ、それがいいんじゃないか?ゼロスは王宮にいてもじっとしていられないだろうし… |
| ゼロス | ちょ、ちょっとロイドくん…。俺さまを何だと思ってるのよ… |
| ロイド | へへっ、悪い悪い!みんなと一緒なら、俺も安心だ |
| ティア | ありがとう、ゼロス。みんな。何としてでもコレットを救出しましょう |
| ジュード | なら、そっちの事は一旦みんなに任せてもいいかな? |
| ミラ | ジュード、どうかしたのか? |
| ジュード | 街はおおよそ鎮静化したけど、治療が必要な人はまだたくさんいる |
| ジュード | だから、僕はもう少しこの街に残ろうかなって |
| ティポ | ジュード君はお医者さんの卵だもんねー |
| エリーゼ | ジュードならそう言うかもって思ってました… |
| エリーゼ | でも…ジュードと別れるのは… |
| ジュード | 大丈夫だよ、エリーゼ。ミラだっているし |
| ジュード | それに、みんなともちゃんと打ち解けられたじゃない |
| エリーゼ | …はい |
| ティア | …ありがとう、ジュード。今のこの街にとってあなたの存在は何より心強いわ |
| ティア | …もしミュウとエミル、マルタと会う機会があったら、よろしく伝えてくれるかしら |
| ティア | 特にミュウには…必ずルークを連れて帰るからって |
| ジュード | うん、わかった。それじゃ行くね。街の状況が落ち着いたら、僕もまた合流するよ |
| ミラ | ジュード、気をつけてな |
| スタン | …行ったな。よし、じゃあ俺達も早いところ動き出すとしようか |
| ライラ | そうですわね。まずはどこへ向かうかですが… |
| ルドガー | 結局、ルークの行方については情報が得られなかったな… |
| ミクリオ | 神子を攫ったとなれば次にする事は天啓の石碑を読み解く事だろうね |
| スレイ | 確かに…。…でも、天啓の石碑って、まだ見つかってないんだよな? |
| ヴェイグ | となると、今頃コレットの力を使って、石碑を探しているかもしれないな |
| ロイド | そこに行けば、ルークかコレットが…?でも、どうやってそこに… |
| ゼロス | おいおい、俺さまも神子だって事を忘れてない?「あれ」なら俺さまも使えるんだけど |
| エリーゼ | あれって…何ですか? |
| ゼロス | まあまあ、後で見せてやるって。って事で、目的地は俺さまに任せてとにかく街を出ようぜ |
| ティア | 今街を離れる事は心苦しいけれど、今は、コレットを追わなくては… |
| ティア | …行きましょう |