| Name | Dialogue |
| scene1 | 勝利の代償 |
| リフィル | ふう… |
| ジーニアス | どう?姉さん |
| リフィル | 二人共峠は越したわ。時間はかかるけど、何とか持ち直すでしょう |
| カノンノ | よかった…! |
| リタ | ルークもミュウも助かるのね。ほっとしたわ |
| リッド | 一時はどうなる事かと思ったぜ。ま、無事で何よりだ |
| アスベル | ああ、そうだな。本当にありがとう、ジーニアス、リフィルさん |
| リフィル | ここへ来るまでに施した応急処置が功を奏したのよ。賢明な判断だったわ |
| リフィル | …さてと、ここはあなた達に任せて私はそろそろ戻るわね |
| リフィル | 彼らが目を覚ますまで、ゆっくりしていくといいわ。…後はお願いね、ジーニアス |
| ジーニアス | うん、任せといて |
| ジーニアス | あーあ、二人共こんなにボロボロになっちゃって… |
| ルドガー | まさかルーク達だけでクロノスに勝ったなんてな |
| ミラ | 何とか勝利を得たが、その分、代償も大きい |
| エミル | …そうだね。二人共助かったからいいものの、ここまでひどい怪我を負うなんて |
| アスベル | ルーク達はしばらくここで安静にしていてもらわないとな |
| ソフィ | ルークとミュウが治るまで、わたし達もここにいるの? |
| リオン | …いや、僕達に立ち止まっている時間はない |
| リタ | そうね、二人はここに残してあたしらだけで次の大精霊のところへ行くしかないわ |
| カノンノ | ルーク…ミュウ… |
| ジーニアス | 大丈夫、二人の事はボクが責任を持って見てるから安心して |
| エミル | 僕もここに残ります。二人が心配だし… |
| ミラ | お前達が見ていてくれるならルーク達も心強いだろう |
| ルーク | う… |
| ソフィ | ルーク!? |
| ルドガー | 意識が戻ったのか? |
| ルーク | あれ…?ここ、どこだ…? |
| ジーニアス | ボクの家だよ。思ったより早く意識が戻って安心したよ |
| ルーク | ジーニアス…?お前の家っつー事は、ここはメルトキオか…? |
| リッド | ああ、結構前に戻って来たんだ。お前はずっと意識がなかったからわからないのも無理ねえけどな |
| ルーク | …そうか、俺は確か時空の歪みでクロノスと戦って…… |
| アスベル | ルーク、本当によくやってくれたな。お前達のお蔭でクロノスの暴走を鎮められたんだ |
| カノンノ | それだけじゃないよ、クロノスが私達に協力してくれる事になったの。本当にありがとう、ルーク |
| ルーク | いや…俺はただ…ブタザルの奴が── |
| ルーク | そうだ、あいつは!?ブタザルはどこだ!? |
| リタ | ミュウならあそこに── |
| ミュウ | … |
| ルーク | ……!!くっ…! |
| カノンノ | ちょ、ちょっとルーク!?駄目だよ急に起き上がったりしたらまた傷が… |
| ルーク | うるせー…!傷なんかどうでも── |
| ルーク | いつっ…! |
| ソフィ | ルーク、無理しちゃダメ |
| ルーク | おい、ブタザル… |
| ミュウ | … |
| ルーク | ブタザル!おい、起きろ!おい!! |
| ルーク | くそっ…やっぱり…だから逃げろってあれほど… |
| ルーク | …… |
| エミル | ルーク…。大丈夫だよ、安心して。ミュウは生きてる |
| ルーク | へ?……マジか?本当か、エミル!? |
| エミル | うん、本当だよ。ちゃんと息してるでしょ? |
| ルーク | ……本当だ。弱々しいけど…息してる… |
| ルーク | …けっ、何だよ!ブタザルのくせに脅かしやがって、こいつ… |
| エミル | 安心した? |
| エミル | …それなら、そろそろ腕を放して欲しいんだけど? |
| エミル | 嬉しいのはわかるけど、そんなに強く掴まれると… |
| ルーク | なっ、べ、別に嬉しいとかそんなんじゃねーっつーの! |
| ルーク | てっきり死んだと思ってたからびっくりしただけだ! |
| ルーク | つーか、お前らもお前らだ!生きてるなら生きてるって早く言えよ! |
| リタ | あんたが勝手に早合点しただけでしょ。ほんと、バカっぽいんだから |
| ルーク | お前らがそろいもそろって辛気くせー顔してるからだろーが!俺は悪くねえ! |
| カノンノ | ルークは本当にミュウの事が大好きなんだね |
| ルーク | 誰がだよ!こいつを死なせたらティア達に何言われるかってだけで── |
| ソフィ | …ふふ |
| ルーク | あ、こら!何笑ってんだソフィ! |
| リッド | 何はともあれルークも怪我はしてっけど一応元気そうだし、一安心だな |
| アスベル | ああ、そうだな |
| ルドガー | …よし、ルークの目覚めも確認出来たところで、今度こそ出発しようか |
| ルーク | 出発?次の大精霊のところか? |
| ミラ | ああ、そうだ |
| ルーク | そうか。じゃあ、俺も一緒に… |
| ルーク | いてっ! |
| ジーニアス | 駄目だよ、ルーク。大人しく寝てないと |
| エミル | 大精霊の事はしばらくみんなに任せてルークは治療に専念して。僕も一緒にいるから |
| ルーク | けっ、こんな傷、屁でもねーよ。動いてる内に治るっての |
| カノンノ | 駄目だよ。アッシュさん達とも約束したの、ルークに無理はさせないって |
| ルーク | アッシュ…!?そういやあいつらは一体どこに… |
| アスベル | メルトキオまで一緒に戻って来たんだけどな、その後すぐにどこかへ行ってしまったんだ |
| カノンノ | アッシュさんもナタリアさんもルークの事、すごく心配してたんだよ |
| カノンノ | だから約束したの、ルークの事は安心して任せて、無理はさせないからって |
| ルーク | ナタリアはともかく……あいつが俺の心配なんかするわけねーだろ |
| カノンノ | 本当だよ…!気を失ったルークをここまで運んでくれたのもアッシュさんなんだよ |
| ルーク | あいつが俺を…?信じらんねえ… |
| アスベル | いや、カノンノの話は事実だ。彼自身も傷を負っていたし、俺が運ぶと言ったんだが、それでもって… |
| ルーク | マジかよ…。何であいつがそんな… |
| ルーク | って、いてて…くそ |
| アスベル | ルーク…? |
| リオン | いずれにせよ、今の負傷した状態のお前では足手まといだ。…まずは傷の治療に専念しろ |
| ミラ | …私も同感だ。傷が癒えたらまた合流すればいい |
| ルーク | …… |
| リタ | ちょっと、あいつ大丈夫なの?何かぼーっとしちゃってるけど |
| エミル | うーん、僕にもわからない…。急にどうしちゃったんだろう |
| ジーニアス | …とにかく、ルーク達の事はボクらに任せて、君達は早く動き出した方がいいんじゃない? |
| リッド | それもそうだな |
| リオン | ミラ。次の大精霊の居場所はどこだ |
| ミラ | …ここから西の方角に大精霊の強い気配を感じる |
| ソフィ | 西…じゃあ、そっちの方に向かえばいいんだね |
| アスベル | ああ |
| リッド | じゃあなルーク、オレ達は行く |
| ルーク | … |
| ミラ | では、エミル、ジーニアス後は頼んだぞ |
| エミル | うん、わかった。みんな、気をつけて |
| ジーニアス | 外まで見送るよ。みんな、行こう |
| scene2 | 勝利の代償 |
| リタ | ありがと、ジーニアス。見送りはここまででいいわ。ルーク達の事、頼んだわよ |
| ジーニアス | うん、任せて。姉さんもいる事だし、二人の事は心配いらないよ |
| ジーニアス | …それにしても、コンウェイが帰っちゃったのは残念だったなー。もっといろいろと話したかったのに |
| ルドガー | 縁があればまた会えるだろ。そうガッカリするなよ |
| エミル | ちょ、ちょっとルーク!駄目だって… |
| ルーク | うるせー!邪魔すんじゃねーって言ってんだろ! |
| カノンノ | あれって… |
| | |
| エミル | ごめん、みんな…。頑張って止めたんだけど全然言う事聞いてくれなくて… |
| ルーク | おい、お前ら!俺を置いて行こうったって、そうはいかねーからな! |
| ソフィ | いつものルークに戻ってる… |
| アスベル | そ、そうだな… |
| ルーク | ここまで来たからには追い返したって無駄だからな。俺も一緒に行くぜ! |
| アスベル | 一緒にって、無茶を言うな。そんな大怪我をしているのに |
| ルーク | こんな怪我、どうって事ねーっつーの! |
| ルーク | 大体、怪我が完全に治ってねーのはミラやリッドも一緒だろ |
| リッド | う…それは…まあ… |
| ルーク | ほらみろ!なのに俺だけなんて不公平じゃねーか |
| ルドガー | いや、でも… |
| ルーク | そんなに俺を休ませたけりゃさっさと大精霊、全部元に戻そうぜ。そうすりゃ俺も休んでやるからよ |
| ソフィ | … |
| | |
| ルーク | 何だよ、ソフィ。文句でもあんのか |
| ソフィ | ううん、そうじゃない |
| ソフィ | ルークが大精霊を心配してるって気持ちはわかった。…だから、来てもいいよ |
| ルーク | 別に心配してねーっつーの。俺はただ早いとこ面倒事を終わらせたいってだけで… |
| ソフィ | うん、わかった。…でもね、一つだけ約束してほしいの |
| ソフィ | 辛くなったらすぐに言って。わたしがルークを守るから |
| ルーク | …わーったよ、ったく。必要ねーけど、約束してやる。これでいいか? |
| ソフィ | うん、ありがとう |
| リタ | 結局ついてくるわけ?みんな、あんたのためを思って言ってたってのに、呆れた… |
| リタ | とにかくついてくる以上、絶対足手まといになんじゃないわよ?いい? |
| ルーク | へっ、任せとけっつーの! |
| ルーク | じゃ、そういう事でエミル、それにジーニアス、ブタザルの面倒は頼んだぜ |
| エミル | …う、うん、わかった。ルークも気をつけて |
| リオン | …よし、そうと決まればさっさと行くぞ。お前達、これ以上無駄に時間を使うな |
| ルーク | 無駄って言い方はねーだろ!大体リオン、お前はいつも── |
| | |
| | きゃああああっ! |
| ルドガー | 何だ、今の悲鳴は… |
| ミラ | 見ろ、魔物だ! |
| | ガルル… |
| リッド | やれやれ、これじゃあまた「時間を無駄にするな」ってリオンに言われちまうな |
| アスベル | 街の人達に被害が及ぶ前にあの魔物を倒さないと…。よし、みんな急ごう! |
| scene1 | 大精霊の気配 |
| ロイド | …あれからあちこち見て回ったけど新たに破壊された街や村は見つからなかったな |
| スタン | あいつの言った通りだったって事か… |
| アーチェ | やっぱ、あの白い髪のヤツが犯人なんじゃない?犯人じゃないとわかんないような事知ってたじゃん |
| ゼロス | 俺さまもアーチェちゃんに同感だ。あいつがアスカを暴走させてたって事とも話が繋がるし… |
| ユーリ | … |
| クレス | ユーリ、君はどう思う?何か引っかかっている事があるように見えるけど |
| ユーリ | ん? |
| ユーリ | ああ…まあ、大した事じゃねえんだがちっとばかし気になる事があってな |
| ユーリ | あいつが犯人だとして、何で出くわした時、オレ達には手を出さなかったのか… |
| スタン | う~ん。わからないけど、俺達の方が人数が多かったから、とか、そんな理由じゃないのか? |
| ユーリ | 街一つ滅ぼしてのけたのかもしれない奴がか?どうだろうな |
| ユーリ | それに、あいつが例の第三者って奴だとしたら、単独ってのも考えにくいんじゃないのか |
| レイヴン | うーん…まあ、確かに… |
| ユーリ | テムザ山でロイド達が最初に会った時点で、言ってみりゃ奴はオレ達の目的を知ったわけだ |
| ユーリ | もし、あいつが第三者なら尻尾を掴もうとしているオレ達を野放しにする理由がわからねえ |
| クレス | なるほど。確かにそうだね… |
| ロイド | じゃあ、あの男は第三者じゃないって事か? |
| ユーリ | それも現時点じゃ断定出来ないな。詳しい事情を知る存在だって事は間違いねえだろうけどな |
| ゼロス | だったら、何にせよやる事は一緒だ。何としてもあの男を捜し出して、洗いざらい吐かせるしかねーだろ |
| ユーリ | …まあな |
| レイヴン | とにかく、当面の目的はあの男の捜索って事で決まりかね |
| クレス | ああ。…とは言うものの彼の行先は見当もつかないし、どこへ向かったらいいんだろう… |
| | ドガッ! |
| ロイド | ん?この音は何の音だ? |
| | |
| | ガルルルル! |
| | グオオオオ! |
| | バキィッ! |
| スタン | 叩きつけるような音と…魔物の声が…たくさん…? |
| アーチェ | 近くで誰かが魔物と戦ってるんじゃない!? |
| レイヴン | 音だけじゃ何とも言えんけど、もしかしたら、助けが必要だったりするかもねえ |
| クレス | とにかく、音のする方へ行ってみよう! |
| | |
| ルーク | いてて…。…ったく、クロノスの野郎手加減なしで殴りやがって… |
| カノンノ | 仕方ないよ。あれはクロノスの意志じゃないんだし… |
| カノンノ | クロノスが言ってたよ。ルーク達に借りが出来た、それを返すために私達に力を貸してくれるって |
| カノンノ | きっとルーク達に、とても感謝してるって事だよ |
| ルーク | … |
| ルーク | …けっ、まあ仕方ねーからそういう事にしてやるけどよ |
| カノンノ | ふふっ |
| ルドガー | じゃあ、俺はそろそろ行くよ |
| ルーク | ん?何だ、ルドガー、一緒に来ないのかよ? |
| ルドガー | ああ、俺は兄さんと合流して時空の歪みに取り残された人達を一緒に助けに行く |
| ルーク | そうか…ってそういや、時空の歪みはどうなったんだ? |
| ルドガー | 現状はそのままで、完全にこの世界との繋がりが断たれるのは、先の話になると思う |
| ミラ | あれだけの空間だからな、完全に繋がりを断つには時間が必要だ |
| ルーク | って事は…また地震が起きたら時空の歪みに落っこっちまうかもしれねーって事か? |
| カノンノ | それは安心して。その心配はなくなるみたい |
| ミラ | クロノスが自我を取り戻した今、亀裂が生じたとしても、時空の歪みと繋がる事はない |
| ミラ | 更に言えば、幸いマナの減少も徐々に緩やかになっている |
| ミラ | 地震などの異変も静まりつつある事を踏まえると、亀裂が発生する事自体少なくなっていくだろう |
| ルーク | ややこしいな…要するにどういう事なんだ? |
| ルドガー | 要は、新たな被害が出る事はない、後は取り残された人達を救い出せば、一件落着って事だ |
| ルーク | よくわかんねーけど、とにかくもう大丈夫って事だな |
| ルドガー | ま、そんなところだ |
| アスベル | ルドガー、今まで本当にありがとうな。お蔭でいろいろと助かったよ |
| アスベル | ここからは別行動になるが、時空の歪みに取り残された人達を必ず救い出してあげてほしい |
| ルドガー | ああ、勿論。絶対最後の一人まで救い出してみせる |
| ルドガー | …それじゃ、俺はそろそろ行くよ。また俺で力になれる事があったらいつでも声をかけてくれ |
| リッド | ああ、ユリウスにもよろしく伝えておいてくれ |
| scene2 | 大精霊の気配 |
| リッド | この辺りの魔物は凶暴なヤツが多いから注意して進めよ |
| アスベル | …ん? |
| アスベル | ああ、そういえば、リッドはコルテア街に住んでるって言っていたな |
| リッド | ああ。異変が起こる前は、この森でよく狩りをしてたからな、それなりに詳しいぜ |
| リッド | そういや、ルイニス街も近いよな。リオンなら、この辺りの事に詳しいんじゃねえのか? |
| リオン | …さあな |
| カノンノ | この森の荒れようじゃ動物達も居場所をなくしてしまってるかもしれないね… |
| リタ | それは魔物にも言える事ね。森を出て、周辺の街や村に被害を与えてなきゃいいけど |
| ルーク | …つーか、ミラ。何かどんどん森の奥に進んでるけど方向、合ってんのかよ? |
| ミラ | ああ、問題ない。目指す方角は、概ね変わりない |
| リッド | この方角って言ったら、コルテア街があるところじゃねえか |
| アスベル | そんな…ミラ、大精霊はコルテア街にいるのか? |
| ミラ | いや、今の時点では正確な位置まではわからない |
| ソフィ | 街じゃないといいね… |
| アスベル | とにかく、大精霊の居場所が特定出来ないとしても急いだ方がいい |
| カノンノ | うん、そうだね。ミラ、引続き道案内を… |
| | ガサッ |
| リッド | …!今の音はまさか… |
| | |
| | ガルルル! |
| リッド | やっぱり魔物か! |
| scene1 | 偶然の再会 |
| ロイド | あちこちに魔物の死体が…。戦闘は既に終わったみたいだな |
| ゼロス | ああ、…にしてもこれだけの魔物を倒すなんてただ者じゃなさそう── |
| | |
| | ガアアッ! |
| アーチェ | なっ、魔物!? |
| レイヴン | うおっと…!まだお仲間が潜んでたか |
| セネル | …どけっ! |
| セネル | ふっ、はっ、食らえっ! |
| | ギャウウッ! |
| | |
| セネル | ふう… |
| クレス | 素手で魔物を…君は一体…? |
| セネル | すまない、驚かせてしまったな |
| セネル | 俺はセネル・クーリッジ。シーブル村の… |
| アーチェ | あーっ!!誰かと思ったらセネルじゃん! |
| ロイド | 何だアーチェ、知り合いか? |
| レイヴン | そそ、リタっち達とア・ジュールに行った時にお世話になったんよ。なー、セネルちゃん |
| セネル | お前達…。まさかこんなところで再会するとはな。他の二人は一緒じゃないのか? |
| アーチェ | 二人?ああ、リタとエステルの事ね。今はいろいろあって別行動してるの |
| アーチェ | それより、あんたこそどうしてこんなとこに?海で救助活動を続けるって話じゃなかったっけ? |
| セネル | …少し気になる話を聞いてな |
| セネル | 海の荒れは収まりつつあるし、救助活動は中断して、今はその「気になる話」を追う事にした |
| クレス | 気になる話…?セネル、よかったらその話、僕達にも聞かせてくれないかい? |
| セネル | ああ、勿論だ |
| セネル | 西にある小さな孤島を知っているか? |
| ゼロス | ルイニス街の西にある孤島…確かバレル島だったか |
| セネル | ああ。そこで妙な雷雲が発生しているらしい |
| セネル | そいつは、普通じゃ考えられないほどの速さで拡大、遂には本土に差しかかるまで広がっているそうだ |
| ゼロス | 雷雲ねえ…雷が鳴って、大雨が降るってだけじゃねーの? |
| セネル | ただの雷雨だけなら、俺もわざわざ調べになんか行かない |
| ユーリ | って事は、何か妙なとこがあんだな |
| セネル | 雨は降らないらしいが、雷がな。自然現象で起こる雷とは比にもならない威力だって話だ |
| アーチェ | 比にもならない威力ってどんくらいなのよ? |
| セネル | これ以上の事は俺にもわからない、だから確かめに行くんだ |
| セネル | その情報が本当だとしたら…雷雲が拡大している以上周辺の街にも被害が出る可能性がある |
| スタン | … |
| ユーリ | 異常な威力の落雷か…嫌な感じだな |
| クレス | …僕も同じ事を考えてたよ。ひょっとすると、これは、大精霊の影響なのかもしれないね |
| ユーリ | 考えられるな。ま、オレは専門じゃねえし詳しい事はわからねえが |
| セネル | 大精霊の影響?一体どういう事だ? |
| セネル | お前達はミラとも知り合いなんだな |
| ユーリ | て事は、お前もか?世間ってのは案外狭いもんだな |
| レイヴン | あのさ、もし本当に大精霊絡みなら、ミラちゃん達にこの雷の話、伝えた方がいいんでないの? |
| クレス | そうだね…彼女に伝えた方がいいとは思うけど… |
| ユーリ | 慌てんなって。本当に大精霊が関わってんなら、ミラだってもう向かってるかもしれねえぜ |
| セネル | ミラが…そうか。なら、お前達、俺と一緒にシーブル村へ来るか? |
| アーチェ | シーブル村…?何で?孤島はルイニス街の西にあるんじゃ… |
| セネル | バレル島へ行くには、シーブル村から船を出し、南の海上を進むしか方法はない |
| セネル | …仮にミラが動き出しているとしたら遅かれ早かれ、必ずシーブル村を目指す事になるだろう |
| レイヴン | 闇雲に動くよりは、セネルくんに同行した方が、ミラちゃん達と会える可能性は高いって事ね |
| ゼロス | じゃあ、今はあの男の捜索は後回しにしよーぜ!俺さま、野郎よりミラさまを追う方がいいっ! |
| スタン | …なあ、セネル…その雷雲の事だけど、今どの辺りまで広がってるんだ? |
| セネル | バレル島から一番近い街…ルイニス街の上空辺りまで拡大していると聞いている |
| ロイド | ルイニス街だって!?おい、スタン… |
| スタン | …ああ |
| スタン | …悪い、みんな。俺、一旦ルイニス街に行くよ。ここからならそう遠くないし |
| セネル | ルイニス街へ?今街へ行ったとしても、お前がそこで出来る事はないだろう? |
| スタン | ルイニスには妹のリリスがいるんだ。もし雷が当たったら…! |
| セネル | 妹か… |
| セネル | …スタン、だったらなおさら、街へ行くのはよせ |
| スタン | 何でだよ! |
| セネル | …妹を救いたいなら、俺と一緒に来て大きな被害になる前に落雷を止める方法を探すべきだ |
| セネル | 俺にも妹がいる。お前の気持ちは痛いほどわかるが、むやみに突っ走らず冷静になれ |
| スタン | セネル… |
| ロイド | スタン、俺もそれがいいと思う。ここはみんなでシーブル村に向かってミラを捜そう |
| スタン | シーブル村だな、わかった。…リリス…街のみんな…絶対に雷は止めてやるからな…! |
| セネル | よし、そうと決まれば早速行こう |
| | |
| リッド | コルテア街はもうすぐだ |
| リッド | まさか本当に大精霊がコルテア街にいるって言うんじゃねえだろうな… |
| ミラ | いや、気配はここからさらに北西…。被害を心配するならおそらくルイニス街の方だ… |
| ルーク | お、おい、待てよリオン! |
| ミラ | そうか…ルイニス街は今も…… |
| リオン | … |
| | |
| ミラ | …リオン、気を落とすな。気休めにしかならないかもしれないが聞いてくれ |
| ミラ | 私達が出会ってすぐの頃、氷漬けの街を元に戻すべくイフリートの力を借りた事を覚えているか? |
| リオン | …ああ。それがどうした |
| ミラ | 大精霊イフリートの力を用いても、街の氷が溶ける事はなかった。すなわち── |
| リオン | …あの氷に覆われている以上ルイニス街が大精霊の影響を受ける事はない、という事か… |
| ミラ | 確証はないが、その可能性は高い |
| リオン | … |
| リオン | …ふん、まさか街があの氷に守られる事になるとはな。皮肉なものだ |
| ルーク | わかるように言えよ。つまりルイニス街は大丈夫って事か? |
| リタ | 多分ね。でも、切羽詰まってるって状況に変わりはないわよ |
| リタ | それにルイニス街だけじゃないわ。あの辺だって、他にも街や村はたくさんあるし |
| アスベル | リタの言う通りだ。とにかく俺達は一刻も早く大精霊の元へ急いだ方がいい |
| ソフィ | うん、急ごう |
| scene2 | 偶然の再会 |
| アーチェ | 孤島に行ってミラと会えると思う?別の大精霊のところに行っちゃってすれ違っちゃったりしないかな? |
| ユーリ | どうだろうな。けど、バレル島で何が起きてるか、確かめるのも無駄じゃないだろ |
| ゼロス | ん?おい、みんな…向こうから来る奴らってもしかして… |
| ミラ | ユーリ? |
| ユーリ | ミラ…!?…おいおい、偶然にもほどがあるだろ |
| アーチェ | ホント、嘘みたい… |
| アスベル | 俺達もびっくりしたよ |
| ミラ | まさか、大精霊の気配を追って来てお前達と会う事になるとはな |
| ロイド | …大精霊の気配…!?やっぱりそうだったのか! |
| ロイド | 聞いてくれミラ。セネルの話だと―― |
| カノンノ | 西の孤島に発生した妙な雷雲…? |
| ソフィ | ミラ…それって… |
| ミラ | ああ、発生している現象から考えても大精霊による影響とみて間違いはなさそうだ |
| ミラ | 更に言えば、雷雲の発生したバレル島は、私達が追っていた大精霊の気配と同じ方角にある |
| リオン | つまり、僕達の追っていた大精霊こそルイニス街周辺に雷雲をもたらしている元凶、という事か… |
| スタン | リオン、早く何とかしないと、ルイニス街が── |
| リオン | …街への影響は今のところ問題ないと考えていいようだ |
| スタン | 問題ない…?それはどういう事だ? |
| リオン | 街を覆う氷だ。同じ大精霊であるイフリートの炎でも、影響を受けなかった事を考えると… |
| スタン | 雷の影響も受けないって事か!? |
| ミラ | …おそらく、だがな |
| スタン | よかった…少し安心したよ。とはいえ、雷は何とかしないとな |
| スタン | ルイニス街の氷が結局何なのか、全然わかってないし、確実に安全だとも言い切れない |
| スタン | それに、例えルイニス街が大丈夫だとしても、他の街が危険に晒されてるかもしれないし |
| スタン | そうだろ、リオン? |
| リオン | ああ… |
| スタン | なら、俺もバレル島に連れて行ってくれ!このまま黙って見てるなんて、俺には出来ない! |
| クレス | …よし、じゃあ、こうしないか? |
| クレス | 僕達は、引続き第三者を追う。大精霊の事はミラ達に任せたい |
| クレス | スタン、君はミラ達と一緒に大精霊のところへ行くといい。第三者の事は僕達で何とかするから |
| スタン | クレス… |
| クレス | ミラ、これでどうかな?彼にとってあの街は、家族のいる大切な場所なんだ |
| クレス | だから、同行させてやってほしい |
| ミラ | わかった。スタン、では共に行くぞ |
| スタン | ありがとう! |
| ロイド | やっぱり大精霊だったんだな… |
| ユーリ | どうやってお前らにそれを伝えたもんかと思ってたんだが手間が省けて助かったぜ |
| ミラ | 私達もここでユーリ達に出会わなければルイニス街に向かっていただろう |
| ミラ | まさか、気配のありかが海を隔てた孤島にあったとは、想像すらしていなかったからな |
| アスベル | …とにかくこれで大精霊の居所ははっきりした。俺達は急いでバレル島へ向かうべきだ |
| ソフィ | うん、わかった |
| リッド | バレル島に行くにはシーブル村に行かないといけねえんだったな |
| セネル | ああ。そこからでしか島へは行けない |
| ルーク | 決まりだな。んじゃ、とっとと行こうぜ |
| アスベル | ユーリ、情報ありがとうな。大精霊の事は任せてくれ、必ずどうにかする |
| ユーリ | ああ、頼んだぜ。オレらは第三者の情報収集に専念させてもらうさ |
| ロイド | 大精霊の事、頼んだぜ! |
| リタ | おっさん、あんたもぼーっとしてないでしっかり働きなさいよ |
| レイヴン | へいへい。全く、たまに会ったと思えば、つれない言い草なんだから… |
| ロイド | じゃあ、俺達は行くぜ。しっかりやれよ! |
| ゼロス | 俺さまもミラさまと一緒に行きたいけど、ま、しょーがねえかぁ。気をつけろよー! |
| カノンノ | うん!みんなも、気をつけてねー! |
| ソフィ | シーブル村… |
| アスベル | ソフィはシーブル村に来た事があるのか? |
| ソフィ | うん。優しい人達がたくさんいてすごくいいところだった |
| アスベル | そうか、それはよかったな。村の人達と久しぶりに会えるといいな |
| アスベル | じゃあ、改めて出発しよう。みんな、準備はいいか? |
| | ガサ… |
| リオン | …!待て、そこの茂みに何かいる |
| カノンノ | ひょっとして… |
| | ガアアアアッ! |
| ルーク | けっ、魔物かよ! |
| scene1 | シーブル村へ |
| セネル | ここまで来れば、シーブル村まではあと少しだ |
| ミラ | そうか──…ん?あれは… |
| | ガルル… |
| フィリア | … |
| セネル | 誰かが魔物に襲われているようだな |
| スタン | 大変だ、助けないと! |
| アスベル | ああ! |
| ??? | たああーーーっ! |
| | ズバッ! |
| | ギャオオオッ! |
| セネル | あいつ… |
| アスベル | …?セネルの知り合いか? |
| ??? | フィリア、大丈夫!? |
| フィリア | はい…!ありがとうございます、シングさん |
| セネル | シング! |
| シング | あ、セネル!どこ行ってたんだよ |
| セネル | それはこっちの言い分だ。お前こそどこへ行っていた? |
| シング | それが…実は、時空の歪みってところにうっかり迷い込んじゃってさ |
| シング | 詳しく話すと長いんだけど、ユリウスさんって人に助けてもらってようやく戻って来れたんだよ |
| ソフィ | あ!シング…! |
| シング | ソフィ! |
| シング | …って、あれ!?オレも知った顏がちらほら… |
| シング | みんなに久しぶりに会えて嬉しいよリタも一緒にいるんだね! |
| リタ | いつぞやは情報提供、助かったわ。お蔭で赤い髪の男もコレットも見つける事が出来たわ |
| フィリア | こんにちは、ルークさん |
| ルーク | フィリアじゃねーか。何でメルトキオの司祭がここにいるんだ? |
| セネル | 司祭? |
| シング | 少し前までは、オレを助けてくれたユリウスさんの手伝いをしてたらしいんだけど… |
| シング | 今はいろいろあってシーブル村で怪我人達の救護を手伝ってくれてるんだ |
| スタン | へえ。この状況で司祭様がいてくれるなんて、村の人達も心強いだろうな |
| シング | ところでセネル、コハクとヒスイを見なかったか?ずっと村に帰ってないらしいんだ |
| スタン | コハクとヒスイって、兄妹の?その二人なら、俺、ちょっと前に会ったぞ |
| スタン | …って待てよ、そういえばシングを捜してるとか何とか言ってたような… |
| シング | ええーっ!?コハクはともかく、ヒスイまでオレを捜しに? |
| シング | それは悪い事しちゃったな… |
| シング | でも無事でよかった、ずっと心配してたんだ |
| スタン | 二人共元気そうだったよ。確か今は、クラースさんって人と行動を共にしてるはずだ |
| シング | ありがとう、スタン。二人の事がわかって安心したよ |
| シング | 本当はオレも二人を捜しに行きたかったんだけど、今は村も物騒な事になっててさ… |
| シング | さっきの魔物、見ただろ?ああいった魔物がしょっちゅう村に侵入して来るような状態なんだ |
| フィリア | シングさんが戻られてからは、魔物の被害がかなり減ったんですがそれでも怪我人は後を絶たなくて… |
| セネル | それで、シーブル村に留まり救護を手伝ってくれてるのか… |
| フィリア | ええ… |
| シング | でもまあ、セネルも村に戻って来たしシーブル村もこれでちょっとは安心かな? |
| セネル | …いや、シング。悪いが、俺はまた少し村を離れなければならない… |
| シング | …何かあったのか? |
| スタン | ああ、実は… |
| フィリア | バレル島に妙な雷雲…ですか |
| シング | へぇ…そんな事になってたんだ |
| セネル | シーブル村の事も気がかりだが、雷雲を放っておけば被害が生まれる可能性が高い |
| スタン | 島から近い街や村にも危機が迫ってるんだ。一刻も早く孤島へ行かないと! |
| シング | だったら、村の事は心配しないで!オレが頑張るからさ |
| シング | フィリアも手伝ってくれてる事だし、こっちはこっちで何とかするよ |
| セネル | すまないな |
| シング | じゃあ、とにかく早いところ村へ戻ろう |
| フィリア | そうですね |
| scene2 | シーブル村へ |
| セネル | よし、村に着いた |
| セネル | …にしても随分と荒れているな。これも天変地異の影響か… |
| シング | うん、オレが戻って来た時にはもうこんな感じで── |
| | |
| | きゃああ! |
| シング | …!あの悲鳴は!? |
| 女の子 | た、助けて… |
| | グルルル… |
| リッド | おいおい、まずい状況だぜ。村のど真ん中に魔物が…! |
| アスベル | その子に手出しはさせない! |
| | バシッ! |
| | ギャウウッ! |
| | |
| リタ | ふう…アスベルが咄嗟に割って入ったお蔭で何とか間に合ったみたいね |
| フィリア | 怪我はありませんでしたか? |
| 女の子 | う、うん…ありがとう |
| シング | はあ…全く、心臓が止まるかと思ったよ。近頃はあんな事ばっかりさ |
| シング | さっきは魔物を追いかけて村の外へ出てたんだけど…やっぱり村を離れちゃ駄目だね |
| ソフィ | あんなにいいところだったシーブル村がどうして… |
| ミラ | これも全て、異変の影響なのだろうな |
| セネル | …シング。こんな状況で、お前一人に村を任せてすまないが… |
| シング | 気にしないで!確かにもう少し人手が欲しいけど、魔物はそんなに強くないし、オレ一人で何とかするよ |
| ソフィ | … |
| ソフィ | ねえ、シング。わたしがここに残って手伝う。それだと少しは助かる? |
| アスベル | ソフィ…お前、いいのか? |
| ソフィ | うん。この村はね、わたしが前にこの時代に来た時に、初めて来た場所なの |
| ソフィ | 村の人達はみんな親切でわたしにとても優しくしてくれた |
| ソフィ | それにね、シングとコハクに助けてもらった事もあるんだよ |
| ソフィ | だから、今度はわたしがシングや村のみんなを助けたい… |
| カノンノ | ソフィ… |
| シング | 力を貸してくれるっていうならオレ達としては大助かりだけど…でも、ソフィ、本当にいいのか? |
| ソフィ | うん、いいよ |
| シング | それなら、ありがたくお願いするよ!ありがとう、ソフィ |
| フィリア | 私からもお礼を…。ありがとうございます、ソフィさん |
| ソフィ | アスベル…。わたしはこの村に残る、だから、大精霊の事はお願いしてもいい? |
| ソフィ | …大精霊の事は、すごく大事な事だってわかってる。けど、困ってるシングを置いていけない… |
| アスベル | ああ、わかるよ、ソフィ。大丈夫、大精霊の事は俺達に任せてくれ。必ず暴走を鎮めると約束する |
| ソフィ | …ありがとう、アスベル! |
| ソフィ | あと、ミラ…ルークの事、見ててあげてね。無理しないように… |
| ミラ | 大丈夫だ、目を配っておく |
| ルーク | あのな、お前ら!二人そろって俺をガキ扱いすんじゃねー! |
| セネル | …とにかくソフィ、本当に感謝する。だが、ここは安全だとは言えない。十分に気をつけてくれ |
| ソフィ | うん、ありがとう。セネル達も気をつけてね |
| セネル | ああ!じゃあ、みんな行こう。船は波止場に係留してある |
| リオン | …!またか… |
| | |
| | ガルル… |
| リッド | やれやれ、また魔物かよ。ソフィもこれから大忙しだな… |
| ルーク | とにかく、とっとと片付けちまおーぜ! |
| scene1 | 雷鳴響く孤島 |
| ルーク | おい、岩にぶつかるぞ! |
| セネル | 大丈夫だ、よけられる! |
| リタ | こっちに大きい渦があるわ! |
| セネル | わかってる! |
| アスベル | それにしてもひどいな、この海域は…難所なんてものじゃないぞ |
| リオン | そこかしこに岩があり、潮の流れも早い。確かに抜けるのは容易ではないな |
| ミラ | … |
| リッド | なあ、ミラ。さっきから全く話してないよな。何か気になる事でもあるのか? |
| ミラ | …いや、何でもない。気にするな |
| アスベル | …?本当に大丈夫なのか? |
| ミラ | ああ、心配をかけてすまない。今は無事この荒れた海を乗り越えられる事だけを祈ろう |
| カノンノ | うん、そうだね… |
| カノンノ | お願い…どうか無事に、バレル島に着けますように… |
| | |
| リタ | 何とか無事にたどり着けたわね…。船酔いしてる余裕すらなかったわ |
| ルーク | ふー…本当にもう何度も死ぬかと思ったぜ… |
| リッド | にしても、これだけ大荒れの海で何とか島までたどり着けたのはセネルの腕のお蔭かもな |
| スタン | ああ、本当だな。ありがとな、セネル |
| セネル | 礼には及ばない。むしろ本番はここからだ |
| アスベル | ああ。それにしても、この薄暗さは… |
| リオン | 陽の光が全く入らないな…。まるで雷雲が全てを遮っているようだ |
| | ゴゴゴ… |
| カノンノ | 雷の音…?今にも落雷しそう── |
| | ズドドドドーーーン!! |
| カノンノ | きゃあっ!?言ってるそばから… |
| ルーク | …おいおい、やべーんじゃねえのか?あんなでっかい稲光を見たのは初めてだぜ… |
| リッド | ああ…それに稲光から雷が落ちるまでそんなに間がなかった。こいつは近いな… |
| リタ | って事は、大精霊も… |
| リオン | …! |
| スタン | カノンノのネックレスが、光り出した…? |
| ミラ | 間違いない、大精霊はすぐ近くにいる |
| ミラ | この雷雲を生み出している、雷を司る大精霊…ヴォルトがな |
| カノンノ | ヴォルト… |
| リオン | …行くぞ。相手がどんな大精霊であろうと、やる事は同じだ |
| アスベル | ああ、リオンの言う通りだ。…みんな、一刻も早くヴォルトを捜し出そう! |
| scene2 | 雷鳴響く孤島 |
| | ゴゴゴゴ… |
| ルーク | ずっと空がゴロゴロ鳴ってやがる。またいつ雷が落ちてきても、おかしくねえぞ |
| リタ | ちょっと、やめてよ。そういう事言うと… |
| | ズドドドドーーーン! |
| カノンノ | きゃーっ!! |
| リッド | うおっ、またかよ! |
| リタ | だからやめてって言ったのに! |
| ルーク | た、ただの偶然だ!俺のせいじゃねっつーの! |
| アスベル | カノンノ、大丈夫か? |
| カノンノ | う、うん…いきなりでびっくりしたけど… |
| スタン | まずいな…。こんな調子じゃ、いつ雷に打たれてもおかしくないぞ |
| ミラ | …だが、それでも行くしかない。今私達が行かなければ、この雷が各地の街を襲う事になる |
| アスベル | そうはさせない…!必ず止めてみせるさ |
| セネル | …よし、みんな。出来るだけ姿勢を低くしながら進め。警戒は怠るなよ |
| カノンノ | う、うん…! |
| | |
| リオン | …!ここは… |
| リッド | 木が焼けて煙が出てる…。さっきのでっかい雷が落ちたんだろうな |
| ルーク | マジかよ…。ズタズタの黒焦げじゃねーか… |
| アスベル | 想像していた以上に深刻な事態だ…。こんな落雷が直撃したら、人間なんてひとたまりもない… |
| リオン | … |
| スタン | なあリオン。ちょっといいか? |
| | |
| スタン | これまでみんなが戦ってきたっていう大精霊の話、聞いたよ。すごい力を持ってるんだってな |
| リオン | … |
| スタン | みんなあちこち怪我してるみたいだし…これまで相当苦労してきたんだろうな |
| リオン | …だから、何だ? |
| リオン | 大精霊の話を聞いて怖気づいたのなら帰れ。セネルに帰りの船を出してもらえばいい |
| スタン | 帰りたい、なんて言ってないだろ!むしろその逆だ |
| リオン | 逆…? |
| スタン | …リオン、俺さ、みんなから話を聞いて考えたんだ |
| スタン | ヴォルトとの戦いは、俺達が前に出て戦わないか? |
| リオン | …何?お前、何を考えている? |
| スタン | ええと…。ほら、ルークとかリッドとか…みんな、結構ひどい怪我じゃないか |
| スタン | 俺は今のところ、大きな怪我もしてないだろ?だから、だよ |
| スタン | これ以上怪我人を増やさないために、俺とリオンで頑張りたいんだ。リオンと俺なら、きっとやれる |
| リオン | … |
| スタン | お前がルイニスのために頑張ってる事はわかってるつもりだ。だから、俺もその手伝いがしたいんだよ |
| リオン | スタン… |
| リオン | … |
| スタン | ごめん、説明がわかりにくかったか?ええと、だからさ… |
| リオン | お前の下手な説明はもういい。無駄口を叩く暇があるならさっさとヴォルトを捜せ |
| | |
| スタン | おい、リオン…! |
| スタン | …って、行っちゃったか。どうしたんだ?リオンの奴… |
| リッド | やれやれ。スタン、お前も大変だな |
| アスベル | 口では大丈夫だって言っていても、リオンはやっぱりルイニス街の事が気がかりなんだろう |
| ミラ | …だとしても、視界や足場の悪いこの状況で、単独で動く事には賛成出来ない |
| スタン | ミラの言う通りだな…。とにかく、リオンを連れ戻さないと |
| スタン | おーい!リオ── |
| | ズドドドドドーーーーン!!! |
| ルーク | ぐあっ! |
| ミラ | ルーク! |
| カノンノ | きゃあっ! |
| アスベル | カノンノ!? |
| リオン | 今の落雷…まさか! |
| アスベル | う… |
| カノンノ | アスベル、大丈夫!?私を守ろうとして、こんな… |
| アスベル | よかった…無事みたいだな。俺の事は心配しなくていい、大丈夫だから… |
| ミラ | …ルーク、立てるか? |
| ルーク | ぐ…あ、ああ、なんとかな。てっきり全員消し炭にされたと思ったけどよ… |
| リタ | ミラが咄嗟に防御陣を展開してくれたからよ。でなかったら今頃… |
| リタ | って、セネル、あんたその肩…! |
| セネル | …問題ない、気にするな。それよりも今の落雷…あれじゃ気配を感じ取るのは難しそうだ |
| リッド | ああ、本当にこんなの直撃したら笑えねえよ… |
| スタン | すごい雷だったな…。これがただの雷だったとしたら、ヴォルトはもっとすごいんだろうな… |
| | |
| リオン | おい、お前達!無事か!? |
| アスベル | ああ、何とかな…。リオン、お前は大丈夫か? |
| リオン | 僕は何ともない。…だが、ヴォルトと戦う前に負傷者を増やす事になるとは… |
| リッド | …とにかく、ここから離れるべきだ。また雷が落ちてくるようじゃ、次こそ一巻の終わりだろうしな |
| リオン | よし、動ける者から離れろ。今度は分散した方がいいだろう。直撃の確率が減る |
| リオン | …スタン、僕に掴まれ |
| スタン | ああ、助かるよ。ありがと── |
| スタン | …なっ…!リオン、後ろ…!! |
| リオン | …! |
| | |
| ヴォルト | ヴヴヴ |
| カノンノ | …!みんな、ネックレスの光がどんどん強くなってる… |
| リオン | では、こいつが… |
| ミラ | ああ、間違いない。ヴォルトだ |
| リタ | こっちが負傷してから出て来るなんて、いい度胸してるじゃない…! |
| ルーク | けっ、どんなマネをしようが結局お前が俺達に倒されるって事は変わらねーけどな! |
| ヴォルト | ガガガ |
| セネル | …!ヴォルトを見ろ、光を帯び始めたぞ… |
| ヴォルト | ガガ…ガガガ… |
| アスベル | どうやら、一気に俺達にトドメを刺すつもりでいるらしい…! |
| スタン | みんな、気をつけろ!来るぞ! |
| scene1 | 大精霊ヴォルト |
| スタン | リオン、今だ! |
| リオン | はああっ! |
| | ズバッ! |
| ヴォルト | ヴヴ… |
| セネル | はあ…はあ…やったか? |
| リッド | いや、まだだ…。だが、ヤツは確実に弱ってるぞ!リオン、今の内にトドメを刺せ! |
| リオン | 言われなくてもわかっている |
| ヴォルト | ヴヴヴ…ガガ… |
| リオン | これで…終わりだっ! |
| ヴォルト | ガガガガガガ |
| | バチバチッ |
| リオン | …!ヴォルトの周囲に光が…まさか、これは──…まずい! |
| ミラ | …! |
| リオン | お前達、離れろ!! |
| | ズババババッ! |
| リオン | ぐっ…! |
| カノンノ | きゃあああっ! |
| アスベル | カノ──…ぐああっ! |
| ルーク | うわあああっ! |
| リッド | うぐっ! |
| スタン | ぐわああっ!! |
| ミラ | くっ…! |
| | |
| スタン | う… |
| リオン | スタン、大丈夫か |
| スタン | 何とか…リオン、お前は…? |
| リオン | ああ。僕は無事だ |
| カノンノ | アスベル…何度も庇ってもらってありがとう…大丈夫…? |
| アスベル | 俺は大丈夫だ…、それより、みんなは…!? |
| ルーク | みんな…何とか無事みたいだ。つか、今度こそマジで死んだかと思ったぜ… |
| ミラ | 渾身の一撃を放ったというわけだな。何とか全員直撃は免れたようだが… |
| セネル | また、ミラの防御陣に助けられたな |
| ミラ | ああ…。だが、今の雷撃でもう防御陣は展開出来そうにない… |
| リタ | …ヴォルトはどこ!?姿が見当たらないわ |
| リオン | 雷撃を放った後、ここから去って行った |
| リオン | 周囲の木々をなぎ払いながらあの森の奥に入って行った |
| スタン | あいつは逃げたって事だよな?だとしたら、きっとヴォルトも相当なダメージを負っているはずだ |
| スタン | すぐに追いかけよう! |
| リッド | そうだな…逃がすわけにはいかねえ |
| ルーク | つっ… |
| ミラ | ルーク、傷が痛むのか? |
| ルーク | このくらい何ともねえ…!…お前ら、とっととヴォルトをぶっ倒して元に戻すぞ |
| カノンノ | うん…! |
| リオン | …こっちだ。動ける奴は僕について来い |
| スタン | ああ、わかった! |
| scene2 | 大精霊ヴォルト |
| リタ | 見事に辺りの木々はズタボロね。すごいエネルギーだわ… |
| スタン | 大精霊の力がここまでのものだなんて…。話は聞いてたけど、想像以上だ… |
| ルーク | …ああ、あの雷撃はヤバすぎるぜ |
| セネル | ミラのお蔭で何とか直撃せずに済んでいたが、次まともにあいつを食らったら… |
| リオン | おそらく全滅は免れないだろう。例え生き残る者がいたとしてもカノンノを失えばそれまでだ… |
| アスベル | 何か方法はないのか…?ヴォルトの雷撃を避けて倒す方法は… |
| リタ | 今までだってギリギリだったのよ?近づけばそれだけ不利になるわ |
| リッド | なら、雷撃を放つ前に倒しちまうってのはどうだ? |
| ルーク | どうやってだよ!あれだけみんなで攻撃してもまだ倒せなかったんだぞ!? |
| ミラ | …いや、出来ない事もなさそうだ。あまり気は進まないがな… |
| アスベル | なっ…本当か!? |
| ミラ | ああ。さっきのヴォルトとの戦闘の最中、奴の周囲のマナの密度が大きく低下する変化が見られた |
| カノンノ | マナの密度が低下…?それってどういう事? |
| ミラ | 簡単に言えば、一時的にヴォルトが無防備な状態になった、という事だ |
| ミラ | その機を狙えばおそらく一瞬で片を付ける事も出来なくはないだろう… |
| スタン | じゃあ、そのタイミングを狙うべきだ。そうだろ? |
| ミラ | …ああ、だが── |
| リオン | …その攻撃方法にはお前の気の進まぬ理由がある、という事だな |
| ミラ | …察しがいいな。いや、リオンは気付いていたか… |
| アスベル | ヴォルトの身体が光に包まれた瞬間だって…? |
| リオン | ああ。間違いない。ヴォルトは光に包まれた後に雷撃を放っていた |
| セネル | …つまりは、その瞬間こそヴォルトを倒せる唯一のタイミングだって事か? |
| ミラ | そういう事だ |
| リッド | それって…失敗したら、問答無用で雷撃を食らっちまうって事だよな。さすがに、それは無茶じゃねえのか? |
| ミラ | 勿論、無茶は承知の上だ。だが、ヴォルトの雷撃がある以上、この方法しかないだろう |
| スタン | そんな… |
| リオン | 闇雲に挑んだところで、雷撃が放たれれば、どのみち終わりだ |
| リオン | …命を懸けるなら、僕は勝機のある方法を選ぶ |
| アスベル | リオン… |
| アスベル | ああ、そうだな、俺もリオンに賛成だ! |
| セネル | 俺も反対はしない。だが、その方法でいくとしてももう少し詳細を詰めた方がいい |
| リタ | 同感ね。うっかり全滅はごめんだわ。それに、さっきみたいに逃げられないようにもしないと |
| リッド | じゃあ、オトリ作戦ってのはどうだ? |
| カノンノ | オトリ? |
| リッド | ああ。ヴォルトが無防備な状態を狙うトドメ役は誰か一人に任せて残りは全員オトリ役になるんだ |
| リッド | オトリ役は分散して攻撃を仕掛けてヴォルトの注意を引きつけておくってワケだ |
| ミラ | いい案かもしれない。ヴォルトの気が逸れる分、トドメ役の成功率は上がる |
| セネル | 少なくとも、闇雲に突っ込むよりは勝算がありそうだ |
| ルーク | けど、誰がそのトドメ役をやるんだ?そいつが失敗したら元も子もねーって事だろ? |
| カノンノ | うーん… |
| スタン | その役目、俺はリオンが相応しいと思うんだけど、どうかな? |
| スタン | 剣の腕はみんな知ってるだろ?それにリオンはすごく冷静だし…俺はリオンが適任だと思うんだ |
| ミラ | 確かにその通りだな。リオンの腕が立つというのは、私も同感だ |
| カノンノ | ヴォルトの雷撃にいち早く気付いて私達に声を掛けてくれたのもリオンだったしね |
| アスベル | 確かに、観察力や判断力という部分でもリオンは鋭いし、申し分はない |
| リッド | 素早さって点でも問題ねえしな。スタンの言う通り、オレもリオンが適任だと思うぜ |
| セネル | 俺も特に異存はない |
| ルーク | いつも態度がそっけないのは気にいらねーけどな |
| リタ | この際態度はどうでもいいでしょ。やる事さえやってくれれば |
| アスベル | …そういうわけだ。リオン、お前にトドメ役を頼みたい。引き受けてくれるか? |
| スタン | 勝手に進めてごめんな、リオン。押し付ける気はないんだ。大切な役だし…リオンに決めて欲しい |
| リオン | 僕は… |
| リオン | … |
| | |
| リオン | …いいだろう、引き受けてやる。だがスタン、勘違いするなよ。僕は別に臆しているわけじゃない |
| リオン | お前達が僕の足を引っ張らないか心配だった、それだけの事だ |
| スタン | ははは、リオンらしいな!…頼むぞ、リオン! |
| リオン | …やり遂げてやるさ、必ずな。ただし、お前達は誰一人として僕の足を引っ張るな。…いいな? |
| スタン | ああ、勿論約束するよ。な、みんな? |
| リッド | おう!オレは元々猟師だからな。こういうヤツなら任せとけって |
| ルーク | それより、リオン!お前、役割重大なんだからな! |
| ルーク | 言ってみりゃ、俺達の命はお前にかかってんだから…集中してやれよ、マジで! |
| リオン | そんな事は言われなくてもわかっている |
| アスベル | よし。方針も決まって、光明が見えてきたな |
| カノンノ | うん、そうだね |
| スタン | みんな、リオンを信用してるんだな!俺もずっとお前を頼りにしてたけど…やっぱりお前はすごいよ、リオン! |
| | |
| リオン | … |
| スタン | …どうした、リオン?やっぱり不安になったのか? |
| リオン | …何でもない。考え事だ。…カノンノ、お前は僕と一緒に来い |
| リオン | オトリ役から離れたところで待機し、僕がヴォルトを仕留めた後で僕のところに来い。いいな? |
| カノンノ | え…? |
| カノンノ | 私は大丈夫だよ。みんなと一緒に、オトリ役をやるから |
| リオン | お前は、オトリ役よりももっと重要な役目を担っている。忘れたわけではあるまい? |
| カノンノ | で、でも… |
| アスベル | …カノンノ、俺からも頼む。ここはリオンの指示に従ってくれ |
| カノンノ | アスベル…私大丈夫だよ?みんなと一緒にきっと上手く── |
| ミラ | カノンノ、私も二人と同意見だ |
| カノンノ | ミラ… |
| ミラ | お前には大精霊の暴走を鎮めるという重要な役割がある |
| ミラ | ここで万が一お前を失えば世界を救う希望を失う事になる… |
| ルーク | 大精霊の暴走を鎮められるのはカノンノしかいねーしな |
| カノンノ | … |
| アスベル | …お前を信じていないわけじゃない。ただ、この作戦は危険だ、下手すれば全滅する可能性だってある |
| アスベル | お前には、お前にしかやれない事があるんだ |
| カノンノ | …うん、わかった。じゃあ私は、リオンと行って、離れて待ってるね。みんなの無事を祈ってる |
| リタ | あんたこそ、気をつけなさいよ。油断してやられんじゃないわよ |
| スタン | よし!それぞれ役割も決まったところで、早速動きだそう |
| セネル | ああ、そうだな。ヴォルトはこの森を更に奥へ進んだところにいるはずだ |
| リッド | じゃ、早いとこ行くとしよう… |
| リッド | …ん? |
| | ガサガサッ! |
| リオン | …!そこの陰に何かいるぞ! |
| リタ | まさかヴォルト…!? |
| | |
| | ガルルルル! |
| ルーク | 魔物かよ!…ったく、もう作戦失敗かと思ったじゃねーか!脅かすんじゃねえっつーの! |
| scene1 | 雷雲を切裂く者 |
| セネル | …! |
| セネル | …みんな、姿勢を低くしろ。見つけたぞ、ヴォルトだ… |
| リタ | あんなところに… |
| リッド | おい、こっちだ。気付かれたらまずい。注意しながら進むぞ |
| | |
| ヴォルト | … |
| | |
| スタン | 大丈夫、まだ気付かれてはなさそうだな |
| ルーク | へっ、今度はこっちから奇襲をかけてやるぜ。覚悟してろよ、ヴォルト…! |
| ミラ | では皆、準備はいいな?先ほど決めた作戦の通りに動いてくれ |
| リッド | ああ、問題ねえ。攻撃は頼んだぜ、リオン |
| リオン | …わかっている |
| カノンノ | アスベル… |
| アスベル | 俺達の事は大丈夫だ、お前はリオンの指示に従って自分の身を守ってくれ、いいな? |
| カノンノ | う、うん… |
| ルーク | よし、それじゃ始めよーぜ!ヘマするなよ、お前ら! |
| | |
| スタン | うおおおおーーっ! |
| ヴォルト | …! |
| ルーク | 今度は逃がさねーぞ、ヴォルト! |
| ヴォルト | ジジ…ガガガガ… |
| アスベル | そうだ…こっちを見ろ。お前の相手は俺達だ |
| ミラ | ヴォルトの注意を引きつけつつ、雷撃のタイミングを見極めなければ… |
| リタ | リオンの奴、大丈夫なんでしょうね。失敗したら承知しないんだから |
| | |
| カノンノ | 始まった…みんな大丈夫かな… |
| カノンノ | …大丈夫だよね。きっと。うん、絶対大丈夫 |
| リオン | … |
| | |
| スタン | せいっ! |
| セネル | ふっ!はっ!食らえっ! |
| ヴォルト | ガガガ…ガガガ |
| リタ | やっぱり大して効いてない…雷撃はまだなの!? |
| リッド | …!光に包まれ始めてる…ひょっとしたら… |
| アスベル | 来るか…!? |
| セネル | …いや、まだだ! |
| ルーク | くそっ、まぎらわしい事してんじゃねーよ! |
| ヴォルト | ヴヴ… |
| ミラ | もっとだ…!もっと攻撃を重ねてヴォルトの気を引くんだ! |
| スタン | よし!来い!うおおおおっ! |
| scene2 | 雷雲を切裂く者 |
| セネル | はあっ! |
| | ズドッ! |
| ヴォルト | ヴヴヴ |
| アスベル | 次はこっちだ。食らえ! |
| | ズバッ! |
| ヴォルト | ヴ… |
| リッド | さっきから相当攻撃を当ててるぞ。この分だと雷撃を出す前に、決着をつけられるんじゃねえか? |
| ヴォルト | ヴヴ…ガガガッ! |
| | ヴンッ! |
| リッド | うおっ!? |
| ミラ | 油断するな、リッド!これしきの事でヴォルトが倒れるとは思えん |
| スタン | さっき逃げたのは一体何だったんだよ! |
| ルーク | ぐっ…くそっ…!さっきの傷が… |
| リタ | ちょっと、ルーク!?…まずいわ、このままじゃあたしらの方が先にバテちゃいそう… |
| ヴォルト | ジジ…ガガガガ… |
| | バチバチ… |
| スタン | みんな、あれを見ろ…!ついに雷撃の準備が始まったんじゃ… |
| ミラ | …!間違いない、ヴォルトの周辺にあるマナの密度に変化が生じている |
| セネル | ここからが本番だな…! |
| アスベル | あと一息だ。みんな、頑張ろう! |
| | |
| カノンノ | 見て、ヴォルトの方…!ヴォルトに光が集まって来てる… |
| リオン | … |
| カノンノ | 雷撃を放つ準備をしてる…きっとそうだよね、リオン? |
| カノンノ | …リオン?私の事をじっと見てるけど…何かついてる…? |
| リオン | …そういうわけじゃない |
| カノンノ | …とにかくお願い、みんなのところに行ってあげて!指示通り私はここで待ってるよ |
| カノンノ | リオンの攻撃はきっと成功する…私もみんなも信じてるよ。だから── |
| リオン | …来い |
| カノンノ | …え? |
| カノンノ | リ、リオン?そんなに腕を強く引っ張らないで…ねえ、どうしたの…? |
| リオン | …黙ってついて来い |
| カノンノ | で、でも…みんなが…!一体どこに行くの!?ねえ、リオン…!? |
| リオン | … |
| | |
| ヴォルト | ジジ…ガガ |
| | バチバチバチッ…!! |
| リッド | どうやら本格的に雷撃を放つ準備に入ったみたいだな…!攻撃を仕掛けるにはいい頃合いだ |
| リタ | そうね。後はリオンが、上手く決めてくれれば… |
| スタン | 頼むぞ…リオン! |
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| カノンノ | 本当に、どこに行くつもりなの…?ヴォルトやみんなのいるところから、どんどん遠くなっちゃうよ? |
| リオン | … |
| カノンノ | リオン、お願い…わけがわからないよ…ねえ… |
| リオン | … |
| リオン | …お前はただ黙って僕に従えばいい |
| カノンノ | リオン… |
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| | バチバチバチッ…! |
| リタ | ちょっと、スタン!リオンはまだなの!?ヴォルトの奴、今にも雷撃を放ちそうな勢いよ!? |
| スタン | じきに来るはずだ…!だからもう少し踏ん張ってあいつの注意を引きつけててくれ! |
| ヴォルト | ガガガガガガ |
| アスベル | ヴォルトを覆っている光がどんどん増している…攻撃するなら今が絶好の機会だ…! |
| セネル | くっ…なのに何故来ない!?このままじゃ…本当に間に合わないぞ…! |
| ルーク | だーっ!何やってんだよリオンの奴! |
| スタン | ルーク、最後まで信じろ!!大丈夫だ、必ず来る…!リオンは必ず… |
| | バチバチバチッ!! |
| リッド | ちっ、駄目だ、もう間に合わねえ…! |
| スタン | そんな…!絶対そんなはず…… |
| ミラ | … |
| | ズバーーーーッ! |
| ヴォルト | ジ…ジジ… |
| リタ | うっ…!光が拡散して視界が… |
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| セネル | 光が収まった…。今のは一体…? |
| リオン | …どうやらヴォルトの雷撃は収まったようだ |
| スタン | リオン…!! |
| ルーク | ったく、遅えんだよ!ギリギリすぎるっつーの! |
| ミラ | …いや、ルーク。リオンの攻撃は絶妙なタイミングで繰り出されている |
| ミラ | マナの密度の変化には十分に注意を向けて見ていた。それは間違いない… |
| ミラ | ヴォルトの攻撃パターンにもあの短時間で気付いていたリオンだ |
| ミラ | 雷撃のタイミングも観察していたのかもしれないな |
| アスベル | そうだったのか…。俺も、遅いと感じていたが時期を見計らってたんだな… |
| スタン | さすがリオンだ!本当にありがとうな!これでヴォルトも倒せて── |
| リオン | …いや、まだだ |
| ヴォルト | ヴヴヴ… |
| リタ | ちょっと、嘘でしょ!? |
| セネル | …いや、だが見てみろ。ヴォルトの様子が明らかにおかしい。攻撃は確実に効いている |
| ミラ | 今なら、雷撃を気にする事なく、攻撃を仕掛けられる。全員で一気に畳みかけるぞ! |
| アスベル | ああ! |
| リッド | 行くぞ、ヴォルト! |
| ヴォルト | ガガガ |
| scene3 | 雷雲を切裂く者 |
| リオン | はああああっ! |
| | ズバーーン! |
| ヴォルト | ヴ… |
| ヴォルト | … |
| ルーク | ヴォルトの奴、やっと大人しくなりやがった |
| リッド | やれやれ、ようやくってワケか |
| リタ | 8人がかりでやっとだなんて、ほんと随分と手こずらせてくれたもんだわ |
| スタン | 本当にな…って、ほら見てみろよ。今気付いたけど、周辺があちこち焼け焦げてるぞ |
| アスベル | うわ…本当だ…おそらくヴォルトの電撃の影響だろうな |
| セネル | …周辺の様子もそうだが、それだけじゃない。スタン、お前顔をやけどしてるぞ |
| スタン | え?…あれ、本当だ。全然気付いてなかったよ |
| ミラ | これくらいで済んだのは、むしろ幸いだ |
| ミラ | これまで相手にした大精霊と比べても、ヴォルトの強さは相当なものだったからな |
| リオン | … |
| スタン | やったな、リオン!絶対決めてくれるって、俺、信じてたよ! |
| リオン | うるさい!耳元で大声を出すな |
| スタン | へへ… |
| アスベル | ところで…カノンノはどこだ? |
| リタ | そう言えば、姿が見えないわね。リオン、あんた一緒だったわよね?カノンノはどこに行ったの? |
| リオン | … |
| アスベル | どうしたんだ…?…まさか、カノンノの身に何かあったんじゃ… |
| アスベル | リオン、カノンノはどこだ…?教えてくれ、一体何が── |
| カノンノ | おーい! |
| カノンノ | はあ…はあ…みんな、無事でよかった…! |
| アスベル | カノンノ…!どこにいたんだ!?姿が見えないから、てっきり何かあったのかと思って… |
| カノンノ | ごめんね、戻って来るのが遅くなっちゃって…心配をかけちゃったみたいだね |
| カノンノ | でも、まずはその事で、リオンにお礼を言わなきゃ…。さっきは本当にありがとう |
| リタ | 何の話? |
| カノンノ | 実はね、本当なら私はそこの木の影に隠れておく話になってたんだけど…ほら、見て |
| リッド | ん?黒焦げになって倒れてる木が… |
| リッド | ってまさか… |
| カノンノ | うん、あのままあそこにいたら私もきっと今頃無事ではいられなかったと思う |
| カノンノ | けどね、リオンが機転を利かせて私を別の安全な場所まで連れてってくれたの |
| カノンノ | リオン、さっきは本当にありがとう! |
| リオン | …ああ |
| カノンノ | じゃあ、私は早速ヴォルトのところに行くね |
| アスベル | リオン、カノンノの事、本当にありがとう。俺からも礼を言わせてくれ |
| リオン | …僕は… |
| リオン | … |
| カノンノ | ──ありがとう、ヴォルト… |
| リオン | ヴォルトとの契約は終わったのか? |
| カノンノ | うん |
| ミラ | セルシウス、アスカ、クロノス、そしてヴォルト…これでまた新たなる大精霊を救う事が出来たな |
| リオン | これで4体か… |
| アスベル | 大精霊との戦闘は苦難を強いられる事も多いが着実に成果は得られてる |
| ルーク | この調子でやっていけば、異変が収まる日も結構近いって事だよな? |
| リッド | ああ、徐々にではあるが着実にマシにはなってきてるしな |
| リタ | あと少し…引続き、頑張らないとね |
| カノンノ | うん! |
| カノンノ | …あ、見て。空が… |
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| リッド | お、陽の光か…? |
| セネル | 辺り一面に広がっていた雷雲が晴れてきたようだな |
| カノンノ | きれい… |
| アスベル | ああ、きれいだな |
| スタン | ああいう風にさ、俺達のやっている事が、世界を照らす光になるといいよな |
| アスベル | …きっとそうなる、いや、必ずそうしてみせるさ |
| カノンノ | アスベル… |
| カノンノ | うん、そうだね!よーし、これからも頑張ろうね、みんな! |
| アスベル | ああ! |
| リオン | … |