| Name | Dialogue |
| scene1 | 次に目指すは、再び── |
| | ゴゴゴ… |
| リドウ | こうして高い場所から見下ろすと、俺達の計画は順調に進んでいる事が目に見えてわかる |
| リドウ | いい光景だと思わないか? |
| ??? | ああ、そうだな。くく…大精霊の力がこれほどのものだったとはな |
| リドウ | … |
| ??? | それはそうと、こうやって顔を合わせるのはあの時以来か |
| ??? | 思わぬところで得た大精霊の暴走という大きな戦力で、当初の計画よりも事は遥か順調に動いている。だが── |
| リドウ | … |
| ??? | 私達のこの計画を揺るがそうと目障りな「虫」が動いている事にはお前も気付いているな、リドウ |
| リドウ | 勿論。…けど、脅威じゃない |
| リドウ | 今更どうあがこうと、この状況を覆す事は不可能。そうだろ? |
| リドウ | そんな一匹の「虫」を気に掛けるより俺達は速やかに計画を成し遂げるべく動く方が賢明ってものさ |
| ??? | …ふん、いいだろう。確かに現時点ではお前の言う通り、さしたる脅威ではない |
| ??? | だがいずれ、奴とまみえる日は必ず来る事になるだろう。その時には、必ず息の根を── |
| ??? | む…? |
| リドウ | どうかしたのか? |
| ??? | 僅かではあるが、大精霊どもの暴走する勢いが弱まった…? |
| リドウ | 弱まった…? |
| ??? | … |
| ??? | これは一体… |
| | |
| ミラ | う… |
| レイア | ミラ…? |
| ミラ | レイア… |
| レイア | よかった。目が覚めたみたいね |
| ミラ | ここは… |
| レイア | リンネル村だよ。まさか、覚えてないの? |
| ミラ | いや、完全に覚えていないわけではないが…どうやら村に着いた瞬間気を失ってしまったようだな |
| レイア | 村に着くなりその場で倒れ込むくらいボロボロだったもんね |
| ミラ | つっ… |
| レイア | あ、無理しちゃ駄目だよ。怪我の治療をしたばかりなんだから |
| ミラ | いや、今はのんびり寝ている暇など……そうだ、リッドとカノンノは? |
| ミラ | 確か、あの二人もかなりの傷を負っていたはずだが |
| レイア | リッドも随分大怪我を負ってたみたいだけど、だいぶ回復したかな |
| レイア | カノンノの方は、怪我の程度が軽かった事もあってもう何ともないって |
| ミラ | …そうか。それはよかった |
| | |
| リッド | ミラ、起きたか。具合はどうだ? |
| ミラ | 私の心配をするよりも自分の具合は大丈夫なのか? |
| リッド | ああ、完全復活とまではいかないけどマシになってきたぜ |
| ルーク | やっと起きたのかよ。このまま目が覚めないんじゃねーかとヒヤヒヤしたぜ |
| ミラ | ああ。皆に心配をかけてしまったな、すまない |
| リタ | 別に謝る事ないわよ。これだけの大怪我を負ったんだから少しくらい休んで当然よ |
| メルディ | はいな。メルディもそう思うよ |
| ミラ | …?スパーダの姿が見えないようだが |
| ルーク | ああ、あいつなら俺達と一緒にお前らをここまで運んだ後、カン・バルクに戻ったぜ |
| ルーク | ニブル湖の状況を、ガイアスに伝えるんだってよ |
| レイア | ミラが目覚めたらよろしく伝えてほしいって言ってたよ |
| ミラ | そうか… |
| アスベル | リッドとカノンノから詳しい話は聞いた。氷山の中では、大変だったな |
| アスベル | …何より、みんなが無事でいてくれて本当によかった |
| リッド | ま、結果何とかなったからよかったものの、今思い返したら結構な冷や汗モンだったよな |
| カノンノ | うん…もう駄目かもって何度も思ったけど、リッドさんとミラさんのお蔭で何とか切り抜ける事が出来たよ |
| カノンノ | …ミラさんが起きたら、改めてお礼を言いたいと思ってたの。本当にありがとう |
| ミラ | いや、礼を言いたいのは私も同じだ |
| ミラ | リッドがいない間、私の背中を守ってくれたのはカノンノ、お前だからな |
| カノンノ | ミラさん… |
| リオン | とにかく、これでリプリカームに大精霊の暴走を鎮める効果がある事は立証された |
| リタ | しかも、その大精霊があたしらに力を貸してくれる事になるなんてね。想像もしなかったわ |
| リッド | 心強い味方が出来たって事は確かだぜ。あいつの力は実際に戦ったオレ達がよく知ってる |
| リオン | …カノンノ、例のネックレスは? |
| カノンノ | ここにあるよ |
| | |
| カノンノ | あのセルシウスがネックレスの中にいるなんて、何だか今でも不思議な感じ… |
| ルーク | だよな。話は聞いたけど信じられねーっつーか… |
| ミラ | だが、彼女はここにいる。紛れもない事実だ |
| リオン | … |
| アスベル | リオン、どうかしたのか?ネックレスをじっと見つめて… |
| リオン | …何でもない。大精霊がその中にいる、と言われても実感がわかない、と考えていただけだ |
| リオン | そんな事より、ミラも目覚めた事だ。速やかに次の大精霊のところへ向かうべきではないのか? |
| ミラ | そうだな。私達にはゆっくりしている時間など── |
| ミラ | うっ… |
| アスベル | ミラ…!大丈夫か?気が焦るのはわかるが、無理はするな |
| ミラ | いや、そういうわけにはいかない |
| ミラ | こうしている間にも、大精霊の暴走による影響で事態は刻々と悪化している |
| ミラ | 早く手を打たねば、手遅れになる。今すぐここを発つべきだ |
| リタ | そんな事言って、大丈夫なの?そりゃ時間がないのはわかるけど… |
| カノンノ | ミラさん…何かあったらすぐに声をかけてね…? |
| ミラ | …ありがとう、カノンノ |
| リッド | なら、早いとこ行くとしようぜ。次の目的地は… |
| リオン | 言うまでもない、大精霊アスカのいるテムザ山だろう |
| ミラ | ああ。前にアスカと会った時は結局傷付けるだけ傷付け、暴走を鎮めてやる事は出来なかった |
| ミラ | …今度こそ、必ず救ってやりたい |
| リオン | … |
| リタ | だったら、まずはア・ジュール港ね。そろそろ船も用意出来てるだろうし |
| ミラ | 船…? |
| アスベル | スパーダが、今回の報告と合わせて船を手配するよう、話をしておいてくれる事になってるんだ |
| ミラ | …そうか。では、その厚意に甘えるとしよう |
| カノンノ | うん!じゃあ出発しよう |
| scene2 | 次に目指すは、再び── |
| ミラ | 世話になったな |
| レイア | ううん、全然いいの!それより、村を救ってくれて本当にありがとう |
| メルディ | 村がなくならなくてメルディ本当に嬉しいよぅ。ありがとな! |
| リッド | 氷漬けの心配はなくなったにしろ、まだ異変が収まったわけじゃねえ |
| リッド | もし何か起こったら次はお前らが村を守るんだぞ |
| メルディ | はいな!マカせてほしーよ、リッド! |
| カノンノ | ん?あの人達は…? |
| レイア | あ、来た来た!みんなが助けてくれたウサちゃんの飼い主と、そのお母さんだよ |
| 女の子 | あの…どうもありがとう |
| リッド | ああ、あの時のか。もうウサギを逃がすなよ? |
| 女の子 | うん! |
| 母親 | みなさんには本当にお世話になりました |
| アスベル | 礼を言うのはこちらです。村の再建で大変な時に、こんな大勢で押しかけてしまって |
| ルーク | メシも食わせてもらったしな。城のほどじゃねーけど、結構うまかったぜ |
| 女の子 | また村に遊びに来てね。約束だよ? |
| リタ | わかった、約束する。また来るわ |
| 女の子 | じゃーねー! |
| ミラ | それでは私達も行くか。レイア達も、村の再建を頑張ってくれ |
| レイア | うん、ありがとう。みんなもね!何かあればいつでも声をかけて。出来る事なら何でもするから |
| メルディ | はいな!みんながところにすぐ駆けつけるよ |
| アスベル | ああ、その時はよろしくな |
| カノンノ | リンネル村の人達、みんな温かくていい人達ばかりだったね |
| リタ | あたしらがニブル湖から戻った時は不安で仕方ないって顔してたけど、元気を取り戻したみたいでよかったわ |
| ルーク | あの調子なら、割とすぐに再建出来んじゃねーか? |
| アスベル | そうだな。彼らのためにも、一刻も早く他の大精霊の暴走も鎮めて平和な世界を取り戻さないとな |
| カノンノ | うん…! |
| ミラ | よし、では行こう。ここから南下すればア・ジュール港、地割れで足場が悪いから注意して── |
| | ガサガサ… |
| カノンノ | 何…?今、そこの草むらで何か… |
| | |
| | ガルル… |
| リオン | 魔物か…! |
| | グオオオオッ! |
| scene1 | すれ違う気持ち |
| ??? | 大精霊の暴走が弱まる、可能性として考えられるとすれば… |
| リドウ | 各地にいる大精霊の内、自我を取り戻した奴がいるって言いたいわけ? |
| ??? | それしか考えられん |
| ??? | …だが、今の状況で大精霊が自発的に自我を取り戻す事は不可能だ |
| リドウ | 考えられるとしたら、誰かが大精霊に自我を取り戻させた、という事かな |
| ??? | 他に考えられる可能性はない |
| リドウ | … |
| ??? | あの「虫」の仕業か?…いや、奴の力をもってしても、成し得るとは思えない。だとしたら… |
| ??? | …リドウ。お前が襲撃したという例の女…確か、取り逃がしたという話だったか |
| リドウ | 部下からそう報告を受けている。その物言いだと、あの女が暴走を鎮めたと思っているわけだ |
| ??? | そう考え得る事が出来る |
| リドウ | へえ… |
| ??? | くっ!どのような手立てを用いたのだ… |
| ??? | 大精霊の暴走は、今や計画遂行には欠かせない「手段」の一つと言える |
| ??? | これらを止められるわけにはいかない。断じてな |
| ??? | …リドウ、今すぐ例の女を捜し出し始末する。お前も手を貸せ |
| リドウ | その必要はないさ |
| ??? | …何? |
| リドウ | 既に手は打ってある |
| リドウ | …と、そういえば、今回君を呼び出した理由についてまだ何も話していなかったな |
| ??? | 呼び出した理由…だと? |
| リドウ | ああ、世界各地を襲撃して回るのはもうやめにしよう、そう言いに来たんだ |
| ??? | …!貴様…それはどういう意味だ |
| ??? | 私達の行いはマナ枯渇を促進…即ち、大精霊の暴走を促進させている |
| ??? | 動く事をやめれば、どうなるかは察しがつくはずだが |
| リドウ | へぇ…やっぱり、そこまで気付いていたんだ。さすがだな |
| リドウ | …だからこそ、俺達は襲撃をやめて、静かに「その時」を待つべきなんだよ |
| リドウ | 大精霊の暴走が鎮まる時、俺達は新たな力を手に入れる… |
| リドウ | くくく、楽しみだね… |
| ??? | … |
| ??? | …どういうわけか、説明してもらおうか |
| | |
| カノンノ | ア・ジュール港に着いたね |
| アスベル | 船の手配は既に整っているはずだ。…と言っても港は案外広いし探すのは大変そうだな |
| ルーク | なら聞いてみりゃ早いだろ。おい、そこのお前! |
| リタ | お前って…あんたね、少しは言い方ってもんを── |
| ア・ジュール兵 | お前達は…! |
| ミラ | 私達はガイアスの知り合いだ。船の手配の話が通っているはずだが、どこへ行けばいい? |
| ア・ジュール兵 | … |
| リッド | ん?もしかして、話が通ってねえのか? |
| ア・ジュール兵 | …話は聞いている。船に乗りたければ桟橋へ行け |
| ルーク | けっ、何だよあいつ。感じ悪ぃな |
| リタ | あんたの言い方が気に障ったんじゃないの? |
| アスベル | …とにかく、話は通っているみたいだし桟橋の方へ行ってみよう |
| カノンノ | うん、そうだね |
| ジェイド | ──そうそう、船の操舵係に、これを渡すのを忘れないでくださいね |
| アニス | …… |
| アニス | …大佐ぁ、本当にここまでしてあげる必要あるんですか? |
| ジェイド | これが私達にとっても大事な作戦である事はわかっていますよね、アニス |
| アニス | それはわかってますけどぉ… |
| アニス | … |
| ジェイド | …釈然としない様子ですね。備えあれば憂いなしという奴ですよ |
| アニス | …でも、大佐── |
| ジェイド | あなたの納得出来ない気持ちもわからないではありませんがね、アニス |
| ジェイド | ですが、これは個人の感情より重要な話です。あなたも軍人ならそこは割り切るよう願いますよ |
| アニス | … |
| リタ | ジェイド!?何でまたあんたがここに… |
| ジェイド | またご挨拶ですねえ。皆さんの船を用意していたんですよ。スパーダから話は聞いています |
| カノンノ | ジェイドさんも、一緒に行くの? |
| ジェイド | そうしたいのは山々ですが、あいにくとやる事が山積みでしてね。宮仕えの悲しいところです |
| ジェイド | ウィンドルまでは私の部下が案内しますのでその点はご心配なく |
| ルーク | 部下ね。ま、誰でも構わねーけどよ……ん?って、アニスじゃねーか |
| アニス | ほえ?ルーク様!?どうしてこんなところに… |
| ジェイド | おや、そういえばアニスには話していませんでしたね |
| ジェイド | ルークも大精霊の暴走を鎮めるためにウィンドルの皆さんと行動を共にしているんですよ |
| リタ | 別にここにいる全員がウィンドルの人間ってわけじゃないけどね |
| アニス | … |
| ルーク | おいアニス、お前が俺達をウィンドルまで案内してくれるのかよ? |
| アニス | それは…うー、大佐に聞いてください |
| ルーク | …何だ、アニスの奴。いつもと何か様子が違ったな。怒ってるみたいっつーか… |
| ミュゼ | どうしてそんな態度になるか、ちょっと考えればわかるんじゃないかしら? |
| リタ | ミュゼ!?あんたまで来てたわけ!? |
| リッド | ちょっと考えればわかるって、どういう意味だ? |
| ミュゼ | 今回のウィンドルとの一時休戦を快く思わない者がこの国には大勢いるという事よ |
| ミュゼ | ア・ジュールの民は、ウィンドルを許したわけじゃない。そこは忘れないで欲しいわね |
| アスベル | … |
| ルーク | まだそんな事言ってんのかよ。今は過ぎた事なんか構ってる場合じゃねーだろ |
| ミュゼ | あなたはキムラスカの人間でしょ?なら、ア・ジュールの人間の気持ちはわからないでしょ? |
| ルーク | 何だと、てめえ…! |
| アスベル | …やめろ、ルーク |
| ルーク | ちっ…んだよ、ったく… |
| ミュゼ | ミラ、あなたもあなたよ。どうしてこんな連中と一緒に行動するの |
| ミラ | 私はこの世界を救うために、必要だと思う事をしている。何も不思議な点はないはずだが |
| ミラ | ミュゼ、お前には世界を救いたいという気持ちはないのか? |
| ミュゼ | … |
| カノンノ | ミュゼさん… |
| アスベル | 心配するな、カノンノ。これはちょっとした気持ちのすれ違いだ。いつか必ずわかり合える… |
| リオン | …そうには見えんが… |
| ジェイド | まあ、うちもいろいろですから。とにかく、船へ向かいましょうか。準備は既に整っていますので |
| リッド | ああ、そうしてくれ |
| ジェイド | ちなみに、ウィンドルまでは迂回する航路を使います |
| ジェイド | 最短航路の海域が、どうやら大荒れのようでしてね。無理はしない方がいいでしょう |
| アスベル | 構いません。急いでいるとはいえ、その海域で何かあっては元も子もありませんから |
| リタ | …あまり揺れないといいんだけど。船酔いはもうこりごりだわ |
| ジェイド | 迂回航路なら、その辺りも大丈夫ですよ。…では、こちらへ |
| scene2 | すれ違う気持ち |
| ルーク | ジェイドが言っていた通り、海、全然荒れてねーな。迂回して正解だったってわけか |
| リッド | 今のところはな。でも油断は禁物だぜ。海の上は天候も変わりやすいって言うし |
| リタ | このまま何事もなくウィンドルまでたどり着く事を祈るわ… |
| ア・ジュール兵 | … |
| アスベル | あ、ちょっといいかい?ウィンドルまで、あとどれくらいだろう? |
| ア・ジュール兵 | … |
| アスベル | あ… |
| カノンノ | …行っちゃったね。聞こえてなかったのかな…? |
| ルーク | この距離で聞こえねーはずねえだろ。無視しやがったに決まってるぜ |
| ルーク | …けっ、相変わらず感じ悪ぃな |
| リッド | せっかく休戦したってのにこれじゃ、本当の和平実現は当分先になりそうだな |
| アスベル | …仕方ないさ。つい先日まで、彼らにとってウィンドルは憎き敵国だったんだ |
| アスベル | そう簡単に、全てを水に流せるはずがない |
| カノンノ | … |
| ミラ | カノンノ、どうかしたのか?何か考え込んでいるようだが |
| カノンノ | あ、うん…アスベルと会ったばかりの頃の事を思い出してたの |
| カノンノ | あの時も、ア・ジュールからウィンドルまで、こうやって船に乗ったなって |
| カノンノ | ずっと船倉に隠れてたから、外の景色は見られなかったけどね |
| リタ | 船倉?何でそんなところに…って、まさか、忍び込みでもしたわけ!? |
| アスベル | う…それしか方法がなかったんだ。俺の立場も明かせなかったし… |
| リッド | だからって、さすがに密航はまずいんじゃねえのか?お前一人ならまだしも… |
| カノンノ | でも、アスベルはちゃんと私の事もエリーゼの事も守ってくれたよ? |
| ルーク | おいおい、カノンノだけじゃなくエリーゼも一緒だったのかよ。ったく、ガキ連れでよくやるぜ… |
| アスベル | し、仕方ないだろ!みんなを守りつつ、安全にバロニアへ帰るにはあれしか方法がなかったんだから |
| アスベル | ルークだって、俺の立場に置かれたらきっと同じようにしていたさ |
| ルーク | やるかっつーの、んな事 |
| アスベル | いや、やるさ!それしか手段がなかったんだからな |
| リオン | 全く、どいつもこいつも騒がしい馬鹿ばかりだな |
| リタ | ここはあんたに賛成するわ。くだらない事で言い争って本当バカっぽい… |
| カノンノ | …でも、こんな風に大精霊を捜して世界中を回る事になるなんて、あの時は想像もしてなかったな… |
| ミラ | 不安か? |
| カノンノ | …不安といえば、そうなのかもしれない |
| カノンノ | ミラさんとリッドさんのお蔭で何とか無事にセルシウスを元に戻す事は出来た |
| カノンノ | …けど、私がいた事でミラさんとリッドさんは酷い怪我を負ったし… |
| カノンノ | 大精霊の暴走を鎮めるのに私の力が必要だとしても、私のせいで誰かを傷付けたくはないよ |
| リッド | カノンノ… |
| ミラ | 私の傷の事は気にするな。あれは油断していただけの事だ |
| カノンノ | でも… |
| ミラ | …リッドが倒れた後、二人でセルシウスに立ち向かった時の事を覚えているか? |
| ミラ | 迷いが消えたお前は、あの時の私にとってとても心強い存在だった。だからこそ、背中を預けられた |
| ミラ | …カノンノ。お前は強い心を持っている。それを忘れないで欲しい |
| カノンノ | ミラさん… |
| リッド | そうだぜ。セルシウスを相手にあんだけやり合えたんだ、もっと自信を持っていいんじゃねえのか? |
| カノンノ | リッドさん…。二人共、本当にありがとう |
| カノンノ | あ…ネックレスが… |
| ミラ | セルシウスがお前に語りかけている。お前の心まで傷付けてしまった事を謝りたいそうだ |
| ミラ | お前のように苦しむ人間をこれ以上生まないためにも、他の大精霊の事も救い出してほしい、そう言っている |
| カノンノ | セルシウス、あなたもありがとう…。あなたの気持ちはわかってる、一緒に力を合わせて頑張ろうね |
| ルーク | 何だあいつら、急に仲良くなりやがって気持ちわりーな |
| アスベル | 仲良く…? |
| アスベル | ふっ、確かにそうかもしれないな |
| | |
| アスベル | …よーし、カノンノ。これを機に、俺以外のみんなの事も名前だけで呼んでみたらどうだ? |
| カノンノ | …え?アスベル、突然どうしたの…? |
| アスベル | その方が、より「仲間」って感じがするだろ?お前も言ってたじゃないか |
| ルーク | そういや、カノンノってアスベル以外の奴の事は「さん」付けで呼んでるよな |
| アスベル | 元々は俺の事もアスベルさんって呼んでたんだ |
| アスベル | だが、堅苦しいのはよそうって事で呼び名を改めたんだ。な、カノンノ? |
| カノンノ | うん |
| リッド | へぇ。言われてみりゃ確かに堅苦しいってのもわからなくはねえが…ま、オレはどっちでも構わねえぜ |
| リタ | 別にカノンノの呼びやすいように呼べばいいんじゃないの? |
| カノンノ | 本当?じゃあ… |
| カノンノ | ふう… |
| カノンノ | …リッド、ミラ、ルーク、リタ、リオン、それにアスベル…みんな、改めてよろしくね! |
| ミラ | ああ |
| リタ | はいはい、よろしく |
| ルーク | 俺もそれでいいぜ…って、何だよ、リオン。お前も返事くらいしろよな |
| リオン | …僕は呼び名なんかに興味はない。好きにすればいいだろう |
| ルーク | んだよ。相変わらずノリの悪い奴── |
| | |
| | ズズーーン! |
| リッド | っと!?何だ、この揺れは! |
| リタ | まさか、暗礁にでも乗り上げたんじゃ…? |
| リオン | …!違う、あれを見ろ! |
| | |
| | ガアアアアアッ! |
| ルーク | ちっ、魔物かよ! |
| ミラ | 船の上は揺れるから、態勢は崩さないように気をつけろ! |
| scene1 | 危難の海 |
| リオン | …終わったか |
| リッド | 何とかな。ったく、突然何だって── |
| | ズズーーン! |
| アスベル | 今度は何だ…!?船体が急に傾いたぞ? |
| リタ | まさか、また魔物!? |
| ア・ジュール兵 | 大変だ!船倉から浸水して船が沈みかかっているぞ! |
| リオン | まさか、さっきの魔物の仕業か? |
| カノンノ | そんな…! |
| ルーク | じょ、冗談じゃねーぞ!こんな海のど真ん中で沈んじまったらおしまいじゃねーか! |
| ミラ | なら、今出来る事をするしかないだろう。何か方法はないのか? |
| ア・ジュール兵 | 船倉の穴はいったん塞ぐが、それでもこの船は港までは持たないだろう |
| ア・ジュール兵 | とにかく最短航路で陸地を目指し、なるべく陸に近いところで救命艇に乗り換えるしかない |
| アスベル | 最短航路って、確か… |
| リオン | ああ、海域が大荒れになっているという話だったな |
| リタ | ちょっと…そんな危ないところに浸水した状態で突っ込むなんて自殺行為じゃない! |
| ア・ジュール兵 | このまま迂回航路で目的地を目指しても確実に船は沈む… |
| ミラ | それしか方法がない、という事だな。…わかった、ここはお前達の判断に任せよう |
| ミラ | 船の事は私達より彼らの方が専門だ。従うしかあるまい |
| ルーク | くそ、何でこんな事になんだよ…。いいかお前ら、何としても絶対無事に陸地にたどり着けよな! |
| ア・ジュール兵 | お前に言われるまでもない! |
| リッド | やれやれ…一難去ってまた一難とは、この事だな |
| リオン | … |
| カノンノ | お願い…どうか無事に目的地に着いて…! |
| scene2 | 危難の海 |
| | ズズズ…! |
| ルーク | うおっ!?ますます船体が傾きやがった! |
| リオン | 喫水線もだいぶ上がっている…!かなり浸水が進んでいるようだ |
| リッド | おいおい、間に合うのかよ… |
| アスベル | もう少しだ…もう少しだけ、もってくれ! |
| ミラ | む…、あれは…? |
| リタ | 何よあれ…海が割れてる!?ちょっと、あれってまさかルーク達が言ってた時空の歪み…? |
| ルーク | 言われてみりゃ確かに似てるような…マジかよ、海にまであんなもんが…まるで馬鹿でかい滝みてーじゃねえか |
| リッド | まさか大陸だけじゃなく海にまであんなモンが出来てたとはな… |
| カノンノ | この辺りの海域が荒れてるのは、あの海面に発生した亀裂のせいだったのかも… |
| | ザアァァァ…! |
| カノンノ | きゃあっ!? |
| アスベル | カノンノ、大丈夫か! |
| ルーク | おい、何やってんだよ。ちゃんと船を操縦しろ! |
| ミラ | いや、あの滝の勢いに飲まれ船が流されているのだ |
| リオン | くっ…このままじゃ船体ごとあの亀裂に飲み込まれてしまう…!もっと出力を上げられないのか!? |
| ア・ジュール兵 | …ぐああ! |
| リオン | おい、何かあったのか?…! |
| | グオオオオオッ! |
| リタ | なっ、魔物!?こんな時に何でよ、もう! |
| リッド | …仕方ねえ、一気に片を付けるぞ! |
| scene3 | 危難の海 |
| リタ | ファイアボール! |
| | ズバーン! |
| | グオオオオッ |
| ルーク | ったく、こんなタイミングに出てきやがって、空気読めっつーの! |
| リッド | …っと、船はどうなった?亀裂から少しは離れられたのか? |
| | ザアァァァ…! |
| リオン | いや、離れるどころかますます亀裂に近付いている |
| リタ | 何かさっきより船体の傾きもひどくなってない?まずいわ、このままじゃ… |
| ミラ | む…?そういえば、アスベルとカノンノの姿が見えないようだが… |
| カノンノ | みんなー!大変! |
| リタ | 何、カノンノ!?どうしたの? |
| カノンノ | 船を操縦していた兵士さんが、意識を失ってたのさっきの魔物にやられたみたい… |
| リッド | 何だって!?…そりゃ、亀裂に近付くわけだ。確か舵は甲板にあったよな。急ぐぞ! |
| カノンノ | うん |
| | |
| アスベル | おい、しっかりしろ! |
| ア・ジュール兵 | う…うう… |
| ミラ | ここにいたか、アスベル |
| リオン | どんな具合だ?舵を取れる状態なのか? |
| アスベル | とりあえず、応急処置を施した |
| アスベル | 意識は戻ったみたいだが…腕に酷い傷を負っていてとても舵を取れる状態じゃない |
| ルーク | なっ、…それじゃあこの船の操縦は誰がすんだよ!俺は出来ねーぞ? |
| ア・ジュール兵 | う、うう…もう駄目だ… |
| ア・ジュール兵 | よりによって、ウィンドルの連中と一緒に死ぬ事になるなんて… |
| アスベル | 諦めるな!まだ終わりじゃない! |
| ア・ジュール兵 | 気休めを言うな…。この船の操縦士は俺一人だ、もうあの亀裂から逃れる術はない |
| アスベル | 大丈夫だ。俺が船を操縦する |
| カノンノ | アスベルが?そんな事出来るの? |
| アスベル | この人は腕を負傷しているが、幸い意識はあるようだ。やり方を聞いて、俺が舵を取る |
| ア・ジュール兵 | …!? |
| アスベル | 頼む、教えてくれないか! |
| ア・ジュール兵 | … |
| アスベル | 死んでしまえばそれまでだ、今は敵も味方も言ってられないだろう。世界を救うために協力してくれ…! |
| ア・ジュール兵 | …。…仕方がない。いいか、まずは―― |
| アスベル | ありがとう!だいたいは把握出来たよ |
| ア・ジュール兵 | うう…不覚だ |
| アスベル | …こんなところで、誰も死なせたりはしない。全員でウィンドルまでたどり着こう |
| | ザアアアアア! |
| ルーク | うぉっ!?ますます引っ張られてくぞ! |
| リッド | …よし、アスベル。早いとこ頼む。このままじゃオレ達全員があの亀裂に飲み込まれちまう |
| アスベル | わかった |
| | |
| リタ | どう?何とかなりそう? |
| アスベル | くっ…操縦は問題なさそうだが亀裂の勢いが強すぎて…思うように進まない! |
| リタ | そんな… |
| カノンノ | …!そうだ…セルシウス、お願い、力を貸して…! |
| | ピシィィィッ…! |
| | ザァァ…… |
| リッド | 滝の一部が凍って…亀裂に吸い込まれる水の勢いが弱まってるぞ |
| ルーク | おし!これなら何とかなるかもしれねえ!アスベル、今の内だ! |
| アスベル | わかってる!何とかしたいのは山々なんだが… |
| リオン | ちっ…まずい、船の浸水も深刻だ。このままだと沈没も時間の問題だろう |
| アスベル | …そうだ!船が浸水しているところも、凍らせればいいんじゃないか? |
| リタ | やってみる価値あるわね |
| カノンノ | セルシウス、お願い…! |
| | ピシッ…! |
| | … |
| | ズ…ズズ… |
| リタ | …駄目か。表面が凍っているみたいだけど、浸水の勢いの方が強いわ |
| アスベル | くっ!時間稼ぎにしかならないって事か |
| カノンノ | … |
| リタ | 亀裂に飲み込まれるか、沈没か…そんなの、どっちもごめんよ!何とかならないの!? |
| | ドドド… |
| ミラ | …この音は? |
| リッド | …おい!向こうから何か来るぞ! |
| リオン | あれは…ア・ジュールの船か? |
| | |
| ジェイド | 皆さん、急いでこちらへ!アニス、牽引ロープを! |
| アニス | わかってます! |
| | ヒュンッ! |
| | |
| ルーク | ジェイドにアニス!?お前らどうして… |
| | |
| ジェイド | その説明は後です!皆さん、こちらに乗り移ってください |
| | |
| リッド | わかった。みんな、急げ! |
| ア・ジュール兵 | う… |
| アスベル | よかったな、これで助かるぞ!よし、俺の肩に掴まれ。少し傷が痛むかもしれないが辛抱しろ |
| ア・ジュール兵 | あ、ああ… |
| | |
| | ズズズ… |
| リタ | 沈んでく…。あと少し遅かったら、あたしらもあの船と一緒に沈んでたわね |
| | |
| ジェイド | 何とか間に合ったようで何よりです。私としても来た甲斐がありました |
| ミラ | 礼を言うぞ、ジェイド。…だが、どうして私達の居場所がわかったのだ? |
| ジェイド | ああ、これのお蔭です。出航前にあなた方の船に、これと同じものを仕込ませていただきましてね |
| リオン | これは、通信機…か? |
| リッド | 通信機って、そいつはどういう事だ?オレ達の話を盗聴してたって事かよ? |
| ジェイド | 盗聴とは人聞きの悪い。万が一に備えての処置ですよ |
| ジェイド | 私にしてみれば、皆さんが互いにどう呼び合うかなんて別にどうでもよい事ですから |
| ルーク | しっかり盗み聞きしてんじゃねーか! |
| ジェイド | まあともあれ、現にこうして功を奏したわけですし、それでよかったとしませんか? |
| アスベル | …確かに、結果救われた事には変わりませんね。ありがとうございます |
| リタ | 相変わらず、いちいち鼻に付くけど… |
| リッド | アスベルとセルシウスにも感謝しねえとな |
| アスベル | 俺はあまり大した事は出来なかったけどな…。まあ、全員無事で本当によかったよ |
| ア・ジュール兵 | … |
| | |
| ジェイド | さて、危険も去った事ですし、このまま皆さんをウィンドルまでお送りしましょう |
| ジェイド | こちらの船は最新式で、出力も大幅に向上していますから、今度こそ快適な船旅を約束しますよ |
| ルーク | だったら最初から、こっちに乗せろっつーの |
| ジェイド | まあそう言わずに。こちらにもいろいろと事情がありましてね |
| ジェイド | それでは改めて…ウィンドルへ向けて全速前進! |
| scene1 | マナの異変 |
| ??? | … |
| ??? | …まさかと思っていたが、実際に大精霊が姿を消している以上、事実と考えるしかあるまい |
| ??? | だが、どういう理屈だ…?あの状況から自ら正気を取り戻す事は不可能のはず。だとすれば── |
| ??? | …あの女か |
| ??? | … |
| ??? | いずれにせよ大精霊の存在しないこの場に用はない── |
| ??? | …いや |
| ??? | マナの減少する速度も緩やかになっている |
| ??? | 大精霊の暴走が鎮まったとはいえ、それだけでマナ減少がここまで急速に緩やかになるとは考えにくい |
| ??? | 考えられる可能性は一つ |
| ??? | … |
| ??? | 奴め…何を企んでいる |
| | |
| ジェイド | 長らくご苦労様でした。ウィンドル港に着きましたよ |
| ルーク | やれやれ…やっとかよ |
| リタ | ア・ジュール港を出航した時は、こんな大冒険になるとは思わなかったわ… |
| アスベル | お忙しいところ、わざわざありがとうございました |
| ジェイド | いえいえ。こうして無事にお送り出来て、よかったですよ |
| ジェイド | あなたの身にもし何かあれば、リチャード陛下の心象が著しく悪化した事でしょうしね |
| ア・ジュール兵 | あの…アスベル殿… |
| カノンノ | あ、あなたは船を操縦してた── |
| ア・ジュール兵 | …さっきはありがとうございました。あなた達のお蔭で、何とかこうして生き延びる事が出来ました |
| アスベル | 礼ならカーティス大佐に。結局のところ、俺は何も出来ていませんから |
| ア・ジュール兵 | いえ、私の心が折れそうになった時、懸命に励ましてくださいました |
| ア・ジュール兵 | 私は…あなた達ウィンドルの方々の事を誤解していたかもしれない |
| ア・ジュール兵 | あなた達のこれからの無事を心よりお祈りしています。それでは…! |
| ジェイド | いがみ合っていた者同士が、共に苦難を乗り越える事で信頼を育む…美しい光景ですねぇ |
| アニス | … |
| ジェイド | ほら、アニスもお礼を言わないと。あの兵士は、あなたの直属でしょう |
| アニス | …ありがとうございました |
| アスベル | あ、いや…どういたしまして |
| ジェイド | それでは、私達はア・ジュールへ戻りますね |
| ミラ | 気をつけて帰ってくれ。いろいろと助かった |
| ジェイド | いえいえ。またお会いする機会を楽しみにしていますよ |
| カノンノ | …アスベルが言ってた通りみんなただ、気持ちがすれ違ってしまってるだけなのかもしれないね |
| アスベル | …ああ。時間はかかるかもしれないがいずれは手を取り合う事が出来る。改めて俺も、そう感じたよ |
| ミラ | 何はともあれ無事ウィンドルへ到着した事だ。早速テムザ山へ向かうとしよう |
| リオン | …ああ |
| scene2 | マナの異変 |
| ルーク | あれから結構歩いたけど、テムザ山はまだなのかよ。たりぃ… |
| ミラ | 安心しろ、もうすぐ着く。この道をさらに南へ進めば──…ん? |
| リオン | どうかしたのか? |
| ミラ | マナに変化が生じている…これは一体… |
| カノンノ | 変化…? |
| ミラ | … |
| ミラ | …やはり、気のせいではなさそうだ。わずかではあるが、マナの減少速度が緩やかになっている |
| ミラ | 無論、完全に止まったわけではないが… |
| アスベル | セルシウスの暴走を鎮めたから、という事じゃないのか? |
| ミラ | 確かにセルシウスの暴走を鎮めた時もマナの減少速度は変化したが、その時よりさらに遅くなっているのだ |
| ミラ | …セルシウスの暴走を鎮めた以外にも、マナに影響する何かが起こったという事か…? |
| リッド | …何かよくわかんねえけど、マナの減り具合がマシになったって事なら、いい事じゃねえのか? |
| ミラ | だといいが… |
| リオン | 腑に落ちない点があるにしろ、原因がわからないなら、今考えたところで仕方ないだろう |
| アスベル | …それもそうだな。確かに気がかりではあるけど、いい方向に動いているのかもしれない |
| アスベル | これによって俺達のやるべき事が変わるわけじゃないし、今はとにかくアスカの暴走を鎮める事を考えよう |
| ミラ | …ああ、そうだな。では、気を取り直して先へ進むと── |
| | ガサ… |
| リタ | みんな、気をつけて!すぐ近くに何かいる! |
| ルーク | 魔物か!? |
| リッド | …そのようだぜ。みんな、気をつけろ! |
| scene1 | アスカ、再び |
| ミラ | ようやく、戻って来られた… |
| ルーク | ここがテムザ山か。そういや、クレス達と合流する前近くを通ったっけな |
| リッド | ああ、何かでっけえ山があるとは思ってたけど、まさかここに大精霊がいたなんてな |
| アスベル | ああ、俺も何だか信じられない、というか…不思議な気分だ |
| カノンノ | 不思議な気分? |
| アスベル | テムザ山には今まで何度も来た事があるんだ。前回は確か、ユーリと一緒だった |
| ルーク | ユーリと?男同士でピクニックでもしてたのかよ? |
| アスベル | まさか!騎士団を抜けたばかりのユーリと、行動を共にしていたんだ |
| アスベル | フレンがユーリを追って来て、二人が戦う羽目になってしまって…大変だったんだぞ |
| リタ | ふーん、あの二人が…そんな事があったのね |
| リッド | リオンは、前にミラと一緒にここへ来て、アスカとやり合ってんだよな? |
| リオン | ああ |
| リオン | だが… |
| ルーク | セルシウスでうまくいったんだ。前の時の失敗は気にしなくていーんじゃねーの? |
| ルーク | リプリカームの効果はお墨付きなんだろ? それにこの俺もいるんだしな! |
| リタ | …はあ、あんたのその自信は一体どこから沸いてくるんだか… |
| ミラ | … |
| カノンノ | ミラ、一緒に必ずアスカを救ってあげようね! |
| ミラ | …ああ、そうだな。よし、では山を登るとしよう |
| ミラ | アスカは中腹にある洞窟にいた。まずはそこを目指そう |
| ルーク | よーし、待ってろよ、アスカ! |
| scene2 | アスカ、再び |
| リタ | ここが、例の…? |
| アスベル | こんなところに洞窟があったなんて初めて知ったよ |
| リッド | 異変の影響であちこち地形が変わっちまってる。こいつが元々あったモンかはわからねえけどな |
| ミラ | …皆、気を付けろ。周囲の気がかなり張り詰めている |
| ルーク | この奥にアスカがいるっつー事か |
| カノンノ | うん、間違いないみたい…。ネックレスも反応を示してる |
| リオン | … |
| ミラ | …待てリオン、単独で動くのは危険だ。以前とは違うただならぬ気配を感じる |
| ミラ | アスカの暴走がより進行しているのだろう… |
| アスベル | 暴走が進行!?…確かに、前にミラ達がここへ来てから時間も経っているが、でもだからって… |
| ミラ | それ以外にも、思い当たる事はある… |
| リオン | …あの男か |
| リタ | あの男って? |
| ミラ | 前にここへ来た時、妙な男に出くわしたのだ |
| ミラ | 奴は、魔導器とおぼしき剣を向けアスカに何かを施していた |
| ルーク | ブ、魔導器だって!?それって一体… |
| リオン | その男がアスカのマナを乱し暴走を促進させようとした。…僕達はそう考えている |
| ミラ | 具体的にその男が何をしていたか確証がない分、あくまで仮説にすぎないがな |
| カノンノ | そんな… |
| リタ | 魔導器で精霊に干渉…?そんな魔導器があったとして、どうしてそんな事を… |
| リッド | さあな。想像もつかねえよ。リタは魔導器に詳しいんだろ? |
| リッド | その魔導器を使ってるヤツに心当たりはねえのか? |
| リタ | わからない…。研究者だとしてもそんな魔導器が存在するなんて聞いた事ないし… |
| リタ | あ! |
| リタ | 妙な男、で思い出したけど、あたしも前にア・ジュール港でわけ知り風な怪しい男に会ったわ |
| アスベル | わけ知り風って、どういう事だ? |
| リタ | 今回の一連の出来事について、何か知ってそうな感じだった |
| リタ | 一連の戦いの裏事情を知る…あるいは、例の第三者に直接何らかの関わりを持っているのかも… |
| リタ | そういえば、そいつの事はジェイドが部下を使って調査してくれてるはずなんだけど、どうなってんのかしら |
| ミラ | いずれにせよ、今回の一連の出来事に誰かの陰謀が関わっている事は明らかだ |
| ミラ | 私の見た男とリタの会った男が、何者かわからないにせよ、警戒は怠らないに越した事はない |
| ミラ | リドウの事もあるしな |
| ルーク | ん?リドウ?何だそれ、初耳だぜ? |
| ミラ | 私を襲撃した男だ。精霊回収を目的としているが故に邪魔な存在となる私を消そうとした |
| リオン | … |
| カノンノ | そんな…一体何のために… |
| ミラ | 目的まではわからない。…だが、私とは相反する目的を持ち動いている事は確かだ |
| リタ | …なら、そのリドウって奴と例の怪しい男が共謀してる可能性も無きにしも非ずって事ね |
| ミラ | ああ、私もそう考えていた。二人は、明らかに私達とは敵対した行動をとっているからな |
| ルーク | ま、リドウだか何だか知らねーがその辺りの事は、ユーリやクレスが調べてんだし、大丈夫じゃねえの? |
| リッド | ああ、だといいんだけどな… |
| | |
| カノンノ | あ…みんな!ネックレスの光が急に強く… |
| ミラ | …これは警告だ。アスカが近付いて来ている…! |
| リオン | 僕達の存在に気付いたようだな |
| アスカ | ウッ…ウオオォォォォォォッ! |
| アスベル | …!これはアスカの──…くっ、何だ!?このすさまじい風は一体…!? |
| リッド | おい、まさかあれが…! |
| アスカ | グオオオーーーッ! |
| アスベル | これが大精霊アスカか… |
| リタ | すごい迫力…。さすがは大精霊ってとこね |
| カノンノ | でも、何だか苦しそう |
| ルーク | 苦しんで…そういやクロノスも苦しんでたよな。…って事は、待てよ、あの時のあいつも暴走…? |
| アスカ | グオオオオオッ! |
| ミラ | アスカ…。今度こそ必ず救い出してみせる! |
| | |
| アスカ | グアアアアアアアアアッ! |
| リッド | 来るぞ! |
| scene1 | 引き離された仲間 |
| ミラ | アスカ、これで最後だ…目を覚ませ! |
| | ザシューーーッ! |
| アスカ | グア… |
| アスカ | ガ… |
| ルーク | はあ…はあ…よし、これで大人しく── |
| アスカ | グオオオオッ! |
| アスベル | くっ…駄目か! |
| リッド | あれだけの攻撃を与えたのに…まさか効いてねえとか言うんじゃねえだろうな…! |
| リオン | …いや、アスカをよく見てみろ。傷はある。効いていないはずがない |
| ミラ | リプリカームを与えるためにもアスカの暴走を一時的に鎮める事は必要不可欠だ… |
| ミラ | もう一度、攻撃を仕掛ける…皆、援護を頼む! |
| ルーク | しょうがねえな、任せろ! |
| リタ | あたしは遠方から援護するわ!カノンノ、あんたもここにいなさい |
| カノンノ | うん、わかった |
| | ズドッ! |
| アスベル | ぐっ…! |
| アスカ | グアアアア! |
| リオン | ちっ… |
| アスカ | ガアッ!! |
| ミラ | くっ…アスカ!お前を傷付ける事は本意ではない… |
| ミラ | 頼む、早く大人しくなってくれ…! |
| | ザシュッ!! |
| アスカ | グア… |
| リッド | ミラの攻撃でアスカが怯んだ!みんな、今の内だ! |
| ルーク | よし、行くぜアスカ!! |
| アスカ | グアア… |
| アスカ | グアアアアアアッ! |
| ルーク | な、おい…!どこに行きやがんだ── |
| カノンノ | きゃあっ!? |
| リタ | なっ、カノンノがアスカに捕まったわ…! |
| アスベル | カノンノ!!アスカ、カノンノを離すんだ! |
| ルーク | おい、あの野郎、まさかあのまま飛び去ろうっつーんじゃねーだろうな!? |
| ミラ | そうはさせるか! |
| | ガシッ |
| アスカ | グオオオーーッ! |
| リオン | ミラ!アスカに掴まって、何をする気だ! |
| アスベル | 更に高く…!カノンノをどこへ連れて行く気だ!? |
| リッド | ミラ!無茶すんな!早く降りろ! |
| | バサァッ、バサァッ |
| アスベル | おい、待て!ミラ、カノンノ! |
| アスベル | カノンノーーッ! |
| ルーク | ミラーーッ! |
| | |
| カノンノ | お願い、話を聞いて!アスカ! |
| ミラ | カノンノ、今は何を話しても無駄だ。それより振り落とされないようしっかりと捕まっていろ |
| ミラ | 隙を見て、お前を安全な場所へ連れて行く、だから今は── |
| アスカ | グアアアアーーッ! |
| ミラ | なっ…!!このまま振り落とす気か!? |
| カノンノ | お願いアスカ、ミラを落とさないで!こんな高さから落ちたら…! |
| アスカ | クアアアアーーッ! |
| ミラ | くっ…!落ちる!カノンノ、私が行くまで、無事で…! |
| カノンノ | そんな… |
| カノンノ | ミラ!ミラーーーーーーッ!! |
| scene2 | 引き離された仲間 |
| リオン | アスカはこの洞窟の天井の穴から飛び去った。おそらく山頂の方を目指せば… |
| ルーク | 途中で見つけられるかもしれねーって事だよな?よし、なら早いとこ追いかけようぜ! |
| リッド | ああ、それがいい。早く追いつかねえと見失っちまう |
| リタ | あたしらは大精霊の居場所を感知出来ないしね…。急いだ方がいいわ |
| アスベル | …カノンノ、ミラ。すぐに行く、どうか無事でいてくれ… |
| | |
| ミラ | うっ…ここは… |
| ミラ | …ああ、そうか私は落下して──… |
| ミラ | …そうだ、カノンノ!? |
| ミラ | うっ…!落下した時の衝撃で…傷を負ったか |
| ミラ | だが、幸い大きな傷にはなっていないようだ |
| ミラ | 四大… |
| ミラ | 心配をかけてすまない、私は大丈夫だ。カノンノもアスカも、必ず救ってみせる…! |
| ミラ | お前達も落下の衝撃から私を守ってくれたのだろう?弱っているのに、すまないな |
| ミラ | …いや、だが休む暇はない。カノンノを追わねば… |
| ミラ | 世界や大精霊を救うにはカノンノの存在は不可欠だ… |
| ミラ | 取り返しのつかない事態になる前に何としても…! |
| ミラ | … |
| ミラ | …アスカは山頂の方か。よし、早速── |
| | カラ… |
| ミラ | む…?頭上から石が… |
| | |
| | グオオオオッ! |
| ミラ | …くっ、魔物か!あいにくだがお前と遊んでいる時間はない! |
| scene1 | 想いの果てに |
| ミラ | ようやく山頂にたどり着いたか。アスカとカノンノはどこだ…?この辺りにいるはずだが… |
| アスカ | ギィィッ |
| ミラ | ここにいたか…。アスカ、今お前をその苦しみから救い出してやるぞ。だからカノンノを… |
| ミラ | …!アスカ…カノンノはどこだ?彼女をどこへやった!? |
| ミラ | まさか…! |
| アスカ | グアアッ! |
| ミラ | くっ…馬鹿な、何て事を…!! |
| ミラ | カノンノはお前を救える唯一の存在、それをお前は…! |
| アスカ | ガアアッ! |
| ミラ | くっ… |
| アスカ | グオオッ! |
| ミラ | はあ、はあ…話が通じるはずもないか。ならば──… |
| アスカ | ガアアアアッ! |
| ミラ | なっ…!あの速さは避けきれな── |
| | バシィッ! |
| アスカ | グアッ! |
| ミラ | 何だ…?何が起きた? |
| ??? | こんなところで死ぬつもり?世界を救うって話は嘘だったのかしら |
| ミラ | …!お前は… |
| | |
| ミラ | ミュゼ…どうしてお前がここに? |
| ミュゼ | …そんな事より、ミラ。あなたの捜しものは、この子でしょ? |
| カノンノ | … |
| ミラ | カノンノ! |
| ミュゼ | 大丈夫よ、気を失っているだけだから |
| ミラ | ミュゼ、お前がカノンノを救ってくれたのか? |
| ミュゼ | この子が死んで困るのは別にあなた達だけじゃないって事よ |
| ミラ | 確かにそうだな。だが、理由は何であれ礼を言う |
| ミラ | ここでカノンノを失えば、大精霊を救う事はおろか、世界も破滅の一途をたどる事になっていたからな |
| ミュゼ | …何があってもこの子だけは守れ、…ガイアスからの指示よ |
| ミュゼ | …とにかく、これで私の役目は終わり。この子は返すわ |
| ミュゼ | どういう理由か知らないけど、ウィンドルの連中もいない状態で勝機はない |
| ミュゼ | この子を死なせたくないなら今は身を引くべき── |
| | |
| アスカ | グアアアアアアアッ!! |
| ミラ | …! |
| ミラ | …ミュゼ、悪いがついでにもう一つ頼みを聞いてくれないか |
| ミラ | 安全な場所へカノンノを連れて行き、守ってやってほしい |
| ミュゼ | …あなたはどうするのよ |
| ミラ | 私はここでアスカと戦う |
| ミュゼ | …無茶な事言わないで |
| ミュゼ | 一人で太刀打ち出来る相手じゃない事くらい、あなたが一番よくわかっているはずよ |
| ミュゼ | 更には全身に傷を負って…そんな状態で戦うなんて死ににいくも同然── |
| ミラ | …アスカの力はよく知っている。だが、それでも今引く事は出来ない |
| アスカ | ガアアアアッ! |
| ミラ | 来い、アスカ!お前の相手はこの私だ!! |
| ミュゼ | ちょっと、ミラ! |
| scene2 | 想いの果てに |
| カノンノ | う… |
| ミュゼ | … |
| カノンノ | ん…あれ…ミュゼさん? |
| ミュゼ | あら、やっとお目覚め? |
| カノンノ | どうしてミュゼさんが…?私…確かアスカに連れ去られて… |
| カノンノ | …そうだ、ミラ!ミラも一緒だったの…!でも、途中でアスカに振り落とされてしまって… |
| ミュゼ | 振り落とされて…?…あの全身の傷はそういうわけだったのね |
| カノンノ | 全身の傷って…ミュゼさん、ミラに何かあったの!?ミラは大丈夫な── |
| | ドォーーン! |
| カノンノ | …!何の音!?あっちの方から聞こえて… |
| | |
| アスカ | ガアアアアッ!! |
| ミラ | くっ… |
| | |
| カノンノ | あれは… |
| ミュゼ | …見ての通り、ミラはアスカと戦ってるわ |
| カノンノ | まさか一人で…? |
| ミュゼ | ええ、そうよ。止めたって聞きやしないんだから… |
| カノンノ | 大変…一人だなんて無茶だよ…!私もそっちに… |
| ミュゼ | …待ちなさい。あなたをミラのところへ行かせるわけにはいかないわ |
| カノンノ | ミュゼさん!?お願い、そこを通して…! |
| ミュゼ | 駄目よ。あなたが死ねば、世界を救う手だてはなくなって、ガイアスが悲しむもの |
| カノンノ | … |
| | |
| ミラ | はっ! |
| アスカ | グオオオッ! |
| ミラ | くっ、寸時に攻撃をかわされたか…ならば、これでどうだ! |
| | ザシュッ! |
| アスカ | グア… |
| ミラ | よし、今の内に一気に──… |
| アスカ | ガ…ガアアッ!! |
| ミラ | なっ…! |
| | ズカッ! |
| ミラ | うぐっ…! |
| | |
| カノンノ | ミラ…!! |
| ミュゼ | … |
| カノンノ | お願いミュゼさん!ミラのところに行かせて…!このままじゃミラが… |
| ミュゼ | …駄目よ |
| カノンノ | 一人でアスカを倒すなんて無理だよ!ただでさえ、ミラはセルシウスと戦った時に深い傷を負ってる |
| カノンノ | その傷だって完全に癒えてないのに、新たな怪我まで負って…。一人でどうにか出来る状態じゃ… |
| ミュゼ | そんな事、あなたに言われなくてもわかってるわよ |
| ミュゼ | ミラには忠告したわ。一人で敵う相手じゃない、あなたを連れて身を引けと… |
| ミュゼ | それでも聞かなかったのはミラよ。…自業自得だわ |
| カノンノ | 自業自得…? |
| カノンノ | どうしてそんな風に言えるの!?ミラは必死に頑張ってるんだよ、世界と大精霊達を救うために |
| カノンノ | 私欲のために戦ってるんじゃない…。…お願いだから、そんな言い方はしないで…! |
| ミュゼ | … |
| | |
| ミラ | はあ…はあ……せめてもう少し、思うように身体が動けば… |
| アスカ | グオオ! |
| ミラ | …アスカの動きにはまるで隙がない。やはりミュゼの言ったように勝機は微塵もないのか…? |
| アスカ | ガアアアアアッ! |
| ミラ | うっ! |
| ミラ | …ぐ…それでも…私は諦めるわけにはいかない |
| ミラ | 必ず救い出してやるぞ…アスカ! |
| | |
| ミュゼ | ミラ… |
| ミュゼ | どうして?どうしてそこまでして一人で立ち向かおうとするの…? |
| ミュゼ | ここで身を引き、態勢を立て直し新たに挑む事だって出来たはず。なのに──… |
| カノンノ | ミラは、一刻も早くアスカを救い出してあげたいんだと思う… |
| ミュゼ | アスカを…? |
| カノンノ | うん。このネックレスの力の存在が明らかになる前、ミラは一度アスカと戦った事があるみたい |
| カノンノ | その時は、結局アスカを救う事が出来なかったみたいで…ミラ、本当に悔しそうにしてた |
| カノンノ | 今身を引いたら、その分アスカの苦しみは長引く。…そんな風に考えてるんじゃないかな |
| ミュゼ | … |
| カノンノ | それに、ミラってね、四大精霊やセルシウスと、よく話をしているの |
| カノンノ | いつも本当に楽しそうで何だか、親友だったり家族と話しているみたいな感じなんだよ |
| ミュゼ | 家族… |
| カノンノ | そう、家族。ミラにとって大切な存在だからこそ、どんなに不利な状況でも逃げずに救おうとしてるんだと思う… |
| ミュゼ | … |
| カノンノ | ミュゼさん…お願い。私をミラのところに行かせて |
| カノンノ | 私にとって、ミラは…みんなは、大切な存在なの!失いたくないよ… |
| ミュゼ | … |
| ミュゼ | …ごめんなさい、カノンノ |
| ミュゼ | あなたの気持ちは十分伝わったわ。…だけど、答えは変えられない、私にはあなたを守る義務があるから |
| カノンノ | な、何を… |
| | |
| アスカ | グオオオッ! |
| | ズドッ! |
| ミラ | うっ…! |
| ミラ | …やはり、どうあがこうと私一人では無理なのか…? |
| ミラ | くっ…四大が万全の状態であれば…一人でも… |
| ミラ | …いや、私には仲間がいる。せめて、アスベル達がここにたどり着くまではやられるわけには── |
| アスカ | ガアアッ! |
| ミラ | …!あれは… |
| | バサバサ… |
| ミラ | アスカが遥か上空へ…まずい、まさかこの一撃で私を仕留めるつもりなのか…? |
| ミラ | くっ、何としてでもこの攻撃だけはかわさねば… |
| | ズキン! |
| ミラ | うっ…こんな時に足の傷が… |
| アスカ | グアアアアアアアアアッ!! |
| ミラ | しまった…! |
| | ドカッ! |
| ミラ | …! |
| ミュゼ | …全く、手のかかる妹ね |
| ミラ | ミュゼ!? |
| ミラ | どうして戻って来た!?カノンノは… |
| ミュゼ | あの子は無事よ。そんな事より── |
| | |
| アスカ | ガアアアアッ! |
| ミュゼ | まずは目の前のアスカをどうにかすべきね |
| ミラ | あ、ああ |
| ミュゼ | …ミラ、あなたは下がってなさい。その傷じゃ足手まといになるわ。アスカは私が倒す |
| ミラ | いや、アスカは私が救う。ここで引き下がる事はしない。断じてな…! |
| ミュゼ | 本当に聞きわけのない子…。なら勝手にしなさい、邪魔になるようなヘマはしないでよね |
| ミラ | お前こそ、遅れを取るなよ! |
| scene3 | 想いの果てに |
| ミラ | これで決める! |
| ミュゼ | 受けなさい! |
| ミラ・ミュゼ | はあああああっ! |
| | ズバーーーーッ!! |
| アスカ | クアアアアーーーッ! |
| アスカ | ア…アア… |
| | |
| ミュゼ | 何とか大人しくなったみたいね |
| ミラ | ああ、そのようだな… |
| ミラ | でもまさか、一時は対立し剣を交えたお前と、こうして共に戦う事になるとはな… |
| ミラ | …妙な感覚だった。いや、だが姉妹である事を考えれば本来は自然な形なのかもしれんが |
| ミュゼ | … |
| ミラ | …ミュゼ、礼を言う。今日は二度も危機を救われたな |
| ミラ | どちらの時も、お前が来てくれていなければ私は確実にやられていただろう |
| ミラ | アスカを倒す事が出来たのもお前の協力があっての事だ |
| ミュゼ | 協力って…、勘違いしないでよね。私はあくまでガイアスからの指示、…ガイアスのためにやった事よ |
| ミラ | ガイアスの指示はカノンノを守る事、だろう? |
| ミラ | それなら、私に構わずカノンノを連れここから立ち去れば済んだ事、…私を救ったのはやはりお前の意志だ |
| ミュゼ | う、うるさいわね!意志なんて、そんな明確なものは何もないわ…ただ── |
| カノンノ | ミラ!ミュゼさん! |
| ミラ | カノンノ!…無事だったか! |
| カノンノ | うん、私は大丈夫。ずっとあそこの岩陰に隠れてたから |
| カノンノ | それより…ミラとミュゼさんこそすごい怪我…大丈夫なの? |
| ミラ | ああ、問題ない。ミュゼもこう見えてタフだからな |
| ミュゼ | タフって…それは褒めてるのかしら? |
| カノンノ | … |
| ミラ | そうだ、それよりもカノンノ、早速アスカにリプリカームを与えてやってほしい |
| カノンノ | うん、そうだね! |
| ミュゼ | … |
| ミラ | 早速始めてやってくれ |
| カノンノ | うん!アスカ…お願い、元に戻って──… |
| アスベル | カノンノ!ミラ! |
| リタ | 二人とも大丈夫!?…って、そこに倒れてるのってアスカじゃない! |
| リオン | ネックレスの光がアスカに… |
| リッド | ああ、セルシウスの時と同じだ |
| ルーク | あれが大精霊の暴走を鎮めるリプリカームって奴なのか…? |
| カノンノ | お願い、どうか…アスカを助けてあげて… |
| アスカ | クウウ… |
| ミラ | …アスカ?私の言っている事がわかるか? |
| アスカ | … |
| ミラ | アスカ… |
| ミラ | 皆、アスカは無事正気を取り戻す事が出来たようだ |
| リオン | … |
| アスベル | 暴走が鎮まった、という事だよな…よかった… |
| ミラ | …カノンノ、お前に礼を言っているぞ |
| カノンノ | ううん、お礼ならミラに言って。あなたを救うために必死に頑張ってくれたんだよ |
| カノンノ | 例えリプリカームがあったとしても、ミラがいなかったら、きっとあなたを救う事は出来なかった |
| ミラ | カノンノ… |
| アスカ | … |
| ミラ | いや、礼には及ばん。むしろ、もっと早く救ってやれなかった事を詫びねばいけないくらいだ… |
| ミラ | …それよりアスカ。目覚めたそばからすまないが、私達に力を貸してくれないか |
| ミラ | お前と同じ暴走状態に陥り今も尚苦しんでいる大精霊が世界各地にいる |
| ミラ | それにより自然の調和が取れなくなり世界の命を蝕んでいる状況だ… |
| ミラ | 既にセルシウスの協力は得られる事になっている。…アスカ、お前の力も貸してほしい |
| アスカ | … |
| ミラ | アスカ… |
| アスベル | ミラ、アスカは何て言ってるんだ? |
| ミラ | …快く承諾してくれた。私達と共に、仲間と世界を救いたいそう言ってくれている |
| カノンノ | アスカ…ありがとう。あなたが力を貸してくれる事、本当に心強く思うよ |
| リッド | …なら、契約ってワケだな |
| リタ | 確か精霊の力を借りるにあたって必要な儀式、よね |
| ミラ | ああ。ではカノンノ、早速ネックレスを |
| カノンノ | うん! |
| | |
| リオン | ネックレスの色がまた変わったな |
| リタ | 未だに信じられないわ、この中にセルシウスとアスカがいるなんて… |
| リオン | … |
| ルーク | それよりミラ、大丈夫なのかよ?どこもかしこも傷だらけじゃねーか |
| ミラ | ああ、心配は無用だ |
| リオン | …そうには見えんがな |
| アスベル | 遅くなってしまって悪かったな。あちこち必死に捜し回ったんだがなかなか見つけられなくて… |
| リタ | カノンノとミラがいなきゃ、あたしらは大精霊の気配すらたどれないものね |
| リッド | …にしても、まさかお前達だけでアスカを倒しちまうなんてな |
| カノンノ | 私は何もしてない、アスカを倒せたのはミラと── |
| カノンノ | …あれ? |
| ルーク | あ?他に誰かいるのか?お前ら二人だけじゃねーのか? |
| ミラ | … |
| | |
| リオン | ミラ、どういう事だ?お前達以外にも誰かいたのか? |
| ミラ | …ああ。私の姉がな |
| アスベル | 姉…? |
| ミラ | ああ、危険を顧みず私の窮地を救ってくれた、この上なく心強い、頼れる姉だ |
| リタ | ──これでアスカの暴走も無事鎮められたわけだけど…次はどこへ行けばいいの? |
| ルーク | …なあ、次はクロノスのところに行かねーか? |
| リオン | クロノス…。時空の歪みにいたという大精霊か |
| ルーク | ああ、アスカを見て思ったんだ。あいつもきっと暴走してたんじゃねーかって。だから… |
| カノンノ | きっと、今も苦しんでるんだよね… |
| ルーク | … |
| ルーク | …わからねえ。けど…あの時の借りは返さねえと俺の気がすまねえ |
| ルーク | あいつを元に戻して…そしたら、もう一回ぶん殴ってやる! |
| リッド | 元に戻してから、か。へえ、案外いいとこあんじゃねえか |
| ルーク | う、うっせーな!とにかく、クロノスのところに行く!いいなお前ら! |
| ミラ | 私は異存なしだ。奴なら既に居所もわかっている事だしな |
| ルーク | 何はともあれ、まずはメルトキオの方へ向かおうぜ |
| ルーク | 時空の歪みの入口がある亀裂はあっちの方だろ |
| リタ | ちょっと待って。ルドガーかユリウスの力がないと亀裂には入れないんじゃなかった? |
| ルーク | そ、そんなのわかってるっつーの!メルトキオに行きながらどうやって会うか考えればいいだろ! |
| リタ | バカっぽい…… |
| カノンノ | とにかく、早速出発しようよ!メルトキオに向かう時に、どこかでばったり会えるかもしれないし |
| アスベル | それもそうだな。じゃあ、行くとしよう! |