NameDialogue
scene1次に目指すは、再び──
ゴゴゴ…
リドウこうして高い場所から見下ろすと、俺達の計画は順調に進んでいる事が目に見えてわかる
リドウいい光景だと思わないか?
???ああ、そうだな。くく…大精霊の力がこれほどのものだったとはな
リドウ
???それはそうと、こうやって顔を合わせるのはあの時以来か
???思わぬところで得た大精霊の暴走という大きな戦力で、当初の計画よりも事は遥か順調に動いている。だが──
リドウ
???私達のこの計画を揺るがそうと目障りな「虫」が動いている事にはお前も気付いているな、リドウ
リドウ勿論。…けど、脅威じゃない
リドウ今更どうあがこうと、この状況を覆す事は不可能。そうだろ?
リドウそんな一匹の「虫」を気に掛けるより俺達は速やかに計画を成し遂げるべく動く方が賢明ってものさ
???…ふん、いいだろう。確かに現時点ではお前の言う通り、さしたる脅威ではない
???だがいずれ、奴とまみえる日は必ず来る事になるだろう。その時には、必ず息の根を──
???む…?
リドウどうかしたのか?
???僅かではあるが、大精霊どもの暴走する勢いが弱まった…?
リドウ弱まった…?
???
???これは一体…
ミラう…
レイアミラ…?
ミラレイア…
レイアよかった。目が覚めたみたいね
ミラここは…
レイアリンネル村だよ。まさか、覚えてないの?
ミラいや、完全に覚えていないわけではないが…どうやら村に着いた瞬間気を失ってしまったようだな
レイア村に着くなりその場で倒れ込むくらいボロボロだったもんね
ミラつっ…
レイアあ、無理しちゃ駄目だよ。怪我の治療をしたばかりなんだから
ミラいや、今はのんびり寝ている暇など……そうだ、リッドとカノンノは?
ミラ確か、あの二人もかなりの傷を負っていたはずだが
レイアリッドも随分大怪我を負ってたみたいだけど、だいぶ回復したかな
レイアカノンノの方は、怪我の程度が軽かった事もあってもう何ともないって
ミラ…そうか。それはよかった
リッドミラ、起きたか。具合はどうだ?
ミラ私の心配をするよりも自分の具合は大丈夫なのか?
リッドああ、完全復活とまではいかないけどマシになってきたぜ
ルークやっと起きたのかよ。このまま目が覚めないんじゃねーかとヒヤヒヤしたぜ
ミラああ。皆に心配をかけてしまったな、すまない
リタ別に謝る事ないわよ。これだけの大怪我を負ったんだから少しくらい休んで当然よ
メルディはいな。メルディもそう思うよ
ミラ…?スパーダの姿が見えないようだが
ルークああ、あいつなら俺達と一緒にお前らをここまで運んだ後、カン・バルクに戻ったぜ
ルークニブル湖の状況を、ガイアスに伝えるんだってよ
レイアミラが目覚めたらよろしく伝えてほしいって言ってたよ
ミラそうか…
アスベルリッドとカノンノから詳しい話は聞いた。氷山の中では、大変だったな
アスベル…何より、みんなが無事でいてくれて本当によかった
リッドま、結果何とかなったからよかったものの、今思い返したら結構な冷や汗モンだったよな
カノンノうん…もう駄目かもって何度も思ったけど、リッドさんとミラさんのお蔭で何とか切り抜ける事が出来たよ
カノンノ…ミラさんが起きたら、改めてお礼を言いたいと思ってたの。本当にありがとう
ミラいや、礼を言いたいのは私も同じだ
ミラリッドがいない間、私の背中を守ってくれたのはカノンノ、お前だからな
カノンノミラさん…
リオンとにかく、これでリプリカームに大精霊の暴走を鎮める効果がある事は立証された
リタしかも、その大精霊があたしらに力を貸してくれる事になるなんてね。想像もしなかったわ
リッド心強い味方が出来たって事は確かだぜ。あいつの力は実際に戦ったオレ達がよく知ってる
リオン…カノンノ、例のネックレスは?
カノンノここにあるよ
カノンノあのセルシウスがネックレスの中にいるなんて、何だか今でも不思議な感じ…
ルークだよな。話は聞いたけど信じられねーっつーか…
ミラだが、彼女はここにいる。紛れもない事実だ
リオン
アスベルリオン、どうかしたのか?ネックレスをじっと見つめて…
リオン…何でもない。大精霊がその中にいる、と言われても実感がわかない、と考えていただけだ
リオンそんな事より、ミラも目覚めた事だ。速やかに次の大精霊のところへ向かうべきではないのか?
ミラそうだな。私達にはゆっくりしている時間など──
ミラうっ…
アスベルミラ…!大丈夫か?気が焦るのはわかるが、無理はするな
ミラいや、そういうわけにはいかない
ミラこうしている間にも、大精霊の暴走による影響で事態は刻々と悪化している
ミラ早く手を打たねば、手遅れになる。今すぐここを発つべきだ
リタそんな事言って、大丈夫なの?そりゃ時間がないのはわかるけど…
カノンノミラさん…何かあったらすぐに声をかけてね…?
ミラ…ありがとう、カノンノ
リッドなら、早いとこ行くとしようぜ。次の目的地は…
リオン言うまでもない、大精霊アスカのいるテムザ山だろう
ミラああ。前にアスカと会った時は結局傷付けるだけ傷付け、暴走を鎮めてやる事は出来なかった
ミラ…今度こそ、必ず救ってやりたい
リオン
リタだったら、まずはア・ジュール港ね。そろそろ船も用意出来てるだろうし
ミラ船…?
アスベルスパーダが、今回の報告と合わせて船を手配するよう、話をしておいてくれる事になってるんだ
ミラ…そうか。では、その厚意に甘えるとしよう
カノンノうん!じゃあ出発しよう
scene2次に目指すは、再び──
ミラ世話になったな
レイアううん、全然いいの!それより、村を救ってくれて本当にありがとう
メルディ村がなくならなくてメルディ本当に嬉しいよぅ。ありがとな!
リッド氷漬けの心配はなくなったにしろ、まだ異変が収まったわけじゃねえ
リッドもし何か起こったら次はお前らが村を守るんだぞ
メルディはいな!マカせてほしーよ、リッド!
カノンノん?あの人達は…?
レイアあ、来た来た!みんなが助けてくれたウサちゃんの飼い主と、そのお母さんだよ
女の子あの…どうもありがとう
リッドああ、あの時のか。もうウサギを逃がすなよ?
女の子うん!
母親みなさんには本当にお世話になりました
アスベル礼を言うのはこちらです。村の再建で大変な時に、こんな大勢で押しかけてしまって
ルークメシも食わせてもらったしな。城のほどじゃねーけど、結構うまかったぜ
女の子また村に遊びに来てね。約束だよ?
リタわかった、約束する。また来るわ
女の子じゃーねー!
ミラそれでは私達も行くか。レイア達も、村の再建を頑張ってくれ
レイアうん、ありがとう。みんなもね!何かあればいつでも声をかけて。出来る事なら何でもするから
メルディはいな!みんながところにすぐ駆けつけるよ
アスベルああ、その時はよろしくな
カノンノリンネル村の人達、みんな温かくていい人達ばかりだったね
リタあたしらがニブル湖から戻った時は不安で仕方ないって顔してたけど、元気を取り戻したみたいでよかったわ
ルークあの調子なら、割とすぐに再建出来んじゃねーか?
アスベルそうだな。彼らのためにも、一刻も早く他の大精霊の暴走も鎮めて平和な世界を取り戻さないとな
カノンノうん…!
ミラよし、では行こう。ここから南下すればア・ジュール港、地割れで足場が悪いから注意して──
ガサガサ…
カノンノ何…?今、そこの草むらで何か…
ガルル…
リオン魔物か…!
グオオオオッ!
scene1すれ違う気持ち
???大精霊の暴走が弱まる、可能性として考えられるとすれば…
リドウ各地にいる大精霊の内、自我を取り戻した奴がいるって言いたいわけ?
???それしか考えられん
???…だが、今の状況で大精霊が自発的に自我を取り戻す事は不可能だ
リドウ考えられるとしたら、誰かが大精霊に自我を取り戻させた、という事かな
???他に考えられる可能性はない
リドウ
???あの「虫」の仕業か?…いや、奴の力をもってしても、成し得るとは思えない。だとしたら…
???…リドウ。お前が襲撃したという例の女…確か、取り逃がしたという話だったか
リドウ部下からそう報告を受けている。その物言いだと、あの女が暴走を鎮めたと思っているわけだ
???そう考え得る事が出来る
リドウへえ…
???くっ!どのような手立てを用いたのだ…
???大精霊の暴走は、今や計画遂行には欠かせない「手段」の一つと言える
???これらを止められるわけにはいかない。断じてな
???…リドウ、今すぐ例の女を捜し出し始末する。お前も手を貸せ
リドウその必要はないさ
???…何?
リドウ既に手は打ってある
リドウ…と、そういえば、今回君を呼び出した理由についてまだ何も話していなかったな
???呼び出した理由…だと?
リドウああ、世界各地を襲撃して回るのはもうやめにしよう、そう言いに来たんだ
???…!貴様…それはどういう意味だ
???私達の行いはマナ枯渇を促進…即ち、大精霊の暴走を促進させている
???動く事をやめれば、どうなるかは察しがつくはずだが
リドウへぇ…やっぱり、そこまで気付いていたんだ。さすがだな
リドウ…だからこそ、俺達は襲撃をやめて、静かに「その時」を待つべきなんだよ
リドウ大精霊の暴走が鎮まる時、俺達は新たな力を手に入れる…
リドウくくく、楽しみだね…
???
???…どういうわけか、説明してもらおうか
カノンノア・ジュール港に着いたね
アスベル船の手配は既に整っているはずだ。…と言っても港は案外広いし探すのは大変そうだな
ルークなら聞いてみりゃ早いだろ。おい、そこのお前!
リタお前って…あんたね、少しは言い方ってもんを──
ア・ジュール兵お前達は…!
ミラ私達はガイアスの知り合いだ。船の手配の話が通っているはずだが、どこへ行けばいい?
ア・ジュール兵
リッドん?もしかして、話が通ってねえのか?
ア・ジュール兵…話は聞いている。船に乗りたければ桟橋へ行け
ルークけっ、何だよあいつ。感じ悪ぃな
リタあんたの言い方が気に障ったんじゃないの?
アスベル…とにかく、話は通っているみたいだし桟橋の方へ行ってみよう
カノンノうん、そうだね
ジェイド──そうそう、船の操舵係に、これを渡すのを忘れないでくださいね
アニス……
アニス…大佐ぁ、本当にここまでしてあげる必要あるんですか?
ジェイドこれが私達にとっても大事な作戦である事はわかっていますよね、アニス
アニスそれはわかってますけどぉ…
アニス
ジェイド…釈然としない様子ですね。備えあれば憂いなしという奴ですよ
アニス…でも、大佐──
ジェイドあなたの納得出来ない気持ちもわからないではありませんがね、アニス
ジェイドですが、これは個人の感情より重要な話です。あなたも軍人ならそこは割り切るよう願いますよ
アニス
リタジェイド!?何でまたあんたがここに…
ジェイドまたご挨拶ですねえ。皆さんの船を用意していたんですよ。スパーダから話は聞いています
カノンノジェイドさんも、一緒に行くの?
ジェイドそうしたいのは山々ですが、あいにくとやる事が山積みでしてね。宮仕えの悲しいところです
ジェイドウィンドルまでは私の部下が案内しますのでその点はご心配なく
ルーク部下ね。ま、誰でも構わねーけどよ……ん?って、アニスじゃねーか
アニスほえ?ルーク様!?どうしてこんなところに…
ジェイドおや、そういえばアニスには話していませんでしたね
ジェイドルークも大精霊の暴走を鎮めるためにウィンドルの皆さんと行動を共にしているんですよ
リタ別にここにいる全員がウィンドルの人間ってわけじゃないけどね
アニス
ルークおいアニス、お前が俺達をウィンドルまで案内してくれるのかよ?
アニスそれは…うー、大佐に聞いてください
ルーク…何だ、アニスの奴。いつもと何か様子が違ったな。怒ってるみたいっつーか…
ミュゼどうしてそんな態度になるか、ちょっと考えればわかるんじゃないかしら?
リタミュゼ!?あんたまで来てたわけ!?
リッドちょっと考えればわかるって、どういう意味だ?
ミュゼ今回のウィンドルとの一時休戦を快く思わない者がこの国には大勢いるという事よ
ミュゼア・ジュールの民は、ウィンドルを許したわけじゃない。そこは忘れないで欲しいわね
アスベル
ルークまだそんな事言ってんのかよ。今は過ぎた事なんか構ってる場合じゃねーだろ
ミュゼあなたはキムラスカの人間でしょ?なら、ア・ジュールの人間の気持ちはわからないでしょ?
ルーク何だと、てめえ…!
アスベル…やめろ、ルーク
ルークちっ…んだよ、ったく…
ミュゼミラ、あなたもあなたよ。どうしてこんな連中と一緒に行動するの
ミラ私はこの世界を救うために、必要だと思う事をしている。何も不思議な点はないはずだが
ミラミュゼ、お前には世界を救いたいという気持ちはないのか?
ミュゼ
カノンノミュゼさん…
アスベル心配するな、カノンノ。これはちょっとした気持ちのすれ違いだ。いつか必ずわかり合える…
リオン…そうには見えんが…
ジェイドまあ、うちもいろいろですから。とにかく、船へ向かいましょうか。準備は既に整っていますので
リッドああ、そうしてくれ
ジェイドちなみに、ウィンドルまでは迂回する航路を使います
ジェイド最短航路の海域が、どうやら大荒れのようでしてね。無理はしない方がいいでしょう
アスベル構いません。急いでいるとはいえ、その海域で何かあっては元も子もありませんから
リタ…あまり揺れないといいんだけど。船酔いはもうこりごりだわ
ジェイド迂回航路なら、その辺りも大丈夫ですよ。…では、こちらへ
scene2すれ違う気持ち
ルークジェイドが言っていた通り、海、全然荒れてねーな。迂回して正解だったってわけか
リッド今のところはな。でも油断は禁物だぜ。海の上は天候も変わりやすいって言うし
リタこのまま何事もなくウィンドルまでたどり着く事を祈るわ…
ア・ジュール兵
アスベルあ、ちょっといいかい?ウィンドルまで、あとどれくらいだろう?
ア・ジュール兵
アスベルあ…
カノンノ…行っちゃったね。聞こえてなかったのかな…?
ルークこの距離で聞こえねーはずねえだろ。無視しやがったに決まってるぜ
ルーク…けっ、相変わらず感じ悪ぃな
リッドせっかく休戦したってのにこれじゃ、本当の和平実現は当分先になりそうだな
アスベル…仕方ないさ。つい先日まで、彼らにとってウィンドルは憎き敵国だったんだ
アスベルそう簡単に、全てを水に流せるはずがない
カノンノ
ミラカノンノ、どうかしたのか?何か考え込んでいるようだが
カノンノあ、うん…アスベルと会ったばかりの頃の事を思い出してたの
カノンノあの時も、ア・ジュールからウィンドルまで、こうやって船に乗ったなって
カノンノずっと船倉に隠れてたから、外の景色は見られなかったけどね
リタ船倉?何でそんなところに…って、まさか、忍び込みでもしたわけ!?
アスベルう…それしか方法がなかったんだ。俺の立場も明かせなかったし…
リッドだからって、さすがに密航はまずいんじゃねえのか?お前一人ならまだしも…
カノンノでも、アスベルはちゃんと私の事もエリーゼの事も守ってくれたよ?
ルークおいおい、カノンノだけじゃなくエリーゼも一緒だったのかよ。ったく、ガキ連れでよくやるぜ…
アスベルし、仕方ないだろ!みんなを守りつつ、安全にバロニアへ帰るにはあれしか方法がなかったんだから
アスベルルークだって、俺の立場に置かれたらきっと同じようにしていたさ
ルークやるかっつーの、んな事
アスベルいや、やるさ!それしか手段がなかったんだからな
リオン全く、どいつもこいつも騒がしい馬鹿ばかりだな
リタここはあんたに賛成するわ。くだらない事で言い争って本当バカっぽい…
カノンノ…でも、こんな風に大精霊を捜して世界中を回る事になるなんて、あの時は想像もしてなかったな…
ミラ不安か?
カノンノ…不安といえば、そうなのかもしれない
カノンノミラさんとリッドさんのお蔭で何とか無事にセルシウスを元に戻す事は出来た
カノンノ…けど、私がいた事でミラさんとリッドさんは酷い怪我を負ったし…
カノンノ大精霊の暴走を鎮めるのに私の力が必要だとしても、私のせいで誰かを傷付けたくはないよ
リッドカノンノ…
ミラ私の傷の事は気にするな。あれは油断していただけの事だ
カノンノでも…
ミラ…リッドが倒れた後、二人でセルシウスに立ち向かった時の事を覚えているか?
ミラ迷いが消えたお前は、あの時の私にとってとても心強い存在だった。だからこそ、背中を預けられた
ミラ…カノンノ。お前は強い心を持っている。それを忘れないで欲しい
カノンノミラさん…
リッドそうだぜ。セルシウスを相手にあんだけやり合えたんだ、もっと自信を持っていいんじゃねえのか?
カノンノリッドさん…。二人共、本当にありがとう
カノンノあ…ネックレスが…
ミラセルシウスがお前に語りかけている。お前の心まで傷付けてしまった事を謝りたいそうだ
ミラお前のように苦しむ人間をこれ以上生まないためにも、他の大精霊の事も救い出してほしい、そう言っている
カノンノセルシウス、あなたもありがとう…。あなたの気持ちはわかってる、一緒に力を合わせて頑張ろうね
ルーク何だあいつら、急に仲良くなりやがって気持ちわりーな
アスベル仲良く…?
アスベルふっ、確かにそうかもしれないな
アスベル…よーし、カノンノ。これを機に、俺以外のみんなの事も名前だけで呼んでみたらどうだ?
カノンノ…え?アスベル、突然どうしたの…?
アスベルその方が、より「仲間」って感じがするだろ?お前も言ってたじゃないか
ルークそういや、カノンノってアスベル以外の奴の事は「さん」付けで呼んでるよな
アスベル元々は俺の事もアスベルさんって呼んでたんだ
アスベルだが、堅苦しいのはよそうって事で呼び名を改めたんだ。な、カノンノ?
カノンノうん
リッドへぇ。言われてみりゃ確かに堅苦しいってのもわからなくはねえが…ま、オレはどっちでも構わねえぜ
リタ別にカノンノの呼びやすいように呼べばいいんじゃないの?
カノンノ本当?じゃあ…
カノンノふう…
カノンノ…リッド、ミラ、ルーク、リタ、リオン、それにアスベル…みんな、改めてよろしくね!
ミラああ
リタはいはい、よろしく
ルーク俺もそれでいいぜ…って、何だよ、リオン。お前も返事くらいしろよな
リオン…僕は呼び名なんかに興味はない。好きにすればいいだろう
ルークんだよ。相変わらずノリの悪い奴──
ズズーーン!
リッドっと!?何だ、この揺れは!
リタまさか、暗礁にでも乗り上げたんじゃ…?
リオン…!違う、あれを見ろ!
ガアアアアアッ!
ルークちっ、魔物かよ!
ミラ船の上は揺れるから、態勢は崩さないように気をつけろ!
scene1危難の海
リオン…終わったか
リッド何とかな。ったく、突然何だって──
ズズーーン!
アスベル今度は何だ…!?船体が急に傾いたぞ?
リタまさか、また魔物!?
ア・ジュール兵大変だ!船倉から浸水して船が沈みかかっているぞ!
リオンまさか、さっきの魔物の仕業か?
カノンノそんな…!
ルークじょ、冗談じゃねーぞ!こんな海のど真ん中で沈んじまったらおしまいじゃねーか!
ミラなら、今出来る事をするしかないだろう。何か方法はないのか?
ア・ジュール兵船倉の穴はいったん塞ぐが、それでもこの船は港までは持たないだろう
ア・ジュール兵とにかく最短航路で陸地を目指し、なるべく陸に近いところで救命艇に乗り換えるしかない
アスベル最短航路って、確か…
リオンああ、海域が大荒れになっているという話だったな
リタちょっと…そんな危ないところに浸水した状態で突っ込むなんて自殺行為じゃない!
ア・ジュール兵このまま迂回航路で目的地を目指しても確実に船は沈む…
ミラそれしか方法がない、という事だな。…わかった、ここはお前達の判断に任せよう
ミラ船の事は私達より彼らの方が専門だ。従うしかあるまい
ルークくそ、何でこんな事になんだよ…。いいかお前ら、何としても絶対無事に陸地にたどり着けよな!
ア・ジュール兵お前に言われるまでもない!
リッドやれやれ…一難去ってまた一難とは、この事だな
リオン
カノンノお願い…どうか無事に目的地に着いて…!
scene2危難の海
ズズズ…!
ルークうおっ!?ますます船体が傾きやがった!
リオン喫水線もだいぶ上がっている…!かなり浸水が進んでいるようだ
リッドおいおい、間に合うのかよ…
アスベルもう少しだ…もう少しだけ、もってくれ!
ミラむ…、あれは…?
リタ何よあれ…海が割れてる!?ちょっと、あれってまさかルーク達が言ってた時空の歪み…?
ルーク言われてみりゃ確かに似てるような…マジかよ、海にまであんなもんが…まるで馬鹿でかい滝みてーじゃねえか
リッドまさか大陸だけじゃなく海にまであんなモンが出来てたとはな…
カノンノこの辺りの海域が荒れてるのは、あの海面に発生した亀裂のせいだったのかも…
ザアァァァ…!
カノンノきゃあっ!?
アスベルカノンノ、大丈夫か!
ルークおい、何やってんだよ。ちゃんと船を操縦しろ!
ミラいや、あの滝の勢いに飲まれ船が流されているのだ
リオンくっ…このままじゃ船体ごとあの亀裂に飲み込まれてしまう…!もっと出力を上げられないのか!?
ア・ジュール兵…ぐああ!
リオンおい、何かあったのか?…!
グオオオオオッ!
リタなっ、魔物!?こんな時に何でよ、もう!
リッド…仕方ねえ、一気に片を付けるぞ!
scene3危難の海
リタファイアボール!
ズバーン!
グオオオオッ
ルークったく、こんなタイミングに出てきやがって、空気読めっつーの!
リッド…っと、船はどうなった?亀裂から少しは離れられたのか?
ザアァァァ…!
リオンいや、離れるどころかますます亀裂に近付いている
リタ何かさっきより船体の傾きもひどくなってない?まずいわ、このままじゃ…
ミラむ…?そういえば、アスベルとカノンノの姿が見えないようだが…
カノンノみんなー!大変!
リタ何、カノンノ!?どうしたの?
カノンノ船を操縦していた兵士さんが、意識を失ってたのさっきの魔物にやられたみたい…
リッド何だって!?…そりゃ、亀裂に近付くわけだ。確か舵は甲板にあったよな。急ぐぞ!
カノンノうん
アスベルおい、しっかりしろ!
ア・ジュール兵う…うう…
ミラここにいたか、アスベル
リオンどんな具合だ?舵を取れる状態なのか?
アスベルとりあえず、応急処置を施した
アスベル意識は戻ったみたいだが…腕に酷い傷を負っていてとても舵を取れる状態じゃない
ルークなっ、…それじゃあこの船の操縦は誰がすんだよ!俺は出来ねーぞ?
ア・ジュール兵う、うう…もう駄目だ…
ア・ジュール兵よりによって、ウィンドルの連中と一緒に死ぬ事になるなんて…
アスベル諦めるな!まだ終わりじゃない!
ア・ジュール兵気休めを言うな…。この船の操縦士は俺一人だ、もうあの亀裂から逃れる術はない
アスベル大丈夫だ。俺が船を操縦する
カノンノアスベルが?そんな事出来るの?
アスベルこの人は腕を負傷しているが、幸い意識はあるようだ。やり方を聞いて、俺が舵を取る
ア・ジュール兵…!?
アスベル頼む、教えてくれないか!
ア・ジュール兵
アスベル死んでしまえばそれまでだ、今は敵も味方も言ってられないだろう。世界を救うために協力してくれ…!
ア・ジュール兵…。…仕方がない。いいか、まずは――
アスベルありがとう!だいたいは把握出来たよ
ア・ジュール兵うう…不覚だ
アスベル…こんなところで、誰も死なせたりはしない。全員でウィンドルまでたどり着こう
ザアアアアア!
ルークうぉっ!?ますます引っ張られてくぞ!
リッド…よし、アスベル。早いとこ頼む。このままじゃオレ達全員があの亀裂に飲み込まれちまう
アスベルわかった
リタどう?何とかなりそう?
アスベルくっ…操縦は問題なさそうだが亀裂の勢いが強すぎて…思うように進まない!
リタそんな…
カノンノ…!そうだ…セルシウス、お願い、力を貸して…!
ピシィィィッ…!
ザァァ……
リッド滝の一部が凍って…亀裂に吸い込まれる水の勢いが弱まってるぞ
ルークおし!これなら何とかなるかもしれねえ!アスベル、今の内だ!
アスベルわかってる!何とかしたいのは山々なんだが…
リオンちっ…まずい、船の浸水も深刻だ。このままだと沈没も時間の問題だろう
アスベル…そうだ!船が浸水しているところも、凍らせればいいんじゃないか?
リタやってみる価値あるわね
カノンノセルシウス、お願い…!
ピシッ…!
ズ…ズズ…
リタ…駄目か。表面が凍っているみたいだけど、浸水の勢いの方が強いわ
アスベルくっ!時間稼ぎにしかならないって事か
カノンノ
リタ亀裂に飲み込まれるか、沈没か…そんなの、どっちもごめんよ!何とかならないの!?
ドドド…
ミラ…この音は?
リッド…おい!向こうから何か来るぞ!
リオンあれは…ア・ジュールの船か?
ジェイド皆さん、急いでこちらへ!アニス、牽引ロープを!
アニスわかってます!
ヒュンッ!
ルークジェイドにアニス!?お前らどうして…
ジェイドその説明は後です!皆さん、こちらに乗り移ってください
リッドわかった。みんな、急げ!
ア・ジュール兵う…
アスベルよかったな、これで助かるぞ!よし、俺の肩に掴まれ。少し傷が痛むかもしれないが辛抱しろ
ア・ジュール兵あ、ああ…
ズズズ…
リタ沈んでく…。あと少し遅かったら、あたしらもあの船と一緒に沈んでたわね
ジェイド何とか間に合ったようで何よりです。私としても来た甲斐がありました
ミラ礼を言うぞ、ジェイド。…だが、どうして私達の居場所がわかったのだ?
ジェイドああ、これのお蔭です。出航前にあなた方の船に、これと同じものを仕込ませていただきましてね
リオンこれは、通信機…か?
リッド通信機って、そいつはどういう事だ?オレ達の話を盗聴してたって事かよ?
ジェイド盗聴とは人聞きの悪い。万が一に備えての処置ですよ
ジェイド私にしてみれば、皆さんが互いにどう呼び合うかなんて別にどうでもよい事ですから
ルークしっかり盗み聞きしてんじゃねーか!
ジェイドまあともあれ、現にこうして功を奏したわけですし、それでよかったとしませんか?
アスベル…確かに、結果救われた事には変わりませんね。ありがとうございます
リタ相変わらず、いちいち鼻に付くけど…
リッドアスベルとセルシウスにも感謝しねえとな
アスベル俺はあまり大した事は出来なかったけどな…。まあ、全員無事で本当によかったよ
ア・ジュール兵
ジェイドさて、危険も去った事ですし、このまま皆さんをウィンドルまでお送りしましょう
ジェイドこちらの船は最新式で、出力も大幅に向上していますから、今度こそ快適な船旅を約束しますよ
ルークだったら最初から、こっちに乗せろっつーの
ジェイドまあそう言わずに。こちらにもいろいろと事情がありましてね
ジェイドそれでは改めて…ウィンドルへ向けて全速前進!
scene1マナの異変
???
???…まさかと思っていたが、実際に大精霊が姿を消している以上、事実と考えるしかあるまい
???だが、どういう理屈だ…?あの状況から自ら正気を取り戻す事は不可能のはず。だとすれば──
???…あの女か
???
???いずれにせよ大精霊の存在しないこの場に用はない──
???…いや
???マナの減少する速度も緩やかになっている
???大精霊の暴走が鎮まったとはいえ、それだけでマナ減少がここまで急速に緩やかになるとは考えにくい
???考えられる可能性は一つ
???
???奴め…何を企んでいる
ジェイド長らくご苦労様でした。ウィンドル港に着きましたよ
ルークやれやれ…やっとかよ
リタア・ジュール港を出航した時は、こんな大冒険になるとは思わなかったわ…
アスベルお忙しいところ、わざわざありがとうございました
ジェイドいえいえ。こうして無事にお送り出来て、よかったですよ
ジェイドあなたの身にもし何かあれば、リチャード陛下の心象が著しく悪化した事でしょうしね
ア・ジュール兵あの…アスベル殿…
カノンノあ、あなたは船を操縦してた──
ア・ジュール兵…さっきはありがとうございました。あなた達のお蔭で、何とかこうして生き延びる事が出来ました
アスベル礼ならカーティス大佐に。結局のところ、俺は何も出来ていませんから
ア・ジュール兵いえ、私の心が折れそうになった時、懸命に励ましてくださいました
ア・ジュール兵私は…あなた達ウィンドルの方々の事を誤解していたかもしれない
ア・ジュール兵あなた達のこれからの無事を心よりお祈りしています。それでは…!
ジェイドいがみ合っていた者同士が、共に苦難を乗り越える事で信頼を育む…美しい光景ですねぇ
アニス
ジェイドほら、アニスもお礼を言わないと。あの兵士は、あなたの直属でしょう
アニス…ありがとうございました
アスベルあ、いや…どういたしまして
ジェイドそれでは、私達はア・ジュールへ戻りますね
ミラ気をつけて帰ってくれ。いろいろと助かった
ジェイドいえいえ。またお会いする機会を楽しみにしていますよ
カノンノ…アスベルが言ってた通りみんなただ、気持ちがすれ違ってしまってるだけなのかもしれないね
アスベル…ああ。時間はかかるかもしれないがいずれは手を取り合う事が出来る。改めて俺も、そう感じたよ
ミラ何はともあれ無事ウィンドルへ到着した事だ。早速テムザ山へ向かうとしよう
リオン…ああ
scene2マナの異変
ルークあれから結構歩いたけど、テムザ山はまだなのかよ。たりぃ…
ミラ安心しろ、もうすぐ着く。この道をさらに南へ進めば──…ん?
リオンどうかしたのか?
ミラマナに変化が生じている…これは一体…
カノンノ変化…?
ミラ
ミラ…やはり、気のせいではなさそうだ。わずかではあるが、マナの減少速度が緩やかになっている
ミラ無論、完全に止まったわけではないが…
アスベルセルシウスの暴走を鎮めたから、という事じゃないのか?
ミラ確かにセルシウスの暴走を鎮めた時もマナの減少速度は変化したが、その時よりさらに遅くなっているのだ
ミラ…セルシウスの暴走を鎮めた以外にも、マナに影響する何かが起こったという事か…?
リッド…何かよくわかんねえけど、マナの減り具合がマシになったって事なら、いい事じゃねえのか?
ミラだといいが…
リオン腑に落ちない点があるにしろ、原因がわからないなら、今考えたところで仕方ないだろう
アスベル…それもそうだな。確かに気がかりではあるけど、いい方向に動いているのかもしれない
アスベルこれによって俺達のやるべき事が変わるわけじゃないし、今はとにかくアスカの暴走を鎮める事を考えよう
ミラ…ああ、そうだな。では、気を取り直して先へ進むと──
ガサ…
リタみんな、気をつけて!すぐ近くに何かいる!
ルーク魔物か!?
リッド…そのようだぜ。みんな、気をつけろ!
scene1アスカ、再び
ミラようやく、戻って来られた…
ルークここがテムザ山か。そういや、クレス達と合流する前近くを通ったっけな
リッドああ、何かでっけえ山があるとは思ってたけど、まさかここに大精霊がいたなんてな
アスベルああ、俺も何だか信じられない、というか…不思議な気分だ
カノンノ不思議な気分?
アスベルテムザ山には今まで何度も来た事があるんだ。前回は確か、ユーリと一緒だった
ルークユーリと?男同士でピクニックでもしてたのかよ?
アスベルまさか!騎士団を抜けたばかりのユーリと、行動を共にしていたんだ
アスベルフレンがユーリを追って来て、二人が戦う羽目になってしまって…大変だったんだぞ
リタふーん、あの二人が…そんな事があったのね
リッドリオンは、前にミラと一緒にここへ来て、アスカとやり合ってんだよな?
リオンああ
リオンだが…
ルークセルシウスでうまくいったんだ。前の時の失敗は気にしなくていーんじゃねーの?
ルークリプリカームの効果はお墨付きなんだろ? それにこの俺もいるんだしな!
リタ…はあ、あんたのその自信は一体どこから沸いてくるんだか…
ミラ
カノンノミラ、一緒に必ずアスカを救ってあげようね!
ミラ…ああ、そうだな。よし、では山を登るとしよう
ミラアスカは中腹にある洞窟にいた。まずはそこを目指そう
ルークよーし、待ってろよ、アスカ!
scene2アスカ、再び
リタここが、例の…?
アスベルこんなところに洞窟があったなんて初めて知ったよ
リッド異変の影響であちこち地形が変わっちまってる。こいつが元々あったモンかはわからねえけどな
ミラ…皆、気を付けろ。周囲の気がかなり張り詰めている
ルークこの奥にアスカがいるっつー事か
カノンノうん、間違いないみたい…。ネックレスも反応を示してる
リオン
ミラ…待てリオン、単独で動くのは危険だ。以前とは違うただならぬ気配を感じる
ミラアスカの暴走がより進行しているのだろう…
アスベル暴走が進行!?…確かに、前にミラ達がここへ来てから時間も経っているが、でもだからって…
ミラそれ以外にも、思い当たる事はある…
リオン…あの男か
リタあの男って?
ミラ前にここへ来た時、妙な男に出くわしたのだ
ミラ奴は、魔導器とおぼしき剣を向けアスカに何かを施していた
ルークブ、魔導器だって!?それって一体…
リオンその男がアスカのマナを乱し暴走を促進させようとした。…僕達はそう考えている
ミラ具体的にその男が何をしていたか確証がない分、あくまで仮説にすぎないがな
カノンノそんな…
リタ魔導器で精霊に干渉…?そんな魔導器があったとして、どうしてそんな事を…
リッドさあな。想像もつかねえよ。リタは魔導器に詳しいんだろ?
リッドその魔導器を使ってるヤツに心当たりはねえのか?
リタわからない…。研究者だとしてもそんな魔導器が存在するなんて聞いた事ないし…
リタあ!
リタ妙な男、で思い出したけど、あたしも前にア・ジュール港でわけ知り風な怪しい男に会ったわ
アスベルわけ知り風って、どういう事だ?
リタ今回の一連の出来事について、何か知ってそうな感じだった
リタ一連の戦いの裏事情を知る…あるいは、例の第三者に直接何らかの関わりを持っているのかも…
リタそういえば、そいつの事はジェイドが部下を使って調査してくれてるはずなんだけど、どうなってんのかしら
ミラいずれにせよ、今回の一連の出来事に誰かの陰謀が関わっている事は明らかだ
ミラ私の見た男とリタの会った男が、何者かわからないにせよ、警戒は怠らないに越した事はない
ミラリドウの事もあるしな
ルークん?リドウ?何だそれ、初耳だぜ?
ミラ私を襲撃した男だ。精霊回収を目的としているが故に邪魔な存在となる私を消そうとした
リオン
カノンノそんな…一体何のために…
ミラ目的まではわからない。…だが、私とは相反する目的を持ち動いている事は確かだ
リタ…なら、そのリドウって奴と例の怪しい男が共謀してる可能性も無きにしも非ずって事ね
ミラああ、私もそう考えていた。二人は、明らかに私達とは敵対した行動をとっているからな
ルークま、リドウだか何だか知らねーがその辺りの事は、ユーリやクレスが調べてんだし、大丈夫じゃねえの?
リッドああ、だといいんだけどな…
カノンノあ…みんな!ネックレスの光が急に強く…
ミラ…これは警告だ。アスカが近付いて来ている…!
リオン僕達の存在に気付いたようだな
アスカウッ…ウオオォォォォォォッ!
アスベル…!これはアスカの──…くっ、何だ!?このすさまじい風は一体…!?
リッドおい、まさかあれが…!
アスカグオオオーーーッ!
アスベルこれが大精霊アスカか…
リタすごい迫力…。さすがは大精霊ってとこね
カノンノでも、何だか苦しそう
ルーク苦しんで…そういやクロノスも苦しんでたよな。…って事は、待てよ、あの時のあいつも暴走…?
アスカグオオオオオッ!
ミラアスカ…。今度こそ必ず救い出してみせる!
アスカグアアアアアアアアアッ!
リッド来るぞ!
scene1引き離された仲間
ミラアスカ、これで最後だ…目を覚ませ!
ザシューーーッ!
アスカグア…
アスカガ…
ルークはあ…はあ…よし、これで大人しく──
アスカグオオオオッ!
アスベルくっ…駄目か!
リッドあれだけの攻撃を与えたのに…まさか効いてねえとか言うんじゃねえだろうな…!
リオン…いや、アスカをよく見てみろ。傷はある。効いていないはずがない
ミラリプリカームを与えるためにもアスカの暴走を一時的に鎮める事は必要不可欠だ…
ミラもう一度、攻撃を仕掛ける…皆、援護を頼む!
ルークしょうがねえな、任せろ!
リタあたしは遠方から援護するわ!カノンノ、あんたもここにいなさい
カノンノうん、わかった
ズドッ!
アスベルぐっ…!
アスカグアアアア!
リオンちっ…
アスカガアッ!!
ミラくっ…アスカ!お前を傷付ける事は本意ではない…
ミラ頼む、早く大人しくなってくれ…!
ザシュッ!!
アスカグア…
リッドミラの攻撃でアスカが怯んだ!みんな、今の内だ!
ルークよし、行くぜアスカ!!
アスカグアア…
アスカグアアアアアアッ!
ルークな、おい…!どこに行きやがんだ──
カノンノきゃあっ!?
リタなっ、カノンノがアスカに捕まったわ…!
アスベルカノンノ!!アスカ、カノンノを離すんだ!
ルークおい、あの野郎、まさかあのまま飛び去ろうっつーんじゃねーだろうな!?
ミラそうはさせるか!
ガシッ
アスカグオオオーーッ!
リオンミラ!アスカに掴まって、何をする気だ!
アスベル更に高く…!カノンノをどこへ連れて行く気だ!?
リッドミラ!無茶すんな!早く降りろ!
バサァッ、バサァッ
アスベルおい、待て!ミラ、カノンノ!
アスベルカノンノーーッ!
ルークミラーーッ!
カノンノお願い、話を聞いて!アスカ!
ミラカノンノ、今は何を話しても無駄だ。それより振り落とされないようしっかりと捕まっていろ
ミラ隙を見て、お前を安全な場所へ連れて行く、だから今は──
アスカグアアアアーーッ!
ミラなっ…!!このまま振り落とす気か!?
カノンノお願いアスカ、ミラを落とさないで!こんな高さから落ちたら…!
アスカクアアアアーーッ!
ミラくっ…!落ちる!カノンノ、私が行くまで、無事で…!
カノンノそんな…
カノンノミラ!ミラーーーーーーッ!!
scene2引き離された仲間
リオンアスカはこの洞窟の天井の穴から飛び去った。おそらく山頂の方を目指せば…
ルーク途中で見つけられるかもしれねーって事だよな?よし、なら早いとこ追いかけようぜ!
リッドああ、それがいい。早く追いつかねえと見失っちまう
リタあたしらは大精霊の居場所を感知出来ないしね…。急いだ方がいいわ
アスベル…カノンノ、ミラ。すぐに行く、どうか無事でいてくれ…
ミラうっ…ここは…
ミラ…ああ、そうか私は落下して──…
ミラ…そうだ、カノンノ!?
ミラうっ…!落下した時の衝撃で…傷を負ったか
ミラだが、幸い大きな傷にはなっていないようだ
ミラ四大…
ミラ心配をかけてすまない、私は大丈夫だ。カノンノもアスカも、必ず救ってみせる…!
ミラお前達も落下の衝撃から私を守ってくれたのだろう?弱っているのに、すまないな
ミラ…いや、だが休む暇はない。カノンノを追わねば…
ミラ世界や大精霊を救うにはカノンノの存在は不可欠だ…
ミラ取り返しのつかない事態になる前に何としても…!
ミラ
ミラ…アスカは山頂の方か。よし、早速──
カラ…
ミラむ…?頭上から石が…
グオオオオッ!
ミラ…くっ、魔物か!あいにくだがお前と遊んでいる時間はない!
scene1想いの果てに
ミラようやく山頂にたどり着いたか。アスカとカノンノはどこだ…?この辺りにいるはずだが…
アスカギィィッ
ミラここにいたか…。アスカ、今お前をその苦しみから救い出してやるぞ。だからカノンノを…
ミラ…!アスカ…カノンノはどこだ?彼女をどこへやった!?
ミラまさか…!
アスカグアアッ!
ミラくっ…馬鹿な、何て事を…!!
ミラカノンノはお前を救える唯一の存在、それをお前は…!
アスカガアアッ!
ミラくっ…
アスカグオオッ!
ミラはあ、はあ…話が通じるはずもないか。ならば──…
アスカガアアアアッ!
ミラなっ…!あの速さは避けきれな──
バシィッ!
アスカグアッ!
ミラ何だ…?何が起きた?
???こんなところで死ぬつもり?世界を救うって話は嘘だったのかしら
ミラ…!お前は…
ミラミュゼ…どうしてお前がここに?
ミュゼ…そんな事より、ミラ。あなたの捜しものは、この子でしょ?
カノンノ
ミラカノンノ!
ミュゼ大丈夫よ、気を失っているだけだから
ミラミュゼ、お前がカノンノを救ってくれたのか?
ミュゼこの子が死んで困るのは別にあなた達だけじゃないって事よ
ミラ確かにそうだな。だが、理由は何であれ礼を言う
ミラここでカノンノを失えば、大精霊を救う事はおろか、世界も破滅の一途をたどる事になっていたからな
ミュゼ…何があってもこの子だけは守れ、…ガイアスからの指示よ
ミュゼ…とにかく、これで私の役目は終わり。この子は返すわ
ミュゼどういう理由か知らないけど、ウィンドルの連中もいない状態で勝機はない
ミュゼこの子を死なせたくないなら今は身を引くべき──
アスカグアアアアアアアッ!!
ミラ…!
ミラ…ミュゼ、悪いがついでにもう一つ頼みを聞いてくれないか
ミラ安全な場所へカノンノを連れて行き、守ってやってほしい
ミュゼ…あなたはどうするのよ
ミラ私はここでアスカと戦う
ミュゼ…無茶な事言わないで
ミュゼ一人で太刀打ち出来る相手じゃない事くらい、あなたが一番よくわかっているはずよ
ミュゼ更には全身に傷を負って…そんな状態で戦うなんて死ににいくも同然──
ミラ…アスカの力はよく知っている。だが、それでも今引く事は出来ない
アスカガアアアアッ!
ミラ来い、アスカ!お前の相手はこの私だ!!
ミュゼちょっと、ミラ!
scene2想いの果てに
カノンノう…
ミュゼ
カノンノん…あれ…ミュゼさん?
ミュゼあら、やっとお目覚め?
カノンノどうしてミュゼさんが…?私…確かアスカに連れ去られて…
カノンノ…そうだ、ミラ!ミラも一緒だったの…!でも、途中でアスカに振り落とされてしまって…
ミュゼ振り落とされて…?…あの全身の傷はそういうわけだったのね
カノンノ全身の傷って…ミュゼさん、ミラに何かあったの!?ミラは大丈夫な──
ドォーーン!
カノンノ…!何の音!?あっちの方から聞こえて…
アスカガアアアアッ!!
ミラくっ…
カノンノあれは…
ミュゼ…見ての通り、ミラはアスカと戦ってるわ
カノンノまさか一人で…?
ミュゼええ、そうよ。止めたって聞きやしないんだから…
カノンノ大変…一人だなんて無茶だよ…!私もそっちに…
ミュゼ…待ちなさい。あなたをミラのところへ行かせるわけにはいかないわ
カノンノミュゼさん!?お願い、そこを通して…!
ミュゼ駄目よ。あなたが死ねば、世界を救う手だてはなくなって、ガイアスが悲しむもの
カノンノ
ミラはっ!
アスカグオオオッ!
ミラくっ、寸時に攻撃をかわされたか…ならば、これでどうだ!
ザシュッ!
アスカグア…
ミラよし、今の内に一気に──…
アスカガ…ガアアッ!!
ミラなっ…!
ズカッ!
ミラうぐっ…!
カノンノミラ…!!
ミュゼ
カノンノお願いミュゼさん!ミラのところに行かせて…!このままじゃミラが…
ミュゼ…駄目よ
カノンノ一人でアスカを倒すなんて無理だよ!ただでさえ、ミラはセルシウスと戦った時に深い傷を負ってる
カノンノその傷だって完全に癒えてないのに、新たな怪我まで負って…。一人でどうにか出来る状態じゃ…
ミュゼそんな事、あなたに言われなくてもわかってるわよ
ミュゼミラには忠告したわ。一人で敵う相手じゃない、あなたを連れて身を引けと…
ミュゼそれでも聞かなかったのはミラよ。…自業自得だわ
カノンノ自業自得…?
カノンノどうしてそんな風に言えるの!?ミラは必死に頑張ってるんだよ、世界と大精霊達を救うために
カノンノ私欲のために戦ってるんじゃない…。…お願いだから、そんな言い方はしないで…!
ミュゼ
ミラはあ…はあ……せめてもう少し、思うように身体が動けば…
アスカグオオ!
ミラ…アスカの動きにはまるで隙がない。やはりミュゼの言ったように勝機は微塵もないのか…?
アスカガアアアアアッ!
ミラうっ!
ミラ…ぐ…それでも…私は諦めるわけにはいかない
ミラ必ず救い出してやるぞ…アスカ!
ミュゼミラ…
ミュゼどうして?どうしてそこまでして一人で立ち向かおうとするの…?
ミュゼここで身を引き、態勢を立て直し新たに挑む事だって出来たはず。なのに──…
カノンノミラは、一刻も早くアスカを救い出してあげたいんだと思う…
ミュゼアスカを…?
カノンノうん。このネックレスの力の存在が明らかになる前、ミラは一度アスカと戦った事があるみたい
カノンノその時は、結局アスカを救う事が出来なかったみたいで…ミラ、本当に悔しそうにしてた
カノンノ今身を引いたら、その分アスカの苦しみは長引く。…そんな風に考えてるんじゃないかな
ミュゼ
カノンノそれに、ミラってね、四大精霊やセルシウスと、よく話をしているの
カノンノいつも本当に楽しそうで何だか、親友だったり家族と話しているみたいな感じなんだよ
ミュゼ家族…
カノンノそう、家族。ミラにとって大切な存在だからこそ、どんなに不利な状況でも逃げずに救おうとしてるんだと思う…
ミュゼ
カノンノミュゼさん…お願い。私をミラのところに行かせて
カノンノ私にとって、ミラは…みんなは、大切な存在なの!失いたくないよ…
ミュゼ
ミュゼ…ごめんなさい、カノンノ
ミュゼあなたの気持ちは十分伝わったわ。…だけど、答えは変えられない、私にはあなたを守る義務があるから
カノンノな、何を…
アスカグオオオッ!
ズドッ!
ミラうっ…!
ミラ…やはり、どうあがこうと私一人では無理なのか…?
ミラくっ…四大が万全の状態であれば…一人でも…
ミラ…いや、私には仲間がいる。せめて、アスベル達がここにたどり着くまではやられるわけには──
アスカガアアッ!
ミラ…!あれは…
バサバサ…
ミラアスカが遥か上空へ…まずい、まさかこの一撃で私を仕留めるつもりなのか…?
ミラくっ、何としてでもこの攻撃だけはかわさねば…
ズキン!
ミラうっ…こんな時に足の傷が…
アスカグアアアアアアアアアッ!!
ミラしまった…!
ドカッ!
ミラ…!
ミュゼ…全く、手のかかる妹ね
ミラミュゼ!?
ミラどうして戻って来た!?カノンノは…
ミュゼあの子は無事よ。そんな事より──
アスカガアアアアッ!
ミュゼまずは目の前のアスカをどうにかすべきね
ミラあ、ああ
ミュゼ…ミラ、あなたは下がってなさい。その傷じゃ足手まといになるわ。アスカは私が倒す
ミラいや、アスカは私が救う。ここで引き下がる事はしない。断じてな…!
ミュゼ本当に聞きわけのない子…。なら勝手にしなさい、邪魔になるようなヘマはしないでよね
ミラお前こそ、遅れを取るなよ!
scene3想いの果てに
ミラこれで決める!
ミュゼ受けなさい!
ミラ・ミュゼはあああああっ!
ズバーーーーッ!!
アスカクアアアアーーーッ!
アスカア…アア…
ミュゼ何とか大人しくなったみたいね
ミラああ、そのようだな…
ミラでもまさか、一時は対立し剣を交えたお前と、こうして共に戦う事になるとはな…
ミラ…妙な感覚だった。いや、だが姉妹である事を考えれば本来は自然な形なのかもしれんが
ミュゼ
ミラ…ミュゼ、礼を言う。今日は二度も危機を救われたな
ミラどちらの時も、お前が来てくれていなければ私は確実にやられていただろう
ミラアスカを倒す事が出来たのもお前の協力があっての事だ
ミュゼ協力って…、勘違いしないでよね。私はあくまでガイアスからの指示、…ガイアスのためにやった事よ
ミラガイアスの指示はカノンノを守る事、だろう?
ミラそれなら、私に構わずカノンノを連れここから立ち去れば済んだ事、…私を救ったのはやはりお前の意志だ
ミュゼう、うるさいわね!意志なんて、そんな明確なものは何もないわ…ただ──
カノンノミラ!ミュゼさん!
ミラカノンノ!…無事だったか!
カノンノうん、私は大丈夫。ずっとあそこの岩陰に隠れてたから
カノンノそれより…ミラとミュゼさんこそすごい怪我…大丈夫なの?
ミラああ、問題ない。ミュゼもこう見えてタフだからな
ミュゼタフって…それは褒めてるのかしら?
カノンノ
ミラそうだ、それよりもカノンノ、早速アスカにリプリカームを与えてやってほしい
カノンノうん、そうだね!
ミュゼ
ミラ早速始めてやってくれ
カノンノうん!アスカ…お願い、元に戻って──…
アスベルカノンノ!ミラ!
リタ二人とも大丈夫!?…って、そこに倒れてるのってアスカじゃない!
リオンネックレスの光がアスカに…
リッドああ、セルシウスの時と同じだ
ルークあれが大精霊の暴走を鎮めるリプリカームって奴なのか…?
カノンノお願い、どうか…アスカを助けてあげて…
アスカクウウ…
ミラ…アスカ?私の言っている事がわかるか?
アスカ
ミラアスカ…
ミラ皆、アスカは無事正気を取り戻す事が出来たようだ
リオン
アスベル暴走が鎮まった、という事だよな…よかった…
ミラ…カノンノ、お前に礼を言っているぞ
カノンノううん、お礼ならミラに言って。あなたを救うために必死に頑張ってくれたんだよ
カノンノ例えリプリカームがあったとしても、ミラがいなかったら、きっとあなたを救う事は出来なかった
ミラカノンノ…
アスカ
ミラいや、礼には及ばん。むしろ、もっと早く救ってやれなかった事を詫びねばいけないくらいだ…
ミラ…それよりアスカ。目覚めたそばからすまないが、私達に力を貸してくれないか
ミラお前と同じ暴走状態に陥り今も尚苦しんでいる大精霊が世界各地にいる
ミラそれにより自然の調和が取れなくなり世界の命を蝕んでいる状況だ…
ミラ既にセルシウスの協力は得られる事になっている。…アスカ、お前の力も貸してほしい
アスカ
ミラアスカ…
アスベルミラ、アスカは何て言ってるんだ?
ミラ…快く承諾してくれた。私達と共に、仲間と世界を救いたいそう言ってくれている
カノンノアスカ…ありがとう。あなたが力を貸してくれる事、本当に心強く思うよ
リッド…なら、契約ってワケだな
リタ確か精霊の力を借りるにあたって必要な儀式、よね
ミラああ。ではカノンノ、早速ネックレスを
カノンノうん!
リオンネックレスの色がまた変わったな
リタ未だに信じられないわ、この中にセルシウスとアスカがいるなんて…
リオン
ルークそれよりミラ、大丈夫なのかよ?どこもかしこも傷だらけじゃねーか
ミラああ、心配は無用だ
リオン…そうには見えんがな
アスベル遅くなってしまって悪かったな。あちこち必死に捜し回ったんだがなかなか見つけられなくて…
リタカノンノとミラがいなきゃ、あたしらは大精霊の気配すらたどれないものね
リッド…にしても、まさかお前達だけでアスカを倒しちまうなんてな
カノンノ私は何もしてない、アスカを倒せたのはミラと──
カノンノ…あれ?
ルークあ?他に誰かいるのか?お前ら二人だけじゃねーのか?
ミラ
リオンミラ、どういう事だ?お前達以外にも誰かいたのか?
ミラ…ああ。私の姉がな
アスベル姉…?
ミラああ、危険を顧みず私の窮地を救ってくれた、この上なく心強い、頼れる姉だ
リタ──これでアスカの暴走も無事鎮められたわけだけど…次はどこへ行けばいいの?
ルーク…なあ、次はクロノスのところに行かねーか?
リオンクロノス…。時空の歪みにいたという大精霊か
ルークああ、アスカを見て思ったんだ。あいつもきっと暴走してたんじゃねーかって。だから…
カノンノきっと、今も苦しんでるんだよね…
ルーク
ルーク…わからねえ。けど…あの時の借りは返さねえと俺の気がすまねえ
ルークあいつを元に戻して…そしたら、もう一回ぶん殴ってやる!
リッド元に戻してから、か。へえ、案外いいとこあんじゃねえか
ルークう、うっせーな!とにかく、クロノスのところに行く!いいなお前ら!
ミラ私は異存なしだ。奴なら既に居所もわかっている事だしな
ルーク何はともあれ、まずはメルトキオの方へ向かおうぜ
ルーク時空の歪みの入口がある亀裂はあっちの方だろ
リタちょっと待って。ルドガーかユリウスの力がないと亀裂には入れないんじゃなかった?
ルークそ、そんなのわかってるっつーの!メルトキオに行きながらどうやって会うか考えればいいだろ!
リタバカっぽい……
カノンノとにかく、早速出発しようよ!メルトキオに向かう時に、どこかでばったり会えるかもしれないし
アスベルそれもそうだな。じゃあ、行くとしよう!