NameDialogue
scene1リチャードの想い
ルーク──上手い事話もまとまって、これで肩の荷が一つ降りたって感じだな!
リッドああ、そうだな。とにかく、これでもう魔導器や魔導兵器が使われる心配はなくなったってわけだ
リチャードみんな、本当にありがとう
リチャード無事ガイアス陛下の力添えを得る事が出来──
リチャード更には我が国とア・ジュールの関係修復においても、講和への足掛かりを得る事が出来た
リチャードみんなからの報告がなければ、この交渉は勿論、事態の把握すら出来ていなかっただろう
リチャード…下手をすれば、自らの手でこの世界を崩壊させていたかもしれない
エステルリチャード陛下…
リチャード改めて、礼を言わせてほしい。これも全て、みんなのお蔭だ。心から感謝する
アスベル何を言うんだ。それは俺達も同じだ
アスベルあのガイアス陛下を相手に、よく渡り合えたと思う。それは紛れもなくリチャード、お前のお蔭だ
リタまあ、そうね。国王同士の直談判だったからこそ上手くいったようなもんじゃない?
リッド難しく考える必要はねえよ。誠意ってのがあいつに伝わったんだろ
ミラ…リチャード。かつての行いから、私はお前に対しいい印象を持っていなかった
ミラだが、お前は変わろうとしている。ガイアスとの話でそれがよくわかった。認識を改めねばな
リチャード…ありがとう。勿論、僕に出来る事は何でもする。…だが、認識を改める必要はない
リチャードいくら償おうとも、僕の行いによって出来た人々の心の傷や苦しみ、恐怖を完全に取り除く事は出来ない
リチャード…だからこそ、過去の行いも含めて僕を見ていてほしいんだ
リチャード彼らの痛みや想いを受け止め、その上で僕は全力を尽くしたい、かつての平和な世界を取り戻すために
ミラリチャード…お前の想いはわかった。お前の変わっていく様を、私達がしっかり見届けよう
リチャードああ、ありがとう
エステルリタ、それにみなさん、本当にありがとうございました。わたしも出来る限りお手伝いします
アスベルありがとうございます、エステリーゼ様
カノンノ早速だけど…私達が次にやるべき事は、大精霊の暴走を鎮めるって事かな?
リオンああ。戦争の原因となった第三者の調査に関しては、スタン達が動いているはずだからな
ジェイドこれはどうも、皆さんお揃いで
リタ何、またあんた?ついさっき別れたばっかりじゃない
ジェイドリチャード陛下とエステリーゼ殿下を船までお見送りするよう、ガイアス陛下より仰せつかりましてね
カノンノ二人共、帰っちゃうの?
リチャードこの状況下で、いつまでも国を空けているわけにはいかないからね
エステルわたしは出来れば、このままリタ達と一緒に行きたいのですが…
アスベル駄目です
エステル…そうですよね…やっぱり…。わかりました。リチャード陛下と共にひとまず国に戻ります
エステルリタ、何かあればすぐにバロニアへ来てください。わたしに出来る事があれば、何でもしますから
リタわかったわ。ありがと、エステル
ジェイドでは、港に参りましょうか。あまり船員を待たせては気の毒ですしね
リッドじゃあ、オレ達も一緒に港まで見送りに行くか
リタそうね。行きましょ
scene2リチャードの想い
リチャードん…?
アスベルあれは…
アスベルフレンじゃないか!護衛兵を引き連れているようだが…
フレンやあ、アスベル。どうやら無事だったみたいだね。陛下と殿下の護衛、ご苦労様
フレン国王陛下、エステリーゼ殿下、お迎えにあがりました
エステルフレン、どうしてここに?
フレン陛下がご出発された後、ユーリと会い、話を聞きました
フレン護衛はアスベルのみと聞き、慌てて全力で後を追い、つい先ほど、港で船と合流しました
リチャードなるほど。世話をかけたね、フレン
ジェイドいやはや、今日は歴史的な日ですね。国王陛下と、ウィンドルが誇る高名な騎士お二方のご来駕を賜るとは
カノンノ高名な騎士って…?
リオン…騎士、というからにはフレンとアスベルの事だろうな
リッドなるほどな。お前らは前からジェイドに名前を知られてたってわけだ
ルークそんなにすげー事か?俺もキムラスカじゃ、知らない奴はいねーけどな
リタ何自慢してんのよ。それは別に当たり前でしょ
リタでも、戦争が続いてたらウィンドルの要人がカン・バルクを訪れるなんてあり得なかったわけだし
リタそう考えると、確かに結構すごい事かもしれないわね
リチャードアスベル、フレンも来てくれた事だ。見送りはここまでで大丈夫だよ
アスベルえ?でも…
リチャード時間がないのだろう?君達はすぐにでも次の行動に移った方がいい
アスベル…そうか。わかった。そうさせてもらう
フレン心配ないよ、アスベル。陛下と殿下は、僕がウィンドルまで安全にお連れすると約束する
エステルみなさん、どうか気を付けて。何かあれば必ず力になります
アスベルエステリーゼ様、ありがとうございます
リッドあんたらの協力は必要不可欠だ。何かあったらすぐに連絡する。その時はよろしく頼むぜ
リチャード勿論だ。ではアスベル、僕達は行く。吉報を待っているよ
アスベルああ、約束するよ。必ずやり遂げてみせる
フレンそれでは参りましょう
ジェイド私はこのまま陛下達と港まで行きます。皆さん、それではお元気で
リタ…さてと、エステル達も無事に行ったわね
ルークよし、じゃあ俺達も早いとこ動き出そうぜ。…で、どこへ行けばいいんだ?
リオンまずは所在のはっきりしているアスカの元へ戻るべきだろう
ミラああ、私も同感だ
アスベルそのアスカっていう大精霊は、テムザ山にいるという話だったよな
ミラそうだ
ルークちょっと待てよ、テムザって確かウィンドルの山じゃねーか!そういう話は早く言えっつーの!
ルークエステル達の船に乗ってテムザまで行けばよかっただろ!
リッドそうかもしれねえけど、お偉方の船に便乗ってワケにもいかねえだろ、普通
アスベルああ、そうだな。俺達は俺達の力で出来る事をするべきだ
リタ何でもいいけど、船がいるならさっさと探せば──
きゃああああ!
リタ何、今の!悲鳴!?
カノンノみんな、向こうから魔物が!
ガアアアアッ!
アスベルくっ、こいつ…!
scene1新たな気配
ルークよし、魔物は片付いたし、とっととアスカの元へ行こうぜ
リタとんだ邪魔が入ったわね急ぎましょ
ミラ…!これは…
アスベルミラ…?
リオンどうした。四大精霊が何か言っているのか?
ミラいや、そうではない。だが、ただならぬ気配を感じるのだ…
カノンノただならぬ気配…それってまさか、アスカの…?
ミラ…いや、この気配はテムザ山とは逆の方向…もっと近い場所から感じられる
リッドって事はアスカじゃなくて、別の大精霊の気配がするって事か?
ミラああ、おそらくそう考えて間違いはなさそう──
リッド…ん?何か騒がしいのがいるな
スパーダだから何度言ったらわかンだよ。ルカはここに残れって
ルカいくらスパーダでも一人じゃ危険だよ。僕も一緒に行く
スパーダ心配してくれるのは嬉しいけどよ──
ミラあれは…スパーダ?
リタルカ!?
スパーダお?ミラじゃねーか。久しぶりだな!それと一緒にいる顔にも見覚えが…
リタリタよ。その節は世話になったわね
スパーダへえ、まさかお前がミラの仲間だったとは思いもしなかったぜ。世間ってのは案外狭いモンだな
スパーダところでリタ、前に話してた魔導兵器はどうなった?
リタひとまず当座の危険はなくなったわ。だからって他にも問題が山積みなのは変わらないけど
ミラスパーダは、ここで何をしていたのだ?随分と騒がしかったようだが
ルカ実は…
スパーダここから西にあるニブル湖が凍ったってんで、ちと様子を見に行こうと思ったのさ
ルーク湖が凍った?すっげーな。寒い国だとそんな事になんのか
スパーダバカ言え、いくらア・ジュールが寒いからって、そうそう湖は凍らねェよ
アスベル…?どういう事だ?
ルカ…何だか不自然なんだ。湖は勿論、その辺り一帯まで氷漬けの状態になってしまったみたいで…
リオン氷漬け…だと?
ルカうん…。極寒のア・ジュールでもそんな異常寒波が起こった事は今まで一度だってない…
リオン
スパーダさらにその寒波が広まってやがって、近隣の村まで被害が及んでるって状況らしいぜ
スパーダ本当だとしたら放っては置けねェ。一度調査に行って、本当なら陛下に陳情しようと思ってたんだ
ミラまさか…
リッドア・ジュールの西といえば…確かメルディがいるリンネル村があるところか?
ルークああ、そうだそうだ。行った事があるから間違いねーぜ
アスベルリンネル村…
スパーダよく知ってるな。そのリンネル村も、下手すりゃ影響を受けてるかもしれねェ
リッド何だと!?それじゃあメルディ達が危ねえじゃねえか!
スパーダそうかもな。どうなってるかわからねェから、まずニブル湖に調査に行こうと思ってんだ
ミラそういう事か。…なら、スパーダ。私達をその湖へ案内してくれないか?
リタ大精霊の事はどうするわけ?そりゃ氷漬けの話も気にはなるけど、こっちだってあまり時間が──
ミラだから行くのだ
リオン…まさか、その湖の氷漬けも大精霊によるものだというのか?
ミラ私が強い気配を感じたのもここから西の方角だ。…湖の氷が大精霊の影響である可能性は高い
リオン
カノンノ…ねえ、みんな。行こう、その湖に。今にも被害が及びそうな村があるのに放ってなんかおけないよ
アスベルああ、俺もそれがいいと思う。その氷が大精霊の力の影響だとしたら遅かれ早かれ、いずれは行く事になる
アスベルだったら今は、アスカよりも、村の安全がかかっているこちらを優先させるべきだ
リッドオレも同感だ。さくっと片付けちまえば、リンネル村に影響が出る前に何とか出来るかもしれねえ
リタわかった。聞いての通りよ、スパーダ。あたし達も一緒に行くから
スパーダお前達が同行する事は構わねェが…何がどうなってんだ?大精霊がどうとか…話が見えねえ
ミラ事情は道々説明する。今は時間がない
スパーダ…わかったよ。まあミラ達なら、信用出来るしな
スパーダルカ、そういうわけで、オレはこいつらと行く。それなら問題ないだろ?
ルカう、うん。わかったよ…これだけ人数がいれば、安心…かな
ルカみなさん、どうかスパーダの事を、よろしくお願いします
スパーダそんじゃ、早速出発すっか
ルーク湖を氷漬けにしちまう大精霊か…。一体どんな奴なんだろーな
リオン
scene2新たな気配
ミラ…そういう事情で、暴走した大精霊を鎮めるために行動しているのだ
スパーダまさか、オレの知らないとこでそんな事態になってたとはな…
スパーダ…決めた、オレも協力するぜ。大精霊の暴走と世界の危機…決して他人事じゃねェからな
ミラお前ならきっと、そう言ってくれると思っていた。よろしく頼むぞ、スパーダ
カノンノふう…
アスベル大丈夫か、カノンノ。カン・バルクから歩き通しで、疲れたんじゃないか?
カノンノううん、平気だよ
アスベル無理はするなよ。いざとなったらお前をおぶってやる事だって──
リタおぶるって…アスベル、あんたねえ、いくら何でも心配性すぎない?
リッド確かにリタの言う通りだな。子どもじゃねえんだし、一人で歩けるだろ。な、カノンノ?
カノンノありがとう、アスベル。本当に辛かったら言うから、大丈夫だよ
カノンノそれよりも…私、本当についてきてよかったのかな。足手まといになってないかな
アスベルそんな事はないさ。カノンノはよくやってる
リッドああ、そんな心配すんなよ
カノンノでも私、みんなみたいに、強くないし…
ミラ戦うだけが強さではない。強さの形は、人それぞれで誰にでもあるものだ
ルークお、いい事言うじゃねーか。だいたいお前にはリプリカームって力があるんだし、それで充分だろ
カノンノうん…。ありがとう、みんな
リッドそれにしても、カノンノのネックレスに、まさかあんな特殊な力があったなんてな
アスベル…そうだな。俺も驚いたよ
アスベル変わった形のネックレスだし失った記憶の手がかりになればいいと思っていたが
アスベルまさか世界の危機を救うために必要となるものだなんて…
アスベルその時は、想像すらしなかったよ
カノンノアスベル…
カノンノ私も驚いてるよ。でも、それと同時に嬉しいとも思ってる
カノンノ私は今もまだ、自分がどこの誰なのかわかってない。正直に言うと、少し不安だったの
カノンノ…でも、このネックレスが、世界を救う力を持っているって知ってすごく嬉しかった
カノンノ何だか、得体のしれない自分が世界に認めてもらえたって気がして…
カノンノ…なんてね!なかなか記憶が戻らないから少し不安になってただけ…!単純に嬉しいよって話だよ!
アスベルカノンノ…
カノンノとにかく…!無事、このリプリカームで大精霊の暴走を鎮められるといいね
ミラ…ああ、頼むぞカノンノ
リオンおい、お前達…
ルークん?どうかしたのかリオン──
リオン…無駄話はそこまでにしてさっさと歩け
ルークんだよ、相変わらず愛想悪ぃ奴だな
スパーダ随分ピリピリしてんな、あいつ
ミラ無理もないだろう。今回の件はリオンにとっても無関係ではないからな
リッド無関係じゃない…?何があったんだ?リオ──
カサ…
リタ…?今、そこの雪の塊、動かなかった?
グオオオオッ!
リッド雪じゃねえ、魔物だ!
ルークったく、紛らわしいんだっつーの!
scene1逸る気持ち
ミラむ?あれは集落か…?
スパーダリンネル村だ。ニブル湖は、この先をもう少し西へ進んだところにある
リッドあれがメルディの村か。あいつ、無事だといいんだけどな…
ルークへえ、前の戦争で焼かれた建物が、だいぶ建て直されてるみてーだな
リッドそんなに復興してんのか。メルディの奴、頑張ってるんだな
アスベル
リタ今のところ、氷結で大きな被害は出てなさそうだけど…ここから例の湖まではどのくらいあるの?
スパーダそんなに遠くはねえよ。今被害が出ていなくても、楽観は出来ねェ距離だと思うぜ
ルークったく、とことんついてねー村だな。次から次へと厄介事に巻き込まれてよ
リッド…前にメルディから聞いたよ。村の連中は、何も悪い事なんてしてないのにな
アスベル
カノンノアスベル、どうかしたの?何だか悲しそうな顔してる
アスベル…いや、何でもない。ちょっといろいろと思い出しただけさ
リタミラ、例の気配はどうなの?
ミラ…ああ、ここへ来て大精霊の気配はより高まっている
ミラここからもう少し西…その辺りに大精霊がいるはずだ
リオン西…やはり、湖か
ミラおそらくな
カノンノじゃあ、ニブル湖へ急いだ方がよさそうだね
ルークあーあ。せめて村に寄って腹ごしらえくらいしたかったぜ
カサ…
アスベル気持ちはわかるが仕方ないさ。あとで寄れるなら寄って、その時に──
アスベル…ん?
カノンノあ、ウサギ…
トトト…
リッドお、よかったなルーク。どうやら飯にありつけそうだぞ
リタ飯って…リッド、あんたまさかあのウサギを獲るつもり?
ルークマジかよ。そんな事出来るのか?
リッドオレは猟師だぜ。まあ見てろって
メルディダメーーーー!!!
リッドうおっ!?な、何だ?
ルークメルディ!?
メルディリッド、あのウサギ、ごはんと違うよぅ!あれは村の女の子が友達!
リッドペットって事か?
メルディはいな。だから食べるのダメ。触るはいいよ。でも、優しくしてな?
メルディ…って、あれ?ウサギ、もういないな
リオンお前の声に驚いて、とっくに逃げたぞ
メルディバイバ!大変!すぐに追いかけないと!メルディ、ウサギが事サガしてたよ!
メルディこの辺りは魔物もオオカミもたくさんいるよ。放っておいたら、ウサギ、食べられちゃうよぅ!
メルディお願いよ!ウサギが事、捕まえて欲しいよぅ!ウサギ、みんなが友達!
リッドウサギが友達って言ってもなぁ…
リオンおい、こんな事に無駄な時間を使うつもりか?僕達にはやる事があるはずだ
メルディヒドいよぅ!みんなは、友達が怖がっててもヘーキか?
カノンノ…ねえ、みんな。メルディのお願い、聞いてあげない?
リタそりゃ、気持ちはわからないでもないけど…
アスベル…よし、メルディ。やってみよう。友達は放っておけないもんな
メルディバイバ!本当か!?ありがとな!メルディも頑張るよぅ!
リッド…やれやれ。これじゃあ捕まえようとしたオレだけが悪者みたいじゃねえか
リッドわかったよメルディ、オレもやる
スパーダウサギはあっちに行った。やるなら早くやっちまおうぜ
ミラああ。皆、急ぐぞ!
scene2逸る気持ち
カノンノいた!あのウサギじゃない?メルディ
メルディそう、あのウサギ!よかった、魔物に食べられてないよー!
アスベル見つけたはいいが、どうやって捕獲したらいいんだ?傷付けるわけにもいかないし…
リッドそこで猟師の出番ってわけだ。アスベル、カノンノ。何かロープになりそうなものはねえか?
カノンノえっと…あ、植物のつるならここにあるよ
リッド上等だ。アスベル!そいつが逃げねえように、オレの反対側に回ってくれ!
アスベルわかった!
リッドこれを輪っかにして──よっと!
ヒュンッ!
キュッ!
カノンノわあ!足に絡まった!
リッド無傷で捕獲完了、ってわけだ
アスベルへえ、上手いもんだなあ
リッドメルディ、ウサギは任せた。今度は逃がすなよ
メルディはいな!
メルディやったー!捕まえたよー!
アスベルよかったな
リッドああ、そうだな。もう少しで食われちまうところだったからな
リッド…ルークに
ルークおい!飯だっつったのはリッド、お前じゃねーか!俺は悪くねえ!
???メルディー!
メルディあ、レイア!
レイアウサちゃん捕まった?…って、リッドにルーク!それに、ミラも…!
ミラ久しぶりだな、レイア
メルディリッドがお蔭で、無事にウサギを捕まえられたよー
レイアありがとう、リッド。でも、どうしてここに?
ルークこの近くのニブル湖が氷漬けになったってんでちょっと様子見に来たんだよ
レイアあの氷の事ね…。本当にどうしてこんな事になっちゃったんだろ…
メルディリンネル村がオトナ達、みんな集まって、これからどうするか相談してるよ
レイア…湖のすぐ傍にあった小さな村が氷に覆われてしまったみたいなの
レイアこの様子だと、リンネル村がああなってしまうのも時間の問題だろうって…
レイアそれに、聞いた話だと逃げ遅れた人達の何人かが、氷漬けになっちゃったっていうし…
ミラ村も、人々も氷漬けに…
リオン…くっ
アスベルおいリオン、待ってくれ。どこへ行くんだ?
リオン…ニブル湖に決まっているだろう
リタちょっと待ちなさいよ。もう少し二人の話を聞いた方がいいわよ。情報は多いに越した事ないんだから!
リオン勝手にしろ、僕は先に行く
リタさっきから何なの、あいつ!
ミラ
ミラ…この際だ、リオンについて少し話しておく
スパーダまさかシルヴァラントにも氷漬けになった街があるなんてな…
アスベルルイニス街の話はクラトスさんから聞いていたが、そこまでひどい状況だったとは…
カノンノ…リオンさんはきっと、自分の街と、今回の出来事を重ねてしまったんだね
ルークったく…それならそうと、早く言えっつーの
ミラ私も実際にルイニス街をこの目で見たが、悲惨な状況だった。リオンが焦る気持ちもわからなくはない…
リタだったら早いとこリオンを追った方がよくない?あの調子じゃあいつ、一人で大精霊に挑みかねないわよ
リッド確かにな。じゃあ、早速──
レイア待って、ミラ!
レイア大精霊とか、あまりよくわかってないけど、わたし達も手伝うよ
レイア…村を守りたいの。だから、出来る事は協力させて
ミラレイア…。なら、お前達は村へ戻って万が一の事態に備えてほしい
ミラ状況によっては、村を出て避難する必要が出て来るかもしれない
メルディせっかく村の修理、みんなで頑張ったのにまたなくなってしまうか?
リッド大丈夫だ。そんな事にならないように、みんなで何とかする
ルーク大精霊を大人しくさせたらまた来るから、そん時はうまい飯食わせろよ
メルディ…わかった、たくさん用意して待ってるよぅ
レイアリンネル村の事は任せて。みんな、気を付けてね
アスベルああ、ありがとう。よし、じゃあ行こうか
カノンノうん!
リオン
ミラリオン!
ルークやっと追い付いたぜ…、つか、早すぎんだよ、お前。面倒かけやがって
リッドホントだぜ。焦んのもわかんなくねえけど、ちょっとは待ってろって
アスベルリオン、ミラから事情は聞いた。お前の気持ちはわかるけど、一人で行くのは危険だ
ミラ私もイフリートと戦った時、今のお前と同じように一人で抱え込んで焦っていた。だからこそ言う──
ミラ一人で全てを背負い込むな、もっと私達の事を頼ってほしい
ミラお前の傍には、同じ目的を持って行動する私達がいる。それを忘れないでくれ
リオン
リオン…わかった
リタとにかく、これで全員揃ってニブル湖へ行けるわね
スパーダよし、じゃあ先へ進もうぜ。こうしている間にもドンドン時間は過ぎてくからな
リッド…っと、悠長に話してるヒマもなさそうだぜ。魔物のおでましだ
グオオオオッ!
scene1ニブル湖の異変
ルーク…はーくしょん!うう…さみぃ
リタバカっぽい。そんな腹出しの格好なんかしてるからよ
ルークなっ…バカとは何だ!べ、別に腹は寒くねーし!
リタそんな真っ赤なお腹して…どの口が言うんだか
ルーク…!
リッド腹出しっぱなしにしてりゃ意外と慣れるモンだぜ
リッドで、今はどの辺だ?そろそろ例の湖に着くのか?
アスベル近付いてはいると思う。リンネル村の辺りと比べると徐々に冷え込みが増してきているし
スパーダああ、この丘を登ればもう湖畔が見えるはずだぜ…ほら、見えてきたろ…って…
リオンむ…?
カノンノまさか、あれが…?
ミラ…!
リタ湖って…見えるのはでっかい氷の山ばかりじゃない
リッドどうりで寒いと思ったぜ。あんな巨大な氷の塊が、すぐ近くにあるんじゃな
ルークで、湖は一体どこなんだよ?
スパーダ…あそこだ
ルークあ?だから、氷の山しかねーじゃん。俺が聞いてんのは、湖で──
スパーダだから、その氷山のとこだって。元は、あそこが湖!地図で見ても間違いはねェ
アスベル…まさか、湖の水が凍って氷山になったとでも言うのか?そんな事が本当にあり得るのか?
スパーダ湖が凍る事自体めったにねェ話なんだ。ましてや氷山なんて…普通じゃあり得ねェよ!
カノンノつまりこれは普通じゃなくって、大精霊の力…
リオンおいミラ、大精霊の気配は?
ミラ…間違いない、あの氷山の中だ。強い力を感じる。氷を砕き、今にも飛び出してきそうなほどの強い力だ…
ミラ力の主は、セルシウス。氷を司る大精霊…そう考えて間違いないだろう
リッドなっ…氷を司る大精霊だって!?そんな奴がいんのか?
ミラああ、この氷山を見て確信した。これほどまでに強大な氷の力を使える大精霊は彼女しかいない
ミラまさか、セルシウスほどの大精霊まで暴走に飲み込まれていたとは…
リオン
スパーダそのセルシウスって奴は強いのか?
ミラ精霊の中でもかなり強力な力を持つ大精霊だ。苦戦を強いられる事になるだろう…
ミラ覚悟してかからねば、返り討ちに遭う。確実にな…
リッドそれでも、やるしかねえんだろ?
ミラああ、その通りだ
リオン…セルシウスの暴走を鎮めなければ…。…何としてでも
リタやらないと、あたし達の世界が破滅してしまうんだし。贅沢言ってる余裕なんてないわ
アスベルそうだな。相手が強力な大精霊でも、力を合わせればきっと何とかなる、そう信じて進むしかない
カノンノ私も、出来る限りの事はするよ
ミラ…覚悟は揺らいでないな。安心したよ
ルーク今更怖気づくかっつーの!風邪ひく前に、とっととあの氷山を調べに行こうぜ
scene2ニブル湖の異変
ルークセルシウスは氷山の中にいるんだよな?って事は入口を探さねーと…
カノンノ私もそう思ってさっきから探してるんだけど…それらしいものは──
カノンノ…!
アスベルカノンノ、どうした?何か見つけ…
アスベル…!これは…!
リオンどうかしたのか?
アスベルリオンは来るな!
リオン何…?
リタアスベル、あんた何を言って──
リタ…あ
ミラこれは…
リオン…!
ルークな、何だこりゃ!?人間が、こ、氷漬けに…マジかよ…
リッドリオンに来るなって言ったのは…これがあったからか…
スパーダひでえな…。話には聞いてても、実際に見ると…
リタ…ルイニス街の人達もこんな風になってしまったの?
リオン…ああ
アスベルとにかく、一刻も早くセルシウスの元へ急ごう。暴走を鎮められたらこの人達を救えるかもしれない…!
ヒュオオオオオ!
カノンノきゃあっ!?
リタちょっと、いきなり吹雪!?
ルーク…っぷ!目を開けてられねーぞ!
アスベルみんな、大丈夫か!?
ビシッ!
リオン何の音だ?
ビシッ!ビシビシビシッ!
スパーダまずいぜ!周辺の氷が割れ始めてる!
リッドおいおい、冗談じゃねえぞ。氷の下は湖だろ?落ちたら死んじまうじゃねえか!
アスベルこのままでは危険だ。足場のしっかりしたところまで一旦退避しよう!
リタでもこの吹雪じゃ、どっちへ進めばいいのか…
ゴゴゴ…
ズゴゴゴゴゴ!
ルークじ、地震まで始まりやがった!マジでこのままじゃヤバいっつーの!
アスベルまずい、足場の氷にヒビが…!
リッドおいみんな、向こうに洞窟の入口がある。ひとまずあそこに避難するぞ!
スパーダえ、洞窟?それはそれで危ねェんじゃ…
リッド足場が割れるよりはマシだろ。急げ!
ミラリッドに続け!遅れるな!
ズガガガガガッ!ガラガラガラッ!
ルークうわっ!?今度は氷山まで崩れて来やがった!
リオンくっ…!
アスベルカノンノ、どこだ?カノンノーーッ!
scene1それぞれの動向
ルークアスベル、おい!しっかりしろ!
アスベルう、うう…
アスベルあ…ルーク…
ルークったく、焦らすなっつーの。なかなか起きねーから死んじまったのかと思ったじゃねーか
リタリオンとスパーダを見つけてきたわよ。二人とも怪我はない?
スパーダああ、何とかな…
リオン吹雪と地震は収まったのか…?
リタみたいね。あくまで今のところは、だけど
アスベルカノンノは?あと、ミラとリッドも
ルークそれが…さっきから捜してるんだが、三人共見つからねーんだ
アスベル何だって…!
スパーダそういや、洞窟の入口がどうこうって誰かが叫んでたな。あれ、リッドの声だったような…
アスベル洞窟に逃げ込んだって事か?でもそんな洞窟、どこに…
リタみんなを捜すついでに一応見たんだけど、それらしいものはなかったわ
ルークさっきの氷山の崩落でこの辺りの様子も様変わりしちまったしな…
リタ崩れた氷の下に閉じ込められたりしてなきゃいいけど…
アスベルそんな…!
アスベルとにかく、みんなを捜そう!
リッド…?ここは…洞窟の中か?
リッドいてて…さっきのすさまじい吹雪と地震は一体何だった……ん?あれは…
リッドおいミラ、カノンノ、しっかりしろ!
カノンノん…、リッド…?あれ…ここは…?
ミラ…洞窟の中か、何とか避難出来たようだな。他の者達は?
リッドこの辺りには見当たらない。ひょっとしたら他の奴らは洞窟の外にいるのかもしれねえな
カノンノそんな…
リッドとにかく一度外に出て、他の奴らを捜そう。入口は…
ミラあそこのようだが…
カノンノ氷が崩れて完全に塞がってしまってる…
リッドこの状態じゃ出ようにも出られねえな。外から入ってくるのも難しそうだ
ミラならば、イフリートの力を使うか。大精霊の力による氷だ、イフリートの炎なら溶かす事が出来るはずだ
リッドいや、やめた方がいい。ここは洞窟だ。ヘンに崩して落盤でもすりゃ、それこそ大惨事だ
ミラ確かにそうだな。…それはそうと、リッド、身体は動くか?
リッドああ、大きなケガもねぇし、いつも通り戦えるぜ。急にどうした?
ミラ…幸か不幸か、この洞窟はセルシウスの居場所に繋がっている。気配がぐっと近く感じられるのだ
ミラ洞窟の奥から冷気も吹き寄せている。まず間違いあるまい
カノンノそんな…。奥へ進めば出口があって出られるかもしれないのに…
ミラ覚悟を決めるしかないだろう。ここにずっと留まっているわけにもいかないからな
リッドこのまま三人でセルシウスの元へ行く…そういう事だな
カノンノ三人で…?
ミラああ。おそらく先ほどの吹雪も、この氷山も、全てはセルシウスの力によるものだ
ミラここから出るにも、セルシウスの暴走を鎮める他ない
カノンノ私達だけでセルシウスと渡り合うなんて…本当に出来るのかな…?
リッド確かに戦力としては半分以下だけど…まあ、何とかなんだろ
カノンノ
ミラああ、いずれにせよ、ここで立ち止まっても仕方あるまい
リッドそうだな。んじゃ、さっさとセルシウスのところへ行くとしようぜ
カノンノ
scene2それぞれの動向
リオン洞窟への入口は見つかったか?
リタ駄目ね。こっちは見当たらないわ
アスベルくそ、一体どこにあるんだ?こんなに探しても見つからないなんて…
スパーダおい…!もしかして、ここじゃないか?
アスベル…!
ルークここが…って、完全に崩れて塞がってんじゃねーか。どうりで気付かなかったわけだぜ
リオン…外でこの様子だ、中の方も何かしらの影響が出ているだろう
スパーダおいおい、あいつら本当に無事なのかよ…
アスベルとにかく、急いで入口を塞いでいる氷を取り除こう
リタあたしに任せなさい。術でぶっとばすわ!
リタファイアボール!
ズバッ!
シュン…ッ
ルークなっ、…あれだけの炎をぶつけられたのにびくともしてねーぞ
リタ…!もう1回いくわよ!
ズバッ!
シュン…ッ!
アスベル駄目だ…
リオン
カノンノふう…
リッド妙な気分だな。だいぶ歩いたような気がするが、辺りの風景が変わらねえ…本当に進んでんのか?
カノンノ確かに、ずっと氷に囲まれてて、同じところをぐるぐる歩いているみたいだね
ミラ安心しろ、セルシウスの気配は徐々に強まっている。私達が進んでいる事は確かだ
リッドそれを聞いて安心したぜ。…にしてもすげーな、この氷。ここが湖だったなんて信じられねえぜ
カノンノうん…大精霊の力ってすごいんだね。氷山の中に入って、改めてそう感じるよ
カノンノねえ、ミラさん…出来るかな、私達…セルシウスを鎮められる?
カノンノだって、こんなすごい力を持っているんでしょ
ミラ上手くいく保証はどこにもない。だが、皆と合流出来ない以上、私達だけでやるしかない
カノンノ
カノンノうん…それはわかってる…けど…
リッド不安なのか?
カノンノ…うん
リッド…カノンノ、お前も見ただろ?あの氷漬けになっちまった奴らを
リッド今ここでオレ達がやらなきゃあっという間に広まってあちこちで同じ事が起きちまう
カノンノそれは駄目…!何としても食い止めなきゃ…
リッドだろ?だったら、厳しかろうが何だろうが、オレ達三人でセルシウスの暴走を鎮めるしかねえ
カノンノ
リッドまあ、そんな心配すんな。人間腹をくくりゃあ大体何とかなるってもんだ
リッド少なくともオレはこれまで、それでやって来られたからな。だから、お前も大丈夫だろ。多分な
カノンノ腹をくくる…
カノンノ…うん、そうだね。そうだよね
カノンノ不安ばかり言ってても仕方ないよね。何としてでも私達はやり遂げなきゃならないんだもん
リッドああ、その意気だ
カノンノうん!…ありがとう、リッドさん
ミラリッド…
カノンノ…よーし、元気出てきた!二人共、心配かけてごめんね。もう大丈夫だから
ミラわかった。では改めて、先へ進もう──……と、言いたいところだが…
グルルル…
ミラその前に、片付けなければならない相手がいるようだ
ガアアアアッ!
リッドったく。これ以上面倒事を増やすなって!
scene1大精霊セルシウス
リタファイアボール!
ズバッ!
シュン…ッ
スパーダこんだけの炎をぶつけて、やっと、チュンチュンの涙ほどしか溶けねえなんて…
ルークくそっ、火が駄目ならと思って斬りつけてみたけど、それも駄目みてーだ
ルーク全力で叩き斬ろうとしてもびくともしねーし、下手すりゃ剣の方が折れちまいそうだ
リオン
アスベルくっ…!こうなったら、全員で一斉に技を──
リオン…無駄だ、やめておけ
ルークリオン…?
リオンこの氷は、ルイニス街のものとは違いわずかではあるが溶けはするようだな
リオンだが、こんな氷山に囲まれた中では何をしたところで無意味だ
アスベルそんな…じゃあ、一体どうすれば…
カノンノそういえば…アスベル達、大丈夫だったかな?
リッドあいつらなら心配ねえだろ。まあ、今頃オレ達がどうなったかとやきもきはしてるだろうがな
ミラ…!
カノンノミラさん?どうかしたの?
ミラ…セルシウスだ、近いぞ。気配が強まって──
カノンノあ…ネックレスが…
リッド光り出したな…これは、セルシウスの気配に反応してるって事だよな?
ミラああ、間違いない
ミラしつこいようだが改めて言っておく。これから私達がまみえるセルシウスはとにかく強力な大精霊だ
ミラ暴走に陥り、理性を失っている状態となれば危険性はさらに高い
リッドああ、わかってる
ミラ…さらにはこの人数だ。私達の連携が上手くいくかどうかが勝敗の分かれ目となるだろう
ミラ協力し合い、しっかりと連携を取れれば勝機はある。だが、逆に乱れるようであれば…
リッド…死ぬ、って事だろ
カノンノ私、頑張るよ。絶対、二人の足手まといにはならないようにするから
リッドよし、何が何でもセルシウスの奴を正気に戻してやろうぜ
カノンノうん…!
ミラよし、では先へ進もう。ここからは、いつセルシウスが姿を現してもおかしくない。慎重にな
scene2大精霊セルシウス
アスベルこの冷気の中では、炎の威力も弱まって氷を溶かす事は出来ない…。一体どうすれば…
リオン
スパーダ思うんだけどよ…
スパーダ今頃三人で、大精霊のところに向かってるんじゃねーか?オレがあいつらの立場ならそうするぜ
アスベルそんな…
ルーク三人が無事で、出口がなくて、奥に進むしかないってんならそうかもな
リタ…普通の手段で溶かせないこの氷を何とかするためには、根本の原因を排除する必要があるのは確かだけど…
アスベルだが、相手は大精霊だぞ?彼らの脅威はミラから聞いている。たった三人で挑むなんて無茶だ!
リオン…だが、他に選択肢がないならば例え無茶でもやるしかないだろう
スパーダま、ミラがいるから大丈夫だろ。あいつとは前に一緒に戦った事があるから、実力はよく知ってる
ルークそれを言うなら、リッドもそれなりに腕は立つはずだぜ。まあ、俺にはかなわねーけどな
リタ…アスベル、カノンノの事が心配なのはわかるけど、今はこれ以上どうしようもないわ
リタ大精霊の事を一番よく知ってるミラが一緒なら、多分、そんな軽はずみな真似はしないと思う
アスベル
アスベル心配なのはカノンノだけじゃない。あの二人は強いし、信頼もしているがやっぱり無茶だ…
アスベル合流する手立てを諦めては駄目だここでじっとしていても何も前には進まない…
アスベル洞窟の入口がわかりにくかった例もあるし…もう一度探してくる!
スパーダ心配で、いてもたってもいられねーか。まあ、それもそうだな
リタあたし達も他に入口がないか探してみましょ。要は合流出来ればいいんだから
ルークま、ここで寒い中、何もしねーでじっとしてたって仕方ねーしな。やろうぜ、リオン
リオン僕に指図するな。お前に言われなくともそうしている
ミラ…!…近いぞ
カノンノネックレスの光も、ますます強くなったみたい
リッドいよいよお出ましってわけか
ヒュウウ…
カノンノ…!冷たい風が…
リッドこの冷気…何だか妙な感覚だぜ。ゾクゾクするっていうか…
ミラセルシウスも私達の存在に気付いているようだな
リッド威嚇してるってわけか
ミラそんなところだろう。暴走して正気を失っているとはいえ本能で察知するのは可能な──
ビュンッ!
カノンノ…!
ミラカノンノ、危ない!
ズバァァァッ!!
ミラうっ…!
カノンノミラさん!?
リッド何だ、この氷の槍みてえなのは!?冗談じゃねえぜ!おい、ミラ大丈夫なのか!?
ミラ大丈夫だ…これくらいの傷、何ともない…
カノンノ嘘だよ。こんな深い傷…何ともないわけないじゃない!立ってる事さえ辛いんじゃ…
ミラ…何ともない、大丈夫だ。心配するな…
カノンノでも…!
リッドおい、向こうを見ろ!
カノンノあれは…
???
リッドあいつがまさか、セルシウスか…?
ミラああ、そうだ
カノンノだとしたら、この氷の槍も…
セルシウスウウウ…
リッド…随分と怒ってるみてえだな。どっからどう見てもマトモに話は出来なさそうだ
ミラ暴走に飲み込まれているからな。…力ずくで大人しくさせるしか方法はあるまい
セルシウスガアアアアッ!
ビュンッ!
ミラまたさっきの攻撃か…!カノンノ、避けろ!
カノンノ…!駄目、間に合わな──
バシッ!
リッドふう…間一髪だな。カノンノ、大丈夫か?
カノンノう、うん…ありがとう。もう駄目かと思った…
ミラ何とか間に合ったか…。リッド、礼を言うぞ
リッド「連携」だろ?気にすんな。そんな事より…
リッドおい、セルシウス!目を覚ましやがれ!
セルシウスウウウウウ…!
リッド呼びかけても無駄、か。だろうなあ。やっぱりミラが言うように、力ずくで大人しくさせるしかねえみてえだ
チャキ…
リッド行くぞ、セルシウス。…これもお前のためだ、悪く思うなよ
ミラ待っていろ、今暴走から解放してやる…
セルシウスガアアアアッ!!
カノンノ来るよ!二人共気を付けて!
scene3大精霊セルシウス
カノンノ本当に倒せた、の…?私達、本当に…
カノンノ信じられない…
リッドああ、…結構手間取ったけど何とかなったみてえだな
カノンノや、やった…!
ミラリッド、負傷しているようだが…大丈夫か?
リッドこの程度ならどうって事ねえよ
ミラそうか…ならよかった。お前が前に出て戦ってくれたお蔭だ。助かったよ
リッドお前こそ、深手を負っているとは思えないくらいの動きだ。大したもんだぜ
リッドそれにカノンノ、お前も。よく頑張ってくれたな
カノンノ私なんてまだまだ…セルシウスを倒せたのは本当に二人のお蔭──
ミラう…
ドサッ!
カノンノミラさん!?
リッドおいおい、大丈夫かよ…ってこいつはヤバイな。すぐに手当しねえと…
ミラ…大丈夫だ。このくらいの傷、何とも…
カノンノお願い、動かないで…!押さえても血が噴き出しちゃう…!
ミラカノンノ、私の事は後回しでいい、それより早くセルシウスの元へ…。リプリカームを与えるのだ
ミラ枯渇状態にあるセルシウスのマナを補えば、暴走は鎮まり正気を取り戻すだろう
ミラ…私達もこの状況だ、この機を逃せば、再びセルシウスを抑止する事は難しい…
カノンノでも…
リッドカノンノ、頼む。ミラはオレが見てる。だから今の内にやってくれ
カノンノわかった。じゃあ…
セルシウスグ…グァ…
カノンノ…!
ミラリッド!まずい…セルシウスが…!
セルシウスグオオオオオオオッ!
リッドちっ…させるかよ!
ビュンッ!
カノンノ…!?狙いは私じゃない…?まさか…
カノンノリッドさん、危ない!!氷の槍が…!
リッド何っ…!?
ズバッ!
カノンノ…っ!
ミラ…っ!
リッドぐ…
カノンノ…!ウソ…!リッドさん…!氷が…胸に…刺さってる…!?
カノンノそんな…
ビュンッ!ビュンッ!
ミラカノンノ、危ない!離れろ!
リッド悪ぃ…カノンノ…逃げ…てくれ…
ドサッ!
ミラリッド…!
カノンノそんな…嘘でしょ…?ねえ、リッドさん…リッド…
カノンノリッドーーッ!!
scene1同じ想いを胸に
カノンノリッドさん…!もう少し頑張って、今そっちに──
ミラカノンノ、やめるんだ!気持ちはわかるが、今動くとセルシウスの標的になるぞ!
カノンノでも…リッドさんは…胸を押さえて…倒れてるのに…!早く手当て…手当てをしないと…
カノンノ…死んじゃうよ…!
ミラ今は自分の事を考えるんだ!…リッドだってお前が傷付く事を望んではいない
カノンノでも…
セルシウスウウウ…
ミラセルシウス…
ミラリッドすまない…私の判断が間違っていた…
ミラアスベル達を信じて待つ事も出来たのだ…それを……
セルシウスウウウウ…!
ミラカノンノ、私が隙を作る。その間に逃げろ
カノンノえ?
ミラ私達には世界を救うために、大精霊の暴走を鎮めるという使命がある
ミラこの使命を遂行する意志を持っていたのはリッドも同じ…
ミラリッドのためにも、ここでお前まで失うわけにはいかない
カノンノミラさん…
カノンノ私もやる…例え二人でも、絶対にセルシウスの暴走を鎮めよう
ミラカノンノ…いいのだな?
カノンノ…うん!
ミラ…わかった。ありがとう、カノンノ。私の背中はお前に任せたぞ
ミラセルシウス!お前の暴走は必ず私達が鎮めてみせる!
セルシウスシャアアッ!
scene2同じ想いを胸に
カノンノはあ…はあ…セルシウス、いい加減目を覚まして!
セルシウスシャアアッ!
ミラセルシウスが元の勢いを取り戻している…
ミラそれにここは…。どうやら私達は戦いながらより動きやすい広い場所へ誘導されていたようだな
ビュンッ!
カノンノ…!
ミラくっ…!危ない、カノンノ!
ドン!
ザシュ!
ミラうぐっ…!
カノンノミラさん…!
ミラ私の事は気にするな…それより、怪我はないか…?
カノンノミラさんが庇ってくれたから私は大丈夫だけど、でも…
セルシウスウウウ…!
ビュンッ!
カノンノっと…!危ない、もう少しで…
ミラぐっ…!
カノンノミラさん、大丈夫!?
ミラ無論だ…と言いたいところだが、さすがにこうも攻撃が続くといささか厳しい…
ミラこちらに攻撃を仕掛ける隙すら与えてくれそうにないからな
セルシウスガアアッ!
ビュンッ!
シャアアッ!
ビュンッ!
ミラまずい…このままでは──
セルシウスガアアアアッ!
ビュンッ!
ザシュ!
カノンノうっ…!
ミラカノンノ!
セルシウスウオオオッ!
カノンノ…!
バシィッ!
カノンノ
カノンノ…?
ミラセルシウスの動きが止まった…?これは一体…
セルシウスウ…
リッド…もう終わりにしようぜ、セルシウス
カノンノ…!その声は…まさか…
リッドああ、オレだ
ミラリッド!まさか、生きていたのか…
リッド当たり前だろ。勝手に殺すなよ
カノンノでも、胸に氷が刺さったのに…!
リッド胸?オレが食らったのは肩だよ。運がいい事に左肩、ときたもんだ。左腕はヤバそうだが、剣は振れそうだ
リッドあの氷のせいで肩は痛えし、本当はあのまま昼寝してたかったけど寒くて寝てなんかいられねえよ
リッド昼寝の続きは、こいつをどうにかしてから、だな。…さ、やろうぜ
カノンノ昼寝って…もう…リッドさん…!
ミラふっ、お前という奴は…
リッドおい、ミラ、カノンノ。お前らもケガ、ひでえじゃねえか
カノンノ大丈夫だよ、このくらい!
ミラああ、私も問題ない
リッドそうは思えねえがな…まあ…やるしかねえよな
リッドよし、これ以上体力を消耗する前に連携して一気に攻撃を畳みかける。いいな?
カノンノうん!
ミラああ
リッドそれじゃ、もうひと踏ん張りといくか
リッド覚悟しろよ、セルシウス!今度こそケリをつけてやる
セルシウスウウウ…!
scene3同じ想いを胸に
リッドこれで…どうだ!
ズバーンッ!!
セルシウスウ…
ドサッ
カノンノ今度こそ終わった…?
ミラああ…大丈夫だろう
セルシウス
リッドよし…今の内だ。カノンノ、リプリカームを
カノンノうん
ミラまた突然暴れ出すかもしれん。警戒を怠るな
カノンノ大丈夫、わかってるよ
カノンノネックレスが光り出した…
リッドうっ…このまぶしい光は…っておいおい、光がセルシウスの身体に流れ込んで…
ミラセルシウスの枯渇したマナがどんどん回復している…。四大の時と同じだ
リッドじゃあ、これでセルシウスの暴走は鎮まるってわけだな
ミラ実際にリプリカームを暴走した状態の大精霊に与えるのはこれが初めてだ
ミラゆえに、まだ断言は出来んが、この様子ならおそらく問題ないだろう…
カノンノあ、光が収まった…
ミラむ…!今、セルシウスが動いたぞ。気は抜くな
リッド頼むから、正気に戻ってくれよ…?さすがにもう一度やり合うのは勘弁だぜ
カノンノお願い…!
セルシウスう…
セルシウスここは…?わたしは…何を…?
リッドセルシウスが喋った…って事は…、暴走はちゃんと鎮められたのか?
ミラああ、そのようだな
カノンノよかった…!
セルシウスあなた達は…?
ミラ私はミラ=マクスウェル、隣の二人は、リッドとカノンノだ
ミラ…セルシウス、お前はマナの枯渇により今まで暴走状態に陥っていたのだ
セルシウスマナの枯渇…それに、暴走…?
セルシウスまさか、そのような事になっていたなんて…
カノンノ何も知らない間に暴走に陥ってしまったんだね…。かわいそう…
セルシウスええ…最後に覚えているのは一瞬にして世界中のマナが減少していった事…
リッドそれが、お前達大精霊を暴走させたきっかけだったって事だろうな
セルシウスとにかく、これ以上人に被害を及ぼす前にわたしを止めてくれた事…本当に感謝するわ
ミラ礼ならカノンノに言うといい。お前の暴走を鎮める作用をしたのは、彼女のリプリカームという力だ
セルシウスリプリカーム…?
カノンノこのネックレスから溢れ出る力の事だよ。あなた達精霊にマナを与えて癒す事が出来るんだって
セルシウスそんな力が存在するなんて、初めて知ったわ
ミラ…やはり、お前も知らないのか。精霊にまつわる力だ、誰かが知っていてもおかしくないはずなんだが…
セルシウスとにかく、本当にありがとう。カノンノ、リッド、ミラ…
カノンノううん、いいんだよ。役に立てたなら私も嬉しい
セルシウスそれにしても…わたしは取り返しのつかない事をしてしまったのね…
ミラ湖畔の辺りで氷漬けになっていた人々の事か…
カノンノセルシウスの力なんだよね?氷を溶かせば、助かるんじゃないの?
セルシウス…いいえ。わたしの力は自然の力と同じもの…
セルシウス氷漬けになった人は助からないでしょう…。…ごめんなさい…
リッド雪山で遭難したのと同じって事か…
セルシウス…本当にごめんなさい。暴走していたとはいえ、誰かを傷付けるつもりなどなかったのに…
ミラお前が悪いわけではない。悪いのはこの状況を裏で煽ってる奴だ
リッドそれに、オレ達人間のせいでもある。まんまとそいつの企てに乗せられて魔導器を使っちまったんだから
カノンノそうだよね…
ミラ…とにかく、これでセルシウスは正気を取り戻した。湖周辺の危機は一旦去ったと捉えていいだろう
ミラだが、これで終わりではない。セルシウスの他にも、世界の各地で暴走状態に陥っている大精霊がいる
セルシウス
リッドそうだな。のんびりしてられねえ。早いとこ、ここから外へ出ないとな。アスベル達も待ってる事だろうし
カノンノセルシウス、この氷山から出られるよう、力を貸してくれる?
セルシウスええ、勿論。その前に──
セルシウスわたしもあなた達の目的に協力させて
セルシウス暴走していたとはいえ、多くの人間達を傷付けた事に変わりはない。…その償いをしたいの
セルシウスそれに、今も尚、わたしと同じように暴走し苦しんでいる仲間がいる…。放っておけないわ
カノンノセルシウス…。あなたの気持ちはわかる、勿論、断る理由なんてないよ
リッドこんだけ強いセルシウスが力を貸してくれるっていうならむしろ、ありがてえ話だと──
ミラ…!これは…
カノンノネックレスが光って…──でも、何だろうこれ…?何だか今までとは様子が…
セルシウス…カノンノの意志にネックレスが共鳴している
リッド共鳴…?それは一体どういう事だ?
セルシウス…どうやら、そのネックレスはわたしとあなたを結ぶ、契約の証となってくれるみたい
ミラ契約…確かクラースが話していたな。精霊を喚び出すには契約を交わす必要があると…
セルシウスええ、人間と精霊が共にあろうとすると「契約」が必要となる
セルシウスその契約に必要不可欠となるのが契約の証
セルシウスカノンノ、そしてそのネックレス。…これが、あなたの「役割」なのかも知れないわね
カノンノまさか、そんな事が…
リッドカノンノの意志に共鳴してるって事は契約はカノンノにしか出来ない、そういう事だよな?
ミラリプリカームの事も踏まえると、そう考えるべきだろうな。…ますます不思議な代物だ
リッド…まさか、リプリカームだけじゃなくそんな役割まで果たしちまうとか、すげえな…
セルシウス…カノンノ、もう一度聞かせて。あなたとの契約のために…
セルシウスこのわたしを…人を殺してしまったわたしを…受け入れてくれる…?
セルシウスもしあなたや、あなたの仲間達がわたしを受け入れてくれるのならば…
セルシウスそのネックレスをわたしに向かって、掲げて…
カノンノ…うん、わかった。やってみるね。みんな…いいよね?
リッド・ミラああ、勿論だ
カノンノセルシウス…私達に力を貸して──…
リッドおい、セルシウスはどこだ?消えちまったのか…?
カノンノ…ううん、ここにいるよ
リッドな、ネックレスの色が変わった…!?まさか、この中に?
カノンノそうみたい。セルシウスみたいなきれいな色になったね
ミラ契約は成功した、という事か。…セルシウスか、とても心強い味方が出来たな
リッドま、とにかくこれでカタは付いた事だし外へ出ようぜ。あいつらも待ってんだろ
ミラああ、そうだな
ルーク──駄目だ。どーにもなんねー!
アスベルくっ…こうしている間にもカノンノ達は…。何か手はないのか…?
リオン精霊に詳しいクラースやリヒターがいれば、何かいい手を思い付いたかもしれんが…
ビシッ!
リタ…!ねえ、ちょっとあれを見て!氷山が…
ビシッ!ビシビシビシッ!
スパーダな、何だ?すげえ勢いでヒビが…まさか崩れちまうんじゃ…!
ドカッ!スザ…ガラガラガラッ!
ルークなっ、氷が砕けて穴が…
ミラようやく外に出られたようだな。リッド、長らく肩を借りてすまなかったな
リッド別に構わねえ、こっちの肩は無傷だ。やれやれ、出るのも一苦労だったな。カノンノ、お前も怪我は大丈夫か?
カノンノうん、私は大丈夫だよ。二人こそ早く手当しなくちゃ
アスベルカノンノ!リッド!ミラ!
リタ無事だったのね!
リオン…こいつらのどこが「無事」なんだ。どう見ても「無事」には見えん
スパーダ中で何があった?まさかセルシウスと戦ったのか?
ミラああ、何とかセルシウスの暴走を鎮める事に成功した。更には私達に力を貸してくれると…
アスベルセルシウスが…?それは一体どういう事だ?
ミラ世界を救いたいという想いは人間も精霊も同じ、という事だ
リタそれにしてもあんた達、本当に三人だけでやってのけたっていうの?
リッド…他に誰がいんだよ。まあ、苦労したのは確かだけどな…
アスベルそうか…協力出来なくてすまなかった
カノンノ謝らないで。あの状況じゃ、仕方なかったよ
ルークま、とにかく結果オーライって事でいーんじゃねーの?
ルークじゃ、リンネル村に戻ろうぜ。メルディ達にも、避難する必要はねーって伝えなきゃなんねーし
リタそれにリッド達もちゃんと手当した方がいいんじゃないの?ボロボロよあんた達。早いとこ──
リオン待て。その前に確認しておきたい。氷漬けになった人間は、元に戻るのか?
カノンノそれは…
ミラ…残念ながら無理だ。湖の氷はいずれ自然に元に戻るが、…命は救えない
ミラすまない…
リオンくっ…
ミラリオン、聞いてほしい
ミラここで起きた現象は、ルイニス街とは別だ。お前の街で起きた現象に精霊は干渉していない
ミラルイニス街の氷の原因がわからない以上断言は出来ないが、街の人々を救える可能性はある。だから──
リオン…わかっている
リッドリオン…。氷が溶けたら、せめて丁寧に弔ってもらえるといいな…
スパーダああ、そうだな。ガイアス陛下にはオレが責任を持って伝えて、頼んでおくよ
ミラありがとう、スパーダ
カノンノあ、ネックレスが…セルシウスが何か言ってるの…?
ミラ…すまない、そう言っている。ひどく心を痛めているようだ
リオン
ミラニブル湖で失った命は、決して忘れない…これからの行動で償っていきたい──だそうだ
アスベル…そうか…
リッド…うぐっ…!
カノンノリッドさん!?みんな、お願い。リンネル村でリッドさんとミラさんを休ませてあげて!ひどいケガなの…!
スパーダったく、喋ってる場合じゃねェだろ!お前らホントにボロボロじゃねーか!…おら、オレに掴まれよ!
アスベル俺も手伝う。みんな、急いでリンネル村へ向かおう!