| Name | Dialogue |
| scene1 | リチャードの想い |
| ルーク | ──上手い事話もまとまって、これで肩の荷が一つ降りたって感じだな! |
| リッド | ああ、そうだな。とにかく、これでもう魔導器や魔導兵器が使われる心配はなくなったってわけだ |
| リチャード | みんな、本当にありがとう |
| リチャード | 無事ガイアス陛下の力添えを得る事が出来── |
| リチャード | 更には我が国とア・ジュールの関係修復においても、講和への足掛かりを得る事が出来た |
| リチャード | みんなからの報告がなければ、この交渉は勿論、事態の把握すら出来ていなかっただろう |
| リチャード | …下手をすれば、自らの手でこの世界を崩壊させていたかもしれない |
| エステル | リチャード陛下… |
| リチャード | 改めて、礼を言わせてほしい。これも全て、みんなのお蔭だ。心から感謝する |
| アスベル | 何を言うんだ。それは俺達も同じだ |
| アスベル | あのガイアス陛下を相手に、よく渡り合えたと思う。それは紛れもなくリチャード、お前のお蔭だ |
| リタ | まあ、そうね。国王同士の直談判だったからこそ上手くいったようなもんじゃない? |
| リッド | 難しく考える必要はねえよ。誠意ってのがあいつに伝わったんだろ |
| ミラ | …リチャード。かつての行いから、私はお前に対しいい印象を持っていなかった |
| ミラ | だが、お前は変わろうとしている。ガイアスとの話でそれがよくわかった。認識を改めねばな |
| リチャード | …ありがとう。勿論、僕に出来る事は何でもする。…だが、認識を改める必要はない |
| リチャード | いくら償おうとも、僕の行いによって出来た人々の心の傷や苦しみ、恐怖を完全に取り除く事は出来ない |
| リチャード | …だからこそ、過去の行いも含めて僕を見ていてほしいんだ |
| リチャード | 彼らの痛みや想いを受け止め、その上で僕は全力を尽くしたい、かつての平和な世界を取り戻すために |
| ミラ | リチャード…お前の想いはわかった。お前の変わっていく様を、私達がしっかり見届けよう |
| リチャード | ああ、ありがとう |
| エステル | リタ、それにみなさん、本当にありがとうございました。わたしも出来る限りお手伝いします |
| アスベル | ありがとうございます、エステリーゼ様 |
| カノンノ | 早速だけど…私達が次にやるべき事は、大精霊の暴走を鎮めるって事かな? |
| リオン | ああ。戦争の原因となった第三者の調査に関しては、スタン達が動いているはずだからな |
| ジェイド | これはどうも、皆さんお揃いで |
| リタ | 何、またあんた?ついさっき別れたばっかりじゃない |
| ジェイド | リチャード陛下とエステリーゼ殿下を船までお見送りするよう、ガイアス陛下より仰せつかりましてね |
| カノンノ | 二人共、帰っちゃうの? |
| リチャード | この状況下で、いつまでも国を空けているわけにはいかないからね |
| エステル | わたしは出来れば、このままリタ達と一緒に行きたいのですが… |
| アスベル | 駄目です |
| エステル | …そうですよね…やっぱり…。わかりました。リチャード陛下と共にひとまず国に戻ります |
| エステル | リタ、何かあればすぐにバロニアへ来てください。わたしに出来る事があれば、何でもしますから |
| リタ | わかったわ。ありがと、エステル |
| ジェイド | では、港に参りましょうか。あまり船員を待たせては気の毒ですしね |
| リッド | じゃあ、オレ達も一緒に港まで見送りに行くか |
| リタ | そうね。行きましょ |
| scene2 | リチャードの想い |
| リチャード | ん…? |
| アスベル | あれは… |
| アスベル | フレンじゃないか!護衛兵を引き連れているようだが… |
| フレン | やあ、アスベル。どうやら無事だったみたいだね。陛下と殿下の護衛、ご苦労様 |
| フレン | 国王陛下、エステリーゼ殿下、お迎えにあがりました |
| エステル | フレン、どうしてここに? |
| フレン | 陛下がご出発された後、ユーリと会い、話を聞きました |
| フレン | 護衛はアスベルのみと聞き、慌てて全力で後を追い、つい先ほど、港で船と合流しました |
| リチャード | なるほど。世話をかけたね、フレン |
| ジェイド | いやはや、今日は歴史的な日ですね。国王陛下と、ウィンドルが誇る高名な騎士お二方のご来駕を賜るとは |
| カノンノ | 高名な騎士って…? |
| リオン | …騎士、というからにはフレンとアスベルの事だろうな |
| リッド | なるほどな。お前らは前からジェイドに名前を知られてたってわけだ |
| ルーク | そんなにすげー事か?俺もキムラスカじゃ、知らない奴はいねーけどな |
| リタ | 何自慢してんのよ。それは別に当たり前でしょ |
| リタ | でも、戦争が続いてたらウィンドルの要人がカン・バルクを訪れるなんてあり得なかったわけだし |
| リタ | そう考えると、確かに結構すごい事かもしれないわね |
| リチャード | アスベル、フレンも来てくれた事だ。見送りはここまでで大丈夫だよ |
| アスベル | え?でも… |
| リチャード | 時間がないのだろう?君達はすぐにでも次の行動に移った方がいい |
| アスベル | …そうか。わかった。そうさせてもらう |
| フレン | 心配ないよ、アスベル。陛下と殿下は、僕がウィンドルまで安全にお連れすると約束する |
| エステル | みなさん、どうか気を付けて。何かあれば必ず力になります |
| アスベル | エステリーゼ様、ありがとうございます |
| リッド | あんたらの協力は必要不可欠だ。何かあったらすぐに連絡する。その時はよろしく頼むぜ |
| リチャード | 勿論だ。ではアスベル、僕達は行く。吉報を待っているよ |
| アスベル | ああ、約束するよ。必ずやり遂げてみせる |
| フレン | それでは参りましょう |
| ジェイド | 私はこのまま陛下達と港まで行きます。皆さん、それではお元気で |
| リタ | …さてと、エステル達も無事に行ったわね |
| ルーク | よし、じゃあ俺達も早いとこ動き出そうぜ。…で、どこへ行けばいいんだ? |
| リオン | まずは所在のはっきりしているアスカの元へ戻るべきだろう |
| ミラ | ああ、私も同感だ |
| アスベル | そのアスカっていう大精霊は、テムザ山にいるという話だったよな |
| ミラ | そうだ |
| ルーク | ちょっと待てよ、テムザって確かウィンドルの山じゃねーか!そういう話は早く言えっつーの! |
| ルーク | エステル達の船に乗ってテムザまで行けばよかっただろ! |
| リッド | そうかもしれねえけど、お偉方の船に便乗ってワケにもいかねえだろ、普通 |
| アスベル | ああ、そうだな。俺達は俺達の力で出来る事をするべきだ |
| リタ | 何でもいいけど、船がいるならさっさと探せば── |
| | きゃああああ! |
| | |
| リタ | 何、今の!悲鳴!? |
| カノンノ | みんな、向こうから魔物が! |
| | ガアアアアッ! |
| アスベル | くっ、こいつ…! |
| scene1 | 新たな気配 |
| ルーク | よし、魔物は片付いたし、とっととアスカの元へ行こうぜ |
| リタ | とんだ邪魔が入ったわね急ぎましょ |
| ミラ | …!これは… |
| アスベル | ミラ…? |
| リオン | どうした。四大精霊が何か言っているのか? |
| ミラ | いや、そうではない。だが、ただならぬ気配を感じるのだ… |
| カノンノ | ただならぬ気配…それってまさか、アスカの…? |
| ミラ | …いや、この気配はテムザ山とは逆の方向…もっと近い場所から感じられる |
| リッド | って事はアスカじゃなくて、別の大精霊の気配がするって事か? |
| ミラ | ああ、おそらくそう考えて間違いはなさそう── |
| リッド | …ん?何か騒がしいのがいるな |
| | |
| スパーダ | だから何度言ったらわかンだよ。ルカはここに残れって |
| ルカ | いくらスパーダでも一人じゃ危険だよ。僕も一緒に行く |
| スパーダ | 心配してくれるのは嬉しいけどよ── |
| ミラ | あれは…スパーダ? |
| リタ | ルカ!? |
| スパーダ | お?ミラじゃねーか。久しぶりだな!それと一緒にいる顔にも見覚えが… |
| リタ | リタよ。その節は世話になったわね |
| | |
| スパーダ | へえ、まさかお前がミラの仲間だったとは思いもしなかったぜ。世間ってのは案外狭いモンだな |
| スパーダ | ところでリタ、前に話してた魔導兵器はどうなった? |
| リタ | ひとまず当座の危険はなくなったわ。だからって他にも問題が山積みなのは変わらないけど |
| ミラ | スパーダは、ここで何をしていたのだ?随分と騒がしかったようだが |
| ルカ | 実は… |
| スパーダ | ここから西にあるニブル湖が凍ったってんで、ちと様子を見に行こうと思ったのさ |
| ルーク | 湖が凍った?すっげーな。寒い国だとそんな事になんのか |
| スパーダ | バカ言え、いくらア・ジュールが寒いからって、そうそう湖は凍らねェよ |
| アスベル | …?どういう事だ? |
| ルカ | …何だか不自然なんだ。湖は勿論、その辺り一帯まで氷漬けの状態になってしまったみたいで… |
| リオン | 氷漬け…だと? |
| ルカ | うん…。極寒のア・ジュールでもそんな異常寒波が起こった事は今まで一度だってない… |
| リオン | … |
| スパーダ | さらにその寒波が広まってやがって、近隣の村まで被害が及んでるって状況らしいぜ |
| スパーダ | 本当だとしたら放っては置けねェ。一度調査に行って、本当なら陛下に陳情しようと思ってたんだ |
| ミラ | まさか… |
| リッド | ア・ジュールの西といえば…確かメルディがいるリンネル村があるところか? |
| ルーク | ああ、そうだそうだ。行った事があるから間違いねーぜ |
| アスベル | リンネル村… |
| スパーダ | よく知ってるな。そのリンネル村も、下手すりゃ影響を受けてるかもしれねェ |
| リッド | 何だと!?それじゃあメルディ達が危ねえじゃねえか! |
| スパーダ | そうかもな。どうなってるかわからねェから、まずニブル湖に調査に行こうと思ってんだ |
| ミラ | そういう事か。…なら、スパーダ。私達をその湖へ案内してくれないか? |
| リタ | 大精霊の事はどうするわけ?そりゃ氷漬けの話も気にはなるけど、こっちだってあまり時間が── |
| ミラ | だから行くのだ |
| リオン | …まさか、その湖の氷漬けも大精霊によるものだというのか? |
| ミラ | 私が強い気配を感じたのもここから西の方角だ。…湖の氷が大精霊の影響である可能性は高い |
| リオン | … |
| カノンノ | …ねえ、みんな。行こう、その湖に。今にも被害が及びそうな村があるのに放ってなんかおけないよ |
| アスベル | ああ、俺もそれがいいと思う。その氷が大精霊の力の影響だとしたら遅かれ早かれ、いずれは行く事になる |
| アスベル | だったら今は、アスカよりも、村の安全がかかっているこちらを優先させるべきだ |
| リッド | オレも同感だ。さくっと片付けちまえば、リンネル村に影響が出る前に何とか出来るかもしれねえ |
| リタ | わかった。聞いての通りよ、スパーダ。あたし達も一緒に行くから |
| スパーダ | お前達が同行する事は構わねェが…何がどうなってんだ?大精霊がどうとか…話が見えねえ |
| ミラ | 事情は道々説明する。今は時間がない |
| スパーダ | …わかったよ。まあミラ達なら、信用出来るしな |
| スパーダ | ルカ、そういうわけで、オレはこいつらと行く。それなら問題ないだろ? |
| ルカ | う、うん。わかったよ…これだけ人数がいれば、安心…かな |
| ルカ | みなさん、どうかスパーダの事を、よろしくお願いします |
| スパーダ | そんじゃ、早速出発すっか |
| ルーク | 湖を氷漬けにしちまう大精霊か…。一体どんな奴なんだろーな |
| リオン | … |
| scene2 | 新たな気配 |
| ミラ | …そういう事情で、暴走した大精霊を鎮めるために行動しているのだ |
| スパーダ | まさか、オレの知らないとこでそんな事態になってたとはな… |
| スパーダ | …決めた、オレも協力するぜ。大精霊の暴走と世界の危機…決して他人事じゃねェからな |
| ミラ | お前ならきっと、そう言ってくれると思っていた。よろしく頼むぞ、スパーダ |
| カノンノ | ふう… |
| アスベル | 大丈夫か、カノンノ。カン・バルクから歩き通しで、疲れたんじゃないか? |
| カノンノ | ううん、平気だよ |
| アスベル | 無理はするなよ。いざとなったらお前をおぶってやる事だって── |
| リタ | おぶるって…アスベル、あんたねえ、いくら何でも心配性すぎない? |
| リッド | 確かにリタの言う通りだな。子どもじゃねえんだし、一人で歩けるだろ。な、カノンノ? |
| カノンノ | ありがとう、アスベル。本当に辛かったら言うから、大丈夫だよ |
| カノンノ | それよりも…私、本当についてきてよかったのかな。足手まといになってないかな |
| アスベル | そんな事はないさ。カノンノはよくやってる |
| リッド | ああ、そんな心配すんなよ |
| カノンノ | でも私、みんなみたいに、強くないし… |
| ミラ | 戦うだけが強さではない。強さの形は、人それぞれで誰にでもあるものだ |
| ルーク | お、いい事言うじゃねーか。だいたいお前にはリプリカームって力があるんだし、それで充分だろ |
| カノンノ | うん…。ありがとう、みんな |
| リッド | それにしても、カノンノのネックレスに、まさかあんな特殊な力があったなんてな |
| アスベル | …そうだな。俺も驚いたよ |
| アスベル | 変わった形のネックレスだし失った記憶の手がかりになればいいと思っていたが |
| アスベル | まさか世界の危機を救うために必要となるものだなんて… |
| アスベル | その時は、想像すらしなかったよ |
| カノンノ | アスベル… |
| カノンノ | 私も驚いてるよ。でも、それと同時に嬉しいとも思ってる |
| カノンノ | 私は今もまだ、自分がどこの誰なのかわかってない。正直に言うと、少し不安だったの |
| カノンノ | …でも、このネックレスが、世界を救う力を持っているって知ってすごく嬉しかった |
| カノンノ | 何だか、得体のしれない自分が世界に認めてもらえたって気がして… |
| カノンノ | …なんてね!なかなか記憶が戻らないから少し不安になってただけ…!単純に嬉しいよって話だよ! |
| アスベル | カノンノ… |
| カノンノ | とにかく…!無事、このリプリカームで大精霊の暴走を鎮められるといいね |
| ミラ | …ああ、頼むぞカノンノ |
| リオン | おい、お前達… |
| ルーク | ん?どうかしたのかリオン── |
| リオン | …無駄話はそこまでにしてさっさと歩け |
| ルーク | んだよ、相変わらず愛想悪ぃ奴だな |
| スパーダ | 随分ピリピリしてんな、あいつ |
| ミラ | 無理もないだろう。今回の件はリオンにとっても無関係ではないからな |
| リッド | 無関係じゃない…?何があったんだ?リオ── |
| | |
| | カサ… |
| リタ | …?今、そこの雪の塊、動かなかった? |
| | グオオオオッ! |
| リッド | 雪じゃねえ、魔物だ! |
| ルーク | ったく、紛らわしいんだっつーの! |
| scene1 | 逸る気持ち |
| ミラ | む?あれは集落か…? |
| スパーダ | リンネル村だ。ニブル湖は、この先をもう少し西へ進んだところにある |
| リッド | あれがメルディの村か。あいつ、無事だといいんだけどな… |
| ルーク | へえ、前の戦争で焼かれた建物が、だいぶ建て直されてるみてーだな |
| リッド | そんなに復興してんのか。メルディの奴、頑張ってるんだな |
| アスベル | … |
| リタ | 今のところ、氷結で大きな被害は出てなさそうだけど…ここから例の湖まではどのくらいあるの? |
| スパーダ | そんなに遠くはねえよ。今被害が出ていなくても、楽観は出来ねェ距離だと思うぜ |
| ルーク | ったく、とことんついてねー村だな。次から次へと厄介事に巻き込まれてよ |
| リッド | …前にメルディから聞いたよ。村の連中は、何も悪い事なんてしてないのにな |
| アスベル | … |
| カノンノ | アスベル、どうかしたの?何だか悲しそうな顔してる |
| アスベル | …いや、何でもない。ちょっといろいろと思い出しただけさ |
| リタ | ミラ、例の気配はどうなの? |
| ミラ | …ああ、ここへ来て大精霊の気配はより高まっている |
| ミラ | ここからもう少し西…その辺りに大精霊がいるはずだ |
| リオン | 西…やはり、湖か |
| ミラ | おそらくな |
| カノンノ | じゃあ、ニブル湖へ急いだ方がよさそうだね |
| ルーク | あーあ。せめて村に寄って腹ごしらえくらいしたかったぜ |
| | カサ… |
| アスベル | 気持ちはわかるが仕方ないさ。あとで寄れるなら寄って、その時に── |
| アスベル | …ん? |
| カノンノ | あ、ウサギ… |
| | トトト… |
| リッド | お、よかったなルーク。どうやら飯にありつけそうだぞ |
| リタ | 飯って…リッド、あんたまさかあのウサギを獲るつもり? |
| ルーク | マジかよ。そんな事出来るのか? |
| リッド | オレは猟師だぜ。まあ見てろって |
| メルディ | ダメーーーー!!! |
| リッド | うおっ!?な、何だ? |
| ルーク | メルディ!? |
| | |
| メルディ | リッド、あのウサギ、ごはんと違うよぅ!あれは村の女の子が友達! |
| リッド | ペットって事か? |
| メルディ | はいな。だから食べるのダメ。触るはいいよ。でも、優しくしてな? |
| メルディ | …って、あれ?ウサギ、もういないな |
| リオン | お前の声に驚いて、とっくに逃げたぞ |
| メルディ | バイバ!大変!すぐに追いかけないと!メルディ、ウサギが事サガしてたよ! |
| メルディ | この辺りは魔物もオオカミもたくさんいるよ。放っておいたら、ウサギ、食べられちゃうよぅ! |
| メルディ | お願いよ!ウサギが事、捕まえて欲しいよぅ!ウサギ、みんなが友達! |
| リッド | ウサギが友達って言ってもなぁ… |
| リオン | おい、こんな事に無駄な時間を使うつもりか?僕達にはやる事があるはずだ |
| メルディ | ヒドいよぅ!みんなは、友達が怖がっててもヘーキか? |
| カノンノ | …ねえ、みんな。メルディのお願い、聞いてあげない? |
| リタ | そりゃ、気持ちはわからないでもないけど… |
| アスベル | …よし、メルディ。やってみよう。友達は放っておけないもんな |
| メルディ | バイバ!本当か!?ありがとな!メルディも頑張るよぅ! |
| リッド | …やれやれ。これじゃあ捕まえようとしたオレだけが悪者みたいじゃねえか |
| リッド | わかったよメルディ、オレもやる |
| スパーダ | ウサギはあっちに行った。やるなら早くやっちまおうぜ |
| ミラ | ああ。皆、急ぐぞ! |
| scene2 | 逸る気持ち |
| カノンノ | いた!あのウサギじゃない?メルディ |
| メルディ | そう、あのウサギ!よかった、魔物に食べられてないよー! |
| アスベル | 見つけたはいいが、どうやって捕獲したらいいんだ?傷付けるわけにもいかないし… |
| リッド | そこで猟師の出番ってわけだ。アスベル、カノンノ。何かロープになりそうなものはねえか? |
| カノンノ | えっと…あ、植物のつるならここにあるよ |
| リッド | 上等だ。アスベル!そいつが逃げねえように、オレの反対側に回ってくれ! |
| アスベル | わかった! |
| リッド | これを輪っかにして──よっと! |
| | ヒュンッ! |
| | キュッ! |
| カノンノ | わあ!足に絡まった! |
| リッド | 無傷で捕獲完了、ってわけだ |
| アスベル | へえ、上手いもんだなあ |
| リッド | メルディ、ウサギは任せた。今度は逃がすなよ |
| メルディ | はいな! |
| メルディ | やったー!捕まえたよー! |
| アスベル | よかったな |
| リッド | ああ、そうだな。もう少しで食われちまうところだったからな |
| リッド | …ルークに |
| ルーク | おい!飯だっつったのはリッド、お前じゃねーか!俺は悪くねえ! |
| ??? | メルディー! |
| メルディ | あ、レイア! |
| レイア | ウサちゃん捕まった?…って、リッドにルーク!それに、ミラも…! |
| ミラ | 久しぶりだな、レイア |
| メルディ | リッドがお蔭で、無事にウサギを捕まえられたよー |
| レイア | ありがとう、リッド。でも、どうしてここに? |
| ルーク | この近くのニブル湖が氷漬けになったってんでちょっと様子見に来たんだよ |
| レイア | あの氷の事ね…。本当にどうしてこんな事になっちゃったんだろ… |
| メルディ | リンネル村がオトナ達、みんな集まって、これからどうするか相談してるよ |
| レイア | …湖のすぐ傍にあった小さな村が氷に覆われてしまったみたいなの |
| レイア | この様子だと、リンネル村がああなってしまうのも時間の問題だろうって… |
| レイア | それに、聞いた話だと逃げ遅れた人達の何人かが、氷漬けになっちゃったっていうし… |
| ミラ | 村も、人々も氷漬けに… |
| リオン | …くっ |
| アスベル | おいリオン、待ってくれ。どこへ行くんだ? |
| リオン | …ニブル湖に決まっているだろう |
| リタ | ちょっと待ちなさいよ。もう少し二人の話を聞いた方がいいわよ。情報は多いに越した事ないんだから! |
| リオン | 勝手にしろ、僕は先に行く |
| リタ | さっきから何なの、あいつ! |
| ミラ | … |
| ミラ | …この際だ、リオンについて少し話しておく |
| スパーダ | まさかシルヴァラントにも氷漬けになった街があるなんてな… |
| アスベル | ルイニス街の話はクラトスさんから聞いていたが、そこまでひどい状況だったとは… |
| カノンノ | …リオンさんはきっと、自分の街と、今回の出来事を重ねてしまったんだね |
| ルーク | ったく…それならそうと、早く言えっつーの |
| ミラ | 私も実際にルイニス街をこの目で見たが、悲惨な状況だった。リオンが焦る気持ちもわからなくはない… |
| リタ | だったら早いとこリオンを追った方がよくない?あの調子じゃあいつ、一人で大精霊に挑みかねないわよ |
| リッド | 確かにな。じゃあ、早速── |
| レイア | 待って、ミラ! |
| レイア | 大精霊とか、あまりよくわかってないけど、わたし達も手伝うよ |
| レイア | …村を守りたいの。だから、出来る事は協力させて |
| ミラ | レイア…。なら、お前達は村へ戻って万が一の事態に備えてほしい |
| ミラ | 状況によっては、村を出て避難する必要が出て来るかもしれない |
| メルディ | せっかく村の修理、みんなで頑張ったのにまたなくなってしまうか? |
| リッド | 大丈夫だ。そんな事にならないように、みんなで何とかする |
| ルーク | 大精霊を大人しくさせたらまた来るから、そん時はうまい飯食わせろよ |
| メルディ | …わかった、たくさん用意して待ってるよぅ |
| レイア | リンネル村の事は任せて。みんな、気を付けてね |
| アスベル | ああ、ありがとう。よし、じゃあ行こうか |
| カノンノ | うん! |
| | |
| リオン | … |
| ミラ | リオン! |
| ルーク | やっと追い付いたぜ…、つか、早すぎんだよ、お前。面倒かけやがって |
| リッド | ホントだぜ。焦んのもわかんなくねえけど、ちょっとは待ってろって |
| アスベル | リオン、ミラから事情は聞いた。お前の気持ちはわかるけど、一人で行くのは危険だ |
| ミラ | 私もイフリートと戦った時、今のお前と同じように一人で抱え込んで焦っていた。だからこそ言う── |
| ミラ | 一人で全てを背負い込むな、もっと私達の事を頼ってほしい |
| ミラ | お前の傍には、同じ目的を持って行動する私達がいる。それを忘れないでくれ |
| リオン | … |
| リオン | …わかった |
| リタ | とにかく、これで全員揃ってニブル湖へ行けるわね |
| スパーダ | よし、じゃあ先へ進もうぜ。こうしている間にもドンドン時間は過ぎてくからな |
| リッド | …っと、悠長に話してるヒマもなさそうだぜ。魔物のおでましだ |
| | |
| | グオオオオッ! |
| scene1 | ニブル湖の異変 |
| ルーク | …はーくしょん!うう…さみぃ |
| リタ | バカっぽい。そんな腹出しの格好なんかしてるからよ |
| ルーク | なっ…バカとは何だ!べ、別に腹は寒くねーし! |
| リタ | そんな真っ赤なお腹して…どの口が言うんだか |
| ルーク | …! |
| リッド | 腹出しっぱなしにしてりゃ意外と慣れるモンだぜ |
| リッド | で、今はどの辺だ?そろそろ例の湖に着くのか? |
| アスベル | 近付いてはいると思う。リンネル村の辺りと比べると徐々に冷え込みが増してきているし |
| スパーダ | ああ、この丘を登ればもう湖畔が見えるはずだぜ…ほら、見えてきたろ…って… |
| リオン | む…? |
| カノンノ | まさか、あれが…? |
| | |
| ミラ | …! |
| リタ | 湖って…見えるのはでっかい氷の山ばかりじゃない |
| リッド | どうりで寒いと思ったぜ。あんな巨大な氷の塊が、すぐ近くにあるんじゃな |
| ルーク | で、湖は一体どこなんだよ? |
| スパーダ | …あそこだ |
| ルーク | あ?だから、氷の山しかねーじゃん。俺が聞いてんのは、湖で── |
| スパーダ | だから、その氷山のとこだって。元は、あそこが湖!地図で見ても間違いはねェ |
| アスベル | …まさか、湖の水が凍って氷山になったとでも言うのか?そんな事が本当にあり得るのか? |
| スパーダ | 湖が凍る事自体めったにねェ話なんだ。ましてや氷山なんて…普通じゃあり得ねェよ! |
| カノンノ | つまりこれは普通じゃなくって、大精霊の力… |
| リオン | おいミラ、大精霊の気配は? |
| ミラ | …間違いない、あの氷山の中だ。強い力を感じる。氷を砕き、今にも飛び出してきそうなほどの強い力だ… |
| ミラ | 力の主は、セルシウス。氷を司る大精霊…そう考えて間違いないだろう |
| リッド | なっ…氷を司る大精霊だって!?そんな奴がいんのか? |
| ミラ | ああ、この氷山を見て確信した。これほどまでに強大な氷の力を使える大精霊は彼女しかいない |
| ミラ | まさか、セルシウスほどの大精霊まで暴走に飲み込まれていたとは… |
| リオン | … |
| スパーダ | そのセルシウスって奴は強いのか? |
| ミラ | 精霊の中でもかなり強力な力を持つ大精霊だ。苦戦を強いられる事になるだろう… |
| ミラ | 覚悟してかからねば、返り討ちに遭う。確実にな… |
| リッド | それでも、やるしかねえんだろ? |
| ミラ | ああ、その通りだ |
| リオン | …セルシウスの暴走を鎮めなければ…。…何としてでも |
| リタ | やらないと、あたし達の世界が破滅してしまうんだし。贅沢言ってる余裕なんてないわ |
| アスベル | そうだな。相手が強力な大精霊でも、力を合わせればきっと何とかなる、そう信じて進むしかない |
| カノンノ | 私も、出来る限りの事はするよ |
| ミラ | …覚悟は揺らいでないな。安心したよ |
| ルーク | 今更怖気づくかっつーの!風邪ひく前に、とっととあの氷山を調べに行こうぜ |
| scene2 | ニブル湖の異変 |
| ルーク | セルシウスは氷山の中にいるんだよな?って事は入口を探さねーと… |
| カノンノ | 私もそう思ってさっきから探してるんだけど…それらしいものは── |
| カノンノ | …! |
| アスベル | カノンノ、どうした?何か見つけ… |
| | |
| アスベル | …!これは…! |
| リオン | どうかしたのか? |
| アスベル | リオンは来るな! |
| リオン | 何…? |
| リタ | アスベル、あんた何を言って── |
| リタ | …あ |
| ミラ | これは… |
| リオン | …! |
| ルーク | な、何だこりゃ!?人間が、こ、氷漬けに…マジかよ… |
| リッド | リオンに来るなって言ったのは…これがあったからか… |
| スパーダ | ひでえな…。話には聞いてても、実際に見ると… |
| リタ | …ルイニス街の人達もこんな風になってしまったの? |
| リオン | …ああ |
| アスベル | とにかく、一刻も早くセルシウスの元へ急ごう。暴走を鎮められたらこの人達を救えるかもしれない…! |
| | |
| | ヒュオオオオオ! |
| カノンノ | きゃあっ!? |
| リタ | ちょっと、いきなり吹雪!? |
| ルーク | …っぷ!目を開けてられねーぞ! |
| アスベル | みんな、大丈夫か!? |
| | ビシッ! |
| リオン | 何の音だ? |
| | ビシッ!ビシビシビシッ! |
| スパーダ | まずいぜ!周辺の氷が割れ始めてる! |
| リッド | おいおい、冗談じゃねえぞ。氷の下は湖だろ?落ちたら死んじまうじゃねえか! |
| アスベル | このままでは危険だ。足場のしっかりしたところまで一旦退避しよう! |
| リタ | でもこの吹雪じゃ、どっちへ進めばいいのか… |
| | ゴゴゴ… |
| | ズゴゴゴゴゴ! |
| ルーク | じ、地震まで始まりやがった!マジでこのままじゃヤバいっつーの! |
| アスベル | まずい、足場の氷にヒビが…! |
| | |
| リッド | おいみんな、向こうに洞窟の入口がある。ひとまずあそこに避難するぞ! |
| スパーダ | え、洞窟?それはそれで危ねェんじゃ… |
| リッド | 足場が割れるよりはマシだろ。急げ! |
| ミラ | リッドに続け!遅れるな! |
| | ズガガガガガッ!ガラガラガラッ! |
| ルーク | うわっ!?今度は氷山まで崩れて来やがった! |
| リオン | くっ…! |
| アスベル | カノンノ、どこだ?カノンノーーッ! |
| scene1 | それぞれの動向 |
| ルーク | アスベル、おい!しっかりしろ! |
| アスベル | う、うう… |
| | |
| アスベル | あ…ルーク… |
| ルーク | ったく、焦らすなっつーの。なかなか起きねーから死んじまったのかと思ったじゃねーか |
| リタ | リオンとスパーダを見つけてきたわよ。二人とも怪我はない? |
| スパーダ | ああ、何とかな… |
| リオン | 吹雪と地震は収まったのか…? |
| リタ | みたいね。あくまで今のところは、だけど |
| アスベル | カノンノは?あと、ミラとリッドも |
| ルーク | それが…さっきから捜してるんだが、三人共見つからねーんだ |
| アスベル | 何だって…! |
| スパーダ | そういや、洞窟の入口がどうこうって誰かが叫んでたな。あれ、リッドの声だったような… |
| アスベル | 洞窟に逃げ込んだって事か?でもそんな洞窟、どこに… |
| リタ | みんなを捜すついでに一応見たんだけど、それらしいものはなかったわ |
| ルーク | さっきの氷山の崩落でこの辺りの様子も様変わりしちまったしな… |
| リタ | 崩れた氷の下に閉じ込められたりしてなきゃいいけど… |
| アスベル | そんな…! |
| アスベル | とにかく、みんなを捜そう! |
| | |
| リッド | …?ここは…洞窟の中か? |
| リッド | いてて…さっきのすさまじい吹雪と地震は一体何だった……ん?あれは… |
| リッド | おいミラ、カノンノ、しっかりしろ! |
| カノンノ | ん…、リッド…?あれ…ここは…? |
| ミラ | …洞窟の中か、何とか避難出来たようだな。他の者達は? |
| リッド | この辺りには見当たらない。ひょっとしたら他の奴らは洞窟の外にいるのかもしれねえな |
| カノンノ | そんな… |
| リッド | とにかく一度外に出て、他の奴らを捜そう。入口は… |
| ミラ | あそこのようだが… |
| カノンノ | 氷が崩れて完全に塞がってしまってる… |
| リッド | この状態じゃ出ようにも出られねえな。外から入ってくるのも難しそうだ |
| ミラ | ならば、イフリートの力を使うか。大精霊の力による氷だ、イフリートの炎なら溶かす事が出来るはずだ |
| リッド | いや、やめた方がいい。ここは洞窟だ。ヘンに崩して落盤でもすりゃ、それこそ大惨事だ |
| ミラ | 確かにそうだな。…それはそうと、リッド、身体は動くか? |
| リッド | ああ、大きなケガもねぇし、いつも通り戦えるぜ。急にどうした? |
| ミラ | …幸か不幸か、この洞窟はセルシウスの居場所に繋がっている。気配がぐっと近く感じられるのだ |
| ミラ | 洞窟の奥から冷気も吹き寄せている。まず間違いあるまい |
| カノンノ | そんな…。奥へ進めば出口があって出られるかもしれないのに… |
| ミラ | 覚悟を決めるしかないだろう。ここにずっと留まっているわけにもいかないからな |
| リッド | このまま三人でセルシウスの元へ行く…そういう事だな |
| カノンノ | 三人で…? |
| ミラ | ああ。おそらく先ほどの吹雪も、この氷山も、全てはセルシウスの力によるものだ |
| ミラ | ここから出るにも、セルシウスの暴走を鎮める他ない |
| カノンノ | 私達だけでセルシウスと渡り合うなんて…本当に出来るのかな…? |
| リッド | 確かに戦力としては半分以下だけど…まあ、何とかなんだろ |
| カノンノ | … |
| ミラ | ああ、いずれにせよ、ここで立ち止まっても仕方あるまい |
| リッド | そうだな。んじゃ、さっさとセルシウスのところへ行くとしようぜ |
| カノンノ | … |
| scene2 | それぞれの動向 |
| リオン | 洞窟への入口は見つかったか? |
| リタ | 駄目ね。こっちは見当たらないわ |
| アスベル | くそ、一体どこにあるんだ?こんなに探しても見つからないなんて… |
| スパーダ | おい…!もしかして、ここじゃないか? |
| | |
| アスベル | …! |
| ルーク | ここが…って、完全に崩れて塞がってんじゃねーか。どうりで気付かなかったわけだぜ |
| リオン | …外でこの様子だ、中の方も何かしらの影響が出ているだろう |
| スパーダ | おいおい、あいつら本当に無事なのかよ… |
| アスベル | とにかく、急いで入口を塞いでいる氷を取り除こう |
| リタ | あたしに任せなさい。術でぶっとばすわ! |
| リタ | ファイアボール! |
| | ズバッ! |
| | シュン…ッ |
| ルーク | なっ、…あれだけの炎をぶつけられたのにびくともしてねーぞ |
| リタ | …!もう1回いくわよ! |
| | ズバッ! |
| | シュン…ッ! |
| アスベル | 駄目だ… |
| リオン | … |
| | |
| カノンノ | ふう… |
| リッド | 妙な気分だな。だいぶ歩いたような気がするが、辺りの風景が変わらねえ…本当に進んでんのか? |
| カノンノ | 確かに、ずっと氷に囲まれてて、同じところをぐるぐる歩いているみたいだね |
| ミラ | 安心しろ、セルシウスの気配は徐々に強まっている。私達が進んでいる事は確かだ |
| リッド | それを聞いて安心したぜ。…にしてもすげーな、この氷。ここが湖だったなんて信じられねえぜ |
| カノンノ | うん…大精霊の力ってすごいんだね。氷山の中に入って、改めてそう感じるよ |
| カノンノ | ねえ、ミラさん…出来るかな、私達…セルシウスを鎮められる? |
| カノンノ | だって、こんなすごい力を持っているんでしょ |
| ミラ | 上手くいく保証はどこにもない。だが、皆と合流出来ない以上、私達だけでやるしかない |
| カノンノ | … |
| カノンノ | うん…それはわかってる…けど… |
| リッド | 不安なのか? |
| カノンノ | …うん |
| | |
| リッド | …カノンノ、お前も見ただろ?あの氷漬けになっちまった奴らを |
| リッド | 今ここでオレ達がやらなきゃあっという間に広まってあちこちで同じ事が起きちまう |
| カノンノ | それは駄目…!何としても食い止めなきゃ… |
| リッド | だろ?だったら、厳しかろうが何だろうが、オレ達三人でセルシウスの暴走を鎮めるしかねえ |
| カノンノ | … |
| リッド | まあ、そんな心配すんな。人間腹をくくりゃあ大体何とかなるってもんだ |
| リッド | 少なくともオレはこれまで、それでやって来られたからな。だから、お前も大丈夫だろ。多分な |
| カノンノ | 腹をくくる… |
| カノンノ | …うん、そうだね。そうだよね |
| カノンノ | 不安ばかり言ってても仕方ないよね。何としてでも私達はやり遂げなきゃならないんだもん |
| リッド | ああ、その意気だ |
| カノンノ | うん!…ありがとう、リッドさん |
| ミラ | リッド… |
| | |
| カノンノ | …よーし、元気出てきた!二人共、心配かけてごめんね。もう大丈夫だから |
| ミラ | わかった。では改めて、先へ進もう──……と、言いたいところだが… |
| | グルルル… |
| ミラ | その前に、片付けなければならない相手がいるようだ |
| | ガアアアアッ! |
| リッド | ったく。これ以上面倒事を増やすなって! |
| scene1 | 大精霊セルシウス |
| リタ | ファイアボール! |
| | ズバッ! |
| | シュン…ッ |
| スパーダ | こんだけの炎をぶつけて、やっと、チュンチュンの涙ほどしか溶けねえなんて… |
| ルーク | くそっ、火が駄目ならと思って斬りつけてみたけど、それも駄目みてーだ |
| ルーク | 全力で叩き斬ろうとしてもびくともしねーし、下手すりゃ剣の方が折れちまいそうだ |
| リオン | … |
| アスベル | くっ…!こうなったら、全員で一斉に技を── |
| リオン | …無駄だ、やめておけ |
| ルーク | リオン…? |
| リオン | この氷は、ルイニス街のものとは違いわずかではあるが溶けはするようだな |
| リオン | だが、こんな氷山に囲まれた中では何をしたところで無意味だ |
| アスベル | そんな…じゃあ、一体どうすれば… |
| | |
| カノンノ | そういえば…アスベル達、大丈夫だったかな? |
| リッド | あいつらなら心配ねえだろ。まあ、今頃オレ達がどうなったかとやきもきはしてるだろうがな |
| ミラ | …! |
| カノンノ | ミラさん?どうかしたの? |
| ミラ | …セルシウスだ、近いぞ。気配が強まって── |
| カノンノ | あ…ネックレスが… |
| リッド | 光り出したな…これは、セルシウスの気配に反応してるって事だよな? |
| ミラ | ああ、間違いない |
| ミラ | しつこいようだが改めて言っておく。これから私達がまみえるセルシウスはとにかく強力な大精霊だ |
| ミラ | 暴走に陥り、理性を失っている状態となれば危険性はさらに高い |
| リッド | ああ、わかってる |
| ミラ | …さらにはこの人数だ。私達の連携が上手くいくかどうかが勝敗の分かれ目となるだろう |
| ミラ | 協力し合い、しっかりと連携を取れれば勝機はある。だが、逆に乱れるようであれば… |
| リッド | …死ぬ、って事だろ |
| カノンノ | 私、頑張るよ。絶対、二人の足手まといにはならないようにするから |
| リッド | よし、何が何でもセルシウスの奴を正気に戻してやろうぜ |
| カノンノ | うん…! |
| ミラ | よし、では先へ進もう。ここからは、いつセルシウスが姿を現してもおかしくない。慎重にな |
| scene2 | 大精霊セルシウス |
| アスベル | この冷気の中では、炎の威力も弱まって氷を溶かす事は出来ない…。一体どうすれば… |
| リオン | … |
| スパーダ | 思うんだけどよ… |
| スパーダ | 今頃三人で、大精霊のところに向かってるんじゃねーか?オレがあいつらの立場ならそうするぜ |
| アスベル | そんな… |
| ルーク | 三人が無事で、出口がなくて、奥に進むしかないってんならそうかもな |
| リタ | …普通の手段で溶かせないこの氷を何とかするためには、根本の原因を排除する必要があるのは確かだけど… |
| アスベル | だが、相手は大精霊だぞ?彼らの脅威はミラから聞いている。たった三人で挑むなんて無茶だ! |
| リオン | …だが、他に選択肢がないならば例え無茶でもやるしかないだろう |
| スパーダ | ま、ミラがいるから大丈夫だろ。あいつとは前に一緒に戦った事があるから、実力はよく知ってる |
| ルーク | それを言うなら、リッドもそれなりに腕は立つはずだぜ。まあ、俺にはかなわねーけどな |
| リタ | …アスベル、カノンノの事が心配なのはわかるけど、今はこれ以上どうしようもないわ |
| リタ | 大精霊の事を一番よく知ってるミラが一緒なら、多分、そんな軽はずみな真似はしないと思う |
| アスベル | … |
| アスベル | 心配なのはカノンノだけじゃない。あの二人は強いし、信頼もしているがやっぱり無茶だ… |
| アスベル | 合流する手立てを諦めては駄目だここでじっとしていても何も前には進まない… |
| アスベル | 洞窟の入口がわかりにくかった例もあるし…もう一度探してくる! |
| スパーダ | 心配で、いてもたってもいられねーか。まあ、それもそうだな |
| リタ | あたし達も他に入口がないか探してみましょ。要は合流出来ればいいんだから |
| ルーク | ま、ここで寒い中、何もしねーでじっとしてたって仕方ねーしな。やろうぜ、リオン |
| リオン | 僕に指図するな。お前に言われなくともそうしている |
| | |
| ミラ | …!…近いぞ |
| カノンノ | ネックレスの光も、ますます強くなったみたい |
| リッド | いよいよお出ましってわけか |
| | ヒュウウ… |
| カノンノ | …!冷たい風が… |
| リッド | この冷気…何だか妙な感覚だぜ。ゾクゾクするっていうか… |
| ミラ | セルシウスも私達の存在に気付いているようだな |
| リッド | 威嚇してるってわけか |
| ミラ | そんなところだろう。暴走して正気を失っているとはいえ本能で察知するのは可能な── |
| | ビュンッ! |
| カノンノ | …! |
| ミラ | カノンノ、危ない! |
| | ズバァァァッ!! |
| ミラ | うっ…! |
| カノンノ | ミラさん!? |
| リッド | 何だ、この氷の槍みてえなのは!?冗談じゃねえぜ!おい、ミラ大丈夫なのか!? |
| ミラ | 大丈夫だ…これくらいの傷、何ともない… |
| カノンノ | 嘘だよ。こんな深い傷…何ともないわけないじゃない!立ってる事さえ辛いんじゃ… |
| ミラ | …何ともない、大丈夫だ。心配するな… |
| カノンノ | でも…! |
| リッド | おい、向こうを見ろ! |
| カノンノ | あれは… |
| ??? | … |
| リッド | あいつがまさか、セルシウスか…? |
| ミラ | ああ、そうだ |
| カノンノ | だとしたら、この氷の槍も… |
| セルシウス | ウウウ… |
| リッド | …随分と怒ってるみてえだな。どっからどう見てもマトモに話は出来なさそうだ |
| ミラ | 暴走に飲み込まれているからな。…力ずくで大人しくさせるしか方法はあるまい |
| | |
| セルシウス | ガアアアアッ! |
| | ビュンッ! |
| ミラ | またさっきの攻撃か…!カノンノ、避けろ! |
| カノンノ | …!駄目、間に合わな── |
| | バシッ! |
| リッド | ふう…間一髪だな。カノンノ、大丈夫か? |
| カノンノ | う、うん…ありがとう。もう駄目かと思った… |
| ミラ | 何とか間に合ったか…。リッド、礼を言うぞ |
| リッド | 「連携」だろ?気にすんな。そんな事より… |
| リッド | おい、セルシウス!目を覚ましやがれ! |
| セルシウス | ウウウウウ…! |
| リッド | 呼びかけても無駄、か。だろうなあ。やっぱりミラが言うように、力ずくで大人しくさせるしかねえみてえだ |
| | チャキ… |
| リッド | 行くぞ、セルシウス。…これもお前のためだ、悪く思うなよ |
| ミラ | 待っていろ、今暴走から解放してやる… |
| セルシウス | ガアアアアッ!! |
| カノンノ | 来るよ!二人共気を付けて! |
| scene3 | 大精霊セルシウス |
| カノンノ | 本当に倒せた、の…?私達、本当に… |
| カノンノ | 信じられない… |
| リッド | ああ、…結構手間取ったけど何とかなったみてえだな |
| カノンノ | や、やった…! |
| ミラ | リッド、負傷しているようだが…大丈夫か? |
| リッド | この程度ならどうって事ねえよ |
| ミラ | そうか…ならよかった。お前が前に出て戦ってくれたお蔭だ。助かったよ |
| リッド | お前こそ、深手を負っているとは思えないくらいの動きだ。大したもんだぜ |
| リッド | それにカノンノ、お前も。よく頑張ってくれたな |
| カノンノ | 私なんてまだまだ…セルシウスを倒せたのは本当に二人のお蔭── |
| ミラ | う… |
| | |
| | ドサッ! |
| カノンノ | ミラさん!? |
| リッド | おいおい、大丈夫かよ…ってこいつはヤバイな。すぐに手当しねえと… |
| ミラ | …大丈夫だ。このくらいの傷、何とも… |
| カノンノ | お願い、動かないで…!押さえても血が噴き出しちゃう…! |
| ミラ | カノンノ、私の事は後回しでいい、それより早くセルシウスの元へ…。リプリカームを与えるのだ |
| ミラ | 枯渇状態にあるセルシウスのマナを補えば、暴走は鎮まり正気を取り戻すだろう |
| ミラ | …私達もこの状況だ、この機を逃せば、再びセルシウスを抑止する事は難しい… |
| カノンノ | でも… |
| リッド | カノンノ、頼む。ミラはオレが見てる。だから今の内にやってくれ |
| カノンノ | わかった。じゃあ… |
| セルシウス | グ…グァ… |
| カノンノ | …! |
| ミラ | リッド!まずい…セルシウスが…! |
| | |
| セルシウス | グオオオオオオオッ! |
| リッド | ちっ…させるかよ! |
| | ビュンッ! |
| カノンノ | …!?狙いは私じゃない…?まさか… |
| カノンノ | リッドさん、危ない!!氷の槍が…! |
| リッド | 何っ…!? |
| | ズバッ! |
| カノンノ | …っ! |
| ミラ | …っ! |
| リッド | ぐ… |
| カノンノ | …!ウソ…!リッドさん…!氷が…胸に…刺さってる…!? |
| カノンノ | そんな… |
| | ビュンッ!ビュンッ! |
| ミラ | カノンノ、危ない!離れろ! |
| リッド | 悪ぃ…カノンノ…逃げ…てくれ… |
| | ドサッ! |
| ミラ | リッド…! |
| カノンノ | そんな…嘘でしょ…?ねえ、リッドさん…リッド… |
| カノンノ | リッドーーッ!! |
| scene1 | 同じ想いを胸に |
| カノンノ | リッドさん…!もう少し頑張って、今そっちに── |
| ミラ | カノンノ、やめるんだ!気持ちはわかるが、今動くとセルシウスの標的になるぞ! |
| カノンノ | でも…リッドさんは…胸を押さえて…倒れてるのに…!早く手当て…手当てをしないと… |
| カノンノ | …死んじゃうよ…! |
| ミラ | 今は自分の事を考えるんだ!…リッドだってお前が傷付く事を望んではいない |
| カノンノ | でも… |
| セルシウス | ウウウ… |
| ミラ | セルシウス… |
| ミラ | リッドすまない…私の判断が間違っていた… |
| ミラ | アスベル達を信じて待つ事も出来たのだ…それを…… |
| セルシウス | ウウウウ…! |
| ミラ | カノンノ、私が隙を作る。その間に逃げろ |
| カノンノ | え? |
| ミラ | 私達には世界を救うために、大精霊の暴走を鎮めるという使命がある |
| ミラ | この使命を遂行する意志を持っていたのはリッドも同じ… |
| ミラ | リッドのためにも、ここでお前まで失うわけにはいかない |
| カノンノ | ミラさん… |
| カノンノ | 私もやる…例え二人でも、絶対にセルシウスの暴走を鎮めよう |
| ミラ | カノンノ…いいのだな? |
| カノンノ | …うん! |
| ミラ | …わかった。ありがとう、カノンノ。私の背中はお前に任せたぞ |
| ミラ | セルシウス!お前の暴走は必ず私達が鎮めてみせる! |
| セルシウス | シャアアッ! |
| scene2 | 同じ想いを胸に |
| カノンノ | はあ…はあ…セルシウス、いい加減目を覚まして! |
| セルシウス | シャアアッ! |
| ミラ | セルシウスが元の勢いを取り戻している… |
| ミラ | それにここは…。どうやら私達は戦いながらより動きやすい広い場所へ誘導されていたようだな |
| | ビュンッ! |
| カノンノ | …! |
| ミラ | くっ…!危ない、カノンノ! |
| | ドン! |
| | ザシュ! |
| ミラ | うぐっ…! |
| カノンノ | ミラさん…! |
| ミラ | 私の事は気にするな…それより、怪我はないか…? |
| カノンノ | ミラさんが庇ってくれたから私は大丈夫だけど、でも… |
| セルシウス | ウウウ…! |
| | ビュンッ! |
| カノンノ | っと…!危ない、もう少しで… |
| ミラ | ぐっ…! |
| カノンノ | ミラさん、大丈夫!? |
| ミラ | 無論だ…と言いたいところだが、さすがにこうも攻撃が続くといささか厳しい… |
| ミラ | こちらに攻撃を仕掛ける隙すら与えてくれそうにないからな |
| セルシウス | ガアアッ! |
| | ビュンッ! |
| | シャアアッ! |
| | ビュンッ! |
| ミラ | まずい…このままでは── |
| セルシウス | ガアアアアッ! |
| | ビュンッ! |
| | ザシュ! |
| カノンノ | うっ…! |
| ミラ | カノンノ! |
| セルシウス | ウオオオッ! |
| カノンノ | …! |
| | |
| | バシィッ! |
| | |
| カノンノ | … |
| カノンノ | …? |
| ミラ | セルシウスの動きが止まった…?これは一体… |
| | |
| セルシウス | ウ… |
| | |
| リッド | …もう終わりにしようぜ、セルシウス |
| | |
| カノンノ | …!その声は…まさか… |
| | |
| リッド | ああ、オレだ |
| ミラ | リッド!まさか、生きていたのか… |
| リッド | 当たり前だろ。勝手に殺すなよ |
| カノンノ | でも、胸に氷が刺さったのに…! |
| リッド | 胸?オレが食らったのは肩だよ。運がいい事に左肩、ときたもんだ。左腕はヤバそうだが、剣は振れそうだ |
| リッド | あの氷のせいで肩は痛えし、本当はあのまま昼寝してたかったけど寒くて寝てなんかいられねえよ |
| リッド | 昼寝の続きは、こいつをどうにかしてから、だな。…さ、やろうぜ |
| カノンノ | 昼寝って…もう…リッドさん…! |
| ミラ | ふっ、お前という奴は… |
| リッド | おい、ミラ、カノンノ。お前らもケガ、ひでえじゃねえか |
| カノンノ | 大丈夫だよ、このくらい! |
| ミラ | ああ、私も問題ない |
| リッド | そうは思えねえがな…まあ…やるしかねえよな |
| リッド | よし、これ以上体力を消耗する前に連携して一気に攻撃を畳みかける。いいな? |
| カノンノ | うん! |
| ミラ | ああ |
| リッド | それじゃ、もうひと踏ん張りといくか |
| リッド | 覚悟しろよ、セルシウス!今度こそケリをつけてやる |
| | |
| セルシウス | ウウウ…! |
| scene3 | 同じ想いを胸に |
| リッド | これで…どうだ! |
| | ズバーンッ!! |
| セルシウス | ウ… |
| | |
| | ドサッ |
| | |
| カノンノ | 今度こそ終わった…? |
| ミラ | ああ…大丈夫だろう |
| セルシウス | … |
| リッド | よし…今の内だ。カノンノ、リプリカームを |
| カノンノ | うん |
| ミラ | また突然暴れ出すかもしれん。警戒を怠るな |
| カノンノ | 大丈夫、わかってるよ |
| カノンノ | ネックレスが光り出した… |
| リッド | うっ…このまぶしい光は…っておいおい、光がセルシウスの身体に流れ込んで… |
| ミラ | セルシウスの枯渇したマナがどんどん回復している…。四大の時と同じだ |
| リッド | じゃあ、これでセルシウスの暴走は鎮まるってわけだな |
| ミラ | 実際にリプリカームを暴走した状態の大精霊に与えるのはこれが初めてだ |
| ミラ | ゆえに、まだ断言は出来んが、この様子ならおそらく問題ないだろう… |
| カノンノ | あ、光が収まった… |
| ミラ | む…!今、セルシウスが動いたぞ。気は抜くな |
| リッド | 頼むから、正気に戻ってくれよ…?さすがにもう一度やり合うのは勘弁だぜ |
| カノンノ | お願い…! |
| セルシウス | う… |
| セルシウス | ここは…?わたしは…何を…? |
| リッド | セルシウスが喋った…って事は…、暴走はちゃんと鎮められたのか? |
| ミラ | ああ、そのようだな |
| カノンノ | よかった…! |
| セルシウス | あなた達は…? |
| ミラ | 私はミラ=マクスウェル、隣の二人は、リッドとカノンノだ |
| ミラ | …セルシウス、お前はマナの枯渇により今まで暴走状態に陥っていたのだ |
| セルシウス | マナの枯渇…それに、暴走…? |
| セルシウス | まさか、そのような事になっていたなんて… |
| カノンノ | 何も知らない間に暴走に陥ってしまったんだね…。かわいそう… |
| セルシウス | ええ…最後に覚えているのは一瞬にして世界中のマナが減少していった事… |
| リッド | それが、お前達大精霊を暴走させたきっかけだったって事だろうな |
| セルシウス | とにかく、これ以上人に被害を及ぼす前にわたしを止めてくれた事…本当に感謝するわ |
| ミラ | 礼ならカノンノに言うといい。お前の暴走を鎮める作用をしたのは、彼女のリプリカームという力だ |
| セルシウス | リプリカーム…? |
| カノンノ | このネックレスから溢れ出る力の事だよ。あなた達精霊にマナを与えて癒す事が出来るんだって |
| セルシウス | そんな力が存在するなんて、初めて知ったわ |
| ミラ | …やはり、お前も知らないのか。精霊にまつわる力だ、誰かが知っていてもおかしくないはずなんだが… |
| セルシウス | とにかく、本当にありがとう。カノンノ、リッド、ミラ… |
| カノンノ | ううん、いいんだよ。役に立てたなら私も嬉しい |
| セルシウス | それにしても…わたしは取り返しのつかない事をしてしまったのね… |
| ミラ | 湖畔の辺りで氷漬けになっていた人々の事か… |
| カノンノ | セルシウスの力なんだよね?氷を溶かせば、助かるんじゃないの? |
| セルシウス | …いいえ。わたしの力は自然の力と同じもの… |
| セルシウス | 氷漬けになった人は助からないでしょう…。…ごめんなさい… |
| リッド | 雪山で遭難したのと同じって事か… |
| セルシウス | …本当にごめんなさい。暴走していたとはいえ、誰かを傷付けるつもりなどなかったのに… |
| ミラ | お前が悪いわけではない。悪いのはこの状況を裏で煽ってる奴だ |
| リッド | それに、オレ達人間のせいでもある。まんまとそいつの企てに乗せられて魔導器を使っちまったんだから |
| カノンノ | そうだよね… |
| ミラ | …とにかく、これでセルシウスは正気を取り戻した。湖周辺の危機は一旦去ったと捉えていいだろう |
| ミラ | だが、これで終わりではない。セルシウスの他にも、世界の各地で暴走状態に陥っている大精霊がいる |
| セルシウス | … |
| リッド | そうだな。のんびりしてられねえ。早いとこ、ここから外へ出ないとな。アスベル達も待ってる事だろうし |
| カノンノ | セルシウス、この氷山から出られるよう、力を貸してくれる? |
| セルシウス | ええ、勿論。その前に── |
| セルシウス | わたしもあなた達の目的に協力させて |
| セルシウス | 暴走していたとはいえ、多くの人間達を傷付けた事に変わりはない。…その償いをしたいの |
| セルシウス | それに、今も尚、わたしと同じように暴走し苦しんでいる仲間がいる…。放っておけないわ |
| カノンノ | セルシウス…。あなたの気持ちはわかる、勿論、断る理由なんてないよ |
| リッド | こんだけ強いセルシウスが力を貸してくれるっていうならむしろ、ありがてえ話だと── |
| ミラ | …!これは… |
| カノンノ | ネックレスが光って…──でも、何だろうこれ…?何だか今までとは様子が… |
| セルシウス | …カノンノの意志にネックレスが共鳴している |
| リッド | 共鳴…?それは一体どういう事だ? |
| セルシウス | …どうやら、そのネックレスはわたしとあなたを結ぶ、契約の証となってくれるみたい |
| ミラ | 契約…確かクラースが話していたな。精霊を喚び出すには契約を交わす必要があると… |
| セルシウス | ええ、人間と精霊が共にあろうとすると「契約」が必要となる |
| セルシウス | その契約に必要不可欠となるのが契約の証 |
| セルシウス | カノンノ、そしてそのネックレス。…これが、あなたの「役割」なのかも知れないわね |
| カノンノ | まさか、そんな事が… |
| リッド | カノンノの意志に共鳴してるって事は契約はカノンノにしか出来ない、そういう事だよな? |
| ミラ | リプリカームの事も踏まえると、そう考えるべきだろうな。…ますます不思議な代物だ |
| リッド | …まさか、リプリカームだけじゃなくそんな役割まで果たしちまうとか、すげえな… |
| セルシウス | …カノンノ、もう一度聞かせて。あなたとの契約のために… |
| セルシウス | このわたしを…人を殺してしまったわたしを…受け入れてくれる…? |
| セルシウス | もしあなたや、あなたの仲間達がわたしを受け入れてくれるのならば… |
| セルシウス | そのネックレスをわたしに向かって、掲げて… |
| カノンノ | …うん、わかった。やってみるね。みんな…いいよね? |
| リッド・ミラ | ああ、勿論だ |
| カノンノ | セルシウス…私達に力を貸して──… |
| リッド | おい、セルシウスはどこだ?消えちまったのか…? |
| カノンノ | …ううん、ここにいるよ |
| リッド | な、ネックレスの色が変わった…!?まさか、この中に? |
| カノンノ | そうみたい。セルシウスみたいなきれいな色になったね |
| ミラ | 契約は成功した、という事か。…セルシウスか、とても心強い味方が出来たな |
| リッド | ま、とにかくこれでカタは付いた事だし外へ出ようぜ。あいつらも待ってんだろ |
| ミラ | ああ、そうだな |
| | |
| ルーク | ──駄目だ。どーにもなんねー! |
| アスベル | くっ…こうしている間にもカノンノ達は…。何か手はないのか…? |
| リオン | 精霊に詳しいクラースやリヒターがいれば、何かいい手を思い付いたかもしれんが… |
| | ビシッ! |
| リタ | …!ねえ、ちょっとあれを見て!氷山が… |
| | ビシッ!ビシビシビシッ! |
| スパーダ | な、何だ?すげえ勢いでヒビが…まさか崩れちまうんじゃ…! |
| | ドカッ!スザ…ガラガラガラッ! |
| | |
| ルーク | なっ、氷が砕けて穴が… |
| ミラ | ようやく外に出られたようだな。リッド、長らく肩を借りてすまなかったな |
| リッド | 別に構わねえ、こっちの肩は無傷だ。やれやれ、出るのも一苦労だったな。カノンノ、お前も怪我は大丈夫か? |
| カノンノ | うん、私は大丈夫だよ。二人こそ早く手当しなくちゃ |
| | |
| アスベル | カノンノ!リッド!ミラ! |
| リタ | 無事だったのね! |
| リオン | …こいつらのどこが「無事」なんだ。どう見ても「無事」には見えん |
| スパーダ | 中で何があった?まさかセルシウスと戦ったのか? |
| ミラ | ああ、何とかセルシウスの暴走を鎮める事に成功した。更には私達に力を貸してくれると… |
| アスベル | セルシウスが…?それは一体どういう事だ? |
| ミラ | 世界を救いたいという想いは人間も精霊も同じ、という事だ |
| リタ | それにしてもあんた達、本当に三人だけでやってのけたっていうの? |
| リッド | …他に誰がいんだよ。まあ、苦労したのは確かだけどな… |
| アスベル | そうか…協力出来なくてすまなかった |
| カノンノ | 謝らないで。あの状況じゃ、仕方なかったよ |
| ルーク | ま、とにかく結果オーライって事でいーんじゃねーの? |
| ルーク | じゃ、リンネル村に戻ろうぜ。メルディ達にも、避難する必要はねーって伝えなきゃなんねーし |
| リタ | それにリッド達もちゃんと手当した方がいいんじゃないの?ボロボロよあんた達。早いとこ── |
| リオン | 待て。その前に確認しておきたい。氷漬けになった人間は、元に戻るのか? |
| カノンノ | それは… |
| ミラ | …残念ながら無理だ。湖の氷はいずれ自然に元に戻るが、…命は救えない |
| ミラ | すまない… |
| リオン | くっ… |
| ミラ | リオン、聞いてほしい |
| ミラ | ここで起きた現象は、ルイニス街とは別だ。お前の街で起きた現象に精霊は干渉していない |
| ミラ | ルイニス街の氷の原因がわからない以上断言は出来ないが、街の人々を救える可能性はある。だから── |
| リオン | …わかっている |
| リッド | リオン…。氷が溶けたら、せめて丁寧に弔ってもらえるといいな… |
| スパーダ | ああ、そうだな。ガイアス陛下にはオレが責任を持って伝えて、頼んでおくよ |
| ミラ | ありがとう、スパーダ |
| カノンノ | あ、ネックレスが…セルシウスが何か言ってるの…? |
| ミラ | …すまない、そう言っている。ひどく心を痛めているようだ |
| リオン | … |
| ミラ | ニブル湖で失った命は、決して忘れない…これからの行動で償っていきたい──だそうだ |
| アスベル | …そうか… |
| リッド | …うぐっ…! |
| カノンノ | リッドさん!?みんな、お願い。リンネル村でリッドさんとミラさんを休ませてあげて!ひどいケガなの…! |
| スパーダ | ったく、喋ってる場合じゃねェだろ!お前らホントにボロボロじゃねーか!…おら、オレに掴まれよ! |
| アスベル | 俺も手伝う。みんな、急いでリンネル村へ向かおう! |