| Name | Dialogue |
| | 向けられた刃 |
| ヒューバート | どうして兄さんが… |
| アスベル | …… |
| ヒューバート | 入り口の警備を襲ったというのは、本当なんですか? |
| アスベル | …… |
| ヒューバート | 黙っていないで、何か言ってください! |
| | チャキッ |
| ヒューバート | …! |
| アスベル | そこをどいてくれ、ヒューバート。今はお前と話してる時間がないんだ |
| ヒューバート | 何を馬鹿な事を…!今すぐ剣を下ろしてください |
| ヒューバート | 自分が何をしているのか、わかっているんですか!? |
| アスベル | ああ。俺にはどうしてもやらなければいけない事があるんだ |
| アスベル | 邪魔をするつもりならたとえお前でも容赦はしない |
| ヒューバート | 兄さん… |
| 保管庫の警備1 | 行か…せるな…!そいつは、マナリスを持ち去るつもりだ…! |
| ヒューバート | な… |
| ヒューバート | 本当に、兄さんがマナリスを…? |
| アスベル | だとしたら、どうするんだ? |
| ヒューバート | …マナリスは返してもらいます。このまま兄さんを行かせるわけにはいきません |
| アスベル | そうか。──なら、仕方ないな |
| アスベル | はあっ! |
| | キィィンッ! |
| ヒューバート | くっ…! |
| | カシーン! |
| ヒューバート | やめてください、兄さん!この保管庫にある物は全て、四大国が協同で管理しています |
| ヒューバート | 保管庫からマナリスを奪取すれば、兄さんは犯罪者として世界中から追われる事になるんですよ!? |
| アスベル | ああ、わかってるさ。覚悟は出来てる |
| ヒューバート | 兄さん…! |
| アスベル | 話は終わりだ、ヒューバート。そこを通してもらうぞ! |
| | ヒュッ…キィンッ! |
| ヒューバート | っ…ぐっ… |
| | キィインッ!ガキィンッ! |
| アスベル | 剣に迷いがあるな |
| ヒューバート | …っ! |
| アスベル | 心を乱したその一瞬が、命取りになるぞ |
| | ガキィィィン… |
| ヒューバート | くうっ! |
| アスベル | 勝負は見えたな。さあ道を開けてくれ |
| ヒューバート | はぁ…はぁ…それは出来ないと先ほども言ったはずです |
| アスベル | …そうか。悪いが、俺も引くわけにはいかない |
| | チャキッ |
| ヒューバート | 本気、なんですね… |
| ヒューバート | 弟として、兄さんがしようとしている愚行を見逃すわけにはいきません |
| | チャキンッ! |
| ヒューバート | ここであなたを止める。それが、ぼくの役目です |
| アスベル | 心に迷いがある内は、俺には勝てない |
| アスベル | これで終わりだ!はああぁぁ!! |
| | |
| ヒューバート | つっ──…! |
| | |
| アイゼン | ようやくここまで戻って来たな |
| パスカル | すっかり暗くなっちゃったね~!ひとまず、早く本部に戻って── |
| | ザッザッザ── |
| アイゼン | あれは…調査隊か?随分物々しいな |
| パスカル | …ん?先頭を歩いてる人って、もしかして… |
| エレノア | …… |
| パスカル | エレノアだ!ここで何してるんだろ…? |
| パスカル | 行ってみよう、アイゼン! |
| アイゼン | おい、待──…聞いてないな |
| アイゼン | …… |
| パスカル | お─い、エレノア─! |
| エレノア | あなた達は…!調査から戻って来たんですか? |
| パスカル | うん!今から本部に向かうところだよ! |
| アイゼン | お前は何故ここにいるんだ。砂漠地帯でマナリスの探索を進めていたんじゃなかったのか? |
| エレノア | それは… |
| ジェイ | 詳しい事情は、ぼくからお話ししますよ |
| パスカル | ジェイ! |
| ジェイ | どうも |
| ジェイ | エレノアさんは先に行ってください。今はゆっくり話してる場合じゃないでしょう |
| エレノア | …そうですね |
| エレノア | アイゼン、パスカル。すみませんが、私は先を急ぎます |
| エレノア | 話はジェイに聞いてください。──それでは |
| アイゼン | …何があった? |
| ジェイ | 実は── |
| アイゼン | 砂漠地帯での襲撃に、森での戦闘か… |
| ジェイ | ええ。襲撃犯は調査隊に対して何らかの悪意を抱いているようです |
| ジェイ | エレノアさんの話では、四大国連合調査隊の掲げる平和が綺麗事だと言っていたそうですから |
| アイゼン | …… |
| パスカル | あたし達が知らないところで、大変な事が起こってたんだね |
| アイゼン | ──ひとつ、気になる事がある |
| アイゼン | 四大国連合調査隊を襲った奴らとエメロードを追いかけていた男達は仲間だと言ったな? |
| ジェイ | ええ、そう聞いています |
| アイゼン | そうなると、敵はエメロードに何らかの利用価値を見出していた事になる |
| ジェイ | そうでしょうね。彼女は古代アヴァロン島の住人で知識も豊富ですから |
| ジェイ | 敵の目的が何であれ彼女から得られるものは多いでしょう |
| アイゼン | だが、エメロードがアヴァロン島の住人だという情報は、調査隊でも一部の人間しか知らないはずだ |
| ジェイ | …おそらく、どこからか情報が漏れているんでしょう |
| ジェイ | 男達は、調査隊に支給されている通信機の事も知っていたようですから |
| パスカル | 調査隊に内通者がいるって事…?そうなると、こっちも慎重に動かないといけないね |
| ジェイ | 本部は救援に向かう隊員を編成しエレノアさんに指揮を任せました |
| ジェイ | ぼくもこれから、捜索に加わる事になっています |
| パスカル | そっか。引き留めてごめんね |
| パスカル | あたし達も、本部への報告が済んだら許可をとってすぐに追いかけるよ! |
| アイゼン | そうだな。敵の数が把握出来ていない以上こちらも数を揃えた方がいい |
| ジェイ | わかりました。どこに敵の仲間が潜んでいるかもわからないのでくれぐれも気を付けてください |
| パスカル | ジェイもね! |
| ジェイ | ぼくは心配いりませんよ。気を抜いたりしませんから |
| ジェイ | それでは、また |
| アイゼン | 本部へ急ぐぞ。事態は一刻を争う |
| パスカル | うん、行こう! |
| scene1 | 平和への亀裂 |
| パスカル | ──それにしても四大国連合調査隊を襲った人達の目的って何だったんだろう? |
| アイゼン | わからん。だが、平和を願う人間がいる一方で戦いを望む人間がいる事も確かだ |
| アイゼン | 平和は綺麗事にすぎない。その言葉から察するに… |
| アイゼン | 襲って来た奴らは、四大国が歩もうとしている平和協調の道を疎ましく思っているんだろうな |
| パスカル | なるほどね。だから、各国の結束を示す四大国連合調査隊を狙って… |
| | ガタッ── |
| パスカル | …ん? |
| パスカル | 今、何か音がしなかった? |
| アイゼン | ああ。保管庫の方からだ |
| アイゼン | …嫌な予感がする。中に入るぞ |
| パスカル | うん |
| | |
| パスカル | …!この人達って… |
| 保管庫の警備達 | …… |
| アイゼン | 保管庫の警備だな。…気絶しているようだ |
| アイゼン | もう一人、そこに誰かいるぞ |
| ヒューバート | う… |
| パスカル | 弟くん…!? |
| ヒューバート | パスカル…さん…? |
| パスカル | うん、そうだよ |
| ヒューバート | …くっ |
| パスカル | …!無理に立とうとしちゃ駄目だよ…! |
| パスカル | ほら、掴まって? |
| ヒューバート | ありがとうございます… |
| パスカル | 弟くん、怪我してるね…。大丈夫? |
| ヒューバート | 心配はいりません。こんな傷、大した事ありませんよ |
| パスカル | そっか…なら、よかった!一体何があったの? |
| ヒューバート | それは… |
| アイゼン | ──保管されていたマナリスが全部なくなってやがる |
| パスカル | えっ!? |
| ヒューバート | …… |
| アイゼン | ここで何があったかは、大体想像がつく |
| アイゼン | 誰が、マナリスを持ち去ったんだ |
| ヒューバート | …兄さんです |
| パスカル | アスベルが…? |
| ヒューバート | はい。保管庫の外に出ようとした兄さんを制止したら、剣を向けてきて |
| パスカル | でも、アスベルは襲われたエメロードを守るために森に残ったはずじゃ… |
| ヒューバート | …?何の話ですか |
| アイゼン | ここに来る前に、エレノアに会った。あいつから事情をきいたジェイの話によれば── |
| | |
| ヒューバート | 兄さん達が襲撃に…。そんな事があったんですね |
| パスカル | アスベルはエメロードが人質に取られて、仕方なくマナリスを持ち去ったんじゃない? |
| ヒューバート | いえ…兄さんに脅されているような様子はありませんでした |
| ヒューバート | 兄さん以外に怪しい人物もいませんでしたし |
| パスカル | そんな…。アスベルが自分の意志で弟くんを傷付けるなんて、信じられないよ |
| アイゼン | 他に何か気付いた事はないか?些細な事でも構わん |
| ヒューバート | そうですね…。兄さんは見た事のない黒い服を着ていました |
| ヒューバート | それから… |
| ヒューバート | …!そう言えば、去り際に妙な事を言っていました |
| パスカル | 妙な事…? |
| ヒューバート | はい。何か思い詰めたような顔で… |
| | |
| アスベル | お前の負けだ、ヒューバート。もう諦めろ |
| ヒューバート | 兄さん…!待って…ください… |
| ヒューバート | どうして…。──どうして、こんな事を…! |
| アスベル | …四大国が手を取り合うなんて、無理だったんだ |
| | |
| パスカル | それって… |
| アイゼン | 四大国連合調査隊を襲った男達と、同じ思想だな |
| ヒューバート | あんな事を口にするなんて…。兄さんの顔をしていましたが、別人のようでした |
| ヒューバート | 四大国が平和協調の道を歩むと決めた時、兄さんは本当に喜んでいましたから |
| パスカル | …… |
| アイゼン | どちらにせよマナリスを奪われた以上、お前の兄を野放しにはしておけない |
| ヒューバート | …わかっています。調査隊の上層部に、マナリスが奪取されたと伝えましょう |
| パスカル | …! |
| パスカル | それって、アスベルが追われる立場になるって事だよね…? |
| ヒューバート | 兄さんが何のためにマナリスを持ち去ったのか、知る必要があります |
| ヒューバート | 今は手段を選んでいる場合じゃない。詳しい話は、兄さんの口から話してもらいましょう |
| パスカル | …それもそうだね。あたし達も一緒に行くよ! |
| ヒューバート | わかりました。では、ここを出ましょう |
| アイゼン | そうだな |
| scene2 | 平和への亀裂 |
| ヒューバート | 一先ず会議室の方へ向かいます。あそこなら、上層部の人間がいるはず── |
| ??? | あれ…? |
| ルカ | パスカル!アイゼン! |
| パスカル | ルカ!それに、みんなも…! |
| アイゼン | 調査から戻って来ていたのか |
| アリーシャ | ああ、先ほど着いたばかりだ。パスカル、君の隣にいる彼は…? |
| パスカル | 弟くんだよ! |
| ヒューバート | …だから、前も言ったでしょう。ぼくは弟くんじゃなくてヒューバートです |
| ロイド | ヒューバートは誰かの兄弟なのか? |
| パスカル | うん、アスベルの弟だよ。だから弟くんなんだ~ |
| スパーダ | そういえば、アスベルが弟も調査隊にいるって言ってたな |
| アリーシャ | それにしても…随分急いでいる様子だったが、何かあったのか? |
| アイゼン | …保管庫にあったマナリスが全て奪われた |
| ルーク | はあ!?どういう事だよ |
| ヒューバート | …兄さんが、警備を襲ってマナリスを奪取しました |
| ロイド | アスベルが!? |
| アリーシャ | そんな…。何かの間違いじゃないのか |
| ヒューバート | …残念ながら、事実です。ぼく自身が、保管庫を襲った兄さんと剣を交えましたから |
| スパーダ | けどよ、アスベルはエレノアと俺達を襲った賊の一人を連れて本部に向かったはずだぜ |
| ルーク | そうだ!なのに、何で一人で行動してるんだよ!? |
| アイゼン | その話だが── |
| アリーシャ | エレノア達は本部に向かう途中で襲われたのか… |
| ルカ | エメロードさん、大丈夫かな… |
| スパーダ | とにかく、アスベルを捜して話を聞こうぜ |
| スパーダ | あいつが何の事情もなくマナリスを持ち去るとは思えねえからな |
| ロイド | ああ、そうだな!今から手分けして── |
| 本部の男1 | ──今の話は本当ですか? |
| 本部の男1 | アスベル・ラントがマナリスを持ち去ったというのは |
| アリーシャ | …!あなた方は── |
| | |
| ヒューバート | 彼らは確か…本部に所属しているシルヴァラントの貴族ですね |
| パスカル | うん、アリーシャの知り合いなんだって |
| 本部の男2 | ウィンドルの騎士が私利私欲のために調査隊の所有物に手を出した…これは、由々しき事態ですな |
| アリーシャ | 待ってください…!アスベル本人に事情を聞くまでそうと決めつけるのは早計で── |
| 本部の男1 | 殿下が仲間を庇いたい気持ちはわかりますが、アスベル・ラントがマナリスを奪った事実は変わりません |
| アリーシャ | …… |
| 本部の男2 | 大方、あの騎士は我々の味方を装って裏では調査隊を裏切る行動を取っていたのでしょう |
| 本部の男2 | マナリスを奪取するために、周到な計画を立てていたに違いない |
| スパーダ | 待てよ。俺達が砂漠地帯で賊に襲われた時、アスベルも一緒にいたぜ |
| スパーダ | たまたま賊の一人を捕えたから、アスベルとエレノアが本部に戻る事になったんだ |
| スパーダ | アスベルが本部に戻ったのは、計画的な行動じゃなかった。そうだよな?ルーク |
| ルーク | ああ!賊に襲われなかったら、アスベルは俺達と調査を続けてたはずだ! |
| 本部の男1 | それこそが、彼の計画だったのでは? |
| スパーダ | ああ? |
| 本部の男1 | 今、調査隊は魔物の討伐に人員を割かれていて本部の警備が手薄になっているんですよ |
| 本部の男2 | 好機を得た彼は、裏で賊を操ってあなた方を襲わせ、あえて捕えた。…本部に戻る理由を得るために |
| ルカ | そんな…! |
| アリーシャ | 本部に戻ったのはアスベルだけではありません。エレノアも同行しています! |
| 本部の男1 | ふむ…だからこそ、彼女を引きはがすために再び賊を動かしたのでは? |
| 本部の男1 | 一人で保管庫に向かい、マナリスを奪うために |
| ロイド | そんなの、ただの推測だろ!アスベルにはきっと何か事情があったはずだ! |
| 本部の男2 | 事情、ですか…。あなたの話も憶測にすぎないのでは? |
| ロイド | …… |
| パスカル | …あの人達、何が何でもアスベルを悪者にしたいみたいだね |
| アイゼン | そのようだな |
| 本部の男1 | どちらにせよ、この話は我々だけの問題ではありません |
| 本部の男1 | 至急会議室へ出向き各国の代表に意見を仰がなければ |
| アリーシャ | …わかりました。このまま会議室へ向かいましょう |
| アリーシャ | ヒューバート。君も一緒に来てもらえるだろうか |
| アリーシャ | 保管庫で起こった事を詳しく話してほしい |
| ヒューバート | 勿論です。ぼくも今から、そこへ向かおうと思っていましたから |
| スパーダ | 俺達も行くぜ。アスベルは、四大国連合調査隊の一員だからな |
| アリーシャ | ああ、そうだな |
| パスカル | それじゃ、あたし達も… |
| アリーシャ | …パスカル達は、宿舎で待っていてくれないか |
| ロイド | 何でだよ!?俺達も一緒に… |
| アリーシャ | この先は国同士の話し合いになる。私達全員が会議に参加する事は認められないだろう |
| アリーシャ | 一旦、私に任せてくれないか。会議の内容は、必ず後で話す |
| ロイド | …わかった。頼んだぜ、アリーシャ |
| アリーシャ | ああ |
| 本部の男1 | 話は纏まりましたか?では、アスベル・ラントの犯行を報告しに行きましょう |
| 本部の男2 | あなた方がどれだけ庇っても彼の罪は軽くならないでしょうがね |
| アリーシャ | …… |
| scene1 | 軌跡を辿って |
| ローエン | ──アスベルさんは単独で保管庫に侵入し、マナリスを奪取した |
| ローエン | これが、昨夜保管庫で起こった事件の概要です |
| エレノア | そんな…にわかには信じられません |
| ジェイド | 残念ながら、今の話は事実です。保管庫で襲われた警備達から証言を得ていますので |
| ジェイド | まさか、こうも容易くマナリスを奪われるとは…警備の見直しが必要ですねぇ |
| エレノア | …… |
| ローエン | エレノアさんは先ほど招集命令を受けて本部に戻られたばかりです。驚かれるのも無理はありません |
| ローエン | お気持ちはお察ししますが、今は事態を打開するためにあなたの力を貸していただきたい |
| エレノア | …わかりました。私に出来る事があるなら、全力を尽くします |
| ローエン | ありがとうございます。では、会議を続けましょうか |
| クラトス | アスベルの捜索はどうなっている |
| フレン | 捜索隊が追跡を試みていますが、依然として居場所は掴めていません |
| ローエン | 目撃情報さえ得られないとなると、あらかじめ逃走経路を確保していた可能性が高いですね |
| スパーダ | レーダーでマナリスの反応を追えないのか? |
| ジェイド | それが出来れば苦労はしていませんよ |
| クラトス | 捜索隊から、マナリスの波動がレーダーで探知出来ないと聞いている |
| ルーク | それなら、波動が遮られそうな場所を捜せばいいんじゃねーか?俺達が行った山の中みたいにさ |
| ジェイド | 既に指示は出していますが、今のところよい報告はありませんね |
| アリーシャ | …… |
| 本部の男1 | これではっきりしたな。奴は周到な計画を立てた上でマナリスを強奪した |
| 本部の男1 | エレノアを逃がしたのも、本部の目を欺くための策だったに違いない |
| エレノア | まさか…!そんなはずはありません! |
| スパーダ | 否定しても無駄だぜ。あいつらの中じゃ、そういう筋書きになってるみてェだからよ |
| スパーダ | 砂漠地帯で俺達を襲った奴らもアスベルが差し向けたって言い張ってるくらいだ |
| エレノア | どうして…そんな… |
| アリーシャ | 私達も否定はしているが…アスベル本人に真意を確かめない限り話し合いは平行線のままだろう |
| エレノア | …すみません。私が森に留まっていれば、こんな事には… |
| ルーク | 何でエレノアが謝るんだよ。おまえは悪くねぇだろ |
| エレノア | ルーク… |
| 本部の男1 | ルーク様の仰る通りです。諸悪の根源はウィンドルのアスベル・ラントだ |
| ルーク | な…!誰もそんな事言ってねえだろーがっ! |
| ルーク | あいつは…アスベルは何か事情があってマナリスを持ち出したんだ! |
| 本部の男1 | 全く…アリーシャ殿下といいルーク様といい、個人的な見解を述べられては困ります |
| 本部の男2 | どんな理由があろうとも保管庫を襲撃し、マナリスを強奪した彼の行いは重罪だ |
| 本部の男2 | ウィンドルの騎士が、四大国の所有物に手を出した…これは、国際的な問題ですよ |
| フレン | …… |
| クラトス | 今は、アスベルの罪状を議論している場合ではない |
| ジェイド | そうですね。何よりもまず優先するべきなのはマナリスの回収ではありませんか? |
| 本部の男1 | …であれば、調査隊の総力を挙げてアスベル・ラントを捕縛し、マナリスを奪還すればいい |
| 本部の男2 | すぐに他の隊を出動させろ。マナリスさえ無事ならば、どんな攻撃も許可する |
| 本部の男2 | 手加減は無用だ。徹底的に追い詰めろ! |
| エレノア | な…。マナリスを回収出来れば、アスベルはどうなってもいいと言うのですか!? |
| 本部の男1 | 何か問題があるのか?あの男は調査隊の反逆者だろう |
| ヒューバート | …… |
| クラトス | 調査隊の指揮は、四大国の代表者に一任されている |
| クラトス | 隊員に指示を出すのは我々の役目だ。勝手に行動されては困るな |
| 本部の男1 | そ、それは… |
| クラトス | これ以上は会議の妨げになる。退室願おうか |
| 本部の男2 | なっ…!貴様、何の権限を持って… |
| ジェイド | おや、おかしいですね。会議における決定権は、我々に委ねられているはずですが |
| 本部の男2 | く… |
| クラトス | 私が彼らを連れて出る。後の事は頼めるか |
| フレン | はい、わかりました |
| ローエン | …これで、落ち着いて話が出来そうですね |
| ジェイド | かなり強引な方法でしたが…まあ、クラトスなら上手くやってくれるでしょう |
| ルーク | けっ、清々するぜ。あいつら、アスベルの事を悪く言いやがって |
| ローエン | ──さて、今一度みなさんにお聞きしたい事があります |
| ローエン | アスベルさんは何か事情があってマナリスを持ち去ったと思いますか? |
| スパーダ | ああ。あいつは、理由もなく平和を壊すような真似はしないと思うぜ |
| アリーシャ | …私も同意見です。現段階でアスベルを反逆者と決めつけるのは、早計かと |
| ローエン | ふむ…であれば、真相がわかるまで事を大きくするのは避けた方がよさそうですね |
| ジェイド | 同感です。マナリス強奪の件は、一旦伏せておく事にしましょう |
| ジェイド | 真相はどうであれ、今、この件を広めても余計な混乱を招くだけです |
| ローエン | では次に…フレンさん。あなたの意見を伺ってもよろしいですか? |
| フレン | …私は、アスベルが国やリチャード陛下を裏切って私利私欲に走る人間ではないと思っています |
| フレン | しかし、どんな理由があったとしても彼が起こした事は許されるものではない |
| フレン | このままでは、四大国の関係に亀裂が生じてしまう… |
| フレン | 今は一刻も早く事態の解決に動かなければいけません |
| ジェイド | そうですね。捜索の指揮は私が取りましょう |
| ジェイド | アリーシャ隊と四大国連合調査隊にも捜索に加わっていただきますよ |
| アリーシャ | …!我々でよろしいのですか? |
| ジェイド | 今は、猫の手も借りたい状況ですから |
| アリーシャ | わかりました。必ず、任務を遂行します |
| ヒューバート | …ぼくも、兄の捜索に同行させてください |
| フレン | それは構わないが…。場合によってはアスベルと戦う事も覚悟しなければいけないんだぞ |
| ヒューバート | 承知の上です。もしまた戦う事になっても次は負けません |
| フレン | …わかった。同行を認めよう |
| ヒューバート | ありがとうございます |
| ジェイド | 話は纏まったようですね。それでは準備が出来次第、出発してください |
| アリーシャ | 承知致しました |
| フレン | みんな…アスベルの事を頼んだよ |
| スパーダ | ああ、任せとけって |
| | |
| ロイド | ──そっか。つまり、俺達でアスベルを見つけて、マナリスを取り戻せばいいって事だよな? |
| アリーシャ | ああ。捜索には四大国連合調査隊とヒューバートも同行する |
| パスカル | 弟くんも一緒に行くんだね。やっぱお兄ちゃんの事心配? |
| ヒューバート | …兄さんにもしもの事があったら、悲しむ人がいますから |
| パスカル | 弟くんは、ホントお兄ちゃんっ子だよね |
| ヒューバート | 子ども扱いしないでください |
| パスカル | はいは~い。そんじゃ、早速アスベルを捜さないとね! |
| パスカル | マナリスの反応を追えばアスベルにたどり着けるかな? |
| アリーシャ | その件だが…クラトス殿の話ではマナリスの波動が探知出来ないそうだ |
| ルカ | そっか…。そうなると、捜索が難しくなるね |
| パスカル | 大丈夫!こんな事もあろうかと… |
| パスカル | じゃじゃーん!レーダーを改良しておいたんだよね! |
| ルーク | あー…、そういや前に移動経路が記録出来るようにしたとか言ってたな |
| パスカル | そうそう!新しい機能を使えばマナリスの波動が途切れた場所が割り出せるんだよ! |
| スパーダ | そりゃ、すげェな。早速使ってみようぜ |
| パスカル | おっけー! |
| | ポチッ…! |
| パスカル | ここが、最後にマナリスの反応が探知された場所だよ! |
| アイゼン | ──森の遺跡の近くか |
| ロイド | これでアスベルを捜せるな! |
| ヒューバート | 時間が経てば経つほど追うのが難しくなります。急ぎましょう |
| ルカ | うん、そうだね |
| scene2 | 軌跡を辿って |
| エドナ | …… |
| 謎の男1 | おい、止まれ |
| エドナ | …… |
| | ガサガサッ |
| 謎の男2 | …本当にこいつで間違いないのか? |
| 謎の男1 | ああ、装置が反応してる |
| エドナ | そこ、どいてくれない?邪魔なんだけど |
| 謎の男2 | まあ、そう言うなよ。お前に話がある |
| エドナ | ワタシにはないわ。女の子一人に寄ってたかってどういうつもり? |
| 謎の男1 | 天族であるお前の力を借りたい |
| エドナ | …! |
| エドナ | どうしてそれを… |
| 謎の男2 | おっと、抵抗はするなよ。怪我したくなかったらな! |
| エドナ | はぁ…面倒ね |
| エドナ | ──エアプレッシャー! |
| 謎の男たち | ぐ…っ!? |
| 謎の男3 | 気を付けろ!こいつ、ただのガキじゃねぇ! |
| エドナ | 人を見た目で判断すると痛い目見るわよ |
| エドナ | 何が目的か知らないしわかりたくもないけど |
| | ブンッ! |
| エドナ | これ以上やるつもりなら手加減しないわ |
| 謎の男4 | くそっ!あれを使え! |
| 謎の男1 | ああ…! |
| 謎の男1 | ──はああ! |
| エドナ | うっ──…! |
| | ドサッ── |
| 謎の男1 | やっと倒れたか… |
| 謎の男2 | 手間取らせやがって…。さっさとこいつを運んで── |
| 謎の男1 | くっ!!何の光だ…!? |
| 謎の男3 | 傘についてるマスコットが光ってるぞ…! |
| ??? | 盟約の──そして、制裁の時は来たれり! |
| 謎の男2 | 何だこいつは…!? |
| フェニックス | ふっ…冥土の土産に覚えておくがいい。我が名は── |
| 謎の男1 | かかれ! |
| フェニックス | 何…!?名乗り終わる前に攻撃を仕掛けてくるなど、鬼畜の所業! |
| フェニックス | ──ふんっ! |
| 謎の男2 | ぐああ!? |
| 謎の男3 | な、何て力だ… |
| フェニックス | ふ…汝等ごときに引けを取る我ではないわ! |
| 謎の男4 | この…! |
| | ピョーン |
| フェニックス | はあっ! |
| 謎の男4 | ぐふっ! |
| フェニックス | ふん、脆弱な奴らめ |
| 謎の男1 | 調子にのるなよ…! |
| フェニックス | な…!うご…けぬ… |
| 謎の男1 | そこでじっとしてろ |
| フェニックス | 卑怯な…! |
| | ザッ…ザッ… |
| フェニックス | やめろ!その娘に…エドナに触れるな! |
| 謎の男3 | 諦めろよ、マスコット。装置がある限り、お前は動く事すら出来ねぇんだからな |
| フェニックス | く…! |
| 謎の男2 | さぁ、一緒に来てもらうぜ天族サンよ |
| エドナ | … |
| scene1 | 蝕む黒夢 |
| アスベル | …… |
| | |
| アスベル | ──双衝ッ!! |
| ア・ジュール兵 | ぐぁっ…! |
| アスベル | はあ…はあ…何とか退けたか |
| アスベル | (今は持ちこたえているが、 ここも長くは持たないだろう) |
| 部隊長 | アスベル!ア・ジュールの後続軍が国境線を越えウィンドル領地へ侵攻中だ |
| 部隊長 | 今の戦力では迎え撃てない。一度砦まで退いて体勢を立て直すぞ! |
| アスベル | はっ。俺が隊のしんがりを務めます |
| 部隊長 | わかった。──全軍撤退!みな、私に続け! |
| アスベル | (砦を落とされたら、本陣が 危ない…。何としても 防衛線を死守しないと) |
| | ガキィイン── |
| アスベル | …!あれは… |
| ウィンドル兵 | く、来るな…! |
| ア・ジュール兵 | … |
| ウィンドル兵 | 誰か…誰か、たす… |
| アスベル | やめ…! |
| | ドシュッ! |
| ウィンドル兵 | ぐああああ…! |
| アスベル | やめろおおおお! |
| ア・ジュール兵 | うぐ…!? |
| | ドサッ… |
| アスベル | おい、しっかりしろ。おい! |
| ウィンドル兵 | …… |
| アスベル | (間に合わなかった…) |
| アスベル | くそ…!どうしてこんな…! |
| ??? | …けて…。助…けて… |
| アスベル | …!どこだ…!? |
| アスベル | (あそこに誰か倒れてる…? 助けないと…!) |
| アスベル | 今行く!待っててくれ! |
| パスカル | 痛い…よ…。助けて… |
| アスベル | パスカル…!?何でこんなところに…!? |
| パスカル | アス、ベル… |
| パスカル | うう… |
| アスベル | …!しっかりしろ、パスカル…! |
| アスベル | (酷い傷だ…。 このままだと命が危ない…!) |
| パスカル | 痛い…痛いよ… |
| アスベル | くそ…!どうしたら… |
| パスカル | アスベル、これを… |
| アスベル | これは…マナリスか |
| パスカル | お願い、アスベル…。助けて… |
| アスベル | …安心しろ、パスカル |
| アスベル | すぐに助けてやるからな! |
| パスカル | …… |
| アスベル | (傷口が塞がっていく…!) |
| パスカル | ありがとう、アスベル。楽になったよ |
| アスベル | そうか、よかった… |
| アスベル | …っ! |
| アスベル | (力が抜ける…。 これが、マナリスを 使用した代償なのか) |
| パスカル | アスベル? |
| アスベル | …何でもない。傷はもう痛まないか? |
| パスカル | うん、平気 |
| アスベル | なら、俺と一緒に来てくれ。砦まで行けば── |
| ??? | 誰か…助けてくれ… |
| アスベル | …!まさか、この声は… |
| リチャード | 誰、か… |
| アスベル | リチャード!? |
| アスベル | (なぜ、リチャードが戦場に…!) |
| パスカル | 大変!怪我してるみたい |
| パスカル | あたしがマナリスでリチャードの傷を癒してくるよ! |
| アスベル | それは駄目だ…! |
| パスカル | え…? |
| アスベル | (マナリスの代償を パスカルに背負わせるわけには いかない…!) |
| アスベル | リチャードの事は俺に任せて、パスカルは先に砦へ向かってくれ |
| パスカル | でも… |
| アスベル | 大丈夫だ。リチャードは必ず俺が助けるから |
| パスカル | …わかった。頼んだよ、アスベル |
| アスベル | ああ! |
| アスベル | リチャード…!しっかりするんだ! |
| リチャード | アスベル…?僕を助けに来てくれたんだね… |
| リチャード | うぐっ… |
| アスベル | 苦しいのか?大丈夫か、リチャード! |
| リチャード | 思ったより…傷が深いみたいだ。僕は、もう… |
| アスベル | 心配するな。何があっても、俺がお前を助ける |
| アスベル | 死なせたりしない。絶対に…! |
| リチャード | この、光は… |
| アスベル | どうだ?痛みは消えたか…? |
| リチャード | ああ、何ともないよ |
| アスベル | よかった… |
| アスベル | ぐっ…!! |
| リチャード | アスベル!? |
| アスベル | 大丈夫、だ… |
| リチャード | アスベル…。君が来てくれなかったら僕は本当に死んでいたと思うよ |
| リチャード | 助けてくれてありがとう |
| アスベル | ああ…リチャード。お前が無事で本当によかった |
| アスベル | っ…! |
| | |
| アスベル | …… |
| 謎の男1 | アスベル様。ご報告が |
| アスベル | 何だ? |
| 謎の男1 | マナリスを使用するための器が見つかりました |
| 謎の男1 | 作戦は順調です。この後はどう動きましょうか? |
| アスベル | いずれ調査隊がマナリスの反応を追ってくるはずだ |
| アスベル | 俺達は出来るだけ長くここで足止めをする。準備を怠るな |
| 謎の男1 | はっ |
| 謎の男1 | それにしても…今頃、調査隊の奴らは仲間が裏切ったと思って動揺しているでしょうね |
| アスベル | ああ、事は順調に進んでいる… |
| アスベル | この男"を選んで正解だった" |
| | ザッザッザ… |
| 謎の男1 | この足音は… |
| アスベル | …来たようだな |
| scene2 | 蝕む黒夢 |
| パスカル | ──この辺りだね |
| ロイド | ここでレーダーの反応が途切れてるのか? |
| パスカル | うん、そうだよ |
| ルカ | 近くにマナリスの波動が遮られそうな場所はないみたいだけど… |
| ヒューバート | …!これを見てください。足跡が残っています |
| エレノア | …この数から見て、一人や二人ではないようですね |
| アリーシャ | ここで誰かと落ち合ったのか…?一体誰と… |
| ルーク | そんな事より、この後はどうすんだよ!? |
| ルーク | マナリスの反応がなけりゃアスベルを捜せないだろ |
| ヒューバート | それなら、この足跡を追って── |
| | |
| アイゼン | その必要はなさそうだ |
| アイゼン | …そこにいる事はわかっている。出てこい |
| | ガサ… |
| | |
| アスベル | …… |
| ヒューバート | 兄さん…! |
| 謎の男1 | おっと、動くなよ |
| | ガサガサ… |
| ルカ | …!いつの間に… |
| ロイド | くそ!囲まれたか… |
| 謎の男2 | 全く、しつこい連中だ。ここまで追い掛けて来るとはな |
| 謎の男3 | 今度こそ…お前達にはここで死んでもらうぜ |
| エレノア | あなた達は…! |
| パスカル | 知ってる人? |
| ルーク | 砂漠地帯で俺達を襲った奴らだ…! |
| ルーク | 何でおまえらが、アスベルと一緒にいるんだよ! |
| 謎の男3 | アスベル様、ご指示を |
| エレノア&ルーク | …! |
| スパーダ | おいおい、何の冗談だ? |
| スパーダ | そいつらが…おまえの仲間って事かよ、アスベル |
| アスベル | ああ |
| アイゼン | …シルヴァラントの貴族達が言っていた通りだったというわけか |
| ルカ | そんな…!アスベルが四大国連合調査隊を襲わせたの? |
| アスベル | …… |
| アイゼン | 否定はしないようだな |
| ヒューバート | くっ…!何故あなたはこんな事をしているのですか、兄さん! |
| アスベル | …星のカケラの事を覚えているか?四大国の均衡は、きっかけさえあれば簡単に揺らぐ |
| アスベル | マナリスの使用を巡って国同士の争いが起こるのは、時間の問題だ |
| パスカル | それは… |
| アスベル | 再び戦争を起こすわけにはいかない。だからこそ俺は、行動を起こした |
| アリーシャ | …確かに、マナリスを巡って争いが起こる可能性は否定出来ない |
| アリーシャ | だが、君がしている事もまた、争いの種をまく行為だ! |
| エレノア | アリーシャの言う通りです。アスベルがマナリスを持ち去った事で四大国の均衡が崩れようとしています |
| エレノア | 平和を願うならばこんな事をするべきではありません!マナリスを渡してください |
| アスベル | 俺はもう他国の人間を信じる事が出来ない |
| アスベル | ウィンドルを守るためにマナリスを渡すわけにはいかないんだ |
| ヒューバート | 馬鹿な事を…!あなたが取った選択肢は国の平和を壊す行為だ |
| ヒューバート | ウィンドルがマナリスを保有していると疑われて、総攻撃を受ける事だってあり得ます! |
| アスベル | …どうしようもない状況になった時は国のみんなを守るために、俺がマナリスに平和を願う |
| パスカル | え… |
| ロイド | 何言ってんだよ!人間がマナリスを使うのは、危険だって知ってるだろ!? |
| アスベル | それくらいの覚悟がないと、何も成し遂げられない |
| アイゼン | …何を言っても無駄のようだな |
| ルーク | 待てよ!アスベルと戦うつもりなのか!? |
| アイゼン | このまま押し問答を続けていても事態は解決しない |
| スパーダ | アスベル。おまえは考えを変えるつもりはねえんだな? |
| アスベル | ああ。俺は…ウィンドルを守るためなら、何だってする |
| エレノア | アスベル… |
| | チャキッ |
| パスカル | 弟くん…!? |
| ヒューバート | 兄さんが間違った道を進むと言うならば、それを正すのがぼくの役目です |
| ヒューバート | …今度こそ負けません。勝って、あなたを止める! |
| アスベル | お前がその気なら、受けて立つ |
| アスベル | ただし、俺の元にたどり着ければ…な |
| アスベル | ──俺は先へ行く。彼らの相手は任せるぞ |
| 謎の男1 | はい、アスベル様 |
| エレノア | 待ってください、アスベル…! |
| 謎の男2 | おっと、この先には進ませないぜ |
| エレノア | く…。邪魔をするなら、容赦しません! |
| スパーダ | 仕方ねェな。さっさとこいつらを倒してアスベルを追うぞ! |
| ルカ | うん! |
| scene3 | 蝕む黒夢 |
| ロイド | ──はああ! |
| 謎の男1 | ぐ…! |
| | ドサッ |
| スパーダ | これで全員だな |
| ルーク | こんな奴らに構ってられねえ。早くアスベルを追おうぜ |
| アリーシャ | 待ってくれ。全員気絶してるとはいえこのままにしておくのは危険だ |
| アリーシャ | 縄で拘束してから行こう。手分けすればすぐに終わる |
| エレノア | そうですね。取りかかりましょう |
| パスカル | …よし!これで大丈夫だね |
| ヒューバート | 先を急ぎましょう。森の奥に、兄さんがいるはずです |
| アイゼン | …その前に、あいつについて聞きたい事がある |
| ヒューバート | 何ですか? |
| アイゼン | あいつが今回の行動を起こしたきっかけに心当たりはあるか |
| ヒューバート | …いえ。正直今でも、何故兄さんがこんな事をしているのかわからないんです |
| ヒューバート | 兄さんはやると言ったら反対しても聞かない人ですが… |
| ヒューバート | 国やリチャード陛下を裏切る事は絶対にしません。そういう人なんです |
| アイゼン | …義理堅い人間のようだな |
| ロイド | ああ。それにアスベルは、仲間想いなんだ |
| ルーク | …そうだな。あいつはどんな時でも仲間を見捨てたりしない |
| パスカル | アスベルは、何があっても仲間を信じる人だと思うよ |
| アイゼン | …… |
| アイゼン | お前達の言葉を聞いていると、今のあいつは別人のように思える |
| アリーシャ | ああ…。私も、彼が平和のために調査隊を裏切る人間だとは思えないよ |
| アリーシャ | それに、調査隊の上層部がマナリスの使用について揉めていた事は事実だが… |
| アリーシャ | アスベルが起こした行動の方が、四大国の均衡を崩しかねない |
| パスカル | …アスベルがエレノアと別れて、保管庫で弟くんと会うまでの間に何かがあったんじゃないかな? |
| ルカ | どうしてそう思うの? |
| パスカル | さっき、アスベルが国を守るためにマナリスを使うって言ってたでしょ? |
| パスカル | 前にエルピスの塔の前で話した時、願いは自分でかなえるものだって言ってたんだよね |
| パスカル | どっちかと言うと、アスベルはマナリスを使う事に対して否定的だったよ |
| エレノア | なるほど…。短期間で考え方が変わるのはおかしいですね |
| アイゼン | …何かカラクリがあるかもしれんな |
| スパーダ | とにかく、先へ進もうぜ。ここで話してても解決しねえだろ |
| ルーク | そうだな。あいつに直接確かめてやる! |
| ロイド | よし。行こうぜ、アスベルのところへ! |
| scene1 | 守る強さ |
| アスベル | …来たか |
| ヒューバート | 兄さん… |
| アスベル | 彼らにお前達の足止めを頼むのは荷が重かったみたいだな |
| ルカ | ……。何か、変じゃない? |
| スパーダ | 気になる事でもあんのか、ルカ? |
| ルカ | うん…。…ねぇ、アスベル。どうしてここで僕達を待ってたの? |
| ルカ | 僕らが戦っていた間に、いくらでも逃げられたはずだよね |
| アスベル | …… |
| アイゼン | …ちっ、そういう事か。まんまと嵌められたな |
| エレノア | 嵌められた…?どういう意味ですか? |
| アイゼン | マナリスはここにはない |
| エレノア | …! |
| アイゼン | おそらく、俺達が森に着いた頃には別の場所に運ばれていたんだろう |
| アリーシャ | 何故そう思うんだ? |
| アイゼン | あいつがマナリスを持っているなら、ここで俺達を待ち構えている必要がないからな |
| ルカ | そっか…アスベル達は、僕らの目をマナリスから逸らすためにわざと森に残ったんだ |
| パスカル | …!だから、レーダーの反応が途切れた場所で待ち伏せしてたんだね |
| アリーシャ | あえて兵力を分断したのも時間を稼ぐため、という事か… |
| ルカ | 僕達がマナリスを追ってくると予測して、裏をかいた。──そうだよね? |
| アスベル | …確かに、マナリスはここにはない。安全な場所へ運ぶように俺が指示を出した |
| スパーダ | その場所を教えろって言っても、話す気はねえんだろ? |
| アスベル | ああ |
| ロイド | アスベル…。本当に、後悔しないのか? |
| ロイド | 調査隊の反逆者として俺達と戦う事になってもいいのか? |
| アスベル | 構わない。マナリスさえあれば俺の願いはかなえられる |
| ヒューバート | …… |
| パスカル | アスベルの言う通り、マナリスを使えば世界を平和にする事が出来るかもしれないけど… |
| パスカル | マナリスの使用には代償が伴うから、アスベルが無事じゃ済まなくなるよ |
| アスベル | 平和を守るためなら、この身がどうなっても構わない |
| アスベル | 俺には、それだけの覚悟がある |
| ルーク | …だったら、俺達も引くわけにはいかねえ |
| ルーク | これ以上、おまえに馬鹿な真似はさせられねぇからな! |
| アスベル | そうか。ならここで、決着をつけよう |
| | チャキッ |
| エレノア | …!本気で、私達と戦うつもりなのですね… |
| アイゼン | 諦めろ。今のあいつは、仲間想いの義理堅い男ではないようだ |
| ヒューバート | …… |
| ヒューバート | …最後にひとつだけ、答えてください |
| ヒューバート | 兄さんは、平和を守るために仲間を傷付ける事になってもいいんですか? |
| ヒューバート | あなたを信じて、ここまで追いかけて来てくれた人達ですよ |
| アスベル | 何かを得るためには何かを失う必要がある |
| アスベル | 戦争を繰り返させないために多少の犠牲は必要なんだ |
| ヒューバート | やはり…あなたは、兄さんじゃない |
| アスベル | 何を、馬鹿な事を… |
| ヒューバート | 兄さんは、目的のために自分の大切なものを犠牲にしたりしません |
| ヒューバート | むしろ、仲間を守るために自分を差し出すような人です |
| エレノア | …そうですね。アスベルはどんな時でも、仲間を守る選択をしてきました |
| ルーク | ああ。俺達の知ってるアスベルは他の目的のために仲間を諦めたりしない! |
| ルカ | それじゃあ…あそこにいるアスベルは偽物って事? |
| アイゼン | …あるいは、記憶を改ざんされたか違う思考を植え付けられたかだろうな |
| アイゼン | 誰かがあいつの思考を捻じ曲げたなら考え方が違っていても納得がいく |
| アスベル | その推測は的外れだ。俺は、俺の意志で行動している |
| スパーダ | だったら、その意志ってやつを俺達が納得出来るように話せよ |
| スパーダ | 調査隊の仲間同士で戦っても意味ねえだろ |
| アスベル | お前達がマナリスを取り戻そうとする限り、戦いは避けられない |
| アスベル | 来ないなら、こちらから行くぞ! |
| アリーシャ | …!早い…! |
| ロイド | パスカル、避けろ! |
| パスカル | わわっ。何であたし狙い!? |
| アスベル | 終わりだ! |
| ヒューバート | そうはさせません! |
| | ガキ─ンッ! |
| ヒューバート | つっ──…! |
| パスカル | 弟くん…! |
| パスカル | …?あれは…! |
| | カシーン! |
| アスベル | 邪魔をするな、ヒューバート |
| ヒューバート | そうはいきません。あなたが誰でも、パスカルさんに剣を向けるのは許せない |
| パスカル | 弟くん…! |
| ヒューバート | …!パスカルさん、危ないから後ろに下がって── |
| パスカル | もしかしたら、アスベルを助けられるかもしれないよ…! |
| ヒューバート | …! |
| パスカル | だから…少しでも長く時間を稼げるかな? |
| ヒューバート | …わかりました。手加減出来る相手ではないのでそう長くは持ちませんよ |
| パスカル | うん、わかってる |
| アスベル | 何をコソコソと話しているんだ? |
| ヒューバート | あなたには関係のない事です |
| | チャキ── |
| ヒューバート | ここからは、本気でいかせてもらいます |
| ルーク | 待てよ、俺達も…! |
| ヒューバート | いえ…。ここは、ぼくに任せてくれませんか |
| ヒューバート | あの人と、一対一で決着を付けたいんです |
| スパーダ | 一人で大丈夫なのか? |
| ヒューバート | はい。兄さんの名を騙る者に二度も負けるわけにはいきません |
| アスベル | 自分の力を過信しているようだな、ヒューバート |
| アスベル | 何度やっても結果は同じだ。お前は、俺に勝てない |
| ヒューバート | 侮ってもらっては困ります!──はああ! |
| エレノア | 彼一人に戦わせてよいのですか!?私達も、加勢に… |
| パスカル | 待って…!みんなに聞いてほしい事があるんだ |
| ルカ | どうしたの?パスカル |
| パスカル | さっきアスベルが近くに来た時に見えたんだけど… |
| パスカル | アスベルがつけてる首飾り、何かの装置みたいなんだよ |
| パスカル | もしかしたら、あの首飾りがアスベルの記憶や思考に何らかの作用を及ぼしてるのかもしれない! |
| アリーシャ | アイゼンが話していたように、アスベルは思考を捻じ曲げられているというわけか… |
| アイゼン | 確かにそれなら、あいつが真っ先にお前を狙ったのも頷ける |
| ロイド | 俺達の中で技術的な知識があるのは、パスカルだけだもんな |
| ルーク | それじゃあ、あいつの首飾りを壊せば…! |
| エレノア | アスベルの正気を、取り戻せるかもしれませんね |
| スパーダ | 簡単には壊させてくれなさそうだが…やるしかねぇな |
| アリーシャ | よし、それなら全員でアスベルを抑え込もう |
| | キィイン!ガキイィン! |
| ヒューバート | はぁ…はぁ… |
| アスベル | まだ立ち上がるのか。いい加減、諦めたらどうだ? |
| アスベル | 何度やってもお前は俺に勝てない |
| ヒューバート | …確かに、ぼく一人ではあなたを倒せないかもしれない |
| ヒューバート | ですが… |
| | |
| ルカ | はあっ! |
| | カキ─ンッ! |
| アスベル | く…!? |
| ヒューバート | ぼくは今のあなたと違って一人ではありません |
| パスカル | 弟くん、大丈夫? |
| ヒューバート | ええ、問題ありません。打開策は見つかりましたか? |
| パスカル | うん、ばっちり! |
| アリーシャ | パスカルがアスベルに近付けるように私達で隙を作る |
| アリーシャ | ヒューバート、君も力を貸してくれ |
| ヒューバート | わかりました。パスカルさん、兄さんを頼みますよ |
| パスカル | うん…!任せて |
| アスベル | 何をしようとしているのか知らないが…お前達に、マナリスは渡さない! |
| アスベル | ──来い! |
| scene2 | 守る強さ |
| アスベル | リチャード、動けそうか? |
| リチャード | ああ、大丈夫だ |
| アスベル | よし、それなら砦へ向かって── |
| アスベル | …っ! |
| リチャード | アスベル? |
| アスベル | …何でもない。さあ、早く行こう |
| リチャード | 待ってくれ、アスベル。あそこに誰かいるようだ |
| アスベル | …!あれ、は… |
| シェリア | …… |
| アスベル | …!シェリア…! |
| リチャード | 大変だ、早く助けに行こう |
| アスベル | シェリア!おい、しっかりしろ…! |
| シェリア | ん…アス…ベル…? |
| シェリア | ごほっ…げほっ…う…はあ…はあ… |
| アスベル | シェリア!? |
| リチャード | 酷い怪我だ…。このままだと… |
| アスベル | くそっ!誰が…誰がこんな事を…! |
| シェリア | ごほっ…痛い…苦し… |
| シェリア | 助けて…アスベル… |
| アスベル | 大丈夫だ、シェリア…! |
| アスベル | 今、俺が助けてやる! |
| リチャード | すごい…。傷が塞がっていく… |
| アスベル | ぐっ… |
| リチャード | アスベル…! |
| アスベル | 大丈夫、だ…。シェリアは… |
| リチャード | …心配ないよ。出血もないようだ |
| アスベル | …… |
| シェリア | アスベル、聞いて… |
| アスベル | どうした?シェリア |
| シェリア | あっちにヒューバートが倒れてるの… |
| アスベル | ヒューバートが…!? |
| リチャード | アスベル、あそこだ…! |
| ヒューバート | う…… |
| アスベル | …! |
| シェリア | 酷い怪我なの…。助けてあげて…お願い… |
| リチャード | …アスベル、僕にマナリスを渡してくれ |
| リチャード | 君の代わりに僕が彼を助けるよ |
| アスベル | 駄目だ、リチャード。それだけは…絶対に駄目だ! |
| リチャード | しかし、このままでは彼が…!アスベルの身体だって… |
| アスベル | …リチャード、頼みがある。肩を貸してくれないか? |
| アスベル | ヒューバートを助けるために、俺をあそこまで連れて行ってほしい。…頼むよ |
| リチャード | アスベル… |
| ヒューバート | う…ぐ… |
| アスベル | ヒューバート… |
| ヒューバート | にい、さん…? |
| リチャード | これでいいのかい?アスベル |
| アスベル | ああ。支えてくれてありがとう、リチャード |
| リチャード | 礼はいらない。君の力になれて嬉しかったよ |
| アスベル | (あと一度なら…使えるはずだ) |
| アスベル | …ヒューバート。今、助けてやるからな |
| アスベル | ぐっ…はあっ… |
| | ドサッ |
| ヒューバート | 兄さん…! |
| アスベル | はあっ…はあっ… |
| ヒューバート | 大丈夫ですか! |
| アスベル | ああ…。お前は…大丈夫…か? |
| ヒューバート | ええ…。身体が楽になりました |
| ヒューバート | ありがとうございます |
| アスベル | そうか… |
| リチャード | 君はよくやったよ、アスベル。僕達を助けてくれて、本当にありがとう |
| アスベル | …ああ |
| アスベル | (よかった…。 これで、みんな助かったんだな) |
| アスベル | (守れて、よかった…) |
| ヒューバート | 疲れたでしょう、兄さん。もう眠ってください |
| アスベル | (…? 何だ、この違和感は…) |
| ヒューバート | 自分を犠牲にしてまでぼく達を助けてくれて本当にありがとうございます |
| アスベル | (…違う。 こんな時、ヒューバートは…) |
| | |
| ヒューバート | 兄さん…! |
| アスベル | ヒューバート…? |
| アスベル | どうしたんだ?そんなに慌てて |
| ヒューバート | …兄さんが怪我をしたと聞いたので |
| アスベル | ああ…そこまで酷い傷じゃないよ。大げさだな |
| ヒューバート | 戦地で負傷した仲間を助けるために無茶をしたそうですね |
| ヒューバート | 救援部隊が到着するまで怪我人を庇いながら一人で敵兵と戦っていたとか… |
| アスベル | …… |
| ヒューバート | そうやってすぐに一人で背負おうとするのは兄さんの悪い癖です |
| ヒューバート | 無茶をすればいいというものではありませんよ。ぼくの気苦労も考えてください |
| アスベル | 心配かけてすまない、ヒューバート |
| ヒューバート | …別に、ぼくは心配なんてしていません |
| ヒューバート | 兄さんにもしもの事があったら、シェリアやリチャードが悲しむでしょう |
| ヒューバート | それにぼくも── |
| | |
| アスベル | …… |
| ヒューバート | 兄さん…? |
| アスベル | 違う…。お前は、ヒューバートじゃない |
| ヒューバート | 何を言ってるんですか…? |
| アスベル | 俺がマナリスを使って命を助けても…みんなは、礼を言ったりしない |
| アスベル | 無茶をするなって、怒るはずだ |
| ヒューバート | …… |
| アスベル | それに…マナリスを使って願いをかなえる事は間違ってる |
| アスベル | 運命は、自分の手で掴み取るものだ…! |
| | |
| アスベル | …… |
| ヒューバート | (…! 兄さんの動きが止まった…?) |
| ヒューバート | パスカルさん!今です! |
| パスカル | 任せて! |
| パスカル | アスベル、今…助けるからね! |
| | パキッ… |
| | 夢からの解放 |
| パスカル | アスベル、今…助けるからね! |
| | パキッ… |
| アスベル | …つっ…! |
| | カシャンッ──… |
| | |
| アスベル | (ここは…?) |
| | ザバーン… |
| アスベル | (波の音がする…。 船の上にいるのか…?) |
| アスベル | (…あれは──) |
| | |
| アスベル | う… |
| ヒューバート | 兄さん! |
| パスカル | アスベル! |
| アスベル | ん…ヒューバート…?それに、みんなも… |
| ロイド | 意識が戻ったんだな…!大丈夫か、アスベル? |
| アスベル | ああ…。…ここは? |
| スパーダ | 迷いの森にある遺跡の傍だ |
| アスベル | 迷いの森…?どうして俺は、この場所に… |
| アイゼン | 何も覚えていないのか? |
| アスベル | ああ…。エレノアと別れた後、男達と戦って…気を失ったところまでは覚えてるけど、それからは… |
| エレノア | …アスベル、身体はどうですか?具合が悪かったり、どこか痛いと感じるところは…? |
| アスベル | 平気だ。エレノアは本部に戻ってみんなと合流出来たんだな |
| アスベル | …無事でよかった |
| エレノア | っ… |
| ルーク | 馬鹿野郎!今は自分の心配しろよ!俺達がどれだけ… |
| スパーダ | まあまあ、落ち着けよ。アスベルは何も覚えてねえみたいだし責めても仕方ねーだろ? |
| ロイド | 真っ先に仲間の事を考えるのはアスベルらしいしな! |
| パスカル | うんうん、それでこそアスベルって感じだよね~ |
| アスベル | …? |
| ルカ | はは…。ちゃんと説明しないと、ますますアスベルが混乱しちゃうよ |
| アリーシャ | そうだな。まずは、状況を整理しよう |
| ヒューバート | 兄さんの様子を見るに、ぼく達と対峙していた時の事は記憶にないようですね |
| アイゼン | ああ。パスカルの予想通り首飾りが思考や記憶に作用を及ぼしていたのだろう |
| アスベル | 俺は、何か忘れているのか…? |
| エレノア | それは… |
| ヒューバート | …兄さんは先ほど、気を失った後の事は何も覚えていないと言っていましたね |
| アスベル | ああ…。ここで目が覚めるまではずっと…夢を見ていたんだ |
| アスベル | 夢だと気付けないくらい鮮明で…現実味のあるものだった |
| ロイド | どんな内容だったんだ? |
| アスベル | 戦場で倒れている仲間を助けるために、マナリスを使い続ける夢だ |
| アスベル | マナリスの使用には代償があるとわかっていても、使わずにはいられなかった |
| アスベル | みんな、酷く傷付いていて…早く治療しないと命が危ない状態だったから |
| エレノア | アスベル… |
| アスベル | だけど途中で違和感を覚えて、夢の内容を否定したんだ。その後に、目が覚めた |
| ヒューバート | なるほど… |
| ヒューバート | 首飾りを破壊する前に兄さんの動きが止まったのは、夢の中で抵抗した事と関係があるかもしれませんね |
| アスベル | さっきも気になったんだが、首飾りって何の話だ…? |
| パスカル | アスベルの首に取り付けられていた装置の事だよ |
| アイゼン | おそらく、お前が気を失った後に付けられたんだろう |
| アスベル | …その装置が、夢と関係してるのか? |
| パスカル | これは推測だけど…首飾りを付けられると、催眠状態に引き入れられるんじゃないかな |
| パスカル | アスベルの意識を夢の中に閉じ込めて意のままに操るためにね |
| パスカル | たぶん、夢を否定した事でアスベルの意識が一瞬戻って動きが止まったんだと思う |
| スパーダ | つまり、首飾りを付けられてる間はアスベルの意志とは関係なく敵の都合のいいように動かされてたって事か |
| アスベル | そう言えば…森で戦った男達が、俺にはまだ利用価値があると話してた |
| アスベル | ──教えてくれ。俺が夢を見ている間に何があったんだ? |
| エレノア | …… |
| アリーシャ | …それは、私が話そう |
| アスベル | 本部の保管庫を襲って、マナリスを強奪した…? |
| アリーシャ | ああ。私達は最後にマナリスの反応が探知された場所を追って来たんだ |
| ルーク | 結局、マナリスは別の場所に運ばれた後だったけどな |
| アスベル | …俺は、この手でヒューバート達を傷付けたんだな |
| アスベル | その上、助けに来てくれたみんなにも剣を向けたのか──… |
| ヒューバート | 兄さん… |
| スパーダ | お前は何も悪くねえだろ。操られてただけなんだからよ |
| アスベル | …それでも、俺が意識を奪われたせいでマナリスが敵の手に渡ったんだ |
| アスベル | 今回の件で四大国の均衡が崩れるような事があれば── |
| アスベル | リチャード達が必死に守ろうとしている平和を壊す事になる… |
| アイゼン | 今は思い悩むより、マナリスを取り戻す事を考えるべきだろう |
| アイゼン | お前を操っていた奴がどんな目的でマナリスを使うかわからんからな |
| アスベル | …そうだな。悪用されれば、大変な事になる |
| アスベル | まずはマナリスを奪還しよう。それに、攫われた女性も助けないと |
| アスベル | 意識を奪われていた間に犯した罪はその後で償うよ |
| エレノア | アスベル…今回の件は、私にも責任があります。一人で背負わないでください |
| アスベル | …ありがとう、エレノア |
| パスカル | そうと決まれば、持ち去られたマナリスを探さないとね! |
| ルカ | うん。エメロードさんもきっと、敵がいる場所に囚われてるはずだよ |
| ルーク | そうは言ってもよ、レーダーでマナリスを追えないんじゃ探しようがないだろ |
| ルカ | アスベルと一緒にいた人達なら何か知ってるんじゃないかな? |
| スパーダ | あいつらが簡単に口を割るとは思えねェけどな |
| ヒューバート | しかし、彼らが所持している物が何かの手がかりになるかもしれません |
| アイゼン | 調べるだけの価値はありそうだ |
| ロイド | それじゃ、さっきの場所に戻ろうぜ! |
| | |
| 謎の男達 | …… |
| ルカ | まだ、目が覚めてないみたいだね |
| エレノア | 今の内に、所持品を調べましょう |
| アリーシャ | そうだな。手分けして取りかかろう |
| パスカル | 了解~! |
| ロイド | ん…?何だ、これ |
| ルーク | どうかしたのか? |
| ロイド | こいつの服のポケットに紙が入ってたんだ |
| ルーク | …何かの書類みてえだな。開いてみようぜ |
| | ガサガサッ |
| アスベル | これは…!通行許可書だ |
| ヒューバート | 調査隊員が島の各所に立ち入る事を許可する書状──… |
| ヒューバート | 本部の上層部しか発行出来ない通行許可書を、何故彼らが… |
| パスカル | ジェイが言ってた通り、調査隊の内部に内通者がいるんだろうね |
| アスベル | 書状の署名欄を確認しよう。彼らと繋がってる人物がわかるはずだ |
| エレノア | …!まさか── |
| ロイド | どうしたんだ? |
| エレノア | この署名は、シルヴァラントの貴族のものです |
| ルーク | つまり…アスベルを追う時にいちゃもんつけて来た奴がマナリスの強奪に関わってたって事かよ!? |
| エレノア | …その可能性が高いと思います |
| アリーシャ | 彼らが襲撃犯と組んで悪事に手を染めていたというのか…? |
| アリーシャ | 何故、そんな… |
| スパーダ | だからあいつら、アスベルに全ての罪を着せようとしてたのかもな |
| ルーク | それが本当なら、一発殴らねえと気がすまねえぜ |
| アリーシャ | …… |
| 謎の男2 | う… |
| アイゼン | …目が覚めたようだな |
| 謎の男3 | く…動けねえ |
| アリーシャ | 手荒にしてすまないが、縄で縛らせてもらった。君達を逃がすわけにはいかないからな |
| 謎の男2 | くそ…!計画は完璧だったはずなのに… |
| アスベル | …… |
| 謎の男1 | お前は… |
| 謎の男1 | ──首の装置を壊したのか。よくカラクリに気付いたな |
| 謎の男1 | …それで?守りたいものを自分の手で壊した感想を聞かせてくれよ |
| アスベル | っ… |
| エレノア | 何て卑劣な…! |
| ルーク | こいつ…!絶対に許さねえ! |
| ヒューバート | 気持ちはわかりますが、今は感情を抑えるべきです |
| ヒューバート | 怒りで思考を曇らせると彼の思う壺です |
| 謎の男1 | ち…。邪魔しやがって |
| ルカ | …あなた達に聞きたい事があります。マナリスをどこへ運んだんですか? |
| 謎の男2 | 俺達が話すと思うか? |
| スパーダ | 力ずくで吐かせてもいいんだぜ? |
| アイゼン | 何度か殴られればそんな軽口も言えなくなるだろう |
| 謎の男3 | ひ…っ |
| ルカ | ふ、二人共、落ち着いて… |
| アスベル | …もう一度聞く。お前達はマナリスがどこへ運ばれたか知っているのか? |
| 謎の男2 | さあな |
| スパーダ | …やっぱ、一発殴っとくか |
| アイゼン | 手伝おう |
| 謎の男2 | ま、待てよ…!俺達もどこに運んだのかまでは知らされてねえんだ! |
| 謎の男1 | 馬鹿、余計な事をしゃべるな! |
| 謎の男2 | …!わ、悪い… |
| ルカ | 今の話が本当だとすると…マナリスの捜索は振り出しに戻ったみたいだね… |
| パスカル | ん~、困ったね。通行許可書だけじゃ、マナリスを探す手がかりにはならないし… |
| アスベル | …… |
| アスベル | そう言えば、意識が戻る前に一瞬だけ何か、夢とは別のものが見えたんだ |
| ヒューバート | 首の装置を破壊した直後ですか? |
| アスベル | ああ。船の上にいるみたいだった |
| アスベル | 通行許可書を持っていれば港から船に乗る事も出来るから、ふと思い出して… |
| パスカル | …それって、もしかしたらアスベルを操ってた人が見てたものなんじゃないかな |
| エレノア | どうしてそう思うんですか? |
| パスカル | 一方的に支配されてた意識が、首飾りを破壊した時に同期して… |
| パスカル | アスベル側に、操ってた人の意識が流れ込んで来たんじゃないかと思ってさ |
| パスカル | あの装置は、意識や記憶を共有出来る物だと思うんだよね |
| パスカル | 操られていた間も、アスベルはあたし達や弟くんの事を認識してたし |
| アスベル | ──そう言えば、夢の中にリチャードやシェリアも出てきた |
| アスベル | 俺の記憶を探って親しい人間が苦しむ姿を見せていたのか… |
| ロイド | だったら、港に行ってみようぜ! |
| ロイド | 船に乗った奴がマナリスを持ってるかもしれないしさ |
| アリーシャ | そうだな。操られていた時、アスベルはここにいる男達に指示を出していた |
| アリーシャ | おそらく、意識を乗っ取っていた人物が首謀者だろう。マナリスを持っている可能性は高い |
| アイゼン | 船の上にいたと言っていたが…何か他に見えたものはあるか? |
| アスベル | ──確か…岩山の向こうにエルピスの塔が見えたんだ |
| ルカ | 大体の場所がわかれば、僕達も船に乗って追いかけられそうだね |
| ヒューバート | …ぼくは一度、本部に戻ります。ここにいる男達を引き渡さなくてはいけませんからね |
| スパーダ | それなら、オレ達も一緒に行くぜ。本部に内通者がいるなら一人で行動するのは危険だしな |
| ルーク | ああ。ジェイド達に話して、裏切った奴らを徹底的に追い詰めてやろうぜ |
| エレノア | …アリーシャ。私も本部に戻って、シルヴァラントの貴族を調べます |
| アリーシャ | ああ、頼む…。マナリスの奪還は私達に任せてくれ |
| アスベル | …俺はアリーシャ達と港に向かうよ。意識が戻る前に見た場所を探す必要があるし… |
| アスベル | 俺のせいでマナリスが奪われたなら、取り返す責任があるからな |
| ヒューバート | 兄さん… |
| アスベル | …ヒューバート。上層部に伝言を頼めるか? |
| アスベル | マナリスを取り戻した後で、必ず本部に戻ると |
| ヒューバート | …ええ。本部の対応はぼくに任せて兄さんは行ってください |
| ヒューバート | くれぐれも、無茶はしないようにしてくださいね |
| アスベル | …ありがとう、ヒューバート |
| アスベル | 今も、夢の中でも、お前には助けられてばかりだな |
| ヒューバート | …何の事かはわかりませんが、気持ちだけは受け取っておきます |
| パスカル | いいねぇ、兄弟愛 |
| ヒューバート | からかわないでください! |
| パスカル | へいへーい。そんじゃ、あたし達はそろそろ出発しよっか |
| エレノア | みなさん、気を付けてくださいね |
| アスベル | ああ。必ずマナリスを取り戻して、本部に戻るよ |
| scene1 | 不死鳥の漢 |
| アリーシャ | ようやく、ここまで来たな。港まであと少しだ |
| ロイド | 急ごうぜ。早くしないと逃げられちまう |
| アスベル | ああ。港に到着したら、すぐに出航できる船を探そう |
| | トタトタトタッ…── |
| パスカル | …ん?何だろう、あれ |
| ルカ | どうしたの、パスカル? |
| パスカル | 道の先に、何かいるような…。ほら、あそこ! |
| ロイド | ほんとだ。小さいから気付かなかったぜ |
| アイゼン | …!あいつは… |
| フェニックス | …… |
| ルカ | あれ…?あの形、見覚えがあるような… |
| アイゼン | (あいつが島にいるという事は、 やはり──) |
| アイゼン | ──確かめたい事がある。先に行くぞ |
| パスカル | え、ちょっと!アイゼン、待── |
| ルカ | …行っちゃったね |
| ロイド | アイゼンの奴…どうしたんだ、急に |
| アスベル | 焦っていたようだし、何か事情がありそうだな |
| アリーシャ | ああ…。私達も後を追いかけよう |
| アイゼン | ──おい、止まれ! |
| フェニックス | …!汝は…! |
| フェニックス | 海賊が出たという噂を聞いていたが…やはりこの島に来ていたのか、友よ |
| アイゼン | ああ。まさかここで、お前と再会するとはな |
| ロイド | おーい、アイゼン!待てって! |
| パスカル | はあ…はあ…。いきなり走り出さないでよ~! |
| ルカ | はは…。パスカルが言うとあんまり説得力ないね… |
| フェニックス | …友よ、この者達は汝の同志か?見たところ、ただの人間のようだが |
| アイゼン | 調査隊の仲間だ。この島では行動を共にしている |
| フェニックス | …!そうか… |
| フェニックス | まさか、汝が調査隊に入っていたとはな |
| ロイド | なあ、アイゼン。こいつ、普通に話してるけど…何者なんだ? |
| アイゼン | ノルミン天族のフェニックスだ |
| アリーシャ | 天族…。この方が… |
| アスベル | それで…アイゼンはフェニックスに確かめたい事があるのか? |
| アイゼン | ああ。…フェニックス、お前がいるという事は、この島に来ているんだろう |
| アイゼン | …エドナが |
| フェニックス | …… |
| ロイド | エドナって…前に話してた、アイゼンの妹だよな |
| パスカル | フェニックスはエドナと一緒に行動してるの? |
| アイゼン | ああ。俺が傍にいられない代わりに妹を守ってくれている |
| アイゼン | こいつの力は不死鳥。俺の死神の呪いとは真逆の性質を持つ加護の力だからな |
| ルカ | そうだったんだ。でも…今は一人みたいだね |
| アイゼン | あいつは、どうした? |
| フェニックス | …許せ、友よ |
| フェニックス | エドナは攫われた。我が、敵に不覚を取ったばかりに |
| | |
| アイゼン | …!攫われただと? |
| アイゼン | 誰が、あいつに手を出しやがった |
| フェニックス | 見知らぬ男達だったが…一人の少女を複数人で取り囲む、極重悪人共である事は確かだ |
| フェニックス | エドナが天族だと知り、襲って来た |
| フェニックス | 話しぶりから察するに天族であれば誰でもよかったのだろう |
| アスベル | それは…何かの事件に巻き込まれた可能性があるな |
| ルカ | うん…。どうしてその男達は天族を狙ってたんだろう? |
| フェニックス | 敵は、天族であるエドナの力を借りたいと話していた |
| ロイド | そいつらはどうやってエドナが天族だって調べたんだ?見た目だけじゃわからないよな |
| フェニックス | 天族に反応する装置を使ったようだ。おそらく、島の中に天族を捕える網を張っていたのだろう |
| フェニックス | あのような者達にエドナを奪われるとは、何たる不覚…! |
| アイゼン | くそっ。どうしてこうなる |
| アイゼン | 同じ島の中にいたあいつに呪いの影響が出たのか… |
| ルカ | アイゼン… |
| パスカル | うーん、もしかして… |
| パスカル | その男達って、今あたし達が追ってる襲撃犯と関係があるんじゃないかな? |
| アイゼン | 何…!? |
| アスベル | どうしてそう思うんだ? |
| パスカル | マナリスを強奪しても、代償を支払わないと願いはかなえられないでしょ |
| パスカル | でも天族なら最小限の代償でマナリスを使える。だから、狙われたんじゃないかな? |
| アスベル | なるほど…。確かにそれなら、マナリスを持っている人間の傍に連れていかれたと考えるのが自然だ |
| フェニックス | エドナの居場所が、わかるのか…!? |
| アイゼン | 確証があるわけじゃないが、今俺達が追っている敵に囚われているかもしれん |
| ルカ | 敵は船で逃走してる可能性が高いんだ |
| ルカ | 僕達は今から港に行ってその船を追うつもりだよ |
| フェニックス | ならば、我も共に行くぞ!あの悪人共に報復を与えてやらねばな |
| フェニックス | そして次こそは…!友よ、汝と交わした約束通り、あの子を守ってみせる! |
| アイゼン | ああ…必ず、あいつを取り返すぞ |
| パスカル | そんじゃ、そろそろ出発しよっか |
| フェニックス | 待て。港に行く前に、汝らに一つ忠告がある |
| ロイド | 何だ? |
| フェニックス | 敵が持っている装置に注意しろ。一瞬でエドナを昏倒させ、我の動きを封じた代物だ |
| パスカル | 装置の特徴は? |
| フェニックス | 箱形の装置で、使用時に強い光を放っていた |
| アスベル | 一瞬で動きを奪う装置か…厄介だな |
| ルカ | 装置を使われる前に対処するしかなさそうだね |
| アリーシャ | ああ。十分注意して、先へ進もう |
| scene2 | 不死鳥の漢 |
| パスカル | ──人が多いね。久しぶりに港に来たけど、前より活気がある気がするよ |
| アリーシャ | 島に訪れる観光客は日に日に増加しているからな |
| アイゼン | とりあえず、使えそうな船を探すぞ。出来れば速度の速いものを── |
| セネル | ──お前達、ここで何してるんだ? |
| ロイド | お前は…セネル! |
| セネル | 久しぶりだな。今日はどうしたんだ?何か急いでるみたいだったが… |
| アリーシャ | 実は、船を探しているんだ。よければ力を貸してもらえないだろうか |
| セネル | …何かわけがありそうだな。話を聞かせてくれ |
| セネル | ──そんな事があったのか |
| セネル | …実は、少し前に金髪の少女が港を歩いていたんだ |
| アイゼン | 何…!それは本当か |
| セネル | ああ。お前の妹と特徴が似ていたから「アイゼンを知っているか」と尋ねたんだが… |
| セネル | 何も答えないまま行ってしまった。だから、妹じゃないと判断したんだ |
| ルカ | もしそれがエドナなら、どうして答えなかったんだろう? |
| アスベル | 敵に脅されていたか…あるいは、何か言えない事情があったんじゃないか? |
| アイゼン | …… |
| ロイド | セネルは、その子がどこへ向かったかわかるか? |
| セネル | いや…。ただ、シルヴァラントの大型船に乗り込むところまでは見たな |
| ルカ | …! |
| パスカル | シルヴァラントの船って事は…セネルが見た女の子は、やっぱりエドナだったんじゃないかな |
| セネル | どういう事だ? |
| アリーシャ | …敵は、シルヴァラントの貴族が署名した通行許可書を持っていたんだ |
| アリーシャ | シルヴァラントが保有している船に乗っている可能性が高い。おそらく、アイゼンの妹も… |
| セネル | なるほどな…。そういう事なら、俺が船を出そう |
| ルカ | …!いいの? |
| セネル | ああ。同じ兄として、妹を心配する気持ちはわかる |
| セネル | それに、いつまでもマナリスを敵の手に渡しておくわけにはいかないだろ? |
| アイゼン | …そうだな。力を借りるぞ |
| セネル | 任せてくれ |
| ルカ | それで…シルヴァラントの船はどの方角に向かったの? |
| セネル | 港から北上した。そのまま進めば途中で岩山が見えてくる |
| ロイド | …!アスベルが見た場所と一致してるな |
| アスベル | 今から船を出して、シルヴァラントの船に追いつく事は出来るか? |
| セネル | ああ。俺の船なら、大型船より速度が出る。すぐに追いつけるだろう |
| フェニックス | これで、エドナを追うための道が拓けたな |
| アイゼン | ああ。…頼めるか、セネル |
| セネル | 勿論だ。船に乗ってくれ、すぐに出航する |
| scene1 | 同じ願い |
| | ザバーン |
| パスカル | うわっ!とっとっと…── |
| | ガシッ |
| ロイド | 危ないだろ、パスカル。ちゃんと、どこかに掴まっとけって |
| パスカル | ありがと~、ロイド。もう少しですっ転ぶところだったよ |
| アイゼン | やけに揺れるな。この海域は、波が荒いのか? |
| セネル | いや、ここ数日で海の様子が変わったんだ。魔物の数も増えてる |
| アリーシャ | 海もなのか…。島でも、同様の現象が起きているんだ |
| セネル | らしいな。本部から島内の様子は聞いてる |
| セネル | 島全体が、何かの影響を受けているようだが…今のところ、原因はわからない |
| ルカ | 海にいる魔物が増えたら、大陸から島に行き来するのが難しくなりそうだけど…大丈夫かな |
| セネル | 今はまだ大きな問題になっていないが…油断は出来ないだろうな |
| セネル | …!──見えてきたぞ |
| セネル | あれが、港で話した岩山だ |
| ロイド | どうだ、アスベル? |
| アスベル | …間違いない。目が覚める前に見えた景色と同じだ |
| パスカル | って事は、やっぱり…港から出たシルヴァラントの船に敵が乗ってるんだね |
| アリーシャ | ああ。という事は…船に乗り込んだ少女もエドナ様で間違いないだろう |
| ルカ | でもどうして、島に沿って船を進めてるのかな? |
| ルカ | 島から離れた方が追跡され難いと思うんだけど… |
| パスカル | うーん、たぶん…船の事がバレるはずないって思ってるんじゃないかな? |
| ロイド | 確かに、アスベルがこの景色を見てなかったら、あいつらが船に乗ってるなんて考えもしなかったよな |
| アリーシャ | ああ…。島の周辺に留まっているという事は、まだ何か狙いがあるのだろうか… |
| セネル | …… |
| セネル | これは推測だが、奴らは川を下って、エルピスの塔に向かうつもりなんじゃないか? |
| アイゼン | 何故そう思う? |
| セネル | 逃げる目的で船を出したならとっくに島から離れているはずだ |
| セネル | この航路を行けば、川を下ってエルピスの塔に近付く事が出来る |
| セネル | 俺が、海賊達を追って湖に出た進路と同じだ |
| アリーシャ | つまり敵の最終目的は…サフィアか |
| セネル | ああ、おそらくな。シルヴァラントの船には小舟が積まれていたはずだ |
| セネル | 大型船では無理だが、小舟なら川を下れる |
| アスベル | だが、砂漠地帯で回収されたマナリスがなければ塔の扉は開かないはずだ |
| パスカル | それは… |
| パスカル | 本部にいるシルヴァラントの貴族が最後のマナリスを持ち出す算段だったのかも |
| アリーシャ | あり得ない話ではないな。今は、セネルの推測に賭けてみるしかないだろう |
| アイゼン | ああ。お前の言っている河口はどこにある |
| セネル | この先だ。このまま船を進めよう |
| アイゼン | 頼んだ |
| アイゼン | …… |
| ルカ | アイゼン…エドナの事、心配、だよね… |
| アイゼン | …たった一人の、家族だからな |
| パスカル | それにしても、まさか島にアイゼンの妹が来てたなんてね |
| アリーシャ | そう言えば…セネルはアイゼンの妹を知っていたようだが、二人には面識があったのか? |
| セネル | 前に、妹を捜して港に来ていたアイゼンと話をした |
| セネル | エルピスの塔の近くで妹と似た声を聴いたから島にいないか捜してたんだよな? |
| アイゼン | ああ |
| ロイド | そうなのか!?言ってくれれば俺達も捜したのに |
| アイゼン | 確証がなかったからな。まさか、本当に島に来ているとは思っていなかった |
| アイゼン | …フェニックス。あいつは何故、この島に来ていたんだ |
| フェニックス | 少し前…エドナが住んでいた山に導師が現われた |
| フェニックス | あの子は導師から、アヴァロン島に願いをかなえる輝石があると聞いて旅に同行したのだ |
| アリーシャ | …! |
| パスカル | 導師って…スレイの事? |
| フェニックス | …!汝はスレイを知っているのか |
| パスカル | うん、一緒に旅をした事があるんだ。島でも何回か会ったよ |
| ロイド | 俺も、島で会う前からスレイの事は知ってるぜ! |
| フェニックス | そうか。導師の仲間が我が友と共にいたとは…数奇な運命だ |
| アイゼン | それで…どうしてエドナは、サフィアに興味を持ったんだ? |
| アイゼン | 人間嫌いのあいつが山を下りるくらい、かなえたい願いがあったのか? |
| フェニックス | 直接口に出す事はなかったが…おそらく、汝の呪いを解きたいと考えていたのだろう |
| アイゼン | …そうか |
| ロイド | エドナも、アイゼンに会いたかったんだな |
| アイゼン | …あいつは今まで何度も呪いの影響を受けて傷付いてきた |
| アイゼン | もう二度とあいつを傷付けないために離れたが…また、巻き込んじまったな |
| ルカ | アイゼン… |
| セネル | …心配するな。必ず、シルヴァラントの船に追いついてみせる |
| セネル | そしたら、みんなで妹を助け出せばいい |
| アリーシャ | セネルの言う通りだ。必ずエドナ様を救い出そう…私達の、力で |
| アイゼン | お前ら… |
| ロイド | そうと決まれば、早く船を見つけねえとな! |
| アスベル | ああ。甲板に散って、周囲を確認しよう |
| フェニックス | 友よ、どうやら…この島で、よい仲間を得たようだな |
| アイゼン | …ああ、そうだな |
| ルカ | こっちに船はいないみたい…。パスカル、そっちはどう? |
| パスカル | 同じく、何も見えないよ~ |
| | …オオ…オ… |
| ロイド | ん…?今、何か聞こえなかったか? |
| | |
| | ガタンッ── |
| アリーシャ | くっ…何だ?この揺れは…! |
| アイゼン | 暗礁にでも乗り上げたのか? |
| セネル | いや、違う。この辺りの海は深い |
| セネル | 岩やサンゴ礁が船底に当たる事はないはずだ。これは… |
| ルカ | …!あれって… |
| ルカ | みんな!海の中に、何かの影が見えるよ |
| | ギャオオオ! |
| アスベル | 魔物だ…!それも、すごい数の! |
| セネル | 島周辺の海域でこれだけの魔物が出たのは初めてだ…! |
| | ザッバーン |
| | ギャオオオ! |
| パスカル | うわあああ!海から飛び出してきた! |
| アスベル | 下がれ、パスカル! |
| アスベル | ──裂空刃! |
| | ギャオオオン…! |
| | バシャン! |
| ルカ | やった…! |
| | ドコンッ! |
| セネル | くっ…!魔物の数が多すぎる |
| セネル | このままじゃ船体が持たない。速度を上げて魔物を振り切るぞ! |
| アイゼン | わかった。お前は舵に集中しろ |
| アイゼン | 海から飛び出してくる奴らは、俺達で片付ける |
| セネル | ああ、頼んだ |
| | ザッバーン |
| ロイド | また来たぞ…! |
| アリーシャ | 任せろ!──裂駆槍! |
| | ギャオオオン…! |
| パスカル | まだまだ下にいるよ!みんな、気を付けて! |
| フェニックス | ふっ…。この程度の魔物に遅れを取る我ではないわ! |
| scene2 | 同じ願い |
| セネル | ──追って来ないな。どうやら魔物達は諦めたようだ |
| パスカル | はー、よかった。船が沈んじゃうんじゃないかってヒヤヒヤしたよ |
| アリーシャ | ああ…。あのまま攻撃を受け続けていたら危なかった |
| アイゼン | …いつの間にか、かなり進んで来たな。ここはどの辺りだ? |
| セネル | 進路に問題はない。もうそろそろ、河口が見えてくる頃だ |
| アスベル | …!みんな、あれを見てくれ |
| アリーシャ | あの旗は…!間違いない、シルヴァラントの船だ |
| セネル | あそこで停泊しているようだな。無事に追いついてよかった |
| ロイド | セネル、あの船に出来るだけ近付いてくれ! |
| セネル | ああ、わかった |
| ルカ | 近くで見ると、すごく大きいね… |
| パスカル | ん…?あれ… |
| ロイド | どうかしたのか、パスカル? |
| パスカル | 甲板のところに、誰か立ってるみたいだよ |
| フェニックス | …!まさか、あれは── |
| | |
| エドナ | …… |
| | |
| アイゼン | エドナ…! |
| フェニックス | 何故、我らに反応しない…? |
| フェニックス | 何か様子がおかしい。攫われた時と、服装も変わっている |
| パスカル | もしかしたら、アスベルと同じ首飾りを付けられてるかもしれないね |
| アスベル | だから、港でセネルの問いかけに答えなかったのか |
| アイゼン | ──許さねえ。あいつに手を出した奴には落とし前をつけさせる |
| アイゼン | セネル、船を横につけられるか。このままシルヴァラントの船に乗り込む |
| セネル | ああ、任せろ! |
| scene1 | 兄として |
| セネル | 近付くのは、ここまでが限界だ。後は乗り込むしかない |
| セネル | 船に積んである梯子を使ってくれ。舷側にかければあっちの甲板に登れる |
| アイゼン | 助かった。礼を言う |
| パスカル | 何かあった時のために、誰か一人は船にいた方がいいよね? |
| セネル | ここには俺が残ろう。船はいつでも動かせるようにしておく |
| ロイド | ああ、わかった!それじゃ、早速梯子をかけて登ろうぜ |
| | |
| アリーシャ | …!待て、ロイド。向こうの甲板に人の動きがある |
| アスベル | こっちの動きに気付かれたみたいだな… |
| ルカ | 甲板から縄を落としてるよ!この船に乗り込むつもりなんだ…! |
| アスベル | 迎え撃とう。ここで引き返すわけにはいかない! |
| パスカル | うん!縄の数からして、降りてくるのは一人や二人じゃなさそうだね |
| フェニックス | ふん、何人来ようとも返り討ちにしてくれる! |
| | シュルシュルシュル── |
| | ドタドタドタッ |
| 船の男1 | まさか、この船を追ってくる奴がいるとはな… |
| 船の男1 | 悪いが、お前達には海の藻屑となってもらう |
| アイゼン | 黙れ。海に沈むのはてめえらの方だ |
| アイゼン | 妹に手を出した事、後悔させてやる |
| 船の男1 | …ちっ、かかれ!一人残らず排除しろ! |
| 船の男2 | うおおおおお! |
| アイゼン | ──おらっ! |
| | ドガッ! |
| 船の男2 | ぐふっ…!? |
| パスカル | うわ…、痛そ~ |
| ロイド | アイゼンの奴、かなり怒ってるみたいだな。いつもより容赦ないぜ… |
| フェニックス | 戦場で問答は無用。我らも後に続くぞ! |
| ルカ | うん! |
| scene2 | 兄として |
| | バキィッ |
| 船の男3 | ぐ…う… |
| アイゼン | ちっ、キリがねえな |
| アリーシャ | ああ…。一向に数が減らない |
| アリーシャ | おそらく敵は、ここで私達の体力を消耗させるつもりだろう |
| フェニックス | おのれ、どこまでも姑息な真似を…! |
| セネル | …ここは、俺に任せろ |
| パスカル | セネル? |
| セネル | ──魔神拳・双牙! |
| 船の男達 | ぐうう…!? |
| アスベル | …!敵の連携が崩れた…! |
| セネル | 今だ!敵が怯んでいる間に、お前達は船に乗り込め! |
| セネル | 甲板に降りてくる敵は俺が引き付ける |
| ルカ | でも、それじゃセネルが…! |
| ロイド | お前を残して行けるわけないだろ! |
| セネル | 甲板に上がって縄を切れば敵は降りて来られない |
| セネル | お前達が甲板に着くまでの時間稼ぎだ |
| アリーシャ | しかし… |
| 船の男1 | くそ、いつまで倒れているつもりだ!早くあいつらを始末しろ! |
| アイゼン | …悩んでいる暇は、なさそうだな |
| セネル | 行け!俺の事は気にするな |
| セネル | 必ず、マナリスを奪還しろ |
| ロイド | …わかった。任せろ! |
| アスベル | 梯子をかけよう。ルカ、手伝ってくれ! |
| ルカ | うん! |
| アスベル | …よし、これで登れるな。俺が先陣を切る |
| ロイド | ああ、俺達も後に続くぜ! |
| アイゼン | …上に着いたら縄を切る。それまで、持ち堪えろ |
| セネル | ああ、わかった |
| セネル | アイゼン。必ず、妹を助けてこの船に戻って来い |
| セネル | 妹が困っていれば、何があろうと、どこにいようと即座に駆け付ける。それが兄というものだからな |
| アイゼン | …ああ、そうだな |
| セネル | …さてと後はあいつらを信じてここを守り切るだけだな |
| 船の男1 | 何をしてる…!あの梯子を落とせ…! |
| セネル | ここから先は…誰一人通す気はない |
| セネル | …さあ、来い!俺が相手だ! |
| scene1 | 黒幕 |
| | シュタッ── |
| 船の男1 | な…!こいつ、いつの間に── |
| アスベル | はあっ! |
| | ドサッ… |
| 船の男2 | っ…敵襲だ!船内にいる奴らを集めろ! |
| ロイド | くそっ、やっぱりここも敵だらけだな |
| アリーシャ | ああ…。この先も、慎重に行こう |
| | シュタッ── |
| アイゼン | これで全員だ!縄を切れ! |
| ルカ | うん、任せて!──やあっ! |
| | ザシュッ! |
| 船の男3 | うあああああ! |
| | ドボン! |
| ロイド | よし…!これで、あいつらは船に乗り込めなくなったな |
| アイゼン | ああ。下はセネルに任せて、俺達は先へ進むぞ! |
| 船の男2 | くそ、縄をやられた…!こうなったら… |
| フェニックス | …!あれは── |
| フェニックス | あの男が持っている箱が例の装置だ…! |
| パスカル | 装置を使って何かするつもりだよ! |
| アリーシャ | させるか!──やあっ! |
| | バキッ! |
| 船の男2 | な…!? |
| フェニックス | 装置の起動を槍による攻撃で防いだのか…見事な動きだ! |
| | バキ…バキバキ… |
| パスカル | 見て!今の一撃で、装置が崩れてくよ |
| | パリィィン |
| 船の男2 | こ、これは… |
| ルカ | 箱の中から、マナリスが…!? |
| 船の男2 | どういう事だ…!?何で、これが箱の中に!? |
| 船の男4 | くそ…!俺達は、あいつに騙されてたんだ! |
| 船の男5 | 知らず知らずの内に代償を払わされてたって事か…!? |
| アイゼン | …連中も、動揺しているようだな |
| アスベル | ああ。箱の中身がマナリスだと知らなかったみたいだ |
| 船の男2 | ちっ、一先ずこいつらを倒すぞ! |
| 船の男2 | あいつを問い詰めるのは、その後だ! |
| フェニックス | 構えろ!来るぞ! |
| アイゼン | 覚悟はいいか?死神の力、見せてやる…! |
| scene2 | 黒幕 |
| ルカ | ふう…何とか全員倒したみたいだね。みんな、大丈夫? |
| アリーシャ | 問題ないよ。敵が持っていたマナリスも、無事に回収出来た |
| パスカル | よーし!この調子で、残りのマナリスも取り戻さないとね! |
| アスベル | 問題は、この船のどこにマナリスが隠されているかだな |
| アイゼン | まずは、奥にある階段を上って船橋を目指すぞ |
| ルカ | エドナを助けるんだね? |
| アイゼン | ああ。それに…船橋にある舵を奪えば船の動きを封じられる |
| アイゼン | その後で、船内を探ってマナリスを見つけ出せばいい |
| パスカル | お~!すごく、海賊っぽいね |
| アイゼン | 海賊だからな |
| ロイド | そんじゃ、船橋に向かおうぜ! |
| アリーシャ | ああ。どこに敵が潜んでいるかもわからない。警戒して進もう |
| | |
| ルカ | …!みんな、見て。舵の傍に、誰か立ってるよ |
| エドナ | …… |
| アイゼン | エドナ! |
| | コツコツコツ… |
| ロイド | ん…?柱の陰から、エドナの方に誰か歩いて来るぞ! |
| アリーシャ | …!あなたは…! |
| | |
| エメロード | ──驚きました。まさか、あなた方がここまで来るなんて |
| ルカ | エメロードさん…!よかった、無事で── |
| アスベル | 待て。何か…様子が変だ |
| ロイド | エメロードが手に持ってるのって、マナリス…だよな? |
| パスカル | どうしてエメロードがマナリスを…? |
| エメロード | 私がマナリスを奪うように指示したからです |
| パスカル | っ…!そんな… |
| アリーシャ | あなたが…黒幕だったのか |
| エメロード | ふふ… |
| scene1 | 夢見る傀儡 |
| アリーシャ | あなたが…黒幕だったのか |
| エメロード | ふふ… |
| ロイド | 黒幕って…ちょっと待てよ。どういう事だ? |
| ロイド | エメロードは俺達が森で戦った奴らに追われてたんじゃなかったのか? |
| アスベル | ああ…。俺とエレノアは彼女が男達に囲まれているのを見て助けようとしたんだ |
| エメロード | あの時は、あなた方の動きを鈍らせるためにわざと人質に取られたのです |
| アイゼン | …アスベルとエレノアを追い詰めるために打った芝居だった、というわけか |
| エメロード | その通りです。砂漠地帯の失態を繰り返すわけにはいきませんでしたから |
| エメロード | 確実に装置を取り付けるために最善の策を講じました |
| アリーシャ | 初めから、狙いは四大国連合調査隊だったのか… |
| パスカル | アスベルの首についてた装置はエメロードが作ったの? |
| エメロード | はい。私が持ち得る技術の全てを投じて完成させた装置です |
| アイゼン | エドナの首に付いてる装置も同じ物だな |
| エメロード | ──気が付いていましたか。彼女は今、自らの意志で行動する事は出来ません |
| エメロード | 私が装置を使って彼女の身体を支配していますから |
| エドナ | …… |
| エメロード | 対象の意識を乗っ取り、意のままに操る事が出来る…素晴らしい発明だと思いませんか? |
| フェニックス | 貴様…! |
| パスカル | …… |
| ルカ | じゃあ、もしかして首飾りを使ってアスベルを操っていたのも── |
| エメロード | ええ、私です |
| アスベル | …! |
| エメロード | 装置で記憶を読み取り言動を真似る事で、彼が調査隊を裏切ったように見せかけました |
| アスベル | 何故そんな事を…! |
| エメロード | 勿論、あなたを囮として利用するためです |
| エメロード | 私達がエルピスの塔へ向かう間、調査隊の注意を逸らしておく必要がありましたから |
| アリーシャ | そんな事のために、手の込んだ芝居まで打ってアスベル達を陥れたのか!? |
| エメロード | ふふ…お蔭で、調査隊の目を欺く事が出来ました |
| アイゼン | …ルカ達が砂漠で回収したマナリスは調査隊の中に紛れ込んだ内通者が持ち出す算段だったのか? |
| エメロード | ええ、その通りです。外部に気を取られている時は、内部に注意がいかないものですから |
| エメロード | 私の計画通りに進んでいれば今頃、調査隊に気付かれる事なくサフィアを手にしていたでしょう |
| エメロード | ──それがまさか、こうも容易く追いつかれてしまうとは… |
| エメロード | あなた方は、どうやってこの船を探し出したのですか? |
| パスカル | 首飾りを破壊した時にアスベルとエメロードの意識が同期したんだよ |
| エメロード | …なるほど。その時に、私の居場所がわかる何かが見えたというわけですね |
| エメロード | 捨て駒として利用するつもりが、こちらの手を読まれる事になるとは…予想外でした |
| ロイド | 捨て駒って…。お前、本気で言ってるのか!? |
| エメロード | はい。彼には全ての罪を背負って死んでもらうつもりでした。──哀れな道化として |
| アスベル | …… |
| エメロード | しかし、あなた方が予想していたよりも早く首の装置に気付いてしまった |
| エメロード | あの短時間で装置のカラクリに気が付いたその洞察力には驚かされます |
| パスカル | …エメロードはマナリスを強奪するために、アンマルチアの技術を使ってたんだね |
| パスカル | 天族に反応する装置に…マナリスが入った箱形の装置もエメロードが発明したものでしょ? |
| パスカル | それに…マナリスを運ぶために、波動を遮断する装置を使ったんじゃない? |
| エメロード | その通りです。マナリスを運んだ経路を調査隊に知られるわけにはいきませんから |
| アリーシャ | だから、レーダーでマナリスの反応を探知する事が出来なかったのか… |
| アイゼン | 断崖の集落で目覚めた後、俺達に協力したのは情報を得るためか? |
| アイゼン | 過去の記憶を失っていると言ったのも、虚言だろう |
| エメロード | ええ、私がサフィアを手に入れるまであなた方に余計な情報を与えたくありませんでしたから |
| エメロード | 記憶がないと偽ったまま、仲間としてふるまっていた方が何かと都合がよかったのです |
| ルカ | そんな… |
| ロイド | お前、怪我してまでパスカルの事を助けてただろ?あれも演技だったって言うのか? |
| エメロード | はい。あなた方の信頼を得るためにあえて傷を負ったのです |
| パスカル | エメロード… |
| フェニックス | 信頼を寄せる仲間を裏切り、あまつさえ利用するとは…汝には人の心がないのか! |
| エメロード | 目的を達成するために犠牲を払うのは当然の事でしょう |
| ロイド | こいつ…! |
| エメロード | ふふ…サフィアを手にするのは他の誰でもない、この私です |
| アリーシャ | あなたにサフィアは渡さない!奪ったマナリスを返して、大人しく投降するんだ |
| アリーシャ | 今頃、本部にいるシルヴァラントの貴族達も拘束されているはずだ |
| エメロード | それがどうしたのですか?利用価値のない駒は切り捨てるまでです |
| エメロード | 多少計画は狂いましたが…マナリスとこの天族の娘を使えばどうとでもなるでしょう |
| エドナ | …… |
| アイゼン | てめぇ…! |
| ロイド | マナリスを取り戻す前に、エドナの首飾りを破壊するぞ! |
| ルカ | うん…! |
| エメロード | そう簡単にいくと思っているのですか? |
| エメロード | ──彼らを始末しなさい |
| | ザザザッ |
| アリーシャ | …!伏兵か…! |
| 船の男6 | 囲め!一人残らず片付けるぞ! |
| 船の男7 | ああ! |
| アスベル | 俺達が話している間に、船の中から出てきたみたいだな… |
| フェニックス | く…!船内にまだこれだけ人が残っていたのか |
| エメロード | 真相を知られた以上、皆さんを生かしておく事は出来ません |
| エメロード | あなた方には、ここで死んでいただきます |
| 船の男6 | かかれ! |
| | ダッダッダ── |
| ルカ | みんな、気を付けて!来るよ…! |
| アイゼン | ちっ!上等だ! |
| scene2 | 夢見る傀儡 |
| 船の男7 | うぐ…! |
| | ドサッ |
| フェニックス | ふん、脆弱な奴らだ |
| エメロード | …やはりその者達では力不足でしたか |
| エドナ | …… |
| アイゼン | …! |
| エメロード | 彼女が、あなた方の相手です。存分に戦ってください |
| エドナ | ──エアプレッシャー |
| アイゼン | っつ…! |
| ルカ | アイゼン…! |
| エドナ | ──インブレイスエンド |
| アイゼン | ちっ! |
| エメロード | 逃げるだけですか?…やはり妹には手が出せないようですね |
| アリーシャ | 兄妹だと知っていて、わざとアイゼンに攻撃をしかけたのか…! |
| パスカル | 装置を使ってエドナの記憶を読んでるから、厄介だね |
| フェニックス | く…!どこまで悪逆非道な行いを重ねるつもりだ! |
| エドナ | ──ロックランス |
| アリーシャ | くっ…! |
| アイゼン | やめろ、エドナ…! |
| エメロード | 話しかけても、無駄です。彼女は夢の中に囚われている |
| エメロード | あなた方の声が届く事はありません |
| エドナ | …… |
| scene3 | 夢見る傀儡 |
| エドナ | …ここでいいわ。向こうでお兄ちゃんが待ってるから |
| スレイ | そっか。じゃあ、ここでお別れだね |
| スレイ | 今までありがとう、エドナ。…短い間だったけど、一緒に旅が出来て楽しかったよ |
| エドナ | スレイ… |
| ライラ | サフィアの力でアイゼンさんの呪いが消えたので、もう何も心配する事はありませんね |
| ライラ | エドナさんの願いがかなって本当によかったです |
| ライラ | アイゼンさんとお二人で幸せに暮らしてください… |
| エドナ | 大げさね。前の生活に戻るだけよ |
| エドナ | …ただ、それだけ |
| ミクリオ | こんな時くらい、素直に喜べばいいだろう。誰もからかったりしない |
| エドナ | 生意気ね、ミボのくせに |
| エドナ | あなたこそ、素直に言っていいのよ?ワタシと離れるのが寂しい、って |
| ミクリオ | …別に、思ってない |
| スレイ | ミクリオも素直じゃないな |
| ライラ | お二人のやり取りを見られなくなると思うととても寂しいですわ |
| ミクリオ | ──スレイ。そろそろ行かないと、日が暮れる |
| スレイ | そうだな。エドナ、オレ達はもう行くよ |
| エドナ | そう。…あまり無茶しないようにね、スレイ |
| スレイ | うん!じゃあ、また! |
| スレイ | 近くを通る事があったら会いに来るから!アイゼンによろしく! |
| エドナ | …… |
| エドナ | …ありがとう。あなた達との旅も、悪くなかったわ |
| アイゼン | 別れは済んだのか? |
| エドナ | ええ。もう行ったわ |
| アイゼン | そうか |
| エドナ | ──お兄ちゃんは、これからずっとここにいてくれるのよね? |
| アイゼン | ああ。お前の傍にいる |
| アイゼン | もう俺の呪いが原因でお前を傷付ける心配もないからな |
| エドナ | …そう |
| エドナ | なら、時間は沢山あるわね。とりあえず… |
| エドナ | 久しぶりに、お兄ちゃんの作ったパルミエが食べたいわ。作ってくれる? |
| アイゼン | ああ、わかった |
| | |
| エドナ | …… |
| エメロード | 今、彼女は幸福な夢の中にいます。そこから抜け出そうとは思わないでしょう |
| アリーシャ | そんなものは偽りにすぎない! |
| エメロード | だからと言って、手放せると思いますか? |
| エメロード | ずっと願い続けてきた世界にいられる幸せを |
| フェニックス | まさか…エドナは、兄と共に歩む未来を夢に見ているのか |
| アイゼン | …… |
| エドナ | ──跪きなさい |
| アスベル | …!来るぞ! |
| アイゼン | くっ…! |
| | ガシッ |
| エドナ | …! |
| アイゼン | ──目を覚ませ、エドナ! |
| エドナ | お兄ちゃん…? |
| アイゼン | …! |
| パスカル | アイゼン、危ない…! |
| エドナ | …さようなら、お兄ちゃん |
| アイゼン | ぐっ…!? |
| scene1 | 兄妹の流儀 |
| アイゼン | ぐっ…!? |
| ロイド | アイゼン!大丈夫か!? |
| アイゼン | ああ…。大した傷じゃない |
| エドナ | …とっさに身体を逸らして直撃を避けたのね |
| エドナ | さすが、お兄ちゃん。簡単には倒れてくれなさそうね |
| アイゼン | てめぇ!いつまでそのくだらねえ茶番を続けるつもりだ! |
| エメロード | ふふ…気に入りませんでしたか? |
| パスカル | やっぱり…エメロードがアイゼンを油断させるためにエドナの振りをしたんだね |
| ルカ | 酷い…!どうしてそんな事が出来るんだ! |
| エメロード | 首に装置を付けられた者は私の思うがままに動く人形…言わば、傀儡です |
| エメロード | 手先を使って隙をつく事に、何か問題がありますか? |
| フェニックス | 貴様…!妹を想う兄の心まで利用すると言うのか! |
| エメロード | ええ。使える物は全て利用します |
| アスベル | …人は物じゃない。他人の思考を奪って身体を乗っ取るあなたのやり方は、非道だ |
| エメロード | あなた達には私の崇高な考えが理解出来ないでしょう |
| エメロード | これ以上の会話は無意味です。この少女を傷付けたくないのなら大人しく死を受け入れなさい |
| アリーシャ | …!仕掛けて来るぞ! |
| エドナ | ──エアプレッシャー! |
| ルカ | …! |
| フェニックス | くっ…! |
| | ドンッ! |
| | ドサッ |
| ルカ | うっ… |
| フェニックス | 間一髪だったな… |
| パスカル | 二人共、大丈夫!? |
| ルカ | う、うん…。何とか… |
| ルカ | ありがとう、フェニックス。助かったよ |
| フェニックス | 礼には及ばぬ。それよりも、今は一刻も早く首飾りを破壊しなければ |
| アリーシャ | エドナ様の術が厄介ですね…。今のままではろくに近付く事も出来ない |
| アイゼン | 俺とパスカルの術であいつの動きをかく乱する。お前達はその隙に接近しろ |
| ロイド | ああ、わかった! |
| パスカル | そんじゃ、行くよ!──ウィンドニードル! |
| エドナ | 無駄よ |
| アイゼン | これならどうだ?──フリジットフォトン! |
| エドナ | くっ…! |
| アリーシャ | 体勢が崩れた!今の内だ! |
| ロイド | 両側から挟み撃ちにするぞ、アスベル! |
| アスベル | ああ! |
| アスベル | ──はああ! |
| | ガキーンッ! |
| エドナ | つっ…! |
| ロイド | 今だ、首飾りを…! |
| アリーシャ | 任せろ…! |
| エドナ | ──甘く見ないで |
| | カシーン! |
| エドナ | …… |
| ルカ | あれは…!マナリス…!? |
| エドナ | ──インブレイスエンド! |
| ロイド&アスベル | ぐああっ! |
| アリーシャ | ロイド!アスベル! |
| エメロード | ふふふ……あははは!素晴らしい… |
| エメロード | 予想以上の力ですね |
| パスカル | マナリスを使って術の威力を増幅させたの…!? |
| エメロード | その通りです |
| アイゼン | てめぇ!エドナにマナリスを使わせやがったのか! |
| エメロード | 心配しなくても天族であるこの娘なら、マナリスの代償を最小限に抑えられます |
| ロイド | それでも、全く負担がないわけじゃないだろ! |
| エメロード | それが何だと言うのですか?これだけの力を発揮出来るなら、安い対価でしょう |
| パスカル | そんな…技術を使って誰かが不幸になるなんておかしいよ…! |
| パスカル | 人を傷付けるエメロードのやり方は絶対に間違ってる! |
| エメロード | …あなたも、かつてこの島にいたアンマルチア族の者達と同じような事を言うのですね |
| エメロード | 私には理解出来ません |
| エメロード | 高度な技術を使って他の種族を意のままに操る事が出来るのに何故、実行しないのか… |
| アリーシャ | 身に余る力は、人を不幸にする。アンマルチア族の技術者達は、それをわかっていたんじゃないのか |
| エメロード | 代償を恐れ使われない技術など存在していないのと同じです |
| エメロード | 技術は使われてこそ真価を発揮するもの──何故それがわからないのですか? |
| ロイド | 何言ってんだ! |
| ロイド | 自分の手を汚さないで他人に代償を支払わせるお前に共感する奴なんていない! |
| エメロード | …そうですか。ならば、マナリスの力を見せてあげましょう |
| エメロード | あなた方は強大な力の前に成す術もなくひれ伏すのです! |
| エメロード | その時初めて…私達が発明した技術の偉大さを知る事になるでしょう! |
| エドナ | …… |
| アリーシャ | いけない…! |
| アリーシャ | ──逆雲雀! |
| エドナ | く…! |
| アスベル | 彼女にマナリスを使う隙を与えないようにするぞ! |
| ルカ | うん!──裂空斬! |
| | ガキーンッ! |
| エドナ | 面倒ね… |
| アイゼン | 俺達も行くぞ。隙をみてあいつの首飾りを破壊する |
| ロイド | ああ、わかった! |
| フェニックス | …我が友よ、早々に決着をつけるぞ |
| フェニックス | これ以上、エドナに苦しい想いはさせたくない |
| アイゼン | 心配するな、フェニックス。必ず、あいつを取り戻してみせる |
| scene2 | 兄妹の流儀 |
| アイゼン | エドナ、パルミエが焼けたぞ |
| エドナ | 美味しそうね。それに、いい香り… |
| アイゼン | 自家製のバターを生地に練り込んだ自信作だ |
| エドナ | 素材から拘るところは相変わらずね。焼き加減も完璧だし… |
| アイゼン | お前が食べたい時はいつでも作ってやる |
| エドナ | …ありがとう |
| エドナ | それよりも、お兄ちゃん。ワタシとずっと一緒にいてくれるって言ったけど… |
| エドナ | 本当は、海で冒険を続けたいんじゃないの? |
| アイゼン | いや、それはない。お前一人をここに残して、海賊を続けるつもりもないからな |
| エドナ | …前はワタシを置いて、しょっちゅう旅に出てたわよね |
| エドナ | いつも勝手に飛び出して行ったくせに…どうして今は一緒にいてくれるの? |
| アイゼン | 俺にとって、お前以上に大切なものはないと気付いたからだ |
| アイゼン | 安心しろ。これからは何よりもお前を優先する |
| エドナ | …じゃあ、ワタシがここでずっと一緒に過ごしたい…って言ったらどうする? |
| アイゼン | それがお前の願いなら、俺はここを動かない |
| エドナ | ──それがお兄ちゃんの流儀に反する事でも? |
| アイゼン | ああ |
| | |
| エドナ | やっぱり…偽物なのね |
| エドナ | お兄ちゃんは、そんな事言ったりしないもの |
| アイゼン | エドナ…?何を言って── |
| | |
| | ブンッ |
| エドナ | 近付かないで。…本当は、ずっとおかしいと思ってたの |
| エドナ | お兄ちゃんは例え呪いが消えても海賊をやめたりしないわ |
| エドナ | 自分がこうだと決めたら、迷わずワタシとの別れを選ぶ。…それが、お兄ちゃんだから |
| アイゼン | …… |
| エドナ | 頭ではわかってるのに、お兄ちゃんってだけで…見ない振りをしてたけど |
| エドナ | でもやっぱり…偽物は、偽物ね。全然違うもの |
| アイゼン | ここから抜け出すつもりか?現実に戻れば、俺と離れる事になるんだぞ |
| エドナ | 結構よ。あなたは、ワタシの知ってるアイゼンじゃない |
| エドナ | いつも勝手にいなくなって何でも勝手に決めて…どうしようもない家族だけど |
| エドナ | ワタシがずっと会いたかったのはそんなお兄ちゃんだから |
| アイゼン | …… |
| エドナ | どんなに辛い事があっても現実から逃げたりしない |
| エドナ | ワタシはアイゼンの妹よ。自分の舵は、自分で取るわ |
| | |
| エドナ | …… |
| パスカル | …!エドナの動きが止まったよ |
| ルカ | アスベルの時と同じだ…! |
| ロイド | アイゼン!今の内に、早く! |
| アイゼン | ああ! |
| エドナ | おにい…ちゃ…ん |
| アイゼン | …! |
| アイゼン | 今、お前の舵を戻してやる |
| アイゼン | ──俺の妹を返してもらうぞ! |
| | パキッ… |
| エドナ | つっ…! |
| | 願いの代償 |
| アイゼン | ──俺の妹を返してもらうぞ! |
| | パキッ… |
| エドナ | つっ…! |
| | カシャンッ──… |
| フェニックス | …!後の事は頼む! |
| ロイド | フェニックス…!? |
| フェニックス | 我はまだ、エドナに正体を明かすわけにはいかぬのだ! |
| アスベル | な、何だ…? |
| ルカ | フェニックスが、マスコットに…!? |
| | |
| エドナ | …うっ… |
| アイゼン | エドナ…! |
| エドナ | …お兄、ちゃん…? |
| エドナ | …… |
| アイゼン | おい…!しっかりしろ、エドナ! |
| アリーシャ | …心配ない。眠っているだけのようだ |
| パスカル | マナリスの力を使いすぎて気を失ったんだろうね |
| パスカル | 呼吸も安定してるし、しばらくしたら目を覚ますと思うよ |
| アイゼン | …そうか |
| エメロード | ──まさか、装置を取り付けた者が、次々に精神から私を追い出そうとするとは… |
| エメロード | どうやらこの装置は失敗作だったようですね |
| アイゼン | …… |
| アイゼン | ──パスカル。エドナを頼む |
| パスカル | …うん、任せて |
| エメロード | それにしても…天族を失うとは、惜しい事をしました |
| エメロード | 妹を人質に取って、あなたが私の命令に従うように策を練る方がよかったかもしれませんね |
| | |
| アイゼン | 黙れ! |
| | |
| アイゼン | てめぇだけは、絶対に許さねぇっ!! |
| エメロード | ふふっ |
| | バシュウッ |
| アイゼン | くっ…!? |
| ルカ | はじき返された…!? |
| パスカル | 気を付けて、みんな…! |
| パスカル | エドナの時みたいに、マナリスを使って術の力を増幅するかもしれないよ! |
| ロイド | その前に倒すぞ! |
| アスベル | ああ!加勢する! |
| ロイド | ──魔神連牙斬! |
| アスベル | ──葬刃! |
| エメロード | 無駄です |
| ロイド&アスベル | ぐっ…!? |
| ルカ | ロイド!アスベル! |
| エメロード | ──逃しませんよ。死になさい! |
| アリーシャ | ──させない! |
| エメロード | …防がれましたか |
| ロイド | ありがとう、アリーシャ。助かったよ |
| アリーシャ | 間に合ってよかった。…しかし、気は抜けない |
| アリーシャ | マナリスを使われたら、次は防ぎきれるかどうか… |
| | |
| エメロード | ──これを、警戒しているのですか? |
| ルカ | …! |
| エメロード | …… |
| | |
| アスベル | …?どうしてマナリスを使おうとしないんだ? |
| パスカル | もしかして…使わないんじゃなくて、使えないんじゃないかな? |
| ルカ | どうしてそう思うの? |
| パスカル | マナリスの使用には、代償が伴うでしょ? |
| パスカル | エメロードは天族じゃないし、危険を冒してまでマナリスを使う気がないのかも |
| エメロード | 当たらずといえども遠からずといったところですね |
| エメロード | 確かに、私はマナリスを使えません |
| エメロード | しかしそれは、代償を恐れているからではなく…支払う代償を持ち得ていないからです |
| エメロード | サフィアやマナリスは、寿命を代償に力を発揮する物ですから |
| ルカ | …!寿命を…? |
| アイゼン | …だから、寿命を持たない天族は最小限の代償でマナリスを使えるというわけか |
| エメロード | その通りです |
| エメロード | ヒューマノイドはそもそも寿命という概念から外れているのでマナリスを扱えません |
| アリーシャ | …箱形の装置にマナリスを入れて男達の目を欺いていたのは、あなたの代わりに使用させるためか |
| エメロード | はい。マナリスの使用に危険が伴う事は、調査隊が周知していますから |
| エメロード | ああでもしないと、彼らはマナリスを使わないでしょう |
| ロイド | 自分が代償を払えないからって仲間を騙してマナリスを使わせてたのかよ!? |
| エメロード | 仲間…?何度も言わせないでください |
| エメロード | 彼らはただの手駒にすぎない。生かすも殺すも私の自由なのです |
| アスベル | だが…夢の中でマナリスを使った時には、疲労感があった |
| アスベル | マナリスを使い続けていれば、男達も違和感を覚えるはずだ |
| エメロード | あれは、あなたを夢に留めるためにわざと痛みを感じさせただけです |
| エメロード | 代償が寿命だと知らないあなたはマナリスの使用に苦痛が伴うと考えていた |
| エメロード | だから、痛みを与えたのです。夢の内容に違和感を覚えられると困りますから |
| パスカル | じゃあ、寿命が減ってもマナリスを使ってる人達は何も気付かないの? |
| エメロード | はい。通常はマナリスの使用時に疲労感や倦怠感を感じる事はありません |
| エメロード | 例外として、寿命のない天族のみ身体に負担がかかります |
| パスカル | …エメロードは、技術で人を傷つける事に何も感じないの? |
| エメロード | ええ、全く。技術は使われてこそ真価を発揮するのですから |
| アリーシャ | 他者の命を犠牲にしてもサフィアを使い続けるつもりなのか!? |
| エメロード | そうです。より精巧な装置を作り、サフィアを使うための駒を増やせば… |
| エメロード | あらゆるものを意のままに操る事が出来る! |
| エメロード | 私はサフィアを使い、全ての種族を統べる神になるのです |
| ロイド | そんなの、認められるかよ! |
| アスベル | ああ。技術を悪用して他者を貶めるなんて、間違ってる |
| エメロード | 間違い…?ふふふ……あははは! |
| エメロード | あなた方は知らないだけです。サフィアによって、争いが繰り返されていた事を |
| エメロード | 誰もがあなた方の言う『間違い』を犯してきたのです |
| ルカ | どういう事…? |
| エメロード | 遥か昔、古代のアヴァロン島でサフィアを巡って島民同士が争いを起こしました |
| エメロード | サフィアは全種族の叡智の結晶…手に入れたいと願う者は後を絶たなかった |
| パスカル | そんな… |
| エメロード | 島内の争いをなくすためにサフィアをエルピスの塔に封印し、一時は平穏を取り戻しましたが… |
| エメロード | 技術の恩恵にあやかろうと人々はサフィアよりも力の弱いマナリスを生み出しました |
| アリーシャ | …その後で、私達がカタグラフィで見た他国との戦争が起こったのか… |
| エメロード | そうです。サフィアやマナリスの噂を聞きつけた外部の人間が島に侵入してきました |
| エメロード | サフィアを巡って再びアヴァロン島は戦禍に巻き込まれる事になったのです |
| エメロード | そして最後には…ヘルダルフがサフィアを使って島に瘴気を蔓延させました |
| アイゼン | 記録館で得た情報と一致しているな |
| パスカル | うん… |
| エメロード | 私以外にも、サフィアを欲する人間は大勢います |
| エメロード | これまでも、サフィアを巡って戦争が繰り返されてきました |
| ルカ | だからって、エメロードさんが他人を傷つけていい理由にはならないよ! |
| エメロード | 何故ですか? |
| エメロード | サフィアを発明したアンマルチア族にこそ、その力を使う権利がある |
| アイゼン | …てめぇはさっき装置を改良してサフィアを使うための駒を増やすと言っていたな |
| アイゼン | 何故、回りくどい真似をする?サフィアに願えばいくらでも手駒を増やせるだろう |
| エメロード | いいえ。サフィアであっても、全ての願いをかなえられるわけではありません |
| エメロード | サフィアを使う本人が成しえる可能性がある事しか願いを実現出来ないのです |
| エメロード | アンマルチアの技術を持たない者達は、他者を操る術を持ちません |
| エメロード | だからこそ、私自身が装置を使って手駒を増やす必要があるのです |
| パスカル | それって…寿命を先払いして願いをかなえる時間を短縮してるって事? |
| エメロード | ええ。大金持ちになりたいと願えば、支払った寿命で本人が稼げる範囲の金額が手に入ります |
| ロイド | それじゃ、アイゼンの呪いは… |
| エメロード | 原理がわからない事を解消する手立てはありません |
| エメロード | サフィアを使っても呪いが消える事はないでしょう |
| ルカ | そんな… |
| アイゼン | …… |
| scene1 | 奪還 |
| エメロード | いくら叡智の結晶と言えども…かなう可能性のない願いを実現出来る力はありません |
| エメロード | しかし、夢の中でなら…天族の娘は、幸福な時をすごす事が出来たのです |
| エメロード | なのに、残酷な現実に自ら手を伸ばすとは…愚かですね |
| | |
| アイゼン | ふざけるな!あいつの覚悟を、てめぇに笑わせたりしねぇ |
| ルカ | アイゼン… |
| エメロード | ふふ…悲観しないのですね?自らの願いがかなわないと知ったのに |
| エメロード | 慈悲を乞うなら、私があなた方に優しい夢を見せてあげます |
| アリーシャ | そんなものは必要ない! |
| エメロード | 何故、否定するのですか?大人しく私の手駒になれば望む世界の中で生きられますよ? |
| ロイド | 馬鹿にするな!お前の身勝手な計画はここで潰してやる! |
| エメロード | …マナリスを使えないからと言って私があなた方に劣るとでも? |
| エメロード | この身体は人間であった時よりも全ての機能が向上している… |
| エメロード | そう易々と倒せるなどと思われては困ります |
| アスベル | 確かに、さっき剣を交えた時のあなたの動きは只者じゃなかった。それでも… |
| | チャキッ… |
| アスベル | 俺達は、自分勝手な願いのために四大国の平和を崩そうとしたあなたを倒す! |
| エメロード | …あくまでも、神に逆らうというのですね |
| アイゼン | 神だろうが、何だろうが絶対に許さん |
| アイゼン | エドナを巻き込んだ落とし前はつけさせてもらう! |
| パスカル | あたしも、同じアンマルチア族として、エメロードを止めるよ! |
| エメロード | いいでしょう。口で言っても理解出来ないというなら… |
| エメロード | 力の差を思い知りなさい! |
| scene2 | 奪還 |
| エメロード | 馬鹿な…。こんなはずでは… |
| ルカ | エメロードさん… |
| エメロード | サフィアさえ…マナリスさえ、使えれば…! |
| パスカル | もう止めようよ、エメロード |
| パスカル | エメロードの知識と技術があれば、人を幸せにする事も出来たはずなのに… |
| エメロード | そんな事をして私に何の利があるというのですか? |
| エメロード | 力は行使してこそ、意味がある──。強い人間はその権利を持つのです |
| アスベル | それは違う。本当に強いのは、自分の力を誰かのために使える人だ |
| エメロード | 他者のために力を尽くす?…くだらない |
| アリーシャ | 何故そう言い切れる。人が人を想う気持ちがあるから、今の平和が成り立っているんだ |
| アリーシャ | みんなが必死に紡いだ未来をあなたが摘み取る事は許されない! |
| エメロード | ふふふ…あはははは! |
| アイゼン | 何が可笑しい |
| エメロード | 平和など、まやかしにすぎないのです |
| エメロード | あなた達が知っている歴史は…その事実を語っていないのでしょうが |
| アリーシャ | …話は本部に戻ってから聞こう。あなたの持っているマナリスを渡してもらおうか |
| エメロード | …… |
| エメロード | …いいでしょう、あなた方にこれを返します。どの道、私には使えない物ですから |
| パスカル | エメロード…。本部に戻ったら、あたしも一緒に謝るから…だから… |
| エメロード | …つくづく、甘いですね |
| | |
| エメロード | ──どきなさい! |
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| パスカル | うわっ!? |
| | タタッ…── |
| ロイド | あいつ…!海の方へ向かって…!? |
| アリーシャ | 待て、そっちは…! |
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| | バシャン! |
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| ルカ | エメロードさん…! |
| アイゼン | …まさか、自分から海に飛び込むとはな |
| ロイド | 浮いてこないのか!? |
| アリーシャ | …ああ。どこにも姿が見えない |
| アイゼン | 追い詰められて、自ら死を選んだのか |
| パスカル | そんな…! |
| アスベル | …… |
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| ロイド | 落ち着いたか?パスカル |
| パスカル | うん、大丈夫 |
| ルカ | これからどうしようか…?船にいた人達は、とりあえず捕縛したけど… |
| アリーシャ | 一先ず、本部へ戻ろう。回収したマナリスを渡して事情を説明しなければ |
| アスベル | ああ。サフィアやマナリスの代償が寿命だという件も、早く伝えた方がいい |
| ロイド | そうだな。とりあえず、下にいるセネルを呼んで来ようぜ! |
| セネル | カタはついたようだな |
| アリーシャ | ああ。本部に戻って、この件を報告しようと思う |
| セネル | わかった。俺がこの船を動かして、港までお前達を連れていく |
| ルカ | セネルの船はどうするの? |
| セネル | 船同士を縄で固定すれば牽引出来るから、心配ない |
| セネル | それで…アイゼンの妹は無事なのか? |
| アイゼン | ああ。気を失ってはいるが、命に別条はない |
| アイゼン | 少し休めば、回復するだろう |
| セネル | そうか…。よかったな、無事に妹を取り戻せて |
| アイゼン | お前のお蔭だ。…礼を言う |
| セネル | 大した事じゃない |
| セネル | 前にも言っただろ?島に侵入した海賊達を懲らしめてくれた礼だ |
| アイゼン | ふ…そうだったな |
| セネル | ──船を出すぞ。港に着くまで、お前達は休んでてくれ |
| ロイド | ああ、わかった |
| パスカル | …エドナ、よく眠ってるね |
| アイゼン | ああ。この様子だと、目覚めるまでまだ時間がかかりそうだな |
| ロイド | 目を覚ましたら、エドナと何を話すんだ? |
| ロイド | 会うの、久しぶりなんだろ? |
| アイゼン | …エドナは、俺がこの島にいる事を知らないままだ |
| アイゼン | それなら、会わなかった事にした方がいい |
| ルカ | え…!?どうして? |
| アイゼン | 死神の呪いがある限りこいつと一緒にいる事は出来ない |
| アイゼン | 会わずに別れた方が互いのためだ |
| ルカ | …… |
| ロイド | それじゃ、フェニックスとも会えなくなるな |
| パスカル | この…傘についてるマスコットがフェニックスなんだよね? |
| パスカル | 姿が変わる前に正体を明かすわけにはいかないって言ってたけど… |
| アイゼン | ああ。普段はマスコットの振りをしてエドナを見守っているらしい |
| ルカ | よく、バレないね… |
| ロイド | それで、本部に戻ったらエドナはどうするんだ? |
| アイゼン | フェニックスが言っていた導師にエドナをこの島から連れ出すよう頼むつもりだ |
| パスカル | それなら、研究室に寄るといいよ。スレイはよくあそこにいるから |
| アイゼン | そうか、わかった |
| ロイド | 本部に着いたら、俺達はまずアスベルの疑いを晴らさないとな! |
| アスベル | …… |
| ルカ | マナリスも取り戻したし…大丈夫、だよね…? |
| アリーシャ | …アスベルの処遇については、上の判断を仰ぐしかない |
| ロイド | そんな… |
| アリーシャ | それに、シルヴァラントの貴族達がマナリスの強奪に関わっていた事で、四大国の均衡が崩れる可能性もある |
| アイゼン | 全てが元通りというわけにはいかないようだな |
| アリーシャ | ああ… |
| ロイド | ──アスベル、心配するなよ!俺達が、クラトスに事情を説明するからさ! |
| パスカル | うんうん!ルーク達や弟くんだってアスベルの助けになってくれるよ |
| アスベル | …ありがとう、みんな |