NameDialogue
scene1美脚健脚、格闘少女
スタンふぅ。あの光の柱にも大分近づいたな
ヴェイグみんな、疲れてないか?ずっと歩き通しだから、少し休憩するか?
カイルいえ、大丈夫です!先を急ぎましょう!
レイヴン若い子は元気だねえ…おっさんはもうクッタクタ!そうだ少年、おぶってくれたり──
ラピードワン!ワンワン!
レイヴンうわわ!ちょ、冗談、冗談よワンコ!自分で歩くから、押さないでってば!
カイルはは、ラピードは気合入ってるな!ほらレイヴンさん!あの光の柱までもうすぐですよ!
カイルあそこに、蒼流の神殿があるんですよね?
レイヴンその通り。ハロルドちゃんの話だとあの光の柱は例の核が放ってるものらしいし
ヴェイグラザリスの結界を構築しているエネルギーの供給元か…不気味だな
スタンけど、こっちにとってはいい目印だ。迷わなくて済むもんな!
カイルあの光の柱を目指していけば、核にたどり着ける…!確かに便利ですね!
レイヴンわかってると思うけど、核の破壊は簡単にいかないよ?
スタン白き獅子…ですね。昨日の話だと、蒼流の神殿にはユーリの部隊が…
レイヴンそういう事
カイル…だとしても、絶対に核は壊さないと!ユーリさんも助けなくちゃならないし
カイルって事で…ほら、早く行きましょうよ!
レイヴンふーむ…
レイヴンはあ…。少年、肩の力抜きなって。焦ったってしょうがないから
カイルあ、…ごめんなさい。元世界の運命がかかってると思ったら…
レイヴン気持ちはわからなくもないけどね。こういう大変な時こそ平静を保っていられた方の勝ちよ?
カイルでも、ユーリさんと戦う事になってもレイヴンさんは平気なんですか?…大切な仲間なのに
レイヴン大切な仲間、ね…
レイヴンあいにくだけど、別にそんな立派なもんじゃないよ
カイルえ?でも…みんなが行き先を決める時ユーリさんのところに行くって真っ先に言いましたよね?
ラピードワン!
レイヴンま、青年には借りがあんのよ。ちょっとしたね
レイヴンそれを返しに行くだけ
カイルユーリさんに借り…?それって一体──
レイヴンその話はまた今度、ってね
カイルそうやってまたはぐらかす…
スタンまあまあ、カイル。また話してくれるって言ってるんだし
カイルでも…
ヴェイグレイヴンにもいろいろと事情があるんだろう
ヴェイグ…気になるのはわかるが今は目の前の事に集中するべきだ
カイル
ラピードガルルルル…ワン!
レイヴンどこ行くの、ワンコ!?
???きゃあっ!
スタンまずい!向こうで女の子が魔物に襲われてるぞ!
カイル本当だ!助けないと!
ヴェイグああ、急ぐぞ…!
scene2美脚健脚、格闘少女
スタンふぅ…!倒し切れたか
カイル君、大丈夫?怪我はない?
???あ…うん。あの、助けてくれてありがとう
コハクわたしはコハク・ハーツ。あなた達は?
カイル…コハク?あれ…何か、どこかで…
レイヴンん?少年?どうかしたの?
カイルああ、思い出した!そうだ、確か元の世界で──
カイルもがが!?
スタンな、何でもないよ!だよな、カイル
コハクでも、今何か言おうと…
スタンあー…いやその、何て言うか君がちょっと俺達の知り合いに似てたから…
コハクそう、なんだ?
レイヴン…ちょっとちょっとスタン?
ヴェイグまさか、元の世界の知り合いか?
スタン前に少し話した事があって…
レイヴンなるほど…
レイヴン悪いけど、今はあの子の記憶を取り戻すのは、後回しにさせてちょうだい
レイヴン下手な事して、こっちが咎人だってバレるわけにもいかないし
スタンはい…わかってます。コハクのためにも、核の破壊が最優先、ですよね
カイルんー!んー!
スタンおっと、口を塞ぎっぱなしだった。ごめんな、カイル
カイルぷはっ…!
コハク…えっと、何こそこそ話してるの?
レイヴン…ああ、ごめんね。ちょっと、相談事よ
レイヴンあ、おっさんはレイヴンよん。そいでこいつがラピード
ラピードワン!
ヴェイグオレはヴェイグ。隣にいるのがカイルとスタンだ
コハクそう、よろしくね
コハクそれにしても、あなた達…この辺では見ない顔だね。旅人さん?
カイルえーっと、それは…
レイヴンややや!よーく見たら、なんつー美少女!
コハクは…はあ
レイヴンおまけにまぶしいばかりの美脚!おっさん目がつぶれちゃう!
カイルち、ちょっとレイヴンさん…!
レイヴンこんな足場の悪いところで転んだりしたら大変よ?
レイヴンそうだ!よかったら、おっさんが近くの街まで送って──
コハクはぁっ!
レイヴンうぉっと!?
カイルす、すごい蹴り…
コハクわたしはこの足で、一人で帰れるから心配はいらないよ
レイヴンはは…そうみたいね。余計なお世話だったみたいね
レイヴンそれじゃあおっさん達は先を急ぐから、コハクちゃんも気を付け──
コハクどこに行くの?そっちには蒼流の神殿しかないけど…
レイヴンえ?
レイヴン…へえ、蒼流の神殿っていうのがあるんだ。おっさん、知らなかったなぁ
コハク知らないの?それじゃあ、何でこんなところに…
コハク…もしかして、あなた達もあの光の柱の事を調べに来たの?
カイルえ、何でわかったの!?
スタンこら、カイル!そんな簡単にばらしちゃ…!
スタン…ん?「あなた達も」って事は…
ヴェイグお前も、光の柱を調べに?
コハク…本当は、魔物がいて危険だから神殿には近づくなって、言われてるんだけどね
コハクけど、光の柱が出現してから村のみんなも不安がってるし…
コハクみんなが安心出来るものなのか、確かめてみようと思って
コハクだから、あなた達も同じように光の柱を調べに来たのかと…
カイルもしかして…コハクは蒼流の神殿に行ってきたの?
コハクうん。中をのぞいてみたんだけど…聞いてた通り、魔物がいっぱいいて
コハクわたし一人じゃ無理だと思って引き返してきたところだったの
レイヴンそれは賢明な判断ね
レイヴンそれじゃ、光の柱の調査はおっさん達がやっとくからさ、コハクちゃんは村に帰って──
コハクでもよかった!仲間がこんなに増えるなんて、頼もしい!
ラピード…ワフ
コハクねえ、わたしも蒼流の神殿に連れて行ってくれない?道案内くらいなら出来るし
レイヴン残念だけど、そいつはダーメ。いくらコハクちゃんのお願いでも、ね
レイヴンさっき自分で言ってたじゃない。危ない場所なんだって
コハクそうだけど…
コハク実は一度村に帰って、しっかり準備をしてからもう一度来ようと思っていたの
コハクあなた達が一緒なら準備をする手間も、一人で神殿に入る必要もなくなるし…
カイル…ねえ、レイヴンさん。一緒に行きませんか?
スタン確かに、女の子を一人で放っておくわけにはいかないし…
レイヴンけど、ねぇ…
ヴェイグ…あの様子だと、どっちにしろ後で一人で調査に来るつもりらしい
ヴェイグ後から鉢合わせするよりは、同行させた方がいいんじゃないか?
レイヴン…ま、それもそうね。後で面倒な事になるよりは…
レイヴンわかったわ、コハクちゃん。とりあえず神殿までの案内、頼める?
コハクホント?やったぁ!それじゃあ、早速行きましょう!
カイルあ、ちょっと待ってよコハク!
スタン俺達も行こう、ヴェイグ
ヴェイグああ
レイヴン…けど、どこまで一緒に行くかはしっかりと考えないと──…って!ちょっと!?
レイヴンもー、少しはおっさんの話を聞いてちょうだいよ。おっさん泣いちゃうよ!
レイヴンはあ…。コハクちゃんを上手く言いくるめて、神殿から遠ざけるしかないか
scene1蒼流の神殿へ
コハクみんなー、こっちだよこっち!
レイヴン…案内してもらったのはいいものの、どう言いくるめたもんかね
スタンところで、その蒼流の神殿はどこにあるんだ?
ヴェイグそれらしい建物は見当たらないが…
カイルっていうか、滝しかない…
コハクやっぱりそうだよね。神殿っていうくらいだし、わたしも最初はてっきり建物だと思い込んでた
コハクでもね、実はこの大きな滝こそが蒼流の神殿なんだよ!
レイヴン滝の中が…?
コハクうん。とにかく入口に案内するから、ついてきて
カイルわかった!
スタン二人共、足元に気を付けて…っておい、待てって!カイル、コハク!
ラピードワウ
レイヴン
ヴェイグ二人共行ってしまったな。…問題はここからどうやってコハクと別れるか、だ
スタンレイヴンさん、何かいい方法はないかな?
レイヴンうーん、あの様子じゃ一筋縄じゃいかないだろうし
レイヴンはあ…何かの拍子にコハクちゃんの記憶が戻ったりしたら万々歳なんだけどねえ
レイヴンま、コハクちゃんの件は引続き考えるとして、とにかく今は二人を追いましょ
ヴェイグそうだな
scene2蒼流の神殿へ
ラピードワフッ!
スタンどうした、ラピード?何か見つけたのか?
カイル特に何もないみたいだけど…
ラピードワン!
ヴェイグん…おい、ここを見てみろ。地面に足跡がたくさんあるぞ
スタン本当だ。でも、ここって一般人は近づくなって言われてるんだろ?何で足跡がこんなにあるんだ?
レイヴン…こいつは、軍靴の跡ね
ヴェイグ白き獅子か…
コハクさっき一人で来た時は気付かなかった…
レイヴン足跡は消えかかってるしね。よく見なきゃわからないよ
コハクでも、どうして白き獅子がここに…あっ!もしかして彼らも光の柱の事、調べに来たのかな?
コハクだとしたら、何か話が聞けるかもしれないね!
カイルあ、うん…えーっと、そうだね
コハクよーし、それじゃはりきって行こう!神殿の入口はもうすぐだよ!
レイヴン
コハク…さあ、神殿の入口に着いたよ
カイルこれが…!
レイヴン随分物々しい雰囲気ね。こりゃ大層大事なもんが隠されているんだろうねえ
ヴェイグしかし、こんなところに入口があるとはな…
カイルコハク、よく見つけられたね。オレだったら見逃してたかも
コハクあはは…実はわたし、前からこの辺りにはよく来てたんだ
コハクそれでね、偶然この扉を見つけちゃって…
カイルえ、でもこの辺りって近づいちゃ駄目だって話じゃ…
コハクそれはその…ここで捕れる淡水イカが味噌との相性が抜群だったから…!
レイヴンイカ!?まさかそのためにこんなとこまで来てたなんて、よっぽど好きなのね…
ヴェイグ…まあ、お蔭で無事たどり着けたわけだが
スタンああ、そうだな。コハクがいてくれて助かったよ!
コハクえへへ、お礼なんていいよ。でも、気を付けてね?この中は魔物でいっぱいだから
カイルわかってるよ!よーし、それじゃあ早速…
ズズズ…
ギャオオオッ!
カイルうわぁっ!
バタンッ!
ヴェイグカイル、大丈夫か!?
カイルだ、大丈夫です…。開けた瞬間目の前に魔物がいたからちょっと驚いただけで…
スタンまさかあんなところで待ち構えてるなんて…
レイヴンこりゃ気を付けて開けるしかないね。みんな、構えて──
コハクあ、そういう事なら任せて!
カイル…どうするの?
コハク見ててね…
コハク…はぁあ!
ドガンッ!!
ギャウッ!
スタン何て、威力だ…!扉ごと魔物を蹴り飛ばしたぞ…
コハクふぅ、結構固かった…!
レイヴンははは…あまりコハクちゃんを怒らせない方がよさそうね
ヴェイグ油断するな…!奥から魔物が押し寄せて来るぞ!
scene3蒼流の神殿へ
カイルせいっ!
ギャウウッ…!
カイル…よし、今のでとりあえず最後かな
コハクそれじゃ、神殿の中に入ろう!
レイヴンああ、ちょっと待ってコハクちゃん!
コハク…?
レイヴンおっさんからの提案なんだけど…
レイヴン今回みたいに、魔物達がまたいつ飛び出しちゃうかわからないでしょ?
レイヴンあんな凶悪な魔物が外に出てったら、近くの村が襲われるかも…
レイヴンだから、ここで魔物を逃がさないよう見張っておく必要があるとおっさん思うのよね
レイヴンそして今の戦闘を見て、おっさん、ピンッと来たのよ!
レイヴンあのすごい足さばき!見張り役に一番ふさわしいのはコハクちゃんに違いないってね!
コハクでもわたし、神殿の中を調べないと…扉は閉めておけば大丈夫じゃない?
レイヴンその事なんだけど…ほら、コハクちゃんが蹴ったせいで閉まらなくなっちゃってる
コハクあ…
ヴェイグ頼む、コハク。神殿を調べている間に村が襲われたら元も子もない
スタン光の柱の事はちゃんと調べて来るよ。だから俺達に任せてくれ!
コハク…わかったよ。わたしはここに残る。魔物が出て来ないように見張ってるね
スタンありがとう!
スタンそれじゃあ、俺達行ってくるよ
コハクちゃんと無事に戻ってきてね!
scene1夢と現実
カイル…これでよかったのかなあ?何か、コハクを騙してるみたいで…
レイヴンこれもお互いのため、世界のためよ
レイヴンさて、核の破壊と青年との再会…。ここからが本番ね
スタンにしても…ここは妙な部屋だな
ヴェイグ壁に小部屋がいくつもあって、鉄柵に囲われている…
カイル牢屋みたいだね
レイヴン…暗くて小部屋の奥まで見えないねえ
ヴェイグ白き獅子も…いないな
ヴェイグここにもいないとなると…上の階か
スタン随分静かだよな…魔物もいないみたいだし…
レイヴン最初のであらかた倒しちゃった?…でも、たったあれだけなんて妙ねぇ
ヴェイグひとまず、慎重に進むとしよう
ヴェイグそれと、気を付けるのは魔物だけじゃなく…
ガゴゴゴゴゴゴゴッ…
カイルおわぁぁぁぁ!?お、落とし穴──っ!?
ラピードワフッ!
スタンカイル!?大丈夫か?
カイルぎ、ぎりぎり、何とか…
ヴェイグ罠にも気を付けよう…と、言おうと思ったんだが…
レイヴン早速、か。全く、先走りすぎなんだから
ヴェイグ穴の淵に手をかけてなければ、危ないところだったな
レイヴンどれどれ?うわー…すごく深い穴。こりゃ落ちたらタダじゃすまないぞ
カイルか、観察するより…引き上げてもらえると助かります!
ヴェイグと、そうだったな。スタンは右を持ってくれ、オレは左を持つ
スタンわかった。それじゃあ引き上げるぞ
スタンいくぞ、せーの…!
カイルふう、助かったぁ…
カイルありがとうございます。スタンさん、ヴェイグさん
スタンこういう事もあるから、もっと慎重に行こうな
スタンそれにしても、落とし穴か…。厄介だな
ヴェイグ侵入者を捕えるための罠なのだろうか
レイヴンん?これはもしかして……
ガゴゴゴゴゴゴゴッ…
カイルうわっ!また床が抜けて…ちょっとレイヴンさん、一体何を──
レイヴンなるほどなるほど…そういう事ね
ヴェイグこの仕掛けについて何かわかったのか?
レイヴンこれはどうも罠ってわけじゃなさそうね
レイヴン単に経年劣化で床が落ちやすくなってるだけ
レイヴン…ほら、こういうとことか
ギィ…ガゴゴゴッ!
カイルうわっ!?また…!
スタンもろくなってる床は落ちるんだな
レイヴンそーゆー事
カイルそうとわかれば安心ですね!よーし、じゃあしっかり足元に注意して──
ギギギギギッ…
スタン…ん?今の音は何だ?
ヴェイグ床が落ちたというわけではなさそうだが…
ギギギギギギギギギギッ…
カイルな、何だ…!?また…
ラピード…グルルルルッ!
レイヴン…!この気配は…
グォオオオオオ!!
スタンなっ…魔物!?しかも大群…!?
カイルさっきまでどこにもいなかったのに…こいつら、一体どこから出てきたんだ!?
スタン…!壁の小部屋の鉄柵が全部開いてるぞ
カイルもしかして、あの中にいたのか…?でも、何で急に…!
レイヴン決まってるでしょ、誰かさんがおっさん達に向けて魔物の群れを放った
レイヴン…そうとしか考えられない
ヴェイグ…床抜けとは違ってこっちはれっきとした罠という事か
カイルとにかく、早く何とかしないと!
ヴェイグなら、不用意に動かずここで迎え撃つべきだ…
レイヴンそうね。気乗りはしないけどうっかり床抜けに巻き込まれたらたまったもんじゃないし
ラピードワオーーーン!
スタンみんな、来るぞ!構えろ!
カイル…はい!
scene2夢と現実
カイルくそっ…!こいつら、どれだけいるんだよ…!
スタン倒しても倒しても…数が多すぎてキリがない…!
ラピードグルルルルッ…!
レイヴンくっ…これじゃ消耗戦だ。まずいな…
レイヴンまだ青年はおろか、核の元にすら辿りつけていないってのに
カイル…なら、ここはオレが引き受けます!その間にみんなは上に向かってください!
スタンこの数を一人で!?無茶だ!
ヴェイグここにたった一人で残ったら、間違いなく死ぬぞ…!
カイル大丈夫です!
スタン大丈夫って、どうしてそんな事…
カイルだって英雄はこんなところで死んだりなんかしませんから!
レイヴン
カイルだから、みんなは早く上に──
レイヴンやれやれ、この馬鹿野郎が…
ゴンッ
カイルいったぁ!?な、何するんですか!レイヴンさん!
レイヴン全員でも厳しい状況だってのに、たった一人で何とかなるわけないでしょ
カイルけど…!
レイヴン英雄だから大丈夫だって?
レイヴン馬鹿な事言ってないでここは全員で切り抜けるのよ
カイル
レイヴン…って、勝手に仕切っちゃったけど、みんなもそれでいい?
スタンうん、俺もその方がいいと思う
ヴェイグ一人も欠けず突破しよう
ラピードワオーン!
カイル……
レイヴン体力の問題は後で考えるとして…──さあ、行きますか!
scene3夢と現実
スタンこいつで、最後だ!
ザシュッ
グガアアア!!
ヴェイグ…はあ、何とかなったな…
レイヴンあー、疲れた…全く。本当にギリギリだったわ…
カイルはぁ…はぁ…
スタン…カイル。さっきは何であんな事、言い出したんだ?
カイル…だって、ユーリさんや元の世界を救うためにも…誰かが上の階に行かないと…
スタンだからって、カイル一人が残ってどうにかなる状況じゃなかった。そうだろ?
スタンあまり無茶はしないでくれ…な?
カイルでも…
レイヴン…やれやれ。少年、ちょっといいかしら
カイル…何ですか、レイヴンさん
レイヴンおっさんからの忠告よ
レイヴン「英雄」に憧れるのは結構だけど、夢や憧れに囚われるなんて事、あっちゃいけないよ
レイヴンましてそれが原因で命を落とすなんて馬鹿馬鹿しい事なんだから
カイル…!別に死ぬつもりなんて…!
カイル…オレはただ、一人でも何とか出来るって本当にそう思ったから……
レイヴンおっさんには、そうは見えなかったけど
レイヴンみんなで戦った後でさえ息を切らしてるくらいだったのに、一人で太刀打ち出来るわけがない
レイヴンもっと自分の力量をわきまえて、冷静に周りを見極めないと
カイルオ、オレは…ちゃんと見極めてるつもりで…!
スタンまあまあ、二人共
スタンいろいろと言いたい事があるかもしれないけど、今は言い争ってる場合じゃない
スタンいつまた魔物が現れるとも限らないし、とにかく先に進んだ方がいいんじゃないのか?
レイヴン…ごめんごめん。スタンの言うとおりだね
レイヴンおっさんの説教話はこのくらいにしてさっさと上を目指すとしますか
スタンカイル、お前もそれでいいよな?
カイル…はい。それで大丈夫です…
カイル
ヴェイグ…レイヴン、一ついいか?聞きたい事があるんだが
レイヴンうん?何?
ヴェイグ…レイヴンは「英雄」に、随分とこだわっているように思える
レイヴン…そう?そんな風に見えた?
ヴェイグいつものレイヴンなら、飄々と受け流すか、茶化して終わりだ
レイヴン英雄を語る時だけ、らしくないって言いたいわけね…
ヴェイグああ
ヴェイグ前に話していた英雄の話…あれはやはり、レイヴン自身に関係があったんじゃないか?
レイヴン…どうしてそう思ったのかしら?
ヴェイグ…あの話をしている時、どこか実感がこもっているように感じた
ヴェイグまるで自分の経験を語るかのような、そんな話し方だったからな
レイヴンあー、あの時は酔いすぎたみたい。余計な事、言っちゃったかねぇ
レイヴン…て言うか、おっさんと英雄の話がそんなに気になる?
ヴェイグ仲間の事を知っておきたいだけだ
レイヴン……
レイヴン…少年
カイルは、はい…
レイヴンこの前話した「英雄」の話、もう少し詳しく話す事にしたわ
レイヴンあれね、実はおっさんの昔話でね
カイル…えっ?
レイヴンあんまり気持ちのいい話じゃないし、少年の夢を壊すかもしれない
レイヴンそれでも、聞きたい?
カイル…はい、聞きたいです。どんな話でも
レイヴンそう…わかった
レイヴンじゃあ話すけど、ちょっとここじゃ駄目ね。また魔物が現れるかもしれないし
レイヴンとりあえず先に進みましょうか。話はその先でするわ
カイルはい…!
scene1喪失の英雄譚
ヴェイグ階段を登ってみたが…ここもさっきと同じような部屋か
レイヴンえーっと、壁の小部屋に魔物はっと…
スタン…いないな。今度こそ間違いなく
ヴェイグ相変わらず、白き獅子の姿もないな。上層で待ち構えているという事か…?
レイヴンあと気がかりなのは一つだけね
レイヴンそーれっと!
ガゴゴゴゴゴゴゴッ…
スタンここも床がボロボロだ
レイヴン引き続き足元にはご注意を、っと…
ヴェイグ…それで、レイヴン。さっきの話の事だが…
レイヴンお?話?何の話だったかしら
ヴェイグ
レイヴン嘘、嘘。ちょっと場を和ませようとしたおっさんなりの冗談だから
レイヴンそれじゃあ、聞かせてあげるわ。英雄と呼ばれた…ろくでもない男の話を
カイル
レイヴン…おっさんはね、昔はシルヴァラントに仕える騎士だったのよ
カイルレイヴンさんが?意外です…
ヴェイグ全然そうは見えないな…
レイヴンおっさんもそう思う。今からしたら考えられないね
レイヴンと言っても、その実は褒められたもんでもなくって
レイヴン放蕩息子がそのまま騎士になったようなものだから…
レイヴン任務はいい加減だし、酔って女の子を引っかけたり
カイル何だか…今と全然変わらないような…
レイヴン今よりやる気はあったけどね。情熱と呼べるような…何せ若かったし
レイヴンま、そんな感じで騎士生活を送って、仲間も出来たわけよ
レイヴン信頼のおける同僚とか、ちょっと小生意気な後輩とか
レイヴンそれと…目標になる憧れるような先輩もいたしね
カイルレイヴンさんが憧れるなんてきっとすごい人だったんですね
レイヴン…そうね。おっさんだけじゃなくて、みんなの憧れの的だった
レイヴンその人に出会って、心を入れ替えたつもりで特訓して…
レイヴンそして、ようやくその人に追いついたと思った
レイヴンけど…、あれは十年くらい前だったかしら。シルヴァラントで内乱が起きたのよ
スタン内乱…?もしかして、キムラスカの国境近くで起きたっていう…
レイヴンお。詳しいのね
ヴェイグ…あれほどの内乱だ。シルヴァラントの国民なら誰でも耳にした事はあるだろう
ヴェイグ多くの街が消失し、たくさんの市民の命が失われたと聞く
レイヴン…そうね。何もかもがめちゃくちゃになった酷い争いだったわ
レイヴン自国民だけに留まらず隣国キムラスカの、とある街まで巻き込む事になったくらいだし
カイル大きな内乱だったんですね…
レイヴンその戦いで同僚も部下も、そして…憧れだった上司も全員死んだわ
レイヴンそして最後に、俺自身も…
スタンえっ…?でも、レイヴンさんは生きて…
レイヴンその後にいろいろあってね
レイヴン…まあ、そんなこんなで何とか生き返ったはいいけど、気付けば俺は世間から英雄扱い
レイヴン内乱を終わらせるために散った「救国の英雄」ってさ
カイル救国の、英雄…
レイヴン──冗談じゃない
レイヴン仲間も、憧れも…何一つ守れなかった男が英雄?…笑わせてくれる
カイルレイヴンさん…
レイヴン生きる理由をなくした男はどうなったと思う?
レイヴン命令を聞くだけの騎士として、ただ国に尽くす存在になった
レイヴン…そこからまた紆余曲折あって今のおっさんに至るわけだけど
レイヴンま、それはとりあえず今は置いておきましょう
レイヴン…以上が、おっさんの知ってる英雄の話
ヴェイグそれが…レイヴンが英雄にこだわる理由か…
カイルだから、英雄なんていいもんじゃないって…
スタンレイヴンさんが話してた事、ようやく繋がった気がする…
ラピードワフ…
カイル
scene2喪失の英雄譚
カイル
ヴェイグあの「救国の英雄」がまさか生きていたとはな…
スタンしかも、それがレイヴンさんでさらにはそんな背景まであったなんて…
スタン命を懸けて内乱を終わらせた勇敢な英雄…
スタン俺達はずっとそう聞かされてきたけど…結局は表側の話しか知らなかったって事だよな…
レイヴン…ちょっとちょっと、そんな辛気臭い顔しないでよ
レイヴンでもまあ、真実なんてさ所詮はそんなもんよ
カイル…あの、レイヴンさん
レイヴンうん?どうしたの、少年
カイルオレ…その…
ラピード…!ワウッ!ワウッ!
騎士団員1…!こいつらは…やはり例の咎人共か。クロー隊長の仰った通りだ…
騎士団員2例の魔物の罠は突破してきたらしい。様子を見に来て正解だったな
スタン…!白き獅子のお出ましか!
ヴェイグユーリはいないな…。…となると、まだ上か
レイヴン全く…もう少し休ませてくれてもいいんじゃない?
騎士団員1はっ、何をふざけた事を…
騎士団員1これより上層へは行かせん、…まあ、行ったところでどうせ我々の守備は突破出来んがな…!
騎士団員2お前達の身柄はこの場で私達が拘束する!…総員、構え!
カイルぐっ…
レイヴンせっかちだねぇ。それじゃ、話の続きは後にして…
ヴェイグ今は目の前の敵に集中する!来るぞ…!
カイル…わかりました!
レイヴンよしよし。んじゃまあ、かかってきなさいよ。白き獅子共
scene3喪失の英雄譚
ヴェイグはっ…!
ザシュッ!
騎士団員1ぐぅぅ…おのれ咎人め…
ドサッ
スタン…よし、終わったな
レイヴンはー、連戦は疲れるわぁ。やっぱり無理するもんじゃないねぇ
ヴェイグそれより、やはりユーリはオレ達の侵入に気付いていたらしいな
レイヴンまあ、あの不自然な魔物の罠の時点でそうだろうと思ってたけどね
スタンしかも、あの口振りだとこの先白き獅子との戦いは避けられそうにない
レイヴン…そうねぇ
カイルあ、あの、レイヴンさん!
レイヴンん?何?
カイルえっと、さっきの話なんだけど…オレ…その…
カイルレイヴンさんが英雄にどういう事を感じてるとか、そういうの、全然考えられてなくて…
レイヴンやれやれ…
レイヴン何を気にしてるのか知らないけど、おっさん、昔の事は整理ついてんの
レイヴン…おせっかいな奴らがいたからね
カイルおせっかいな奴ら…?それって、もしかして…
レイヴンとにかく、さっきは悪かったね
カイルいえ…。オレの方こそ、ごめんなさい
カイルレイヴンさんにそんな過去があったって知らなかったとはいえ…
カイルそれに、みんなが言うようにさっきは無謀だったと反省してます…
レイヴンわかってくれたならそれでよし、ってね
レイヴンそんじゃ、おっさんの話はこれで終わり
ヴェイグレイヴン、辛い話をさせてすまなかった
レイヴンだから言ったでしょ~?もう整理ついてるって
ヴェイグそうか。ならいいんだが…
スタンとにかく、そろそろ先に進もう。いつまでもここで立ち止まっているわけにはいかない
レイヴン若者と違っておっさんには休息が──…と言いたいところだけど、そうも言ってられないね
レイヴンさてと、行きますか
カイル…レイヴンさんにあんな過去があったなんて…
スタンカイル、何をやってるんだ?行くぞ!
カイル…はい、今行きます!
scene1変えられる未来
レイヴンそろそろ半分登ったくらいか。さーて、お次は何が出るか…
ヴェイグ本命には近づいているはずだが気は抜けないな
レイヴンでもま、気張るのもほどほどにね。何かいる時は、ワンコも教えてくれるでしょ
ラピードワンッ!
スタン…あれ、カイルは?
カイル
スタンおーい、カイル?
カイル…へっ?は、はい。何ですか、スタンさん
スタンやっぱり上の空だったな。敵がいつ出てくるかわからないんだ、気を付けないと
カイルは、はい。ごめんなさい…
スタン…もしかして、レイヴンさんの事で悩んでたのか?
カイル…はい。オレ、レイヴンさんの事情とか、何も考えてなかったなって…
カイル知らなかったとはいえ、無神経な事たくさん言っちゃったから…
スタンカイル…
スタン…カイルは、今どう思ってるんだ?レイヴンさんの事情を聞いて
カイル…オレ、レイヴンさんの気持ちはわかったつもりです
カイルでも…レイヴンさんが何一つ守れなかったなんて…そんな風にはやっぱり思えないんです
カイル…仲間を守る事が出来なかったのは事実かもしれないけど……
カイルそれでも、英雄だってみんなから認められた人なんです。きっと何かは成し遂げたはずで…
カイルこれからも、何かを成し遂げられる人だって…そう思うんです!
カイルだからその…何て言うか、レイヴンさんに自分自身の事、信じてほしいって言うか…
カイルあと、オレ達の事も…
スタンそうか…。それが、カイルの気持ちなんだな
カイル…はい!
スタンそれなら、一緒に考えてみよう。どうしたらレイヴンさんが自分自身を信じられるようになるか
カイルうーん、レイヴンさんが英雄って呼ばれるのを受け入れられないのは仲間を救えなかったから、ですよね…
スタンああ。でも、過去を変えるなんて事は出来ないしな…
カイルそうですね…、過去はさすがに──…
カイル…あっ!
スタンカイル?何か思い付いたか?
カイルはい、多分…!
カイルオレ、もう一度レイヴンさんと話してみます!
ヴェイグどうやら、ここが三階のようだが…
レイヴン人っ子一人いない…。白き獅子は上層で固まってるのかねぇ
カイルレイヴンさん!オレ、聞きたい事があるんです!
レイヴンうおっ!ビックリしたぁ!急に追い付いてきたと思ったらどうしたのよ、少年
カイル教えてください。ユーリさんと、何があったのか!
レイヴンユーリ?何よ突然
カイルレイヴンさんが言ってた「おせっかいな奴ら」って、ユーリさんの事じゃないですか?
レイヴン…へえ、少年案外察しがいいのね
レイヴンそうよ、ユーリ達の事。でも、改まって話すような事じゃ──
カイルいえ…ちゃんと聞かせてください!
カイル…知りたいんです
カイルユーリさんを助ける事が、レイヴンさんが自分自身を信じられるきっかけになるかもしれないから
レイヴン…!
カイルレイヴンさんが英雄って呼ばれる事を受け入れられないのは、かつての仲間を救えなかったからだ…
カイル…過去に戻ってあの時の仲間を助ける事は出来ないかもしれません
カイルけど、未来なら…今目の前にいるユーリさんの事は助けられます!
レイヴン
カイル今のレイヴンさんがあるのはユーリさん達の「おせっかい」のお蔭なんですよね
カイル…レイヴンさん。ユーリさんを…大切な仲間を、今度こそ助けましょうよ!
レイヴン少年…
カイルオレ、レイヴンさんの事大切な仲間だと思ってるんです
カイルだから、レイヴンさんには自分自身を信じてほしい…!
カイルそのためには何としてもユーリさんを助けないと駄目なんです!
カイル…だから、二人の事をちゃんと知りたい
カイル知った上で、レイヴンさんの力になりたいんだ!
レイヴンカイル…
スタンレイヴンさん、俺とヴェイグも同じ気持ちですよ
ラピードワフッ!
レイヴンやれやれ、おたくらまで…。暑苦しいったらないね
ヴェイグレイヴン、お前はオレ達に余計な気遣いをかけさせまいと考えているのかもしれないが──…
レイヴン…買い被りすぎよ。単純に話すほどの事じゃない、それだけ
ヴェイグそれも本音かもしれない。だが、レイヴンが自分の事を隠しすぎるのも事実だ
ヴェイグ無理に話せとは言わない。だが…オレ達もレイヴンの気持ちを理解したい
スタンああ。カイルの言う通り、俺達はレイヴンさんの力になりたいんです
カイル聞かせてください!お願いします…レイヴンさん!
レイヴン…はぁ、若いってのはいいねぇ。そういうまっすぐな目に、おっさん弱いんだわ
レイヴンどっかの誰かさんも、そんな目をしてたっけね…
レイヴンわかった、おっさんの負け。聞きたいって言うなら、聞かせてやろうじゃないの
カイルあ、ありがとうございます!
レイヴン礼を言われるような話じゃないよ。ま、暇潰しだと思って聞いておくれや
scene2変えられる未来
レイヴン…あれは確か、青年達に初めておっさんの素性を明かした日だったかね
カイル素性って…
レイヴン当時のおっさんにはもう一つの顔があったのよ。シュヴァーンって言う騎士の顔が…
ユーリ──レイヴン…いや、今はシュヴァーンか
ユーリあの時は取り逃がしちまったが、まさかこんな形で再会する事になるなんてな
シュヴァーン……
ユーリ聞きたい事は山ほどあるが、今は急いでんだ。そこを通してくんねぇか
ユーリ…それとも、本気でやり合うつもりか?
シュヴァーン
チャキッ
シュヴァーンシルヴァラント騎士団隊長首席シュヴァーン・オルトレイン、……参る
ユーリちっ、馬鹿野郎が…
シュヴァーン……ぐっ…
ユーリはあっ…はぁっ…
シュヴァーン俺の負け…のようだな
シュヴァーン……殺せ
ユーリ何だと…?
シュヴァーン国のため、俺は剣になった。命令を完遂するためだけに存在する国の剣だ
シュヴァーン…それがこの様だ。唯一の使命すらこなせないなら生きている意味はない
シュヴァーン何より元々死んだ身だ、今さら命など惜しくもない。…わかったら殺れ──
ユーリ一人で勝手に終わった気になってんじゃねぇ!
バキィ!
シュヴァーン…つっ!
ユーリ何が死んだ身だ!あんたの身体はまだ動くじゃねえか!
ユーリ国の剣だと…?なら、オレの目の前にいるのは誰だ?
シュヴァーン…何?
ユーリ情けねえツラしたただのおっさんだ。オレには「国の剣」なんて御大層なもんには見えねえな!
ユーリその目で見ろ。足で歩け。てめえの頭で考えろ!
ユーリ他人にゆだねてんじゃねえよ…てめえの人生だろうが。シャンと生きやがれ!
シュヴァーン俺の…人生…
スタンそんな事が…
レイヴン…こっぴどく叱られちゃってねえ。ありゃーほんとに立場なかったわよ
レイヴンま、でもそのお蔭で目が覚めてね。もっぺん、自分の人生を生きてみようかって気になったわけ
レイヴンもっとも、今はまだ生きる意味を探してるところだけど
カイルそれじゃあ、ユーリさんは人生の恩人って事ですか?
レイヴン大げさに言うとそんなとこねえ。いやぁ、頭があがらないわ
レイヴン青年も、おっさんなんて「裏切り者」って捨て置けばよかったのに…
レイヴンまぁ、そんな奴だから自然に仲間が集まってたわ
レイヴン「凛々の明星」って言ってね。おっさんやワンコもそこに属してた
レイヴン…当時の仲間達は、今この世界のどこにいんのかすらわかんない状況だしね
レイヴンだから、青年を助けてやれんのはおっさん達だけってわけ。ね、ワンコ
ラピードワフッ!
スタンその仲間達の事…大切だったんですね
レイヴン…そういう言い方も出来るかな
レイヴン
レイヴン…あ、まずいわ。じわじわ効く。我ながら超恥ずかしくない?コレ
スタンそんな事ないですよ!いい話じゃないですか!
ヴェイグ…ああ恥ずかしがる必要はない
カイルやっぱり聞いてよかったです…!オレ、レイヴンさんの力になります!
カイル今度こそ必ず、オレ達の仲間を…
カイルユーリさんを助けましょう!
スタンああ。レイヴンさんの話をここまで聞いて、負けるわけにはいかないよな
ヴェイグ…レイヴンには、ユーリに「借り」を返させなければな
ラピードワンッ!
レイヴン…それじゃ、遠慮なく力を貸してもらおうかね
カイルへへへ…。任せてください!
…グ…ルル…
ヴェイグ…待て、何か聞こえないか?
レイヴン…ああ、いるね。こりゃ魔物の声だ
ラピードガウッ!ガウッ!
スタン後ろ!?…って事は下の階か…!
ヴェイグどうする、魔物が来る前に先へ進むのも手だが…
レイヴン…残念だけど、その暇はないみたい
グルルルァ!!
ヴェイグ相当な数だ…。まだこれほど残っていたとは…!
カイルくっ…!こっちは急いでるんだ、邪魔するな!行くぞぉーっ!!
scene3変えられる未来
カイル蒼破刃!!
ギャウゥ…
カイルくそっ!いくら倒してもキリがないよ!
レイヴン焦ったら駄目よ、少年。数は多いけど、こいつらも無限に湧き出るわけじゃないんだから
ゴゴゴゴゴゴ…
騎士団員1──何の騒ぎだ!
騎士団員2…!まさか咎人がここまで!?
レイヴンこんな時に…全く、空気読めっての
騎士団員1四階への守りを固めろー!
カイル扉の向こうは上への階段…。騎士達が集まって来る!
レイヴン何が何でも登らせないつもりね。このまま階段に向かうのは…ちょっとキツいかも
スタン…みんな、まずは階段前の騎士達を蹴散らそう!
レイヴン魔物を引き連れて?下手すりゃ挟み撃ちよ
スタンけど、上手くいけば騎士達も魔物と戦闘になる
ヴェイグ隙を見て、扉を閉められればいいが…!
カイル行きましょう!扉が開いている内に!
騎士団員1咎人共が来るぞ!
騎士団員2魔物にも注意しろ!
カイルどけぇーっ!
ザシュッ!
騎士団員1ぐっ!
ドサッ
カイルみんな急いで!扉を閉め──!?
グルルルァ!!
カイルくっ、魔物が…!うわあっ…!
ザシュッ!
ギャウゥ…
スタンカイル、どうした!扉は閉まらないのか!?
カイルそれが…
ヴェイグまずい、動きそうにないな…
スタンそんな…!さっきは普通に開いたのに…
ヴェイグ連中の仕業かもしれないな。…何にせよ、魔物が押し寄せて来る、このままではらちが明かない…!
スタンなら…
スタンカイル、レイヴンさん、ラピード!
スタンここは俺とヴェイグで食い止める、みんなは先へ進んでくれ!
レイヴンあんた達…!
ヴェイグ…核とユーリを頼む
カイルでも…!
騎士団員2先へは行かせん!
ヴェイグお前の相手はこっちだ!
ザシュッ!
騎士団員2ぐあっ!
ドサッ
レイヴン…ここは頼んだよ、二人共!
スタン任せてください!絶対、無茶はしないし…そりゃあっ!
ギャウゥ…
スタン負ける気もない!
レイヴン頼もしいわね。…行くわよ、カイル、ラピード
ラピードワンッ!
カイル…ヴェイグさん、スタンさん!気を付けて!
ヴェイグ心配するな、行け!
スタン上の方は頼んだぞ!それと…カイル!
カイルは、はい!
スタン…頑張ってこい!
カイル…はいっ!!必ず、ユーリさんを助け出します!
スタンひとまず、ここは送り出せたか…無事にたどり着いてくれよ…!
ヴェイグあいつらなら大丈夫だ。オレ達が…抑えていればなっ!
ギャウゥ…
スタンはは、心強いな!それはそうと、勝手に俺と一緒に残らせちゃって悪かっ──
グルルルァ!!
スタンしまった…!
ヴェイグスタン、伏せろ!
パキパキパキッ!!
グ…ギャ…ガ…!!
スタンす、すごいな…あれだけの魔物を一瞬で氷漬けに…ありがとう、ヴェイグ!
ヴェイグそれより、次が来るぞ!
スタンよーし…俺も負けてられないな!どおりゃあああっ!!
ゴオオオオッ!!
グギャアアッ…!
ヴェイグフッ…「すごいな」か。これだけの炎を扱っておいて、よく言う
スタン情けないところばっかりじゃ、先に行ったみんなにも笑われるからな!
ヴェイグでは…背中は任せるぞ、スタン!
ヴェイグ絶氷刃!
スタンああ、お互いにな!こいつら全員、一匹だって通さない!
スタン爆炎剣!
グルルルァアアッ!!
スタン・ヴェイグうおおおおおおおっ!!
パキパキパキッ!!
ゴオオオオオッ!!
ギャオオォン……!
騎士団員3この咎人共、何て強さだ…!
グルルルァ!!
騎士団員3ちっ!邪魔をするな、魔物め!
ヴェイグどうやら、三つ巴になっているようだ
スタンああ…少しは楽になるといいな
スタン…こっちは必ず食い止める。任せたぞ、カイル…!
scene1咎を断つ爪
騎士団員1止まれ!ここは通さんぞ!
カイルレイヴンさん、待ち伏せされてます!仲間を呼ばれたみたいです!
レイヴンま、そうなるわね。止まれと言われて止まるわけにはいかないけどさ
カイルですね!そこをどけえっ!
騎士団員1うぐっ…!
カイル…はあっ…ふう…ん…?レイヴンさん、あれ見てください!
カイル外から光が…!きっと、あそこが頂上ですよ!
レイヴン…っは、そりゃよかった。おっさん、こいつらの相手に飽き飽きしてたとこよ
レイヴンさっさと突破して、先に行くとしますか!
騎士団員2そうやすやすと通すと思うな、咎人共が!!
レイヴン…ふっ!!
騎士団員2ぐっ…これだけの数を相手にして、まだ歯向かうか…!
レイヴンやすやすとなんて思ってないよ。こちとら二人も欠けてんだからさ…。ま、お勤めご苦労さん
騎士団員2お…おの…れ…!
レイヴンふぅ…大体片付いたみたいね。少年、ワンコ、そっちはどうよ?
ラピード…ワフ!
カイル問題なし!行きましょう!
レイヴンふ、頼もしくて結構結構
レイヴン青年もお待ちかねだろうし…それじゃあいっちょ、本命にご対面といこうじゃないの!
カイルはい!!
カイルうわっ、眩しい!
カイルここが最上階…!ついに──
カイル…!レイヴンさん、あのクリスタル…!
レイヴン…へえ、まさかあんなにもギラギラ光ってるなんてね。一目瞭然じゃない
カイルじゃあ、やっぱりあれが…
レイヴン例の「核」って事で、間違いないでしょ
レイヴン勿論…お守りは付いてるけど
クロー…来たか
カイル……
ラピード…ワオーン!
レイヴンとっくに臨戦態勢ってわけね。厳重な警戒にあの派手なクリスタル…わかりやすくていいわ
カイルあれを壊せばいいってわけですね
クローさせやしねえよ。ただ、ここまで来たのは褒めてやる
レイヴンお蔭様で戦う前からクタクタだけどね
クロー…ふ、よく言うぜ
チャキンッ!
クロー…一応聞いておくが、大人しく捕まる気は当然ねぇよな?
レイヴン…ちょっと見ない内にくだらない質問をするようになったのね
クローなら仕方ねぇ。ちょっと痛い目見てもらうぜ
レイヴンやだねえ、ピリピリしちゃって
クローさせてんのはあんただろ。…それより、何故天帝の命を狙う?
レイヴン別に命までは狙ってないわよ。おっさん達はただ…元の世界を取り戻しにきただけ
クロー取り戻す?…これだから咎人の言う事は聞いちゃいられねぇ
クローお前達がやってる事は天帝の守る平和の破壊…。だから天帝は結界を張った
クローこの結界はな、天帝が命の危機を感じない限り、発動しないって話だ
クローその結界の核を潰しに来たって事はお前らはつまり、天帝の命を狙う者って事だろ
レイヴンふーん…そんな風に説明を受けて守備させられてるってわけね
レイヴンま、大体合ってる事にしといてあげるわ
レイヴン…こっちとしても細かい事情とかさ、言いたい事は山ほどあるんだけど…今さらだわ
レイヴンここまで来たら、お互いやる事は変わんないでしょ
レイヴンまずはそのクリスタル、ぶっ壊させてもらうわ
クローさせるわけにはいかねぇ。全力で叩きのめす!
レイヴンくく…
クロー何がおかしい?
レイヴンいや、天帝に忠実な騎士様の割に随分とおしゃべりだなーと思ってね
レイヴン「咎人の言葉に耳を貸すな」だっけ?ラザリスの言いつけで確か、そんなんがあったでしょ
クロー……何が言いたい。はっきり言ってみろよ
レイヴンただ忠実に使命を全うするだけなら、言葉を交わす必要なんてないのよ。とっとと襲ってくればいい
レイヴンなのにそうしないって事は…本当は出ちゃってるんじゃないの?
レイヴン本物の青年の感情、がさ
クロー何だと…?
レイヴン…他人の命令に従ってるなんてらしくないじゃないの、ユーリ
クロー…!おい、いくらあんたにでもその名前を教えた覚えはないぜ
レイヴンこの世界では、ね
クロー…ちっ
カイルユーリさん、思い出してください!レイヴンさんは、あなたの大事な──
クロー黙れ。お前らの虚言に付き合う気はない
クロー総員、かかれ!咎人共を捕えろ!
カイルちょ…ユーリさん、話を──…!
レイヴンありがとよ、少年。けど、もう戦闘は避けて通れないわ
カイル…レイヴンさん。って、あれ、ラピードは…?
ラピードワウッ!
騎士団員3気を付けろ!そいつはただの犬じゃない!
カイルラピード、いつの間に…!
騎士団員4くそっ、抜かれた!クロー隊長、申し訳ありません!犬が一匹、そちらに!
クローちっ、そいつはオレがやる。お前らは構わずその二人をやれ!
騎士団員4…はっ!
レイヴンふ、ワンコってば随分気合入ってるじゃない
レイヴンこっちも負けてらんないってね。…それじゃ、行きますか!
カイルわかりました!
scene2咎を断つ爪
ラピードワンッ、ワンッ!
クロー頼もしいペット連れてるじゃねえか。躾はなってねえみてえだがな
ラピード…!ウウウッ…!
クロー遊んでやるよ。来な、犬っころ
ラピードワウッ!
クローふっ…なかなかいい攻撃だが…まだまだ!
ザシュッ!
ラピードグ、ウゥッ!
クロー攻撃が直線的過ぎるぜ。周りが見えてないみてぇだが、どうした、何かに怒ってんのか?
ラピードワウウウッ!
カイル大丈夫か、ラピード!
騎士団員他の心配をしている余裕があるのか、咎人!
カイルくそ…!
カキーンッ!
カイルうっ…!本当に強いな、こいつら…
レイヴンひとまずは目の前の敵に集中しなさい…!
レイヴン心配ないわ。あのワンコの事よ、一筋縄じゃいかない…!
ラピードグルルルル!
クローおっと…へえ、やるじゃねぇか犬っころ。部下にほしいくらいだぜ
ラピード…ッ!ワォーン!!
クローぐっ…!単なるペットのじゃれつきとはわけが違うってか
クローふ、何度も近くで見たがまた一段とキレがよくなって──…
クロー…!
クロー「何度も近くで見た」だと…?オレは一体、何を言って…
ラピードワンッ!!
ザシュッ!
クロー…ちっ!
カイルユーリさんの襟が…!
レイヴンやっと青年の素顔を拝めたわね
ラピードワンッ!
クロー犬っころだと思って手加減してたが…
チャキンッ!
クロー悪かったな。こっからは、本気で叩きのめしてやる
ラピードワオーーーーン!
カイルはあぁぁ!
ズバッ!
騎士団員ぐ、ぐふっ…!
ドサッ…
カイルはぁっ…はぁっ…!あと、少し…!
レイヴン騎士達もだいぶ減ってきたし少年、ちょっと休んでてもいいのよ?
カイル…っ、まだいけます!
レイヴン少年は元気だねぇ…。こりゃ、おっさんももうひと頑張りしなきゃ駄目だね…!
scene3咎を断つ爪
レイヴン…はぁっ!
騎士団員おのれ、咎人め…お許しを、ラザリス、さ…ま…!
ドサッ…
レイヴンいっちょ…あがり、かね…ぜぇっ…
カイルは、はい…。一人一人、すごい気迫で…、はぁっ…手強かった…
カイル……っ。そうだ、ラピードは!?
クローはぁ…はぁ…。ここにいるぜ、坊主
ラピードグ…ウゥ…
カイルそんな…ラピード!?しっかりしろよ、ラピード!
ラピード
カイル息はある…!けど、ボロボロだ…
レイヴン…容赦ないじゃない
クロー当然だろ…ぐっ…!こっちも無傷じゃ済まなかった。…ったく、信じられねえ犬だぜ
クロー何にせよ、次はお前達だ
レイヴンへっ…そりゃお互い様でしょ。そっちこそ、残りはおたくだけよ
クローまさかうちの部下達が揃ってやられちまうとはな
クローだが、所詮は半人前のガキ一人と肩で息するおっさんが一人…。今のあんたらならオレ一人で十分だ
レイヴン…見くびってもらっちゃ困るね。こう見えて…おっさんまだまだ元気よ?
クローはっ、そんな面してよく言うぜ。立ってんのも精一杯だろ
クローだが、あんたの実力はオレもよく知ってる。見くびるつもりなんざねえさ
クロー…あんたの息が整う前に一瞬で、ケリつけさせてもらうぜ
レイヴン…!速い…!
レイヴン避けきれな──
クロー…しばらく、寝ときな。レイヴン
カイルくっ…させるもんか!間に合えっ…!
ガキーンッ!
カイル…!?つっ──…!
クローオレの一撃を受け止めた事は褒めてやるぜ。だがその腕、いつまでもつか…!
カイルくっ…!
クローはああっ!
ザシュッ!
カイルうわあぁっ!?
レイヴンカイル!
カイル
クロー殺しちゃいねえよ。気を失って寝てるだけだ
レイヴンっ…!てめえ、いい加減に──…くっ!
クローもはや抵抗する力すら残ってねえってか
レイヴン…ったく、情けないね
クロー…レイヴン、お前もここまでだ
クロー帝都に連行する。それまではこのガキと一緒に大人しく寝てな
チャキッ…
クロー…それじゃあな。いい夢見ろよ、おっさん
レイヴンくっ…
レイヴン俺は…
レイヴン俺はまた、救えないまま──
scene1自分の正義
クロー──いい夢見ろよ、おっさん
レイヴン……
カキーーンッ!
レイヴン…?今のは…
クローお前…!
カイルはぁ…はぁ…レイヴンさんは、…オレが守る!
クロー…当分目覚める事はねえと思ってたがまだそんな力が残ってたとはな
カイル…甘く見るなよ!オレはまだ…、まだ戦える!はああああぁぁぁぁっ!!
キンッ!キンッ!
クローどうした?太刀筋、ふらついてるぜ!
カイルくっ…!
レイヴン少年…!
カイルはぁ…はぁ…
カイル立ってください、レイヴンさん!
カイルここで立たなきゃ、また仲間を助けられない…!そうでしょ!?
レイヴン…!
カイルユーリさんを助けるんじゃなかったんですか!?
カイル「借り」を返さなくていいんですか!?
カイルだったら…、だったら向き合って戦わないと!
レイヴン少年…
カイルレイヴンさんならきっとユーリさんを助けられます!
カイル──英雄だから!
カイルオレはレイヴンさんを信じる!だから…レイヴンさんも自分自身を信じてください…!
クロー何をごちゃごちゃと…!はっ!
ズガッ!
カイルうぐっ…!
クローおいおい、もう終わりか?
カイルはぁ…はぁ…ま、まだだ!今ぶっ倒してやるから覚悟しろよ!
カイルはあーっ!
レイヴン…英雄、ね。言ってくれるじゃない
レイヴン…全く、おっさん使いの荒い少年だわ
レイヴン…でも、少年の言う通りね。借りを返すまで、諦めるわけにはいかないものね…!
scene2自分の正義
キンッ!ガキイィン!
カイルはぁ…はぁ…くぅ!
クローおい、もう剣を持つ力も残っていないんじゃねえのか?
カイルそんな事…ないっ!
クローまぁ、いいさ。これで、終わりにしてやる…!はぁっ!
ガキィィインッ!
カイルうっ、うわああああっ!
レイヴンカイル!
カイルうっ…!
レイヴン少年、大丈夫!?
カイル…だ、大丈夫です…!オレはまだ…、全然…
レイヴンカイル…
レイヴン悪かったね、ここまで頑張らせて
レイヴン…後はおっさんに任せなさい
カイルレイヴンさん…
カイル…オレ、レイヴンさんなら絶対に立ち上がってくれるって思ってました…
レイヴンはは…。お待たせ──っと
クローやる気になったのか?
クローさっきまで、何もかも諦めたような顔してたくせに
レイヴンおっさんには退くに退けない理由があるからね
レイヴン大人として…情けない背中は見せらんないでしょ
クロー…へえ、勘違いしてたぜ。あんたはもっと枯れた人間だと思ってたが
レイヴン何を言ってんのよ。水を与えたのはおたくでしょーが
クロー…覚えてねぇな
レイヴンあったのよ。青年が、おっさんの心を潤わせてくれた事が
クロー……やっぱり咎人だな。聞くんじゃなかったぜ
レイヴンあら、年上の話は素直に聞いておくものよ?
クロー口車には乗らねぇよ。オレは白き獅子として、あんたを捕まえる…それだけだ
レイヴン白き獅子として、か…
レイヴンふ、まるで昔のおっさんみたいね
レイヴン騎士として盲目的に国に仕えてたあの頃の俺と同じ…
クローあんたが国に仕える騎士だと?何を寝ぼけた事言って──…
クローうっ…!
クローな、何だ…?頭が…
シュヴァーン──殺せ
ユーリ何だと…?
シュヴァーン国のため、俺は剣になった。命令を完遂するためだけに存在する国の剣だ
シュヴァーン…それがこの様だ。唯一の使命すらこなせないなら生きている意味はない
クローくっ…!今のは……
カイルユーリさん…?もしかして記憶が…!?
レイヴンへぇ、いい兆候じゃない。ちょっとはおっさんの言う事信じる気になった?
クロー…馬鹿言うな。信じるわけねぇだろ
クロー咎人の術だか何だか知らねぇが、不発に終わったな
レイヴンったく、何を言っても駄目か
レイヴンけど、こうやって見てると、あの時偉そうにおっさんに説教たれた青年と同じ人物だなんて思えないね
レイヴン…自らの正義を見失って騎士として天帝に仕えてるなんて、全然ユーリらしくない
クローオレらしさだって?あんたにオレの何がわかる
レイヴンわかってるよ。少なくとも、今のお前さんよりはね
カイルオレにだってわかります…!ユーリさんが、大切な事を忘れちゃってるって!
クロー…何を言おうが無駄だぜ。オレはあんたのように、咎人の言葉に惑わされやしない
レイヴンやれやれ、頭が固いねぇ
レイヴンやっぱり、あの時の俺みたいに…
レイヴン一発ぶん殴らないと、治らないみたいだな
クロー上等だ。返り討ちにしてやるよ
レイヴン…少年、今こそお前さんの力が必要よ
レイヴン「今度こそ」仲間を助けたいの。…手伝ってくれるんでしょ?
カイル…!はい、勿論です!
レイヴンよーし、それじゃあ…
レイヴンいくぞっ…!!
カイルうおおおおおっ!
クロー来い…!
scene3自分の正義
レイヴンはぁ…はっ…ごほっ…。随分いい顔になったじゃない、ユーリ
クローぐっ…がはっ…!はぁ…はぁ…
クローまさか、このオレが…くっ…!
カイルはぁ、はぁ…ユーリさん、ここまでにしましょう…!これ以上戦う必要は──
クロー…いや、まだだ。お前ら咎人は必ず捕える
クローそれに、天帝の命をあんたらに狙わせやしな──
レイヴンいい加減にしな、青年
レイヴン青年の意思はどこにあるのよ
レイヴンおたくが今必死になってやろうとしてる事のどこに正義が?
レイヴン…ふざけんじゃねえ!
クロー
カイルレイヴンさん…
レイヴン正義を他人にゆだねてんじゃないよ
レイヴン「その目で見ろ。 足で歩け。 てめえの頭で考えろ!」
クロー…!
レイヴン…ユーリ、おたくが教えてくれたんでしょうが
クローくっ…!また、この感覚──…
ユーリ一人で勝手に終わった気になってんじゃねぇ!
バキィ!
シュヴァーン…つっ!
ユーリ何が死んだ身だ!あんたの身体はまだ動くじゃねえか!
ユーリ国の剣だと…?なら、オレの目の前にいるのは誰だ?
シュヴァーン…何?
ユーリ情けねえツラしたただのおっさんだ。オレには「国の剣」なんて御大層なもんには見えねえな!
ユーリその目で見ろ。足で歩け。てめえの頭で考えろ!
クローくそっ…!また、頭の中に──
レイヴン思い出したかい?青年
レイヴン…いい加減やめにしようや。他人にゆだねんのはさ
レイヴン──てめえの人生だろ、シャンと生きやがれ!
scene1明星は再び瞬く
レイヴン──てめえの人生だろ、シャンと生きやがれ!
クロー…!その、言葉は──…
クローうっ…!
カイルユーリさん!?まさか…!
クロー…………
クローオレは…
レイヴン目ぇ覚ましな、ユーリ!
クローえ、おいちょっと待て!おっさ──
バキィ!
クローいって…。おっさん、やり方が荒っぽいぜ…
レイヴンはぁ、はぁ…。おや…?
レイヴンその様子、もしかして…
クロー…ああ、思い出したさ。お蔭様でな
カイルやっぱり!ユーリさん、記憶が…!
レイヴンおっさんの拳が効いたのね
ユーリいや、あんたが殴る直前には記憶は取り戻してた。明らかに余計な一発だ
レイヴンええ!?そ、そうなの…?
レイヴン…まあまあ、おっさんも前に一度おもっきし青年にぶん殴られた事あるしさ
レイヴンほら、覚えてるでしょ?勝手に終わった気になってんじゃねぇ!とか言って
レイヴンだからほら、お互い様って事で~
ユーリそんな事もあったっけな。…ったく、執念深いおっさんだぜ
レイヴン少年もよく頑張ったわね
レイヴンいやー、さすがのおっさんも今回はちょっとマズイと思ってたのよね
レイヴン何せほら、青年ってば容赦なかったじゃない?
ユーリ…はいはい、悪かったよ
レイヴンでも、青年もこうして記憶を取り戻す事が出来たし…
レイヴンこれも少年が協力してくれたお蔭。ありがとね…カイル
カイルレイヴンさん…。力になれたならよかったです!
カイルオレ、レイヴンさんの事信じてました
カイルレイヴンさんなら、絶対ユーリさんを助けられるって
レイヴンふ、まあね
レイヴン…俺様にかかれば、記憶の一つや二つ、取り戻すのなんて楽勝よ!なーんて──
ユーリやれやれ、どこが楽勝だって?もうよれよれじゃねーか
レイヴンうっ…。…て、それ青年が言うの?
ユーリそれより、クリスタルの事はいいのか?
ユーリお前ら、あれが目当てで来たんだろ?
カイルそうだった!オレ達、あのクリスタルを壊しに来たんだ!
カイルレイヴンさん、早くクリスタルを壊しましょう!
レイヴンはいはい、わかってるよ。んじゃ、最後の大仕事と行きますか
レイヴン青年、あんたはワンコの事見ててやってちょうだい
ユーリああ、勿論言われなくてもそうするさ
ユーリ…相棒だからな
カイル──これがクリスタルか。近くで見ると、やっぱり強い力を感じる…
レイヴンそりゃそうでしょ。あんなでっかい結界を作る力を送ってるんだから
レイヴンじゃ、少年。とっととやっちゃって!
カイルえっ、オレがやるんですか!?
レイヴン少年なら出来ると思ってるから言ってるのよ
レイヴンおっさんが見届けてるからさ、ばっちり決めてみせなさい
カイル…わかりました!
カイル…はあああっ!
パキイィンッ!
カイル空に伸びてた光が消えていく…。これでやっと…
レイヴンそうね
レイヴン…さてと。これで核も残り二つ…他のみんなも上手くいってるといいんだけど
カイルみんなならきっと、大丈夫ですよ!
カイルそれより…
カイル…あの、レイヴンさん
レイヴンん?
カイルさっきの戦い…レイヴンさん、本当にかっこよかったです
レイヴンこの少年は、何を言い出すかと思えば…
カイルユーリさんを助けて、核も壊せた。やっぱりオレ、レイヴンさんは英雄だと思います
レイヴン…そうだとしたら、少年のお蔭だけどね
カイルえ?今何て…
レイヴン何でもないわ、こっちの話
レイヴン…それより少年、まだ英雄になりたいって思ってる?
レイヴン憧れの英雄も、成れの果てはこーんなおっさんだったりするのよ
カイルはい!むしろ、レイヴンさんの事を知って憧れる英雄がもう一人増えました
カイルオレは父さんやレイヴンさんのような英雄になります、絶対に!
レイヴン少年…
レイヴンお前さんならなれるよ、きっと
scene2明星は再び瞬く
レイヴンユーリ、ワンコの様子はどう?
ユーリああ、ようやく意識は取り戻した。命には別状なさそうだが…
ユーリ見たところ、自力で歩けるようになるまでは少し時間がかかりそうだな
ラピードクゥン…
ユーリ…悪かったな、ラピード
ユーリそれとレイヴン。あんたにも随分と世話かけちまったな
レイヴンさて、何の事かしらね~。おっさん忘れっぽいからなーんも覚えてないわ
レイヴン…でもまあ、これで貸し借りなしってわけだし、あんま気にしなくていいんでない?
ユーリレイヴン…
ユーリ…ふ、それもそうだな
カイルふふっ
レイヴンん?少年、何笑ってんのよ
カイルあ、いや、二人は本当に仲がいいんだなーって思って──
レイヴン少年~、前にも言ったはずよ。おっさん達は単なる腐れ縁みたいなもんだって
レイヴンそんな暑苦しい青春みたいな関係じゃないんだって
カイルえぇ~?うーん、やっぱりどう見ても仲良しだと思うんだけど…
レイヴン…さてと。ここはもう用済みだし、そろそろおいとましますか
カイルそうですね、スタンさんやヴェイグさんの事も気がかりだし…!
ユーリスタンとヴェイグ…?あいつらも一緒なのか?
カイルはい。オレ達を先に進ませるために、二人は下の階に残ってくれたんです
レイヴンあー…その辺りの事とかおっさん達の目的の事とか、青年にも話しておいた方がよさそうだな
レイヴン下へ降りながら諸々の事情は説明するわ
ユーリああ、頼む
ユーリ…それじゃ、早速行くか。ラピードはオレが担いで連れて行く
カイルよーし、行きましょう!
scene3明星は再び瞬く
スタンはぁ…はぁ…。ヴェイグ…
ヴェイグ何だ…?
スタン生きてるか?
ヴェイグ…生きてなきゃ返事は出来ないだろう
スタンははっ、そりゃそうか
ヴェイグよし、スタン。大分休めたし、そろそろ──
カイル…あっ!スタンさん!ヴェイグさん!
スタンカイル…?レイヴンさん、ラピード…、それにユーリも…!
レイヴン無事でよかったわ。お互いボロボロだけど
ヴェイグ…ユーリ、記憶が戻ったようだな
ユーリああ、お蔭様でな
ユーリおっさんから事情は聞いたぜ。二人にも随分と心配かけちまったみたいだな
スタンいや、構わないさ!ユーリが戻って来てくれて本当によかったよ
ヴェイグところで、例の核はどうなった?
レイヴンちゃーんと壊したよ。空に伸びてた光の柱も、綺麗さっぱり消えたし
スタンそっか、よかった…!
カイルそれより、この魔物の数…スタンさん達が全部倒したんですか?
カイルしかも、騎士達まで同時に…
スタンああ。かなり大変だったけどヴェイグと一緒だったからな、どうって事ないさ
ヴェイグああ。安心して背中を預けられた事が勝因だ
カイルたった二人で…すごい。さすがです!
ユーリ…この騎士達は死んでんのか?
ヴェイグいや、気絶させただけだ
スタンこの人達も記憶を改変されてるだけだ。罪はないからな…
ユーリ
カイルこのままにしておくのは可哀想ですね…
レイヴンそうね。いつまた魔物達が出てくるかわかったもんじゃないし
ユーリ心配ない、オレがここに残るさ
ユーリ記憶を操作された偽りの世界であれこいつらは一応、オレの部下だったわけだ
ユーリなら、オレが面倒見る…それが筋ってもんだろ?
ユーリ騎士ってのは気乗りしないが、むざむざ見殺しにも出来ねえしな
カイルユーリさん…
ユーリま、上手い事クローのふりしてりゃオレに危害が及ぶ事もないだろ
レイヴンそれもそうね
ユーリそれじゃ、決まりだな。…っつーわけで、ラピード。お前ともここで一旦お別れだ
ユーリヴェイグ、こっからは代わりに担いでやってくれねえか?
ヴェイグああ、勿論だ。来い、ラピード
ラピード……
カイル…?ラピード?
ラピードワフ、ワフワフッ!
ユーリ…やれやれ
レイヴンん?どしたのワンコ
ユーリああ、ここに残るってよ
ユーリオレの事、よっぽど心配してくれてるみてぇだな
ヴェイグふ、頼もしいな。さすがお前の相棒だ
スタンラピード、ユーリの事頼んだぞ!
ラピード…ワフッ!
ユーリそれじゃ、ひとまず決まりだな
ユーリ…こいつらの安全が確認出来たらオレ達もすぐに後を追う
カイルはい!必ず、追って来てくださいね!
レイヴンよーし、そんじゃおっさん達もさっさと神殿から出るとするかね
カイル…!そういえば、入口でコハクを待たせたままじゃない!?
ヴェイグそうだったな。もう随分時間が経ってる気がするが、まだいるだろうか
レイヴン問題は、光の柱の事何て説明するかね。さて、どうしたもんか…
スタンまあ、何とかなるって!
レイヴン…何とかって、何よ。コハクちゃんを怒らせたら、あの強烈な蹴りが飛んでくるわよ
レイヴン下に着くまでにマトモな言い訳考えないと…
カイル……。と、とにかくオレ達は行きます!
カイルユーリさんとラピードも気を付けて!また会えるの、楽しみにしてます!
ユーリおう、またな
ラピードワフッ!