| Name | Dialogue |
| scene1 | 捉えた違和感 |
| | ゴゴゴ…ゴ… |
| リタ | やっと揺れが収まった…一体何なのよ、この地震は |
| | ゴゴゴ…! |
| リタ | …!また…! |
| | ズバッ! |
| リタ | 地面に亀裂まで…。どう見てもただ事じゃないわね |
| リタ | とにかく、急いでメルトキオに戻った方がよさそうだわ |
| | |
| リタ | 街もいつになく騒然としてるわね…。あんな大地震が起こったんだし無理ないけど… |
| リタ | それにしても、さっきのあの光…。タイミングから考えて、地震の発生に何か関係してる可能性も――… |
| リタ | … |
| リタ | 光…海の向こうからでも見えるほどの…あれだけの強さを出せるもの… |
| リタ | …まさか… |
| リタ | 調べてみる必要がありそうね。あの本…確か図書館の書庫よね。面倒だけど行かなきゃ |
| ??? | … |
| scene2 | 捉えた違和感 |
| リタ | …算出される力の総量…なるほど…ありえない話じゃない。でもどうして… |
| ??? | およ、こんなところで何してんの、リタっち? |
| | |
| リタ | レイヴン!?…って、いきなり驚かすんじゃないわよ!おっさんこそ何してんのよ! |
| レイヴン | いやあ、リタっちが深刻そうな顔して図書館に入っていくのが見えたから、どうしたのかなーって思ってさ |
| リタ | まあ深刻は深刻だけど…別におっさんには関係ないでしょ |
| レイヴン | おーおー、冷たいねえ。まあ、そう言わずに、俺様に相談してみなさいって |
| レイヴン | こう見えても人の相談に乗るの、結構得意な方なんよ? |
| リタ | どこがよ。うさんくさいわね |
| リタ | …まあ、いいわ。ちょうど考えを整理したいと思ってたとこだし、あんたを壁だと思って喋る事にする |
| レイヴン | ちょ、壁って… |
| リタ | あたし、さっき妙な光を見たの。場所は、ウィンドルとア・ジュールの国境地帯辺りだと思う |
| リタ | で、その閃光について、思い当たる節があったからここでいろいろ調べてたってわけ |
| レイヴン | ウィンドルとア・ジュールの国境の閃光?またまた、そんなの見えるわけないでしょ。それより地震よ大地震 |
| リタ | 壁がしゃべるな!その光がこの大地震の発生に関係してるかもしれないんだから |
| レイヴン | え、それホント? |
| リタ | あたしが見た閃光の正体は、魔導器(ブラスティア)。おそらくそれは間違いないわ |
| レイヴン | なるほど。リタっちは魔導器の専門家だもんねぇ。そんで何かしら気付くところがあったと |
| レイヴン | で、それがどうこの大地震と関係してるわけ? |
| リタ | あれだけの閃光の原因として考えられるものは多くないわ。魔導器は、その数少ない一つ |
| リタ | で、その直後の地震でしょ。関連性があると考える方が自然じゃない |
| リタ | でもあくまで仮説だし、わからない事も多すぎる。だから確かめないと |
| リタ | それに本当にあれが魔導器だとしたら、相当無茶な事をしてるはずよ |
| リタ | そんな事するバカはとっちめてやらないとあたしの気が済まないわ |
| リタ | 大体、海を越えて視認できるなんて既存の魔導器とはケタ違いの出力よ。そんなの研究していたとしたら… |
| リタ | 何であたしを呼ばないのよ! |
| リタ | …って、そうじゃなくて、国境で何でそんな魔導器を… |
| レイヴン | 戦闘用に特別な魔導器を使ったとか?国境の辺りで見えたってんなら、いかにもありそうな話じゃない? |
| レイヴン | ウィンドルとア・ジュールが戦争を再開、魔導器を使って派手にやりあったとかね |
| リタ | それはそうかもしれないけど… |
| リタ | …そもそも、もうすぐ和平交渉をするってところまで修復された二国が、何でまた戦争を始めたりするのよ? |
| レイヴン | さあねえ。魔導器と大地震の関係はともかく、戦争なんてのは案外、簡単に始まるもんかもよ? |
| レイヴン | ちょっとしたきっかけで火がついてそのままあっさりケンカ沙汰…人間同士よくある話でしょ |
| リタ | 政治に興味ないあたしでさえ、両国が和平を急いでたって事は知ってる。それなのに… |
| レイヴン | ふーん。何がそんなに気になるのかおっさんにはわからんけど、でも実際、どうするわけ? |
| リタ | 自分の目で確かめる |
| レイヴン | はい? |
| リタ | これ以上ここであれこれ考えてたって仕方がないもの。行って確かめる |
| レイヴン | 行くって、あの、リタさん?もしかして国境地帯の事、仰ってる?戦争やってるかもしれないのに? |
| リタ | 危険かもしれないけどしょうがないわ。本当に未知の魔導器があるなら確かめないと |
| レイヴン | いやいやリタっち。いくら何でもそりゃ無茶でしょ。もうちょっと考えた方がいいって |
| リタ | じゃあどうすればいいのよ。傭兵でも雇えっての?そんな金ありゃしないわよ |
| レイヴン | いやそうじゃなくてね…あーもう、しょうがない。こうなったら、おっさんも付き合いますよ |
| リタ | はあ?あんた、話聞いてた?あたしは観光に行くわけじゃないの!わかってる? |
| レイヴン | だからよ。リタっち一人、そんなとこ行かせたとなれば、周りから何て言われるやら。ね? |
| リタ | はあ…なら好きにすれば?おっさんがいようがいまいが役に立つとは思えないけど |
| レイヴン | ありがとー、リタっち!よし、じゃあ早速しゅっぱ~つ! |
| | |
| リタ | …何なのよ、あの呑気っぷりは。バカっぽい… |
| リタ | …何だか一気に、先行きが不安になってきた…。本当に大丈夫なの?あのおっさん… |
| scene1 | 国境地帯への道 |
| レイヴン | んでリタっち、国境地帯へはどうやって行くつもり?やっぱり船で? |
| リタ | そうね。シルヴァラント港へ行ってウィンドル港かア・ジュール港、先に着く船に乗ろうと思ってる |
| レイヴン | おっさんは、どちらかといえばウィンドル経由の方がいいかなあ。寒いところは苦手でさ |
| リタ | あんたの希望なんて聞いてないから |
| リタ | っていうか、この状況で船が出てるかどうかだって── |
| | |
| | ゴゴゴ… |
| レイヴン | おおっと。また地震… |
| レイヴン | 一向に収まる様子がないけど、一体世界に何が―― |
| | ズゴゴゴゴ…! |
| レイヴン | ちょっとちょっと…!これ、今までより大きいんじゃない? |
| | |
| | ズザッ! |
| レイヴン | リタっち、足元!!地面にヒビが…! |
| リタ | え!?ちょ、落ち――…!! |
| ??? | はあっ! |
| レイヴン | なっ!? |
| | |
| ??? | 大丈夫か |
| リタ | う、うん… |
| リタ | って、あんた!ヴェイグ!? |
| リタ | 久しぶりじゃない。前にロイドと一緒にあんたを訪ねて、遺跡の事を教えてもらったわよね |
| ヴェイグ | ああ、あの時の… |
| リタ | …あ、ありがと。助かったわ |
| リタ | それにしても、こんなところで会うなんて偶然ね |
| ??? | よかった、間に合ったみたいね |
| レイヴン | …!ちょっと…!この輝かしいお嬢様はどこの誰様!? |
| ヴェイグ | 俺の幼なじみの…クレアだ |
| クレア | クレア・ベネットです。よろしく |
| レイヴン | クレアちゃんね!俺様はレイヴン。よろしく~! |
| クレア | よろしくお願いします |
| | |
| リタ | はあ、このおっさんは…全く。…ところで、あんた達はどうしてここに? |
| ヴェイグ | …メルトキオに用がある |
| リタ | こんな状況で出歩くとか正気なの? |
| リタ | って、人の事言えた義理じゃないわね |
| | ゴゴゴ… |
| レイヴン | ううむ、また揺れたねえ |
| クレア | ヴェイグ、村は大丈夫かしら…。みんなが心配だわ |
| ヴェイグ | ああ…早く用を済ませて村へ戻ろう。それにしても、この地震は一体… |
| ヴェイグ | 地震の規模、それに頻度も… |
| ヴェイグ | 世界に何らかの異変が起きているとしか思えない… |
| リタ | 同感ね。これだけ続くのは普通じゃないわ |
| クレア | この地震の影響で世界中が混乱してて船も休航しているみたいだし…どうなってしまうのかしら… |
| リタ | えっ、ちょっと、それ本当!? |
| リタ | あたしら、これから港へ行って、船に乗るつもりだったんだけど |
| ヴェイグ | それは諦めた方がいい |
| ヴェイグ | 海も荒れているし当分は難しいだろう |
| レイヴン | あちゃー、やっぱしか |
| レイヴン | となると陸路でウィンドルへ行くしかないかねえ |
| リタ | …そうするしかないか |
| リタ | 何としてでも、あの光の原因を自分の目で確かめてやるんだから! |
| ヴェイグ | 地震の影響を受け、どこも足場が悪い状況だ。道中はくれぐれも気をつけろ |
| リタ | ありがとう、あんた達もね |
| クレア | あ、そうそう。ちょっと待って |
| クレア | もしよかったらピーチパイを持っていかない? |
| クレア | お腹が空いたら、どうぞ |
| リタ | …いいの?結構、手が込んでるみたいだけど |
| クレア | ええ。今日の朝に焼いたばかりで、作りすぎてしまったの |
| リタ | じゃあ、ありがたくもらっとくわ。ありがと |
| ヴェイグ | では、オレ達はもう行く |
| ヴェイグ | またどこかで会おう |
| | |
| レイヴン | いやあ、クレアちゃん、美人だったねえ |
| リタ | そんなに気に入ったなら、向こうについていけば? |
| レイヴン | そんな事言わないでって。リタっち~! |
| リタ | うざ… |
| レイヴン | そんなつれなくしないで、もらったピーチパイでも食べて、機嫌直してってば |
| リタ | …何このピーチパイ。すごく美味しい |
| レイヴン | クレアちゃんは料理も上手か |
| レイヴン | これで甘いものじゃなかったらよかったんだけどねえ |
| リタ | 美味しいものを食べたら、何か元気出てきたわ |
| リタ | じゃ、改めてウィンドルへ向かうわよ |
| レイヴン | へいへーい |
| scene2 | 国境地帯への道 |
| レイヴン | ようやくウィンドルに入った…やっぱり歩きだと疲れるねえ |
| リタ | 不満があるなら、ついてくんのやめたら? |
| レイヴン | もー、リタっちったら、冷たいんだから |
| リタ | リタっちって言うな! |
| レイヴン | おーっと、向こうに村らしきものを発見! |
| レイヴン | あそこでちょっち休憩しない? |
| リタ | …あのバカ、疲れたって言いながら、元気に走ってんじゃない |
| | |
| レイヴン | はて、この村は一体…? |
| リタ | あんまりのんびり出来そうな雰囲気じゃないわね… |
| リタ | そこかしこの民家に焼けたような跡… |
| リタ | 大きな火事でもあったのかしら |
| レイヴン | 地震の影響…ではなさそうだねえ。修理されてる部分もあるみたいだし… |
| レイヴン | 過去に戦場になった、とか? |
| リタ | ア・ジュールがここまで攻めて来たって事? |
| リタ | 国境からはだいぶ離れてるけど… |
| | |
| ??? | あんた達、旅の人? |
| リタ | …! |
| アーチェ | あたし、アーチェ・クライン。あんた達は? |
| リタ | リタよ。リタ・モルディオ |
| リタ | こっちはただのおっさん |
| レイヴン | ただのおっさんって… |
| レイヴン | まあおっさんだけど。俺様はレイヴン。よろしくね |
| アーチェ | リタにレイヴンね、よろしく! |
| アーチェ | ここはトーティス村だよ。あんた達、ここには初めて来たの? |
| リタ | あ、うん。まあ… |
| アーチェ | だったら、びっくりしたでしょ?あちこち焼け焦げててさ |
| アーチェ | 元騎士団員に悪い奴がいてさ、そいつにやられたらしいよ |
| アーチェ | ひどい事するよね |
| リタ | 何よそれ… |
| アーチェ | あ、でもその悪い奴はクレスが倒してたって話なんだけどね |
| アーチェ | そんな事があって村の人もだいぶ減ったけど、今は残った人達で何とか村を再建しようとしてるの |
| アーチェ | あたしは元々旅人だったんだけど、ここで手伝っている内に、放っておくわけにもいかなくなってさ |
| レイヴン | 再建のお手伝いをしてるってわけね |
| レイヴン | 偉い!アーチェちゃん、偉いよ!おっさん感動して泣いちゃう |
| アーチェ | 当ったり前じゃない! |
| アーチェ | …ま、あたしが勝手に居ついてるってのもあるんだけどね |
| ??? | おーい、アーチェ!油売ってないでこっち手伝えよ! |
| | |
| アーチェ | うっさいわねぇ!あたしは人と話してんの!後でちゃんと行くわよ! |
| チェスター | 早く来いよ!って…ん?お前達誰だ?見ない顔だな |
| アーチェ | リタにレイヴンだよ。二人は旅人で… |
| アーチェ | えーと…どこから来たんだっけ? |
| リタ | シルヴァラントよ |
| チェスター | シルヴァラント…? |
| チェスター | わざわざこんなところに何で―― |
| 村の男 | うわあ!魔物だ!チェスター、助けてくれ! |
| チェスター | ちっ、また魔物かよ!どこからともなく現れやがって…今行く! |
| | |
| レイヴン | ありゃ結構な大物だねぇ…リタっち、どうする? |
| リタ | 決まってんでしょ! |
| リタ | ほらおっさん、あたし達も加勢するわよ! |
| レイヴン | はいはい、じゃあいっちょ行くとしますか! |
| scene1 | 悲劇の村、トーティス |
| アーチェ | 助かったーありがとね!二人とも強いんだねー、びっくりしちゃった |
| リタ | あんた達こそ、なかなかやるじゃない |
| チェスター | 二人が加勢してくれたお蔭で助かったぜ。ありがとよ |
| チェスター | ところで…お前達、どうしてわざわざシルヴァラントから? |
| リタ | ああ、その話ね… |
| アーチェ | 妙な閃光、ね… |
| リタ | うん、あの光は地震の発生と関連しているんじゃないかって疑ってるんだけど |
| レイヴン | さらに言えばその光、戦争再開の印だったんじゃないかなーっておっさん、予想したんだけど。どう? |
| チェスター | お前達の予想通り、ウィンドルとア・ジュールが戦争を再開したのは事実だ… |
| チェスター | さらに、その戦闘でウィンドル軍が新兵器を投入したって噂も耳にした |
| リタ | 新兵器…。それが魔導器かもしれないって事ね |
| リタ | はあ…。そもそも魔導器ってのは、人間の生活を豊かにする目的で生み出されたはずなのに… |
| レイヴン | …そんな便利な装置も、ちょっと手を加えれば、簡単に人を殺すための兵器になってしまうって事よ |
| チェスター | …でもよ、リタの言う光と地震の関係性が本当だったとしたら…許せねえよ…! |
| チェスター | あいつらの戦争のせいで、各地で大地震が起きてるって事だろ? |
| チェスター | 軍人同士勝手に戦争するだけでも迷惑だってのに… |
| チェスター | ちょっと前だってオレ達の村をめちゃくちゃにして… |
| チェスター | この村の次は、世界か…?あいつらは、一体どれだけのモンを犠牲にすりゃ気が済むんだよ! |
| アーチェ | チェスター… |
| チェスター | … |
| チェスター | …よし、決めた。リタ、オレもお前達と一緒に行く! |
| チェスター | 知りたいんだ、真実を… |
| アーチェ | ちょっと、チェスター!クレスとの約束を忘れたの?この村はどうすんのよ!? |
| アーチェ | 村の復興はまだ途中で、さっきみたいに魔物だって簡単に入ってきちゃう状況だし… |
| アーチェ | あんたまで村を離れちゃったら残された村の人達はどうすんの?一体誰がみんなを守るの? |
| チェスター | それはそうだけど…でも、オレは―― |
| アーチェ | クレスにも村を頼むって言われたんでしょ! |
| アーチェ | 親友の頼みを無視するの? |
| チェスター | そうは言ってねえよ! |
| 村の男 | おーい、チェスター!手が空いたらこっちに来てくれ!見せたいものがあるんだ! |
| チェスター | … |
| アーチェ | ねえ。あんたはクレスにさ、ただ村の守り「だけ」を任されたとでも思ってんの? |
| アーチェ | みんなあんたをすっごい頼りにしてるんだからさ |
| アーチェ | そこは、あたしでも代わってはあげられない…代わりたくても、代われないの |
| レイヴン | 慕われてんだねえ |
| チェスター | …そんなんじゃねえよ |
| チェスター | みんながオレを頼りに…か。そう、だな… |
| チェスター | 今オレが離れちまったら、せっかくここまで再建した村も、魔物に荒らされちまうかもしれねえ |
| アーチェ | そうそう。あんたはそれでいいのよ。あんたはこの村を守んなきゃ。死んじゃった妹のためにもさ |
| アーチェ | その代わり… |
| アーチェ | このあたしがリタ達についてって、真実を見てきてあげる |
| チェスター | はぁ!? |
| レイヴン | アーチェちゃんが? |
| アーチェ | そ。あたしの実力は、もうわかったでしょ?バンバン力になっちゃうから! |
| リタ | ありがとう、アーチェ。あんたが一緒に来てくれると、心強いわ |
| チェスター | 全く、相変わらず勝手なヤツだな… |
| チェスター | じゃあアーチェ、そっちは頼むぞ。後、クレスの事もな |
| アーチェ | そうそう。放っておけないよね!クレスったら戦争が再開したって聞いた途端飛び出してっちゃってさ! |
| アーチェ | ま、その事も何かわかったらちゃんと知らせてあげるから!どーんと任せなさいって☆ |
| レイヴン | 丸く収まったところで、それじゃ、そろそろ行くとしますかね |
| レイヴン | このまま例の国境地帯へ向かう? |
| リタ | ええ、勿論 |
| レイヴン | …あ、確かその途中にバロニアがあったよね。先にそっちに寄った方がいいかも |
| リタ | 何でバロニアに寄らなきゃいけないのよ。これ以上の寄り道なんてゴメンだわ |
| レイヴン | でもさ、この国とア・ジュール、戦争になってんのよ |
| レイヴン | いろいろ準備とか…やる事があるでしょ |
| アーチェ | あー、それがいいかも |
| アーチェ | ヘタに動いて牢屋にでも入れられたら、それこそリタは調査に行けなくなるじゃん |
| リタ | うー…もう!わかったわよ! |
| リタ | とっとと行って、用事済まして一日でも早く国境に行くわよ! |
| レイヴン | せっかちだねえ。ま、それじゃ、バロニアを目指すって事で |
| アーチェ | じゃあ行ってくるね、チェスター!しっかり村を守るのよ!何かあったら許さないんだから! |
| チェスター | バーカ。オレがいる限りそんな事させねえよ |
| チェスター | 三人とも、気を付けて行けよ! |
| scene2 | 悲劇の村、トーティス |
| レイヴン | ふいー。ようやくバロニアに到着っと |
| リタ | 相変わらず大きな街ね |
| リタ | でも、何だか前に来た時とは様子が違う…。活気に欠けるっていうか |
| アーチェ | 確かにいつもはもっと賑やかだよね。やっぱり戦争が始まったのと、地震が頻繁に起きてるせいかなあ |
| リタ | そうかもね… |
| レイヴン | さて、じゃあ始めますかね |
| リタ | 具体的に何を準備するのよ?無駄な寄り道までさせといて |
| レイヴン | まあまあ。ここは情報収集が鉄則ってもんよ |
| レイヴン | おっさんに任せときなさいって |
| アーチェ | そうだね。魔導器の事とか新兵器の事とか、光の事とか…知ってる人がきっと見つかるよ |
| リタ | …そんなうまくいくものなの? |
| リタ | うーん…一通り聞いて回ったけど… |
| アーチェ | 新兵器の事は、みんな知らないみたいだね |
| レイヴン | わかった事といえば、戦争が再開したキッカケくらいか |
| レイヴン | みんな口を揃えて、ア・ジュールが攻撃を仕掛けてきたからだって話してたねえ |
| レイヴン | そもそもの両国の争いの発端は星のカケラを巡って、ウィンドルがア・ジュールに攻め込んだって話よね |
| レイヴン | ア・ジュールはその事を根に持ってて和平交渉をエサにウィンドルを油断させて、総攻撃を仕掛けた… |
| アーチェ | …ウィンドルはア・ジュールの攻撃に対抗するために、やむなく兵器を使った、みたいな感じかな? |
| リタ | まあ、ア・ジュール側の話を聞いていない以上、まだ何とも言えないけどね |
| リタ | …よし。こうなったら奥の手よ。二人とも、お城へ行くわよ |
| アーチェ | あたし達がいきなり行って、お城へ入れてくれるかな? |
| リタ | 何とかなるでしょ。あそこには知り合いもいるしね |
| レイヴン | 知り合い…ああ、そういう事ね |
| | |
| 警備兵 | 怪しい者を城内へ通す事は、まかりならん |
| リタ | 何でよ! |
| レイヴン | リタっち…さっきの余裕は一体どこに… |
| リタ | うっさい、おっさんは黙ってて! |
| リタ | 仕方ないわね…こうなったら、中に入る事は諦めるわ |
| リタ | 代わりに、エステル… |
| リタ | エステリーゼをここへ呼んでくれる? |
| 警備兵 | お前のような不審者がエステリーゼ様と知り合いなわけがないだろう。嘘をつくならもっとマシなものにしろ |
| リタ | なっ…嘘なんかつくわけないでしょ! |
| リタ | あたしはエステル…、エステリーゼの… |
| 警備兵 | エステリーゼ様の、何だ? |
| リタ | だから、エステリーゼの…… |
| 警備兵 | だから、何だと言うのだ!フン、どうせ答えられんのだろう。ほら、さっさと立ち去れ! |
| レイヴン | リタっち、どうしたのよ?言えばいいじゃない、友達だって |
| リタ | …う、うっさいわね! |
| リタ | あーもうっ、早く呼びなさい!じゃないと、ファイア… |
| レイヴン | わー!ちょっとちょっと!ここでファイアボールはまずいって! |
| アーチェ | ん?お城の中から、誰か出て来たよ |
| ??? | 何の騒ぎです? |
| リタ | あ、エステル…ちょうどいいところに来たわ! |
| エステル | まあ、リタ!来てくれたんですね! |
| 警備兵 | ほ、本当にエステリーゼ様と、お知り合いだったのか…? |
| リタ | だから言ったじゃない。これでもまだあたしを疑うっての? |
| 警備兵 | し、失礼いたしました!ご無礼のほど、お許しください! |
| レイヴン | 嬢ちゃん、久しぶり。元気してた? |
| エステル | レイヴンも一緒だったんですね! |
| エステル | はい、わたしは元気です。二人もお元気そうで何よりです |
| アーチェ | ねえねえ、リタ。まさかこのエステリーゼ様ってウィンドルのお姫様とか…? |
| リタ | うん、そうよ |
| アーチェ | お姫様と友達だったなんて二人ともすごいんだねえ。驚いちゃった… |
| エステル | ええと、そちらの方は…? |
| レイヴン | ああ、この娘はアーチェちゃん |
| レイヴン | トーティス村再建のお手伝いをしてるんだって |
| エステル | まあ、ではクレスの… |
| エステル | 初めまして、エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインです |
| アーチェ | は、初めまして! |
| アーチェ | エステリーゼ・シデひゅ…シデス・ひゅら…? |
| エステル | あ、エステルって呼んでください。言葉も普通でお願いします。二人のお友達ならわたしのお友達ですから |
| エステル | …それより、どうしたんです?こんな大変な状況の時に、揃ってバロニアへ来るなんて… |
| リタ | それなんだけど、実は―― |
| 街の女 | きゃあああ! |
| 警備兵 | な、何だ!? |
| 街の女 | 魔物が突然街へ入ってきて… |
| | |
| アーチェ | …!大変、早く助けないと! |
| エステル | はい、行きましょう! |
| 警備兵 | エステリーゼ様…!魔物退治へは私が―― |
| リタ | いいから!魔物の事はあたし達に任せてあんたはここを守る、いい? |
| 警備兵 | で、ですが…! |
| エステル | 城内には国王陛下もいらっしゃいます |
| エステル | 魔物を中へ入れるわけには行きません! |
| レイヴン | おっさんはお任せしたいとこだけど、そういうわけにもいかないか |
| レイヴン | よし、みんな!俺様の後に続いて… |
| レイヴン | …って、もう行っちゃった!?おっさん悲しい… |
| scene3 | 悲劇の村、トーティス |
| エステル | これで魔物はいなくなりましたね。みなさん、ありがとうございます |
| アーチェ | あんなの、どうって事ないわ! |
| アーチェ | そんな事よりエステル、さっき「クレス」って言ったよね? |
| アーチェ | エステルはクレスとも友達なの?クレスが今どこで何をしてるのか、知らない? |
| エステル | クレスなら、少し前にバロニアへ来ていました |
| エステル | 今はもう行ってしまいましたけど… |
| エステル | どこに向かったのかは、わたしも聞かなかったのでわかりません |
| エステル | すみません… |
| アーチェ | うーん。入れ違いってヤツかあ。本当どこで何やってんだろ |
| リタ | ところで、エステル。さっきの話の続きで、あんたに頼みがあるんだけど… |
| | |
| エステル | ──なるほど、そうだったんですね |
| レイヴン | 嬢ちゃんは、今回の戦いでウィンドルが投入した新兵器について何か知らないの? |
| エステル | 確かにリタの言う新兵器が投入されたという話は聞いています |
| エステル | でも、魔導器かどうかはわかりません |
| エステル | ア・ジュールの所有する兵器は特殊な力を持つそうで、普通の兵器だと対抗出来ないそうです |
| エステル | …ア・ジュールの兵器が魔導器であるのかも、わかりません。ごめんなさい、リタ |
| リタ | そっか… |
| リタ | でも別にあんたが謝る必要なんてないわよ |
| アーチェ | ねえ、両国の新兵器が魔導器かどうかって重要なの?兵器って事には変わりないじゃん |
| レイヴン | リタっちにとっては重要なのよ。魔導器大好きだもんね、リタっち |
| リタ | う、うっさい! |
| エステル | 魔導器…そういえば… |
| リタ | 何か思い出したの? |
| エステル | 確か、西にあるイニル街に、魔導器研究に使っていたという施設があると聞いた事があります |
| リタ | イニル街…? |
| リタ | あれ、その街の名前…どっかで聞いたような…… |
| リタ | あ、思い出した!! |
| リタ | そこって確か、一時変な病気が流行ってたとかどうとか… |
| アーチェ | 変な病気…何それ、こわいじゃん!今は勿論、治まってるんだよね? |
| リタ | そのはずよ |
| リタ | ま、あたしも人づてに聞いた話だから詳しくは知らないけど |
| レイヴン | 魔導器の研究施設…リタっち、これは行ってみる価値アリじゃない?何かわかるかもよ? |
| リタ | うーん…正直これ以上寄り道したくはないんだけど。あたしが行きたいのは国境だし… |
| リタ | でも、もしかしたらこの国の魔導器があの光や地震と関係があるかもしれないんだし、調べる価値はある、か… |
| エステル | …リタ、わたしも一緒に連れて行ってもらえませんか? |
| リタ | いきなり何言い出すのよ、エステル |
| リタ | 自分の国がこんな状態の時にあんたみたいな立場の人間が… |
| エステル | 戦争が再開されると知った時からずっと考えていたんです |
| エステル | 本当にこうするしかないのかって |
| エステル | わたしだけじゃありません。陛下も、最後までその判断を出すのに悩ましい様子だったそうです |
| エステル | 結局、答えは出ないまま、応戦せざるを得ない状況となり戦争再開になってしまいましたが… |
| レイヴン | 嬢ちゃん… |
| エステル | 戦争そのものばかりか、それが異変を引き起こしているとしたら。二重に人々を苦しめているとしたら… |
| リタ | エステル…。まだそうだと決まったわけじゃないわ |
| エステル | だからこそ、異変の原因を突き止めなければならないと思うんです |
| エステル | 出来れば自分の目で…耳で知りたい。そして責任を取りたいと思うんです。ただの我がままかもしれませんが… |
| エステル | リタがお城に来たのは偶然じゃないって思うんです。お願いです。一緒に連れて行ってください |
| リタ | エステル… |
| リタ | 分かった。そこまで言うなら。だけど、一つ言っとくわ |
| リタ | あたしは、この件であんたが責められる必要なんてないと思ってるから |
| リタ | あたしはただ真相が知りたいだけ |
| リタ | だからその…あんたがここで責任を感じる必要はないっていうか… |
| エステル | …わかってますよ、リタ。ありがとうございます |
| アーチェ | じゃあ、改めてよろしくね。エステル! |
| アーチェ | …うわあ、お姫様と旅なんてすっごいじゃん! |
| レイヴン | さてさて、そんじゃ警備に見つかってお尋ね者にされる前に、さっさと行こうじゃないの |
| レイヴン | って、よく考えたら四人で男はおっさん一人…こりゃなかなか照れるねえ |
| リタ | 誰も気にしてないから、好きなだけ勝手に照れてれば? |
| レイヴン | ひどっ! |
| アーチェ | これでもっと賑やかになるね!さってと、じゃ、次の目的地のイニル街に向かおっか |
| scene1 | リタとエステル |
| アーチェ | ねえ、結構歩いた気がするんだけど…イニル街って、遠いの? |
| エステル | そこまで遠くはないはずですが…ひょっとして、道に迷ってしまったのでしょうか… |
| レイヴン | この辺りで、一旦休憩にしない?おっさん、歳だから疲れちゃって |
| リタ | 情けない… |
| アーチェ | まあ、何だかんだでずっと歩き通しだったしね。少しくらいならいいんじゃないの? |
| リタ | 仕方ないわね。まあいいわ、この時間を利用して… |
| エステル | リタ、どこへ行くんです?あ…読書ですか? |
| リタ | まあね |
| レイヴン | 何なに?わざわざ別のとこなんて行かないで、ここで読めばいいじゃないの |
| リタ | 気が散るから嫌。言っとくけど、邪魔したらぶっ飛ばすからね |
| レイヴン | お~こわいこわい |
| アーチェ | ま、いいんじゃない?一人で集中したい時もあるでしょ。あたしもちょっと散歩してくるね |
| エステル | … |
| | |
| リタ | よいしょっと…この辺りなら静かだし、集中できそうね |
| リタ | … |
| エステル | … |
| | ガサガサ… |
| リタ | ん…?何か音が…まさか、魔物…? |
| ??? | ナァ~ |
| リタ | 猫!?こんなところで…あんた、どこから来たの? |
| リタ | ふーん。毛並みもいいし、野良じゃなさそうね |
| リタ | ほら、おいでおいで |
| リタ | ナァ~♪ |
| ??? | … |
| リタ | ナァ?ナァ~ |
| リタ | あ…ちょっと! |
| リタ | あーあ、行っちゃった… |
| エステル | 可愛かったですね |
| リタ | にゃーっ! |
| リタ | エ、エステル…!ちょ…何でここに… |
| エステル | リタと少しお話がしたいなって後を追ってきたんです |
| リタ | … |
| エステル | …? |
| | |
| | ギャオオオオ! |
| エステル | これは…魔物の声です! |
| リタ | もしかしてあの猫…大変! |
| | グルルルル…! |
| ??? | フーッ! |
| エステル | あそこにいました! |
| リタ | ちょっと!その子から離れなさい! |
| scene2 | リタとエステル |
| リタ | よかった、無事みたいね |
| ??? | ナァ~♪ |
| エステル | リタにお礼を言ってるみたいですよ |
| リタ | そ、そう?どうだか |
| リタ | 今度は気をつけて帰んなさいよ |
| エステル | 行ってしまいましたね |
| リタ | それでエステル…さっきの事なんだけど…その… |
| エステル | リタ、猫が好きなんですね。物真似、とても上手でした |
| リタ | …!あ、あれはその―― |
| エステル | わたし、リタの新たな一面が見られて、すごく嬉しいです |
| エステル | リタの事、もっと好きになりました |
| リタ | …!ば、バカな事言ってないでほら、みんなのところに帰るわよ! |
| エステル | え?リタ?でも、今休憩し始めたところで… |
| リタ | もう終わり!この話も休憩も、終わりよ…! |
| エステル | …? |
| レイヴン | あ、いたいた。二人ともどこに行ってたのよ? |
| レイヴン | アーチェちゃんもどこかに行っちゃったみたいだし… |
| エステル | 向こうの方に猫がいて、それでリタが… |
| リタ | わー!!…えーっとその… |
| リタ | そう、向こうで少し話してたの!…それだけよ! |
| レイヴン | 話?何の話をしてたのよ? |
| リタ | そ、それは… |
| エステル | あ…それは、その…内緒です!わたしとリタ、二人だけの秘密です! |
| リタ | …ほっ |
| レイヴン | えー、ずるい。おっさんにも教えてよ。でないと泣いちゃうから |
| リタ | か、勝手に泣け! |
| リタ | とにかく、別におっさんにわざわざ話すような事じゃないわよ |
| レイヴン | 隠し事なんてリタっち冷たい…じゃあエステルちゃん、教えて? |
| エステル | …ふふっ、二人だけのヒミツです |
| リタ | …! |
| レイヴン | えー。ずるいずるいずーるーいー |
| リタ | と、とにかく…これで休憩は終わり! |
| リタ | ほら、おっさん、あんたはさっさとアーチェを呼んでくる!いい? |
| レイヴン | へいへーい…まったく人使い荒いんだから… |
| scene1 | イニル街の傷跡 |
| リタ | へえ、ここがイニル街… |
| レイヴン | 見たところ普通の街だけど…本当にこんなとこで、魔導器が研究されてたっていうの? |
| ??? | ナァ~ |
| アーチェ | あー、あんなところに猫が… |
| エステル | …!リタ、あの猫… |
| リタ | うん、さっき街道で見た子に間違いないわね |
| レイヴン | おんや、リタっち。あの猫と面識有って感じ? |
| リタ | ま、まあ、ちょっとね…って |
| リタ | あ…! |
| アーチェ | 行っちゃったね… |
| リタ | … |
| エステル | …リタ、あの子の後、追いかけてみませんか? |
| リタ | え… |
| アーチェ | あ、それいいじゃん! |
| アーチェ | 聞き込みしようにもアテもないし、あの子の飼い主とかちょうどいいかも |
| レイヴン | そういう事なら早いとこ追いかけた方がいいんじゃない? |
| レイヴン | あの猫、見た目の割に足が速そうだったし |
| リタ | え、ええと… |
| エステル | リタもほら、早く行きましょう! |
| リタ | わ、わかってるわよ! |
| | |
| ??? | はい、ルル。ご飯だよ |
| ルル | ナァ… |
| ??? | もしかして、ロイヤル猫缶がいいの? |
| ??? | 駄目だよ、あれは晩ごはんの時だけ!ルドガーにも言われてるんだから |
| リタ | あの猫、ルルって言うんだ… |
| ??? | あれ?あなた達、誰? |
| エステル | こんにちは。その猫、あなたが飼っているんです? |
| エル | ルルの飼い主はエルじゃなくて、ルドガーだよ。エルはお世話をしてるだけ |
| エル | ルドガーはね、ちょっと前にエルのおうちのお隣に引っ越してきたの |
| エル | でも、この前のジシンでエルのおうち壊れちゃったから… |
| エル | 今、ルドガーのところでイソーローしてるんだ |
| アーチェ | そっか。いい人がお隣でよかったね |
| エル | うん! |
| リタ | ところでエル、そのルドガーって人はどこ?あたし達聞きたい事があるんだけど |
| エル | ルドガーは、今いないよ。メガネのおじさんと一緒にヒトダスケしに行くんだって。 |
| アーチェ | メガネのおじさん? |
| エル | メガネのおじさんは、ルドガーのお兄ちゃんだよ |
| エル | ユリウスって名前なんだけど、エルはメガネのおじさんって呼んでるんだー |
| エル | 二人とも、出かけちゃったから、エルがお留守番してるの |
| レイヴン | ありゃりゃ…エルちゃん、こんなに小さいのに一人でお留守番してるなんて…偉いのね |
| リタ | まあ、いないなら仕方ないわね |
| リタ | じゃあ一応聞くけど、エル、あんた魔導器について何か知らない? |
| リタ | この街に、魔導器を研究してた施設があるって聞いて来たんだけど |
| レイヴン | ちょ、ちょっとリタっち!こんな小さな子に聞いたってさすがにわかるわけ―― |
| エル | うん、知ってるよ |
| レイヴン | え、本当に!? |
| エル | 前に王様が作ってた魔導器はもう壊れちゃってるけど、それでもいいならエル、案内するよ |
| エステル | 是非、お願いします |
| レイヴン | ほへー聞いてみるもんだねえ |
| アーチェ | こんな小さい子が魔導器の事知ってるなんて、ちょっと意外~ |
| リタ | じゃあ、早速お願いするわ。ルル、また後でね |
| ルル | ナァ~ |
| scene2 | イニル街の傷跡 |
| エル | ここだよ |
| リタ | ここが例の研究施設…? |
| エル | うん。ここで魔導器を作ってたんだよ |
| エル | たくさんハイエキが出てそのせいで街の人がいっぱい変なビョーキになっちゃったの |
| リタ | …廃液…なるほど、それが奇病の正体ってわけね。どういう―― |
| エル | エル、ミラとユーリと一緒に魔導器を壊して、そうしたら、みんなのビョーキが治ったんだよ |
| リタ | はあ!?ユーリが魔導器を壊した!? |
| レイヴン | ユ…ユーリって、まさか…あの黒髪長髪の青年の事かしら…? |
| エステル | 騎士団を脱退したという話は聞いていますが…まさかユーリが壊したなんて… |
| リタ | 壊すとか何考えてんのよ! |
| リタ | …あ、でも奇病の原因になってたのよね。うー… |
| リタ | その場にあたしがいたら、きっと壊さずに止める方法を見つけられたかもしれないのに… |
| エル | リタは、魔導器壊すのイヤだったの?…ビョーキでみんなが、困ってても? |
| リタ | そ、そんな事言ってないでしょ! |
| リタ | ただ…本当に悪いのはそういう使い方する奴で、魔導器は、その… |
| エル | ふーん… |
| アーチェ | それにしても、魔導器って本当は人の生活を豊かにするいいものなんでしょ? |
| アーチェ | なのに、扱い方によっては簡単に凶器になっちゃうんだね… |
| リタ | … |
| リタ | それは魔導器に限った話じゃないわ。どの道具であっても同じ事でしょ |
| レイヴン | まあ、そうだわねえ |
| エステル | じゃあ早速、中に入ってみます? |
| エル | 入り口はこっちだよ。前はハイスイコウから入ったんだけど今はフツーに入れると思うよ |
| レイヴン | そりゃありがたい。おっさん、水に濡れるのは勘弁よ |
| | |
| アーチェ | 何にもないわね… |
| エステル | せめて残骸でも残っていればよかったんですが… |
| エル | 怖い顔した兵隊さん達がいろいろ持って行っちゃったよ |
| リタ | まぁ、見張りもいない研究所に、大事なもの残すバカはいないわよね。でも逆に… |
| リタ | ここまで綺麗に何もないとよっぽど人には知られたくない事をしてた、って考えるのが妥当ね |
| リタ | それが何かがわからないのは悔しいけど |
| レイヴン | 結局、バロニアでもイニル街でも、大した収穫はなかった、か。おっさん、面目ないわ |
| リタ | 別に大して期待してなかったし。やっぱりこのまま国境地帯に… |
| アーチェ | あー、ごめん、それ無理! |
| リタ | な、何よ、いきなり大声出して |
| アーチェ | イニル街の手前で聞いたんだけど、国境の辺りにすごい地割れが出来て大陸が分断状態なんだって |
| アーチェ | 伝えるの忘れてた、ごめん! |
| リタ | 忘れてたって、あんたねえ…って、じゃあ、もうこのまま進んだって意味ないって事じゃない |
| レイヴン | こりゃ国境は諦めるしかないかねえ。閃光の原因探るどころじゃないわ |
| リタ | …国境は仕方ないわね。アーチェの話が本当ならそもそも封鎖されているかもしれないし |
| リタ | それに、ウィンドルの新兵器は魔導器かどうかわからない、ってエステルも言ってたわけだし… |
| リタ | だったら、他の方法で光の正体を探るまでよ。あたしはア・ジュールに行くわ |
| レイヴン | へ?ア・ジュール!? |
| リタ | そう。ウィンドル側は手詰まり。国境にも行けない |
| リタ | となれば、次はア・ジュールを調べるのは当然よ |
| アーチェ | ア・ジュールか…。じゃあ、ウィンドル港から船でア・ジュールへ向かうんだね |
| アーチェ | っていうか、エステルを敵国に連れて行っちゃっていいの?見つかったらまずいんじゃない? |
| エステル | それは…でも出来ればわたし、やはり最後まで一緒に行きたいです |
| エステル | 駄目でしょうか… |
| レイヴン | まあ、ここから一人で帰れってのも、それはそれで無茶だわなあ |
| レイヴン | あ、でもさ、クレアちゃん達の話じゃ船止まってんじゃなかったっけ? |
| レイヴン | 動いてりゃいいんだけどねえ |
| エル | お話、終わった? |
| エル | エル、そろそろ帰らないとだし |
| リタ | …ああ、そうだったわね。エル、案内ありがと。助かったわ |
| エル | どういたしまして。じゃあ、エルは帰るね! |
| エル | あ、そうだ! |
| エル | もしルドガーとメガネのおじさんに会ったら、エルは元気だよって、伝えてくれる? |
| アーチェ | おっけ。もし会えたら、とびきり元気にしてたよって伝えておいてあげる |
| エル | ありがとう! |
| リタ | じゃ、そろそろ行くわよ |
| scene1 | ア・ジュールの協力者 |
| アーチェ | ウィンドル港に着いたけど…海、荒れてるね… |
| 船員 | 現在、各国行き定期船の航行は全て休止です。再開の見込みは立っていません! |
| リタ | やっぱりまだ船は動いてないか… |
| リタ | でも、何としてもア・ジュールに行かなきゃ…! |
| リタ | …あそこに小船があるわ。海が荒れていようが非公式だろうが渡航できれば何でもいい。行くわよ |
| アーチェ | ちょっとぉ!リタ、本気なの!? |
| アーチェ | 行きたい気持ちはわかるけどさあ、これ、命に関わっちゃうレベルだよ? |
| レイヴン | おっさんもアーチェちゃんに賛成~。この状況で無断で国境越えなんて無謀過ぎ! |
| レイヴン | 命あっての物種だよ? |
| リタ | 来たくないなら来なくていいわ。あたしは一人でも行ってみせる |
| エステル | わたしも行きます! |
| エステル | あ…小船の近くに人がいます!交渉してみましょう、リタ! |
| アーチェ | あ~ん、もう!誰も行かないなんて言ってないでしょ! |
| アーチェ | 置いていくなーー!! |
| レイヴン | あ~あ~、みんなしてもー。これが若さってやつ? |
| レイヴン | しょうがないね、どーも… |
| | |
| エステル | あの、すみません。この船の持ち主の方です? |
| ??? | …?そうだが… |
| レイヴン | ただの船乗りにしては鋭い目つき…ただもんじゃなさそうねえ |
| エステル | わたし達、どうしても、ア・ジュールへ行きたいんです。船を出していただけませんか? |
| ??? | この状況を見てわからないのか?今、海に繰り出すのは危険だ。悪い事は言わない、やめておけ |
| エステル | 海が荒れているのはわかっています |
| エステル | でも…それでも、行きたい…いえ、行かなければならないんです |
| ??? | … |
| リタ | あたし達、今回の戦争で使われた兵器について調べてるの。それがこの天変地異の原因かもしれないから |
| リタ | だから、どうしてもア・ジュールに行く必要があんのよ。わかる? |
| レイヴン | ちょっと、リタっち。そんな上から目線な… |
| ??? | …天変地異の原因だと? |
| ??? | 確かに、ただの自然現象とは思えないほどの事態だが… |
| エステル | 詳しい事はまだわかりません |
| エステル | ですがア・ジュールへ行けば何か手がかりが得られるかもしれないんです…! |
| ??? | お前達、そんなに必死に天変地異の原因を探ってどうする? |
| ??? | 原因がわかれば得る物でもあるのか? |
| エステル | 苦しんでいる人々を助けるのに、何かできる事があるなら行動したい。それだけです |
| リタ | …あたしは新兵器の正体を確かめたい。それだけよ |
| リタ | それが本当に魔導器で、変な使い方してるなら、相手をぶん殴ってでも止めさせるわ |
| ??? | 詳しい事情はわからない、…けど、お前達が真剣だって事はよくわかった |
| ??? | …いいだろう。ア・ジュールへ連れて行ってやる |
| アーチェ | ほんと!? |
| ??? | ただし、この異変の影響で海も大荒れ…それに、いつまた大地震が来るとも限らない |
| ??? | それ相応の覚悟をしておけ |
| レイヴン | 念のため、聞いておきたいんだけど、覚悟って… |
| ??? | 勿論、海の藻屑となる覚悟だ |
| レイヴン | あー、やっぱり… |
| セネル | 俺はセネル・クーリッジ。海上から人々の救助活動を行っているシーブル村のマリントルーパーだ |
| セネル | …本来ならば人命救助を行う立場の俺が、人が死ぬかも知れない荒れた海に船を出す事自体間違っているが… |
| セネル | 最近、天変地異を境に人が行方不明になる現象が何件も確認されている |
| セネル | 俺は海に落ちたのではないかと考え、独自に調査を進めていた |
| セネル | だが、手がかりはなしだ |
| セネル | …お前達が天変地異の調査をしているというなら、情報が交換条件だ |
| セネル | …了承するなら全員すぐに乗り込め |
| エステル | わかりました。何かわかったらセネルにもお知らせしますね! |
| エステル | よろしくお願いします |
| レイヴン | とほほ…藻屑にならないといいけど… |
| scene2 | ア・ジュールの協力者 |
| セネル | ア・ジュール港の近くに着いた。歩けばすぐ港街に入れるだろう |
| セネル | …藻屑にならなくてよかったな |
| リタ | よくないわよ…気持ち悪い…うっぷ |
| アーチェ | リタってば船酔いー!?ちょっと、大丈夫なの? |
| セネル | じゃあ、俺はもう行く。ここに長居していると、ア・ジュールの奴らに目を付けられる |
| エステル | ありがとうございました、セネル。このご恩は忘れません |
| セネル | 交換条件の事、忘れるなよ。俺も何かわかったら知らせる |
| セネル | …またな |
| アーチェ | うん、まったねー |
| レイヴン | やれやれ。改めて考えると旅に出てからいろんな人に会って、いろいろ手助けしてもらったもんだねぇ |
| エステル | はい。こんな風に世界中の人々が手を取り合う事ができれば、戦争など起こらないと思うのですが… |
| アーチェ | ほんとよね…どうして戦争なんか―― |
| リタ | うえっぷ… |
| レイヴン | ちょっとリタっち、本当に大丈夫?顔色真っ青よ? |
| ア・ジュール兵 | お前達、何者だ。どこから来た? |
| エステル | あの、わたし達は… |
| レイヴン | …嬢ちゃんは立場上あまり顔を出さない方がいいかもね。後ろに下がっといで |
| エステル | は、はい… |
| リタ | …あたし達、シルヴァラントから来たの |
| ア・ジュール兵 | シルヴァラントだと?目的は? |
| リタ | …ちょっとした調べ物。船酔いで気持ち悪いから、もう行っていいでしょ? |
| ア・ジュール兵 | 怪しいな。お前達、本当はウィンドルのスパイなんじゃないのか? |
| アーチェ | は?何言ってんの。そんなわけないじゃん! |
| ア・ジュール兵 | いいや、やはり怪しい。こうなったら全員の身柄を拘束し、徹底的に調べてやる! |
| レイヴン | そりゃまずい…ねえ旦那ぁ、そう固い事言わないでさ、ね? |
| ア・ジュール兵 | 抵抗すると痛い目に遭わせるぞ! |
| | |
| リタ | あーもう、うっさい! |
| リタ | 人が気持ち悪くて吐きそうなのに、ごちゃごちゃ騒ぐんじゃないわよ! |
| リタ | あたしは、あんたらの国が使った兵器の事を知りたいだけ!邪魔するとぶっ飛ばすわよ!! |
| ア・ジュール兵 | 何だと…! |
| レイヴン | あちゃー…リタっち、それだけは言っちゃ駄目 |
| ア・ジュール兵 | 兵器の偵察…!?お前達、やはりウィンドルのスパイだな!全員牢屋にぶち込んで―― |
| ??? | あー、ちょっと待ってくれ。彼らはオレの知り合いだ |
| | |
| ア・ジュール兵 | あ、あなたは…スパーダ・ベルフォルマ様! |
| スパーダ | お役目ご苦労 |
| スパーダ | 彼らの対応についてはオレに任せてくれ。いいな? |
| ア・ジュール兵 | はっ! |
| ??? | 君達、大丈夫?乱暴な事されなかった? |
| | |
| スパーダ | オレについてきな。何、悪いようにはしねェよ |
| アーチェ | …う…うん。わかった… |
| アーチェ | ど、どうしようもないもんね、この場合… |
| | |
| スパーダ | 無事に脱出成功っと。うまくいったな、ヒャハハハ! |
| スパーダ | おっと、自己紹介がまだだったな |
| スパーダ | オレはスパーダ、こいつはルカだ。よろしくな |
| ルカ | よろしくね |
| アーチェ | スパーダにルカだね。二人ともありがと!お蔭で助かったよ |
| エステル | リタ、船酔いの方は大丈夫です? |
| リタ | うう…ようやく治まったって感じ |
| レイヴン | お蔭で助かったけどもさ、おたくら、何だってあんな事してくれたわけ? |
| スパーダ | そいつが、うちの兵器の事を話してたからさ。オレ達も調べてたところでな |
| スパーダ | 単刀直入に聞くぜ。お前達、魔導兵器の事、どこまで掴んでる? |
| リタ | 魔導兵器…? |
| リタ | やっぱり、ア・ジュールの所有する兵器は、魔導器を使ったものなの? |
| スパーダ | あ?そんな事も知らなかったのか |
| スパーダ | 何だ、もっといろんな事を知ってるのかと期待したんだがな |
| エステル | お役にたてなくて、すみません… |
| レイヴン | そういうおたくらは、どれくらいの事を知ってるのよ? |
| スパーダ | 軍事用に開発した魔導器を、うちの国じゃ魔導兵器って呼んでる |
| スパーダ | ヤバそうな代物だったんで、一度ぶっ壊したんだが、どういうわけか今回の戦争に投入したって話だ |
| スパーダ | オレ達が壊した魔導兵器の他にも隠し持っていたのか、あるいは新たに作り出したのか… |
| リタ | …ふうん、なるほどね。あんた達が魔導兵器について、何を疑問視してるかは何となくわかったわ |
| リタ | …それで、今回の戦争で使われた魔導兵器ってのは、今どこにあるの? |
| スパーダ | おそらく、北東にあるテノス兵器工場だろうな。元々そこで作ってたもんだし |
| ルカ | それに…僕達見たんだ、テノス兵器工場にすごい数の資材が持ち込まれるのを… |
| アーチェ | テノス兵器工場…ねえ |
| アーチェ | 待って。あんたら、何でそこまで知ってるなら自分達で調べに行かないワケ? |
| アーチェ | あんた達の疑問もそこに行けば解決するんじゃないの? |
| スパーダ | ま、それにはウチもいろいろと理由があんだよ。だから、信じる信じないはお前らに任せる |
| スパーダ | オレの実家はカン・バルクにある |
| スパーダ | ベルフォルマ家って言えば、すぐにわかる。待ってるぜ |
| リタ | 待ってるって…どういう意味よ。調べて来て情報を寄越せっての? |
| リタ | …そもそも、あんたア・ジュールの人間なんでしょ?どうしてあたしらに情報なんか… |
| スパーダ | だから言ったろ?ワケありなんだよ。オレやルカは今、自由に動ける状況じゃねェんだ |
| スパーダ | じゃ、同じ魔導兵器を調べるモン同士仲良くしようぜ!ヒャハハ! |
| ルカ | 詳しく話せなくてゴメンねじゃあ、また! |
| アーチェ | …怪しいわね。テノス兵器工場だっけ?これが罠って可能性ない? |
| レイヴン | そうねえ。はいそうですかって言って行ってみてとっ捕まるのはちょっとね |
| リタ | なら、カン・バルクに行くべきね。ベルフォルマ家ってのを調べましょ |
| リタ | …また寄り道なのは気に食わないけど |
| リタ | 問題はア・ジュールの本拠地にエステルを連れて行く事になるって事だけど… |
| エステル | わたし…やっぱりみなさんの足かせになっているんですよね。すみません… |
| リタ | そ、そういう意味で言ったんじゃないわよ! |
| リタ | とにかく目立たないようにすればいいんだから。いい? |
| | ガサ… |
| レイヴン | ん?今何か音がしなかった? |
| | |
| | ギャオオオオ! |
| アーチェ | ちょ、ちょっと!いきなり魔物なんて…! |
| リタ | ったく…あたし達、あんたの相手をしてる暇なんてないの!悪いけど、さくっと終わらせるわよ |
| scene1 | 食えない男 |
| エステル | ここがア・ジュールの都、カン・バルクなんですね。見咎められず入れてよかったです |
| リタ | さ、とっととベルフォルマ家ってのを探して、素性を探るわよ。って…また地震!? |
| | |
| | ゴゴゴ… |
| アーチェ | …収まった。結構頻繁に揺れてるけど、今回のはちょっと大きかったね |
| レイヴン | 戦争が再開したのに加えてこう地震が続いた日にゃ、みんなしんどいわよねぇ |
| アーチェ | でも、もたもたしてられないじゃん。ほら、ベルフォルマ家の情報を集めようよ! |
| リタ | そうね。これで誰も聞いた事がない家ならあたし達は騙されてたって事がわかる |
| リタ | 早くわかればそれだけ早くここを離れられるってもんだし |
| エステル | すみません、リタ…わたしがいるばっかりに… |
| リタ | だ、だからあんたのせいじゃないってば!ほら、あんたら調査!目立つのはナシ!後でここに集合ね! |
| レイヴン | もし万が一何かあったら、リタっちにどやされるからエステル嬢ちゃんはおっさんと一緒に行動ね |
| リタ | どやされるじゃ済まないわよ。しっかり任せたわよ、おっさん |
| | |
| アーチェ | …ホンモノじゃん!!ベルフォルマ家って、ア・ジュールのホンモノの貴族じゃん!! |
| リタ | ますますもって意味がわからないわ。あのスパーダって奴が偽者かと思ったけど、容姿も噂のままだったし |
| レイヴン | 普通、貴族がお上に楯突くなんてするもんじゃないからねえ。こりゃ信用してもいいんでないの? |
| エステル | 名高い一族のようですし、あまり目立っては動き辛いという話も納得がいきます |
| リタ | 確かにあいつにはリスキーな話よね。目的はよくわからないけど、あのスパーダって奴は信用してよさそう |
| アーチェ | じゃあスパーダが言ってたテノス兵器工場ってトコに行ってみる? |
| リタ | そうね。でもせっかくここに来たんだし、もう少し情報収集して行っても―― |
| レイヴン | …!?しっ。…みんな静かに。ここの兵士だ。話が聞けるかもしれないよ |
| | |
| ア・ジュール兵 | タトリン様、お帰りなさいませ |
| リタ | …! |
| ??? | ただいま。大佐はどこ? |
| ア・ジュール兵 | カーティス大佐でしたら、いつものカフェにいらっしゃいます |
| ??? | また?まあいいか。じゃあ私、大佐に報告しに行ってくるから |
| ア・ジュール兵 | はっ |
| エステル | リタ、今の… |
| アーチェ | カーティス「大佐」だってさ。この国の相当偉い人じゃん |
| リタ | あの女の後をつけるわよ。その大佐って奴を言いくるめて、うまい事情報を引き出してやる |
| レイヴン | やれやれ。面倒な事にならなきゃいいけどね |
| scene2 | 食えない男 |
| ??? | 大佐ー! |
| ??? | おや、アニスではないですか |
| リタ | あれがカーティス大佐って奴?てか、軍人なのにカフェでお茶しながら部下に報告させるってどうなの? |
| アニス | 部下があちこち駆け回っている時にこんなところで優雅にお茶だなんて、ずるくないですか |
| ??? | これも情報収集の一環ですよ。市井の人々の声に耳を傾けるのも、大事な事ですからね |
| アニス | ふーん…まあいいですけど。言いつけ通り、ウィンドルの件、進めておきましたよ~☆ |
| ??? | ご苦労様でした。後は、有力な情報を持ち帰る事を期待して待ちましょうか |
| | |
| レイヴン | リタっち。おっさんにはわかる。ああいう輩は相手にしたらいけないタイプよ |
| リタ | 大佐だか何だか知らないけど、そこに軍の幹部がいるのよ?こんな機会逃す手はないわ |
| リタ | 誰も知らない魔導兵器の情報を聞き出す、絶好のチャンスじゃない。行ってくるわ |
| リタ | …ねえ、そこのあんた達! |
| レイヴン | え、ちょ、ちょっと、おっさん知らないよ~!? |
| アニス | …? |
| ??? | どなたですか? |
| リタ | 単刀直入に聞くわ。魔導兵器の事を教えなさい |
| アニス | …! |
| ??? | これはこれは…いきなりすごい事を尋ねますね。何故そんな事を知りたがるんですか? |
| リタ | あたしは魔導器の研究者よ。魔導器を使った兵器を作ったりして、あんた達、一体どういうつもりなの? |
| リタ | それにあんたの国が魔導兵器を使って戦争再開させたそうじゃない。何考えてんのよ。バカじゃないの? |
| アニス | 何言ってんの?先に仕掛けてきたのは、ウィンドルじゃ―― |
| ??? | まあまあ、アニス |
| ??? | いやー、興味深いですね。まさかカフェで魔導器研究者の方と話をする機会があるとは思いませんでした |
| ??? | ご質問の魔導兵器の件ですが、残念ながら詳しい事はお教えできません。重要機密ですから |
| ??? | ところであなた、魔導兵器の事をどこで知ったのですか?機密情報ですから本来、知るはずがないのですが |
| ??? | 知るはずのない情報を知っているあなたは尋問対象となる資格を十分満たしていると言えます |
| ??? | とはいえ、この店で騒ぎを起こしたくありませんので… |
| ??? | 情報元を教えていただければ、見逃して差し上げますよ |
| ??? | 悪い取引ではないと思いますがね。いかがです? |
| レイヴン | …リタっち!これ以上は、ヤバいって…! |
| リタ | 情報の出処?研究者としての、あたしのカンよ。何か文句ある? |
| ??? | …勘、ですか。わかりました。…そういう事にしておきましょうか。今は、ね |
| ??? | では、話は終わりです。騒ぎにならないうちに、早めにお帰りになる事をお勧めしますよ |
| アーチェ | も、もう!リタってば無謀過ぎるよ!ヒヤヒヤさせないでよぉ…! |
| リタ | …気に食わないわね、あの軍人。もういいわ、行きましょ |
| アニス | 大佐…あの連中… |
| ??? | … |
| | |
| レイヴン | ちょっと、リタっち、おっさん正直肝が冷えたわよ。目立つの禁止って自分で言っておいてさ |
| リタ | 食えない奴だったわ。あのまま話してても、ボロなんて絶対に出さなかったでしょうね |
| エステル | あのまま話していたら、リタが捕まってしまったかも知れないんですよね… |
| リタ | カフェにいるから騒ぎを起こしたくないなんて、わざとらしいにもほどがあるわ。これから見張られるかも |
| アーチェ | うう~。やめてよね~。もうこの街から離れた方がいいよ。こうなったらテノス兵器工場に逃げ込んじゃおうよ |
| レイヴン | …ますます敵の懐に入る感じがして、おっさん嫌だわ。ま、向こうさんにとっては予想外だと信じたいとこだね |
| scene1 | 導き出した答え |
| アーチェ | さっすが…兵器工場ってだけあって、大きい建物ね。警備も随分と厳重だし… |
| リタ | スパーダの言ってた通り、ここに魔導兵器が存在する可能性は高そうね |
| | |
| ア・ジュール兵1 | 異常はないか |
| ア・ジュール兵2 | はっ |
| アーチェ | …で、どうやって中に入るのさ?軍事機密だし、見張りもいるしさっきみたいな直球じゃあ |
| アーチェ | 入れてもらえるどころか捕まっちゃうのがオチだと思うけど… |
| リタ | 正面から入れないなら、裏から入るまでよ |
| エステル | …侵入するって事です?そんな事をしてしまって、大丈夫でしょうか… |
| レイヴン | 大丈夫…じゃあないと思うけどね。見つかったら、牢屋に入れられてそんでもって拷問とかされて――… |
| アーチェ | … |
| リタ | 捻り潰すわよおっさん…って言いたいところだけど、おっさんの言う事は一理あるわ |
| リタ | 何度も言ってるけどあたしは魔導器を変な使い方する奴が許せないの。これはそのあたしが勝手にやってる事 |
| リタ | だから、嫌ならついて来なくていい。ましてや軍事機密の施設に乗り込むんだから。殺される可能性だってあるわ |
| レイヴン | …それでもリタっちは行くんだよねえ |
| リタ | 当然でしょ。何のためにここまで来たのよ。このまま帰るなんてごめんだわ |
| アーチェ | だよね~。リタって「こう!」って決めたら、絶対諦めなさそうだもんね…オッケー。あたしも行く |
| アーチェ | あたし、逃げ帰ったなんてチェスターに言いたくないもん。…笑われるし |
| エステル | リタ、わたしも行きます。止めたって駄目です! |
| レイヴン | ま、こうなるのはわかってたけどね。おっさんだけ帰るなんて出来ないし、さ、こっちこっち |
| エステル | え?レイヴンは侵入できる場所を知ってるんです? |
| レイヴン | こういうのは排水口って相場が決まってるもんよ、嬢ちゃん。じゃ、行きますかね |
| | |
| エステル | よいしょ…っと。あ、通路のような場所に出ましたね。侵入成功です! |
| レイヴン | 嬢ちゃん、嬉しいのはわかるけど声の大きさに気をつけてね。そこらに兵士、うじゃうじゃいるから |
| リタ | …ますますもって怪しいわね。絶対に魔導兵器作ってる奴ぶっとばしてやる |
| アーチェ | …向こうから兵士が来る…!みんな、隠れて! |
| | コツ…コツ…コツ… |
| | … |
| リタ | … |
| レイヴン | …行ったかしら? |
| アーチェ | もう大丈夫だと思う。ふう、ひやひやしちゃった |
| エステル | 中も警備は厳重みたいですね |
| リタ | 見つかったら一巻の終わりね。…手早く済ませましょ |
| ア・ジュール兵 | お前達、何者だ!? |
| アーチェ | やば!もう見つかっちゃったじゃん!! |
| ア・ジュール兵 | 貴様達、さてはウィンドルのスパイだな? |
| レイヴン | 残念。うちらの所属はバラバラ、言わば連合国の部隊ってとこかね |
| リタ | バカ言ってんじゃないわよ!みんな、逃げるわよ! |
| ア・ジュール兵 | 待て! |
| scene2 | 導き出した答え |
| リタ | まだ追いかけてくる…ったく、しつこいわね!エステル、そこの扉よ!入って! |
| エステル | はい! |
| | バタン! |
| | … |
| | … |
| アーチェ | …逃げ切ったかな?ちょっと距離あったもんね。扉に入るところは見られなかったと思うけど |
| レイヴン | でも、見つかるのは時間の問題よ。向こうも血眼になって捜してるだろうし |
| リタ | 通路にいる兵士の気配がなくなったらこの部屋を出て魔導兵器の探索。発見、調査次第すぐに脱出。いい? |
| エステル | わかりました! |
| リタ | 実物を調べればわかるかもしれない。この異変を引き起こした原因が…。ううん。絶対に突き止めてやるわ… |
| ??? | そこにいるのは誰? |
| リタ | …!何、あんた…? |
| レイヴン | 浮いてる… |
| ??? | あなた達…見ない顔ね。新しく入った人? |
| レイヴン | そ、そうそう!おっさん達最近配属になった新人。よろしくね、お嬢さん |
| ??? | そう…。で、私に何か用かしら?魔導兵器の調整なら、もう少し時間がかかるわよ |
| リタ | …魔導兵器!?これが…!? |
| レイヴン | …調査するも何も、この部屋が魔導兵器の実験室だったワケね。こら、ツイてるわ |
| ??? | …本当はこんな兵器、もう使いたくなかったんだけどね。ガイアスも、よく思ってないし… |
| エステル | ガイア…いえ、陛下が…?そうなんですか… |
| リタ | ねえ、この国…えーっと…あたし達の国の魔導兵器って、いわゆる一般的な魔導器と同じなの? |
| ??? | 原理的にはね。ただ、魔導兵器はその力を最大限に引き出せるよう、魔導器の出力を上げたもの |
| ??? | そのせいで、魔導兵器が消費するマナの量は、通常の魔導器とは格段に違う… |
| リタ | なっ…それは本当なの!? |
| ??? | ええ。あなたの指す一般的な魔導器が何なのかはわからないにせよ、比にもならないわ |
| リタ | 比にもならないって…。そんな…何て事なの… |
| レイヴン | あーちょっと、リタっち?いまいち状況が飲み込めないんだけど今一体どういう話になってんの? |
| リタ | …マナってのは、あらゆる生命の源でこの世界の調和を司る物質の事で、魔導器の動力源でもあるの |
| リタ | そのマナがなくなれば、人間はおろか、世界そのものの生命にだって影響が出てくる |
| アーチェ | 世界そのものの、生命…? |
| エステル | じゃあ、魔導兵器を使用した今は、マナが大量に消費され、世界の命が蝕まれている状態だという事です? |
| ??? | …そういう事よ。もしかしたら、今この世界で起きている異常も… |
| レイヴン | …!て事はリタっちの予想通り… |
| リタ | そんな危険なものだって知りながら何でそんなもの使ったのよ!?攻撃するにしても何か別の―― |
| ??? | …背に腹は代えられない |
| ??? | 向こうが魔導器を使っていたのよ。こちらも対抗措置を講じていなければこの国は滅んでいたわ。確実にね |
| エステル | …!それじゃ、ウィンドルの新兵器も、やはり魔導器だったんですね… |
| エステル | あの…教えてください、ウィンドルの魔導器も、この国の魔導兵器と同じ仕組みなのでしょうか? |
| ??? | このマナの枯渇状況からみて、マナを食い潰しているのはウィンドルの魔導器も同じでしょうね |
| エステル | そんな… |
| リタ | …当然よね。出力の高い魔導器を使用すれば、消費するマナの量も比例して上がる… |
| リタ | 予感はしてたけど、両国とも魔導器を使ってた…それも最悪な使い方で…!許せない…!! |
| ??? | …?あなた、一体――… |
| ア・ジュール兵 | ミュゼ様!不審者が内部に侵入しました。ウィンドルの工作員かもしれません! |
| アーチェ | …!やば… |
| ミュゼ | ウィンドルの工作員ですって…?まさかあなた達… |
| ア・ジュール兵 | こ、こいつらは…!!ミュゼ様、こいつらが侵入者です!間違いありません! |
| レイヴン | ちっちっち。若人。我々は連合国の部隊だってば。ウィンドルだけじゃないんだよね |
| ミュゼ | やたらと魔導器に詳しい子がいるとは思ったけど、ウィンドルのスパイだったなんてね |
| ミュゼ | よほど自信があるのかしら |
| ミュゼ | でも…、ガイアスのために作った魔導兵器をみすみすウィンドルの人間に渡すわけにはいかないわ! |
| レイヴン | いやだから、うちらはウィンドルの人間だけじゃないんだけど…おっさんの話、聞いてくんない? |
| リタ | 作ったですって!?こんなバカな真似したのはあんただっていうの!? |
| エステル | リ、リタ、落ち着いてください。あの、ミュゼさん、わたし達は…! |
| ミュゼ | ごちゃごちゃうるさい!あなた達はここで始末するわ! |
| scene3 | 導き出した答え |
| ミュゼ | …っ!やるわね…!でも、これで私を止められると思わないで |
| リタ | 別にあんたを殺したいわけじゃない。あたしはただ魔導器でバカな真似をするのをやめさせたいだけで… |
| ミュゼ | どんな御託を並べても無駄よ。あなたの目的はこの魔導兵器の情報を盗む事でしょう |
| エステル | 侵入するという手段を取った事は謝ります!ですが、決して情報を盗むつもりなんて… |
| ミュゼ | 本当かしら。そもそも、先に攻撃を仕掛けてきたのはウィンドルよ。これ以上ガイアスの邪魔はさせない! |
| レイヴン | だからこっちはウィンドルじゃなくてって、聞く耳持たずを地で行ってるわこりゃ |
| ミュゼ | 今度こそ、覚悟しなさい! |
| ??? | 双方、そこまでです |
| リタ | あんた…! |
| アーチェ | カン・バルクの何とか大佐じゃん!まさかホントにつけられてたってワケ!? |
| ミュゼ | ジェイド!?…なぜ止めるの? |
| ジェイド | この方達に下手な事をすると、ウィンドルとの関係が、余計こじれてしまいますのでね |
| ミュゼ | どうして?たかがスパイの一人や二人… |
| ジェイド | それが、たかがでもないんですよ。ですよね。エステリーゼ・シデス・ヒュラッセイン殿下? |
| リタ | なっ…!あんた、エステルの正体を知って… |
| レイヴン | …そりゃそうでしょ。カン・バルクでリタっちが勝手に聞きに行っちゃうしおっさん、アピール頑張ったんだから |
| リタ | は、はあ!?あんたがエステルの事、バラしたっての!?あのメガネに!?ふざけんな! |
| レイヴン | じゃないとあの場で処刑だって。それに顔バレてないワケないでしょ。嬢ちゃんが、さ。…でしょ? |
| ジェイド | どこまで本気かは図りかねましたが必死に彼女の顔を指さしていましたからね。いやあ、見ものでした |
| ジェイド | リタでしたか。あのままあなたが魔導兵器の情報源を教えてくれれば私はどちらでもよかったのですが |
| ジェイド | テノスに向かったという情報を得たので、ここで待たせてもらいましたよ。殿下が殺されては厄介ですからね |
| ミュゼ | 王族が工作員なんてね…。いきなり戦争を仕掛てきたりするし、ウィンドルは何を考えているのかしら |
| リタ | ウソね。ア・ジュールが先に仕掛けたって聞いたわ。卑怯なのはどっちなの? |
| ジェイド | …無駄な議論はその辺にしませんか、二人とも |
| ミュゼ | 無駄な議論?攻め込んできたのは、ウィンドル。これは間違いない事でしょう? |
| アーチェ | …あのさ、何かおかしくない? |
| アーチェ | 今さ、この戦争仕掛けたのってウィンドルとア・ジュール、両方だって言い合ってたじゃん |
| アーチェ | 何でどっちかってわかんないの?どうしてどっちもなの?同時に仕掛けたんだったらわかるよ? |
| アーチェ | でも、違うんだよね?これっておかしくない?でさ、思ったんだけど… |
| レイヴン | いや、それはどっちもただ自分の都合のいい事を言ってるだけなんじゃ… |
| アーチェ | 勿論そうかもだけどさ、でももし、どっちも正しかったらどうなるのかなーって |
| エステル | …どういう事です? |
| ジェイド | 興味深い話です。続けてください |
| アーチェ | 要するに、最初の一発目はどっちの国も撃ってないって事だよ。この戦争が始まる時のさ |
| ジェイド | …その可能性に思い当たったのはあなたが最初ではありませんよ。ここに報告書があります |
| リタ | …報告書? |
| ジェイド | はい。我が軍が作成したものです。攻撃時間について記録が残っています |
| ジェイド | ウィンドルからの攻撃、7時12分。我が軍の応戦時刻、7時…20分 |
| ミュゼ | ウィンドルから攻撃を仕掛けたっていうのはまぎれもない事実ね |
| ジェイド | ところが記録は、これだけではないんですよ |
| ジェイド | 私の部下がウィンドルにいましてね。そこで入手したウィンドルの攻撃時間の記録です |
| レイヴン | …それこそスパイってわけね。それで? |
| ジェイド | …この記録によればア・ジュールからの攻撃が7時12分、と記録されています |
| リタ | それ、ウィンドルもア・ジュールも同じ時間に攻撃を始めたって事になるじゃない |
| ミュゼ | …どういう事?偽物を掴まされているんじゃない? |
| ジェイド | その点は私も疑いました。ですのであなたにお聞きします。エステリーゼ様 |
| エステル | は、はい |
| ジェイド | このサインと印鑑に見覚えは? |
| エステル | ウィンドルが使用しているものです。…間違いありません |
| ミュゼ | つまり、その書類はウィンドルの正式な記録という事?でも、この人が嘘をついている可能性だってあるわ |
| ジェイド | 確かにその可能性は否定できません。時間をかけて真贋を調べる事も出来ますが、必要ないと思いますよ |
| ミュゼ | ジェイド、あまりはぐらかさないで。…あなた、第三者が攻撃をしたって言いたいの? |
| リタ | 第三者…?あたしが見た最初の光が、第三者によるものの可能性…? |
| リタ | …確かにあの爆発だけがケタ違いだった。それもシルヴァラントから視認できる程の威力… |
| ジェイド | 話が早い方ばかりで助かります。私もこの両国の報告書を読んでから疑問を持つようになりましてね |
| ジェイド | とはいえ、私もア・ジュールの軍人。戦時下で迂闊な事を言えば、自分の首が危ないんですよ |
| ジェイド | それに戦争や天変地異で国民が不安がっている中、こんな紙切れで皆が皆、納得するとも思えません |
| ジェイド | そこにあなた方が現れたんですよ。ウィンドル王族に魔導器に詳しい方、その他もろもろがね |
| レイヴン | その他もろもろ…随分な言われようだ事 |
| ジェイド | さて、ここからが本題です。エステリーゼ様、この状況をどうお考えですか? |
| エステル | わたしは…戦争を終わらせたいです。真実をリチャード陛下に伝え、すぐにでも停戦を |
| エステル | それにミュゼさんが言っていた事も気になります |
| エステル | 魔導兵器の使用でマナが減り、天変地異にも関係があるかもしれない、という事が |
| リタ | …もし戦争を誘発、魔導兵器を使用させ、マナを枯渇させようとしている第三者がいるとしたら… |
| ミュゼ | …目的は戦争や地震だけかしら?マナがなくなれば、命どころか世界が破滅するのよ |
| ジェイド | 推論はそこまでにしましょう。ここで予想を立てたところで全ては机上の空論にしかなりません |
| レイヴン | 確かにね。最初の爆発、第三者の存在天変地異、マナの枯渇。ぜーんぶ仮定のまま話が進んじゃってるからね |
| アーチェ | じゃあそれぜーんぶ確かめに行くって事?誰が? |
| ジェイド | もちろん、あなた方と私がです |
| ミュゼ | ジェイド、あなた本気!?相手は敵国ウィンドルの人間よ! |
| ジェイド | ああ、そうでした。ではみなさん。いかがでしょうか。私を「捕虜」にしてみては? |
| リタ | はあ!?捕虜!?…あんた、何考えてんのよ! |
| ジェイド | 極めて現実的かつ建設的に物事を考えているつもりですよ |
| ジェイド | 別に好きで戦争をやっているわけではありませんのでね。ですが止めるにも理由と証拠が必要です |
| ジェイド | 先程も言いましたが、私はこの国の軍人ですので、ウィンドルを正々堂々調べるわけにもいきません |
| ジェイド | もちろんスパイを使って探る事はできますが、リスクもあります |
| レイヴン | バレれば、国間の仲はますます険悪になる、って事ね |
| ジェイド | その通り。ですので、私はあなた方の捕虜になり、同行する事で堂々とウィンドルに入ろうと思います |
| アーチェ | 無茶苦茶だよ… |
| ジェイド | …という事で、今から私はあなた方の捕虜になります。こほん。「あー、捕まってしまいましたー」 |
| リタ | …あんた絶対楽しんでるでしょ。まあいいわ。情報も聞けたし、次はこいつ連れてウィンドルに行きましょ |
| エステル | …あの、リタ! |
| リタ | 何、エステル。気になる事でもあったの? |
| エステル | …わたしも捕虜として、ここに残ろうと思います |
| リタ | な、何でよ!あんたが残る意味なんて―― |
| エステル | あります。カーティス大佐を捕虜とした場合、この国の方が怒ると思うんです |
| エステル | これ以上国の関係を悪くしたくはありません。ですから… |
| エステル | わたしは独断でア・ジュールへ停戦を申し込みに行った事にできませんか? |
| ジェイド | …ふむ、助かりますがやや困りもしますね |
| ジェイド | 私がウィンドルに行った場合、エステリーゼ様を捕虜とした国の人間として非難される事になります |
| エステル | でしたら、リチャード陛下に親書を。それと、リタ達にもウィンドル内を調査できるよう、手紙を書きます |
| ジェイド | それはありがたい。感謝しますよ。…という事です、ミュゼ。彼女の事を宜しくお願いします |
| ミュゼ | …ジェイド。今の状況で、ガイアスを置いていくつもり?もし、ガイアスを裏切るのであれば… |
| ジェイド | そこは信用していただくしかないですね |
| ジェイド | それに陛下は大丈夫ですよ。…あなたもいますしね |
| ジェイド | ここしばらく陛下にも会っていないでしょう?彼女を連れて行くのは城へ帰るいい口実だと思いますが? |
| ミュゼ | …わかったわ。ガイアスもあなたの事は信頼しているし。この人を連れて城へ帰るわ |
| エステル | 本当ですか!?よかった…よろしくお願いしますね、ミュゼさん |
| ミュゼ | …ミュゼでいいわ |
| ジェイド | くれぐれも丁重な扱いをお願いしますよ。何かあった場合…わかっていますね? |
| ミュゼ | わかってるわよ! |
| ジェイド | 結構です。それと、皆さんも私の事はジェイドと呼んでください |
| アーチェ | うう~。こいつおっかないよぉ… |
| レイヴン | おっさんも同感。おっかなーい |
| エステル | こんな事を言い出してごめんなさい、リタ。でも、わたし、リタを信じて待っていますから |
| リタ | エステル… |
| エステル | お願いです。戦争を止めてください。わたしも、出来る事をしますから。どうか…気をつけて |
| リタ | わかったわ。…任せて |
| レイヴン | おーっとリタちゃん、泣いちゃう?寂しくて泣いちゃう感じ? |
| リタ | うっさい、おっさん!! |
| ジェイド | いやー、楽しそうな仲間で心が躍りますねぇ |
| アーチェ | あたしはあんたがおっかなくて心が重いわよ… |