| Name | Dialogue |
| scene1 | 戦場の少女 |
| アスベル | この辺りには誰もいない…みんな無事に撤退できたようだな |
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| | ゴゴゴ… |
| アスベル | また揺れている…。…この地震は一体いつまで続くんだ? |
| アスベル | 辺りの地割れもひどいしこの様子じゃいつ地面が崩落してもおかしくなさそうだ… |
| アスベル | よし、そろそろ俺も撤退してリチャードにウィンドル軍撤退完了の報告を… |
| アスベル | …ん?あれは… |
| アスベル | 女の子…?まさか…どうしてあんなところにまだ人が残っているんだ!? |
| | |
| アスベル | おい、しっかりしろ。おい! |
| ??? | … |
| アスベル | 気を失ってるのか。怪我は…特になさそうだな |
| アスベル | とにかく、ここは危険だ。安全なところへ連れて行こう |
| アスベル | よっ…と… |
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| ??? | ん… |
| アスベル | 起きたか? |
| ??? | あ… |
| ??? | あなたは…? |
| アスベル | 俺はアスベル・ラント。ウィンドル王国の騎士だ。君の名も教えてくれるか |
| ??? | 私は… |
| カノンノ | …カノンノ。うん、そう。カノンノだよ |
| アスベル | わかった。カノンノ、ここにいるのは危険だ。俺と一緒に安全な所へ行こう |
| カノンノ | あ、うん… |
| アスベル | 一人で歩けるか? |
| カノンノ | うん、大丈夫 |
| アスベル | よし。それじゃ、出発しよう |
| scene2 | 戦場の少女 |
| アスベル | カノンノ、君はどうしてこんな危険な場所にいたんだ? |
| アスベル | この辺りが戦争の激戦区である事は誰しもが知っているはず。なのに、こんな場所にいるなんて… |
| カノンノ | うーん、どうしてかな… |
| アスベル | 君一人か?他に誰か、一緒にいなかったのかい? |
| カノンノ | ううん、一人…だと思う |
| アスベル | だと思う、か…。…あ、じゃあ、住んでいるところは? |
| カノンノ | うーん…ごめん、わからない |
| アスベル | ひょっとして、記憶喪失――…まさかこの戦争に巻き込まれて… |
| カノンノ | …? |
| アスベル | …ごめん、カノンノ。今無理に思い出す必要はないんだ。まずは、安全の確保を―― |
| カノンノ | あ…! |
| | チャリ… |
| アスベル | ネックレスか、綺麗だな。それに、変わった形をしている。星をモチーフにしているような…? |
| カノンノ | …これはとっても大切なものなんだよ絶対に放しちゃいけない、そんな気がするの |
| アスベル | …そうか。そのネックレスが何か、君の手掛かりになればいいな。大事に持っておくんだぞ |
| | ゴゴゴ… |
| カノンノ | さっきから、地震が多いね |
| アスベル | ああ。この分だと、おそらくウィンドル全域で、被害が出ているだろう |
| アスベル | あちこち見て回ったが、もう他にウィンドル軍は残っていないようだ早くバロニアへ帰還した方がいいな |
| カノンノ | バロニアって? |
| アスベル | ウィンドルの王都、俺の住んでいる街さ。そうだ、カノンノも一緒に来ないか? |
| カノンノ | 私も?どうして? |
| アスベル | おそらく君は今、戦争もしくはこの大地震のショックで、一時的に記憶が混乱している状態なんだと思う |
| カノンノ | 記憶が混乱… |
| アスベル | ああ。帰る場所もままならない今、一人でこの辺りをうろつくのは危険だし…どうだ? |
| カノンノ | …うん、そうだね。じゃあ私、一緒に行くよ!ありがとう、アスベルさん |
| アスベル | ああ。よし、そうと決まったら早速… |
| | |
| | ガルルル! |
| カノンノ | な、何!?今の… |
| アスベル | 魔物か! |
| scene1 | バロニアを目指して |
| カノンノ | そういえば、アスベルさんは騎士だって言ってたけど、どんな事をしているの? |
| アスベル | 国王陛下と、国…あとは民を守る、それが騎士の務めだ |
| カノンノ | すごい!立派なお仕事だね!じゃあ、アスベルさんの住むバロニアってどんなところ? |
| アスベル | ウィンドル王国の中心にあって、多くの人が住んでいる都だ。すごく栄えていて、賑やかな街だよ |
| アスベル | 俺は物心がついた頃からバロニアで暮らしてるんだ |
| アスベル | バロニアには親友もいるし、俺にとって思い入れの深い故郷の街なんだ |
| カノンノ | 故郷… |
| アスベル | このところ、いろんな事があってリチャードも苦労しているから、俺も何とか力になりたいんだけどな |
| アスベル | あ、リチャードっていうのはウィンドルの国王なんだが、俺の親友なんだ |
| カノンノ | アスベルさん、王様と知り合いなの?すごいね! |
| アスベル | いや、友達がたまたま王様だっただけで…他にもシェリアって… |
| アスベル | う…! |
| カノンノ | あ…! |
| | |
| カノンノ | …!アスベルさん…!この崖は…!? |
| アスベル | この辺りにこんな崖はなかった…地震の影響がここまでとは… |
| アスベル | ウィンドル…いや、世界中がこんな事になっているとしたら…くっ、早くバロニアへ戻らないと! |
| アスベル | … |
| アスベル | 亀裂の両端も見えない…どうやら完全に大陸が分断されてしまったようだな |
| アスベル | 方角的にはこの崖の向こうにバロニアへ続く道があるはずだが、亀裂を越える事は出来なさそうだ |
| カノンノ | そんな… |
| アスベル | …陸路でバロニアへ戻れないとなると海路を使うしかないが…西にある港はア・ジュールの領内… |
| アスベル | 俺一人でも危険なのにカノンノを連れたまま、国境を越えて港まで行けるだろうか? |
| アスベル | …考えても他に方法はない、か。カノンノ、来た道を戻る事になるが、西の方へ行こう |
| アスベル | 少し遠回りにはなってしまうが、港からウィンドル方面への船が出ていたはずだ |
| アスベル | 危険な道だが、俺についてきてくれ。少なくとも、ここに留まるよりは安全なはずだ |
| カノンノ | 帰れる方法はあるんだね…よかった!じゃあ、早速港を目指そう |
| アスベル | ああ…ん?あれは… |
| | |
| ??? | 困りました… |
| ??? | どうしよう、エリー。ジュード君、やっぱりこの下に落っこちちゃったのかな? |
| アスベル | おい、君達!そんなところで何をしている? |
| ??? | …! |
| アスベル | 君達…こんなところでどうした?保護者はいないのか? |
| ??? | わたし達…ウィンドルから来てて…ジュードを…お友達を捜してるんです |
| ??? | お前達こそ、誰だー!? |
| カノンノ | ぬいぐるみが喋った… |
| アスベル | 驚かせてすまなかった。俺達は怪しい者じゃない |
| アスベル | 俺はウィンドル王国の騎士、アスベル・ラントだ。こっちはカノンノ |
| ??? | … |
| エリーゼ | わたしは…エリーゼ・ルタス。この子は…お友達のティポ…です |
| アスベル | エリーゼにティポか、よろしく。それにしても…こんなところに友達がいるのか? |
| アスベル | 両軍撤退しているとはいえここは戦場だ。地震も頻発しているし一刻も早く家に―― |
| エリーゼ | ジュードを…見ませんでしたか? |
| カノンノ | ジュード…さっきも言っていた、お友達? |
| ティポ | そうそうー、地面ががーっと揺れて気付いたらジュード君、いなくなってたんだよねー |
| アスベル | …まさか、この亀裂に? |
| エリーゼ | わかりません…。はぐれてからずっと亀裂の周りを捜してるんですけど、見つからなくて… |
| エリーゼ | … |
| アスベル | そういう事だったのか…。だったら、君達も俺達と一緒に来ないか? |
| カノンノ | 私達、この亀裂の向こう側にあるバロニアへ向かってる最中なの。よかったら一緒に行こうよ |
| ティポ | …どうする、エリー。悪い人達じゃないみたいだけどー |
| エリーゼ | でも…ジュードを捜さなきゃ… |
| アスベル | バロニアへ着いたら、俺が騎士団にそれらしい人を見なかったか尋ねてみる。だから一緒に行こう |
| エリーゼ | … |
| ティポ | エリー、これだけ捜しても見つからなかったんだし、バロニアなら何か知ってる人がいるかもよー |
| エリーゼ | そうですね…じゃあ、お願いします |
| カノンノ | よかった。じゃあ改めてよろしくね、エリーゼ、ティポ |
| エリーゼ | … |
| カノンノ | …ん?エリーゼ、どうかした? |
| エリーゼ | カノンノの髪…ピンクでかわいい…です |
| カノンノ | …そ、そうかな?ありがとう |
| アスベル | 女の子二人にぬいぐるみか…何だか、不思議な顔ぶれになってきたな |
| scene2 | バロニアを目指して |
| アスベル | やっとア・ジュール港についたな…ここは敵地だから、目立つ事は控えて、おとなしくしていてくれよ |
| カノンノ | ウィンドルへ行く船、出てるといいね |
| アスベル | さすがに普通の船は無理だろう…。戦時下に敵国へ向かう船なんてそうそうないよ |
| ティポ | えー、じゃあ、何で港に来たのー!船が出てないなら意味ないよー! |
| アスベル | しっ!ティポ、大きな声を出すな。こういう時に出航する船は軍用…おっと、隠れて! |
| | ザッザッザッ… |
| カノンノ | ア・ジュール軍の兵士だね…あんなにたくさん… |
| アスベル | よし、あの兵士達の後をつけてみよう。二人ともついて来てくれないか |
| ティポ | あーっ!アスベル君!ぼくを数に入れてないぞー! |
| エリーゼ | …ティポをのけ者にしないでください |
| アスベル | ごめんごめん。三人とも…これでいいか? |
| ティポ | もー、忘れないでよねー |
| ??? | … |
| ??? | あ、戻って来た。首尾はどうだった? |
| ア・ジュール兵 | はっ。タトリン殿のご命令通り、ウィンドル港へ向かう民間船を一隻、何とか手配いたしました |
| ア・ジュール兵 | 民間船も、天変地異の影響でほとんど破損しておりました。しばらくはこの港から船は出せないでしょう |
| ア・ジュール兵 | 我々は作戦通り、密輸船に偽装してウィンドル港へ侵入、任務を遂行します |
| ティポ | 何だかこうやってると、ぼく達スパイみたいだねー |
| アスベル | しっ! |
| アニス | ご苦労様。じゃあ準備が出来次第、現地に向かってね |
| アニス | 私は本部に戻って、大佐に報告しとくから。よろしくー |
| | ザッザッザッ… |
| エリーゼ | 今、話をしていた女の子も、ア・ジュール軍の関係者…ですか? |
| アスベル | ああ。口ぶりからして間違いないだろう |
| アスベル | あの兵士達、ウィンドルへ潜入して国内の状況を探るようだ。放置してはおけない |
| エリーゼ | …! |
| カノンノ | どうしたの、エリーゼ? |
| エリーゼ | そこの岸壁のへりに、何かが… |
| | |
| | グオオオオッ! |
| ティポ | わー!魔物だー!? |
| scene1 | 最悪の再会 |
| カノンノ | あ!あそこにさっきの兵士達がいるよ |
| ア・ジュール兵 | 準備を急げ!完了し次第出航する |
| アスベル | くそっ、何とかして止めたいがここで騒ぎを起こしても捕まるだけだ…何か手はないのか… |
| カノンノ | アスベルさん、あの船はウィンドルまで行くんだよね? |
| アスベル | そうだな…このまま放っておくと残念ながらそういう事になる |
| カノンノ | だったら、あの船に乗ってウィンドルに行くのはどうかな? |
| アスベル | !?密輸船に偽装しているとはいえ敵国の軍隊が乗っているんだ…! |
| アスベル | ……いや、待てよ。いいアイディアかもしれない… |
| ティポ | えー!?アスベル君、本気なのー!? |
| エリーゼ | お願いして乗せてもらえるような船じゃないですよね…? |
| アスベル | ああ。最初はこっそり乗り込むしかないだろう。船がウィンドル港に着くまで身を隠して… |
| アスベル | 港に着いたところで港の軍に協力を要請して奴らを捕まえてもらおう |
| アスベル | 無茶な手段かもしれないがア・ジュール領内に残るのも危険だし他の船も出る気配はなさそうだ |
| アスベル | こんな手段で申し訳ないが、俺と一緒に船に乗ってもらえないか? |
| カノンノ | …あの船に乗ればウィンドルヘ行けるんだよね。だったらやってみようよ |
| エリーゼ | …怖いですけど、それしか方法がないのなら、わたしも…それがいいと思います |
| ティポ | 残っても、ウィンドルの人が、ア・ジュールにいるのは危険だしー |
| アスベル | …ありがとう。三人の身に危険が及ばないよう、俺が必ず守ってみせる |
| カノンノ | じゃあ、急いで船に乗り込もう!もう出航だって言ってたし |
| エリーゼ | はい…! |
| ??? | … |
| ??? | ヒューッ。思わぬところで獲物発見。美味しくいただいちゃいますか?いただかれちゃいますか? |
| scene2 | 最悪の再会 |
| | ボーッ… |
| カノンノ | 汽笛が鳴ってる |
| エリーゼ | 今、船はどの辺りにいるんでしょう…? |
| アスベル | ア・ジュール港を出てだいぶ経つ。そろそろウィンドル港に着いてもいい頃だ |
| ティポ | うまく船に乗り込めてよかったねー |
| アスベル | まあな…。だが、最後まで油断は禁物だ。みんなしっかり荷物の隅に隠れて―― |
| カノンノ | 何だかスリルがあって楽しいね |
| ティポ | だねー |
| エリーゼ | ハラハラします… |
| アスベル | …。みんなこの緊迫した状況を本当に理解しているんだろうか… |
| ティポ | 入り口に鍵もかけたし、大丈夫だよー!アスベル君、心配しすぎー |
| エリーゼ | 気持ちはわかりますけど… |
| カノンノ | アスベルさんがそうやって張りつめすぎてると、私達まで緊張しちゃうかも |
| アスベル | う…そうか。ごめん |
| アスベル | はあ…俺もまだまだ未熟だな。もう少し心に余裕を持たないとな |
| カノンノ | アスベルさんなら大丈夫だよ。そのうち出来るようになると思う。何となくだけど… |
| アスベル | 励ましてくれてありがとう。カノンノは優しいな |
| | |
| ア・ジュール兵 | おい、話し声が聞こえないか?船倉に誰かいるのか? |
| アスベル | …! |
| | ガチャガチャ! |
| ア・ジュール兵 | 中から鍵がかかってる…!やはり誰かいるんじゃないか?おい! |
| | ドンドン! |
| ティポ | どうしよう、気付かれちゃったよー! |
| エリーゼ | このままここに、立てこもりますか…? |
| アスベル | いや、そんな事をしてもいずれ扉をこじ開けられ、見つかってしまうだけだ |
| アスベル | …俺が出る。カノンノ達はここで隠れているんだ |
| カノンノ | 私も一緒に… |
| アスベル | いや、俺一人でいい。みんなは隙を見つけて、別の場所へ移動、いいな? |
| | ドンドン! |
| ア・ジュール兵 | 早くここを開けろ!…くっ… |
| アスベル | … |
| | ガチャ… |
| ア・ジュール兵 | … |
| アスベル | すみません。俺は… |
| | ドサッ! |
| アスベル | え…? |
| カノンノ | いきなり倒れた…? |
| エリーゼ | どうしちゃったんでしょう…? |
| ??? | さてさてここで問題です。このア・ジュール兵は、どうしていきなり倒れたんでしょーか |
| ティポ | 誰!? |
| アスベル | この声は…! |
| ??? | 1ば~ん 波がとっても高いから2ば~ん 海がとっても青いから3ば~ん 船に乗れて嬉しかったから |
| ティポ | さ……さんばん! |
| ??? | ぶっぶ~、正解は5番! |
| ティポ | 聞いてないよー! |
| ハスタ | ハスタ様の気まぐれですよっと! |
| アスベル | ハスタ隊長!? |
| ハスタ | あっれー、アスベル君、ウィンドル軍を除名されたオレをまだ隊長って呼んでくれるのー? |
| カノンノ | アスベルさんの知り合い…? |
| ハスタ | アスベル先生ェ…。いたいけな女子を二人もはべらせて、何とも楽しそうですなあ |
| アスベル | あなたは戦争中に国王の命に背いて勝手に略奪を行った罪で指名手配されていたはず… |
| アスベル | 一体どこにいたんですか?それに、この倒れた兵士達は… |
| ハスタ | 質問は順番にでおじゃるよ!もっともそうしたところで、素直に答えるとは限らねーデスが |
| ハスタ | 騎士団は除名じゃなくてやめたのサ。陛下ってば、ツキモノが落ちたようにすっかりおとなしくなっちまったし |
| アスベル | 今の陛下が、本当の陛下です。騎士団を辞められたとはいえ不敬な発言は止めてください |
| ハスタ | これからどうしよ~とか途方に暮れてたんだけど、いきなりの戦争再開!天変地異! |
| ハスタ | オレさまの時代アゲイン!そう思って張り切ってたところで、アスベル先生を見かけたってワケ |
| ハスタ | アスベル君、昔リンネル村でオレさまにケチつけたの覚えてる~? |
| ハスタ | アレが未だオレさまの中でプッツンきたまま忘れられなくて~いっそ殺してもいいかな~って思いまして |
| アスベル | それで、見かけた俺達の後をつけてきた、という事ですか… |
| エリーゼ | …この人、すごく嫌な感じ、です… |
| ハスタ | さあ、初めましての方も含めてここで潔く死んでもらおうか。オレの気晴らしにね… |
| ティポ | いやー!そんなの理不尽ー! |
| ハスタ | 人生とは理不尽なものなのサ。ドゥーユーアンダスタン?オーケイ、レディゴー! |
| アスベル | くっ…! |
| scene1 | シルヴァラントの傭兵 |
| ハスタ | う~ん…ああ、お花畑が見える…な~んちゃってェ! |
| アスベル | ハスタ…。今でも、あなたのやり方が正しかったとは到底思えない |
| アスベル | そんなあなたですが… |
| アスベル | 一度は隊長を務めた方のこんな姿は見たくなかった… |
| ハスタ | よし、聞くんだいい子達。こういうのはどうだろう?オレをいっそ仲間にするというのは? |
| ティポ | ええー |
| エリーゼ | そんなの…嫌です… |
| カノンノ | この人…正気? |
| ハスタ | おいおい、オレの脳内会議では過半数で即時可決なんだぜ?何て冷たい反応!ひどくなーい? |
| | ガタンッ… |
| ハスタ | お、どうやらお船が港に到着したようデスね |
| ハスタ | よし、そこで提案その3だ |
| ティポ | その2はどうなったのさー! |
| ハスタ | かわいこちゃんをババッとさらって、オレさま華麗にエスケープ! |
| ハスタ | きゅぴーん! |
| カノンノ | アスベルさん!! |
| ティポ | カノンノ君がさらわれたー! |
| アスベル | 待て!! |
| | |
| アスベル | こんな卑怯な真似はやめてください! |
| ハスタ | んん~、ボクちん、そういうの全然気にしない主義! |
| ハスタ | おお~っと、それ以上近付くなよ。かわい子ちゃんのどてっ腹に大きな風穴が開いちまうゼ? |
| カノンノ | アスベルさん…ごめんなさい… |
| ティポ | 最低だー! |
| エリーゼ | 卑怯…です… |
| ハスタ | いいねェ、この、いかにもって感じの悪役感!オレさま最高!ヒーハー! |
| アスベル | …?あれは… |
| | バシィッ! |
| ハスタ | グフゥォァッ! |
| | |
| ??? | 大丈夫か |
| カノンノ | う、うん… |
| アスベル | カノンノーーッ! |
| アスベル | 怖かっただろう…怪我はないか?どこか痛めなかったか? |
| カノンノ | だ、大丈夫だよ。捕まってたのは、ちょっとだけだから |
| ハスタ | おぅのぅれぇ、せっかく勝ったと思ったのにまさかこんな目に…あぁぁな口惜しやぁぁ |
| ハスタ | な~んてね!はい、お時間終了です。形勢不利になったし、か~えろっと! |
| アスベル | ハスタ! |
| ハスタ | 覚えとけよ、カッコつけマン。あとそこのロン毛野郎も。アスタ・ラ・ビスタ・ベイベー! |
| | |
| アスベル | か、カッコつけマン… |
| アスベル | …と、とにかく兵士を呼ぼう。ハスタは彼らに追ってもらった方がいい |
| エリーゼ | ア・ジュールの船も捕まえてもらわないといけませんね |
| アスベル | そうだな。それと… |
| ??? | … |
| アスベル | カノンノを助けていただいて、ありがとうございました |
| カノンノ | ありがとうございます |
| ??? | たまたま奴の死角にいたのでな。そう恐縮しなくてもいい |
| クラトス | 私はクラトス・アウリオン。傭兵だ |
| クラトス | あの地震後、治安が悪くなっている。旅をするなら気を付ける事だな |
| アスベル | 俺はアスベル・ラント。ウィンドルの騎士です |
| アスベル | 何かお礼をしたいのですが… |
| クラトス | 出来る事をしたまでだ。ああいう男は私も好かん。気にするな |
| アスベル | あいにく持ち合わせもないし…バロニアへ戻れば、いろいろ融通も利くのですが… |
| クラトス | バロニア?ちょうど、私もバロニアへ向かっていたところだ |
| アスベル | では、一緒に行きませんか。バロニアには知り合いがいるので、お仕事をご紹介出来ると思います |
| クラトス | …それは助かる。では、ありがたく同行させてもらおう |
| アスベル | よろしくお願いします |
| エリーゼ | クラトスみたいな強い人が一緒に行ってくれると心強いですね |
| アスベル | じゃあ、行きましょう。俺は警備班に報告と指示を出してきますね |
| scene2 | シルヴァラントの傭兵 |
| カノンノ | ウィンドルって、ア・ジュールとは景色が違うんだね |
| アスベル | 向こうは雪がたくさん降ったりして、気候もだいぶ異なるからな |
| アスベル | それにしても…この辺りの森はちっとも変わらないな |
| アスベル | 昔何度か遊びに来た事があるよ |
| カノンノ | そうなんだ… |
| アスベル | あの時は楽しかったな。みんなで弁当を食べたり、ひなたぼっこしたり… |
| ティポ | ひなたぼっこ気持ちよさそー |
| エリーゼ | 楽しそう…です |
| | |
| | ゴゴゴ…! |
| カノンノ | 地震…! |
| クラトス | とてもひなたぼっこを楽しめる状況ではなさそうだな |
| アスベル | そうですね…。それに、今は一刻も早く、バロニアを目指さないと |
| アスベル | 戦争は中断状態とはいえリチャードやシェリア、それに街の人達の事も心配ですし… |
| エリーゼ | ジュード達の事を知っている人がいないか捜さないと…です |
| アスベル | そういえば…クラトスさんは傭兵ですから、各国の事情に詳しそうですね |
| クラトス | そうだな。それなりには情報も入ってくる |
| アスベル | 今、世界はどうなっているんですか? |
| アスベル | キムラスカやシルヴァラントも、異変に見舞われているんですか? |
| クラトス | どこも似たり寄ったりだそうだ |
| クラトス | 地震の影響で崩壊する街…さらには大陸に生じた亀裂に飲み込まれる者も続出しているらしい |
| クラトス | さらにはあの港で会った男のように、この混乱に乗じて悪事を働く者も後を絶たない |
| アスベル | …ハスタ…あの後、捕まえられただろうか |
| ティポ | この地震ってさー自然現象なのかなー? |
| クラトス | そうだ、と言いたいところだが… |
| アスベル | 何か気になる事でも? |
| クラトス | シルヴァラントにあるルイニス街を知っているか? |
| アスベル | はい。以前に騎士団の任務で訪れた事があります |
| アスベル | あの街がどうかしましたか? |
| クラトス | 今回の異変と機を同じくして、街全体が氷漬けになった |
| アスベル | 氷漬け…?住んでいた人達は? |
| クラトス | 無論、一緒に凍った |
| カノンノ | そんな… |
| エリーゼ | 怖い…です |
| クラトス | そういう事だ。今各地で起きている異変が、ただの天災とは考えにくい |
| クラトス | あまりに不自然な点が多いからな |
| アスベル | そうですね…この世界は、一体どうなってしまったのか… |
| | ガサッ… |
| ティポ | そこの草むらに何かいるよー |
| エリーゼ | ウサギか何かでしょうか…? |
| | |
| | ギャオオオッ! |
| カノンノ | 違う!魔物…! |
| scene1 | 忘れられた祭壇 |
| アスベル | 結構歩いたな… |
| アスベル | だが、バロニアまでもう少し…よし、このまま一気に進もう |
| カノンノ | う、うん… |
| エリーゼ | ふう… |
| クラトス | … |
| クラトス | …アスベル。この辺りでいったん、休憩を挟んではどうだ? |
| アスベル | ここで、ですか? |
| アスベル | バロニアまであと少しです、街の事も気がかりですし、ここは一気に… |
| クラトス | カノンノもエリーゼも、だいぶ疲れている。このまま進むのは酷だと思うが |
| アスベル | あ… |
| カノンノ | …わ、私は大丈夫だよ! |
| エリーゼ | …わたしも、まだ頑張れます! |
| ティポ | もう動きたくないよーゆっくり休んでお菓子を食べたいよー |
| エリーゼ | ティ、ティポ! |
| アスベル | …クラトスさん、ありがとう |
| アスベル | みんな、すまない。ここで休憩にしよう! |
| アスベル | 確かこの奥に、泉があります。冷たい水を飲めば元気が出るかも… |
| ティポ | わーい、泉、泉ー!エリー、行こ! |
| クラトス | 私も一緒に行こう。アスベルはここで、カノンノを見ていろ |
| アスベル | わかりました |
| | |
| アスベル | ティポの奴、動きたくないとか言ってたわりに結構元気じゃないか |
| カノンノ | ごめんね、アスベルさん。足手まといになっちゃって |
| アスベル | あ、いや…カノンノが謝る事はない。俺の方こそ気付けなくてすまなかった |
| カノンノ | ううん、仕方ないよ。それだけバロニアの事が、心配だったんだよね |
| アスベル | はは、まずはみんなの身の安全を確保しようと焦っていた |
| アスベル | そして、バロニアの事も… |
| アスベル | バロニアには、俺の大切な人やものがたくさんあるんだ |
| カノンノ | 大切なもの、か…。何だかうらやましいな |
| カノンノ | ここまでの旅の間、アスベルさんがリチャードさんやシェリアさんの事を話してくれた時… |
| カノンノ | すごく優しい顔をしてた |
| カノンノ | アスベルさんにとって二人やバロニアはとっても大事な存在なんだよね |
| アスベル | あ… |
| アスベル | …その、ごめん。カノンノはまだ記憶が… |
| カノンノ | 大丈夫だよ、気にしないで!その事も、そのうち何とかなるって思ってるし |
| カノンノ | バロニアもきっと大丈夫!勿論、リチャードさんやシェリアさんも |
| アスベル | カノンノ… |
| アスベル | ああ、そうだな |
| アスベル | カノンノの記憶の事も、きっと何とかするからな |
| カノンノ | うん、ありがとう。その気持ちだけでもうれしいよ |
| | |
| ティポ | ただいまー! |
| カノンノ | おかえりなさい |
| エリーゼ | アスベルとカノンノに冷たいお水を汲んできました |
| アスベル | ありがとう、エリーゼ。助かるよ |
| クラトス | もう少しここで休んでから、出発するのがいいだろう |
| アスベル | はい、そうしましょう |
| scene2 | 忘れられた祭壇 |
| ティポ | アスベル君、バロニアまだー? |
| アスベル | あと本当にもう少しだから。もう少しでこの森を抜ける。そうしたら… |
| カノンノ | …? |
| エリーゼ | どうしたんですか、カノンノ |
| カノンノ | 何だか…この森の奥が、気になって… |
| クラトス | 気になる…?魔物でもいるのか? |
| カノンノ | … |
| アスベル | おい、カノンノ! |
| ティポ | カノンノ君、何かヘンだったよー!追いかけよー! |
| アスベル | カノンノ、待つんだ! |
| | |
| カノンノ | あ… |
| エリーゼ | ここは…? |
| クラトス | 祭壇のようだな。それもかなり古い |
| アスベル | 森の奥にこんな場所があるなんて、知らなかった… |
| カノンノ | 祭壇…崩れちゃってる… |
| ティポ | 地震のせいかなー? |
| カノンノ | 何だろう、ここ… |
| カノンノ | 懐かしい…?ううん、そうじゃない…何かわからないけど、不思議な感じ… |
| アスベル | ここに来た事があるんじゃないのか? |
| カノンノ | そうかな…わからない |
| カノンノ | …?これ、何だろ |
| | |
| クラトス | 石版だな。何やら文字が書かれているようだが |
| エリーゼ | 何て書いてあるんでしょう…? |
| カノンノ | あ… |
| ティポ | カノンノ君のネックレスが、光ってるよー! |
| アスベル | どういう事だ…? |
| カノンノ | 私にもわからない… |
| カノンノ | でも、何かが…何かの力が伝わってくるような感じがするよ… |
| カノンノ | これは一体――… |
| ??? | どうやらそのネックレスは、精霊の存在に反応しているようだな |
| アスベル | 誰だ!? |
| | |
| ??? | … |
| カノンノ | あなたは一体… |
| クラトス | …いつからそこにいた? |
| ??? | …俺にかまける前に魔物を倒す方が賢明だと思うが |
| ??? | …手は貸してやる |
| エリーゼ | どういう――…! |
| | |
| | グオオオオッ! |
| ティポ | うわーー!また魔物だよー! |
| アスベル | …くっ! |
| scene1 | カノンノのネックレス |
| クラトス | 終わったか… |
| カノンノ | あ、あの… |
| ??? | おい、お前! |
| ??? | そのネックレスをどこで手に入れた?いつ?どうやって? |
| ??? | お前は精霊について何を知っている?他に反応のあった場所は?全て答えろ! |
| カノンノ | あ…あの…私… |
| ??? | 隠すな、言え! |
| アスベル | やめろ!カノンノが怖がっているだろう! |
| エリーゼ | やめてください…! |
| ティポ | そだー!強引すぎるぞー! |
| ??? | ちっ…お前はこの娘の何だ? |
| アスベル | 俺はアスベル・ラント。カノンノは大切な仲間だ |
| ??? | 仲間、だと? |
| アスベル | ああ。俺の仲間は俺が守る。お前に勝手な事はさせない! |
| ??? | … |
| リヒター | 俺はリヒター・アーベント。精霊について調べている |
| クラトス | 精霊だと? |
| クラトス | …そのようなものを調査するお前が、カノンノに何の用があるというのだ? |
| リヒター | …。話したところでお前達にはわからん |
| クラトス | … |
| リヒター | 質問はこれで全部か? |
| リヒター | 次はお前に答えてもらおう。まずはそのネックレスの話からだ |
| カノンノ | …リヒターさん、ごめんなさい。私、以前の事をよく覚えていなくて |
| カノンノ | どこでネックレスを手に入れたとか、そういうの、全然わからないんです |
| リヒター | … |
| アスベル | これで気は済んだか?それじゃ俺達は、そろそろ出発しよう |
| リヒター | …ちょっと待て。お前達はこれからどこへ行くんだ? |
| エリーゼ | バロニア…です |
| リヒター | … |
| リヒター | …奇遇だな。俺もそこへ行く予定だ |
| ティポ | ホントー?カノンノ君についてきたいだけじゃないのー!? |
| リヒター | 目的地が同じなのだから同行しても問題はないだろう? |
| アスベル | いや、俺は反対だ |
| アスベル | 危険人物でないか、確証が持てない。カノンノ、お前も怖いだろう? |
| カノンノ | …調べ事をしてて、それについて知りたかったんだよね? |
| カノンノ | 悪気があってしたわけじゃないなら私は気にしないよ |
| カノンノ | 私も自分の事なら必死になっちゃうかもしれないし |
| エリーゼ | …カノンノは優しいんですね |
| カノンノ | それに、このネックレスの事なら私も知りたいから… |
| カノンノ | リヒターさんが力になってくれそうな気がするの |
| カノンノ | だからアスベルさん、私からもお願い。リヒターさんと一緒に行きたいの |
| アスベル | …カノンノがそこまで言うなら… |
| アスベル | リヒター、共に行こう。ただし、もうカノンノに怖い思いをさせないでくれ |
| リヒター | …ああ |
| クラトス | … |
| scene2 | カノンノのネックレス |
| ティポ | バロニアに着いたー!ジュード君の事何かわかるかなー? |
| カノンノ | ここがバロニア… |
| アスベル | ああ。だけど…いつもと雰囲気が違うな |
| | ゴゴゴ… |
| エリーゼ | また地震…です |
| アスベル | この異変のせいかな… |
| アスベル | 普段はもっと活気に溢れて、賑やかな街なのに… |
| アスベル | 空気は張り詰めているし、出歩く民も数えるほどしかいない |
| アスベル | …いるのは警戒にあたる兵士達ばかりだ… |
| クラトス | 戦争と異変で物流が滞り、物資も少なくなってきているはずだ。そういう事も影響しているのだろう |
| アスベル | なるほど…。建造物の被害がそこまで酷くない事が唯一の救いだな… |
| リヒター | …その理由は、ここが「王都」だからだろう。国の都だ、壊れた建物もすぐ補修されるはずだ |
| アスベル | そういう事か… |
| アスベル | だとしたら、他の街は…?シェリアは… |
| アスベル | くっ… |
| カノンノ | アスベルさん…大丈夫、大丈夫だよきっと! |
| アスベル | …そうだな |
| アスベル | とにかく、一旦俺は城へ…リチャードの元へ向かう |
| アスベル | みんな、一旦ここで待っていてくれるか? |
| エリーゼ | アスベル、わたし達、ジュードの事知っている人がいないか調べていてもいいですか? |
| ティポ | カノンノ君も一緒だよー |
| カノンノ | 私達の事は気にしなくて大丈夫!ゆっくりリチャードさんと話して来てね |
| アスベル | ああ、わかった。リヒター、お前はどうするんだ? |
| リヒター | … |
| リヒター | もう少しお前達と一緒にいてやる |
| エリーゼ | 別に一緒にいたいなんて、頼んでませんけど… |
| クラトス | 私もエリーゼ達に同行しよう。心配せず行ってくるがいい、アスベル |
| アスベル | 助かります。じゃあ、俺は行ってくる! |
| リヒター | … |
| scene1 | 故郷への帰還 |
| アスベル | ただいま戻りました、リチャード陛下 |
| リチャード | アスベル!よかった、無事だったんだね |
| リチャード | 撤退の殿という任務を頼んだものの地震も続くし、気が気ではなかったよ |
| リチャード | 今は他に誰もいない。かしこまって話す必要はないよ。君が無事で本当によかった… |
| リチャード | 前線で起きた事に関しては、既に報告を受けた。もう戦争をしている場合ではないな… |
| アスベル | ああ。地震はこの辺りでも起きているみたいだが…あの辺りはすさまじいものだった… |
| リチャード | ア・ジュールとの国境付近は地割れの影響で大陸が分断されたと報告を受けている |
| リチャード | あんな状態ではア・ジュール軍も進軍出来ないだろうから、当面は侵攻の恐れはないだろうし… |
| リチャード | あの魔導器を再び使う事なく戦争を収束出来ればいいんだが… |
| リチャード | 今回起きた異変は、僕が許されざる選択をした事に対する天罰なのかもしれない… |
| アスベル | 天罰って…どういう事だ? |
| リチャード | せっかくソフィ達が、僕を邪念から解き放ち、やり直す機会をくれたというのに… |
| リチャード | その機会を、僕は無にしてしまった。敵への反撃とはいえ魔導器を使用し、戦争で大勢の兵達を死なせて… |
| アスベル | リチャード… |
| アスベル | 確かに、戦争は再開してしまった… |
| アスベル | けど、あの時リチャードが応戦の指示を出さなければ、この国は確実に滅んでいた… |
| リチャード | … |
| アスベル | これが正しい判断だったのかは俺にもわからない…だけど――… |
| アスベル | だけど…この国を守るための判断をしたお前を俺は全力で支えたいと思う |
| アスベル | お前は一人じゃない。俺にも、お前の重荷を背負わせてくれ |
| リチャード | アスベル… |
| アスベル | 異変の事は、それこそお前への天罰なんかじゃない。あれは天災――… |
| アスベル | …天災…? |
| リチャード | …アスベル、どうかしたのか? |
| アスベル | あ、いや。何でもない。とにかく、自分一人で責任を背負い込むのはよせ |
| アスベル | この状況からどうやってこの国を守り救っていけるかを共に考えよう。俺達や、この国のみんなで… |
| リチャード | アスベル…その気持ち、嬉しいよ。感謝する |
| リチャード | だが…やはり僕は国を統べる者として己の責任を軽く考えたくはないんだ |
| アスベル | リチャード… |
| リチャード | …そういえば、シェリアさんとは無事に会えたかい?君を心配してバロニアまで出向いていたようだが… |
| アスベル | シェリアが…? |
| リチャード | まだ会えていないのか…。しばらく街で君の帰りを待つと言っていたが… |
| アスベル | そうか…ありがとうリチャード。街へ戻ったら、シェリアを捜してみるよ |
| | |
| アスベル | リチャード、落ち込んでいたな…。大丈夫だろうか… |
| アスベル | リチャードのために…この国のために、俺に出来る事は一体――… |
| ティポ | 何一人でブツブツ言ってんのー |
| アスベル | うわあ!?びっくりした! |
| カノンノ | おかえりなさい、アスベルさん |
| エリーゼ | アスベル、大丈夫ですか…?ずっと一人でしゃべってました |
| アスベル | ごめん、少し考え事をしていたんだ… |
| アスベル | それはそうと、お前達の捜していたジュードっていう友達の事は何かわかったのか? |
| エリーゼ | いえ…、バロニアでもそれらしい話は聞けませんでした… |
| ティポ | もしかしたら、本当に亀裂に落ちちゃったのかもー… |
| アスベル | そうか… |
| アスベル | カノンノ、お前はどうだ?何か思い出したか? |
| カノンノ | 記憶の方は全然… |
| カノンノ | でもね、クラトスさんにいろんな話を聞いたよ。シルヴァラントの事とか… |
| リヒター | ただの傭兵にしては、いろいろと知りすぎている気もするがな |
| クラトス | … |
| アスベル | あ!そうだ、そういえばシェリアがこの街に来ているとリチャードが言ってたんだ |
| カノンノ | 本当に!?よかったね、アスベルさん。じゃあ早速シェリアさんのところに… |
| 騎士 | アスベル殿!お待ちください! |
| アスベル | どうした?何かあったのか!? |
| 騎士 | ユーリさんが、城に押し入ろうと城門でフレン隊長ともめています…!今にも決闘でもしそうな剣幕です |
| ティポ | 決闘だってー! |
| アスベル | …あの二人が?そんな馬鹿な! |
| 騎士 | とにかく、私達では、あの方達を止められません! |
| アスベル | わかった。すぐ行く |
| 騎士 | ありがとうございます!私は、念のため増援を呼んできます! |
| scene2 | 故郷への帰還 |
| カノンノ | あそこに、にらみ合っている人達がいるよ |
| アスベル | 間違いない、ユーリとフレンだ!何だってこんな事に… |
| | |
| ユーリ | どけよ、フレン。悪ぃが、お前と遊んでる暇はねえんだ |
| フレン | 出来るわけないだろう。そんな頭に血が上っている状態の君を陛下に会わせる事など出来ない! |
| | |
| クラトス | どうやらまだ決闘には至っていないようだな… |
| ティポ | でも、今にも戦いが始まりそうー!怖いよー |
| | |
| フレン | 一体どうしたっていうんだ。いくら君でもこんな… |
| ユーリ | どうもこうもねえ。やっと終わりかけた戦争をまたおっぱじめやがって |
| ユーリ | おまけに、人がせっかくイニル街の魔導器をぶっ壊したってのに、またあんな物騒なもん出しやがって |
| フレン | 戦争再開は陛下にとっても苦渋の選択だったんだ。魔導器の使用だって… |
| ユーリ | 向こうが仕掛けてきたから、だろ? |
| ユーリ | んな事はわかってる。けど、それで大勢死んだ |
| フレン | 応戦しなければもっと大勢の人間が死んだかもしれないんだぞ! |
| | |
| リヒター | 魔導器、と言ったな… |
| カノンノ | アスベルさん、魔導器って? |
| アスベル | ア・ジュールを迎え撃つにあたり、急遽、今回の戦闘に投入される事が決まった装置の事だ |
| アスベル | 兼ねてから我が国で研究していた魔導器を、兵器として機能させるべく手を加えられたと聞いている |
| | |
| ユーリ | あの魔導器を使い続けりゃ、そんなもんじゃ済まなくなる。わかってるはずだぜ |
| フレン | …戦争が最善の道だとは言わない。だけどこの国を守るために、あの時は他に方法がなかった! |
| ユーリ | かもな。けど、戦争だけでもたくさんなのに話はそれじゃ終わらねえんだ |
| ユーリ | この国を守ろうとして、世界をおしゃかにしちまうんじゃ意味ねえだろ |
| フレン | 世界?何を言っているんだ?我々はあくまで防衛のためにあれを… |
| ユーリ | そういう意味じゃねえよ |
| ユーリ | この世界にはマナってのがあってな。そいつが世界のあらゆるもんを支えているんだそうだ |
| ユーリ | あの魔導器はマナを大量に消費する。それがこの天変地異を引き起こしてんじゃねえかって話だ |
| フレン | 世界を支えるマナ…それが天変地異を… |
| フレン | 本気で言っているのか? |
| ユーリ | 冗談でこんなとこまで来やしねえよ |
| フレン | … |
| ユーリ | … |
| フレン | … |
| フレン | …そうだな。僕の知っているユーリは不真面目だけど、少なくともこういう冗談を言うような男じゃない |
| ユーリ | ほっとけ |
| フレン | それに重大な事であればあるほど、憶測で動いたりもしない |
| フレン | わかった。君を陛下に会わせよう。ただし、もう少し頭を冷やしてからだ。いいね? |
| ユーリ | …オレとしちゃ、お前が信じてくれたんなら任せて帰りたいくらいだけどな |
| フレン | そういうわけにはいかないだろう。第一、もっと詳しい話があるはずだ |
| ユーリ | まあ、な。例えば── |
| 騎士 | フレン隊長、ご無事ですか!皆、ユーリ・ローウェルを押さえろ! |
| ユーリ | おっと、時間切れか。申し開きはガラじゃねえ。後、任せた |
| | |
| フレン | ユーリ!恩赦を無駄にするような無茶だけは── |
| ユーリ | その恩赦もこの世あっての物種だからな。それより魔導器の件、頼んだぜ |
| ユーリ | 世界を終わらせたくなけりゃ二度と国王の奴に使わせるんじゃねえぞ! |
| フレン | ユーリ、待ってくれ、ユーリ! |
| | |
| ティポ | アスベル君ー、あのユーリって人行っちゃうよー? |
| アスベル | … |
| アスベル | …ユーリを追いかけよう! |
| scene3 | 故郷への帰還 |
| アスベル | ユーリ!待ってくれ! |
| ユーリ | あん?何だお前…ってアスベルじゃねえか |
| アスベル | ユーリ、すまない。立ち聞きするつもりはなかったんだがさっきの話、詳しく聞かせてほしい |
| アスベル | 今起きている異変の原因が、魔導器にあるというのは本当か? |
| ユーリ | オレが聞いた限りでは、な。マナは生命の源。で、魔導器はそのマナを動力源にするって話だ |
| ユーリ | 魔導器を使えば使うほどマナは激減、世界の調和とか秩序とかいったもんが壊れちまうんだとさ |
| ユーリ | 今、世界中で、地震だの亀裂だの、おかしな異変が起こってんだろ。その原因がこれってわけだ |
| アスベル | ユーリ…その話は一体どこで… |
| ユーリ | 知り合いに、その手の事に詳しい奴がいてな |
| ユーリ | そいつからの受け売りだよ |
| アスベル | 世界の調和と秩序が壊れる、その結果が…この大地震だっていうのか? |
| | |
| リヒター | 「マナ」に目をつけるとは、な…なかなか興味深い奴だ |
| カノンノ | リヒターさん…? |
| アスベル | …異変は天災とは考えにくい |
| アスベル | …ユーリの話が本当なら、クラトスさんが前に話していた読みの通りですね |
| クラトス | 出来れば、そうあってほしくはなかったがな… |
| アスベル | …おかしいとは思っていたんだ。未だかつて起きた事のないほどの大きな地震が頻発するなんて… |
| アスベル | でも、その異変の原因が俺達の使った魔導器だったなんて… |
| アスベル | 幸い、リチャードは魔導器の使用に積極的じゃない。魔導器が今後大量のマナを消費する事はないだろうが… |
| アスベル | … |
| ユーリ | 起きちまった事は取り消せねえ。肝心なのは、それでどうするか、だ。違うか? |
| アスベル | … |
| カノンノ | アスベルさん… |
| ユーリ | ま、国王がもう魔導器使うつもりがねえんなら、ここに用はねえ |
| ユーリ | とんだ無駄骨だぜ、ったく |
| ユーリ | そんじゃ、オレは行くぜ。あんまり調子こいてる余裕はなさそうなんでな |
| ユーリ | オレ達自身の手で何とかするってティルグの奴に大見得切った以上、ちったあ頑張るさ |
| エリーゼ | ティルグ…? |
| ユーリ | ん?ああ、こっちの話だ。じゃあな |
| アスベル | … |
| アスベル | …ユーリ、待ってくれ!俺も君と共に行く |
| ユーリ | アスベル…? |
| アスベル | 異変を止めたいんだ。この国を…この世界を守りたいんだ! |
| アスベル | 自国を守るための判断だったとはいえ俺達は、取り返しのつかない事をしてしまった |
| アスベル | 世界からしてみれば、勝手な事を言っているのはわかってる |
| アスベル | だけど、今の俺に出来る事は、壊れ始めている世界を守る事だ! |
| ユーリ | わかった、わかった。相変わらず生真面目な奴だな |
| ユーリ | 別に構わねえさ。ただ条件が一つある |
| ユーリ | この異変を止めるためには、とにかくもう、あの魔導器を使わせるわけにはいかねえ |
| ユーリ | もしまた魔導器が使われるようならその時は国王と事を構える事だってあり得る |
| ユーリ | それでも来るか? |
| アスベル | …そうならないよう全力を尽くすのも俺の義務だと思っている |
| カノンノ | アスベルさん… |
| アスベル | カノンノ…。すまない…お前の記憶の事も何とかしてやらなきゃならないのに… |
| カノンノ | ううん、それはいいの。どうにかしようとして戻るものじゃないし |
| カノンノ | そんな事より、私もアスベルさん達と一緒に行ってもいいかな? |
| カノンノ | 私、自分の住んでいたところすらまだわからないままだけど… |
| カノンノ | それでも世界の事をもっと知りたいし、守りたいって思う。だから… |
| アスベル | 勿論、それは構わないが… |
| アスベル | 俺達と一緒だと、何かと大変な事になるかもしれないぞ? |
| アスベル | それに、危険に巻き込んでしまう可能性だって―― |
| カノンノ | 大丈夫だよ!アスベルさんったら本当に心配性なんだから |
| アスベル | そ、そうか… |
| アスベル | …よし、わかった。カノンノ、お前も一緒に行こう。何があっても俺が必ず守るからな |
| カノンノ | うん!またよろしくね、アスベルさん |
| アスベル | …あ、そうだ!これを機に、その「アスベルさん」って呼び方はやめにしないか? |
| アスベル | 俺の事は「アスベル」でいい |
| アスベル | 新たな旅立ちを機に、堅苦しいのは抜きって事でさ |
| カノンノ | …うん!何だか、本当に「仲間」って感じがするね |
| カノンノ | ありがとう、アスベル |
| アスベル | いや、こちらこそありがとう。じゃあ、改めてよろしくな |
| エリーゼ | …その天変地異って、あの亀裂も関係してるんでしょうか…? |
| ティポ | もしそうなら、アスベル君について行けばジュード君が見つかるかもー! |
| エリーゼ | …でも、わたし達がついて行くと迷惑になってしまうかもしれないです… |
| アスベル | 迷惑なんて、そんな事はないさ。お前達の捜しているジュードの事も引続き、一緒に捜そう |
| エリーゼ | アスベル…ありがとうございます。これからもよろしくお願いします… |
| クラトス | 私もこのまま同行しよう |
| クラトス | 世界の危機…決して他人事ではないからな |
| カノンノ | リヒターさんは? |
| リヒター | …このまま共に行ってやろう |
| ティポ | え~、まだついてくるのー |
| アスベル | クラトスさんに、リヒター… |
| アスベル | 二人共ありがとう。心強いよ |
| ユーリ | おいおい、いきなりまた大所帯になっちまったもんだな |
| ユーリ | ま、よろしく頼むぜ |
| アスベル | ユーリ、改めてよろしく頼むよ |
| ユーリ | ああ、当てにさせてもらうぜ |
| アスベル | ああ! |
| リヒター | 既に暴走は、取り返しのつかない段階に至っている |
| リヒター | 果たしてどこまで食い止められるか… |
| クラトス | … |
| リヒター | 何、ほんの戯れ言だ |
| クラトス | … |